(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】DNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20221205BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20221205BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221205BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221205BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221205BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221205BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221205BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C12N15/55
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520324
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020077531
(87)【国際公開番号】W WO2021064106
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518338943
【氏名又は名称】ウニベルシテテット イ トロムソ-ノルゲス アークティスク ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン、アトレ ノラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピョートロフスキー、イヴォンネ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050FF14E
4B050KK11
4B050LL05
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、DNAポリメラーゼおよび3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素に関する。特に、本発明は、海洋起源のDNAポリメラーゼII活性および3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する熱に不安定な酵素に関する。さらに、本発明は、主に3’-5’活性を発揮する、すなわちポリメラーゼ活性が存在しないDNAポリメラーゼに関する。本発明はさらに、例えば、組換えクローニングプロセスにおいて、または汚染核酸分子の除去のためのプロセスにおいて、二本鎖DNAの3’-5’鎖を分解して一本鎖オーバーハングを行うためのエキソヌクレアーゼ活性の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAエキソヌクレアーゼは、実質的にポリメラーゼ活性を備えておらず、前記酵素は、約30℃を超える温度など、25℃を超える温度で不可逆的に不活性化される、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項2】
単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項3】
単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号2の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも70%の配列が同一であるアミノ酸配列、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも80%の配列が同一であるアミノ酸配列など、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも90%の配列が同一であるアミノ酸配列など、を含む、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記アミノ酸配列が、アミノ酸位置V440~Y447および位置G519~A523に対応するアミノ酸領域の少なくとも1つにおいて少なくとも1つの突然変異を含み、番号付けは配列番号2のアミノ酸番号付けに従うものである、単離されたDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、442位、445位および568位のアミノ酸は、以下からなる群より選択され:
【表1】
ただし、442位のアミノ酸(D442)、445位のアミノ酸(S445)および568位のアミノ酸(D568)は、それぞれ同時に、Asp、SerおよびAspではない、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項7】
単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、以下のアミノ酸配列:
-442位のアミノ酸はAlaである;
-568位のアミノ酸はAlaである;
-442位のアミノ酸はGluである;
-568位のアミノ酸はGluである;
-442位および568位のアミノ酸はAlaである;および
-445位のアミノ酸はArgである、
を含むDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼの群から選択され、かつ前記アミノ酸の番号付けは配列番号1に従うものである、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、配列番号3、4、5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3、4、5、6、7および8をそれぞれ有する配列の全長にわたって少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ただし、
-配列番号3の442位のアミノ酸はAlaである;
-配列番号4の568位のアミノ酸はAlaである;
-配列番号5の442位のアミノ酸はGluである;
-配列番号6の568位のアミノ酸はGluである;
-配列番号7の442位および568位のアミノ酸はAlaである;および
-配列番号8の445位のアミノ酸はArgである、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼはDNAポリメラーゼII由来3’-5’エキソヌクレアーゼである、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと、緩衝液と、を含む組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子。
【請求項12】
