(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの生合成
(51)【国際特許分類】
C12N 1/19 20060101AFI20221202BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221202BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/61 20060101ALN20221202BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20221202BHJP
C12P 23/00 20060101ALN20221202BHJP
【FI】
C12N1/19 ZNA
C12N1/21
C12N15/29
C12N15/53
C12N15/62 Z
C12N15/31
C12N15/61
C12N15/54
C12P23/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520244
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020054323
(87)【国際公開番号】W WO2021067974
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516131979
【氏名又は名称】コナゲン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウ,イシェン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ワンリ
(72)【発明者】
【氏名】コートニー,ジェイコブ,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ナン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ユ,オリバー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC12
4B064AH01
4B064BJ01
4B064BJ05
4B064CA02
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA24X
4B065AA72X
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA05
4B065CA09
4B065CA13
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書において、組換え核酸分子、核酸構築物、融合酵素、形質転換された宿主細胞、および芳香化合物アルファ-イオノンまたはベータ-イオノンを作製するための方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオノン化合物を産生するための組換え微生物産生宿主細胞であって、第1のコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含み、前記第1のコード配列が、カロチノイド開裂活性を有する第2のドメインに融合された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)として機能できる第1のドメインを含む融合酵素をコードし、前記第1のコード配列が、脂質体構造タンパク質、含油性(oleaginicity)誘導性脂肪滴タンパク質、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質からなる群から選択され、かつ前記第1のドメインが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、小さいユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはチオレドキシン(TrxA)を含まない、宿主細胞。
【請求項2】
前記第1のドメインが、配列番号5、配列番号7、または配列番号9に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記第1のドメインが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号31、または配列番号33に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記第1のドメインが、配列番号29、または配列番号30のアミノ酸配列に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオレオシンポリペプチドである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記第1のドメインが、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウダイグサ(Ricinus communis)、ダイズ(Glycine max)、ゴマ(Sesamum indicum)、Coix lacryma、クロカビ(Aspergillus niger)、またはアカパンカビ(Neurosporacrassa)由来のカレオシンを含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記第2のドメインが、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼまたはカロチノイドオキシゲナーゼである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記第2のドメインが、配列番号11、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記第2のドメインが、ツクバネアサガオ(Petunia x hybrida)、モクセイ(Osmanthus fragrans)、トウモロコシ(Zea mays)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブドウ(Vitis vinifera)、ニンジン(Daucus carota)、トマト(Lycopersicon esculentum)、もしくはヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)由来のCCD1酵素、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ベニノキ(Bixa Orellana)、コギク(Chrysanthemum morifolium)、サフラン(Crocus sativus)、マレーヤマバショウ(Musa acuminata)、セイヨウリンゴ(Malus domestica)、モモ(Prunus persica)、ダマスクバラ(Rosa damascene)、ブドウ(Vitis vinifera)、およびモクセイ(Osmanthus fragrans)由来のCCD4酵素を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記第1のドメインが、3~30アミノ酸長を含みかつグリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含むリンカーを介して前記第2のドメインに融合される、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記リンカーが、グリシン-セリンリンカーを含む、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記第1のコード配列が、TEFプロモーターに作動可能に連結される、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項12】
リコペンイプシロン-シクラーゼまたはカロチノイド開裂ジオキシゲナーゼもしくはカロチノイドオキシゲナーゼドメインに融合されたリコペンイプシロン-シクラーゼドメインを含む融合酵素をコードする第2のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、アルファ-イオノンを産生するための請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項13】
フィトエンシンターゼをコードする第2のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、ベータ-イオノンを産生するための請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項14】
フィトエンデヒドロゲナーゼをコードする第3のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
1つ以上のコード配列を含む1つ以上の核酸構築物をさらに含み、前記1つ以上のコード配列が、宿主細胞に対し天然のメバロン酸経路酵素から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記天然のメバロン酸経路酵素が、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)、およびイソペンテニル-二リン酸-イソメラーゼ(IPI)からなる群から選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
1つ以上のコード配列を含む1つ以上の核酸構築物をさらに含み、前記1つ以上のコード配列が、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ(GGPPS)、GGPPS::FPPS融合酵素、フィトエンデヒドロゲナーゼ(CarB)、二官能性リコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼ(CarRP)、およびリコペンシクラーゼ活性を有しない変異体CarRP(CarRP*)からなる群から選択される1つ以上の酵素をコードする、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記宿主細胞が、酵母である、請求項1~17のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカである、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
カロチノイド化合物を産生するための組換え微生物産生宿主細胞であって、ベータ-カロチンケトラーゼまたはベータ-カロチンヒドロキシラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドまたはカレオシンポリペプチドを含む融合酵素をコードするコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含む、宿主細胞。
【請求項22】
ベータ-カロチンケトラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドを含む第1の融合酵素をコードする第1のコード配列とベータ-カロチンヒドロキシラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドまたはカレオシンポリペプチドを含む第2の融合酵素をコードする第2のコード配列とを含む請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記ベータ-カロチンケトラーゼが、藻類のまたは細菌のBKTまたはCrtWである、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記ベータ-カロチンケトラーゼが、ヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis)、クロレラ・ゾフィンギエンシス(Chlorella zofingiensis)、Chlamydomonas reinhardtii、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、およびパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)由来である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記ベータ-カロチンヒドロキシラーゼが、藻類CrtR-Bである、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記藻類CrtR-bが、ヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis)またはChlamydomonas reinhardtii由来である、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記オレオシンポリペプチドが、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列を含み、かつ前記カレオシンポリペプチドが、配列番号31または配列番号33のアミノ酸配列を含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記カロチノイド化合物が、アスタキサンチンである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記カロチノイド化合物が、カンタキサンチンである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカである、請求項21~29のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項31】
第1の核酸配列および第2の核酸配列を含む合成のまたは組換えの核酸分子であって、前記第1の核酸配列および前記第2の核酸配列が、融合酵素を一緒にコードし、前記融合酵素が、脂質体区画化シグナルタグとして機能できる第1のドメインとカロチノイド開裂活性を有する第2のドメインとを含み、前記第1のドメインが、脂質体構造タンパク質、含油性(oleaginicity)誘導性脂肪滴タンパク質、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質からなる群から選択され、かつ前記第1のドメインが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、小さいユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはチオレドキシン(TrxA)を含まない、核酸分子。
【請求項32】
前記第1のドメインが、25kDa未満の分子量を有する脂質体構造体である、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項33】
前記第1のドメインが、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の核酸分子。
【請求項34】
前記第1のドメインが、配列番号1または配列番号3に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
前記第1の核酸配列が、配列番号2または配列番号4に対し少なくとも80%の配列同一性を呈する核酸配列を含む、請求項33または34に記載の核酸分子。
【請求項36】
前記第1のドメインが、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号31、または配列番号33に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記第1の核酸配列が、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号32、または配列番号34に対し少なくとも80%の配列同一性を呈する核酸配列を含む、請求項36に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記第2のドメインが、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼである、請求項31~37のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項39】
前記第2のドメインが、配列番号11、配列番号14、または配列番号16に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項38に記載の核酸分子。
【請求項40】
前記第2の核酸配列が、配列番号12、配列番号13、配列番号15、または配列番号17に対し少なくとも80%の配列同一性を呈する核酸配列を含む、請求項39に記載の核酸分子。
【請求項41】
前記第2のドメインが、カロチノイドオキシゲナーゼまたは9-シス-エポキシカロチノイドジオキシゲナーゼである、請求項31~37のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項42】
前記第2のドメインが、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の核酸分子。
【請求項43】
前記第2の核酸配列が、配列番号19、配列番号21、配列番号23、または配列番号25に対し少なくとも80%の配列同一性を呈する核酸配列を含む、請求項42に記載の核酸分子。
【請求項44】
前記第2のドメインが、ツクバネアサガオ(Petunia x hybrida)、モクセイ(Osmanthus fragrans)、トウモロコシ(Zea mays)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブドウ(Vitis vinifera)、ニンジン(Daucus carota)、トマト(Lycopersicon esculentum)、もしくはヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)由来のCCD1酵素、またはシロイヌナズナ、ベニノキ(Bixa Orellana)、コギク(Chrysanthemum morifolium)、サフラン(Crocus sativus)、マレーヤマバショウ(Musa acuminata)、セイヨウリンゴ(Malus domestica)、モモ(Prunus persica)、ダマスクバラ(Rosa damascene)、ブドウ(Vitis vinifera)、およびモクセイ(Osmanthus fragrans)由来のCCD4酵素を含む、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項45】
一方の末端で前記第1の核酸配列におよび他方の末端で前記第2の核酸配列に作動可能に連結された第3の核酸配列をさらに含み、前記第3の核酸配列が、前記第2のドメインに前記第1のドメインを連結するリンカーをコードする、請求項31~44のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項46】
前記リンカーが、3~30のアミノ酸長を含む、請求項45に記載の核酸分子。
【請求項47】
前記リンカーが、グリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含む、請求項45または46に記載の核酸分子。
【請求項48】
前記リンカーが、任意によりGGGGSの1つ以上のユニットを含む、グリシン-セリンリンカーを含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項49】
前記リンカーが、GGGGSである、請求項45~48のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項50】
前記リンカーが、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである、請求項45~49のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項51】
