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特表2022-551457抗がん剤に対して細胞を感作する新規のカルバゾール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】抗がん剤に対して細胞を感作する新規のカルバゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20221202BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/366 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221202BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/405
A61P35/00
A61K31/337
A61K31/427
A61K31/365
A61K31/366
A61K38/08
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521143
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020078585
(87)【国際公開番号】W WO2021069736
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】19306335.1
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20315388.7
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ロランス ラファネシェール
(72)【発明者】
【氏名】ルノー プリュデン
(72)【発明者】
【氏名】ローラリー ペロンヌ
(72)【発明者】
【氏名】マルク ビヨー
(72)【発明者】
【氏名】オドレイ ベルネ
(72)【発明者】
【氏名】エリク デナリエ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ダレマーニュ
(72)【発明者】
【氏名】シルバン ロー
(72)【発明者】
【氏名】ペギー シュザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-シャルル ランセロ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ ペラト
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン レスナール
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC08
4C063DD04
4C063EE01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084MA02
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086BA02
4C086BA17
4C086BC12
4C086BC82
4C086CA03
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物
に関し、ここで、R、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここでR3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
ここで、R、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)の化合物であって、
ここでR、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数であり、xはアルキル基に存在するXの数であり、好ましくはxは1であり、Xはアルキル基の末端位置にある、式-Cn2n+1-xxのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)、
化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の式(I)の化合物であって、
ここでR、およびR1は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、
ここでR2は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数であり、xはアルキル基に存在するXの数であり、好ましくはxは1であり、Xはアルキル基の末端位置にある、式-Cn2n+1-xxのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、
ここで、R3、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、および
ここでR4は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-Rfは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)、
化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物であって、
ここでR、およびR1は、水素原子、塩化物原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
ここでR2は、水素原子、メチル基、-COH基、Xは塩化物原子、臭化物原子、ヨウ素原子、およびヒドロキシル基からなる群から選択される、式-CH2Xのアルキル基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、式-C(O)Hのアシル基、カルボキシル基(-COOH)、Rbはメチル基またはエチル基である、式-C(O)NRbのアミド基、およびRcはフェニル基である、式-C=N-Rcのイミノ基、からなる群から選択され、
ここで、R3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、メチル基およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
ここでR4は、水素原子、メチル基、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、ヨウ素原子、Rdはメチル基またはエチル基である、式-ORdのアルコキシ基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、Reはメチル基、エチル基、直鎖プロピル基、直鎖ペンチル基、-CH2CH2-シクロペンチル基、および(パラ-メチル)フェニル基である、式-C(O)Reのアシル基、Rfはメチル基またはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、カルボキシル基(-COOH)、およびシアノ基(-CN)、からなる群から選択される、
化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物であって、
ここでR、およびR1は、水素原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
ここでR2は、水素原子、-COH基、および-CH2OH基からなる群から選択され、
ここで、R3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
ここでR4は、水素原子、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、Rfはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、およびRaはメチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、からなる群から選択される、
化合物。
【請求項6】
3、R4、R5、およびR6からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも3つが水素原子であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、以下からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物:
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【請求項8】
酸、好ましくは有機酸の存在下で、
式(II)の化合物:
【化3】
を式(III)の化合物
【化4】
または、式(IV)の化合物
【化5】
と接触させる工程a)を含み、
ここでR、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基、
請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つの化合物、および少なくとも一つの薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項10】
