(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】異なる飛行モードのためのハイブリット電力システム
(51)【国際特許分類】
B64C 29/02 20060101AFI20221205BHJP
B64D 27/10 20060101ALI20221205BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20221205BHJP
B64C 27/28 20060101ALI20221205BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20221205BHJP
B64D 27/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B64C29/02
B64D27/10
B64D27/24
B64C27/28
B64C29/00 A
B64D27/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515645
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020054772
(87)【国際公開番号】W WO2021072065
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519225026
【氏名又は名称】キティー・ホーク・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】KITTY HAWK CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンハ・プラナイ
(72)【発明者】
【氏名】バンダー・リンド・デーモン
(57)【要約】
【解決手段】第1動力源、第2動力源、および、電力コントローラが提供され、第1動力源、第2動力源、および、電力コントローラを備える機体は、ホバリングモードと前進飛行モードとの間の移行モードで飛行可能である。電力コントローラは、移行モード中に、機体に備えられているロータに給電するために第1動力源および第2動力源の内の1つ以上を選択する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
第1動力源と、
第2動力源と、
電力コントローラと、
を備え、
前記第1動力源、前記第2動力源、および、前記電力コントローラを備えた機体は、ホバリングモードと前進飛行モードとの間の移行モードで飛行可能であり、
前記電力コントローラは、前記移行モード中に、前記機体に備えられているロータに給電するために前記第1動力源および前記第2動力源の内の1つ以上を選択するよう構成されている、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記機体は、
後縁を有する前進テーパ翼と、
前記前進テーパ翼の前記後縁に取り付けられているティルトロータと、
をさらに備える垂直離着陸(VTOL)機を含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリを含み、
前記第2動力源は、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリを含み、
前記移行モード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記高放電率バッテリを選択すると共に前記ロータに給電するために前記高エネルギバッテリを選択するよう構成されている、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、重量と、190Wh/kg以下のエネルギ密度とを有する高放電率バッテリを含み、
前記第2動力源は、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリを含み、
前記高放電率バッテリの前記重量は、総バッテリ重量の20%以下である、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記移行モード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除するよう構成されており、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択するよう構成されている、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記移行モード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除するよう構成されており、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択するよう構成されており、
前記内燃機関は、前記バッテリが選択解除されて前記ロータに給電していない時間の少なくとも一部において前記バッテリを充電するために用いられる、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記移行モード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除するよう構成されており、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラは、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択するよう構成されており、
前記バッテリは、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリを含む、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、クルージング専用ロータを備え、
前記電力コントローラは、さらに、
前進飛行モード中に、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除するよう構成されている、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、前記機体の尾部の後方に配置されているクルージング専用推進ロータを備え、
前記電力コントローラは、さらに、
前進飛行モード中に、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除するよう構成されている、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、
190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリと、
235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリと
を含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、クルージング専用ロータを備え、
前記電力コントローラは、さらに、
前進飛行モード中に、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除するよう構成されている、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、クルージング専用ロータを備え、
前記電力コントローラは、さらに、
