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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】気相における表面修飾
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20221202BHJP
   C07F 9/42 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C23C16/18
C07F9/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521539
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020055052
(87)【国際公開番号】W WO2021072245
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/914,356
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン、グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H050AA03
4H050AB80
4H050WA15
4H050WA23
4K030AA24
4K030BA61
4K030CA02
4K030CA05
(57)【要約】
本願の態様は、修飾された表面を有する基材を生成する方法を提供する。いくつかの態様において、表面修飾の方法は、気相にある有機試薬で基材の表面を処理して、その表面の上に有機層を形成することを伴う。いくつかの態様において、酸化表面の上に安定した表面コーティングを形成する方法が提供される。有機ホスホリルハライドが使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性表面にリン含有層を形成する方法であって、その方法は、
気相にあるホスホリルハライドで前記金属性表面を処理することを含み、前記ホスホリルハライドは前記金属性表面に前記リン含有層を形成する、方法。
【請求項2】
前記金属性表面は、金属表面又は金属酸化物表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属性表面は、遷移金属酸化物表面である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属性表面は、酸化チタン表面、酸化アルミニウム表面、酸化ジルコニウム表面、酸化鉄表面、酸化スズ表面、又は酸化タンタル表面である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属性表面は、二酸化チタン(TiO)表面である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ホスホリルハライドはホスホリルジハライドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスホリルハライドは有機ホスホリルハライドであり、前記リン含有層は有機リン層である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機リン層は有機ホスホナート層である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ホスホリルハライドは有機ホスホリルジハライドである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ホスホリルハライドは有機ホスホリルジクロリドである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ホスホリルハライドは、約132g/モル~260g/モルの分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ホスホリルハライドは、約132g/モル~232g/モルの分子量を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ホスホリルハライドは、約203g/モル~232g/モルの分子量を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ホスホリルハライドは、式(I):
【化1】
のもの又はその塩であり、
の各例は、独立してハロゲンであり、
は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリール、-OR、若しくは-N(Rであり、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は酸素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は窒素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
は、任意選択で置換されたアルキルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
は、任意選択で置換されたC1~10アルキルである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
は、任意選択で置換されたC1~8アルキルである、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
は非置換のC1~8アルキルである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
は、任意選択で置換されたC6~8アルキルである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
は非置換のC6~8アルキルである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記式(I)の化合物は、
【化2】
からなる群から選択される、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ホスホリルハライドは、下記式:
【化3】
のもの又はその塩であり、
は、任意選択で置換されたアルキレンである、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
は、任意選択で置換されたC1~6アルキレンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
は、非置換のC1~6アルキレンである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記ホスホリルハライドは、式(II):
【化4】
のもの又はその塩であり、
はハロゲンであり、
の各例は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリール、-OR、若しくは-N(Rであるか、或いは任意選択で2つのR基が、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は酸素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は窒素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
の各例はClである、請求項14から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ホスホリルハライドはホスホリルトリハライドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ホスホリルハライドはホスホリルトリクロリドである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
気相にある少なくとも1種のクロロシランで前記金属性表面を処理することをさらに含み、前記少なくとも1種のクロロシランは、前記金属性表面の上にコーティング層を形成する、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1種のクロロシランは、クロロシロキサン化合物、アルキルクロロシラン化合物、又はこれらの双方である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種のクロロシランは、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティング層の少なくとも一部は、前記リン含有層上に形成される、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
基材の表面を修飾する方法であって、前記方法は、
第1の表面部分及び第2の表面部分を有する基材を、気相にあるホスホリルハライドで処理することを含み、前記ホスホリルハライドは、リン含有層を前記第1の表面部分に優先的に形成し、前記第1の表面部分及び前記第2の表面部分は異なる表面特性を有する、方法。
【請求項34】
前記第1の表面部分は、金属表面又は金属酸化物表面である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の表面部分は、遷移金属酸化物表面である、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の表面部分は、酸化チタン表面、酸化アルミニウム表面、酸化ジルコニウム表面、酸化鉄表面、酸化スズ表面、又は酸化タンタル表面である、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の表面部分は、二酸化チタン(TiO)表面である、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の表面部分は、透明表面又はガラス表面である、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の表面部分は、シリカ(SiO)表面である、請求項33から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ホスホリルハライドは、前記リン含有層を前記第1の表面部分に約2倍~約60倍の選択性で優先的に形成する、請求項33から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ホスホリルハライドは、前記リン含有層を前記第1の表面部分に約4倍~約40倍の選択性で優先的に形成する、請求項33から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ホスホリルハライドは、前記リン含有層を前記第1の表面部分に約8倍~約20倍の選択性で優先的に形成する、請求項33から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
気相にある少なくとも1種のクロロシランで前記基材を処理することをさらに含み、前記少なくとも1種のクロロシランは、第1の表面部分及び第2の表面部分の上にコーティング層を形成する、請求項33から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1種のクロロシランは、クロロシロキサン化合物、アルキルクロロシラン化合物、又はこれらの双方である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1種のクロロシランは、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記コーティング層の少なくとも一部は、前記リン含有層上に形成される、請求項43から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ホスホリルハライドは有機ホスホリルハライドであり、前記リン含有層は有機リン層である、請求項33から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記有機リン層は有機ホスホナート層である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
気相にある前記ホスホリルハライドで前記基材を処理する前に、カップリング部分を含む官能化剤で前記基材を処理することをさらに含み、前記官能化剤は、前記第2の表面部分に優先的に結合することによって、前記第2の表面部分を官能化する、請求項33から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記カップリング部分は、共有結合性カップリング部分又は非共有結合性カップリング部分である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記共有結合性カップリング部分は、トランス-シクロオクテン(TCO)部分、テトラジン部分、アジド部分、アルキン部分、アルデヒド部分、イソシアナート部分、N-ヒドロキシスクシンイミド部分、チオール部分、アルケン部分、ジベンゾシクロオクチル部分、ビシクロノニン部分、又はチアミンピロリン酸部分である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記非共有結合性カップリング部分は、ビオチン部分、アビジンタンパク質、ストレプトアビジンタンパク質、レクチンタンパク質、又はSNAPタグである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記官能化剤は、シリカに優先的に結合可能な部分を含む、請求項49から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記シリカに優先的に結合可能な部分はシランである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記シランは、モノエトキシシラン、メトキシシラン、ジエトキシシラン、トリクロロシラン、又はジエトキシメトキシシランである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記官能化剤は、ビオチン化シランを含む、請求項49から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記基材は、サンプルウェルのアレイを備える、請求項33から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記アレイのサンプルウェルは上部開口部を備え、前記上部開口部は、前記上部開口部の遠位にある底面まで前記基材内に延びており、前記サンプルウェルは、前記上部開口部と前記底面との間に配置された側壁面を備える、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記側壁面は第1の表面部分を備え、前記底面は第2の表面部分を備え、前記ホスホリルハライドは、前記リン含有層を前記サンプルウェルの前記側壁面に優先的に形成する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
サンプルウェル表面を官能化する方法であって、
(a)金属酸化物表面及びシリカ(SiO)表面を有するサンプルウェルを、カップリング部分を含む官能化剤で処理する工程であって、前記官能化剤は、前記シリカ表面に優先的に結合することによって、前記サンプルウェル表面を官能化することと、
(b)気相にある有機試薬で(a)のサンプルウェルを処理する工程であって、前記有機試薬は、有機層を前記金属酸化物表面に優先的に形成することと
を含む、方法。
【請求項61】
(c)前記金属酸化物表面及びシリカ表面の上にコーティング層を形成する1種以上の付加的な試薬で前記サンプルウェルを処理する工程をさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記金属酸化物表面の上のコーティング層は前記サンプルウェルの側壁に形成され、前記シリカ表面の上のコーティング層は前記サンプルウェルの底面に形成される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記金属酸化物表面は、二酸化チタン(TiO)表面である、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記官能化剤は、シリカに優先的に結合可能な部分を含む、請求項60から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記シリカに優先的に結合可能な部分はシランである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記シランは、モノエトキシシラン、メトキシシラン、ジエトキシシラン、トリクロロシラン、又はジエトキシメトキシシランである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記カップリング部分は、共有結合性カップリング部分又は非共有結合性カップリング部分である、請求項60から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記共有結合性カップリング部分は、トランス-シクロオクテン(TCO)部分、テトラジン部分、アジド部分、アルキン部分、アルデヒド部分、イソシアナート部分、N-ヒドロキシスクシンイミド部分、チオール部分、アルケン部分、ジベンゾシクロオクチル部分、ビシクロノニン部分、又はチアミンピロリン酸部分である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記非共有結合性カップリング部分は、ビオチン部分、アビジンタンパク質、ストレプトアビジンタンパク質、レクチンタンパク質、又はスナップタグである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記官能化剤はビオチン化シランを含む、請求項60から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記有機試薬は有機ホスホリルハライドであり、前記有機層は有機リン層である、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記1種以上の付加的な試薬は気相にある、請求項61から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記1種以上の付加的な試薬はシランであり、前記コーティング層はシラン層である、請求項61から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記1種以上の付加的な試薬はクロロシランである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記付加的な試薬の1種以上は、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
