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特表2022-551407黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法
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  • 特表-黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20221202BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518273
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2021117482
(87)【国際公開番号】W WO2022052994
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】202010947255.4
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】周 海輝
(72)【発明者】
【氏名】胡 良友
(72)【発明者】
【氏名】潘 修軍
(72)【発明者】
【氏名】李 東東
(72)【発明者】
【氏名】張 殿臣
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA13
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本開示により、黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】黒鉛負極材料は、内部に細孔を有する天然黒鉛コアと、炭素被覆層と、前記天然黒鉛コアの内部における細孔中に充填されており、かつ前記炭素被覆層を形成する黒鉛化充填剤と、を含む。前記方法は、天然黒鉛と充填剤を混合した後、粉砕して黒鉛粉体を得ることと、前記黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して、前記黒鉛負極材料を得ることとを含む。本開示に係る構造方法では、天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤の混合・被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、工程が簡単になり、生産効率が向上され、製造された負極及びリチウムイオン電池は初回効率及びサイクル特性が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に細孔(122)を有する天然黒鉛コア(120)と、
前記天然黒鉛コア(120)の表面に形成された炭素被覆層(140)と、
前記天然黒鉛コア(120)の内部における細孔(122)中に充填されており、かつ前記炭素被覆層(140)を形成する黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料(100)。
【請求項2】
黒鉛材料が充填された細孔(122)を内部に有する天然黒鉛コア(120)と、
前記天然黒鉛コア(120)の表面に形成された炭素被覆層(140)と、を含み、
前記黒鉛材料及び前記炭素被覆層(140)は、いずれも、充填剤を黒鉛化してなる黒鉛化充填剤により形成される、ことを特徴とする黒鉛負極材料。
【請求項3】
以下の条件a~dのうちの少なくとも1つを満たす、請求項1又は2に記載の黒鉛負極材料(100)。
a.前記天然黒鉛コア(120)は、メジアン径が8μm~25μmである;
b.前記炭素被覆層(140)は、厚さが10nm~100nmである;
c.前記細孔(122)は、細孔容積が0.01cm3/g~0.08cm3/gである;
d.前記黒鉛化充填剤100質量%に対して、前記天然黒鉛コア(120)の内部における細孔(122)中に充填された黒鉛化充填剤の含有量は、20質量%~80質量%である。
【請求項4】
以下の条件a~cのうちの少なくとも1つを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料(100)。
a.前記黒鉛負極材料(100)は、平均細孔容積が0.005cm3/g~0.010cm3/gである;
b.前記黒鉛負極材料(100)において、孔径≧50nmのマクロ細孔の割合が80%~90%である;
c.前記黒鉛負極材料(100)のO原子の濃度とC原子の濃度の比(O/C値)は、0.02~0.04である。
【請求項5】
前記充填剤は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料(100)。
【請求項6】
天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕、球形化して、細孔中に前記充填剤が充填された黒鉛粉体を得る工程と、
前記黒鉛粉体を黒鉛化処理して前記黒鉛負極材料(100)を得る工程とを含むことを特徴とする黒鉛負極材料(100)の製造方法。
【請求項7】
前記天然黒鉛は、天然鱗片状黒鉛を含み、及び/又は、
前記天然黒鉛は、メジアン径が10μm~150μmである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記充填剤は、残留炭素分が10~90質量%であり、且つ60℃~350℃で液体に溶融可能な有機炭素源を含む、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記有機炭素源は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
以下の条件a~dのうちの少なくとも1つを満たす、請求項8または9に記載の製造方法。
a.前記充填剤は、粒子径が0.5μm~10μmである;
b.前記ピッチは、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ及び改質ピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む;
c.前記ピッチは、メジアン径が1μm~10μmである;
d.前記樹脂は、フェノ一ル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を含む。
【請求項11】
以下の条件a~cのうちの少なくとも1つを満たす、請求項6~10のいずれか一項に記載の製造方法。
a.前記天然黒鉛と前記充填剤の質量比は、10:(0.5~3)である;
b.前記黒鉛粉体は、メジアン径が8μm~25μmである;
c.前記黒鉛粉体は、球形黒鉛粉体である。
【請求項12】
前記黒鉛化は、非酸素雰囲気を含む保護雰囲気で行われ、及び/又は、
前記黒鉛化は、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気からなる群より選択される少なくとも1つを含む保護雰囲気で行われ、及び/又は
前記黒鉛化熱処理は、温度が2000℃~3300℃であり、時間が10h~72hである、請求項6~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記黒鉛化処理により得られた製品に対して、分散及び篩分を行うことをさらに含む、請求項6~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
メジアン径が10μm~150μmの天然鱗片状黒鉛とメジアン径が1μm~10μmのピッチを質量比10:(0.5~3)で物理的に混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕、球形化して、メジアン径が8μm~25μmの球形黒鉛粉体を得る工程と、
前記球形黒鉛粉体を保護雰囲気下で2000℃~3300℃の温度で10h~72h黒鉛化処理して、前記黒鉛負極材料(100)を得る工程とを含む、請求項6~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料(100)、又は請求項6~14のいずれか一項に記載の黒鉛負極材料(100)の製造方法で製造された黒鉛負極材料(100)を含むことを特徴とするリチウムイオン電池(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年9月10日付で中国専利局に提出した、出願番号が2020109472554、発明の名称が「黒鉛負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、エネルギー貯蔵材料の分野に関し、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関し、特に黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、近年、3C電子機器、電動自転車、エネルギー貯蔵システム、特に電気自動車に広く応用されている。現在市販されているリチウムイオン電池負極材料は、主に、ソフトカーボン、ハードカーボン及び黒鉛材料などの炭素負極材料である。ここで、上記した黒鉛材料は、現在最も成熟に商品化されたリチウムイオン電池負極材料である。
【0004】
また、黒鉛材料は、天然黒鉛及び人造黒鉛の2種類に分けられる。天然黒鉛は、通常、球形天然黒鉛を指すが、球形天然黒鉛は、異方性が高く、電解液選択性とサイクル特性が悪く、膨張率が高いなどの欠点を有する。これに鑑みて、天然黒鉛負極材料には、天然黒鉛のサイクル特性及び膨張率の改善が常に早急に解決すべき課題の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本開示は、黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示により、
内部に細孔を有する天然黒鉛コアと、
前記天然黒鉛コアの表面に形成される炭素被覆層と、
前記天然黒鉛コアの内部の細孔に充填され、かつ前記炭素被覆層を形成する黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料を提供する。
【0007】
本開示により、
黒鉛材料が充填された細孔を内部に有する天然黒鉛コアと、
前記天然黒鉛コアの表面に形成された炭素被覆層と、を含む黒鉛負極材料であって、
前記黒鉛材料及び前記炭素被覆層はいずれも、充填剤を黒鉛化した黒鉛化充填剤により形成された黒鉛負極材料を提供する。いくつかの実施形態において、前記黒鉛コアは、メジアン径が8μm~25μmである。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記炭素被覆層は、厚さが10nm~100nmである。
【0009】
前記細孔は、細孔容積が0.01cm3/g~0.08cm3/gである。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛コアの内部の細孔に充填された黒鉛化充填剤の含有量は、前記黒鉛化充填剤100質量%に対して、20質量%~80質量%である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、平均細孔容積が0.005cm3/g~0.010cm3/gである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料における細孔に占めるマクロ細孔の割合は80%~90%であり、前記マクロ細孔は孔径≧50nmである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料のO原子の濃度とC原子の濃度との比(O/C値)は、0.02~0.04である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0015】
本開示により、前記黒鉛負極材料の製造方法であって、
天然黒鉛と充填剤を混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、細孔に前記充填剤が充填された黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を黒鉛化処理して前記黒鉛負極材料を得る工程とを含む、方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛は、天然鱗片状黒鉛を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛は、メジアン径(D50)が10μm~150μmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、残留炭素分が10質量%~90質量%で、且つ60~350℃で液体に溶融可能な有機炭素源を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記有機炭素源は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、粒子径が0.5μm~10μmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記ピッチは、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ及び改質ピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記ピッチは、メジアン径が1μm~10μmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記樹脂は、フェノ一ル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛と前記充填剤との質量比は、10:(0.5~3)である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛粉体は、メジアン径が8~25μmである。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛粉体は、球形黒鉛粉体である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛化は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気として、非酸素雰囲気が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記保護雰囲気は、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛化熱処理は、温度が2000℃~3300℃、時間が10h~72hである。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、前記黒鉛化処理により得られた製品を分散させて篩分することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記方法は、
メジアン径が10μm~150μmの天然鱗片状黒鉛とメジアン径が1μm~10μmのピッチを質量比10:(0.5~3)で物理的に混合し、混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、メジアン径が8μm~25μmの球形黒鉛粉体を得る工程と、
前記球形黒鉛粉体を保護雰囲気下で2000~3300℃の温度で10h~72h黒鉛化処理して前記黒鉛負極材料を得る工程とを含む。
【発明の効果】
【0032】
本開示により、前記黒鉛負極材料、又は前記製造方法で製造された黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の実施形態に係る技術案をより明確に説明するために、以下に実施形態を示すために必要な図面を簡単に説明する。なお、添付の図面は本開示の実施形態を例示的に示し、図中の寸法比例は、必ず実施形態の実際の比例とは直接に対応するわけではない。また、添付の図面は、本開示の一部の実施形態を示すものに過ぎず、範囲を限定するためのものと見なされるべきではない。
図1】本開示の実施例1で製造した黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本開示における実施形態で使用した天然黒鉛材料に対して球形化のみを行った球形黒鉛の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】本開示の比較例1で製造した黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】本開示におけるいくつかの実施形態に係る黒鉛負極材料の断面構造を示す図である。
図5】本開示におけるいくつかの実施形態に係るカソードの断面構造を示す図である。
図6】本開示におけるいくつかの実施形態に係る電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示をよりよく説明して当業者に本開示の内容をより容易に理解させるために、以下、本開示についてさらに詳細に説明する。しかしながら、下記実施例は、本開示の簡単化された例に過ぎず、本開示の特許請求の範囲を代表するか又は限定するものではなく、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じると理解される。なお、特に限定しない限り、本開示の各実施形態における各特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0035】
本開示の実施形態で提供する黒鉛負極材料の製造方法により、内部に隙間や欠陥がない緻密構造を有する天然黒鉛負極材料を製造することができる。
【0036】
I.黒鉛負極材料
一実施形態において、
内部に細孔122を有する黒鉛コアと、
黒鉛コアの内部の細孔122に充填された黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料100を提供する。
