(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】耳用製剤、方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5395 20060101AFI20221202BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20221202BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20221202BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221202BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221202BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221202BHJP
C07D 498/06 20060101ALN20221202BHJP
C07D 233/62 20060101ALN20221202BHJP
C07J 5/00 20060101ALN20221202BHJP
【FI】
A61K31/5395
A61P27/16
A61K9/08
A61P43/00 121
A61K31/137
A61K31/4164
A61K31/573
A61K47/06
A61P31/04
A61P31/10
A61P29/00
C07D498/06
C07D233/62
C07J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521440
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020054770
(87)【国際公開番号】W WO2021072063
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430299
【氏名又は名称】ピードモント アニマル ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヘプラー ダグラス アイ.
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー ゲイル エル.
(72)【発明者】
【氏名】エルクスレーベン ドロテア エー.
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ニール イー.
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C086
4C091
4C206
【Fターム(参考)】
4C072AA02
4C072AA06
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC02
4C072CC11
4C072DD10
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4C072FF07
4C072GG07
4C072GG08
4C072GG09
4C072HH08
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4C076BB26
4C076CC10
4C076DD34A
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4C086ZB35
4C086ZC75
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4C091BB03
4C091BB05
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4C206NA12
4C206ZA34
4C206ZB11
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、粘稠性の耳用担体に抗生物質、抗真菌剤、および抗炎症剤を含む一回限りの治療を施すことによって、耳感染症、特に耳真菌症および外耳炎を治療するための製剤および方法に関する。一実施形態では、製剤は、マルボフロキサシン、テルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、ならびにデキサメタゾンを含む治療有効量の有効成分を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
i)マルボフロキサシン、
ii)テルビナフィン、クロトリマゾール、またはそれらの組み合わせ、および
iii)副腎皮質ステロイド
を含む、治療薬と、
b)担体と
を含む、耳用製剤。
【請求項2】
流動性液体の形態で哺乳動物の外耳道に送達することができる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記外耳道内に導入される際、前記製剤が前記外耳道内に少なくとも3日間留まり、治療薬を放出するように、前記担体が増粘剤を含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記担体は約10~90重量%の前記増粘剤を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記担体は約10~50重量%の前記増粘剤および約50~90重量%の鉱物油を含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記増粘剤はワックスである、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記担体は約60~80重量%の鉱物油および約10~30%のワックスを含む、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記ワックスはパラフィンである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記担体は約65~75重量%の鉱物油および約20~30重量%のパラフィンを含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
