IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2022-551426金属発泡体およびその製造方法、ならびに触媒としてのその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】金属発泡体およびその製造方法、ならびに触媒としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/08 20060101AFI20221202BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221202BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221202BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221202BHJP
   B01J 25/02 20060101ALI20221202BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C22C1/08 A
B01J35/04 331Z
B01J37/08
B01J37/00 K
B01J25/02 Z
B01J37/02 301R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519028
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076824
(87)【国際公開番号】W WO2021058704
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199659.4
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ポス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ベアヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケ ロース
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB03A
4G169BB05C
4G169BC02C
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC31A
4G169BC59A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169CB02
4G169CB06
4G169CB07
4G169CB21
4G169CB41
4G169CB62
4G169CB77
4G169CC05
4G169DA06
4G169EB11
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EB17Y
4G169EB18Y
4G169EC01X
4G169EC01Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169FA01
4G169FB24
4G169FB29
4G169FB32
4G169FB34
4G169FB48
4G169FC04
4G169FC07
(57)【要約】
本発明は、金属発泡体の製造方法であって、(a)ニッケル、コバルト、銅、またはそれらの合金もしくは組み合わせから作製される金属発泡体Aを提供するステップと、(b)金属発泡体Aにアルミニウム含有材料MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、(c)金属発泡体AXを酸素排除下に熱処理して、金属発泡体Aの金属部分とアルミニウム含有材料MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップであって、ここで、熱処理の継続時間を、熱処理の温度に応じて選択し、かつ熱処理の温度を、金属発泡体AXの厚さに応じて選択するものとするステップとを含む方法に関する。本発明はさらに、本発明による方法により得られる金属発泡体、および化学変換用触媒としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属発泡体の製造方法であって、
(a)ニッケル、コバルト、銅、またはそれらの合金もしくは組み合わせから作製される金属発泡体Aを提供するステップと、
(b)金属発泡体Aにアルミニウム含有材料MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、
(c)金属発泡体AXを酸素排除下に熱処理して、前記金属発泡体Aの金属部分と前記アルミニウム含有材料MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップであって、
ここで、前記熱処理の継続時間H(単位:分)を、前記熱処理の温度T(単位:℃)に応じて以下のように選択する:
min<H<Hmaxであり、ここで、
