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特表2022-551274経路をたどるための制御された関節アーム付きのロボット手術介入装置
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  • 特表-経路をたどるための制御された関節アーム付きのロボット手術介入装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】経路をたどるための制御された関節アーム付きのロボット手術介入装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/32 20160101AFI20221201BHJP
   A61F 11/20 20220101ALI20221201BHJP
【FI】
A61B34/32
A61F11/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520626
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 FR2020051724
(87)【国際公開番号】W WO2021064331
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】1911028
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116421
【氏名又は名称】コリン
【氏名又は名称原語表記】COLLIN
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ、マザレグ
(72)【発明者】
【氏名】アルマン、チャプリンスキー
(57)【要約】
このロボット手術介入装置は、作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)を有する関節アーム(10)であって、手術器具(12)を保持する遠位端、経路に沿って手術器具(12)の機能的な端(24)を動かす関節アーム(10)の周辺制御機器(28)、および周辺制御機器(28)によって提供される運動命令を処理して、それらを関節アーム(10)の作動モータを制御する命令へと変換する手段(32)を含む。これは、関節アーム(10)の自動逆行トリガ(34)をさらに含み、トリガ(34)の作動は、完了した経路に沿った手術器具(12)の機能的な端の逆行運動のため、関節アーム(10)の作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々に個々の逆行制御命令が送信されることを引き起こす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)を有する関節アーム(10)であって、その遠位端は、手術器具(12)を保持することを目的とする、関節アーム(10)、
-経路に沿って前記手術器具(12)の機能的な端(24)を動かす前記関節アーム(10)の周辺制御機器(28)、および
-前記周辺制御機器(28)によって提供される運動命令を処理して、それらを前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々の個々の制御命令へと変換する手段(32)、を含むロボット手術介入装置であって、
前記ロボット手術介入装置は、オペレータによって機械的に作動され得る前記関節アーム(10)の自動逆行トリガ(34)をさらに含み、前記トリガ(34)の作動は、前記周辺制御機器(28)からの任意の運動命令とは無関係に、完了した経路に沿った前記手術器具(12)の前記機能的な端(24)の逆行運動のため、前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々に個々の逆行制御命令を送信することを引き起こすことを特徴とする、ロボット手術介入装置。
【請求項2】
前記自動逆行トリガ(34)の作動が、前記周辺制御機器(28)によって提供される新規運動命令の処理の保留を引き起こすように構成される、請求項1に記載のロボット手術介入装置。
【請求項3】
-前記処理手段(32)は、前記経路に沿った前記機能的な端(24)の制御された運動の間、前記関節アーム(10)の連続的な位置付けの順序系列をメモリ(50)に記憶する手段(36、48)を含み、
-前記処理手段(32)は、前記自動逆行トリガ(34)の作動が、前記関節アーム(10)の連続的な逆行を、この順序系列の最後の記憶された位置付けから最初の記憶された位置付けまで段階的に引き起こすように構成される、請求項1または2に記載のロボット手術介入装置。
【請求項4】
前記関節アーム(10)の前記連続的な位置付けの順序系列の各々の記憶された位置付けは、前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の位置のセットを含む、請求項3に記載のロボット手術介入装置。
【請求項5】
前記記憶手段(36、48)は、一定の時間間隔で前記関節アーム(10)の前記連続的な位置付けをメモリ(50)に記憶するように構成される、請求項3または4に記載のロボット手術介入装置。
