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特表2022-551181工作機械における振れ判定のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】工作機械における振れ判定のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521689
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 GB2020052484
(87)【国際公開番号】W WO2021069893
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】1914730.5
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ジェイソン メリフィールド
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル デイビッド ホイル
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029AA24
3C029AA40
(57)【要約】
非接触式工具セッター(2)などの、工作機械に搭載された工具エッジセンサを使用して、工作機械の回転可能なスピンドルによって支持された工具(12)の振れを判定するための方法および装置を説明する。スピンドルは、スピンドル中心線(20)を中心として工具を回転するように配置され、工具は、フルート切削工具であり得る。この技術は、回転軸周りの三つ以上の向きにスピンドルを回転させるステップと、工具エッジセンサを使用して、回転軸周りの三つ以上の向きの各々に関し工具(12)のエッジの位置を測定するステップとを含む。工具中心点は、工具エッジの位置群を関数に当て嵌めることによって検出され、工具中心点とスピンドル中心線(20)との間における位置の差異は、工具の振れの判定に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の回転可能なスピンドルに支持された工具の振れを、前記工作機械に搭載された工具エッジセンサを使用して判定する方法であって、前記スピンドルがスピンドル中心線を中心として前記工具を回転するように配置される、方法において、
回転軸周りの三つ以上の向きに前記スピンドルを回転移動させる第一のステップと、
前記工具エッジセンサを使用して、回転軸周りの前記三つ以上の向きの各々に関して工具エッジの位置を測定する第二のステップと、
前記第二のステップで測定された前記工具エッジの位置を関数に当て嵌めることにより、工具中心点を決定する第三のステップと、
前記第三のステップで決定された前記工具中心点とスピンドル中心線との間における位置の差異を使用して、前記工具の振れを判定する第四のステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第一のステップが、回転軸周りの前記三つ以上の向きに前記切削工具を間欠回転させるステップを含み、前記工具が回転しないままで前記第二のステップの測定が行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一のステップが、前記切削工具を継続的に回転させるステップを含み、前記工具が回転している間に前記第二のステップが回転軸周りの前記三つ以上の向きに行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第三のステップが、前記工具エッジにおいて測定された前記三つ以上の位置を円に当て嵌めて、前記円の中心を検出するステップを含み、前記円の中心は前記工具中心点を定めることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第四のステップが、前記工具の長手方向に沿った複数の位置で前記工具の振れを判定するステップを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工具が複数の切削刃を有する切削工具を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工具が三つ以上の切削刃を有する切削工具を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記切削工具がフルート切削工具であることを特徴とする、請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記切削工具が前記工具中心点に一致する長軸を有し、複数の切削刃の各々が前記工具の長軸から同一の半径方向の距離でわずかに拡がることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工具が、前記工具の円周に沿って実質的に等間隔で相互に離れる複数の切削刃を含む切削工具であり、前記切削刃が、第一の角距離だけ等間隔に離れて、前記第二のステップにおける回転方向が、第二の角距離だけの間隔で離れ、前記第二の角距離が前記第一の角距離の約数であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工具が、工具円周に沿って実質的に等間隔で相互に離れる複数の切削刃を含み、回転軸周りの前記三つ以上の向きが、前記工具円周に沿って実質的に等間隔で相互に離れて、回転軸周りの向きの個数が、前記切削刃の個数に対する公約数を共有し、前記公約数が1より大きい整数であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二のステップが、工具回転軸に実質的に垂直である少なくとも一つの平面内で前記工具エッジの測定を行うステップを含むことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工具エッジセンサが、ブレイクビーム式非接触式工具計測デバイスを含み、前記第二のステップが、前記工作機械を使用して、前記工具エッジセンサに相対して前記スピンドルを移動させるステップを含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工作機械のスピンドルに保持された工具の振れを測定するための工具検知装置であって、前記スピンドルがスピンドル中心線を中心として前記工具を回転させるように配置され、回転軸周りの三つ以上の向きの各々で前記工具のエッジの位置を測定するための工具エッジセンサと、前記工具のエッジの測定された位置群を関数に当て嵌めて、工具中心点を決定するためのプロセッサとを備え、前記工具の振れが、前記工具中心点および前記スピンドル中心線の間における位置の差異から判定されることを特徴とする、工具検知装置。