前記核酸分子が、配列番号9、または配列番号9を有する配列の全長にわたって少なくとも80%の配列が同一である配列を含む、請求項8に記載の核酸分子。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子と、前記核酸分子によってコードされるタンパク質配列の転写および翻訳に必要な調節配列とを含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の1つ以上の発現ベクター、または請求項12~11のいずれか一項に記載の一つ以上の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの調製のための方法であって、前記方法は以下のステップ:
a)コードされたDNAポリメラーゼの発現に適した条件下での、請求項13に記載の1つ以上の発現ベクター、または請求項11~12のいずれか一項に記載の一つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を培養すること;
b)前記宿主細胞、前記培地または上清からDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼを単離または取得すること、
を含む方法。
【請求項16】
組換えクローニングプロセスにおける請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの使用であって、前記エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントは、二本鎖DNA分子の一本鎖DNAオーバーハングを提供する、前記使用。
【請求項17】
試料から汚染ポリヌクレオチドを除去するための方法であって、前記方法は、前記試料を、請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと接触させることを含む、方法。
【請求項18】
1つ以上の標的二本鎖核酸分子のセグメントを欠失させるための方法であって、前記方法は、1つ以上の二本鎖核酸分子と、請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントとを接触させることを含み、前記エキソヌクレアーゼは、前記二本鎖核酸分子の3’-5’方向のヌクレオチドを切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する、方法。
【請求項19】
2つ以上の二本鎖(ds)DNA分子のアセンブリのための方法であって、前記方法は以下のステップ:
(a)アセンブリされる2つ以上のdsDNA分子を提供するステップであって、dsDNA分子の末端が配列同一の領域を共有する、前記提供するステップ;
(b)提供された2つ以上のDNA分子を、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱に不安定なDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼ酵素と接触させることにより、提供されたdsDNA分子の両端に一本鎖オーバーハングが生成されるステップ;
(c)ステップ(b)で生成された前記オーバーハングの部分を介して前記DNA分子がアニールする条件下で、(a)のDNA分子をインキュベートするステップ;
(d)任意選択で、ステップ(c)で提供されたアニールされた分子をDNAポリメラーゼと接触させ、DNAポリメラーゼがギャップを埋めることを可能にするステップであって、同DNAポリメラーゼは、低下した、損傷された、または不活性化された鎖置換活性を有する、前記ステップ、
を含む方法。
【請求項20】
少なくとも1つの標的二本鎖核酸分子をアクセプター核酸分子に挿入して、組換え二本鎖核酸分子を提供するためのプロセスであって、前記プロセスは以下のステップ:
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと標的二本鎖核酸分子とを接触させるステップであって、前記エキソヌクレアーゼは、前記標的鎖核酸分子の平滑末端の3’-5’方向のヌクレオチドを切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する、接触させるステップ;
(b)請求項1~9のいずれか一項に記載のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと二本鎖アクセプター核酸分子とを接触させるステップであって、前記エキソヌクレアーゼは、前記アクセプター核酸分子の平滑末端の3’-5’方向のヌクレオチドを切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する、接触させるステップ;
(c)ステップ(a)および(b)の生成物、DNAポリメラーゼ、(a)および(b)の1つまたは複数の核酸分子の一部にアニーリングすることができるオリゴヌクレオチドプライマー、ならびにヌクレオチドを含む反応混合物を提供するステップ;
(d)オリゴヌクレオチドプライマーがステップ(a)および(b)の核酸分子にアニーリングし、DNAポリメラーゼが1つ以上のヌクレオチドを重合することによって前記オリゴヌクレオチドプライマーを伸長させることにより組換え二本鎖分子を生成する条件下で、前記反応混合物をインキュベートするステップ、
を含むプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAポリメラーゼおよび3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素に関する。特に、本発明は、海洋起源のDNAポリメラーゼII活性および3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する熱に不安定な酵素に関する。さらに、本発明は、主に3’-5’活性を発揮する、すなわちポリメラーゼ活性が存在しないDNAポリメラーゼに関する。本発明はさらに、例えば、組換えクローニングプロセスにおいて、または汚染核酸分子の除去のためのプロセスにおいて、二本鎖DNAの3’-5’鎖を分解して一本鎖オーバーハングを行うためのエキソヌクレアーゼ活性の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成生物学は急速に発展している分野であり、将来のバイオ経済とバイオエネルギーにおける課題に対する可能な解決策として注目されている。合成生物学の究極のビジョンは、有用な作業を予測可能に実行できる細胞の新しい生物学的オペレーティングシステムを作り出すことである。合成生物学のパイプラインにおける重要なステップの1つは、DNAフラグメントを、多くの場合、複数のアセンブリを含む、より大きな機能的構築物にアセンブリすることである。
【0003】
しかしながら、現在のボトルネックは、時間のかかる手動処理ステップを行わないで複数のDNAアセンブリを行うための確固たる室温メソッドがないことである。したがって、現在のハードルを回避できる新しいDNAアセンブリ法が強く望まれている。
【0004】
ゲノムDNAの複製は、モノデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)からのポリデオキシリボヌクレオチドの合成を触媒するDNAポリメラーゼの主要な機能である。
インビトロでは、DNAポリメラーゼの特性はDNA合成において使用され、例えば、様々なDNA増幅プロセスおよびテンプレートに一致する2つの新しいDNA鎖を作製する目的のDNA鎖テンプレートを読み取るDNA分子の合成において使用される。
