(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】再生可能なモノマーとそのポリマー
(51)【国際特許分類】
C07H 9/04 20060101AFI20221130BHJP
C08G 63/668 20060101ALI20221130BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20221130BHJP
C08G 63/688 20060101ALI20221130BHJP
C08G 69/40 20060101ALI20221130BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20221130BHJP
C08G 64/22 20060101ALI20221130BHJP
C08G 85/00 20060101ALI20221130BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20221130BHJP
C07D 493/14 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
C07H9/04 CSP
C08G63/668
C08G63/78
C08G63/688
C08G69/40
C08G64/02
C08G64/22
C08G85/00
C08L101/16
C07D493/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522056
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020078874
(87)【国際公開番号】W WO2021074211
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514095985
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル ドゥ ローザンヌ(エーペーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】イェレミー ルターバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ マンカー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ディック
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニア ベルテラ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C071
4J001
4J029
4J031
4J200
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057BB02
4C057DD03
4C057FF02
4C071AA01
4C071BB02
4C071CC15
4C071EE04
4C071EE05
4C071FF16
4C071FF17
4C071GG03
4C071GG06
4C071LL03
4J001DA02
4J001DB01
4J001DB04
4J001DC22
4J001EB24
4J001EB57
4J001EC05
4J001EC24
4J001FB03
4J001FC03
4J001JA01
4J001JA10
4J001JA12
4J029AA01
4J029AA03
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC01
4J029AC02
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA03
4J029BF30
4J029CF19
4J029DB13
4J029FC02
4J029FC43
4J029HA01
4J029HB03A
4J029HC02
4J029KA02
4J029KD01
4J029KD02
4J031CA06
4J200AA02
4J200AA03
4J200AA08
4J200AA10
4J200BA03
4J200BA05
4J200BA19
4J200BA29
4J200CA01
4J200CA06
4J200EA01
4J200EA07
(57)【要約】
構造(I)、(II)、又は(V)、式(I)、(II)、(V)を有する化合物が記載され、ここで、R
1は-H、-CH
2OH、又は-CH(OH)CH
2OHであり;R
2は-H、-OH、又は-CH
2OHであり;R
3は-H、-OH、又は-CH
2OHであり;nは0又は1であり;pは0又は1であり;R
10は、水素又は1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分であり[ここで、炭化水素部分の各水素原子は、任意選択的にC
1~C
4-アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Rは-Z-F又はYのいずれかであり、及びここで、Zは0~10個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換され、及びFは、-COOH、-CH(COOH)
2、-COOR
4、-CHO、-CH(CHO)
2、-C
2H
3、-C
2H、-N
3、-NH
2、-NHR
7、-OH、-CH(CH
2OH)
2であり、ここで、R
4はC
1~C
4-アルキル基であり、及びR
7はC
1~C
4-アルキル基であり、及びここで、Yは水素、又は1~20個の炭素原子を有する線状、分岐状、又は環状の有機残基であり、ただし、RがYでありかつnが0である場合、R
1又はR
2の少なくとも1つは水素ではない。また、前記化合物の調製方法、前記化合物から得られるポリマー、並びに前記ポリマーの調製方法も記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(I)、又は(II)、又は(V)を有する化合物:
【化1】
[ここで、
R
1は、-H、-CH
2OH、又は-CH(OH)CH
2OHであり;
R
2は、-H、-OH、又は-CH
2OHであり;
R
3は、-H、-OH、又は-CH
2OHであり;
R
10は、水素、又は1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、ここで炭化水素部分の各水素原子は、任意選択的にC
1~C
4-アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
Rは、-Z-F又はYのいずれかであり、及びここで、Zは0~10個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されており、及びFは、-COOH、-CH(COOH)
2、-COOR
4、-CHO、-CH(CHO)
2、-C
2H
3、-C
2H、-N
3、-NH
2、-NHR
7、-OH、-CH(CH
2OH)
2であり、そして
Yは、水素、又は1~20個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状の有機残基であり、
ここで、R
4は、C
1~C
4-アルキル基であり;
R
7は、C
1~C
4-アルキル基であるが、ただし
RがYであり、かつnが0である場合、R
1又はR
2の少なくとも1つは水素ではない]。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rは、-Z-F[ここで、Zは0~10個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されており、及びFは、-COOH、-CH(COOH)
2、-COOR
4、-CHO、-CH(CHO)
2、-C
2H
3、-C
2H、-N
3、-NH
2、-NHR
7、-OH、-CH(CH
2OH)
2である]であり;
特に、Rは、
-(CH
2)
mCOOH;-C
6H
4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(COOH)
2;
-(CH
2)
mCOOR
4;-C
6H
4COOR
4[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10COOR
4[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(COOR
4)
2;
-(CH
2)
mCHO;-C
6H
4CHO[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10CHO[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(CHO)
2;
-(CH
2)
mC
2H
3;-C
6H
4C
2H
3[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10C
2H
3[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(C
2H
3)
2;
-(CH
2)
mC
2H;-C
6H
4C
2H[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10C
2H[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];
-(CH
2)
mN
3;-C
6H
4N
3[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10N
3[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];
-(CH
2)
mNH
2;-C
6H
4NH
2[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10NH
2[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(NH
2)
2;
-(CH
2)
mNHR
7;-C
6H
4NHR
7[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10NHR
7[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-(CH
2)
mCH(NHR
7)
2;
-(CH
2)
mOH;-C
6H
4OH[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C
6H
10OH[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又は
-(CH
2)
mCH(CH
2OH)
2であり;
ここでR
4はC
1~C
4-アルキル基であり;
mは0~10、特に0~4の整数であり;及びR
7はC
1~C
4-アルキル基である、化合物。
【請求項3】
nが0であり、R
2が-Hである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の化合物であって、Rが-(CH
2)
mCOOR
4;-C
6H
4COOR
4[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];-C
6H
10COOR
4[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又は-(CH
2)
mCH(COOR
4)
2[ここで、mは0~4であり、R
4はC
1~C
4-アルキル基であり、特に、ここでR
4は-CH
3であり、mは0である]である化合物。
【請求項5】
前記化合物が構造(I)を有し、mが0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Yが、1~10個の炭素原子、好ましくは1~7個の炭素原子、最も好ましくは1~3個の炭素原子を有する線状又は分枝状の有機残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
構造(I)、又は(II):
【化2】
[ここで、R、R
1、R
2、R
3、R
10、n、及びpは、請求項1~6のいずれか1項で定義される通りである]のうちの1つを有する請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物の調製方法であって、以下の工程を含む方法:
a.炭水化物又はリグノセルロース含有組成物を提供する工程;
b.カルボン酸、カルボン酸アミド、エーテル、アルキン、アルケン、アルデヒド、塩化物、ヒドロキシル、アジド、カルボン酸エステル、アルデヒド、ビニル、及びアミンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を任意選択的に含むアルデヒドを、炭水化物又はリグノセルロース含有組成物に加えて、混合物を得る工程;
