(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】フッ素化熱可塑性エラストマーの処理方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20221205BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20221205BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B29C45/00
C08L27/12
C08J5/00 CEW
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520137
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020053890
(87)【国際公開番号】W WO2021067660
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ダブリュ・ハウザー
(72)【発明者】
【氏名】アザーズ・エイ・バホラ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ワイ・カペロ
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・デライユ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・バーゲン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA26
4F071AA84
4F071AA89
4F071AF61Y
4F071AH12
4F071AH19
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4J002FD146
4J002GC00
4J002GJ02
4J002GM00
4J002GT00
(57)【要約】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を成形するための射出成形プロセスが開示される。このプロセスを使用して作成された物品は、収縮がほとんどない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を成形するプロセスであって、前記プロセスは、以下のステップ:
a.形成ΔHが1~30J/g、好ましくは1~20J/g、より好ましくは1~10J/gの半結晶性フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を提供すること
b.前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を射出成形すること
を含み、
i.バレル温度は、T
mより30~200℃高く、好ましくはT
mより50~200℃高く、より好ましくはT
mより60~180℃高く、
ii.金型温度は、溶融遷移(T
m)未満であり、好ましくはT
cとT
mの間であり、好ましくはT
mより10~70℃低く、より好ましくはT
mより10~60℃低く、さらにより好ましくはT
mより10~40℃低く、
iii.金型の冷却時間は、60秒より長く、好ましくは70秒以上、好ましくは70~1000秒、好ましくは80~900秒、さらにより好ましくは100~800秒である、
プロセス。
【請求項2】
前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物はフルオロポリマーブレンドを含み、前記ブレンドは、エラストマーフルオロポリマー及び熱可塑性フルオロポリマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のT
mは、40℃より高く、好ましくは60℃より高く、より好ましくは80℃より高い、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のT
mは、40℃~230℃、好ましくは60℃~200℃、より好ましくは80℃~175℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
所定の組成物について、T
cがT
mより少なくとも15℃低いという条件で、T
cは、少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
所定の組成物について、T
cがT
mより少なくとも15℃低いという条件で、T
cは、0℃~215℃、好ましくは10℃~215℃の範囲であり得る、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
所定の組成物について、T
cがT
mより少なくとも15℃低いという条件で、組成物のT
mは、120℃未満、好ましくは100℃未満であり、T
cは少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記フルオロポリマー熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含み、
Hは、HFP、フッ素化もしくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量を含むフルオロポリマーであり、
Sは、好ましくは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%含み、
Hの量は組成物の20~80重量%であり、Sの量は組成物の20~80重量%である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項9】
230℃、100s
-1で測定されたHの溶融粘度は1~30kPであり230℃、100s
-1で測定されたSの溶融粘度は10~55kPである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
Hは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項8又は9に記載のプロセス:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項11】
Sは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項8又は9に記載のプロセス:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。
【請求項12】
フルオロポリマーHはVDFとHFPのコポリマーであり、VDFは少なくともHの70重量%を構成し、フルオロポリマーSはVDFとHFPのコポリマーであり、HFPはSの少なくとも30重量%、好ましくはSの少なくとも40重量%、より好ましくはSの少なくとも45重量%を構成する、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項13】
Hの量は組成物の40~60重量%であり、Sの量は組成物の60~40重量%である、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項14】
組成物中のフルオロポリマーHとSの合計比率は、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項15】
SとHの前記フルオロポリマーブレンドの溶融粘度は、230℃の温度、100s