最大継続時間Hmax=d1+(a1-d1)/(1+(T/c1)^b1)であり、かつ
最小継続時間Hmin=d2+(a2-d2)/(1+(T/c2)^b2)であり、
ここで、
a1=366.1;
b1=129.0;
c1=650.9;
d1=8.7;
a2=33.5;
b2=235.5;
c2=665.8;
d2=1.8;であり、
かつ前記熱処理の温度Tを、前記金属発泡体AXの厚さDに応じて以下のように選択する:
0mm<D≦10mmの場合、600℃<T≦680℃であり、
10mm<D≦20mmの場合、600℃<T≦675℃であり、
20mm<D≦30mmの場合、600℃<T≦665℃であり、
30mm<Dの場合、600℃<T≦660℃であるものとするステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルミニウム含有材料MPは、アルミニウム含有粉末であり、前記アルミニウム含有粉末とともに、または前記アルミニウム含有粉末の前に、金属発泡体Aに有機バインダーを施与する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属発泡体Aは、ニッケルからなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
金属発泡体Aは、100~1500kg/m、好ましくは200~1200kg/m、特に好ましくは300~600kg/mの範囲のかさ密度を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
金属発泡体Aは、100~20,000m/m、好ましくは1,000~6,000m/mのBET比表面積を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
金属発泡体Aは、0.50~0.95の気孔率を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記アルミニウム含有材料MPは、前記アルミニウム含有材料MPに対して80~100重量%、好ましくは80~99.8重量%、特に好ましくは90~99.5重量%の量の金属アルミニウムを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記アルミニウム含有材料MPは、粒子から構成される粉末であり、前記粒子の95%は、5~75μmの範囲の直径を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(d)前記金属発泡体Bを浸出剤で処理して活性化させるステップ
をさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記浸出剤による金属発泡体Bの処理を、20~120℃の範囲の温度で5分~8時間の範囲の継続時間で行い、前記浸出剤は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
(e)前記活性化された金属発泡体Bに、好ましくはMo、Pt、Pd、Rh、Ru、Cuおよびそれらの混合物から選択される、プロモーター元素をポストドーピングするステップ
をさらに含む、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により得られる、金属発泡体。
【請求項13】
請求項9から11までのいずれか1項記載の方法により得られる、金属発泡体。
【請求項14】
化学変換用触媒としての、請求項13記載の金属発泡体の使用。
【請求項15】
前記化学変換は、水素化、異性化、水和、水素化分解、還元的アミノ化、還元的アルキル化、脱水素化、酸化、脱水、および転位から選択される、請求項14記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景および先行技術
本発明は、金属発泡体の製造方法、該方法により製造することができる金属発泡体、および化学変換用触媒としての該金属発泡体の使用に関する。
【0002】
いわゆるラネー金属触媒や活性化多孔質金属触媒は、高活性で通常は粉末状の触媒であり、広く商業的に利用されている。一般にラネー金属触媒の前駆体は、少なくとも1つの触媒活性金属と少なくとも1つのアルカリ可溶性(浸出性)合金成分とを含む合金/金属間相である。典型的な触媒活性金属は、例えばNi、Co、CuにFe、Cr、Pt、Ag、Au、MoおよびPdを加えたものであり、典型的な浸出性合金成分は、例えばAl、ZnおよびSiである。合金からのラネー金属の製造は通常、濃縮苛性ソーダを用いて浸出成分を除去する活性化プロセスによって行われる。
【0003】
粉末状のラネー金属触媒の主な欠点は、コストのかかる沈降および/または濾過プロセスにより触媒反応の反応媒体から分離する必要があることである。
【0004】
