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  • 特表-迅速なヒドロシリル化硬化組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】迅速なヒドロシリル化硬化組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20221201BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20221201BHJP
   B29C 45/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/05
B29C45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533223
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020062788
(87)【国際公開番号】W WO2021118837
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/946,449
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】カミングス、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、ジョエル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サー、ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】タフト、ブラッドリー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラーデマッヘル、レイチェル
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA33
4F206AA36
4F206AA48
4F206AB07
4F206JA07
4F206JL02
4J002CP04X
4J002CP12W
4J002CP13W
4J002CP14W
4J002DD046
4J002DE186
4J002EA026
4J002EC017
4J002EC027
4J002EX036
4J002FD206
4J002FD207
(57)【要約】
【解決手段】 組成物は、線状および樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドと、線状および樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドと、線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンが2.0を超えかつ14未満のD/D比を有するヒドロシリル化触媒と、を含有し、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン上の末端アルケニル官能基の合計に対するシリルヒドリド水素のモルおよび比は、1.2~2.2である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(A)アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドであって、
(i)以下の式を有する線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
(RSiO1/21-a(R SiO2/2
(式中、各(RSiO1/2)単位中の少なくとも1つのRは、C1-8末端アルケニル基から選択され、下付き文字aは、0.333~0.999の範囲内の値を有し、前記線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって判定される260~155,000ダルトンの重量平均分子量を有する)と、
(ii)以下の式を有する樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
(RSiO1/2(SiO4/2(HO1/2
(式中、各分子中の少なくとも2つのR基は、C1-8末端アルケニル基から選択され、下付き文字bは、0.35~0.55の範囲内の値を有し、下付き文字cは、0.46~0.55の範囲内の値を有し、下付き文字dは、0.04~0.11の範囲内の値を有し、下付き文字b、c、およびdの合計は1であり、前記樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、GPCによって判定される3,000~30,000ダルトンの範囲内である)と、からなり、
前記アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド中のC1-8末端アルケニル基の総濃度が、前記アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド中のポリオルガノシロキサンの総モルに対して2.5~13.5モルパーセントの範囲内である、ブレンドと、
(B)シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドであって、
(i)以下の式を有する線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
(R SiO1/21-(e+f)(R SiO2/2(R’’HSiO2/2
(式中、下付き文字eおよびfの合計は、0.50~0.999の範囲内にあり、下付き文字の比率e/fは、2.0よりも大きく、かつ14.0よりも小さく、前記線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、前記線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのモルに対して、6~45モルパーセントの範囲内の水素化ケイ素濃度、およびGPCによって判定される350~60,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、前記シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドの10重量パーセントを超え、かつ50重量パーセント未満の濃度で存在する)と、
(ii)以下の式を有する樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
(R’’’ HSiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2
(式中、下付き文字gは、0.5~0.7の範囲内の値を有し、下付き文字hは、0.01~0.03の範囲内の値を有し、下付き文字iは、0.27~0.51の範囲内の値を有し、下付き文字g、h、およびiの合計は、1であり、前記樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのモルに対して50~75モルパーセントの範囲内の水素化ケイ素濃度を有し、GPCによって判定される500~1,500ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する)と、からなる、ブレンドと、
(C)前記組成物の100万重量部当たり2~6重量部の濃度のヒドロシリル化触媒と、
を含み、
Rは、各出現において独立して、フェニル、ヒドロキシル、C1-8アルキル、およびC1-8末端アルケニル基からなる群から選択され、
は、各出現において独立して、フェニル基およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、
’’およびR’’’は、各出現において独立して、水素およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、
下付き文字a~iは、前記分子内の全シロキサン単位に対する対応するシロキサン単位のモル比であり、
成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)、および(B)(ii)の合計重量に対する重量パーセントに対して、成分(A)(i)の濃度は、25~80重量パーセントの範囲内にあり、成分(A)(ii)は、25~70重量パーセントの範囲内にあり、成分(B)(i)は、0.2~15重量パーセントの範囲内にあり、かつ成分(B)(ii)は、1.0~10重量パーセントの範囲内にあり、前記組成物中のアルケニル官能化ポリオルガノシロキサン上の末端アルケニル官能基の合計に対するシリルヒドリド水素のモル比は、1.2~2.2の範囲内にある、組成物。
【請求項2】