【0005】
さまざまな種類のポリメラーゼが発見されている。例えば、大腸菌(E.coli)や他の原核細胞では、既知のDNAポリメラーゼは一般にDNAポリメラーゼI~Vと呼ばれている。複製の忠実度、熱安定性、伸長速度、そして校正活性と効率はさまざまである。DNAポリメラーゼの中には比較的単純なものもあれば、20個の異なるペプチドサブユニットからなる大腸菌ポリメラーゼIIIのように複雑なものもある。
【0006】
広く使用されているDNAポリメラーゼの多くは、少なくとも70℃までのような高温で安定であるため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または熱サイクルDNA配列決定のようなDNA検出および分析方法での使用が可能である。このようなプロセスに適用可能なDNAポリメラーゼは、一般に熱安定性DNAポリメラーゼと呼ばれる。
【0007】
DNAポリメラーゼはモノヌクレオチドからデノボ(de novo)合成を開始できないので、インビトロのDNA複製過程で使用される場合、dNTPに加えて、鎖成長の開始点として使用できる3’末端ヒドロキシル基を有するプライマー(最初のオリゴヌクレオチド)が必要である。プライマーは、テンプレートの相補的領域にアニーリングすることによってDNAポリメラーゼへ二本鎖構造を提供する、遊離の3’-OH基を有する短いまたは長いピースのDNAまたはRNAであり得る。選択されたDNAポリメラーゼはテンプレートに沿って作用し、プライマーを5’→3’方向に伸長させる。
【0008】
DNA鎖の極性のために、DNA分子の2本の鎖の複製は双方向性であり、テンプレートの複製の方向に応じて「リーディング」鎖と「ラギング」鎖という2つの異なる産物を生じる。リーディング鎖は単一の連続鎖として合成されるのに対し、ラギング鎖は最初に岡崎フラグメントと呼ばれる小さなオリゴヌクレオチドとして合成され、それがライゲーションされて連続鎖を形成する。インビボでは、低分子RNAはリーディング鎖および、特にラギング鎖の両方の合成において天然のプライマーとして作用する。
【0009】
DNAポリメラーゼIIIはリーディング鎖を連続的に合成し、またラギング鎖における岡崎フラグメントを合成し、その合成されたフラグメント間にギャップを残し、その後そのギャップがDNAポリメラーゼIによって埋められることはよく知られている。
【0010】
DNA合成活性に加えて、DNAポリメラーゼは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性または鎖置換活性のような他の酵素活性も発揮し得る。インビボにおいて、いくつかのDNAポリメラーゼの3’-5’エキソヌクレアーゼ活性は遺伝的安定性にとって重要であり、DNAポリメラーゼのエラーを修正する。例えば、得られたDNA分子内のミスマッチした塩基対の結果は、その後、DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ機能によって修正される。DNAポリメラーゼIIは、効率的な3’-5エキソヌクレアーゼ活性を有することが知られており、例えば、DNAポリメラーゼIIIによって生成されるミスマッチエラーを修正し、また、例えば、UV照射によるようなDNAの合成後損傷の修復にも関与すると考えられている。
【0011】
ミスマッチした塩基対を置換して修復するためには、DNAポリメラーゼの校正活性が、誤って導入されたdNTPを除去できなければならず、したがってヌクレアーゼ活性はDNA分子のリン酸骨格のホスホジエステル結合の切断を伴う。ミスマッチdNTPを除去してDNAを分解する能力は、インビトロ分子生物学において様々な方法で利用される。
【0012】
海洋起源の種々の酵素が知られている。例えば、特許文献1は、サイクロバチルス種(Psychrobacillus sp.)から単離された海洋起源の熱安定性DNAポリメラーゼを開示しており、同熱安定性DNAポリメラーゼは室温以上の温度を含む広範囲の温度で活性である。
【0013】
特許文献2は、一本鎖DNAを分解することができ、65℃未満の温度に曝露された場合、15~20分以内に不活性化され得る、冷水環境由来の熱不安定性エキソヌクレアーゼを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2017/162765号
【特許文献2】国際公開第2016/026574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、dNTPの非存在下で非常に強い3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有することが見出されたモリテラ・ビスコーサ(Moritella viscosa)由来の熱に不安定なDNAポリメラーゼIIを同定した。本発明の酵素は、以下の実験の部でさらに開示されるように、冬の潰瘍病に罹患した養殖タイセイヨウサケ由来のM.viscosa(M.ビスコーサ)株において同定された。
【0016】
特に、本発明のエキソヌクレアーゼは、二本鎖DNA分子に結合し、その末端を3’-5’方向に分解することができ、その結果、本発明のDNAポリメラーゼ由来(derived)3’-5エキソヌクレアーゼに供されるDNA分子の両端に5’オーバーハング(overhang)が生ずることが見出された。
【0017】
さらに、本発明の同定された酵素はまた、室温で非常に低いポリメラーゼ活性を有することが見出された。
同定されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼのさらなる利点は、最適な活性のための温度が室温付近にあることである。さらに、本発明の酵素は、25℃を超える温度、例えば約30℃を超える温度で容易に不活性化され、その結果、約25℃で使用した場合、エキソヌクレアーゼ活性はしばらくすると停止することが示されている。従って、例えば、5’オーバーハングを調製するために使用した場合、適切な長さのオーバーハングが、例えば約5~30分以内に形成され得る。
【0018】
3’-5エキソヌクレアーゼ活性、弱いポリメラーゼ活性および熱不安定性の組み合わせにより、同酵素は、以下にさらに示すように、分子クローニング、ポリヌクレオチド除去およびDNAアセンブリプロセスにおいて有用である。
【0019】
しかし、本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼの利点は、エキソヌクレアーゼ活性がdNTPの存在下でも活性である点にある。従って、本発明の酵素は、例えば、dNTPを除去することを目的とする事前の精製プロセスを行うことなく、5’オーバーハングを調製するために使用することができる。
【0020】
エキソヌクレアーゼ活性のみを利用できるようにするために、本願の発明者らはまた、ポリメラーゼ活性が十分に損なわれているかまたは欠如している本発明のDNAポリメラーゼの改変されたバリアントを合成した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の態様によれば、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供され、ここで、前記DNAエキソヌクレアーゼは、実質的にポリメラーゼ活性を有さず、前記酵素は、約30℃を超える温度など、25℃を超える温度で不可逆的に不活性化される。
【0022】