そのため、ラネー金属触媒を固定化し、固定床触媒として利用できるようにする試みが既にいくつかなされている。例えば、欧州特許出願公開第2764916号明細書には、水素化に適したフォーム状の触媒成形体の製造方法が記載されており、該方法では、a)例えばNi、Fe、Co、Cu、Cr、Pt、Ag、AuおよびPdから選択される少なくとも1つの第1の金属を含む金属発泡成形体を提供し、b)例えばAl、ZnおよびSiから選択される少なくとも1つの第2の浸出性成分または合金化により浸出性成分への移行が可能な成分を金属発泡成形体の表面に施与し、c)ステップb)で得られた金属発泡成形体を合金化することにより表面の少なくとも一部に合金を形成し、d)ステップc)で得られたフォーム状の合金を、合金の浸出性成分を浸出させ得る薬剤による処理に供する。
【0005】
国際公開第2019057533号から、フォーム状の触媒成形体の類似の製造方法が知られている。ここでも、モノリス型のフォーム状金属物体に金属粉末を施与した後に熱処理することで、フォーム状金属物体と金属粉末との接触領域に合金が形成される。この国際公開第2019057533号には、フォーム状金属物体および金属粉末に選択できる様々な金属および金属の組み合わせに加え、熱処理の実施により合金を形成するための一般的な記載、およびニッケル発泡体上のアルミニウム粉末の処理に関するいくつかの具体例が開示されている。
【0006】
本発明は、金属発泡体の製造方法であって、金属発泡体を提供するステップと、次いでアルミニウム含有材料を施与するステップと、熱処理を行って合金を形成するステップとを含む方法に関する。ここで、合金形成の程度は熱処理の条件によって異なり、高温で長時間の熱処理を行うと、例えば金属発泡体の深部領域に合金が形成されるのに対し、低温で短時間の熱処理を行うと、金属発泡体の上部領域のみに合金が形成され、金属発泡体の内部に非合金化領域が残る。金属発泡体の内部に非合金化領域が残ることは、金属発泡体の機械的安定性に好影響を与えるため、先行技術では、そのような金属発泡体が得られる方法が必要とされている。本発明による熱処理の温度制御により、合金形成を金属発泡体の上層に限定することができるため、金属発泡体の中心領域に非合金領域が残る。ここで、本発明による方法では、処理される金属発泡体の厚さも考慮される。
【0007】
本発明
本発明による金属発泡体の製造方法は、
ニッケル、コバルト、銅、またはそれらの合金もしくは組み合わせから作製される金属発泡体Aを提供するステップと、
金属発泡体Aにアルミニウム含有材料MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、
金属発泡体AXを酸素排除下に熱処理して、金属発泡体Aの金属部分とアルミニウム含有材料MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップであって、
ここで、熱処理の継続時間H(単位:分)を、熱処理の温度T(単位:℃)に応じて以下のように選択する:
min<H<Hmaxであり、ここで、
最大継続時間Hmax=d1+(a1-d1)/(1+(T/c1)^b1)であり、かつ
最小継続時間Hmin=d2+(a2-d2)/(1+(T/c2)^b2)であり、
ここで、
a1=366.1;
b1=129.0;
c1=650.9;
d1=8.7;
a2=33.5;
b2=235.5;
c2=665.8;
d2=1.8;であり、
かつ熱処理の温度Tを、金属発泡体AXの厚さDに応じて以下のように選択する:
0mm<D≦10mmの場合、600℃<T≦680℃であり、
10mm<D≦20mmの場合、600℃<T≦675℃であり、
20mm<D≦30mmの場合、600℃<T≦665℃であり、
30mm<Dの場合、600℃<T≦660℃であるものとするステップと
を含む。
【0008】
本発明に関連して得られた実験結果から、合金形成のための熱処理の条件の選択が結果にかなりの影響を与えることがわかった。本発明による方法では、合金形成を金属発泡体の上層に限定することができるため、金属発泡体の中心領域に非合金化領域が残る。この非合金化領域の存在は、得られる金属発泡体の化学的および機械的安定性等の特性に影響を及ぼす。
【0009】
本発明に関連して、金属発泡体Aとは、フォーム状の金属物体を意味すると理解される。フォーム状の金属物体は、例えば2012年7月15日付でオンライン公開されたUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,「Metallic Foams」の章, DOI: 10.1002/14356007.c16_c01.pub2に開示されている。原理的には、孔径および細孔の形状、層厚、面密度、幾何学的表面、気孔率などに関して様々な形態的特性を有する金属発泡体が適している。好ましくは、金属発泡体は、100~1500kg/m、より好ましくは200~1200kg/m、最も好ましくは300~600kg/mの範囲のかさ密度を有する。平均孔径は、好ましくは400~3000μm、より好ましくは400~800μmである。好ましい金属発泡体は、100~20,000m/m、より好ましくは1,000~6,000m/mのBET比表面積を有する。気孔率は、好ましくは0.50~0.95の範囲にある。
【0010】
