(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】電気化学的プロセスのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/65 20210101AFI20221202BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20221202BHJP
B01D 61/50 20060101ALI20221202BHJP
B01D 61/54 20060101ALI20221202BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20221202BHJP
C02F 1/461 20060101ALI20221202BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20221202BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20221202BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20221202BHJP
C25B 9/21 20210101ALI20221202BHJP
H02M 7/12 20060101ALN20221202BHJP
【FI】
C25B9/65
C02F1/469
B01D61/50
B01D61/54 510
C02F1/44 A
C02F1/461
C25B9/00 A
C25B9/60
C25B9/70
C25B9/21
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022517806
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 FI2020050445
(87)【国際公開番号】W WO2021053260
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504357510
【氏名又は名称】ラッペーンランナン-ラハデン テクニッリネン ユリオピスト ルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス コポネン
(72)【発明者】
【氏名】ベサ ルースカネン
(72)【発明者】
【氏名】アンッティ コソネン
(72)【発明者】
【氏名】アントン ポルークトブ
(72)【発明者】
【氏名】イェロ アホラ
(72)【発明者】
【氏名】マルック ニエメラ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
4K021
5H006
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006HA47
4D006JA68Z
4D006MA03
4D006MA13
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5H006AA02
5H006AA07
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5H006CC01
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
(57)【要約】
電気化学的プロセスのためのシステムは、電気化学反応器(101)、直流電流を電気化学反応器の電極(102、103)に供給するためのコンバータ・ブリッジ(104)、及びコンバータ・ブリッジの交流電圧端子に接続される直列インダクタ(107)を備える。コンバータ・ブリッジは、コンバータ・ブリッジの交流電圧端子と直流電圧端子の間に双方向性制御可能スイッチ(111、112)を備える。双方向性制御可能スイッチの強制転流により、電気化学反応器に供給される直流電流の電流リップルを低減することができる。また、強制転流により、システムの交流電圧源の力率を制御することもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的プロセスのためのシステムであって、
流体を含み、電流を前記流体に向けるための電極(102、103、202、203)を備えるための電気化学反応器(101、201)と、
1つ又は複数の交流電圧を受けるための交流電圧端子(105、205)及び直流電流を前記電気化学反応器の前記電極に供給するための直流電圧端子(106、206)を有するコンバータ・ブリッジ(104、204)と、
前記コンバータ・ブリッジの前記交流電圧端子に接続される直列インダクタ(107、207)とを備え、