c.混合物を酸性条件下で加熱する工程;及び
d.構造(I)、又は(II):
【化3】
[ここで、R、R
1、R
2、R
3、R
10、n、及びpは、請求項1~6のいずれか1項で定義される通りである]を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物を、分離、特に単離する工程。
【請求項8】
工程b)のアルデヒドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキシル酸、ジアルデヒド、シクロプロパンカルボキサルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルデヒド、トルアルデヒド、及びベンズアルデヒドからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7又は8のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭水化物が、アルドペントース、アルドヘキソース、アルドヘプトース、ケトヘキソース、ケトヘプトース、又はこれらの混合物であり、好ましくは、ここで前記炭水化物が、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコヘプトース、マンノヘプトース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、タロヘプツロース、アロヘプツロース、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、前記炭水化物が、キシロース若しくはグルコース、又はこれらの混合物であり;又は、リグノセルロース含有組成物が、リグノセルロース含有組成物の総重量に基づいて20~40重量%のリグニン含有量を有し、及び/又は、アルデヒドが式R-CHOを有し、ここでRは、請求項1で定義される通りである、方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の方法であって、前記アルデヒドが式CHO-(CH
2)
mCOOH;CHO-C
6H
4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];CHO-C
6H
10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又はCHO-(CH
2)
mCH(COOH)
2を有し、及び、ここで前記方法が、工程c.の後でかつ工程d.の前に、C
1~C
4-アルキルアルコール、好ましくはメタノールを添加する追加の工程を含む、方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の方法であって、前記混合物が50~120℃、好ましくは60~110℃、より好ましくは60~110℃、最も好ましくは60~85℃で加熱され、及び/又は、前記加熱が70~130mbar、好ましくは80~120mbar、より好ましくは90~110mbarの圧力で行われる、方法。
【請求項12】
前記リグノセルロース含有組成物がバイオマス、特にリグノセルロース系バイオマスである、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
繰り返し単位として以下を含むポリマー:
【化4】
{ここで、
R
1、R
2、R
3、R
10、n、及びpは、請求項1で定義される通りであり;そして
R
5は-Z-F
1-又はY
1であり、及びR
6は-F
2-Z-又はY
1であり[ここで、Zは0~10の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲンで置換されており、及びF
1は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR
8-、-R
8NC(=O)-、又は共有結合であり、及びF
2は-OC(=O)-、-C(=O)O-、-R
8NC(=O)-、-C(=O)NR
8-、又は共有結合であり;そして
Y
1は、1~20個の炭素原子を有する線状、分枝状、又は環状の有機残基である]、
特に、ここで、
R
5は-(CH
2)
mC(=O)O-であり、及びR
6は-OC(=O)(CH
2)
m-であり;又は
R
5は-C
6H
4C(=O)O-であり、及びR
6は-OC(=O)C
6H
4-であり[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];又は
R
5は-C
6H
10C(=O)O-であり、及びR
6は-OC(=O)C
6H
10-であり[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又は
R
5は-(CH
2)
mOC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)O(CH
2)
m-であり;又は
R
5は-C
6H
4OC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)OC
6H
4-であり[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];又は
R
5は-C
6H
10OC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)OC
6H
10-であり[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又は
R
5は-(CH
2)
mC(=O)NR
8-であり、及びR
6は-R
8NC(=O)(CH
2)
m-であり;又は
R
5は-C
6H
4C(=O)NR
8-であり、及びR
6は-R
8NC(=O)C
6H
4-であり[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];又は
R
5は-C
6H
10C(=O)NR
8-であり、及びR
6は-R
8NC(=O)C
6H
10-であり[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];又は
R
5は-(CH
2)
mR
8NC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)NR
8(CH
2)
m-であり;又は
R
5は-C
6H
4R
8NC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)NR
8C
6H
4-であり[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];又は
R
5は-C
6H
10R
8NC(=O)-であり、及びR
6は-C(=O)NR
8C
6H
10-であり[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC
1~C
4-アルキル基で置換されている];
ここで、R
8はH又はC
1~C
4-アルキル基であり;
mは0~10、特に0~4の整数であり;そして
oは2~10、特に2~4の整数であるが、ただし、
R
5とR
6がY1で、nが0の場合、R
1又はR
2の少なくとも1つは水素ではない}。
【請求項14】
前記ポリマーが、構造(III)を有する繰り返し単位を含み、ここでn及びR
2は請求項3に定義された通りであり、及びR
1はH又はCH
2OHであり、特にR
1はHであり、mは請求項5に定義された通りである、請求項13に記載のポリマー。
【請求項15】
R
5が-C(=O)O-であり、及びR
6が-OC(=O)-であり、及びoが2である、請求項13又は14に記載のポリマー。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物が、任意選択的に式R
9-L-R
9Aを有する化合物との反応に供される、請求項13~15のいずれか1項に記載のポリマーの調製方法[ここで
Lは、(CH
2)
o(VII)、CO(VIII)、及びジフェニルスルホン(IX)
【化5】
からなる群から選択され、
R
9とR
9Aは、-OR
11、-OH、-NR
8、-COOH、-COOR
4、及びハロゲン原子からなる群から独立して選択され;
ここで、R
11は、アリール及びアルキルからなる群から選択されるか、又は残基R
9のR
11と残基R
9AのR
11が一緒に環系を形成し;
ここで、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択され;
ここで、R
8は、請求項13で定義される通りであり;
ここで、R
4は、請求項2又は4で定義される通りであり;及び
oは、請求項13又は15で定義される通りである]。
【請求項17】
R
9とR
9Aが同じである、請求項16に記載のポリマーの調製方法。
【請求項18】
Lが(CH
2)
o(VII)である、請求項16又は17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
R
9-L-R
9Aが、ビス-(4-ハロゲンフェニル)スルホン、特にビス-(4-クロロフェニル)スルホン、又はビス-(4-フルオロフェニル)スルホンである、請求項16又は17のいずれかに記載のポリマーの調製方法。
【請求項20】
前求項16又は17のいずれかに記載のポリマーの調製方法であって、
ここで、
R
9-L-R
9Aは有機炭酸塩であり、好ましくは
炭酸ジアルキル、好ましくは炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、又は炭酸メチルエチル;
炭酸ジアリール、好ましくは炭酸ジフェニル又は炭酸ジメチルフェニル;又は
環状炭酸塩、好ましくは炭酸エチレン又は炭酸トリメチレンである、方法。
【請求項21】
前記反応が、触媒及び/又は開始剤の存在下で、及び/又は30~250℃の温度で実施される、請求項16~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
シート、繊維、又は成形品の製造のための、特にポリ(エチレンテレフタレート)の代替品としての、請求項13~15のいずれか1項に記載のポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
プラスチックは我々の日常生活の中でどこにでもある消耗品になっている。世界のプラスチック生産は2015年には年間3億8000万トン以上に増加し、年平均増加率は8.5%である。これらのプラスチックの生産による世界のライフサイクル温室効果ガス排出量は、2015年には17億トンのCO2相当量(CO2e)、すなわち全世界の温室効果ガス排出量の5%であり、現在の傾向が続く場合、2050年までに65億トン CO2eに増加すると推定される(Zheng, J. & Suh, S. Strategies to reduce the global carbon footprint of plastics. Nat. Clim. Chang. 9, 374-378 (2019))。また、このプラスチックの3分の1以上は6か月未満の平均寿命の後に廃棄され、その大部分は最終的に埋め立て地又は自然環境に行き着く(Geyer, R.; Jambeck, J. R.; Law, K. L. Production, Use, and Fate of All Plastics Ever Made. Sci. Adv. 2017, 3 (7), e1700782)。プラスチックは、再生不可能で汚染性の化石燃料から製造されるだけでなく、非生分解性であり、世界の生態系に有害である。
【0002】
プラスチック生産からの排出と汚染を軽減するために、バイオベースポリマー及び生分解性ポリマーの研究が切実に必要とされている。2018年には、227万4000トンのバイオプラスチックが生産されたが、これは世界のプラスチック生産の1%未満に相当する。この227万4000トンのうち、38.7%が生分解性ポリマーで構成されている。ただし、再生可能製品に対する消費者の需要の増加に伴い、バイオプラスチック市場は今後10年間で大幅に拡大すると予想される(Biopolymers facts and statistics 2017 report. Institute for Bioplastics and Biocomposites)。
【0003】
