IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グルコマート ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

特表2022-551381小型化アクティブセンシングシステムおよび方法
<>
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図1
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図2
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図3
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図4
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図5
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図6
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図7
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図8
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図9
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図10
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図11
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図12
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図13
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図14
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図15
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図16a
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図16b
  • 特表-小型化アクティブセンシングシステムおよび方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】小型化アクティブセンシングシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022510082
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020072885
(87)【国際公開番号】W WO2021032629
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/887,767
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19192138.6
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19195939.4
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19218195.6
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20158808.4
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522059634
【氏名又は名称】グルコマート ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Glucomat GmbH
【住所又は居所原語表記】Donaupark 13, 93309 Kelheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ライヒル
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM03
4C038KX01
(57)【要約】
本発明は、被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的なアクティブセンシングシステムに関する。さらに、本発明は、被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的な方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的なシステムであって、前記システムが、
(a)約400nm~約1500nmまたは500nm~約1500nmの範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に放出するように適応化された放射源であって、前記身体部位は特に、指先、耳たぶ、手首、前腕および上腕から選択されており、照射された前記身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、放射源と、
(b)前記被験体の従前に照射された前記身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出するためのセンシングユニットであって、
(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように、かつ
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように
適応化された、センシングユニットと、
(c)前記センシングユニット(b)において検出されたIR放射に基づいて、前記生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するための分析ユニットと
を備える、システム。
【請求項2】
前記システムは、約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を放出するための外部放射源を備えていない、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液がグルコースである、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、前記センシングユニットが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記血液中のグルコースの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記少なくとも1つの波長もしくは波長範囲は、特に、約9.2μmの波長、約9.4μmの波長、約9.6μmの波長、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長のうちの少なくとも2つを含む波長範囲、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長を含む波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記放射源(a)が、約550nm~約1200nmの範囲、特に約800nm~約820nmの範囲、例えば約810nm、および/または約590nm~約610nmの範囲、例えば約600nm、および/または約920nm~約980nmの範囲、例えば約940nmのVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記放射源(a)は、LED、レーザーダイオード、vcsel(垂直共振器型面発光レーザー)、またはレーザーである、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記放射源(a)は、多波長放射源である、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記センシングユニット(b)が、少なくとも1つの第1のセンサ、少なくとも1つの第2のセンサ、および任意手段としての少なくとも1つの第3のセンサを備え、
前記少なくとも1つの第1のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記少なくとも1つの第2のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記少なくとも1つの第3のセンサは、存在する場合に、(i)不特定のIR放射を検出するように適応化されており、(ii)不特定のVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、(iii)検出されるVIS/NIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、かつ/または(iv)前記身体部位の温度を計測するための温度センサである、
請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの第1のセンサが、第1の波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、少なくとも1つの他の第1のセンサが、第2の波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記第2の波長範囲が、前記第1の波長もしくは波長範囲と、さらに別の波長もしくは波長範囲とを含み、
前記システムが特に、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、第1のセンサが、約9.2μmの波長を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第1のセンサが、約9.2μm~約9.6μmの波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記約9.2μm~約9.6μmの波長範囲が、約9.2μmの第1の波長と、約9.4μmおよび約9.6μmの少なくとも一方の波長とをさらに含み、特に約9.4μmおよび約9.6μmの波長をさらに含む、
請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、少なくとも2つの異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化された少なくとも2つの異なる第2のセンサを備え、
前記システムが特に、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、第2のセンサが、約8.6μm~9.0μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第2のセンサが、約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、
請求項8または9記載のシステム。
【請求項11】
前記センシングユニット(b)が、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に別々に検出するように適応化された少なくとも1つのセンサを備え、
少なくとも1つの第1の時間間隔において、前記センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