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コア120の表面に設けられた炭素被覆層140をさらに含む。いくつかの実施形態において、炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤を含む。いくつかの実施形態において、炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤で形成される。いくつかの実施形態において、黒鉛コアは、天然黒鉛を含むか、又は天然黒鉛から構成される。
【0037】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、
黒鉛材料が充填された細孔122を内部に有する天然黒鉛コア120と、
天然黒鉛コア120の表面に形成された炭素被覆層140と、を含み、
前記黒鉛材料及び前記炭素被覆層140はいずれも、充填剤を黒鉛化してなる黒鉛化充填剤により形成される。
【0038】
いくつかの実施形態において、
内部に細孔122を有する天然黒鉛コア120と、
天然黒鉛コア120の表面に形成された炭素被覆層140と、
天然黒鉛コア120の内部の細孔122に充填され、かつ炭素被覆層140を形成する黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料100を提供する。
【0039】
本開示の実施形態における黒鉛負極材料100は、黒鉛コア120の内部の細孔122(欠陥)に黒鉛化充填剤が充填され、外部に被覆される構造により、内部の緻密化が図られ、天然黒鉛の内部の欠陥が解消され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良く、総合的な性能に優れる。これにより、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が改善される。充填剤が天然黒鉛の内部の細孔に充填されると共に、天然黒鉛の表面に被覆されることにより、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が根本的に解決され、天然黒鉛のサイクル特性が改善されるだけでなく、製造プロセスが簡素化され、原材料の移動と残留による損失が低減され、生産コストが低減され、生産効率が高くなる。図4に示されるように、本実施形態における黒鉛負極材料100は、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化充填剤が充填されることにより、内部の緻密化が図られ、天然黒鉛の内部の欠陥、及び黒鉛を粉砕して球形化させる際に存在する内部における細孔欠陥という課題が解消され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良くなる。また、黒鉛化充填剤が、天然黒鉛コア120の表面に炭素被覆層140を形成するとともに、外部被覆構造を形成する。該外部被覆構造は、黒鉛内部の緻密化構造と協同して材料の膨張率を低下させ、電極のサイクル特性をさらに向上し、総合的な性能をさらに改善し、一定程度で天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が改善される。
【0040】
(A)黒鉛コア
いくつかの実施形態において、天然黒鉛コア120は、メジアン径が8μm~25μmであり、8μm、10μm、15μm、20μm又は25μmなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
(B)黒鉛化充填剤と被覆層
いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ及び樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、充填剤は、黒鉛化ピッチ及び黒鉛化樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、黒鉛化充填剤は、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填される。
【0043】
図4に示されるように、黒鉛化充填剤は、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填される。黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コアの表面に設けられる炭素被覆層140をさらに含む。炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤で形成される。換言すれば、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填された材料は、炭素被覆層140の材料と同じであり、いずれも黒鉛化充填剤から構成される。
【0044】
いくつかの実施形態において、被覆層は、厚さが10nm~100nmであり、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm又は100nmなどが挙げられるが、これらに限定されない。厚さが10nm~100nmの範囲にある被覆層は、本実施形態の内部緻密化構造と協同して電池のサイクル特性等をよりよく向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、黒鉛化充填剤は、粒子径が0.5μm~10μmであり、0.5μm、1μm、3μm、5μm、7μm、9μm、10μmが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、細孔122は、細孔容積が0.01cm3/g~0.08cm3/gであり、0.01cm3/g、0.03cm3/g、0.05cm3/g、0.07cm3/g、0.08cm3/gが挙げられるが、これらに限定されない。このように特定されるパラメータ範囲により、黒鉛化充填剤により天然黒鉛内部の細孔122が完全に充填され、内部緻密構造を形成することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、該天然黒鉛コアには、マクロ細孔の割合が92%~98%であり、内部に細孔が多い。いくつかの実施形態において、該天然黒鉛コアには、マクロ細孔の割合が94%~96%である。なお、ここで、天然黒鉛コアにおけるマクロ細孔の割合は、黒鉛負極材料100における黒鉛化充填剤を除いた後の天然黒鉛コア120の構造に基づいて算出したものである。
【0048】
なお、上記したマクロ細孔とは、孔径≧50nmの孔を指す。
【0049】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部における平均細孔容積が0.005cm3/g~0.010cm3/gであり、例えば0.005cm3/g、0.006cm3/g、0.007cm3/g、0.008cm3/g、0.009cm3/g、0.010cm3/g等であってもよい。本開示による黒鉛負極材料100は、細孔容積が低下することにより、材料のサイクル過程中での副反応を低減し、材料のサイクル特性を向上させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部におけるマクロ細孔の割合が80%~90%である。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部におけるマクロ細孔の割合が、例えば80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%等であってもよい。本開示による黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コア120に比べて、内部のマクロ細孔容積が多く低減することから、本開示の方法で製造した黒鉛負極材料は内部の細孔が黒鉛化充填剤により効果的に充填されることにより、材料のサイクル特性を向上することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛コア120の内部の細孔122に充填された黒鉛化充填剤の量は、全部黒鉛化充填剤100質量%に対して、20質量%~80質量%であり、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%が挙げられるが、これらに限定されない。20質量%~80質量%の範囲内とすることにより、充填剤で黒鉛内部の隙間を密に充填することを実現できると共に、容量を大きく低下させることがない。黒鉛化充填剤の量が少なすぎると、黒鉛の内部の細孔122を完全に充填することができなくなり、黒鉛化充填剤の量が多すぎると、材料の容量が低くなり、圧縮密度が低くなる等の悪影響を与える恐れがある。
【0052】
いくつかの実施形態において、X線光電子分光分析によるClsとOlsに対応するスペクトルのピーク面積から算出したO原子とC原子の濃度に基づき、黒鉛負極材料におけるO原子の濃度とC原子の濃度の比(O/C値)は、0.02~0.04である。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料は、O/C値が例えば0.02、0.022、0.025、0.027、0.030、0.032、0.035、0.037、0.039、0.04等であってよい。O/C値が低い場合、本開示の材料の酸素含有量が低く、酸素含有官能基が少ないと意味しており、サイクル過程中における副反応の減少や、材料のサイクル特性の向上に寄与可能である。
【0053】
II.黒鉛負極材料の製造
一実施形態において、黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程を含む、黒鉛負極材料100の製造方法であって、
前記黒鉛粉体は、内部に細孔122を有する天然黒鉛コア120と、天然黒鉛コア120の内部の細孔122内に充填された充填剤とを含む、製造方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤の混合物を粉砕して黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、細孔に前記充填剤が充填された黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得る工程と、
混合物を粉砕して球形化し、黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0057】
本開示による製造方法では、原料用意段階において、天然黒鉛と充填剤とを均一に混合してもよく、その後、粉砕及び球形化の過程中に、固体の充填剤を天然黒鉛粒子の内部に嵌め込み、黒鉛化処理した後、天然黒鉛粒子の内部に嵌め込まれた充填剤により、天然黒鉛粒子の内部の欠陥が解消され、緻密化構造が形成され、ひいては製品の性能が向上される。
【0058】
本開示による方法では、天然黒鉛と充填剤を均一に混合した後、粉砕及び球状化の過程中に、充填剤を黒鉛の内部に嵌め込ませるとともに、天然黒鉛の外面を被覆することもできる。熱処理後には、内部が緻密で、外部が被覆される構造が形成され、天然黒鉛の内部の欠陥が解消され、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が根本的に解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が向上される。
【0059】
本開示による構造方法では、天然黒鉛の球形化、球形化された黒鉛(球形黒鉛)と充填剤の混合及び被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなり、天然黒鉛と充填剤の両者を混合して一緒に粉砕・球形化することにより、鱗片状黒鉛のみを粉砕・球形化する場合に内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消され、内部に緻密化構造が形成され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良くなり、総合的な性能に優れる。
【0060】
黒鉛
いくつかの実施形態において、黒鉛は、天然黒鉛であってもよい。いくつかの実施形態において、天然黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛は、メジアン径(D50)が10μm~150μmであり、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm又は150μmなどが挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0062】
充填剤
本明細書において、用語「充填剤」とは、黒鉛コアの内部の細孔122に充填可能で、黒鉛化可能なものである。本明細書において、「充填剤」は、「黒鉛化可能な充填剤」とも称する。充填剤の例としては、有機炭素源が挙げられるが、これに限定されない。
【0063】
いくつかの実施形態において、充填剤は、残留炭素分が10~90質量%で、且つ60~350℃で液体に溶融可能な有機炭素源を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、ピッチとしては、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、改質ピッチ、天然ピッチ、シェール(shale)ピッチ及びウッドピッチからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アセトンフルフラール樹脂、フラン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態において、油脂としては、石油、ディーゼル油及び潤滑油からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態において、アルカンとしては、鎖状アルカン及び環状アルカンからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態において、芳香族炭化水素としては、単環式芳香族炭化水素と多環式芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態において、充填剤は、60~350℃、70~300℃、80~250℃、85~245℃、又は90~240℃の温度で液体に溶融可能なものであってもよく、上記温度として、例えば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃又は350℃が挙げられる。充填剤は、一定の融点を有してもよく、一定の融点を有しなくてもよい。例えば、充填剤は、溶融温度区間を有してもよい。いくつかの実施形態において、充填剤は、溶融温度区間が40℃以下、30℃以下、20℃以下、又は15℃以下である。いくつかの実施形態において、充填剤は、軟化点が195~220℃、198~215℃、又は200~210℃である。
【0071】
いくつかの実施形態において、充填剤は、残留炭素分が10~90質量%、20~85質量%、30~80質量%、40~75質量%、50~70質量%、又は60~65質量%であってもよく、例えば、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%又は95質量%であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ及び/又は樹脂を含む。理論に縛られるものではないが、ピッチと樹脂は、常温(例えば25℃)で固体粉末であり、黒鉛と一緒に粉砕、球形化される過程中で球形黒鉛の内部の細孔122に進入することができ、高温黒鉛化過程中で先に溶融して液体状態になり、細孔に充填してから硬化して固体状態になることにより、内部構造が緻密になって天然黒鉛の内部の欠陥を解消できるだけでなく、外表面に炭素構造の被覆層を形成して天然黒鉛が電解液と直接に接触することを回避し、これによって製品性能を向上することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、充填剤としては、固体粉末充填剤又は半固体充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、ピッチは、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ及び改質ピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、ピッチは、天然ピッチ、シェールピッチ及びウッドピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。典型的で非限定的な組み合わせとして、石油ピッチと石炭ピッチの組み合わせ、石炭ピッチとメソフェーズピッチの組み合わせ、メソフェーズピッチと改質ピッチの組み合わせが挙げられる。また、典型的で非限定的な組み合わせとして、石油ピッチ、ウッドピッチ、及びメソフェーズピッチの組み合わせ;石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、及び天然ピッチの組み合わせ;石油ピッチ、石炭ピッチ、及びシェールピッチの組み合わせ等が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、ピッチは、メジアン径(D50)が1μm~10μmであり、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm又は10μm等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0076】
いくつかの実施形態において、樹脂は、フェノ一ル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤との質量比は10:(0.5~3)であり、10:0.5、10:0.8、10:1、10:1.2、10:1.4、10:1.6、10:1.8、10:2、10:2.2、10:2.4、10:2.6、10:2.8又は10:3等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0078】
