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特表2022-551486イヌジステンパーウイルスのヘマグルチニンおよび融合ポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】イヌジステンパーウイルスのヘマグルチニンおよび融合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/45 20060101AFI20221202BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221202BHJP
   C07K 14/13 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221202BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221202BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20221202BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20221202BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20221202BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20221202BHJP
【FI】
C12N15/45 ZNA
C12N7/01
C12N15/10 200Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/13
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61P35/00
C12N15/861 Z
C12N15/86 Z
C07K19/00
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521407
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020055100
(87)【国際公開番号】W WO2021072284
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,111
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル,スティーヴン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ムニョス アリア,ミゲル エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA26
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、CDV Hおよび/またはCDV Fポリペプチドに関する方法および材料を提供する。たとえば、CDV Hポリペプチド、CDV Fポリペプチド、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、水疱性口内炎ウイルス(VSV))、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を作製する方法、ならびに、がんまたは感染症を治療するために、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を使用する方法を提供する。
【選択図】図2-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有する、CDV Fポリペプチド。
【請求項2】
前記シグナルペプチド配列が、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のCDV Fポリペプチド。
【請求項3】
前記CDV Fポリペプチドが、配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、前記CDV Fポリペプチドが配列番号4を含む、請求項1または2に記載のCDV Fポリペプチド。
【請求項4】
前記CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスが、全長の野生型CDV Fポリペプチドおよび前記CDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示す、請求項1~3のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチドを含む組換えウイルス。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸分子を含む組換えウイルス。
【請求項8】
配列番号2のアミノ酸ナンバリングに従って、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、548A、またはそれらの組み合わせを含む、CDV Hポリペプチド。
【請求項9】
前記CDV Hポリペプチドが、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aのうち2、3、4、5または6個の組み合わせを含む、請求項8に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項10】
前記CDV Hポリペプチドが、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aのうち7、8、9、10または11個の組み合わせを含む、請求項8に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項11】
前記CDV Hポリペプチドが、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aのうち12、13、または14個の組み合わせを含む、請求項8に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項12】
前記CDV Hポリペプチドが、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aを含む、請求項8に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項13】
前記CDV Hポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含む、請求項8に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項14】
配列が、配列番号5のアミノ酸ナンバリングに従ってP454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびT/M548からなる一群から選択される、提示されたアミノ酸残基の変異を含むことを除いて、図11に示す配列を含むCDV Hポリペプチド。
【請求項15】
前記CDV Hポリペプチドが、前記の一群から選択される2、3、4、5、または6個の提示アミノ酸残基の変異を含む、請求項14に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項16】
前記CDV Hポリペプチドが、前記の一群から選択される7、8、9、10、または11個の提示アミノ酸残基の変異を含む、請求項14に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項17】
前記CDV Hポリペプチドが、前記の一群から選択される12、13、または14個の提示アミノ酸残基の変異を含む、請求項14に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項18】
前記CDV Hポリペプチドが、前記の一群の提示アミノ酸残基の変異を含む、請求項14に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項19】
前記CDV Hポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含む、請求項14に記載のCDV Hポリペプチド。
【請求項20】
請求項8~19のいずれか1つに記載のCDV Hポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項21】
請求項8~19のいずれか1つに記載のCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルス。
【請求項22】
前記ウイルスが、請求項1~4のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチドを含む、請求項21に記載の組換えウイルス。
【請求項23】
請求項20に記載の核酸分子を含む組換えウイルス。
【請求項24】
前記ウイルスが、請求項5に記載の核酸分子を含む、請求項23に記載の組換えウイルス。
【請求項25】
前記組換えウイルスが、(a)CDV、および(b)VSV、MeV、またはアデノウイルスのハイブリッドウイルスである、請求項6、7、および21~24のいずれか1つに記載の組換えウイルス。
【請求項26】
RNA分子を含む、複製能を有する水疱性口内炎ウイルスであって、前記RNA分子が、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むが、前記RNA分子は、機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いている、ウイルス。
【請求項27】
前記CDV Fポリペプチドが、請求項1~4のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチドである、請求項26に記載のウイルス。
【請求項28】
前記CDV Hポリペプチドが、請求項8~19のいずれか1つに記載のCDV Hポリペプチドである、請求項26または27に記載のウイルス。
【請求項29】
前記CDV Hポリペプチドが一本鎖抗体のアミノ酸配列を含む、請求項26~28のいずれか1つに記載のウイルス。
【請求項30】
前記一本鎖抗体が、CD19、CD20、CD38、CD46、EGFR、αFR、HER2/neu、またはPSMAに対する一本鎖抗体である、請求項29に記載のウイルス。
【請求項31】
前記RNA分子が、NISポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含む、請求項26~30のいずれか1つに記載のウイルス。
【請求項32】
請求項6、7、および21~31のいずれか1つに記載のウイルスを含む組成物。
【請求項33】
VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含む核酸ストランドであって、この核酸ストランドが、機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いている、前記核酸ストランドを含む核酸分子。
【請求項34】
前記CDV Fポリペプチドが、請求項1~4のいずれか1つに記載のCDV Fポリペプチドである、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
前記CDV Hポリペプチドが、請求項8~19のいずれか1つに記載のCDV Hポリペプチドである、請求項33または34に記載の核酸分子。
【請求項36】
前記CDV Hポリペプチドが一本鎖抗体のアミノ酸配列を含む、請求項33~35のいずれか1つに記載の核酸。
【請求項37】
前記一本鎖抗体が、CD19、CD20、CD38、CD46、EGFR、αFR、HER2/neu、またはPSMAに対する一本鎖抗体である、請求項36に記載の核酸分子。
【請求項38】
前記RNA分子が、NISポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含む、請求項33~37のいずれか1つに記載の核酸分子。
【請求項39】
請求項5、20、および33~38のいずれか1つに記載の核酸分子を含む組成物。
【請求項40】
がんを治療する方法であって、前記方法が、請求項32および39のいずれか1つに記載の組成物を、がん細胞を有する哺乳動物に投与することを含み、前記哺乳動物内のがん細胞の数が投与後に減少する、方法。
【請求項41】
前記哺乳動物がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが、骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、リンパ腫、中皮腫、肺癌、脳腫瘍、胃癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、または頭頸部癌である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
哺乳動物において腫瘍退縮を生じさせるための方法であって、前記方法が、請求項32および39のいずれか1つに記載の組成物を、腫瘍を有する哺乳動物に投与することを含み、その腫瘍の大きさが投与後に縮小する、方法。
【請求項44】
前記哺乳動物がヒトである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記のがんが、骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、リンパ腫、中皮腫、肺癌、脳腫瘍、胃癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、または頭頸部癌である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
複製能を有する水疱性口内炎ウイルスを細胞からレスキューする方法であって、前記水疱性口内炎ウイルスは、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むRNA分子を含むが、前記RNA分子は機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いており、前記方法は:
(a)複製能を有する水疱性口内炎ウイルスが産生される条件下で、RNA分子をコードする核酸を前記細胞に挿入すること、ならびに
(b)前記の複製能を有する水疱性口内炎ウイルスを回収すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月9日出願の米国仮出願第62/913,111号の利益を主張するものである。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(そして、参照により本出願の開示に組み入れられる)。
【0002】
1.分野
本明細書は、イヌジステンパーウイルス(CDV)ヘマグルチニン(H)および融合(F)ポリペプチドに関するものである。たとえば、本明細書は、CDV Hポリペプチド、CDV Fポリペプチド、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、水疱性口内炎ウイルス(VSV))、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を作製する方法、ならびに、がんまたは感染症を治療するために、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景情報
VSV、麻疹ウイルス(MeV)、およびアデノウイルスなどのウイルスは、がんを治療するための腫瘍溶解性ウイルスとして使用することができる。水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス科に属するウイルスである。VSVゲノムは一分子のマイナス鎖RNAであって、これは、5つの主要なポリペプチドである、ヌクレオカプシド(N)ポリペプチド、リン酸化タンパク質(P)ポリペプチド、マトリックス(M)ポリペプチド、糖タンパク質(G)ポリペプチド、およびウイルスポリメラーゼ(L)ポリペプチドをコードしている。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書は、CDV Hおよび/またはCDV Fポリペプチドに関する方法および材料を提供する。たとえば、本明細書は、CDV Hポリペプチド、CDV Fポリペプチド、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、水疱性口内炎ウイルス(VSV))、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子、CDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を作製する方法、ならびにがんまたは感染症を治療するためにCDV Hポリペプチドおよび/またはCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を使用する方法を提供する。
【0005】
本明細書に記載されるように、CDV Fポリペプチドは、CDV Hポリペプチドと組み合わせて細胞により発現した場合、そのCDV Hポリペプチドと組み合わせて同等の細胞により発現した野生型CDV Fポリペプチドの融合活性のレベルと比べて融合活性が高まるように、設計することができる。たとえば、トランケート型シグナルペプチド配列を有するように設計されたCDV Fポリペプチドは、CDV Hポリペプチド(たとえば、野生型または脱標的化CDV Hポリペプチド)と組み合わせて細胞により発現したとき、同等の細胞によりそのCDV Hポリペプチドと組み合わせて発現した全長シグナルペプチド配列を含有する野生型CDV Fポリペプチドの融合活性のレベルと比べて、増加した融合活性を示す可能性がある。このようなCDV Fポリペプチドをウイルスに組み込んで、そのウイルスに感染した細胞で観察される融合活性を増加させる能力を有する組換えウイルスを作製することができる。
【0006】
また、本明細書に記載されるように、CDV Hポリペプチドは、Fポリペプチド(たとえば、CDV Fポリペプチド)と組み合わせて使用されるときに、Nectin-4ポリペプチド、SLAMF1ポリペプチド、または野生型Vero細胞上に存在するウイルス受容体を介した、細胞侵入または細胞融合の能力を有しないように、脱標的化するよう設計することができる。このようなCDV Hポリペプチドは、目的とする1以上の標的に対する再標的化能力を有するHポリペプチドを設計するための、プラットフォームを提供することができる。たとえば、本明細書に記載のHポリペプチドは、目的の標的に対する結合特異性を有する結合配列(たとえば、一本鎖抗体(scFv)配列)を含有するようにさらに改変することが可能であって、その再標的化HポリペプチドおよびFポリペプチドを含有する組換えウイルスが、その標的を発現する細胞に感染できるようにすることができる。
【0007】
さらに、VSVなどのウイルスは、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、CDV Fポリペプチド(たとえば、野生型CDV Fポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Fポリペプチド)、CDV Hポリペプチド(たとえば、野生型CDV Hポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Hポリペプチド)、およびVSV Lポリペプチドをコードする核酸分子を有するように設計することができる。このような核酸分子は、機能的なVSV Gポリペプチドを欠いている、および/または、全長VSV Gポリペプチドをコードする核酸配列を欠いている可能性がある。たとえば、本明細書に記載のVSVは、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、CDV Fポリペプチド(たとえば、野生型CDV Fポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Fポリペプチド)、CDV Hポリペプチド(たとえば、野生型CDV Hポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Hポリペプチド)およびVSV Lポリペプチドをコードしているが、機能的なVSV Gポリペプチドをコードする能力を欠いた核酸配列を有するように設計することができる。一部の場合において、本明細書に記載のVSVは、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、CDV Fポリペプチド(たとえば、野生型CDV Fポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Fポリペプチド)、CDV Hポリペプチド(たとえば、野生型CDV Hポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Hポリペプチド)およびVSV Lポリペプチドをコードする核酸分子を有するように設計することができるが、そのCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドをコードする核酸配列は、野生型VSVにおいて全長VSV Gポリペプチドをコードする核酸配列が通常存在する位置にある。一部の場合において、本明細書に記載のVSVは、VSV Gポリペプチドをコードする核酸配列が、CDV Fポリペプチド(たとえば、野生型CDV Fポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Fポリペプチド)およびCDV Hポリペプチド(たとえば、野生型CDV Hポリペプチドまたは本明細書に記載の改変型CDV Hポリペプチド)をコードする核酸で置き換えられているような核酸分子を有するように設計することができる。
【0008】
本明細書に記載されるように、VSV/CDVハイブリッドは、CDV選択性、および野生型または親VSVで見られるような迅速な複製を有するように設計することができる。一部の場合において、本明細書に記載のVSV/CDVハイブリッドは、あらかじめ選択されたトロピズムを有するように設計することができる。たとえば、Nectin-4および/またはSLAMF1に対する特異性をノックアウトしたCDV Fおよび/またはHポリペプチドを使用することができる。このような場合、scFvまたはポリペプチドリガンドを、たとえば、CDV HポリペプチドのC末端に結合させることができる。その場合、scFvまたはポリペプチドリガンドが、VSV/CDVハイブリッドのトロピズムを決定づけることができる。VSV/CDVハイブリッドを細胞受容体(たとえば、腫瘍関連細胞受容体)に向けて方向づけるために使用することができるscFvの例には、抗EGFR、抗αFR、抗CD46、抗CD38、抗HER2/neu、抗EpCAM、抗CEA、抗CD20、抗CD133、抗CD117(c-Kit)、および抗CD138および抗PSMA scFvが含まれるが、それに限定されない。VSV/CDVハイブリッドを方向づけるために使用することができるポリペプチドリガンドの例としては、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターuPAポリペプチド、IL-13またはIL-6などのサイトカイン、一本鎖T細胞受容体(scTCR)、エキスタチンポリペプチド、幹細胞因子(SCF)、EGFおよびインテグリン結合ポリペプチドなどがあるが、それに限定されない。
【0009】
いくつかの例において、本明細書に記載のVSV/CDVハイブリッドは、インターフェロン(IFN)ポリペプチド(たとえば、ヒトIFN-βポリペプチド)、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)ポリペプチド(たとえば、ヒトNISポリペプチド)、蛍光ポリペプチド(たとえば、GFPポリペプチド)、任意の適当な治療用導入遺伝子(たとえば、HSV-TKまたはシトシンデアミナーゼ)、宿主免疫に拮抗するポリペプチド(たとえば、インフルエンザNS1、HSVγ34.5またはSOCS1)、または腫瘍抗原(たとえば、がんワクチン成分)をコードする配列を含む核酸分子を有することができる。IFNポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸とVSV Lポリペプチドをコードする核酸との間に配置することができる。このような位置は、がん細胞における効率的なウイルス複製を妨害することなく、非がん組織における抗ウイルス自然免疫応答を活性化するのに有効な量のIFNポリペプチドをウイルスが発現することを可能にし、したがって潜在的なウイルス毒性を緩和することができる。NISポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸とVSV Lポリペプチドの間に配置することができる。このような位置は、(a)感染細胞におけるヨウ素の選択的蓄積を可能にするのに有効な量のNISポリペプチドをウイルスが発現することを可能にし、それによって放射性同位元素を用いたウイルス分布のイメージング、および感染したがん細胞を標的とする放射線治療をいずれも可能にし、(b)感染細胞に対して毒性となるほど高くない量のNISポリペプチドをウイルスが発現することを可能にすることができる。VSVのゲノム内で、IFNポリペプチドをコードする核酸を、VSV Mポリペプチドをコードする核酸とVSV Lポリペプチドをコードする核酸との間に配置し、NISポリペプチドをコードする核酸をVSV Mポリペプチドをコードする核酸とVSV Lポリペプチドの間に配置すると、生存能力があり、複製および伝播する能力を有し、適当なレベルの機能的IFNポリペプチドを発現し、さらにイメージング用および放射線治療用の放射性ヨウ素を取り込むために適当なレベルの機能的NISポリペプチドを発現する、VSVをもたらすことができる。
【0010】
一般に、本明細書のある態様は、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有するCDV Fポリペプチドを特徴とする。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV Fポリペプチド、およびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0011】
別の実施形態において、本明細書は、CDV Fポリペプチドをコードする核酸分子を特徴とする。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0012】
別の実施形態において、本明細書は、CDV Fポリペプチドを含む組換えウイルスを特徴とする。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0013】
別の実施形態において、本明細書は、核酸分子を含む組換えウイルスを特徴とする。核酸分子はCDV Fポリペプチドをコードすることができる。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0014】
別の実施形態において、本明細書は、配列番号2のアミノ酸ナンバリングに従って、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、548A、またはそれらの組み合わせを含むCDV Hポリペプチドを特徴とする。CDV Hポリペプチドは、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aのうち2、3、4、5または6個の組み合わせを含むことができる。CDV Hポリペプチドは、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aのうち7、8、9、10または11個の組み合わせを含むことができる。CDV Hポリペプチドは、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、および548Aのうち12、13または14個の組み合わせを含むことができる。CDV Hポリペプチドは、454A、464A、479A、494A、510A、520A、525A、526A、527S、528A、529A、537A、539A、547A、および548Aを含むことができる。CDV Hポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含むことができる。
【0015】
