(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】材料移送装置およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20221130BHJP
B01L 3/00 20060101ALI20221130BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20221130BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20221130BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
G01N35/10 J
B01L3/00
C12M1/00 Z
C12N5/071
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546593
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020054432
(87)【国際公開番号】W WO2021071855
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516247270
【氏名又は名称】ドラッグアレイ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】テン ダユ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ダニエル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】サファビ ファルザド
(72)【発明者】
【氏名】シャナハン ロブ
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
4B063
4B065
4G057
【Fターム(参考)】
2G058CC02
2G058EA14
4B029AA09
4B029AA27
4B029GA03
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB03
4B029GB04
4B029GB05
4B029HA05
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR51
4B063QS10
4B063QS39
4B065AA93X
4B065BA21
4B065BB04
4B065BD15
4B065BD50
4B065CA46
4G057AB06
(57)【要約】
本明細書に記載の移送システム、装置、キット、および方法は、標的作用物質をウェルに付着させたままにしながら、ドナー容器へのまたはドナー容器からの、例えば、ドナープレートのウェルへのまたはドナープレートのウェルからの材料(例えば、流体)の移送を容易にするために使用され得る。システムは、移送アセンブリを形成するように結合することができるドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを含むことができる。移送アダプタは、平面シートおよび複数の開口部を含んでもよく、ウェルからの流体の流れを調節するように構成されてもよい。移送アセンブリは、遠心分離機に設置されてもよく、遠心分離機によって生成された流体移送力は、流体をドナープレートのウェルから流出させ、移送アダプタの開口部を通ってレシーバプレートに流入させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面、第2の平面、および複数の開口部を有する平面シートであって、前記複数の開口部の各開口部が、前記第1の平面と前記第2の平面との間に延在する、前記平面シートと、
複数の一次延長部であって、前記複数の一次延長部の各一次延長部が前記第1の平面から突出し、かつ一次内腔を含む、前記複数の一次延長部と、
複数の二次延長部であって、前記複数の二次延長部の各二次延長部が前記第2の平面から突出しかつ二次内腔を含み、各二次内腔が、開口部および一次内腔と整列されて連続移送内腔を作り出す、前記複数の二次延長部と
を備える、流体を移送するための装置。
【請求項2】
前記複数の一次延長部の各一次延長部が、内側断面積および外側断面積を有し、前記内側断面積が前記外側断面積よりも大きい、請求項1記載の装置。
【請求項3】
各一次延長部が少なくとも2つの領域を有し、前記少なくとも2つの領域の各々が前記平面シートに対して異なる角度を有する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの領域が、前記平面シートに対して近位の第1の領域と、前記平面シートに対して遠位の第2の領域とを含み、前記平面シートに対する前記第1の領域の角度が、前記平面シートに対する前記第2の領域の角度よりも大きい、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記複数の一次延長部の各一次延長部が、前記一次内腔に流体接続するように構成された少なくとも1つの構造を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの構造が、アパーチャ、孔、スリット、間隙、ノッチ、溝、またはチャネルを含む、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記一次延長部が、前記一次内腔に流体接続するように構成された4つのスリットを含む、請求項6記載の装置。
【請求項8】
第1の側面と、第2の側面と、複数の開口部とを備え、前記複数の開口部の各開口部が、前記第1の側面と前記第2の側面との間に延在する、移送アダプタと、
前記移送アダプタの前記第2の側面に取り外し可能に結合するように構成される、レシーバプレートと
を備える、流体を移送するためのシステム。
【請求項9】
1つまたは複数のウェルを含むドナープレートをさらに備え、前記ドナープレートが、前記移送アダプタの前記第1の側面に取り外し可能に結合するように構成される、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記移送アダプタと前記ドナープレートとが取り外し可能に結合されたとき、前記複数の開口部の各開口部が、前記複数のウェルの異なるウェルと整列する、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記移送アダプタが、複数の一次延長部を含み、前記複数の一次延長部の各一次延長部が、前記ドナープレートの前記複数のウェルの異なるウェルの内面に対してシールするように構成される、請求項9または10記載のシステム。
【請求項12】
前記レシーバプレートが複数のレシーバウェルを含み、前記移送アダプタと前記レシーバプレートとが取り外し可能に結合されたとき、前記複数の開口部の各開口部が、前記複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルと整列する、請求項8~11のいずれか一項記載のシステム。
【請求項13】
前記移送アダプタが、複数の二次延長部を含み、前記複数の二次延長部の各二次延長部が、前記複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルに挿入されるように構成される、請求項8~12のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
前記移送アダプタが、前記第1の側面および/または前記第2の側面に接着剤を含む、請求項8~13のいずれか一項記載のシステム。
【請求項15】
前記移送アダプタが、前記複数の開口部の各開口部に隣接する複数の弁尖(leaflet)を含み、少なくとも1つの弁尖が開位置と閉位置との間で動くことができる、請求項8~14のいずれか一項記載のシステム。
【請求項16】
前記移送アダプタが、外力が流体に加えられたときにのみ、前記複数の開口部を通る前記流体の流れを可能にするように構成される、請求項8~15のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
第1の位置(例えば、直立位置)に移送アセンブリを形成するために、移送アダプタ、ドナープレート、およびレシーバプレートを結合する段階であって、前記第1の位置では、前記移送アダプタが、前記レシーバプレートの下方および前記ドナープレートの上方に位置する、前記結合する段階と、
前記移送アセンブリを回転軸の周りで遠心分離する段階であって、前記移送アセンブリが遠心分離されるとき、前記ドナープレートが前記移送アダプタおよび前記レシーバプレートよりも前記回転軸の近くに位置する、前記遠心分離する段階と
を含む、流体を移送するための方法であって、
前記移送アダプタが複数の開口部を含みかつ前記ドナープレートが複数のウェルを含み、かつ
前記移送アセンブリが前記第1の位置にあるとき、および前記移送アセンブリが遠心分離されるとき、前記複数の開口部の各開口部が前記複数のウェルの異なるウェルと整列されている、
前記方法。
【請求項18】
前記ドナープレートを前記移送アダプタから結合解除する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ドナープレートと前記移送アダプタとが結合されたとき、前記複数のウェルの各ウェルと前記移送アダプタとの間にシールが形成される、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記シールが、前記複数のウェルから前記複数の開口部を通って流体が流れることは可能にするが、前記複数のウェルのウェル間の流体の流れは遮断する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記複数のウェルの各ウェルが、前記ウェルに付着した標的作用物質および流体を含む、請求項17~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記標的作用物質が、遠心分離後に前記ウェルに付着したままである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記流体が、遠心分離後に前記レシーバプレートに移送されている、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
前記レシーバプレートが複数のレシーバウェルを含み、かつ
前記移送アセンブリが前記第1の位置にあるとき、および前記移送アセンブリが遠心分離されるとき、前記複数の開口部の各開口部が前記複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルと整列されている、
請求項17~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記レシーバプレートと前記移送アダプタとが結合されたとき、前記複数のレシーバウェルの各レシーバウェルと前記移送アダプタとの間にシールが形成される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記シールが、流体が前記複数の開口部を通って前記複数のレシーバウェルに流れることは可能にするが、前記複数のレシーバウェルのレシーバウェル間の流体の流れは遮断する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
複数のウェルを含むドナープレートのウェルから、および/または複数のウェルを含むドナープレートのウェルに、流体を移送するための方法であって、少なくとも1つのウェルが、前記ウェルに付着した複数の標的作用物質と流体とを含み、前記方法が、
前記ドナープレートに流体移送力を印加する段階であって、前記流体移送力が、前記少なくとも1つのウェル内の前記複数の標的作用物質に対して同時および実質的に均一な効果を有する、前記段階
を含む、前記方法。
【請求項28】
前記複数のウェルの少なくとも2つのウェルの各々が、前記ウェルに付着した複数の標的作用物質と流体とを含み、前記流体移送力が、前記少なくとも2つのウェルのすべてのウェル内の前記複数の標的作用物質に対して同時および実質的に均一な効果を有する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
第1の側面の第1の平面および第2の側面の第2の平面を有する平面シートと、
前記第2の側面に開口部を有する前記第1の側面の複数のエンクロージャ(例えば、ウェル)と、
前記第2の平面から突出し、かつ前記エンクロージャの前記開口部に接続された内腔を含む、前記第2の側面の複数の延長部と
を備える、流体を移送するための装置。
【請求項30】
各延長部が、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに挿入されるように構成される、請求項29記載の装置。
【請求項31】
各延長部が、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに対してシールするように構成される、請求項29記載の装置。
【請求項32】
前記延長部の内面が、前記レシーバウェルの内壁と角度を形成するように構成され、前記角度が約7度以下である、請求項29~31のいずれか一項記載の装置。
【請求項33】
液剤、例えば凍結乾燥剤などの作用物質を前記複数のエンクロージャ内にさらに含む、請求項29~32のいずれか一項記載の装置。
【請求項34】
各エンクロージャが、作用物質を保持および/または分注するように構成された構造を含む、請求項29~33のいずれか一項記載の装置。
【請求項35】
前記構造が突起を含む、請求項34記載の装置。
【請求項36】
第1の位置(例えば、直立位置)に移送アセンブリを形成するために、請求項29~35のいずれか一項記載の装置をレシーバプレートと結合する段階と、
前記移送アセンブリを回転軸の周りで遠心分離する段階であって、前記移送アセンブリが遠心分離されるとき、前記装置が前記レシーバプレートよりも前記回転軸の近くに位置する、前記遠心分離する段階と
を含む、作用物質を移送するための方法であって、
前記装置の各開口部が、前記レシーバプレートの異なるレシーバウェルと整列され、それにより、前記装置の少なくとも1つのエンクロージャ内の作用物質が、対応する前記レシーバウェルに移送される、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年10月7日に出願された米国仮出願第62/911,811号の優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本発明は、一般に、マルチウェルプレートへのおよび/またはマルチウェルプレートからの流体移送、例えば、マルチウェルプレートのデカントおよび/または充填、またはマルチウェルプレート間もしくはマルチウェルプレートと別の構造との間での液体の移送などの材料移送のためのツールに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
マルチウェルプレートは、複数の試料に対して化学的、生物学的、または薬理学的試験を並行して行うなど、広範囲の実験室用途で使用される。マルチウェルプレートは、小さい開口ディボットまたはウェルのグリッドを有することができ、各ウェルは、評価中に異なる試料を保持することができる。いくつかの評価のために、試料は、各ウェルの基部上に不動化された標的作用物質を含み得る。これらの標的作用物質には、タンパク質、核酸、細胞、微生物(例えば、細菌、真菌)、植物(例えば、藻類)、ウイルス、小分子薬物もしくは他の化学化合物、または抗原抗体複合体が含まれ得るが、これらに限定されない。一般に、評価中の試料は、各ウェルを部分的に満たし、標的作用物質を浸漬する流体も含む。反応、結合、または他の工程がウェル内で起こった後、各試料の流体成分および/または標的作用物質に対して別個に試験を実施すること、または各試料の流体成分を新しい流体で置換または補充することが望ましいことが多い。したがって、標的作用物質の少なくとも一部をウェルに付着させたままにしながら、マルチウェルプレートのウェルに、またはマルチウェルプレートのウェルから流体を移送するための技術が開発されてきた。
【0004】
マルチウェルプレートのウェルへの、またはマルチウェルプレートのウェルからの流体の移送を容易にするために、いくつかの技術および装置が開発されているが、それらはすべて重大な欠点を有する。例えば、真空吸引は、手動および自動/ロボット技術の両方で流体を除去するために使用されることが多い。しかしながら、ピペットなどの吸引器具によってもたらされる力および流れは、ウェル内に平等に分配されず、吸引力および流れは、吸引器具の先端付近で最大である。したがって、真空吸引は、試料の異なる部分に異なる影響を及ぼす可能性があり、1つの試料内および異なる試料間に望ましくない変動をもたらす可能性がある。例えば、吸引器具の先端付近の標的作用物質は、意図せず損傷したり、ウェルから外れて除去されたりする可能性があるが、先端からより遠い標的作用物質は影響を受けない可能性がある。
【0005】
さらに、一度に1つより多くのウェルから流体を充填または除去するためにマルチチャネル装置が使用される場合であっても、手動技術は、多くの場合、遅く、手間がかかる。これは、流体が数百のウェルを有するマルチウェルプレートにまたはマルチウェルプレートから移送される場合に特に当てはまる。手動装置は、一般に、流体をすべてのウェルにまたはすべてのウェルから同時に移送するのに十分なチャネルを有さず、ウェルで起こる工程の一部は時間的制約があり得る。したがって、異なる時間に異なるウェルにまたは異なるウェルから流体を移送することは、異なる試料間の望ましくない変動の別の原因となり得る。さらに、流体移送のためのマルチチャネル装置の使用は、マルチウェルプレートのウェル間の交差汚染をもたらす可能性がある。液体ハンドラなどの自動またはロボット装置は、一般に、高価であるという不利な点を有する。
【0006】
したがって、マルチウェルプレートのウェルへのまたはウェルからの流体の移送を容易にする改善された装置またはシステムに対する大きな必要性が存在する。そのような装置またはシステムは、標的作用物質をウェル内で不動化し、実質的に撹乱されないままにしながら、流体をすべてのウェルにまたはすべてのウェルから同時に移送することができるべきである。流体移送に関与する力は、流体または標的作用物質の試料間の変動を減少させるために、各ウェル内および異なるウェル間で均一であるべきである。さらに、改善された流体移送装置またはシステムは、比較的低コストだが、所望の結果を達成するために必要な手動作業は最小限であるべきである。
【発明の概要】
【0007】
概要
一局面では、流体などの材料を移送するための装置であって、以下を備える装置が、本明細書に開示される:第1の平面、第2の平面、および複数の開口部を有する平面シートであって、上記複数の開口部の各開口部が、上記第1の平面と上記第2の平面との間に延在する、上記平面シート;複数の一次延長部であって、上記複数の一次延長部の各一次延長部が上記第1の平面から突出し、かつ一次内腔を含む、上記複数の一次延長部;ならびに複数の二次延長部であって、上記複数の二次延長部の各二次延長部が上記第2の平面から突出しかつ二次内腔を含み、各二次内腔が、開口部および一次内腔と整列されて連続移送内腔を作り出す、上記複数の二次延長部。いくつかの態様では、装置内の上記複数の一次延長部の各一次延長部は、内側断面積および外側断面積を有し、上記内側断面積は上記外側断面積よりも大きい。先の態様のいずれかにおいて、各一次延長部は少なくとも2つの領域を有することができ、上記少なくとも2つの領域の各々は上記平面シートに対して異なる角度を有することができる。いくつかの態様では、上記少なくとも2つの領域は、上記平面シートに対して近位の第1の領域と、上記平面シートに対して遠位の第2の領域とを含み、上記平面シートに対する上記第1の領域の角度は、上記平面シートに対する上記第2の領域の角度よりも大きい。
【0008】
先の態様のいずれかにおいて、複数の一次延長部の各一次延長部は、一次内腔に流体接続するように構成された少なくとも1つの構造を含むことができる。いくつかの態様では、少なくとも1つの構造は、アパーチャ、孔、スリット、間隙、ノッチ、溝、またはチャネルを含む。いくつかの態様では、一次延長部は、一次内腔に流体接続するように構成された4つのスリットを含む。
【0009】
一局面では、第1の側面と、第2の側面と、複数の開口部とを備え、複数の開口部の各開口部が、第1の側面と第2の側面との間に延在する、移送アダプタと、移送アダプタの第2の側面に取り外し可能に結合するように構成される、レシーバプレートとを備える、流体を移送するためのシステムが本明細書に開示される。いくつかの態様では、システムは、1つまたは複数のウェルを含むドナープレートをさらに備え、ドナープレートは、移送アダプタの第1の側面に取り外し可能に結合するように構成される。いくつかの態様では、移送アダプタとドナープレートとが取り外し可能に結合されたとき、複数の開口部の各開口部は、複数のウェルの異なるウェルと整列する。
【0010】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、複数の一次延長部を含むことができる。先の態様のいずれかにおいて、複数の一次延長部の各一次延長部は、ドナープレートの複数のウェルの異なるウェルの内面に対してシールするように構成され得る。
【0011】
先の態様のいずれかにおいて、レシーバプレートは、複数のレシーバウェルを含むことができる。先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタとレシーバプレートとが取り外し可能に結合されたとき、複数の開口部の各開口部は、複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルと整列することができる。
【0012】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、複数の二次延長部を含むことができ、複数の二次延長部の各二次延長部は、複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルに挿入されるように構成され得る。
【0013】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、第1の側面および/または第2の側面に接着剤を含むことができる。
【0014】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、複数の開口部の各開口部に隣接する複数の弁尖(leaflet)を含むことができ、少なくとも1つの弁尖は、開位置と閉位置との間で動くことができる。
【0015】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、外力が流体に加えられたときにのみ、複数の開口部を通る流体の流れを可能にするように構成され得る。
【0016】
