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特表2022-551300脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/20 20220101AFI20221201BHJP
   C01F 11/08 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B09B3/20 ZAB
C01F11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520995
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 CN2019122680
(87)【国際公開番号】W WO2021097912
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201911151098.X
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514543
【氏名又は名称】インスティテュート オブ リサーチ オブ アイロン アンド スティール,ジィァンスー プロビンス/シャー-スティール カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF RESEARCH OF IRON & STEEL,JIANGSU PROVINCE/SHA-STEEL, CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(71)【出願人】
【識別番号】521514554
【氏名又は名称】ヂャンジャガン ホンチャン スティール プレート カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHANGJIAGANG HONGCHANG STEEL PLATE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(71)【出願人】
【識別番号】521514565
【氏名又は名称】ジィァンスー シャガン グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU SHAGANG GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Jinfeng Town, Zhangjiagang Suzhou,Jiangsu 215625, China
(74)【代理人】
【識別番号】100120019
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 敏安
(72)【発明者】
【氏名】マオ ルェイ
(72)【発明者】
【氏名】マオ シェンドン
(72)【発明者】
【氏名】ワン フェイ
(72)【発明者】
【氏名】スー ハン
【テーマコード(参考)】
4D004
4G076
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB03
4D004BA06
4D004CA13
4D004CA30
4D004DA03
4D004DA06
4G076AA02
4G076AA10
4G076AB08
4G076AB28
4G076AC02
4G076AC04
4G076AC10
4G076BA38
4G076BD02
4G076DA29
4G076DA30
(57)【要約】
本発明は、脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システムを開示する。前記資源回収方法は、脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得るステップと、前記溶液を脱硫スラリーに調製するステップと、前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得るステップと、を含み、これにより、脱硫灰中の硫黄、カルシウムの回収を実現し、プロセスにおいて固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得る水洗工程と、
水酸化カルシウムに富む前記溶液を脱硫スラリーに調製するスラリー化工程と、
亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムに富む前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得る焙焼工程と、を含むことを特徴とする、脱硫灰の資源回収方法。
【請求項2】
前記水洗工程では、水と脱硫灰との質量比は20:1を超えることを特徴とする、請求項1に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項3】
前記水洗工程では、得られた前記固体残留物を圧縮、乾燥脱水前処理を行い、乾燥温度は200~400℃であることを特徴とする、請求項1に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項4】
前記焙焼工程では、前記還元剤は還元性雰囲気であることを特徴とする、請求項1に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項5】
前記還元性雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~5%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気であることを特徴とする、請求項4に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項6】
前記還元性雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~2%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気であることを特徴とする、請求項4に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項7】
前記焙焼工程では、焙焼温度は1000~1300℃であることを特徴とする、請求項1に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項8】
前記スラリー化工程では、調製された脱硫スラリーは排煙脱硫に使用され、
前記水洗工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記水洗工程で得られた前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行う析出工程を、更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項9】
前記焙焼工程で得られた前記残留物を前記スラリー化工程の前記溶液に添加して脱硫スラリーを調製する残留物再利用工程を、更に含むことを特徴とする、請求項1又は8に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項10】
前記水洗工程、前記焙焼工程、前記残留物再利用工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記焙焼工程で得られた前記残留物を鉄鉱焼結用のフラックス剤として使用する残留物多重再利用工程を、更に含むことを特徴とする、請求項9に記載の脱硫灰の資源回収方法。
【請求項11】
脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得る水洗工程と、
前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行う析出工程と、
亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムに富む前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得る焙焼工程と、を含むことを
特徴とする、脱硫灰の資源回収方法。
【請求項12】
脱硫灰投入口及び給水口を有する水洗反応槽と、
前記水洗反応槽に適合し、前記水洗反応槽内の混合液を固液分離するための固液分離装置と、
