(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01J37/147 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533445
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020083036
(87)【国際公開番号】W WO2021110449
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】クック ベンジャミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン オーエン
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE23
5C101EE36
5C101EE65
5C101EE68
5C101EE78
5C101FF02
5C101HH11
(57)【要約】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置が提供される。ビームブランキング装置は、第1のブランキングユニットと、第2のブランキングユニットと、第3のブランキングユニットと、を含む。第1のブランキングユニットは、第1のブランキング電極および第1の開孔を含む。第2のブランキングユニットは、第2のブランキング電極および第2の開孔を含む。第3のブランキングユニットは、第3のブランキング電極および第3の開孔を含む。ビームブランキング装置は、第1のブランキング電極用の第1の対向電極、第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極を含む。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置(100、200、300、400)であって、
第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含む第1のブランキングユニット(110、210、310、500)と、
第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含む第2のブランキングユニット(120、220、320)と、
第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含む第3のブランキングユニット(130、230、330)と、
前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極(108、208、408、520)と、
を備え、
前記第1のブランキングユニット、前記第2のブランキングユニット、および前記第3のブランキングユニットが、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定し、
前記第1のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレット(B1、B)を第1の偏向方向(D110、D500)に偏向させるために、前記第1の開孔において前記第1のブランキング電極と前記共通電極との間に第1の電界を生成するように配置され、前記第2のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第2のビームレット(B2)を第2の偏向方向(D120)に偏向させるために、前記第2の開孔において前記第2のブランキング電極と前記共通電極との間に第2の電界を生成するように配置され、前記第3のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第3のビームレット(B3)を第3の偏向方向(D130)に偏向させるために、前記第3の開孔において前記第3のブランキング電極と前記共通電極との間に第3の電界を生成するように配置され、
前記平面アレイと交差する分割面(D)が、前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3のブランキングユニットから分離し、前記第1の偏向方向、前記第2の偏向方向、および前記第3の偏向方向が、前記分割面から離れる方向を向いている、
ビームブランキング装置(100、200、300、400)。
【請求項2】
前記分割面が、前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差する、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項3】
前記第2の偏向方向および前記第3の偏向方向が実質的に同じであり、前記第1の偏向方向が、前記分割面でミラーリングされた、前記第2の偏向方向の鏡像である、請求項1または2に記載のビームブランキング装置。
【請求項4】
前記第1の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第1の偏向面内にあり、前記第2の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第2の偏向面内にあり、前記第3の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第3の偏向面内にあり、前記第1の偏向面、前記第2の偏向面、および前記第3の偏向面が、前記分割面に実質的に垂直である、請求項1~3のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項5】
前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極に接続された制御回路を備え、前記制御回路が、前記第1の電界、前記第2の電界、および前記第3の電界をそれぞれ生成するために、前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極を同じ動作電位にするように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項6】
ウエハ(510)を備え、前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、前記第3のブランキング電極、および前記共通電極が前記ウエハ上に形成され、前記ウエハが、前記第1のビームレットが前記第1の開孔を通過することを可能にするための第1の孔と、前記第2のビームレットが前記第2の開孔を通過することを可能にするための第2の孔と、前記第3のビームレットが前記第3の開孔を通過することを可能にするための第3の孔と、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項7】
前記共通電極が、前記第1のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第1の遮蔽バリア(521)を形成し、前記第2のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第2の遮蔽バリアを形成し、前記第3のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第3の遮蔽バリアを形成する、請求項6に記載のビームブランキング装置。
【請求項8】
前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極が、前記分割面から離れる方向を向くか、または前記分割面に向かう方向を向く湾曲したブランキング電極である、請求項1~7のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項9】
前記ビームブランキング装置がm行n列のブランキングユニットを含み、mおよびnが2以上であり、前記第1のブランキングユニットが第1の行(R2)および第1の列(C1)に配置され、前記第2のブランキングユニットが第2の行(R3)および前記第1の列(C1)に配置され、前記第3のブランキングユニットが前記第2の行(R3)および第2の列(C2)に配置され、前記分割面が各列を2つの半列に分離し、各列内または各半列内のブランキングユニットが、そこを通過するビームレットを一緒に偏向するように構成され、各行内のブランキングユニットが、そこを通過する前記ビームレットを個々に偏向するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項10】
前記第1のブランキング電極の高さ(h522)、前記第2のブランキング電極の高さ、および前記第3のブランキング電極の高さのうちの少なくとも1つが、100μm~1000μmの範囲にあり、前記共通電極の高さ(h520)が、200μm~3000μmの範囲にある、請求項1~9のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項11】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置(100、200、300、400)であって、
第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含む第1のブランキングユニット(110、210、310、500)と、
第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含む第2のブランキングユニット(120、220、320)と、
第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含む第3のブランキングユニット(130、230、330)と、
前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極(108、208、408、520)と、
を備え、
前記第1のブランキングユニット、前記第2のブランキングユニット、および前記第3のブランキングユニットが、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定し、
前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差する分割面(D)が、前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3のブランキングユニットから分離し、前記第1のブランキング電極の中心(C522)から前記第1の開孔の中心(C524)を通る第1の線、前記第2のブランキング電極の中心から前記第2の開孔の中心を通る第2の線、および前記第3のブランキング電極の中心から前記第3の開孔の中心を通る第3の線が、前記分割面から離れる方向を向いているか、または前記第1の線、前記第2の線、および前記第3の線が、前記分割面に向かう方向を向いている、ビームブランキング装置(100、200、300、400)。
【請求項12】
前記第1の線、前記第2の線、および前記第3の線が、前記分割面に対して実質的に垂直である、請求項11に記載のビームブランキング装置。
【請求項13】
前記第1のブランキング電極の前記中心が前記第1の開孔の前記中心よりも前記分割面に近く、前記第2のブランキング電極の前記中心が前記第2の開孔の前記中心よりも前記分割面に近く、前記第3のブランキング電極の前記中心が前記第3の開孔の前記中心よりも前記分割面に近い、請求項11または12に記載のビームブランキング装置。
【請求項14】
前記共通電極が、前記第1のブランキング電極および前記第2のブランキング電極が配置されるキャビティ(550)を形成し、前記第3のブランキング電極が配置されるキャビティを形成し、前記第2のブランキング電極と前記第3のブランキング電極との間に遮蔽バリア(CB)を形成する、請求項11~13のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項15】
前記第1の開孔の前記中心と前記第2の開孔の前記中心との間のピッチ(pR)が100μm~500μmの範囲にあり、前記第2の開孔の前記中心と前記第3の開孔の前記中心との間のピッチ(pC)が100μm~500μmの範囲にある、請求項11~14のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項16】