一局面では、第1の位置(例えば、直立位置)に移送アセンブリを形成するために、移送アダプタ、ドナープレート、およびレシーバプレートを結合する段階であって、第1の位置では、移送アダプタが、レシーバプレートの下方およびドナープレートの上方に位置する、上記結合する段階と、移送アセンブリを回転軸の周りで遠心分離する段階であって、移送アセンブリが遠心分離されるとき、ドナープレートが移送アダプタおよびレシーバプレートよりも回転軸の近くに位置する、上記遠心分離する段階とを含む、流体などの材料を移送するための方法であって、移送アダプタが複数の開口部を含みかつドナープレートが複数のウェルを含み、かつ、移送アセンブリが第1の位置にあるとき、および移送アセンブリが遠心分離されるとき、複数の開口部の各開口部が複数のウェルの異なるウェルと整列されている、上記方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、ドナープレートを移送アダプタから結合解除する段階をさらに含む。
【0017】
先の態様のいずれかにおいて、ドナープレートと移送アダプタとが結合されたとき、複数のウェルの各ウェルと移送アダプタとの間にシールが形成され得る。いくつかの態様では、シールは、複数のウェルから複数の開口部を通って流体が流れることは可能にするが、複数のウェルのウェル間の流体の流れは遮断する。
【0018】
先の態様のいずれかにおいて、複数のウェルの各ウェルは、ウェルに付着した標的作用物質および流体を含むことができる。いくつかの態様では、標的作用物質は、遠心分離後にウェルに付着したままである。
【0019】
先の態様のいずれかにおいて、流体は、遠心分離後にレシーバプレートに移送されていることができる。
【0020】
先の態様のいずれかにおいて、レシーバプレートは、複数のレシーバウェルを含むことができ、移送アセンブリが第1の位置にあるとき、および移送アセンブリが遠心分離されるとき、複数の開口部の各開口部は複数のレシーバウェルの異なるレシーバウェルと整列され得る。いくつかの態様では、レシーバプレートと移送アダプタとが結合されたとき、複数のレシーバウェルの各レシーバウェルと移送アダプタとの間にシールが形成される。いくつかの態様では、シールは、流体が複数の開口部を通って複数のレシーバウェルに流れることは可能にするが、複数のレシーバウェルのレシーバウェル間の流体の流れは遮断する。
【0021】
一局面では、複数のウェルを含むドナープレートのウェルから、および/または複数のウェルを含むドナープレートのウェルに、流体などの材料を移送するための方法であって、少なくとも1つのウェルが、ウェルに付着した複数の標的作用物質と流体とを含み、上記方法が、ドナープレートに流体移送力を印加する段階であって、流体移送力が、少なくとも1つのウェル内の複数の標的作用物質に対して同時および実質的に均一な効果を有する段階を含む、上記方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、複数のウェルの少なくとも2つのウェルの各々が、ウェルに付着した複数の標的作用物質と流体とを含み、流体移送力が、少なくとも2つのウェルのすべてのウェル内の複数の標的作用物質に対して同時および実質的に均一な効果を有する。
【0022】
一局面では、流体などの材料を移送するための装置であって、第1の側面の第1の平面および第2の側面の第2の平面を有する平面シートと、第2の側面に開口部を有する第1の側面の複数のエンクロージャ(例えば、ウェル)と、第2の平面から突出し、かつエンクロージャの開口部に接続された内腔を含む、第2の側面の複数の延長部とを備える、上記装置が、本明細書で開示される。いくつかの態様では、各延長部は、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに挿入されるように構成される。いくつかの態様では、各延長部は、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに対してシールするように構成される。
【0023】
先の態様のいずれかにおいて、延長部の内面は、レシーバウェルの内壁と角度を形成するように構成することができ、角度は約7度以下とすることができる。
【0024】
先の態様のいずれかにおいて、装置は、液剤、例えば凍結乾燥剤などの作用物質を複数のエンクロージャ内にさらに含むことができる。
【0025】
先の態様のいずれかにおいて、装置の各エンクロージャは、作用物質を保持および/または分注するように構成された構造を含むことができる。いくつかの態様では、構造は突起を含む。
【0026】
一局面では、第1の位置(例えば、直立位置)に移送アセンブリを形成するために、先の態様のいずれかに記載の装置をレシーバプレートと結合する段階と、移送アセンブリを回転軸の周りで遠心分離する段階であって、移送アセンブリが遠心分離されるとき、装置がレシーバプレートよりも回転軸の近くに位置する、上記遠心分離する段階とを含む、作用物質を移送するための方法であって、装置の各開口部が、レシーバプレートの異なるレシーバウェルと整列され、それにより、装置の少なくとも1つのエンクロージャ内の作用物質が、対応するレシーバウェルに移送される、上記方法が、本明細書に開示される。
【0027】
先の態様のいずれかにおいて、本明細書に記載の移送システム、装置、キットおよび方法は、標的作用物質をウェルに付着させたままにしながら、マルチウェルプレートのウェルへのまたはウェルからの流体の移送を容易にするために使用され得る。一局面では、流体などの材料の移送のための移送アダプタが本明細書に開示される。特定の態様では、システムは、互いに分離されているか、または移送アセンブリを形成するように結合されているマルチウェルプレートおよび移送アダプタを含むことができる。一局面では、マルチウェルプレートと移送アダプタとは可逆的に結合される。一局面では、マルチウェルプレートと移送アダプタとは、マルチウェルプレートと移送アダプタとの間の漏れを防止するためにシール的に結合される。先の態様のいずれかにおいて、システムは、レシーバプレートをさらに含むことができる。レシーバプレートは、移送アダプタから分離されてもよく、または移送アセンブリを形成するように移送アダプタおよび/またはマルチウェルプレートに結合されてもよい。一局面では、移送アダプタとレシーバプレートとは可逆的に結合される。一局面では、移送アダプタとレシーバプレートとは、移送アダプタとレシーバプレートとの間の漏れを防止するためにシール的に結合される。
【0028】
特定の態様では、マルチウェルプレートは、標準的な既製のマルチウェルプレートであってもよく、または以下でより詳細に説明するように、1つ以上の方式でカスタマイズされてもよい。移送アダプタは、平面シートおよび複数の開口部を含んでもよく、ウェルからの流体の流れを調節するように構成されてもよい。レシーバプレートは、1つ以上のレシーバウェルを含んでもよく、移送された流体は、1つ以上のレシーバウェルに含有されてもよい。移送アセンブリは、遠心分離機に設置されてもよく、遠心分離機によって生成された流体移送力は、流体をマルチウェルプレートのウェルから流出させ、移送アダプタの開口部を通ってレシーバプレートの1つ以上のレシーバウェルに流入させることができる。流体移送力は、各ウェル内および異なるウェル間に均一に印加されてもよく、流体はすべてのウェルから同時に移送されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】
図1Aおよび1Cは、本明細書に記載の移送システムの態様の斜視図である。
【
図1B】
図1Bおよび1Dは、本明細書に記載の移送アセンブリの態様の斜視図である。
【
図1C】
図1Aおよび1Cは、本明細書に記載の移送システムの態様の斜視図である。
【
図1D】
図1Bおよび1Dは、本明細書に記載の移送アセンブリの態様の斜視図である。
【
図2】本明細書に記載のマルチウェルプレートのウェルの態様の説明図である。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、本明細書に記載のドナープレートの態様の斜視図である。
図3Aは、ドナープレートの保持キャビティ内に挿入された分離ウェル構造の態様を示し、
図3Bは、分離ウェル構造が除去されたドナープレートを示す。
【
図4A】
図4A~4Dは、本明細書に記載の分離ウェル構造の態様の斜視図である。
【
図4B】
図4A~4Dは、本明細書に記載の分離ウェル構造の態様の斜視図である。
【
図4C】
図4A~4Dは、本明細書に記載の分離ウェル構造の態様の斜視図である。
【
図4D】
図4A~4Dは、本明細書に記載の分離ウェル構造の態様の斜視図である。
図4Dは、分離ウェル構造の態様の近接斜視図である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、本明細書に記載の誘導ウェル構造の態様の斜視図である。
図5Cは、本明細書に記載の誘導ウェル構造の断面図である。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、本明細書に記載の移送アダプタの態様の斜視図である。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、本明細書に記載の移送アダプタの態様の斜視図である。
【
図6C】
図6Cは、移送アダプタの第1の側面の近接斜視図である。
【
図6D】
図6Dは、マルチウェルプレートのウェルの態様に挿入された移送アダプタの第1の側面の断面図である。
【
図6E】
図6Eは、移送アダプタの第2の側面の近接斜視図である。
【
図6F】
図6Fおよび6Gは、レシーバプレートのレシーバウェルの態様に挿入された移送アダプタの第2の側面の断面図である。
【
図6G】
図6Fおよび6Gは、レシーバプレートのレシーバウェルの態様に挿入された移送アダプタの第2の側面の断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本明細書に記載の移送アダプタおよびマルチウェルプレートの態様の斜視図である。
【
図7C】
図7Cは、流体をレシーバウェルに移送するために遠心力を使用する例を示す。
【
図7D】
図7Dは、不均等なメニスカス形成の干渉を低減するのに役立つ、本明細書に開示される複数の区画を示す。
【
図8A】
図8A~8Cは、異なる向きでの本明細書に記載の移送アセンブリの態様の側面図である。
【
図8B】
図8A~8Cは、異なる向きでの本明細書に記載の移送アセンブリの態様の側面図である。
【
図8C】
図8A~8Cは、異なる向きでの本明細書に記載の移送アセンブリの態様の側面図である。
【
図9】本明細書に記載の材料移送のためのシステムおよび方法を示す。
【
図10】
図10Aおよび10Bは、本明細書に記載の材料移送のためのシステムおよび方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
以下の説明では、様々な態様の完全な理解を提供するために、特定の具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者は、本複合物がこれらの詳細なしで作製および使用され得ることを理解するであろう。他の例では、態様の説明が不必要に不明瞭になるのを避けるために、周知の構造は詳細に図示または説明されていない。文脈がそうでないことを要求しない限り、明細書および以下の特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、オープンで包括的な意味で、すなわち「含むが、限定されない」と解釈されるべきである。さらに、「含む(comprising)」という用語(および「含む(comprise)」もしくは「含む(comprises)」または「有する(having)」または「含む(including)」などの関連する用語)は、他の特定の態様では、例えば、本明細書に記載の任意の物質組成物、組成物、方法または工程などの態様が、記載された特徴「からなる(consist of)」または「から本質的になる(consist essentially of)」ことができることを排除することを意図しない。本明細書で提供される見出しは、便宜上のものにすぎず、特許請求される態様の範囲または意味を解釈するものではない。
【0031】
本明細書を通して「一態様」または「態様」への言及は、態様に関連して説明される特定の特徴、構造、または特質が少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一態様では」または「態様では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ態様を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特質は、1つ以上の態様において任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ウェル」への言及は、1つ以上のウェルを含む。また、本明細書で使用される場合、具体的に明記されない限り、または文脈から明らかでない限り、「または」という用語は包括的であると理解され、「または」および「および」の両方を包含する。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、特に、例えば遠心分離機を使用して移送を実行するために移送システムが組み立てられる場合の漏れ防止シールまたは流体閉鎖システムに関する。「漏れ防止シール」または「流体閉鎖」システムとは、相互接続され、互いに連通している場合もある1つ以上の容器(例えば、ウェル)、チャンバ、弁、および/または通路を含むシステム内の液体が、そのようなシステムの外部と連通することができず、同様に、そのようなシステムの外部の液体は、システムの内部に含有される液体と連通することができないことを意味する。
【0034】
本明細書に記載の移送システム、装置、キット、および方法は、マルチウェルプレートのウェルへの、またはマルチウェルプレートのウェルからの流体の移送を容易にするために使用され得る。システムは、移送アセンブリを形成するように結合することができるドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを含むことができる。ドナープレートおよび/またはレシーバプレートは、いくつかの態様では、任意の標準的なマルチウェルプレートであってもよく、その態様は、様々な実験室用途で使用するために当技術分野で周知である。しかしながら、他の態様では、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートは、移送システムの他の構成要素との相互作用を容易にするため、またはウェルの分割または組み合わせを可能にするための1つ以上の特徴を含み得る。ドナープレートおよび/またはレシーバプレートは、標準的な6、24、96、および384個のウェル配置を含むがこれらに限定されない任意の数のウェルを含み得る。ウェルの少なくとも一部は、流体で満たされていてもよく、1つ以上の標的作用物質、例えば限定されないが、タンパク質、核酸、細胞、微生物(例えば、細菌、真菌)、植物(例えば、藻類)、ウイルス、小分子薬物または任意の化学化合物、抗原抗体複合体などがそれらの内面に付着していてもよい。
【0035】
流体が制御された様式でウェルにまたはウェルから移送されるために、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートは、移送アダプタに解放可能に接続されてもよい。移送アダプタは、例えば、各開口部がドナープレートおよび/またはレシーバプレートの異なるウェルと整列するように配置された平面シートおよび複数の開口部を含むことができる。移送アダプタは、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートに対して、ドナープレートウェルを出る流体が開口部を通って流出するが、ドナープレートの別のウェルには流入しないように、および/またはレシーバプレートウェルに入る流体が開口部を通って流入するが、レシーバプレートの別のウェルには流入しないようにシールすることができる。移送アダプタの1つ以上の特徴によって、開口部とウェルとの整列および/またはプレートのシールを容易にすることができる。例えば、各開口部は、移送アダプタ表面から突出し、ドナープレートのウェルに嵌合する関連する延長部を有することができる。移送アダプタはまた、レシーバプレートとの整列および/またはレシーバプレートに対するシールを容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。
【0036】
ドナープレートのウェルから移送された流体は、移送アダプタの開口部を通ってレシーバプレートに流入することができる。いくつかの態様では、レシーバプレートは、1つの流体接続領域(例えば、単一の大きなウェル)にすべての流体を含有させることなどによって、各ウェルから移送された流体の混合を可能にすることができる。他の態様では、レシーバプレートは、ドナープレートから移送される流体の混合を防止するように構成されてもよく、各ウェルから移送される流体は、レシーバプレートの別個の領域に含有されてもよい。例えば、レシーバプレートは、複数のレシーバウェルを含むことができ、レシーバウェルは、移送アダプタの開口部と整列し、開口部に対してシールすることができる。これは、移送された流体に対して研究が実施される場合に特に有用であり得る。
【0037】
本明細書に記載の方法は、移送アセンブリを形成することと、移送アセンブリを遠心分離することとを含むことができる。移送アセンブリは、ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを、移送アダプタがドナープレートの上方およびレシーバプレートの下方にある向きに結合することによって形成することができる。この結合は、移送アダプタの開口部をドナープレートのウェルと整列させ、ドナープレートおよび移送アダプタを一緒にシールすることを含んでもよい。同様に、複数のレシーバウェルを含むレシーバプレートの態様では、レシーバプレートと移送アダプタとを結合することは、開口部とレシーバウェルとを整列させることと、レシーバプレートと移送アダプタとを一緒にシールすることとを含んでもよい。次いで、移送アセンブリを再配置し、回転軸の周りで遠心分離することができる。移送アセンブリが遠心分離される場合、ドナープレートが移送アダプタおよびレシーバプレートよりも回転軸に近くなるように配向されてもよい。移送アセンブリを所望の速度および所望の持続時間で遠心分離して、標的作用物質をウェルに付着させたままにしながら、実質的にすべての流体をドナープレートのウェルからレシーバプレートのウェルに移送することができる。次いで、移送アセンブリのプレートを分離することができ、単離された標的作用物質および/または移送された流体にアクセスすることができる。
【0038】
本開示を通して、説明のために流体移送または液体移送について言及する。本移送システムおよび本方法は、限定されないが、液体、溶液、ゲル(例えば、重合ゲル)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末などの乾燥粉末)、ペースト、結晶、または固体などの任意の適切な形態の1つ以上の作用物質を移送するために使用され得ることを理解されたい。標的作用物質は、限定されないが、液体または溶液(例えば、標的作用物質が細胞型である場合、細胞は、細胞懸濁液内に送達され得る)、ゲル(例えば、ヒドロゲルまたはゾル-ゲル)、粉末、固体などの任意の適切な組成物内に送達することができる。したがって、有用な材料移送装置および使用方法が本明細書に開示される。
【0039】
材料移送システム
一局面では、例えば重力および/または遠心力(例えば、遠心分離機によって発生させられるもの)を使用することによって、マルチウェル容器(例えば、プレート)のウェルへのおよび/またはウェルからの材料(例えば、流体)の同時移送を容易にする材料(例えば、流体)移送システムが本明細書に開示される。一局面では、移送システムの構成は、容器のウェルにおよび/またはウェルから移送される流体の流路を少なくとも部分的に決定する。別の局面では、移送システムの構成は、少なくとも2つの容器の間に実質的な流体の流れを発生させるのに必要な力の大きさを少なくとも部分的に決定する。流体の移送を調節するために、マルチウェル容器(例えば、プレート)は、レシーバ容器として、別のマルチウェル容器(例えば、プレート)などの少なくとも1つの他の容器に可逆的に結合されてもよい。例えば、
図1Aは、
図1Bに示す移送アセンブリ102を形成するために可逆的に結合され得るドナープレート104、移送アダプタ106、およびレシーバプレート108を含む移送システム100を示す。
【0040】
一局面では、ドナー容器(例えば、プレート)は複数のウェルを含み、その少なくとも一部は1つ以上の標的作用物質を含む。例えば、
図1Aに示すように、ドナープレート104は、複数のウェル110を含むマルチウェルプレートであり、その少なくとも一部は、1つ以上の標的作用物質を含む可能性があり、および/または少なくとも部分的に流体で満たされ得る。一局面では、少なくとも1つの標的作用物質を含有するウェル110は、少なくとも部分的に流体で満たされてもよく、本明細書に記載のシステムおよび方法は、流体の移送を支援して少なくとも1つの標的作用物質および/または流体を単離するように構成される。一局面では、移送アダプタ106は、移送アダプタの第1の側面114から第2の側面116まで延在し得る複数の移送内腔112を含む。一局面では、レシーバプレート108は、
図1Aに示すように、複数のレシーバウェル118を含む。一局面では、レシーバプレートはドナープレートと同じ構造を有してもよいが、レシーバウェルは、移送アセンブリが最初に形成されるときに空であってもよい(例えば、レシーバウェルは標的作用物質または流体を含有していなくてもよい)。いくつかの態様では、移送アセンブリの3つの構成要素(例えば、104、106、および108)は、移送アセンブリ(例えば、102)が形成されるときに、ドナー容器(例えば、プレート)の各ウェルが、移送アダプタの異なる移送内腔(例えば、112)およびレシーバ容器(例えば、プレート)の異なるレシーバウェル(例えば、118)と整列することができるように構成される。いくつかの態様では、移送アセンブリは、ドナー容器が移送アダプタおよびレシーバ容器の上方にある位置に反転される。例えば、ドナープレート104が移送アダプタ106およびレシーバ容器108の上方にある場合、流体はウェル110から移送内腔112を通ってレシーバウェル118に流入することができる。
【0041】
あるいは、レシーバ容器(例えば、プレート)は、複数のウェルを含むことができ、その少なくとも一部は1つ以上の標的作用物質を含む。例えば、レシーバプレート108は、複数のウェル118を含むマルチウェルプレートであってもよく、その少なくとも一部は少なくとも1つの標的作用物質を含み得る。一局面では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、流体のレシーバウェルへの移送を支援するように構成される。一局面では、移送アダプタ106は、移送アダプタの第1の側面114から第2の側面116まで延在し得る複数の移送内腔112を含む。一局面では、ドナープレート104は、複数のドナーウェル110を含む。