前記固液分離装置の液相出口に連通する脱硫スラリー調製装置と、
前記固液分離装置の固相出口に連通し、還元性雰囲気注入口、焙焼加熱装置、温度コントローラ、及び気固分離装置を有する焙焼反応器であって、前記温度コントローラは、前記焙焼加熱装置に接続してそれを制御し、前記気固分離装置は、前記焙焼反応器内の気相生成物と固相生成物を分離するために使用される焙焼反応器と、を含むことを特徴とする、脱硫灰の資源回収システム。
【請求項13】
段階的に接続されるm+1個の資源回収サブシステムを含み、mは正の整数であり、
前記m+1個の資源回収サブシステムは、いずれも前記水洗反応槽、前記固液分離装置及び前記焙焼反応器を含み、各々の水洗反応槽の脱硫灰投入口に連通する外部脱硫反応器がそれぞれ対応して設けられ、
1番目からm番目の前記資源回収サブシステムは、いずれも前記脱硫スラリー調製装置を含み、各々の前記脱硫スラリー調製装置の脱硫スラリー排出口がそれぞれ、その次の前記資源回収サブシステムに対応する外部脱硫反応器に連通し、
m+1番目の前記資源回収サブシステムは、析出反応器及び結晶化反応器を含み、その固液分離装置の液相出口は前記析出反応器に連通し、前記析出反応器は炭酸カリウム投入口及び炭酸ナトリウム投入口のうちの少なくとも1つと、第2固液分離装置とを有し、前記第2固液分離装置の液相出口は前記結晶化反応器に連通することを特徴とする、請求項12に記載の脱硫灰の資源回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願日が2019年11月21日、出願番号が201911151098.X、発明の名称が「脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システム」の中国特許出願の優先権を主張し、その全てが参照によって本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、冶金固形廃棄物処理の技術分野に属し、脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システムに関する。
【背景技術】
【0003】
排煙脱硫技術は、主に乾式脱硫技術、半乾式脱硫技術及び湿式脱硫技術に分けられている。湿式脱硫技術に対して、乾式脱硫技術及び半乾式脱硫技術は、脱硫効率が高く、プロセスフローが短く、占有面積が小さく、投資が低い等の利点があり、特に、半乾式排煙脱硫技術は、その利点がより顕著であるため、中小型の発電機セット及び鋼鉄焼結の排煙脱硫プロセスに広く適用されている。
【0004】
乾式脱硫技術と半乾式脱硫技術はどちらも脱硫灰と呼ばれる脱硫副産物を生成することがあるが、その主成分は一般的に、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等を含み、成分が安定せず、アルカリ性であり、分解しやすく、吸水して膨張しやすい等の特性を有し、処分及び資源の再利用が困難である固形廃棄物に属し、現在、一般的に埋立方式でしか処分できず、環境を汚染し、土地を占有するだけでなく、非常に大きな安全上のリスクが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、脱硫灰の処分が困難で、総合的な利用が実現しにくいという従来技術の技術的問題を解決するために、脱硫灰の資源回収方法及び資源回収システムを提供することである。
【0006】
上記目的の1つを達成するために、本願の一実施形態は、
脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得る水洗工程と、
水酸化カルシウムに富む前記溶液を脱硫スラリーに調製するスラリー化工程と、
亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムに富む前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得る焙焼工程と、を含む脱硫灰の資源回収方法を提供する。
【0007】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記水洗工程では、水と脱硫灰との質量比は20:1を超える。
【0008】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記水洗工程では、得られた前記固体残留物を圧縮、乾燥脱水前処理を行い、乾燥温度は200~400℃である。
【0009】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記焙焼工程では、前記還元剤は還元性雰囲気である。
【0010】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記還元性雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~5%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気である。
【0011】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記還元性雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~2%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気である。
【0012】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記焙焼工程では、焙焼温度は1000~1300℃である。
【0013】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記スラリー化工程では、調製された脱硫スラリーは排煙脱硫に使用され、
前記資源回収方法は、前記水洗工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記水洗工程で得られた前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行う析出工程を、更に含む。
【0014】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記資源回収方法は、前記焙焼工程で得られた前記残留物を前記スラリー化工程の前記溶液に添加して脱硫スラリーを調製する残留物再利用工程を、更に含む。
【0015】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記資源回収方法は、前記水洗工程、前記焙焼工程、前記残留物再利用工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記焙焼工程で得られた前記残留物を鉄鉱焼結用のフラックス剤として使用する残留物多重再利用工程を、更に含む。
【0016】
上記の目的の1つを達成するために、本願の一実施形態は、
脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得る水洗工程と、
前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行う析出工程と、
亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムに富む前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得る焙焼工程と、を含む脱硫灰の資源回収方法を提供する。
【0017】
上記の目的の1つを達成するために、本願の一実施形態は、
脱硫灰投入口及び給水口を有する水洗反応槽と、
前記水洗反応槽に適合し、前記水洗反応槽内の混合液を固液分離するための固液分離装置と、
前記固液分離装置の液相出口に連通する脱硫スラリー調製装置と、
前記固液分離装置の固相出口に連通し、還元性雰囲気注入口、焙焼加熱装置、温度コントローラ、及び気固分離装置を有する焙焼反応器であって、前記温度コントローラは、前記焙焼加熱装置に接続してそれを制御し、前記気固分離装置は、前記焙焼反応器内の気相生成物と固相生成物を分離するために使用される焙焼反応器と、を含む脱硫灰の資源回収システムを提供する。
【0018】
本願の一実施形態の更なる改善として、前記資源回収システムは、段階的に接続されるm+1個の資源回収サブシステムを含み、mは正の整数であり、
