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特表2022-551495リン脂質-フラバグリン抱合体及び標的化されたがん治療のためのリン脂質-フラバグリン抱合体の使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】リン脂質-フラバグリン抱合体及び標的化されたがん治療のためのリン脂質-フラバグリン抱合体の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20221202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221202BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221202BHJP
   A61K 31/665 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K31/665
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521432
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020055121
(87)【国際公開番号】W WO2021072300
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,571
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517171163
【氏名又は名称】セレクター・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ジャロッド ロングカー
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA10
4C086DA37
4C086ZB26
4C086ZB27
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB28
(57)【要約】
本明細書中には、リン脂質エーテル(PLE)分子が開示される。リン脂質-フラバグリン抱合体がさらに提供される。このリン脂質-フラバグリン抱合体は、リンカーを介してフラバグリンに結合したPLEを含んでよい。本明細書中には、対象のがんを治療する方法及び対象の腫瘍又はがん細胞に薬物を標的化する方法がさらに提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、Zは、フラバグリン類縁体である、
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
以下:
【化2】
及び
【化3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法であって、前記方法は、前記対象に有効量の請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項5】
対象における腫瘍又はがん細胞に薬物を標的化する方法であって、前記方法は、前記対象に請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項6】
前記化合物、又は前記その薬学的に許容される塩は、前記腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに局在化するか又は移行する、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物、又は前記その薬学的に許容される塩は、前記対象のがん細胞に選択的である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物、又は前記その薬学的に許容される塩は、健康細胞よりも少なくとも約2倍多く腫瘍細胞又はがん細胞に取り込まれる、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記がんは、メラノーマ、脳がん、肺がん、副腎がん、肝がん、腎がん又は腎臓がん、膵がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、結腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、リンパ腫、白血病、骨髄腫、造血器がん、肝細胞がん、網膜芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、芽細胞腫、扁平上皮がん、腺がん、又はこれらの組み合わせである、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記がんは、メラノーマ、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、又はこれらの組み合わせである、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記肺がんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、又はこれらの組み合わせを含み、
前記メラノーマは、表在拡大型黒色腫、結節性メラノーマ、悪性黒子由来黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、母斑性黒色腫(nevoid melanoma)、スピッツ母斑様黒色腫(spitzoid melanoma)、線維形成性黒色腫、又はこれらの組み合わせを含み、
前記結腸直腸がんは、腺がんを含み、又は
前記乳がんは、浸潤性乳管がん、転移性乳がん、炎症性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、乳管内上皮内がん(ductal carcinoma in situ)、又はこれらの組み合わせを含む、
請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記がんは、がん幹細胞を含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記がんは、転移性がん細胞を含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記がんは、循環腫瘍細胞を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象は、ヒトである、請求項4~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月10日に出願された、米国仮特許出願第62/913,571号の利益及び優先権を主張し、その内容の全体を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、リン脂質-フラバグリン抱合体(phospholipid-flavagline conjugates)及び標的化されたがん治療に関する。
【背景技術】
【0003】
緒言
臨床用途の抗がん剤の大多数は、全ての増殖細胞に対する毒性及び/又は腫瘍細胞の全てに対しては効果を発揮することができないことにより制限された有用性を有する。標的化を強化するよう意図されている特有な作用機序を備える新規作用薬が開発し続けられているが、これらの化合物の多くはなお腫瘍絶対選択性を欠いており、オフターゲット効果により治療的利用が制限され続けている。抗体薬物抱合体(ADC)は、腫瘍細胞の表面上の特異的なエピトープに結合するよう設計されており、関連する毒性を減少させる試みの中で腫瘍細胞を標的とする代替法を提供している。選択性は高いが、抗体薬物抱合体は中程度の細胞性取り込み及び限定された細胞死滅活性しか果たせないので、治療的に有用な抗体薬物抱合体はきわめて少ない。より効果的な腫瘍標的化プラットフォームが必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
ある態様において、本開示は、式(I)の化合物であって、
【化1】
式中、Zは、フラバグリン類縁体(analog)である、
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0005】
本開示の別の態様は、本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0006】
本開示の別の態様は、対象のがんの治療方法であって、この方法は、この対象に本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、治療方法を提供する。
【0007】
本開示の別の態様は、対象における腫瘍又はがん細胞に薬物を標的化する方法であって、この方法は、この対象に本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、この腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに局在化するか又は移行する。いくつかの実施形態において、この化合物は、この対象のがん細胞に選択的である。いくつかの実施形態において、この化合物は、健康細胞よりも少なくとも約2倍多く腫瘍細胞又はがん細胞に取り込まれる。いくつかの実施形態において、このがんは、メラノーマ、脳がん、肺がん、副腎がん、肝がん、腎がん又は腎臓がん(renal or kidney cancer)、膵がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、結腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、リンパ腫、白血病、骨髄腫、造血器がん、肝細胞がん、網膜芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、芽細胞腫、扁平上皮がん、腺がん、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、この対象は、ヒトである。
【0009】
本開示は、以下の詳細な説明及び添付の図面を考慮して明らかになるであろう他の態様及び実施形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1A図1B図1C図1D図1Eは、標識された脂質ラフトを含む腫瘍細胞の画像である。腫瘍細胞は、正常細胞と比較して高濃度の脂質ラフトを有していた。
図1B図1A図1B図1C図1D図1Eは、標識された脂質ラフトを含む腫瘍細胞の画像である。腫瘍細胞は、正常細胞と比較して高濃度の脂質ラフトを有していた。
図1C図1A図1B図1C図1D図1Eは、標識された脂質ラフトを含む腫瘍細胞の画像である。腫瘍細胞は、正常細胞と比較して高濃度の脂質ラフトを有していた。
図1D図1A図1B図1C図1D図1Eは、標識された脂質ラフトを含む腫瘍細胞の画像である。腫瘍細胞は、正常細胞と比較して高濃度の脂質ラフトを有していた。
図1E図1A図1B図1C図1D図1Eは、標識された脂質ラフトを含む腫瘍細胞の画像である。腫瘍細胞は、正常細胞と比較して高濃度の脂質ラフトを有していた。
図1F図1Fは、CLR 1501(化合物(1))を含む正常な線維芽細胞及びCaki-2腫瘍細胞の画像である。CLR 1501はCaki-2細胞には高度に局在化したが、正常な線維芽細胞では最小限しか局在化しなかった。
図1G図1Gは、コントロールA549細胞の画像であり、図1Hは、脂質ラフトを破壊するためにメチル-b-シクロデキストリンで処理したA549細胞の画像である。図1G図1Hとの両方の細胞をCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、A549細胞の脂質ラフトの大部分が破壊されると、CLR 1501(化合物(1))の取り込みが60%減少した。
図1H図1Gは、コントロールA549細胞の画像であり、図1Hは、脂質ラフトを破壊するためにメチル-b-シクロデキストリンで処理したA549細胞の画像である。図1G図1Hとの両方の細胞をCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、A549細胞の脂質ラフトの大部分が破壊されると、CLR 1501(化合物(1))の取り込みが60%減少した。
図1I図1I図1J、及び図1Kは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、小胞体(ER)を染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、悪性細胞ではERと共局在化したが、正常細胞では共局在化しなかった(図示せず)。
図1J図1I図1J、及び図1Kは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、小胞体(ER)を染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、悪性細胞ではERと共局在化したが、正常細胞では共局在化しなかった(図示せず)。
図1K図1I図1J、及び図1Kは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、小胞体(ER)を染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、悪性細胞ではERと共局在化したが、正常細胞では共局在化しなかった(図示せず)。
図1L図1L図1M、及び図1Nは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、核及びミトコンドリアを染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、ミトコンドリアと共局在化した。
図1M図1L図1M、及び図1Nは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、核及びミトコンドリアを染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、ミトコンドリアと共局在化した。
図1N図1L図1M、及び図1Nは、CLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートし、核及びミトコンドリアを染色したPC3細胞の画像である。CLR 1501(化合物(1))は、ミトコンドリアと共局在化した。
図2図2は、腫瘍の局在化を示す、CLR 1502(化合物(2))を注射した直腸結腸(HCT-116)腫瘍を有するマウスの画像である。
図3図3は、A549(ヒト肺腺がん)細胞又は正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)中のPLEに結合した細胞障害性化合物(CLR 1865、化合物(8))と比較した細胞障害性化合物(FLV1)の細胞障害性対濃度のグラフである。