第2の態様によれば、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼが、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される。
【0023】
第3の態様によれば、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記DNAポリメラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号2の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される。
【0024】
第2および第3の態様に従う単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントは、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも70%が同一であるアミノ酸配列、例えば、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも80%が同一であるアミノ酸配列、例えば、配列番号1または配列番号2を有する配列の全長にわたって少なくとも90%が同一であるアミノ酸配列を含むことができる。
【0025】
第4の態様によれば、単離されたDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントであって、前記ポリメラーゼが、アミノ酸位置V440~Y447および位置G519~A523に対応するアミノ酸領域の少なくとも1つにおける少なくとも1つの突然変異を含むアミノ酸配列を含む、単離されたDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される。
【0026】
上記態様の一実施形態によれば、前記DNAポリメラーゼは、D442、S445および/またはD568に対応するアミノ酸位置において少なくとも1つの突然変異を含み、ここで、少なくとも1つの突然変異は、以下への置換である:
-D442に対応する位置に疎水性側鎖を有するアミノ酸;
-S445に対応する位置に疎水性の側鎖を有するアミノ酸;および/または
-D568に対応する位置に疎水性側鎖を有するアミノ酸。
【0027】
例えば、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の一実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、アミノ酸における少なくとも1つの突然変異は、配列番号1および配列番号2に記載されるアミノ酸配列のD442および/またはD568に対応して位置する(positions)。
【0028】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、アミノ酸における少なくとも1つの突然変異は、配列番号1および配列番号2に記載されるアミノ酸配列のD442および/またはD568に対応して位置し、かつ同少なくとも1つの突然変異は、D442、S445および/またはD568に対応する位置に疎水性側鎖を有するアミノ酸への置換である。
【0029】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、配列番号1または配列番号2の番号付けに従う位置442のアミノ酸は、Glu、Asp、Ala、Gly、Val、Leu、およびIleからなる群より選択される。
【0030】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、配列番号1または配列番号2の番号付けに従う位置658のアミノ酸は、Glu、Asp、Ala、Gly、Val、Leu、およびIleからなる群より選択される。
【0031】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、配列番号1または配列番号2の番号付けに従う位置445のアミノ酸は、Ser、Arg、LysおよびHisからなる群より選択される。
【0032】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、位置442、445および568のアミノ酸は、以下からなる群より選択される:
【0033】
【0034】
ただし、442位のアミノ酸(D442)、445位のアミノ酸(S445)および568位のアミノ酸(D568)は、それぞれ同時に、Asp、SerおよびAspではない。
【0035】
さらに、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、上記態様の別の実施形態に従って、アミノ酸配列を含み得、ここで、位置442および568のアミノ酸は、以下からなる群より選択される:
【0036】
【0037】
ただし、442位のアミノ酸(D442)、445位のアミノ酸(S445)および568位のアミノ酸(D568)は、それぞれ同時に、Asp、SerおよびAspではない。
【0038】
上記態様のいずれかによる一実施形態において、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントは、以下のアミノ酸配列を含むDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼの群から選択されるDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼである:
-442位のアミノ酸はAlaである;
-568位のアミノ酸はAlaである;
-442位のアミノ酸はGluである;
-568位のアミノ酸はGluである;
-442位および568位のアミノ酸はAlaである;および
-445位のアミノ酸はArgである(ここで、番号付けは配列番号1のアミノ酸配列に従う)。
【0039】
上記実施形態によるDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、実質的にポリメラーゼ活性を有さないDNAポリメラーゼII由来3’-5’エキソヌクレアーゼであり、ここで同酵素は、約30℃を超える温度など、25℃を超える温度で不可逆的に不活性化される。
【0040】
第6の態様によれば、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供され、同DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、それぞれ、配列番号3、4、5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3、4、5、6、7および8を有する配列の全長と、少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも97%、例えば少なくとも98%または99%配列が同一である配列を含み、以下の条件を満たす、前記DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される:
-配列番号3の442位のアミノ酸はAlaである;
-配列番号4の568位のアミノ酸はAlaである;
-配列番号5の442位のアミノ酸はGluである;
-配列番号6の568位のアミノ酸はGluである;