金属発泡体のかさ密度は、ISO 845に準拠して求められる。平均孔径は、「The Guide 2000 of Technical Foams」Vol.4, Part 4, p33-41に記載されているRecticel社のVisiocell(登録商標)分析法によって求められる。特に、透明な紙に印刷された校正済みのリングを選択したセルに重ね合わせて孔直径を光学的に測定することにより孔径が測定される。この孔径の測定を少なくとも100の異なるセルに対して行うことで、平均セル径が得られる。BET比表面積は、DIN 9277に準拠して、最大2gまでの金属発泡体サンプルへのガス吸着によって測定される。気孔率は以下の式で求められる:
【数1】
は、金属発泡体サンプルの体積(単位:mm)であり、
Wは、金属発泡体サンプルの重量(単位:g)であり、
ρは、金属の密度(単位:g/cm)である(例えば、Niでは8.9g/cm)。
【0011】
製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、有機ポリマー製の発泡体を2つの金属成分で逐次的にまたは同時にコーティングした後、熱分解によってポリマーを除去することができ、その際に金属発泡体が得られる。少なくとも1つの第1の金属またはその前駆体でコーティングするために、有機ポリマー製の発泡体を、第1の金属を含む溶液または懸濁液と接触させてもよい。これは、例えば、吹付けや浸漬によって行うことができる。また、化学気相成長法(chemical vapor deposition、CVD)による堆積も可能である。例えば、ポリウレタンフォームに1つまたは2つの金属を逐次的にコーティングした後、ポリウレタンフォームを熱分解させることができる。発泡体の形態の成形体を製造するのに適したポリマー発泡体は、好ましくは100~5000μm、特に好ましくは450~4000μm、特に450~3000μmの範囲の孔径を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは5~60mm、特に好ましくは10~30mmの層厚を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは300~1200kg/mの密度を有する。比表面積は、好ましくは100~20000m/m、特に好ましくは1000~6000m/mの範囲にある。気孔率は、好ましくは0.50~0.95の範囲にある。
【0012】
本発明による方法のステップ(a)で使用される金属発泡体Aは、例えば、立方体形、直方体形、円筒形など、あるいはより複雑な幾何学的形状といった、任意の所望の形状を有することができる。
【0013】
ステップ(b)で金属発泡体に施与されるアルミニウム含有材料MPは、アルミニウム含有材料MPに対して80~100重量%、好ましくは80~99.8重量%、特に90~99.5重量%の量の金属Alを含む。高純度アルミニウムは引火性が高いため、保護ガス雰囲気下で取り扱う必要がある。この材料は、金属アルミニウム(Al)に加えてさらにアルミニウムAl(III)を含むことができる。このAl(III)は、典型的には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/または炭酸アルミニウムの群から選択される酸化性化合物の形態である。特に好ましくは、Al(III)の割合は、アルミニウム含有材料MPに対して0.05~<10重量%の範囲であり、非常に好ましくは0.1~8重量%の範囲にある。この混合物は、AlおよびAl(III)に加えてさらに、有機化合物および/またはさらなる金属または金属酸化物もしくは金属炭酸塩を含んでいてもよく、さらなる金属は、例えばTi、Ta、Zr、V、Cr、Mo、W、Mn、Rh、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、CeおよびBiなどのプロモーター元素の群から選択されるのが好ましい。有機化合物は、炭化水素、ポリマー、樹脂、ワックス、アミンおよびアルコールの群から選択されるのが好ましい。
【0014】
ステップ(b)で金属発泡体に施与されるアルミニウム含有材料MPは、好ましくはアルミニウム含有粉末である。好ましい実施形態では、アルミニウム含有粉末は、1~5重量%、特に好ましくは2~4重量%、最も好ましくは約3重量%の有機化合物、特にワックスと、94.5~98.8重量%、特に好ましくは95.5~97.8重量%、最も好ましくは96.5~96.8重量%のAlとを含む。好ましくは、アルミニウム含有粉末の粒子は、5μm以上200μm以下の直径を有する。特に好ましいのは、粒子の95%が5~75μmの直径を有する粉末である。
【0015】
アルミニウム含有粉末は、通常、有機バインダーを用いて金属発泡体の表面に固定化される。一実施形態では、アルミニウム含有粉末を実際に施与する前に、金属発泡体に有機バインダーを含浸させる。含浸は、例えば、バインダーの吹付け、バインダーへの金属発泡体の浸漬、または発泡体を通してバインダーをポンピング若しくは吸引することによって行うことができるが、これらの方法に限定されるものではない。通常、バインダーは、金属発泡体の層厚が10~60μm、好ましくは10~30μmとなるような量で使用される。次いで、このようにして準備した金属発泡体にアルミニウム含有粉末を施与することができる。
【0016】