図4図4は、A375(ヒトメラノーマ)及びHEK293(ヒト胎児腎)細胞中のCLR 1852(化合物(9))の取り込みの倍率増加対時間のグラフである。
図5図5は、CLR 1502(化合物(2))のインビボ取り込みを示す、マウスの乳がんモデルの画像である。
図6図6は、CLR 1501(化合物(1))の取り込みを示す、骨髄腫細胞株の画像である。
図7図7は、がん細胞へのCLR 1501(化合物(1))の特異的取り込みを示す、がん幹細胞、正常脳組織、及び正常幹細胞の画像である。
図8図8は、A549(ヒト肺腺がん)細胞及び正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)におけるFLV3と比較したCLR 1852(化合物(9))の%細胞障害性対濃度のグラフである。
図9図9は、HCT116腫瘍モデルにおけるCLR 1852(化合物(9))と比較したビヒクルの腫瘍体積対時間のグラフである。
図10図10は、HCT116腫瘍モデルにおけるCLR 1852(化合物(9))と比較したビヒクルの体重対時間のグラフである。
図11図11は、A375(ヒトメラノーマ)及びA549(ヒト肺腺がん)細胞株のサイトゾルで検出されたFLV3(サイトゾル体積に対して正規化)の濃度対時間のグラフである。
図12図12は、CLR 1899の投与後のマウスモデルの体重変化の代表的結果を示す(0.5mg/kg、1mg/kg、及び2mg/kg)。
図13図13は、MCF-7異種移植モデルにおけるCLR 1899のインビボ有効性の代表的結果を示す(投与量群あたり10匹のマウス)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書には、リン脂質化合物及びリン脂質-フラバグリン抱合体が記載される。正常組織より高濃度の天然由来エーテル脂質を含む多数の動物腫瘍及びヒト腫瘍に基づき、リン脂質エーテル(PLE)分子を開発した。本明細書に詳述するPLE分子を、薬物を腫瘍細胞及びがん細胞に選択的に送達する腫瘍ターゲティングプラットフォームとして使用してよい。
【0012】
本明細書で詳述するとおり、PLE分子の組織分布を、新鮮なヒト腫瘍サンプルを含む、100種類を超える種々の腫瘍細胞で試験した。PLE分子は正常組織と比較して、腫瘍組織に多く取り込まれることが示された。PLE分子は、リンカーを介してフラバグリン分子及びその類縁体と結合してリン脂質-フラバグリン抱合体を形成することができる。
【0013】
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書中に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。抵触する場合、定義を含む、本文書が規制する。本明細書中に記載されるものと類似する又は同等の方法及び材料を本発明の実行又は試験に用いることができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体を参照により援用される。本明細書中に開示される材料、方法、及び実施例は、例証にすぎず、制限を意図するものではない。
【0014】
本明細書で用いる場合、用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain(s))」、及びその変形は、追加の行為又は構造の可能性を排除しないオープン移行部、用語、又は単語であることを意図する。単数形「1つの(a)」「及び(and)」及び「この(the)」には、文脈上特に明記されていない限り、複数の参照が含まれる。本開示ではまた、明確に述べられるかそうでないかに関わらず、本明細書中に提示される実施形態又は要素を「含む(comprising)」「からなる(consisting of)」「本質的にからなる(consisting essentially of)」他の実施形態も想定する。
【0015】
本明細書の数値範囲の詳述については、同程度に正確なこれらの間の各々の間の数を明確に想定する。例えば、6~9の範囲については、数6及び9に加えて数7及び8も想定し、6.0~7.0の範囲については、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明確に想定される。
【0016】
本明細書で用いる場合、関心のある1つ又は複数の値に適用される用語「約」とは、示された参照値と類似する値を指す。特定の態様において、用語「約」とは、別段の記述又は文脈からの別段の証拠(このような数が可能な値の100%を超える場合を除く)がない限り、示された参照値のいずれかの方向(超又は未満)の20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に含まれる数値範囲を指す。
【0017】
特定の官能基及び化学用語の定義を以下に詳述する。本開示の目的のために、化学元素を元素の周期表、CASバージョン、化学・物理学ハンドブック第75版、表紙裏にしたがって特定し、具体的な官能基を概してこれらに記載されるように定義した。そのうえ、有機化学の一般的な原則、並びに具体的な反応部分及び反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry, 7th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2013; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989; Carruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載され、その各々の内容の全体を本明細書中に参照により援用される。
【0018】
本明細書で用いる場合、用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」とは、酸素原子により親分子部分に追加された、本明細書中に定義されるアルキル基を指す。アルコキシの代表例としては、限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ及びtert-ブトキシが挙げられる。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「アルキル」とは、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分枝の、飽和炭化水素鎖を意味する。用語「低級アルキル」又は「C1-6アルキル」とは、1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝の、鎖状飽和炭化水素を意味する。用語「C14アルキル」とは、1~4個の炭素原子を含む直鎖又は分枝の、鎖状飽和炭化水素を意味する。用語「C13アルキル」とは、1~3個の炭素原子を含む直鎖又は分枝の、鎖状飽和炭化水素を意味する。アルキルの代表例としては、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-へキシル、3-メチルへキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシルが挙げられる。
【0020】
本明細書で用いる場合、用語「アルケニル」とは、2~20個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素鎖を意味する。
【0021】
本明細書で用いる場合、用語「アルキニル」とは、2~20個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む不飽和炭化水素鎖を意味する。
【0022】
本明細書で用いる場合、用語「アルコキシアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義されるアルコキシ基を指す。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「アリールアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義されるアリール基を指す。
【0024】
本明細書で用いる場合、用語「アルキルアミノ」とは、本明細書中に定義されるアミノ基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義される少なくとも1つのアルキル基を指す
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「アルキレン」とは、例えば、2~5個の炭素原子などの、1~10個の炭素原子の直鎖又は分枝の、鎖状飽和炭化水素から誘導される二価の基を指す。アルキレンの代表例としては、限定されないが、CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH-2CH2-、及び-CH2CH2CH2CH2CH2-が挙げられる。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「アミド」とは、Rが水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニル、又はヘテロアルキルであってよい、-C(O)NR-又は-NRC(O)-を意味する。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「アミノアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義される少なくとも1つのアミノ基を意味する。
【0028】
本明細書で用いる場合、用語「アミノ」とは、Rx及びRyが水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニル、又はヘテロアルキルであってよい、-NRxyを意味する。アミノが2個の他の部分を同時に追加するアミノアルキル基又は任意の他の部分の場合、アミノは、Rxが水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルケニル、又はヘテロアルキルであってよい、-NRx-であってよい。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「アリール」とは、フェニル基などの芳香族基、又は二環式縮合環系を指す。二環式縮合環系は、親分子部分に追加され、本明細書中に定義されるシクロアルキル基、フェニル基、本明細書中に定義されるヘテロアリール基、又は本明細書中に定義される複素環に縮合した、フェニル基により例示される。アリールの代表例としては、限定されないが、インドリル、ナフチル、フェニル、キノリニル、及びテトラヒドロキノリニルが挙げられる。「アリールアルキル」とは、アリール基で置換された本明細書中に定義されるアルキルを指す。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「アリーレン」とは、親アリールの2個の異なる炭素原子から2個の水素原子を除去することにより誘導される2個の一価の遊離基中心を有する本明細書中に定義されるアリールを指す。典型的なアリーレン基としては、限定されないが、フェニレン及びナフチレンが挙げられる。「アリールアルキレン」とは、この基のアリール基から1個の水素原子を除去すること及びこの基のアルキル基から除去された他の水素により誘導される2個の一価の遊離基中心を有する本明細書中に定義されるアリールアルキルを指す。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「カルボキシル」とは、カルボン酸、又は-COOHを意味する。
【0032】
用語「シクロアルキル」とは、一価の飽和炭化水素環又は二環式基を意味する。シクロアルキル基には、1つのヘテロ原子も1つの二重結合もない。シクロアルキル基は、単環式であるか、又は縮合、スピロ、若しくは架橋二環式環系である。単環式シクロアルキル基は、環に3~10個の炭素原子、好ましくは4~7個の炭素原子、及びより好ましくは5~6個の炭素原子を含む。二環式シクロアルキル基は、環に8~12個の炭素原子、好ましくは9~10個の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、置換されても非置換でもよい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0033】
本明細書で用いる場合、用語「シクロアルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、好ましくは環あたり5~10個の炭素原子を有する非芳香族単環式又は多環式環系を意味する。例示的な単環式シクロアルケニル環としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプテニルが挙げられる。
【0034】
本明細書で用いる場合、用語「シクロアルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、好ましくは環あたり5~10個の炭素原子又は環あたり10個超の炭素原子を有する単環式又は多環式環系を意味する。
【0035】
本明細書で用いる場合、用語「ハロアルキル」とは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の水素原子をハロゲンで置換した、本明細書中に定義されるアルキル基を意味する。ハロアルキルの代表例としては、限定されないが、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、及び3,3,3-トリフルオロプロピルなどのトリフルオロプロピルが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「ハロゲン」又は「ハロ」とは、Cl、Br、I、又はFを意味する。
