(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジン樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08G 14/073 20060101AFI20221201BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08G14/073
C08J5/24 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503469
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2020000785
(87)【国際公開番号】W WO2021064458
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】釜江 俊也
【テーマコード(参考)】
4F072
4J033
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB28
4F072AD22
4F072AD26
4F072AG03
4F072AG17
4F072AH43
4F072AK02
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL04
4F072AL05
4F072AL07
4F072AL17
4J033FA01
4J033FA04
4J033FA11
(57)【要約】
少なくとも成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含有する、繊維強化複合材料のための硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物が提供される。成分[A]は、カルボニル、酸素、硫黄、スルホン、又はスルホキシドなどの非炭化水素連結基を芳香族部分間に有する少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジン樹脂を含む。成分[B]は、直接結合又は炭化水素連結基を芳香族部分間に有する少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジン樹脂を含む。成分[C]は、脂環式環の一部である少なくとも2つのエポキシ基を含有する少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含む。硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、繊維強化複合材料の成形に有用である。より詳細には、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、加熱によって得られる硬化材料が、高温及び高圧縮荷重などの極端な使用環境下で優れた性能を有する繊維強化複合材料を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含む硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物であって:
a)前記成分[A]は、式(IA)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み:
【化1】
式中、Zは、C=O、CH
2OC(=O)、O、S、S=O、又はO=S=Oから選択され、各Rは、独立して、水素、C
1~C
20アルキル基、アリル基、又はC
6~C
14アリール基から選択され、各R
1は、独立して、水素、C
1~C
20アルキル基、アリル基、又はC
6~C
14アリール基から選択され;
b)前記成分[B]は、式(IA’)及び/又は式(IB’)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み:
【化2】
式中、nは、0又は1であり;n=1の場合、Z’は、置換若しくは無置換のC
1~C
20アルキル基、置換若しくは無置換の二価C
6~C
20アリール基、又は置換若しくは無置換の二価C
2~C
20ヘテロアリール基から選択され;n=0の場合、前記ベンゾオキサジン部分の前記ベンジル基は、前記2つのベンゾオキサジン部分間で縮合され、又は直接結合によって結合されており;
【化3】
Lは、CH
2、C(CH
3)
2、CH(CH
3)、ジシクロペンタジエン、Ar、及びAr-Y-Arなどの二価炭化水素連結基から選択され、Yは、直接結合、C(R
2)(R
3)、C(R
2)(Ar)、二価ヘテロ環、[C(R
2)(R
3)]
x-Ar-[C(R
4)(R
5)]
y S、SO
2、及びOであってよく、Arは、アリール基であり、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、独立して、H、C
1~C
8アルキル、及びハロゲン化アルキルから選択され;
c)前記成分[C]は、式(II)で表される少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含み:
【化4】
式中、m=0又は1であり;R
6及びR
7は、同一であり又は異なり、各々、エポキシ基の炭素原子と一緒になって少なくとも1つの脂肪族環を形成する置換若しくは無置換のC
1~C
20脂肪族部分であり、mは、0又は1であり;m=1の場合、Xは、単結合、2つの単結合、又は二価部分を表し;m=0の場合、前記脂肪族環は、R
6及びR
7を含んで縮合されており(すなわち、R
6及びR
7を含む縮合環系が存在する);
d)成分[A]及び成分[B]は、境界値を含めて1/2~5/1の質量比[A]/[B]で存在し、成分[A]、成分[B]、及び成分[C]は、境界値を含めて1/9~2/3の質量比[C]/([A]+[B])で存在する、
硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分[C]が、式(II)で表される少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含み、式中、R
6及びR
7は、各々独立して、シクロペンタン環の一部、シクロヘキサン環の一部、又はノルボルナン環の一部である、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項3】
さらに成分[D]を含み、前記成分[D]は、1又は複数の繰り返し単位を含む熱可塑性プラスチック化合物を含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性プラスチック化合物が、ポリエーテルスルホン又はポリイミド樹脂である、請求項3に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性プラスチック化合物が、フェニルトリメチルインダン単位又はフェニルインダン単位を追加として含有する骨格を有するポリイミド樹脂である、請求項4に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分[A]が、Z、R、又はR
1のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の多官能性ベンゾオキサジン部分を含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分[B]が、Z’、L、R、又はR
1のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の多官能性ベンゾオキサジン部分を含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化されたベンゾオキサジン樹脂組成物が、G’オンセット法で特定した場合の少なくとも215℃のガラス転移温度を有し、同時に少なくとも4.3GPaの曲げ弾性率も有する、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項9】
前記成分[A]が、ZがSである式(IA)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【請求項10】
前記成分[A]が、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、又は式(VIII)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項11】
前記成分[B]が、式(IX)、式(X)、式(XI)、式(XII)、式(XIII)、又は式(XIV)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【請求項12】
前記成分[A]が、式(V)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み、前記成分[B]が、式(IX)又は式(XI)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む、請求項1に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物。
【化16】
【化17】
【化18】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物で含浸された強化繊維マトリックスを含むプリプレグ。
【請求項14】
請求項13に記載のプリプレグを硬化することによって得られる繊維強化複合材料。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物及び強化繊維を含む混合物を硬化することによって得られる硬化マトリックスを含む繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/909,385号及び2020年8月11日に出願された米国仮特許出願第63/064,154号の優先権を主張するものであり、これらのいずれについても、その全内容が、あらゆる点において参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ベンゾオキサジン樹脂組成物、プリプレグ、及び炭素繊維強化複合材料を例とする繊維強化複合材料に関する。より詳細には、本開示は、高温及び高圧縮荷重などの極端な使用環境下で優れた性能を有する繊維強化複合材料に使用するためのベンゾオキサジン樹脂組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
