(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】三環式誘導体を用いた脳卒中の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20221202BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221202BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K38/36
A61K47/02
A61K47/12
A61K9/19
A61K9/20
A61K47/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506440
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2019009444
(87)【国際公開番号】W WO2021020612
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2019年7月23日の投資説明会にて、三環式誘導体の開発について説明
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514036922
【氏名又は名称】ジェイル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウ・ナム
(72)【発明者】
【氏名】イン-ヘ・イェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドンホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョウン・ジャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB13
4C076DD25
4C076DD26
4C076DD42
4C076DD67
4C076FF36
4C076FF61
4C084AA02
4C084AA03
4C084DC21
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA66
4C086ZA36
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、三環式誘導体を用いた脳卒中の治療方法に関する。より具体的に、本発明は、脳卒中患者を治療するための治療剤であって、本発明による三環式誘導体が最適の効能、効果を示し得る投与用量と投与方法に関する。本発明による治療方法は、新規の三環式誘導体を安全に投与しながら最適の効能、効果を示す利点を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物であって、
前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、
前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分の1回投与用量は、700~2000mgであることを特徴とする、請求項1に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記有効成分の1回投与用量は、700~1100mgであることを特徴とする、請求項1に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記第1用量の医薬組成物は、対象体に有効成分を基準として7~13mg/minで静脈投与され、第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、請求項3に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項5】
前記第1用量の医薬組成物と第2用量の医薬組成物は、順次的で且つ連続的に対象体に投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、脳卒中症状が発生して再灌流を必要とする対象体又は脳卒中症状の発生後に再灌流を施行した対象体に投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、脳卒中症状の発生後12時間以内に投薬されることを特徴とする、 請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項8】
前記再灌流は、脳卒中症状の発生後10時間以内に行われることを特徴とする、請求項6に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物の投与後の有効成分の血中濃度が24時間の間1000μg/L以上であることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、tPAと併用投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項11】
前記対象体は、哺乳動物であることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項12】
前記対象体は、ヒトであることを特徴とする、請求項11に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項13】
対象体は、前記医薬組成物の投与後90日の時点で測定した修正ランキンスケール(Korean version of modified Rankin Scale、K-mRS)が2.5以下であることを特徴とする、請求項11に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物は、安定化剤及び/又はpH調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記pH調節剤は、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記安定化剤は、糖又はその誘導体であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物のpHは、2.5~7であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物を含む製剤及び前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針書を含むことを特徴とする、キット。
【請求項19】
前記製剤は、凍結乾燥粉末又はケーキの形態であることを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
安定化剤及び/又はpH調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記指針書は、前記製剤を薬学的に許容される担体にとかして液剤に再構成した後、これを注射用水と混合して投与のための医薬組成物を準備し、前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与し、前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与することを含む前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針であることを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【請求項22】
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物をこれを必要とする対象体に投与することを含み、
前記医薬組成物は、第1用量の医薬組成物及び第2用量の医薬組成物に分割して投与され、
前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、
前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、脳卒中の治療方法。
【請求項23】
前記有効成分の1回投与用量は、700~2000mgであることを特徴とする、請求項22に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項24】