別の実施形態において、本明細書は、配列が、配列番号5のアミノ酸ナンバリングに従ってP454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびT/M548からなる一群から選択される、提示されたアミノ酸残基の変異を含むことを除いて、図11に示す配列を含むCDV Hポリペプチドを特徴とする。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される2、3、4、5、または6個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される7、8、9、10、または11個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される12、13、または14個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含むことができる。
【0016】
別の実施形態において、本明細書は、CDV Hポリペプチドをコードする核酸分子を特徴とする。CDV Hポリペプチドは、配列が、配列番号5のアミノ酸ナンバリングに従ってP454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびT/M548からなる一群から選択される、提示されたアミノ酸残基の変異を含むことを除いて、図11に示す配列を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される2、3、4、5、または6個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される7、8、9、10、または11個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される12、13、または14個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含むことができる。
【0017】
別の実施形態において、本明細書は、CDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスを特徴とする。CDV Hポリペプチドは、配列が、配列番号5のアミノ酸ナンバリングに従ってP454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびT/M548からなる一群から選択される、提示されたアミノ酸残基の変異を含むことを除いて、図11に示す配列を含むポリペプチドである。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される2、3、4、5、または6個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される7、8、9、10、または11個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される12、13、または14個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含むことができる。ウイルスはCDV Fポリペプチドを含むことができるが、このCDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を含む。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0018】
別の実施形態において、本明細書は、CDV Hポリペプチドをコードする核酸分子を含む組換えウイルスを特徴とする。CDV Hポリペプチドは、配列が、配列番号5のアミノ酸ナンバリングに従ってP454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびT/M548からなる一群から選択される、提示されたアミノ酸残基の変異を含むことを除いて、図11に示す配列を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される2、3、4、5、または6個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される7、8、9、10、または11個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群から選択される12、13、または14個の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、その一群の提示アミノ酸残基の変異を含むことができる。CDV Hポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸ナンバリングによるM437を含むことができる。ウイルスはCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。
【0019】
別の実施形態において、本明細書は、(a)CDV、および(b)VSV、MeV、またはアデノウイルスのハイブリッドウイルスである、本明細書に記載の組換えウイルスを特徴とする。
【0020】
別の実施形態において、本明細書は、RNA分子を含む、複製能を有する水疱性口内炎ウイルスを特徴とするものであって、このRNA分子は、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むが、このRNA分子は、機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いている。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。CDV Hポリペプチドは、上記の段落の一つに記載のCDV Hポリペプチドとすることができる。CDV Hポリペプチドは、一本鎖抗体のアミノ酸配列を含むことができる。一本鎖抗体は、CD19、CD20、CD38、CD46、EGFR、αFR、HER2/neu、またはPSMAに対する一本鎖抗体とすることができる。RNA分子は、NISポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むことができる。
【0021】
別の実施形態において、本明細書は、上記の段落のいずれかのウイルスを含む組成物を特徴とする。
【0022】
別の実施形態において、本明細書は、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含む、核酸ストランドを含む核酸分子を特徴とするが、この核酸ストランドは、機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いている。CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸残基75個未満のシグナルペプチド配列を有することができる。シグナルペプチド配列は、配列番号6の75個以下のアミノ酸残基を含むことができる。CDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~60を欠くか、または配列番号4の少なくともアミノ酸残基1~105を欠くという条件付きで、配列番号4を含むことができる。このCDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む組換えウイルスは、全長の野生型CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドを含む同等の対照組換えウイルスと比較して、増加した融合活性を示すことができる。CDV Hポリペプチドは、上記の段落の一つに記載のCDV Hポリペプチドとすることができる。CDV Hポリペプチドは、一本鎖抗体のアミノ酸配列を含むことができる。一本鎖抗体は、CD19、CD20、CD38、CD46、EGFR、αFR、HER2/neu、またはPSMAに対する一本鎖抗体とすることができる。RNA分子は、NISポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むことができる。
【0023】
別の実施形態において、本明細書は、上記の段落のいずれかの核酸分子を含む組成物を特徴とする。
【0024】
別の実施形態において、本明細書は、がんを治療する方法を特徴とする。本方法は、本明細書に記載の組成物(たとえば、本明細書に記載のウイルスを含有する組成物)を、がん細胞を有する哺乳動物に投与することを含み、その哺乳動物内のがん細胞の数は、投与後に減少する。哺乳動物は、ヒトとすることができる。がんは、骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、リンパ腫、中皮腫、肺癌、脳腫瘍、胃癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、または頭頸部癌とすることができる。
【0025】
別の実施形態において、本明細書は、哺乳動物において腫瘍退縮を生じさせるための方法を特徴とする。本方法は、本明細書に記載の組成物(たとえば、本明細書に記載のウイルスを含有する組成物)を、腫瘍を有する哺乳動物に投与することを含み、その腫瘍の大きさは投与後に縮小する。哺乳動物は、ヒトとすることができる。がんは、骨髄腫、メラノーマ、神経膠腫、リンパ腫、中皮腫、肺癌、脳腫瘍、胃癌、結腸癌、直腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、肝臓癌、または頭頸部癌とすることができる。
【0026】
別の実施形態において、本明細書は、複製能を有する水疱性口内炎ウイルスを細胞からレスキューする方法を特徴とする。水疱性口内炎ウイルスは、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を含むRNA分子を含んでおり、このRNA分子は機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠いている。本方法は、(a)複製能を有する水疱性口内炎ウイルスが産生される条件下で、RNA分子をコードする核酸を細胞に挿入すること、ならびに(b)複製能を有する水疱性口内炎ウイルスを回収すること、を含む。
【0027】
特に指定のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似した、または同等の、方法および材料を使用して、本発明を実施することができるが、適当な方法および材料は以下に記載される。本明細書に記載のすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。矛盾が生じた場合には、定義を含めて、本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は、例示に過ぎず、限定することを意図しない。
【0028】
本発明の1以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】CDV遺伝子型に関するヘマグルチニン遺伝子の最尤法による分子系統解析。一般時間反転モデルに基づく最尤法を用いて系統樹を推定した。解析は119のCDV H全ヌクレオチド配列を対象とした。22458/15株および5804株はそれぞれArtic-like遺伝子型およびEurope-1/South America 1遺伝子型に分類された。進化解析はMEGA7で行った。
図2-1】標的細胞融合のためのCDV H/F複合体の作製。(A)シンシチウム形成アッセイ:単層の、Vero細胞、およびヒトNectin-4ポリペプチドまたはイヌSLAMF1ポリペプチドを発現するVero細胞に、CDV5804、CDV22458/16、またはCDVOnderstepoort(large plaque-forming)(CDVOL)由来のHおよびFポリペプチドをコードする発現プラスミドを、指示されるように同時にトランスフェクトした。シンシチウム形成は、ギムザ染色してから24時間後に記録した。(B)細胞に、感度を高めるために、GFP発現プラスミドをさらにトランスフェクトした。核の染色にはDAPIを使用した。(C)受容体拡大型モルビリウイルス付着タンパク質の模式図。受容体結合タンパク質は、細胞質尾部(C)、膜貫通ドメイン(T)、およびCD38特異的一本鎖可変フラグメント(scFv)に続いてHisタグに融合されたエクトドメインを含有した。(D)受容体の拡大したモルビリウイルスの付着タンパク質の表面発現。HEK293T細胞に、CD38受容体に対して再標的化された指定の付着タンパク質をトランスフェクトし、PE結合抗HIS抗体を用いてFACSにより表面発現を解析した。(E)自己会合性スプリットルシフェラーゼアッセイに基づく定量的融合アッセイの模式図。エフェクター細胞に、HおよびFポリペプチドをコードするプラスミド、ならびにウミシイタケルシフェラーゼ(RL)および緑色蛍光タンパク質(GFP)の二分割した半分をコードするプラスミドをトランスフェクトした。受容体を有する標的細胞に、デュアルスプリットレポーター遺伝子のもう半分をコードするプラスミドをトランスフェクトし、エフェクター細胞と混合した。内容物の混合により、そうしなければ機能しない二分割のレポーター遺伝子の酵素活性を回復させ、その活性をリアルタイムで測定した。(F)CD38-受容体に拡張されたモルビリウイルス付着タンパク質の細胞標的化融合活性。エフェクター細胞に、指示された付着/融合ポリペプチドペアを同時にトランスフェクトした。標的細胞との共培養後、発光シグナルを記録した。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で実施した1つの代表的な実験から得たものである。注目すべきは、CDV FシグナルペプチドがMEVの相同ペプチドで置き換えられたことである(MeV SP)。統計的有意性は、Turkey多重比較検定を用いた二元配置分散分析(two-way ANOVA)により算出した.*、p<.02;***、p<0.0005;****、p<.0001。(G)CDV Hポリペプチドの完全性。HEK293T細胞に、指示されたCDV Hポリペプチドをトランスフェクトし、細胞溶解物を抗HIS抗体(CDV H)または抗-β-アクチン(ローディングコントロール)でイムノブロットした。(H)再標的化されたH/F複合体の細胞標的化融合。細胞融合は、(C)に記載のように測定した。エフェクター細胞に、受容体を利用できない(receptor-blind)CD38再標的化ペアMeV H/F、およびCDV H5804/F22458/16を同時にトランスフェクトし、関連受容体を発現するCHO細胞でオーバーレイした。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で行った1つの代表的な実験から得たものである。(I) CDV H/F複合体のHer2/neuへの再標的化。Her2/neu特異的scFvまたはアフィボディ(ZX)をディスプレイしたCDV H/F複合体を用いて、細胞融合アッセイを実施した。ディスプレイされたリガンドに対する結合アフィニティを示す。(J)受容体の発現と受容体結合親和性との関係。異なる親和性を有するHer2/neu特異的アフィボディをディスプレイしたCDV Hポリペプチドの融合活性を、Her2/neu陽性細胞株で評価した:HT1080 (3.4 ×103分子/細胞)、Sko3pi (4.19×103分子/細胞)、TET67L (1.5×105分子/細胞)。CDV Fのみをトランスフェクトした細胞をネガティブコントロールとして使用した。
図2-2】図2-1の続きである。
図2-3】図2-2の続きである。
図2-4】図2-3の続きである。
図2-5】図2-4の続きである。
図3-1】CDVのH/F複合体は、麻疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質と置き換わり、細胞を標的とした侵入、および抗麻疹ウイルス抗体抵抗性をもたらすことができる。(A)細胞表面での発現。CHO細胞に、DSPプラスミドの1つ、およびFポリペプチド(MeVまたはCDV F224568/16)発現プラスミドとともに、指示されたHポリペプチド発現プラスミド(HIS-タグ付き)をトランスフェクトした。24時間後、抗HIS抗体を用いたCELISAによりHの発現を測定した。(B)(A)のようにトランスフェクトしたCHO細胞を、指示されたCHO細胞由来細胞株とともに共培養し、9時間の経時的な発光値を得た。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で行った代表的な1つの実験から得られた。(C)CD46に対して標的化されたCDV H/F複合体をコードする麻疹ウイルスのタンパク質組成(scFv A09、Stealth 2.0)。1.6E4 TCID50粒子をSDS-PAGEに供し、関連抗体でイムノブロットした。麻疹ウイルスを対照として使用した。(D)増殖動態。Stealth 2.0ウイルスの増殖動態を、指定の時点でVeroおよびVero-HIS(感染多重度(MOI)=0.03)上で測定した。Vero/hSLAMF1細胞上のMeVの増殖動態を、比較のために含めた。(E)中和アッセイ。MeVおよびCDVの抗血清を用いて、蛍光フォーカス減少中和アッセイを行った。異なる希釈度の抗血清を、一定量のウイルスとともに37℃で1時間プレインキュベートした。その後、この混合物を使用してVero-HIS細胞に感染させ、抗体を含まない対照ウェルのウイルス量を100%とした。すべての中和曲線は、同一の96ウェルプレートで4回反復して行われた曲線の平均値およびSDを表す。(F)組換えウイルスの受容体選択性。関連する受容体を発現するCHO細胞を、指示されたMOIで組換えウイルスに感染させた。GFP自己蛍光は2日後に記録された。
図3-2】図3-1の続きである。
図4-1】CD46を標的とするエンベロープキメラMeVの腫瘍溶解活性。CDB17 SCIDマウスにヒト骨髄腫細胞株U266.B1を皮下移植した。腫瘍体積が500 mm3に達した時点で、マウスを無作為化し、無処置のまま(PBS対照)、または1×105 TCID50粒子を単回静脈内投与して処置した。その後、腫瘍体積(B)および生存率(C)を記録した。
図4-2】図4-1の続きである。
図5】いくつかの実施形態による典型的な組換えVSVの模式図。VSV-hIFNβ-NIS:VSV Indianaを操作して、M/G遺伝子間領域においてヒトインターフェロンβ(hIFNβ)を発現し、G/L遺伝子間領域においてヒトヨウ化ナトリウムシンポーター(NIS)を発現するようにし、他に記載されるようにレスキューした(Naik et al., Leukemia, 26:1870-78 (2012))。CDV-F22458/16(CDV FポリペプチドのシグナルペプチドがMeV Fポリペプチドのシグナルペプチドで置き換えられている)およびCDV-H5804を発現するVSVを、pVSV-スマートプラットフォームを用いて作製した。CDV-H5804ポリペプチドにおける点変異、Y539AおよびR529A、を部位特異的変異誘発により導入し、イヌのNectin-4およびSLAMF1ポリペプチドに対する天然のトロピズムをそれぞれ除去した。CDV-H5804のC末端にEGFRまたはCD38標的化scFvを、IGESリンカーペプチドおよびH6ポリヒスチジンタグによりディスプレイすることによって、標的化ウイルスを作製した。再標的化されたVSV-CDV F/H構築物は、Vero抗H6上でレスキューされ、感染、ウイルス増幅、および標的細胞の融合を可能にした。各組換えウイルスの力価を示す。
図6】指示されたCHO細胞(野生型CHO細胞または指定の受容体を安定して過剰発現するCHO細胞)の単層を、VSV-CDVFH-GFPまたはVSV-CDVF/Haa-αEGFR-GFPにモック(mock)感染または感染させた(MOI = 0.2)。蛍光顕微鏡写真は、指示された時点で100倍の倍率で撮影された。GFPの発現(緑)は、単層内のウイルス感染および拡散と相関する。
図7】指示されたCHO細胞(野生型CHO細胞または受容体EGFRもしくはCD38を安定して発現するCHO細胞)の単層を、VSV-CDVFHaa-αEGFRまたはVSV-CDVFHaa-αCD38に感染させた(MOI = 0.1)。42時間後、細胞単層をパラホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。写真は40倍の倍率で撮影した。
図8】腹膜に異種移植されたヒト卵巣癌に対するキメラVSV-CDVFHaa-αEGFRの治療効果。雌の5-6週齢の胸腺欠損ヌードマウス(Envigo, Indianapolis, IN)に、2×106 SKOV3ip.1-Fluc細胞(200μL/マウス)を、腹腔内移植した(-7日目)。移植後7日目(0日目)に、担がんマウスを、IVISスペクトル(Perkin Elmer, Hopkinton, MA)を用いてホタルルシフェラーゼのシグナルに基づいて無作為化した。マウスは、マイクロチップおよび耳の切欠きによって識別された。無作為化後、マウスは、腹腔内注射により1×107 TCID50のウイルスまたは生理食塩水対照(250μL/マウス)の単回投与を受けた。マウスは、体重の10%を超える、腹水性の皮下注射部位腫瘍を発症した場合、または体重が20%を超えて減少した場合に安楽死させた。すべての生存マウスは、実験終了時に安楽死させた(ウイルス処置後92日目)。カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線をプロットし、ログランク検定で比較した。臨床観察および体重は、研究の終了またはマウスの安楽死まで、1週間に3回記録した。
図9-1】図9は、CDV Hポリペプチド(配列番号2)をコードするCDV Hオープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号1)である。
図9-2】図9-1の続きである。
図10-1】図10は、CDV Fポリペプチド(配列番号4)をコードするCDV Fオープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号3)である。
図10-2】図10-1の続きである。
図11-1】野生型CDVエンベロープのEGFRおよびCD38への再標的化。(A)再標的化された野生型CDV Hポリペプチドを生成するためのクローニング戦略の模式図(上)。標準的な1文字のアミノ酸略号は、天然受容体(SLAMF1およびNectin-4)の利用を除去するために導入された変化を示すために使用される(下)。アミノ酸のナンバリングは、配列番号5を基準とする。一本鎖抗体フラグメントは、Factor Xa(Fxa)切断部位(IEGRアミノ酸配列)を用いてH糖タンパク質のC末端伸長としてディスプレイされる。Vero-His細胞上でのウイルスレスキューを容易にするために、必要に応じてすべての構築物に6-ヒスチジンタグを含める。(B)CD38に標的化された受容体ブラインドHポリペプチドの標的化融合能力を示す同時トランスフェクション実験。12ウェルプレート中のCHO-CD38細胞に、CMV駆動CDV FプラスミドおよびCMV駆動野生型CDV H-CD38またはCMV駆動受容体ブラインドCDV H-CD38のいずれかを同時にトランスフェクトし、細胞を24時間後に固定して染色し、画像化した。(C) CDV H構築物による標的細胞融合は、プールされた麻疹免疫ヒト血清に対して抵抗性であった。CHO-CD38細胞に、CMV駆動HおよびFプラスミドを、可視化のためのCMV駆動GFPプラスミドとともに同時にトランスフェクトし、指示された希釈液とともにインキュベートした。細胞は、トランスフェクトの24時間後に写真撮影した。(D)標的化CDV Hポリペプチドを有するキメラ麻疹ウイルスは、目的の受容体を発現するCHO細胞、および目的の受容体を有するヒト腫瘍細胞株のパネルに対して特異性を保持している。細胞株は0.5のMOIでそれぞれのウイルスに感染させ、48時間後に写真を撮影した。(E)再標的化されたCDVエンベロープを有するキメラ麻疹ウイルスのin vivoでの腫瘍溶解効果および特異性を検証するための実験の概略設計。ヌードマウスに、5×106個のSKOV3ip-fluc細胞を、皮下(SQ)または腹腔内(IP)に移植した後、10日目から隔日に、皮下腫瘍には1×106 TCID50/mLを腫瘍内(IT)に、IP腫瘍には2×106 TCID50/mLをIPに、6回投与した。(F) それぞれのウイルスで処置したSKOV3ip皮下腫瘍の個々の腫瘍体積(上)およびそれぞれのウイルスで処置した腹腔内腫瘍を有する動物の生存率(下)。
図11-2】図11-1の続きである。
図11-3】図11-2の続きである。
図12-1】図12は、代表的な数のCDV Hポリペプチドのアラインメントである。最上段の配列(AF378705.1_America1とする)は配列番号5であり、指示された箇所でナンバリングのために使用される。
図12-2】図12-1の続きである。
図12-3】図12-2の続きである。
図12-4】図12-3の続きである。
図12-5】図12-4の続きである。
図12-6】図12-5の続きである。
図12-7】図12-6の続きである。
図12-8】図12-7の続きである。
図12-9】図12-8の続きである。
図12-10】図12-9の続きである。
図12-11】図12-10の続きである。
図12-12】図12-11の続きである。
図12-13】図12-12の続きである。
図12-14】図12-13の続きである。
図12-15】図12-14の続きである。
図12-16】図12-15の続きである。
図13-1】図13は、代表的な数のCDV Fポリペプチドのアラインメントである。シグナルペプチド配列は、アミノ酸1位からアミノ酸135位までである。最上段の配列(AF378705.1_America1とする)は、配列番号7であり、指示された箇所でナンバリングのために使用される。
図13-2】図13-1の続きである。
図13-3】図13-2の続きである。
図13-4】図13-3の続きである。
図13-5】図13-4の続きである。
図13-6】図13-5の続きである。
図13-7】図13-6の続きである。
図13-8】図13-7の続きである。
図13-9】図13-8の続きである。
図13-10】図13-9の続きである。
図13-11】図13-10の続きである。
図14】CDV OLはSLAMF1およびNECTIN4受容体を欠いた細胞を感染させることができる。(A)CDV分離株によるVero細胞への感染性をOL株と比較して評価した。細胞をMOI = 0.1(Vero-dogSLAMF1細胞で判定される)で感染させ、48時間後に可視化のためにHema-Quickで染色した。(B)異なる関連受容体を発現するCHO細胞のパネルに、CDV H/F OL糖タンパク質を含むeGFPレポーターMeVを感染させた。感染性は蛍光顕微鏡を用いて報告した。倍率40倍。
図15-1】野生型CDV H/Fと短縮型シグナルペプチドとの異種性の組み合わせは、H-F相互作用が弱くなるため、受容体依存性の融合が促進される。(A) CDV-F、CDV-H、およびeGFPを同時にトランスフェクトした細胞におけるシンシチウムの形成。CDV-Fのシグナルペプチドは、模式図中の黒いボックスで示すように、MeV-Fのホモログで置き換えた。同時トランスフェクションから24時間後、融合スコアをGFPチャンネル下で評価した。(B)定量的融合アッセイ。エフェクターBHK細胞は、付着タンパク質(CDV-HまたはNipah-G)および融合タンパク質(F)の指示された組み合わせに加えて、デュアルスプリットレポータープラスミドの一方でトランスフェクトした。標的CHO細胞およびCD38発現CHO細胞(CHO-CD38)は、もう一方のデュアルスプリットレポータープラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの16時間後の細胞をオーバーレイし、8時間後にウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した(RLU)。値は、3連で行った1つの代表的な実験の平均±標準偏差(SD)を表す。統計的有意性は、Holm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて判定した(ns、有意でない;*、p<0.05;**、p<0.002;***、p<0.0001)。(C) CDV-H/Fの免疫共沈降。wtまたは変異型HISタグ付きCDV-Hタンパク質のいずれか一方をFLAGタグ付きCDV-Fタンパク質とともに一過性に発現するHEK293T細胞を溶解し、抗FLAG抗体で免疫沈降(IP)させた。シグナル強度は、抗HIS抗体を用いて測定した。(D)完全に再標的化されたCDV-HおよびMeV-Hタンパク質の、CHO細胞およびCHO細胞由来細胞株への定量的融合アッセイ。HISタグ付きの、またはHISタグ付きでCD38に再標的化された、MeV-H/FおよびCDV-H/F複合体を、エフェクター細胞にトランスフェクトし、発光シグナルを経時的に測定した。MeV-Haals = 変異Y481A、R533A、S548LおよびF549Sを介してCD46、NECTIN-4およびSLAMF1について利用できない(blind)MeV-H。
図15-2】図15-1の続きである。
図15-3】図15-2の続きである。
図15-4】図15-3の続きである。
図16-1】CDV-Hタンパク質のアミノ酸残基M437の、異なる遺伝子群間での保存。GenBankから検索されたCDV-H配列を用いて配列アラインメントを行ったが、これにはSPA.Madrid/22458/16分離株について今回決定されたCDV-H配列が含まれる。アクセッション番号を示す。
