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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】眼用シーラントおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20221202BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221202BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20221202BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20221202BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20221202BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20221202BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C09K3/10 E
A61P27/02
A61L27/16
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/54
A61L27/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521381
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020054838
(87)【国際公開番号】W WO2021133457
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/912,617
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511140770
【氏名又は名称】マサチューセッツ アイ アンド イヤー インファーマリー
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ダナ,レザ
(72)【発明者】
【氏名】アナビ,ナシム
(72)【発明者】
【氏名】ジュメル,クロタイルド
(72)【発明者】
【氏名】サニ,イーサン シゼイ
【テーマコード(参考)】
4C081
4H017
【Fターム(参考)】
4C081AB21
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB06
4C081BB08
4C081CA08
4C081CD081
4C081CD151
4C081CD27
4C081CE01
4C081CE02
4C081DA12
4H017AA04
4H017AB01
4H017AC08
4H017AD06
4H017AE05
(57)【要約】
本開示は、眼表面損傷の治療に使用することができるシーラント組成物およびそれを必要とする対象において眼表面損傷を治療する方法を提示する。シーラント組成物は、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、GelMA、任意選択で、ジアクリル酸(ポリエチレングリコール)(PEGDA)、および可視光活性化光開始剤を含むことができる。この方法は、シーラント組成物をアプリケータに適用するステップ、シーラント組成物を含有するアプリケータを対象の眼の表面に配置するステップであって、眼の表面が眼表面損傷を有するか、または有することが疑われる、ステップ、ならびにアプリケータおよびシーラント組成物を可視光、例えば、約400ナノメートル(nm)から800nmの波長を有する可視光に曝露することによってシーラント組成物を光架橋するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、
ゼラチンメタクリロイル(GelMA)、
任意選択で、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(PEGDA)、および
可視光活性化光開始剤
を含む、シーラント組成物。
【請求項2】
加水分解酵素を含まない、請求項1に記載のシーラント組成物。
【請求項3】
グリコシダーゼ加水分解酵素を含まない、請求項1~2のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項4】
前記可視光活性化光開始剤が、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、エオシンY二ナトリウム塩、4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸塩、トリエタノールアミン、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レサズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項5】
前記可視光活性化光開始剤が、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、およびエオシンY二ナトリウム塩の混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項6】
前記可視光活性化光開始剤が、約420ナノメートル(nm)から550nmの波長を有する光に曝露すると活性化される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項7】
前記MeHAがメタクリル酸グリシジル-ヒアルロン酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項8】
前記MeHAが、体積当たり約1重量%から3重量%(w/v)の濃度で前記シーラント組成物中に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項9】
前記GelMAが、メタクリルアミド置換およびメタクリル酸塩置換を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項10】
メタクリルアミド置換のメタクリル酸塩置換に対する比が、約80:20から99:1の間である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項11】
前記GelHAが、約2%から4%(w/v)の濃度で前記シーラント組成物中に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項12】
前記GelHAが、約0.5%から1%(w/v)の濃度で前記シーラント組成物中に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項13】
前記GelMAが、約30%から85%の間のメタクリロイル置換度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項14】
治療剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項15】
前記治療剤が、抗生物質、抗炎症薬、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項14に記載のシーラント組成物。
【請求項16】
前記成長因子が、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載のシーラント組成物。
【請求項17】
約25%から約35%の範囲の膨潤率を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項18】
約0.5パスカル秒(Pa・s)から約200Pa・sの範囲の粘度を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項19】
約100水銀柱ミリメートル(mmHg)から150mmHgの破裂強度を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項20】
約30日から35日の分解速度を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項21】
眼表面損傷の修復に使用するための、請求項1~20のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項22】
PEGDAが、約0.5%から1%(w/v)の濃度で存在する、請求項1~21のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項23】
対象の眼の眼表面損傷を治療する方法であって、
請求項1~21のいずれか一項のシーラント組成物をアプリケータに適用するステップ、
前記シーラント組成物を含有する前記アプリケータを前記対象の眼の表面に配置するステップであって、前記表面が前記眼表面損傷を有するか、または有することが疑われる、ステップ、および
前記シーラント組成物を可視光に曝露することによって前記シーラント組成物を光架橋するステップ
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記アプリケータがコンタクトレンズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記可視光が約400ナノメートル(nm)から800nmの波長を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記眼表面損傷が角膜損傷または強膜損傷である、請求項22~25のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項27】
前記角膜損傷が、角膜全層裂傷または角膜全層穿孔である、請求項22~26のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項28】
前記眼表面損傷が約350ミクロンを超える深さを有する、請求項22~27のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項29】
前記眼表面損傷がデスメ膜または角膜内皮に及ぶ、請求項22~28のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【請求項30】
前記眼表面損傷が、全層裂傷または全層穿孔である、請求項22~29のいずれか一項に記載のシーラント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/912617号の利益を主張する。上記の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援による研究
本発明は、国防総省によって授与された助成金番号W81XWH-18-1-0654、国立衛生研究所によって授与された助成金番号EB023052、および国立衛生研究所によって授与された助成金番号HL140618の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【0003】
本開示は、眼表面損傷の治療に使用するためのシーラント組成物およびそれを必要とする対象においてシーラント組成物で眼表面損傷を治療する方法を提示する。シーラント組成物は、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、ゼラチンメタクリロイル(GelMA)、任意選択で、ジアクリル酸ポリ(エチレングリコール)(PEGDA)、および可視光活性化光開始剤を含むことができる。この方法は、シーラント組成物をアプリケータに適用するステップ、シーラント組成物を含有するアプリケータを対象の眼の表面に配置するステップであって、眼の表面が眼表面損傷を有するか、または有することが疑われる、ステップ、ならびにアプリケータおよびシーラント組成物を可視光、例えば、約400ナノメートル(nm)から800nmの波長を有する可視光に曝露することによってシーラント組成物を光架橋するステップを含む。
【背景技術】
