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特表2022-551421刺激性化学物質を包装するための水溶性不織布ウェブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】刺激性化学物質を包装するための水溶性不織布ウェブ
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20221202BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221202BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221202BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221202BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/14 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/18 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 7/20 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20221202BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20221202BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K5/00
C08L101/00
C08K3/00
C11D7/22
C11D7/26
C11D1/62
C11D1/75
C11D1/72
C11D3/37
C11D3/20
C11D3/14
C11D3/18
C11D7/24
C11D7/20
C11D3/10
C11D3/395
B65D65/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518959
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020053601
(87)【国際公開番号】W WO2021067476
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,582
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508122415
【氏名又は名称】モノソル リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブライドウェル, ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ナイト, ジョナサン
【テーマコード(参考)】
3E086
4H003
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA19
3E086BA29
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4J002AB043
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4J002EF067
4J002EG047
4J002EH106
4J002EJ007
4J002EN007
4J002EN046
4J002EN086
4J002EN108
4J002EN136
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4J002GG00
(57)【要約】
スルホネート改質PVOH繊維形成材料、および/またはポリビニルピロリドンと、スルホネート改質PVOH、カルボキシル改質PVOH、もしくは両方とを含む繊維形成材料のブレンドを含む不織布ウェブを含む外壁を有するパケットを含む単位用量物品が、本明細書に開示される。刺激性化学物質を含む組成物を含む前記単位用量物品も、本明細書に開示される。本開示は概して、水溶性不織布ウェブおよび関連する組成物に関する。より特には、本開示は、刺激性化学組成物を包装するための水溶性不織布ウェブに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁を含むパケットであって、前記外壁が、外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、前記外壁が、
(a)スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料であって、
前記スルホネート改質PVOH繊維形成材料が少なくとも95%の加水分解度を有し、前記スルホン化アニオン性モノマーが約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、または
(b)(i)ポリビニルピロリドン、および
(ii)スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、もしくは両方を含む改質ポリビニルアルコール(PVOH)
を含む、繊維形成材料のブレンド
を含む複数の繊維を含む不織布ウェブを含む、パケットと、
前記内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品。
【請求項2】
前記スルホン化アニオン性モノマー単位が、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸2-スルホエチル、および前述のもののアルカリ塩の群から選択される1つまたは複数である、請求項1に記載の単位用量物品。
【請求項3】
前記スルホン化アニオン性モノマー単位がAMPSである、請求項2に記載の単位用量物品。
【請求項4】
前記スルホン化アニオン性モノマーが、約1mol%~約3mol%の範囲の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項5】
(a)前記複数の繊維が、セルロース、デンプン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、もしくはこれらの組合せを含む繊維をさらに含む、または
(b)前記スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む前記複数の繊維が、セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、もしくはこれらの組合せを含む繊維形成材料をさらに含む、または
(c)(a)と(b)との組合せである、
先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項6】
前記不織布ウェブが酸捕捉剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項7】
前記酸捕捉剤が、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、活性化オレフィン、アリル系化合物、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、および第三級アミン含有化合物の群から選択される1つまたは複数である、請求項6に記載の単位用量物品。
【請求項8】
前記酸捕捉剤が、前記繊維中もしくは前記繊維上、前記不織布ウェブ中もしくは前記不織布ウェブ上、または前述のものの組合せに提供されている、請求項6または7に記載の単位用量物品。
【請求項9】
前記酸捕捉剤が、前記繊維上にコーティングされている、前記不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方である、請求項8に記載の単位用量物品。
【請求項10】
前記酸捕捉剤が、前記不織布ウェブ全体に分散している、請求項8に記載の単位用量物品。
【請求項11】
前記不織布ウェブが酸化防止剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項12】
前記酸化防止剤が、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、および酢酸亜鉛の群から選択される1つまたは複数である、請求項11に記載の単位用量物品。
【請求項13】
前記酸化防止剤が、前記繊維中もしくは前記繊維上、前記不織布ウェブ中もしくは前記不織布ウェブ上、または前述のものの組合せに提供されている、請求項11または12に記載の単位用量物品。
【請求項14】
前記酸化防止剤が、前記繊維上にコーティングされている、前記不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方である、請求項13に記載の単位用量物品。
【請求項15】
前記酸化防止剤が、前記不織布ウェブ全体に分散している、請求項11に記載の単位用量物品。
【請求項16】
前記不織布ウェブが可塑剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項17】
前記可塑剤が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、最大400MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、およびマルチトールの群から選択される1つまたは複数である、請求項16に記載の単位用量物品。
【請求項18】
前記可塑剤が、グリセロール、マルチトール、およびトリメチロールプロパンの群から選択される1つまたは複数である、請求項17に記載の単位用量物品。
【請求項19】
前記不織布ウェブが充填剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項20】
前記充填剤が、高アミロースデンプン、非晶質シリカ、およびヒドロキシエチル化デンプンの群から選択される1つまたは複数である、請求項19に記載の単位用量物品。
【請求項21】
前記不織布ウェブが界面活性剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項22】
前記界面活性剤が、第四級アミン、ミリスチルジメチルアミンオキシド、アルキルポリエチレングリコールエーテル、およびコカミドの群の1つまたは複数を含む、請求項21に記載の単位用量物品。
【請求項23】
前記不織布ウェブが、38℃および80%RH雰囲気において、次亜塩素酸カルシウムに6週間曝露した後、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項24】
前記不織布ウェブが、38℃および80%RH雰囲気において、次亜塩素酸カルシウムに6週間曝露した後、3.5を超えない、または3.0を超えない、または2.5を超えないb値を維持する、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項25】
前記組成物が刺激性化学物質を含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項26】
前記刺激性化学物質が、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せを含む、請求項25に記載の単位用量物品。
【請求項27】
前記酸化性物質が塩素遊離性化合物である、請求項26に記載の単位用量物品。
【請求項28】
前記酸化性物質が、次亜塩素酸、ハイポクロライト、ハロゲン化イソシアヌレート、クロライト、クロレート、ペルクロレート、ブロメート、ペルブロメート、ハロゲン化ヒダントイン、ペルボレート、ペルヨーデート、ペルサルフェート、ペルマンガネート、クロメート、ジクロメート、ニトレート、ニトライト、ペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシ酸、および無機酸のうちの1つまたは複数を含む、請求項26または27に記載の単位用量物品。
【請求項29】
前記刺激性化学物質が塩基媒介酸化性物質を含む、請求項25に記載の単位用量物品。
【請求項30】
前記塩基媒介酸化性物質がハイポクロライトを含む、請求項29に記載の単位用量物品。
【請求項31】
前記塩基が、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムのうちの1つまたは複数を含む、請求項26に記載の単位用量物品。
【請求項32】
前記組成物が非家庭用ケア組成物である、請求項25から31のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項33】
前記非家庭用ケア組成物が、農業用組成物、航空用組成物、食品および栄養組成物、工業用組成物、家畜用組成物、海洋用組成物、医療用組成物、商業用組成物、軍用および/または準軍用組成物、オフィス用組成物、娯楽および/またはパーク用組成物、ペット用組成物、ならびにプールおよび/または水処理用組成物の群から選択される1つまたは複数である、請求項32に記載の単位用量物品。
【請求項34】
前記非家庭用ケア組成物が、プールおよび/または水処理用組成物である、請求項33に記載の単位用量物品。
【請求項35】
前記非家庭用ケア組成物中の酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せの濃度が、前記非家庭用ケア組成物の総重量を基準として、50重量%~100重量%、または60重量%~100重量%、または70重量%~100重量%、または80重量%~100重量%、または90重量%~100重量%の範囲である、請求項33または34に記載の単位用量物品。
【請求項36】
前記パケットが、酸捕捉剤、酸化防止剤、または両方を含む第1のコーティングをさらに含み、前記第1のコーティングが前記外壁と接触している、請求項24から35のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項37】
前記第1のコーティングが、前記外壁の前記内側表面の少なくとも一部に提供されている、請求項36に記載の単位用量物品。
【請求項38】
前記パケットが、酸捕捉剤、酸化防止剤、または両方を含む第2のコーティングをさらに含む、請求項36または37に記載の単位用量物品。
【請求項39】
前記第1のコーティングが、前記外壁の前記内側表面の少なくとも一部に提供されており、前記第2のコーティングが、前記外壁の前記外側表面の少なくとも一部に提供されている、請求項38に記載の単位用量物品。
【請求項40】
前記酸捕捉剤が、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、金属ステアリン酸塩、活性化オレフィン、アリル系化合物、カルボキシレート化合物、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、および第三級アミン含有化合物のうちの1つまたは複数を含む、請求項36から39のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項41】
前記酸化防止剤が、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、および酢酸亜鉛のうちの1つまたは複数を含む、請求項36から40のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項42】
前記ポリビニルピロリドン繊維形成材料の、前記カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、前記スルホネート繊維形成材料、または両方に対する重量比が、それぞれ、約1:1~約1:19、1:3~約1:19、重量で約1:5~約1:15、重量で約1:5~約1:12、重量で約1:5~約1:9、重量で約1:6~約1:9、または重量で約1:6.5~約1:7.5である、請求項2に記載の単位用量物品。
【請求項43】
前記カルボキシル改質PVOHが、マレイン酸モノメチル、マレイン酸、無水マレイン酸、およびこれらのアルカリ塩の群から選択される1種または複数種のマレエートモノマー単位を含む、請求項2から42のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項44】
前記マレエートモノマー単位が、約1mol%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する、請求項43に記載の単位用量物品。
【請求項45】
プールおよび/または水処理用組成物が前記内側パウチ容積部に収容されており、前記プールおよび/または水処理用組成物が酸化性物質を含み、前記プールおよび/または水処理用組成物中の前記酸化性物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、
前記酸化性物質が次亜塩素酸カルシウムを含み、前記パケットが、必要に応じて、前記外壁の前記内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項46】
プールおよび/または水処理用組成物が前記内側パウチ容積部に収容されており、前記プールおよび/または水処理用組成物が酸化性物質を含み、前記プールおよび/または水処理用組成物中の前記酸化性物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、
前記酸化性物質がトリクロロイソシアヌル酸を含み、前記パケットが、必要に応じて、前記外壁の前記内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の単位用量物品。
【請求項47】
組成物をバルク水に計量供給するためのプロセスであって、前記バルク水と、請求項1から46のいずれか一項に記載の単位用量物品を接触させるステップを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国特許法第119条第(e)項の下で、2019年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/908,582号の利益を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は概して、水溶性不織布ウェブおよび関連する組成物に関する。より特には、本開示は、刺激性化学組成物を包装するための水溶性不織布ウェブに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
水溶性包装材料は、送達されるべき材料の分散、注入、溶解、および計量供給を単純化するために、一般に使用される。伝統的な包装材料としては水溶性フィルムが挙げられ、これから作製されるパウチは、洗濯用、食器用洗浄剤、または刺激性化学物質などの組成物を包装するために一般に使用される。消費者は、パウチに入った組成物を、水に直接加えることができる。有利には、これによって、消費者が組成物を計量する必要性を排除しながら、正確な計量供給が提供される。伝統的な水溶性フィルムは、パウチ構成要素(例えば刺激性化学物質)または環境中の水分と相互作用し得るが、これはフィルムの特性に影響を及ぼし得、例えば、このような化学物質と接触させて保存する場合、フィルムの溶解性が経時的に減少して、計量供給後に望ましくない残留物が残り得る、かつ/またはフィルムの機械的特性が経時的に悪化し得る。別のタイプの問題においては、水溶性フィルムは、刺激性化学物質と接触させて保存する場合、変色する場合がある。別のタイプの問題においては、水溶性ポリマーから調製された水溶性フィルムは、加工機器および/または他の水溶性フィルムに張り付く場合がある。このような問題は特に、フィルムをパウチに形成し、パウチを二次包装内で一緒に保存する場合に起こり得る。加えて、現在販売されている、水溶性ポリマー性フィルムから作製されたいくつかのパウチは、消費者が取り扱う際に不快なゴム様またはプラスチック様の感触を有する。別のタイプの問題においては、水溶性パウチを、例えばバルク水に提供する場合、水溶性パウチは、バルク溶液全体に内容物のより均一な分布をもたらすのではなく、内容物の局所的な集中がもたらされるように、内容物を放出し得る。
【0004】
したがって、当技術分野において、取り扱いが快適であり、パウチ内容物を速やかに放出してより均一な分布を提供し、他の水溶性包装に張り付く傾向が低減していながら、パウチ内容物と接触させて保存した後も水溶性のままであることができる水溶性包装が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示の一態様は、外壁を含むパケットであって、外壁が、外側表面、および内側パウチ容積部(volume)を画定する内側表面を有し、外壁が、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料であって、スルホネート改質PVOH繊維形成材料が少なくとも95%の加水分解度を有し、スルホン化アニオン性モノマーが約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する、スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む複数の繊維を含む不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品を提供する。
【0006】
本開示の別の態様は、外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質ポリビニルアルコール(PVOH)、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含む不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品を提供する。
【0007】
本開示の別の態様は、本開示の単位用量物品であって、プールおよび/または水処理用組成物が内側パウチ容積部に収容されており、プールおよび/または水処理用組成物が酸化性物質を含み、プールおよび/または水処理用組成物中の酸化性物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、酸化性物質が次亜塩素酸カルシウムを含み、パケットが、必要に応じて、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、単位用量物品を提供する。
【0008】
本開示の別の態様は、本開示の単位用量物品であって、プールおよび/または水処理用組成物が内側パウチ容積部に収容されており、プールおよび/または水処理用組成物が酸化性物質を含み、プールおよび/または水処理用組成物中の酸化性物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、酸化性物質がトリクロロイソシアヌル酸を含み、パケットが、必要に応じて、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、単位用量物品を提供する。
【0009】
本開示の別の態様は、組成物をバルク水に計量供給するためのプロセスであって、バルク水を、本開示による単位用量物品と接触させるステップを含む、プロセスを提供する。
【0010】
本明細書に記載する組成物について、構成要素およびその組成的範囲、繊維形成材料、複数層構築物、繊維の幾何学的形状、ならびに/または機械的特性を含むがこれに限定されない、必要に応じた特色が、本明細書において提供する様々な態様および実施形態から選択されることが企図される。
【0011】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の検討から、当業者には明らかであろう。本開示の繊維、不織布ウェブ、単位用量物品、および組成物は、様々な形態における実施形態が可能であるが、本開示は説明のためのものであり、本明細書に記載する具体的な実施形態に本開示を限定することを意図しないことを理解しながら、以後の記載は具体的な実施形態を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本明細書に提示する開示において、一態様は、外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品を提供する。実施形態では、不織布ウェブは、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質ポリビニルアルコール(「PVOH」)繊維形成材料を含む、複数の繊維を含む。実施形態では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は、少なくとも95%の加水分解度を有する。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマーは、約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する。
