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特表2022-551245ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20221201BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20221201BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221201BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20221201BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20221201BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A23L33/135
A61P13/12
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K35/747
A61K35/741
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519831
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 KR2020013379
(87)【国際公開番号】W WO2021066549
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122531
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435511
【氏名又は名称】コバイオラブズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】リ キウク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ソクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム テウク
(72)【発明者】
【氏名】ハン スンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ナム ボヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジミン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME14
4B065AA30X
4B065BA22
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC55
4C087BC56
4C087BC57
4C087BC58
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZC75
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】
本発明は、ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株およびその用途に関するものであり、本発明に係るラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株は、腎臓の炎症を減少させ、血中尿素窒素、クレアチニン、p-クレゾールなどの血中尿毒物質の濃度を減少させて腎臓を保護し、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および腎繊維化の抑制効果を示し、腎機能改善および慢性腎不全を始めとした腎疾患の予防および治療用途として有用に活用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC13518BPであるラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株。
【請求項2】
前記菌株は、配列番号1として表示される16s rDNA配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
請求項1の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する、食品用組成物。
【請求項4】
前記食品用組成物は、腎機能を改善することを特徴とする、請求項3に記載の食品用組成物。
【請求項5】
前記腎機能の改善が腎炎症の減少、尿毒物質の血中濃度の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復および/または腎線維化の減少によるものである、請求項4に記載の食品用組成物。
【請求項6】
請求項1の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する、動物用飼料用組成物。
【請求項7】
請求項1の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する、腎疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記腎疾患の予防または治療が腎炎症の減少、尿毒物質の血中濃度の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復および/または腎線維化の抑制によるものである、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記尿毒物質が血中尿素窒素、血中クレアチニンおよび/または血中p-クレゾールであることを特徴とする、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記腎疾患は、尿毒症、慢性腎不全、急性腎不全、亜急性腎不全、腎線維化症、糸球体腎炎、腎盂腎炎、間質性腎炎、蛋白尿、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、悪性腎硬化症、ループス腎炎、血栓性微小血管病症、移植拒絶、糸球体病症、腎臓肥大、腎臓増殖症、造影剤誘発性腎臓病、毒素誘発性腎損傷、酸素フリーラジカル媒介された腎臓病、多嚢胞性腎疾患、および腎炎で構成された群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
追加のプロバイオティクス菌株、菌株の培養物、菌株の破砕物、および菌株の抽出物で構成された群から選択される1種以上を追加として含有する、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記追加のプロバイオティクス菌株は、ラクトバチルスパラカゼイおよびラクトバチルスプランタラムから選択される1種以上である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記ラクトバチルスパラカゼイは、ラクトバチルスパラカゼイKBL382(寄託番号KCTC13509BP)であり、前記ラクトバチルスプランタラムは、ラクトバチルスプランタラムKBL396(寄託番号KCTC13278BP)である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、腎疾患の予防または治療方法。
【請求項15】
請求項1の菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含む、腎疾患の予防または治療用薬剤を製造するための組成物の用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株およびその用途に関するものであり、より詳しくは、新規のプロバイオティクスであるラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株、および前記菌株、この培養物、破砕物、および抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する腎疾患予防または治療用薬学的組成物、食品用組成物、および動物飼料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全(chronic kidney disease,CKD)は、世界的な保健問題として台頭している疾病であって、米国においては10人中1人の頻度として、国内においても全体の調査人口の13%が慢性腎不全を患っていると報告されている。慢性腎不全は、容易に可逆的な回復を期待することが困難であり、次第に腎機能が減少して慢性腎不全5期に入ると、末期腎不全の状態で透析や移植を準備しなければならない。
【0003】
現在まで知られている腎不全の治療は、腎機能の消失によって示される合併症を治療することに焦点が当てられているだけで、腎不全を根本的に回復させ得る薬はない。最近数十年間、腎不全への進行を防ぐ複数の薬剤が試みられてきたが、レニン-アンジオテンシンシステム(Renin―angiotensin system,RAS)を遮断する薬物程度だけが腎不全の悪化をある程度緩和させるだけで、未だこれを回復させるには臨床的に有用かつ明らかな薬剤はないのが実情である。
【0004】
腎不全が進行すると、尿毒物質(uremic toxin)が体に蓄積しつつ、複数の合併症が引き起こる。このような尿毒物質は、体内の炎症反応および酸化性ストレスを誘発し、血管の老化を促進するなど、主要な合併症の原因と見なされている(Cachofeiro V et al. Oxidative stress and inflammation, a link between chronic kidney disease and cardiovascular disease. Kidney Int Suppl 2008:S4―9; Wu J et al. The role of oxidative stress and inflammation in cardiovascular aging. Biomed Res Int 2014; 2014:615312)。尿毒物質としては、PCS(p-cresyl sulfate)、IS(indoxyl sulfate)、TMAO(trimethylamine-N-oxide)などがあり、慢性腎不全患者の場合、血清および尿におけるPCS、IS、TMAO水準が一般人よりも高いと報告されている(Ramezani A et al., Role of the Gut Microbiome in Uremia: A Potential Therapeutic Target. Am J Kidney Dis. 2016 67:483-498)。これらは、腸内細菌叢(microbiota)が食物に含まれたチロシン(またはフェニルアラニン)、トリプトファン、コリン(choline)を腸において分解して生成された代謝体であるp-クレゾール(cresol)、インドール(indole)、TMA(trimethylamine)が上皮細胞を通じて吸収された後に肝臓において代謝された二次代謝物である(下記図25参照)。
【0005】
このような尿毒物質が体内に蓄積する最も重要な原因は、腎排泄の減少である。しかし、尿毒物質の相当部分は、食物が経口を通じて吸収された後に腸内において発生する窒素分解産物(nitrogen waste product)であり、これは腸内環境および微生物によって影響を多く受ける。このような理由によって、「腸透析(enteri