前記有効成分の1回投与用量は、700~1100mgであることを特徴とする、請求項22に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項25】
前記第1用量の医薬組成物は、対象体に有効成分を基準として7~13mg/minで静脈投与され、第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、請求項24に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項26】
前記第1用量の医薬組成物と第2用量の医薬組成物は、順次的で且つ連続的に対象体に投与されることを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項27】
前記医薬組成物は、脳卒中症状が発生して再灌流を必要とする対象体又は脳卒中症状の発生後に再灌流を施行した対象体に投与されることを特徴とする請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項28】
前記医薬組成物は、脳卒中症状の発生後12時間以内に投薬されることを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項29】
前記再灌流は、脳卒中症状の発生後10時間以内に行われることを特徴とする、請求項27に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項30】
前記医薬組成物の投与後の有効成分の血中濃度が24時間の間1000μg/L以上であることを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項31】
前記医薬組成物は、tPAと併用投与されることを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項32】
前記対象体は、哺乳動物であることを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項33】
前記対象体は、ヒトであることを特徴とする、請求項32に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項34】
対象体は、前記医薬組成物の投与後90日の時点で測定した修正ランキンスケール(Korean version of modified Rankin Scale、K-mRS)が2.5以下であることを特徴とする、請求項32に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項35】
前記医薬組成物は、安定化剤及び/又はpH調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項22~請求項25のうちいずれか一項に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項36】
前記pH調節剤は、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項35に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項37】
前記安定化剤は、糖又はその誘導体であることを特徴とする、請求項35に記載の脳卒中の治療方法。
【請求項38】
前記医薬組成物のpHは、2.5~7であることを特徴とする、請求項35に記載の脳卒中の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三環式誘導体を用いた脳卒中の治療方法に関する。より具体的に、本発明は、脳卒中患者を治療するための治療剤であって、本発明による三環式誘導体が最適の効能、効果を示し得る投与用量と投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、発病後数時間以内に脳損傷が進行するため死亡率が高い疾患であり、生存しても四肢麻痺、言語障害、記憶障害、精神障害など一生肉体的、精神的障害をもたらすので、社会的や経済的に大きい負担となる疾患である。
【0003】
脳卒中は、大きく血管が詰まって脳組織の壊死などが発生する虚血性脳卒中と血管破裂により発病する出血性脳卒中に分けられるが、虚血性脳卒中が80%程度を占める。
【0004】
虚血性脳卒中の場合、組織型プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator、tPA)のような血栓溶解剤や血栓除去術(thrombectomy)のような治療方法のみが唯一である。現在、脳卒中の治療剤として許可を受けた唯一の治療剤であるベーリンガーインゲルハイム社のアクチラーゼ(Actilyse(登録商標))は、虚血性脳卒中発病患者を対象として発病4.5時間以内に静脈に投与すると、血管を塞いでいた血栓をとかすことによって血液の流れを正常化して脳損傷を防ぐ。しかし、発病4.5時間以内に投与した場合にのみ効果があり、4.5時間以後に投与する場合、脳出血、死亡などの副作用を増加させるという限界があるので、使用が制限される。また、大きい血管が詰まった患者においては、その効果が制限的である。最近、大きい血管が詰まった患者の治療において再灌流率及び速度を向上させたステント型血栓リトリーバー(stent retriever)を用いた血栓除去術(stent-retriever thrombectomy)が導入され、5個の重要臨床試験でtPA治療後に血栓除去術を並行すると、tPA単独治療に比べて患者の予後を有意に改善させるということを立証した。しかし、tPA治療と血栓除去術治療を施行した大血管閉塞患者において独立的な日常生活ができない患者が30-67%に至り、病床で寝たきりとなるか死亡などの非常に不良な予後を示す患者も12%~30%となる。したがって、脳卒中患者の予後を追加的に改善するためには、迅速な再灌流だけではなく神経保護作用により細胞死及び神経障害を最小化できる薬物の開発が必要である。
【0005】
現在まで開発が試みられた大部分の臨床薬は、細胞自滅を遮断する作用機序で治療効果を示そうとしたが、脳卒中の発病後初期10時間以内では、細胞死による脳損傷が主に起きるので、臨床的に大きい効果を示しにくかった。日本三菱田辺(Mitsubishi-Tanabe)社により開発された脳卒中治療剤であるエダラボン(Edaravone)は、毒性問題により現在日本、中国でのみ脳卒中治療剤として販売中である。また、アストラゼネカ社により開発された脳卒中治療剤であるセロビブ(Cerovive、NXY-059)も臨床3相で効能立証に失敗して新薬開発が中断された。
【0006】
脳虚血においてDNA損傷によるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化は、発作、頭部の損傷及び神経変性疾患による細胞死滅に対して作用する。PARPの阻害は、細胞自滅の阻害だけではなく同時にATPエネルギー枯渇による脳細胞の壊死も直接遮断して脳神経を保護する治療剤としての開発可能性がある。大韓民国特許登録第0968175号に開示されているPARP-1抑制剤である三環式誘導体化合物である10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オンは、最近、tMCAO動物モデルにおいて脳梗塞体積減少に効果があることが確認された(Molecular Neurobiology 55(9859)、January 2018)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Molecular Neurobiology 55(9859)、January 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題を解決するために、本発明は、本発明による三環式誘導体を含む医薬組成物及びそれを用いた治療方法及び本発明による三環式誘導体を含むキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による医薬組成物又は製剤の有効成分として用いられる「三環式誘導体」は、10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物を含む。
【0011】