再生可能資源からのポリマーが開発されているが、通常それらの機械的特性及び/又はそれらの加工性は、石油ベースのプラスチックの特性に達していない。再生可能資源由来の頻繁に使用されるポリマーであるポリ乳酸(PLA)、ポリコハク酸ブチル(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、世界のポリマー市場の8%を占める最も豊富なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)などの包装材料の適切な代替品ではない(Munoz-Guerra, S.; Lavilla, C.; Japu, C.; Martinez de Ilarduya, A. Renewable Terephthalate Polyesters from Carbohydrate-Based Bicyclic Monomers. Green Chem. 2014, 16 (4), 1716-1739)。これは、それらの劣った機械的特性と加工性に起因する。Coca-Cola co.とDuPontは、再生可能に得られたジオールを使用して部分的に再生可能なPETを商品化したが、硬い二酸成分であるテレフタル酸(TPA)を経済的に生産するか、又はこれを置き換えるための再生可能な経路を未だ見出すことができていない。
【0004】
PETの満足のいく再生可能な代替品はまだ見つ及びていない。現時点でPETの最も有望な持続可能な代替候補は、2,5-フランジカルボン酸から製造されるポリ(エチレンフラノエート)(PEF)のようである。PEFは再生可能な資源から製造される場合があるが、グルコースからの多段階反応シーケンスは、望ましくない分解生成物や重合前に必要な集中的な分離と相まって、その商品化が制限されている。さらに、PEFは非生分解性であるという報告がある(Sajid et al., Green Chem. 2018, 20 (24), 5427-5453)。
【0005】
再生可能なポリエステルは、市販のイソソルビドなどのジアンヒドロヘキシトールを使用して調製されているが、これらは、糖に由来する硬い二環式ジオールである。これらの環状糖を含むポリエステルは、優れた熱的及び機械的特性も備えており、生分解性が向上している(Zamora, F.; Hakkou, K.; Munoz-Guerra, S.; Galbis, J. A. Hydrolytic Degradation of Carbohydrate-Based Aromatic Homo- and Co-Polyesters Analogous to PET and PEI. Polymer Degradation and Stability 2006, 91 (11), 2654-2659)。ただし、これらの糖の主な欠点は反応性が低いことであり、これはアルコール基の二次的な性質と、場合によっては縮合環に対するヒドロキシル基の異なる立体配向に起因する。さらに、イソソルビドは通常、D-ソルビトールの酸触媒脱水によって得られる。イソソルビドモノマーの必要な純度を得るためには、蒸留、アルコールからの再結晶、溶融物からの再結晶、又はこれらの方法の組み合わせを含む面倒な反応工程を必要とする。さらに、合成はジオールに限定されており、アミンなどの誘導体の製造は、さらなる合成工程を必要とする。
【0006】
同様の二環式、糖由来の二酸(2,3:4,5-ジ-O-メチレン-ガラクタレート)も、テレフタル酸(TPA)を直接置き換える試みとして、ガラクタル酸をホルムアルデヒドでアセタール化することによって合成されている。優れた熱的及び機械的特性と強化された水生分解性を備えた高分子量ポリマーが得られたが、バイオマスからのこれらの前駆体の生産には、有毒なパラホルムアルデヒドを使用する面倒な多段階反応シーケンスが必要であり、このため現在は再生可能な炭素からの商業的合成は実用的ではない。例えば、(グルコースから生成されるため)実現可能な生産の最も有望な候補であるグルカル酸ベースのポリマーの生産には、グルコースをグルコン酸に発酵させ、続いてPt/C触媒上でグルコン酸をグルカル酸へと酸化し、最後に、有毒なパラホルムアルデヒドと反応させて最終生成物を得る必要がある(Lavilla, C.; Alla, A.; Martinez de Ilarduya, A.; Benito, E.; Garcia-Martin, M. G.; Galbis, J. A.; Munoz-Guerra, S. Carbohydrate-Based Polyesters Made from Bicyclic Acetalized Galactaric Acid. Biomacromolecules 2011, 12 (7), 2642-2652; Lavilla, C.; Alla, A.; Martinez de Ilarduya, A.; Benito, E.; Garcia-Martin, M. G.; Galbis, J. A.; Munoz-Guerra, S. Biodegradable Aromatic Copolyesters Made from Bicyclic Acetalized Galactaric Acid. Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2012, 50 (16), 3393-3406)。
【0007】
グルコースのアセタールなどの炭水化物のアセタールが調製されている。例えば、米国特許第6,294,666号には、グルコースのアセタール化によって調製された三環式化合物が記載されている。しかしながら、米国特許第6,294,666号は重合性モノマーを記載していない。またWO96/32434A1において、グルコースのアセタール化によって調製された三環式化合物が、製薬用途に使用されるポリエチレンオキシドのサッカリド残基として記載されている。また、WO96/32434A1は重合性モノマーを記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で解明された先行技術から進んで、本発明の目的は、重合又は共重合させることができ、特に、完全に再生可能な、好ましくは生分解可能性を有するポリマーを生成することができるモノマーを提供することである。理想的には、そのモノマーから調製されたポリマー又はコポリマーは、良好な熱的及び/又は機械的特性を有する。
【0009】
WO2011/021398は、感光性樹脂に使用できる重合性基を有するピラノース誘導体及びフラノース誘導体、並びにそれらのピラノース誘導体及びフラノース誘導体の製造方法を開示している。
【0010】
他のより具体的な目的は、一部は明らかになり、そして一部は本明細書で後述される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
これらの利点のいくつか又はすべては、本発明によれば、請求項1に記載の化合物、請求項7に記載の方法、請求項13に記載のポリマー、請求項16に記載の方法、及び請求項22に記載の使用によって達成される。
【0012】
本発明のさらなる有利な実施態様は、従属請求項において特定され、本明細書において以下で詳細に明らかにされる。
【0013】
本発明は、構造(I)又は(II)又は(V)を有する化合物を提供する:
【0014】
【0015】
[ここで、
R1は、-H、-CH2OH、又は-CH(OH)CH2OHであり;
R2は、-H、-OH、又は-CH2OHであり;
R3は、-H、-OH、又は-CH2OHであり;
R10は、水素、又は1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分(moiety)であり、ここで炭化水素部分の各水素原子は、任意選択的にC1~C4-アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
Rは、-Z-F又はYのいずれかであり、及びここで、Zは0~10個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されており、及びFは、-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-C2H、-N3、-NH2、-NHR7、-OH、-CH(CH2OH)2であり、そして
Yは、水素、又は1~20個の炭素原子を有する線状、分岐状、若しくは環状の有機残基であり、
ここで、R4は、C1~C4-アルキル基であり;そして
R7は、C1~C4-アルキル基であるが、ただし
RがYであり、かつnが0である場合、R1又はR2の少なくとも1つは水素ではない]。
【0016】
好ましくは、Zが0個の炭素原子を有する炭化水素部分である場合、それは共有結合である。
【0017】
好ましくは、R10は、1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換の炭化水素部分であり得る。「1~20個の炭素原子を有する置換炭化水素部分」という用語は、1個以上又はすべての水素原子がC1~C4-アルキル基又はハロゲン原子で置き換え(置換)され得る炭化水素部分を表す。炭化水素部分の末端炭素原子の3個の水素原子のそれぞれは、C1~C4-アルキル基又はハロゲン原子で置換され得る。R10は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、1-フルオロイソプロピル、1,1-ジフルオロイソプロピル、1,1,1-トリフルオロイソプロピル、1,1,1,2-テトラフルオロ-イソプロピル、ペンタフルオロイソプロピル、ヘキサフルオロイソプロピルなどであり得る。
【0018】
-C2H3基はビニル基を表す。-C2H基はエチニル基を表す。-N3基はアジド基を表す。
【0019】
置換されているアルキル部分又は芳香族若しくは脂肪族部分などの化学部分の場合、部分中の水素原子の1個が置換基で置き換えられる。例えば、メチル基で置換された-C6H4-部分は、-C6H3(CH3)-部分に対応する。
【0020】
驚くべきことに、単純な合成プロトコルを使用して、バイオマスなどの再生可能な資源から重合性モノマーを調製できることが見出された。確立されたアセタール化化学を使用することにより、本明細書で報告される化合物を得ることができる。アルデヒドに結合した追加の官能基に応じて、異なる官能基を有するモノマーを得ることができる。あるいは、アセタール化は、特に限定されるものではないが、ビニル、アルコール、アミン、及びアジド基を含む他の官能基に容易に変換することができる官能基を有するアルデヒドを使用して、実施することができる。従って、ポリエステル、ポリアミド、又は他のタイプのポリマーは、本明細書で報告される化合物から調製することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、構造(I)、(II)、及び(V)の縮合環は、本明細書に記載の化合物から調製された良好な熱的及び/又は機械的特性を有するポリマーを提供すると考えられる。これらの特性はテレフタル酸とフランジカルボン酸から生成されるPET及びPEFに見られる。こうして本発明は、バイオマスから直接、単純なプロセスで製造することができる生分解性炭水化物を使用して、再生可能な資源からの初めてのモノマーを提供する。
【0021】
本発明はまた、構造(I)、(II)、又は(V):
【0022】
【0023】
[ここで、R、R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りである]のうちの1つを有する本発明の化合物、又は本発明の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物の調製方法を提供し、この方法は以下の工程を含む:
a.炭水化物又はリグノセルロース含有組成物を提供する工程;
b.カルボン酸、カルボン酸アミド、エーテル、アルキン、アルケン、アルデヒド、塩化物、ヒドロキシル、及びアジド、カルボン酸エステル、アルデヒド、ビニル、及びアミンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を任意選択的に含むアルデヒドを、炭水化物又はリグノセルロース含有組成物に加えて、混合物を得る工程;
c.混合物を酸性条件下で加熱する工程;及び
d.構造(I)、(II)、又は(V):
【0024】
【0025】
[ここで、R、R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りである]のうちの1つを有する本発明の化合物、又は本発明の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物を、分離、特に単離する工程。
【0026】
好ましくは、前記少なくとも1つの官能基は、カルボン酸、カルボン酸アミド、エーテル、アルデヒド、塩化物、及びヒドロキシルからなる群から選択される。
【0027】
本発明はまた、繰り返し単位として以下を含むポリマーを提供する:
【0028】
【0029】
[ここで、R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りであり;及び
R5は-ZZ-F1-又はY1であり、R6は-F2-Z-又はY1であり、ここで、Zは0~10の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、及びF1は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR8-、-R8NC(=O)-、又は共有結合であり、及びF2は-OC(=O)-、-C(=O)O-、-R8NC(=O)-、-C(=O)NR8-、又は共有結合である;
ここで、R8はH又はC1~C4-アルキル基であり;及び
