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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】脂溶性ビタミンの新しい飼料添加物
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/174 20160101AFI20221201BHJP
   A23K 40/30 20160101ALI20221201BHJP
【FI】
A23K20/174
A23K40/30 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518982
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020078658
(87)【国際公開番号】W WO2021069752
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】19202638.3
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】シェファー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シェックス, ローランド
(72)【発明者】
【氏名】シェコウ, クリストス
(72)【発明者】
【氏名】ズウィック, トーマス
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB03
2B150AB20
2B150DE02
2B150DE14
2B150DJ01
2B150DJ26
(57)【要約】
本発明は、少なくとも脂溶性ビタミンを含む飼料添加物、及びその製造方法を対象とする。本発明のさらなる目的は、そのような飼料添加物を含む飼料、並びにそのような飼料添加物及び飼料の補充方法及び対応する使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1~40重量%の範囲の量の脂溶性ビタミン;
b)少なくとも5~55重量%の範囲の量のリグノスルホン酸塩;及び
c)少なくとも10重量%の量のヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの化合物
を含む飼料添加物であって;
前記リグノスルホン酸塩及び前記化合物c)は、前記脂溶性ビタミンがカプセル化されたマトリックスを形成し;
前記飼料添加物中のエトキシキンの量は≦0.5重量%であり;且つ
前記飼料添加物中のブチル化ヒドロキシトルエンの量は≦0.5重量%である(全ての量は前記飼料添加物の総重量に基づく)飼料添加物。
【請求項2】
前記脂溶性ビタミンは、ビタミンA若しくはその誘導体、ビタミンD若しくはその誘導体、又はこれらの任意の混合物である、請求項1に記載の飼料添加物。
【請求項3】
前記リグノスルホン酸塩は、リグノスルホン酸ナトリウム又はリグノスルホン酸カルシウム又はこれらの任意の混合物である、請求項1又は2に記載の飼料添加物。
【請求項4】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の飼料添加物。
【請求項5】
吸収剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飼料添加物。
【請求項6】
5~35重量%の範囲の量の前記脂溶性ビタミン、5~50重量%の範囲の量の前記リグノスルホン酸塩、15~70重量%の範囲の量の前記化合物c)、0.05~15重量%の範囲の量の前記抗酸化剤、1~30重量%の範囲の量の前記吸収剤、及び0~10重量%の範囲の量の残留水分を含む(全ての量は前記飼料添加物の総重量に基づく)、請求項5に記載の飼料添加物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飼料添加物を製造する方法であって、以下の工程:
i)前記リグノスルホン酸塩及び前記化合物c)及び任意選択で水溶性抗酸化剤を水に溶解することによってマトリックスを提供する工程;
ii)前記脂溶性ビタミン及び任意選択で前記脂溶性抗酸化剤を有機溶媒に溶解することによって活性相を提供する工程;
iii)工程i)で得られた前記マトリックスと工程ii)で得られた前記活性相とを混合して分散液を得る工程;
iv)工程iii)で得られた前記分散液中の前記活性相の液滴を粉砕し、前記有機溶媒を除去して分散液を得る工程;
v)工程iv)で得られた前記分散液を吸収剤の存在下で乾燥させて、前記飼料添加物を得る工程
を含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法の工程iv)を実施して得られる分散液。
【請求項9】
a)少なくとも脂溶性ビタミン;
b)少なくともリグノスルホン酸塩;及び
c)少なくとも10重量%の量のヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの化合物;
d)少なくとも0~15重量%の範囲の量の抗酸化剤
を含む分散液であって、;
前記リグノスルホン酸塩及び前記化合物c)は、前記脂溶性ビタミンがカプセル化されたマトリックスを形成し;
前記分散液中のエトキシキンの量は≦0.5重量%であり;且つ
前記分散液中のブチル化ヒドロキシトルエンの量は≦0.5重量%である(全ての量は前記飼料添加物の乾燥物質の総重量に基づく)分散液。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飼料添加物を含む飼料。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飼料添加物又は請求項10に記載の飼料の、ヒトを除く動物に前記脂溶性ビタミンを補充するための使用。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飼料添加物又は請求項10に記載の飼料をヒトを除く動物に投与することによって、前記動物に前記脂溶性ビタミンを補充する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の概要]
本発明は、
a)少なくとも1~40重量%の範囲の量の脂溶性ビタミン;
b)少なくとも5~55重量%の範囲の量のリグノスルホン酸塩;及び
c)少なくとも10重量%の量のヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの化合物
を含む飼料添加物であって、
リグノスルホン酸塩及び化合物c)は、脂溶性ビタミンがカプセル化されたマトリックスを形成し;
飼料添加物はエトキシキン(=6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)を実質的に含まず;且つ
飼料添加物はブチル化ヒドロキシトルエンを実質的に含まず;
全ての量は飼料添加物の総重量に基づく
飼料添加物を対象とする。
【0002】
本発明はまた、そのような飼料添加物の製造方法を対象とする。本発明のさらなる目的は、そのような飼料添加物を含む飼料、並びにそのような飼料添加物及び飼料の補充方法及び対応する使用である。
【0003】
[発明の背景]
脂溶性ビタミンは、動物の飼料に重要な成分である。しかしながら、それらは酸化しやすく、且つ水溶性ではない。脂溶性ビタミンを含む種々の水分散性製剤が既に存在するが、それらの安定性を改善する必要性が依然として存在する。
【0004】
[発明の目的]
したがって、少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含む安定な飼料添加物を提供する必要がある。
【0005】
さらに、それらを含む飼料が魅力的な色を有するように、特定の色を有する飼料添加物を提供する必要がある。
【0006】
本発明の別の目的は、動物を含まない、すなわち、例えばゼラチンなどの動物源からの化合物を使用しない飼料添加物を提供することである。
【0007】
さらに、飼料添加物の製造中の脂溶性ビタミンの損失(いわゆる「プロセス損失」)は、好ましくは初期量の7%以下、より好ましくは初期量の5%以下、最も好ましくは初期量の3%以下であるべきである。
【0008】
[詳細な説明]
この要求は、
a)少なくとも1~40重量%の範囲の量の脂溶性ビタミン;
b)少なくとも5~55重量%の範囲の量のリグノスルホン酸塩;及び
c)少なくとも10重量%の量のヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの化合物
を含む飼料添加物であって、
リグノスルホン酸塩及び化合物c)は、脂溶性ビタミンがカプセル化されたマトリックスを形成し;
飼料添加物はエトキシキンを実質的に含まず、且つ
飼料添加物はブチル化ヒドロキシトルエンを実質的に含まず;
全ての量は飼料添加物の総重量に基づく
飼料添加物を対象とする本発明によって満たされる。
【0009】
本発明はまた、そのような飼料添加物の製造方法を対象とする。本発明のさらなる目的は、そのような飼料添加物を含む飼料、並びにそのような飼料添加物及び飼料の補充方法及び対応する使用である。
【0010】
詳細を以下に示す。
【0011】
有利には、本発明の飼料添加物は、殺虫剤残留物のレベルを増加させるという理由から議論されている蜜蝋を含まない。
【0012】
好ましくは、リグノスルホン酸塩及び化合物c)は、様々な分子サイズを有し、異なる官能基を特徴とする化合物の混合物として、緻密でガラス状のマトリックスを形成する。
【0013】
「カプセル化された」とは、脂溶性ビタミンがリグノスルホン酸塩b)及び化合物c)のマトリックス中に埋め込まれ、それによって酸化及び分解から保護されることを意味する。飼料添加物の前駆体、すなわち、本発明による飼料添加物の製造方法の工程iv)を行った後に得られる分散液は水中油型分散液を形成し、脂溶性ビタミンは内相に位置する油であり、リグノスルホン酸塩は乳化剤として作用する。化合物c)は、その安定性に寄与する、マトリックス中の充填剤及び追加の乳化剤である。分散液を「粉末捕捉」した後、脂溶性ビタミンを含むマトリックスを吸収剤でコーティングする。本発明の文脈における「コーティングされた」とは、吸収剤がマトリックスを取り囲むことを意味する。
【0014】
本発明による飼料添加物の単一化合物及びそれらの量は、以下のように決定することができる。
【0015】
[化合物a):脂溶性ビタミン]
脂溶性ビタミンは、例えば、HPLC-DAD(高性能液体クロマトグラフィー ダイオードアレイ検出)又はHPLC-FL(高性能液体クロマトグラフィー-蛍光検出)によって、以下の公開された方法と同様に抽出及び分析することができる:
W.Schuep,J.Schierle,Carotenoids,Volume 1A:Isolation and Analysis;Editors:G.Britton,S.Liaaen-Jensen,H.Pfander;Birkhaeuser Verlag Basel(CH),1995.