これに代えて、有機バインダーおよびアルミニウム含有粉末をワンステップで施与することもできる。このために、アルミニウム含有粉末を、施与前に液体バインダー自体に懸濁させるか、またはアルミニウム含有粉末およびバインダーを補助液体に懸濁もしくは溶解させる。
【0017】
本発明による方法のステップ(b)におけるアルミニウム含有粉末の施与は、様々な方法で行うことができ、例えば、金属発泡体を圧延または浸漬によりアルミニウム含有粉末と接触させることや、アルミニウム含有粉末を吹付け、散布または注型により施与することにより行うことができる。このために、アルミニウム含有粉末は純粋な粉末として存在することができ、あるいはバインダーおよび/または補助液体に懸濁されている。補助液体を使用する場合には、これは好ましくは水である。
【0018】
バインダーは、金属物体へのアルミニウム含有粉末の付着を促進する有機化合物である。ここで好ましくは、バインダーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレングリコール、ワックス、ポリエチレンイミン(PEI)、およびこれらの化合物の混合物から選択される。ポリスチレン標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィーで測定したMが例えば10,000~1,300,000g/molであるPVPまたはPEIが、バインダーとして特に好ましい。好ましくは、例えばM=500,000~1,000,000g/molまたはM=600,000~900,000g/molであるPEIがバインダーとして使用される。典型的には、PEIは水溶液として使用され、PEIおよび水の重量に対して、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~10重量%、または2~5重量%、最も好ましくは2~3重量%の濃度で使用される。アルミニウム含有粉末は、任意に例えば水などの補助液体に溶解させたバインダーに、例えばPEI水溶液に懸濁させることができ、懸濁液中のアルミニウム含有粉末の量は、懸濁液の総重量に対して、好ましくは30~70重量%、特に好ましくは40~60重量%、最も好ましくは45~55重量%である。
【0019】
ステップ(b)におけるアルミニウム含有材料MPの代替的な施与方法には、例えば、溶融金属中への金属発泡体の浸漬、アルミニウム含有材料MPのスパッタリングまたは化学気相成長、および金属塩としてのアルミニウム含有材料MPの堆積とその後の金属への還元が含まれる。また、上記のすべての施与方法を組み合わせることも可能である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、アルミニウム含有材料MPは、アルミニウム含有粉末であり、有機バインダーは、アルミニウム含有粉末とともに、またはアルミニウム含有粉末の前に、金属発泡体Aに施与される。
【0021】
コーティングされた金属発泡体は軟質であるため、必要に応じて容易に成形することができる。例えば、コーティングされた金属発泡体の表面に、例えば波形などのエンボス加工を施すことができる。エンボス加工は、例えばプロファイルローラ、パンチ、またはエンボス加工具などの通常の工具で行うことができる。さらに、コーティングされた金属発泡体は、任意に事前にエンボス加工を施した後に折り畳んだり巻いたりすることができる。変形された金属発泡体は、複数の金属発泡体を、任意に事前にエンボス加工を施した後に積み重ねることによっても得ることができ、その際、発泡体は、コーティングされた金属発泡体のみからなることができ、あるいはコーティングされた2つの金属発泡体の間に配置されたコーティングされていない金属発泡体を含んでもよい。巻かれた、折り畳まれた、または積層された金属発泡体は、本明細書では多層とも呼ばれ、適宜、様々な成形プロセスによってさらに成形することができる。コーティングされた金属発泡体の成形、変形および/または積層により、用途に応じて所望の幾何学的形状を有する金属発泡体AXを製造することができる。
【0022】
本発明による方法のステップ(c)では、熱処理により1つ以上の合金を形成する。本発明に関連して得られた実験結果から、合金形成を金属発泡体の上部領域に限定し、金属発泡体の内部に非合金化領域を残すためには、比較的厳密な温度制御が必要であることがわかった。また、熱処理の条件を選択する際には、金属発泡体AXの厚みDを考慮する必要がある。本発明による方法のステップ(c)における金属発泡体AXの熱処理は、酸素排除下で行われなければならない。
【0023】
熱処理の継続時間H(単位:分)は、熱処理の温度T(単位:℃)に応じて以下のように選択される:
min<H<Hmaxであり、ここで、
最大継続時間Hmax=d1+(a1-d1)/(1+(T/c1)^b1)であり、かつ
最小継続時間Hmin=d2+(a2-d2)/(1+(T/c2)^b2)であり、
ここで、
a1=366.1;
b1=129.0;
c1=650.9;
d1=8.7;
a2=33.5;
b2=235.5;
c2=665.8;
d2=1.8;であり、
かつ熱処理の温度Tは、金属発泡体AXの厚さDに応じて以下のように選択される:
0mm<D≦10mmの場合、600℃<T≦680℃であり、