【0004】
角膜損傷は、世界中で毎年150~200万の新しい症例が発生しており、角膜の瘢痕化および視力喪失の一般的な原因である。損傷に加えて、感染症および免疫や化学物質によって誘導された眼の傷害は、世界中で毎年数百万件の角膜潰瘍を引き起こしている(例えば、最も正確な推定では、米国のみでも100万人近くが診療所を来院し、直接費用は年間1億7500万ドルである)。
【0005】
欠損を塞ぐ縫合糸の配置および組織移植を含む手術は、深刻な角膜欠損および損傷の標準治療と見なされる一般的な手段である。しかし、外傷の場合、縫合はほとんど常に不規則な乱視を引き起こす。組織の損失および/または高密度の瘢痕形成を伴う複雑な損傷の場合、一般的に移植が使用される。しかし、組織移植には、ドナー組織が必要であること(および高い費用が伴うこと)および免疫拒絶のリスクが絶えず存在することなど、いくつかの欠点がある。さらに、縫合および組織移植はいずれも膨大な資源を消費し、高度な外科的技術を必要とする。角膜が炎症、感染、または損傷により薄くなっている場合、および移植手術が必要ない場合は、シアノアクリル酸接着剤(主に使用される)、フィブリン接着剤、またはポリエチレングリコール(PEG)をベースにしたシーラントなどの外科用接着剤を使用してもよい。しかし、これらの市販の接着剤はいずれも、(i)角膜欠損の充填、または(ii)より大きな(例えば、約2mmを超える)角膜切開もしくは穿孔の密封については、FDAに承認されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある特定の態様は、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、ゼラチンメタクリロイル(GelMA)、任意選択で、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(PEGDA)、および可視光活性化光開始剤を含む、シーラント組成物を対象とする。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、GelMA、および可視光活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、眼表面損傷または欠損の修復のために使用することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は加水分解酵素を含まない。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はグリコシダーゼ加水分解酵素を含まない。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、エオシンY二ナトリウム塩、4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸塩、トリエタノールアミン、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レサズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、およびエオシンY二ナトリウム塩の混合物を含む。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、約420ナノメートル(nm)から550nmの波長を有する光に曝露すると活性化される。いくつかの実施形態では、MeHAはメタクリル酸グリシジル-ヒアルロン酸を含む。いくつかの実施形態では、MeHAは、体積当たり約1重量%から3重量%(w/v)の濃度でシーラント組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、GelMAは、メタクリルアミド置換およびメタクリル酸置換を含む。いくつかの実施形態では、メタクリルアミド置換のメタクリル酸置換に対する比は、約80:20から99:1の間である。いくつかの実施形態では、GelMAは、約2%から4%(w/v)の濃度でシーラント組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、GelMAは、約0.5%から1%(w/v)の濃度でシーラント組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、GelMAは、約30%から85%のメタクリロイル置換度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗生物質、抗炎症薬、成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、成長因子は、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約25%から約35%の範囲の膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約0.5パスカル秒(Pa・s)から約200Pa・sの範囲の粘度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約100水銀柱ミリメートル(mmHg)から150mmHgの破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約30日から35日の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、眼表面損傷の修復に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、PEGDAは、約0.5%から1%(w/v)の濃度で存在する。
【0008】
本開示のある特定の態様は、対象の眼の眼表面損傷を治療する方法を対象とする。この方法は、本開示のシーラント組成物のいずれかをアプリケータに適用するステップ、シーラント組成物を含有するアプリケータを対象の眼の表面に配置するステップであって、表面が眼表面損傷を有するか、または有することが疑われる、ステップ、およびシーラント組成物を可視光に曝露することによってシーラント組成物を光架橋するステップを含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、アプリケータはコンタクトレンズである。いくつかの実施形態では、光は約400ナノメートル(nm)から800nmの波長を有する。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は角膜または強膜損傷である。いくつかの実施形態では、角膜損傷は角膜全層裂傷または角膜全層穿孔である。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は、約350ミクロンを超える深さを有する。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は、デスメ膜または角膜内皮に及ぶ。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は、全層裂傷または全層穿孔である。
【0010】
本本明細書で使用した「眼表面損傷」という用語は、角膜または強膜の潰瘍、裂傷、欠損、穿孔、または意図的に実施された切開(例えば、外科手術で行われる)を含むことができる。
【0011】
本本明細書で使用した「対象」または「患者」という用語は、本開示の組成物または方法が、例えば、実験、診断、予防、および/または治療の目的のために投与することができる任意の哺乳動物(例えば、ヒトまたは獣医対象、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット、またはウサギ)を意味する。対象は、治療を求めるかもしくは必要としている可能性があるか、治療を要するか、治療を受けているか、治療を受けようとしているか、または特定の疾患もしくは状態について訓練を受けた専門家の保護下にある。
【0012】
本明細書で使用した「シーラント組成物」という用語は、本開示の対応する文脈によって規定されるように、前駆体シーラント組成物(例えば、架橋重合前のシーラント組成物)および/またはシーラントゲル組成物(例えば、架橋重合後のシーラント組成物)を意味することができる。
【0013】
その他の定義は、本開示全体を通して文脈中に記載されている。別段の定義がない限り、本本明細書で使用した技術用語および科学用語は全て、本開示の内容が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本開示で使用するために方法および材料を本明細書で記載しているが、当技術分野で知られているその他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書で言及した刊行物、特許出願、特許、配列、データベース入力、およびその他の参考文献は全て、それらの内容が本開示の内容と矛盾しない限り、全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。
【0014】
本開示のある特定の実施形態は、シーラント組成物および眼表面損傷または欠損の治療のためにシーラント組成物を使用する方法を含む。近年、角膜損傷または欠損を処置するために、手術費の削減、術後の来院の軽減、患者および支払者にとって負担が大きいために術後の高価な薬物療法に対する遵守が不適切であることに関連した合併症の軽減などの必要な要件を満たすことができる、改善された接着剤が必要とされている。本開示のシーラント組成物およびシーラント組成物を使用する方法は、上述の必要な要件に対処する。いくつかの実施形態では、本明細書で記載したシーラント組成物を使用する方法は、眼損傷の治療に関連する麻酔、時間、および/または人員の経費を削減および/または排除することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示のシーラント組成物は、提供しやすいシステムで適用することが容易である。例えば、本開示のシーラント組成物は、縫合糸を用いずに眼損傷を処置するために光活性化接着性生体材料を含むことができ、確実に全体を被覆するためにコンタクトレンズアプリケータを介して適用することができる。眼薬の95%は局所的であり、患者の遵守は周知のように悪く、術後の予後に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、治療剤(例えば、抗炎症薬、抗生物質、抗緑内障薬、および再生促進タンパク質)の持続的送達を可能にする。いくつかの実施形態では、本開示のシーラント組成物は、眼損傷および欠損のより良い処置のための薬物を組み込むことが可能である。いくつかの実施形態では、薄型のシーラント組成物(例えば、透明な製剤で)を適用すると、損傷していない眼に対しても長期の薬物送達を提供することができ、眼の薬物療法に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法およびシーラント組成物は、患者が手動で薬物を適用する必要なく、1週間または数週間、治療剤を眼表面に局所的に送達することができ、不十分な服薬遵守およびそれによって引き起こされる悪影響を防ぐことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は眼組織に対して生体適合性である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は眼の創傷の迅速な密封を促進する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物の生体力学的特性は、天然組織(例えば、角膜)の生体力学的特性に類似している。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は強い接着性および高い保持力を有する。さらに、いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、表面(例えば、眼表面)に適用後滑らかな表面を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、設定された期間にわたって、薬物および/または治療薬の制御された持続的な放出を可能にする能力を有する。