異種核酸配列に作動可能に連結された請求項31~50のいずれか一項に記載の核酸分子を含む核酸構築物であって、任意により前記異種核酸配列が、プロモーター配列である、核酸構築物。
【請求項52】
イプシロン-シクラーゼまたはフィトエンシンターゼをコードする異種核酸配列をさらに含む、請求項51に記載の核酸構築物。
【請求項53】
カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)ドメインに連結された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)ドメインを含む融合酵素。
【請求項54】
前記LBTドメインが、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項53に記載の融合酵素。
【請求項55】
前記LBTドメインが、配列番号1または配列番号3に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項54に記載の融合酵素。
【請求項56】
前記LBTドメインが、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号31、または配列番号33に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項53に記載の融合酵素。
【請求項57】
前記CCDドメインが、配列番号11、配列番号14、または配列番号16に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の融合酵素。
【請求項58】
前記CCDドメインが、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項53~56のいずれか一項に記載の融合酵素。
【請求項59】
前記LBTドメインが、リンカーを介して前記CCDドメインに連結される、請求項53~58のいずれか一項に記載の融合酵素。
【請求項60】
前記リンカーが、3~30のアミノ酸長を含む、請求項59記載の融合酵素。
【請求項61】
前記リンカーが、グリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含む、請求項59または60に記載の融合酵素。
【請求項62】
前記リンカーが、グリシン-セリンリンカーを含む、請求項61に記載の融合酵素。
【請求項63】
前記リンカーが、GGGGSの1つ以上のユニットを任意により含む、請求項62に記載の融合酵素。
【請求項64】
請求項31~50のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項51もしくは52に記載の核酸構築物を含む組換えヤロウイア・リポリティカ細胞。
【請求項65】
それによりイオノン化合物が産生される条件下にてグルコースまたはグリセロールを含む培地中で請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を培養することを含む、イオノン化合物を産生するための方法。
【請求項66】
前記イオノン化合物が、アルファ-イオノンである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記イオノン化合物が、ベータ-イオノンである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
それによりカロチノイド化合物が産生される条件下にてグルコースまたはグリセロールを含む培地中で請求項21~30のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を培養することを含む、カロチノイド化合物を産生するための方法。
【請求項69】
前記カロチノイド化合物が、アスタキサンチンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記カロチノイド化合物が、カンタキサンチンである、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年10月4日に出願された米国仮出願第62/911,116号の優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、アルファイオノンおよびベータイオノンなどの、芳香化合物を含むカロチノイド化合物の生合成産生のための組成物およびプロセスに関する。より具体的には、本方法およびプロセスは、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)ドメインに連結された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)ドメインを有する融合酵素をコードする異種核酸を含むように形質転換された微生物宿主細胞を利用する。
【背景技術】
【0003】
消費者は、良い味およびにおいを有する食品、香料、および化粧品を求めている。多くの場合、これらの良い嗅覚および味覚の形質は、それらの臭気しきい値がppb未満の範囲にある時に特別に優れた芳香特性を有する、アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンなどのカロチノイドの誘導体を介して提供される。アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの現在の供給は、主に植物からの抽出プロセスまたは化学合成のいずれかによって行われている。より多くの消費者が天然成分を好むにつれて、天然源からのイオノンの市場需要が劇的に増加している。しかし、約1グラムのアルファ-イオノンを生産するには、約100トンのラズベリー、すなわち農業面積20ヘクタールを必要とする。さらに、植物抽出ベースの生産は、関心のある化合物の強度および存在量に対する気象影響、植物病害および/または収穫不良のリスク、化合物の安定性、生産増加の環境影響、および貿易制限などの著しい欠点を有する。構造的にアルファ-イオノンは、キラル中心を有する。植物(ラズベリーなど)由来の天然アルファ-イオノンは、(R)-(+)-(E)-アルファ-イオノンである。対照的に、化学的に合成されたα-イオノンは、2つの異性体(RおよびS)を有する(
図1)。R-エナンチオマーは、スミレのような、果実のような、またはラズベリーのような風味として記載される、独特で強力な花の風味および芳香を有し、一方、S-エナンチオマーは、ベータ-イオノンと同様の木質の香りを有する。したがって、化学的に合成されたアルファ-イオノンは、ラセミ混合物として存在し、2つの異なる香りを有するエナンチオマーを含有する。したがって、香料産業に対するその効用は限られている。(S)-アルファ-イオノンまたは(R)-アルファ-イオノンのエナンチオ選択的合成のための新規方法が報告されているが、合成された(R)-アルファ-イオノン報告の最も高いエナンチオマー純度は、現在まで約97%であり、(S)-エナンチオマーのかなりの量が依然として存在することを意味する。さらに、化学合成産生は環境問題を引き起こす可能性があり、有毒な前駆体を使用する可能性があり、かつ産生プロセス自体は、主要な出発物質の費用のために費用の増加を受け得る。
【0004】
したがって、当該技術分野では、植物抽出および化学合成によってもたらされる限定なしに、経済的かつ確実に「天然」アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンを産生する新規方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本教示によれば、アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンは、微生物細胞培養を用いる酵素工学および発酵技術により高収率で確実に産生ができる。これらの微生物細胞培養物は、「天然」アルファ-イオノンまたはベータ-イオノンde novoを商業的に有意な収率で合成できる。したがって、本明細書では、新規生合成方法が、アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの産生の費用を低減し、かつこれらの芳香化合物が従来どおり抽出される天然源の大規模な栽培および加工の環境影響を低減するために提供される。
【0006】
より具体的には、本教示は、微生物発酵によりイオノン化合物(例えば、アルファ-イオノン、ベータ-イオノン)を作製するための方法および組成物を包含し、このような方法および組成物は、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)ドメインに連結された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)ドメインを有する融合酵素をコードする異種核酸分子による真核細胞の形質転換を含む。
【0007】
アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの発酵産生は、それによりそれらのそれぞれの前駆体イプシロン-カロチンまたはベータ-カロチンが開裂される、反応ステップの効率により妨げられてきた。本開示は、ある区画化シグナルタグが、その中でイプシロン-カロチンおよびベータ-カロチンが蓄積する脂質体を標的にでき、それによってCCD酵素のそのような脂質体への結合親和性を増大し、したがってCCD酵素の触媒効率を劇的に増大するという知見に一部基づく。脂質体区画化シグナルタグ融合CCDをコードする核酸分子の過剰発現と、種々のカロチノイド前駆体生合成遺伝子の過剰発現を組み合わせることにより、イオノン化合物の産生は、可溶性タグの使用、部位指向性変異誘発、またはEC-CCD融合酵素のみを作製するなどの代替的戦略よりもはるかに高い力価を提供することにより、改善され得る。したがって、本開示は、化学合成または植物抽出に関連する欠点なしに、「天然の」アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンを産生するための経済的かつ信頼性の高い方法を提供する。
【0008】
一態様では、本教示は、イオノン化合物を産生するための組換え微生物産生宿主細胞に関し、宿主細胞は、融合酵素をコードするコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含み、融合酵素は、カロチノイド開裂活性を有する第2のドメインに融合された脂質体区画化シグナルタグとして機能できる第1のドメインを含む。様々な実施形態では、脂質体区画化シグナルタグ(LBT)は、脂質体構造タンパク質(例えば、オレオシンおよびカレオシン)、含油性(oleaginicity)誘導性脂質滴タンパク質(例えば、Oil1)、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質(例えば、STL1などの糖輸送体)であり得る。第2のドメインは、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)、またはイプシロン-カロチンおよびベータ-カロチンの適切な結合を開裂してアルファ-イオノンおよびベータ-イオノンを提供できる、他のモノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、およびペルオキシダーゼなどの機能的同等物であり得る。
【0009】
様々な実施形態では、本教示は、第1の核酸配列および第2の核酸配列を含む合成のまたは組換えの核酸分子(すなわち、LBT-CCD融合酵素コード配列)に関し、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、融合酵素を一緒にコードし、こうした融合酵素は、脂質体区画化シグナルタグとして機能できる第1のドメインおよびカロチノイド開裂活性を有する第2のドメインを含む。いくつかの実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、脂質体構造タンパク質、含油性誘導性脂肪滴タンパク質、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質からなる群から選択できる。ある特定の実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、15kDa~26kDaの分子量を有する脂質体構造タンパク質などの、小さい脂質体構造タンパク質であり得る。例えば、その分子量は、25kDa未満、20kDa未満、または約17または18kDaであり得る。好ましい実施形態では、融合酵素の第1のドメインは、オレオシンまたはカレオシンであり得る。特定の実施形態では、融合酵素の第1のドメインは、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウダイグサ(Ricinus communis)、ダイズ(Glycine max)、ゴマ(Sesamum indicum)、Coix lacryma、クロカビ(Aspergillus niger)、またはアカパンカビ(Neurosporacrassa)由来のカレオシンであり得る。
【0010】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、トウモロコシ(Zea mays)16kDaオレオシンタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0011】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0012】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、リムノスピラ(Limnospira maxima)オレンジカロチノイド結合タンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0013】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)膜輸送体Stl1pタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0014】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ヤロウイア・リポリティカ脂質滴タンパク質Oil1pまたは脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0015】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、シロイヌナズナカレオシンまたは脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、シロイヌナズナカレオシンは、配列番号31に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態ではシロイヌナズナカレオシンは、配列番号31のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態ではシロイヌナズナカレオシンは、配列番号31のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号32に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0016】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ゴマカレオシンまたは脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、ゴマは、配列番号33に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ゴマは、配列番号33のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、ゴマは、配列番号33のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号34に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0017】
様々な実施形態では、本教示による融合酵素は、溶解度増強タグを含まない。このような溶解度増強タグの例としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、小さいユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはチオレドキシン(TrxA)が挙げられる。
【0018】
様々な実施形態では、カロチノイド開裂活性を有する第2のドメインは、カロチノイド-開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)であり得る。例えば、CCD酵素は、広範囲のカロチノイドの結合5,6(5’、6’)、7,8(7’、8’)、および9,10(9’、10’)の二重結合を開裂できるCCD1またはCCD4酵素であり得る。例えば、第2のドメインは、ツクバネアサガオ(Petunia x hybrida)CCD1(PhCCD1)またはその機能的バリアントであり得る。例えば、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号11に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号11のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号11のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第2の核酸配列は、配列番号12または配列番号13に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0019】
別の実施形態では、第2のドメインは、モクセイ(Osmanthus fragrans)CCD1酵素またはその機能的バリアントであり得る。例えば、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号14のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号14のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第2の核酸配列は、配列番号15に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0020】
さらに別の実施形態では、第2のドメインは、トウモロコシCCD1またはその機能的バリアントであり得る。例えば、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号16に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号16のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第2の核酸配列は、配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0021】