「三環式誘導体」の薬学的に許容可能な塩は、塩酸、ベンゼンスルホン酸、マレイン酸(maleic acid)、ジメタンスルホン酸、ビス[(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン-1-イル)メタンスルホン酸]、酒石酸、2,6-ジオキソ-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-4-カルボン酸、アジピン酸(adipic acid)、二硝酸(dinitric acid)、フマル酸、(S)-2-アミノコハク酸、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸、シクロヘキシルスルファミン酸(cyclohexylsulfamic acid)、硫酸(sulfuric acid)、コハク酸、ギ酸、グルタミン酸又は二リン酸などを含む。また、三環式誘導体は、水和物又は塩水和物又は溶媒化物の形態で存在することができる。例えば、本発明による医薬組成物内で有効成分は、10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン二塩酸塩又は10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン二塩酸塩二水和物の形態で存在可能である。
【0012】
薬学的に許容される担体は、滅菌注射可能溶液、分散液の即席製造のための滅菌水性溶液、分散液又は滅菌粉末を含む。製薬活性物質に対する滅菌水性溶液、分散液又は追加で含まれ得る成分(agents)に対しては、当業界で公知である。任意の通常的な媒質又は追加的な成分(agents)は、本発明の三環式誘導体と相溶不可能である場合以外は、本発明の医薬組成物においてその使用が考慮される。薬学的に許容される担体は、本発明の三環式誘導体と生理学上相溶性である任意の全ての適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤、抗酸化剤又は吸収遅延剤などを含む。本発明の医薬組成物に用いられ得る適合する水性及び非水性担体の例は、滅菌水(distilled water)、食塩水(saline)、ホスフェート緩衝塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適合する混合物、植物性オイル、例えば、オリーブオイル、コーンオイル、ピーナッツオイル、綿油及びゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴム及び注射可能な有機エステル、例えば、エチルオレート、及び/又は多様な緩衝剤を含む。その外の他の担体が製薬分野でよく知られている。
【0013】
「治療」は、脳卒中があるか脳卒中が発生する危険、脳卒中の症状又は脳卒中が発生する素因を有する対象体に本発明の三環式誘導体を適用又は投与することと定義され、ここで、その目的は、脳卒中、脳卒中の症状又は脳卒中が発生する素因を治癒、治療、軽減、緩和、変更、除去、好転、改善するか又は影響を与えることである。また、「治療」は、対象体に本発明の三環式誘導体を含む医薬組成物の適用又は投与が意図され、ここで、その目的は、疾患、疾患の症状又は疾患が発生する素因を治癒、治療、軽減、緩和、変更、除去、好転、改善するか又は影響を与えることである。
【0014】
本発明で適用される医薬組成物は、好ましくは、「治療有効量」の本発明による三環式誘導体を含む。
【0015】
脳卒中に対する組成物の「治療有効量」、又は「有効量」は、一実施様態で、組成物の不在時に比べて脳卒中と連関した一つ以上の症状(例えば、再灌流損傷(Reperfusion injury)によって脳細胞壊死又は細胞自滅、その結果として発生する脳梗塞体積増加と四肢麻痺、顔面筋肉麻痺などの肉体的障害と言語障害、記憶障害、認知能力低下などの精神的障害などの臨床症状及び生化学的症状など)を遅延、減少、緩和、好転、安定化、抑制及び/又は逆転させる組成物の量を意味する。これは、目的とする治療結果を達成するために必要な投与量及び期間を含む。用語症状の「遅延」は、本発明による三環式誘導体に対する露出と本願で説明する一つ以上の症状の発生との間の期間の増加を意味する。用語症状の「除去」は、本願で説明する一つ以上の症状の40、50、60、70、80、90又は、甚だしくは100%の減少を意味する。また、治療有効量は、組成物の任意の毒性又は有害な効果よりも治療上有益な効果がさらに大きい量を含む。
【0016】
「投与」は、治療的目的を達成するための物質の投与を言う。本発明で「投与」は、静脈への投与を含む。投与は、目的とする治療効果の達成のために1回以上行われ得る。
【0017】
「対象体」は、全てのヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ及びフェレット、げっ歯類、例えば、マウス、ラット及びギニーピッグ、鳥類、例えば、ニワトリ、両生類及び爬虫類を含むが、これに制限されない。好ましい実施様態で、対象は、哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット又はげっ歯類である。より好ましい実施様態で、対象は、ヒトである。用語「対象体」、「患者」及び「個体」は、本願において相互交換的に用いられる。
【0018】
「虚血」は、血液を供給する血管が狭窄又は収縮するか、正常的な血管生成が十分に行われず血液供給が不足して酸素が欠乏した状態を言う。
【0019】
「再灌流」は、虚血による組織損傷を防ぐために血管に血流が再び流れることを言う。
【0020】
「キット」は、脳卒中の治療のための本発明の三環式誘導体を投与するための成分を含む包装された製品を言う。当該キットは、好ましくは、キットの成分を維持する容器又はボックスを含む。また、キットは、本発明の三環式誘導体を投与するための指針書を含む。
【0021】
本発明は、
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物であって、
前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、
前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、(有効成分を基準として)20~26時間の間対象体に静脈投与される脳卒中治療用医薬組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物をこれを必要とする対象体に投与することを含み、
前記医薬組成物は、第1用量の医薬組成物及び第2用量の医薬組成物に分割して投与され、
前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、
前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、(有効成分を基準として)20~26時間の間対象体に静脈投与される脳卒中治療方法を提供する。
【0023】
下記実施例によると、本発明による医薬組成物は、1回投与時に医薬組成物を分割用量で投与することが好ましい。分割用量で投与する方法は、有効成分の1回投与用量を基準として、第1用量の医薬組成物は、迅速に投与されて対象体において本発明による三環式誘導体が迅速に所望する血中濃度を達成することになるので好ましい。医薬組成物で第1用量の医薬組成物を除外した残りの用量、すなわち、第2用量の医薬組成物は、以後ゆっくり対象体に投与されることで、三環式誘導体が所望する血中濃度を一定レベルに維持できるようにするる。脳卒中患者にいて本発明による三環式誘導体の迅速な投与及び一定レベルの血中濃度を維持させることは、適切な治療効果を得るために非常に重要である。
【0024】
このとき、まず、投与される第1用量の医薬組成物は、前記有効成分の1回投与用量を基準として、有効成分の8~20重量%、例えば、10~20重量%、12~20重量%、15~18%重量を含む医薬組成物の分量で決める。
【0025】
第1用量の医薬組成物に後続して投与される第2用量の医薬組成物は、前記第1用量の医薬組成物が投与されてから残っている医薬組成物の分量となる。例えば、第1用量が有効成分の8~20重量%であるとき、第2用量は、有効成分の92~80%の重量%を含む医薬組成物となる。
【0026】