【0017】
値が本開示で範囲として記載されている場合、終点が含まれる。さらに、記載には、特定の数値または特定の部分的範囲が明示的に記載されているかどうかに関係なく、そのような範囲内の可能な部分的範囲全て、およびそのような範囲内にある特定の数値の開示が含まれることを理解されたい。
【0018】
本開示のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0019】
本開示の特徴の様々な実施形態を本明細書で説明する。しかし、そのような実施形態は単に例として提供されており、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって、多数の変形、変化、および置換を行うことができることを理解されたい。本明細書で記載した特定の実施形態の様々な代替物も本開示の範囲内であることも理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】シーラント組成物例を使用して対象の眼の眼表面損傷を治療する方法の例を示す概略図である。
図2A-2B】前駆体ゲル調製物を示す概略図である。図2Aは、ヒアルロン酸のメタクリル化工程の例を示す概略図である。図2Bは、シーラント組成物の光架橋工程の例を示す概略図である。
図3A-3D】光架橋前後のシーラント組成物例の物理的特徴を示す図である。図3Aは、様々なメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)濃度で調製された前駆体シーラント組成物例の画像を示す。図3Bは、様々なMeHA/GelMA/PEGDA濃度を含有する前駆体シーラント組成物例の定常剪断粘度を示す図である。図3Cは、様々なMeHA/GelMA/PEGDA濃度を含有する前駆体シーラント組成物例の剪断応力を示す図である。図3Dは、光架橋後の透明な固体MeHAシーラント例の画像を示す。
図4A-4B】光架橋後のシーラント組成物例のインビトロにおける生体適合性の評価を示した図である。図4Aは、培養培地または異なる濃度のHAGM、GelMA、およびPEGDAで調製された光架橋ヒドロゲルの培養液体抽出物で24時間インキュベートし、Hoechst33342(青-核染色)カルセイン-AM(緑-生染色、およびヨウ化プロピジウム(赤-死染色)で染色した、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)の顕微鏡画像を示す(群当たりn=3)。図4Bは、570nmで測定した吸光度(OD)を示す図である(690nmのバックグラウンド吸光度を差し引いた)。データは平均±標準偏差(SD)で表している(群当たりn=6)。
図5A-5B】メタクリル酸グリシジルヒアルロン酸(MeHA)、ゼラチンメタクリロイル(GelMA)、およびジアクリル酸(ポリエチレングリコール)(PEGDA)の様々な比で形成されたシーラント組成物例の力学的特徴を示す図である。図5Aは、シーラント組成物例のキロパスカル(kPa)で測定された弾性率を示す図である。図5Bは、シーラント組成物例のkPaで測定された引張強度(すなわち、極限応力)を示す図である。図5Cは、シーラント組成物例のパーセント伸展性を示す図である。シーラント組成物例は、可視光に4分間曝露した後に形成された。データは平均±SDで表している(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001およびn≧3)。
図5C】(上記の通り。)
図6A】シーラント組成物例のヒドロゲル特性を示す図である。シーラント組成物例の膨潤率を図6A、含水率を6Bに示す。**H3と比較してp<0.005、##H3G2と比較してp<0.005。
図6B】(上記の通り。)
図7】シーラント組成物例の分解評価を示す図である。MeHAシーラントのみまたはGelMAおよびPEGDAの様々な濃度の組み合わせからなる製剤の分解率(n=6)。図は平均±SDで表している。**H3と比較してp<0.005、##H3P1と比較してp<0.005。
図8A-8C】シーラント組成物例のエキソビボにおけるブタ角膜損傷に対する接着評価を示す図である。図8Aは、シーラント組成物を適用した代表的な画像を示す。図8Bは、アプリケータ除去前後の光架橋後のシーラント組成物例の光コヒーレントトモグラフィ(OCT)画像を示す。図8Cは、市販の光学シーラントであるReSure(登録商標)(対照、n=5)と比較したシーラント組成物例(n=10)の平均破裂圧力を示す図である。図は平均±標準誤差(SEM)で表している(**H3と比較してp<0.005)。
図9A】インビトロにおける様々なシーラントからのHGFの速度論的放出を示す図である。図9Aは、様々な時点で様々な製剤によって放出されたピコグラム/ミリリットル(pg/ml)のHGF濃度を示す図である(群当たりn=6)。図は平均±標準誤差(SEM)で表している。図9Bは、製剤によって放出されたHGFの曲線下面積(AUC)、Tmax、およびCmaxを示す。
図9B】(上記の通り。)
【発明を実施するための形態】
【0021】
角膜損傷、重度の感染による角膜潰瘍、強膜損傷、角膜穿孔、またはその他の角膜欠損に対してより良い処置が求められている。本明細書で記載したような適応外のシアノアクリル酸およびフィブリン接着剤の使用は、欠損および複雑な裂傷を塞ぐのにほとんど効果がない。フィブリン接着剤は、「湿った」漏出および複雑な創傷には効果がない。シアノアクリル酸接着剤には、毒性、不透明性、適用の難しさ、粗さ、および生体適合性の欠如などの多くの制限がある。
【0022】
本開示のシーラント組成物は、当技術分野で現在使用されているシーラント組成物では満たされない以下の要件のうちの1つまたは複数を満たす:1)提供しやすいシステムによる容易な適用、2)生体適合性、3)創傷の迅速な密封、4)天然の角膜組織と類似の生体力学的特性、5)強力な接着性および高い保持力、ならびに6)適用後の滑らかな表面。さらに、本開示のシーラント組成物は、7)設定された期間にわたる薬物/治療薬の制御された持続的な放出を可能にする。したがって、本開示のシーラント組成物は、眼損傷または欠損の処置における明確で予想外の改善を提示する。
【0023】
シーラント組成物
本開示は、化学的に修飾されたヒアルロン酸(HA)、化学的に修飾されたゼラチン、および化学的に修飾されたポリエチレングリコール(PEG)のうちの1つまたは複数を含むことができる接着性生体材料(例えば、ヒドロゲル)を含むシーラント組成物を提示する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeHA、GelMA、PEGDA、および可視光活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeHA、GelMA、および可視光活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、特定の医学的応用(例えば、複雑な全層裂傷の閉塞)を満たすために、MeHA、GelMA、または両方の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は加水分解酵素(例えば、グリコシダーゼ)を含まない。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はヒドロゲルである。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は生体適合性である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は眼の環境に対して無毒である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、光架橋可能な、粘弾性の複合ヒドロゲルである。
【0024】
ヒアルロン酸(HA)は粘弾性で生体適合性の高いグリコサミノグリカンであり、角膜中に自然に存在する。HAは軟組織の再生および再構成において役割を果たすことが知られている。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたHAは、本開示のシーラント組成物に含めることができる。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたHAは、メタクリル化ヒアルロン酸またはHAの光架橋可能な誘導体であってもよい。いくつかの実施形態では、HAのメタクリル化は、HA骨格反応の開環および可逆的エステル転移反応によって実施することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物に含まれるメタクリル化ヒアルロン酸はメタクリル酸グリシジル-ヒアルロン酸(MeHA)である。
【0025】
いくつかの実施形態では、MeHAは、シーラント組成物において、体積当たり約1重量%から約3重量%(w/v)の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約0.5%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約1%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約2%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約3%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約4%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、MeMAを約5%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、メタクリル化ヒアルロン酸を約0.1%から約20%w/v、約1%から約15%w/v、約2%から約10%w/v、または約3%から約5%w/vの範囲の濃度で含む。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は約10%w/v未満、約5%w/v未満、約3%w/v未満、約2%w/v未満、または約1%w/v未満である。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は0.5%w/v超、約1%w/v超、約2%w/v超、約3%w/v超、約4%w/v超、約5%w/v超、約6%w/v超、または約7%w/v超である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、PEGDAを約0.5%w/vまたは約1%w/vの濃度で含む。
【0026】