c dialysis)」という概念が導入され、腸粘膜は、半透膜(semi-permeable membrane)の役割をし、一部老廃物を腸に排泄する役割もする。実際に、腸内から発生する尿毒物質の吸収を阻害するために開発された薬剤が臨床に使われており、リン結合製剤とカリウム低下抑制剤のような薬物は、リンまたはカリウムのような特定物質を腸において吸収されないように誘導する薬物である。また、AST-120(Kremezin(R),Kureha-Chemical Co., Tokyo,
Japan)は、炭素素材微細球体で構成された経口吸着剤として、腸内において発生する代表的な尿毒物質であるインドール系物質を吸着して便として排泄を誘導する薬物である。しかし、このような薬物は、大部分が消化不良感、悪心、嘔吐、便秘などの消化器系統の副作用が多く、薬物順応度は他の一般薬剤に比べ低い。従って、未だ透析または移植のほかに尿毒を除去し得る効率的な方法はない。
【0006】
プロバイオティクス(probiotics)は、腸内微生物の均衡に役立つ抗菌活性と酵素活性を有する微生物および前記微生物が生産する生産物をいう。さらに、プロバイオティクスは、乾燥細胞や発酵産物の形態としてヒトや動物に供給され、腸内細菌叢を改善する単一または複合菌株の形態の生菌と定義されている。プロバイオティクスが備えなければならない特性は、人間の腸内を生息地とし、非病原性、無毒性の特性を有し、腸に行く間に生き残らなければならない。さらに、伝達食品内において消費される前に生存率と活性を維持し、感染予防に使用される抗生物質に対して敏感でなければならず、抗生物質耐性を有するプラスミドを保有してはならない。また、腸内環境において、酸、酵素、胆汁に対する耐性を備えなければならない。最近、プロバイオティクスは、多様な健康機能改善効果が報告されつつ、既存の化合物に基づく治療剤を代替し得る主要な治療物質として脚光を浴びている。
【0007】
最近の多様な研究を通じて、健康な腸内微生物群集は、栄養および代謝、免疫反応の調節に重要な役割を行い、腸内微生物の不均衡は、肥満、2型糖尿病、炎症性腸疾患、心血管系合併症などの多様な疾患に関与するものとして報告された。慢性腎不全の場合も、患者の十二指腸(duodenum)や空腸(jejunum)において正常人にはみられない菌株の増殖が観察され、特に好気性菌株(aerobic bacteria)の過増殖がみられるが、一部の報告においては、EnterobacteriaまたはEnterococciのような菌株が血液透析患者において100倍以上増加すると報告された(Simenhoff ML et al. Biomodulation of the toxic and nutritional effects of small bowel bacterial overgrowth in end―stage kidney disease using freeze―dried Lactobacillus acidophilus. Miner Electrolyte
Metab 1996; 22:92-96; Hida M et al., Inhibition of the accumulation of uremic toxins in the blood and their precursors in the feces after oral administration of Lebenin, a lactic acid bacteria preparation, to uremic patients undergoing hemodialysis. Nephron 1996; 74:349-355)。また、慢性腎不全患者においては、腸内微生物環境の適切な均衡をとり、短鎖脂肪酸を生成して酵母、カビ、および有害細菌の感染を抑制し、多様なmetaboliteを分泌するものとして知られたLactobacilllusまたはBifidobacteria菌株が減少して、最終的に腸内不均衡(intestinal dysbiosis)が招かれるという報告がある(Koppe L et al., Probiotics and chronic kidney disease. Kidney Int 2015; 88:958―966.; Ramezani A & Raj DS. Th
e gut microbiome, kidney disease, and targeted interventions. J Am Soc Nephrol 2014; 25:657-670; Ranganathan N et al. Pilot study of probiotic dietary supplementation for promoting healthy kidney function in patients with chronic kidney disease. Adv Ther 2010; 27:634-647)。
【0008】
従って、慢性腎不全患者において不均衡になった腸内細菌の環境を健康な環境に転換させて、尿毒による合併症を減らし、腎機能を改善しようとする試みが最近報告された。 特に、実験的には、スプラーグドーリーラット(Sprague Dawley rat)を用いた5/6腎切除モデルにおいて、LactobacilllusおよびBifidobacteria菌株を含むprobioticsを16週間投与した場合、血中内の窒素レベルが減少して、probioticsを用いた腎機能の改善効果を期待されることになった(Ranganathan N et al. Probiotic amelioration of azotemia in 5/6th nephrectomized Sprague-Dawley rats. ScientificWorldJournal 2005; 5:652-660)。患者を対象とした臨床研究においても肯定的な結果を示したが、1996年の研究において8人の透析を受けている末期腎不全患者にLactobacillus菌株を経口で投与して血中dimethylamine(DMA)およびNitrosodimethylamineを報告して以来、慢性腎不全患者にprobioticsを投与した場合、腎不全の指標である血中尿素窒素レベル(BUN、blood urea nitrogen)を下げるものとして知られるようになった(Ranganathan N et al. Pilot study of probiotic dietary supplementation for promoting healthy kidney function in
patients with chronic kidney disease. Adv Ther 2010; 27:634-647; Ranganathan N et al. Probiotic dietary supplementation
in patients with stage 3 and 4 chronic kidney disease: a 6-month pilot scale trial in Canada. Curr Med Res Opin 2009; 25:1919-1930)。慢性腎不全患者を対象に最初に進めた無作為二重盲検研究において、probioticsとprebioticsを混合した腸溶被覆カプセル(enteric coated capsule)として製造して、慢性腎不全4期の患者に投与したところ、重要な腸内発生尿毒であるp-cresolの血中レベルが有意に減少したことを観察し、全体患者の血中からindoxyl sulfateのレベルが減少してはいなかったが、抗生物質に晒されなかった患者において有意に減少したことを観察した。また、腸内細菌分析において、Bifidobacteria菌株の有意な増加があり、腸内環境を改善させ得ることを報告した(Rossi M et al. Synbiotics Easing Renal Failure by Improving Gut Microbiology (SYNERGY): a Randomized Trial. Clin J Am Soc Nephrol 2016; 11:223-231)。
【0009】
これに関して、本発明者は、従来満足する程度の治療法がない慢性腎不全を始めとした腎疾患の治療のためにプロバイオティクスの研究に邁進し、その結果、新規のラクトバチルスアシドフィルス菌株が腎炎症の抑制、尿毒物質の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および腎線維化抑制の側面において卓越した効果を示して、腎機能の改善および腎疾患の治療または予防に有用であることを確認することによって、本発明を
完成することになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、腎機能の改善、または腎疾患の予防および治療に優れた効果を示す新規のラクトバチルスアシドフィルス菌株およびこの多様な用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、寄託番号KCTC13518BPであるラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する腎疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
本発明に係る薬学的組成物は、腎炎症の減少、尿毒物質の血中濃度の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および/または腎線維化の抑制を通じて腎疾患を予防または治療することができる。
【0014】
本発明において、前記尿毒物質は、血中尿素窒素、血中クレアチニン、および/または血中p-クレゾールを含み得る。
【0015】
本発明において、前記腎疾患は、尿毒症、慢性腎不全、急性腎不全、亜急性腎不全、腎線維化症、糸球体腎炎、腎盂腎炎、間質性腎炎、蛋白尿、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、悪性腎硬化症、ループス腎炎、血栓性微小血管病症、移植拒絶、糸球体病症、腎臓肥大、腎臓増殖症、造影剤誘発性腎臓病、毒素誘発腎損傷、酸素フリーラジカル媒介された腎臓病、多嚢胞性腎疾患、および腎炎で構成された群から選択され得るが、これに限定されない。
【0016】
本発明は、また、前記菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する食品用組成物を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する動物飼料用組成物を提供する。
【0018】
本発明の薬学的組成物は、本発明のラクトバチルスアシドフィルス菌株(KBL409)の腎機能改善効果を増強され得る追加のプロバイオティクス菌株、例えば、ラクトバチルスパラカゼイおよび/またはラクトバチルスプランタラムと共に併用投与され得る。好ましくは、前記追加のプロバイオティクス菌株は、ラクトバチルスパラカゼイKBL382(寄託番号KCTC13509BP)菌株および/またはラクトバチルスプランタラムKBL396(寄託番号KCTC13278BP)を含む。
【0019】