前記カップリング部分に結合する目的の分子を前記サンプルウェルに接触させる工程をさらに含み、それによって、前記目的の分子を前記サンプルウェルの表面にカップリングする、請求項60から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記目的の分子は生体分子である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記生体分子は核酸又はポリペプチドである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記ポリペプチドはタンパク質又はその断片である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記ポリペプチドは重合酵素である、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記重合酵素は核酸ポリメラーゼである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記ポリペプチドは、ポリペプチドシークエンシング反応のための基質である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記ポリペプチドは、ポリペプチドシークエンシング反応のための基質ではない、請求項79から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記ポリペプチドは、核酸シークエンシング反応を促進する、請求項83に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気相における表面修飾に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイベースのプラットフォームは、生体分子を検出及び分析するための超並列技術に広く使用されている。これらのプラットフォームの例としては、バイオセンシングに使用されるマイクロアレイ及び単一分子シークエンシングに使用されるピクセルアレイが挙げられる。アレイは、一般に単一デバイスの表面上における非常に小さな領域の集まりを含んでおり、各領域が独立してサンプルをアッセイすることができる。これらの領域は、所望の化学種に対して反応性がより高くなるか、又はより低くなるように選択的に修飾された表面部分を備えることができる。特定のアッセイは、所望の表面官能性を除去したりデバイス表面の下部材料を損傷したりする可能性のある腐食性溶液又は他の過酷な条件の使用を必要とする。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で開示される技術の態様は、気相にある1種以上の試薬を使用する表面修飾の方法に関する。いくつかの実施形態において、本願は、液相試薬を従来使用する表面修飾プロセスにおける気相試薬の使用に関する。いくつかの態様において、本願は、気相試薬を使用して、基材表面にリン含有層を形成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本願は、基材表面に安定した表面コーティングを形成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本願は、基材表面の選択的に修飾された部分を調製する方法を提供する。
【0004】
いくつかの態様において、本願は、金属性表面にリン含有層を形成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、気相にあるホスホリルハライド(phosphoryl halide)で金属性表面を処理することを含み、ホスホリルハライドは金属性表面にリン含有層を形成する。いくつかの実施形態において、この方法は、金属性表面を気相にある少なくとも1種のクロロシランで処理することをさらに含み、少なくとも1種のクロロシランは、金属性表面の上にコーティング層を形成する。ある実施形態において、少なくとも1種のクロロシランは、クロロシロキサン化合物、アルキルクロロシラン化合物、又はこれらの双方である。ある実施形態において、少なくとも1種のクロロシランは、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である。いくつかの実施形態において、コーティング層の少なくとも一部はリン含有層上に形成される。
【0005】
いくつかの態様において、本願は、基材の表面を修飾する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、気相にあるホスホリルハライドで第1の表面部分及び第2の表面部分を有する基材を処理することを含み、ホスホリルハライドはリン含有層を第1の表面部分に優先的に形成する。いくつかの実施形態において、第1の表面部分及び第2の表面部分は異なる表面特性を有する。いくつかの実施形態において、この方法は、気相にある少なくとも1種のクロロシランで基材を処理することをさらに含み、少なくとも1種のクロロシランは、第1の表面部分及び第2の表面部分の上にコーティング層を形成する。ある実施形態において、少なくとも1種のクロロシランは、クロロシロキサン化合物、アルキルクロロシラン化合物、又はこれらの双方である。ある実施形態において、少なくとも1種のクロロシランは、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である。ある実施形態において、コーティング層の少なくとも一部はリン含有層上に形成される。いくつかの実施形態において、この方法は、気相にあるホスホリルハライドで基材を処理する前に、カップリング部分を含む官能化剤で基材を処理することをさらに含み、官能化剤は第2の表面部分に優先的に結合することによって、第2の表面部分を官能化する。ある実施形態において、第1の表面部分は金属表面又は金属酸化物表面である。ある特定の実施形態において、第1の表面部分は遷移金属酸化物表面である。ある実施形態において、第2の表面部分は透明表面又はガラス表面である。ある実施形態において、第2の表面部分はシリカ(SiO2)表面である。いくつかの実施形態において、第1の表面部分は金属性表面又はプラスチック表面であり、第2の表面部分は透明表面又はガラス表面(例えばシリカ表面)である。
【0006】
ある実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を第1の表面部分に約2倍~約60倍の選択性で優先的に形成する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を第1の表面部分に約4倍~約40倍の選択性で優先的に形成する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を第1の表面部分に約8倍~約20倍の選択性で優先的に形成する。
【0007】
いくつかの態様において、本願は、サンプルウェル表面を官能化する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、金属酸化物表面及びシリカ表面を有するサンプルウェルを、カップリング部分を含む官能化剤で処理することを含む。いくつかの実施形態において、官能化剤は、シリカ表面に優先的に結合することによって、サンプルウェル表面を官能化する。いくつかの実施形態において、この方法は、サンプルウェルを気相にある有機試薬で処理することをさらに含み、有機試薬は有機層を金属酸化物表面に優先的に形成する。いくつかの実施形態において、有機試薬はホスホリルハライドであり、有機層はリン含有層である。いくつかの実施形態において、有機試薬は有機ホスホリルハライドであり、有機層は有機リン層である。
【0008】
いくつかの実施形態において、この方法は、金属酸化物表面及びシリカ表面の上にコーティング層を形成する1種以上の付加的な試薬でサンプルウェルを処理することをさらに含む。ある実施形態において、金属酸化物表面の上のコーティング層は、サンプルウェルの側壁に形成され、シリカ表面の上のコーティング層は、サンプルウェルの底面に形成される。いくつかの実施形態において、1種以上の付加的な試薬は気相にある。いくつかの実施形態において、1種以上の付加的な試薬はシランであり、コーティング層はシラン層である。いくつかの実施形態において、1種以上の付加的な試薬はクロロシランである。いくつかの実施形態において、付加的な試薬の1種以上は、ヘキサクロロジシロキサン、ヘキシルトリクロロシラン、又はこれらの双方である。いくつかの実施形態において、この方法は、サンプルウェルをカップリング部分に結合する目的の分子と接触させることによって、目的の分子をサンプルウェル表面にカップリングすることを含む。いくつかの実施形態において、目的の分子は核酸又はポリペプチドなどの生体分子である。ある実施形態において、ポリペプチドはタンパク質又はその断片である。ある特定の実施形態において、カップリングされたポリペプチドは、ポリペプチドシークエンシングのための基質である、つまり、ポリペプチド自体がシークエンシングされることになる。タンパク質、ポリペプチド及びアミノ酸をシークエンシングして特定する方法は、国際公開第2020/102741号に開示されており、該特許文献は参照により余すところなく本明細書に援用される。特定の実施形態において、ポリペプチドは重合酵素である。ある特定の実施形態において、重合酵素は、例えば、核酸シークエンシング反応で使用するための、核酸ポリメラーゼである。このような核酸シークエンシング反応では、カップリングされたポリペプチド自体はシークエンシングされず、代わりに、核酸基質のシークエンシングを促進する。ポリヌクレオチド、核酸及びヌクレオチドをシークエンシングして特定する方法は、国際公開第2016/187580号に開示されており、該特許文献は参照により余すところなく本明細書に援用される。
【0009】
従って、いくつかの態様において、本願は、ホスホリルハライドを使用する表面修飾の方法を提供する。いくつかの実施形態において、本願のホスホリルハライドは、式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
のもの又はその塩であり、ここで、Xの各例は独立してハロゲンであり、Rは、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリール、-OR、若しくは-N(Rであり、Rの各例は独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は酸素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、Rの各例は独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は窒素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成する。
【0012】
本発明のある実施形態の詳細が本明細書に示される。本発明の他の特徴、目的及び効果は、詳細な説明、図面、実施例及び特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を示しており、記載とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
図1図1A図1Cは、本願による表面修飾のためワークフローの例を示す。図1Aは、サンプルウェルの選択的に官能化された表面部分を調製するためのワークフローを示す。図1Bは、バックフィルプロセスを用いてサンプルウェル表面をコーティングするためのワークフローを示す。図1Cは、官能化された表面に目的の分子をカップリングするためのワークフローを示す。
図2図2は、本願による修飾された表面を有するサンプルウェルの例を示す。
図3図3は、X線光電子分光法(XPS)から得られたスペクトル及び濡れ性測定から得られた画像を示し、これらは全体として、金属酸化物表面に対する気相ホスホン酸ジクロリドの高い選択性を示した。
図4A図4A図4Bは、XPSから得られたスペクトル及び原子間力顕微鏡(AFM)から得られた画像を示す。図4Aは、液相ヘキシルホスホン酸による処理によって形成された表面コーティングについて得られたデータを示す。
図4B図4Bは、気相ホスホン酸ジクロリドによる処理によって形成された表面コーティングについて得られたデータを示す。
図5図5は、シラン表面コーティングの安定性試験についてXPSによって得られたデータを示す。
図6図6は、XPSによって測定した、表面コーティングのリンのパーセンテージに対するケイ素のパーセンテージのプロットを示す。
図7図7は、ビオチン化シランの特有なフラグメントピークを特定するために用いられた対照実験について飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって得られたスペクトルを示す。
図8図8は、シリカ表面及び二酸化チタン表面における表面コーティングについてTOF-SIMSによって検出されたフラグメントピークの相対量を示す。
図9図9は、図8に示したデータから特定された選択性計算値を示す。
図10図10は、修飾された表面を有するアレイの化学的及び物理的特性評価中に得られた画像及びスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願の態様は、修飾された表面を有する基材を調製するために気相試薬を使用する方法に関する。いくつかの態様において、本願は、基材の金属性表面又はプラスチック表面を修飾する方法を提供する。いくつかの実施形態において、基材は、基材の金属性表面又はプラスチック表面にリン含有層を形成するために、気相にあるホスホリルハライドで処理される。いくつかの実施形態において、基材は、基材の金属性表面又はプラスチック表面の上にコーティング層を形成するために、少なくとも1種のシランで処理される。いくつかの実施形態において、コーティング層の少なくとも一部はリン含有層上に形成される。いくつかの態様において、異なる表面特性を備えた表面部分を有するサンプルウェルなどの基材の選択的に修飾された表面部分を調製する方法を本願は提供する。
【0015】
いくつかの態様において、基材の露出表面を修飾するために用いられて、いくつかの利点の中でも特に、選択的な表面の官能化を可能にし、基材表面に耐腐食性及び/又は防汚性を与えることができる表面修飾技術の発見に本願は関する。金属性表面又はプラスチック表面にリン含有層を形成するための以前の技術は、液相試薬の使用を伴っていた。本願の気相試薬を使用してリン含有層を形成することができ、これらの気相試薬は、以前の液相表面修飾プロセスと比較して、調製時間を大幅に短縮し、化学廃棄物を低減することを本発明者らは認識及び理解した。このような試薬の使用により液体に関連する工程段階が最小限となり、それにより全体工程のスケーラビリティ並びにコーティングの一貫性及び均一性が有利に改善されることをさらに認識及び理解した。
【0016】
いくつかの態様において、本願は、アレイ、バイオセンサー又は他のアッセイデバイスなどの基材を露出表面の下部材料の保護によって腐食性溶液により耐えられるようにすることができる安定した表面コーティングの発見に関する。例えば、ある生物学的アッセイは、基材の材料を腐食したり基材表面から官能性化学部分を除去したりする可能性のある腐食性溶液又は他の過酷な条件(例えば高塩溶液、複数溶液洗浄、等)の使用を必要とする。本発明者らは、ある気相試薬が基材表面に非常に安定した表面コーティングを形成するために使用できることを認識及び理解した。従って、いくつかの態様において、本願は、過酷なアッセイ条件下で且つ/又は長期間にわたって基材を安定させる、基材表面を修飾する方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様において、本願は、金属性表面又はプラスチック表面上のリン含有層が金属性表面又はプラスチック表面の上におけるシランコーティング層の形成を増進するという発見に関する。表面修飾のための以前の技術は、シラン処理(silanization)による官能化に対して金属性表面を不動態化するために液体ホスホン酸誘導体を使用しており、これは、不動態化層がシラン処理を阻止して非金属性表面の官能化を促進するという以前の仮定に基づいていた。驚いたことに、ホスホン酸誘導体を使用して形成されたリン含有層が金属性表面の上におけるシラン処理を促進することを本発明者らは見い出した。これらの発見に基づいて、本発明者らは、気相にあるホスホン酸誘導体を使用して金属性表面又はプラスチック表面にリン含有層を形成する前に、非金属性表面を官能化することを伴う技術を開発した。これにより、リン含有層は、下流のシラン処理が金属性表面又はプラスチック表面の上にシランコーティング層を形成するための下地層として機能する。
