(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】粘液バリア特性の強化のための膣用避妊組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20221202BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20221202BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20221202BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20221202BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
A61K9/06
A61P15/18
A61K31/785
A61K31/715
A61K38/02
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521645
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 DK2020050282
(87)【国際公開番号】W WO2021069046
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143014
【氏名又は名称】サークル バイオメディカル コントラセプション エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クロージャー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シンフ,ウルリケ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB30
4C076CC50
4C076DD38P
4C076EE30P
4C076EE32P
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA03
4C084BA44
4C084MA28
4C084NA14
4C084ZA86
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA03
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA28
4C086NA14
4C086ZA86
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物に関する。本開示は、さらに、膣用避妊組成物の使用、治療に使用するための膣用避妊組成物、避妊薬又は避妊剤として使用するための膣用避妊組成物及び産児制限又は産児制限治療に使用するための膣用避妊組成物に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、前記1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、前記モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物。
【請求項2】
前記膣用避妊組成物が、フォームでない、請求項1に記載の膣用避妊組成物。
【請求項3】
前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~90,000Da、例えば30,000Da~75,000Da、例えば30,000Da~60,000Da、例えば30,000Da~50,000Da、例えば30,000Da~40,000Daの分子量を有する、請求項1又は2に記載の膣用避妊組成物。
【請求項4】
前記モノマー単位の少なくとも55%が、少なくとも1つのアミノ基を含み、例えば前記モノマー単位の少なくとも60%が、少なくとも1つのアミノ基を含み、例えば前記モノマー単位の少なくとも65%が、少なくとも1つのアミノ基を含み、例えば前記モノマー単位の少なくとも70%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアミノ基が、第一級アミンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項6】
前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、又はこれらの組合せから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項7】
前記モノマー単位が、アミノ官能化C6糖である、請求項1~6のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項8】
前記モノマー単位が、D-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミンの組合せである、請求項1~7のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項9】
少なくとも50%がD-グルコサミンであり、50%以下がN-アセチル-D-グルコサミンであり、例えば50%~100%がD-グルコサミンであり、0%~50%がN-アセチル-D-グルコサミンであり、例えば少なくとも65%がD-グルコサミンであり、35%以下がN-アセチル-D-グルコサミンであり、例えば65%~100%がD-グルコサミンであり、0%~35%がN-アセチル-D-グルコサミンである、請求項8に記載の膣用避妊組成物。
【請求項10】
前記粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合されたペプチド分子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項11】
前記粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸のポリペプチドであり、ここで、前記アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、請求項10に記載の膣用避妊組成物。
【請求項12】
前記粘膜付着性ポリマーが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、及び/又はポリ-アルギニンを含む、請求項10又は11に記載の膣用避妊組成物。
【請求項13】
前記生理的に許容されるゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、グリセロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、又はこれらの組合せから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項14】
前記粘膜付着性ポリマーが、前記膣用避妊組成物の総重量の0.05重量%~10.0重量%の濃度である、請求項1~13のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項15】
前記組成物のpHが、2.0~7.0、例えば2.5~6.5、例えば3.0~6.0である、請求項1~14のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項16】
組成物が、避妊組成物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物。
【請求項17】
避妊剤としての、請求項1~16のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物の使用。
【請求項18】
治療に使用するための膣用避妊組成物であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物である、膣用避妊組成物。
【請求項19】
避妊薬又は避妊剤として使用するための膣用避妊組成物であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物である、膣用避妊組成物。
【請求項20】
産児制限又は産児制限治療に使用するための膣用避妊組成物であって、請求項1~16のいずれか一項に記載の膣用避妊組成物である、膣用避妊組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーである、膣用避妊組成物に関する。本発明はまた、治療又は避妊におけるこのような膣用避妊組成物の使用に関する。粘膜付着性ポリマーは、粘液を凝集させずに粘液層を架橋することができる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
本明細書における特許文献の引用及び援用は、便宜上行われるに過ぎず、このような特許文献の妥当性、特許性、及び/又は権利行使可能性のいずれの概説も反映しない。
【0003】
ホルモン避妊薬に不満がある女性が急速に増加しているが、便利(埋め込みなし、使用しやすい、柔軟に使用できる)且つ有効(典型的な使用の場合に90%を超える有効性)である代替法を見出すことができない。実際に、欧州及び米国における1億2500万組のカップルが、産児制限を使用しており、ホルモン避妊薬(ピル、パッチ、インプラント、リングなど)が、群を抜いて最も多く使用されている産児制限方法である。しかしながら、ホルモンによって引き起こされる副作用への意識の高まりが、避妊薬の市場に強い影響を与えている。現在、ホルモン避妊薬の副作用についての確かな証拠がある。50万~180万人の女性を含む3つの研究は、ホルモン避妊薬の使用が、抗うつ薬を摂取する女性の割合を23%増加させ、ティーンエイジャーではその割合はほぼ2倍になり(Charlotte Wessel Skovlund,Lina Steinrud Morch,Lars Vedel Kessing,and Ojvind Lidegaard. 2016. “Association of Hormonal Contraception With Depression.” JAMA Psychiatry 73(11):1154-62)、自殺未遂の女性の割合を197%増加させ、自殺率を308%増加させ(Charlotte Wessel Skovlund,Lina Steinrud Morch,Lars Vedel Kessing,Theis Lange,and Ojvind Lidegaard. 2017. “Association of Hormonal Contraception With Suicide Attempts and Suicides.” The American Journal of Psychiatry,November)、乳癌を発症するリスクを、1年未満使用される場合に9%増加させ、10年間使用される場合に最大で38%増加させる(Lina S. Morch, Charlotte W. Skovlund,Philip C. Hannaford,Lisa Iversen,Shona Fielding,and Ojvind Lidegaard. 2017. “Contemporary Hormonal Contraception and the Risk of Breast Cancer.” The New England Journal of Medicine 377(23):2228-39)ことを示す。多くの女性は、ホルモン避妊をやめることを望んでいるが、好適な代替法を見出すことができない。現行の代替法は、不便(コンドーム、ペッサリー)又は侵襲的(銅及びホルモン溶出インプラント)のいずれかであり、実際の使用の場合に有効性が低いことがある(例えばコンドームは、平均して85%有効であるに過ぎない)。
【0004】
肺、消化管、及び女性生殖管を含め、ヒトの体内に隠された400平方メートル超の上皮表面がある。湿潤した上皮表面は、脱水、せん断応力、及び感染からの保護のために粘液ゲルに依存している。水のほか、粘液は、主に、タンパク質、脂質、及び塩と混合されたムチンバイオポリマーを含有する。ムチンは、分子の分子量の最大で50%を占め得るオリゴ糖と密にコンジュゲートされた伸長した中心タンパク質コアからなる大型の糖タンパク質である。ムチンは、保護機能における中心的役割を果たし、サイズ排除及び親和性に基づく選択フィルタとして働くバリアを生成し、多くの有害な分子が上皮表面に到達するのを防ぐ。
【0005】
粘膜付着性ポリマーは、それらの付着特性のため、薬物送達に使用されている。例えば、それらは、薬物を炎症部位に送達するのに使用されている。
【0006】
粘膜付着性ポリマーは、典型的に、薬物と一緒に、材料又はゲルへと組み立てられ、これは、薬物を、粘液層の表面に集め、薬物送達を改善することを意図している。
【0007】
国際公開第2004069230号は、生理的に活性な薬剤、すなわち薬物、及び、組成物からの活性薬剤の放出を長くするように働く持続放出又は粘膜付着性薬剤、例えばキトサンを含有する医薬組成物に関する。
【0008】
キトサンの別の使用は、女性の避妊における使用である。これの一例は、CN102895256号に見られ、これは、女性の避妊及び殺真菌効果のために好適なキトサンゲル発泡剤及びその調製方法に関し、発泡剤製造の技術分野に属する。本開示によれば、キトサン分子が、ポリアクリル酸とともに固体発泡体マトリックス中に捕捉され、これが、物理的に、精子の通過を防ぐ。さらに、キトサンが、2000~5000Daの分子量分布、95%超の脱アセチル化度、5~10重量%の濃度を有する一方、ポリアクリル酸は、1~3重量%の濃度である。
【0009】
女性の避妊のためのキトサンの別の例は、国際公開第2018185321号に見られ、これは、粘液を凝集させずに粘液層を架橋することができる、粘膜付着性ポリマー、より特定的にキトサンに関する。キトサンは、4~20個のモノマー単位及び50%超の脱アセチル化度からなる。
【0010】
第3の例は、米国特許第4474769号に見られ、これは、キトサン製剤を、長期間にわたって女性の子宮腔内に直接注入して、哺乳動物精子を殺滅又は不活性化するための方法に関する。
【0011】
粘膜付着性分子が、粘膜組織の緊密性(tightness)及び増粘(thickening)を促進するか又はバリア機能を強化することが知られているが、使用は、粘膜付着性ポリマー及び粘液浸透性ナノ粒子が、粘液を架橋し、凝集させて、高度に膨張した相互浸透ポリマー網目構造の形成をもたらすことが示されている。したがって、粘液の凝集は、粘液内の細孔の開口をもたらし、粘液のバリア特性を弱める。したがって、凝集なしで粘液を架橋する改善を示す組成物に対する、当該技術分野における必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、粘液を凝集させずに、又は当該技術分野における先行する組成物と比較してより少ない程度の凝集で、女性の子宮頸部入口、すなわち、子宮頚膣部の粘液層を架橋することができる粘膜付着性ポリマーを提供することである。子宮頚膣部は、子宮頸部の外部の保護粘膜である。好ましくは、粘膜付着性ポリマーはまた、子宮頸管の粘膜である子宮頚内膜において女性の子宮頸部入口の粘液層を架橋し得る。架橋は、運動精子が粘液層を通って移動するのを防ぐのに十分なものであるべきである。
【0013】
本発明の別の目的は、細胞及び微生物、例えば、細菌、ウイルス、及び/又は精子が、架橋された粘液に侵入し、粘膜内に拡散するのを防ぐためのより信頼性の高いバリア効果を提供する粘膜付着性ポリマーを提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、妊娠及び/又は性感染症(STI)を防ぐのに十分なバリア効果を提供する粘膜付着性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
ここで、非侵襲的で、使用しやすく、有効な、ホルモン避妊の代替法を提供する新たに開発された技術が、発見された。この手法は、膣と子宮との間の身体の天然のバリアである頸管粘液を、精子細胞に対して一時的に不透過性にすることに依拠する。頸管粘液は、女性を感染症から保護し、主に、その月を通して異物細胞に対して不透過性である。しかしながら、排卵日前後に、ホルモンの変化が、粘液を緩くし、その後、精子細胞に対して非常に透過性になる。頸管粘液への粘膜付着性(バイオ)ポリマーの送達が、粘液ゲルの微細構造を変化させ、それによって、身体自身の天然のバリアを強化し、受精を防ぎ得ることが見出された。