(A)(ii)の前記樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、下付き文字bが、0.35~0.47の範囲内にあるアルケニル官能化ポリオルガノシロキサン、および下付き文字bが、0.48~0.55の範囲内にある、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、組成物重量に基づいて、0.1~1.0重量パーセントのアセチレン性アルコールをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロシリル化触媒の濃度が、前記組成物の100万重量部当たり2~4重量部の範囲内にある、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記末端アルケニル基が、ビニル基である、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
各Rは、各出現において独立して、メチル基、ビニル基、およびフェニル基からなる群から選択され、Rは、各出現において独立して、メチル基およびフェニル基からなる群から選択され、R’’は、メチルであり、R’’’は、各出現において独立して、水素およびメチル基からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の末端アルケニルおよびヒドロキシル基の合計に対する前記シリルヒドリド水素のモル比が、1.2~1.7の範囲内である、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、シリカ粒子を含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
先行請求項のいずれか一項に記載の組成物を硬化させるための方法であって、(i)先行請求項のいずれか一項に記載の組成物を提供する工程と、(ii)前記組成物を、摂氏120~220度の範囲内の温度まで加熱する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
前記組成物の前記加熱が、射出成形プロセス、カプセル化成形プロセス、圧縮成形プロセス、ディスペンサー成形プロセス、押出成形プロセス、トランスファー成形プロセス、トランスファー成形プロセス、プレス加硫プロセス、遠心鋳造プロセス、カレンダープロセス、ビーズ塗布プロセスおよびブロー成形プロセスからなる群から選択されるプロセス中に行われる、請求項9に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサンの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
ヒドロシリル化反応組成物は、ヒドロシリル化反応を受けて、硬化組成物を形成する。ヒドロシリル化反応組成物は、コーティングおよび成形部品の形成など、多くの異なる用途で一般的に使用されている。これらの用途の多くでは、組成物を迅速に硬化させるという利点がある。例えば、反応性射出成形用途は、ヒドロシリル化反応組成物を利用して、金型内での組成物の急速な硬化がプロセス全体をスピードアップし得る半連続プロセスで、成形部品を形成することができる。反応性射出成形プロセスでは、反応物を金型に導入し、そこで反応物が架橋して金型の形状のポリマー物品を形成し、続いて架橋ポリマー物品を金型から除去し、次いで新しい反応物を金型に注入して別の架橋ポリマー物品を形成する必要がある。反応性射出成形プロセスの場合、金型内の架橋反応の速度は、それが金型内の部品の必要な滞留時間を決定し、典型的には製造速度を決定するため、重要である。ヒドロシリル化反応性射出成形プロセス中の金型内の部品の滞留時間は、典型的には、最大5分である。硬化中の金型内での滞留時間を最小限に抑えるために、反応性射出成形で使用される反応のヒドロシリル化反応をどのように加速するかを特定することが望ましい。
【0003】
ヒドロシリル化反応組成物の反応性射出成形中の金型内の滞留時間を減少させる1つの方法は、ヒドロシリル化反応が完了する前に成形物品を除去することである。しかしながら、それらが十分に反応する前にプロセスが成形物品を除去する場合、寸法の不一致および/または部品ごとの機械的特性の変動があり得る。金型の制約を受けずに反応(硬化)している組成物は、反応が進むにつれて、膨張または収縮し得る。さらに、機械的応力に供された不完全に硬化した部品は、架橋が金型の外側で継続するため、望ましくない変形をもたらす。したがって、金型から取り外した後の寸法の完全性と一貫した機械的特性を維持するために十分に硬化するのに必要な時間を減少させることにより、金型の滞留時間を減少させることが望ましい。特に、「T90」を最小化することが望ましい。これは、10分間の硬化の組成物強度(金型内での典型的な最長滞留時間の2倍)に対して、90%の硬化組成物強度を達成するのに必要な時間である。10分の硬化時間後、組成物は、通常、ほぼ一定の強度を達成している。その強度の90%で、組成物は、金型から取り除くのに十分な寸法完全性および機械的特性の一貫性を有するはずである。
【0004】
T90を最小化するための1つの選択肢は、組成物中の反応触媒の濃度を増加させることによる。反応性射出成形で使用される典型的なヒドロシリル化反応組成物は、線状および/または樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒と組み合わせた線状または樹脂性のシリルヒドリド官能化架橋剤のいずれかを含む。ヒドロシリル化反応は、ビニル官能化反応物と複数のSi-H官能基を含有する架橋剤との間で起こり、ヒドロシリル化反応触媒(典型的には、白金触媒)を利用する。ヒドロシリル化触媒の濃度を増加させると、反応速度を増加させることができる。しかしながら、増加した触媒濃度は、得られる成形物品の黄変を増加させる傾向もあり、このことは、透明かつ無色の光学物品には望ましくない。
【0005】
T90を低減するための別の選択肢は、ビニル官能基に対してSiH官能基の濃度を増加させることである(つまり、架橋剤官能基の濃度を増加させる)。ただし、架橋剤の量を増加させてSiH官能基を増加させると、物品の透明度が低減し、このことは、透明かつ無色の光学物品にもまた望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
組成物中のアルケニル官能基に対して触媒の濃度を増加させること、または架橋剤官能基の濃度を増加させることなく、ヒドロシリル化反応組成物のT90を低減することが望ましい。10分間の硬化後に得られる硬化組成物の強度を維持または増加させながらT90のそのような低減を達成することがさらに望ましい。
【0007】
本発明の組成物は、組成物中のアルケニル官能基に対して触媒の濃度を増加させること、または架橋剤官能基の濃度を増加させることなく、ヒドロシリル化反応のT90を低減するという問題を解決する。さらに、本発明は、10分間の硬化後に得られる硬化組成物の強度を維持または増加させながらT90を低減するという問題を解決する。さらに、本発明は、SiH対アルケニル官能基のモル比が1.2以上~1.6以下、さらには1.7以下、さらには2.2以下の範囲内である組成物についてこの問題を解決し得、このことにより、本発明を、目標最終硬化強度の範囲に好適な組成物に適用可能なものにする。
【0008】
本明細書において、硬化組成物の「強度」は、トルク弾性率によって測定され、ここで、より高いトルク弾性率は、より高い強度に対応する。摂氏150度(℃)で10分間の反応時間、ASTM D5289に従ってトルク係数を測定する。したがって、本明細書では、摂氏150度(℃)で10分間硬化する組成物の強度(トルク係数)のプロットからT90を判定する。T90は、組成物が、10分で組成物が有する強度の90%に達する時間である。詳細には、可動ダイレオメータ(MDR)(Alpha Technologies MDR-2000)を使用して、トルク係数を測定する。厚さ50マイクロメートルのMylar(商標)ポリエステルフィルムを、デジタルスケールの計量トレイに置く(Mylar(商標)はDUPONT Teijin Films USの商標である)。全ての成分をMylarポリエステルフィルム上で一緒に混合した後、すぐに約4グラムの配合物の重さを量る。Mylarポリエステルフィルムの配合物を50マイクロメートルの厚さのMylarポリエステルフィルムの追加の層で覆い、試験のために、150℃の定常状態にあるMDRプラテンにすぐに移す。プラテンを閉じて、試験全体を通して1°アークで下部プラテンを振動させる。150℃で10分間トルク係数を監視して、サンプルのトルク係数のプロットを取得する。
【0009】