本発明は、また、前記菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、腎疾患の予防または治療方法を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記菌株、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含む、腎疾患の予防または治療用薬剤を製造するための組成物の用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】67種のラクトバチルスおよびラクトコッカス菌株のp-cresol分解能を比較した結果である。
図2】33種のビフィドバクテリウム菌株のp-cresol分解能を比較した結果である。
図3】高いp-cresol分解能を示す10種のラクトバチルス候補菌株のp-cresol分解能を比較した結果である。
図4】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の処理時間に係るp-cresol分解能を示した結果である。
図5】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株処理時のPBMCのIL-2、IL-4、IL-13、およびIL-17Aの発現量を確認した結果である。
図6】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株処理時のPBMCのIFN-γの発現量を確認した結果である。
図7】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株処理時のPBMCのIL-10の発現量を確認した結果である。
図8】慢性腎不全の動物モデルにおいて、ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の腎臓保護効果究明のための実験模式図である。
図9】アデニンおよびラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による腎機能の変化を示した結果である。
図10】アデニンおよびラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与によるアルブミン尿の変化を示した結果である。
図11】アデニンおよびラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による腎臓形態および腎線維化の変化を示した結果である:(A)対照群、(B)KBL409投与群、(C)アデニン飼料投与群、(D)アデニン飼料およびKBL409投与群。
図12】慢性腎不全誘導時のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与によるProcol1a、Acta2のmRNA発現変化を示した結果である。
図13】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与時の慢性腎不全誘導腎臓の線維化関連タンパク質指標の変化を示した結果である。
図14】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与時の腎臓内マクロファージ関連指標の変化を示した結果である。
図15】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による慢性腎不全誘導腎組織内のマクロファージの変化を免疫組織化学検査を通じて確認した結果である:(A)F4/80染色、(B)CD68染色。
図16】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による慢性腎不全誘導腎臓内のTlr4、Asc、Nlrp3、IL-18のmRNA発現変化を示した結果である。
図17】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による慢性腎不全誘導腎組織内のNRLP3活性度の変化を免疫組織化学検査を通じて確認した結果である。
図18】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与による慢性腎不全誘導腎臓内のミトコンドリアの形態変化を透過電子顕微鏡検査を通じて確認した結果である。
図19】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与時の慢性腎不全誘導モデルの全身性炎症反応の変化を示した結果である。
図20】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与に係る血中p-クレゾール濃度の変化を示した結果である:(A)大腸菌との比較(B)ラクトバチルスアシドフィルス菌株間の比較。
図21】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株投与に係る血中TMAO濃度の変化を示した結果である。
図22】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の単独投与、KBL409およびKBL382菌株の併用投与、KBL409およびKBL396菌株の併用投与による慢性腎不全誘導腎臓内のNlrp3、Pre-IL18のmRNA発現変化を示した結果である。
図23】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の単独投与、KBL409およびKBL382菌株の併用投与、KBL409およびKBL396菌株の併用投与による慢性腎不全誘導腎臓内のPpargc1a、TfamのmRNA発現変化、およびMfn1発現変化を示した結果である。
図24】ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の単独投与、KBL409およびKBL382菌株の併用投与、KBL409およびKBL396菌株の併用投与による慢性腎不全誘導腎臓内のFn、Procol1のmRNA発現変化、およびBax/Bcl2の比率変化を示した結果である。
図25】食物に含まれたチロシン、トリプトファン、コリンが腸内細菌叢(microbiota)および肝臓を通じて尿毒物質(uremic toxin)として代謝される経路を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
他の式として定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野において熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的には、本明細書において使用された命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0023】
本発明においては、人間由来の微生物の尿毒物質分解効果を確認して、腎機能の改善効果が卓越したラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株を選別したが、前記菌株の16SrDNAを分析した結果、前記菌株が従来公知されていない新規の菌株であることを確認した。
【0024】
従って、本発明は、一貫的に新規のプロバイオティクスであるラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株に関するものであり、前記菌株は、以下の配列番号1として表示される16s rDNA配列を含むことを特徴とする。
【0025】
<配列番号1>ラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株の16s rDNA配列
【0026】
これに関して、本発明においては、前記菌株に対する効能実験を進め、その結果、前記菌株は、腎炎症を減少させ、慢性腎不全の原因となる尿毒物質の分解効果が卓越するだけでなく、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および腎線維化の抑制効果を示して、腎機能の向上ないし腎疾患の治療または予防に卓越した効果を示すことを確認することができた。
【0027】
具体的には、本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株は、慢性腎不全の動物モデルにおいて、血中尿素窒素、血中クレアチニンおよび/または血中p-クレゾールなどの尿毒物質の濃度、および蛋白尿を著しく減少させるものとして示された。
【0028】
また、本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株は、腎線維化の指標であるProcol1aおよびActa2 mRNA発現量ならびにCollagen1、Fibronectin、α-SMA、およびVimentin発現量を著しく減少させ、組織病理学的検査を通じても腎不全の特徴である腎尿細管の拡張、腎尿細管細胞の扁平、尿細管間質の拡張および基質蓄積、そして、腎線維化の増加を緩和させることを確認することができた。
【0029】
さらに、本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株は、尿細管間質内のマクロファージの浸潤および腎臓内インフラマソームの発現を抑制するだけでなく、慢性腎不全時に発生するミトコンドリアの機能異常を回復させ、IL-6およびTNF-αを
抑制することによって、慢性腎不全モデルにおける全身性炎症反応を減少させるものとして確認された。
【0030】
従って、本発明は、他の観点において、ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上の薬学的有効量を含有する腎疾患の治療または予防のための薬学的組成物に関する。
【0031】
本発明の薬学的組成物は、生菌の菌体、乾燥菌株の形態、菌株の培養物、菌株の破砕物、またはこれらの組み合わせを薬剤学的に許容可能な担体または媒体と組み合わせた組成物として提供され得る。用いられる担体または媒体は、溶媒、分散剤、コーティング、吸収促進剤、制御された放出剤(即ち、徐放剤)、および1種以上の不活性賦形剤(デンプン、ポリオール、顆粒剤、極微細セルロース(microfine cellulose)、微結晶型セルロース、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを含む)などを含むことができる。必要な場合、開示された組成物の錠剤の剤形は、標準水性或いは非水性手法によってコーティングされてもよい。薬剤学的に許容可能な担体および賦形剤、また、前記追加の成分の例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、抗微生物剤、およびコーティング剤を挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続、または遅延された放出を提供できるように当業界に公知された方法を使用して剤形化され得る。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であり得る。また、本発明に係る腎疾患の予防または治療用組成物は、経口、経皮、皮下、静脈、または筋肉を含む複数の経路を通じて投与され得、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、および患者の重症度などの複数の因子によって適切に選択され得、本発明に係る腎疾患の予防または治療用組成物は、腎機能の改善ないし腎疾患の予防または治療する効果を有する公知の薬剤、例えば、レニン-アンジオテンシンシステム遮断剤と併用して投与することができる。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、特に、経口用単位の剤形として、腸溶被覆された腸溶性製剤として提供され得る。本明細書における「腸溶被覆」は、胃酸によっては分解されず被覆が維持されるが、小腸においては充分に分解されて活性成分が小腸内に放出され得るようにする、薬剤学上の許容可能なすべての種類の公知の被覆を含む。本発明の「腸溶被覆」は、pH1のHCl溶液のような人工胃汁を36℃ないし38℃で接触させると、2時間以上そのまま維持され、好ましくは、以後、pH6.8のKHPO緩衝溶液のような人工腸汁において30分以内に分解される被覆を指称する。