前記ビームブランキング装置がウエハベースのビームブランキング装置である、請求項11~15のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項17】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置(100、200、300、400)を動作させる方法(600)であって、前記ビームブランキング装置が、共通電極(108、208、408、520)を共有し、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定するブランキングユニット(110、120、130;210、220、230;310、320、330;500)を備え、
前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレット(B1、B2、B3、B)を、前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差し、前記ブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離する分割面(D)から離れるように偏向させるステップ(620)、
を含む、方法(600)。
【請求項18】
前記共通電極を基準電位にするステップを含み、前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップが、前記ブランキングユニットのそれぞれを前記基準電位とは異なる同じ動作電位にするステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記共通電極を基準電位にするステップを含み、前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップが、前記第1のグループの前記ブランキングユニットを第1の動作電位にするステップと、前記第2のグループの前記ブランキングユニットを第2の動作電位にするステップ、とを含み、前記第1の動作電位および前記第2の動作電位が前記基準電位とは異なり、かつ互いに異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ブランキングユニットが、前記平面アレイの前記平面を画定する第1のブランキングユニット(110、210、310、500)、第2のブランキングユニット(120、220、320)、および第3のブランキングユニット(130、230、330)を含み、前記第1のブランキングユニットが第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含み、前記第2のブランキングユニットが第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含み、前記第3のブランキングユニットが第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含み、前記共通電極が前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成し、前記分割面が前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3ブランキングユニットから分離し、前記第1のブランキング電極の中心(C522)から前記第1の開孔の中心(C524)を通る第1の線、前記第2のブランキング電極の中心から前記第2の開孔の中心を通る第2の線、および前記第3のブランキング電極の中心から前記第3の開孔の中心を通る第3の線が、前記分割面から離れる方向を向いているか、または前記分割面に向かう方向を向いているかのいずれかである、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷電粒子ビーム装置、例えば電子ビーム装置の分野に関する。実施形態は、このような荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置、およびビームブランキング装置を動作させる方法に関する。より詳細には、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットをブランキングするためのビームブランキング装置および対応する動作方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
例えばウエハ上の欠陥などを検出するために試料を分析するために、電子ビーム検査(EBI)のための電子ビーム装置などの荷電粒子ビーム装置を使用することができる。試料を分析するのに必要な時間を短縮するために、複数のビーム/ビームレットを用いて、試料の異なる部分を同時に検査することができる。このようなビーム/ビームレットをブランキングすることができれば利点を得ることができ、この目的のためにマルチビームレット荷電粒子装置用のビームブランキング装置を使用することができる。特定のビーム/ビームレットのこのようなブランキングは、他のビーム/ビームレットに影響を与える可能性があり、これはクロストークとして知られている現象である。クロストークは、ブランキングされていないビーム/ビームレットが偏向されるべきではないにもかかわらず、ブランキングされていないビーム/ビームレットが偏向されるという状況をもたらす可能性がある。クロストークは、試料の分析結果を悪化させる可能性がある。クロストークの問題は、ビームブランキング装置が小さくなると、一層顕著になり、ビームブランキング装置ではビーム/ビームレット間の距離(「ピッチ」)も小さくなる。例えば、ビーム/ビームレット、例えば30kVの電子による電子ビームをブランキングするために10mradの偏向を達成する一方で、ウエハにおける他のすべてのビーム/ビームレットのビームシフトが0.1nm以下であるという要求があり、ウエハ上のビームサイズは10nmよりも小さく、ビームブランキング装置は、例えばウエハから約120mm離れていることがある。これは、クロストークをいかに低く抑えるかという非常に厳しい要求である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、特にクロストークが小さい改良されたビームブランキング装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置が提供される。ビームブランキング装置は、第1のブランキングユニットと、第2のブランキングユニットと、第3のブランキングユニットと、を含む。第1のブランキングユニットは、第1のブランキング電極および第1の開孔を含む。第2のブランキングユニットは、第2のブランキング電極および第2の開孔を含む。第3のブランキングユニットは、第3のブランキング電極および第3の開孔を含む。ビームブランキング装置は、第1のブランキング電極用の第1の対向電極、第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極を含む。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定する。第1のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレットを第1の偏向方向に偏向させるために、第1の開孔において第1のブランキング電極と共通電極との間に第1の電界を生成するように配置される。第2のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第2のビームレットを第2の偏向方向に偏向させるために、第2の開孔において第2のブランキング電極と共通電極との間に第2の電界を生成するように配置される。第3のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第3のビームレットを第3の偏向方向に偏向させるために、第3の開孔において第3のブランキング電極と共通電極との間に第3の電界を生成するように配置される。平面アレイと交差する分割面は、第1のブランキングユニットを第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットから分離し、第1の偏向方向、第2の偏向方向および第3の偏向方向は、分割面から離れる方向を向いている。代替的にまたは追加的に、第1の偏向方向、第2の偏向方向および第3の偏向方向は、平面アレイと交差する分割線から離れる方向を向いている。
【0005】
別の実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のためのビームブランキング装置が提供される。ビームブランキング装置は、第1のブランキングユニットと、第2のブランキングユニットと、第3のブランキングユニットと、を含む。第1のブランキングユニットは、第1のブランキング電極および第1の開孔を含む。第2のブランキングユニットは、第2のブランキング電極および第2の開孔を含む。第3のブランキングユニットは、第3のブランキング電極および第3の開孔を含む。ビームブランキング装置は、第1のブランキング電極用の第1の対向電極、第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極を含む。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定する。平面アレイの平面に垂直に平面アレイと交差する分割面は、第1のブランキングユニットを第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットから分離する。第1のブランキング電極の中心から第1の開孔の中心を通る第1の線、第2のブランキング電極の中心から第2の開孔の中心を通る第2の線、および第3のブランキング電極の中心から第3の開孔の中心を通る第3の線は、分割面から離れる方向を向くか、または分割面に向かう方向を向く。
【0006】
別の実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置を動作させる方法が提供される。ビームブランキング装置は、共通電極を共有し、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定するブランキングユニットを含む。本方法は、ブランキングユニットのそれぞれを用いて、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットを、平面アレイと交差し、ブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離する分割面から離れるように偏向させるステップを含む。
【0007】
本明細書に記載される実施形態と組み合わせることができるさらなる利点、特徴、態様、および詳細は、従属請求項、説明、および図面から明らかである。
【0008】
さらなる詳細が、図面を部分的に参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置を示す図である。
【
図2】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの偏向方向の特定の態様を示す図である。
【
図3】本明細書に記載される実施形態によるマルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置およびビームダンプを示す図である。
【
図4】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの配置および偏向方向の態様を示す図である。
【
図5】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの配置および偏向方向の態様を示す図である。
【
図6】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの配置および偏向方向の態様を示す図である。
【
図7】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置を示す図である。
【
図8】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの配置および偏向方向のさらなる態様を示す図である。
【
図9】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置のブランキングユニットの配置および偏向方向のさらなる態様を示す図である。
【
図10】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置用のビームブランキングユニットを示す図である。
【
図11】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置用のビームブランキングユニットを示す図である。
【
図12】本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置を示す図である。
【