-配列番号7の442位および568位のアミノ酸はAlaである;および
-配列番号8の445位のアミノ酸はArgである、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント。
【0041】
上記態様のいずれかの別の実施形態によれば、単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼは、DNAポリメラーゼII由来3’-5’エキソヌクレアーゼである。
【0042】
別の実施形態によれば、本発明に従う単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供され、ここで、同酵素は、25℃を超える温度、例えば30℃を超える温度で不可逆的に不活性化される。
【0043】
第7の態様によれば、上記請求項のいずれかに従う単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメント、および緩衝液を含む組成物が提供される。
【0044】
第8の態様によれば、本発明に従う単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子が提供される。
【0045】
第8の態様の一実施形態によれば、核酸分子であって、前記分子が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7からなる群より選択される核酸配列であるか、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7をそれぞれ有する配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、核酸分子が提供される。
【0046】
第8の態様の別の実施形態によれば、核酸分子が、配列番号9、または配列番号9を有する配列の全長にわたって少なくとも80%の配列が同一である配列を含む、核酸分子が提供される。
【0047】
第9の態様によれば、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離されたDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子と、前記核酸分子によってコードされるタンパク質配列の転写および翻訳に必要な調節配列とを含む発現ベクターが提供される。
【0048】
前記発現ベクターは、一実施形態に従って、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7からなる群から選択される核酸配列を含むことができるか、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7のそれぞれの配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む。
【0049】
第10の態様によれば、本発明に従う1つ以上の発現ベクターまたは本発明に従う1つ以上の核酸分子を含む宿主細胞が提供される。
第11の態様によれば、本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの調製のための方法であって、以下の工程を含む方法が提供される:
a)コードされたDNAポリメラーゼの発現に適した条件下での、請求項19~20のいずれか一項に記載の組換え発現ベクターの一つ以上、または請求項16~18のいずれか一項に記載の一つ以上の核酸分子を含む宿主細胞を培養すること;
b)前記宿主細胞、前記培地または上清からDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼを単離または取得すること。
【0050】
第12の態様によれば、本発明はさらに、組換えクローニングプロセスにおける本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントの使用に関し、ここで、前記エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントは、二本鎖DNA分子の一本鎖DNAオーバーハング(overhang)を提供する。
【0051】
第13の態様によれば、試料から汚染ポリヌクレオチドを除去するための方法が提供され、この方法は、試料を、本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと接触させることを含む。
【0052】
第14の態様によれば、1つ以上の標的二本鎖核酸分子のセグメントを欠失させるための方法が提供され、同方法は、1つ以上の二本鎖核酸分子と、本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントとを接触させることを含み、ここで、前記エキソヌクレアーゼは、二本鎖核酸分子の3’-5’方向のヌクレオチドを切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する。
【0053】
第15の態様によれば、2つ以上の二本鎖(ds)DNA分子のアセンブリのための方法が提供され、同方法は以下のステップを含む:
(a)アセンブリされるべき2つ以上のdsDNA分子を提供するステップであって、dsDNA分子の末端が配列同一の領域を共有する、前記提供するステップ;
(b)提供された2つ以上のDNA分子を、本発明に従う熱に不安定なDNAポリメラーゼ由来3’-5’またはその酵素的に活性なフラグメントと接触させることにより、提供されたdsDNA分子の両端に一本鎖オーバーハングが生成されるステップ;
(c)ステップ(b)で生成されたオーバーハング部分を介して前記DNA分子がアニールする条件下で、(a)のDNA分子をインキュベートするステップ;
(d)任意選択で、ステップ(c)で提供されたアニールされた分子をDNAポリメラーゼと接触させ、DNAポリメラーゼがギャップを埋めることを可能にするステップであって、同DNAポリメラーゼは、低下した、損傷された、または不活性化された鎖置換活性を有する、前記ステップ。
【0054】
第15の態様の一実施形態によれば、ステップ(a)~(d)は一定温度で行われる。
第15の態様の別の実施形態によれば、ステップ(a)~(d)は18℃~25℃の範囲の温度で行われる。
【0055】
第15の態様の別の実施形態によれば、ステップ(c)または(d)のアセンブリされたDNA分子は、増殖のために適切な宿主細胞にさらに移される。
第15の態様のさらに別の実施形態によれば、ステップ(b)は18℃~25℃の範囲の温度で約5~15分間行われる。
【0056】
上記した第14および第15の態様の実施形態によれば、dsDNA分子またはds核酸分子を消化することにより、生成されたオーバーハングの長さは、10から40ヌクレオチドである。
【0057】
第16の態様によれば、少なくとも1つの標的二本鎖核酸分子をアクセプター核酸分子に挿入して、組換え二本鎖核酸分子を提供するための、以下のステップを含むプロセスが提供される:
(a)本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと標的二本鎖核酸分子とを接触させるステップであって、前記エキソヌクレアーゼは、標的鎖核酸分子の末端の3’-5’方向のヌクレオチドを切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する、接触させるステップ;