前進飛行モード中に、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
前記バッテリも前記内燃機関も、前記前進飛行モード中に前記ティルトロータに給電せず、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除するよう構成されている、システム。
【請求項12】
方法であって、
第1動力源、第2動力源、および、電力コントローラを提供し、前記第1動力源、前記第2動力源、および、前記電力コントローラを備えた機体は、ホバリングモードと前進飛行モードとの間の移行モードで飛行可能であり、
前記電力コントローラを用いて、前記移行モード中に、前記機体に備えられているロータに給電するために前記第1動力源および前記第2動力源の内の1つ以上を選択すること、
を備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記機体は、
後縁を有する前進テーパ翼と、
前記前進テーパ翼の前記後縁に取り付けられているティルトロータと、
をさらに備えた垂直離着陸(VTOL)機を含む、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリを含み、
前記第2動力源は、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリを含み、
前記方法は、さらに、前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記高放電率バッテリを選択すると共に前記ロータに給電するために前記高エネルギバッテリを選択することを備える、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、重量と、190Wh/kg以下のエネルギ密度とを有する高放電率バッテリを含み、
前記第2動力源は、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリを含み、
前記高放電率バッテリの前記重量は、総バッテリ重量の20%以下である、方法。
【請求項16】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記方法は、さらに、
前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除し、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択すること、
を備える、方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記方法は、さらに、
前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除し、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択し、
前記内燃機関を用いて、前記バッテリが選択解除されて前記ロータに給電していない時間の少なくとも一部において前記バッテリを充電すること、
を備える、方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記方法は、さらに、
前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、前記バッテリが前記ロータに給電しないように前記バッテリを選択解除し、
ホバリングモード中に、前記電力コントローラを用いて、前記ロータに給電するために前記内燃機関を選択すると共に前記ロータに給電するために前記バッテリを選択すること、
を備え、
前記バッテリは、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリを含む、方法。
【請求項19】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、クルージング専用ロータを備え、
前記方法は、さらに、
前進飛行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除すること、
を備える、方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1動力源は、内燃機関を含み、
前記第2動力源は、バッテリを含み、
前記機体に備えられている前記ロータは、ティルトロータを含み、
前記機体は、さらに、前記機体の尾部の後方に配置されているクルージング専用推進ロータを備え、
前記方法は、さらに、
前進飛行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記クルージング専用ロータに給電するために前記内燃機関を選択し、
ホバリングモードおよび前記移行モード中に、前記電力コントローラを用いて、前記内燃機関が前記クルージング専用ロータに給電しないように前記内燃機関を選択解除すること、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、名称を「FIXED WING AIRCRAFT WITH TILT ROTORS」とする、2019年10月9日出願の米国仮特許出願第62/912,872号に基づく優先権を主張し、この仮特許出願は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
密集した都市部で離着陸し、新しい輸送経路を開拓し、道路の交通渋滞を迂回することができる新しいタイプの航空機が開発されている。例えば、Kitty Hawk社は、約30フィート(9.144メートル)×30フィートのフットプリントで離着陸できる新しい電動垂直離着陸(eVTOL)ティルトロータを開発中である。初期のプロトタイプがすでに製造およびテストされており、機体の性能のさらなる改善(例えば、航続距離の改善)が望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
以下の詳細な説明と添付の図面において、本発明の様々な実施形態を開示する。
【0004】
【
図1A】ティルトロータを備えた前進固定翼機の一実施形態を示す斜視図。
【0005】
【
図1B】ティルトロータを備えた前進固定翼機の一実施形態を示す上面図。
【0006】
【
図2A】モータをオフにした状態での境界層厚さの一実施形態を示す底面図。
【0007】
【
図2B】モータをオンにした状態での境界層厚さの一実施形態を示す底面図。
【0008】
【
図3A】対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力と共に、ティルト翼構成の一例を示す図。
【0009】
【
図3B】前縁取り付けティルトロータを備えた固定翼構成と、それに対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力との一例を示す図。
【0010】
【
図3C】後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼構成と、それに対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力との一実施形態を示す図。
【0011】
【
図4】主翼上の後縁取り付けティルトロータがオフである時に生み出される空気流の一実施形態を示す図。
【0012】
【
図5】比較のために前進テーパ翼および直線翼の一実施形態を示す図。
【0013】
【
図6A】ホバリング位置からクルージング位置への離陸時の傾斜変更の一実施形態を示す図。
【0014】
【