【0018】
上述した利点に加えて、表面コーティングは生物学的アッセイにおける試薬に対してより好ましい界面、例えば生物学的反応における試薬成分の付着を低減又は排除する防汚表面コーティングなどを提供することができる。本願に従って使用され得る表面コーティング及び表面修飾プロセスの例は、「SUBSTRATES HAVING MODIFIED SURFACE REACTIVITY AND ANTIFOULING PROPERTIES IN BIOLOGICAL REACTIONS(生物学的反応における表面反応性及び防汚性を改良した基材)」と題された米国特許出願公開第20180326412号に記載されており、該特許文献は、参照により本願によって余すところなく援用される。
【0019】
いくつかの態様の中でも特に、金属性表面又はプラスチック表面にリン含有層を形成する方法を本願は提供する。いくつかの実施形態において、金属性表面は、金属、金属酸化物(例えば酸化物アニオン、水酸化物)又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、金属性表面は、1種以上の遷移金属を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物表面は、遷移性金属(即ち遷移金属)酸化物表面である。いくつかの実施形態において、金属酸化物表面は、酸化チタン(例えば二酸化チタン)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化スズ及び/又は酸化タンタルを含み得る。ある実施形態において、金属性表面は、二酸化チタン(TiO2)表面である。いくつかの実施形態において、プラスチック表面は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、金属性表面又はプラスチック表面は、本明細書に記載される表面修飾プロセスの前又はその初めに、前処理されるか、又は浄化され得る。いくつかの実施形態において、表面は、表面修飾プロセスの前又はその初めに、プラズマ洗浄プロセスに供されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、表面は、プラズマ、ラジカル、励起種及び/又は原子種に曝露されてもよい。いくつかの実施形態において、表面は、水素、アンモニア、及び/又はこれらの混合物に曝露されるとともに熱処理されてもよい。いくつかの実施形態において、表面は、表面にリン含有層を形成する前に、酸素プラズマ、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メタノール中の水酸化カリウム、硫酸中の過酸化水素(例えば「ピラニア」溶液)、硫酸中の硝酸、アンモニア中の過酸化水素、硫酸、フッ化水素酸、EDTA、又はこれらの処理剤の組み合わせで処理される。いくつかの実施形態において、前処理された表面は、露出した水酸化物アニオン官能基及び/又は酸化物アニオン官能基を備える。
【0021】
本明細書で用いる場合、いくつかの実施形態において、リン含有層とは、気相前駆体(例えば気相にあるホスホリルハライド)から表面上に吸着したリン含有分子の集合体を指す。いくつかの実施形態において、この層のリン含有分子は、有機尾部と末端リン含有部分とを含み、該分子は、有機尾部がリン含有部分と比較して表面から遠位に位置するように、リン含有部分を通じて表面上に吸着される。リン含有部分の例としては、ホスホナート又はホスホン酸、ホスホニット、ホスファート、ホスフィット、ホスホンアミダート(phosphonamidate)、ホスホロアミダート(phosphoramidate)及び当該技術分野において既知の他のこのような有機リン官能基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。従って、いくつかの実施形態において、リン含有層は、有機ホスホナート層などの有機オルガノリン層である。いくつかの実施形態において、リン含有層は、気相にある前駆体試薬から金属性表面又はプラスチック表面に自発的に吸着する分子の比較的秩序だった集合体である自己組織化単分子膜(SAM)である。
【0022】
本願によれば、リン含有層(例えば有機層)は、気相にある試薬(例えばホスホリルハライドなどの気相にある有機試薬)で表面を処理することによって、金属性表面又はプラスチック表面に形成される。いくつかの態様において、基材の1つ以上の表面部分に安定した表面コーティングを形成する方法を本願は提供する。いくつかの実施形態において、安定した表面コーティングとは、リン含有層とコーティング層(例えばシランコーティング層)とを含む表面コーティングを指す。
【0023】
いくつかの実施形態において、コーティング層は、リン含有層が金属性表面又はプラスチック表面に形成された後に、金属性表面又はプラスチック表面の上に形成される。いくつかの実施形態において、コーティング層の一部分は金属性表面又はプラスチック表面上に形成され、コーティング層の別の部分はリン含有層上に形成される。いくつかの実施形態において、コーティング層の一部分は、基材の第1の表面部分の上(例えば金属性表面又はプラスチック表面の上)に形成され、コーティング層の別の部分は、基材の第2の表面部分の上(例えば透明表面又はガラス表面の上)に形成される。いくつかの実施形態において、コーティング層は、気相にある少なくとも1種のシランで表面を処理することによって形成される。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のシランは、クロロシロキサン、アルキルクロロシラン、又はこれらの混合物などのクロロシランである。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のシランは、金属性表面又はプラスチック表面に吸着する。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のシランは、リン含有層に吸着する。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のシランは、透明表面又はガラス表面に吸着する。
【0024】
本明細書で用いられる場合、気相試薬又は気相にある試薬とは、気体から固体への堆積反応を受け得る分子であるか、又はそのような分子を含む、気体から固体への前駆体を指す。いくつかの実施形態において、気体とは、ガス、蒸気、及び/又はエアロゾルを指す。いくつかの実施形態において、気体とは、ガス相物質(例えばガス若しくは蒸気)、又はガス、蒸気若しくはエアロゾルによって占められ得る容積中に他の形で分散した物質(例えば、容積中に噴霧若しくは噴射された液滴)を指す。気体から固体への堆積とは、気相にある分子又は材料が1種以上の固相状態の堆積生成物を形成する反応を指す。例えば、いくつかの実施形態において、気体から固体への堆積反応は分解反応である。気体から固体への分解反応は、少なくとも1種の気相状態生成物と、少なくとも1種の固相状態生成物とを生じ得る。気相状態生成物とは、その物質の物理的状態がガス、蒸気又はエアロゾルである分子を指す。固相状態生成物とは、その物質の物理的状態が固体である原子、イオン、化合物、分子又はこれらの組み合わせを指す。気体から固体への前駆体の固相堆積生成物は、本明細書に記載されるリン含有層及び/又はコーティング層などの固体材料の形成に寄与し得る。
【0025】
従って、いくつかの実施形態において、リン含有層及び/又はコーティング層の形成は、気相にある1種以上の試薬の化学的及び/又は物理的変換を伴い得る。例えば、気相にあるホスホリルハライドによる表面の処理中、ホスホリルハライドは、ハライドガスの形態にある気相生成物と、表面(例えばリン含有層)上においてホスホリル層の形態にある固相生成物とに分解し得る。いくつかの実施形態において、リン含有層は、表面へのホスホリルの共有結合を通じて形成される。例として、ホスホリルのリン原子が表面上の水酸化物アニオン官能基及び/又は酸化物アニオン官能基によって結合され得、それによりホスホリルはホスホナート基を通じて共有結合される。いくつかの実施形態において、リン含有層は、共有結合を形成することなく表面に形成され、例えばファンデルワールス、水素結合又は双極子力によって適所に保持される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本願の気相試薬は、化学気相堆積法(CVD)、原子層堆積法(ALD)、分子線エピタキシー法(MBE)、物理気相堆積法(PVD)又はこれらの堆積プロセスの任意の組み合わせに適し得る。気相試薬はCVD前駆体及び/又はALD前駆体であってもよい。CVD及びALDは、気相前駆体から固体材料を堆積させるための気体から固体への堆積プロセスの限定されない例である。CVDプロセスの例としては、有機金属CVD(MOCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、マイクロ波プラズマ支援CVD(MWCVD又はMPCVD)、熱フィラメントCVD(HFCVD)、光開始CVD(PICVD)、レーザCVD(LCVD)、気相エピタキシー(VPE)及びALDが挙げられるが、これらに限定されるものではない。気相試薬の堆積は、基材又はその受容面との試薬の反応を伴い得る。いくつかの実施形態において、基材は、本明細書に記載されるリン含有層及び/又はコーティング層などの固体材料を堆積させるために、複数の種類の気相試薬に同時に及び/又は連続して曝露される。
【0027】
いくつかの態様において、本願は表面を修飾するための方法及び組成物を提供する。本明細書で用いられる場合、いくつかの実施形態において、表面とは、基材又は固体支持体の表面を指す。いくつかの実施形態において、基材とは、本明細書に記載される層又はコーティングなどの堆積された材料を支持することができる受容面などの表面を有する材料、層又は他の構造物を指す。いくつかの実施形態において、基材の受容面は、任意選択で、サンプルウェルのアレイなどのナノスケール又はマイクロスケールの凹状特徴部を含む1つ以上の特徴部を有してもよい。いくつかの実施形態において、アレイとは、センサ又はサンプルウェルなどの要素を平面状に配置したものである。アレイは、1次元又は2次元であり得る。1次元アレイとは、第1の次元において1列又は1行の要素を有し、第2の次元において複数の列又は行を有するアレイである。第1の次元及び第2の次元における列又は行の数は、同一であってもよいし、同一でなくてもよい。いくつかの実施形態において、アレイは、例えば、10個、10個、10個、10個、10個、又は10個のサンプルウェルを含み得る。
【0028】
ある実施形態において、上記アレイのサンプルウェルは上部開口部を備え、上部開口部は上部開口部の遠位にある底面まで基材内に延びており、またサンプルウェルは、上部開口部と底面との間に配置された側壁面を備える。ある実施形態において、側壁面は第1の表面部分を備え、底面は第2の表面部分を備え、ホスホリルハライドは、リン含有層をサンプルウェルの側壁面に優先的に形成する。
【0029】
いくつかの態様において、本願は、サンプルウェルの1つ以上の表面を修飾する方法を提供する。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、目的の分子又は反応の局在化を可能にする基材の物理的又は化学的特質であり得る限定領域を備える。いくつかの実施形態において、限定領域は、目的の分子を結合する基材の表面の個別領域、例えば、そのような表面にカップリングされたポリペプチド又は核酸を有するサンプルウェルの底面などであってもよい。いくつかの実施形態において、サンプルウェルは、基材内又はデバイス内に作られ、画定された形状及び容積を有する空洞又はウェルを備える。サンプルウェルは、例えば、米国出願第16/555,902号に開示されているように、当該技術分野で説明されている技術を用いて作製することができ、上記特許文献の内容は参照により余すところなく本明細書に援用される。
【0030】
図1Aは、本願の態様によるサンプルウェル表面の官能化の例を概略的に示している。サンプルウェル100の断面図が示されており、サンプルウェルは金属性表面102及びシリカ表面104を有する。例示のため、サンプルウェル100は、上面から底面に延びる側壁によって画定されるように示されており、金属性表面102は側壁及び上面に形成されており、シリカ表面104は底面に形成されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、サンプルウェル100を画定する特徴部(側壁、上面、底面)のうちの任意のものが、異なる表面特性又は付加的な表面特性を有していてもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、サンプルウェル100は、シリカ表面104の一部分が側壁に形成され、シリカ表面104の別の部分は底面に形成されるように、底面の材料内に延びる側壁によって画定される。この構成では、サンプルウェル100の側壁は、底面の近位にある表面部分に形成されたシリカ表面104と、底面から遠位にある表面部分に形成された金属性表面102とを含むであろう。
【0032】
プロセス(I)では、シリカ表面104に優先的に結合する官能化剤108でサンプルウェル100を処理して官能化表面106を形成する。官能化剤108は、サンプルウェル100の底面にカップリング官能性を提供するカップリング部分を含む。示したように、いくつかの実施形態において、官能化表面106は、官能化剤108と、カップリング部分を含まないシラン110とを含む。従って、いくつかの実施形態において、官能化表面106は、プロセス(I)において、官能化剤108とシラン110とを含有する混合物でサンプルウェル100を処理することによって形成される。いくつかの実施形態において、官能化剤108はビオチン化シラン(例えばビオチン-PEG-シラン)であり、シラン110は非ビオチン化シラン(例えばPEG-シラン)である。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される官能化剤はカップリング部分を含む。いくつかの実施形態において、カップリング部分は共有結合性カップリング部分である。共有結合性カップリング部分の例としては、トランス-シクロオクテン(TCO)部分、テトラジン部分、アジド部分、アルキン部分、アルデヒド部分、イソシアナート部分、N-ヒドロキシスクシンイミド部分、チオール部分、アルケン部分、ジベンゾシクロオクチル部分、ビシクロノニン(bicyclononyne)部分、及びチアミンピロリン酸部分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。共有結合性カップリング部分を含む官能化剤の例としては、アジド-PEG-シラン(例えばアジド-PEG3-シラン、アジド-PEG5-シラン)及びアジド-アルキルシラン(例えばアジド-C11-シラン)などのアジド-シラン及びアジド-オルガノシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、カップリング部分は非共有結合性カップリング部分である。非共有結合性カップリング部分の例としては、ビオチン部分、アビジンタンパク質、ストレプトアビジンタンパク質、レクチンタンパク質、及びSNAPタグが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、官能化剤は、シリカに優先的に結合可能な部分を含む。
【0034】
ある実施形態において、シリカに優先的に結合可能な部分はシランである。ある実施形態において、上記シランは、モノエトキシシラン、メトキシシラン、ジエトキシシラン、トリクロロシラン、又はジエトキシメトキシシランである。ある実施形態において、官能化剤は、ビオチン化シランを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、官能化剤108及びシラン110は、官能化されるべき表面上におけるカップリング部分の所望の密度に基づいて決定される比率で提供され得る。例えば、いくつかの実施形態において、官能化表面は、官能化剤に対してシランが少なくとも5倍過剰のモル比で官能化剤及びシランを含有する混合物を使用して形成される。いくつかの実施形態において、混合物は、官能化剤に対して約5倍過剰~約250倍過剰のシラン(例えば、官能化剤に対して、約5倍~100倍、約5倍~約50倍、約50倍~約250倍、約100倍~約250倍、又は約50~約150倍過剰のシラン)を含有する。
【0036】
プロセス(II)では、気相にあるホスホリルハライドでサンプルウェル100を処理してリン含有層112を形成する。示したように、いくつかの実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層112を金属性表面102に優先的に形成する。いくつかの実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を金属性表面(例えばサンプルウェルの第1の表面部分)に約2倍~約60倍の選択性で優先的に形成する。いくつかの実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を金属性表面に約4倍~約40倍の選択性で優先的に形成する。いくつかの実施形態において、ホスホリルハライドは、リン含有層を金属性表面に約8倍~約20倍の選択性で優先的に形成する。
【0037】