図1Aに示すように、レシーバプレートは、ドナープレート104と同じ構造を有してもよいが、レシーバウェルは、移送アセンブリ102が最初に形成されるときに流体を含有していない。いくつかの態様では、移送アセンブリの3つの構成要素(例えば、104、106、および108)は、移送アセンブリ(例えば、102)が形成されるときに、ドナー容器(例えば、プレート)の各ウェルが、移送アダプタの異なる移送内腔(例えば、112)およびレシーバ容器(例えば、プレート)の異なるレシーバウェル(例えば、118)と整列することができるように構成される。いくつかの態様では、移送アセンブリは、ドナー容器が移送アダプタおよびレシーバ容器の上方にある位置に反転される。例えば、ドナープレート104が移送アダプタ106およびレシーバ容器108の上方にある場合、流体はウェル110から移送内腔112を通ってレシーバウェル118に(例えば、1つ以上のレシーブウェル中の1つ以上の標的作用物質と接触および/または反応させるために)流入することができる。
【0042】
一局面では、ドナー容器は、移送アダプタの第1の側面と取り外し可能におよび/またはシール的に結合するように構成され、レシーバプレートは、移送アダプタの第2の側面と取り外し可能におよび/またはシール的に結合するように構成される。例えば、
図1Aに示すように、ドナープレート104は、移送アダプタ106の第1の側面114と取り外し可能に結合するように構成され、レシーバプレート108は、移送アダプタの第2の側面116と取り外し可能に結合するように構成される。一局面では、ウェル110、移送内腔112、およびレシーバウェル118を整列させることに加えて、3つの構成要素(例えば、104、106、および108)を結合することは、ドナーウェルを移送アダプタの第1の側面に対してシールし、レシーバウェルを移送アダプタの第2の側面に対してシールする。いくつかの態様では、シールは、ドナーウェル間またはレシーバウェル間の内容物の混合(例えば、流体の混合)を防止、最小化、または低減するように構成される。例えば、移送アダプタの第1の側面に対するドナーウェルのシールは、2つの隣接するドナーウェル間の混合などのドナーウェル間の混合を防止、最小化、または低減することができる。同様に、移送アダプタの第2の側面に対するレシーバウェルのシールは、2つの隣接するレシーバウェル間の混合などのレシーバウェル間の混合を防止、最小化、または低減することができる。ドナー容器、移送アダプタ、およびレシーバ容器が整列されたとき、シールは、ドナーウェルと他のレシーバウェルとの間の混合を防止、最小化、または低減しながら、ドナーウェルとその対応するレシーバウェルとの間(およびドナーウェルと他のレシーバウェルとの間ではない)の内容物の移送を可能にする。
【0043】
いくつかの態様では、ドナープレート、移送アダプタ、および/またはレシーバプレートは、プレートの構造物(例えば、ドナーウェル、移送内腔、およびレシーバウェル)の整列、構成要素の結合、および/または構成要素のシールを容易にするように構成された1つ以上の特徴を含む。例えば、
図1Aに示す移送アダプタ106は、ドナープレート104のドナーウェル110に挿入されるように構成された一次延長部120と、レシーバプレート108のレシーバウェル118に挿入されるように構成された二次延長部122とを含むことができる。ドナーウェルおよびレシーバウェルへの一次延長部および二次延長部のそれぞれの挿入は、整列および/またはシールを容易にすることができる。
【0044】
いくつかの態様では、レシーバプレートおよびドナープレートは、異なる構造を有してもよい。一局面では、ドナープレートは、境界壁、誘導ウェル構造、および任意で分離ウェル構造を含む。例えば、
図1Cに示す移送システム150では、ドナープレート154は境界壁160、誘導ウェル構造162、および分離ウェル構造164を含み、レシーバプレート158はマルチウェルプレートである。いくつかの態様では、ドナープレートは、移送アダプタ(例えば、
図1Cの156)に固定的に取り付けられるか、または一体化される。いくつかの態様では、ドナープレートは、ドナープレートに結合された分離ウェル構造を含む。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、ドナープレートに取り外し可能に結合されるように構成され、移送アセンブリを組み立てることは、分離ウェル構造をドナープレートに結合することをさらに含む。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、ドナープレートに固定的に取り付けられるか、または一体化される。
【0045】
図1Dに示すような移送アセンブリ152を参照すると、移送アセンブリは、第1の位置に組み立てられてもよく、移送アダプタ156は、ドナープレート154の下方およびレシーバプレート158の上方に位置する。一局面では、ドナープレート154は直立位置にあり、ウェルの上部開口部は上方を向き、ウェルの底部開口部(図示せず)は下方および移送アダプタ156の方を向いている。別の局面では、レシーバプレート158は直立位置にあり、レシーバウェルの入口は、移送アダプタ156に向かって上方に向いている。この位置では、流体は、移送アダプタおよび/または流体の特性のためにドナープレートのウェル内に留まることができ、重力および/または遠心力(例えば、遠心分離機によって発生させられるもの)のためにレシーバウェルに移送され得る。
図1Dに示すように、分離ウェル構造164は、個別のドナーウェルを形成するために境界壁および誘導ウェル構造と併せて使用することができる。
【0046】
ドナープレート
様々なドナープレートが、本明細書に記載の移送システムおよびアセンブリにおける使用に適し得る。しかしながら、ドナープレートの具体的な種類にかかわらず、その機能の1つは、1つ以上の流体および任意で1つ以上の標的作用物質を1つ以上の個別のウェルに含有させることであり得る。いくつかの態様では、ドナープレートは、マイクロタイターまたはマイクロウェルプレートとしても知られるマルチウェルプレートであってもよい。特定の態様では、ドナープレートは、広範囲の実験室用途に一般的に使用されるものなどの標準的な既製のマルチウェルプレートであってもよい。他の態様では、ドナープレートは、流体の移送および/またはドナープレートと移送アダプタとの間の相互作用を容易にするものなどの1つ以上のカスタムな特徴を含むことができる。ドナープレートの特質は変化し得るが(例えば、ウェルの数、ウェルのサイズ、およびウェルの内容物など)、遠心分離機に設置され得る任意のマルチウェルプレートは、本明細書に記載の移送システムでの使用に適している。
【0047】
一局面では、本明細書に記載のドナー容器および/またはレシーバ容器は、マルチウェルプレートであってもよい。マルチウェルプレートは、目的の作用物質または物質を含有し得る小さな開口ディボットまたはウェルのグリッドを含み得る。
図2は、マルチウェルプレートの代表的なウェル(200)を示す。いくつかの態様では、ウェル(例えば、200)は、マルチウェルウェルプレートの上面(例えば、204)を通る開口部(例えば、202)を含むことができ、材料は、開口部を通ってウェルに入るおよび/または出ることができる。いくつかの態様では、ウェルは、基部(例えば、206)および1つ以上の側面または壁(例えば、208)を含み、それらによって境界付けられ得る。いくつかの態様では、ウェルの断面形状は、例えば
図2に示すように円形である。ウェルは、任意の適切な断面形状、例えば、三角形、長方形、任意の他の四辺形、五角形、六角形、円形、長円形、楕円形、任意の他の丸い形状、または不規則な形状である断面を有し得ることを理解されたい。いくつかの態様では、例えば
図2に示すように、ウェル(例えば、200)の1つ以上の壁(例えば、208)は、マルチウェルプレートの上面(例えば、204)に垂直であり、および/またはウェルの長手方向軸に平行である。他の態様では、1つ以上の壁は、ウェルの長手方向軸に対して角度を有してもよい。いくつかの態様では、開口部(例えば、202)の断面形状および/または面積は、基部(例えば、206)の断面形状および/または面積と異なってもよい。いくつかの態様では、基部は、平坦な表面を含むか、または凹面、凸面、もしくは任意の他の適切な形状の表面を含む。
【0048】
一態様では、ドナー容器および/またはレシーバ容器は、任意の適切な数のウェル、例えば、少なくとも1つのウェル、またはマルチウェルプレートの場合には少なくとも2つのウェルを有することができる。例えば、既製のマルチウェルプレートは、少なくとも約6個のウェル、少なくとも約12個のウェル、少なくとも約24個のウェル、少なくとも約48個のウェル、少なくとも約96個のウェル、少なくとも約384個のウェル、少なくとも約480個のウェル、少なくとも約1536個のウェル、少なくとも約3456個のウェル、または3456個を超えるウェルを含み得る。ウェルは、行および列などの任意の適切な配置を有してもよく、いくつかの態様では、隣接するウェルのすべての対の間の距離はほぼ同じであってもよい。いくつかの態様では、マルチウェルプレートは、ウェルを分離および/または組み合わせることを可能にし得る1つ以上の特徴を含み得る。例えば、いくつかの態様では、例えば、「Multi-well separation apparatus and reagent delivery device」と題され、2015年2月18日に出願された、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、国際特許出願PCT/US15/16435号に記載のように、ウェルの壁は、ウェルの数、形状、および/またはサイズを変更するために取り外し可能および/または再配置可能であり得る。
【0049】
いくつかの態様では、ドナープレートは、保持キャビティの側部を形成する境界壁を含む。例えば、
図3Aに示すように、ドナープレート300は、保持キャビティ350を囲む側部を形成する境界壁302を含む。
図3Aおよび3Bに示す例では、境界壁302は、第1の部分302a、第2の部分302b、第3の部分302c、および第4の部分302dの4つの直交部分を含む。これらの4つの部分は、矩形領域を画定することができる。いくつかの態様では、4つの直交部分は、1つの一体化された構成要素であってもよく、他の態様では、4つの直交部分は、1つより多い構成要素(例えば、2、3、4、またはそれ以上)を含んでもよく、これらは、任意の適切な様式で、例えば、接着剤(例えば、にかわ、接着性ポリマーなど)、溶接、機械的締結具、化学結合などを任意の適切な組み合わせで使用して、取り付けまたは組み立てられてもよい。
【0050】
しかしながら、境界壁は、矩形領域を画定する必要はなく、さらに、4つの部分を含む必要はないことを理解されたい。いくつかの態様では、例えば、境界壁は、任意の多角形、例えば、三角形、四辺形(例えば、平行四辺形または台形)、五角形、六角形などを画定してもよい。境界壁は、実質的に平面である必要はなく、湾曲形状を有する領域、例えば、円形、長円形、楕円形、環形、弓形などを画定するように湾曲していてもよいことを理解されたい。いくつかの態様では、境界壁は、4つ未満の部分(例えば、1、2、または3つの部分)または4つより多い部分(例えば、5、6、7、8、またはそれ以上の部分)を含む。他の態様では、境界壁は1つより多い領域を画定する。例えば、いくつかの態様では、境界壁は、境界壁の対向する部分、例えば、第1の部分302aの第1の端部および第3の部分302cの第2の端部に取り付けられ得る第5の部分を含んでもよい。そのような態様では、境界壁は、2つの矩形領域を画定することができる。
【0051】
いくつかの態様では、ドナープレートは境界シールをさらに含む。例えば、
図3Aに示すように、ドナープレート300は境界シール304を含む。一局面では、境界シールは、境界壁と移送アダプタとの間に漏れ防止シールを形成するように構成される。例えば、
図3Aおよび3Bに示すように境界壁302と移送アダプタ700とが結合されたとき、境界シールは、境界壁と移送アダプタとの間に漏れ防止シールを形成することができる。境界シールは、限定されないが、ゴム、プラスチック、ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせなどのシールを形成するための任意の適切な材料を含むことができる。いくつかの態様では、境界シールは、境界壁の遠位側に対応する形状を有する適切な材料を含む。例えば、
図3Bに示すように、境界シール304は、境界壁302の遠位側306に対応する形状を有する適切な材料の薄いストリップを含むことができる。
【0052】
いくつかの態様では、境界シールは、境界壁と移送アダプタとが結合されたときに、境界壁と移送アダプタとの間に置かれるように構成される。いくつかの態様では、境界シールは、境界壁の遠位側に固定される。これらの態様では、境界シールは、任意の適切な様式で、例えば、限定されないが、接着剤(例えば、にかわ、接着性ポリマーなど)、溶接、機械的締結具、化学結合などを任意の適切な組み合わせで使用して、遠位側(例えば、
図3Bに示す306)に固定することができる。いくつかの態様では、境界壁の遠位側への境界シールの固定は、境界シールと境界壁との間に漏れ防止シールを作り出し、境界壁と移送アダプタとの間の圧縮力は、境界シールと移送アダプタとを一緒に押圧することができ、それにより、境界シールと移送アダプタとの間にも漏れ防止シールを形成する。
【0053】
他の態様では、境界シールは、やはり任意の適切な様式で、例えば、接着剤(例えば、にかわ、接着性ポリマーなど)、溶接、機械的締結具、化学結合などを任意の適切な組み合わせで使用して、移送アダプタの第1の平面に固定される。一局面では、移送アダプタの第1の平面(例えば、
図7Aに示す704)への境界シールの固定は、境界シールと移送アダプタとの間に漏れ防止シールを作り出し、境界壁と移送アダプタとの間の圧縮力は、境界壁と境界シールとを一緒に押圧し、それにより、境界壁と境界シールとの間にも漏れ防止シールを作り出す。
【0054】
さらに他の態様では、境界シールは、境界壁または移送アダプタのいずれにも固定されないが、代わりに、境界壁と移送アダプタとが結合されるときに圧縮力によって境界壁と移送アダプタとの間に挟まれる。境界壁が移送アダプタに固定的に取り付けられるさらに他の態様では、境界シールは、移送アダプタの第1の平面と境界壁の遠位側との両方に固定される。
【0055】
しかしながら、本明細書に記載のドナープレートは、境界シールを含む必要はないことを理解されたい。例えば、境界壁および基板が、境界シールなしで漏れなくその中に組成物(例えば、細胞懸濁液)を適切に保持することができる保持キャビティを形成するように構成されている場合、境界シールは不要であり得る。例えば、境界壁が移送アダプタに固定的に取り付けられているかまたは一体化されている態様では、ドナープレートは境界シールを含まなくてもよい。別の例として、境界壁および移送アダプタが固定的に取り付けられていないかまたは一体化されていないが、漏れ防止シールを形成するように構成されている態様では、ドナープレートは境界シールを含まなくてもよい。これは、例えば、境界壁が、移送アダプタの構造または材料(例えば、ゴム、プラスチック、またはポリマー)をシールまたは嵌合係合するように構成された材料、例えば、ゴム、プラスチック、またはポリマー(例えば、弾性ポリマー)などを含む場合に当てはまり得る。これらの場合、境界壁と移送アダプタとを一緒に押圧する圧縮力は、境界壁と移送アダプタとの間に直接(例えば、境界シール構造なしで)漏れ防止シールを作り出すことができる。
【0056】
図3Aおよび3Bのドナープレート300の態様に戻ると、移送アダプタおよび境界壁302は、結合されたときに保持キャビティ350を形成することができる。いくつかの態様では、保持キャビティは、水性組成物などの流体を保持するように構成された領域を提供する。境界壁が移送アダプタに固定的に取り付けられているかまたは一体化されている態様では、境界壁および移送アダプタによって同様の保持キャビティを形成することができることを理解されたい。
【0057】
図3Aおよび3Bは、結合された境界壁302および移送アダプタ700を単一の一体化された保持キャビティ350を形成するものとして示しているが、他の態様では、結合された境界壁および移送アダプタは、1つより多い領域を有する保持キャビティを形成することができる。例えば、境界壁が、境界壁の対向する部分(例えば、第1の端部から第1の部分302aまで、および第2の端部から第3の部分302cまで)に取り付けられ得る第5の部分を含む上述の態様では、保持キャビティは、2つの矩形領域を含むことができる。これらの2つの領域は、一方の領域に置かれた組成物が他方の領域に移動することができないように、境界壁によって分離されてもよい。
【0058】
保持キャビティ、同様にそれを形成する構成要素は、任意の適切な寸法を有することができる。いくつかの態様では、ドナープレート(例えば、
図3Aおよび3Bに示すような300)は、標準的な96ウェルプレートに近似するように構成される。したがって、移送アダプタ700および境界壁302の長さおよび幅は、その最大寸法が約13cm未満、すなわち約130mm×85mmであってもよい。保持キャビティ350の深さ(したがって、境界壁302のおおよその高さ)は、いくつかの態様では、約1mm、約3mm、約5mm、約7mm、約9mm、約11mm、約13mm、約15mm、約17mm、約19mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、または約40mm超であってもよい。
【0059】
一局面では、ドナープレートの保持キャビティ内に設置されるように構成された分離ウェル構造が本明細書で提供される。いくつかの態様では、ドナープレートは、保持キャビティ内に取り外し可能に設置された、または不可逆的に配設された分離ウェル構造を含む。
図4Aは、保持キャビティ内に置かれるように構成された分離ウェル構造400を示す。
図3Bのドナープレート300は、その保持キャビティ350内に設置され得る分離ウェル構造400を含んでもよい。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、保持キャビティ内に取り外し可能に結合されるように構成される。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、境界壁(例えば、302)および/または移送アダプタ(例えば、700)に固定的に取り付けられるかまたは一体化される。分離ウェル構造がドナープレートの保持キャビティ内に設置されたとき、保持キャビティ内の流体(例えば、水性組成物)を分離された体積/領域に分割することができる。組成物を分離された体積/領域に分割するこの様式は、従来の様式よりも簡単および/または効率的であり得る。従来の様式とは、例えば、ある体積の液体を別個のウェルに個別にピペットで入れるなどであり、これは、組成物を保持キャビティに1回移送するのとは対照的に、組成物を繰り返し移送することを必要とし得る。材料が分離された体積/領域に分割されると、これによって、分離された体積/領域が異なる工程を受ける(例えば、各体積/領域に異なる試薬を導入することによって)ことが可能になり得る。さらに、分離ウェル構造を保持キャビティから除去することもでき、分離された体積/領域の内容物をバルクで変更することが可能になる。分離された体積/領域の各々に対して同じ工程(例えば、洗浄段階)を実施することが望ましい場合、これは、分離された体積/領域の各々に対して個別に工程を実施するよりも簡単で効率的であり得る。
【0060】
図4Aに示すように、分離ウェル構造400は、複数の分離壁402を含むことができる。いくつかの態様では、分離壁402は、二組の直交する平行壁を含むことができ、分離壁402によって分離された開口部404のアレイまたはマトリックスを形成するように、グリッドまたは格子状構造を形成することができる。分離ウェル構造が保持キャビティ内で結合されたとき、保持キャビティを、
図4Aに示す分離ウェル408などの複数の分離ウェルに分離することができる。いくつかの態様では、
図4Cに示す分離ウェル構造400が保持キャビティ内に設置されたとき、境界壁302は、
図4Aに示すように、最も外側の分離ウェル408の外壁の少なくとも一部を形成する。他の態様では、
図4Cに示す分離ウェル構造400は、分離ウェル構造が保持キャビティ内に設置されたときに、境界壁が最も外側の分離ウェルの外壁を形成する必要がないように、それ自体の外壁を有することができる。
【0061】
いくつかの態様では、分離ウェル構造は、
図4Bに示す406などの1つ以上の分離シールをさらに含む。
図4Cに示す態様では、分離ウェル構造400は、境界壁302の上縁部に結合するように構成された1つ以上の分離ウェルリップ412を含むことができる。いくつかの態様では、分離壁を有するドナープレートは、標準的な96ウェルプレートに近似するように構成される。例えば、
図4C(ならびに
図1Cおよび1D)では、保持キャビティに設置されたときの分離壁は、96個の開口部(すなわち、8行×12列)を作り出す。
【0062】
いくつかの態様では、分離壁は、分離ウェルの少なくとも2つ(例えばすべて)を流体接続するように構成された1つ以上の分離壁スロットを含む。いくつかの態様では、
図4Dに示すように、分離壁402は、分離ウェル408の一部または全部を流体接続することができるように、1つ以上の分離壁スロット440を含むことができる。一局面では、分離壁402は、隣接する分離ウェル408のすべての対の間に分離壁スロット(例えば、440)を含むことができる。別の局面では、分離壁の少なくとも一部は、移送アダプタと接触せず、移送アダプタと分離壁の底面との間に1つ以上の間隙を残し、したがって分離ウェルの一部または全部を流体接続することができる。いくつかの態様では、移送アダプタと分離壁の底面との間の間隙のサイズは、分離ウェル構造が保持キャビティ内で結合されたときに分離壁が少なくとも部分的に流体に沈められるように、保持キャビティ内の流体の高さよりも小さくてもよい。一局面では、分離壁402および任意で境界壁302は、分離ウェル408の側壁を形成することができ、移送アダプタは、分離ウェルの基部を形成することができる。別の局面では、保持キャビティ350の内容物は、分離ウェル408に分離および分割されてもよい。分離ウェル構造は、限定されないが、ゴム、プラスチック、シリコン、セラミック、金属、ポリマー、ガラスなど、またはそれらの任意の適切な組み合わせなどの任意の適切な1つまたは複数の材料を含むことができる。
【0063】
いくつかの態様では、分離壁が保持キャビティ内で結合されたとき、分離壁は境界壁とほぼ同じ高さを有する。例えば、分離壁および境界壁の両方は、高さが約1mm、約3mm、約5mm、約7mm、約9mm、約11mm、約13mm、約15mm、約17mm、約19mm、約25mm、約30mm、約35mm、約40mm、またはそれを超えることができる。いくつかの態様では、内容物が分離壁を越えて分離ウェル間を流れるのを防止するために、分離壁の高さ(したがって、分離ウェルの深さ)が、分離壁がキャビティ内で結合されたときの保持キャビティ内の流体の深さよりも大きい限り、分離壁は境界壁よりも低い高さを有する。他の態様では、分離壁の高さ(および任意で境界壁の高さ)が、分離壁がキャビティ内で結合されるときに保持キャビティ内の流体の深さよりも大きい限り、分離壁は境界壁よりも高い高さを有する。分離壁の開口部のすべてが材料の移送に使用される必要はないことに留意されたい。
【0064】