図6B】クルージング位置からホバリング位置への着陸時の傾斜変更の一実施形態を示す図。
【0015】
【0016】
【
図8】2つのバッテリサブシステムを含むハイブリッド電力システムを備えた機体の一実施形態を示す図。
【0017】
【
図9】バッテリサブシステムおよび内燃機関を含むハイブリッド電力システムを備えた機体の一実施形態を示す図。
【0018】
【
図10】クルージング専用プロペラと、ホバリングおよび移行専用ティルトロータと、バッテリサブシステムおよび内燃機関を含むハイブリッド電力システムとを備えた機体の一実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、処理、装置、システム、物質の組成、コンピュータ読み取り可能な格納媒体上に具現化されたコンピュータプログラム製品、および/または、プロセッサ(プロセッサに接続されたメモリに格納および/またはそのメモリによって提供される命令を実行するよう構成されたプロセッサ)を含め、様々な形態で実施されうる。本明細書では、これらの実施例または本発明が取りうる任意の他の形態が、技術と呼ばれうる。一般に、開示されている処理の工程の順序は、本発明の範囲内で変更されてもよい。特に言及しない限り、タスクを実行するよう構成されるものとして記載されたプロセッサまたはメモリなどの構成要素は、或る時間にタスクを実行するよう一時的に構成された一般的な構成要素として、または、タスクを実行するよう製造された特定の構成要素として実装されてよい。本明細書では、「プロセッサ」という用語は、1または複数のデバイス、回路、および/または、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するよう構成された処理コアを指すものとする。
【0020】
以下では、本発明の原理を示す図面を参照しつつ、本発明の1または複数の実施形態の詳細な説明を行う。本発明は、かかる実施形態に関連して説明されているが、どの実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、本発明は、多くの代替物、変形物、および、等価物を含む。以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細事項が記載されている。これらの詳細事項は、例示を目的としたものであり、本発明は、これらの具体的な詳細事項の一部または全てがなくとも特許請求の範囲に従って実施可能である。簡単のために、本発明に関連する技術分野で周知の技術事項については、本発明が必要以上にわかりにくくならないように、詳細には説明していない。
【0021】
ハイブリッド電力システムを備えた電動垂直離着陸(eVTOL)ティルトロータの様々な実施形態が本明細書に記載されている。文脈および背景については、すべての電力システムにわたって単一のタイプのセルおよび/またはパワートレインを利用していた(例えば、すべてのバッテリが同じタイプのセルと共に同じ設計を有する)より旧式の機体について最初に記載することが有益でありうる。次いで、ハイブリッド電力システムを備えたeVTOLティルトロータ例の様々な実施形態と、応用例および/または利点について記載する。当然、本明細書に記載のハイブリッド電力システムは、他の機体で用いられてもよい。
【0022】
図1Aは、ティルトロータを備えた前進固定翼機の一実施形態を示す斜視図である。
図1Bは、ティルトロータを備えた前進固定翼機の一実施形態を示す上面図である。図の例において、主翼(100aおよび100b)は、固定されて、すなわち、固定位置で、胴体(102aおよび102b)に取り付けられている固定翼である。換言すると、主翼は、回転できるティルト翼ではない。また、主翼(100aおよび100b)は、(例えば、ピッチ軸に対する)前進翼である。例えば、前進角度は、(図に示すように)先尾翼を備えた航空機実施形態については、およそ14°~16°の間のθ
sweepであってよく、または、先尾翼を備えていない航空機実施形態については、35°ほどのθ
sweepであってよい。
【0023】
この例において、主翼(100aおよび100b)は、主翼の後縁に取り付けられている6つのロータ(104aおよび104b)を有する。この構成におけるロータまたはプロペラは、(例えば、プロペラが、翼の後方にあり、少なくとも前進飛行位置にある時には機体を前方に「推進」するため)推進プロペラと呼ばれることもある。前進飛行モードは、本明細書では、クルージングモードと呼ばれることもある。明確にするために、主翼上のこれらのロータは、(例えば、先尾翼に取り付けられているロータと区別するために)主翼ロータと呼ばれることもある。当然、ここに示されているロータの数は、単なる例示であり、限定を意図されていない。
【0024】
6つの主翼ロータに加えて、先尾翼(108aおよび108b)に取り付けられている2つのロータ(106aおよび106b)が存在する。これらのロータは、先尾翼ロータと呼ばれることもある。先尾翼は、主翼よりも薄いので、主翼ロータとは異なり、先尾翼ロータは、先尾翼の後縁ではなく先尾翼の遠位端に取り付けられている。
【0025】
この例におけるロータはすべて、ティルトロータであり、これは、それらのロータが、2つの位置の間で、傾斜しまたは他の方法で回転できることを意味する。ここで示した図において、ロータは、クルージング位置(例えば、前進飛行位置、後ろ向き位置、など)にある。この位置において、ロータは、(実質的に)後方への推力を提供するように(例えば、実質的に)縦方向の回転軸を中心に回転している。ロータがこの位置にある時、ティルトロータ機を空中に維持するための揚力は、主翼(100aおよび100b)ならびに先尾翼(108aおよび108b)を流れる空気流から生じる。この特定の例において、ティルトロータの回転範囲は、約0°~5°の最小角度位置および約90°~95°の最大角度位置を有する。この範囲は、設計および/または実装に固有である。
【0026】
また、ロータは、ホバリング位置(例えば、垂直離着陸位置、下向き位置、など)(図示せず)になるように、下向きに傾斜可能である。この第2位置において、ロータは、(実質的に)下向きの推力を提供するように(例えば、実質的に)垂直方向の回転軸を中心に回転している。この構成において、ティルトロータ機を空中に維持するための揚力は、ロータの下向きの空気流から生じる。
【0027】
一般的に言うと、ティルトロータは、実質的に下向きに推力を出力するように向けられている時、航空機が垂直離着陸(VTOL)を実行することを可能にする。(例えば、航空機全体が浮揚される方法に関する、および/または、具体的にティルトロータの位置に関する)このモードまたは構成は、ホバリングと呼ばれることもある。垂直離着陸を実行する能力は、空港および/または滑走路のないエリアで航空機が離着陸することを可能にする。一旦浮揚すれば、ティルトロータは(必要に応じて)、下方の代わりに(実質的に)後方へ推力を出力するように、位置を変化させる。これは、前進飛行にとってより効率のよい方法で航空機が飛行することを可能にし、このモードまたは構成は、クルージングと呼ばれることもある。
【0028】