プロセス(III)では、少なくとも1種のシランでサンプルウェル100を処理して金属性表面102及びシリカ表面104の上にコーティング層114を形成する。いくつかの実施形態において、コーティング層114は、1種以上のシラン(例えば1種類のシラン又は複数の種類のシランの混合物)を含有する単一組成物でサンプルウェル100を処理することによって形成される。例えば、いくつかの実施形態において、コーティング層114は2種類以上のシランの共堆積によって形成される。いくつかの実施形態において、コーティング層114は、図1Bに示すように、バックフィルシラン処理(backfill silanization)によって形成される。
【0038】
図1Bは、バックフィルシラン処理によってコーティング層114を形成する例を概略的に示している。プロセス(i)では、サンプルウェル100を第1のシランで処理して金属性表面102及びシリカ表面104の上に部分的なコーティング層116を形成する。プロセス(ii)では、サンプルウェル100を第2のシランで処理してコーティング層114を形成する。いくつかの実施形態において、第1のシランと第2のシランとは同一である。いくつかの実施形態において、第1のシランと第2のシランとは異なる(例えば異なる種類のシランである)。
【0039】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるコーティング層は、気相にある1種以上のシランで表面を処理することによる堆積、共堆積、又はバックフィルシラン処理によって、表面の上に形成することができる。気相処理に使用できるシランは、真空において好ましい沸点又は引火点(例えば約200℃未満)を有した任意のシラン化合物を含む。コーティング層を形成するために使用され得る気相にあるシランの例としては、ハロゲン化シラン(例えばクロロシロキサン、アルキルクロロシラン、アルキルジクロロシラン、アルキルトリクロロシランなどのクロロシラン)、アルコキシシラン(例えばモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、及びトリアルコキシシラン)、ケイ素水素化物(例えばヘキシルシラン)、並びに線状及び環状の双方を含むアザシラン(例えばヘキサメチルジシラザン)、並びに線状及び環状の双方を含むチアシラン(thiasilanes)(例えば2,2,4-トリメチル-1-チア-2-シラシクロペンタン)が挙げられる。クロロシランの具体的な例としては、ヘキサクロロジシロキサン、クロロ(ヘキシル)ジメチルシラン、ヘキシルジクロロシラン及びヘキシルトリクロロシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルコキシシランの具体的な例としては、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン及びヘキシルトリメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
図1A図1Bで一般的に示すように、いくつかの実施形態において、コーティング層114の一部は、官能化剤108のカップリング部分が目的の分子を官能化表面106にカップリングするために依然として利用可能となるように、シリカ表面104の上に形成される。図1Cは、目的の分子が基材の官能化表面にカップリングされる例を示している。プロセス(IV)では、官能化剤108のカップリング部分に結合する目的の分子118をサンプルウェル100と接触させる。目的の分子の例は、本明細書に記載されており、核酸及びポリペプチド(例えば、ポリペプチドシークエンシング反応に使用するためのタンパク質及びタンパク質断片、並びに核酸シークエンシング反応に使用するための核酸ポリメラーゼなどの重合酵素)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0041】
図2は、本願による表面修飾を有したサンプルウェル100の例を示す断面図である。図2に示すように、サンプルウェル100は、クラッド層204(例えばSiO)上に配置された金属スタック202を通って形成された開口部によって画定される。いくつかの実施形態において、サンプルウェル100は、デバイス(例えばサンプルウェルのアレイを備えたデバイス)の表面に形成された複数のサンプルウェルのうちの1つである。金属スタック202は、金属材料(複数可)(例えばアルミニウム、チタン、銅)の1つ以上の層を含み得る。図2に示すように、金属スタック202のいくつかの実施形態は、クラッド層204の上部に近接して配置されたアルミニウム層206と、アルミニウム層206の上の窒化チタン層208とを含む。
【0042】
アルミニウム層206は、銅及び/又はケイ素を含有してもよい。いくつかの実施形態において、アルミニウム層206は、約2%未満の銅及び/又はケイ素を含有してもよく、約30nm~150nmの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは値の範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、アルミニウム層は約65nmである。窒化チタン層208は、アルミニウム層206に接するチタンの層を含んでもよく、約1nm~150nmの範囲又はその範囲内の任意の値若しくは値の範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、窒化チタン層208の厚さは約80nmである。
【0043】
サンプルウェル100の底部で目的の分子をカップリングするための選択的な化学的官能化を促進するために、サンプルウェル100の底面は、他の表面(例えばサンプルウェル100の側壁)とは異なる組成を有するべきである。図2に示すように、サンプルウェルの底面はクラッド層の材料(例えば、露出したSiO)である場合があり、サンプルウェル100の側壁はスペーサ材210である場合がある。スペーサ材210は、1種以上の金属酸化物(例えばTiO、Al、SiO、TiN、HfO、ZrO及びTa)を含有し得る。アレイの上面は、層208の上面の酸化によって形成された1種以上の金属酸化物材料(例えばTiNの酸化によって形成されたTiO)を含有し得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、アレイの露出面(層208の上面、サンプルウェル側壁、底面)が、表面修飾中及びアッセイ中に使用されるものを含む特定の種類の溶液に対して実質的に安定していることが望ましい場合がある。例えば、アッセイに用いられる一定の条件は、腐食性溶液又は他の場合には過酷な処理条件(例えば高イオン強度水溶液、複数溶液のサイクル、高pH又は低pHの溶液、等)を含む場合がある。本願によれば、表面修飾プロセスを用いて、そのような溶液と所望の期間にわたって接したときに実質的に安定であり得る1つ以上の層及び/又はコーティングを露出面上に有したアレイを生成することができる。
【0045】
図2に示すように、本願の表面修飾技術によって生成されたサンプルウェル100は、サンプルウェル100の底面を画定するクラッド層204の露出面上にカップリング部分212を備えた官能化剤108を含むことができる。サンプルウェル100は、層208の上面上及びスペーサ材210上(例えばサンプルウェル100の金属性表面上)に形成されたリン含有層112を備える。本明細書に記載するように、リン含有層112は、リン含有層112をサンプルウェル100の金属性表面に優先的に形成する気相にあるホスホリルハライドでサンプルウェル100を処理することによって形成され得る。示したように、サンプルウェル100は、クラッド層204の露出面(例えばシリカ表面)の上、並びに層208の上面及びスペーサ材210(例えば金属性表面)の上に形成されたコーティング層114を備える。いくつかの実施形態において、コーティング層114はシランコーティング層である。いくつかの実施形態において、本願の安定した表面コーティングは、リン含有層112とコーティング層114とを含む。
【0046】
ホスホリルハライド
本明細書に記載する方法は、気相試薬としてホスホリルハライドを使用する。「ホスホリルハライド」は、>P(=O)(X)基を含む有機化合物又は無機化合物であり、ここでXはハロゲンである。ホスホリルハライドは、以下に記載するように、ホスホリルモノハライド、ホスホリルジハライド、又はホスホリルトリハライドである。ある実施形態において、ホスホリルハライドは有機ホスホリルハライドである。「有機」という用語は、試薬が1つ以上の炭素原子(即ち、少なくとも1つの炭素含有基)を含むことを意味する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは有機ホスホリルハライドであり、リン含有層は有機リン層である。
【0047】
ホスホリルハライドは、気相での使用の助けとなる分子量を有するべきである。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、500、450、400、350、300、250、200又は150g/モル未満の分子量を有する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、約132g/モル~260g/モルの分子量を有する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、約132g/モル~232g/モルの分子量を有する。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、約203g/モル~232g/モルの分子量を有する。
【0048】
ホスホリルジハライド
ある実施形態において、ホスホリルハライドは、ホスホリルジハライドである(即ち、-P(=O)(X基を備え、ここでXの各例は独立してハロゲンである)。ある実施形態において、ホスホリルジハライドはホスホリルジクロリドである。ある実施形態において、ホスホリルジハライドは有機ホスホリルジハライドである。ある実施形態において、ホスホリルジハライドは有機ホスホリルジクロリドである。
【0049】
ある実施形態において、ホスホリルジハライドは、有機ホスホン酸ジハライドである(-P(=O)(Xが炭素に結合している)。ある実施形態において、ホスホリルジハライドは、有機ホスホン酸ジクロリドである。
【0050】
例えば、ある実施形態において、ホスホリルジハライドは式(I):
【0051】
【化2】
【0052】
のもの又はその塩であり、ここで、
の各例は独立してハロゲンであり、
は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリール、-OR、若しくは-N(Rであり、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は酸素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は窒素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成する。
【0053】
本明細書に記載するように、Xの各例は独立してハロゲンである。ある実施形態において、Xの各例は独立して-Cl又は-Brである。ある実施形態において、Xの各例は-Clである。ある実施形態において、Xの各例は-Brである。
【0054】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式:
【0055】
【化3】
【0056】
のものである。
ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたアルキルである。ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたC1~10アルキルである。ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたC1~8アルキルである。ある実施形態において、Rは非置換のC1~8アルキルである。ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたC6~8アルキルである。ある実施形態において、Rは非置換のC6~8アルキルである。ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたCアルキルである。ある実施形態において、Rは非置換のCアルキルである。ある実施形態において、Rは任意選択で置換されたCアルキルである。ある実施形態において、Rは非置換のCアルキルである。
【0057】
ある実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルからなる群から選択される。
【0058】
ある実施形態において、Rは、
【0059】
【化4】
【0060】
からなる群から選択される。
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライド(例えば式(I)の化合物)は、下記式のうちの1つの化合物である。
【0061】
【化5】
【0062】
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライドは、
【0063】
【化6】
【0064】
からなる群から選択される。
ある実施形態において、Rは-ORである。ある実施形態において、Rは-ORであり、Rは任意選択で置換されたアリールである。ある実施形態において、Rは-ORであり、Rは任意選択で置換されたフェニルである。ある実施形態において、Rは-ORであり、Rは非置換のフェニルである。ある実施形態において、Rは-ORであり、Rはハロゲン又は-NOで置換されたフェニルである。
【0065】
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライドは、
【0066】
【化7】
【0067】
からなる群から選択される。
ホスホリルハライド(即ち式(I)の化合物)の他の例としては、下記のもの:
【0068】
【化8】
【0069】
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ある実施形態において、Rはポリマー基(例えばポリエチレングリコール(PEG))である。ある実施形態において、Rはポリフルオロアルキル基である。
【0070】
ある実施形態において、ホスホリルハライド(即ち式(I)の化合物)は式(I-a):
【0071】
【化9】
【0072】
のもの又はその塩であり、ここで、Lは任意選択で置換されたアルキレンである。
ある実施形態において、式(I-a)の化合物は、式:
【0073】
【化10】
【0074】
のものである。
ある実施形態において、Lは任意選択で置換されたC1~6アルキレンである。ある実施形態において、Lは非置換のC1~6アルキレンである。ある実施形態において、Lは下記式のうちの1つのものである。
【0075】
【化11】
【0076】
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライド(即ち式(I-a)の化合物)は、下記:
【0077】
【化12】
【0078】
である。
ホスホリルモノハライド
ある実施形態において、ホスホリルハライドは、ホスホリルモノハライドである(即ち、>P(=O)(X)基を備え、ここでXはハロゲンである)。ある実施形態において、ホスホリルモノハライドはホスホリルモノクロリドである。ある実施形態において、ホスホリルモノハライドは有機ホスホリルモノハライドである。ある実施形態において、ホスホリルモノハライドは有機ホスホリルモノクロリドである。
【0079】
ある実施形態において、ホスホリルモノハライドは、有機ホスフィン酸ジハライドである(ここで、>P(=O)(Xは2つの異なる炭素基に結合している)。ある実施形態において、ホスホリルモノハライドは有機ホスフィン酸クロリドである。
【0080】
ある実施形態において、ホスホリルハライドは、式(II):
【0081】
【化13】
【0082】
のもの又はその塩であり、ここで、
はハロゲンであり、
の各例は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたヘテロアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、又は任意選択で置換されたヘテロアリール、-OR、若しくは-N(Rであるか、
或いは任意選択で、2つのR基が、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は酸素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成し、
の各例は、独立して、水素、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアシル、又は窒素保護基であるか、任意選択で2つのRが、介在する原子と一緒になって任意選択で置換されたヘテロシクリルを形成する。
【0083】
ある実施形態において、Xは-Cl又は-Brである。ある実施形態において、Xは-Clである。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、式:
【0084】
【化14】
【0085】
のものである。
ある実施形態において、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたアルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたC1~10アルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたC1~6アルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、非置換のC1~6アルキルである。
【0086】
ある実施形態において、Rの各例は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルからなる群から独立して選択される。