他の実施形態では、第2のドメインは、これらに限定されないが、シアノバクテリアネンジュモ(Nostocales cyanobacterium)、カロトリクス属(Calothrix sp.)Calothrix brevissima、およびScytonema milleiなどの様々なシアノバクテリア由来の、カロチノイドオキシゲナーゼ、9-シスエポキシカロチノイドジオキシゲナーゼ、またはその機能的バリアントであり得る。例えば、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第2の核酸配列は、配列番号19、配列番号21、配列番号23または配列番号25に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、ツクバネアサガオ、モクセイ、トウモロコシ、シロイヌナズナ、ブドウ(Vitis vinifera)、ニンジン(Daucus carota)、トマト(Lycopersicon esculentum)、およびヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)由来のCCD1酵素を含み得る。他の実施形態では、第2のドメインまたはCCDドメインは、シロイヌナズナ、ベニノキ(Bixa Orellana)、コギク(Chrysanthemum morifolium)、サフラン(Crocus sativus)、マレーヤマバショウ(Musa acuminata)、セイヨウリンゴ(Malus domestica)、モモ(Prunus persica)、ダマスクバラ(Rosa damascene)、ブドウ(Vitis vinifera)、およびモクセイ由来のCCD4酵素を含み得る。所望のイオノン化合物がアルファ-イオノンである実施形態において、第2のドメインまたはCCDドメインは、ツクバネアサガオまたはモクセイのCCD1酵素、コギクのCCD4酵素、またはそれらの機能的相同体を含み得る。所望のイオノン化合物がベータ-イオノンである実施形態において、第2ドメインのまたはCCDドメインは、ツクバネアサガオまたはモクセイのCCD1酵素、モモのCCD4酵素、またはそれらの機能的相同体を含み得る。
【0023】
様々な実施形態では、核酸分子は、一方の末端で第1の核酸配列に、他方の末端で第2の核酸配列に作動可能に連結された第3の核酸配列を含み得、第3の核酸配列は、第1のドメインを第2のドメインに連結するリンカーをコードする。例えば、リンカーは、3~30アミノ酸長を含み得る。リンカーは、グリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーであり得る。ある特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSの1つ以上のユニットを含み得る。特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSであり得る。代替的実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSであり得る。
【0024】
本教示の別の態様は、核酸構築物に関する。核酸構築物は、異種核酸配列に作動可能に連結された上記核酸分子の様々な実施形態を含んでよい。例えば、異種核酸配列は、プロモーター配列などの発現制御配列をコードできる。いくつかの実施形態では、核酸構築物はまた、レタス(Lactuca sativa)リコペンイプシロン-シクラーゼ(EC)などのリコペンイプシロン-シクラーゼまたはその機能的相同体をコードする異種核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸構築物はまた、フィトエンシンターゼ(CarRP)をコードする異種核酸配列を含み得る。
【0025】
本教示のさらに別の態様は、本明細書に記載のカロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)ドメインに連結された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)ドメインを含む融合酵素に関する。LBTドメインは、リンカーを介してCCDドメインに連結され得る。例えば、リンカーは、3~30アミノ酸長を含み得る。リンカーは、グリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーであり得る。ある特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSの1つ以上のユニットを含んでよい。特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSであり得る。代替的実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSであり得る。様々な実施形態では、融合酵素は、リンカーを介してCCDドメインに融合されるLBTドメインからなり得る。
【0026】
本教示のさらに別の態様は、宿主細胞を形質転換する方法に関し得る。この方法は、宿主細胞に上記の本核酸分子または核酸構築物のいずれかを導入すること、およびカロチノイド(例えば、イオノン)化合物の産生のために使用できる形質転換宿主細胞を選択またはスクリーニングすること、を含み得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、藻類細胞、または真菌細胞などの微生物細胞であり得る。他の実施形態では、宿主細胞は、目的のカロチノイドおよびイオノンを天然に産生しない植物細胞であり得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、ヤロウイア;エシェリヒア;サルモネラ;バチルス;アシネトバクター;ストレプトマイセス;コリネバクテリウム;メチロシヌス;メチロモナス;ロドコッカス;シュードモナス;ロドバクター;シネコシスティス;サッカロミセス;チゴサッカロミセス;クルイウェロマイセス;カンジダ;ハンセヌラ;デバリオミセス;ムコール;ピキア;トルロプシス;アスペルギルス;アルスロボトリス;ブレビバクテリア;マイコバクテリウム;アルスロバクター;シトロバクター;クレブシエラ;パントエア;およびクロストリジウムから選択され得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、ヤロウイア・リポリティカ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、またはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であり得る。
【0027】
本教示のさらに別の態様は、上記の本核酸分子のいずれかを含む組換え細胞に関し得る。組換え細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、細菌細胞、酵母細胞、藻類細胞、または真菌細胞などの微生物細胞であり得る。他の実施形態では、組換え細胞は、目的のイオノンを天然に産生しない植物細胞であり得る。ある特定の実施形態では、組換え細胞は、ヤロウイア;エシェリヒア;サルモネラ;バチルス;アシネトバクター;ストレプトマイセス;コリネバクテリウム;メチロシヌス;メチロモナス;ロドコッカス;シュードモナス;ロドバクター;シネコシスティス;サッカロミセス;チゴサッカロミセス;クルイウェロマイセス;カンジダ;ハンセヌラ;デバリオミセス;ムコール;ピキア;トルロプシス;アスペルギルス;アルスロボトリス;ブレビバクテリア;マイコバクテリウム;アルスロバクター;シトロバクター;クレブシエラ;パントエア;およびクロストリジウムから選択され得る。特定の実施形態では、組換え細胞は、ヤロウイア・リポリティカ、サッカロミセス・セレビシエ、またはコリネバクテリウム・グルタミカムであり得る。
【0028】
本教示のさらに別の態様は、アルファ-イオノンまたはベータ-イオノンなどのイオノン化合物を産生するための方法に関し得る。本方法は、本教示による組換え宿主細胞を好適な培地(例えば、グルコースまたはグリセロールを含む培地)中で、それによりイオノン化合物が産生される条件下で培養することを含み得る。組換え宿主細胞は、本発明の核酸分子または上記の構築物のいずれかを含んでよく、培養ステップは、本教示による融合酵素の発現をもたらし、結果として、組換え宿主細胞によるアルファ-イオノンまたはベータ-イオノンの産生を増加させる。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞は、メバロン酸経路に関与する1つ以上の遺伝子を過剰発現するようにさらに形質転換され得る。例えば、アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの両方の産生の前駆体であるリコペンの産生を増加させるために、形質転換宿主細胞は、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IPI)、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPPS)、およびゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ(GGPPS)の1つ以上を過剰発現するように形質転換され得る。いくつかの実施形態では、形質転換宿主細胞は、GGPPSにイン-フレームで融合されたFPPS(FPPS::GGPPS)を含む融合酵素をコードする合成核酸分子を過剰発現するように形質転換され得る。いくつかの実施形態では、形質転換宿主細胞はさらに、フィトエンデヒドロゲナーゼ(CarB)、二官能性リコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼ(CarRP)、またはその変異体(例えば、変異体CarRP-E78K(CarRP*)、ここで、変異は、CarRP酵素のリコペンシクラーゼ活性をノックアウトする)を過剰発現するように形質転換され得る。例えば、ベータ-カロチンの産生を増加させるために、ベータ-イオノンの直前の前駆体である形質転換宿主細胞を、CarRPおよびCarBを過剰発現するように形質転換し、これが今度はベータ-イオノンの産生を増加させる。あるいは、イプシロン-カロチンの産生を増加させるために、形質転換宿主細胞を、CarRP*、CarB、およびイプシロン-シクラーゼ(EC)遺伝子を過剰発現するように形質転換できる。例えば、イプシロン-シクラーゼ遺伝子は、レタスEC遺伝子であり得る。こうした実施形態では、形質転換宿主細胞は、配列番号26に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を有する核酸分子を過剰発現するように形質転換され得る。ある特定の実施形態では、形質転換宿主細胞は、第1のECドメインおよび第2のCCDドメインを有する融合酵素をコードする核酸分子を過剰発現するように形質転換され得、ECドメインは、本教示によるリンカーを介してCCDドメインに連結されて、イプシロン-カロチン、および次いでアルファ-イオノンの産生をさらに改善する。
【0029】
本教示は、カロチノイド化合物を産生するための組換え宿主細胞も包含する。宿主細胞は、ベータ-カロチンケトラーゼ(BKTもしくはCrtW)またはベータ-カロチンヒドロキシラーゼ(CrtR-B)に融合されたLBTドメイン(例えば、オレオシンまたはカレオシンポリペプチド)を有する融合酵素をコードするコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含み得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、LBT-BKT融合酵素をコードするコード配列およびLBT-CrtR-B融合酵素をコードするコード配列の両方を含み得る。ベータ-カロチンケトラーゼおよびベータ-カロチンヒドロキシラーゼは、ヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis)、クロレラ・ゾフィンギエンシス(Chlorella zofingiensis)、Chlamydomonas reinhardtii、パラコッカス属(Paracoccus sp.,)、およびパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)由来であり得る。一実施形態では、本発明は、アスタキサンチンを産生する方法に関し、本方法は、アスタキサンチンが産生される条件下で、LBT-BKT融合酵素をコードするコード配列およびLBT-CrtR-B融合酵素をコードするコード配列の両方で形質転換された組換え宿主細胞を培養することを包含する。別の実施形態では、本発明は、カンタキサンチンを産生する方法に関し、本方法は、LBT-CrtW融合酵素をコードするコード配列で形質転換された組換え宿主細胞を、カンタキサンチンが産生される条件下で培養することを含む。
【0030】
本開示は、様々な改変および代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態が、例として図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、本明細書に提示される図面および詳細な説明は、開示される特定の実施形態に本開示を限定することを意図するものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨および範囲内にあるすべての変形、均等物、および代替物を網羅することを意図するものであることが理解されるべきである。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明において明らかになるであろう。
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様をさらに実証するために含まれ、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(R)-アルファ-イオノン(上)、(S)-アルファ-イオノン(中心)、およびベータ-イオノン(下)の化学構造を示す。
【
図2】本教示によるアルファ-イオノンおよびベータ-イオノンへの生合成経路を示す。上の部分は、選択された宿主細胞において内因的に起こり得るメバロン酸経路を示す。下の部分は、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)からフィトエンへ、リコペンへの異種生合成経路を示し、これは、イプシロン-シクラーゼ(EC)遺伝子または二官能性リコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼ(CarRP)が過剰発現されるかに応じて、それぞれ、イプシロン-カロチンまたはベータ-カロチンを導く。本教示によるLBT-CCD融合酵素の存在下で、イプシロン-カロチンは、アルファ-イオノンに変換され、ベータ-カロチンは、ベータ-イオノンに変換される。灰色で網掛けされている遺伝子は、形質転換宿主細胞で過剰発現される遺伝子である。
【
図3】ヤロウイア・リポリティカ(AおよびB)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(C)における脂質体または脂質滴中のカロチノイド蓄積の顕微鏡画像を示す。
【
図4】本発明者らが、
図2に強調して示される種々の遺伝子を過剰発現させるために生成したプラスミドを示す。これらの遺伝子カセットを、実施例1、3、5、7および8にさらに詳細に記載されるとおり、ヤロウイア・リポリティカATCC 90811株の染色体に組み込んだ。
【
図5】形質転換ヤロウイア・リポリティカ株の細胞培養におけるイプシロン-カロチン産生を確認するHPLCプロフィルおよびUVスペクトルを示す。
【
図6】形質転換ヤロウイア・リポリティカ株の細胞培養におけるベータ-カロチン産生を確認するHPLCプロフィルおよびUVスペクトルを示す。
【
図7】形質転換ヤロウイア・リポリティカ株の細胞培養におけるアルファ-イオノン産生を確認するGC/MSスペクトルを示す。
【
図8】実施例7に記載された異なる戦略を用いて異種CCD遺伝子(PhCCD1)を過剰発現するように形質転換されたヤロウイア・リポリティカ株によるアルファ-イオノンの産生力価を比較する。
【
図9】形質転換ヤロウイア・リポリティカ株の細胞培養におけるベータ-イオノン産生を確認するGC/MSスペクトルを示す。
【
図10】ヘマトコッカス(左)およびクロレラ・ゾフィンギエンシス(右)におけるアスタキサンチン生合成経路を示す。酵素は、それらの遺伝子の命名に従って命名される。BKT、ベータ-カロチノイドケトラーゼ;CrtR-B、ベータ-カロチノイドヒドロキシラーゼ。カンタキサンチンは、ベータ-カロチンからベータ-カロチノイドケトラーゼCrtWを介してエキネノンに、エキネノンからCrtWを介してカンタキサンチンへと合成できる。
【
図11】CrtRB酵素をコードするコード配列およびBKT酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(crtRB-BKT)を用いて形質転換された株と比較して、LBT-CrtRB融合酵素をコードするコード配列およびLBT-BKT融合酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(オレオシン::crtRB-オレオシンン::BKT)を用いて形質転換された組換え微生物産生株を用いた場合の、アスタキサンチン(AS)およびゼアキサンチン(ZX)の増加された産生を示す。CXは、カンタキサンチンを表し、BCは、ベータ-カロチンを表す。
【
図12】CrtW酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(crtW)で形質転換された株と比較して、LBT-CrtW融合酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(オレオシン::crtW)で形質転換された組換え微生物産生株を用いた場合の、カンタキサンチン(CX)の増加された産生を示す。BCは、ベータ-カロチンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
含油性酵母ヤロウイア・リポリティカは、アセチル-CoA(カロチノイド主鎖の出発物質、
図2参照)のその大きな細胞間プールサイズ、および十分に確立された遺伝的ツールボックスのため、カロチノイド産生のための最も多産の異種宿主の1つである。発明者らは、異なるカロチノイド前駆体生合成遺伝子の多数の組み合わせをスクリーニングした。本発明者らは、HMGS、HMGR、IPI、FPPSおよびGGPPS遺伝子の共過剰発現を介して、カロチノイド産生のための種々の効率の高い宿主株を作製した。ヤロウイア・リポリティカカロチノイド宿主株でのCarRP*/CarB、CarRP/CarB、またはcarRP*/CarB/EC遺伝子の過剰発現は、リコペン(2g/L)、ベータ-カロチン(4g/L)またはイプシロン-カロチン(1.5g/L)の高力価産生をもたらす。
【0034】
宿主としてリコペン産生ヤロウイア・リポリティカ株を用いて、本発明者らは、イオノン産生のために28のCCD酵素をスクリーニングした。スクリーニングされた種々のCCD酵素のうち、植物ツクバネアサガオ由来のPhCCD1(配列番号11)が、最も高い活性を呈した。しかし、野生型PhCCD1で形質転換した株は、試験管ベースの細胞培養から3mg/L未満のアルファ-イオノンしか産生できなかった。CCD酵素の触媒効率はイオノン化合物の発酵産生の重要なボトルネックであることが、報告された。ヤロウイア・リポリティカ宿主細胞の油性の性質は、カロチノイドの蓄積に非常に有用である。
図3Aおよび
図3Bに示すとおり、赤色リコペンおよびオレンジ色イプシロン-カロチンが、ヤロウイア・リポリティカ細胞の脂質体中に蓄積する。同様に、カロチノイドを含む脂質滴が、コリネバクテリウム・グルタミカムカロチン産生株において観察される(
図3C)。したがって、本発明者らは、脂質体(小滴)中のカロチンの蓄積が、カロチン基質分子のCCD酵素への結合を妨げ得ると仮定した。したがって、本発明者らは、PhCCD1酵素自体に対するタンパク質工学的努力の他に、異なる推定区画化シグナルタグに連結されたPhCCD1を含む複数の融合酵素をスクリーニングすることにより、脂質体に基づく細胞内区画工学に基づく新規アプローチを調査することを決定した。実施例が示すように、このアプローチは、カロチノイド開裂酵素の効率の顕著な改善をもたらした。したがって、本発明は、商業的スケールアップ産生に好適である「天然の」アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンを産生するための経済的かつ信頼性のあるアプローチを提供する。
【0035】
アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンを作製する方法