前記m+1個の資源回収サブシステムは、いずれも前記水洗反応槽、前記固液分離装置及び前記焙焼反応器を含み、各々の水洗反応槽の脱硫灰投入口に連通する外部脱硫反応器がそれぞれ対応して設けられ、
1番目からm番目の前記資源回収サブシステムは、いずれも前記脱硫スラリー調製装置
を含み、各々の前記脱硫スラリー調製装置の脱硫スラリー排出口がそれぞれ、その次の前記資源回収サブシステムに対応する外部脱硫反応器に連通し、
m+1番目の前記資源回収サブシステムは、析出反応器及び結晶化反応器を含み、その固液分離装置の液相出口は前記析出反応器に連通し、前記析出反応器は炭酸カリウム投入口及び炭酸ナトリウム投入口のうちの少なくとも1つと、第2固液分離装置とを有し、前記第2固液分離装置の液相出口は前記結晶化反応器に連通する。
【0019】
よって、従来技術に比べると、本願は以下の有益な効果を有する。脱硫灰を水洗し、水洗後に得られた固体残留物を還元剤の作用下で焙焼することによって、脱硫灰中の硫黄元素がほぼ全て、二酸化硫黄の形で前記排煙に移行することができ、脱硫灰中の硫黄元素の資源回収が実現される。また、水洗後に得られた溶液と固体残留物の焙焼後に得られた残留物を、ともに脱硫スラリーに調製することによって、脱硫灰中のカルシウム元素を全て脱硫スラリーに戻し、カルシウム元素の脱硫プロセスにおけるリサイクルを実現し、プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、顕著な経済的利益及び環境的利益を有する。また、水洗後に得られた溶液から炭酸カリウム/炭酸ナトリウムの作用下で析出した沈殿物及び水洗後に得られた固体残留物を焙焼し、酸化カルシウム残留物を得て、更に鉄鉱焼結に使用することで、カルシウム元素の回収再利用を実現することができ、プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、顕著な経済的利益及び環境的利益を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の第一の実施形態における脱硫灰の資源回収方法のプロセスフローチャートである。
図2】本願の第一の実施形態における脱硫灰の資源回収システムの概略図である。
図3】本願の第二の実施形態における脱硫灰の資源回収方法のプロセスフローチャートである。
図4】本願の第二の実施形態における脱硫灰の資源回収システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、図面に示される具体的な実施形態を参照しながら、本発明を詳しく説明する。ただし、これらの実施形態は本発明を制限するものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいてなされた構造、方法又は機能上の変換は、全て本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【0022】
<第一の実施形態>
図1を参照すると、脱硫灰の資源回収方法の第一の実施形態を提供し、脱硫灰の効率的な処理を実現できるほか、脱硫灰中の硫黄、カルシウム等の元素の回収を可能にし、それによって、脱硫灰の高付加価値の資源化利用が可能となり、プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、経済的で環境にやさしい。具体的には、前記資源回収方法は次の各工程を含む。
【0023】
水洗工程で、脱硫灰を水洗し、固液分離後、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムに富む固体残留物及び水酸化カルシウムに富む溶液を得る。
【0024】
脱硫灰の主成分は一般的に、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等を含む。脱硫灰は、具体的に、乾式脱硫灰、半乾式脱硫灰から選ばれるいずれか1つ又は2つの混合物であってもよい。前記乾式脱硫灰は、具体的に、循環流動床による排煙脱硫灰又は他の乾式脱硫灰のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせであってもよく、前記半乾式脱硫灰は、具体的に、回転スプレー法による排煙脱硫灰又は他の半乾式脱硫灰のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせであって
もよい。
【0025】
当該水洗工程では、まず、脱硫灰を水洗し、その中の水酸化カルシウムは水に溶解し、酸化カルシウムと水が反応して水酸化カルシウムを生成し、脱硫灰中の水酸化カルシウムと酸化カルシウムの両方も液相に入ることができるが、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等は水に不溶である。更に、固液分離によって得られた液相は水酸化カルシウムに富み、得られた固体残留物は元の脱硫灰中の亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等を保持している。即ち、当該水洗工程により、脱硫灰中の排煙脱硫反応に関与しない酸化カルシウム及び水酸化カルシウムは分離され、後述するスラリー化工程において、更に、脱硫スラリーに再調製されてリサイクルされる。
【0026】
好ましくは、当該水洗工程では、水と脱硫灰との質量比は20:1を超え、これにより、脱硫灰中の酸化カルシウム及び水酸化カルシウムを全て抽出するための十分な水量を確保することができる。水と脱硫灰は機械的な撹拌によって十分に混合してもよく、当然ながら、本分野で知られている他の既存の操作で十分な混合を実現してもよい。
【0027】
当該水洗工程では、具体的には、ろ過、遠心分離等によって固液分離を実現してもよい。
【0028】
更に、固液分離後、得られた前記固体残留物に対して脱水前処理を行い、具体的には、圧縮や乾燥等のいずれか1つ又は2つのプロセスによって脱水前処理を行ってもよい。好ましくは、前記固体残留物を乾燥させて、前記固体残留物の水分を除去し、乾燥温度は200~400℃であってもよい。このように、前記固体残留物の水分を除去することによって、前記固体残留物を水分含有量が多いまま、次の焙焼工程に投入して高温焙焼を行うことによる安全上のリスクを回避することができ、一方、合理的な温度制御によって、前記固体残留物を適切に予備加熱することができ、これにより、前記固体残留物を次の焙焼工程に投入して高温焙焼を行うプロセスをよりスムーズにし、過度の温度による前記固体残留物の予想外の反応変化を回避することができる。
【0029】
スラリー化工程で、前記水洗工程で得られた水酸化カルシウムに富む前記溶液を脱硫スラリーに調製する。
【0030】
前記水洗工程により、脱硫灰中の酸化カルシウム及び水酸化カルシウムは分離され、水酸化カルシウムに富む溶液が得られる。当該スラリー化工程では、前記溶液を脱硫スラリーに調製する。このように、前記水洗工程と当該スラリー化工程を組み合わせることによって、脱硫灰中の酸化カルシウム及び水酸化カルシウムをベースに脱硫スラリーを得ることができ、脱硫灰中の酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの資源回収を可能にする。
【0031】
好ましくは、前記スラリー化工程では、水酸化カルシウムに富む前記溶液に酸化カルシウムを添加し、脱硫スラリーを調製する。
【0032】
更に、当該スラリー化工程は、前記脱硫スラリーを用いて二酸化硫黄に富む排煙を脱硫するステップも含む。即ち、前記脱硫スラリーは、二酸化硫黄に富む排煙を脱硫するために、排煙脱硫プロセスに再適用され、特に、半乾式排煙脱硫プロセスに適用することができる。このように、前記水洗工程と当該スラリー化工程を組み合わせることによって、脱硫灰中の酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの資源回収を実現できるだけでなく、更に酸化カルシウム及び水酸化カルシウムの回収生成物(即ち、前記脱硫スラリー)の資源再利用も実現できる。
【0033】
焙焼工程で、前記水洗工程で得られた亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムに富む前記固
体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得る。
【0034】