10mm<D≦20mmの場合、600℃<T≦675℃であり、
20mm<D≦30mmの場合、600℃<T≦665℃であり、
30mm<Dの場合、600℃<T≦660℃である。
【0024】
ここで、金属発泡体AXの厚さDは、以下のように決定される:
金属発泡体の幾何学的形状が単純な場合、例えば金属発泡体のマットを直方体状に切り出した場合、Dは、その切り出した部分の最も短い辺の長さ、つまり多くの場合は金属発泡体のマットの厚さを表す。より複雑な幾何学的形状の物体の場合、Dは概算で決定され、疑わしい場合には、Dについて小さすぎる値よりも大きすぎる値であると仮定する。ここで、Dの値は、発泡体内部の点のうち表面までの最小距離が最大となる点から、表面までの最小距離の2倍の値と見積もられる。いずれにしても、Dを決定する際には、発泡体の細孔およびその表面は無視されるべきであり、すなわち、この決定においては、発泡体の細孔は充填されているものとみなすべきである。さらに、直径が1cm未満である当該発泡体の凹部も同様に、表面ではなく充填された領域とみなすべきである。
【0025】
熱処理は、金属発泡体AXを通常は段階的に加熱することと、その後に室温まで冷却することとを含む。熱処理は、不活性ガスまたは還元的な条件下で行われる。還元的な条件とは、水素と、反応条件下で不活性な少なくとも1つのガスとを含むガス混合物の存在と理解され、例えば、50体積%のNと50体積%のHとを含むガス混合物が適している。不活性ガスとしては、窒素が好ましく使用される。加熱は、例えばベルト炉などで行うことができる。適切な加熱速度は、10~200K/分、好ましくは20~180K/分の範囲にある。熱処理の間に、通常はまず室温から約300~最大で350℃まで温度を上げ、この温度で約2~30分の時間にわたって保持して水分や有機成分をコーティングから除去する。熱処理のこのフェーズでは、合金形成は生じない。
【0026】
その後、温度を600℃超の範囲に高めると、金属発泡体Aの金属部分とアルミニウム含有材料MPとの間で合金が形成され、金属発泡体Bが得られる。
【0027】
合金形成を金属発泡体の上部領域に限定し、金属発泡体の内部に非合金化領域を残すためには、熱処理の継続時間Hを、熱処理の温度Tに応じて適切に選択することが必要である。本発明によれば、熱処理の継続時間H(単位:分)は、熱処理の温度T(単位:℃)に応じて以下のように選択される:
min<H<Hmaxであり、ここで、
最大継続時間Hmax=d1+(a1-d1)/(1+(T/c1)^b1)であり、かつ
最小継続時間Hmin=d2+(a2-d2)/(1+(T/c2)^b2)であり、
ここで、
a1=366.1;
b1=129.0;
c1=650.9;
d1=8.7;
a2=33.5;
b2=235.5;
c2=665.8;
d2=1.8;であり、
かつ熱処理の温度Tは、金属発泡体AXの厚さDに応じて以下のように選択される:
0mm<D≦10mmの場合、600℃<T≦680℃であり、
10mm<D≦20mmの場合、600℃<T≦675℃であり、
20mm<D≦30mmの場合、600℃<T≦665℃であり、
30mm<Dの場合、600℃<T≦660℃である。
【0028】
合金形成後、金属発泡体は、酸素排除下で冷却される。この冷却は、単に熱処理を停止することによって行うことができ、例えば、酸素排除下で、加熱環境、例えば炉から金属発泡体を取り出して周囲温度までゆっくりと冷却させることによって行うことができる。しかし、浸出性の金属間相を「凍結」させるために、触媒成形体を可能な限り迅速に200℃未満の温度にすることが好ましい。これは、適切な冷却媒体によって行うことができ、好ましくは、ベルト炉などの炉の冷却ゾーンで冷却が行われる。これは、例えば冷却水のジャケットで囲まれていてよい。好ましい冷却速度は、5~500K/min、特に好ましくは20~400K/min、最も好ましくは30~200K/minである。熱処理と冷却との間に、成形体を無酸素環境で保持しなければならない。「酸素排除下」または「無酸素環境」とは、本明細書では、不活性ガス雰囲気中または還元性雰囲気下を意味する。ここで、不活性ガスとしては、好ましくは窒素が使用される。還元性雰囲気としては、例えば好ましくは50/50の体積比のN/Hなどの不活性ガスと水素との混合物が適している。好ましくは、成形体は、窒素流下で加熱および冷却され、典型的には5~30m/hの範囲、特に好ましくは10~30m/hの範囲の流量の窒素流下で加熱および冷却される。
【0029】
温度Tが高すぎるおよび/または継続時間Hが長すぎると、金属発泡体の最深層まで合金形成が進み、非合金化領域が残らなくなる。温度Tが低すぎるおよび/または継続時間Hが短すぎると、合金形成が全く始まらない。
【0030】
合金形成時に、異なる温度Tの時間間隔を本発明による範囲内で選択した場合、この時間間隔の継続時間に応じて重み付けした平均値を用いて、熱処理の温度Tに対するHminおよびHmaxを決定することができる。
【0031】
金属発泡体A中に2つの金属成分が存在する場合、好ましい実施形態では、金属発泡体Aにおける2つの金属成分の重量比は、1:1~20:1の範囲にあり、特に好ましくは1:1~10:1の範囲にある。