【0034】
本発明の腸溶被覆は、1つのコア(core)に約16ないし30、好ましくは16ないし20または25mg以下の量で被覆される。本発明の腸溶被覆の厚さが5ないし100μm、好ましくは20ないし80μmである場合が腸溶被覆として満足な結果を示す。腸溶被覆の材料は、公知の高分子物質の中から適宜選択される。適当な高分子物質は、多数の公知文献(L.Lachmanほか、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy,3版,1986,pp.365-H.Suckerほか、Pharmazeutische Technologie,Thieme,1991,pp.355-359;Hagers Handbuchder pharmazeutischen Praxis,4版,Vol.7,pp.739-742、および766-778,(SpringerVerlag,1971);およびRemington‘s Pharmaceutical Sciences,13版,pp.1689-1691(Mack Publ.,Co.,1970))に列挙されており、セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル、アクリル樹脂のメチルアクリ
レート共重合体、およびマレイン酸、ならびにフタル酸誘導体の共重合体がこれらに含まれ得る。
【0035】
本発明の腸溶被覆は、腸溶被覆溶液をコアに噴霧する通常的な腸溶被覆法を使用して製造され得る。腸溶被覆工程に使用される適当な溶媒としては、エタノールのようなアルコール、アセトンのようなケトン、ジクロロメタン(CHCl)のようなハロゲン化炭化水素溶媒であり、これらの溶媒の混合溶媒が使用されてもよい。ジ(di)-n-ブチルフタレートまたはトリアセチンのような軟化剤を1対約0.05ないし約0.3(コーティング材料対軟化剤)の比率として被覆溶液に添加する。噴霧過程を連続的に遂行することが適切であり、コーティングの条件を考慮して噴霧量を調整することが可能である。噴霧圧は、多様に調整することができ、一般的に約1ないし約1.5バール(bar)の噴霧圧で満足できる結果が得られる。
【0036】
本発明において、腎疾患とは、腎臓が排泄、調節、代謝、および内分泌的機能を正常的に遂行できず、全体的に機能が低下するか、異常を招く状態をすべて指称し、慢性的な全ての腎臓病が含まれ、明確ではなく器質的変化と糸球体の濾過機能が低下していく疾患をすべて含む。腎臓の損傷による機能の低下は、腎臓および関連構造の増大、腎臓の萎縮、体液量の変化、電解質の不均衡、代謝性アシドーシス、ガス交換障害、抗感染症機能の損傷、尿毒性毒素の蓄積などを招く。
【0037】
本発明において、前記腎疾患は、腎炎症の減少、血中尿素窒素、クレアチニンまたはp-クレゾールなどの尿毒物質の血中濃度の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復および/または腎線維化の抑制を通じて改善、治療、または予防され得る疾患をいう。具体的には、尿毒症、慢性腎不全、急性腎不全、亜急性腎不全、腎線維化症、糸球体腎炎、腎盂腎炎、間質性腎炎、蛋白尿、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、悪性腎硬化症、ループス腎炎、血栓性微小血管病症、移植拒絶、糸球体病症、腎臓肥大、腎臓増殖症、造影剤誘発性腎臓病、毒素誘発性腎損傷、酸素フリーラジカル媒介された腎臓病、多嚢胞性腎疾患、および腎炎などを含むが、これに限定されない。
【0038】
本発明において、用語の「治療」は、別に言及されない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の1つ以上の症状を逆転、または緩和若しくはその進行を抑制することを意味する。
【0039】
また、本発明において、用語の「予防」は、疾病を縮小させる防止(averting)、遅延(delaying)、妨害(impeding)、または阻害(hindering)に関する。
【0040】
本発明に係る腎疾患の予防または治療用組成物は、薬学的に有効な量のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株を単独で含むか、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤と共に含むことができる。
【0041】
本発明において、用語の「有効量(または、薬学的有効量)」は、好ましい効果を伝達するのには極めて充分であるが、医学的判断の範囲内において深刻な副作用を充分に防止する程度の少ない量を意味する。本発明の組成物によって体内に投与される微生物の量は、投与経路、投与対象を考慮して適切に調整され得る。
【0042】
本発明の組成物は、対象個体に1日1回以上投与され得る。単位投与量は、ヒト被験者および他の哺乳動物のための単位投与に適合して物理的に分離された単位を意味し、各単位は、適切な薬剤学的担体を含み、治療効果を示す本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の予定された量を含有する。成人患者の経口投与用投与単位は、本発
明の微生物0.001g以上を含有することが好ましく、本発明の組成物の経口投与量は、1回に0.001ないし10g、好ましくは0.01ないし5gである。1つの例として、本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株の薬学的有効量は、0.01ないし10g/1日であり、1×10ないし1×1010CFU/日の投与量で投与され得る。しかし、投与量は、患者の疾患の深刻度および共に使用される微生物と補助有効成分によって可変的である。また、1日の総投与量を複数の回数に分割して必要に応じて連続的に投与することができる。従って、前記投与量の範囲は、如何なる方法としても本発明の範囲を制限しない。
【0043】
本発明は、他の観点において、ラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株、前記菌株の菌体、前記菌株の培養物、前記菌株の破砕物、および前記菌株の抽出物で構成された群から選択された1種以上を含有する食品用組成物に関する。
【0044】
前記食品用組成物は、腎機能改善のために使用されることを特徴とする食品用組成物、好ましくは健康機能食品であり得る。また、このような腎機能の改善は、腎炎症の減少、尿毒物質の血中濃度の減少、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および/または腎線維化の減少によって達成され得る。
【0045】
前記食品用組成物は、腎機能の改善に効果のある食品、例えば、食品の主原料、副原料、食品添加剤、健康機能食品、または機能性飲料として容易に活用することができるが、これに限定されない。
【0046】
前記食品用組成物とは、栄養素を1つまたはそれ以上を含有している天然物または加工品を意味し、好ましくは、ある程度の加工工程を経て直接食べられる状態となったものを意味し、通常的な意味として、食品、食品添加剤、健康機能食品、および機能性飲料をすべて含むものを言う。
【0047】
本発明に係る前記食品用組成物を添加することができる食品としては、例えば、各種食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、機能性食品などがある。追加として、本願発明において、食品には特殊栄養食品(例、調製乳類、乳・幼児食など)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、ムク(ソバ・緑豆・ドングリなどの粉を沈殿させて煮かため、ゼリー状にした食品)類、麺類(例、ラーメン類、そば類など)、パン類、健康補助食品、調味食品(例、醤油、味噌、コチュジャン、混合醤など)、ソース類、菓子類(例、スナック類)、キャンディー類、チョコレート類、ガム類、アイスクリーム類、乳加工品(例、発酵乳、チーズなど)、その他加工食品、キムチ、漬物食品(例、各種キムチ類、チャンアチなど)、飲料(例、果汁飲料、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類など)、天然調味料(例、ラーメンスープなど)を含むが、これに限定されない。前記食品、飲料、または食品添加剤は、通常の製造方法として製造され得る。
【0048】
前記健康機能食品とは、食品に物理的、生化学的、生物工学的手法などを用いて該当食品の機能を特定の目的に作用、発現するように付加価値を付与した食品群や、食品組成が有する生体防御リズム調節、疾病防止と回復などに関する体内調節機能を生体に対して充分に発現するように設計して加工した食品を意味する。前記機能性食品には、食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができ、機能性食品の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤、および希釈剤をさらに含むことができる。
【0049】
本発明において、前記機能性飲料とは、渇きを解消するか、味を楽しむために飲むものの総称を意味し、指示された比率で必須成分として腎機能改善のための前記組成物を含むことのほかには、他の成分には特別な制限はなく、通常の飲料のように複数の香味剤また
は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0050】
さらに、前記記述したもの以外に、本発明の食品用組成物を含有する食品は、複数の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができ、前記成分は、独立的または組み合わせて使用することができる。
【0051】
本発明の食品用組成物を含有する食品において、前記本発明に係る組成物の量は、全体の食品重量の0.001重量%ないし100重量%として含むことができ、好ましくは1重量%ないし99重量%として含むことができ、飲料の場合、100mLを基準として0.001gないし10g、好ましくは0.01gないし1gの比率として含むことができる。しかし、健康および衛生を目的とするか、健康調整を目的とする長期間摂取の場合には前記範囲以下であってもよく、有効成分は安全性の面において如何なる問題もないので、前記範囲以上の量として使用され得るため、前記範囲に限定されるものではない。
【0052】