【請求項15】
工作機械の回転可能なスピンドルに支持された切削工具の振れを測定するための方法であって、前記スピンドルが、スピンドル中心線に関して前記切削工具を回転させるように配置される、方法において、
前記工具の周囲で三つ以上の円周方向位置で前記工具のエッジの位置を測定する第一のステップと、
前記第一のステップで測定された前記工具のエッジの位置から工具中心点を計算する第二のステップと、
前記スピンドル中心線からの前記第二のステップで計算された前記工具中心点の偏差を使用して、前記工具の振れを判定する第三のステップと
を備えることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に搭載された工具エッジセンサを使用して、フルート切削工具などの、工具の振れを判定するための改善された技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤルテストインジケーター(DTI)を使用して、円筒形シャフトの振れ(runout)を測定することは既知である。このような測定は、DTIの先端をシャフトと接触させて配置し、DTIを使用して、シャフトが回転する際に先端の前後する動きを測定することを必要とする。最大先端偏位値および最小先端偏位値の間における差異は、シャフトの軸偏心量(TIR)の測定を与える。
【0003】
DTIを使用して、フルート切削工具の振れを測定することも既知である。このようなフルート工具は、一般的に工具の長手方向に沿って螺旋を描く、または巻き付く切削刃を有する。全ての切削刃は、工具の中心軸から半径方向に同一の距離で拡がると推定され、振れは、DTIを使用して、様々な切削刃がDTIの先端に接触させられる際に生じる先端の偏位における差異を測定することによって決定される。特に、DTIは、最大量および最小量だけDTIの先端を偏位させる二つの刃に関する半径方向の位置における差異からTIRを決定する。
【0004】
工作機械(例えば、複合工作機械、旋盤、フライス盤等)などで使用するための非接触式ブレイクビーム式工具計測デバイスも既知である。例えば、いわゆるNC4非接触式工具セッティングシステムは、英国ウォットン・アンダー・エッジ所在のレニショウ公開有限責任会社によって販売される。NC4装置は、光ビームを発生するためのレーザー光源を含む送信器を備える。光ビームは、回転する工具を配置することができる空き領域の区画を通して受信器に対して指向される。工具計測動作の間、工具セッターが搭載された工作機械は、光ビームの内側および/または外側に工具を移動させるようにプログラムされる。受信器からの出力信号は光ビームの吸光量を示し、装置はこの受信された強度信号を閾値と比較する。いわゆるトリガー信号は、装置によって生成されて、工具がビームに相対する一定の位置に到達していることを示す。トリガー信号により、工具の長さまたは直径をそれ自体で測定することが可能である工作機械によって、工具の位置を決定することが可能となる。工具振れ測定のために、工具は、光ビームに相対して移動しながら回転する。工具位置は、2回測定される。第一の工具位置は、最長の刃らしきものが検出される際に見出され、第二の工具位置は、最短の刃らしきものが検出される際に見出される。これらの測定は、工具の先端から工具の上部に一定の距離だけ移して実施される。これらの刃に関する測定された工具の位置(工具半径)における差異は、上記で言及されたDTIによってなされる最大/最小の偏位測定と同様な方式において、TIRの測定として使用される。
【0005】
しかしながら、本発明者らは、特定の切削工具に関する(DTI、または非接触式工具計測装置を使用して行われる)このような振れ測定が、意外に誤差を受けやすいことを発見している。これは、とりわけ、複数の刃が工具の長手方向に沿って螺旋を描くフルート工具に関する場合である。特に、本発明者らは、上述された技術を使用して測定されるTIRが、切削工具の長手方向に沿って変動することを発見している。以下に詳細に説明されるように、これは、切削エッジに関する測定された半径が、工具のその刃に関する振れおよび円周方向位置の両方に依存する態様で変動することになるからである。本発明者らは、工具の長手方向に沿って様々に変動するこれら二つの効果の組合せが、最長の刃および最短の刃の間における位置的な差異が正確なTIRを必ずしも与えないことを意味することを発見している。
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、先行技術における短所の少なくとも幾つかを低減し、より信頼性のあるTIR測定を提供する。
【0007】
本発明に関する第一の態様によると、工作機械に搭載された工具エッジセンサを使用して、工作機械における回転可能なスピンドルで保持された工具の振れを判定する方法が提供され、スピンドルはスピンドル中心線を中心として工具を回転させるように配置され、この方法は次のステップを備える。
(1)回転軸周りの三つ以上の向きにスピンドルを回転移動させるステップ、
(2)工具エッジセンサを使用して、回転軸周りの三つ以上の向きの各々に関する工具のエッジの位置を測定するステップ、
(3)ステップ(2)で測定された工具エッジの位置を関数に当て嵌めることにより、工具中心点を決定するステップ、