本実施形態において、天然黒鉛と充填剤の質量比を10:(0.5~3)の範囲とすることにより、黒鉛における隙間を完全に充填することができるだけでなく、材料の容量低下などを引き起こすことはない。天然黒鉛と充填剤の質量比が大きすぎる(即ち充填剤が少なすぎる)と、黒鉛の内部の細孔122を完全に充填することができなくなり、また天然黒鉛と充填剤の質量比が小さすぎる(即ち充填剤が多すぎる)と、材料の容量が低くなり、圧縮密度が低くなる等の悪影響を与える恐れがある。
【0079】
混合
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得ることを含む。
【0080】
粉砕・球形化
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛と充填剤を含む混合物を粉砕及び/又は球形化して黒鉛粉体を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛と充填剤の混合物を粉砕して黒鉛粉体を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、混合物を粉砕して黒鉛粉体を得ることを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、粉砕及び球形化は、機械式粉砕機で実行される。
【0082】
いくつかの実施形態において、黒鉛粉体は、メジアン径(D50)が8μm~25μmであり、8μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、20μm、22μm、24μm又は25μm等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、粉砕・球形化後に得られた黒鉛粉体のメジアン径が大きすぎると、材料のDmax(材料中の粒子の最大粒径)が大きすぎて、電池製造過程中にセパレータを突き破り、電池において短絡が発生する恐れがある。また、粉砕・球形化後に得られた黒鉛粉体のメジアン径が小さすぎると、球形黒鉛の収率が低くなり、コストが高くなる可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態において、黒鉛粉体は、球形黒鉛粉体である。
【0085】
黒鉛化
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛粉体を黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛化は、保護雰囲気で行ってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、保護雰囲気は、非酸素雰囲気を含む。
【0087】
好ましくは、前記非酸素雰囲気として、真空雰囲気、水素雰囲気、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、ネオン雰囲気、アルゴン雰囲気、クリプトン雰囲気及びキセノン雰囲気からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、保護雰囲気は、窒素雰囲気及び/又はアルゴン雰囲気を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の温度は2000℃~3300℃であり、例えば、2000℃、2100℃、2200℃、2300℃、2400℃、2500℃、2600℃、2700℃、2800℃、2900℃、3000℃、3100℃、3200℃又は3300℃等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。2000℃~3300℃の温度範囲であれば、充填剤を効率的に黒鉛へ変化させることに寄与可能である。
【0090】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の時間は10h~72hであり、例えば、10h、15h、20h、25h、30h、35h、40h、45h、50h、55h、60h、65h、70h又は72h等が挙げられるが、これに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0091】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤の粉砕前の混合時間は10min~60minであり、例えば、10min、15min、20min、25min、30min、35min、40min、45min、50min、55min、60minが挙げられるが、これらに限定されない。前記混合時間が10min~60minの範囲であれば、充填剤と天然黒鉛をより均一に混合し、充填剤で天然黒鉛の表面をよりよく被覆するとともに、黒鉛の隙間を通じて黒鉛の細孔中に浸潤することができ、これにより黒鉛の細孔への予備充填が行われる。
【0092】
いくつかの実施形態において、製造方法は、黒鉛化処理により得られた製品を分散、篩分することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物の製造方法は、
メジアン径が10μm~150μmの天然鱗片状黒鉛とメジアン径が1μm~10μmのピッチを質量比10:(0.5~3)で物理的に混合して混合物を得る工程と、
混合物を粉砕して球形化し、メジアン径が8μm~25μmの球形黒鉛粉体を得る工程と、
球形黒鉛粉体を保護雰囲気下で2000℃~3300℃の温度で10h~72h黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程と、を含む。
少なくともいくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤の混合時間は、10min~60minである。
【0093】
好ましくは、前記製造方法において、鱗片状黒鉛と充填剤(例えば、ピッチ)との両者を混合して粉砕・球形化を行う。粉砕・球形化の過程中において、鱗片状黒鉛に湾曲と折り畳みが生じ、充填剤(例えば、ピッチ)が球形黒鉛の内部に嵌め込まれるとともに、球形黒鉛の外表層を被覆する。鱗片状黒鉛と充填剤(例えば、ピッチ)との両者を共に粉砕・球形化することにより、単に鱗片状黒鉛のみを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消されるだけでなく、球形黒鉛がその外表層に充填剤(例えば、ピッチ)により均一に被覆される。これにより、天然黒鉛の膨張率を低下し、サイクル特性を向上することができる。
【0094】
III.負極材料及び負極
黒鉛負極材料100は、負極活物質、例えばリチウムイオン電池における負極活物質として用いることができる。一実施形態では、上記黒鉛負極材料100を含む負極材料を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態において、負極材料は、バインダーをさらに含む。
いくつかの実施形態において、負極材料は、導電剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記黒鉛負極材料、バインダー及び導電剤を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、負極材料は、黒鉛をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記した黒鉛負極材料、バインダー、導電剤及び黒鉛を含む。
【0097】
一実施形態では、上記各成分を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態では、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーを混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態では、黒鉛負極材料100、導電剤、バインダー及び黒鉛を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。
【0098】
一実施形態では、黒鉛負極材料100を含む負極240を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、負極は、負極集電体242と、負極集電体242上における負極活物質層244とを含み、前記負極活物質層244が上記負極材料を含む。
【0100】
一実施形態では、負極材料を含むスラリーを負極集電体242に塗布することを含む、負極240の製造方法を提供する。
【0101】
図5に示されるように、いくつかの実施形態において、負極集電体242と、負極集電体242上における負極活物質層244とを含む負極であって、前記負極活物質層244が上記黒鉛負極材料100を含む、負極を提供する。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、導電剤とバインダーをさらに含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、黒鉛をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーの質量比は、(93~98):(1.0~2.0):(1.0~5.0)である。
【0103】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素複合負極材料を含むスラリーを負極集電体(242)上に塗工して負極集電体(242)上に負極活物質層を形成することと、負極活物質層を乾燥させることとを含む、負極240の製造方法を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、乾燥は、真空乾燥であってもよい。いくつかの実施形態において、スラリーの総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中の黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーの総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中の黒鉛負極材料100、導電剤、バインダー及び黒鉛の総固形分は30~60質量%である。
【0105】
いくつかの実施形態において、スラリーを負極集電体242上に塗工する前に、負極活物質層中の各成分(例えば、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダー、並びに任意の黒鉛)を溶媒に分散してスラリーを形成する工程を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、負極集電体242は、金属であってもよい。いくつかの実施形態において、負極集電体242としては、銅箔集電体が挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
スラリーは、溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記溶媒としては、水が挙げられるが、これに限定されない。
【0108】
バインダーは、負極活物質粒子同士の間の接着性及びそれらと集電体242との接着性を向上することができる。いくつかの実施形態において、バインダーは、非水系バインダー又は水系バインダーからなる群より選択される少なくとも1つを含む。非水系バインダーは、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、オキシエチレン基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、及びポリイミドからなる群より選択される1つを含んでもよいが、これらに限定されない。水系バインダーは、ゴム系バインダー及びポリマー樹脂バインダーからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0109】
導電剤は、電極の導電性を向上することができる。導電剤としては、高導電率材料が挙げられるが、これに限定されない。例えば、金、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、及び/又はそれらと類似した金属の粉末又は繊維、及び/又は類似した金属系材料;天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維及び/又は類似した炭素系材料;ポリフェニレン誘導体及び/又は類似した導電性ポリマー;及び/又は、上記各種物質の混合物であってもよい。
【0110】
IV.リチウムイオン電池
一実施形態では、黒鉛負極材料100を含むリチウムイオン電池200を提供する。
【0111】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、製造方法で製造された黒鉛負極材料100を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含んでもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含み、前記負極240は、負極集電体242上に、黒鉛負極材料100を含む負極活物質層を有する。
【0114】
図6に示されるように、いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220と負極240の間に設けられたセパレータ280を含んでもよい。セパレータ280は、ポリプロピレン微多孔質フィルムなどのポリマー微多孔質フィルムであってもよい。セパレータ280は、市販品でもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、外装ケース290を含んでもよい。正極220、負極240、セパレータ280、電解液260は、外装ケース290に収容されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池は、円筒型電池、角型電池、ボタン型電池のいずれであってもよい。リチウムイオン電池は、剛性外装ケースの電池であってもよく、ソフトパッケージ電池であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、正極220は、正極集電体と、正極集電体上における正極活物質層とを含んでもよい。正極活物質層は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な正極活物質を含み、正極活物質の例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、LiNi1-x-yCoxy2(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)、リチウム-遷移金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態において、電解液260として、非水有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、炭酸エステル、エステル、エーテル及びケトンからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態において、炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピルメチルカーボネート、プロピルエチルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。エステルとしては、ブチロラクトン(BL)、デカラクトン、バレロラクトン(BL)、メバロニックラクトン、カプロラクトン(BC)、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸n-プロピルからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。エーテルとしては、ジブチルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。ケトンとしては、ポリメチルビニルケトンが挙げられるが、これに限定されない。
【0119】
本開示による黒鉛負極材料100の製造について、通常、球形天然黒鉛は、鱗片状黒鉛を球形化、粉砕して得られるものであり、内部に大量の隙間が存在する。このような球形天然黒鉛は、外表面への被覆により改質された球形天然黒鉛などの他の形態の黒鉛と比べて、サイクル過程中に電解液がその内部における隙間に徐々に浸入して副反応が発生し、内部における隙間で生成したSEI膜の破壊、修復が繰り返し、電解液中の有機分子が共挿入されることにより、黒鉛の層状構造が剥離されて破壊され、膨張率が高くなり、容量が持続的に減衰することになる。
【0120】
本開示による製造方法では、黒鉛と充填剤を混合してから粉砕等の処理を行って黒鉛粉体を得る過程において、天然黒鉛の球形化、球形化された黒鉛(球形黒鉛)と充填剤の混合・被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、製造プロセスが簡単になり、生産効率が高くなる。天然黒鉛と充填剤の両者を一括に混合して粉砕・球形化することにより、鱗片状黒鉛だけを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥を有するという欠点が解消され、内部が緻密的な構造を形成することができる。そして、黒鉛化充填剤で天然黒鉛コア120の表面に形成した炭素被覆層140からなる外部被覆構造は、黒鉛内部の緻密的な構造と相乗的に材料の膨張率を低下させ、電極のサイクル特性をさらに向上し、得られた製品が優れた総合的な性能を有することができる。
