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特表2022-551518生体外で組織特性を決定するための基準キャンセリングシステム、デバイス、および方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】生体外で組織特性を決定するための基準キャンセリングシステム、デバイス、および方法。
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20221202BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20221202BHJP
   G01L 9/14 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
G01N27/72
G01L7/00 C
G01L9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521517
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 US2020054587
(87)【国際公開番号】W WO2021071954
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,116
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
【住所又は居所原語表記】4545 Roosevelt Way NE, Suite 400, Seattle, Washington 98105 US
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】スニアデッキ,ネイサン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒガシ,タイ
(72)【発明者】
【氏名】モスコウィッツ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミチャウ-カニンガム,ジェブニ
(72)【発明者】
【氏名】ダーリング,ロバート,ブルース
【テーマコード(参考)】
2F055
2G053
【Fターム(参考)】
2F055AA05
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE29
2F055FF49
2F055GG49
2G053AA16
2G053AB01
2G053BA08
2G053BB02
2G053BB18
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB05
2G053CB07
2G053CB12
2G053CB21
(57)【要約】
組織標本の特性を決定するように構成されたデバイスおよび方法が提供される。代表的な組織分析デバイスは、感知モジュールと基準モジュールとを含む。感知モジュールは、第1のポスト上に貼り付けられた組織標本を有するように構成された第1のポストおよび第2のポストと、第1のポストの変位に対応する変位信号を出力するように構成された変位センサとを含む。基準モジュールは、周囲磁場のような基準入力に対応する基準信号を出力するように構成された基準センサを含む。デバイスは、変位信号に基づく変位値、基準信号に基づく基準値、変位値および基準値に基づく基準キャンセルされた変位値、ならびに基準キャンセルされた変位値に基づく組織標本の特徴を決定する命令をさらに含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織標本の特性を決定するための組織分析デバイスであって、
感知モジュール、
基準モジュール、および
非一時的な機械可読記憶媒体を備え、
前記感知モジュールは、
ベース上に配置され、第1のポスト中に配置された磁性材料を有し、第1のポストに取り付けられた前記組織標本を有するように構成された第1のポスト、
前記ベース上に配置され、第2のポストに取り付けられた前記組織標本を有するように構成された前記第2のポスト、および
前記第1のポストの変位に対応する変位信号を出力するように構成された変位センサを備え、
前記基準モジュールは、基準入力に対応する基準信号を出力するように構成され、
前記非一時的な機械可読記憶媒体は、プロセッサによって実行されると当該プロセッサに動作を実行させる論理を記憶し、
前記動作は、
前記変位信号に基づいて変位値を決定するステップ、
前記基準信号に基づいて基準値を決定するステップ、
前記変位値および前記基準値に基づいて、基準キャンセルされた変位値を決定するステップ、ならびに
前記基準キャンセルされた変位値に基づいて前記特性を決定するステップを含む、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記感知モジュールは、第3のポストをさらに備え、
前記第1のポスト、前記第2のポスト、および前記第3のポストは、三角形の構成で配置される、デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記感知モジュールは、第3のポストおよび第4のポストをさらに備え、
前記第1のポスト、前記第2のポスト、前記第3のポストおよび前記第4のポストは、長方形の構成で配置される、デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記感知モジュールは、第3のポスト、第4のポスト、および第5のポストをさらに備え、
前記第1のポスト、前記第2のポスト、前記第3のポスト、前記第4のポスト、および前記第5のポストは、五角形の構成で配置される、デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記基準キャンセルされた変位値を決定するステップは、前記変位値から前記基準値を減算するステップに基づく、デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に線形係数を乗算するステップおよび非線形係数を乗算するステップを含む、デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に前記線形係数を乗算するステップの前に前記変位信号を周波数フィルタリングするステップを含まない、デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記基準値を決定するステップは、前記基準信号に線形係数を乗算するステップを含む、デバイス。
【請求項9】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に線形係数を乗算するステップを含む、デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の組織分析デバイスであって、
前記線形係数は、前記第1のポストの前記変位と前記組織標本によって及ぼされる力との間の相関係数である、デバイス。
【請求項11】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって
前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に第1の線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含み、
前記基準値を決定するステップが、前記基準信号に、前記第1の線形係数とは異なる第2の線形係数を乗算するステップを含み、ならびに
前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に、前記第1の線形係数および前記第2の線形係数とは異なる第3の線形係数を乗算するステップを含む、デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位センサは、前記第1のポストから、第1の距離離れて配置され、
前記基準センサは、前記第1のポストから、より大きい第2の距離離れて配置される、デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の組織分析デバイスであって、
前記第2の距離は、前記基準センサが前記組織標本から任意の信号振幅を感知しないように十分に大きい、デバイス。
【請求項14】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記感知モジュールは、
第2の組織標本に付着されるように構成され、第3のポスト中に配置された第2の磁性材料を有する前記第3のポスト、
前記第2の組織標本に付着されるように構成された第4のポスト、および
前記第3のポストの変位に対応する第2の変位信号を出力するように構成された第2の変位センサをさらに備える、デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の組織分析デバイスであって、
前記基準センサは、前記変位センサおよび前記第2の変位センサから等距離に配置される、デバイス。
【請求項16】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記第1のポストと前記第2のポストが培養皿のウェル内に配置され、前記変位センサがプリント回路基板上の前記第1のポストの真下に配置されている、デバイス。
【請求項17】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位信号は、前記第1のポストの前記変位によって生じる局所磁場の変化に対応し、前記基準信号は、周囲磁場に対応する、デバイス。
【請求項18】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位センサと前記基準センサは、共通の向きを有する、デバイス。
【請求項19】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位センサと前記基準センサは、巨大磁気抵抗(GMR)センサ、フラックスゲート、ホールセンサ、および異方性磁気抵抗磁力計からなる群から選択される同一のセンサタイプである、デバイス。
【請求項20】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記特性は、純粋な力である、デバイス。
【請求項21】
請求項1に記載の組織分析デバイスであって、
前記変位値が、複数の軸における感知磁場に対応する複数の変位値成分を含み、
前記基準値が、前記複数の軸における基準磁場に対応する複数の基準値成分を含み、
前記基準キャンセルされた変位値を決定するステップは、前記複数の変位値成分のうちの少なくとも1つを、前記複数の基準値成分のうちの対応する1つから減算するステップに基づく、デバイス。
【請求項22】
方法であって、
組織標本を第1のポストおよび第2のポストに貼り付けるステップ、
前記第2のポストに対する前記第1のポストの変位を感知するステップ、
前記第2のポストに対する前記第1のポストの前記変位を感知しながら、基準入力を感知するステップ、
前記第2のポストに対する前記第1のポストの前記変位に基づいて変位信号を出力するステップ、
前記基準入力に基づいて基準信号を出力するステップ、
前記変位信号に基づいて変位値を決定するステップ、
前記基準信号に基づいて基準値を決定するステップ、
前記基準値および前記変位値に基づいて、基準キャンセルされた変位値を決定するステップ、ならびに
前記基準キャンセルされた変位値に基づいて前記組織標本の特性を決定するステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に前記線形係数を乗算するステップの前に前記変位信号を周波数フィルタリングするステップを含まない、方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法であって、
前記基準値を決定するステップは、前記基準信号に線形係数を乗算するステップを含む、方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、
前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に線形係数を乗算するステップを含む、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、
前記線形係数は、前記第1のポストの変位と前記組織標本の前記特性との間の相関である、方法。
【請求項28】
請求項22に記載の方法であって、
前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に第1の線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含み、
前記基準値を決定するステップが、前記基準信号に第2の線形係数を乗算するステップを含み、ならびに
前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に第3の線形係数を乗算するステップを含む、方法。
【請求項29】
請求項22記載の方法であって、
前記特性は純粋な力である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2019年10月9日に出願された米国仮出願第62/913,116号の利益を主張するものであり、この全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0003】
政府ライセンス権の記載
この発明は、米国国立科学財団から授与された政府補助金番号661730の下、政府の支援を受けて行われたものである。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
収縮中の組織(例えば、心筋細胞だけでなく、他の組織も)のベースライン強度、および、この収縮の強度に関して組織に既知の効果、未知の効果、および/または期待される効果を有する適用処理後のこれらの同じ組織、ならびに、収縮の機能に関する他の特性を測定することが望ましい。収縮の機能に関する他の特性とは、純粋な定常力、相対力、ストレイン、周波数、所与の刺激に対する収縮の持続時間、所与の刺激に対する組織の時間応答などを含むがこれらに限定されない。このような測定により、医師や研究者は組織の成熟や生存率を評価することができ、これによって修復の成功の可能性を高めることができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、生体組織および/または細胞を培養および分析するためのデバイスおよび方法に関する。このような組織および細胞には、筋肉組織(例えば、人工心臓組織、平滑筋肉組織、および骨格筋肉組織)ならびに非筋肉組織(例えば、靱帯組織および縫合組織)が含まれるが、これらに限定されない。
【0006】
一態様では、本開示は少なくとも1つの生体組織標本の特性(例えば、力、ストレイン)を決定するための組織分析デバイスを提供する。組織分析デバイスは、感知モジュールと基準モジュールを含む。感知モジュールは、ベース上に配置され、第1のポスト中に配置された磁性材料を有し、第1のポストに取り付けられた前記組織標本を有するように構成された第1のポスト、前記ベース上に配置され、第2のポストに取り付けられた前記組織標本を有するように構成された第2のポスト、および前記第1のポストの変位に対応する変位信号を出力するように構成された変位センサを備える。基準モジュールは、基準入力に対応する基準信号を出力するように構成された基準センサを備える。さらに、組織分析デバイスは、プロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに動作を実行させる論理を記憶する非一時的な機械可読記憶媒体を備える。前記動作は、前記変位信号に基づいて変位値を決定するステップ、前記基準信号に基づいて基準値を決定するステップ、前記変位値および前記基準値に基づいて、基準キャンセルされた変位値を決定するステップ、ならびに前記基準キャンセルされた変位値に基づいて前記特性を決定するステップを含む。