前記水洗工程により、脱硫灰中の亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等は前記固体残留物に分離され、即ち、前記固体残留物中の主成分は亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等である。当該焙焼工程では、前記固体残留物を還元剤の作用下で焙焼し、還元剤の還元作用及び焙焼の作用によって、前記固体残留物中の硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムは酸化カルシウムに変換され、二酸化硫黄が放出され、これにより二酸化硫黄に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物が得られる。
【0035】
このように、前記水洗工程と当該焙焼工程を組み合わせることによって、脱硫灰中の硫酸カルシウム及び亜硫酸カルシウムをベースに二酸化硫黄に富む排煙を得て、これにより、脱硫灰中の硫黄元素がほぼ全て、二酸化硫黄の形で前記排煙に移行することができ、脱硫灰中の硫黄元素の資源回収が実現される。更に好ましくは、当該焙焼工程は、得られた前記排煙を硫酸に調製するステップも含み、具体的には、前記排煙を除塵、浄化、触媒酸化、吸収等のプロセスによって濃度の異なる硫酸に調製することができる。このように、前記水洗工程と当該焙焼工程を組み合わせることによって、脱硫灰中の硫黄元素の資源回収を実現するだけでなく、更に硫黄元素の回収生成物(即ち、前記排煙)の資源再利用も実現する。
【0036】
また、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムに加えて、前記固体残留物中の主成分は、炭酸カルシウムも含む。当該焙焼工程では、前記固体残留物を高温焙焼することによって、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムを十分に反応させて酸化カルシウムを生成することができるだけでなく、前記固体残留物中の炭酸カルシウムを酸化カルシウムに分解させることもでき、その反応は一般的に次のとおりである。
CaCO=CaO+CO
即ち、当該焙焼工程では、二酸化硫黄、二酸化炭素に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得ることができる。
【0037】
このように、前記水洗工程と当該焙焼工程を組み合わせることによって、脱硫灰中の硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム中のカルシウム元素がほぼ全て、酸化カルシウムの形で当該焙焼工程で得られた前記残留物に移行することができ、この部分のカルシウム元素の資源回収が実現される。また、前記残留物を様々な異なる工業生産(例えば、後述する好ましい残留物再利用工程)に使用して、更に、この部分のカルシウム元素の資源再利用を実現することもできる。
【0038】
更に、当該焙焼工程では、前記還元剤は還元性雰囲気であり、即ち、当該焙焼工程では、前記固体残留物を還元性雰囲気中で焙焼する。このように、コークス、微粉炭等の固相還元剤を使用する場合に比べると、還元性雰囲気中で前記固体残留物を焙焼することによって、消費されなかった固相還元剤が焙焼後の残留物に新たにドープされることを回避し、焙焼後に得られた前記残留物の好ましい成分純度を確保することができる。
【0039】
好ましくは、前記還元性雰囲気は、弱還元性雰囲気であり、具体的には、一酸化炭素の体積分率が0~5%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気であり、残りのガスは通常、窒素又は不活性ガスである。このように、一酸化炭素を還元性ガスとして前記固体残留物と反応させるという好ましい態様を採用し、一酸化炭素の体積分率を最適化することによって、前記固体残留物中の亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムが酸化カルシウムに完全に変換されることを確保できるだけでなく、過剰な一酸化炭素ガスにより反応生成物が制御不能となること、及び資源の浪費を回避することができる。
【0040】
具体的には、当該焙焼工程では、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムが関与する反応は、一般的に次のとおりである。
CaSO+CO=CaSO+CO
CaSO=CaO+SO
【0041】
また、前記還元性雰囲気中で、一酸化炭素の体積分率は、更に好ましくは0~2%であり、即ち、前記還元性雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~2%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気である。
【0042】
更に、当該焙焼工程では、焙焼温度は1000~1300℃である。このように、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムが酸化カルシウムに十分に変換されることを確保し、当該還元反応の効率を確保することができる。ここで、前述したように、焙焼前に前記固体残留物に対して脱水前処理を行うことによって、前記固体残留物を水分含有量が多いまま、高温焙焼することによる安全上のリスクを回避することができ、また、この実施形態は連続的な生産作業に寄与する。当然ながら、実施形態の1つの変形として、当該焙焼工程では、上記焙焼温度まで徐々に加熱するように前記固体残留物を焙焼してもよく、この変形例では、連続的な生産作業が不便であるが、焙焼前の前記固体残留物に対する脱水前処理の操作を省き、工程を簡素化することができる。
【0043】
また、当該焙焼工程では、バッグ式除塵、遠心分離等の方式によって、得られた前記排煙と前記残留物を気固分離してもよく、当然ながら、本分野で知られている他の既存の操作で気固分離を実現してもよい。
【0044】
残留物再利用工程で、前記焙焼工程で得られた前記残留物を、前記スラリー化工程の前記溶液に添加する。
【0045】
前記焙焼工程で得られた前記残留物は、酸化カルシウムが豊富である。前記残留物中の酸化カルシウム、前記スラリー化工程の前記溶液中の水酸化カルシウムがともに、脱硫スラリーに調製されるように、前記残留物を前記スラリー化工程の前記溶液に添加し、これにより、前記スラリー化工程に新たに追加投入される酸化カルシウム資源の量を減らすことができ、前記脱硫灰中のカルシウム元素がほぼ全て、脱硫スラリーに戻り、脱硫灰中のカルシウム元素の資源再利用が実現される。また、前記水洗工程、前記スラリー化工程、前記焙焼工程及び当該残留物再利用工程を組み合わせることによって、カルシウム資源の脱硫プロセスにおける繰り返しリサイクルを実現し、利用価値及び経済的利益を向上させることができる。
【0046】
図2を参照すると、脱硫灰の資源回収システム100の第一の実施形態を更に提供し、当該資源回収システムは、前述した第一の実施形態の資源回収方法を実現するために使用することができ、以下において、前述した資源回収方法の説明を参照しながら、資源回収システム100の構造及び機能を理解することができる。
【0047】
具体的には、資源回収システム100は、水洗反応槽10、固液分離装置20、脱硫スラリー調製装置30及び焙焼反応器40を含む。
【0048】
水洗反応槽10は脱硫灰投入口11及び給水口12を有する。文字通り、脱硫灰投入口11は、脱硫灰を水洗反応槽10に導入するために使用することができ、外部脱硫反応器200の脱硫灰排出口に連通することができ、当該脱硫反応器200は、具体的に、乾式脱硫反応器、半乾式脱硫反応器のいずれか1つ又は2つの組み合わせであってもよい。給水口12は、水を水洗反応槽10に導入するために使用することができ、外部貯水池300に連通することができる。水洗反応槽10を設けることによって、脱硫灰と水が水洗反
応槽10内に合流して混合液を形成して、前述した水洗工程における脱硫灰の水洗操作を実現することができ、それにより、脱硫灰中の水酸化カルシウムと酸化カルシウムの両方も液相に入ることができ、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等は水に不溶であるため、固相状態を維持するか、混合液に懸濁している。
【0049】
好ましくは、水洗反応槽10は更に撹拌装置を有し、前記撹拌装置は、脱硫灰中の酸化カルシウム、水酸化カルシウムが液相に充分入るように、水洗反応槽10の脱硫灰及び水を十分に撹拌することができる。
【0050】