少なくとも1つの第2の時間間隔において、前記センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記センシングユニット(b)が単一のセンサを備える、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記センシングユニット(b)が、光学検出器、特に光学的な光起電力検出器、さらに特にInAsSbベースの検出器である、少なくとも1つのセンサを備える、請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが、前記放射源(a)によって放出されるIR/VIS放射および前記センシングユニット(b)によって検出されるIR放射に対して光学的に透明な材料から少なくとも部分的に作製されたカバーをさらに備え、
前記カバーは、CaFおよび/またはBaFから少なくとも部分的に作製されており、かつ/またはIR放射に対して透明な、かつ任意手段としてVIS/NIR放射に対して透明なプラスチック材料から少なくとも部分的に作製されており、
前記カバーの光学的に透明な材料は、約0.2mm~約2mm、特に約0.5mm~約1.5mm、さらに特に約1mmの厚さを有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、前記身体部位からのIR放射を前記センシングユニット(b)に、特に前記センシングユニット(b)の前記少なくとも1つのセンサに集束させるカバーをさらに備え、特に、前記カバーは、IRフレネルレンズ、または複数のIRフレネルレンズを含むアレイを備える、請求項1から14までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための、請求項1から15までのいずれか1項記載のシステムの使用であって、前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液が血液であり、血液中のグルコース量の変化率が測定される、使用。
【請求項17】
被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための方法であって、前記方法が、
(a)約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの波長範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に照射するステップであって、照射された前記身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、ステップと、
(b)前記被験体の従前に照射された前記身体部位から放出される約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を検出するステップであって、
別々に、(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ、および
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ
を含む、ステップと、
(c)前記生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するために、検出されたIR放射を分析するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記身体部位が、約5μm~約12μmの波長範囲の外部IR放射源によって照射されない、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液が血液である、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記生理的パラメータの濃度が定量的に測定され、かつ/または前記生理的パラメータの量の変化率が測定され、特に非定量的に測定される、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的なアクティブセンシングシステムに関する。さらに、本発明は、被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的な方法に関する。
【0002】
背景
2016年において、約4億1500万人が糖尿病を患っている。2040年には6億4000万人超まで増大することが予想されている。糖尿病患者には失明、腎臓疾患、心臓疾患、卒中などの合併症のリスクがあるので、血液グルコースレベルを細かくモニタリングすることによって疾患を制御することが求められている。
【0003】
現在、血液グルコースの測定は主に侵襲的なシステムおよび方法に基づいており、血液サンプルが採取された後にin vitro試験にかけられたり、グルコースレベルをin vivoで測定するためにセンサが埋め込まれたりする。これらの侵襲的なシステムおよび方法は、痛みを感じたり、不便であったりする、という欠点がある。
【0004】
よって、グルコースおよび/または生理的パラメータの信頼性の高い非侵襲的な測定を可能にするシステムおよび方法を開発する必要がある。
【0005】
発明の概要
本発明によれば、非侵襲的なシステムおよび方法を用いて、生理的パラメータの簡単、迅速かつ信頼性の高い測定が実現可能となる。これらのシステムおよび方法は、約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を被験体、特にヒト被験体の身体部位に照射し、前記被験体の照射された身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出することを含む。驚くべきことに、本発明者は、身体部位、例えば指先、耳たぶ、手首または前腕に短波長の放射を照射し、照射された身体部位から放出される長波長の放射を検出することにより、血液などの体液中のグルコースなどの生理的パラメータを測定できることを見出した。
【0006】
本発明によるVIS/NIR放射を身体部位に照射すると、照射された身体部位の領域内でエネルギ吸収が引き起こされる。この照射された領域、すなわち吸収領域におけるエネルギ吸収は、照射された身体部位内、特に吸収領域内の組織温度の局所的な上昇をもたらし、これにより、照射された身体部位、特に吸収領域からの約5μm~約12μmの範囲のIR放射の放出の増大を含む、IR放射の放出の増大が再び引き起こされる。よって、照射された身体部位から放出されるIR放射の検出が容易となり、実質的に改善される。
【0007】
本発明の第1の態様は、被験体の体液中の生理的パラメータ、特にグルコースを測定するための非侵襲的なシステムであって、システムが、
(a)約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に放出するように適応化された放射源であって、身体部位は特に、指先、耳たぶ、手首、前腕および上腕から選択されている、放射源と、
(b)前記被験体の照射された身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出するためのセンシングユニットであって、
(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように、かつ
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように
適応化された、センシングユニットと、
(c)センシングユニット(b)において検出されたIR放射に基づいて、生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するための分析ユニットと
を備える、システムに関する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための上記のシステムの使用であって、特に、生理的パラメータがグルコースであり、体液が血液である、使用に関する。
【0009】
本発明のまたさらなる態様は、被験体の体液中の生理的パラメータ、特にグルコースを非侵襲的に測定するための方法であって、方法が、
(a)約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの波長範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に照射するステップと、
(b)前記被験体の照射された身体部位から放出される約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を検出するステップであって、
別々に、(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ、および
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ
を含む、ステップと、
(c)生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するために、検出されたIR放射を分析するステップと
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】波長[nm]に応じた身体組織への電磁放射の侵入深さ[mm]を示す図である。
図2】400nm~1100nmの範囲の波長に応じた、人体に存在する特定の化合物の相対的な吸収係数を示す図である。
図3】グルコースの吸収帯を示す図である。
図4】本発明のシステムの実施形態を示す図である。
図5】本発明のシステムのさらなる実施形態を示す図である。
図6】本発明のまたさらなる実施形態を示す図である。
図7】本発明のまたさらなる実施形態を示す図である。
図8】本発明のまたさらなる実施形態を示す図である。
図9】複数の分析物に対して特異的な波長/波長範囲および基準波長/波長範囲での計測を示す図である。
図10】一実施形態を示す図である。
図11】本発明のまたさらなる実施形態を示す図である。
図12】本発明のまたさらなる実施形態を示す図である。
図13図4のシステムの概略図である。
図14】810nmの光を2秒間にわたって照射した後の指先のヒートマップを示す図である。
図15】パワー2mW、周波数0.1Hzで810nmの光を断続的に照射している間の時間依存的な熱パワー出力を指先の自己放出に加えて示す図である。
図16a】本発明のセンシングユニットの実施形態のブロック図である。
図16b図16aに示したセンシングユニットと同様である、本発明のセンシングユニットのさらなる実施形態のブロック図である。
図17】一実施形態を示す図である。
【0011】
詳細な説明
本発明は、被験体、特にヒト被験体の従前に照射された身体部位からの約5μm~約12μmの波長範囲、特に約8μm~約10μmの範囲のIR放射を検出することによって生理的パラメータを測定することを含む。生理的パラメータは、この波長範囲に特性吸収帯を有する任意の化合物でありうる。例えば、生理的パラメータは、グルコース、または乳酸もしくはトロポニンなどの臨床的に関連する別の分析物である。
【0012】
本発明の特定の実施形態では、システムは、血液中のグルコースを非侵襲的に測定するように適応化されている。この実施形態では、IR放射は、グルコースが特性吸収帯を有し、かつ検出されるIR放射の強度が血液中のグルコースの濃度に依存する、グルコースに対して特異的な波長もしくは波長範囲で検出される。さらに特に、グルコースに対して特異的な波長もしくは波長範囲は、約9.2μmの波長、約9.4μmの波長、約9.6μmの波長、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長のうちの少なくとも2つを含む波長範囲、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長の3つ全てを含む波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。付加的に、IR放射は、グルコースが特性吸収帯、特に吸収最小値を有しておらず、かつ検出されるIR放射の強度が血液中のグルコースの濃度に実質的に依存しない、基準波長もしくは波長範囲で検出される。さらに特に、基準波長もしくは波長範囲は、約8.7μm~約9.0μmの波長もしくは波長範囲、約9.7μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0013】