強化繊維及びマトリックス樹脂を含む繊維強化複合材料は、軽量であり、非常に優れた力学特性を有しているため、スポーツ、航空宇宙、及び一般産業用途において広く用いられている。
【0004】
繊維強化複合材料を製造するための方法としては、未硬化マトリックス樹脂を強化繊維に注入してシート状プリプレグ中間体を形成し、続いて硬化する方法、及び液状樹脂を、モールド中に配置しておいた強化繊維中に流動させて中間体を製造し、続いて硬化する樹脂トランスファー成形法、が挙げられる。プリプレグを用いる方法では、通常は、複数のプリプレグシートを積み重ねた後にオートクレーブ処理することによって、繊維強化複合材料が得られる。プリプレグに用いられるマトリックス樹脂は、生産性を考慮した観点から、一般的には熱硬化性樹脂である。
【0005】
フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが、熱硬化性樹脂として用いられてきた。しかし、弾性率及び耐熱性を改善するという観点から、近年では、国際公開第2003018674号に開示されるように、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としてベンゾオキサジン樹脂を用いることに関する研究が進められている。
【0006】
しかし、ほとんどの多官能性ベンゾオキサジン樹脂は、室温近辺又はそれよりも高い融点、及び高い粘度を有する。これらの特性により、強化繊維と組み合わせてプリプレグのためのマトリックス材料として用いた場合、ベンゾオキサジン樹脂は、乏しいタック性及びドレープ性という欠点を呈する。米国特許出願公開第20150141583号に開示されるように、40℃以下で液体である多官能性グリシジル型エポキシ樹脂が、ベンゾオキサジンのための反応性希釈剤として効果的に用いられてきた。これらのエポキシは、ベンゾオキサジンのための効果的な反応性希釈剤であり、なぜなら、それらが、ベンゾオキサジン樹脂の粘度を低下させるのに有効であり、熱可塑性化合物を容易に溶解させることができ、及び硬化マトリックスの架橋密度を高めることで、無希釈ベンゾオキサジン樹脂と比較してガラス転移温度を向上させるからである。米国特許出願公開第20150376406号に開示されるように、脂環式エポキシ樹脂を樹脂組成物中に含めることによって、グリシジル型エポキシ樹脂を含有するベンゾオキサジン樹脂組成物と比較して、粘度を低下させ、水の吸収を抑え、UV分解を低減し、ガラス転移温度を高めることができる。
【0007】
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、脆弱な材料、すなわち、低い靭性及び伸びを有する材料が、繊維強化複合材料に用いられた場合に引張強度の低下を受けることは、一般的に受け入れられている。したがって、複合材料用途において引張強度及び破壊靱性を改善するために、熱可塑性化合物をベンゾオキサジン樹脂組成物に添加することが好ましい。熱可塑性化合物の添加が、熱可塑性化合物が完全に溶解した場合に(上述の特性を改善するための理想的なケース)、ベンゾオキサジン樹脂の粘度も上昇させることから、反応性希釈剤を配合物に添加してベンゾオキサジン樹脂の粘度を低下させることが必須である。一般に、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度は、温度が25℃~100℃の場合、1~50000ポアズであるべきである。ベンゾオキサジン樹脂組成物が、プリプレグによるホットメルト法で使用することを意図している場合、粘度は、温度が60℃~100℃の場合、10~10000ポアズであるべきである。一般に、構造用途のための繊維強化複合材料におけるマトリックス材料の弾性率は、できる限り高い方がよい。航空宇宙用途の場合、マトリックス材料の曲げ弾性率は、ASTM D790に従って測定した場合、25℃及び相対湿度50%の条件下、25℃で少なくとも3.0GPaであるべきである。
【0008】
一般に、ガラス転移温度と弾性率の間にはトレードオフの関係が存在する。ベンゾオキサジンに対する脂環式エポキシの比率を高めると、樹脂の硬化後ガラス転移温度は上昇するが、弾性率は低下する。別の選択肢として、異なるベンゾオキサジンを用いて高いガラス転移温度とすることはできるが、対応して弾性率は低下する。したがって、樹脂硬化物が高いガラス転移温度、さらには高い弾性率の両方を有する新規な組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明者らは、少なくとも1つのベンゾオキサジンが非炭化水素連結基(すなわち、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する連結基、特に少なくとも1個の酸素原子及び/又は少なくとも1個の硫黄原子を含有する連結基であり、例えばエーテル連結基、スルフィド連結基、ケトン連結基、スルホン連結基、又はスルホキシド連結基の形態であってよい)を含有し、少なくとも1つのベンゾオキサジンが連結基としての直接結合又は炭化水素連結基(すなわち、炭素原子及び水素原子を含有するが、ヘテロ原子は含有しない連結基)を含有する多官能性ベンゾオキサジンのブレンドと、少なくとも1つの脂環式エポキシと、を用いることで、硬化マトリックスでは高いガラス転移温度及び高い弾性率、並びに未硬化状態では室温での低い粘度の両方が実現されることを発見した。本発明は、したがって、硬化して、耐熱性に優れた硬化品を形成することができ、それによって、上記で述べた先行技術で公知の樹脂組成物の欠点が克服されるベンゾオキサジン樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、繊維強化複合材料のための、成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を含むベンゾオキサジン樹脂組成物に関し、
a)成分[A]は、式(IA)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み:
【0011】
【0012】
式中、Zは、C=O、CH2OC(=O)、O、S、S=O、又はO=S=Oから選択され、各Rは、独立して、水素、C1~C20アルキル基、アリル基、又はC6~C14アリール基から選択され、各R1は、独立して、水素、C1~C20アルキル基、アリル基、又はC6~C14アリール基から選択され;
b)成分[B]は、式(IA’)及び/又は式(IB’)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み:
【0013】
【0014】
式中、nは、0又は1であり;n=1の場合、Z’は、置換若しくは無置換のC1~C20アルキル基、置換若しくは無置換の二価C6~C20アリール基、又は置換若しくは無置換の二価C2~C20ヘテロアリール基から選択され;n=0の場合、ベンゾオキサジン部分のベンジル基は、2つのベンゾオキサジン部分間で縮合され又は直接結合によって結合されていてよく;
【0015】
【0016】
式中、Lは、CH2、C(CH3)2、CH(CH3)、ジシクロペンタジエン、Ar、及びAr-Y-Arなどの二価炭化水素連結基から選択され、Yは、直接結合、C(R2)(R3)、C(R2)(Ar)、二価ヘテロ環、[C(R2)(R3)]x-Ar-[C(R4)(R5)]y S、SO2、及びOであってよく、Arは、アリール基であり、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、H、C1~C8アルキル、及びハロゲン化アルキルから選択され;
c)成分[C]は、式(II)で表される少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含み:
【0017】
【0018】
式中、m=0又は1であり;R6及びR7は、同一であり又は異なり、各々、エポキシ基の炭素原子と一緒になって少なくとも1つの脂肪族環を形成する置換若しくは無置換のC1~C20脂肪族部分であり、mは、0又は1であり;m=1の場合、Xは、単結合、2つの単結合、又は二価部分を表し;m=0の場合、脂肪族環は、R6及びR7を含んで縮合されており(すなわち、R6及びR7を含む縮合環系が存在する);
d)成分[A]及び成分[B]は、境界値を含めて1/2~5/1の質量比[A]/[B]で存在し、成分[A]、成分[B]、及び成分[C]は、境界値を含めて1/9~2/3の質量比[C]/([A]+[B])で存在する、
硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物に関する。
【0019】
一実施形態では、成分[C]は、式(II)で表される少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含み、式中、R6及びR7は、各々独立して、シクロペンタン環の一部、シクロヘキサン環の一部、又はノルボルナン環の一部である。
【0020】
一態様では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物はさらに、成分[D]を含み、成分[D]は、1又は複数の繰り返し単位を含む熱可塑性化合物を含む。一実施形態では、熱可塑性化合物は、ポリエーテルスルホン又はポリイミド樹脂である。別の実施形態では、熱可塑性化合物は、フェニルトリメチルインダン単位又はフェニルインダン単位をさらに含有する骨格を有するポリイミド樹脂である。
【0021】
硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物の一態様では、成分[A]は、Z、R、又はR1のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の多官能性ベンゾオキサジンを含む。別の態様では、成分[B]は、Z’、L、R、又はR1のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の多官能性ベンゾオキサジンを含む。
【0022】
一実施形態では、硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物は、G’オンセット法(G’ onset method)で特定した場合の少なくとも215℃のガラス転移温度、及び25℃で少なくとも4.3GPaの曲げ弾性率を有する。
【0023】
一態様では、成分[A]は、ZがSである式(IA)の少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む。
