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特表2022-551420腫瘍を治療するためのIL-12提示エクソソームとSTINGアゴニスト含有エクソソームとの併用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】腫瘍を治療するためのIL-12提示エクソソームとSTINGアゴニスト含有エクソソームとの併用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20221202BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K31/7084
A61K9/51
A61K9/127
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/11 Z ZNA
C07K14/54
C07K16/00
C07K16/28
C07K16/30
C12N1/00 Z
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518958
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020052587
(87)【国際公開番号】W WO2021062060
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/906,016
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/066,605
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/070,149
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520170759
【氏名又は名称】コディアック バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, ヌルディーン
(72)【発明者】
【氏名】サティヤナラヤナン, スリラム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA99X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC26
4C076EE56F
4C076EE56H
4C076EE59
4C076FF16
4C076FF21
4C076FF43
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB261
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA75
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、(i)細胞外小胞及びSTINGアゴニストを含む組成物、例えば、STINGアゴニストを封入したエクソソームと、(ii)IL-12部分と、を併用して投与することを含む、腫瘍を治療する方法を提供する。本開示の特定の態様は、腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍を治療する方法であって、(i)細胞外小胞(EV)とインターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子(stimulator of interferon genes protein)(STING)アゴニストとを含む組成物と、(ii)インターロイキン12(IL-12)部分と、を併用して投与することを含む、方法に関する。いくつかの態様では、IL-12部分は、第2のEVに結合されている。いくつかの態様では、IL-12部分は、STINGアゴニストを含むEVに関連付けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍を治療する方法であって、(i)細胞外小胞(EV)とインターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子(stimulator of interferon genes protein)(STING)アゴニストとを含む組成物と、(ii)インターロイキン12(IL-12)部分と、を併用して投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記IL-12部分が第2のEVに関連付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL-12部分が、前記STINGアゴニストを含む前記EVに関連付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍が原発腫瘍、二次腫瘍、または原発腫瘍と二次腫瘍の両方である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記投与することが、前記腫瘍の体積を減少させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与することが、前記STINGアゴニストまたは前記IL-12部分を含む細胞外小胞のいずれかを投与した(「単剤療法」)後の腫瘍体積と比較して、前記腫瘍の体積を、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍、減少させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記投与することが、前記原発腫瘍の体積を減少させる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与することが、前記投与することの14日目後に前記単剤療法と比較して、前記原発腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、減少させることができる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与することが、前記二次腫瘍の体積を減少させる、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記投与することが、前記投与することの14日目後に、前記単剤療法と比較して、前記二次腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、または少なくとも約2倍、減少させることができる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与することが、前記腫瘍の増殖を減少させる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記投与することが、前記STINGアゴニストまたは前記IL-12部分を含む細胞外小胞のいずれかを投与した(「単剤療法」)後の腫瘍体積と比較して、前記腫瘍の増殖を、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍、減少させる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記投与することが、前記原発腫瘍及び/または前記二次腫瘍の増殖を減少させる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
抗がん剤を投与することをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗がん剤が、チェックポイント阻害剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
STINGアゴニスト及びIL-12部分を含む、細胞外小胞。
【請求項19】
STINGアゴニストを含む細胞外小胞と、IL-12部分を含む第2のEVとを含む、組成物。
【請求項20】
前記IL-12部分が、IL-12タンパク質、IL-12タンパク質をコードする核酸、またはIL-12活性を有する分子である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法、請求項18に記載のEV、または請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記IL-12部分が、IL-12タンパク質である、請求項1~17及び20のいずれか1項に記載の方法、請求項18もしくは20に記載のEV、または請求項19もしくは20に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞外小胞が、エクソソーム、ナノ小胞、アポトーシス小体、マイクロベシクル、リソソーム、エンドソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、ミセル、多層構造、再小胞化された小胞、または押し出された細胞である、請求項1~17、20、及び21のいずれか1項に記載の方法、または請求項18、20及び21のいずれか1項に記載のEV。
【請求項23】
前記EVが、エクソソームである、請求項1~17及び20~22のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~22のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記STINGアゴニストが、前記EVに関連付けられている、請求項1~17及び20~23のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~23のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記STINGアゴニストが、前記EVに封入されている、請求項1~17及び20~23のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~23のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記STINGアゴニストが、場合によりリンカーによって前記EVの脂質二重層に連結される、請求項1~17及び20~23のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~23のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記EVが、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRN)タンパク質を過剰発現する、請求項1~17及び20~26のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~26のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記STINGアゴニストが、前記PTGFRNタンパク質に連結されていない、請求項27に記載の方法、EV、または組成物。
【請求項29】
前記細胞外小胞が、PTGFRNタンパク質を過剰発現する細胞によって生成される、請求項1~17及び20~28のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~28のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記細胞外小胞が、リガンド、サイトカイン、または抗体をさらに含む、請求項1~17及び20~28のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~28のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記抗体が、アンタゴニスト抗体及び/またはアゴニスト抗体を含む、請求項30に記載の方法、EV、または組成物。
【請求項32】
前記STINGアゴニストが、環状ジヌクレオチドである、請求項1~17及び20~31のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~31のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記STINGアゴニストが、非環状ジヌクレオチドである、請求項1~17及び20~31のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~31のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記STINGアゴニストが、脂質結合タグを含む、請求項1~17及び20~33のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~33のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記STINGアゴニストが、物理的及び/または化学的に改変されている、請求項1~17及び20~35のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~35のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記改変されたSTINGアゴニストが、対応する未改変のSTINGアゴニストとは異なる極性及び/または電荷を有する、請求項35に記載の方法、EV、または組成物。
【請求項37】
前記STINGアゴニストの濃度が、約0.01μM~100μMである、請求項1~17及び20~36のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~36のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記STINGアゴニストの濃度が、約0.01μM~0.1μM、0.1μM~1μM、1μM~10μM、10μM~50μM、または50μM~100μMである、請求項1~17及び20~37のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~37のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
前記EV内の前記STINGアゴニストの濃度が、約1μM~10μMである、請求項38に記載の方法、EV、または組成物。
【請求項40】
前記STINGアゴニストが、
【化1】
[式中、
は、H、OH、またはFであり、
は、H、OH、またはFであり、
Zは、OH、OR、SHまたはSRであり、式中、
i)Rは、NaまたはNHであるか、または
ii)Rは、ピバロイルオキシメチルなどのインビボでOHまたはSHを与える酵素不安定基であり、
Bi及びB2は、以下から選択される塩基であり、
【化2】
ただし、
-式(I)において:X及びXはOHではなく、
-式(II)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、かつ、
-式(III)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、ZはOHではない。]、またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~17及び20~39のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~39のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記STINGアゴニストが、
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~17及び20~40のいずれか1項に記載の方法、請求項18及び20~40のいずれか1項に記載のEV、または請求項19~40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
前記IL-12部分が、足場部分に連結されている、請求項18及び20~41のいずれか1項に記載のEV。
【請求項43】
前記第2のEVが、足場部分を含む、請求項2~17及び20~41のいずれか1項に記載の方法、または請求項19~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記IL-12部分が、前記足場部分に連結されている、請求項43に記載の方法または組成物。
【請求項45】
前記足場部分が、PTGFRNタンパク質を含む、請求項42に記載のEV、または請求項43に記載の方法もしくは組成物。
【請求項46】
前記PTGFRNタンパク質が、配列番号33を含む、請求項45に記載のEV、方法、または組成物。
【請求項47】
前記PTGFRNタンパク質が、配列番号1と少なくとも約70%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一である、請求項46に記載のEV、方法、または組成物。
【請求項48】
前記PTGFRNタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項47に記載のEV、方法、または組成物。
【請求項49】
請求項18~42及び45~48のいずれか1項に記載のEVまたは請求項19~41及び43~48のいずれか1項に記載の組成物と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項50】
請求項49に記載の組成物及び使用説明書を含むキット。
【請求項51】
前記投与が、非経口、経口、静脈内、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、または他の任意の適切な投与経路による、請求項1~17、20~41、43~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記投与が、腫瘍内である、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願と共にASCIIテキストファイル(名称4000_072PC03_Seqlisting_ST25;サイズ:101,647バイト;作成日:2020年9月24日)の形で提出される、電子的に提出される配列表の内容の全体を、参照により本明細書に援用する。
【0002】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2019年9月25日に出願された米国特許仮出願同62/906,016号、2020年8月17日に出願された同第63/066,605号、及び2020年8月25日に出願された米国特許仮出願第63/070,149号の優先権の利益を主張するものであり、それぞれの全内容を参照によって本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
インターフェロン遺伝子の刺激因子(Stimulator of Interferon Genes)(STING)は、一般的に細菌によって産生される環状ジヌクレオチドのサイトゾルセンサーである。STINGは活性化されるとI型インターフェロンの産生をもたらし、免疫応答を開始する。STINGのアゴニズムは、前臨床的に腫瘍に対する免疫応答を誘導するための有望なアプローチであることが示されている。残念なことに、STINGの幅広い発現プロファイルを考慮すると、STINGアゴニストの全身送達は全身性の炎症を引き起こす。これは投与可能な用量を制限し、それによって治療効果も制限される。全身送達の代替的なアプローチとして、STINGアゴニストを腫瘍に直接注射することがある。腫瘍内注射は極めて効果的であるが、針で到達して組織を傷害することができる固形腫瘍に限定される。したがって、STINGアゴニストを送達する改善された方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の特定の態様は、腫瘍の治療を必要とする対象の腫瘍を治療する方法であって、(i)細胞外小胞(EV)とインターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子(stimulator of interferon genes protein)(STING)アゴニストとを含む組成物と、(ii)インターロイキン12(IL-12)部分と、を併用して投与することを含む、方法に関する。いくつかの態様では、IL-12部分は、第2のEVに結合されている。いくつかの態様では、IL-12部分は、STINGアゴニストを含むEVに関連付けられる。
【0005】
いくつかの態様では、腫瘍は、原発腫瘍、二次腫瘍、または原発腫瘍及び二次腫瘍の両方である。
【0006】
いくつかの態様では、投与することは、腫瘍の体積を減少させる。
【0007】
いくつかの態様では、投与することは、STINGアゴニストまたはIL-12部分を含む細胞外小胞のいずれかを投与した(「単剤療法」)後の腫瘍体積と比較して、腫瘍の体積を、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍、減少させる。
【0008】
いくつかの態様では、投与することは、原発腫瘍の体積を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に単剤療法と比較して、原発腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、減少させることができる。
【0009】
いくつかの態様では、投与することは、二次腫瘍の体積を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に、単剤療法と比較して、二次腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約1.9倍、または少なくとも約2倍、減少させることができる。いくつかの態様では、投与することは、腫瘍の増殖を減少させる。
【0010】
いくつかの態様では、投与することは、STINGアゴニストまたはIL-12部分を含む細胞外小胞のいずれかを投与した(「単剤療法」)後の腫瘍体積と比較して、腫瘍の増殖を、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍、減少させる。いくつかの態様では、投与することは、原発腫瘍及び/または二次腫瘍の増殖を減少させる。
【0011】
いくつかの態様では、方法は、抗がん剤を投与することをさらに含む。いくつかの態様では、抗がん剤は、チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。
【0012】
本開示の特定の態様は、STINGアゴニスト及びIL-12部分を含む細胞外小胞に関する。
【0013】
本開示の特定の態様は、STINGアゴニストを含む細胞外小胞と、IL-12部分を含む第2のEVとを含む組成物に関する。
【0014】
特定の態様では、IL-12部分は、IL-12タンパク質、IL-12タンパク質をコードする核酸、またはIL-12活性を有する分子である。特定の態様では、IL-12部分は、IL-12タンパク質である。
【0015】
特定の態様では、細胞外小胞は、エクソソーム、ナノ小胞、アポトーシス小体、マイクロベシクル、リソソーム、エンドソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、ミセル、多層構造、再小胞化された小胞、または押し出された細胞である。いくつかの態様では、EVは、エクソソームである。
【0016】
いくつかの態様では、STINGアゴニストは、EVに関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、EVに封入される。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、場合によりリンカーによってEVの脂質二重層に連結される。いくつかの態様では、EVは、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRN)タンパク質を過剰発現する。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、PTGFRNタンパク質に連結されていない。いくつかの態様では、細胞外小胞は、PTGFRNタンパク質を過剰発現する細胞によって生成される。
【0017】
いくつかの態様では、細胞外小胞は、リガンド、サイトカイン、または抗体をさらに含む。いくつかの態様では、抗体は、アンタゴニスト抗体及び/またはアゴニスト抗体を含む。
【0018】
いくつかの態様では、STINGアゴニストは、環状ジヌクレオチドである。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、非環状ジヌクレオチドである。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、脂質結合タグを含む。
【0019】
いくつかの態様では、STINGアゴニストが、物理的及び/または化学的に改変される。いくつかの態様では、改変されたSTINGアゴニストは、対応する未改変のSTINGアゴニストとは異なる極性及び/または電荷を有する。
【0020】
いくつかの態様では、STINGアゴニストの濃度は、約0.01μM~100μMである。いくつかの態様では、STINGアゴニストの濃度は、約0.01μM~0.1μM、0.1μM~1μM、1μM~10μM、10μM~50μM、または50μM~100μMである。いくつかの態様では、EV内のSTINGアゴニストの濃度は、約1μM~10μMである。
【0021】
いくつかの態様では、STINGアゴニストは、
【化1】
[式中、
【0022】
は、H、OH、またはFであり、
【0023】
は、H、OH、またはFであり、
【0024】
Zは、OH、OR、SHまたはSRであり、式中、
【0025】
i)Rは、NaまたはNHであるか、または
【0026】
ii)Rは、ピバロイルオキシメチルなどのインビボでOHまたはSHを与える酵素不安定基であり、
【0027】
Bi及びB2は、以下から選択される塩基であり、
【化2】
【0028】
ただし、
【0029】
-式(I)において:X及びXはOHではなく、
【0030】
-式(II)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、かつ、
【0031】
-式(III)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、ZはOHではない。]、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0032】
いくつかの態様では、STINGアゴニストは、


【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの態様では、IL-12部分は、足場部分に連結される。いくつかの態様では、第2のEVは、足場部分を含む。いくつかの態様では、IL-12部分は、足場部分に連結される。いくつかの態様では、足場部分は、PTGFRNタンパク質を含む。いくつかの態様では、PTGFRNタンパク質は、配列番号33を含む。いくつかの態様では、PTGFRNタンパク質が、配列番号1と少なくとも約70%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一である。いくつかの態様では、PTGFRNタンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの態様では、投与は、非経口、経口、静脈内、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、または他の任意の適切な投与経路による。いくつかの態様では、投与は、腫瘍内である。
【0035】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示されるEVまたは本明細書に開示される組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0036】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される組成物及び使用説明書を含むキットに関する。
態様
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】エクソソームにSTINGアゴニストをロードする方法の図を示す。
図2A】PBSコントロール(四角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム(「exoIL-12」)(逆三角形)、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(「exoSTING」)(三角形)、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法(丸)の施行後の一次部位(原発腫瘍)に接種されたB16F10マウスにおける平均腫瘍体積(mm)のグラフである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
図2B】PBSコントロール(四角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム(「exoIL-12」)(逆三角形)、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(「exoSTING」)(三角形)、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法(丸)の施行後の二次部位(二次腫瘍)に接種されたB16F10マウスにおける平均腫瘍体積(mm)のグラフである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
図2C】PBSコントロール(四角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム(逆三角形)、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(三角形)、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法(丸)の施行後のB16F10マウスにおける原発腫瘍及び二次腫瘍の増殖速度を示す箱ひげ図である。統計的有意性は、Tukey事後検定を用いた一元配置分散分析により判定した。*p<0.05 vs PBS;***p<0.001 vs PBS;#p<0.05 vs exoIL-12;⊥ p<0.05 vs exoSTING;⊥⊥⊥ p<0.001 vs exoSTING。