約0.1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、および
約0.1重量%~5重量%のテルビナフィン、クロトリマゾール、またはそれらの組み合わせ
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
約0.01~2.5重量%の副腎皮質ステロイドを含む、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記担体は約65~75重量%の鉱物油および約20~30重量%のパラフィンを含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記副腎皮質ステロイドは、アムシノニド、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、ジフロラゾンジアセテート、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、酢酸プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記副腎皮質ステロイドは、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
約0.1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、約0.1重量%~5重量%のテルビナフィン、約0.01~2.5重量%の副腎皮質ステロイド、約65~75重量%の鉱物油、および約20~30重量%のパラフィンを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
前記副腎皮質ステロイドは、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、またはそれらの組み合わせである、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
37℃で約10~80,000cPs、または37℃で約60,000~65,000cPsの粘度を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
a)真菌および細菌感染症を治療するための治療薬であって、
i)約1.5~2.0重量%のマルボフロキサシン、
ii)約1.0~5.0%重量%のテルビナフィン、クロトリマゾール、またはそれらの組み合わせ、および
iii)約0.1~0.3%重量%のデキサメタゾン
を含む、治療薬と、
b)約20~30%重量%のワックスと、
c)約65~75%重量%の鉱物油と
を含む、耳用製剤。
【請求項19】
約1.0~5.0重量%のテルビナフィンを含む、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
耳の感染症を有する哺乳動物の外耳道に適用された後、前記外耳道に留まり、37℃で約10~80,000cPs、37℃で約10,000~80,000cPs、37℃で約20,000~80,000cPs、37℃で約30,000~80,000cPs、または37℃で約40,000~80,000cPsの粘度を有する、請求項20に記載の製剤。
【請求項21】
前記外耳道内に導入されると前記外耳道内に留まり、有効成分を2~7日間放出し、その後、前記耳内では見つからない、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
約1.5~2.0重量%のマルボフロキサシン、約1.5~3.5重量%のテルビナフィン、約0.1~0.3重量%のデキサメタゾン、約20~30重量%のワックス、および約65~75重量%の鉱物油を含む、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
単回治療用であり、2、14、または27日以内に少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の臨床的治癒率を有する、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
耳に許容可能な担体中にマルボフロキサシン、テルビナフィンおよびデキサメタゾンを含み、
前記担体は、37℃で約10~80,000cPs、37℃で約10,000~80,000cPs、37℃で約20,000~80,000cPs、37℃で約30,000~80,000cPs、または37℃で約40,000~80,000cPsを有し、
前記担体は有効成分を2~7日間耳に保持し、その後、出て行くかまたは吸収され、ならびに、
製剤は単回治療用であり、2、14、または27日以内に少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の臨床的治癒率を有する、
耳用製剤。
【請求項25】
1.5~2.0重量%のマルボフロキサシン、2.0~5.0重量%のテルビナフィン、0.1~0.3重量%のデキサメタゾン、20~30重量%のパラフィン、および65~75重量%の鉱物油を含む、耳用製剤。
【請求項26】
1.5~2.0重量%のマルボフロキサシン、1.5~5.0重量%のクロトリマゾール、0.1~0.3重量%のデキサメタゾン、20~30重量%のパラフィン、および65~75重量%の鉱物油を含む、耳用製剤。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の単回投与の前記製剤を、耳の感染症を有する哺乳動物の外耳道内に適用することを含む、哺乳動物の外耳道における感染症を治療するための方法。
【請求項28】
前記耳の感染症は、2、14または27日以内に臨床的に解消される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物はヒト、イヌまたはネコである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
送達構成要素に流体連結する収容コンパートメントを含む注入ユニットと、
前記収容コンパートメント内に収容された請求項1~26のいずれか一項に記載の製剤と