図13】本明細書に記載される実施形態によるマルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置を動作させる方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。実施形態およびその一部は、任意の方法で組み合わせることができる。例えば、本明細書に記載される実施形態の任意の態様は、任意の他の実施形態の任意の他の態様と組み合わせて、さらなる実施形態を形成することができる。実施形態の詳細な説明は、例示のために提供される。図は、縮尺または角度が正確である必要はなく、例示のために一部を誇張している場合がある。同一または同様の部分は、図において同一の参照符号を有することがあり、図間の相違のみが原則として説明される。
【0011】
一実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置が提供される。本明細書で使用される「マルチビームレット」という用語は、別々の荷電粒子ビーム源から生じる複数のビーム、ならびに単一の荷電粒子ビーム源から生じる複数のビーム、例えば、単一の荷電粒子ビーム源によって照明される開孔プレートによって形成されるビームレットの場合を含む。ビームブランキング装置は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の個々のビームレットを他のビームレットから独立してブランキングするように構成されてもよく、および/またはビームレットのグループを他のビームレットのグループから独立してブランキングするように構成されてもよい。グループは、ビームレットのアレイの行または列であってもよい。荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム装置であってもよい。荷電粒子ビーム装置は、試料を検査するように構成されてもよい。荷電粒子ビーム装置は、ウエハなどの試料の電子ビーム検査(EBI)のための電子ビーム装置であってもよい。
【0012】
ビームブランキング装置は、第1のブランキングユニットと、第2のブランキングユニットと、第3のブランキングユニットと、を含む。第1のブランキングユニットは、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレットをブランキングするように構成されてもよい。第2のブランキングユニットは、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第2のビームレットをブランキングするように構成されてもよい。第3のブランキングユニットは、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第3のビームレットをブランキングするように構成されてもよい。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットは、平面アレイに配列されている。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、平面アレイの平面を画定し、第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、直線状に配置されていない。ビームブランキング装置は、N個のブランキングユニットを有することができ、ビームブランキング装置は、第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットに加えて、N-3個のさらなるブランキングユニットを有することができる。N-3個のさらなるブランキングユニットは、平面アレイに配列されてもよい。ブランキングユニットの数Nは、≧3、≧4、≧6、≧9、≧12、≧16、≧36、または≧100であってもよい。ブランキングユニットの数Nは、≦1000、≦500、≦200、または≦100であってもよい。ブランキングユニットの数Nは、これらの下限および上限から形成される範囲内であってもよい。平面アレイは、m行のブランキングユニット、およびn列のブランキングユニットを含むことができる。ここで、Nは、nのm倍に等しくてもよい。平面アレイは、正則格子であってもよい。平面アレイは、ブランキングユニットの正方格子であってもよい。代替として、平面アレイは、ブランキングユニットの三角形格子または六角形格子であってもよく、または他の規則的な幾何学形状、例えば、同心円上に配列されたブランキングユニットを含んでもよい。
【0013】
第1のブランキングユニットは、第1のブランキング電極および第1の開孔を含む。第2のブランキングユニットは、第2のブランキング電極および第2の開孔を含む。第3のブランキングユニットは、第3のブランキング電極および第3の開孔を含む。ビームブランキング装置は、第1のブランキング電極用の第1の対向電極、第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極を含む。N-3個のさらなるブランキングユニットは、第4~第Nのブランキング電極および第4~第Nの開孔をそれぞれ含むことができる。共通電極は、N-3個のさらなるブランキングユニットの第4~第Nのブランキング電極用の対向電極を形成することができる。共通電極は、平面アレイの平面内にあってもよい。共通電極は、平面アレイの平面を画定することができる。ブランキングユニットの開孔のそれぞれは、マルチビームレット荷電粒子装置のビームレットのうちの1つがビームブランキング装置を通過することを可能にすることができる。ブランキングユニットのそれぞれは、共通電極と連携して、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットのうちの1つを偏向させるように構成されてもよい。
【0014】
第1の開孔は、第1のブランキングユニットの第1の光軸を画定することができる。第1の光軸は、第1の開孔の中心線であってもよく、第1の開孔の対称線であってもよい。第2の開孔は、第2のブランキングユニットの第2の光軸を画定することができる。第2の光軸は、第2の開孔の中心線であってもよく、第2の開孔の対称線であってもよい。第3の開孔は、第3のブランキングユニットの第3の光軸を画定することができる。第3の光軸は、第3の開孔の中心線であってもよく、第3の開孔の対称線であってもよい。第1の光軸は、第2の光軸および/または第3の光軸と平行であってもよい。第2の光軸は、第3の光軸と平行であってもよい。ビームブランキング装置のブランキングユニットの開孔によって画定される光軸は、互いに平行であってもよい。この場合、ブランキングユニットのすべての光軸が互いに平行であるとき、ビームブランキング装置または平面アレイは光軸を有すると言われる。第1の光軸は、平面アレイの平面に垂直であってもよい。第2の光軸は、平面アレイの平面に垂直であってもよい。第3の光軸は、平面アレイの平面に垂直であってもよい。k番目のブランキングユニットのk番目の開孔によって画定されるk番目の光軸は、平面アレイの平面に対して垂直であってもよく、l番目のブランキングユニットのl番目の開孔によって画定されるl番目の光軸に対して平行であってもよく、kは4~Nの範囲にあり、lは1~Nの範囲にある。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレット、第2のビームレット、および第3のビームレット、ならびに他のビームレットのいずれかは、それぞれのビームレットが通過する対応するビームブランキングユニットの光軸に平行な入射方向でビームブランキング装置に入射することができる。
【0015】
第1のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレットを第1の偏向方向に偏向させるために、第1の開孔において第1のブランキング電極と共通電極との間に第1の電界を生成するように構成されてもよい。第2のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第2のビームレットを第2の偏向方向に偏向させるために、第2の開孔において第2のブランキング電極と共通電極との間に第2の電界を生成するように構成されてもよい。第3のブランキング電極は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第3のビームレットを第3の偏向方向に偏向させるために、第3の開孔において第3のブランキング電極と共通電極との間に第3の電界を生成するように構成されてもよい。N-3個のさらなるブランキングユニットのN-3個のブランキング電極のそれぞれは、存在する場合、対応して、すなわち、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレット荷電粒子ビーム装置のk番目のビームレットをk番目の偏向方向に偏向させるために、k番目の開孔においてk番目のブランキング電極と共通電極との間にk番目の電界を生成するように構成されてもよく、kは4~Nの範囲にある。
【0016】
平面アレイと交差する分割面は、第1のブランキングユニットを第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットから分離する。分割面は、ビームブランキング装置のブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離することができ、第1のグループは、第1のブランキングユニットを含むかまたは第1のブランキングユニットから構成され、第2のグループは、第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットを含むかまたは第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットから構成されている。N-3個のさらなるブランキングユニットのいずれも、第1のグループまたは第2のグループに属することができる。第1のグループおよび第2のグループは、同じ数のブランキングユニットまたは本質的に同じ数のブランキングユニットを含むことができる。第1のグループおよび第2のグループは、同じ数または本質的に同じ数のブランキングユニットの行またはブランキングユニットの列を含むことができる。分割面は、ブランキングユニットの行間またはブランキングユニットの列間など、ブランキングユニット間で平面アレイと交差していてもよく、および/またはブランキングユニットと交差していなくてもよい。分割面は、ブランキングユニットの各行を2つの半行に分離することができる。分割面は、ブランキングユニットの各列を2つの半列に分離することができる。分割面は、平面アレイを等しいまたは実質的に等しい半分に分離することができる。分割面は、平面アレイの中心またはその近くで平面アレイと交差してもよく、中心は、平面アレイに配列された最も外側のブランキングユニットの位置から決定される。
【0017】
分割面は、平面アレイの平面に垂直に平面アレイと交差してもよい。分割面は、第1の光軸、第2の光軸、第3の光軸、k番目のブランキングユニットの光軸(kは4~Nの範囲にある)、および平面アレイの光軸のうちの少なくとも1つに平行であってもよい。分割面は、第1のビームレットの入射方向、第2のビームレットの入射方向、第3のビームレットの入射方向、k番目のビームレットの入射方向(kは4~Nの範囲にある)、およびマルチビーム荷電粒子ビーム装置の一部またはすべてのビームレットの入射方向のうちの少なくとも1つに平行であってもよい。
【0018】
一部の実施形態によると、第1の偏向方向、第2の偏向方向、および第3の偏向方向は、分割面から離れる方向を向いている。k番目のブランキングユニットのk番目の偏向方向は、分割面から離れる方向を向くことができ、kは4~Nの範囲にある。平面アレイのすべてのブランキングユニットの偏向方向は、分割面から離れる方向を向くことができる。偏向方向は、偏向方向が、対応するブランキングユニットによって規定される分割面の側に、平面に対して垂直で平面から離れる方向を向く非ゼロベクトル成分を有する場合に、平面から離れる方向を向く。換言すれば、非ゼロベクトル成分は、その平面の外向きの法線に比例する。第2の偏向方向および第3の偏向方向は、互いに平行であってもよい。第1の偏向方向は、分割面が鏡映面である第2の偏向方向または第3の偏向方向の鏡像であってもよく、またはそのような鏡像に平行であってもよい。分割面は、平面アレイの対称面であってもよい。分割面の一方の側のブランキングユニットは、分割面の他方の側のブランキングユニットの鏡像であってもよい。
【0019】