図3】PBS+IgGコントロール(四角形)、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+IgG(三角形)、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+PD-1(programmed death1)に結合する抗体(抗PD-1抗体、逆三角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+IgG(白抜き三角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+抗PD-1抗体(白抜き逆三角形)、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及びIgGの3剤併用療法(丸)、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤併用療法(アスタリスク)の施行後のB16F10マウスにおける二次腫瘍(A)及び原発腫瘍(B)の腫瘍体積のグラフである。
図4A】PBS+IgGコントロール、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+IgG、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+抗PD-1抗体、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+IgG、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+抗PD-1抗体、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及びIgGの3剤併用療法、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤併用療法(示されるように)の施行後のB16F10マウスにおける原発腫瘍(図4A)及び二次腫瘍(図4B)の増殖速度のグラフである。統計的有意性は、Tukey事後検定を用いた一元配置分散分析によって判定した(図4A-4B)。各データセットの上の小文字は、統計群を示す。*p<0.05、**p<0.001、***p<0.0005、****p<0.0001。
図4B】PBS+IgGコントロール、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+IgG、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+抗PD-1抗体、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+IgG、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+抗PD-1抗体、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及びIgGの3剤併用療法、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤併用療法(示されるように)の施行後のB16F10マウスにおける原発腫瘍(図4A)及び二次腫瘍(図4B)の増殖速度のグラフである。統計的有意性は、Tukey事後検定を用いた一元配置分散分析によって判定した(図4A-4B)。各データセットの上の小文字は、統計群を示す。*p<0.05、**p<0.001、***p<0.0005、****p<0.0001。
図5A】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。PBS+IgGコントロールで処置した原発腫瘍。
図5B】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+IgGで処置した原発腫瘍。
図5C】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+抗PD-1抗体で処置した原発腫瘍。
図5D】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+IgGで処置した原発腫瘍。
図5E】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+抗PD-1抗体で処置した原発腫瘍。
図5F】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及びIgGの3剤併用療法で処置した原発腫瘍。
図5G】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤併用療法で処置した原発腫瘍。
図5H】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。PBS+IgGコントロールによる処置後の二次腫瘍。
図5I】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+IgGによる処置後の二次腫瘍。
図5J】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト+抗PD-1抗体による処置後の二次腫瘍。
図5K】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+IgGによる処置後の二次腫瘍。
図5L】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム+抗PD-1抗体による処置後の二次腫瘍。
図5M】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及びIgGの3剤併用療法による処置後の二次腫瘍。
図5N】各群で処置した5匹のマウスのそれぞれについて腫瘍体積を表す線グラフである。表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤併用療法による処置後の二次腫瘍。
図6】表面に提示されたIL-12を有する操作されたエクソソーム(「exoIL-12」)の図である。
図7A】非処理マウス及び図示されるように遊離組換えIL-12またはexoIL-12で処理したマウスにおける腫瘍保持量を示す散布図である。
図7B】非処理マウス及び図示されるように遊離組換えIL-12またはexoIL-12で処理したマウスにおけるIFN-γのAUCを示す散布図である。
図7C】非処理マウス及び図示されるように遊離組換えIL-12またはexoIL-12で処理したマウスにおける腫瘍増殖を示す散布図である。
図7D】非処理マウス及び図示されるように遊離組換えIL-12またはexoIL-12で処理したマウスにおける再チャレンジ後の腫瘍増殖を示す散布図である。
図7E】コントロール及びexoIL-12で処理したマウスにおける抗原特異的CD8+T細胞の割合(%)を示す箱ひげ図である。
図8A】皮膚及び血漿中で測定したexoIL-12によって測定された薬物動態のグラフである。
図8B】0.3μg、1.0μg、または3.0μgのexoIL-12の投与後の経時的な皮膚中のIP-10のビヒクルに対する倍率変化によって測定された組織薬力学のグラフである。
図8C】0.3μg、1.0μg、または3.0μgのexoIL-12の投与後の経時的な血漿中のIP-10のビヒクルに対する倍率変化によって測定された組織薬力学のグラフである。
図9】健康なボランティア(A)及びがん患者(B)におけるexoIL-12治療の安全性及び有効性を評価する臨床試験の概略図である。
図10A】示されるように、i)エクソソームとIgGコントロールとの併用、(ii)エクソソームと抗PD-1抗体との併用、(iii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとIgGコントロールとの併用、(iv)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと抗PD-1抗体との併用、(v)exoIL-12と抗PD-1抗体との併用、(vi)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとexoIL-12との併用、及び(vii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(10ng)とexoIL-12(10ng)との併用の施行後の最大20日間にわたる二次腫瘍体積(mm)のグラフである。
図10B】図示されるように、i)エクソソームとIgGコントロールとの併用、(ii)エクソソームと抗PD-1抗体との併用、(iii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとIgGコントロールとの併用、(iv)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと抗PD-1抗体との併用、(v)exoIL-12と抗PD-1抗体との併用、(vi)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとexoIL-12との併用、及び(vii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(10ng)とexoIL-12(10ng)との併用の施行後の最大20日間にわたる原発腫瘍体積(mm3)のグラフである。
図10C】図示されるように、i)エクソソームとIgGコントロールとの併用、(ii)エクソソームと抗PD-1抗体との併用、(iii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとIgGコントロールとの併用、(iv)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと抗PD-1抗体との併用、(v)exoIL-12と抗PD-1抗体との併用、(vi)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとexoIL-12との併用、及び(vii)エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト(10ng)とexoIL-12(10ng)との併用の施行後の1mm当たりのCD8細胞の数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明をより詳細に説明するのに先立って、本発明は記載される特定の態様に限定されるものではなく、言うまでもなく変化し得る点は理解されるべきである。本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるため、本明細書で使用される用語は、あくまで特定の態様を説明するためのものであって、限定することを目的としたものではない点も理解されるべきである。
【0039】
別段の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施または試験において使用することができるが、代表的な例示的方法及び材料について以下に記載する。
【0040】
本明細書に引用されるすべての刊行物及び特許は、あたかもそれぞれの刊行物または特許が参照によって援用されるものとして具体的かつ個々に示されているのと同様に本明細書に参照によって援用されるものであり、引用される刊行物と関連する方法及び/または材料を開示及び記載するために参照によって本明細書に援用されるものである。
【0041】
本開示を読むことで当業者には明らかとなるように、本明細書に記載及び例示される個々の態様のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離するか、またはそれと組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することが可能である。
【0042】
I.定義
本明細書において、また付属の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる点に留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、ならびに「1つ以上の(one or more)」、及び「少なくとも1つの(at least one)」は、本開示では互換可能に用いられる場合がある。各請求項は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合もある点にも留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の記載との関連において「~だけの」、「~のみ」などといった除外的な語の使用に対する、または否定による限定の使用に対する先行詞としての役割を有するものとする。
【0043】
さらに、本明細書で使用するところの「及び/または」とは、他方を伴うかまたは伴わない、2つの特定の特性または要素のそれぞれの具体的な開示として理解されるべきである。したがって、本明細書において「A及び/またはB」といった語句で用いられる「及び/または」なる用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(のみ)、及び「B」(のみ)を含むものとする。同様に、「A、B、及び/またはC」といった語句で使用される「及び/または」なる用語は、以下の態様、すなわち、A、B、及びC、A、B、またはC、AまたはC、AまたはB、BまたはC、A及びC、A及びB、B及びC、A(のみ)、B(のみ)、ならびにC(のみ)のそれぞれを包含するものとする。
【0044】
各態様が「~を含む(comprising)」なる文言によって記述される場合、さもなければ「~からなる(consisting of)」及び/または「~から本質的になる(consisting essentially of)」によって記述される同様の態様も提供されるものと理解される。
【0045】
別段の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用される用語の多くについての一般的な辞書を与えるものである。
【0046】
単位、接頭語、及び記号は、国際単位系(SI)で認められた形式で記載する。数値範囲は、その範囲を規定する数を含むものとする。値の範囲が記載されている場合、その範囲の記載された上限と下限との間にあるそれぞれの介在する整数値、及びそのそれぞれの分数もまた、そのような値の間のそれぞれの部分範囲とともに具体的に開示される点は理解されるべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は独立してその範囲に含まれる場合も、その範囲から除外される場合もあるが、どちらかの限界値が含まれるか、どちらの限界値も含まれないか、または両方の限界値が含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示に包含される。したがって、本明細書に記載される範囲は、記載される端点を含む、その範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解される。
【0047】
値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同じ数または量である値もまた、本開示の範囲内に含まれる点を理解されたい。ある組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせのそれぞれも具体的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。ある開示の任意の要素が複数の選択肢を有するものとして開示される場合、各選択肢が単独で、または他の選択肢との任意の組み合わせとして除外されるその開示の例もまた、本明細書に開示される。つまり、ある開示の複数の要素がそのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書に開示される。
【0048】
ヌクレオチドは、それらの広く認められている1文字の略号で呼称する。特に示されない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’の方向に左から右に記載する。本明細書では、ヌクレオチドは、IUPAC-IUB生化学命名法委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨されるそれらの一般的に知られる1文字記号で呼称する。したがって、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Uはウラシルを表す。
【0049】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載する。本明細書では、アミノ酸は、それらの一般的に知られる3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号で呼称する。
【0050】
「約」または「およそ」なる用語は、本明細書では概ね大体、おおよそ、またはその周辺であることを意味するために使用される。「約」なる用語が数値範囲とともに使用される場合、記載される数値よりも上及び下の境界値を広げることによって、その範囲を修飾する。本明細書で使用されるこの用語は、参照される量の5%以内を意味し、例えば、約50%とは、47.5%~52.5%の値の範囲を包含するものとして理解される。
【0051】
本明細書で使用するところの「細胞外小胞」または「EV」なる用語は、内部空間を封入する膜を含む細胞由来の小胞を指す。細胞外小胞は、それらが由来する細胞よりも小さい直径を有するすべての膜結合小胞(例えば、エクソソーム、ナノ小胞)を含む。一般的に、細胞外小胞は直径が20nm~1000nmの範囲であり、内部空間(すなわち、内腔)内にある場合、細胞外小胞の外表面に提示される場合、及び/または膜を貫通している場合のいずれかの形で、さまざまなマクロ分子ペイロードを含むことができる。前記ペイロードは、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、小分子、及び/またはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、細胞外小胞は足場部分を含む。例として、また、これらに限定されるものではないが、細胞外小胞は、アポトーシス小体、細胞の断片、直接的操作または間接的操作(例えば、連続押出またはアルカリ溶液での処理によるもの)によって細胞から誘導される小胞、小胞化オルガネラ、及び生細胞により産生される小胞(例えば、直接の原形質膜出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合によるもの)を含む。細胞外小胞は、生きているもしくは死んだ生物、外植された組織もしくは臓器、原核または真核細胞、及び/または培養された細胞に由来するものであってよい。いくつかの態様では、細胞外小胞は、1つまたは複数の導入遺伝子産物を発現する細胞によって生成される。
【0052】
本明細書で使用するところの「エクソソーム」なる用語は、内部空間(すなわち、内腔)を封入する膜を含み、直接の原形質膜出芽によるか、または後期エンドソームの原形質膜との融合により細胞から生成される、前記細胞由来の小さい(直径20~300nm、例えば直径40~200nm)小胞を指す。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、約20nm~約300nmである。エクソソームは、細胞外小胞の一種である。エクソソームは、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、場合により、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバー(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、またはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖類、もしくはグリカン)または他の分子を含む。いくつかの態様では、エクソソームは足場部分を含む。エクソソームは、プロデューサー細胞に由来するものであってよく、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づいてプロデューサー細胞から単離することができる。いくつかの態様では、本開示のエクソソームは、1つ以上の導入遺伝子産物を発現する細胞によって生成される。
【0053】
本明細書で使用するところの「ナノ小胞」なる用語は、内部空間を封入する膜を含む、細胞由来の小さい(直径20~250nm、より好ましくは直径30~150nm)小胞であって、ナノ小胞が操作なしではプロデューサー細胞によって産生されないように直接的操作または間接的操作によって細胞から生成されるものを指す。前記プロデューサー細胞の適切な操作としては、これらに限定されるものではないが、連続押出、アルカリ溶液による処理、超音波処理、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ナノ小胞の産生は、場合により、前記プロデューサー細胞の破壊につながり得る。ナノ小胞の集団は、原形質膜からの直接出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合によってプロデューサー細胞から誘導される小胞を実質的に含まないことが好ましい。ナノ小胞は、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、場合により、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバー(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、またはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖類、もしくはグリカン)または他の分子を含む。いくつかの態様では、ナノ小胞は足場部分を含む。ナノ小胞は、上記の操作によってプロデューサー細胞から誘導されると、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づいてプロデューサー細胞から単離することができる。
【0054】
「改変された」なる用語は、本明細書に記載のエクソソームとの関連で使用される場合、改変されたEVが天然に存在するEVとは異なるような、EVの改変または操作を指す。いくつかの態様では、本明細書に記載の改変EVは、天然に存在するEVの膜と比較して、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物などの組成が異なる膜を含む(例えば、膜がより高い密度または多くの数の天然EVタンパク質を含む、及び/または膜がEVには天然にみられないタンパク質を含む)。特定の態様では、膜に対するそのような改変は、EVの外表面を変化させる。特定の態様では、膜に対するそのような改変は、EVの内腔を変化させる。
【0055】
本明細書で使用するところの「足場部分」なる用語は、本明細書で開示されるSTINGアゴニスト、IL-12部分、及び/または他の任意の目的の化合物(例えば、ペイロード)をEVに、EVの内腔表面または外表面のいずれかに固定するために使用できる分子を指す。特定の態様では、足場部分は合成分子を含む。いくつかの態様では、足場部分は、非ポリペプチド部分を含む。他の態様では、足場部分は、EVに天然に存在する脂質、炭水化物、またはタンパク質を含む。いくつかの態様では、足場部分は、エクソソーム中に天然に存在しない脂質、炭水化物、またはタンパク質を含む。特定の態様では、足場部分はScaffold Xである。いくつかの態様では、足場部分はScaffold Yである。さらなる態様では、足場部分は、Scaffold XとScaffold Yの両方を含む。特定の態様では、足場部分は、Lamp-1、Lamp-2、CD13、CD86、フロチリン、シンタキシン-3、CD2、CD36、CD40、CD40L、CD41a、CD44、CD45、ICAM-1、インテグリンα4、L1CAM、LFA-1、Mac-1α及びβ、Vti-1A及びB、CD3ε及びζ、CD9、CD18、CD37、CD53、CD63、CD81、CD82、CXCR4、FcR、GluR2/3、HLA-DM(MHC II)、免疫グロブリン、MHC-IもしくはMHC-II成分、TCRβ、テトラスパニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0056】
本明細書で使用するところの「Scaffold X」なる用語は、エクソソームの表面で最近同定されたエクソソームタンパク質を指す。例えば、参照によって本明細書にその全体を援用する米国特許10,195,290号を参照。Scaffold Xタンパク質の非限定的な例としては、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(「PTGFRNタンパク質」)、ベイシジン(「BSGタンパク質」)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー2(「IGSF2タンパク質」)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー3(「IGSF3タンパク質」)、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー8(「IGSF8タンパク質」)、インテグリンβ1(「ITGB1タンパク質」)、インテグリンα4(「ITGA4タンパク質」)、4F2細胞表面抗原重鎖(「SLC3A2タンパク質」)、及びATPトランスポータータンパク質のクラス(「ATP1A1タンパク質」、「ATP1A2タンパク質」、「ATP1A3タンパク質」、「ATP1A4タンパク質」、「ATP1B3タンパク質」、「ATP2B1タンパク質」、「ATP2B2タンパク質」、「ATP2B3タンパク質」、「ATP2Bタンパク質」)が挙げられる。いくつかの態様では、Scaffold Xタンパク質は、タンパク質全体またはそのフラグメント(例えば、機能的フラグメント、例えば、EV、例えば、エクソソームの外表面または内腔表面上に別の部分を固定することができる最小フラグメント)とすることができる。いくつかの態様では、Scaffold Xは、部分(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)をEV、例えば、エクソソームの外表面または内腔表面に固定することができる。
【0057】
本明細書で使用するところの「Scaffold Y」なる用語は、エクソソームの内腔表面で新たに同定されたエクソソームタンパク質を指す。参照によって本明細書にその全体を援用する国際公開第WO/2019/099942号を参照。Scaffold Yタンパク質の非限定的な例としては、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(「MARCKSタンパク質」)、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(「MARCKSL1タンパク質」)、及び脳の酸可溶性タンパク質1(「BASP1タンパク質」)が挙げられる。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質は、タンパク質全体またはそのフラグメント(例えば、機能的フラグメント、例えば、EV、例えば、エクソソームの内腔表面上に部分を固定することができる最小フラグメント)とすることができる。いくつかの態様では、Scaffold Yは、部分(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)をEV、例えば、エクソソームの内腔に固定することができる。
【0058】
本明細書で使用するところのタンパク質(例えば、治療用タンパク質、Scaffold X、またはScaffold Y)の「フラグメント」なる用語は、天然に存在する配列よりも短いタンパク質のアミノ酸配列、天然に存在するタンパク質と比較してタンパク質のN末端及び/またはC末端または任意の部分が欠失されたタンパク質を指す。本明細書で使用するところの「機能的フラグメント」なる用語は、タンパク質機能を保持したタンパク質フラグメントを指す。したがって、いくつかの態様では、Scaffold Xタンパク質の機能的フラグメントは、部分をEVの内腔表面及び/または外表面に固定する能力を保持している。同様に、特定の態様では、Scaffold Yタンパク質の機能的フラグメントは、部分をEVの内腔表面に固定する能力を保持している。フラグメントが機能的フラグメントであるかどうかは、ウエスタンブロット、FACS分析、及びフラグメントと例えばGFPなどの自家蛍光タンパク質との融合を含む、EVのタンパク質含有量を決定するための任意の周知の方法によって評価することができる。特定の態様では、Scaffold Xタンパク質の機能的フラグメントは、天然に存在するScaffold Xタンパク質の能力、例えば、部分を固定する能力の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約100%を保持する。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質の機能的フラグメントは、天然に存在するScaffold Yタンパク質の能力、例えば、別の分子を固定する能力の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または少なくとも約100%を保持する。
【0059】
本明細書で使用される場合、分子(例えば、機能性分子、抗原、Scaffold X及び/またはScaffold Y)の「変異体」なる用語は、当該技術分野では周知の方法により比較した場合に、別の分子と特定の構造的及び機能的同一性を共有する分子を指す。例えば、あるタンパク質の変異体は、別のタンパク質における置換、挿入、欠失、フレームシフトまたは再構成を含み得る。
【0060】
いくつかの態様では、Scaffold Xの変異体は、完全長の成熟したPTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、もしくはATPトランスポータータンパク質、またPTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、もしくはATPトランスポータータンパク質のフラグメント(例えば、機能的フラグメント)と少なくとも約70%の同一性を有する変異体を含む。いくつかの態様では、PTGFRNの変異体またはそのフラグメントの変異体は、配列番号1によるPTGFRNまたはその機能的フラグメントと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。
