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特表2022-5513482次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の特徴を判定するためのシステムおよび方法
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  • 特表-2次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の特徴を判定するためのシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-08
(54)【発明の名称】2次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の特徴を判定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20221201BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01N3/20
G01N3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537743
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020065449
(87)【国際公開番号】W WO2021127067
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/951,674
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085,407
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケダール・キレイン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・デランド
(72)【発明者】
【氏名】ゾンヤン・ジャン
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AA07
2G061AA17
2G061AB01
2G061BA07
2G061CA14
2G061CB01
2G061DA01
2G061EA04
(57)【要約】
二軸曲げの誘発を利用して、炭素繊維強化ラミネート構造体などの二次元織物複合材料において等二軸圧縮強度の特徴を判定するための方法およびシステムが開示される。この二軸曲げによるひずみ測定値は、この複合材料の等二軸圧縮強度を判定するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元織物複合材料における等二軸圧縮強度を判定するための方法であって、
第1の繊維方向に配設された第1の繊維セットおよび第2の繊維方向に配設された第2の繊維セットを少なくとも備える二次元織物複合材料試験片を用意するステップであって、前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、ある角度で交差される、ステップと、
前記二次元織物複合材料試験片における二軸曲げを誘発するために前記二次元織物複合材料試験片に対して面外一軸荷重を印加するステップと、
前記二軸曲げを生じるように誘発された前記二次元織物複合材料試験片の前記第1の繊維方向および前記第2の繊維方向に沿ったひずみ測定値を取得するステップと、
取得した前記ひずみ測定値から前記二次元織物複合材料試験片の前記等二軸圧縮強度を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記等二軸圧縮強度は、前記第1の繊維方向および前記第2の繊維方向に沿って取得した前記ひずみ測定値から算出した応力から判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二次元織物複合材料試験片は、前記第1の繊維方向に沿って測定される第1の繊維弾性率と、前記第2の繊維方向に沿って測定される第2の繊維弾性率と、任意には前記第1の繊維方向および前記第2の繊維方向とは異なる方向に沿って測定される少なくとも1つのさらなる弾性率とを有し、前記第1の繊維弾性率および前記第2の繊維弾性率は、前記少なくとも1つのさらなる弾性率をそれぞれ個別に上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、マトリックス内に埋設され、前記マトリックスは、マトリックス弾性率を有し、前記第1の繊維弾性率および第2の繊維弾性率は、それぞれ個別に前記マトリックス弾性率を上回る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の繊維弾性率および第2の繊維弾性率のそれぞれが個別に、前記マトリックス弾性率よりも少なくとも5倍高い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二次元織物複合材料試験片は、ある引張強度およびある一軸圧縮強度を有し、前記引張強度は、前記一軸圧縮強度よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、90°の角度で交差される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、平織りパターン、綾織りパターン、繻子織りパターン、バスケット織りパターン、または畝織りパターンで