【0016】
[化合物b):リグノスルホン酸塩]
リグノスルホン酸塩は、例えば、G.Jayne and E.Pohl,Das Papier,1967,21,Vol.10A,pages645-653(“Nachweis der Ligninsulfonsaeure in grosser Verduennung(Abwaesser von Sulfitzellstoff-Fabriken)”)によって開示されている手順に従って、製剤中、分光測定により測定することができる。
【0017】
[化合物c)]
例えばOSAデンプンなどの修飾ヘキソースポリマーは、例えばモノグラフ“Modified Starches”(FAO JECFA Monograph16)に記載されているような湿式化学法を用いて定性的に同定することができる。OSAデンプンの定量は旋光分析によって行うことができる(例えば、Gorden A.Mitchel,Methods of Starch Analysis,1990,42,pages131-134を参照)。
【0018】
ヘキソース、ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー及び/又はヘキソースポリマーの混合物、すなわち、例えばデンプン加水分解物は、サイズ排除クロマトグラフィーによって分析することができる;例えば、White DR Jr,Hudson P,Adamson JT,Journal of chromatography A 2003,997(1-2),pages79-85(“Dextrin characterization by high-performance anion-exchange chromatography--pulsed amperometric detection and size-exclusion chromatography--multi-angle light scattering-refractive index detection.”)を参照されたい。
【0019】
ヘキソース及びヘキソースダイマー、すなわち、例えばスクロースは、RI(屈折率)検出又はパルスアンペロメトリック検出を伴うHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)によって分析することができる;例えば、Diana Duarte-Delgado,Carlos-Eduardo Narvaez-Cuenca、Luz-PatriciaRestrepo-Sanchez,Ajjamada Kushalappa,Teresa Mosquera-Vasquez,Journal of Chromatography B 2015,Volume975,pages18-23(“Development and validation of a liquid chromatographic method to quantify sucrose,glucose,and fructose in tubers of Solanum tuberosum Group Phureja”)を参照されたい。
【0020】
[抗酸化剤]
抗酸化剤は、例えば、Paula Becker Pertuzatti,Marla Sganzerla,Andressa Carolina Jacques,Milene Teixeira Barcia,Rui Carlos Zambiazi,LWT-Food Science and Technology 2015,Volume64,Issue1,pages259-263(“Carotenoids,tocopherols and ascorbic acid content in yellow passion fruit(Passiflora edulis)grown under different cultivation systems”)によって開示されるように、HPLC-DAD/FL(高性能液体クロマトグラフィー ダイオードアレイ検出/蛍光検出)によって分析することができる。
【0021】
[吸収剤]
吸収剤によるコーティングは、デンプンの同定のためのFTIR(フーリエ変換赤外分光法)及び二酸化ケイ素のための蛍光X線分析法などの分光技術と組み合わせた顕微鏡技術を用いて定性的に特徴付けることができる;例えば、P.V.Kowsik,N.Mazumder,Microsc.Res.Tech.2018,81,pages1533-1540(“Structural and chemical characterization of rice and potato starch granules using microscopy and spectroscopy.”)及びM.Mutsuga,K.Sato,Y.Hirahara,Y.Kawamura,Food Addit.Contam.Part A Chem.Anal.Control Expo.Risk Assess.2011,28(4),pages423-427(“Analytical methods for SiO and other inorganic oxides in titanium dioxide or certain silicates for food additive specifications”)を参照されたい。他の吸収剤の測定のための対応する分析方法は当業者に知られている。
【0022】
本発明による飼料添加物中の単一化合物及びそれらの量の詳細を以下に示す。
【0023】
[化合物a):脂溶性ビタミン]
用語「脂溶性ビタミン」は、本発明の目的のためには、特にビタミンA、D、E及び/又はK、ビタミンA、D、E又はKに類似した作用を有する対応するプロビタミン及びビタミン誘導体(例えば、エステル、特にアルキルエステル)、並びにそれらの任意の混合物を含む。コエンザイムQ10も含まれる。
【0024】
「ビタミンD」は、ビタミンD(コレカルシフェロール)若しくはビタミンD(エルゴカルシフェロール)、又は両方を意味する。
【0025】
「ビタミンD誘導体」は、例えば25-ヒドロキシビタミンD(いわゆる「HyD」)、1,25-ジヒドロキシビタミンD又は24,25-ジヒドロキシビタミンDのようなビタミンDの任意の誘導体を意味する。
【0026】
ビタミンKは、ビタミンK及び/又はビタミンK及び/又はビタミンK、特にビタミンKであり得る。
【0027】
脂溶性ビタミンの特に好ましい例は、ビタミンA、酢酸ビタミンA、プロピオン酸ビタミンA、パルミチン酸ビタミンA、D-α-トコフェロール、DL-α-トコフェロール、酢酸D-α-トコフェリル、酢酸DL-α-トコフェリル、コハク酸D-α-トコフェリル、コハク酸DL-α-トコフェリル、ビタミンD及び25-ヒドロキシビタミンD、並びにこれらの任意の混合物である。最も好ましいのは、酢酸ビタミンA、ビタミンD及びこれらの任意の混合物である。
【0028】
本発明の飼料添加物中の脂溶性ビタミンの量に関して、脂溶性ビタミンの遊離形態の量は直接計算されるが、脂溶性ビタミンの誘導体の量は脂溶性ビタミンの遊離形態として計算される。
【0029】
脂溶性ビタミンの量は、飼料添加物中のその最終量が、吸収剤を含む飼料添加物の乾燥物の総重量に基づいて、好ましくは1.0~40重量%の範囲、より好ましくはその最終量が5.0~35重量%の範囲、さらにより好ましくはその最終量が10~30重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が15~25重量%の範囲となるように選択される。これらの選択は、上記の好ましい脂溶性ビタミンにも適用される。
【0030】
[化合物b):リグノスルホン酸塩]
本発明による飼料添加物中に存在するリグノスルホン酸塩は特に、最も多様なカチオンを有するリグノスルホン酸塩を含有する工業的に製造された製品である。リグノスルホン酸ナトリウム、リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸マグネシウム及びリグノスルホン酸アンモニウムが特に好ましい。本発明による飼料添加物は、成分b)として、単一のリグノスルホン酸塩、又はいくつかのリグノスルホン酸塩の混合物を含有することができる。さらに、本発明による飼料添加物中に存在するリグノスルホン酸塩は、リグノスルホン酸塩に加えてさらなる成分を含有する工業的に製造された製品の一部であり得る。
【0031】