【0061】
いくつかの態様では、Scaffold Yの変異体は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはMARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1のフラグメントに対して少なくとも70%の同一性を有する変異体を含む。いくつかの態様では、MARCKSの変異体またはそのフラグメントの変異体は、配列番号401によるMARCKSまたはその機能的フラグメントと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、MARCKSL1の変異体またはそのフラグメントの変異体は、配列番号402によるMARCKSL1またはその機能的フラグメントと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または、少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、BASP1の変異体またはそのフラグメントの変異体は、配列番号403によるBASP1またはその機能的フラグメントと少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質の変異体またはそのフラグメントの変異体は、EVの内腔に特異的に標的化される能力を保持している。いくつかの態様では、Scaffold Yは、1つ以上の変異、例えば、保存的アミノ酸置換を含む。
【0062】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置換されている場合、その置換は保存的であるとみなされる。別の態様では、アミノ酸のストリングは、側鎖ファミリーメンバーの順序及び/または組成が異なる構造的に類似したストリングで保存的に置換することができる。
【0063】
2個のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の「配列同一率(%)」または「同一率(%)」なる用語は、比較ウインドウにわたって各配列によって共有される同一の一致位置の数を指し、2個の配列の最適なアラインメントを得るために導入する必要のある付加または欠失(すなわちギャップ)を考慮したものである。一致位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が、標的配列と参照配列の両方に示される任意の位置である。標的配列内に示されるギャップは、ヌクレオチドまたはアミノ酸ではないため、カウントされない。同様に、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされるが、参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸はカウントされないため、参照配列内に示されるギャップはカウントされない。
【0064】
配列同一性の比率(%)は、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が両方の配列に存在する位置の数を求めて一致位置の数を得て、一致位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割り、その結果を100倍して配列同一性の比率(%)を得ることによって計算される。配列同士の比較及び2個の配列間の配列同一率(%)の決定は、オンラインでの使用またはダウンロード用の容易に入手可能なソフトウェアを使用して行うことができる。適当なソフトウェアプログラムは、さまざまな販売元から入手可能であり、タンパク質及びヌクレオチド配列の両方のアライメント用のものがある。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2個の配列間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の適当なプログラムとしては、例えば、バイオインフォマティクスプログラムパッケージEMBOSSの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)よりwww.ebi.ac.uk/Tools/psaにおいてやはり入手可能なNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherがある。
【0065】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一率(%)を有することができる。配列同一率の値(%)は、10分の1の位に四捨五入される点に留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数である点に留意されたい。
【0066】
当業者であれば、配列同一率(%)を計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない点は理解されよう。配列アラインメントは、複数の配列アラインメントから導出することができる。複数の配列アラインメントを生成するための適切なプログラムの1つに、www.clustal.orgから入手できるClustalW2がある。別の適当なプログラムとして、www.drive5.com/muscle/から入手できるMUSCLEがある。あるいはClustalW2及びMUSCLEは、例えば、EBIから入手することもできる。
【0067】
配列アラインメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能的データ(例えば、突然変異の位置)、または系統発生データなどの異種ソースからのデータと統合することによって生成できる点も理解されよう。異種データを統合してマルチプル配列アラインメントを生成する適当なプログラムとしてwww.tcoffee.orgで入手できるか、あるいは例えばEBIからも入手できるT-Coffeeがある。配列同一率(%)を計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで精選することができる点も理解されよう。
【0068】
ポリヌクレオチド変異体は、コーディング領域、非コーディング領域、またはその両方に改変を含むことができる。一態様では、ポリヌクレオチド変異体は、サイレント置換、付加、または欠失を生じるが、コードされるポリペプチドの性質または活性を変化させない改変を含む。別の態様では、ヌクレオチド変異体は、遺伝コードの縮重に起因するサイレント置換によって作製される。他の態様では、5~10個、1~5個、または1~2個のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、削除、または付加されている変異体。ポリヌクレオチド変異体は、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化するため(ヒトmRNAのコドンを他のもの、例えばE.coliなどの細菌宿主に変更する)など、さまざまな理由で作製することができる。
【0069】
天然に存在する変異体は「対立遺伝子変異体」と呼ばれ、生物の染色体上の特定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態の1つを指す(Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley & Sons,New York(1985))。これらの対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドレベルのいずれかで異なり得るものであり、本開示に含まれる。あるいは、天然に存在しない変異体は、突然変異誘発技術または直接合成によって生成することもできる。
【0070】
タンパク質工学及び組換えDNA技術の既知の方法を使用して、ポリペプチドの特性を改善または改変するための変異体を作製することができる。例えば、生物学的機能を実質的に失うことなく、分泌されたタンパク質のN末端またはC末端から1つ以上のアミノ酸を欠失させることができる。本明細書に参照によりその全体を援用するRon et al.,J.Biol.Chem.268:2984-2988(1993)は、3、8、または27個のアミノ末端のアミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を有する変異体KGFタンパク質を報告している。同様に、インターフェロンγは、このタンパク質のカルボキシ末端から8~10個のアミノ酸残基を欠失させた後に最大10倍高い活性を示した。(参照によりその全体を本明細書に援用するDobeli et al.,J.Biotechnology 7:199-216(1988))。
【0071】
さらに、変異体がしばしば天然に存在するタンパク質と同様の生物学的活性を保持していることを示す十分な証拠がある。例えば、Gayleと共同研究者(本明細書に参照によりその全体を援用するJ.Biol.Chem 268:22105-22111(1993))は、ヒトサイトカインIL-1aの広範な突然変異分析を行っている。彼らはランダム突然変異誘発を用いて、分子の全長にわたって変異体当たり平均2.5個のアミノ酸の変化を有する3500種を超える個々のIL-1a変異体を作製した。すべての可能なアミノ酸位置で複数の変異を調べた。これらの研究者は、「これら分子のほとんどは、[結合または生物活性]のいずれにもほとんど影響することなく改変できる」ことを発見した。(抄録を参照。)実際、調べた3500種を超えるヌクレオチド配列のうち、23種の固有のアミノ酸配列のみが、野生型とは活性が大きく異なるタンパク質を生じた。
【0072】
上記のように、ポリペプチド変異体には、例えば、修飾ポリペプチドが含まれる。修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化(本明細書に参照によりその全体を援用するMei et al.,Blood 116:270-79(2010))、タンパク分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、及び、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNAの媒介による付加、及びユビキチン化が挙げられる。いくつかの態様では、Scaffold X及び/またはScaffold Yは、任意の便宜の良い位置で改変される。
【0073】
本明細書で使用するところの「プロデューサー細胞」なる用語は、EVを生成するために使用される細胞を指す。プロデューサー細胞は、インビトロで培養された細胞、またはインビボの細胞であってよい。プロデューサー細胞としては、これらに限定されるものではないが、例えば、EV、例えば、エクソソーム、例えば、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮線維芽細胞、s9f細胞、fHDF線維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪組織由来の間葉系幹細胞、及びRPTEC/TERT1細胞の生成に有効であることが知られている細胞が挙げられる。特定の態様では、プロデューサー細胞は、抗原提示細胞である。いくつかの態様では、プロデューサー細胞は、細菌細胞である。いくつかの態様では、プロデューサー細胞は、樹状細胞、B細胞、マスト細胞、マクロファージ、好中球、クッパー・ブロウィッツ細胞、またはこれらの細胞のいずれかに由来する細胞、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、プロデューサー細胞は、細菌細胞はない。他の態様では、プロデューサー細胞は、抗原提示細胞ではない。
【0074】
本明細書で使用するところの「関連付けられた」なる用語は、それぞれ、第1の部分、例えばSTINGアゴニスト及び/またはIL-12部分の、第2の部分、例えば細胞外小胞への封入、または第1の部分、例えばSTINGアゴニスト(及び/またはIL-12部分)と第2の部分、例えば細胞外小胞との間に形成される共有結合または非共有結合を指す。例えば、いくつかの態様では、足場部分、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)が、細胞外小胞内または細胞外小胞上に発現され、STINGアゴニストが、細胞外小胞の内腔内または外表面上にロードされる。例えば、いくつかの態様では、足場部分、例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質)が、細胞外小胞内または細胞外小胞上に発現され、IL-12部分が、細胞外小胞の外表面上にロードされる。一態様では、「関連付けられた」なる用語は、共有の非ペプチド結合または非共有結合を意味する。例えば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合を形成するか、または架橋することができるチオール基を含む。共有結合の例としては、これらに限定されるものではないが、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、アグノスティック結合(agnostic bond)、曲がった結合(bent bond)、双極子結合、パイバックボンド(Pi backbond)、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数、または反結合が挙げられる。非共有結合の非限定的な例としては、イオン結合(例えば、カチオン-パイ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素錯体、低バリア水素結合、または対称水素結合)、ファンデルワールス力(van der Walls force)、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、オーロフィリシティー(aurophilicity)、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学的極性が挙げられる。他の態様では、「関連付けられた」なる用語は、第1の部分、例えば、細胞外小胞が、第2の部分、例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分を封入することを意味する。いくつかの態様では、第1の部分と第2の部分とは互いに連結することができる。他の態様では、第1の部分と第2の部分とは、互いに物理的及び/または化学的に連結されない。
【0075】
本明細書で使用される場合、「~に連結される」または「~と結合される」なる用語は、互換的に使用され、第1の部分と第2の部分、例えばそれぞれ、STINGアゴニストと細胞外小胞、及び/またはIL-12部分と細胞外小胞との間に形成される共有または非共有結合を指す。いくつかの態様では、足場部分は、細胞外小胞内または細胞外小胞上で発現され(例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質))、IL-12部分は、細胞外小胞の表面に露出されたScaffold Xタンパク質(例えば、PTGFRNタンパク質)の部分に連結または結合される(例えば、「表面に提示されたIL-12」)。いくつかの態様では、足場部分は、細胞外小胞内または細胞外小胞上で発現され(例えば、Scaffold X(例えば、PTGFRNタンパク質))、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、細胞外小胞の内腔に露出されたScaffold Xタンパク質(例えば、PTGFRNタンパク質)の部分に連結または結合される。
【0076】
本明細書で使用するところの「ロードされた」なる用語、またはこの用語の文法的に異なる語形(例えば、ロード(load)またはロードされる(loaded))は、第1の部分(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)が第2の部分(例えば、EV、例えば、エクソソーム)に関連付けられた状態またはプロセスを指す。いくつかの態様では、第1の部分は、第2の部分と化学的または物理的に連結される。いくつかの態様では、第1の部分は、第2の部分と化学的または物理的に連結されない。いくつかの態様では、第1の部分は、第2の部分内、例えばEV(例えば、エクソソーム)の内腔内に存在し、例えば、「封入される」。いくつかの態様では、第1の部分は、第2の部分の外表面に関連付けられ、例えば、EV(例えば、エクソソーム)の表面に連結または結合され、例えば、第2の部分の「表面に提示される」。
【0077】
「封入された」なる用語、またはこの用語の文法的に異なる語形(例えば、封入、または封入すること)は、第1の部分(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)が第2の部分(例えば、EV、例えば、エクソソーム)の内部にあり、2つの部分が化学的または物理的に連結されていない状態またはプロセスを指す。いくつかの態様では、「封入された」なる用語は、「の内腔内」と互換的に使用される場合がある。第1の部分(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)を第2の部分(例えば、EV、例えば、エクソソーム)内に封入する非限定的な例は、本明細書の他の箇所で開示されている。
【0078】
本明細書で使用するところの「単離する」、「単離された」、及び「単離すること」または「精製する」、「精製された」、及び「精製すること」、ならびに「抽出された」及び「抽出すること」なる用語は互換的に使用され、1つ以上の精製プロセス、例えば、所望のEV調製物の選択または濃縮が行われた、所望のEVの調製(例えば、複数の既知または未知量及び/または濃度)の状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用するところの、単離することまたは精製すること、とは、プロデューサー細胞を含有する試料からEVを除去、部分的に除去する(例えば、画分)プロセスである。いくつかの態様では、単離されたEV組成物は検出可能な望ましくない活性を有さないか、あるいは、望ましくない活性のレベルまたは量が、許容されるレベルまたは量以下である。他の態様では、単離されたEV組成物は、許容される量及び/または濃度以上の所望のEVの量及び/または濃度を有する。他の態様では、単離されたEV組成物は、組成物が得られる出発材料(例えば、プロデューサー細胞調製物)と比較して濃縮されている。この濃縮は、出発材料と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%、または99.9999%超であってよい。いくつかの態様では、単離されたEV調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離されたEV調製物は、いかなる夾雑する生物物質も100%含まないか、99%含まないか、98%含まないか、97%含まないか、96%含まないか、95%含まないか、94%含まないか、93%含まないか、92%含まないか、91%含まないか、または90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)もしくは不要な核酸、タンパク質、脂質、または代謝産物を含み得る。残留する生物学的産物を実質的に含まない、とは、EV組成物が検出可能なプロデューサー細胞を含有せず、EVのみが検出可能であることを意味する場合もある。
【0079】
本明細書で使用するところの「アゴニスト」なる用語は、受容体に結合し、受容体を活性化して生物学的応答を生じる分子を指す。受容体は、内因性アゴニストまたは外因性アゴニストのいずれかによって活性化され得る。内因性アゴニストの非限定的な例としては、ホルモン、神経伝達物質、及び環状ジヌクレオチドが挙げられる。外因性アゴニストの非限定的な例としては、薬物、小分子、及び環状ジヌクレオチドが挙げられる。アゴニストは、完全、部分、またはインバースアゴニストであってよい。
【0080】
本明細書で使用するところの「アンタゴニスト」なる用語は、受容体に結合すると、それ自体が生物学的応答を誘発するのではなく、アゴニスト媒介性応答を遮断または抑制する分子を指す。多くのアンタゴニストは、受容体上の構造的に規定された結合部位において内因性リガンドまたは基質と競合することによってその効力を示す。アンタゴニストの非限定的な例としては、アルファ遮断薬、ベータ遮断薬、及びカルシウムチャネル遮断薬が含まれる。アンタゴニストは、競合的、非競合的、または不競合的アンタゴニストであってよい。
【0081】
本明細書で使用するところの「遊離STINGアゴニスト」または「遊離IL-12部分」なる用語は、細胞外小胞に関連付けられていないSTINGアゴニストまたはIL-12部分を意味するが、それ以外の点では細胞外小胞に関連付けられたSTINGアゴニストまたはIL-12部分と同じである。特に、STINGアゴニストまたはIL-12部分に関連付けられた細胞外小胞と比較した場合、遊離STINGアゴニストまたは遊離IL-12部分は、細胞外小胞と関連付けられた同じSTINGアゴニストまたはIL-12部分である。いくつかの態様では、遊離STINGアゴニストをその有効性、毒性、及び/または他の任意の特性についてSTINGアゴニストを含む細胞外小胞と比較した場合、細胞外小胞に関連付けられたSTINGアゴニストと比較した遊離STINGアゴニストの量は、EVに関連付けられたSTINGアゴニストの量と同じである。いくつかの態様では、遊離IL-12部分をその有効性、毒性、及び/または他の任意の特性についてIL-12部分を含む細胞外小胞と比較した場合、細胞外小胞に関連付けられたIL-12部分と比較した遊離IL-12部分の量は、EVに関連付けられたIL-12部分の量と同じである。
【0082】
本明細書で使用するところの「exoSTING」なる用語は、STINGアゴニストがロードされたエクソソームを指す。いくつかの態様では、エクソソームは、エクソソームの内腔内にSTINGアゴニストを含む。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、エクソソームの内腔表面、例えば、足場タンパク質、例えば、Scaffold X、例えば、PTGFRNと関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、エクソソームの内腔内に封入され、足場タンパク質には関連付けられない。いくつかの態様では、エクソソームは、エクソソームの表面上にSTINGアゴニストを含む。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、エクソソームの外表面に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、エクソソームの外表面に連結または結合される。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、表面に露出された足場タンパク質、例えば、Scaffold Xタンパク質、例えば、PTGFRNタンパク質に連結または結合される。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、エクソソームの脂質二重層に連結または結合される。
【0083】
本明細書で使用するところの「exoIL-12」なる用語は、IL-12部分、例えば、IL-12タンパク質またはそのフラグメントがロードされたエクソソームを指す。いくつかの態様では、IL-12部分は、エクソソームの外表面に関連付けられる(例えば、IL-12部分の表面提示)。IL-12部分を含むエクソソームの非限定的な例は、例えば、本明細書に参照によりその全体をそれぞれ援用するところの米国特許第10,723,782号及び国際公開第WO2019/133934A2号にみることができる。いくつかの態様では、IL-12部分は、エクソソームの外表面に連結または結合される。いくつかの態様では、IL-12部分は、表面に露出された足場タンパク質、例えば、Scaffold Xタンパク質、例えば、PTGFRNタンパク質に連結または結合される。いくつかの態様では、IL-12部分は、エクソソームの脂質二重層に連結または結合される。いくつかの態様では、エクソソームは、エクソソームの内腔内にIL-12部分を含む。いくつかの態様では、IL-12部分は、エクソソームの内腔表面、例えば、足場タンパク質、例えば、Scaffold X、例えば、PTGFRNと関連付けられる。いくつかの態様では、IL-12部分は、エクソソームの内腔内に封入され、足場タンパク質には関連付けられない。
【0084】
本明細書で使用するところの「リガンド」なる用語は、受容体に結合し、受容体を調節して生物学的応答を生じる分子を指す。調節は、受容体によって媒介される生物学的応答の活性化、非活性化、遮断、または減衰であり得る。受容体は、内因性または外因リガンドのいずれかによって調節され得る。内因性リガンドの非限定的な例としては、抗体及びペプチドが挙げられる。外因性アゴニストの非限定的な例としては、薬物、小分子、及び環状ジヌクレオチドが挙げられる。リガンドは、完全、部分、またはインバースリガンドであってよい。
【0085】
本明細書で使用するところの「抗体」なる用語は、天然であるかまたは部分的もしくは全体的に合成されたものであるかによらず免疫グロブリン、及びそのフラグメントを包含する。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を網羅する。「抗体」は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントからのフレームワーク領域を含むポリペプチドをさらに含む。抗体なる用語の使用は、全抗体、ポリクローナル、モノクローナル及び組換え抗体、それらのフラグメントを含むことを意図し、一本鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、例えば、scFv、(scFv)、Fab、Fab’、及びF(ab’)、F(ab1)、Fv、dAb、及びFdフラグメントのような抗体フラグメント、ダイアボディ、及び抗体関連ポリペプチドをさらに含む。抗体は、所望の生物学的活性または機能を有するものである限り、二重特異性抗体及び多重特異性抗体を含む。
【0086】
本明細書で使用するところの「治療有効量」なる用語は、所望の治療効果、薬理学的及び/または生理学的効果をそれを必要とする対象に対して生じるうえで十分な試薬または医薬化合物の量である。予防は治療とみなすことができるため、治療有効量とは「予防有効量」でもあり得る。
【0087】
本明細書で使用するところの「医薬組成物」なる用語は、例えば、薬学的に許容される担体及び賦形剤のような1つ以上の他の化学成分と混合もしくは混ぜ合わされるかまたはそれに懸濁されたEVなどの、本明細書に記載される1つ以上の化合物を指す。医薬組成物の目的の1つは、EVの調製物の対象への投与を促進することである。「賦形剤」または「担体」なる用語は、化合物の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加される不活性物質のことを指す。「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」なる用語及びそれらの文法的な変化形は、ヒトを含む動物での使用について米国連邦政府の規制機関によって承認されているかまたは米国薬局方に記載されている薬剤のいずれか、ならびに、対象への組成物の投与が禁止される程の望ましくない生理学的作用の発生を引き起こさず、また、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効化しない任意の担体または希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0088】
本明細書で使用するところの「ペイロード」なる用語は、EVと接触される標的(例えば、標的細胞)に作用する治療剤を指す。エクソソーム及び/またはプロデューサー細胞に導入することができるペイロードには、ヌクレオチド(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含む、または転写を妨げるヌクレオチド)、核酸(例えば、酵素などのポリペプチドをコードするDNAもしくはmRNA分子、またはmiRNA、dsDNA、lncRNA、及びsiRNAのような制御機能を有するRNA分子)、アミノ酸(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含む、または翻訳を妨げるアミノ酸)、ポリペプチド(例えば、酵素)、脂質、炭水化物、及び小分子(例えば、小分子薬及び毒素)などの治療剤が含まれる。
【0089】
「投与」、「投与すること」なる用語、及びそれらの変化形は、EVなどの組成物または薬剤を対象に導入することを指し、組成物または薬剤の同時及び順次の導入を含む。対象への組成物または薬剤の導入は、腫瘍内、経口、肺内、鼻腔内、非経口的(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、直腸内、リンパ管内、くも膜下腔内、眼周囲、または局所的を含む任意の適当な経路による。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。適当な投与経路によって、組成物または薬剤はその目的とする機能を実行することができる。例えば、適当な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または薬剤を対象の静脈内に導入することによって投与される。
【0090】
本明細書で使用するところの「治療する」、「治療」または「治療すること」なる用語は、例えば、疾患または状態の重症度の減少、疾患経過の期間の短縮、疾患または状態に関連する1つ以上の症状の改善または消失、疾患または状態を必ずしも治癒しなくとも疾患または状態を有する対象に有益な効果をもたらすことを指す。この用語には、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含まれる。一態様では、「治療する」または「治療」なる用語は、対象において抗原に対する免疫応答を誘導することを意味する。
【0091】