図16-2】図16-1の続きである。
図16-3】図16-2の続きである。
図16-4】図16-3の続きである。
図17-1】キメラリガンドをディスプレイする受容体結合タンパク質の完全性および発現。(A)抗CD38 scFvに融合された指定のタンパク質、または融合されていない指定のタンパク質をトランスフェクトした、HEK293T細胞のウェスタンブロット分析。タンパク質は、抗HIS抗体または抗β-アクチン抗体(ローディングコントロール)でブロットした。(B)透過処理あり、またはなしで、固定されたHEK293T細胞上での付着タンパク質および変異型タンパク質発現をフローサイトメトリーで解析した。ヒストグラムは、2回繰り返された生物学的実験からの1つの代表的な実験から得られたものである。各ヒストグラムの右上に、2回繰り返された生物学的実験からの幾何平均強度±SDを示す。塗りつぶされた曲線領域は、空のプラスミドをトランスフェクトした細胞を示す。
図17-2】図17-1の続きである。
図18-1】FエクトドメインへのFLAGタグの挿入、およびそれがタンパク質の生物反応性に及ぼす影響。(A)未切断MeV-FおよびCDV-Fの模式図。NH2およびCOOH末端、シグナルペプチド(SP)、融合ペプチド(FP)、ならびに膜貫通(TM)および細胞質領域が示される。切断部位周辺の配列(太字)および融合ペプチドの配列を示す。ナンバリングは同型シグナルペプチドを考慮した。(B)異なる位置にFLAG挿入を有する相同HおよびF発現プラスミドを同時にトランスフェクトした後のVero細胞におけるシンシチウム形成。トランスフェクションの16時間後に細胞を染色し、定量のために顕微鏡写真を取得した。(C)シンシチウム形成の定量。データは平均値±SDとして示す(n=20)。有意性はHolm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて決定した(ns、有意でない;***、p≦0.001)。(D)アミノ酸216においてFLAGタグ挿入を有するか、または有しないCDV-H/F SPAの同時トランスフェクションに関するデュアルスプリットタンパク質融合アッセイ。ルシフェラーゼシグナルは8時間後に測定した。実験は技術的に2連で行った。
図18-2】図18-1の続きである。
図19】scFvのCD46特異性。(A)標的タンパク質のSDS-PAGE分析。MW:分子量ラダー、C:クマシー染色、WB:抗CD46抗体を用いたウェスタンブロット分析。(B) 実験に使用したCD46のサイズ排除クロマトグラフィートレース。推定MWは、図のように検量線から得られる。(C)ELISAで測定された、CD46またはNECTIN4に対するscFv-Fcタグ付き融合タンパク質の結合。検出は、Fc部分をタンパク質量の対照として用いて行った。実験は技術的に二連で行った。データは、平均±SD (n=2)として示される。有意性は、Holm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて判定された。*、p<0.05;**、p<0.005。
図20-1】ディスプレイされたscFvのCD46結合親和性は、再標的化CDV H/F複合体のCD46依存性細胞間融合を決定づける。(A)一本鎖抗体フラグメント(scFv)を含有する(実線)または含有しない(破線)バイオセンサー表面へのCD46の結合に関する代表的なセンサーグラム(レゾナンスユニット、RU)。実験データは、scFv K2を300秒間注入し、その後バッファーを注入したことを表す。その後、1μMのCD46を両方のバイオセンサー表面に流し、注入中(結合)および注入後(解離)のシグナルを記録した。表面は、本明細書に記載のように、サイクルの終了時に最終的に再生された。(B)表面プラズモン共鳴によって評価されるCD46のscFvへの結合。さまざまな濃度のCD46のscFvへのレスポンスユニット(黒い線)を示すセンサーグラム。最適な1:1結合モデルを赤い破線として示す。結合親和性(Kd)は、結合および解離速度から決定された(表1)。(C) CHO細胞上でのMeV-HおよびCDV-Hバリアントの定量的融合アッセイ。実験は二連で行い、2回繰り返して、同様の結果となった(図21を参照のこと)。データは平均値±SDで示す。
図20-2】図20-1の続きである。
図21】CDV-H/F複合体上にディスプレイされたscFvの結合親和性は、細胞-細胞融合を促進する。(A)図20Cの定量的融合アッセイで使用した細胞タンパク質の量に関する細胞酵素結合免疫吸着検定法(CELISA)。CELISAは、抗6×HIS-tagモノクローナル抗体を用いて、指示された付着タンパク質でトランスフェクトされたCHO細胞で実施した(n=5)。(B)親和性調整scFvを用いたCD46再標的化CDV-H/F複合体の定量的融合アッセイ(図20Cに提示したものと同じデータ)。Y539Aは、NECTIN4に対する天然のトロピズムを消失させるためのCDV-Hにおける置換を示す。
図22-1】CD46に再標的化されたCDVエンベロープ糖タンパク質は、トロピズムを決定づける。(A)Stealthの模式図:CD46再標的化CDV H/Fエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されたワクチン由来の麻疹ウイルス。BioRender.comで作製した。(B)ウイルス侵入におけるCD46結合親和性の役割。細胞は、指定のMOIで、CD46に対して異なる親和性を有するscFvをディスプレイしたStealthウイルスに感染させた。eGFP発現は、感染の48時間後にモニターした。(C)HIS-偽受容体またはCD46を発現するCHO細胞および派生細胞株を、Fluc発現Stealthウイルス(K1およびA09)にMOI 0.5で感染させた。ルシフェラーゼの発現を感染の48時間後に測定した。CHO-CD46を除いてn=2、*、p値<0.05(両側t検定)。(D)VeroまたはVero-αHIS細胞におけるStealth-A09の多段階増殖動態。指示された時点で、上清および細胞ペレットの両者を回収し、Vero-αHIS細胞でウイルス力価を測定した。値およびエラーバー(SD)は、3連で行った代表的な実験について決定された。(E)ウイルスのタンパク質組成。ウェスタンブロット分析は、同量のウイルス粒子を用いて判定され、関連抗体をプローブとして用いた。標準物質の分子量を示す。(F)ウイルスのトロピズム。CHO細胞由来細胞株を、指定のeGFP発現ウイルスに感染させた。eGFP自己蛍光は、48時間後に測定した。スケールバー、200μm。(G)Stealthの遺伝的安定性。Vero-hSLAMF1細胞をStealthに感染させ、複数回継代した。8回継代した後、回収したウイルスを用いて、ヒトまたはイヌのSLAMF1を発現するVero細胞を感染させた。3日または6日間感染させた後の代表的な顕微鏡写真を示す。
図22-2】図22-1の続きである。
図22-3】図22-2の続きである。
図22-4】図22-3の続きである。
図23】改変されたCDV融合機構(apparatus)複合体に対する受容体相互作用の評価。細胞に、MeV-FおよびMeV-H、またはCDV-FおよびCDV-H再標的化バリアントを、CD46特異的scFvとともに同時にトランスフェクトした。可視化目的で、eGFPをコードする発現プラスミドを同時にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にeGFPの自己蛍光を可視化した。Y539Aは、NECTIN4に対する天然のトロピズムを消失させるためのCDV-Hにおける置換を示す。「+」および「-」記号は、半定量化のために使用された(図15Aに示されるものと同じ)。「ディスプレイなし」は、scFvがないことを示す。
図24-1】高いCD46結合親和性は、卵巣癌のマウスモデルにおけるCD46標的化Stealthウイルスの腫瘍溶解活性を決定づける。(A)実験デザインの研究概要図。ホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードするSKVOv3ip.1腫瘍細胞(SKOV3ip.Fluc)を胸腺欠損マウスに腹腔内移植した。10日目に1×106 TCID50粒子のStealthを同じ経路で投与した。その後、腫瘍組織量は、生物発光イメージング(BLI)により7日間隔でモニターされた。(B)Stealth-N1EおよびStealth-A09ウイルスで処置したSKOV3ip.Fluc保有マウスのカプラン生存曲線(n=5)。ログランク検定で定義される統計的有意性。(C)処置された動物の背側の撮影を示す代表的なBLI。放射輝度(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)は、右側に示す説明に従って、マウスの腫瘍組織量を示すように色に変換された。(D)全身発光の定量化(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)。n=5。Ns、有意ではない; *、p値<0.05; **、p<0.005。
図24-2】図24-1の続きである。
図25】Stealth-A09ウイルスは、多発性骨髄腫のマウスモデルにおいて親ウイルスであるMeVと区別できないほどの腫瘍溶解性を達成する。(A)皮下U266.B1細胞腫瘍を有するSCIDマウスを、最適以下の用量のウイルスによる静脈内処置を行った。腫瘍の増殖をノギスで測定し(n=5)、腫瘍が潰瘍化したとき、または腫瘍サイズが体重の20%に達したときに、動物を安楽死させた。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(n=5)。群間の有意差はログランク検定で判定した(*、p<0.05)。(C)全身投与後の皮下腫瘍細胞へのウイルス輸送。安楽死時に採取した各群の代表の2サンプルについて免疫組織化学によりeGFP発現を評価した。スケール、200 nm。
図26】CD46への結合親和性の増大は、CD46特異的なウイルス侵入を促進する。Fluc発現Stealthウイルスを用いて、MOIを減少させて標記細胞に感染させた。ルシフェラーゼ発現を、感染の48時間後に測定した。CHO-CD46およびStealth-A09(n=3)を除くすべてについてn=2である。
図27-1】Stealthウイルスは、MeV免疫血清の存在下で腫瘍溶解性を保持する。(A) SKOV3ip.Fluc細胞を胸腺欠損ヌードマウスに注射し、10日間定着させた。次に、該当する群のマウスに、同じ経路でウイルス処置する3時間前に、600mIUの抗MeV IgG抗体を腹腔内投与した。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(各群n=5マウス)。群間の有意差はログランク検定で判定した(ns、有意でない;*、p<0.05;**、p<0.002)。(C)処置された動物の背側の撮影を示す代表的なBLI。放射輝度(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)は、右側に示す説明に従って、マウスの腫瘍組織量を示すように色に変換された。(D)全身発光の定量化(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)。n=5である。統計的有意性は、ダネット(Dunnett)の多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって判定された。Ns、有意でない。
図27-2】図27-1の続きである。
図27-3】図27-2の続きである。
図28】麻疹ウイルスおよびStealthの間の交差中和の欠如。(A)MeVおよびStealthのウイルス中和アッセイ。ヒトABプール血清(左パネル)またはフェレット抗CDV血清(右パネル)を使用した。相対感染とは、血清非存在下での感染量と比較した、血清存在下での感染量を指す。値は、技術的に4連で実施された、2回または3回の生物学的反復実験から計算された。(B)感染したHuCD46Ge-IFNARKOマウスから得られた抗血清も、ウイルス間の交差中和を判定するために使用した、n=8(いくつかのデータポイントが重複することに注意されたい)。ND50力価は、第3次WHO国際血清標準品(3 IU/mL)で評価したときにMeVについて得られたND50に基づいて、mIU/mLに変換された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本明細書は、CDV Fポリペプチドを提供する。本明細書に記載されるように、CDV Fポリペプチドは、CDV HポリペプチドとともにCDV Fポリペプチドを含有するウイルス粒子が高い融合活性を示すように設計することができる。たとえば、CDV Fポリペプチドは、長さがアミノ酸75個以下のシグナルペプチド配列を含有するように設計することができる。通常は、野生型CDV Fポリペプチドは、約135アミノ酸長のシグナルペプチド配列を含有する。野生型CDV Fポリペプチドの135アミノ酸シグナルペプチド配列の例は、配列番号6(MHKEIPEKSRTRTHTQQDLPQQKSTEYTEIKTSRARHGITPAQRSTHYGPRTLDRLVCYIMNRAMSCKQASYRSDNIP
AHGDHEGVVHHTPESVSQGARSQLKRRTSNAINSGFQYIWLVLWCIGIASLFLCSKA)に示されている。本明細書に記載されるように、75アミノ酸長以下となるようにCDV Fポリペプチドのシグナルペプチド配列をトランケートすると、CDV Hポリペプチドとともにウイルスの一部となっている場合、完全長の野生型シグナルペプチド配列(たとえば、配列番号6)を有するCDV Fポリペプチドを含有する同等の対照ウイルスによって示される融合活性レベルと比較して、ウイルスの融合活性の増加を可能にさせるCDV Fポリペプチドをもたらすことができる。
【0031】
本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、7アミノ酸長から75アミノ酸長であるシグナルペプチド配列を含有することができる。たとえば、本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、7から75(たとえば、7から70、7から65、 7から60、7から55、7から50、7から45、7から40、7から35、7から30、7から25、10から75、15から75、20から75、25から75、35から75、45から75、50から75、55から75、65から75、20から60、25から50、30から60、または30から40)アミノ酸長であるシグナルペプチド配列を含有することができる。本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、野生型シグナルペプチド配列を、そのN末端から、そのC末端から、またはそのN末端とC末端の両方からトランケートすることによって、あるいは野生型シグナルペプチド配列のN末端とC末端の間の領域からアミノ酸を欠失させることによって、作製することができる。いくつかの場合において、麻疹ウイルスシグナルペプチド配列は、本明細書に記載のCDV Fポリペプチドのシグナルペプチドに使用することができる。本明細書に記載のCDV Fポリペプチドのシグナルペプチド配列の例には、表1に記載されるものがあるが、それに限定されない。
【0032】
【表1】
【0033】
いくつかの場合において、本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、シグナルペプチド配列全体を欠くように設計することができる。たとえば、本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、140位のアミノ酸で始まる、図13に記載のアミノ酸配列のうち1つを有することができる。
【0034】
本明細書に記載のCDV Fポリペプチドは、CDV Fポリペプチドが75アミノ酸残基より長いシグナルペプチド配列を含まない限り、任意の適当なアミノ酸配列を有することができる。本明細書に記載されるように使用することができるCDV Fポリペプチドのアミノ酸配列の例には、図13に示すアミノ酸配列が含まれるが、それに限定されない。
【0035】
また、本明細書は、CDV Hポリペプチドを提供する。本明細書に記載されるように、CDV Hポリペプチドは、CDV FポリペプチドとともにそのCDV Hポリペプチドを含有するウイルスが、野生型CDV Hポリペプチドを含有するウイルスと比較して、SLAMF1ポリペプチドおよび/またはNectin-4ポリペプチドに対するトロピズムの減少、または除去を示すように設計することができる。たとえば、CDV Hポリペプチドは、アミノ酸位置454、460、479、494、510、520、525、526、527、528、529、537、539、547、および548のうち1以上(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15)のアミノ酸位置において変異を含むように設計することができる。通常は、(CDV Fポリペプチドとともに)野生型CDV Hポリペプチドを含有するウイルスは、そのウイルスがSLAMF1陽性細胞およびNectin-4陽性細胞に感染するというような性質である、SLAMF1ポリペプチドおよびNectin-4ポリペプチドに対するトロピズムを示す。本明細書に記載されるように、CDV Hポリペプチドのアミノ酸位置P/S454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびY/M548の1以上を異なるアミノ酸(たとえば、アラニン)に変異させることにより、そのCDV Hポリペプチドを(CDV Fポリペプチドとともに)含有するウイルスがSLAMF1陽性細胞および/またはNectin-4陽性細胞に感染する能力を減少させる、または除去することができる。SLAMF1ポリペプチドおよび/またはNectin-4ポリペプチドに対するトロピズムが減少した、または除去された、本明細書に記載のCDV Hポリペプチドの例には、CDV Hポリペプチドが、P/S454、V/L/F460、L/F/W479、I494、I/L/V510、Y520、Y/N525、D/G526、I/V527、S/T528、R529、Y/D537、Y539、Y/F547、およびY/M548のうち1以上の変異(たとえば、1、2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の変異)を含有することを条件に、図12に記載のCDV Hポリペプチドが含まれるが、それに限定されない。SLAMF1ポリペプチドおよび/またはNectin-4ポリペプチドに対する減少した、または除去されたトロピズムを有するCDV Hポリペプチドを作製するために使用することができる変異の例には、表2に記載されるものが挙げられるが、それに限定されない。SLAMF1ポリペプチドおよび/またはNectin-4ポリペプチドに対する減少した、または除去されたトロピズムを有するCDV Hポリペプチドを作製するために使用することができる、表2に記載の変異の組み合わせの例には、表3に記載のものが含まれるが、それに限定されない。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
本明細書はまた、本明細書に記載のCDV Hポリペプチド、および/または本明細書に記載のCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を提供し、本明細書に記載のCDV Hポリペプチド、および/または本明細書に記載のCDV Fポリペプチドを含有する組換えウイルス(たとえば、VSV)を作製する方法も提供するものである。たとえば、組換えウイルス(たとえば、VSV)は、(a)本明細書に記載のCDV Hポリペプチド、および野生型CDV Fポリペプチドを含むように、(b)野生型CDV Hポリペプチド、および本明細書に記載のCDV Fポリペプチドを含むように、または(c)本明細書に記載のCDV Hポリペプチド、および本明細書に記載のCDV Fポリペプチドを含むように、設計することができる。いくつかの場合において、組換えウイルス(たとえば、VSV)は、CDV H 5804を有するCDV Hポリペプチド、およびCDV F 22458/16を有するCDV Fポリペプチドを含むように設計することができる。
【0039】
本明細書はまた、本明細書に記載のCDV Hポリペプチドをコードする核酸分子、および/または本明細書に記載のCDV Fポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。たとえば、核酸分子(たとえば、ベクター)は、本明細書に記載のCDV Hポリペプチド、および/または本明細書に記載のCDV Fポリペプチドをコードするように設計することができる。
【0040】
本明細書は、VSVに関連する方法および材料を提供する。たとえば、本明細書は、複製可能なVSV、複製可能なVSVをコードする核酸分子、複製可能なVSVを作製する方法、およびがんもしくは感染症の治療のために複製可能なVSVを使用する方法を提供する。
【0041】
本明細書に記載されるように、VSVは、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、CDV Fポリペプチド(たとえば、本明細書に記載のCDV Fポリペプチド)、CDV Hポリペプチド(たとえば、本明細書に記載のCDV Hポリペプチド)、およびVSV Lポリペプチドをコードするが、機能的VSV Gポリペプチドはコードしていない、核酸分子を有するように設計することができる。当然のことながら、VSVについて本明細書に記載される配列は、VSVのマイナス鎖ゲノムの生成を可能にする、ウイルスゲノムのプラス鎖cDNAをコードするプラスミドに組み込まれる。したがって、たとえばVSVポリペプチドをコードする核酸配列は、当然のことながら、そのポリペプチドを(たとえば、直接翻訳を介して)コードするプラス鎖転写物の鋳型となるRNA配列を指すと考えられる。
【0042】
CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドをコードする核酸は、VSVゲノム内の任意の位置に配置することができる。いくつかの場合において、CDV FポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸の下流に配置することができる。たとえば、CDV Fポリペプチドをコードする核酸、およびCDV Hポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸と、VSV Lポリペプチドをコードする核酸との間に、配置することができる。
【0043】
CDV Fポリペプチドをコードする任意の適当な核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、野生型CDV Fポリペプチドまたは本明細書に記載のCDV Fポリペプチドをコードする核酸は、VSVのゲノムに挿入することが可能である。
【0044】
CDV Hポリペプチドをコードする任意の適当な核酸は、VSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、野生型Hポリペプチドまたは本明細書に記載のHポリペプチドをコードする核酸は、VSVのゲノムに挿入することができる。いくつかの場合において、SLAMF1および/またはNectin-4に対する特異性を欠いたCDV Hポリペプチドをコードする核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、表2に示される1以上の変異を有するCDV Hポリペプチドをコードする核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載のVSV/CDVハイブリッドは、あらかじめ選択されたトロピズムを有するように設計することができる。たとえば、SLAMF1および/またはNectin-4に対する特異性をノックアウトしたCDV Fおよび/またはHポリペプチドを使用して、scFvまたはポリペプチドリガンドが、たとえばCDV HポリペプチドのC末端に、結合できるようにすることができる。このような場合、scFvまたはポリペプチドリガンドは、VSV/CDVハイブリッドのトロピズムを決定づけることができる。VSV/CDVハイブリッドを細胞受容体(たとえば、腫瘍関連細胞受容体)に方向付けるために使用することができるscFvの例には、抗EGFR、抗CD46、抗αFR、抗PSMA、抗HER-2、抗CD19、抗CD20、または抗CD38 scFvsが含まれるが、それに限定されない。VSV/CDVハイブリッドを方向づけるために使用することができるポリペプチドリガンドの例としては、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子uPAポリペプチド、IL-13などのサイトカイン、一本鎖T細胞受容体(scTCR)、エキスタチンポリペプチド、およびインテグリン結合ポリペプチドなどがあるが、それに限定されない。
【0045】
いくつかの場合において、本明細書に記載されるVSVの核酸分子は、IFNポリペプチド、蛍光ポリペプチド(たとえば、GFPポリペプチド)、NISポリペプチド、治療用ポリペプチド、自然免疫拮抗ポリペプチド、腫瘍抗原、またはそれらの組み合わせをコードすることができる。IFNポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸の下流に配置することができる。たとえば、IFNポリペプチドをコードする核酸は、VSV Mポリペプチドをコードする核酸と、CDV Fポリペプチドをコードする核酸またはCDV Hポリペプチドをコードする核酸との間に、配置することができる。このような配置により、ウイルスは、がん細胞での効率的なウイルス複製を妨げることなく、非がん組織における抗ウイルス自然免疫応答を活性化するのに有効な量のIFNポリペプチドを発現し、したがって潜在的なウイルス毒性を緩和することを可能にすることができる。
【0046】
IFNポリペプチドをコードする任意の適当な核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、IFNβポリペプチドをコードする核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。VSVのゲノムに挿入することができるIFNβポリペプチドをコードする核酸の例としては、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_002176.2(GI No. 50593016)に記載の核酸配列のヒトIFNβポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_010510.1(GI No.6754303)、BC119395.1(GI No. 111601321)、またはBC119397.1(GI No.111601034)に記載の核酸配列のマウスIFNβポリペプチドをコードする核酸、およびGenBank(登録商標)アクセッション番号NM_019127.1(GI No.9506800)に記載の核酸配列のラットIFNβポリペプチドをコードする核酸が挙げられるが、それに限定されない。
【0047】
NISポリペプチドをコードする核酸は、CDV Fポリペプチドをコードする核酸またはCDV Hポリペプチドをコードする核酸の下流に配置することができる。たとえば、NISポリペプチドをコードする核酸は、CDV FまたはHポリペプチドをコードする核酸とVSV Lポリペプチドをコードする核酸の間に配置することができる。このような配置により、(a)感染細胞におけるヨウ素の選択的蓄積を可能にするのに有効であるが、(b)感染細胞に対して毒性を示すほど高くはない、量のNISポリペプチドをウイルスが発現し、それによって放射性同位元素を用いたウイルス分布のイメージング、および感染したがん細胞を標的とする放射線治療の両方を可能にすることができる。
【0048】
NISポリペプチドをコードする任意の適当な核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、ヒトNISポリペプチドをコードする核酸を、VSVのゲノムに挿入することができる。VSVのゲノムに挿入できるNISポリペプチドをコードする核酸の例としては、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_000453.2 (GI No.164663746)、BC105049.1 (GI No. 85397913)、または BC105047.1 (GI No.85397519)に記載の核酸配列のヒトNISポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_053248.2 (GI No. 162138896)、AF380353.1 (GI No.14290144)、またはAF235001.1 (GI No.12642413)に記載の核酸配列のマウスNISポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_524154(GI No.114676080)に記載の核酸配列のチンパンジーNISポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_541946 (GI No. 73986161)に記載の核酸配列のイヌNISポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_581578 (GI No.297466916)に記載の核酸配列のウシNISポリペプチドをコードする核酸、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_214410 (GI No. 47523871)に記載の核酸配列のブタNISポリペプチドをコードする核酸、およびGenBank(登録商標)アクセッション番号NM_052983 (GI No. 158138504)に記載の核酸配列のラットNISポリペプチドをコードする核酸などが挙げられるが、それに限定されない。