【請求項6】
前記関節アーム(10)の前記連続的な位置付けの順序系列が記憶される前記メモリ(50)は、スタック構造として構成される、請求項3~5のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項7】
前記自動逆行トリガ(34)は、前記関節アーム(10)の前記自動逆行の速度を、前記オペレータによって加えられる圧力の関数として変化させる速度バリエータを伴う停止ペダルまたはプッシュボタンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項8】
前記処理手段(32)は、圧力が前記オペレータによって前記自動逆行トリガ(34)にそれ以上印加されなくなるとすぐに、現在の自動逆行を停止し、前記周辺制御機器(28)によって提供される新規運動命令を処理することを再開するように構成される、請求項7に記載のロボット手術介入装置。
【請求項9】
前記周辺制御機器(28)は、6Dジョイスティックである、請求項1~8のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項10】
患者に対する中耳または内耳手術介入のために構成および寸法決定され、前記手術器具(12)自体が患者の中耳または内耳手術介入器具である、請求項1~9のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術介入のためのロボット装置、特に、耳鼻科の分野に関するが、これに限られない。
【0002】
本発明は、より詳細には、
作動モータを有する関節アームであって、その遠位端は、手術器具を保持する、関節アーム、
経路に沿って手術器具の機能的な端を動かす関節アーム周辺制御機器、および
周辺制御機器によって提供される運動命令を処理して、それらを、関節アームの作動モータの各々を制御する個々の制御命令へと変換する手段
を含むロボット手術介入装置に当てはまる。
【背景技術】
【0003】
そのような装置は、台湾の台北にて、2010年10月18~22日に開催されたIEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systemsにおいて公開された「RobOtol: from design to evaluation of a robot for middle ear surgery」という表題のMiroirらによる論文に説明されている。それは、患者の中耳または内耳に対する耳鼻科手術介入に特によく適した構造および運動学を提示する。これらの介入は、誤った動きに敏感であり、そのため、ロボット支援は大いに役立つ。
【0004】
それにもかかわらず、この支援があったとしても、彼又は彼女が一般的に手術しなければならない狭い体積を考えると、医師は、周辺制御機器を操作するときに誤った行為をする場合がある。大半の場合において、手術行為の精度が、わずかな偏向は全く重大ではなく、容易に修正され得るようなものであっても、許容誤差がゼロまたはほぼゼロであるという特定の状況も存在する。これは、例えば、患者の耳の内側で耳鼻科手術器具を離脱するときに当てはまる。手術器具の機能的な端の接触のためにこれによってたどられる経路は、機能的な端が展開することになる隙間を前提とすると、複雑になり得るため、その除去は、完了した経路を考慮しなければならない場合に厄介になり得る。さらには、そのような除去は、緊急事態において望ましいため、それは高速でなければならない。この実行の速度は、医師にとってのストレス、および誤った行為の増大したリスクを付与する。
【0005】
より一般的には、手術器具を保持し、周辺制御機器の助けを借りて操作されるロボット装置によって支援される任意の種類の手術介入において、手術器具の迅速な除去が所望される場合のほんのわずかな不正確さが重大な結果を及ぼし得る状況は非常に多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、上述した問題および制約の少なくとも一部を回避することを可能にするロボット装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、
-作動モータを有する関節アームであって、その遠位端は、手術器具を保持する、関節アーム、
-経路に沿って手術器具の機能的な端を動かす関節アームを制御する周辺制御機器、および
-周辺制御機器によって提供される運動命令を処理して、それらを、関節アームを作動させる作動モータの各々を制御する個々の制御命令へと変換する手段、を含むロボット手術介入装置であって、
関節アームの自動逆行トリガをさらに含み、その作動は、周辺制御機器の任意の運動命令とは無関係に、完了した経路に沿った手術器具の機能的な端の逆行運動のため、関節アームの作動モータの各々に個々の逆行制御命令を送信することを引き起こす、ロボット手術介入装置が提案される。
【0008】
このやり方では、いかなる逆行も、逆行経路が厳密にたどられるという保証を伴って、トリガによって、および周辺制御機器の助けなしに、自動的に実行され得る。上で述べた厄介な状況において、これは、制限された体積においても、または隙間があっても、および自動逆行がトリガされるとき周辺制御機器によって発行されるいかなる命令にも関係なく、望ましい引き込みからのいかなる偏向も防ぐ。