本発明は、線状および樹脂性アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンと線状または樹脂性シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのいずれかとの組み合わせのブレンドを含む典型的な一般的に使用されるヒドロシリル化反応組成物に対してこれらの改善を提供する。驚くべきことに、本発明は、線状および樹脂性アルケニル官能性ポリオルガノシロキサンのブレンドを、樹脂性シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンおよび特定の比率のDおよびD単位(以下に定義)を有する線状シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのブレンドと組み合わせた使用は、樹脂のみもしくは高分子シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのみを含む組成物、または特定の比率範囲外のDおよびD単位のモル比を有する線状および樹脂性シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのブレンドを使用する組成物よりも、組成物のT90がより短く、かつ完全硬化組成物の強度が同等またはより高くなることを発見した結果である。比較は、組成物中の等しいシリルヒドリド(SiH)基-アルケニル基モル比で、等しい触媒濃度で行われる。反応速度を増加させ、完全硬化組成物の強度を維持または増加させるために線状シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンを使用することは、特に驚くべきことである。なぜなら、線状ポリオルガノシロキサンの濃度を導入または増加させると、典型的には、硬化した組成物の強度を低減させ、さらには硬化速度を遅くしさえすると予想されるからである。しかしながら、ここで特許請求される発明のD/Dモル比の特定の範囲において、線状ポリオルガノシロキサンは、硬化速度を組成物の10分強度の90%に増加させ(T90を減少させる)、一方、硬化組成物の10分強度を維持または増加させる。
【0010】
本発明の組成物はまた、T90を減少させ、少なくとも完全硬化組成物の強度を維持することに加えて、透明かつ無色の硬化組成物を生成し得る。
【0011】
本発明の鍵は、線状シリルヒドリドが特定のD/Dモル比を有する線状および樹脂性シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのブレンドを使用することである。ブレンドは、樹脂性シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンを、主に式(R SiO2/2)を有するD単位および式(R’’HSiO2/2)を有するD単位を含む線状シリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサン(式中、Rは、各出現において独立して、フェニル基およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、R’’は、各出現において独立して、水素およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、D/D単位のモル比は、2.0より大きく、好ましくは2.2以上であると同時に、14.0未満、典型的には13.5以下、11以下、10以下、9以下、さらには8以下である)との組み合わせで含むか、またはそれらからなる。
【0012】
第1の態様では、本発明は、(A)アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドを含む組成物であり、このブレンドは、(i)以下の式を有する線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
(RSiO1/21-a(R SiO2/2
(式中、各(RSiO1/2)単位の少なくとも1つのRは、C1-8末端アルケニル基から選択され、下付き文字aは、0.333~0.999の範囲内の値を有し、線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって判定される260~155,000ダルトンの重量平均分子量を有する)と、(ii)以下の式を有する樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
(RSiO1/2(SiO4/2(HO1/2
(式中、各分子中の少なくとも2つのR基は、C1-8末端アルケニル基から選択され、下付き文字bは、0.35~0.55の範囲内の値を有し、下付き文字cは、0.46~0.55の範囲内の値を有し、下付き文字dは、0.04~0.11の範囲内の値を有し、下付き文字b、c、およびdの合計は1であり、樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、GPCによって判定される3,000~30,000ダルトンの範囲内である)と、からなり、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド中のC1-8末端アルケニル基の総濃度が、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド中のポリオルガノシロキサンの総モルに対して2.5~13.5モルパーセントの範囲内である、ブレンドと、(B)シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドであって、(i)以下の式を有する線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
(R SiO1/21-(e+f)(R SiO2/2(R’’HSiO2/2
(式中、下付き文字eおよびfの合計は、0.50~0.999の範囲内にあり、下付き文字の比率e/fは、2.0よりも大きく、かつ14.0よりも小さく、線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのモルに対して、6~45モルパーセントの範囲内の水素化ケイ素濃度、およびGPCによって判定される350~60,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有し、シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドの10重量パーセントを超え50重量パーセント未満の濃度で存在する)と、(ii)以下の式を有する樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
(R’’’ HSiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2
(式中、下付き文字gは、0.5~0.7の範囲内の値を有し、下付き文字hは、0.01~0.03の範囲内の値を有し、下付き文字iは、0.27~0.51の範囲内の値を有し、下付き文字g、h、およびiの合計は、1であり、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのモルに対して50~75モルパーセントの範囲内の水素化ケイ素濃度を有し、GPCによって判定される500~1,500ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する)と、からなる、ブレンドと、(C)組成物の100万重量部当たり2~6重量部の濃度のヒドロシリル化触媒と、を含む、組成物であって、Rは、各出現において独立して、フェニル、ヒドロキシル、C1-8アルキル、およびC1-8末端アルケニル基からなる群から選択され、Rは、各出現において独立して、フェニル基およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、R’’およびR’’’は、各出現において独立して、水素およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、下付き文字a~iは、分子内の全シロキサン単位に対する対応するシロキサン単位のモル比であり、成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)、および(B)(ii)の合計重量に対する重量パーセントに対して、成分(A)(i)の濃度は、25~80重量パーセントの範囲内にあり、成分(A)(ii)は、25~70重量パーセントの範囲内にあり、成分(B)(i)は、0.2~15重量パーセントの範囲内にあり、かつ成分(B)(ii)は、1.0~10重量パーセントの範囲内にあり、組成物中のアルケニル官能化ポリオルガノシロキサン上の末端アルケニル官能基の合計に対するシリルヒドリド水素のモル比は、1.2~2.2の範囲内にある、組成物である。