ゼラチンは、角膜の主要な構造成分であるコラーゲンの誘導体である。ゼラチンは、ゼラチン中にRGDモチーフが存在するため、細胞および組織に対して強力な接着特性を有しており、光活性化前駆体を形成するために化学的に修飾されたコラーゲンの変性形態である。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたゼラチンは、本開示のシーラント組成物に含めることができる。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたゼラチンは、ゼラチンの光架橋可能な誘導体であるGelMAを形成するために無水メタクリロイル(MA)で修飾することができる。いくつかの実施形態では、ゼラチンの化学修飾は、ゼラチンと無水メタクリル酸(MAA)との合成反応によって実施することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、少なくとも約30%から約85%の範囲のメタクリロイル置換度(すなわち、メタクリロイル官能化)を有するGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、または80%~85%の範囲であってもよい置換度を有するGelMAを含む。いくつかの実施形態では、GelMAの置換度は、10%、20%、30%、40%、または50%よりも大きい。いくつかの実施形態では、GelMAの置換度は、100%、90%、80%、70%、または60%よりも小さい。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約70%の置換度を有するGelMAを含む。いくつかの実施形態では、GelMAは、メタクリルアミド置換およびメタクリル酸置換を含む。いくつかの実施形態では、メタクリルアミド置換のメタクリル酸置換に対する比は、約80:20から99:1の間である。いくつかの実施形態では、メタクリルアミド置換のメタクリル酸置換に対する比は、80:20から85:15、85:25から90:10、90:10から95:5、または95:5から99:1の範囲であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物中のGelMAの濃度は、約2%から約4%w/vの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約0.5%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約1%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約2%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約3%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約4%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、GelMAを約0.1%から約20%w/v、約1%から約15%w/v、約2%から約10%w/v、または約3%から約5%w/vの範囲の濃度で含む。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は約10%w/v未満、約5%w/v未満、約3%w/v未満、約2%w/v未満、または約1%w/v未満である。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は約0.5%w/v超、約1%w/v超、約2%w/v超、約3%w/v超、約4%w/v超、約5%w/v超、約6%w/v超、または約7%w/v超である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、PEGDAを約0.5%w/vまたは約1%w/vの濃度で含む。
【0029】
PEGは、人体で十分に許容される合成ポリマーである。天然由来のポリマーとは異なり、PEGは分解性がなく、シーラント組成物を体内に長く保持することができる。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたPEGは、本開示のシーラント組成物に含めることができる。いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたPEGは、PEGの光架橋可能な誘導体であるPEGDAを含むことができる。いくつかの実施形態では、PEGDAは、PEGを塩化アクリロイルと化学的に反応させることによって合成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物中のPEGDAの濃度は、約0.5%から約1%w/vの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、PEGDAを約0.5%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、PEGDAを約1%w/vの濃度で含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、PEGDAを約0.01%から約0.5%w/v、約0.5%から約1%w/v、約1%から約1.5%w/v、または約1.5%から約3%w/vの範囲の濃度で含む。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は約10%w/v未満、約5%w/v未満、約3%w/v未満、または約1%w/v未満である。いくつかの実施形態では、PEGDAの濃度は約0.5%w/v超、約1%w/v超、約2%w/v超、約3%w/v超、約4%w/v超、約5%w/v超、約6%w/v超、または約7%w/v超である。
【0031】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびPEGDAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約0.5%のPEGDAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約1%のPEGDAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約2%のPEGDAを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約1%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約2%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約3%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHAおよび約4%のGelMAを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PEGDA、およびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約0.5%のPEGDA、および約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約1%のPEGDA、および約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約0.5%のPEGDA、および約2%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約1%のPEGDA、および約2%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約0.5%のPEGDA、および約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約1%のPEGDA、および約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約0.5%のPEGDA、および約2%から約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約1%のPEGDA、および約2%から約4%のGelMAを含む。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHA、約0.5%から約1%のPEGDA、および約2%から約4%のGelMAを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、シーラント組成物が非固体(例えば、粘性液体、ゲル、または液体)状態にあるとき、シーラント組成物の重合および凝固を活性化するために使用することができる光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、露光は光開始剤を活性化し、フリーラジカルを形成し、メタクリル酸基間のビニル結合架橋を引き起こし、したがって、シーラント組成物の凝固を引き起こす。
【0035】
前駆体ゲルシーラントを光架橋するために、様々な種類の光源を使用することができる。シーラント組成物を重合するために使用することができる光源の非限定的な例には、可視光の光源(例えば、白色または青色光)、紫外線光源、近赤外光源、および蛍光光源が含まれる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、約420ナノメートル(nm)から550nmの間の波長を有する光に曝露したときに活性化することができる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、約460nmの波長を有する光に曝露したときに活性化することができる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、約400nmから800nmの範囲の波長を有する光に曝露したときに活性化することができる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、800、750、700、650、600、550、500、450、または400nm未満の波長を有する光に曝露したときに活性化することができる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、400、450、500、550、または600nmを超える波長を有する光に曝露したときに活性化することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、光開始剤は、光活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、光活性化光開始剤は、紫外線活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、光活性化光開始剤は、近赤外(NIR)線活性化光開始剤を含む。いくつかの実施形態では、光活性化光開始剤は、可視光活性化光開始剤を含む。例えば、光活性化光開始剤は、青色光活性化光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、エオシンY二ナトリウム塩、4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸塩、トリエタノールアミン、dl-2,3-ジケト-1,7,7-トリメチルノルカンファン(CQ)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン(PPD)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-(4-プロピルフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレンキノン、フェロセン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(50/50ブレンド)、ジベンゾスベレノン、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、レサズリン、レゾルフィン、ベンゾイルトリメチルゲルマン、それらの誘導体、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、およびエオシンY二ナトリウム塩の混合物を含む。いくつかの実施形態では、可視光活性化光開始剤は、トリエタノールアミン、N-ビニルカプロラクタム、リボフラビン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、およびエオシンY二ナトリウム塩から選択される2つまたはそれ以上の要素の混合物を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよび光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよび光開始剤を含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびPEGDAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PDGDA、および光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびPEGDAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PDGDA、および光開始剤を含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PEGDA、およびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PDGDA、GelMA、および光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PEGDA、およびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、PDGDA、GelMA、および光開始剤を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、GelMA、および光開始剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHAおよびGelMAを含むことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物はMeHA、GelMA、および光開始剤を含むことができる。