-1のせん断速度で、1000~4400Pa・s、好ましくは1000~3000Pa・s、より好ましくは800~2200Pa・sである、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項16】
前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、フッ素化熱可塑性加硫物(TPV)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
TPVは、以下からなる群から選択される架橋剤を含む、請求項16に記載のプロセス:メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジ又は高級ポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ポリオキサゾリン、ジアルデヒド(グリオキサールなど)、二官能性及び三官能性アセトアセテート、マロネート、アセタール、チオール及びアクリレート、脂環式エポキシ分子、オルガノシラン(エポキシシラン、アミノシランなど)、カルバメート、ジアミン、及びトリアミン、無機キレート剤(特定の亜鉛及びジルコニウム塩、チタン酸塩、グリコウリル及び他のアミノプラストなど)、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N-ジアリル-アクリルアミド;以下に定義されるフッ素化ビスオレフィン、N,N’ビスアリルシクロ-オクタ-7-エン-ジスクシンイミド(BOSA);N,N,N’-テトラアリル-マロンアミド;トリビニル-イソシアヌレート;2,4,6-トリビニル-メチルトリシロキサン。
【請求項18】
前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、VDF及びHFP系のコポリマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
試験方法に従って、金型外収縮は4.3%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセスから製造された物品。
【請求項20】
試験方法に従って、部品を65℃で72時間アニーリングした後、5%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満の収縮を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセスから製造された物品。
【請求項21】
試験方法に従って部品を80℃で72時間アニーリングした後、5%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満の収縮を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載の物品。
【請求項22】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を成形するプロセスであって、前記プロセスは、以下のステップ:
a.形成ΔHが1~10J/gの半結晶性ポリマー組成物を提供すること
b.前記ポリマーを、
i.T
mより50~200℃高い、バレル温度、
ii.溶融遷移(T
m)未満であり、好ましくはT
cとT
mの間であり、より好ましくはT
mより10~60℃低い、金型温度、
iii.80~800秒である、金型の冷却時間で、
射出成形することを含み、
前記フッ素化熱可塑性エラストマー組成物は、20%~80%のH比率でHポリマーとSポリマーのブレンドを含む、プロセス。
【請求項23】
Hはフッ化ビニリデンとHFPを含むコポリマーを含み、Sはフッ化ビニリデンとHFPを含むコポリマーを含む、請求項22に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマー、好ましくは、フッ化ビニリデン(VINYLIDENE FLUORIDE、VDF)由来のユニット及びヘキサフルオロプロペン(HEXAFLUOROPROPENE、HFP)由来のユニットを含むコポリマーに基づく熱可塑性エラストマー組成物を処理するプロセスに関する。これらのフルオロ熱可塑性エラストマー(FLUORO-THERMOPLASTIC ELASTOMERS、F-TPE)の処理により、従来の熱可塑性処理装置を使用して、ウェアラブル又は家電製品又は物品部品を製造することが可能になる。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーはポリマー材料の一種であり、使用温度ではエラストマーの挙動を示すが、熱可塑性プラスチックと同様に高温で処理及びリサイクルできる。これらのハイブリッド特性を達成するために、ポリマーシステムの少なくとも1つの相は、通常、低硬度、低TG、及び/又は低結晶化度を有する。そのため、これらの材料の射出成形には課題が伴う。すなわち、特殊な冷却システムなしで部品の寸法を維持することである。
【0003】
文献WO2018046355は、熱可塑性エラストマーのクラスである動的に硬化した熱可塑性加硫物(THERMOPLASTIC VULCANIZATE、TPV)の組成物を開示しているが、前記TPVを射出成形するための解決策を提示していない。同様に、文献WO2018050688、US20160177079、及びUS20160194512は、フッ素化熱可塑性エラストマー組成物を開示しているが、これらの組成物の射出成形部品の解決策を論じていない。したがって、収縮が少なく、表面構造を変更できる高品質の部品を再現性よく作成するプロセスが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TPE樹脂から複雑な又は有用な部品を射出するには、その背景にあるメカニズムを理解し、加工条件で発生する寸法変化を制御できなければならない。TPEのアモルファス領域の残留応力は、最終的な部品収縮の主要な推進要因である。同様に、半結晶相での結晶化の動力学は、結晶化が妥当な時間枠内で金型内で発生するように制御する必要がある。
【0005】
これは、おそらく、半結晶性ポリマーの収縮の原因(すなわち、結晶化自体)であると一般に考えられているという直感に反する。確かに、結晶化による密度の変化は、成形部品の体積変化に寄与するが、これは、全体的な結晶化度及び/又は体積パーセント結晶相に、より密接に依存する。結晶化度の低い材料では、これが支配的な要因にならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の射出成形装置を用いて、熱可塑性エラストマー材料、好ましくはフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を射出成形するためのプロセスが開示されている。このプロセスで作成された部品は、金型自体からの取り出し時に寸法変化が非常に小さく、高温にさらされた後もこの部品の品質を好適に維持する。
【0007】
開示されたプロセスにおいて、金型温度は、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物の最高溶融転移(Tm)よりも低く、好ましくはTcとTmとの間、好ましくはTmより10~70℃低く、より好ましくはTmより10~60℃低く、さらにより好ましくは熱可塑性エラストマー組成物のTmより10~40℃低い。一般に、このプロセスの冷却時間は、60秒より長く、好ましくは70秒以上であり、そして70~1000秒、好ましくは80~900秒、さらにより好ましくは100~800秒の範囲であり得る。一般に、バレルの温度は、Tmより30~220℃高く、好ましくはTmより50~200℃高く、より好ましくはTmより600~180℃高い。