交差される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記二次元織物複合材料試験片は、複数層のラミネート構造体からなり、各層内の前記第1の繊維方向は同一であり、各層内の前記第2の繊維方向は同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ラミネート構造体は、8~12層からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ラミネート構造体は、2mm~3mmの厚さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記マトリックスは、熱可塑性材料または熱硬化性材料からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記マトリックスは、エポキシまたはビニルエステルからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記面外一軸荷重は、単調である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記面外一軸荷重は、前記二次元織物複合材料試験片の中心にて印加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ひずみ測定値は、前記面外一軸力が印加される面とは対向側の前記二次元織物複合材料試験片の面においてその場(in situ)取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記面外一軸荷重は、前記織物複合材料試験片の上部表面が少なくとも1つの可視クラックを生ずるまで、または前記第1の繊維方向に沿った前記ひずみ測定値および前記第2の繊維方向に沿った前記ひずみ測定値が分岐する時に、印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記織物複合材料試験片の前記等二軸圧縮強度は、前記織物複合材料試験片の前記上部表面が前記少なくとも1つの可視クラックを生じさせる時に、または前記第1の繊維方向に沿った前記ひずみ測定値および前記第2の繊維方向に沿った前記ひずみ測定値が分岐する時に取得された、前記第1の繊維方向および前記第2の繊維方向に沿って取得される前記ひずみ測定値から算出された応力から判定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記二次元織物複合材料試験片は、支持リング上に保持され、前記面外一軸荷重は、前記支持リングに対して同心状に位置する載荷リングにより印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記支持リングは、鋼からなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記支持リングは、前記載荷リングの直径よりも3~5倍大きい直径を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記二次元織物複合材料試験片は、切欠なし円形ディスクまたは切欠なし正方形プレートの形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記二次元織物複合材料試験片は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリマー繊維、およびそれらの組合せから選択された繊維と、エポキシまたはビニルエステルから選択されたマトリックスとを含む、直交異方性繊維強化複合材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
織物複合材料において等二軸圧縮強度を判定するための方法であって、
(i)支持リング上に二次元織物複合材料試験片を配置するステップであって、前記二次元織物複合材料試験片は、複数の層を備え、
上部表面および下部表面であって、前記二次元織物複合材料試験片の前記下部表面は、前記支持リングと接触状態にある、上部表面および下部表面と、
第1の繊維方向に配設された第1の繊維セットおよび第2の繊維方向に配設された第2の繊維セットであって、前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、90°の角度で交差される、第1の繊維セットおよび第2の繊維セットと、
前記第1の繊維方向に沿って測定された第1の繊維弾性率、前記第2の繊維方向に沿って測定された第2の繊維弾性率、および任意には前記第1の繊維方向または前記第2の繊維方向とは異なる方向に沿って測定された少なくとも1つのさらなる弾性率であって、前記第1の繊維弾性率および前記第2の繊維弾性率は、前記少なくとも1つのさらなる弾性率をそれぞれ個別に上回り、前記二次元織物複合材料試験片は、ある引張強度およびある一軸圧縮強度を有し、前記引張強度は、前記一軸圧縮強度よりも高い、第1の繊維弾性率、第2の繊維弾性率、および少なくとも1つのさらなる弾性率と、
前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットが中に埋設されたマトリックスであって、前記マトリックスは、マトリックス弾性率を有し、前記第1の繊維弾性率および前記第2の繊維弾性率は、前記マトリックス弾性率よりもそれぞれ個別に高く、前記二次元織物複合材料試験片の前記下部表面は、前記支持リングと接触状態にある、マトリックスと
を備える、ステップと、