【0049】
VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、およびVSV Lポリペプチドをコードする、本明細書に記載のVSVの核酸配列は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NC_001560 (GI No. 9627229)に記載されたVSV Indiana株に由来するものであっても、VSV New Jersey株に由来するものであってもよい。
【0050】
ある態様において、本明細書は、VSV Nポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を(たとえば、3’から5’の方向で)有するが、機能的なVSV Gポリペプチドをコードするプラス鎖転写物の鋳型となる核酸配列を欠く、核酸分子(たとえば、RNA分子)を含有するVSVを提供する。このようなVSVは、細胞(たとえば、がん細胞)に感染し、複製能を有する可能性がある。
【0051】
任意の適当な方法を用いて、核酸(たとえば、CDV Fポリペプチドをコードする核酸、CDV Hポリペプチドをコードする核酸、IFNポリペプチドをコードする核酸、および/またはNISポリペプチドをコードする核酸)をVSVのゲノムに挿入することができる。たとえば、他の文献に記載されている方法(Schnell et. al., PNAS, 93:11359-11365 (1996), Obuchi et al., J. Virol., 77(16):8843-56 (2003)); Goel et al., Blood, 110(7):2342-50 (2007)); and Kelly et al., J. Virol., 84(3):1550-62 (2010))を使用して、核酸をVSVのゲノム内に挿入することができる。任意の適当な方法を用いて、本明細書に記載の核酸分子を含有するVSVを特定することができる。そのような方法には、PCR、ならびにノーザン分析およびサザン分析などの核酸ハイブリダイゼーション技術が含まれるが、これに限定されない。いくつかの場合において、免疫組織化学および生化学的技術を使用して、特定の核酸分子によりコードされるポリペプチドの発現を検出することによって、VSVがその特定の核酸分子を含有するかどうかを判定することができる。
【0052】
別の態様において、本明細書は、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、CDV Fポリペプチド、CDV Hポリペプチド、およびVSV Lポリペプチドをコードする一方で、機能的なVSV Gポリペプチドをコードする能力を欠く、核酸分子を提供する。たとえば、本明細書で提供される核酸分子は、VSV Nポリペプチドをコードする核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードする核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードする核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードする核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードする核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードする核酸配列を含むが、機能的なVSV Gポリペプチドをコードする核酸配列を含まない、単一の核酸分子でありうる。
【0053】
別の態様において、本明細書は、機能的なVSV Gポリペプチドをコードする能力を欠いているが、VSV Nポリペプチド、VSV Pポリペプチド、VSV Mポリペプチド、IFNポリペプチド、CDV Fポリペプチド、CDV Hポリペプチド、NISポリペプチド、およびVSV Lポリペプチドをコードする、核酸分子を提供する。たとえば、本明細書で提供される核酸分子は、VSV Nポリペプチドをコードする核酸配列、VSV Pポリペプチドをコードする核酸配列、VSV Mポリペプチドをコードする核酸配列、IFNポリペプチドをコードする核酸配列、CDV Fポリペプチドをコードする核酸配列、CDV Hポリペプチドをコードする核酸配列、NISポリペプチドをコードする核酸配列、およびVSV Lポリペプチドをコードする核酸配列を含むが、機能的なVSV Gポリペプチドをコードする能力を欠いた、単一の核酸分子とすることができる。
【0054】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、RNA(たとえば、ウイルスRNA)およびDNA(cDNA、ゲノムDNA、および合成(たとえば、化学的に合成された)DNAなど)の両者を包含する。核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。一本鎖の核酸は、センス鎖またはアンチセンス鎖とすることができる。また、核酸は、環状であっても直鎖状であってもよい。
【0055】
本明細書はまた、がんを治療する(たとえば、腫瘍の大きさを縮小する、腫瘍増殖を抑制する、または生存腫瘍細胞数を減少させる)ための方法、がんに対する宿主免疫を誘導するための方法、およびHIVもしくは麻疹などの感染症を治療するための方法を提供する。たとえば、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、腫瘍の大きさを縮小し、がん細胞もしくは腫瘍の増殖を抑制し、哺乳動物体内の生存がん細胞数を減少させ、および/または腫瘍に対する宿主の免疫応答を誘導するために、がんを有する哺乳動物に投与することができる。本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、そのウイルスの利用可能なコピー数を、典型的には少なくとも2倍(たとえば、5~10倍、50~100倍、500~1,000倍、または5,000~10,000もの倍率で)増やすために宿主細胞内で増殖させることができる。いくつかの場合において、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、標準的な細胞培養培地(たとえば、37℃にて5%CO2中で、5~10%のウシ胎仔血清を添加したDMEMまたはRPMI-1640)中で、望ましい濃度が得られるまで、増殖させることができる。ウイルス力価は、典型的には、培養中の細胞(たとえば、Vero細胞)に接種することによって検定される。
【0056】
本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、たとえば、がん細胞群(たとえば、腫瘍)への直接注入、またはがん細胞への静脈内投与によって、がん患者に投与することができる。本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、骨髄腫(たとえば、多発性骨髄腫)、メラノーマ、神経膠腫、リンパ腫、中皮腫、ならびに肺、脳、胃、結腸、直腸、腎臓、前立腺、卵巣、乳房、膵臓、肝臓および頭頸部のがんを含むが、それに限定されない、さまざまな種類のがんの治療に使用することができる。
【0057】
本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、生物学的に適合する溶液、または製薬上許容される送達ビヒクル中で、がん細胞群の中への直接的な(たとえば、腫瘍内)投与、または全身性(たとえば、静脈内)投与、のいずれかにより、患者に投与することができる。適当な医薬製剤は、用途および投与経路(たとえば、経皮または注射による)に、部分的に依存する。このような形態は、組成物または製剤が、標的細胞(すなわち、ウイルスが送達されるべき細胞)に到達すること、またはその効果を発揮することを妨げるべきではない。たとえば、血流に注入される薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。
【0058】
投与量は患者によって(たとえば、腫瘍の大きさに応じて)異なるが、安全性が証明されたウイルス濃度を下限とし、有害な副作用の有無とともに、がん細胞増殖の低下をモニターしながら、より高い用量へと1012pfuまで漸増させることによって、有効量を決定することができる。治療上有効な用量は、典型的には、がん細胞の数または腫瘍サイズの少なくとも10%の減少をもたらす。用量漸増試験を用いて、所定のウイルス治療のために望ましい効果を得ることができる(たとえば、Nies and Spielberg, "Principles of Therapeutics," In Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, eds. Hardman, et al., McGraw-Hill, NY, 1996, pp 43-62を参照されたい)。
【0059】
本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、たとえば、約103pfu~約1012pfu(たとえば、約105pfu~約1012pfu、約106pfu~約1011pfu、または約106pfu~約1010pfu)の範囲の用量で送達することができる。治療上有効な用量は、反復投与で提供することができる。反復投与が適切であるのは、がん細胞群もしくは腫瘍が縮小を停止したこと、または腫瘍が依然として存在しているのにウイルス活性の程度が減少しつつあること、のいずれかが、臨床症状もしくは腫瘍サイズの観察、またはモニタリングアッセイによって示される場合である。反復投与は、最初に使用されたのと同じ経路、または別の経路で投与することができる。治療上有効な用量は、いくつかの別個の部分からなる用量(たとえば、数日間隔または数週間間隔)で送達することができるが、ある実施形態において、1回~約12回の投与が提供される。あるいはまた、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)の治療上有効な用量は、徐放性製剤によって送達することができる。いくつかの場合において、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、がん細胞内でのウイルス複製および拡散を促進する薬剤、またはウイルス毒性から非がん細胞を保護する薬剤と組み合わせて送達することができる。そのような薬剤の例は、他の文献に記載されている(Alvarez-Breckenridge et al., Chem. Rev., 109(7):3125-40 (2009))。
【0060】
本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、徐放性をもたらすためのデバイスを用いて投与することができる。本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)の徐放用の製剤は、たとえば、高分子の賦形剤(たとえば、膨潤性もしくは非膨潤性ゲル、またはコラーゲン)を含むことができる。本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)の治療上有効な用量は、高分子賦形剤の中で提供されうるが、この賦形剤/ウイルス組成物は、がん細胞の部位に(たとえば、腫瘍の近傍または腫瘍内部に)埋め込まれる。体液の作用により賦形剤は徐々に溶解し、有効量のウイルスが一定期間にわたって連続的に放出される。あるいはまた、徐放性デバイスは、交互に重なった一連の活性層およびスペーサー層を含むことができる。このようなデバイスの活性層はそれぞれ、通常は、賦形剤に包埋された1回分のウイルスを含有し、スペーサー層はそれぞれ、賦形剤のみを含むか、または低濃度のウイルス(すなわち、有効量より低い)を含む。このデバイスの連続する各層が溶解するにつれて、ウイルスの投与量がパルスとして送達される。スペーサー層のサイズ/製剤は、投与間隔を決定するが、使用される治療計画にしたがって最適化される。
【0061】
いくつかの場合において、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、直接投与することができる。たとえば、ウイルスは、皮膚を通して触診可能な腫瘍(たとえば、乳がん腫瘍)に直接注入することができる。超音波ガイダンスもまた、このような方法で使用することができる。あるいはまた、ウイルスの直接投与は、カテーテルラインまたは他の医療アクセス装置を介して実現することが可能であり、がん細胞群の場所を特定するためのイメージングシステムと併せて使用することができる。この方法では、医療アクセス装置に挿入されたガイドワイヤーを用いて、埋め込み型投与デバイスが通常はがん細胞群の近傍に配置される。本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)の有効量は、露出した術野で見ることができるがん細胞群に直接投与することができる。
【0062】
いくつかの場合において、本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)は、全身的に送達することができる。たとえば、全身的な送達は、注射によって、または薬物の複数用量の投与のために設計された静脈内送達デバイスを介して、静脈内で実現することができる。このようなデバイスには、翼状輸液針、末梢静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、末梢から中心静脈まで挿入したカテーテル(peripherally inserted central catheters)、および外科的に留置されたカテーテルまたはポートが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で提供される組換えウイルス(たとえば、VSV)による治療の経過は、臨床症状の変化を評価することにより、またはがん細胞の数もしくは腫瘍の大きさを直接監視することにより、モニターすることができる。固形腫瘍の場合、ウイルス治療の有効性は、治療前後の腫瘍のサイズまたは重量を測定することによって評価することができる。腫瘍のサイズは、直接(たとえば、ノギスを使用して)、またはイメージング技術(たとえば、X線、磁気共鳴画像、またはコンピュータ断層撮影)を使用して、またはイメージングを行わない光学データ(たとえば、スペクトルデータ)の評価から、判定することができる。がん細胞群(たとえば、白血病細胞)については、治療前後の患者の血液循環中の白血病細胞の絶対数を測定することによって、ウイルス治療の有効性を判定することができる。また、ウイルス治療の効果は、がん特異抗原のレベルをモニターすることによっても評価することができる。がん特異抗原には、たとえば、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、CA125、α-フェトプロテイン(AFP)、糖鎖抗原15-3、および糖鎖抗原19-4などがある。
【0064】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これらは特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0065】
実施例1 CDV FおよびHポリペプチドならびに組換えウイルス
細胞株
Veroアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero;American type culture collection[ATCC], Cat.# CCL-81)およびその派生細胞株(Nectin-4(Noyce et al., Virology, 436(1):210-20 (2013)), SLAMF1 (Tatsuo et al, Nature, 406(6798):893-7 (2000))、イヌSLAMF1 (von Messling et al., J. Virol., 77(23):12579-91 (2003)、または膜に固定された、ヘキサヒスチジンペプチドに特異的な一本鎖抗体 (Nakamura et al., Nat. Biotechnol, 23(2):209-14 (2005))のいずれかを発現する)は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(GE Healthcare Life Sciences, Cat.# SH30022.01)中で維持されたが、この培地は、5%(容量/容量)熱非動化ウシ胎児血清 (FBS, Gibco)、ならびにVero/NECTIN-4およびVero/SLAMF1用には0.5 mg/mLジェネティシン(Geneticin)(G418; Corning)を、Vero/dogSLAMF1用には1 mg/mL Zeocin (ThermoFisher)を、添加したものである。ヒト腎臓上皮細胞(HEK293T細胞)(Cosset博士(Universite de Lyon)より入手)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC, Cat.# CCL-10)、ヒト神経膠芽腫U-87 MG細胞(ATCC、カタログ番号HTB-14)、およびSKOV3ip.1ヒト卵巣腫瘍細胞は、DMEM+10% FBS中で維持された。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、CHO-CD46、およびCHO-EGFR(Nakamura et al, Nat. Biotechnol., 22(3):331-6 (2004))、CHO-SLAMF1(Tatsuo et al., Nature, 406(6798):893-7 (2000))、CHO-dogSLAMF1(Seki et al., J. Virol, 77(18):9943-50 (2003))、CHO-NECTIN4(Liu et al., J. Virol., 88(4):2195-204 (2014))、CHO-CD38(Peng et al., Blood, 101:2557-62 (2003))、CHO-HER2/neu(Hasegawa et al., J. Virol., 81(23): 13149-57 (2007))、バーキットB細胞リンパ腫Ramos(ATCC, Cat.# CRL-1596)、およびRaji細胞(ATCC、カタログ番号CCL-86)は、他に記載される通り、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地(Corning Inc, Cat. #10-040-CV, Corning, NY, United States)で培養された。
【0066】
プラスミドならびに全ゲノムrMeVの構築
CDV 22458/16発現プラスミドを作製するために、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてCDV 22458/16分離株に感染したVero/イヌSLAMF1細胞(継代1)から全RNAを抽出した。CDV-HおよびCDV-Fの両遺伝子をSuperScript III逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific, Cat.# 11752050)で逆転写し、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した:
CDVH7050(+):AGAAAACTTAGGGCTCAGGTAGTCC
CDVH8949(-):TCGTCTGTAAGGGATTTCTCACC
CDVF4857(+):AGGACATAGCAAGCCAACAGG
CDVH7050(-):GGACTACCTGAGCCCTAAGTTTTCT
【0067】
PCR産物は、Sanger (Genewiz, Plainfield NJ, USA)により直接、配列決定し、pJET1.2ベクター(Thermo Fisher)にクローニングした。次にCDV Hオープンリーディングフレーム(図8)を、フォワードプライマー
【化1】
およびリバースプライマー
【化2】
を用いてPCR増幅し、PacIおよびSpeI(New England Biolabs, Iswich MA, USA)で制限切断されたpCGベクター(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))に、InFusion HDキット(Takara, Shinagawa, Tokyo, Japan)を用いてクローニングした。プライマーは、PacIおよびSpeI制限部位(それぞれ下線)ならびにMeV-Hの非翻訳領域(イタリック体)を提供した。同様に、CDV Fオープンリーディングフレーム(図9;配列番号4のアミノ酸残基136-662)をHpaI/SpeI制限pCG-CDV-Fプラスミドにクローニングした(von Messlingら、J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))。得られたプラスミドpCG-CDV F 22458/16は、MeV-F非翻訳領域およびMeV-Fシグナルペプチドを有する。
【0068】
CDV H/F Onderstepoortワクチンおよび5804分離株(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))、ならびにMeV Nseのための発現プラスミドは、他の文献に記載されている(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))。Hタンパク質の再標的化型は、相同なPacI/SfiI消化PCR産物をpTNH6ベクターに挿入することによって作製された(Nakamura et al., Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005);およびNakamura et al., Nat. Biotechnol., 22(3):331-6 (2004))。部位特異的変異誘発(QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit, Agilent Technologies, Santa Clara CA, USA)を用いて、Hのトロピズムを除去するとともに、CDV-FのSpeIサイトを除去して、細胞質側末端にトランケーションを導入した。
【0069】
エンベロープ交換型rMeVは、対応する発現プラスミドのPacI/SpeIおよびNarI/PacI領域を閉じることによって作製された。rMeVのレスキューは、STARTシステム(Nakamura et al., Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005))を用いて行った。
【0070】
タンパク質発現
細胞は、Fugene HD(PROMEGA, Fitchburg WI, USA)またはTransIT-LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC, Madison WI, USA)を用いてトランスフェクトした。定量的融合アッセイには、デュアルスプリットレポーターシステム(Kondo et al., J. Biol. Chem., 285(19):14681-8 (2010);およびIshikawa et al., Protein Eng. Des. Sel., 25(12):813-20 (2012))を他に記載されたように使用し(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8), pii: E688, doi: 0.3390/v11080688 (2019))、エフェクター細胞としてBHK細胞を使用した。融合の半定量的な評価のために、Vero細胞および派生株は、HおよびF発現プラスミドを各1μg用いてトランスフェクトし、1日後にHema-Quik(Thermo Fisher Scientific, Cat.#123-745)により染色を行った。画像は顕微鏡(Eclipse Ti-S; Nikon)を用いて4倍の倍率で得られた。あるいはまた、シンシチウム形成をさらに可視化するために、GFP発現プラスミドを組み入れた。Hポリペプチドのレベルを評価するために、トランスフェクトした細胞を、6×Hisタグモノクローナル抗体(Miltenyi Biotec, Cat. # 130-120-787またはThermo Fisher Scientific, Cat. #MA1-135)を用いて、他に記載されているように(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8), pii: E688, doi: 10.3390/v11080688 (2019);およびSaw et al., Methods, 90:68-75 (2015))、フローサイトメトリーまたはCELISAで分析した。フローサイトメトリーで総タンパク質発現を分析するために、細胞をeBioscience Intracellular Fixation & Permeabilization Buffer(Thermofisher, Cat.#88-8823-88)を用いて処理した。
【0071】
ウイルスタンパク質含量
ウイルス標品をジチオスレイトール存在下で加熱し、4-12%Bis-Trisポリアクリルアミドゲル中に分画し、ポリフッ化ビニリデン膜に移した。ブロットを、抗MeV-Hcyt(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))、抗MeV-N(Toth et al., J. Virol., 83(2):961-8 (2009))、または抗Hisタグ(Genscript, Piscataway NJ, USA, Cat.# A01857-40)抗体を用いて分析し、二次ウサギ抗体コンジュゲート(ThermoFisher, Cat.#31642)をプローブとして検出した。このブロットを、SuperSignal Wester Pico化学発光基質(ThermoFisher)とともにインキュベートし、ChemiDoc Imaging Sytem (Bio-Rad)で解析した。
【0072】
中和アッセイ
蛍光フォーカス減少中和アッセイは、他に記載されるように行った(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11): e00209-17 (2017))。ポリクローナル抗イヌジステンパーウイルス、Lederle Avirulent(抗血清、フェレット)は、BEI Resources(NR-4025)から入手した。ヒト血清は、特に血液型がAB型である60~80名のドナーからプールされたものを使用した(Valley Biomedical Products & Services, Inc, Cat.#HS1017, Lot #C80553)。
【0073】
結果
融合誘導CDV H/F複合体の作製
CDVのエンベロープ糖タンパク質は、MeVのものと36%(Hポリペプチド)および66%(Fポリペプチド)のアミノ酸相同性を有する。HおよびFポリペプチドのオープンリーディングフレームは、死に瀕したイヌの死後組織から分離された第1継代野生型CDV分離株SPA.Madrid/22458/16(CDV 22458/16)から得られた。全長ヘマグルチニン遺伝子の最尤法による系統発生解析は、22458/16のCDV HポリペプチドがArticクレード内にグループ化されることを示した(図1)。22458/16のH/F複合体を同時にトランスフェクトしたところ、SLAMF1受容体が存在するときのみ融合活性を示した(図2A)。Nectin-4発現細胞では融合活性の欠如が観察された。ヘテロタイプ野生型の5804のCDV Hポリペプチドと22458/16のCDV Fポリペプチドとの同時発現は、Nectin-4を発現するVero細胞において顕著なシンシチウム形成をもたらした。一方、Onderstepoortワクチン株のラージプラーク形成バリアント由来のH/F複合体は、Nectin-4およびSLAMF1の発現にかかわらず、大きなシンシチウム形成をもたらした。
【0074】