【0013】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を硬化させるための方法であって、(i)第1の態様の組成物を提供する工程、および(ii)組成物を、120~220℃の範囲内の温度まで加熱する工程を含む、方法である。
【0014】
本発明は、硬化ヒドロシリル化製品を調製するために有用である。本発明は、射出成形プロセスを使用して硬化ヒドロシリル化生成物を調製するために特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、線状架橋剤のみ(比較例A)、樹脂架橋剤のみ(比較例B)、ならびに本発明の樹脂性および線状架橋剤の組み合わせ(実施例1)を含む組成物について、150℃で10分間の硬化にわたる硬化曲線の速度を示す。硬化速度は、時間に対するトルク係数(組成強度)のプロットとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
試験方法は、試験方法番号付きで日付が示されていない場合、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法の参照は、試験協会の参照と試験方法番号との双方を含む。本明細書では、次の試験方法の略語および識別子が適用される。ASTMは米国材料試験協会を指し、ENはヨーロッパ電気標準規格を指し、DINはドイツ工業品標準規格を指し、ISOは国際標準化機構を指し、CIEは国際照明委員会を指す。
【0017】
製品名または商品名によってのみ特定される材料は、本明細書に別段の記載がない限り、本明細書の優先出願日においてその製品名または商品名で販売されている材料を指す。
【0018】
「複数」とは、2つ以上を意味する。「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。特に記載がない限り、全ての範囲はエンドポイントを含む。
【0019】
「アルキル」は、水素原子を除去することによりアルカンから誘導される炭化水素基である。「置換アルキル」は、少なくとも1つの炭素または水素の代わりに炭素および水素以外の原子を有するアルキルである。置換アルキルには、アルキルアミンおよびアルキルチオールが挙げられる。
【0020】
「アリール」は、水素原子を除去することにより、芳香族炭化水素から誘導される基である。「置換アリール」は、少なくとも1つの炭素または水素の代わりに炭素および水素以外の原子を有するアリールである。
【0021】
「末端不飽和アルケニル基」は、対応するアルケン基からアルケニル基を形成するために水素原子が除去されたであろう場所から離れた炭素鎖の末端において、末端炭素および隣接炭素の間に炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基を意味する。例えば、アリル基は末端アルケニル基である。誤解を避けるため、ビニル基もまた末端アルケニル基とみなされる。
【0022】
「Cx-y」は、x個以上およびy個以下の炭素原子を有する分子を指す。
【0023】
「透明」とは、積分球を備える紫外可視(UV-Vis)分光計を使用して、ASTM D1003に従って測定される3.2センチメートルサンプル光路長を使用して400ナノメートルの波長で80%を超える平均透過率を有する材料を意味する。
【0024】
「無色」とは、CIE 1976規格によって判定される3.2センチメートル光路長で材料が0.007未満のΔuを有することを意味する。
【0025】
ポリシロキサンは、複数のシロキサン単位を含む。ポリオルガノシロキサンは、1つ以上のシロキサン単位が有機官能基を含む複数のシロキサン単位を含む。シロキサン単位は、一般に、記号M、D、TおよびQで特徴付けられる。Mは、一般に、式「R°SiO1/2」を有するシロキサン単位を指す。Dは、一般に、式「R°SiO2/2」を有するシロキサン単位を指す。Tは、一般に、式「R°SiO3/2」を有するシロキサン単位を指す。Qは、式「SiO4/2」を有するシロキサン単位を指す。R°は、各出現において独立して、通常、水素、ヒドロキシル、アルコキシ、またはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニルを含む炭素結合置換基からなる群から選択される。「炭素結合置換基」は、炭素原子を介してケイ素原子に結合している基である。特に、「1/2」の倍数の下付き文字を有する酸素原子は、酸素が特定の原子を第2の原子に架橋することを示し、第2の原子もまた、「1/2」の倍数の下付き文字を有する酸素で特定される。例えば、「(SiO4/2)(HO1/2)」は、単一の酸素を介して水素に結合したケイ素原子を有するQ型基を指す。
【0026】
29Si、13CおよびH NMRを使用して、例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee、ed.,John Wiley&Sons:New York,1991,p.347ffに記載されている方法を使用して、シロキサン単位および(HO1/2)単位の平均モル量および平均モル比を判定する。これらの値は、典型的には、関連するシロキサン単位の後に下付き文字として示される。
【0027】
ポリオルガノシロキサンの有機基の同定は、ケイ素29核磁気分光法(29Si NMR)、炭素13核磁気分光法(13C NMR)、水素核磁気分光法(H NMR)、滴定、またはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を使用してなされ得る。
【0028】
ポリシロキサンの分子量は、Waters 515ポンプ、Waters 717オートサンプラーおよびWaters 2410示差屈折計を使用して三重検出ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって判定された重量平均分子量として本明細書に報告されている。PLgel5μmガードカラム(50mm×7.5mm)を先行させ、2本のPolymer Laboratories PLgel 5マイクロメートル(μm)Mixed-Cカラム(200~2,000,000ダルトンの分子量分離範囲)(300ミリメートル(mm)×7.5mm)を用いて分離を行う。溶離液として、毎分1.0ミリリットル(mL)で流れるHPLCグレードのトルエンを使用し、カラムおよび検出器を用いて45℃で分析を行う。トルエン中のサンプルを5ミリグラム/mLの濃度で調製し、時々振とうしながら室温で約3時間溶媒和させ、分析に先立って0.45マイクロメートル(μm)のポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを通して濾過する。75マイクロリットルの注入量を使用し、25分間データを収集する。ThermoLabsystems AtlasクロマトグラフィーソフトウェアおよびPolymer Laboratories Cirrus GPCソフトウェアを使用して、データ収集と分析を実行する。580~2,300,00ダルトンの分子量範囲でポリスチレン標準を使用して、検量線(3次)に対する重量平均分子量を判定する。
【0029】
組成物を調製するために使用される各成分の量から、組成物中の成分の重量パーセント(重量%)を判定する。
【0030】
組成物のT90を、上記にすでに説明したように判定する。「T90」は、150℃で10分後、組成物がトルク係数の90%に達するのにかかる時間である。摂氏150度(℃)で10分間の反応時間にわたり、ASTMD5289に従ってトルク係数を測定する。
【0031】
本発明は、組成物でであって、(A)アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドであって、(i)線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンと、(ii)樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンと、を含む、ブレンドと、(B)シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドであって、(i)線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンと、(ii)樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンと、を含む、ブレンドと、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含む、組成物である。
【0032】
成分(A)-アルキル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド
アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドは、(i)線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンと、(ii)樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンと、からなる。これらのアルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの各々の構造を、以下に説明する。
【0033】
線状および樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン中のR基の選択は、R基によって提供されるC1-8末端アルケニル基の総濃度が、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド中のポリオルガノシロキサンの総モル((A)(i)および(A)(ii)の組み合わせ)に対して、2.5~13.5モルパーセント(モル%)の範囲内にあるようなものである。
【0034】
(A)(i)線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
本発明における線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、主に、組成物の反応性粘度低減剤として必要とされる。線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンがないと、組成物の粘度が濃くなり、射出成形プロセスで使用できなくなる。粘度低減剤の反応性は、成分を得られるポリマーに結合させることによってそれが組成物の硬化形態中で抽出されないようにするために重要である。
【0035】
線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの式は、次のとおりである。
(RSiO1/21-a(R SiO2/2
【0036】
Rは、各出現において独立して、フェニル、ヒドロキシル、C1-8アルキル、アルコキシ、およびC1-8末端アルケニル基からなる群から選択されるが、各(RSiO1/2)単位においてRの少なくとも1つはC1-8末端アルケニル基である。好ましくは、C1-8末端アルケニル基は、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルからなる群から選択される。望ましくは、C1-8末端アルケニル基は、ビニル基である。
【0037】
は、各出現において独立して、フェニル、C1-8アルキルおよびアルコキシ、基からなる群から選択される。好ましくは、C1-8アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルからなる群から選択される。
【0038】
下付き文字aは、分子内の全てのシロキサン単位に対する(R SiO2/2)シロキサン単位の平均モル比であり、0.333以上、好ましくは、0.8以上の値を有し、同時に0.999以下の値を有する。
【0039】
線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、260ダルトン(Da)以上、300Da以上、400Da以上、500Da以上、1,000Da以上、2,000Da以上、3,000Da以上、4,000Da以上、5,000Da以上、7,500Da以上、10,000Da以上、15,000Da以上、20,000Da以上、25,000Da以上、さらには28,000Da以上の重量平均分子量を有し、同時に155,000Da以下、好ましくは140,000Da以下、さらには130,000Da以下の重量平均分子量を有する。
【0040】
好適な線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンには、DMS-V03からDMS-V52の名称でGelestから市販されているもののいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0041】
線状アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン(成分(A)(i))の濃度は、成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)および(B)(iii)の合計の重量に基づいて、25重量パーセント(重量%)以上であると同時に80重量%以下である。
【0042】
(A)(ii)樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン
本発明において、樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、反応性強化剤として必要とされる。樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンがなければ、組成物は、反応性射出成形プロセス中に金型から抽出するための所望の強度または靭性まで硬化しないであろう。
【0043】
樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの式は、次のとおりである。
(RSiO1/2(SiO4/2(HO1/2
【0044】
Rは、各出現において独立して、フェニル、ヒドロキシル、C1-8アルキル、アルコキシ、およびC1-8末端アルケニル基からなる群から選択されるが、Rは、各分子での少なくとも2回の出現で、C1-8末端アルケニル基からなる群から選択される。好ましくは、C1-8末端アルケニル基は、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルからなる群から選択される。望ましくは、C1-8末端アルケニル基はビニルである。
【0045】
下付き文字bは、分子内での(RSiO1/2)、(SiO4/2)、および(HO1/2)単位の総モル数に対する分子内の(RSiO1/2)シロキサン単位の平均モル比である。下付き文字bは、0.35~0.55の範囲内の値を有する。
【0046】
下付き文字cは、分子内の(RSiO1/2)、(SiO4/2)、および(HO1/2)単位の総モル数に対する(SiO4/2)シロキサン単位の平均モル比である。下付き文字cは、0.46~0.55の範囲内の値を有する。
【0047】
下付き文字dは、分子内の(RSiO1/2)、(SiO4/2)、および(HO1/2)単位の総モル数に対する分子内の(HO1/2)単位の平均モル比である。下付き文字cは、0.04以上、さらには0.06以上であり、同時に0.11以下の値を有する。
【0048】
樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、3,000から30,000ダルトンの範囲内の重量平均分子量を有する。
【0049】
好適な樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンには、US2676182に従って調製されたものが挙げられる。樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、シリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって生成された樹脂コポリマーを、アルケニル含有エンドブロッキング剤で処理することによって製造され得る。この方法は、好ましくは、酸性条件下で、シリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン、およびそれらの組み合わせと反応させ、次いで、2~5重量%のヒドロキシル基を含むM型単位およびQ型単位を有するコポリマーを回収することを含む。コポリマーは、不飽和有機基を含むエンドブロッキング剤および脂肪族不飽和を含まないエンドブロッキング剤と、樹脂の全てのシロキサン単位に対して樹脂中で3~9モルパーセント(モル%)の不飽和有機官能性M単位を提供するのに十分な量で、さらに反応させることができる。好適なエンドブロッキング剤には、シラザン、シロキサン、シラン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0050】
樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、下付き文字bが0.35以上、0.40以上、0.44以上、同時に0.47以下、0.44以下の範囲内にあるような配合を有し得る。このような樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、1.2~2.2を含む広範囲のシリルヒドリド対アルケニルのモル比にわたって最終硬化弾性率を維持または増加させながら、T90の低減を達成するために、本発明において特に用途が広い。そのような樹脂は、典型的には、0.05以上、0.06以上、さらには0.07以上、同時に0.11以下、さらには0.09以下、さらには0.08以下の範囲内の下付き文字dをさらに有する。
【0051】