【0013】
本開示の別の態様は、外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品を提供する。実施形態では、不織布ウェブは、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含む。実施形態では、繊維形成材料のブレンドは、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質PVOH、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む。
【0014】
本明細書に提示する開示において、一態様は、複数の繊維を含む水溶性不織布ウェブを提供する。実施形態では、複数の繊維は、カルボキシル改質ポリビニルアルコール、およびスルホネート改質ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含むことができ、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料の、スルホネートおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比は、約3:1~約19:1である。実施形態では、複数の繊維は、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料を有する繊維と、スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料を有する繊維、ポリビニルピロリドン繊維形成材料を有する繊維、または両方のタイプの繊維とを含む繊維のブレンドを含むことができ、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料の、スルホネートおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比は、約3:1~約19:1である。実施形態では、複数の繊維は、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、またはポリビニルピロリドン繊維形成材料を含む第1の繊維と、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、ポリビニルピロリドン繊維形成材料、またはこれらの組合せを含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含む繊維のブレンドを含むことができ、カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料の、スルホネートおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比は、約3:1~約19:1である。
【0015】
刺激性化学物質としては、非常に酸性もしくはアルカリ性である化学種、正の標準電極電位を有する化合物、および/または水分含有材料を乾燥させるように非常に吸湿性が高い化合物が挙げられる。
【0016】
本開示の別の態様は、外壁であって、外側表面と、内側パウチ容積部を画定する内側表面とを有し、本明細書に記載する水溶性不織布ウェブを含む、外壁と、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む水溶性単位用量物品を提供する。実施形態では、組成物は刺激性化学物質を含むことができる。
【0017】
本開示による水溶性単位用量物品は、1つまたは複数の利点、例えば、刺激性化学物質の存在下で弾性および溶解性などの望ましい不織布ウェブ特性を保持すること、刺激性化学物質の存在下での分解への耐性、着色への耐性、水溶性フィルムから作製されたパウチに対して改善された手触り、水溶性フィルムから調製されたパウチに対して低減した、他のパウチおよび/もしくは二次包装に張り付く傾向を提供し、かつ/または水溶性フィルムから調製されたパウチと比較して、内容物のバルク水へのより均一な放出および分布を提供するように設計することができる。
【0018】
別段の指定がない限り、本明細書において言及するすべての百分率、部、および比は、繊維組成物、不織布ウェブ組成物の総乾燥重量、または場合により本開示のパケット内容物組成物の総重量を基準とし、すべての測定は、約25℃において行われる。別段の指定がない限り、列挙される成分に関係するこのような重量はすべて、有効レベルに基づき、そのため、市販の材料に含まれ得るキャリアまたは副生成物を含まない。
【0019】
本明細書に述べるすべての範囲には、範囲の可能な部分集合のすべて、およびこのような部分集合の範囲の任意の組合せが含まれる。通常の場合、別段述べられていない限り、範囲は述べられた端点を含む。値の範囲が提供される場合、この範囲の上限と下限との間にある各値、および任意の他の述べられた、またはその述べられた範囲の間にある値は、本開示の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、述べられた範囲におけるあらゆる具体的に除外された限度を条件として、本開示の範囲内にも包含される。述べられた範囲が限度の一方または両方を含む場合、含まれる限度のいずれかまたは両方を除いた範囲も、本開示の一部であることが企図される。
【0020】
例えば、記載する主題、または記載する主題に関連する範囲の一部のパラメータとしての、本明細書に記載するあらゆる数値について、記載の一部を形成する選択肢は、具体的な数値的値を包囲する機能的に等価の範囲であることが明白に企図される(例えば、「40mm」として開示される寸法について、企図される代替実施形態は、「約40mm」である)。
【0021】
本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「不織布ウェブ」という用語は、(例えばカーディングプロセスによって)配列され、互いに結合した繊維を含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、ウェブまたはシートを指す。さらに、本明細書において使用する場合、「不織布ウェブ」には、例えば、その表面に積層されたフィルムを有する不織布ウェブまたはシートを含めた、不織布ウェブまたはシートを含む任意の構造物が含まれる。繊維から不織布ウェブを調製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Nonwoven Fabrics Handbook, prepared by Ian Butler, edited by Subhash Batra et al., Printing by Design, 1999に記載されている通りである。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「フィルム」という用語は、例えば注型または押出成形プロセスによって調製された、連続フィルムまたはシートを指す。
【0022】
本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「水溶性」という用語は、本明細書に述べるように、MSTM-205に従って決定される、特定の温度において300秒またはそれ未満の溶解時間を有する、任意の繊維、不織布ウェブ、またはフィルムを指す。例えば、溶解時間は、必要に応じて、約80℃、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約20℃、または約10℃の温度において、200秒もしくはそれ未満、100秒もしくはそれ未満、60秒もしくはそれ未満、または30秒もしくはそれ未満であってもよい。溶解温度が特定されない実施形態では、水溶性繊維、不織布ウェブ、または不織布複合物品は、約80℃を超えない温度において、300秒またはそれ未満の溶解時間を有する。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「冷水溶解性」という用語は、MSTM-205に従って決定される、10℃において300秒またはそれ未満の溶解時間を有する、任意の繊維、不織布ウェブ、または不織布複合物品を指す。例えば、溶解時間は、必要に応じて、10℃において、200秒もしくはそれ未満、100秒もしくはそれ未満、60秒もしくはそれ未満、または30秒であってもよい。実施形態では、「水溶性フィルム」とは、1.5milの厚さにおいて、フィルムが80℃を超えない温度において、300秒またはそれ未満で溶解することを意味する。例えば、1.5mil(約38μm)の厚さの水溶性フィルムは、MSTM-205に従って、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約30℃、約20℃、または約10℃の温度において、300秒もしくはそれ未満、200秒もしくはそれ未満、100秒もしくはそれ未満、60秒もしくはそれ未満、または30秒もしくはそれ未満の溶解時間を有することができる。
【0023】
本明細書において使用する場合、パケット(複数可)およびパウチ(複数可)という用語は、互換的であると考えられるべきである。ある特定の実施形態では、パケット(複数可)およびパウチ(複数可)という用語は、好ましくは、例えば計量された用量の送達系の形態で、封入された材料を有する、不織布ウェブを使用して作製された容器、および全面的に封止された容器をそれぞれ指すために使用される。密閉パウチは、熱封止、溶媒溶着、および(例えば水溶性接着剤の使用による)接着封止などのようなプロセスおよび特色を含めた、任意の好適な方法で作製することができる。
【0024】
本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「重量%(wt.%)」および「重量%(wt%)」という用語は、不織布ウェブ中の残留水分を含めた不織布ウェブ全体の「乾燥」(非水)重量部、または場合により文脈に応じて、組成物もしくはコーティング全体の重量部における、特定の要素の組成を指すことを意図する。
【0025】
本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「PHR」(「phr」)という用語は、水溶性不織布ウェブ、または不織布ウェブを作製するために使用する溶液中の、100部の水溶性ポリマー樹脂(複数可)(別段の定めがない限り、PVOHであろうと、他のポリマー樹脂であろうと)当たりの部における、特定の要素の組成を指すことを意図する。
【0026】
本明細書において使用する「含む(comprising)」とは、本開示の実践において共同で用いることができる、様々な構成要素、成分、またはステップを意味する。したがって、「含む」という用語は、より制限的である「から本質的になる」および「からなる」という用語を包含する。本組成物は、本明細書に開示する必要な要素、および必要に応じた要素のいずれかを含む、これらから本質的になる、またはこれらからなることができる。例えば、熱成形されたパケットは、その熱形成特徴の使用のために、本明細書に記載する不織布ウェブ「から本質的になる」場合があるが、熱成形されていない不織布ウェブ(例えば、蓋部)と、不織布ウェブ上に、例えばインクジェット印刷による、必要に応じたマーキングとを含むことができる。本明細書に説明のために開示する本開示は、好適には、具体的に本明細書に開示されない任意の要素またはステップの非存在下で実践され得る。
【0027】
不織布ウェブ、パウチ、ならびに関連する作製および使用方法は、別段述べられていない限り、下でさらに記載する追加の必要に応じた要素、特色、およびステップのうちの1つまたは複数の任意の組合せを含む実施形態を含むことが企図される。
【0028】
不織布ウェブは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Nonwoven Fabrics Handbook, prepared by Ian Butler, edited by Subhash Batra et al., Printing by Design, 1999に記載されているように、当技術分野において周知であるカーディングを含めた任意の好適な方法によって作製することができる。パウチなどの容器を不織布から形成する方法は、当技術分野において公知である。不織布ウェブを使用して、垂直式形成、充填および封止(VFFS)、または熱成形を含めた任意の好適なプロセスによって、容器(パウチ)を形成することができる。不織布ウェブは、例えば、不織布ウェブ層の溶媒封止または熱封止を含めた任意の好適なプロセスによって、例えば容器の外周で封止することができる。有利には、本開示の不織布ウェブは、熱および/または水(例えば湿気)の存在下で、優先的な収縮を示すことができる。したがって、不織布ウェブは、パケットに形成した際に、熱および/または水収縮させることができる。パウチは、例えば、バルク水に送達されるべき材料を計量供給するために使用することができる。
【0029】
不織布ウェブ、パウチ、および関連する使用方法は、別段述べられていない限り、下でさらに記載する追加の必要に応じた要素、特色、およびステップのうちの1つまたは複数の任意の組合せを含む実施形態を含むことが企図される。
【0030】
水溶性繊維形成材料
【0031】
一般に、水溶性不織布ウェブは、単一の繊維形成材料または繊維形成材料のブレンドを含めた、複数の繊維を含むことができる。実施形態では、繊維形成材料は水溶性である。実施形態では、繊維は水溶性である。
【0032】
一般に、本開示の繊維は、少なくとも1種のポリビニルアルコール繊維形成材料を含む。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの加水分解またはけん化と通常は呼ばれる、加アルコール分解によって一般に調製される合成ポリマーである。事実上すべてのアセテート基がアルコール基に変換されている、全面的に加水分解したPVOHは、約140°F(約60℃)を超える熱水にのみ溶解する、強く水素結合した結晶性の高いポリマーである。ポリ酢酸ビニルの加水分解後に十分な数のアセテート基が残される、すなわち、PVOHポリマーが部分的に加水分解した場合には、ポリマーはより弱く水素結合し、結晶性がより低く、一般に約50°F(約10℃)未満の冷水に溶解する。このように部分的に加水分解したポリマーは、ビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマー、すなわちPVOHコポリマーであるが、一般にPVOHと称される。
【0033】
ポリビニルアルコールは、改質ポリビニルアルコール、例えばコポリマーであってもよい。改質ポリビニルアルコールには、酢酸ビニル/ビニルアルコール基に加えて1種または複数種のモノマーを含む、コポリマーまたはより高元の(higher)ポリマー(例えばターポリマー)を含むことができる。必要に応じて、改質は中性であり、例えば、エチレン、プロピレン、N-ビニルピロリドン、または他の非荷電モノマー種によって提供される。必要に応じて、改質はカチオン性改質であり、例えば、正電荷を帯びたモノマー種によって提供される。必要に応じて、改質はアニオン性改質である。したがって、いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコールは、アニオン性改質ポリビニルアルコールを含む。アニオン性改質ポリビニルアルコールは、アニオン性モノマー単位、ビニルアルコールモノマー単位、および必要に応じて酢酸ビニルモノマー単位(すなわち、完全に加水分解していない場合)を含む、部分的または全面的に加水分解したPVOHコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、PVOHコポリマーは、2種またはそれよりも多くのタイプのアニオン性モノマー単位を含むことができる。PVOHコポリマーのために使用することができるアニオン性モノマー単位の一般的なクラスとしては、スルホン酸ビニルモノマーおよびそのエステル、モノカルボン酸ビニルモノマー、そのエステルおよび無水物、重合性二重結合を有するジカルボン酸モノマー、そのエステルおよび無水物、ならびに前述のもののいずれかのアルカリ金属塩に対応するビニル重合単位が挙げられる。好適なアニオン性モノマー単位の例としては、ビニル酢酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、マレイン酸ジアルキル、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸モノアルキル、フマル酸ジアルキル、イタコン酸、イタコン酸モノアルキル、イタコン酸ジアルキル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキル、シトラコン酸ジアルキル、シトラコン酸無水物、メサコン酸、メサコン酸モノアルキル、メサコン酸ジアルキル、グルタコン酸、グルタコン酸モノアルキル、グルタコン酸ジアルキル、グルタコン酸無水物、アクリル酸アルキル、アルキルアルカクリレート(alkacrylate)、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸2-スルホエチル、前述のもののアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、または他のアルカリ金属の塩)、前述のもののエステル(例えば、メチル、エチル、または他のC~CもしくはCアルキルエステル)、および前述のものの組合せ(例えば、複数のタイプのアニオン性モノマーまたは同等の形態の同じアニオン性モノマー)を含めた、ビニルアニオン性モノマーに対応するビニル重合単位が挙げられる。いくつかの実施形態では、PVOHコポリマーは、2種またはそれよりも多くのタイプの、中性、アニオン性、およびカチオン性モノマー単位から選択されるモノマー単位を含むことができる。
【0034】
PVOHコポリマーに1種または複数種のアニオン性モノマー単位を組み込むレベル(改質度)は、特に限定されない。実施形態では、1種または複数種のアニオン性モノマー単位は、PVOHコポリマー中に、約1mol.%または2mol.%~約6mol.%または10mol.%の範囲(様々な実施形態では、例えば、少なくとも1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、もしくは4.0mol.%、および/または最大約3.0、4.0、4.5、5.0、6.0、8.0、もしくは10mol.%)の量で存在する。実施形態では、1種または複数種のアニオン性モノマー単位は、PVOHコポリマー中に、約1mol.%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%、約2mol.%~約6mol.%、約3mol.%~約5mol.%、または約1mol.%~約3mol.%の範囲の量で存在する。
【0035】
本開示の水溶性繊維および不織布ウェブに含まれるPVOHホモポリマーおよびPVOHコポリマーの加水分解度(DH)は、約75%~約99.9%(例えば、冷水溶解性組成物などについては、約79%~約92%、約80%~約90%、約88%~92%、約86.5%~約89%、または約88%、90%もしくは92%;約90%~約99%、約92%~約99%、約95%~約99%、約98%~約99%、約98%~約99.9%、約96%、約98%、約99%、または99%超)の範囲とすることができる。DHは、具体的にはポリ酢酸ビニルポリマーから除去されたアセテートの量の尺度であるが(例えば、加水分解、けん化を介して)、PVOHポリマーまたはコポリマーに残存するアセテートの量を理解するために、最も一般的に使用される。アセテート基は、PVOHコポリマーの非晶質または非結晶領域を形成する。そのため、大雑把には、DHが高いほど、PVOHコポリマーまたはPVOHコポリマーのブレンドの結晶化度が相対的に高いと述べることができる。PVOH樹脂が特定のDHを有する(または有しない)ものとして記載される場合、別段の指定がない限り、指定のDHは、そのPVOH樹脂についての平均DHであることが意図される。
【0036】
一般に、加水分解度が低下するにつれて、ポリマーから作製された繊維または不織布ウェブは、機械的強さが低下するが、約20℃未満の温度におけるより速い溶解性を有することになる。加水分解度が上昇するにつれて、ポリマーから作製された繊維または不織布ウェブは、機械的に強くなる傾向があり、熱成形性が減少する傾向がある。PVOHの加水分解度は、ポリマーの水溶性が温度依存となるように選択することができ、したがって、ポリマーおよび追加の成分から作製される繊維および/または不織布ウェブの溶解性も影響される。1つの選択肢において、不織布ウェブは冷水溶解性である。いかなる他のモノマーも含まないコポリ(酢酸ビニル ビニルアルコール)ポリマー(例えば、アニオン性モノマーと共重合していないホモポリマー)については、10℃未満の温度における水に溶解する冷水溶解性の繊維または不織布ウェブは、約75%~約90%の範囲、または約80%~約90%の範囲、または約85%~約90%の範囲の加水分解度を有するPVOHを含むことができる。別の選択肢において、繊維または不織布ウェブは熱水溶解性である。いかなる他のモノマーも含まないコポリ(酢酸ビニル ビニルアルコール)ポリマー(例えば、アニオン性モノマーと共重合していないホモポリマー)については、少なくとも約60℃の温度における水に溶解する熱水溶解性の繊維または不織布ウェブは、少なくとも約98%の加水分解度を有するPVOHを含むことができる。
【0037】
ポリマーブレンドの加水分解度は、算術加重の平均加水分解度
【数1】
によって特徴付けることもできる。例えば、2種またはそれよりも多くのPVOHポリマーを含むPVOHポリマーについての
【数2】
は、式
【数3】
[式中、WはそれぞれのPVOHポリマーの重量百分率であり、Hはそれぞれの加水分解度である]によって計算される。ポリマーが特定の加水分解度を有すると称される場合、そのポリマーは、指定の加水分解度を有する単一のポリビニルアルコールポリマーであっても、指定された平均加水分解度を有するポリビニルアルコールポリマーのブレンドであってもよい。
【0038】
PVOHポリマーの粘度(μ)は、British Standard EN ISO 15023-2:2006 Annex E Brookfield Test methodに記載されているように、ULアダプタを有するBrookfield LVタイプ粘度計を使用して、新たに作製した溶液を測定することによって決定される。20℃における4%ポリビニルアルコール水溶液の粘度を述べるのが、国際的慣習である。本明細書においてセンチポアズ(cP)で指定するすべての粘度は、別段の指定がない限り、20℃における4%ポリビニルアルコール水溶液の粘度を指すことを理解されるべきである。同様に、ポリマーが特定の粘度を有する(または有しない)ものとして記載される場合、別段の指定がない限り、指定の粘度は、本質的に対応する分子量分布を有するポリマーについての平均粘度、すなわち、下に記載する加重自然対数平均粘度(weighted natural log average viscosity)であることが意図される。PVOHポリマーの粘度はPVOHポリマーの重量平均分子量
【数4】
と相関があり、しばしば粘度が
【数5】
の代わりとして使用されることは、当技術分野において周知である。
【0039】
実施形態では、PVOH樹脂は、約1.0~約50.0cPs、約1.0~約40.0cPs、または約1.0~約30.0cPs、例えば約4cPs、8cPs、15cPs、18cPs、23cPs、または26cPsの粘度を有し得る。実施形態では、PVOHコポリマーは、約1.0~約30.0cPs、例えば、約1cPs、1.5cPs、2cPs、2.5cPs、3cPs、3.5cPs、4cPs、4.5cPs、5cPs、5.5cPs、6cPs、6.5cPs、7cPs、7.5cPs、8cPs、8.5cPs、9cPs、9.5cPs、10cPs、11cPs、12cPs、13cPs、14cPs、15cPs、17.5cPs、18cPs、19cPs、20cPs、21cPs、22cPs、23cPs、24cPs、25cPs、26cPs、27cPs、28cPs、29cPs、30cPs、31cPs、32cPs、33cPs、34cPs、または35cPsの粘度を有し得る。実施形態では、PVOHコポリマーは、約21cPs~26cPsの粘度を有し得る。実施形態では、PVOHコポリマーは、約5cPs~約14cPsの粘度を有することができる。
【0040】