第1の偏向方向は、平面アレイの平面に垂直であり、分割面と交差する第1の偏向面内にあってもよい。第1の偏向面は、第1のブランキングユニットの対称面であってもよい。第1のブランキング電極の中心は、第1の偏向面上にあってもよい。第1の開孔の中心は、第1の偏向面上にあってもよい。第2の偏向方向は、平面アレイの平面に垂直であり、分割面と交差する第2の偏向面内にあってもよい。第2の偏向面は、第2のブランキングユニットの対称面であってもよい。第2のブランキング電極の中心は、第2の偏向面上にあってもよい。第2の開孔の中心は、第2の偏向面上にあってもよい。第3の偏向方向は、平面アレイの平面に垂直であり、分割面と交差する第3の偏向面内にあってもよい。第3の偏向面は、第3のブランキングユニットの対称面であってもよい。第3のブランキング電極の中心は、第3の偏向面上にあってもよい。第3の開孔の中心は、第3の偏向面上にあってもよい。第1の偏向面、第2の偏向面、および第3の偏向面のいずれかまたはすべては、分割面に対して垂直または実質的に垂直であってもよい。
【0020】
図1は、ビームブランキング装置100の一実施形態を示す。ビームブランキング装置100は、第1のブランキングユニット110、第2のブランキングユニット120、および第3のブランキングユニット130を含むブランキングユニットの平面アレイ105を含む。第1のブランキングユニット110、第2のブランキングユニット120、および第3のブランキングユニット130は、平面アレイ105の平面Aを画定し、または平面Aに広がる。
図1において、平面アレイ105は、m=4行およびn=3列の正方格子に配列された12個のブランキングユニットを有するように示されている。ビームブランキング装置100は、ブランキングユニットのそれぞれのブランキング電極と協働する共通電極108を含み、開孔を通過するビームレットを偏向させるためにブランキングユニットの開孔内に電界を生成する。分割面Dは、第1のブランキングユニット110を第2のブランキングユニット120および第3のブランキングユニット130から分離する。分割面Dは、平面Aに垂直であり、ブランキングユニットの第2の列と第3の列との間で平面アレイと交差し、12個のブランキングユニットを、同じサイズを有するブランキングユニットの2つのグループ、すなわち第1のブランキングユニット110を含む第1のグループと、第2のブランキングユニット120および第3のブランキングユニット130を含む第2のグループとに分離する。分割面Dは、平面アレイ105の対称面(鏡映面)である。分割面は、平面アレイの平面、または本明細書に記載される任意の平面、線、もしくは点と同様に、物理的オブジェクトである必要はなく、ブランキングユニットの配置、配向、および/または構成された動作などの、物理的オブジェクトの幾何学的特性を定義する幾何学的オブジェクトとすることができる。
【0021】
第1のビームレットB1は、平面Aに対して垂直であり、第1のブランキングユニット110の開孔によって画定される第1のブランキングユニット110の光軸と一致する第1の入射方向I1で第1のブランキングユニット110に到達する。第2のビームレットB2は、平面Aに対して垂直であり、第2のブランキングユニット120の開孔によって画定される第2のブランキングユニット120の光軸と一致する第1の入射方向I2で第2のブランキングユニット120に到達する。第3のビームレットB2は、平面Aに垂直であり、第3のブランキングユニット130の開孔によって画定される第3のブランキングユニット130の光軸と一致する第1の入射方向I3で第3のブランキングユニット130に到達する。
【0022】
図1において、第1のブランキングユニット110、第2のブランキングユニット120、および第3のブランキングユニット130のブランキング電極は同じ動作電位にあり、共通電極108に対して電圧差がある。例えば、ビームレットが電子によって形成される場合、共通電極は接地されていてもよく、第1のブランキングユニット110、第2のブランキングユニット120、および第3のブランキングユニット130には負の電圧が供給されてもよい。第1のビームレットB1は、第1のブランキングユニット110の開孔で偏向され、第1の偏向方向D110に伝搬する。第1の偏向方向D110は、分割面Dに平行で平面Aに垂直なベクトル成分を有し、分割面の外向きの法線nD
1の方向のベクトル成分を有する。第2のビームレットB2は、第2のブランキングユニット120の開孔で偏向され、第2の偏向方向D120に伝搬する。第3のビームレットB3は、第3のブランキングユニット130の開孔で偏向され、第3の偏向方向D130に伝搬する。第2および第3の偏向方向D120、D130のそれぞれは、分割面Dに平行で平面Aに垂直なベクトル成分と、分割面の外向きの法線nD
2の方向のベクトル成分と、を有する。第2のブランキングユニット120および第3のブランキングユニット130は、第1のブランキングユニット110と比較して分割面の反対側にあるため、
図1に示すように、第2のブランキングユニット120および第3のブランキングユニット130のいずれの側の外向きの法線nD
2も、第1のブランキングユニット110の側の外向きの法線nD
1とは反対である。ブランキング電極、対応するブランキングユニット、およびビームブランキング装置全体は、第1の偏向方向D110、第2の偏向方向D120、および第3の偏向方向D130が分割面から離れる方向を向くように構成されている。
【0023】
図2は、偏向方向が分割面Dから離れる方向を向いている場合を示す。
図2は、ビームブランキング装置の平面アレイの平面への投影図である。したがって、平面アレイの平面に垂直な方向の偏向方向のベクトル成分は見えない。分割面Dは、分割面Dのそれぞれの側の外向きの法線nD
1および外向きの法線nD
2とともに示されている。ブランキングユニット150が例示的に示されており、ブランキングユニットは、ブランキング電極152および開孔154を含む。ブランキングユニット150は、ビームレットを偏向方向D150に偏向させる。偏向方向D150は、外向きの法線nD
1に比例するベクトル成分を有するため、偏向方向D150は、偏向方向D150が分割面Dおよび平面アレイの平面に平行なベクトル成分も有するか否かにかかわらず、分割面Dから離れる方向を向いている。偏向方向D150は、平面アレイの平面に垂直な偏向面P150内にある。
図2の分割面Dの下方の2つの他のブランキングユニットは、ビームレットを分割面から離れるように偏向させるのではなく、分割面に向かってまたは分割面に平行に偏向させている。したがって、これら2つの他のブランキングユニットは、
図2において×印で消されている。
図2の分割面Dの上方には、分割面から離れる方向を向く偏向方向にビームレットを偏向させるために、ブランキング電極と共通電極との間で、開孔内にそれぞれの電界を生成するように構成された、さらに3つのブランキングユニットが示されている。ここで、真ん中のものは、ビームレットを分割面に垂直な方向に、すなわち分割面から真っ直ぐ離れる方向に偏向させる。
【0024】
図3は、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置100およびビームダンプ710を示す。ビームダンプは、開孔715を含む。ビームレットがビームブランキング装置内で偏向されない場合、すなわちビームレットが通過するブランキングユニットが作動しない(そのブランキングユニットの共通電極とブランキング電極との間に電圧差がない)場合、ビームレットは、入射方向I1、I2およびI3を有するビームレットB1、B2およびB3について例示的に示されるように、ビームレットの入射方向に伝搬する。偏向されていないビームレットは、ビームダンプ710の開孔715を通過する。ビームブランキング装置100の12個のブランキングユニットの偏向されていないビームレットの位置は、ビームダンプ710の平面に破線の円で示されている。ビームレットが通過するブランキングユニットにおいてビームレットが偏向される場合、ビームレットは、ビームレットB1、B2およびB3ならびに対応する偏向方向D110、D120およびD130について例示的に示されるように、偏向方向に偏向される。ビームブランキング装置100の12個のブランキングユニットの偏向されたビームレットの位置は、ビームダンプ710上に実線の円で示されている。
図3において、第1のブランキングユニット110を通過する第1のビームレットB1を含む、分割面Dの左側のブランキングユニットを通過するビームレットは、開孔715の左側に偏向されて、ビームダンプ710によってブランキングされ、一方、第2のブランキングユニット120を通過する第2のビームレットB2および第3のブランキングユニット130を通過する第3のビームレットB3を含む、分割面Dの右側のブランキングユニットを通過するビームレットは、開孔715の右側に偏向されて、ビームダンプ710によってブランキングされる。偏向されていないビームレットがビームブランキング装置の下流に伝播する方向に等しい入射方向と、同じビームレットがビームブランキング装置によって偏向されたときのビームレットの偏向方向との間の角度は、偏向角と呼ばれる。第1のビームレットB1の偏向角φ、すなわち、第1の入射方向I1と第1の偏向方向B1との間の角度が
図3に示されている。ブランキングユニットの偏向角は同じであってもよいが、代わりに、例えば、異なる電圧がビームブランキングユニットのビームブランキング電極に印加された場合は、異なっていてもよい。
【0025】
分割面の一方の側のビームレットを分割面の他方の側のビームレットとは異なるように偏向させることによって、すなわち、両方とも分割面から離れる方向に、例えば分割面から真っ直ぐ離れる方向に偏向させることによって、すべてのビームレットを同じ(すなわち平行な)偏向方向に偏向させることと比較してブランクまでの距離が短縮される。
図3において、真ん中のビームレット、例えば、ビームレットB1、B2またはB3は、ブランクまでの距離が最も大きい最も重要なものである。したがって、ブランクまでの距離は、最も左側のビームレットがビームダンプ710の開孔715の右側に偏向される(または最も右側のビームレットが開孔715の左側に偏向される)場合と比較して、ほぼ半分に短縮される。したがって、ビームレットをブランキングするのに必要な偏向角をより小さくすることができる。これは、偏向がブランキング電極と共通電極との間に印加される電圧差の増加とともに増加すること、偏向が平面アレイの厚さまたは光軸方向におけるブランキング電極の高さの減少とともに減少することを考慮すると、ブランキング電極と共通電極との間のアーク放電によりビームブランキングユニットが動作不能になる電圧差の最大値が存在すること、および偏向されていないビームレットおよび偏向されたビームレットの両方とビームダンプの開孔の境界との間にマージンが存在するという複数の利点を有することができる。したがって、最も左側のビームレットがビームダンプの開孔の右側に偏向される場合と比較して、同じ電圧差で、開孔をより大きくすることができ、それでも前記マージンを増加させることができる。前記電圧差を減少させることができ、それによってクロストークを減少させることができ、それでも同じマージンを得ることができる。あるいは、電極、特に光軸に沿った電極の高さを小型化することができ、ブランキングユニット間の遮蔽を最大化しながら最終的にブランキングユニットを小型化することができ、それでもビームダンプ上でブランキングするのに十分な偏向を得ることができる。これにより、クロストークならびに製造の複雑さおよびコストを低減することができる。
【0026】
本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によると、第1のブランキング電極の中心から第1の開孔の中心を通る第1の線、第2のブランキング電極の中心から第2の開孔の中心を通る第2の線、および第3のブランキング電極の中心から第3の開孔の中心を通る第3の線は、分割面から離れる方向を向くか、または分割面に向かう方向を向く。ある線が、平面に垂直な、平面から離れる方向を向く非ゼロベクトル成分を有する場合、その線は平面から離れる方向を向くと言われ、ある線が、平面に垂直な、平面に向かう方向を向く非ゼロベクトル成分を有する場合、その線は平面に向かう方向を向くと言われる。
【0027】
図4および
図5は、平面アレイの平面への投影を表す状況を示しており、分割面Dが示されている。
図4には、ブランキング電極162および開孔164を有するブランキングユニット160が示されている。ブランキング電極162の中心C162から発し、開孔164の中心C164を通過する線L162は、分割面Dから離れる方向を向く、分割面Dに垂直なベクトル成分を有する。したがって、ブランキングユニット160は、分割面Dから離れる方向を向く、ブランキング電極162の中心C162から開孔164の中心C164を通る線L162を有する。ブランキング電極162の中心C162および開孔164の中心C164は、平面アレイの平面に垂直な偏向面P160上にある。同じことが、分割面Dの上方に示される他の2つのブランキングユニットにも当てはまり、右上のブランキングユニットは、分割面Dから真っ直ぐ離れる方向に、すなわち分割面Dに垂直な方向を向く、中心から開孔を通る線を有する。