(ii)前記第1の繊維方向に対して平行となる構成で前記下部表面に対して動作連結された第1のひずみ計を用いて第1のひずみを測定し、前記第2の繊維方向に対して平行となる構成で前記下部表面に対して動作連結された第2のひずみ計を用いて第2のひずみを測定するステップと、
(iii)前記織物複合材料試験片の前記上部表面の少なくとも一部分が少なくとも1つの可視クラックを生じるまで、または前記第1のひずみ測定値および前記第2のひずみ測定値が分岐するまで、前記二次元織物複合材料において二軸曲げを誘発するように、単調力下において前記織物複合材料試験片の前記上部表面に対して載荷リングを接触させることによって、前記二次元織物複合材料試験片の前記中心に対して面外一軸荷重を印加するステップであって、前記載荷リングは、前記支持リングの直径未満の直径を有し、前記支持リングに対して同心状に配設される、ステップと、
(iv)前記ステップ(iii)の最中に前記第1のひずみ計および前記第2のひずみ計から前記二次元織物複合材料試験片におけるひずみ測定値を取得するステップと、
(v)前記第1の繊維方向および前記第2の繊維方向に沿って取得された前記ひずみ測定値から算出された応力から前記織物複合材料試験片の等二軸圧縮強度を判定するステップと
を含む、方法。
【請求項25】
前記支持リングは、前記載荷リングの前記直径の3~5倍大きい直径を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記二次元織物複合材料試験片は、切欠なし円形ディスクまたは切欠なし正方形プレートの形状である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、平織りパターン、綾織りパターン、繻子織りパターン、バスケット織りパターン、または畝織りパターンで交差される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記二次元織物複合材料試験片は、複数層のラミネート構造体からなり、各層内の前記第1の繊維方向は同一であり、各層内の前記第2の繊維方向は同一である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ラミネート構造体は、8~12層からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ラミネート構造体は、2mm~3mmの厚さを有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マトリックスは、熱可塑性材料または熱硬化性材料からなる、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記マトリックスは、エポキシまたはビニルエステルからなる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
押し込み保護インサート材料が、前記織物複合材料試験片の前記上部表面と前記載荷リングとの間に配設される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記押し込み保護インサートは、フォーム材もしくはフルオロポリマーまたはそれら両方からなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
織物複合材料において等二軸圧縮強度を判定するためのシステムであって、
上部表面および下部表面を備える二次元織物複合材料試験片の前記下部表面を保持するように構成された支持リングであって、前記二次元織物複合材料試験片はさらに、第1の繊維方向に配設された第1の繊維セットおよび第2の繊維方向に配設された第2の繊維セットを少なくとも備え、前記第1の繊維セットおよび前記第2の繊維セットは、ある角度にて交差される、支持リング、および載荷リングであって、前記支持リングは、前記載荷リングよりも大きい直径を有し、前記載荷リングは、前記支持リングに対して同心状に配設され、前記織物複合材料試験片に二軸曲げを誘発させるために単調力条件下において前記二次元織物複合材料の前記上部表面の中心に接触するように構成される、支持リングおよび載荷リングと、
二軸曲げの前記誘発の最中にひずみ測定値を取得するためのひずみ測定デバイスであって、取得された前記ひずみ測定値は、前記織物複合材料試験片の前記等二軸圧縮強度を判定するために使用され、前記ひずみ測定デバイスは、前記第1の繊維方向に対して平行となる構成で前記下部表面に対して動作連結された第1のひずみ計を用いて第1のひずみを測定し、前記第2の繊維方向に対して平行となる構成で前記下部表面に対して動作連結された第2のひずみ計を用いて第2のひずみを測定する、ひずみ測定デバイスと
を備える、システム。
【請求項36】
前記支持リングの前記直径は、前記載荷リングの前記直径よりも3~5倍大きい、請求項35に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下において、2019年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/951,674号と、2020年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/085,407号とに基づく優先権を主張する。これらの仮特許出願のそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、限定するものではないが炭素繊維強化複合材料等を含む、2次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の特徴を判定するための方法と、この方法のためのシステムとに関する。