レポーター遺伝子を用いて、より正確にシンシチウム形成を確認するために、ヘテロタイプ野生型のCDV H5804ポリペプチドおよびCDV F22458/16ポリペプチドの組み合わせで、上記の融合表現型を確認した(図2B)。ホモタイプのH/F5804でシンシチウムが形成されないのは、天然の135アミノ酸長のシグナルペプチドの存在に起因すると考えられるが、SLAMF1依存的にのみ細胞間融合を誘導するCDV H/F22458/16で認められた明確な融合表現型について、さらに検討を行った。CDV H22458/16ポリペプチドに使用したクローンは、コンセンサス配列についてアミノ酸の変更を含んでいることが判明した(M437L)。このクローンを用いて、437位をロイシンからメチオニンに変更したCDV H22458/16ポリペプチドをコードするクローンを作製した。
【0075】
CDV融合装置のトロピズムの拡大
野生型CDV H/F複合体の同時トランスフェクションは、特異的受容体依存的にシンシチウム形成をもたらしたが、Ondertepoortワクチン由来のH/Fではそうならなかったので、受容体の利用を別の受容体に拡大できるかどうかを判断するために、以下の実験を行った。標的受容体として、CD38を選択し、この目的のために、CD38特異的scFvを付着タンパク質のカルボキシ末端ドメインにディスプレイした(図2C)。比較のために、解析にはMeV HポリペプチドならびにニパGポリペプチドを含めた。図2Dに示された結果は、異なる構築物が同等のレベルで表面に発現したことを実証している。注目すべきは、CDV H22458/16のL437M置換が、細胞表面発現に影響を及ぼさないようにみえることであった。次に、融合能力を、他の文献に記載された自己会合性スプリットルシフェラーゼアッセイを使用して定量的に比較した(Kondo et al., J. Biol. Chem., 285:14681-14688 (2010); and Ishikawa et al., Protein Eng. Des. Sel., 25:813-820 (2012))。このアッセイ(図2E)において、エフェクター細胞は、H/F複合体およびデュアルスプリットGFP/ウミシイタケシフェラーゼタンパク質の二分割の片方をコードする発現プラスミドをトランスフェクトした(DSP1-7)。同様に、関連受容体を発現する標的細胞は、もう半分をトランスフェクトした(DSP8-12)。内容物の混合により、そうしなければ機能しない二分割のGFP/ウミシイタケシフェラーゼタンパク質が会合し、活性が測定される。異なるHまたはG/F複合体を発現するエフェクター細胞を用いたこの実験の結果を、図2Fに示す。親CHO細胞株を用いた場合には融合活性は観察されなかったが、HIS特異的scFv(CHO-HIS)またはCD38分子を安定して発現するように操作されたCHO細胞では融合活性が明らかであった。一般に、活性レベルは、CD38標的化を用いると、偽受容体系6×His-抗6×HIS scFvと比較していっそう明白であった。これらの相違は、Nipar GαCD38を使用した場合により顕著であった。前者の融合能力は、ヘテロタイプCDV H5804 αCD38ポリペプチド/CDV F22458/16ポリペプチド、またはOnderstepoort株由来のホモタイプH/Fと比較して著しく低下していた。驚くべきことに、CDV H22458/16ポリペプチドのL437M置換は、発現レベルでの差異が観察されない場合でも、ポリペプチドの融合表現型を劇的に変化させた(図2G)。この新しい融合能は、CDV F5804ポリペプチドのシグナルペプチドをより短いMeV Fシグナルペプチドで置き換えた場合にのみ、5804からのホモタイプCDV H/Fで得られたものと同等となった。それにもかかわらず、CDV H5804 αCD38ポリペプチド/CDV F22458/16ポリペプチドのヘテロタイプの組み合わせの融合レベルは、Onderstepoortのラージプラーク形成バリアントによって得られたものと同等であり、優れていた。これらの結果は、CDV融合機構が別の受容体を使用できるように設計することができるだけでなく、異なるCDV株に由来するH/F複合体のヘテロタイプの組み合わせから、受容体依存的に融合誘導能の高い表現型を得ることもできることを示している。このCDV H/F複合体の融合能の向上は、CDV Fポリペプチドのシグナルペプチドを短縮し、M437を有するCDVポリペプチドを使用することによって達成された。
【0076】
受容体の標的化
上記の段落で述べたCDV Hポリペプチドは、依然としてヒトNectin-4を受容体として使用することが可能であった。Nectin-4相互作用を妨げるために、Y539A変異を含むCDV Hポリペプチドをコードする核酸を作製した。図2Hによれば、Y539A点変異を含むCDV H αCD38ポリペプチド(CDV HY539A αCD38)は、ヒトNectin-4細胞上では融合活性を失ったが、CHO-HIS(CDV HY539A αCD388およびCDV HY539A)細胞およびCHO-CD38(CDV HY539A αCD388)細胞上では依然として融合を誘導する能力を有していたことがわかる。この融合活性は、完全に再標的化されたMeV Hポリペプチド(MeV Haals αCD38およびMeV Haals αCD38)によって得られた活性と同等であった。これらの結果は、CDV H/F複合体を特定の受容体に向けて効率的に再標的化できることを示している。
【0077】
CDV H/Fにより駆動される細胞間融合に及ぼすリガンド結合親和性の影響
CDV Hポリペプチドのエクトドメインにディスプレイされるリガンドの結合親和性の違いが、融合性に影響するかどうかを評価するために、Her2/neu特異的scFvバインダーおよびアフィボディ分子(Hasegawa et al., J. Virol., 81(23): 13149-57 (2007); Wikman et al., Protein Eng. Des. Sel., 17(5):455-62 (2004); and Orlova et al., Cancer Res., 66(8):4339-48 (2006))がディスプレイされた。図2Iは、Her2/neu分子を安定して発現するように操作されたCHO細胞上では融合を引き起こすために1nMより高い結合親和性が必要であったが、親細胞株ではそうでなかったことを示している。このことは、バインダーがscFvの形であろうとアフィボディ分子の形をとろうと、その性質とは関係なくいえることであった。受容体密度とバインダー親和性の関係を調べるために、表面に異なるレベルのHer2/neu分子を発現しているがん細胞株のアレイを用いて、定量的融合アッセイを繰り返した:HT1080 (1.2 ×104)、Sko3pi (1.5 ×105)、およびTET67L (4.3 ×103)。もっとも結合親和性の高いアフィボディ(Z342、0.022 nM)をディスプレイすることで、CDV Hは受容体密度に関係なくテストしたすべての細胞株において融合を引き起こすことが可能となったが、Z4(50 nM)はもっとも高い受容体密度を発現するSkov3pi細胞でのみ、細胞間融合を可能にした。これらの結果は、バインダー親和性と標的細胞上の受容体密度との間に相互関係があることを示しており、受容体密度が低いほど、高いバインダー親和性で効果を発揮する。
【0078】
CD46を標的とするCDV H/F複合体は腫瘍溶解性麻疹ウイルスの中和感受性を克服することができる
MeV H Nse株と同様の融合レベルを保持するscFv-CDV Hポリペプチドを得るために、異なるCD46特異的scFvバインダーをCDV Hポリペプチド上にディスプレイした。細胞表面の発現レベルを比較した(図3A)。細胞酵素結合免疫吸着法(CELISA)により、非標的化MeV HポリペプチドおよびCDV Hポリペプチドの両方、ならびにCD46標的化CDV Hポリペプチドが、細胞表面に同様に発現していることが示された。次に、定量的融合アッセイから、CHO-Nectin-4細胞ではMeV Hポリペプチドのみが融合活性を生じるのに対して、CHO-CD46細胞では非標的化CDV Hポリペプチド以外はすべて融合を生じることが判明した(図3B)。CDV Hポリペプチド上にディスプレイされたscFvバインダーA10、A09、G09およびK2は、MeV Hポリペプチドで見られたのと同様の融合レベルを誘導したが、scFV G101469およびK01はそれより比較的低いレベルであった。既存のMeV外被と置き換えるために、CDV H-scFv A09/CDV Fポリペプチドが選択された。このウイルスをStealth 2.0と称するが、これをレスキューすると、H/Fポリペプチドが正常にビリオンにディスプレイされることが確認された。ウェスタンブロット解析により、細胞質側末端に対する抗MeV Hポリペプチド抗体を使用すると、MeVの場合のみMeV Hポリペプチドが検出されることが確認された。これに対して、CDV H-scFV A09ポリペプチドは、抗6×HIS-タグ抗体をプローブとして膜を探索した場合にのみ検出された(図3C)。これと同じHIS-タグ系は、抗HIS scFvを安定的に発現するVero細胞ではStealth 2.0ウイルスの複製を可能にしたが、親Vero細胞株では不可能であった(図3D)。この複製動態は、Vero/hSLAM上でMeVによって得られたものと同等であった。まとめると、これらの結果は、麻疹ウイルスエンベロープHおよびFポリペプチドを、ウイルス複製に負の影響を与えることなく、CDV由来のHおよびFポリペプチドに置き換えることができることを示している。
【0079】
20~30人のアメリカ人ドナーからプールされた血清を用いて、Stealth 2.0の中和感受性を検討した。対照として、CDV抗血清を使用した。図3Eは、Stealth 2.0がMeV抗血清の中和活性に対して非感受性であることを示す。これに対して、MeVの中和パターンは、基本的に逆で、抗麻疹抗体によって中和されたが、抗CDV抗体では中和されなかった。
【0080】
明白な融合のない場合でもウイルスの侵入は起こりうるので、新しいエンベロープによってもたらされるウイルスのトロピズムを確認するために、次の実験を行った。CHO細胞が受容体CD46、Nectin-4、およびイヌまたはヒトSLAMF1を発現している場合、ウイルス由来のGFP自己蛍光が観察された(図3F)。反対に、Stealth 2.0によるGFP自己蛍光は、抗6×HIS scFv発現(CHO-HIS)、CD46、およびイヌSLAMF1の場合にのみ観察された。以上の結果は、CD46を標的とするCDV H/Fエンベロープを使用することによって、抗麻疹ウイルス抗体の中和に対して抵抗性のあるヒトCD46-指向性麻疹ウイルスを作製できることを示す。
【0081】
Stealth 2.0は親MeVと同様の抗腫瘍効果を誘導する
Stealth 2.0の腫瘍溶解薬としての使用を評価するために、以下を実施した。U266.B1腫瘍を有するSCIDマウスを、MeVまたはStealth 2.0のいずれかの単回静脈内投与で処置した(図4A)。PBS処置群の移植腫瘍は指数関数的に増殖し続け(図4B)、12日目までには腫瘍組織量が原因で全頭を殺処分せざるを得なかった(図4C)。これに対して、2つの治療群はいずれも腫瘍の進行が遅く、その結果、生存期間の中央値が有意に増加した。Stealth 2.0およびMeVについて、同様の腫瘍溶解活性が観察され、後者はCD46に加えて、受容体Nectin-4およびSLAMF1を使用することができるので、これらの結果は、CD46を標的とすることが多発性骨髄腫モデルにおける腫瘍退縮に十分であることを実証している。さらに、Stealth 2.0は、高レベルの中和作用のある抗麻疹ウイルス抗体が患者に存在する場合、現行の腫瘍溶解性MeVワクチンの代わりに使用しうることを実証した。
【0082】
CDV H/F複合体は他のモノネガウイルス目を再標的化することができる
ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科リッサウイルス(Lyssavirus)属に属するVSVのトロピズムを支配するCDV H/F複合体の適合性を調べるために、以下を実施した。インターフェロンβ(IFN-β)およびナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)を発現するように操作されたVSVである、VSV-hIFNβ-NIS(Naik et al., Mol. Cancer Ther., 17(1):316-326 (2018))を入手し、他の文献(Ayala-Breton et al., Hum. Gene Ther., 23(5):484-91 (2012))に記載された技術を用いてVSV-GポリペプチドをCDV HおよびFポリペプチドで置き換えることにより改変した。CDV F22458/16ポリペプチド、および親CDV H5804ポリペプチド(VSV-CDVFH-GFP)、またはEGFR(VSV-CDVFHaal-αEGFR-GFP)もしくはCD38(VSV-CDVFHaal-αCD38-GFP)受容体に対して再標的化されたCDV Hポリペプチドのいずれかを使用した(図5)。さらに、CDV Hポリペプチドはいずれも、イヌSLAMF1との相互作用をなくすために、既存のCDV HY539Aバックグラウンドの中にR529A変異(CDV Haa)を含有した。
【0083】
新たなエンベロープ複合体がウイルスのトロピズムを支配していることを確認するために、特定の受容体を発現するCHO細胞パネルに感染させた。図6に示すように、ウイルスが親CDV F/H複合体をディスプレイしている場合、GFPの自己蛍光はNectin-4またはイヌSLAMF1受容体のいずれかを発現する細胞において観察された。これに対して、EGFR特異的scFv CDV Hが存在する場合には、EGFR受容体を発現している細胞においてのみ、感染およびGFP自己蛍光が観察された。同様に、CD38特異的scFv CDV Hが存在する場合、CD38受容体を発現している細胞においてのみ、感染およびGFP自己蛍光が観察された。この場合、CD38を発現する細胞ではシンシチウム形成および細胞死滅効果が観察されたが、EGFR受容体を発現するCHO細胞では観察されなかった;一方、EGFR特異的ウイルス(VSV-CDVFHaal-αEGFR-GFP)では逆のパターンが観察された(図7)。これらの結果から、CDV F/H複合体は、ウイルストロピズムの方向性を変えるために選ばれた受容体を用いたscFvディスプレイを介して、受容体特異的に細胞侵入およびシンシチウム形成を制御するために使用することができることが、ラブドウイルスとの関連において明らかになった。
【0084】
この系を腫瘍溶解性ベクターとして使用することを、in vivoでも評価した(図8)。SKOV3ip.1 腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスを、EGFR標的化VSV、または現在臨床試験中の VSV-hIFNβ-NISの単回投与で処置した。VSV-hIFNβ-NISは、PBS処置対照群に対して生存率を改善しなかったが、EGFR標的化VSVは、生存率の有意な改善をもたらした(p<0.005)。これらの結果は、本明細書に記載された標的化VSVが腫瘍学的な目的で使用できることを実証している。
【0085】
CD38およびEGFRを標的とするMeV
MeVに関するCD38およびEGFR標的化が、CDV FおよびHポリペプチドを用いて達成できることを確認するために、以下を実施した(図11)。安全性を高めるために、追加の変異をCDV Hポリペプチドに挿入して、天然受容体の使用に逆戻りする可能性を阻止した(Sawatsky et al., J. Virol., 92(15):e0069-18 (2018))。R529Aのアミノ酸置換に加えて、D526A、I527A、S528A、R529A、Y539A、Y547A、およびT548の置換も組み入れられた(図11A)。図11Bは、CD38標的CDV Hポリペプチドに関して、これらの変異の導入が、融合誘導能に影響を及ぼさなかったことを示している。同様に、図11Cは、このさまざまな点変異が、麻疹免疫ヒト血清に対するポリペプチドの中和感受性に影響しなかったことを示す。CD38標的化MeV Hポリペプチドの融合活性は、プールされた麻疹抗血清によって、1:80希釈まで、阻害されたが、相同CD38標的化CDV Hポリペプチドは、1:10希釈というテストされた最高濃度で、阻害されなかった。ラブドウイルスの場合と同様に、標的化CDV H/F複合体を組み込んだ麻疹ウイルスは、CD38またはEGFR特異的に、細胞に感染し融合することができた(図11D)。この感染特異性はまた、多くの腫瘍細胞株で観察された。Skov3piおよびU87細胞(EGFR陽性)は、EGFR標的化ウイルスに感染したが、CD38標的化ウイルスには感染しなかった。これに対して、RajiおよびRamos細胞株(CD38陽性)は、CD38標的化ウイルスにのみ感染した。対照として、6×HIS偽受容体を発現する細胞は、すべての再標的化ウイルスに感染した。これらの結果は、抗麻疹免疫を回避して、細胞を標的とする侵入およびシンシチウム形成をもたらすために、CDV F/H複合体を使用することができることを実証している。
【0086】
CD38およびEGFR標的化MeVのin vivoでの腫瘍溶解活性も検討した。SKOV3ip.1腫瘍を無胸腺ヌードマウスの皮下または腹腔内に移植し、その後、同じ経路によりウイルス処置を行った(図11E)。CD38標的化ウイルスは、ある程度の治療有効性を示したが、EGFR標的化ウイルスの示す有効性が優っていた(図11F)。これに対して、CD38標的化ウイルスは腹腔内投与後に抗腫瘍効果を示さなかったが、EGFR標的ウイルスは100%の生存率によって観察されるように、完全な腫瘍の退縮をもたらした。注目すべきは、MeV H/F 複合体またはCDV H/Fのいずれかで再標的化されたMeVの間に相違が見られなかったことである。これらの結果は、CDV H/F複合体が、麻疹で誘導された中和抗体によって中和されるという問題なしに、腫瘍溶解性麻疹ウイルスの殺腫瘍性を高めることができることを示している。
【0087】
実施例2 麻疹免疫ヒト血清による中和に対して抵抗性のあるCD46特異的な腫瘍溶解性麻疹ウイルスのさらなる解析
本実施例では、実施例1の情報および結果の一部を繰り返すとともに、追加の結果を提供する。
【0088】
野生型CDV糖タンパク質の異種性の組み合わせは、細胞融合の促進をもたらす
MeV外被を、ウイルスが抗麻疹抗体による中和を回避するのを可能にする、別のウイルス外被で置き換えた。これを行うために野生型CDVが選択された。ワクチン用として認可されたCDV株(Onderstepoort株)があるが、この株はSLAMF1およびNectin-4に加えて、現在未確認の受容体を利用することができるため(図14)、ウイルスのトロピズムの改変が困難であった。そこで、SLAMおよびNectin-4のみと相互作用することが知られている野生株に着目した。
【0089】
もっとも融合性の高いCDVのH/F糖タンパク質ペアを特定するために、以下を実施した。5804PおよびSPA.Madrid/16(以下、それぞれ5804およびSPAと称する)分離株から得られた異なるH/Fの組み合わせを、SLAMF1またはNECTIN4を発現するVero細胞で一過性に発現させて、ウイルスタンパク質によって誘導される細胞融合(シンシチウム形成)の程度を定性的に評価した。CDV-H/Fペアの融合活性は、135 aa-シグナルペプチドがCDV-Fに維持されている場合には観察されなかった(図15A)。MeV Fからの相同タンパク質で入れ替えると、5804PからのH/Fタンパク質の同時発現は、SLAMF1およびNECTIN4発現細胞における細胞融合をもたらしたが、SPAからのH/Fタンパク質の同時発現は、SLAMF1発現Vero細胞においてのみ細胞融合を促進した。一方、異種性の組み合わせである、CDV-H SPAおよびCDV-F 5804ではなくて、CDV-H 5804およびCDV-F SPAの同時発現は、SLAMF1およびNECTIN4発現Vero細胞においてシンシチウム形成をもたらした。上記にまとめられたデータは、CDV-H SPA上の融合欠損を裏付ける証拠を提供した。NECTIN4発現細胞におけるCDV-H SPAの融合欠損が、受容体に対する低親和性に起因するかどうかの検討を始めるために、融合表現型を非天然受容体を用いて定量的に比較し、受容体結合親和性について条件を標準化した。この方法は、Hisタグ付きCD38特異的scFvを受容体結合タンパク質のC末端ドメインに融合させ、CD38、またはHISタグの偽受容体(CHO-αHIS)のいずれかをコードするCHO細胞において融合レベルを測定することであった。L437は、他のCDV遺伝子群には存在しないクローン特異的変異に相当するため、L437M置換がCDV-H SPAに組み入れられた(図16)。比較のために、他のウイルス由来の再標的化された受容体結合タンパク質も追加として加えられた:MeV-HおよびNipah-G(Bender et al., PLoS Pathog., 12(6):e1005641 (2016);およびNakamura et al., Nat. Biotechnol., 22(3):331-6 (2004))。比較に厳密さを加えるために、受容体結合タンパク質の発現を、最初にウェスタンブロットおよびフローサイトメトリー分析によって分析し、タンパク質の折り畳みにも表面発現にも有意な影響のないことを示した(図17Aおよび17B)。SPAタンパク質からのCDV-H/FペアをCHO-C38で発現させると、M437Lを有するCDV-H SPAのみが融合を促進した(図15B)。注目すべきは、SPAまたは5804P分離株からの2つのホモタイプCDV-H/Fペアの間で融合能に有意差は観察されなかったことである。驚くべきことに、異種性H/Fの組合せであるCDV-H 5804/F SPAによって引き起こされる融合活性は、同種の組合せであるCDV-H/F 5804およびCDV-H/F SPAによって達成された融合活性を上回った。再標的化されたNipah G/Fペアについては、CHO-CD38細胞において有意な融合レベルが観察されたものの(p<0.0001)、再標的化されていないCDV H/F OLペアによって得られた融合レベルと比較すると、有意ではなかった。
【0090】
この一連の実験に基づいて、さらに検討および改良するために、高融合性CDV-H 5804/F SPAペアを選択した。
【0091】
CDV H/F相互作用の強さは、細胞間融合効率と逆相関する
CDV-H 5804/F SPAペアで観察される細胞融合の促進は、H/F界面における低い結合アビディティに関連している可能性がある。これは、H/Fの解離が融合プロセスに必須であるという観察に基づくものであった(Plemper et al., J. Virol., 76(10):5051-61 (2002);およびBradel-Tretheway et al., J. Virol., 93(13) (2019))。この仮説を検証するために、関連性の異なるCDV-HおよびFタンパク質の組み合わせについて、相対的強度を免疫共沈降(co-IP)アッセイで評価した。検出を容易にするために、CDV-F SPAは、タンパク質の生物活性に影響を及ぼさないFLAGタグと融合した(図18)。図15Cに示す結果から、CDV-H SPAにM437L変異が存在すると、CDV-H SPAのCDV-F SPAに対する親和性が弱くなることが判明した。それに加えて、CDV-F SPAのCDV-H 5804に対する親和性は、CDV-F SPAのCDV-H SPAに対する親和性よりわずかに低かった(図15C)。以上をまとめると、これらのデータは、融合誘導レベルとCDV-H/F相互作用の強さとの間に逆相関があることを示している。
【0092】
完全再標的化CDVエンベロープ糖タンパク質は、MeV糖タンパク質と同等の融合活性を示す
上記のCDV-Hタンパク質は、依然としてNECTIN4を受容体として使用することができた(図15A)。再標的化効率を最大限に高めるために、CDV-Hタンパク質は、ヒト細胞との、この望ましくない相互作用から脱標的化がなされる必要があった。この天然のトロピズムの除去が、非天然受容体へのCDV-H/F結合によって誘導される細胞融合に影響を及ぼすかどうかを判定するために、NECTIN4依存性融合を阻害する(Mateo et al, J. Virol., 87(16):9208-16 (2013))、細胞表面発現には影響を与えないが(Sawatsky et al., J. Virol., 86(7):3658-66 (2012))と以前に示された変異である、Y539A変異をCDV-Hに導入したが、これはMeV-HにおけるY543Aに相当するものである。次に、CDV-H 5804 (Y539A) 5804 / F SPAの融合能を、完全に再標的化されたMeV-H/Fペアの融合能と比較した(Nakamura et al, Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005))。このために、デュアルスプリットGFP/ルシフェラーゼレポータータンパク質に基づく、定量的動態学的融合アッセイを利用した。図15Dに示すデータは、CD38標的化CDV-H 5804(Y539A)が、CHO-NECTIN-4細胞では融合活性を有しないが、CHO-αHIS細胞(構築物CDV H 5804(Y539A)/F SPAおよびCDV H 5804(Y539A)αCD38/F SPA)およびCHO-CD38細胞(CDV H 5804(Y539A)αCD38/F SPA)では融合を誘導したことを示している。NECTIN-4ブラインドCDV-H 5804/F SPAペアの融合活性は、完全再標的化MeV-Hタンパク質で得られた活性と同等であったため、CDV-H 5804 (Y539A)は、CDV-H/F複合体を、特定の受容体に向けて効率的に再標的化できると結論付けられ、このタンパク質が完全再標的化ウイルスに組み込むために選択された。
【0093】
結合親和性がCDV H/F複合体のCD46に対する効率的な再標的化を決定する
上記のように選択されたCDV-Hタンパク質が、CD38特異的scFvを融合することで効率的にCD38に向けて再標的化できたことを考慮して、次に、このタンパク質を、CD46特異的scFvをディスプレイすることによってCD46に向けて再標的化した。CD46を十分に高い結合親和性で認識するscFvをCDV-H上でC末端にディスプレイすることで、MeV H/F複合体によって誘導されるのと同様のCD46による細胞間融合活性がもたらされるであろうと仮定した。これを検証するために、ファージ抗体ディスプレイライブラリから分離されたいくつかの異なるscFvバリアントの精製CD46への結合を評価することによって、CD46に対して高い親和性を有する抗CD46 scFvが特定された(図19)。共有結合で固定化された抗Fc抗体を有するセンサーチップを用いて、表面プラズモン共鳴技術を適用した。キメラFc-scFv融合タンパク質はセンサー表面に捕捉され、その後SCR1-4を含む可溶性CD46を用いて検討した(図20A)。これらのアッセイ条件下で、得られた結果から、A09およびK2断片をディスプレイするキメラFc-scFv融合タンパク質の親和性定数(Kd)が、K01およびN1E断片のそれよりも有意に強く(A09>K2>N1E>K2)、主として会合の増加(A09)または解離速度の減少(K2)に起因することが示された(表4、図20B)。
【0094】
【表4】
【0095】
CDV-Hタンパク質へのscFvの融合がCD46依存性融合を支援できるかどうか、もしそうであるなら、CD46結合親和性が細胞融合にどのように影響を及ぼすかを判定するために、以下を実施した。基本的なアプローチとして、脱標的化されたCDV H [5804 (Y539)]および再標的化されたCDV-H [5804 (Y539) -scFv] /F SPAペアについて定量的融合アッセイを行って、CHO細胞、およびNECTIN4もしくはCD46を発現するCHO細胞上で、未改変MeV/F複合体と比較した。すべてのタンパク質は、同等のレベルで発現した(図21)。scFv K01を除いて、他のすべての抗CD46 scFvは、CHO-CD46細胞(図20C)および高CD46発現を有するHeLa細胞株(図21)において、CDV-H/F複合体が細胞間融合を誘導することを可能にした。MeV-H/F複合体のみが、CHO-NECTIN-4細胞において細胞間融合を誘導した。
【0096】
この一連の実験から、再標的化CDV H/F複合体を介したCD46による細胞間融合には結合親和性の閾値が存在し、この閾値より上で、結合親和性と細胞間融合との間に正の相関があると結論付けられた。
【0097】
CD46を標的とするCDVエンベロープ糖タンパク質は、その結合親和性に応じて効率的にMeVビリオンに取り込まれ、ウイルス侵入に関与する