先尾翼は、最初に(例えば、主翼の前に)失速して、失速時に多くの縦揺れモーメントを生み出し揚力をあまり失わないので有用であり、一方、主翼の失速は、縦揺れモーメントの変化あたり多くの揚力を失う(例えば、航空機全体の降下または墜落を引き起こす)。したがって、先尾翼がない場合と比べて、先尾翼があれば、失速は、潜在的により無害になる。主翼の失速が、翼付け根で生じた場合には逆縦揺れモーメントを生み出し、翼先端で生じた場合には、大きく危険な横揺れモーメントを生み出しうるので、先尾翼の失速挙動は、前進翼と組み合わせれば、特に有益である。さらに、先尾翼は、低い対気速度で揚力を生み出し、CLmax(すなわち、最大揚力係数)を増大させることができ、先尾翼モータを保持または他の方法で取り付けるための支柱を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、ロータを先尾翼および/または主翼に取り付けるために用いられるパイロン(110aおよび110b)は、ティルトロータが、図に示す2つの位置の間で回転できるように、何らかのヒンジおよび/または回転メカニズムを備える。任意の適切なヒンジメカニズムが用いられてよい。例えば、超軽量機では、非常に厳しい重量条件があるので、軽量なソリューションが望ましい場合がある。あるいは、固定傾斜ソリューションが、非常に厳しい重量条件を満たすために用いられてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、航空機は、主翼(100aおよび100b)ならびに先尾翼(108aおよび108b)が、緊急時に必要であれば、グライダのような着陸を実行するのに十分な揚力を提供できるように設計されている。例えば、一部の超軽量規格または仕様は、1または複数のロータが故障した場合に安全に着陸する能力と、その要件を満たすグライダのような着陸を実行する能力と、を求める。(例えば、ティルト翼ではなく)固定翼を主翼に用いる1つの利点は、誤った位置(例えば、ホバリング位置)で翼がスタックすることで、グライダのような着陸に適さない翼の位置であるためにグライダのような着陸が不可能になる危険性がないことである。
【0031】
後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼の別の利点は、ホバリング位置からクルージング位置への移行またはその逆の移行の間の失速挙動である。ティルト翼では、移行中に、ティルト翼の迎え角が変化することで、失速が大きいリスクになる。後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼は、翼の迎え角を変化させない(例えば、ロータがオフ/オンされ、または、ティルトロータがシフトされた場合でも)。また、この構成は、主翼に動圧および循環の両方を加え、これは、移行(例えば、ホバリング位置からクルージング位置への移行、または、その逆の移行)中の挙動を実質的に改善する。換言すると、後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼では、(一例として)ティルト翼と比べて、より迅速および/またはより効率的に移行を実行できる。
【0032】
(例えば、ティルト翼ではなく)ティルトロータを備えた固定翼機に関連する別の利点は、1または複数のティルトアクチュエータに対して、より小さい重量比率が用いられることである。すなわち、複数のティルトロータのための複数のアクチュエータは(複数であっても)、ティルト翼のための単一の重いアクチュエータよりも小さい重量比率を備える。また、ティルト翼のための単一の(そして重い)アクチュエータではなく、複数のアクチュエータが存在するので、ティルトロータには障害点が少ない。別の利点は、固定翼であれば、ティルト翼設計と比べて、移行(例えば、クルージングモードまたは位置と、ホバリングモードまたは位置との間の移行)が、より安定的および/または高速になることである。
【0033】
いくつかの実施形態において、ロータは、ロータがホバリング位置にある時とクルージング位置にある時とで異なるブレードピッチを有する可変ピッチプロペラである。例えば、異なる(範囲の)ブレードピッチが、クルージング位置にある時とホバリング位置にある時とで、より効率的な動作または飛行を可能にしうる。ロータがクルージング位置にある時、ブレードピッチを「クルージングピッチ」(例えば、約26°)にすると、クルージングにとって良好な(例えば、より低い抗力の)小さい前面面積が実現される。ロータがホバリング位置にある時、ブレードピッチを「ホバリングピッチ」(例えば、約6°)にすると、ホバリングにとって良好な大きい全円面積が実現される。別の言い方をすれば、或るブレードピッチが、クルージングモードに適しているがホバリングモードには適していない場合があり、その逆の場合もある。可変ピッチプロペラの利用は、より良い(例えば、全体的な)効率を実現し、電力消費の削減および/または航続距離の増大をもたらす。
【0034】
以下の図は、
図1Aおよび
図1Bに示した航空機の例に関連する様々な利点を示す。
【0035】
図2Aは、モータをオフにした状態での境界層厚さの一実施形態を示す底面図である。この例において、層流走行ライン200a、202a、および、204aは、主翼の様々な領域での層流の走行を示す。この例において、航空機はクルージングしている(例えば、実質的に前方に飛行している)と仮定する。
図1Aおよび
図1Bのように、主翼ロータ(206)は、この実施形態において主翼(208)の後縁に取り付けられている。次の図は、ロータをオンにした状態での境界層厚さを示す。
【0036】
図2Bは、モータをオンにした状態での境界層厚さの一実施形態を示す底面図である。この例において、モータは、オンであり、ロータは、30m/sの出口気流速度を有する。モータがオンであるため、主翼上の層流走行を増大させる低圧領域が、翼の後方に向かって形成されている。例えば、
図2Aの層流走行ライン200a、202a、および、204aに対応する層流走行ライン200b、202b、および、204bを参照すること。2つのセットを比較すると、層流走行が、最初の2つの位置(すなわち、200a/200bおよび202a/202b)について増大していることが示されている。最後の位置(すなわち、204a/204b)は、先尾翼ロータ(210)からの干渉により、若干長い層流走行長にとどまっている。
【0037】
主翼ロータからの抗力(より具体的には、主翼ロータを主翼に取り付けるために用いられているパイロンからの抗力)は、主翼から生じる後流の中に隠されている。例えば、パイロン(220)が層流走行(222)の範囲の大部分の後方に接続されまたは他の方法で取り付けられていることをより明確に示す
図2Aを参照する。ここに示した実施形態では、パイロンも、主翼からの境界層厚さの一部を維持しており、これは、パイロンが表面積あたりでより低い抗力を有することを意味する。これは、いくつかの他の代替設計または構成と比べて、抗力を改善する。以下の図は、このことをより詳細に説明している。
【0038】
図3Aは、対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力と共に、ティルト翼構成の一例を示す図である。この例では、固定ロータ(300)が、固定された位置または角度でティルト翼(302)に取り付けられている。これは、上述の航空機実施形態の一代替構成である。固定ロータ(300)によって生み出された気流を後方または下方のいずれかに方向付けるために、ティルト翼(302)が回転される。図に示すように、この構成では、ティルト翼の後縁に抗力(304)があるが、これは望ましくない。
【0039】
この構成での揚力(306)および推力(308)も図示されており、ここで、ティルト翼は、移行の途中であるように示されている(例えば、クルージング位置とホバリング位置との間の移行)。図に示すように、揚力(306)および推力(308)は、互いに実質的に直交しているが、これは、非効率的である。換言すると、ティルト翼は、その移行中には非効率的である。
【0040】