【背景技術】
【0003】
薄い複合材料構造物が、例えば航空機翼、風力タービンブレード、自動車用タイヤのベルトおよびプライ、貯蔵/輸送用に使用される圧力容器等の多様な工学用途において使用される。これらの薄いエンジニアリング構造物の動作信頼性および設計効率にとって、応力状態の中でもとりわけ二軸曲げ下におけるそれらの破壊挙動の特徴を判定し理解することは重要である。繊維強化複合材料の二軸強度に関する研究はある程度存在するが、プレートの二軸曲げ破壊を含む研究はあまり一般的ではない。等方性脆性材料に関する複数の試験規格が存在するが、異方性複合材料のためのそのような規格は存在しない。等方性材料の二軸曲げ試験のための一般的な方法は、円形リング上にディスク形状またはプレート形状の試験片を支持することと、その中心または中心付近において面外荷重印加することとを含む。面外荷重は、ボールを介して(ボールオンリング、BOR)、均一な圧力の印加により(プレッシャーオンリング、POR)、またはより小さな円形リングを介して(リングオンリング、ROR)のいずれかによって印加される。他の試験方法は、載荷リングの代わりに、周縁部に沿った3支点上に支持されたディスクの上面に対して印加される点荷重を利用するものである。これは、コンクリート用(ASTM C1550試験)およびさらには歯科セラミック用(ISO6872)の標準試験である。この試験では、誘発される応力場は、荷重点のみにおいて3回対称であり等二軸性である。
【0004】
リングオンリング(ROR)曲げ試験は、実施が簡単であり、セラミックの等二軸引張強度を測定するためのASTM標準試験の主たるものである(ASTM C1499)。RORセットアップにおいて生成される荷重は、二次元におけるビームの4点曲げ試験と類似のものである。換言すれば、試験片の各対角線方向断面が、4点曲げを受けるビームとみなされ得る。したがって、載荷リング内のディスク形状またはプレート形状の試験片の領域は、純曲げを被る。等方性材料の場合には、載荷リング内のこの領域における弾性応力分布は、軸対称となる。この試験手順は、等方性の巨視的挙動を示し、構造的に均質であるセラミックに対して適用されてきた。また、この方法は、ガラス、およびさらに近年ではコンクリートに対してもその適用が広がりつつある。
【0005】
プレート曲げ試験は、主に等方性脆性材料に対して適用されてきたが、異方性複合材料に関するいくつかの研究が確認できる(しかしながら必ずしもROR試験を用いたものではない)。いくつかの初期の研究では、繊維ガラス強化ポリエステル(FRP)およびFRP-ポリウレタンフォーム複合材料の挙動が、舗装材料としての使用可能性についてこれらの材料を評価するために研究された。一軸曲げ試験、引張試験、および二軸曲げ試験が、単調載荷および繰返し載荷の下において実施されていた。これらの二軸曲げ試験は、円形プレート試験片が全周クランプ支持具により中心横荷重を被るものであった。一軸試験の結果は、二軸試験と良好な一致を示すものであった。また、ROR試験セットアップを利用し、破壊メカニズムを研究する、連続炭化ケイ素繊維強化アルミニウム複合材料の二軸曲げが知られている。繊維破断およびマトリックスクラックの両方が、単調載荷下で発生するが、繰返し曲げの下では、繊維破断が、主な破壊メカニズムとなることが判明している。また、クロスプライ炭素繊維樹脂複合材料の応答が、ディスク試験片を用いた二軸曲げ下において解析されており、これは単調載荷と繰返し載荷との下における破壊モード比較に焦点がおかれている。さらに、歯科用樹脂複合材料、繊維強化セメント系複合材料、およびセラミック複合材料に対しても適用が見られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの例があるにもかかわらず、プレート曲げ試験は、異方性繊維強化ポリマーマトリックス複合材料については一般的ではない。推測されるところのその理由は、中心ではなくエッジにて破壊を発生させるエッジ効果の存在である。しかし、これは常にそうであるとは限らない。したがって、二次元織布複合材料の等二軸圧縮強度の特徴を判定するための簡易で、信頼性が高く、費用対効果の高い、繰返し可能な試験が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、例えば炭素繊維強化ラミネートなどの二次元織物複合材料における等二軸圧縮強度を判定するための方法に関する。この二次元織物複合材料は、第1の繊維方向に配設された第1の繊維セットと、第2の繊維方向に配設された第2の繊維セットとを少なくとも備え、第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、例えば相互に対して直角でなど、ある角度にて交差される。この方法は、例えば単調荷重などの面外一軸荷重を二次元織物複合材料試験片に対して印加することにより二次元織物複合材料試験片に二軸曲げを誘発するステップと、例えば二軸曲げを生じるように誘発された二次元織物複合材料試験片の第1の繊維方向および第2の繊維方向に沿って配設された2つ以上のひずみ計などによって、ひずみ測定値を取得するステップと、少なくとも1つの可視クラックが二次元織物複合材料試験片の上部表面に現れる時および/またはひずみ計による測定値がもはや一致せず分岐する時に、第1の繊維方向および第2の繊維方向に沿って取得したひずみ測定値から算出された応力から二次元織物複合材料試験片の等二軸圧縮強度を判定するステップとを含む。他の実施例では、本開示は、二次元織物複合材料の等二軸強度を判定するためのシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の方法の一実施形態のジオメトリセットアップを示す、一般的な手法の分解斜視図である。