【0016】
4~20個のモノマーを含有する低分子量粘膜付着性ポリマー(例えば国際公開第2018185321号又はBiomacromolecules,2018,19,3,872-882を参照)が、前記粘液を架橋することによって粘液バリア特性を強化する理想的な粘膜付着性ポリマーであることが以前に明記された。ポリマーの小さいサイズが、分子を、粘液の内部で有利に拡散させるという見解であった。これは、粘膜付着性ポリマーの、粘膜中への拡散を改善して、粘液を凝集させずに、厚い厚さにわたって粘液層を架橋することを可能にするはずである。それによって、小さい粘膜付着性ポリマー複合体は、網目構造の細孔を塞ぎ、バリア特性を強化するであろう。しかしながら、例えばキトサンによるバリア特性のこのような強化は、ブタ胃粘素及び結腸ムチン細胞株において小さいキトサンサイズについて機能することが示されたが、避妊用組成物としての用途では、標的化する必要がある粘液が、消化管中のムチンと非常に異なっている。排卵時に、頸管粘液は、ゲルを通した精子の通過を可能にするように緩くなる。胃粘液又は結腸粘液と比較して、ムチン含量は減少され、全体的な粘液構造及び組成が、非常に異なる。したがって、粘液層が、粘液を凝集させずに、運動精子が粘液層を通って移動するのを十分に防ぐほど十分に架橋されることが非常に重要である。
【0017】
粘液の凝集は、ムチンポリマーが、粘膜付着性ポリマーの周りで凝縮するときに起こる。この結果は、非常に密なムチンポリマー凝集体の領域の生成及び非常に目の粗い及び非常に緩いムチン網目構造の領域の生成である。これらの目の粗い領域は、精子を通過させ得る。
【0018】
したがって、本発明は、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物に関する。
【0019】
胃粘液及び結腸粘液について上述される4~20個のモノマーの粘膜付着性ポリマーによる治療が、実際に、排卵粘液中の粘液バリアの有効な強化に好適でないことが示されることが、本明細書に開示される。少なくとも20,000Daの粘膜付着性ポリマーが、例えば粘液バリアに侵入しようとする精子細胞に対するバリアを形成する際にはるかに有効であることが示される。さらに、100,000Daを超える粘膜付着性ポリマーが、大き過ぎて、粘液と相互作用しにくいことが本明細書に示される。
【0020】
本明細書に開示される組成物は、膣用ゲル中で製剤化される場合、子宮頸部に効率的に送達され得る。ゲルの成分は、立体障害効果によって又は粘膜付着性ポリマー及びゲルと凝集体を形成する分子間相互作用によって、ゲルから粘液中への粘膜付着性ポリマーの拡散を防ぐことができ、例えば、粘膜付着性ポリマーが、ゲル化剤として典型的に使用されるカルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの賦形剤軟質ゲルとして提供される場合、この成分は、例えば、粘膜付着性ポリマーとして使用される場合、キトサンと強く相互作用する。少なくとも2つの異なるタイプのゲル化剤が、女性の排卵頸管粘液中への粘膜付着性ポリマーの浸透を防がず、粘膜付着性ポリマーによって得られるバリア強化効果を妨げずに、天然及び正荷電で、膣用製剤に好適である。ゲル化剤は、粘膜付着性ポリマーとの強い相互作用を避けるために、天然又は正荷電のいずれかである必要がある。別の例では、粘膜付着性ポリマーが、チオール基を介して粘液と相互作用する場合、賦形剤は、チオール基を含有してはならない。
【0021】
本発明はさらに、避妊剤としての膣用避妊組成物の使用であって、前記膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、使用に関する。
【0022】
本発明はまた、治療に使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物に関する。
【0023】
さらに、本発明は、避妊薬又は避妊剤として使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物に関する。
【0024】
本発明は、産児制限又は産児制限治療に使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物にさらに関する。
【0025】
最後に、本発明は、治療の方法、妊娠を避ける方法、避妊の方法、及び/又は産児制限若しくは産児制限治療の方法であって、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物を使用する工程を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面の簡単な説明
【
図1A】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 A、B、C-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の甲殻類の殻由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の甲殻類の殻由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおける拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。全てのサンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1B】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 A、B、C-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の甲殻類の殻由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の甲殻類の殻由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおける拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。全てのサンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1C】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 A、B、C-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の甲殻類の殻由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の甲殻類の殻由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおける拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。全てのサンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1D】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 D、E、F、G、H-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の非動物由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の非動物由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1E】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 D、E、F、G、H-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の非動物由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の非動物由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1F】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 D、E、F、G、H-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の非動物由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の非動物由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1G】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 D、E、F、G、H-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の非動物由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の非動物由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1H】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 D、E、F、G、H-左側のグラフは、キトサン濃度(% w/v)で表される20ミリ秒の曝露時間の時点での様々な分子量の非動物由来のキトサンについてのCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。右側のグラフは、800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される様々な分子量の非動物由来の標識されたキトサンの相対的蛍光強度(RFI)として表されるCVMにおけるキトサンの拡散プロファイルである。蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の最大拡散距離を示す。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。
【
図1I】子宮頸部、排卵粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5 I-様々なサイズのキトサンを用いて行われるキトサン浸透試験の代表的な画像。強度プロファイルを、
図1A~Cのグラフを作成するためにこれらの画像について測定した。
【
図2】キトサンモル質量の関数としての、30分の曝露後のヒト子宮頸部排卵粘液中のキトサン蓄積の定量。
【
図3A】子宮頸部、排卵粘液を通した精子侵入:水(H
2O)のみ(A)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(B)、又は100mMの乳酸(LAC)(C)を含有するpH5.5溶液中の0.5%(w/v)COキトサン。
【
図3B】子宮頸部、排卵粘液を通した精子侵入:水(H
2O)のみ(A)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(B)、又は100mMの乳酸(LAC)(C)を含有するpH5.5溶液中の0.5%(w/v)COキトサン。
【
図3C】子宮頸部、排卵粘液を通した精子侵入:水(H
2O)のみ(A)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(B)、又は100mMの乳酸(LAC)(C)を含有するpH5.5溶液中の0.5%(w/v)COキトサン。
【
図4A】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-7.1kDa、B-18.9kDa、C-27.9kDa、D-36.2kDa、及びE-251.8kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)に溶解された真菌ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図4B】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-7.1kDa、B-18.9kDa、C-27.9kDa、D-36.2kDa、及びE-251.8kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)に溶解された真菌ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図4C】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-7.1kDa、B-18.9kDa、C-27.9kDa、D-36.2kDa、及びE-251.8kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)に溶解された真菌ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図4D】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-7.1kDa、B-18.9kDa、C-27.9kDa、D-36.2kDa、及びE-251.8kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)に溶解された真菌ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図4E】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-7.1kDa、B-18.9kDa、C-27.9kDa、D-36.2kDa、及びE-251.8kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A-7.1kDaについては100mMの乳酸溶液)に溶解された真菌ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図5A】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.4kDa、B-35.0kDa、C-1.4kDa+35.0kDa、及びD-150.0kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、100mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は100mMの乳酸溶液に溶解された甲殻類の殻ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図5B】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.4kDa、B-35.0kDa、C-1.4kDa+35.0kDa、及びD-150.0kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、100mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は100mMの乳酸溶液に溶解された甲殻類の殻ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図5C】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.4kDa、B-35.0kDa、C-1.4kDa+35.0kDa、及びD-150.0kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、100mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は100mMの乳酸溶液に溶解された甲殻類の殻ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図5D】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.4kDa、B-35.0kDa、C-1.4kDa+35.0kDa、及びD-150.0kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、100mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は100mMの乳酸溶液に溶解された甲殻類の殻ベースのキトサンで処理された。使用されるキトサンのモル質量が、グラフの左側に示される。