oは2~10、特に2~4の整数であり;及び
Y1は、1~20個の炭素原子を有する線状、分岐状、又は環状の有機残基であるが、
ただし、R5とR6がY1であり、及びnが0の場合、R1又はR2の少なくとも1つは水素とは異なる]。
【0030】
本発明はまた、本発明のポリマーの調製方法を提供し、ここで本発明の少なくとも1つの化合物は、任意選択的に式R9-L-R9Aを有する化合物との反応に供され、
ここで、
Lは、(CH2)o(VII)、CO(VIII)、及びジフェニルスルホン(IX)からなる群から選択される:
【0031】
【0032】
[R9とR9Aは、-OR11、-OH、-NR8、COOH、COOR4、及びハロゲン原子からなる群から独立して選択され;
ここで、R11は、アリール及びアルキルからなる群から選択されるか、又は残基R9のR11と残基R9AのR11は一緒に環系を形成し;
ここで、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択され;及び
ここで、R4、R8、及びOは、本明細書で定義される通りである]。
【0033】
最後に、本発明はまた、シート、繊維、又は成形品の製造のための、特にポリ(エチレンテレフタレート)の代替物としての、本発明のポリマーの使用も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】DMSO-d6中のジメチルグリオキシレートキシロース(DMGX)異性体の2D HSQC NMRスペクトルを示す。
【
図2】DMSO-d6中のDMGX異性体の
13C NMRスペクトルを示す。
【
図3】精製されたDMGX異性体のガスクロマトグラフィークロマトグラム(GC)を示す。
【
図4】GC-MSからのDMGX異性体の質量スペクトル(MS)と断片化を示す。
【
図5】ポリ(エチレンジメチルグリオキシレートキシロース)(PEDMGX)の2D HSQC NMRスペクトルを示す。
【
図6】PEDMGXのレフレクターポジティブ(reflector positive)MALDIスペクトルを示す。
【
図7】様々な温度と期間で合成された3つのPEDMGX試料のGPCクロマトグラムを示す。
【
図8】30℃から250℃に加熱し、冷却して30℃にもどしたPEDMGXの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す。
【
図9】PEGDMXの熱重量分析(TGA)曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好適な実施態様
【0036】
本発明の化合物
構造(I)、(II)、及び(V)は、好ましくはアルドース又はケトースなどの炭水化物からアルデヒドとの反応により得られる。当業者は、これが本明細書で報告される化合物及びポリマーの立体構造に及ぼす影響について認識している。
【0037】
残基R1、R2、R3、及びR10は、構造(I)、(II)、又は(V)が得られた炭水化物のタイプに応じて特に異なる。構造(I)、(II)、又は(V)がアルドースから得られた場合、R1は-H、-CH2OH、又は-CH(OH)CH2OHであり得、R2は-Hであり得、R3は-H、-OH、又は-CH2OHであり得る。構造(I)、(II)、又は(V)がケトースから得られた場合、R1は-H又は-CH2OHであり得、R2は-OH又は-CH2OHであり得、R3は-Hの場合であり得る。
【0038】
従って、本発明の化合物は、好ましくは以下の構造のうちの1つを有し得る:
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
[ここで、Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、Fは-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-C2H、-N3、-NH2、-NHR7、-OH、-CH(CH2OH)2であり、ここで、R4はC1~C4-アルキル基であり、R7はC1~C4-アルキル基である]。
【0043】
より好ましくは、本発明の化合物は以下の構造を有する:
【0044】
【0045】
[ここで、
Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、Fは-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-C2H、-N3、-NH2、-NHR7、-OH、-CH(CH2OH)2であり、ここでR4はC1~C4-アルキル基であり、及びR7はC1~C4-アルキル基である]。
【0046】
Zは、好ましくは-(CH2)m-(ここでmは0~10、特に0~4の整数である);-C6H4-(ここで芳香族環は、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で任意選択的に置換されている);又は-C6H10-(ここで脂肪族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている)である。Fは、好ましくは-COOH、-COOR4、-C2H3、-C2H、又は-N3であり、ここでR4はC1~C4-アルキル基である。
【0047】
好ましくは、R2は-Hである。より好ましくは、R2はHであり、R1はH又はCH2OHであり、そしてR3は-Hである。
【0048】
構造(I)及び(II)において、nは好ましくは0である。これは、構造(I)又は(II)がアルドースから得られた場合に特に当てはまる。
【0049】
好ましくは、化合物は構造(I)を有する。構造(I)を有する化合物は、ポリマーに優れた熱的及び/又は機械的特性を与える硬質モノマーである。
【0050】
化合物が構造(I)を有し、R2がHで、及びR1がH又はCH2OH、特にR1がHである場合、非常に良好な結果が得られた。
【0051】
構造(I)、(II)、及び(V)において、Rは、炭化水素部分及び官能基を含み得る。有利には炭化水素部分は、0~10、好ましくは0~4個の炭素原子を有するアルキレン部分である。炭化水素部分はまた、5~10個、好ましくは6個の炭素原子を有する芳香族環系であり得る。炭化水素部分はまた、5~10個、好ましくは6個の炭素原子を有する環状脂肪族環系であり得る。Rに含まれ得る官能基は、-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-NH2、-C2H、-N3、-NHR7、-OH、及び-CH(CH2OH)2からなる群から、好ましくは-COOH、-COOR4、-NH2、-NHR7、及び-OHからなる群から、より好ましくは-COOH及び-COOR4からなる群から選択することができ、ここで、R4はC1~C4-アルキル基であり、及びR7はC1~C4-アルキル基である。Rはまた、前述の官能基の1つからなる場合もある。
【0052】
記載されているように、構造(I)、(II)、及び(V)において、Rは-Z-Fであり、ここでZは0~10個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されており、及びFは、-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-C2H、-N3、-NH2、-NHR7、-OH、-CH(CH2OH)2であり、ここでR4は、C1~C4-アルキル基であり;及びR7はC1~C4-アルキル基である。
【0053】
本発明の1つの実施態様によれば、構造(I)、(II)、及び(V)において、Rは、好ましくは
-(CH2)mCOOH;-C6H4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(COOH)2;
-(CH2)mCOOR4;-C6H4COOR4[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10COOR4[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];(CH2)mCH(COOR4)2;
-(CH2)mCHO;-C6H4CHO[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10CHO[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(CHO)2;
-(CH2)mC2H3;-C6H4C2H3[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10C2H3[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(C2H3)2;
-(CH2)mC2H;-C6H4C2H[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10C2H[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];
-(CH2)mN3;-C6H4N3[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10N3[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];
-(CH2)mNH2;-C6H4NH2[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10NH2[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(NH2)2;
-(CH2)mNHR7;-C6H4NHR7[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10NHR7[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(NHR7)2;
-(CH2)mOH;-C6H4OH[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10OH[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];又は
-(CH2)mCH(CH2OH)2であり、
ここで、R4はC1~C4-アルキル基であり;
R7はC1~C4-アルキル基であり;及び
mは、0~10、特に0~4の整数である。
【0054】
より好ましくは、構造(I)、(II)、及び(V)において、Rは、
-(CH2)mCOOH;-C6H4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(COOH)2;
-(CH2)mCOOR4;-C6H4COOR4[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];-C6H10COOR4[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-(CH2)mCH(COOR4)2であり、
ここで、R4はC1~C4-アルキル基であり;
R7はC1~C4-アルキル基であり;及び
mは、0~10、特に0~4の整数である。
【0055】
Rが、-(CH2)mCOOR4;-C6H4COOR4[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];-C6H10COOR4[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];又は-(CH2)mCH(COOR4)2である場合、非常に良好な結果が得られており、ここでmは0~4であり、及びR4はC1~C4-アルキル基である。好ましくは、Rは-COOMeである。
【0056】
前述の炭化水素部分は通常、容易にアクセスできるアルデヒドの一部である。これらのアルデヒドが利用できない場合、化合物は、官能基変換、例えば還元的アミノ化又はヒドロアミノ化によって得ることができる。さらに、前述の残基Rの官能基は、良好な熱的及び/又は機械的特性を有する構造(I)及び(II)を有する化合物からポリマーを調製することを可能にする。特に、熱的及び/又は機械的特性は、より剛性の高いポリマーの場合は芳香族環系又は脂肪族環系、又はより柔軟なポリマーの場合はアルキレン部分などの、特定の炭化水素部分を選択することによって調整することができる。前述の官能基は、ポリエステル、ポリアミド、又はポリエーテルなどの様々なタイプのポリマーへのアクセスを提供する。ポリエステルは、生分解性であることが非常に多いという特別な利点を有する。
【0057】
本発明の実施態様によれば、Rは、-(CH2)mCOOH、-(CH2)mCH(COOH)2、-(CH2)mCOOR4、-(CH2)mCH(COOR4)2、-(CH2)mCHO、-(CH2)mCH(CHO)2;-(CH2)mC2H3、-(CH2)mCH(C2H3)2、-(CH2)mC2H、-(CH2)mN3、-(CH2)mNH2、-(CH2)mCH(NH2)2、-(CH2)mNHR7、-(CH2)mOH、又は-(CH2)mCH(CH2OH)2であり、ここで、R4はC1~C4-アルキル基、好ましくは-CH3基であり;R7はC1~C4-アルキル基であり;及び、mは、0~10、好ましくは0~4の整数、より好ましくは0である。