【0041】
シーラント組成物の物理的特性
剛性、弾性、分解速度、接着性、および膨潤性を含むがこれらに限定されない、本開示のシーラント組成物の物理的特性は、1つまたは複数のポリマー(例えば、MeHA、GelMA、PEGDA、および/または光開始剤)の濃度を調節することによって微調整することができる。あるいは、ポリマー濃度の調節と組み合わせて、シーラントの物理的特性は、露光時間(すなわち、重合時間)を制御することによって微調整することもできる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は光源に約4分間曝露する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は光源に約15秒から15分の範囲の期間曝露する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は光源に約1から10分の範囲の期間曝露する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は光源に約30秒から1分、1から2分、2から3分、3から4分、4から5分、5から6分、6から7分、7から8分、8分から9分、または9から10分間曝露する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、光源に約20、15、10、または7分未満曝露する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は光源に約10秒、30秒、1、3、または5分超曝露する。
【0042】
穿通性眼損傷(例えば、裂傷)の治療は、損傷部位からの眼内液の漏出のために非常に困難である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、流出することなく眼損傷部位でその形状および/または粘稠度を保持することができ、損傷部位からの眼内液の漏出を阻止することができる粘性ゲルである。シーラントの粘度は、シーラントが角膜の表面に良好に保持させる(すなわち、流出しない)重要な特性である(例えば、角膜損傷を治療する場合)。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は重合および凝固すると、光架橋および凝固の前の前駆体シーラント組成物の粘度よりも高い粘度を有する。いくつかの実施形態では、前駆体シーラント組成物(例えば、光架橋および凝固の前のシーラント)は、水の粘度よりも高い粘度を有する。いくつかの実施形態では、前駆体シーラント組成物は、練り歯磨きの粘度と同様の粘度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約0.5パスカル秒(Pa・s)から約300Pa・sの範囲の粘度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、低い剪断速度で(例えば、約0.001毎秒(秒-1)から1秒-1の剪断速度で)約100Pa・sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、低い剪断速度で(例えば、約0.001から0.1秒-1の剪断速度で)約1から10Paの範囲の剪断応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaを含み、前駆体シーラント組成物は低い剪断速度で(例えば、約0.001毎秒(秒-1)から1秒-1の剪断速度で)約30Pa・sから約300Pa・sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、粘度は約100Pa・sである。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約4%のGelMAを含み、前駆体シーラント組成物は低い剪断速度で(例えば、約0.001毎秒(秒-1)から1秒-1の剪断速度で)約30Pa・sから約300Pa・sの粘度を有する。いくつかの実施形態では、粘度は約100Pa・sである。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaを含み、前駆体シーラント組成物は低い剪断速度で(例えば、約0.001から0.1秒-1の剪断速度で)約0.1から10Paの範囲の剪断応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約4%のGelMAを含み、前駆体シーラント組成物は低い剪断速度で(例えば、約0.001から0.1秒-1での剪断速度で)約0.1から10Paの範囲の剪断応力を有する。
【0043】
シーラント組成物の重要な物理的特性は、弾性率、極限応力(または極限引張強度)、および伸展性である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約25kPaの弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約10kPaから約30kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約20kPaから約30kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約10kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約15kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約20kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約4%のGelMAを含み、シーラントゲル組成物は、約10kPaから約30kPa、約15kPaから約30kPa、約20kPaから約30kPa、約10kPaから約25kPa、約15kPaから約25kPa、または約20kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約20kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約4%のGelMAを含み、シーラントゲル組成物は、約10kPaから約30kPa、約15kPaから約30kPa、約20kPaから約30kPa、約10kPaから約25kPa、約15kPaから約25kPa、または約20kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は約10kPaから約30kPa、約15kPaから約30kPa、約20kPaから約30kPa、約10kPaから約25kPa、約15kPaから約25kPa、または約20kPaから約25kPaの範囲の弾性率を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約18kPaの極限応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約5kPaから約20kPaの範囲の極限応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約10kPaから約20kPaの範囲の極限応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約15kPaから約20kPaの範囲の極限応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約4%のGelMAを含み、シーラントゲル組成物は、約5kPaから約20kPa、約10kPaから約20kPa、または約15Paから約20kPaの範囲の極限応力を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は、約5kPaから約20kPa、約10kPaから約20kPa、または約15Paから約20kPaの範囲の極限応力を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約40%の伸展性を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約30%から約60%の範囲の伸展性を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約40%から約50%の範囲の伸展性を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHaを含み、シーラントゲル組成物は約30%から約60%の範囲の伸展性を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は約40%から約50%の範囲の伸展性を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物はヒドロゲルである。ヒドロゲルは、水を含む間隙溶媒(例えば、流体)で満たされたポリマーネットワークを含む。ヒドロゲルは、溶媒を吸収(例えば、膨潤するとき)または排出することによってその体積を変えることができる。ヒドロゲルの膨潤率は、実施例9に示したように、吸水によるヒドロゲルの重量の部分的増加として定義される。典型的に、膨潤率はポリマー/溶媒の両方およびポリマーの弾性に左右される。ポリマーが硬すぎるか、または親和性が低すぎる場合は、膨潤が低いかまたは弱い。対照的に、低弾性および高親和性は、高い膨潤に有利である。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約25%から約35%の範囲の膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約10%から約15%、約15%から約20%、約20%から約25%、約25%から約30%、約30%から約35%、約35%から約40%、約40%から約45%、または約45%から約50%の膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約50%未満、約45%未満、約40%未満、約35%未満、または約30%未満の膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約5%超、約10%超、約15%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、または約40%超の膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約30%の短期膨潤率(すなわち、約1から6時間の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約25%から約40%の短期膨潤率(すなわち、約1から6時間の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約30%の中期膨潤率(すなわち、約1から3日の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約25%から約40%の中期膨潤率(すなわち、約1から3日の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約35%の長期膨潤率(すなわち、約1から4週間の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約30%から約40%の長期膨潤率(すなわち、約1から4週間の期間にわたって測定された膨潤率)を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は、約25%から約40%の短期膨潤率、約25%から約40%の中期膨潤率、および/または25%から約40%の長期膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は、約25%から約35%の短期膨潤率、約25%から約35%の中期膨潤率、および/または25%から約35%の長期膨潤率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約2%から約4%のGelMAを含み、シーラントゲル組成物は、約10%から約20%の短期膨潤率、約10%から約20%の中期膨潤率、および/または10%から約20%の長期膨潤率を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約94%以上の含水率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約94%から約97%の範囲の含水率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHaを含み、シーラントゲル組成物は約94%から約97%の範囲の含水率を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は約94%から約95%の範囲の含水率を有する。