本明細書に記載の方法は、いくつかの実施形態において、融合酵素およびそのような融合酵素を発現するように形質転換された組換え宿主細胞を用いる「天然の」アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの産生を提供する。様々な実施形態では、本方法は、核酸分子で形質転換された成長する細胞を含む細胞系を含み、このような核酸分子は、第1の核酸配列および第2の核酸配列を含み、このような第1および第2の核酸配列は、一緒に、脂質体区画化シグナルタグとして機能できる第1のドメイン(本明細書では、LBTドメインと呼ばれることもある)およびカロチノイド開裂活性を有する第2のドメイン(本明細書では、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)ドメインと呼ばれることもある)を含む異種融合酵素をコードする。いくつかの実施形態では、細胞系は、細菌細胞、酵母細胞、目的のイオノンを天然で産生しない植物細胞、藻類細胞、細菌細胞および/または本明細書に記載される脂質体区画化シグナルタグおよび/またはCCDを天然にコードしない真菌細胞を含み得る。特定の実施形態では、細胞系は、ヤロウイア;エシェリヒア;サルモネラ;バチルス;アシネトバクター;ストレプトマイセス;コリネバクテリウム;メチロシヌス;メチロモナス;ロドコッカス;シュードモナス;ロドバクター;シネコシスティス;サッカロミセス;チゴサッカロミセス;クルイウェロマイセス;カンジダ;ハンセヌラ;デバリオミセス;ムコール;ピキア;トルロプシス;アスペルギルス;アルスロボトリス;ブレビバクテリア;マイコバクテリウム;アルスロバクター;シトロバクター;クレブシエラ;パントエア;およびクロストリジウムから選択される成長中の細菌細胞および/または酵母細胞を含み得る。
【0036】
アルファ-イオノンまたはベータ-イオノン生合成のための経路および酵素
図2を参照して、グルコースまたはグリセロールのような炭素源からのアルファ-イオノンおよびベータ-イオノンの生合成産生を、微生物宿主細胞における一連の天然のおよび異種の遺伝子のin vivo過剰発現を介して行うことができる。イソペンテニル二リン酸(IPP)およびその異性体ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)は、カロチノイドの直接前駆体であるゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を作製するためのC5構成要素である。植物または真菌宿主細胞では、IPPおよびDMAPPは、メバロン酸(MVA)経路から産生され得る。アセチル-CoAの2分子は、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼによってアセトアセチル-CoAの1分子に縮合される(AtoB)。アセトアセチル-CoAは、それぞれ、HMG-CoAシンターゼ(HMGS)およびHMG-CoAレダクターゼ(HMGR)により中間ヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)を介してメバロン酸に変換される。次いで、IPPが、メバロン酸キナーゼ(MevK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)およびホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(PMD)の3つの酵素によりメバロン酸から産生される。MVA経路は、IPPからDMAPPを生成するためにイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IPI)を必要とする。複数のIPPおよびDMAPP分子の連結により、GGPPが形成される。二官能性リコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼCarRPにより触媒される2つのGGPPユニットの縮合により、フィトエンが産生され、これは次いでフィトエンデヒドロゲナーゼCarBによりリコペンに変換される。リコペンは、イプシロン-シクラーゼ(EC)によりイプシロン-カロチンに環化されるか、CarRPによりベータ-カロチンに環化される。CCD酵素によるイプシロン-カロチンまたはベータ-カロチンの開裂は、それぞれ、アルファ-イオノンまたはベータ-イオノンの産生をもたらす。
【0037】
図2を続いて参照して、本教示に従って形質転換された微生物宿主細胞において過剰発現される遺伝子が、灰色で強調/陰影付けされる。具体的には、これらは以下を含む:HMGS(NCBI RefSeq XP_506052.1);HMGR(GenBank受託番号RDW25091.1);IPI(NCBI RefSeq XP_504974.1);FPPS(NCBI RefSeq XP_503599.1);GGPPS(NCBI RefSeq XP_502923.1);CarRP(UniProtKB/Swiss-Prot:Q9UUQ6.1);CarRP*(78位でリジンに変異したグルタミン酸を有する変異体CarRP-E78K);CarB(GenBank受託番号OAD07725.1);EC(GenBank受託番号AAK07434.1);およびPhCCD1(GenBank受託番号AAT68189.1)。
【0038】
脂質体区画化シグナルタグ
図3を参照して、ヤロウイア・リポリティカ(AおよびB)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(C)における脂質体(小滴)中のカロチン基質の蓄積を観察した。脂質体(小滴)は、トリアシルグリセロールおよびステリルエステルなどの中性脂質の形態で代謝エネルギーを貯蔵するユビキタスオルガネラである。推定脂質体区画化シグナルタグは、脂質体の形成を促進する脂質合成酵素、および脂質体集合体のための構造または膜タンパク質を含み得る。加えて、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、カロチノイドに対するその高い親和性のため有用であり得る。多数の候補タンパク質の厳密なスクリーニングを実施後に、本発明者らは、脂質体区画化シグナルタグとCCD酵素が融合酵素として一緒に発現されるときに、ヤロウイア・リポリティカ細胞におけるCCD酵素のin vivoカロチノイド開裂効率の改善をもたらした、特定の推定脂質体区画化シグナルタグを同定した。これらの脂質体区画化シグナルタグは、脂質体構造タンパク質(例えば、様々なオレオシンおよびカレオシン)、含油性誘導性脂質滴タンパク質(例えば、Oil1)、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質(例えば、STL1などの糖輸送体)を含み得る。いくつかの実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、配列番号29または配列番号30に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオレオシンであり得る。いくつかの実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウダイグサ(Ricinus communis)、ダイズ(Glycine max)、ゴマ(Sesamum indicum)、Coix lacryma、クロカビ(Aspergillus niger)、またはアカパンカビ(Neurosporacrassa)由来のカレオシンであり得る。いくつかの実施形態では、脂質体区画化シグナルタグは、リムノスピラ(Limnospira maxima)オレンジカロチノイド結合タンパク質、ヤロウイア・リポリティカ膜輸送体Stl1pタンパク質、ヤロウイア・リポリティカ脂質滴タンパク質Oil1p、トウモロコシ16kDaオレオシン、ゴマ17kDaオレオシン、シロイヌナズナカレオシン、およびゴマカレオシンからなる群から選択され得る。任意の特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、トウモロコシオレオシンおよびゴマオレオシンの保存ドメインにそれぞれ対応する、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドは、本教示による脂質体区画化シグナルタグとして有用であり得ると考えている。
【0039】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、トウモロコシ16kDaオレオシンタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0040】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、ゴマ17kDaオレオシンタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0041】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、リムノスピラ(Limnospira maxima)オレンジカロチノイド結合タンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、オレンジカロチノイド結合タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0042】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ヤロウイア・リポリティカ膜輸送体Stl1pタンパク質または脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、膜輸送体Stl1pタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0043】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ヤロウイア・リポリティカ脂質滴タンパク質Oil1pまたは脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、脂質滴タンパク質Oil1pは、配列番号9のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0044】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合された脂質体区画化シグナルタグは、シロイヌナズナカレオシンまたは脂質体に結合できるその機能的バリアントであり得る。例えば、シロイヌナズナカレオシンは、配列番号31に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態ではシロイヌナズナカレオシンは、配列番号31のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、シロイヌナズナカレオシンは、配列番号31のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号32に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0045】
様々な実施形態では、CCD酵素に融合される脂質体区画化シグナルタグは、ゴマカレオシンまたは脂質体に結合し得るその機能的バリアントであり得る。例えば、ゴマは、配列番号33に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、ゴマは、配列番号33のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、ゴマは、配列番号33のアミノ酸配列からなり得る。したがって、第1の核酸配列は、配列番号34に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0046】
カロチノイド開裂ドメイン
カロチノイド開裂活性を呈する酵素は、種々のカロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)を含み得る。例えば、本発明の融合酵素のカロチノイド開裂ドメインは、広範囲のカロチノイドの二重結合5,6(5’、6’)、7,8(7’、8’)、および9,10(9’、10’)を開裂できるCCD1またはCCD4酵素であり得る。例えば、CCDは、ツクバネアサガオCCD(PhCCD1)またはその機能的バリアントであり得る。例えば、CCDは、配列番号11に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、CCDは、配列番号11のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、CCDは、配列番号11のアミノ酸配列からなり得る。他の実施形態では、CCDは、モクセイCCDまたはその機能的バリアントであり得る。例えば、CCDは、配列番号14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、CCDは、配列番号14のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、CCDは、配列番号14のアミノ酸配列からなり得る。さらに他の実施形態では、CCDは、トウモロコシCCDまたはその機能的バリアントであり得る。例えば、CCDは、配列番号16に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、CCDは、配列番号16のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、CCDは、配列番号16のアミノ酸配列からなり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、CCDは、PhCCD1の相同体であり得る。例えば、CCDは、カロチノイドオキシゲナーゼ、9-シスエポキシカロチノイドジオキシゲナーゼ、またはその機能的バリアントであり得る。このような相同体は、これらに限定されないが、シアノバクテリアネンジュモ(Nostocales cyanobacterium)、カロトリクス属(Calothrix sp.)Calothrix brevissima、およびScytonema milleiなどの、種々のシアノバクテリアに由来し得る。例えば、CCDは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態では、CCDは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24のアミノ酸配列を含み得る。他の実施形態では、CCDは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24のアミノ酸配列からなり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、CCDドメインは、シロイヌナズナ、ブドウ、ニンジン、トマト、およびヨーロッパキイチゴ由来のCCD1酵素を含み得る。他の実施形態では、CCDドメインは、シロイヌナズナ、ベニノキ(Bixa Orellana)、コギク(Chrysanthemum morifolium)、サフラン(Crocus sativus)、マレーヤマバショウ(Musa acuminata)、セイヨウリンゴ(Malus domestica)、モモ(Prunus persica)、ダマスクバラ(Rosa damascene)、ブドウ(Vitis vinifera)、およびモクセイ由来のCCD4酵素を含み得る。所望のイオノン化合物がアルファ-イオノンである実施形態において、CCDドメインは、ツクバネアサガオまたはモクセイのCCD1酵素、コギクのCCD4酵素、またはそれらの機能的相同体を含み得る。所望のイオノン化合物がベータ-イオノンである実施形態において、CCDドメインは、ツクバネアサガオまたはモクセイのCCD1酵素、モモのCCD4酵素、またはそれらの機能的相同体を含み得る。
【0049】
融合酵素
融合酵素を含む融合タンパク質は、多機能特性を有する新規生体分子のクラスとして開発されている。2つ以上のタンパク質ドメインを一緒に遺伝的に融合させることにより、融合タンパク質産物は、それらの構成部分の各々に由来する多くの別個の機能を得ることができる。組換え融合タンパク質を成功裏に構築するには、2つの必須要素:構成タンパク質およびリンカーを必要とする。構成タンパク質の選択は、融合タンパク質産物の所望の機能に基づき、本教示によれば、上述のLBTドメインおよびCCDドメインを含む。タンパク質ドメインを一緒に接合させるための好適なリンカーの選択は、好適でないリンカーが融合タンパク質のミスフォールディング、タンパク質産生における低収率、または生物活性の障害をもたらし得るので、複雑であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1のLBTドメインを第2のCCDドメインに連結するために使用されるリンカーは、3~30アミノ酸長を含み得る。リンカーは、グリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンリンカーであり得る。ある特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSの1つ以上のユニットを含むことができる。特定の実施形態では、リンカーは、GGGGSであり得る。代替的実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSであり得る。
【0051】
本発明の融合酵素は、リンカーを介してCCDドメインに融合されたLBTドメインからなり得る。融合酵素は、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、小さいユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはチオレドキシン(TrxA)、またはそれらの任意の機能的相同体を含む任意の構成成分を含まなくてよい。
【0052】
核酸および核酸構築物
本教示による核酸分子は、LBTドメインおよびCCDドメインを含む融合酵素を一緒にコードする第1の核酸配列および第2の酸配列を有する合成および組換え核酸分子を含む。様々な実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8または配列番号10に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。様々な実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号12、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、または配列番号25に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%の同一性を有する核酸配列を含み得る。様々な実施形態では、本核酸分子はまた、本明細書に記載のリンカーをコードする第3の核酸配列を含む。
【0053】
本教示による核酸構築物は、他の異種核酸配列に作動可能に連結され得る、本明細書に提供される合成または組換え核酸分子を含み得る。例えば、本明細書に提供される構築物は、本明細書に記載の1つ以上の融合酵素をコードする核酸配列を含んでよく、その核酸配列は、他の異種核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターをさらに含む。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、調節エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の融合酵素をコードする核酸配列は、ターミネーター配列に作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、ヤロウイア細胞中で機能的である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される核酸構築物は、発現カセットまたはベクターとしてさらに定義される。
【0054】
細胞系
本明細書において言及されるとおり、本発明の方法による細胞系は、CCDドメインに連結されたLBTドメインを含む本発明の融合酵素を発現するために使用できる任意の細胞(複数可)を含み得る。このような細胞系としては、これらに限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞を挙げることができる。いくつかの実施形態では、細胞系は、細菌細胞、酵母細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞系は、原核細胞、真核細胞、およびそれらの組み合わせを含む。