【0087】
ある実施形態において、Rの各例は、
【0088】
【化15】
【0089】
からなる群から独立して選択される。
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライド(即ち式(II)の化合物)は下記のものである。
【0090】
【化16】
【0091】
ある実施形態において、Rの各例は、独立して-ORであり、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたアルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、-ORであり、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたC1~10アルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、-ORであり、Rの各例は、独立して、任意選択で置換されたC1~6アルキルである。ある実施形態において、Rの各例は、独立して、-ORであり、Rの各例は、独立して、非置換のC1~6アルキルである。
【0092】
例えば、ある実施形態において、ホスホリルハライド(即ち式(II)の化合物)は下記のうちの1つである。
【0093】
【化17】
【0094】
ホスホリルトリハライド
ある実施形態において、ホスホリルハライドは、ホスホリルトリハライドである(即ち、式P(=O)(Xのものであり、ここでXの各例は独立してハロゲンである)。ある実施形態において、ホスホリルハライドは、ホスホリルトリクロリドである。ある実施形態において、ホスホリルハライドはホスホリルトリブロミドである。
【0095】
定義
化学的定義
具体的な官能基及び化学用語の定義は、以下でより詳細に記載する。化学元素は、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and physics第75版の見返しに従って識別され、具体的な官能基はそこに記載されているように一般に定義される。加えて、有機化学の一般原理、並びに具体的な官能性部分及び反応性は、「Organic Chemistry、トーマス ソーレル(Thomas Sorrell)、University Science Books、サウサリート、1999年」、「スミス(Smith)及びマーチ(March)、March’s Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、2001年」、「ラロック(Larock)、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers, Inc.、ニューヨーク、1989年」、及び「カラザーズ(Carruthers)、Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3版、Cambridge University Press、ケンブリッジ、1987年」に記載されている。
【0096】
特に明記しない限り、本明細書に示される構造はまた、1種以上の同位体濃縮された原子の存在のみが異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素若しくはトリチウムによる水素の置換、18Fによる19Fの置換、又は13C若しくは14Cによる12Cの置換を除く本構造を有する化合物は本開示の範囲内である。このような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツール又はプローブとして有用である。
【0097】
値の範囲が列挙されている場合、それはその範囲内の各値及び部分的な範囲を包含するように意図される。例えば、「C1~6アルキル」は、C、C、C、C、C、C、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5及びC5~6アルキルを包含するように意図される。
【0098】
「脂肪族」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及び炭素環式基を指す。同様に、「ヘテロ脂肪族」という用語は、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、及び複素環式基を指す。
【0099】
「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基のラジカル(「C1~10アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~9個の炭素原子を有する(「C1~9アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~8個の炭素原子を有する(「C1~8アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~7個の炭素原子を有する(「C1~7アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~6個の炭素原子を有する(「C1~6アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~5個の炭素原子を有する(「C1~5アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~4個の炭素原子を有する(「C1~4アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する(「C1~3アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1~2個の炭素原子を有する(「C1~2アルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は1個の炭素原子を有する(「Cアルキル」)。いくつかの実施形態において、アルキル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルキル」)。C1~6アルキル基の例としては、メチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)(例えばn-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C)(例えばn-ブチル、tert-ブチル基、sec-ブチル、iso-ブチル)、ペンチル(C)(例えばn-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、第三アミル)、及びヘキシル(C)(例えばn-ヘキシル)が挙げられる。アルキル基の付加的な例としては、n-ヘプチル(C)、n-オクチル(C)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルキル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換アルキル」)か、又は1つ以上の置換基(例えばFなどのハロゲン)で置換されている(「置換アルキル」)。ある実施形態において、アルキル基は、非置換C1~10アルキル(非置換C1~6アルキルなど、例えば-CH(Me)、非置換エチル(Et)、非置換プロピル(Pr、例えば非置換n-プロピル(n-Pr)、非置換イソプロピル(i-Pr))、非置換ブチル(Bu、例えば非置換n-ブチル(n-Bu)、非置換tert-ブチル(tert-Bu又はt-Bu)、非置換sec-ブチル(sec-Bu)、非置換イソブチル(i-Bu))である。ある実施形態において、アルキル基は、置換C1~10アルキル(置換C1~6アルキルなど、例えば-CF、Bn)である。
【0100】
「ハロアルキル」という用語は、置換アルキル基であり、水素原子の1つ以上が、独立して、ハロゲン、例えばフルオロ、ブロモ、クロロ又はヨードによって置換されている。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~8個の炭素原子を有する(「C1~8ハロアルキル」)。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~6個の炭素原子を有する(「C1~6ハロアルキル」)。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~4個の炭素原子を有する(「C1~4ハロアルキル」)。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~3個の炭素原子を有する(「C1~3ハロアルキル」)。いくつかの実施形態において、ハロアルキル部分は1~2個の炭素原子を有する(「C1~2ハロアルキル」)。ハロアルキル基の例としては、-CHF、-CHF、-CF、-CHCF、-CFCF、-CFCFCF、-CCl、-CFCl、-CFClなどが挙げられる。
【0101】
「ヘテロアルキル」は、親鎖内に(つまり、親鎖の隣接する炭素原子の間に挿入された)及び/又は親鎖の1つ以上の末端位置に配置された、酸素、窒素、又は硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(例えば1、2、3、又は4個のヘテロ原子)をさらに含むアルキル基を指す。ある実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~10個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~10アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~9個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~9アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~8個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~8アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~7個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~7アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~6個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~6アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~5個の炭素原子及び1個又は2個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~5アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~4個の炭素原子及び1個又は2個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~4アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~3個の炭素原子及び1個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~3アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1~2個の炭素原子及び1個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC1~2アルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に1個の炭素原子及び1個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロCアルキル」)を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、親鎖内に2~6個の炭素原子及び1個又は2個のヘテロ原子を有する飽和基(「ヘテロC2~6アルキル」)を指す。別段の定めがない限り、ヘテロアルキル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換ヘテロアルキル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアルキル」)。ある実施形態において、ヘテロアルキル基は非置換ヘテロC1~10アルキルである。ある実施形態において、ヘテロアルキル基は置換ヘテロC1~10アルキルである。
【0102】
「アルケニル」という用語は、2~10個の炭素原子及び1つ以上の炭素-炭素二重結合(例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの二重結合)を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2~9アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2~8アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2~7アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2~5アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2~4アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2~3アルケニル」)。いくつかの実施形態において、アルケニル基は2個の炭素原子を有する(「Cアルケニル」)。1つ以上の炭素-炭素二重結合は、内部にあってもよいし(例えば2-ブテニルなどで)、又は末端にあってもよい(例えば1-ブテニルなどで)。C2~4アルケニル基の例としては、エテニル(C)、1-プロペニル(C)、2-プロペニル(C)、1-ブテニル(C)、2-ブテニル(C)、ブタジエニル(C)などが挙げられる。C2~6アルケニル基の例としては、前述したC2~4アルケニル基、並びにペンテニル(C)、ペンタジエニル(C)、ヘキセニル(C)などが挙げられる。アルケニルの付加的な例としては、ヘプテニル(C)、オクテニル(C)、オクタトリエニル(C)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルケニル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換アルケニル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルケニル」)。ある実施形態において、アルケニル基は非置換C2~10アルケニルである。ある実施形態において、アルケニル基は置換C2~10アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が規定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH又は
【0103】
【化18】
【0104】
)は(E)-又は(Z)-二重結合であり得る。
「アルキニル」という用語は、2~10個の炭素原子及び1つ以上の炭素-炭素三重結合(例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの三重結合)を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基のラジカル(「C2~10アルキニル」)を指す。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2~9アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2~8アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2~7アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2~5アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2~4アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2~3アルキニル」)。いくつかの実施形態において、アルキニル基は2個の炭素原子を有する(「Cアルキニル」)。1つ以上の炭素-炭素三重結合は、内部にあってもよいし(例えば2-ブチニルなどで)、又は末端にあってもよい(例えば1-ブチニルなどで)。C2~4アルキニル基の例としては、エチニル(C)、1-プロピニル(C)、2-プロピニル(C)、1-ブチニル(C)、2-ブチニル(C)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。C2~6アルケニル基の例としては、前述したC2~4アルキニル基、並びにペンチニル(C)、ヘキシニル(C)などが挙げられる。アルキニルの付加的な例としては、ヘプチニル(C)、オクチニル(C)などが挙げられる。別段の定めがない限り、アルキニル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換アルキニル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換アルキニル」)。ある実施形態において、アルキニル基は非置換C2~10アルキニルである。ある実施形態において、アルキニル基は置換C2~10アルキニルである。
【0105】