【0037】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロアルキル」とは、アルキル基の炭素のうち少なくとも1つを酸素、窒素、及び硫黄などのヘテロ原子で置換した、本明細書中に定義されるアルキル基を意味する。ヘテロアルキルの代表例としては、限定されないが、アルキルエーテル、二級及び三級アルキルアミン、アミド並びにアルキルスルフィドが挙げられる。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロアリール」とは、N、O、及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族単環又は芳香族二環式環系を指す。芳香族単環は、N、O、及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む5又は6員環である。5員環芳香族単環は、2個の二重結合を有し、6員環芳香族単環は、3個の二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基は、親分子部分に追加され、本明細書中に定義される単環式シクロアルキル基、本明細書中に定義される単環式アリール基、本明細書中に定義される単環式ヘテロアリール基、又は本明細書中に定義される単環式複素環と縮合した、単環式ヘテロアリール環により例示される。ヘテロアリールの代表例としては、限定されないが、インドリル、ピリジニル(ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イルを含む)、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピロリル、ベンゾピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チエニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、プリニル、イソインドリル、キノキサリニル、インダゾリル、キナゾリニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、イソキノリニル、キノリニル、6,7-ジヒドロ-1,3-ベンゾチアゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、ナフチリジニル、ピリドイミダゾリル、チアゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イル、チアゾロ[5,4-d]ピリジン-2-イルが挙げられる。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「複素環(heterocycle)」又は「複素環の(heterocyclic)」又は「ヘテロシクリル(heterocyclyl)」とは、単環式複素環、二環式複素環(ヘテロ二環式)、又は三環式複素環を意味する。単環式複素環は、O、N、及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3、4、5、6、7、又は8員環である。3又は4員環は、ゼロ個又は1個の二重結合、及びO、N、及びSからなる群から選択される1個のヘテロ原子を含む。5員環は、ゼロ個又は1個の二重結合、及びO、N、及びSからなる群から選択される1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含む。6員環は、ゼロ個、1個又は2個の二重結合及びO、N、及びSからなる群から選択される1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含む。7及び8員環は、ゼロ個、1個、2個、又は3個の二重結合及びO、N、及びSからなる群から選択される1個、2個、又は3個のヘテロ原子を含む。単環式複素環の代表例としては、限定されないが、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼパニル、1,3-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオラニル、1,3-ジチアニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキセタニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチエニル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、1,2-チアジナニル、1,3-チアジナニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、及びトリチアニルが挙げられる。二環式複素環は、フェニル基に縮合した単環式複素環、又は単環式シクロアルキルに縮合した単環式複素環、又は単環式シクロアルケニルに縮合した単環式複素環、又は単環式複素環に縮合した単環式複素環、又は環の2個の隣接しない原子が1個、2個、3個、又は4個の炭素原子のアルキレン架橋、若しくは2個、3個、又は4個の炭素原子のアルケニレン架橋により結合した架橋単環式複素環系である。二環式複素環の代表例としては、限定されないが、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、クロマニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル、2,3-ジヒドロイソキノリン、アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル(2-アザビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イルを含む)、2,3-ジヒドロ-1H-インドリル、イソインドリニル、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロリル、オクタヒドロピロロピリジニル、及びテトラヒドロイソキノリニルが挙げられる。三環式複素環は、フェニル基に縮合した二環式複素環、又は単環式シクロアルキルに縮合した二環式複素環、又は単環式シクロアルケニルに縮合した二環式複素環、又は単環式複素環に縮合した二環式複素環、又は二環式環の2個の隣接しない原子が1個、2個、3個、又は4個の炭素原子のアルキレン架橋、若しくは2個、3個、又は4個の炭素原子のアルケニレン架橋により結合した二環式複素環により例示される。三環式複素環の例としては、限定されないが、オクタヒドロ-2,5-エポキシペンタレン、ヘキサヒドロ-2H-2,5-メタノシクロペンタ[b]フラン、ヘキサヒドロ-1H-1,4-メタノシクロペンタ[c]フラン、アザ-アダマンタン(1-アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)、及びオキサ-アダマンタン(2-オキサトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)が挙げられる。単環式、二環式及び三環式複素環は、環内部に含まれる任意の炭素原子又は任意の窒素原子により親分子部分に結合され、非置換であっても置換されてもよい。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロアリールアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義されるヘテロアリール基を指す。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、本明細書中に定義される複素環基を指す。
【0042】
本明細書で用いる場合、用語「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」とは、-OH基を意味する。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「ヒドロキシアルキル」とは、本明細書中に定義されるアルキレン基により親分子部分に追加された、少なくとも1つの-OH基を意味する。
【0044】
いくつかの例において、ヒドロカルビル置換基(アルキル又はシクロアルキルなど)の炭素原子の数は、接頭辞「Cxy-」によって示され、xは置換基中の炭素原子数の最小値でありyは置換基中の炭素原子数の最大値である。したがって、例えば「C13アルキル」とは、1~3個の炭素原子を含むアルキル置換基を指す。
【0045】
用語「置換された」とは、1つ又は複数の水素でない置換基でさらに置換されてよい基を指す。置換基としては、限定されないが、ハロゲン、=O(オキソ)、=S(チオキソ)、シアノ、ニトロ、フルオロアルキル、アルコキシフルオロアルキル、フルオロアルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキルアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキレン、アリールオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアルキル、アリールアミノ、スルホニルアミノ、スルフィニルアミノ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニル、スルフィニル、-COOH、ケトン、アミド、カルバメート及びアシルが挙げられる。
【0046】
用語
【化2】
とは、単結合
【化3】
又は二重結合
【化4】
又は三重結合
【化5】
を表す。
【0047】
本明細書中に記載される化合物について、この基及び置換基は、選択及び置換により安定な化合物を生じるように、例えば化合物が転位、環化、脱離などにより自発的に変換を受けないように、原子及び置換基の許される原子価にしたがって選択されてよい。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「投与」又は「投与する」とは、所望の効果を達成するために任意の適切な経路により化合物又は抱合体を提供する、接触させる、及び/又は送達することを指す。これらの化合物又は抱合体は、限定されないが、経口的、眼に、経鼻的に、静脈内に、局所的に、を含む多数の方法でエアロゾル、坐薬などとして対象に投与してよく、組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本明細書で用いる場合、「がん」は、腫瘍、新生物、がん、前がん、細胞株、悪性腫瘍、又は無制限に拡大し増殖する潜在能力を有する細胞の任意の他の供給源に由来する員位の細胞又は組織を含んでよい。がん細胞は、自然起源の供給源に由来してよく、又は人工的に作成してよい。がん細胞はまた、他の組織へと浸潤し転移する能力があってよい。がん細胞は、他の組織に浸潤し、転移した任意の悪性細胞をさらに包含する。生物という面に関して1つ又は複数のがん細胞はまた、がん、腫瘍(tumor)、新生物、腫瘍(growth)、悪性腫瘍、又はがん性状態の細胞を記述するために当技術分野において用いられる任意の他の用語で呼ばれてよい。がんは、例えばメラノーマ、脳がん、肺がん、副腎がん、肝がん、腎がん又は腎臓がん(renal or kidney cancer)、膵がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、結腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、リンパ腫、白血病、骨髄腫、造血器がん、肝細胞がん、網膜芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、芽細胞腫、扁平上皮がん、及び腺がんを含んでよい。
【0050】
本明細書で用いる場合、用語「がん幹細胞」とは、悪性腫瘍に見られる異なるタイプのがん細胞に自己複製し、分化することができるがん細胞を指す。
【0051】
概して、「循環腫瘍細胞」(CTC)に対する言及は、単一細胞を指すことを意図するが、「複数の循環腫瘍細胞」又は「複数の循環腫瘍細胞の集団」に対する言及は、1個超のがん細胞を指すことを意図する。しかしながら、当業者は、「循環腫瘍細胞」に対する参照は、1つ又は複数の循環腫瘍細胞を含む複数の循環腫瘍細胞の集団を含むことを意図するが、「1個の循環腫瘍細胞」のに対する参照は、1個超の循環腫瘍細胞を含むこともあることを理解するだろう。本明細書で用いる場合、用語「循環腫瘍細胞」又は「複数の循環腫瘍細胞」とは、対象の血又は血清サンプル中に見られる任意のがん細胞又はがん細胞の集団を指す。複数のCTCはまた、対象の血又は血清サンプル中に見られる1個のがん幹細胞又はがん幹細胞の集団を含んでもよく、又はからなってもよい。
【0052】
用語「コントロール」、「参照レベル」及び「参照」は、本明細書中で互換的に用いられる。参照レベルは、測定結果をどちらに評価すべきかに対する評価基準として利用される予め決められた値又は範囲であってよい。本明細書で用いられる「コントロール群」とは、コントロール対象の群を指す。予め決められたレベルは、コントロール群からのカットオフ値であってよい。予め決められたレベルは、コントロール群からの平均値であってよい。カットオフ値(又は予め決められたカットオフ値)は、適応的指標モデル(AIM)法により決定してよい。カットオフ値(又は予め決められたカットオフ値)は、患者群の生体試料からの受信者動作特性(ROC)解析により決定してよい。生物学的技術として概ね知られるROC解析は、1つの状態を別の状態と識別する試験の能力を決定する。ROC解析の説明は、P.J. Heagertyら(Biometrics 2000, 56, 337-44)によってなされ、その開示の全体を参照により本明細書に援用される。あるいは、カットオフ値は、患者群の生体試料からの四分位数解析により決定してよい。例えば、カットオフ値は、25~75パーセンタイル範囲のいずれかの値に対応する値、好ましくは25パーセンタイル、50パーセンタイル、又は75パーセンタイル、より好ましくは75パーセンタイルを選択することにより決定してよい。当技術分野において既知の任意の方法を用いてこのような統計改正を実行してよく、任意の数の市販のソフトウェアパッケージ(例えばAnalyse-it Software Ltd., Leeds, UK; StataCorp LP, College Station, TX; SAS Institute Inc., Cary, NCから)により実施することができる。標的又はタンパク活性の健康又は正常レベル又は範囲を標準的実務にしたがって定義してよい。コントロールは、病状が分かっている対象又はそのサンプルであってよい。この対象又はそのサンプルは、健康、病気、治療前に病気、治療中に病気、治療後に病気、又は治療後に健康、又はこれらの組み合わせであってよい。本明細書で用いる場合、用語「正常な対象」とは、健康な対象、すなわち疾患の臨床徴候又は症状を有さない対象を意味する。正常な対象を、他の検出されていない疾患の徴候又は症状のために臨床的に評価し、この評価は、日常的な身体検査及び/又は臨床検査を含んでよい。いくつかの実施形態において、コントロールは、健康なコントロールである。いくつかの実施形態において、コントロールは、がんを含む。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「有効用量」又は「治療有効量」又は「治療的有効量」又は「有効量」とは、治療効果を誘発するのに充分な量又は所望の治療結果を達成するのに必要な期間有効な薬物の用量を意味する。有効用量は、当業者によって決定されてよく、個人の病状、年齢、性別、及び体重、投与方法、疾患のステージ及び重症度、対象の全般的健康状態、処方する医師の意見、及び薬物が個人に所望の応答を誘発する能力に依存してよい。治療的有効量もまた、治療的有効効果がいずれの物質の毒性効果又は有害効果を凌ぐものである。「予防的有効量」とは、所望の予防結果を達成するのに必要な投与量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の初期ステージ前又は初期ステージで対象に用いられるので、予防的有効量は、治療有効量より少ないことになる。
【0054】