(b)本発明によるDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントと二本鎖アクセプター核酸分子とを接触させるステップであって、前記エキソヌクレアーゼは、ヌクレオチドを前記アクセプター核酸分子の末端の3’-5’方向で切断して、相補的な一本鎖5’オーバーハングを生成する、接触させるステップ;
(c)ステップ(a)および(b)の産物、DNAポリメラーゼ、(a)および(b)の1つまたは複数の核酸分子の一部にアニーリングすることができるオリゴヌクレオチドプライマー、ならびにヌクレオチドを含む反応混合物を提供するステップ;
(d)オリゴヌクレオチドプライマーがステップ(a)および(b)の核酸分子にアニーリングし、DNAポリメラーゼが1つ以上のヌクレオチドを重合することによって前記オリゴヌクレオチドプライマーを伸長させることにより組換え二本鎖分子を生成する条件下で、前記反応混合物をインキュベートするステップ。
【0058】
第16の態様の一実施形態によれば、二本鎖アクセプター核酸分子はベクターである。第16の態様のさらに別の実施形態によれば、ステップ(a)および(b)は、18℃~25℃の範囲内の温度で実施される。第16の態様のさらに別の実施形態によれば、ステップ(d)のDNAポリメラーゼは、熱に不安定なDNAポリメラーゼである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】M.ビスコーサ由来のDNAポリメラーゼIIに対する相同タンパク質である、E.Coli由来のDNAポリメラーゼIIのモデル(PDBコード:1Q8I)を表し、アミノ酸D442、S445およびD568、ならびにC末端およびN末端の位置を示す。
【
図2-1】本発明の酵素のDNAおよびアミノ酸配列を示す。
【
図2-2】本発明の酵素のDNAおよびアミノ酸配列を示す。
【
図3】本発明の酵素(MV Pol II)のポリメラーゼ活性を、大腸菌(E.coli)由来のクレノウフラグメント酵素(KF)および好熱性バチルスステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus:Bst)ポリメラーゼのポリメラーゼ活性と比較して示す。
【
図4】本発明のDNAポリメラーゼ由来3'-5'エキソヌクレアーゼのエキソヌクレアーゼ活性を示す。
【
図5】様々な温度での本発明の単離された酵素(MV pol II)のエキソヌクレアーゼ活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明者らは、言及したように、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性および非常に弱いポリメラーゼ活性を有する海洋起源の新規な熱不安定性(heat labile)DNAポリメラーゼを同定し、特に、前記酵素を分子クローニングプロセスに適用可能にする。
【0061】
本出願を通して、「本発明の酵素」または「DNAポリメラーゼ由来3'-5'エキソヌクレアーゼ(DNA polymerase derived 3’-5’ exonuclease)」に言及する場合、添付の特許請求の範囲に開示されており、以下の明細書に記載されているように本発明の酵素に言及することが理解されるべきである。例えば、配列番号2を含む酵素またはその酵素的に活性なフラグメント、または配列番号2と比較して配列全体にわたって約60%の配列同一性を有する配列。前記用語はまた、配列番号2のアミノ酸配列を有する単離された酵素と比較して、例えば部位特異的変異誘発により修飾されている酵素を含み、修飾された酵素は酵素3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を保持するが、M.ビスコーサにて同定された開示された野生型DNAポリメラーゼと比較して、DNAポリメラーゼ活性が損なわれるか、低下するか、または欠如している。
【0062】
以下でさらに示されるように、エキソヌクレアーゼ活性は、標的DNA分子の増幅または発現のためにベクターに容易に挿入され得る5’-3オーバーハングを標的DNA分子に提供するために使用され得る。それはまた、ポリヌクレオチド除去プロセスにおいて、過剰なポリヌクレオチドまたは残留ポリヌクレオチドが望ましくないタンパク質または他の材料の精製を含む方法において、使用されてもよい。
【0063】
酵素は熱に不安定であり、したがって、約30℃を超える温度など、25℃を超える温度で容易に不活化されるため、同酵素は、室温にて、そして労力または余分な不活化ステップを必要とせずに使用することができる。
【0064】
本発明の酵素は、室温で実施される様々なプロセスで使用することができる。「室温」という用語は、当技術分野で認識されている用語であり、18℃~25℃の範囲内の温度を含む。
【0065】
酵素は、汚染されたDNAを除去するか、または5'オーバーハングを形成するのに必要な時間の間、活性であることが見出される。すなわち、標的dsDNAを本発明の酵素と接触させると、約10~40ヌクレオチドの長さのオーバーハングが、室温でもその熱不安定性のために、同酵素が標的DNA分子上で消化を停止する前に調製されるであろう。例えば、室温では、酵素は約5~30分以内に約10~40ヌクレオチドの長さを有するdsDNA分子の5’オーバーハングを形成することが見出されている。精製プロセスにおいて汚染核酸を除去するために使用される場合、必要な時間はまた、精製される試料のタイプおよび汚染核酸の量に依存して変化し得る。
【0066】
本明細書において特に定義されない限り、使用されるすべての技術的および科学的用語は、遺伝学、生化学、および分子生物学の分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0067】
本明細書に記載されるものと類似または同等のすべての方法および材料を、本明細書に記載される適切な方法および材料とともに、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により援用される。矛盾がある場合には、定義を含む本明細書が優先する。
【0068】
数値の制限または範囲が示されている場合は、エンドポイントが含まれる。また、数値の制限または範囲内のすべての値と下位の範囲(sub ranges)は、明示的に書き込まれているかのように明示的に含まれる。
【0069】
第1の態様によれば、約30℃を超える温度で不可逆的に不活性化されるDNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される。
DNAポリメラーゼの「酵素的に活性なフラグメント(enzymatically active fragment)」という表現は、ポリメラーゼの活性が維持されている、すなわち、配列番号1~8に示されるアミノ酸配列を有するが、配列番号1~8に示される配列と比較して1つ以上のアミノ酸が除去されているDNAポリメラーゼと比較して、同じ、または少なくとも同様の活性を有するDNAポリメラーゼを意味すると理解されるべきである。当業者は、例えばアミノ酸配列のC末端又はN末端にある1つ以上のアミノ酸が、そのタンパク質の活性に影響を与えることなく除去され得ることを認識するであろう。
【0070】