いくつかの態様では、分離ウェル構造は、保持キャビティを実質的に満たす。例えば、分離ウェル構造400の断面寸法は、保持キャビティ350の断面寸法と実質的に同じであり得る。一局面では、保持キャビティ350は、分離ウェル構造400を嵌合式に収容するように構成される。他の態様では、分離ウェル構造は、保持キャビティを満たす必要はない。例えば、分離ウェル構造400は、保持キャビティ350よりも小さい断面積を有することができ、したがって、保持キャビティ350の一部のみを分離ウェル408に細分することができる。
【0065】
いくつかの態様では、分離壁の1つ以上は、1つ以上の分離壁スロットを含む。一局面では、分離壁スロットは、分離壁に開口部を含む。別の局面では、分離壁スロットは、分離壁の底部に位置する。さらなる局面では、分離壁スロットは、分離壁の底縁部に間隙を含む。例えば、
図4Dに示すように、1つ以上の分離壁402は、分離壁の開口部などの1つ以上の分離壁スロット440を含む。いくつかの態様では、分離壁スロット440は、分離壁の底部に位置し、分離壁402の底縁部に間隙を含むことができる。分離壁スロット440は、分離壁402の内部など、分離壁402に沿った任意の場所に位置し、すべての側面が分離壁によって境界付けられてもよく、または分離壁の上部にあり、分離壁の上縁部の間隙であってもよいことを理解されたい。いくつかの態様では、分離壁スロット440は、交差する分離壁402を越えて延在することができる。他の態様では、分離壁スロット440は、交差する分離壁402を超えて延在していなくてもよい。いくつかの態様では、分離壁スロット440は、1つ以上の交差する分離壁402を越えて延在することができる。他の態様では、分離壁スロット440は、1つ以上の交差する分離壁402を超えて延在していなくてもよい。いくつかの態様では、分離壁スロット440は、分離壁402の全長に沿って延在することができる。他の態様では、分離壁スロット440は、分離壁402の全長に沿って延在していなくてもよい。
【0066】
いくつかの態様では、分離壁の1つ以上は、保持キャビティを、サブセット内の他の分離ウェルと流体接続されるように構成されているが、他のサブセット内の分離ウェルと流体接続されるように構成されていない分離ウェルのサブセットに分割するように構成された1つ以上の分離壁スロットを含む。例えば、いくつかの態様では、保持キャビティを二等分する第1の分離壁402は、分離壁スロット440を含まず、残りの分離壁402は、各隣接する分離ウェル408の間に分離壁スロット440を含み、その結果、互いに流体接続するように構成された第1の分離壁の一方の側の分離ウェル408の第1のサブセットと、互いに流体接続するように構成された第1の分離壁の他方の側の分離ウェル408の第2のサブセットとが得られるが、分離ウェルの第1のサブセットは、分離ウェルの第2のサブセットと流体接続するように構成されていない。いくつかの態様では、分離ウェルは、同じサブセット内の他の分離ウェルにのみ流体接続するように構成された任意の数および/または構成の分離ウェルサブセットに細分することができる。
【0067】
いくつかの態様では、分離壁スロットは、任意の適切な形状および/または寸法の断面積を有することができる。いくつかの態様では、分離壁スロットの断面の最大寸法は、約1μm~約20μm、約20μm~約40μm、約40μm~約60μm、約60μm~約80μm、約80μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約400μm、約400μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約4mm、約4mm~約6mm、約6mm~約8mm、約8mm~約1cm、約1cm超、約1μm~約1cm、約100μm~約1mm、または約1mm~約1cmであってもよい。しかしながら、いくつかの態様では、保持キャビティ内の流体が分離壁スロット(例えば、440)を横切っておよび分離ウェル(例えば、408)間で自由に流れることを可能にするために、分離壁スロットの断面積が特定の値であることが望ましい場合があることを認識されたい。
【0068】
一局面では、分離壁スロットは、限定されないが、三角形、正方形、長方形、任意の他の四辺形(平行四辺形または台形など)、五角形、六角形などの形状、任意の丸みを帯びた形状(円形、長円形、または楕円形など)、または不規則な形状を有する断面などの任意の適切な形状を有することができる。いくつかの態様では、分離壁スロットの1つ以上は、例えば
図4Dに示すように、矩形断面形状を有する。いくつかの態様では、分離壁スロットの1つ以上またはすべては、等しい断面サイズおよび/または形状を有する。いくつかの態様では、分離壁スロットは、同じサイズおよび/または形状を有する必要はない。
【0069】
一局面では、開口部(例えば、404)は、任意の適切な断面積を有することができる。いくつかの態様では、開口部の断面の最大寸法は、約1μm~約20μm、約20μm~約40μm、約40μm~約60μm、約60μm~約80μm、約80μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約400μm、約400μm~約600μm、約600μm~約800μm、約800μm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約4mm、約4mm~約6mm、約6mm~約8mm、約8mm~約1cm、約1cm超、約1μm~約1cm、約100μm~約1mm、または約1mm~約1cmであってもよい。しかしながら、いくつかの態様では、毛細管効果に対抗するために、開口部(例えば、404)の高さと断面積との比が特定の値であることが望ましいことを認識されたい。得られた分離ウェル(例えば、408)は、限定されないが、約100μL未満、約100μL~約200μL、約200μL~約400μL、約400μL~約600μL、約600μL~約800μL、約800μL~約1mL、約1mL~約10mL、約10mL~約20mL、約20mL~約40mL、約40mL~約60mL、約60mL~約80mL、約80mL~約100mL、約100mL超、約100μL~約100mL、または約1mL~約10mLなどの任意の適切な体積を有し得る。
【0070】
開口部(例えば、404)は、正方形の断面形状を有するものとして
図4A~4Cに示されているが、開口部は、限定されないが、三角形、長方形、任意の他の四辺形(平行四辺形または台形など)、五角形、六角形などの形状、任意の丸みを帯びた形状(円形、長円形、または楕円形など)、または不規則な形状を有する断面などの任意の適切な形状を有することができる。いくつかの態様では、開口部の1つ以上またはすべては、等しい断面サイズおよび/または形状を有する。いくつかの態様では、開口部は同じサイズおよび/または形状を有する必要はない。他の態様では、開口部の断面は、開口部の寸法に沿って同じである必要はない。例えば、いくつかの態様では、各開口部のその近位端(例えば、移送アダプタに対して近位)における断面積は、その遠位端(例えば、移送アダプタに対して遠位)における断面積よりも大きくてもよい。他の態様では、各開口部のその遠位端における断面積は、その近位端における断面積よりも大きくてもよい。これらの場合、分離壁(例えば、402)の厚さは、それに応じて変化して可変断面積を作り出すことができることを理解されたい。例えば、分離ウェルの厚さは、近位端(例えば、移送アダプタに対して近位)よりも遠位端(例えば、移送アダプタに対して遠位)で大きくてもよく、あるいは、遠位端よりも近位端で大きくてもよい。
【0071】
図4A~4Bに示す態様では、分離ウェル構造400は64個の開口部404を画定し、したがって、保持キャビティ(例えば、350)内で結合されたとき、分離ウェル構造は保持キャビティを64個の分離ウェル408に分離することができる。しかしながら、分離ウェル構造は、任意の数の開口部を画定することができ、したがって、保持キャビティ(例えば、350)と結合されたとき、分離ウェル構造は、保持キャビティを任意の数の分離ウェルに分離することができることを理解されたい。例えば、分離ウェル構造は、少なくとも約6、少なくとも約12、少なくとも約24、少なくとも約48、少なくとも約96、少なくとも約384、少なくとも約480、少なくとも約1536、少なくとも約3456個、またはそれ以上の開口部を画定することができ、したがって、保持キャビティ(例えば、350)と結合されたとき、保持キャビティを少なくとも約6、少なくとも約12、少なくとも約24、少なくとも約48、少なくとも約96、少なくとも約384、少なくとも約480、少なくとも約1536、少なくとも約3456個、またはそれ以上の分離ウェルに分離することができる。開口部(例えば、404)および分離ウェル(例えば、408)の数は、本明細書に列挙された数によって限定される必要はないことを理解されたい。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、標準的なマイクロタイター実験用プレートに見られる開口部の数を確定し得るが、他の態様では、分離ウェル構造は、長方形数であってもなくてもよい非標準的な数の開口部を確定し得る。
【0072】
いくつかの態様では、所与の断面積、例えば保持キャビティ350の断面積内の分離ウェル(例えば、408)の数を最大にすることが望ましい。そうするために、分離壁(例えば、402)の厚さを最小限に抑えることが望ましい場合がある。いくつかの態様では、分離壁の厚さは、約50μm~約2000μmであってもよい。特定の態様では、分離壁の厚さは、約200μm~約1800μm、約400μm~約1600μm、約600μm~約1400μm、約800μm~約1400μm、または約1000μm~約1200μmである。
【0073】
いくつかの態様では、本明細書に記載の境界壁(例えば、302)は、402などの分離ウェル構造なしで使用することができることも理解されたい。
【0074】
いくつかの態様では、分離ウェル構造は分離シールをさらに含む。一局面では、分離ウェル構造と移送アダプタとが結合されたとき、分離シールは、1つ以上の分離ウェルの遠位端に漏れ防止シールを作り出すことができる。いくつかの態様では、これにより、各分離ウェルを単離領域とすることができ、その結果、隣接する1つまたは複数の分離ウェルとは異なる工程または処理を受けることができる。
図4A~4Bに示すように、分離シール406は、分離ウェル構造と移送アダプタとが結合されたときに、分離ウェル構造400の分離壁402の遠位面と移送アダプタの第1の平面(例えば、704)との間に置かれ得る。いくつかの態様では、分離シールは、少なくとも1つまたはすべての分離ウェルの底縁部を覆うことができ、したがって、移送アダプタに押圧されたときに少なくとも1つまたはすべての分離ウェルをシールすることができる。分離シールは、限定されないが、ゴム、プラスチック、もしくはポリマー、またはそれらの任意の適切な組み合わせなど、シールを形成するための任意の適切な材料を含むことができる。
【0075】
図4A~4Bに示す態様では、分離シール406は、分離ウェル構造400の分離壁402の遠位面に結合される。分離シールは、任意の適切な様式で、例えば、限定されないが、接着剤(例えば、にかわ、接着性ポリマーなど)、化学結合など、またはそれらの任意の組み合わせを使用することによって、分離ウェル構造に取り付けることができる。しかしながら、他の態様では、分離シールは、移送アダプタの第1の平面(例えば、704)に取り付けられてもよいことを理解されたい。さらに他の態様では、分離シールは、境界壁(例えば、302)に取り付けられてもよい。いくつかの態様では、分離シールは、境界シール(例えば、304)と一体化されてもよく、または境界シールに取り付けられてもよい。
【0076】
分離ウェル構造(例えば、400)は分離シール(例えば、406)を含む必要がないことをさらに理解されたい。分離ウェル構造および移送アダプタが、分離シールなしで、漏れなくそれらの中に流体(例えば、水性組成物)を適切に保持することができる分離ウェルを形成するように構成されている場合、分離シールは不要であり得る。例えば、これは、分離シールが、移送アダプタの材料とシールを形成することができるゴム、プラスチック、またはポリマーなどの材料を含む場合であり得る。これらの場合、分離ウェル構造と移送アダプタとを一緒に押圧する圧縮力は、中間の分離シールを必要とせずに、分離ウェル構造と移送アダプタとの間に直接漏れ防止シールを作り出すことができる。別の例として、ドナープレートは、以下でより詳細に説明するように、誘導ウェル構造を含むいくつかの(すべてではないが)態様では分離シールを含まなくてもよい。
【0077】
いくつかの態様では、分離ウェル構造(例えば、400)は、結合されたときに、分離ウェル構造と移送アダプタ(例えば、700)との間に漏れ防止分離ウェル(例えば、408)が形成されるのに十分な圧縮圧力が存在するように、保持キャビティ(例えば、305)内に結合されるように構成され得る。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、境界壁(例えば、302)および/または移送アダプタ(例えば、700)を介して保持キャビティ内に結合されるように構成されてもよい。
図4A~4Bに示す態様では、分離ウェル構造400は、境界壁302に結合するように構成された分離ウェルクリップ410を含む。
図4Cに示す態様では、分離ウェル構造400は、境界壁302の上縁部に結合するように構成された分離ウェルリップ412を含む。
【0078】
いくつかの態様では、ドナープレート(例えば、300)は、保持キャビティ(例えば、350)内で取り外し可能に結合するように構成された分離ウェル構造(例えば、400)を含む。一局面では、分離ウェル構造と保持キャビティとの間の結合機構の設計は、2つの要素が結合された後に分離ウェル構造を保持キャビティから取り外すことができるようなものであってもよい。結合を解除して保持キャビティから除去する能力は、保持キャビティ内の流体を最初に分離ウェルに分離するために分離ウェル構造を挿入することを可能にし、次いで分離ウェル内の流体を再結合するために分離ウェル構造を除去することを可能にし得る。
【0079】
いくつかの態様では、ドナープレート(例えば、300)は、保持キャビティ(例えば、350)内に固定的に結合された分離ウェル構造(例えば、400)を含む。一局面では、分離ウェル構造と保持キャビティとの間の結合機構の設計は、2つの要素が結合された後に分離ウェル構造を保持キャビティから取り外すことができないようなものであってもよい。いくつかの態様では、ドナープレート(例えば、300)は、境界壁(例えば、302)および/または移送アダプタ(例えば、700)に固定的に取り付けられたまたは一体化された分離ウェル構造(例えば、400)を含む。
【0080】
記載された分離ウェル構造特徴のいずれも、任意の適切な方式で組み合わせることができることを理解されたい。例えば、移送アダプタの態様は、
図4A~4Bに関して説明した態様からのいくつかの構成要素、および
図4C~4Dに関して説明した態様からの他の構成要素を含むことができる。
【0081】
いくつかの態様では、ドナープレート(例えば、300)は、誘導ウェル構造(例えば、502)を含む。誘導ウェル構造は、分離ウェル(例えば、408)の遠位部分の断面積を低減するように構成され得る。これは、例えば、各分離ウェル内の流体を、移送アダプタ(例えば、700)の開口部と整列した分離ウェルの基部のより小さい断面積に誘導することができるため、有利であり得る。いくつかの態様では、誘導ウェル構造は、限定されないが、分離ウェル構造と移送アダプタとの間に置かれるように構成され得る軟質および/または弾性材料(例えば、シリコーン、ゴムなど)などの材料の薄層を含み得る。一般に、誘導ウェル構造は、近位端上で分離ウェル構造の開口部の遠位端に対応することができる複数の開口部を含むことができ、開口部は近位方向から遠位方向に狭くすることができる。誘導ウェル構造内の開口部の遠位端は、分離ウェル内の流体が移送アダプタ内の開口部に誘導されることを可能にし得る。いくつかの態様では、分離ウェルの中心は、移送アダプタの開口部と整列していなくてもよく、誘導ウェル構造の開口部の遠位端は、分離ウェル内の流体の流れを移送アダプタの開口部に誘導するように位置していてもよい。
【0082】
図5A~5Bは、それぞれ、誘導ウェル構造502の一態様の斜視図および上面図を示す。そこから分かるように、誘導ウェル構造502は、複数の開口部504を含む薄い構造を含むことができる。近位側の開口部504の断面形状は、分離ウェル408の断面形状に対応するように構成され得る。開口部504は、開口部504の断面積が近位から遠位に向かって減少するように、逆四角錐台形状を有してもよい。開口部504の遠位端では、移送アダプタ700の一部が露出されてもよい。
【0083】
図5A~5Bは、それぞれ、誘導ウェル構造の一態様の斜視図および上面図を示す。これらの例では、誘導ウェル構造502は、複数の開口部504を含む薄い構造を含む。近位側の開口部504の断面形状は、分離ウェル408の断面形状に対応するように構成され得る。開口部504は、開口部の断面積が近位端から遠位端に向かって減少するように、逆四角錐台形状を有してもよい。開口部504の遠位端では、移送アダプタ700の一部が露出されてもよい。
図5Cは、逆四角錐台形状の開口部504を有する誘導ウェル構造502の側面からの近接図を示す。一局面では、近位端506における開口部の断面積は、遠位端508における開口部の断面積よりも大きい。他の態様では、開口部は、限定されないが、円錐台または角錐台などの他の形状を有してもよい。
【0084】
一局面では、誘導ウェル構造は、分離ウェル構造と移送アダプタとの間に置かれてもよい。ドナープレートが誘導ウェル構造を含むいくつかの態様では、ドナープレートは分離シールを含まなくてもよい。例えば、ドナープレートは、分離シールのない誘導ウェル構造を含むことができ、誘導ウェル構造は、移送アダプタと分離ウェル構造との間にシールを形成することができるゴム、プラスチック、またはポリマーなどの材料を含む。いくつかの態様では、誘導ウェル構造は、移送アダプタ(例えば、
図1Cに示す700)の第1の平面(例えば、704)に取り付けられてもよい;誘導ウェル構造は、境界壁に取り付けられてもよい;誘導ウェル構造は、境界シールに(例えば、誘導ウェル構造の外縁部を境界シールの内縁部に取り付けることによって)取り付けられてもよい;および/または誘導ウェル構造は分離ウェル構造に取り付けられてもよい。誘導ウェル構造は、これらの要素(例えば、第1の平面、境界壁、境界シール、および/または分離ウェル構造)に、任意の適切な様式で、例えば、限定されないが、接着剤(にかわ、接着性ポリマーなど)、化学結合などで取り付けることができる。いくつかの態様では、誘導ウェル構造は、これらの要素(例えば、第1の平面、境界壁、境界シール、および/または分離ウェル構造)のいずれかに固定的に取り付けられてもよい。いくつかの態様では、誘導ウェル構造、移送アダプタ、境界壁、および/または分離ウェル構造は、一体的に形成される。
【0085】
ドナープレートが誘導ウェル構造を含む他の態様では、ドナープレートは分離シールも含み得る。例えば、誘導ウェル構造が、一般に、移送アダプタと、誘導ウェル構造と、分離ウェル構造との間に十分なシールを形成することができない材料、例えば、ガラスまたは硬質プラスチックなどを含むいくつかの態様において、ドナープレートは、誘導ウェル構造および分離シールの両方を含むことができる。これらの態様では、分離シールは、移送アダプタと誘導ウェル構造との間および/または誘導ウェル構造と分離ウェル構造との間に置かれてもよい。分離シールが移送アダプタと誘導ウェル構造との間に置かれるとき、分離シールは、移送アダプタの第1の平面、誘導ウェル構造の遠位面、または境界壁に取り付けられてもよい。分離シールが誘導ウェル構造と分離ウェル構造との間に置かれるとき、分離シールは、誘導ウェル構造の近位面、分離ウェル構造の遠位面、または境界壁に取り付けられてもよい。
【0086】
いくつかの態様では、本明細書に記載のドナープレートは、カバーをさらに含んでもよい。カバーは、保持キャビティを覆うためにドナープレートに嵌合するように構成されてもよい。いくつかの態様では、カバーは、分離ウェル構造が保持キャビティ内で結合されたときに各分離ウェルの上部を個別にシールするように構成されてもよい。
【0087】
いくつかの態様では、複数のウェルのうちの少なくとも1つまたは各ウェルは、約100μL~約100mLの体積を有し得る。いくつかの態様では、少なくとも1つまたは各ウェルは、約100μL未満、約100μL~約200μL、約200μL~約400μL、約400μL~約600μL、約600μL~約800μL、約800μL~約1mL、約1mL~約10mL、約10mL~約20mL、約20mL~約40mL、約40mL~約60mL、約60mL~約80mL、約80mL~約100mL、または約100mL超の体積を有し得る。いくつかの態様では、複数のウェルの各々は、約1mm~約40mmの深さを有し得る。いくつかの態様では、複数のウェルの各々は、約5mm~約15mm、約10mm~約20mm、約15mm~約25mm、約20mm~約30mm、約25mm~約35mm、約30mm~約40mm、または約40mm超の深さを有し得る。
【0088】
マルチウェル容器(例えば、プレート)は、ガラス、プラスチック、および金属を含むがこれらに限定されない任意の適切な1つまたは複数の材料を含むことができる。いくつかの態様では、ウェルの内面の少なくとも一部はコーティングを含んでもよく、いくつかの態様では、基部のみがコーティングを含んでもよい。コーティングは、標的作用物質の不動化などの1つ以上の有用な機能を果たし得る。例えば、コーティングは、1つ以上の化学化合物、タンパク質、ゲル(例えば、ヒドロゲル)、ポリマー、コポリマー、固定細胞、微生物などを含み得る。
【0089】
ドナープレートのウェルは、任意の適切な内容物で少なくとも部分的に満たされ得る。一般に、本明細書に記載の移送システムで使用されるドナープレートのドナーウェルの内容物は、1つ以上の流体および任意で1つ以上の標的作用物質を含み得る。1つ以上の流体は、ドナーウェルを少なくとも部分的に満たし得る。標的作用物質は、ドナーウェルの内面または基部に少なくとも一時的に固定化または不動化され、流体に浸漬されてもよい。移送工程を通して、流体はドナーウェルから実質的に移送され得るが、標的作用物質はウェルの内面に大部分が不動化されたままであり得る。任意の適切な標的作用物質、例えば、タンパク質、核酸、微生物(例えば、細菌、真菌)、植物(例えば、藻類)、ウイルス、小分子薬物または任意の化学化合物、ポリマー、抗原、抗体、細胞断片、細胞ホモジネート、DNA、ペプチドなどが使用され得る。流体は、水性流体などの任意の適切な流体を含み得る。
【0090】