用語「阻害する」又は「阻害している」とは、阻害物質非存在時に対抗して、阻害物質存在時には活性が減少する又は妨げられることを意味する。用語「阻害」とは、プロセスの減少若しくは下方制御又はプロセスの刺激の消失を指し、バイオマーカー又はポリペプチドの発現量又は活性が欠如又は最小化する。阻害は、直接的であっても間接的であってもよい。阻害は、特異的であってもよい、すなわち阻害物質はバイオマーカー又はポリペプチドを阻害し、他のものを阻害しない。
【0055】
本明細書で用いる場合、「サンプル」又は「試験サンプル」とは、サンプル中の化合物又は標的の存在及び/又はレベルを検出又は決定する任意のサンプルを意味することができる。サンプルは、液体、溶液、乳濁液、混合物、又は懸濁液を含んでよい。サンプルは、医療サンプルを含んでよい。サンプルは、血液、全血、血漿及び血清などの血液分画、末梢血単核球(PBMC)、筋肉、間質液、汗、唾液、尿、涙、滑液、骨髄、脳脊髄液、鼻分泌物、痰、羊水、気管支肺胞洗浄液、胃洗浄、嘔吐、糞便物質(fecal matter)、肺組織、末梢血単核球、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、扁桃腺細胞、がん細胞、腫瘍細胞、胆汁、消化液、皮膚、又はこれらの組み合わせなどの、任意の生物学的液体又は組織を含んでよい。いくつかの実施形態において、このサンプルは、アリコートを含む。他の実施形態において、このサンプルは、生物学的液体を含む。サンプルを、当技術分野において既知の任意の手段により取得することができる。このサンプルを、患者から取得して直接用いることができ、又は本明細書中に論じられるいくつかの方法で又はそうでなければ当技術分野で既知のいくつかの方法でサンプルの特徴を調整するようろ過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、妨害成分の不活性化、試薬の添加、及び同種のものなどの、前処理をすることができる。サンプルを診断前、治療前、治療中、治療後、若しくは診断後、又はこれらの組み合わせで取得してよい。
【0056】
本明細書で用いる場合、用語「特異度」とは、真陰性の数+偽陽性の数で割った真陰性の数を指し、特異度(「spec」)は、0<spec<1の範囲内であってよい。したがって、1又は100%に等しい感度及び特異度の両方を有する方法が好ましい。
【0057】
「特異的に結合する」により概して、化合物又は抱合体がランダムで無関係の標的に結合するよりも標的に対してより容易に結合するときの、化合物又は抱合体がその標的に結合することを意味する。
【0058】
本明細書で用いる場合「対象」とは、本明細書中に記載される化合物又は方法を望む又は必要とする哺乳類を意味することができる。この対象は、ヒトであってもよく、又は非ヒト動物であってもよい。対象は哺乳類であってもよい。哺乳類は、霊長類であっても非霊長類であってもよい。哺乳類は、ヒトなどの霊長類、例えばイヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ブタ、マウス、ラット、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、及びモルモットなどの非霊長類、又は例えばサル、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、及びテナガザルなどの非ヒト霊長類であってよい。対象は、例えば成人、青少年、又は乳児などの、任意の年齢又は発育段階であってよい。対象は、オスであってもメスであってもよい。いくつかの実施形態において、対象は、特異的遺伝子マーカーを有する。
【0059】
本明細書で用いる場合、用語「毒性」とは、対象にとって有害でいずれかの副作用を引き起こすある量の化学的実体、薬剤、又は物質を指す。用語「無毒性」とは、対象を傷つけることができる程度が比較的低い物質を指す。「細胞障害性」とは、細胞に対して毒性のある化学的実体、薬剤、又は物質を指す。毒性とは、動物、細菌、植物、又は本明細書中に定義される他の対象などの生物全体に対する影響、並びに細胞(細胞傷害性)又は肝臓(肝毒性)などの臓器(臓器障害性)などの生物の部分構造に対する影響を指す。毒物学の中心的概念は、効果が用量依存的であるということであり、水でさえ充分大量に摂取すると水中毒を生じることができ、一方ヘビ毒などの非常に毒性の物質についてさえ、それ以下では検出可能な毒性効果がない容量がある。比較的無毒性の組成物又は化合物を用いると、広範な対象が重篤な安全性への懸念又は危険を抱えることなく、この組成物又は化合物を安全に取り扱うことを可能にしてよい。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「治療する」、「治療された」又は「治療している」とは、対象の望まれない生理的状態、障害、又は疾患を遅くする(和らげる)又は有益な効果若しくは所望の臨床結果を取得する治療法を指す。本発明の目的について、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、症状の軽減、状態、障害若しくは疾患の程度の減少、状態、障害若しくは疾患の状況の安定化(すなわち悪化しない)、状態、障害若しくは疾患の発症の遅延又は悪化の緩徐化、状態、障害若しくは疾患状態の回復、及び検出可能か検出不可能かにかかわらず、寛解(部分か全体かにかかわらない)、又は状態、障害若しくは疾患の増強又は改善が挙げられる。治療にはまた、治療を受けなかった場合の期待生存時間と比較して生存時間を延長することが含まれる。「治療」又は「治療している」は、対象を疾患から保護することを指す場合、疾患を抑制する、阻止する、回復する、又は完全に除去することを意味する。疾患を防ぐことには、疾患の発症前に対象に本発明の組成物を投与することが含まれる。疾患を抑制することには、疾患の誘導後だが、疾患の臨床出現前に対象に本発明の組成物を投与することが含まれる。疾患を阻止又は回復することには、疾患の臨床出現後に対象に本発明の組成物を投与することが含まれる。疾患は、がんを含んでよい。
【0061】
2.リン脂質エーテル
本明細書には、リン脂質エーテル(PLE)分子が提供される。PLEは、式(I’)であって、
【化6】
Xは、水素、メチル、又はカルボキシルで置換されたフェニルである、
式(I’)又はその塩によってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、PLEは、以下の、
【化7】
及び
【化8】
から選択される。
【0063】
PLEは、例えば蛍光分子、化学発光分子、放射標識、磁気標識、赤外分子、又はこれらの組み合わせなどの検出可能な部分(レポーター又は標識とも呼ばれる)と結合してよい。磁気標識は、磁気近接センサーと充分に関連付けると、磁気近接センサーによって検出することができ、磁気近接センサーに信号を出力させる標識部分である。磁気標識は、常磁性物質、超常磁性物質、強磁性物質、強磁性物質(ferromagnetic)、反強磁性物質、これらの組み合わせ、及び同種のものから選択される1つ又は複数の物質を含んでよい。蛍光標識は、蛍光検出器によって検出することができる標識部分である。適した蛍光分子(蛍光団)としては、限定されないが、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインジクロロトリアジンの5-異性体、ケージドカルボキシフルオレセインーアラニンーカルボキサミド、オレゴングリーン488、オレゴングリーン514、ルシファーイエロー、アクリジンオレンジ、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、ヨウ化プロピジウム、JC-1(5,5′,6,6′-テトラクロロ-1,1′,3,3′-テトラエチルベンズイミダゾイルカルボシアニンヨージド)、テトラブロモローダミン123、ローダミン6G、TMRM(テトラメチルローダミンメチルエステル)、TMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)、テトラメチルローザミン、ローダミンB及び4-ジメチルアミノテトラメチルローザミン、緑色蛍光蛋白質、青色シフト緑色蛍光蛋白質、シアンシフト緑色蛍光蛋白質、赤色シフト緑色蛍光蛋白質、黄色シフト緑色蛍光蛋白質、4-アセトアミド-4′-イソチオシアナト-スチルベン-2,2′-ジスルホン酸、アクリジン、アクリジンイソチオシアナートなどのアクリジン及び誘導体、5-(2′-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド(naphth-alimide)-3,5ジスルホン酸、N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4aジアザ-5-インダセン-3-プロピオン酸BODIPY;カスケードブルー;ブリリアントイエロー;クマリン及び誘導体、例えばクマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、クマリン120),7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン(クマリン151);シアニン色素、シアノシン、4′,6-ジアミニジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、5′,5″-ジブロモピロガロール-スルホンフタレイン(sulfonaphthalein)(ブロモピロガロールレッド)、7-ジエチルアミノ-3-(4′-イソチオシアナトフェニル)-4-メチルクマリン、ジエチレントリアミンペンタアセタート、4,4′-ジイソチオシアナトジヒドロ-スチルベン-2-,2′-ジスルホン酸、4,4′-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2′-ジスルホン酸、5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニルクロリド(DNS,ダンシルクロリド)、4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4′-イソチオシアナート(DABITC)、エオシン及び誘導体、例えばエオシン、エオシンイソチオシアナート、エリスロシン及び誘導体、例えばエリスロシンB、エリスロシンイソチオシアナート、エチジウム、フルオレセイン及び誘導体、例えば5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2-イル)アミノ-1-フルオレセイン(DTAF)、2′,7′ジメトキシ-4′5′-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、QFITC、(XRITC)、フルオレスカミン、IR144、IR1446、マラカイトグリーンイソチオシアナート、4-メチルウンベリ-フェロネオルトクレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラローザニリン、フェノールレッド、B-フィコエリトリン、o-フタルジアルデヒド、ピレン及び誘導体、例えばピレン、ピレンブチレート、スクシンイミジル1-ピレン、ブチレート量子ドット、リアクティブレッド4(Cibacron(商標)ブリリアントレッド3B-A)ローダミン及び誘導体、例えば6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシローダミン(R6G)、リサミンローダミンBスルホニルクロリドローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン101のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミン(hodamine)イソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、4-(4’-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、ロソール酸、CAL Fluor Orange560、テルビウムキレート誘導体、Cy3;Cy5;Cy5.5;Cy7;IRD700;IRD800;ラホーヤブルー、フタロシアニン、並びにナフタロシアニン、クマリン及び関連色素、ロドールなどのキサンテン色素、レゾルフィン、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、ルミノールなどのアミノフタルヒドラジド、並びにイソルミノール誘導体、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、並びに蛍光性ユウロピウム及びテルビウム複合体、これらの組み合わせ、並びに同種のものなどが挙げられる。
【0064】
検出可能な部分は、PLEに共有結合的に、又は開裂可能に結合してよい。例えば標識されたPLEを、以下の、
【化9】
及び
【化10】
から選択してよい。
【0065】
上の化合物(1)は、PLEと安定に結合した、蛍光部分、BODIPYを有するPLE(3)であり、CLR 1501と呼ぶこともできる。上の化合物(2)は、PLEと安定に結合した、近赤外分子、IR-775を有するPLE(3)であり、CLR 1502と呼ぶこともできる。化合物(1)及び(2)は、リン脂質薬物抱合体(PDC)と呼ぶこともできる。
【0066】
PLE、又はその抱合体は、腫瘍細胞又はがん細胞に特異的であってよい。対象への投与時に、PLE、又はその抱合体は、腫瘍又はがん細胞に局在化してよい。PLE、又はその抱合体は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に多く取り込まれてよい。PLE、又はその抱合体は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍多く取り込まれてよい。
【0067】
3.リン脂質-フラバグリン抱合体化合物
PLEは、リンカーを介してフラバグリン化合物と結合してリン脂質-フラバグリン抱合体(PLE-フラバグリン抱合体とも呼ばれる)を形成することができる。
【0068】
1つの態様において、本出願は、式(I)の化合物であって、
【化11】
式中、Zは、フラバグリン類縁体である、
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0069】
フラバグリンは、Aglaia属(センダン科)の植物に見られる天然物のファミリーである。フラバグリンは、シクロペンタ[b]ベンゾフラン骨格によって特徴づけられる。フラバグリンは、強力な殺虫活性、抗真菌活性、抗炎症活性、神経保護活性、心保護活性、及び抗がん活性を有してよい。フラバグリンは、化学療法の有効性を増強する、及び/又は化学療法の心臓の副作用を軽減することができる。適したフラバグリン類縁体は、例えば米国特許出願公開第2018/0086729号に開示される化合物を含み、その内容の全体を参照により本明細書中に援用される。フラバグリンは、例えばFLV1,FLV3、これらの誘導体若しくは構造類縁体、又はこれらの組み合わせを含んでよい。本明細書で用いる場合、用語「フラバグリン類縁体」又は「フラバグリン抗がん剤」には、全ての天然及び合成フラバグリン化合物、その誘導体、並びにその構造類縁体が含まれる。