がん、および微小管の調節解除に関与する障害からなる群から選択される疾患および/または障害の治療方法において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
好ましくはタキサンによる、細胞微小管(cell microtubule)の安定化を必要とするがん、およびLKB1欠損細胞によって誘発されるがんからなる群から選択されるがんの治療方法において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、細胞微小管、好ましくはヒト細胞を安定化する少なくとも一つの化合物と同時投与されることを特徴とする、ヒトまたは動物の体の治療方法で使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
細胞微小管を安定化する前記化合物は、タキサン、エポチロン、TPI-287、カバジタキセル(carbazitaxel)、ザムパノリド(zampanolide)、ダクチロリド(dactylolide)、ディスコデルモリド、タッカロノリド(taccalonolide)、ダブネチド(davunetide)、エリュテロビン、ジクチオスタチン、およびサルコジクチン(sarcodictyin)AおよびBからなる群から選択され、好ましくはタキサンである、請求項12に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項14】
細胞微小管を安定化する前記化合物は、パクリタキセルである、請求項12または13に記載の使用のための式(I)の化合物。
【請求項15】
前記式(I)の化合物は、LKB1欠損細胞を有する患者に投与されることを特徴とする、ヒトまたは動物の体の治療方法で使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の新規のカルバゾール誘導体に関する。
【0002】
本発明はまた、式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0003】
本発明はまた、式(I)のそのような化合物を含む医薬組成物に関する。
【0004】
最後に、本発明はまた、がんの治療方法において使用するための式(I)の化合物に関する。
【背景技術】
【0005】
最先端の技術
現在、肺がん、乳がん、および卵巣がんを含む様々ながんがパクリタキセルを使用して治療されている。パクリタキセルは、細胞の微小管を標的とし、β-チューブリンのタキサン部位に結合し、微小管の横方向および/または縦方向のチューブリン接触を強化することによって微小管格子を安定化させる薬剤である。パクリタキセルは、高濃度では、微小管の集合を促進する。低濃度で臨床的に適切な濃度では、パクリタキセルは主に微小管-ポリマーの質量に大きな影響を与えることなく微小管のダイナミクスを抑制する。
【0006】
しかしながら、パクリタキセルの溶解度が低いこと、その毒性、および多剤耐性メカニズムに対する感受性は、依然としてその使用を深刻に制限している。
【0007】
さらに、腫瘍抑制遺伝子として知られるLKB1遺伝子の生殖細胞変異は、肺腺がんまたは子宮腫瘍の場合に頻繁に観察される。このような突然変異はまた、ポイツ・ジェガーズ症候群の症例の大部分の原因であり、この症候群は、ポリープの形成、および悪性腫瘍、特に消化器腫瘍および乳房腫瘍の発生率の増加を誘発する。
【0008】
これらのがんにおけるLKB1欠損細胞のこの高い有病率は、そのような細胞を標的とする治療法の開発に焦点を当てる緊急性を示している。
【発明の概要】
【0009】
発明の目的
本発明の一つの目的は、上記の制限を緩和することができる、がんに対する改善された治療を提供することである。
【0010】
特に、本発明は、細胞微小管(cell microtubule)を安定化する化合物、特にパクリタキセルの毒性を低減するという技術的問題に対する解決策を提供することを目的としている。
【0011】
本発明は、微小管を安定化する化合物に対する耐性、特にパクリタキセルに対する耐性を低下させるという技術的問題に対する解決策を提供することを目的としている。
【0012】
本発明は、LKB1欠損細胞を標的とする新規の治療を提供するという技術的問題に対する解決策を提供することを目的としている。
【0013】
本発明の一つの目的は、上記の技術的限界を緩和することができる、特にがんに対する医薬治療における使用のための化合物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、微小管を安定化する化合物に対する耐性、特にパクリタキセルに対する耐性を低下させることである。
【0015】
本発明の別の目的は、LKB1欠損細胞に対して選択的に細胞毒性である化合物を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】単独で、または様々な濃度(0.5、1、6、12、および25μM)の化合物(I-a)と組み合わせた場合の、パクリタキセル(PTX)濃度の関数としての、HeLa細胞生存率の変化を示す。
図2】DMSO(対照)または12μMまたは25μMの化合物(I-a)で処理した細胞の細胞内微小管(cellular microtubule)(上)およびDNA(下)の画像を示す。
図3】DMSO(対照)または12μMまたは25μMの化合物(I-a)で処理した細胞の染色体集結の画像を示す。
図4】HeLa細胞を12μMまたは25μMの化合物(I-a)またはDMSO(対照)で処理したときの細胞周期分布を示す。細胞周期をフローサイトメトリーで分析した。ステップsubG1、G1、Sで、24時間後、DMSOおよび化合物(I-a) 12μMに対応する曲線が本質的に重ね合わされる。
図5】HeLa細胞を1nMまたは5nMの濃度のパクリタキセル、またはDMSO(対照)で処理した場合の細胞周期分布を示す。細胞周期をフローサイトメトリーで分析した。
図6】HeLa細胞を化合物(I-a)(12μM)とパクリタキセル(1nM)、またはDMSO(対照)の混合物で処理した場合の細胞周期分布を示す。細胞周期をフローサイトメトリーで分析した。
図7】マウスが受けた治療(パクリタキセルのみ、化合物(I-a)のみ、またはパクリタキセルと化合物(I-a)の組み合わせ)に応じた、時間の経過に伴う腫瘍サイズの生体内での変化を表すグラフである。
図8】化合物(I-a)の濃度に応じて、LKB1欠損細胞またはLKB1が再導入された細胞の細胞生存率を表すグラフである。
図9】化合物(I-a)のみ、またはパクリタキセルと化合物(I-a)の組み合わせでインキュベートしたRPE-1細胞の細胞生存率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I)の化合物に関し、:
【0018】
【化1】
【0019】
ここで、R、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基。
【0020】
本発明の式(I)の化合物はまた、その互変異性、ラセミ、鏡像異性、または多形の形態、または薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0021】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の式(I)の化合物が、その毒性を著しく増加させることなく、細胞微小管を安定化する化合物の効果、特にパクリタキセルの効果を増強することを発見した。式(I)のそのような化合物は、微小管を安定化する化合物、特にパクリタキセルの低用量のがん治療における使用を可能にすることができ、そして耐性の発生を制限し得る。
【0022】
式(I)の化合物は、微小管を安定化する化合物、特にパクリタキセルの低、非毒性用量に対して細胞を感作することができる。
【0023】
式(I)の化合物単独では、間期微小管ダイナミクスに大きな影響を及ぼさず、中程度の細胞毒性を示す。しかしながら、式(I)の化合物は、微小管を安定化する化合物、特にパクリタキセルと相乗的な細胞毒性効果を発揮する。
【0024】
理論に拘束されることなく、本発明者らは、式(I)の化合物が微小管ダイナミクスの調節を誘導し、微小管内の微小管を安定化する化合物の蓄積を増加させると考える。
【0025】
また、驚くべきことに、本発明者らによって、本発明の式(I)の化合物がLKB1欠損細胞に対して選択的に細胞毒性であることが発見された。
【0026】
本発明は、「置換された」基または部分に言及し、これは、該基または部分の少なくとも一つの水素ラジカルが、置換基と呼ばれる原子または原子の基で置換されることを意味することが知られている。
【0027】
好ましい置換基の例は、ハロゲン(クロロ-、ヨード-、ブロモ-、またはフルオロ-);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト(phosphonato);ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(たとえば、トリフルオロメチル);単環式または縮合または非縮合多環式であってもよいシクロアルキル(たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル)、または単環式または縮合または非縮合多環式であってもよいヘテロシクロアルキル(たとえば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはチアジニル)、単環式または縮合または非縮合多環式アリールまたはヘテロアリール(たとえば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、またはベンゾフラニル);アミノ(一級、二級、または三級);CO2CH3; CONH2; OCH2CONH2; NH2; SO2NH2; OCHF2; CF3; OCF3;であり、および、そのような部分はまた、任意選択で、縮合環構造または架橋、たとえば-OCH2O-によって置換されていてもよい。これらの置換基は、任意選択で、そのような基から選択される置換基でさらに置換されていてもよい。