【0024】
一態様では、成分[A]は、以下で開示される式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、又は式(VIII)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む。別の態様では、成分[B]は、以下で開示される式(IX)、式(X)、式(XI)、式(XII)、式(XIII)、又は式(XIV)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む。
【0025】
本発明の別の態様では、成分[A]は、式(V)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含み、成分[B]は、式(IX)又は式(XI)で表される少なくとも1つのベンゾオキサジンを含む。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
本発明の一態様では、上述した実施形態のいずれかに従う硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物で含浸した強化繊維マトリックスを含むプリプレグが本明細書で提供される。本発明の別の態様では、そのようなプリプレグを硬化することによって、繊維強化複合材料が得られる。なお別の態様では、複数のそのようなプリプレグから積層体が形成される。本発明のさらなる実施形態は、上述した実施形態のいずれかに従うベンゾオキサジン樹脂組成物及び繊維を含む混合物を硬化することによって得られた樹脂硬化物を含む繊維強化複合材料を提供し、繊維は、例えば炭素、ガラス、セラミック、重合体、又は天然材料から製造されていてよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる点でその全内容が参照により本明細書に援用される。
【0031】
冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1又は複数の(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法的対象を意味するために本明細書で用いられる。例えば、「重合体樹脂」とは、1つの重合体樹脂又は2つ以上の重合体樹脂を意味する。本明細書で引用される範囲はいずれも、境界値を含む。本明細書全体を通して用いられる「実質的に」及び「約」の用語は、小さい変動を表し明らかにするために用いられる。例えば、それらは、量又は数量の記載した値からの相違が±5%以内であることを意味し得る。
【0032】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」の言及は、その実施形態と関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」の句が、本明細書全体を通して様々な個所に出現することは、必ずしもすべて同じ実施形態を意味しているものではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1又は複数の実施形態において、適切ないかなる方法で組み合わされてもよい。
【0033】
特に断りのない場合、「室温」は、本明細書で用いられる場合、25℃の温度を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる場合、粘度とは、温度を2℃/分の速度で一定上昇させながら、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)及び直径40mmの円形パラレルプレートを用い、周波数10ラジアン/秒及びギャップ長0.6mmで測定した場合の複素粘弾性係数n*を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる場合、用語PHRとは、「樹脂100部あたりの部」を意味し、樹脂配合物の反応性部分(すなわち、樹脂配合物が硬化されるときに化学反応を起こす樹脂配合物の成分、例えばベンゾオキサジン及びエポキシ樹脂)だけを考慮する。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「繊維強化複合材料」の用語は、「繊維強化複合体」、「繊維強化ポリマー材料」、「繊維強化ポリマー」、「繊維強化プラスチック材料」、「繊維強化プラスチック」、及び「炭素繊維強化ポリマー」の用語と交換可能に用いられる。
【0037】
本開示によると、優れた耐熱性(硬化時)及び優れたプロセス性、さらには硬化時の弾性率に関する優れた力学特性を有するベンゾオキサジン樹脂組成物を得ることができる。さらに、本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物を用いることによって、このベンゾオキサジン樹脂組成物を硬化することで、非常に優れた弾性率及びガラス転移温度を有する繊維強化複合材料を得ることができ、そのような繊維強化複合材料は、強化繊維と組み合わせて用いられた場合、優れた力学特性を呈する。
【0038】
本開示のベンゾオキサジン樹脂組成物、プリプレグ、及び繊維強化複合材料について、以下で詳細に記載する。
【0039】
上記で述べた問題点に照らして行った広範な研究の結果、本発明者らは、繊維強化複合材料用途において、非炭化水素連結基を有する少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジンを含む少なくとも成分[A]、炭化水素連結基を有する少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジンを含む少なくとも成分[B]、及びある特定の構造的特徴を有し、特定の比で混合された少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含む少なくとも成分[C]、を混合することによって形成されるベンゾオキサジン樹脂組成物を用いることによって、上述の課題が解決されることを発見した。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「多官能性ベンゾオキサジン」の用語は、分子内にベンゼン環に結合した少なくとも2つのオキサジン環を有する、すなわち少なくとも二官能性である、ベンゾオキサジン化合物を意味する。二官能性、及び三官能性ベンゾオキサジン樹脂、並びにそれらの組み合わせが、本発明の実施形態において特に有用である。
【0041】
ある特定の実施形態によると、成分[A]及び成分[B]の各々は、以下の一般式(III)で表される2つ以上の構造単位を含有する、少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジン樹脂を含む、少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジン樹脂から本質的に成る、又は少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジン樹脂から成る。
【0042】
【0043】
式(III)中、R8は、炭素数が1~12個の直鎖状アルキル基、炭素数が3~8個の環状アルキル基、水素、フェニル基、又は炭素数が1~12個の直鎖状アルキル基若しくはハロゲンで置換されたフェニル基を意味し得る。
【0044】
上記の一般式(III)で表される構造単位において、R8の限定されない例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、o-t-ブチルフェニル基、m-t-ブチルフェニル基、p-t-ブチルフェニル基、o-クロロフェニル基、o-ブロモフェニル基、ジシクロペンタジエン基、又はベンゾフラノン基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、又はo-メチルフェニル基を用いることが好ましく、なぜなら、そのような基の存在は、有利な取り扱い特性に寄与するからである。
【0045】
成分[A]における構造式(III)で表される構造単位は、C=O、CH2OC(=O)、S、SO2、SO、又はOなどの非炭化水素二価連結基を介して連結されている。適切な非炭化水素二価連結基は、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有することを特徴とし得る。そのような二価非炭化水素連結基は、1つの式(III)の構造単位のベンゼン環にある炭素原子と、及び別の式(III)の構造単位のベンゼン環にある炭素原子と結合していてよい。
【0046】
成分[B]における構造式(III)で表される構造単位は、直接(例:ベンゼン環を繋げる単結合によって)、又は炭化水素連結基を介して、特にCH2、C(CH3)2、CH(CH3)、若しくはジシクロペンタジエンなどの二価炭化水素連結基を介して連結されていてよい、又はベンゾオキサジン部分のベンジル基が縮合されていてもよい。そのような二価非炭化水素連結基は、1つの式(III)の構造単位のベンゼン環にある炭素原子と、及び別の式(III)の構造単位のベンゼン環にある炭素原子と結合していてよい。構造式(III)の構造単位は、二価連結基によって、そのような構造単位の窒素原子(R8置換基が関与)を介して連結されることも可能であり、一般式N-L-Nに相当し、Lは、二価の連結基であり、各Nは、オキサジン環の一部である。例えば、そのようなリンカー基は、Ar-CH2-Arであってよく、この場合、Arはアリール基である。他の適切な連結基としては、Ar、Ar-S-Ar、及びAr-O-Arが挙げられる。
【0047】
多官能性ベンゾオキサジンの一実施形態において、本発明の成分[A]としての使用に適する一般式(III)で表される2つの構造単位を含む二官能性ベンゾオキサジンとしては、例えば以下の式(IA)で表されるベンゾオキサジンが挙げられる。
【0048】
【0049】
成分[A]において、式(IA)のZは、C=O、CH2OC(=O)、O、S、S=O、又はO=S=Oから選択される。
【0050】
式(IA)のR及びR1は、独立して、アルキル(例:C1~C8アルキル)、シクロアルキル(例:C5~C7シクロアルキル、好ましくは、C6シクロアルキル)、及びアリールから選択され、シクロアルキル基及びアリール基は、所望に応じて、例えばC1~C8アルキル、ハロゲン、及びアミン基によって置換されていてもよく、置換されている場合は、1又は複数の置換基(好ましくは、1つの置換基)が、各シクロアルキル基及びアリール基上に存在してよい。
【0051】