図5は、ブランキング電極のそれぞれの中心からそれぞれの開孔の中心を通る線が分割面Dに向かう方向を向いている他の状況を示す。例えば、ブランキングユニット170は、ブランキング電極172および開孔174を含み、ブランキング電極172の中心C172から開孔174の中心C174を通る線L172は、分割面Dに向かう方向を向いている。これは、線L172が分割面Dに垂直なベクトル成分を有し、このベクトル成分が分割面Dに向かう方向を向いているからである。ブランキング電極172の中心C172および開孔174の中心C174は、平面アレイの平面に垂直な偏向面P170上にある。
【0028】
ビームブランキング装置の平面アレイ内にN-3個のさらなるブランキングユニットが存在する場合、4~Nの範囲にある一部またはすべてのkについて、k番目のブランキング電極の中心からk番目の開孔の中心を通るk番目の線は、特に第1、第2、および第3の線が分割面から離れる方向を向いている場合、分割面から離れる方向を向くことができ、または特に第1、第2、および第3の線が分割面に向かう方向を向いている場合、分割面に向かう方向を向くことができる。第1、第2、および第3の線、ならびに任意のk番目の線は、分割面から真っ直ぐ離れる方向を向くことができ、または分割面に真っ直ぐ向かう方向を向くことができる。これは、これらの線が、分割面に対して垂直な方向、および分割面から離れる方向または分割面に向かう方向のいずれかを向くことができることを意味する。第1、第2、および第3の線、ならびに任意のk番目の線は、分割面から実質的に真っ直ぐ離れる方向を向くことができ、または分割面に実質的に真っ直ぐ向かう方向を向くことができる。ここで、「実質的に」とは、分割面に垂直な方向を向いて±5°以内を意味する。
【0029】
図1のビームブランキング装置100の平面アレイ105は、各ブランキングユニットについて、ブランキング電極の中心から開孔の中心を通る線が、分割面Dから真っ直ぐ離れる方向を向いている実施形態である。
図6は、第1のブランキングユニット210、第2のブランキングユニット220、および第3のブランキングユニット230を含むブランキングユニットを含む平面アレイ205と、共通電極208と、を含むビームブランキング装置200の一実施形態を示し、各ブランキングユニットについて、ブランキング電極の中心から開孔の中心を通る線は、分割面Dに真っ直ぐ向かう方向を向いている。ブランキング電極に印加される電圧は、共通電極に対する電圧差が
図1の実施形態と比較して反対の符号を有するようなものであり、したがって、第1のブランキングユニット210、第2のブランキングユニット220、および第3のブランキングユニット230について示されるように、すべてのブランキングユニットの偏向方向は依然として分割面から離れる方向を向いている。例えば、ビームレットが電子によって形成され、共通電極が接地されている場合、ブランキング電極に印加される電圧は正にされる。ブランキングユニットのこのような配置によって、ビームレットを、分割面から離れる方向に偏向させることができ、一方、同じ動作電位を、すべてのブランキングユニットのブランキング電極に印加することができ、または、少なくとも、同じ符号を有する共通電極に対する電圧差を、ビームブランキング装置の電圧源によってすべてのブランキングユニットのブランキング電極に印加することができる。これは、電圧源および/またはブランキング電極への接続を単純化することができる。
【0030】
他の実施形態によると、第1の偏向方向、第2の偏向方向、および第3の偏向方向は、分割線から離れる方向を向いていてもよく、代替的にまたは追加的に、分割面から離れる方向を向いていてもよい。分割線は、平面アレイの平面に垂直に平面アレイと交差してもよい。分割線は、第1の光軸、第2の光軸、第3の光軸、k番目のブランキングユニットの光軸(kは4~Nの範囲にある)、および平面アレイの光軸のうちの少なくとも1つに平行であってもよい。分割線は、第1のビームレットの入射方向、第2のビームレットの入射方向、第3のビームレットの入射方向、k番目のビームレットの入射方向(kは4~Nの範囲にある)、およびマルチビーム荷電粒子ビーム装置の一部またはすべてのビームレットの入射方向のうちの少なくとも1つに平行であってもよい。加えて、または代わりに、第1のブランキング電極の中心から第1の開孔の中心を通る第1の線、第2のブランキング電極の中心から第2の開孔の中心を通る第2の線、および第3のブランキング電極の中心から第3の開孔の中心を通る第3の線は、すべて分割線から離れる方向を向くか、またはすべて分割線に向かう方向を向いている。ある線が分割線に垂直で分割線から離れる方向を向く非ゼロベクトル成分を有する場合、その線は分割線から離れる方向を向くと言われ、ある線が分割線に垂直で分割線に向かう方向を向く非ゼロベクトル成分を有する場合、その線は分割線に向かう方向を向くと言われる。
【0031】
図7は、このような実施形態を示し、平面アレイ305に配列された第1のブランキングユニット310、第2のブランキングユニット320、および第3のブランキングユニット330を含むビームブランキング装置300を特徴とする。ビームレットB1が第1のブランキングユニット310によって偏向される第1の偏向方向は、分割線DLから離れる方向を向いており、同じことがビームレットB2の第2の偏向方向およびビームレットB3の第3の偏向方向についても当てはまる。
図8は、偏向方向が分割線から離れる方向を向くことの意味を示す。
図8は、平面アレイの平面への投影図であり、分割線DLから離れるようにビームレットを偏向させる5つのブランキングユニットを示す。これら5つのブランキングユニットのうち、ブランキング電極352および開孔354を有するブランキングユニット350が例示的に示されている。ブランキングユニット350は、開孔354を通過するビームレットの偏向方向D350が分割線DLに垂直な方向のベクトル成分を有し、したがって分割線DLから離れる方向を向くように配置および構成されている。分割線DLが高さ(z)を形成し、
図8の投影図において見える座標が半径方向(r)および方位角(φ)の座標である円柱座標を使用する場合、分割面に垂直な方向のベクトル成分は、半径方向成分である。右上に示されるブランキングユニットは、ビームレットが分割線DLから真っ直ぐ離れる方向を向くようにビームレットを偏向させており、すなわちビームレットは、円柱座標において方位角ベクトル成分を有さない。右下の×印で消されたブランキングユニットは、分割線DLから離れる方向ではなく、分割線DLに向かう偏向方向を示す。
【0032】
図9は、分割線DLの周りに円形に配置され、偏向方向が分割線DLから真っ直ぐ離れる方向を向くように構成された5つのビームブランキングユニットを含むビームブランキング装置の実施形態を示す。5つのブランキングユニットは、ブランキング電極362および開孔364を有するブランキングユニット360を含む。ブランキング電極362は、図示されていない共通電極とともに、開孔364内に電界を生成し、開孔364を通過するビームレットが分割線DLから真っ直ぐ離れる方向を向く偏向方向に偏向されるようにする。ビームブランキング装置は、分割線DLの周りに同心円状に配置することができ、やはり分割線DLから真っ直ぐ離れる方向に偏向させるさらなるブランキングユニット(図示せず)を含むことができる。
【0033】
平面アレイの形状寸法、すなわちブランキングユニットの位置および配向を含むブランキングユニットの配置に応じて、分割線から真っ直ぐ離れるビームレットの偏向は、分割面から真っ直ぐ離れる偏向よりもさらにブランクまでの最大距離を最小化することができる。その場合、偏向角を小さくすることができ、前述の利点がもたらされる。
【0034】
図10および
図11は、本明細書に記載される実施形態において使用することができるブランキングユニット500を示し、ブランキングユニット500は、ウエハベースのブランキングユニットである。ウエハベースのブランキングユニットでは、構成要素は、少なくとも1つのウエハを含む層スタックから形成することができ、または、例えば堆積技法によってウエハ上に形成することができる。
図10および
図11において、ブランキングユニット500は、ウエハ510を含む。ブランキングユニットは、中心C522を有するブランキング電極522と、中心C524を有する開孔524とを含み、中心C524は、ブランキングユニット500の光軸を形成する。
図10は、平面アレイの平面に垂直であり、中心C524および中心C522を通る偏向面におけるブランキングユニット500の断面を示す。
図11は、
図10に示す平面CSに沿った断面図であり、矢印で示すように上方から見た図である。偏向方向D500と、ブランキング電極522の中心C522から開孔524の中心C524までの線L522とは、偏向面内にある。偏向面は、ブランキングユニット500の対称面である。ブランキング電極522は、幅w522を有し、ブランキング電極522の中心C522は、幅w522の半分の位置で偏向面内にある。偏向方向D500は、ビームレットBを入射方向Iの左に偏向させるように
図10に示されているが、ビームレットBは、ブランキング電極522と共通電極520との間の電圧差が反対の符号を有する場合は、入射方向Iの右に偏向させることができる。ウエハ510および共通電極520は、開孔524を画定する。
【0035】
共通電極520は、ブランキング電極522を、上方から、すなわちビームレットBの入射方向Iから見て遮蔽する。共通電極は、ブランキング電極を上方から遮蔽するための第1の水平遮蔽バリア521を含み、開孔524は、第1の水平遮蔽バリア521内に形成されている。共通電極520は、ブランキング電極の高さh522全体に沿ってブランキング電極522を取り囲み、ブランキング電極522を他のブランキングユニットのブランキング電極から遮蔽する。
図10には示されていないが、共通電極520は、ブランキング電極522よりもさらに下方に、すなわち、入射方向Iにさらに延在して、他のブランキング電極に対する遮蔽性を向上させ、クロストークを低減することができる。このため、共通電極520の高さh520は、共通電極520が描かれるよりも大きく示されている。共通電極520は、底部から、すなわち、入射方向Iと反対の方向から見て、ブランキング電極522を遮蔽することもできる。共通電極520による下方からの遮蔽は、共通電極520の上方からの遮蔽と同様であってもよい。共通電極520は、ブランキング電極522を下方から遮蔽するために、開孔524のサイズを有する、光軸に沿って開孔524と位置合わせされた孔を有する第2の水平遮蔽バリアを形成することができる。クロストークは、偏向方向において、ここでは偏向方向D500または平面アレイの平面へのその投影方向(すなわち、
図11の左)において最も顕著であることが分かった。したがって、偏向方向の遮蔽は、偏向方向の平面アレイの平面への投影の方向に配置されたブランキングユニットがグループとして、例えば列としてブランキングされるように構成されていなければ、クロストークを低減するために最も重要であるが、そのように構成されている場合は、偏向方向の遮蔽は重要ではなく、以下でより詳細に説明するように省略することさえ可能である。
【0036】
共通電極520は、ブランキング電極522が配置されるキャビティ550を形成する。キャビティ550は、ノッチ552を呈する。ここでは
図11において破線の円として示されるビームレットBの入射方向Iにおける開孔524の形状の連続部分を考慮して、ノッチ552は、開孔524のその形状を部分的に取り囲んでいる。ブランキング電極522は、ここでは環帯の扇形の形態で湾曲しており、開孔524のその形状を部分的に取り囲んでいる。ビームレットBを偏向させる電界は、ノッチ552と、ノッチ552に最も近いブランキング電極522の内面との間に形成される。ノッチ552は、ブランキング電極の内面の反対側の共通電極の内面が直線である状況と比較して、ビームレットBの偏向を増加させ、他のビームレットへのクロストークを減少させることができる。また、ブランキング電極の湾曲により、ブランキング電極の内面が直線である状況と比較して、ビームレットBの偏向を増加させ、他のビームレットへのクロストークを減少させることができる程度がさらに大きくなる。
【0037】