【0007】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記感知モジュールは、第3のポストをさらに備え、前記第1のポスト、前記第2のポスト、および前記第3のポストは、三角形の構成で配置される。本明細書に開示された任意の実施形態では、前記感知モジュールは、第3のポストおよび第4のポストをさらに備え、前記第1のポスト、前記第2のポスト、前記第3のポストおよび前記第4のポストは、長方形の構成で配置される。本明細書に開示された任意の実施形態では、前記感知モジュールは、第3のポスト、第4のポスト、および第5のポストをさらに備え、前記第1のポスト、前記第2のポスト、前記第3のポスト、前記第4のポスト、および前記第5のポストは、五角形の構成で配置される。
【0008】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記基準キャンセルされた変位値を決定するステップは、前記変位値から前記基準値を減算するステップに基づく。
【0009】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に線形係数を乗算するステップおよび非線形係数を乗算するステップを含む。
【0010】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に前記線形係数を乗算するステップの前に変位信号を周波数フィルタリングするステップを含まない。
【0011】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記基準値を決定するステップは、前記基準信号に線形係数を乗算するステップを含む。
【0012】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に線形係数を乗算するステップを含む。
【0013】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記線形係数は、前記第1のポストの前記変位と前記組織標本によって及ぼされる力との間の相関係数である。
【0014】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に第1の線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含み、前記基準値を決定するステップが、前記基準信号に、前記第1の線形係数とは異なる第2の線形係数を乗算するステップを含み、ならびに、前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に、前記第1の線形係数および前記第2の線形係数とは異なる第3の線形係数を乗算するステップを含む。
【0015】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位センサは、前記第1のポストから、第1の距離離れて配置され、前記基準センサは、前記第1のポストから、より大きい第2の距離離れて配置される。本明細書に開示された任意の実施形態では、前記第2の距離は、前記基準センサが前記組織標本から任意の信号振幅を感知しないように十分に大きい。
【0016】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記感知モジュールは、第2の組織標本に付着されるように構成され、第3のポスト中に配置された第2の磁性材料を有する前記第3のポスト、前記第2の組織標本に付着されるように構成された第4のポスト、および前記第3のポストの変位に対応する第2の変位信号を出力するように構成された第2の変位センサをさらに備える。本明細書に開示された任意の実施形態では、前記基準センサは、前記変位センサおよび前記第2の変位センサから等距離に配置される。
【0017】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記第1のポストと前記第2のポストが培養皿のウェル内に配置され、前記変位センサがプリント回路基板上の前記第1のポストの真下に配置されている。
【0018】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位信号は、前記第1のポストの前記変位によって生じる局所磁場の変化に対応し、前記基準信号は、周囲磁場に対応する。
【0019】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位センサと前記基準センサは、共通の向きを有する。
【0020】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位センサと前記基準センサは、巨大磁気抵抗(GMR)センサ、フラックスゲート、ホールセンサ、および異方性磁気抵抗磁力計からなる群から選択される同一のセンサタイプである。
【0021】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記特性は、純粋な力である。
【0022】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値が、複数の軸における感知磁場に対応する複数の変位値成分を含み、前記基準値が、前記複数の軸における基準磁場に対応する複数の基準値成分を含み、前記基準キャンセルされた変位値を決定するステップは、前記複数の変位値成分のうちの少なくとも1つを、前記複数の基準値成分のうちの対応する1つから減算するステップに基づく。
【0023】
別の態様では、本開示は方法、例えば、組織標本の特性を決定する方法を提供する。方法は、組織標本を第1のポストおよび第2のポストに貼り付けるステップ、前記第2のポストに対する前記第1のポストの変位を感知するステップ、前記第2のポストに対する前記第1のポストの前記変位を感知しながら、基準入力を感知するステップ、前記第2のポストに対する前記第1のポストの変位に基づいて変位信号を出力するステップ、前記基準入力に基づいて基準信号を出力するステップ、前記変位信号に基づいて変位値を決定するステップ、前記基準信号に基づいて基準値を決定するステップ、前記基準値および前記変位値に基づいて、基準キャンセルされた変位値を決定するステップ、ならびに前記基準キャンセルされた変位値に基づいて前記組織標本の特性を決定するステップを含む。
【0024】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップは、前記変位信号に線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含む。
【0025】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に前記線形係数を乗算するステップの前に前記変位信号を周波数フィルタリングするステップを含まない。
【0026】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記基準値を決定するステップは、前記基準信号に線形係数を乗算するステップを含む。
【0027】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に線形係数を乗算するステップを含む。
【0028】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記線形係数は、前記第1のポストの変位と前記組織標本の前記特性との間の相関である。
【0029】
本明細書に開示された任意の実施形態では、前記変位値を決定するステップが、前記変位信号に第1の線形係数を乗算するステップ、および非線形係数を乗算するステップを含み、前記基準値を決定するステップが、前記基準信号に第2の線形係数を乗算するステップを含み、ならびに前記特性を決定するステップは、前記基準キャンセルされた変位値に第3の線形係数を乗算するステップを含む。
【0030】
本概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに記載される概念の選択を簡略化して紹介するために提供される。本概要は、クレームされた主題の主要な特徴を特定することを意図したものではなく、また、クレームされた主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の上述の態様および付随する利点の多くは、添付の図面と併せ、以下の発明を実施するための形態を参照することにより、よりよく理解できるようになり、また、より容易に理解されるであろう。
【0032】
図1図1は、組織標本の特性を磁気的に検出するように構成された組織分析デバイスの側面図を示す。
【0033】
図2図2は、組織標本の変位に伴う磁場の変化を検出するための回路を示す。
【0034】
図3図3は、組織標本の前負荷と後負荷をシミュレートするために使用される外部磁石を含む、図1の例示的なデバイスを示す。
【0035】
図4図4Aは、外部磁石で前負荷の力と後負荷の力を経時的に変化させたグラフを示す。図4Bは、組織標本の長さ-力のグラフを示す。図4Cは、心臓組織における前負荷時および/または後負荷時の圧力の変化を表す心臓の圧力-容積(PV)ループを示すグラフである。
【0036】
図5図5は、本開示に記載の様々なデバイスにおける心臓組織の拍動に起因する、変化するポスト位置とこの結果生じる電圧を示すグラフである。
【0037】
図6図6は、組織標本によって及ぼされる力を磁気的に決定する代表的な方法を示す。
【0038】
図7図7は、本明細書に記載された様々な方法を行うように構成された例示的なコンピューティングデバイスを示す。
【0039】
図8図8は、本開示の一実施形態に係る基準キャンセリング組織分析デバイスを示す。
【0040】
図9図9A~9Eは、本開示の組織分析デバイスの一態様の種々の構成を示す。
【0041】
図10図10は、本開示の組織分析デバイスの別の態様の1つの代表的な構成を示す。
【0042】
図11図11は、本開示に係る組織分析デバイス用の代表的な回路を示す。
【0043】
図12図12は、本開示に係る組織分析デバイスのプリント回路基板の代表的なレイアウトを示す。
【0044】
図13A
図13B図13Aおよび図13Bは、本開示に係る組織分析デバイスの態様を示す。
【0045】
図14図14は、本開示に係る組織標本の特性を決定するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の説明において、本開示のいくつかの実施形態を図示する添付の図面を参照する。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、システムまたはプロセスの変更がなされてもよいことが理解されよう。以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されるものではなく、本発明の実施形態の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0047】
本開示の様々な実施形態は、筋肉組織標本および非筋肉組織標本を含む生体組織標本(以下、「組織標本」という)の力および他の特性(例えば、ストレインおよび負荷)を磁気的に検出し決定するための改良されたシステムおよび方法を提供する。代表的な筋肉組織としては、心臓細胞(心筋細胞など)、骨格筋、平滑筋などがある。代表的な非筋肉組織としては、靭帯組織、縫合組織(suture tissue)などがある。理解を容易にするために、本開示では、時折、心筋細胞の文脈でデバイスおよび方法を説明するが、当業者は、本明細書に記載のデバイスおよび方法が心筋細胞に限定されず、少なくとも上記の他の組織に適用できることを理解するであろう。
【0048】
本開示の実施形態は、組織標本の特性の決定および分析におけるSN比を改善する。さらに、これらの実施形態は、例えば、組織標本を分析する光学的方法と比較して、組織特性の決定のためのデータストレージ要件を低減する。本明細書に記載される技術は、再現可能で、正確で、かつ精密な結果をもたらすことができる。本明細書で使用される場合、「心臓組織」および/または「心筋組織」は、単一の心筋細胞および/または複数の心筋細胞が融着して1つの組織を形成しているものを指す場合がある。以下の発明を実施するための形態において、これらの用語は、時に互換的に使用されることがある。
【0049】
本開示の実施形態は、組織標本を培養し、高分子マイクロポスト(polymeric microposts)(本明細書では「ポスト」と呼ぶ)に貼り付けることができるように構成されている。組織標本の特性(例えば、力応答)を分析することにより、組織標本が曝される様々な試薬および治療の影響に関する情報、ならびに組織標本の発生および成熟に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、心筋細胞からなる小組織を培養し、マイクロポスト間に(例えば、接着剤で)貼り付けることができる。組織標本は、繊維マトリックス内に播種されてもよい。いくつかの実施形態では、繊維マトリックスは、コラーゲン、フィブリン、マトリゲル、シリコーン、および/または他の高分子物質を含んでもよい。心臓組織が貼り付けられるマイクロポストの少なくともいくつかは、可撓性を有するように設計されてもよい。様々な実施形態において、マイクロポストに所望の可撓性または剛性を与えるために、マイクロポストの直径、長さ、または材料を選択することができる。心臓組織は、心筋組織の収縮時に可撓性マイクロポストを曲げるのに有効となり得る。
【0050】
本開示では、マイクロポストは、「ポスト」と呼ばれることがある。さらに、場合によっては、本明細書に記載されるポストは、多種多様な寸法を有することができる。このため、用語「ポスト」と共に使用される接頭辞「マイクロ」は、本開示によって企図されるすべての可能なポストおよび意図されたポストを説明するものではない。以下でさらに詳細に説明するように、組織標本によって発生する力は、ポストが変位する(例えば、曲がるかまたは偏る)量に基づいて決定されることができる。
【0051】
組織標本を播種し、このような組織標本(例えば、人工心臓組織)から特性を決定する以前の試みは、様々な障害に遭遇してきた。例えば、心臓組織が貼り付けられたマイクロポストの動きをモニタリングするために、高度な画像分析が使用される場合がある。心臓組織が及ぼす力を、この動きに基づいて決定することができる。しかし、心臓組織の力を経時的にモニタリングするためには、専用の顕微鏡と非常に複雑なコンピュータビジョン技術が必要である。光学データを処理し格納するためのコンピュータ処理要件およびデータストレージ要件は、特に本明細書に記載の技術と比較して、比較的高い。さらに、単一の24ウェルプレートを超える拡張は、追加の顕微鏡ならびに/または力測定の各ポイントのためのかなりのセットアップおよびティアダウンタイムを必要とする。このため、このような技術を用いた大規模な並行研究は、法外に高価であり、および/または時間がかかる可能性がある。人工心筋細胞組織の力発生をモニタリングする他のいくつかの方法は、破壊的な方法を必要とするか、または単に電気生理的にモニタリングするにすぎず心臓組織の実際の力が発生しないものである。
【0052】