【0028】
本発明は、カルボン酸からのヒドロキシル基の除去によって誘導される部分として知られている「アシル」基に言及している。アシル基の例は、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、または塩化アシルである。
【0029】
好ましくは、本発明による式(I)の化合物において、R、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数であり、xはアルキル基に存在するXの数であり、好ましくはxは1であり、Xはアルキル基の末端位置にある、式-Cn2n+1-xxのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、および
3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-Rfは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)。
【0030】
より好ましくは、本発明による式(I)の化合物において、R、およびR1は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、
2は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数であり、xはアルキル基に存在するXの数であり、好ましくはxは1であり、Xはアルキル基の末端位置にある、式-Cn2n+1-xxのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、
3、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、および
4は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-Rfは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)。
【0031】
さらにより好ましくは、本発明による式(I)の化合物において、R、およびR1は、水素原子、塩化物原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
2は、水素原子、メチル基、-COH基、Xは塩化物原子、臭化物原子、ヨウ素原子、およびヒドロキシル基からなる群から選択される、式-CH2Xのアルキル基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、式-C(O)Hのアシル基、カルボキシル基(-COOH)、Rbはメチル基またはエチル基である、式-C(O)NRbのアミド基、およびRcはフェニル基である、式-C=N-Rcのイミノ基、からなる群から選択され、
3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、メチル基およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
4は、水素原子、メチル基、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、ヨウ素原子、Rdはメチル基またはエチル基である、式-ORdのアルコキシ基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、Reはメチル基、エチル基、直鎖プロピル基、直鎖ペンチル基、-CH2CH2-シクロペンチル基、および(パラ-メチル)フェニル基である、式-C(O)Reのアシル基、Rfはメチル基またはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、カルボキシル基(-COOH)、およびシアノ基(-CN)、からなる群から選択される。
【0032】
有利には、本発明による式(I)の化合物において、R、およびR1は、水素原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
2は、水素原子、-COH基、および-CH2OH基からなる群から選択され、
3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
4は、水素原子、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、Rfはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、およびRaはメチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、からなる群から選択される。
【0033】
一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物は、R3、R4、R5、およびR6からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも3つが水素原子であることを特徴とする。
【0034】
一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物において、R4は水素原子ではない。
【0035】
一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物において、R4はハロゲン原子である。
【0036】
一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物が含む、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも1つは水素原子である。
【0037】
一実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物が含む、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも2つは水素原子である。
【0038】
一実施形態によれば、 R=R1=R2=Hである。
【0039】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【0040】
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【0041】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【0042】
【化3-1】
【化3-2】
【0043】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(I-f)の化合物、式(I-h)の化合物、式(I-e)の化合物、式(I-m)の化合物、式(I-n)の化合物、式(I-c)の化合物、式(I-s)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(I-f)の化合物、式(I-h)の化合物、式(I-e)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(I-f)の化合物、式(I-h)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(I-f)の化合物、式(I-h)の化合物、式(I-c)の化合物、式(I-s)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
より好ましくは、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物、式(I-c)の化合物、式(I-s)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0048】
有利には、式(I)の化合物は、式(I-a)の化合物である。
【0049】
有利には、式(I)の化合物は、式(I-c)の化合物、式(I-s)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせである。
【0050】
本発明は、本発明による式(I)の化合物の製造方法にも関し、酸、好ましくは有機酸の存在下で、
式(II)の化合物:
【0051】
【化4】
【0052】
を式(III)の化合物
【0053】
【化5】
【0054】
または、式(IV)の化合物
【0055】
【化6】
【0056】
と接触させる工程a)を含み、
ここでR、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基。
【0057】
好ましくは、本発明による式(I)の化合物の製造方法は、酸、好ましくは有機酸の存在下で、
式(II)の化合物:
【0058】
【化7】
【0059】
を式(III)の化合物