前記コンバータ・ブリッジは、それぞれ前記交流電圧端子の1つを備え、前記直流電圧端子の間に接続されるコンバータ・レッグ(108~110、208、210)を備え、前記コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中の前記コンバータ・レッグの前記交流電圧端子と前記直流電圧端子の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチ(111、211)と、検討中の前記コンバータ・レッグの前記交流電圧端子と前記直流電圧端子の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチ(112、212)とを備えることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記システムは、電力を交流電圧ネットワークから前記コンバータ・ブリッジに転送するための変圧器(113、213)を備え、前記変圧器の二次巻線(134、234)は、前記直列インダクタを介して前記コンバータ・ブリッジの前記交流電圧端子に接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変圧器は、前記変圧器の変圧比を変更するためのタップ切り替え器(114、214)を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムはインダクタ-コンデンサ・フィルタ(115)を備え、それで前記インダクタ-コンデンサ・フィルタ及び前記直列インダクタ(107)がインダクタ-コンデンサ-インダクタ・フィルタを構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電気化学反応器(101)は、それぞれ陽極、陰極、並びに前記陰極を含む陰極区画及び前記陽極を含む陽極区画に電解セルを分割する多孔質隔膜を備える1つ又は複数の前記電解セル(116~119)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気化学反応器(201)は、前記電極(202、203)の間にあって、交互する一連の陰イオン選択膜(220)と陽イオン選択膜(221)とを備える電気透析スタックを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
電力を電気化学的プロセスに供給するための方法であって、
1つ又は複数の交流電圧を直列インダクタ(107)を介してコンバータ・ブリッジ(104)の交流電圧端子(105)に供給(301)すること、及び
直流電流を前記コンバータ・ブリッジの直流電圧端子(106)から電気化学反応器の電極(102、103)に供給し(302)、前記電気化学的プロセスを実行することを含み、
前記コンバータ・ブリッジは、それぞれ前記交流電圧端子の1つを備え、前記直流電圧端子の間に接続されるコンバータ・レッグ(108~110)を備え、前記コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中の前記コンバータ・レッグの前記交流電圧端子と前記直流電圧端子の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチ(111)と、検討中の前記コンバータ・レッグの前記交流電圧端子と前記直流電圧端子の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチ(112)とを備えることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記方法は、変圧器(113)を用いて、電力を交流電圧ネットワークから前記コンバータ・ブリッジに転送することを含み、前記変圧器の二次巻線(134)は、前記直列インダクタ(107)を介して前記コンバータ・ブリッジの前記交流電圧端子に接続される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記変圧器の変圧比をタップ切り替え器を用いて変更することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数の交流電圧は、前記コンバータ・ブリッジの前記交流電圧端子に、前記直列インダクタとともにインダクタ-コンデンサ-インダクタ・フィルタを構成するインダクタ-コンデンサ・フィルタ(115)を介して供給される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学的プロセスは電気分解プロセスである、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電気分解プロセスは、アルカリ水電気分解プロセス、プロトン交換膜水電気分解プロセス、又は固体酸化物電解質セルプロセスである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気化学的プロセスは電気透析プロセスである、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、電気分解又は電気透析などの電気化学的プロセスのためのシステムに関する。さらに、本開示は、電力を電気化学的プロセスに供給するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力が流体を処理するために供給される電気化学的プロセスは、例えば、電気分解プロセス又は電気透析プロセスであってもよい。電気分解は、例えば、水を水素ガスH2及び酸素ガスO2に分解するための水の電気分解であってもよい。水の電気分解の広く使用されているタイプは、例えば、水性水酸化カリウム“KOH”又は水性水酸化ナトリウム“NaOH”を含みうるアルカリ液体電解質で電極が動作するアルカリ水の電気分解である。電極は、電子に非導電性である多孔質隔膜によって分離されているため、それ故、電極の間の電気的短絡を回避する。さらに、多孔質隔膜は、生成された水素ガスH2及び酸素ガスO2が混合することを回避する。電気分解に必要とされるイオン導電率は、多孔質隔膜に浸透できる水酸化物イオンOH-に起因する。電気透析は、通常、食塩水を脱塩するために使用されるが、産業排水の処理、乳清の脱塩、及びフルーツ・ジュースの脱酸などの他の用途がますます重要になっている。電気透析は電極の間にあって、交互する一連の陰イオン選択膜及び陽イオン選択膜を備える電気透析スタックで実行される。陰イオン選択膜と陽イオン選択膜の連続する膜の間の領域は、希釈区画及び濃縮区画を構成する。電界では、陽イオンは陽イオン選択膜を通して移動し、陰イオンは陰イオン選択膜を通して移動する。最終的な結果としては、希釈区画内のイオン濃度が低下し、隣接する濃縮区画がイオンで濃縮される。