本発明の食品用組成物は、前記ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株を独立的または許容可能な担体に添加するか、人間または動物が摂取するのに適合した組成物の形態として製造され得る。即ち、他のプロバイオティクス細菌を含有しない食品および既にいくつかのプロバイオティクス細菌を含有した食品に添加して使用され得る。例えば、本発明の食品を製造することにおいて、本発明の菌株と共に使用可能な他の微生物は、人間や動物が摂取するのに適合し、摂取時の病原性有害細菌を抑制するか、哺乳動物腸管内の微生物の均衡を改善させ得るプロバイオティクス活性を有するものであり、特に限定されない。そのようなプロバイオティクス微生物の例としては、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ピチア(Pichia)、およびトルロプシス(Torulopsis)を含む酵母(yeast)、アスペルギルス(Aspergillus)、クモノスカビ(Rhizopus)、ムコール(Mucor)、ペニシリン(Penicillium)などのようなカビ、およびラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ラクトコッカス(Lactococcus)、バシラス(Bacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)属に属する細菌などがある。適当なプロバイオティクス微生物の具体的な例としては、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、バチルスコアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルスリチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルスサブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウムビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウムインファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウムロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカスフェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカスフェカーリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスアリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルスカゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルスカルバタス(Lactobacillus
curvatus)、ラクトバチルスデルブリッキィ(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスファルシミニス(Lactobacillus
farciminus)、ラクトバチルスガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルスヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルスサケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカスアシジラクティシ(Pediococcus acidilactici)などが挙げられる。好ましくは、優れたプロバイオティクス活性を有しつつ、腎機能の改善効果に優れたプロバイオティクス微生物を本発明の食品用組成物に追加として含むことによって、その効果をさらに増進させ得る。本発明の食品用組成物に使用され得る担体の例としては、増量剤、高繊維添加剤、カプセル化剤、脂質などであり得、このような担体の例は、当業界に充分に公知されている。本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株は、凍結乾燥されるか、カプセル化された形態、または培養懸濁液や乾燥粉末形態であり得る。
【0053】
本発明の組成物は、また、前記菌株を含有する動物飼料用添加剤またはこれを含有する動物飼料用組成物の形態として提供され得る。
【0054】
本発明の動物飼料用添加剤は、乾燥または液体状態の製剤形態であり得、前記ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株以外に非病原性の他の微生物をさらに含んでもよい。添加することができる微生物としては、例えば、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、および糖転換酵素を生産できるバチルスズブチリス(Bacillus subtilis)のような古草菌、牛の胃のような嫌気的条件において生理的活性および有機物分解能のあるラクトバチルス(Lactobacillus)菌株、家畜の体重を増加させ、牛乳の産乳量を増やし、飼料の消化吸収率を高める効果を示すアスペルギルスオリゼー(Aspergillus oryzae)のような糸状菌(Slyter,L.L.J.Animal Sci.1976,43.910-926)およびサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のような酵母(Johnson,D.E et al.J.Anim.Sci.,1983,56,735-739;Williams,P.E.V.et al,1990,211)などが使用され得る。
【0055】
本発明の動物飼料用添加剤は、前記ラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株以外に1つ以上の酵素製剤をさらに含んでもよい。添加される酵素製剤は、乾燥または液体状態がすべて可能であり、酵素製剤としては、リパーゼ(lipase)のような脂肪分解酵素、フィチン酸(phytic acid)を分解してリン酸塩とイノシトールリン酸塩を作るフィターゼ(phytase)、デンプンとグリコーゲン(glycogen)などに含まれているα-1,4-グリコシド結合(glycoside bond)を加水分解する酵素であるアミラーゼ(amylase)、有機リン酸エステルを加水分解する酵素であるホスファターゼ(phosphatase)、セルロース(cellulose)を分解するカルボキシメチルセルラーゼ(carboxymethylcellulase)、キシロース(xylose)を分解するキシラーゼ(xylase)、マルトース(maltose)を2分子のグルコース(glucose)に加水分解するマルターゼ(maltase)、およびサッカロース(saccharose)を加水分解してグルコース-フルクトース(glucose-fructose)混合物を作る転換酵素(invertase)などのような糖生成酵素などが使用され得る。
【0056】
本発明のラクトバチルスアシドフィルスKBL409菌株を動物飼料用添加剤として使用することにおいて、飼料用原料としては、各種穀物および大豆タンパクを始めとしたピーナッツ、エンドウ豆、テンサイ、パルプ、穀物副産物、動物内臓粉、および魚粉などが使用され得、これらは、加工されないか、または加工されたものを制限なく使用すること
ができる。加工過程は、必ずこれに限定されるものではないが、例えば、飼料原料が充填された状態で加圧下に一定の排出口に圧縮される工程で、タンパク質の場合には変性されて利用性が増加する押出成形(extrusion)を使用することが好ましい。押出成形(extrusion)は、熱処理過程を通じてタンパク質を変性させ、抗酵素因子を破壊するなどの利点を有する。また、大豆タンパク質のような場合には、押出成形を通じてタンパク質の消化率を向上させ、大豆に存在するタンパク質分解酵素の阻害剤のうちの1つであるトリプシン阻害剤(trypsin inhibitor)のような抗栄養因子を不活性化させ、タンパク質分解酵素による消化率の向上を増加させて、大豆タンパクの栄養的価値を増加させることができる。
【0057】
一方、本発明の薬学的、食品用、または動物飼料用組成物は、KBL409菌株の腎機能改善効果を増強させ得る追加のプロバイオティクス菌株を追加で含むか、または本発明の組成物を追加のプロバイオティクス菌株を含む別途の組成物と同時または順次的に併用投与することができる。
【0058】
KBL409菌株の腎機能改善効果を増強させ得る追加のプロバイオティクス菌株は、好ましくは、ラクトバチルスパラカゼイおよびラクトバチルスプランタラムを含み、より好ましくは、前記追加のプロバイオティクス菌株は、下記配列番号2の16s rDNA配列を有するラクトバチルスパラカゼイKBL382(寄託番号KCTC13509BP)菌株および/または下記配列番号3の16s rDNA配列を有するラクトバチルスプランタラムKBL396(寄託番号KCTC13278BP)であり得る。
【0059】
<配列番号2>ラクトバチルスパラカゼイKBL382(寄託番号KCTC13509BP)菌株の16s rDNA配列
【0060】
<配列番号3>ラクトバチルスプランタラムKBL396(寄託番号KCTC13278BP)菌株の16s rDNA配列
【0061】
前記ラクトバチルスパラカゼイKBL382およびラクトバチルスプランタラムKBL396は、それぞれ0.001ないし10g/日、好ましくは0.01ないし5g/日の投与量として1日1回ないし数回投与され得る。
【0062】
1つ以上のプロバイオティクス菌株が単一組成物内の混合物として投与されるか、1つ以上のプロバイオティクス菌株が相違する組成物として別途投与されるという観点から、菌株の相乗作用的プロバイオティクス効果が有用な限度に維持される限り、任意の適切な比率の菌株が使用され得る。このような比率は、該当分野の熟練した技術者が容易に決定することができる。例えば、1:10、1:5、1:1、5:1、または10:1の比率、またはこれらの限界値の間の任意の比率、例えば、1:1の2つの菌株(例えば、KBL409:KBL382)が使用され得る。
【0063】
本発明は、さらに他の観点において、腎疾患の予防または治療に使用されるための前記菌株または組成物の用途および前記治療剤の製造のための前記菌株または組成物の用途を提供する。
【0064】
本発明は、さらに他の観点において、薬学的有効量の前記菌株または組成物を腎疾患の予防または治療が要求される個体に投与する段階を含む、前記疾患の予防または治療方法
を提供する。
【0065】
前記疾患の予防または治療方法に使用される薬学的組成物および投与方法は、前記において説明したので、この2つの間に共通した内容は、本明細書の過度の複雑さを避けるために、その記載を省略する。
【0066】
一方、前記疾患の予防または治療用組成物を投与できる個体は、人間を含むすべての動物を含む。例えば、イヌ、ネコ、マウスのような動物であり得る。
【0067】
以下、実施形態を通じて本発明をさらに詳細に説明しようとする。これらの実施形態は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態によって制限されるものとして解釈されないことは当業界において通常の知識を有する者にとって自明なことである。
【0068】
実施形態1.p-クレゾール分解能を有する乳酸菌の選別
【0069】