【0060】
【化8】
【0061】
と接触させる工程a)を含み、
ここでR、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-カルボキシル基、
-1~10個の炭素原子を含むアミド基、および
-場合によってはアルキル基で置換されている、直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和のイミノ基、および
ここで、R3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、アルキル基、
-1~10個の炭素原子を含むアルコキシ基、
-1~10個の炭素原子を含むアシル基、
-1~10個の炭素原子を含む炭酸基、
-カルボキシル基、および
-シアノ基。
【0062】
一実施形態では、式(I)の化合物の製造方法は、式(III)の化合物を式(II)または(IV)の化合物、好ましくは式(II)の化合物と接触させる前に、該式(III)の化合物を上記酸と接触させ工程a’)を含む。
【0063】
好ましくは、工程a)またはa’)の酸は酢酸である。
【0064】
好ましくは、工程a)は、25℃から120℃、より好ましくは60℃から100℃の温度で、典型的には15分から180分、より好ましくは60分から150分の期間で実施される。
【0065】
好ましくは、工程a’)は、15℃から40℃、より好ましくは20℃から30℃の温度で、典型的には1分から60分、より好ましくは10分から20分の期間で実施される。
【0066】
特定の実施形態によれば、工程a)は、有機溶媒中で、好ましくは1~8個の炭素原子を含むアルコール中で、より好ましくはエタノール中で実施される。
【0067】
好ましくは、本発明の方法において:
R、R1およびR2は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数であり、xはアルキル基に存在するXの数であり、好ましくはxは1であり、Xはアルキル基の末端位置にある、式-Cn2n+1-xxのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、および
3、R4、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、およびnは1~10の間の整数である、式-Cn2n+1のアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-Rfは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)。
【0068】
より好ましくは、本発明の方法において:
R、およびR1は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、
2は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-Xは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基からなる群から選択され、nは1~10の間の整数である、式-CHnXのアルキル基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-式-C(O)Hのアシル基、
-カルボキシル基(-COOH)、
-Rbは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)NRbのアミド基、および
-Rcは、水素原子または直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、またはフェニル基からなる群から選択される、式-C=N-Rcのイミノ基、
3、R5およびR6は、以下からなる群から独立して選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、および
4は、以下からなる群から選択される:
-水素原子、
-ハロゲン原子、
-ヒドロキシル基、
-直鎖、飽和、および1~10個の炭素原子を含むアルキル基、
-Rdは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-ORdのアルコキシ基、
-Raは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-C(O)ORaのアシル基、
-Reは、水素原子または直鎖、環状または分岐、飽和または不飽和、場合によっては置換されている、1~10個の炭素原子を含む、式-C(O)Reのアシル基、
-Rfは、1~9個の炭素原子を含む直鎖および飽和アルキル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、
-カルボキシル基(-COOH)、および
-シアノ基(-CN)。
【0069】
さらにより好ましくは、本発明の方法において:
R、およびR1は、水素原子、塩化物原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
2は、水素原子、メチル基、-COH基、Xは塩化物原子、臭化物原子、ヨウ素原子、およびヒドロキシル基からなる群から選択される、式-CH2Xのアルキル基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、式-C(O)Hのアシル基、カルボキシル基(-COOH)、Rbはメチル基またはエチル基である、式-C(O)NRbのアミド基、およびRcはフェニル基である、式-C=N-Rcのイミノ基、からなる群から選択され、
3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、メチル基およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
4は、水素原子、メチル基、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、ヨウ素原子、Rdはメチル基またはエチル基である、式-ORdのアルコキシ基、Raはメチル基またはエチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、Reはメチル基、エチル基、直鎖プロピル基、直鎖ペンチル基、-CH2CH2-シクロペンチル基、および(パラ-メチル)フェニル基である、式-C(O)Reのアシル基、Rfはメチル基またはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、カルボキシル基(-COOH)、およびシアノ基(-CN)、からなる群から選択される。
【0070】
有利には、本発明の方法において:
R、およびR1は、水素原子、およびメチル基からなる群から独立して選択され、
2は、水素原子、-COH基、および-CH2OH基からなる群から選択され、
3、R5およびR6は、水素原子、塩化物原子、およびエチル基からなる群から独立して選択され、および
4は、水素原子、ヒドロキシル(hydroxyle)基、塩化物原子、臭化物原子、フッ化物原子、およびRfはエチル基である、式-OC(O)ORfの炭酸基、およびRaはメチル基である、式-C(O)ORaのアシル基、からなる群から選択される。
【0071】
一実施形態によれば、式(II)の化合物において、R3、R4、R5、およびR6からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも3つは水素原子である。
【0072】
一実施形態によれば、式(III)の化合物において、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも1つは水素原子である。
【0073】
一実施形態によれば、式(III)の化合物において、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも2つは水素原子である。
【0074】
一実施形態によれば、式(III)の化合物において、 R=R1=R2=Hである。
【0075】
一実施形態によれば、式(IV)の化合物において、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも1つは水素原子である。
【0076】
一実施形態によれば、式(IV)の化合物において、R、R1、およびR2からなる群から選択される置換基のうちの少なくとも2つは水素原子である。
【0077】
一実施形態によれば、式(IV)の化合物において、 R=R1=R2=Hである。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明による方法において、式(II)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【0079】
【化9】
【0080】
好ましくは、式(II)の化合物は、式(II-a)の化合物、式(II-c)の化合物、式(II-d)の化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
有利には、式(II)の化合物は式(II-a)の化合物である。
【0082】
別の好ましい実施形態では、式(III)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【0083】
【化10】
【0084】