【0003】
上記の種類の電気化学的プロセスは、直流電流“DC”電力を必要とする。したがって、交流電流“AC”から直流電流“DC”への変換、すなわち、整流は、交流電圧ネットワークに接続されるシステムで必要とされる。パワー・エレクトロニクスは、制御されたDC電源の実装で重要な役割を果たす。産業用電気分解及び電気透析システムでは、サイリスタに基づく整流器は一般的な選択である。より詳細な情報は、例えば、出版物で表示されている:J.R.Rodriguez、J.Pontt、C.Silva、E.P.Wiechmann、P.W.Hammond、F.W.Santucci、R.Alvarez、R.Musalem、S.Kouro、P.Lezana:大電流整流器、最先端の将来動向、IEEEトランザクション、インダストリアル・エレクトロニクス 52、2005、pp738-746。産業用システムでのサイリスタ整流器の幅広い使用は、サイリスタの高効率、高信頼性、及び高電流処理能力によって達成される。産業的用途の典型的なサイリスタ・ブリッジ整流器は、6パルス及び12パルス整流器である。サイリスタ・ブリッジ整流器の直流電圧及び直流電流には、その周波数がサイリスタの自然転流による交流電源電圧の周波数の倍数となる交流成分がある。50Hzの電源電圧と組み合わせて、6パルスのサイリスタ整流器による主な交流成分は、300Hz、600Hz、及び900Hzであり、スイッチの2倍の数に対応する12パルスのサイリスタ整流器による主な交流成分は、600Hz、1200Hz、及び1800Hzであるが、振幅はより低くなる。
【0004】
導電体の抵抗電力損失は、電流の2乗に正比例する。したがって、電流の瞬間的な増加は、電流と抵抗電力損失の間の二次関係による抵抗電力損失の強力な一因となる。直流電流の電流リップルが大きければ大きいほど、二乗平均平方根の“RMS”値と直流電流の平均値の差が大きくなる。したがって、電流リップルは、上記の種類の電気化学的プロセスを実行するシステムでの損失を低減するために、最小限に抑えるべきである。さらに、電流リップルは、電気化学的プロセスのミリ秒時間スケールに動態的作用を課し、そのことは電解セル又は電気透析セルの劣化を加速するかもしれない。たとえば、陰極の劣化は、セル電圧が特定の保護値を下回るとき、アルカリ水の電気分解で発生すると言われている。より詳細な情報は、例えば、出版物で表示されている:A.Ursua、E.L.Barrios、J.Pascual、I.S.Martin、P.Sanchis:再生可能エネルギーを有する市販のアルカリ水電解槽の統合、制限及び改善、水素エネルギーの国際ジャーナル、41、30、2016、pp.12852-12861。電流リップルにより瞬間電流密度がゼロに近づくか、又はさらにゼロになる場合でも、ファラデー効率が低下し、酸素側の水素ガスの量がより小さな電流密度で増加するため、供給される直流電流の品質が最適でないことにより、水電解システムの安全な動作範囲が制限される。したがって、供給された直流電流の品質が向上すると、エネルギー効率の高い動作範囲と同様に、安全な動作範囲が広がる。
【発明の概要】
【0005】
以下は、様々な実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。概要は、本発明の広範な概観ではない。本発明の解決の鍵又は重要な要素を特定することも、本発明の範囲を線引きすることも意図されていない。以下の概要は、例示的かつ非限定的な実施形態のより詳細な説明への前置きとして、いくつかの概念を単純化された形で提示しているにすぎない。
【0006】
本発明によれば、例えば、電気分解プロセス又は電気透析プロセスであってもよい電気化学的プロセスのための新しいシステムが提供される。本発明によるシステムは、
流体を含み、電流を流体に向けるための電極を備える電気化学反応器と、
1つ又は複数の交流電圧を受けるための交流電圧端子及び直流電流を電気化学反応器の電極に供給するための直流電圧端子を有するコンバータ・ブリッジと、
コンバータ・ブリッジの交流電圧端子に接続される直列インダクタと、を備える。
【0007】
上記のコンバータ・ブリッジは、それぞれ交流電圧端子の1つを備え、直流電圧端子の間に接続されるコンバータ・レッグを備える。コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチと、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチとを備える。
【0008】
コンバータ・ブリッジの双方向性制御可能スイッチの強制転流により、電気化学反応器の電極に供給される直流電流の電流リップルを低減することができる。さらに、双方向性制御可能スイッチの強制転流により、システムの交流電圧源の力率を制御することができる。
【0009】
本発明によれば、また、電力を電気化学的プロセスに供給するための新しい方法も提供される。本発明による方法は、
1つ又は複数の交流電圧を直列インダクタを介して上記の種類のコンバータ・ブリッジの交流電圧端子に供給すること、及び
直流電流をコンバータ・ブリッジの直流電圧端子から電気化学反応器の電極に供給し、電気化学的プロセスを実行すること、を含む。