(4)ステップ(3)で決定された工具中心点とスピンドル中心線との間における差異を使用して、工具の振れを判定するステップ。
【0008】
この第一の態様において、本発明は、工作機械に搭載された工具エッジセンサ(例えば、ブレイクビームレーザー式工具セッティング装置)を使用して、工作機械の回転可能なスピンドルに保持された工具(例えば、フルート切削工具)の振れを測定する方法を提供する。工具は、例えば、一つまたは複数の切削エッジ(例えば、切削刃)が半径方向に突き出て中央に工具軸を有する細長い切削工具(例えば、ドリル、ミルなど)であり得る。使用時に、スピンドルは、いわゆるスピンドル軸またはスピンドル中心線を中心として工具を回転させる。スピンドル中心線の位置は、機械座標系で既知である(例えば、それは工作機械のキャリブレーション中に決定されることになる)。理想として、工具の長軸は、完全にスピンドル中心線(すなわち、スピンドル回転軸)に沿って配置されるが、実際には、スピンドル中心線が工具軸に一致しないときに、振れ(偏心(eccentricity)とも呼ばれる)が生じる。この振れは、切削工具に関して、工作物からあまりに多くの材料を除去する結果になり得る、または、摩耗の増大に起因して工具の寿命を縮減し得る、工具の有効切削直径の増加という効果を有する。このようにして、任意の振れに関する測定は、幾つかの理由で重要である。
【0009】
本発明に関する方法は、スピンドルを回転させて、回転軸周りの三つ以上の向き(すなわち、方位的な位置)に工具を回転移動させるステップ(1)を備える。また、ステップ(2)により、工具エッジセンサを使用して、回転軸周りの三つ以上の向きの各々で工具のエッジの位置を測定することを実施する。工具エッジセンサは、既知の方法で、完全に較正されることになり、これにより、工具エッジ測定は機械座標系で行われる。以下により詳細に説明されるように、工具は、各回転方向の回転移動(間欠回転)および回転停止を受けて、このような各位置でステップ(2)の工具エッジ測定を可能とし得て、または、工具が回転している間に、ステップ(2)の工具エッジ測定を行い得る。工具エッジが工具の最も外側の表面であることは、注意すべきことである。したがって、工具エッジは、切削エッジ、非切削エッジ、または工具における他の任意の表面であってよい。以下に記述される好適な実施形態において、工具が回転軸周りの三つ以上の向きの各々に位置するとき、工具エッジの位置を別々に測定するために、スピンドルは、工作機械によって工具エッジセンサに相対して移動(例えば、平行移動)させられ得る。
【0010】
この方法のステップ(3)は、ステップ(2)で行われた工具エッジ位置の測定を使用して、工具中心点を決定することを含む。これは、工具の角度方向を考慮して、回転軸周りの向きの各々に関して測定されたエッジ位置を、関数に当て嵌めることによってなされる。例えば、測定された工具エッジ位置は、円に当て嵌められ得て、その円の中心が決定され得る。工具を回転させるスピンドルを備える工作機械の座標系でエッジ位置が好都合で測定されること(すなわち、測定が機械座標系でなされ得る)は、注意すべきことである。しかしながら、任意の適切な一つまたは複数の座標系を使用することが可能になる。工具中心点を見出すために使用されるフィッティングプロセスは、後述されるような方程式を解くことを含み得るか、または、反復的もしくは数値的な技術を使用し得る。上述された通り、エッジ位置測定を円に当て嵌めることは好適であり、というのも、これは、円の中心(すなわち、工具中心点)を直ちに決定することを可能とするからである。
【0011】
ステップ(3)で定められた工具中心点は、工具軸の位置を与える。スピンドル中心線の位置も既知であり、工具振れに関する信頼性のある測定を提供するために、スピンドル軸からの工具中心点の偏差を使用することができる。こうして、この方法のステップ(4)は、ステップ(3)で決定された工具中心点とスピンドル中心線との間における位置の差異を使用して、工具の振れ(すなわち、軸偏心量またはTIR)を判定する。
【0012】
重要なことであるが、スピンドル中心線に相対する工具中心点の位置を知ることは、工具において半径方向で最大偏位および最小偏位の間における差異(例えば、切削工具における最長の刃および最短の刃に関する半径方向の位置の差異)から振れを測定する、上述された先行技術の方法に関連すると発見されている誤差を無くして、ステップ(4)で振れを計算することができることを意味する。このように、先行技術である振れ測定技術に関する上述された短所(すなわち、工具の長手方向に沿って変動する刃の円周方向の位置に起因する任意の変化から工具振れの効果を分離させることができないこと)は、本発明に関する方法を使用して克服される。このようにして、工具の全タイプに関して使用することができる、より信頼性のある振れ測定が提供される。工具振れを判定するステップが、(例えば、後続の機械加工プロセスにおける使用のために)振れの値を与えること、または、振れ量が許容可能な範囲内にあるかどうかを検査することを含み得ることは、注目される必要がある。
【0013】
上述された通り、ステップ(2)の測定は、工具が回転していないときに行われ得る。このように、ステップ(1)は、回転軸周りの三つ以上の向きに切削工具を間欠回転(ステッピング)させることを含み得る。代替的には、工具エッジ測定は、工具がまだ回転しているときに、回転軸周りの望ましい各向きで収集され得る。このようにして、ステップ(1)は、切削工具を継続的に回転させることを含み得て、ステップ(2)の測定は、工具が回転している間に、回転軸周りの三つ以上の向きに行われ得る。たとえ工具が回転中でない場合であっても、測定間に工具の他の動きがあることは、注意すべきことである。例えば、工具エッジの位置を測定するために、非接触式工具セッターの光ビームの中に工具を平行移動させ得る。
【0014】