を備える、治療キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)に基づき、2019年10月11日に出願された米国仮特許出願第62/914,301号の優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、耳の感染症、特に慢性耳炎を治療するための抗真菌性/抗菌性/抗炎症性製剤、ならびに製剤を送達するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
耳の感染症、特に真菌性の耳の感染症は、多くの場合暖かく湿った気候で発生する、よく起こる耳の障害である。真菌性外耳炎は、外耳道の真菌感染症および関連する合併症である。外耳炎患者の30.4%もが真菌性耳炎の症状または耳の炎症状態を示すことが報告されている。
【0004】
耳真菌感染症の一般的な症状には、耳痛、耳漏、難聴、耳閉感、掻痒、耳鳴りがある。真菌感染症を引き起こしたり発症率を高めたりする可能性のあるいくつかの要因には、多湿気候、真菌の成長を支援する耳垢(イヤーワックス)の存在、外耳道の形状、免疫機能の低下、糖尿病、耳鼻咽喉科抗生物質の使用の増加、広域抗生物質の長期使用、全身性ステロイド薬の使用、妊娠、閉塞型の補聴器、外傷および細菌感染症がある。
【0005】
外耳炎を引き起こす一般的な真菌は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)とカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)であり、その治療はこれらの真菌に合わせて調整することができる。他の真菌も外耳炎を引き起こす可能性があり、それぞれの治療薬で治療することもできる。好適な治療法を決定するために病原の特定が必要かどうかは議論の余地がある。ある学派は、治療は特定された種の感受性に基づくべきであると考えているが、他の学派は、原因となる微生物に関係なく、治療は薬の有効性および特性に基づく必要があると考えている。経験豊富な耳鼻咽喉科医(ENT)は、主に試験で特徴的な真菌要素を肉眼で特定し、局所酸性化剤または特定の抗真菌剤を適用することにより、培養なしで真菌を日常的に治療できるようになった。したがって、開業医は、必要に応じて、微生物を識別したり、またはベストプラクティスに従って経験的に可能性のある微生物を治療したりすることができる。
【0006】
現在、真菌感染症の治療のための薬には、ポリエン、トリアゾール、ヌクレオシド類似体、エキノカンジンの4つの主要なクラスがある。ポリエンおよびトリアゾールファミリーの作用機序には、真菌の細胞膜に見られるエルゴステロールと呼ばれる必須の化学成分が含まれる。薬はエルゴステロールに結合し、真菌の膜に極性の細孔を作り、これにより、細胞内からイオンおよび他の分子が漏れ、そして細胞を死滅させる。ヌクレオシド類似体はヌクレオチド合成を妨害し、それは細胞の適切なエネルギー生成、代謝およびシグナル伝達を妨げる。エキノカンジンは、細胞壁の生合成を妨害することによって作用する、新しいクラスの抗真菌剤である。ただし、エキノカンジンは胚毒性があることが知られており、肝疾患のある患者には用量調整が必要である。
【0007】
現在までに報告されている治療のほとんどは、一週間から一か月の期間に複数回局所的に適用される液剤、クリーム、粉末、または軟膏を必要とする。長期の治療計画は、患者がかかりつけ医もしくは耳鼻咽喉科医を何度も訪問しなければならないこと、または自己管理薬の場合、多くの場合、患者が指示に従って薬を適用するのを忘れる結果として、さらに治療期間を延長させる場合もある真菌や細菌の二次増殖を引き起こすこと、のいずれかにより患者に不便をかける。さらに、多くの薬は複合剤によって引き起こされる感染に対して完全な有効性を持っておらず、これもまた治療時間を延長させる可能性がある。さらに、純粋な液状の薬、例えば点耳薬は、特に外耳道から液体が非常に急速に出て行き、重力により外耳道内の全ての感染領域に、特に外耳道の上半分に、液体が到達できるとは限らないため、慢性外耳炎の治療にはあまり望ましくない。対照的に、クリームおよび軟膏は耳に留まることが多く、耳鼻咽喉科で取り除く必要がある。
【0008】
米国特許第7,220,431号(非特許文献1)は、哺乳動物の鼓膜に製剤を適用することにより、哺乳動物の中耳に薬剤を投与するための方法を開示している。この方法は、耳道で発生した感染症、例えば外耳炎の治療方法を示していない。製剤は、100,000cps未満の粘度を有することを特徴とし、製剤は、鼓膜への適用後にゲルを形成する。ただし、外耳道が閉塞されると追加の点耳薬を導入できないため、この特許の実用化には問題がある可能性がある。さらに、固化したゲルは固くなり、感染症状が解消された後に患者が取り除くのが難しい可能性がある。全ての有効成分を放出した後、固化したゲルが外耳道内に長く留まると、真菌や細菌の感染症が再発する可能性がある。
【0009】
米国特許第8,030,297号(非特許文献2)は、メニエール病、自己免疫性耳疾患、中耳炎、音響外傷誘発性感音難聴、薬物誘発性感音難聴、感音難聴、特発性感音難聴、めまい、および耳鳴りから選択される耳障害を治療するための方法を開示している。この方法は、16重量%~21重量%のポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレン、ならびに1mg/ml~70mg/mlの多粒子抗炎症副腎皮質ステロイドを有する熱可逆性水性ゲルを含む医薬組成物の鼓室内投与を必要とする。「鼓膜内」投与および対象疾患は、この特許が外耳炎を治療していないことを明らかにしている。また、この特許は、真菌感染症を治療するための抗真菌剤の使用を示していない。
【0010】
動物用に利用できる動物用製品もいくつかある。Intervet(登録商標)/Schering-Plough Animal Health(登録商標)によるPOSATEX OTIC SUSPENSION(商標)は、懸濁液中にオルビフロキサシン、フロ酸モメタゾン一水和物、およびポサコナゾールを含有する。ただし、有効性は限られており(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および酵母マラセチア・パチデルマティス(Malassezia pachydermatis))、オルビフロキサシンはイヌでの使用のみが承認されている。さらに、7日間連続で使用する必要がある。