固液分離装置20は水洗反応槽10に適合し、水洗反応槽10内の混合液を固液分離するために使用される。固液分離装置20は、水洗反応槽10の内部に配置するか、水洗反応槽10の外部に配置するか、又は水洗反応槽10と一体的に設置してもよく、具体的には、沈降器、ろ過装置、遠心分離機等のいずれか1つ又は任意の組み合わせにしてもよく、当然ながら、固液分離装置20は、本分野で知られている固液分離を実現可能な他の既存の構造/装置で実施してもよい。図示の例では、固液分離装置20は、水洗反応槽10の外部に設置されるろ過塔であり、水洗反応槽10内の混合液は、水洗反応槽10の排出口13を介してろ過塔に送ることができ、当該混合液はろ過塔内で固液分離を完了することができる。
【0051】
このように、水洗反応槽10と固液分離装置20を組み合わせることによって、前述した前記水洗工程を実現することができ、固液分離装置20で分離された液相は、水酸化カルシウムに富む溶液であり、分離された固相は、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む固体残留物である。
【0052】
脱硫スラリー調製装置30は、前述したスラリー化工程を実現するために使用することができ、具体的には、固液分離装置20の液相出口21に連通することによって、固液分離装置20で分離された液相は、脱硫スラリー調製装置30内に送られ、即ち、脱硫スラリー調製装置30は、固液分離装置20から水酸化カルシウムに富む前記溶液を導入し、更に前記溶液を脱硫スラリーに調製することができる。
【0053】
好ましくは、脱硫スラリー調製装置30は、更に酸化カルシウム投入口31を有する。当該酸化カルシウム投入口31は、酸化カルシウムを脱硫スラリー調製装置30内に導入するために使用することができ、ここで、酸化カルシウムは、外部の酸化カルシウム貯蔵サイロ400から提供されるものであってもよく、好ましくは、後述するように、焙焼反応器40の気固分離装置の固相出口42から提供されるものであってもよい。
【0054】
更に、調製された脱硫スラリーを排煙脱硫プロセスに適用するために、脱硫スラリー調製装置30の脱硫スラリー排出口32は、外部脱硫反応器200に連通し、当該脱硫反応器200は、乾式脱硫反応器及び/又は半乾式脱硫反応器であってもよい。例えば、脱硫スラリーを脱硫スラリー噴射システムによって排煙中の二酸化硫黄の除去に適用することができる。
【0055】
焙焼反応器40は前述した焙焼工程を実現するために使用することができ、具体的には、固液分離装置20の固相出口22に連通することによって、固液分離装置20で分離された固相は、焙焼反応器40内に送られ、即ち、焙焼反応器40は、固液分離装置20から亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む前記固体残留物を導入することができる。
【0056】
焙焼反応器40は、還元性雰囲気注入口41、焙焼加熱装置、温度コントローラ及び気固分離装置を有する。
【0057】
還元性雰囲気注入口41は、焙焼反応器40内が対応する反応雰囲気を維持するために、反応に必要な雰囲気を焙焼反応器40に導入するために使用することができ、外部エアタンク500に連通することができる。好ましくは、還元性雰囲気注入口41から導入される雰囲気は、一酸化炭素の体積分率が0~5%で、酸素の体積分率が2%未満の雰囲気であり、残りのガスは通常、窒素又は不活性ガスである。一酸化炭素の体積分率は、更に好ましくは0~2%であり得る。このように、焙焼反応器40内の反応雰囲気の維持を容易にする還元性雰囲気注入口41を設けることによって、焙焼反応器40の焙焼反応がスムーズに進行することを確保する。
【0058】
前記温度コントローラは、焙焼反応器40内が必要な焙焼温度を維持するために、前記焙焼加熱装置に接続して熱を発生させるようにそれを制御する。好ましくは、前記温度コントローラによる制御下で、前記焙焼加熱装置は、焙焼反応器40内を1000~1300℃の焙焼温度に維持するために、熱を発生させる。
【0059】
このように、焙焼反応器40を設けることによって、前述した焙焼工程を実現することができ、即ち、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む前記固体残留物の高温焙焼を実現し、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウムを酸化カルシウム及び二酸化硫黄に変換し、炭酸カルシウムを酸化カルシウム及び二酸化炭素に分解させ、最終的に、二酸化硫黄、二酸化炭素に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物を得ることができる。
【0060】
前記気固分離装置は、焙焼反応器40内の気相生成物と固相生成物を分離するために使用され、即ち、前記排煙及び前記残留物の更なる資源再利用のために、二酸化硫黄、二酸化炭素に富む排煙と酸化カルシウムに富む残留物とを分離することができる。好ましくは、前記気固分離装置は、焙焼反応器40内に配置されるバッグ式除塵装置又は遠心分離装置であってもよい。
【0061】
好ましくは、前記気固分離装置の気相出口43は、焙焼反応器40内で調製された前記排煙を硫酸の調製に使用するために、硫酸調製装置600に連通することができ、前記気固分離装置の固相出口42は、酸化カルシウムに富む前記残留物と固液分離装置20で分離された水酸化カルシウムに富む前記溶液を混合し、脱硫スラリーの調製に使用するために、脱硫スラリー調製装置30の酸化カルシウム投入口31に連通することができる。このように、外部酸化カルシウム貯蔵サイロ400から追加投入される酸化カルシウムの量を減らすことができる。
【0062】
また、好ましくは、焙焼反応器40と固液分離装置20の固相出口22との間に脱水装置をも設けてもよく、固液分離装置20で分離された前記固体残留物を焙焼反応器40に投入する前に、先に前記脱水装置に入れて脱水前処理を行い、前記固体残留物中の水分を少なくとも部分的に除去し、前記固体残留物を水分含有量が多いまま、高温の焙焼反応器40に投入することによる安全上のリスクを回避する。
【0063】
更に、前記脱水装置は、圧縮脱水装置、乾燥装置のうちのいずれか1つ又は両者の組み合わせを含んでもよく、好ましくは、前記脱水装置は圧縮脱水装置及び乾燥装置を含み、前記圧縮脱水装置は、固液分離装置20の固相出口22に比較的近接して設置され、前記乾燥装置は、前記圧縮脱水装置と焙焼反応器40との間に設置され、前記固体残留物は前記圧縮脱水装置及び前記乾燥装置に順次入って脱水前処理を行なわれる。
【0064】
以上より、従来技術に比べると、本願の一実施形態の前記資源回収方法及び資源回収システム100は以下の有益な効果を有する。脱硫灰を水洗し、水洗後に得られた固体残留
物を還元剤の作用下で焙焼することによって、脱硫灰中の硫黄元素がほぼ全て、二酸化硫黄の形で前記排煙に移行することができ、脱硫灰中の硫黄元素の資源回収が実現される。また、水洗後に得られた溶液と固体残留物の焙焼後に得られた残留物を、ともに脱硫スラリーに調製することによって、脱硫灰中のカルシウム元素を全て脱硫スラリーに戻し、カルシウム元素の脱硫プロセスにおけるリサイクルを実現し、プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、顕著な経済的利益及び環境的利益を有する。
【0065】
以下において、図1及び図2に対応する一実施形態の前記資源回収方法及び前記資源回収システムの特定の技術及び有益な効果を理解するように、具体的な実施例を1つ挙げる。
【0066】
実施例1
半乾式脱硫反応器200で半乾式脱硫プロセスによって製造された脱硫灰を、水洗反応槽10に送り込んで水洗し、ここで、水洗反応槽10内の水と脱硫灰との質量比は20:1を超え、また、水洗反応槽10の撹拌装置の撹拌作用によって、脱硫灰と水を十分に均一に混合して混合液を得る。
水洗反応槽10内の前記混合液を固液分離装置20に送って固液分離を行い、分離された液相は、水酸化カルシウムに富む溶液であり、分離された固相は硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む固体残留物である。
硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む前記固体残留物を先に前記圧縮脱水装置に入れて圧縮脱水前処理を行い、その後、前記乾燥装置に入れて乾燥脱水前処理を行い、ここで、前記乾燥装置内の温度を200~400℃に維持するように制御する。