図3Bは、前縁取り付けティルトロータを備えた固定翼構成と、それに対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力との一例を示す図である。この例では、ティルトロータ(320)が、固定翼(322)の前縁に取り付けられている。これは、上述の航空機実施形態の別の一代替構成である。この構成に対応する抗力(324)および推力(326)も示されている。この構成で生み出される有益な揚力はないため、揚力ベクトルはこの図には示されていない。
【0041】
図3Cは、後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼構成と、それに対応する揚力ベクトル、推力ベクトル、および、抗力との一実施形態を示す図である。この例では、ティルトロータ(340)が、固定翼(342)の後縁に取り付けられている。この構成において、後縁取り付けティルトロータに起因する(例えば、主に、そのパイロン(図示せず)に起因する)抗力は、主翼から生じる後流の中に隠されている。このように、(少なくともティルトロータ(340)に起因する)抗力はない。
【0042】
また、固定翼(342)に対する後縁取り付けティルトロータ(340)の位置は、固定翼上の空気(344)を吸い込み、その後、空気は、向きを変えまたは曲がって、ロータを通過して下方に向かう。翼の上で向きを変えるこの流れは、図に示す比較的大きな誘導揚力(346)を生み出す。ロータに起因する推力ベクトル(348)も図示されている。誘導揚力(346)および推力(348)は、実質的に同じ方向であり(すなわち、両方とも実質的に上向きである)、これは、移行中を含め、より効率的な構成であることに注意されたい。換言すると、後縁取り付けティルトロータを備えた固定翼を利用すれば、他のロータおよび翼の構成と比べて、移行時に、抗力の低下および効率の改善が実現される(例えば、実質的に同じ方向を向いている揚力および推力のベクトルに起因する)。例えば、
図3Aの抗力304および
図3Bの抗力324と、
図3Aの揚力306および推力308の直交する配置とに注意されたい。
【0043】
以下の図は、向きを変える流れの一実施形態をより詳細に示す。
【0044】
図4は、主翼上の後縁取り付けティルトロータがオフである時に生み出される空気流の一実施形態を示す図である。この例において、ティルトロータ(400)が示されているが、比較のために主翼ロータがオフにされている。ロータがオフの状態で、流入気流(402)および流出気流(404)が、実質的に同じ方向に動いている。すなわち、気流は、ロータを通過する際に、(例えば、下方に)向きを変えていない。
【0045】
ティルトロータ機420は、ロータがオンにされていることを除けば、ティルトロータ機400と同じ機体を示している。この例において、流入気流(422)および流出気流(424)は、顕著に異なる方向を有しており、図に示すティルトロータ例のロータを通過する際に気流の顕著な方向転換または屈曲が存在する。上述のように、これは、顕著な揚力を誘導し、それは、電力の消費が少なくなり、および/または、ティルトロータの航続距離が増大するため、望ましい。
【0046】
この例において、主翼ロータ(426)は、ホバリング位置にある。図に示すように、これらのロータは、若干傾斜されまたは他の方法で角度を付けられている(例えば、主翼の上部が若干前向きで、底部が若干後ろ向きになっている)。この図において、傾斜量は、θpitch(428)として示されており、いくつかの実施形態において、約90°の回転範囲または動作範囲である(例えば、(例えば、最小抗力のための)クルージング位置にある時に水平から~3°だけ上がり、ホバリング位置にある時に水平から~93°下がることで、~96°の回転範囲が生じる)。このロータの角度付けまたは傾斜は、流れの方向転換が起こるために絶対に必要であるわけではないが、いくつかの実施形態において、主翼ロータは、流れの方向転換の量を増やしまたはその他の方法で最適化するために、或る程度まで角度を付けられまたはその他の方法で傾斜される。いくつかの実施形態において、先尾翼ロータが、同様に傾斜される。ティルトロータ420は、上昇位置にある様子が示されており、したがって、(例えば、ティルトロータに対する)垂直軸は、地面および/または基準系に垂直ではないことに注意されたい。
【0047】
いくつかの実施形態において、ロータ(例えば、主翼ロータおよび/または先尾翼ロータ)は、ロータがホバリング位置にある時、胴体から離れてわずかに外向きに回転されまたは他の方法で角度を付けられる。いくつかの実施形態において、この回転(例えば、外向き回転)は、より大きいヨーオーソリティのために約10°である。
【0048】
いくつかの実施形態において、主翼は、前進翼であることに加えて、テーパされている(例えば、翼が、外側に先端に向かうほど狭くなっている)。以下の図は、様々な翼および/または尾翼の実施形態を説明している。
【0049】
図5は、比較のために前進テーパ翼および直線翼の一実施形態を示す図である。図の例において、翼500は、テーパのない直線翼である(例えば、その翼は、翼の中心から先端まで同じ幅である)。ロータ例(502)が、直線翼(500)の後縁に示されている。
【0050】
一点鎖線で示す推力中心(504)が、ロータの配置または配列によって決定づけられ、主翼ロータ(502)の中心を通っている。簡単のために、先尾翼ロータは、この例では無視されている。揚力中心は、翼の形状に基づく。長方形の翼(翼500など)に対しては、実線で示す揚力中心(506)は、翼の中心を通っている。空力中心の計算は、より複雑であり(例えば、空力中心は、翼の断面に依存する、など)、破線で示す空力中心508は、このタイプの翼での例および/または典型である。
【0051】
図に示すように、直線翼(500)と、それに対応する主翼ロータ(502)の配列は、揚力中心(506)および空力中心の両方から比較的離れた推力中心(504)を生み出す。この分離は、望ましくない。より具体的には、主翼ロータ(502)がホバリング位置にある時に、推力中心(504)が揚力中心(506)から離れていれば、移行は(例えば、実質的に上向きの飛行から実質的に前向きの飛行への切り替え、または、その逆の切り替えなど、航空機全体の動きの文脈で)、非常に大きいモーメントを生み出すので、機体を横転させ、もしくは、加速または安定を阻害し、ならびに/もしくは、大型および/または非最適な推進システムを必要としうる。クルージング時に、推力中心(504)が、揚力中心(506)から離れていても、それほど重要ではないが(例えば、推力モーメントは、より小さいと同時に、空力モーメントによってより容易にバランスを取られるため)、それでもまだ望ましくない。
【0052】
対照的に、前進テーパ翼(520)と、それに対応する後縁に沿ったロータ(522)の配列は、互いにより近い推力中心(524)、揚の中心(526)、および、空力中心(528)を生み出す。例えば、翼の前進は、様々な程度でロータを前進させる。これは、推力中心を前方に移動させる(例えば、前縁部に向かって、かつ、その他の中心に向かって)。翼のテーパは、空力中心および揚力中心が、前進の結果として前方に移動しすぎること(より重要なことには、推力中心から離れすぎること)を防ぐ。例えば、テーパのない前進翼(図示せず)では、推力中心が、空力中心および揚力中心とほぼ同じ量だけ前方に移動し、翼520について図示されているよりも3つの中心の間の分離が大きくなる。
【0053】