【0011】
Med-Pharmex(登録商標)製のTRI-OTIC(商標)は、硫酸ゲンタマイシン、吉草酸ベタメタゾン、およびクロトリマゾールを含有する。ただし、この処方も一日二回、外耳道内に7日間連続して適用する必要があり、有効性は限られている(マラセチアパチデルマティス、以前はピチロスポルム・カニス(Pityrosporum canis)、および/またはゲンタマイシンに感受性のある細菌)。
【0012】
ヒトでの使用が承認されている組み合わせも少しはあるが、全ての組み合わせの有効性は非常に限られている。Alcon(登録商標)製のCIPRODEX(登録商標)は、0.3%シプロフロキサシンおよび0.1%デキサメタゾンの懸濁液(0.3%シプロフロキサシン、0.1%デキサメタゾン)である。ただし、真菌に対する有効性はなく、一日二回7日間使用するように指示されている。CIPRO HC(登録商標)は、シプロフロキサシンおよびヒドロコルチゾンを含有する同様の製剤であり、同じ制限がある。一般的に入手可能なCORTISPORIN(登録商標)は、ネオマイシンおよび硫酸ポリミキシンB、およびヒドロコルチゾン耳用液剤を含有するが、同じ制限があり、一日3~4回の適用が最大10日間必要である。
【0013】
したがって、真菌性耳感染症、例えば耳真菌症および外耳炎を治療するための医療製剤および方法が依然として必要であり、それは単回投与のみを必要とし、それでも真菌および細菌感染症ならびに同時に発症する炎症の範囲を根絶することができる。耳真菌症および外耳炎の高い治癒率を達成するために製剤の単回投与のみが必要とされるような、患者の外耳道内に有効な薬品を留めておくことができる製剤が特に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,220,431号
【特許文献2】米国特許第8,030,297号
【発明の概要】
【0015】
本開示は、真菌および細菌を含む広範囲の微生物に対して非常に高い有効性を保持しながら、一回の投与のみを必要とする慢性外耳炎を治療するための製剤、方法および装置に関する。製剤は、一つまたは複数の抗菌剤、一つまたは複数の抗真菌剤、および一つまたは複数の抗炎症剤の治療有効量と、7日未満で耳から出て行く粘稠性の基剤とを含む。
【0016】
好ましい実施形態には、マルボフロキサシンと、デキサメタゾンと、ならびにテルビナフィンおよびクロトリマゾールのいずれかまたは両方と、が含まれる。これらは一緒に、広範囲の真菌感染症、ならびにあらゆるそれに伴う細菌感染症および炎症を根絶する有効成分を構成する。製剤はまた、麻酔薬または鎮痛薬との組み合わせから恩恵を受ける場合がある。例えば、すでに耳での使用が承認されているベンゾカインは、大幅な痛みの緩和を提供することができる。
【0017】
本発明の単回投与製剤を用いて、服用指示に従わないことにおける患者の服薬不履行に起因する合併症を排除することができる。さらに、医薬品有効成分(「API」)を感染領域に直接適用する最適な方法により、一回の用量が大幅に少なくなるために細菌群集の耐性が低下し、それにより細菌の耐性が最小限に抑えられる。
【0018】
さらに、製剤に粘性のある担体を使用することにより、製剤が外耳道内に投与され体温によって加熱されると、製剤は粘性の形態のままであることが可能になる。粘度が高いため、治療用製剤全体が感染した外耳道と長時間接触したままになり、有効成分を少なくとも2、3、4日またはそれ以上にわたり継続的に放出することができる。
【0019】
実施形態では、製剤には以下が含まれる。
【0020】
【0021】
本発明の別の態様では、本明細書に記載の化合物の組み合わせの使用は、本明細書に記載の耳の感染症を治療するための治療薬を製造することである。
【0022】
本発明の別の態様は、治療薬を製造する方法であり、この方法は、本明細書に記載の化合物の組み合わせを粘性担体とブレンドして、本明細書に記載の治療用組成物のうちの一つを作製することを含む。
【0023】
本発明の別の態様は、耳の感染症を治療するための単回投与使用のための使用説明書と一緒にパッケージ化された本明細書に記載の組成物を含むキットである。
【0024】
本発明の別の態様は、耳の感染症を治療するための単回投与使用のための使用説明書一緒に、内部にパッケージ化された本明細書に記載の組成物を含むキットである。
【0025】
外耳道用の使い捨て耳用製剤には、粘性担体が含まれている。担体は、所望の粘度を有し、製剤を外耳道内に長期間、好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9日間またはそれ以上留めるという目標を達成する任意のオントロジー的に許容可能な材料であることができる。異なる担体を選択すると、製剤の物理的性質が変わる可能性があるが、治療効果は変わらない。例えば、当業者は、液体、泡、クリーム、軟膏、または他のオントロジー的に許容される形態で製剤を製造するために、担体をそのように選択することができる。
【0026】
増粘剤は、ワックスのように完全に天然であってもよく、多糖類、タンパク質、アルコール、シリコーンもしくはワックスを含む合成または半合成ポリマー等であってもよい。好適な増粘剤には、蜜蝋、カンデリラワックス、カルナウバワックス、パラフィン、オゾケライトワックス、セチルアルコール、コーンスターチ、ステアリン酸グリセリル、グアーガム、アラビアガム、キサンタンガム、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、アクリレートポリマー、ポリアルファオレフィン、HE-セルロース、PEG-150ジステアレート、ソルビトール、ステアリン酸、ステアリルパルミテート、ポロクサマー407等が含まれ得る。
【0027】
好ましい増粘剤は、有効な期間のために水に不溶性であるかまたは水溶性が低く、かつ耳毒性ではない。好ましい担体には、鉱物油と増粘剤との組み合わせ、例えば、PCCA Plasticized(商標)(PCCA US、TX、カタログ番号30-3211)として知られる低密度ポリエチレンの独自のブレンドが含まれる。さらにより好ましくは、10~25%、15~21%、または約17%もしくは18%の米国薬局方(USP)またはNational Formulary(NF)パラフィンを、USPまたはNF鉱物油と合わせて100重量%にした混合物である。
【0028】