本明細書に記載の材料移送システムと共に使用するのに適したドナープレートは、移送アダプタとの結合、シール、および/または整列を容易にするための1つ以上の特徴を含み得る。いくつかの態様では、ドナープレートの上面の少なくとも一部は、移送アダプタの表面に接触するように構成され得る接着剤で覆われてもよい。接着剤は、ドナープレートと移送アダプタとを一緒に結合し、および/または流体がドナープレートの異なるウェル間を流れるのを防止することができるシールを形成するのを助けることができる。追加的または代替的に、ドナープレートの上面は、移送アダプタの表面上の対応する構造と係合する構造を備えてもよい。例えば、ドナープレートは、上面の周囲の周り、ドナーウェルの周り、または移送アダプタの対応する溝に嵌合することができる任意の他の適切な場所にリップを有することができる。これは、ドナープレートのドナーウェルを移送アダプタの開口部と結合、シール、および整列させることに寄与し得る。他の例として、ドナープレートは、移送アダプタと接合するように構成されたクリップ、クランプ、ラッチなどを含むことができる。ドナープレートはまた、移送アダプタ上のクリップ、クランプ、ラッチなどと接合するように構成されてもよい。クリップ、クランプ、ラッチなどは、2つ以上のプレートの結合、シール、および/または整列を容易にするために、移送アダプタおよび/またはレシーバプレートに取り付けることができる。
【0091】
いくつかの態様では、ドナープレートは、移送アダプタとは別個の異なる要素として説明されているが、いくつかの態様では、ドナープレートは、移送アダプタと一体的に形成されてもよいことを理解されたい。これらの態様では、組み合わされたドナープレート-移送アダプタは、ドナープレートのウェルからレシーバプレートのウェルへの材料(例えば、流体)の移送を容易にするために、レシーバプレートと結合することができる。組み合わされたドナープレート-移送アダプタは、ドナープレートの異なるウェルからの流体の混合を可能にするまたは防止するように構成されてもよい。
【0092】
移送アダプタ
一局面では、本明細書に記載の移送システムは、マルチウェルプレートのウェルへのまたはウェルからの流体の移送を調節するように構成された移送アダプタを含むことができる。移送システムのプレートが組み合わされて移送アセンブリを形成するとき、移送アダプタの第1の側面は、ドナープレートに(可逆的または不可逆的に)結合されてもよく、移送アダプタの反対側の第2の側面は、レシーバプレートに(可逆的になど)結合されてもよい。いくつかの態様では、移送アダプタおよびドナープレートは一体的に形成され、移送アダプタの露出した面は、レシーバプレートに(可逆的になど)結合されてもよい。移送アダプタは、複数の開口部を有する平面シートを含むことができ、移送アセンブリの層状配置は、流体がドナープレートのウェルから移送アダプタの開口部を通ってレシーバプレート内に流れることを可能にし得る。この流体の流れを促進するために、一般に、ドナープレート内に存在するウェルと少なくとも同じ数の開口部が移送アダプタ内に存在してもよく、開口部は、移送アダプタの各開口部がドナープレートの異なるウェルと整列するように配置されてもよい。例えば、隣接する開口部の中心間の距離、開口部の行および列の配置、ならびに開口部の各行および列の数は、ドナープレート内のウェルの配置と一致し得る。いくつかの態様では、移送アダプタは、ドナープレートの各ウェルと整列した1つより多い開口部を有するように構成されてもよい。複数のレシーバウェルを有するレシーバプレートを含む移送アセンブリの態様では、移送アダプタの各開口部は、異なるレシーバウェルと整列してもよく、または1つより多い開口部が各レシーバウェルと整列してもよい。
【0093】
移送アダプタは、開口部とドナープレートのウェルとの、およびいくつかの態様では、レシーバプレートのレシーバウェルとの整列を容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。例えば、移送アダプタは、移送アダプタとドナープレートとが結合されるときの整列を助けるための挿入ガイドとして作用することができる少なくとも1つの開口部に近接した1つ以上の構造を含むことができる。いくつかの態様では、これらの構造は、各開口部に隣接するまたは各開口部を取り囲む平面シートの表面から突出する延長部を含むことができる。各延長部は、開口部をドナーウェルと整列させるために、異なるドナーウェルと係合する(例えば、接触、進入、少なくとも部分的に嵌合する)ことができる。移送アダプタは、ドナープレートのウェルに係合するための第1の側面および/またはレシーバプレートのレシーバウェルに係合するための第2の側面に延長部を含むことができる。
【0094】
移送アダプタは、追加的または代替的に、ドナープレートの所定の部分と整列する整列ガイドを含んでもよい。例えば、整列ガイドは、ドナープレートの対応する寸法と一致し得る移送アダプタの1つ以上の寸法(例えば、長さ、幅)であってもよい。移送アダプタおよびドナープレートの対応する寸法を整列させることはまた、開口部をウェルと整列させることもできる。別の例として、整列ガイドは、ドナープレート上の対応する特徴と接合するように構成された1つ以上のピンおよび/または凹みを含んでもよい。移送アダプタは、開口部をレシーバウェルと整列させるために、レシーバプレートの所定の部分と整列させることができる同じまたは異なる整列ガイドを有することができることを理解されたい。
【0095】
一局面では、移送アダプタをドナープレートおよびレシーバプレートに結合することによって、液密または漏れ防止シールを形成することができる。例えば、ドナーウェル間の流体の流れを遮断するために、ドナープレートの各ウェルと移送アダプタとの間にシールを形成することができる。言い換えれば、流体は、ドナーウェルから移送アダプタの開口部を通って流れることができるが、シールは、流体が1つのドナーウェルから別のドナーウェルに流れるのを防止することができる。例えば、異なる実験プロトコルが異なるドナーウェルで実施された場合、ドナーウェル間の流体の混合を防止することが望ましい場合があり、したがって、ウェルの内容物を単離しておくことが望ましい。レシーバプレートが複数のレシーバウェルを含む場合、ドナープレートの各ウェルから移送された流体を単離するために、各レシーバウェルと移送アダプタとの間にシールを形成することが望ましい場合がある。シールの別の機能は、移送アセンブリのプレートが意図せず分離されないように、それらを摩擦によって一緒に保持することであり得る。
【0096】
一局面では、移送アダプタは、シールを容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。例えば、延長部を含む移送アダプタの態様では、各延長部は、ウェル(例えば、ドナープレートのドナーウェルまたはレシーバプレートのレシーバウェル)の内面に嵌合してシールすることができる。延長部の一部のサイズおよび形状は、ウェルの一部のサイズおよび形状と一致してもよく、これらの部分は相互作用してシールを形成してもよい。延長部および/またはウェルの材料特性は、シールを改善することができる(例えば、流体がシールを通って漏れる可能性を減少させ、および/またはシールを破るのに必要な力を増加させる)。例えば、延長部は、1つ以上の適応材料(例えば、ゴム、プラスチック、またはポリマー)を含むことができる。これにより、延長部をウェルの形状に適合させることができる。延長部およびウェルの材料はまた、延長部およびウェルを一緒に保持する摩擦力を増加または減少させるように選択されてもよい。
【0097】
移送アダプタのいくつかの態様は、ドナープレートまたはレシーバプレートのウェルに入る延長部または他の構造を含まなくてもよい。これらの態様では、移送アダプタの平面は、ウェル開口部の周りのドナープレートの上面に対してシールすることができる。移送アダプタおよび/またはドナープレートは、これらの表面のシールを容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。例えば、接着剤は、移送アダプタおよび/またはドナープレートの表面上にあってもよい。追加的または代替的に、クリップまたはクランプは、移送アダプタおよびドナープレートの表面を一緒に圧縮することができる。ドナープレートのウェルを移送アダプタに対してシールすることができる本明細書に記載のシール機構のいずれも、レシーバプレートのレシーバウェルを移送アダプタに対してシールするために使用することができることを理解されたい。いくつかの態様では、移送アダプタの平面は、ドナープレートの底面に固定的に結合されてもよい。
【0098】
移送アダプタは、複数の方式で流体の流れを調節することができる。例えば、整列およびシール機構は、開口部を通る流体の流れを誘導することができる。他の例では、移送アダプタの1つ以上の特徴によって、流体を開口部を通って流すのに必要な力の量を決定することができる。いくつかの態様では、開口部のサイズおよび/または形状は、移送アダプタの上方に位置するドナーウェル内の流体に作用する重力によって、流体が開口部を通って流れるようになるようなものであってもよい。他の態様では、開口部のサイズおよび/または形状は、重力のみでは流体が開口部を通って流れることができないようなものであってもよい。例えば、開口部が1つ以上の小さな孔またはスリットを含む場合、流体の凝集力(例えば、表面張力)および流体と移送アダプタとの間の接着力が流体の流れを防止する可能性がある。したがって、開口部を通る流体の実質的な流れを引き起こすのに必要な力の大きさは、開口部のサイズおよび/または形状、開口部を取り囲む材料の特性(例えば、疎水性、親水性)、ならびに流体の特性(例えば、粘度)に依存し得る。凝集力および接着力が重力のみに起因して開口部を通る流体の流れを防止するように移送アダプタが構成されている場合、遠心分離機によって生成される力などの外力の印加は、流体の流れを発生させることができる。
【0099】
追加的または代替的に、移送アダプタは、外力(例えば、移送アダプタを遠心分離することによる)が各開口部の面積を変更することができるように構成されてもよい。例えば、いくつかの態様では、1つ以上の弁尖が各開口部の面積を取り囲んでもよく、および/または画定してもよい。外力が印加されていない場合、弁尖は閉じた第1の位置にあり、開口部を通る流体の流れを遮断することができる。この第1の位置では、開口部は完全に閉じられてもよく、または面積は重力による流体の流れを防止するのに十分に小さくてもよい。外力が移送アダプタに(例えば、移送アダプタを遠心分離することによって)印加されたとき、弁尖は、第2の開位置に偏向、変形、または移動することができる。開口部の面積は、弁尖が第2の開位置にあるときに増加することができ、流体は開口部を通って流れることができる。外力が印加されたときにのみ流体の実質的な流れを可能にする移送アダプタは、いくつかの利点を有することができる。例えば、これにより、流体移送後に流体がレシーバプレートからドナープレートに意図せず逆流することを防止することができる。この構成はまた、移送アダプタがドナープレートのための液密カバーまたは蓋として機能することを可能にし得る。
【0100】
マルチウェル容器(例えば、96ウェルプレート)と共に使用するように構成された移送アダプタの例を
図6Aおよび
図6Bに示す。
図6Aにおいて、移送アダプタ600は、基板(例えば、平面シート602)と、基板上の複数の開口部と、各開口部に関連する一次延長部606および二次延長部608とを含む。この例では、開口部ならびに関連する一次および二次延長部は、96ウェルプレートのウェルに対応するように、例えば6行×12列に配置される。しかしながら、開口部ならびに関連する一次および二次延長部は、任意のマルチウェル容器のウェルの一部または全部に対応するために、任意の適切なパターンで配置されてもよいことを理解されたい。
【0101】
開口部をよりよく示すために、
図6Bは、一次および二次延長部のない開口部604の一列を示す。一局面では、各開口部は、基板の第1の表面と第2の表面との間に延在する貫通孔を含む。例えば、
図6Bに示すように、開口部604は、平面シート602の第1の平面610と第2の平面612との間に延在する貫通孔である。この例では、移送アセンブリが形成されたときに各開口部が96ウェルプレートの異なるウェルと整列するように配置されている96個の開口部604がある。
【0102】
一局面では、移送アダプタは、移送アダプタ基板上の開口部の周りの第1の表面から突出する一次延長部を含む。例えば、
図6Aおよび6Bに示すように、移送アダプタ600は、各開口部604の周りの第1の平面610から突出する一次延長部606を含む。別の局面では、移送アダプタは、移送アダプタ基板上の開口部の周りの第2の表面から突出する二次延長部をさらに含む。例えば、
図6Bに示すように、一次延長部606に加えて、移送アダプタ600は、各開口部604の周りの第2の平面612から突出する二次延長部608をさらに含み得る。
【0103】
一局面では、一次延長部は一次内腔を含み、および/または二次延長部は二次内腔を含む。例えば、
図6Bに示すように、各一次延長部606は一次内腔618を含み、各二次延長部608は二次内腔620を含む。いくつかの態様では、一次内腔および二次内腔は、移送アダプタの第1の側面と第2の側面との間に延在する連続移送内腔を形成するように構成される。例えば、一次内腔および二次内腔は両方とも、移送アダプタ基板上の同じ開口部に流体接続するように構成され、それにより、基板を通る連続移送内腔を形成する。
図6Bに示すように、各一次内腔618は、対応する開口部604および二次内腔620と整列させられ、および/または流体接続するように構成され、それにより、移送アダプタ600の第1の側面614と第2の側面616との間に延在する連続移送内腔を形成する。いくつかの態様では、移送アダプタの第1の側面がドナープレートに結合されたとき、複数のウェルから複数の移送内腔を通ってレシーバプレートへの流体の流れを容易にするために、各移送内腔をドナープレートの異なるウェルと整列させることができる。
【0104】
別の局面では、一次延長部は、移送アダプタおよびドナープレートの整列および/またはシールを容易にし、それにより、ドナープレートウェルから移送アダプタの開口部を通る流体の流れを容易にする。一態様では、一次延長部は、ドナープレートのウェルに少なくとも部分的に嵌合し、それに対してシールするように構成される。特定の態様では、一次延長部は、ドナープレートウェルの内面とシール(例えば、液密シール)を形成するように構成される。例えば、
図6Cおよび6Dに示すように、各一次延長部606は、ドナープレートの異なるウェルに少なくとも部分的に嵌合し、それに対してシールする(例えば、それの内面にシールを形成する)ように構成される。一次延長部の詳細は、
図6Cの移送アダプタの第1の側面614の一部の近接図に見ることができる。マルチウェルプレートのウェル622に挿入された一次延長部606の断面図を
図6Dに示す。いくつかの態様では、一次延長部は、移送アダプタ基板に隣接する内側端部と、基板に対して遠位の外側端部とを含む。例えば、
図6Dに示すように、各一次延長部606は、平面シート602に隣接する内側端部624と、平面シートに対して遠位の外側端部626とを含み得る。一態様では、一次延長部は、内側断面の面積が一次延長部の外側断面の面積よりも大きくなるように、内側端部から外側端部に向かって先細になっている。例えば、
図6Dに示すように、各一次延長部606は、内側断面積が外側断面積よりも大きくなるように、内側端部624から外側端部626に向かって先細になっている。一局面では、一次延長部の外側断面積は、一次延長部の外側端部をウェル内に容易に挿入および前進させることができるように、ウェルの内側断面積よりも小さい。例えば、
図6Dに示すように、一次延長部606の外側端部626がウェル622に挿入されたとき、一次延長部の外側端部の外側断面積は、例えば、外側端部の断面積とウェル開口部の断面積とが同じ断面平面で取られる場合、ウェルの対応する内側断面積よりも小さい。さらに、一次延長部606の外側端部626をウェル622に挿入することにより、各一次内腔618および移送アダプタの各開口部をドナープレートの異なるウェルと整列させることができる。
【0105】
さらに別の局面では、一次延長部の外面上に、ウェルの内面に接触してシールするように構成されたシール領域が設けられる。例えば、
図6Dに示すように、一次延長部606の外側端部626は、一次延長部の外面の一部、すなわちシール領域628がウェル622の内面に接触してシールするまでウェル622内に前進することができる。一局面では、シールが形成されたとき、一次延長部の(その外面上の)断面形状および面積は、シール領域が接触するウェルの部分の内側断面形状および面積と実質的に同じである。一局面では、これにより、一次延長部の外周とウェルの内周との間に連続的なシールを形成することが可能になる。
図6A~6Cに示す例では、一次延長部606の断面形状は円形であってもよく、これにより、同様に円形断面形状を有するウェルと連続的な円周方向シールを形成することができる。しかしながら、一次延長部のシール領域は、ウェルの内側断面形状(例えば、正方形、長方形、楕円形、または長円形)と一致する任意の形状を有することができる。いくつかの態様では、シール領域でウェルに対して液密シールを形成するために、一次延長部がウェルに完全に挿入される。他の態様では、ウェルへの一次延長部の部分的な挿入は、ウェルに対して液密シールを形成するのに十分である。例えば、
図6Dはウェル622内に完全に挿入された一次延長部606を示しているが、いくつかの態様では、一次延長部がウェル内に完全に入る前に液密シールを形成することができることを理解されたい。
【0106】
一局面では、一次延長部は、移送アダプタ基板に対して異なる傾斜または角度を有する1つ以上の部分を含む。場合によっては、2つ以上の傾斜を含む一次延長部は、1つの傾斜を有する一次延長部と比較して有利である。例えば、
図6Cおよび6Dに示すように、一次延長部606は、平面シート602に対して異なる傾斜または角度を有する少なくとも2つの部分を含む。具体的には、シール領域628の外面は、平面シート602に対して角度αを有する第1の傾斜を有し、平面シート602に対して遠位の一次延長部の端部(例えば、一次延長部606の領域632)の外面は、平面シートに対して角度βを有する第2の傾斜を有する。いくつかの態様では、第1の傾斜は、ウェル622の内面の傾斜と実質的に同じであってもよく、これにより、シール領域628とウェルの内面との間の接触面積を最大にすることができる。いくつかの態様では、ウェル622の壁は垂直(例えば、マルチウェルプレートの上面630に垂直)であり、したがって、第1の傾斜は垂直(例えば、移送アダプタの平面シート602に対して垂直)であり得る。いくつかの態様では、領域632の第2の傾斜は、シール領域628の傾斜より小さくてもよく(すなわち、角度βは角度αより小さくてもよい)、したがって、領域632は、ウェル622の内面に接触せず、それに対してシールしなくてもよい。一局面では、より小さい第2の傾斜は、外側端部626においてより小さい断面積をもたらし、それにより、一次延長部のウェル622への挿入を容易にすることができる。別の局面では、より小さい傾斜は、一次延長部606の長さを減少させ、例えば、内側端部624と外側端部626との間の長手方向距離を短くすることができる。この構成によって、一次延長部とウェル内の標的作用物質、例えばウェル622の底基部の標的作用物質634との間の接触の可能性を減少させることができる。
【0107】
一局面では、一次延長部の遠位領域の傾斜がウェルの内面の傾斜よりも小さい場合、一次延長部とウェルの内面との間にポケットを形成することができる。例えば、
図6Dは、一次延長部がウェルに挿入されたときに領域632の傾斜がウェルの内面の傾斜よりも小さいため、一次延長部606とウェル622との間に形成されたポケット636を示す。この例では、移送アセンブリが反転されたとき、または遠心分離中に、流体は、一次内腔618に直接流入し、続いてウェル622から流出する代わりに、このポケット636に入る場合がある。
【0108】
一局面では、一次延長部は、流体が移送アダプタとウェルとの間、例えば一次延長部とポケット636内などのウェルの内面との間に捕捉される可能性を減少させるための1つ以上の特徴を含む。いくつかの態様では、1つ以上の特徴は、一次延長部の構造、サイズ、および/または形状(例えば、スリット、間隙、ノッチ、アパーチャ、溝、チャネルなど)の特徴、および/または一次延長部の材料の特性(例えば、疎水性または親水性)の特徴を含む。例えば、
図6Cに示すように、各一次延長部606は、一次内腔618に流体接続するように構成された1つ以上のスリット638(例えば、4つのスリット638)を含むことができる。一局面では、スリットは、例えば領域632内の一次延長部の周囲の間隙であってもよい。一局面では、ポケットに入る流体は、ポケットに捕捉されたままではなく、スリットまたは間隙を通って一次内腔に流れ、ウェルを出ることができる。別の局面では、
図6Cに示すように、各スリット638は、一次内腔618の中心に向かって向く傾斜または角度のある基部640を含むことができ、それにより、流体をポケット636から一次内腔に、最終的にウェル622を出るように誘導することができる。スリットが
図6Cに示されているが、ポケットが一次内腔に流体接続するように構成された任意の構造は、流体がポケットに保持される可能性を減少させ得ることを理解されたい。いくつかの態様では、構造は、アパーチャ、孔、スリット、間隙、ノッチ、溝、またはチャネルなどを含む。
【0109】
いくつかの態様では、一次延長部は、ウェルの内面の傾斜と同じである外側傾斜と、ウェルの内面の傾斜よりも小さい内側傾斜とを有する領域を含み、この場合、一次延長部の材料がポケットを満たしているため、ポケットはない。例えば、
図6Dを参照すると、一次延長部606は、ウェルの内面の傾斜と同じ外側傾斜と、ウェルの内面の傾斜よりも小さい内側傾斜とを有する領域632を含むことができ、この場合、ポケット636はない。このような一次延長部では、一次延長部606の外側端部626は、ウェルから一次内腔618に流体を案内するように湾曲したまたは角度のある(例えば、凹状または円錐状)表面を含むことができる。
【0110】
移送アダプタの第2の側面に目を向けると、いくつかの態様では、第1の側面といくつかの構造的類似性があり得るが、第2の側面はレシーバプレートと結合するように構成される。例えば、レシーバプレートが複数のレシーバウェルを含む移送システムでは、移送アダプタの第2の側面は、レシーバウェルに係合する(例えば、挿入される)ように構成された複数の二次延長部を含むことができる。いくつかの態様では、本開示の移送アダプタは、移送アダプタ基板の第2の表面から突出する二次延長部を含む。例えば、
図6Eは、平面シート602の第2の平面612から突出する二次延長部608を含む、移送アダプタの第2の側面(616)の一部の拡大図を示す。
図6Fは、レシーバウェル642の内面に挿入され、それに対してシールされた二次延長部608の断面図である。この例では、各二次延長部は、移送アダプタ基板の異なる開口部と整列させられ、それを取り囲むことができる。いくつかの態様では、二次延長部は、移送アダプタ基板の開口部と流体接続し、次に一次延長部の一次内腔と流体接続するように構成された二次内腔を含む。例えば、二次内腔620は、開口部604および一次内腔618と流体接続し、それにより、移送アダプタ600の第1の側面614と第2の側面616との間に延在する連続移送内腔を形成することができる。いくつかの態様では、二次延長部は、基板(例えば、平面シート)に隣接する内側端部から基板に対して遠位の反対側の外側端部まで先細になっていてもよい。例えば、
図6Fに示すように、二次延長部608は、平面シート602に隣接する内側端部644から平面シートに対して遠位の外側端部646まで先細になっていてもよい。言い換えれば、内側端部における二次延長部の断面積は、外側端部における断面積よりも大きくてもよい。
【0111】