別の態様によれば、DNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼが提供され、ここで、前記酵素は、実質的にポリメラーゼ活性を有しておらず、さらに、約30℃を超える温度など、25℃を超える温度で不可逆的に不活性化される。
【0071】
第2の態様によれば、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むか、または配列番号1の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントが提供される。
【0072】
本発明は、前述のように、3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、またはその酵素的に活性なフラグメントを提供し、ここで、前記酵素は、実質的にポリメラーゼ活性を有さない。ポリメラーゼ活性が低下した野生型酵素のバリアントが、部位特異的突然変異誘発を用いて得られている。
【0073】
Blasco他、The Journal of Biological Chemistry,vol 268,No.32,pp 24106-24113では、部位特異的突然変異誘発法を用いて、小さな(66kDa)単一サブユニットDNAポリメラーゼの活性に対する影響を研究し、モチーフDx2SLYPがポリメラーゼ活性の活性部位の一部を形成することを示唆した。
【0074】
「ポリメラーゼ活性を実質的に有さない」という表現は、配列番号2に従うアミノ酸配列を有する前記野生型DNAポリメラーゼと比較して、本発明の酵素のポリメラーゼ活性の活性部位が損なわれているかまたは欠如していることを意味すると理解されるべきである。例えば、当業者は、配列番号3~7のアミノ酸配列を有するDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼのポリメラーゼ活性と同様に低下したポリメラーゼ活性を有するDNAポリメラーゼが、ポリメラーゼ活性が損なわれている、すなわち実質的にポリメラーゼ活性がないことを認識するであろう。当業者はさらに、ポリメラーゼ活性が、Summerer,Methods Mol.Biol.,2008,429,225-235に開示されているようなリアルタイムモレキュラービーコンアッセイを用いて、または以下の実施例4に示すような修飾された形態で測定できることを認識するであろう。
【0075】
さらに別の態様によれば、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む酵素またはその酵素的に活性なフラグメントを提供する。
【0076】
さらに別の態様によれば、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む酵素またはその酵素的に活性なフラグメントを提供する。
【0077】
上述したように、配列番号1または配列番号2に従うアミノ酸を含み、野生型配列(配列番号2)と比較して、アミノ酸位置G447~L453およびG519~A523に対応する領域に少なくとも1つの変異を含むDNAポリメラーゼが提供される。
【0078】
当業者は、アミノ酸が側鎖の化学的特性に依存してグループ化されることを認識するであろう。アミノ酸は、一般に、疎水性または親水性および/または極性または非極性側鎖を有するものとして分類される。同じ生化学的特性を有する他のアミノ酸に対する1つのアミノ酸の置換は、一般に保存置換として知られている。当業者は、保存的置換が、タンパク質のアミノ酸配列、例えば、本発明に従う酵素に、同酵素の活性を変化させることなく導入され得ることを認識するであろう。したがって、このような修飾は生物学的に同等な製品を構成すると考えられる。
【0079】
アミノ酸の保存的置換には、以下のグループ内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる:
・Val、Ile、Leu、Met(疎水性側鎖を有するアミノ酸)
・Phe、Tyr、Trp(疎水性側鎖を有するアミノ酸)
・Arg、His、Lys(側鎖に正電荷を有するアミノ酸)
・Ala、Gly(側鎖の小さいアミノ酸)
・Ser、Thr(非荷電側鎖を有するアミノ酸)
・Asn、Gln(非荷電側鎖を有するアミノ酸)
・Asp、Glu(負に荷電した側鎖を有するアミノ酸)。
【0080】
一般に、保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷またはサイズ特性を変化させず、したがってタンパク質の三次元構造をほとんど変化させないアミノ酸置換を指し、これが生物活性が有意に変化しない理由である。
【0081】
したがって、当業者は、配列番号1または配列番号2に従うアミノ酸配列を有する酵素であって、位置442のアミノ酸がAsp、Glu、Ala、Gly、Val、Leu、Ileからなる群より選択され、および/または位置445のアミノ酸がSer、Thr、Arg、His、Lysからなる群より選択され、および/または位置568のアミノ酸がAsp、Glu、Ala、Gly、Val、Leu、Ileからなる群より選択され、ただし、位置442(D442)、445(S445)、および568(D568)のアミノ酸がそれぞれAsp、Ser、およびAspではない酵素は、配列番号3~8に従う酵素と同一またはほぼ同一のポリメラーゼ活性および3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するであろうことを認識するであろう。
【0082】
また、当業者は、1つまたは複数のアミノ酸が、本発明の酵素の活性を変更することなく、削除、挿入、または追加され得ることを理解するであろう。
したがって、本発明は、添付の請求項に開示されるように、DNAポリメラーゼ由来エキソヌクレアーゼを包含し、ここで、上記のような修飾(アミノ酸の置換、欠失、挿入および付加)は、酵素の活性を本質的に変化させることなく、すなわち、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性を本質的に変化させることなく、導入され得ることが理解されるべきである。
【0083】
さらに別の態様によれば、本発明は、配列番号3、4、5、6、7および8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号3、4、5、6、7および8をそれぞれ有する配列の全長にわたって少なくとも60%の配列が同一であるアミノ酸配列を含む、DNAポリメラーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを提供する。
【0084】
別の態様によれば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、7および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも75%、例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも97%95%、例えば、少なくとも98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む酵素が提供される。
【0085】
さらに、本発明は、本発明に従う酵素又はその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子、ならびにそれらと実質的に相同な核酸分子を提供する。