多官能性ベンゾオキサジンの一実施形態において、本発明の成分[B]としての使用に適する一般式(III)で表される2つの構造単位を含む二官能性ベンゾオキサジンとしては、例えば以下の式(IA’)及び式(IB’)で表されるベンゾオキサジンが挙げられる。
【0052】
【0053】
【0054】
式(IA’)において、nは、0又は1である。n=1の場合、Z’は、直接結合、C(R2)(R3)、C(R2)(Ar)、二価ヘテロ環(例:3,3-イソベンゾフラン-1(3h)-オン)、及び[C(R2)(R3)]x-Ar-[C(R4)(R5)]yから選択されてよい。n=0の場合、ベンゾオキサジン部分のベンジル基は、2つのベンゾオキサジン部分間で縮合され、又は直接結合によって結合されていてもよい。
【0055】
式(IB’)において、Lは、CH2、C(CH3)2、CH(CH3)、ジシクロペンタジエン、Ar、及びAr-Y-Arなどの二価炭化水素連結基から選択されてよく、Yは、直接結合、C(R2)(R3)、C(R2)(Ar)、二価ヘテロ環(例:3,3-イソベンゾフラン-1(3h)-オン)、[C(R2)(R3)]x-アリール-[C(R4)(R5)]y、S、SO2、及びOであってよく、Arは、アリール基であり、x及びyは、独立して、0又は1である。
【0056】
式(IA’)のRは、独立して、水素、C1~C20アルキル基、アリル基、又はC6~C14アリール基から選択され、各R1は、独立して、水素、C1~C20アルキル基、アリル基、又はC6~C14アリール基から選択される。式(IB’)のR1は、独立して、同じ基から選択されてよい。
【0057】
R2、R3、R4、及びR5は、独立して、H、C1~C8アルキル(好ましくはC1~C4アルキル、及び好ましくはメチル)、及びハロゲン化アルキル(ハロゲンは、典型的には、塩素又はフッ素である)から選択され、x及びyは、独立して、0又は1である。アリール基が存在する場合、アリール基は、好ましくはフェニルである。1つの実施形態では、フェニル基に結合した基は、互いに対してパラ位又はメタ位に配置されていてよい。
【0058】
Z’基及びL基は、直鎖状又は非直鎖状であってよく、典型的には、直鎖状である。L基は、好ましくは、式(IB’)に示されるように、ベンゾオキサジン部分の各々の窒素に結合している。Z基は、二官能性ベンゾオキサジン化合物のアリール基の一方又は両方において、メタ位又はオルソ位のいずれかで結合していてもよい。したがって、Z’基は、パラ/パラ、パラ/メタ、パラ/オルソ、メタ/メタ、又はオルソ/メタ配置でアリール環に結合していてよい。
【0059】
別の実施形態では、式(IA)又は式(IA’)に相当する二官能性ベンゾオキサジン部分は、各Rが独立してアリールから選択される化合物から、又は好ましくはフェニルである化合物から選択される。1つの実施形態では、アリール基は、置換されていてもよく、好ましくは、置換基は、C1~C8アルキルから選択され、好ましくは、少なくとも1つのアリール基に単一の置換基が存在する。C1~C8アルキルは、直鎖状及び分岐鎖状アルキル鎖を含む。好ましくは、式(IA)又は式(IA’)の各Rは、独立して、無置換アリールから選択され、好ましくは、無置換フェニルである。
【0060】
式(IA)又は式(IA’)として本明細書で定められる二官能性ベンゾオキサジン部分の各ベンゾオキサジン基にあるアリール環は、独立して、各環の3つの利用可能な位置のいずれで置換されていてもよく、典型的には、所望に応じて存在してよいいずれかの置換基は、Z基又はZ’基の結合位置に対してオルソ位に存在する。しかし、アリール環は、無置換のままであることが好ましい。
【0061】
適切な三官能性ベンゾオキサジン樹脂としては、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド又はその生成源若しくは均等物の存在下で、芳香族トリアミンをフェノール(一価又は多価)と反応させることによって製造することができる化合物が挙げられる。
【0062】
本開示において、成分[A]の多官能性ベンゾオキサジン樹脂として、以下の構造式(IV)~(VIII)で表される少なくとも1つのモノマーを用いることが好ましく、成分[B]の多官能性ベンゾオキサジン樹脂として、以下の構造式(IX)~(XV)で表される少なくとも1つのモノマーを用いることが好ましい。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
本発明のある特定の実施形態では、成分[A]及び成分[B]の各々は、好ましくは、少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジンを含み(又は少なくとも1つの多官能性ベンゾオキサジンから成り、又は本質的に成り)、及びモノマー単独から構成されていてよい、又は複数の分子が重合されたオリゴマーの形態を有していてもよい。加えて、異なる構造を有する多官能性ベンゾオキサジンが一緒に用いられてもよい。一実施形態では、成分[A]は、非炭化水素連結基を有する2つ以上の多官能性ベンゾオキサジンを含有していてもよく、この場合、2つ以上の多官能性ベンゾオキサジンは、Z、R、又はR1のうちの少なくとも1つが異なっており、異なる成分[A]は、[An]として表されてよく、nは、2~10の整数であり、[A1]、[A2]…から[An]まで、などである。別の実施形態では、成分[B]は、2つ以上の多官能性ベンゾオキサジンを含有していてもよく、この場合、2つ以上の多官能性ベンゾオキサジン部分は、Z’、L、R、又はR1のうちの少なくとも1つが異なっており、異なる成分[B]は、[Bn]として表されてよく、nは、2~10の整数であり、[B1]、[B2]…から[Bn]まで、などである。
【0076】
本発明の別の実施形態では、成分[A]の成分[B]に対する質量比([A]/[B])は、境界値を含めた1/2~5/1である。1つの実施形態では、成分[A]の成分[B]に対する質量比([A]/[B])の下限は、1/2以上であり、好ましくは2/3以上であり、より好ましくは3/2以上である。さらに、成分[A]の成分[B]に対する質量比([A]/[B])の上限は、5/1以下であり、好ましくは4/1以下であり、好ましくは3/1以下であり、より好ましくは5/2以下である。この範囲内であれば、適切な量の成分[C]とブレンドした場合に、ベンゾオキサジン樹脂組成物は、混合則によって予測されるよりも高いTg及び弾性率を同時に有することになる。一実施形態では、成分[C]の成分[A]及び成分[B]の合計量に対する質量比([C]/([A]+[B]))は、境界値を含めた1/9~2/3である(成分[A]及び成分[B]の合計質量に対する成分[C]の質量は、成分[A]及び成分[B]の合計9部あたり1部以上の成分[C]であり、成分[A]及び成分[B]の合計3部あたり2部以下の成分[C]である)。
【0077】
本発明の様々な実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、98PHR未満及び1PHR超、又は好ましくは60PHR以下及び27PHR以上、又はより好ましくは60PHR以下及び25PHR以上、又は特に好ましくは50PHR以下及び40PHR以上の量で存在する成分[A]を含む。別の実施形態では、成分[B]は、98PHR未満及び1PHR超、又は好ましくは50PHR以下及び15PHR以上、又はより好ましくは35PHR以下及び25PHR以上の量で存在する。いくつかの実施形態では、成分[C]は、98PHR未満及び1PHR超、又は好ましくは40PHR以下及び10PHR以上、又は好ましくは30PHR以下及び20PHR以上の量で存在する。したがって、そのような実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、>1~<98PHRの成分[A]、>1~<98PHRの成分[B]、及び>1~<98PHRの成分[C]を含む。他の実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、25~60PHRの成分[A]、15~50PHRの成分[B]、及び10~40PHRの成分[C]を含む。いくつかの他の実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、40~50PHRの成分[A]、25~35PHRの成分[B]、及び20~30PHRの成分[C]を含む。
【0078】
本発明の実施形態に従う硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物を用いて製造される炭素繊維強化重合体(CFRP)などの繊維強化複合材料は、使用温度要件が高い構造航空宇宙用途に特に適している。
【0079】
成分[A]として用いられる多官能性ベンゾオキサジン樹脂は、小西化学工業株式会社及びHuntsman Advanced Materialsを含むがこれらに限定されないいくつかの供給業者から入手され得る。成分[B]として用いられる多官能性ベンゾオキサジン樹脂は、四国化成工業株式会社、小西化学工業株式会社、及びHuntsman Advanced Materialsを含むがこれらに限定されないいくつかの供給業者から入手され得る。これらの供給業者の中でも、四国化成工業株式会社は、ビスフェノールAアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAメチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、及びビスフェノールFアニリン型ベンゾオキサジン樹脂を提供している。市販の原材料を用いる代わりに、多官能性ベンゾオキサジン樹脂は、必要に応じて、フェノール化合物(例:ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、又はチオジフェノール)、アルデヒド、及びアリールアミン間での反応を起こすことによって製造することもできる。詳細な製造方法は、米国特許第5,543,516号、同第4,607,091号(Schreiber)、米国特許第5,021,484号(Schreiber)、及び米国特許第5,200,452号(Schreiber)に見出され得る。
【0080】
本発明において、エポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも2つの1,2-エポキシ基を有するエポキシ化合物、すなわち、エポキシ官能基に関して少なくとも二官能性であるエポキシ化合物を意味する。
【0081】