【
図6】賦形剤として増粘剤を含有する製剤におけるキトサンの溶解性試験。光透過率(%T)、又は濁度(600nmにおける)を、乳酸の溶液(32.5mM、LAC)及びLAC中のヒドロキシエチルセルロースの溶液(HEC)について測定した。使用されるキトサンのモル質量が、以下:Z10-36.2kDa、95/5-35kDa、及びCO-1.4kDaに相当する。
【
図7A】排卵頸管粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5(A-35.0kDaのw/o、B-35.0kDa+2.7%のHEC、及びC-35.0kDa+1.6%のHEC+2.5%のグリセロール)。30分の曝露後20ミリ秒の時点での、キトサンのみ及び賦形剤と混合されたキトサンについての排卵頸管粘液中のキトサン濃度(%、w/v)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される相対的蛍光強度(RFI)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。使用されるキトサンのモル質量が、各グラフの上に示される。
【
図7B】排卵頸管粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5(A-35.0kDaのw/o、B-35.0kDa+2.7%のHEC、及びC-35.0kDa+1.6%のHEC+2.5%のグリセロール)。30分の曝露後20ミリ秒の時点での、キトサンのみ及び賦形剤と混合されたキトサンについての排卵頸管粘液中のキトサン濃度(%、w/v)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される相対的蛍光強度(RFI)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。使用されるキトサンのモル質量が、各グラフの上に示される。
【
図7C】排卵頸管粘液中へのキトサンの拡散:0.5%のCS//pH5.5(A-35.0kDaのw/o、B-35.0kDa+2.7%のHEC、及びC-35.0kDa+1.6%のHEC+2.5%のグリセロール)。30分の曝露後20ミリ秒の時点での、キトサンのみ及び賦形剤と混合されたキトサンについての排卵頸管粘液中のキトサン濃度(%、w/v)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。800ミリ秒の曝露時間で顕微鏡法によって測定される相対的蛍光強度(RFI)。サンプルを、32.5mMのLACに溶解させた。使用されるキトサンのモル質量が、各グラフの上に示される。
【
図8A】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A)、32.5mMの乳酸及び2.7%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)(B)、若しくは32.5mMの乳酸、2.7%のヒドロキシエチルセルロース及び2.5%のグリセロール(Gro)(C)に溶解された35kDaの甲殻類の殻ベースのキトサン(95/5)で処理された。
【
図8B】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A)、32.5mMの乳酸及び2.7%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)(B)、若しくは32.5mMの乳酸、2.7%のヒドロキシエチルセルロース及び2.5%のグリセロール(Gro)(C)に溶解された35kDaの甲殻類の殻ベースのキトサン(95/5)で処理された。
【
図8C】ヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液(A)、32.5mMの乳酸及び2.7%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)(B)、若しくは32.5mMの乳酸、2.7%のヒドロキシエチルセルロース及び2.5%のグリセロール(Gro)(C)に溶解された35kDaの甲殻類の殻ベースのキトサン(95/5)で処理された。
【
図9A】ポリ-L-リジン(PLL)のヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.6kDa、B-66kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液中5mg/mLの濃度で溶解された低モル質量ポリ-L-リジン(A)若しくは32.5mMの乳酸溶液中5mg/mLの濃度で溶解された高モル質量ポリ-L-リジン(B)で処理された。
【
図9B】ポリ-L-リジン(PLL)のヒト子宮頸部排卵粘液を通した精子侵入(A-1.6kDa、B-66kDa)。粘液は、非処理(w/o)であるか、32.5mMの乳酸溶液(LAC)で処理されたか、又は32.5mMの乳酸溶液中5mg/mLの濃度で溶解された低モル質量ポリ-L-リジン(A)若しくは32.5mMの乳酸溶液中5mg/mLの濃度で溶解された高モル質量ポリ-L-リジン(B)で処理された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
1つ又は複数の要素に関連した「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、又は「含有する(containing)」などの用語を用いた、本発明のいずれかの態様又は実施形態の本明細書における説明は、特に記載しない限り又は文脈上明白に矛盾しない限り、その特定の1つ又は複数の要素「からなる(consists of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、又はそれを「実質的に含む(substantially comprises)」本発明の同様の態様又は実施形態に対する裏付けを提供することが意図され、例えば、特定の要素を含む本明細書に記載される組成物は、特に記載しない限り又は文脈上明白に矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載するものと理解されるべきである。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」という用語は、本明細書において使用される際、記載される特徴、整数、工程、操作、要素、及び/又は成分の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分、及び/又はその群の存在又は追加を除外しないことがさらに理解されるであろう。
【0028】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義されるものなどの用語が、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において定義されるように表されない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈されないことが、さらに理解されるであろう。
【0029】
本明細書において使用される際、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明記されない限り、「少なくとも1つ」を含め、複数形を含むことが意図される。「少なくとも1つ」は、「a」又は「an」を限定するものと解釈されるべきではない。
【0030】
本明細書において提供されるあらゆる例、又は例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、本発明をよりよく例示することが意図されるに過ぎず、特に権利請求されていない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる用語も、権利請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示すものと解釈されるべきではない。
【0031】
以下の実施形態、態様、及び定義を説明する際、本発明は、開示される態様と組み合わされた全ての開示される実施形態及び定義を想定している。さらに、全ての可能な実施形態の組合せ及び変更は、明確に記載されていない。それにもかかわらず、特定の手段が、互いに異なる従属請求項に記載されるか、又は異なる実施形態に記載されるという事実だけで、これらの手段の組合せが、利益をもたらすように使用することができないことを示すものではない。本発明は、記載される実施形態の全ての可能な組合せ及び変更を想定している。
【0032】
本発明の第1の態様に開示されるのは、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物である。
【0033】
本発明の第2の態様に開示されるのは、避妊剤としての膣用避妊組成物の使用であって、前記膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、使用である。
【0034】
本発明の第3、第4、及び第5の態様に開示されるのは、治療に使用するため、避妊薬又は避妊剤として使用するため、及び産児制限又は産児制限治療において使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物である。
【0035】
本発明の第6、第7、第8、及び第9の態様に開示されるのは、治療の方法、妊娠を避ける方法、避妊の方法、及び産児制限若しくは産児制限治療の方法であって、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物を使用する工程を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、方法である。
【0036】
本明細書に開示される際、避妊用組成物は、精子が卵子又は卵に到達するのを防ぎ、性感染症から保護するのにさらに役立ち得るバリア方法によって、卵細胞及び精子細胞を引き離しておくことによって、女性が妊娠するのを防ぐ組成物である。子宮頚膣部及び子宮頚内膜にバリアを生成し、それによって、膣(又は膣管)内に精子細胞を保持することによって、精子が卵子又は卵に到達するのが防がれる。したがって、精子細胞は、子宮頸部を通して子宮に入り、それによってファローピウス管(又は卵管)に入って、卵に到達する機会を有さないであろう。精子細胞は、その代わりに、膣内で酸性の流体によって殺滅されてしまうか、又は「逆流」中に失われる。
【0037】
本明細書に開示される際、有効成分は、避妊能力を提供する、すなわち、精子が卵子又は卵に到達するのを防ぐことによって、女性が妊娠するのを防ぐ、避妊用組成物中の1つ以上の化合物である。
【0038】
粘膜付着性ポリマーは、粘膜付着を示すポリマーである。粘膜付着は、生体材料と粘液又は粘膜との間の引力などの、2つの生体材料を結び付ける界面張力として本明細書に記載される。したがって、粘膜付着性ポリマーとは、粘液又は粘膜に対する引力を有するポリマーを意味する。
【0039】
粘液は、全ての上皮表面の保護カバーであり、これは、上皮層の潤いを保ち、微生物が上皮に侵入するのを防ぐ。粘液は微生物を捕捉し、それらの遠位の輸送を促進するため、天然の保護効果が達成される。粘膜付着性ポリマーによって達成されるバリア効果に言及する際、それは、ポリマーの架橋による粘液の強化である。強化されたバリアの効果は、拡散を停止させる架橋された粘液の緊密性、及び粘液が複合体化された粘膜付着性ポリマーによってどのくらい長く強化されるかに基づく。後者は、架橋されたポリマーを含む粘液を除去する、粘膜から細胞によって分泌される粘液の天然のターンオーバーによって決定される。
【0040】
子宮頸部の粘膜における粘液層は、月経周期の4つの段階に応じてレオロジー特性が異なる。排卵時に、頸管粘液は、ゲルを通した精子の通過を可能にするほど緩く、したがって、粘液の孔径も増加されるであろう。バリア層の厚さは、精子などの比較的大きい細胞に対して不透過性であるように調整され得るが、それはまた、細菌、ウイルス、又は微生物若しくは病原体に対して不透過性であることが必要とされ得る、さらに緊密なバリア層へと調整されてもよい。
【0041】
頸管粘液の増粘が生じ得るという有効なバリアを前提として、頸管粘液バリア特性が、避妊方法として利用され得ることが広く認められている。実際に、レボノルゲストレル子宮内避妊システム(LNG-IUS)及びプロゲスチンのみのミニピルの避妊の主要な機構は、頸管粘液が増粘することによる。本明細書に開示される手法は、バリアの性質によってではなく、バリアを生成する手段によってこれらの手法と異なる:非ホルモン性、非侵襲的であり、副作用のない要求に応じた避妊薬である。
【0042】
したがって、粘膜付着性ポリマーは、細胞及び微生物、例えば、細菌、ウイルス、及び精子が、架橋された粘液に侵入し、粘膜中に拡散するのを防ぐ、より信頼性の高いバリア効果を提供する。膣用避妊組成物は、最も小さい微生物でさえ侵入するのを防ぎ、それによって、妊娠だけでなく、性感染症(STI)も防ぎ得るほど緊密な架橋された粘液を作製する。
【0043】
したがって、いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、組成物は、避妊用組成物である。さらに、本発明は、望ましくない副作用を有するホルモン又は化学物質を含まない避妊用組成物を提供する。望ましくない作用は、塞栓、片頭痛、又は月経周期に影響を及ぼすなどの軽度の副作用を含み得る。本発明に係る粘膜付着性ポリマーの有効時間は、粘液のターンオーバーによって決定され、これは、避妊効果が一時的であることを意味する。有効時間及び受胎の影響がなくなった後、避妊は解消される。十分な避妊の時間は、粘液の生物学的ターンオーバー、粘膜付着性ポリマーの濃度などのいくつかの因子によって影響される。避妊効果は、所定の時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間、1、2、3日間或いは最大で10日間にわたって持続し、これは、精子細胞が子宮頸部に入るのを阻止するのに十分な時間である。精子が子宮頸部に入るのを阻止することによって、膣の酸性環境が、精子の運動性を低下させ、精子を弱めて、卵子を受精させることができないようにする。天然条件下で、精子細胞は、生存するために数分以内に子宮頸部に入る必要がある。完全な避妊効果が、1回の適用から得られ、これは、避妊用組成物の非同期の(non-coherent)使用が、同期の(coherent)使用と同じ保護を提供することを意味する。完全な避妊効果が1回の適用から得られることはまた、頸管粘液の、避妊用組成物との一時的な接触が、頸管粘液との持続した接触と同じ完全な保護を提供し得ることを意味し得る。
【0044】
粘膜付着性ポリマーのサイズは、分子が粘液の内部で拡散することを可能にする。粘膜中への粘膜付着性ポリマーのこの拡散は、それが、粘液を凝集させずに、運動精子が粘液を通して移動するのを防ぐのに十分に厚い厚さにわたって粘液層を架橋し得るのを可能にする。粘膜付着性ポリマーは、粘液と複合体を形成し、それによって、網目構造の細孔を塞ぎ、そのバリア特性を強化する。排卵時に、頸管粘液は、ゲルを通した精子の通過を可能にするように緩く、したがって、粘液の孔径も、非排卵粘液と比較して増加されるであろう。粘膜付着性ポリマーのサイズは、排卵頸管粘液のこの増加した孔径へと調整されるべきである。排卵頸管粘液の増加した孔径のために役立つ粘膜付着性ポリマーのサイズはまた、頸管粘液の孔径が排卵により増加しないとき、有効に働く。
【0045】