【0070】
いくつかの実施形態において、フラバグリン類縁体は、FLV1、又はその塩を含む。
【化12】
【0071】
いくつかの実施形態において、フラバグリン類縁体は、FLV3、又はその塩を含む。
【化13】
【0072】
本明細書中に開示される、適した化合物は、
【化14】
及び
【化15】
又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、この化合物は、
【化16】
又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0074】
式(II)の抱合化合物であって、
【化17】
Xは、
【化18】
又は
【化19】
又はメチレン又は結合であり、Yは、ジスルフィドを含むリンカーであり、そしてZは、フラバグリン抗がん剤である、式(II)の抱合化合物、又はその塩も提供される。式(II)の抱合化合物は、リン脂質薬物抱合体(PDC)と呼ぶこともできる。
【0075】
式(II)において、リンカーはジスルフィドなどの開裂可能なリンカーであってよく、フラバグリンを腫瘍又はがん細胞に送達するよう特に設計される。いくつかの実施形態において、リンカーは、ジスルフィドを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、以下のもの、
【化20】
を含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、式(II)のリン脂質-フラバグリン抱合化合物は、以下の、
【化21】
及び
【化22】
又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0077】
本明細書中に記載される化合物は、不斉中心又はキラル中心が存在する立体異性体として存在してよい。立体異性体は、キラル炭素原子周囲の置換基の配置によって「R」又は「S」である。本明細書で用いる場合、用語「R」又は「S」は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E, Fundamental Stereochemistry, in Pure Appl. Chem., 1976, 45, 13-30で定義される配置である。この開示では各種立体異性体及びその混合物を想定し、これらは本発明の範囲内に特に含まれる。立体異性体には、鏡像異性体及びジアステレオマー、及び鏡像異性体及びジアステレオマーの混合物が含まれる。化合物の個別の立体異性体を、不斉中心又はキラル中心を含む市販の出発物質から合成的に、又はラセミ混合物の調製後当業者に周知の分割方法により調製してよい。これらの分割方法は、(1)鏡像異性体の混合物の不斉補助基への付着、再結晶又はクロマトグラフィーによる生じたジアステレオマー混合物の分離、及びFurniss, Hannaford, Smith, and Tatchell, “Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry,” 5th edition (1989), Longman Scientific & Technical, Essex CM20 2JE, Englandに記載される、任意の補助基からの光学的に純粋な生成物の遊離、又は(2)キラルクロマトグラフィーカラム上での光学鏡像異性体混合物の直接分離、又は(3)分別再結晶法により例示される。本明細書に記載される化合物は、互変異性形並びに幾何異性体を含んでよく、これらの異性体も本開示の実施形態を構成すると理解されるべきである。本明細書に記載される化合物はまた、ラセミ混合物として存在してよい。
【0078】
本開示はまた、同位体標識されたPLE、同位体標識されたフラバグリン、同位体標識されたリンカー、又は同位体標識されたリン脂質-フラバグリン抱合体などの、同位体標識された化合物を含む。同位体標識された化合物は、1つ又は複数の原子を自然において普通に見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換するという事実以外は本明細書中で詳述したものと同一である。本発明の化合物における包含に適した同位体の例は、限定されないが、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素である。重水素、すなわち2Hなどの重い同位体で置換すると、例えばインビボ半減期の増大又は投与量の要件の減少などの代謝安定性の向上から生じる特定の治療上の利点を提供することができ、したがって、いくつかの状況では好まれてよい。化合物は、受容体の分布を決定するために医用画像撮像及びポジトロン放出断層撮影(PET)研究用にポジトロン放出同位体を組み込んでよい。化合物に組み込むことができる、適したポジトロン放出同位体は、11C、13N、15O、及び18Fである。同位体標識された化合物は概して、当業者に既知の従来の技術によって又は非同位体標識試薬の代わりに適した同位体標識試薬を用いる添付の実施例に記載されたものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0079】
開示されたPLE又はリン脂質-フラバグリン抱合体は、薬学的に許容される塩として存在することができる。用語「薬学的に許容される塩」とは、水又は油に可溶又は分散可能で、過度の毒性、刺激作用、及びアレルギー反応なく障害を治療するのに適して、合理的ベネフィット/リスク比で釣り合い、そして意図する用途に効果的である、化合物の塩又は双性イオンを指す。塩は、化合物の最終分離及び精製中に、又は化合物のアミノ基を適した酸と反応させることにより分離して調製してよい。例えば、化合物を、限定されないが、メタノール及び水などの適した溶媒に溶解し、塩酸などの、少なくとも1等量の酸で処理してよい。生じた塩を沈殿させ、ろ過により分離し、減圧下で乾燥してよい。あるいは、溶媒及び過剰な酸を減圧下で除去して塩を得てもよい。代表的な塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩(naphthylenesulfonate)、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び同種のものが挙げられる。化合物のアミノ基はまた、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、及び同種のものなどのアルキルクロライド、ブロミド、ヨウ化物で四級化してよい。
【0080】
開示される化合物の最終分離又は精製中にカルボニル基を、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又はアルミニウムなどの金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、若しくは炭酸水素塩又は一級、二級、又は三級有機アミンなどの適した塩基と反応させることにより塩基付加塩を調製してよい。メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、及び同種のものから誘導されるものなどの、四級アミン塩を調製することができる。
【0081】
本明細書中に記載されるリン脂質-フラバグリン抱合化合物は、腫瘍又はがん細胞に特異的であってよい。対象への投与時、この化合物は腫瘍又はがん細胞に限局化してよい。この化合物は腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに限局化又は移行してよい。この化合物は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に多く取り込まれてよい。この化合物は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍多く取り込まれてよい。
【0082】
フラバグリン又はフラバグリン類縁体は、対象への投与時のインビボでの開裂など、本化合物から開裂してよい。フラバグリン又はフラバグリン類縁体は、腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに限局化又は移行してよい。フラバグリン又はフラバグリン類縁体は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に多く取り込まれてよい。フラバグリン又はフラバグリン類縁体は、健康な細胞よりも腫瘍又はがん細胞に少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍多く取り込まれてよい。
【0083】
本明細書中に記載される化合物を、実施例1に記載される方法又は当技術分野で既知の他の方法によって合成してよい。合成プロセスは、PLE部分、フラバグリン類縁体部分、及び実施例1に示される完全な化合物を調製するステップを含んでよい。適したフラバグリンは、例えば、Haoyuan Chemexpress Co. (Shanghai, China)のものなどの市販製品を含む。
【0084】
4.医薬組成物
本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩を、医薬品技術の当業者にとって周知の標準技術にしたがって医薬組成物に製剤してよい。1つの態様において、本開示は、本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容される担体」とは、無毒性で不活性な固体、半固体又は液体賦形剤、希釈剤、被包物質、又は任意の種類の製剤補助剤を意味する。
【0085】
本化合物を投与する経路及び組成物の形態は、用いるべき担体の種類を規定することになる。医薬組成物は、例えば、全身投与(例えば、経口、直腸、舌下、頬側、留置剤(implants)、鼻腔内、膣内、経皮、静脈内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、又は非経口)又は局所投与(例えば、経皮、肺、鼻腔、耳、眼、リポソーム送達系、又はイオントフォレーシス)用に適した多様な形態であってよい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、対象の中枢神経系に対する投与用である。手法及び処方は概して、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,」 (Meade Publishing Co., Easton, Pa.)中に見ることができる。医薬組成物は典型的には、無菌であり、製造及び貯蔵条件で安定でなければならない。全ての担体は、組成物において任意である。
【0086】
薬学的に許容される担体としては、例えば、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、香料、甘味料、抗酸化剤、保存料、流動化剤、溶媒、懸濁剤、湿潤剤(wetting agents)、界面活性剤、皮膚軟化薬、噴霧剤、湿潤剤(humectants)、散剤、pH調整剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
薬学的に許容される担体として役立つことができる物質のいくつかの例としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(リン酸塩など)、グリシン、ソルビン酸、若しくはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸、水、塩若しくは電解質の部分グリセリド混合物(プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩など)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖類(ラクトース、グルコース、及びスクロースなど)、デンプン(コーンスターチ及びジャガイモデンプンなど)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなど)、トラガント粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、添加剤(カカオバター及び坐薬ワックス(suppositorywaxes)など)、油類(ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油など)、グリコール(プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなど)、エステル(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど),寒天、無毒相溶性滑沢剤(non-toxic compatible lubricants)(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)、着色料、放出剤(releasing agents)、コーティング剤、乳化剤、甘味剤、風味材料(flavorant)、芳香剤、保存剤、抗酸化剤が挙げられ、また製剤者の判断により、組成物中に存在することができる。
【0088】
組成物中の成分の量は調製される組成物の種類によって変わってよいが、概して全身組成物は、0.01%~50%の化合物(PLE又はリン脂質-フラバグリン抱合体など)及び50%~99.99%の1つ又は複数の担体を含んでよい。非経口投与用の組成物は典型的には、0.1%~10%の化合物及び90%~99.9%の1つ又は複数の担体を含んでよい。経口剤形は、例えば、少なくとも約5%、又は約25%~約50%の化合物を含んでよい。経口投与化合物は、約50%~約95%の担体、又は約50%~約75%の担体を含んでよい。開示される化合物と組み合わせて利用される担体の量は、単位用量毎の化合物を投与するための実用的な量の組成物を提供するのに充分である。本発明の方法に有用な剤形を作製するための技術及び組成物を、以下の参考文献に記載する、Modern Pharmaceutics, Chapters 9 and 10, Banker & Rhodes, eds. (1979); Lieberman et al.,Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1981); and Ansel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 2nd Ed., (1976)。
【0089】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書中に開示される治療有効量の化合物、又はその薬学的に許容される塩から本質的になる。
【0090】