上で概説したように、本発明は、約500nm~約1500nmの波長範囲の電磁放射(VIS/NIR放射)を身体組織に照射し、照射された身体部位から放出される約5μm~約15μmの波長範囲の電磁放射(IR放射)を検出することに基づく。VIS/NIR放射を身体部位に照射すると、局所的なエネルギ吸収によって前記身体部位からのIR放射の自己放出が高められ、局所的な温度上昇が引き起こされることになる。よって、照射された身体部位からのIR放射の自己放出が、前記身体部位のVIS/NIR放射による従前の照射によって増大する。このため、約5μm~約15μmの波長範囲の外部IR放射源による身体部位の照射が必要とされない。よって、特定の実施形態では、本発明のシステムは、外部IR放射源を含まず、特に特定の実施形態では、本発明のシステムは、検出されるIR放射が放出される身体部位を照射するように適応化された外部IR放射源を含まない。
【0014】
図1は、波長[nm]に応じた身体組織への電磁放射の侵入深さ[mm]を示す。侵入深さが波長に依存することが分かる。約400nm~約1500nmの可視(VIS)/近赤外(NIR)波長範囲、特に約500nm~約1500nmの範囲または約400nm~約1200nmの範囲、さらに特に約550nm~約1200nmの範囲では、約1mm以上の、特に約3mm以上の侵入深さが存在する。よって、放射を照射された身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇をもたらすことになる。これにより、体液中に存在する特定の有機化合物、すなわち生理的パラメータが吸収帯を示す、より長い波長のIR放射、例えば約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大が再びもたらされる。これにより、本発明の上記の態様による、そのようなパラメータの定量的または定性的な測定が可能となる。
【0015】
特定の実施形態では、身体部位に放出されるVIS/NIR放射は、約550nm~約1000nmの範囲、特に約800nm~約820nm、例えば約810nm、および/または約590nm~約660nmの範囲、例えば約600nm、および/または約920nm~約980nmの範囲、例えば約940nmである。特定の実施形態では、身体に放出されるVIS/NIR放射は、約450nm~約800nmの範囲である。
【0016】
図2は、400nm~1100nmの範囲の波長に応じた、人体に存在する特定の化合物の相対的な吸収係数を示す。放射を身体部位へ放出させることのできる約600nmおよび約810nmの波長が、具体的に示されている。約500nm~約1050nmの波長範囲では、水(HO)の吸収が比較的少ない。さらに、主要な血液成分であるヘモグロビン(Hb)とオキシヘモグロビン(Hboxy)は、同様の吸収係数を示す。皮膚色素であるメラミンは、波長の増大とともに減少する吸収係数を示す。
【0017】
本発明の実施形態では、放射源(a)は、約920nm~約960nmの範囲、例えば約940nmのVIS/NIR放射を身体部位に放出するように適応化されている。この照射波長は、単独で、または少なくとも1つのさらなる照射波長と組み合わせて使用可能である。図3に示すように、グルコースは、波長940nmに吸収帯を有する。よって、約940nmの波長の照射は、グルコース分子の選択的な励起を招き、IR波長範囲、特に約5μm~約12μmの波長範囲におけるグルコース分子のより多くの吸収をもたらしうる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、放射源(a)は、約920nm~約980nmの範囲、例えば約940nmのVIS/NIR放射を前記被験体の身体部位に放出するように適応化されており、センシングユニット(b)は、約940nmの波長を有するVIS/NIR放射を検出するようにさらに適応化されており、検出されるVIS/NIR放射の強度はグルコースの濃度に依存する。VIS/NIR波長範囲の計測信号は、例えば比較器によって、上述したようなIR範囲の計測信号と組み合わされてもよい。
【0019】
またさらなる実施形態では、VIS/NIRの照射が、少なくとも2つの異なる波長の組み合わせ、特に、約800nm~約820nm、例えば約810nmの第1の波長と、約920nm~約980nm、例えば約940nmの第2の波長との組み合わせで行われる。
【0020】
図4は、本発明のシステムの実施形態を示す。身体部位(1)、例えば指先が、身体部位(1)内の吸収領域(2)への照射を行うように適応化されたシステムとの接触状態に置かれる。
【0021】
システムは、光学的に透明な材料から少なくとも部分的に作製されたカバー(3)を備える。例えば、カバーは、約5μm~約12μmのIR波長範囲またはその部分範囲、例えば約8μm~約12μmにおいて透明であり、かつ任意手段としての、約400nm~約1500nmまたはその部分範囲のVIS/NIR波長範囲において透明である、CaFおよび/もしくはBaFまたはプラスチック材料から少なくとも部分的に作製される。好適なIR透過プラスチック材料は、例えば、Fresnel Technologies(Fort Worth,Texas,USA)から市販されているPolyIRプラスチック材料などである。特定の実施形態では、カバーは、約0.2mm~約2mm、特に約0.5mm~約1.5mm、さらに特に約1mmの厚さを有しうる。
【0022】
システムは、フィルタ要素(5)および任意手段としてのレンズ要素(図示せず)を備えうる少なくとも1つのセンサ(4)をさらに備え、レンズ要素は、例えば、センサ(4)とフィルタ要素(5)との間に配置されていてよい。センサ(4)は、回路基板(6)上に取り付けられていてもよい。さらに、システムは、少なくとも1つの放射源(9,9a)を備える。例えば、システムは、センサ(4)と同じ側に配置された放射源(9)、および/またはセンサ(4)とは反対の身体部位(1)の側に位置する放射源(9a)を備えていてよい。所望により、被験体の正確な皮膚温度をモニタリングするために、フィルタ要素(5)を備えていないさらなるセンサ(4)を設けてもよい。
【0023】
システムは、1つ以上のセンサ(4)を含む。図4の実施形態では、システムは、4つの異なるセンサ(4)を備える。センサは、所望によりロックインアンプと組み合わせて使用されうる、光学検出器、特に光学的な光起電力検出器、例えばInAsSbベースの検出器であってよい。光起電力検出器、例えばInAsSbベースの検出器は、立ち上がり時間がわずか数ナノ秒であり、身体部位が断続的に照射される装置に特に有用である。他の実施形態では、センサは、熱検出器、例えばサーモパイルまたはボロメータであってもよい。好適なセンサとしては、光起電力検出器(例えば、Hamamatsu P13894)、サーモパイル(例えば、Heimann HCS C21 F8-14)または他のタイプのIRセンサ(例えば、Sensirion STS21またはMelexis MLX90632)が挙げられる。所望により、センサ(4)が、所望の波長もしくは波長範囲の放射を選択的に透過させることができるフィルタ要素(5)を備えていてもよい。フィルタ要素は、例えば約50~100nmの狭い帯域幅、または、例えば約400nm以上の、より広い帯域幅を有してもよい。フィルタは、それぞれの波長に対して光学的に透過性である、ゲルマニウムまたは他のフィルタ材料から作製されていてよい。さらに、センサは、このセンサに入射する光を集束させることができるレンズ要素、例えばマイクロレンズを備えていてもよい。
【0024】
特定の実施形態では、センサ表面は、その感度を高めるために、AuまたはAg、特にAuなどの貴金属でコーティングされていてよい。Bundt焼き皿(baking-pan)として形成可能なこうしたコーティングが、Awad(Nature Scientific Reports 9:12197(2019))に記載されており、この文献の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0025】
特定の実施形態では、センサは、約1mm~約10000mm、例えば約10mm~約1000mmの面積を有する小型化センサである。特定の実施形態では、センサは、さらにより小型化されてもよく、例えばASIC(特定用途向け集積回路)であってもよい。
【0026】
本発明のセンシングユニットでは、少なくとも1つのセンサが、分析物に対して特異的なセンサ、すなわち、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されたセンサであってよく、少なくとも1つのセンサは、基準センサ、すなわち、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されたセンサであってもよい。
【0027】
特定の実施形態では、センシングユニット(b)は、従前に照射された身体部位から自己放出されるIR放射、すなわち、外部IR源による照射なしに被験体の体熱によって生じたIR放射を検出するように適応化されている。さらに、センシングユニット(b)は、従前に照射された身体部位内の吸収領域から放出されるIR放射を検出するように適応化されていてよく、吸収領域は、局所的に温度が上昇し、約5μm~約12μmの波長範囲におけるIR放射の放出の増大を示す。
【0028】
特定の実施形態では、少なくとも1つのさらなるセンサ、例えば、(i)不特定のIR放射を検出するように適応化されたセンサ、(ii)不特定のVIS/NIR放射を検出するように適応化されたセンサ、(iii)検出されるVIS/NIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化されたセンサ、および/または(iv)身体部位の温度を計測するための温度センサが存在してもよい。
【0029】
特定の実施形態では、少なくとも1つのさらなる分析物に対して特異的なセンサ、すなわち、検出されるVIS/NIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化されたセンサが存在してもよい。例えば、約940nmの波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化された少なくとも1つのさらなるセンサが存在してもよい。
【0030】
さらに、デバイスは、光源(9)が取り付けられた回路基板(7)と、能動的および/または受動的なヒートシンク(8)とを備えていてよい。
【0031】
VIS/NIR放射源(9,9a,9b)は、コリメートされた放射を放出するように適応化可能であり(例えば、レーザーベースの光源)、かつ/またはコリメートされていない放射を放出するように適応化可能である(例えば、LEDベースの光源)。例えば、光源は、LED、レーザーダイオード、VCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)、またはレーザーから選択されうる。特定の実施形態では、約650nm~約950nmの範囲、特に約750nm~約850nmの範囲、さらに特に約780nm~約820nmの範囲のVIS/NIR放射を放出するように適応化可能な広帯域VIS/NIR放射エミッタが使用される。好適なVIS/NIRエミッタは、例えばOsram社によるOSLON製品、OSLON SFH 4763である。
【0032】
放射源は、約400nm~約1500nmの範囲、特に約500nm~約1500nmの範囲のVIS/NIR放射を放出するように適応化されている。VIS/NIR放射は、所定の時間間隔を通じて連続的または断続的に放出されてもよい。
【0033】