工具中心点は、工具のエッジに関して測定された位置群を任意の関数に当て嵌めることにより、ステップ(3)で見出され得る。この関数は、工具の形状を記述し得る。好都合なことに、この関数は円を含み得る。このように、ステップ(3)は、工具エッジに関して三つ以上の測定された位置を円に当て嵌めて、円の中心を見出し、円の中心は工具中心点を決定することを含み得る。本質的ではないが、円は、解析の単純性から一般的に好適である。その上、ほとんどの切削工具は、研削工程を利用して通常製作されており、そのため、これらが高度に対称性を有することは良い推定となる。例えば、切削工具の切削刃はそれぞれ、工具軸から同一距離だけ突き出る傾向がある。
【0015】
ステップ(4)は、工具中心点の位置およびスピンドル中心線の位置におけるベクトル差異を用いて、振れを計算することを含み得る。ステップ(4)は、工具の長手方向に一つの位置(すなわち、一つの平面内)で工具の振れを判定することを含み得る。代替的には、ステップ(4)は、工具の長手方向に沿った複数の位置で工具の振れを決定することを含み得る。好適な実施形態において、工具中心点は、工具の長手方向に沿った複数の異なる位置(平面)で検出され得る。このような複数の工具中心点を、工具軸(すなわち、工具中心線)の決定に使用することができる。工具中心線およびスピンドル中心線を知ることは、工具の長手方向に沿って任意の位置で振れを判定することを可能とする。換言すると、角度振れを測定することができる。これは、例えば、さらに工具の上部に移して行われる測定を使用して、工具先端における振れを判定することも可能とする。
【0016】
本発明に関する方法は、任意の工具に対して実施し得る。工具は、切削工具であることが好適である。切削工具は、複数の刃を有し得る。切削刃は、工具中心点に一致する長軸を有し得て、複数の切削刃の各々は、工具の長軸から半径方向で同一の距離だけわずかに拡がる。切削工具は、三つ以上の切削刃を有し得る。工具は、フルート切削工具であり得る。フルート切削工具は、一つまたは複数の切削刃(切削エッジとよばれることもある)を含み得る。フルート切削工具は、二つ以上の切削刃を含み得る。切削刃は、直線状(例えば、一つまたは複数の直線状の切削エッジは工具の長手方向に沿って与えられ得る)であり得る。好都合なことに、一つまたは複数の切削刃は、切削工具に沿って螺旋を描く、または巻き付くことがあり得る。螺旋状の刃の輪郭が与えられ得る。切削刃の公称輪郭は既知であり得る。
【0017】
上述された通り、切削工具(例えば、フルート切削工具)は、複数の切削刃を含み得る。切削工具は、三つ以上の切削刃を含み得る。切削工具は、四つ以上の切削刃を含み得る。好都合なことに、複数の切削刃は、工具円周に沿って等間隔で相互に離れる。代替的に、切削刃の非対照的な配置が与えられ得る。切削工具は、長軸(すなわち、工具軸または工具中心線)を有し、この長軸は、工具中心点を通過する。複数の切削刃の各々は、工具の長軸(工具軸)から半径方向で同一の距離だけわずかに拡がり得る。換言すると、切削工具の全ての刃は、同一の高さを有し得る。
【0018】
複数の切削刃が工具に与えられる場合、このような切削刃は、第一の角距離だけ離れてそれぞれ間隔を空けることが好適である。換言すると、刃の間に規則的かつ既知の円周状の間隔があり得る(例えば、三刃は相互に120°だけ離れてよいし、四刃は相互に90°だけ離れてよい)。このとき、ステップ(2)における回転軸周りの向き/位置は、第二の角距離だけ離れて間隔を空けてよい。回転軸周りの少なくとも三つの位置が、ステップ(2)のために使用される。回転軸周りの位置の個数は、切削刃の個数に基づいて設定され得る。ステップ(2)における測定を切削工具に関する任意の初期角度方向から行うことができるように、第一および第二の角距離は設定される。第二の角距離が第一の角距離の約数であることが、好都合となる。そのため、例えば、90°だけ相互に離れた四刃によって工具が与えられる場合、工具が測定される回転位置は、90°、45°、30°、18°、15°、10°、9°、6°、5°、3°、2°、または1°だけ離れてよい。これは、切削工具の初期角度に関係なく、測定が各工具に対して同一のポイントで行われることを確実にする。測定精度の向上が望ましい場合、多数の測定値が使用されるが、少数の測定値(例えば、四刃カッタ場合に4個)のみを使用しても、測定された円の中心位置を確実に検出することができる。
【0019】
望ましい測定精度を得るために多数の測定値が必要とされ得るが、この方法が不規則に間隔を空けた刃を有する工具にも適用され得ることは、注意すべきことである。ステップ(2)における回転軸周りの向きの個数は、切削刃の個数に基づいて選択され得る。例えば、工具は、工具円周に沿って実質的に等間隔で相互に離れる複数の切削刃を含み得る。ステップ(2)における回転軸周りの三つ以上の向きは、工具円周に沿って実質的に等間隔で相互に離れ得る。このような場合には、回転軸周りの向きの個数は、切削刃の個数と公約数を共有することが好都合であって、この公約数は、1より大きい整数である。この方式において、各刃における同一の位置は、工具の初期角度方向に関係なく、測定されることになる。
【0020】
ステップ(2)における測定は、工具の回転軸(すなわち、スピンドル中心線)に対して実質的に垂直な平面内で行われ得る。好都合なことに、工具エッジセンサは、非接触式工具計測デバイスを含む。例えば、それは、ブレイクビーム式非接触式工具計測デバイス(上述されたNC4工具計測システムなど)を含んでよい。非接触式工具計測デバイスは、工具による光ビームの不明瞭化を測定し得る。ステップ(2)は、工作機械を使用して、工具エッジセンサ(例えば、非接触式工具計測デバイス)に相対してスピンドルを移動させ得る。非接触式工具計測デバイスは、光強度閾値が超えられたとき、トリガー信号を出力し得る。非接触式工具計測デバイスは、受信された光強度に関連して変動する強度信号を出力し得る。工具エッジセンサは、一次元センサを含み得る。このセンサは、接触式または非接触式のセンサであり得る。接触式工具セッターは、半径方向から工具を咬み合わせて使用され得て、工具が回転するときに工具円周に沿って経路を辿って、工具エッジ位置測定を提供することもあり得る。
【0021】