別の望ましい樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンは、下付き文字bが0.48以上、0.50以上であり、同時に0.55以下、さらには0.53以下、0.52以下、0.51以下、さらには0.50以下であるような配合を有する。そのような樹脂は、典型的には、さらに、0.03以上、0.04以上の範囲で、同時に0.11以下、0.09以下、さらには0.08以下の範囲内の下付き文字dを有する。
【0052】
樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサン(成分(A)(ii))の濃度は、成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)および(B)(iii)の合計の重量に基づいて、25重量%以上であると同時に70重量%以下である。
【0053】
成分(B)-シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド
シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドは、(i)線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンと、(ii)樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンと、からなる。線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのブレンドの重量に対して、10重量%超、さらに15重量%以上、20重量%以上、さらに25重量%以上の濃度で存在し、同時に50重量%未満、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、さらには25重量%以下であり得る。100重量%までの残余は、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンである。これらの範囲外のシリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのブレンドを有する組成物は、最終硬化組成物の最終弾性率を増加または維持しながら、選択的に速いT90値を達成し得るが、これらのブレンド比は、1.2~1.6の間、好ましくは1.7、さらにより好ましくは2.2のシリルヒドリド対アルケニル比にわたってそのような性能を達成するために必要とされる。
【0054】
組成物中のシリルヒドリド水素の、組成物中のアルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの末端アルケニル官能基の合計に対するモル比は、1.2以上、好ましくは1.4以上であると同時に、2.2以下、好ましくは1.8以下、さらにより好ましくは、1.7以下、または1.6以下である。組成物に含まれる成分の構造および濃度から、このモル比を判定する。構造および組成が不明な場合は、H、13C、29Si NMR分光法を使用してモル比を判定し、組成中の官能基のモル濃度を特定する。
【0055】
望ましくは、樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの下付き文字bが0.35~0.44の範囲にあり、下付き文字dが0.04~0.11の範囲内にある場合、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの末端アルケニル官能基の合計に対するシリルヒドリド水素のモル比組成は、1.2~2.2の範囲内にある。
【0056】
望ましくは、樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの下付き文字bが0.44~0.50の範囲にあり、下付き文字dが0.06~0.11の範囲内にある場合、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンの末端アルケニル官能基の合計に対するシリルヒドリド水素のモル比組成は、1.2~1.7の範囲内にある。
【0057】
(B)(i)線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、成分(B)(i)または成分(B)(ii)を単独で成分(A)と共に有する組成物に対して、全硬化組成物の最終強度を維持または増加させながらT90を驚くほどに低減することを提供するという、他の成分との驚くべき相乗効果を提供する(等しいSiH:末端アルケニル基モル比を有する組成物を使用して比較した)。
【0058】
線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、次の式を有する。
(R SiO1/21-(e+f)(R SiO2/2(R’’HSiO2/2
【0059】
は、各出現において独立して、フェニル、アルコキシおよびC1-8アルキル基からなる群から選択される。
【0060】
’’は、各出現において独立して、水素およびC1-8アルキル基からなる群から選択され、好ましくは水素またはメチル、最も好ましくはメチルである。
【0061】
下付き文字eは、線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン中の全シロキサン単位に対する(R SiO2/2)シロキサン単位(「D」)の平均モル比である。下付き文字fは、線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン中のシロキサン単位の総数に対する(R’’HSiO2/2)シロキサン単位(「D」)の平均モル比である。下付き文字eおよびfは、各々、0.50以上であると同時に、0.999以下である値を有する。驚くべきことに、白金触媒の量または架橋剤の濃度を増加させることなくT90を最適に低減するためには、下付き文字e:fの比は、2.0以上、好ましくは2.2以上、2.4以上2.6以上、3.0以上、4.0以上であると同時に、14.0以下でなければならず、13.5以下、13.1以下、13.0以下、12.0以下、11.0以下、10.5以下、10.6以下、さらに5.0以下、または3.2以下であり得ることが発見されている。この比率の範囲は、DおよびD単位間の最適な間隔を提供することが可能である。
【0062】
線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、1モルの線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンに対して、6モルパーセント(モル%)以上で、同時に45モル%以下である水素化ケイ素濃度を有する。H、13Cおよび29Si NMR分光法により、水素化ケイ素のモル%を判定する。
【0063】
線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、望ましくは、350Da以上、好ましくは1,500Da以上の重量平均分子量を有し、同時に、典型的には、60,000Da以下、好ましくは25,000Da以下の重量平均分子量を有する。
【0064】
好適な線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、US3,722,247の手順に従って調製され得る。好適な市販の線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンには、Momentive Performance Materials Japan LLCから88466として入手可能なものが挙げられる。
【0065】
線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン(成分(B)(i))の濃度は、成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)および(B)(iii)の合計の重量に基づいて、0.2重量%以上であると同時に、15重量%以下である。
【0066】
(B)(ii)樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン
樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、本発明の組成物を硬化させたときに所望の最終弾性率を達成するために必要である。
【0067】
樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、次の式を有する。
(R’’’ HSiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2
【0068】
は、各出現において独立して、フェニル、アルコキシ、およびC1-8のアルキル基からなる群から選択される。