【0008】
金型のゲートサイズは、せん断を減らすために最大化する必要がある。これにより、収縮が少なくなる。
【0009】
金型を供給するランナー経路の長さは最小化されるべきであるが、断面積は、せん断応力を最小化するために最大化されるべきである。
【0010】
このプロセスの充填速度は、1~100cm3/秒、好ましくは5~50cm3/秒の範囲である。
【0011】
これらの条件下で処理することができるフッ素化熱可塑性エラストマー組成物には、フルオロポリマー熱可塑性エラストマーポリマー、フルオロポリマー熱可塑性エラストマーポリマーブレンド、及びフルオロ熱可塑性加硫物及びセグメント化ブロック共重合によって製造されたF-TPEが含まれるが、これらに限定されない。セグメント化ブロック共重合によって製造されたF-TPEの例は、文献US4158678、US4243770、US5198502、WO2018149757、WO2018050688、又はUS6107363に記載されている。フルオロ熱可塑性加硫物の例は、US20160177079、WO2015014699、US20160194512及びUS2008032080に記載されている。
【0012】
本発明の方法を使用して、フッ素化熱可塑性エラストマー組成物を容易に射出成形して、収縮率が4.3%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、さらにより好ましくは2%未満の部品を作製することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明で使用される熱可塑性エラストマー組成物は、架橋されていない十分に高い粘度(又は分子量)のフルオロポリマー「S」と架橋されていない十分に高い粘度(又は分子量)のフルオロポリマー「H」とのブレンドを含む。フルオロポリマーのブレンドは、20~80重量%のSと80~20重量%のHを含む。ポリマーSとポリマーHはどちらも架橋剤なしで製造される。
【0014】
一実施形態では、第1の側面のポリマーHフルオロポリマーは、少なくとも70重量%のフッ化ビニリデンモノマー単位を有するホモポリマー又はコポリマーである。Sは、少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%のHFPを有するフルオロポリマーコポリマーである。
【0015】
本発明の側面1は、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を成形するプロセスであって、前記プロセスは、以下のステップ:
(I)形成ΔHが1~30J/g、好ましくは1~20J/g、より好ましくは1~10J/gの半結晶性フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を提供すること
(II)前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を射出成形すること
を含み、
(a)バレル温度は、Tmより30~220℃高く、好ましくはTmより50~200℃高く、より好ましくはTmより60~180℃高く、
(b)金型温度は、最高溶融遷移(Tm)未満であり、好ましくはTcとTmの間であり、好ましくはTmより10~70℃低く、より好ましくはTmより10~60℃低く、さらにより好ましくはTmより10~40℃低く、
(c)金型の冷却時間は、60秒より長く、好ましくは70~1000秒、好ましくは80~900秒、さらにより好ましくは100~800秒である。
【0016】
側面2:前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物はフルオロポリマーブレンドを含み、前記ブレンドは、エラストマーフルオロポリマー及び熱可塑性フルオロポリマーを含む、側面1に記載のプロセス。
【0017】
側面3:前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTmは、40℃より高く、好ましくは60℃より高く、より好ましくは80℃より高い、側面1又は2に記載のプロセス。
【0018】
側面4:前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTmは、40℃~230℃、好ましくは60℃~200℃、より好ましくは80℃~175℃である、側面1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【0019】
側面5:所定の組成物について、TcがTmより少なくとも15℃低いという条件で、Tcは、少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い、側面1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【0020】
側面6:所定の組成物について、TcがTmより少なくとも15℃低いという条件で、Tcは、0℃~215℃、好ましくは10℃~215℃の範囲であり得る、側面1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【0021】
側面7:所定の組成物について、TcがTmより少なくとも15℃低いという条件で、組成物のTmは、120℃未満、好ましくは100℃未満であり、Tcは少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い、側面1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【0022】
側面8:前記フルオロポリマー熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含み、
Hは、HFP、フッ素化もしくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%を含むフルオロポリマーであり、
Sは、好ましくは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%含み、Hの量は組成物の20~80重量%であり、Sの量は組成物の20~80重量%である、側面1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【0023】
側面9:230℃、100s-1で測定されたHの溶融粘度は1~30kPであり、230℃、100s-1で測定されたSの溶融粘度は10~55kPである、側面8に記載のプロセス。
【0024】
側面10:Hは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、側面8又は9に記載のプロセス:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。
【0025】
側面11:Sは、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、側面8~10のいずれか1項に記載のプロセス:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。
【0026】
側面12:フルオロポリマーHはVDFとHFPのコポリマーであり、VDFは少なくともHの70重量%を構成し、フルオロポリマーSはVDFとHFPのコポリマーであり、HFPはSの少なくとも30重量%、好ましくはSの少なくとも40重量%、より好ましくはSの少なくとも45重量%を構成する、側面8~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【0027】