この方法は、工作機械(例えば、旋盤、フライス盤、穿孔機など)のスピンドルに保持された工具に対して実施される。工作機械は、コンピュータ数値制御式(CNC)の工作機械であり得る。工作機械は、(例えば、一つまたは複数の軸に沿ってスピンドルを平行移動させるための)電動軸を備え得る。工作機械のスピンドルは、電動化され得て、工具の回転を駆動する。スピンドル(および工具)の回転角度が測定可能となるように、スピンドルをコード化することもあり得る。工具エッジセンサは、工作機械の可動部または静止部に搭載され得る。例えば、工具エッジセンサは、機械加工されるべき工作物を配置することができるベッドまたはテーブルに搭載されてよい。
【0022】
第二の態様によると、工作機械のスピンドルで保持された工具の振れを測定するための工具検知装置が提供され、スピンドルはスピンドル中心線を中心として工具を回転させるように配置され、この装置は、回転軸周りの三つ以上の向きの各々で工具のエッジの位置を測定するための工具エッジセンサと、工具中心点を決定するための関数に、工具のエッジの測定された位置群を当て嵌めるためのプロセッサとを備え、工具の振れは工具中心点とスピンドル中心線との間における位置の差異から判定される。
【0023】
また、本発明は、工作機械の回転可能なスピンドルによって支持された切削工具の振れを測定するための方法を拡張し、スピンドルはスピンドル中心線を中心として切削工具を回転させるように配置され、この方法は次のステップを備える。すなわち、(a)工具の周囲に円周方向に沿った三つ以上の位置で工具のエッジの位置を測定するステップ、(b)ステップ(a)で測定された工具エッジの位置から工具中心点を計算するステップ、(c)スピンドル中心線からの、ステップ(b)で計算された工具中心点の偏差を使用して、工具の振れを判定するステップ。ステップ(a)は、回転軸周りの三つ以上の向きにスピンドルを回転移動させることと、回転軸周りの三つ以上の向きの各々で工具のエッジの位置を測定することとを含み得る。代替的に、ステップ(a)は、検知チップを有する接触式工具セッターを使用することと、三つ以上の異なる方向から検知チップに工具を接触させることとを含み得る。これは、回転中にない工具の振れを測定することを可能とし、こうしてスピンドルの角度方向を測定するための手段を含まない工作機械に関する利点となる。異なる方向における複数の非接触式工具セッタデバイスを提供すること、または、単体の非接触式工具セッタデバイスの方向転換を可能とすることを、工具を回転させる必要性の回避に利用することもできる。
【0024】
また、スピンドルに保持されたフルート切削工具の振れを測定するための工具検知装置は、本明細書において記述され、この装置は、回転軸周りの三つ以上の位置の各々で切削工具のエッジの位置を測定するための工具エッジセンサと、工具のエッジの測定された位置群を関数に当て嵌めて、これによって工具の振れを判定するためのプロセッサとを備える。上述された関連する方法とともに記述される任意の特徴は、この装置によって実装され得る。
【0025】
また、回転可能なスピンドルによって支持されたフルート切削工具に関する工具振れを測定する方法が、本明細書において記述される。この方法は、切削工具の長手方向に沿った二つ以上の位置で、すなわち、最長の刃らしきものが検出される際における第一の工具位置と、最短の刃らしきものが検出される際における第二の工具位置とで、測定することを含む。換言すると、最大および最小の工具直径は、先行技術にしたがって測定される。しかしながら、このような測定は、工具の長手方向に沿った複数の位置で行われる。様々な工具長に関する最大および最小の工具直径における変動は、振れの効果を、切削工具に関する螺旋状の刃の輪郭の効果から分離することを可能とする。
【0026】
また、工具エッジセンサを使用して、回転可能なスピンドルによって支持されたフルート切削工具の振れを判定するため方法が、本明細書において記述され、この方法は次のステップを備える。すなわち、(a)回転軸周りの三つ以上の向きにスピンドルを回転移動させるステップ、(b)工具エッジセンサを使用して、回転軸周りの三つ以上の位置の各々で工具のエッジの位置を測定するステップ、(c)工具のエッジの測定された位置を関数に当て嵌めて、それによって工具の振れを判定するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
この方法は、以下の添付図面に関連して、例示のみとして、ここで説明されることになる。
図1】ブレイクビーム式非接触式工具計測デバイスおよび二刃切削工具を示す図である。
図2a図1における工具の回転に対する振れの効果を示す図である。
図2b図1における工具の回転に対する振れの効果を示す図である。
図2c図1における工具の回転に対する振れの効果を示す図である。
図3a】振れの効果をさらに例証する図である。
図3b】振れの効果をさらに例証する図である。
図4a】工具に沿って拡がる螺旋状のフルートを示す図である。
図4b】工具に沿って拡がる螺旋状のフルートを示す図である。
図5a】工具の長手方向に沿った二つの位置で測定された内側半径および外側半径を示す図である。
図5b】工具の長手方向に沿った二つの位置で測定された内側半径および外側半径を示す図である。
図6】内側および外側の工具半径の値を示す図である。
図7】工具の長手方向に沿った様々な位置に関して内側および外側の工具半径の値を表すスライスを示す図である。
図8a】工具の長手方向に沿った位置の関数として工具の測定された特性を示す図である。
図8b】工具の長手方向に沿った位置の関数として工具の測定された特性を示す図である。
図8c】工具の長手方向に沿った位置の関数として工具の測定された特性を示す図である。
図9a図1~8に関する理論的分析を確認する、工具に対して行われた測定を示す図である。
図9b図1~8に関する理論的分析を確認する、工具に対して行われた測定を示す図である。
図10a図8aと同様であるが、三刃カッタに関する分析を示す図である。
図10b図8bと同様であるが、三刃カッタに関する分析を示す図である。