特に、本発明の実施形態に従う硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、成分[C]として、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を含有し、エポキシド基のうちの少なくとも1つ、好ましくはエポキシド基のうちの少なくとも2つが脂環式環の一部である、1又は複数の脂環式エポキシ樹脂を含む。本発明のある特定の実施形態では、成分[C]は、式(II)で表される少なくとも1つの脂環式エポキシ樹脂を含有し、式中、R6及びR7は、同一であり又は異なり、各々、エポキシ基の炭素原子と一緒になって少なくとも1つの脂肪族環(ある特定の場合では、二環式脂肪族環が形成される)を形成する置換又は無置換のC1~C20の脂肪族部分であり、Xは、単結合又は二価部分を表す。他の実施形態では、Xは、式(II)に存在せず、脂環式エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどのR6及びR7を含む縮合環系を含む。
【0082】
【0083】
式中、mは、0又は1であり;R6及びR7は、同一であり又は異なり、各々、エポキシ基の炭素原子と一緒になって少なくとも1つの脂肪族環を形成する置換又は無置換のC1~C20脂肪族部分であり、m=1の場合、Xは、単結合、2つの単結合、又は二価部分を表す。例えば、R6及びR7は、各々独立して、3つの炭素鎖又は4つの炭素鎖を含んでいてよく、それによって、それぞれ、5員環又は6員環の脂肪族環を形成する。R6及び/又はR7はまた、ノルボルナン環などの二環式環を提供する構造を有していてもよい。他の実施形態では、m=0の場合、Xは、式(II)の脂環式エポキシ樹脂中に存在せず、脂肪族環は、縮合しており、R6及びR7を含む(すなわち、R6及びR7を含む縮合環系が存在する)。
【0084】
ここで、脂環式エポキシ樹脂とは、少なくとも2つの1,2-エポキシシクロアルカン構造部分が存在するエポキシ樹脂を意味する(そのような部分の各々は、脂肪族環の一部である2つの隣接する炭素原子も、各々が同じ酸素原子と結合しているエポキシ環の一部である、脂肪族環である)。脂環式エポキシ樹脂は、硬化物のTgを高め、未硬化樹脂組成物の粘度を低下させることができることから、有用である。Xは、CH2OC(=O)、O、S、アルキル(例:X=CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、CH2CH(CH3)、又はC(CH3)2)、エーテル含有部分(例:X=CH2OCH2)、カルボニル含有部分(例:X=C(=O))、オキシラン環含有部分(例:X=CH-O-CH、2個の炭素原子間に単結合が存在することで、酸素原子と2個の炭素原子とを含む3員環を形成している)、又は縮合環系から選択され得る。
【0085】
ある特定の実施形態では、m=0の場合、式(II)のXは存在せず、それは、R6及びR7が縮合環系の一部であることを意味する。ジシクロペンタジエン型ジエポキシドは、R6及びR7が縮合環系の一部である脂環式エポキシ樹脂の例である。他の実施形態では、m=1の場合、式(II)のXは、R6及びR7を含有する環状基を繋げる単結合である。
【0086】
そのような脂環式エポキシ樹脂に存在するシクロアルカン基は、例えば、単環式又は二環式(例:ノルボルナン基)であってよい。適切な単環式シクロアルカン基の例としては、限定されないが、シクロペンタン基(R6及びR7がC3H5基であり得る)、シクロヘキサン基(R6及びR7の各々がC4H8基である)、又はノルボルナン基(R6及びR7がC5H9基であり得る)が挙げられる。
【0087】
そのようなシクロアルカン基は、置換されていてよく(例えば、アルキル基によって)、又は、好ましくは、無置換であってもよい。Xが単結合又は二価部分である場合、そのようなシクロヘキサン及びシクロペンタン環上のエポキシ基は、環上の2,3位又は3,4位に存在してよい。
【0088】
成分[C]として有用である脂環式エポキシ樹脂の具体的な実例としては、限定されないが、3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキシルとも称されるビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)、ビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル]、ビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)オキシラン、ビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン]、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。加えて、ビス(3,4-エポキシシクロペンチル)、ビス(3,4-エポキシシクロペンチル)エーテル、及び3,4-エポキシシクロペンチル-3,4-エポキシシクロヘキシルを含む上述のモノマーのシクロペンタンで一置換又は二置換したバージョンが用いられてもよい。
【0089】
m=0であり、Xが無く(すなわち、存在せず)、R6及びR7が縮合環系の一部である脂環式エポキシ樹脂の例としては、限定されないが、ジシクロペンタジエン型ジエポキシド、トリシクロペンタジエン型ジエポキシド、テトラヒドロインデン型ジエポキシド、テトラシクロテトラデカジエン型ジエポキシド、及びペンタシクロペンタデカジエン型ジエポキシドが挙げられる。
【0090】
適切な脂環式エポキシ樹脂の実例としては、限定されないが、成分[C]のエポキシ樹脂として以下の構造式(XVI)~(XX)で表される以下の化合物が挙げられる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
式(XIX)及び式(XX)において、X=単結合、O、S、CH2、CH2CH2、CH2CH2CH2、CH2CH(CH3)、C(CH3)2、CH2OCH2、C(=O)、CH2OC(=O)、又はオキシランであり、式(XX)のシクロヘキサン環の一方又は両方は、シクロペンタン環で置き換えられてもよい。
【0097】
上記で示される式(XIX)は、R6及びR7が二環式脂肪族環の一部である脂肪族部分である、脂環式エポキシ樹脂の例である。
【0098】
式(XVI)、(XVII)、及び(XVIII)は、式(II)においてm=0であり、Xが存在せず、脂環式エポキシ樹脂が縮合脂肪族環を含有する脂環式エポキシ樹脂の例である(これらの化合物は、二環式脂肪族環も含有する)。
【0099】
そのような脂環式エポキシ樹脂は、本技術分野にて公知であり、適切ないかなる合成方法を用いて製造されてもよく、例えば、3,3’-ジシクロヘキセニル骨格を有する化合物などの脂環式ジ及びトリオレフィン系化合物のエポキシ化による。例えば、米国特許第7,732,627号、並びに米国特許出願公開第2004/0242839号及び同第2014/0357836号には、本発明において有用である脂環式エポキシ樹脂を得るための方法が記載されている。
【0100】
また、米国特許第4,607,091号(その全内容があらゆる点で参照により本明細書に援用される)に開示される脂環式エポキシ樹脂のいずれも、特に表1に列挙される脂環式エポキシ樹脂も、本発明の成分[C]での使用に適している。
【0101】
本発明の一実施形態では、成分[C]は、X、R6、及びR7のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の脂環式エポキシ樹脂を含有していてよく、この場合、異なる脂環式エポキシ樹脂は、[C1]、[C2]、[C3]、などと表され得る。
【0102】
1つの実施形態では、エポキシ成分[C]の、成分[A]及び成分[B]によって提供されるベンゾオキサジンの合計量に対する質量比([C]/([A]+[B]))の下限は、1/9以上であり、好ましくは1/5以上であり、より好ましくは3/10以上である。さらに、成分[C]の、成分[A]及び成分[B]によって提供されるベンゾオキサジンの合計量に対する質量比([C]/([A]+[B]))の上限は、2/3以下であり、好ましくは1/2以下であり、より好ましくは2/5以下である。この範囲内であると、製造プロセスに対してより適した粘度範囲を有する硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物が得られ、同時にプリプレグにおいて、適切な粘着性(タック)及び変形性(ドレープ性)も得られる。加えて、硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物において、非常に優れた弾性率及びガラス転移温度が維持されることから、複合材料として用いられる場合、この材料は、高い温度で優れた力学特性を提供する。成分[C]の、成分[A]及び成分[B]に対するブレンド量が1/9未満である場合、ベンゾオキサジン樹脂組成物の粘度が上昇し、このことは、製造プロセス性を損なう可能性があり、及び材料のTgが低下して、高温用途での使用が制限される。しかし、成分[C]のブレンド量が2/3を超えると、Tgが再度低下する。その結果、熱環境中で複合材料として用いられる場合の力学特性が損なわれる傾向にある。
【0103】
本発明のある特定の実施形態では、上述したベンゾオキサジン樹脂組成物中に、成分[D]として少なくとも1つの熱可塑性化合物を混合又は溶解することも、硬化材料の特性を向上させるために、及び硬化時の最低粘度を上昇させてプロセス特性を高めるために、望ましい場合がある。一般的に、熱可塑性化合物(重合体)の主鎖中に炭素-炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合、及び/又はカルボニル結合から成る群より選択される結合を有する熱可塑性化合物(重合体)が好ましい。さらに、熱可塑性化合物はまた、部分架橋構造を有していてもよく、結晶又はアモルファスであってもよい。特に、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド樹脂(フェニルトリメチルインダン構造又はフェニルインダン構造を有するポリイミド樹脂を含む)、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリエーテルニトリル、及びポリベンズイミダゾールから成る群より選択される少なくとも1つの熱可塑性化合物が、ベンゾオキサジン樹脂組成物中に混合又は溶解されることが適切である又は好ましい。ポリイミド樹脂熱可塑性化合物の場合、熱可塑性化合物の骨格は、追加として、フェニルトリメチルインダン単位又はフェニルインダン単位を含有してよい。
【0104】