ヒトまたは他の哺乳動物患者の好ましい実施形態では、担体は、対象の外耳道に適用され、37℃の体温によって温められた後、約10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000,または70,000cPsを有する、粘稠性の液体のままであるという特徴がある。少なくとも10,000、20,000、30,000、または40,000cPsの粘稠性が望ましく、好ましくは少なくとも10,000、15,000、20,000、30,000、40,000、45,000、50,000、55,000、または60,000cPsであるが、様々に対応ができる。製剤の粘稠性が高すぎる場合、それは出て行かないので、80,000cPsを超える製剤はあまり望ましくなく、好ましくは70,000cPs未満である。動的A(絶対)粘度を、ATSM D-2394に従って37℃で確認する必要がある。
【0029】
製剤は粘稠性であるが、注入ユニット、例えばシリンジおよび針で適用することができる流動性のある液体のままである。粘性のある液体は外耳道内に留まり、組織の感染部分と接触したままになる。これにより、製剤内の有効成分を長期間、好ましくは少なくとも3日間、より好ましくは少なくとも4日間、理想的には5日間、または6~7日間、連続して放出することが可能になり、したがって真菌および細菌の感染症、ならびに感染症に伴う炎症を継続的に治療する。さらに重要なことに、粘稠性の液体が長期間存在するため、継続的に放出される有効成分はまた、真菌や細菌の増殖を防ぎ、外耳道内の衛生状態を維持する。さらに、製剤の粘性の性質により、症状が解消された後、製剤は外耳道から徐々に出て行く(または吸収される)ことができる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、担体は、より粘稠性の低い液体製剤、および鼓膜切開チューブ(AOMT)を使用して急性中耳炎を治療するために使用される製剤であることができる。これにより、耳漏の場合に、液状の製品を用いて、鼓膜切開チューブを通して鼓膜を通過することができる。このような担体は、例えば、米国特許第7,220,431号および同第8,030,297号に記載されている。ただし、外耳道での使用に好適な一部の薬は、膜を越える使用に好適ではない場合があり、それぞれの適合性を試験する必要がある。
【0031】
本発明の別の態様は、耳の感染症を治療するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物の外耳道内に製剤を、通常は一回のみまたは場合によっては二回適用するステップを含み、製剤は本明細書に記載される通りである。
【0032】
本発明のさらに別の態様では、耳の感染症を治療するための治療キットが提供され、キットは、小さなチューブまたはシリンジなどの送達構成要素に流体連結する収容コンパートメントを含む注入ユニットと、収容コンパートメント内に収容された治療用製剤と、を含む。治療用製剤は、本明細書に記載されている通りである。デバイスは、使用後に廃棄される使い捨てデバイスであることが好ましい。他の実施形態では、収容コンパートメントは複数回の投与を可能にするが、送達構成要素は使い捨てである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、耳真菌感染症、特に外耳炎を治療するための新規の製剤および方法を提供する。本発明の製剤および方法は、一度だけの外耳道への製剤の投与によって、慢性外耳炎を治療し、さらには根絶することを可能にする。
【0034】
本開示は、耳または体温で10~80,000cPsの粘稠性の基剤に抗真菌剤、抗生物質、および抗炎症剤を含む、真菌性耳感染症を治療するための新規の製剤を提供する。
【0035】
本明細書で使用する場合、「耳の感染症」は、耳の真菌および/または細菌感染症を意味する。感染症の場所は主に耳道である。一実施形態では、用語「耳の感染症」は、耳真菌症、慢性および急性の外耳炎を含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、「有効成分」は、治療される病気に対して治療効果を有する医薬品の物質を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「副腎皮質ステロイド」は、抗炎症効果を有するステロイドのクラスを意味し、これには、アムシノニド、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、ジフロラゾンジアセテート、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、酢酸プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する場合、「増粘剤」は、製剤の粘度を増加させる光学的に許容可能な添加剤を意味する。増粘剤は、温度が体温まで上昇すると、製剤の全体を耳に許容可能な粘性の液体にすることができる。本発明で使用することができる増粘剤の例には、低密度ポリエチレン、ポロクサマー、ワックス、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。鉱物油を加えて、増粘剤の粘度を調整することができる。本発明の増粘剤は、好ましくは、37℃で約10~80,000cPsに近い、37℃で約10,000~80,000cPs、37℃で約20,000~80,000cPs、または37℃で約40,000~80,000cPs、例えば、37℃で約50,000~70,000cPs、または37℃で約60,000~62,000cPsの粘度を有する製剤を提供する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「注入ユニット」は、治療薬を貯蔵し、患者の対象領域に治療薬を注射または送達することができるユニットを意味する。典型的な注入ユニットには、例えば、標準的なルアーロックまたはルアーコネクタにより、針または管と連結するシリンジが含まれるが、これらに限定されない。針またはチューブを、本明細書に記載されているようにカスタマイズすることができる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「流動性」とは、室温で100,000cPs未満の粘度を有する液体を意味する。