ブランキングユニット500は、絶縁層530によってウエハ510および共通電極520から絶縁された導電性経路540を含む。導電性経路540は、ブランキング電極522に電気的に接続し、電位をブランキング電極に印加することができる。導電性経路540は、電圧源に接続する制御回路の一部であってもよく、またはそれに接続されてもよく、ブランキング電極522を接地などの共通電極と同じ電位にすることによってブランキング電極522をオフに切り替えることができ、ブランキング電極を共通電極の電位とは異なる特定の動作電位にすることによってブランキング電極522をオンに切り替えることができる。例えば、ビームレットBが電子ビームである場合、共通電極を接地電位にし、ブランキング電極522を負の動作電位にして、
図10に示す偏向方向D500にビームレットBを偏向させる電圧差を確立することができる。導電性経路540および絶縁層530は、
図10に示すブランキングユニット500の他の構成要素と同様に、ウエハ技術によって製造することができる。本明細書に記載される実施形態によると、ビームレットをブランキングするためにより小さい偏向角が必要な場合、共通電極の高さおよびブランキング電極の高さを減少させることができる。この減少により、ブランキング電極を取り囲むキャビティと開孔のアスペクト比を減少させることができる。これは、ウエハ技術による製造、特に、
図10に示されるような構造を生成するためのボッシュエッチングプロセスなどのエッチングプロセスをより容易にする。ウエハベースのビームブランキング装置、すなわち、ウエハ技術によって製造されたブランキングユニット500などのブランキングユニットを含むビームブランキング装置は、ウエハ上にすべてのブランキングユニットに共通することができる制御回路を含むこともでき、またはウエハのスタック上に制御回路を含むことができる。ウエハベースのビームブランキング装置は、非常に小型にすることができる。例えば、共通電極の高さh520は、700μm以下であってもよく、第1の水平遮蔽バリア521の高さh521は、25μm以下であってもよく、開孔524の幅(ここでは開孔524の直径)は、100μm以下であってもよく、ブランキング電極522の幅は、25μm以下であってもよく、ブランキング電極の高さh522は、250μm以下であってもよい。ブランキング電極の幅および/または高さをより小さくすると、ブランキング電極の静電容量が減少し、これにより、スイッチング速度が速くなる可能性がある。本明細書に記載されるブランキング電極のいずれも、100pF未満、またはさらに25pF未満の静電容量を有することができる。ブランキング電極のいずれも、スイッチング時間が約100ns以下、またはさらに10ns以下となるように構成することができる。
【0038】
図12は、平面アレイ405に配列されたブランキングユニットを含むビームブランキング装置400を示す。2つの列C1およびC2ならびに4つの行R1、R2、R3およびR4に配列された8つのブランキングユニットが示されているが、ビームブランキング装置400は、より多くのブランキングユニットと、ブランキングユニットが配列されるより多くの行および列とを含むことができる。各ブランキングユニットは、ブランキング電極452、462、472および482ならびに開孔454、464、474および484などの、ブランキング電極および開孔を有する。開孔幅wAは、開孔454、464、474および484について同じである。ブランキング装置400は、共通電極408を有する。分割面Dは、ビームブランキング装置400の対称面であり、平面アレイおよびブランキングユニットを2つの大きさの等しい半分に分割し、すべてのブランキングユニットの偏向方向は、開孔の中心から始まる矢印によって示されるように、分割面から真っ直ぐ離れる方向を向いている。
【0039】
垂直ピッチまたは行間ピッチpRは、1つの列内の開孔の中心間で測定して、250μm以下であってもよい。水平ピッチまたは列間ピッチpCは、1つの行内の開孔の中心間で測定して、250μm以下であってもよい。1つの列内の2つのブランキングユニット間の共通電極408の部分は、ブランキングユニットの行間の遮蔽を行うため、行バリアRBと呼ばれ、1つの行内の2つのブランキングユニット間の共通電極408の部分は、ブランキングユニットの列間の遮蔽を行うため、列バリアRCと呼ばれる。列バリアCBの厚さtCBは、50μm以下であってもよい。行バリアRBの厚さtRBは、75~125μmであってもよい。分割線Dによって分離された1つの列内の2つの隣接するブランキングユニット間には、遮蔽は設けられていない。これは、偏向方向が、分割面Dおよび平面アレイ405の平面に垂直な、反対方向を向くベクトル成分を有するような隣接するブランキングユニット間のクロストークがほとんどないためである。一対のブランキング電極452および472は、共通電極408の1つの拡大されたキャビティに配置され、同じことが一対のブランキング電極462および482にも当てはまる。ブランキングユニットを個別に操作せず、列全体または半列を一緒にオンまたはオフに切り替える場合は、行バリアRBを省略することもできる。ブランキングユニットをオンに切り替えると、列内に著しいクロストークが存在する可能性があるが、これらのブランキングユニットのすべてのビームレットがブランキングされるため、これは問題ではない。個別に操作可能なブランキングユニットは、試料を分析するためのより高い柔軟性を提供する。列または半列内で一緒に操作することしかできないブランキングユニットは、柔軟性は低いが、クロストークの問題を低減することができ、回路を簡素化することができる。例えば、制御回路は、列全体または半列を一緒に切り替えるだけでよいため、制御回路を簡素化することができる。あるいは、1つの列または半列内のブランキングユニットへの導電性経路をウエハ上で接続して、導電性経路が常に同電位にあり、一緒にしか切り替えられないようにすることもできる。
【0040】
本明細書に記載される実施形態によるビームブランキング装置は、以下の構成要素のうちの少なくとも1つを含むことができ、または以下の特性のうちの少なくとも1つを有することができる。ビームブランキング装置は、電圧源を含むか、または電圧源に接続されてもよい。ビームブランキング装置は、駆動回路または駆動電子機器とも呼ばれる制御回路を含むことができる。制御回路は、第1のブランキング電極、第2のブランキング電極、および第3のブランキング電極に接続されてもよい。制御回路は、ビームブランキング装置のk番目のブランキングユニットの任意のk番目のブランキング電極に接続されてもよく、kは4~Nの範囲にある。制御回路は、電圧源に接続されてもよく、または接続可能であってもよい。電圧源は、動作電位を提供するように構成されてもよい。制御回路は、第1のブランキング電極、第2のブランキング電極、および第3のブランキング電極のそれぞれを選択的に異なる電位にするように構成されてもよい。異なる電位は、動作電位および基準電位を含むか、またはそれらから構成されている。異なる電位は、2*基準電位-動作電位として表される電位を含んでもよい。ビームブランキング装置は、共通電極が基準電位に置かれるように構成されてもよい。基準電位は、グランドであってもよい。動作電位は、基準電位と比較して、10~400ボルトまたは-10~-400ボルトの範囲、例えば、100~200ボルトまたは-100~-200ボルトの範囲にあってもよい。
【0041】
ブランキング電極が制御回路によって動作電位に選択的に置かれるとき、ブランキング電極の状態は、「オン」と呼ばれ、ブランキング電極が制御回路によって基準電位に選択的に置かれるとき、ブランキング電極の状態は、「オフ」と呼ばれる。制御回路は、第1のブランキング電極を切り替えるように、すなわち、第1のブランキング電極の状態をオンからオフに、およびその逆に変化させるように構成されてもよい。制御回路は、第2のブランキング電極を切り替えるように構成されてもよい。制御回路は、第3のブランキング電極を切り替えるように構成されてもよい。制御回路は、4~Nの一部またはすべてのkについて、k番目のブランキング電極を切り替えるように構成されてもよい。制御回路は、ビームブランキング装置のブランキングユニットの一部またはすべてを独立して、例えば、第1のブランキング電極を第2のブランキング電極から独立して、ならびに第1のブランキング電極および第2のブランキング電極の両方を第3のブランキング電極から独立して切り替えるように構成されてもよい。制御回路は、ビームブランキング装置のブランキングユニットのすべてではないが一部を一緒に切り替えるように構成されてもよい。制御回路は、グループ内のブランキングユニットを一緒に切り替えるが、ブランキングユニットのグループのいずれかを他のグループから独立して切り替えるように構成されてもよい。このようなグループは、分割面の一方の側のビームブランキングユニットの列またはブランキングユニットの半分の列であってもよい。このようなグループは、同じ偏向方向、すなわち平行な偏向方向を有するブランキングユニットから、または偏向方向が同じ偏向面内にあるブランキングユニットから形成することができる。
【0042】
第1、第2、第3および任意のk番目のブランキングユニット(kは4~Nの範囲にある)の少なくとも1つ、一部またはすべてを含む、ビームブランキング装置のブランキングユニットの少なくとも1つ、一部またはすべては、以下の構成要素の少なくとも1つを含むか、または以下の特性の少なくとも1つを有することができ、簡単にするために1つのブランキングユニットに関して以下に説明する。ブランキングユニットのブランキング電極は、環帯の扇形部などの湾曲したブランキング電極であってもよい。湾曲したブランキング電極は、曲率の高い表面を有し、ここが湾曲したブランキング電極が面する場所である。ブランキング電極は、分割面に面していてもよく、分割面から離れる方向に面していてもよい。ブランキング電極は、共通電極のパートナーノッチ(partnering notch)に面してもよい。ブランキング電極およびパートナーノッチはそれぞれ、光軸の方向に開孔の連続部分を部分的に取り囲むことができる。共通電極は、ブランキングユニットの開孔を画定することができる。
【0043】
ビームブランキング装置は、ウエハベースのビームブランキング装置であってもよい。ビームブランキング装置は、シリコンウエハなどのウエハを含むことができる。ウエハは、第1の開孔、第2の開孔、および第3の開孔を画定することができる。ウエハは、ビームブランキング装置のすべてのブランキングユニットの開孔を画定することができる。共通電極、第1のブランキング電極、第2のブランキング電極、第3のブランキング電極、および任意のk番目のブランキング電極のうちの少なくとも1つ、一部、またはすべてをウエハ上に堆積させることができる。共通電極、第1のブランキング電極、第2のブランキング電極、第3のブランキング電極、および任意のk番目のブランキング電極のうちの少なくとも1つ、一部、またはすべての材料は、金、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、チタン、タングステン、白金、および銀などの金属であってもよい。第1のブランキングユニットは、第1のブランキング電極に接続された第1の導電性経路を有してもよい。第1の導電性経路は、第1のブランキング電極を切り替える制御回路の一部であってもよい。第1の導電経路は、印刷層であってもよい。第1の導電経路は、少なくとも1つの絶縁層によって共通電極から絶縁されていてもよい。第1の導電性経路および少なくとも1つの絶縁層は、プリント基板(PCB)技法によってウエハ上に形成することができる。第1のブランキング電極は、共通電極の第1のキャビティに配置されてもよい。第1のブランキング電極は、第1の光軸の方向において第1のブランキング電極を第1の水平遮蔽バリアから分離する絶縁層上に形成されていてもよい。第2のブランキングユニット、第3のブランキングユニット、および任意のk番目のブランキングユニットについても同様である。ここで、kは4~Nの範囲にあってもよい。
【0044】
それぞれの開孔の中心間で測定される隣接するブランキングユニット間のピッチは、100μm~1000μmの範囲、例えば、100μm~300μmの範囲にあってもよい。ピッチは、行間のピッチおよび/または列間のピッチであってもよい。共通電極の一部である遮蔽バリアの厚さ(幅)は、10μm~300μmの範囲、例えば、20μm~150μmの範囲にあってもよい。遮蔽バリアは、行バリアおよび/または列バリアであってもよい。ブランキング電極の幅は、10μm~100μmの範囲、例えば、20μm~50μmの範囲にあってもよい。ブランキング電極の高さは、100~1000μmの範囲、例えば200~500μmの範囲にあってもよい。共通電極の高さ、特に共通電極が形成する遮蔽バリアの高さは、200μm~3000μmの範囲、例えば400~1000μmの範囲にあってもよい。
【0045】