液体剤形としては、限定されないが、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン(microemulsions)、溶液、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。固体剤形としては、限定されないが、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、セメント(cement)、パテ、及び顆粒剤が挙げられる。本化合物の局所投与又は経皮投与用の剤形としては、限定されないが、軟膏剤、ペースト剤、クリーム、ローション剤、ゲル、散剤、溶液、噴霧剤、吸入剤又はパッチが挙げられる。
【0091】
液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、及び同種のもの)、植物油、無毒グリセリルエステル、及びこれらの適した混合物を含む溶媒又は液体分散媒であってよい。
【0092】
医薬組成物は、滅菌注射用又は注入可能な溶液又は分散などの即時調製に適合した活性成分を含む滅菌水溶液又は分散などの、注射又は輸液に適した剤形であってよい。最終的な剤形は、製造及び貯蔵条件で無菌、液体、流動性がある、そして安定であるべきである。滅菌注射用溶液を、適切な溶媒中の必要とされる量の本明細書中に開示される少なくとも1つの化合物、又はその薬学的に許容される塩を必要な場合他の各種成分と混合し、任意選択でその後ろ過滅菌することにより調製してよい。滅菌注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術を含んでよく、これにより滅菌溶液中に存在する活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0093】
いくつかの実施形態において、組成物は、輸液又は注射による投与に適した溶液などの、溶液である。溶液を水中に調製してよく、任意選択で無毒の界面活性剤と混合してよい。分散をまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びこれらの混合物中で、並びに油類中で調製してよい。これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含んでよい。微生物の活動の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、及び同種のものなどの各種抗菌薬及び抗真菌薬によってもたらすことができる。
【0094】
注射用の形態は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で本明細書中に開示される化合物、又はその薬学的に許容される塩の微小カプセルマトリクスを形成することにより作製してよい。化合物のポリマーに対する比率及び利用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射用製剤はまた、体組織と親和性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を封入することにより調製される。
【0095】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書中に記載される少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つの追加の抗がん薬を含んでよい。本開示に有用な抗がん薬としては、限定されないが、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、シスプラチン、ゲルダナマイシン、メルタンシン、アビラテロン、アファチニブ、アミノレブリン酸、アプレピタント、アキシチニブ、アザシチジン、ベリノスタット、ベンダムスチン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロファラビン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デノスマブ、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドラスタチン(例えばモノメチルオーリスタチンE)、ドキソルビシン、エンザルタミド、エピルビシン、エリブリンメシル酸塩、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、フロクスウリジン、フルダラビンリン酸エステル、フルオロウラシル、ガネテスピブ、ゲフィチニブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、チウキセタン、イブルチニブ、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、イピリムマブ、イクサベピロン、ラパチニブ、ロイコボリンカルシウム、ロムスチン、マイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ネルフィナビル、ニロチニブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オマセタキシンメペサクシネート、オキサリプラチン、パニツムマブ、パゾパニブ、ペグアスパルガーゼ、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、ペントスタチン、ペルツズマブ、プリカマイシン、ポマリドミド、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プロカルバジン、塩化ラジウム-223、ラムシルマブ、レゴラフェニブ、レタスピマイシン、ルキソリチニブ、セムスチン、シルツキシマブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブマレート、タネスピマイシン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレミフェン、トラメチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、及びアフリベルセプト(ziv-aflibercept)が挙げられる。現在抗がん剤として知られている又は抗がん剤として働くことができるいずれの化合物もまた、本開示に有用である。
【0096】
5.投与
本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は本明細書中に記載される医薬組成物を、対象に投与してよい。化合物及び組成物を、特定の対象の年齢、性別、体重、及び状態、並びに投与経路などの因子を考慮して、様々な用量及び医療治術の当業者にとって公知の技術により投与してよい。
【0097】
本発明の化合物及び組成物を、予防的に又は治療的に投与してよい。予防的投与においては、予防反応を誘導するための有効量の化合物及び組成物を投与してよい。治療的適用においては、治療効果を誘発するために有効量な量で、化合物及び組成物を、それを必要とする対象に投与してよい。
【0098】
例えば、治療有効量の化合物は、約1mg/kg~約1000mg/kg、約5mg/kg~約950mg/kg、約10mg/kg~約900mg/kg、約15mg/kg~約850mg/kg、約20mg/kg~約800mg/kg、約25mg/kg~約750mg/kg、約30mg/kg~約700mg/kg、約35mg/kg~約650mg/kg、約40mg/kg~約600mg/kg、約45mg/kg~約550mg/kg、約50mg/kg~約500mg/kg、約55mg/kg~約450mg/kg、約60mg/kg~約400mg/kg、約65mg/kg~約350mg/kg、約70mg/kg~約300mg/kg、約75mg/kg~約250mg/kg、約80mg/kg~約200mg/kg、約85mg/kg~約150mg/kg、及び約90mg/kg~約100mg/kgであってよい。
【0099】
化合物を、Donnellyら(Ann. Rev. Immunol. 1997, 15, 617-648); Felgnerら (1996年12月3日に発行された米国特許第5,580,859号); Felgner (1997年12月30日に発行された米国特許第5,703,055号);及びCarsonら(1997年10月21日に発行された米国特許第5,679,647号)に記載される当技術分野で周知の方法により投与することができ、その全ての内容をその全体を参照により本明細書に援用される。化合物を、例えば、ワクチンガン(vaccine gun)を用いて個人に投与することができる粒子又はビーズに合成することができる。当業者は、生理学的に許容される化合物を含む、薬学的に許容される担体の選択は、例えば、投与経路に依存することを理解するだろう。
【0100】
化合物を多様な経路により送達することができる。典型的な送達経路としては、例えば、皮内、筋肉内又は皮下送達などの、非経口投与が挙げられる。他の経路としては、経口投与、鼻腔内、膣内、経皮的、静脈内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、及び表皮経路が挙げられる。いくつかの実施形態において、化合物は静脈内に、動脈内に、又は腹腔内に対象に投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、対象に静脈内に投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、対象に経口的に投与される。
【0101】
いくつかの実施形態において、化合物は、放出制御製剤で投与される。化合物を、例えば、循環に放出してよい。いくつかの実施形態において、化合物を、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約1週間、少なくとも約1.5週間、少なくとも約2週間、少なくとも約2.5週間、少なくとも約3.5週間、少なくとも約4週間、又は少なくとも約1ヶ月間にわたり放出してよい。
【0102】
化合物を、単一用量又は偶発性に、又は反復用量で投与することができる。例えば、化合物を毎時、2時間毎、4時間毎、8時間毎、12時間毎、25時間毎、36時間毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に1回投与してよい。
【0103】
6.方法
本明細書中に記載される化合物の選択的腫瘍標的化の基礎は、大抵の正常細胞の細胞膜と比較したがん細胞の細胞膜の差にある。リン脂質エーテル(PLE)分子は、迅速な細胞分裂に必要なエネルギーを生成するために腫瘍細胞が受ける代謝変換を利用する。腫瘍は、長鎖脂肪酸(LCFA)をエネルギーに変換するためのβ酸化経路の利用を増強する。LCFAの取り込みを増加させるために、腫瘍細胞は「脂質ラフト」として知られる細胞膜が形成する特殊なマイクロドメインを変化させる。脂質ラフトは、代謝変換及びリン脂質の要求により形成される。腫瘍細胞内部では、これらの領域が過剰になり、安定化し、有望な腫瘍特異的な標的となることができる。具体的には、がん細胞の細胞膜には脂質ラフトが非常に豊富にある。正常細胞には、脂質ラフトの存在は制限され、一過性である(~2ナノ秒)。腫瘍においては、脂質ラフトの存在は増加しており、安定化されている(最大10日)。がん細胞では、健康細胞よりも脂質ラフトが5~10倍多い。加えて、脂質ラフトはほとんど全ての種類の腫瘍に非常に豊富であり、試験した個人のがん細胞の100%であることが実証されている。脂質ラフトは膜のリン脂質二分子膜のうち非常に組織化され、特殊化された領域であり、高濃度の各種シグナル分子、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質及びコレステロールを含み、細胞表面及び細胞内シグナル分子(例えば、成長因子及びサイトカイン受容体、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/Akt生存経路)を組織化するのに役立つ。データから、脂質ラフトはリン脂質エーテルが流入する入口として役立つことが示される。これらの化合物のがん細胞対非がん細胞に対する著しい選択性は、PLEのコレステロールに対する高い親和性及びがん細胞のコレステロール豊富な脂質ラフトの存在量に起因する。脂質ラフトが果たす中心的役割は、脂質ラフト構造を破壊するとPLEのがん細胞への取り込みが抑制されるという事実によって強調される。脂質ラフトの形成が阻止されるとPLEの取り込みが60%まで減少することが分かっている。脂質ラフトがリン脂質薬物抱合体を迅速に内部移行することと組み合わされたこの特徴により、脂質ラフトは理想的な標的となる。
【0104】
PLE類縁体などの、本明細書中に開示される化合物は、LCFAミメティックであってよい。本明細書中に開示される分子は、腫瘍細胞上の脂質ラフトを標的指向化することに関連する広範な構造活性相関(SAR)解析を受け、これらの領域に特異的に結合することが分かった。本明細書中に開示される分子は、細胞質への直接流入並びに細胞の細胞質内部のゴルジ装置ネットワークに沿った小胞体及びミトコンドリアへの移行を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される化合物は、フラバグリン(FLV)類縁体と結合した独自に設計されたリン脂質エーテルを含む。FLVは、翻訳、細胞周期進行を抑制し、アポトーシスを誘導する強力な細胞毒である。
【0105】
本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は本明細書中に記載される化合物を含む組成物を、がんを治療するために用いてよい。1つの態様において、本開示は、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法であって、この方法は、この対象に有効量の本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は本明細書中に記載される化合物を含む組成物を投与することを含む、治療方法を提供する。
【0106】
別の態様において、本開示は、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するのに使用するための、本明細書中に記載される、化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0107】
別の態様において、本開示は、がんの治療を必要とする対象におけるがんを治療するための薬物を製造するための、本明細書中に記載される、化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0108】