側面13:Hの量は組成物の40~60重量%であり、Sの量は組成物の60~40重量%である、側面8~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【0028】
側面14:組成物中のフルオロポリマーHとSの合計比率は、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%である、側面8~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【0029】
側面15:SとHの前記フルオロポリマーブレンドの溶融粘度は、230℃の温度、100s-1のせん断速度で、1000~4400Pa・s、好ましくは1000~3000Pa・s、より好ましくは800~2200Pa・sである、側面8~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【0030】
側面16:前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、フッ素化熱可塑性加硫物(TPV)を含む、側面1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【0031】
側面17:TPVは、以下からなる群から選択される架橋剤を含む、側面16に記載のプロセス:メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジ又は高級ポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ポリオキサゾリン、ジアルデヒド(グリオキサールなど)、二官能性及び三官能性アセトアセテート、マロネート、アセタール、チオール及びアクリレート、脂環式エポキシ分子、オルガノシラン(エポキシシラン、アミノシランなど)、カルバメート、ジアミン、及びトリアミン、無機キレート剤(特定の亜鉛及びジルコニウム塩、チタン酸塩、グリコウリル及び他のアミノプラストなど)、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N-ジアリル-アクリルアミド;以下に定義されるフッ素化ビスオレフィン、N,N’ビスアリルシクロ-オクタ-7-エン-ジスクシンイミド(BOSA);N,N,N’-テトラアリル-マロンアミド;トリビニル-イソシアヌレート;2,4,6-トリビニル-メチルトリシロキサン。
【0032】
側面18:前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、VDF及びHFP系のコポリマーを含む、側面1に記載のプロセス。
【0033】
側面19:試験方法に従って、金型外収縮は4.3%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満である、側面1~18のいずれか1項に記載のプロセスから製造された物品。
【0034】
側面20:試験方法に従って、部品を65℃で72時間アニーリングした後、5%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満の収縮を示す、側面1~19のいずれか1項に記載のプロセスから製造された物品。
【0035】
側面21:試験方法に従って部品を80℃で72時間アニーリングした後、5%未満、好ましくは3%、より好ましくは1%未満の収縮を示す、側面1~19のいずれか1項に記載の物品。
【0036】
側面22:フッ素化熱可塑性エラストマーを成形するプロセスであって、前記プロセスは、以下のステップ:
(I)形成ΔHが1~10J/gの半結晶性ポリマー組成物を提供すること
(II)前記ポリマーを、
(a)Tmより50~200℃高い、バレル温度、
(b)溶融遷移(Tm)未満であり、好ましくはTcとTmの間であり、より好ましくはTmより10~60℃低い、金型温度、
(c)70~800秒である、金型の冷却時間で、
射出成形することを含み、
前記フッ素化熱可塑性エラストマー組成物は、20%~80%のH比率でHポリマーとSポリマーのブレンドを含む、プロセス。
【0037】
側面23:Hはフッ化ビニリデンとHFPを含むコポリマーを含み、Sはフッ化ビニリデンとHFPを含むコポリマーを含む、側面22に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願に記載されているすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。特に明記しない限り、組成物中のすべてのパーセンテージは重量パーセントである。
【0039】
「ポリマー」という用語は、特に明記しない限り、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー(3つ以上のモノマー単位)のいずれを意味するために使用される。任意のコポリマー又はターポリマーは、ランダム、ブロック状、又はグラジエントであり得、ポリマーは、線状、分枝状、星型、くし型、又は他の任意の形態であり得る。
【0040】
本出願の文脈において、別段に断りがない限り、すべての粘度は、230℃の温度及び100s-1のせん断速度で測定される溶融粘度である。より具体的には、溶融粘度は、DYNISCO LCR 7000毛細管レオメーターによって測定することができる。測定は230℃で10~3000s-1の範囲のせん断速度で実行され、粘度は100S-1で記録される。
【0041】
Tc及びTmは、それぞれ第1の冷却及び第2の加熱による10℃/分の加熱/冷却速度での示差走査熱量測定(DIFFERENTIAL SCANNING CALORIMETRY、DSC)によって識別される。形成ΔHは、2回目の加熱時の熱流曲線の吸熱領域(Tm)又は1回目の冷却時の発熱領域(Tc)を積分し、温度上昇率とサンプル質量で割ることによって定義される。
Tmに関するすべての言及は、別段に断りがない限り、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物の最高溶融転移温度を指す。Tcに関するすべての言及は、別段に断りがない限り、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物の最低結晶化温度を指す。
【0042】
半結晶性とは、熱可塑性エラストマーポリマー組成物が1~60J/gの間の形成のΔHを有することを意味する。
【0043】
収縮試験:収縮は、165mmの金型サイズからのタイプIのASTM引張棒の1次元長さ変化のパーセントによって定義され、少なくとも0.1mmの感度を備えたキャリパーで簡単に測定される。離型後の収縮は、離型後24時間で測定され、この間、引張棒は周囲温度(20~25℃)になる。別段に断りがない限り、収縮とは、金型外の収縮を指す(物品はアニーリングせず)。
【0044】
アニーリング手順。金型から物品を取り出した後、物品を指示された温度に指示された時間加熱し、次いで、上記の収縮試験に従って、アニーリング加熱から取り出してから24時間後に測定する。「アニーリング収縮」。
【0045】