特定の実施形態では、放射源は、照射された身体部位、例えば指先の温度、特に照射された身体部位内の吸収領域の温度の局所的な上昇を引き起こすように適応化されている。温度の局所的な上昇は、約1℃~約15℃の範囲、特に約2℃~約10℃、さらに特に約3℃~約5℃の範囲であってよい。照射された身体部位、例えば指先の局所的な温度上昇は、約45℃まで、約40℃まで、または約37℃までの温度範囲、例えば約30℃~約35℃または約30℃~約32℃の温度範囲であってもよい。この局所的な温度上昇により、照射された身体部位、特に照射された身体部位内の吸収領域からのIR放射の自己放出が高められることになる。
【0034】
特定の実施形態では、放射源は、約10mW~約1W、特に約20mW~約500mW、さらに特に約50mW~約250mW、なおさらに特に約100mW~約200mW、例えば約150mWのパワーで、約0.1~約20秒、特に約0.2秒~約5秒、さらに特に約0.5秒~約2秒、例えば約1秒の時間間隔において連続的に放射を放出するように適応化されていてもよい。
【0035】
さらなる実施形態では、放射源は、約10mW~約5W、特に約20mW~約1W、さらに特に約50mW~約500mWのパワーで、約0.1秒~約20秒、特に約0.2秒~約5秒、さらに特に約0.5秒~約2秒の時間間隔において断続的に放射を放出するように適応化されていてもよい。放射は、約1Hz~約1MHzのパルス周波数で断続的に放出されるように適応化されていてもよい。
【0036】
さらなる実施形態では、放射源は、複数の異なる波長、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個またはさらにより多くの異なる波長でVIS/NIR放射を放出するように適応化されてもよい。例えば、放射源はマルチLEDチップであってよい。多波長放射源の使用により、身体部位の特定の特徴、例えば、色素沈着、皮膚の厚さ、角質の有無などに応じて、照射される身体部位の組織への電磁放射の所定の侵入深さを調節することができる。前述の図1に示したように、身体組織への侵入深さは波長によって変化し、異なる波長または異なる波長の組み合わせを有するVIS/NIR放射の使用は、所望により、各被験体および/または各身体部位に個々に適合させることができる。
【0037】
特定の実施形態では、放射源(a)は、幾つかの異なる波長もしくは波長範囲、例えば、約400nm~約1200nm、さらに特に約450nm~約900nm、例えば、約470nm、約520nm、約590nm、約650nm、約750nmおよび約810nmの波長から選択されうる少なくとも2個、3個、4個、6個または8個の波長で、VIS/NIR放射を放出するように適応化された多波長放射源である。
【0038】
本発明のシステムのさらなる実施形態が、図5に示されている。ここでは、単一の放射源(9a)が、フィルタ(5)を備えた少なくとも1つのセンサ(4)とフィルタ(5a)を備えたさらなるセンサ(4a)とを備えるセンシングユニットとは反対の、身体部位(1)の側に設けられる。特定の実施形態では、センサ(4a)は、光センサ、例えばフォトダイオードである。これは、放射源(9a)からの透過放射の基準計測、例えば、約600nmおよび/または約810nmおよび/または約940nmの波長の放射を計測するように適応化されている。このために、フィルタ要素(5a)は、約600nmおよび/または約810nmおよび/または約940nmのバンドパスフィルタであってよい。
【0039】
本発明のまたさらなる実施形態が、図6に示されている。ここでは、身体部位(1)内の吸収領域(2)への直接のアクセスが、放射によるデバイスのカバー構造の通過なしにかつ/または身体表面の角質構造、例えば指の爪および/または角質の通過なしに、身体部位の皮膚を通して提供される、放射源(9b)が、身体部位(1)、例えば指先の側に設けられる。これにより、干渉、例えばカバー構造による干渉、または角質もしくは爪のケラチン物質、およびマニキュアによる任意の干渉を低減または排除することができる。この実施形態によれば、単一の放射源(9b)または複数の放射源(9b)、例えば2個、3個、4個、6個または8個の放射源が、身体部位(1)、例えば指先の周囲の位置に設けられていてよい。複数の放射源が存在する場合、これらは好ましくは身体表面の約3mm~約5mm下方にありうる、身体部位内の単一の吸収領域(2)に放射を放出するように適応化されている。
【0040】
本発明のまたさらなる実施形態が、図7に示されている。この実施形態では、身体部位から放出されるIR放射をセンシングユニットの少なくとも1つのセンサ(4)に集束させるように適応化されたカバー(3)が設けられる。これにより、センサ上の放射強度、ひいては計測の感度および/または精度が向上しうる。カバー(3)は、センサ上で検出される波長範囲のIR放射、特に約5μm~約12μmまたはその部分範囲、例えば約8μm~約12μmの波長範囲のIR放射に対して実質的に透明である材料、例えば、プラスチック、金属、金属酸化物または複合材料からなる。好適な材料は、例えば前述のPolyIRプラスチック材料である。この実施形態では、カバー(3)は、IRフレネルレンズ、すなわち、通過するIR放射を効率的に集束させることができる大きな開口および短い焦点距離を有するレンズ、または複数の、例えば10個までもしくはより多数のIRフレネルレンズを含むアレイを備えていてよい。特定の実施形態では、アレイは、約50nm~約500μmの範囲の直径を有しうるIRフレネルマイクロレンズ、例えば100個または1000個までのマイクロレンズを備えていてもよい。特定の実施形態では、IRフレネルレンズは、約3mm~約10mm、例えば約5mmのバックフォーカス長を有していてよく、IR透過プラスチックから製造されていてよい。例えば、8~14μmの波長範囲において光学的に透明である好適なIRフレネルレンズが、Edmund Optics社(製品ファミリ番号2042)から市販されている。
【0041】
さらに、図7は、センサ(4)を備えるセンシングユニットの位置とは反対の身体部位の側に設けられた放射源(9a)を示している。しかし、1つ以上の放射源が、例えば図6に示したように、身体部位(1)の周囲に配置されてもよいことに留意されたい。この実施形態では、例えば図4および図5に示したように、複数の異なるセンサが存在してもよいことにさらに留意されたい。
【0042】
図4および図5に示したように、本発明のシステムは、複数の異なるセンサ(4)を備えていてもよい。特定の実施形態では、システムは、第1のセンサが、第1の波長もしくは波長範囲、例えば約9.2μmの波長の放射を検出するように適応化されており、少なくとも別の第1のセンサが、第1の波長もしくは波長範囲を含む、また別の波長もしくは波長範囲をさらに含む第2の波長範囲のIR放射を検出するように適応化された、複数の分析物に対して特異的なセンサ、例えばグルコース特異センサを備えてもいてよい。例えば、他の第1のセンサは、約9.2μmの波長の、付加的に約9.4μmの波長および/または約9.6μmの波長の、特に約9.4μmの波長および約9.6μmの波長のIR放射を検出するように適応化されていてもよい。
【0043】
さらに、センシングユニットは、異なる波長もしくは波長範囲の基準放射を検出するように適応化された複数の基準センサを備えてもよい。例えば、グルコースを測定する場合、基準センサが、約8.6μm~約9.0μmの波長範囲を有する放射を検出するように適応化されてもよい。別の基準センサが、約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲を有する放射を検出するように適応化されている。
【0044】
本発明のまたさらなる実施形態が、図8に示されている。この実施形態では、身体部位(1)、例えば指先のための支持体(16)が設けられ、前記支持体(16)は、身体部位(1)の一部分(15)を受け入れるように適応化された開口部を備える。例えば、支持体は、その中心に開口部、例えば実質的に円形の開口部を有する環状構造体を備えていてよい。システムは、身体部位(1)の一部分(15)、例えば指先の一部分が開口部に押し込まれるように、身体部位(1)を支持体(16)の開口部に押し付けるように適応化されている。よって、部分(15)内の血管を含む組織が圧縮され、部分(15)内の毛細血管の血液量の増大をもたらす。これにより、信号強度、ひいては計測の感度および/または精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、図8のシステムは、図7の文脈で上述したようなIRフレネルレンズとして形成されうるカバー(3)を含む。しかし、他のカバーも好適であることに留意されたい。さらに、センサ(4)を備えるセンシングユニットの位置とは反対の身体部位の側に設けられた放射源(9a)が示されている。しかし、1つ以上の放射源がまた、例えば図6に示したように、身体部位(1)の周囲に配置されていてもよいことに留意されたい。さらに、この実施形態では、例えば図4および図5に示したように、複数の異なるセンサが存在してもよいことに留意されたい。
【0046】
図9には、複数の分析物に対して特異的な波長/波長範囲および基準波長/波長範囲での計測が示されている。
【0047】
グルコースの吸収信号(24)は、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの3つの異なるピークを有する。第1のグルコース特異センサが、9.2μmのピークのみを計測するように適応化されうる。このようなセンサは、狭い範囲(22)のみの放射を透過させることができるフィルタ要素によって適応化される。よって、センサは、この狭い範囲内の放射を選択的に検出することができる。さらなるグルコース特異センサが、約9.1μm~約9.7μmのより広い範囲の放射を計測し、これにより約9.2μm、9.4μmおよび9.6μmのピークを含むように適応化されていてもよい。このセンサは、より広い範囲(21)の放射を透過させることができるフィルタ要素によって適応化されていてもよい。
【0048】
2つの基準センサが設けられていてもよく、ここで、各前記基準センサは、約8.6μm~約9.0μm、特に約8.8μm~8.9μmの範囲の波長の放射(20)、および/または約9.8μm~約10.2μm、特に約9.9μm~10.1μmの範囲の波長の放射(23)をそれぞれ透過させることができるフィルタ要素を備える。
【0049】
約9.2μmの波長での計測と、9.2μmのピークを含み、他のピークの少なくとも1つ、特に約9.6μmのピークを含む波長範囲での計測とを別々に並行して行うと、被験体の血液にエタノールが含まれているかどうかを判断できるので、さらなる利点が得られる。エタノールおよび他のアルコールは、約9.6μmの波長に吸収帯を有するが、約9.2μmの波長には有していないので、9.2μmのピークと9.6μmのピークとの間の比が、血中アルコールによって生じる外乱を測定し、かつ任意手段として補正するために使用されうる。
【0050】
代替的な実施形態では、第1のグルコース特異センサが9.6μmのピークのみを計測するように適応化されていてもよい。このようなセンサは、狭い範囲のみの放射を透過させることができるフィルタ要素を備える。さらなるグルコース特異センサが約9.4μm~約9.6μmのより広い範囲の放射を計測し、これにより約9.4μmおよび約9.6μmのピークを含むが、9.2μmのピークを含まないように適応化されてもよい。このセンサは、より広い範囲の放射を透過させることができるフィルタ要素を備えてもよい。
【0051】
さらなる代替的な実施形態では、約7.8μm~約8.2μm、特に約7.9μm~約8.1μmの範囲の波長を有する放射を透過させることができるフィルタ要素を備えた基準センサが、任意手段としての、約8.8μm~9.2μmの範囲の波長を有する放射および/または約9.8μm~10.2μmの波長を有する放射をそれぞれ透過させることができるフィルタ要素を備えた少なくとも1つのさらなる基準センサと組み合わせて設けられてもよい。