【0032】
好ましい実施形態では、金属発泡体Aは、金属ニッケルからなる。
【0033】
さらなる好ましい実施形態では、金属発泡体Bと金属発泡体Aとの重量比V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A)は、1.1:1~1.5:1の範囲にあり、特に好ましくは1.2:1~1.4:1の範囲にある。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、以下のステップ(d)を含む方法をさらに含む:金属発泡体Bを浸出剤で処理して活性化させる。浸出剤による金属発泡体Bの処理は、施与されたアルミニウム含有材料MPの組成物の金属成分や、金属発泡体の金属部分とアルミニウム含有材料MPの組成物との間の合金を少なくとも部分的に溶解させ、このようにして金属発泡体から除去する役割を果たす。金属発泡体中のアルミニウムの含有量は、触媒の性能および寿命、特に水素化活性および反応媒体中での化学的安定性に影響を与える。典型的には、金属発泡体のアルミニウムの元の総重量に対して30~70重量%、好ましくは40~60重量%のアルミニウムが除去される。残留アルミニウムの含有量が少ないほど、本発明による金属発泡体の水素化活性が高くなる。好ましくは、金属発泡体の総重量に対して、残留アルミニウムの含有量を2~20重量%、特に好ましくは5~15重量%、非常に特に好ましくは2~17重量%、最も好ましくは3~12重量%に設定する。
【0035】
浸出剤としては、金属間相からアルミニウムを選択的に溶解させるいずれの薬剤も適しており、アルカリ性でも酸性でもよく、また錯化作用があってもよい。好ましくは、浸出剤は塩基の水溶液であり、例えば、水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、特に好ましくはNaOH、KOHおよび/またはLiOHまたはそれらの混合物、非常に好ましくはNaOHの水溶液である。
【0036】
好ましい実施形態では、塩基性溶液による金属発泡体Bの処理は、20~120℃、好ましくは60~115℃、特に好ましくは80~110℃の範囲の温度で、5分~8時間の範囲の継続時間で行われ、その際、塩基性溶液は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である。好ましくは、浸出時間、すなわち例えばNaOH水溶液などの浸出剤によるステップ(d)の処理時間は、15~90分である。
【0037】
本発明による方法のステップ(d)における活性化は、例えば液相式またはトリクル式で実施することができる。浸出剤による処理の後、触媒成形体は、水、C~Cアルカノール、およびそれらの混合物から選択される洗浄媒体で洗浄されることが好ましい。適切なC~Cアルカノールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、およびイソブタノールである。
【0038】
金属成分を適切に選択した場合、塩基性溶液で処理した結果として得られる金属発泡体は、国際公開第2019057533号に開示されているように、触媒として使用することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、活性化された金属発泡体を、ステップ(e)においてさらなる金属のポストドーピングによって改質させてもよく、プロモーター元素とも呼ばれるこれらのドーピング元素は、好ましくは遷移金属から選択される。ポストドーピングのために、金属発泡体は、好ましくは、施与するドーピング元素の水溶液で処理される。金属発泡体を損傷しないようにするため、ドーピング溶液は、通常はpH≧7である。施与するドーピング元素の溶液に化学的還元成分を添加して、溶解したドーピング元素を金属発泡体上に還元的に析出させてもよい。改質のための好ましいドーピング元素は、Mo、Pt、Pd、Rh、Ru、Cuおよびそれらの混合物からなる群から選択される。ドーピングに適した方法は、例えば、国際公開第2019/057533号の第20頁~第25頁に記載されている。ステップ(d)で活性化され、必要に応じてステップ(e)でポストドーピングされた金属発泡体は、そのまま触媒として使用することも、保管することもできる。表面での酸化プロセス及び関連する触媒活性の低下を防ぐために、活性化後の金属発泡体は、好ましくは水中に保管される。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、本発明による方法により得られるコーティングされた金属発泡体をさらに含む。
【0041】
本発明による方法の1つにより得られる活性化され、任意にドーピングされた金属発泡体は、例えば、水素化、異性化、水和、水素化分解、還元的アミノ化、還元的アルキル化、脱水素化、酸化、脱水、および転位などの、特に有機化合物の多数の触媒的化学反応用の触媒として使用することができ、好ましくは水素化反応用触媒として使用することができる。原則として、本発明による触媒成形体は、ラネー金属触媒で触媒されるすべての水素化反応に好適である。本発明による触媒活性金属発泡体の好ましい用途は、カルボニル化合物、オレフィン、芳香環、ニトリル、およびニトロ化合物の選択的水素化プロセスである。具体的な例としては、カルボニル基の水素化、ニトロ基の水素化によるアミンの生成、ポリオールの水素化、ニトリルの水素化によるアミンの生成、例えば、脂肪ニトリルの水素化による脂肪アミンの生成、アルコールの脱水素化、還元的アルキル化、オレフィンの水素化によるアルカンの生成、およびアジドの水素化によるアミンの生成である。特に好ましいのは、カルボニル化合物の水素化での使用である。