本発明では、前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与される。上述したように、第1用量の医薬組成物は、体内で迅速な速度で10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オンが治療有効濃度に至るように投与される。第1用量の医薬組成物の投与速度は、有効成分を基準として5~15mg/min、例えば、7~13mg/min、7~11mg/min、例えば、8~11mg/minの速度で投与され得る。
【0027】
また、第1用量の医薬組成物の投与後に、前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、有効成分を基準として20~26時間の間対象体に静脈投与する。第2用量の医薬組成物は、10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オンが体内で適正レベルの血中濃度を維持するように投与速度が適切に調節され得る。第2用量の医薬組成物は、(有効成分を基準として)例えば、20~26時間、例えば、21±1時間、22±1時間、23±1、24±1、25±1時間の範囲内で適切に調節して投与され得る。
【0028】
これに制限されるものではないが、前記第1投与用量は、ボーラス(bolus)投与され、第2投与用量は、点滴投与(IV infusion)され得る。第1投与用量と第2投与用量は、一つの容器に入っているか、又はそれぞれ別の容器に入っていてもよい。例えば、第1投与用量と第2投与用量は、一つの容器に入っていてもよく、インフュージョンポンプを用いて第1投与用量の投与速度で、引き続き、第2投与用量の投与速度で本発明の医薬組成物を静脈に連続的に注射することができる。多様なインフュージョンポンプが現在常用化されており、ボーラス投与後に点滴投与の形態で静脈内注入されるように投与の時間と速度を調節することが可能である。
【0029】
本発明による三環式誘導体の1回投与用量は、治療時点での脳卒中症状の状態及び重症度、脳卒中の治療履歴、例えば、tPA投与有無などを考慮し、その外、対象体の年齢、体重、性別、健康状態、投薬している薬物などを全般的に考慮して当業者が適切に選択することができる。
【0030】
本発明で、前記有効成分の1回投与用量は、700~2000mgであってもよい。
【0031】
本発明の一具体例で、前記有効成分の1回投与用量は、700~1100mgであってもよい。上述したように、前記有効成分の1回投与用量を第1用量と第2用量に分割投与することができる。
【0032】
例えば、前記有効成分が10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン二塩酸塩である場合、前記有効成分の1回投与用量は、900mgであってもよい。これに制限されるものではないが、このとき、900mgの1回投与用量に対して第1投与用量を150mg、第2投与用量は、第1投与用量を除外した残りの用量である750mgに設定することができる。前記第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、第2用量の医薬組成物は、有効成分を基準として20~26時間の間対象体に静脈投与され得る。
【0033】
本発明の他の具体例で、前記有効成分の1回投与用量は、1600~2000mgであってもよい。上述したように、前記有効成分の1回投与用量を第1用量と第2用量に分割投与することができる。
【0034】
例えば、前記有効成分が10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン二塩酸塩である場合、前記有効成分の1回投与用量は、1800mgであってもよい。これに制限されるものではないが、このとき、1800mgの1回投与用量に対して第1投与用量を300mg、第2投与用量は、第1投与用量を除外した残りの用量である1500mgに設定することができる。前記第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、第2用量の医薬組成物は、有効成分を基準として20~26時間の間対象体に静脈投与され得る。
【0035】
これに制限されるものではないが、前記第1用量の医薬組成物と第2用量の医薬組成物は、順次的で且つ連続的に対象体に投与され得る。第1用量の医薬組成物の投与完了即時、第2用量の医薬組成物が直ちに対象体に投与され得る。
【0036】
本発明による医薬組成物が投与される対象体は、脳卒中患者であれば、特に制限されない。tPAは、血栓溶解剤であるため再灌流を必要とする患者に投与される一方、本発明で有効成分として用いられる10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オンは、PARP阻害剤として虚血性損傷による細胞自滅阻害だけでなく同時にATPエネルギー枯渇による脳細胞の壊死も直接遮断して脳神経を保護する効果を有するので、本発明による医薬組成物が投与される対象体は、脳卒中症状が発生して再灌流を必要とする対象体又は脳卒中症状の発生後再灌流を施行した対象体を全て含む。例えば、脳卒中患者としてtPAを投与する前又は後の患者、及び血栓除去術(thrombectomy)を受ける前又は後の患者が全て本発明による医薬組成物が投与される対象体であってもよい。
【0037】
脳卒中により虚血となった対象体は、迅速な時間内に再び再灌流が行われることが好ましい。
【0038】
これに制限されるものではないが、本発明において、前記再灌流は、脳卒中症状の発生後24時間以内、例えば、20時間以内、16時間以内、12時間以内、10時間以内、8時間以内、6時間以内、4.5時間以内に行われることが好ましい。
【0039】
一方、本発明による医薬組成物の投与後の有効成分の血中濃度が24時間の間1000μg/L以上であってもよい。これは、本発明による医薬組成物の治療的効果の達成のために好ましい。
【0040】
本発明による医薬組成物は、tPAと併用投与され得る。本発明の医薬組成物は、例えば、tPAにより再灌流が既に行われた対象体に投与されてもよく、又はtPAと同時に投与されてもよい。
【0041】
本発明において、前記対象体は、哺乳動物であってもよく、好ましくは、ヒトである。
【0042】
本発明の一具体例で、前記対象体は、下記特性のうち一つ以上を有するヒトを含む。
a)CT血管造影術、MR血管造影術又はTFCA相、頭蓋内内頚動脈(intracranial internal carotid artery、IICA)又は中脳動脈(middle cerebral artery、MCA)において急性大脳動脈閉塞が確認された者;
b)血管内再開通治療(endovascular recanalization therapy、ERT)前、脳卒中尺度(Korean-National Institutes of Health Stroke Scale、K-NIHSS)が6-30点である者;
c)症状発現後24時間以内、10時間以内又は6時間以内にmodified thrombolysis in cerebral infarction(mTICI)再灌流された者;
d)tPA静脈治療後に血栓除去術のために血管造影術を行ったとき、静脈tPA効果により血栓除去術をする前に既に再灌流が確認された者;
e)発病前pre-mRS 0-1である者。
【0043】
これに制限されるものではないが、本発明の一具体例で、本発明による医薬組成物の投与後90日の時点で測定した修正ランキンスケール(Korean version of modified Rankin Scale、K-mRS)が2.5以下、好ましくは、2以下であってもよい。K-mRSが0~2である場合、患者は独立的な日常生活が可能な状態であると評価される。本発明による医薬組成物の投与は、患者が90日以内にK-mRSが2.5以下に到逹できるようにする非常に優れた脳卒中治療効果を示す。
【0044】
一方、本発明による医薬組成物は、有効成分及び薬学的に許容可能な担体の外にpH調節剤、安定化剤、等張化剤などのような追加の薬学的に許容される添加剤を含むことができる。
【0045】
本発明の一具体例で、前記医薬組成物は、pH調節剤を含むことができる。pH調節剤は、酸やアルカリによるpHの変化を最小化する中和性物質を言う。これに制限されるものではないが、pH調節剤の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム又はこれらの混合物を含む。
【0046】