【0055】
本開示の細菌細胞は、限定するものではないが、エシェリキア属、ストレプトマイセス属、ザイモモナス属、アセトバクター属、シトロバクター属、シネコシスティス属、リゾビウム属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、連鎖球菌属、キサントモナス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、バチルス属、アルカリゲネス属、緑膿菌属、エロモナス属、アゾトバクター属、コマモナス属、マイコバクテリウム属、ロドコッカス属、グルコノバクター属、ラルストニア属、アシドチオバチルス属、ミクロルナタス属、ゲオバクター属、ゲオバチルス属、アルスロバクター属、フラボバクテリウム属、セラチア属、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora spp)、サーマス属、ステノトロホモナス属、クロモバクテリウム属、シノリゾビウム(Sinorhizobium spp)、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora spp)、アグロバクテリウム属、パントエア属、およびビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)を含む。
【0056】
本開示の酵母細胞としては、限定されるものではないが、サッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)、およびピキア(Pichia)を含む。本発明の開示によれば、本明細書で特許請求される酵母は、真菌界のメンバーとして分類される真核生物の単細胞微生物である。酵母は、多細胞祖先から進化した単細胞生物であるが、本開示に有用ないくつかの種は、仮性菌糸または偽菌糸として知られる連結した出芽細胞の糸を形成することによって多細胞特性を発現できる。
【0057】
細胞培養
細胞培養物は、培養物中にある任意の細胞(複数可)を指す。培養またはインキュベートは、細胞を、制御された条件下、典型的にはそれらの自然環境外で成長させるプロセスである。例えば、酵母細胞などの細胞は、液体栄養ブロス中で細胞懸濁液として成長させ得る。細胞培養物は、これらに限定されないが、細菌細胞培養物、酵母細胞培養物、植物細胞培養物、および動物細胞培養物を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、細菌細胞、酵母細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0058】
本開示の細菌細胞培養物は、限定するものではないが、エシェリキア属、ストレプトマイセス属、ザイモモナス属、アセトバクター属、シトロバクター属、シネコシスティス属、リゾビウム属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、連鎖球菌属、キサントモナス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、バチルス属、アルカリゲネス属、緑膿菌属、エロモナス属、アゾトバクター属、コマモナス属、マイコバクテリウム属、ロドコッカス属、グルコノバクター属、ラルストニア属、アシドチオバチルス属、ミクロルナタス属、ゲオバクター属、ゲオバチルス属、アルスロバクター属、フラボバクテリウム属、セラチア属、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora spp)、サーマス属、ステノトロホモナス属、クロモバクテリウム属、シノリゾビウム(Sinorhizobium spp)、サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora spp)、アグロバクテリウム属、パントエア属、およびビブリオ・ナトリエゲンス(Vibrio natriegens)を含む細菌細胞を含む。
【0059】
本開示の酵母細胞培養は、限定されるものではないが、サッカロミセス属(Saccharomyces spp.)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ(Candida)、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、カンジダ・ボイジニイ(Candida boidinii)、およびピキア(Pichia)を含む酵母細胞を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞培養物は、当技術分野において公知である1つ以上の栄養物質を含む水性培地であり得る。そのような液体培地は、1つ以上の炭素源、窒素源、無機塩、および/または成長因子を含んでよい。
好適な炭素源としては、グルコース、フルクトース、キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびコーンシロップが挙げられる。好適な窒素源の例としては、ペプトン、コーンスティープリカー、ミーンエクス(mean extract)、酵母エキス、カゼイン、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩、硝酸塩およびそれらの混合物などの有機および無機窒素含有物質を挙げることができる。無機塩の例としては、リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびカリウム塩を挙げることができる。液体培地はまた、1つ以上のビタミンおよび/またはミネラルを含んでよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、細胞は、16℃~40℃の温度で培養される。例えば、細胞は、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃または40℃の温度で培養され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、細胞は、約3~約9のpH範囲で、好ましくは約4~約8の範囲で培養される。pHは、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニアなどの無機酸もしくは有機酸もしくは塩基の添加、またはリン酸塩、フタル酸塩もしくはTris(登録商標)などの緩衝液の添加によって調節できる。
【0063】
いくつかの実施形態では、細胞は、0.5時間~96時間、またはそれより長い期間培養される。例えば、細胞は、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、48時間、54時間、60時間、66時間、または72時間培養されてよい。典型的には、細菌細胞などの細胞は、12~24時間培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、12時間~24時間、37℃の温度で培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、12時間~24時間、16℃の温度で培養される。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞は、細胞培養培地の密度1x108(OD600<1)~2x1011(OD~200)生存細胞/mlに培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、密度1x108、2x108、3x108、4x108、5x108、6x108、7x108、8x108、9x108、1x109、2x109、3x109、4x109、5x109、6x109、7x109、8x109、9x109、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、または2x1011生細胞/mlに培養される。(換算係数:OD1=8x108細胞/ml)。
【0065】
合成生物学
本明細書で用いられる標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,N.Y.,1989年(以下「Maniatis」);およびSilhavy,T.J.,Bennan,M.L.and Enquist,L.W.EXPERIMENTS with GENE FUSIONS;Cold Spring Harbor LaboratoryCold Spring Harbor,N.Y.,1984年;およびAusubel,F.M.ら、IN CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,publishing and Willey-Interscience,1987年に記載され、これらは、参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
微生物産生系
形質転換宿主細胞におけるタンパク質の発現は、最も多くの場合、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指示する構成または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて、細菌または酵母宿主細胞において行われる。融合ベクターは、その中にコードされるタンパク質、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に複数のアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは典型的には、次の3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増加させる;2)組換えタンパク質の溶解度を増大させる;および3)親和性精製においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を補助する。多くの場合、タンパク質分解開裂部位が、融合部分と組換えタンパク質の接合部に導入されて、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。そのようなベクターは、本開示の範囲内である。
【0067】
一実施形態では、発現ベクターは、微生物細胞における組換えポリペプチドの発現のための遺伝的エレメントを含む。微生物細胞における転写および翻訳のためのエレメントは、プロモーター、タンパク質複合体のコード領域、および転写ターミネーターを含み得る。
【0068】
当業者であれば、発現ベクターの調製に利用可能な分子生物学技術を知っているであろう。本技術の発現ベクターに組み込むために使用されるポリヌクレオチドは、本明細書に記載のとおり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのルーチン技術によって調製され得る。
【0069】
複数の分子生物学技術が、相補的な凝集末端を介してDNAをベクターに作動可能に連結するために開発されている。一実施形態では、相補的なホモポリマートラクトを、ベクターDNAに挿入される核酸分子に加えることができる。ベクターおよび核酸分子を次に、、相補的なホモポリマーテール間の水素結合により接合して、組換えDNA分子を形成する。
【0070】
代替的実施形態では、提供される1つ以上の制限部位を含む合成リンカーを使用して、本技術のポリヌクレオチドを発現ベクターに作動可能に連結する。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、制限エンドヌクレアーゼ消化によって生成される。一実施形態では、核酸分子は、バクテリオファージT4DNAポリメラーゼまたは大腸菌DNAポリメラーゼIで処理され、これらの酵素は、突出した3’-一本鎖末端を3’-5’-エキソヌクレアーゼ活性により除去し、陥没3’末端をそれらの重合活性により埋め、それにより平滑末端DNAセグメントを生成する。この平滑末端セグメントを次いで、バクテリオファージT4 DNAリガーゼなどの、平滑末端DNA分子のライゲーションを触媒できる酵素の存在下で、大量のモル過剰のリンカー分子と共にインキュベートする。したがって、反応生成物は、その末端に高分子リンカー配列を保持するポリヌクレオチドである。これらのポリヌクレオチドは次に、適切な制限酵素により開裂され、ポリヌクレオチドの末端と適合する末端を産生する酵素により開裂された発現ベクターにライゲートされる。
【0071】
あるいは、ライゲーション非依存性クローニング(LIC)部位を有するベクターが使用され得る。必要とされるPCR増幅ポリヌクレオチドを次いで、制限消化またはライゲーションなしに、LICベクターにクローニングできる(Aslanidis and de Jong,NUCL.ACID.RES.18 6069-74,(1990年),Haun,et al,BIOTECHNIQUES 13,515-18(1992年)、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。
【0072】
一実施形態では、選択されたプラスミドへの挿入のための目的のポリヌクレオチドを単離および/または改変するために、PCRを使用することが好適である。配列のPCR調製での使用のために適切なプライマーは、核酸分子の必要とされるコード領域を単離し、制限エンドヌクレアーゼまたはLIC部位を追加し、コード領域を所望のリーディングフレームに配置するように設計され得る。
【0073】
一実施形態では、本技術の発現ベクターに組み込むためのポリヌクレオチドは、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用するPCRの使用により調製される。コード領域が増幅され、一方でプライマー自体は、増幅される配列産物に組み込まれる。一実施形態では、増幅プライマーは、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、これは、増幅された配列産物が適切なベクター中にクローン化されることを可能にする。
【0074】
発現ベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって、植物または微生物の宿主細胞に導入できる。本技術の発現ベクターによる適切な細胞の形質転換は、当技術分野において公知である方法によって達成され、典型的には、ベクターおよび細胞の種類の両方に依存する。好適な技術としては、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムの共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、ケモポレーションまたはエレクトロポレーションが挙げられる。
【0075】
うまく形質転換された細胞、すなわち、発現ベクターを含む細胞は、当技術分野で周知の技術によって同定され得る。例えば、本技術の発現ベクターでトランスフェクトされた細胞を培養して、本明細書に記載のポリペプチドを産生できる。細胞を、当技術分野で周知の技術により、発現ベクターDNAの存在について検査できる。
【0076】
宿主細胞は、前述の発現ベクターの単一のコピー、または代替的に発現ベクターの複数のコピーを含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、形質転換細胞は、細菌細胞、酵母細胞、藻類細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、または動物細胞であってよい。いくつかの実施形態では、細胞は、カノーラ植物細胞、ナタネ植物細胞、ヤシ植物細胞、ヒマワリ植物細胞、ワタ植物細胞、トウモロコシ植物細胞、ピーナッツ植物細胞、アマ植物細胞、ゴマ植物細胞、ダイズ植物細胞、およびペチュニア植物細胞からなる群から選択される植物細胞である。
【0078】
微生物宿主細胞発現系、および外来タンパク質の高レベルの発現を指示する調節配列を含有する発現ベクターは、当業者によく知られている。これらのいずれもが、微生物宿主細胞における本技術の組換えポリペプチドの発現のためのベクターを構築するために使用可能であろう。これらのベクターを次に、形質転換を介して適切な微生物に導入して、本技術の組換えポリペプチドの高レベルの発現を可能にするであろう。
【0079】
好適な微生物宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは、当技術分野でよく知られている。典型的には、ベクターまたはカセットは、関連するポリヌクレオチドの転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、および自律複製または染色体組込みを可能にする配列を含む。好適なベクターは、転写開始制御を保有するポリヌクレオチドの領域5’および転写終結を制御するDNA断片の領域3’を含む。両方の制御領域が、形質転換宿主細胞に相同な遺伝子に由来することが好ましいが、このような制御領域は、宿主として選択された特定の種に固有の遺伝子に由来する必要はないことは理解されるべきである。
【0080】
所望の微生物宿主細胞中で組換えポリペプチドの発現を駆動するために有用である、開始制御領域またはプロモーターは、多数あり、当業者にはよく知られている。これらの遺伝子を駆動できる実質的に任意のプロモーターは、これらに限定されないが、CYCI、HIS3、GALI、GALIO、ADHI、PGK、PH05、GAPDH、ADCI、TRPI、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセスにおける発現に有用);TEF(ヤロウイアにおける発現に有用);AOXI(ピキアにおける発現に有用);およびlac、trp、JPL、IPR、T7、tac、およびtrc(大腸菌における発現に有用)を含み、本技術にとって好適である。
【0081】
終結制御領域はまた、微生物宿主に固有の様々な遺伝子に由来し得る。終結部位は任意により、本明細書に記載の微生物宿主に含まれ得る。
【0082】
植物細胞では、本技術の発現ベクターは、所望の組織内の所望の発生段階で、本発明の技術の組換えポリペプチドの発現を指示できるプロモーターに作動可能に連結されたコード領域を含み得る。便宜上、発現されるポリヌクレオチドは、プロモーター配列および同じポリヌクレオチドに由来する翻訳リーダー配列を含み得る。転写終結シグナルをコードする3’非コード配列も存在するものとする。発現ベクターはまた、ポリヌクレオチド発現を容易にするために、1つ以上のイントロンを含んでもよい。
【0083】
植物宿主細胞については、コード領域の発現を誘導できる任意のプロモーターおよび任意のターミネーターの任意の組み合わせを、本技術のベクター配列において使用してよい。プロモーターおよびターミネーターのいくつかの好適な例は、ノパリンシンターゼ(nos)、オクトピンシンターゼ(ocs)およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)遺伝子由来のものを含む。使用され得る効率的な植物プロモーターの1つの型は、高レベルの植物プロモーターである。このようなプロモーターは、本技術の発現ベクターと作動可能な連結において、ベクターの発現を促進できるはずである。本技術において使用され得る高レベル植物プロモーターとしては、例えばダイズ由来のリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(複数可)のプロモーター(Berry-Loweら、J.MOLECULAR AND APP.GEN.,1:483-98(1982年)、それが本明細書に一致する程度に、その全体が本明細書に援用される)、およびクロロフィル結合タンパク質のプロモーターが挙げられる。これら2つのプロモーターは、植物細胞中で光誘発性であることが知られている(例えば、GENETIC ENGINEERING OF PLANTS,AN AGRICULTURAL PERSPECTIVE,A.Cashmore,Plenum,N.Y.(1983年)、29-38頁;Coruzzi,G.ら、THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,258:1399(1983年)、およびDunsmuirら、JOURNAL OF MOLECULAR AND APPLIED GENETICS,2:285(1983年)を参照されたい、これらは、それぞれ、本明細書に一致する程度まで、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0084】