【0121】
本開示による黒鉛負極材料は、膨張率が小さく、サイクル特性が高いという利点を有し、総合的な性能に優れる。
【0122】
本開示の実施例の目的、構成及び利点をより明らかにするために、以下に本開示の実施例の構成を明確、完全に説明する。実施例において明記されていない具体的な条件について、一般的な条件又は製造元により提示される条件に従って行ってもよい。使用された試薬又は機器は、生産メーカーが明記されない場合、いずれも市販品を購入することで入手可能な一般的な製品であってもよい。
【実施例
【0123】
以下、本開示の典型的で非限定的な実施例を示す。
【0124】
<実施例1>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(D50が70μm)、石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)を原料とし、両者の質量比を10:1とし、まず機械的で物理的な混合により35min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を窒素雰囲気、3200℃の条件下で10h黒鉛化した。最後に、材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0125】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に、黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。黒鉛コアは、D50が8μmであり、炭素被覆層は厚さが40nmであった。
【0126】
図1は、本実施例で製造された黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真であり、該図から天然球形黒鉛の内部がピッチにより密に充填されており、かつ外表層に均一な被覆層が形成されたことが分かる。なお、本開示の実施例2~8で製造された黒鉛負極材料の走査型電子顕微鏡写真は、実施例1と近似しており、いずれも充填剤により天然球形黒鉛の内部隙間が完全に密に充填されており、外部に炭素層で均一に被覆されることになった。図2は、図1に比べて、天然鱗片状黒鉛に対して球形化処理のみを行う(充填剤を添加して混合することがない)ことにより得られた球形黒鉛を示す図であり、黒鉛材料に存在する隙間が明らかに見える。
【0127】
<実施例2>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(D50が70μm)、石油ピッチ(軟化点が180℃、D50が3μm)を原料とし、両者の質量比を10:1とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3000℃で24h黒鉛化した。最後に、材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0128】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に、黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が8μmであり、炭素被覆層は、厚さが60nmであった。
【0129】
<実施例3>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)、石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0130】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が17μmであり、炭素被覆層は、厚さが80nmであった。
【0131】
<実施例4>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)、石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的且つ物理的に混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3200℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0132】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。黒鉛コアは、D50が17μmであり、炭素被覆層は、厚さが80nmであった。
【0133】
<実施例5>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)、石油ピッチ(軟化点が180℃、D50が3μm)を原料とし、両者の質量比を10:3とし、まず機械的で物理的な混合により45min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3000℃で24h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0134】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が23μmであり、炭素被覆層は、厚さが100nmであった。
【0135】
<実施例6>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)、石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:3とし、まず機械的で物理的な混合により45min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0136】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が23μmであり、炭素被覆層は、厚さが100nmであった。
【0137】
<実施例7>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が10μm)、石炭ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:0.5とし、まず機械的で物理的な混合により35min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3300℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0138】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コア120の内部における細孔122欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層140がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。天然黒鉛コア120は、D50が8μmであり、炭素被覆層140は、厚さが10nmであった。
【0139】
<実施例8>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料100を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が100μm)、フェノ一ル樹脂を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が25μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2000℃で72h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0140】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コア120と、天然黒鉛コア120の表面を被覆する炭素被覆層140とを含み、天然黒鉛コア120の内部における細孔122欠陥に黒鉛化されたフェノ一ル樹脂が充填されており、天然黒鉛コア120に隙間や欠陥がなく、炭素被覆層140がフェノ一ル樹脂を黒鉛化してなる炭素構造層であった。天然黒鉛コア120は、D50が25μmであり、炭素被覆層140は、厚さが80nmであった。
【0141】
<比較例1>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が70μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)と35min混合し、両者の質量比を10:1とし、混合粉体を3200℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本実施例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例1と同様に実行した。)。
【0142】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が8μmであり、被覆層は、厚さが45nmであった。
【0143】
図3は、本比較例1で製造された黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真であり、該図から、天然球形黒鉛の内部に僅かな隙間がピッチにより充填されており、その内部における多くの隙間がピッチにより充填されておらず、隙間が依然として明らかに見えることに鑑みて、黒鉛負極材料への密な充填が実現されなかったことがわかる。
【0144】
<比較例2>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)と40min混合し、両者の質量比を10:2とし、混合粉体を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本実施例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例3と同様に実行した。)。
【0145】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が17μmであり、被覆層は、厚さが65nmであった。
【0146】
<比較例3>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)と45min混合し、両者の質量比を10:3とし、混合粉体を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本実施例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例6と同様に実行した。)。
【0147】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が23μmであり、被覆層は、厚さが110nmであった。
【0148】
実験例
<実験例1:電池性能実験>
【0149】
電池性能実験(一)
I.ボタン電池用電極シートの製造:
実施例又は比較例で製造された黒鉛負極材料を負極活物質として用い、活物質:CMC(カルボキシメチルセルロース):SBR(スチレンブタジエンゴム)の質量比=96.5:1.5:2で均一に混合した後、溶媒と混合して銅箔からなる負極集電体に塗布し、上記材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、乾燥して負極シートを得た。
得られた電極シートを用いてボタン電池を組み立てた。具体的には、金属リチウムシートを負極とし、1mol/LのLiPF6+EC(エチルカーボネート)+EMC(エチルメチルカーボネート)(体積比1:1:1)との組成を有するものを電解液260とし、微多孔質ポリエチレン/ポリプロピレン複合フイルムをセパレータ280とし、アルゴン雰囲気のグローブボックス(MBRAUN UNIlab Plus)内に電池を組み立てた。
【0150】
II.電池性能実験
(1)ボタン電池の初回リチウムイオン放出時の比容量(Q1(dis))(mAh/g)の測定:
1(cha)=Cl(cha)/m (1)
ここで、
1(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回放電比容量(mAh/g);
1(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回放電容量(mAh);
m:活物質の質量(g)。
【0151】
(2)ボタン電池の初回効率(即ち、初回クーロン効率;E1)(%)の測定:
1=Ql(dis)/Ql(cha)×100% (2)
ここで、
1(cha):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回充電比容量(mAh/g);
1(cha):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回充電容量(mAh)。
(「Silicon-carbon」GB/T 38823-2020に記載の式D.3を参照)
電気化学的性能実験は、Wuhan LAND Electronic Co.,Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用いて行い、充放電電圧を0.01~1.5V、充放電レートを0.1Cとし、測定した初回容量及び効率を表1に示す。初回サイクル中に0.1Cで充放電し、2サイクル目に0.2Cで充放電し、その後のすべてのサイクル中には0.5Cで充放電する条件下で、ボタン電池の50サイクル目の膨張率を測定した。
【0152】
電池性能実験(二)
I.リチウムイオン電池の製造
図5に示されるように、実施例又は比較例で製造された黒鉛負極材料100からなる天然黒鉛系複合材料、導電剤、CMC及びSBRを95:1.5:1.5:2の質量で混合した後、溶媒と混合して銅箔からなる負極集電体242に塗布し、材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、乾燥して上層に負極活物質層244が形成された負極シート240を得た。正極活物質のLiCoO2、導電剤、PVDFを96.5:2:1.5の質量比で均一に混合した後に、溶媒と混合してアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、正極シート220を得た。1mol/LのLiPF6+EC+EMC(体積比=1:1:1)との組成を有するものを電解液260とし、微多孔質ポリエチレン/ポリプロピレン複合フイルムをセパレータ280とするとともに、外装ケース290を用いて組み立ててリチウムイオン電池200を製造した。
【0153】
II.電気化学的性能実験
全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率の計算式:
全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率(%)=C1000(dis)/C1(dis)×100% (3)
ここで、
100(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の100サイクル目の放電容量(mAh)。
電気化学的性能実験は、Wuhan LAND Electronic Co.,Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用い、1Cのレートで常温で充放電し、電圧範囲を3.0~4.25Vとし、測定したサイクル特性を表1に示す。
【0154】
電池性能実験(三)
電気化学的性能実験:
50サイクル目の膨張率の測定:
1.電池性能実験(二)における方法で負極シートを製造し、コバルト酸リチウム材料で正極シートを作製し、正極シートの面密度を16±1mg/cm3とし、圧縮密度を3.5g/ccとした。また、負極シートの面密度を7±1mg/cm3とした;
2.正負極シートをin‐situテスト用金型で測定用電池に組み立てた;
3.組み立てられた電池について充放電サイクルを行い、in‐situでテストデータを記録した;
4.下記式でテストデータから膨張率を算出した。
膨張率=電極シートの厚さ変化値/充放電前の電極シートの厚さ×100% (4)
上記電気化学性能実験は、Wuhan LAND electronics Co., Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用いて行い、1Cのレートで常温で充放電し、電圧範囲を3.0~4.25Vとし、サイクルを合計50回行い、測定した50サイクル目の膨張率を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
<実験例2:黒鉛負極材料の性能実験>
(一)黒鉛負極材料のO/C値の測定
測定方法:
O/C値は、X線光電子分光分析(XPS)によるC1sとO1sの光電子スペクトルにおけるピーク面積から算出したO原子とC原子の濃度比、すなわち、O原子の濃度/C原子の濃度である。
操作方法は、下記の通りである。上記実施例1~8及び比較例1~3で製造された黒鉛負極材料の試料を真空オーブンに入れ、120℃で12時間乾燥させて試料中の水分及び揮発分を除去し、その後、X線光電子分光装置(XPS、型式ESCALAB 250Xi)によりその元素構成及び含有量を測定し、XPSによる測定結果におけるC1s及びO1sの光電子スペクトルにおけるピーク面積に基づいてO原子とC原子の濃度比、即ち、O/C値を得ることができる。
実験結果を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
(二)黒鉛負極材料の孔径の測定
測定方法:
上記実施例1~8及び比較例1~3で製造された黒鉛負極材料の試料を真空オーブンに入れ、120℃で12時間乾燥させて、試料中の水分及び揮発分を除去し、その後、比表面積/細孔径分布測定装置(型式ASAP 2460)により試料の窒素吸脱着等温線を測定し、その後にBJHモデル(Barrett-Joyner-Halenda)によりフィッティングを行い、試料の細孔容積と細孔径分布データを取得することができる。ここで、マクロ細孔の割合とは、孔径が50nm以上の細孔の容積の、試料の総細孔容積に占める割合を指す。