【0052】
本発明のまたさらなる実施形態では、システムは、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に検出するように適応化されたセンサを備えていてよい。この実施形態では、システムは、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を透過させるように適応化された複数のフィルタを備えるセンサを備えていてよく、前記フィルタは、計測サイクルの異なる段階中にセンサ上に配置され、これによって計測サイクル内の異なる波長もしくは波長範囲の検出を可能にする。このような実施形態が、図10に示されている。ここでは、軸(11)を中心として回転可能なフィルタホイール(10)と、軸を中心として回転可能なシャッタホイール(13)とを備えるシステムが提供される。フィルタホイールおよびシャッタホイールは、放射源(図示せず)からの光が被験体の身体部位(図示せず)へと通過しうる照明孔(15)を備える。照射された身体部位からの反射光は、上述したような分析物に対して特異的なフィルタ要素および/または基準フィルタ要素を備えうるフィルタホイール(10)の異なる孔(14)を通過しうる。フィルタホイール(10)およびシャッタホイール(13)の位置は、磁気センサと組み合わせた磁石(12)を用いてモニタリングされうる。動作中、これらは所定の周波数で回転され、これにより、所定の時間間隔で放射源からの放射を身体部位へと時間依存的に通過させ、フィルタホイール(10)の異なる孔(14)を通してセンサ(図示せず)まで、身体部位から放出される放射を時間依存的に通過させることができる。
【0053】
代替的な実施形態(図示せず)では、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に検出するように適応化されたセンサが、ファブリペロー干渉計、例えば、所望のIR波長範囲に関するMEMS分光器(参照:Tuohinieni et al.,J.Micromech. Microeng.22(2012),115004;Tuohinieni et al.,J.Micromech.Microeng.23(2013),075011)であってもよい。
【0054】
特定の実施形態では、システムは、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に検出するように適応化された単一のセンサを備える。このセンサは、異なるフィルタ、例えばフィルタホイールを備えてもよく、または上述したようなファブリペロー干渉計であってもよい。
【0055】
本発明のシステムは、センシングユニット(b)において検出されたIR放射に基づいて生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するための分析ユニット(c)をさらに備える。分析ユニットは、例えばA/D変換器およびマイクロコントローラを備えていてもよい。計測された信号の分析は、強度および/または減衰時間に基づきうる。
【0056】
本発明のまたさらなる実施形態が、図11に示されている。この実施形態のシステムは、被験体の身体に持続的に固定されるように適応化されている。このシステムは特に、所定の時間間隔において複数の計測を実施するように適応化されている。システムは、ハウジング(30)と、このハウジングを身体(33)、例えば手首または前腕の周りに固定するためのストラップ(31)とを備える。さらに、システムは、身体部位(33)の吸収領域(34)にVIS/NIR光を放出するための放射源と、照射された身体部位から放出されるIR放射を検出するためのセンサとを備える。
【0057】
本発明のまたさらなる実施形態が、図12に示されている。この実施形態のシステムは、被験体の身体に持続的に固定されるように適応化されており、特に、所定の時間間隔において複数の計測を実施するように適応化されている。システムは、ハウジング(30)と、このハウジングを身体(33)、例えば手首や前腕の周りに固定するためのストラップ(31)とを備える。さらに、システムは、身体部位(33)の吸収領域(34)にVIS/NIR光を放出するための複数の放射源、例えば2つの放射源と、照射された身体部位から放出されるIR放射を検出するためのセンサとを備える。これらの放射源から放出される光は、身体部位(33)の表面に斜めに、例えば約30°~約75°の角度で入射しうる。
【0058】
図13には、図4のシステムの概略図が示されている。
【0059】
図14は、810nmの光を2秒間にわたって照射した後の指先のヒートマップを示している。
【0060】
図15は、パワー2mW、周波数0.1Hzで810nmの光を断続的に照射している間の時間依存的な熱パワー出力を指先の自己放出に加えて示す図である。
【0061】
図16aは、本発明のセンシングユニットの実施形態のブロック図を示している。関心領域(ROI)、すなわち被験体、特にヒト被験体の皮膚組織が、940nmの波長を有するVIS/NIR放射を放出する第1の光源、約810nmの波長を有するVIS/NIR放射を放出する第2の光源、および任意手段としての、約600nmの波長を有するVIS/NIR放射を放出する第3の光源によって照射される。関心領域を透過した、または関心領域から反射された放射が、センシングユニットによって分析される。さらに、デバイスは温度センサを備える。
【0062】
センシングユニットは、複数のセンサ、例えば分析物に対して特異的なIRセンサ(1)および(2)、ならびに基準センサ、例えばIRセンサ(4)を備える。グルコースの測定のために、IRセンサ(1)は、約9.2μmの波長に対して透過性である第1の光学フィルタを備えていてよく、IRセンサ(2)は、約9.2μm~約9.6μmの波長範囲に対して透過性である第2の光学フィルタを備えていてよい。基準センサ(4)が、約8.6μm~約9.0μmの波長もしくは波長範囲および/または約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲に対して透過性である、第4の光学フィルタを備えていてもよい。さらに、センシングユニットは、グルコースが強い吸収帯を有する約940μmの波長を有するVIS/NIR放射を検出するためのNIRセンサを備える。NIRセンサは、この波長に対して透過性である好適な光学フィルタを備える。さらに、センシングユニットは、関心領域における皮膚組織の温度を計測するための温度センサを備えてもよい。それぞれのセンサは、最初の信号増幅のために増幅器(アンプ)に結合されていてもよい。個々のセンサからの信号は、比較器を用いて他のセンサからの信号によって参照されてよく、これによって計測精度および/または信号品質が改善される。例えば、940nmのNIRセンサからの計測信号が、分析物に対して特異的なIRセンサ(1)からの計測信号によって参照されうる。代替的または付加的に、940nmのNIRセンサからの計測信号が、分析物に対して特異的なIRセンサ(1)および/または分析物に対して特異的なIRセンサ(2)および/または基準IRセンサ(4)からの計測信号によって参照されてもよい。計測された信号、および任意手段としての参照信号が、ロックインアンプユニットによってさらに増幅され、マイクロコントローラユニットに送信される。ロックインアンプから光源へのフィードバック制御も提供されうる。信号および/または内部アルゴリズムの結果が、マイクロコントローラユニットから、例えば直接の接続によって、またはBluetoothおよび/またはWLANを介して、ディスプレイユニットおよび/または別のデバイスに送信されてもよい。
【0063】
図16bは、図16aに示したセンシングユニットと同様の、本発明のセンシングユニットのさらなる実施形態のブロック図を示す。ここでは、付加的または代替的に、多波長光源、例えば、複数の個々のダイオードを備える多波長LEDが設けられる。多波長光源は、例えば400nm~約700nmの波長範囲を有してもよく、マイクロコントローラユニットによって操作されてもよい。さらに、アンプ(AMP)に結合された温度センサが存在する。この温度センサもまた、マイクロコントローラユニットによって操作されてもよい。
【0064】
本発明のまたさらなる実施形態では、システムは、例えば約7μm~約12μmの範囲、特に約8μm~約10μmの範囲を含む、関心対象となる波長範囲内のIRスペクトルを検出するように適応化された、スペクトルもしくはラインセンサまたはスペクトルもしくはラインセンサアレイ、典型的にはボロメータまたはサーモパイルアレイを備えていてよい。照射された身体部位からのIR放射をスペクトル分割または回折デバイスに通過させ、次いでセンサまたはセンサアレイに通過させることによって、IRスペクトルが生成されうる。このような実施形態が、図17に示されている。照射された身体部位(71)、例えば指先から放出されるIR放射(70)が、任意手段としての、IR放射を集束させるように適応化された集束要素(72)、例えばレンズまたは凹面鏡要素によって集束され、次いでスペクトル分割または回折要素(73)、例えばプリズムまたは透過性もしくは反射性の光学格子へと進行し、そこでIR放射がその波長に従って分割される。回折した放射は、そこからスペクトルセンサもしくはラインセンサまたはセンサアレイ(74)、典型的にはボロメータまたはサーモパイルアレイへと進行し、そこで、関心対象となる波長範囲、例えば上述したように、例えば、分析物に対して特異的な波長もしくは波長範囲および基準波長もしくは波長範囲を含む8μm~約20μmのIRスペクトルが検出される。関心対象となる生理的パラメータ、例えばグルコースの量は、所定の分析物に対して特異的な波長と基準波長との相対強度に従って、スペクトル分析によって測定されてもよい。
【0065】
本発明のシステムおよび方法は、計測される生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定すること、特に血液中のグルコースを定性的にかつ/または定量的に測定することを可能にする。
【0066】
特定の実施形態では、生理的パラメータの濃度、例えば血液中のグルコースの濃度は、定量的に測定される。特定の実施形態では、生理的パラメータ、例えばグルコースの計測量の変化率が測定される。これらの実施形態は、非定量的な計測、例えば、単位時間当たりの分析物量の変化、すなわち、単位時間当たりの分析物量の増大または分析物量の減少の相対的な計測を含んでもよい。分析物量の一方向への変化すなわち増大または減少が所定のレベルおよび/または時間を超えた場合、システムは警告を発生させる。この実施形態は特に、被験体の身体、例えば手首、前腕または上腕の周りに持続的に固定されうる、図11および図12に示したようなシステムに有用である。この実施形態は、グルコースレベルの常時モニタリングに対して適応化されていてよい。
【0067】
特定の実施形態では、本発明のシステムは、非定量的計測と定量的計測の両方を行うように適応化されている。例えば、システムは、非定量的計測を行うように、例えば、標準的な動作中の経時的な分析物量の変化、例えば増大または減少を定性的に計測するように適応化されていてよい。非定量的計測は、例えば、必要に応じて、連続的および/または断続的なモニタリング計測として行われてもよい。分析物量の変化が所定のレベルおよび/または時間を超えた場合、システムは、より詳細な情報を提供するために定量的計測に切り替えるように適応化されている。これらの実施形態では、身体、例えば手首や足首に持続的に固定されるように適応化されたシステムが使用されうる。このようなシステムの具体的な実施形態は、図11および図12に示されている。
【0068】