【0058】
化合物が構造(I)[Rは、-(CH2)mCOOH、-(CH2)mCH(COOH)2、-(CH2)mCOOR4、-(CH2)mCH(COOR4)2、(CH2)mCHO、-(CH2)mCH(CHO)2;-(CH2)mC2H3、-(CH2)mCH(C2H3)2、-(CH2)mC2H、-(CH2)mN3、-(CH2)mNH2、-(CH2)mCH(NH2)2、-(CH2)mNHR7、-(CH2)mOH、又は-(CH2)mCH(CH2OH)2であり、ここで、R4はC1~C4-アルキル基、好ましくは-CH3基であり;R7はC1~C4-アルキル基であり;及びmは0である]を有する場合に、最適な結果が得られた。より好ましくは、R2はHであり、及びR1はH又はCH2OHであり、特にR1はHである。
【0059】
本発明の好適な実施態様において、Yが、水素、又は1~10個の炭素原子、より好ましくは1~7個の炭素原子、最も好ましくは1~3個の炭素原子を有する線状又は分枝状有機残基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンなどの炭化水素部分である場合に、良好な結果が得られた。
【0060】
従って、好ましくは本発明の化合物は、以下の構造のうちの1つを有する:
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
より好ましくは、本発明の化合物は、以下の構造のうちの1つを有する:
【0075】
【0076】
さらにより好ましくは、本発明の化合物は、以下の構造のうちの1つを有する:
【0077】
【0078】
【0079】
上に示した構造では、環系は好ましくは以下の立体構造を有する:
【0080】
【0081】
化合物の調製方法
本発明はまた、構造(I)、(II)、又は(V)を有する本発明の化合物の調製方法を提供する。本発明の方法は、炭水化物を提供し、炭水化物にアルデヒドを添加することを含む。炭水化物の混合物が使用される場合、構造(I)、(II)、又は(V)を有する化合物の混合物、特に構造(I)、(II)、又は(V)を有する本発明の化合物の混合物を得ることができる。
【0082】
従って本発明は、構造(I)、(II)、又は(V):
【0083】
【0084】
[ここで、R、R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りである]のうちの1つを有する本発明の化合物、又は本発明の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物の調製方法を提供し、この方法は以下の工程を含む:
a.炭水化物又はリグノセルロース含有組成物を提供する工程;
b.カルボン酸、カルボン酸アミド、エーテル、アルキン、アルケン、アルデヒド、塩化物、ヒドロキシル、アジド、カルボン酸エステル、アルデヒド、ビニル、及びアミンからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を任意選択的に含むアルデヒドを、炭水化物又はリグノセルロース含有組成物に加えて、混合物を得る工程;
c.混合物を酸性条件下で加熱する工程;及び
d.構造(I)、(II)、又は(V):
【0085】
【0086】
[ここで、R、R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りである]のうちの1つを有する本発明の化合物、又は本発明の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物を、分離、特に単離する工程。
【0087】
本発明の好適な実施態様において、工程b)のアルデヒドが、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキシル酸、ジアルデヒド、シクロプロパンカルボキサルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルデヒド(pivaldehyde)、トルアルデヒド、及びベンズアルデヒドからなる群から選択される場合、良好な結果が得られた。
【0088】
本発明の化合物の調製方法において、異なる炭水化物を炭水化物として使用することができる。炭水化物は、アルドース又はケトースであり得る。炭水化物は、ペントース、ヘキソース、又はヘプトースであり得る。好ましくは、炭水化物は、アルドペントース、アルドヘキソース、アルドヘプソース、ケトヘキソース、ケトヘプソース、又はこれらの混合物である。より好ましくは、炭水化物は、アルドペントース、アルドヘキソース、アルドヘプソース、又はこれらの混合物、特にアルドペントース、アルドヘキソース、又はこれらの混合物である。
【0089】
有利には、炭水化物は、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコヘプトース、マンノヘプトース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、タロヘプツロース、アロヘプツロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、炭水化物は、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、グルコヘプトース、マンノヘプトース、又はこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、又はこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、炭水化物は、キシロース、グルコース、又はこれらの混合物である。
【0090】
本発明の化合物の調製方法において、リグノセルロース含有組成物を使用することができる。
【0091】
リグノセルロースは、地球上で最も豊富に入手可能な原材料(バイオマス)であると考えられている。リグノセルロース系バイオマスは、未使用のバイオマス、廃棄物バイオマス、エネルギー作物に分類できる。未使用のリグノセルロース系バイオマスには、樹木、低木、草など、自然界に存在するすべての陸生植物が含まれる。廃棄リグノセルロース系バイオマスは、農業(トウモロコシ茎葉、サトウキビバガス、わらなど)や林業(製材所や製紙工場の廃棄物)などの様々な産業部門の低価値の副産物として生産される。
【0092】
リグノセルロースは、ヘミセルロース、セルロース、リグニンを含む。ヘミセルロースとセルロースはどちらも炭水化物ポリマーと見なすことができる。炭水化物ポリマーは、5つ及び6つの炭素糖モノマーを含み、リグニンに結合している。
【0093】
リグニンは芳香族ポリマーと見なすことができる。前記芳香族ポリマーは、グアヤシル(guaiacyl)及びシリンギルサブユニットなどのメトキシル化フェニルプロパンサブユニットを含む。
【0094】
キシランはヘミセルロース類に属する多糖類であり、キシランの主なモノマー単位はD-キシロースである。セルロースは多糖と見なすことができ、主なモノマー単位はβ-1-4結合を介して結合しているD-グルコースである。
【0095】
好ましくは、リグノセルロース含有組成物は、バイオマス、特にリグノセルロース系バイオマス、好ましくは未使用のリグノセルロース系バイオマス、例えば木材である。リグノセルロース系バイオマスは、樺、ブナ、ポプラ、スギ、ダグラスファー(Douglas fir)、糸杉、モミ、セイヨウネズ(juniper)、カウリマツ、カラマツ、マツ、ツガ、セコイア(red wood)、トウヒ、及びイチイなどの樹木に由来することが好ましい。最も好ましい木材は、リグノセルロース含有組成物として、オーク、ポプラ、カエデ、ユーカリ、樺、及び/又はブナなどの硬材(hardwood)である。
【0096】
リグノセルロース含有組成物はまた、エネルギー作物に由来し得る。エネルギー作物は、リグノセルロース系バイオマスの収量が高い作物である。さらに、エネルギー作物は急速に成長しているため、リグノセルロース系バイオマスは、例えば2、3か月後などの短期間ですでに利用可能である。エネルギー作物の例としては、ダンチク(giant reed)、ビッグブルーステム(big bluestem)、ナンキンハゼ、アマナズナ、ウキクサ、パージングナッツ、クロヨナ、スイッチグラス、エレファントグラス(elephant grass)などがある。
【0097】
1つの実施態様によれば、リグノセルロース含有組成物は、トウモロコシの穂軸に由来する。
【0098】
リグノセルロース含有組成物は、23℃の温度で固体であることが好ましい。好ましくは、リグノセルロース含有組成物は、60℃以下の温度で風乾される。例えばリグノセルロース含有組成物は、過剰な水を除去するために貯蔵用に風乾される。風乾されたリグノセルロース含有組成物は、好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、特に0~10重量%の水を含む。
【0099】
リグノセルロース含有組成物は、リグノセルロース含有組成物の総重量に基づいて、1~50重量%、好ましくは10~30重量%のリグニン含有量を有し得る。リグニンは、好ましくはクラーソンリグニン(Klason lignin)として測定される。
【0100】
クラソンリグニンの測定には、クラソンリグニン試験が適用される。この試験では、木質粒子(0.25~0.50g)を50mLビーカーに入れ、72重量%の硫酸溶液7.5mLを添加する。混合物を室温に2時間放置し、10分毎にガラス棒で撹拌する。次に、スラリーを丸底フラスコに移し、290mLの水を加えて硫酸濃度を3重量%にする。ガラス瓶をスクリューキャップで密閉し、オートクレーブ内で120℃で1時間滅菌する。得られた溶液を濾過し、沈殿物を水で洗浄し、105℃で乾燥させ、秤量してクラーソンリグニン含有量を決定する。
【0101】
クラーソンリグニンの含有量は、次の式で求めることができる:
クラーソンリグニンの含有量[%]=KL/LCC×100、ここで
KLはクラーソンリグニンの量[g]であり、LCCはリグノセルロース含有組成物のル[g]である。
【0102】
本発明の化合物の調製方法において、異なるアルデヒドを使用することができる。好ましくは、アルデヒドは式R-CHOを有し、ここで、Rは本明細書で定義される通りである。より好ましくは、アルデヒドは式CHO-(CH2)mCOOH;CHO-C6H4COOH(ここで芳香族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている);CHO-C6H10COOH(ここで脂肪族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている);又はCHO-(CH2)mCH(COOH)2を有する。
【0103】
リグノセルロース含有組成物は、溶媒、例えばジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、又はγ-バレロラクトン、グライム、又はジグライムなどのエーテル溶媒と混合することができる。
【0104】
モノマーを製造するために、基質(糖又はリグノセルロース)とアルデヒドを含む混合物を工程cで様々な温度で加熱することができる。有利には混合物は、50~120℃、好ましくは60~110℃、より好ましくは60~100℃、最も好ましくは60~85℃で加熱される。50℃未満の温度では、反応の進行が非常に遅いことが見出された。すべての温度で、酸触媒の存在によって反応を加速することができる。120℃を超える温度では、望ましくない副生成物が生成されることが見出された。
【0105】
混合物の加熱はまた、原料に応じて様々な圧力下で実施することができる。炭水化物の場合、加熱は150mbar未満の圧力で有利に行われる。特に、反応は70~130mbar、好ましくは80~120mbar、より好ましくは90~110mbarの圧力で実施され得る。反応は減圧下でより速く進行することが見出された。
【0106】
炭水化物の場合、混合物を50~120℃、好ましくは60~110℃、より好ましくは60~100℃、最も好ましくは60~85℃で、及び70~130mbar、好ましくは80~120mbar、より好ましくは90~110mbarの圧力で加熱すると、非常に良好な結果が得られる。これらの条件下で、反応の過程で生成された水を反応から除去することができ、これは、所望の生成物の高収率を得るのを助け、また反応を加速するのを助ける。
【0107】