本発明のある特定の実施形態では、成分[D]のガラス転移温度(Tg)は、有利な耐熱性が得られるように、150℃以上であり、170℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましい。ブレンドされる成分[D]のガラス転移温度が、150℃未満である場合、得られる成形体は、使用時に熱変形を起こしてしまう傾向にある。高い耐熱性若しくは高い耐溶剤性を得るという観点から、又は溶解性及び接着性を含むベンゾオキサジン樹脂組成物に対する親和性という観点から、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド樹脂(フェニルトリメチルインダン構造又はフェニルインダン構造を有するポリイミド樹脂を含む)、又はポリエーテルイミドを用いることが好ましい。
【0105】
適切なスルホン系熱可塑性化合物の具体例としては、限定されないが、米国特許出願公開第2004/044141(A1)号に記載のポリエーテルスルホン及びポリエーテルスルホン-ポリエーテルエーテルスルホン共重合体オリゴマーが挙げられる。適切なイミド系熱可塑性化合物の具体例としては、限定されないが、米国特許第3856752号に記載のポリイミド樹脂及びポリイミド-フェニルトリメチルインダンオリゴマーが挙げられる。
【0106】
本明細書で用いられる場合、オリゴマーの用語は、およそ10からおよそ100の有限個のモノマー分子が互いに結合した比較的低分子量の重合体を意味する。一実施形態では、成分[D]は、オリゴマーである。
【0107】
成分[D]の分子量は、好ましくは、150000g/モル以下の重量平均分子量である。より好ましくは、重量平均分子量は、7000~150000g/モルである。7000g/モル未満である場合、物理的特性の改善効果が僅かとなり、ベンゾオキサジン樹脂組成物の耐熱性が損なわれる。150000g/モル超である場合、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物との親和性が乏しくなり、硬化性若しくは硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物において、又は炭素繊維強化複合材料において、物理的特性の改善が得られなくなる。加えて、溶解された場合、少量がブレンドされた場合であっても粘度が高くなり過ぎ、プリプレグを製造した際に、タック性及びドレープ性が低下してしまう。重量平均分子量が7000~150000g/モルである成分[D]が用いられた場合、これは、ベンゾオキサジン樹脂組成物との親和性を改善する効果、及びベンゾオキサジン樹脂組成物の耐熱性を損なうことなく物理的特性を改善する効果を有する。さらに、プリプレグを製造した際に、適切なタック性及びドレープ性が得られる。
【0108】
本明細書の実施形態で言及される平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(以降では「GPC」)によって得られた重量平均分子量を示す。数平均分子量を測定するための方法の例としては、2つのShodex 80M(登録商標)[カラム](昭和電工製)及び1つのShodex 802(登録商標)[カラム](昭和電工製)を用い、0.3μLのサンプルを注入し、流速1mL/分で測定したサンプルの保持時間を、ポリスチレンから構成された較正サンプルの保持時間を用いることによって分子量に変換する、という方法が挙げられる。液体クロマトグラフィにおいて複数のピークが観察された場合、液体クロマトグラフィによって予め目的の成分を分離し、続いて各成分をGPCに掛け、続いて分子量への変換を行う。
【0109】
ベンゾオキサジン樹脂組成物は、成分[D]として熱可塑性化合物を含有する必要はないが、本発明の様々な実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂組成物は、少なくとも1重量部、少なくとも5重量部、又は少なくとも10重量部の成分[D]を含み、これはすなわち、成分[A]、[B]、及び[C]の合計100重量部あたりの熱可塑性化合物である。例えば、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、成分[A]、[B]、及び[C]の合計100重量部あたり、5~30重量部の成分[D](熱可塑性化合物)を含んでよい。
【0110】
本発明のある特定の実施形態では、成分[A]、[B]、及び[C]の比は、[A]/[B]の質量比が境界値を含めて1/2~5/1であり、[C]/([A]+[B])の質量比が境界値を含めて1/9~2/3であるように変動される。驚くべきことに、これらの比であれば、混合則に基づいて予測されるよりも高いTg及び曲げ弾性率が得られ、構造航空宇宙用途に特に良好に適する樹脂が製造されることが見出された。さらに、これらの比であれば、プリプレグ及び繊維強化複合材料の製造に理想的に適する樹脂粘度も得られる。
【0111】
ある特定の実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、さらに1若しくは複数のさらなる添加剤を含む、さらに1若しくは複数のさらなる添加剤から本質的に成る、又はさらに1若しくは複数のさらなる添加剤から成る。そのような適切なさらなる添加剤の例としては、限定されないが、強靭化剤、触媒、強化剤、充填剤、接着促進剤、難燃剤、チクソトロピー剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0112】
本発明のある特定の実施形態では、硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物は、好ましくは、40℃で1.0×102~1.0×106ポアズの粘度を有する。40℃の粘度を1.0×102ポアズ以上に設定することによって、適切な粘着性を有するプリプレグを得ることが可能であり、40℃の粘度を1.0×106ポアズ以下に設定することによって、プリプレグを積層した際の適切なドレープ性及びタックを付与することが可能である。40℃の粘度は、より好ましくは、1.0×103~1.0×105ポアズの範囲内であり、特に好ましくは、1.0×104~1.0×105ポアズの範囲内である。
【0113】
さらなるある特定の実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂組成物の最低粘度は、好ましくは0.1~300ポアズ、より好ましくは0.5~100ポアズ、特に好ましくは1~50ポアズである。最低粘度が低過ぎると、マトリックス樹脂の流動性が高くなり過ぎる可能性があり、そのため、プリプレグの硬化時に、樹脂がプリプレグから外に出てしまう可能性がある。さらに、得られる繊維強化複合材料で所望される樹脂分率が実現され得ない可能性、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動が不充分であり得る可能性、プリプレグの固化プロセスの終了が早過ぎ得る可能性、及び得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが発生し得る可能性がある。最低粘度が高過ぎる場合、プリプレグ中のマトリックス樹脂の流動が低くなり得る可能性、プリプレグの固化プロセスの終了が早過ぎ得る可能性、及び得られる繊維強化複合材料中に多くのボイドが発生し得る可能性がある。本明細書において、40℃の粘度及び最低粘度は、以下の方法によって特定される。すなわち、測定は、40mm径パラレルプレートのレオメータ(ARES、TA Instruments製)をギャップ0.6mmで用いて行われる。ねじれ変位は、10ラジアン/秒で適用した。温度は、2℃/分で40℃から180℃まで上昇させた。
【0114】
他の実施形態では、ベンゾオキサジン樹脂組成物が硬化されると、マトリックスのガラス転移温度は、G’オンセット法で特定される場合(実施例でより詳細に述べる)、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも215℃、特に好ましくは少なくとも230℃である。
【0115】
なおさらなる実施形態によると、ベンゾオキサジン樹脂組成物が硬化されて、ある曲げ弾性率を有する硬化マトリックスが提供される場合、硬化マトリックスの25℃の曲げ弾性率は、好ましくは少なくとも4.3GPa、より好ましくは少なくとも4.5GPa、特に好ましくは少なくとも4.7GPaであってよい。
【0116】
次に、繊維強化複合(FRC)材料について述べる。強化繊維を含浸した後にベンゾオキサジン樹脂組成物の実施形態を硬化することにより、そのマトリックス樹脂として硬化物の形態で硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物の実施形態を含有するFRC材料を得ることができる。
【0117】
本発明で用いられる強化繊維の種類に関して特に制限又は限定はなく、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、及び炭化ケイ素繊維が挙げられるがこれらに限定されない広範な繊維が用いられてよい。炭素繊維は、特に軽量で堅いFRC材料を提供し得る。例えば、180~800GPaの引張弾性率を有する炭素繊維が用いられてよい。180~800GPaの高い弾性率を有する炭素繊維が、本発明の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物と組み合わされた場合、剛性、強度、及び耐衝撃性の望ましいバランスが、繊維強化複合材料で実現され得る。
【0118】
強化繊維の形態に関して特に制限又は限定はなく、例えば、長繊維(一方向延伸)、トウ、織物、マット、ニット、組み紐、及び短繊維(10mm未満の長さに切断)を含む多様な形態の繊維が用いられてよい。ここで、長繊維とは、少なくとも10mmにわたって実質的に連続的である単一繊維又は繊維束を意味する。他方、短繊維は、10mm未満の長さに切断された繊維束である。高い比強度及び比弾性率が要求される用途には、強化繊維束が同じ方向に引き揃えられた繊維配列が適し得る。
【0119】
本発明の実施形態に従う繊維強化複合材料は、プリプレグ積層成形法、樹脂トランスファー成形法、樹脂フィルム注入法、ハンドレイアップ法、シートモールディングコンパウンド法、フィラメントワインディング法、及びプルトルージョン法などの方法を用いて製造されてよいが、これに関して特に制限又は限定は適用されない。
【0120】