特定の実施形態では、システムは、幾つかの異なる身体部位の非定量的計測、例えば連続的および/または断続的なモニタリング計測と定量的計測とを行うように適応化されている。例えば、システムは、第1の身体部位、例えば、システムが持続的に固定されうる、手首や足首などの身体部位の非定量的計測を行い、第2の身体部位、例えば、毛細血管によりアクセスしやすい、耳たぶや指先などの身体部位の定量的計測を行うように適応化されていてよい。第2の身体部位の計測を行うために、システムは、第1の身体部位から取り外され、第2の身体部位に特に直接に接触させられる。第2の身体部位の計測を行った後に、システムはそこから取り外され、例えば第1の身体部位に固定することにより、第1の身体部位に再び接触させられてもよい。具体的な実施形態では、第1の身体部位は手首であり、かつ/または第2の身体部位は指先である。
【0069】
本発明のまたさらなる態様は、血中アルコールによって生じる外乱の識別および任意の補正を可能にする、血液中のグルコースを測定するための非侵襲的なシステムであって、
前記被験体の身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出するための、(i)約9.2μmの波長のIR放射を検出し、それとは別に少なくとも約9.2μmおよび約9.6μmの波長のIR放射、特に約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長を含む波長範囲のIR放射を検出するように適応化された、センシングユニットと、
上記のセンシングユニットとは別にグルコースを測定する分析ユニットと
を備える、システムである。
【0070】
本発明のまたさらなる態様は、このシステムを使用して被験体の血液中のグルコースを非侵襲的に測定するための方法である。
【0071】
これらの態様の好ましい特徴は、上記の明細書において先に示した通りである。
【0072】
本発明のまたさらなる態様は、身体部位から放出されるIR放射を計測するための、任意手段としてのロックインアンプと組み合わせた、InAsSbセンサの使用である。
【0073】
この態様の好適な特徴は、上記の明細書において先に示した通りである。
【0074】
本発明のまたさらなる態様は、グルコースを非定量的に計測するためのシステムおよび方法であって、所定の時間間隔中の複数の計測を含み、分析物量の変化を示す計測信号の変化を測定し、グルコース量の一方向への変化すなわち増大または減少が所定の時間内で特定のレベルを超えた場合に警告を発生させる、システムおよび方法である。このシステムおよび方法は、グルコースレベルの常時モニタリングに適応化されてもよい。
【0075】
この態様の好適な特徴は、上記の明細書において先に示した通りである。
【0076】
以下では、本発明の特定の態様および実施形態を明細書の一部として記述する。
【0077】
本明細書の実施形態
1. 被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的なシステムであって、システムが、
(a)約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に放出するように適応化された放射源であって、照射された身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、放射源と、
(b)前記被験体の従前に照射された身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出するためのセンシングユニットであって、
(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように、かつ
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように
適応化された前記センシングユニットと、
(c)センシングユニット(b)において検出されたIR放射に基づいて、生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するための分析ユニットと
を備える、システム。
【0078】
2. システムは、約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を放出するための外部放射源を備えていない、実施形態1記載のシステム。
【0079】
3. 生理的パラメータが、約5μm~約12μmのIR範囲、特に約8μm~約10μmの範囲に少なくとも1つの特性吸収帯を有する化合物から選択される、実施形態1または2記載のシステム。
【0080】
4. 生理的パラメータがグルコースである、実施形態1から3までのいずれか1つ記載のシステム。
【0081】
5. 体液が血液である、実施形態1から4までのいずれか1つ記載のシステム。
【0082】
6. システムが、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、前記センシングユニットが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の血液中のグルコースの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記少なくとも1つの波長もしくは波長範囲は、特に、約9.2μmの波長、約9.4μmの波長、約9.6μmの波長、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長のうちの少なくとも2つを含む波長範囲、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの3つ全ての波長を含む波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択されている、実施形態1から5までのいずれか1つ記載のシステム。
【0083】
7. システムが、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、前記センシングユニットが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の血液中のグルコースの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記少なくとも1つの波長もしくは波長範囲が特に、約8.7μm~約9.0μmの波長もしくは波長範囲、約9.7μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択されている、実施形態1から6までのいずれか1つ記載のシステム。
【0084】
8. システムが、単一の放射源(a)を備える、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のシステム。
【0085】
9. システムが、複数の放射源(a)、例えば、2個、3個、4個またはそれ以上、例えば10個までの個々の放射源(a)を備える、実施形態1から7までのいずれか1つ記載のシステム。
【0086】
10. 放射源(a)が、約400nm~約1200nmの範囲、特に約550nm~約1100nmの範囲、特に約800nm~約820nmの範囲、例えば約810nm、および/または約590nm~約660nmの範囲、例えば約600nm、および/または約920nm~約980nmの範囲、例えば約940nmのVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、実施形態1から9までのいずれか1つ記載のシステム。
【0087】
11. 放射源(a)が、コリメートされた放射を放出するように適応化されており、かつ/またはコリメートされていない放射を放出するように適応化されている、実施形態1から10までのいずれか1つ記載のシステム。
【0088】
12. 放射源(a)が、LED、レーザーダイオード、vcsel(垂直共振器型面発光レーザー)、またはレーザーである、実施形態1から11までのいずれか1つ記載のシステム。
【0089】
13. 放射源(a)が、所定の時間間隔を通じて連続的または断続的にVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、実施形態1から12までのいずれか1つ記載のシステム。
【0090】
14. 放射源(a)が、照射された身体部位、特に照射された身体部位内の吸収領域において約2℃~約10℃の範囲、特に約3℃~約5℃の範囲の温度の局所的な上昇を得るためにVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、実施形態1から13までのいずれか1つ記載のシステム。
【0091】
15. 放射源(a)が、約10mW~約1W、特に約20mW~約500mW、さらに特に約50mW~約250mWのパワーでVIS/NIR放射を連続的に放出するように適応化されている、実施形態13または14記載のシステム。
【0092】
16. 放射源(a)が、約0.1秒~20秒、特に約1秒~約5秒、さらに特に約0.5秒~約2秒の時間間隔にわたってVIS/NIR放射を連続的に放出するように適応化されている、実施形態13、14または15記載のシステム。
【0093】
17. 放射源(a)が、約10mW~約5W、特に約20mW~約1W、さらに特に約50mW~約500mWのパワーでVIS/NIR放射を断続的に放出するように適応化されている、実施形態13または14記載のシステム。
【0094】
18. 放射源(a)が、約0.1秒~約20秒、特に約0.2秒~約5秒、さらに特に約0.5秒~約2秒の時間間隔にわたってVIS/NIR放射を断続的に放出するように適応化されている、実施形態13、14または17記載のシステム。
【0095】
19. 放射源(a)が、約1Hz~約1MHzのパルス周波数でVIS/NIR放射を断続的に放出するように適応化されている、実施形態13、14、17または18記載のシステム。
【0096】
20. 放射源(a)が多波長放射源であり、特に、放射源が、約400nm~約1200nm、さらに特に約450nm~約900nmの幾つかの、例えば2個、3個、4個、6個、8個、10個またはそれ以上の異なる波長もしくは波長範囲の、例えば、約470nm、約520nm、約590nm、約650nm、約750nmおよび約810nmから選択されうる少なくとも2個、3個、4個、6個または8個の波長のVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、実施形態1から19までのいずれか1つ記載のシステム。
【0097】
21. 放射源(a)が、センシングユニット(b)とは反対に位置する身体部位の側に設けられている、実施形態1から20までのいずれか1つ記載のシステム。
【0098】
22. 少なくとも1つの放射源(a)が、放射をシステムの一部を通過させずに身体部位に直接に放出することの可能な身体部位の側に設けられている、実施形態1から21までのいずれか1つ記載のシステム。
【0099】
23. 少なくとも1つの放射源(a)が、放射を身体表面の角質部分、例えば指の爪を通過させずに身体部位内に直接に放出することの可能な身体部位の側に設けられている、実施形態1から22までのいずれか1つ記載のシステム。
【0100】
24. センシングユニット(b)が、従前に照射された身体部位から自己放出されるIR放射を検出するように適応化されている、実施形態1から23までのいずれか1つ記載のシステム。
【0101】
25. センシングユニット(b)が、従前に照射された身体部位内の吸収領域から放出されるIR放射を検出するように適応化されており、吸収領域が、局所的に温度が上昇し、約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大を示す、実施形態1から24までのいずれか1つ記載のシステム。
【0102】
26. センシングユニット(b)が、少なくとも1つの第1のセンサ、少なくとも1つの第2のセンサ、および任意手段としての少なくとも1つの第3のセンサを備え、
少なくとも1つの第1のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