図1は、本開示の様々な実施形態にしたがって、組織の力および他の特性を磁気的に検出するために用いることができる組織分析デバイス100の側面図を示している。デバイス100は、ベース102と複数のポスト(例えばポスト104およびポスト106)とを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポスト104および/またはポスト106は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーを含んでもよい。様々な実施形態において、PDMSポリマーは、4部品アクリルモールドまたは別のモールドから形成されてもよい。様々な実施形態では、ベース102は生体適合性マトリックス材料(コラーゲン、フィブリン、マトリゲル、および/またはマイクロポストを結合および/または貼り付けるための他の任意の適当な材料など)で構成されてもよい。図1には2つのポスト104および106が描かれているが、本開示の様々な実施形態にしたがって、任意の数のポストを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態は、第3のポストを含み、第1のポスト、第2のポスト、および第3のポストは、三角形の構成で配置される。いくつかの実施形態は、第3のポストおよび第4のポストを含み、第1のポスト、第2のポスト、第3のポスト、および第4のポストは、長方形の構成で配置される。いくつかの実施形態は、第3のポスト、第4のポスト、および第5のポストを含み、第1のポスト、第2のポスト、第3のポスト、第4のポスト、および第5のポストは、五角形の構成で配置される。このような実施形態は代表的なものであり、限定的なものではない。
【0053】
いくつかの実施形態では、ポスト104とポスト106などの隣接するポストの間には4mm~20mmのギャップがある。いくつかのさらなる実施形態では、ポスト104とポスト106は、約5mm~24mmの長さ、および0.5mm~3mmの直径とできる。
【0054】
他の実施形態では、ポストは、所望の実装によって、先に述べた範囲に対して、より長くてもより短くてもよく、および、より大きなまたはより小さな直径を有してもよい。同様に、ポスト間のギャップは、所望の実装に応じて、場合によっては、4ミリメートルより小さくてもよい。以下でさらに詳細に説明するように、ポストの寸法は、ポストに剛性および/または可撓性を与えるために選択されてもよい。いくつかの実施形態では、アレイ状に配置されたポストは、例えば24ウェルプレートなどのマルチウェルプレートに挿入するために間隔を空けて配置されてもよい。様々な実施形態において、ポストのアレイにおけるポストの各対(ポスト104およびポスト106など)は、ポストの各対がマルチウェルプレートの各ウェルと対応し、かつウェルの中に適合できるように、適切に間隔を空けて配置されてもよい。
【0055】
ベース102は、剛性または可撓性とできる。また、ベース102は、ベース102の対のポスト(例えば、ポスト104およびポスト106)の先端部110がベース102を反転させることによってプレートの個々のウェルに適合するように、24ウェルプレートまたは他の数のウェルプレートとインターフェースで接続されるように設計されてもよい。組織標本116を培養し、心臓組織が2つのポストの「間」で成長するように、当該組織標本116をポスト104、106の先端部110に(例えば、接着剤で)貼り付けることができる。例えば、図1に描かれた組織標本116を、ポスト104および106に付着させ、2つのポストの間で成長させることができる。いくつかの実施形態では、組織標本116を、個々のウェル内で培養することができる。様々な他の実施形態では、以下にさらに詳細に説明するように、ポスト104、106の先端部110が挿入されるマルチウェルプレートのウェルは、栄養素および/または治療剤を含む溶液を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポスト104、106に付着した心臓組織は、薬剤に対する心臓組織の応答を測定することによって治療剤の有効性を試験するために、治療剤にさらされてもよい。
【0056】
ポスト104および106の第1の端(近位端)は、ベース102に結合され、ポスト104および106の第2の端(遠位端)は、先端部110を備えることができる。いくつかの実施形態では、先端部110は、組織付着を促進するためにポストの残りの部分に対して不均一であってもよいが、他の様々な実施形態では、先端部110は、所望の実装によって、ポストに対して比較的均一であってもよい。様々な実施形態において、ポストは、高分子材料を含み、直径が約2ミリメートル未満とできる。ポスト104は、ポスト104に貼り付けられた心臓組織の収縮に応じて、ポスト104の先端部110を静止位置から離れて偏らせ得るように、十分に可撓性があってよい。例えば、組織標本116は、ポスト104の先端部110またはこの近傍でポスト104に貼り付けされることができる。また、組織標本116は、ポスト106、もしくは別のポストおよび/または物体に貼り付けされることができる。心臓組織の自発的な拍動により組織標本116が収縮すると、この収縮の力により、ポスト104が静止位置から第2の位置(偏った位置)まで曲がるか、または偏向する。図1において、ポスト104は、垂直な静止位置から離れて曲げられた偏った位置に示されている。
【0057】
ポスト106は、組織標本116の収縮に応答して、垂直な静止位置からポスト106の偏りまたは他の動きを防止および/または制限するために、ポスト106に剛性を付与する剛性インサート108を含んでもよい。剛性インサート108は、組織標本116の収縮中のポスト106の偏りを防止および/または低減するのに十分な剛性を有するシリコーンガラス、金属、プラスチックおよび/または任意の他の材料を含んでもよい。
【0058】
いくつかの他の実施形態では、ポスト106は、剛性インサートを含まない場合があり、したがって、ベース102に貼り付けられる他のポストと同様の可撓性を示す場合がある。さらに他の実施形態では、様々なポストに所望の水準の可撓性を付与するために、ポストの直径および/または長さを変更することができる。例えば、あるポストはより可撓性があり、他のポストはより可撓性がないことが望まれる場合、ポストの長さに沿ってより大きな可撓性を付与するために、いくつかのポストは、より小さな直径および/またはより大きな長さで形成されてもよい。同様に、他のポストは、剛性を付与/可撓性を制限するために、より大きな直径および/またはより短い長さで形成されてもよい。さらに、本明細書の記載では、円筒形状のポストについて言及しているが、代わりに、ポストは、他の形状で形成されてもよい。例えば、ポストは、平行六面体形状または他の多角形状に形成されることができる。
【0059】
図1に描かれているように、ポスト104は、ポスト内に埋め込むかまたは他の方法でポストに結合したネオジム磁石および/または別の磁石のような磁性材料112を備えることができる。いくつかの実施形態では、ポスト104の先端部110を、磁性材料112の埋め込みによるポスト104の引き裂きを防止するように構成することができる。様々なさらなる実施形態では、磁性材料は、2mmより小さくてもよい。様々な実施形態において、ポスト104が偏ったときに、ポスト104の偏りによって磁石が第1の位置から第2の位置に適宜変位するように、磁性材料112はポスト104の先端部またはこの近傍に配置されることができる。
【0060】
磁性材料112は、磁場114を発生させる。ポスト104の偏りは、磁性材料112を、磁性材料112の元の位置に対して変位させ、および/または回転させることができる。したがって、磁性材料112に関連する磁場114は、同様に、磁性材料112の並進および/または回転に起因して並進および/または回転することができる。
【0061】
ポスト104に近接して配置された変位センサ120(例えば、磁力計)は、組織標本116の拍動に伴って磁性材料112および磁場114が変位センサ120に近づいたり遠ざかったりすることによって、検出磁場の強度の変化を検出することができる。変位センサ120は、ポスト104およびポスト106の位置に対して様々な位置に配置されることができる。変位センサ120は、磁性材料112の第1の位置から第2の位置への偏りによる磁場の変化を検出できるように位置付けられてもよい。様々な実施形態において、変位センサ120は、ポスト104から0.1mm~10mm以内に位置してもよい。いくつかの他の実施形態では、変位センサ120は、ポスト104から11~30ミリメートルに位置していてもよい。様々な他の実施形態では、変位センサ120は、磁力計の種類および/または使用される磁性材料の種類に応じて、ポスト104により近くにまたはポスト104からさらに遠くに位置していてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、変位センサ120によって検出される磁場強度の変化は、マイクロテスラのオーダーとでき、ポスト104および106が配置されるウェル内の局所領域のみに影響を及ぼすことができる。したがって、組織標本116の拍動に関連する磁場変化は、他のポストに付着した、および/またはマルチウェルプレートの他のウェル内に配置された心臓組織の拍動に関連する磁場変化と区別することができる。
【0063】
様々な実施形態において、変位センサ120は、巨大磁気抵抗(GMR)センサ、フラックスゲート、ホールセンサ、異方性磁気抵抗磁力計、または類似の磁力計である。実施形態は、本明細書では一般にGMRセンサの文脈で記載されるが、これは代表的なものであり、限定的なものではない。いくつかの実施形態では、変位センサ120のアレイは、1つ1つの磁力計がマルチウェルプレートの各ウェルに関連付けられるように配置されてもよい。したがって、マルチウェルプレートの各ウェルに配置された心臓組織に関連する磁場強度の変化を検出し、他のウェルと区別することができる。磁場強度の変化は、出力変位信号122をもたらす。変位信号122は、変位センサ120からの出力電圧を含むことができる。
【0064】
様々な実施形態において、磁力計および/または磁力計のアレイは、変位信号122をフィルタリング、増幅、および/または基準キャンセリングするための他の回路と共にプリント回路基板上に配置されることができる。変位センサ120がGMRベースの磁気センサであるいくつかの実施形態では、変位センサ120は、GMRセンサによって検出される磁場が増加するときに変位信号122の電圧の減少をもたらすホイートストーンブリッジ構成に配置された抵抗を含んでもよい。GMRセンサのホイートストーンブリッジからの各測定値は、GMRセンサに対するポスト104の変位に対応する変位信号122として出力されることができる。変位信号は、電圧、電流、デジタル信号、または他の信号とできる。本明細書では、変位信号を電圧信号として説明するが、これは代表的なものであり、限定的なものではない。
【0065】
いくつかの実施形態では、変位信号122は、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、および/または基準キャンセリング回路に出力され、1つまたは複数の演算増幅器および/または計装増幅器を用いて増幅される。例えば、変位センサ120、フィルタ130(図2ではハイパスフィルタ)、および計装増幅器220を含む回路の一例を描いた図2を参照されたい。本明細書に記載されるいくつかの実施形態、例えば、いくつかの基準キャンセリングの実施形態は、このような周波数フィルトレーションを含まない。
【0066】
フィルタ130からの出力電圧を、データ取得システムによって検出することができ、以下でさらに詳細に議論するように、組織標本116の拍動に関連する力を決定するために使用することができる。図2に示される例示的な回路ではハイパスフィルタが描かれているが、いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載される様々な実施形態にしたがって、取り込まれてデータ取得システムに渡される所望の周波数に応じて、ローパスフィルタおよび/またはバンドパスフィルタが使用されてもよい。本明細書に記載されるさらに他の実施形態では、変位信号122に表されるすべての周波数を保持するために、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、および/またはハイパスフィルタの代わりに、基準キャンセリング回路が利用される。さらに他の実施形態では、基準キャンセリング回路は、1つまたは複数のローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、および/またはハイパスフィルタに加えて利用される。
【0067】
変位センサ120は、調整回路を含むプリント回路基板にはんだ付けされてもよい。いくつかの実施形態では、変位センサ120は、ホイートストーンブリッジ構成を備えてもよく、システムの長期ドリフトを低減するためにハイパスフィルタにルーティングされてもよい。図2に描かれたハイパスフィルタ130のようなフィルタは、低周波周囲ノイズを排除しながら心臓組織収縮周波数を通過させるカットオフ周波数を有するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、ハイパスフィルタ130は、約0.01~0.3Hzのカットオフ周波数を有していてもよい。様々な他の実施形態では、ハイパスフィルタ130は、約0.1~0.25Hzのカットオフ周波数を有してもよい。さらに他の実施形態では、ハイパスフィルタ130は、約0.16Hz~0.5Hzのカットオフ周波数を有していてもよい。様々な周波数範囲が例示の目的で提供されているが、本開示にしたがって、他の範囲のカットオフ周波数が使用されてもよい。心臓組織の律動的な拍動の周波数の識別は、いくつかの実施形態では、ハイパスフィルタのカットオフ周波数の上限として役立つが、心臓組織の平均よりも遅い拍動からのデータ損失を回避するために、しばしば、より低いカットオフ周波数が使用される。さらに、心臓組織の拍動に関連する周波数より、低いおよび/または高い周波数をフィルタリングするために、様々な実装においてバンドパスフィルタおよび/またはローパスフィルタが使用されてもよい。フィルタ130は、温度変動に起因する、および/またはデバイス100が位置する環境の周囲磁場に起因する、検出信号のドリフトを相殺するのに有効であり得る。本開示の実施形態、例えば以下に説明するいくつかの基準キャンセリングの実施形態は、組織標本の特性に相関する周波数を保持する利点のために、このようなローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、および/またはバンドパスフィルタを除外する。
【0068】
フィルタ130からの信号は、データ取得システムを通る前に、図2に描かれた計装増幅器220などの計装増幅器を通してルーティングされてもよい。データ取得システムは、心臓組織の収縮および力の周波数をモニタリングおよび記録するのに有効であり得る。さらに、データ取得システムは、治療剤および/または栄養素などの流体の添加のタイミングを記録することができる。データ取得システムは、図1に描かれたフィルタ130から受信したデータを格納するのに有効な1つまたは複数の処理要素および/または1つまたは複数のメモリを含んでもよい。
【0069】
本開示の実施形態は、上述した回路の一部または全部を利用して、すなわち、追加の実施形態を形成することができる。
【0070】
磁気モデル
以下の実施形態は、心筋力を磁気的に検出するためのシステムを検証するために使用される実験方法を説明する。特定のデータおよび器具が以下の議論において説明されるが、他の器具(例えば、磁石、フィルタ、材料)が本開示にしたがって使用されてもよく、このような他の器具は、例示の目的で、以下で議論される値とは異なる値をもたらす可能性がある。
【0071】