いくつかの態様では、外側端部は、外側端部からレシーバウェル内に出る流体が、レシーバウェルの中心に誘導されるのではなく、レシーバウェルの壁に案内されるように構成される。一局面では、この構成は、レシーバウェルの1つ以上の内容物に対する出ていく流体の衝撃を低減または排除する。例えば、
図6Gに示すように、外側端部646は、外側端部から出る流体が、1つ以上の作用物質634を含有し得るレシーバウェルの中心に誘導されるのではなく、壁に案内されるように、レシーバウェルの中心ではなくレシーバウェルの壁に向くように構成される。そのような態様は、流体移送に起因するレシーバウェル642の基部上における内容物の撹乱の量を低減することができる。外側端部646の開口部のサイズおよびレシーバウェル642の基部からのその距離はまた、レシーバウェルの底基部における標的作用物質634の撹乱を排除、低減、または最小限に抑えるために変化させることができることを理解されたい。細胞または組織培養物がレシーバウェルの底部で増殖される例では、
図6Gに示すような構成を使用して、液体移送中の細胞または組織培養物の撹乱を回避することができる。
【0112】
他の態様では、1つ以上の作用物質が、レシーバウェルの底基部上ではなく、レシーバウェルの内壁上に提供されてもよい。流体移送の目的に応じて、二次延長部の適切な構成を選択することができる。例えば、移送された流体が(例えば、内壁上の凍結乾燥試薬を再構成するために)内壁上の1つ以上の作用物質に接触することを意図している場合、
図6Gに示すような構成を使用して接触を容易にすることができる。しかしながら、(例えば、細胞が壁上で成長するために)作用物質への接触および/または衝撃が回避されるべきである場合、二次延長部は、流体をレシーバウェルの内壁ではなく底板に誘導するように構成されてもよい。
【0113】
いくつかの態様では、二次延長部の先細形状は、外側端部をレシーバウェルの入口に挿入することを可能にし、それにより、各二次内腔および移送アダプタの開口部を異なるレシーバウェルと整列させる。例えば、
図6Fに示すように、二次延長部の外面の少なくとも一部がレシーバウェルの内面の一部に接触してそれに対してシールするまで、二次延長部608をレシーバウェル642内に前進させることができる。シール(例えば、液密シール)を形成する二次延長部608およびレシーバウェル642の部分は、二次延長部およびレシーバウェルの周囲の周りに連続的なシールを形成するために、同じ断面積および形状を有することができる。このシールによって、レシーバウェル642間の流体の流れを遮断することができる。
図6Eおよび6Fに示す二次延長部608は、ただ1つの傾斜を含み、スリットを含まないが、二次延長部は、異なる傾斜を有する2つ以上の部分、および1つ以上のスリットを含む、一次延長部に関して本明細書で説明した特徴のいずれかを含むことができることを理解されたい。
【0114】
別の局面では、本明細書に開示される移送アダプタは、第1の平面および第2の平面を有する平面シートと、第1の平面と第2の平面との間に延在する複数の開口部とを含む。例えば、
図7Aに示すように、移送アダプタ700はマルチウェルプレートの上方に位置し、この移送アダプタの一部の近接図が
図7Bに示されている。これらの例では、移送アダプタ700は、第1の平面704および第2の平面706を有する平面シート702と、第1の平面と第2の平面との間に延在する複数の開口部708とを含む。いくつかの態様では、移送アダプタは、
図6A~6Fに示す移送アダプタの態様に関して説明した一次延長部および/または二次延長部を欠いている。例えば、移送アダプタ700は、各開口部がドナープレート710(例えば、96ウェルプレート)の異なるウェルと整列するように配置された開口部708を含むことができる。いくつかの態様では、ドナープレートのウェルの少なくとも1つまたはすべては、移送アダプタの第1の平面に対してシールすることができ、それにより、ウェル間の流体混合の可能性を低減することができる。したがって、一局面では、移送アダプタ700の各開口部708は、ドナープレートの異なるドナーウェルと整列することができ、各ドナーウェルは、移送アダプタの第1の平面704に対してシールすることができる。いくつかの態様では、移送アダプタの第1の平面は、ドナープレート(例えば、300)の底面および/または分離ウェル構造(例えば、400)の底面に固定的に結合される。移送アダプタおよびドナープレートは、一体的に形成されてもよく、任意で分離ウェル構造を含んでもよい。同様に、複数のレシーバウェルを有するレシーバプレートを含む移送システムの態様では、移送アダプタの各開口部(例えば、708)は、異なるレシーバウェルと整列することができ、各レシーバウェルは、移送アダプタの第2の平面(例えば、706)に対してシールすることができる。
【0115】
一局面では、移送アダプタは、開口部とドナープレートのドナーウェルおよび/またはレシーバプレートのレシーバウェルとの整列を容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。例えば、移送アダプタ700の1つ以上の側面は、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートの対応する側面と同じサイズ(例えば、長さおよび/または幅)を有してもよい。移送アダプタとドナープレートおよび/またはレシーバプレートとは、対応する側面を整列させることにより、開口部(例えば、708)をドナープレートのドナーウェルおよび/またはレシーバプレートのレシーバウェルと整列させることもできるように構成されてもよい。
【0116】
別の局面では、移送アダプタ(例えば、700)は、ドナープレート(例えば、710)のドナーウェルが第1の平面(例えば、704)に対して、および/またはレシーバプレートのレシーバウェルが第2の平面(例えば、706)に対してシールすることを可能にするように構成される。例えば、第1の平面は、接着剤で少なくとも部分的に覆われてもよい。移送アセンブリが形成されるとき、移送アダプタの第1の平面は、ドナープレートの上面(例えば、712)と係合してもよく、接着剤は、2つの表面を可逆的または不可逆的に付着させ、それらの間に液密シールを形成してもよい。したがって、流体は、開口部(例えば、708)を通ってドナープレートのウェルから流出することができるが、シールは、流体が移送アダプタの第1の平面とドナープレートの上面との間を流れて異なるウェルに到達するのを遮断することができる。同様に、接着剤は、レシーバプレートの表面とシールを形成し、レシーバウェル間の流体の流れを遮断するために、移送アダプタの第2の平面を少なくとも部分的に覆ってもよい。
【0117】
いくつかの態様では、接着剤は、第1および/または第2の平面(例えば、それぞれ704および706)全体を覆うことができ、他の態様では、接着剤が第1および/または第2の平面の一部のみを覆うことが望ましい場合がある。例えば、接着剤がドナープレート(例えば、710)のウェルおよび/またはレシーバプレートのレシーバウェルの内容物を汚染するリスクを低減するために、移送アダプタの第1および/または第2の平面は、流体と接触し得る領域(例えば、開口部708の周り)において接着剤を欠く場合がある。接着剤は、移送アダプタの1つ以上の表面を覆うことができるが、同じまたは異なる接着剤が、追加的または代替的に、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートの表面を覆うことができることを理解されたい。
【0118】
移送アダプタ(例えば、700)は、流体を開口部(例えば、708)を通って流すことができる力の量を制御するように構成されてもよい。例えば、移送アダプタは、ドナープレート(例えば、710)が移送アダプタの上方にあるように移送アセンブリが位置している場合、重力が開口部を通る流体の実質的な流れを発生させるのに十分でない可能性があるように構成されてもよい。流体が開口部を通って流れ、ドナープレートのウェルから移送されるために、遠心分離機などからの外力が移送アセンブリに加えられてもよい。少なくとも、各開口部(708)のサイズおよび/または形状(例えば、断面積および/または幅)、移送アダプタの1つまたは複数の材料、および/または流体の特性(例えば、粘度)は、流体を開口部を通って流すのに必要な力を決定することができる。例えば、開口部のサイズを減少させること、開口部を境界付ける材料の疎水性を増加させること、および/または流体の凝集力(例えば、表面張力)を増加させることは、開口部を通る流体の実質的な流れを引き起こすのに必要な力の大きさを増加させることができる。
図7A~7Bに示す開口部708は十字形であるが、開口部は任意の形状(例えば、正方形、長方形、円形、または長円形)を有してもよく、移送アダプタは依然として重力に起因して開口部を通る流体の流れを防止するように構成されてもよい。
図7Cは、流体をウェルに移送するために遠心力を使用する例を示す。一局面では、移送アダプタ(例えば、ゴム製)のプレカット孔またはスリットは、通常の重力条件下(例えば、
図7C、左)でシールするが、ゴムのプレカット孔またはスリットは、増加した遠心力がホールドまたはスリットを通して流体を押圧した場合(例えば、
図7C、右)、遠心分離中に開口する。
【0119】
図7Cは、説明のために1つの開口部を示しているが、いくつかの態様では、本発明の移送アダプタは、例えば
図7A~7Bに示すように、複数の開口部を含む。一局面では、液体の複数の区画は、区画内の(液体が容器壁と接する場所での)不均等なメニスカス形成の干渉を低減するのに役立つ。例えば、
図7Dが示すように、区画がない場合、より多くのメニスカス形成(したがって、より多くの体積)が壁に最も近い位置に見られるが、中央の位置はより少ない体積を有する。複数の区画を設けることにより、各区画内で等しい体積を達成することができ、不均等なメニスカス形成の干渉が低減または排除される。
【0120】
いくつかの態様では、移送アダプタは、ドナープレートの各ウェルと整列した1つの開口部を有するように構成されてもよく、他の態様では、移送アダプタは、ドナープレートの各ウェルと整列した1つより多い開口部を有するように構成されてもよい。例えば、移送アダプタは、複数の小さな開口部が各ウェルと整列するように構成されてもよい。
【0121】
いくつかの態様では、遠心分離機などからの外力は、各開口部(例えば、708)のサイズおよび/または形状を変更することができ、それにより、開口部を通る流体の流れを増加させることができる。例えば、1つ以上の弁尖(例えば、4つの弁尖714)が各開口部の領域を取り囲んでもよく、および/または画定してもよく、弁尖が移動して開口部の領域を変更してもよい。移送アダプタ(例えば、700)に外力が印加されていない場合、弁尖は、
図7A~7Bに示されるように、第1の閉位置にあり得る。弁尖が閉位置にあるとき、各開口部の面積は最小化され得る。移送アダプタは、各開口部の面積が最小化され、重力のみが流体に印加されるとき、流体が開口部を通って流れないように構成されてもよい。これらの態様では、最小化されたときの各開口部の面積は、ほぼ0(例えば、開口部は完全に閉じていてもよい)であってもよく、または開口部は、流体内の凝集力および/または流体と移送アダプタとの間の接着力が開口部を通る流体の流れを防止することができるように構成されてもよい。外力が移送アダプタに印加されたとき、各弁尖の少なくとも一部が偏向するか、そうでなければ平面シート(例えば、702)の水平面外に移動することができ、弁尖は第2の開位置にあり得る。弁尖が開位置にあるとき、各開口部の面積は、弁尖が閉位置にあるときよりも大きくてもよく、それにより、開口部を通る流体の流れを可能にする。移送アダプタは、弁尖を閉位置から開位置に移動させ、開口部を通る流体の流れを可能にするために所望の力が必要とされるように構成することができる。例えば、弁尖のサイズ、形状および材料は、弁尖がどれだけ容易に移動することができるかを少なくとも部分的に決定することができる。
【0122】
記載された移送アダプタの特徴のいずれも、任意の適切な方式で組み合わせることができることを理解されたい。例えば、移送アダプタの態様は、
図6A~6Fに関して説明した態様からのいくつかの構成要素、および
図7A~7Bに関して説明した態様からの他の構成要素を含むことができる。具体的には、移送アダプタの態様は、ドナープレートおよびレシーバプレートそれぞれとの移送アダプタの整列およびシールを容易にするための一次および二次延長部を含むことができる。この態様はまた、外力が移送アダプタに印加されない限り流体の流れを遮断するように構成された、
図7A~7Bに示す十字形開口部708などの開口部を有することができる。さらに、移送アダプタは、移送アダプタとマルチウェルプレートおよび/またはレシーバプレートとのシールおよび/または結合を容易にするために、1つ以上の表面に接着剤を有してもよいし、有しなくてもよい。
【0123】
移送アダプタは、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートとの相互作用を容易にするための1つ以上の追加のまたは代替の特徴を含むことができる。例えば、移送アダプタは、移送アダプタとドナープレートおよび/またはレシーバプレートとの結合、整列、および/またはシールを助けるために、恒久的または取り外し可能なクリップまたはクランプを含むことができる。いくつかの態様では、移送アダプタは、1つのサイズまたは種類のドナープレートおよび/またはレシーバプレートと共に使用するように構成されてもよい。例えば、移送アダプタは、固定された数の開口部を有してもよく、この開口部の数は、1つの種類のドナープレートにおける開口部の数と同じであってもよい。他の態様では、1つの移送アダプタは、複数のサイズまたは種類のドナープレートおよび/またはレシーバプレートと共に使用されてもよい。例えば、移送アダプタは、移送アダプタのサイズを減少または増加させ、それにより、開口部の数を減少または増加させるために、恒久的または可逆的に分離および/または接続することができる1つ以上の区域を含むことができる。
【0124】
先の態様のいずれかにおいて、移送アダプタは、限定されないが、ゴム、プラスチック、ポリマーなどの適切な材料を含むことができる。
【0125】
レシーバプレート
いくつかの態様では、本明細書に記載の移送システムは、移送アダプタと結合し、ドナープレートのウェルから移送された流体を含有することができるレシーバプレートを含むことができる。移送アセンブリが形成されるとき、レシーバプレートは、ドナープレートが取り付けられる側面とは反対側の移送アダプタの側面に可逆的に取り付けられてもよい。次いで、流体は、ドナープレートのウェルから、移送アダプタの開口部を通って、レシーバプレート内に流れることができる。移送された流体をレシーバプレートに含有させることにより、流体が遠心分離機に逃げるのを防止することができ、流体が標的作用物質から分離された後に流体に対して研究を実施することを可能にすることができる。いくつかの態様では、レシーバプレートは、ドナープレートの異なるウェルから移送された流体の混合を防止するように構成されてもよい。例えば、レシーバプレートは、複数のレシーバウェルを含むことができ、ドナープレートの各ウェルから移送された流体は、異なるレシーバウェルに流入することができる。他の態様では、ドナープレートの異なるウェルから移送された流体は、レシーバプレート内で混合することができる。例えば、レシーバプレートは、ドナープレートのすべてのウェルからの流体が流入することができるただ1つのレシーバウェルを含むことができる。
【0126】
本明細書に記載の移送システムで使用されるレシーバプレートのレシーバウェルの内容物は、1つ以上の標的作用物質を含み得る。標的作用物質は、レシーバウェルの内面または基部に少なくとも一時的に固定化または不動化されてもよい。移送工程を通して、流体は、ドナーウェルからレシーバウェルに実質的に移送され得るが、標的作用物質は、レシーバウェルの内面に大部分が不動化されたままであり得る。任意の適切な標的作用物質、例えば、タンパク質、核酸、微生物(例えば、細菌、真菌)、植物(例えば、藻類)、ウイルス、小分子薬物または任意の化学化合物、ポリマー、抗原、抗体、細胞断片、細胞ホモジネート、DNA、ペプチドなどが使用され得る。
【0127】
ドナープレートの異なるウェルから移送される流体の混合を防止するように構成されたレシーバプレートの態様では、レシーバウェルの数および配置は、移送アダプタの開口部およびドナープレートのウェルの数および配置と同じであり得る。したがって、レシーバプレートと移送アダプタおよびドナープレートとの整列により、各レシーバウェルを移送アダプタの異なる開口部およびドナープレートの異なるウェルと整列させることができる。各レシーバウェルは、各レシーバウェルの体積が1つのウェルから移送される流体を収容するのに十分な大きさであり得る限り、ドナープレートのウェルに関して説明したサイズおよび形状のいずれかを有することができる。
【0128】
異なるレシーバウェル間の流体の流れを遮断するために、レシーバプレートは、移送アダプタに対してシールするように構成されてもよい。例えば、
図6A、6B、6E、および6Fに示すように、二次延長部を有する移送アダプタを含む移送システムの態様では、各二次延長部は、異なるレシーバウェルに嵌合してシールすることができる。
図6Fに関してより詳細に説明したように、レシーバウェルの少なくとも一部は、二次延長部の少なくとも一部と同じ断面サイズおよび形状を有し得る。これにより、二次延長部の外面とレシーバウェルの内面との間の連続的な円周方向シールの形成を容易にすることができる。
【0129】
複数のレシーバウェルを含むレシーバプレートのいくつかの態様では、レシーバプレートは、標準的な既製のマルチウェルプレートであってもよい。例えば、移送システムのいくつかの態様では、レシーバプレートはドナープレートと同じであってもよい。他の態様では、レシーバプレートは、ドナープレートとは異なる種類の標準的なマルチウェルプレートであってもよい。例えば、ドナープレートは、標的作用物質を不動化するための材料でコーティングされてもよく、レシーバプレートは、そのようなコーティングを含まなくてもよく、またはその逆であってもよい。
【0130】
図1Aおよび1Bの移送システムに示されるレシーバプレートの態様は、標準的なマルチウェルプレートであってもよい。そこに見られるように、レシーバプレート(108)は、接触面(126)および複数のレシーバウェル(118)を含むことができる。接触面は、移送アセンブリ(102)が形成されたときに移送アダプタ(106)に面するかまたは接触するように構成されてもよい。流体は、開口部または入口(124)を通って各レシーバウェル(118)に流入することができる。
【0131】
いくつかの態様では、レシーバプレートは、ドナープレートの異なるウェルから移送された流体の混合を可能にし得る。例えば、レシーバプレートは、移送アダプタ内の開口部およびドナープレート内のウェルよりも少ないレシーバウェルを含むことができ、および/または複数のレシーバウェルを流体接続することができる。移送された流体の混合を可能にするように構成されたレシーバプレートは、(例えば、ウェルの一方の半分が第1のレシーバウェルに流入し、ウェルの他方の半分が第2のレシーバウェルに流入してもよく、ウェルの各行または列が異なるレシーバウェルに流入してもよい、など)ドナープレートのウェルのいくつかのみから移送された流体間の混合を可能にすることができる。他の態様では、レシーバプレートは、ドナープレートのすべてのウェルから移送された流体の混合を可能にするように構成されてもよい。例えば、レシーバプレートは、単一のレシーバウェルを含むことができ、ドナープレートのすべてのウェルから移送された流体は、単一のレシーバウェルに流入することができる。さらに他の態様では、レシーバプレートは、レシーバウェルの数を変更するように調整可能であってもよく、これにより、許容される流体混合の程度を変更することができる。例えば、レシーバプレートは、レシーバウェルの数を変更するように調整することができる1つ以上の取り外し可能な、組み合わせ可能な、および/または分離可能な壁を含むことができる。
【0132】
別の局面では、レシーバプレートは、移送アダプタとの整列、シール、および/または結合を容易にするための1つ以上の特徴を含むことができる。例えば、ドナープレートの異なるウェルから移送された流体の混合を可能にし得るレシーバプレートの態様であっても、移送システムからの流体の漏れ(例えば、遠心分離機への漏れ)を防止するために、レシーバプレートが移送アダプタに対してシールすることが有利であり得る。いくつかの態様では、移送アダプタの接触面の少なくとも一部は、シールを容易にするために接着剤で覆われてもよい。接着剤は、レシーバプレートの接触面の少なくとも一部と移送アダプタの表面との間の接触を維持し、流体が2つの表面間を移動するのを防止することができる。追加的または代替的に、クリップまたはクランプは、レシーバウェル間の流体の流れを防止するために、レシーバプレートの接触面とドナープレートの表面とを一緒に保持することができる。いくつかの態様では、レシーバプレートは、プレートの整列、シール、および/または結合を容易にするために、移送アダプタ上の対応する雌または雄構造とそれぞれ相互作用する任意の雄または雌構造を有することができる。例えば、レシーバプレートは、接触面の周囲の周り、1つまたは複数のレシーバウェルの周り、または任意の他の適切な場所にリップを含むことができ、リップは、移送アダプタの対応する溝に嵌合することができる。
【0133】
いくつかの態様では、移送アダプタとの結合に加えて、レシーバプレートは、ドナープレートと取り外し可能に結合するように構成されてもよい。例えば、レシーバプレートがドナープレートのための蓋としても機能することが有利であり得る。言い換えれば、レシーバプレートは、ドナープレートの上面が覆われるように、ドナープレートに可逆的に取り付けられるように構成されてもよい。いくつかの態様では、レシーバプレートは、遠心分離機に設置されるように構成されてもよい。例えば、レシーバプレートは、遠心分離機(例えば、遠心分離機のバケット内)に嵌合するような形状およびサイズであってもよく、および/または遠心分離機の一部(例えば、遠心分離機のバケット)に可逆的に取り付けるための特徴(例えば、クリップまたはクランプ)を含んでもよい。レシーバプレートは、ガラス、プラスチック、および金属を含むがこれらに限定されない任意の適切な1つまたは複数の材料を含むことができる。
【0134】
レシーバプレートは、一般に、移送アダプタとは別個の異なる要素として説明されているが、いくつかの態様では、レシーバプレートは、移送アダプタと一体的に形成されてもよいことを理解されたい。これらの態様では、組み合わされた移送アダプタ-レシーバプレートは、ドナープレートのウェルからの流体の移送を容易にし、移送された流体を含有させるために、ドナープレートと結合することができる。組み合わされた移送アダプタ-レシーバプレートは、ドナープレートの異なるウェルから移送された流体の混合を可能にするかまたは防止するように構成されてもよい。
【0135】
移送システムおよびキット