樹脂トランスファー成形は、強化繊維ベース材料が、液体熱硬化性樹脂組成物(本明細書で述べるベンゾオキサジン樹脂組成物など)で直接含浸され、硬化される方法である。この方法は、プリプレグなどの中間品が関与しないことから、成形コスト削減の多大な可能性を有し、宇宙船、航空機、鉄道車両、自動車、船舶などのための構造材の製造に有利に用いられる。
【0121】
プリプレグ積層成形法は、強化繊維ベース材料を熱硬化性樹脂組成物で含浸することによって製造されたプリプレグが、成形及び/又は積層され、続いて、成形及び/又は積層されたプリプレグに加熱加圧を適用することで樹脂が硬化されてFRC材料が得られる方法である。
【0122】
フィラメントワインディングは、1から数十の強化繊維ロービングが、所定の角度での張力下、回転する金属芯金(マンドレル)の周りに巻き付けられながら、一緒に一方向に延伸され、熱硬化性樹脂組成物で含浸される方法である。ロービングの巻き付けが所定の厚さに到達すると、それは硬化され、次に金属芯金が取り除かれてよい、又は取り除かれなくてもよい。
【0123】
プルトルージョンは、強化繊維が、液体熱硬化性樹脂組成物で満たされた含浸槽に連続的に通されて熱硬化性樹脂組成物によってそれらが含浸され、続いて、成形及び硬化のためにスクイズ金型及び加熱金型に通され、引張機を用いて連続的に延伸される方法である。この方法は、FRC材料を連続的に成形するという利点を提供することから、釣り竿、棒状体、パイプ、シート、アンテナ、建築構造物などのためのFRC材料の製造に用いられる。
【0124】
これらの方法の中でも、得られる繊維強化複合材料に非常に優れた剛性及び強度を与えるために、プリプレグ積層成形法が用いられてよい。
【0125】
プリプレグは、本発明の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物及び強化繊維の実施形態を含有してよい。そのようなプリプレグは、強化繊維ベース材料を本発明の実施形態に従う硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物で含浸することによって得られ得る。含浸法は、ウェット法、及びホットメルト法(ドライ法)を含む。
【0126】
ウェット法は、強化繊維がまず、メチルエチルケトン又はメタノールなどの溶媒中に硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物を溶解することによって作製される本発明の硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物の溶液中に浸漬され、取り出され、続いて、オーブンによる蒸発などによって溶媒が除去されて、強化繊維がベンゾオキサジン樹脂組成物で含浸される方法である。
【0127】
ホットメルト法は、加熱によって予め流動状とされたベンゾオキサジン樹脂組成物で強化繊維を直接含浸することによって、又は樹脂フィルムとして用いるために離型紙などをベンゾオキサジン樹脂組成物でまずコーティングし、次に平坦形状に配列された強化繊維の一方又は両側上にフィルムを配置し、続いて加熱加圧を適用して強化繊維を樹脂で含浸することによって実行され得る。ホットメルト法は、中に実質的に残留溶媒を有しないプリプレグを与え得る。
【0128】
プリプレグの強化繊維断面密度は、50~350g/m2であってよい。断面密度が少なくとも50g/m2である場合、繊維強化複合材料の成形時に所定の厚さを確保するために積層する必要のあるプリプレグの数を少なくすることができ、これによって、積層作業が単純化され得る。他方、断面密度が350g/m2以下である場合、プリプレグのドレープ性が良好となり得る。プリプレグの強化繊維の質量分率は、いくつかの実施形態では、50~90質量%、他の実施形態では、60~85質量%、又はさらに他の実施形態では、70~80質量%であってもよい。強化繊維の質量分率が少なくとも50質量%である場合、繊維含有率が充分であり、このことは、その非常に優れた比強度及び比弾性率、さらには硬化時にFRC材料が過剰の熱を発生させることを防止するという点での繊維強化複合材料の利点を提供し得る。強化繊維の質量分率が90質量%以下である場合、樹脂によって充分に含浸することができ、繊維強化複合材料中に大量のボイドが形成されるリスクが低減され得る。
【0129】
プリプレグ積層成形法下での加熱加圧の適用には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法などが適宜用いられてよい。
【0130】
オートクレーブ成形は、プリプレグが所定の形状のツールプレート上で積層され、次にバッギングフィルムで覆われ、続いて空気が積層体から引き抜かれながら加熱加圧が適用されることによる硬化が行われる方法である。それは、繊維配向の精密な制御を可能とし得るものであり、さらには、ボイド含有率を最小限に抑えることによって、非常に優れた力学特性を有する高品質な成形された材料の提供も可能とし得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.3~1.0MPaであってよく、一方成形温度は、90~300℃の範囲内であってよい。本発明の硬化されたベンゾオキサジン樹脂組成物のTgが並外れて高いことにより、プリプレグの硬化を比較的高い温度で行うことが有利であり得る(例:少なくとも180℃又は少なくとも200℃の温度)。例えば、成形温度は、200℃~275℃であってよい。別の選択肢として、プリプレグは、それよりも多少低い温度(例:90℃~200℃)で成形され、脱型され、続いてモールドから取り出された後により高い温度(例:200℃~275℃)で後硬化されてもよい。
【0131】
ラッピングテープ法は、プリプレグが、マンドレル又は他の何らかの芯金の周りに巻き付けられて、管状繊維強化複合材料が形成される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、釣り竿、及び他の棒形状品の製造に用いられ得る。より具体的には、この方法は、マンドレルの周りにプリプレグを巻き付け、プリプレグを固定してそれに圧力を適用する目的で、熱可塑性プラスチックフィルムから成るラッピングテープを張力下でプリプレグ上に巻き付けることを含む。オーブン中での加熱による樹脂の硬化後、芯金が取り除かれて、管状体が得られる。ラッピングテープの巻き付けに用いられる張力は、20~100Nであってよい。成形温度は、80~300℃の範囲内であってよい。
【0132】
内圧成形法は、熱可塑性樹脂チューブ又は他の何らかの内圧アプリケーターの周りにプリプレグを巻き付けることによって得られるプリフォームが、金属モールド内部にセットされ、続いて内圧アプリケーター中に高圧ガスが導入されて圧力が適用され、それに付随して同時に金属モールドが加熱されてプリプレグが成形される方法である。この方法は、ゴルフシャフト、バット、及びテニス又はバドミントンラケットなどの複雑な形状を有する物体を成形する際に用いられ得る。成形プロセスの過程で適用される圧力は、0.1~2.0MPaであってよい。成形温度は、室温~300℃、又は180~275℃の範囲内であってよい。
【0133】
本発明のプリプレグから製造される繊維強化複合材料は、上記で述べたように、クラスA表面を有し得る。「クラスA表面」の用語は、審美的欠点及び欠陥のない極めて高い仕上げ品質特性を呈する表面を意味する。
【0134】
本発明の実施形態に従う硬化性ベンゾオキサジン樹脂組成物から得られる硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物及び強化繊維を含有する繊維強化複合材料は、有利には、スポーツ用途、一般産業用途、及び航空宇宙用途に用いられる。これらの材料が有利に用いられるスポーツ用途としては、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス又はバドミントンラケット、ホッケースティック、及びスキー用ストックが挙げられる。これらの材料が有利に用いられる一般産業用途としては、自動車、自転車、船舶、及び鉄道車両などの輸送手段用の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、及び補修/補強材が挙げられる。
【0135】
本明細書中において、明確で簡潔な明細書の作成が可能となる方法で実施形態を記載してきたが、実施形態は、本発明から逸脱することなく、様々に組み合わされ、又は分離され得ることを意図しており、そのことは理解される。例えば、本明細書で述べるすべての好ましい特徴は、本明細書で述べる本発明のすべての態様に適用可能であることは理解される。
【0136】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書において、組成物又はプロセスの基礎的で新規な特徴に実質的に影響を与えることのないいずれの要素又はプロセス工程も除外するものとして解釈され得る。加えて、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書において指定されないいずれの要素又はプロセス工程も除外するものとして解釈され得る。
【0137】
本発明は、本明細書において具体的な実施形態を参照して説明され、記載されるが、本発明は、示される詳細事項に限定されることを意図するものではない。そうではなく、請求項の均等物の範囲内で、本発明から逸脱することなく、その詳細事項に様々な改変が成されてもよい。
【実施例】
【0138】
本発明の例において、特性の測定は、以下で述べる方法に基づいた。各例についての詳細を、表1~表3に示す。
【0139】
<樹脂板の作製>
所定量の成分をすべて混合物中に溶解することによって混合物を作製した。ベンゾオキサジン樹脂組成物を、2mm厚のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)スペーサーを用いて厚さ2mmに設定したモールドキャビティ中に投入した。次に、ベンゾオキサジン樹脂組成物を、オーブン中の熱処理によって硬化して、2mm厚の硬化樹脂板を得た。
【0140】
<繊維強化複合(FRC)材料の製造>
指定の樹脂組成物で含浸した指定の強化繊維を含むプリプレグを作製した。まず、所定量の成分をすべて混合物中に溶解することによって混合物を作製した。次に、ナイフコーターを用いて離型紙上にそれをコーティングして、2枚の樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムの上述の2枚のシートを、シートの形態の指定の繊維配列の両側に重ね合わせ、ローラーを用いてベンゾオキサジン樹脂組成物を含浸させて、炭素繊維の目付が190グラム/m2及び樹脂含有率が35%であるプリプレグを作製した。