主要の腎臓尿毒物質であるp-cresol sulfate(PCS)、indole sulfate(IS)、trimethylamine N-oxide(TMAO)の前駆体は、それぞれp-クレゾール、インドール、トリメチルアミン(trimethylamine、TMA)であり、それぞれ腸内微生物によるフェニルアラニン(またはチロシン)、トリプトファン、コリンの分解産物である。本発明においては、腎臓尿毒物質の前駆体を代謝/分解することができる微生物の同定に焦点を合わせて研究を遂行し、このうち、p-クレゾール分解能を主な選別対象に選択して、尿毒物質分解を通じた腎疾患の治療効果を示すプロバイオティクス菌株を選別しようとした。このために、人間由来の計67種のラクトバチルスおよびラクトコッカス菌株、計33種のビフィドバクテリウム菌株のp-クレゾール分解能を評価した。すべての菌株は、低いpHおよび胆汁炎に抵抗性があるため、これらは進行時間の間、胃腸管において生存可能であった。p-クレゾール分解能は、p-クレゾールを含有するMRS培地において菌株を培養した後、残余p-クレゾールの濃度をガスクロマトグラフィーによって測定して確認した。
【0070】
1-1.菌株の培養および飼料の準備
【0071】
本実験において使用された菌株を、200μMのp-クレゾールを含むMRS培地において24hの間培養した。各試料50μLに濃硫酸2.5μLを入れ、90℃、30min加熱した後、準備したinternal standard(0.2mg/mL 2,6-dimethylphenol,Sigma-Aldrich)を2.5μL入れ、分析溶媒としてのethyl acetateを50μL入れて1分間vortexで混ぜた。これを15,000rpmで2分間遠心分離後、GC vial(with 250μL glass insert)に上澄み液を入れた。
【0072】
1-2.p-クレゾールの濃度測定を通じた菌株の選別
【0073】
ガスクロマトグラフィーを使用して培養上澄み液内のp-クレゾール量を測定した。分析装備はGC-EI-MS(Agilent 5985)を使用し、flow rate
1.3mL/minとして、初期75℃から150℃(rate20℃)、そして250℃(rate25℃)にオーブン温度を上げて分析を進めた(Post run 75℃ 3min)。コラムは、DB-5 capillary column 30mX0.25mm,df=0.25(Agilent)を使用した。
【0074】
その結果、ラクトバチルスおよびラクトコッカス菌株の場合、大部分の分解能は高くな
かったが、一部優れたp-クレゾール分解能を示す10種の菌株を1次選別した(図1)。ビフィドバクテリウム菌株の場合、大部分のp-クレゾールを分解できないことが確認された(図2)。
【0075】
1-3.菌株の2次選別
【0076】
前記実施形態1-2において、p-クレゾール分解能が確認された10種のラクトバチルス菌株に2次としてp-クレゾール分解能評価実験を遂行した結果、Lactobacillus acidophilus種に属するKBL402およびKBL409が最も高いp-クレゾール分解能を保有していることを確認した(図3)。2つの菌株は、16s rDNA配列上、ほとんど類似した種として判断され、KBL409菌株を選定して追加実験を進めた。
【0077】
1-4.KBL409菌株のp-クレゾール分解能の測定
【0078】
KBL409を対象に実施形態1-2と同一の方法として、時間によるp-クレゾール分解能を測定した結果、KBL409は処理12時間後に95%、36時間後に85%まで培養液内のp-クレゾールを減少させ得ることを確認した(図4)。これにより、特に、KBL409は、優れたp-クレゾール分解能を示して、p-クレゾールの過多蓄積による腎疾患を効果的に緩和し得ることが分かった。
【0079】
実施形態2.KBL409の抗炎症効果の確認
【0080】
腎疾患において細胞死の重要メカニズムうちの1つであるpyroptosisは、炎症反応に伴って発生するため、炎症反応の改善効果を通じた腎臓保護効果に対して検証する必要がある。KBL409のp-クレゾール分解能と共に抗炎症効果も共に確認するために、PBMC(peripheral blood mononuclear cell)を用いて炎症性および抗炎症性マーカーの発現程度を確認した。
【0081】
2-1.PBMCの準備および菌株の処理
【0082】
人間由来のPBMC(Zen-Bio, Inc., Research Triangle Park, NC, USA)を1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1%のゼンタマイシン、および10%のFBSを含有したRPMI-1640培地(Gibco, Paisley UK)において培養した。培養されたPBMC(2×10cell)を96-well plateに入れ、T細胞を活性化させる抗CD3抗体を1μg/mL(OKT3; Thermo Fisher Scientific, Inc., Waltham, MA, USA)として処理した後、1:100の比率のKBL409菌株或いは大腸菌を添加して37℃において72時間培養した。
【0083】
2-2.炎症性および抗炎症性サイトカインの測定
【0084】
菌株処理後、培養されたPBMC細胞の上澄み液のみを消毒して各サイトカインの量を測定した。IL-2、IL-4、IL-10、IFN-γ、およびIL-17Aの測定には、BD Cytometric Bead Array (CBA) Human Th1/Th2/Th17 Cytokine Kit (BD Biosciences)を使用し、IL-13の測定には、IL-13 Human enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) Kit (BMS231-3;Thermo Fisher Scientific)を使用した。
【0085】
その結果、KBL409処理群(CD3/KBL409)において、Th1の炎症性サイトカインであるIL-2、Th2の炎症性サイトカインであるIL-4およびIL-13、そしてTh17の炎症性サイトカインであるIL-17Aの発現が、大腸菌処理群(CD3/E.coli)およびPBS処理群(CD3/PBS)に比べ著しく低く維持されることを確認した(図5)。一方、さらに他のTh1の炎症性サイトカインであるIFN-γは、PBS処理群(CD3/PBS)とは大きな差はなかったが、大腸菌処理群(CD3/E.coli)に比べては、著しく低く維持されることを確認した(図6)。また、KBL409をPBMCとして処理した後、抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現量を確認した結果、KBL409処理群(CD3/KBL409)におけるIL-10の発現が、PBS処理群(CD3/PBS)に比べ並外れて増加したことを確認した(図7)。従って、KBL409は、全般的なT細胞の炎症性サイトカインの発現を著しく抑制させ、抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現を増加させることによって、慢性腎不全に伴う腎臓および全身性炎症反応を抑制できることが分かった。
【0086】
実施形態3.慢性腎不全誘導マウスモデルにおけるKBL409の効果確認
【0087】
アデニン(0.2% adenine)を含む飼料(chow)を餌として摂取させて腎不全を誘導する方法は、手術が必要ないためこれによる死亡がなく、飼料摂取が比較的容易であって長期間観察でき、腎切除を必要としないため、両側の腎臓から腎不全をすべて観察でき、充分な組織を確保することができる利点があるので、腎不全誘導モデルとして広く使用されている(Jia T et al.A novel model of adenine-induced tubulointerstitial nephropathy in mice.BMC Nephrol 2013;14:116)。本発明においては、アデニン誘導腎不全モデルを用いて、KBL409投与時の腎機能、腎線維化などの変化および炎症の改善効果を確認した。また、腎機能低下による血中尿毒物質の減少効果を共に確認した。
【0088】
3-1.慢性腎不全誘導マウスモデルの製作および菌株の投与
【0089】
本実験においては、平均体重20g前後の7週齢C57BL/6マウスを対照群と実験群に分けて実験を進めた。図8に図示したように、対照群は、再び2群に分けてKBL409菌株を投与した群(Con+KBL409;n=10)と投与しなかった群(Con;n=10)に分けた。実験群は、アデニン飼料を投与して慢性腎不全を誘導し、やはり、KBL409菌株を投与した群(CKD+KBL409;n=10)、投与しなかった群(CKD;n=10)に分けて計4群のマウスとして実験を進めた。アデニン飼料は、通常的な餌に0.2%のアデニンを追加した餌になるようにし、KBL409菌株は、1×10CFUを毎日経口投与した。すべての群のマウスは、6週間飼育後に犠牲にして腎臓を摘出した(図8)。
【0090】
3-2.腎機能の変化確認
【0091】
血中尿素窒素(BUN)は、血液中の尿素に含有された窒素を測定した値であり、クレアチニンは、タンパク質の一種であるクレアチンの老廃物として腎臓の糸球体にろ過される体内濾過指標であり、蛋白尿(proteinuria)ともいうアルブミン尿(albuminuria)は、尿にタンパク質が混ざって出るものである。アルブミン尿の量、BUN、およびクレアチニンの含量が高い場合、腎機能が低下したことを示す。これに関して、KBL409の慢性腎不全に対する効果を確認するために、前記各マウス群別に犠牲前に収集した尿および血液から生化学分析器(Automated Chemistry Analyzer、Roche、HITACHI7600)を用いて、アルブミン尿の量、BUN、およびクレアチニンの量を測定した。
【0092】
その結果、図9から分かるように、アデニン飼料投与群(CKD)は、対照群(Con)に比べBUNおよびクレアチニン濃度の著しい上昇が観察され、成功的に慢性腎不全が誘導されたことを確認した。また、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)は、アデニン飼料のみを投与された群に比べ、有意に低いBUNおよびクレアチニン濃度を示した(図9)。アルブミン尿の場合、アデニン飼料投与群(CKD)は、対照群(Con)に比べアルブミン尿の量が著しく増加した一方、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)は、これに比べてアルブミン尿の量が有意に減少した(図10)。従って、本発明のKBL409の投与は、代表的な腎不全指標であるアルブミン尿の量、BUN、およびクレアチニン濃度を減少させて腎機能を改善する効果を示すことを確認した。
【0093】
3-3.腎線維化の変化確認
【0094】
腎線維化とは、腎組織において発生する過多の炎症反応、酸化性ストレス、上皮細胞の線維細胞化のような多様な原因によって腎組織が線維化されて腎機能を喪失することになる症状を意味する。これは、腎疾患の重要なマーカーであり、末期腎不全の極めてありふれた症状のうちの1つである。これに関して、慢性腎不全による腎線維化に対するKBL409の効果を確認するために、実施形態3-1において確保した各群の腎組織サンプルの組織病理学的検査、Procol1aおよびActa2 mRNA発現量分析、Collagen1、Fibronectin、α-SMA、およびVimentin発現量分析を遂行した。
【0095】
3-3-1.組織病理学的検査
【0096】