本明細書に記載の移送システムの1つ以上の要素は、ドナープレートのウェルからレシーバプレートのウェルへの流体の同時および均一な移送を容易にすることができる移送キットに含まれてもよい。例えば、いくつかの態様では、移送キットは、ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを含むことができる。他の態様では、移送キットは、移送アダプタおよびレシーバプレートを含んでもよく、移送キットは、標準的な既製のマルチウェルプレートと共に使用するように構成されてもよい。移送アダプタおよびドナープレートが一体的に形成される態様では、移送キットは、組み合わされたドナープレート移送アダプタを含んでもよい。移送アダプタおよびレシーバプレートが一体的に形成される態様では、移送キットは、組み合わされた移送アダプタ-レシーバプレートを含んでもよい。いくつかの態様では、移送キットは、ドナープレートと結合されるように構成された分離ウェル構造をさらに含むことができる。分離ウェル構造は、ドナープレートと取り外し可能に結合されるように構成されてもよい。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、ドナープレートに固定的に取り付けられるか、または一体化される。いくつかの態様では、移送キットは移送アダプタを含んでもよく、移送キットは、ドナープレートおよびレシーバプレートの両方のための標準的なマルチウェルプレートと共に使用するように構成されてもよい。移送キットは、特定の標的作用物質、流体、遠心分離機、および/または具体的な種類の標準的なマルチウェルプレートと共に使用するように構成されてもよいことを理解されたい。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書に開示される作用物質移送システムは、ウェル間移送のためのドナー容器をレシーバ容器に含む。一局面では、ドナー容器は、先の態様のいずれかに開示されるような移送アダプタとして機能する構造を含むドナープレートである。例えば、いくつかの態様では、ドナープレートの移送アダプタ構造は、
図6Bに示すような第2の延長部(608)と同様であるが、これらの態様では、
図6A~6Bに示すような一次延長部(606)は、ここでは閉じた端部を有し、したがって、移送アダプタは、1つ以上の作用物質を収容し、ドナープレートとして機能するように構成される。
図9に示すように、1つ以上の作用物質(図示せず)をドナープレート(900)に予め沈着(例えば、製造業者によって)させることができる。一局面では、ドナープレートは、1つ以上の予め沈着された作用物質が1つ以上の閉じた端部(例えば、ウェル)の底部に局在するとき上を向いている。別の局面では、ドナープレートは、移送アセンブリ(904)を形成するためにレシーバプレート(902)と結合するように構成される。これらの例は、例示の目的で96ウェルプレート形式を使用しているが、任意のウェル形式(例えば、384ウェルプレート形式)を使用することができる。一局面では、ドナープレートは、
図9に示すように、移送アセンブリを形成するために、レシーバプレートが上を向いている間、反転されてもよい。別の局面では、レシーバプレートは、移送アセンブリを形成するために、ドナープレートが上を向いている間、反転されてもよい。言い換えれば、ドナープレートは、例えば、ドナープレートの移送アダプタ構造をレシーバ容器(例えば、96ウェルプレート)の1つ以上のウェルに挿入することによって、レシーバプレートの上部に据え付けられてもよく、またはその逆であってもよい。この段階は、製造業者によって実施されてもよい。
【0137】
一局面では、移送アセンブリは、1つ以上の作用物質をドナー容器からレシーバ容器に移送するために、遠心力などの外力を受けることができる。一例が
図10Aに示されており、作用物質1004は、レシーバプレート1002上に組み立てられたドナープレート1000内に予め沈着される。アセンブリが遠心分離機に設置されると、作用物質1004をレシーバプレート1002のウェルに移送することができる。
【0138】
一局面では、流体を移送するための装置であって、第1の側面の第1の平面および第2の側面の第2の平面を有する平面シートと、第2の側面に開口部を有する第1の側面の複数のエンクロージャ(例えば、ウェル)と、第2の平面から突出し、かつエンクロージャの開口部に接続された内腔を含む、第2の側面の複数の延長部とを備える装置が、本明細書で提供される。一態様では、各延長部は、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに挿入されるように構成される。別の態様では、各延長部の外面は、レシーバプレートの異なるレシーバウェルに対してシールするように構成される。先の態様のいずれかにおいて、延長部の内面は、レシーバウェルの内壁と角度を形成するように構成することができ、角度は、約10度未満、例えば、約1度、約2度、約3度、約4度、約5度、約6度、約7度、約8度、約9度、または約10度であり得る。
【0139】
別の局面では、ドナープレートは、作用物質をより良好に保持および/または分注するための1つ以上の構造またはパターンを含む。例えば、乾燥剤、例えば凍結乾燥剤などの作用物質を収容するために、ドナープレートのウェル(例えば、ウェルの底部)に突起を設けることができる。一例が
図10Bに示されており、作用物質1004は、レシーバプレート1002上に組み立てられたドナープレート1000の突起1006上に予め沈着される。アセンブリが遠心分離機に設置されると、作用物質1004をレシーバプレート1002のウェルに移送することができる。この例では、移送(例えば、遠心分離によって)の前に、突起1006は、ドナープレート内の作用物質1004の保持を容易にすることができる。移送中、突起1006は、作用物質1004をレシーバプレート内に分注するのを助けることができる。突起などの任意の適切なパターンを使用することができる。例えば、ドナープレートは、1つ以上のウェルに複数の突起を含むことができ、各ウェルは、そこに予め沈着された異なる作用物質を有する。レシーバプレートは、レシーバウェル内に1つ以上の溶液を含有し得る。移送アセンブリが形成されると、レシーバウェルへのおよび/またはレシーバウェルからの材料移送を実施することができる。例えば、漏れ防止シールがドナーウェルとレシーバウェルとの間に形成される場合、レシーバウェル内の溶液は、ドナーウェルの複数の突起上の1つ以上の作用物質と混合することができる。
【0140】
いくつかの態様では、キットは、本明細書に開示される方法を実行するための材料または試薬を送達するためのシステムを含む。本開示の材料移送システムを使用する反応アッセイの文脈において、キットは、ある場所から別の場所への反応試薬(例えば、適切な容器内のプローブ、酵素など)および/または支持材料(例えば、緩衝液、アッセイを実施するための書面の説明書など)の貯蔵、移送または送達を可能にするシステムを含み得る。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または支持材料を含有する1つ以上のエンクロージャ(例えば、ボックス)を含む。そのような内容物は、一緒にまたは別個に意図された受取人に送達されてもよい。例えば、第1の容器は、アッセイに使用するための酵素を含有してもよく、第2の容器は、プローブを含有してもよい。いくつかの態様では、キットの各構成要素、例えばドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートは、別個に包装されてもよい。他の態様では、キットの2つ以上の構成要素は一緒に包装されてもよい。例えば、ドナープレート、移送アダプタ、および/またはレシーバプレートを一緒に包装することができる。あるいは、ドナープレートおよび移送アダプタは一緒に包装されてもよく、レシーバプレートは別個に包装されるか、またはキットのユーザによって提供される。
【0141】
方法
一局面では、例えば重力または遠心分離機によって生成された流体移送力を利用して、マルチウェルプレートのウェルへのまたはウェルからの材料(例えば、1つ以上の流体および/または1つ以上の乾燥試薬)の移送を容易にする方法が本明細書に開示される。
【0142】
いくつかの態様では、ドナープレート内の複数のウェルから流体を除去することが望ましく、この方法は、ドナープレートのウェルからレシーバプレートに流体を移送することを含む。
【0143】
いくつかの態様では、レシーバプレート内の複数のウェルに流体を添加することが望ましく、この方法は、最初に流体をドナープレートに添加し、続いて流体をドナープレートからレシーバプレートのウェルに移送することを含む。
【0144】
先の態様のいずれかにおいて、ドナープレートは、ドナープレート内の複数のウェルへの流体の同時充填を可能にする特徴を有し得る。流体は、ドナープレートのすべてのウェルから同時に移送することができ、流体移送力の効果は、各ウェル内および異なるウェル間で実質的に均一であり得る。さらに、流体移送は、主に自動であることができ、最小限の手動作業が必要とされ得る。この方法は、一般に、ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートから移送アセンブリを形成することと、移送アセンブリを遠心分離することとを含むことができる。移送アセンブリを形成することは、移送アダプタの第1の側面をドナープレートに取り外し可能に結合することと、移送アダプタの反対側の第2の側面をレシーバプレートに取り外し可能に結合することとを含むことができる。移送アダプタとドナープレートとを結合することは、移送アダプタの各開口部をドナープレートの異なるウェルと整列させることと、移送アダプタとドナープレートとの間に液密シールを形成することとを含むことができる。同様に、複数のレシーバウェルを有するレシーバプレートを含む移送システムの態様では、移送アダプタとレシーバプレートとを結合することは、移送アダプタの各開口部をレシーバプレートの異なるレシーバウェルと整列させることと、移送アダプタとレシーバプレートとの間に液密シールを形成することとを含むことができる。いくつかの態様では、ドナープレートおよび移送アダプタは一体的に形成され、移送アセンブリを形成することは、組み合わされたドナープレート-移送アダプタの移送アダプタの露出した側面をレシーバプレートに取り外し可能に結合することを含むことができる。いくつかの態様では、移送アダプタおよびドナープレートは一体的に形成され、移送アセンブリを形成することは、組み合わされた移送アダプタ-レシーバプレートの移送アダプタの露出した側面をドナープレートと取り外し可能に結合することを含むことができる。
【0145】
移送アセンブリは、それが形成されるときに第1の位置にあってもよい。第1の位置では、移送アダプタは、レシーバプレートの下方およびドナープレートの上方に位置してもよい。この位置では、流体は、ドナープレートのウェル内に留まることができる。
図3のドナープレート300を含む移送アセンブリなどのいくつかの態様では、第1の位置では、移送アダプタは、ドナープレートの下方およびレシーバプレートの上方に位置してもよく、この位置では、流体は、ドナープレートのウェル内に留まることができる。移送アセンブリが形成された後、移送アセンブリは回転軸の周りで遠心分離することができる。遠心分離機は、回転軸から離れるように流体を移動させることができる流体移送力を生成することができる。したがって、移送アセンブリは、遠心分離機が回転するときに流体の外側への移動がドナープレートからレシーバプレートへの流体の流れをもたらし得るように、遠心分離機内で配向されてもよい。これは、ドナープレートが移送アダプタおよびレシーバプレートよりも回転軸に近くなるように移送アセンブリを配向することによって達成することができる。遠心分離機が静止しているときおよび回転するときの移送アセンブリの具体的な向き(例えば、回転軸に対する移送アセンブリの角度)は、少なくとも使用される遠心分離機ロータの種類に依存し得る。移送アセンブリは、流体移送の量および/または速度を制御するために、所望の持続時間および所望の速度で遠心分離されてもよい。移送アセンブリが遠心分離された後、ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを分離することができ、これにより、例えば、移送された流体および/または単離された標的作用物質にアクセスすることができる。
【0146】
移送アセンブリの形成
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、ドナープレートは流体を含有せず、本方法は、ドナープレートに流体を送達することを含む。ドナープレート300の態様を参照すると、流体(例えば、水性組成物)をドナープレートの保持キャビティ(例えば、上述の保持キャビティ350)に送達することができる。保持キャビティは、境界壁(例えば、上述の境界壁302)を移送アダプタ(例えば、上述の移送アダプタ700)に結合することによって形成することができる。いくつかの態様では、境界壁は、移送アダプタに固定的に取り付けられるか、または一体化される。分離ウェル構造(例えば、上述の分離ウェル構造400)を保持キャビティ内に結合することができ、それにより、保持キャビティの内容物を複数の分離ウェル(例えば、上述の分離ウェル408)に分割することができる。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、保持キャビティ内に取り外し可能に結合されるように構成され、流体は、保持キャビティ内に分離ウェル構造を結合する前に保持キャビティに送達される。いくつかの態様では、流体は、保持キャビティ内で分離ウェル構造を結合した後に保持キャビティに送達される。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、境界壁および/または移送アダプタに固定的に取り付けられるか、または一体化される。流体が内部に分離ウェル構造を有する保持キャビティに送達されるいくつかの態様では、分離ウェル構造は、2つ以上の分離ウェルが流体接続されるように1つ以上の分離壁スロット(例えば、上述の分離壁スロット440)を含んでもよく、保持キャビティに流体を送達することは、1つ以上の分離ウェルに流体を送達することを含む。いくつかの態様では、流体接続された分離ウェルの各々に等しい体積の流体を分配するための期間を許容することができる。
【0147】
いくつかの態様では、少なくとも1つのレシーバプレートを、流体で満たされた複数のウェルを含むドナープレートと結合することによって、移送アセンブリを形成することができ、任意で、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートのウェルは、1つ以上の標的作用物質を含有する。例えば、移送アダプタの第1の側面は、ドナープレートと(例えば、取り外し可能に、固定的に、または一体的に)結合されてもよく、移送アダプタの反対側の第2の側面は、レシーバプレートと結合されてもよい。一局面では、ドナープレートは、移送アダプタと直接結合され、レシーバプレートと間接的に結合されてもよい。ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートを結合して移送アセンブリを形成することにより、ドナープレートのウェルからの流体を移送アダプタの開口部を通ってレシーバプレートに移送することができる。ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートは、任意の順序で結合されてもよい。言い換えれば、ドナープレートは、レシーバプレートが移送アダプタの第2の側面に取り付けられる前、後、または同時に、移送アダプタの第1の側面に取り付けられてもよい。移送アダプタとドナープレートおよび/またはレシーバプレートとの間の結合または取り付けは、不可逆的または可逆的であってもよい。移送アダプタとドナープレートおよび/またはレシーバプレートとの可逆的な結合により、プレートを結合解除および分離することができ、それにより、例えば、移送された流体および/または単離された標的作用物質に移送後にアクセスすることができる。
【0148】
移送アダプタとドナープレートとを結合することは、移送アダプタとドナープレートとを整列させ、それらを一緒にシールすることを含んでもよい。移送アダプタとドナープレートとを整列させることは、移送アダプタの開口部をドナープレートのウェルと整列させることを含んでもよい。この整列は、移送アダプタおよび/またはドナープレートの1つ以上の特徴によって、容易にすることができる。例えば、各開口部に関連する一次延長部を含む移送アダプタの態様では、各一次延長部をドナープレートの異なるウェルに挿入し、それにより、各開口部を異なるウェルと整列させることができる。整列ガイドを含む移送アダプタの態様では、整列ガイドは、ドナープレートの所定の部分と整列されてもよく、これはまた、移送アダプタの開口部をドナープレートのウェルと整列させることもできる。
【0149】
移送アダプタとドナープレートとを結合することはまた、2つのプレートの間に液密シールを形成することも含んでもよい。1つまたは複数のシールは、流体がドナープレートの異なるウェル間を流れるのを遮断することができるが、それでも流体がウェルから移送アダプタの開口部を通って流れることを可能にすることができる。シールは、移送アダプタおよび/またはドナープレートの1つ以上の特徴によって、容易にすることができる。いくつかの態様では、これらの1つ以上の特徴は、整列を容易にする1つ以上の特徴と同じであり得る。例えば、各開口部に関連する一次延長部を含む移送アダプタの態様では、各一次延長部は、整列を容易にすることに加えて、ドナープレートの異なるウェルとシールを形成することができる。各一次延長部は、ウェルに挿入され、一次延長部の外面の一部がウェルの内面の一部に対してシールするまで前進することができる。いくつかの態様では、シールを容易にする1つ以上の特徴は、整列を容易にする1つ以上の特徴とは異なり得る。例えば、移送アダプタのいくつかの態様は、接着剤で少なくとも部分的に覆われた第1の表面を含んでもよい。この態様では、接着剤で覆われた移送アダプタの第1の表面をドナープレートの上面に対して押圧して、流体が異なるウェル間を流れるのを遮断することができるシールを形成することができる。いくつかの態様では、移送アダプタは、ドナープレートに固定的に取り付けられるか、または一体化される。移送アダプタおよびドナープレートが一体的に形成される態様では、移送アセンブリを形成する方法は、移送アダプタとドナープレートとを結合することを含まなくてもよいことを理解されたい。
【0150】
移送アセンブリを形成することはまた、移送アダプタとレシーバプレートとを結合することも含んでもよい。移送アダプタとレシーバプレートとを結合することは、移送アダプタとレシーバプレートとを整列し、それらを一緒にシールすることを含んでもよい。複数のレシーバウェルを有するレシーバプレートを含む移送アセンブリの態様では、移送アダプタとレシーバプレートとを整列および/またはシールする方法は、移送アダプタとドナープレートとを整列および/またはシールするために記載された方法と同様であってもよい。例えば、移送アダプタとレシーバプレートとを整列させることは、移送アダプタの開口部をレシーバプレートのレシーバウェルと整列させることを含んでもよい。移送アダプタとレシーバプレートとを一緒にシールすることにより、レシーバウェルと移送アダプタとの間に液密シールを形成することができ、それにより、流体が開口部を通ってレシーバウェル内に流れることを可能にすることができるが、流体がレシーバウェル間を流れるのを防止することができる。これらのシールはまた、ドナープレートの各ウェルからの流体がレシーバプレートの異なるレシーバウェルに流入することを確実にするのに役立ち得る。いくつかの態様では、移送アダプタとレシーバプレートとを結合することは、各開口部を異なるレシーバウェルと整列させることを含み得るが、液密シールは形成されなくてもよいことを理解されたい。移送アダプタおよび/またはレシーバプレートの1つ以上の特徴により、移送アダプタの第2の側面の二次延長部および/または接着剤など、移送アダプタとレシーバプレートとの整列および/またはシールを容易にすることができる。いくつかの態様では、移送アダプタは、レシーバプレートに固定的に取り付けられるか、または一体化される。
【0151】
移送アダプタにある開口部よりも少ないレシーバウェルを有するレシーバプレートを含む移送アセンブリの態様では、移送アダプタとレシーバプレートとの結合は、依然として整列および/またはシールを含むことができる。例えば、複数の開口部を含む移送アダプタが単一のレシーバウェルを含むレシーバプレートと結合される場合、整列は、すべての移送された流体がレシーバウェルに含有され得るように、すべての開口部を単一のレシーバウェルと整列させることができる。さらに、移送アセンブリからの流体の逃げを防止するために、移送アダプタとレシーバプレートとの間の液密シールを単一のレシーバウェルの周りに形成することができる。移送アダプタおよびレシーバプレートが一体的に形成される態様では、移送アセンブリを形成する方法は、移送アダプタとレシーバプレートとを結合することを含まなくてもよいことも理解されたい。
【0152】
いくつかの態様では、移送アセンブリは、
図1Bに示すように、ドナープレートを直立位置にして、例えばウェルの開口部を上方に向かせて、第1の直立位置に組み立てることができる。
図1Bは、第1の直立位置にある移送アセンブリ(102)の例を示す。そこに見られるように、移送アダプタ106は、レシーバプレート108の下方およびドナープレート104の上方に位置する。ドナープレートのウェル(図示せず)の開口部は、上方および移送アダプタの方を向いている。レシーバプレートは反転され、例えば、レシーバウェルの入口は、移送アダプタに向かって下方に向いている。この位置では、流体は、重力のためにドナープレートのウェル内に留まることができる。
【0153】
図1Dに示す移送アセンブリ(152)の態様を参照すると、移送アセンブリは、第1の位置に組み立てられてもよく、移送アダプタ156は、ドナープレート154の下方およびレシーバプレート158の上方に位置する。ドナープレートは直立位置にあり、例えば、ウェルの上部開口部は上方を向き、ウェルの底部開口部(図示せず)は下方および移送アダプタの方を向いている。レシーバプレートは直立しており、例えば、レシーバウェルの入口は、移送アダプタに向かって上方に向いている。この位置では、流体は、移送アダプタおよび/または流体の特性のためにドナープレートのウェル内に留まり得る。いくつかの態様では、ドナープレートは、移送アダプタに固定的に取り付けられるか、または一体化される。いくつかの態様では、ドナープレートはドナープレート(例えば、300)であり、それに結合された分離ウェル構造(例えば、400)を含む。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、ドナープレートに取り外し可能に結合されるように構成され、移送アセンブリを組み立てることは、分離ウェル構造をドナープレートに結合することをさらに含む。いくつかの態様では、分離ウェル構造は、ドナープレートに固定的に取り付けられるか、または一体化される。
【0154】
材料移送