図2】本開示の例示の実施形態による二次元織物複合材料において測定されたひずみを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態についての以下の詳細な説明では、当技術において既知の関連する機能または構造に関する説明は、不要な詳述により本発明が分かりにくくなるのを避けるために、本発明のコンセプトの明快な理解を目的として省略される。本明細書において説明されるシステムおよび方法の実施形態は、ある試験片ジオメトリおよび試験セットアップの利用により、一軸荷重の印加による二次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の高信頼度の測定を可能にする。この目的に対して例示される試験方法は、リングオンリング(ROR)曲げ試験である。この試験では、二軸強度は、切欠なしの円形ディスクまたは切欠なしの正方形プレートをその中心にて単調な面外荷重にさらすことによって測定される。これにより、試験片の二軸曲げが誘発され、一軸荷重が二軸応力状態へと変換される。この試験セットアップは高額ではなく、試験片ジオメトリは単純である。また、高額な試験片グリップを必要とせず、標準的な汎用試験機での実施が可能である(すなわち別個の荷重フレーム、ロードセル等を必要としない)。さらに本明細書において説明されるように、本方法を利用した数値応力解析および実験測定が提供される。このシステムおよび方法は、安定性、信頼性、および反復可能性を有し、さらに場合によっては様々な繊維強化複合材料に対して適応可能である。複合材料の等二軸強度の特徴を判定することは、特に複合材料が一般的に圧縮に弱いため、二軸圧縮にさらされた構造物の許容荷重を正確に評価するために必要である。
【0010】
一実施形態では、本開示は、二次元織物複合材料の等二軸圧縮強度を判定するための方法を提示する。一実施例では、この方法は、第1の繊維方向に配設された第1の繊維セットと、第2の繊維方向に配設された第2の繊維セットとを少なくとも備える二次元織物複合材料試験片を用意することを含み、これらの第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、例えば第1の繊維セットが第2の繊維セットに対して直交方向に交差されるなど、ある角度にて相互に交差する。一実施例では、第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、織物複合材料における経糸および緯糸のそれぞれに対応する。第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、平織りパターン、綾織りパターン、繻子織りパターン、バスケット織りパターン、または畝織りパターンで交差され得る。また、第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、編物複合材料を構成するものであることが可能である。
【0011】
図1の非限定的な実施形態において分かるように、二次元織物複合材料試験片100は、上部表面110および下部表面120を備える。この二次元織物複合材料試験片は、ノッチなし円形ディスクまたはノッチなし正方形プレート(図1に示すような)の形状であることが可能であり、図示するように第1の繊維方向に配設された第1の繊維セット130(部分的に図示)を備え、この第1の繊維方向は、側部180の長さにわたりこの側部180に対して平行に延在する方向であり(第1の繊維方向)、さらに二次元織物複合材料試験片は、図示するように第2の繊維方向に配設された第2の繊維セット140を備え、この第2の繊維方向は、側部170の長さにわたりこの側部170に対して平行に延在する方向であり(第2の繊維方向)、この第2の繊維セットは、第1の繊維セット130とある角度にて(図では直交方向で)交差される。図示するように、二次元織物複合材料は、複数の層からなる薄層であることが可能であり、例えばこの複数の層は、8から12個の層、例えば10層であるが、それに限定されず、より多数またはより少数の層が予期される(便宜上の理由により3層が図示される)。ある層内の第1の繊維セット130は、上方および下方の他の層内の第1の繊維セットと整列され、ある層内の第2の繊維セットは、上方および下方の他の層内の第2の繊維セットと整列される。下部表面120は、支持リング150上に支持され、ある実施時において単調荷重となる面外一軸荷重(矢印で図示)が、支持リング150と同心状の載荷リング160により上部表面110の中心に対して印加されて、二次元織物複合材料試験片において二軸曲げを誘発する。支持リング150および載荷リング160は、それぞれが円形であることが可能であり、載荷リング160は、支持リング150に対して同心状に位置し、例えば支持リング150は、載荷リング160の直径を3~5倍上回る直径を有する。さらに、これらの両リングは、例えば鋼を含む金属など、印加される力に対して耐える適切な剛性を有する材料からなる。二次元織物複合試験片は、例えば限定するものではないが2mm~3mmなど、二軸曲げの誘発を可能にするために十分である厚さを有する。一実施例では、第1の繊維セットおよび第2の繊維セットは、マトリックス内に埋設され、このマトリックスは、例えば熱可塑性材料または熱硬化性材料、例えばそれぞれビニルエステルまたはエポキシ樹脂など、1つまたは複数のポリマーを含むことが可能である。限定するものではないが、二次元織物複合材料試験片は、直交異方性繊維強化複合材料からなることが可能であり、この直交異方性繊維強化複合材料は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリマー繊維、およびそれらの組合せから選択された繊維と、エポキシまたはビニルエステルから選択されたマトリックスとを含む。