好ましくは、式(III)の化合物は、式(III-a)の化合物、または式(III-c)の化合物である。非常に好ましくは、式(III)の化合物は式(III-a)の化合物である。
【0085】
別の好ましい実施形態では、式(IV)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【0086】
【化11】
【0087】
好ましくは、式(IV)の化合物は、式(IV-b)の化合物である。
【0088】
一実施形態によれば、本発明による方法は、工程a)から得られた化合物の化学修飾の工程b)をさらに含む。好ましくは、工程b)は、アシル基の還元である。好ましくは、工程b)は、工程a)から得られた化合物を、アルデヒドを還元する化合物、たとえば、水素化ホウ素塩、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムと接触させることを含む。より好ましくは、工程b)は、好ましくは工程a)から得られた化合物をアルデヒドを還元する化合物、たとえば水素化ホウ素塩と、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムと接触させることによるアルデヒドの還元である。
【0089】
好ましくは、工程b)は、15℃から40℃の温度で、より好ましくは、20℃から30℃の温度で、典型的には60分から150分の期間で実施される。
【0090】
本発明はまた、本発明による式(I)の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする、医薬組成物に関する。
【0091】
「薬学的に許容される賦形剤」という表現は、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤等の任意の希釈剤、アジュバントまたは媒体を指す。
【0092】
本発明の医薬組成物は、任意の適切な経路、たとえば、経口、頬、吸入、舌下、経鼻、経皮(percutaneous)、すなわち、経皮(transdermal)、または非経口(静脈内、筋肉内、皮下および冠状動脈内を含む)投与によって投与することができる。したがって、本発明の医薬組成物は、ハードゼラチンカプセル、カプセル、圧縮錠剤、経口摂取される懸濁剤、トローチ剤、または注射可能な溶液、軟膏、または投与方法に適した任意の他の形態等の様々な形態で提供される。
【0093】
正確な処方、投与経路、および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。投与量および投与間隔は、予防効果または治療効果を維持するのに十分な式(I)の化合物の血漿レベルを提供するように個別に調整することができる。したがって、投与される医薬組成物の量は、治療される対象、対象の体重、罹患の重症度、および投与方法に依存する。一実施形態では、投与される式(I)の化合物の量は、細胞の微小管を安定化する同時投与された化合物に対する治療される対象の応答に依存する。
【0094】
本発明はまた、本発明による式(I)の少なくとも1つの化合物、細胞微小管、好ましくはヒト細胞を安定化する少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むことを特徴とする医薬組成物に関する。
【0095】
本発明によれば、細胞微小管を安定化する化合物は、微小管ポリマーを安定化し、その脱重合から保護し、したがって、細胞分裂のプロセスならびに微小管ダイナミクスに依存する他の異なるプロセスを阻害する。
【0096】
好ましくは、細胞微小管を安定化する化合物は、タキサン、エポチロン、TPI-287、カバジタキセル(carbazitaxel)、ザムパノリド(zampanolide)、ダクチロリド(dactylolide)、ディスコデルモリド、タッカロノリド(taccalonolide)、ダブネチド(davunetide)、エリュテロビン、ジクチオスタチン、およびサルコジクチン(sarcodictyin)AおよびBからなる群から選択される。
【0097】
より好ましくは、細胞微小管を安定化する化合物は、タキサンからなる群から選択される。
【0098】
有利には、細胞微小管を安定化する化合物は、パクリタキセルである。
【0099】
特に、本発明による細胞微小管を安定化する化合物は、HeLa細胞に対してin vitroで活性である。一実施形態によれば、本発明による細胞微小管を安定化する化合物は、5nM以下、好ましくは厳密に5nM未満の濃度でHeLa細胞上でin vitroで活性である。
【0100】
本発明はまた、がんおよび微小管の調節解除に関与する障害からなる群から選択される疾患および/または障害の治療方法における使用のための、本発明による式(I)の化合物に関する。
【0101】
本発明はまた、がんおよび微小管の調節解除に関与する障害からなる群から選択される疾患および/または障害の治療方法に関し、該方法は、式(I)の化合物のそれを必要としている対象への治療上有効な投与を含む。
【0102】
本発明はまた、がんおよび微小管の調節解除に関与する障害からなる群から選択される疾患および/または障害を治療するための薬剤を製造するための本発明による式(I)の化合物の使用に関する。
【0103】
本発明によれば、微小管の調節解除に関与する障害は、微小管ダイナミクスの調節解除に関与する障害である。
【0104】
好ましくは、微小管の調節解除に関与する障害は、アルツハイマー病または統合失調症等の神経疾患、心臓病、および脊髄損傷からなる群から選択される。
【0105】
本発明はまた、好ましくはタキサンによる、細胞微小管(cell microtubule)の安定化を必要とするがん、およびLKB1欠損細胞によって誘発されるがんからなる群から選択されるがんの治療方法において使用するための、本発明による式(I)の化合物にも関する。
【0106】
好ましくは、細胞微小管を安定化する化合物によって治療可能ながんは、乳がん、卵巣がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、および前立腺がんからなる群から選択される。
【0107】
好ましくは、LKB1欠損細胞によって誘発されるがんは、肺腺がんおよび子宮がん、子宮頸がん、乳がん、腸がん、精巣がん、膵臓がん、および皮膚がんからなる群から選択される。
【0108】
有利には、本発明による式(I)の化合物は、乳がん、卵巣がん、肺がん、肝臓がん、子宮がん、およびAIDS関連カポジ肉腫からなる群から選択されるがんの治療方法において使用される。
【0109】
本発明はまた、ヒトまたは動物の体の治療方法で使用するための、本発明による式(I)の化合物に関するものであり、細胞微小管、好ましくはヒト細胞を安定化する少なくとも一つの化合物と同時投与されることを特徴とする。
【0110】
好ましくは、細胞微小管を安定化する化合物は、タキサン、エポチロン、TPI-287、カバジタキセル(carbazitaxel)、ザムパノリド(zampanolide)、ダクチロリド(dactylolide)、ディスコデルモリド、タッカロノリド(taccalonolide)、ダブネチド(davunetide)、エリュテロビン、ジクチオスタチン、およびサルコジクチン(sarcodictyin)AおよびBからなる群から選択され、好ましくはタキサンである。
【0111】
有利には、細胞微小管を安定化する化合物は、パクリタキセルである。
【0112】
本発明はまた、ヒトまたは動物の体の治療方法で使用するための、本発明による式(I)の化合物に関するものであり、該式(I)の化合物は、LKB1欠損細胞を有する患者に投与されることを特徴とする。
【0113】
本発明によれば、LKB1欠損細胞は、LKB1をコードするSTK11遺伝子が生殖細胞変異を起こしているため、または変異を含む様々なメカニズムによってLKB1活性を不活性化しているため、活性型肝キナーゼB1(active liver kinase B1;LKB1)を発現しない細胞である。
【0114】
本発明は、以下の非限定的な例を読むことでよりよく理解されるであろう。
【実施例
【0115】
実施例1: 式(I)の化合物の合成
式(II)の化合物は、以下に公開されている方法に従って合成された:
- Tabka et al., European Journal of Medicinal Chemistry (1989), 24(6), 605-610,
- Lancelot et al., Heterocyles (1990), 31(2),
- Lancelot et al., Gazzetta chimica Italiana, 121, 1991,
- Lancelot et al., (1986), 22eme Rencontres Internationales de chimie therapeutique, Clermont-Ferrand, September 3-5, 124,
- Lancelot et al., (1989), 25eme Rencontres Internationales de chimie therapeutique, Grenoble, July 2-5,
- Panno et al., Nuovi 1,4-Dimethil carbazoli: Sintesi, Reattivitae valutazione Biologica. Tesi Di Dottorato d’Universita Calabria: Universita Della Calabria, 2011.