移送アセンブリが第1の位置に形成された後、移送アセンブリは、重力および/または外力が流体をドナープレートからレシーバプレートに移送することを可能にするように再配置されてもよい。例えば、本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、移送アセンブリは遠心分離機に設置されてもよく、遠心分離機は流体移送力を発生させることができる。流体移送力は、各ウェル内および異なるウェル内の流体および任意の標的作用物質に対して実質的に同時および均一な効果を有し得る。流体が重力下でドナープレートからレシーバプレートに流れない移送アセンブリの態様では、移送アセンブリを遠心分離することにより、流体をドナープレートからレシーバプレートに流すことができる。流体が重力下でドナープレートからレシーバプレートに流れる移送アセンブリの態様では、移送アセンブリを遠心分離することにより、流体をより迅速に流すことができ、および/またはドナープレートからの流体のより完全な移送を可能にすることができる。
【0155】
遠心分離機は、回転軸の周りで回転するロータを含んでもよく、移送アセンブリは、同様に回転軸の周りで回転するように、ロータ内またはロータ上に設置されてもよい。移送アセンブリの回転運動は、流体を回転軸から離れて外側に移動させることができる。移送アセンブリは、流体の外側への移動が、ドナープレートのウェルから、移送アダプタの開口部を通って、レシーバプレート内への流れをもたらし得るように、遠心分離機内で配向されてもよい。例えば、遠心分離機が回転するとき、例えば、遠心分離機ロータおよび移送アセンブリが回転軸の周りを回転するとき、移送アセンブリは、ドナープレートが移送アダプタおよびレシーバプレートよりも回転軸の近くに位置するように配向されてもよい。より具体的には、遠心分離機が回転するとき、ドナープレートの各ウェルは、それが整列される移送アダプタおよびレシーバウェルの開口部よりも回転軸の近くに位置してもよい。
【0156】
いくつかの態様では、
図8Aに見られるように、遠心分離機が回転するとき、移送アセンブリ(800)は回転軸(802)に平行に配向されてもよい。他の態様では、
図8Bに見られるように、遠心分離機が回転するとき、移送アセンブリは、回転軸に対して平行と垂直との間の角度で配向されてもよい。しかしながら、
図8Aおよび8Bの両方に見られるように、遠心分離機が回転するとき、ドナープレート(804)は、移送アダプタ(806)およびレシーバプレート(808)よりも回転軸に近くてもよい。
【0157】
移送アセンブリが遠心分離機にあるときの移送アセンブリの具体的な向きは、使用される遠心分離機ロータの種類に依存し得る。例えば、固定角度ロータが使用される場合、移送アセンブリは、最初に遠心分離機に設置され、遠心分離機が静止しているとき、遠心分離機が回転するときと同じ向き(例えば、垂直、垂直と水平との間の角度)を有し得る。対照的に、スインギングバケットロータが使用される場合、移送アセンブリは、最初に遠心分離機に設置されたとき、遠心分離機が回転するときとは異なる向きを有し得る。例えば、移送アセンブリが最初にスインギングバケットロータを備えた遠心分離機に設置されるとき、移送アセンブリは水平(例えば、回転軸に垂直)に配向されてもよい。遠心分離機が回転するとき、ロータおよび移送アセンブリのバケットは外側に傾いて、ドナープレートが移送アダプタおよびレシーバプレートよりも回転軸に近くなるように移送アセンブリを配向させることができる。移送アセンブリが最初に遠心分離機に水平に設置されるとき、移送アセンブリは、第1の直立位置に組み立てられたときの向きと比較して反転されてもよいことを理解されたい。例えば、
図8Cに示すように、移送アセンブリ(800)が第2の反転位置にあるとき、移送アダプタ(806)は、ドナープレート(804)の下方およびレシーバプレート(808)の上方にあってもよい。
【0158】
一局面では、移送アセンブリが遠心分離機内に設置された後、遠心分離機ロータは回転して流体移送力を生成することができる。流体移送力は、流体をドナープレートからレシーバプレートに外側に流すことができるが、標的作用物質は、ドナープレートおよび/またはレシーバプレートのウェルに付着したままであり得る。具体的な遠心分離方法は、移送アセンブリの特質(例えば、ドナープレートの態様、および/または移送アダプタの態様)、移送される流体の特質(例えば、量および/または粘度)、および任意の標的作用物質の特質(例えば、ウェルへの標的作用物質の付着、および/または標的作用物質の安定性)に依存し得る。少なくともこれらの特質に基づいて、移送アセンブリは、所望の持続時間にわたって所望の遠心分離設定で遠心分離されてもよい。例えば、速力(例えば、毎分回転数)、加速度、温度、回転軸からの距離、ロータの種類、および/または任意の他の利用可能な設定を、特定の移送アセンブリから流体を除去するために指定することができる。これらのような設定は、実質的にすべての流体がドナープレートのウェルから移送される可能性を高め、任意の標的作用物質がウェルから外れるかまたは損傷する可能性を低下させ、および/または流体をウェルから除去するのに必要な時間を決定するために調整することができる。
【0159】
上述したように、遠心分離機によって生成される流体移送力は、移送アセンブリの異なる態様に異なる影響を及ぼし得る。例えば、移送アセンブリのいくつかの態様が遠心分離機に設置されたとき、流体移送力は、ドナープレートのウェルからの流体の流れを開始させることができる。他の態様では、流体は、遠心分離機からの流体移送力が移送アセンブリに印加される前に、重力のためにウェルから流出し始めていてもよい。移送アセンブリのこれらの態様に流体移送力を印加すると、実質的にすべての流体がドナープレートからレシーバプレートに移送されるまで、ドナープレートのウェルからの流体の流れ(例えば、体積流量および/または流速)が増加し得る。流体移送力が移送アセンブリの特定の態様に印加されたとき、移送アダプタの開口部のサイズおよび/または形状は変化し得る。例えば、流体移送力が、各開口部の周りに1つ以上の弁尖を有する移送アダプタを含む移送アセンブリに印加されたとき、1つ以上の弁尖の少なくとも一部は、移送アダプタ平面シートの平面から外方に、回転軸から離れて偏向し得る。移送アダプタの弁尖の移動は、開口部のサイズを増加させることができ、それにより、開口部を通る流体の流れを増加させることができる。したがって、流体移送力の具体的な効果は移送アセンブリの態様に依存し得るが、全体的な効果は、ドナープレートのウェルからレシーバプレートへの流体移送の量または速度を増加させることであり得る。
【0160】
移送アセンブリが遠心分離されるとき、移送アセンブリ内の実質的にすべての流体および任意の標的作用物質が同時に流体移送力の影響を受け得る。これは、流体移送力が他のものよりも先にいくつかのウェル内の流体および任意の標的作用物質に影響を及ぼし得る、個別のウェルまたはウェルのサブセットのピペット操作などの他の流体移送技術とは対照的である。ドナープレートのすべてのウェルから同時に流体を移送することは、流体移送の速度を増加させ、異なるウェルで起こる反応、結合、または他の工程間の変動を減少させるなどの1つ以上の利点を有し得る。これは、例えば、工程が時間的制約がある場合に望ましい場合がある。さらに、流体移送力の効果は、各ウェル内および異なるウェル間で実質的に均一であり得る。したがって、各ウェル内および異なるウェル内の流体および任意の標的作用物質は、ほぼ同じ流体移送力を受ける可能性があり、これは、同じウェルの異なる部分からの試料間および異なるウェルからの試料間の変動を減少させる可能性がある。対照的に、ウェルから流体を除去するためにピペットが使用される場合、ピペットの先端付近の力は、先端からより遠い力とは異なる可能性があり、異なるウェルに同じ力を印加することは困難であり得る。遠心分離機によって生成される流体移送力の効果は実質的に均一であり得るが、回転軸からの距離のわずかな差により、ウェル内およびウェル間に無視できる態様が存在し得ることを理解されたい。しかしながら、これらの差は、流体、標的作用物質、および/またはウェル内で起こる工程(例えば、反応、結合など)に無視できる影響を及ぼし得る。
【0161】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、移送アセンブリは遠心分離機に設置されなくてもよい。例えば、上記で詳細に説明したように、移送アダプタのいくつかの態様は、流体が重力下でドナープレートからレシーバプレートに流れることを可能にするように構成されてもよい。一局面では、移送アセンブリを第1の直立位置から第2の反転位置に裏返すことにより、流体の移送をもたらすことができる。
図8Cを参照すると、移送アセンブリ(800)が第2の反転位置にあるとき、移送アダプタ(806)は、ドナープレート(804)の下方およびレシーバプレート(802)の上方にある。この配向では、ドナープレートは、ウェル(図示せず)の開口部が下方および移送アダプタの方を向くように反転位置にあり得る。レシーバプレート(808)は、レシーバウェル入口(図示せず)が移送アダプタに向かって上方に向くように直立位置にあり得る。移送アセンブリは、ドナープレートのウェルから実質的にすべての流体を除去するのに十分であり得る所望の持続時間にわたって、第2の反転位置に留まることができる。所望の持続時間は、少なくとも移送アセンブリの特質(例えば、ドナープレートの態様、および/または移送アダプタの態様)、移送される流体の特質(例えば、量および/または粘度)、および任意の標的作用物質の特質(例えば、ウェルへの標的作用物質の付着、および/または標的作用物質の安定性)によって決定され得る。さらに、本明細書に記載の方法の他の態様では、移送アセンブリを第1の直立位置から第2の反転位置に裏返すことができ、これにより、流体の移送をもたらすことができ、次いで、移送アセンブリを上述のように続いて遠心分離することができることを理解されたい。
【0162】
移送アセンブリの分離
移送アセンブリが遠心分離される態様では、遠心分離後、移送アセンブリは遠心分離機から取り外されてもよく、プレートの一方または両方が分離されてもよい。遠心分離を含まない方法の態様では、移送アセンブリのプレートの一方または両方は、移送アセンブリが所望の持続時間にわたって第2の反転位置にあった後に分離されてもよい。いくつかの態様では、ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートは分離されてもよい。ドナープレート、移送アダプタ、およびレシーバプレートは、任意の順序で互いに分離されてもよく、この分離により、ドナープレート内の標的作用物質および/またはレシーバプレート内の移送された流体へのアクセスを可能にすることができる。次いで、単離された標的作用物質および/または移送された流体に対して研究を実施することができ、あるいは標的作用物質または移送された流体を廃棄することができる。いくつかの態様では、例えば、いくらかの流体がドナープレートのウェル内に残っていると判定された場合、移送アセンブリを再形成し、反転させる、および/または再度遠心分離することができる。他の態様では、ドナープレートは、移送アダプタとレシーバプレートとが結合されたままで、移送アダプタから分離されてもよい。さらに他の態様では、レシーバプレートは、ドナープレートと移送アダプタとが結合されたままで、移送アダプタから分離されてもよい。
【0163】
上記の発明は、明確さおよび理解のために、例示および例としてある程度詳細に説明されているが、特定の変更および修正が実施されてもよく、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることは明らかであろう。さらに、本明細書に記載の装置の構成要素および特質は、任意の組み合わせで使用されてもよく、具体的な図に関する特定の要素または特質の説明は、限定することを意図するものではなく、要素が他の記載された要素のいずれとも組み合わせて使用され得ないことを示唆するものでもないことを理解されたい。
【実施例】
【0164】
実施例1
一例として、本明細書に記載の方法は、薬物の経路を研究するために使用することができる。
【0165】
1. 細胞の導入:細胞懸濁液を、細胞培養培地で満たされた96ウェルマルチウェルプレートのウェルにピペットで入れることができる。次いで、細胞をウェルの底面に一定時間付着させることができる。
【0166】
2. 馴化培地の収集:細胞が所望の状態に達した後、移送アセンブリは、移送アダプタの開口部が96ウェルマルチウェルプレートのウェルと整列するように、移送アダプタ(96個の開口部を有する移送アダプタなど)の第1の表面を直立位置で96ウェルマルチウェルプレート(ここでは、ドナープレート)の上部に結合し、1つのウェルを有する反転したレシーバプレートを移送アダプタの第2の表面に結合することによって形成することができる。移送アセンブリを反転させ、スイングバケットロータに装填し、付着した細胞を実質的に撹乱することなく馴化培地の約半分をドナープレートからレシーバプレートに移送することを可能にする条件を使用して遠心分離することができる。レシーバプレートを、移送アセンブリから分離させ、馴化培地を取っておくことができる。残りの移送アダプタ-96ウェルマルチウェルプレートアセンブリは、96ウェルマルチウェルプレートが直立するように反転することができ、任意で、付着した細胞を撹乱することなくウェルの底部に任意の残りの培地を収集することを可能にするパラメータを使用して遠心分離することができ、移送アダプタは、96ウェルマルチウェルプレートから分離させることができる。
【0167】
3. 処置:試験条件を細胞に課すことができる。例えば、ドナープレートの上面および底面に開口部を有するドナープレート-移送アダプタの組み合わせは、ドナープレート-移送アダプタの露出した移送アダプタ表面を直立位置の96ウェルマルチウェルプレートの上部に結合して、移送アセンブリを形成することによって、処理される細胞を含有する96ウェルマルチウェルプレート(ここでは、レシーバプレート)に結合することができる。一局面では、ドナープレートの保持キャビティは、流体を充填する前に、内部に結合された分離ウェル構造を有さない。所望の濃度の薬物などの試験作用物質を、確保された馴化培地に添加してもよく、これをドナープレートの保持キャビティに充填する。次いで、保持キャビティ内の流体が、移送アダプタの開口部および96ウェルマルチウェルプレートのウェルと整列する96個の分離ウェルに分割されるように、分離ウェル構造を保持キャビティ内に結合することができる。保持キャビティ内の分離ウェル構造の結合は、各分離ウェル内の流体の体積が平等に分配されることをもたらし得る。
【0168】
例えば、馴化培地に希釈された試験作用物質を充填する前に、分離ウェル構造を保持キャビティ内で結合してもよい。別の例として、分離ウェル構造は、2つ以上の分離ウェルを流体接続する1つ以上の分離壁スロットまたは間隙を含んでもよく、馴化培地に希釈された試験作用物質を1つ以上の分離ウェルに充填することができ、流体接続された分離ウェル間で培地を均等に分配することを可能にする。
【0169】
例えば、分離ウェル構造は、各分離ウェルが互いに流体接続されるように構成されてもよく、試験作用物質を補充した馴化培地を含む組成物は、組成物が各分離ウェル間に平等に分配されるように1つ以上の分離ウェルに送達されてもよい。
【0170】
例えば、分離ウェル構造は、分離ウェルの第1のサブセット(第1の半分など)が互いに流体接続され、分離ウェルの第2のサブセット(第2の半分など)が互いに流体接続されるが、分離ウェルの第1のサブセットは分離ウェルの第2のサブセットと流体接続されないように構成されてもよい。そのような例では、ある濃度の試験作用物質が補充された馴化培地の部分を含む第1の組成物を、第1の組成物が分離ウェルの第1のサブセットの各々の間に平等に分配されるように、分離ウェルの第1のサブセットの1つ以上のウェルに送達することができ、異なる濃度の試験作用物質(または異なる試験作用物質)が補充された馴化培地の別の部分を含む第2の組成物を、第2の組成物が分離ウェルの第2のサブセットの各々の間に平等に分配されるように、分離ウェルの第2のサブセットの1つ以上のウェルに送達することができる。
【0171】
ドナープレート中の流体は、流体がドナープレートの分離ウェルから、移送アダプタの開口部を通って、96ウェルマルチウェルプレートのウェルに、それに付着した細胞を実質的に撹乱することなく通過することを可能にする条件下で、移送アセンブリを遠心分離することによって、処理される細胞を含有する96ウェルマルチウェルプレートに移送することができる。
【0172】
4. 培地の収集:試験条件が成熟した後、各ウェルの培地を、分泌因子の存在などの分析のためにレシーバプレートの個別のウェルに収集することができる。移送アセンブリは、段階2で上述したように、ただし、移送アダプタの開口部および付着した細胞を含有する96ウェルマルチウェルプレートのウェルと整列する96ウェルを有するレシーバプレートを用いて形成することができる。移送アセンブリは、付着した細胞を実質的に撹乱することなく96ウェルマルチウェルプレートからレシーバプレートへの流体の移送を可能にする条件下で遠心分離することができる。次いで、レシーバプレート内の回収された培地を分析することができる。
【0173】
5. 細胞の調製:細胞の様々なマーカーをスクリーニングすることができる。細胞は、最初に分析のために調製することができる。細胞は、段階3で上述したような移送アセンブリを組み立てることによって、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄することができ、この場合、リン酸緩衝生理食塩水をドナープレートの保持キャビティに充填し、移送アセンブリを、リン酸緩衝生理食塩水を付着した細胞を実質的に撹乱することなく96ウェルマルチウェルプレートのウェルに移送することを可能にする条件下で、遠心分離する。次いで、96ウェルマルチウェルプレートを移送アセンブリから結合解除し、段階2で上述したように移送アセンブリを形成して、リン酸緩衝生理食塩水を付着した細胞を実質的に撹乱することなくレシーバプレートに移送することを可能にする条件下で移送アセンブリを遠心分離することによって、リン酸緩衝生理食塩水を96ウェルマルチウェルプレートのウェルから除去することができる。96ウェルマルチウェルプレートのウェルに流体を充填し、ウェルから流体を除去する同様の方法を適用して、溶液を充填し、インキュベートし、除去することによって、96ウェルマルチウェルプレート内の細胞をホルマリンまたはパラホルムアルデヒド溶液で固定することができる。次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、血清またはアルブミン溶液で遮断し、必要に応じてTriton X-100で透過処理し、次いで上述の方法を使用してリン酸緩衝生理食塩水に浸漬することができる。
【0174】
6. 分析剤の導入:次いで、例えば、96ウェルマルチウェルプレートのウェルに流体を送達するための段階3で上述した方法と同様の方法を使用して、1つ以上の分析剤(例えば、一次抗体)を送達することができる。一次抗体などの分析剤がそれらの標的に付着し得るように、インキュベーションのための十分な時間が許容され得る。
【0175】
7. 検出剤の導入:例えば、段階5で上述した方法と同様の方法を使用してリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、一次抗体などの分析剤の活性を分析することができる。例えば、非共役一次抗体を使用する場合、リン酸緩衝生理食塩水を二次抗体で置き換えてもよい。
【0176】
実施例2
別の例として、本明細書に記載の方法は、個体(例えば、患者)由来の複数の細胞型に対する薬物の有効性を評価するために使用することができる。
【0177】
1. 細胞の導入:個体からの細胞のライブラリーを、96ウェルマルチウェルプレートの個別のウェルにピペットで入れることができる。次いで、細胞をウェルの底面に一定時間付着させることができる。
【0178】
2. 薬物の充填:ドナープレートの上面および底面に開口部を有するドナープレート-移送アダプタの組み合わせは、ドナープレート-移送アダプタの露出した移送アダプタ表面を直立位置の96ウェルマルチウェルプレートの上部に結合して、移送アセンブリを形成することによって、処理される細胞を含有する96ウェルマルチウェルプレート(ここでは、レシーバプレート)に結合することができる。場合によっては、ドナープレートの保持キャビティは、流体を充填する前に、内部に結合された分離ウェル構造を有さない。所望の濃度の薬物を含む組成物を、ドナープレートの保持キャビティに充填することができる。次いで、保持キャビティ内の流体が、移送アダプタの開口部および96ウェルマルチウェルプレートのウェルと整列する96個の分離ウェルに分割されるように、分離ウェル構造を保持キャビティ内に結合することができる。保持キャビティ内の分離ウェル構造の結合は、各分離ウェル内の流体の体積が平等に分配されることをもたらし得る。
【0179】
例えば、分離ウェル構造は、薬物組成物を充填する前に保持キャビティ内で結合されてもよい。分離ウェル構造は、2つ以上の分離ウェルを流体接続する1つ以上の分離壁スロットまたは間隙を含んでもよく、薬物組成物を1つ以上の分離ウェルに充填することができ、流体接続された分離ウェル間で組成物を均等に分配することを可能にする。
【0180】
例えば、分離ウェル構造は、各分離ウェルが互いに流体接続されるように構成されてもよく、薬物を含む組成物は、組成物が各分離ウェル間に平等に分配されるように1つ以上の分離ウェルに送達されてもよい。
【0181】
例えば、分離ウェル構造は、分離ウェルの第1のサブセット(第1の半分など)が互いに流体接続され、分離ウェルの第2のサブセット(第2の半分など)が互いに流体接続されるが、分離ウェルの第1のサブセットは分離ウェルの第2のサブセットと流体接続されないように構成されてもよい。そのような例では、ある濃度の薬物を含む第1の組成物を、第1の組成物が分離ウェルの第1のサブセットの各々の間に平等に分配されるように、分離ウェルの第1のサブセットの1つ以上のウェルに送達することができ、異なる濃度の薬物(または異なる薬物)を含む第2の組成物を、第2の組成物が分離ウェルの第2のサブセットの各々の間に平等に分配されるように、分離ウェルの第2のサブセットの1つ以上のウェルに送達することができる。
【0182】
ドナープレート中の流体は、流体がドナープレートの分離ウェルから、移送アダプタの開口部を通って、96ウェルマルチウェルプレートのウェルに、それに付着した細胞を実質的に撹乱することなく通過することを可能にする条件下で、移送アセンブリを遠心分離することによって、処理される細胞を含有する96ウェルマルチウェルプレートに移送することができる。
【0183】
3. 分析:各ウェルの細胞に対する薬物の効果は、生細胞分析によって分析することができる。各ウェル内の細胞の明視野画像または動画を取得することができる。細胞が本質的に蛍光性である場合(例えば、細胞のゲノムにトランスフェクトされたGFP遺伝子による)、細胞の蛍光画像を取得することができる。追加的または代替的に、各分離ウェル内の培地は、例えば、実施例1で上述したものと同様の方法を使用して、さらなる試験のために取っておくことができる。
【0184】
薬物に応答した細胞の比活性を観察するために、各ウェル中の培地を除去してもよく、実施例1で上述したものと同様の方法を用いて細胞に対して様々なアッセイを実施してもよい。例えば、染色アッセイでは、ロボット液体ハンドラまたはマルチチャネルピペットを必要とせずに、96ウェルマルチウェルプレート内のすべての細胞を一度に処理および染色することができる。蛍光アッセイでは、細胞からの蛍光シグナルを取得することができる。
【国際調査報告】