ポリビニルアルコールは、溶解性の特徴において変化を受け得る。コポリ(酢酸ビニル ビニルアルコール)ポリマー(PVOHホモポリマー)におけるアセテート基が、酸またはアルカリ性加水分解のいずれかによって加水分解可能であることは、当業者には公知である。加水分解度が上昇するにつれて、PVOHホモポリマーから作製されたポリマー組成物は、機械的強さが上昇するが、低温における溶解性が低下することになる(例えば、完全な溶解のためには熱い水温が必要となる)。したがって、PVOHホモポリマーのアルカリ性環境への曝露により、ポリマーを、所与の水性環境(例えば冷水媒体)において素早く完全に溶解するものから、水性環境においてゆっくりとかつ/または不完全に溶解し、未溶解ポリマー性残留物が生じる可能性があるものに変換することができる。
【0041】
例えばマレエート改質PVOHなどのペンダントカルボキシル基を有するPVOHコポリマーは、近傍にあるペンダントカルボキシル基とアルコール基との間にラクトン環を形成し得、これによってPVOHコポリマーの水溶性が低下し得る。強塩基の存在下では、ラクトン環は、比較的温かく(周囲)、高湿度の条件において、数週間かけて開環し得る(例えば、ラクトン開環反応を介して、対応するペンダントカルボキシル基およびアルコール基を形成し、水溶性が上昇する)。したがって、PVOHホモポリマーを用いて観察される効果とは対照的に、このようなPVOHコポリマーは、保存中に、ポリマーとパウチ内のアルカリ性組成物との間の化学的相互作用に起因して、より溶解性となり得ると考えられる。
【0042】
重合性ビニル結合を有する特定のスルホネートおよびその誘導体は、酢酸ビニルと共重合して、強塩基の存在下で安定な冷水溶解性PVOHポリマーを提供することができる。水溶性繊維の調合に使用することができる、塩基によって触媒されるこれらのコポリマーの加アルコール分解生成物は、素早く溶解するビニルアルコール-スルホン酸塩コポリマーである。PVOHコポリマーにおけるスルホネート基は、水素イオンの存在下でスルホン酸基に戻る場合があるが、スルホン酸基は依然として、ポリマーに優れた冷水溶解性を提供する。実施形態では、ビニルアルコール-スルホン酸塩コポリマーは、残留アセテート基を含有せず(すなわち、全面的に加水分解されている)、そのため、酸またはアルカリ性加水分解のいずれによっても、さらなる加水分解ができない。一般に、改質の量が増加するにつれて水溶性が上昇し、したがって、スルホネートまたはスルホン酸基によって十分に改質されると、水素結合および結晶化度が抑制され、冷水に溶解性とすることができる。酸性または塩基性種の存在下では、コポリマーは一般に、スルホネートまたはスルホン酸基を除いて影響を受けず、酸性または塩基性種の存在下であっても、優れた冷水溶解性が維持される。好適なスルホン酸コモノマー(および/またはそのアルカリ金属塩誘導体)の例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびアクリル酸2-スルホエチルが挙げられ、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)のナトリウム塩が、好ましいコモノマーである。
【0043】
ポリビニルアルコールポリマーであろうとそれ以外であろうと、水溶性ポリマーをブレンドすることができる。ポリマーブレンドがポリビニルアルコールポリマーのブレンドを含む場合、PVOHポリマーブレンドは、PVOHホモポリマー、または1種もしくは複数種のタイプのアニオン性モノマー単位を含むPVOHコポリマー(例えば、PVOHター(またはより高元のコ)ポリマー)を含むことができる、第1のPVOHポリマー(「第1のPVOHポリマー」)と、PVOHホモポリマー、または1種もしくは複数種のタイプのアニオン性モノマー単位を含むPVOHコポリマー(例えば、PVOHター(またはより高元のコ)ポリマー)を含むことができる、第2のPVOHポリマー(「第2のPVOHポリマー」)とを含むことができる。いくつかの態様では、PVOHポリマーブレンドは、第1のPVOHポリマーと、第2のPVOHポリマーのみを含む(例えば、2種のポリマーの二元ブレンド)。代わりにまたは加えて、PVOHポリマーブレンド、またはそれから作製した繊維もしくは不織布ウェブは、他のポリマー(例えば、一般に他の水溶性ポリマー、特に他のPVOH系ポリマー、または両方)を含まない、または実質的に含まないことを特徴とし得る。本明細書において使用する場合、「実質的に含まない」とは、第1および第2のPVOHポリマーが、水溶性の繊維または不織布ウェブにおける水溶性ポリマーの総量の少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%を占めることを意味する。他の態様では、水溶性の繊維または不織布ウェブは、1種または複数種の追加の水溶性ポリマーを含むことができる。例えば、PVOHポリマーブレンドは、第3のPVOHポリマー、第4のPVOHポリマー、第5のPVOHポリマー等(例えば、アニオン性モノマー単位を有するまたは有しない、1種または複数種の追加のPVOHホモポリマーまたはPVOHコポリマー)を含むことができる。例えば、水溶性不織布ウェブは、PVOHポリマー以外(例えば、アニオン性モノマー単位を有するまたは有しない、PVOHホモポリマーまたはPVOHコポリマー以外)である、少なくとも第3(または第4、第5等)の水溶性ポリマーを含むことができる。
【0044】
PVOHポリマー以外の水溶性ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリアクリレート、水溶性アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、プルラン、水溶性天然ポリマー(限定するものではないが、グアーガム、ガムアカシア、キサンタンガム、カラギーナン、およびデンプンが挙げられる)、水溶性ポリマー誘導体(限定するものではないが、加工デンプン、エトキシ化デンプン、およびヒドロキシプロピル化デンプンが挙げられる)、前述のもののコポリマー、ならびに前述のもののいずれかの組合せを挙げることができる。さらに他の水溶性ポリマーとしては、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸およびその塩、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアミノ酸、ポリアミド、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ならびに前述のもののいずれかの組合せを挙げることができる。このような水溶性ポリマーは、PVOHであろうとそれ以外であろうと、多様な供給源から市販されている。実施形態では、繊維形成材料は、カルボキシル改質ポリビニルアルコールを含むことができる。実施形態では、カルボキシル改質PVOHは、マレイン酸モノメチル、マレイン酸、無水マレイン酸、これらのアルカリ塩、およびこれらの組合せからなる群から選択されるマレエートモノマー単位を含む。したがって、実施形態では、カルボキシル改質PVOHは、マレエート改質PVOHを含む。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「マレエート改質PVOH」とは、マレイン酸、マレイン酸モノアルキル、マレイン酸ジアルキル、および/または無水マレイン酸からなる群から選択されるモノマーとの重合から得られるモノマー単位を含むポリビニルアルコールを指す。実施形態では、マレエートモノマー単位は、マレイン酸モノメチルとすることができる。
【0045】
実施形態では、マレエート改質PVOHは、ラクトン環を実質的に含まず、その結果、改質PVOHは、マレエートモノマー単位当たり約2個のペンダントカルボキシレート基を有する。実施形態では、マレエート改質PVOHは、マレエートモノマー単位当たり約1.5個のペンダントカルボキシレート基~2個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.2個のペンダントカルボキシレート基~約2個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1個のペンダントカルボキシレート基~約2個のペンダントカルボキシレート基、例えば、マレエートモノマー単位当たり約2個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.9個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.8個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.7個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.6個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.5個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1.2個のペンダントカルボキシレート基、またはマレエートモノマー単位当たり約1個のペンダントカルボキシレート基を含むことができる。
【0046】
実施形態では、繊維形成材料は、スルホネート改質ポリビニルアルコールを含む。実施形態では、スルホネート改質PVOHは、繊維を構成する唯一のポリビニルアルコール繊維形成材料である。実施形態では、不織布ウェブは、スルホネート改質PVOHが存在する唯一の繊維形成材料である、繊維からなる。実施形態では、繊維形成材料は、スルホネート改質PVOHと、セルロース繊維形成材料またはデンプン繊維形成材料とを含む。実施形態では、繊維形成材料は、スルホネート改質PVOH、およびポリビニルピロリドン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、または両方を含む。実施形態では、スルホネート改質PVOHは、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸2-スルホエチル、これらのアルカリ塩、およびこれらの組合せからなる群から選択されるスルホン化アニオン性モノマー単位を含む。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位は、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸2-スルホエチル、これらのアルカリ塩、およびこれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、これらのアルカリ塩、およびこれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位はAMPSを含む。実施形態では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は、少なくとも95%の加水分解度を有する。実施形態では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は95%~99.9%の範囲の加水分解度を有する。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位は、約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位は、約1mol%~約3mol%の範囲の量で存在する。
【0047】
一般に、AMPS改質PVOHコポリマーまたはマレエート改質PVOHコポリマーは、1つまたは複数の利点を提供するように選択することができる。例えば、AMPSまたはマレエート改質PVOHは、PVOH不織布に損傷をもたらし得る酸、酸化性物質、および塩基などの刺激性化学物質への耐性の改善を提供することができる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、AMPS改質によって、酸が誘導するPVOHの架橋を抑制することができ、これによって水中での不織布の溶解性を低下させることができ、かつAMPS改質および/またはマレエート改質によって、不織布の望ましくない黄変を生じ得る、酸/塩基が誘導するポリエン形成(縮合反応)を抑制することができると考えられる。さらに、AMPSおよびマレエート改質によって、得られる不織布に、1つまたは複数の利点、例えば、不織布における結晶領域の低減を提供することができ、これは溶解時間の低減をもたらす。
【0048】
繊維形成材料が、アニオン性モノマー単位を含むPVOHコポリマーを含む場合、PVOHコポリマー中への1種または複数種のアニオン性モノマー単位の組込みのレベルは、特に限定されない。実施形態では、1種または複数種のアニオン性モノマー単位は、PVOHコポリマー中に、約1mol.%~約10mol.%、約1.5mol.%~約8mol.%、約2mol.%~約6mol.%、約3mol.%~約5mol.%、または約1mol.%~約4mol.%の範囲(様々な実施形態では、例えば、少なくとも約1.0、1.5、1.8、2.0、2.5、3.0、3.5、または4.0mol.%、および最大約3.0、4.0、4.5、5.0、6.0、8.0、または10mol.%)の量で存在する。実施形態では、アニオン性モノマーはマレエートモノマー単位を含み、マレエートモノマー単位は、約1mol%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する。実施形態では、アニオン性モノマーはマレエートモノマー単位を含み、マレエートモノマー単位は、約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する。実施形態では、アニオン性モノマーはスルホン化アニオン性モノマー単位を含み、スルホン化アニオン性モノマー単位は、約1mol%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する。実施形態では、アニオン性モノマーはスルホン化アニオン性モノマー単位を含み、スルホン化アニオン性モノマー単位は、約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する。
【0049】
ポリビニルピロリドンは、モノマーN-ビニルピロリドンを重合させることで作製される合成樹脂である。PVPポリマーの分子量の決定に充てられた、多くの研究が存在する。低分子量ポリマーは、高分子量化合物よりも狭い分子性物質の分布曲線を有する。様々なPVPポリマー生成物の分子量を測定するための技法のいくつかは、絶対分子量分布を決定するための、沈降、光散乱、浸透圧測定、NMR分光法、沸点測定法、およびサイズ排除クロマトグラフィーを測定することに基づく。これらの方法の使用によって、3種の分子量パラメータ、すなわち、数平均(Mn)、粘度平均(Mv)、および重量平均(Mw)のうちのいずれか1種を測定することができる。これらの特徴のそれぞれは、同じポリマーについて異なる応答を生じ得る。そのため、あらゆる文献の調査においては、いずれの分子平均が引用されているかを知らなければならない。
【0050】
実施形態では、ポリビニルピロリドンは、少なくとも約3,000g/molの重量平均分子量
【数6】
を有することできる。様々な実施形態では、PVPは、約3,000g/mol~約1千万g/molの範囲の
【数7】
を有することができる。いくつかの実施形態では、PVPは、約30,000g/mol~約800万g/mol、または約60,000g/mol~500万g/mol、または約80,000g/mol~約500万g/mol、または約100,00g/mol~約500万g/mol、または約150,000g/mol~約400万g/mol、または約200,000g/mol~約400万g/mol、または約500,000g/mol~約400万g/mol、または約100万g/mol~約300万g/molの範囲の
【数8】
を有することができる。実施形態では、PVPは、約120万g/mol~約300万の
【数9】
を有することができる。様々な実施形態では、PVPは、約3,000g/mol~約500万g/mol、例えば、約3,000g/mol、5,000g/mol、10,000g/mol、30,000g/mol、50,000g/mol、100,000g/mol、200,000g/mol、500,000g/mol、100万g/mol、200万g/mol、300万g/mol、400万g/mol、または500万g/molの範囲の
【数10】
を有することができる。重量平均分子量は、当業者により、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー)などの方法によって決定することができる。PVP樹脂が特定の分子量を有する(または有しない)ものとして記載される場合、別段の指定がない限り、指定の分子量は、本質的に対応する分子量分布を有する樹脂についての平均分子量であることが意図される。
【0051】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、本明細書に開示する高Mw PVPポリマーは、不織布が乾燥および/または吸湿性構成要素と接触した場合、不織布を出て移動することに抵抗するため、有利であると考えられる。Mwが高いほど、個々のポリマー鎖はより絡み合うことができ、その結果、PVP鎖が不織布の他の構成要素から分離し、フィルムを出て移動する可能性が低いと考えられる。
【0052】
PVPポリマーは、本明細書に記載する不織布ウェブの繊維に繊維形成材料として加えた場合、いくつかの利点を提供することができる。例えば、理論によって束縛されることを意図するものではないが、PVPポリマーのピロリドン官能基が、刺激性化学物質からのHイオンと反応する酸トラップおよび/またはpH緩衝剤として作用することができ(下のスキーム1に示す)、これによって、酸が誘導する架橋およびポリビニルアルコールの変色が妨げられると考えられる。さらに、刺激性化学物質と接触しているPVOHホモポリマーまたはコポリマー不織布ウェブは、刺激性化学物質が不織布ウェブから水および/または可塑剤を吸い取るため、典型的には経時的に脆化する。刺激性化学物質は吸湿性であり得、他の極性溶媒、および可塑剤として一般に使用されるものなどの材料の吸収につながる可能性がある。しかしながら、有利には、本明細書に記載する繊維形成材料中のPVOHコポリマーとPVPとの組合せにより、刺激性化学物質の存在下で不織布ウェブが脆化するのを防止するのに役立ち得る。本明細書に記載する不織布におけるPVPは、可塑剤と同様に作用することができるが、刺激性化学物質による不織布ウェブからの吸い取りに耐性がある。PVPはまた、フィルムが比較的少量の伝統的な可塑剤含有量および水含有量を含む場合であっても、本明細書における不織布ウェブが可撓性を維持することを可能にし得る。
【0053】
スキーム1
【化1】
【0054】
本明細書に記載するように、スルホネート改質PVOHとカルボキシル改質PVOHとの組合せは、有利なことに、酸、酸化性物質、または塩基などの刺激性化学物質の存在下での分解への耐性を提供することができる。
【0055】
本明細書に記載するように、スルホネート改質PVOHは、有利なことに、塩基媒介酸化性物質などの刺激性化学物質の存在下における、不織布の分解への耐性を提供することができる。本明細書において使用する場合、「塩基媒介酸化性物質」という用語は、塩基性機構の酸化経路を使用して、別の化学種を酸化する酸化性物質を指す。塩基性機構の酸化経路とは、OHなどの塩基が、試薬の酸化反応を開始または触媒する経路を指す。例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ならびに次亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸カルシウムと同様の構造を有する一価および二価の塩は、塩基媒介酸化性物質と考えられる。
【0056】
本明細書に記載するように、PVOHとPVPとの組合せは、有利には、酸、酸化性物質、または塩基などの刺激性化学物質の存在下での分解への耐性を提供することができる。例えば、単独の樹脂としてPVOHを使用する場合、刺激性化学物質がPVOHと反応して、不織布ウェブを急速に分解させ得る。対照的に、PVOHとPVPとの組合せは、不織布ウェブの分解を停止または少なくとも減速することができることが、有利なことに見出されている。理論によって束縛されることを意図するものではないが、PVPのピロリドン官能基が酸トラップとして作用し、刺激性化学物質からのHイオンと相互作用して、ビニルアルコールのヒドロキシル単位の酸触媒脱離を、Hイオンが促進することを防止し、これによって、ポリビニルアルコールの分解が妨げられ得ると考えられる。従来の水溶性PVOHフィルムは、塩素化殺菌剤、ならびに他の酸化性化学物質、酸、およびある特定の塩基などの刺激性化学物質の存在下で、分解する傾向を有する。過剰な酸化によって、フィルムは水に不溶性となり、したがって、単位用量包装剤のために有効ではなくなる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、ある特定の刺激性化学物質によって生成される次亜塩素酸イオンは、PVOHコポリマーフィルムにおけるペンダント-OH部分を酸化し、ポリマー骨格にカルボニル基を生じると考えられる。カルボニル基は、酸性アルファ水素を生じるため、ポリエン形成(および黄変)に向かう中間ステップである。カルボニル基は、鎖の切断への中間体でもある。加えて、ある特定の刺激性化学物質によって生成される塩酸は、ヒドロキシル基と反応してポリマー骨格に不飽和結合を生じ得、水中溶解性の減少およびフィルムの変色をもたらす場合がある。いずれの事象においても、ペンダント-OH基の除去により、フィルムはますます水に不溶性となる。
【0057】
刺激性化学物質と接触している、単独の繊維形成材料として典型的なPVOHホモポリマーまたはコポリマーを含む不織布ウェブは、有利には、刺激性化学物質の存在下で残留水が不織布ウェブを出て移動するため脆化しないが、しかしながら、このような水の減少は、繊維の、究極的には不織布ウェブの収縮をもたらす場合がある。さらに有利には、スルホネート改質PVOHおよび/またはPVPは、カルボキシル改質PVOHのためのレオロジー改質剤と同様に作用することができることで、繊維生成中の繊維形成材料の流動を制御することができ、かつ刺激性化学物質によるカルボキシル改質PVOHの分解を抑制することによって、刺激性化学物質の存在下で、カルボキシル改質PVOHに化学的適合性が付与される。
【0058】
本明細書に記載する水溶性不織布ウェブは、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料を含むことができ、スルホネート改質PVOHおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料は、それぞれ、約3:1~約19:1の重量比で提供することができる。実施形態では、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料の、スルホネート改質PVOHおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比は、それぞれ重量で、約3:1~約18.2、約3:1~約17:1、約5:1~約15:1、約5:1~約12:1、約5:1~約9:1、約6:1~約9:1、または約6.5:1~約7.5:1である。実施形態では、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料の、スルホネート改質PVOHおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比は、それぞれ重量で、約5:1~約15:1、約5:1~約12:1、約5:1~約9:1、約6:1~約9:1、約6.5:1~約7.5:1、約3:1~約6.5:1、または約3:1~約5:1である。
【0059】
実施形態では、本明細書に開示する水溶性不織布ウェブは、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質PVOH、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含むことができる。実施形態では、ポリビニルピロリドン繊維形成材料の、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、または両方に対する重量比は、それぞれ重量で、約1:1~約1:19である。実施形態では、ポリビニルピロリドン繊維形成材料の、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、または両方に対する重量比は、それぞれ、約1:3~約1:19、重量で約1:5~約1:15、重量で約1:5~約1:12、重量で約1:5~約1:9、重量で約1:6~約1:9、または重量で約1:6.5~約1:7.5である。
【0060】
水溶性不織布ウェブ
【0061】