【0010】
例示的かつ非限定的な実施形態は、付随する従属請求項に記載されている。
【0011】
構造と操作方法の両方に関する様々な例示的かつ非限定的な実施形態は、その追加の目的及び利点とともに添付の図面と併せて読むとき、特定の例示的かつ非限定的な実施形態の以下の説明から最もよく理解されるであろう。
【0012】
この文書では、“備える”及び“含む”という動詞は、列挙されていない特徴の存在を除外も要求もしない開放された制限として使用される。従属請求項に列挙される特徴は、特に明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、本文書を通じて“a”又は“an”、すなわち、単数形の使用は、複数を除外しないことを理解されたい。
【0013】
例示的かつ非限定的な実施形態及びそれらの利点は、例の意味で、添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明する、
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、電気化学的プロセスのための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムを示す。
【
図2】
図2は、電気化学的プロセスのための別の例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムを示す。
【
図3】
図3は、電力を電気化学的プロセスに供給するための例示的かつ非限定的な実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に示す説明で提供される特定の例は、添付の請求項の範囲及び/又は適用性を制限するものとして解釈されるべきではない。以下の説明に記載されている例のリスト及びグループは、特に明記されていない限り、網羅的なものではない。
【0016】
図1は、電気化学的プロセスのための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムを示す。システムは、液体を含みまた電流を液体に向けるための電極を備える電気化学反応器101を備える。
図1では、電極の2つは参照符号102及び103で示される。
図1に示される例示的システムでは、電気化学反応器101は、電解セルのスタックを備える。電解セルは、例えば、アルカリ水の電気分解のためのアルカリ液体電解質を含んでもよい。この例示的な場合において、液体電解質は、例えば、水性水酸化カリウム“KOH”又は水性水酸化ナトリウム“NaOH”を含んでもよい。ただし、また、電解セルが他のある電解質を含むことも可能である。
図1では、電解セルの4つは参照符号116、117、118、及び119で示される。電解セルのそれぞれは、陽極、陰極、並びに陰極を含む陰極区画及び陽極を含む陽極区画に電解セルを分割する多孔質隔膜を備える。システムは、例えば、数十又はさらに数百の電解セルを備えてもよい。しかしながら、また、例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムが、1つから10の電解セルを備えることも可能である。
図1に示す例示的システムでは、電解セルは電気的に直列接続される。しかしながら、また、例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムの電解セルが電気的に並列接続されるか、又は電解セルが、並列接続された電解セルの直列接続されたグループ、又は直列接続された電解セルの並列接続されたグループを構成するように配置されるか、又は電解セルが、他のある方法で互いに電気的に接続されることも可能である。
【0017】
システムは、水素分離器タンク126と、電解セルの陰極区画から水素分離器タンク126の上部までの第1配管125とを備える。システムは、酸素分離器タンク127と、電解セルの陽極区画から酸素分離器タンク127の上部までの第2配管136とを備える。システムは、水素分離器タンク126の下部から、及び酸素分離器タンク127の下部から液体電解質を電解セルに戻して循環させるための第3配管128を備える。水素分離器タンク126及び酸素分離器タンク127において、ガスが上昇し続け、液体電解質が電解質サイクルに戻るにつれて、水素ガスH2及び酸素ガスO2は分離される。
図1に示される例示的システムでは、第3配管128は、液体電解質を電解セルにポンピングするための制御可能ポンプ130を備える。ポンプ制御される電解質サイクルは、特に温度制御が必要とされるときに有利である。しかしながら、また、例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムが、重力電解質循環を含むことも可能である。
図1に示される例示的システムでは、さらに、第3配管128は液体電解質を濾過するためのフィルタ130を備える。フィルタ130は、例えば、不純物を液体電解質から除去するための膜フィルタであってもよい。
【0018】