1つの実施態様によれば、バイオマスの場合、工程a.からc.は、好ましくは極性非プロトン性溶媒であり、さらにより好ましくはエーテル性、最も好ましくはジオキサン、γ-バレロラクトン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、又はテトラヒドロフランである溶媒中で有利に実施される。この実施態様によれば、工程a.からc.は、好ましくは0.5から72時間、より好ましくは1~24時間、そして最も好ましくは2~4時間実施される。この実施態様によれば、工程a.からc.は、有利には50~120℃、好ましくは60~110℃、より好ましくは60~100℃、そして最も好ましくは60~85℃の温度で実施される。次にセルロースは、好ましくは反応混合物から濾過して除去される。次に溶媒は、好ましくは反応混合物から1mbar~150mbarなどの減圧下の蒸発によって除去される。次にリグニンは、好ましくは溶媒中での沈殿と、それに続く沈殿混合物の濾過によって除去され、濾液が得られる。次に、得られた濾液は好ましくは濃縮され、酸が加えられ、続いて上記の炭水化物について記載したように加熱及び減圧される。
【0108】
混合物の酸性条件は、様々な手段によって達成される。有利には、混合物に酸が加えられる。この目的のために、様々な酸を使用することができる。適切な酸の例は、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、及びトルエンスルホン酸である。酸は、好ましくは、0.1~1M、より好ましくは0.2~0.6Mの濃度で使用される。好ましくは、硫酸が混合物に添加される。特に限定されるものではないが、グリオキシル酸などの酸性アルデヒドは、反応を自己触媒することができる。
【0109】
本発明の化合物の調製方法は、追加の工程を含み得る。有利には本発明の方法は、アルコールを添加する工程を含む。特にアルデヒドがカルボン酸基を含む場合、より具体的には、アルデヒドが式CHO-(CH2)mCOOH;CHO-C6H4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];CHO-C6H10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];又はCHO-(CH2)mCH(COOH)2[ここで、mは、0~10、好ましくは0~4の整数である]を有する場合、アルコールを添加することができる。アルコールは、好ましくは混合物が酸性条件下で加熱された後に添加される。好ましくは、アルコールはC1~C4-アルキルアルコール、より好ましくはメタノールである。
【0110】
有利には、アルデヒドの式CHO-(CH2)mCOOH;CHO-C6H4COOH[ここで、芳香族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];CHO-C6H10COOH[ここで、脂肪族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている];又はCHO-(CH2)mCH(COOH)2[ここで、mは、0~10、好ましくは0~4の整数である]を有し、前記方法は、工程の後c.及び工程d.の前に、C1~C4-アルキルアルコール、好ましくはメタノールを添加する追加の工程を含む。
【0111】
C1~C4-アルキルアルコール、好ましくはメタノールなどのアルコールは、アルコールの容量対反応混合物の質量の比率が1:1からアルコールの容量対反応混合物の質量の比率が20:1まで、好ましくはアルコールの容量対反応混合物の質量の比率が5:1からアルコールの容量対反応混合物の質量の比率が15:1まで、より好ましくはアルコールの容量対反応混合物の質量の比率が10:1で添加され得る。
【0112】
次に、C1~C4-アルキルアルコール、好ましくはメタノールを含む混合物は、好ましくは混合物の沸点まで加熱され得る。加熱は、1~10時間、好ましくは2~5時間、より好ましくは2~4時間継続することができる。
【0113】
工程d.は中和工程を含み得る。中和は好ましくは弱塩基を用いて行われる。適切な弱塩基の例は、好ましくは水溶液としての、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムなどの重炭酸塩である。
【0114】
本発明の化合物又は本発明の少なくとも2つの異なる化合物を含む組成物の分離、特に単離は、いくつかの工程を含み得る。分離は、1つ以上の本発明の化合物を有機溶媒で溶解することを含み得る。分離はまた、好ましくは1つ以上の本発明の化合物を有機溶媒に溶解する前に、1つ以上の濾過及び/又は乾燥工程を含み得る。適切な有機溶媒の例は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、グライム、ジグライム、ジクロロメタン、クロロホルム、及びテトラクロロメタン、特にジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、及びジクロロメタン、より具体的には酢酸エチル又はジクロロメタンである。分離はまた、例えば、重炭酸ナトリウム水溶液及び/又は塩化ナトリウム水溶液などの水溶液を用いる1つ以上の洗浄工程を含み得る。分離はまた、精製工程、例えば蒸留を含み得る。蒸留は、好ましくは最終精製工程として行われる。あるいは、結晶化は重合前の最終精製工程として実施することができる。例えば、ジメチルグリオキシレートキシロースの場合、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン、又はアルコールを結晶化に使用することができる。温度制御された結晶化を実施することにより、異性体のキラル分割が可能である。
【0115】
本発明のポリマー
本発明の化合物は、ポリマーの調製に使用することができる。例えば、本発明の化合物は、ポリエステル又はポリアミドの調製のためのモノマーとして使用することができる。
【0116】
従って、本発明はまた、繰り返し単位として含む以下のポリマーを提供する:
【0117】
【0118】
[ここで、
R1、R2、R3、R10、n、及びpは、本明細書で定義される通りであり;及び
R5は-Z-F1-及びR6は-F2-Z-であり、ここで、Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、そしてここで、F1は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR8-、-R8NC(=O)-、又は共有結合であり、及びF2は-OC(=O)-、-C(=O)O-、-R8NC(=O)-、-C(=O)NR8-、又は共有結合であり;ここで、R8はH又はC1~C4-アルキル基であり;及びoは2~10、特に2~4の整数である]。
【0119】
残基R1、R2、及びR3は、本発明のポリマーの調製に使用されるモノマーがそこから得られた炭水化物のタイプに応じて異なる。モノマーがアルドースから得られた場合、R1は-H、-CH2OH、又は-CH(OH)CH2OHであり得、R2は-Hであり得、及びR3は-H、-OH、又は-CH2OHであり得る。モノマーがケトースから得られた場合、R1は-H又は-CH2OHであり得、R2は-OH又は-CH2OHであり得、及びR3は-Hであり得る。
【0120】
従って、本発明のポリマーは、好ましくは、繰り返し単位として、以下の構造のうちの少なくとも1つを含む:
【0121】
【0122】
【0123】
[ここで、Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、及びF1は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR8-、-R8NC(=O)-、又は共有結合であり、及びF2は-OC(=O)-、-C(=O)O-、-R8NC(=O)-、-C(=O)NR8-、又は共有結合であり;
ここで、R8はH又はC1~C4-アルキル基であり;
R10は水素又は1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、ここで炭化水素部分の各水素原子は、任意選択的にC1~C4-アルキル基又はハロゲン原子で置換され得;及び
oは2~10、特に2~4の整数である]。
【0124】
より好ましくは、本発明のポリマーは、繰り返し単位として、以下の構造のうちの少なくとも1つを含む:
【0125】
【0126】
【0127】
[ここで、Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、及びF1は-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)NR8-、-R8NC(=O)-、又は共有結合であり、及びF2は-OC(=O)-、-C(=O)O-、-R8NC(=O)-、-C(=O)NR8-、又は共有結合であり;
ここで、R8はH又はC1~C4-アルキル基であり;
R10は水素又は1~20個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、ここで炭化水素部分の各水素原子は、任意選択的にC1~C4-アルキル基又はハロゲン原子で置換され得;及び
oは2~10、特に2~4の整数である]。
【0128】
Zはまた、0~10個、好ましくは0~4個の炭素原子を有するアルキレン部分であり得る。さらに、Zはまた5~10個、好ましくは6個の炭素原子を有する芳香族環系であり得る。さらに、Zは5~10個、好ましくは6個の炭素原子を有する環状脂肪族環系であり得る。
【0129】
Zは、好ましくは-(CH2)m-[ここで、mは0~10、特に0~4の整数である];-C6H4-[ここで、芳香族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている];。又は-C6H10-[ここで、脂肪族環は任意選択的に、1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている]である。Fは、好ましくは-COOH、-COOR4、-C2H3であり、ここで、R4はC1~C4-アルキル基である。
【0130】
好ましくは、R2は-Hである。より好ましくは、R2はHであり、R1はH又はCH2OHであり、そしてR3は-Hである。
【0131】
構造(III)及び(IV)において、nは好ましくは0である。これは、構造(III)又は(IV)がアルドースから得られた場合に特に当てはまる。
【0132】
記載されているように、構造(I)、(II)、及び(V)において、Rは-Z-Fであり、ここで、Zは0~10個の炭素原子を有し、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換された炭化水素部分であり、及びFは-COOH、-CH(COOH)2、-COOR4、-CHO、-CH(CHO)2、-C2H3、-NH2、-NHR7、-OH、-CH(CH2OH)2であり、ここで、R4はC1~C4-アルキル基であり;及び、R7はC1~C4-アルキル基である。
【0133】
本発明の1つの実施態様によれば、構造(III)、(IV)、及び(VI)において、R5は好ましくは、-(CH2)mC(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)(CH2)m-である;又は
R5は-C6H4C(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)C6H4-であり、ここで芳香族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H4C(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)C6H10-であり、ここで脂肪族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている;又は
R5は-(CH2)mOC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)O(CH2)m-であり;又は
R5は-C6H4OC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)OC6H4-であり、ここで芳香族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H10OC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)OC6H10-であり、ここで脂肪族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている;又は
R5は-(CH2)mC(=O)NR8-であり、及びR6は-R8NC(=O)(CH2)m-である;又は
R5は-C6H4C(=O)NR8-であり、及びR6は-R8NC(=O)C6H4-であり、ここで芳香族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H10C(=O)NR8-であり、及びR6は-R8NC(=O)C6H10-であり、ここで脂肪族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている;又は
R5は-(CH2)mR8NC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)NR8(CH2)m-であり;又は