実験結果を表3に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
上記実施例と比較例の結果を併せて検討すると分かるように、本開示の実施例1~8で提供した黒鉛負極材料100は、製造方法において天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤の混合・被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなり、天然黒鉛と充填剤の両者を一緒に混合して粉砕・球形化することにより、単に鱗片状黒鉛だけを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消され、黒鉛コアにおける隙間が効率よく密に充填されており、内部に緻密的な構造が形成される。また、本開示に係る黒鉛負極材料は、比較例の黒鉛材料に比べて、細孔容積が著しく低下し、マクロ細孔容積の割合が低下し、製品の膨張率が小さくなり、そして、黒鉛化処理後、本開示の黒鉛負極材料は、比較例で製造された材料に比べて、表面における酸素含有官能基が減少し、O/C値が著しく低下し、サイクル過程中の副反応が減少し、材料のサイクル特性の向上に寄与することができる。さらに、本実施形態の電極性能実験において、50サイクル目の膨張率が依然として低いレベルに維持され、サイクル特性がよく、全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率がより高いレベルに維持され、総合的な性能に優れたという利点を示している。
【0161】
比較例1の実施例1に対する区別、比較例2の実施例3に対する区別、及び、比較例3の実施例6に対する区別は、いずれも、天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤との混合・被覆、充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を、同時に行うことではなく、順に行い、それにより充填剤が単に黒鉛表面に被覆され、黒鉛の内部における隙間に入ることができず、構造には依然として欠陥が存在する。そのため、比較例1~3の製品は各実施例の製品と比べて膨張率が大幅に増大し、サイクル特性が大幅に低下することになった。
【0162】
上記実施例により本開示の詳細な方法を説明したが、本開示は、上記詳細な方法に限定されるものではなく、すなわち、本開示は、必ずしも上記詳細な方法に実施するわけではない。当業者にとって、本開示に基づく任意の改良、本開示の製品の各原料の等価置換及び補助成分の添加、選択される具体的な添加方式等は、いずれも本開示の保護範囲及び開示範囲内にあることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0163】
上記から、本開示により、黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。この黒鉛負極材料は、内部に緻密的な構造が形成されたものであり、電極に応用すると、製品は膨張率が小さく、サイクル特性が高く、総合的な性能に優れたという利点を示すことができる。この製造方法によれば、天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤の混合・被覆、および充填材による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなることができる。そして、製造された負極及び電池は、初回効率が高く、サイクル特性が高いなどの利点を示すことができる。
【符号の説明】
【0164】
100 黒鉛負極材料
120 天然黒鉛コア
122 細孔
140 炭素被覆層
200 電池
220 正極
240 負極
242 負極集電体
244 負極活物質層
260 電解液
280 セパレータ
290 外装ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年9月10日付で中国専利局に提出した、出願番号が2020109472554、発明の名称が「黒鉛負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、エネルギー貯蔵材料の分野に関し、負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関し、特に黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、近年、3C電子機器、電動自転車、エネルギー貯蔵システム、特に電気自動車に広く応用されている。現在市販されているリチウムイオン電池負極材料は、主に、ソフトカーボン、ハードカーボン及び黒鉛材料などの炭素負極材料である。ここで、上記した黒鉛材料は、現在最も成熟に商品化されたリチウムイオン電池負極材料である。
【0004】
また、黒鉛材料は、天然黒鉛及び人造黒鉛の2種類に分けられる。天然黒鉛は、通常、球形天然黒鉛を指すが、球形天然黒鉛は、異方性が高く、電解液選択性とサイクル特性が悪く、膨張率が高いなどの欠点を有する。これに鑑みて、天然黒鉛負極材料には、天然黒鉛のサイクル特性及び膨張率の改善が常に早急に解決すべき課題の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本開示は、黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示により、
内部に細孔を有する天然黒鉛コアと、
前記天然黒鉛コアの表面に形成される炭素被覆層と、
前記天然黒鉛コアの内部の細孔に充填され、かつ前記炭素被覆層を形成する黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料を提供する。
【0007】
本開示により、
黒鉛材料が充填された細孔を内部に有する天然黒鉛コアと、
前記天然黒鉛コアの表面に形成された炭素被覆層と、を含む黒鉛負極材料であって、
前記黒鉛材料及び前記炭素被覆層はいずれも、充填剤を黒鉛化した黒鉛化充填剤により形成された黒鉛負極材料を提供する。いくつかの実施形態において、前記黒鉛コアは、メジアン径が8μm~25μmである。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記炭素被覆層は、厚さが10nm~100nmである。
【0009】
前記細孔は、細孔容積が0.01cm3/g~0.08cm3/gである。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛コアの内部の細孔に充填された黒鉛化充填剤の含有量は、前記黒鉛化充填剤100質量%に対して、20質量%~80質量%である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料は、平均細孔容積が0.005cm3/g~0.010cm3/gである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料における細孔に占めるマクロ細孔の割合は80%~90%であり、前記マクロ細孔は孔径≧50nmである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛負極材料のO原子の濃度とC原子の濃度との比(O/C値)は、0.02~0.04である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0015】
本開示により、前記黒鉛負極材料の製造方法であって、
天然黒鉛と充填剤を混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、細孔に前記充填剤が充填された黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を黒鉛化処理して前記黒鉛負極材料を得る工程とを含む、方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛は、天然鱗片状黒鉛を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛は、メジアン径(D50)が10μm~150μmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、残留炭素分が10質量%~90質量%で、且つ60~350℃で液体に溶融可能な有機炭素源を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記有機炭素源は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記充填剤は、粒子径が0.5μm~10μmである。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記ピッチは、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ及び改質ピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記ピッチは、メジアン径が1μm~10μmである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記樹脂は、フェノ一ル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記天然黒鉛と前記充填剤との質量比は、10:(0.5~3)である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛粉体は、メジアン径が8~25μmである。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛粉体は、球形黒鉛粉体である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛化は、保護雰囲気で行い、前記保護雰囲気として、非酸素雰囲気が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記保護雰囲気は、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛化熱処理は、温度が2000℃~3300℃、時間が10h~72hである。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記製造方法は、前記黒鉛化処理により得られた製品を分散させて篩分することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記方法は、
メジアン径が10μm~150μmの天然鱗片状黒鉛とメジアン径が1μm~10μmのピッチを質量比10:(0.5~3)で物理的に混合し、混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、メジアン径が8μm~25μmの球形黒鉛粉体を得る工程と、
前記球形黒鉛粉体を保護雰囲気下で2000~3300℃の温度で10h~72h黒鉛化処理して前記黒鉛負極材料を得る工程とを含む。
【発明の効果】
【0032】
本開示により、前記黒鉛負極材料、又は前記製造方法で製造された黒鉛負極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の実施形態に係る技術案をより明確に説明するために、以下に実施形態を示すために必要な図面を簡単に説明する。なお、添付の図面は本開示の実施形態を例示的に示し、図中の寸法比例は、必ず実施形態の実際の比例とは直接に対応するわけではない。また、添付の図面は、本開示の一部の実施形態を示すものに過ぎず、範囲を限定するためのものと見なされるべきではない。
図1】本開示の実施例1で製造した黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本開示における実施形態で使用した天然黒鉛材料に対して球形化のみを行った球形黒鉛の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】本開示の比較例1で製造した黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】本開示におけるいくつかの実施形態に係る黒鉛負極材料の断面構造を示す図である。
図5】本開示におけるいくつかの実施形態に係るカソードの断面構造を示す図である。
図6】本開示におけるいくつかの実施形態に係る電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示をよりよく説明して当業者に本開示の内容をより容易に理解させるために、以下、本開示についてさらに詳細に説明する。しかしながら、下記実施例は、本開示の簡単化された例に過ぎず、本開示の特許請求の範囲を代表するか又は限定するものではなく、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じると理解される。なお、特に限定しない限り、本開示の各実施形態における各特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0035】
本開示の実施形態で提供する黒鉛負極材料の製造方法により、内部に隙間や欠陥がない緻密構造を有する天然黒鉛負極材料を製造することができる。
【0036】
I.黒鉛負極材料
一実施形態において、
内部に細孔122を有する黒鉛コアと、
黒鉛コアの内部の細孔122に充填された黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料100を提供する。
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コア120の表面に設けられた炭素被覆層140をさらに含む。いくつかの実施形態において、炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤を含む。いくつかの実施形態において、炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤で形成される。いくつかの実施形態において、黒鉛コアは、天然黒鉛を含むか、又は天然黒鉛から構成される。
【0037】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、
黒鉛材料が充填された細孔122を内部に有する天然黒鉛コア120と、
天然黒鉛コア120の表面に形成された炭素被覆層140と、を含み、
前記黒鉛材料及び前記炭素被覆層140はいずれも、充填剤を黒鉛化してなる黒鉛化充填剤により形成される。
【0038】
いくつかの実施形態において、
内部に細孔122を有する天然黒鉛コア120と、
天然黒鉛コア120の表面に形成された炭素被覆層140と、
天然黒鉛コア120の内部の細孔122に充填され、かつ炭素被覆層140を形成する黒鉛化充填剤と、を含む黒鉛負極材料100を提供する。
【0039】
本開示の実施形態における黒鉛負極材料100は、黒鉛コア120の内部の細孔122(欠陥)に黒鉛化充填剤が充填され、外部に被覆される構造により、内部の緻密化が図られ、天然黒鉛の内部の欠陥が解消され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良く、総合的な性能に優れる。これにより、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が改善される。充填剤が天然黒鉛の内部の細孔に充填されると共に、天然黒鉛の表面に被覆されることにより、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が根本的に解決され、天然黒鉛のサイクル特性が改善されるだけでなく、製造プロセスが簡素化され、原材料の移動と残留による損失が低減され、生産コストが低減され、生産効率が高くなる。図4に示されるように、本実施形態における黒鉛負極材料100は、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化充填剤が充填されることにより、内部の緻密化が図られ、天然黒鉛の内部の欠陥、及び黒鉛を粉砕して球形化させる際に存在する内部における細孔欠陥という課題が解消され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良くなる。また、黒鉛化充填剤が、天然黒鉛コア120の表面に炭素被覆層140を形成するとともに、外部被覆構造を形成する。該外部被覆構造は、黒鉛内部の緻密化構造と協同して材料の膨張率を低下させ、電極のサイクル特性をさらに向上し、総合的な性能をさらに改善し、一定程度で天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が改善される。
【0040】
(A)黒鉛コア
いくつかの実施形態において、天然黒鉛コア120は、メジアン径が8μm~25μmであり、8μm、10μm、15μm、20μm又は25μmなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
(B)黒鉛化充填剤と被覆層
いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ及び樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、充填剤は、黒鉛化ピッチ及び黒鉛化樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、黒鉛化充填剤は、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填される。
【0043】