図10c図8cと同様であるが、三刃カッタを示す図である。
図11a図10aと同様であるが、四刃カッタに関する分析を示す図である。
図11b図10bと同様であるが、四刃カッタに関する分析を示す図である。
図11c図10cと同様であるが、四刃カッタを示す図である。
図12a図12cに示されるような三刃カッタに関して行われた実験のデータを示す図である。
図12b図12dに示されるような四刃カッタに関して行われた実験のデータを示す図である。
図12c図12aに関連する三刃カッタを示す図である。
図12d図12bに関連する四刃カッタを示す図である。
図13】2フルートカッタに関する振れ誤差を示す図である。
図14】3フルートカッタに関する振れ誤差を示す図である。
図15】4フルートカッタに関する振れ誤差を示す図である。
図16】与えられた振れにおける四刃カッタの四刃に関して測定される半径を示す図である。
図17】入力行列の編成を示す図である。
図18】要素の合計を示す図である。
図19】行列式を計算して逆行列を作成するラプラスの方法を示す図である。
図20】x0およびy0に関する解法を示す図である。
図21】改善方法および先行方法を使用して測定されたTIRの比較を示す図である。
図22c】上記で概説された理論に基づく実験を示す図である。
図22d】上記で概説された理論に基づく実験を示す図である。
図23a】直径0.07mmのドリルの長手方向に沿った種々の位置における三つの振れに関して、基準値と対比して測定されたTIRを示す図である。
図23b】直径0.07mmのドリルの長手方向に沿った種々の位置における三つの振れに関して、基準値と対比して測定されたTIRを示す図である。
図24a】直径0.05mmのドリルの長手方向に沿った種々の位置における三つの振れに関して、基準値と対比して測定されたTIRを示す図である。
図24b】直径0.05mmのドリルの長手方向に沿った種々の位置における三つの振れに関して、基準値と対比して測定されたTIRを示す図である。
図25】工具先端からの様々な距離で、かつ、工具直径測定間における様々な角度増分で行われた複数の測定に関する振れにおける測定された差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、非接触式工具計測デバイス2が例証される。このデバイスは、光ビーム6を発生するためのレーザーを含む送信モジュール4を備える。光ビーム6は、受信された光の強度を検出するための光検出器を含む受信モジュール8に渡される。送信モジュールおよび受信モジュールは両方ともに、工作機械におけるベッド、または、任意の確かに適切な部分に搭載することができる共通の基部10に取り付けられる。図示されないが、非接触式工具計測デバイス2は、据付時に、既知の方法でインターフェースを通じて工作機械に接続される。
【0029】
使用時に、受信モジュール8によって受信された光量が測定される。工具が光ビーム6の内側に置かれる場合、受信モジュールに到達する光量は、(すなわち、ビームが不明瞭になることから)低減する。受信された光強度は閾値と継続的に比較され、光ビームの内側または外側への工具の移動に起因して閾値が超えられた際に、いわゆるトリガー信号が発信される。このトリガー信号は関連する工作機械のコントローラのSKIP入力に渡され、工作機械によって測定されるように、工具の位置はトリガー信号の受信で捕捉される。これにより、工具サイズ測定(例えば、工具長または工具直径)を行うことが可能となる。
【0030】
図1~15を参照して、非接触式工具計測デバイスを使用して、切削工具の振れを測定するための先行技術がどのようにして誤差を生じやすいのかということを、ここで説明することになる。
【0031】
再び図1を参照して、フルート切削工具12が(工具12が保持されるスピンドルは図示されないことに注意して)示される。切削工具12(カッタと呼ばれることもあり得る)は、zc軸に完全に合わせる配置で示され、この軸は光ビーム6が平行となるyc軸に対して垂直である。切削工具12の先端は、二つの切削エッジまたは切削刃を有し、切削工具12は、回転軸の方向に配向され、これにより、切削工具12の先端における切削刃14が光ビーム6に対して直角になる(すなわち、それはxc方向に突き出る)。また、切削工具12は完全に真っ直ぐであり、切削エッジの両方が半径方向に同一の高さまたは長さを有する(すなわち、両方の刃が工具中心線から同一の距離で半径方向に拡がる)ことが推定される。
【0032】
図2aは、振れを取り入れる効果を示す。特に、工具先端がベクトルxcに沿って0.5°だけスピンドル中心線に相対して旋回(回転)する際のケースを(図面が例証目的のためにはるかに大きな傾斜を示すことに注意して)検討する。旋回する動きの軸はレーザービームの上方で57.295mm長であると仮定されると、工具先端で1.0mmのTIRが生じる。これがどのようにしてスピンドル軸20(すなわち、スピンドルが中心として回転する軸であって、スピンドル中心線ともよく呼ばれる)を工具軸22(すなわち、細長い工具の中心軸)から逸脱させるのかということを、図2bおよび2cはより詳細に示す。
【0033】
図3aは、工具を保持するスピンドルが回転する際の工具先端の動き(これもまた例証目的のために誇張される)を示す。工具先端におけるこの振れは、使用時には、工具がその物理的なサイズより大きな直径の穴を開けることを意味することになる。図3bは、同一の効果に関するトップダウンビューを示す。
【0034】
図4aおよび4bを参照して、切削エッジにおける螺旋状の輪郭に関する効果が、ここで検討されることになる。上記で説明された通り、刃14がxc方向に突き出るように、工具先端12が配置されるケースを検討する。さらに工具の上部に移ると、切削刃に関する螺旋状の輪郭は、刃14がxc方向の外向きにもはや突き出さなくなることを意味する。本例示において、切削工具は、32mmごとに完全な一回転を完了する螺旋を有する。工具の先端から2mm間隔で上に移してスライスを検討する場合、このとき各スライスは22.5°だけシフトする。図4aは、このようなスライスを工具の側面から示し、図4bは先端における第一のスライス30と、先端から2mm上のポイントにおける第二のスライス32とを示す。