また、本発明による医薬組成物は、追加で糖又はその誘導体を含むことができる。糖又はその誘導体は、医薬組成物で安定化剤又は等張化剤としての役目を行うことができる。前記糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類又はこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。単糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどがあり、これに制限されない。二糖類の例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなどがあり、これに制限されない。オリゴ糖の例としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などがあり、これに制限されない。多糖類の例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、ペクチンなどがあり、これに制限されない。
【0047】
糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸又はこれらの混合物を含むことができる。糖アルコールの例としては、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールなどがあり、これに制限されない。糖酸の例としては、(グリセリン酸など)、ウロソン酸(ノイラミン酸など)、ウロン酸(グルクロン酸など)、アルダル酸(酒石酸など)などがあり、これに制限されない。
【0048】
本発明の一具現例で、糖又はその誘導体として、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール又はこれらのうち2以上の混合物を含むことができる。これに制限されるものではないが、本発明による医薬組成物は、D-マンニトールを含むことができる。
【0049】
また、追加の添加剤として等張化剤を含むことができ、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖、ホウ酸、グリセリン、塩化カリウム、トウモロコシのシロップなどが用いられ得る。
【0050】
これに制限されるものではないが、本発明による有効成分は、凍結乾燥粉末又はケーキの形態に製剤化され、必要に応じて、通常の注射用水、例えば、生理食塩水にとかして用いることができる。pH調節剤及び/又は安定化剤のような追加の添加剤も適量の生理食塩水にとかして用いることができる。また、pH調節剤及び/又は安定化剤のような薬学的に許容される添加剤は、これらが溶解している溶液の形態で提供されてもよい。
【0051】
これに制限されるものではないが、有効成分が溶解している溶液と、pH調節剤及び/又は安定化剤が溶解している溶液を順次に通常の注射用水、例えば、生理食塩水が入っている注射用バッグに注入して液剤形態の本発明による医薬組成物を得ることができる。
【0052】
本発明の一具体例で、本発明の医薬組成物は、pH7以下、好ましくは、pH2.5~7、例えば、pH3~pH7、pH3.5~pH6.5、pH4~pH6、pH4.5~pH6、pH5~pH6であってもよい。これは有効成分の析出を防いで対象体に注射することに適合した範囲である。
【0053】
他の側面で、本発明は、有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物を含む製剤及び前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針書を含むキットを提供する。
【0054】
前記製剤は、当業者に公知の方法によって液剤、凍結乾燥粉末又はケーキなどの剤形を有することができる。有効成分が凍結乾燥粉末又はケーキなどの剤形で製剤化される場合、対象体に投与する直前に、これを必要に応じて注射用水と適切に混合して適切な濃度の液剤に再構成して用いることができる。
【0055】
一具体例で、前記製剤は、凍結乾燥粉末又はケーキであってもよい。この場合、前記キットは、凍結乾燥粉末又はケーキ形態の製剤を液剤に再構成するために薬学的に許容される担体を追加で含むことができる。また、前記キットは、pH調節剤及び/又は安定化剤などのような薬学的に許容される添加剤を追加で含むことができる。添加剤に対しては上で説明した通りである。
【0056】
本発明によるキットにおいて、前記指針書は、前記キットに含まれる内容物が対象体での脳卒中の治療のために本発明による三環式誘導体を対象体に投与することによって脳卒中の治療のために用いられ得ることを示すラベル又はインプリント(imprint)を追加で含む。
【0057】
本発明の一具体例で、前記指針書は、前記製剤を薬学的に許容される担体にとかして液剤に再構成した後、これを注射用水と混合して投与のための医薬組成物を準備し、前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与し、前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、有効成分を基準として20~26時間の間対象体に静脈投与することを含む前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針書を意味することができる。
【0058】
前記指針書は、前記製剤を薬学的に許容される担体にとかした溶液を通常の注射用水(例えば、生理食塩水)が入っている注射バッグに注入し、それとは別に、pH調節剤及び/又は安定化剤などのような薬学的に許容される添加剤を適量の注射用水(例えば、生理食塩水)にとかした溶液を前記注射バッグに注入して液剤形態の本発明による医薬組成物を得る過程に対する説明を含むことができる。また、前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与し、前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、(有効成分を基準として)20~26時間の間対象体に静脈投与することを含む前記製剤を対象体に投与する用法に対する説明を含むことができる。
【0059】
追加として、本発明によるキットは、本発明の第1用量の医薬組成物及び第2用量の医薬組成物を対象体に投与するための手段又はバイアル、テフロンバッグ又は注入バッグ(通常、治療剤の注入のために用いられる)を追加で含むことができる。ここで、「手段」は、シリンジ、注射針、カニューレ、カテーテル、静脈投与用注入バッグ、静脈内ビークル、遮光バッグ、遮光ライン又は遮光チュービングカバーなどを含む。
【0060】
本発明による医薬組成物は、追加で注射用水と混合した後にインフュージョンポンプ(infusion pump)を用いて投与され得る。インフュージョンポンプは、速度別点滴投与を可能とするので、有効成分の適切な血中濃度の維持のために用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0061】
本出願による医薬組成物は、再灌流有無に関係なく脳の神経細胞の保護のために用いることができるので、非常に優れた脳卒中の治療効果を提供する。また、本発明による医薬組成物の投与方法は、新たな三環式誘導体を安全に投与しながら最適の効能、効果を示す利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、試験薬物集団の薬動学モデルの適合度を示す。
【
図2】
図2は、時間による試験薬物濃度の個別的な観察及び予測を示す。
【
図3】
図3は、試験薬物集団の薬動学モデルでの視覚的予測検査を示す。
【
図4】
図4は、時間による試験薬物の血中濃度シミュレーションを示す。
【
図5】
図5は、試験薬物900mgを15分間150mgボーラス投与した後に24時間まで750mg点滴投与時の時間による血中濃度シミュレーションを示す。
【
図6】
図6は、試験薬物1800mgを30分間300mgボーラス投与した後に24時間まで1500mg点滴投与時の時間による血中濃度シミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0064】
臨床試験用医薬品
<試験薬>
*本剤:
試験薬物(10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン二塩酸塩として)300mgの凍結乾燥ケーキ又は粉末/バイアル