図4に示されるように、黒鉛化充填剤は、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填される。黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コアの表面に設けられる炭素被覆層140をさらに含む。炭素被覆層140は、黒鉛化充填剤で形成される。換言すれば、黒鉛コア120の内部の細孔122に充填された材料は、炭素被覆層140の材料と同じであり、いずれも黒鉛化充填剤から構成される。
【0044】
いくつかの実施形態において、被覆層は、厚さが10nm~100nmであり、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm又は100nmなどが挙げられるが、これらに限定されない。厚さが10nm~100nmの範囲にある被覆層は、本実施形態の内部緻密化構造と協同して電池のサイクル特性等をよりよく向上させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、黒鉛化充填剤は、粒子径が0.5μm~10μmであり、0.5μm、1μm、3μm、5μm、7μm、9μm、10μmが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、細孔122は、細孔容積が0.01cm3/g~0.08cm3/gであり、0.01cm3/g、0.03cm3/g、0.05cm3/g、0.07cm3/g、0.08cm3/gが挙げられるが、これらに限定されない。このように特定されるパラメータ範囲により、黒鉛化充填剤により天然黒鉛内部の細孔122が完全に充填され、内部緻密構造を形成することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、該天然黒鉛コアには、マクロ細孔の割合が92%~98%であり、内部に細孔が多い。いくつかの実施形態において、該天然黒鉛コアには、マクロ細孔の割合が94%~96%である。なお、ここで、天然黒鉛コアにおけるマクロ細孔の割合は、黒鉛負極材料100における黒鉛化充填剤を除いた後の天然黒鉛コア120の構造に基づいて算出したものである。
【0048】
なお、上記したマクロ細孔とは、孔径≧50nmの孔を指す。
【0049】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部における平均細孔容積が0.005cm3/g~0.010cm3/gであり、例えば0.005cm3/g、0.006cm3/g、0.007cm3/g、0.008cm3/g、0.009cm3/g、0.010cm3/g等であってもよい。本開示による黒鉛負極材料100は、細孔容積が低下することにより、材料のサイクル過程中での副反応を低減し、材料のサイクル特性を向上させることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部におけるマクロ細孔の割合が80%~90%である。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100は、全体として、内部におけるマクロ細孔の割合が、例えば80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%等であってもよい。本開示による黒鉛負極材料100は、天然黒鉛コア120に比べて、内部のマクロ細孔容積が多く低減することから、本開示の方法で製造した黒鉛負極材料は内部の細孔が黒鉛化充填剤により効果的に充填されることにより、材料のサイクル特性を向上することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛コア120の内部の細孔122に充填された黒鉛化充填剤の量は、全部黒鉛化充填剤100質量%に対して、20質量%~80質量%であり、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%が挙げられるが、これらに限定されない。20質量%~80質量%の範囲内とすることにより、充填剤で黒鉛内部の隙間を密に充填することを実現できると共に、容量を大きく低下させることがない。黒鉛化充填剤の量が少なすぎると、黒鉛の内部の細孔122を完全に充填することができなくなり、黒鉛化充填剤の量が多すぎると、材料の容量が低くなり、圧縮密度が低くなる等の悪影響を与える恐れがある。
【0052】
いくつかの実施形態において、X線光電子分光分析によるClsとOlsに対応するスペクトルのピーク面積から算出したO原子とC原子の濃度に基づき、黒鉛負極材料におけるO原子の濃度とC原子の濃度の比(O/C値)は、0.02~0.04である。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料は、O/C値が例えば0.02、0.022、0.025、0.027、0.030、0.032、0.035、0.037、0.039、0.04等であってよい。O/C値が低い場合、本開示の材料の酸素含有量が低く、酸素含有官能基が少ないと意味しており、サイクル過程中における副反応の減少や、材料のサイクル特性の向上に寄与可能である。
【0053】
II.黒鉛負極材料の製造
一実施形態において、黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程を含む、黒鉛負極材料100の製造方法であって、
前記黒鉛粉体は、内部に細孔122を有する天然黒鉛コア120と、天然黒鉛コア120の内部の細孔122内に充填された充填剤とを含む、製造方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤の混合物を粉砕して黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を粉砕して球形化し、細孔に前記充填剤が充填された黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、
天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得る工程と、
混合物を粉砕して球形化し、黒鉛粉体を得る工程と、
黒鉛粉体を保護雰囲気下で黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程とを含む、黒鉛負極材料100の製造方法を提供する。
【0057】
本開示による製造方法では、原料用意段階において、天然黒鉛と充填剤とを均一に混合してもよく、その後、粉砕及び球形化の過程中に、固体の充填剤を天然黒鉛粒子の内部に嵌め込み、黒鉛化処理した後、天然黒鉛粒子の内部に嵌め込まれた充填剤により、天然黒鉛粒子の内部の欠陥が解消され、緻密化構造が形成され、ひいては製品の性能が向上される。
【0058】
本開示による方法では、天然黒鉛と充填剤を均一に混合した後、粉砕及び球状化の過程中に、充填剤を黒鉛の内部に嵌め込ませるとともに、天然黒鉛の外面を被覆することもできる。熱処理後には、内部が緻密で、外部が被覆される構造が形成され、天然黒鉛の内部の欠陥が解消され、天然黒鉛の電解液に対する選択性の面での課題が根本的に解決され、ひいては天然黒鉛のサイクル特性が向上される。
【0059】
本開示による構造方法では、天然黒鉛の球形化、球形化された黒鉛(球形黒鉛)と充填剤の混合及び被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなり、天然黒鉛と充填剤の両者を混合して一緒に粉砕・球形化することにより、鱗片状黒鉛のみを粉砕・球形化する場合に内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消され、内部に緻密化構造が形成され、材料の膨張率が小さくなり、サイクル特性が良くなり、総合的な性能に優れる。
【0060】
黒鉛
いくつかの実施形態において、黒鉛は、天然黒鉛であってもよい。いくつかの実施形態において、天然黒鉛としては、天然鱗片状黒鉛が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛は、メジアン径(D50)が10μm~150μmであり、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm又は150μmなどが挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0062】
充填剤
本明細書において、用語「充填剤」とは、黒鉛コアの内部の細孔122に充填可能で、黒鉛化可能なものである。本明細書において、「充填剤」は、「黒鉛化可能な充填剤」とも称する。充填剤の例としては、有機炭素源が挙げられるが、これに限定されない。
【0063】
いくつかの実施形態において、充填剤は、残留炭素分が10~90質量%で、且つ60~350℃で液体に溶融可能な有機炭素源を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は、ピッチ、樹脂、油脂、アルカン、オレフィン、アルキン及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、ピッチとしては、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、改質ピッチ、天然ピッチ、シェール(shale)ピッチ及びウッドピッチからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
いくつかの実施形態において、樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アセトンフルフラール樹脂、フラン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブテンからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態において、油脂としては、石油、ディーゼル油及び潤滑油からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態において、アルカンとしては、鎖状アルカン及び環状アルカンからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施形態において、芳香族炭化水素としては、単環式芳香族炭化水素と多環式芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態において、充填剤は、60~350℃、70~300℃、80~250℃、85~245℃、又は90~240℃の温度で液体に溶融可能なものであってもよく、上記温度として、例えば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃又は350℃が挙げられる。充填剤は、一定の融点を有してもよく、一定の融点を有しなくてもよい。例えば、充填剤は、溶融温度区間を有してもよい。いくつかの実施形態において、充填剤は、溶融温度区間が40℃以下、30℃以下、20℃以下、又は15℃以下である。いくつかの実施形態において、充填剤は、軟化点が195~220℃、198~215℃、又は200~210℃である。
【0071】
いくつかの実施形態において、充填剤は、残留炭素分が10~90質量%、20~85質量%、30~80質量%、40~75質量%、50~70質量%、又は60~65質量%であってもよく、例えば、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%又は95質量%であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、充填剤は、ピッチ及び/又は樹脂を含む。理論に縛られるものではないが、ピッチと樹脂は、常温(例えば25℃)で固体粉末であり、黒鉛と一緒に粉砕、球形化される過程中で球形黒鉛の内部の細孔122に進入することができ、高温黒鉛化過程中で先に溶融して液体状態になり、細孔に充填してから硬化して固体状態になることにより、内部構造が緻密になって天然黒鉛の内部の欠陥を解消できるだけでなく、外表面に炭素構造の被覆層を形成して天然黒鉛が電解液と直接に接触することを回避し、これによって製品性能を向上することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、充填剤としては、固体粉末充填剤又は半固体充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、ピッチは、石油ピッチ、石炭ピッチ、メソフェーズピッチ及び改質ピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、ピッチは、天然ピッチ、シェールピッチ及びウッドピッチからなる群より選択される少なくとも1つを含む。典型的で非限定的な組み合わせとして、石油ピッチと石炭ピッチの組み合わせ、石炭ピッチとメソフェーズピッチの組み合わせ、メソフェーズピッチと改質ピッチの組み合わせが挙げられる。また、典型的で非限定的な組み合わせとして、石油ピッチ、ウッドピッチ、及びメソフェーズピッチの組み合わせ;石炭ピッチ、メソフェーズピッチ、及び天然ピッチの組み合わせ;石油ピッチ、石炭ピッチ、及びシェールピッチの組み合わせ等が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、ピッチは、メジアン径(D50)が1μm~10μmであり、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm又は10μm等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0076】
いくつかの実施形態において、樹脂は、フェノ一ル樹脂及び/又はエポキシ樹脂を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤との質量比は10:(0.5~3)であり、10:0.5、10:0.8、10:1、10:1.2、10:1.4、10:1.6、10:1.8、10:2、10:2.2、10:2.4、10:2.6、10:2.8又は10:3等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0078】
本実施形態において、天然黒鉛と充填剤の質量比を10:(0.5~3)の範囲とすることにより、黒鉛における隙間を完全に充填することができるだけでなく、材料の容量低下などを引き起こすことはない。天然黒鉛と充填剤の質量比が大きすぎる(即ち充填剤が少なすぎる)と、黒鉛の内部の細孔122を完全に充填することができなくなり、また天然黒鉛と充填剤の質量比が小さすぎる(即ち充填剤が多すぎる)と、材料の容量が低くなり、圧縮密度が低くなる等の悪影響を与える恐れがある。
【0079】
混合
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、天然黒鉛と充填剤を混合して混合物を得ることを含む。
【0080】
粉砕・球形化
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛と充填剤を含む混合物を粉砕及び/又は球形化して黒鉛粉体を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛と充填剤の混合物を粉砕して黒鉛粉体を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、混合物を粉砕して黒鉛粉体を得ることを含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、粉砕及び球形化は、機械式粉砕機で実行される。
【0082】
いくつかの実施形態において、黒鉛粉体は、メジアン径(D50)が8μm~25μmであり、8μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、20μm、22μm、24μm又は25μm等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、粉砕・球形化後に得られた黒鉛粉体のメジアン径が大きすぎると、材料のDmax(材料中の粒子の最大粒径)が大きすぎて、電池製造過程中にセパレータを突き破り、電池において短絡が発生する恐れがある。また、粉砕・球形化後に得られた黒鉛粉体のメジアン径が小さすぎると、球形黒鉛の収率が低くなり、コストが高くなる可能性がある。
【0084】
いくつかの実施形態において、黒鉛粉体は、球形黒鉛粉体である。
【0085】
黒鉛化
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100の製造方法は、黒鉛粉体を黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得ることを含む。いくつかの実施形態において、黒鉛化は、保護雰囲気で行ってもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、保護雰囲気は、非酸素雰囲気を含む。
【0087】
好ましくは、前記非酸素雰囲気として、真空雰囲気、水素雰囲気、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、ネオン雰囲気、アルゴン雰囲気、クリプトン雰囲気及びキセノン雰囲気からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、保護雰囲気は、窒素雰囲気及び/又はアルゴン雰囲気を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の温度は2000℃~3300℃であり、例えば、2000℃、2100℃、2200℃、2300℃、2400℃、2500℃、2600℃、2700℃、2800℃、2900℃、3000℃、3100℃、3200℃又は3300℃等が挙げられるが、これらに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。2000℃~3300℃の温度範囲であれば、充填剤を効率的に黒鉛へ変化させることに寄与可能である。