本開示の水溶性不織布ウェブは一般に、複数の水溶性繊維を含む。不織布ウェブとは、一般に、互いに結合した繊維の配列物であって、繊維が織られても編まれてもいない配列物を指す。一般に、複数の水溶性繊維は、任意の配向に配列することができる。実施形態では、複数の水溶性繊維は、ランダムに配列される(すなわち、配向を有しない)。実施形態では、複数の水溶性繊維は、一方向配向に配列される。実施形態では、複数の水溶性繊維は、二方向配向に配列される。いくつかの実施形態では、複数の水溶性繊維は多方向性であり、不織布ウェブの異なるエリアでは異なる配列を有する。
【0062】
一般に、任意の所与の不織布ウェブ中の複数の繊維は、本明細書に開示する任意の繊維形成材料を含むことができる。不織布ウェブは、(1)単一の繊維形成材料を含む単一の繊維タイプ、(2)繊維形成材料のブレンドを含む単一の繊維タイプ、(3)各繊維タイプが単一の繊維形成材料を含む、繊維タイプのブレンド、(4)各繊維タイプが繊維形成材料のブレンドを含む、繊維タイプのブレンド、または(5)各繊維タイプが単一の繊維形成材料もしくは繊維形成材料のブレンドを含む、繊維タイプのブレンドを含むことができる。繊維タイプのブレンドを含む実施形態では、異なる繊維タイプは、直径、長さ、靱性、形状、剛性、弾性、溶解性、融点、ガラス転移温度(T)、繊維形成材料化学、色、またはこれらの組合せにおける差異を有することができる。
【0063】
実施形態では、複数の水溶性繊維は、ポリビニルアルコールポリマーを含む。前述の実施形態の改良では、水溶性繊維は、PVOHコポリマーを含む。実施形態では、水溶性繊維は、単一のPVOHコポリマー樹脂を含む。実施形態では、水溶性繊維は、ポリビニルアルコールポリマーのブレンドを含む、繊維形成材料のブレンドを含む。実施形態では、水溶性繊維は、ポリビニルアルコールポリマーとPVPポリマーとのブレンドを含む、繊維形成材料のブレンドを含む。実施形態では、水溶性ポリマーは、2種またはそれよりも多くのPVOHコポリマーと、1種のPVPポリマーとを含む。
【0064】
実施形態では、不織布ウェブは、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む、複数の繊維を含むことができる。実施形態では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は、少なくとも95%の加水分解度を有する。実施形態では、スルホン化アニオン性モノマーは、約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する。
【0065】
実施形態では、少なくとも95%の加水分解度を有し、スルホン化アニオン性モノマーが約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する、AMPS改質PVOHなどのスルホネート改質PVOHを含む繊維を含む、本明細書に記載する不織布ウェブまたは単位用量は、1つまたは複数の利点を提供することができる。例えば、不織布ウェブを分解させる、塩基媒介酸化性物質などの刺激性化学物質への耐性の改善である。さらに、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は、ウェブを次亜塩素酸カルシウムなどの塩基媒介酸化性物質組成物に、38℃および80%RH雰囲気において6週間曝露することによって決定される、良好な長期保存特性(例えば、溶解特性および変色への耐性の維持)を有する不織布ウェブを提供することができる。このようなウェブは、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を示し、かつ/または3.5を超えない、もしくは3.0を超えないb値を維持することができる。38℃および80%RH雰囲気は、4mil高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムから調製した二次包装中で、水溶性不織布ウェブを塩基媒介酸化性物質と接触させて包装することによって、維持することができる。
【0066】
実施形態では、不織布ウェブは、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質PVOH、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンドは、ポリビニルピロリドンとスルホネート改質PVOHとを含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンドは、ポリビニルピロリドンとカルボキシル改質PVOHを含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンドは、ポリビニルピロリドンと、スルホネート改質PVOHと、カルボキシル改質PVOHとを含むことができる。
【0067】
実施形態では、ポリビニルピロリドン、およびカルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH、または両方の組合せを含む繊維を含む、本明細書に記載する不織布ウェブまたは単位用量は、1つまたは複数の利点を提供することができる。例えば、不織布ウェブに損傷をもたらす、酸、酸化性物質、および塩基などの刺激性化学物質への耐性の改善である。さらに、組合せは、ウェブをトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)または重硫酸ナトリウム(SBS)組成物に、38℃および80%RH雰囲気において8週間曝露することによって決定される、良好な長期保存特性(例えば、溶解特性および変色への耐性の維持)を有する不織布ウェブを提供することができる。このようなウェブは、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を示し、出発不織布ウェブおよび23℃の水中でMSTM 205に従って試験した後の不織布ウェブの表面積に基づくと、50%を超えない不織布ウェブ残留物が残り、かつ/または3.5を超えないb値を維持することができる。TCCAは、当技術分野における最も刺激性が強い酸化性物質の1つであると考えられ、そのため、すべての刺激性化学物質についての良好な代わりとなると考えられる。38℃および80%RH雰囲気は、4mil高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムから調製した二次包装中で、水溶性不織布ウェブを刺激性化学物質と接触させて包装することによって、維持することができる。
【0068】
実施形態では、水溶性不織布ウェブは、
(a)(i)カルボキシル改質PVOHと、(ii)スルホネート改質PVOH、PVP、もしくは両方とを含む繊維形成材料のブレンド、
(b)(iii)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料を含む繊維と、(iv)スルホネート改質PVOH繊維形成材料、PVP繊維形成材料を含む繊維、もしくは両方のタイプの繊維を含む繊維とを含む繊維のブレンド、または
(c)(v)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、もしくはPVP繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、PVP繊維形成材料、もしくはこれらの組合せを含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含む繊維のブレンド
を含む複数の繊維を含むことができ、
(a)、(b)、および(c)のいずれかにおいて、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料の、スルホネート改質PVOHおよび/またはPVP繊維形成材料に対する重量比は、それぞれ重量で、約3:1~約19:1である。
【0069】
実施形態では、繊維形成材料のブレンド(a)は、(i)マレエート改質PVOH繊維形成材料と、(ii)スルホネート改質PVOH繊維形成材料とを含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンド(a)は、(i)マレエート改質PVOH繊維形成材料と、(ii)PVP繊維形成材料とを含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンド(a)は、(i)マレエート改質PVOH繊維形成材料と、(ii)スルホネート改質PVOH繊維形成材料およびPVP繊維形成材料とを含むことができる。実施形態では、繊維形成材料のブレンド(a)は、(ii)PVP繊維形成材料を含むことができる。前述の実施形態の改良では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料はAMPSを含む。
【0070】
実施形態では、繊維のブレンド(b)は、(iii)マレエート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維と、(iv)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(b)は、(iii)マレエート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維と、(iv)PVP繊維形成材料を含む繊維とを含むことができ、実施形態では、繊維のブレンド(b)は、(iii)マレエート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維と、(iv)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維およびPVP繊維形成材料を含む繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(b)は、(iv)PVP繊維形成材料を含む繊維を含むことができる。前述の実施形態の改良では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料はAMPSを含む。
【0071】
実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびPVP繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、およびPVP繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(vi)PVP繊維形成材料を含む第2の繊維を含むことができる。前述の実施形態の改良では、カルボキシル改質PVOHはマレエート改質PVOHを含み、スルホネート改質PVOH繊維形成材料はAMPSを含む。
【0072】
実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびPVP繊維形成材料、またはこれらの組合せを含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、およびPVP繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。前述の実施形態の改良では、カルボキシル改質PVOHはマレエート改質PVOHを含み、スルホネート改質PVOH繊維形成材料はAMPSを含む。
【0073】
実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)PVP繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)PVP繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料およびPVP繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。実施形態では、繊維のブレンド(c)は、(v)PVP繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質PVOH繊維形成材料、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、およびPVP繊維形成材料を含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含むことができる。前述の実施形態の改良では、カルボキシル改質PVOHはマレエート改質PVOHを含み、スルホネート改質PVOH繊維形成材料はAMPSを含む。
【0074】
実施形態では、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、例えばAMPS改質PVOH、またはカルボキシル改質PVOH繊維形成材料、例えばマレエート改質PVOH、またはPVP繊維形成材料を含む、本明細書に記載する水溶性不織布ウェブは、1つまたは複数の利点を提供するように選択することができる。実施形態では、マレエート改質PVOHと、AMPS改質PVOH、PVP、またはこれらの組合せとを含む、繊維および/または繊維形成材料のブレンドは、水溶性不織布に損傷をもたらす、酸、酸化性物質、および塩基などの刺激性化学物質への耐性の改善を提供することができる。
【0075】
実施形態では、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料と、スルホネート改質PVOHおよび/またはPVP繊維形成材料との組合せを含む繊維を含む、本明細書に記載する水溶性不織布ウェブまたは単位用量は、1つまたは複数の利点を提供することができる。例えば、水溶性フィルムに損傷をもたらす、酸、酸化性物質、および塩基などの刺激性化学物質への耐性の改善である。さらに、組合せは、ウェブをトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)または重硫酸ナトリウム(SBS)組成物に、38℃および80%RH雰囲気において8週間曝露することによって決定される、良好な長期保存特性を有する水溶性ウェブを提供することができる。このようなウェブは、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を示し、出発不織布ウェブおよび23℃の水中でMSTM 205に従って試験した後の不織布ウェブの表面積に基づくと、50%を超えない不織布ウェブ残留物が残り、少なくとも90%の平均伸びを維持し、かつ/または3.5を超えないb値を維持することができる。TCCAは、当技術分野における最も刺激性が強い酸化性物質の1つであり、そのため、すべての刺激性化学物質についての良好な代わりであると考えられる。38℃および80%RH雰囲気は、4mil高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムから調製した二次包装中で、水溶性不織布ウェブを刺激性化学物質と接触させて包装することによって維持した。
【0076】
不織布ウェブは、限定するものではないが、ポリビニルアルコール(例えば、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH)、ポリビニルピロリドン、水溶性アクリレートコポリマー、ポリエチレンイミン、プルラン、限定するものではないが、グアーガム、ガムアカシア、キサンタンガム、カラギーナン、およびデンプンを含めた水溶性天然ポリマー、水溶性ポリマー加工デンプンを含めた、1種または複数種の水溶性ポリマー、前述のもののコポリマー、または前述のもののいずれかの組合せを含む繊維形成材料を含む繊維をさらに含むことができる。さらに他の水溶性ポリマーとしては、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸およびその塩、ポリアミノ酸、ポリアミド、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、または前述のもののいずれかの組合せを挙げることができる。このような水溶性ポリマーは、多様な供給源から市販されている。一タイプの実施形態では、追加のポリマー(複数可)のタイプおよび/または量によって、刺激性化学物質への耐性がより低い水溶性不織布ウェブを生じない。実施形態では、(a)複数の繊維のうちの複数が、セルロース、デンプン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、もしくはこれらの組合せを含む繊維をさらに含む、(b)スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む複数の繊維が、セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、もしくはこれらの組合せを含む繊維形成材料をさらに含む、または(c)(a)と(b)との組合せ。実施形態では、複数の繊維は、セルロース、デンプン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、またはこれらの組合せを含む繊維をさらに含むことができる。実施形態では、複数の繊維は、スルホネート改質PVOH繊維形成材料、およびセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシル化アニオン性モノマー単位を含むカルボキシル改質PVOH、またはこれらの組合せを含む繊維形成材料のブレンドを含む繊維を含むことができる。実施形態では、セルロースは、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、前述のものの塩、または前述のものの組合せを含むことができる。実施形態では、セルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムを含むことができる。実施形態では、CMCは、約20%~約60%の置換を有することができる。
【0077】
水溶性繊維および/または水溶性不織布ウェブは、他の助剤および処理剤、例えば、限定するものではないが、可塑剤、可塑剤相溶化剤、界面活性剤、着色剤、酸捕捉剤、滑沢剤、離型剤、充填剤、増量剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、粘着防止剤(detackifying agent)、消泡剤、層状シリケート型ナノ粘土(例えば、モンモリロナイトナトリウム)などのナノ粒子、漂白剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、または他のもの)、苦味剤などの嫌悪剤(例えば、安息香酸デナトニウム、サッカリンデナトニウム、および塩化デナトニウムなどのデナトニウム塩;スクロースオクタアセテート;キニーネ;ケルセチンおよびナリンゲン(naringen)などのフラボノイド;ならびにカシンおよびブルシンなどのクアシノイド)、ならびに刺激物(例えば、カプサイシン、ピペリン、イソチオシアン酸アリル、およびレシニフェラトキシン(resinferatoxin))、セルロース、デンプン、ならびに他の機能性成分を、意図する目的に好適な量で含むことができる。具体的なこのような助剤および処理剤は、水溶性繊維における使用に好適なもの、または水溶性不織布ウェブにおける使用に好適なものから選択することができる。
【0078】
実施形態では、水溶性繊維および/または不織布ウェブは、セルロース、デンプン、またはこれらの組合せを含む。実施形態では、水溶性繊維および/または不織布ウェブは、セルロースを含む。実施形態では、水溶性繊維および/または不織布ウェブは、デンプンを含む。
【0079】
実施形態では、水溶性繊維および水溶性不織布ウェブは、助剤を含まない。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、繊維について「助剤を含まない」とは、繊維が、繊維の総重量を基準として、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、または約0.001重量%未満の助剤を含むことを意味する。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、不織布ウェブについて「助剤を含まない」とは、不織布ウェブが、不織布ウェブの総重量を基準として、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、または約0.001重量%未満の助剤を含むことを意味する。実施形態では、水溶性繊維は可塑剤を含む。実施形態では、水溶性繊維は界面活性剤を含む。実施形態では、不織布ウェブは可塑剤を含む。実施形態では、不織布ウェブは界面活性剤を含む。実施形態では、水溶性繊維は、可塑剤、界面活性剤、セルロース、デンプン、またはこれらの組合せ以外の助剤を含まない。実施形態では、水溶性不織布ウェブは、可塑剤、界面活性剤、セルロース、デンプン、またはこれらの組合せ以外の助剤を含まない。
【0080】
可塑剤とは、材料(通常は樹脂またはエラストマー)に加えて、その材料をより柔らかく、より可撓性にし(ポリマーのガラス転移温度を低下させることによって)、より処理を容易にする、液体、固体、または半固体である。あるいは、ポリマーまたはモノマーを化学修飾することによって、ポリマーを内部的に可塑化することもできる。加えて、または代わりに、好適な可塑化剤の添加によって、ポリマーを外部的に可塑化することもできる。水は、PVOH、および水溶性ポリマーを含むがこれに限定されない他のポリマーのための、非常に効率的な可塑剤であると認識されているが、ポリマー不織布ウェブは、低いおよび高い相対湿度を含めた多様な周囲条件に対して、少なくともいくらかの耐性(堅牢性)を有する必要があるため、水はその揮発性によって実用性が限定される。
【0081】
可塑剤としては、限定するものではないが、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、最大400MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPDiol(登録商標))、エタノールアミン、マルチトール、およびこれらの混合物を挙げることができる。実施形態では、可塑剤は、グリセロール、マルチトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの組合せからなる群から選択される。繊維中に提供する非水可塑剤の総量は、総繊維重量を基準として、約1重量%~約45重量%、または約5重量%~約45重量%、または約10重量%~約40重量%、または約20重量%~約30重量%、約1重量%~約4重量%、または約1.5重量%~約3.5重量%、または約2.0重量%~約3.0重量%の範囲、例えば、約1重量%、約2.5重量%、約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、または約40重量%とすることができる。
【0082】
繊維における使用のための界面活性剤は、当技術分野において周知である。必要に応じて、界面活性剤は、カーディング中の繊維の分散を支援するために含まれる。本開示の繊維に好適な界面活性剤としては、限定するものではないが、スルホコハク酸ジアルキル、グリセロールおよびプロピレングリコールのラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸のラクチル系(lactylic)エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、アルキルポリエチレングリコールエーテル、レシチン、グリセロールおよびプロピレングリコールのアセチル化脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸のアセチル化エステル、ミリスチルジメチルアミンオキシド、トリメチル獣脂アルキルアンモニウムクロリド、第四級アンモニウム化合物、第四級アミン、約8~24個の炭素原子を含有する高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキルポリエチレングリコールエーテル、硫酸アルキル、アルキルポリエトキシレートサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、モノエタノールアミン、ラウリルアルコールエトキシレート、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、コカミド、これらの塩、ならびに前述のもののいずれかの組合せが挙げられる。実施形態では、界面活性剤は、第四級アミン、ミリスチルジメチルアミンオキシド、アルキルポリエチレングリコールエーテル、コカミド、またはこれらの組合せを含む。
【0083】