【0012】
一実施形態では、二次元織物複合材料試験片は、第1の繊維方向に沿って測定されるような第1の繊維弾性率と、第2の繊維方向に沿って測定されるような第2の繊維弾性率とを有する。任意には、第1の繊維方向または第2の繊維方向とは異なる他の方向に沿って測定される少なくとも1つのさらなる弾性率が存在し、第1の繊維弾性率および第2の繊維弾性率は、それぞれ個別にこの少なくとも1つのさらなる弾性率よりも高い。第1の繊維セットおよび第2の繊維セットがマトリックス中に埋設されると、マトリックス自体は、マトリックス弾性率を有し、第1の繊維弾性率および第2の繊維弾性率は、それぞれ個別にこのマトリックス弾性率よりも高い。例えば、第1の繊維弾性率および第2の繊維弾性率はそれぞれ個別に、マトリックス弾性率よりも少なくとも5倍高い。他の実施例では、二次元織物複合材料試験片は、引張強度および一軸圧縮強度を有し、この引張強度は、一軸圧縮強度よりも高い。第1の繊維セットおよび第2の繊維セットならびにマトリックスからなる複合材料に関する弾性率(ヤング率としても知られる)と、この複合材料の引張強度とは、例えば周知の試験規格ASTM D3039/D3039M-14、Standard Test Method for Tensile Properties of Polymer Martrix Composite Materials、ASTM International、West Conshohocken PAの適用によってなど、当技術において従来より知られている手段により判定されるか、または市販の複合材料の製造業者から得られる。圧縮強度(一軸)は、例えば周知の試験規格ASTM D6641/D6641M-16el、Standard Test Method for Compressive Properties of Polymer Matrix Composite Materials Using a Combined Loading Compression (CLC) Test Fixture、ASTM International、West Conshohocken PAの適用によってなど、当技術において従来より知られている手段により判定されるか、または市販の複合材料の製造業者から得られる。
【0013】
本方法の一実施例では、ひずみ測定値が、二軸曲げを生じるように誘発された二次元織物複合材料試験片の第1の繊維方向および第2の繊維方向に沿って判定される。ひずみ測定値は、面外一軸力が印加される面とは対向側の二次元織物複合材料試験片の面においてその場(in situ)判定されることが可能であり、例えばひずみ測定値は、面外一軸力が上部表面110に対して印加されるときに、二次元織物複合材料試験片100の下部表面120において判定され得る。ひずみ測定値は、市販のひずみ計から読み取ることが可能であり、このひずみ計は、例えば限定するものではないが下部表面120の中心または中心付近などにおいて、下部表面120に対して装着され得る。一実施例では、2つのひずみ計が使用され、第1のひずみ測定値は、第1の繊維方向(繊維130)に対して平行となる構成で下部表面120に対して当技術において知られているように動作連結された第1のひずみ計から判定され、第2のひずみ測定値は、第2の繊維方向(繊維140)に対して平行となる構成で下部表面120に対して当技術において知られているように動作連結された第2のひずみ計から判定される。一実施形態では、第1のひずみ計および第2のひずみ計は、二次元織物複合材料試験片の中心におよび/または中心付近にそれぞれ個別に装着される。一実施例では、単調面外一軸荷重が、複合材料が破壊するまで、すなわち二次元織物複合材料試験片の上部表面110が少なくとも1つの可視クラックを生ずる時まで、または第1の繊維方向に沿ったひずみ測定値および第2の繊維方向に沿ったひずみ測定値が図2に示すようにおよび以降で例示されるように分岐する時まで印加される。等二軸圧縮強度は、可視クラックまたはひずみ計の分岐が生じた時点において第1の繊維方向に沿っておよび第2の繊維方向に沿って判定されたこれらのひずみ測定値から算出される応力から判定することが可能である。一実施例では、下部表面上におけるひずみ測定は、上部表面上におけるひずみをもたらすために使用され、さらにこの上部表面上におけるひずみは、応力状態をもたらし得る。この応力状態からの応力算出により、以下の等式(1)を介して複合材料の等二軸曲げ強度の特徴が判定される。
Fbf=Q11εc+Q12εc (1)