「カルボシクリル」又は「炭素環式」という用語は、非芳香族環系内において3~14個の環炭素原子を有し(「C3~14カルボシクリル」)、非芳香族環系内のヘテロ原子がゼロである非芳香族環状炭化水素基のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は3~10個の環炭素原子を有する(「C3~10カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3~8カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は3~7個の環炭素原子を有する(「C3~7カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3~6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は4~6個の環炭素原子を有する(「C4~6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は5~6個の環炭素原子を有する(「C5~6カルボシクリル」)。いくつかの実施形態において、カルボシクリル基は5~10個の環炭素原子を有する(「C5~10カルボシクリル」)。例示的なC3~6カルボシクリル基には、シクロプロピル(C)、シクロプロペニル(C)、シクロブチル(C)、シクロブテニル(C)、シクロペンチル(C)、シクロペンテニル(C)、シクロヘキシル(C)、シクロヘキセニル(C)、シクロヘキサジエニル(C)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的なC3~8カルボシクリル基には、前述のC3~6カルボシクリル基、並びにシクロヘプチル基(C)、シクロヘプテニル(C)、シクロヘプタジエニル(C)、シクロヘプタトリエニル(C)、シクロオクチル(C)、シクロオクテニル(C)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル(C)、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(C)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。例示的なC3~10カルボシクリル基には、前述のC3~8カルボシクリル基、並びにシクロノニル(C)、シクロノネニル(C)、シクロデシル(C10)、シクロデセニル(C10)、オクタヒドロ-1H-インデニル(C)、デカヒドロナフタレニル(C10)、スピロ[4.5]デカニル(C10)などが含まれるが、これらに限定されるものではない。前述の例が示すように、ある実施形態において、カルボシクリル基は、単環式(「単環式カルボシクリル」)又は多環式(例えば、二環式系(「二環式カルボシクリル」)若しくは三環式系(「三環式カルボシクリル」)などの縮合環系、架橋環系若しくはスピロ環系を含む)のいずれかであり、飽和していてもよく、又は1つ以上の炭素-炭素二重結合若しくは三重結合を含んでいてもよい。「カルボシクリル」はまた、上記で定義されたカルボシクリル環が1つ以上のアリール基又はヘテロアリール基と縮合され、結合点がカルボシクリル環上にある環系を含み、そのような場合、炭素の数は、炭素環系における炭素の数を依然として示す。別段の定めがない限り、カルボシクリル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換カルボシクリル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換カルボシクリル」)。ある実施形態において、カルボシクリル基は非置換C3~14カルボシクリルである。ある実施形態において、カルボシクリル基は置換C3~14カルボシクリルである。
【0106】
いくつかの実施形態において、「カルボシクリル」は、3~14個の環炭素原子を有する単環式の飽和カルボシクリル基(「C3~14シクロアルキル」)である。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~10個の環炭素原子を有する(「C3~10シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~8個の環炭素原子を有する(「C3~8シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~6個の環炭素原子を有する(「C3~6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は4~6個の環炭素原子を有する(「C4~6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5~6個の環炭素原子を有する(「C5~6シクロアルキル」)。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は5~10個の環炭素原子を有する(「C5~10シクロアルキル」)。C5~6シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル(C)及びシクロヘキシル(C)が挙げられる。C3~6シクロアルキル基の例としては、前述のC5~6シクロアルキル基、並びにシクロプロピル(C)及びシクロブチル(C)が挙げられる。C3~8シクロアルキル基の例としては、前述のC3~6シクロアルキル基、並びにシクロヘプチル(C)及びシクロオクチル(C)が挙げられる。別段の定めがない限り、シクロアルキル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換シクロアルキル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換シクロアルキル」)。ある実施形態において、シクロアルキル基は非置換C3~14シクロアルキルである。ある実施形態において、シクロアルキル基は非置換C3~14シクロアルキルである。
【0107】
「ヘテロシクリル」又は「複素環式」という用語は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する3~14員の非芳香族環系のラジカルを指し、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「3~14員ヘテロシクリル」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロシクリル基では、結合点は、原子価が許す限り、炭素原子又は窒素原子であり得る。ヘテロシクリル基は、単環式(「単環式ヘテロシクリル」)又は多環式(例えば、二環系(「二環式ヘテロシクリル」)又は三環系(「三環式ヘテロシクリル」)などの縮合環系、架橋環系又はスピロ環系を含む)のいずれかであってもよく、飽和していてもよく、又は1つ以上の炭素-炭素二重結合若しくは三重結合を含んでいてもよい。ヘテロシクリル多環式環系は、一方又は双方の環内に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロシクリル」はまた、上記で定義されたヘテロシクリル環が1つ以上のカルボシクリル基と縮合され、結合点がカルボシクリル環上若しくはヘテロシクリル環上のいずれかにある環系、又は上記で定義したヘテロシクリル環が1つ以上のアリール基若しくはヘテロアリール基と縮合され、結合点がヘテロシクリル環上にある環系を含み、そのような場合、環員の数はヘテロシクリル環系における環員の数を依然として示す。別段の定めがない限り、ヘテロシクリル基の各例は、独立して、非置換である(「非置換ヘテロシクリル」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。ある実施形態において、ヘテロシクリル基は非置換の3~14員ヘテロシクリルである。ある実施形態において、ヘテロシクリル基は置換された3~14員ヘテロシクリルである。
【0108】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の非芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロシクリルは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。
【0109】
「アリール」という用語は、芳香族環系(「C6~14アリール」)内に提供された6~14員の環炭素原子を有し、芳香族環系内に提供されるヘテロ原子はゼロである単環式又は多環式(例えば二環式又は三環式)4n+2芳香族環系(例えば、環状アレイにおいて共有される6、10又は14個のπ電子を有する)のラジカルを指す。いくつかの実施形態において、アリール基は6個の環炭素原子を有する(「Cアリール」、例えばフェニル)。いくつかの実施形態において、アリール基は10個の環炭素原子を有する(「C10アリール」、例えば1-ナフチル及び2-ナフチルなどのナフチル)。いくつかの実施形態において、アリール基は14個の環炭素原子を有する(「C14アリール」、例えばアントラシル)。「アリール」はまた、上記で定義されたアリール環が1つ以上のカルボシクリル基又はヘテロシクリル基と縮合され、結合ラジカル又は結合点がアリール環上にある環系を含み、そのような場合、炭素原子の数は、アリール環系における炭素原子の数を依然として示す。別段の定めがない限り、アリール基の各例は、独立して、非置換である(「非置換アリール」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換アリール」)。ある実施形態において、アリール基は非置換C6~14アリールである。ある実施形態において、アリール基は置換C6~14アリールである。
【0110】
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族環系内に提供された環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~14員の単環式又は多環式(例えば二環式、三環式)4n+2芳香族環系(例えば、環状アレイにおいて共有される6、10又は14個のπ電子を有する)のラジカルを指し、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~14員ヘテロアリール」)。1つ以上の窒素原子を含むヘテロアリール基では、結合点は、原子価が許す限り、炭素原子又は窒素原子であり得る。ヘテロアリール多環式環系は、一方又は双方の環内に1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。「ヘテロアリール」は、上記で定義されたヘテロアリール環が1つ以上のカルボシクリル基又はヘテロシクリル基と縮合され、結合点がヘテロアリール環上にある環系を含み、そのような場合、環員の数はヘテロアリール環系における環員の数を依然として示す。「ヘテロアリール」はまた、上記で定義されたヘテロアリール環が1つ以上のアリール基と縮合され、結合点がアリール環上又はヘテロアリール環上のいずれかにある環系も含み、そのような場合、環員の数は縮合多環式(アリール/ヘテロアリール)環系における環員の数を示す。1つの環がヘテロ原子を含まない多環式ヘテロアリール基(例えばインドリル、キノリニル、カルバゾリルなど)では、結合点は、いずれかの環上、即ち、ヘテロ原子を有する環(例えば2-インドリル)上又はヘテロ原子を含まない環(例えば5-インドリル)上のいずれかにあり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供された環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~10員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~10員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供された環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~8員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~8員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、芳香族環系に提供された環炭素原子及び1~4個の環ヘテロ原子を有する5~6員の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄から独立して選択される(「5~6員ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~3個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する。いくつかの実施形態において、5~6員ヘテロアリールは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1個の環ヘテロ原子を有する。別段の定めがない限り、ヘテロアリール基の各例は、独立して、非置換である(「非置換ヘテロアリール」)か、又は1つ以上の置換基で置換されている(「置換ヘテロアルール」)。ある実施形態において、ヘテロアリール基は非置換の5~14員ヘテロアリールである。ある実施形態において、ヘテロアリール基は置換された5~14員ヘテロアリールである。
【0112】
「不飽和結合」という用語は二重結合又は三重結合を指す。「不飽和」又は「部分的に不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む部分を指す。「飽和」という用語は、二重結合又は三重結合を含まない部分を指し、つまり、その部分は単結合のみを含む。
【0113】
基に「-エン(-ene)」という接尾辞語を付すことで、その基が二価部分であることを示しており、例えば、アルキレンはアルキルの二価部分である。
別段に明示されていない限り、基は任意選択で置換されている。「任意選択で置換された」という用語は、置換されているか、又は非置換であることを指す。ある実施形態において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、カルボシクリル基、ヘテロシクリル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、任意選択で置換される。「任意選択で置換された」は、置換されていても、非置換であってもよい基(例えば「置換された」若しくは「非置換の」アルキル、「置換された」若しくは「非置換の」アルケニル、「置換された」若しくは「非置換の」アルキニル、「置換された」若しくは「非置換の」ヘテロアルキル、「置換された」若しくは「非置換の」ヘテロアルケニル、「置換された」若しくは「非置換の」ヘテロアルキニル、「置換された」若しくは「非置換の」カルボシクリル、「置換された」若しくは「非置換の」ヘテロシクリル、「置換された」若しくは「非置換の」アリール、又は「置換された」若しくは「非置換の」ヘテロアリール基)を指す。一般に、「置換された」という用語は、基に存在する少なくとも1つの水素が、許容可能な置換基、例えば置換により安定した化合物、例えば転位、環化、脱離、又は他の反応などによる変換を自発的に受けない化合物を生じる置換基で置き換えられることを意味する。別段に示されていない限り、「置換された」基は、基の1つ以上の置換可能な位置に置換基を有し、所与の構造中の2箇所以上の位置が置換される場合、置換基は各位置で同一であるか、又は異なるかのいずれかである。「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容可能な置換基による置換を含むと考えられ、安定した化合物の形成をもたらす本明細書に記載した置換基のうちの任意のものを含む。本発明は、安定した化合物に到達するために、あらゆるそのような組み合わせを企図する。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たし、安定した部分の形成をもたらす、水素置換基及び/又は本明細書に記載された任意の適当な置換基を有し得る。本発明は、本明細書に記載の例示的な置換基によって、いかなるようにも限定されることを意図するものではない。
【0114】