好適な界面活性剤としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性、および双性イオン性のクラスを挙げることができる。好適な界面活性剤としては、限定するものではないが、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、モノエタノールアミン、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第三級アセチレン系グリコールおよびアルカノールアミド(非イオン性)、ポリオキシエチレン化アミン、第四級アンモニウム塩および第四級化ポリオキシエチレン化アミン(カチオン性)、約8~24個の炭素原子を含有する高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル、アルキルポリエトキシレートサルフェートおよびアルキルベンゼンスルホネート(アニオン性)、ならびにアミンオキシド、N-アルキルベタインおよびスルホベタイン(双性イオン性)が挙げられる。他の好適な界面活性剤としては、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、グリセリンおよびプロピレングリコールのラクチル化脂肪酸エステル、脂肪酸のラクチル系エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、レシチン、グリセリンおよびプロピレングリコールのアセチル化脂肪酸エステル、ならびに脂肪酸のアセチル化エステル、ならびにこれらの組合せが挙げられる。様々な実施形態では、繊維中の界面活性剤の量は、約0.01重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約0.01重量%~0.25重量%、または約0.10重量%~0.20重量%の範囲である。
【0084】
特定の実施形態では、水溶性フィルムに使用する界面活性剤は、第四級アンモニウム界面活性剤、または塩基性で、ヒンダードアミンの特徴を含む他の界面活性剤とすることができ、有利には、刺激性化学物質からの酸化防止剤保護を提供することができる。例えば、ミリスチル(C14)ジメチルアミンオキシド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド塩、またはこれらの組合せは、フィルムに有利な酸化防止剤保護を提供することができる。
【0085】
実施形態では、本明細書における水溶性不織布ウェブは、1種または複数種の酸捕捉剤および/または酸化防止剤をさらに含むことができる。酸捕捉剤および/または酸化防止剤は、水溶性不織布ウェブの分解の低減、または水溶性不織布ウェブの黄変の低減、または水溶性不織布ウェブの引張強さの維持など、水溶性不織布ウェブに対する組成物の損傷する効果を低減すると考えられる。さらに、理論によって束縛されることを意図するものではないが、酸捕捉剤または酸化防止剤を含むことで、酸触媒加水分解および縮合反応が緩和され、次亜塩素酸の形態のハイポクロライトの酸化活性を促進し得る、不織布ウェブ環境中の酸の量の低減が支援されると考えられる。
【0086】
実施形態では、酸捕捉剤は、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、活性化オレフィン、マレエート分子(例えば、マレイン酸およびその誘導体)、アリル系化合物(例えば、アリル系アルコール、アリル系アセテート等)、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、アミン(例えば、ピリジン、モノエタノールアミン、メチルアミン、アニリン)、および第三級アミン含有化合物のうちの1つまたは複数を含むことができる。酸捕捉剤は、本明細書に記載するフィルム中に、約0.25PHR~約15PHRの範囲、例えば、約0.25PHR、約1PHR、約1.5PHR、約2PHR、約3PHR、約4PHR、約5PHR、約5.5PHR、約6PHR、約6.5PHR、約7PHR、約8PHR、約9PHR、約10PHR、または約15PHRの量で含むことができる。
【0087】
実施形態では、酸捕捉剤は、繊維中もしくは繊維上、不織布ウェブ中もしくは不織布ウェブ上、または両方の中もしくは上に提供することができる。実施形態では、酸捕捉剤は、繊維上にコーティングされている、不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方であることができる。実施形態では、酸捕捉剤は、不織布ウェブ全体に分散させることができる。酸捕捉剤は、不織布ウェブ全体の繊維に吸着させることも、静電気力によって結合させることもできる。例えば、酸捕捉剤は、繊維が敷かれているときに加えられて、酸捕捉剤が不織布ウェブ全体に提供されるようにすることができる。実施形態では、酸捕捉剤は、処理中の繊維形成材料に提供されて、酸捕捉剤が繊維自体に提供されるようにすることができる。
【0088】
実施形態では、水溶性不織布ウェブは、酸化防止剤、例えば、塩化物捕捉剤をさらに含むことができる。例えば、好適な酸化防止剤/塩化物捕捉剤としては、サルファイト、ビサルファイト、チオサルフェート、チオサルフェート、ヨージド、ニトライト、カルバメート、アスコルベート、およびこれらの組合せが挙げられる。実施形態では、没食子酸プロピル(PGA)、没食子酸、クエン酸(CA)、メタ重亜硫酸ナトリウム(SMBS)、カルバメート、アスコルベート、およびこれらの組合せから選択される酸化防止剤。実施形態では、酸化防止剤は、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、クエン酸、酢酸亜鉛、およびこれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、酸化防止剤は、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酢酸亜鉛、およびこれらの組合せからなる群から選択することができる。酸化防止剤は、不織布ウェブ中に、約0.25~約10PHRの範囲、例えば、約0.25PHR、約1PHR、約1.5PHR、約2PHR、約3PHR、約4PHR、約5PHR、約5.5PHR、約6PHR、約6.5PHR、約7PHR、約8PHR、約9PHR、または約10PHRの量で含むことができる。実施形態では、酸化防止剤は、不織布ウェブ中に、約2~約7PHRの範囲の量で含むことができる。
【0089】
実施形態では、酸化防止剤は、繊維中もしくは繊維上、不織布ウェブ中もしくは不織布ウェブ上、または両方の中もしくは上に提供することができる。実施形態では、酸化防止剤は、繊維上にコーティングされている、不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方であることができる。実施形態では、酸化防止剤は、不織布ウェブ全体に分散させることができる。酸化防止剤は、不織布ウェブ全体の繊維に吸着させることも、静電気力によって結合させることもできる。例えば、酸化防止剤は、繊維が敷かれているときに加えられて、酸捕捉剤が不織布ウェブ全体に提供されるようにすることができる。実施形態では、酸化防止剤は、処理中の繊維形成材料に提供されて、酸捕捉剤が繊維自体に提供されるようにすることができる。
【0090】
実施形態では、水溶性不織布ウェブは、充填剤、例えば、高アミロースデンプン、非晶質シリカ、ヒドロキシエチル化デンプン、およびこれらの組合せからなる群から選択される充填剤をさらに含むことができる。充填剤は、酸捕捉剤および酸化防止剤について本明細書に記載したように、繊維中もしくは繊維上、不織布ウェブ中もしくは不織布ウェブ上、または両方の中もしくは上に提供することができる。実施形態では、充填剤は、繊維上にコーティングされている、不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方であることができる。実施形態では、充填剤は、不織布ウェブ全体に分散させることができる。充填剤は、不織布ウェブ全体の繊維に吸着させることも、静電気力によって結合させることもできる。実施形態では、充填剤は、繊維形成材料中に提供することができる。
【0091】
複数の水溶性繊維は、当技術分野において公知の任意のプロセス、例えば、湿式冷却ゲル紡糸、熱可塑性繊維紡糸、メルトブローイング、スパンボンディング、電界紡糸、回転紡糸、連続フィラメント生成操作、トウ繊維生成操作、およびこれらの組合せによって調製することができる。実施形態では、繊維は、湿式冷却ゲル紡糸、メルトブローイング、スパンボンディング、またはこれらの組合せによって調製された水溶性繊維を含む。実施形態では、繊維は、湿式冷却ゲル紡糸によって調製された水溶性繊維を含み、不織布ウェブへとカーディングされる。
【0092】
繊維および不織布ウェブを、それを調製するのに使用されるプロセスによって言及することは、当技術分野において標準的である。したがって、本明細書における、例えば「メルトブローン繊維」または「カード式不織布ウェブ」への言及はいずれも、特定のメルトブローンまたはカーディング方法についてのプロダクトバイプロセス限定ではなく、むしろ特定の繊維またはウェブを同定しているにすぎないと理解されるべきである。そのため、加工の用語は、列挙された繊維および/または不織布をいずれの特定のプロセスによる調製にも限定することなく、繊維および/または不織布を区別するために使用され得る。
【0093】
本開示の繊維は、二構成要素繊維とすることができる。本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、「二構成要素繊維」とは、繊維形成材料のブレンドを含む繊維を指すのではなく、むしろ、2つまたはそれよりも多くの別個の領域の繊維形成材料を含み、繊維形成材料の組成が領域によって異なる繊維を指す。二構成要素繊維の例としては、限定するものではないが、芯/鞘二構成要素繊維、海中島二構成要素繊維、および並列二構成要素繊維が挙げられる。芯/鞘二構成要素繊維は一般に、第1の組成の繊維形成材料(例えば、単一の繊維形成材料、または繊維形成材料の第1のブレンド)を有する芯と、第2の組成の繊維形成材料(例えば芯材料とは異なる単一の繊維形成材料、または芯の繊維形成材料の第1のブレンドとは異なる、繊維形成材料の第2のブレンド)を有する鞘とを含む。海中島二構成要素繊維は一般に、第1の組成の繊維形成材料を有する第1の連続した「海」領域と、その中に分散した、第1の組成とは異なる第2の組成の繊維形成材料を有する、別個の「島」領域とを含む。並列二構成要素繊維は一般に、繊維の長さ方向に延びる、第1の組成の繊維形成材料を含む第1の領域と、繊維の長さ方向に延びる、第1の組成とは異なる第2の組成の繊維形成材料を含む第2の領域とを含み、第1の領域は少なくとも第2の領域に隣接する。このような二構成要素繊維は、当技術分野において周知である。
【0094】
繊維の形状は特に限定されないが、円形、楕円形(リボンとも称される)、三角形(デルタとも称される)、三葉型、および/または他の多葉形状(図1)を含むがこれらに限定されない断面形状を有することができる。繊維の形状が完全に幾何学的である必要はなく、例えば、円形断面形状を有する繊維は、断面積として完全な円を有する必要はなく、三角形断面形状を有する繊維は一般に、丸まった角を有することが理解されよう。理論によって束縛されることを意図するものではないが、液体のための毛細管または溝タイプの方向性流路を提供する形状を有する、不織布中の吸湿性繊維(例えば三葉型繊維)では、毛細管作用/不織布の表面からの液体の吸い上げが推進され、毛細管または溝タイプの方向性流路を含まない繊維形状を有する、同一の不織布と比較して、改善された液体の獲得を提供することができると考えられる。
【0095】
繊維の直径とは、最長の断面軸に沿った繊維の断面直径を指すことが理解されよう。繊維が特定の直径を有する(または有しない)と記載される場合、別段の指定がない限り、指定の直径は、言及した特定の繊維タイプについての平均直径であること、すなわち、ポリビニルアルコール繊維形成材料から調製した複数の繊維が、複数の繊維の間で算術平均の繊維直径を有することが意図される。典型的には「直径」を有すると考えられない形状、例えば、三角形または多葉形状については、直径は、繊維形状に外接する円の直径を指す(図1)。
【0096】
本開示の繊維は、典型的には、約10ミクロン~300ミクロンの範囲、例えば、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、少なくとも20ミクロン、少なくとも25ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも100ミクロン、または少なくとも125ミクロン、かつ最大約300ミクロン、最大約275ミクロン、最大約250ミクロン、最大約225ミクロン、最大約200ミクロン、最大約100ミクロン、最大約50ミクロン、最大約45ミクロン、最大約40ミクロン、または最大約35ミクロン、例えば、約10ミクロン~約300ミクロン、約50ミクロン~約300ミクロン、約100ミクロン~約300ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約10ミクロン~約45ミクロン、または約10ミクロン~約40ミクロンの範囲の直径を有する。実施形態では、本開示の水分散性不織布ウェブを調製するために使用する水溶性繊維は、100ミクロン超~約300ミクロンの直径を有することができる。実施形態では、繊維は、約10ミクロン~約50ミクロン、約10ミクロン~約30ミクロン、約10ミクロン~約25ミクロン、約10ミクロン~約20ミクロン、または約10ミクロン~約15ミクロンの範囲の直径を有するセルロースを含む。実施形態では、繊維は、水溶性繊維形成材料を含み、約50ミクロン~約300ミクロン、約100ミクロン~約300ミクロン、約150ミクロン~約300ミクロン、または約200ミクロン~約300ミクロンの直径を有する。実施形態では、本開示の水分散性不織布ウェブを調製するための使用する、複数の水溶性繊維の直径は、実質的に一様な直径を有する。本明細書において使用する場合、繊維の間で直径の分散が10%未満、例えば、8%もしくはそれ未満、5%もしくはそれ未満、2%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満である場合、繊維直径は「実質的に一様」である。実質的に一様な直径を有する繊維は、本明細書に記載する、湿式冷却ゲル紡糸プロセスまたは熱可塑性繊維紡糸によって調製することができる。さらに、繊維のブレンドを使用する場合、繊維の平均直径は、個々の繊維の加重平均を使用して決定することができる。
【0097】
本開示の不織布ウェブおよび不織布複合物品を調製するために使用する、本開示の繊維は一般に、任意の長さのものとすることができる。実施形態では、繊維の長さは、約20mm~約100mm、約20~約90、約30mm~約80mm、約10mm~約60mm、または約30mm~約60mmの範囲、例えば、少なくとも約30mm、少なくとも約35mm、少なくとも約40mm、少なくとも約45mm、または少なくとも約50mm、かつ最大約100mm、最大約95mm、最大約90mm、最大約80mm、最大約70mm、または最大約60mmとすることができる。実施形態では、水溶性繊維の長さは、約30mm未満、または約0.25mm~約30mm未満の範囲、例えば、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.75mm、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7.5mm、または少なくとも約10mm、かつ最大約29mm、最大約28mm、最大約27mm、最大約26mm、最大約25mm、最大約20mm、または最大約15mmとすることができる。繊維は、押出しポリマー混合物を、切断および/または捲縮することによって、任意の長さに調製することができる。実施形態では、繊維は、例えば、スパンボンディング、メルトブローイング、電界紡糸、および回転紡糸などのプロセスによって調製された連続フィラメントとすることができ、連続フィラメントを調製し、直接ウェブ形態に提供することができる。さらに、繊維のブレンドを使用する場合、繊維の平均長さは、個々の繊維の加重平均を使用して決定することができる。
【0098】
本開示の繊維は一般に、任意の長さの直径に対する比を有することができる。実施形態では、繊維の長さの直径に対する比は、約2超、約3超、約4超、約6超、約10超、約50超、約60超、約100超、約200超、約300超、約400超、または約1000超とすることができる。
【0099】
本開示の水溶性不織布ウェブを調製するために使用する水溶性繊維は一般に、任意の靭性を有することができる。繊維の靭性は、繊維の粗さと相関する。繊維の靭性が減少するにつれて、繊維の粗さは増加する。本開示の水溶性不織布ウェブを調製するために使用する繊維は、約1~約100cN/dtex、もしくは約1~約75cN/dtex、もしくは約1~約50cN/dtex、もしくは約1~約45cN/dtex、もしくは約1~約40cN/dtex、もしくは約1~約35cN/dtex、もしくは約1~約30cN/dtex、もしくは約1~約25cN/dtex、もしくは約1~約20cN/dtex、もしくは約1~約15cN/dtex、もしくは約1~約10cN/dtex、もしくは約3~約8cN/dtex、もしくは約4~約8cN/dtex、もしくは約6~約8cN/dtex、もしくは約4~約7cN/dtex、もしくは約10~約20、もしくは約10~約18、もしくは約10~約16の範囲、または約1cN/dtex、約2cN/dtex、約3cN/dtex、約4cN/dtex、約5cN/dtex、約6cN/dtex、約7cN/dtex、約8cN/dtex、約9cN/dtex、約10cN/dtex、約11cN/dtex、約12cN/dtex、約13cN/dtex、約14cN/dtex、もしくは約15cN/dtexの靭性を有することができる。実施形態では、繊維は、約3cN/dtex~約10cN/dtexの靭性を有することができる。実施形態では、繊維は、約5cN/dtex~約10cN/dtexの靭性を有することができる。実施形態では、繊維は、約7cN/dtex~約10cN/dtexの靭性を有することができる。実施形態では、繊維は、約4cN/dtex~約8cN/dtexの靭性を有することができる。実施形態では、繊維は、約6cN/dtex~約8cN/dtexの靭性を有することができる。
【0100】
本開示の水溶性不織布ウェブを調製するために使用する繊維は一般に、任意の繊度を有することができる。繊維の繊度は、所与の太さのヤーンの断面に、どれほど多くの繊維が存在するかに相関する。繊維繊度は、繊維の質量の長さに対する比である。繊維繊度の主な物理的単位は1texであり、これは1gの重量を有する1000mの繊維に等しい。典型的には、1g/10,000mの繊維を表す単位dtexを使用する。繊維の繊度は、好適な不織布ウェブの剛直性/手触り、ねじり剛性、反射および光との相互作用、染料および/または他の活性物質/添加剤の吸収、製造プロセスにおける繊維紡糸の容易さ、ならびに完成品の一様性を有する不織布ウェブを提供するように選択することができる。一般に、繊維の繊度が上昇するにつれて、それから得られる不織布は、より高い一様性、改善された引張強さ、伸び性、および艶を示す。加えて、理論によって束縛されることを意図するものではないが、より細い繊維は、密度に基づいて、より大きな繊維と比較してより遅い溶解時間をもたらすと考えられる。さらに、理論によって束縛されることを意図するものではないが、繊維のブレンドを使用する場合、繊維の平均繊度は、個々の繊維構成要素の加重平均を使用して決定することができる。繊維は、非常に細い(dtex≦1.22)、細い(1.22≦dtex≦1.54)、中程度の(1.54≦dtex≦1.93)、少し粗い(1.93≦dtex≦2.32)、および粗い(dtex≧2.32)として特徴付けることができる。本開示の不織布ウェブは、非常に細い、細い、中程度の、少し粗い、またはこれらの組合せである繊維を含むことができる。実施形態では、繊維は、約1dtex~約10dtex、約1dtex~約7dtex、約1dtex~約5dtex、約1dtex~約3dtex、または約1.7dtex~約2.2dtexの範囲の繊度を有する。実施形態では、繊維は、約1.7dtexの繊度を有する。実施形態では、繊維は、約2.2dtexの繊度を有する。実施形態では、繊維は、約1.7dtexの繊度を有する繊維と、約2.2dtexの繊度を有する繊維とを含む。
【0101】
湿式冷却ゲル紡糸
【0102】
実施形態では、複数の水溶性繊維は、湿式冷却ゲル紡糸プロセスによって調製された水溶性繊維を含み、湿式冷却ゲル紡糸プロセスは、
(a)水溶性ポリマー(複数可)を溶液に溶解させて、ポリマー混合物を形成するステップであって、ポリマー混合物が必要に応じて助剤を含む、ステップ、
(b)ポリマー混合物を紡糸ノズルを通して凝固浴に押し出して、押出しポリマー混合物を形成するステップ、
(c)押出しポリマー混合物を、溶媒交換浴を通過させるステップ、
(d)必要に応じて、押出しポリマー混合物を湿式延伸するステップ、および
(e)押出しポリマー混合物を仕上げ加工して、水溶性繊維を提供するステップ
を含む。
【0103】
水溶性ポリマーを溶解させる溶媒は、好適には、水溶性ポリマーが溶解する、任意の溶媒とすることができる。実施形態では、水溶性ポリマーを溶解させる溶媒は、極性非プロトン性溶媒を含む。実施形態では、水溶性ポリマーを溶解させる溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。
【0104】
一般に、凝固浴は、押出しポリマー混合物をゲル化するための冷却された溶媒を含む。凝固浴は一般に、押出しポリマー混合物の凝固を推進する、任意の温度とすることができる。凝固浴は、ポリマーが溶解する溶媒と、ポリマーが溶解しない溶媒との混合物を含むことができる。ポリマーが溶解しない溶媒が一般に主要な溶媒であり、ポリマーが溶解しない溶媒は、混合物の50%超を占める。
【0105】
凝固浴を通過させた後、押出しポリマー混合物ゲルを、1つまたは複数の溶媒交換浴を通過させることができる。溶媒交換浴は、水溶性ポリマーが溶解する溶媒を、水溶性ポリマーが溶解しない溶媒で交換して、押出しポリマー混合物をさらに凝固させるため、および水溶性ポリマーが溶解する溶媒を、より容易に蒸発する溶媒で交換し、それによって乾燥時間を低減するために提供される。溶媒交換浴は、水溶性ポリマーが溶解する溶媒と水溶性ポリマーが溶解しない溶媒との勾配を有する一連の溶媒交換浴、水溶性ポリマーが溶解しない溶媒のみを有する一連の溶媒交換浴、または水溶性ポリマーが溶解しない溶媒のみを有する単一の溶媒交換浴を含むことができる。実施形態では、少なくとも1つの溶媒交換浴は、水溶性ポリマーが溶解しない溶媒から本質的になることができる。
【0106】
仕上げ加工繊維は、ときとして、ステープルファイバー、ショートカットファイバー、またはパルプと称される。実施形態では、仕上げ加工は、押出しポリマー混合物を乾燥させることを含む。実施形態では、仕上げ加工は、押出しポリマー混合物を切断または捲縮して、個々の繊維を形成することを含む。押出しポリマー混合物の湿式延伸では、押出しポリマー混合物に実質的に一様な直径が提供され、このようにして、それから繊維が切断される。延伸は、当技術分野において周知であるように、押出しとは区別される。特に、押出しとは、樹脂混合物を紡糸口金ヘッドを通して押し込むことによって繊維を作製する行為を指し、一方、延伸とは、機械的に繊維を機械方向に引っ張って、繊維の強さおよび靭性を上昇させるために、ポリマー鎖の配向および結晶性を促進することを指す。
【0107】
水溶性繊維が湿式冷却ゲル紡糸プロセスから調製される実施形態では、水溶性ポリマーは一般に、任意の水溶性ポリマーまたはそのブレンド、例えば、本明細書に一般に記載するように、2種またはそれよりも多くの異なるポリマーとすることができる。前述の実施形態の改良では、ポリマー(複数可)は、例えば、10~10,000,000の範囲、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも750、または少なくとも1000、かつ最大10,000,000、最大5,000,000、最大2,500,00、最大1,000,000、最大900,000、最大750,000、最大500,000、最大250,000、最大100,000、最大90,000、最大75,000、最大50,000、最大25,000、最大12,000、最大10,000、最大5,000、または最大2,500、例えば、1000~約50,000、1000~約25,000、1000~約12,000、1000~約5,000、1000~約2,500、約50~約12,000、約50~約10,000、約50~約5,000、約50~約2,500、約50~約1000、約50~約900、約100~約800、約150~約700、約200~約600、または約250~約500の範囲の任意の重合度(DP)を有することができる。実施形態では、DPは少なくとも1,000である。助剤は、上に記載したように、繊維自体に加えることも、カーディングおよび/またはボンディングプロセス中に、不織布ウェブに加えることもできる。