【0141】
<繊維の目付>
樹脂の目付(RAW)は、プリプレグ化前のフィルム状とされた樹脂を取り、100×100mmの正方形サンプルを切り出し、正方形の樹脂をこすり取り、樹脂の重量を測定することによって特定した。目付は、この重量を2倍して正方形サンプルの面積で除したものである。繊維の目付(FAW)は、同様の方法を介し、プリプレグ化後に、100×100mmの正方形サンプルを切り出し、プリプレグを秤量し、この値からRAWを差し引くことによって測定した。
【0142】
<樹脂含有率>
樹脂含有率(RC)は、プリプレグ中の樹脂の重量パーセントである。
【0143】
【0144】
<硬化>
樹脂単独の樹脂板を、対流式オーブン中、2つの硬化プロファイルのうちの1つで硬化した。
硬化条件1
(1)室温から180℃まで、1.5℃/分の速度で温度を上昇;
(2)180℃で2時間保持;
(3)180℃から220℃まで、1.5℃/分の速度で温度を上昇;
(4)220℃で2時間保持;
(5)220℃から30℃まで、3℃/分の速度で温度を低下。
硬化条件2
(1)室温から180℃まで、1.5℃/分の速度で温度を上昇;
(2)180℃で2時間保持;
(3)180℃から220℃まで、1.5℃/分の速度で温度を上昇;
(4)220℃で6時間保持;
(5)220℃から240℃まで、1.5℃/分の速度で温度を上昇;
(6)240℃で6時間保持;
(5)240℃から30℃まで、3℃/分の速度で温度を低下。
【0145】
複合材料を、圧力が20PSIを超えるまで真空を適用しながらオートクレーブ中で硬化した。初期昇温時には85PSIを適用し、硬化サイクル全体でこれを維持した。熱プロファイルは、硬化条件1と同一であった。
【0146】
<粘度>
未硬化の樹脂試料を、ギャップ0.6mmで40℃に予備加熱した40mm径パラレルプレートのレオメータ(ARES、TA Instruments製)中に置いた。ねじれ変位は、10ラジアン/秒で適用した。温度を、粘度が検出限界の1.1ポアズ未満まで低下するまで、又は樹脂の最低粘度が特定されるまで、2℃/分で上昇させた。
【0147】
<硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物のガラス転移温度>
硬化された2mmの樹脂板から試料を機械切削し、次にそれを、SACMA SRM 18R-94に従って、動的粘弾性測定装置(ARES、TA Instruments製)を用い、50℃から300℃まで5℃/分の速度で昇温することにより、1.0Hzのねじりモードで測定した。ガラス転移温度(Tg)は、温度-対数貯蔵弾性率曲線上において、ガラス状態の接線、及びガラス状態とゴム状態との間にある遷移状態の接線の交点を見出すことによって特定した。その交点での温度を、一般的にG’オンセットTg(G’onset Tg)と称されるガラス転移温度であると見なした。
【0148】
<硬化ベンゾオキサジン樹脂組成物の曲げ試験>
硬化された2mmの樹脂板から試料を機械切削し、曲げ弾性率及び曲げ強度を、ASTM D-790に従って室温で測定した。
【0149】
<FRCの有孔圧縮強度(OHC)>
いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂組成物を含むFRC積層体を作製して、有孔圧縮強度(OHC)を試験した。プリプレグを、350mm×350mmのサンプルに切り出した。16枚の織物状プリプレグサンプルを積層して[+45,0,-45,90]2sの構成の積層体を作製し、真空バッギングを行い、上記で開示した手順に従って積層体を硬化して、擬似等方FRC材料を得た。この試験試料を、次に、ASTM-D6484の規定に従い、Instron万能試験機を用いて有孔圧縮強度試験に掛けた。
【0150】
<原材料>
ベンゾオキサジン樹脂組成物の作製には、以下の市販の製品及び化学薬品を用いた。
【0151】
成分[A]:
アラルダイト(登録商標)MT35900(Huntsman Advanced Materials製)、チオジフェノール型ベンゾオキサジン樹脂、式(V)
BS-BXZ(小西化学工業株式会社製)、ビスフェノールS-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、式(IV)
成分[B]:
アラルダイト(登録商標)MT35600(Huntsman Advanced Materials製)、ビスフェノールA-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、式(X)
F-a(四国化成工業株式会社製)、ビスフェノールF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、式(XI)
P-d(四国化成工業株式会社製)、フェノール-ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、式(XV)
成分[C]:
アラルダイト(登録商標)CY-179(Huntsman Advanced Materials製)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、XがCH2OC(=O)の式(XX)
セロキサイド(登録商標)8000 (株式会社ダイセル製)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)、Xが直接結合である式(XX)
エポカリック(商標)THI-DE(JXTGエネルギー株式会社製)、テトラヒドロインデンジエポキシド、式(XX)
エポカリック(商標)DE-102(JXTGエネルギー株式会社製)、テトラシクロテトラデカジエンジエポキシ、式(XVI)
エポカリック(商標)DE-103(JXTGエネルギー株式会社製)、ペンタシクロペンタデカジエンジエポキシ、式(XVII)
他の成分:
エポン(商標)828(Hexion Inc.製)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル
成分[D]
Matrimid(登録商標)9725(Huntsman Advanced Materials製)、ポリイミド樹脂、重量平均分子量80,000g/モル;
Virantage(登録商標)VW30500(Solvay製)、ポリエーテルスルホン、重量平均分子量14,000g/モル
表1及び表2に示すベンゾオキサジン樹脂組成物を、以下のようにして作製した。所定量の成分をすべて溶解することによって混合物を作製した。ベンゾオキサジン樹脂組成物を、2mm厚のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)スペーサーを用いて厚さ2mmに設定したモールドキャビティ中に投入した。次に、ベンゾオキサジン樹脂組成物を、硬化条件1又は硬化条件2に従い、オーブン中の熱処理によって硬化して、2mm厚の硬化樹脂板を得た。樹脂組成物単独(硬化された形態)の測定された特性を表1及び表2に示す。
【0152】
実施例1~4から、望ましいガラス転移温度及び曲げ弾性率の範囲を同時に提供するという点で、比較例1~6と比較して予想外に良好な結果を得た。この利点は、実施例1と比較例2との比較によってよく分かり、25PHRのF-aをMT35900で置き換えることによって、望ましい弾性率を維持しながらTgの著しい改善という結果をもたらすことが実証された。この利点は、実施例4と比較例5との比較によってもよく分かり、5PHRのMT35900をF-aで置き換えることによって、望ましいTgを維持しながら弾性率の著しい改善という結果をもたらすことが実証された。これは、F-aのTgが、単一成分として硬化された場合であっても又はCY-179とブレンドされた場合であっても、MT35900よりも非常に低いことを考えると、驚くべきことである。
【0153】
実施例2、実施例8、比較例3、及び比較例6の間での比較から、CY-179のベンゾオキサジンに対する比が好ましい範囲外で選択された場合に、Tgが大きく低下することがよく分かる。
【0154】
実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4から、良好な曲げ弾性率を維持しながら、MT35900濃度の上昇と共に、混合則での予測を上回ってTgが上昇する範囲がよく分かる。
【0155】
実施例2及び実施例3から、成分[A]、成分[B]、及び成分[C]を特定の比でブレンドすることによる、特に有利なTgと弾性率との組み合わせがよく分かる。
【0156】
実施例3と比較すると、実施例6から、成分[D]の添加による有利な弾性率及び粘度がよく分かる。実施例6からはまた、実施例15と比較した弾性率、Tg、及び粘度に対する成分[D]添加の利点もよく分かる。
【0157】
実施例7からは、成分[C]としてセロキサイド8000を用いた場合の有利なTgと弾性率との組み合わせがよく分かる。
【0158】
実施例9、実施例10、及び実施例11からは、成分[A]として式(IV)のBS-BXZベンゾオキサジンを用いた場合の有利なTg及び弾性率がよく分かる。
【0159】
実施例12、実施例13、及び実施例14からは、式(II)においてXが存在せず、縮合環系の一部である成分[C]を用いた場合の有利なTg及び弾性率がよく分かる。
【0160】
比較例7からは、成分[C]以外のエポキシを用いた場合のTgが低いことがよく分かる。
【0161】
実施例16からは、成分[B]として式(IB’)のP-d型ベンゾオキサジンを指定される比の中で用いた場合に、高いTg及び弾性率が同時に得られたことがよく分かる。
【0162】
表3は、特定の比の成分[A]、成分[B]、成分[C]、及び成分[D]によるベンゾオキサジン樹脂で作製したプリプレグを硬化することによって得られた繊維強化複合材料における有利なTg及び有孔圧縮強度を例示するものである。実施例17、実施例18、及び実施例19からは、異なる種類の炭素繊維及び異なるサイジング剤による有利なTg及び有孔圧縮強度がよく分かる。実施例20からは、成分[A]の成分[B]に対する比として27/8を、成分[C]の成分[A]と成分[B]との合計に対する比([C]/([A]+[B]))の比として3/7を用いて、実施例17、実施例18、及び実施例19で示したよりも高い比とした場合の、有利なTg及び有孔圧縮強度がよく分かる。比較例9からは、成分[A]の成分[B]に対する比が指定の範囲外である場合、繊維強化複合体のTgが低下することがよく分かる。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【国際調査報告】