本明細書で使用するところの「防止する」または「防止すること」なる用語は、特定の転帰の発生または重症度を減少または低減することを指す。いくつかの態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「調節する」、「調節すること」、「改変する」及び/または「調節因子」なる用語は、一般に、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能または挙動を増加または減少させる、例えば、直接的または間接的に促進/刺激/アップレギュレートまたは干渉/阻害/ダウンレギュレートすることによって変化させる能力を指す。いくつかの例では、調節因子は、コントロールに対して、または一般に予想される活性の平均的レベルに対して、または活性のコントロールレベルに対して、特定の濃度、レベル、活性または機能を増加及び/または減少させることができる。
【0093】
本明細書で使用するところの「哺乳動物対象」には、これらに限定されるものではないが、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)を含むすべての哺乳動物が含まれる。
【0094】
「個体」「対象」「宿主」及び「患者」なる用語は、本明細書では互換的に使用され、診断、処置または治療が望ましいあらゆる哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。いくつかの態様では、対象は哺乳動物であり、他の態様では、対象はヒトである。
【0095】
本明細書で使用するところの「実質的に含まない」なる用語は、EVを含む試料が、質量/体積(m/v)濃度比率で10%未満のマクロ分子しか含まないことを意味する。一部の画分は、0.001(m/v)%未満、0.01(m/v)%未満、0.05(m/v)%未満、0.1(m/v)%未満、0.2%未満、0.3未満(m/v)%未満、0.4(m/v)%未満、0.5(m/v)%未満、0.6(m/v)%未満、0.7(m/v)%未満、0.8(m/v)%未満、0.9(m/v)%未満、1(m/v)%未満、2(m/v)%未満、3(m/v)%未満、4(m/v)%未満、5(m/v)%未満、6(m/v)%未満、7(m/v)%未満、8(m/v)%未満、9(m/v)%未満、または10(m/v)%未満のマクロ分子を含有してもよい。
【0096】
本明細書で使用するところの「マクロ分子」なる用語は、核酸、外因性タンパク質、脂質、炭水化物、代謝産物、またはそれらの組み合わせを意味する。
【0097】
本明細書で使用するところの「わずかな」、「低下した」、または「無視できる」なる用語は、対象のベースライン炎症応答と比較した、または遊離STINGアゴニストの投与に対する対象の炎症応答と比較した、STINGアゴニストを封入したEVを含む試料の投与後の対象における炎症応答の存在、レベル、または量を指す。例えば、全身性炎症の無視できるまたはわずかな存在、レベルまたは量とは、対象のベースライン炎症と比較して、または遊離STINGアゴニストの投与に対する対象の免疫応答と比較して、0.001%未満、0.01%未満、0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、10%未満、12%未満、15%未満、17%未満、20%未満、または25%未満の全身性炎症であり得る。全身性炎症のレベルまたは量は、ベースラインと比較して、または遊離STINGアゴニストの投与に対する炎症応答と比較して、0.1倍未満、0.5倍未満、0.5倍未満、1倍未満、1.5倍未満、2倍未満であり得る。
【0098】
本明細書で使用するところの「原発腫瘍」とは、腫瘍が増殖を開始した対象内の場所の元の、または最初の腫瘍を指す。原発腫瘍は、例えば原発腫瘍内の細胞の転移による原発腫瘍の場所以外の場所での原発腫瘍の増殖の開始後に発生する腫瘍を指す「二次腫瘍」とは対照的に使用される。
【0099】
本明細書に記載される範囲は、記載される端点を含むその範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解される。
【0100】
特に明記しない限り、1つ以上の立体中心を有する化合物について言及する場合、そのそれぞれの立体異性体及びその立体異性体のすべての組み合わせを意味する。
【0101】
II.治療方法
本開示の特定の態様は、疾患または状態、例えば腫瘍の治療を必要とする対象の疾患または状態、例えば腫瘍を治療する方法であって、(i)細胞外小胞(EV)とインターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子(stimulator of interferon genes protein)(STING)アゴニストとを含む組成物と、(ii)インターロイキン12(IL-12)部分と、を併用して投与することを含む、方法に関する。いくつかの態様では、IL-12部分は、EVに関連付けられる。いくつかの態様では、IL-12部分は、第2のEVに関連付けられる。いくつかの態様では、本方法は、(i)第1のEVとSTINGアゴニストとを含む組成物と、(ii)IL-12部分に関連付けられた第2のEVと、を投与することを含む。いくつかの態様では、IL-12部分は、STINGアゴニストを含むEVに関連付けられる(例えば、IL-12及びSTINGアゴニストがEVに関連付けられる)。いくつかの態様では、本方法は、(i)EVとSTINGアゴニストとを含む組成物を投与することを含み、EVはIL-12部分に関連付けられる。いくつかの態様では、EVは、STINGアゴニストに関連付けられる。
【0102】
いくつかの態様では、STINGアゴニストは、EVに関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、EVの内腔内にロードされる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、EVに関連付けられない。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、ナノ粒子内にロードされる。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、脂質ナノ粒子、リポソーム、高分子ミセル、デンドリマー、キトサンナノ粒子、アルギン酸塩ナノ粒子、キサンタンガムベースのナノ粒子、セルロースナノ結晶、無機ナノ粒子(例えば、銀、金、酸化鉄、及びシリカナノ粒子)、ナノ結晶、金属ナノ粒子、量子ドット、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるナノ粒子にロードされる。
【0103】
いくつかの態様では、本方法によって治療可能な腫瘍は、原発腫瘍、二次腫瘍、または原発腫瘍及び二次腫瘍の両方である。いくつかの態様では、投与することは、腫瘍の体積を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、STINGアゴニストまたはIL-12部分を含む細胞外小胞のいずれかを投与した(「単剤療法」)後の腫瘍体積と比較して、腫瘍の体積を、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍、減少させる。
【0104】
いくつかの態様では、投与することは、原発腫瘍の体積を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に、単剤療法と比較して、原発腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍、減少させることができる。
【0105】
いくつかの態様では、投与することは、原発腫瘍の腫瘍増殖速度を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に、単剤療法と比較して、原発腫瘍の増殖速度を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍、減少させることができる。いくつかの態様では、投与することは、原発腫瘍の増殖を低下または停止させることができる。
【0106】
前記投与することが、二次腫瘍の体積を減少させる、請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に、単剤療法と比較して、二次腫瘍の体積を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍、減少させることができる。
【0107】
いくつかの態様では、投与することは、二次腫瘍の腫瘍増殖速度を減少させる。いくつかの態様では、投与することは、投与することの14日目後に、単剤療法と比較して、二次腫瘍の増殖速度を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍、減少させることができる。いくつかの態様では、投与することは、二次腫瘍の増殖を低下または停止させることができる。
【0108】
本開示の他の態様は、疾患または状態、例えば腫瘍の治療を必要とする対象の疾患または状態、例えば腫瘍を治療する方法であって、インターロイキン12(IL-12)部分を含む細胞外小胞(EV)を投与することを含み、STINGアゴニストを含むEVを投与することを含まない、方法に関する。
【0109】
いくつかの態様では、方法は、抗がん剤をさらに含む。いくつかの態様では、抗がん剤は、チェックポイント阻害剤を含む。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。
【0110】
III.組成物(細胞外小胞)
本開示の特定の態様は、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分を含む細胞外小胞(EV)に関する。特定の態様では、EVは、STINGアゴニストを含む。いくつかの態様では、EVは、IL-12部分を含む。特定の態様では、EVは、STINGアゴニスト及びIL-12部分を含む。
【0111】
本開示のいくつかの態様は、第1のEV(例えば、エクソソーム)及び第2のEV(例えば、エクソソーム)を含む組成物であって、第1のEV(例えば、エクソソーム)がSTINGアゴニストを含み(例えば、STINGアゴニストがロードされる)、第2のEV(例えば、エクソソーム)がIL-12部分を含む(例えば、IL-12部分がロードされる)、組成物に関する。いくつかの態様では、STINGアゴニストは、第1のEV(例えば、エクソソーム)によって封入される。いくつかの態様では、IL-12部分は、第2のEV(例えば、エクソソーム)の外表面に関連付けられる。いくつかの態様では、第2のEV(例えば、エクソソーム)は、表面に露出されたIL-12を含む。
【0112】
いくつかの態様では、EVは、エクソソーム、ナノ小胞、アポトーシス小体、マイクロベシクル、リソソーム、エンドソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、ミセル、多層構造、再小胞化された小胞、または押し出された細胞である。特定の態様では、EVはエクソソームである。
【0113】
III.A.STINGアゴニスト
自然免疫システムは、免疫応答を誘発するパターン認識受容体(PRR)を介して病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する。PRRは、一本鎖及び二本鎖RNAならびにDNAをはじめとするさまざまな病原体分子を認識する。レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)及び一部のToll様受容体(TLR)などのPRRは、RNAリガンドを認識する。DNAリガンドは、サイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)、AIM2、及びその他のTLRによって認識される。TLR、RLR、及びAIM2が他のシグナルカスケードアダプタータンパク質と直接相互作用して転写因子を活性化するのに対して、cGASは、インターフェロン遺伝子(STING)受容体の刺激物質を活性化する環状ジヌクレオチド分子であるcGAMPを生成する。STINGとRLRはどちらも、転写因子IRF3とNF-κBの活性化を誘導するアダプターキナーゼTBK1を活性化し、I型IFN及び炎症性サイトカインの産生をもたらす。
【0114】
環状ジヌクレオチド(CDN)は、分子c-di-GMPにおけるような2個の3’,5’ホスホジエステル結合を特徴とする細菌のシグナル伝達分子として最初に同定された。STINGは細菌のCDNによって活性化され得るが、哺乳動物細胞における自然免疫応答は、cGASによって生成されるCDNシグナル伝達分子cGAMPによっても媒介される。cGAMPは、混合型の2’,5’及び3’,5’ホスホジエステル結合を特徴としている。細菌及び哺乳動物CDNはいずれも、直接STINGと相互作用して、IFNα及びIFN-βなどのI型IFNの産生をもたらす炎症促進性シグナル伝達カスケードを誘導する。
【0115】
本開示で使用されるSTINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)または非環状ジヌクレオチドアゴニストとすることができる。これらに限定されるものではないが、cGMP、環状di-GMP(c-di-GMP)、cAMP、環状di-AMP(c-di-AMP)、環状-GMP-AMP(cGAMP)、環状di-IMP(c-di-IMP)、環状AMP-IMP(cAIMP)などの環状プリンジヌクレオチド、及びそれらの任意の類似体は、患者の免疫または炎症反応を刺激または増強することが知られている。CDNは、環状ジヌクレオチド同士を結合する2’2’、2’3’、2’5’、3’3’、もしくは3’5’結合、またはそれらの任意の組み合わせを有する場合がある。
【0116】
環状プリンジヌクレオチドは、標準的な有機化学技術によって修飾することでプリンジヌクレオチドの類似体を生成することができる。適当なプリンジヌクレオチドとしては、これらに限定されるものではないが、アデニン、グアニン、イノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、イソグアニン、または当該技術分野では周知の他の任意の適切なプリンジヌクレオチドが挙げられる。環状ジヌクレオチドは修飾された類似体であってもよい。これらに限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ビホスホロチオエート、フルオリネート、及びジフルオリネート修飾を含む、当該技術分野では周知の任意の適切な修飾を使用することができる。
【0117】
5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)、または当該技術分野では周知の他の任意の非環状ジヌクレオチドアゴニストなどの非環状ジヌクレオチドアゴニストも使用することができる。
【0118】
任意のSTINGアゴニストを使用することができることが企図される。STINGアゴニストには、DMXAA、STINGアゴニスト-1、ML RR-S2 CDA、ML RR-S2c-di-GMP、ML-RR-S2 cGAMP、2’3’-c-di-AM(PS)2、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMPdFHS、3’3’-cGAMP、3’3’-cGAMPdFSH、cAIMP、cAIM(PS)2、3’3’-cAIMP、3’3’-cAIMPdFSH、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、2’3’-c-di-AMP、2’3’-c-di-AM(PS)2、c-di-GMP、2’3’-c-di-GMP、c-di-IMP、c-di-UMP、またはそれらの任意の組み合わせがある。好ましい態様では、STINGアゴニストは、3’3’-cAIMPdFSHであり、代替的に3~3cAIMPdFSHとも呼ばれる。当該技術分野では周知のさらなるSTINGアゴニストも使用することが可能である。
【0119】
他の態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化4】
式中、
は、H、OH、またはFであり、
は、H、OH、またはFであり、
Zは、OH、OR、SHまたはSRであり、式中、
i)Rは、NaまたはNHであるか、または
ii)Rは、ピバロイルオキシメチルなどのインビボでOHまたはSHを与える酵素不安定基であり、
Bi及びB2は、以下から選択される塩基であり、
【化5】
ただし、
-式(I)において:X及びXはOHではなく、
-式(II)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、かつ、
-式(III)において:X及びXがOHである場合、Bはアデニンではなく、Bはグアニンではなく、ZはOHではない。本明細書に参照によりその内容の全体を援用するWO2016/096174号を参照されたい。
【0120】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、以下、
【化6-1】
【化6-2】
その薬学的に許容される塩を含む。WO2016/096174A1を参照。
【0121】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。


【化7-1】
【化7-2】
または任意のその薬学的に許容される塩。
【0122】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化8】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2014/093936に定義されている。
【0123】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化9】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2014/189805に定義されている。
【0124】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化10】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2015/077354に定義されている。Cell reports 11,1018-1030(2015)も参照されたい。
【0125】
いくつかの態様では、本開示に有用なSTINGアゴニストは、本明細書に参照によりそれらの全体を援用するWO2013/185052及びSci.Transl.Med.283,283ra52(2015)に記載される、c-di-AMP、c-di-GMP、c-di-IMP、c-AMP-GMP、c-AMP-IMP、及びc-GMP-IMPを含む。
【0126】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化11】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2014/189806に定義されている。
【0127】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化12】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2015/185565に定義されている。
【0128】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化13】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2014/179760に定義されている。
【0129】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化14】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2014/179335に定義されている。
【0130】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化15】
これは、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2015/017652に定義されている。
【0131】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化16】
これは、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2016/096577に定義されている。
【0132】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。

【化17】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2016/120305に定義されている。
【0133】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化18】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2016/145102に定義されている。
【0134】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化19】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2017/027646に定義されている。
【0135】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化20】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2017/075477に定義されている。
【0136】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化21】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2017/027645に定義されている。
【0137】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化22】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2018/100558に定義されている。
【0138】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。


【化23】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2017/175147に定義されている。
【0139】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、下式を有する化合物を含む。
【化24】
式中、各記号は、本明細書に参照によりその全内容を援用するWO2017/175156に定義されている。
【0140】
いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL606、CL611、CL602、CL655、CL604、CL609、CL614、CL656、CL647、CL626、CL629、CL603、CL632、CL633、CL659、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL606またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL611またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL602またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL655またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL604またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL609またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL614またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL656またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL647またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL626またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL629またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL603またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL632またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL633またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの態様では、本開示で有用なSTINGアゴニストは、CL659またはその薬学的に許容される塩である。
【0141】
いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、環状ジヌクレオチドSTINGアゴニスト及び/または非環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストを含む。いくつかの態様では、いくつかの環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストが、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソーム上に存在する場合、かかるSTINGアゴニストは同じであってもよく、または異なってもよい。いくつかの態様では、いくつかの非環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストが存在する場合、かかるSTINGアゴニストは同じであってもよく、または異なってもよい。いくつかの態様では、本開示のEV、例えば、エクソソーム、組成物は、EV、例えば、エクソソームの2つ以上の集団を含むことができ、EV、例えば、エクソソームの各集団は、異なるSTINGアゴニストまたはそれらの組み合わせを含む。
【0142】
STINGアゴニストはまた、細胞外小胞またはEV(例えば、内腔内に結合していない)中へアゴニストの封入を増加させるように修飾することができる。いくつかの態様において、STINGアゴニストは、足場部分、例えば、Scaffold Yに連結される。特定の態様では、修飾は、EV、例えば、エクソソームの外表面のSTINGアゴニスト(例えば、本明細書に開示される足場部分、例えばScaffold Xに連結された)のより良好な発現を可能とする。この修飾には、アゴニストを化学物質もしくは酵素で処理することによる、またはSTINGアゴニストの極性もしくは電荷を物理的もしくは化学的に変化させることによる脂質結合タグの付加が含まれ得る。STINGアゴニストは、単一の処理によって、または処理の組み合わせ、例えば、脂質結合タグのみを付加すること、または脂質結合タグを付加し、かつ極性を変化させることによって修飾することができる。上記の例は、非限定的な例示的な例として意図されている。任意の修飾の組み合わせを実施することができることが企図される。
【0143】
III.B.インターロイキン-12(IL-12)
本開示の特定の態様は、IL-12部分を含む細胞外小胞を、それを必要とする対象に投与する方法に関する。いくつかの態様では、方法は、STINGアゴニストを含むEVを投与することをさらに含む。いくつかの態様では、方法は、STINGアゴニストを含むEVを投与することを含まない。インターロイキン12(IL-12)は、樹状細胞、マクロファージ、好中球によって産生されるヘテロ二量体サイトカインである。例えば、reactome.org/content/detail/R-HSA-9020591で入手可能なInterleukin-12 Signaling,Reactome、及びUniProtKB-P29459(IL-12Aサブユニット)P29460(IL-12Bサブユニット)を参照されたい。IL-12は、それぞれ35kDaの軽鎖(p35)及び40kDaの重鎖(p40)をコードするインターロイキン-12サブユニットα(IL12A)及びインターロイキン-12サブユニットβ(IL12B)の遺伝子によってコードされている。活性なIL-12ヘテロ二量体はp70と呼ばれる場合もある。p35成分が一本鎖サイトカインと相同性を有するのに対して、p40は造血サイトカイン受容体ファミリーメンバーの細胞外ドメインと相同性を有する。したがって、IL-12ヘテロ二量体は可溶性受容体に連結されたサイトカインに似ている。IL-12は、ナイーブT細胞のTh1細胞への分化に関与しており、しばしばT細胞刺激因子としても知られている場合もある。IL-12は、ナチュラルキラー細胞及びCD8+細胞傷害性Tリンパ球の細胞傷害性活性を増加させる。IL-12はまた、インターフェロンγを介したCXCL10の産生の増加によって媒介される抗血管新生活性も有している。本開示で使用可能なIL-12部分の非限定的な例は、例えば、それぞれ本明細書に参照によりその全体を援用する米国特許第10,723,782号、国際公開第WO2019/133934A2号、及び国際出願第PCT/US2020/028778号にみることができる。
【0144】
IL-12受容体は、インターロイキン-12受容体サブユニットβ-1(IL12RB1)とインターロイキン-12受容体サブユニットβ-2(IL12RB2)とによって形成されるヘテロ二量体であり、どちらも、IL6様サイトカインスーパーファミリーのシグナル伝達受容体サブユニットであるIL6ST(gp130)と高い相同性を有している。IL-12RB2は、IL-12機能に重要な役割を果たしていると考えられているが、これは1つには、活性化T細胞でのその発現が、Th1細胞の発生を促進するサイトカインによって刺激され、Th2細胞の発生を促進するサイトカインによって阻害されるためである。さらに、IL-12の結合はIL12RB2チロシンのリン酸化を引き起こし、キナーゼである非受容体チロシンプロテインキナーゼTYK2及びチロシンプロテインキナーゼJAK2の結合部位を与える。これらは、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)ファミリー、特に骨髄性及び他の細胞型によって産生されるサイトカインであるSTAT4の転写因子タンパク質を活性化する。
【0145】
IL-12A及びBサブユニットのアミノ酸配列を表1Aに示す。