*緩衝溶剤:D-マンニトール150mg、炭酸水素ナトリウム90mg、注射用水適量/バイアル
【0065】
<対照薬(偽薬)>
*本剤:リン酸リボフラビンナトリウム0.2mg、D-マンニトール150mgの凍結乾燥ケーキ又は粉末/バイアル
*緩衝溶剤:注射用水適量/バイアル
【0066】
<調剤方法>
【0067】
*900mg用量群の注射調剤:
1.1.0L 0.9%注射用滅菌生理食塩水から20ml注射器を用いて0.9%注射用滅菌生理食塩水18mlを取り、本剤バイアル3個にそれぞれ6mlずつ注入して溶解させる。
2.試験薬300mgが溶解した0.9%注射用滅菌生理食塩水溶液の全量(6mlx3個、総18ml)を20ml注射器で取り、前記1.の対象者注入用1.0L 0.9%注射用滅菌生理食塩水に注入する。
3.20ml注射器を用いて透明な緩衝液を含有したバイアル3個からそれぞれ6mlずつ総18mlを取り、前記2.の対象者注入用1.0L 0.9%注射用滅菌生理食塩水に注入する。
4.調剤が完了した注射液を含有した注入用1.0L 0.9%注射用滅菌生理食塩水は、直ちに遮光バッグで包装する。
5.投薬用注射剤は、使用時調剤及び調剤後即時使用を原則とする。
【0068】
実施例1.試験薬物の単一用量上昇1相の臨床試験
試験薬物の単回投与時の安全性を評価するために、大韓民国内の健康な男性志願者を対象として、5個用量群(35mg、75mg、150mg、300mg、600mg)、40人(コホート当たり8人:試験群6人、偽薬群2人)の対象者に対してデータ安全性モニタリング委員会(Data Safety Monitoring Board、DSMB)の決定による段階的臨床試験を実施した。
【0069】
<投与方法>
静脈注射療法で試験薬又は偽薬を水液に混合した後、インフュージョンポンプ(infusion pump)を用いて30分(±5分)間投与した。
【0070】
<異常反応の評価>
臨床試験薬を投与した40人の試験対象者のうち合計6人の試験対象者から7件の異常反応が発生した。偽薬を投与した群から報告された異常反応はなかった。全体異常反応7件のうち、600mgを投与した試験対象者では、「めまい(dizziness)」1件が中等症であり、この外の異常反応は全て軽症に該当した。すべての異常反応は後遺症なしに自発的に回復した。臨床試験の全期間にわたって重大な異常反応は発生しなかった。これによって、試験薬物の単回投与耐薬性は、試験用量範囲で良好であると判断された。
【0071】
実施例2.試験薬物の多回用量上昇1相の臨床試験
試験薬物の繰り返し投与時の安全性を評価するために、大韓民国内の健康な男性志願者を対象として、3個用量群(150mg、300mg、450mgを12時間間隔で7回繰り返し投与)、24人(コホート当たり8人:試験群6人、偽薬群2人)の対象者に対してデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)の決定による段階的臨床試験を実施した。
【0072】
<投与方法>
静脈注射療法で試験薬又は偽薬を水液に混合した後、インフュージョンポンプ(infusion pump)を用いて60分(±10分)間投与し、これを12時間間隔で7回繰り返して投与した。
【0073】
<異常反応の評価>
臨床試験薬を投与した24人の試験対象者のうち合計7人の試験対象者から12件の異常反応が発生し、このうち10件が薬物異常反応であると確認された。偽薬を投与した群では、1件(1人)の異常反応が発生した。全ての異常反応は軽症であり、後遺症なしに自発的に回復した。臨床試験の全期間にわたって重大な異常反応は発生しなかった。これによって、試験薬物150~450mgを12時間間隔で繰り返し投与時の耐薬性は良好であると判断された。
【0074】
実施例3.集団薬動学模型の構築及びシミュレーション
試験薬物の投与に対する薬動学模型は、未来の投与用量及び用法の薬動学をシミュレーションするだけでなく試験薬物の効能及び安全性をシミュレーションするための定量的薬動学的模型との統合のために確立された。薬動学模型は、試験薬物の1相単回投与の臨床試験に参加した試験対象者のうち、35mg、75mg、150mg、300mg、600mgを投与した合計30人の試験対象者の薬動学情報及び人口学的情報を基盤として薬動学模型を構築して行った。分析は、NONMEM(登録商標)(version 7.2;ICON Development Solutions、Ellicott City、MD、USA)を用いて非線形混合効果モデル(nonlinear mixed effect modeling)方法で行った。
【0075】
集団薬動学模型は、構造模型構築、共変量分析、モデル選別の順に進行した。初段階としては、基本構造模型(basic structure model)を構築し、時間による薬物濃度の変化様相を最もよく説明できる模型を樹立する段階であって、1-区画模型(1-compartment model)、2-区画模型(2-compartment model)3-区画模型(3-compartment model)の順に探索し、薬理学的、統計学的に最も適切な模型を選択した。次の段階としては、共変量分析(covariate analysis)を行い、人口学的情報のうち一部である年齢、身長、体重、血清クレアチン、BUN、アルブミン、AST、ALT濃度が薬動学に及ぼす影響を定量的に評価した。最後には、モデル選別(internal validation)を行い、樹立された模型のシミュレーションを行い、これを図式的評価方法であるvisual predictive check(VPC)で評価した。
【0076】
構築された模型を土台に多様な投与用量/用法別薬動学様相をシミュレーションした。多様な用量を30分間bolus投与する場合から、1時間infusion投与、2時間infusion投与、12時間infusion投与、24時間infusion投与した場合などをシミュレーションした。また、多様な用量を15分bolus投与した後に12時間infusionした場合、30分bolus投与した後に24時間infusionした場合などもシミュレーションした。
【0077】
このようなシミュレーション結果を土台に目標血中濃度を維持できる投与用量/用法を探索した。
【0078】
<集団薬動学模型の構築>
試験薬物の時間-血中濃度の変化様相は、3-区画模型(3-compartment model with 1st order elimination)から最もよく説明される。年齢、身長、体重、血清クレアチン、BUN、アルブミン、AST、ALT濃度を活用した共変量分析では、有意な共変量を発見することができなかった。それぞれの薬動学的パラメータ予測分析結果は、表1の通りである。
【0079】
【0080】
前記集団薬動学の分析結果は、観察された資料によく符合し、これは、
図1のgoodness-of-fitグラフと
図2の個人別測定値及び予測値グラフを通じて確認することができた。また、Visual Predictive Check(VPC)結果、大部分の資料が5%~95%内に存在した(
図3)。これを通じて前記集団薬動学模型が試験薬物の薬動学予測に適切な模型であることが確認できた。
【0081】
<シミュレーション>
試験薬物150mgから1500mgまでの用量を30分間bolus投与する場合から、1時間infusion投与、2時間infusion投与、12時間infusion投与、24時間infusion投与した場合をシミュレーションし、多様な投与用量/用法での薬動学様相を把握した。シミュレーション結果中の一部は、
図4の通りであった。
【0082】
試験薬物の適応症である虚血性脳卒中(ischemic stroke)は、急性期薬物治療(acute therapy)が必要な薬物であるので、初期に有効濃度以上の血中/細胞内濃度に到逹することが臨床的に重要である。したがって、初期にbolus投与を通じて迅速に血中薬物濃度を高める必要があると判断した。試験薬物は、PARP抑制剤であるが、現在まで脳卒中患者においてPARP抑制剤による変化様相(reversibilityなど)が明確に糾明されていない。ただし、血栓除去時に必然的に同伴される再灌流損傷(Reperfusion injury)によって脳細胞壊死又は細胞自滅が24時間以内に集中的に発生することが知られている。したがって、一定濃度以上の血中薬物濃度の維持を通じて細胞内薬物濃度を一定濃度以上持続的に維持して本発明によるPARP抑制剤が持続的に作用できるようにすることが必要であると判断した。したがって、bolus以後のinfusionを通じて目標血中濃度以上の薬物濃度を24時間まで維持する必要があると判断した。