乾燥後の前記固体残留物を焙焼反応器40に送り、この時、焙焼反応器40内の焙焼温度を1000~1300℃に維持し、焙焼反応器40内において一酸化炭素の体積分率が0%~5%で、酸素の体積分率が2%未満の弱還元性雰囲気を維持し、前記固体残留物を、この弱還元性雰囲気中で高温焙焼する。
焙焼反応器40内の生成物を気固分離し、二酸化硫黄、二酸化炭素に富む排煙及び酸化カルシウムに富む残留物をそれぞれ得る。
前記排煙を硫酸調製装置600に送り、前記排煙を除塵、浄化、触媒酸化、吸収等の工程によって濃度の異なる硫酸に調製し、検査した結果、得られた硫酸の品質は業界の性能基準を満たしている。
前記残留物、水素化ナトリウムに富む前記溶液をそれぞれ脱硫スラリー調製装置30に送り、少量の酸化カルシウムを、酸化カルシウム貯蔵サイロ400から脱硫スラリー調製装置30に補充し、三者をともに、脱硫スラリーに調製する。脱硫スラリーを用いて排煙中の二酸化硫黄を除去するために、脱硫スラリー調製装置30で調製された脱硫スラリーを、脱硫スラリー噴射システムによって半乾式脱硫反応器200に噴射させ、検査した結果、脱硫スラリーは、業界の性能基準を満たし、脱硫効果が標準に達していた。
【0067】
<第二の実施形態>
図3を参照すると、脱硫灰の資源回収方法の第二の実施形態を提供し、同様に脱硫灰の効率的な処理を実現できるほか、脱硫灰中の硫黄、カルシウム等の元素の回収を可能にし、それによって、脱硫灰の高付加価値の資源化利用が可能となり、プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、経済的で環境にやさしい。
【0068】
本実施形態の前記資源回収方法は、同様に水洗工程、スラリー化工程、焙焼工程、残留物再利用工程を含み、これらの各工程は、図1の第一実施形態における各工程と同じであるので、説明を省略する。一方、本実施形態は、前記水洗工程、前記スラリー化工程を複数サイクル実行した後、そして前記水洗工程、前記焙焼工程、前記残留物再利用工程を複
数サイクル実行した後、更なる対応措置を実施する点において、第一の実施形態とは異なっている。
【0069】
具体的には、本実施形態では、前記資源回収方法は次の工程を更に含む。
【0070】
析出工程で、前記水洗工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記水洗工程で得られた前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行う。
【0071】
複数のサイクルを実行し、前記サイクルの各々は、いずれも前記水洗工程、前記スラリー化工程を含む。好ましくは、各サイクルの前記水洗工程の脱硫灰は、前のサイクルの前記スラリー化工程で得られた脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰から取られ、即ち、各サイクルの前記スラリー化工程で得られた脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰は、次のサイクルの前記水洗工程に投入される。
【0072】
前記水洗工程、前記スラリー化工程に従ってサイクルを実行するたびに、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等が脱硫灰に導入され、前記水洗工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後、最終的に大量の塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムが富化されることになる。当該析出工程では、複数のサイクルを実行した後に、次の前記水洗工程で得られた前記溶液に対して、前記スラリー化工程を引き続き行わず、前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加する。このように、前記溶液内の炭酸イオン(添加された炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムに由来)とカルシウムイオン(水酸化カルシウム、濃縮された塩化カルシウムに由来)とが反応して水不溶性の炭酸カルシウムを生成すると同時に、遊離の塩化カリウム及び/又は塩化ナトリウムを生成する。炭酸カリウムを添加する場合を例にすると、具体的な反応は一般的に以下を含む。
CO+CaCl=2KCl+CaCO
CO+Ca(OH)=2KOH+CaCO
【0073】
その後、ろ過、遠心分離等の任意の方式によって固液分離を行い、塩化カリウム、塩化ナトリウムを有する塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得る。
【0074】
炭酸カルシウムに富む前記固相沈殿物は、様々な異なる工業生産で使用することができ、好ましくは、前記固相沈殿物を前記焙焼工程に投入し、焙焼することによって、その中の炭酸カルシウムを酸化カルシウム及び二酸化炭素に分解させ、更に気固分離を行い、酸化カルシウムを得て、排煙脱硫の脱硫剤又は鋼鉄焼結用のフラックス剤として使用する。
【0075】
前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行うことによって、前記塩溶液から塩化カリウム結晶及び/又は塩化ナトリウム結晶を析出させることができる。
【0076】
このように、当該析出工程を設けることにより、複数のサイクルによって生成された塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムの富化された脱硫灰から、塩化カリウム、塩化ナトリウムの結晶を抽出し、カルシウム元素資源が炭酸カルシウムの形で回収、さらには再利用されることを確保し、高付加価値の経済的利益及び環境的利益を有する。
【0077】
当該析出工程で記載されている「複数のサイクル」の「複数」は、具体的には、実際の生産ニーズ又は脱硫灰中の塩酸塩の富化状況に応じて、mで表す任意の正の整数に設定することができる。
【0078】
また、実施形態の変形として、前記資源回収方法は、m+1番目のサイクルのみで実施される場合、前記水洗工程と、当該水洗工程で得られた前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加し、固液分離を行って塩溶液及び炭酸カルシウムに富む固相沈殿物を得て、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行い、炭酸カルシウムに富む前記固相沈殿物を次の焙焼工程に投入する前記析出工程と、前記焙焼工程と、を含む。
【0079】
残留物多重再利用工程で、前記水洗工程、前記焙焼工程、前記残留物再利用工程、前記スラリー化工程に従って複数のサイクルを実行した後に、次の前記焙焼工程で得られた前記残留物を焼結機に投入して鉄鉱焼結用のフラックス剤として使用する。
【0080】
前述したように、複数のサイクルを実行し、前記サイクルの各々は、いずれも前記水洗工程、前記焙焼工程、前記残留物再利用工程、前記スラリー化工程を含む。各サイクルの前記残留物再利用工程においては、当該サイクルの前記焙焼工程で得られた前記残留物を当該サイクルの前記スラリー化工程に添加し、調製された脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰は、次のサイクルの前記水洗工程に投入される。
【0081】
サイクルを実行するたびに、脱硫灰に鉄元素が新たに導入される可能性があり、複数のサイクルを実行した後、最終的に脱硫灰に大量の鉄元素が富化されることになる。当該鉄元素は前記焙焼工程で得られた前記残留物に入るため、当該残留物多重再利用工程では、複数のサイクルを実行した後に、次の前記焙焼工程で得られた前記残留物は、前記残留物再利用工程のように脱硫スラリーの調製に使用するのではなく、焼結機に投入して鉄鉱焼結用の原料として使用し、その中に富化された鉄元素を回収して、高付加価値で利用する。
【0082】
当該残留物多重再利用工程で記載されている「複数のサイクル」の「複数」は、具体的には、実際の生産ニーズ又は脱硫灰中の鉄元素の富化状況に応じて、任意の正の整数に設定することができ、前述した析出工程における「複数」と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
また、実施形態の変形では、前記資源回収方法は、m+1番目のサイクルのみで実施される場合、一般的に、前記水洗工程と、前記焙焼工程と、前記焙焼工程で得られた前記残留物を焼結機に投入して鉄鉱焼結用の原料として使用する前記残留物多重再利用工程と、を含む。