さらなる実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置が提供される。ビームブランキング装置は、第1の湾曲ブランキング電極を含む第1のブランキングユニットと、第2の湾曲ブランキング電極を含む第2のブランキングユニットと、第3の湾曲ブランキング電極を含む第3のブランキングユニットと、第1の湾曲ブランキング電極用の第1の対向電極、第2の湾曲ブランキング電極用の第2の対向電極、および第3の湾曲ブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極と、を含む。第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットは、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定する。平面アレイと交差する分割面、例えば平面アレイの平面に対して垂直な分割面は、第1のブランキングユニットを第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットから分離し、第1の湾曲ブランキング電極、第2の湾曲ブランキング電極、および第3の湾曲ブランキング電極は、分割面から離れる方向を向くかまたは分割面に向かう方向を向く。代替的にまたは追加的に、第1の湾曲ブランキング電極、第2の湾曲ブランキング電極、および第3の湾曲ブランキング電極面は、平面アレイの平面と交差する分割線から離れる方向を向いてもよく、または分割線に向かう方向を向いてもよい。
【0046】
さらなる実施形態によると、ビームブランキング装置は、共通電極を共有し、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定するブランキングユニットを含んでもよい。ブランキングユニットのそれぞれは、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットを分割面から離れるように偏向させるように構成され、分割面は、平面アレイと交差し、例えば、平面アレイの平面に垂直であり、ブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離する。ブランキングユニットのそれぞれは、ビームレットを分割面から真っ直ぐ離れる方向に偏向させるように構成されてもよい。代替的または追加的に、ブランキングユニットのそれぞれは、平面アレイの平面と交差する分割線から離れるようにビームレットを偏向させるように構成されてもよい。ブランキングユニットのそれぞれは、開孔を含むことができ、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットを分割面から離れるように偏向させるために、開孔においてブランキング電極と共通電極との間に電界を生成するように配置されたブランキング電極を含むことができる。ブランキングユニットのそれぞれは、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットを偏向方向に偏向させるように構成されてもよく、ブランキングユニットのそれぞれについて、偏向方向は、平面アレイの平面に垂直であり、分割面と交差する偏向面内にある。ここで、a)ブランキングユニットのそれぞれの偏向面が分割面に垂直であること、b)ブランキングユニットの偏向面が互いに平行であること、c)第1のグループのブランキングユニットの偏向面のそれぞれが、分割面でミラーリングされた、第2のグループのブランキングユニットの偏向面の鏡像に平行であること、のうちの少なくとも1つが成り立つことができる。各ブランキングユニットについて、ブランキング電極の中心は、開孔の中心よりも分割面に近い。あるいは、各ブランキングユニットについて、ブランキング電極の中心は、開孔の中心よりも分割面から離れている。ブランキングユニットのそれぞれについて、ブランキング電極は、開孔および分割面と交差する対称面を有していてもよい。ブランキング電極は、対称面において開孔と分割面との間に配置されてもよい。あるいは、開孔は、対称面においてブランキング電極と分割面との間に配置されてもよい。ブランキングユニットのそれぞれについて、ブランキング電極は、ブランキングユニットの光軸に沿って開孔の連続部分を部分的に取り囲む湾曲したブランキング電極であってもよい。平面アレイは、m行およびn列を有してもよく、nおよびmは1よりも大きく、分割面は、m行に平行な平面アレイと交差し、m行のうちの2つの間にあり、m行のうちのx行は、分割面の一方の側にあり、x行のブランキングユニットは、第1のグループに属し、m行のうちのm-x行は、分割面の他方の側にあり、m-x行のブランキングユニットは、第2のグループに属する。ここで、xは、floor(m/2)であってもよい。平面アレイに配列されたブランキングユニットは、本明細書に記載されるように、第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットを含むことができる。
【0047】
さらなる実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置を動作させる方法が提供される。ビームブランキング装置は、共通電極を共有し、平面アレイに配列されて、平面アレイの平面を画定するブランキングユニットを含む。ブランキングユニットは、本明細書に記載されるような第1のブランキングユニット、第2のブランキングユニット、および第3のブランキングユニットを含んでもよく、またはそれらから構成されてもよい。ブランキングユニットのそれぞれは、本明細書に記載されるようなブランキングユニットであってもよい。ブランキングユニット、共通電極、平面アレイ、およびビームブランキング装置、ならびにマルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、本明細書に記載されるようなものであってもよく、すなわち、配置、構造および形状寸法/寸法を含む、記載される特性の一部またはすべてを有してもよい。
【0048】
さらなる実施形態によると、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置が提供される。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、例えば、ウエハなどの試料の電子ビーム検査のためのマルチビームレット電子ビーム装置であってもよい。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、本明細書に記載されるようなビームブランキング装置を含む。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子の複数のビームレットを生成するための1つまたは複数の荷電粒子ビーム源、例えば1つまたは複数の電子ビーム源を含む。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、1つまたは複数の荷電粒子ビーム源とビームブランキング装置との間にビームレット形成ステージを含むことができる。ビームレット形成ステージは、ビームレットを形成して入射方向に沿ってビームブランキング装置に到達させるための荷電粒子ビーム光学系を含むことができる。入射方向は、ビームブランキング装置の光軸またはビームブランキング装置のブランキングユニットの光軸と整列させることができる。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、ビームブランキング装置の下流にビームダンプを含み、ビームダンプは開孔を含む。ビームダンプは、ビームブランキング装置によって偏向されているビームレットをブランキングし、ビームブランキング装置によって偏向されていないビームレットをビームダンプの開孔を通過させるように配置および構成される。マルチビームレット荷電粒子ビーム装置は、ビームレットを試料に集束させるための対物レンズを含むことができ、試料を支持するための試料支持体を含むことができる。
【0049】
本方法は、ブランキングユニットのそれぞれを用いて、マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレットを分割面から離れるように、例えば分割面から真っ直ぐ離れるように偏向させるステップを含む。分割面は、平面アレイと交差し、ブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離する。
図13は、610から始まり、ビームブランキング装置のブランキングユニットのそれぞれを用いた分割面から離れるビームレットの偏向620を含むこのような方法600を示す。第1のグループは、本明細書に記載される第1のブランキングユニットを含むことができ、第2のグループは、本明細書に記載される第2のブランキングユニットおよび第3のブランキングユニットを含むことができる。分割面は、平面アレイの平面に垂直に平面アレイと交差してもよい。ブランキングユニットのそれぞれの偏向は、他のブランキングユニットの偏向と同時であってもよく、または異なる時点で行われてもよい。本方法は、偏向されているビームレットを、例えば本明細書に記載されるビームダンプによってブランキングするステップを含むことができる。ブランキングユニットのそれぞれについて、ビームレットを偏向させるステップは、ブランキングユニットをオンに切り替えるステップを含んでもよい。
【0050】
本方法は、共通電極を基準電位、例えば接地電位にするステップを含むことができる。本方法は、例えば電圧源によって1つだけの動作電位を提供するステップを含んでもよく、ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップは、ブランキングユニットを動作電位にするステップを含んでもよい。あるいは、本方法は、例えば1つの電圧源または2つの電圧源によって、第1の動作電位および第2の動作電位を提供するステップを含んでもよい。第1の動作電位は、基準電位の2倍から第2の動作電位を引いたものに等しいという関係が成り立ってもよい。ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップは、第1のグループのブランキングユニットを第1の動作電位に置くステップと、第2のグループのブランキングユニットを第2の動作電位に置くステップとを含むことができる。ここで、ブランキングユニットのブランキング電極のそれぞれは、同じ方向を向いていてもよい。ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向させるステップは、ビームレットを偏向角だけ偏向させるステップを含むことができ、偏向角は10mradよりも大きい。ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向させるステップは、他のビームレットを0.0001mrad未満だけ偏向させるステップを含むことができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置(100、200、300、400)であって、
第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含む第1のブランキングユニット(110、210、310、500)と、
第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含む第2のブランキングユニット(120、220、320)と、
第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含む第3のブランキングユニット(130、230、330)と、
前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極(108、208、408、520)と、
を備え、
前記第1のブランキングユニット、前記第2のブランキングユニット、および前記第3のブランキングユニットが、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定し、
前記第1のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第1のビームレット(B1、B)を第1の偏向方向(D110、D500)に偏向させるために、前記第1の開孔において前記第1のブランキング電極と前記共通電極との間に第1の電界を生成するように配置され、前記第2のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第2のビームレット(B2)を第2の偏向方向(D120)に偏向させるために、前記第2の開孔において前記第2のブランキング電極と前記共通電極との間に第2の電界を生成するように配置され、前記第3のブランキング電極が、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置の第3のビームレット(B3)を第3の偏向方向(D130)に偏向させるために、前記第3の開孔において前記第3のブランキング電極と前記共通電極との間に第3の電界を生成するように配置され、