少なくとも1つの第2のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
少なくとも1つの第3のセンサは、存在する場合に、(i)不特定のIR放射を検出するように適応化されており、(ii)不特定のVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、(iii)検出されるVIS/NIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、かつ/または(iv)身体部位の温度を計測するための温度センサである、
実施形態1から25までのいずれか1つ記載のシステム。
【0103】
27. 少なくとも1つの第1のセンサおよび少なくとも1つの第2のセンサが、所定の波長もしくは波長範囲において光学的に透明であるフィルタ要素、および任意手段としてのレンズ要素をそれぞれ備える、実施形態26記載のシステム。
【0104】
28. システムが、少なくとも2つの異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化された少なくとも2つの異なる第1のセンサを備える、実施形態26または27記載のシステム。
【0105】
29. 少なくとも1つの第1のセンサが、第1の波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、少なくとも1つの他の第1のセンサが、第2の波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、第2の波長範囲が、第1の波長もしくは波長範囲を含み、さらに別の波長もしくは波長範囲を含む、実施形態26、27または28記載のシステム。
【0106】
30. システムが、血液中のグルコースを測定するためのものであり、第1のセンサが、約9.2μmの波長を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第1のセンサが、約9.2μm~約9.6μmの波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、実施形態29記載のシステム。
【0107】
31. システムが、血液中のグルコースを測定するためのものであり、第1のセンサが、約9.6μmの波長を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第1のセンサが、約9.4μm~約9.6μmの波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、実施形態29記載のシステム。
【0108】
32. システムが、少なくとも2つの異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化された少なくとも2つの異なる第2のセンサを備える、実施形態26から31までのいずれか1つ記載のシステム。
【0109】
33. システムが、血液中のグルコースを測定するためのものであり、第2のセンサが、約8.6μm~9.0μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第2のセンサが、約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、実施形態32記載のシステム。
【0110】
34. システムが、血液中のグルコースを測定するためのものであり、第2のセンサが、約7.8μm~約8.2μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、任意手段としての少なくとも1つのさらなる第2のセンサが、約8.6μm~9.0μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように、かつ/または約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、実施形態26から32までのいずれか1つ記載のシステム。
【0111】
35. システムが、血液中のグルコースを測定するためのものであり、VIS/NIR放射、特に、約940nmの波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化された少なくとも1つの第3のセンサを備える、実施形態26から34までのいずれか1つ記載のシステム。
【0112】
36. センシングユニット(b)が、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に別々に検出するように適応化された少なくとも1つのセンサを備え、
少なくとも1つの第1の時間間隔において、センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
少なくとも1つの第2の時間間隔において、センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、
実施形態1から35までのいずれか1つ記載のシステム。
【0113】
37. センシングユニット(b)が、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を透過させるように適応化された複数のフィルタを備える少なくとも1つのセンサを備える、実施形態36記載のシステム。
【0114】
38. センサが、シャッタホイールおよび/またはフィルタホイールを備える、実施形態36または37記載のシステム。
【0115】
39. シャッタホイールが、複数の開口部を備え、前記開口部の少なくとも幾つかが、所定の波長もしくは波長範囲において光学的に透明であるフィルタ要素、および任意手段としてのレンズ要素を備える、実施形態38記載のシステム。
【0116】
40. センシングユニット(b)が、ファブリペロー干渉計である少なくとも1つのセンサを備える、実施形態36記載のシステム。
【0117】
41. センシングユニット(b)が、少なくとも1つのスペクトルセンサもしくはラインセンサ、またはスペクトルもしくはラインセンサアレイを備える、実施形態1から40までのいずれか1つ記載のシステム。
【0118】
42. センシングユニット(b)が単一のセンサを備える、実施形態36から41までのいずれか1つ記載のシステム。
【0119】
43. センシングユニット(b)が、光学検出器、特に光学的な光起電力検出器、さらに特にInAsSbベースの検出器である、少なくとも1つのセンサを備える、実施形態1から42までのいずれか1つ記載のシステム。
【0120】
44. センシングユニット(b)が、サーモパイルまたはボロメータである、少なくとも1つのセンサを備える、実施形態1から43までのいずれか1つ記載のシステム。
【0121】
45. 分析ユニット(c)が、生理的パラメータの濃度を定量的に測定するように、かつ/または生理的パラメータの変化率を非定量的に測定するように適応化されたマイクロコントローラを備える、実施形態1から44までのいずれか1つ記載のシステム。
【0122】
46. システムが、指先、耳たぶ、手首、前腕および上腕から選択される身体部位からのIR放射を検出するように適応化されている、実施形態1から45までのいずれか1つ記載のシステム。
【0123】
47. 放射源(a)とセンシングユニット(b)とが、身体部位の同じ側に配置されている、実施形態1から46までのいずれか1つ記載のシステム。
【0124】
48. 放射源(a)とセンシングユニット(b)とが、身体部位の異なる側、特に反対の側に配置されている、実施形態1から47までのいずれか1つ記載のシステム。
【0125】
49. 第1の放射源(a)が、センシングユニット(b)と同じ身体部位の側に配置されており、さらなる放射源(a)が、異なる側、特にセンシングユニットとは反対の身体部位の側に配置されている、実施形態1から48までのいずれか1つ記載のシステム。
【0126】
50. システムが、放射源(a)によって放出されるVIS/NIR放射および/またはセンシングユニット(b)によって検出されるIR放射に対して光学的に透明な材料から少なくとも部分的に作製されたカバーをさらに備える、実施形態1から49までのいずれか1つ記載のシステム。
【0127】
51. カバーは、CaFおよび/またはBaFから少なくとも部分的に作製されており、かつ/またはIR放射に対して透明な、かつ任意手段としてVIS/NIR放射に対して透明なプラスチック材料から少なくとも部分的に作製されている、実施形態50記載のシステム。
【0128】
52. カバーの光学的に透明な材料は、約0.2mm~約2mm、特に約0.5mm~約1.5mm、さらに特に約1mmの厚さを有する、実施形態50または51記載のシステム。
【0129】
53. システムが、センシングユニットによって検出されるIR放射、特に約5μm~約12μmのIR波長範囲またはその部分範囲において光学的に透明なカバーをさらに備え、前記材料が、任意手段としての、放射源(a)によって放出されるVIS/NIR放射に対して実質的に光学的に不透過性の材料から少なくとも部分的に作製されている、実施形態1から52までのいずれか1つ記載のシステム。
【0130】
54. 身体部位からのIR放射をセンシングユニット(b)、特に、センシングユニット(b)の少なくとも1つのセンサに集束させるカバーをさらに備える、実施形態1から53までのいずれか1つ記載のシステム。
【0131】
55. カバーが、IRフレネルレンズ、または複数のIRフレネルレンズを含むアレイを備える、実施形態54記載のシステム。
【0132】
56. 被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための、実施形態1から55までのいずれか1つ記載のシステムの使用。
【0133】
57. 生理的パラメータがグルコースであり、体液が血液である、実施形態56記載の使用。
【0134】
58. 生理的パラメータが、定量的に測定される、実施形態56または57記載の使用。
【0135】
59. 生理的パラメータレートの変化率が、非定量的に測定される、実施形態56、57または58記載の使用。
【0136】
60. 被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための方法であって、方法が、
(a)約500nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの波長範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に照射するステップであって、照射された身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、ステップと、
(b)前記被験体の従前に照射された身体部位から放出される約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を検出するステップであって、
別々に、(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ、および
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の体液中の生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ
を含む、ステップと、
(c)生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するために、検出されたIR放射を分析するステップと
を含む方法。
【0137】
61. 身体部位が、約5μm~約12μmの波長範囲の外部IR放射源によって照射されない、実施形態60記載の方法。
【0138】
62. 生理的パラメータがグルコースであり、体液が血液である、実施形態60または61記載の方法。
【0139】
63. 生理的パラメータが、定量的に測定される、実施形態60、61または62記載の方法。