同一性スコアリングを用いる配列類似性の解析
本明細書で使用される場合、「配列同一性」は、2つの最適に整列されたポリヌクレオチドまたはペプチド配列が、構成成分、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸の整列のウィンドウ全体にわたって不変である程度を指す。試験配列および参照配列の整列セグメントについての「同一性画分」は、2つの整列された配列によって共有され参照配列セグメント中の成分(すなわち、参照配列全体または参照配列のより小さい画定された部分)の総数で除算される、同一成分の数である。
【0085】
本明細書で使用される場合、「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」という用語は、2つの配列が最適に整列される(比較ウィンドウにわたり総計で参照配列の20パーセント未満である適切なヌクレオチドの挿入、欠失、またはギャップを有する)場合に、試験(「対象」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)と比較される、参照(「クエリ」)ポリヌクレオチド分子(またはその相補鎖)の直鎖ポリヌクレオチド配列中の同一ヌクレオチドのパーセンテージを指す。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適アライメントは、当業者に周知であり、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunschの相同アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似性検索法、および好ましくはGCG(商標登録)Wisconsin Package(商標登録)(Accelrys Inc.,Burlington,MA)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAなどのこれらのアルゴリズムのコンピュータによる実施によって行われてよい。試験配列および参照配列の整列セグメントについての「同一性画分」は、2つの整列された配列によって共有され参照配列セグメント中の成分(すなわち、参照配列全体または参照配列のより小さい画定された部分)の総数で除算される、同一成分の数である。パーセント配列同一性は、同一性画分に100を乗じたものとして表される。1つ以上のポリヌクレオチド配列の比較は、完全長ポリヌクレオチド配列もしくはその一部に対し、またはより長いポリヌクレオチド配列に対してでよい。本開示の目的のために、「パーセント同一性」は、翻訳されたヌクレオチド配列についてBLASTXバージョン2.0を、ポリヌクレオチド配列についてBLASTNバージョン2.0を用いて決定されてもよい。
【0086】
配列同一性のパーセントは好ましくは、Sequence Analysis Software Package(商標)(Version10;Genetics Computer Group,Inc.,Madison,WI)の「Best Fit」または「Gap」プログラムを用いて決定される。「ギャップ」は、Needleman and Wunsch(Needleman and Wunsch,JOURNAL OF MOLECULAR BIOLOGY 48:443-53,1970年)のアルゴリズムを利用して、一致の数を最大化しかつギャップの数を最小化する2つの配列のアラインメントを見つける。「BestFit」は、Smith and Watermanの局所相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列と挿入ギャップの間の最良の類似性のセグメントの最適アラインメントを行って、一致の数を最大化する(Smith and Waterman,ADVANCES IN APPLIED MATHEMATICS,2:482-489,1981年,Smithら、NUCLEIC ACIDS RESEARCH 11:2205-2220,1983年)。パーセント同一性は、最も好ましくは、「Best Fit」プログラムを用いて決定される。
【0087】
配列同一性を決定するための有用な方法はまた、National Center Biotechnology Information(NCBI)(National Library of Medicine,National Institute of Health,Bethesda,Md20894;BLAST Manual,Altschulら、NCBI,NLM,NIH;Altschulら、J.MOL.BIOL.215:403-10(1990年)を参照)から公的に入手可能なBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)プログラムに開示されており、BLASTプログラムのバージョン2.0以降は、配列へのギャップ(欠失および挿入)の導入を可能にし;ペプチド配列については、配列同一性を決定するためにBLASTXを使用でき;ポリヌクレオチド配列については、BLASTNを使用して、配列同一性を決定できる。
【0088】
本明細書中で使用される場合、「実質的なパーセント配列同一性」という用語は、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらに高い配列同一性、例えば約98%または約99%の配列同一性のパーセント配列同一性を指す。したがって、本開示の一実施形態は、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列と少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約90%の配列同一性、またはさらに高い配列同一性、例えば約98%または約99%の配列同一性のパーセント配列同一性を有する、ポリヌクレオチド分子である。
【0089】
同一性および類似性
同一性は、配列のアラインメント(配列情報、構造情報、または他の一部の情報のみを用いて行うことができるが、通常は配列情報のみに基づく)後の配列対間で同じであるアミノ酸の画分であり、類似性は、いくつかの類似性マトリックスを用いたアラインメントに基づいて割り当てられるスコアである。類似性インデックスは、以下のBLOSUM62、PAM250、またはGONNETのいずれか1つ、またはタンパク質の配列アラインメントのために当業者によって使用される任意のマトリックスであってよい。
【0090】
同一性は、2つの部分配列間の対応の度合いである(配列間にギャップはない)。25%以上の同一性は、機能の類似を意味し、一方で18~25%は、構造または機能の類似を意味する。2つの完全に無関係な配列またはランダムな配列(100残基を超える配列)が、20%より高い同一性を有し得ることに留意されたい。類似性は、2つの配列を比較したときの、その配列間の類似の度合いである。これは、それらの同一性に依存する。
【0091】
本明細書で使用する用語の説明:
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他の意味を指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0092】
「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が説明または特許請求の範囲で使用される限り、そのような用語は、特許請求において移行句として使用される場合に、「含む(comprise)」が解釈されるとおり、用語「含む(comprise)」と同様に包括的であることが意図される。
【0093】
「例示的」という言葉は、本明細書では、「例、実例、または例示として機能する」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として記載される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であるものと解釈されるべきではない。
【0094】
「相補的」という用語は、当業者にその通常の慣習的な意味を与えるものであり、互いにハイブリダイズできるヌクレオチド塩基間の関係を説明するために限定なく使用される。例えば、DNAに関しては、アデノシンは、チミンに相補的であり、シトシンは、グアニンに相補的である。したがって、本技術は、添付の配列表に報告されるような完全配列に相補的である単離された核酸断片、ならびにそれらの実質的に類似した核酸配列も含む。
【0095】
「核酸」および「ヌクレオチド」という用語は、当業者にそれぞれの通常および慣習的な意味を与えるものであり、これらに限定されないが、それらの一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびポリマーを指すために使用される。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的修飾されたバリアントまたは縮重バリアント(例えば、縮重コドン置換)、および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。
【0096】
「コード配列」は、当業者に通常かつ慣用的な意味を与えるものであり、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指すために限定されることなく使用される。
【0097】
「単離された」という用語は、当業者に通常かつ慣用的な意味を与えるものであり、単離された核酸または単離されたポリペプチドの文脈で使用される場合、限定するものではないが、ヒトの手によって、その天然環境とは別に存在し、したがって、天然の産物ではない核酸またはポリペプチドを指すために使用される。単離された核酸またはポリペプチドは、精製形態で存在し得るか、または、例えば、トランスジェニック宿主細胞中などの非天然環境に存在し得る。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「インキュベートすること(incubating)」および「インキュベーション(incubation)」は、2つ以上の化学的または生物学的実体(例えば、化学的化合物および酵素)を混合する、およびそれらが所望の産物を産生するのに好ましい条件下で相互作用することを可能にする、過程を意味する。
【0099】
「縮重バリアント」という用語は、1つ以上の縮重コドン置換によって参照核酸配列とは異なる残基配列を有する核酸配列を指す。縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る。核酸配列およびそのすべての縮重バリアントは、同じアミノ酸またはポリペプチドを発現する。
【0100】
この「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド」という用語は、当業者にそれぞれの通常のおよび慣習的な意味を与えるものである。3つの用語は、同義的に使用されることがあり、そのサイズまたは機能に関係なく、これらに限定されないが、アミノ酸またはアミノ酸類似体のポリマーを指すために使用される。「タンパク質」は多くの場合、比較的大きいポリペプチドに関して使用され、「ペプチド」は多くの場合、小さいポリペプチドに関して使用されるが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複し、変動する。本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、特に記載のない限り、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を指す。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、ポリヌクレオチド産物を指す場合、本明細書では同義的に使用される。したがって、例示的ポリペプチドとしては、ポリヌクレオチド産物、天然存在タンパク質、相同体、オルソログ、パラログ、断片、ならびに前述の他の同等物、バリアント、および類似体が挙げられる。
【0101】
「ポリペプチド断片」および「断片」という用語は、参照ポリペプチドに関して使用される場合、当技術分野の当業者にそれらの通常および慣習的な意味を与えるものであり、これらに限定されないが、参照ポリペプチド自体と比較してアミノ酸残基が欠失しているが、残りのアミノ酸配列が、通常、参照ポリペプチド内の対応する位置と同一であるポリペプチドを指すために使用される。そのような欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端、あるいはその両方で起こり得る。
【0102】
ポリペプチドまたはタンパク質の「機能的断片」という用語は、全長ポリペプチドもしくはタンパク質の一部であり、かつ実質的に同じ生物学的活性を有するか、または全長ポリペプチドもしくはタンパク質と実質的に同じ機能を実行する(例えば、同じ酵素反応を実行する)、ペプチド断片を指す。
【0103】
用語「バリアントポリペプチド」「修飾アミノ酸配列」または「修飾ポリペプチド」は、同義的に使用され、1つ以上のアミノ酸により、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加により、参照ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を指す。一態様では、バリアントは、「機能的バリアント」であり、これは参照ポリペプチドの能力の一部または全部を保持する。
【0104】
「機能的バリアント」という用語は、保存的に置換されたバリアントをさらに含む。「保存的に置換されたバリアント」という用語は、1つ以上の保存的アミノ酸置換により参照ペプチドと異なり、かつ参照ペプチドの活性の一部またはすべてを維持するアミノ酸配列を有するペプチドを指す。「保存的アミノ酸置換」は、機能的に類似した残基による、あるアミノ酸残基の置換である。保存的置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの1つの非極性(疎水性)残基の別のものへの置換;アルギニンとリジン、グルタミンとアスパラギン、スレオニンとセリンなど、別のものへの1つの荷電もしくは極性(親水性)残基の置換;リジンもしくはアルギニンなどの1つの塩基性残基の別のものへの置換;アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの1つの酸性残基の別のものへの置換;またはフェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンなどの1つの芳香族残基の別のものへの置換が挙げられる。そのような置換は、タンパク質またはポリペプチドの見かけの分子量または等電点にほとんどまたはまったく影響を有しないと予想される。「保存的置換バリアント」という句はまた、得られるペプチドが本明細書に記載の参照ペプチドの活性の一部またはすべてを維持するという条件で、ある残基が化学的に誘導体化された残基で置換される、ペプチドを含む。
【0105】
用語「バリアント」は、本技術のポリペプチドに関連して、参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、およびさらには100%同一のアミノ酸配列を有する機能的に活性なポリペプチドをさらに含む。
【0106】
本技術のバリアントポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大パーセント配列同一性を達成した後、かつ配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない場合に、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージを指す。
【0107】
パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当該技術分野の範囲内である様々な方法で達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定できる。例えば、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2を用いて決定され得る。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、ncbi.nlm.nih.gov.からダウンロードできる。NCBI BLAST2は、いくつかの検索パラメータを使用し、それらの検索パラメータの全てが、例えば、アンマスク(unmask)イエス(yes)、鎖=全て、予測される発生10、最小低複合長(minimum low complexity length)=15/5、マルチパスe値=0.01、マルチパス=25のための定数、最終ギャップアラインメントについてのドロップオフ=25およびスコアリングマトリックス=BLOSUM62を含むデフォルト値に設定される。NCBI-BLAST2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、もしくは所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(これは、所与のアミノ酸配列Bへの、所与のアミノ酸配列Bとの、もしくは所与のアミノ酸配列Bに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aとして代替的に述べることができる)は、以下のように計算される:100×分数X/Y、式中、Xは、配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2により、AおよびBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコアされるアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが理解される。
【0108】
この意味で、アミノ酸配列「類似性」を決定するための技術は、当技術分野において周知である。一般に、「類似性」は、アミノ酸が同一であるか、または電荷もしくは疎水性などの類似の化学的特性および/または物理的特性を有する、適切な場所での2つ以上のポリペプチドのアミノ酸対アミノ酸の正確な比較を指す。いわゆる「%類似性」が次いで、比較されるポリペプチド配列間で決定され得る。核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための技術も当技術分野において周知であり、その遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること(通常はcDNA中間体を介して)およびその中にコードされるアミノ酸配列を決定すること、およびこれを第2のアミノ酸配列と比較すること、を含む。一般に、「同一性」は、それぞれ、2つのポリヌクレオチドもしくはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の対応を指す。2つ以上のポリヌクレオチド配列は、2つ以上のアミノ酸配列でできるように、それらの「パーセント同一性」を決定することにより比較できる。ウィスコンシン配列解析パッケージ、バージョン8(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)で利用可能なプログラム、例えば、GAPプログラムは、2つのポリヌクレオチド間の同一性と、2つのポリペプチド配列間の同一性および類似性の両方をそれぞれ計算できる。配列間の同一性または類似性を計算するための他のプログラムは、当業者に知られている。
【0109】
参照位置に「対応する」アミノ酸位置は、アミノ酸配列を整列させることによって同定されるように、参照配列と整列する位置を指す。このようなアライメントは、手動で、またはClustalW2、Blast2などの周知の配列アライメントプログラムを使用することにより行われる。
【0110】