R5は-C6H4R8NC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)NR8C6H4-であり、ここで芳香族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H10R8NC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)NR8C6H10-であり、ここで脂肪族環は、任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている;又は
R8はH又はC1~C4-アルキル基である;及び
mは0~10、特に0~4の整数である。
【0134】
より好ましくは、構造(III)、(IV)、及び(VI)において、R5は好ましくは-(CH2)mC(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)(CH2)m-であえう;又は
R5は-C6H4C(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)C6H4-であり、ここで芳香族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H10C(=O)O-であり、及びR6は-OC(=O)C6H10-であり、ここで脂肪族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている;又は
R5は-(CH2)mOC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)O(CH2)m-であり、ここで芳香族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H4OC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)OC6H4-であり、ここで芳香族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基又は1~4個のハロゲン原子で置換されている;又は
R5は-C6H10OC(=O)-であり、及びR6は-C(=O)OC6H10-であり、ここで脂肪族環は任意選択的に1~4個のC1~C4-アルキル基で置換されている; ここで、
mは、0~10、特に0~4の整数である。
【0135】
従って、好ましくは本発明のポリマーは、繰り返し単位として、以下の構造のうちの少なくとも1つを含む:
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
(ここで、oは2~10、特に2~4の整数である)。
【0154】
好ましくは、本発明のポリマーは、構造(III)を有する繰り返し単位を含み、ここで、nは0であり、R2は-Hであり、R1はH又はCH2OHであり、特にR1はHであり、及びmは0である。
【0155】
本発明の1つの実施態様によれば、ポリマーは、構造(IV)を有する繰り返し単位を含まない。
【0156】
構造(III)、(IV)、及び(VI)において、R5が-C(=O)O-であり、R6が-OC(=O)-であり、及びoが2の場合、非常に良好な結果が得られた。
【0157】
最も好ましくは、本発明のポリマーは繰り返し単位として以下を含む:
【0158】
【0159】
ここで、oは2であり;構造(IV)を有する繰り返し単位を含まない。
【0160】
上に示した構造では、環系は好ましくは以下の立体構造を有する:
【0161】
【0162】
前述の繰り返し単位、特にキシロースに由来する繰り返し単位を含むポリマーは、良好な熱的及び/又は機械的特性を示すことが見出された。さらに、これらのポリマーは、安価で豊富な資源から簡単なプロセスで容易に調製することができる。
【0163】
ポリマーの調製方法
本発明はまた、本発明のポリマーの調製方法を提供し、ここで本発明の少なくとも1つの化合物は、任意選択的に式R9-L-R9Aを有する化合物との反応に供され、ここでR9とR9Aは、-OR11、-OH、-NHR8、-COOH、-COOR4、及びハロゲン原子からなる群から独立して選択され;
ここで、R11は、アリール及びアルキルからなる群から選択されるか、又は残基R9のR11と残基R9AのR11が一緒に環系を形成し;
ここで、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択され;
ここで、R4、R8、及びoは、本明細書で定義される通りである。これは、R9とR9Aが同じでも異なっていてもよいことを意味する。
【0164】
R9とR9Aが同一である本発明の好適な実施態様において、非常に良好な結果が得られた。
【0165】
本発明の別の好適な実施態様によれば、Lが(CH2)oである場合、良好な結果が得られた。
【0166】
本発明のさらに好適な実施態様において、R9-L-R9Aがビス-(4-ハロゲンフェニル)スルホン、特にビス-(4-クロロフェニル)スルホン又はビス-(4-フルオロフェニル)スルホンである場合、良好な結果が得られた。
【0167】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、R9-L-R9Aが式(VIII)のLCOの有機炭酸塩であり、R9とR9Aが同じ又は異なるOR11である時、良好な結果が得られており、ここでR11はアリールとアルキルからなる群から選択されるか、又は残基R9のR11と残基R9AのR11は、一緒に環系を形成し、すなわち環状炭酸塩を形成する。例えば、有機炭酸塩は、炭酸ジアルキル、炭酸ジアリール、又は環状炭酸塩であり得る。炭酸ジアルキルの例は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、又は炭酸メチルエチルである。炭酸ジアリールの例は、炭酸ジフェニル又は炭酸ジメチルフェニルである。環状炭酸塩の例は、炭酸エチレン又は炭酸トリメチレンである。
【0168】
好ましくは、反応は重合反応である。
【0169】
本発明の少なくとも1つの化合物と式R9-L-R9Aを有する化合物は、異なる比率、例えば1:10~10:1で提供され得る。好ましくは、本発明の少なくとも1つの化合物と式R9-L-R9Aを有する化合物は、1:1~1:10、より好ましくは1:1~1:8、最も好ましくは1:1~1:5の比率で提供される。
【0170】
好ましくは、反応は触媒の存在下で行われる。使用できる重縮合触媒の非網羅的なリストには、三酸化アンチモン、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、酸化ジブチルスズ、及び酢酸亜鉛が含まれる。
【0171】
反応はまた、開始剤、特にラジカル開始剤の存在下で実施することができる。これは、本発明の化合物がビニル基を含む場合に特に当てはまる。
【0172】
反応は、異なる温度で実施することができる。好ましくは反応は、30~250℃の温度で、より好ましくは50~230℃の温度で、最も好ましくは100~220℃の温度で実施される。反応がラジカル開始剤の存在下で行われる場合、温度は好ましくは、ラジカル開始剤を考慮して、特に開始剤の半減期を考慮して調整される。適切なラジカル開始剤の例は、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、又はアゾイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤である。
【0173】
本発明のポリマーの調製方法における反応はまた、いくつかの工程を含み得る。本発明のポリマーの調製方法の1つの実施態様によれば、第1の工程において、本発明の化合物と式R9-L-R9Aを有する化合物を反応させて中間体を生成することができる。例えば、構造:
【0174】
【0175】
を有する化合物をエタンジオールと反応させて、中間体として2つのエタンジオール単位:
【0176】
【0177】
を含む対応するエステル交換中間体を生成することができる。
【0178】
次に第2の工程において、中間体を重合して、本発明のポリマーを得ることができる。例えば、構造:
【0179】
【0180】
を有する中間体を第2の工程で重合することができる。
【0181】
第1及び第2の工程は、異なる温度で実施することができ、例えば第1の工程は、100℃~200℃、好ましくは120℃~160℃、最も好ましくは130℃~150℃の温度で実施することができる。さらに第2の工程は、150℃~250℃、好ましくは170℃~230℃、最も好ましくは180℃~220℃の温度で実施することができる。
【0182】
反応の工程は、様々な期間にわたって実施することができる。例えば反応の第1の工程は、1~15時間、好ましくは1~10時間、より好ましくは1~7時間実施され得る。反応の第2の工程は、2~15時間、好ましくは3~10時間、より好ましくは3~8時間実施することができる。
【0183】
第1及び第2の工程で、高収率及び高分子量を達成するために、特にエステル交換反応の場合、圧力を下げることができる。例えば、上記の試薬としてエタンジオールを用いるエステル交換反応では、反応を最初に常圧で行い、次に減圧することができる。ただし、これは、アミド、ポリエステル、又はポリアミドの調製にも適用することができる。
【0184】
好ましくは第1の工程中に、圧力は、100mbar以下、より好ましくは50mbar以下、最も好ましくは10mbar以下に低減される。有利には第2の工程中に、圧力は、100mbar以下、より好ましくは50mbar以下、より好ましくは10mbar以下、最も好ましくは1mbar以下に低減される。反応中、特に第1及び/又は第2の工程中に圧力を下げることにより、ポリマーのより高い収率及び/又はより高い分子量を達成することができる。
【0185】
本発明の方法はまた、精製工程を含み得る。ポリマーは、沈殿、抽出、及び/又はカラムクロマトグラフィーによって精製することができる。好ましくは、ポリマーは沈殿によって精製される。
【0186】
本発明のポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)に取って代わる有望な候補である。従って本発明はまた、特にポリ(エチレンテレフタレート)の代替として、シート、繊維、又は成形品の製造のための本発明のポリマーの使用を提供する。
【0187】
以下に、実施例を記載するが、これらは限定することを意味するものではない。
【実施例】
【0188】
方法
MALDI-TOF:合成されたポリマーのマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)スペクトルを、Bruker AutoFlex Speed装置(Bremen, Germany)を使用して取得した。試料は、ポリマーを1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に1mg/mLの濃度で溶解して調製した。1mlのTHF中の10mgの2,5-ジヒドロキシ安息香酸と10μLのトリフルオロ酢酸(TFA)の溶液を調製した。続いて0.5μLのポリマー/HFIP溶液を鋼分析プレートに沈着させ、続いて0.5μLのDHB/TFA溶液を沈着させた。最適な信号を実現するために、様々なポリマー試料のレーザー出力を60~90%に設定した。
【0189】
ゲル浸透クロマトグラフィー:合成されたポリマーの数平均分子量と重量平均分子量(MnとMw)を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を介して決定した。Agilent 1100 GPC/SECには1つのPFGリニアMカラム(PSS)が取り付け、294nmで動作するAgilent 1100 VWD/UV検出器、DAWN HELEOS IIマルチアングルレーザー光散乱(MALS)検出器(Wyatt Technology Europe)、及びOptilab TrEX RI検出器(Wyatt)に連結した。試料は、0.03MK-TFAcを含むHFIPを用いて室温で1mL/分で溶出した。機器の精度を確保するために、各ポリマー試料を2回分析した。正確な分子量を測定するために、ポリメチルメタクリレート(PMMA)標準物質をドイツのPSS Polymer Standards Serviceから購入し、使用して、データに適用される検量線を作成した。
【0190】
GC-MS分析:ガスクロマトグラフィー-質量分析スペクトルは、HP5-MSキャピラリカラムとAgilent 5977Aシリーズ質量分析検出器を備えたAgilent 7890BシリーズGCを使用して取得した。GC-MS法は以下のように実行された:注入温度250℃、カラム温度プログラムは50℃で1分間開始、続いて15℃/分の勾配で300℃まで上昇、300℃で7分間保持、検出温度は290℃。
【0191】
NMR分析:すべてのNMRスペクトルは、Bruker Avance III 400MHz分光計を使用して取得した。
【0192】
合成
【0193】
一般的な反応スキーム:
【0194】
【0195】