「エラストマー」とは、本明細書では、ASTM規格、特別公報No.184による応力/緩和プロトコルに供されたときに、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の弾性回復を有する材料を意味する。このプロトコルは、ASTMD638で定義された引張棒に適用される。このサンプルは、25℃で100%の引張変形を受ける。100%の変形が5分間維持された後、サンプルが解放される。5分間の弛緩後、残留変形が測定される。弾性回復は、初期サンプル長から残留変形を差し引いたものとして定義される。引張プロトコルは、100又は200ポンドのロードセルを備えたインストロンモデル4201、4202などで実行される。
【0046】
フッ素化熱可塑性エラストマーとは、周囲温度で弾性を示し、溶融加工技術によってプラスチックとして処理することができるポリマー材料を意味する。フッ素化熱可塑性エラストマー(FLUORINATED THERMOPLASTIC ELASTOMERIC、TPE)材料の例には、ブレンド(通常は熱可塑性エラストマーとエラストマー)、TPV、及びブロック共重合体(熱可塑性の1つ又は複数のブロックとエラストマーの1つ又は複数のブロックを含む)が含まれる。
【0047】
本発明は、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を射出成形するプロセスを提供し、前記プロセスは、以下のステップ:
(I)形成ΔHが1~30J/g、好ましくは1~20J/g、より好ましくは1~10J/gの半結晶性フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を提供すること
(II)前記フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を射出成形すること
を含み、
(a)バレル温度は、Tmより30~200℃高く、好ましくはTmより50~200℃高く、より好ましくはフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTmより60~180℃高く、
(b)金型温度は、最高溶融遷移(Tm)未満であり、好ましくはTcとTmの間であり、好ましくはTmより10~70℃低く、より好ましくはTmより10~60℃低く、さらにより好ましくはTmより10~40℃低く、
(c)金型の冷却時間は、60秒より長く、70秒以上、70~1000秒、好ましくは80~900秒、さらにより好ましくは80~800又は100~800秒である。
【0048】
本発明は、開示されたプロセスによって製造された物品を提供する。
【0049】
本発明のプロセスは、型外収縮が少ない物品をもたらす。好ましくは、型外収縮は、収縮試験によって測定される場合、4.3%以下、4%未満、3%未満、より好ましくは1%未満である。
【0050】
バレル温度は、熱可塑性エラストマー組成物の融点よりも高い。好ましくは、バレル温度は、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物が低い残留流動誘起応力で金型に流入することを確実にするために、Tmより少なくとも30℃高く、好ましくは少なくとも50℃高い。
【0051】
成形における2種類の関連残留応力は、流動誘起応力及び熱誘起応力である。ポリマーが処理中にせん断を受けると、流動誘起残留応力が発生する。溶融状態にあるとき、ポリマー分子は応力を受けておらず、ランダムコイル状態になる傾向がある。処理中、ポリマーはせん断と伸びを経る可能性があり、分子は流れ方向に配向する。ポリマー分子がランダムコイル状態に完全に緩和される前に凝固が発生すると、分子配向は成形部品内に固定される。
【0052】
ポリマーはまた、処理中に熱的に誘発された残留応力を経る可能性がある。これは冷却中に発生する。ポリマーは、冷却すると収縮する。冷却中、ポリマーは金型壁から中心までさまざまな速度で冷却される。ポリマーが冷却し始めると、外面は収縮し始めるが、コアのポリマーの大部分はまだ熱く、未収縮である。内部コアが冷却すると、外部層はすでに剛性があるため、その収縮は外部層によって抑制される。
【0053】
金型温度が最高溶融遷移(Tm)より低く、好ましくは金型温度がフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTcとTmとの間であり、より好ましくはTmより10~70℃低いことが重要である。これにより、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物を金型から外す前に固化することが保証される。
【0054】
金型冷却時間は、60秒より長く、好ましくは70秒以上、より好ましくは80秒以上であり、好ましくは、冷却時間は1000秒未満である。冷却時間は、70~1000秒、80~900秒、又は100~800秒であり得る。冷却時間が短すぎると、部品が顕著に固化することができない。冷却時間が短すぎると、収縮が大きくなる。
【0055】
金型温度と冷却時間の組み合わせにより、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物の適切な結晶化が可能になる。これにより、離型後の形状とサイズを維持する成形部品が提供される。
【0056】
本発明に従って成形することができる熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、少なくとも2つのフルオロポリマーポリマーのブレンドであり得、一方のフルオロポリマーはエラストマーであり、他方は熱可塑性である。ブレンドには、架橋剤が含まれる場合と含まれない場合がある。ブレンドに架橋剤が含まれている場合、それは通常TPVと呼ばれる。そのような架橋剤は当技術分野で知られている。
【0057】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTmは、40℃より高く、好ましくは60℃より高く、より好ましくは80℃より高い。Tmは、40℃~230℃、好ましくは60℃~200℃、より好ましくは80℃~170℃の範囲であり得る。
【0058】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物Tcの結晶化温度は、少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い。所定のフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物について、TcがTmより少なくとも15℃低いという条件で、Tcは、0℃~170℃、好ましくは10℃~170℃の範囲であり得る。
【0059】
一実施形態では、所定のフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物について、TcがTmより少なくとも15℃低いという条件で、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物のTmは120℃未満、好ましくは100℃未満であり、結晶化温度Tcは少なくとも0℃、好ましくは10℃より高く、より好ましくは15℃より高い。
【0060】
熱可塑性エラストマーポリマー組成物の例は、WO201804635、WO2018050688、US20160177079、US20160194512に見られる。そのような組成物は、本発明によって処理することができる。
【0061】
本発明で使用される1つの熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、架橋されていない十分に高い溶融粘度のフルオロポリマー「S」と、架橋されていない十分に高い溶融粘度のフルオロポリマー「H」とのブレンドを含む。フルオロポリマーのブレンドは、20~80重量%のSと80~20重量%のHを含む。ポリマーSとポリマーHはどちらも架橋剤なしで製造される。