【0009】
任意選択で、ロボット装置は、自動逆行トリガの作動が、周辺制御機器によって提供される新規運動命令の処理の保留を引き起こすように構成される。
【0010】
また任意選択で、
-処理手段は、経路に沿った機能的な端の制御された運動の間、関節アームの連続的な位置付けの順序系列をメモリに記憶する手段を含み、
-処理手段は、自動逆行トリガの作動が、関節アームの連続的な逆行を、この順序系列の最後の記憶された位置付けから最初の記憶された位置付けまで段階的に引き起こすように構成される。
【0011】
また任意選択で、関節アームの連続的な位置付けの順序系列の各々の記憶された位置付けは、関節アームの作動モータの位置のセットを含む。
【0012】
また任意選択で、記憶手段は、一定の時間間隔で関節アームの連続的な位置付けをメモリに記憶するように構成される。
【0013】
また任意選択で、関節アームの連続的な位置付けの順序系列が記憶されるメモリは、スタック構造に構成される。
【0014】
また任意選択で、自動逆行トリガは、関節アームの自動逆行の速度を、オペレータによって加えられる圧力の関数として変化させる速度バリエータを伴う停止ペダルまたはプッシュボタンを含む。
【0015】
また任意選択で、処理手段は、圧力がオペレータによって自動逆行トリガにそれ以上印加されなくなるとすぐに、現在の自動逆行を停止し、周辺制御機器によって提供される新規運動命令を処理することを再開するように構成される。
【0016】
また任意選択で、周辺制御機器は、6Dジョイスティックである。
【0017】
また任意選択で、本発明に係るロボット手術介入装置は、患者に対する中耳または内耳手術介入のために構成およびサイズ決定されてもよく、手術器具自体は患者の中耳または内耳手術介入器具である。
【0018】
本発明は、単に例として提供され、添付の図面を参照する、以下の説明の助けを借りてよりよく理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る、ロボット手術介入装置の一般的な構造を概略的に示す図である。
【0020】
図2】本発明の実施形態に係る、図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す図である。
【0021】
図3図2の方法を実行することによって実現されるシナリオの例を示す図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るロボット手術介入装置は、手術器具12を保持する作動モータを有する関節アーム10を含む。この図に示された非限定的な例は、より詳細には、患者の中耳または内耳の耳鼻科手術における応用のためのロボット装置のものであり、その構造および運動学は、Miroirらによる上述した文書の教示に従って最適化される。関節アーム10は、故に、その基部から手術器具12を保持するその端までに、直列の3つのモータ駆動の角柱リンクに続く直列の3つのモータ駆動のロトイド(rotoid)リンクを有する。
【0023】
第1モータM1によって作動される第1角柱リンクL1は、第1モータM1に関係している第1局所直交デカルト座標系(X1、Y1、Z1)の軸Z1に沿った(例えば、垂直)関節アーム10の第1部材14の並進運動を可能にする。第1モータM1は、第1局所座標系(X1、Y1、Z1)がロボット装置の固定基部に関係しているグローバル直交デカルト座標系(X0、Y0、Z0)と同じ方向を有するように、ロボット装置に装着される。故に、第1部材14の運動軸は、Z0に平行である。
【0024】
第1部材14の一端によって保持される第2モータM2によって作動される第2角柱リンクL2は、第2モータM2に関係している第2局所直交デカルト座標系(X2、Y2、Z2)の軸Z2に沿って関節アーム10の第2部材16の並進運動を可能にする。第2局所座標系(X2、Y2、Z2)は、そのZ2軸がX1軸に平行であるように、第1局所座標系(X1、Y1、Z1)のY1軸に対して直角に回される。故に、第2部材16の運動軸は、X0に平行である。
【0025】
第2部材16の一端によって保持される第3モータM3によって作動される第3角柱リンクL3は、第3モータM3に関係している第3局所直交デカルト座標系(X3、Y3、Z3)の軸Z3に沿って関節アーム10の第3部材18の並進運動を可能にする。第3局所座標系(X3、Y3、Z3)は、そのZ3軸がY2軸に平行であるように第2局所座標系(X2、Y2、Z2)のX2軸に対して直角に回され、Y2軸自体はY1軸に平行である。故に、第3部材18の運動軸は、Y0に平行である。
【0026】
第3部材18の一端によって保持される第4円柱モータM4によって作動される第4ロトイドリンクL4は、第4モータM4に関係している第4局所直交デカルト座標系(X4、Y4、Z4)軸Z4を中心に、関節アーム10の第4部材20の回転運動を可能にする。
【0027】
第4部材20の一端によって保持される第5円柱モータM5によって作動される第5ロトイドリンクL5は、第5モータM5に関係している第5局所直交デカルト座標系(X5、Y5、Z5)の軸Z5を中心に、関節アーム10の第5部材22の回転運動を可能にする。