モノマーの調製のために、商業規模で生産され、再生可能なエチレングリコールから容易に生産することができるグリオキシル酸をD-キシロースと反応させた(上記スキームの工程a)。次に、グリオキシル酸で保護されたキシロースをメタノールでエステル化して重縮合速度を高め、保護された糖の分離を促進した(上記スキームの工程b)。最後に、ジエステルで保護されたキシロースであるジメチルグリオキシレートキシロース(dimethylglyoxylate xylose)(DMGX)をエチレングリコールで重合して、完全に再生可能なポリエステルであるポリ(エチレンジメチルグリオキシレートキシロース)(poly(ethylene dimethylglyoxylate xylose))(PEDMGX)を生成した(上記スキームの工程c)。
【0196】
キシロースからのジメチルグリオキシレートキシロースの合成
D-キシロース(200g、1.33mol、1.00当量)を2Lの丸底フラスコ中でグリオキシル酸一水和物(500g、5.43mol、4.08当量)と一緒にし、ロータリーエバポレーターで95℃で加熱した。キシロースを溶融グリオキシル酸に溶解した後、98重量/重量%の硫酸(28.57g、270.8mmol、0.2当量)を滴加した。次に、ロータリーエバポレーターの圧力をゆっくり20mbarに下げて、反応の副産物として生成された水を連続的に抜き取った。ジグリオキシル酸で保護されたキシロースのによって決定される収率が93%を超えた(約3時間)後、反応を停止させた。次にメタノール(1L)を反応混合物に加え、得られた溶液を、ジグリオキシル酸で保護されたキシロースのジメチルエステルの、GC-FIDによって決定される収率が95%(約1時間)を超えるまで、80℃の油浴を使用して加熱還流した。次に、反応物を室温に冷却し、水酸化ナトリウムで中和した。得られた塩を濾過して除去し、濾液を真空下で45℃で100mbarのロータリーエバポレーターで濃縮した。次に残留物をDCM(0.6L)に溶解し、(2L)分液漏斗に移した。次に、有機相を脱イオン水(1L)で3回洗浄して、暗色の糖分解生成物と未反応のカルボン酸塩を除去した。次に有機相を食塩水(1L)で1回抽出し、次に1Lの丸底フラスコに移し、真空下で濃縮した。得られた残留物を、蒸留ブリッジを使用して0.02mbarの圧力及び80~180℃の油浴温度で蒸留した。80℃~180℃の間の勾配中に得られたグリオキシル酸メチル及び残留溶媒を含む留出物を廃棄した。第2のフラスコを取り付け、生成物を含む第2の画分を収集した。この粘稠な黄色の油状物をDCM(0.5L)に溶解し、活性炭(30g)で処理した。PTFEコーティングされた攪拌棒を使用して700RPMで4時間撹拌した後、溶液を0.2μmナイロンメンブレンフィルターで濾過して活性炭を除去し、真空下で濃縮して、ジメチルグリオキシレートキシロースを粘稠な無色の油状物として得た(205g、53%)。この油状物は4つの立体異性体の混合物である。あるいは、活性炭処理の代わりに結晶化を使用して黄色の不純物を除去することもできる。結晶化は、メタノール、シクロペンチルメチルエーテル、及びトルエンでうまく行われた。また、温度制御された結晶化を使用することにより、最も豊富な異性体を選択的に結晶化し、他の3つの異性体を母液に残すことができた。
【0197】
図1~4はDMGXの分析データを示す。
図1は、DMGX異性体の合成が成功したことを示す2D HSQC NMRを示す。DMGXの異なる異性体は、NMRスペクトルに異なるピークのセットを与える。ピークの横の括弧内の文字は、それぞれ炭素6と9の立体構造を示す。
図2は、DMGX異性体のみの
13C NMRスペクトルを示す。ピークの横の括弧内の文字は、それぞれ炭素6と9の立体構造を示す。
図3では、精製されたDMGX異性体のガスクロマトグラフィーにおける異なる保持時間が明らかである。
図4は、DMGX異性体と断片化生成物の対応するGC-MS質量ピークを示す。
【0198】
ポリ(エチレンジメチルグリオキシレートキシロース)の例示的な合成
2つ口丸底フラスコ中の1モル当量のジメチルグリオキシレートキシロースに、過剰の蒸留したてのエタンジオール(2.2当量)と0.4重量%の三酸化アンチモンを入れた。反応容器を蒸留管に取り付け、窒素で3回パージ後加熱した。容器を砂浴中で安定した窒素流下で2時間連続的に攪拌して140℃に加熱し、メタノールを蒸留により除去した。次に連続窒素流下で浴を2時間200℃にした。次に真空を0.1mbarの圧力で適用し、反応をさらに3時間継続させてエチレングリコールを蒸留除去し、エステル交換を進行させた。反応物を室温まで冷却し、続いて最小量の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに溶解し、撹拌しながらメタノールに滴下して沈殿させた。ポリマーを溶液から濾別し、メタノールで洗浄した後、真空下で乾燥させた。様々なエステル交換触媒、反応時間、及び温度を使用して、様々な分子量の同じポリマーを生成することができる。
【0199】
図5~9はPEDMGXの分析データを示す。
図5は、PEDMGXの合成が成功したことを示す2D HSQC NMRスペクトルを示す。ピークの横の括弧内の文字は、それぞれ炭素6と9の立体構造を示す。
図6は、PEDMGXのリフレクターポジティブMALDIスペクトルを示す。顕著なピーク間の距離は、繰り返し単位の分子量に対応する。
図7は、様々な温度と時間で合成された3つの異なるPEDMGX試料のGPCクロマトグラムを示す(すべてがここで説明されているわけではない)。機器の精度を確保するために、各ポリマー試料を2回分析した。測定には、PSS Polymer Standards Service(ドイツ)のポリメチルメタクリレート(PMMA)分子量標準を、分子量測定の外部標準物質として使用した。10~50kDaの範囲の分子量が達成され、これは充分にPETの商業的範囲(20~60kDa)内である。
図8は、30℃~250℃に加熱し、冷却して30℃にもどしたPEDMGXのDSC曲線を示す。DSCは、125℃のガラス転移を示し、これは、PETよりも45~55℃高く、PEFよりも30℃高い。これにより、ポリエステルは、特に沸騰水との接触が必要なものを含め、その特性を失うことなく、非常に高温の用途に使用できるようになる。
図9にPEGDMXのTGA曲線を示す。TGAは約348℃の分解温度を示し、これはPETの400℃の分解温度よりも低いが、それでもポリマーの処理温度と最終使用温度よりはるかに高い。
【0200】
DMGXベースのポリエステルの一般的な調製手順
以下のポリマーは、以下の方法を使用して合成された:ポリ(エチレンジメチルグリオキシレートキシロース)、ポリ(プロピレンジメチルグリオキシレートキシロース)、ポリ(ブチレンジメチルグリオキシレートキシロース)、ポリ(ペンチレンジメチルグリオキシレートキシロース)、ポリ(ヘキシレンジメチルグリオキシレートキシロース)は、DMGXをそれぞれエタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、及びヘキサンジオールで重合。ジメチルグリオキシレートキシロース(10g、34.4ミリモル、1.0当量)を、ジオール(86ミリモル、2.5当量)、再エステル化触媒:酢酸亜鉛(2mg、0.011ミリモル、0.00032当量)、酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)(13mg、0.011mmol、0.00032当量)、及び亜リン酸トリフェニル(13mg、0.042mmol、0.0012当量)と、250mL、2つ首丸底フラスコ中で一緒にした。次に、反応容器に蒸留ブリッジ、真空アダプター、窒素フロー用のバルブ及び250mLの収集フラスコを取り付け、シュレンク(Schlenk)ラインに接続した。反応容器を窒素で3回戻し充填した。次に窒素の定常流下で、反応混合物を油浴で撹拌しながら140℃に加熱した。反応の過程で、メタノール副生成物を反応混合物から蒸留し、収集フラスコに収集した。変換を1H-NMRでモニターし、完全な再エステル化が観察されたら(約1~4時間)、エステル交換触媒である三酸化アンチモン(2mg、0.0069mmol、0.0002当量)を、陽圧窒素下のジオール(0.5mL)中の懸濁物として反応混合物に添加した。次に反応混合物を190℃に加熱し、反応容器を30分かけてゆっくり0.02mbarの圧力まで排気して、ジオール反応副生成物を蒸留し、重縮合反応を進めた。反応を1H-NMRでモニターし、末端基分析で所望の分子量が観察されたら反応を停止した(高分子量、約8~14時間)。4つのDMGX異性体の混合物に由来するポリマーは、通常オレンジ色であった。最も豊富なDMGX異性体から合成されたポリマーは、一般に透明度が高く無色であった。反応物を室温に冷却し、最小量の1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール(250mL)に溶解した。得られた溶液を、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールポリマー用のイソプロパノール(1L)と、より短い鎖ジオール用のメタノール(1L)の攪拌溶液に滴加して、ポリマーを沈殿させた。ポリマーを濾過して収集し、イソプロパノール続いてジエチルエーテルで洗浄し、真空下で60℃及び0.02mbarで一晩乾燥させて、生成物を鮮やかな白色粉末として得た。高分子量を達成するのがより困難であったエタンジオール及びプロパンジオールとの重合のために、より高活性のエステル交換触媒である酸化ジブチルスズ(45mg、0.184mmol、0.0053当量)を、酢酸亜鉛及び三酸化アンチモンの代わりに使用した。
【0201】
リグノセルロース系バイオマスからのジメチルグリオキシレートキシロースの合成
バイオマス(抽出物を含まず、乾燥済み、90.0g)を、風袋重量を量った1L試薬瓶に集めた。次に、瓶にグリオキシル酸一水和物(60.753g、660mmol、3.3当量)、1,4-ジオキサン(250mL)、塩酸(37重量%、16.7mL、200mmol、1.0当量)と、2つの大きなPTFEコーティングされた攪拌棒を加えた。フラスコをGL45キャップで密封し、振盪インキュベーターに300RPMで24時間入れた。完了後、反応物を室温(約23~30℃)に冷却した。2Lフィルターフラスコ、ネオプレンアダプター、及び定性濾紙片を備えたブフナー漏斗で構成される濾過装置を組み立てた。反応物を、ブフナー漏斗を通してジオキサン(250mL)で洗浄することにより濾過して、セルロースに富む固体を除去した。次に、濾液を29/32の2L丸底フラスコに移し、45℃の浴温と10mbarの極限圧力でロータリーエバポレーターで濃縮した。次に、濃縮リグニン溶液に、楕円形のPTFEコーティングされた攪拌棒を加え、続いて脱イオン水(1L)を加えてリグニンを沈殿させた。混合物を500RPMで30分間撹拌して、大きな凝集物を破壊した。その後、攪拌棒を取り外した。2Lフィルターフラスコ、ネオプレンアダプター、及び0.8μmナイロンメンブレンフィルターを備えたメンブレン濾過装置で構成される濾過装置を組み立てた。次に、沈殿したリグニン溶液をナイロンメンブレンフィルターを通して脱イオン水(100mL)で洗浄することにより濾過して、リグニンを収集した。
【0202】
濾液を29/32の2L丸底フラスコに移し、硫酸(1.7mL、31mmol、0.16当量、98重量%)を加えた。次に反応溶液を、ロータリーエバポレーター(90℃、200mbar~50mbar)で3時間真空下で濃縮して、すべての水を反応溶液から蒸発させた。反応混合物に、メタノール(400mL)及び楕円形のPTFEコーティングされた攪拌棒を加えた。次に、反応物を室温で12時間撹拌し、次に10N NaOH(3.1mL)で中和した。1Lフィルターフラスコ、ネオプレンアダプター、及びブフナー漏斗(すりガラスフリット、多孔度グレード3)で構成される濾過装置を組み立てた。中和された反応溶液中に得られた塩と撹拌棒を濾別し、濾液をロータリーエバポレーターで45℃及び100mbarで乾燥させた。次に残留物をDCM(250mL)に溶解し、1Lの分液漏斗に移した。250mLの水で希釈した溶液と漏斗を密封して振盪した。有機相と水相を分離し、水相を分液漏斗に戻した。これをDCM(250mL)でもう一度抽出した。層を再び分離し、有機相を合わせ、硫酸マグネシウム(1~2g)で乾燥させた。1Lフィルターフラスコ、ネオプレンアダプター、及びブフナー漏斗(すりガラスフリット、多孔度グレード3)で構成される濾過装置を組み立てた。次に有機相を濾過して硫酸マグネシウムを除去し、次に29/32の1L丸底フラスコに移した。ロータリーエバポレーターを使用して45℃、500mbarで、ジクロロメタンを除去した。得られた油状物を50mLのナシ型丸底フラスコに移し、PTFEコーティングされた攪拌棒を加えた。次にフラスコに蒸留トレイン、2つ口丸底フラスコ、及びガスアダプターを取り付け、シュレンクラインに接続した。油浴を用いて、反応溶液をゆっくり180℃に加熱した。残留グリオキシル酸メチルは、90~180℃及び0.1mbarで蒸留除去した。次に、収集フラスコを交換し、所望の生成物を180℃及び0.01mbarで留出物として取り出した。蒸留生成物を重合に使用した。
【国際調査報告】