【0108】
熱可塑性繊維紡糸
【0109】
熱可塑性繊維紡糸は当技術分野において周知である。簡潔には、熱可塑性繊維紡糸は、
(a)繊維形成ポリマーを含み、必要に応じて助剤を含む、ポリマー混合物を調製するステップ、
(b)ポリマー混合物を紡糸口金ノズルを通して押し出して、押出しポリマー混合物を形成するステップ、
(c)必要に応じて、押出しポリマー混合物を延伸するステップ、および
(d)押出しポリマー混合物を仕上げ加工して、繊維を提供するステップ
を含む。
【0110】
熱可塑性繊維紡糸プロセスの仕上げ加工ステープルファイバーを、乾燥、切断および/または捲縮することによって仕上げ加工して、個々の繊維を形成することができる。押出しポリマー混合物の延伸では、機械的に繊維を機械方向に引っ張り、繊維の強さおよび靭性を上昇させるために、ポリマー鎖の配向および結晶性を促進する。熱可塑性繊維紡糸のためのポリマー混合物を調製するステップは、典型的には、(a)溶液を紡糸口金を通して押し出した後、溶液が熱風の流れと接触すると、溶媒が容易に蒸発し、後には固体繊維が残るように、繊維形成材料と容易に揮発する溶媒との溶液を調製すること、または(b)高温ポリマーを紡糸口金を通して押し出した後、冷風を用いたクエンチによってポリマーを凝固させるように、ポリマーを融解させることを含むことができる。少なくとも、(a)熱可塑性繊維紡糸方法では、押出し繊維が、凝固浴の使用によってではなく、溶媒の蒸発によって、または冷風を用いて高温固体繊維をクエンチすることによって凝固するという点、および(b)湿式冷却ゲル紡糸方法では、繊維が固体状態ではなくゲル状態である間に、必要に応じて延伸が実行されるという点において、熱可塑性繊維紡糸方法は湿式冷却ゲル紡糸方法とは異なる。
【0111】
熱可塑性繊維紡糸プロセスから繊維を調製するための繊維形成材料は一般に、任意の繊維形成ポリマーまたはそのブレンド、例えば、2種またはそれよりも多くの異なるポリマーとすることができるが、ただし、ポリマーまたはそのブレンドが、容易に揮発する溶媒中で好適な溶解性を有する、かつ/または分解温度よりも低く、それとは異なる融点を有することを条件とする。さらに、繊維を作製するために、繊維形成ポリマーのブレンドを使用する場合、繊維形成材料は、容易に揮発する溶媒中で同様の溶解性を有し、かつ/または2種もしくはそれよりも多くの繊維形成材料が、同様の温度で融解するように、同様の熱プロファイルを有しなければならない。対照的に、湿式冷却ゲル紡糸プロセスから繊維を調製するための繊維形成材料は、同様には限定されず、同じ溶媒系に溶解する、任意の2種またはそれよりも多くのポリマーのブレンドから繊維を調製することができ、溶媒系は、単一の溶媒であることも、揮発性溶媒であることさえ必要ではない。
【0112】
熱可塑性繊維紡糸繊維を調製するための繊維形成ポリマー(複数可)は、例えば10~10,000の範囲、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも750、または少なくとも1000、かつ最大10,000、最大5,000、最大2,500、最大1,000、最大900、最大750、最大500、または最大250の重合度(DP)を有することができる。実施形態では、DPは1,000未満である。
【0113】
溶融紡糸
【0114】
溶融紡糸は、当技術分野において周知であり、スパンボンドプロセスとメルトブローンプロセスの両方を指すものと理解される。溶融紡糸は、繊維形成と直列で不織布ウェブを直接調製する、連続プロセスである。上記のように、溶融紡糸形成繊維は、仕上げ加工されず、任意の一貫した長さへの切断もされない(これらのプロセスによって、例えば、ステープルファイバーは調製されない)。加えて、溶融紡糸は延伸ステップを含まず、そのため、得られる溶融紡糸繊維の直径への唯一の制御は、繊維形成材料を押し出す孔のサイズであり、ポリマー鎖は典型的には、いずれの特定の方向へも配向されない。
【0115】
簡潔には、溶融紡糸は、
(a)繊維形成ポリマーを含み、必要に応じて助剤を含む、ポリマー混合物を調製するステップ、
(b)ポリマー混合物をダイアセンブリに押し出して、押出しポリマー混合物を形成するステップ、
(c)押出しポリマー混合物をクエンチするステップ、
(d)クエンチした押出しポリマー混合物をベルト上に堆積させて、不織布ウェブを形成するステップ、および
(e)不織布ウェブを結合させるステップ
を含む。
【0116】
スパンボンドプロセスでは、押出しポリマー混合物をダイアセンブリに溶融ポリマーとしてポンプ注入し、ダイアセンブリを通過すると、冷風によってクエンチする。メルトブローンプロセスでは、押出しポリマー混合物を、熱風が吹き抜けるダイアセンブリにポンプ注入し、ダイアセンブリを出て、周囲温度の空気と接触させると、クエンチする。両方のプロセスにおいて、繊維を連続的にベルトまたはドラム上に落下させ、通常はベルトまたはドラムの下で真空を引くことによって推進する。
【0117】
溶融紡糸繊維の直径は一般に、約0.1~約50ミクロンの範囲、例えば、少なくとも約0.1ミクロン、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約2ミクロン、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約15ミクロン、または少なくとも約20ミクロン、かつ最大約50ミクロン、最大約40ミクロン、最大約30ミクロン、最大約25ミクロン、最大約20ミクロン、最大約15ミクロン、最大約10ミクロン、約0.1ミクロン~約50ミクロン、約0.1ミクロン~約40ミクロン、約0.1ミクロン~約30ミクロン、約0.1ミクロン~約25ミクロン、約0.1ミクロン~約20ミクロン、約0.1ミクロン~約15ミクロン、約0.1ミクロン~約10ミクロン、約0.1ミクロン~約9ミクロン、約0.1ミクロン~約8ミクロン、約0.1ミクロン~約7ミクロン、約0.1ミクロン~約6ミクロン、約0.1ミクロン~約6ミクロン、約5ミクロン~約35ミクロン、約5ミクロン~約30ミクロン、約7.5ミクロン~約25ミクロン、約10ミクロン~約25ミクロン、または約15ミクロン~約25ミクロンである。メルトブローンプロセスでは、約1~10ミクロンの範囲の平均直径を有する極微細繊維を提供することができるが、メルトブローンプロセスでは、繊維と繊維との直径に非常に大きなばらつき、例えば100~300%のばらつきがあることは、当技術分野において周知である。さらに、スパンボンド繊維は、より大きな平均繊維直径、例えば、典型的には約15~約25ミクロンを有する場合があるが、繊維の間の一様性の改善、例えば約10%のばらつきを有することは、当技術分野において周知である。
【0118】
加熱押出しプロセス(例えば、溶融紡糸、熱可塑性繊維紡糸)のための繊維形成材料は、湿式冷却ゲル紡糸プロセスのためのものよりも限定される。一般に、加熱押出しプロセスのための重合度は、約200~約500の範囲に限定される。重合度が200未満に低下すると、繊維形成材料の粘度が低すぎ、材料をダイアセンブリを通してポンプ注入することによって調製した個々の繊維は、ダイアセンブリを出た後に適当な分離を維持しない。同様に、重合度が500を上回って上昇すると、材料をダイアセンブリにおける十分に小さな孔を通して効率的にポンプ注入して、プロセスを高速で行うには粘度が高すぎ、したがって、プロセス効率と繊維および/または不織布の一様性とが失われる。さらに、繊維形成材料の加熱を必要とするプロセスは、ポリビニルアルコールホモポリマーが必要な熱安定性を一般に有しないため、ポリビニルアルコールホモポリマーには好適でない。
【0119】
湿式冷却ゲル紡糸プロセスは、有利なことに、水溶性ポリマーのブレンドを含む繊維を提供すること、繊維の直径の制御を提供すること、比較的大きな直径の繊維を提供すること、繊維の長さの制御を提供すること、繊維の靭性の制御を提供すること、高靭性繊維を提供すること、大きな重合度を有するポリマーから繊維を提供すること、および/または自立式不織布ウェブを提供するために使用することができる繊維を提供することなど、1つまたは複数の便益を提供する。スパンボンド、メルトブローン、電界紡糸、および回転紡糸などの連続プロセスでは一般に、水溶性ポリマーをブレンドすること(例えば、様々なポリマーのメルトインデックスのマッチングが困難であることに起因する)、大きな直径の(例えば50ミクロン超)繊維を形成すること、繊維の長さを制御すること、高靭性繊維を提供すること、および高重合度を有するポリマーの使用が可能ではない。さらに、湿式冷却ゲル紡糸プロセスは、有利なことに、溶融処理可能であるだけのポリマーに限定されず、そのため、非常に高い分子量、高い融点、低いメルトフローインデックス、またはこれらの組合せを有する繊維形成材料から作製された繊維を利用することができ、加熱押出しプロセスによって調製される繊維と比較して、より強い物理的特性および異なる化学的機能性を有する繊維が提供される。さらになお、有利なことに、湿式冷却ゲル紡糸プロセスは、ポリマーの粘度によって限定されない。対照的に、繊維形成材料の溶融を必要とするプロセスが、5cPまたはそれ未満の粘度を有する繊維形成材料に限定されることは、当技術分野において公知である。したがって、ポリビニルアルコールホモポリマーおよびコポリマーを含み、5cP超の粘度を有するポリマーを含む繊維は、湿式冷却ゲル紡糸によってのみ利用できる。
【0120】
不織布ウェブ
【0121】
本開示の不織布ウェブは一般に、2つの外側表面を有するシート様構造であり、不織布ウェブは複数の繊維を含む。本開示の不織布ウェブは、任意の当技術分野において公知の方法を使用して、繊維から調製することができる。当技術分野において公知であるように、繊維がスパンボンドまたはメルトブローンされる場合、繊維が連続的に敷かれて不織布ウェブを形成し、続いて繊維を結合させる。
【0122】
ステープルファイバーをカーディングまたはエアレイし、結合させて、不織布ウェブを提供することもできる。カーディングおよびエアレイする方法は、当技術分野において周知である。
【0123】
不織布ウェブを結合させる方法は、当技術分野において周知である。一般に、結合としては、熱的、機械的、および/または化学的結合を挙げることができる。熱的結合としては、限定するものではないが、カレンダー加工、エンボス加工、エアスルー、および超音波を挙げることができる。機械的結合としては、限定するものではないが、水流交絡(スパンレース)法、ニードルパンチ法、およびステッチボンド法を挙げることができる。化学的結合としては、限定するものではないが、溶媒結合および樹脂結合を挙げることができる。
【0124】
熱的結合は、熱および圧力を適用することによって達成され、典型的には、カーディングプロセスによって生成した細孔サイズ、形状、および配列が維持される。熱的結合の条件は、当業者が容易に決定することができる。一般に、適用する熱および/または圧力が低すぎると、自立型ウェブを形成するために繊維が十分に結合することはなく、熱および/または圧力が高すぎると、繊維が一緒に融合し始める。繊維の化学は、熱的結合のための熱および/または圧力の上限および下限を規定する。理論によって束縛されることを意図するものではないが、235℃を上回る温度では、ポリビニルアルコール系繊維は分解すると考えられる。繊維の熱的結合のためのエンボスの方法は公知である。エンボス加工は、片面エンボス加工とすることも、両面エンボス加工とすることもできる。典型的には、水溶性繊維のエンボス加工は、規則的な円形アレーと、平坦な表面を有する鋼製ロールとからなる単一のエンボス加工ロールを使用した、片面エンボス加工を含む。エンボス加工が増加するにつれて(例えば、表面の特色がウェブに付与されるにつれて)、ウェブの表面積が増加する。理論によって束縛されることを意図するものではないが、ウェブの表面積が増加するにつれて、ウェブの溶解性が上昇することが予想される。したがって、不織布ウェブの溶解特性は、有利には、エンボス加工を通じて表面積を変化させることによって、調整することができる。
【0125】
エアスルー結合は一般に、不織布ウェブ中に高い熱可塑性樹脂含有量と、2種の異なる融点の材料を必要とする。エアスルー結合では、熱風がドラムの外側からドラムの中心に向かって流れる間に、非結合不織布ウェブがドラムの周りを円運動する。エアスルー結合は、低い密度およびより高い坪量(例えば、20g/m超~約2000g/m)を有する不織布を提供することができる。エア結合によって結合した不織布は、典型的には非常に柔らかい。
【0126】
化学的結合は一般に、溶媒結合および樹脂結合を含む。特に、化学的結合は典型的には、溶媒と樹脂(例えば、ラテックス、または繊維の調製から残った廃棄物ポリマー)とのバインダ溶液を使用する。不織布は、バインダ溶液でコーティングし、熱および圧力を適用してバインダを硬化させ、不織布を結合させることができる。バインダ溶液は、バインダ溶液の浴槽に不織布を浸漬すること、バインダ溶液を不織布上に噴霧すること、バインダ溶液をウェブ上に押し出すこと(泡沫結合)、および/または印刷もしくはグラビアとしてバインダ溶液を適用することによって適用することができる。
【0127】
化学的結合は、カーディング/溶融紡糸された細孔とは異なり、より小さく、より規則的でない細孔を生じ得る。理論によって束縛されることを意図するものではないが、化学的結合のために使用する樹脂溶液が十分に濃縮されている、および/または十分な圧力が適用される場合、非多孔質水分散性不織布ウェブを形成することができると考えられる。化学的結合において使用する溶媒は、ウェブ中に存在する繊維の部分的な可溶化を誘導して、繊維を一緒に溶着させ、結合する。したがって、一般に、化学的結合のための溶媒は、不織布の繊維のうちの1種または複数種の繊維形成材料を、少なくとも部分的に可溶化することができる、任意の溶媒とすることができる。実施形態では、溶媒は、水、エタノール、メタノール、DMSO、グリセリン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、溶媒は、水、グリセリン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、バインダ溶液は、水、エタノール、メタノール、DMSO、グリセリン、およびこれらの組合せからなる群から選択される溶媒を含み、ポリビニルアルコール、ラテックス、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択される樹脂をさらに含む。溶液中に提供されたバインダは、溶着プロセスを支援して、より機械的に堅牢なウェブを提供する。ポリマー溶液の温度は特に限定されず、室温(約23℃)において提供することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、繊維の第2の層を使用して、不織布ウェブを結合させることができる。実施形態では、本開示の複合物品の少なくとも1つの不織布層が、不織布ウェブ/繊維の第2の層を使用して結合される。実施形態では、本開示の複合物品の少なくとも2つの不織布層が、不織布ウェブ/繊維の追加の層を使用して結合される。実施形態では、本開示の複合物品の少なくとも1つの不織布層が、熱的、機械的、または化学的結合を単独で使用して、または不織布ウェブ/繊維の追加の層を使用して結合することに加えて、結合される。
【0129】
細孔サイズは、ブルナウアー-エメット-テーラー理論(BET)、小角X線散乱(SAXS)、および分子吸着を含むがこれらに限定されない、高倍率かつ規則的な表面分析技法を使用して決定することができる。
【0130】
不織布ウェブは、坪量によって特徴付けることができる。不織布の坪量とは、不織布の単位面積当たりの質量である。坪量は、当技術分野において公知であるように、製造条件を変化させることによって、改質することができる。不織布ウェブは、結合させる前とその後とで、同じ坪量を有し得る。あるいは、結合方法によって、不織布ウェブの坪量が変化し得る。例えば、熱および圧力の適用を通じて結合が起こる場合、不織布の厚さ(と、したがって不織布の面積と)が減少し、これによって坪量が増加し得る。したがって、本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、不織布の坪量とは、結合後の不織布の坪量を指す。
【0131】
本開示の不織布ウェブは一般に、約0.1g/m~約700g/m、約0.5g/m~約600g/m、約1g/m~約500g/m、約1g/m~約400g/m、約1g/m~約300g/m、約1g/m~約200g/m、約1g/m~約100g/m、約30g/m~約100g/m、約20g/m~約100g/m、約20g/m~約80g/m、または約25g/m~約70g/mの範囲の任意の坪量を有することができる。
【0132】
本開示の不織布ウェブは一般に、任意の厚さを有することができる。好適な厚さとしては、限定するものではないが、約5~約10,000μm(1cm)、約5~約5,000μm、約5~約1,000μm、約5~約500μm、約200~約500μm、約5~約200μm、約20~約100μm、または約40~約90μm、または約50~80μm、または約60~65μm、例えば50μm、65μm、76μm、または88μmを挙げることができる。
【0133】
本開示の不織布ウェブは、高嵩高性または低嵩高性として特徴付けることができる。一般に嵩高性とは、厚さの、単位面積当たりの質量(すなわち坪量)に対する比を指す。高嵩高性不織布ウェブは、厚さの、単位面積当たりの質量に対する比が大きいことによって特徴付けることができる。本明細書において使用する場合、「高嵩高性」とは、本明細書によって定義される坪量と200μmを超過する厚さとを有する、本開示の不織布ウェブを指す。不織布ウェブの厚さは、ASTM D5729-97、ASTM D5736、およびISO 9073-2:1995に従って決定することができ、例えば、不織布ウェブを2Nの荷重に供し、厚さを測定することが含まれ得る。高嵩高性材料は、当技術分野において公知の方法によれば、例えば、スルーエア結合、またはクロスラッパーを使用して、非結合ウェブをそれ自体の上に折り重ねて嵩高性および坪量を増大させる、クロスラッピングに使用することができる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、不織布ウェブの溶解性が不織布ウェブの厚さに依存し得る水溶性不織布ウェブとは対照的に、不織布ウェブの溶解性が、ウェブの厚さに依存するとは考えられていない。この点において、個々の繊維は、不織布ウェブの厚さとは関係なく、水溶性フィルムよりも大きな表面積を提供するため、水の繊維への接近、および究極的には、繊維の溶解を限定するパラメータは、坪量(すなわち、不織布中の繊維密度)であると考えられる。
【0134】
本開示の水溶性不織布ウェブの溶解性は一般に、ウェブを調製するために使用した繊維のタイプと、水溶性ウェブの坪量との関数である。理論によって束縛されることを意図するものではないが、不織布ウェブの溶解性プロファイルは、不織布ウェブを調製するために使用した繊維の同じ溶解性プロファイルに追従し、繊維の溶解性プロファイルは一般に、繊維を調製したポリマーの同じ溶解性プロファイルに追従すると考えられる。例えば、PVOH繊維を含む不織布ウェブについて、PVOHポリマーの加水分解度を選択することができるが、その結果、不織布ウェブの水溶性も影響を受ける。一般に、所与の温度において、PVOHポリマーの加水分解度が、部分的な加水分解(88%DH)から全面的な加水分解(≧98%DH)に上昇するにつれて、ポリマーの水溶性は一般に低下する。したがって、1つの選択肢において、水溶性不織布ウェブを冷水溶解性とすることができる。いかなる他のモノマーも含まない(例えば、アニオン性モノマーと共重合していない)コポリ(酢酸ビニル ビニルアルコール)ポリマーについては、10℃未満の温度における水に溶解する冷水溶解性のウェブは、約75%~約90%の範囲、または約80%~約90%の範囲、または約85%~約90%の範囲の加水分解度を有するPVOHの繊維を含むことができる。別の選択肢において、水溶性不織布ウェブを熱水溶解性とすることができる。いかなる他のモノマーも含まない(例えば、アニオン性モノマーと共重合していない)コポリ(酢酸ビニル ビニルアルコール)ポリマーについては、少なくとも約60℃の温度における水に溶解する熱水溶解性のウェブは、少なくとも約98%の加水分解度を有するPVOHの繊維を含むことができる。
【0135】
PVOHの改質によって、一般に、PVOHポリマーの溶解性が上昇する。したがって、所与の温度において、PVOHコポリマーから調製された水溶性不織布ウェブの溶解性は、PVOHコポリマーと同じ加水分解度を有するPVOHホモポリマーから調製された不織布ウェブの溶解性よりも、高いことが予想される。これらの傾向に従って、特定の溶解性の特徴を有する水溶性不織布ウェブは、ポリマーを繊維内におよび/または繊維を不織布ウェブ内にブレンドすることによって、設計することができる。
【0136】
さらに、繊維組成が一定のままであるならば、より多くの溶解する材料があるため、ウェブの坪量が増加するにつれて、ウェブの溶解の速度は減少する。例えば、所与の温度において、PVOHポリマーを含む繊維から調製された、例えば40g/mの坪量を有する水溶性ウェブは、例えば30g/mの坪量を有する、それ以外は同一の水溶性ウェブよりもゆっくりと溶解することが予想される。したがって、坪量も、水溶性不織布ウェブの溶解性の特徴を改質するために使用することができる。水溶性不織布ウェブは一般に、約1g/m~約700g/m、約1g/m~約600g/m、約1g/m~約500g/m、約1g/m~約400g/m、約1g/m~約300g/m、約1g/m~約200g/m、約10g/m~約100g/m、約30g/m~約100g/m、約20g/m~約100g/m、約20g/m~約80g/m、約25g/m~約70g/m、または約40g/m~約60g/mの範囲の任意の坪量を有することができる。
【0137】
理論によって束縛されることを意図するものではないが、水溶性不織布ウェブの溶解性(溶解が完了するまでの時間の観点から)は、同じPVOHポリマーから調製された、同じサイズ(L×W)および/または質量の水溶性フィルムの溶解性を凌駕することが予想されると考えられる。これは、フィルムと比較して不織布に見出されるより大きな表面積に起因し、より速い可溶化をもたらす。下の実施例に示されるように、88%の加水分解度を有するPVOHホモポリマーから調製された不織布ウェブは14秒で溶解し、一方、同様のサイズの、88%の加水分解度を有する同じPVOHホモポリマーから調製された水溶性フィルムは、約100秒で溶解する。
【0138】
水溶性不織布ウェブの靭性は、ウェブを調製するために使用した繊維の靭性と同じでも、異なっていてもよい。理論によって束縛されることを意図するものではないが、不織布ウェブの靭性は、不織布ウェブの強さと関係があり、より大きな靭性は、より大きな強さを不織布ウェブに提供すると考えられる。一般に、不織布ウェブの靭性は、異なる靭性を有する繊維を使用することによって、改質することができる。不織布ウェブの靭性はまた、加工によって影響され得る。一般に、本開示の水溶性ウェブは比較的大きな靭性を有し、すなわち、水溶性不織布ウェブは、物品および/またはパウチを調製するための単独の材料として使用することができる自立式ウェブである。対照的に、メルトブローン、電界紡糸、および/または回転紡糸プロセスによって調製された不織布ウェブは、典型的には小さな靭性を有し、自立式ではない、または物品もしくはパウチを形成するための単独のウェブとして使用できない場合がある。
【0139】
一般に、本開示の水溶性不織布ウェブについての動摩擦係数、および静止摩擦係数の動摩擦係数に対する比は、不織布ウェブへの表面接触を減少させる、水溶性フィルムに対する不織布ウェブの表面粗度の上昇に起因して、水溶性フィルムについての動摩擦係数、および静止摩擦係数の動摩擦係数に対する比よりも低い。有利には、この表面粗度は、改善された感触(すなわち、ゴム様の手触りではなく布様の手触り)、改善された審美性(すなわち、水溶性フィルムよりも少ない光沢)を消費者に提供する、かつ/または加工機器/型の表面に沿ってウェブを延伸することを必要とする、熱成形された、ならびに/もしくは垂直式で形成、充填および封止された、ならびに/もしくはマルチチャンバのパケットの調製における加工性を推進することができる。したがって、繊維は、抗力を生じるほど粗くはないが、得られる不織布ウェブに表面粗度を提供するには十分に粗くあるべきである。
【0140】