特に明記しない限り、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の%同一性は、2つの配列の短い方の全長にわたる同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージを指す。
【0111】
すべての文法的形態および綴りの変形における「相同」という用語は、スーパーファミリーからのポリヌクレオチドまたはポリペプチドおよび異なる種からの相同ポリヌクレオチドまたはタンパク質を含む、「共通の進化的起源」を保有するポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の関係を指す(Reeckら、CELL 50:667,1987年)。そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それらの配列類似性によって反映されるように、パーセント同一性または保存された位置での特定のアミノ酸またはモチーフの存在に関して、配列相同性を有する。例えば、2つの相同ポリペプチドは、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには100%同一である、アミノ酸配列を有し得る。
【0112】
「好適な調節配列」は、当業者にその通常の慣習的な意味を与えるものとし、限定されないが、コード配列の上流(5’非コード配列)に、内部に、または下流(3’非コード配列)に位置し、かつ関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指すために使用される。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を含み得る。
【0113】
「プロモーター」は、当業者にその通常の慣習的な意味を与えるものとし、限定されないが、コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を指すために使用される。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’に位置している。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来してよく、または自然界に見られる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されてよく、さらには合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターが、異なる組織または細胞型において、または異なる発達段階において、または異なる環境条件に応答して、遺伝子の発現を指示し得ることが当業者によって理解される。ほとんどの場合ほとんどの細胞型で遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは一般に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全に定義されていないため、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることが、さらに認識される。
【0114】
「作動可能に連結された」という用語は、一方の機能が他方の機能によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を与えることができる場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列と作動可能に連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンス配向で調節配列に作動可能に連結できる。
【0115】
本明細書で使用される「発現」という用語は、当業者にその通常の慣習的な意味を与えるものとし、これらに限定されないが、本技術の核酸断片由来のセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指すために使用される。「過剰発現」は、通常のまたは形質転換されない生物における産生のレベルを超える、トランスジェニックまたは組換え生物における遺伝子産物の産生を指す。
【0116】
「形質転換」は、当業者にその通常の慣習的な意味を与えるものとし、これらに限定されないが、標的細胞によるさらなる発現のための、ポリヌクレオチドの標的細胞への移入を指すために使用される。移入されたポリヌクレオチドは、標的細胞のゲノムまたは染色体DNAに組み込まれ得、その結果、遺伝的に安定な遺伝をもたらすか、またはそれは、宿主の染色体は関係なく複製できる。形質転換核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」生物と呼ばれる。
【0117】
本明細書で宿主細胞に関連して使用される場合、「形質転換された」、「トランスジェニック」、および「組換え」という用語は、当業者にそれぞれの通常および慣習的な意味を与えるものとし、これらに限定されないが、その中に異種核酸分子が導入された、植物または微生物細胞などの、宿主生物の細胞を指すために使用される。核酸分子は、宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれ得るか、または核酸分子は、染色体外分子として存在し得る。このような染色体外分子は、自己複製され得る。形質転換された細胞、組織、または対象は、形質転換プロセスの最終産物のみでなく、そのトランスジェニック子孫も包含すると理解される。
【0118】
ポリヌクレオチドに関連して本明細書で使用される場合、「組換え」、「異種」、および「外因性」という用語は、当業者にそれらの通常の慣習的な意味を与えるものであり、これに限定されないが、特定の宿主細胞に対し外来の供給源に由来する、または同じ供給源に由来する場合、その元の形態から改変された、ポリヌクレオチド(例えば、DNA配列または遺伝子)を指すために使用される。したがって、宿主細胞における異種遺伝子は、特定の宿主細胞に対し内因性であるが、例えば、部位指向性変異誘発または他の組換え技術の使用によって改変された、遺伝子を含む。これらの用語はまた、天然に存在するDNA配列の非天然に存在する複数のコピーを含む。したがって、これらの用語は、細胞に対し外来であるか異種である、または細胞に対し相同であるが、そのエレメントが通常見出されない宿主細胞内の位置にあるかもしくは形態である、DNAセグメントを指す。
【0119】
同様に、「組換え」、「異種」、および「外因性」という用語は、ポリペプチドまたはアミノ酸配列に関連して本明細書で使用される場合、特定の宿主細胞に対し外来性の供給源に由来するか、または、同じ供給源に由来する場合、その元の形態から修飾される、ポリペプチドまたはアミノ酸配列を意味する。したがって、組換えDNAセグメントを宿主細胞内で発現させて、組換えポリペプチドを産生できる。
【0120】
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」という用語は、当業者にそれぞれの通常および慣習的な意味を与えるものであり、これらに限定されないが、多くの場合、細胞の中枢代謝の一部ではなく、通常は環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子を運搬する、追加の染色体エレメントを指すために使用される。このようなエレメントは、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、直鎖または環状の、自律的に複製する配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってよく、その中で複数のヌクレオチド配列が独自の構造へと接合されまたは再度組み合わされ、それは細胞中に適切な3’非翻訳配列と共に選択された遺伝子産物のプロモーター断片およびDNA配列を導入できる。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含み、かつ特定の宿主細胞の形質転換を促進する外来遺伝子に加えてエレメントを有する、特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来遺伝子を含み、かつ外来遺伝子に加えて外来宿主におけるその遺伝子の発現の増強を可能にするエレメントを有する、特定のベクターを指す。
【0121】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本開示の実施または試験に使用できるが、好ましい材料および方法が、以下に記載される。
【0122】
以下の非限定的例を検討することにより、本開示はより完全に理解されるであろう。これらの例は、本技術の好ましい実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。以上の考察およびこれらの実施例から、当業者は、本技術の本質的特徴を確認でき、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本技術を様々な用途および条件に適合させるために様々な変更および修正を加えることができる。
【0123】
実施例
実施例1:イプシロン-カロチンを産生するヤロウイア・リポリティカ株の生成
一般に、構成的TEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターを、ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主細胞における個々の遺伝子の過剰発現のために使用した。TEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターの両方を保有するpUC57-Kanベースのベクターを、クローニングした。個々の遺伝子を、Gibsonアセンブリを用いて、TEFプロモーターとXPR2ターミネーターの間にクローニングした。TEFプロモーター、過剰発現のための1つ以上の遺伝子、およびXPR2ターミネーターを含むカセットを、PCRを用いて増幅し、次いで、それぞれ栄養要求性リジン、ロイシンおよびウラシルマーカーを有する、pYlex-SDH、pYconVec-Leu、およびpYconVec-Leuなどの高コピー数ヤロウイア組込みベクターにクローニングした。
【0124】
カロチノイド前駆体供給を増幅させるために、HMGS、HMGRおよびIPIをコードする遺伝子を含む3つの遺伝子を、それらの自身のTEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共に、pYlex-SDHベクターにクローニングして、pYlex-SDH-TEF-IPI-TEF-HMGR-TEF-HMGS構築物を生成した(
図4A)。pYlex-SDH-TEF-IPI-TEF-HMGR-TEF-HMGS構築物を次いで用いて、ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主を形質転換し、リジンを含まない最小培地プレート上で選択した。
【0125】
リコペン産生のための2つの遺伝子、特にCarRP*(そのリコペンシクラーゼ活性を完全に喪失した変異体CarRP)およびCarBをコードする遺伝子、ならびにGGPPSにイン-フレームで融合されたFPPSを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を、それら自身のTEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共にpYconVec-Leuベクターにクローニングして、pYconVec-Leu-TEF-carB-TEF-carRP*-TEF-GGPPS::FPPS構築物を生成した(
図4B)。pYconVec-Leu-TEF-carB-TEF-carRP*-TEF-GGPPS::FPPS構築物を次いで用いて、pYlex-SDH-TEF-IPI-TEF-HMGR-TEF-HMGSを有するヤロウイア・リポリティカATCC 90811株を形質転換し、ロイシンを含まない最小培地プレート上で選択した。赤色クローンは、ヤロウイア・リポリティカ産生菌であった。最も高いリコペン含量を有するコロニーを、LYC-40と命名し、イプシロン-カロチンおよびアルファ-イオノン産生のための宿主として選択した。
【0126】
イプシロン-シクラーゼ(EC)遺伝子を、TEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共にpYconVec-Uraベクターにクローニングして、pYconVec-Ura-TEF-EC構築物を作製した。pYconVec-Ura-TEF-ECを次いで用いて、リコペン産生ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主LYC-40を形質転換し、ウラシルを含まない最小培地プレート上で選択した。したがって、オレンジ色のイプシロン-カロチン産生ヤロウイア・リポリティカ株を生成した。
【0127】
実施例2:HPLC分析のためのイプシロン-カロチンの抽出
イプシロン-カロチン産生ヤロウイア・リポリティカ株を、YPD寒天プレート上にストリークし、30℃で成長させた。インキュベーションの2日後に、オレンジ色コロニーを、YPD液体培地5ml中で250rpmおよび30℃で4日間成長させた。0.2mlの細胞培養物を、遠心分離により回収し、細胞ペレットを、0.8mlのメタノールおよび0.2mlのジクロロメタン中に再懸濁した。直径0.5mmのガラスビーズを次いで、添加した。ヤロウイア・リポリティカ細胞を、ビーズビーターホモジナイザー中で1分間破壊した。次いで、混合物を、15,000rpmで10分間遠心分離し、上清を、HPLC分析のために回収した。
【0128】
イプシロン-カロチンのHPLC分析を、クォータナリポンプ、温度制御カラムコンパートメント、オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を備えるUltimate 3000HPLC System(Dionex,Sunnyvale,CA)を用いて行った。ガードカラムを有するGemini C18(150mmx4.6mm 3μm)を、リコペン、デルタ-カロチンおよびイプシロン-カロチンの特徴を明らかにするために使用した。流速1.0ml/分を適用し、移動相は、イソプロパノール(A)およびアセトニトリル(B)で構成された。プログラムは、0~5分85% B;5~13分85%~60% B;13~14分60%~85%B;14~16分85%Bであり、検出波長は、リコペン、デルタ-カロチンおよびイプシロン-カロチンに対し474nmであった。
【0129】
図5に示すとおり、HMGS、HMGR、IPI、CarRP*、CarB、FPPS::GGPPS、およびECの遺伝子を保有するヤロウイア・リポリティカ株は、既知の標準に対し抽出した産物の保持時間(上)およびUVスペクトル(下)を比較することにより、リコペン(10分ピーク)、デルタ-カロチン(11.5分ピーク)およびイプシロン-カロチン(13分ピーク)を蓄積した。
【0130】
実施例3:ベータ-カロチンを産生するヤロウイア・リポリティカ株の生成
ベータ-カロチン産生のための2つの遺伝子、特にCarRPおよびCarBをコードする遺伝子、ならびにGGPPSにイン-フレームで融合されたFPPSを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を、それら自身のTEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共にpYconVec-Leuベクターにクローニングして、pYconVec-Leu-TEF-carB-TEF-carRP-TEF-GGPPS::FPPS構築物を作製した。pYconVec-Leu-TEF-carB-TEF-carRP-TEF-GGPPS::FPPS構築物を次いで用いて、pYlex-SDH-TEF-IPI-TEF-HMGR-TEF-HMGSを有するヤロウイア・リポリティカATCC 90811株を形質転換し、ロイシンを含まない最小培地プレート上で選択した。オレンジ色のクローンは、ヤロウイア・リポリティカベータ-カロチン産生菌であった。最も高いベータ-カロチン含量を有するコロニーを、BC-3と命名し、ベータ-イオノン産生のための宿主として選択した。
【0131】
実施例4:HPLC分析のためのベータ-カロチンの抽出
ベータ-カロチン産生ヤロウイア・リポリティカ株を、YPD寒天プレート上にストリークし、30℃で成長させた。インキュベーションの2日後に、オレンジ色コロニーを、YPD液体培地5ml中で250rpmおよび30℃で4日間成長させた。0.2mlの細胞培養物を、遠心分離により回収し、細胞ペレットを、0.8mlのメタノールおよび0.2mlのジクロロメタン中に再懸濁した。直径0.5mmのガラスビーズを次いで、添加した。ヤロウイア・リポリティカ細胞を、ビーズビーターホモジナイザー中で1分間破壊した。次いで、混合物を、15,000rpmで10分間遠心分離し、上清を、HPLC分析のために回収した。
【0132】
ベータ-カロチンのHPLC分析を、クォータナリポンプ、温度制御カラムコンパートメント、オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を備えたUltimate 3000HPLC System(Dionex,Sunnyvale,CA)を用いて行った。ガードカラムを有するGemini C18(150mmx4.6mm 3μm)を、ベータ-カロチンの特徴づけのために用いた。流速1.0ml/分を適用し、移動相は、イソプロパノール(A)およびアセトニトリル(B)で構成された。プログラムは、0~5分85% B、5~13分85%~60%B、13~14分60%~85%B、14~16分85% Bである。検出波長は、ベータ-カロチンに対し474nmであった。
【0133】
図6に示すとおり、HMGS、HMGR、IPI、carRP、carBおよびFPPS::GGPPSの遺伝子を保有するヤロウイア・リポリティカは、ベータ-カロチン標準のものに対し抽出したベータ-カロチンの保持時間(上)およびUVスペクトル(下)を比較することにより、ベータ-カロチン(13.5分ピーク)を蓄積する。
【0134】
実施例5:9,10(9’,10’)カロチノイド開裂活性を有する候補CCD酵素の同定
【0135】
カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼ(CCD)酵素は、種々のカロチン基質(
図5に示すイプシロン-カロチンおよび
図6に示すベータ-カロチンなど)の開裂を触媒して、種々のイオノン化合物(アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンなど)を生成できる。
図2を参照して、効率的なCCDは、アルファ-イオノンまたはベータ-イオノンへの生合成経路における決定因子および重要なボトルネックである。
【0136】
いくつかの植物またはシアノバクテリアは、イオノン化合物を作製できることが報告されている。既知のCCD遺伝子配列の公開文献および配列類似性ネットワーク(SSN)解析に基づいて、28の候補CCD遺伝子を、ヤロウイア・リポリティカにおける最も効率的なCCD酵素のin vivoスクリーニングのために選択した。候補CCD遺伝子は個々に、pUC57-Kan-TEF-XPR2ベクターにクローニングされている。各候補CCD遺伝子を、それ自体のTEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共に、pYconVec-Ura-TEF-ECベクターにクローン化して、pYconVec-Ura-TEF-EC-TEF-CCD構築物を生成した。各pYconVec-Ura-TEF-EC-TEF-CCD構築物を次いで用いて、リコペン産生ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主LYC-40を形質転換し、ウラシルを含まない最小培地プレート上で選択した。このようにして、オレンジ色または黄色のアルファ-イオノン産生ヤロウイア・リポリティカ株を生成した。スクリーニングされたCCD酵素のすべての中で、本発明者らは、PhCCD1(植物ツクバネアサガオ由来)を最も高い活性を有するCCD酵素として同定したが、試験管ベースの細胞培養からのそのアルファ-イオノン力価は、依然として非常に低かった(<3mg/L)。コドン最適化PhCCD1遺伝子の3つの異なるバージョン(配列番号12および配列番号13など)を次いで、同じ戦略を用いてスクリーニングして、ヤロウイア・リポリティカATCC 90811(配列番号13)中の最も効率的なPhCCD1遺伝子を同定した。