システムのモデルは、埋め込まれた磁性材料112を点双極子として扱うことによって、Matlab(任意の適当なプログラミング言語を使用してもよい)で開発された。磁性材料112と変位センサ120との間の距離が磁性材料112のサイズよりもはるかに大きいため、点双極子は磁性材料112の公正な近似とできる。いくつかの実施形態では、1mmのネオジム磁石の双極子強度は、M=7.5e+1.5eγ+1.5emAmの双極子強度を有することができる。センサの最適な位置および隣接するポストの影響を判断するために、センサの平面上のアレイについて漂遊磁場のx成分を決定した。投影は、点双極子の磁場に基づいて決定された。ここで、mは上述の磁気モーメント、Bは磁場変化、およびrは磁石の現在の位置からセンサの平面上の位置までの距離である。いくつかの実施形態では、センサは、垂直方向において磁石から少なくとも10mm離れている。様々な実施形態において、ポスト104に対する変位センサ120の最適な位置は、変位センサ120をポスト104の1~5mm前方に位置づけること含む場合がある。
【0072】
システム上でキャリブレーションが行われた後、組織の力を決定するために磁場変化Bを使用することができる。心臓組織が可撓性ポスト104に及ぼす力は、可撓性ポスト104の硬さおよび寸法によって決定される、可撓性ポスト104の先端部110が移動する距離に比例する。可撓性ポスト104の先端部110が動く距離は、変位センサ120におけるBに変化を生じさせ、次いで、変位センサ120はコンピューティングデバイスで読み取られる変位信号(すなわち、電圧)に差異を生じさせる。キャリブレーションを、ポストの先端部を手動で指定距離動かし(したがって、既知の力を発生させ)、システム内の対応する電圧変化をモニタリングすることによって実行することができる。電圧の変化はB(磁場変化)に起因する。
【0073】
変位センサ120は、ポストが300μmまで偏ったときに、隣接する変位センサ120が測定可能な信号を有しないように、アレイ状に間隔を空けて配置されてもよい。地球に対する向きは、センサの応答をわずかに変えることがわかったが、これは、地球の磁場がポストの漂遊磁場に対して配向している間のセンサの線形範囲から離れる動きによると思われる。センサは複数の方向で電圧-位置の線形応答を示したが、感度はわずかに異なっていた。
【0074】
周波数と力のプロット
代表的なシステムのテストでは、6つのセンサからの電圧出力により、24ウェルプレートの1列目のポストの活動力の発生を同時に追跡した。データはLabViewを使用して記録され、実験中にリアルタイムで画面に表示された。すべての実験でポストホック解析を行い、時間経過に伴うパルスの周波数と振幅を評価した。データは、カットオフ周波数7Hzの8次バターワースフィルタを用いて、測定ノイズを除去するためにローパスフィルタでフィルタリングされた。ピーク間振幅を記録し、データから平均値を除去した。α=0.0001の指数移動平均フィルタを用いて、データの平均を除去し、アナログハイパスフィルタで除去できなかったシステムの任意の低周波ドリフトを考慮した。
【0075】
データをフィルタリングした後、カスタムピーク発見プログラムにより、最小振幅が7mV、または典型的なベースライン動作が約5~10%のデータの最大値と最小値を発見した。周波数は、最大値間の時間に基づいて決定された。瞬間的な振幅は、最大値と最小値が2秒以内である限り、隣接する最小値から最大値を減算することによって決定された。次いで、解析のためにデータをグループ化(30秒ずつグループ化)した。周波数と振幅の平均は、実験終了の180秒まで、30秒ごとに平均化された。流体添加中のポストのわずかな調整によるエラーを減らすため、各流体添加時点の前後4秒のウィンドウを、周波数と振幅の両方の測定値の平均から除去した。
【0076】
薬理学的阻害剤
本開示の実施形態では、ポストに貼り付けされ、マルチウェルプレートのウェル内に配置された組織標本は、治療剤にさらされてもよい。例えば、ベラパミル塩酸塩(CAS 152-11-4、Tocris Bioscience、Bristol、UK)およびイソプロテレノール塩酸塩(CAS 5984-95-2、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を使用して阻害実験を行うことができる。心臓組織は、関連する薬剤と脱イオン水との混合物で処理されてもよい。治療剤は、最終濃度に基づいて、適切な希釈に濾過され、分配されてもよい。いくつかの実験例では、いくつかのウェルは、治療剤を含まないコントロールとして機能してもよい。
【0077】
図3は、本開示の実施形態にしたがって、心臓組織における前負荷および後負荷をシミュレートするために使用される外部磁石330を含む、図1の例示的なデバイスを示す図である。外部磁場は、外部磁石330を介してデバイス100のポスト104および106に加えられてもよい。いくつかの実施形態では、外部磁石330は永久磁石を含むことができ、一方、他の実施形態では、外部磁石330は、磁性材料112に作用してポスト104および/または106に貼り付けされた組織標本116に対して引っ張る磁力を付与するために電磁コイル340を含んでもよい。いくつかの実施形態では、外部磁石330は、ポスト104および/またはポスト106に隣接して配置されてもよい。外部磁石330は、磁性材料112を第1の力で引き付け、これによってポスト104の遠位端部を変位させるのに有効であり得る。
【0078】
拡張期中に組織標本116が弛緩すると、ポスト(例えば、可撓性ポスト104)の復元力によって、心筋の弾性反跳(elastic recoil)のように組織標本116が伸張する。しかし、磁力が加えられると、組織標本116は、拡張期充満時の心室拡張と同様に、さらに伸張する(「前負荷」と称することもある)。したがって、前負荷をシミュレートするために、組織標本116を、心周期の拡張期中および/または拡張期直後に第1の量だけ伸ばして組織標本116に負荷を与えてもよい。例えば、組織標本116が付着した可撓性ポスト104は、磁性材料112を引きつける外部磁石330の磁力によって、静止位置350から位置352に引っ張ることができる。
【0079】
組織標本116が電気刺激で強制的に収縮を開始し、同時に外部磁石330からの磁力の増加が加わると、収縮期の血圧による抵抗に類似した収縮に対する抵抗が増加する(「後負荷」と呼ばれることもある)。前負荷と後負荷の増加は、例えば、組織標本116の心周期中の様々な時点で電磁コイル340を流れる電流を制御したり、外部磁石330と磁性材料112との間の距離を変化させたりすることにより、独立的かつ複雑なパターンで行われることができる(例えば、図4A)。
【0080】
このパターンを用いて、心臓組織の長さ-力(例えば、図4B)を、前負荷および/または後負荷の増加に対する心臓の圧力-容積(PV)ループ(例えば、図4C)と比較することが可能である。したがって、静脈還流の増加を模倣して前負荷を徐々に増加させ、発生中の血圧の上昇を模倣して後負荷を徐々に増加させ、これらの負荷条件を変化させて心不全または高血圧のPVループを模倣することができる。様々な実施形態において、電磁コイル340に供給する電流の量を変化させることによって、磁性材料112に加えられる磁力の量を調節することができる。
【0081】
磁気センサ
様々な実施形態では、ポストの偏りを追跡するために高速光学顕微鏡法を使用できるが、このようなアプローチは、一度に1つのサンプル/1つのウェルというように、スループットが低い場合がある。さらに、光学技術は、大量の処理リソースおよびデータストレージならびに高価な光学機器を必要とする場合がある。さらに、画像解析アルゴリズムは煩雑であり、結果の正確性を確保するためにユーザ入力を必要とする。
【0082】
したがって、本明細書に記載される磁気的アプローチは、巨大磁気抵抗(GMR)センサおよび/または他の磁力計(例えば、図1に描かれる変位センサ120)を用いてポストの偏りを記録するために使用されることができる。GMRセンサおよび/または他の磁力計のアレイを、信号処理のための基準キャンセリング回路および計装増幅器と共に使用することで、複数のマルチウェルプレートの並列処理が可能になる。組織標本116が可撓性ポスト(例えば、図1のポスト104)を引っ張ると、この動きによってネオジム磁石または他の磁性材料112が回転および並進し、これによってGMRセンサにおける磁場の強度が変化する。磁場の変化は非常に小さく(マイクロテスラ)、このウェル内の局所領域のみに影響を与え、他のウェルには影響を与えない。
【0083】
磁場変化は、センサからの電圧出力の変化をもたらし、これを、光学顕微鏡法を用いて検出されたポストの偏り、および対応する収縮力(図5参照)に対応するようにキャリブレーションすることができる。電圧信号を使用して、組織標本116によって及ぼされる力を決定することができる。したがって、強力な処理と大量のデータストレージを必要とせずに、心筋組織の収縮のリアルタイム分析が可能である。様々な実施形態において、PIOコントローラを、組織標本116の収縮力に応答して前負荷および後負荷を調節するために電磁コイル340(図3)と共に使用することができる。
【0084】
組織標本の成熟に対する前負荷の影響
以下の記述は、本明細書に記載された心筋力を磁気的に検出するためのシステムにおいて、培養された心臓組織への前負荷の影響をシミュレートする実験を説明する。以下に記載する数値は、心臓組織に導入する所望のストレインに応じて、異なる実装では変更することができる。
【0085】
人工心臓組織は、先に述べたように培養することができるが、可撓性ポストにネオジム磁石を組み込むために若干の変更を加えている。簡単に言えば、4x10個のhiPSC-CM(心筋細胞)を、フィブリン足場(fibrin scaffold)中で2x10個の正常ヒト皮膚線維芽細胞(前もって最適化された比率)と混合してもよい。コンストラクトを、組織を形成するために7日間、または自発的な拍動が観察されるまで、平衡化することができる。この時点から、組織は2Hzでペーシングすることができる。この例では、前負荷(周方向)伸張の目標は、妊娠中のヒトLV室の寸法の過去の測定値に基づいている。電気刺激(2Hz)とともに、心臓組織には2週間にわたり1日あたり連続的に2%増加する磁場を加えることができる。これにより、約30%のストレインが生じ、さらに1週間保持することができる。ストレインは、先に説明したように、電磁コイル340(図3)を通して駆動される電流によって生成される印加磁場によって達成され、GMRセンサ(図1に描かれた変位センサ120など)でモニタリングされる。24ウェルフォーマットを用いて、2週間後に0%~40%の範囲の前負荷の伸張を調べるために、前負荷実験を並行して実行することができる。
【0086】
心臓組織を前負荷でコンディショニングした後、コンストラクトを固定し、免疫組織化学的検査用に凍結切片を作製して、この生存と成熟を評価することができる。コンストラクトは、増殖レベルおよびアポトーシスレベル、細胞のサイズおよび伸長、筋原繊維構造(a-アクチニンによるサルコメアスペーシングおよびZバンド幅)、接合部の結合性(junctional integrity)(N-カドヘリン、コネキシン43)、T管形成(カベオリン3)、ミオシン9スイッチング、cTnlおよびssTnlの発現(目的1c.2に記載)、電気成熟(electrical maturation)(KCNJ2)ならびに心室表現型(ventricular phenotype)(MLC2V)により評価することも可能である。レポーター細胞株がアレン脳科学研究所から入手可能になると、前負荷による成熟についてテストすることができる。
【0087】
収縮性能を生体力学的に評価し、伝導速度をCa2イメージング(GCaMP6またはFluo-4を発現するhiPSC-CMs)により評価することができる。力、速度、およびパワーの動態を、記載されるようにコンストラクトについて評価することができる。力-長さ解析は、フランクスターリング曲線(収縮末期エラスタンス)および受動的な硬さ(拡張末期エラスタンス)を得るために力を測定しながら磁気的に誘発されたストレインをコンストラクトに適用して原位置で実施することができる。また、0.5Hz~3Hzの電気ペーシング(力-Hz応答)を使用して、収縮性とキネティクスの周波数依存利得を評価することもできる。
【0088】
組織標本の成熟に対する後負荷の影響
以下の説明は、本明細書に記載された心筋力を磁気的に検出するためのシステムにおいて、培養された心臓組織への後負荷の影響をシミュレートする実験を説明する。以下に説明する値は、心臓組織に導入する所望のストレインに応じて、異なる実装では変更することができる。
【0089】
収縮期の周方向の張力(後負荷)を、妊娠中のLV寸法と収縮期血圧の公表データを用い、Lameの式を用いた解析により、ヒト胎児の左室壁筋繊維で推定することが可能である。このような解析により、後負荷は10週~40週の間に2.3kPa~8.2kPaまで直線的に増加することが明らかとなる。したがって、初期の実験では、このダイナミックレンジを再現するように後負荷をチューニングすることができる。PlD制御を使用して、後負荷が過剰に駆動されないようにし、心臓組織の収縮を防止することができる。
【0090】
前負荷や後負荷をかけずにポスト上で培養した心臓組織は、3週間後には最大500μNの活動力で収縮することができる。これは、2.5kPaの縦応力(0.2mmの平均組織断面値を使用)に変換され、10週間後の後負荷による張力と同等の大きさである。この手順は、ゼロ後負荷で開始し、2週間かけて1日当たり120μNの割合で徐々に増加させることができる。この結果、約1650μNになり、さらに1週間保持することができる。24ウェルフォーマットを使用して、目標値である1650μNの70%未満の力と20%超の力の範囲を調べるために、後負荷実験を並行して行うことができる。コンストラクトの生存および成熟を、上記のように評価することができる。また、機能評価を、伝導速度、単収縮力、速度、パワー、力-長さ応答、力-周波数応答、組織弾性についても実施することができる。
【0091】
前負荷と後負荷を組み合わせたクリープ(creep)のためのバイオリアクター
前負荷と後負荷のいずれも胎児の発育中に絶えず変化するので(すなわちクリープ)、心肥大を促進する圧力-容積ループに似た力-長さループを生み出す前負荷と後負荷を組み合わせて適用することができる(図4C)。24ウェルプレートを用いて、2つのマイクロポスト間に配置された各心臓組織に、異なる比率の前負荷および後負荷を与えることができる。前負荷の伸張は2%ずつ徐々に増加させ、後負荷の張力は2週間かけて1日あたり120μNずつ増加させることができる。この後、コンストラクトを、上記のように成熟の特徴および収縮機能の改善について評価することができる。さらに、甲状腺ホルモン、トリヨードサイロニン、またはLet-7トランスジーンを用いて、生体力学的負荷の組み合わせをhiPSC-CMの成熟と収縮性能について評価できる。
【0092】
上記の説明では、デバイス100のポスト間で培養されるものとして心臓組織が一般的に説明されているが(図1)、様々な他の実施形態では、本開示にしたがって異なる組織が使用されてもよい。例えば、律動的な収縮を示す他の組織を、本明細書に記載される力を磁気的に検出するためのシステムを用いて研究してもよい。代表的な組織としては、筋肉組織(例えば、人工心臓組織、平滑筋肉組織、および骨格筋肉組織)ならびに非筋肉組織(例えば、靭帯組織および縫合組織)がある。いくつかの実施形態では、心臓組織は比較的安定した周波数で収縮するため、本開示に記載のシステムは、心臓組織の律動的な拍動に関連する力を検出および決定するのに最適なシステムである。
【0093】