【表1】
【0146】
いくつかの態様では、IL-12部分はIL-12タンパク質を含む。いくつかの態様では、IL-12タンパク質は、完全長のヒトIL-12、例えば、IL-12ヘテロ二量体を含む。いくつかの態様では、IL-12ヘテロ二量体は、IL-12αサブユニットがIL-12βサブユニットに共有結合した融合タンパク質を含む(配列番号13;表1B)。いくつかの態様では、IL-12部分は、IL-12αサブユニットを含む。いくつかの態様では、IL-12部分はIL-12βサブユニットを含む。
【0147】
【表2】
【0148】
いくつかの態様では、IL-12ヘテロ二量体は、リンカーによってIL-12βサブユニットに共有結合されたIL-12αサブユニットを含む。いくつかの態様では、リンカーは、1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、リンカーは、本明細書に開示されるリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、Gly/Serリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、切断可能なリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、ジスルフィド結合を含む。
【0149】
いくつかの態様では、IL-12部分は、IL-12活性を有する分子を含む。いくつかの態様では、IL-12活性を有する分子は、IL-12類似体である。いくつかの態様では、IL-12活性を有する分子は、IL-12受容体を活性化する分子を含む。
【0150】
いくつかの態様では、IL-12部分は、IL-12タンパク質、例えば、IL-12αサブユニット、IL-12βサブユニット、及び/またはIL-12ヘテロ二量体をコードする核酸分子を含む。いくつかの態様では、核酸分子は、IL-12αサブユニットをコードする。いくつかの態様では、核酸分子は、IL-12βサブユニットをコードする。いくつかの態様では、核酸分子は、IL-12αサブユニット及びIL-12βサブユニットをコードする。いくつかの態様では、核酸分子は、IL-12βサブユニットに共有結合したIL-12αサブユニットをコードする。いくつかの態様では、核酸分子は、IL-12ヘテロ二量体をコードする。
【0151】
いくつかの態様では、IL-12部分は核酸分子を含み、核酸分子はベクターに組み込まれる。いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)及びヘルペスウイルスのようなDNAウイルスに基づいたベクター、ならびにレトロウイルスに基づくベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、レンチウイルスである。いくつかの態様では、ウイルスはAAVである。
【0152】
III.C.足場操作されたEV、例えば、エクソソーム
いくつかの態様では、本開示のEVは、その組成が改変された膜を含む。例えば、それらの膜組成は、膜のタンパク質、脂質、またはグリカン含量を変更することによって改変することができる。
【0153】
いくつかの態様では、表面操作されたEVは、PEG誘導融合及び/または超音波融合などの化学的及び/または物理的方法により生成される。他の態様では、表面操作されたEV、例えば、エクソソームは、遺伝子操作によって生成される。遺伝子改変されたプロデューサー細胞または遺伝子改変された細胞の子孫から生成されるEVは、改変された膜組成を含み得る。いくつかの態様では、表面操作されたEV、例えば、エクソソームは、より高いまたはより低い密度(例えば、より多い数)の足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、Scaffold X)を有するか、または足場部分の変異体またはフラグメントを含む。
【0154】
例えば、表面操作されたEV(例えば、Scaffold Xで操作された、またはScaffold Yで操作されたEV)は、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、Scaffold X及び/またはScaffold Y)をコードする外因性配列またはその変異体もしくはフラグメントで形質転換された細胞(例えば、HEK293細胞)から生成され得る。外因性配列から発現される足場部分を含むEVは、改変された膜組成を有し得る。
【0155】
足場部分のさまざまな改変またはフラグメントを、本開示の態様で使用することができる。例えば、結合剤への親和性が高められるように修飾された足場部分は、結合剤を使用して精製することができる表面操作されたEVを生成するために使用することができる。EV、例えば、エクソソーム及び/または膜により効果的に標的化するように改変された足場部分を使用することができる。EV、例えば、エクソソーム、膜への特異的かつ効果的な標的化に必要な最小限のフラグメントを含むように改変された足場部分も使用することができる。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書に開示されるSTINGアゴニストは、EV、例えば、エクソソームの表面上で、融合タンパク質、例えば、STINGアゴニストとScaffold X及び/またはScaffold Yとの融合タンパク質として発現される。例えば、融合タンパク質は、足場部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)に連結された本明細書に開示されるSTINGアゴニストを含むことができる。
III.C.1.Scaffold Xタンパク質
【0157】
特定の態様において、Scaffold Xは、PTGFRNタンパク質、BSGタンパク質、IGSF2タンパク質、IGSF3タンパク質、IGSF8タンパク質、ITGB1タンパク質、ITGA4タンパク質、SLC3A2タンパク質、ATPトランスポータータンパク質、Lamp-1タンパク質、Lamp-2タンパク質、CD13タンパク質、CD86タンパク質、フロチリンタンパク質、シンタキシン-3タンパク質、CD2タンパク質、CD36タンパク質、CD40タンパク質、CD40Lタンパク質、CD41aタンパク質、CD44タンパク質、CD45タンパク質、ICAM-1タンパク質、インテグリンα4タンパク質、L1CAMタンパク質、LFA-1タンパク質、Mac-1α及びβタンパク質、Vti-1A及びBタンパク質、CD3ε及びζタンパク質、CD9タンパク質、CD18タンパク質、CD37タンパク質、CD53タンパク質、CD63タンパク質、CD81タンパク質、CD82タンパク質、CXCR4タンパク質、FcRタンパク質、GluR2/3タンパク質、HLA-DM(MHC II)タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、MHC-IまたはMHC-II成分タンパク質、TCRβタンパク質、テトラスパニンタンパク質、またはそれらのフラグメントもしくは変異体を含む。
【0158】
いくつかの態様では、本明細書に記載の表面操作されたEV、例えば、エクソソーム(例えば、Scaffold Xで操作されたEV、例えば、エクソソーム)は、当該技術分野では周知のEV、例えば、エクソソームと比較して優れた特性を示す。例えば、表面(例えば、Scaffold X)操作されたものは、天然に存在するEV、例えば、エクソソーム、または従来のエクソソームタンパク質を使用して作製されたEV、例えば、エクソソームと比較して、その表面上により高度に濃縮された修飾タンパク質を含む。さらに、本発明の表面操作されたEV、例えば、エクソソーム(例えば、Scaffold Xで操作されたEV、例えば、エクソソーム)は、天然に存在するEV、例えば、エクソソーム、または従来のエクソソームタンパク質を使用して作製されたEV、例えば、エクソソームと比較して、より高い、より特異的な、またはより制御された生物活性を有し得る。
【0159】
他の態様では、本開示のEV、例えば、エクソソームは、STINGアゴニスト及びScaffold Xを含み、STINGアゴニストはScaffold Xに連結される。いくつかの態様では、本開示のEV、例えば、エクソソームは、STINGアゴニスト及びScaffold Xを含み、STINGアゴニストはScaffold Xに連結されていない。
【0160】
いくつかの態様では、本開示に有用なScaffold Xは、プロスタグランジンF2受容体ネガティブレギュレーター(PTGFRNポリペプチド)を含む。PTGFRNタンパク質は、CD9パートナー1(CD9P-1)、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質F(EWI-F)、プロスタグランジンF2α受容体調節タンパク質、プロスタグランジンF2α受容体関連タンパク質、またはCD315と称される場合もある。ヒトPTGFRNタンパク質(Uniprotアクセッション番号Q9P2B2)の完全長アミノ酸配列は、表2に配列番号1として示されている。PTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチド(配列番号1のアミノ酸1~25)、細胞外ドメイン(配列番号1のアミノ酸26~832)、膜貫通ドメイン(配列番号1のアミノ酸833~853)、及び細胞質ドメイン(配列番号1のアミノ酸854~879)を含む。成熟PTGFRNポリペプチドは、シグナルペプチドを含まない配列番号1(すなわち、配列番号1のアミノ酸26~879)からなる。いくつかの態様では、本開示で有用なPTGFRNポリペプチドフラグメントは、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメインを含む。他の態様では、本開示で有用なPTGFRNポリペプチドフラグメントは、PTGFRNポリペプチドの膜貫通ドメイン、及び(i)膜貫通ドメインのN末端の少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個のアミノ酸、(ii)膜貫通ドメインのC末端の少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、または少なくとも25個のアミノ酸、または(i)と(ii)の両方を含む。
【0161】
いくつかの態様では、Scaffold Xは、配列番号33と少なくとも約少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。


【表3】
【0162】
他の態様では、Scaffold Xは、配列番号2、3、4、5、6、7、または8と少なくとも約少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0163】
STINGアゴニストをEV、例えば、エクソソームの表面に連結するために使用することができる他のScaffold Xタンパク質の非限定的な例は、本明細書に参照によりその全体をそれぞれ援用する米国特許第10,195,290B1号及び同第10,561,740B2号にみることができる。
【0164】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるScaffold Xを使用して、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分をEV、例えば、エクソソームの内腔表面及び/または外表面に同時に連結することもできる。例えば、PTGFRNポリペプチドは、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分を、EV、例えば、エクソソームの表面に加えて、内腔内に連結するために使用することができる。いくつかの態様では、Scaffold Xを使用して、STINGアゴニスト及びさらなる治療剤(例えば、IL-12部分)をEV、例えば、エクソソーム(例えば、ペイロード)に連結することができる。したがって、特定の態様では、本明細書に開示されるScaffold Xは、二重の目的で使用することができる。
【0165】
いくつかの態様では、本開示のEV、例えば、エクソソームは、天然に存在するEV、例えば、エクソソームのものとは異なる内部空間(すなわち、内腔)を含む。例えば、EV、例えば、エクソソームは、EV、例えば、エクソソームの内腔側の組成が、天然に存在するEV、例えば、エクソソームのものとは異なるタンパク質、脂質、またはグリカン含量を有するように改変することができる。
【0166】
いくつかの態様では、操作されたEV、例えば、エクソソームは、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、Scaffold Y)をコードする外因性配列、またはEV、例えば、エクソソームの内腔側の組成もしくは内容を変化させる足場部分の改変もしくはフラグメントで形質転換された細胞から生成することができる。EV、例えば、エクソソームの内腔側で発現させることができるエクソソームタンパク質のさまざまな改変またはフラグメントを、本開示の態様で使用することができる。
【0167】
いくつかの態様では、本明細書で開示されるSTINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、EV、例えば、エクソソームの内腔内にある(すなわち、封入されている)。いくつかの態様では、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、EV、例えば、エクソソームの内腔表面に連結される。本明細書で使用される場合、ある分子(例えば、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分)がEV、例えば、エクソソームの「内腔内にある」ものとして記載される場合、その分子はEV、例えば、エクソソーム内に位置している(例えば、関連付けられる)が、EVの内腔表面のいずれの分子にも連結されていないことを意味する。他の態様では、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、EV、例えば、エクソソームの内腔表面に、融合分子、例えば、STINGアゴニストと足場部分(例えば、Scaffold XまたはScaffold Y)との融合分子として発現される。
【0168】
いくつかの態様では、本開示の併用療法は、内腔内にSTINGアゴニストを含む第1のEVと、PTGFRNタンパク質を介してEVの外表面上にIL-12を含む第2のEVとを投与することを含む。
【0169】
III.C.2.Scaffold Yタンパク質
いくつかの態様では、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、EV、例えば、エクソソームの内腔表面に、融合分子、例えば、STINGアゴニストとScaffold Y部分との融合分子として発現される。いくつかの態様では、操作されたEV、例えば、エクソソームは、足場部分(例えば、エクソソームタンパク質、例えば、Scaffold Y)をコードする外因性配列、またはEV、例えば、エクソソームの内腔表面の組成もしくは内容を変化させる足場部分の改変もしくはフラグメントで形質転換された細胞から生成することができる。EV、例えば、エクソソームの内腔表面上で発現させることができるエクソソームタンパク質のさまざまな改変またはフラグメントを、本開示の態様で使用することができる。
【0170】
いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームの内腔表面を変化させることができるエクソソームタンパク質としては、これらに限定されるものではないが、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)タンパク質、脳の酸可溶性タンパク質1(BASP1)タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0171】
本開示で有用なScaffold Yタンパク質の非限定的な例は、本明細書に開示されている。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質は、配列番号411、438、446、及び455~567から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質は、配列番号411、438、446、及び455~567から選択されるアミノ酸配列からなる。いくつかの態様では、Scaffold Yタンパク質は、本明細書に参照によってその全体をそれぞれ援用するところの国際公開第WO/2019/099942号または同WO2020/101740号に開示される任意のScaffold Yタンパク質を含むか、またはそれからなる。
【0172】
いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内のScaffold Xに関連付けられ、IL-12部分はScaffold X部分に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内の第1のScaffold Xに関連付けられ、IL-12部分は第2のScaffold X部分に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内のScaffold Xに関連付けられ、IL-12部分はScaffold Y部分に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内の第1のScaffold Yに関連付けられ、IL-12部分は第2のScaffold Y部分に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内の足場タンパク質に関連付けられておらず、IL-12部分はScaffold Y部分に関連付けられる。いくつかの態様では、STINGアゴニストはEV内の足場タンパク質に関連付けられておらず、IL-12部分はScaffold X部分に関連付けられる。いくつかの態様では、IL-12部分はEV内の足場タンパク質に関連付けられておらず、STINGアゴニストはScaffold Y部分に関連付けられる。いくつかの態様では、IL-12部分はEV内の足場タンパク質に関連付けられておらず、STINGアゴニストはScaffold X部分に関連付けられる。
【0173】
III.D.リンカー
本開示のEVは、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分をEVまたはEVの外表面上の足場部分、例えば、Scaffold Xに連結する1つ以上のリンカーを含むことができる。いくつかの態様では、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分は、EVに直接、またはリンカーによってEV上の足場部分に連結される。いくつかの態様では、STINGアゴニスト及び/またはIL-12は、例えば、リンカーによって、EVの脂質二重層に連結される。リンカーは、当該技術分野では周知の任意の化学部分であってよい。
【0174】
いくつかの態様では、「リンカー」なる用語は、ペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)または非ポリペプチドを指す。いくつかの態様では、2つ以上のリンカーを直列に連結することができる。一般に、リンカーは柔軟性を与えるか、または立体障害を防止/改善する。リンカーは通常は切断されないが、特定の態様では、そのような切断が望ましい場合もある。したがって、いくつかの態様では、リンカーは、リンカーの配列内に位置するかまたはリンカー配列のいずれかの末端でリンカーに隣接させることができる1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0175】
いくつかの態様において、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約55個、少なくとも約60個、少なくとも約65個、少なくとも約70個、少なくとも約75個、少なくとも約80個、少なくとも約85個、少なくとも約90個、少なくとも約95個、または少なくとも約100個のアミノ酸を含むことができる。
【0176】
いくつかの態様では、ペプチドリンカーは合成、すなわち非天然である。一態様では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直線配列を、第1の直線配列が自然には連結されていない、または遺伝子的に自然に融合されていないアミノ酸の第2の直線配列に連結または遺伝子的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(例えば、天然または非天然ペプチド)を含む。例えば、一態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変された形態(例えば、付加、置換または欠失などの変異を含む)である非天然のポリペプチドを含むことができる。
【0177】
リンカーは切断されやすい(「切断性リンカー」)ものとしてもよく、それにより、STINGアゴニストまたは他のペイロードの放出を容易にする。いくつかの態様では、リンカーは、「還元感受性リンカー」である。いくつかの態様では、還元感受性リンカーは、ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様では、リンカーは「酸不安定性リンカー」である。いくつかの態様では、酸不安定性リンカーは、ヒドラゾンを含む。適当な酸不安定性リンカーには、例えば、cis-アコニットリンカー、ヒドラジドリンカー、チオカルバモイルリンカー、またはそれらの任意の組み合わせも含まれる。いくつかの態様では、リンカーは、非切断性リンカーを含む、
【0178】
III.E.プロデューサー細胞及び改変
EV、例えば、エクソソームは、インビトロで増殖させた細胞または対象の体液から生成することができる。EV、例えば、エクソソームがインビトロの細胞培養から生成される場合、さまざまなプロデューサー細胞、例えば、HEK293細胞を使用することができる。本明細書に記載される内腔が操作されたEV、例えば、エクソソームの生成に使用できるさらなる細胞タイプとしては、限定されるものではないが、間葉系幹細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、及びがん細胞株が挙げられる。さらなる例としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、間葉系幹細胞(MSC)、BJヒト包皮由来繊維芽細胞、fHDF繊維芽細胞、AGE.HN(登録商標)神経前駆細胞、CAP(登録商標)羊膜細胞、脂肪組織由来の間葉系幹細胞、及びRPTEC/TERT1細胞が挙げられる。特定の態様では、プロデューサー細胞は、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、マスト細胞、好中球、クッパー・ブロウィッツ細胞、これらの細胞のいずれかに由来する細胞、またはそれらの任意の組み合わせではない。
【0179】
いくつかの態様はまた、小胞表面上に外因性タンパク質を発現する改変されたEVを生成するように1つ以上の外因性配列、例えば、IL-12に連結されたPTGFRNを含むようにEV、例えば、エクソソームを遺伝子改変することを含んでもよい。
【0180】
より具体的には、本EV、例えば、エクソソームは、リガンド、サイトカイン、もしくは抗体、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上の追加の外因性タンパク質をコードする配列で形質転換された細胞から生成させることができる。これらのさらなる外因性タンパク質は、STINGアゴニストと組み合わせてさらなる免疫刺激シグナルの活性化または調節を可能にすることができる。使用が企図される例示的なさらなる外因性タンパク質としては、本明細書に参照によりその全体をそれぞれ援用する米国特許出願第62/611,140号、国際公開第WO/2019/133934号、ならびに米国特許第10,195,290B1号及び同第10,561,740B2号に詳細に記載されているタンパク質、リガンド、及び他の分子が挙げられる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、CD40L、OX40L、またはCD27Lを含むリガンドでさらに改変される。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、IL-7、IL-12、またはIL-15を含むサイトカインでさらに改変される。本明細書に記載の1つ以上のエクソソームタンパク質のいずれも、プラスミド、ゲノムに挿入された外因性配列、または合成メッセンジャーRNA(mRNA)などの他の外因性核酸から発現させることができる。
【0181】
いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームをさらに改変して、EV、例えば、エクソソームの表面上にアンタゴニスト抗体もしくはアゴニスト抗体またはそのフラグメントを提示させることで、EV取り込みを誘導し、細胞経路を活性化、または遮断して、STINGアゴニストのコンビナトリアル効果を高める。いくつかの具体的な態様では、抗体またはそのフラグメントは、DEC205、CLEC9A、CLEC6、DCIR、DC-SIGN、LOX-1、またはランゲリンに対する抗体である。プロデューサー細胞は、アンタゴニスト抗体またはアゴニスト抗体をコードするさらなる外因性配列を含むように改変することができる。あるいは、アンタゴニスト抗体またはアゴニスト抗体は、当該技術分野では周知の任意の適切な連結化学によってEV、例えば、エクソソームに共有結合によって連結または結合させることもできる。適切な連結化学の非限定的な例としては、アミン反応性基、カルボキシル反応性基、スルフヒドリル反応性基、アルデヒド反応性基、光反応性基、ClickIT化学、ビオチン-ストレプトアビジンまたは他のアビジン結合、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0182】
IV.STINGアゴニストを有するEVを製造する方法
IV.A.EV中にSTINGアゴニストを封入するための方法
STINGアゴニストは、当該技術分野では周知の任意の適切な技術によってEV、例えば、エクソソーム中に封入することができる。生体分子をEV、例えば、エクソソームにロードするすべての既知の方法は、本明細書での使用に適しているとみなされると考えられる。かかる技術としては、受動拡散、エレクトロポレーション、化学的もしくはポリマートランスフェクション、ウイルス形質導入、機械的膜破壊もしくは機械的剪断、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。STINGアゴニストとEV、例えば、エクソソームとを、封入時に適切な緩衝液中でインキュベートすることができる。
【0183】
一態様では、STINGアゴニストは、受動拡散によってEV、例えば、エクソソームに封入される。STINGアゴニストとEV、例えば、エクソソームとを一緒に混合し、STINGアゴニストが小胞の脂質二重層を通して拡散するのに十分な時間インキュベートすることにより、EV、例えば、エクソソーム中に封入することができる。STINGアゴニストとEV、例えば、エクソソームとは、約1~30時間、2~24時間、4~18時間、6~16時間、8~14時間、10~12時間、6~12時間、12~20時間、14~18時間、または20~30時間、一緒にインキュベートすることができる。STINGアゴニストとEV、例えば、エクソソームとは、約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、または30時間、一緒にインキュベートすることができる。
【0184】
EV、例えば、エクソソームの溶液の緩衝条件を、STINGアゴニストの封入を最適化するために変更することもできる。一態様では、緩衝液は、スクロースを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とすることができる。PBSは当業者には周知の緩衝液である。せん断保護剤、粘度調整剤、及び/または小胞の構造特性に影響を与える溶質などのさらなる緩衝液の改変を用いることもできる。膜軟化材料及び分子密集剤などのSTINGアゴニスト封入の効率を改善するための賦形剤を添加することもできる。緩衝液の他の改変としては、特定のpH範囲及び/または塩濃度、有機溶媒、小分子、洗剤、両性イオン、アミノ酸、ポリマー、及び/または複数の濃度を含む上記の任意の組み合わせを挙げることができる。
【0185】
インキュベーション中のEV、例えば、エクソソームとSTINGアゴニストの溶液の温度を、STINGアゴニストの封入を最適化するために変更することができる。温度は室温でよい。温度は約15℃~90℃、15~30℃、30~50℃、50~90℃とすることができる。温度は約15℃、20℃、35℃、30℃、35℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、または90℃とすることができる。
【0186】
アゴニストとEV、例えば、エクソソームとのインキュベーション中のSTINGアゴニストの濃度を、STINGアゴニストの封入を最適化するために変更することもできる。アゴニストの濃度は、少なくとも0.01mM~100mMのSTINGアゴニストとすることができる。アゴニストの濃度は、少なくとも0.01~1mM、1~10mM、10~50mM、または50~100mMとすることができる。アゴニストの濃度は、少なくとも0.01mM、0.02mM、0.03mM、0.04mM、0.05mM、0.06mM、0.07mM、0.08mM、0.09mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM、0.5mM、0.6mM、0.7mM、0.8mM、0.9mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、15mM、20mM 30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、または100mMとすることができる。
【0187】
STINGアゴニストとインキュベートされる細胞外粒子の数を、STINGアゴニストの封入を最適化するために変更することもできる。精製されたEV、例えば、エクソソームの粒子の数は、少なくとも約10個~少なくとも約1020個の精製された小胞の全粒子であってよい。精製された粒子の数は、約10~1018個、1010~1016個、10~1014個、または1010~1012個の精製された小胞の全粒子であってよい。精製された粒子の数は、少なくとも約10個、10個、1010個、1012個、1014個、1016個、1018個、または1020個の精製された小胞の全粒子であってよい。