【0083】
そこで、次の段階として迅速に初期目標血中濃度以上に到逹することができ、目標血中濃度を24時間まで維持することができるbolus+infusion用法に対するシミュレーションを多様な用量で実施した。このうち、試験薬物150mgを15分bolus投与後に750mgを24時間までcontinuous infusionする用法は、最高血中薬物濃度は、平均約3500μg/L、維持血中薬物濃度は、約1000μg/Lであると推定された。試験薬物300mgを30分bolus投与後に1500mgを24時間までcontinuous infusionする用法は、最高血中濃度は、平均約5000μg/L、維持血中薬物濃度は、約2000μg/Lであると推定された。二つの投与用法の予測血中薬物濃度-時間様相は、
図5及び
図6の通りであり、時間別予測血中薬物濃度は、表2の通りであった。
【0084】
【0085】
<評価>
シミュレーション結果と薬物の薬動学-薬力学的特性を考慮したとき、前記二つの投与用量/用法が適切であると判断した。
【0086】
実施例4.脳卒中患者に試験薬物投与時の安全性及び治療効能の評価
急性期虚血性脳卒中患者を対象として試験薬物の有効性探索及び安全性を評価するための多気管、無作為割当、二重目隠し、偽薬対照、電気2相臨床試験を実施した。本臨床試験は、合計3個のコホートで構成され、コホート1から試験対象者の登録を始めて安全性が確保されると、コホート2を順次に登録する。コホート2の登録は、コホート1の全ての試験対象者が訪問5(29日)を完了した時点でデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)を通じて評価した後、安全性が確保された場合に進行する。コホート1、2は、試験薬物の安全性及び有効性を確認するためのものであり、これを土台にコホート3の用量・用法などを決定する。
【0087】
本臨床試験は、前方循環系の急性大脳動脈閉塞が確認された中等症で重症の虚血性脳卒中患者のうち血管内再開通治療(endovascular recanalization therapy、ERT)後に血管造影術(angiogram)でmodified thrombolysis in cerebral infarction(mTICI)2b又は3等級の再灌流が行われた患者を対象として実施する。ERT施行前に適応症となる場合、組織型プラスミノゲンアクチベータ(intravenous tissue plasminogen activator、IV tPA)の静脈内投与が許容される。また、静脈tPA投与後にERTのために血管造影術を行ったとき、ERT施行前に静脈tPA効果のみで既にmTICI 2b-3再灌流が行われた患者も臨床試験の対象となる。
【0088】
試験対象者は、次の全ての基準に符合すると本臨床試験に登録され得る。
<スクリーニング選定基準>
*満19歳以上の急性期虚血性脳卒中がある男女
*CT血管造影術、MR血管造影術又はTFCA相、頭蓋内内頚動脈(intracranial internal carotid artery、IICA)又は中脳動脈(middle cerebral artery、MCA)M1分節の前循環部急性大脳動脈閉塞が確認された者
*血管内再開通治療(endovascular recanalization therapy、ERT)前、脳卒中尺度(Korean-National Institutes of Health Stroke Scale、K-NIHSS)が6-30点である者
*問診を通じて発病前に全ての業務と日常活動の施行が可能で発病前に障害がないことが確認された者
【0089】
<コホート1、2>
*症状発現後6時間以内にmodified thrombolysis in cerebral infarction(mTICI)2b又は3等級で再灌流された者(ただし、tPA静脈治療後に血栓除去術のために血管造影術を行ったとき、静脈tPA効果によって血栓除去術を行う前に既にmTICI 2b-再灌流が確認された者も参与可能である)
*症状発現後6.5時間以内に臨床試験用医薬品が投与できる者
*血管再灌流後30分以内に臨床試験用医薬品が投与できる者
*血管再灌流後90分以内にMRI評価が可能な者
*臨床試験参与に本人又は代理人により自発的に書面同意した者
【0090】
<コホート3>
*症状発現後10時間以内にmodified thrombolysis in cerebral infarction(mTICI)2b又は3等級で再灌流された者(ただし、tPA静脈治療後に血栓除去術のために血管造影術を行ったとき、静脈tPA効果によって血栓除去術を行う前に既にmTICI 2b-再灌流が確認された者も参与可能である)
*症状発現後12時間以内に臨床試験用医薬品が投与できる者
*血管再灌流後2分以内に臨床試験用医薬品が投与できる者
*血管再灌流後から臨床試験用医薬品の投与の前まで2時間以内にMRI評価が可能な者
*発病前のpre-mRS 0-1である者
*臨床試験参与に本人又は代理人により自発的に書面同意した者
【0091】
試験対象者は、次の基準のうち一つでも符合すると本臨床試験に登録できない。
*血管内再開通治療の禁忌の者(実験実績の検査結果、血小板(platelet)数値が40 X 109/L未満の者、aPTT 50秒以上又はINR 3.0超過の者)
*造影剤又は臨床試験用医薬品や構成成分に過敏反応がある者
*MRI検査が禁忌であるか不可能な者
*出血素因の病歴のある者
*臨床試験参与前6ヶ月以内の出血性脳卒中病歴のある者
*慢性肝障害のある者
*腎障害(血清クレアチン>3mg/dL)
*脳卒中外同伴疾患により期待寿命が3ヶ月未満の者
*妊婦又は授乳婦
*血管内再開通治療時にチロフィバン(Tirofiban、抗凝固剤)を投与した者
*スクリーニング前12週以内に他の臨床試験用医薬品又は医療機器を投与/施術した者
*追跡観察が不可能であると判断される者
*その外、試験者の判断によって臨床試験参与が不可能な者
【0092】
下記のコホート1~3は、試験薬又は対照薬を水液に混合した後にインフュージョンポンプ(infusion pump)を用いて投与する。
【0093】
<コホート1.低用量投与群>
*試験薬群:症状発現後6時間以内に再灌流が確認された後、30分以内に試験薬物の投与を始める。試験薬物150mgを15分間静脈投与(bolus)した後、即時、試験薬物750mgを23時間45分(±2時間)間静脈内に点滴注入(infusion)する。症状発生後、6.5時間以内に試験薬物の投与を始めなければならない。
*対照薬群:前記試験薬群と同一の方法で偽薬を投与する。
【0094】
<コホート2.高用量投与群>
*試験薬群:症状発現後6時間以内に再灌流が確認された後、30分以内に試験薬物の投与を始める。試験薬物300mgを30分間静脈投与(bolus)した後、即時、試験薬物1500mgを23時間30分(±2時間)間静脈内に点滴注入(infusion)する。症状発生後、6.5時間以内に試験薬物の投与を始めなければならない。
*対照薬群:前記試験薬群と同一の方法で偽薬を投与する。
【0095】
<コホート3.低用量投与群>
*試験薬群:症状発現後10時間以内に再灌流が確認された後、2時間以内に試験薬物の投与を始める。試験薬物150mgを15分間静脈投与(bolus)した後、即時、試験薬物750mgを23時間45分(±2時間)間静脈内に点滴注入(infusion)する。症状発生後、12時間以内に試験薬物の投与を始めなければならない。
*対照薬群:前記試験薬群と同一の方法で偽薬を投与する。
【0096】
<脳梗塞病変変化率の評価>
臨床試験用医薬品を投与しながら再灌流後90分以内に拡散強調画像(diffusion weighted imaging、DWI)及びグラジエントリコールドエコー(gradient-recalled echo、GRE)又は磁化強調画像(susceptibility weighted imaging、SWI)、磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging、MRI)検査を行い、これをベースライン結果として活用する。ベースラインに対して4日時点の脳梗塞病変の変化比を測定した。
【0097】