高い受容体親和性が高いウイルス感染性につながるかどうかを調べるために、以下を実施した。この問題への対処に着手するために、同遺伝子型のMeVのパネルを作製したが、そこでこのMeV外被は、CD46に特異的な低親和性(K1)、中親和性(N1E)、および高親和性(A09)のscFvをディスプレイするCDV-H 5804(Y539A)とともに、CDV-F SPAで置き換えられた、(図22A)。これらの「Stealth」ウイルスは、レポーター遺伝子としてeGFPまたはホタルルシフェラーゼのいずれかを発現するようにさらに操作され、Vero-αHIS細胞上でレスキューされた。次に、CHO-CD46細胞または産生細胞株(Vero-αHIS)に感染するStealthウイルスの能力を評価した。図22Bに示すデータは、3つのStealthウイルスのすべてが、Vero-αHIS細胞上で効率的にシンシチウム形成を誘導したが、Stealth-A09のみがCHO-CD46細胞上でシンシチウムを形成したことを示した。Stealth-N1Eは、未融合のGFP陽性CHO-CD46細胞の小クラスターを生じさせたが、Stealth-K1は明らかにそれらに感染しなかった(図22B)。感染のレポーターとしてルシフェラーゼを使用すると、Stealth-K1によるCD46依存性の感染が検出されたが、ルシフェラーゼレベルは、細胞がStealth-A09に感染したときに得られたレベルよりも有意に低く(図22Cおよび23)、CD46への結合がウイルス侵入の効率を決定することが示された。
【0098】
さらに性質検討するために、その優れたCD46依存性のウイルス侵入に基づいて、Stealth-A09(このウイルスは実施例1ではStealth 2.0と称された)を選択した。Stealth-A09は、Vero-αHIS細胞で複製されたが、親Vero細胞株では複製されなかったことから、HIS-偽受容体を介した効率的なウイルス複製、およびアフリカミドリザル由来のCD46との相互作用の欠如が示された(図22D)。本来のMeVに対するStealth-A09の相対的な粒子対感染性の比を推定するために、ウイルス標品でウェスタンブロット分析を行って、主要な構造タンパク質(N)を検出したが、発現レベルに有意差は観察されなかった(図22E)。同等数のウイルス粒子を分析した結果、データは、2つのウイルスについて、類似した粒子対プラーク形成単位(PFU)比を示唆し、外来エンベロープのビリオンへの効率的な取り込みを示す。次に、αHIS、CD46、NECTIN-4、またはヒトもしくはイヌSLAMF1のいずれかを安定的に発現するCHO細胞のパネルに感染させて、ウイルスの受容体特異的トロピズムを十分に調べた。図22Fに示す結果から、MeVは、受容体CD46およびNECTIN-4、ならびにイヌまたはヒトSLAMF1のいずれかを発現するCHO細胞に感染するが、Stealth-A09は、CHO-αHIS、CHO-CD46およびCHO-dogSLAM細胞のみに感染することが判明し、これは、Stealth-A09がヒトCD46に対して効率的に再標的化されていることを示すものである。
【0099】
CDV-HがヒトSLAMF1に結合しないことを示す最近の報告(Fukuhara et al., Viruses, 11(8) (2019))と一致して、MeV-Stealth-A09のCHO-hSLAMF1への侵入は観察されなかった(図22F)。しかしながら、異なるCDV株を介したヒトSLAMF1への適応は観察されていた(Bieringer et al., PLoS One, 8(3):e57488 (2013))。そこで、MeV-StealthがヒトSLAMF1に適応する可能性を評価するために、Vero-hSLAMF1細胞でウイルスを連続して継代し、ウイルスのトロピズムを分析した。感染細胞は、5日間隔で8回ブラインド継代を行ってから、トロピズムを検証した。この継代回数は、麻疹ウイルス準種の繰り返し適応を引き起こすのに十分であることがすでに示されている(Donohue et al., PLoS Pathog., 15(2):e1007605 (2019))。図22Gに示すように、この選択圧の終了時に、MeV-Stealth-A09は、依然としてVero-dogSLAMF1細胞でのみシンシチウム形成を誘導することが可能であっって、VeroまたはVero-hSLAMF1細胞では不可能であったが、個別のGPF陽性細胞のみが観察されたわけではない。したがって、このデータは、病原性のあるヒトSLAMF1受容体の使用を可能にする適応の可能性に反するものである。
【0100】
まとめると、これらの結果は、MeV H/F糖タンパク質がCD46再標的化CDV-H/F糖タンパク質と交換可能であること、ならびに細胞侵入は受容体の親和性に依存することを示している。
【0101】
MeV-Stealthの腫瘍溶解活性はそのCD46結合親和性に依存する
Stealthウイルスの抗腫瘍能、およびCD46結合親和性のin vivoでの役割を明らかにするために、以下を実施した。このために、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(SKOV3ip.Fluc)を発現する腹膜播種SKOV3ip.1腫瘍を有する無胸腺マウスを、生理食塩水または106 TCID50のStealth-N1EおよびStealth-A09の単回腹腔内投与で処置した(n=5)。その後、腫瘍組織量を、in vivo生物発光イメージングを用いてモニターした(図24A)。7日目までに、対照群と比較して、同等の腫瘍組織量の減少が、Stealth-N1EまたはStealth-A09のいずれかの投与を受けた動物で観察された(図24B)。しかしながら、Stealth-N1Eでは21日目までに腫瘍組織量減少の統計的有意性は失われたのに対して、Stealth-A09群についてはそうではなかった。生存曲線の比較は、MeV Stealth-A09のみが対照群と比較してマウスの生存を増加させることを示した。このように、Stealth-A09は、その高いCD46親和性に依存すると思われる腫瘍溶解能を示す。
【0102】
MeV-Stealthは骨髄腫および卵巣腫瘍を有するマウスの腫瘍溶解および生存期間の延長を達成する
MeV-Stealth-A09の、腫瘍溶解薬としてMeVを超える有用性を評価するために、以下を実施した。このために、まず、皮下にヒト骨髄腫異種移植片(U266.B1細胞由来)を有する重症複合免疫不全(SCID)マウスを、無処置のままとするか(PBS処置群)、またはMeV-StealthもしくはMeVを最適以下の静脈内投与量で処置した。PBS処置群の腫瘍は指数関数的に増殖し続け、12日目までに腫瘍組織量が原因で、すべてのマウスを殺処分せざるをえなかった(図25A)。MeVまたはMeV-Stealth-A09のいずれかで処置すると、腫瘍の進行が遅くなり、その結果、生存期間中央値がそれぞれ7日および5日、有意に増加した(図25B)。腫瘍溶解効果がウイルス複製に起因するかどうかを評価するために、移植腫瘍の組織学的分析を行った。図25Cに示す結果は、いずれのウイルスも腫瘍組織に向かうことができることを強く示唆した。これらの結果は、CD46を標的とするStealthが、CD46およびSLAMF1の両者を標的とするMeVと比べて同様のレベルで、腫瘍溶解を引き起こし、それによってこの多発性骨髄腫モデルにおいて腫瘍退縮を引き起こすことを強く示唆した。
【0103】
次に、MeV-Stealth-A09の治療効果を、麻疹免疫血清の存在下での生存期間の延長として評価した。このin vivo試験に着手する前に、まず、組換えウイルスの中和感受性をin vitroで評価した。図26に示す結果は、MeV-Stealth-A09が麻疹免疫ヒト血清の中和活性に対しては非感受性であるが、CDV-免疫フェレット血清もしくはマウス血清によって完全に中和されることを示した。MeVについては、基本的に逆のパターンが観察された(図23)。次に、MeVまたはMeV-Stealthの単回腹腔内注射の前にPBSまたは麻疹免疫ヒト血清のいずれかの投与を受けた無胸腺ヌードマウスの腹腔内に、SKOV3ip.Fluc細胞を移植した(図27A)。ウイルスの注射を受けなかった動物も、免疫血清の存在下でMeVで処置された動物も、高い生物発光活性を示し、それは時間とともに増加し続けた(図27B)が、これはMeVが、既存の免疫のある状態では腫瘍溶解効果を発揮できないことを示している。これに対して、カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線は、免疫血清がない状態で、両方の腫瘍溶解性ウイルス(OV)処置がマウスの生存を有意に延長し、対照マウスの生存時間中央値が18日であるのに対して、MeV処置マウスでは37日、Stealth処置マウスでは53日となることを示した(図27C)。しかしながら、MeV処置後の生存期間の延長は、マウスが麻疹免疫血清を受けた場合に完全に無効になったのに対して、MeV-Stealth処置は、免疫血清なしでの処置に対する統計的差異なしに、依然として生存期間を有意に延長することができた(生存期間中央値28日)。
【0104】
これらの結果は、異種移植骨髄腫モデルおよび卵巣がんの同所性モデル(orthotropic model)の両方において、CD46の標的化が腫瘍溶解性を駆動すること、および対応するCDV-H/F融合装置によるMeV外被の交換が、MeV免疫ヒト血清からMeVを保護することを実証している。
【0105】
方法および結果
細胞株
ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, Cat.# CCL-10, ATCC, Manassas, VA, USA)、Francois-Loic Cosset博士(Universite de Lyon)から入手したヒト腎臓上皮細胞(HEK293T)、およびヒト卵巣癌細胞株SKOV3ip.1-Fluc(Mader et al., Clin. Cancer Res., 15(23):7246-55 (2009))を、5%ウシ胎仔血清(FBS; Cat. #10437-028; Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Cat.# SH30022.01, GE Healthcare Life, Pittsburg, PA, USA)で維持した。Veroアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero、ATCC、Cat.#CCL-81)およびその派生株(ヒトNECTIN-4(Noyce et al., Virology, 436(1):210-20 (2013))、ヒトSLAMF1(Ono et al., J. Virol., 75(9):4399-401 (2001))、またはヘキサヒスチジンペプチド(6×HISタグ)に特異的な膜アンカー型一本鎖可変フラグメント(scFv)(Nakamura et al., Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005))を発現する)を、DMEM(Cat. # SH30022.01, GE Healthcare Life Sciences)で他に記載のように(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019))培養した。イヌSLAMF1分子を構成的に発現するVero細胞(Vero-dogSLAMF1)は、第二世代レンチウイルスベクター(Lukkana Suksanpaisan博士[Imanis Life Science, MN, USA]のご厚意により供与)の導入およびピューロマイシン選択により作製したが、このレンチウイルスベクターは、脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターの制御下で、N末端FLAGタグ配列(DYKDDDD)を有するイヌ由来のコドン最適化SLAMF1分子(GenBank NP_001003084.1)をコードするものである。細胞は、5% FBSを添加したDMEMで維持した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、CHO-CD46細胞、CHO-hSLAMF1細胞、CHO-dogSLAMF1細胞、CHO-NECTIN4細胞、CHO-αHIS細胞、CHO-CD38細胞およびヒト骨髄腫細胞株U266.B1(David Dingli博士[Mayo Clinic, Rochester, MN]のご厚意により供与)は、10%FBSを添加したRPMI1640培地で増殖させた。細胞は、湿度を飽和させた状態で5% CO2中37℃にて培養した。
【0106】
プラスミドならびに全ゲノム組換え麻疹ウイルス(MeV)の構築
イヌジステンパーウイルス(CDV)SPA.Madrid/22458/16発現プラスミドを作製するために、RNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いて、CDV SPA.Madrid/22458/16分離株に感染したVero/イヌSLAMF1細胞(継代1)から全RNAを抽出した。CDV-ヘマグルチニン(H)およびCDV-融合(F)遺伝子の両者を、SuperScript III逆転写酵素(Cat.# 11752050, Thermo Fisher Scientific)で逆転写し、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅させた:CDVH7050(+): 5'-AGAAACTTAGGCTCAGTAGTCC-3';CDVH8949(-): 5'-TCGTCTGTAAGGGATTTCTCACC-3';CDVF4857(+): 5'-AGGACATAGCAAGCCAACAGG-3'およびCDVH7050(-): 5'-GGACTACCTGAGCCTAAGTTT-3'。PCR産物をサンガー法(Genewiz, Plainfield NJ, USA)により直接配列決定し、pJET1.2ベクター(Thermo Fisher Scientific)にクローニングした。次にCDV-Hのオープンリーディングフレームを、フォワードプライマー
【化3】
およびリバースプライマー
【化4】
を用いてPCR増幅し、PacIおよび SpeI(New England Biolabs, MA, USA)で制限切断されたpCGベクター(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))に、InFusion HDキット(Takara, Shinagawa, Tokyo, Japan)を用いてクローニングした。プライマーは、PacIおよびSpeI制限部位(下線)、ならびにMeV-Hの非翻訳領域のコード配列(イタリック)を含んでいた。同様に、CDV-Fのオープンリーディングフレーム(アミノ酸残基136-662)をHpaI/SpeI制限pCG-CDV-Fプラスミドにクローニングした(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))。得られたプラスミドpCG-CDV-F SPA.Madrid/22458/16 は、MeV-F非翻訳領域およびシグナルペプチドのコード配列を含んでいた。CDV-H/F Onderstepoortワクチンおよび5804P分離株(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))ならびにMeV Nse株に対する発現プラスミドは、他に記載されている(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))。CDV-F 5804のシグナルペプチドは、CDV-F SPA.Madrid/22458/16について上述したように、異種MeV-Fと交換された。Nipah-GおよびNipah-F糖タンパク質遺伝子のオープンリーディングフレームは、購入したRNAテンプレート(Cat. # NR-37391, BEI Resources)から増幅し、Nipah-F遺伝子(GenBank AF212302.2)はNarIおよびPacI部位を用いてpCGベクターに挿入された。H/Gタンパク質の再標的化型は、相同のPacI/SfiI消化されたPCR産物をpCGHX α-CD38に挿入することにより作製した(Peng et al., Blood, 101(7):2557-62 (2003))。CD46を認識するscFvのコード配列の挿入は、SfiIおよびNotI制限部位を介して抗CD38 scFvを置き換えることにより実施した。部位特異的変異誘発(QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit, Agilent Technologies, Santa Clara CA, USA)を用いて、Hのトロピズムを除去し、CDV-FのSpeI部位を削除した。
【0107】
本実施例で使用したウイルスは、リン酸化タンパク質遺伝子の下流に追加の転写ユニットを有する、Moraten/Schwartワクチン株pB(+)MVvac2(ATU)PのcDNA分子クローンから得られた(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998);およびMunoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019))。細菌での増殖時にプラスミドの不安定性を回避し、ウイルスのレスキュー効率を高めるために、プラスミド骨格を、最適化されたT7プロモーターに続いて自己切断型ハンマーヘッドリボザイム(Hrbz)を有するpSMART LCkanベクター(Cat. # 40821-1; Lucigen, Middleton, WI, USA)に置き換えた(Beaty et al, mSphere, 2(2) (2017);およびMunoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019))。eGFPまたはホタルルシフェラーゼは、固有のMluI/AatII制限部位を用いて感染性クローンにクローニングされた。rMeVのレスキューは、STARTシステムを用いて行った(Nakamura et al, Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005))。
【0108】
組換えタンパク質の発現
CD46-Fc融合タンパク質をコードするプラスミドは、CD46エクトドメイン(残基35-328)をIgG1のFcドメインと融合することにより作製した(pfc1-hg1e3; InvivoGen, San Diego, CA, USA)。scFv K1、K2、およびA09は、VLおよびVH配列をGSSGGSSSGフレキシブルリンカーで分離して設計し、コドン最適化し、合成してpUC57-Kan (GenScript)にクローニングした。第4のscFv(N1E)は、VHおよびVL配列をSSGGGGSリンカーで分離して設計し、コドン最適化し、Creative Biolabs(Shirley, NY)により合成して、pCDNA3.1+(Invitrogen)にクローニングした。IgG構築物については、scFvを、分泌シグナルおよびC末端ヒトFc領域のコード配列に続いて6×HISタグを保有する、pHL-FcHIS(Cat.# 99846, Addgene, Cambridge, MA, USA)の固有のAgeIおよびKpnI部位にクローニングした。組換えタンパク質は、無血清Expi293発現培地(Thermo Fisher)中のExpi293F懸濁細胞を、メーカーの指示に従ってシェーカーフラスコ内でトランスフェクトすることにより発現させた。組換えタンパク質を含有する培養上清を回収し、Protein Gクロマトグラフィーカートリッジ(Cat.#89926、ThermoFisher)に通した。結合した組換えタンパク質を0.1Mグリシン(pH 2.0)で溶出し、続いて1M Tris(pH 8.0)で直ちに中和し、分離されたタンパク質をAmicon Ultra遠心濃縮器(Millipore Sigma, Burlington, MA, USA)を用いて濃縮した。CD46およびNECTIN4は、1:200の割合でHRV 3C Protease(Thermo Fisher)とともにインキュベートすることにより、Fc領域から遊離させた。最終精製工程は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化したSuperdex 75 10/300ゲル濾過カラム(GE Healthcare)を用いて実施した。タンパク質濃度は、アミノ酸組成から決定されるタンパク質の吸光係数から算出した。
【0109】
融合アッセイ
Fugene HD (PROMEGA, Fitchburg WI, USA)またはTransIT-LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio LLC, Madison WI, USA)を用いて、細胞をトランスフェクトした。定量的な融合アッセイのために、デュアルスプリットレポーターシステム(Kondo et al., J. Biol. Chem., 285(19):14681-8 (2010);およびIshikawa et al., Protein Eng. Des. Sel., 25(12):813-20 (2012))を、エフェクター細胞としてBHK細胞を用いて、他に記載のように使用した(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019))。半定量的な融合の評価のために、Vero細胞および派生細胞株を、シンシチウム形成をさらに可視化するためのGFP発現プラスミドを含む、合計0.1μgのDNA(HおよびF発現プラスミド1:1の割合)でトランスフェクトした。画像は顕微鏡(Eclipse Ti-S; Nikon)を用いて、40倍または100倍の倍率で取得した。
【0110】
モルビリウイルス付着タンパク質の発現解析
Hポリペプチドのレベルを評価するために、他に記載されているように(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019); and Saw et al., Methods, 90:68-75 (2015))、トランスフェクトした細胞を、抗6×HISタグモノクローナル抗体(Cat. # 130-120-787, Miltenyi Biotec、またはCat. # MA1-135、Thermo Fisher Scientific)を用いて、フローサイトメトリーまたは細胞酵素結合免疫吸着検定法(CELISA)により分析した。フローサイトメトリー(FACSCanbt、BD Biosciences、San Jose、CA、USA)による全タンパク質発現の分析のために、細胞をeBioscience Intracellular Fixation & Permeabilization バッファー(Cat.# 88-8823-88, Thermo Fisher Scientific)で処理した。
【0111】
エンベロープ糖タンパク質の免疫共沈降(co-IP)
3マイクログラム(Hの1μgおよびFの2μg)の全DNAを、HEK293T細胞(4e5細胞)にトランスフェクトした。24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、1mMの架橋剤3,3'-ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオナート)(DTSSP; Cat.# 21578, Thermo Fisher Scientific)で処理し、次に20mM Tris/HCl(pH 7)でクエンチし、1× Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Cat. # 1861281, Thermo Fisher Scientific)を含有する0.4 mL M-PER哺乳類タンパク質抽出試薬(Thermo Fisher Scientific)で溶解した。可溶性画分を10,000×g、4℃で10分間遠心分離した後に回収し、その30分の1量を細胞溶解物インプットとして取り置いた。残りは0.5μgの抗FLAGモノクローナル抗体M2(Sigma-Aldrich)およびEZview redプロテインGアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich, St.Louis, MO, USA)とともにインキュベートした。沈殿物を洗浄し(20 mM Tris-HCl、pH 7.4、140 mM塩化ナトリウム)、β-メルカプトエタノールを含有するlaemmliバッファー中で沸騰させて変性させた。
【0112】
SDS-PAGEおよびイムノブロッティング
サンプルは、4~12%NuPAGE Bis-trisゲル(Thermo Fisher)でのゲル電気泳動によって分画し、iBLOT 2ドライブロッティングシステム(Cat. # IB21001, Thermo Fisher Scientific)を用いてポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写した。タンパク質材料は、抗体である抗MeV-H606(Hudacek et al., Cancer Gene Therapy, 20(2):109-16 (2013))、抗MeV-F431(von Messling et al., J. Virol., 78(15):7894-903 (2004))、抗Fcyt(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))、抗MeV-N (Toth et al., J. Virol., 83(2):961-8 (2009))、抗HIS (Cat.# A01857-40, GenScript, Piscataway NJ, USA)、抗β-アクチン (Cat.# A3854, Sigma-Aldrich)、および抗CD46 (Cat.# sc-7056, Santa Cruz, Dallas TX, USA)とともにインキュベートすることによって検出した。イムノブロットは、ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識二次抗体およびKwikQuant Imager(Kindle Bioscience LLC, Greenwich CT, USA)を用いて可視化した。独立した2回の繰り返し実験の代表的な結果を示す。バンドの定量は、KwikQuant Image Analyzer 1.4(Cat. # D1016, Kindle Biosciences, LLC)を用いて行った。
【0113】
抗体結合アッセイ
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、scFvのCD46への結合を測定した。Nunc-Immuno MicroWell 96ウェル固相プレートを、0.05M炭酸-重炭酸バッファー、pH9.6(Cat.# E107, Bethyl Laboratories, Montgomery TX, USA)中、1μg精製CD46またはN4で、4℃にて一晩コーティングした。次に精製scFv-Fc融合タンパク質をPBSで希釈し、12.5μg/mLの濃度で添加した。結合した抗体を、二次抗体である抗ヒトIgG(Fc特異的)HRP標識抗体(1:70,000;Cat. # A0170, Sigma-Aldrich)を用いて検出した。並行して、125 ngのscFv-Fc融合タンパク質をまずウェルに結合させ、二次抗体だけでインキュベートした後、光学密度(OD490 nm)を測定することによって、タンパク質レベルをモニターした。
【0114】
表面プラズモン共鳴(SPR)
scFv A09、2B10、K1、K2、およびCD46の間の相互作用を、Biacore T-100システム(GE Healthcare, Waukesha, WI, USA)上でSeries S CM5 センサーチップを用いて測定した。A09、N1E、K1、およびK2については、10mM酢酸ナトリウム、pH4.5で希釈した抗FC抗体(MAB1302、EMD Millipore, Burlington, MA, USA)50μg/mLを、アミンカップリングキット試薬(EDC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド)、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)およびエタノールアミン)を用いて、CM5チップのアクティブチャンネルおよびリファレンスチャンネルに固相化した。抗体の固相化は、約12000のレスポンスユニットをもたらした。CD46と抗FC抗体捕捉scFvとの間の相互作用を、HBS EPバッファー(0.01 M HEPES pH 7.4、0.15 M NaCl、3 mM EDTA、0.005% v/v Surfactant P20)を用いて、25℃にて10Hzのデータレートで測定した。各結合サイクルは、15μg/mLのscFvを10μL/minの流速で300秒間アクティブチャネルにロードすることから開始した。100秒間のバッファー洗浄および120秒間の安定化期間の後、CD46(濃度範囲:A09は50 nM-1000 nM、K2は 37.5 nM-100 nM、N1EおよびK1は50-1000 nM)を、40μL/分の流速で100秒間活性アクティブチャンネルおよびリファレンスチャンネル上に流した。結合段階に続いて、200秒の解離期間をおいて、その後、表面固定化抗FC抗体を再生するために、10 mMグリシンpH2.0を30μL/minの流速で60秒間注入した。すべてのセンサーグラム(sensogram)は、Biacore T100評価ソフトウェアv2.04を用いて1:1結合モデルでフィッティングされた。