【0028】
最後に、第5部材22の一端によって保持される第6円柱モータM6によって作動される第6ロトイドリンクL6は、第6モータM6に関係している第6局所直交デカルト座標系(X6、Y6、Z6)の軸Z6を中心に、手術器具12の回転運動を可能にする。
【0029】
図1の特に興味深い構成に従って、3つのロトイドリンクの3つのそれぞれの回転軸Z4、Z5、およびZ6は、手術器具12の機能的遠位端24の同じ中心点で収束し、故にこの点を枢支点にする。これは、角柱リンクのモータM1、M2、M3のいかなる作動もなしに、ロトイドリンクのモータM4、M5、M6のうちの少なくとも1つを作動させる任意の命令が、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)における手術器具12のいかなる運動もなしに、手術器具12の回転をその枢支点を中心に引き起こすことを意味する。
【0030】
手術器具12は、関節アーム10に、より詳細には、モータM6に接続されているアーム10の対応する装着端に装着する近位端26を有する。この装着は、例えば、有利には、特許FR2 998 344 B1に説明されるロッキングシステムに従ってなされるが、これは必須ではない。意図した用途に適合な任意の他の締結システムも適合する。
【0031】
手術器具12は、局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)が規定され関係している周りのその主軸Zpが、近位装着端26の中心点を手術器具12の遠位機能端24の枢支点に接続するものであるように、直線形態を有してもよい。この場合、図1に示されないが、Zp軸は、Z6軸と併合する。
【0032】
代替として、および図1に示されたように、それは、特許出願FR3 066 378 A1に説明されるものなどのずれた部を有する手術器具であってもよい。この場合、それに関係している局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)がまだ規定されている周りのその主軸Zpは、この器具の直線遠位部のものであり、その近位固定端26の中心点をその機能的遠位端24の枢支点に接続する軸Z6に対して軸外である。
【0033】
ロボット手術介入装置は、6つのモータM1~M6を作動させることによって、3つの並進自由度および3つの回転自由度に従って望ましい経路に沿った手術器具12の機能的遠位端24の運動を可能にするように適合される、6Dジョイスティックまたは任意の他の均等の装置などの、関節アーム10の周辺制御装置28をさらに含む。それはまた、特に、手術フェーズ中の手術器具12の、その経路に沿った任意の運動を表示および監視する、画面30を含み得る。
【0034】
ロボット手術介入装置は、周辺制御機器28によって提供される運動命令を処理して、それらを、関節アーム10のモータM1~M6の各々を制御する個々の制御命令へと変換する手段をさらに含む。これらの処理手段は、電子回路32の形態を取ってもよい。
【0035】
ロボット手術介入装置は、関節アーム10の自動逆行トリガ34をさらに含む。例えば、それは、オペレータによって加えられる圧力の関数として、関節アーム10の自動逆行の速度を変化させる速度バリエータを伴う停止ペダルまたはプッシュボタン装置であってもよい。その機能は、例えば、それがペダルである場合、足圧によって作動されると、周辺制御機器28からの任意の運動命令とは無関係に、完了した経路に沿った手術器具12の機能的な端24の逆行運動のため、6つの作動モータM1~M6の各々に個々の逆行制御命令を送信することを引き起こすことになる。手術行為において、トリガ34は、足によるその作動が医師の手を自由にするため、有利にはペダルである。
【0036】
電子回路32は、モータM1~M6を制御する個々の制御命令を関節アーム10に伝送するため、およびそれが望むたびに、モータM1~M6のデカルトまたは角度位置を受信するために、関節アーム10に接続される。それは周辺制御機器28の運動命令を受信するために周辺制御機器28に接続される。これらは、一般的には、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現される。それは逆行トリガ34に接続されて、その作動を検出し、結果的に関節アーム10の自動逆行に従事する。
【0037】
それは、関節アーム10に個々の制御命令を伝送し、周辺制御機器28から運動命令を受信し、関節アーム10からモータM1~M6の位置を受信するように設計される、マイクロプロセッサなどの中央処理装置36を有する。それは、上述した変換および自動逆行を実施する、中央装置36によって実行されることになる、少なくとも1つのコンピュータプログラムが記憶されるメモリ38をさらに有する。ソフトウェアスイッチ44に従って選択され得る2つのコンピュータプログラム40および42が図1に示される。
【0038】
本発明の1つの潜在的な実施形態によると、第1コンピュータプログラム40は、周辺制御機器28によって提供される運動命令の、モータM1~M6の各々を制御するための個々の命令への変換を実施するため、および望ましい時間にモータM1~M6のそれぞれの位置の記憶を実施するための命令を含む。第2コンピュータプログラム42は、自動逆行を実施するための命令を含む。