知られているように、生体高分子リグニンは、植物、特に木材中にセルロースとともに存在する。木材は、タイプに応じて、約16~37重量%のリグニンを含有する。化学的に考察すると、リグニンは、少なくとも20kDと推定される分子量を有するメトキシル化フェニルプロパンモノマー(p-クマリルアルコール、コニフェリルアルコール、シナピルアルコールなど)の不規則ポリマーからなる。セルロースの製造における第1の工程においては、木材を分解するが、ほとんどの場合、これは125℃~180℃にて亜硫酸アルカリ液で処理することにより達成される。これにより、セルロースが遊離し、リグニンが水溶性誘導体のリグノスルホン酸塩(「亜硫酸リグニン」としても知られる)に変換される。より小規模では、木材の分解は水酸化ナトリウム及び四硫化二ナトリウムで木材を処理することによっても達成される(「クラフト法」)。この方法で得られるリグニンは、「クラフトリグニン」又は「硫酸リグニン」と呼ばれ、中性pHで水溶性ではない。セルロースの製造のためのより最近の方法は、木材の分解のために、例えば、水が混合されたアルコールなどの有機溶媒を使用し、したがって製造されたリグニンは、「オルガノソルブリグニン」と呼ばれる。この形態のリグニンも同様に水溶性ではない。現在、主にリグノスルホン酸塩及びクラフトリグニンが市販されている。
【0032】
多くの場合、木材の分解後、セルロースが分離され、得られたリグノスルホン酸塩含有溶液が約50%の固形分に濃縮され、この形態で販売されている。ほとんどの生産者はまた、溶液を噴霧乾燥することによって得られた粉末状の製品を提供し、これらの固体形態はまた、リグニンに加えて、かなりの量の種々の糖を含有する。一部の生産者は、糖を酵素により除去し、必要であれば、精製、例えば超遠心分離を行って、一次(粗)リグノスルホン酸塩から、比較的高い含量のリグノスルホン酸塩を有するリグニン誘導体を製造する。また提供されるクラフトリグニンは水溶性を達成するためにスルホン化することができ、スルホン化された製品は、本発明による調製物に使用するリグノスルホン酸塩として好適である。市販のリグノスルホン酸塩製品は、一般に、約40~90%のリグノスルホン酸塩及び少量の種々の糖類、灰分、炭水化物、酢酸塩、ギ酸塩、樹脂などからなり、組成は、使用される木材の品質に非常に大きく依存する。
【0033】
このような水溶性リグノスルホン酸塩製品もまた、本発明による飼料添加物における使用に適している。一般に、比較的高い含量の糖類及び追加の副生成物を有する粗生成物だけでなく、前述の精製されたリグニン誘導体も、そのようなリグニン誘導体が水溶性又は少なくとも水分散性であるという条件で、本発明による飼料添加物に使用することができる。
【0034】
好適なリグニン誘導体の好ましい例は、リグノスルホン酸ナトリウム、リグノスルホン酸アンモニウム、リグノスルホン酸マグネシウム及びリグノスルホン酸カルシウム、並びにこれらの混合物のいずれかである。リグノスルホン酸ナトリウム及びリグノスルホン酸カルシウムが特に好ましい。リグノスルホン酸カルシウムが最も好ましい。
【0035】
リグノスルホン酸塩の供給者は、Borregaard Industries Limited、ノルウェー(Norway);Burgo Group、Rayonier Advanced Materials、Wuhan Xinyingda Chemicals、Shenyang Xingzhenghe Chemical、Abelin Polymers、GREENAGROCHEM、Harbin Fecino Chemical、Karjala Pulp、日本製紙株式会社(Nippon Paper Industries)、Pacific Dust Control、Sappi、The Dallas Group of America、Venki Chem及びXinyi Feihuang Chemicalである。
【0036】
特に好適な脱糖リグノスルホン酸カルシウムは、Borregaard Industries Limited、ノルウェーから、Borrebright CY22P、Borresperse Na220及びBorrement CA120という商品名で入手可能であり、Borrebright CY22Pが特に好ましい。これは、トウヒタイマーをチップに切断し、蒸解用重亜硫酸カルシウム溶液と一緒に蒸解釜に供給することによって製造される。高温(130~140℃)での蒸解の間、木材中のリグニンは解重合され、スルホン化され、これが水溶性リグノスルホン酸塩を作る。蒸解の終わりに、亜硫酸塩液はリグノスルホン酸カルシウム及び糖を含有する。亜硫酸溶液(リグノスルホン酸カルシウム及び糖)は、濾過によってセルロースパルプと分離される。亜硫酸アルカリ液は、蒸発プラントで約53%に濃縮される。濃縮液を噴霧乾燥機に供給してリグノスルホン酸塩粉末を製造する(入口温度200~250℃の範囲)。
【0037】
リグノスルホン酸塩の量は、飼料添加物中のその最終量が、吸収剤を含む飼料添加物の乾燥物の総重量に基づいて、好ましくは5~55重量%の範囲、より好ましくはその最終量が5~50重量%の範囲、さらにより好ましくはその最終量が5~45重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が10~40重量%の範囲となるように選択される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、リグノスルホン酸塩b)の脂溶性ビタミンa)に対する重量比は、10:1~1:10の範囲、好ましくは7:1~1:7の範囲、より好ましくは5:1~1:5の範囲、さらにより好ましくは3:1~1:3の範囲、最も好ましくは2:1~1:2の範囲である。
【0039】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、化合物c)のリグノスルホン酸塩b)に対する重量比は、1:15~25:1の範囲、好ましくは1:10~20:1の範囲、より好ましくは1:7~15:1の範囲、さらにより好ましくは1:5~10:1の範囲、特に好ましくは1:3~8:1の範囲、最も好ましくは1:2~5:1の範囲である。
【0040】
[化合物c)]
化合物c)は、ヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー及びこれらの任意の混合物から選択される。ヘキソースも存在し得る。これは、ヘキソース及びヘキソースダイマーの混合物も包含されることを意味する。ヘキソース及びヘキソースダイマーの混合物の例は、転化糖(グルコース+フルクトース+スクロース)である。
【0041】
ヘキソースは、6個の炭原子を有する単糖である。ヘキソースは官能基によって分類され、アルドヘキソースは1位にアルデヒドを有し、ケトヘキソースは2位にケトンを有する。
【0042】
好ましくは、化合物c)がアルドヘキソースオリゴマー若しくはアルドヘキソースポリマー若しくは修飾アルドヘキソースポリマー又はこれらの任意の混合物から選択される。
【0043】
ヘキソースダイマー中のヘキソースは、1つの単一のヘキソースであっても、互いに異なる2つのヘキソースであってもよい。ヘキソースダイマーの例は、スクロース(グルコース-フルクトースダイマー)、ラクトース(グルコース-ガラクトースダイマー)、マルトース(a-(1-4)結合を有するグルコースダイマー)、イソマルトース(a-(1-6)結合を有するグルコースダイマー)、トレハロース(a-(1-1)結合を有するグルコースダイマー)及びニゲロース(a-(1-3)結合を有するグルコースダイマー)、並びにこれらの任意の混合物である。2つのヘキソースが互いに異なるヘキソースダイマーの1つの好ましい例は、スクロース、グルコース-フルクトースダイマーである。
【0044】
ヘキソースオリゴマー中のヘキソースは、1つの単一のヘキソースであっても、互いに異なるいくつかのヘキソースであってもよい。好ましくは、ヘキソースはグルコースである。ヘキソースオリゴマーのより好ましい例は、グルコースシロップ、乾燥グルコースシロップ又はデキストリンなどの加水分解デンプン製品である。このようなグルコースシロップ、乾燥グルコースシロップ及びデキストリンは、それらの「デキストロース当量」に従って分類され、ヘキソース、ヘキソースダイマー及びヘキソースポリマーをさらに含有してもよい。
【0045】
「デキストロース」は、「グルコース」の別名である。用語「デキストロース当量」(DE)は加水分解の程度を示し、乾燥重量に基づいてD-グルコースとして計算される還元糖の量の尺度であり;スケールは、0に近いDEを有する天然デンプン及び100のDEを有するグルコースに基づく。
【0046】
マルトデキストリンは、3~20の範囲のDEを有するデキストリンであり、DE>20を有する加水分解デンプン生成物は、それらの含水量に応じて、「グルコースシロップ」又は「乾燥グルコースシロップ」と呼ばれる。「グルコースシロップ」又は「乾燥グルコースシロップ」は、粉末、微小顆粒又は顆粒の形態で使用され得る。グルコースシロップは、一般に、グルコース、マルトース、オリゴ糖及び多糖の混合物からなり、これらの成分量は様々である。
【0047】