本開示の水溶性不織布ウェブは、単一の層として使用することもでき、他の水溶性不織布ウェブと重ねることもでき、水溶性フィルムとの積層体の形態とすることもできる。いくつかの実施形態では、水溶性不織布ウェブは、水溶性不織布ウェブの単一層を含む。いくつかの実施形態では、水溶性不織布ウェブは、2つまたはそれよりも多くの水溶性不織布ウェブの層を含む、多層水溶性不織布ウェブである。1つまたは複数の層を、互いに積層することができる。前述の実施形態の改良では、2つまたはそれよりも多くの層は、同じとする(例えば、同じ繊維から調製し、同じ坪量である)ことができる。前述の実施形態の改良では、2つまたはそれよりも多くの層は、異なる(例えば、異なるタイプの繊維から調製する、かつ/または異なる坪量を有する)ことができる。
【0141】
一般に、多層水溶性不織布ウェブは、個々の層の坪量の和である坪量を有することができる。したがって、多層水溶性不織布ウェブは、単一層として提供される個々の層のいずれかよりも、溶解に長くかかることになる。
【0142】
実施形態では、本開示の水溶性不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を有する。
【0143】
実施形態では、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、23℃の水中でMSTM 205に従って試験した後の不織布ウェブ残留物の表面積は、MSTM 205に従って試験する前の不織布ウェブの表面積の約50%未満である。
【0144】
実施形態では、不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、3.5を超えない、または3.0を超えない、または2.5を超えないb値を維持する。実施形態では、不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、3.5を超えないb値を維持する。実施形態では、不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、3.0を超えないb値を維持する。実施形態では、不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA、SBS、または次亜塩素酸カルシウム組成物に6または8週間曝露した後、2.5を超えないb値を維持する。
【0145】
さらに、外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有する外壁と、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含むパケットの形態における、本明細書に記載する水溶性不織布ウェブを含む水溶性単位用量物品が、本明細書において提供される。実施形態では、組成物は刺激性化学物質を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は、酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸化性物質を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は塩基を含むことができる。
【0146】
外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料であって、スルホネート改質PVOH繊維形成材料が少なくとも95%の加水分解度を有し、スルホン化アニオン性モノマーが約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する、スルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む複数の繊維を含む不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品も、本明細書において提供される。実施形態では、組成物は刺激性化学物質を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸化性物質を含むことができる。実施形態では、酸化性物質は塩基媒介酸化性物質である。実施形態では、塩基媒介酸化性物質は次亜塩素酸カルシウムを含むことができる。
【0147】
外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質ポリビニルアルコール(PVOH)、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む複数の繊維を含む不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む単位用量物品も、本明細書において提供される。実施形態では、組成物は刺激性化学物質を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は、酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸化性物質を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は塩基を含むことができる。
【0148】
実施形態では、刺激性化学物質は、ハイポクロライト、次亜塩素酸、ハロゲン化イソシアヌレート、クロレート、クロライト、ペルクロレート、ブロメート、ペルブロメート、ハロゲン化ヒダントイン、ペルボレート、ペルヨーデート、ペルサルフェート、ペルマンガネート、クロメート、ジクロメート、ニトレート、ニトライト、ペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシ酸、クエン酸、塩酸、および無機酸のうちの1種または複数種、例えば、重硫酸ナトリウム(SBS)、シアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、および次亜塩素酸カルシウムのうちの1種または複数種を含むことができる。実施形態では、組成物は、トリクロロイソシアヌル酸など、酸と酸化性物質との両方であることができる。実施形態では、刺激性化学物質はハイポクロライトを含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は次亜塩素酸カルシウムを含むことができる。
【0149】
実施形態では、刺激性化学物質は塩素遊離性化合物を含むことができる。実施形態では、酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せは、塩素遊離性化合物を含むことができる。本明細書において使用する場合、「塩素遊離性化合物」という用語は、水と接触すると塩素または塩化物イオンを放出する化学物質のファミリーを指す。塩素遊離性化合物は、漂白材料、水消毒剤、医療機器消毒剤、および他の消毒目的として、一般に使用されている。
【0150】
一実施形態では、例として、酸化性物質は、次亜塩素酸、ハイポクロライト、ハロゲン化イソシアヌレート、例えば、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロレート、クロライト、ペルクロレート、ブロメート、ペルブロメート、ハロゲン化ヒダントイン、ペルボレート、ペルヨーデート、ペルサルフェート、ペルマンガネート、クロメート、ジクロメート、ニトレート、ニトライト、ペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシ酸、無機酸、またはこれらの組合せを含んでもよい。実施形態では、酸化性物質はトリクロロイソシアヌル酸を含む。実施形態では、酸化性物質は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、ジクロロイソシアヌル酸(DCCA)、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(BCDMH)、次亜塩素酸カルシウム(Cal-Hypo)、ペルオキシ一硫酸カリウム(MPS)を含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は塩基媒介酸化性物質を含むことができる。実施形態では、塩基媒介酸化性物質はハイポクロライトを含むことができる。実施形態では、塩基媒介酸化性物質は次亜塩素酸カルシウムを含むことができる。実施形態では、刺激性化学物質は酸媒介酸化性物質を含むことができる。本明細書において使用する場合、「酸媒介酸化性物質」という用語は、スキーム2に示すものなどの酸性機構の酸化経路を使用して、別の化学種を酸化する酸化性物質を指す。一般に、酸媒介酸化性物質としては、酸安定化分子を含む任意の酸化性化合物が挙げられる。実施形態では、酸媒介酸化性物質は、TCCA、DCCA、BCDMH、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、酸媒介酸化性物質はハロゲン化イソシアヌレートを含むことができる。実施形態では、酸媒介酸化性物質は、TCCA、DCCA、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、酸媒介酸化性物質はBCDMHを含むことができる。
【0151】
スキーム2 PVOHの3種の酸媒介酸化経路
1.縮合反応
【化2】
2.架橋
【化3】
3.酸化的ケトン形成
【化4】
【0152】
有利なことに、本明細書に開示する単位用量物品は、酸媒介酸化性物質に比べて、塩基媒介酸化性物質への予想外に選択的な耐性を有する場合があることが見出されている。例えば、AMPS改質PVOH不織布ウェブを構成する繊維を含む不織布ウェブは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCA(酸媒介酸化性物質)、または別個に次亜塩素酸カルシウム(塩基媒介酸化性物質)に、2、4、および6週間曝露した場合、非常に異なる結果を示した。TCCAと次亜塩素酸カルシウムとは両方とも酸化性物質であるが、AMPS改質PVOHを含む不織布ウェブは、次亜塩素酸カルシウムに曝露した場合には良好に機能し、TCCAに曝露した場合には同様には機能しなかった。特に、38℃および80%RH雰囲気において、次亜塩素酸カルシウムに6週間曝露した場合、不織布ウェブは、溶解、崩壊、および%残留物試験(MSTM 205)による許容される崩壊(例えば、300秒未満に100%の崩壊)を維持し、CIELab試験による変色に抵抗し(例えば、3未満のb値を有した)、伸び試験による許容される伸び%(例えば15%未満)を維持した。しかしながら、同じ組成を有する不織布は、38℃および80%RH雰囲気において、TCCAにほんの2週間曝露した場合、MSTM 205による許容されない崩壊(例えば、崩壊に300秒よりも長くかかる)を示し、許容されない変色(例えば、3超のb値)を示し、さらには許容されない伸び%(例えば、15%超)を示した。理論によって束縛されることを意図するものではないが、各酸化性物質の異なる機構経路によって、性能に関しまちまちの結果がもたらされると考えられる。
【0153】
実施形態では、酸は、1%水溶液中で-2~6.5、または1%水溶液中で-1~6、または1%水溶液中で0~5、または1%水溶液中で1~5、または1%水溶液中で1~4の範囲のpHを有する酸を含むことができる。実施形態では、酸は、重硫酸ナトリウム、シアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、クエン酸、塩酸、またはこれらの組合せを含むことができる。実施形態では、酸は、重硫酸ナトリウム、シアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0154】
実施形態では、塩基は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0155】
実施形態では、水溶性単位用量物品は、非家庭用ケア組成物を含むことができる。非家庭用ケア組成物は、農業用組成物、航空用組成物、食品および栄養組成物、工業用組成物、家畜用組成物、海洋用組成物、医療用組成物、商業用組成物、軍用および準軍用組成物、オフィス用組成物、娯楽およびパーク用組成物、ペット用組成物、プールおよび/または水処理用組成物、ならびにこれらの組合せから選択することができる。実施形態では、非家庭用ケア組成物は、プールおよび/または水処理用組成物である。
【0156】
実施形態では、水溶性単位用量物品は、組成物の総重量を基準として、50重量%~100重量%、または60重量%~100重量%、または70重量%~100重量%、または80重量%~100重量%、または90重量%~100重量%の範囲の、酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せの濃度を含む刺激性化学組成物を含むことができる。実施形態では、水溶性単位用量物品の非家庭用ケア組成物中の酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せの濃度は、非家庭用ケア組成物の総重量を基準として、50重量%~100重量%、または60重量%~100重量%、または70重量%~100重量%、または80重量%~100重量%、または90重量%~100重量%の範囲である。
【0157】
実施形態では、パケットは、酸捕捉剤および/または酸化防止剤を含む第1のコーティングをさらに含むことができ、第1のコーティングは水溶性不織布ウェブと接触している。実施形態では、酸捕捉剤、酸化防止剤、またはこれらの組合せを含む第1のコーティングを、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供することができる。実施形態では、酸捕捉剤、酸化防止剤、またはこれらの組合せを含む第1のコーティングを、外壁の外側表面の少なくとも一部に提供することができる。実施形態では、パケットは、酸捕捉剤、酸化防止剤、または両方を含む第2のコーティングをさらに含む。実施形態では、第1のコーティングは、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供されており、第2のコーティングは、パウチの外側表面の少なくとも一部に提供されている。
【0158】
本明細書に記載する水溶性単位用量物品の第1および/または第2のコーティングは、当技術分野において公知である任意の好適な方法、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ブラシコーティング、および噴霧コーティングなどの溶液コーティングを使用して、外壁に提供することができる。
【0159】
第1および/または第2のコーティング中に提供する酸捕捉剤および/または酸化防止剤は、本明細書に開示する任意の酸捕捉剤および/または酸化防止剤とすることができる。実施形態では、酸捕捉剤は、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、金属ステアリン酸塩、活性化オレフィン、アリル系化合物、カルボキシレート化合物、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、第三級アミン含有化合物、およびこれらの組合せを含む。実施形態では、酸化防止剤は、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酢酸亜鉛、およびこれらの組合せを含む。
【0160】
外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面とを有する外壁と、内側パウチ容積部に収容されたプールおよび/または水処理用組成物とを有するパケットの形態における、本開示による水溶性不織布ウェブを含む水溶性単位用量物品であって、プールおよび/または水処理用組成物中の刺激性化学物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、パケットが、必要に応じて、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、水溶性単位用量物品がさらに提供される。
【0161】
実施形態では、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む複数の繊維を含む、本明細書に開示する単位用量物品であって、スルホネート改質PVOH繊維形成材料が、少なくとも95%の加水分解度を有し、スルホン化アニオン性モノマーが、約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する、単位用量物品は、内側パウチ容積部に収容されたプールおよび/または水処理用組成物を含むことができ、プールおよび/または水処理用組成物は、プールおよび/または水処理用組成物の50重量%~100重量%の範囲で、次亜塩素酸カルシウムを含むことができる。実施形態では、パケットは、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む。
【0162】
実施形態では、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質PVOH、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含む、本明細書に開示する単位用量物品は、内側パウチ容積部に収容されたプールおよび/または水処理用組成物を含むことができ、プールおよび/または水処理用組成物は、プールおよび/または水処理用組成物の50重量%~100重量%の範囲で、次亜塩素酸カルシウムを含むことができる。実施形態では、パケットは、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む。
【0163】
バルク水の組成物を計量供給するためのプロセスであって、バルク水と、本明細書に記載する水溶性単位用量物品を接触させるステップを含み、これによって水溶性不織布ウェブの少なくとも一部が溶解し、組成物がバルク水に放出される、プロセスが、本明細書においてさらに提供される。実施形態では、水溶性単位用量物品は、内側パウチ容積部を画定するパケットの形態における、本明細書に記載する水溶性不織布ウェブと、内側パウチ容積部内に封入された、計量供給される組成物とを含むことができ、水溶性不織布ウェブは、PVOHとPVPとの水溶性混合物を含むことができる。実施形態では、PVOHとPVPとは、それぞれ、約95重量%:5重量%~約25重量%:75重量%の比で存在する。
【0164】
組成物をバルク水に計量供給するためのプロセスであって、バルク水と、本開示による単位用量物品を接触させるステップを含む、プロセスが、本明細書においてさらに提供される。実施形態では、バルク水は、不織布ウェブの少なくとも一部を溶解させ、組成物をバルク水に放出する。実施形態では、単位用量物品の不織布ウェブは、(i)ポリビニルピロリドン、および(ii)スルホネート改質ポリビニルアルコール(PVOH)、カルボキシル改質PVOH、または両方を含む、繊維形成材料のブレンドを含む複数の繊維を含むことができる。実施形態では、単位用量物品の不織布ウェブは、スルホン化アニオン性モノマー単位を含むスルホネート改質PVOH繊維形成材料を含む、複数の繊維を含むことができ、スルホネート改質PVOH繊維形成材料は少なくとも95%の加水分解度を有し、スルホン化アニオン性モノマーは約1mol%~約5mol%の範囲の量で存在する。一般に、バルク水は、非家庭用ケア組成物を中に提供することを必要とする、任意のバルク水であってもよい。実施形態では、バルク水は、プールまたはスパであってもよい。一般に、バルク水の温度は、水溶性不織布ウェブの少なくとも一部を溶解する、または崩壊させるのに十分な、任意の温度とすることができる。実施形態では、バルク水は、少なくとも約10℃、例えば、約10℃~約100℃、約10℃~約70℃、約10℃~約60℃、約20℃~約50℃、または約20℃~約40℃の範囲の温度を有する。一般に、バルク水は任意のpHを有することができる。実施形態では、バルク水のpHは、約4~約10、約5~約9、または約6~約7の範囲とすることができる。
【0165】
本明細書中の本開示の、具体的な企図される実施形態を、以下の番号付きパラグラフに記載する。
【0166】
1.(a)(i)カルボキシル改質ポリビニルアルコール(PVOH)と、(ii)スルホネート改質ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、もしくは両方とを含む、繊維形成材料のブレンド、(b)(iii)カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料を含む繊維と、(iv)スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料を含む繊維、ポリビニルピロリドン繊維形成材料を含む繊維、もしくは両方を含む、繊維のブレンド、または(c)(v)カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、もしくはポリビニルピロリドン繊維形成材料を含む第1の繊維と、(vi)カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、スルホネート改質ポリビニルアルコール繊維形成材料、ポリビニルピロリドン繊維形成材料、もしくはこれらの組合せを含む繊維形成材料のブレンドを含む第2の繊維とを含む、繊維のブレンドを含む、複数の繊維を含む水溶性不織布ウェブであって、(a)、(b)、および(c)のいずれにおいても、カルボキシル改質PVOH繊維形成材料の、スルホネート改質PVOHおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比が、それぞれ、重量で約3:1~約19:1である、水溶性不織布ウェブ。
【0167】
2.カルボキシル改質ポリビニルアルコール繊維形成材料の、スルホネートおよび/またはポリビニルピロリドン繊維形成材料に対する重量比が、それぞれ、重量で約5:1~約15:1、重量で約5:1~約12:1、重量で約5:1~約9:1、重量で約6:1~約9:1、または重量で約6.5:1~約7.5:1である、パラグラフ1に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0168】
3.カルボキシル改質PVOHが、マレイン酸モノメチル、マレイン酸、無水マレイン酸、これらのアルカリ塩、およびこれらの組合せからなる群から選択されるマレエートモノマー単位を含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0169】
4.マレエートモノマー単位が、約1mol%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する、パラグラフ3に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0170】
5.スルホネート改質PVOHが、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸2-スルホエチル、これらのアルカリ塩、またはこれらの組合せからなる群から選択されるスルホン化アニオン性モノマー単位を含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0171】
6.スルホン化アニオン性モノマーが、約1mol%~10mol%、または約1mol%~8mol%、または約1mol%~5mol%の範囲の量で存在する、パラグラフ5に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0172】
7.(a)の繊維形成材料がポリビニルピロリドンを含む、(b)の繊維がポリビニルピロリドンを含む、または(c)の第2の繊維がポリビニルピロリドン繊維形成材料を含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0173】
8.複数の繊維が、セルロース系改質剤、デンプン改質剤、または両方をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0174】
9.酸捕捉剤をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0175】
10.酸捕捉剤が、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、活性化オレフィン、アリル系化合物、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、第三級アミン含有化合物、およびこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ9に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0176】
11.酸捕捉剤が、繊維中もしくは繊維上、不織布ウェブ中もしくは不織布ウェブ上、または前述のものの組合せに提供されている、パラグラフ9または10に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0177】