【0062】
フルオロポリマーH:ポリマーHは、50重量%を超えるフルオロモノマーを含むホモポリマー又はコポリマーであり得る。
【0063】
ポリマーHは、HFP、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)を含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、長鎖過フッ素化ビニルエーテル及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量%を含むフルオロポリマーである。
【0064】
一実施形態では、Hは、好ましくはホモポリマー、又は0~30重量%のHFPを含むフルオロモノマーを70~100重量%有するコポリマーであり、230℃、100s-1で測定され1~30kP、好ましくは4~20kPの溶融粘度を有する。
【0065】
本発明のフルオロポリマーHは、少なくとも50重量%の1つ又は複数のフルオロモノマーを含むポリマーを含むが、これらに限定されない。本発明に従って使用される「フルオロモノマー」という用語は、フリーラジカル重合反応を受けることができるフッ素化及びオレフィン的に不飽和のモノマーを意味する。本発明に従って使用するための適切な例示的なフルオロモノマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。本発明の実施に使用されるフルオロポリマーには、上記のフルオロモノマーの重合生成物、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)をそれ自体で重合することによって作製されるホモポリマー、又はフッ化ビニリデン(VDF)をヘキサフルオロプロペン(HFP)と重合させて作製されたコポリマーが含まれる。
【0066】
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン及びフッ化ビニリデンモノマー単位を有するものなどのターポリマーを含む、フルオロターポリマーも想定される。最も好ましくは、フルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーホモポリマー又はコポリマーである。本発明はPVDFに関して例示されるが、当業者は、PVDFという用語が例示される場合に他のフルオロポリマーを表すことができることを認識するであろう。
【0067】
ポリマーHは、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマーである。PVDFは、ホモポリマー、コポリマー、又はポリマーアロイにすることができる。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーHは、フッ化ビニリデン(VDF)を重合することによって作製されたホモポリマー、ならびにフッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマーを含み、ここで、フッ化ビニリデン単位は、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量の51重量%を超え、好ましくは、70%を構成し、より好ましくは、モノマー単位の総重量の75%を超える。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマー(一般に本明細書では「コポリマー」と呼ばれる)は、フッ化ビニリデンを、以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、部分的又は完全にフッ素化されたアルファオレフィン(3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、ヘキサフルオロプロペン、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレンなど)の1つ又は複数、過フッ素化ビニルエーテル(パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-N-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなど)、フッ素化ジオキソール(パーフルオロ(1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)など)、アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又はフッ素化されたアリルモノマー(2-ヒドロキシエチルアリルエーテル又は3-アリルオキシプロパンジオールなど)、及びエテン又はプロペン、ならびにフッ素化又は部分的にフッ素化されたアクリレート又はメタクリレート。好ましいコポリマー又はターポリマーは、フッ化ビニル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、及びヘキサフルオロプロペン(HFP)で形成される。
【0068】
ポリマーHの好ましいコポリマーには、約70~約99重量%のVDF、及び対応して約1~約30重量%のHFP、好ましくは15~30重量%のHFPのレベルを含むもの;VDF/HFP/TFEのターポリマー;及びVDFとTFEのコポリマーが含まれる。
【0069】
ポリマーHの場合、すべてのモノマー単位がフルオロモノマーであることが好ましいが、フルオロモノマーと非フルオロモノマーとのコポリマーも本発明によって想定される。非フルオロモノマーを含むコポリマーの場合、モノマー単位の少なくとも60重量%はフルオロモノマーであり、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%がフルオロモノマーである。有用なコモノマーには、エチレン、プロピレン、スチレン系、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、非フッ素含有ハロゲン化エチレン、ビニルピリジン、N-ビニル線状及び環状アミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
フルオロポリマーS:本発明のフルオロポリマーSは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)を含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、長鎖過フッ素化ビニルエーテル及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるものを好ましくは少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%含む。好ましくは、この群から選択されるモノマーは、35重量%~70重量%、好ましくは40~70重量%、より好ましくは43~70重量%である。残りの重量パーセントは、好ましくは他のフルオロモノマーで構成される。本発明に従って使用される「フルオロモノマー」という用語は、フリーラジカル重合反応を受けることができるフッ素化及びオレフィン的に不飽和のモノマーを意味する。本発明に従って使用するための適切な例示的なフルオロモノマーには、以下が含まれるが、これらに限定されない:フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1,1-トリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分的又は過フッ素化アルファオレフィン、C3以上の部分的又は過フッ素化環状アルケン、パーフルオロメチルエーテル(PMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖過フッ素化ビニルエーテルを含むフッ素化又は過フッ素化ビニルエーテル、フッ素化又は部分的フッ素化アクリレート及びメタクリレート、並びにそれらの組み合わせ。本発明の実施に使用されるフルオロポリマーSは、上記のフルオロモノマーの重合生成物、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)をヘキサフルオロプロペン(HFP)と重合することによって作製されるコポリマーを含む。