ヘキソース及びヘキソースダイマーも含有する市販のヘキソースオリゴマーは、例えば、商品名、Glucidex 21(Roquetteから)、Glucidex IT 47(Roquetteから)、Dextrose Monohydrate ST(Roquetteから)、Sirodex 331(Tate & Lyleから)、Glucamyl F 452(Tate & Lyleから)、及びRaftisweet I 50/75/35(Lebbe Sugar Specialtiesから)で市販されており、Glucidex 21及びGlucidex 47が特に好ましい。
【0048】
ヘキソースポリマー及び修飾ヘキソースポリマー中のヘキソースは、単一のヘキソースであっても、多くのヘキソースの混合物であってもよい。好ましくは、1つのヘキソース又は互いに異なる2つのヘキソースが、本発明のヘキソース-ポリマー又は変性ヘキソース-ポリマー中に存在する。より好ましくは、修飾ヘキソースポリマーは、オクテニルコハク酸で修飾されたデンプン(いわゆる「OSAデンプン」)などの修飾食品デンプンであり、実際には、グルコース、グルコースダイマー、グルコースオリゴマー、グルコースポリマー(=デンプン)、並びにOSA修飾グルコースダイマー、OSA修飾グルコースオリゴマー及びOSA修飾グルコースポリマー(=OSA修飾デンプン)の混合物である。
【0049】
さらなる好適な修飾ヘキソースポリマーは、国際公開第2020/093962号パンフレット、国際公開第2020/093919号パンフレット、国際公開第2020/093960号パンフレット及び中国特許出願公開第A109517080号明細書に開示されている方法に従って変性されたOSAデンプンである。
【0050】
ヘキソースポリマー、特にアルドヘキソースポリマーの例は、天然デンプン、特に天然トウモロコシデンプンである。さらなる例は、ワキシーコーン、コムギ、タピオカ、エンドウ及びジャガイモなどの他の植物源由来のデンプンである。
【0051】
最も好ましい化合物c)は、デンプン加水分解物、例えば、10~50の範囲のDEを有する、より好ましくは15~40の範囲のDEを有する、さらにより好ましくは15~30の範囲のDEを有する、最も好ましくは15~25の範囲のDEを有する乾燥グルコースシロップ及びデキストリンなどである。
【0052】
このようなデンプン加水分解物の市販の例は、例えばGlucidex 21及びGlucidex IT47のような乾燥グルコースシロップ、並びに黄色デキストリンなどのデキストリンである。最も好ましい例はまた、それらと修飾食品デンプンとの混合物であり、デンプン加水分解物、特にデキストリン(例えば黄色デキストリン)と、修飾食品デンプン、特にOSAデンプンとの重量比が、1:10~10:1の範囲、好ましくは1:7~7:1の範囲、より好ましくは1:6~6:1の範囲、さらにより好ましくは1:1~1:6の範囲、最も好ましくは1:1~1:5の範囲であることが、特に好ましい。以下、さらに詳細に説明する。
【0053】
Glucidex 21は、20~23の範囲のDEを有し、粒子の少なくとも50%が40μmより大きく、250μmより大きな粒子は多くとも10%である微粉末の形態の乾燥グルコースシロップである。Glucidex 21は、3%のグルコース、7%のマルトース、90%のオリゴ糖及び多糖を含有する。
【0054】
Glucidex IT47は、43~47の範囲のDEを有し、粒子の少なくとも95%が40μmより大きく、500μmより大きな粒子は多くとも5%である微粉末の形態の乾燥グルコースシロップである。Glucidex IT 47は、5%のグルコース、50%のマルトース、45%のオリゴ糖及び多糖を含有する。
【0055】
さらなる好ましい化合物c)は、還元糖の最大量がデンプン加水分解物の総重量に基づいて10重量%であるデンプン加水分解物である。
【0056】
化合物c)の量は、飼料添加物中のその最終量が、飼料添加物の乾燥物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくはその最終量が15~70重量%の範囲、より好ましくはその最終量が20~65重量%の範囲、最も好ましくは20~45重量%の範囲となるように選択される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、化合物c)は、いずれも飼料添加物の総重量に基づいた量で、少なくとも5重量%の例えばデキストリンなどのヘキソースオリゴマーと、少なくとも10重量%の例えば修飾食品デンプンなどの修飾ヘキソースポリマーとの混合物である。
【0058】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、化合物c)は、いずれも飼料添加物の総重量に基づいた量で、5~25重量%の範囲の量の例えばデキストリンなどのヘキソースオリゴマーと、10~45重量%の範囲の量の例えば修飾食品デンプンなどの修飾ヘキソースポリマーとの混合物である
【0059】
[デキストリン]
デキストリンは、デンプン又はグリコーゲンの加水分解によって生成される低分子量炭水化物の群である。デキストリンは、α-(1→4)又はα-(1→6)グリコシド結合によって連結されるD-グルコース単位のポリマーの混合物である。
【0060】
デキストリンは、例えば、アミラーゼのような酵素を使用して、又は酸性条件下で乾燥熱を適用することによって(「熱分解」又は「焙煎」)、デンプンから製造することができる。熱によって製造されるデキストリンは、「焙焼デキストリン」としても知られる。デンプンは酸性条件下での焙煎中に加水分解し、短鎖デンプン部分は一部、分解されたデンプン分子にα-(1,6)結合で再分枝する。それらは低い粘度を有する。
【0061】
好ましくは、Roquetteから市販されている黄色デキストリンが本発明の飼料添加物に使用される。
【0062】
[「修飾食品デンプン」]
修飾食品デンプンは、親水性及び親油性部分を提供する化学構造を有するように既知の方法によって化学的に修飾された食品デンプンである。好ましくは、修飾食品デンプンはその構造の一部として長い炭化水素鎖(好ましくはC5~C18)を有する。
【0063】
本発明の飼料添加物を製造するためには、少なくとも1種の修飾食品デンプンを使用することが好ましいが、1種の飼料添加物中に2種以上の異なる修飾食品デンプンの混合物を使用することが可能である。
【0064】
デンプンは親水性であり、したがって乳化能力を有しない。しかしながら、修飾食品デンプンは、既知の化学的方法により疎水性部分で置換されたデンプンから製造される。例えば、デンプンを、炭化水素鎖で置換された、無水コハク酸などの環状ジカルボン酸無水物で処理することができる。特に好ましい修飾食品デンプンは、次式(I):
【化1】

(式中、Stはデンプンであり、Rはアルキレン基であり、R’は疎水性基である)
を有する。好ましくは、Rは、ジメチレン又はトリメチレンなどの低級アルキレン基である。R’は、好ましくは5~18個の炭素原子を有する、アルキル基又はアルケニル基であり得る。式(I)の好ましい化合物は、「OSAデンプン」(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム)である。置換度、すなわち、エステル化されたヒドロキシル基の数対エステル化されていない遊離ヒドロキシル基の数は、通常、0.1%~10%の範囲、好ましくは0.5%~4%の範囲、より好ましくは2%~3%の範囲で変化する。
【0065】
用語「OSAデンプン」は、オクテニルコハク酸無水物(OSA)で処理された任意の天然源由来の任意のデンプンを意味する。置換度、すなわち、OSAでエステル化されたヒドロキシル基の数対エステル化されていない遊離ヒドロキシル基の数は、通常、0.1%~10%の範囲、好ましくは0.5%~4%の範囲、より好ましくは2%~3%の範囲で変化する。「修飾食品デンプン」は、OSAデンプンに対してしばしば使用される別名である。
【0066】
デンプンの天然源は、トウモロコシ、ワキシーコーン、小麦、タピオカ、エンドウ及びジャガイモであり得るか、又は合成され得る。
【0067】
用語「OSAデンプン」はまた、例えば、Ingredionから商品名HiCap 100、Capsul(オクテニルブタンジオン酸アミロデキストリン)、Capsul HS、Purity Gum 2000、Cleargum COA1、Cleargum CO03、UNI-PURE、HYLON VIIで;Ingredion及びRoquetteからそれぞれ;Cargillから商品名C*EmCapで、又はTate & Lyleから市販されているデンプンを包含する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、IngredionからのCapsul及びCapsul HS、又はRoquetteからのCleargum COA1などの市販の修飾食品デンプンがそれぞれ使用される。