【0041】
特許請求の範囲または明細書において、用語「含む」と併せて使用する場合の単語「一つの(a)」または「一つの(an)」の使用は、文脈が別段の指示をしない限り、一つまたは複数を意味する。
【0042】
用語「約」は、記載された値に測定誤差をプラスもしくはマイナスした値、または測定方法が示されていない場合は、記載された値にプラスもしくはマイナス10%の値を意味する。
【0043】
特許請求の範囲において、用語「または」の使用は、代替案のみを指すように明示的に示されていない限り、または代替案が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用される。
【0044】
用語「備える」、「有する」、「含む」(およびそれらの変形)は、オープンエンドの連結動詞であり、特許請求の範囲で使用される場合、他の要素を追加することができる。
【0045】
語句「からなる」は排他的であり、全ての追加の要素を除外する。
【0046】
語句「本質的に~からなる」は、追加の材料要素を除外するが、本発明の性質を実質的に変更しない非材料要素、例えば、使用説明書、特別な包装、防腐剤、酸化防止剤等を包含することが可能である。医薬品有効成分は材料と見なされる。
【0047】
本明細書で薬を名前で呼ぶ場合、その全ての活性塩、異性体、および誘導体が含まれると見なされる。
【0048】
特に指示しない限り、全ての百分率は重量によるものである。
【0049】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、0.01重量%~5重量%のマルボフロキサシン、0.01重量%~5重量%のテルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、0.01重量%~2.5重量%の副腎皮質ステロイド、10重量%~70重量%の増粘剤、ならびに30重量%~90重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0050】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、1重量%~3重量%のテルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、0.1重量%~0.3重量%の副腎皮質ステロイド、15重量%~25重量%の増粘剤、ならびに70重量%~90重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0051】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~2重量%のマルボフロキサシン、1重量%~2重量%のテルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、0.1重量%~0.25重量%の副腎皮質ステロイド、15重量%~25重量%の増粘剤、ならびに70重量%~90重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0052】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、1重量%~3重量%のテルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、0.1重量%~0.3重量%の副腎皮質ステロイド、15重量%~20重量%の増粘剤、ならびに75重量%~80重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0053】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~2重量%のマルボフロキサシン、1重量%~2重量%のテルビナフィンおよび/またはクロトリマゾール、0.1重量%~0.25重量%の副腎皮質ステロイド、15重量%~20重量%の増粘剤、ならびに75重量%~80重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0054】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、1重量%~5重量%のテルビナフィン、0.1重量%~0.3重量%の副腎皮質ステロイド、20重量%~30重量%の増粘剤、および65重量%~80重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0055】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、2重量%~4重量%のテルビナフィン、0.1重量%~0.3重量%の副腎皮質ステロイド、20重量%~30重量%の増粘剤、および65重量%~80重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0056】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、2重量%~4重量%のテルビナフィン、0.1重量%~0.3重量%の副腎皮質ステロイド、20重量%~30重量%の増粘剤、および65重量%~75重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0057】
一実施形態では、本開示は、哺乳動物の耳の感染症を治療するための製剤を提供し、製剤は、1重量%~3重量%のマルボフロキサシン、2重量%~4重量%のテルビナフィン、0.1重量%~0.3重量%のデキサメタゾン、20重量%~30重量%のパラフィン、および65重量%~75重量%の鉱物油を含む。他の治療上好適な基剤を、増粘剤の代わりに、製剤の有効性に影響を与えることなく本発明で利用することもできる。
【0058】
一実施形態では、副腎皮質ステロイドは、アムシノニド、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、ジフロラゾンジアセテート、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、フロ酸モメタゾン、酢酸プレドニソロン、トリアムシノロンアセトニド、およびそれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、副腎皮質ステロイドは、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニドまたはそれらの組み合わせである。