【0035】
図5aおよび5bは、工具計測デバイスで測定されるように、工具の位置に対する第一および第二のスライスの間で工具切削エッジの角度における変化の効果を例証する。
【0036】
図5aは、切削工具の第一の刃14がxc方向に沿って拡がるとき、スピンドル軸20および工具軸22が0.5mmだけ離れる第一のスライスを示す。振れの効果は、こうして、第一の刃14が物理的な長さより0.5mm長い(すなわち、第一の刃がxc方向にさらに拡がる)ように見せることである。そのため、半径3mmの工具に関して、第一の刃は3.5mm長であるように測定されることになる。同様にして、切削工具の第二の刃は、物理的な長さより0.5mm短くなると測定されることになる。第二の刃は、こうして、2.5mm長であるように測定されることになる。測定された刃の長さにおける差異(刃が半径方向に拡がる内容に言及するための略記として、刃長が本明細書で使用されることに注意して)は、このようにして、振れ量に等しい1.0mmとなる。
【0037】
しかしながら、図5bは、工具計測が第二のスライス(すなわち、先端から0.2mm上)で行われる際の状況を示す。切削刃に関する螺旋回転の効果は、スピンドル軸20および工具軸22が0.5mmだけ離れるとき、切削刃がxc方向に沿ってもはや突き出ないことを意味する。その代わり、切削刃がxc方向に沿って拡がるために必要とされる追加の回転22.5°に起因して振れの影響が低減される。特に、スピンドル軸20および工具軸22は、この第二のスライスに関してxc方向にわずか0.483mmだけ離れる。これは、最大および最小の刃長がそれぞれ3.451mmおよび2.561mmとして測定されるという結果である。このようにして、工具長における差異はここで実在の振れ1.0mmよりも小さくなることを認めることができる。
【0038】
図6は、第一および第二のスライスに関して内側/外側の半径およびTIRを要約する。
【0039】
図7は、32mmに沿って22.5°の間隔で取られた、工具のスライスの各々に関して、図5aおよび5bの模式図と同様の模式図を示す。左上の模式図は、第一のスライス(すなわち、先端)を示し、後続のスライス群は、上の行から下の行へ左から右へ順番に表示される。スピンドル軸および工具軸の両方がxc軸に沿って同一の位置に位置する(すなわち、偏心はyc方向における差異に起因するのみ)ことから、第五および第十三のスライス(すなわち、90°および270°)に関して全く振れが測定されず、このため、その効果が、レーザービームに沿って(すなわち、yc方向に)位置的な変動に低反応となる工具計測デバイスによって認められないことは、注意すべきことである。
【0040】
図8aは、上述されたスライスの各々における二つの工具先端に関して測定された半径を示す。点群80は第一の切削刃14に関して測定された半径を示し、点群82は第二の切削刃に関して測定された半径を示す。図8bは、工具の外側半径(点群84)、および測定されたTIR(点群86)を示す。こうして、TIRにおける変化が切削工具の長手方向に沿った半径測定の場所に基づいて生じることを認めることができる。
【0041】
図9aおよび9bは、このような誤差が工具の測定時にどのようにして生じるかということを示す。図9bは、ニコン社製ゼロフィット工具ホルダーに搭載された直径6mmの2フルートエンドミルを示す。工具ホルダーの旋回点は、工具先端から130mmの位置にある。切削フルート上方にあるシャンク(工具先端から27mmの位置)の振れは、解像度0.1μmを有するLVDT(線形可変差動変圧器)を使用して測定される。工具ホルダーは、(LVDTによって測定されるように)107μmの振れをもたらすように設置され、工具直径および工具振れは、上述された通り非接触式工具計測デバイス2を使用して測定される。測定された工具直径および工具振れにおける変化は、図9aにプロットされる。理論的なモデルのように、測定された振れは工具先端からの位置により変動することを認めることができる。
【0042】
図10aおよび10bは、同様の効果が三刃切削工具において起こることを示す。図10aは各切削刃の測定された半径を示し、図10bは測定された外側半径およびTIRを示す。
【0043】
図11aおよび11bは、同様の効果が四刃切削工具において起こることを示す。図11aは各切削刃の測定された半径を示し、図11bは測定された外側半径およびTIRを示す。
【0044】
図12aおよび12bは、実験的測定によって図10および11のモデルをサポートする。図12aによると振れの変化は三刃切削工具に関して測定された直径の変化に追随しないが、図12bにおいて示されるように四刃工具に関して振れの変化は測定された直径の変化に追随することは、注意すべきことである。
【0045】
ここで図13を参照して、二刃カッタの測定時に発生し得る最大可能誤差が1.0mmであることが認められる。図14は、三刃カッタの測定時に発生し得る最大可能誤差が0.110mmであることを示し、図15は、四刃カッタに関する最大誤差が0.340mmであることを示す。これはすべて、TIR1.0mmが実際に存在することに基づく。
【0046】
先行技術は、工具の上方、一定の高さで工具振れおよび直径を測定しており、このことは正確な結果を保証することができないことを意味する。最悪の場合、最小の直径が測定されることになり、TIRがゼロを示すことになり、しかしながら、工具はさらにフルートの上部に移してより大きな直径でさらに切削することになる。単一の完全に深さ8mmのレッジ切削が作られる場合、レッジのエッジは直線状にならない(すなわち、エッジは波状になり、かつ/または形状誤差を有することになる)。
【0047】
ここで図16~25を参照して、上述された技術の短所の少なくとも幾つかを解決する、本発明に係る振れ測定のための技術を説明することになる。
【0048】