図6は、本開示の様々な態様にしたがって、組織標本によって及ぼされる力を磁気的に決定するための例示的な方法を示す。図示された方法は、心臓組織の文脈で説明されるが、以下の方法は、筋肉組織と非筋肉組織の両方を含む他の組織標本に適用可能であることが理解されるものとする。図1~5に関して先に説明した図6のこれらの部分は、明確性と簡潔さの目的のために、再度説明しない場合がある。
【0094】
図6のプロセスは、動作610で、「心臓組織が第1のポストおよび第2のポストに付着するように心臓組織を培養する(第1のポストは第1のポリマーおよび磁性部分を含み、第2のポストは第2のポリマーを含む)」ことから始めることができる。動作610において、心臓組織を、組織が第1のポストと第2のポストに付着するように培養することができる。上述したように、場合によっては、第1のポストは、心臓組織の収縮中に当該心臓組織によって及ぼされる力で曲がるように、比較的可撓性があってよい。さらに、いくつかの場合では、第2のポストは、偏らないように、または心臓組織の収縮中の偏りを最小化するように、比較的剛性があってよい。いくつかのさらなる実施形態では、剛性のインサートを第2のポスト内に挿入することによって、第2のポストに剛性を付与してもよい。例えば、シリカインサート、ガラスインサート、プラスチックインサート、高分子インサートまたは他の非磁性活性インサートが、剛性を付与するために第2のポストの内部に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のポストおよび/または第2のポストは、ポストを備える材料内に埋め込まれた希土類磁石(earth magnet)のような磁性材料を含んでいてもよい。例えば、1mmのネオジム磁石が、第1のポストの先端部内に埋め込まれてもよい。ポストは、PDMSポリマーなどのポリマーを有することができる。
【0095】
図6のプロセスは、動作610から動作620、「第1のポストに近接して位置する磁力計によって、第1のポストが第1の位置から第2の位置まで第1の方向に偏ることによって生じる磁場の変化を検出する」に進むことができる。動作620において、磁力計(図1に描かれた変位センサ120など)を、第1のポスト(可撓性ポスト)に近接して位置付けることができる。本明細書に記載されるように第1のポストは磁性材料を含むことができるので、磁力計は第1のポストの偏りに起因する磁場の変化を検出するのに有効であり得る。様々な実施形態では、第1のポストは、可撓性とでき、第1のポストに付着し、第1のポストと第2のポストとの間に配置された心臓組織の収縮によって偏ってもよい。
【0096】
図6のプロセスは、動作620から動作630、「磁場の変化に対応する信号を生成する」に進むことができる。動作630では、磁場の変化に応じて、磁力計によって信号を生成することができる。例えば、磁力計がGMRセンサである場合、GMRセンサによって生成される信号の電圧を、GMRセンサによって検出される磁場の変化によって調節することができる。GMRセンサによって検出される磁場の変化は、第1ポストおよび第2ポストに付着した心臓組織の収縮によって、可撓性の第1ポスト内に埋め込まれた磁石の動きによって生じてもよい。
【0097】
図6のプロセスは、動作630から動作640、「フィルタリングされた信号を生成するために、第1の周波数範囲の外側にある信号の周波数をフィルタで除去して信号をフィルタリングする(第1の周波数範囲は心臓組織の拍動に関連付けられた周波数を含む)」に進むことができる。動作640では、磁力計(例えば、GMRセンサまたは他の磁気センサ)によって生成された信号を、第1の周波数範囲の外側の信号の周波数をフィルタで除去することによってフィルタリングすることができる。第1の周波数範囲は、第1および第2のポストに付着した心臓組織の拍動に関連付けられた周波数または周波数範囲とできる。
【0098】
したがって、温度変動および/または局所環境における周囲磁場に起因する磁場ノイズをフィルタで除去し、心臓組織の拍動に起因する磁場変化を検出することができる。使用されるフィルタのカットオフ周波数は、観察中の心臓組織の予想される周波数範囲を反映してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、フィルタを、特定の環境から生じるノイズをフィルタで除去するように設計することができる。例えば、機械および/または他の周囲条件によって、様々な周波数の不要なノイズが局所的な環境において生成される可能性がある。使用される特定のフィルタを、特定の環境および条件に対してSN比を最大化するように設計してもよい。
【0099】
図6のプロセスは、動作640から動作650、「フィルタリングされた信号に少なくとも部分的に基づいて心臓組織によって及ぼされる力を決定する」に進むことができる。動作650において、心臓組織によって及ぼされる力を、磁力計によって出力し、電子周波数フィルタによってフィルタリングされた信号に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。心臓組織によって及ぼされる力を決定するために使用される計算を、図1で上述したようなデータ取得デバイスによって実行してもよい。さらに、磁力計によって生成され、データ取得デバイスによって計算されたデータを、メモリに格納することができる。したがって、本明細書に記載の実施形態は、心臓組織をモニタリングするための光学技術と比較して、最小限のデータストレージおよび処理要件で、心臓組織のリアルタイムモニタリングおよび超並列モニタリングを可能にすることができる。
【0100】
図7を参照すると、いくつかの実施形態に係るコンピューティングデバイス700の構成要素がブロック図に示されている。これは、非一時的な機械可読記憶媒体(例えば、ハードドライブ記憶システム)から命令724を読み取り、本明細書で議論される方法論のいずれか1つまたは複数を全体的にまたは部分的に実行するように構成されている。特に、図7は、コンピューティングデバイス700に本明細書で議論される方法論のいずれか1つまたは複数を実行させるための命令724(例えば、ソフトウェア、プログラム、アプリケーション、アプレット、アプリ、または他の実行可能コード)が、全体的にまたは部分的に実行され得るコンピュータシステムの例示的な形態のコンピューティングデバイス700を示す。例えば、コンピューティングデバイス700は、図6を参照して上述した方法の全部または一部を実行するのに有効であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、図1に関して上述したデータ取得システムの機能を実行してもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイス700は、スタンドアロンデバイスとして動作し、または他のコンピューティングデバイスに接続(例えば、ネットワーク化)されてもよい。ネットワーク化された展開において、コンピューティングデバイス700は、サーバ-クライアントネットワーク環境においてサーバコンピューティングデバイスもしくはクライアントコンピューティングデバイスとして、または分散ネットワーク環境(例えば、ピアツーピア)におけるピアコンピューティングデバイスとして動作してもよい。コンピューティングデバイス700は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。例として、サーバコンピュータ、クライアントコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブック、携帯電話、スマートフォン、セットトップボックス(STB)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、Webアプライアンス、ネットワークルータ、ネットワークスイッチ、ネットワークブリッジ、またはこのコンピューティングデバイスによって行われる動作を指定する命令724を、順次または他の方法で実行することができる任意のコンピューティングデバイスとできる。さらに、単一のコンピューティングデバイス700のみが図示されているが、用語「コンピューティングデバイス」は、本明細書で議論される方法論のいずれか1つまたは複数のすべてまたは一部を実行するために、個別にまたは連帯的に命令724を実行するコンピューティングデバイスの任意のコレクションも含むものと見なされるものとする。
【0102】
コンピューティングデバイス700は、プロセッサ702(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、無線周波数集積回路(RFIC)、またはこれらの任意の適当な組み合わせ)、メインメモリ704、およびスタティックメモリ706を含み、これらはバス708を介して互いに通信するよう構成される。プロセッサ702は、プロセッサ702が本明細書に記載される方法論のいずれか1つまたは複数を全体的にまたは部分的に実行するように構成可能であるように、命令724の一部または全部によって、一時的または持続的に構成可能なマイクロ回路を含んでもよい。例えば、プロセッサ702の1つまたは複数のマイクロ回路のセットは、本明細書に記載される1つまたは複数のモジュール(例えば、ソフトウェアモジュール)を実行するように構成可能とできる。
【0103】
コンピューティングデバイス700は、発光ダイオード(LED)ディスプレイスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)スクリーン、ガスプラズマベースのフラットパネルディスプレイ、LCDプロジェクタ、または他のタイプのディスプレイデバイスなどの1つまたは複数のデバイスなどのディスプレイ構成要素710をさらに含むことができる。
【0104】
コンピューティングデバイス700は、ユーザから入力を受信するように動作可能な1つまたは複数の入力デバイス712を含むことができる。入力デバイス712は、例えば、押しボタン、タッチパッド、タッチスクリーン、ホイール、ジョイスティック、キーボード、マウス、トラックボール、キーパッド、加速度計、ライトガン、ゲームコントローラ、またはユーザがコンピューティングデバイス700に入力することができる他の任意のこのようなデバイスまたは要素を含むことができる。これらの入力デバイス712は、コンピューティングデバイス700に物理的に組み込まれてもよいし、有線インターフェースまたは無線インターフェースを介してコンピューティングデバイス700に動作可能に結合されてもよい。タッチスクリーンディスプレイを有するコンピューティングデバイスの場合、入力デバイス712は、ディスプレイ構成要素710と連動して動作し、ユーザがタッチ入力(例えば、指またはスタイラス)を使用してディスプレイ構成要素710によって表示される画像と対話することを可能にするタッチセンサを含むことができる。いくつかの実施形態では、図1に関して上述した変位センサ120および/またはフィルタ130は、コンピューティングデバイス700に入力を与えるために動作可能な入力デバイス712の実施形態とできる。
【0105】
また、コンピューティングデバイス700は、特定の無線プロトコルの通信範囲内にある1つまたは複数の別個のデバイスと通信するように動作可能な1つまたは複数の無線構成要素を含む、少なくとも1つの通信インターフェース720も含むことができる。無線プロトコルは、Bluetooth(登録商標)、セルラー、IEEE 802.11、または赤外線通信プロトコル(lrDA対応のプロトコルなど)など、デバイスが無線で通信できるようにするために使用される任意の適切なプロトコルとできる。通信インターフェース720は、他のデバイスと結合し通信するための1つまたは複数の有線通信インターフェースも含んでもよく、または代替的に含むことができることを理解されたい。
【0106】
また、コンピューティングデバイス700は、例えば、従来のプラグインアプローチを通じて、または他のアプローチ(容量性充電など)を通じて再充電されるように動作可能な充電式電池などの電源728を含んでもよい。あるいは、電源728は、電力網からのAC電力をデバイス700の内部構成要素用に調節されたDC電力に変換する電源ユニットを備えることができる。
【0107】
また、コンピューティングデバイス700は、記憶素子716を含むこともできる。記憶素子716は、本明細書に記載された方法論または機能のうち任意の1つまたは複数を具体化する命令724(論理)が格納された機械可読媒体を含む。また、命令724は、コンピューティングデバイス700によるこの実行前または実行中に、完全にまたは少なくとも部分的に、メインメモリ704内、プロセッサ702内(例えば、プロセッサのキャッシュメモリ内)、またはこの両方に存在することができる。命令724はまた、スタティックメモリ706にも存在することができる。
【0108】
したがって、メインメモリ704およびプロセッサ702も、機械可読媒体(例えば、有形の非一時的な機械可読媒体)とみなすことができる。命令724は、通信インターフェース720を介してネットワーク202上で送信または受信されてもよい。例えば、通信インターフェース720は、任意の1つまたは複数の転送プロトコル(例えば、HTTP)を用いて、命令724を通信してもよい。
【0109】
コンピューティングデバイス700は、サーバ、タブレットコンピューティングデバイス、スマートフォン、メディアプレーヤー、携帯型ゲームデバイス、携帯型デジタルアシスタント、ラップトップコンピュータ、またはデスクトップコンピュータなどのいくつかの電子デバイスのうちの任意の1つまたは複数として実装され得る。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス700は、分散コンピューティングデバイス、例えば、複数の異種サーバにまたがって分散されたクラウドコンピューティングデバイスである。いくつかの例示的実施形態では、コンピューティングデバイス700は、1つまたは複数の追加の入力構成要素(例えば、センサまたはゲージ)を有することができる(図示せず)。このような入力構成要素の実施形態は、画像入力構成要素(例えば、1つまたは複数のカメラ)、音声入力構成要素(例えば、マイクロフォン)、方位入力構成要素(例えば、コンパス)、位置入力構成要素(例えば、GPS受信機)、方向入力構成要素(例えば、ジャイロスコープ)、動き検出構成要素(例えば、1つまたは複数の加速度計)、高度検出構成要素(例えば、高度計)、およびガス検出構成要素(例えば、ガスセンサ)である。これらの入力構成要素のうちの任意の1つまたは複数によって得られた入力は、本明細書に記載される任意のモジュールによって使用するためにアクセス可能であり、利用可能であってもよい。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「メモリ」は、データを一時的または永久的に格納することができる非一時的な機械可読媒体を指し、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、およびキャッシュメモリが含まれるが、これらに限定されないものとみなすことができる。機械可読媒体は、伝搬信号を具現化しない点で非一時的なものである。機械可読媒体は、例示的実施形態では単一の媒体として説明されているが、用語「機械可読媒体」は、命令724を格納できる単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型データベースもしくは分散データベース、または関連するキャッシュおよびサーバ)を含むと解されたい。また、「機械可読媒体」という用語は、任意の媒体、または複数の媒体の組み合わせが含まれると解されるものとする。これは、命令724が、コンピューティングデバイス700の1つまたは複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ702)によって実行されると、コンピューティングデバイス700に、本明細書に記載される方法論のいずれか1つまたは複数を全体的または部分的に実行させるように、コンピューティングデバイス700による実行のために命令724を記憶することができる。したがって、「機械可読媒体」は、単一のストレージ装置またはデバイス、および複数のストレージ装置またはデバイスを含むクラウドベースのストレージシステムまたはストレージネットワークを指す。「機械可読媒体」という用語は、固体メモリ、光学媒体、磁気媒体、またはこれらの任意の適当な組み合わせの形態の1つまたは複数の有形(例えば、非一時的)データレポジトリを含むが、これらに限定されないものと見なされるものとする。