【0069】
「修飾デンプン」及び「OSAデンプン」という用語にはさらに、酵素、例えばグリコシラーゼ(EC3.2;http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/EC3.2/を参照されたい)により部分的に加水分解された修飾デンプン/OSAデンプン、並びに既知の方法によって化学的に部分的に加水分解(いわゆる酸分解)された修飾デンプン/OSAデンプンも包含される。
【0070】
酵素による加水分解は、通常、約5℃~約<100℃の温度、好ましくは約5℃~約70℃の温度、より好ましくは約20℃~約55℃の温度で行われる。
【0071】
グリコシラーゼは、果実、動物起源、細菌又は真菌由来であり得る。グリコーラーゼは、エンド活性及び/又はエキソ活性を有し得る。したがって、エンドグリコシラーゼ及びエキソグリコシラーゼの酵素調製物、又はそれらの混合物のいずれかを使用することができる。好ましくは、グリコシラーゼは、ペクチン分解活性及び/又はヘミセルロース分解活性を有する。通常、グリコシラーゼは未知の副活性も示すが、これは所望する生成物の製造にとって重要ではない。
【0072】
グリコシラーゼの例は、供給者のNovozymes、Genencor、AB-Enzymes、DSM Food Specialities、Amanoなどから市販されている酵素調製物である。
【0073】
グリコシラーゼは、修飾デンプン/OSAデンプンの乾燥重量に基づいて、約0.01~約10重量%、好ましくは約0.1~約1重量%の濃度を提供するように添加される。本発明の方法の好ましい実施形態では、酵素は一度に添加される。酵素による加水分解は、段階的に行うこともできる。例えば、グリコシラーゼ又はグリコシラーゼの混合物を、例えば1%の量でインキュベーションバッチに添加し、その後、例えば5~10分後(35℃の温度で)、さらなるグリコシラーゼ又はグリコシラーゼの混合物(これは、最初に添加したグリコシラーゼ又はグリコシラーゼの混合物と同じであっても異なっていてもよい)を、例えば2%の量で添加し、その後、インキュベーションバッチを35℃で10分間加水分解する。この手順を用いて、約ゼロの加水分解度を有する出発修飾デンプン/OSAデンプンを使用することができる。
【0074】
加水分解の持続時間は、約数秒~約300分の間で変化し得る。酵素処理の正確な持続時間は、酵素活性のようなパラメーター、又は基質の組成に強く依存し、乳化安定性、乳化能力、エマルションの液滴サイズなどの修飾デンプン/OSAデンプンの所望の特性に関しで実験的な方法で決定し得る。或いは、これは浸透圧を測定することによって決定し得る(W.Dzwokak and S.Ziajka,Journal of food science,1999,64(3)393-395)。
【0075】
グリコシラーゼの不活性化は好適には熱変性によって、例えば、インキュベーションバッチを約80~85℃に5~30分間、特に5~10分間加熱することによって達成される。
【0076】
[化合物d):抗酸化剤]
飼料中にエトキシキンを使用するための規制当局による承認は、欧州連合(European Union)において一時停止されている。したがって、本発明の飼料添加物は、エトキシキンを実質的に含まないことが有利である。
【0077】
本発明の文脈における「実質的に含まない」は、エトキシキンの量が、飼料添加物の乾燥物質の総重量に基づいて、≦0.5重量%、好ましくは≦0.2重量%、より好ましくは≦0.1重量%であることを意味する。最も好ましくは、本発明の飼料添加物の製造中にエトキシキンを添加しない。したがって、最も好ましくは、本発明の飼料添加物中にエトキシキンは含まれない。
【0078】
有利には、本発明の飼料添加物はまた、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(IUPAC名=2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)などのブチル化ヒドロキシトルエンを実質的に含まない。
【0079】
本発明の文脈における「実質的に含まない」は、ブチル化ヒドロキシトルエンの量が、飼料添加物の乾燥物質の総重量に基づいて、≦0.5重量%、好ましくは≦0.2重量%、より好ましくは≦0.1重量%であることを意味する。最も好ましくは、本発明の飼料添加物の製造中にブチル化ヒドロキシトルエンを添加しない。したがって、最も好ましくは、本発明の飼料添加物中にブチル化ヒドロキシトルエンは含まれない。
【0080】
本発明の最も好ましい実施形態では、エトキシキンもブチル化ヒドロキシトルエンも本発明の飼料添加物中に含まれない。
【0081】
飼料添加物は、抗酸化剤又は抗酸化剤の混合物を含んでもよい。好ましくは、脂溶性抗酸化剤と水溶性抗酸化剤との混合物が使用される。
【0082】
抗酸化剤の総量は、飼料添加物中のその最終量が、吸収剤を含む飼料添加物の乾燥物の総重量に基づいて、好ましくは0.05~15重量%の範囲、より好ましくはその最終量が0.1~10重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が0.5~8重量%の範囲となるように選択される。
【0083】
好適な脂溶性抗酸化剤の例は、トコフェロール及びその類似体、例えば、国際公開第2019/185894号パンフレットに開示されている式(II)の化合物
【化2】

(式中、R1a及びR2aは互いに独立してH若しくはC1~11アルキル若しくは(CH-OH(nは1~4の整数である)であるか、又はR1a及びR2aは一緒にケト基を表し、AはCHR3a又はC(=O)であり、R3a、R4a及びR6aは互いに独立してH又はC1~4アルキルであり、R5aはH又はOH又はC1~4アルキル又はC1~4アルコキシである)などである。
【0084】
さらなる好適な脂溶性抗酸化剤は、国際公開第2019/185938号パンフレットに開示されている式(II)の化合物(式中、2つの置換基R1a及びR2aの一方はC12~21アルキルであり、2つの置換基R1a及びR2aの他方は水素又はC1~5アルキル又は(CH-OH(nは1~5の整数である)であり、AはCH(R3a)であり、R3a、R4a及びR6aは互いに独立してH又はC1~4アルキルであり、R5aはH又はOH又はC1~4アルキル又はC1~4アルコキシである)である。
【0085】
国際公開第2019/185900号パンフレットに開示された選択を有する式(II)の化合物(式中、AはCHであり、R1aはC1-5アルキルであり、R2aはH又はC1~2アルキルであり、R5aはH又はC1~4アルコキシ又はC1~4アルキルであり、R4a及びR6aは互いに独立してH又はC1~4アルキルである)もまた、本発明の飼料添加物における好適な抗酸化剤である。
【0086】
国際公開第2019/185894号パンフレットに開示されている式(II)の抗酸化剤の好ましい例は、以下の式(1)~(11)の化合物(「Me」はメチルである)である。
【化3】

【化4】
【0087】
本発明の飼料添加物に使用することができる好適な抗酸化剤のさらなる例は、国際公開第2019/185898号パンフレットに開示されている式(III)及び(IV)の化合物
【化5】

(式中、R1b及びR2b互いに独立してH若しくはC1~11アルキル若しくは(CH-OH(nは1~6の整数である)であるか、又はR1b及びR2bは一緒にケト基を表し、R3b、R4b、R5b及びR6bは互いに独立してH又はC1~6アルキル又はC1~6アルコキシであり、R7bはH又はC1~6アルキルである)である。
ここで、「アルキル」及び「アルコキシ」はそれぞれ、直鎖状アルキル及び分岐状アルキル、並びに直鎖状アルコキシ及び分岐状アルコキシを包含する。
【0088】
式(III)及び(IV)の化合物の好ましい例は、以下の化合物(12)~(19)である。
【化6】
【0089】
さらなる好適な抗酸化剤は、国際公開第2019/185940号パンフレットに開示されたさらなる選択を有する式(V)の化合物(式中、R、R及びRは互いに独立してH又は直鎖状C1~6アルキル又は分岐状C3~8アルキルであり、好ましくは、RはH又はメチル又はエチル又はn-プロピル又はイソプロピル又はtert-ブチルであり、R及びRは互いに独立してH又はメチル又はエチルである)である。
【化7】
【0090】
また、国際公開第2019/185904号パンフレットに開示されている式(VI)の化合物(式中、nは1又は2であり、R1b及びR3bは互いに独立してH又はC1~5アルキルであり、R2bはH又はC1~5アルキル又はC1~5アルキルオキシであり、好ましくはR1b、R2b及びR3bの少なくとも1つはHであることを条件とする)も、本発明の飼料添加物中の抗酸化剤として使用することができる。