前進テーパ翼のいくつかの他の利点は、より良好なパイロットの視界、および、より良好な胴体と主翼との接合位置(例えば、主翼桁が、パイロットを通らず、操縦席の後ろを通りうるような位置)を含む。さらに、テーパは、飛行方向について言及するように、翼のモーメントを低減し、モータの推力中心を胴体への翼の取り付け部に近づけるので、翼から胴体へ伝わるモーメントが減り、尾部支材が短くなり(例えば、それにより、機体重量が減る)、ピッチ安定性が改善される。
【0054】
以下の図は、クルージング位置とホバリング位置との間のロータの傾斜の移行の例を記載している。
【0055】
図6Aは、ホバリング位置からクルージング位置への離陸時の傾斜変更の一実施形態を示す図である。いくつかの実施形態において、ティルトロータ例は、(例えば、実質的に垂直に)この移行を離陸後すぐに実行する。この傾斜の移行は、任意選択的であり、航空機は、ロータをホバリング位置にした状態で完全に飛行してもよい(ただし、性能は最適ではない)ことに注意されたい。例えば、これは、傾斜動作のリスクがあり、より高い高度でその動作を実行した方がよい場合になされうる。
【0056】
ティルトロータ600は、垂直離陸を実行した後の航空機の例を示す。図に示すこの状態において、主翼ロータおよび先尾翼ロータは、ホバリング位置にある(例えば、ロータが実質的に下向きの推力を生み出すように、実質的に垂直な回転軸を中心に回転している)。
【0057】
次いで、ティルトロータは、ティルトロータが移行を開始すべき或る所望の高度に達するまで、ロータをホバリング位置にしたままで、完全に上向きの移動方向から少なくともいくらかの前進運動を伴う移動方向へ移行する(602)。換言すると、機体は、最初に移行し、次いで、ロータの傾斜を変化させる。一例において、ティルトロータがホバリング位置からクルージング位置へのロータ傾斜変更を開始する高度は、移行中に何か問題が生じた場合に十分な復帰時間を取るのに十分な高さの高度である。ホバリング位置とクルージング位置との間のロータの切り替えは、何か問題(例えば、ロータの故障、ロータのスタック、など)が生じる可能性がより高いよりリスクの高い時間である。ティルトロータ機には、復帰のためのシステムおよび/または技術(例えば、より大きい推力を残りのロータに出力させることによって、故障しているロータを補う、パラシュートを装備する、など)が整えられている場合があるが、これらのシステムおよび/または技術が機能するには時間(すなわち、十分な高度)が必要である。
【0058】
位置602から、ティルトロータは、実質的に前方に飛行し、(例えば、推力が実質的に下向きに出力される)ホバリング位置からクルージング位置へティルトロータを移行させる。クルージング位置604になると、ロータは、実質的に縦軸を中心に回転するので、後方推力を出力する。
【0059】
図6Bは、クルージング位置からホバリング位置への着陸時の傾斜変更の一実施形態を示す図である。例えば、ティルトロータ例は、垂直に着陸する前にこの移行を実行してよい。前述の移行と同様に、この移行は任意選択的である。例えば、ティルトロータ例は、ティルトロータをクルージング位置に維持し、必要に応じて、垂直着陸ではなくグライダのような着陸を実行してもよい。
【0060】
ティルトロータ610は、クルージング位置のロータを示している。実質的に前方に飛行している間に、ティルトロータは、610に示すクルージング位置から612に示すホバリング位置へ移行される。ティルトロータがホバリング位置(612)にある状態で、ティルトロータは、最終的に地面に着陸するまで、電力利用を(より)低く保ち、モータまたは他の構成要素が故障した場合により良い選択肢(例えば、ティルトロータは、ロータの出力を上げて着陸プロセスまたは経路から抜け出すことができる)を保持するように、(少なくともこの例では)いくらかの前進運動を伴って位置614まで降下する。
【0061】
図7は、速度-傾斜図の一例を示すグラフである。図に示すグラフでは、x軸は、航空機の前進速度を示し、y軸は、(例えば、最小傾斜の)クルージング位置(700)から(例えば、最大傾斜の)ホバリング位置(702)までの範囲の傾斜(例えば、ティルト翼またはティルトロータの位置または角度)を示している。
【0062】
第1動作範囲(704)が、実線の境界で示されて格子パターンで網掛けされており、ティルト翼航空機に関連する。例えば、
図4のティルトロータ400ならびに
図3Aのティルト翼302および固定ロータ300を参照すること。第2動作範囲(706)が、破線の境界線とグレーの塗り潰しで示されており、後縁取り付けティルトロータを有する前進固定翼を備えた(例えば、同等の)航空機に関連する。例えば、上述の実施形態を参照すること。
【0063】
図に示すグラフにおいて、ティルトロータ動作範囲(706)は、ティルト翼動作範囲(704)の上位集合であり、これは、前者の航空機構成が、後者よりも安全でありおよび/または耐空性を有し、さらに、同等の傾斜位置でより高速および低速の両方で飛行できることを示唆する。固定翼では、翼は、すでに(および/または常に)(前進)飛行の方向に向けられている。ティルトロータが(最大)ホバリング位置(702)またはその付近にある時、機体は、モータをクルージング位置まで傾斜させる必要なしに、ほとんど失速速度(例えば、V2)まで飛行可能である。例えば、ティルトロータ動作範囲(706)は、V2まで(例えば、最大)ホバリング位置(702)にとどまることができることに注意されたい。これは、ティルト翼動作範囲(704)と比べて、ティルトロータ動作範囲(706)の動作レジームを大幅に増大させる。ティルト翼動作範囲(704)より上のグレー領域すべてに注意されたい。
【0064】
ホバリング位置またはその付近にあるティルトロータ構成の動作範囲の拡大に寄与しうる別の影響は、流れの方向転換を含む(例えば、
図4参照)。主翼上での流れの方向転換は、いくらかの追加揚力を引き起こす。いくつかの実施形態において、この流れの方向転換およびその結果生じる揚力は、通常のホバリング時に主翼ロータを真下からわずかな後方角度に(例えば、最小傾斜位置700に)傾斜させることによって増幅または最適化される。
【0065】
対照的に、ティルト翼は、ティルト翼が(例えば、最大)ホバリング位置(702)に傾斜された時に広い前面を呈する。結果として、ティルト翼は、完全な(例えば、最小)クルージング位置(700)またはその付近になるか、もしくは、ほぼそうなるまで、いかなる適切な速度で前方に飛行することもできない。
【0066】
図1Aおよび
図1Bへ一時的に戻ると、ティルトロータ機の初期のプロトタイプは、設計の簡単のために、単一のタイプのバッテリセルを備えたバッテリシステムを利用していた。例えば、リチウムバッテリセルは、高放電率(すなわち、高い電流レベルを出力できる)または高エネルギのいずれかであって、両方ではない傾向がある(例えば、典型的には、放電率容量が増大するとエネルギ容量が減少するため)。例えば、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有するバッテリおよび/またはセルは、通常、高い消費電流をサポートすることができ、したがって、高放電率として見なされまたは分類され、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有するものは、高エネルギとして見なされまたは分類される。初期のプロトタイプは、設計の複雑さを低減する単一タイプのセルを利用するために、2つの間の折衷であるバッテリセルを利用していた。機体のその他の部分は、既存の機体とはより異なっていたため、初期のプロトタイプでは可能な限り設計の簡単さを維持することが望ましかった。
【0067】