【0084】
図4を参照すると、脱硫灰の資源回収システム100の第二の実施形態を更に提供する。当該資源回収システム100は、前述した第二の実施形態の資源回収方法を実現するために使用することができ、以下において、前述した第二の実施形態の前記資源回収方法の説明を参照しながら、前記資源回収システム100の構造及び機能を理解することができる。また、本実施形態の資源回収システム100は、図2に示される第一の実施形態の資源回収システム100とは少し異なり、以下において、相違点に着目して説明する。前述した第一の実施形態の資源回収システム100の説明を参照しながら、本実施形態を理解することができる。
【0085】
本実施形態の資源回収システム100は、段階的に接続されるm+1個の資源回収サブシステムを含み、ここでmは正の整数であり、図示の例ではm=2である。即ち、資源回収システム100は、資源回収サブシステム100a、資源回収サブシステム100b、資源回収サブシステム100cを含み、当該資源回収サブシステム100a、資源回収サブシステム100b、資源回収サブシステム100cは段階的に順次配置されている。
【0086】
各前記資源回収サブシステムはいずれも、水洗反応槽10を含み、その水洗反応槽10
の脱硫灰投入口11に連通する外部脱硫反応器が対応して設けられている。例えば、資源回収サブシステム100aは外部脱硫反応器200aに対応し、その水洗反応槽10の脱硫灰投入口11は、外部脱硫反応器200aから脱硫灰を導入するために、外部脱硫反応器200aの脱硫灰排出口に連通する。資源回収サブシステム100bは外部脱硫反応器200bに対応し、その水洗反応槽10の脱硫灰投入口11は、外部脱硫反応器200bから脱硫灰を導入するために、外部脱硫反応器200bの脱硫灰排出口に連通する。資源回収サブシステム100cは外部脱硫反応器200cに対応し、その水洗反応槽10の脱硫灰投入口11は、外部脱硫反応器200cから脱硫灰を導入するために、外部脱硫反応器200cの脱硫灰排出口に連通する。
【0087】
本実施形態では、各前記資源回収サブシステムの水洗反応槽10は、前述した第一の実施形態の資源回収システム100の水洗反応槽10と同じになるように設定され、同じ符号で示されるため、これ以上の説明は省略する。
【0088】
本実施形態では、前記資源回収サブシステムの各々は、いずれも固液分離装置20を含む。後述するm+1番目の資源回収サブシステムの固液分離装置20の液相出口21が、脱硫スラリー調製装置に連通するのではなく、析出反応器50に連通するという点を除けば、固液分離装置20は、前述した第一の実施形態の資源回収システム100の固液分離装置20と同じになるように設定され、同じ符号で示されるため、相違点以外の説明は省略する。
【0089】
本実施形態では、1番目からm番目の資源回収サブシステムはいずれも、脱硫スラリー調製装置30を含み、例えば、図示されるように、資源回収サブシステム100a、資源回収サブシステム100bはいずれも脱硫スラリー調製装置30を含む。脱硫スラリー調製装置30について、本実施形態と図2に示される資源回収システム100との相違点は、図2に示される資源回収システム100では、その脱硫スラリー調製装置30の脱硫スラリー排出口32は、調製された脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰が、またその水洗反応槽10に投入して処理されるように、外部脱硫反応器200に連通するのに対し、本実施形態の資源回収システム100では、1番目からm番目の資源回収サブシステムの各々の脱硫スラリー調製装置30の脱硫スラリー排出口32は、脱硫スラリー調製装置30によって調製された脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰が、次段階の水洗反応槽10に投入して処理されるように、その次の段階の資源回収サブシステムに対応する外部脱硫反応器にそれぞれ連通することのみである。
【0090】
例えば、資源回収サブシステム100aの脱硫スラリー調製装置30は、脱硫スラリー調製装置30によって調製された脱硫スラリーを排煙脱硫に使用することで生成された脱硫灰が、次の段階の資源回収サブシステム100bの水洗反応槽10に投入して処理されるように、次の段階の資源回収サブシステム100bに対応する外部脱硫反応器200bに連通し、同様に、資源回収サブシステム100bの脱硫スラリー調製装置30は、次の段階の資源回収サブシステム100cに対応する外部脱硫反応器200cに連通する。
【0091】
1番目からm番目の資源回収サブシステムの各々の脱硫スラリー調製装置30について、上述したこと以外は、前述した第一の実施形態の資源回収システム100の脱硫スラリー調製装置30と同じになるように設定され、同じ符号で示されるため、これ以上の説明は省略する。
【0092】
本実施形態では、1番目からm番目の資源回収サブシステムとは異なり、m+1番目の資源回収サブシステムの固液分離装置20の液相出口21は脱硫スラリー調製装置に接続されているのではない。具体的には、m+1番目の資源回収サブシステムについて、図示される資源回収サブシステム100cを例とすると、資源回収サブシステム100cは、
析出反応器50及び晶析装置60を含み、析出反応器50及び晶析装置60は、前述した析出工程を実現するために使用される。
【0093】
析出反応器50は、当該固液分離装置20で分離された液相を、析出反応器50内に送るために、資源回収サブシステム100cの固液分離装置20の液相出口21に連通する。
【0094】
析出反応器50は、炭酸カリウム投入口51及び第2固液分離装置を有する。
【0095】
炭酸カリウム投入口51は、炭酸カリウムを析出反応器50に導入するために使用することができ、ここで、炭酸カリウムは、外部炭酸カリウム貯蔵サイロから提供されるものであってもよく、当然ながら、実施形態の変形では、炭酸カリウム投入口51は、炭酸ナトリウム投入口によって置き換えられてもよいし、炭酸ナトリウム投入口と一体的に設置してもよい。前述した第二の実施形態の前記析出工程についての説明を参照すると、資源回収サブシステム100a及び資源回収サブシステム100bの続き、資源回収サブシステム100cの固液分離装置20で分離された水酸化カルシウムに富む溶液は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムが富化される。析出反応器50を設けて、前記溶液に炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを添加することによって、前記溶液内に炭酸イオン(添加された炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムに由来)とカルシウムイオン(水酸化カルシウム、濃縮された塩化カルシウムに由来)とが反応して水不溶性の炭酸カルシウムを生成すると同時に、遊離の塩化カリウム及び/又は塩化ナトリウムを生成する。
【0096】
好ましくは、析出反応器50は更に第2撹拌装置を有し、前記第2撹拌装置は、炭酸イオン、カルシウムイオンが十分に接触して反応するように、析出反応器50内の水酸化カルシウムに富む溶液と、投入された炭酸カリウム及び/又は炭酸カリウムとを十分に撹拌することができる。
【0097】
前記第2固液分離装置は、析出反応器50内の液相生成物と固相生成物を分離するために使用され、即ち、前記塩溶液及び前記固相沈殿物の更なる資源回収を可能にするために、塩化カリウム、塩化ナトリウムを有する塩溶液と炭酸カルシウムに富む固相沈殿物とを分離することができる。好ましくは、前記第2固液分離装置は、析出反応器50の内部に配置するか、析出反応器50の外部に配置するか、又は析出反応器50と一体的に設置してもよく、具体的には、沈降器、ろ過装置、遠心分離機等のいずれか1つ又は任意の組み合わせにしてもよく、当然ながら、前記第2固液分離装置は更に、本分野で知られている固液分離を実現可能な他の既存の構造/装置で実施してもよい。
【0098】
前記第2固液分離装置の液相出口52は、前記第2固液分離装置で分離された塩化カリウム、塩化ナトリウムを有する前記塩溶液を晶析装置60に送るために、晶析装置60に連通する。晶析装置60は、前記塩溶液を蒸発、濃縮、結晶化を行うことができ、これにより、前記塩溶液から塩化カリウム結晶及び/又は塩化ナトリウム結晶を析出させることができる。
【0099】