前記平面アレイと交差する分割面(D)が、前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3のブランキングユニットから分離し、前記第1の偏向方向、前記第2の偏向方向、および前記第3の偏向方向が、前記分割面から離れる方向を向いており、
前記共通電極が前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極を上方から遮蔽するか、下方から遮蔽するか、または上方および下方の両方から遮蔽する、
ビームブランキング装置(100、200、300、400)。
【請求項2】
前記分割面が、前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差する、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項3】
前記第2の偏向方向および前記第3の偏向方向が実質的に同じであり、前記第1の偏向方向が、前記分割面でミラーリングされた、前記第2の偏向方向の鏡像である、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項4】
前記第1の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第1の偏向面内にあり、前記第2の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第2の偏向面内にあり、前記第3の偏向方向が、前記平面アレイの前記平面に垂直であり、前記分割面と交差する第3の偏向面内にあり、前記第1の偏向面、前記第2の偏向面、および前記第3の偏向面が、前記分割面に実質的に垂直である、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項5】
前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極に接続された制御回路を備え、前記制御回路が、前記第1の電界、前記第2の電界、および前記第3の電界をそれぞれ生成するために、前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極を同じ動作電位にするように構成されている、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項6】
ウエハ(510)を備え、前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、前記第3のブランキング電極、および前記共通電極が前記ウエハ上に形成され、前記ウエハが、前記第1のビームレットが前記第1の開孔を通過することを可能にするための第1の孔と、前記第2のビームレットが前記第2の開孔を通過することを可能にするための第2の孔と、前記第3のビームレットが前記第3の開孔を通過することを可能にするための第3の孔と、を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項7】
前記共通電極が、前記第1のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第1の遮蔽バリア(521)を形成し、前記第2のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第2の遮蔽バリアを形成し、前記第3のブランキング電極と前記ウエハとの間で前記平面アレイの前記平面に平行に延在する第3の遮蔽バリアを形成する、請求項6に記載のビームブランキング装置。
【請求項8】
前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極が、前記分割面から離れる方向を向くか、または前記分割面に向かう方向を向く湾曲したブランキング電極である、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項9】
前記ビームブランキング装置がm行n列のブランキングユニットを含み、mおよびnが2以上であり、前記第1のブランキングユニットが第1の行(R2)および第1の列(C1)に配置され、前記第2のブランキングユニットが第2の行(R3)および前記第1の列(C1)に配置され、前記第3のブランキングユニットが前記第2の行(R3)および第2の列(C2)に配置され、前記分割面が各列を2つの半列に分離し、各列内または各半列内のブランキングユニットが、そこを通過するビームレットを一緒に偏向するように構成され、各行内のブランキングユニットが、そこを通過する前記ビームレットを個々に偏向するように構成されている、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項10】
前記第1のブランキング電極の高さ(h522)、前記第2のブランキング電極の高さ、および前記第3のブランキング電極の高さのうちの少なくとも1つが、100μm~1000μmの範囲にあり、前記共通電極の高さ(h520)が、200μm~3000μmの範囲にある、請求項1に記載のビームブランキング装置。
【請求項11】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置用のビームブランキング装置(100、200、300、400)であって、
第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含む第1のブランキングユニット(110、210、310、500)と、
第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含む第2のブランキングユニット(120、220、320)と、
第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含む第3のブランキングユニット(130、230、330)と、
前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成する共通電極(108、208、408、520)と、
を備え、
前記第1のブランキングユニット、前記第2のブランキングユニット、および前記第3のブランキングユニットが、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定し、
前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差する分割面(D)が、前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3のブランキングユニットから分離し、前記第1のブランキング電極の中心(C522)から前記第1の開孔の中心(C524)を通る第1の線、前記第2のブランキング電極の中心から前記第2の開孔の中心を通る第2の線、および前記第3のブランキング電極の中心から前記第3の開孔の中心を通る第3の線が、前記分割面から離れる方向を向いているか、または前記分割面に向かう方向を向いており、
前記共通電極が、前記第1のブランキング電極、前記第2のブランキング電極、および前記第3のブランキング電極を上方から遮蔽するか、下方から遮蔽するか、または上方および下方の両方から遮蔽する、
ビームブランキング装置(100、200、300、400)。
【請求項12】
前記第1の線、前記第2の線、および前記第3の線が、前記分割面に対して実質的に垂直である、請求項11に記載のビームブランキング装置。
【請求項13】
前記第1のブランキング電極の前記中心が前記第1の開孔の前記中心よりも前記分割面に近く、前記第2のブランキング電極の前記中心が前記第2の開孔の前記中心よりも前記分割面に近く、前記第3のブランキング電極の前記中心が前記第3の開孔の前記中心よりも前記分割面に近い、請求項11に記載のビームブランキング装置。
【請求項14】
前記共通電極が、前記第1のブランキング電極および前記第2のブランキング電極が配置されるキャビティ(550)を形成し、前記第3のブランキング電極が配置されるキャビティを形成し、前記第2のブランキング電極と前記第3のブランキング電極との間に遮蔽バリア(CB)を形成する、請求項11に記載のビームブランキング装置。
【請求項15】
前記第1の開孔の前記中心と前記第2の開孔の前記中心との間のピッチ(pR)が100μm~500μmの範囲にあり、前記第2の開孔の前記中心と前記第3の開孔の前記中心との間のピッチ(pC)が100μm~500μmの範囲にある、請求項11に記載のビームブランキング装置。
【請求項16】
前記ビームブランキング装置がウエハベースのビームブランキング装置である、請求項11~15のいずれか1項に記載のビームブランキング装置。
【請求項17】
マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームブランキング装置(100、200、300、400)を動作させる方法(600)であって、前記ビームブランキング装置が、共通電極(108、208、408、520)を共有し、平面アレイ(105、205、305、405)に配列されて、前記平面アレイの平面(A)を画定するブランキングユニット(110、120、130;210、220、230;310、320、330;500)を備え、
前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて、前記マルチビームレット荷電粒子ビーム装置のビームレット(B1、B2、B3、B)を、前記平面アレイの前記平面に垂直に前記平面アレイと交差し、前記ブランキングユニットを第1のグループと第2のグループとに分離する分割面(D)から離れるように偏向させるステップ(620)、
を含み、
前記ブランキングユニットのそれぞれについて、前記共通電極が、前記ビームレットの入射方向から見て上方から、または前記ビームレットの入射方向と反対の方向から見て下方から、あるいは上方および下方の両方から、それぞれの前記ブランキングユニットのブランキング電極を遮蔽する、
方法(600)。
【請求項18】
前記共通電極を基準電位にするステップを含み、前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップが、前記ブランキングユニットのそれぞれを前記基準電位とは異なる同じ動作電位にするステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記共通電極を基準電位にするステップを含み、前記ブランキングユニットのそれぞれを用いて偏向するステップが、前記第1のグループの前記ブランキングユニットを第1の動作電位にするステップと、前記第2のグループの前記ブランキングユニットを第2の動作電位にするステップ、とを含み、前記第1の動作電位および前記第2の動作電位が前記基準電位とは異なり、かつ互いに異なる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ブランキングユニットが、前記平面アレイの前記平面を画定する第1のブランキングユニット(110、210、310、500)、第2のブランキングユニット(120、220、320)、および第3のブランキングユニット(130、230、330)を含み、前記第1のブランキングユニットが第1のブランキング電極(452、522)および第1の開孔(454、524)を含み、前記第2のブランキングユニットが第2のブランキング電極(472)および第2の開孔(474)を含み、前記第3のブランキングユニットが第3のブランキング電極(482)および第3の開孔(484)を含み、前記共通電極が前記第1のブランキング電極用の第1の対向電極、前記第2のブランキング電極用の第2の対向電極、および前記第3のブランキング電極用の第3の対向電極を形成し、前記分割面が前記第1のブランキングユニットを前記第2のブランキングユニットおよび前記第3ブランキングユニットから分離し、前記第1のブランキング電極の中心(C522)から前記第1の開孔の中心(C524)を通る第1の線、前記第2のブランキング電極の中心から前記第2の開孔の中心を通る第2の線、および前記第3のブランキング電極の中心から前記第3の開孔の中心を通る第3の線が、前記分割面から離れる方向を向いているか、または前記分割面に向かう方向を向いているかのいずれかである、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】