後続の型および/またはプロトタイプの機体では、機体の航続距離の増大が、所望の性能改善である。ハイブリッド電力システム(例えば、飛行中の様々な時またはモードで利用される2以上の異なる電力システムを備える)は、単一タイプのセルを備えたバッテリシステムを利用するよりも複雑であるが(例えば、ハイブリッド電力システムを備えた機体は、その他の設計上の考慮事項だけでなく、飛行中に様々な電力システムのオンおよびオフを安全に切り替える必要があるため)、航続距離の増大により、そのトレードオフが報われる。
【0068】
以下の図は、上述のティルトロータ機に利用されうるハイブリッド電力システムの様々な例を記載している。まず、2つのタイプのバッテリを備えたハイブリッド電力システムの一実施形態について記載する。その後、バッテリおよび燃焼機関を備えたハイブリッド電力システムの一実施形態について記載する。本明細書に記載のハイブリッド電力システムは、本明細書に記載のティルトロータ機の例だけではなく、他のタイプの機体での利用に適しうることに注意されたい。
【0069】
図8は、2つのバッテリサブシステムを含むハイブリッド電力システムを備えた機体の一実施形態を示す図である。図の例において、ティルトロータ機は、1つの高放電率バッテリ(800)と、5つの高エネルギバッテリ(802)と、を備える。この例において、高放電率バッテリ(800)は、~180Wh/kgのエネルギ密度を有し、総バッテリ重量の~15%を占めており、一方、高エネルギバッテリ(802)は、~270Wh/kgのエネルギ密度を有する。高エネルギバッテリは、放電率がより制限されているが、クルージング飛行の電力要求に適している。
【0070】
例えば、
図6Aに示した飛行シーケンスを考える。ホバリングレジーム(
図6Aの600)および移行レジーム(
図6Aの602)では、それらの飛行モード中により多くの推力がロータに求められるため(例えば、揚力のすべてまたはほとんどがロータから生じるように、翼にはほとんどまたは全く揚力がないため)、比較的高い放電率が必要となる。対照的に、クルージング中(
図6Aの604)、必要とされる電力は、はるかに低く、ホバリング中に必要とされる電力の約30%である。そのために、垂直離陸中(すなわち、
図6Aのホバリングモード600)、および、機体がホバリングモードから前進飛行に移行している間(
図6Aの602)には、高放電率バッテリ(800)が、ティルトロータへ電力を供給するために用いられる。前進飛行すなわちクルージングレジーム(
図6Aの604)では、高エネルギバッテリ(802)が、電力を供給するために用いられる。
【0071】
図に示すハイブリッド電力システム例に対する利点は、初期のプロトタイプのために最初に用いられていた初期の非ハイブリッド電力システム(例えば、単一タイプのバッテリセルを備えたシステム)と比べて(例えば、クルージング)航続距離を増大させることである。例えば、初期のバッテリシステムは、~200Wh/kg(これは、妥協値である)のエネルギ密度を有する単一タイプのセルを利用していた。この妥協の結果として、電力を大量消費する飛行のホバリング段階および移行段階に必要とされる総電流レベルを引き込むことができるように、より多くのセルが必要になる。この妥協戦略の最終結果は、(例えば、クルージング)航続距離が、ハイブリッド電力システム例によって提供される距離よりも短いことである。例えば、図に示すハイブリッド電力システム例は、初期の非ハイブリッド電力システムと比べて、クルージングバッテリ容量およびクルージング航続距離が~15%増大しうる。
【0072】
この例に示すように、いくつかの実施形態において、(例えば、ハイブリッド電力システムにおける)第1動力源は、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリを含み、(例えば、ハイブリッド電力システムにおける)第2動力源は、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリを含む。いくつかの実施形態において、移行モード中、電力コントローラは、機体のロータに給電するために高放電率バッテリを選択すると共にロータに給電するために高エネルギバッテリを選択するよう構成されている。いくつかの実施形態において、高放電率バッテリの重量は、総バッテリ重量の20%以下である。
【0073】
ハイブリッド電力システムを用いる場合の1つの考慮事項は、ティルトロータに電力を供給する電力サブシステムをいつ変更するのかを決定することである。一例として、垂直離陸後、電流センサがバス電流を監視し、航空機がクルージングモードにある時に、モータからの消費電流が低下して安定すると、動力源が高放電バッテリ(800)から高エネルギバッテリ(802)に切り替えられる。すなわち、離陸シーケンス中に切り替えるためのテストは、機体がどの飛行モードまたは状態にあるのか(例えば、飛行コンピュータまたはコントローラが、HOVER_ST、TRANS_ST、または、FF_STの値を持つ飛行状態変数を有してよい)と、(例えば、移動時間窓内の)平均消費電流が何らかの閾値以下であるか否かと、に基づいてよい。
【0074】
一部の例では、ティルトロータに給電するために用いられる電力サブシステムの変更をトリガする閾値または状態は、離陸シーケンス(例えば、ホバリング、移行、および、前進飛行のシーケンス)と着陸シーケンス(例えば、前進飛行、移行、および、ホバリングのシーケンス)とで異なっている。例えば、上述の電流センサが、離陸中に高放電から高エネルギへいつ切り替えるのかを決定するために利用可能である。しかしながら、着陸中、特に、最終アプローチの段階では、ロータがホバリングモードに傾斜されても機体が下降しているので、消費電流が低いままでありうる。機体が地面に近づくにつれて、消費電力が突然増大することで、非常に地上近くで動力源の切り替えを余儀なくされ、スイッチ装置が故障した場合に余裕がない場合がある。かかる場合に、地上近くで電力要求が増大するまで待つのではなく、消費電流に関わらず、移行終了段階の開始時に(例えば、飛行状態変数がFF_STからTRANS_STに移行するのに伴って)動力源を切り替えることが望ましい場合がある。
【0075】
航空機のためのハイブリッド電力システムにおける重要な考慮事項は、異なる動力源を安全に切り替える方法である。一例として、安全のために、切り替えは、いずれかのスイッチが故障してもシステムが機能するような規模の、2つ以上の電子的に作動される機械式または半導体ベースのスイッチを用いて実行される。さらに、安全のために、一方の動力源では開回路位置で故障するが他方の動力源では閉回路位置で故障ようにスイッチを選択することにより、両方のパックが同時にバスに接続される状況も、どちらのパックもバスに接続されない状況も防止することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、ハイブリッド電力システムは、バッテリおよび内燃機関を備える。以下の図では、これの様々な例を記載する。以下で詳述するように、いくつかの実施形態では、前進飛行モードに(および、おそらくは、移行モード中に或る程度まで)用いられるがホバリングモードでは用いられない1または複数のクルージング専用(すなわち、固定)プロペラが存在する。
【0077】
図9は、バッテリサブシステムおよび内燃機関を含むハイブリッド電力システムを備えた機体の一実施形態を示す図である。図の例において、クルージングモード中、内燃機関(例えば、燃料タンク(900)と、ギアボックスを備えたエンジン(902)とを含む)が、エンジン-発電機シャフト(906)を介して発電機(904)を駆動し、パワーエレクトロニクス機器(908)が、電動ティルトロータのための内燃機関による電力の生成を制御する。ホバリングモード中、内燃機関によって供給される電力は、バッテリ(910)によって補われる。