システムは、交流電圧を受けるための交流電圧端子105と、直流電流を電気化学反応器101の電極に供給するための直流電圧端子106とを有するコンバータ・ブリッジ104を備える。システムは、コンバータ・ブリッジ104の交流電圧端子に接続される直列インダクタ107を備える。コンバータ・ブリッジ104は、コンバータ・レッグ108、109、及び110を備え、それぞれは、交流電圧端子105の1つを備え、直流電圧端子106の間に接続される。コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子106の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチと、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子106の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチとを備える。
図1では、コンバータ・レッグ109の双方向性上部分岐制御可能スイッチは、参照符号111で示され、またコンバータ・レッグ109の双方向性下部分岐制御可能スイッチは、参照符号112で示される。この例示的な場合では、各双方向性制御可能スイッチは、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ“IGBT”及び逆並列ダイオードを備える。しかしながら、また、各双方向性制御可能スイッチが、例えば、ゲート・ターンオフ・サイリスタ“GTO”、又は金属酸化物電界効果トランジスタ“MOSFET”、又はIGBTの代わりに他のある適切な半導体スイッチを備えることも可能である。コンバータ・ブリッジ104の双方向性スイッチの強制転流により、電気化学反応器101の電極に供給される直流電流の電流リップルを低減させることができる。さらに、双方向性スイッチの強制転流により、システムの交流電圧源の力率を制御することができる。システムは、制御可能スイッチの動作を制御するためのゲートドライバー・ユニット137を備え、それで所望の直流電流が電気化学反応器101の電極に供給され、所望の交流電圧が交流電圧端子105で発生する。
【0019】
図1に示される例示的システムは、電力を交流電圧ネットワーク135から直列インダクタ107を介してコンバータ・ブリッジの交流電圧端子105に転送するための変圧器113を備える。この例示的な場合において、さらに、システムはインダクタ-コンデンサ“LC”フィルタ115を備え、それでインダクタ-コンデンサ・フィルタ115及び直列インダクタ107は、インダクタ-コンデンサ-インダクタ“LCL”フィルタを構成する。変圧器の二次巻線134は、LCLフィルタを介してコンバータ・ブリッジ104の交流電圧端子105に接続される。変圧器113の二次電圧は、非常に低くなるように有利に選択されるので、コンバータ・ブリッジ104は、直流電圧端子106の直流電圧が電気化学反応器101に適した範囲内にあるとき、制御可能スイッチの適切なデューティ・サイクル比で動作することができる。交流電圧から直流電圧への変換は単一ステップで行われ、単一ステップは通常コンバータ・ブリッジ104の電圧ブースト特性に繋がる。電圧ブースト特性では、直流電圧端子106の直流電圧が、システムに供給される交流線間電圧の最大値よりも高いことを可能にする。例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムでは、変圧器113は、変圧器の変圧比を変更するためのタップ切り替え器114を備える。タップ切り替え器114は、例えば、ロード中に変圧比を変更できる負荷時タップ切り替え器であってもよい。直列インダクタ107、コンバータ・ブリッジ104、及び場合によってはLCフィルタ115を備える配列は、DC-DCコンバータとしても使用することができる。
【0020】
さらに、システムは、電気化学反応器101に供給される直流電流を測定するための電流センサー及び/又は直流電圧端子106の直流電圧を測定するための電圧センサーを備えてもよい。上記の電流センサー及び電圧センサーは、
図1に示されていない。電流センサー及び/又は電圧センサーは、例えば、コンバータ・ブリッジ104を備えるコンバータ・デバイスの一部であってもよい。別の例では、電流センサー及び/又は電圧センサーは、電気化学反応器101の一部であってもよい。電流センサーの出力信号及び/又は電圧センサーの出力信号は、ゲートドライバー・ユニット137を制御するコントローラに送ることができる。コントローラは、
図1に示されていない。
【0021】
図2は、電気化学的プロセスのための例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムを示す。システムは、液体を含み電流を液体に向けるための電極202及び203を備える電気化学反応器201を備える。
図2に示される例示的システムでは、電気化学反応器201は、電極202と203の間にあって、交互する一連の陰イオン選択膜と陽イオン選択膜を備える電気透析スタックを備える。
図2では、陰イオン選択膜の1つは参照符号220で示され、また陽イオン選択膜の1つは参照符号221で示される。陰イオン選択膜と陽イオン選択膜の連続する膜の間の領域は、希薄区画224及び濃縮区画223を構成する。電界では、陽イオンは陽イオン選択膜を通して移動し、陰イオンは陰イオン選択膜を通して移動する。最終的な結果は、希薄区画224内のイオン濃度は低下し、隣接する濃縮区画223はイオンで濃縮される。
図2に示される例示的システムでは、例えば、塩分を含んだ食物などの処理される食物は入り口231を介して受け取られ、例えば、真水などの希薄液体は第1出口232を介して除去され、また、例えば、濃縮塩水などの濃縮物は第2出口233を介して除去される。
【0022】