さらに、粘膜付着性ポリマーのサイズは、一般に、より低い分子量でより可溶性であり、より少ない立体障害を有する。粘膜付着性ポリマーが大きい場合、それは、粘液の細孔を通して通過、又は通り抜けできず、したがって、それは、結局、増加した数のムチン分子と相互作用することになり、それによって、ゲルを通して拡散しないが、それが小さ過ぎる場合、それは、ムチン分子と相互作用せずに直ぐに通過し得る。したがって、粘膜付着性ポリマーが粘液の細孔を通して最後まで浸透するのを避けるための、より大きいサイズであるが、大き過ぎないサイズと、対象の粘膜への適切な送達のための高い十分な溶解性を得るためのより小さいサイズとの間で調整が必要とされる。これによって、粘膜付着性ポリマーは、粘膜により効率的に送達され得、これは、ひいては、より小さい又はより大きい粘膜付着性ポリマー分子(20,000Da未満又は100,000Da超)を用いて得られるものより強い、したがってより有効な架橋を可能にする。
【0046】
粘膜付着性ポリマーは、一般に、カチオン性であり、モノマーの少なくとも50%が荷電している。モノマー単位は、例えば、物理的pHが正に荷電したアミノ基を含み得る。それはまた、疎水性であり得、例えばモノマーの最大で50%が、疎水性側鎖を有する。粘膜付着性ポリマーのこれらの2つの特徴は、適合する賦形剤を選択する場合、役割を果たし得る。
【0047】
アミノ基は、化学において、水素原子、アルキル基、アリール基、又はこれら3つの組合せへの単結合によって結合された窒素原子からなる官能基である。アミノ基を含有する有機化合物は、アミンと呼ばれる。アミンは、無機化合物アンモニア、NH3の誘導体である。アンモニア中の水素の1つ、2つ、又は3つ全てが、アルキル又はアリール基で置換されるとき、得られる化合物はそれぞれ、第一級、第二級、又は第三級アミンとして知られている。アンモニアのように、アミンは、窒素原子の非共有電子対が、プロトンと配位結合を形成し得るため、弱塩基である。水不溶性アミンは、酸を加えて、その水溶性アミン塩を形成することによって、溶解可能にされ得る。アミノ基は、粘膜付着性ポリマーを塩基性にし、これは、それが含む大量の負荷電分子のため、粘膜へのそれらの結合に有利である。塩基性アミノ基は、特に、より効率的な架橋を提供する。さらに、粘膜付着性ポリマーのモノマーの一部、最大で50%が、疎水性基を含むとき、粘膜付着性ポリマーはまた、粘膜に付着し、その中に拡散して、粘液を凝集させずに粘膜を架橋し得る。本発明に関して、アミノ基は-NH2であり、ここで、1つ又は両方の水素原子が、基Rで置換され得、又はアミノ基は、3つのR基を有する第四級アミノ基、すなわち、-N+R3であり得る。Rは、1つ以上の-OH、-SH、又は-NH2で任意に置換されるC1~C4アルキルから選択され得る。2つ以上のRが、同じ窒素原子上に存在する場合、これらは、同じ又は異なるR基であり得る。Rが、4個以下の炭素原子を有する限り、特に、R基の水素原子が、1つ以上の-OH、-SH、又は-NH2で置換されるとき、本明細書に開示されるアミノ基は、一般に、塩基性であると見られる。例えば5個以上の炭素原子を有するより長いアルキル鎖は、アミノ基の塩基性を隠し得るが、5個以上の炭素原子のアルキルを有するアミノ基はまた、本発明に関してアミノ基と見なされる。同様に、糖は、アミド基、例えば-CONHCH3、又は-NHCHOも含み得るが、このような基は、本発明に関してアミノ基と見なされない。
【0048】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、アミノ基は、10個以上の炭素原子のアルキルを含まない。
【0049】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、アミノ基は、9個以上の炭素原子のアルキルを含まない。
【0050】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、アミノ基は、8個以上の炭素原子のアルキルを含まない。
【0051】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、アミノ基は、6個以上の炭素原子のアルキルを含まない。
【0052】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、アミノ基は、5個以上の炭素原子のアルキルを含まない。
【0053】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位の少なくとも55%、例えばモノマー単位の少なくとも60%、例えばモノマー単位の少なくとも65%、例えばモノマー単位の少なくとも70%が、少なくとも1つのアミノ基を含む。
【0054】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのアミノ基の1つ以上は、第一級アミンである。本発明に関して、第一級アミンは、いずれの水素原子も基R置換で置換されていないアミノ基(すなわち-NH2)である。
【0055】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのアミノ基は、第一級アミンである。
【0056】
膣用避妊組成物は、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む。1つ以上の有効成分は、生理的に許容されるゲル化剤(又は担体)中で投与され得、これは、1つ以上の有効成分が、それが使用される条件で可溶性であることを確実にし、1つ以上の有効成分が、標的領域中で均一に分布されるのを確実にする。本明細書において、均一に分布されるとは、標的とされる粘液領域が、粘液中に拡散し、粘液バリアを強化するのに十分な有効成分を含む少なくとも最小量の組成物に供されることを意味する。
【0057】
生理的に許容されるゲル化剤(又は担体)とは、有効用量で、ヒト及び/又は動物生物に対して化学的にも物理的にも毒性でない非毒性化合物を意味する。
【0058】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、グリセロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、又はこれらの組合せから選択される。任意の好適な医薬品ゲル化剤は、ゲル化剤が、1つ以上の有効成分、特に粘膜付着性ポリマーと相互作用しない限り、使用され得る。
【0059】
生理的に許容されるゲル化剤との組合せによって、組成物と粘液との接触面積が最大化される。増加した接触面積は、最大量の粘膜付着性ポリマーが、粘液層中に拡散し、その特性を変更し得るのを確実にするのに役立ち得る。また、増加した拡散に寄与するのは、組成物の高い密度である。例えば、半固体ゲル中などで、水の組成密度と同様の高い組成密度を有することによって、適用される組成物は、形状を変化させ、子宮頸部入口の全表面を覆うことができる。
【0060】
ヒドロキシエチルセルロース(又はエチルセルロース)は、セルロースに由来するゲル化剤及び増粘剤である。それは、化粧品、清浄液、及び他の家庭用品において広く使用されている。ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース(又はメチルセルロース)は、消化管液における薬物の溶解を改善するために、カプセル製剤中で疎水性薬物とともに使用されることが多い。このプロセスは、親水化として知られている。
【0061】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、又はこれらの組合せから選択される。
【0062】
グリセリン(glycerine)又はグリセリン(glycerin)とも呼ばれるグリセロールは、単純なポリオール化合物である。それは、無色で無臭の粘性液体であり、甘い味がし、非毒性である。グリセロール骨格は、グリセリドとして知られている多くの脂質に見られる。それは、食品産業において甘味料として、及び医薬製剤中の湿潤剤として広く使用されている。グリセロールは、その水への溶解性及びその吸湿性に関与する3つのヒドロキシル基を有する。
【0063】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、グリセロールである。
【0064】
ヒプロメロースとも呼ばれるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、様々な市販の製品に見られる、点眼剤、並びに経口薬剤中の賦形剤及び制御送達成分として使用される、半合成の、不活性の、粘弾性のポリマーである。食品添加物として、ヒプロメロースは、乳化剤、増粘剤、及び懸濁化剤であり、動物ゼラチンの代替である。そのコーデックス委員会コード(Codex Alimentarius code)(E番号)は、E464である。
【0065】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0066】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、水溶性及び有機溶解性の両方を有するセルロースの誘導体である。それは、賦形剤、及び局所眼保護剤及び滑沢剤として使用されている。HPCは、繰り返しグルコース単位中のヒドロキシル基のいくつかが、プロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロキル化(hydroxypropylated)-OCH2CH(OH)CH3基を形成した、セルロースのエーテルである。グルコース単位当たりの置換ヒドロキシル基の平均数は、置換度(DS)と呼ばれる。完全な置換は、3のDSを提供するであろう。加えられるヒドロキシプロピル基は、ヒドロキシル基を含有するため、これはまた、HPCの調製中にエーテル化され得る。これが起こるとき、グルコース環当たりのヒドロキシプロピル基のモル数であるモル置換度(MS)は、3より大きくなり得る。
【0067】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0068】
グアランとも呼ばれるグアーガムは、食物、飼料、及び工業用途において有用な増粘及び安定化特性を有するグアー豆から抽出されるガラクトマンナン多糖である。グアーの種子は、機械的に殻を取り除かれ、水和され、粉砕され、用途に応じて選別される。それは、典型的に、自由流動性の、オフホワイトの粉末として生成される。化学的に、グアーガムは、糖ガラクトース及びマンノースから構成される菌体外多糖である。骨格は、ガラクトース残基が、2マンノースごとに1,6-結合して、短い側鎖を形成するβ 1,4-結合マンノース残基の直鎖である。グアーガムは、5分間にわたって80℃の温度に耐える能力を有する。
【0069】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、生理的に許容されるゲル化剤は、グアーガムである。
【0070】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、薬学的に許容されるゲル化剤は、薬学的に許容される担体であり、ここで、薬学的に許容される担体は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、生理食塩水(生理食塩溶液)、又はそれらの組合せであり得る。
【0071】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、膣用避妊組成物は、フォームでない。
【0072】
フォームは、液体又は固体中にガスのポケットを捕捉することによって形成される物体である。ほとんどのフォームでは、ガスの体積が大きく、液体又は固体の薄膜が、ガスの領域を分離している。
【0073】
粘膜付着性ポリマーは、C6糖が、エーテル、エステル、又はアミド結合を介して互いに結合された多糖であり得る。C6糖のモノマーは、例えば任意のエーテル結合を介して結合され得、例えば2つの隣接するC6糖のC1及びC4が結合され得、又は2つの隣接するC6糖のC1及びC6が結合され得る。特に、モノマーが、C6糖、例えばグルコースである場合、モノマー、例えばグルコースモノマーは、β 1,4-結合を介して結合され得る。
【0074】
少なくとも1つのアミノ基は、グルコースモノマーの任意の炭素原子、例えばC2又はC3に結合され得る。
【0075】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、エーテル結合を介して互いに結合された複数のモノマー単位からなる。
【0076】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位は、C6糖、アミノ官能化C6糖、又はこれらの組合せから選択される。
【0077】
C6糖は、分子が6個の炭素を有する炭水化物(すなわち、ヘキソース)である。このクラスの最もよく知られた例は、セルロース及びデンプン分子の主成分であるグルコースである。
【0078】
アミノ官能化C6糖(又はアミノ糖)は、ヒドロキシル基がアミン基で置換された糖分子である。60を超えるアミノ糖が知られており、最も多いものの1つは、キチンの主成分であるN-アセチル-D-グルコサミンである。アミノ-官能化は、C6糖のC2、C3、C4、及び/又はC6上であり得る。
【0079】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位は、アミノ官能化C6糖である。
【0080】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位は、D-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミンの組合せである。
【0081】
D-グルコサミン(C
6H
13NO
5)は、アミノ糖であり、グリコシル化タンパク質及び脂質の生化学的合成における代表的な前駆体である。D-グルコサミンは、多糖類、キトサン、及びキチンの構造の一部である。D-グルコサミンは、最も多い単糖類の1つである。それは、甲殻類の外骨格の加水分解によって又は、一般的ではないが、トウモロコシ又はコムギなどの穀物の発酵によって、商業的に生成される。
【化1】
【0082】
N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc、C
8H
15NO
6)は、単糖及びグルコースの誘導体である。それは、いくつかの生物系において重要である。それは、細菌細胞壁中のバイオポリマーの一部であり、これは、MurNAcの乳酸残基においてオリゴペプチドと架橋された、GlcNAc及びN-アセチルムラミン酸(MurNAc)の交互の単位から構築される。この層状構造は、ペプチドグリカンと呼ばれる(以前はムレインと呼ばれていた)。GlcNAcは、昆虫及び甲殻類の外皮を形成する、ポリマーキチンのモノマー単位である。
【化2】
【0083】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位の少なくとも50%が、D-グルコサミンである一方、モノマー単位の50%以下は、N-アセチル-D-グルコサミンであり、例えば、50%~100%が、D-グルコサミンであり、0%~50%が、N-アセチル-D-グルコサミンである。
【0084】
モノマー単位の少なくとも50%がD-グルコサミンであるとは、粘膜付着性ポリマー中のモノマーの総量の少なくとも50%がD-グルコサミンに由来することを意味する。同様に、モノマー単位の50%以下がN-アセチル-D-グルコサミンであるとは、粘膜付着性ポリマー中のモノマーの総量の50%以下がN-アセチル-D-グルコサミンに由来することを意味する。さらに、50%~100%又は0%~50%とは、粘膜付着性ポリマー中のモノマーの総量の50%~100%又は0%~50%が前記モノマー単位に由来することを意味し、全ての端点(0%、50%、及び100%)が含まれる。
【0085】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、モノマー単位の少なくとも65%が、D-グルコサミンである一方、モノマー単位の35%以下は、N-アセチル-D-グルコサミンであり、例えば、65%~100%が、D-グルコサミンであり、0%~35%が、N-アセチル-D-グルコサミンである。端点が含まれる。