偽薬に対する試験群間の比較は、評価変数(infarct growth ratio)をlog変換した後、two sample t-testを用いる。追加的に、log変換しない原資料に対してWilcoxon rank sum testを用いて偽薬に対して試験群間の比較を行う。
【0098】
もし、予後に影響を及ぼすことができる要因を補正する必要がある場合、評価変数(infarct growth ratio)をlog変換した後に共分散分析法(ANCOVA)を用いる。
【0099】
<評価>
対照薬又は試験薬を投与した患者から脳梗塞病のベースラインが類似した患者間の脳梗塞病変変化比を確認した(表3)。
【0100】
【0101】
確認結果、試験薬を投与した患者群が対照薬を投与した患者群に比べて脳梗塞病変の増加率が顕著に低かった。
【0102】
<修正ランキンスケールの評価>
脳卒中やその他神経学的障害を経験した者の日常生活で障害や依存度を評価するために最も広く用いられる方法が修正ランキンスケール(Korean version of modified Rankin Scale、K-mRS)である。K-mRSは、脳卒中による障害(disability)を評価する全般的機能的尺度(global functional outcome scale)として脳卒中の臨床試験において最も普遍的に用いられる尺度である。K-mRSの分布比較(K-mRS distribution shift analysis)は、試験群と対照群の全般的な予後を比較する方法であって、神経保護剤を含む急性期脳卒中治療法の臨床試験において最も勧告する分析方法である。K-mRSは、日常的な生活の独立性と他人の助けが必要な程度によって患者の全般的機能(global functional)を評価する尺度として0~6段階(0:正常、5:ひどい障害、6:死亡)に区分される。29日、90日の時点で、評価者が評価したK-mRS点数に対する割合を提示し、スクリーニング時に評価したpre-mRSは、疾患基礎情報として活用される。K-mRS 0-2(独立的な日常生活が可能な状態)とK-mRS 3-4(神経学的障害がないか些細であって脳卒中発生以前の日常生活を全て行うことができる状態)の割合を比較し、悪い予後を示す患者を比較する際には、伝統的には死亡に該当するK-mRS 6割合を比較する。しかし、K-mRS 5は、死亡と類似した程度の不良である予後なので、本研究ではK-mRS 5-6割合も評価しようとする。
【0103】
<分析方法>
有効性に対する資料は、補正された治療-意向集団(Modified intention-to-treat(mITT))と計画書順応集団(Per-Protocol set(PPS))を用いて分析する。有効性評価時の主分析対象群は、mITTとする。安全性に対する資料は、Safety setを対象として分析する。mITTは、無作為割当以後に臨床試験用医薬品を投与し、1回以上一次有効性評価結果がある全ての試験対象者から得られた資料を分析に含む。また、分析時に実際投与した臨床試験用医薬品と関係なく無作為割当された群によって分析する。
【0104】
<評価>
コホート1及び2の患者から有効性を検討した結果は、下記表4及び表5の通りである。
【0105】
【0106】
【0107】
有効性を検討した結果、試験薬物900mg投与群で試験薬を投与した患者群が対照薬を投与した患者群に比べてK-mRSの結果が顕著に優れた結果を確認した(表5)。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物であって、
前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与され、
前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分の1回投与用量は、700~2000mgであることを特徴とする、請求項1に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記有効成分の1回投与用量は、700~1100mgであることを特徴とする、請求項1に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記第1用量の医薬組成物は、対象体に有効成分を基準として7~13mg/minで静脈投与され、第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与されることを特徴とする、請求項3に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項5】
前記第1用量の医薬組成物と第2用量の医薬組成物は、順次的で且つ連続的に対象体に投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は、脳卒中症状が発生して再灌流を必要とする対象体又は脳卒中症状の発生後に再灌流を施行した対象体に投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は、脳卒中症状の発生後12時間以内に投薬されることを特徴とする、 請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項8】
前記再灌流は、脳卒中症状の発生後10時間以内に行われることを特徴とする、請求項6に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物の投与後の有効成分の血中濃度が24時間の間1000μg/L以上であることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は、tPAと併用投与されることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項11】
前記対象体は、哺乳動物であることを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項12】
前記対象体は、ヒトであることを特徴とする、請求項11に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項13】
対象体は、前記医薬組成物の投与後90日の時点で測定した修正ランキンスケール(Korean version of modified Rankin Scale、K-mRS)が2.5以下であることを特徴とする、請求項11に記載の脳卒中治療用医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物は、安定化剤及び/又はpH調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記pH調節剤は、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記安定化剤は、糖又はその誘導体であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物のpHは、2.5~7であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
有効成分として治療的有効量の10-エトキシ-8-(モルホリノメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-5(6H)-オン、その薬学的に許容可能な塩、その水和物、その塩水和物又はその溶媒化物を含む製剤及び前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針書を含むことを特徴とする、キット。
【請求項19】
前記製剤は、凍結乾燥粉末又はケーキの形態であることを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
安定化剤及び/又はpH調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記指針書は、前記製剤を薬学的に許容される担体にとかして液剤に再構成した後、これを注射用水と混合して投与のための医薬組成物を準備し、前記有効成分の1回投与用量を基準として、前記有効成分の8~20重量%を含む第1用量の医薬組成物は、有効成分を基準として5~15mg/minで対象体に静脈投与し、前記有効成分の残りの投与用量を含む第2用量の医薬組成物は、20~26時間の間対象体に静脈投与することを含む前記製剤を対象体に投与する用法を指示する指針であることを特徴とする、請求項18に記載のキット。
【国際調査報告】