ここで、Q11およびQ12は、等式(2)および(3)において定義され、εcは、破壊時における、すなわち少なくとも1つの可視クラックが二次元織物複合材料試験片の上部表面に生じた時か、または第1のひずみ計および第2のひずみ計の測定値が分岐する時における(これらのいずれが先であるかにかかわらず)、ひずみ計測定値である。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、E1は、例えばASTM D3039/D3039M-14または当技術において知られる他の手段などにより第1の繊維方向に沿って測定された第1の繊維弾性率であり、E2は、例えばASTM D3039/D3039M-14または既知の他の手段などにより第2の繊維方向に沿って測定された第2の繊維弾性率であり、V12は、ASTM E132-04、(2014) Standard Test Method for Poisson's Ration at Room Temperature、ASTM International、West Conshohocken PAにより測定されるような、第1の(引張)繊維方向および第2の(収縮)繊維方向の面内ポアソン比であり、V21は、ASTM E132-04、(2014) Standard Test Method for Poisson's Ration at Room Temperature、ASTM International、West Conshohocken PAにより測定されるような、第2の(引張)繊維方向および第1の(収縮)繊維方向の面内ポアソン比である。
【0016】
この例において実施される試験1および2に関して、数値E1、E2、V12、およびV21は、以下の通りであった。
E1=42110.53MPa
E2=42110.53MPa
V12=V21=0.12
【0017】
これらの数値から、Q11およびQ12を等式(2)および(3)から算出すると、以下のようになった。
Q11=47275.78MPa
Q12=5127.094MPa
【0018】
試験1および2に関して、数値εcを本開示の方法により測定すると、以下のようになった。
εc(試験1)、図2のひずみ分岐点にて=0.014
εc(試験2、図示しないが図2と同様のグラフ)=0.013
【0019】
等式(1)より、試験1および2の織物複合材料に関する等二軸圧縮強度は、以下の通りとなった。
試験1:Fbf=670MPa
試験2:Fbf=622MPa
【0020】
したがって、二次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の正確な特徴判定は、主ひずみすなわちここでは第1の繊維方向および第2の繊維方向におけるひずみのその場(in situ)測定と、認識している弾性率および面内ポアソン比とを利用することにより、確認可能となる。
【0021】
実施例
以下の例は、本開示の例示的なものにすぎず、限定的なものではない。
【0022】
二次元織物複合材料試験片のリングオンリング試験
この例におけるリングオンリング曲げ試験(ROR)セットアップは、セラミックの等二軸曲げ試験のための周知のASTM C1499規格を利用して設計した。載荷リングは直径20mmを有し、載荷リング断面の半径は5mmであった。支持リングは、直径100mmを有し、支持リング断面の半径は10mmであった。これらの両リングは、鋼から作製されたものであった。円形のセラミックディスクを試験することが一般的であるが、複合材料の場合には、正方形形状のプレートの作製がはるかに容易である。なぜならば、正方形形状のプレートは、大型プレートラミネートから一般的に切り取られるからである。105mm×105mmサイズの切欠なしの正方形形状複合材料試験片を使用した。
【0023】
二次元織物複合材料試験片の製造
この織物複合材料プレート試験片を、リングオンリング曲げ試験のために、真空支援樹脂注入技術により調製した。この複合材料は、いずれもFibre Glast Development Corpから調達した120分のポットライフおよび3Kのシステム2000エポキシ樹脂と、2×2平織り炭素繊維織布とから作製した。このエポキシ樹脂は、供給業者による指定の通りに、100:27の樹脂/硬化剤混合比にて硬化剤と混合させた。所望の寸法に切断された炭素織布の10個の層を平坦パネル上に積み上げ、次いで真空バッグ内に封じ込めた。これらの層を整列させることにより均質な積層材すなわち[0°]10を作製した。次いで、この真空バッグを一方の端部にて樹脂ポットに対して連結し、他方の端部にてGeneral Electric 1/3hp真空ポンプに対して連結した。真空圧を25~30インチHgの間に維持し、これにより繊維層中に樹脂が均一に注入されるのを確保した。注入が終了すると、このシステムを24時間にわたり放置して乾燥させ、その後にシステムを真空バッグから取り出した。合計厚さ3.2mmの10層を有する仕上げ硬化した複合材料ラミネートプレートを、真空バッグから引っ張り出し、試験のために所望の105mm×105mmの試験片サイズへと切断した。
【0024】
試験の説明
ROR曲げ試験のために、105mm×105mmサイズの正方形プレートを切り取った。これらのプレートは、経糸および緯糸が正方形プレートの辺に対して平行になるように切断した。次いで、鋼支持リングおよび鋼載荷リングを使用した二軸曲げ下において複合材料プレート試験片を試験した。小さなマットレスフォーム層を載荷リングと複合材料との間に配置して、押し込みを防止し印加荷重の均一な分散を確保した。0.5mm/分の速度での変位制御で試験を実施した。合計で4つのリングオンリング曲げ試験を実施した。本明細書では、本実施例にしたがって調製されるような二次元織物複合材料試験片に対して実施した2つの試験すなわち試験1および試験2を報告する。
【0025】
考察