【0086】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサンであり、ここで、グルコースモノマーの少なくとも50%が、-NH2基を有する。キトサンは、少なくとも50%脱アセチル化されたとも示され得る。
【0087】
キトサンは、ランダムに分布したβ 1,4-結合D-グルコサミン(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化単位)から構成される線状多糖である。それは、エビ及び他の甲殻類のキチン殻を、水酸化ナトリウムのようなアルカリ性物質で処理することによって作製されるか、又はそれは、真菌細胞壁などの別の供給源から抽出され得る。
【0088】
粘膜付着性ポリマーがキトサンである場合、例えば、高分子量ポリアクリル酸の存在を避けることが重要であるが、これは、アクリルモノマー中のカルボキシル官能基が、キトサン鎖中の塩基性アミノ基とイオン錯体を形成し、これが、高度に膨張した相互浸透性ポリマー網目構造の形成をもたらすためである。これは、粘液の凝集をもたらし、ひいては、粘液内の細孔の開口をもたらし、粘液のバリア特性を弱める。
【0089】
キトサンは、強く粘膜付着性の分子であり、これは、それが、粘液ゲルを構成するムチン糖タンパク質と絡み合い、それに結合することができることを意味する。したがって、それらは、粘膜薬物送達デバイスにおいて使用されており、市販の止血製品に含まれる。しかしながら、本明細書に開示される際に使用されるキトサンは、典型的に、高いモル質量のものであり、したがって、粘液ゲル中であまり拡散せず、粘液を凝集及び凝縮させる傾向がある。
【0090】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサンであり、ここで、グルコースモノマーの少なくとも50%が、-NH2基を有し、グルコースモノマーの40%以下が、-CONHCH3基を有する。
【0091】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサンであり、ここで、グルコースモノマーの少なくとも50%が、-NH2基を有し、グルコースモノマーの20%以下が、-CONHCH3基を有する。
【0092】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサンであり、ここで、グルコースモノマーの少なくとも70%が、-NH2基を有する。キトサンは、少なくとも70%脱アセチル化されたとも示され得る。
【0093】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサンであり、ここで、グルコースモノマーの少なくとも70%が、-NH2基を有し、グルコースモノマーの20%以下が、-CONHCH3基を有する。
【0094】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、キトサン、キトサン-トリメチル、キトサン-チオグリコール酸、キトサン-イミノチオラン、キトサン-チオエチルアミジン、又はこれらの組合せから選択される。
【0095】
キトサン-トリメチルは、キトサンの四級化親水性誘導体である。キトサンのこの四級化誘導体は、正電荷を有し、広範囲のpHにわたって可溶性である。
【0096】
キトサン-チオグリコール酸、キトサン-イミノチオラン、及びキトサン-チオエチルアミジンは、異なるチオール基の導入によって修飾されたキトサン誘導体である。チオール基は、カルボジイミドによって媒介されるアミド結合形成によってキトサンに導入される。それによって、得られるポリマーの特性は、元のポリマーと比較して、水溶性、粘膜付着、生分解性及びインサイチュゲル化に関して改変される。
【0097】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、20,000Da~100,000Da、例えば30,000Da~90,000Da、例えば30,000Da~80,000Da、例えば30,000Da~70,000Da、例えば40,000Da~60,000Daの分子量、例えば45,000Da~55,000Daの分子量を有するキトサンである。全ての端点が、上記の範囲に含まれる。
【0098】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、アミド結合を介して結合された180~900アミノ酸の長さのペプチド分子である。粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸を含む場合、アミノ酸の少なくとも50%が塩基性基を有する限り、又はアミノ酸の少なくとも50%が必要に応じて疎水性基を有する限り、又はアミノ酸の少なくとも50%がチオール基を有するか、又はこれら3つの組合せ(塩基性、疎水性、及びチオール)である限り、任意のアミノ酸が含まれ得る。粘膜付着性ポリマーは、天然アミノ酸に限定されず、アミノ酸が、非毒性であり、対象によって耐容されることが好ましい。粘膜付着性ポリマーが、D-アミノ酸を含まず、粘膜付着性ポリマーに含まれる任意のアミノ酸がL-アミノ酸であることが好ましい。
【0099】
一般に、以下のアミノ酸:アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンは、塩基性であると考えられ、一実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、アミノ酸のポリペプチドであり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される。残りのアミノ酸は、任意のアミノ酸、例えば、遺伝子コードから定義される20のアミノ酸のいずれかから選択され得るが、特に、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、及びグルタミンである。粘膜付着性ポリマーの特定の実施形態は、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、及び/又はポリ-アルギニンを含む。塩基性アミノ酸を使用する利点は、それらが水溶液における良好な溶解性を有することである。
【0100】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、180~900アミノ酸の長さのペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、疎水性基を有し、このアミノ酸は、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなるリストから選択される。残りのアミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、及びグルタミンからなるリストから選択され得、又は残りのアミノ酸は、任意のアミノ酸、例えば、遺伝子コードから定義される20のアミノ酸のいずれかから選択され得る。
【0101】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、アミノ酸を含み、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなる群から選択され、又はアミノ酸の50%が、疎水性基を有し、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなる群から選択される。
【0102】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される。別の実施形態において、アミノ酸の少なくとも60%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される。さらに別の実施形態において、アミノ酸の少なくとも70%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される。
【0103】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%がリジンである。別の実施形態において、アミノ酸の少なくとも60%がリジンである。さらに別の実施形態において、アミノ酸の少なくとも70%がリジンである。
【0104】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、L-リジンであるアミノ酸を含む。いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、ポリ-L-リジン(PLL)である。
【0105】
アミノ酸又は疎水性アミノ酸は生分解性であるため、アミノ酸又は疎水性アミノ酸を使用することが有利である。粘液タンパク質とポリマーとの間のタンパク質-ペプチド相互作用は、粘膜付着を促進し得る。さらに、アミノ酸ポリマーは、細菌を用いて組換えにより又は合成的に生成され得る。
【0106】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、糖モノマー、例えばC6糖モノマー、及びアミノ酸の両方を含み、ここで、モノマーの少なくとも50%が塩基性であり、例えばアミノ基を有し、又はモノマーの少なくとも50%が疎水性であり、例えば疎水性基を有する。
【0107】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せによって互いに結合された40~800個のモノマー単位、例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せによって互いに結合された50~750個のモノマー単位、例えば75~700個のモノマー単位、例えば100~650個のモノマー単位、例えば150~600個のモノマー単位からなる。粘膜付着性ポリマーのサイズは、それが、ポリマーが、粘液ゲル中に深く拡散するのに十分に小さく、緊密な架橋網目構造を形成するのに十分に大きいことを確実にするため、非常に重要である。緊密とは、例えば、微生物又は精子細胞に対して不透過性であることを意味する。
【0108】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、低分子量を有するポリマーから選択され、これは、粘膜付着性ポリマーが、粘液と安定した複合体を形成するのを確実にする、20~約100kDaの範囲の分子量を提供する重合度(DP)を有するべきである。
【0109】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、20,000Da~90,000Da、例えば30,000Da~80,000Da、例えば30,000Da~70,000Da、例えば40,000Da~60,000Daの分子量、例えば45,000Da~55,000Daの分子量を有する。全ての端点が、上記の範囲に含まれる。
【0110】
サイズ又はポリマーは、ポリマーが、使用される条件において可溶性であること、及びポリマーが、粘液の細孔を通って拡散し、厚い緊密なバリアを形成し得ることを確実にする。
【0111】
粘膜付着性ポリマーは、女性の腹部中で低いpHである、標的とされる粘膜の環境において安定しているべきである。したがって、粘膜付着性ポリマーが安定しているpH範囲は、1~8の範囲である。pH環境に応じて、ポリマーの異なるタイプ及びサイズが使用され得る。
【0112】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、膣用避妊組成物のpHは、2.0~7.0、例えば2.5~6.5、例えば3.0~6.0である。全ての端点が、上記の範囲に含まれる。
【0113】
組成物のpHが2.0~7.0であるとは、pHが、測定される場合、2つの値の間であること、及び粘膜付着性ポリマーが、この範囲内で安定していることを意味する。組成物のより低いpHは、組成物が、女性の腹部、特に女性の膣(ここで、pH値は、3~5の範囲である)に適用されるべきである場合に好ましい。
【0114】
粘膜付着性ポリマーの拡散は、粘膜付着性ポリマー及び生理的に許容されるゲル化剤が、粘液に付着するときに起こる。治療における粘膜付着性ポリマーの使用は、良好な粘膜付着をもたらす、その重合度及びアセチル化度により可能である。これは、ポリマーが粘液中に拡散し、粘液の細孔を一時的に塞ぐのを可能にする。これは、粘液の一時的な架橋効果のため起こり、これは、粘液の正常なターンオーバー及び粘膜付着性ポリマーの生分解性によって制御される。したがって、有効な架橋時間は、例えば1mg/mL~100mg/mLの濃度、例えば1mg/mL~75mg/mLの濃度、例えば1mg/mL~50mg/mLの濃度、例えば1mg/mL~25mg/mLの濃度、例えば5mg/mLの範囲の濃度などの、粘膜付着性ポリマーの様々な濃度に粘液を供することによって調整され得る。全ての端点が、上記の範囲に含まれる。
【0115】
いずれかの態様に係る1つ以上の実施形態において、粘膜付着性ポリマーは、膣用避妊組成物の総重量の0.05重量%~10.0重量%、例えば、膣用避妊組成物の総重量の0.5重量%~10.0重量%、例えば1.0重量%~10.0重量%、例えば2.5重量%~10.0重量%.例えば5.0重量%~10.0重量%、例えば0.05重量%~10.0重量%、例えば0.05重量%~8.0重量%、例えば0.05重量%~6.0重量%、例えば0.05重量%~4.0重量%の濃度である。
【0116】
0.05重量%~10.0重量%とは、膣用避妊組成物の総重量の0.05%~10.0%が、粘膜付着性ポリマーに由来することを意味する。全ての端点が、上記の範囲に含まれる。
【0117】
粘膜付着性ポリマーは、その付着特性及びサイズのため、粘液に浸透し、粘液の表面中に拡散して、厚い層を形成する。次に、粘膜付着性ポリマーは、粘液と複合体を形成し、それによって、網目構造の細孔を塞いで、強化されたバリア特性を粘液に与える。粘液が強化されるとき、それは、粒子に対して不透過性であり、例えば外部から誘導された液体、粒子及び細胞、例えば精子の通過を防ぐ。粘液中で形成された複合体は、特定のサイズの細胞に対して標的化され得、それによって、20~30nmの範囲のサイズのビリオン(又はウイルス)、0.3μmの範囲のマイコプラズマ、0.5~5μmの範囲の細菌、又は3μmの範囲の精子に対して不透過性である。
【0118】
処理された粘液が、精子に対して一時的に不透過性であるため、避妊剤としての、粘膜付着性ポリマー及び薬学的に許容されるゲル化剤を含む本発明の組成物。本発明に関連する避妊効果は、単回の使用によって達成される非外科的な及びホルモン作用のないバリア効果による、妊娠の可逆的及び一時的な防止を意味し、これは、避妊効果が、1回の適用によって達成され、例えば組み合わされた経口避妊ピル(産児制限ピル又は口語で「ピル」と呼ばれることが多い)などのホルモンピルの場合のように所定の時間にわたって濃度が増加されることを必要としないことを意味する。
【0119】
一時的な効果とは、粘液に適用される場合、粘膜付着性ポリマーの効果が可逆的であることを示唆する。逆戻りが起こる率は、粘液中に拡散されるポリマーの量及び粘液自体の生物学的ターンオーバーによって決定される。
【0120】
別の態様において、本発明は、粘膜付着性ポリマー及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物、例えば上記の避妊用組成物、並びにアプリケータを含む、パーツのキットである。一実施形態において、アプリケータは、アプリケータが、シリンジを介して又は膣に溶解されてゲルを放出する軟質ゲルカプセルの導入によって膣内に挿入される、ゲルの形態の膣用避妊組成物を含む、方法を用いる送達デバイスである。ゲルは、アプリケータから展開され、頸管粘液に適用され;それによって、粘液は、粘膜付着性ポリマーによって架橋される。一実施形態において、アプリケータは、膣用避妊組成物を含み、排出機構によって中身を排出され得る容器である。
【0121】
粘膜付着性ポリマー及び生理的に許容されるゲル化剤を含む組成物は、アプリケータをさらに含むキットのパーツであり得る。アプリケータは、組成物を、例えば子宮頸部の表面に適用するのに使用され得る。
【0122】
一実施形態において、アプリケータは、シリンジである。別の実施形態において、アプリケータは、軟質ゲルカプセルである。
【0123】
さらなる実施形態において、キットは、膣用避妊組成物、アプリケータ、及び使用説明書を含む。