式(III-a)(CAS:696-59-3)、(III-c)(CAS:50634-05-4)、および(IV-b)(CAS-110-13-4)の化合物は市販されている 。
【0116】
化合物(I-a)、(I-d)、(I-e)、(I-f)、(I-i)、(I-m)、(I-n)、(I-p)、(I-q)の合成
式(III-a)の化合物(0.0033~0.0044mol)を50mLの酢酸中で室温で15分間撹拌した。次に、式(II-x)(x=a-i)の化合物1当量を添加した。混合物を80℃で1時間30分加熱した。冷却後、溶液を減圧下で濃縮した。残留物を炭酸水素ナトリウムの飽和溶液50mLに再溶解し、次に酢酸エチル70mLで抽出した。有機相を水で洗浄し、デカントし、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。式(I-x)の化合物(x=a、d、e、f、j、m、n、p、q)は、アセトニトリル中での結晶化によって得られた。
【0117】
化合物(I-c)、(I-h)、(I-k)の合成
式(III-c)の化合物(0.0041mol)を50mLの酢酸中で室温で15分間撹拌した。次に、式(II-x)(x=a,d,e)の1当量の化合物を添加した。混合物を80℃で2時間加熱した。冷却後、溶液を減圧下で濃縮した。残留物を炭酸水素ナトリウムの飽和溶液50mLに再溶解し、次に酢酸エチル70mLで抽出した。有機相を水で洗浄し、デカントし、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。式(I-x)(x=c,h,k)の化合物は、アセトニトリル中での結晶化によって得られた。
【0118】
化合物(I-b)、(I-g)、(I-j)、(I-o)の合成
式(II-x)の化合物(x=a,d,e,g)(0.0041~0.0049mol)を、1.2当量の式(IV-b)の化合物および0.3mLの酢酸の存在下で50mLの無水エタノール中で80℃で2時間加熱した。冷却後、溶液を減圧下で濃縮した。残留物を炭酸水素ナトリウムの飽和溶液40mLに再溶解し、次に酢酸エチル60mLで抽出した。有機相を水で洗浄し、デカントし、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。式(I-x)(x=b,g,j,o)の化合物は、アセトニトリル中での結晶化によって得られた。
【0119】
化合物(I-s)の合成
式(I-c)の化合物(0.35mmol)を2mlの乾燥メタノールおよび2mlの乾燥テトラヒドロフラン中で0℃で撹拌した。2当量の水素化ホウ素ナトリウムを添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮した。残留物を5mlの氷水に再溶解し、次に5mlの酢酸エチルで2回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発させた。式(I-s)の化合物は、シリカゲル(ジエチルエーテル)でのクロマトグラフィーによる精製により得られた。
【0120】
化合物(I-a)~(I-q)および(I-s)は、IR分光法および/またはNMR分光法によって特性決定した。各化合物の特性を次の表にまとめる。
【0121】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0122】
実施例2: 式(I)の化合物と組み合わせたパクリタキセル(PTX)の細胞毒性の評価
2.1. HeLa細胞に対する細胞毒性
細胞生存率は、比色Prestoblueアッセイ(Invitrogen、#A13262)を使用して分析した。細胞を96ウェルマイクロプレート(Greiner、#655077)にウェルあたり2,500細胞の密度で播種し、24時間接着させた後、DMSO(最終濃度0.1%)または指定濃度の薬物で72時間処理した。72時間の処理後、10μLのPrestoblueを各ウェルに添加し、細胞をさらに45分間インキュベートした。FLUOstar Optimaマイクロプレートリーダー(励起、544nm;発光、580nm)を使用して、各ウェルの吸光度を測定した。
【0123】
まず、化合物(I-a)、(I-c)(I-f)、(I-h)、(I-e)、(I-m)、(I-n)、および(I-s)のHeLa細胞に対する細胞毒性を、上記の「Prestoblue」アッセイで評価した。
【0124】
化合物(I-a)はわずかに細胞毒性があり、GI50(成長阻害の50%)値は19.4μM~21.8μMであった。
【0125】
化合物(I-f)および(I-e)もわずかに毒性があり、GI50値はそれぞれ16.2μMおよび14.8μMであった。化合物(I-h)のGI50値は1.06μMである。化合物(I-c)および(I-s)の両方のGI50値は2μMである。
【0126】
次に、HeLa細胞を72時間、パクリタキセル(0.05、0.1、0.25、0.5、1、2.5、5nM)と化合物(I-a)、(I-f)、(I-h)、(I-e)、(I-m)、(I-n)、(I-c)および(I-s)の混合物の様々な濃度で処理した。
【0127】
以下の結果が得られた:
【0128】
【表2】
【0129】
パクリタキセルのGI50は、化合物(I-a)濃度の増加とともに減少していることが観察できる。
【0130】
化合物(I-a)の12μMの濃度(化合物(I-a)がそれ自体で細胞毒性を示さない濃度)では、パクリタキセルのGI50は、パクリタキセル単独のGI50と比較して2.2分の1に減少する(1.5nM対0.68nM)。
【0131】
同様の結果は、化合物(I-f)、(I-h)、(I-c)、および(I-s)をパクリタキセルと組み合わせた場合に観察され、化合物(I-e)、(I-m)、または(I-n)をパクリタキセルと組み合わせた場合はより低い程度で観察される。
【0132】
これらの結果は、式(I)の化合物をパクリタキセルと組み合わせて投与することの相乗効果を強調している。
【0133】
2.2. アポトーシスへの影響
アポトーシスアッセイは、フローサイトメトリーを使用してFITC Annexin V Apoptosis Detection Kit I(BD Biosciences、#556547)で実行し、FCSエクスプレスソフトウェアで分析した。
【0134】