例示的な炭素原子置換基には、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、-CN、-NO、-N、-SOH、-SOH、-OH、-ORaa、-ON(Rbb、-N(Rbb、-N(Rbb 、-N(ORcc)Rbb、-SH、-SRaa、-SSRcc、-C(=O)Raa、-COH、-CHO、-C(ORcc、-COaa、-OC(=O)Raa、-OCOaa、-C(=O)N(Rbb、-OC(=O)N(Rbb、-NRbbC(=O)Raa、-NRbbCOaa、-NRbbC(=O)N(Rbb、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-OC(=NRbb)Raa、-OC(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb、-OC(=NRbb)N(Rbb、-NRbbC(=NRbb)N(Rbb、-C(=O)NRbbSOaa、-NRbbSOaa、-SON(Rbb、-SOaa、-SOORaa、-OSOaa、-S(=O)Raa、-OS(=O)Raa、-Si(Raa、-OSi(Raa-C(=S)N(Rbb、-C(=O)SRaa、-C(=S)SRaa、-SC(=S)SRaa、-SC(=O)SRaa、-OC(=O)SRaa、-SC(=O)ORaa、-SC(=O)Raa、-P(=O)(Raa、-P(=O)(ORcc、-OP(=O)(Raa、-OP(=O)(ORcc、-P(=O)(N(Rbb、-OP(=O)(N(Rbb、-NRbbP(=O)(Raa、-NRbbP(=O)(ORcc、-NRbbP(=O)(N(Rbb、-P(Rcc、-P(ORcc、-P(Rcc 、-P(ORcc 、-P(Rcc、-P(ORcc、-OP(Rcc、-OP(Rcc 、-OP(ORcc、-OP(ORcc 、-OP(Rcc、-OP(ORcc、-B(Raa、-B(ORcc、-BRaa(ORcc)、C1~10アルキル、C1~10ペルハロアルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリールが含まれ、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、ここで、Xは対イオンであるか、又は炭素原子上の2個のジェミナル水素が=O、=S、=NN(Rbb、=NNRbbC(=O)Raa、=NNRbbC(=O)ORaa、=NNRbbS(=O)aa、=NRbb、若しくは=NORcc基で置き換えられており、Raaの各例は、独立して、C1~10アルキル、C1~10ペルハロアルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリールから選択されるか、又は2つのRaa基が結合して3~14員のヘテロシクリル若しくは5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、Rbbの各例は、独立して、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc、-CN、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc、-COaa、-SOaa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc、-SON(Rcc、-SOcc、-SOORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、-P(=O)(Raa、-P(=O)(ORcc、-P(=O)(N(Rcc、C1~10アルキル、C1~10ペルハロアルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリールから選択されるか、又は2つのRbb基が結合して3~14員のヘテロシクリル若しくは5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、ここで、Xは対イオンであり、Rccの各例は、独立して、水素、C1~10アルキル、C1~10ペルハロアルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリールから選択されるか、又は2つのRcc基が結合して3~14員のヘテロシクリル若しくは5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、Rddの各例は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO、-N、-SOH、-SOH、-OH、-ORee、-ON(Rff、-N(Rff、-N(Rff 、-N(ORee)Rff、-SH、-SRee、-SSRee、-C(=O)Ree、-COH、-COee、-OC(=O)Ree、-OCOee、-C(=O)N(Rff、-OC(=O)N(Rff、-NRffC(=O)Ree、-NRffCOee、-NRffC(=O)N(Rff、-C(=NRff)ORee、-OC(=NRff)Ree、-OC(=NRff)ORee、-C(=NRff)N(Rff、-OC(=NRff)N(Rff、-NRffC(=NRff)N(Rff、-NRffSOee、-SON(Rff、-SOee、-SOORee、-OSOee、-S(=O)Ree、-Si(Ree、-OSi(Ree、-C(=S)N(Rff、-C(=O)SRee、-C(=S)SRee、-SC(=S)SRee、-P(=O)(ORee、-P(=O)(Ree、-OP(=O)(Ree、-OP(=O)(ORee、C1~6アルキル、C1~6ペルハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ヘテロC1~6アルキル、ヘテロC2~6アルケニル、ヘテロC2~6アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~10員のヘテロシクリル、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリールから選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4若しくは5個のRgg基で置換されているか、又は2個のジェミナルRdd置換基が結合して=O若しくは=Sを形成することが
でき、ここで、Xは対イオンであり、Reeの各例は、独立して、C1~6アルキル、C1~6ペルハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ヘテロC1~6アルキル、ヘテロC2~6アルケニル、ヘテロC2~6アルキニル、C3~10カルボシクリル、C6~10アリール、3~10員のヘテロシクリル、及び3~10員のヘテロアリールから選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRgg基で置換されており、Rffの各例は、独立して、水素、C1~6アルキル、C1~6ペルハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ヘテロC1~6アルキル、ヘテロC2~6アルケニル、ヘテロC2~6アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~10員のヘテロシクリル、C6~10アリール、及び5~10員のヘテロアリールから選択されるか、又は2つのRff基が結合して3~10員のヘテロシクリル若しくは5~10員のヘテロアリール環を形成し、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRgg基で置換されており、且つRggの各例は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO、-N、-SOH、-SOH、-OH、-OC1~6アルキル、-ON(C1~6アルキル)、-N(C1~6アルキル)、-N(C1~6アルキル) 、-NH(C1~6アルキル) 、-NH(C1~6アルキル)、-NH 、-N(OC1~6アルキル)(C1~6アルキル)、-N(OH)(C1~6アルキル)、-NH(OH)、-SH、-SC1~6アルキル、-SS(C1~6アルキル)、-C(=O)(C1~6アルキル)、-COH、-CO(C1~6アルキル)、-OC(=O)(C1~6アルキル)、-OCO(C1~6アルキル)、-C(=O)NH、-C(=O)N(C1~6アルキル)、-OC(=O)NH(C1~6アルキル)、-NHC(=O)(C1~6アルキル)、-N(C1~6アルキル)C(=O)(C1~6アルキル)、-NHCO(C1~6アルキル)、-NHC(=O)N(C1~6アルキル)、-NHC(=O)NH(C1~6アルキル)、-NHC(=O)NH、-C(=NH)O(C1~6アルキル)、-OC(=NH)(C1~6アルキル)、-OC(=NH)OC1~6アルキル、-C(=NH)N(C1~6アルキル)、-C(=NH)NH(C1~6アルキル)、-C(=NH)NH、-OC(=NH)N(C1~6アルキル)、-OC(=NH)NH(C1~6アルキル)、-OC(=NH)NH、-NHC(=NH)N(C1~6アルキル)、-NHC(=NH)NH、-NHSO(C1~6アルキル)、-SON(C1~6アルキル)、-SONH(C1~6アルキル)、-SONH、-SO(C1~6アルキル)、-SOO(C1~6アルキル)、-OSO(C1~6アルキル)、-SO(C1~6アルキル)、-Si(C1~6アルキル)、-OSi(C1~6アルキル)-C(=S)N(C1~6アルキル)、C(=S)NH(C1~6アルキル)、C(=S)NH、-C(=O)S(C1~6アルキル)、-C(=S)SC1~6アルキル、-SC(=S)SC1~6アルキル、-P(=O)(OC1~6アルキル)、-P(=O)(C1~6アルキル)、-OP(=O)(C1~6アルキル)、-OP(=O)(OC1~6アルキル)、C1~6アルキル、C1~6ペルハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、ヘテロC1~6アルキル、ヘテロC2~6アルケニル、ヘテロC2~6アルキニル、C3~10カルボシクリル、C6~10アリール、3~10員のヘテロシクリル、5~10員のヘテロアリールであるか、又は2個のジェミナルRgg置換基が結合して=O若しくは=Sを形成することができ、ここでXは対イオンである。
【0115】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)又はヨウ素(ヨード、-I)を指す。
「アシル」という用語は、一般式-C(=O)RX1、-C(=O)ORX1、-C(=O)-O-C(=O)RX1、-C(=O)SRX1、-C(=O)N(RX1、-C(=S)RX1、-C(=S)N(RX1、-C(=S)O(RX1)、-C(=S)S(RX1)、-C(=NRX1)RX1、-C(=NRX1)ORX1、-C(=NRX1)SRX1、及び-C(=NRX1)N(RX1を有する基を指し、ここで、RX1は、水素、ハロゲン、置換された若しくは非置換のヒドロキシル基、置換された若しくは非置換のチオール、置換された若しくは非置換のアミノ、置換された若しくは非置換のアシル、環状若しくは非環状で置換された若しくは非置換の分岐状若しくは非分岐状の脂肪族、環状若しくは非環状で置換された若しくは非置換の分岐状若しくは非分岐状のヘテロ脂肪族、環状若しくは非環状で置換された若しくは非置換の分岐状若しくは非分岐状のアルキル、環状若しくは非環状で置換された若しくは非置換の分岐状若しくは非分岐状のアルケニル、置換された若しくは非置換のアルキニル、置換された若しくは非置換のアリール、置換された若しくは非置換のヘテロアリール、脂肪族オキシ(aliphaticoxy)、ヘテロ脂肪族オキシ(heteroaliphaticoxy)、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ(aliphaticthioxy)、ヘテロ脂肪族チオキシ(heteroaliphaticthioxy)、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、モノ-若しくはジ-脂肪族アミノ、モノ-若しくはジ-ヘテロ脂肪族アミノ、モノ-若しくはジ-アルキルアミノ、モノ-若しくはジ-ヘテロアルキルアミノ、モノ-若しくはジ-アリールアミノ、又はモノ-若しくはジ-ヘテロアリールアミノであるか、或いは、2つのRX1基が一緒になって5~6員の複素環を形成する。例示的なアシル基には、アルデヒド(-CHO)、カルボン酸(-COH)、ケトン、アシルハライド、エステル、アミド、イミン、カルボナート、カルバメート及び尿素が含まれる。アシル置換基には、安定した部分(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなどであり、これらの各々はさらに置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい)の形成をもたらす本明細書に記載された置換基のうちの任意のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
窒素原子は、原子価が許す限り、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよく、一級、二級、三級、及び四級の窒素原子を含む。例示的な窒素原子置換基には、これらに限定されるものではないが、水素、-OH、-ORaa、-N(Rcc、-CN、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc、-COaa、-SOaa、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc、-SON(Rcc、-SOcc、-SOORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、-P(=O)(ORcc、-P(=O)(Raa、-P(=O)(N(Rcc、C1~10アルキル、C1~10ペルハロアルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリールが含まれ、又はN原子に結合した2つのRcc基が結合して3~14員のヘテロシクリル若しくは5~14員のヘテロアリール環を形成し、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、Raa、Rbb、Rcc及びRddは上記で定義した通りである。
【0117】
ある実施形態において、窒素原子上に存在する置換基は窒素保護基である(本明細書では「アミノ保護基」とも称される)。窒素保護基には、これらに限定されるものではないが、-OH、-ORaa、-N(Rcc、-C(=O)Raa、-C(=O)N(Rcc、-COaa、-SOaa、-C(=NRcc)Raa、-C(=NRcc)ORaa、-C(=NRcc)N(Rcc、-SON(Rcc、-SOcc、-SOORcc、-SORaa、-C(=S)N(Rcc、-C(=O)SRcc、-C(=S)SRcc、C1~10アルキル(例えばアラルキル、ヘテロアラルキル)、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヘテロC1~10アルキル、ヘテロC2~10アルケニル、ヘテロC2~10アルキニル、C3~10カルボシクリル、3~14員のヘテロシクリル、C6~14アリール、及び5~14員のヘテロアリール基が含まれ、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アラルキル、アリール、及びヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、又は5個のRdd基で置換されており、Raa、Rbb、Rcc及びRddは本明細書で定義した通りである。窒素保護基は、当技術分野ではよく知られており、参照により本明細書に援用される「Protecting Groups in Organic Synthetis、T.W.グリーン(Greene)及びP.G.M.ウッツ(Wuts)、第3版、John Wiley & Sons、1999年」に詳細に記載されているものを含む。
【0118】
ある実施形態において、酸素原子上に存在する置換基は酸素保護基である(本明細書では「ヒドロキシル保護基」とも称される)。酸素保護基には、これらに限定されるものではないが、-Raa、-N(Rbb、-C(=O)SRaa、-C(=O)Raa、-COaa、-C(=O)N(Rbb、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb、-S(=O)Raa、-SOaa、-Si(Raa、-P(Rcc、-P(Rcc 、-P(ORcc、-P(ORcc 、-P(=O)(Raa、-P(=O)(ORcc、及び-P(=O)(N(Rbbが含まれ、ここで、X、Raa、Rbb、及びRccは本明細書で定義した通りである。酸素保護基は、当技術分野ではよく知られており、参照により本明細書に援用される「Protecting Groups in Organic Synthetis、T.W.グリーン及びP.G.M.ウッツ、第3版、John Wiley & Sons、1999年」に詳細に記載されているものを含む。
【0119】
ある実施形態において、硫黄原子上に存在する置換基は硫黄保護基である(本明細書では「チオール保護基」とも称される)。硫黄保護基には、これらに限定されるものではないが、-Raa、-N(Rbb、-C(=O)SRaa、-C(=O)Raa、-COaa、-C(=O)N(Rbb、-C(=NRbb)Raa、-C(=NRbb)ORaa、-C(=NRbb)N(Rbb、-S(=O)Raa、-SOaa、-Si(Raa、-P(Rcc、-P(Rcc 、-P(ORcc、-P(ORcc 、-P(=O)(Raa、-P(=O)(ORcc、及び-P(=O)(N(Rbbが含まれ、ここで、Raa、Rbb、及びRccは本明細書で定義した通りである。硫黄保護基は、当技術分野ではよく知られており、参照により本明細書に援用される「Protecting Groups in Organic Synthetis、T.W.グリーン及びP.G.M.ウッツ、第3版、John Wiley & Sons、1999年」に詳細に記載されているものを含む。
【0120】
本明細書で用いられる場合、「少なくとも1つの例」という語句の使用は、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の例を指すが、ある範囲、例えば、1つ~4つ、1つ~3つ、1つ~2つ、2つ~4つ、2つ~3つ、又は3つ~4つの例も包含する。
【0121】
「非水素基」とは、水素ではない特定の可変のものに対して定義された任意の基を指す。
これら及び他の例示的な置換基は、詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲により詳細に記載されている。本発明は、上記の置換基の例示的な列記によっていかなるようにも限定されることを意図するものではない。
【0122】
他の定義