【0078】
いくつかの実施形態において、発電機(904)は、クルージング段階中にバッテリ(910)を(例えば、ゆっくりと)充電するために用いられる。例えば、バッテリは、ホバリングモード中に(例えば、離陸および着陸のために)のみ用いられるので、クルージングモード中には放電していないことから、その時間中に充電されてよい。これにより、着陸時に機体が利用可能なホバリング時間が増大し(着陸区域が占められていて、着陸区域が空くまでの間に機体がホバリングする必要のある場合に有効でありうる)、および/または、より小容量の(したがって軽量の)バッテリの利用が可能になる。
【0079】
比較のために、車両の初期のプロトタイプは、100kgのバッテリパック(例えば、単一タイプのセルを備えた非ハイブリッドバッテリシステム)を備えているとする。図に示すハイブリッドシステム例には、
図8の高放電率バッテリがバッテリ(910)に用いられるとする。その場合、このハイブリッド例におけるバッテリ部分(910)は、~16kgの重量になる。ハイブリッドの内燃機関部分(例えば、燃料タンク(900)と、ギアボックスを備えたエンジン(902)とを含む)は、その流体およびサポートシステムと合わせて~38kgの重量を占める。発電機(904)および電力エレクトロニクス機器(908)は、~16kgを占める。そのため、燃料のために~30kgが残されており、これは、比較例すなわち非ハイブリッドバッテリ構成と比べてクルージング航続距離の50%増加に相当する。複雑さの増大、安全上の課題(可燃性液体によるものなど)、騒音および振動の問題があるが、航続距離が伸びることで、より長い後続距離の用途にとっては、このトレードオフが奏功しうる。また、
図8に示したハイブリッド例と異なり、この実施形態では、電力サブシステムの1つ(内燃機関)が常にオンである。これは、第1電力サブシステムがオフに切り替わる時に第2電力サブシステムがオンに切り替わり損ねる可能性がないため、安全上の理由から有益でありうる。
【0080】
この例に示すように、いくつかの実施形態において、(例えば、ハイブリッドシステムにおける)第1動力源は、内燃機関を含み、第2動力源は、(例えば、高放電率)バッテリを含み、移行モード中、電力コントローラは、ロータに給電するために内燃機関を選択し、バッテリがロータに給電しないようにバッテリを選択解除するよう構成されており、ホバリングモード中、電力コントローラは、ロータに給電するために内燃機関を選択すると共にロータに給電するためにバッテリを選択するよう構成されている。いくつかの実施形態において、内燃機関は、バッテリが選択解除されてロータに給電していない時間の少なくとも一部でバッテリを充電するために用いられる。
【0081】
図10は、クルージング専用プロペラと、ホバリングおよび移行専用ティルトロータと、バッテリサブシステムおよび内燃機関を含むハイブリッド電力システムとを備えた機体の一実施形態を示す図である。この例では、バッテリサブシステム(1000)が、ホバリングおよび移行の際に(電動)ティルトロータ(この図では、ホバリングのために下向きに傾斜された位置で示されている)を駆動する。いくつかの実施形態において、バッテリサブシステム(1000)は、上述のように様々な飛行モード中にオンおよびオフに切り替えられる複数のタイプのセル(例えば、高エネルギバッテリおよび高放電率バッテリ)を含む(例えば、
図8を参照)。
【0082】
ハイブリッド電力システムは、さらに、クルージング専用プロペラ(1002)を駆動する内燃機関を備える。この例において、クルージング専用プロペラは、機首に取り付けられているが、かかるプロペラは、様々な場所に配置されてよい(例えば、テールコーンの推進プロペラなど)。クルージング(すなわち、前進飛行)モード中、機関(1004)は、プロペラシャフト(1008)を介してクルージング専用プロペラ(1002)を回転させるギアボックス(1006)を回転させる。燃料は、燃料タンク(1010)に蓄えられている。
【0083】
比較のために、車両の初期のプロトタイプは、100kgのバッテリパック(例えば、単一タイプのセルを備えた非ハイブリッドバッテリシステム)を備えているとする。この比較において、この例のバッテリ部分(1000)は、高放電バッテリを利用し、このハイブリッド例ではバッテリ部分の重量が~16kgであるとする。内燃機関は、その流体およびサポートシステム、ギアボックス、さらなるプロペラ(1002)と合わせて、~45kgの重量を占める。そのため、燃料のために~39kgが残されており、これは、比較構成と比べてクルージング航続距離のほぼ100%増加に相当する。いくつかの長い航続距離の用途では、航続距離の増大が実現されることで、あらゆる複雑さ、安全性の問題(例えば、可燃性液体を搭載することに関する問題)、騒音および振動、などにおけるトレードオフが奏功する。
【0084】
この例に示すように、いくつかの実施形態において、(例えば、ハイブリッド電力システムにおける)第1動力源は、内燃機関を含み、第2動力源は、バッテリを含み、機体に備えられているロータはティルトロータを含み、機体は、さらに、クルージング専用ロータを備える。電力コントローラは、前進飛行モード中に、クルージング専用ロータに給電するために内燃機関を選択し、ホバリングモードおよび移行モード中に、内燃機関がクルージング専用ロータに給電しないように内燃機関を選択解除するよう構成されている。
【0085】
この例において、ティルトプロペラは、ホバリングおよび移行のために用いられ、飛行のクルージング部分の間にはオフにされる。いくつかの実施形態において、抗力を低減するために、ティルトプロペラは、クルージングモード中に、クルージング時の抗力を低減するためにプロペラブレードを折りたたむ(例えば、後方へ折りたたむ)ことができるように、折りたたみ可能である。
【0086】
いくつかの実施形態において、クルージング専用ロータは、(例えば、クルージング専用ロータによって生み出される後流が先尾翼または主翼上の気流と干渉しないように)機体における尾部の後方に配置されたクルージング専用の推進ロータを含む。いくつかの実施形態において、第2動力源は、190Wh/kg以下のエネルギ密度を有する高放電率バッテリと、235Wh/kg以上のエネルギ密度を有する高エネルギバッテリとを含む(すなわち、バッテリサブシステム自体が、ハイブリッドシステム(
図8に示した例など)である)。
【0087】
上述のように、ハイブリッド電力システムは、航続距離の増大に有効でありうる。いくつかの実施形態において、バッテリは、ホバリングモードおよび/または移行モード中に必要なさらなる推力を提供するが、内燃機関および発電機は、クルージング飛行に必要なより低い電力を提供する。これにより、液体燃料はバッテリよりもはるかにエネルギ密度が高いため、所与の機体重量に対して大幅に航続距離を増加させることになる。
【0088】
別の実施形態において、ハイブリッド電力システムは、2つの電気(すなわち、バッテリ)システムを利用し(一方は、ホバリングおよび/または移行モード用の高出力セルを備え、他方は、高エネルギ密度セル(例えば、典型的には、より低い電流出力容量を有する)を用いて、クルージング電力を提供する)、それにより、単一の電気システム(すなわち、単一の妥協タイプのセルを備える)と比べて航続距離を伸ばすことができる。
【0089】
上述の実施形態は、理解しやすいようにいくぶん詳しく説明されているが、本発明は、提供された詳細事項に限定されるものではない。本発明を実施する多くの代替方法が存在する。開示されている実施形態は、例示であり、限定を意図するものではない。
【国際調査報告】