【表3】
【0135】
DMSOと比較して、化合物(I-a)を12μMの濃度で48時間適用した場合には、追加のアポトーシスは検出されなかったが、25μMでは、アポトーシスによって細胞死が誘導された。これらの結果は、化合物(I-a)が中程度の毒性であることを示している。
【0136】
パクリタキセルと組み合わせると、化合物(I-a)も細胞アポトーシスに対して相乗効果を示す。
【0137】
2.3. ネズミ(murin)がん細胞に対する細胞毒性
細胞生存率は、比色Prestoblueアッセイ(Invitrogen、#A13262)を使用して分析した。細胞を96ウェルマイクロプレート(Greiner、#655077)にウェルあたり2,500細胞の密度で播種し、24時間接着させた後、DMSO(最終濃度0.1%)または指定濃度の薬物で72時間処理した。72時間の処理後、10μLのPrestoblueを各ウェルに添加し、細胞をさらに45分間インキュベートした。FLUOstar Optimaマイクロプレートリーダー(励起、544nm;発光、580nm)を使用して、各ウェルの吸光度を測定した。
【0138】
式(I-a)の化合物とパクリタキセルの組み合わせの相乗効果は、マウス乳がん細胞株(4T1細胞)でも観察される(図1)。
【0139】
実施例3: 式(I)の化合物が細胞周期および有糸分裂に及ぼす影響
式(I)の化合物がHeLa細胞の細胞周期および有糸分裂に及ぼす影響を、フローサイトメトリーおよび免疫蛍光によって分析した。
【0140】
フローサイトメトリー分析では、Hela細胞を示された濃度の化合物(I-a)で12時間、24時間、および48時間処理した。次に細胞を回収し、PBS中で遠心分離して洗浄した。次に、105個の細胞を1mLの70%メタノールで4℃で一晩固定した。PBSで2回洗浄した後、細胞を50μg.mL-1のヨウ化プロピジウムおよび0.2mg.mL-1のRNase A/PBSとともに37℃で30分間インキュベートした後、分析した。特定の細胞周期期(G0、G1、S、G2、およびM)の細胞の割合は、Accuri C6 flow cytometer(Becton Dickinson)を使用して決定した。
【0141】
結果は、3回の別々の実験の平均±SDとして表される。有意性は、スチューデントのt検定によって決定した(対照と比較して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)。
【0142】
免疫蛍光分析のために、細胞を24ウェルマイクロプレートに配置されたガラスカバーガラス上で48時間増殖させた。細胞が70%のコンフルエンスに達したとき、培地を化合物(I-a)を添加した新しいものと交換した。化合物(I-a)に5時間曝露した後、細胞を固定し、-20℃の無水メタノールで6分間透過処理した。洗浄し、3%BSA/PBSで飽和させた後、細胞を抗α-チューブリン抗体(1:4000)とともに室温(RT)で45分間インキュベートした。細胞を再度2回洗浄し、続いてAlexa 488結合抗マウス抗体(1:1000)と室温で30分間インキュベートした。DNAを20μg.mL-1のHoechst 33342で染色し、カバーガラスをMowiol 4-88(Calbiochem、#475904)で顕微鏡スライドに乗せた。画像は、取得ソフトウェアAxioVisionを備えたZeiss AxioimagerM2顕微鏡でキャプチャされ、Fijiソフトウェアを使用して分析された。
【0143】
細胞微小管に対する化合物(I-a)の効果を決定した。化合物(I-a)処理(12~25μM)は、間期細胞の微小管ネットワークを視覚的にかく乱しない(図2)。
【0144】
図3に示すように、染色体の集合の欠陥は、12μMで処理された細胞集団のいくつかの有糸分裂細胞で見られた。このような欠陥の発生は、化合物(I-a)の高用量(25μM)で増加した。
【0145】
微小管の動的不安定性パラメーターに対する高用量(25μM)の化合物(I-a)の効果を、GFP-EB3トランスフェクト細胞のタイムラプス蛍光顕微鏡を使用して測定した(表1)。
【0146】
【表4】
【0147】
化合物(I-a)は、距離ベースのカタストロフ頻度の増加および休止時間の増加によって示されるように、微小管の伸長速度(growth rate)と微小管の伸長長(growth rate)を減少させる。これは、25μMの化合物(I-a)が微小管ダイナミクスを抑制することを示している。
【0148】
フローサイトメトリー分析は、細胞がG2/M期でブロックされるため、12μM濃度の化合物(I-a)が中期の完了に有意な遅延を引き起こすことを示した(図4)。化合物(I-a)を25μMの濃度で適用すると、細胞の大部分が前中期でブロックされる。
【0149】
実施例4: 式(I)の化合物とパクリタキセル(PTX)の組み合わせが細胞周期および有糸分裂に及ぼす影響
フローサイトメトリー分析は、HeLa細胞を使用して行った。HeLa細胞を、化合物(I-a)の有無にかかわらず、示された濃度のパクリタキセルで12時間、24時間、および48時間処理し、次にメタノールで固定し、ヨウ化プロピジウムで染色し、フローサイトメトリーで分析した。結果は、3回の別々の実験の平均±SDとして表す。有意性は、スチューデントのt検定によって決定した(対照と比較して、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)。
【0150】
フローサイトメトリー分析は、5nMのパクリタキセルで15時間処理した後、細胞集団の半分がG2/M期でブロックされ、細胞のほぼ20%がすでにアポトーシスを起こしていることを示した。次に、アポトーシス(subG1)または多核化した細胞の数の増加と並行して、G2/Mの細胞の割合が徐々に減少する(図5)。
【0151】
図6に示すように、1nMのパクリタキセル(PTX)と12μMの化合物(I-a)の組み合わせは、細胞をパクリタキセル5nMで処理したときに観察されるブロックとほぼ重ね合わせることができる細胞周期のブロックを誘発した。組み合わせで得られた結果と5nMのパクリタキセルで得られた結果との類似性は、組み合わせの全体的な効果が化合物(I-a)によるパクリタキセルの効果の増加に起因することを示している。
【0152】