本明細書で用いられる場合、「タンパク質」、「ペプチド」、又は「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸残基のポリマーを含む。この用語は、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。典型的には、タンパク質は、少なくとも3アミノ酸長である。タンパク質とは、個々のタンパク質又はタンパク質の集団を指す場合がある。本発明のタンパク質は好ましくは天然アミノ酸のみを含有するが、当該技術分野において既知の非天然アミノ酸(即ち、自然界に存在しないが、ポリペプチド鎖に組み込むことができる化合物)及び/又はアミノ酸類似体が代わりに利用されてもよい。また、タンパク質中のアミノ酸の1つ以上が、例えば、炭水化物基、ヒドロキシル基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、コンジュゲーション若しくは官能化のためのリンカーなどの化学成分の付加、又は他の修飾によって、修飾されてもよい。タンパク質はまた、単一分子であってもよいし、又は多分子複合体であってもよい。タンパク質は、天然起源のタンパク質又はペプチドの断片であってもよい。タンパク質は、天然起源、組換え体、合成物、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0123】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、DNA及びRNA中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも称される)を指し、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のキメラ混合物又はそれらの誘導体若しくは修飾されたものであり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーションパラメータ等を改善するために、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格において修飾され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5ークロロウラシル、5ーヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4ーアセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン(mannosylqueosine)、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、チオグアニン、及び2,6-ジアミノプリンを含むが、これらに限定されない基から選択される修飾された塩基部分を含み得る。ヌクレオチド配列は、典型的には、タンパク質及び酵素を作るために細胞機構によって使用される情報を含む遺伝子情報をもつ。これらの用語は、二本鎖又は一本鎖のゲノムの及びcDNA、RNA、任意の合成の及び遺伝子操作されたポリヌクレオチド、並びにセンスポリヌクレオチド及びアンチセンスポリヌクレオチドの双方を含む。これには、一本鎖及び二本鎖の分子、即ちDNA-DNA、DNA-RNA及びRNA-RNAハイブリッド、アミノ酸骨格に塩基を抱合させることによって形成された「タンパク質核酸」(PNA)が含まれる。これにはまた、炭水化物又は脂質を含有する核酸も含まれる。例示的なDNAには、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、プラスミドDNA(pDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、アンチセンスDNA、葉緑体DNA(ctDNA又はcpDNA)、マイクロサテライトDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA又はmDNA)、キネトプラストDNA(kDNA)、プロウイルス、溶原菌、反復DNA、サテライトDNA、及びウィルスDNAが含まれる。例示的なRNAには、一本鎖RNA(ssRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、前駆体メッセンジャーRNA(pre-mRNA)、小ヘアピンRNA又は短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、ガイドRNA(gRNA)、転移RNA(tRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)、ヘテロ核RNA(hnRNA)、コーディングRNA、ノンコーディングRNA(ncRNA)、ロングノンコーディングRNA(ロングncRNA又はlncRNA)、サテライトRNA、ウイルスサテライトRNA、シグナル認識粒子RNA、小細胞質RNA、核内低分子RNA(snRNA)、リボソームRNA(rRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、ポリイノシン酸、リボザイム、フレキシザイム、核小体低分子RNA(snoRNA)、スプライスリーダーRNA、ウィルスRNA及びウイルスサテライトRNAが含まれる。
【実施例
【0124】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の実施例を検討するとさらに理解されるであろう。以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を説明することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することは意図していない。
【0125】
実施例1. 表面修飾のための気相ホスホン酸ジクロリド
表面修飾のための気相ホスホン酸ジクロリドの選択性を接触角測定及びX線光電子分光法(XPS)によって評価した。TiO及びSiOから構成された表面領域を有するクーポンを、気相オクチルホスホン酸ジクロリド(PDC)で化学気相堆積法によって処理した。これは、疎水性特性を有する表面コーティングを形成すると予想された。
【0126】
選択性実験の実施例の結果を図3に示す。表面修飾されたクーポンのTiO側は、濡れ性の測定で高い接触角(約99°)を生じ(図3、左側の画像)、XPS測定に基づく高いリンのシグナルを示した(図3、左側のスペクトル)。SiO側は、濡れ性の測定で相対的により低い接触角(約30°)を生じ(図3、右側の画像)、XPS測定に基づくリンのシグナルは検出不能であった(図3、右側のスペクトル)。これらの結果は、シリカ表面と比較して高い選択性で金属酸化物表面にPDCの気相堆積がコーティングを形成することを示す。
【0127】
液相ヘキシルホスホン酸(HPA)又は気相PDCを使用して形成されたコーティングの表面被覆を比較した。XPS及び原子間力顕微鏡(AFM)からのデータに基づくと、気相PDCコーティングは、液相コーティングと比較して、より均一な形式でより良好な被覆を達成した(図4A図4B)。HPA被覆面は、2~3個のHPA分子の端と端をつないで積み重ねた程度の寸法である約2.7nmの高さの透明な斑点を示した(図4A)。比較すると、気相PDCコーティングのXPS及びAFMデータは、より一様な表面分布及び被覆を有した均一な単分子層の形成と一致していた(図4B)。
【0128】
実施例2. 腐食性反応条件のための安定したシラン表面コーティング
生物学的反応(例えばシークエンシング)中における腐食性反応条件は、アレイ上の孔構造の腐食及び官能化された底面上の官能性部分の開裂を引き起こす可能性がある。そのような条件に耐えることができる安定したコーティング層を提供するために、官能化されたシリカ表面及び金属酸化物側壁を有するサンプルウェルを、ヘキサクロロジシロキサン(HCDS)及びシラン架橋コーティングを使用して、シラン処理した。
【0129】
HCDSを使用して、底面における官能性部分(末端アジド官能基)のアクセスを阻止することなく、相対的に厚いシラン表面コーティングを導入した。プロセス時間は、官能性部分が結合又は反応に利用可能となることを保証するように最適化し、安定性は、強酸に24時間浸漬した後のシラン処理した基材のXPSを未処理の対照のものと比較して評価した。結果は、HCDSコーティングが過酷な化学的条件によく耐えられることを示した(図5)。異なるシラン架橋コーティング(アミノプロピルトリメトキシシラン又はヘキシルトリクロロシラン)をHCDSコーティングに施した。双方とも、生物学的シークエンシング反応において高い耐久性及び性能を示した。
【0130】
実施例3. シラン処理に対する事前の有機リン表面コーティングの効果
金属酸化物表面部分及びシリカ表面部分を有するサンプルウェルアレイは、個々のサンプルウェルの官能化されたシリカ表面に目的の分子を固定することによって、生物学的反応を監視するために使用することができる。官能化されたシリカ表面を調製するための事前の表面修飾プロセスは、シラン処理によってシリカ表面を官能化する前に、最初に金属酸化物表面を有機リンコーティングで不動態化することを伴う。このようなプロセスは、有機リンコーティングが金属酸化物表面のシラン処理を阻止して、シリカ表面の選択的な官能化を促進するという仮定に基づいて行われた。
【0131】
複数のアレイプロセスバッチにわたって金属酸化物表面のコーティング組成物に対するXPSからデータを収集した後、有機リンコーティングに由来するリン(「Pのパーセンテージ」)と下流のビオチン化シラン処理コーティングに由来するケイ素(「Siのパーセンテージ」)との間に明確な正の比例相関関係が観察された(図6)。この観察は、有機リンコーティングの量が増加するほど、金属酸化物表面のシラン処理が促進されていたことを示し、これは有機リンコーティングがシラン処理を阻止するという仮定と矛盾していた。
【0132】
有機リンコーティングが下流のシラン処理を促進していた可能性をさらに評価するために、有機リンコーティング(気相PDCによって形成されたもの)有り及び無しのサンプルウェルアレイを、気相にあるトリアルコキシシランで処理し、シラン処理した金属酸化物表面をXPSによって分析した。二重実験の結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1のXPSの結果は、有機リンコーティングした金属酸化物表面におけるシランの量が、有機リンコーティング無しの金属酸化物表面におけるシランの量よりも約60~70%高かったことを示す。このデータにより、有機リンコーティングが下流の金属酸化物表面のシラン処理を促進することを示した初期の観察結果が裏付けられた。
【0135】
ビオチン-シランによる官能化の表面選択性に対する事前の有機リンコーティングの効果を、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)によって定量的に特徴付けた。対照実験を最初に行って、シリカ(SiO)表面及び金属酸化物(TiO)表面の双方についてビオチン-シランの特有なフラグメントピークを特定した。対照実験中に得られたスペクトル(図7)に基づいて、TiO表面及びSiO表面の双方についてビオチンの独特なフラグメントピークは、CN、CNO、Cとして識別された。
【0136】
有機リンコーティング有り又は有機リンコーティング無しのSiO表面及びTiO表面を有する基材をそれぞれビオチン-PEG-シランで処理し、ビオチン化シラン処理した基材をTOF-SIMSに供した。フラグメントピークの相対量を定量化し、これらの結果を図8に示す。PO に由来するフラグメントピークは、反復した「サンプル1」及び「サンプル2」はビオチン化シラン処理の前に気相PDCによって被覆されたが、反復した「サンプル3」及び「サンプル4」は気相PDCによって被覆されなかったことを明らかにするために示されている。
【0137】
図8に示したデータをさらに分析して、試験した基材のTiO表面と比較したSiO表面についてのビオチン化シラン処理の選択性を定量化した。図9は、ビオチンの独特なフラグメントピーク(C、CNO、CN)に対するこの分析の結果を示す。選択性(SiO/TiO)は、図9の上部のパネルに示す式を用いて、各フラグメントピークについて計算した。
【0138】
ポジティブ及びネガティブモードの双方におけるフラグメントイオンから計算されたSiO/TiOのビオチン化選択性は、TiO上における有機リンコーティング無しの基材(サンプル3及び4)が、TiO上における有機リンコーティング有りの基材(サンプル1及び2)よりも、SiO表面のビオチン化シラン処理に関してより高い選択性を示したことを矛盾なく示した。実験的観察及びデータに基づいて、金属酸化物表面の事前有機リンコーティングが、以前に考えられていたようにシラン処理を阻止するのではなく、金属酸化物表面に対するシラン処理コーティングの形成を促進することが断定された。
【0139】
実施例4. 気相中におけるスケーラブルな表面修飾
有機リンコーティングが金属酸化物表面のシラン処理を促進することを断定した後、サンプルウェルアレイの表面修飾プロセスを考案し、このプロセスでは、SiO表面のビオチン化シラン処理をTiO表面の気相PDCコーティングの前に行った。次に、PDCによってTiO表面に形成された有機リンコーティングはシラン処理を促進するための下地層として機能するという理論に基づいて、アレイをシランで処理して双方の表面組成物の上に上層を形成した。処理したアレイの化学的及び物理的な特性評価により、約90°の接触角を有するシラン処理表面の疎水性挙動、AFM画像で鱗片様のモルフォロジーを有したチップ上のコーティングの完全な被覆、及びXPSスペクトルで検出された典型元素(Si及びP)の高いパーセンテージが示された(図10)。
【0140】
プロセス時間の合計は、最初のプラズマ活性化、並びに濯ぎ及び乾燥の間欠的なステップを含めて約5時間であった。活性化及び濯ぎ/乾燥の後、底面の官能化のために、アレイをPEG-シラン及びビオチン-PEG-シランの液相混合物で約1時間処理した。濯ぎ及び乾燥の後、側壁表面の下地処理のために、アレイを気相オクチルホスホン酸ジクロリドで化学気相堆積法によって約30分間処理した。次に、アレイ表面をHCDS及びヘキシルトリクロロシランで化学気相堆積法によって約2.5時間処理して、サンプルウェル表面の上に安定したシランコーティング層を形成した。
【0141】
均等物及び範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は他に文脈から明らかでない限り、1つ、又は2つ以上を意味し得る。ある群の1つ以上の要素の間に「又は(or)」を含む請求項又は記載は、反対の指示がない限り、又は他に文脈から明らかでない限り、群の要素の1つ、2つ以上、又はすべてが、所与の生成物又はプロセスに存在しているか、用いられているか、又は別途関連している場合に満たされると考えられる。本発明は、その群の厳密に1つの要素が、所与の生成物又はプロセスに存在しているか、用いられているか、又は別途関連している実施形態を含む。本発明は、その群の2つ以上又はすべての要素が、所与の生成物又はプロセスに存在しているか、用いられているか、又は別途関連している実施形態を含む。
【0142】
更に、本発明は、列記された請求項の1つ以上からの1つ以上の限定、要素、条項及び記述用語が別の請求項に導入されるすべての変形物、組み合わせ、及び置換を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同一の基本請求項に従属する他の請求項に見られる1つ以上の限定を含むように変更され得る。要素が列記として、例えばマーカッシュ群形式で提示されている場合、それらの要素の各部分群も開示され、任意の要素(複数可)が群から排除され得る。一般に、本発明又は本発明の態様が特定の要素及び/又は特徴を含むと言及されている場合、本発明のある実施形態又は本発明の態様は、そのような要素及び/又は特徴からなるか、又は本質的になることが理解されるべきである。簡潔にするために、これらの実施形態は、本明細書においてこれらの言葉で特に示されていない。また、「含む」及び「含有する」という用語は、オープンであることを意図しており、付加的な要素又はステップを含むことを許容することにも留意されたい。範囲が与えられる場合には、終点が含まれている。さらに、別段の指示がない限り、又は他に文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明確に指示しない限り、本発明の異なる実施形態において述べられた範囲内の任意の具体的な値又は部分範囲を、範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得る。
【0143】
本出願は、様々な交付された特許、公表された特許出願、雑誌記事、及び他の出版物を参照し、これらのすべては参照により本明細書に援用される。援用した参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合には、本明細書が支配するものとする。加えて、従来技術内にある本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のうちの任意の1つ以上から明示的に除外され得る。そのような実施形態は当業者に知られていると思われるため、除外されることが本明細書に明確に示されていなくても、これらの実施形態は除外され得る。本発明の任意の特定の実施形態は、従来技術の存在に関連するか否かにかかわらず、任意の理由で、任意の請求項から除外することができる。
【0144】
当業者は、日常の実験のみを用いて、本明細書に記載された具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は確認することができるであろう。本明細書に記載される本実施形態の範囲は、上記の明細書に限定されることは意図されず、むしろ添付の特許請求の範囲に示される通りである。当業者は、以下の特許請求の範囲において定義されるように、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に対する様々な変更及び修正がなされてもよいことを理解するであろう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】