【0071】
テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン及びフッ化ビニリデンモノマー単位を有するものなどのターポリマーを含む、フルオロターポリマーも想定される。
【0072】
ポリマーSは、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)コポリマーである。Sはコポリマー又はポリマーアロイとすることができる。本発明のポリフッ化ビニリデンポリマーSは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)のコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマーを含み、ヘキサフルオロプロペン(HFP)単位は、ポリマー中のすべてのモノマー単位の総重量の35重量%より多く、好ましくは40重量%、より好ましくは43重量%を構成する。HFPモノマー単位は、ポリマーS中のすべてのモノマー単位の総重量の70重量%も構成することができる。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー及び高級ポリマー(一般に本明細書では「コポリマー」と呼ばれる)は、フッ化ビニリデンを、以下からなる群からの1つ又は複数のモノマーと反応させることによって作製することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、部分的又は完全にフッ素化されたアルファオレフィン(3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、ヘキサフルオロプロペン、部分的にフッ素化されたオレフィンヘキサフルオロイソブチレンなど)の1つ又は複数、過フッ素化ビニルエーテル(パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロ-N-プロピルビニルエーテル、及びパーフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテルなど)、フッ素化ジオキソール(パーフルオロ(1,3-ジオキソール)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)など)、アリル、部分的にフッ素化されたアリル、又はフッ素化されたアリルモノマー(2-ヒドロキシエチルアリルエーテル又は3-アリルオキシプロパンジオールなど)、及びエテン又はプロペン。好ましいコポリマー又はターポリマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン(TFE)、及びヘキサフルオロプロペン(HFP)で形成される。
【0073】
ポリマーSの好ましいコポリマーには、約35~約70重量%のHFP、及び対応して約65~約30重量%のVDF、好ましくは40~55重量%及び約60~約45重量%のHFPのレベルを含むもの;及びVDF/HFP/TFEのターポリマーが含まれる。
【0074】
本発明の一実施形態では、ポリマーSの場合、すべてのモノマー単位がフルオロモノマーであることが好ましいが、フルオロモノマーと非フルオロモノマーとのコポリマーも本発明によって想定される。非フルオロモノマーを含むコポリマーの場合、モノマー単位の少なくとも60重量%はフルオロモノマーであり、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%がフルオロモノマーである。有用なコモノマーには、エチレン、プロピレン、スチレン系、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、非フッ素含有ハロゲン化エチレン、ビニルピリジン、N-ビニル線状及び環状アミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
ポリマーSは、10~55kP、好ましくは15~55kP、より好ましくは20~50kP、さらにより好ましくは25~50kP、最も好ましくは30~50kPの溶融粘度を有する。
【0076】
好ましい実施形態では、ポリマーSは、30重量%を超えるHFP及び最大70重量%のHFP、より好ましくは40重量%を超えて70重量%までのHFPを含む。
【0077】
一実施形態では、Sは、粘度が10~55kP、好ましくは15~55kP、より好ましくは20~50kP、さらにより好ましくは25~50kP、最も好ましくは30~50kPである、30~65重量%のVDF(フッ化ビニリデン)及び35~70重量%のHFPのコポリマーである。
【0078】
少なくとも1つのフルオロポリマーS(すなわち、単一のフルオロポリマーS又はフルオロポリマーSの混合物のいずれか)は、好ましくは、結晶化度が低いか、又は全くない。これは、示差走査熱量計(DIFFERENTIAL SCANNING CALORIMETER、DSC)スキャンで検出された最初の吸熱から計算された20J/g未満、好ましくは15J/g未満、さらにより好ましくは10J/g未満の融解熱を特徴とする。DSCスキャンは、DSC装置を使用してASTM D451-97に従って実行される。機器にはドライボックスが装備されており、ドライボックスを通して窒素パージを行う。9~10mgの試験片を使用し、アルミニウム鍋に圧着する。DSCの実行は-50℃で開始され、その後、210℃まで10℃/分の昇温が続く。
【0079】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、HとSの合計重量に基づいて、ポリマーSとポリマーHを、Sの20~80重量%とポリマーHの80~20重量%;好ましくは、Sの25~75重量%とポリマーHの75~25重量%;より好ましくは、Sの60~40重量%とポリマーHの40~60重量%の比率で組み合わせることによって調製される。一実施形態では、ブレンドは、SのラテックスをHのラテックスと所望の比率で組み合わせ又は混合することによって調製される。フルオロポリマーS及びHはまた、一緒に組み合わされた場合、粉末の形態であり得る。
【0080】
一実施形態では、熱可塑性エラストマーフルオロポリマー組成物は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含む。ここで、Hは、HFP、フッ素化もしくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを0~30重量%、好ましくは15~30重量%、より好ましくは20~30重量を含むフルオロポリマーであり、Sは、好ましくは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ素化若しくは過フッ素化ビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又はそれらの組み合わせからなる群から選択されるものを少なくとも35重量%、好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも43重量%含み、Hの量は組成物の20~80重量%であり、Sの量は組成物の20~80重量%である。