実施例5: 化合物(I-a)およびパクリタキセル(PTX)は、in vivoでの腫瘍増殖に対して相乗的に作用する
化合物(I-a)とパクリタキセルの併用投与の効果と、別々に注射された化合物(I-a)およびパクリタキセルの腫瘍増殖に対する効果を、腫瘍マウスモデルで比較した。
【0153】
最初の一連の実験(図示せず)では、HeLa細胞腫瘍が治療用量のパクリタキセルに感受性であると評価された。その目的のために、異種移植されたHeLa細胞で形成された大きな腫瘍を有するマウスは、10日間、2日ごとにパクリタキセル(2~8mg/Kg)の静脈内(i.v.)注射を受けた。同じ実験で、同じスケジュールで注入された化合物(I-a)(15~60mg/Kg、i.v.)の効果を分析した。パクリタキセルまたは化合物(I-a)で治療した動物と媒体で治療した動物の体重に有意差はなかった。さらに、動物は不快感の徴候を示さず、治療に対する良好な忍容性を示した。パクリタキセルは、4mg/Kgおよび8mg/Kgで投与された場合、腫瘍サイズの有意な減少を誘発した。化合物(I-a)は、注入された用量に関係なく、腫瘍サイズに有意な影響を誘発しなかったが、化合物(I-a)濃度の増加に伴い、腫瘍が小さくなる傾向が見られる。結果は、このモデルにおける高濃度のパクリタキセルの抗腫瘍効果を確認した。結果はまた、化合物(I-a)が単独で適用された場合、高濃度でさえ、有意な抗腫瘍活性を有さないことを示している。
【0154】
異なる濃度の化合物(I-a)と組み合わせた低用量(2~3mg/Kg)のパクリタキセルの腫瘍サイズへの影響を研究するために、第二の実験を行った。
【0155】
この組み合わせ研究のプロトコル: 72匹のNMRIヌードマウス(5週齢のメス)の右脇腹に、指数関数的に分割するHeLa細胞10×106を皮下注射した。腫瘍の体積が約200mm3に達したとき、すなわち細胞注射の9日後に、マウスを8匹ずつの9つの群にランダムに分け、2日ごとに薬物を静脈内注射した。第一の群は2mg/kgのパクリタキセルを受け取り、第二の群は3mg/Kgのパクリタキセルを受け取り、第三の群は40mg/Kgの化合物(I-a)を受け取り、第四の群は60mg/Kgの化合物(I-a)を受け取り、第五の群は化合物(I-a)(40mg/Kg)とパクリタキセル(2mg/Kg)の組み合わせを受け取り、第六の群は化合物(I-a)(40mg/Kg)とパクリタキセル(3mg/Kg)の組み合わせを受け取り、第七の群は化合物(I-a)(60mg/Kg)とパクリタキセル(2mg/Kg)の組み合わせを受け取り、第八の群は化合物(I-a)(60mg/Kg)とパクリタキセル(3mg/Kg)の組み合わせを受け取り、第九の群は媒体(14%DMSO、14%Tween80および72%PBS)を受け取った。ノギス(sliding caliper)を使用して、腫瘍の増殖を週に3回モニタリングした。
【0156】
研究を通して体重の変化は観察されなかった。このことは、この組み合わせが十分に忍容されることを示唆している。図7に示すように、各化合物を別々に投与した場合は効果は見られないが、パクリタキセルと化合物の組み合わせ(I-a)では腫瘍サイズに有意な影響が見られる。この抗腫瘍効果は、化合物(I-a)およびパクリタキセル濃度に関して用量依存的に変化する。これらの結果は、in vitroでパクリタキセルと化合物(I-a)との間に観察された相乗効果がin vivoでも起こり、治療効果につながることを示している。
【0157】
実施例6: LKB1欠損細胞に対する式(I)の化合物の効果の評価
合成致死性の概念を適用して、LKB1欠損細胞に対する式(I)の化合物の選択的毒性を評価した。この方法は、LKB1欠損につながる突然変異と式(I)の化合物の作用の組み合わせが致死性を引き起こすかどうかを判断することで構成されるが、この突然変異自体は致死的ではなく、式(I)の化合物を単独で適用した場合も致死的ではない。LKB1欠損細胞に対する化合物(I)の細胞毒性の差異は、MEF KO LKB1細胞(LKB1欠損細胞)またはLKB1が再導入された細胞で測定した。 MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を使用した細胞生存率分析: アッセイは96ウェルマイクロプレートで行った。LKB1 KO MEF細胞(LKB 1-/-)およびLKB1レスキューMEF細胞(LKB1 +/+)をウェルあたり20,000細胞播種し、24時間増殖させた。次に、培地を、化合物(I-a)(0~25μM)またはDMSO(0.25%)を含む新しい培地と交換した。細胞をさらに48時間増殖させた。次に、5mg/mLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)溶液20μLを各ウェルに添加し、37℃で4時間インキュベートした。培地を廃棄し、DMSO:エタノール(1:1)溶液100μLを各ウェルに添加し、10分間穏やかに振とうして混合した。マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定した。
【0158】
得られた結果を図8に示す。
【0159】
実施例7: 非がん性細胞の生存率に対するパクリタキセルと組み合わせた式(I)の化合物の効果の評価
RPE-1細胞を、化合物(I-a)/パクリタキセルの示された組み合わせとともに72時間インキュベートした。生細胞の割合は、上記のように、Prestoblueアッセイの後に計算した。データは、3回の独立した実験の平均±SEMとして示す。
【0160】
得られた結果を図9に示す。
【0161】
式(I)の化合物は、非がん性細胞に対して毒性を示さないことが分かる。(異なる用量の化合物(I-a)のみの細胞生存率への影響は、0nMのパクリタキセルに対応する図9のグラフのx座標=0で見ることができ、これは0nMのパクリタキセルに相当することに留意)。PTXのGI50(7nM)は、HeLa細胞よりもこの細胞株の方が高かった。PTXと組み合わせて使用した場合、化合物I-aは、高用量(25μM)で細胞生存率に相乗的に影響を与えることができた。これらの結果は、化合物(I-a)が追加の毒性を誘発しないことを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】