【0090】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の時間は10h~72hであり、例えば、10h、15h、20h、25h、30h、35h、40h、45h、50h、55h、60h、65h、70h又は72h等が挙げられるが、これに限定されず、上記数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。
【0091】
いくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤の粉砕前の混合時間は10min~60minであり、例えば、10min、15min、20min、25min、30min、35min、40min、45min、50min、55min、60minが挙げられるが、これらに限定されない。前記混合時間が10min~60minの範囲であれば、充填剤と天然黒鉛をより均一に混合し、充填剤で天然黒鉛の表面をよりよく被覆するとともに、黒鉛の隙間を通じて黒鉛の細孔中に浸潤することができ、これにより黒鉛の細孔への予備充填が行われる。
【0092】
いくつかの実施形態において、製造方法は、黒鉛化処理により得られた製品を分散、篩分することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料の製造方法は、
メジアン径が10μm~150μmの天然鱗片状黒鉛とメジアン径が1μm~10μmのピッチを質量比10:(0.5~3)で物理的に混合して混合物を得る工程と、
混合物を粉砕して球形化し、メジアン径が8μm~25μmの球形黒鉛粉体を得る工程と、
球形黒鉛粉体を保護雰囲気下で2000℃~3300℃の温度で10h~72h黒鉛化処理して黒鉛負極材料100を得る工程と、を含む。
少なくともいくつかの実施形態において、天然黒鉛と充填剤の混合時間は、10min~60minである。
【0093】
好ましくは、前記製造方法において、鱗片状黒鉛と充填剤(例えば、ピッチ)との両者を混合して粉砕・球形化を行う。粉砕・球形化の過程中において、鱗片状黒鉛に湾曲と折り畳みが生じ、充填剤(例えば、ピッチ)が球形黒鉛の内部に嵌め込まれるとともに、球形黒鉛の外表層を被覆する。鱗片状黒鉛と充填剤(例えば、ピッチ)との両者を共に粉砕・球形化することにより、単に鱗片状黒鉛のみを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消されるだけでなく、球形黒鉛がその外表層に充填剤(例えば、ピッチ)により均一に被覆される。これにより、天然黒鉛の膨張率を低下し、サイクル特性を向上することができる。
【0094】
III.負極材料及び負極
黒鉛負極材料100は、負極活物質、例えばリチウムイオン電池における負極活物質として用いることができる。一実施形態では、上記黒鉛負極材料100を含む負極材料を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態において、負極材料は、バインダーをさらに含む。
いくつかの実施形態において、負極材料は、導電剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記黒鉛負極材料、バインダー及び導電剤を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、負極材料は、黒鉛をさらに含む。いくつかの実施形態において、負極材料は、上記した黒鉛負極材料、バインダー、導電剤及び黒鉛を含む。
【0097】
一実施形態では、上記各成分を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態では、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーを混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。一実施形態では、黒鉛負極材料100、導電剤、バインダー及び黒鉛を混合することを含む負極材料の製造方法を提供する。
【0098】
一実施形態では、黒鉛負極材料100を含む負極240を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、負極は、負極集電体242と、負極集電体242上における負極活物質層244とを含み、前記負極活物質層244が上記負極材料を含む。
【0100】
一実施形態では、負極材料を含むスラリーを負極集電体242に塗布することを含む、負極240の製造方法を提供する。
【0101】
図5に示されるように、いくつかの実施形態において、負極集電体242と、負極集電体242上における負極活物質層244とを含む負極であって、前記負極活物質層244が上記黒鉛負極材料100を含む、負極を提供する。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、導電剤とバインダーをさらに含む。いくつかの実施形態において、負極活物質層244は、黒鉛をさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーの質量比は、(93~98):(1.0~2.0):(1.0~5.0)である。
【0103】
いくつかの実施形態において、シリコン酸素複合負極材料を含むスラリーを負極集電体(242)上に塗工して負極集電体(242)上に負極活物質層を形成することと、負極活物質層を乾燥させることとを含む、負極240の製造方法を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、乾燥は、真空乾燥であってもよい。いくつかの実施形態において、スラリーの総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中の黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダーの総固形分は30~60質量%である。いくつかの実施形態において、スラリー中の黒鉛負極材料100、導電剤、バインダー及び黒鉛の総固形分は30~60質量%である。
【0105】
いくつかの実施形態において、スラリーを負極集電体242上に塗工する前に、負極活物質層中の各成分(例えば、黒鉛負極材料100、導電剤及びバインダー、並びに任意の黒鉛)を溶媒に分散してスラリーを形成する工程を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、負極集電体242は、金属であってもよい。いくつかの実施形態において、負極集電体242としては、銅箔集電体が挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
スラリーは、溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態において、上記溶媒としては、水が挙げられるが、これに限定されない。
【0108】
バインダーは、負極活物質粒子同士の間の接着性及びそれらと集電体242との接着性を向上することができる。いくつかの実施形態において、バインダーは、非水系バインダー又は水系バインダーからなる群より選択される少なくとも1つを含む。非水系バインダーは、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、オキシエチレン基含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、及びポリイミドからなる群より選択される1つを含んでもよいが、これらに限定されない。水系バインダーは、ゴム系バインダー及びポリマー樹脂バインダーからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0109】
導電剤は、電極の導電性を向上することができる。導電剤としては、高導電率材料が挙げられるが、これに限定されない。例えば、金、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、及び/又はそれらと類似した金属の粉末又は繊維、及び/又は類似した金属系材料;天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維及び/又は類似した炭素系材料;ポリフェニレン誘導体及び/又は類似した導電性ポリマー;及び/又は、上記各種物質の混合物であってもよい。
【0110】
IV.リチウムイオン電池
一実施形態では、黒鉛負極材料100を含むリチウムイオン電池200を提供する。
【0111】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、前記製造方法で製造された黒鉛負極材料100を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含んでもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220、負極240及び電解液260を含み、前記負極240は、負極集電体242上に、黒鉛負極材料100を含む負極活物質層を有する。
【0114】
図6に示されるように、いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、正極220と負極240の間に設けられたセパレータ280を含んでもよい。セパレータ280は、ポリプロピレン微多孔質フィルムなどのポリマー微多孔質フィルムであってもよい。セパレータ280は、市販品でもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池200は、外装ケース290を含んでもよい。正極220、負極240、セパレータ280、電解液260は、外装ケース290に収容されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池は、円筒型電池、角型電池、ボタン型電池のいずれであってもよい。リチウムイオン電池は、剛性外装ケースの電池であってもよく、ソフトパッケージ電池であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、正極220は、正極集電体と、正極集電体上における正極活物質層とを含んでもよい。正極活物質層は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な正極活物質を含み、正極活物質の例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、LiNi1-x-yCoxy2(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦x+y≦1)、リチウム-遷移金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態において、電解液260として、非水有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、炭酸エステル、エステル、エーテル及びケトンからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態において、炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、プロピルメチルカーボネート、プロピルエチルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。エステルとしては、ブチロラクトン(BL)、デカラクトン、バレロラクトン(BL)、メバロニックラクトン、カプロラクトン(BC)、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸n-プロピルからなる群より選択される少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。エーテルとしては、ジブチルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。ケトンとしては、ポリメチルビニルケトンが挙げられるが、これに限定されない。
【0119】
本開示による黒鉛負極材料100の製造について、通常、球形天然黒鉛は、鱗片状黒鉛を球形化、粉砕して得られるものであり、内部に大量の隙間が存在する。このような球形天然黒鉛は、外表面への被覆により改質された球形天然黒鉛などの他の形態の黒鉛と比べて、サイクル過程中に電解液がその内部における隙間に徐々に浸入して副反応が発生し、内部における隙間で生成したSEI膜の破壊、修復が繰り返し、電解液中の有機分子が共挿入されることにより、黒鉛の層状構造が剥離されて破壊され、膨張率が高くなり、容量が持続的に減衰することになる。
【0120】
本開示による製造方法では、黒鉛と充填剤を混合してから粉砕等の処理を行って黒鉛粉体を得る過程において、天然黒鉛の球形化、球形化された黒鉛(球形黒鉛)と充填剤の混合・被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、製造プロセスが簡単になり、生産効率が高くなる。天然黒鉛と充填剤の両者を一括に混合して粉砕・球形化することにより、鱗片状黒鉛だけを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥を有するという欠点が解消され、内部が緻密的な構造を形成することができる。そして、黒鉛化充填剤で天然黒鉛コア120の表面に形成した炭素被覆層140からなる外部被覆構造は、黒鉛内部の緻密的な構造と相乗的に材料の膨張率を低下させ、電極のサイクル特性をさらに向上し、得られた製品が優れた総合的な性能を有することができる。
【0121】
本開示による黒鉛負極材料は、膨張率が小さく、サイクル特性が高いという利点を有し、総合的な性能に優れる。
【0122】
本開示の実施例の目的、構成及び利点をより明らかにするために、以下に本開示の実施例の構成を明確、完全に説明する。実施例において明記されていない具体的な条件について、一般的な条件又は製造元により提示される条件に従って行ってもよい。使用された試薬又は機器は、生産メーカーが明記されない場合、いずれも市販品を購入することで入手可能な一般的な製品であってもよい。
【実施例
【0123】
以下、本開示の典型的で非限定的な実施例を示す。
【0124】
<実施例1>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(D50が70μm)、石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)を原料とし、両者の質量比を10:1とし、まず機械的で物理的な混合により35min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を窒素雰囲気、3200℃の条件下で10h黒鉛化した。最後に、材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0125】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に、黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。黒鉛コアは、D50が8μmであり、炭素被覆層は厚さが40nmであった。
【0126】
図1は、本実施例で製造された黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真であり、該図から天然球形黒鉛の内部がピッチにより密に充填されており、かつ外表層に均一な被覆層が形成されたことが分かる。なお、本開示の実施例2~8で製造された黒鉛負極材料の走査型電子顕微鏡写真は、実施例1と近似しており、いずれも充填剤により天然球形黒鉛の内部隙間が完全に密に充填されており、外部に炭素層で均一に被覆されることになった。図2は、図1に比べて、天然鱗片状黒鉛に対して球形化処理のみを行う(充填剤を添加して混合することがない)ことにより得られた球形黒鉛を示す図であり、黒鉛材料に存在する隙間が明らかに見える。
【0127】
<実施例2>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(D50が70μm)、石油ピッチ(軟化点が180℃、D50が3μm)を原料とし、両者の質量比を10:1とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3000℃で24h黒鉛化した。最後に、材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0128】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に、黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が8μmであり、炭素被覆層は、厚さが60nmであった。
【0129】
<実施例3>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)、石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0130】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が17μmであり、炭素被覆層は、厚さが80nmであった。
【0131】
<実施例4>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)、石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的且つ物理的に混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3200℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0132】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。黒鉛コアは、D50が17μmであり、炭素被覆層は、厚さが80nmであった。