1つの態様において、本開示は、対象の腫瘍又はがん細胞に薬物を目標とする方法であって、この方法は、この対象に本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は本明細書中に記載される化合物を含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。目標とすることで、本発明の化合物のがん細胞への標的化した送達及び/又はがんの標的化治療をもたらすことができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、この腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに局在化するか又は移行する。
【0110】
いくつかの実施形態において、この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、この対象のがん細胞に選択的である。
【0111】
いくつかの実施形態において、この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に少なくとも約2倍多く取り込まれる。この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、健康細胞よりも腫瘍又はがん細胞に少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍多く取り込まれる。
【0112】
本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は本明細書中に記載される化合物を含む組成物で治療してよいがんとしては、限定されないが、男性乳がんを含む乳がん、肛門がん、虫垂がん、肝外胆管がん、消化管カルチノイド腫瘍、結腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、消化管間質腫瘍(「gist」)、膵島腫瘍、成人原発性肝がん、小児肝がん、膵がん、直腸がん、小腸がん、及び胃がん(胃がん)(stomach (gastric) cancer)を含む消化性がん/胃腸がん膵臓腺がん、副腎皮質がん、膵内分泌腫瘍、メルケル細胞がん、非小細胞肺神経内分泌腫瘍、小細胞肺神経内分泌腫瘍、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍及び甲状腺腫瘍を含む内分泌がん及び神経内分泌がん、眼球内メラノーマ及び網膜芽細胞腫を含む眼がん、膀胱がん、腎(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、移行細胞腎盂腎がん及び尿管がん、精巣がん、尿道がん及びウィルムス腫瘍を含む泌尿生殖器がん、小児中枢神経系がん、小児頭蓋外胚細胞性腫瘍、性腺外胚細胞性腫瘍、卵巣胚細胞性腫瘍及び精巣がんを含む胚細胞がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性絨毛性腫瘍、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞性腫瘍、子宮肉腫、腟がん及び外陰部がんを含む婦人科のがん、下咽頭がん、喉頭がん、口唇がん及び口腔がん、潜在的原発性を有する転移性扁平上皮頸部がん(metastatic squamous neck cancer with occult primary)口腔がん、上咽頭がん、中咽頭がん、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺がん、咽頭がん、唾液腺がん及び咽頭がんを含む頭頸部がん、成人急性リンパ性白血病、小児急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病及び、ヘアリーセル白血病を含む白血病、エイズ関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児ホジキンリンパ腫、妊娠中ホジキンリンパ腫、菌状息肉症、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むリンパ腫、ユーイング肉腫、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、小児横紋筋肉腫及び軟組織肉腫を含む筋骨格がん、成人脳腫瘍、小児脳腫瘍、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、神経芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫を含む神経性のがん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫及び胸腺がんを含む呼吸器のがん/胸部のがん並びにカポジ肉腫、メラノーマ及び扁平上皮がんを含む皮膚がんが挙げられる。特定の実施形態において、がんは、メラノーマ、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、脳がん、肺がん、副腎がん、肝がん、腎がん又は腎臓がん(renal or kidney cancer)、膵がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、結腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、リンパ腫、白血病、骨髄腫、造血器がん、肝細胞がん、網膜芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、芽細胞腫、扁平上皮がん、腺がん、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、又はこれらの組み合わせである。
【0114】
いくつかの実施形態において、がんは、1つ又は複数の循環腫瘍細胞を含んでよい。例えば、この1つ又は複数の循環腫瘍細胞は、乳がん、肺がん、甲状腺がん、子宮頸がん、メラノーマ、扁平上皮がん、前立腺がん、膵がん、結腸直腸がん及びがん幹細胞、及び悪性形質細胞からなる群から選択されてよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、がんは、転移性であってよい。例えば、転移性がんは、乳がん、肺がん、メラノーマ、及び結腸直腸がんからなる群から選択されてよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、がんは、がん幹細胞を含んでよい。例えば、がん幹細胞は、乳がん、肺がん、メラノーマ、及び結腸直腸がんからなる群から選択されてよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、肺がんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、メラノーマは、表在拡大型黒色腫、結節性メラノーマ、悪性黒子由来黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、母斑性黒色腫(nevoid melanoma)、スピッツ母斑様黒色腫(spitzoid melanoma)、線維形成性黒色腫、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、結腸直腸がんは、腺がんを含んでよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、乳がんは、浸潤性乳管がん、転移性乳がん、炎症性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、乳管内上皮内がん、又はこれらの組み合わせを含んでよい。いくつかの実施形態において、がんは、乳がんであり、対象は、エストロゲン受容体陽性、エストロゲン受容体陰性とプロゲステロン受容体陰性の両方、HER2(HER2+)を発現する、HER2(HER2-)を発現しない、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、対象は、成人及び乳幼児などのヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳類などの動物である。
【0122】
方法は、本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩を、本明細書中に記載される量で投与することを含んでよい。いくつかの実施形態において、方法は、約0.0001~約1000mg/kgの本明細書中に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。化合物の有益な投与量を、化合物のインビトロ活性と化合物の動物モデルでのインビボ活性を比較することにより決定することができる。げっ歯類、ブタ、及び他の動物の有効投与量のヒトに対する外挿方法は、当該技術において既知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照する。
【0123】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される、化合物、又はその薬学的に許容される塩、又は医薬組成物を、経口投与又は静脈内投与により投与してよい。しかしながら概して、適した容量は、約0.001mg/kg~約10.0mg/kgなどの、約0.0001mg/kg~約1000mg/kgの範囲になることが多いだろう。例えば、適した容量は、1日あたりレシピエントの体重の約0.01mg/kg~約1.0mg/kg、1日あたりレシピエントの体重の約0.01mg/kg~約3.0mg/kg、1日あたりレシピエントの体重の約0.1mg/kg~約5.0mg/kg、1日あたりレシピエントの体重の約0.2mg/kg~4.0mg/kgなどの、1日あたり体重の約0.001mg/kg~約5.0mg/kgの範囲であってよい。化合物は、例えば、ユニット剤形あたり1~100mg、10~100mg、又は5~50mgの活性成分を含む、ユニット剤形で投与してよい。
【0124】
所望の用量は好都合に、単回投与、又は例えば、1日あたり2回、3回、4回又はそれ以上のサブ用量などの適切な間隔で投与される分割投与で、示されてよい。サブ用量自身を、例えば、多くの別々の離れた間隔での投与に、さらに分割してよい。
【0125】
投与すべき適したインビボ投与量及び特定の投与方法は、年齢、体重、苦痛の重症度、及び治療される哺乳類の種、利用される特定の化合物、及びこれらの化合物を利用する特定用途に応じて変化してよい。所望の結果を達成するための有効投与量レベルの決定は、例えば、ヒト臨床試験、インビボ研究及びインビトロ研究などの、既知の方法により達成されてよい。例えば、本明細書中に開示される化合物、又はその薬学的に許容される塩の有効投与量を、インビトロ活性、及び動物モデルのインビボ活性を比較することにより、決定してよい。このような比較を、確立した薬物に対する比較によりなしてよい。
【0126】
投与量及び感覚を、調整効果又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに充分な活性部分の血漿レベルを提供するよう個々に調整してよい。MECは、各化合物について変わることになるが、インビボ及び/又はインビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個人の特性及び投与経路に依存するだろう。しかしながら、FIPLCアッセイ又はバイオアッセイを用いて血漿濃度を決定することができる。投与間隔もまた、MEC値を用いて決定することができる。組成物は、期間の10~90%の間、好ましくは30~90%の間、最も好ましくは50~90%の間、MECを超える血漿レベルを維持する投与計画を用いて投与されるべきである。局所投与又は選択的取り込みの場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度と関連しなくてよい。
【0127】
本明細書中に記載される組成物を、組成物の安定性、送達量、及び/又は活性を延長させるための追加の組成物とともに投与してよく、又は追加の治療薬と組み合わせてよく、又は追加の治療薬の投与前又は投与後に提供してよい。組み合わせ療法には、本明細書中に記載される化合物のうち1つ又は複数及び1つ又は複数の追加の医薬品を含む単独の医薬品投薬製剤、並びに独自の別個の医薬品投薬製剤での、化合物及び各追加治療薬の投与が含まれる。例えば、本明細書中に記載される化合物を、本明細書中に記載される追加の抗がん剤とともに対象に投与してよい。
【実施例
【0128】
7.実施例
実施例1
化学合成
PLE.PLEを、以下の概略図1にしたがって合成的に作製してよい。
【化23】
【0129】
フラバグリン.フラバグリンは、市販であった。FLV1及びFLV3をHaoyuan Chemexpress Co. (Shanghai, China)から購入した。FLV1及びFLV3をあるいは、以下の概略図2にしたがって合成的に作製した。
【化24】
【0130】
PLE-フラバグリン構築物.CLR 1852(化合物(9))及びCLR 1865(化合物(8))を、以下の概略図3にしたがって合成的に作製した。
【化25】
【0131】
CLR 1899の合成.CLR 1899を概略図4にしたがって合成した。NMR及びMSデータにより構造を検証した。
【化26】
【0132】
実施例2
腫瘍細胞上の脂質ラフトの存在
100超の細胞株をコレラ毒素サブユニットBで染色し、4%ホルムアルデヒドで固定し、フィリピンIIIで30分間染色した。図1A図1Dに示されるように、試験したほとんど全ての腫瘍の種類で細胞膜中に高濃度の脂質ラフトが実証された(100超の細胞株、新鮮な患者サンプルなど)。図1Eに示されるように、A549細胞を正常な線維芽細胞と48時間共培養し、ついでコレラ毒素サブユニットBで染色し、4%ホルムアルデヒドで固定し、フィリピンIIIで30分間染色した。これらの結果から、腫瘍細胞は正常細胞より、高濃度の脂質ラフトを持つことが実証された。
【0133】
実施例3
PDCの腫瘍細胞中への選択的取り込み
正常な線維芽細胞及びCaki-2腫瘍細胞(ヒト明細胞腎細胞がん)を蒔き、一晩共培養した(図1F)。細胞をついで完全培地中37℃で24時間、5μMのCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートした。翌日、細胞を洗浄し、核染色(Hoescht 33342)で共染色した。CLR 1501を励起させ、Alexa-Fluor 488フィルターで検出した。CLR 1501はCaki-2細胞には高度に局在化したが、正常な線維芽細胞では最小限しか局在化しなかった。
【0134】
実施例4
脂質ラフトを破壊するとPDCの取り込みが減少した
A549細胞を別個のウェル中に一晩蒔いた。次の日、細胞を処理しない(図1G)又はメチル-b-シクロデキストリン(図1H)で処理し、これから脂質ラフトを選択的に破壊することが分かった。全ての細胞をついて24時間5μMのCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートした。A549細胞の脂質ラフトの大部分が破壊されると、未処理の細胞と比較して(図1G)CLR 1501の取り込みが60%減少した(図1H)。
【0135】
実施例5
小胞体に対するPDCの追跡