【0059】
一実施形態では、担体は、鉱物油および増粘剤を含む。一実施形態では、増粘剤はパラフィンであり、担体は、鉱物油中に約11~21重量%または約17%もしくは18%のパラフィンを含む。一実施形態では、増粘剤はパラフィンであり、担体は、鉱物油中に約20~30重量%または約24%もしくは25%のパラフィンを含む。一実施形態では、増粘剤はパラフィンであり、担体は、約65~80重量%または約71%もしくは72%の鉱物油中に、約20~30重量%または約24%もしくは25%のパラフィンを含む。一実施形態では、増粘剤はパラフィンであり、担体は、約70~75重量%または約71%もしくは72%の鉱物油中に、約22~26重量%または約24%もしくは25%のパラフィンを含む。一実施形態では、増粘剤はパラフィンであり、担体は、約65~80重量%または約70%~75%鉱物油中にパラフィンを含む。
【0060】
一実施形態では、耳の感染症を治療するための方法は、以下の:
哺乳動物の外耳道内に本開示の製剤を一回適用するステップであって、製剤は哺乳動物の外耳道に適用された後にゲルを形成し、ゲルは有効成分を少なくとも2、3、4、5、6、7、8、または9日間継続的に放出する、ステップ
を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、製剤を外耳道に適用する前に、外耳道から感染性および炎症性のデブリを創傷清拭するステップをさらに含む。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、耳の感染症を治療するための製剤であり、製剤は、一つまたは複数の抗真菌剤と、一つまたは複数の抗生物質と、一つまたは複数の抗炎症剤と、37℃で約10~80,000cPs、37℃で約10,000~80,000cPs、37℃で約20,000~80,000cPs、または37℃で約40,000~80,000cPsを有する担体であって、担体は有効成分を2~7日間耳に保持し、そして出て行くか吸収される、担体と、を含む。
【0062】
一実施形態では、耳用製剤は、耳に許容可能な担体中にマルボフロキサシン、テルビナフィン、およびデキサメタゾンを含む。好ましくは、本明細書に記載の好適な担体中に、0.1~10%のマルボフロキサシン、0.1~10%のテルビナフィンおよび0.01~5%のデキサメタゾンが使用され、最も好ましくは、1.5~2.0%のマルボフロキサシン、1.5~5.0%のテルビナフィン、および0.1~0.25%のデキサメタゾンである。
【0063】
一実施形態では、耳用製剤は、耳に許容可能な担体中にマルボフロキサシン、クロトリマゾール、およびデキサメタゾンを含む。好ましくは、本明細書に記載の好適な担体中に、0.1~10%のマルボフロキサシン、0.1~10%のクロトリマゾールおよび0.01~5%のデキサメタゾンが使用され、最も好ましいのは、1.5~2.0%のマルボフロキサシン、1.0~2.0%のクロトリマゾール、および0.1~0.25%のデキサメタゾンである。
【0064】
一実施形態では、本発明の製剤および方法で治療することができる好適な哺乳動物には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ならびに獣医が耳の感染症について通常治療する他の哺乳動物が含まれる。
【0065】
本開示はさらに、耳の感染症を治療するための治療キットを提供する。一実施形態では、治療キットは、本明細書に記載の製剤を収容するための収容コンパートメントを備える、シリンジ、針または中空管の注入ユニットを含む。チューブまたは針を、治療用製剤の投薬に影響を及ぼさない限り、使用に好適な任意の程度に曲げることができる。
【0066】
キット全体を使い捨てにすることができ、その場合、無駄を防ぐために収容量は一回の投与量に好適な量、例えば1~1.5mlを保持するように小さい。あるいは、治療用製剤がなくなるまでキットを繰り返し使用することもでき、その場合、収容量は複数回の投与量、例えば10~30mlを保持するように大きい。患者がヒトでない、例えばイヌの場合、容量が変わる場合があり、より多くの用量が必要になる場合がある。
【0067】
本発明の製剤の調製は、最終製品が、例えば、外耳道に長期間留まり、かつ有効成分を継続的に放出しながら、室温および体温の両方で流動性を維持する等の所望の特性を有する限り、様々な配合方法で実行されることができる。
【0068】
以下の成分は、本発明の一実施形態の製剤に含まれる。
【0069】
【0070】
以下の成分は、本発明の一実施形態の製剤に含まれる。
【0071】
【0072】
以下の成分は、本発明の一実施形態の製剤に含まれる。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
製造において、マルボフロキサシン粉末、クロトリマゾールまたはテルビナフィン粉末、およびデキサメタゾン粉末は、それぞれの重量に従って計量され、混合容器、例えばフラスコに入れられることができる。
【0077】
次に、鉱物油を加えて、配合物をよく混合することができる。最後に、増粘剤と追加量の鉱物油とを容器に加えて最終配合物を作り、よく混合することができる。別の鉱物油を加えて、製剤の粘度を調整することができる。
【0078】
本明細書に記載の方法において、有効成分の好適な投与量は、通常、約0.01~約50mg/kg、例えば、1日あたり約0.25~約15mg/kg、例えば1日あたり約2.0~約14mg/kgである。この範囲内で、各有効成分の投与量は、1回の投与形態で、約0.25~3.5mg/kg、0.25~14mg/kg、1.0~10mg/kg、1.5~10mg/kg、2.0~10mg/kg、2.5~8.0mg/kg、2.5~8mg/kg、2.5~7.0mg/kg、2.5~6.5mg/kg、2.5~6.0mg/kg、2.5~5.5mg/kg、2.5~5.0mg/kg、2.5~4.0mg/kg、2.5~3.5mg/kg(中間の全ての投与量、例えば2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5mg/kg等を含む)とすることができる。この形態では、組成物は、治療の全過程で1度だけ、1回の適用によって投与される必要があるだけであり、最大100%の根絶で感染症を臨床的に解消する。