【0140】
64. 生理的パラメータレートの変化率が、非定量的に測定される、実施形態60から63までのいずれか1つ記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図17
【手続補正書】
【提出日】2021-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の体液中の生理的パラメータを測定するための非侵襲的なシステムであって、前記システムが、
(a)約400nm~約1500nmまたは500nm~約1500nmの範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に放出するように適応化された放射源であって、前記身体部位は特に、指先、耳たぶ、手首、前腕および上腕から選択されており、照射された前記身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、放射源と、
(b)前記被験体の従前に照射された前記身体部位から放出される約5μm~約12μmの範囲のIR放射を検出するためのセンシングユニットであって、
従前に照射された前記身体部位が、組織温度の局所的な上昇と、約5μm~約12μmの波長のIR放射の放出の増大とを示し、
(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように、かつ
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように
適応化された、センシングユニットと、
(c)前記センシングユニット(b)において検出されたIR放射に基づいて、前記生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するための分析ユニットと
を備える、システム。
【請求項2】
前記システムは、約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を放出するための外部放射源を備えていない、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液がグルコースである、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、前記センシングユニットが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記血液中のグルコースの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記少なくとも1つの波長もしくは波長範囲は、特に、約9.2μmの波長、約9.4μmの波長、約9.6μmの波長、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長のうちの少なくとも2つを含む波長範囲、約9.2μm、約9.4μmおよび約9.6μmの波長を含む波長範囲、またはこれらの任意の組み合わせから選択されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記放射源(a)が、約550nm~約1200nmの範囲、特に約800nm~約820nmの範囲、例えば約810nm、および/または約590nm~約610nmの範囲、例えば約600nm、および/または約920nm~約980nmの範囲、例えば約940nmのVIS/NIR放射を放出するように適応化されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記放射源(a)は、LED、レーザーダイオード、vcsel(垂直共振器型面発光レーザー)、またはレーザーである、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記放射源(a)は、多波長放射源である、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記センシングユニット(b)が、少なくとも1つの第1のセンサ、少なくとも1つの第2のセンサ、および任意手段としての少なくとも1つの第3のセンサを備え、
前記少なくとも1つの第1のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記少なくとも1つの第2のセンサは、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記少なくとも1つの第3のセンサは、存在する場合に、(i)不特定のIR放射を検出するように適応化されており、(ii)不特定のVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、(iii)検出されるVIS/NIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する波長を有するVIS/NIR放射を検出するように適応化されており、かつ/または(iv)前記身体部位の温度を計測するための温度センサである、
請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの第1のセンサが、第1の波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、少なくとも1つの他の第1のセンサが、第2の波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
前記第2の波長範囲が、前記第1の波長もしくは波長範囲と、さらに別の波長もしくは波長範囲とを含み、
前記システムが特に、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、第1のセンサが、約9.2μmの波長を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第1のセンサが、約9.2μm~約9.6μmの波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、前記約9.2μm~約9.6μmの波長範囲が、約9.2μmの第1の波長と、約9.4μmおよび約9.6μmの少なくとも一方の波長とをさらに含み、特に約9.4μmおよび約9.6μmの波長をさらに含む、
請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、少なくとも2つの異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化された少なくとも2つの異なる第2のセンサを備え、
前記システムが特に、血液中のグルコースを測定するように適応化されており、第2のセンサが、約8.6μm~9.0μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、別の第2のセンサが、約9.8μm~約10.2μmの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、
請求項8または9記載のシステム。
【請求項11】
前記センシングユニット(b)が、異なる波長もしくは波長範囲を有するIR放射を時間依存的に別々に検出するように適応化された少なくとも1つのセンサを備え、
少なくとも1つの第1の時間間隔において、前記センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されており、
少なくとも1つの第2の時間間隔において、前記センサが、検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するように適応化されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項12】
前記センシングユニット(b)が単一のセンサを備える、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記センシングユニット(b)が、光学検出器、特に光学的な光起電力検出器、さらに特にInAsSbベースの検出器である、少なくとも1つのセンサを備える、請求項1から12までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項14】
前記システムが、前記放射源(a)によって放出されるIR/VIS放射および前記センシングユニット(b)によって検出されるIR放射に対して光学的に透明な材料から少なくとも部分的に作製されたカバーをさらに備え、
前記カバーは、CaFおよび/またはBaFから少なくとも部分的に作製されており、かつ/またはIR放射に対して透明な、かつ任意手段としてVIS/NIR放射に対して透明なプラスチック材料から少なくとも部分的に作製されており、
前記カバーの光学的に透明な材料は、約0.2mm~約2mm、特に約0.5mm~約1.5mm、さらに特に約1mmの厚さを有する、
請求項1から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、前記身体部位からのIR放射を前記センシングユニット(b)に、特に前記センシングユニット(b)の前記少なくとも1つのセンサに集束させるカバーをさらに備え、特に、前記カバーは、IRフレネルレンズ、または複数のIRフレネルレンズを含むアレイを備える、請求項1から14までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための、請求項1から15までのいずれか1項記載のシステムの使用であって、前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液が血液であり、血液中のグルコース量の変化率が測定される、使用。
【請求項17】
被験体の体液中の生理的パラメータを非侵襲的に測定するための方法であって、前記方法が、
(a)約400nm~約1500nmまたは約500nm~約1500nmの波長範囲の可視(VIS)/近赤外(NIR)放射を前記被験体の身体部位に照射するステップであって、照射された前記身体部位が電磁エネルギを吸収して組織温度の局所的な上昇および約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射の放出の増大をもたらす、ステップと、
(b)前記被験体の従前に照射された前記身体部位から放出される約5μm~約12μmの波長範囲のIR放射を検出するステップであって、
従前に照射された前記身体部位が、組織温度の局所的な上昇と、約5μm~約12μmの波長のIR放射の放出の増大とを示し、
別々に、(i)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に依存する少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ、および
(ii)検出されるIR放射の強度が前記被験体の前記体液中の前記生理的パラメータの濃度に実質的に依存しない少なくとも1つの波長もしくは波長範囲を有するIR放射を検出するステップ
を含む、ステップと、
(c)前記生理的パラメータを定性的にかつ/または定量的に測定するために、検出されたIR放射を分析するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記身体部位が、約5μm~約12μmの波長範囲の外部IR放射源によって照射されない、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記生理的パラメータがグルコースであり、前記体液が血液である、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記生理的パラメータの濃度が定量的に測定され、かつ/または前記生理的パラメータの量の変化率が測定され、特に非定量的に測定される、請求項17から19までのいずれか1項記載の方法。
【国際調査報告】