【0069】
’’’は、各出現において独立して、水素とC1-8アルキル基からなる群から選択され、好ましくは、水素基およびメチル基から選択される。
【0070】
下付き文字gは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン中の全てのシロキサン単位に対する、(R’’’ HSiO1/2)単位の平均モル比である。下付き文字gは、0.5以上であると同時に、0.7以下である値を有する。
【0071】
下付き文字hは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン中の全てのシロキサン単位に対する、(R SiO2/2)単位の平均モル比である。下付き文字gは、0.2以上であると同時に、0.03以下である値を有する。
【0072】
下付き文字iは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンの全てのシロキサン単位に対する、(SiO4/2)単位の平均モル比である。下付き文字gは、0.27以上であると同時に、0.51以下である値を有する。
【0073】
望ましくは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、500Da以上であると同時に1500Da以下の重量平均分子量を有する。
【0074】
好適な樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、US4,774,310の方法に従って作製することができる。好適な市販の樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンには、Millikenから商品名MQH-9で入手可能なものが挙げられる。
【0075】
樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンのモルに対して、50~75モルパーセントの範囲内の水素化ケイ素濃度を有する。
【0076】
樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサン(成分(B)(ii))の濃度は、成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)および(B)(iii)の合計の重量に基づいて、1.0重量%以上であると同時に、10重量%以下である。
【0077】
成分(A)(i)、(A)(ii)、(B)(i)および(B)(ii)の上記式では、Rが、各出現において独立して、メチル基、ビニル基、およびフェニル基からなる群から選択され、同時に、または代替的に、Rが、各出現において独立して、メチル基およびフェニル基からなる群から選択され、同時に、または代替的に、R’’がメチルであり、同時に、または代替的に、R’’’が、各出現において独立して、水素およびメチルからなる群から選択されることが望ましい。
【0078】
成分(C)-ヒドロシリル化触媒
本発明の組成物は、ヒドロシリル化触媒(成分C)をさらに含む。ヒドロシリル化触媒は、望ましくは、組成物中で100万重量部当り2重量部以上、同時に、組成物重量に対して6ppm以下、好ましくは4ppm以下の濃度で存在する。
【0079】
好適なヒドロシリル化触媒には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、もしくはイリジウム金属を含む白金族金属またはそれらの有機金属化合物、およびそれらの任意の2つ以上の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロシリル化触媒は、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(カルステット触媒)、HPtCl、ジ-.μ.-カルボニルジ-.n.-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金アセチルアセトナート(acac)、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物などの白金化合物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトナート)、二塩化白金、および白金化合物とオレフィンもしくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体またはマトリックスもしくはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された白金化合物などの白金化合物および錯体であり得る。ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含む溶液の一部であり得る。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化することができる。触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体であり得る。好適なヒドロシリル化触媒には、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号、および同第5,175,325号、ならびにEP0347895Bに記載されているものが挙げられる。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒およびそれらの調製方法は、米国特許第4,766,176号および米国特許第5,017,654号に例示されている。
【0080】
成分(D)-アセチレンアルコール
本発明の組成物は、任意選択的に、1つまたは組み合わせ、あるいは2つ以上のアセチレンアルコールをさらに含むことができる。アセチレンアルコールは、組成物に貯蔵安定性を提供するための架橋阻害剤として、組成物中の望ましい成分であり得る。
【0081】
好適なアセチレンアルコールの例には、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される任意の1つまたは複数の任意の組み合わせが挙げられる。
【0082】
アセチレンアルコールの濃度は、組成重量に基づいて、通常、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、さらには0.5重量%以下であり、同時にゼロ重量%以上であり、0.001重量%以上、0.01重量%以上、さらに0.1重量%以上でもあり得る。アセチレンアルコールの重量%は、好ましくは、組成物を調製する際に添加される量によって判定される。
【0083】
追加の成分
本発明の組成物は、すでに述べたものに加えて、成分を含み得るか、または含まないものであり得る。好適なそのような追加の成分には、離型剤、充填剤、接着促進剤、熱安定剤、難燃剤、反応性希釈剤、および酸化阻害剤からなる群から選択される任意の1つまたは複数の任意の組み合わせが挙げられ得る。組成物は、シリカ粒子を含有し得るか、または含まないものであり得る。
【0084】
組成物の調製
好ましくは、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド(成分A)およびシリルヒドリド官能性ポリオルガノシロキサンのブレンド(成分B)を調製し、次いでそれらのブレンドを他の成分と組み合わせて組成物を形成することにより、本発明の組成物を調製する。
【0085】
樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンをキシレンなどの溶媒中の溶液として導入し、次にブレンドから溶媒を除去することによって、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンのブレンド(成分A)を調製することは有益である。成分Aを調製するために、フレーク形態などの固体として樹脂を導入すると、本明細書に記載の性能を達成するのに好適な均質なブレンドを調製することが困難になる。
【0086】
組成物の硬化
組成物を、硬化を達成するのに十分な時間、温度に曝すことにより、本発明の組成物を硬化させる。硬化は25℃という低い温度で出現し得るが、一般に、25℃で硬化を完了するには、望ましくない長い時間が必要とされるであろう。典型的には、組成物をより迅速に硬化させるために、組成物を、120℃以上、好ましくは130℃以上、140℃以上、150℃以上、同時に、一般に220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、さらには170℃以下でさえある温度まで加熱することが望ましい。例えば、T90の評価では、組成物を150℃まで加熱する必要があり、図1に示すように、組成物強度は、10分以内にほぼ横ばいになる(完全な反応を示す)。
【0087】