【0137】
実施例6: GC-MS分析のためのアルファ-イオノンの抽出
推定上のオレンジ色または黄色のアルファ-イオノン産生ヤロウイア・リポリティカクローンを、ウラシルを含まない最小培地プレート上にストリークし、30℃で成長させた。3日間のインキュベーション後に、コロニーを、5mlのYPD液体培地中で250rpmおよび30℃で5日間成長させた。アルファ-イオノンの産生を分析するために、1.0mlのヤロウイア・リポリティカ細胞培養物を、採取し、酵母スラリーを、完全な混合のために少なくとも1分間ボルテックスして1.0mlのn-ヘキサンで抽出した。2000rpmで10分間の遠心後に、n-ヘキサン相を、GC/MS分析に用いた。
【0138】
GC/MS分析を、GCMS-QP2010S検出器と組み合わせたShimadzu GC-2010システムで行った。分析カラムは、SHRXI-5MS(厚さ0.25μm、長さ30m、直径0.25mm)であり、噴射温度は、スプリットモードで265℃である。温度勾配は、0~1分110℃、1~8.75分110℃~265℃、勾配20;8.75~9.75分、265℃である。
【0139】
図7に示すとおり、HMGS、HMGR、IPI、CarRP*、CarB、FPPS::GGPPS、ECおよびCCDの遺伝子を保有するヤロウイア・リポリティカ株は、真のアルファ-イオノン標準(下)に対し抽出した産物の保持時間および質量分析データ(上、中心)を比較したときに、アルファ-イオノン(4.3分ピーク)を蓄積することが示された。
【0140】
実施例7:候補脂質体区画化シグナルタグを同定して、PhCCD1 9,10(9’,10’)カロチノイド開裂活性を改善する
図2を参照して、アルファ-イオノンおよびベータ-イオノンへの生合成経路での最後の酵素、すなわちCCDは、その不十分な活性によりイオノン産生の重要なボトルネックである。カロチノイドプラットフォームとして大腸菌を用いて、CCDカロチノイド開裂活性を改善する努力がなされている。CCDへ可溶性タグを添加すること、部位指向性変異誘発を用いること、およびカロチンシクラーゼ-CCD融合酵素を作製することを含む、複数の戦略が、大腸菌におけるOfCCD1の触媒特性を改善し得ることが報告された。また、部位指向性変異誘発およびペプチド-CCD発現の組み合わせは、サッカロミセス・セレビジアエプラットフォームを用いて、PhCCD1活性をわずかに改善し得ることが報告されている。しかし、本発明者らの知る限り、ヤロウイア・リポリティカプラットフォームを用いてCCD活性を改善することは成功していない。CCD酵素に対するタンパク質工学的努力に加えて、発明者らは、PhCCD1などのCCDの開裂活性を改善するために、脂質体をベースにした細胞内区画内工学的アプローチを調査することを選択した。
【0141】
生合成経路または酵素の区画化は、化学的産生を増大させるための効率的な戦略である。経路または酵素の区画化は、酵素を基質または必須の補助因子に接近させること、基質の有効濃度を増加させること、または酵素反応のためのより好適な化学的環境を提供することにより、化学的産生を助ける。
図3を参照して、本発明者らは顕微鏡下で、赤色のリコペンおよびオレンジ色のカロチンが、ヤロウイア・リポリティカ細胞中の脂質体およびコリネバクテリウム・グルタミカム細胞中の脂質滴中に蓄積することを観察した。そのため、本発明者らは、宿主としてヤロウイア・リポリティカリコペン産生株LYC-40を用いて、複数の推定脂質体区画化シグナルタグ(種々の脂質合成酵素、脂質体集合体のための膜タンパク質、および脂質体構造タンパク質、ならびにオレンジカロチノイド結合タンパク質など)のin vivoスクリーニングを実施することを決定した。
【0142】
pYconVec-Ura-TEF-EC-TEF-PhCCD1ベクターを、コドン最適化されたTEFプロモーターとPhCCD1遺伝子の間のBsaI部位を用いて作製した。推定脂質体区画化シグナルタグ(LBT)をコードする候補遺伝子を、BsaI部位に個々にクローニングして、pYconVec-Ura-TEF-EC-TEF-LBT_CCD構築物を生成した(
図4C)。各構築物を次いで用いて、リコペン産生ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主LYC-40を形質転換し、ウラシルを含まない最小培地プレート上で選択した。このように、黄色の推定アルファ-イオノン産生ヤロウイア・リポリティカ株を、最も効率的な脂質体区画化シグナルタグのGC/MSスクリーニングのために生成した。
【0143】
図8に示すとおり、可溶性タグ(例えば、TrxAタグ化PhCCD1、TrxAのためのアミノ酸配列およびコドン最適化核酸配列は、配列番号27および配列番号28として提供される)を添加する戦略、部位指向性変異誘発(PhCCD1-K164L、PhCCD1-T170A、PhCCD1-A327S、PhCCD1-S428N、PhCCD1-K164L_T170A_A327S、PhCCD1-K164L_T170A_A327S_S428N、配列番号11の変異体に対応)の戦略、およびイプシロンシクラーゼ(EC)-CCD融合酵素(EC-LGS-PhCCD1)を作製する戦略と比較して、多数の脂質体区画化シグナルタグは、ヤロウイア・リポリティカ細胞におけるPhCCD1のin vivoカロチノイド開裂効率を劇的に改善できた。これらの脂質体区画化シグナルタグは、リムノスピラ(Limnospira maxima)オレンジカロチノイド結合タンパク質、ヤロウイア・リポリティカ膜輸送体Stl1pタンパク質、ヤロウイア・リポリティカ脂質滴タンパク質Oil1p、トウモロコシ16kDaオレオシンおよびゴマ17kDaオレオシンを含む。
図8を続いて参照して、記載された代替的戦略を介する力価の約5倍の増加に限定されず、CCD酵素に連結された脂質体区画化シグナルタグを含む融合酵素を使用する本発明の方法は、力価の増加が11倍~33倍を超える範囲であることが示された。
【0144】
実施例8:ベータ-イオノンを産生するヤロウイア・リポリティカ株の生成
脂質体区画化タグ付けPhCCD1をコードする遺伝子を、TEFプロモーターおよびXPR2ターミネーターと共に、pYconVec-Uraベクターにクローニングして、pYconVec-Ura-TEF-LBT_PhCCD1構築物を生成した。pYconVec-Ura-TEF-LBT_PhCCD1構築物を次いで用いて、ベータ-カロチン産生ヤロウイア・リポリティカATCC 90811宿主BC-3を形質転換し、ウラシルを含まない最小培地プレート上で選択した。このように、黄色のベータ-イオノン産生ヤロウイア・リポリティカ株を、生成した。黄色のクローンを、ウラシルを含まない最小培地プレート上にストリークし、30℃で成長させた。3日間のインキュベーション後に、コロニーを、5mlのYPD液体培地中で250rpmおよび30℃で5日間成長させた。ベータ-イオノンの産生を分析するために、1.0mlのヤロウイア・リポリティカ細胞培養物を、採取し、酵母スラリーを、完全な混合のために少なくとも1分間ボルテックスして1.0mlのn-ヘキサンで抽出した。2000rpmで10分間の遠心後に、n-ヘキサン相を、GC/MS分析に用いた。
【0145】
GC/MS分析を、GCMS-QP2010S検出器と組み合わせたShimadzu GC-2010システムで行った。分析カラムは、SHRXI-5MS(厚さ0.25μm、長さ30m、直径0.25mm)であり、噴射温度は、スプリットモードで265℃である。温度勾配は、0~1分110℃、1~8.75分110℃~265℃、勾配20;8.75~9.75分、265℃である。
【0146】
図9に示すとおり、遺伝子HMGS、HMGR、IPI、CarRP、CarB、FPPS::GGPPSおよび脂質体区画化タグ付きPhCCD1を保有するヤロウイア・リポリティカ株は、真のベータ-イオノン標準のもの(下)に対し抽出した産物の保持時間および質量分析データ(上、中心)を比較することにより、ベータ-イオノン(4.7分ピーク)を蓄積した。
【0147】
実施例9:融合タンパク質オレオシン::crtRBおよびオレオシン::BKTを発現することによるアスタキサンチンの産生増加
本明細書に記載のLBTペプチドを、他のカロチノイド生成酵素に融合して、他のカロチノイド化合物の生成を増加させることができる。
図11は、タグのないCrtRB酵素をコードするコード配列およびタグのないBKT酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(crtRB-BKT)で形質転換された株と比較して、LBT-CrtRB融合酵素をコードするコード配列およびLBT-BKT融合酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(オレオシン::crtRB-オレオシン::BKT)で形質転換された組換え微生物産生株を用いる場合の、アスタキサンチン(AS)およびゼアキサンチン(ZX)の産生の増加を示す。
【0148】
実施例10:融合タンパク質オレオシン::crtを発現することによるカンタンキサンチンの産生増加
図12は、タグなしCrtW酵素をコードするコード配列を含む核酸構築物(crtW)で形質転換された株と比較して、LBT-CrtW融合酵素をコードするコード配列(オレオシン::crtW)を含む核酸構築物で形質転換された組換え微生物産生株を用いた場合のカンタキサンチン(CX)の産生の増加を示す。
【0149】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオノン化合物を産生するための組換え微生物産生宿主細胞であって、第1のコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含み、前記第1のコード配列が、カロチノイド開裂活性を有する第2のドメインに融合された脂質体区画化シグナルタグ(LBT)として機能できる第1のドメインを含む融合酵素をコードし、前記第1のコード配列が、脂質体構造タンパク質、含油
性誘導性脂肪滴タンパク質、オレンジカロチノイド結合タンパク質、および膜輸送体タンパク質からなる群から選択され、かつ前記第1のドメインが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、小さいユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはチオレドキシン(TrxA)を含まない、宿主細胞。
【請求項2】
前記第1のドメインが、配列番号5、配列番号7、または配列番号9に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記第1のドメインが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号31、または配列番号33に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記第1のドメインが、配列番号29、または配列番号30のアミノ酸配列に対し少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオレオシンポリペプチドである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項5】
前記第1のドメインが、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、トウダイグサ(Ricinus communis)、ダイズ(Glycine max)、ゴマ(Sesamum indicum)、Coix lacryma、クロカビ(Aspergillus niger)、またはアカパンカビ(Neurosporacrassa)由来のカレオシンを含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項6】
前記第2のドメインが、カロチノイド開裂ジオキシゲナーゼまたはカロチノイドオキシゲナーゼである、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記第2のドメインが、配列番号11、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、または配列番号24に対し少なくとも80%の配列同一性を呈するアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記第2のドメインが、ツクバネアサガオ(Petunia x hybrida)、モクセイ(Osmanthus fragrans)、トウモロコシ(Zea mays)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ブドウ(Vitis vinifera)、ニンジン(Daucus carota)、トマト(Lycopersicon esculentum)、もしくはヨーロッパキイチゴ(Rubus idaeus)由来のCCD1酵素、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ベニノキ(Bixa Orellana)、コギク(Chrysanthemum morifolium)、サフラン(Crocus sativus)、マレーヤマバショウ(Musa acuminata)、セイヨウリンゴ(Malus domestica)、モモ(Prunus persica)、ダマスクバラ(Rosa damascene)、ブドウ(Vitis vinifera)、およびモクセイ(Osmanthus fragrans)由来のCCD4酵素を含む、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記第1のドメインが、3~30アミノ酸長を含みかつグリシン、セリン、スレオニン、およびそれらの組み合わせの群から選択されるアミノ酸を含むリンカーを介して前記第2のドメインに融合される、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記リンカーが、グリシン-セリンリンカーを含む、請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
前記第1のコード配列が、TEFプロモーターに作動可能に連結される、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項12】
リコペンイプシロン-シクラーゼまたはカロチノイド開裂ジオキシゲナーゼもしくはカロチノイドオキシゲナーゼドメインに融合されたリコペンイプシロン-シクラーゼドメインを含む融合酵素をコードする第2のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、アルファ-イオノンを産生するための請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項13】
フィトエンシンターゼをコードする第2のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、ベータ-イオノンを産生するための請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項14】
フィトエンデヒドロゲナーゼをコードする第3のコード配列を同じ核酸構築物または異なる核酸構築物中にさらに含む、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
1つ以上のコード配列を含む1つ以上の核酸構築物をさらに含み、前記1つ以上のコード配列が、宿主細胞に対し天然のメバロン酸経路酵素から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項16】
前記天然のメバロン酸経路酵素が、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)、およびイソペンテニル-二リン酸-イソメラーゼ(IPI)からなる群から選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
1つ以上のコード配列を含む1つ以上の核酸構築物をさらに含み、前記1つ以上のコード配列が、ファルネシル二リン酸シンターゼ(FPPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸シンターゼ(GGPPS)、GGPPS::FPPS融合酵素、フィトエンデヒドロゲナーゼ(CarB)、二官能性リコペンシクラーゼ/フィトエンシンターゼ(CarRP)、およびリコペンシクラーゼ活性を有しない変異体CarRP(CarRP*)からなる群から選択される1つ以上の酵素をコードする、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記宿主細胞が、酵母である、請求項1~17のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカである、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
カロチノイド化合物を産生するための組換え微生物産生宿主細胞であって、ベータ-カロチンケトラーゼまたはベータ-カロチンヒドロキシラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドまたはカレオシンポリペプチドを含む融合酵素をコードするコード配列を含む少なくとも1つの核酸構築物を含む、宿主細胞。
【請求項22】
ベータ-カロチンケトラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドを含む第1の融合酵素をコードする第1のコード配列とベータ-カロチンヒドロキシラーゼに融合されたオレオシンポリペプチドまたはカレオシンポリペプチドを含む第2の融合酵素をコードする第2のコード配列とを含む請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記ベータ-カロチンケトラーゼが、藻類のまたは細菌のBKTまたはCrtWである、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記ベータ-カロチンケトラーゼが、ヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis)、クロレラ・ゾフィンギエンシス(Chlorella zofingiensis)、Chlamydomonas reinhardtii、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、およびパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)由来である、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記ベータ-カロチンヒドロキシラーゼが、藻類CrtR-Bである、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記藻類CrtR-bが、ヘマトコッカス(Haematococcus pluvialis)またはChlamydomonas reinhardtii由来である、請求項21または22に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記オレオシンポリペプチドが、配列番号29または配列番号30のアミノ酸配列を含み、かつ前記カレオシンポリペプチドが、配列番号31または配列番号33のアミノ酸配列を含む、請求項21~26のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記カロチノイド化合物が、アスタキサンチンである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記カロチノイド化合物が、カンタキサンチンである、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記宿主細胞が、ヤロウイア・リポリティカである、請求項21~29のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】