【0111】
基準キャンセリングアーキテクチャ
本明細書に記載される組織分析デバイスおよび方法のいずれかは、ポストの変位に対応する第1の部分の変位信号を、デバイスが配置される周囲環境に対応する第2の部分の変位信号から分離する、基準キャンセリングアーキテクチャを利用することができる。したがって、基準キャンセリングアーキテクチャによって、本開示の組織分析デバイスが組織標本の特性をより正確に決定することが可能になる。
【0112】
以下に説明する一例として、組織分析デバイスは、周波数フィルタリングアーキテクチャの代わりに(すなわち、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、および/またはバンドパスフィルタの代わりに)基準キャンセリングアーキテクチャを採用する。よって、信号処理動作の少なくとも一部における変位信号(例えば、電圧)に表される周波数範囲全体が保存される。したがって、組織標本の特性に相関する周波数は、これらの周波数が周囲環境からのノイズを反映する可能性があるとしても、保存される。したがって、組織標本の特性決定(例えば、力の決定)には、このような保存された周波数が含まれる。このような周波数をフィルタリングして周囲ノイズを除去するのではなく、デバイスは、決定された特性のうち、周囲環境に対応する部分をキャンセルする。
【0113】
有利には、本明細書に記載された基準キャンセリングアーキテクチャは、組織標本によって及ぼされる純粋な力を決定することを可能にする。これに比べて、周波数フィルタリングアーキテクチャを利用する組織分析デバイスは、「ノイズの多い」周波数が組織標本によって及ぼされる力に相関しているにもかかわらず、「ノイズの多い」周波数をフィルタで除去するため、組織標本によって及ぼされる純粋な力を決定することはできない。
【0114】
図8図14は、基準キャンセリングアーキテクチャを利用する代表的な組織分析デバイスおよび方法を示す。
【0115】
図8は、本開示の代表的な実施形態に係る組織分析デバイス800を示す。組織分析デバイス800は、本明細書に明示的に記載されている場合を除き、上述した実施形態の任意の特徴を組み込むことができる。
【0116】
組織分析デバイス800は、少なくとも1つの感知モジュール802と、少なくとも1つの基準モジュール804と、少なくとも1つのコンピューティングデバイス806とを含む。後述するように、感知モジュール802および基準モジュール804は、組織標本が感知モジュール802の要素に貼り付けられ(例えば、付着し)、操作される(例えば、電流によって刺激される)と、組織分析デバイス800が周囲環境によって生じる信号をキャンセルした(すなわち、調整した)組織標本の特性を決定するように、コンピューティングデバイス806に通信可能に結合される。代表的な一例として、組織分析デバイス800は、このような方法で組織標本によって及ぼされる純粋な力を決定する。
【0117】
理解を容易にするために図8では別個のモジュールとして示されているが、感知モジュール802、基準モジュール804、およびコンピューティングデバイス806の物理的要素は、互いの間に点在していてもよい。一実施形態では、組織分析デバイス800は、永久ベース部分と、1つまたは複数の培養ウェルを有する使い捨て培養皿とを含むマルチピースアセンブリで具現化される。図13A~Bを参照されたい。このような実施形態では、感知モジュール802の要素は、培養皿上およびベース部分上に配置されたプリント回路基板上に配置され、基準モジュール804およびコンピューティングデバイス806の要素は、プリント回路基板上に配置され、3つすべての要素がプリント回路基板上の互いの間に点在している。
【0118】
感知モジュール802は、以下に説明するような少なくとも1つの感知回路と、ベース(培養皿のウェルのベースなど)上に配置された複数のポストとを含む。各ポストは、図1および図3に関して上述したように、ポストに貼り付けられた組織標本を有するように構成される。図1のベース102およびポスト104、106を参照されたい。この実施形態では、感知モジュール802は、2つのポスト808a~bを含む。したがって、感知モジュール802は、ポスト808aおよびポスト808bに貼り付けられた単一の組織標本で動作するように構成される。しかしながら、このポストの数は代表的なものであり、限定的なものではない。いくつかの実施形態は、n個のポスト、すなわち、3個、4個、5個、またはより多くのポストを含む。
【0119】
上述したように、ポストのうち少なくとも1つは、ポストに貼り付けられた組織標本の収縮または伸張に応じて、曲げまたは偏りなどを通じて変位するように構成される。「変位するポスト」、「偏るポスト」、および「曲がるポスト」という用語は、本明細書において互換的に使用される。本実施形態では、ポスト808aは、変位するように構成され、上述したように、この先端部に配置された磁性材料を有する。同様に、上述したように、少なくとも1つのポストは、剛性を有していてもよい。すなわち、ポストに貼り付けられた組織標本が収縮したり伸長されたりしても変位しない(すなわち、曲がったり偏ったりしない)ように構成される。本実施形態では、ポスト808bは剛性を有している。
【0120】
図9A~9Eを簡単に参照すると、本明細書に記載の感知モジュールのポストは、提供されるポストの数に応じて、ベース上に配置されたときに任意の数の構成を有することができる。例えば、少なくとも3つのポスト908を有する一実施形態は、図9Aに示されるように、三角形の配置を有することができる。同様に、少なくとも4つのポスト908を有する一実施形態は、図9Bに示されるように長方形の配置を有することができる。同様に、少なくとも5つのポスト908を有する一実施形態は、図9Cに示されるように五角形の配置を有することができる。同様に、少なくとも6つのポスト908を有する一実施形態は、図9Dに示されるように六角形の配置を有することができる。同様に、少なくとも8つのポスト908を有する一実施形態は、図9Eに示されるように、八角形の配置を有することができる。このようなポスト配置は、例えば、少なくとも複数のポストが中央に位置する基準センサ912から等距離に配置される場合、(以下に説明するように)複数のポストが共通の基準センサを共有することが有利に可能になる。明確にするために、基準センサ912は、ポスト908から等距離である必要はない。前述のポスト配置のいずれかにおいて、ポストのうちの1つまたは複数は、可撓性を有するように構成されてもよく、ポストのうちの1つまたは複数は、剛性を有するように構成されてもよい。
【0121】
図8に戻ると、感知モジュール802は、少なくとも1つの変位センサを含む。変位センサは、変位したポストの先端部に配置された磁性材料の移動によって引き起こされる局所磁場の変化を感知することなどによって、ポストのうちの1つの変位に対応する変位信号を出力するように構成される。図8の実施形態は、1つの変位センサ810aを含み、これはポスト808aに対応する。すなわち、変位センサ810aは、ポスト808aの変位に対応する変位信号を出力するように構成される。
【0122】
ポストに対する変位センサの位置決めについては後述する。いくつかの実施形態では、組織分析デバイス800は、変位する(すなわち、曲がるまたは偏る)ように構成されたポストの数と同数の変位センサを含む。図8では、ポスト808aは曲がる/偏るように構成されているが、ポスト808bは剛性を有するため、感知モジュール802は、単一の変位センサ810aを含む。いくつかの実施形態では、感知モジュール802は、n個のポスト、ならびにn-1、n/2、および/またはn-r個の変位センサ(ここで、rは、剛性のポストの数に対応する)を有する。例えば、いくつかの実施形態は、n-1、n-2、n-3、またはn/2の変位センサを有する。
【0123】
代表的な変位センサは、巨大磁気抵抗(GMR)センサ、フラックスゲート、ホールセンサ、異方性磁気抵抗(AMR)センサ、または同様の磁力計を含む、上述したこれらのうちのいずれかを含む。例えば、図1の変位センサ120を参照されたい。上述したように、各変位センサは、変位信号(アナログ信号またはデジタル信号とできる)を出力するように構成される。本明細書で説明する実施形態は、一般的に変位信号を電圧として説明するが、これは限定的なものではない。
【0124】
基準モジュール804は、少なくとも1つの基準回路を含む。基準回路は、基準入力(例えば周囲磁場)に対応する基準信号を出力するように構成された少なくとも1つの基準センサ812aを含む。基準入力は、環境要因に起因して変化するが、任意のポストの変位には起因しないことが予想される。したがって、1つまたは複数の基準センサは、基準入力が任意のポストの変位によって妨害されないように、ポストから十分に離れて位置する。言い直すと、基準センサ812aは、この配置および感度のために、ポスト808a~bのいずれかの変位からのいかなる信号振幅も感知しない。一般に、基準センサ812aは、変位ポスト808aおよび任意の他の変位ポストから少なくとも5~10mm離れて位置する。
【0125】
基準キャンセリングアーキテクチャの一部として、基準入力に基づく基準値は、1つまたは複数のポストの変位に基づく変位値からキャンセルされる。したがって、基準センサは、変位センサと同様に、磁力計である。いくつかの実施形態では、基準センサは、GMRセンサ、フラックスゲート、ホールセンサ、またはAMRセンサなど、変位センサのいずれか1つまたはすべてと同じタイプのセンサである。基準センサ812aは、ポスト808a~bのいずれかと同じタイプのセンサとできるが、感度または他の仕様が同じである必要はない。
【0126】
図8の基準モジュール804は、単一の偏りポスト808aに対応する単一の基準センサ812aを含む。しかしながら、いくつかの実施形態は、複数の基準センサ、例えば、センサモジュール内のn個のポストに対応するn個の基準センサを含む。さらに、いくつかの実施形態は、偏りポストの数と同数の基準センサを含む。いくつかの実施形態において、単一の基準センサは、共有の基準センサである。言い換えれば、単一の基準センサの基準出力は、複数の組織標本の基準キャンセルされた特性を決定するために利用される。これにより、決定された組織特性がすべて共通の基準信号に依存するため、組織分析デバイス800の構築および動作の効率化が図られ、より高い精度に寄与する。基準センサ812aの代表的な配置については、後述する。
【0127】
一旦、図10に目を向けると、2つの感知モジュールを有する組織分析デバイスの1つの代表的な配置が示されている。図10は、2つのウェル1030a、bの断面立面図である。各ウェルは、この上に配置された2つのポスト1008a、bを有するベース1032を含む。ポスト1008aは、偏りポストである。組織標本1034a、bは、ウェル1030a、bの2つのポストにそれぞれ貼り付けられている。変位センサ1010a、bは、ウェル1030a、bの偏りポスト1008aの真下に、そこからD1の距離(例えば、3mm~7mm)に配置される。距離D1は、変位センサ1010aが(ウェル1030aの)ポスト1008aの変位による局所磁場の変化を感知し、変位センサ1010bが(ウェル1030bの)ポスト1008aの変位による局所磁場の変化を感知するように十分に小さい。D1は、3次元空間におけるベクトルの長さに相当する。
【0128】
本明細書で使用される「真下」とは、図示されるように直交するx軸、y軸、およびz軸によって表される3次元ユークリッド空間の文脈において、変位センサ1010aおよび(ウェル1030aの)偏りポスト1008aの両方が共通のx座標およびz座標(1~2mm以内)を有するが、変位センサ1010aはポスト1008aよりもy座標の値が小さいということを意味している。同様に、変位センサ1010bおよび(ウェル1030bの)ポスト1008aは、共通のx座標およびz座標(1~2mm以内)を有するが、変位センサ1010bは、ポスト1008aよりもy座標が小さい(例えば、5~10mm小さい)。この配置は、変位センサ1010aが、組織標本1034aの収縮または伸張による(ウェル1030aの)ポスト1008aの変位を感知することを可能にするが、組織標本1034bの変位は感知しない。同様に、この配置は、変位センサ1010bが、組織標本1034bの収縮または伸張による(ウェル1030bの)ポスト1008aの変位を感知することを可能にするが、組織標本1034aの変位は感知しない。いくつかの実施形態では、変位センサは、ポストの真下に配置されるのではなく、ポストの真上またはポストの真横に配置される。
【0129】
基準センサ1012は、ウェル1030a、bの間に配置され、基準入力(本実施形態では、周囲磁場)を感知するように構成される。基準センサ1012は、ウェル1030aのポスト1008a(特に、この先端部に配置された磁性材料)から第2の距離D2離れて配置され、ウェル1030bのポスト1008a(特に、この先端部に配置された磁性材料)から第3の距離D3離れて配置される。D2およびD3は、いずれも、D1と同様に、3次元ベクトルの長さを意味する。基準センサ1012の特定の感度を考えると、D2およびD3はいずれも、基準センサ1012がポスト1008aの変位によるどの信号振幅も感知しないように十分に大きく、例えば、10mm~20mmである。したがって、D2およびD3は、いずれもD1よりも大きい。
【0130】
図10において、D2およびD3は等しい。すなわち、基準センサ1012は、両方の変位センサ1010a、bおよび両方の組織標本1034a、bから等距離に配置されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、D2とD3は等しくない。例えば、いくつかの実施形態では、D2およびD3は等しくないが、D2およびD3の両方は、ポスト1008aのいずれかが偏ったときに基準センサ1012がいかなる信号振幅も感知しないように十分に大きい。例えば、一実施形態では、D2=17mmおよびD3=11mmである。本開示において、「等距離」とは、「3次元空間において等距離である」ことを意味する(すなわち、基準センサ1012からポスト1008aまでの第1の3次元ベクトルの長さがD2を有し、基準センサ1012からポスト1008bまでの第2の3次元ベクトルの長さD3とD2とが同じである)。
【0131】