【0124】
いずれかの実施形態に係る膣用避妊組成物は、性交の前に、一日のうちのいずれの時間に使用されてもよい。好ましくは、性交の24時間から30秒前である。膣用避妊組成物は、妊娠を防ぐために意図的に使用され得、それは、シリンジ又は軟質ゲルカプセルのいずれかを用いて、膣内投与によって1~5mLの量で投与され得る。膣用避妊組成物は、指又はアプリケータのいずれかを用いて、膣内内に挿入される。
【0125】
本発明は、保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例示される。上記の説明及び以下の実施例に開示される特徴は、別々に又はそれらの任意の組合せで、その多様な形態で本発明を実現するための材料であり得る。
【0126】
様々な実施例が、図を参照して、本明細書において後述される。図は、実施例の説明を容易にすることを目的としたものであるに過ぎないことにも留意されたい。それらは、権利請求される発明の包括的な説明であると意図されておらず、又は権利請求される発明の範囲を限定するものであると意図されてもいない。さらに、例示的な実施例は、示される全ての態様又は利点を有する必要はない。特定の実施例とともに説明される一態様又は利点は、必ずしもその実施例に限定されるわけではなく、そのように例示されていない場合でも、又はそのように明示的に説明されていない場合でも、いずれの他の実施例においても実施され得る。
【実施例】
【0127】
実施例
ここで、ブタ胃粘素及び結腸細胞株によって生成される粘液層のヒドロゲルが、低モル質量キトサン(2,000Da未満)によって改変され得、これが、バリア特性を強化し、ヒドロゲルを介した、デキストランポリマー及びコレラ毒素のサブユニットの拡散を減速し得ることが示される。
【0128】
全ての粘液ゲルは、同様の特性を共有するが、それらはまた、いくつかの点で異なる。これは、ムチン収縮(例えば孔径)、ムチン濃度並びに関連するタンパク質及び脂質のタイプ、並びに塩濃度を含む。さらに、それらはまた、pH、せん断応力への曝露、細菌への曝露、及び異なるターンオーバー速度などの環境因子が異なる。したがって、これらの差異を前提とすると、ブタムチンヒドロゲルのために設計された治療が、頸管粘液のバリア特性を強化する際にも機能し得ることは明らかではない。
【0129】
実施例1
本発明者らは、ヒト排卵頸管粘液内で相互作用及び拡散するキトサンの能力、並びにヒト精子に対するヒト排卵頸管粘液のバリアを増大するそれらの能力を試験するために、主に、モル質量及びそれらが抽出される組織起源(動物対真菌)が異なる様々なキトサンタイプを用いて実験を行った。
【0130】
材料及び方法
キトサン標識
キトサン(CS)及びキトサンオリゴマー(CO)を、Kootala et al. 2018(Kootala,Sujit,Luimar Filho,Vaibhav Srivastava,Victoria Linderberg,Amani Moussa,LaurentDavid,Stephane Trombotto,and Thomas Crouzier. 2018. “Reinforcing Mucus Barrier Properties with Low Molar Mass Chitosans.” Biomacromolecules 19(3):872-82)において以前に報告された修正された方法を用いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Sigma-Aldrich)によって標識した。簡潔に述べると、2mlの乳酸溶液(pH5)中の40mg/mlのキトサンを調製し、2mlのメタノールを加え、混合物を、2MのHCl又は2MのNaOHで処理して、pHを5.5に調整した。次に、1:50の比率(50モノマーごとに1フルオレセイン)を達成するためにDMSO中の10mg/mlのFITCの溶液を加えた後、暗所で、室温で2時間振とうした。10mlのエタノールに加えてpHを9に増加するための2mLの2MのNaOHの連続的な添加によって、キトサンを沈殿させた。上清を、4℃で25分間にわたって20,000×gでの遠心分離後に除去した。次に、ペレットをエタノール中で再懸濁させ、次に、4℃で10分間にわたって20,000×gで遠心分離し、上清を除去することによって、毎回非コンジュゲートFITCを抽出するために、ペレットを3回すすいだ。2時間にわたる回転蒸発によってエタノールを除去した後、ペレットを、液体窒素で凍結させ、凍結乾燥させ、4℃で貯蔵した。
【0131】
【0132】
濁度試験
透過率を、600nmでVarian Cary 50 Bio UV-Visible spectrometer(Agilent Technologies,USA)を用いて、濁度試験によって測定した。2.7%のヒドロキシエチルセルロースを含有するサンプルを、キュベットに移し、50mlのプラスチックチューブ中で5分間にわたって600×gで遠心分離して、エアポケットを除去した。
【0133】
精液評価
Andrology,Sexual Medicine,Transmedicine,clinic(ANOVA,Karolinska University Hospital,Sweden)において採取された患者及びボランティアの精液サンプルを、採取後3時間以内に標準的な精液運動解析及び精子侵入アッセイによって行った。データを、採取時間、禁欲時間、及び精液量について取得した。マスターベーションによる精液の完全な採取後、精液を、37℃まで加熱されたインキュベーションチャンバ中でロッカーにおいて30分間にわたって穏やかに液化した。精液の粘度を、視覚的に及びピペッティングによって決定した。精液を、6μlの試料を、予め温めたLeja(登録商標)(Netherland)計数チャンバスライド(20μm)中にピペッティングすることによって顕微鏡によって分析した。続いて、試料を、ステージ加熱器MS 100(37℃、Linkam Scientific Instruments,UK)、5倍の総倍率で、10倍対物レンズ(Ph1)及び0.5倍電荷結合素子カメラUI-1540LE-M-HQ(IDS Imaging Development Systems GmbH,Germany)を備えた臨床ECLIPSE 50i顕微鏡(Nikon Instruments、日本)によって評価した。このシステムを、Computer Aided Semen Analysis software QualiSperm(v3.0.9.486,AKYmed,Switzerland)に連結した。精子濃度[106/ml]のほか、前進運動性[%]、運動性[%]、不動性[%]、速度[μm/秒]、精子サイズ[μm2]、及び細胞数を測定した。以下の基準を満たす精液サンプルが、この試験に含まれていた:>1.5mlの容量、>15×106/mlの濃度及び>40%の前進運動性。これらの基準は、世界保健機関(World Health Organization)(WHO)の基準限度(“WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen” 2010)及びBjoerndahl(Lars Bjoerndahl. 2011. “What Is Normal Semen Quality? On the Use and Abuse of Reference Limits for the Interpretation of Semen Analysis Results.” Human Fertility 14(3):179-86)に記載される正常な精子の値を反映している。各試験において、10の値を、2つのチャンバ中の5つの視野を評価することによって生成した。
【0134】
頸管粘液評価
排卵頸管粘液(CVM)(最も高い浸透性を有するCVM)を、Karolinska University Hospitalにおいて健常なドナーから採取した。ドナーは、ホルモン避妊薬を使用しておらず、18~30歳であり、19~25のBMIを有し、非喫煙者であり、投薬中でもなく慢性疾患に罹患してもいなかった。CVMの採取の前に、それぞれの健常な定期的にサイクリングしているボランティアのホルモン状態を、Karolinska University Laboratoryにおいて血液検査によって調べた。提供の時点で、女性のFSH、LH、及びエストラジオールのレベルを分析したところ、排卵の障害が判明した。粘液を、子宮内膜カテーテルGynebiops standard CH9(GYNEAS,France)及び子宮内膜生検用のPipelle de Cornier(PRODiMED,France)を用いて、外子宮口において採取した。
【0135】
頸管粘液中へのキトサンの拡散のインビトロ蛍光プロファイリング
排卵CVM中に蓄積されたキトサンの拡散距離及び量を決定するために、Wu,et al.(Seyoum Ayehunie,Ying-Ying Wang,Timothy Landry,Stephanie Bogojevic,and Richard A. Cone. 2018. “Hyperosmolal Vaginal Lubricants Markedly Reduce Epithelial Barrier Properties in a Three-Dimensional Vaginal Epithelium Model.” Toxicology Reports 5(January):134-40)にしたがう修正されたキャピラリー拡散アッセイを行った。0.5%(w/v)の標識されたキトサン(キトサン-FITC)を、0.1/1Mの塩酸(HCl、Merck KGaA,Germany)、0.1/1Mの水酸化ナトリウム(NaOH、CPAchem Ltd.,Bulgaria)、又は50%のNaOH(Sigma-Aldrich,USA)の使用によって、pH5.5(pH±0.02)に調整した。
【0136】
ルアーコネクタ(Hilgenberg GmbH,Germany)及び1mlのSoft-Ject(登録商標)シリンジ(Henke-Sass Wolf GmbH,Germany)とともに特注の方形キャピラリーチューブ(L 60mm、ID 0.3×0.3mm、OD 0.45×0.45mm、ホウケイ酸ガラス)の使用によって、CVMを、2つのキャピラリー中に吸引した。次に、チューブを、ルアー結合部で破断し、破断された端部を、ワックス(Paul Marienfeld GmbH & Co. KG,Germany)でシールした。これは、全体的にCVMが充填された気密のキャピラリーをもたらした。ショートスレッド(short thread)キャップ(55°ショアー、Teknolab Sorbent AB,Sweden)の隔壁に、キャピラリーのシールされた端部で穴を開け、キャップを、ショートスレッドガラスバイアル(ND9、1.5ml、VWR,USA)に入れ、開口端を、緩衝液中の300μlの予熱された緩衝液又はキトサン-FITC中に穏やかに挿入した。緩衝液で処理されたキャピラリー中のCVMを、陰性対照として用いた。同時に、陽性対照及び基準蛍光強度として機能する、300μlの0.5%又は0.1%のキトサン-FITCを含むガラスバイアル中にキャピラリーを挿入することによって、ルアーコネクタ(L 50mm、ID 0.3×0.3mm、ホウケイ酸ガラス、CM Scientific Ltd.,UK)なしの同一の方形キャピラリーに、キトサン-FITC溶液を充填した。37℃及び5%のCO2で30分間のインキュベーションの後、キャピラリーを、蛍光顕微鏡法によって評価し、0.01秒~1秒の曝露時間範囲における画像を記録した。画像を、Eclipse Ti倒立顕微鏡(Nikon、日本)、Zyla sCMOSカメラ(5.5MP、Andor,Oxford Instruments,UK)及びNIS-Elements BR 4.60.00ソフトウェア(Nikon、日本)に連結された光源pE-300lite(10ミリ秒、CoolLED,UK)によって取得した。緑色蛍光のためのフィルタB及び2倍対物レンズを使用した。20ミリ秒の曝露時間で捕捉された画像は、異なるCS間の蛍光強度の差を最適に特定し、CVM中のキトサンを計算するのに使用される非飽和画像を示した。800ミリ秒の曝露時間の時点で、蛍光シグナルが、キャピラリーの開始部で飽和されたが、低いキトサン-FITC濃度が、キャピラリーのさらに内部で観察され、それによって、最大拡散距離を取得する。
【0137】
エクスポートされた画像を、ImageJソフトウェア(version 2.0.0-rc-43/1.52b,USA)によって解析した。キャピラリー中の空気及びCVMの界面の5mm前から開始して、各キャピラリーの真ん中(h=15、w=1314)に矩形が描かれ、界面におけるキトサン-FITC蓄積も得られた。蛍光強度を、画素単位で距離にわたってプロットした。各画素は、3μmに相当した。800ミリ秒の曝露時間の時点で、緩衝液で処理されたCVMが、バックグラウンドシグナルを示し、したがって、得られた値を、キトサン-FITCで処理されたCVMで得られた値から差し引いた。
【0138】
既知のキトサン-FITC濃度を有する対照キャピラリーの使用によって、不明のキトサン-FITC濃度を有するキャピラリーに沿った蛍光強度が、キトサン-FITC濃度に変換され得る。20ミリ秒の時点で蓄積されたキトサンの相対量及びキャピラリーに沿った800ミリ秒の相対蛍光強度を、Prism 8(GraphPad,USA)を用いてプロットした。0.02秒の時点で解析されるサンプルについての曲線下面積(AUC)を計算することによって、キトサン-FITC蓄積が得られた。
【0139】
精子侵入の位相差顕微鏡法
精液及びCVMの液化及び評価の後、100μlの緩衝液のみ及び緩衝液中のキトサンを、隔壁を備えたキャップ(55°ショアー、Teknolab Sorbent AB,Sweden)によって閉じられ、37℃で予熱されたガラスバイアル(ND9、1.5ml、VWR,USA)中に充填した。排卵CVMのアリコートを、2つの特注のキャピラリー中に吸引し、キャピラリーを、上述されるように破断端部においてシールした。キャップの隔壁を、CVMを充填されたキャピラリーのシールされた末端によって貫通させた。キャップを通して埋め込まれたキャピラリーを、まず、37℃で30分間にわたってキトサン溶液を含むガラスバイアルに入れた(溶液中5mmの深さ)。次に、キャピラリーを、37℃で30分間にわたって精子の侵入のために、100μlの精液を含むガラスバイアルに移した(溶液中5mmの深さ)。1つの対照実験では、キトサン溶液を緩衝液のみで置き換えた以外は同じプロセスを繰り返した。別の対照実験では、排卵CVMを充填されたキャピラリーを精子に直接浸漬した以外は同じプロセスを繰り返した。インキュベーションの後、キャピラリーを、距離0.5、1、2、3、4、及び5cmで印を付けられた特注の顕微鏡のスライドガラス上に置き、予熱された(37℃)ステージ加熱器DC 95(Linkam Scientific Instruments,UK)上に配置し、顕微鏡法によって観察した。
【0140】
UI-3240LE-C-HQカメラ(IDS Imaging Development Systems,Germany)を備えたEclipse Ci位相差顕微鏡(Nikon、日本)の使用によって、キャピラリーの開始部(0.1cm)を含むスライドガラス上で印を付けられた距離において映像を記録した。10倍の倍率を、対物レンズ(Ph1)及びカメラに使用して、100倍の総倍率を生成した。記録された顕微鏡視野は、0.21×0.27mmであり、0.0567mm2に相当していた。1280×1024画素の解像度を、秒当たり30枚の写真で、各距離の3つの視野の画像を記録するのに使用した。記録は、キャピラリーの上側外面から開始し、続いて、キャピラリーを通して下側面に達するまで焦点を当て、キャピラリーを通した3-Dスキャンを得た。精子を、容量(0.017mm3)で計数した。アッセイを、様々なボランティアの精液を用いて、3連で行った。
【0141】
実施例1の結果
キトサンモル質量の影響が、ヒト排卵頸管粘液を通した様々なサイズの蛍光標識されたキトサンの拡散を試験することによって証明された。動物起源のキトサン(甲殻類の殻から抽出された、CO、95/5及び95/100)及び真菌ベースのキトサン(Z49、Z56、Z13、Z10、Z43)の両方について、結果(
図1、