システムは、交流電圧を受けるための交流電圧端子205と、直流電流を電気化学反応器201の電極202及び203に供給するための直流電圧端子206とを有するコンバータ・ブリッジ204を備える。システムは、コンバータ・ブリッジ204の交流電圧端子205に接続される直列インダクタ207を備える。コンバータ・ブリッジ204は、コンバータ・レッグ208、209、及び210を備え、それぞれが交流電圧端子205の1つを備え、直流電圧端子206の間に接続される。コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチと、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチとを備える。
図2において、コンバータ・レッグ209の双方向性上部分岐制御可能スイッチは、参照符号211で示され、またコンバータ・レッグ209の双方向性下部分岐制御可能スイッチは、参照符号212で示される。システムは、制御可能スイッチの動作を制御するためのゲートドライバー・ユニット237を備え、それで所望の直流電流が電気化学反応器201の電極に供給され、また所望の交流電圧が交流電圧端子205で発生する。
【0023】
図2に示される例示的システムは、電力を交流電圧ネットワーク235から直列インダクタ207を介してコンバータ・ブリッジ204の交流電圧端子205に転送するための変圧器213を備える。例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムにおいて、変圧器213は、変圧器の変圧比を変更するための、例えば、負荷時タップ切り替え器などのタップ切り替え器214を備える。
【0024】
図2に示されるゲートドライバー・ユニット237と同様に、
図1に示されるゲートドライバー・ユニット137は、制御可能スイッチを制御するためのドライバー回路を備える。さらに、ゲートドライバー・ユニット237と同様にゲートドライバー・ユニット137は、ドライバー回路を実行するための処理システムを備えてもよい。処理システムは、1つ又は複数のアナログ回路、1つ又は複数のデジタル処理回路、又はそれらの組み合わせを備えてもよい。各デジタル処理回路は、適切なソフトウェアを備えるプログラマブル・プロセッサ回路、例えば、特定用途向け集積回路“ASIC”などの専用ハードウェア・プロセッサ、又は例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ“FPGA”などの構成可能ハードウェア・プロセッサであってもよい。さらに、処理システムは、1つ又は複数のメモリ回路を備えもよい、それぞれが、例えば、ランダムアクセス・メモリ“RAM”回路であってもよい。
【0025】
本発明は、特定の電気分解プロセス及び/又は特定の電気透析プロセスになにも限定されないことに留意されたい。例えば、例示的かつ非限定的な実施形態によるシステムは、プロトン交換膜“PEM”水電気分解のための電気化学反応器、固体酸化物電解質セル“SOEC”プロセスのための電気化学反応器、又は他のある電気分解プロセスのための電気化学反応器を備えてもよい。
【0026】
図3は、例えば、水の電気分解又は電気透析などの電気化学的プロセスに電力を供給するための例示的かつ非限定的な実施形態による方法のフローチャートを示す。方法は以下の作用、
作用301:1つ又は複数の交流電圧を直列インダクタを介してコンバータ・ブリッジの交流電圧端子に供給すること、及び
作用302:直流電流をコンバータ・ブリッジの直流電圧端子から電気化学反応器の電極に供給し、電気化学的プロセスを実行することを含み、
コンバータ・ブリッジはコンバータ・レッグを備え、それぞれが交流電圧端子の1つを備え、直流電圧端子の間に接続される。コンバータ・レッグのそれぞれは、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の正の端子の間にある双方向性上部分岐制御可能スイッチと、検討中のコンバータ・レッグの交流電圧端子と直流電圧端子の負の端子の間にある双方向性下部分岐制御可能スイッチとを備える。
【0027】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法は、変圧器を用いて、電力を交流電圧ネットワークからコンバータ・ブリッジに転送することを含み、それで変圧器の二次巻線が直列インダクタを介してコンバータ・ブリッジの交流電圧端子に接続される。
【0028】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法は、タップ切り替え器を用いて変圧器の変圧比を変更することを含む。
【0029】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、1つ又は複数の交流電圧は、上記の直列インダクタとともにインダクタ-コンデンサ-インダクタ・フィルタを構成するインダクタ-コンデンサ・フィルタを介してコンバータ・ブリッジの交流電圧端子に供給される。
【0030】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、電気化学的プロセスは、例えば、アルカリ水電気分解プロセス、プロトン交換膜“PEM”水電気分解プロセス、又は固体酸化物電解質セル“SOEC”プロセスでありうる電気分解プロセスである。
【0031】
例示的かつ非限定的な実施形態による方法では、電気化学的プロセスは、例えば、水の脱塩などの電気透析プロセスである。
【0032】
上記の説明に提供されている特定の例は、添付の請求項の適用性及び/又は解釈を制限するものとして解釈されるべきではない。上記の説明に提供されている例のリスト及びグループは、特に明記されていない限り、網羅的なものではない。
【国際調査報告】