【0039】
図1に概略的に示されるような電子回路32は、例えば、データファイルおよびコンピュータプログラムを記憶するための1つまたは複数のメモリと関連付けられたプロセッサを含む従来のコンピュータなどのコンピュータ装置、又は、プログラム40、42の命令、および同様にコンピュータプログラムを構成し得るソフトウェアスイッチ44の命令などプロセッサによって実行されるコンピュータプログラムの命令によって実装されてもよいことに留意されたい。これらのプログラムは、別々に示されるが、この区別は単に機能的である。それらは、任意の組み合わせに係り、1つ以上のソフトウェアプログラムへと、同じくらい容易にグループ分けされ得る。それらの機能はまた、少なくとも部分的に、専用集積回路へとマイクロプログラムまたはマイクロワイヤードされ得る。故に、代替として、電子回路32を実装するコンピュータ装置は、同じアクションを実施するためにデジタル回路のみで(コンピュータプログラムなしに)作製された電子装置によって置き換えられ得る。
【0040】
より詳細には、第1コンピュータプログラム40は、メモリに記憶されたヤコビアンパラメータを使用して、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された、周辺制御機器28によって提供される命令を、関節アーム10を作動させるためのモータM1~M6の各々を制御する個々の命令へヤコビアン変換を実施するための命令46を含む。このヤコビアン変換器関数は、当業者によく知られているため、詳述されないものとする。コンピュータプログラム40の実行によって提供される個々の制御命令は、中央装置36によって関節アーム10に伝送されることになる。
【0041】
第1コンピュータプログラム40は、手術器具12が動作中であるとき、例えば、一定の時間間隔で、モータM1~M6の位置の取得をメモリ38に、より正確には、データストレージ専用のメモリ38の一部50にそれらを記憶するために実施する、命令48をさらに含む。メモリ50のこの一部は、有利には、スタックとして、すなわちLIFO(後入れ先出し)タイプのメモリとして、構造化され得る。データ取得は、中央装置36によって実行される。故に、たどられた経路に沿った機能的な端24の制御された運動の間に一定の時間間隔で回復される関節アーム10の連続的な位置付け、すなわち、より正確には図1の例においてのモータM1~M6のそれぞれの連続的な位置は、順序系列に従ってLIFOメモリ50に記憶される。
【0042】
また、より詳細には、第2コンピュータプログラム42は、そのような連続的な位置の後のセットから最初のセットまで関節アーム10の連続的な段階的逆行のためのLIFOメモリ50に記憶されるモータM1~M6のそれぞれの連続的な位置の読み出しを実施する命令52を含む。モータM1~M6の位置の新規セットが読み出されるたびに、手術器具12の機能的な端24によってたどられた経路が反対方向にたどりなおされることが可能になり、命令52は、モータM1~M6を制御するための対応する個々の命令を生成する。これらは、中央装置36によって関節アーム10に伝送され、位置読み出されたセットは、次いでLIFOメモリ50から消去される。
【0043】
ソフトウェアスイッチ44は、ペダル34が作動されるか否かに応じて、コンピュータプログラム40、42のうちの一方または他方の実行を選択することを可能にする。デフォルトでは、第1コンピュータプログラム40が選択される。周辺制御機器28によって提供される任意の運動命令は、中央装置36によって考慮され、このプログラムの実行によってモータM1~M6の各々を制御するための個々の命令へと変換される。加えて、一定の時間間隔で、モータM1~M6の連続的な位置は、LIFOメモリ50内のスタックされた順序付きリストに記憶される。足でペダル34を押すことにより、ソフトウェアスイッチ44は、第2コンピュータプログラム42の実行に設定される。周辺制御機器28によって発行される任意の新規運動命令は、このとき、もはや考慮されない。LIFOメモリ50に記憶されるモータM1~M6の連続的な位置データは、手術器具12によってたどられた逆経路を再構築するためにそれらの記憶の逆の順序で次々にアンスタックされる。電子装置32がペダル34に加えられる圧力に対して高感度であるようにプログラムされる場合、結果として生じるロボットアーム10の逆行は、例えば、圧力が強いほど、より高速である。好ましい実施形態において、ペダル34が解放されるとすぐに、LIFOメモリ50がクリアにされるかどうかに関わりなく自動逆行は停止し、ソフトウェアスイッチ44は第1コンピュータプログラム40を実行することへと切り替わる。
【0044】
図2は、図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す。
【0045】
最初ステップ100において、ペダル34は作動されず、オペレータは、周辺制御機器28を使用して関節アーム10によって保持される手術器具12の機能的遠位端24の運動に従事する。
【0046】