【0081】
本発明に従って処理することができる1つのフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物は、フルオロポリマーS及びフルオロポリマーHを含むフルオロポリマーブレンドを含む組成物であり、Hはフッ化ビニリデンと30重量パーセント未満のHFPを含むフルオロポリマーであり;Sは、35重量パーセントを超えるHFPを含むビニリデンフルオロポリマーであり、Hの量は、組成物の20~80重量%であり、Sの量は、組成物の20~80重量%である。
【0082】
少なくとも1つのフルオロポリマーS(すなわち、単一のフルオロポリマーS又はフルオロポリマーSの混合物のいずれか)は、好ましくはエラストマーである。
【0083】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物中に2つ以上のフルオロポリマーSが存在する場合、本明細書に記載の粘度値は、組成物にあるのと同じ相対比率でのフルオロポリマーSの対応する混合物の粘度値である。
【0084】
フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物中に2つ以上のフルオロポリマーHが存在する場合、本明細書に記載の粘度値は、組成物にあるのと同じ相対比率でのフルオロポリマーHの対応する混合物の粘度値である。
【0085】
フルオロポリマーの製造は、当業者によく知られている。フルオロポリマーは、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合、又は溶液支援の懸濁若しくは乳化重合を介して製造することができる。ポリマーH及びポリマーS用のラテックスを製造するための反応は、当業者に知られており、例として、例えば、US4360652、6869997、8080621、8158734、8697822、8765890及び他の多くの特許に開示されており、それら特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、フッ素系界面活性剤は、重合プロセスで使用されない。
【0086】
他の添加剤
本発明で使用されるフッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物はまた、限定されないが、以下を含む典型的な添加剤を含み得る:染料;顔料;着色剤;影響修飾子;抗酸化剤;難燃剤;紫外線安定剤;フローエイド;金属、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電性添加剤;消泡剤;ワックス;溶剤;可塑剤などのレオロジー調整剤;界面活性剤;フィラー(ナノフィラーを含む)、及び帯電防止剤。フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物には、ホワイトニングを提供する他の添加剤を添加することができ、限定されないが、これらには以下が含まれる:酸化亜鉛などの金属酸化物フィラー;リン酸塩又は亜リン酸塩安定剤;及びフェノール安定剤。少なくとも1つのフルオロポリマーH又はS又は他のポリマーを合成するために使用される任意の残留添加剤が存在し得る。
【0087】
可塑剤は、ポリマー科学及び工学百科事典(WILEY及びSONS、1989)のP.568-569及びP.588-593で定義されている。それらは、モノマー又はポリマーであり得る。セバシン酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、N-n-ブチルスルホンアミド、高分子ポリエステル及びそれらの組み合わせは、適切な可塑剤の例である。適切な高分子ポリエステルは、例えば、アジピン酸、アゼライン酸又はセバシン酸及びジオール、ならびにそれらの組み合わせから誘導され得る。それらの分子量は、好ましくは少なくとも1500g/モル、より好ましくは少なくとも1800g/モルである。
【0088】
添加剤が存在する場合、それらは、好ましくは、各添加剤につき、フッ素化熱可塑性エラストマーポリマー組成物中に0.1~10重量%の量で、より好ましくは0.2~5重量%、最も好ましくは0.5~3重量%の量で存在する。
【0089】
架橋剤
TPVにおいて、架橋剤は、TPVのエラストマー部分に使用される。ラジカルメカニズムを使用する場合は、ラジカル発生剤に加えて架橋剤を使用する。使用できる架橋剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジ又は高級ポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ポリオキサゾリン、ジアルデヒド(グリオキサールなど)、二官能性及び三官能性アセトアセテート、マロネート、アセタール、チオール及びアクリレート、脂環式エポキシ分子、オルガノシラン(エポキシシラン、アミノシランなど)、カルバメート、ジアミン、及びトリアミン、無機キレート剤(特定の亜鉛及びジルコニウム塩、チタン酸塩、グリコウリル及び他のアミノプラストなど)、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N-ジアリル-アクリルアミド;以下に定義されるフッ素化ビスオレフィン、N,N’ビスアリルシクロ-オクタ-7-エン-ジスクシンイミド(BOSA);N,N,N’-テトラアリル-マロンアミド;トリビニル-イソシアヌレート;2,4,6-トリビニル-メチルトリシロキサンなど。上記の架橋剤又は架橋剤の混合物を利用することができる。
【0090】
物品
本発明のプロセスを使用して、様々な他の物体又は部品をオーバーモールドすることができる。
【0091】
本発明のプロセスは、物品を作製するために使用することができる。例えば、帯状又は板状の物品である。本発明の物品は、特に、ウェアラブル物品及び家電製品から選択することができる。特に、実施形態では、物品は、人体、より具体的にはヒトの皮膚と接触することを意図している。
【0092】
作製され得る他の物品には、センサーの支持体、電子デバイスの支持体、ケーシング、ベルト、手袋、パッド、ストリップ及びバンドが含まれる。
【0093】
ダイヤフラム、Oリング、及びシールなどの機器用の可撓性部品は、本発明のプロセスを使用して作製することができる。
【0094】
オーバーモールドに使用される部品。
【実施例】
【0095】
表1は、異なる条件で射出された、83℃のTm、20℃のTc、及びTmに対して7J/gのΔHを有するフッ素化TPEブレンド、及び結果として生じる部品の収縮を示している。すべてのサンプルは、ASTMタイプI引張棒型を使用した射出速度5cm3/sの射出成形機で作製された。
【0096】
【0097】
データは、本発明に従うことにより、熱可塑性エラストマー組成物を成形することができ、金型からの収縮が4.3%未満、さらには3%未満、又はさらに2%未満であることを示している。65℃、相対湿度90%で72時間アニーリングした後の部品の収縮は、5%未満のままである。
例1、3、及び12は、バレル温度が型外収縮を増加させ、アニーリング収縮が減少することを示している。
例6から9を見ると、保持時間が長くなるほど収縮が少なくなる傾向が見られる。
【国際調査報告】