【0049】
シーラント組成物の分解速度は、添加した1つまたは複数のポリマー(例えば、MeHA、PEGDA、および/またはGelMA)の濃度に基づいて制御することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約35日の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約1日から40日の範囲の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約1から約5日、約5から約10日、約10から約15日、約15から約20日、約20から約25日、約25から約30日、約30から約35日、または約35から約40日の範囲の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約80日未満、約60日未満、約55日未満、約50日未満、約45日未満、約40日未満、約35日未満、または約30日未満の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約1日超、約5日超、約7日超、約10日超、約14日超、約21日超、約25日超、約30日超、約35日超、または約40日超の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHaおよび約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は、約10から約35日、または約15日から約35日の範囲の分解速度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は、約25から約35日、または約30日以上の範囲の分解速度を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、特に湿潤環境において、高い接着特性を有する。通常、光学シーラントの接着強度を測定するためには、臨床上代表的な切開がエキソビボにおいて動物の眼(例えば、ブタの眼)に行われる、インビトロにおける破裂圧力試験を実施することができる。生理的な眼内圧を再現するために、注入カニューレを眼の中に入れることができる。切開を生成したら、光学シーラントを切開上に適用することができ、シーラントを破裂させるために必要な眼内圧を測定することができる。このような眼内圧は、「破裂強度」または「破裂圧力」として定義することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約100水銀柱ミリメートル(mmHg)から約150mmHgの破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は約125mmHgの破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約70から約80mmHg、約80から約90mmHg、約90から約100mmHg、約100から約110mmHg、約110から約120mmHg、約120から約130mmHg、約130から約140mmHg、約140から約150mmHg、または約150から約160mmHgの範囲の破裂強度を有する。いくつかの実施形態ではシーラント組成物は、約200mmHg未満、約190mmHg未満、約180mmHg未満、約170mmHg未満、約160mmHg未満、約150mmHg未満、約140mmHg未満、約130mmHg未満、または約120mmHg未満の破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約70mmHg超、約80mmHg超、約90mmHg超、約100mmHg超、約110mmHg超、または約120mmHg超の破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHaを含み、シーラントゲル組成物は約50mmHg超、または約50mmHgから約150mmHgの破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHaおよび約4%のGelMAを含み、シーラントゲル組成物は約100mmHg超、または約100mmHgから約150mmHgの破裂強度を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約3%のMeHa、約4%のGelMA、および約0.5%から約1%のPEGDAを含み、シーラントゲル組成物は約140mmHg超、または約140mmHgから約150mmHgの破裂強度を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示のシーラント組成物は、薬物送達ペイロードとして治療剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗生物質もしくは抗菌剤、抗炎症剤、成長因子、抗真菌剤、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、治療剤はシプロフロキサシンである。したがって、本明細書で記載したシーラント組成物は、様々な適応症のための一連の「既成の」製品を開発するために使用することができる。いくつかの実施形態では、治療剤を含むシーラント組成物は、治療剤を含まないシーラント組成物と比較して改善された治癒特性を有する(例えば、その他の市販の眼用シーラントまたは治療剤を含まないシーラント組成物による治療と比較して、このシーラント組成物で治療した場合、眼損傷が治癒するのにかかる時間を短縮することができる)。いくつかの実施形態では、シーラント組成物によって放出された薬物は、損傷後の炎症および汚染のリスクを軽減することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物によって放出された薬物は、創傷治癒を促進することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、成長因子(例えば、組換え成長因子)を添加されたシーラント組成物は、創傷治癒を改善することができる。成長因子の非限定的な例には、組換え肝細胞成長因子または組換え神経成長因子などの、治療剤または生物学的薬剤が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、再生促進(単なるシーラントではない)技術であり得る。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、健康な眼における持続的な薬物送達のために設計することできる。例えば、シーラント組成物は、ミセルにカプセル化されたシプロフロキサシン(すなわち、抗生物質)を添加できるように操作された生体材料であってもよい。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は抗菌特性を有する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、慢性状態を治療するか、または感染を予防および/または治療するために、損傷後の、または感染した眼に薬物を溶出することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は薬物を添加されており、炎症を制御し、治癒を促進し、またはそれらの組み合わせを行うことができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、組織再生を促進し、炎症を制御し、またはそれらの組み合わせを行うために、組換え成長因子およびコルチコステロイドを添加したナノ粒子を含有する。
【0053】
適切な抗生物質の非限定的な例には、ガチフロキサシン、ダプトマイシン、チゲサイクリン、テラバンシン、クロラムフェニコール、フシジン酸、バシトラシン、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシン、イソニアジド、および以下の抗菌ファミリーに含まれるもの全てが含まれる:糖ペプチド(テイコプラニン、バンコマイシンなどを含むがこれらに限定されない)、アミノグリコシド(ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチマイシンなどを含むがこれらに限定されない)、セファロスポリン(セファゾリン、セフォキシチン、セフォタキシム、セフロキシム、モキサラクタムなどを含むがこれらに限定されない)、マクロライド(エリスロマイシンを含むがこれに限定されない)、オキサゾリジノン(リネゾリドを含むがこれに限定されない)、キノロン、ポリミキシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、およびペニシリン。適切な抗真菌剤の非限定的な例には、以下の群の抗真菌剤が含まれる:ポリエン抗真菌剤、イミダゾールおよびトリアゾール抗真菌剤、アリルアミン、エキノカンディン、ならびにグリセオフルビン。適切な抗炎症剤の非限定的な例には、ステロイド性抗炎症薬(例えば、プレドニゾロン)、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、ブロムフェナク)、mTOR阻害剤、カルシニューリン阻害剤、合成または天然抗炎症性タンパク質、抗増殖薬(例えば、デキサメタゾン、5-フルオロウラシル、ダウノマイシン、パクリタキセル、クルクミン、レスベラトロール、およびマイトマイシン)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、セレコキシブ、ケトロラック、ピロキシカム、ジクロロフェナク、イブプロフェン、およびケトプロフェン、ラパマイシン、シクロスポリン、およびタクロリムス/FK-506が含まれる。いくつかの実施形態では、成長因子は、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、またはそれらの任意の組み合わせである。適切な成長因子のさらなる非限定的な例には、形質転換成長因子(TGF)(例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3などのベータ形質転換成長因子)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形成因子、骨形成タンパク質(例:BMP-1、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9);ヘパリン結合成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF))、インヒビン(例えば、インヒビンA、インヒビンB)、増殖分化因子(例えば、GDF-1)、およびアクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB)、およびこのような成長因子の生物学的に活性のある類似体、断片、および誘導体が含まれる。