どのようして、工具振れが、個々の切削エッジの各々の測定、およびそれから四刃切削工具に関する工具中心点の平均の計算から導き出すことになるかということを、ここで説明することになる。
【0049】
図16は、切削工具の長手方向に沿った複数のスライスに関してスピンドル中心線からの各切削先端の半径方向位置を例証する。各刃は工具中心から同一の距離で拡がり、刃の角度間隔は等しいことを推定する。
【0050】
これから、二次元円の中心点を決定する数学を検討する。特に、機械座標系で工具エッジの測定位置を記述する任意個数のXY工具計測値「skip」が取り上げられる。これらは、各測定が収集される際にスピンドルの既知な角度方向を使用して、スピンドル中心線に相対する各ポイントにおける角度および半径を記述する極座標に変換される。それから、これらの極座標は、直交座標系に戻して変換され、円に当て嵌められる。この方法は、最適にフィッティングする円を点群データに適用し、これにより、スピンドル中心線に相対するXY座標系で与えられる、フィッティングされた円の中心点を導出することができる。このとき、(先端からプログラムされて)工具に沿った特定測定位置に関して、半径または振れを計算することができる。
【0051】
この関数の目的は、次式を満たすx0およびy0ならびにrを見い出すことである。
【0052】
【数1】
【0053】
これは、xiおよびyiが与えられたポイントである前提で、x0およびy0に関する方程式を解くことによって行われる。
【0054】
この方程式を解くために、入力行列(2×2)および既知のベクトル(1×2)が必要となる。論証の目的のために、図16に示される通り、振れ0.5mmを有する4フルート工具が使用されることになる。
【0055】
図17を参照して、入力行列が定められる。特に、次のステップが実施される。
・点群データが二つのXY座標の配列、すなわちxiおよびyiに集計される。
・xiおよびyiの平均がそれぞれxiおよびyiから差し引かれ、新たな配列xcおよびycを作り出す。
・配列6個の各々がたすき掛けされ、その要素は各配列に関して合計される。
【0056】
図18を参照して、平方和が計算され、それからその他の配列の組合せでたすき掛けされ、それからさらに合計される。
【0057】
行列にベクトルを掛けて、図20にしたがってx0およびy0に関して解く前に、図19に示されるように、このときラプラス法が使用されて、行列式を計算して逆行列を求める。データ点群を円に当て嵌めるために、代替的な数学技術を使用することができることは、注意すべきことである。当然のことながら、異なる座標系を使用することも可能となる。
【0058】
図21は、本発明に関する方法を使用して計算されたTIR値210を示す。これらは、先行技術であるTIR測定214および外側半径測定212より予測可能性および信頼性に優れることが認められる。
【0059】
図22cおよび22dは、本発明に関する方法を論証するために収集された実験データを示す。特に、実験は、直径0.07mmおよび0.05mmである二つのマイクロドリルを使用して実施された。各ドリルビットは、螺旋状に工具をスパイラルアップする二つのフルートを有する。各ドリルは、ニコン社製ゼロフィット工具ホルダーに搭載されて、振れを調整可能とする。図22dは、機械解像度0.001mmに注意して、極座標に変換された図22cの工具に関する線形のトリガー位置を示す。
【0060】
二つの穿孔工具の振れの基準値は、非接触式工具セッターを基にしたカメラによって測定され、本発明に関する方法を実装する非接触式工具セッターを基にしたレーザーで比較された。
【0061】
図23aは、基準とする非接触式工具セッター(を基にしたカメラ)と、工具先端からの様々の距離における3レベルの振れ(0.001mm、0.003mm、および0.008mm)に関して、本発明に関する方法を実装する非接触式工具セッターを基にしたレーザーとを使用して行われた振れ測定の比較を(直径0.07mmのドリルに関して)示す。測定間に良好な相関が認められる。図23bは、工具先端からの様々の距離で3レベルの振れ(0.001mm、0.003mm、および0.008mm)に関す測定差異をプロットする。
【0062】
図24aおよび24bは、直径0.05mmのドリルに関して同様の結果をプロットする。この場合もやはり、良好な相関が観察される。
【0063】
図23および24に提示された本発明に係るTIR測定は、工具に沿った各スライスに関して収集されたデータ点360個(すなわち、1°刻み)を使用して行われた。図25は、直径0.05mmのドリルを測定するときにおける振れ誤差に対する測定増分のサイズ効果を示す。このようなポイント群の角距離が切削刃の角距離を考慮して設定される場合、はるかに少ないポイントだけを使用することも可能である。例えば、三つの等間隔な切削刃を有する工具を測定するために、最少でも三つの等間隔なポイントが適切であり得る。
【0064】
上述された方法は、工具の回転を使用して、工具の円周に沿ったポイントを測定するが、代替的な方法は、接触式工具セッター(または転向可能な非接触式工具セッター)を使用することであり、回転しない工具に対してでありながら、三つ以上の異なる角度から接触式工具セッタースタイラスの中心に接近することである。例えば、工具エッジに関する3回以上(例えば、6回)の等間隔な測定が行われるまで、第一の測定をX軸に沿って、第二の測定をX軸に対して60°で、第三の測定をX軸に対して120°で、それぞれ行うことができる。このとき、工具の回転に関する上述された数学は同一のままであり、測定された工具エッジ位置は円に当て嵌められて、工具中心点を定めることができる。
【0065】
上記が本発明に関する単なる例示であり、本発明の範囲を限定するように認められるべきでないということは、重ねて注意すべきことである。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図12d
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22c
図22d
図23a
図23b
図24a
図24b
図25
【国際調査報告】