図9A~9Eを再び簡単に参照すると、図9Aの感知モジュールは、3つのポスト908を含む。このうちの上側2つは可撓性を有するように構成され、このうちの下側の1つは剛性を有するように構成される。したがって、上側2つのポスト908はそれぞれ、真下に配置された対応する変位センサ910を有する。これは、2つの組織標本が剛性の下側のポストに「V」字構成で貼り付けられることを企図している。本明細書に記載される任意の実施形態において、剛性ポストは、これに貼り付けられた2つ以上の組織標本を有するように構成されてもよい。図9Bにおいて、上側2つのポスト908は、可撓性を有するように構成される。したがって、それぞれが、真下に配置された変位センサ910を有する。下側の2つのポストは剛性を有し、したがって、組織分析デバイスは、これらのポストに貼り付けられた、各可撓性ポスト908と各剛性のポスト908との間に1つの組織標本という2つの平行な組織標本を有するように構成される。同様に、図9Cの組織分析デバイスは、3つの変位センサ910を含み、各変位センサ910は、可撓性を有するように構成されるポスト908に1つずつ配置され、変位センサ910を有しない2つのポスト908は、剛性を有するように構成される。同様に、図9Dの組織分析デバイスは、4つの変位センサ910を含み、それぞれが、可撓性を有するように構成されたポスト908の真下に1つずつ配置され、変位センサ910を有しない2つのポスト908は、剛性を有するように構成される。同様に、図9Eの組織分析デバイスは、5つの変位センサ910を含み、それぞれが、可撓性を有するように構成されたポスト908の真下に1つずつ配置され、変位センサ910を有しない3つのポスト908は、剛性を有するように構成される。前述の実施形態は代表的なものであり、限定的なものではない。例えば、図9Bのポストが4つの実施形態は、基準センサ912の対角線上の向かい側に配置された2つの可撓性ポスト908を有してもよい。別の例として、図9Dのポストが6つの実施形態は、4つではなく、3つの可撓性ポスト908と3つの変位センサ910を有していてもよい。
【0132】
図8に戻り、コンピューティングデバイス806は、図7のコンピューティングデバイス700の任意の特徴を有することができる。理解を容易にするために、この実施形態では、コンピューティングデバイス806は、プロセッサ814(例えば、一般処理ユニット、グラフィック処理ユニット、および/または特定用途向け集積回路)、メモリ816(有形機械可読記憶媒体)、ならびにソフトウェア論理(例えば、実行可能ソフトウェアコード)、ファームウェア論理、ハードウェア論理、またはこれらの様々な組み合わせとして実装され得る複数の命令モジュールを含む。
【0133】
組織分析デバイス800のいくつかの実施形態は、図8に示されるコンピューティングデバイス806の特定の要素を除外している。例えば、組織分析デバイス800のいくつかの実施形態は、既存のコンピューティングデバイス上で動作するように構成された、以下に説明するような命令モジュールを含むが、組織分析デバイス800は、それ自体がコンピューティングデバイスを含まなくてもよい。すなわち、組織分析デバイス800はプロセッサ814および/またはメモリ816を含まなくてもよい。したがって、組織分析デバイス800のいくつかの実施形態は、少なくとも1つの感知モジュール802、および少なくとも1つの基準モジュール804、ならびに以下に説明する1つまたは複数の命令モジュールを含み、これらはソフトウェアまたはハードウェア(例えば、プリント回路基板上またはASIC上)として具現化されてもよい。
【0134】
コンピューティングデバイス806は、インターネット、セルラーネットワーク、RFネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク、広域ネットワーク、または他のネットワークを介して、感知モジュール802(特に、変位センサ810a)および基準モジュール804(特に、基準センサ812a)、遠隔サーバ、基地局、または他のネットワーク要素と通信できるよう構成された回路を有する通信インターフェースを含んでいる。したがって、通信インターフェースは、無線プロトコル(例えば、WIFI(登録商標)、WIMAX(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)、ZIGBEE(登録商標)、セルラー、赤外線、近距離無線通信など)および/または有線プロトコル(ユニバーサルシリアルバスもしくはRS-234、RJ-45などの他のシリアル通信、パラレル通信バスなど)を用いて通信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、通信インターフェースは、コンピューティングデバイス806および他のネットワーク要素(例えば、任意の変位センサおよび基準センサ)が互いを識別し、制御情報を交換することを可能にする発見プロトコルを開始するように構成された回路を含む。一実施形態では、通信インターフェースは、発見プロトコルに構成され、1つまたは複数の事前共有鍵(PSK)をネゴシエートするように構成された回路を有する。
【0135】
本明細書で使用されるように、メモリ816は、機械(例えば、コンピュータ、ネットワークデバイス、パーソナルデジタルアシスタント、製造ツール、1つまたは複数のプロセッサのセットを有する任意のデバイスなど)によってアクセス可能な非一時的な形態で情報を提供(すなわち、格納)する任意のメカニズムを含む有形機械可読記憶媒体である。例えば、機械可読記憶媒体は、記録可能媒体/非記録可能媒体(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなど)を含む。いくつかの実施形態では、メモリ816は、複数のネットワーク要素(例えば、リモートサーバ、ローカルコンピューティングデバイスなど)にわたって分散される。
【0136】
上記のように、コンピューティングデバイス806は、複数の命令モジュールを含む。各モジュールは論理(命令)を含む。プロセッサ814によって命令が実行されると、組織分析デバイス800に、ポストに貼り付けされた少なくとも1つの組織標本の1つまたは複数の特性の感知、検出、測定、および/または決定に関する1つまたは複数の動作を実行させる。理解を容易にするために本明細書では個別の命令モジュールとして記載されているが、いくつかの実施形態では、論理は単一のモジュールまたは図示とは異なる数のモジュールで具現化される。さらに、特定のモジュールに関して以下に説明する論理は、他の実施形態では、ここで説明するものとは異なるモジュールに存在する可能性がある。
【0137】
さらに、命令モジュールは、単一のネットワーク要素において具現化される必要はなく、いくつかの実施形態において、命令モジュールは、複数のネットワーク要素(例えば、リモートサーバ、ローカルコンピューティングデバイスなど)にわたって格納および/または実行される。さらに、本明細書では、論理がソフトウェアの文脈で説明されているが、本明細書に記載される任意の命令モジュールは、ファームウェアとして、例えば、プリント回路基板上の回路として実装することができる。さらに、本明細書に記載される任意の命令モジュールの実施形態は、命令の一部または全部を連続的、定期的(例えば、0.5秒ごと、毎秒、毎分、毎時間、もしくは他の期間ごと)、および/またはオンデマンドで実行する命令を含む。
【0138】
理解を容易にするために、以下に提供される実施形態は、単一の偏りポスト808aおよび剛性ポスト808bに対応する単一の組織標本という文脈における命令を記述する。しかしながら、これは限定的なものではない。本明細書に記載される組織分析デバイスの実施形態は、複数の感知モジュール、および/または複数のポストを有する感知モジュールを有し、したがって、複数の組織標本の特性を決定するように構成される。したがって、以下の任意の命令が、(例えば並列または直列の)複数の組織標本に関連して実行されてもよい。
【0139】
変位命令818は、変位センサ810aが出力する変位信号に基づいて、1つまたは複数の変位値を決定する。n個の変位センサを有する組織分析デバイスでは、変位命令818は、n個の変位値を決定する。ここで、単一の変位センサに対して変位値を決定するように構成された例示的な命令が説明されるが、このような命令は、組織分析デバイスのすべての変位センサに対して、例えば、並行して実行されてもよいことが理解されるものとする。いくつかの実施形態では、変位値は、物理的な移動の単位(例えば、mm)で表記される。しかしながら、いくつかの実施形態では、変位値は、他の単位(例えば、マイクロテスラ)で表記される。変位命令818は、変位値を連続的に、定期的に(例えば、0.5秒ごと、毎秒、毎分、毎時間、または他の期間ごとに)、またはオンデマンドで決定する。
【0140】
いくつかの実施形態では、変位命令818は、ポスト808a、b間に貼り付けられた組織標本の収縮によって引き起こされるような、ポスト808aの変位によって引き起こされる局所磁場の変化に対応する変位値(例えば、マイクロテスラ)を決定する。このような実施形態では、変位センサ810aの変位信号に、第1の線形係数αを乗算するステップによって、変位値が決定される。αは、変位センサ810aの出力(例えば、電圧)と感知磁場における対応する変化(例えば、マイクロテスラ)との間の既知の関係に基づいている。第1の線形係数αは、特定の変位センサ810aの線形挙動の限られた範囲内で有効とできる。
【0141】
いくつかの実施形態では、変位命令818は、変位センサ810aが出力した変位信号に第1の線形係数αを乗算するステップによって、および第1の非線形係数βを乗算するステップによって、ポスト808aの物理的変位(この場合も、ポスト808a、b間に貼り付けられた組織標本の収縮によって生じるなど)に対応する変位値(例えば、mm)を決定する。いくつかの実施形態において、第1の非線形係数βは、磁場の変化とポストの変位(例えば、mm)との間の経験的に検証された、または数学的にモデル化された相関係数に基づく。いくつかの実施形態において、第1の非線形係数βは、磁性材料の磁場強度、ポスト808aにおける磁性材料の位置または向き、および/または変位センサ810aに対するポスト808aの位置の関数である。2つ以上の変位センサを有する実施形態では、第1の線形係数αおよび第1の非線形係数βは、変位センサ間で異なっていてもよいことが理解されるものとする。したがって、n個の変位センサを有する組織分析デバイスは、n個の第1の線形係数(例えば、α1,1・・・α1,n)およびn個の第1の非線形係数(β1,1・・・β1,n)を有し得る。もちろん、いくつかの実施形態では、第1の線形係数および第1の非線形係数は、すべての変位センサについて同じである。
【0142】
いくつかの実施形態において、変位値を決定するステップは、変位信号に第1の線形係数αおよび/または第1の非線形係数βを乗算する前に、1つまたは複数の変位信号を周波数フィルタリングするステップまたは同様の処理ステップを含まない。例えば、いくつかの実施形態では、変位値は、変位信号に第1の線形係数αおよび/または第1の非線形係数βを乗算する前に、変位信号を任意のハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、もしくはバンドパスフィルタを通して、または任意の同様の信号処理技術を通して処理することなく、上述したように決定される。変位信号を周波数フィルタリングすると、信号ノイズを減らすことはできるが、組織標本の特性に相関する周波数をフィルタリングしてしまうという結果になる。したがって、変位信号を周波数フィルタリングすると、特定の組織特性(例えば、純粋な力)の決定が妨げられる。したがって、変位信号に第1の線形係数αおよび/または第1の非線形係数βを乗算する前に、変位信号を周波数フィルタリングせずに変位値を決定することによって、変位信号全体が保持される。有利には、これは、本明細書に記載されるように、組織標本の特定の純粋な特性(例えば、純粋な力)を決定する能力を保持する。いくつかの実施形態において、変位値を決定するステップは、複数の変位値成分を決定するステップを含み、各成分は、複数の軸における感知磁場または物理的変位に対応する。このような実施形態において、1つまたは複数の変位センサは、1つまたは複数の基準センサと共通の向きを有する。
【0143】
基準命令820は、基準センサ812aによって出力される基準信号に基づいて基準値を決定する。基準センサ812aは、ポスト808aの変位からのいかなる信号振幅もなく周囲磁場を感知する。ここで、単一の変位センサに対して基準値を決定する代表的な命令について説明する。しかし、このような命令は、組織分析デバイスのn個の基準センサに対して、例えば、並行して実行されてもよいことが理解されるものとする。
【0144】
基準キャンセリングアーキテクチャの一部として、基準値は、1つもしくは複数の変位値、またはこれらの中間値からキャンセルされる。したがって、任意の実施形態において、1つまたは複数の変位値は、1つまたは複数の基準値に対して時間インデックスを付けられる。いくつかの実施形態では、基準値は、1つまたは複数の変位値と同じ単位を有する。例えば、いくつかの実施形態では、基準値は、周囲磁場の変化(例えば、マイクロテスラ)に対応する単位を有する。このような一実施形態では、基準値を決定するステップは、基準信号に第2の線形係数αを乗算するステップを含む。これは、変位命令818によって利用される第1の線形係数αと同じであっても異なっていてもよい。例えば、基準センサ812aが変位センサ810aとは異なるセンサタイプである、および/または異なる仕様を有する場合、第1の線形係数αおよび第2の線形係数αは異なっていてよい。例えば、いくつかの実施形態では、第2の線形係数αは、基準センサ812aによって出力される電圧と、感知された周囲磁場における対応する変化(例えば、マイクロテスラ)との間の既知の関係に基づいている。第2の線形係数αは、特定の基準センサ812aの線形挙動の限定された範囲内で有効とできる。
【0145】
いくつかの実施形態において、基準値は、変位センサ810aの物理的変位に対応する単位、例えば、mmを有する。このような実施形態では、基準値を決定するステップは、基準信号に第2の線形係数αを乗算するステップ、および第2の非線形係数βを乗算するステップを含み、βは、周囲磁場強度の関数および/または基準センサ812aの位置である。いくつかの実施形態では、基準値を決定するステップは、複数の基準値成分を決定するステップを含む。各成分は、複数の軸における周囲磁場に対応する。このような実施形態では、1つまたは複数の基準センサは、1つまたは複数の変位センサと共通の向きを有する。
【0146】
基準キャンセリング命令822は、変位命令818によって決定された1つまたは複数の変位値に基づき、および、基準命令820によって決定された1つまたは複数の基準値に基づいて、1つまたは複数基準キャンセルされた1つまたは複数の変位値を決定する。いくつかの実施形態において、ポスト808aの変位に対応する基準キャンセルされた変位値は、変位値から基準値を減算するステップに基づいている。一例として、
ΔRC=ΔSM-ΔRM
ここで、ΔSM=αβ γ(γは、変位センサ810aの変位信号)、およびΔRM=αβε(εは、基準センサ812aの基準信号)である。
【0147】
いくつかの実施形態において、基準キャンセルされた変位値を決定するステップは、複数の基準値成分の対応する1つから複数の変位値成分の少なくとも1つを減算するステップに基づいている。
【0148】
いくつかの実施形態では、基準命令820によって決定された1つまたは複数の基準値は、共有される。すなわち、基準キャンセリング命令822によって利用され、複数のポストに対応する基準キャンセルされた変位値を決定する。
【0149】
特性決定命令824は、基準キャンセリング命令822によって決定され、この組織標本に対応する基準キャンセルされた1つまたは複数の変位値に基づいて、1つまたは複数の組織標本の1つまたは複数の特性を決定する。一例として、特性決定命令824は、電流によって刺激されたときに、ポスト808a、bに貼り付けされた組織標本によって及ぼされる力を決定する。特性決定命令824は、基準キャンセルされた変位値に、第3の線形係数αを乗算するステップによって力を決定する。第3の線形係数αは、ポストの変位と組織の力(例えば、組織標本によって及ぼされる力)との間の経験的に検証されたまたは数学的にモデル化された相関係数とできる。心臓組織の場合、このような力の決定は収縮期または拡張期に対応することができる。変位信号が周波数フィルタリングされない(例えば、αおよびβによる乗算の前の)いくつかの実施形態では、決定された力は、純粋な力(例えば、純粋な心筋力)である。有利には、組織標本によって及ぼされる純粋な力を決定する能力によって、医師および研究者がこのような組織標本の成熟および生存率をより良く評価することが可能になる。