【化8】
【0091】
ここで、以下の式(VI-1)及び(VI-2)の化合物が特に好ましい。
【化9】
【0092】
アスタリスク*はそれぞれキラル中心/立体中心を示す。すなわち、前記中心での任意の立体配置を有する全ての可能な異性体は、それぞれ、用語「式(VI-1)の化合物」及び「式(VI-2)の化合物」に包含される。
【0093】
さらなる好適な抗酸化剤は、国際公開第2008/080152号パンフレットに開示されているものなどの没食子酸誘導体、例えばフェルラ酸(=3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェノール)プロパ-2-エン酸)などのヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシクマリン、例えば没食子酸(=3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)及びシリンジ酸(=4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシ-安息香酸)などのヒドロキシ安息香酸、没食子酸プロピル、ロスマリン酸及びカルノシン酸である。
【0094】
好適な脂溶性抗酸化剤はまた、国際公開第2019/185942号パンフレット及び国際公開第2019/185888にそれぞれ公開されている以下の式(VII)及び(VIII)の化合物(式中、R1c、R2c及びR3cは互いに独立してH又はC1~4アルキルである)である。それらの好ましい例は、以下に示す式(20)~(27)のトコトリエノール及びトコフェロールである。
【化10】

アスタリスク*は、それぞれキラル中心/立体中心を示す。用語「式(VII)/(VIII)の化合物」は、前記中心での任意の立体配置を有する全ての可能な異性体を包含する。
【0095】
式(VII)の化合物の特に好ましい例は、以下の式(20)(=アルファ-トコトリエノール)、(21)(=ベータ-トコトリエノール)、(22)(=ガンマ-トコトリエノール)及び(23)(=デルタ-トコトリエノール)の化合物であり、これらには全ての可能なジアステレオマー及びエナンチオマーが含まれる。
【化11】
【0096】
式(VIII)の化合物の特に好ましい例は、以下の式(20)(=アルファ-トコフェロール)、(21)(=ベータ-トコフェロール)、(22)(=ガンマ-トコフェロール)及び(23)(=デルタ-トコフェロール)の化合物であり、これらには全ての可能なジアステレオマー及びエナンチオマーが含まれる。
【化12】
【0097】
アスタリスク*は、それぞれキラル中心/立体中心を示す。用語「式(20)/(21)/(22)/(23)/(24)/(25)/(26)/(27)の化合物」は、前記中心での任意の立体配置を有する全ての可能な異性体を包含する。
【0098】
最も好ましい脂溶性抗酸化剤は、α-トコフェロール、特にDL-α-トコフェロールである。
【0099】
脂溶性ビタミンがビタミンEである場合、ビタミンEはそれ自体抗酸化剤として作用し得るので、ビタミンEの量はそれに応じて増加する。
【0100】
[水溶性抗酸化剤]
一般に、飼料中に許容され、当業者に知られている任意の水溶性抗酸化剤を使用することができる。
【0101】
水溶性抗酸化剤の好ましい例は、アスコルビン酸及びその塩、例えば欧州特許出願公開第A972777号明細書に開示されているようなアスコルビン酸のアルカリ塩及びアルカリ土類塩並びにアスコルビル-2-リン酸塩である。アスコルビン酸のアルカリ塩及びアルカリ土類塩が特に好ましい。最も好ましい水溶性抗酸化剤は、アスコルビン酸ナトリウムである。
【0102】
[本発明による飼料添加物中の最も好ましい抗酸化剤]
最も好ましいのは、単独の抗酸化剤としてα-トコフェロールを、飼料添加物の総重量に基づいて、0.05~10重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.5~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の範囲の量で使用することである。
【0103】
アルファ-トコフェロールとアスコルビン酸ナトリウムとの混合物が抗酸化剤として使用する場合、アルファ-トコフェロールとアスコルビン酸ナトリウムとの重量比は、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは3:1~1:3、さらにより好ましくは2.5:1~1:2、最も好ましくは2:1~1:1.5の範囲である。
【0104】
[本発明による飼料添加物]
飼料添加物は、液体(=分散体)形態であっても固体形態であってもよい。
【0105】
本発明による好ましい固体飼料添加物の組成を以下の表1に示す。表1には成分及びそれらの量を示す。量は重量%で示され、吸収剤を含む飼料成分の総重量に基づいている。全成分の量は、合計で100%の総重量になる。
【0106】
1つの成分の各単一の好ましい量は、任意の他の成分の各好ましい単一の量と組み合わせることができることが理解される。
【0107】
吸収剤を含む好ましい飼料添加物は、化合物a)~d)の総量が、吸収剤の重量を含まない飼料添加物の乾燥物の総重量に基づいて、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%であるものである。
【0108】
【表1】
【0109】
[本発明による飼料添加物の好ましい実施形態]
有利には、本発明の飼料添加物は、殺虫剤残留物のレベルを増加させるという理由から議論されている蜜蝋を含まない。好ましくは、飼料添加物はまた、例えばゼラチンなどの動物起源の成分を全く含まない。
【0110】
吸収剤を含む、本発明による好ましい固体飼料添加物の組成を、以下の表2に列挙する。全成分の総量は飼料添加物の総重量に基づいており、合計で100重量%になる。1つの成分の各単一の好ましい量は、任意の他の成分の各好ましい単一の量と組み合わせることができることが理解される。
【0111】
【表2】
【0112】
デキストリンの代わりに、グルコースシロップ又は乾燥グルコースシロップを変性OSAデンプンと一緒に使用することもできる。
【0113】
表2によるさらなる好ましい飼料添加物は、化合物a)~d)の総量が、吸収剤を除く飼料添加物の総重量に基づいて、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%である飼料添加物である。
【0114】
飼料添加物が液体である場合、それらの成分の量は同じ相対量の飼料添加物を有する飼料添加物を得るために、それに応じて調節されなければならない(表1及び2も参照)。前記液体飼料添加物中の水の量は、液体飼料添加物の総重量に基づいて、好ましくは35~70重量%の範囲、より好ましくは40~65重量%の範囲、さらにより好ましくは45~60重量%の範囲、最も好ましくは50~55重量%の範囲である。
【0115】
[本発明の方法]
本発明はまた、以下の工程を含む、上記の全ての選択を有する飼料添加物の製造方法を対象とする:
i)リグノスルホン酸塩及び化合物c)及び任意選択で水溶性抗酸化剤を水に溶解することによってマトリックスを提供する工程;
ii)脂溶性ビタミン及び任意選択で脂溶性抗酸化剤を有機溶媒に溶解することによって活性相を提供する工程;
iii)工程i)で得られたマトリックスと工程ii)で得られた活性相とを混合して分散液を得る工程;
iv)工程iii)で得られた分散液中の活性相の液滴を粉砕し、有機溶媒を除去して分散液を得る工程;
v)工程iv)で得られた前記分散液を吸収剤の存在下で乾燥させて、飼料添加物を得る工程。
【0116】
飼料添加物は、液体又は固体の形態で使用することができる。液体の形態は、工程iv)の後に得られ、固体の形態は工程v)の後に得られる。好ましくは、本発明の飼料添加物が固体形態で使用される。
【0117】
単一の工程を以下により詳細に開示する。
【0118】
[工程i)]
リグノスルホン酸塩b)、化合物c)及び水溶性抗酸化剤d)(存在する場合)の量は、それぞれ工程i)~iv)及びi)~v)を行った後に得られる分散液又は飼料添加物中のこれらの化合物の最終量が上述した通りとなるように選択される。
【0119】
好ましくは、この工程は、25~70℃の範囲の温度で、より好ましくは30~65℃の範囲の温度で、さらにより好ましくは40~62℃の範囲の温度で、最も好ましくは50~60℃の範囲の温度で行われる。
【0120】
[工程ii)]
脂溶性ビタミンa)及び脂溶性抗酸化剤d)(存在する場合)の量は、それぞれ工程i)~iv)及び工程i)~v)を行った後に得られる分散液又は飼料添加物中のこれらの化合物の最終量が上述した通りとなるように選択される。
【0121】