図2)は、より小さいキトサンが、より深く浸透し、より粘液中に蓄積することを明らかに示す。大きいキトサン(>100kDa)が、おそらく立体障害のため、粘液ゲル網目構造内に浸透できず、したがって粘液中に蓄積しなかったことが非常に顕著であった。これは、非常に表面的なバリアを生成し、これは、例えばせん断応力による破壊に非常に弱いであろう。したがって、100kDaを超えるキトサンは、この理由のため除外された。
【0142】
ヒト排卵頸管粘液のバリア特性に対するキトサンのモル質量の影響を、様々なモル質量のキトサン含有製剤を用いて試験した。精子侵入アッセイ、ヒト精子、及び排卵頸管粘液を使用することによって、ブタ胃粘素ヒドロゲル及び結腸細胞株によって発現された粘液を強化するのに有効であったより小さいキトサンが、粘液を通したヒト精子の侵入を停止させることができなかったことが、確認されるであろう。これは、5.5のpH及び乳酸緩衝液中で、いくつかの様々な緩衝系におけるCOキトサンについて明らかに証明された(
図3)。COが、より大きいキトサン(95/5)と組み合わせて製剤化された場合でも、製剤は、バリア強化効果を提供することができなかった。
【0143】
同様に、7.1及び18.9kDaの真菌キトサン、それぞれZ49及びZ56も、精子侵入を停止させるのに有効でなかったことが示された(
図4)。逆に、20kDaを超える真菌キトサン(例えばZ10)の使用によって、平均精子侵入が、対照群(非処理の粘液)と比較して、及びキトサン溶解緩衝液のみで処理された粘液と比較して、著しく減少されたことが分かった(
図4)。
【0144】
有効なバリア強化効果のサイズ依存性も、甲殻類の殻由来のキトサンについて示される(
図5)。より大きいキトサン(150kDa)が、これらのアッセイにおいて精子侵入を停止させることもある。しかしながら、キトサンの拡散からの結果(
図1及び
図2)は、より大きいキトサン(150kDa)の粘液における低い浸透を明らかに示す。したがって、より大きいキトサン(150kDa)によって形成されるバリアは、粘液ゲルの界面における薄い架橋された層に起因する。インビトロ精子侵入アッセイのよく制御された条件において、このような薄い架橋された層は、実際に、精子に対するバリアをもたらし得る。しかしながら、このような薄い層は、インビボでよく見られるせん断及び対流移動を持続する可能性が低い。対照的に、20kDa~100kDaのキトサンのより深い浸透が、インビボでより頑丈なバリアを構成するであろう。本発明者らは、ヒト排卵頸管粘液のバリア特性を強化するために最適なキトサンは、20kDa~100kDaの範囲内に含まれることを結論付けるが、これは、これらのキトサンが、粘液中への深い浸透と、精子に対する有効なバリアを形成するそれらの能力とを兼ね備えるためである。
【0145】
子宮頸管へのキトサンの適切な送達のために、キトサン製剤は、製剤の滞留時間を増加させ、漏れを避けるために、溶液の粘度を増加させる賦形剤を含有すべきである。賦形剤が、粘液成分との完全な相互作用を許容するようキトサンと相互作用しないことが重要である。選択されたゲル化賦形剤は、少なくとも、それらの良好な生体適合性について知られ、キトサンの正電荷と相互作用し得る負電荷を有さず、キトサンとの知られた相互作用を有さない必要がある。ヒドロキシエチルセルロース及びキトサンの相溶性を、混合物の透過率を測定することによって試験した。透過率変化の非存在は、キトサン沈殿物の非存在及び増粘剤としてのヒドロキシエチルセルロースとのキトサンの良好な相溶性を示唆する(
図6)。0.5%(w/v)の真菌キトサン(Z10、36.2kDa)又は動物由来のキトサン(CO、1.4kDa;95/5、35kDa)の添加は、透過率を変化させず、これは、これらの製剤における沈殿物の非存在及びキトサンの良好な相溶性を示している。グリセロール及びヒドロキシエチルセルロースはまた、ヒト排卵頸管粘液中におけるキトサンの浸透の可能な変化について試験するために、キトサンと組み合わせた。結果は、これらの賦形剤が、排卵頸管粘液中へのキトサンの浸透を変化させないことを示す(
図7)。
図7中の蛍光の低下は、粘液への曝露の30分後の、キトサンのみ及び賦形剤と混合されたキトサンの最大拡散距離を示す。排卵頸管粘液に対するバリア強化効果はまた、試験される賦形剤の存在によって変化されなかった(
図8)。
【0146】
実施例2
この実施例は、「アミノ酸モノマー」による粘液強化を実証するためのものである。本実施例において、ポリ-L-リジン(PLL)の溶液にまず曝露されたヒト排卵頸管粘液中へのヒト精子の侵入が試験される。結果が、
図9A及び9Bに示され、これは、ヒト排卵粘液において行われる精子侵入アッセイを示している。精子数を、非希釈精子への曝露の30分後に評価した。
【0147】
実施例2において使用される材料及び方法は、キトサンをPLLで置き換えて行った以外は、実施例1において使用される材料及び方法と同様である。
【0148】
図9A(左側及び右側)は、32.5mMの乳酸緩衝液、乳酸緩衝液(32.5mM)中の低いモル質量ポリ-L-リジン(wPLL、1.6kDa)、又は非修飾(w/o)に曝露されたヒト排卵頸管粘液を示す。
図9B(左側及び右側)は、32.5mMの乳酸緩衝液中の高いモル質量ポリ-L-リジン(wPLL、66kDa)、乳酸緩衝液(32.5mM)、又は非修飾(w/o)に曝露されたヒト排卵頸管粘液を示す。
【0149】
実施例2の結果
結果から、PLL化合物が、精子に対するヒト排卵頸管粘液のバリア特性を強化することができることが推論され得る。キトサンと同様に、低分子量PLLは、何らの効果も有さなかった。より高い分子量のみが、精子の侵入を防ぐことができた。精子が見られなくなる地点が、粘液のさらに内部であり(66KDaのPLLについて約3cm)、これは、7.1kDaのキトサン(約2cm、
図4A)などの一部のキトサンと同様であったが、27.9kDa及び36.2kDaなどの他のキトサン(約0.5cm、
図4C及び4D)よりさらに内部であった。
【0150】
本発明は、これ以降、以下の非限定的な項目によって説明される。
【0151】
1.1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含む膣用避妊組成物であって、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物。
【0152】
2.膣用避妊組成物が、フォームでない、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0153】
3.粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~90,000Daの分子量を有する、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0154】
4.粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~75,000Daの分子量を有する、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0155】
5.粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~60,000Daの分子量を有する、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0156】
6.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~50,000Daの分子量を有する、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0157】
7.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~40,000Daの分子量を有する、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0158】
8.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合を介して互いに結合された複数のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0159】
9.モノマー単位の少なくとも55%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0160】
10.モノマー単位の少なくとも60%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0161】
11.モノマー単位の少なくとも65%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0162】
12.モノマー単位の少なくとも70%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0163】
13.少なくとも1つのアミノ基の1つ以上が、第一級アミンである、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0164】
14.モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、又はこれらの組合せから選択される、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0165】
15.モノマー単位が、アミノ官能化C6糖である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0166】
16.モノマー単位が、D-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミンの組合せである、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0167】
17.少なくとも50%が、D-グルコサミンである、項目16に記載の膣用避妊組成物。
【0168】
18.50%以下が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目16~17のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0169】
19.50%~100%が、D-グルコサミンである、項目16~18のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0170】
20.0%~50%が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目16~19のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0171】
21.少なくとも65%が、D-グルコサミンである、項目16~20のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0172】
22.35%以下が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目16~21のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0173】
23.65%~100%が、D-グルコサミンである、項目16~22のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0174】
24.0%~35%が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目16~23のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0175】
25.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合された180~900アミノ酸の長さのペプチド分子である、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0176】
26.粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸のポリペプチドであり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目25に記載の膣用避妊組成物。
【0177】
27.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、及び/又はポリ-アルギニンを含む、項目25~26のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0178】
28.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-リジンを含む、項目27に記載の膣用避妊組成物。
【0179】
29.粘膜付着性ポリマーが、180~900アミノ酸の長さのペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、疎水性基を有し、このアミノ酸は、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなるリストから選択され、残りのアミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、及びグルタミンからなるリストから選択され得る、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0180】
30.粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸を含み、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなる群から選択され、又はアミノ酸の50%が、疎水性基を有し、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなる群から選択される、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0181】
31.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0182】
32.アミノ酸の少なくとも60%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目31に記載の膣用避妊組成物。
【0183】
33.アミノ酸の少なくとも70%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目31~32のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0184】
34.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%がリジンである、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0185】
35.アミノ酸の少なくとも60%、例えば少なくとも70%がリジンである、項目34に記載の膣用避妊組成物。
【0186】
36.粘膜付着性ポリマーが、L-リジンであるアミノ酸を含む、項目1~7のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0187】
37.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-L-リジン(PLL)である、項目36に記載の膣用避妊組成物。
【0188】
38.生理的に許容されるゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、グリセロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、又はこれらの組合せから選択される、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0189】