2つのリングオンリング曲げ試験(試験1および2)を破壊するまで実施した。機械により荷重および変位を記録した。ある時点以後に、荷重はそのピークに到達し、次いで大幅に低下したがゼロまでは低下しなかった。これらの両試験において、破壊は、セラミックまたは前に試験したエポキシの場合と同様に、織物複合材料の下部表面ではなく上部表面において開始および伝搬したことが判明した。ひずみ計を使用して、試験1および2を実施した。破損は上部表面において発生したため、上部表面ひずみを測定することが望ましかったが、載荷リングとの干渉により不可能であった。したがって2つのひずみ計をプレートの中心に複合材料の下部表面上に装着した。各ひずみ計は、2つの主要繊維方向の一方に対して平行であり、これにより第1の繊維方向へのひずみおよび第2の繊維方向へのひずみである両主ひずみε1およびε2を測定した。これらのひずみ計は、Omega Engineeringから調達したものであり、予め配線済みであり、線形X-Y Planar Rosetteタイプのものであった。これらのひずみ計は、50,000μひずみの最大能力と、2mm×3mmのグリッドサイズとを有するものであった。また、適切な寸法のスロットを、支持リング上で切断することにより、ひずみ計の電線を外へ出してひずみ計レコーダへ接続できるようにした。これらのひずみ計を使用したこれらの2つの試験において、破壊は、複合材料の上部表面において漸進的に生じた。
【0026】
図2では、試験1のひずみ計測定値(y軸、ε)が示される。図2に示すように、ε1=ε2(第1の繊維方向および第2の繊維方向におけるそれぞれのひずみ計測定値)であり、これが複合材料の下部表面におけるひずみが等二軸引張状態を示していることが分かる。したがって、純曲げ下において、複合材料の上部表面におけるひずみ状態もまた、等二軸的であり、しかし圧縮的なものとなる。注目すべきは、図2において、上部表面における破壊時に約εc=0.014が観測された。この例では、第1の繊維方向におけるひずみ計測定値ε1および第2の繊維方向におけるひずみ計測定値ε2は、分岐する(εc、破壊時のひずみ測定値)。
【0027】
この試験下における織物複合材料プレートの機械的荷重変位挙動は、他の脆性材料(セラミック、コンクリート、ガラス、エポキシ等)とは相違があった。第一に、破壊が二軸圧縮下にある上部表面において発生した。これは、複合材料が二軸引張よりも二軸圧縮の下においてより脆弱であることを示唆する。これは、複合材料の圧縮破壊に関するより広範な認識と一致する。対照的に、他の脆性材料の場合には、破壊は二軸引張により誘発されて下部表面において発生する。第二に、二次元織物複合材料の場合には、損傷累積がより漸進的なものであるため、急激で明確なピークは観測されない。小さなピーク前荷重の低下は、損傷の開始を示す。これらの荷重低下の最中に、ひずみ計読取値(下部表面の)は、依然として完全な等二軸性を示した。これにより、損傷が試験片の上面に位置することが検証された。また、この損傷は、開始時に下面のひずみ場を阻害しなかった。これは、複合材料の層状構造に起因し得るものであり、層同士の間の境界は、損傷を減速させる傾向がある。第三に、ピーク荷重を超過した後でも、破壊は破局的ではなく、すなわち荷重はゼロまで完全には低下しなかった。これは、破損が上方の1層または2層のみに限定されることに起因するものであった。これもまた、複合材料の不均質層構成によるものである。しかし、荷重が大きな低下を示すと、第1の繊維方向および第2の繊維方向におけるひずみ計読取値は分岐した。これは、損傷が弾性応力/ひずみ場を下部に至るまで完全に阻害するのに十分な大きさであったことを示す。他の脆性材料では、破壊は破局的であり、荷重は破壊時にてゼロまで低下する。二次元織物複合材料の場合には、破壊は、上部表面に径方向キンクバンドの形成によって発生することが分かった。キンクバンドは、試験片の中心にて開始し、エッジに向かって伝搬する。これらのキンクバンドは、ほとんどの場合において上部層に限定され、厚さ方向全体にわたる破壊は観測されなかった。このパターンは、複数の径方向引張破断からなるセラミック/コンクリート(およびさらには以前に示したようなエポキシ)において観測されたものと同様である。
【0028】
試験1および試験2の結果
この実施例で実施した試験1および試験2について、本明細書に説明されるように取得した数値E1、E2、V12、およびV21は、以下の通りであった。
E1=42110.53MPa
E2=42110.53MPa
V12=V21=0.12
【0029】
これらの数値から、Q11およびQ12を等式(2)および(3)から算出すると、以下のようになった。
Q11=47275.78MPa
Q12=5127.094MPa
【0030】
試験1および試験2に関して、数値εcを本開示の方法により測定すると、以下のようになった。
εc(試験1)、図2のひずみ分岐点にて=0.014
εc(試験2、図示しないが図2と同様のグラフ)=0.013
【0031】
等式(1)より、試験1および2の織物複合材料に関する等二軸圧縮強度は、以下の通りとなった。
試験1:Fbf=670MPa
試験2:Fbf=622MPa
【0032】
したがって、二次元織物複合材料の等二軸圧縮強度の正確な特徴判定は、主ひずみすなわちここでは第1の繊維方向および第2の繊維方向におけるひずみのその場(in situ)測定と、認識している弾性率および面内ポアソン比とを利用することにより、確認可能となる。
【0033】
特定の実施形態を参照として本開示を図示および説明したが、本発明およびその均等物の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および細部における変更を行い得ることが当業者には理解されよう。
【符号の説明】
【0034】
100 二次元織物複合材料試験片
110 上部表面
120 下部表面
130 第1の繊維セット
140 第2の繊維セット
150 支持リング
160 載荷リング
170 側部
180 側部
図1
図2
【国際調査報告】