前記第2固液分離装置の固相出口53は、前記第2固液分離装置で分離された炭酸カルシウムに富む前記固相沈殿物を析出反応器50から送り出すために使用される。炭酸カルシウムに富む前記固相沈殿物は、様々な異なる工業生産で使用することができ、好ましくは、図4の実施形態では、前記第2固液分離装置の固相出口53は、前記固相沈殿物を前記焙焼工程に投入するために、焙焼反応器40に連通し、前記固相沈殿物と、固液分離装置20から焙焼反応器40に送られた硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウムに富む前記固体残留物とをともに高温焙焼し、その中の前記固相沈殿物中の炭酸カルシ
ウムを酸化カルシウム及び二酸化炭素に分解させ、更に気固分離を行って酸化カルシウムを得て工業生産(例えば、排煙脱硫の脱硫剤として使用するか、又は本実施形態で後述するような鋼鉄焼結用のフラックス剤として使用する)で使用する。
【0100】
このように、析出反応器50及び晶析装置60を設けることにより、複数のサイクルによって生成された塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムの富化された脱硫灰から、塩化カリウム、塩化ナトリウムの結晶を抽出し、カルシウム元素資源が炭酸カルシウムの形で回収、さらには再利用されることを確保し、高付加価値の経済的利益及び環境的利益を有する。
【0101】
更に、本実施形態では、前記資源回収サブシステムの各々は、いずれも焙焼反応器40を含む。後述するm+1番目の資源回収サブシステムにおける焙焼反応器40の気固分離装置の固相出口42が脱硫スラリー調製装置に連通するのではないという点以外、焙焼反応器40は、前述した第一の実施形態の資源回収システム100の焙焼反応器40と同じになるように設定され、同じ符号で示されるため、以下において当該相違点についてのみ説明し、これ以上の説明は省略する。
【0102】
具体的には、1番目からm番目の資源回収サブシステムにおける焙焼反応器40の気固分離装置の固相出口42はいずれも、焙焼反応器40で得られた酸化カルシウムに富む前記残留物を脱硫スラリーの調製に使用するために、脱硫スラリー調製装置30の酸化カルシウム投入口31に連通する。一方、m+1番目の資源回収サブシステムにおける焙焼反応器40の気固分離装置の固相出口42は、脱硫スラリー調製装置に連通するのではない。m+1番目の資源回収サブシステムについて、図示される資源回収サブシステム100cを例とすると、資源回収サブシステム100cの焙焼反応器40の気固分離装置の固相出口42は、酸化カルシウムに富む前記残留物を鉄鉱焼結用のフラックス剤として使用するために、鉄鉱焼結機のフラックス剤注入口に連通する。このように、m回のサイクルによって生成された鉄元素の富化された脱硫灰にについて、m+1番目の資源回収サブシステムの焙焼反応器40で得られた前記残留物は、酸化カルシウム及び鉄元素に富むため、前記残留物再利用工程のように脱硫スラリーの調製に使用するのではなく、焼結機に投入して鉄鉱焼結用の原料として使用することができ、その中に富化された鉄元素を回収して、高付加価値で利用する。
【0103】
以上より、従来技術に比べると、本実施形態の前記資源回収方法及び資源回収システム100は以下の有益な効果を有する。まず、複数のサイクルによって、脱硫灰中の硫黄元素及びカルシウム元素をそれぞれ資源回収し、カルシウム元素を脱硫プロセスにおいてリサイクルする。次に、脱硫灰にカリウム元素、ナトリウム元素、鉄元素が富化されたら、更に、カリウム元素、ナトリウム元素を結晶の形で精製することによって高付加価値の回収生成物を得るほか、鉄元素を鉄鉱焼結に適用し、その中に富化された鉄元素を回収して高付加価値で利用することができる。プロセス全体において固体廃棄物、液体廃棄物、ガス廃棄物等が発生せず、顕著な経済的利益及び環境利益を有する。
【0104】
以下において、図3及び図4に対応する第二の実施形態の前記資源回収方法及び資源回収システム100の特定の技術及び有益な効果を理解するように、具体的な実施例を1つ挙げる。
【0105】
実施例2
半乾式脱硫反応器200aで半乾式脱硫プロセスによって生成された脱硫灰を資源回収サブシステム100aに送り込む。脱硫灰を水洗反応槽10で水洗し、水洗反応槽10内の水と脱硫灰との質量比は20:1を超え、十分に撹拌して混合液を得る。前記混合液を固液分離装置20に送って固液分離を行う。固液分離装置20で分離された固体残留物を
圧縮脱水してから、200~400℃の温度で乾燥脱水し、その後、焙焼反応器40に送り、1000~1300℃の焙焼温度、及び弱還元性雰囲気(一酸化炭素の体積分率が0%~5%で、酸素の体積分率が2%未満)中で高温焙焼する。焙焼後の気相生成物を硫酸調製装置600に送り、除塵、浄化、触媒酸化、吸収等の工程によって濃度の異なる硫酸に調製し、検査した結果、得られた硫酸の品質は業界の性能基準を満たしている。焙焼後の固相生成物と、固液分離装置20で分離された液相生成物を、それぞれ脱硫スラリー調製装置30に送って、脱硫スラリーを調製する。脱硫スラリーを脱硫スラリー噴射システムによって半乾式脱硫反応器200bに噴射させ、脱硫スラリーを用いて排煙中の二酸化硫黄を除去し、検査した結果、脱硫スラリーは業界の性能基準を満たし、脱硫効果が合格している。
半乾式脱硫反応器200bで半乾式脱硫プロセスによって生成された脱硫灰を資源回収サブシステム100bに送り込む。脱硫灰を水洗反応槽10で水洗し、水洗反応槽10内の水と脱硫灰との質量比は20:1を超え、十分に撹拌して混合液を得る。前記混合液を固液分離装置20に送って固液分離を行う。固液分離装置20で分離された固体残留物を圧縮脱水してから、200~400℃の温度で乾燥脱水し、その後、焙焼反応器40に送り、1000~1300℃の焙焼温度、及び弱還元性雰囲気(一酸化炭素の体積分率が0%~5%で、酸素の体積分率が2%未満)中で高温焙焼する。焙焼後の気相生成物を硫酸調製装置600に送り、除塵、浄化、触媒酸化、吸収等の工程によって濃度の異なる硫酸に調製し、検査した結果、得られた硫酸の品質は業界の性能基準を満たしている。焙焼後の固相生成物と、固液分離装置20で分離された液相生成物を、それぞれ脱硫スラリー調製装置30に送って、脱硫スラリーを調製する。脱硫スラリーを脱硫スラリー噴射システムによって半乾式脱硫反応器200cに噴射させ、脱硫スラリーを用いて排煙中の二酸化硫黄を除去し、検査した結果、脱硫スラリーは業界の性能基準を満たし、脱硫効果が合格している。
半乾式脱硫反応器200cで半乾式脱硫プロセスによって生成された脱硫灰を資源回収サブシステム100cに送り込む。脱硫灰を水洗反応槽10で水洗し、水洗反応槽10内の水と脱硫灰との質量比は20:1を超え、十分に撹拌して混合液を得る。前記混合液を固液分離装置20に送って固液分離を行う。固液分離装置20で分離された固体残留物を圧縮脱水してから、200~400℃の温度で乾燥脱水し、その後、焙焼反応器40に送り、1000~1300℃の焙焼温度、及び弱還元性雰囲気(一酸化炭素の体積分率が0%~5%で、酸素の体積分率が2%未満)中で高温焙焼する。焙焼後の気相生成物を硫酸調製装置600に送り、除塵、浄化、触媒酸化、吸収等の工程によって濃度の異なる硫酸に調製し、検査した結果、得られた硫酸の品質は業界の性能基準を満たしている。焙焼後の固相生成物(鉄元素の含有量が10%超え)を原料として鉄鉱焼結機に投入し、検査した結果、焼結作業がスムーズに進行し、焼結製品の品質が良好である。固液分離装置20で分離された液相生成物を析出反応器50に送り、炭酸カリウムを投入し、固液分離後に固相沈殿物及び液相生成物を得る。析出反応器50内の固相沈殿物を焙焼反応器40に送る。析出反応器50内の液相生成物を晶析装置60に送り、蒸発、濃縮、結晶化によって、業界の性能基準を満たしている塩化カリウム結晶、塩化ナトリウム結晶を得る。
【0106】
本明細書は実施形態により説明したが、各実施形態は1つの独立した技術的解決手段だけを含むわけではないことは理解されたい。明細書のこのような記載方式は、単に明瞭にするためのものに過ぎず、当業者が明細書を1つの全体としてみなすべきである。各実施形態の技術的解決手段は、適宜の組合せにより、当業者が理解できる他の実施形態に形成されてもよい。
【0107】
上記の一連の詳細な説明は、本発明の実行可能な実施形態についての具体的な説明に過ぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の技術精神から逸脱することなくなされた同等の実施形態又は変更は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】