【0115】
感染およびウイルス増殖動態解析
ウイルス感染のために、細胞は、Opti-MEM I血清低減培地中で37℃にて90分間、指定のMOIで感染させた。吸収段階の後、接種材料を除去し、洗浄して、ウイルス増殖培地(DMEM+5% FBS)を加えた。eGFP発現ウイルスを用いた場合、感染の48時間後に蛍光顕微鏡写真を撮影した。Fluc発現ウイルスによる感染については、感染細胞に0.5mM D-ルシフェリンを添加した後、Infinite M200 Proマルチモードマイクロプレートリーダー(Tecan Trading AG)を用いて、ルシフェラーゼの発現を測定した。
【0116】
ウイルス増殖動態解析のために、感染の16~18時間前に6ウェルプレートに播種されたVero細胞および派生細胞株を、Opti-MEM(Cat. # 31985070, Thermo Fisher Scientific)中で90分間、感染多重度(MOI)0.03で、感染させた。その後、接種材料を除去し、細胞単層をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS; Cat.# MT-21-031-CVRF, Mediatech, Inc, Manassas, VA, USA)で3回洗浄して、培地を、5% FBSを添加したDMEM 1mLに置き換えた。指示された時点で、細胞上清を回収し、細胞を掻き出して1mLのOpti-MEMに入れた後、3回の凍結/融解サイクルを行った。細胞残屑を遠心分離(2,000 x g、5分間)により除去し、Vero-αHIS細胞におけるウイルス力価を測定した。
【0117】
免疫化試験
I型IFN受容体を欠損し、遺伝子導入によりヒトCD46を発現する、4~6週齢の雌雄HuCD46Ge-IFNARKOマウス(Mrkic et al., J. Virol., 74(3):1364-72 (2000))に、1×105 TCID50粒子のMeVまたはStealth-A09を、腹腔内(i.p.)接種した。28日目に、血清サンプルを採取し、中和抗体について評価するまで-20℃で保存した。
【0118】
中和アッセイ
蛍光に基づくプラーク減少マイクロ中和試験(PRMN)法を、他に記載されているように実施した(Munoz-Alia et al., J. Virol., 91(11) (2017))。簡潔に説明すると、Vero-αHIS細胞を96ウェルプレートに播種し、血清サンプルの連続希釈液を、37℃にて1時間、ウイルス接種液とあらかじ混合してから細胞に添加した。データは、GraphPadソフトウェア(Prism 8)を用いて表されるlog(血清の希釈度)対標準化反応(可変スロープ)としてプロットし、50%中和用量を算出した(ND50)。3rd World Health Organization International血清標準(3IU/mL)を含めることで、単位規定の定数の計算により抗体価をmIU/mLに変換することが可能となった(Haralambieva et al., Vaccine, 29(27):4485-91 (2011))。血液型がAB型である60~80人のドナーからプールされたヒト血清(Cat. # HS1017; Lot # C80553, Valley Biomedical Inc, Winchester, VA, USA)を使用した。以下の試薬は、NIH Defense and Emerging Infections Research Resources Repository, NIAID, NIHから入手した:ポリクローナル抗MeV抗体、Edmonston(抗血清、モルモット)、NR-4024 およびポリクローナル抗CDV Lederle Avirulent(抗血清、フェレット)、NR-4025。
【0119】
麻疹ウイルスおよびStealthの間の交差中和の欠如を評価した(図28A-B)。
【0120】
実験的な腫瘍溶解処置
皮下腫瘍を定着させるために、6週齢の雌の重症複合免疫不全(SCID)マウスに1 ×107個のU266.B1腫瘍細胞を、右脇腹に注入した。腫瘍が直径0.5cmに達した時点で、マウスに1×105の50%組織培養細胞感染量(TCID50)で、MeV(n=5)またはStealth(n=5)の単回静脈内投与を行った。対照マウス(n=5)には、等量のPBSを注入した。動物は、腫瘍が潰瘍化したとき、または腫瘍量が体重の20%に達したときに安楽死させた。腫瘍の直径を1日おきに測定し、腫瘍体積を、長さ×長さ×幅×0.5の式で算出した。
【0121】
卵巣癌の同所性モデルを確立するために、ホタルルシフェラーゼ(SKOV3ip.1-Fluc)を発現する5×106個のSKOV3ip.1細胞を、無胸腺ヌードマウスの腹腔内に注入した。10日後、600mIUの麻疹免疫血清(Cat. # HS1017; Lot # C80553, Valley Biomedical Inc.)または等量の生理食塩水を投与し、3時間後にMeV(n=5)またはStealth(n=5)の単回腹腔内投与(1×106 TCID50)を行った。対照群のマウスには、同量のVero細胞溶解液を投与した(n=5)。治療実験では、代わりに5×106個のSKOV3ip.1-Fluc細胞を移植した。IVIS Spectrum装置(Perking Elmer, Waltham, MA, USA)を用いたin vivo生物発光イメージングにより、腫瘍量を毎週モニターした。マウスは、腹水を生じるか、体重が20%減少した時点で、試験終了時(80日)に安楽死させた。群間の統計的比較は、ログランク検定(Mantel-Cox)で行い、p<0.05を統計的に有意とみなした。
統計分析
【0122】
統計分析は、Mac OS X用のGraphPad Prism 8.3.1バージョンを用いて行った。群間の有意差は、Holm-Sidakの多重比較検定を用いた一元配置分散分析(ANOVA)により判定した。生存率データは、カプラン・マイヤー法を用いて解析し、ログランク検定を用いて群間の有意差を確認した。
【0123】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明とともに記載されているが、上記記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することを意図していないと理解されるべきである。その他の態様、利点および修正は、下記の特許請求の範囲内である。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
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図9-2】
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図12-1】
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図12-10】
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図12-16】
図13-1】
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図14
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図15-3】
図15-4】
図16-1】
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図16-4】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19
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図21
図22-1】
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図22-3】
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図23
図24-1】
図24-2】
図25
図26
図27-1】
図27-2】
図27-3】
図28
【配列表】
2022551486000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月9日出願の米国仮出願第62/913,111号の利益を主張するものである。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされる(そして、参照により本出願の開示に組み入れられる)。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を包含する。2020年11月25日に作成された前記ASCIIコピーは、07039-1936WO1_SL.txtという名称を有し、サイズは1,096,580バイトである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図1】CDV遺伝子型に関するヘマグルチニン遺伝子の最尤法による分子系統解析。一般時間反転モデルに基づく最尤法を用いて系統樹を推定した。解析は119のCDV H全ヌクレオチド配列を対象とした。22458/15株および5804株はそれぞれArtic-like遺伝子型およびEurope-1/South America 1遺伝子型に分類された。進化解析はMEGA7で行った。
図2-1】標的細胞融合のためのCDV H/F複合体の作製。(A)シンシチウム形成アッセイ:単層の、Vero細胞、およびヒトNectin-4ポリペプチドまたはイヌSLAMF1ポリペプチドを発現するVero細胞に、CDV5804、CDV22458/16、またはCDVOnderstepoort(large plaque-forming)(CDVOL)由来のHおよびFポリペプチドをコードする発現プラスミドを、指示されるように同時にトランスフェクトした。シンシチウム形成は、ギムザ染色してから24時間後に記録した。(B)細胞に、感度を高めるために、GFP発現プラスミドをさらにトランスフェクトした。核の染色にはDAPIを使用した。(C)受容体拡大型モルビリウイルス付着タンパク質の模式図。受容体結合タンパク質は、細胞質尾部(C)、膜貫通ドメイン(T)、およびCD38特異的一本鎖可変フラグメント(scFv)に続いてHisタグに融合されたエクトドメインを含有した。(D)受容体の拡大したモルビリウイルスの付着タンパク質の表面発現。HEK293T細胞に、CD38受容体に対して再標的化された指定の付着タンパク質をトランスフェクトし、PE結合抗HIS抗体を用いてFACSにより表面発現を解析した。(E)自己会合性スプリットルシフェラーゼアッセイに基づく定量的融合アッセイの模式図。エフェクター細胞に、HおよびFポリペプチドをコードするプラスミド、ならびにウミシイタケルシフェラーゼ(RL)および緑色蛍光タンパク質(GFP)の二分割した半分をコードするプラスミドをトランスフェクトした。受容体を有する標的細胞に、デュアルスプリットレポーター遺伝子のもう半分をコードするプラスミドをトランスフェクトし、エフェクター細胞と混合した。内容物の混合により、そうしなければ機能しない二分割のレポーター遺伝子の酵素活性を回復させ、その活性をリアルタイムで測定した。(F)CD38-受容体に拡張されたモルビリウイルス付着タンパク質の細胞標的化融合活性。エフェクター細胞に、指示された付着/融合ポリペプチドペアを同時にトランスフェクトした。標的細胞との共培養後、発光シグナルを記録した。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で実施した1つの代表的な実験から得たものである。注目すべきは、CDV FシグナルペプチドがMEVの相同ペプチドで置き換えられたことである(MeV SP)。統計的有意性は、Turkey多重比較検定を用いた二元配置分散分析(two-way ANOVA)により算出した.*、p<.02;***、p<0.0005;****、p<.0001。(G)CDV Hポリペプチドの完全性。HEK293T細胞に、指示されたCDV Hポリペプチドをトランスフェクトし、細胞溶解物を抗HIS抗体(CDV H)または抗-β-アクチン(ローディングコントロール)でイムノブロットした。(H)再標的化されたH/F複合体の細胞標的化融合。細胞融合は、(C)に記載のように測定した。エフェクター細胞に、受容体を利用できない(receptor-blind)CD38再標的化ペアMeV H/F、およびCDV H5804/F22458/16を同時にトランスフェクトし、関連受容体を発現するCHO細胞でオーバーレイした。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で行った1つの代表的な実験から得たものである。(I) CDV H/F複合体のHer2/neuへの再標的化。Her2/neu特異的scFvまたはアフィボディ(ZX)をディスプレイしたCDV H/F複合体を用いて、細胞融合アッセイを実施した。ディスプレイされたリガンドに対する結合アフィニティを示す。(J)受容体の発現と受容体結合親和性との関係。異なる親和性を有するHer2/neu特異的アフィボディをディスプレイしたCDV Hポリペプチドの融合活性を、Her2/neu陽性細胞株で評価した:HT1080 (3.4 ×103分子/細胞)、Sko3pi (4.19×103分子/細胞)、TET67L (1.5×105分子/細胞)。CDV Fのみをトランスフェクトした細胞をネガティブコントロールとして使用した。
図2-2】図2-1の続きである。
図2-3】図2-2の続きである。
図2-4】図2-3の続きである。
図2-5】図2-4の続きである。
図3-1】CDVのH/F複合体は、麻疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質と置き換わり、細胞を標的とした侵入、および抗麻疹ウイルス抗体抵抗性をもたらすことができる。(A)細胞表面での発現。CHO細胞に、DSPプラスミドの1つ、およびFポリペプチド(MeVまたはCDV F224568/16)発現プラスミドとともに、指示されたHポリペプチド発現プラスミド(HIS-タグ付き)をトランスフェクトした。24時間後、抗HIS抗体を用いたCELISAによりHの発現を測定した。(B)(A)のようにトランスフェクトしたCHO細胞を、指示されたCHO細胞由来細胞株とともに共培養し、9時間の経時的な発光値を得た。値およびエラーバー(SD)は、少なくとも3連で行った代表的な1つの実験から得られた。(C)CD46に対して標的化されたCDV H/F複合体をコードする麻疹ウイルスのタンパク質組成(scFv A09、Stealth 2.0)。1.6E4 TCID50粒子をSDS-PAGEに供し、関連抗体でイムノブロットした。麻疹ウイルスを対照として使用した。(D)増殖動態。Stealth 2.0ウイルスの増殖動態を、指定の時点でVeroおよびVero-HIS(感染多重度(MOI)=0.03)上で測定した。Vero/hSLAMF1細胞上のMeVの増殖動態を、比較のために含めた。(E)中和アッセイ。MeVおよびCDVの抗血清を用いて、蛍光フォーカス減少中和アッセイを行った。異なる希釈度の抗血清を、一定量のウイルスとともに37℃で1時間プレインキュベートした。その後、この混合物を使用してVero-HIS細胞に感染させ、抗体を含まない対照ウェルのウイルス量を100%とした。すべての中和曲線は、同一の96ウェルプレートで4回反復して行われた曲線の平均値およびSDを表す。(F)組換えウイルスの受容体選択性。関連する受容体を発現するCHO細胞を、指示されたMOIで組換えウイルスに感染させた。GFP自己蛍光は2日後に記録された。
図3-2】図3-1の続きである。
図4-1】CD46を標的とするエンベロープキメラMeVの腫瘍溶解活性。CDB17 SCIDマウスにヒト骨髄腫細胞株U266.B1を皮下移植した。腫瘍体積が500 mm3に達した時点で、マウスを無作為化し、無処置のまま(PBS対照)、または1×105 TCID50粒子を単回静脈内投与して処置した。その後、腫瘍体積(B)および生存率(C)を記録した。
図4-2】図4-1の続きである。
図5】いくつかの実施形態による典型的な組換えVSVの模式図。VSV-hIFNβ-NIS:VSV Indianaを操作して、M/G遺伝子間領域においてヒトインターフェロンβ(hIFNβ)を発現し、G/L遺伝子間領域においてヒトヨウ化ナトリウムシンポーター(NIS)を発現するようにし、他に記載されるようにレスキューした(Naik et al., Leukemia, 26:1870-78 (2012))。CDV-F22458/16(CDV FポリペプチドのシグナルペプチドがMeV Fポリペプチドのシグナルペプチドで置き換えられている)およびCDV-H5804を発現するVSVを、pVSV-スマートプラットフォームを用いて作製した。CDV-H5804ポリペプチドにおける点変異、Y539AおよびR529A、を部位特異的変異誘発により導入し、イヌのNectin-4およびSLAMF1ポリペプチドに対する天然のトロピズムをそれぞれ除去した。CDV-H5804のC末端にEGFRまたはCD38標的化scFvを、IGESリンカーペプチドおよびH6ポリヒスチジンタグ(配列番号21)によりディスプレイすることによって、標的化ウイルスを作製した。再標的化されたVSV-CDV F/H構築物は、Vero抗H6上でレスキューされ、感染、ウイルス増幅、および標的細胞の融合を可能にした。各組換えウイルスの力価を示す。
図6】指示されたCHO細胞(野生型CHO細胞または指定の受容体を安定して過剰発現するCHO細胞)の単層を、VSV-CDVFH-GFPまたはVSV-CDVF/Haa-αEGFR-GFPにモック(mock)感染または感染させた(MOI = 0.2)。蛍光顕微鏡写真は、指示された時点で100倍の倍率で撮影された。GFPの発現(緑)は、単層内のウイルス感染および拡散と相関する。
図7】指示されたCHO細胞(野生型CHO細胞または受容体EGFRもしくはCD38を安定して発現するCHO細胞)の単層を、VSV-CDVFHaa-αEGFRまたはVSV-CDVFHaa-αCD38に感染させた(MOI = 0.1)。42時間後、細胞単層をパラホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。写真は40倍の倍率で撮影した。
図8】腹膜に異種移植されたヒト卵巣癌に対するキメラVSV-CDVFHaa-αEGFRの治療効果。雌の5-6週齢の胸腺欠損ヌードマウス(Envigo, Indianapolis, IN)に、2×106 SKOV3ip.1-Fluc細胞(200μL/マウス)を、腹腔内移植した(-7日目)。移植後7日目(0日目)に、担がんマウスを、IVISスペクトル(Perkin Elmer, Hopkinton, MA)を用いてホタルルシフェラーゼのシグナルに基づいて無作為化した。マウスは、マイクロチップおよび耳の切欠きによって識別された。無作為化後、マウスは、腹腔内注射により1×107 TCID50のウイルスまたは生理食塩水対照(250μL/マウス)の単回投与を受けた。マウスは、体重の10%を超える、腹水性の皮下注射部位腫瘍を発症した場合、または体重が20%を超えて減少した場合に安楽死させた。すべての生存マウスは、実験終了時に安楽死させた(ウイルス処置後92日目)。カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)生存曲線をプロットし、ログランク検定で比較した。臨床観察および体重は、研究の終了またはマウスの安楽死まで、1週間に3回記録した。
図9-1】図9は、CDV Hポリペプチド(配列番号2)をコードするCDV Hオープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号1)である。
図9-2】図9-1の続きである。
図10-1】図10は、CDV Fポリペプチド(配列番号4)をコードするCDV Fオープンリーディングフレームの核酸配列(配列番号3)である。
図10-2】図10-1の続きである。
図11-1】野生型CDVエンベロープのEGFRおよびCD38への再標的化。(A)再標的化された野生型CDV Hポリペプチドを生成するためのクローニング戦略の模式図(上)。標準的な1文字のアミノ酸略号は、天然受容体(SLAMF1およびNectin-4)の利用を除去するために導入された変化を示すために使用される(下)。アミノ酸のナンバリングは、配列番号5を基準とする。一本鎖抗体フラグメントは、Factor Xa(Fxa)切断部位(IEGRアミノ酸配列)を用いてH糖タンパク質のC末端伸長としてディスプレイされる。Vero-His細胞上でのウイルスレスキューを容易にするために、必要に応じてすべての構築物に6-ヒスチジンタグ(配列番号21)を含める。(B)CD38に標的化された受容体ブラインドHポリペプチドの標的化融合能力を示す同時トランスフェクション実験。12ウェルプレート中のCHO-CD38細胞に、CMV駆動CDV FプラスミドおよびCMV駆動野生型CDV H-CD38またはCMV駆動受容体ブラインドCDV H-CD38のいずれかを同時にトランスフェクトし、細胞を24時間後に固定して染色し、画像化した。(C) CDV H構築物による標的細胞融合は、プールされた麻疹免疫ヒト血清に対して抵抗性であった。CHO-CD38細胞に、CMV駆動HおよびFプラスミドを、可視化のためのCMV駆動GFPプラスミドとともに同時にトランスフェクトし、指示された希釈液とともにインキュベートした。細胞は、トランスフェクトの24時間後に写真撮影した。(D)標的化CDV Hポリペプチドを有するキメラ麻疹ウイルスは、目的の受容体を発現するCHO細胞、および目的の受容体を有するヒト腫瘍細胞株のパネルに対して特異性を保持している。細胞株は0.5のMOIでそれぞれのウイルスに感染させ、48時間後に写真を撮影した。(E)再標的化されたCDVエンベロープを有するキメラ麻疹ウイルスのin vivoでの腫瘍溶解効果および特異性を検証するための実験の概略設計。ヌードマウスに、5×106個のSKOV3ip-fluc細胞を、皮下(SQ)または腹腔内(IP)に移植した後、10日目から隔日に、皮下腫瘍には1×106 TCID50/mLを腫瘍内(IT)に、IP腫瘍には2×106 TCID50/mLをIPに、6回投与した。(F) それぞれのウイルスで処置したSKOV3ip皮下腫瘍の個々の腫瘍体積(上)およびそれぞれのウイルスで処置した腹腔内腫瘍を有する動物の生存率(下)。
図11-2】図11-1の続きである。
図11-3】図11-2の続きである。
図12-1】図12は、代表的な数のCDV Hポリペプチドのアラインメントである。最上段の配列(AF378705.1_America1とする)は配列番号5であり、指示された箇所でナンバリングのために使用される。図12は、配列番号5、1-109、105、110-145および227-228をこの順に開示する。
図12-2】図12-1の続きである。
図12-3】図12-2の続きである。
図12-4】図12-3の続きである。
図12-5】図12-4の続きである。
図12-6】図12-5の続きである。
図12-7】図12-6の続きである。
図12-8】図12-7の続きである。
図12-9】図12-8の続きである。
図12-10】図12-9の続きである。
図12-11】図12-10の続きである。
図12-12】図12-11の続きである。
図12-13】図12-12の続きである。
図12-14】図12-13の続きである。
図12-15】図12-14の続きである。
図12-16】図12-15の続きである。
図13-1】図13は、代表的な数のCDV Fポリペプチドのアラインメントである。シグナルペプチド配列は、アミノ酸1位からアミノ酸135位までである。最上段の配列(AF378705.1_America1とする)は、配列番号7であり、指示された箇所でナンバリングのために使用される。図13は、配列番号7および146-226をこの順に開示する。
図13-2】図13-1の続きである。
図13-3】図13-2の続きである。
図13-4】図13-3の続きである。
図13-5】図13-4の続きである。
図13-6】図13-5の続きである。
図13-7】図13-6の続きである。
図13-8】図13-7の続きである。
図13-9】図13-8の続きである。
図13-10】図13-9の続きである。
図13-11】図13-10の続きである。
図14】CDV OLはSLAMF1およびNECTIN4受容体を欠いた細胞を感染させることができる。(A)CDV分離株によるVero細胞への感染性をOL株と比較して評価した。細胞をMOI = 0.1(Vero-dogSLAMF1細胞で判定される)で感染させ、48時間後に可視化のためにHema-Quickで染色した。(B)異なる関連受容体を発現するCHO細胞のパネルに、CDV H/F OL糖タンパク質を含むeGFPレポーターMeVを感染させた。感染性は蛍光顕微鏡を用いて報告した。倍率40倍。
図15-1】野生型CDV H/Fと短縮型シグナルペプチドとの異種性の組み合わせは、H-F相互作用が弱くなるため、受容体依存性の融合が促進される。(A) CDV-F、CDV-H、およびeGFPを同時にトランスフェクトした細胞におけるシンシチウムの形成。CDV-Fのシグナルペプチドは、模式図中の黒いボックスで示すように、MeV-Fのホモログで置き換えた。同時トランスフェクションから24時間後、融合スコアをGFPチャンネル下で評価した。(B)定量的融合アッセイ。エフェクターBHK細胞は、付着タンパク質(CDV-HまたはNipah-G)および融合タンパク質(F)の指示された組み合わせに加えて、デュアルスプリットレポータープラスミドの一方でトランスフェクトした。標的CHO細胞およびCD38発現CHO細胞(CHO-CD38)は、もう一方のデュアルスプリットレポータープラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの16時間後の細胞をオーバーレイし、8時間後にウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した(RLU)。値は、3連で行った1つの代表的な実験の平均±標準偏差(SD)を表す。統計的有意性は、Holm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて判定した(ns、有意でない;*、p<0.05;**、p<0.002;***、p<0.0001)。(C) CDV-H/Fの免疫共沈降。wtまたは変異型HISタグ付きCDV-Hタンパク質のいずれか一方をFLAGタグ付きCDV-Fタンパク質とともに一過性に発現するHEK293T細胞を溶解し、抗FLAG抗体で免疫沈降(IP)させた。シグナル強度は、抗HIS抗体を用いて測定した。(D)完全に再標的化されたCDV-HおよびMeV-Hタンパク質の、CHO細胞およびCHO細胞由来細胞株への定量的融合アッセイ。HISタグ付きの、またはHISタグ付きでCD38に再標的化された、MeV-H/FおよびCDV-H/F複合体を、エフェクター細胞にトランスフェクトし、発光シグナルを経時的に測定した。MeV-Haals = 変異Y481A、R533A、S548LおよびF549Sを介してCD46、NECTIN-4およびSLAMF1について利用できない(blind)MeV-H。
図15-2】図15-1の続きである。
図15-3】図15-2の続きである。
図15-4】図15-3の続きである。
図16-1】CDV-Hタンパク質のアミノ酸残基M437の、異なる遺伝子群間での保存。GenBankから検索されたCDV-H配列を用いて配列アラインメントを行ったが、これにはSPA.Madrid/22458/16分離株について今回決定されたCDV-H配列が含まれる。アクセッション番号を示す。
図16-2】図16-1の続きである。
図16-3】図16-2の続きである。
図16-4】図16-3の続きである。
図17-1】キメラリガンドをディスプレイする受容体結合タンパク質の完全性および発現。(A)抗CD38 scFvに融合された指定のタンパク質、または融合されていない指定のタンパク質をトランスフェクトした、HEK293T細胞のウェスタンブロット分析。タンパク質は、抗HIS抗体または抗β-アクチン抗体(ローディングコントロール)でブロットした。(B)透過処理あり、またはなしで、固定されたHEK293T細胞上での付着タンパク質および変異型タンパク質発現をフローサイトメトリーで解析した。ヒストグラムは、2回繰り返された生物学的実験からの1つの代表的な実験から得られたものである。各ヒストグラムの右上に、2回繰り返された生物学的実験からの幾何平均強度±SDを示す。塗りつぶされた曲線領域は、空のプラスミドをトランスフェクトした細胞を示す。
図17-2】図17-1の続きである。