【0079】
本開示の製剤は、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の治癒率を達成すると予想される。本製剤を投与された患者は、2~27日で少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%の治癒を示し、ほとんどが7、14、または27日未満で臨床的に治癒し、そして耳から基剤が完全に出て行く。もちろん、基剤成分の割合は、選択したワックスによって異なり、より柔らかいワックスには、より高い割合が必要である場合がある。
【0080】
本明細書で使用する場合、「臨床的治癒率」は、症状の実質的な減少または症状の完全な根絶を指す。実施形態では、感染症は、単回投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27日未満の継続時間内に、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%を超える、または最大100%の有効性で解消される。
【0081】
ほとんどの場合、用量1mlの製剤で十分であると予想される。治療する哺乳動物の種類が変わると体積が変化する可能性があり、当業者は治療ニーズに合わせて容易に量を調整できることに留意されたい。当業者によって容易に理解されるように、本製剤の様々な量を哺乳動物の外耳道に投与することができる。
【0082】
外耳道から感染性および/または炎症性のデブリを創傷清拭した後、外耳の利用可能な全ての空間が満たされるように、上から好適な量の製剤を感染した外耳道に投与することができる。製剤を、使用前にシリンジまたは容器に保存することができ、治療効果を損なうことなく室温で保存することができる。
【0083】
製剤の適用を以下に例示する。まず、耳鼻咽喉科医は患者の耳道内に中空のチューブを注意深く配置する。プランジャーまたは貯蔵ユニットを押すと、治療用製剤は、耳道内に投与され、その中に留まることができる。実施形態では、チューブは柔軟性があり、丸い先端を備えるので、医師は治療用製剤を適用する場合に起こり得る引っかき傷を最小限に抑えることができる。投与された粘稠性の液体は、外耳道内の空間を満たし、それによって外耳道内の二次感染を防ぎながら、その中の感染領域に接触する。
【0084】
製剤の投与後、各患者を検査して、製剤が外耳道内に留まっていることを確認することができる。外耳道(耳甲介)に綿球を設けて排出物を受け止めることもできるが、外耳道を「塞ぐ」試みは行われなかった。フォローアップ検査は、最初の治療から7~14日後に行われ得る。製剤の残留物は14日目に観察され、製剤が14日間外耳道内に留まったことを示すと予想される。症状は通常3日以内に緩和すると予想され、一方、聴力は治療後5~7日以内に正常に戻ると予想される。
【0085】
製剤で使用するのに理想的な抗炎症剤は、デキサメタゾンまたはヒドロコルチゾンである。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本発明の利点および特徴をさらに説明するために提供されているが、それらは、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施例は使用される可能性のあるものの典型であるが、当業者に公知の他の手順、方法、または技術を代わりに使用することができる。
【0087】
実施例I
イヌの外耳炎の治療
この研究は、イヌの外耳炎の治療のための30日間にわたる本発明の耳用製剤の有効性および領域の安全性を評価した。24匹のイヌが二つの研究サイトから本研究に登録され、24匹全てが表Bに記載の製剤で治療された。24匹全てのイヌが安全性評価に含まれ、21匹のイヌが有効性評価に含まれた。
【0088】
本研究に登録された、外耳炎の兆候があるイヌは、クリニックに提供された。0日目に、無傷の鼓膜、異物および耳ダニがいないことを確認するために、聴覚および耳鏡検査を含む身体検査が実施され、紅斑、滲出液、腫れおよび潰瘍に基づいて本研究用の耳に臨床スコアを付けた。本研究に含まれるためには、最小臨床スコアは6以上でなければならない。聴力検査を実施し、細菌培養および真菌(酵母菌)の同定のために耳のスワブを採取し、生理食塩水で耳を洗浄した。イヌは、感染した耳あたり1.0mLのIVPを投与することによって投薬された。両方の耳が感染している場合は、右耳を本研究用の耳と指定した。
【0089】
7日目(+2日)の最初のフォローアップ訪問では、聴覚および耳鏡検査が実施され、耳を評価し、臨床スコアを割り当てた。さらに、観察されたあらゆる有害事象について所有者に質問した。
【0090】
14日目(±2日)の2回目のフォローアップ訪問では、聴覚および耳鏡検査が実施され、耳を評価し、臨床スコアを付けた。さらに、観察された有害事象について所有者に質問した。
【0091】
30日目(+3日)の最終のフォローアップ訪問では、聴覚および耳鏡検査を含む身体検査が実施され、耳を評価し、臨床スコアを割り当てた。聴力検査も実施された。症例が臨床的治癒と見なされるためには、最終訪問時に個々の臨床スコアが悪化することがないことに加えて、最終的な臨床スコアが3以下である必要があった。臨床的治癒が達成されなかった場合は、細菌培養および真菌(酵母菌)の同定のために耳のスワブを採取した。
【0092】
臨床スコアに基づいて、30日目までに13匹のイヌの臨床的治癒が得られ、7日目までに少なくとも9匹が臨床的治癒を示した。表Eおよび表Fに示す製剤の使用により、臨床的治癒の数は増加すると予想される。製剤の投与に直接起因する重篤な有害事象も有害事象も両方共なく、これは、この製剤の安全性を実証する。
【0093】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、このような実施形態は、単なる例として提供されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、実施形態の様々な代替案を任意選択で使用することができる。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】