【0188】
いくつかの態様では、カチオン性脂質及びポリマーのような合成マクロ分子を使用して1つ以上の部分を適当なプロデューサー細胞に導入することができる(Papapetrou et al.,Gene Therapy 12:S118-S130(2005))。いくつかの態様では、カチオン性脂質は、電荷相互作用によって1つ以上の部分と複合体を形成する。これらの態様のいくつかでは、正に荷電した複合体は、負に荷電した細胞表面に結合し、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。いくつかの他の態様では、カチオン性ポリマーを使用してプロデューサー細胞をトランスフェクトすることができる。これらの態様のいくつかでは、カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)である。特定の態様では、リン酸カルシウム、シクロデキストリン、またはポリブレンのような化学物質を使用して1つ以上の部分をプロデューサー細胞に導入することができる。1つ以上の部分はまた、粒子介在型トランスフェクション、「遺伝子銃」、微粒子銃(biolistic)、またはパーティクルボンバードメント法などの物理的方法を使用してプロデューサー細胞中に導入することができる(Papapetrou et al.,Gene Therapy12:S118-S130(2005))。例えば、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質のようなレポーター遺伝子を使用してプロデューサー細胞のトランスフェクション効率を評価することができる。
【0189】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、ウイルス形質導入によってプロデューサー細胞に導入される。モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レンチウイルス、及びスプマウイルスをはじめとする多くのウイルスを遺伝子導入ビヒクルとして使用することができる。ウイルス媒介型の遺伝子導入ビヒクルは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びヘルペスウイルスのようなDNAウイルスに基づくベクター、ならびにレトロウイルスに基づくベクターを含む。
【0190】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、エレクトロポレーションによってプロデューサー細胞に導入される。エレクトロポレーションは、細胞膜に一時的な孔を形成し、細胞内へのさまざまな分子の導入を可能とする。いくつかの態様では、DNA及びRNA、ならびにポリペプチド及び非ポリペプチド治療薬を、エレクトロポレーションによってプロデューサー細胞に導入することができる。
【0191】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、マイクロインジェクションによってプロデューサー細胞に導入される。いくつかの態様では、ガラス製マイクロピペットを使用して、1つ以上の部分を顕微鏡レベルでプロデューサー細胞に注入することができる。
【0192】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、押し出しによってプロデューサー細胞に導入される。
【0193】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、超音波処理によってプロデューサー細胞に導入される。いくつかの態様では、プロデューサー細胞を高強度の音波に曝露して細胞膜の一時的な破壊を引き起こすことで1つ以上の部分のローディングが可能となる。
【0194】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、細胞融合によってプロデューサー細胞に導入される。いくつかの態様では、1つ以上の部分は、電気的細胞融合によって導入される。他の態様では、ポリエチレングリコール(PEG)を使用してプロデューサー細胞を融合する。さらなる態様では、センダイウイルスを使用してプロデューサー細胞を融合する。
【0195】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、低張溶解によってプロデューサー細胞に導入される。かかる態様では、プロデューサー細胞を低イオン強度緩衝液に曝露することで破裂させて1つ以上の部分のローディングを可能とする。他の態様では、低張溶液に対する制御された透析を用いてプロデューサー細胞を膨潤させ、プロデューサー細胞の膜に孔を形成することができる。その後、プロデューサー細胞を、膜の再封止を可能とする条件に曝露する。
【0196】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、洗剤処理によってプロデューサー細胞に導入される。特定の態様では、プロデューサー細胞を弱い洗剤で処理することで、1つ以上の部分のローディングを可能とする孔を形成することによってプロデューサー細胞の膜を一時的に破壊する。プロデューサー細胞がローディングされた後、洗剤を洗い流すことによって膜を再封止する。
【0197】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、受容体介在型エンドサイトーシスによってプロデューサー細胞に導入される。特定の態様では、プロデューサー細胞は、1つ以上の部分の結合時に受容体及び関連する部分の内部移行を誘導する表面受容体を有する。
【0198】
いくつかの態様では、1つ以上の部分は、濾過によってプロデューサー細胞に導入される。特定の態様では、プロデューサー細胞及び1つ以上の部分をプロデューサー細胞より小さい孔径のフィルターに強制的に通すことで、プロデューサー細胞の膜の一時的な破壊を引き起こし、1つ以上の部分をプロデューサー細胞に入れることができる。
【0199】
いくつかの態様では、プロデューサー細胞に数回の凍結融解サイクルを行うことで細胞膜の破壊を生じ、1つ以上の部分のローディングを可能とする。
【0200】
V.EVの精製
本開示で調製されたEV、例えば、エクソソームは、プロデューサー細胞から単離することができる。EV、例えば、エクソソームのすべての既知の単離の方法も、本明細書での使用に適しているとみなされると企図される。例えば、電荷(例えば、電気泳動による分離)、サイズ(例えば、濾過、分子ふるいなど)、密度(例えば、通常の遠心分離または勾配遠心分離)、スヴェドベリ定数(例えば、外力による、またはよらない沈降など)に基づく分離をはじめとするEV、例えば、エクソソームの物理的性質を利用して、培地または他のソース材料からそれらを分離することができる。上記に代えて、または上記に加えて、単離は、1つ以上の生物学的特性に基づいたものとすることができ、表面マーカーを利用できるような方法が含まれ得る(例えば、沈降では、固相への可逆的結合、FACS分離、特異的リガンド結合、非特異的リガンド結合など)。いっそうさらに企図される方法では、EV、例えば、エクソソームは、PEG誘導融合及び/または超音波融合をはじめとする化学的及び/または物理的方法を使用して融合することができる。
【0201】
EV、例えば、エクソソームは、STINGアゴニストとのインキュベーション後に精製を行って、組成物から未封入の遊離STINGアゴニストを除去することもできる。EV、例えば、エクソソームの物理的または生物学的特性に基づく分離を含む、以前に開示されているすべての方法も、本明細書での使用に適しているものとみなされる。
【0202】
単離、精製、及び濃縮は、一般的かつ非選択的な形(通常は連続遠心分離を含む)で行うことができる。あるいは、単離、精製、及び濃縮は、より特異的かつ選択的な形(例えば、プロデューサー細胞に特異的な表面マーカーを用いる)で行うこともできる。例えば、特異的表面マーカーは、免疫沈降、FACSソーティング、アフィニティ精製、及び磁気分離におけるビーズ結合リガンドなどで使用することができる。
【0203】
いくつかの態様では、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、EV、例えば、エクソソームを単離または精製することができる。サイズ排除クロマトグラフィー法は、当該技術分野では周知のものである。例示的かつ非限定的な方法を本明細書に示す。いくつかの態様では、ボイド容積画分が単離され、これは目的のEV、例えば、エクソソームを含む。いくつかの態様では、例えば、密度勾配遠心分離を利用して、EV、例えば、エクソソームをさらに単離することができる。さらにまた、いくつかの態様では、プロデューサー細胞由来のEV、例えば、エクソソームを他の由来のEVからさらに分離することが望ましい場合がある。例えば、プロデューサー細胞由来のEV、例えば、エクソソームは、プロデューサー細胞に特異的な抗原抗体を使用する免疫吸着剤捕捉により、非プロデューサー細胞由来のEV、例えば、エクソソームから分離することができる。
【0204】
いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームの単離では、サイズ排除クロマトグラフィーまたは、陰イオン交換、陽イオン交換、もしくは混合モードクロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーを行うことができる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームの単離では、脱塩、透析、接線流濾過、限外濾過、もしくは透析濾過、またはそれらの任意の組み合わせを行うことができる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームの単離において、これらに限定されるものではないが、示差遠心分離、サイズに基づく膜濾過、濃度及び/または速度ゾーン遠心分離を含む方法の組み合わせを行うことができる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームの単離において、1つ以上の遠心分離工程を行うことができる。遠心分離は、約50,000~150,000×gで行うことができる。遠心分離は、約50,000×g、75,000×g、100,000×g、125,000×g、または150,000×gで行うことができる。
【0205】
VI.治療的投与
VI.A.免疫調節及び用量
本明細書では、STINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの薬学的有効量を投与することにより、対象の免疫または炎症反応を誘導及び/または調節する方法を提供する。
【0206】
樹状細胞(DC)は、自然免疫系と獲得免疫系を結びつける造血細胞系統に由来する抗原提示細胞の集団である。DCは、単球及びマクロファージと共通の骨髄前駆細胞を共有し、一般に形質細胞様DC(pDC)と、標準型DC(cDC)としても知られる骨髄系DC(mDC)の2つの主要な群に分類される。mDCは、骨髄またはリンパ系前駆細胞からの発生とCD8α、CD4、及びC11bの発現レベルに基づいてさらに分類される。DCの3つめの集団は、pDC及びcDCのようなDC前駆細胞ではなく、単球前駆細胞から生じる単球由来DC(moDC)である。moDCは、炎症性キューを受けた後に発生する。未成熟DCは成熟前には末梢組織に存在している。パターン認識受容体(PRR)によって誘導されるシグナル伝達カスケードを含むいくつかのシグナル伝達経路が、DC成熟を引き起こす。未成熟DCの各サブセットはPRRのタンパク質発現パターンが異なり、これにより未成熟DC集団は同じPRRの活性化時に異なる応答をすることができる。これは、DCによって媒介される免疫応答の調節をもたらす。DCに存在するPRRとしては、Toll様受容体(TLR)、Cタイプレクチン受容体、レチノイン酸誘導遺伝子(RIG)-I様受容体(RLR)、NOD様受容体(NLR)、及びSTINGが挙げられる。
【0207】
STING経路は、mDC及びpDCの両方で主要なDNAセンシング経路である。DCにおけるSTING経路の活性化は、TBK1、IRF3、及びNF-κBシグナル伝達を介して、I型IFN及び炎症性サイトカインの産生をもたらす。細胞上の受容体へのIFNの結合は、IFN刺激応答要素の活性化と、免疫及び炎症反応を引き起こすIFN感受性遺伝子の転写をもたらす。IFNシグナル伝達はまた、DCをクロスプライミングして抗原持続性を促進し、MHCI提示に利用できる抗原レパートリーを変化させ、抗原のMHCI提示を強化し、MHCI、MHCII、ならびに共刺激分子CD40、CD80、及びCD86の全体的な表面発現を増加させる。これらの作用により、腫瘍特異的CD8+T細胞のプライミングが増加し、獲得免疫反応が開始される。
【0208】
いくつかの態様では、STINGアゴニストを封入する及び/または表面にSTINGアゴニストを発現するEV、例えば、エクソソームをそれを必要とする対象に投与する方法は、樹状細胞を活性化または誘導し、それにより対象の免疫または炎症反応を誘導または調節する。いくつかの態様では、活性化される樹状細胞は骨髄系樹状細胞である。いくつかの態様では、樹状細胞は、形質細胞様樹状細胞である。
【0209】
いくつかの態様では、方法は、インターフェロン(IFN)-β産生を誘導する。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、2倍~10,000倍高いIFN-β誘導をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか表面に発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、または9000~10,000倍高いIFN-β誘導をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、約2倍超、>5倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、>100倍、>200倍、>300倍、>400倍、>500倍、>600倍、>700倍、>800倍、>900倍、>1000倍、>2000倍、>3000倍、>4000倍、>5000倍、>6000倍、>7000倍、>8000倍、>9000倍、または>10,000倍のIFN-β誘導をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインIFN-β産生量と比較して、2倍~10,000倍高いIFN-β誘導をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインIFN-β産生量と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、または9000~10,000倍高いIFN-β誘導をもたらし得る。STINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインIFN-β産生量と比較して、約2倍超、>5倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、>100倍、>200倍、>300倍、>400倍、>500倍、>600倍、>700倍、>800倍、>900倍、>1000倍、>2000倍、>3000倍、>4000倍、>5000倍、>6000倍、>7000倍、>8000倍、>9000倍、または>10,000倍のIFN-β誘導をもたらし得る。
【0210】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソームを対象に投与することにより、他の免疫モジュレーター(例えば、サイトカインまたはケモカイン)のレベルを調節することもできる。特定の態様では、本明細書に開示される方法は、IFN-γ、CXCL9、及び/またはCXCL10のレベルを増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に記載されるEV、例えば、エクソソームの投与は、遊離STINGアゴニストと比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、または9000~10,000倍高いIFN-γ、CXCL9、及び/またはCXCL10の量をもたらし得る。
【0211】
いくつかの態様では、方法は、骨髄系樹状細胞(mDC)の活性化を誘導する。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、2倍~50,000倍高いmDCの活性化をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍高いmDCの活性化をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して、約2倍超、>5倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、>100倍、>200倍、>300倍、>400倍、>500倍、>600倍、>700倍、>800倍、>900倍、>1000倍、>2000倍、>3000倍、>4000倍、>5000倍、>6000倍、>7000倍、>8000倍、>9000倍、>10,000倍、>15,000倍、>20,000倍、>25,000倍、>30,000倍、>35,000倍、>40,000倍、>45,000倍、または>50,000倍のmDCの活性化をもたらし得る。
【0212】
STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインmDC活性化と比較して、2倍~10,000倍高いmDCの活性化をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインmDC活性化と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍高いmDCの活性化をもたらし得る。STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインmDC活性化と比較して、約2倍超、>5倍、>10倍、>20倍、>30倍、>40倍、>50倍、>60倍、>70倍、>80倍、>90倍、>100倍、>200倍、>300倍、>400倍、>500倍、>600倍、>700倍、>800倍、>900倍、>1000倍、>2000倍、>3000倍、>4000倍、>5000倍、>6000倍、>7000倍、>8000倍、>9000倍、>10,000倍、>15,000倍、>20,000倍、>25,000倍、>30,000倍、>35,000倍、>40,000倍、>45,000倍、または>50,000倍のmDCの活性化をもたらし得る。
【0213】
いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームを投与する方法は、対象のベースライン単球活性化と比較して単球の活性化を誘導しない。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースライン単球活性化と比較して、約2倍未満、<5倍、<10倍、<20倍、<30倍、<40倍、<50倍、<60倍、<70倍、<80倍、<90倍、<100倍、<200倍、<300倍、<400倍、<500倍、<600倍、<700倍、<800倍、<900倍、<1000倍、<2000倍、<3000倍、<4000倍、<5000倍、<6000倍、<7000倍、<8000倍、<9000倍、<10,000倍、<15,000倍、<20,000倍、<25,000倍、<30,000倍、<35,000倍、<40,000倍、<45,000倍、<50,000倍、<55,000倍、<60,000倍、<65,000倍、<70,000倍、<75,000倍、<80,000倍、<85,000倍、<90,000倍、<95,000倍、<100,000倍、<200,000倍、<300,000倍、<400,000倍、<500,000倍、<600,000倍、<700,000倍、<800,000倍、<900,000倍、または<1,000,000倍の単球活性化の誘導をもたらす。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの対象への投与は、対象のベースライン単球活性化と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、45,000~50,000倍、55,000~60,000倍、60,000~65,000倍、65,000~70,000倍、70,000~75,000倍、75,000~80,000倍、80,000~85,000倍、85,000~90,000倍、90,000~95,000倍、95,000~100,000倍、100,000~200,000倍、200,000~300,000倍、300,000~400,000倍、400,000~500,000倍、500,000~600,000倍、600,000~700,000倍、700,000~800,000倍、800,000~900,000倍、または900,000~1,000,000倍未満の単球活性化の誘導をもたらす。
【0214】
いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームを対象に投与する方法は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して単球の活性化を誘導しない。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、遊離STINGアゴニストの投与後の単球活性化の量と比較して、約2倍未満、<5倍、<10倍、<20倍、<30倍、<40倍、<50倍、<60倍、<70倍、<80倍、<90倍、<100倍、<200倍、<300倍、<400倍、<500倍、<600倍、<700倍、<800倍、<900倍、<1000倍、<2000倍、<3000倍、<4000倍、<5000倍、<6000倍、<7000倍、<8000倍、<9000倍、<10,000倍、<15,000倍、<20,000倍、<25,000倍、<30,000倍、<35,000倍、<40,000倍、<45,000倍、または<50,000倍の単球活性化の誘導をもたらす。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの対象への投与は、遊離STINGアゴニストの投与後の単球活性化の量と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍未満の単球活性化の誘導をもたらす。単球の活性化は、単球上のCD86の表面発現によって、または当該技術分野では周知の他の任意の適切な単球活性化マーカーによって測定することができる。
【0215】
本明細書に記載されるEV、例えば、エクソソームに関連する改善された治療効果のため、いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの、遊離STINGアゴニストと比較してより低い投与量を投与することができる。さらに、高用量のSTINGアゴニストの非選択的送達は、望ましい免疫刺激応答を減弱させる可能性がある。したがって、本明細書に記載されるEV、例えば、エクソソームは、より低い用量で投与することができるため、いくつかの態様では、それらより広い治療濃度域で作用し、遊離STINGアゴニストに認められる傾向(例えば、全身毒性、免疫細胞殺傷、細胞選択性の欠如)を低減することができる。
【0216】
本明細書に記載の組成物は、それを必要とする対象の疾患、障害、状態、または症状を改善するのに十分な投与量で投与することができる。いくつかの態様では、必要とする対象に投与されるSTINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの投与量は、約0.01~0.1μM、0.1~1μM、1~10μM、10~100μM、または100~1000μMである。特定の態様では、必要とする対象に投与されるSTINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの投与量は、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、40μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μM、500μM、550μM、600μM、650μM、700μM、750μM、800μM、850μM、900μM、950μM、または1000μMである。
【0217】
いくつかの態様では、必要とする対象に投与されるSTINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの量は、必要とする対象で同じ改善結果をもたらすのに必要な遊離STINGアゴニストの量と比較して、2倍未満、<5倍、<10倍、<20倍、<30倍、<40倍、<50倍、<60倍、<70倍、<80倍、<90倍、<100倍、<200倍、<300倍、<400倍、<500倍、<600倍、<700倍、<800倍、<900倍、<1000倍、<2000倍、<3000倍、<4000倍、<5000倍、<6000倍、<7000倍、<8000倍、<9000倍、<10,000倍、<15,000倍、<20,000倍、<25,000倍、<30,000倍、<35,000倍、<40,000倍、<45,000倍、または<50,000倍である。いくつかの態様では、必要とする対象に投与されるSTINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの量は、必要とする対象で同じ改善結果をもたらすのに必要な遊離STINGアゴニストの量と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍未満である。
【0218】
いくつかの態様では、STINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームを投与する方法は、対象のベースラインの全身性炎症と比較して、全身性炎症を誘導しない。いくつかの態様では、STINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインの全身性炎症と比較して、約2倍未満、<5倍、<10倍、<20倍、<30倍、<40倍、<50倍、<60倍、<70倍、<80倍、<90倍、<100倍、<200倍、<300倍、<400倍、<500倍、<600倍、<700倍、<800倍、<900倍、<1000倍、<2000倍、<3000倍、<4000倍、<5000倍、<6000倍、<7000倍、<8000倍、<9000倍、<10,000倍、<15,000倍、<20,000倍、<25,000倍、<30,000倍、<35,000倍、<40,000倍、<45,000倍、または<50,000倍の全身性炎症の誘導をもたらす。いくつかの態様では、STINGアゴニストを含むEV、例えば、エクソソームの投与は、対象のベースラインの全身性炎症と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍未満の全身性炎症の誘導をもたらす。
【0219】
いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームを対象に投与する方法は、STINGアゴニスト単独の投与と比較して全身性炎症を誘導しない。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの投与は、遊離STINGアゴニストの投与後の全身性炎症の量と比較して、約2倍未満、<5倍、<10倍、<20倍、<30倍、<40倍、<50倍、<60倍、<70倍、<80倍、<90倍、<100倍、<200倍、<300倍、<400倍、<500倍、<600倍、<700倍、<800倍、<900倍、<1000倍、<2000倍、<3000倍、<4000倍、<5000倍、<6000倍、<7000倍、<8000倍、<9000倍、<10,000倍、<15,000倍、<20,000倍、<25,000倍、<30,000倍、<35,000倍、<40,000倍、<45,000倍、または<50,000倍の全身性炎症の誘導をもたらす。いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームの対象への投与は、遊離STINGアゴニストの投与後の全身性炎症の量と比較して、約2~5倍、5~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍、100~200倍、200~300倍、300~400倍、400~500倍、500~600倍、600~700倍、700~800倍、800~900倍、900~1000倍、1000~2000倍、2000~3000倍、3000~4000倍、4000~5000倍、5000~6000倍、6000~7000倍、7000~8000倍、8000~9000倍、9000~10,000倍、10,000~15,000倍、15,000~20,000倍、20,000~25,000倍、25,000~30,000倍、30,000~35,000倍、35,000~40,000倍、40,000~45,000倍、または45,000~50,000倍未満の全身性炎症の誘導をもたらす。全身性炎症は、当該技術分野では周知の任意の適切な方法によって定量または測定することができる。
【0220】
いくつかの態様では、STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームを対象に投与する方法は、さらなる治療薬を投与することをさらに含む。いくつかの態様では、EVはさらなる治療薬をさらに含む。いくつかの態様では、さらなる治療薬は、リガンド、サイトカイン、または抗体を含む。いくつかの態様では、さらなる治療薬は、免疫調節剤である。いくつかの態様では、免疫調節成分は、ネガティブチェックポイント調節因子の阻害剤、またはネガティブチェックポイント調節因子の結合パートナーの阻害剤である。これらの態様のいくつかでは、ネガティブチェックポイント調節因子は、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンムチン含有タンパク質3(TIM-3)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、CD20、CD39、及びCD73からなる群から選択される。さまざまな態様において、さらなる治療薬は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの態様では、抗体及びその抗原結合フラグメントは、1つ以上の全抗体、ポリクローナル、モノクローナル及び組換え抗体、それらのフラグメントであり、一本鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、例えば、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、F(ab1)2、Fv、dAb、及びFdフラグメントのような抗体フラグメント、ダイアボディ、ならびに抗体関連ポリペプチドをさらに含む。抗体なる用語は、所望の生物学的活性または機能を呈する限り、二重特異性抗体及び多重特異性抗体を含む。いくつかの態様では、さらなる治療剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3、またはLAG3の阻害剤である治療用抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0221】