後続ステップ102において、中央処理装置36は、周辺制御機器28によって提供される命令を、モータM1~M6を制御するための個々の命令へと変換するために、および手術器具12によってたどられる経路をLIFOメモリ50に保存するようにそれらの連続的な位置を定期的に記憶するために、第1コンピュータプログラム40の命令46および48を実行する。モータM1~M6の連続的な位置を一定の時間間隔で記録するということは、2つの記録の間の手術器具12の機能的遠位端24によって網羅される距離がその運動の速度に比例することから、有利には、手術器具12の運動の速度に関する情報を維持することを可能にするということに留意されたい。
【0047】
次のステップ104において、医師は、すでに完了した経路に沿った手術器具12の迅速かつ自動逆行を開始することを望む。それを行うため、医師は、ペダル34を押す。
【0048】
後続ステップ106において、中央処理装置36は、次いで、この自動逆行を以前に説明したように実施して第2コンピュータプログラム42の命令52を実行し、逆行の速度は、ペダル34に加えられる圧力の関数であり得る。
【0049】
最後に、最終ステップ108において、医師は、LIFOメモリ50がクリアされたかどうかに関わりなく、自動高速逆行が停止するようにペダル34を解放する。本方法は、次いで、ステップ100または104において再開し得る。
【0050】
図3は、図2の方法を実行することによって実現されるシナリオの例を示す。
【0051】
最初に(すなわち、ステップ100の第1実行において)、LIFOメモリ50は空であり、手術器具12の機能的遠位端24は、初期地点P1にある。
【0052】
ステップ102を実施している間、機能的遠位端24は、
-高速で地点P1から地点P2へ(故に、LIFOメモリ50内の少量の連続運動情報を記憶する)、次いで
-平均速度で地点P2から地点P3へ(故に、LIFOメモリ50内の中間数の連続運動情報を記憶する)、次いで
-平均速度で地点P3から地点P4へ(故に、LIFOメモリ50内の中間数の連続運動情報を記憶する)、次いで
-低速で地点P4から地点P5へ(故に、LIFOメモリ50内の大量の連続運動情報を記憶する)、次いで
-高速で地点P5から地点P6へ(故に、LIFOメモリ50内の少量の連続運動情報を記録する)、動く。
【0053】
地点P6において、オペレータは、ペダル34を押すことによって手術器具12の迅速かつ自動逆行を有効化することを決定する(ステップ104)。
【0054】
これは、ステップ106の実行を結果としてもたらし、このステップの間、機能的遠位端24は、
-高速戻しでP6からP5へ(故に、P5とP6との間の以前に記憶された連続運動情報をアンスタックする)、次いで
-高速戻しでP5からP4へ(故に、P4とP5との間の以前に記憶された連続運動情報をアンスタックする)、次いで
-高速戻しでP4からP3へ(故に、P3とP4との間の以前に記憶された連続運動情報をアンスタックする)、戻る。
【0055】
地点P3に戻ると、オペレータは、ペダル34を解放することによって手術器具12の迅速かつ自動な逆行を中断することを決定する(ステップ108)。
【0056】
彼又は彼女は、次いで、手術器具12の機能的遠位端24を別の経路へ向けることを決定し、これによりステップ100の新規実行へ戻る。
【0057】
図3に示されたシナリオの終わりを示すステップ102の新規実行の間、機能的遠位端24は、
-高速で地点P3から地点P7へ(少量の連続運動情報がLIFOメモリ50に記憶されることを結果としてもたらす)、次いで
-低速で地点P7から地点P8へ(大量の連続運動情報がLIFOメモリ50に記憶されることを結果としてもたらす)、動く。
【0058】
図2内の手術介入方法および図3内のその例示的なシナリオは、患者の中耳または内耳に対するそれら以外の介入の実施に容易に一般化可能である。
【0059】
明白には、上に説明されるものなどのロボット装置は、誤った運動または以前にたどられた経路からの偏向なしに手術器具の迅速な除去が望ましい特定の状況において、安全な手術介入を可能にする。
【0060】
本発明は、上に説明される実施形態に限定されないということにも留意されたい。
【0061】
本発明は、有利には、図1の関節アーム10の構造および運動学に適用されるが、それは、対応する変換および位置付け情報を適合させることによって、他の構造および運動学に一般化され得る。
【0062】
関節アーム10の連続的な位置付けは、モータの位置の形態で記録されるが、手術器具12の連続的な6D位置など、他の形態で記録されてもよい。
【0063】
様々な変形が、まさに開示された教示を鑑みて、上に説明した実施形態に対してなされ得ることは、当業者にとってより広く明白であるものとする。本発明の上の詳細な提示において使用される用語は、本発明を本説明に明記される実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、当業者にまさに開示された教示の実装形態に当業者の一般的知識を当てはめることにより、当業者の手が届く範囲にある予想のすべての均等物を含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】