12.酸捕捉剤が、繊維上にコーティングされている、不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方である、パラグラフ11に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0178】
13.酸捕捉剤が、不織布ウェブ全体に分散している、パラグラフ11に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0179】
14.酸化防止剤をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0180】
15.酸化防止剤が、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酢酸亜鉛、およびこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ14に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0181】
16.酸化防止剤が、繊維中もしくは繊維上、不織布ウェブ中もしくは不織布ウェブ上、または前述のものの組合せに提供されている、パラグラフ14または15に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0182】
17.酸化防止剤が、繊維上にコーティングされている、不織布ウェブ上にコーティングされている、または両方である、パラグラフ16に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0183】
18.酸化防止剤が、不織布ウェブ全体に分散している、パラグラフ16に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0184】
19.可塑剤をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0185】
20.可塑剤が、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、最大400MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エタノールアミン、マルチトール、およびこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ19に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0186】
21.可塑剤が、グリセロール、マルチトール、トリメチロールプロパン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ20に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0187】
22.充填剤をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0188】
23.充填剤が、高アミロースデンプン、非晶質シリカ、ヒドロキシエチル化デンプン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ22に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0189】
24.界面活性剤をさらに含む、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0190】
25.界面活性剤が、第四級アミン、ミリスチルジメチルアミンオキシド、アルキルポリエチレングリコールエーテル、コカミド、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ24に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0191】
26.水溶性不織布ウェブが、38℃および80%RH雰囲気において、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)または重硫酸ナトリウム(SBS)組成物に8週間曝露した後、23℃の水中でMSTM 205に従って300秒を超えない崩壊時間を有する、パラグラフ1から25のいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブ。
【0192】
27.23℃においてMSTM 205に従って試験した後の不織布ウェブ残留物の表面積が、MSTM 205に従って試験する前の不織布ウェブの表面積の約50%未満である、パラグラフ26に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0193】
28.水溶性不織布ウェブが、38℃および80%RH雰囲気において、TCCAまたはSBS組成物に8週間曝露した後、3.5を超えない、または3.0を超えない、または2.5を超えないb値を維持する、いずれか1つのパラグラフ1から27に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0194】
29.水溶性不織布ウェブが、38℃および80%RH雰囲気において、TCCAまたはSBS組成物に8週間曝露した後、少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも120%、または少なくとも150%、または少なくとも175%、または少なくとも200%の平均伸びを維持する、いずれか1つのパラグラフ1から28に記載の水溶性不織布ウェブ。
【0195】
30.外壁を含むパケットであって、外壁が外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有し、外壁が、先行するパラグラフのいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブを含む、パケットと、内側パウチ容積部に収容された組成物とを含む水溶性単位用量物品。
【0196】
31.組成物が刺激性化学物質を含む、パラグラフ30に記載の水溶性単位用量物品。
【0197】
32.刺激性化学物質が、酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ31に記載の水溶性単位用量物品。
【0198】
33.刺激性化学物質が塩素遊離性化合物である、パラグラフ32に記載の水溶性単位用量物品。
【0199】
34.酸が、重硫酸ナトリウム、シアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、クエン酸、塩酸、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ32に記載の水溶性単位用量物品。
【0200】
35.酸化性物質が、次亜塩素酸、ハイポクロライト、ハロゲン化イソシアヌレート、クロライト、クロレート、ペルクロレート、ブロメート、ペルブロメート、ハロゲン化ヒダントイン、ペルボレート、ペルヨーデート、ペルサルフェート、ペルマンガネート、クロメート、ジクロメート、ニトレート、ニトライト、ペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシ酸、無機酸、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ32または33に記載の水溶性単位用量物品。
【0201】
36.塩基が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ32に記載の水溶性単位用量物品。
【0202】
37.組成物が非家庭用ケア組成物である、パラグラフ31から36のいずれか1つに記載の水溶性単位用量物品。
【0203】
38.非家庭用ケア組成物が、農業用組成物、航空用組成物、食品および栄養組成物、工業用組成物、家畜用組成物、海洋用組成物、医療用組成物、商業用組成物、軍用および/または準軍用組成物、オフィス用組成物、娯楽および/またはパーク用組成物、ペット用組成物、プールおよび/または水処理用組成物、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ37に記載の水溶性単位用量物品。
【0204】
39.非家庭用ケア組成物が、プールおよび/または水処理用組成物である、パラグラフ38に記載の水溶性単位用量物品。
【0205】
40.非家庭用ケア組成物中の酸、酸化性物質、塩基、またはこれらの組合せの濃度が、非家庭用ケア組成物の総重量を基準として、50重量%~100重量%、または60重量%~100重量%、または70重量%~100重量%、または80重量%~100重量%、または90重量%~100重量%の範囲である、パラグラフ38または39に記載の水溶性単位用量物品。
【0206】
41.パケットが、酸捕捉剤、酸化防止剤、または両方を含む第1のコーティングをさらに含み、第1のコーティングが外壁と接触している、パラグラフ30から40のいずれか1つに記載の水溶性単位用量物品。
【0207】
42.酸捕捉剤、酸化防止剤、またはこれらの組合せを含む第1のコーティングが、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供されている、パラグラフ41に記載の水溶性単位用量物品。
【0208】
43.パケットが、酸捕捉剤、酸化防止剤、または両方を含む第2のコーティングをさらに含む、パラグラフ41または42に記載の水溶性単位用量物品。
【0209】
44.第1のコーティングが、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供されており、第2のコーティングが、パウチの外側表面の少なくとも一部に提供されている、パラグラフ43に記載の水溶性単位用量物品。
【0210】
45.酸捕捉剤が、N-ビニルピロリドン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、金属ステアリン酸塩、活性化オレフィン、アリル系化合物、カルボキシレート化合物、エチレン含有化合物、第四級アンモニウム化合物、第三級アミン含有化合物、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ41から44のいずれか1つに記載の水溶性単位用量物品。
【0211】
46.酸化防止剤が、没食子酸プロピル、没食子酸、フェノール系化合物、ヒンダードアミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、酢酸亜鉛、またはこれらの組合せを含む、パラグラフ41から45のいずれか1つに記載の水溶性単位用量物品。
【0212】
47.外側表面、および内側パウチ容積部を画定する内側表面を有する外壁と、内側パウチ容積部に収容されたプールおよび/または水処理用組成物とを有するパケットの形態における、パラグラフ1から29のいずれか1つに記載の水溶性不織布ウェブを含む水溶性単位用量物品であって、プールおよび/または水処理用組成物中の刺激性化学物質の濃度が、50重量%~100重量%の範囲であり、
パケットが、必要に応じて、外壁の内側表面の少なくとも一部に提供された酸捕捉剤を含む第1のコーティングを含む、
水溶性単位用量物品。
【0213】
48.組成物をバルク水に計量供給するためのプロセスであって、バルク水と、パラグラフ30から47のいずれか1つに記載の水溶性単位用量物品を接触させるステップを含む、プロセス。
伸び試験
【0214】
破断伸びは、ASTM D 882に従って分析することができる。簡潔には、フィルムデータの収集のために、INSTRON(登録商標)引張試験装置(モデル5544Tensile Testerまたは同等物)を使用する。各測定について、寸法安定性および再現性を確保するために、信頼の置ける切断用具を用いてそれぞれ切断した最少3つの試験供試体を、機械方向(MD)(適用できる場合)に試験する。試験は、23±2.0℃および35±5%相対湿度の標準実験室雰囲気において実施する。3.0±0.15mil(すなわち76.2±3.8μm)の厚さを有する単一フィルムシートの1インチ幅(2.54cm)試料を調製する。次いで、試料をINSTRON(登録商標)引張試験機に移して、試験に進む。製造業者の指示に従って、引張試験機を準備し、500Nロードセルを装備させ、較正する。補正グリップおよびフェイスを装着する(ゴムでコーティングされ、25mm幅である、モデル番号2702-032フェイスを有するINSTRON(登録商標)グリップ、または同等物)。試料を引張試験機に実装し、引張応力が10%低下するまで、508mm/分の速度で引っ張る。引張応力の10%の低下が起こる伸びが、破断伸びである。
【0215】
本開示によるフィルムの好適な挙動は、INSTRON(登録商標)試験機によって測定される、少なくとも約90%の伸び値を特徴とする。様々な実施形態では、フィルムは、38℃および80%RH雰囲気において、TCCAまたはSBS組成物に8週間曝露した後、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも150%、少なくとも175%、または少なくとも200%の伸び値を有する。
溶解、崩壊、および%残留物試験(MSTM 205)
【0216】
不織布ウェブは、当技術分野において公知の方法、MonoSol Test Method 205(MSTM 205)に従って、溶解時間および崩壊時間によって特徴付ける、またはこれらについて試験することができる。例えば、米国特許第7,022,656号を参照されたい。
【0217】
装置および材料:
【0218】
600mLビーカー
【0219】
磁気撹拌機(Lablineモデル番号1250または同等物)
【0220】
磁気撹拌棒(5cm)
【0221】
温度計(0~100℃±1℃)
【0222】
鋳型、ステンレス鋼(3.8cm×3.2cm)
【0223】
タイマー(0~300秒、最も近い秒まで正確)
【0224】
ポラロイド(登録商標)35mmスライドマウント(または同等物)
【0225】
MonoSol 35mmスライドマウントホルダー(または同等物)
【0226】
蒸留水
【0227】
試験するべき各不織布ウェブについて、不織布ウェブ試料から3つの試験供試体を切断し、これは3.8cm×3.2cm供試体である。1枚の不織布ウェブから切断する場合、ウェブの横方向に沿って均等に間隔を空けたウェブのエリアから、供試体を切断するべきである。次いで、以下の手順を使用して、各試験供試体を分析する。
【0228】
各供試体を、別々の35mmスライドマウントに留める。
【0229】
ビーカーを500mLの蒸留水で満たす。温度計を用いて水温を測定し、必要な場合、水を加熱または冷却して、20℃(約68°F)の温度を維持する。
【0230】
水のカラムの高さを記録する。磁気撹拌機をホルダーの基部に載置する。ビーカーを磁気撹拌機上に載置し、磁気撹拌棒をビーカーに加え、撹拌機を作動させ、水カラムのおよそ1/5の高さである渦が現れるまで、撹拌速さを調節する。渦の深さを記録する。
【0231】
35mmスライドマウントを、35mmスライドマウントホルダーのワニ口クランプに、スライドマウントの長端が水面と平行になるように固定する。ホルダーの深さ調節器は、下ろした場合に、クランプの端が水面下0.6cmとなるように設定するべきである。不織布ウェブ表面が水の流れに垂直となるように、スライドマウントの短辺の一方はビーカーの側面に隣接し、他方は撹拌棒の中心の直上に位置するべきである。
【0232】
1回の動きで、固定したスライドおよびクランプを水中に下ろし、タイマーを始動させる。崩壊は、不織布ウェブがばらばらに壊れた時点で起こる。目に見える不織布ウェブがすべてスライドマウントから放出された時点で、水からスライドを引き上げ、未溶解不織布ウェブ断片について、溶液の監視を継続する。溶解は、すべての不織布ウェブ断片がもはや見えず、溶液が透明になった時点で起こる。
【0233】
300秒後、もし不織布ウェブ残留物がフレームにわずかでも残存していれば、残存している不織布ウェブの表面積の割合を、目視検査によって概算した。
【0234】
結果は以下のものを含むべきである:完全な試料の識別表示、個々のおよび平均の崩壊および溶解時間、ならびに試料を試験した水温。
【0235】
不織布ウェブ崩壊時間(I)および不織布ウェブ溶解時間(I)は、それぞれ下の等式1および等式2に示す指数関数アルゴリズムを使用して、標準または参照不織布ウェブ厚さに補正することができる。
補正値=I測定値×(参照厚さ/測定厚さ)1.93 [1]
補正値=S測定値×(参照厚さ/測定厚さ)1.83 [2]
CIELab試験
【0236】
CIELab試験は、Ci7600分光光度計または同等物を使用して、試料の参照黄色度を決定するために使用される。
必要な機器および材料(複数可)
【0237】
X-Rite Ci7600ベンチトップ分光光度計
【0238】
X-Rite Color Masterソフトウェア
【0239】
反射度較正のための黒色トラップ
【0240】
白色リングを有するアパーチャープレート
【0241】
試料ホルダー
【0242】
透過測定を完了する際、反射度アパーチャープレートを覆うための透過プラーク
【0243】
較正を完了する際、反射度アパーチャープレートを覆うための白色較正タイル
【0244】
フィルム試料を切り出すための鋏
Ci7600分光光度計の較正
【0245】
透過測定のためには、内部に白色リングを有するアパーチャープレートを使用しなければならないことに留意されたい。デスクトップに見出されるColor Masterソフトウェアを開く。Color Masterソフトウェアにおいて、「機器」タブへ進む。較正をクリックする。白色較正タイルをアパーチャープレート上に載置する。UV設定は、EXC400に設定するべきである。ロッキングピンを持ち上げながらカバーを前方にスライドさせることによって、透過カバーを閉じる。注:ピンが所定の位置にはまる音が聞こえるはずである。ソフトウェア較正プロンプトにおいて「OK」をクリックする。アパーチャープレートからタイルを取り外す。アクセサリードロアーから黒色トラップを取り出し、アパーチャープレートに配置する。必ず、透過カバーは閉じたままにしておき、ソフトウェア較正プロンプトにおいて「OK」をクリックする。アパーチャープレートから黒色トラップを取り外す。透過プラークをアパーチャープレート上に載置する。較正プロセスに成功すると、較正LEDが緑色になるはずである。
(透過測定のための)標準の作成
【0246】
必ず、白色リングを有するアパーチャープレートを使用する。機器内に試料クランプを載置する。透過プラークをアパーチャープレート上に載置する。「機器」タブを選択する。「標準を作成する」をクリックする。「付属の機器を使用して測定値を取得する」を選択し、「次へ」を叩く。測定値の平均が必要かどうかを選択し、取得する測定値の数を指示する。例:平均のために3つの測定値を取得する。透過試料クランプに2×2の試料を載置する。ロッキングピンを持ち上げながらカバーを前方にスライドさせることによって、透過カバーを閉じる。「測定する」をクリックし、各試料について繰り返す。「次へ」をクリックする。標準の名称をタイプ入力する。選択した場合、標準についての説明をタイプ入力する。「次へ」をクリックする。許容値、またはイルミナント/観測器の仕様を変更したい場合、「修正する」をクリックし、所望の変更を行う。それ以外の場合、「次へ」を選択する。色調分類データを入力するように要求された場合、「いいえ」を選択し、「次へ」を選択する。「終了する」を選択する。
(透過測定のための)標準の選択
【0247】
「データベース」タブを選択する。「標準を探す」をクリックする。必要となる適切な標準をクリックする。標準が青色にハイライトされるはずである。次いで、「選択する」を押す。標準は使用できる状態にある。正しい標準が選択されたかをダブルチェックするため、プログラムの上部左手角におけるコントロールボックスをチェックする。このボックスが、選択された適切な標準を読み出すはずである。
(透過についての)試料の測定
【0248】
適切なアパーチャープレート(白色反射リングを有する)を、機器の前方における測定ポートに実装する。白色キャップをアパーチャープレート上に載置する。試料クランプと止め具とを、つまみねじによってベースに取り付ける。「機器」タブを選択する。「トライアルを測定する」をクリックする。スクリーンの下部左手側に、使用している標準の名称でウィンドウがポップアップする。スクリーン上で見ることができるように、このウィンドウを上に移動させる。必要な場合、SPIN(鏡面反射率を含む)またはSPEX(鏡面反射率を除く)測定値、およびイルミナント/観測器の仕様を表示するなど、仕様を変更する。「ヘイズ」下のハイパーリンクをクリックすることによって、下の画像が適合するように構成を変更する。「ロットI.D.」の隣に、測定している試料の試料名をタイプ入力する。2インチ×2インチ試料を、透過試料ホルダーの中央に位置決めし、球に向けて止め具とクランプとの間に載置する。常に、試料が球の開口部と同じ高さで平行となるように確認する。カバーを閉じる。キーボードのF8を叩くか、または右の角の「測定する」をクリックして、測定を行う。測定時に、クリックノイズが聞こえ、閃光が見えるはずである。測定が完了したら、試料ホルダーから試料を取り出す。別の試料がある場合、それを試料ホルダーに載置する。すべての試料を測定するまで、継続する。試料測定の間にはおよそ1分間待機する。測定が完了したら、「トライアルを測定する」ウィンドウを出る。
試験結果の報告
【0249】
与えられた数値データは、CIE L色測定系に換算されている。これらの値は、測定物体の色の様々な態様を表す。L値は、色がどのくらい明るいまたは暗いかを定量化し、黒色と白色とが2つの末端である。a値は色がどのくらい赤色または緑色であるかを定量化し、正のa値はより赤色であり、負のa値はより緑色である。b値は色がどのくらい黄色または青色であるかを定量化し、正のb値はより黄色であり、負のb値はより青色である。F12/10光源下、L色測定値として与えられるSpex数値データを記録する。
【実施例
【0250】
(実施例1)
PVOH不織布ウェブの刺激性化学物質への曝露
【0251】
スルホネート改質PVOHまたはPVOHホモポリマーの繊維を含む水溶性不織布ウェブを、トリクロロイソシアヌル酸(「TCCA」)および/または次亜塩素酸カルシウム(「Cal Hypo」)を含むパウチに形成した。パウチを、4mil HDPEフィルムから調製した二次包装中で、38℃の温度および80%RHにおいて6週間保存した。MSTM 205に従って溶解、崩壊、および/または%残留物を測定し、CIELab試験に従って黄色度を測定し、伸び試験に従って伸び%を測定した。結果を、下の表1に提供する。
【0252】
溶解/崩壊:0、2、4週間時点で不織布ウェブが溶解または崩壊していない場合(その時点で試験を打ち切る)を除き、0週間、2週間、4週間、および6週間の時点において試料を測定した。溶解または崩壊時間がより短いと、不織布が刺激性化学物質に対してより安定であったことを示し、6週間において溶解または崩壊時間がより長いと、不織布が刺激性化学物質に対してより安定でないことを示した。
【表1-1】
【表1-2】
【0253】
表1に見られるように、単独の繊維形成材料構成要素として、99+%の加水分解度を有する2mol%AMPS改質PVOH、または23cPsの粘度と約88の加水分解度を有するPVOHホモポリマーのいずれかを含む繊維を使用して、水溶性不織布ウェブを調製して、様々なPVOH樹脂に対する刺激性化学物質の効果を決定した。一般に、AMPS改質PVOH繊維およびPVOHホモポリマー繊維は、38℃の温度および80%RHにおいて、酸媒介酸化性物質(すなわちTCCA)に2週間曝露した後、乏しい溶解を有することが見出されることが見出された。しかしながら、AMPS改質PVOH繊維は、驚くべきことに、塩基媒介酸化性物質(例えば次亜塩素酸カルシウム)に2週間、4週間、およびさらには6週間曝露させた後、許容される崩壊(例えば、MSTM 205に従って、300秒未満で不織布ウェブが崩壊する)および許容される変色(例えば、不織布ウェブが、CIELab試験に従って、3.5未満、さらには3.0未満の色b値を有する)を有することが見出された。
【0254】
前述の記載は理解を明瞭にするためだけに与えられ、本発明の範囲内の修正は当業者には明らかであり得るため、これから不要な限定が理解されるべきではない。
【0255】
本明細書に引用されるすべての特許、刊行物、および参考文献は、参照によって本明細書に全面的に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物、および参考文献との間に不一致がある場合、本開示が優先するものとする。
【国際調査報告】