39.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せによって互いに結合された40~800個のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0190】
40.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された50~750個のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0191】
41.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された75~700個のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0192】
42.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された100~650個のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0193】
43.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された150~600個のモノマー単位からなる、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0194】
44.粘膜付着性ポリマーが、膣用避妊組成物の総重量の0.05重量%~10.0重量%の濃度である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0195】
45.組成物のpHが、2.0~7.0である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0196】
46.組成物のpHが、2.5~6.5である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0197】
47.組成物のpHが、3.0~6.0である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0198】
48.組成物が、避妊組成物である、いずれかの先行する項目に記載の膣用避妊組成物。
【0199】
49.避妊剤としての、項目1~48のいずれかに記載の膣用避妊組成物の使用。
【0200】
50.治療に使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物。
【0201】
51.避妊薬又は避妊剤として使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物。
【0202】
52.産児制限又は産児制限治療に使用するための膣用避妊組成物であって、膣用避妊組成物が、1つ以上の有効成分及び生理的に許容されるゲル化剤を含み、1つ以上の有効成分の少なくとも1つが、粘膜付着性ポリマーであり、前記粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~100,000Daの分子量を有し、前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された複数のモノマー単位からなり、前記モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、アミノ酸、又はこれらの組合せから選択され、モノマー単位の少なくとも50%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、膣用避妊組成物。
【0203】
53.膣用避妊組成物が、フォームでない、項目50又は51又は52に記載の膣用避妊組成物。
【0204】
54.粘膜付着性ポリマーが、20,000Da~90,000Daの分子量を有する、項目50~53のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0205】
55.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~75,000Daの分子量を有する、項目50~54のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0206】
56.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~60,000Daの分子量を有する、項目50~55のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0207】
57.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~50,000Daの分子量を有する、項目50~56のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0208】
58.粘膜付着性ポリマーが、30,000Da~40,000Daの分子量を有する、項目50~57のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0209】
59.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合を介して互いに結合された複数のモノマー単位からなる、項目50~58のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0210】
60.モノマー単位の少なくとも55%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0211】
61.モノマー単位の少なくとも60%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、項目50~60のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0212】
62.モノマー単位の少なくとも65%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、項目50~61のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0213】
63.モノマー単位の少なくとも70%が、少なくとも1つのアミノ基を含む、項目50~62のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0214】
64.少なくとも1つのアミノ基が、第一級アミンである、項目50~63のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0215】
65.モノマー単位が、C6糖、アミノ官能化C6糖、又はこれらの組合せから選択される、項目50~64のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0216】
66.モノマー単位が、アミノ官能化C6糖である、項目50~65のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0217】
67.モノマー単位が、D-グルコサミン及びN-アセチル-D-グルコサミンの組合せである、項目50~66のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0218】
68.少なくとも50%が、D-グルコサミンである、項目67に記載の膣用避妊組成物。
【0219】
69.50%以下が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目67~68のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0220】
70.50%~100%が、D-グルコサミンである、項目67~69のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0221】
71.0%~50%が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目67~70のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0222】
72.少なくとも65%が、D-グルコサミンである、項目67~71のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0223】
73.35%以下が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目67~72のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0224】
74.65%~100%が、D-グルコサミンである、項目67~73のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0225】
75.0%~35%が、N-アセチル-D-グルコサミンである、項目67~74のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0226】
76.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合された180~900アミノ酸の長さのペプチド分子である、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0227】
77.粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸のポリペプチドであり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目76に記載の膣用避妊組成物。
【0228】
78.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-リジン、ポリ-オルニチン、及び/又はポリ-アルギニンを含む、項目76~77のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0229】
79.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-リジンを含む、項目78に記載の膣用避妊組成物。
【0230】
80.粘膜付着性ポリマーが、180~900アミノ酸の長さのペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、疎水性基を有し、このアミノ酸は、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなるリストから選択され、残りのアミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、アスパラギン、及びグルタミンからなるリストから選択され得る、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0231】
81.粘膜付着性ポリマーが、アミノ酸を含み、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなる群から選択され、又はアミノ酸の50%が、疎水性基を有し、アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、及びイソロイシンからなる群から選択される、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0232】
82.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目50~15のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0233】
83.アミノ酸の少なくとも60%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目82に記載の膣用避妊組成物。
【0234】
84.アミノ酸の少なくとも70%が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン、及びβ-アラニンからなるリストから選択される、項目82~83のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0235】
85.粘膜付着性ポリマーが、アミド結合を介して結合されたペプチド分子であり、ここで、アミノ酸の少なくとも50%がリジンである、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0236】
86.アミノ酸の少なくとも60%、例えば少なくとも70%がリジンである、項目85に記載の膣用避妊組成物。
【0237】
87.粘膜付着性ポリマーが、L-リジンであるアミノ酸を含む、項目50~59のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0238】
88.粘膜付着性ポリマーが、ポリ-L-リジン(PLL)である、項目87に記載の膣用避妊組成物。
【0239】
89.生理的に許容されるゲル化剤が、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、グリセロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、グアーガム、又はこれらの組合せから選択される、項目50~88のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0240】
90.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せによって互いに結合された40~800個のモノマー単位からなる、項目50~89のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0241】
91.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された50~750個のモノマー単位からなる、項目50~90のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0242】
92.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された75~700個のモノマー単位からなる、項目50~91のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0243】
93.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された100~650個のモノマー単位からなる、項目50~92のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0244】
94.前記粘膜付着性ポリマーが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、又はこれらの組合せを介して互いに結合された150~600個のモノマー単位からなる、項目50~93のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0245】
95.粘膜付着性ポリマーが、膣用避妊組成物の総重量の0.05重量%~10.0重量%の濃度である、項目50~94のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0246】
96.組成物のpHが、2.0~7.0である、項目50~95のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0247】
97.組成物のpHが、2.5~6.5である、項目50~96のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【0248】
98.組成物のpHが、3.0~6.0である、項目50~97のいずれかに記載の膣用避妊組成物。
【国際調査報告】