好ましくは、有機溶媒の量及び溶解温度は、脂溶性ビタミンa)及び脂溶性抗酸化剤d)(存在する場合)を完全に溶解するように選択される。通常、溶液を得るためには、この工程で存在する全ての化合物を混合したときに得られる懸濁液を加熱する必要がある。
【0122】
好適な有機溶媒の例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-メトキシ-2-ブタノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びメチルtert-ブチルエーテルである。
【0123】
懸濁液を加熱する温度は、例えば、40~90℃の範囲であり、より好ましくは、温度は50~80℃の範囲である。
【0124】
[工程iii)]
好ましくは、この工程は、30~70℃の範囲の混合温度で、より好ましくは35~65℃の範囲の混合温度で、さらにより好ましくは40℃~60℃の範囲の混合温度で行われ、エマルションを得る。
【0125】
[工程iv)]
粉砕は、ロータ-ステータ装置又は高圧ホモジナイザー又はその両方を使用することによって達成することができる。当業者に知られる他の装置も使用することができる。
【0126】
ロータ-ステータ装置及び/又は高圧ホモジナイザーが使用される場合、好ましくは70~1000barの範囲、より好ましくは100~300barの範囲の圧力損失が適用される。
【0127】
有機溶媒は、例えば、ロータリーエバポレーター又は薄膜エバポレーターカスケードを使用することによって除去し得る。当業者に知られる他の方法も適用可能である。
【0128】
[工程v)]
乾燥工程により、分散液は固体形態に変換される。
【0129】
固体形態への変換は、吸収剤が使用される当業者に知られる任意の方法によって、好ましくは粉末捕捉技術によって達成することができ、それによれば、噴霧された分散液滴が、デンプンなどの吸収剤(いわゆる「捕捉媒体」)によって捕捉され、乾燥される。
【0130】
好適な吸収剤としては、トウモロコシデンプン、及び他の植物源由来のデンプン、シリカ、修飾シリカ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二リン酸二カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、タルク、カオリン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はこれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、デンプン(すなわち、トウモロコシデンプン及び他の植物源由来のデンプン)、シリカ、リン酸三カルシウム及び疎水性修飾シリカであり、トウモロコシデンプン、又はワキシーコーン、コムギ、タピオカ、エンドウ及びジャガイモなどの他の植物源由来のデンプンが特に好ましい。
【0131】
本発明の別の実施形態では、固体形態への変換を、吸収剤を使用しない当業者に知られた任意の方法、例えば、噴霧乾燥、流動層造粒と組み合わせた噴霧乾燥、噴霧乾燥によって達成することができる。得られた飼料添加物は吸収剤を含まず、成分量及びそれらの範囲は上記と同じであるが、吸収剤の重量なしの飼料添加物の総重量に基づく。
【0132】
[本発明の飼料添加物の特性]
好ましくは、本発明による飼料添加物の内部相、すなわち、工程iv)後の液体飼料添加物の内部相、又は工程v)後の固体飼料添加物の内部相は、脱イオン水中に再分散された場合、特に粒子分析器Delsa(商標)Nano S(Beckmann Coulter、New Castle、DE、USA)を使用して動的光散乱により測定して、100~300nmの範囲、好ましくは120~250nmの範囲、より好ましくは130~230nmの範囲の粒径を有する。すなわち、粒子は上記の範囲内の正規化強度分布による平均直径を有する。
【0133】
[本発明による分散液]
本発明はまた、工程iv)を実施した後に得られる分散液、並びに以下の分散液であって、
-少なくとも脂溶性ビタミン;
-少なくともリグノスルホン酸塩;
-≧10重量%の量の、ヘキソースダイマー、修飾ヘキソースダイマー、ヘキソースオリゴマー、修飾ヘキソースオリゴマー、ヘキソースポリマー、修飾ヘキソースポリマー、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つの化合物;
-少なくとも0~15重量%の範囲の量の抗酸化剤
を含み;
前記分散液中のエトキシキンの量は≦0.5重量%であり;且つ
前記分散液中のブチル化ヒドロキシトルエンの量は≦0.5重量%であり;
全ての量は前記分散液の乾燥物質の総重量に基づく
分散液を対象とする。
【0134】
分散液中の水の量は、分散液の総重量に基づいて、分散液中のその最終量が好ましくは40~65重量%の範囲、より好ましくはその最終量が45~60重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が50~55重量%の範囲となるように選択される。
【0135】
分散液中の脂溶性ビタミンの量は、分散液中のその最終量が、分散液の乾燥物質の総重量に基づいて、好ましくは1.0~40重量%の範囲、より好ましくはその最終量が5.0~35重量%の範囲、さらにより好ましくはその最終量が10~30重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が15~25重量%の範囲となるように選択される。
【0136】
リグノスルホン酸塩の量は、分散液中のその最終量が、分散液の乾燥物質の総重量に基づいて、好ましくは5.0~55重量%の範囲、より好ましくはその最終量が5~50重量%の範囲、さらにより好ましくはその最終量が5~45重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が10~40重量%の範囲となるように選択される。
【0137】
化合物c)の量は、分散液中のその最終量が、分散液の乾燥物質の総重量に基づいて、好ましくはその最終量が15~70重量%の範囲、より好ましくはその最終量が20~65重量%の範囲、最も好ましくは20~45重量%の範囲となるように選択される。
【0138】
抗酸化剤の総量は、分散液中のその最終量が、分散液の乾燥物質の総重量に基づいて、好ましくは0.1~12重量%の範囲、より好ましくはその最終量が0.5~10重量%の範囲、最も好ましくはその最終量が1~8重量%の範囲となるように選択される。
【0139】
分散液の粒径は、固体/乾燥飼料添加物について上記したものと同じである。
【0140】
成分a)~c)、抗酸化剤及び吸収剤についての選択もここで適用される。
【0141】
ブルックフィールド粘度計を用いて50℃で測定された40~50重量%の範囲の含水量を有する分散液の粘度は、好ましくは80~140cPsの範囲、より好ましくは90~135cPsの範囲、さらにより好ましくは95~130cPsの範囲、最も好ましくは100~125cPsの範囲である。
【0142】
[本発明による飼料]
本発明はまた、上記の選択を有する本発明による飼料添加物を含む飼料を対象とする。飼料(又は「飼料原料」)は、加工されていようと部分加工されていようと未加工であろうと、動物への経口給餌に使用することを意図した、添加物を含む任意の物質又は製品を意味する。
【0143】
本発明の文脈における飼料は特に、スターター、グロワー、フィニッシャーを含むブロイラー;スターター、グロワー(若メンドリ)、レイヤー及び雄ブリーダーを含むブロイラーブリーダー用;レイヤー及び他の家禽(例えば、メンドリ及びアヒルレイヤー、レイヤーブリーダー、アヒル及びガチョウ、ヤマウズラ、ウズラ及びキジ、ダチョウ及びエミュー)用;スターター、グロワー、フィニッシャーを含むシチメンチョウ用;スターター、グロワー、レイヤー及び雄ブリーダーを含むシチメンチョウブリーダー用;子牛、代用乳、若雌牛、肉牛、育種雄牛、ヒツジ及びヤギを含む反芻動物用;ウマ、特に子馬、レジャー馬、競走馬、雌馬及び種馬用;ウサギ用;ミンク及びキツネ用、肥育豚:プレスターター、スターター、グロワー、フィニッシャー;ブリーダー:代替未経産ブタ、雌ブタ、雄ブタを含むブタ用、並びにペット、特にイヌ、ネコ用飼料である。
【0144】
飼料添加物及び脂溶性ビタミンの量は、それぞれ、特定の動物種及びその年齢に応じて、その地域の規制ガイドラインに従う。
【0145】
補充ガイドラインでは、ビタミンA及びDの量は国際単位(「I.U.」)で示す。
【0146】
飼料中の活性成分が系統的な方法で確実に伝達されるようにするため、脂溶性ビタミンの普遍的な単位として「I.U.」を使用する。これは、様々な量の脂溶性ビタミンを有する異なる形態のビタミンが存在するからである。
【0147】