ヒト前立腺がん細胞(PC3)をマイクロプレートVI(Ibidi,Verona, WI)上に一晩蒔き、ついで完全培地中37oCで24時間5μMのCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートした。洗浄後、この細胞を手順書によりER-tracker(登録商標)で共染色し、Nikon A1R共焦点光学顕微鏡を用いて画像化した。CLR 1501及びERを励起子、標準的な蛍光フィルターである、Alexa-Fluor 488を用いて検出した。CLR 1501は、悪性細胞ではERと共局在化したが(図1I図1K)、正常細胞では共局在化しなかった(図示せず)。
【0136】
実施例6
小胞体に対するPDCの追跡
PC3(グレードIV、ヒト前立腺がん)細胞株をマイクロスライドVI(Ibidi, Verona,WI)上で一晩培養した。翌日、この細胞を完全培地中37oCで24時間5μMのCLR 1501(化合物(1))とともにインキュベートした。翌日、PBSで洗浄後、細胞を核染色(Hoechst33342)及びミトコンドリアマーカー(Mitotracker(登録商標))(Invitrogen, Carlsbad, CA)で共染色した。この細胞をNikon A1R共焦点顕微鏡を用いて観察した。CLR 1501を励起し、Alexa-Fluor 488フィルターを用いて検出しながら、核染色及びミトコンドリア染色を励起子、それぞれDAPIフィルター及びTexas-Redフィルターを用いて検出した。CLR 1501をミトコンドリアと共に共局在化した(図1L図1N)。
【0137】
実施例7
PDCは、インビボでの標的送達を提供する
直腸結腸(HCT-116)腫瘍を有するヌードマウスに1mgのCLR 1502(化合物(2))を注射し、Pearl赤外イメージングシステムによりが増加した。異なる色は、経時的なCLR 1502の強度を示す。注射のおよそ5.5時間後、腫瘍はまだ赤色を示していた(CLR 1502の最も高い分布を示す)(図2)。24時間以内に、CLR 1502の最大分布を得た。初期の標的化は、30分以内に認められた(図示せず)。
【0138】
実施例8
細胞障害性PDCは、標的化を行い、潜在的に改良された治療指数を提供する
A549(ヒト肺腺がん)細胞及び正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を一晩96穴ディッシュに蒔いた。全ての細胞を増加する様々な濃度の親細胞障害性化合物単独(FLV1又はFLV3)かPDC(開裂可能なリンカーでPLE部分に結合した親細胞障害性化合物、CLR 1865)(化合物(8))又はCLR 1852(化合物(9)))のいずれかで処理した。親細胞障害性化合物はA549細胞に対して、NHDF細胞に対してしたのとほとんど同等の効力を示した。しかしながら、PDC分子は、A549細胞に対して選択性を示した(図3)。PDC分子は、NHDF細胞に対して最高濃度までほとんど効果を示さなかったが、A549細胞においては親分子とほとんど類似する効力を示した。腫瘍細胞に対するPDC分子の細胞障害性と正常細胞に対するPDC分子の細胞障害性の差は、親分子の治療指数を改善する可能性を意味するかもしれなかった。
【0139】
実施例9
細胞障害性PDCは、標的化を提供する
A375(ヒトメラノーマ)及びHEK293(ヒト胎児腎)細胞中のCLR 1852(化合物(9))の取り込みを評価した。この細胞を24時間、CLR 1852(化合物(9))とともにインキュベートした。処理から24時間以内で腫瘍細胞は、正常細胞と比較してどこでもPDCが6~28倍増加したことが分かった(図4)。
【0140】
実施例2~9の結果から、リン脂質エーテル分子は、脂質ラフトを介して腫瘍細胞を標的化することが示された。PDCは正常細胞に対して、共培養中でさえ腫瘍細胞に有意な取り込みを示した。腫瘍細胞に侵入時、PDCは、ミトコンドリア及び小胞体を追跡した。インビボで、PDCは腫瘍を標的化し、そして腫瘍内部に迅速に蓄積することの両方を行った。細胞障害性PDCは、標的化を改良し、安全性を改善する可能性をもたらした。
【0141】
実施例10
PLEの細胞性取り込み
各種がん細胞株を、蛍光標識したPLE(CLR 1501、化合物(1))にインビトロ及びインビボで曝露した。腫瘍細胞取り込みを24時間、連続的に測定した。結果を表1及び図5図6、及び図7に示した。PLE化合物は、腫瘍及びがん細胞に特異的だった。
【0142】
蛍光標識したPLE(CLR 1501、化合物(1))を良性組織に投与したが、取り込みは観察されなかった(表2)。
【表1】
【表2】
【0143】
実施例11
がん細胞中でのPLE-フラバグリン抱合体の活性
PLE-フラバグリン抱合体CLR 1852(化合物(9))及びCLR 1865(化合物(8))を細胞株A375(ヒト悪性メラノーマ)、A549(ヒト肺腺がん)、HCT116(ヒト結腸がん)、及びNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)に投与した。IC50を算出した。結果を表3に示す。
【表3】
【0144】
CLR 1852の細胞障害性を各種濃度にわたり決定した。図8に示すとおり、CLR 1852はおそらく不完全放出により、FLV3単独と比較して効力が中程度の減少を示した。
【0145】
血漿中でのCLR 1865(化合物(8))、CLR 1852(化合物(9))、及びFLV3の安定性を、プロパンテリンをコントロールとして試験した(表4)。少量の分子を血漿に曝露し、この血漿をついでHPLC又はMSにより分析して分子が分解したかどうかを判断した。CLR 1865及びCLR 1852は、優れたヒト血漿安定性を示した。マウス血漿ではCLR 1852がCLR 1865より優れていた。CLR 1865がマウス血漿中で安定だったのはたった3.3時間だけだった。CLR 1852は、血漿中で少なくとも7時間安定だった。
【表4】
【0146】
CLR 1865及びCLR 1852の治療指数(TI)をマウスで試験した(表5)。表5に列挙したのは、マウスに投与した投与量であり、処置後に生きていたマウスの数である(「3/3」とは、3匹中3匹のマウスが生きていたことを意味する)。CLR 1852及びCLR 1865の両方では、FLV3単独と比較して忍容性において優れた改善が示された。CLR 1852は、おそらく溶解度により多い投与が制限されたので、最大耐用量(MTD)を達成しなかった。CLR 1865のMTDは5~10mg/kgだった。インビボ治療指数は、CLR 1852では少なくとも25であり、CLR 1865では少なくとも12.5だった。
【表5】
【0147】
HCT 116細胞(ヒト結腸がん)中でのCLR 1852の効力を試験した。CLR 1852をHCT 116細胞に各々1mg/mgの投与量で3回投与した。ビヒクルと比較すると、CLR 1852は約27日で腫瘍体積を減少し始めた(図9)。ビヒクルと比較すると、CLR 1582は、おそらく毒性のために中程度の体重減少を引き起こした(図10)。CLR 1582はFLV3単独と比較して、少なくとも6倍忍容性が増加した(データ示さず)。
【0148】
CLR 1852及びFLV3単独でA375及びA549細胞に投与した。細胞可溶化物及び成長培地中のFLV3のレベルを、LC/MSを用いて測定した。図11に示すように、細胞可溶化物中に24時間後高レベルのFLV3が存在した。成長培地中に24時間後中レベルのFLV3が存在した。細胞内FLV3レベルは、24時間で定常に達したようにみえるが、細胞外FLV3レベルは増加し続けた。
【0149】
実施例12
がん細胞中でのCLR 1899の活性
CLR 1899を細胞株A375(ヒト悪性メラノーマ)、A549(ヒト肺腺がん)、HCT116(ヒト結腸がん)、及びNHDF(正常ヒト皮膚線維芽細胞)に投与した。インビトロ細胞障害性結果を表6に示す。
【表6】
【0150】
CLR 1899がインビボで耐容性を示すかどうかを判断するために、この化合物を健康なC57BL/6マウスに0.5mg/kg、1.0mg/kg、又は2.0mg/kgの投与レベルで静脈内に投与し、体重変化を観測した(図12)。CLR 1899は、体重変化で測定した時反復投与時に毒性も有害事象も示さなかった。CLR 1899のインビボ有効性をMCF-7異種移植モデルで試験した(図13、投与量群あたり10匹のマウス)。腫瘍体積の減少を記録した。これらの試験において、CLR 1899は、腫瘍増殖を停止又は遅くすることにおいてドセタキセルに等しい活性を示した。
【0151】
特定の態様の先の記載は本発明の一般的性質を非常に充分明らかにしているので、他の人々は当該技術内の知識を適用することにより、過度の実験なしで、このような特定の態様の各種適用を容易に修正及び/又は調整できる。したがって、このような調整及び修正は、本明細書中に示される教示及び案内に基づいて、開示された態様の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書中の語法又は専門用語は、本明細書の専門用語又は語法が教示及び案内を考慮して当業者によって解釈されるように、説明の目的であり制限する目的でないと理解される。
【0152】
本開示の広さ及び範囲は、上述した例示的態様のいずれかによって限定されるべきではないが、以下の特許請求の範囲及びその均等物にしたがって定義されるべきである。
【0153】
本出願に引用した全ての刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文書は、各個別の刊行物、特許、特許出願、及び/又は他の文書が全ての目的のために参照により援用されると個別に示されるのと同一の程度で全ての目的のためにその全体を参照により援用される。
【0154】
完全さの理由で、本開示の各種態様を以下の番号付けした条項に記述する。
【0155】
条項1.式(I)の化合物であって、
【化27】
式中、Zは、フラバグリン類縁体である、
式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【0156】
条項2.以下:
【化28】
及び
【化29】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【0157】
条項3.条項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【0158】
条項4.がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療方法であって、この方法は、この対象に有効量の条項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0159】
条項5.対象における腫瘍又はがん細胞に薬物を標的化する方法であって、この方法は、この対象に条項1~2のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0160】
条項6.この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、この腫瘍又はがん細胞の細胞質又はオルガネラに局在化するか又は移行する、条項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
条項7.この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、この対象のがん細胞に選択的である、条項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【0162】
条項8.この化合物、又はその薬学的に許容される塩は、健康細胞よりも少なくとも約2倍多く腫瘍又はがん細胞に取り込まれる、条項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
条項9.このがんは、メラノーマ、脳がん、肺がん、副腎がん、肝がん、腎がん又は腎臓がん(renal or kidney cancer)、膵がん、食道がん、胃がん(gastric cancer)、胃がん(stomach cancer)、結腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、リンパ腫、白血病、骨髄腫、造血器がん、肝細胞がん、網膜芽細胞腫、神経膠腫、肉腫、芽細胞腫、扁平上皮がん、腺がん、又はこれらの組み合わせである、条項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
条項10.このがんは、メラノーマ、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、又はこれらの組み合わせである、条項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
条項11.この肺がんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、又はこれらの組み合わせを含み、
このメラノーマは、表在拡大型黒色腫、結節性メラノーマ、悪性黒子由来黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、母斑性黒色腫(nevoid melanoma)、スピッツ母斑様黒色腫(spitzoid melanoma)、線維形成性黒色腫、又はこれらの組み合わせを含み、
この結腸直腸がんは、腺がんを含み、又は
この乳がんは、浸潤性乳管がん、転移性乳がん、炎症性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、乳管内上皮内がん、又はこれらの組み合わせを含む、
条項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
条項12.このがんは、がん幹細胞を含む、条項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
条項13.このがんは、転移性がん細胞を含む、条項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
条項14.このがんは、循環腫瘍細胞を含む、条項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
条項15.この対象は、ヒトである、条項4~14のいずれか一項に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
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図1H
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図1K
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図1N
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【国際調査報告】