いくつかの態様では、さらなる治療剤は、T細胞の疲弊を防止または治療する薬剤である。このような薬剤は、Prdm1、Bhlhe40、Irf4、Ikzf2、Zeb2、Lass6、Egr2、Tox、Eomes、Nfatc1、Nfatc2、Zbtb32、Rbpj、Hif1a、Lag3、Tnfrsf9、Ptger2、Havcr2、Alcam、Tigit、Ctla4、Ptger4、Tnfrsf1b、Ccl4、CD109、CD200、Tnfsf9、Nrp1、Sema4c、Ptprj、Il21、Tspan2、Rgs16、Sh2d2a、Nucb1、Plscr1、Ptpn11、Prkca、Plscr4、Casp3、Gpd2、Gas2、Sh3rf1、Nhedc2、Plek、Tnfaip2、及びCtsb、またはそれらの任意の組み合わせを含む、T細胞の疲弊に関連する遺伝子の発現を増加、減少、または調節することができる。治療剤は、NFAT-1またはNFAT-2を含むT細胞の疲弊に関連するタンパク質を増加、減少、または調節する場合もある。
【0222】
VI.B.がんを治療する方法
本明細書では、対象のがんを治療する方法を提供する。この方法は、対象に治療有効量の本明細書に開示される組成物を投与することを含み、組成物は対象におけるSTING介在型免疫応答を増加させ、それにより対象の免疫系の腫瘍標的化を高めることができる。いくつかの態様では、組成物は、対象に腫瘍内投与される。いくつかの態様では、組成物は、非経口的、経口的、静脈内、筋肉内、腹腔内、または他の任意の適切な投与経路を介して投与される。
【0223】
本明細書では、対象のがんの転移を防止する方法が提供される。方法は、対象に治療有効量の本明細書に開示される組成物を投与することを含み、組成物は、対象のある位置の1つ以上の腫瘍が対象の別の位置の1つ以上の腫瘍の成長を促進することを防止することができる。いくつかの態様では、組成物は、ある位置の第1の腫瘍に腫瘍内投与され、第1の腫瘍に投与された組成物は、第2の位置の1つ以上の腫瘍の転移を防止する。
【0224】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソームを投与することは、対象の腫瘍の増殖を阻害及び/または減少させる。いくつかの態様では、腫瘍増殖(例えば、腫瘍の体積または重量)は、基準(例えば、遊離STINGアゴニストまたはSTINGアゴニストを含まないEV、例えば、エクソソームの投与後の対応する対象における腫瘍体積)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%減少する。
【0225】
いくつかの態様では、治療されるがんは、白血球(T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球)の腫瘍微小環境への浸潤、またはいわゆる「熱い腫瘍(hot tumor)」もしくは「炎症性腫瘍」により特徴付けられる。いくつかの態様では、治療されるがんは、腫瘍微小環境への低レベルもしくは検出不可能なレベルの白血球浸潤、またはいわゆる「冷たい腫瘍(cold tumor)」もしくは「非炎症性腫瘍」により特徴付けられる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、「冷たい腫瘍」を「熱い腫瘍」に変換するのに十分な量及び時間で投与され、すなわち、前記投与することは、白血球(T細胞のような)の腫瘍微小環境への浸潤を引き起こす。特定の態様では、がんは、膀胱癌、子宮頸癌、腎細胞癌、精巣癌、結腸直腸癌、肺癌、頭頸部癌、及び卵巣癌、リンパ腫、肝臓癌、神経膠芽腫、黒色腫、骨髄腫、白血病、膵臓癌、またはそれらの組み合わせを含む。本明細書で使用するところの「遠位腫瘍」、「遠隔腫瘍」、または「二次腫瘍」なる用語は、元の(または原発性)腫瘍から遠隔臓器または遠隔組織、例えばリンパ節に拡散した腫瘍を指す。いくつかの態様では、本開示のEV、例えば、エクソソームは、転移性拡散後の腫瘍を治療する。
【0226】
本明細書に開示される方法によって治療することが可能ながん(または腫瘍)の非限定的な例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、消化器癌、腎癌(例えば、腎淡明細胞癌)、卵巣癌、肝癌(例えば、肝細胞癌)、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎癌(例えば、腎細胞癌(RCC))、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌)、甲状腺癌、膵癌、子宮頸癌、胃癌(stomach cancer)、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、及び頭頸部癌(または癌腫)、胃癌(gastric carcinoma)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば、皮膚または眼内悪性黒色腫のような転移性悪性黒色腫)、骨癌、皮膚癌、子宮癌、肛門部癌、精巣癌(例えば、絨毛癌及び非セミノーマ)、卵管癌、子宮内膜癌、頸癌、膣癌、外陰癌、食道癌(例えば、食道胃接合部癌)、小腸癌、内分泌系癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児の固形腫瘍、尿管癌、腎盂癌腫、腫瘍血管新生、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発癌、ウイルス関連癌またはウイルス起源癌(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV関連または起源腫瘍))、及び2つの主要血球系統、すなわち骨髄細胞系(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及びマスト細胞を生成する)またはリンパ細胞系(B、T、NK及び形質細胞を生成する)のいずれかに由来する血液学的悪性腫瘍、例えばすべての種類の白血病、リンパ腫、及び骨髄種、例えば急性、慢性、リンパ球性及び/または骨髄性白血病、例えば急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(MO)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3変異型[M3V])、骨髄単球性白血病(M4または好酸球増加症を伴うM4変異型[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、単離顆粒球性肉腫、及び緑色腫;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞血液学的悪性腫瘍、例えばB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組職(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki1)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸T細胞リンパ腫、縦隔原発細胞型B細胞リンパ腫、前駆体Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性;及びリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、組織球性リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、B細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系の造血性腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽細胞性リンパ腫、前駆体Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫(CTLC)(菌状息肉腫またはセザリー症候群とも呼ばれる)、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL);骨髄腫、例えばIgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無痛性骨髄種とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、及び多発性骨髄種、慢性リンパ球性白血病(CLL)、毛状細胞リンパ腫;骨髄細胞系の造血性腫瘍、線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉由来の腫瘍;セミノーマ、奇形癌腫;線維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、セミノーマ、甲状腺濾胞性癌及び奇形癌腫を含むその他の腫瘍、リンパ系の造血性腫瘍、例えば、これらに限定されるものではないが、小細胞及び脳回状細胞タイプを含む、T前リンパ球性白血病(T-PLL)のようなT細胞疾患を含むT細胞及びB細胞腫瘍;T細胞タイプの大型顆粒リンパ球白血病(LGL);a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形成及び免疫芽球性サブタイブ);血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;頭頸部癌、腎癌、直腸癌、甲状腺癌;急性骨髄性リンパ腫、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0227】
いくつかの態様では、治療することができるがん(または腫瘍)は、乳癌、頭頸部癌、子宮癌、脳腫瘍、皮膚癌、腎癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、腹膜癌、膵臓癌、甲状腺癌、食道癌、眼癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、消化管癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、本開示で治療することが可能ながんは、膵臓癌及び/または腹膜癌である。
【0228】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、転移性癌、切除不能な難治性癌(例えば、以前の癌治療に不応性の癌)、及び/または再発癌の治療に使用することもできる。
【0229】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソームは、1つ以上のさらなる抗癌剤及び/または免疫調節剤と併用することができる。かかる薬剤としては、例えば、化学療法薬、小分子薬、または所定のがんに対する免疫応答を刺激する抗体が挙げられ得る。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、標準治療(例えば、外科手術、放射線、及び化学療法)と併用される。
【0230】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームを、(ii)IL-12部分と併用して、抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤とともに投与することを含むことができ、それにより、免疫経路の複数の要素を標的化することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第1のEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第2のEV、例えば、エクソソームと、(iii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤と、を投与することを含み、それにより、免疫経路の複数の要素を標的化することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第1のEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分と、(iii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤を含む第2のEV、例えば、エクソソームと、を投与することを含み、抗がん剤は、封入されるか、第2のEV、例えば、エクソソームの内腔表面または外表面に発現される。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニストと、(ii)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第1のEV、例えば、エクソソームと、(iii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤を含む第2のEV、例えば、エクソソームと、を投与することを含み、抗がん剤は、封入されるか、第2のEV、例えば、エクソソームの内腔表面または外表面に発現される。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第1のEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む第2のEV、例えば、エクソソームと、(iii)抗がん剤(例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤)を含む第3のEV、例えば、エクソソームと、を投与することを含み、抗がん剤は、封入されるか、第3のEV、例えば、エクソソームの内腔表面または外表面に発現される。
【0231】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)(a)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)及び(b)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤と、を投与することを含み、それにより、免疫経路の複数の要素を標的化することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)(a)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)及び(b)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分と、を投与することを含む。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)(a)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)及び(b)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)STINGアゴニストと、を投与することを含む。
【0232】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分と、(iii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤と、を投与することを含み、それにより、免疫経路の複数の要素を標的化することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)STINGアゴニストと、(iii)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤と、を投与することを含む。いくつかの態様では、本明細書に開示されるがんを治療するための方法は、(i)抗がん剤、例えば、1つ以上のがん免疫療法剤、例えば、チェックポイント阻害剤(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含むEV、例えば、エクソソームと、(ii)STINGアゴニストと、(iii)IL-12部分と、を投与することを含む。
【0233】
いくつかの態様では、方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離STINGアゴニスト)を、(ii)IL-12部分(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離IL-12部分)を投与するよりも前に投与することを含む。いくつかの態様では、方法は、(i)IL-12部分(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離IL-12部分)を、(ii)STINGアゴニスト(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離STINGアゴニスト)を投与するよりも前に投与することを含む。いくつかの態様では、(i)は、(ii)の少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約72時間、または少なくとも約96時間前に投与される。いくつかの態様では、(i)は(ii)の少なくとも約24時間前に投与される。いくつかの態様では、(i)は(ii)の少なくとも約48時間前に投与される。
【0234】
いくつかの態様では、方法は、(i)STINGアゴニスト(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離STINGアゴニスト)と、(ii)IL-12部分(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、または遊離IL-12部分)と、(iii)さらなる抗がん剤(例えば、EV(例えば、エクソソーム)に関連付けられたものか、またはEV(例えば、エクソソーム)に関連付けられていないもの)と、を投与することを含み、(a)(i)が(ii)よりも前に投与され、かつ(ii)が(iii)よりも前に投与されるか、(b)(ii)が(i)よりも前に投与され、かつ(i)が(iii)よりも前に投与されるか、(c)(iii)が(i)よりも前に投与され、かつ(i)が(ii)よりも前に投与されるか、(d)(iii)が(ii)よりも前に投与され、かつ(ii)が(ii)よりも前に投与されるか、(e)(i)と(ii)が同時に、かつ(iii)よりも前に投与されるか、(f)(i)と(ii)が同時に、かつ(iii)よりも後に投与されるか、(g)(i)と(iii)が同時に、かつ(ii)よりも前に投与されるか、(h)(i)と(iii)が同時に、かつ(ii)よりも後に投与されるか、(j)(ii)と(iii)が同時に、かつ(i)よりも前に投与されるか、(k)(ii)と(iii)が同時に、かつ(i)よりも後に投与されるか、または(l)(i)、(ii)及び(iii)が同時に投与される。いくつかの態様では、投与は、(ii)の前に少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約72時間、または少なくとも約96時間の間隔を置く。
【0235】
かかる併用の非限定的な例としては、腫瘍抗原提示を促進する療法(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、及びイミキモドなど);例えば、CTLA-4及び/またはPD1/PD-L1/PD-L2経路を阻害することにより、及び/またはTregもしくは他の免疫抑制細胞(例えば、骨髄由来抑制細胞)を枯渇もしくはブロックすることにより負の免疫制御を阻害する療法;例えば、CD-137、OX-40、及び/またはCD40またはGITR経路を刺激するか及び/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストを用いて、正の免疫制御を刺激する療法;抗腫瘍T細胞の頻度を全身的に増大させる療法;例えば、CD25のアンタゴニスト(例えばガクリズマブ)を用いるかまたはエクスビボの抗CD25ビーズ枯渇により、腫瘍内のTregなどのTregを枯渇または阻害する療法;腫瘍内の抑制性骨髄細胞の機能に影響を与える療法;腫瘍細胞の免疫原性を高める療法(例えば、アントラサイクリン);例えばキメラ抗原受容体により改変された細胞などの遺伝子改変細胞を含む、養子T細胞またはNK細胞移植(CAR-T療法);インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素合成酵素などの代謝酵素を阻害する療法;T細胞のアナジーまたは疲弊を逆転/防止する療法;腫瘍部位における自然免疫活性化及び/または炎症を誘発する療法;免疫刺激性サイトカインの投与;または免疫抑制性サイトカインのブロッキングが挙げられる。
【0236】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソーム及びIL-12部分と併用することができるがん免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を介したシグナル伝達を遮断する)をさらに含む。本方法で使用できる免疫チェックポイント阻害剤の非限定的な例は、CTLA-4アンタゴニスト(例えば、抗CTLA-4抗体)、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体)、TIM-3アンタゴニスト(例えば、抗TIM-3抗体)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0237】
いくつかの態様では、がん免疫療法剤は免疫チェックポイント活性化剤(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を介したシグナル伝達を促進する)を含む。特定の態様では、免疫チェックポイント活性化剤は、OX40アゴニスト(例えば、抗OX40抗体)、LAG-3アゴニスト(例えば、抗LAG-3抗体)、4-1BB(CD137)アゴニスト(例えば、抗CD137抗体)、GITRアゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0238】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるEV、例えば、エクソソームと本明細書に記載される第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)との組み合わせは、薬学的に許容される担体中の単一組成物として同時に投与することができる。他の態様では、EV、例えば、エクソソームと本明細書に記載される第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)との組み合わせは、別々の組成物として同時に投与することができる。さらなる態様では、EV、例えば、エクソソームと本明細書に記載される第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)との組み合わせは、順次投与することができる。いくつかの態様では、EV、例えば、エクソソームは、第2の薬剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の投与前に投与される。
【0239】
VI.C.医薬組成物
本明細書では、対象への投与に適したEV、例えば、エクソソームを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、一般に、STINGアゴニスト及び/またはIL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、対象への投与に適した形態の薬学的に許容される賦形剤または担体と、を含む。いくつかの態様では、医薬組成物は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分と、(iii)対象への投与に適した形態の薬学的に許容される賦形剤または担体と、を含む。いくつかの態様では、医薬組成物は、(i)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、(ii)STINGアゴニストと、(iii)対象への投与に適した形態の薬学的に許容される賦形剤または担体と、を含む。いくつかの態様では、医薬組成物は、(i)STINGアゴニスト(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面に発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、(ii)IL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、(iii)対象への投与に適した形態の薬学的に許容される賦形剤または担体と、を含む。いくつかの態様では、医薬組成物は、(i)STINGアゴニスト及びIL-12部分(例えば、封入されるか、内腔表面または外表面上で発現される)を含む複数のEV、例えば、エクソソームと、(ii)対象への投与に適した形態の薬学的に許容される賦形剤または担体と、を含む。
【0240】
薬学的に許容される賦形剤または担体は、一部には、投与される特定の組成物によって、また、組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、複数のEV、例えば、エクソソームを含む医薬組成物の多種多様な適当な製剤がある(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18th ed.(1990)を参照)。医薬組成物は一般に、無菌状態で、米国食品医薬品局の適正製造基準(GMP)規制のすべてに完全に準拠したものとして製剤化される。
【0241】
いくつかの態様では、医薬組成物は、本明細書に記載される1つ以上のSTINGアゴニストと、EV、例えば、エクソソームとを含む。本開示のEV、例えば、STINGアゴニストを含むEV及びIL-12部分を含む第2のEVは、一緒にまたは別々に配合することができる。
【0242】
薬学的に許容される賦形剤は、一般に安全と認められ(GRAS)、非毒性で、望ましい賦形剤を含み、ヒトの医薬としての使用だけでなく、獣医学的使用においても許容される賦形剤が含まれる。
【0243】
担体または希釈剤の例としては、これらに限定されるものではないが、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。薬学的活性物質のためのかかる媒体及び化合物の使用は当該技術分野では周知のものである。任意の従来の培地または化合物が本明細書に記載されるEV、例えば、エクソソームと不適合でない限り、組成物におけるそれらの使用が企図される。補助治療剤を組成物に添加することもできる。一般的に、医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように配合される。EV、例えば、エクソソームは、腫瘍内、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、皮内、経皮、直腸内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内経路または吸入剤によって投与することができる。一態様では、EV、例えば、エクソソームを含む医薬組成物は、例えば、注射によって静脈内投与される。EV、例えば、エクソソームは、場合により、EV、例えば、エクソソームが意図される疾患、障害または状態の治療に少なくとも部分的に有効である他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0244】
溶液または懸濁液は、以下の成分、すなわち、水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗微生物化合物、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート化合物、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のような緩衝液、及び塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧を調節するための化合物を含むことができる。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整することができる。製剤は、ガラスもしくはプラスチックで形成されたアンプル、使い捨て注射器、または複数用量バイアルに封入することができる。
【0245】
注射可能な使用に適した医薬組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液及び滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、適当な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。組成物は一般的に無菌であり、容易に注射器で使用できる程度の流動性を有する。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動の防止は、さまざまな抗菌化合物及び抗真菌化合物、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。必要に応じて、等張化合物、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを、組成物に添加することができる。例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅延させる化合物を組成物に含めることによって注射用組成物の長期的吸収をもたらすことができる。
【0246】