図18-1】FエクトドメインへのFLAGタグの挿入、およびそれがタンパク質の生物反応性に及ぼす影響。(A)未切断MeV-FおよびCDV-Fの模式図。NH2およびCOOH末端、シグナルペプチド(SP)、融合ペプチド(FP)、ならびに膜貫通(TM)および細胞質領域が示される。切断部位周辺の配列(太字)および融合ペプチドの配列を示す。ナンバリングは同型シグナルペプチドを考慮した。(B)異なる位置にFLAG挿入を有する相同HおよびF発現プラスミドを同時にトランスフェクトした後のVero細胞におけるシンシチウム形成。トランスフェクションの16時間後に細胞を染色し、定量のために顕微鏡写真を取得した。(C)シンシチウム形成の定量。データは平均値±SDとして示す(n=20)。有意性はHolm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて決定した(ns、有意でない;***、p≦0.001)。(D)アミノ酸216においてFLAGタグ挿入を有するか、または有しないCDV-H/F SPAの同時トランスフェクションに関するデュアルスプリットタンパク質融合アッセイ。ルシフェラーゼシグナルは8時間後に測定した。実験は技術的に2連で行った。
図18-2】図18-1の続きである。
図19】scFvのCD46特異性。(A)標的タンパク質のSDS-PAGE分析。MW:分子量ラダー、C:クマシー染色、WB:抗CD46抗体を用いたウェスタンブロット分析。(B) 実験に使用したCD46のサイズ排除クロマトグラフィートレース。推定MWは、図のように検量線から得られる。(C)ELISAで測定された、CD46またはNECTIN4に対するscFv-Fcタグ付き融合タンパク質の結合。検出は、Fc部分をタンパク質量の対照として用いて行った。実験は技術的に二連で行った。データは、平均±SD (n=2)として示される。有意性は、Holm-Sidakの多重比較検定による一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて判定された。*、p<0.05;**、p<0.005。
図20-1】ディスプレイされたscFvのCD46結合親和性は、再標的化CDV H/F複合体のCD46依存性細胞間融合を決定づける。(A)一本鎖抗体フラグメント(scFv)を含有する(実線)または含有しない(破線)バイオセンサー表面へのCD46の結合に関する代表的なセンサーグラム(レゾナンスユニット、RU)。実験データは、scFv K2を300秒間注入し、その後バッファーを注入したことを表す。その後、1μMのCD46を両方のバイオセンサー表面に流し、注入中(結合)および注入後(解離)のシグナルを記録した。表面は、本明細書に記載のように、サイクルの終了時に最終的に再生された。(B)表面プラズモン共鳴によって評価されるCD46のscFvへの結合。さまざまな濃度のCD46のscFvへのレスポンスユニット(黒い線)を示すセンサーグラム。最適な1:1結合モデルを赤い破線として示す。結合親和性(Kd)は、結合および解離速度から決定された(表1)。(C) CHO細胞上でのMeV-HおよびCDV-Hバリアントの定量的融合アッセイ。実験は二連で行い、2回繰り返して、同様の結果となった(図21を参照のこと)。データは平均値±SDで示す。
図20-2】図20-1の続きである。
図21】CDV-H/F複合体上にディスプレイされたscFvの結合親和性は、細胞-細胞融合を促進する。(A)図20Cの定量的融合アッセイで使用した細胞タンパク質の量に関する細胞酵素結合免疫吸着検定法(CELISA)。CELISAは、抗6×HIS-tagモノクローナル抗体を用いて、指示された付着タンパク質でトランスフェクトされたCHO細胞で実施した(n=5)。(B)親和性調整scFvを用いたCD46再標的化CDV-H/F複合体の定量的融合アッセイ(図20Cに提示したものと同じデータ)。Y539Aは、NECTIN4に対する天然のトロピズムを消失させるためのCDV-Hにおける置換を示す。
図22-1】CD46に再標的化されたCDVエンベロープ糖タンパク質は、トロピズムを決定づける。(A)Stealthの模式図:CD46再標的化CDV H/Fエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されたワクチン由来の麻疹ウイルス。BioRender.comで作製した。(B)ウイルス侵入におけるCD46結合親和性の役割。細胞は、指定のMOIで、CD46に対して異なる親和性を有するscFvをディスプレイしたStealthウイルスに感染させた。eGFP発現は、感染の48時間後にモニターした。(C)HIS-偽受容体またはCD46を発現するCHO細胞および派生細胞株を、Fluc発現Stealthウイルス(K1およびA09)にMOI 0.5で感染させた。ルシフェラーゼの発現を感染の48時間後に測定した。CHO-CD46を除いてn=2、*、p値<0.05(両側t検定)。(D)VeroまたはVero-αHIS細胞におけるStealth-A09の多段階増殖動態。指示された時点で、上清および細胞ペレットの両者を回収し、Vero-αHIS細胞でウイルス力価を測定した。値およびエラーバー(SD)は、3連で行った代表的な実験について決定された。(E)ウイルスのタンパク質組成。ウェスタンブロット分析は、同量のウイルス粒子を用いて判定され、関連抗体をプローブとして用いた。標準物質の分子量を示す。(F)ウイルスのトロピズム。CHO細胞由来細胞株を、指定のeGFP発現ウイルスに感染させた。eGFP自己蛍光は、48時間後に測定した。スケールバー、200μm。(G)Stealthの遺伝的安定性。Vero-hSLAMF1細胞をStealthに感染させ、複数回継代した。8回継代した後、回収したウイルスを用いて、ヒトまたはイヌのSLAMF1を発現するVero細胞を感染させた。3日または6日間感染させた後の代表的な顕微鏡写真を示す。
図22-2】図22-1の続きである。
図22-3】図22-2の続きである。
図22-4】図22-3の続きである。
図23】改変されたCDV融合機構(apparatus)複合体に対する受容体相互作用の評価。細胞に、MeV-FおよびMeV-H、またはCDV-FおよびCDV-H再標的化バリアントを、CD46特異的scFvとともに同時にトランスフェクトした。可視化目的で、eGFPをコードする発現プラスミドを同時にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にeGFPの自己蛍光を可視化した。Y539Aは、NECTIN4に対する天然のトロピズムを消失させるためのCDV-Hにおける置換を示す。「+」および「-」記号は、半定量化のために使用された(図15Aに示されるものと同じ)。「ディスプレイなし」は、scFvがないことを示す。
図24-1】高いCD46結合親和性は、卵巣癌のマウスモデルにおけるCD46標的化Stealthウイルスの腫瘍溶解活性を決定づける。(A)実験デザインの研究概要図。ホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードするSKVOv3ip.1腫瘍細胞(SKOV3ip.Fluc)を胸腺欠損マウスに腹腔内移植した。10日目に1×106 TCID50粒子のStealthを同じ経路で投与した。その後、腫瘍組織量は、生物発光イメージング(BLI)により7日間隔でモニターされた。(B)Stealth-N1EおよびStealth-A09ウイルスで処置したSKOV3ip.Fluc保有マウスのカプラン生存曲線(n=5)。ログランク検定で定義される統計的有意性。(C)処置された動物の背側の撮影を示す代表的なBLI。放射輝度(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)は、右側に示す説明に従って、マウスの腫瘍組織量を示すように色に変換された。(D)全身発光の定量化(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)。n=5。Ns、有意ではない; *、p値<0.05; **、p<0.005。
図24-2】図24-1の続きである。
図25】Stealth-A09ウイルスは、多発性骨髄腫のマウスモデルにおいて親ウイルスであるMeVと区別できないほどの腫瘍溶解性を達成する。(A)皮下U266.B1細胞腫瘍を有するSCIDマウスを、最適以下の用量のウイルスによる静脈内処置を行った。腫瘍の増殖をノギスで測定し(n=5)、腫瘍が潰瘍化したとき、または腫瘍サイズが体重の20%に達したときに、動物を安楽死させた。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(n=5)。群間の有意差はログランク検定で判定した(*、p<0.05)。(C)全身投与後の皮下腫瘍細胞へのウイルス輸送。安楽死時に採取した各群の代表の2サンプルについて免疫組織化学によりeGFP発現を評価した。スケール、200 nm。
図26】CD46への結合親和性の増大は、CD46特異的なウイルス侵入を促進する。Fluc発現Stealthウイルスを用いて、MOIを減少させて標記細胞に感染させた。ルシフェラーゼ発現を、感染の48時間後に測定した。CHO-CD46およびStealth-A09(n=3)を除くすべてについてn=2である。
図27-1】Stealthウイルスは、MeV免疫血清の存在下で腫瘍溶解性を保持する。(A) SKOV3ip.Fluc細胞を胸腺欠損ヌードマウスに注射し、10日間定着させた。次に、該当する群のマウスに、同じ経路でウイルス処置する3時間前に、600mIUの抗MeV IgG抗体を腹腔内投与した。(B)カプラン・マイヤー生存曲線(各群n=5マウス)。群間の有意差はログランク検定で判定した(ns、有意でない;*、p<0.05;**、p<0.002)。(C)処置された動物の背側の撮影を示す代表的なBLI。放射輝度(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)は、右側に示す説明に従って、マウスの腫瘍組織量を示すように色に変換された。(D)全身発光の定量化(光子/秒/cm/ステラジアン、p/s/cm2/sr)。n=5である。統計的有意性は、ダネット(Dunnett)の多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって判定された。Ns、有意でない。
図27-2】図27-1の続きである。
図27-3】図27-2の続きである。
図28】麻疹ウイルスおよびStealthの間の交差中和の欠如。(A)MeVおよびStealthのウイルス中和アッセイ。ヒトABプール血清(左パネル)またはフェレット抗CDV血清(右パネル)を使用した。相対感染とは、血清非存在下での感染量と比較した、血清存在下での感染量を指す。値は、技術的に4連で実施された、2回または3回の生物学的反復実験から計算された。(B)感染したHuCD46Ge-IFNARKOマウスから得られた抗血清も、ウイルス間の交差中和を判定するために使用した、n=8(いくつかのデータポイントが重複することに注意されたい)。ND50力価は、第3次WHO国際血清標準品(3 IU/mL)で評価したときにMeVについて得られたND50に基づいて、mIU/mLに変換された。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
実施例1 CDV FおよびHポリペプチドならびに組換えウイルス
細胞株
Veroアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero;American type culture collection[ATCC], Cat.# CCL-81)およびその派生細胞株(Nectin-4(Noyce et al., Virology, 436(1):210-20 (2013)), SLAMF1 (Tatsuo et al, Nature, 406(6798):893-7 (2000))、イヌSLAMF1 (von Messling et al., J. Virol., 77(23):12579-91 (2003)、または膜に固定された、ヘキサヒスチジンペプチド(配列番号21)に特異的な一本鎖抗体 (Nakamura et al., Nat. Biotechnol, 23(2):209-14 (2005))のいずれかを発現する)は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(GE Healthcare Life Sciences, Cat.# SH30022.01)中で維持されたが、この培地は、5%(容量/容量)熱非動化ウシ胎児血清 (FBS, Gibco)、ならびにVero/NECTIN-4およびVero/SLAMF1用には0.5 mg/mLジェネティシン(Geneticin)(G418; Corning)を、Vero/dogSLAMF1用には1 mg/mL Zeocin (ThermoFisher)を、添加したものである。ヒト腎臓上皮細胞(HEK293T細胞)(Cosset博士(Universite de Lyon)より入手)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC, Cat.# CCL-10)、ヒト神経膠芽腫U-87 MG細胞(ATCC、カタログ番号HTB-14)、およびSKOV3ip.1ヒト卵巣腫瘍細胞は、DMEM+10% FBS中で維持された。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、CHO-CD46、およびCHO-EGFR(Nakamura et al, Nat. Biotechnol., 22(3):331-6 (2004))、CHO-SLAMF1(Tatsuo et al., Nature, 406(6798):893-7 (2000))、CHO-dogSLAMF1(Seki et al., J. Virol, 77(18):9943-50
(2003))、CHO-NECTIN4(Liu et al., J. Virol., 88(4):2195-204 (2014))、CHO-CD38(Peng et al., Blood, 101:2557-62 (2003))、CHO-HER2/neu(Hasegawa et al., J. Virol., 81(23): 13149-57 (2007))、バーキットB細胞リンパ腫Ramos(ATCC, Cat.# CRL-1596)、およびRaji細胞(ATCC、カタログ番号CCL-86)は、他に記載される通り、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地(Corning Inc, Cat. #10-040-CV, Corning, NY, United States)で培養された。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
プラスミドならびに全ゲノムrMeVの構築
CDV 22458/16発現プラスミドを作製するために、RNeasy Mini Kit(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてCDV 22458/16分離株に感染したVero/イヌSLAMF1細胞(継代1)から全RNAを抽出した。CDV-HおよびCDV-Fの両遺伝子をSuperScript III逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific, Cat.# 11752050)で逆転写し、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した:
CDVH7050(+):AGAAAACTTAGGGCTCAGGTAGTCC(配列番号22)
CDVH8949(-):TCGTCTGTAAGGGATTTCTCACC(配列番号23)
CDVF4857(+):AGGACATAGCAAGCCAACAGG(配列番号24)
CDVH7050(-):GGACTACCTGAGCCCTAAGTTTTCT(配列番号25)
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
PCR産物は、Sanger (Genewiz, Plainfield NJ, USA)により直接、配列決定し、pJET1.2ベクター(Thermo Fisher)にクローニングした。次にCDV Hオープンリーディングフレーム(図8)を、フォワードプライマー
【化1】
(配列番号26)およびリバースプライマー
【化2】
(配列番号27)を用いてPCR増幅し、PacIおよびSpeI(New England Biolabs, Iswich MA, USA)で制限切断されたpCGベクター(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))に、InFusion HDキット(Takara, Shinagawa, Tokyo, Japan)を用いてクローニングした。プライマーは、PacIおよびSpeI制限部位(それぞれ下線)ならびにMeV-Hの非翻訳領域(イタリック体)を提供した。同様に、CDV Fオープンリーディングフレーム(図9;配列番号4のアミノ酸残基136-662)をHpaI/SpeI制限pCG-CDV-Fプラスミドにクローニングした(von Messlingら、J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))。得られたプラスミドpCG-CDV F 22458/16は、MeV-F非翻訳領域およびMeV-Fシグナルペプチドを有する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
CD38およびEGFRを標的とするMeV
MeVに関するCD38およびEGFR標的化が、CDV FおよびHポリペプチドを用いて達成できることを確認するために、以下を実施した(図11)。安全性を高めるために、追加の変異をCDV Hポリペプチドに挿入して、天然受容体の使用に逆戻りする可能性を阻止した(Sawatsky et al., J. Virol., 92(15):e0069-18 (2018))。R529Aのアミノ酸置換に加えて、D526A、I527A、S528A、R529A、Y539A、Y547A、およびT548の置換も組み入れられた(図11A)。図11Bは、CD38標的CDV Hポリペプチドに関して、これらの変異の導入が、融合誘導能に影響を及ぼさなかったことを示している。同様に、図11Cは、このさまざまな点変異が、麻疹免疫ヒト血清に対するポリペプチドの中和感受性に影響しなかったことを示す。CD38標的化MeV Hポリペプチドの融合活性は、プールされた麻疹抗血清によって、1:80希釈まで、阻害されたが、相同CD38標的化CDV Hポリペプチドは、1:10希釈というテストされた最高濃度で、阻害されなかった。ラブドウイルスの場合と同様に、標的化CDV H/F複合体を組み込んだ麻疹ウイルスは、CD38またはEGFR特異的に、細胞に感染し融合することができた(図11D)。この感染特異性はまた、多くの腫瘍細胞株で観察された。Skov3piおよびU87細胞(EGFR陽性)は、EGFR標的化ウイルスに感染したが、CD38標的化ウイルスには感染しなかった。これに対して、RajiおよびRamos細胞株(CD38陽性)は、CD38標的化ウイルスにのみ感染した。対照として、6×HIS偽受容体(配列番号21として示される「6×HIS」)を発現する細胞は、すべての再標的化ウイルスに感染した。これらの結果は、抗麻疹免疫を回避して、細胞を標的とする侵入およびシンシチウム形成をもたらすために、CDV F/H複合体を使用することができることを実証している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
方法および結果
細胞株
ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, Cat.# CCL-10, ATCC, Manassas, VA, USA)、Francois-Loic Cosset博士(Universite de Lyon)から入手したヒト腎臓上皮細胞(HEK293T)、およびヒト卵巣癌細胞株SKOV3ip.1-Fluc(Mader et al., Clin. Cancer Res., 15(23):7246-55 (2009))を、5%ウシ胎仔血清(FBS; Cat. #10437-028; Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Cat.# SH30022.01, GE Healthcare Life, Pittsburg, PA, USA)で維持した。Veroアフリカミドリザル腎臓細胞(Vero、ATCC、Cat.#CCL-81)およびその派生株(ヒトNECTIN-4(Noyce et al., Virology, 436(1):210-20 (2013))、ヒトSLAMF1(Ono et al., J. Virol., 75(9):4399-401 (2001))、またはヘキサヒスチジンペプチド(6×HISタグ(配列番号21))に特異的な膜アンカー型一本鎖可変フラグメント(scFv)(Nakamura et al., Nat. Biotechnol., 23(2):209-14 (2005))を発現する)を、DMEM(Cat. # SH30022.01, GE Healthcare Life Sciences)で他に記載のように(Munoz-Alia et al., Viruses, 11(8) (2019))培養した。イヌSLAMF1分子を構成的に発現するVero細胞(Vero-dogSLAMF1)は、第二世代レンチウイルスベクター(Lukkana Suksanpaisan博士[Imanis Life Science, MN, USA]のご厚意により供与)の導入およびピューロマイシン選択により作製したが、このレンチウイルスベクターは、脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターの制御下で、N末端FLAGタグ配列(DYKDDDD(配列番号28))を有するイヌ由来のコドン最適化SLAMF1分子(GenBank NP_001003084.1)をコードするものである。細胞は、5% FBSを添加したDMEMで維持した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、CHO-CD46細胞、CHO-hSLAMF1細胞、CHO-dogSLAMF1細胞、CHO-NECTIN4細胞、CHO-αHIS細胞、CHO-CD38細胞およびヒト骨髄腫細胞株U266.B1(David Dingli博士[Mayo Clinic, Rochester, MN]のご厚意により供与)は、10%FBSを添加したRPMI1640培地で増殖させた。細胞は、湿度を飽和させた状態で5% CO2中37℃にて培養した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
プラスミドならびに全ゲノム組換え麻疹ウイルス(MeV)の構築
イヌジステンパーウイルス(CDV)SPA.Madrid/22458/16発現プラスミドを作製するために、RNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いて、CDV SPA.Madrid/22458/16分離株に感染したVero/イヌSLAMF1細胞(継代1)から全RNAを抽出した。CDV-ヘマグルチニン(H)およびCDV-融合(F)遺伝子の両者を、SuperScript III逆転写酵素(Cat.# 11752050, Thermo Fisher Scientific)で逆転写し、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅させた:CDVH7050(+): 5'-AGAAACTTAGGCTCAGTAGTCC-3'(配列番号22);CDVH8949(-): 5'-TCGTCTGTAAGGGATTTCTCACC-3'(配列番号23);CDVF4857(+): 5'-AGGACATAGCAAGCCAACAGG-3'(配列番号24)およびCDVH7050(-): 5'-GGACTACCTGAGCCTAAGTTT-3'(配列番号25)。PCR産物をサンガー法(Genewiz, Plainfield NJ, USA)により直接配列決定し、pJET1.2ベクター(Thermo Fisher Scientific)にクローニングした。次にCDV-Hのオープンリーディングフレームを、フォワードプライマー
【化3】
(配列番号26)およびリバースプライマー
【化4】
(配列番号27)を用いてPCR増幅し、PacIおよび SpeI(New England Biolabs, MA, USA)で制限切断されたpCGベクター(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))に、InFusion HDキット(Takara, Shinagawa, Tokyo, Japan)を用いてクローニングした。プライマーは、PacIおよびSpeI制限部位(下線)、ならびにMeV-Hの非翻訳領域のコード配列(イタリック)を含んでいた。同様に、CDV-Fのオープンリーディングフレーム(アミノ酸残基136-662)をHpaI/SpeI制限pCG-CDV-Fプラスミドにクローニングした(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))。得られたプラスミドpCG-CDV-F SPA.Madrid/22458/16 は、MeV-F非翻訳領域およびシグナルペプチドのコード配列を含んでいた。CDV-H/F Onderstepoortワクチンおよび5804P分離株(von Messling et al., J. Virol., 75(14):6418-27 (2001))ならびにMeV Nse株に対する発現プラスミドは、他に記載されている(Cathomen et al., J. Virol., 72(2):1224-34 (1998))。CDV-F 5804のシグナルペプチドは、CDV-F SPA.Madrid/22458/16について上述したように、異種MeV-Fと交換された。Nipah-GおよびNipah-F糖タンパク質遺伝子のオープンリーディングフレームは、購入したRNAテンプレート(Cat. # NR-37391, BEI Resources)から増幅し、Nipah-F遺伝子(GenBank AF212302.2)はNarIおよびPacI部位を用いてpCGベクターに挿入された。H/Gタンパク質の再標的化型は、相同のPacI/SfiI消化されたPCR産物をpCGHX α-CD38に挿入することにより作製した(Peng et al., Blood, 101(7):2557-62 (2003))。CD46を認識するscFvのコード配列の挿入は、SfiIおよびNotI制限部位を介して抗CD38 scFvを置き換えることにより実施した。部位特異的変異誘発(QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit, Agilent Technologies, Santa Clara CA, USA)を用いて、Hのトロピズムを除去し、CDV-FのSpeI部位を削除した。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
組換えタンパク質の発現
CD46-Fc融合タンパク質をコードするプラスミドは、CD46エクトドメイン(残基35-328)をIgG1のFcドメインと融合することにより作製した(pfc1-hg1e3; InvivoGen, San Diego, CA, USA)。scFv K1、K2、およびA09は、VLおよびVH配列をGSSGGSSSGフレキシブルリンカー(配列番号29)で分離して設計し、コドン最適化し、合成してpUC57-Kan (GenScript)にクローニングした。第4のscFv(N1E)は、VHおよびVL配列をSSGGGGSリンカー(配列番号30)で分離して設計し、コドン最適化し、Creative Biolabs(Shirley, NY)により合成して、pCDNA3.1+(Invitrogen)にクローニングした。IgG構築物については、scFvを、分泌シグナルおよびC末端ヒトFc領域のコード配列に続いて6×HISタグ(配列番号21)を保有する、pHL-FcHIS(Cat.# 99846, Addgene, Cambridge, MA, USA)の固有のAgeIおよびKpnI部位にクローニングした。組換えタンパク質は、無血清Expi293発現培地(Thermo Fisher)中のExpi293F懸濁細胞を、メーカーの指示に従ってシェーカーフラスコ内でトランスフェクトすることにより発現させた。組換えタンパク質を含有する培養上清を回収し、Protein Gクロマトグラフィーカートリッジ(Cat.#89926、ThermoFisher)に通した。結合した組換えタンパク質を0.1Mグリシン(pH 2.0)で溶出し、続いて1M Tris(pH 8.0)で直ちに中和し、分離されたタンパク質をAmicon Ultra遠心濃縮器(Millipore Sigma, Burlington, MA, USA)を用いて濃縮した。CD46およびNECTIN4は、1:200の割合でHRV 3C Protease(Thermo Fisher)とともにインキュベートすることにより、Fc領域から遊離させた。最終精製工程は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で平衡化したSuperdex 75 10/300ゲル濾過カラム(GE Healthcare)を用いて実施した。タンパク質濃度は、アミノ酸組成から決定されるタンパク質の吸光係数から算出した。
【国際調査報告】