【0054】
治療剤を添加したシーラント組成物の放出動態は、製剤中の1つまたは複数のポリマー(例えば、MeHA、PEGDA、および/またはGelMA)の濃度を調整することによって制御することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約1日で最大またはピーク濃度の治療剤を送達する。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、約2日で最大またはピーク濃度の治療剤を送達する。
【0055】
治療の方法
本開示は、対象の眼の眼表面損傷(例えば、角膜または強膜損傷)を治療する方法を提示する。いくつかの実施形態では、本開示は対象の眼の眼表面損傷(例えば、角膜または強膜損傷)の治療に使用するための組成物を提示する。図1に示したように、この方法は、シーラントをアプリケータ(例えば、コンタクトレンズ)に適用するステップ、アプリケータを対象の眼に接触させるステップ、およびシーラント組成物を光架橋するステップを含むことができる。第1のステップは、アプリケータにシーラント組成物を充填することを含むことができる。シーラント組成物が充填されると、アプリケータは、例えば、鉗子を使用することによって、角膜損傷に直接適用される。このアプリケータによって、操作者は鉗子だけで眼損傷に前駆体ゲルを簡単に適用することができる。シーラント組成物を含有するアプリケータは、反転したときにアプリケータの表面から落下したり、流れ落ちたりすることなく、眼表面損傷を有するかまたは有することが疑われる対象の眼の表面に反転して配置することができる。前駆体シーラント組成物の粘度が高い(例えば、練り歯磨きの粘度と同様の粘度)ため、シーラント組成物を含有するアプリケータを眼表面に配置するとき、例えば、眼房水からの漏出を即座に止めることができる。前駆体シーラント組成物は、眼房水からの漏出を阻止するために、あらゆるサイズまたは形状の眼損傷に適用することができる。いくつかの実施形態では、眼の損傷のサイズおよび形状に応じて、約20から200マイクロリットル(μL)の前駆体シーラントゲルを適用することができる。
【0056】
アプリケータの位置が良好な場合、操作者は可視光の光源を使用することによってシーラント組成物を凝固させるために光架橋を開始することができる。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、コンタクトレンズおよびシーラント組成物を可視光に曝露することによって光架橋することができる。いくつかの実施形態では、可視光は約400ナノメートル(nm)から800nmの波長を有する。光架橋後、シーラント組成物(例えば、接着性ヒドロゲル)は固体で透明になることができる。シーラント組成物が光架橋されると、アプリケータを眼表面から取り除くことができる(例えば、鉗子を使用して)。
【0057】
アプリケータは任意の適切なコンタクトレンズ、例えば、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、または組織へのシーラントの制御された適用を可能にする非コンタクトレンズアプリケータであってもよい。コンタクトレンズの種類の非限定的な例には、硬質ガス透過性レンズおよび包帯レンズが含まれる。アプリケータは、様々な材料、直径、ベースカーブ半径、ディオプトリで表した度数、および中心厚のコンタクトレンズであってもよい。アプリケータはまた、眼表面と接触すると滑らかで規則的な表面を有することができ、それによって患者の不快感および視力喪失を制限する。
【0058】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、アプリケータを必要とすることなく眼に液滴として(すなわち、生体材料前駆体状態で)適用することができる。可視光への曝露によって、架橋が可能になり、角膜に類似した生体力学を備えた接着性の固体ヒドロゲルが形成される。露光時間を調整することによって、本開示の接着組成物の重合を細かく制御することができ、市販の眼用シーラントと比較して、正確な適用を可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、白内障手術後の液体漏出を防ぐために使用される。いくつかの実施形態では、シーラント組成物は、創傷を密封し、表面バリアを形成するために、切開、損傷、および/または裂傷に配置されたままである。いくつかの実施形態では、光架橋によって、前駆体シーラント組成物は固体の透明なヒドロゲルになり、眼表面上に生体適合性で接着性のシーラントを形成する。
【0060】
眼表面損傷
本開示は、対象の眼の眼表面損傷を治療するための方法および組成物を提示する。眼表面損傷には、結膜裂傷、角膜穿孔、強膜穿孔、眼科手術(白内障手術など)による切開、またはそれらの任意の組み合わせを含めることができる。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は角膜または強膜損傷である。結膜裂傷は鈍的または穿通性の外傷の後に発生する可能性がある。結膜裂傷は結膜浮腫および結膜下出血を特徴としている。このような場合、裏に潜んでいる強膜穿孔を除外することが重要である。網膜裂孔または眼内異物がないか眼底を検査する必要がある。後眼部の評価のために超音波検査を行ってもよい。
【0061】
角膜裂傷および穿孔は、救急医療現場で見られる外傷性眼損傷の約10分の1を占めている。角膜裂傷および穿孔には、部分層裂傷および全層裂傷を含めることができる。さらに、付属器損傷、強膜穿孔、またはそれらの組み合わせが角膜裂傷および穿孔に関与している可能性がある。角膜穿孔の標準治療には、創傷領域のあらゆる汚染物質の除去、涙の回復、および眼球の水密性の維持が含まれる。角膜穿孔は、異物の挿入に関連しているか、または異物の挿入によって引き起こされる可能性もある。いくつかの実施形態では、角膜損傷は角膜全層裂傷または角膜全層穿孔である。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は、全層裂傷または全層穿孔である。いくつかの実施形態では、眼表面損傷は、全層裂傷または外科的切開または全層穿孔である。例えば、眼への侵入を必要とする眼科手術(例えば、白内障手術)の大部分は、角膜または強膜を介した全層切開を必要とする。強膜創傷を含む全層裂傷の現在の処置手順では、縫合糸の使用を必要とすることが多い。
【0062】
本開示のシーラント組成物は、約1mm未満から約10mmの長さの眼の切開または切断または損傷を治療するために使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示のシーラント組成物は、全層眼欠損および裂傷の閉塞、ならびに制御された長期の薬物溶出に使用することができる。いくつかの実施形態では、適応症には、広範囲の傷害によって引き起こされる角膜潰瘍、欠損、および穿孔の閉塞に加えて、薬物溶出のための生体材料の術後適用を含めることができる。本開示のシーラント組成物は、「通常の」(例えば、病院内または手術室)状況下、または緊急の「現場での」状況下の両方で適用することができる。様々な医療提供者、医師、および場合によっては医師助手や救急医療補助員(例えば、戦域において)は、欠損を治癒させるために、眼を密封して薬物を溶出させるために本明細書で記載したシーラント組成物を適用することができる。本明細書で記載したシーラント組成物は、角膜融解および欠損のための移植およびパッチグラフトの多くの症例を回避することができる。
【実施例
【0064】
本開示のある特定の実施形態は、以下の実施例でさらに記載されているが、特許請求の範囲で記載された任意の実施形態の範囲を限定するものではない。
【0065】
[実施例1]
ジアクリル酸ポリ(エチレングリコール)(PEGDA)の合成
PEGDAを形成するために、ポリ(エチレングリコール)(PEG)をジアクリル酸で化学的に修飾した。ジアクリル酸(ポリエチレングリコール)(PEGDA)を合成するために、ポリ(エチレングリコール)(PEG、Sigma Aldrich)を塩化アクリロイル(Sigma Aldrich)と化学的に反応させた。したがって、10グラムのPEGを4°Cで100mlのジクロロメタン(10%w/v)に溶解した。次に、トリエチルアミン(Sigma Aldrich)をN環境下でPEG溶液に添加した。次に、塩化アクリロイル(Sigma Aldrich)を溶液に添加し、それらをPEG溶液に溶解し、乾燥Nガス下で一晩撹拌した。PEG、塩化アルカロイル、およびトリエチルアミンのモル比は、1:4:4であった。最後に、不溶性塩(トリエチルアミン-HCl)を濾過し(セライト545粉末およびアルミナカラムを使用して)、氷冷エーテルを添加することによって生成物を沈殿させた。粗生成物を9μmの濾紙で濾過し、真空デシケータで一晩乾燥させて、未反応の物質を除去した。
【0066】
[実施例2]
ゼラチンメタクリロイル(GelMA)の合成
ゼラチンは、ゼラチンの光架橋可能な誘導体であるGelMAを形成するために無水メタクリロイル(MA)で化学的に修飾した。置換度70%のゼラチンメタクリロイル(GelMA)を合成した。簡単に説明すると、DPBSに溶かしたブタ皮膚(Sigma)溶液の10%(w/v)ゼラチンを、8mLの無水メタクリル酸と3時間反応させた。次に、溶液を5日間透析して、いかなる未反応の無水メタクリル酸も除去し、次に-80°Cの冷凍庫に24時間入れた。次に、凍結したポリマーを5日間凍結乾燥させた。
【0067】
[実施例3]
ヒアルロン酸(HA)の化学修飾
ヒアルロン酸(HA)は、HAの光架橋可能な誘導体であるMeHAを形成するためにメタクリル酸グリシジル(GM)で化学的に修飾した。HAのメタクリル化は、開環および可逆的エステル交換反応を介してHA骨格にメタクリル酸基を付加することによって実施した(図2A)。2gのヒアルロン酸ナトリウム塩を、連続的に撹拌しながら、200mlの脱イオン水に一晩溶解した。完全に溶解した後、8.0mLのトリエチルアミン、8.0mLのメタクリル酸グリシジル、および4.0gの臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)を上記の順序で別々に添加し、次の添加の前に1時間完全に混合させた。完全に溶解した後、フラスコを少し開き、55°Cで1時間インキュベートした。冷却後、溶液を20倍過剰のアセトン(4L)中で白色の固体繊維として沈殿させた。次に、沈殿物を新鮮なアセトンですすぎ、200mLの超純水に溶解し、2日間透析して凍結乾燥した。メタクリル化度(DM)は、プロトン核磁気共鳴(HNMR)分析を使用して算出した。まず、HAおよびMeHAプレポリマーを重水(DO)に溶解した(1%(w/v))。全てのスペクトルは、Bruker AV400分光計(400MHz)を使用して室温で実行した。DMは、1つのHA分子反復単位当たりのメタクリル酸基の量として定義され、HA分子におけるメタクリル酸プロトン(約5.4、約5.7、および約1.8ppmにピーク)およびメチルプロトン(約1.9ppm)の相対的ピーク積分の比から算出した。この算出方法によると、MeHA骨格で22.4±0.7%のDMが見いだされた。図2Aに示したように、メタクリル酸グリシジルヒアルロン酸(MeHA)は曝露によって合成された。
【0068】
[実施例4]
複合シーラントの調製および光架橋
図2Aに示したように、メタクリル酸グリシジルヒアルロン酸(MeHA)は、メタクリル酸グリシジルと約55°Cの温度で1時間反応させることによって合成した。MeHA、GelMA、および/またはPEGDAは、可視光曝露(波長約420~550nm)によってポリマーを架橋することができる光開始剤(PI)溶液に溶解した。PI溶液は、1.88%(w/v)トリエタノールアミン(TEA)(Sigma)、1.25%(w/v)N-ビニルカプロラクタム(Sigma)、およびエオシンY二ナトリウム塩0.5mMをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解して調製した。次に、眼損傷の修復に対する異なる濃度/比率の効果を研究するために、異なる濃度のMeHA、GelMA、および/またはPEGDAをPI溶液に溶解した。露光によってPIが活性化され、フリーラジカルが形成され、メタクリル酸基間のビニル結合架橋が生じ、こうして固体シーラントが形成された(図2B)。前駆体ゲルを架橋するために青色光(波長約460nm)を発する光源を4分間使用した。