実施形態3-1から得た腎組織サンプルを通常的なホルマリン固定とパラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded(FFPE))を経て4μm厚の組織切片として製作した。血管間質の拡張および腎組織内の糸球体肥大症(glomerular hypertrophy)を見るための過ヨウ素酸シッフ(periodic acid-Schiff、PAS)染色および間質線維症(interstitial fibrosis)を見るためのMasson‘s trichrome染色を遂行した。染色後の各群の組織切片を光学顕微鏡によって観察した。
【0097】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD、図11C)においては、対照群(Con、図11A)と対比して腎不全の特徴である腎尿細管の拡張、腎尿細管細胞の扁平(flattened epithelium)、および尿細管間質の拡張および基質の蓄積が観察され、Masson‘s trichromeクロム染色を通じた腎線維化の増加が観察された。アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409、図11D)においては、前述した組織学的変化が緩和されたことが明確に観察され、特に、繊維化が著しく減少されたことが確認された。
【0098】
3-3-2.腎線維化の指標確認(1)
【0099】
線維化の指標であるProcol1a、Acta2遺伝子の腎組織内の発現程度を測定するために、前記実施形態3-1から得た各群の腎組織からmRNAを分離してProcol1aおよびActa2遺伝子のmRNA発現量を定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって分析した。
【0100】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD)においては、対照群(Con)に比べProcol1aおよびActa2遺伝子のmRNA発現量が大きく増加した一方、アデニン飼
料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、有意な減少が見られることを確認した(図12)。
【0101】
3-3-3.腎線維化の指標確認(2)
【0102】
実施形態3-1から得た各群の腎組織から、腎線維化関連のタンパク質指標であるCollagen1、Fibronectin、α-SMA、およびVimentinの発現をwestern blottingによって確認した。
【0103】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD)においては、Collagen1、Fibronectin、α-SMA、Vimentin発現量が著しく増加した一方、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、有意に減少したことを確認した(図13)。
【0104】
従って、本発明のKBL409は、腎線維化を効果的に抑制して、腎臓損傷による慢性腎不全の進行を抑制するのに有用であることが分かった。
【0105】
3-4.腎臓内マクロファージの変化確認
【0106】
腎臓間質を浸潤するF4/80-陽性マクロファージの数は、腎臓損傷のマーカーとしての役割をする。これに関して、慢性腎不全の代表的なマーカーであるマクロファージの浸潤程度に対するKBL409の効果を確認するために、実施形態3-1において確保した各群の腎組織サンプルを用いてマクロファージの変化を観察した。
【0107】
3-4-1.F4/80、Cd68、およびMcp1発現量の分析
【0108】
実施形態3-1から得た各群の腎組織から、マクロファージの浸潤程度の指標であるF4/80、Cd68、およびmonocyteに対するchemokineであるMcp1のmRNAの腎臓内の発現を定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析によって確認した。
【0109】
その結果、F4/80、Cd68、およびMcp1のmRNA発現量が、アデニン飼料投与群(CKD)においては大きく増加した一方、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては有意に減少したことを確認した(図14)。
【0110】
3-4-3.組織病理学的検査
【0111】
前記実施形態3-3-1と同一の方法によって実施形態3-1から得た腎組織サンプルを通常的なホルマリン固定とパラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded(FFPE))を経て4μm厚の組織切片として製作した後、マクロファージの浸潤程度の指標であるF4/80およびCD68の抗体を用いて免疫組織化学的染色後、光学顕微鏡によって観察した。
【0112】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD)においては、尿細管間質内のマクロファージの沈着が対照群(Con)に比べ著しく増加したが、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、浸潤の程度が大きく減少したことを確認した(図15)。
【0113】
従って、KBL409の投与は、慢性腎不全においてマクロファージの浸潤を抑制する効果があることが分かった。
【0114】
3-5.腎臓内インフラマソーム(inflammasome)発現の変化確認
【0115】
インフラマソームは、多様な組み合わせの炎症-誘発刺激を認識し、caspase-1の活性化を通じて重要な前炎症性サイトカイン、例えば、IL-1βおよびIL-18の生産を調節するタンパク質複合体であり、慢性腎不全において細胞死の重要なメカニズムのうちの1つであるpyroptosisは、インフラマソームによって誘発されるものとして知られている。これに関して、腎臓内インフラマソームの発現に対するKBL409の効果を確認するために、実施形態3-1において確保した各群の腎組織サンプルを用いてTlr4、Asc、Nlrp3、IL-18の発現分析およびNRLP3インフラマソームの発現分析を遂行した。
【0116】
3-5-1.Tlr4、Asc、Nlrp3、およびIL-18発現量の分析
【0117】
実施形態3-1から得た各群の腎組織から主に脂質多糖類(lipopolysaccharide)などを感知してインフラマソームの活性化を誘導するTlr4遺伝子、インフラマソームの構成要素であるAscおよびNlrp3、インフラマソームによる炎症反応過程の主要サイトカインであるIL-18のmRNAの発現を定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析によって確認した。
【0118】
その結果、Tlr4、Asc、Nlrp3、およびIL-18のmRNA発現量は、対照群(Con)と対比してアデニン飼料投与群(CKD)においては大きく増加した一方、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては有意に減少したことを確認した(図16)。これにより、本発明のKBL409の投与は、慢性腎不全誘導腎臓内のTlr4、Asc、Nlrp3、IL-18の発現を抑制する効果があることが分かった。
【0119】
3-5-2.組織病理学的検査
【0120】
前記実施形態3-3-1と同一の方法によって準備した腎組織サンプルを通常的なホルマリン固定とパラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded(FFPE))を経て4μm厚の組織切片に製作した後、インフラマソームの構成要素であるNRLP3の抗体を用いて免疫組織化学的染色後、光学顕微鏡で観察した。
【0121】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD)においては、対照群(Con)に比べ慢性腎不全誘導腎組織内のNRLP3の発現が著しく増加したが、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、大きく減少したことを確認した(図17)。これにより、KBL409の投与は、慢性腎不全誘導時に増加したNRLP3の発現を抑制する効果があることが分かった。
【0122】
3-6.腎臓内ミトコンドリアの変化確認
【0123】
ミトコンドリアの重要な機能中の1つは、ブドウ糖または脂肪酸のような燃料代謝物から出るエネルギーをATPに転換させる酸化リン酸化工程を遂行することである。このようなミトコンドリアの機能異常が、腎疾患の発病期前に関与するものとして知られている。これに関して、慢性腎不全が誘導された腎臓内ミトコンドリアの形態変化に対するKBL409の効果を確認するために、実施形態3-1において確保した各群の腎組織サンプルを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope)によって観察した。
【0124】
その結果、図18から確認できるように、アデニン飼料投与群(CKD)においては、腎臓内ミトコンドリアの大きさが減少し、内膜が破壊されてcristaeが消失されたことを確認することができた。一方、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、ミトコンドリアの構造が回復したことを確認した(図18)。従って、KBL409の投与は、慢性腎不全の発病時に発生するミトコンドリアの機能異常を回復させる効果があることが分かった。
【0125】
3-7.全身性炎症反応の変化確認
【0126】
腎臓において、慢性炎症によってマクロファージとリンパ球が活性化されると、IL-1βTNF-αなどの多様なサイトカインが分泌され、腎線維化が促進され、コラーゲンの蓄積が起きて腎臓が壊れることになる。これに関して、慢性腎不全が誘導されたマウスモデルの全身性炎症反応に対するKBL409の効果を確認するために、全身性炎症反応を誘導するサイトカインであるIL-6およびTNF-αの濃度を酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)を用いて測定した。
【0127】
その結果、アデニン飼料投与群(CKD)においては、対照群(Con)に比べIL-6およびTNF-αの濃度がすべて大きく上昇したが、アデニン飼料およびKBL409投与群(CKD+KBL409)においては、有意に減少したことを確認した(図19)。従って、KBL409菌株が慢性腎不全モデルにおいて、IL-6およびTNF-αを抑制して全身性炎症反応を緩和する効果があることを確認した。
【0128】
実施形態4.血中尿毒物質濃度変化の比較実験
【0129】
4-1.血中p-クレゾール濃度変化の比較
【0130】
血液から検出されるp-クレゾールは、腎疾患症状の程度によって3-300μMの間であるものとして確認され、該当濃度区間に合わせたcalibration curveを導出した。犠牲前に収集した血液試料を用いてp-クレゾール濃度を測定した。動物試験マウスの血清50μLに濃硫酸2.5μLを入れ、90℃30min加熱した後、準備したinternal standard (0.2mg/mL 2,6-dimethylphenol, Sigma-Aldrich)を2.5μL入れ、分析溶媒としてのethyl acetateを50μLを入れて1分間vortexで混ぜた。これを15,000rpmで2分間遠心分離後、GC vial(with 250μL glass insert)に上澄み液を入れた。GC-MS定量は、実施形態1の菌株選別時に使用された分析過程と同一に進めた。
【0131】