本発明の成分を混合して組成物を形成する好適な方法には、成分を一緒に添加し、スパチュラ、ドラムローラー、メカニカルスターラー、3ロールミル、シグマブレードミキサー、パン生地ミキサーまたはツーロールミルで撹拌することが挙げられる。
【0088】
組成物を加熱して硬化を加速するための好適な方法には、射出成形、カプセル化成形、圧縮成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー、ビーズ塗布またはブロー成形などのプロセスによる加熱を含む任意の様式での加熱が挙げられる。
【0089】
本発明の組成物は、触媒または架橋剤の濃度を増加させる必要なしに、完全硬化組成物の強度を維持または増加させながら、T90を減少させる手段を提供する。結果として、得られる硬化組成物の透明性および無色の性状は、高いままであり得る。本組成物は、透明および/または無色の硬化組成物を達成しながら、低減されたT90および同じまたはより高い最終弾性率で硬化し得る。
【0090】
末端のアルケニル官能基に対するSiHのモル比が同じである組成物に対する相対的なT90値を評価する。本組成物によって得られた減少したT90値は、同じSiH対末端アルケニル官能基モル比および同じヒドロシリル化触媒濃度を有する組成物と比較して明らかである。
【0091】
本発明の組成物が提供する低いT90および高い最終弾性率は、それを射出成形用途に理想的にする。低いT90および高い最終弾性率によって、部品に損傷を与えることなく、T90値がより高い組成物よりも部品を金型からより素早く解放することが可能になるが、これは、部品がなお展性を有し、かつ硬化しているためからである。また、迅な硬化および高い最終弾性率によって、本発明の組成物は、コーティングシーラント、接着剤、金型製造、封止材、レンズ、および光ガイドとして有用になる。
【実施例
【0092】
表1に、実施例(Exs)および比較例(Comp Exs)についての材料を列挙する。「Me」は「メチル」を意味し、「Vi」は「ビニル」を意味する。
【表1-1】
【表1-2】
【0093】
以下の表の処方に従って配合物を調製する。一般に、溶媒(キシレン)中でA2成分をA1成分と組み合わせ、次にロータリーエバポレーターを使用して1.3メガパスカル(10Torr)および160℃で1時間溶媒をストリッピングすることにより、配合物を調製する。溶媒は、不揮発性含有量(NVC)試験で確認された混合物の0.3重量%未満である必要がある(アルミニウムトレイ上に10gの混合物を分注し、デジタルスケールで総重量を測定し、サンプルを150℃で2時間加熱し、次いでサンプルを再計量して質量損失を測定することにより、NVC試験を実施する。)。溶媒を除去した後、レシピに必要な負荷で、A1およびA2の成分の混合物をミキシングカップ(FlackTec Max100、透明)に追加する。成分C、成分D、成分B1および次いで成分B2の順に追加し、金属スパチュラまたはガラス製の攪拌棒を使用して各成分を追加した後、手で混合する。全ての成分を追加した後、ミキシングカップにスクリュートップ蓋をかぶせ、FlackTek SpeedMixer DAC150.1FVZを使用して毎分3,000回転で25秒間、非対称遠心混合により混合する。
【0094】
以下の様式で、配合物の光学特性を評価する。配合物のサンプルを、3.2センチメートル×2センチメートル×5センチメートルの寸法のポリスチレンキュベット(Konica Minolta,Sensing Plastic Cell CM-A132部品番号1870-717)に注ぐ。サンプルを、80℃のオーブンで24時間硬化させる。硬化したサンプルをキュベットから取り出し、150℃で1時間後硬化させる。150ミリメートルの積分球を備えるPerkin Elmer Lambda 950分光光度計を使用して、後硬化サンプルの光学特性を測定する。200~800ナノメートルの波長範囲にわたって1ナノメートルのスリット幅を使用し、毎分250ナノメートルのスキャン速度で分光光度計を操作する。サンプルの光透過率を、ASTMD1003に記載されるように取得する。Δuを、CIE 1976規格に記載されているように、透過率スペクトルから計算する。反射率(フレネル反射)を含む透過率データを報告する。
【0095】
図1のデータ
表1は、比較例(Comp Ex)A、比較例B、および実施例(Ex)1の配合物における各成分の重量部を含む。
【表2】
【0096】
図1は、反応が進行するときの組成物の強度を図で示す。データの各セットの大きな記号は、実行のためのT90値に対応する。図1の曲線および表1のデータに示されるように、組成物が線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンを欠く場合(比較例Bを参照)、配合物は比較的長いT90を有するだけでなく、たとえ他の組成物に近い場合であっても最終強度を達成し得ない。組成物が樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンを欠く場合(比較例Aを参照)、たとえ最終的に実施例1と同様の組成物強度に達しても、配合物は比較的長いT90を有する。実施例1は、線状および樹脂性の両方のシリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンが存在する場合、組成物はすぐに強度を高め、かつ比較的短いT90を有することを示す。
【0097】
線状SiHの追加ではなく触媒の増加の効果
比較例CおよびDは、線状および樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンおよび樹脂性のシリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンを含む組成物への触媒濃度の増加の効果を示す。表2は、比較例CおよびDの各成分の重量部分ならびに得られた組成物の特性を示している。比較例Dは、比較例Cの3倍の量の触媒を含有し、光学品質の低減に対応して、より高い経時Δuを生じる。
【表3】
【0098】
線状SiHの追加ではなくSiH濃度の増加の効果
比較例EおよびFは、樹脂性シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンの増加(樹脂性架橋剤濃度の増加)の効果を示している。表3は、比較例EおよびFの各成分の重量部ならびに得られた組成物の特性を示す。樹脂架橋剤を増加させると、減少された400nmでの初期透過率およびより低い透明度に対応する経時Δuが生じる。
【表4】
【0099】
本発明のさらなる実証
以下のデータは、組成物を硬化させたときに本発明の組成物によって得られる有益な結果を示す。特に、幅広い範囲内のシリルヒドリド対アルケニル比にわたって樹脂性シリルヒドリド官能性架橋剤のみを用いる同様の組成物と比較して、より速いT90値および同等またはそれ以上の最終弾性率値が達成され、このことは、本発明において線状架橋剤を添加することの驚くべき効果を実証する。この結果は、全てのシリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンに対する線状シリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンの重量%が10重量%より大きく50重量%未満であり、かつシリルヒドリド官能化ポリオルガノシロキサンについてのD/Dの比が2より大きく14未満である場合に、広範囲のシリルヒドリド対アルケニル比にわたって得られる。
【0100】
表4-6は、各々が樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンとしてA2-1を使用して、3つの異なるシリルヒドリドーアルケニル比での様々なD/D比のサンプルの配合および結果を示す。配合は、組成物中の各成分の重量部を示す。
【0101】
同様に、表7は、各々が樹脂性アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンとしてA2-2を使用して、3つの異なるシリルヒドリドーアルケニル比での様々なD/D比のサンプルの配合および結果を示す。
【0102】
実施例(Exs)として同定されたサンプルは、全てのシリルヒドリド-アルケニル比で、参照(線状架橋剤なしの配合物)と比較して減少したT90値および同等またはそれ超のトルク係数を示し、このことは、広範囲のシリルヒドリド-アルケニル比にわたって線状架橋剤を追加することによる予想外の影響を実証する。比較例(Comp Exs)としてマークされたサンプルのいくつかは、1つまたはいくつかのシリルヒドリド-アルケニル比で、参照と比較して減少されたT90および同等またはそれ超の最終トルク係数を示すが、全てのシリルヒドリド-アルケニル比にわたってそのような特性を実証するわけではない。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】

図1
【国際調査報告】