【0150】
力は1つの方式である。しかしながら、いくつかの実施形態では、特性決定命令824は、組織標本のストレイン、負荷、および/または他の特性を決定する。例えば、いくつかの実施形態では、特性決定命令824は、基準キャンセルされた変位値(例えば、mm)を組織標本の断面寸法の減少(これは、光学的に決定されても、他の測定手段を通じて決定されてもよい)で割ることによって、組織標本のストレインを決定する。別の例として、いくつかの実施形態では、特性決定命令824は、まず組織標本によって及ぼされる、または組織標本上に及ぼされる純粋な力を決定し、次に、純粋な力を組織標本の断面積(これは、光学的に決定されても、他の測定手段を通じて決定されてもよい)で割ることによって、組織標本の負荷を決定する。これらの方式は代表的なものであり、限定的なものではない。
【0151】
前述の命令モジュールは代表的なものであり、限定的なものではない。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス806は、付加的な命令モジュール、例えば、実行されると、コンピューティングデバイス806に、決定された組織特性をリモートネットワーク要素に送信させる命令を有する通信モジュールを含む。
【0152】
図11は、本開示の組織分析デバイスの一実施形態の代表的な回路を示す。これは、プリント回路基板、およびASIC、または同様のデバイス上に少なくとも部分的に具現化されている。感知回路1136は、少なくとも1つの変位センサ(図8の変位センサ810aなど)を含む。これは、1つまたは複数のフィルタおよび増幅器に動作可能に接続されている。感知回路1136は、図11において単一の変位センサを含むが、いくつかの実施形態は、上述したように、複数の変位センサを含むことが理解されるものとする。いくつかの実施形態は、上述したように、周波数フィルタリング回路を含まない。感知回路1136は、上述したような感知モジュール(例えば、図8の感知モジュール802)の一部を形成する。
【0153】
基準回路1138は、少なくとも1つの基準センサ(図8の基準センサ812aなど)を含む。これは、1つまたは複数のフィルタおよび増幅器に動作可能に接続される。基準回路1138は、図11において単一の基準センサを含むが、いくつかの実施形態は、上述したように、複数の基準センサを含むことが理解されるものとする。いくつかの実施形態は、上述したように、周波数フィルタリング回路を含まない。基準回路1138は、上述したように、基準モジュールの一部を形成する。
【0154】
感知回路1136および基準回路1138はそれぞれ、それぞれ独自の変位値および基準値を提供する。基準キャンセル回路1140は、上述の基準キャンセリング命令に加えて、または代替的に、変位値から基準値をキャンセルし、これによって基準キャンセルされた値(例えば基準キャンセルされた変位値)を取得する。いくつかの実施形態において、基準キャンセル回路1140は、感知モジュール、基準モジュール、これらの両方、または別個のモジュールの一部である。
【0155】
図12は、本明細書に記載される組織分析デバイスの回路を有する1つの代表的なプリント回路基板1242を示す。特に、プリント回路基板1242は、4つの感知回路1236a~dおよび1つの基準回路1238を有するセンサアレイを含む。各感知回路1236a~dは、図11の感知回路1136と同様である。この実施形態では、感知回路1236a~dは、長方形アレイに配置される。各感知回路1236a~dは、各感知回路が、この真上に配置されたポスト(例えば、ポスト808a)の変位によって生じる局所磁場の変化を感知するように、上述のように感知モジュールの複数のポストの真下に配置されるように構成される。いくつかの実施形態は、より多いまたはより少ない感知回路、例えば、1つ、2つ、3つ、5つ、6つ、などを有する。このような実施形態では、感知回路は、三角形、五角形、六角形、八角形、または他の配置を含む、本明細書に記載される任意の1つまたは複数の構成に配置されてもよい。
【0156】
また、プリント回路基板1242は、図11に関して上述したものと同様の単一の基準回路1238を含む。基準回路1238は、感知回路1236a~dの間の中央に位置し、感知回路1236a~dから等距離にある。特に、基準回路1238は、3次元的に感知回路1236a~dから等距離にある。つまり、感知回路1236a~dおよび基準回路1238は、プリント回路基板1242の共通の平面上に配置され、基準回路1238は、図12の平面図において、各感知回路1236a~dから等距離である。このような等距離配置を、本明細書で説明する任意の実施形態において利用することができる。
【0157】
有利には、基準回路1238の等距離配置によって、感知回路1236a~dの間で基準回路1238を共有することが可能になる。すなわち、基準回路1238によって決定された基準値は、各感知回路1236a~dにおいて基準キャンセルされた変位値を決定するために利用される。したがって、図示された実施形態は、感知回路と基準回路との比が4:1である。また、図示された実施形態は、変位センサと基準センサの比が4:1である。この比は代表的なものであり、いくつかの実施形態は、より小さいまたはより大きい比、例えば、2:1、3:1、5:1、6:1、7:1、または8:1を有する。重要なのは、基準回路1238(特に基準センサ)は、この基準信号が各感知回路1236a~d上に配置された任意のポストの変位によって乱されないように、各感知回路1236a~dから十分に離れて配置されることである。一実施形態では、基準センサは、各変位センサから少なくとも5mm離れて配置される(例えば、5mm~20mm)。使用中、基準回路1238は、どのポストの真下にも配置されない。
【0158】
プリント回路基板1242は、複数のウェルを有する培養皿と共に使用するように構成される。各ウェルは、上述したように複数のポストを有する。例えば、各感知回路1236a~dは、培養皿の1つのウェルの真下に配置されるように構成されている。有利には、プリント回路基板1242はモジュール式である。例えば、組織標本の高スループット分析を可能にするために、6つのプリント回路基板1242をコンピューティングデバイス(上述のように)に並列に動作可能に接続し、同時に24ウェルの培養皿の下に配置することができる。同様に、単一のプリント回路基板を、図12に示される複数の4:1アレイ、例えば、6つのこのようなアレイで形成することができ、24個の感知回路を提供する。もちろん、この例は代表的なものであり、限定的なものではない。他の実施形態は、異なる数の感知回路および/もしくは基準回路、ならびに/または、異なる感知回路と基準回路の比を有する。
【0159】
図13A~Bは、本開示の代表的な組織分析デバイス1300の態様を示す。組織分析デバイス1300は、繰り返し利用されるように構成されている、すなわち、消耗型アセンブリではない、永久ベース部1344を含む。組織分析デバイス1300は、1つまたは複数の消耗型培養皿1346と関連して利用されるように構成される。各消耗型培養皿は、複数のウェル1348を有し、各ウェル1348は、上述したように、組織標本がポストに貼り付けされた状態で、この中に配置された複数のポストを有する。図13Bを参照されたい。いくつかの実施形態では、組織分析デバイス1300は、培養皿1354aを含む。
【0160】
ベース部分1344は、ポリマー、金属(例えば、1つまたは複数の強磁性金属)、および/またはこれらの組み合わせから構成されてもよい。ベース部1344は、上述したような回路を有するプリント回路基板1342のための安定した土台を提供する。図13Aを参照すると、図示された実施形態のプリント回路基板1342は、6つの4:1センサアレイ1350~fを備え、それぞれ図12に関して上述した通りである。すなわち、各センサアレイ1350a~fは、4つの変位センサと、アレイの各変位センサから等距離に配置された(すなわち、上述のように3次元的に等距離)単一の中央に位置する共有基準センサを含む。図示されたセンサアレイの構成は代表的なものであり、限定的なものではない。図示の実施形態のプリント回路基板1342は、プロセッサおよびメモリを有するコントローラ(例えば、リモートコンピューティングデバイス)と通信するように構成される。これは、組織分析デバイス1300の一部を形成し得る。
【0161】
センサアレイ1350a~fの上に形成されたベース部分1344の開口部は、各ウェルが1つの変位センサの上に直接配置されるが、任意の基準センサの上には配置されないように、培養皿1346を可逆的に保持するように構成されたクレードル1352と共に整列される。したがって、培養皿1346がクレードル1352に配置されると、変位センサは、各ウェル内のポストの変位(例えば、対応する組織標本の収縮による変位)を感知するように構成され、基準センサは、周囲磁場を感知するように構成される。
【0162】
図14は、組織標本の特性を決定するための代表的な方法1400を提供する。この方法は、本開示の組織分析デバイスによって、またはこれに関連して実施され得る。したがって、方法に関して以下で使用される用語は、組織分析デバイスに関連して上で使用される同様の用語と同様の意味を有する。
【0163】
ブロック1402において、組織標本を第1のポストおよび第2のポストに貼り付け、これを、培養皿のウェル内のベース上に配置してもよい。
【0164】
ブロック1404において、例えば、電流による組織標本の刺激に応答して、第2のポストに対する第1のポストの変位を感知する。変位を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように感知することができる。
【0165】
ブロック1406において、第2のポストに対する第1のポストの変位を感知しながら、基準入力を感知する。基準入力を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように感知することができる。
【0166】
ブロック1408において、第2のポストに対する第1のポストの変位に基づく変位信号を出力する。変位信号を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように出力することができる。
【0167】
ブロック1410において、基準入力に基づく基準信号を出力する。基準信号を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように出力することができる。
【0168】
ブロック1412において、変位信号に基づいて変位値を決定する。変位値を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように決定することができる。
【0169】
ブロック1414において、基準値を、基準信号に基づいて決定する。基準値は、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように決定することができる。
【0170】
ブロック1416において、基準値および変位値に基づく基準キャンセルされた変位値を決定する。基準キャンセルされた変位値を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように決定することができる。
【0171】
ブロック1418において、基準キャンセルされた変位値に基づく組織標本の特性を決定する。一実施形態では、特性は、力(例えば、純粋な力)、ストレイン、または負荷である。特性を、図8の組織分析デバイス800に関して上述したように決定することができる。
【0172】
したがって、本開示は、組織標本の特性を決定するように構成された高スループット組織分析デバイスを提供する。特に、本開示の組織分析デバイスおよび方法によって、他の組織特性と共に、組織標本によって及ぼされる純粋な力を決定することが可能となる。
【0173】
本発明を特定の実施形態および例示的な図の観点から説明してきたが、当業者であれば、本発明が説明された実施形態または図に限定されないことを認識するであろう。例えば、上述した様々な実施形態では、組織標本が培養される間の傍ら1対の高分子ポストが記載されている。しかし、他の実施形態では、1つまたは複数の共通のベース上にポスト対のアレイが配置されてもよく、各ポスト対は、ポスト対間で培養され、ポスト対に貼り付けされた組織標本を有する。
【0174】
同様の数字が同様の要素を指す添付図面に関連して上述された発明を実施するための形態は、本開示の代表的な実施形態の説明として意図されており、唯一の実施形態を示すことを意図していない。本開示で説明される各実施形態は、例または説明として提供され、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。本明細書で提供される例示的実施形態は、網羅的であること、または開示された正確な形態に本開示を限定することを意図していない。同様に、本明細書に記載した任意のステップは、同じまたは実質的に同様の結果を達成するために、他のステップ、またはステップの組み合わせと交換可能であってもよい。さらに、任意の実施形態の1つまたは複数の特徴を、1つまたは複数の実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わせて、追加の実施形態を形成してもよく、これらは本開示の範囲内である。
【0175】
一般に、本明細書に開示された実施形態は非限定的であり、本発明者らは、本開示の範囲内の他の実施形態が、図に示され明細書に記載された2つ以上の特定の実施形態からの構造および機能を含み得ることを企図する。本開示の趣旨から逸脱することなく、他の者によって変形および変更がなされ、等価物が採用され得ることが理解されよう。したがって、すべてのこのような変形、変更、および等価物が、請求された本開示の趣旨および範囲内に入ることが明示的に意図される。例えば、本開示は、代表的な実施形態に関して上述した任意の1つまたは複数の特徴の組み合わせを有する追加の実施形態を含む。
【0176】
前述の説明では、本開示の代表的な実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が示されている。しかしながら、当業者には、本明細書に開示された実施形態は、すべての具体的な詳細を具現化しなくても実施され得ることが明らかであろう。いくつかの例では、本開示の様々な態様を不必要に不明瞭にしないために、周知の処理ステップは詳細に説明されていない。
【0177】
本願は、「第1」、「第2」、「垂直」、「水平」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、および「下」などの方向への参照を含むことができる。これらの参照、および本願における他の同様の参照は、特定の実施形態(実施形態が使用のために配置される場合など)の説明および理解を助けることを意図しており、本開示をこれらの方向または位置に限定することを意図するものではない。
【0178】
また、本願は、数量および数を参照することができる。特に明記しない限り、このような数量および数は、制限的なものではなく、本願に関連する可能な数量または数の例示的なものであると考えられる。また、この点で、本願は、数量または数を参照するために、「複数」という用語を使用することができる。この点で、用語「複数」は、例えば、2、3、4、5など、1より多い任意の数であることを意味する。用語「約」、「およそ」などは、記載された値のプラスマイナス5%を意味する。用語「基づく」は、「少なくとも部分的に基づく」を意味する。用語「間」は、これに関連して記載された値を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
【国際調査報告】