前記calibration curveに基づいて各試料別のp-クレゾール濃度を測定した結果、図20から分かるように、正常のマウス(Con+PBS)からは菌株投与の有無にかかわらずp-クレゾールが非常に低い濃度で検出される一方、CKD誘導マウス試料(CKD+PBS)における全般的なp-クレゾール濃度は、高く上昇することを確認した。大腸菌投与群(CKD+positive)とKBL409菌株投与群(CKD+KBL409)間のp-クレゾール濃度を比較したとき、KBL409菌株を投与した群からp-クレゾール濃度が低く測定されることが観察された(図20A)。KBL409菌株と他の2種のラクトバチルスアシドフィルス菌株(ATCC832およびATCC4357)を投与したマウスの血中濃度を比較したとき、慢性腎不全誘導時に菌株を投与しなかった群(CKD+PBS)のp-クレゾール濃度に比べKBL409菌株投与時(CKD+KBL409)の血中p-クレゾール濃度が減少されたことが確認され、他の2種のラクトバチルスアシドフィルス菌株を投与したマウス(CKD+ATCC832
およびCKD+ATCC4357)からは血中p-クレゾール濃度の減少に大きな効果がないものとして確認された:CKD+PBS:19.8μM;CKD+KBL409:15.9μM;CKD+ATCC832;18.2μM;CKD+ATCC4357:23.7μM(図20B)。従って、本発明のKBL409菌株は、他のラクトバチルスアシドフィルス菌株と比べp-クレゾールの減少効果の側面において著しく優れていることを確認した。
【0132】
4-2.血中TMAO濃度変化の比較
【0133】
血中TMAOは、腎疾患の程度によって1-90μMの間であるものとして確認され、該当濃度区間に合わせたcalibration curveを導出した。犠牲前に収集した血液試料を用いて血中TMAO濃度を測定した。動物試験マウスの血清30μLにice cold MeOH 120μL(LC grade)を入れ、vortex 1min. 20,000g、4℃20min間centrifuge後、上澄み液100μLをvivaspin500、3KDaにローディングし、15,000g、4℃30min間centrifuge後に得られたfiltreをtotal recovery vialに入れてTMAO分析のための試料として使用した。
【0134】
液体クロマトグラフィーを使用して血清のTMAOを測定した。分析装備は、UPLC-qTOFを使用し、Positive ESI ionization、sensitive modeによって分析を進めた。移動相としては、(A)0.045% ammonium hydroxide、0.025% formic acid (pH8.1)、(B)pure acetonitrileを使用し、初期条件95%(B)において2.5分に45%(B)、5分に再び95%(B)となるようにし、そして、5.5分まで95%(B)を維持するようにして、flow rate 0.4mL/minとして分析した。分析コラムは、ACQUITY UPLC BEH Amide Column 130Å、1.7μm、2.1mm(186004801, waters)を使用した。MS parametersとしては、Capillary votage 2KV、Sampling cone 15、Source offset 10、Source temperature 150℃ Desolvation temperature 200℃ 00、Nebuliser7とした。
【0135】
各試験群から、血中TMAO濃度およびKBL409の効果を確認した。先ず、KBL409を高濃度および低濃度に投与した動物実験試料の血中TMAO濃度を確認した。慢性腎不全誘導時のTMAO濃度の増加が確認され(CKD+PBS)、特に高濃度のKBL409を投与したマウスにおいては、明確なTMAOの血中濃度の減少が確認された(CKD+High KBL409)(図21A)。次に、KBL409を含む3種のL.acidophilusを投与した慢性腎不全誘導マウスから血中TMAO濃度を確認した。慢性腎不全誘導によりTMAO濃度の増加が確認され、投与した3種のL.acidophilus菌株のすべてにおいてTMAO濃度が減少されたが、特に、KBL409菌株を投与したマウスにおいて血中TMAO濃度が最も大きく減少したことが確認された(図21B)。
【0136】
実施形態5.KBL409と追加のプロバイオティクス菌株の併用投与
【0137】
5-1.慢性腎不全誘導マウスモデルの製作および菌株の投与
【0138】
本実験においては、平均体重20g前後の7週齢C57BL/6マウスを各群当たり10匹ずつ、陰性対照群(Control)、慢性腎不全誘導群(CKD)、RenadylTM(KIBOW BIOTECH、米国)投与陽性対照群(CKD+positiv
e control)、KBL409単独投与群(CKD+KBL409)、KBL409+KBL382併用投与群(CKD+KBL409+mixed1(382))、KBL409+KBL396併用投与群(CKD+KBL409+mixed2(396))の計6群に分けて実験を進めた。慢性腎不全誘導実験群は、アデニン飼料を投与して慢性腎不全を誘導し、アデニン飼料は、通常的な食餌に0.2%のアデニンを追加した食餌となるようにした。KBL409菌株は、1×10CFUを毎日経口投与した。併用菌株(KBL409+KBL382またはKBL409+KBL396)の場合、KBL409を7×10CFUとして、KBL382またはKBL396は、3×10CFUとして同時に投与して、全体の菌数として1×10CFUを毎日投与した。陽性対照群であるRenadylも、複合菌株として全体の菌数が1×10CFUとなるように毎日経口投与した。すべての投与菌株の準備は、0.05%L-cysteineが含まれたPBSに懸濁して準備した。すべての群のマウスは、6週間の飼育後、犠牲にして腎臓を摘出した。
【0139】
5-2.腎疾患マーカーの発現変化の確認
【0140】
5-2-1.Nlrp3、Pre-IL18、Ppargc1a、Tfam、およびMfn1発現量の分析
【0141】
実施形態5-1において確保した各群の腎組織から慢性腎不全の発病に主要な影響を及ぼすインフラマソーム複合体の構成要素であるNlrp3、およびインフラマソームによる炎症反応過程の主要サイトカインであるIL-18の前駆体Pre-IL18のmRNA発現量を定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって分析した。
【0142】
その結果、Nlrp3およびPre-IL18のmRNAの発現は、対照群(Control)と対比して慢性腎不全誘導群(CKD)において増加した一方、陽性対照群(CKD+positive control)、KBL409単独投与群(CKD+KBL409)、KBL409+KBL382併用投与群(CKD+KBL409+mixed1(382))、KBL409+KBL396併用投与群(CKD+KBL409+mixed2(396))においては減少したことを確認した(図22)。その中においても、KBL409+KBL382併用投与群(CKD+KBL409+mixed1(382))において、他のグループに比べ優れたPpargc1a、Tfam、およびMfn1の発現増加効果が観察された(図23)。これにより、本発明のKBL409およびKBL382の併用投与は、菌株を単独投与したときよりも慢性腎不全誘導腎モデルにおいてPpargc1a、Tfam、およびMfn1の発現をより効果的に増加させ、このような相乗作用によってミトコンドリアの機能障害による腎疾患を効果的に予防または治療できることがわかった。
【0143】
5-2-2.FnおよびProcol1発現量ならびにBax/Bcl2比率の分析
【0144】
アポトーシス(apoptosis)は、虚血性腎機能障害を誘発すると知られているが、腎虚血はBaxを活性化させ、Bcl2を減少させることによって、Bax/Bcl2の比率を増加させてアポトーシスを誘導する。即ち、腎臓の上皮細胞において、Baxは、膜透過性を増加させる親-アポトーシスタンパク質、Bcl-2は、Baxによる「膜攻撃」に拮抗する抗-アポトーシスタンパク質であり、Bax/Bcl2の比率は、細胞死の主要な決定因子となる。本実験においては、前記各群の腎組織から、代表的な線維性疾患のバイオマーカーであるFn(フィブロネクチン)およびProcol1のmRNA発現量とBaxおよびBcl2発現量を定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって分析確認した。
【0145】
その結果、Fn、Procol1のmRNA発現量およびBax/Bcl2の比率は、対照群(Control)と対比して慢性腎不全誘導群(CKD)において増加した一方、陽性対照群(CKD+positive control)、KBL409単独投与群(CKD+KBL409)、KBL409+KBL382併用投与群(CKD+KBL409+mixed1(382))、KBL409+KBL396併用投与群(CKD+KBL409+mixed2(396))においては、有意に減少したことを確認した。その中においても、KBL409+KBL382併用投与群(CKD+KBL409+mixed1(382))において、他のグループに比べ優れたFn、Procol1、およびBax/Bcl2の抑制効果が観察された(図24)。これにより、慢性腎不全誘導動物モデルにおいて、本発明のKBL409およびKBL382の併用投与は、菌株を単独投与するときよりもさらに効果的にFn、Procol1、およびBaxの発現を抑制させ、Bcl2の発現を増加させることによって、このような相乗作用として腎疾患を効果的に予防または治療できることがわかった。
【0146】
以上をもって、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は、単に好ましい実施形態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかなことである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とそれらの等価物によって定義されるということである。
【0147】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13518BP
受託日付:20180427
【0148】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13509BP
受託日付:20180417
【0149】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13278BP
受託日付:20170529
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係るラクトバチルスアシドフィルスKBL409(寄託番号KCTC13518BP)菌株は、腎臓の炎症を減少させ、血中尿素窒素、クレアチニン、p-クレゾールなどの血中尿毒物質の濃度を減少させて腎臓を保護し、蛋白尿の減少、腎臓ミトコンドリアの機能回復、および腎線維化の抑制効果を示し、腎機能改善および慢性腎不全を始めとした腎疾患の予防および治療用途として有用に活用され得る。
【配列リストフリーテキスト】
【0151】
電子ファイルを添付した。
【0152】
【0153】
【0154】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
2022551245000001.app
【国際調査報告】