【0133】
<実施例5>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)、石油ピッチ(軟化点が180℃、D50が3μm)を原料とし、両者の質量比を10:3とし、まず機械的で物理的な混合により45min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3000℃で24h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0134】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が23μmであり、炭素被覆層は、厚さが100nmであった。
【0135】
<実施例6>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)、石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:3とし、まず機械的で物理的な混合により45min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0136】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、天然黒鉛コアの内部における細孔欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間欠陥がなく、炭素被覆層がピッチを黒鉛化してなるものであった。天然黒鉛コアは、D50が23μmであり、炭素被覆層は、厚さが100nmであった。
【0137】
<実施例7>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が10μm)、石炭ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)を原料とし、両者の質量比を10:0.5とし、まず機械的で物理的な混合により35min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を3300℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0138】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コアと、天然黒鉛コアの表面を被覆する炭素被覆層とを含み、天然黒鉛コア120の内部における細孔122欠陥に黒鉛化されたピッチが充填されており、天然黒鉛コアに隙間や欠陥がなく、炭素被覆層140がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。天然黒鉛コア120は、D50が8μmであり、炭素被覆層140は、厚さが10nmであった。
【0139】
<実施例8>
本実施例において、以下の方法で黒鉛負極材料100を製造した。
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が100μm)、フェノ一ル樹脂を原料とし、両者の質量比を10:2とし、まず機械的で物理的な混合により40min混合し、次に機械式粉砕機に一括して入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が25μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を2000℃で72h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た。
【0140】
本実施例で提供した黒鉛負極材料は、天然黒鉛コア120と、天然黒鉛コア120の表面を被覆する炭素被覆層140とを含み、天然黒鉛コア120の内部における細孔122欠陥に黒鉛化されたフェノ一ル樹脂が充填されており、天然黒鉛コア120に隙間や欠陥がなく、炭素被覆層140がフェノ一ル樹脂を黒鉛化してなる炭素構造層であった。天然黒鉛コア120は、D50が25μmであり、炭素被覆層140は、厚さが80nmであった。
【0141】
<比較例1>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が70μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が8μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が120℃、D50が5μm)と35min混合し、両者の質量比を10:1とし、混合粉体を3200℃で10h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本比較例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例1と同様に実行した。)。
【0142】
比較例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が8μmであり、被覆層は、厚さが45nmであった。
【0143】
図3は、本比較例1で製造された黒鉛負極材料の断面の走査型電子顕微鏡写真であり、該図から、天然球形黒鉛の内部に僅かな隙間がピッチにより充填されており、その内部における多くの隙間がピッチにより充填されておらず、隙間が依然として明らかに見えることに鑑みて、黒鉛負極材料への密な充填が実現されなかったことがわかる。
【0144】
<比較例2>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が120μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が17μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)と40min混合し、両者の質量比を10:2とし、混合粉体を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本比較例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例3と同様に実行した。)。
【0145】
比較例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が17μmであり、被覆層は、厚さが65nmであった。
【0146】
<比較例3>
天然鱗片状黒鉛(平均粒径D50が150μm)を原料とし、機械式粉砕機に入れ、粉砕・球形化処理を行い、D50が23μmの球形黒鉛を得、そして製造された球形黒鉛材料を石油ピッチ(軟化点が250℃、D50が2μm)と45min混合し、両者の質量比を10:3とし、混合粉体を2800℃で36h黒鉛化した。最後に材料を篩にかけて、篩下物を収集して目標製品の黒鉛負極材料を得た(即ち、本比較例では、天然鱗片状黒鉛を粉砕してからピッチと混合すること以外に、実施例6と同様に実行した。)。
【0147】
比較例で提供した黒鉛負極材料は、黒鉛コアと、黒鉛コアの表面を被覆する被覆層とを含み、黒鉛コアの内部における細孔欠陥に充填物がなく、被覆層がピッチを黒鉛化してなる炭素構造層であった。黒鉛コアは、D50が23μmであり、被覆層は、厚さが110nmであった。
【0148】
実験例
<実験例1:電池性能実験>
【0149】
電池性能実験(一)
I.ボタン電池用電極シートの製造:
実施例又は比較例で製造された黒鉛負極材料を負極活物質として用い、活物質:CMC(カルボキシメチルセルロース):SBR(スチレンブタジエンゴム)の質量比=96.5:1.5:2で均一に混合した後、溶媒と混合して銅箔からなる負極集電体に塗布し、上記材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、乾燥して負極シートを得た。
得られた電極シートを用いてボタン電池を組み立てた。具体的には、金属リチウムシートを負極とし、EC(エチルカーボネート)+EMC(エチルメチルカーボネート)(体積比1:1)にLiPF 6 を1mol/Lの濃度で含むものを電解液260とし、微多孔質ポリエチレン/ポリプロピレン複合フイルムをセパレータ280とし、アルゴン雰囲気のグローブボックス(MBRAUN UNIlab Plus)内に電池を組み立てた。
【0150】
II.電池性能実験
(1)ボタン電池の初回リチウムイオン放出時の比容量(Q1(dis))(mAh/g)の測定:
1(dis)=Cl(dis)/m (1)
ここで、
1(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回放電比容量(mAh/g);
1(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回放電容量(mAh);
m:活物質の質量(g)。
【0151】
(2)ボタン電池の初回効率(即ち、初回クーロン効率;E1)(%)の測定:
1=Ql(dis)/Ql(cha)×100% (2)
ここで、
1(dis) :前記の定義と同じ;
1(cha):レートが0.1Cの電流で充放電する時の初回充電比容量(mAh/g)。
(「Silicon-carbon」GB/T 38823-2020に記載の式D.3を参照)
電気化学的性能実験は、Wuhan LAND Electronic Co.,Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用いて行い、充放電電圧を0.01~1.5V、充放電レートを0.1Cとし、測定した初回容量及び効率を表1に示す。初回サイクル中に0.1Cで充放電し、2サイクル目に0.2Cで充放電し、その後のすべてのサイクル中には0.5Cで充放電する条件下で、ボタン電池の50サイクル目の膨張率を測定した。
【0152】
電池性能実験(二)
I.リチウムイオン電池の製造
図5に示されるように、実施例又は比較例で製造された黒鉛負極材料100からなる天然黒鉛系複合材料、導電剤、CMC及びSBRを95:1.5:1.5:2の質量で混合した後、溶媒と混合して銅箔からなる負極集電体242に塗布し、材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、乾燥して上層に負極活物質層244が形成された負極シート240を得た。正極活物質のLiCoO2、導電剤、PVDFを96.5:2:1.5の質量比で均一に混合した後に、溶媒と混合してアルミニウム箔からなる正極集電体に塗布し、材料の圧縮密度を1.4±0.1g/cm3に制御し、正極シート220を得た。EC+EMC(体積比=1:1)にLiPF 6 を1mol/Lの濃度で含むものを電解液260とし、微多孔質ポリエチレン/ポリプロピレン複合フイルムをセパレータ280とするとともに、外装ケース290を用いて組み立ててリチウムイオン電池200を製造した。
【0153】
II.電気化学的性能実験
全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率の計算式:
全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率(%)=C1000(dis)/C1(dis)×100% (3)
ここで、
1000(dis):レートが0.1Cの電流で充放電する時の100サイクル目の放電容量(mAh)。
電気化学的性能実験は、Wuhan LAND Electronic Co.,Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用い、1Cのレートで常温で充放電し、電圧範囲を3.0~4.25Vとし、測定したサイクル特性を表1に示す。
【0154】
電池性能実験(三)
電気化学的性能実験:
50サイクル目の膨張率の測定:
1.電池性能実験(二)における方法で負極シートを製造し、コバルト酸リチウム材料で正極シートを作製し、正極シートの面密度を16±1mg/cm3とし、圧縮密度を3.5g/ccとした。また、負極シートの面密度を7±1mg/cm3とした;
2.正負極シートをin‐situテスト用金型で測定用電池に組み立てた;
3.組み立てられた電池について充放電サイクルを行い、in‐situでテストデータを記録した;
4.下記式でテストデータから膨張率を算出した。
膨張率=電極シートの厚さ変化値/充放電前の電極シートの厚さ×100% (4)
上記電気化学性能実験は、Wuhan LAND electronics Co., Ltd. 製のLAND電池テストシステム(CT2001A)を用いて行い、1Cのレートで常温で充放電し、電圧範囲を3.0~4.25Vとし、サイクルを合計50回行い、測定した50サイクル目の膨張率を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
<実験例2:黒鉛負極材料の性能実験>
(一)黒鉛負極材料のO/C値の測定
測定方法:
O/C値は、X線光電子分光分析(XPS)によるC1sとO1sの光電子スペクトルにおけるピーク面積から算出したO原子とC原子の濃度比、すなわち、O原子の濃度/C原子の濃度である。
操作方法は、下記の通りである。上記実施例1~8及び比較例1~3で製造された黒鉛負極材料の試料を真空オーブンに入れ、120℃で12時間乾燥させて試料中の水分及び揮発分を除去し、その後、X線光電子分光装置(XPS、型式ESCALAB 250Xi)によりその元素構成及び含有量を測定し、XPSによる測定結果におけるC1s及びO1sの光電子スペクトルにおけるピーク面積に基づいてO原子とC原子の濃度比、即ち、O/C値を得ることができる。
実験結果を表2に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
(二)黒鉛負極材料の孔径の測定
測定方法:
上記実施例1~8及び比較例1~3で製造された黒鉛負極材料の試料を真空オーブンに入れ、120℃で12時間乾燥させて、試料中の水分及び揮発分を除去し、その後、比表面積/細孔径分布測定装置(型式ASAP 2460)により試料の窒素吸脱着等温線を測定し、その後にBJHモデル(Barrett-Joyner-Halenda)によりフィッティングを行い、試料の細孔容積と細孔径分布データを取得することができる。ここで、マクロ細孔の割合とは、孔径が50nm以上の細孔の容積の、試料の総細孔容積に占める割合を指す。
実験結果を表3に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
上記実施例と比較例の結果を併せて検討すると分かるように、本開示の実施例1~8で提供した黒鉛負極材料100は、製造方法において天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤の混合・被覆、および充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなり、天然黒鉛と充填剤の両者を一緒に混合して粉砕・球形化することにより、単に鱗片状黒鉛だけを粉砕・球形化するとその内部に大量の隙間や欠陥が存在するという欠点が解消され、黒鉛コアにおける隙間が効率よく密に充填されており、内部に緻密的な構造が形成される。また、本開示に係る黒鉛負極材料は、比較例の黒鉛材料に比べて、細孔容積が著しく低下し、マクロ細孔容積の割合が低下し、製品の膨張率が小さくなり、そして、黒鉛化処理後、本開示の黒鉛負極材料は、比較例で製造された材料に比べて、表面における酸素含有官能基が減少し、O/C値が著しく低下し、サイクル過程中の副反応が減少し、材料のサイクル特性の向上に寄与することができる。さらに、本実施形態の電極性能実験において、50サイクル目の膨張率が依然として低いレベルに維持され、サイクル特性がよく、全電池の常温での1000サイクル目の容量維持率がより高いレベルに維持され、総合的な性能に優れたという利点を示している。
【0161】
比較例1の実施例1に対する区別、比較例2の実施例3に対する区別、及び、比較例3の実施例6に対する区別は、いずれも、天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤との混合・被覆、充填剤による球形黒鉛の内部における隙間への充填を、同時に行うことではなく、順に行い、それにより充填剤が単に黒鉛表面に被覆され、黒鉛の内部における隙間に入ることができず、構造には依然として欠陥が存在する。そのため、比較例1~3の製品は各実施例の製品と比べて膨張率が大幅に増大し、サイクル特性が大幅に低下することになった。
【0162】
上記実施例により本開示の詳細な方法を説明したが、本開示は、上記詳細な方法に限定されるものではなく、すなわち、本開示は、必ずしも上記詳細な方法に実施するわけではない。当業者にとって、本開示に基づく任意の改良、本開示の製品の各原料の等価置換及び補助成分の添加、選択される具体的な添加方式等は、いずれも本開示の保護範囲及び開示範囲内にあることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0163】
上記から、本開示により、黒鉛負極材料、負極、リチウムイオン電池及びその製造方法を提供する。この黒鉛負極材料は、内部に緻密的な構造が形成されたものであり、電極に応用すると、製品は膨張率が小さく、サイクル特性が高く、総合的な性能に優れたという利点を示すことができる。この製造方法によれば、天然黒鉛の球形化、球形黒鉛と充填剤の混合・被覆、および充填材による球形黒鉛の内部における隙間への充填を同時に行うことにより、原材料の移動と残留による損失が低減され、プロセスが簡単になり、生産効率が高くなることができる。そして、製造された負極及び電池は、初回効率が高く、サイクル特性が高いなどの利点を示すことができる。
【符号の説明】
【0164】
100 黒鉛負極材料
120 天然黒鉛コア
122 細孔
140 炭素被覆層
200 電池
220 正極
240 負極
242 負極集電体
244 負極活物質層
260 電解液
280 セパレータ
290 外装ケース
【国際調査報告】