本発明による脂溶性ビタミンを含む飼料添加物は、通常、プレミックスの形態で、すなわち、他のビタミン又はそれらの製剤及びミネラルなどの他の微量栄養素との混合物の形態で飼料に添加される。飼料中のプレミックス含有量は、多くの種で1重量%未満である。
【0148】
有利には、リグノスルホン酸塩、特にデキストリンなどのデンプン加水分解物、及び特にOSAデンプンなどの修飾食品デンプンを含む本発明による飼料添加物は茶色を示し、これは飼料添加物をその同じ色を示すプレミックスに特に適したものにする。
【0149】
有利には、リグノスルホン酸塩、特にデキストリンなどのデンプン加水分解物、特にOSAデンプンなどの修飾食品デンプン及び天然デンプンを、好ましくは(1~3):1:(2~6):(1-3)の重量比で含む本発明による飼料添加物は黄色を示し、これは飼料添加物をその同じ色を示す子牛用代用乳に特に適したものにする。
【0150】
飼料に含まれる必要がある脂溶性ビタミンを含む飼料添加物の量は、飼料の活性成分及び最終飼料中の脂溶性ビタミンの目標用量に基づいて、前記含有レベルを考慮して計算される。
【0151】
脂溶性ビタミンの換算係数は以下の通りである:
1I.U.のビタミンAは0.344μgの酢酸ビタミンAに相当する;
1I.U.のビタミンDは、0.025μgのビタミンDに相当する;
1gのビタミンK(メナジオン)は、メナジオン重亜硫酸ナトリウム(「MSB」)2.0g及びメナジオンニコチンアミド重亜硫酸塩(「MNB」)2.3gに相当する;
1gのビタミンEは、酢酸DL-α-トコフェリル1.0gに相当する。
【0152】
以下の表3は、空気乾燥飼料1kg当たりに添加された脂溶性ビタミンの量を示す。正確な量は、動物の相/年齢、動物種、及び法的な局所限界などのいくつかの要因に依存する。
【0153】
【表3】
【0154】
以下に、本発明の飼料添加物が添加され得る飼料の非限定的な例を示す。
【0155】
[家禽用飼料]
家禽用飼料は地域によって異なる。以下の表I及びIIに、ヨーロッパ(Europe)及びラテンアメリカ(Latin America)における食餌の典型的な例を示す。これらの食餌には、コムギ、ライムギ、トウモロコシ(maize)/トウモロコシ(corn)などの穀類、NaClなどのミネラル、ダイズ油などの植物油、アミノ酸及びタンパク質が含まれる。
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
[ペットフード]
ペットフードは、目標とする栄養素の仕様を満たすために、複数の成分の組み合わせを使用して、栄養素の仕様を満たすように処方されている。
【0159】
家禽ミールは例えば、ドッグフード及びキャットフードにおいて一般的に見出される成分である。
【0160】
完全且つバランスのとれたドッグフード又はキャットフードの栄養素仕様は、AAFCO(アメリカ飼料検査官協会(American Association of Feed Control Officials))によって提供されるガイドラインを満たすか、又はそれを超えている。ペットフードの成分組成は、任意の合法の飼料成分を含むことができるので、組み合わせの数は全く無限とはいえないがそれに近い。ドッグフード及びキャットフードに使用される成分のいくつかの例は、以下の表IIIに見出すことができる。
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
[豚用飼料]
ここでは、NATIONAL SWINE NUTRITION GUIDE、2010が参照され、2つの非限定的な例を以下に示す。
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
[本発明によるさらなる実施形態]
本発明はまた、ヒトを除く動物、特に前記の動物に脂溶性ビタミンを補充するための上記の選択を有する本発明による飼料添加物の使用、並びにヒトを除く動物、特に前記の動物に脂溶性ビタミンを補充するための上記の選択を有する本発明による飼料の使用を対象とする。
【0167】
本発明のさらなる実施形態は、上記の選択を有する本発明による飼料添加物、又は上記の選択を有する本発明による飼料をヒト以外の動物に投与することによって、前記動物に脂溶性ビタミンを補充する方法である。
【0168】
これによって、酢酸ビタミンA又はビタミンD3又はその両方が補充されることが特に好ましい。
【0169】
本発明を、以下の非限定的な実施例においてさらに説明する。
【0170】
[実施例]
[実施例1~4:酢酸ビタミンAを含む本発明による飼料添加物の調製]
使用した成分及びその量を表4に、飼料添加物の特性を表5に示す。
【0171】
化合物c)として、OSAデンプンとデキストリン黄色との混合物が使用され、さらに天然デンプンが含まれてもよい。
【0172】
化合物b)として、(Borregaard Ligno Tech、ノルウェーから市販されているような)リグノスルホン酸カルシウム)が使用され、脂溶性抗酸化剤としてdl-α-トコフェロールが使用され、水溶性抗酸化剤としてアスコルビン酸ナトリウムが使用される。
【0173】
化合物b)、c)及び水溶性抗酸化剤を脱イオン水に溶解して、いわゆる「マトリックス」を得る。
【0174】
結晶性酢酸ビタミンA及び脂溶性抗酸化剤を、結晶が完全に溶融するまで、水浴中で撹拌しながら65℃で加熱して、いわゆる「活性相」を得る。
【0175】
続いて、ロータ-ステータホモジナイザーを用いて、活性相を5500rpmでマトリックス中に予備乳化する。その後、エマルションをさらに6000rmpで30分間乳化する。
【0176】
続いて、エマルションを捕捉媒体(流動化デンプン又はシリカ)中に噴霧する。固形剤は45~60分間捕捉媒体中に留まり、ビーズレットが得られる。乾燥後、乾燥したビーズレットを篩分けし、160~630μmの範囲の粒径を有する画分をさらなる試験(安定性、プロセス損失など)に使用する。
【0177】
【表10】
【0178】
[試作物を40℃、相対湿度75%に暴露するストレス試験における酢酸ビタミンAの安定性(実施例1~4による飼料添加物)]
120mgのアリコートを、有孔キャップ付きのプラスチックチューブに秤量する。したがってサンプルは、40℃、相対湿度75%の気候室内で4週間及び8週間貯蔵される間、その環境に曝露される。酢酸ビタミンAの総濃度を、それぞれの貯蔵時間でHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって測定する。簡単に記載すると、120mgの前述のアリコートを、200mgのBHT(ブチル化ヒドロキシチロソール)を含有するフラスコに移す。BHTは、分析手順中の酢酸ビタミンAのさらなる分解を防止する。続いて、試料を50℃で10mLの脱イオン水中に再分散させる。100mLのエタノール及び80mLのジクロロメタンを添加した後、混合物を室温で30分間保持する。その後、試料をジクロロメタンで200mLにし、10mLのアリコートを4000rpmで5分間遠心分離する。遠心分離したストック溶液の上清を、HPLC分析用の琥珀色ガラスバイアルに充填する。ビタミンA保持を、初期濃度に基づいて計算する。各試験を2回行う。結果の平均を表5に示す。精度は±5%である。出発値は100%である。結果は、酢酸ビタミンAの飼料添加物が両条件下で少なくとも2週間安定であることを示す。
【0179】
[プロセス損失]
固体粒子の酢酸ビタミンAプロセス損失を測定するために、以下の手順に従う。
100mgの乾燥ビーズレットを200mLメスフラスコに移す。
5mLの2wt%アンモニア溶液(Merck Group、独国(Germany))及び50mgのアミラーゼ(Merck Group、独国)をフラスコに加える。
フラスコを、70℃に設定した超音波水浴中で10分間加える。
その後、フラスコを室温まで冷却する。
エタノールをメスフラスコのメニスカスまで加えた後、メスフラスコを円滑に振り混ぜ、均質な分散液を得る。
次いで、2mLの分散液を回収し、HPLCに注入する。
【数1】
【0180】
[色測定]
色測定は、分光光度計以外で、ヒトの目による色の精神物理学的知覚に従って色値を表すことができる比色計(Hunter Lab Ultra Scan Pro)を用いて行われる。
【0181】
色測定は、CIEガイドライン(国際照明委員会(Commission International d’Eclairage))に従って行われる。値は平面座標L*a*b*として表すことができ、L*は明度の測定値であり、a*は赤-緑軸上の値であり、b*は黄-青軸上の値である。
【0182】
機器の設定:
カラースケール:CIE L*a*b*/L*C*h*
光源の定義:D65昼光相当
ジオメトリ:ディフューズ/10°
波長:400~800nmを走査
試料測定領域径:19.812mm(大)
校正モード:光沢を含む反射。
【0183】
【表11】
【国際調査報告】