【0069】
[実施例5]
接着性ヒドロゲルの力学的特徴およびレオロジー特性
引張試験のために、生体高分子前駆体溶液を実施例1~4に記載したように調製した。次に、70μLの各溶液をポリジメチルシロキサン(PDMS)の長方形(14×5×1mm)の型に入れ、可視光(480~520nm)に240秒間曝露して光架橋させた。光架橋後、ヒドロゲルの寸法はデジタルノギスを使用して測定した。引張試験はInstron5542機械試験機を使用して実施した。試験前に、ヒドロゲルをテンショングリップ機器内の2枚の両面テープの間に配置し、破損するまで2mm/分の速度で伸長した。応力-ひずみ曲線の勾配を取得し、弾性率として記録した。
【0070】
[実施例6]
シーラントの粘度特性
MeHA、GelMA、およびPEGDAの様々な濃度および比率に基づく様々な製剤を評価した(表1)。
【0071】
【表1】
【0072】
様々な濃度のMeHA、GelMA、および/またはPEGDA前駆体ゲルの定常剪断粘度を評価した。
【0073】
レオロジー試験では、Anton-Paar302レオメータの平行プレート間に様々な濃度の生体接着性前駆体を挿入した。定常剪断粘度評価(周波数範囲:0.01~1000rad/s)は、37℃の溶液に対して1.0%の低ひずみで実施した。プレポリマー溶液の粘度を決定するために、剪断速度を0.01から1000秒-1まで変化させて、安定した剪断速度掃引を実施した。
【0074】
全実験で少なくとも3つの試料を試験し、全データは平均±標準偏差として表した(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、および****p<0.0001)。統計的有意性を測定するために、必要に応じて、T検定、一元配置、または二元配置ANOVAに続いてテューキー法またはボンフェローニ法を実施した(GraphPad Prism 6.0、GraphPad Software)。
【0075】
予想通り、結果は、総MeHA濃度を増加させることによって、プレポリマー溶液の粘度が増加することを示した(図3A~B)。全般的に、4%(w/v)のGelMAを含有する前駆体溶液は、その他の製剤と比較して高い粘度を示した。さらに、3%MeHA/1%PEGDA/4%GelMA前駆体溶液は、低い剪断速度(<0.01 1/s)で有意に高い粘度を示した(図3B)。剪断応力値についても同様の振る舞いが観察され、総MeHA濃度を増加させることによってプレポリマー溶液の剪断応力が有意に増加し、MeHA濃度が高いプレポリマー溶液にはより高い注入力が必要であることが示された(図3C)。3%(w/v)MeHAを含有するプレポリマー溶液の剪断応力に有意差はなかった。しかし、粘度値と同様に、3%MeHA/1%PEGDA/4%GelMA前駆体溶液は、低い剪断速度(<0.01 1/s)でより高い剪断応力を示した(図3C)。エキソビボにおける予備実験に基づいて、3%MeHAで形成された製剤は、流出を制限する高粘度に基づいたさらなる研究で使用され、角膜損傷の表面に良好に保持された。
【0076】
[実施例7]
MeHAシーラントのインビトロにおける毒性
ヒト角膜上皮細胞(HCEC)を使用してシーラントの細胞適合性を評価するために、インビトロ細胞毒性試験を実施した。医療機器の細胞毒性に関するISO10993-1規格に準拠した溶出試験法を採用した。抽出物は、光架橋したMeHAシーラント試料を別々の細胞培養培地に37°Cで24時間(h)置くことによって得られた。次に、流体抽出物をコンフルエントな細胞単層に添加した。対照群は、細胞を新鮮な培地でインキュベートすることによって同様に調製した。37℃で1日間インキュベートした後、生細胞のマーカーであるカルセイン-AMおよび死細胞のマーカーであるヨウ化プロピジウムで細胞を染色した。次に、明視野および蛍光顕微鏡を使用して細胞を観察した。結果は、GelMAまたはPEGDAの添加に関係なく、培養培地のみまたは光架橋ヒドロゲルの抽出物でインキュベートしたHCECの間で生/死染色および密度に変化が観察されなかったことを示した(図4A)。インビトロにおけるMTTベースの毒物アッセイ(TOX-1、Sigma)も、製造元の手順に従って各グループで実施した(図4B)。結果は、試験した全群間で測定した場合、570nmでの吸光度(OD)に有意差がないことを示した。これらの結果は、試験した光架橋ヒドロゲルは全てヒト細胞に対して毒性がなく、したがって、ヒト眼表面で十分に許容される可能性があることを示唆している。
【0077】
[実施例8]
いくつかのシーラント製剤の力学的特性
試料の調製
表1に示した各製剤について、様々な濃度を含有する70μLの前駆体ゲルを、直径約6mm、高さ約2.5mmのポリジメチルシロキサン円筒型にピペットで入れた。次に、図3Dに示したように、型内の前駆体ゲルを青色光源で約4分間光架橋して、固体試料を形成した。
【0078】
引張試験
引張試験は引張試験機(Instron(登録商標)5542)を使用して実施した。引張試験を実施する前に、試料(群当たり少なくとも3つ)をテンショングリップ機器内の2枚の両面テープの間に配置し、破損するまで2mm/分の速度で伸長した。応力-ひずみ曲線の勾配を取得し、弾性率として記録した。引張試験によって、4%(w/v)のGelMAを含有する接着性ヒドロゲルの弾性率が、GelMA含有量が少ないかまたはGelMAを含めずに形成したものよりも有意に高いことが明らかになった(図5A)。最大の極限応力(UTS)は、3%MeHA/1%PEGDA/4%GelMAヒドロゲル接着剤で観察され、その他のゲルのUTSよりも有意に高かった。さらに、生体接着性ヒドロゲルのその他全ての組成物のUTS値に有意差はなかった(図5B)。さらに、複合接着剤の伸展性は、その他の組成物と比較して、GelMA含有量が4%(w/v)の接着性ヒドロゲルで有意に減少した(図5C)。これは、これらのヒドロゲルの高い剛性と相関している可能性がある。
【0079】
[実施例9]
膨潤、含水率、および分解試験
表1で示した各試料(n=9)の重量は、光架橋後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で37℃で1時間、2時間、6時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、および4週間インキュベーションした後に測定した。次に、膨潤率は式1に従って算出し、式中、Wは光架橋直後の試料の重量であり、Wは24時間インキュベーション後の試料の最終重量である。
【0080】
【数1】
【0081】
ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で37°Cで24時間インキュベーションした後、試料を凍結乾燥して秤量した。含水率は式2に従って算出し、式中、WはPBS中で1日インキュベーションした後の試料の重量であり、Wは乾燥試料の重量である。
【0082】
【数2】
【0083】
図6Aに示したように、膨潤率は約10%から40%の間であることがわかった。2%または4%のGelMAを含有する製剤は、MeHAのみと比較して低い膨潤率を示した。0.5または1%のPEGDAを含有する製剤は、MeHAのみと比較して低い膨潤率を示した。PEGDAおよびGelMAを含有する製剤は、MeHAのみと比較して同様の膨潤率を示した。これらの結果は、ヒドロゲルが眼の薬物送達のための膨潤制御システムとして使用することができることを示した。メッシュサイズが増加するため、薬剤がシーラントから眼表面に放出され得る。本開示のシーラント組成物の膨潤特性は、ポリマー濃度および比率を変更することによって微調整することができ、薬物放出を変更することができる。様々な種類の薬物をヒドロゲルシーラント組成物に添加することができる。添加できる薬物の非限定的な例には、抗菌薬、抗炎症薬、および成長因子が含まれる。
【0084】
含水率が高いと、角膜の酸素透過が多くなり、したがって生体適合性が向上する。図6Bに示したように、シーラント組成物の含水率は約94から97%の間であり、これはヒト角膜の生理的含水率よりもさらに高いことが見いだされた(すなわち、ヒト角膜の含水率は約78%である)。
【0085】
各製剤のインビトロにおける分解速度を評価した。全試料を、眼に天然に存在する2つの酵素である2U/mLのヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼIを補給したDPBSでインキュベートした。図7に示したように、GelMA、および最も重要なことにPEGDAの存在によって、シーラントの分解速度が低下した。
【0086】
[実施例10]
様々なシーラント製剤の接着特性
眼損傷を正しく治癒させるために、効果的な眼用シーラントは、特に湿った、または水性の環境において、高い接着特性を有さなければならない。表1に示した様々なシーラント組成物の接着特性は、ブタの眼球のエキソビボモデルを使用して評価した。各ブタの眼球の角膜に4mmの線形切開を生成した。生理的眼内圧(IOP)を再現し、適切な切開の成功をモニターするために、注入カニューレを眼内に配置した。切開の成功が確認されたら(すなわち、切開からの流体の漏出が見られたら)、シーラントを切開に適用した(図8A~B)。次に、ヒドロゲルが脱離して切開部から漏出するまで、注入カニューレを介してPBSを注入することによってIOPを上昇させた。市販の眼用シーラント(すなわち、ReSure(登録商標)シーラント)を対照として使用した。各群に加わる圧力値は、圧力センサーを使用して記録した。結果は、ReSure(登録商標)と比較して、本開示の全シーラント組成物の圧力が高いことを示しており、本開示のシーラントが眼表面に対してより高い接着特性を表すことを示している(図8C)。結果は、4%のGelMAの添加によって、エキソビボのブタ角膜損傷においてMeHAシーラントの接着特性が有意に向上することを示している。
【0087】
[実施例11]
様々なシーラント製剤の薬物溶出特性
シーラント組成物の治癒特性を研究するために、肝細胞成長因子(HGF)を表1に示した製剤中に添加した。500ng/mLのHGFを含有する試料は、実施例8で記載したように調製した。次に、試料を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補給したPBSで1カ月間インキュベートした。BSAはHGFを安定化するために使用した。HGFの放出は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用して、様々な時点(1時間、2時間、6時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、1カ月)で評価した。図9Aに示したように、HGFの放出は製剤によって変化し、製剤H3G4P1の放出が最も高かった(AUCおよびCmax)。さらに、放出ピーク(Tmax)は、製剤によって1から2日の間であった。図9Bは、様々なシーラント製剤の薬物動態の標準測定値であるAUC、Cmax、およびTmaxを示している。AUCまたは曲線下面積は、時間とともに放出される総薬物濃度として定義される。Cmaxは、薬剤が送達された後に達成する最大またはピーク濃度を示す。Tmaxは、Cmaxが観察される時間である。
【0088】
その他の実施形態
ある特定の実施形態は詳細な説明の中で説明されているが、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義した任意の実施形態の範囲を例示するものであり、限定するものではないことを理解されたい。その他の態様、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2A-2B】
図3A-3D】
図4A-4B】
図5A-5B】
図5C
図6A
図6B
図7
図8A-8C】
図9A
図9B
【国際調査報告】