【0042】
したがって、さらなる態様では、本発明は、化学変換用触媒としての、好ましくは水素化、異性化、水和、水素化分解、還元的アミノ化、還元的アルキル化、脱水素化、酸化、脱水、および転位から選択される化学変換用の触媒としての、本発明による方法の1つにより得られる活性化され、任意にドーピングされた金属発泡体の使用を含む。
【0043】
実施例
1.金属発泡体の提供
ニッケル製の3つの金属発泡体マット(a,b,c)を準備した(メーカー:AATM、厚さ:1.9mm、単位面積当たりの重量:1000g/m、平均孔径:580μm)。
【0044】
2.アルミニウム粉末の施与
その後、まずすべての金属発泡体マットにバインダー溶液(ポリエチレンイミン(2.5重量%)水溶液)を吹付け、次に粉末状アルミニウム(メーカー:Mepura、平均粒径:<63μm、エチレンビス(ステアラミド)を3重量%添加)を乾燥粉末として施与した(約400g/m)。
【0045】
発泡体マットをコーティングした後、厚さ1.9mm(長さおよび幅、各25mm)の個々の層を積み重ねて、厚さの異なる6つの直方体状の発泡体(a1,a2,a3,b1,b2,b3)を製造した。次いで、接触点の数および接触面積を増やすために、発泡体を約30%圧縮した。
【0046】
金属発泡体a1,a2およびa3:厚さ9mm(1.9mm厚×7層=厚さ13.3mm、9mmに圧縮)
金属発泡体b1,b2およびb3:厚さ12mm(1.9mm厚×9層=厚さ17.1mm、12mmに圧縮)
【0047】
3.熱処理
その後、すべての金属発泡体を、窒素雰囲気下で炉にて熱処理に供した。その際、まず、バインダーを350℃で30分間熱により除去した後、10分以内に最高温度まで加熱し、これを規定時間(処理継続時間)にわたって保持した後、200℃未満に急冷した。
【0048】
【表1】
【0049】
4.合金化の程度の判定
最後に、金属発泡体における合金形成の程度を測定した。このために、金属発泡体の断面を顕微鏡および走査型電子顕微鏡で調べた。その際、以下の結果が得られた:
金属発泡体a1およびb1では、表面では合金形成が起きているが金属発泡体の内部には非合金化領域が残っているのに対し、金属発泡体a2およびb2では合金形成が起きておらず、金属発泡体a3およびb3では、金属発泡体の内部に非合金化領域が残らない程度に合金形成が進んでいる。
【0050】
これまでの実験から、特にさらに次のようなこともわかっている:合金形成のための温度を680℃超、例えば700℃に選択すると、アルミニウムがニッケルと制御不能な反応を起こし、成形体が燃焼して粉末残渣のみが残る。
【0051】
この結果は、本発明による熱処理条件から逸脱すると、金属発泡体の内部に非合金化領域を残した表面的な合金形成が困難になることを明確に示している。
【0052】
5.加熱継続時間の限界曲線の位置の決定
以上の結果をもとに、所与の加熱温度で金属発泡体の内部に非合金化領域を残した表面的な合金形成が生じる加熱継続時間の限界曲線の位置をシグモイドモデル(加熱継続時間=d+(a-d)/(1+(加熱温度/c)^b))を用いて求めた。
【0053】
上側の曲線の位置(最大加熱継続時間)の限界値として、以下の値を用いた:
温度(℃)→継続時間(分)
680→10
675→12
665→30
660→60
【0054】
下側の曲線の位置(最小加熱継続時間)の限界値として、以下の値を用いた:
温度(℃)→継続時間(分)
680→2
675→3
665→20
660→30
【0055】
ここで、限界曲線の位置について、以下の結果が得られた(Hのデータの単位は分、Tのデータの単位は℃):
最大継続時間Hmax=d1+(a1-d1)/(1+(T/c1)^b1)であり、
ここで、
a1=366.1;
b1=129.0;
c1=650.9;
d1=8.7;であり、かつ
最小継続時間Hmin=d2+(a2-d2)/(1+(T/c2)^b2)であり、
ここで、
a2=33.5;
b2=235.5;
c2=665.8;
d2=1.8;である。
【0056】
6.処理された金属発泡体の厚さに応じた熱処理温度の範囲限界の決定
上記の結果およびさらなる経験値から、処理された金属発泡体の厚さに応じた熱処理温度の範囲限界の位置が得られた。
【0057】
熱処理温度T(単位:℃)は、金属発泡体AXの厚さD(単位:ミリメートル)に応じて、以下のように選択されることが望ましい:
0mm<D≦10mmの場合、600℃<T≦680℃であり、
10mm<D≦20mmの場合、600℃<T≦675℃であり、
20mm<D≦30mmの場合、600℃<T≦665℃であり、
30mm<Dの場合、600℃<T≦660℃である。
【国際調査報告】