EV、例えば、エクソソームを、有効量で、適切な溶媒中に、必要に応じて本明細書に列挙した成分のうちの1つまたは組み合わせとともに加えることによって滅菌注射液を調製することができる。一般的に、分散液は、EV、例えば、エクソソームを、塩基性分散媒及び任意の所望の他の成分を含む無菌溶媒に添加することによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライであり、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加的な所望の成分の粉末が得られる。EV、例えば、エクソソームは、EV、例えば、エクソソームの持続的またはパルス放出を可能とする形で製剤化することができるデポー注射またはインプラント製剤の形態で投与することができる。
【0247】
EV、例えば、エクソソームを含む組成物の全身投与は、経粘膜的または経皮的な手段によって行うこともできる。経粘膜または経皮投与を行うには、浸透させるバリアに対して適当な浸透剤が製剤中に用いられる。かかる浸透剤は一般に、当該技術分野では周知のものであり、例えば、経粘膜投与の場合では、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤を使用して行うことができる。経皮投与の場合、改変されたEV、例えば、エクソソームを、当該技術分野では周知のように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリーム中に配合する。
【実施例
【0248】
実施例
以下の実施例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本発明の範囲または内容をいかなる意味においても限定するものとして解釈されてはならない。本発明の実施では、特に示されない限り、当該技術分野の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いている。かかる技術は文献内で十分に説明されている。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993)、Green & Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012)、Colowick & Kaplan,Methods In Enzymology(Academic Press)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition(Pharmaceutical Press,2012)、Sundberg & Carey,Advanced Organic Chemistry:Parts A and B,5th Edition(Springer,2007)を参照されたい。
【0249】
方法
エクソソーム精製:
HEK293SF細胞を合成培地中で7日間、高密度に増殖させた。馴化した細胞培地を回収し、300~800×gで5分間、室温で遠心分離して、細胞と大きな破片を除去した。次に、培地上清に1000U/LのBENZONASE(登録商標)を添加し、37℃の水浴中で1時間インキュベートした。上清を回収し、16,000×gで30分間、4℃で遠心分離して残留する細胞片及びその他の大きな夾雑物を除去した。次に、上清を133,900×gで3時間、4℃で超遠心分離して、エクソソームをペレット化した。上清を廃棄し、任意の残留培地をチューブの底から吸引した。ペレットを200~1000μLのPBS(-Ca-Mg)中に再懸濁した。
【0250】
エクソソーム集団をさらに濃縮するため、ペレットを密度勾配精製(スクロースまたはOPTIPREP(商標))により処理した。スクロース勾配精製を行うため、エクソソームペレットを、下記表5に定義されるようなスクロース勾配の上に層状に重ねた。


【表4】
【0251】
この勾配を、SW41 Tiローターに入れた12mLのUltra-Clear(344059)チューブ中、200,000×gで16時間、4℃でスピンしてエクソソーム画分を分離した。
【0252】
このエクソソーム層を上層から静かに取り除き、38.5mLのUltra-Clear(344058)チューブ中、約32.5mLのPBSに希釈し、133,900×gで3時間、4℃で超遠心分離を行って、精製されたエクソソームをペレット化した。次に、得られたペレットを最小量のPBS(約200μL)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0253】
OPTIPREP(商標)勾配では、SW41 Tiローター用の12mLのUltra-Clear(344059)チューブ中、等量の10%、30%、及び45%OPTIPREP(商標)を用いて3段階の無菌勾配を調製した。ペレットをOPTIPREP(商標)勾配に加え、200,000×gで16時間、4℃で超遠心分離を行ってエクソソーム画分を分離した。次に、エクソソーム層を、チューブの約3mLの上部から静かに回収した。
【0254】
このエクソソーム画分を、38.5mLのUltra-Clear(344058)チューブ中、約32mLのPBSに希釈し、133,900×gで3時間、4℃で超遠心分離を行って精製されたエクソソームをペレット化した。次に、ペレット化したエクソソームを、最小量のPBS(約200μL)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0255】
CIVO(登録商標)を用いたインビボ腫瘍内マイクロインジェクション試験
腫瘍細胞培養
A20細胞(ATCCロット番号70006082)を、L-グルタミン(ThermoFisher)、10%ウシ胎児血清(Thermofisher)及び50ナノモルのBMEを含むRPMI1640中、37℃、5%CO下で培養した。IMPACT III試験(IDEXX Bioresearch)を行ってマイコプラズマ及び病原菌を含まない状態であることを確認した。細胞を販売元から入手した後、2~3代継代した後に拡大及び凍結保存した。解凍後、細胞を週に3回継代培養し、その後、新鮮な凍結ストックから補充することで最大8週間にわたって維持した。
【0256】
インビボ腫瘍研究
マウス実験はすべて、IACUC Board of Presage Biosciences,Seattle,WA(プロトコル番号PR-001)によって承認され、関連するガイドラインと規制に従ってPresageで実施した。関連するすべての手順は麻酔下で行い、痛み及び苦痛を最小限に抑えるようできる限りの努力を払った。平均体重18gmの雌BALB/cAnNHsd系マウス(Envigo)を5~7週齢で実験に使用した。A20同種移植片を作製するために、100万個のA20細胞を100μlの接種量でマウスに接種した。
【0257】
CIVO(登録商標)腫瘍内マイクロインジェクション
CIVO腫瘍内マイクロインジェクションを、Klinghoffer et al.(2016)Science Translational Medicineに記載されるとおりに実施した。簡単に述べると、マウス(各時点につきn=6、4及び24時間)を、移植された腫瘍が以下のおよその寸法、すなわち、14mm(長さ)、10mm(幅)及び7mm(深さ)に達した時点でマイクロインジェクション試験に登録した。CIVOデバイスは、6本の30ゲージの注射針で構成されており、総送達量は2.0μlである。空間的定位を行うため、Presageの蛍光追跡マーカー(FTM、5体積%)を注射内容物に加えた。マイクロインジェクションした物質は次のとおりである。すなわち、コントロールPTGFRN++GFPエクソソーム、ML RR-S2 CDAをロードしたPTGFRN++GFPエクソソーム、ML RR-S2 CDAをロードしたPTGFRN++GFP脱シアリル化エクソソーム、ML RR-S2 CDAをロードした天然エクソソームを、送達される総量が20ngとなるようにいずれも10ng/μlのML RR-S2 CDAとした。遊離ML RR-S2 CDAを、20ngと2μgの両方でマイクロインジェクションした。CIVOマイクロインジェクションの4時間後及び24時間後に、バイオマーカー分析のためにCO吸入によりマウスを安楽死させた。
【0258】
組織学、免疫組織化学、インサイチューハイブリダイゼーション
切除した腫瘍を注入カラムに垂直に厚さ2mmの切片に切断し、10%緩衝ホルマリン中で48時間固定した。UVイメージングを用いて各CIVO部位に注入されたFTMからのシグナルに基づいてCIVOマイクロインジェクションを確認した。次に、厚さ2mmの組織切片を標準パラフィン包埋用に処理した。下記に述べるように、すべての組織学的アッセイで厚さ4μmの切片を使用した。ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色を標準的な方法を用いて行った。
【0259】
免疫組織化学
ホルマリン固定し、パラフィンに包埋した腫瘍を厚さ4μmでスライド上に切り落とした。スライドを60℃で1時間ベイクし、キシレンで脱パラフィンし、段階的にアルコールで再水和した。
【0260】
スライドを100℃の標的回収溶液中で20分間インキュベーションした後、20分間で室温にまで冷却した。血清ブロック(TBST中、5%正常ヤギ血清)を室温で1時間行った。5%NGS TBS希釈液中、適切な一次抗体を用いて室温で一晩、一次抗体染色を行った。対応するアイソタイプコントロールを各バッチに含めた。5%NGS TBS希釈液中、適切な二次抗体を用いて室温で一晩、二次抗体染色を行った。各スライドをDAPIで10分間対比染色し、Prolong Goldマウンティング培地(Invitrogen)とともにカバースリップをかけた。染色したスライドを、デジタル自動化高解像度スキャナーを使用して画像化した。
【0261】
RNAscopeマルチプレックス蛍光試薬キットv2(Advanced Cell Diagnostics)を使用して、インサイチューハイブリダイゼーションを完了した。ホルマリン固定し、パラフィンに包埋した腫瘍を厚さ4μmでスライド上に切り落とした。スライドを60℃で1時間ベイクし、キシレンで脱パラフィンし、段階的にアルコールで再水和した。過酸化水素を10分間加えて、内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチした。スライドを100℃の標的回収溶液中で15分間インキュベーションした後、40℃で15分間、プロテアーゼ消化した。マウスIfnb1プローブ(Advanced Cell Diagnostics)及びTSA Plus Cyanine5検出(Perkin Elmer)を用いてRNAscope ISHアッセイを完了した。各スライドをDAPIで10分間対比染色し、Prolong Goldマウンティング培地(Invitrogen)とともにカバースリップをかけた。染色したスライドを、デジタル自動化高解像度スキャナーを使用して画像化した。
【0262】
全スライドスキャニングと画像分析
染色した各組織切片からのすべての細胞の画像を、デジタル化自動化高解像度全組織スキャニング(3D Histech Panoramic 250 Flash)によってキャプチャーした。PresageのカスタムCIVO Analyzer画像分析プラットフォームを使用して、各組織切片の画像ファイルからの腫瘍反応を定量化した。スライドスキャナーによってキャプチャーされた組織全体の断面画像を、CIVO Analyzerによって自動処理した。各組織切片からの各細胞を、核(DAPI)シグナルに基づいてセグメント化し、Cell Profiler(Broad Institute)を使用してバイオマーカー陰性または陽性として分類した。細胞のセグメント化及び分類に続いて、円形の関心領域(ROI)を、各画像内の各マイクロインジェクション部位の周囲で、各位置のFTMの周囲にローカライズして、最大ROIを半径2000μm以下とした。バイオマーカー測定値に対する既存の壊死の影響を軽減するため、定量分析に先立って、大部分が無細胞腫瘍領域内にある注射部位は除外する。
【0263】
実施例1:エクソソームに封入されたSTINGアゴニスト
STINGアゴニストの封入
ML RR-S2 CDAアンモニウム塩(MedChem Express、カタログ番号HY-12885B)及び(3-3 cAIMPdFSH;InvivoGen、カタログ番号tlrl-nacairs)を含む1mMのSTINGアゴニストを、精製したエクソソーム(総粒子数1E12個)と300ulのPBS中、37℃で一晩インキュベートした。次に、混合物をPBSで2回洗浄し、100,000×gの超遠心分離により精製した(図1)。
【0264】
環状ジヌクレオチドSTINGアゴニストの定量化
LC-MS分析用の試料調製
すべての試料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)バッファーまたはPBS及び5%スクロースのいずれかに加えた。分析に先立ち、粒子濃度(P/mL)をNanoSight NS300でNanoparticle Tracking Analysis(NTA)により測定した。すべての標準及び試料は、各注入液にほぼ同数の粒子が含まれるように調製した。これは、各試料の初期粒子濃度に応じて、最終濃度が1.0~4.0E+11P/mLに達するように試料を希釈することと、エクソソームを標準にスパイクすることとを組み合わせることで行った。
【0265】
標準曲線は、既知の濃度のSTINGアゴニストをPBSバッファーにスパイクし、その後、段階希釈により追加の標準を調製することで調製した。一般的に、最終濃度(すべての試料調製工程後)が25、50、250、500、1250、2500、及び5000nMのSTINGアゴニストとなるように、個別の標準液を調製した。最初に、75.0μLの適切に希釈された各試料と各マトリックス一致標準液を、別々の1.5mLマイクロ遠心チューブ中で調製した。次に、25.0μLのエクソソーム溶解バッファー(60mM Tris、400mM GdmCl、100mM EDTA、20mM TCEP、1.0%TritonX-100)を各チューブに加えてから、すべてのチューブをボルテックスして混合し、短時間遠心分離して沈殿させた。最後に、1.0μLの濃縮Proteinase K酵素溶液(Dako、参照番号S3004)を各チューブに加え、再びすべてのチューブをボルテックスしてから短時間遠心分離した後、55℃で60分間インキュベートした。LC-MSに注入する前に、各試料を室温まで冷却してからHPLCバイアルに移した。
【0266】
LC-MS分析
20.0μLの標準液と試料を、クリーンアップなしでUltiMate3000 RSCLnano(Thermo Fisher Scientific)低流量クロマトグラフィーシステムに未希釈で注入した。分析物の分離は、Phenomenex Kinetex EVO C18コアシェル分析カラム(50×2.1mm、粒径2.6μm、孔径100Å)と、移動相A(MPA:水、0.1%ギ酸)及び移動相B(MPB:アセトニトリル、0.1%ギ酸)の勾配を流量500μL/分で供給するローディングポンプを使用して行った。勾配は2%MPBで開始し、これを2分間維持してSTINGアゴニスト分析物をロードして脱塩した。次いで、MPBの割合を3分間かけて2~30%まで増加させてSTINGアゴニスト分析物を溶出させた。次いで、MPBの割合を1分間かけて30~95%まで増加させ、3分間95%に保持し、1分間かけて95~2%まで減少させ、その後、さらに3分間2%に保持してカラムを再平衡化させた。本方法の合計実行時間は13分であり、LCのフローは2.5~4.5分の間にのみMSに直接送られた。通常のキャリーオーバーは、前の注入のピーク面積の0.05%未満であったため、各分析注入間でブランク注入は行わなかった。
【0267】
質量分析は、Ion Maxソース及び陰イオンモードで動作するHESI-IIプローブを備えたQ Exactive Basic(Thermo Fisher Scientific)質量分析計を使用して行い、500~800DaをスキャンするフルMS-SIMモードを、AGCターゲット1E+6イオン、最大注入時間200ミリ秒、及び分解能35,000で使用して質量スペクトルを収集した。STINGアゴニストの定量は、モノアイソトピック-1のSTINGアゴニストのピークを用い、m/zが688.97~689.13Daの範囲内のすべてのイオンを選択的に抽出した後、3.80~3.90分の保持時間で得られたピークを積分することによって行った。特定の試料中のSTINGアゴニストの濃度は、相対定量化では一般的である、その試料中のSTINGアゴニストのピーク面積と、標準液によって生成されたSTINGアゴニストのピーク面積との比較によって求めた。
【0268】
実施例2:エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと併用した、表面に提示されたIL-12を有するエクソソームのインビボ投与
表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの相乗効果があるかどうかを判定するために、B16F10マウスの2つの異なる部位(「原発」及び「二次」)に腫瘍細胞を皮下接種した。マウスが約50mmの原発腫瘍及び二次腫瘍を発症した接種後4日目に、マウスを7つの処置群に分けた(表6)。群1のマウスには、接種後4、6、7、8、及び10日目に(原発腫瘍の)腫瘍内(IT)注射によりPBSを投与し、接種後4、7、11、及び14日目に腹腔内(IP)注射により10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群2のマウスには、接種後4、7、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした10ngのエクソソームを投与し、接種後4、7、11、及び14日目に腹腔内(IP)注射により10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群3のマウスには、接種後4、7、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした10ngのエクソソームを投与し、接種後4、7、11、及び14日目にIP注射により10mg/kgの抗PD-1抗体(aPD-1)を投与した。群4のマウスには、接種後4、6、及び8日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後4、7、11、及び14日目にIP注射により10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群5のマウスには、接種後4、6、及び8日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後4、7、11、及び14日目にIP注射により10mg/kgの抗PD-1抗体(aPD-1)を投与した。群6のマウスには、接種後4、7、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした10ngのエクソソームを、接種後6、8、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした100ngのエクソソームを、接種後4、7、11、及び14日目にIP注射により、10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群7のマウスには、接種後4、7、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした10ngのエクソソームを、接種後6、8、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした100ngのエクソソームを、接種後4、7、11、及び14日目にIP注射により、10mg/kgの抗PD-1抗体(aPD-1)を投与した。
【表5】
【0269】
表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム及び/またはエクソソームにロードされたSTINGアゴニストの投与は、持続的な完全奏功及び再チャレンジ後の腫瘍増殖の防止をもたらしている(図2A~2C)。腫瘍増殖は、原発腫瘍(図2A)及び二次腫瘍(図2B)の両方で、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストの併用療法の投与後に阻害された。腫瘍増殖速度は、表面に提示されたIL-12を有するエクソソームまたはエクソソームにロードされたSTINGアゴニストのいずれか単独の投与と比較して、併用療法の投与後により大きな減少を示した(図2C)。これらの効果は原発腫瘍でより顕著であったが、各処置群で、二次(注射されていない)腫瘍の腫瘍増殖速度は少なくともわずかに減少し、併用療法後の腫瘍増殖速度は有意に減少した(図2C)。14日目の腫瘍サイズは、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、及び抗PD-1抗体の3剤療法で処置したマウスで、原発腫瘍及び二次腫瘍の両方でさらに減少した(図3A~3B)。しかしながら、3剤併用療法の施行後の原発腫瘍及び二次腫瘍の両方における腫瘍増殖速度は、表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法後の増殖速度と統計的な差はなかった(図4A~4B)。個々の処置の結果を図5A図5Nに示す。
【0270】
実施例3:マウスがんモデルにおける表面に提示されたIL-12を有するエクソソームの投与
表面に提示されたIL-12を有するエクソソームを、PTGFRNに連結された単一のペプチドIL-12(ペプチドリンカーp40によって連結されたp29)を含む融合コンストラクトをエクソソーム産生細胞で発現させることによって調製した(図6)。効力を、ヒトPBMCまたはマウス脾細胞を使用してインビトロで、また、マウス皮下腫瘍モデルを使用してインビボで評価した。局所と全身の薬理学的動態を、マウスの腫瘍内注射及びサルの皮下注射で測定した。すべての試験は、組換えIL-12(rIL-12)を基準として評価した。
【0271】
MC38マウス腫瘍モデルでは、表面に提示されたIL-12を有するエクソソーム(exoIL-12)の腫瘍内投与によって、遊離組換えIL-12及び非処理のコントロールと比較してPKの増強とPDの持続が示された。exoIL-12を投与したマウスは、遊離組換えIL-12と比較して、投与の3、12、24、及び48時間後に腫瘍当たりのIL-12p70濃度によって測定した場合に腫瘍保持量の増加(約15倍)を示した(図7A)。さらに、exoIL-12投与は、組換えIL-12と比較して腫瘍内IFN-γAUCの約4倍の増強をもたらした(図7B)。さらに、exoIL-12の腫瘍内投与は、マウスのMC38腫瘍増殖の用量依存的な減少をもたらした。ExoIL-12は、腫瘍増殖阻害においてrIL-12よりも100倍強力であり、100ngのexoIL-12を投与されたマウスでは、腫瘍増殖をほとんどまたはまったく示さなかった(図7C)。MC38腫瘍モデルでは、exoIL-12で処置したマウスの63%で完全奏功が観察されたのに対して、rIL-12では同等のIL-12の用量で完全奏功は0%であった。これは、exoIL-12処置マウスにおいてほぼ4倍増加した、腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の用量依存的な増加と相関していた(図7E)。
【0272】
MC38再チャレンジ後には、腫瘍増殖の抑制が再び観察された(図7D)。exoIL-12完全奏功マウスの再チャレンジ試験では、腫瘍の再増殖は示されず、CD8+T細胞の欠乏によってexoIL-12の抗腫瘍活性は完全に消失した。腫瘍内投与後、exoIL-12はrIL-12よりも10倍高い腫瘍内曝露及び最大48時間のIFNγ産生の延長を示した。exoIL-12の保持された局所的な薬理動態を、非ヒト霊長類での皮下注射を用いてさらに確認した。
【0273】
毒物学的分析によって、試験した最高用量である3μgのexoIL-12はNOAEL(無有害作用量)であることが明らかにされ、限定的な血漿レベル及び用量依存的組織レベルを示した(図8A)。CXCL10/IP-10の発現は、単回投与後に皮膚で持続することが観察されたが、血漿では検出できなかった(図8B~8C)。
【0274】
exoIL-12の腫瘍に制限された薬理動態は、全身のIL-12曝露及び関連する毒性を伴わずに優れたインビボ有効性及び免疫記憶をもたらす。このように、exoIL-12はrIL-12の主要な制約を克服するものである。
【0275】
実施例4:表面に提示されたIL-12を有するエクソソームの投与の安全性及び有効性を試験する臨床試験
表面に提示されたIL-12を有する操作されたエクソソームを投与することによってヒト対象のがんを治療することの安全性及び有効性を試験するための臨床研究を実施する(図9A~9B)。パートAでは、健康なボランティアにさまざまな用量のexoIL-12を投与し、有害事象及びバイオマーカーを監視する(図9A)。パートBでは、CTCL(ステージIA-IIB)と診断された対象にさまざまな用量のexoIL-12を投与し、安全性及びバイオマーカーを監視する(図9B)。臨床活動を、1つ以上のCTスキャンによって監視する。CTCL、TNBC、黒色腫、GBM、MCC、及び/またはカポジ肉腫を患っている対象は、試験のパートBに適格とされる。
【0276】
実施例5:エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと併用した、表面に提示されたIL-12を有するエクソソームのインビボ投与
表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの相乗効果が抗PD-1併用療法よりも優れているかどうかを判定するために、B16F10マウスの2つの異なる部位(「原発」及び「二次」)に腫瘍細胞を皮下接種した。マウスが約50mmの原発腫瘍及び二次腫瘍を発症した接種後6日目に、マウスを7つの処置群に分けた(表7)。群1のマウスには、接種後6、8、9、10、及び12日目に(原発腫瘍の)腫瘍内(IT)注射により空のエクソソームを投与し、接種後6、9、12、及び16日目に腹腔内(IP)注射により10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群2のマウスには、接種後6、8、9、10、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により空のエクソソームを投与し、接種後6、9、12、及び16日目に腹腔内(IP)注射により10mg/kgの抗PD-1抗体を投与した。群3のマウスには、接種後6、9、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後6、9、12、及び16日目にIP注射により10mg/kgのアイソタイプコントロールを投与した。群4のマウスには、接種後6、9、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後6、9、12、及び16日目にIP注射により10mg/kgの抗PD-1抗体を投与した。群5のマウスには、接種後6、8、及び10日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後6、9、12、及び16日目にIP注射により10mg/kgの抗PD-1抗体を投与した。群6のマウスには、接種後6、9、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした100ngのエクソソームを投与し、接種後8、10、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射によりIL-12をロードした100ngのエクソソームを投与した。群7のマウスには、接種後6、9、及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により、STINGアゴニストをロードした10ngのエクソソームを、接種後8、10及び12日目に(原発腫瘍の)IT注射により、IL-12をロードした10ngのエクソソームを投与した。


【表6】
【0277】
腫瘍増殖は、原発腫瘍における100ng及び10ngの用量の1)STINGアゴニストとエクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、2)エクソソームにロードされたSTINGアゴニストとaPD-1との併用、3)表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとaPD-1との併用、及び4)表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法の施行後に阻害された(図10B)。これらの効果は原発腫瘍でより顕著であったが、各処置群で二次(注射されていない)腫瘍の腫瘍増殖速度は少なくともわずかに減少し、エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと抗PD-1抗体との併用療法後の腫瘍増殖速度は有意に減少した(図10A)。二次腫瘍へのCD8T細胞の浸潤は、100ng及び10ngの用量のエクソソーム、エクソソームと抗PD-1抗体との併用、エクソソームにロードされたSTINGアゴニスト、表面に提示されたIL-12を有するエクソソームと抗PD-1抗体との併用、または表面に提示されたIL-12を有するエクソソームとエクソソームにロードされたSTINGアゴニストとの併用療法と比較して、エクソソームにロードされたSTINGアゴニストと抗PD-1抗体との併用で有意に高かった(図10C)。
【0278】
参照による援用
本出願に引用されるすべての刊行物、特許、特許出願、及び他の文書は、それぞれの個別の刊行物、特許、特許出願、または他の文書があらゆる目的で参照によって個別に援用されていることが示されている場合と同程度に、あらゆる目的でそれらの全体を参照により本明細書に援用するものである。
【0279】
均等物
本開示は特に、治療薬として使用するためのSTINGアゴニストを封入したエクソソームの組成物を提供する。本開示はまた、STINGアゴニストを封入したエクソソームを生成する方法、及びそのようなエクソソームを治療薬として投与する方法も提供する。さまざまな具体的態様を説明及び記載したが、上記の明細書は限定的なものではない。本発明(複数可)の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を行うことができる点は認識されよう。多くの変形例が、本明細書を検討することで当業者には明らかとなろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図5N
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
【配列表】
2022551420000001.app
【国際調査報告】