一態様によれば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6および配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするか、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、7および配列番号8をそれぞれ有する配列の全長にわたって少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子が提供される。
【0086】
さらに別の態様によれば、配列番号9に示される配列を含む核酸分子、または配列番号9を有する配列の全長にわたって少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列が同一である核酸分子が提供される。
【0087】
したがって、当業者は、配列番号1または配列番号2に従うアミノ酸配列を有するDNAポリメラーゼであって、位置442のアミノ酸がGlu、Asp、Ala、Gly、Val、Leu、およびIleからなる群より選択され、および/または位置445のアミノ酸がSer、Arg、Lys、およびHisからなる群より選択され、および/または位置568のアミノ酸がGlu、Asp、Ala、Gly、Val、Leu、およびIleからなる群より選択されるDNAポリメラーゼは、配列番号3~8に従うDNAポリメラーゼと同じまたはほぼ同じ3’-5エキソヌクレアーゼ活性および低下したまたは不活性化されたポリメラーゼ活性を有し得ることを認識するであろう。
【0088】
また、当業者は、1つまたは複数のアミノ酸が、本発明の酵素の活性を変更することなく、削除、挿入、または追加され得ることを理解するであろう。
したがって、本発明は、添付の請求項に開示されるように、DNAポリメラーゼを包含し、ここで、上記のような修飾(アミノ酸の置換、欠失、挿入および付加)は、酵素の活性を本質的に変化させることなく、すなわち、3’-5エキソヌクレアーゼ活性について本発明に従って本質的に変化させることなく、導入され得ることが理解されるべきである。
【0089】
本明細書中で用いるように、タンパク質および核酸分子またはそれらのフラグメントの両方に関して、「配列が同一(sequence indetity)」を参照する場合、第2の配列に対して少なくともx%の同一性を有する配列は、第2のアミノ酸配列の全長に対して、両方の配列がグローバルアライメントを介して最適に配列されている場合に、x%が、第2の配列のそれらの対応するアミノ酸と同一である第1の配列中のアミノ酸の数を表すことを意味する。xが最大の場合、両方の配列が最適にアライメントされている。アラインメントおよび同一性のパーセンテージの決定は、手動または自動で行うことができる。本明細書において配列同一性を言及するときはいつでも、比較は、配列番号1~配列番号9にそれぞれに示される配列全体で行われることが理解されるべきである。
【0090】
当業者は、アミノ酸配列の同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントが、当該技術分野の範囲内の様々な方法で、例えば、ClustalOmega(Sievers F,Higgins DG、(2018)Protein Sci 27:135-145)、Protein BLAST(国立生物工学情報センター(NCBI)、米国)又はMegalign(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの商業的に利用可能なソフトウェア等の、公に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成できることを認識するであろう。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。NCBI BLASTは、アミノ酸配列同一性(MacWilliam他、Nucleic Acids Res.、2013 Jul.;41(Web Server issue):W597~W600)を決定するために使用されるソフトウェアの別の例である。
【0091】
当業者は、アミノ酸配列を修飾しない核酸分子に修飾が導入され得ること、例えば、ヌクレオチドの置換により、置換の影響を受けるトリプレットが依然として同一のアミノ酸をコードすることを認識するであろう。たとえば、イソロイシンというアミノ酸はATT、ATC、ATAのトリプレット(DNAコドン)によってコードされている。次に、イソロイシントリプレットATTの3番目のヌクレオチドにおけるTからCまたはAへの置換は、得られるアミノ酸配列を変化させない。このようなヌクレオチド修飾は、当業者に周知の技術(例えば部位特異的突然変異誘発)によって導入して、好ましくは宿主細胞によって使用されるコドンに核酸配列を適合させ、したがって酵素の発現を増強することができる。
【0092】
さらに、単離および精製を容易にするポリペプチドをコードする核酸分子は、得られる酵素の活性に影響を及ぼすことなく、本発明のヌクレオチド配列に加えることができる。
また、宿主細胞からの所望の酵素の分泌を提供するシグナルペプチドをコードする核酸分子もまた、本発明の核酸配列に連結され得る。
【0093】
本発明はさらに、本発明のDNA-ポリメラーゼ由来3’5’エキソヌクレアーゼまたはその酵素的に活性なフラグメントを含む組成物を含む。組成物は、さらに緩衝剤を含むことができる。当業者は、本発明の酵素を含む組成物に使用される緩衝液は、選択される酵素および酵素が使用されるプロセスに従って変化し、最適化され得ることを認識するであろう。本発明の酵素の3’-5’エキソヌクレアーゼ活性は、当業者に周知の分子クローニング、DNAアセンブリおよびポリヌクレオチド消化方法で一般的に使用される条件、例えば塩の種類および濃度、pH条件などの条件内に保持される。
【0094】
例えば、約8.0を超えるpH、例えば8.0~9.0の範囲内のpHを有するトリス緩衝液のような、トリス緩衝液のような周知の緩衝液を使用することができる。一態様によれば、組成物のpHは8.5~9.0以内である。
【0095】
さらに、当業者は、塩の種類およびその濃度が変化し得ることを認識するであろう。一態様によれば、組成物は、NaClおよびKClからなる群から選択される1種以上の塩を含む。本組成物の別の態様によれば、NaClおよびKClを含む。さらに別の態様によれば、組成物は、約25mMまでのNaClおよびKClを含む。
【0096】
本発明のDNAポリメラーゼの調製
本発明の酵素およびその酵素的に活性なフラグメントまたはそれらをコードする核酸分子は、それらの自然環境から精製または単離されるか、またはそれらは、当業者に周知のクローニング手順および組換えDNA手順によって生産される。
【0097】
本発明によるDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼをコードするか、またはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子は、当業者または商業的供給業者に周知の方法、例えばGenscript(Thermo Fisher Scientific)などによって合成することができる。
【0098】
当業者は、一般に利用可能な遺伝子工学技術及び組換えDNA発現システムを使用する様々な宿主細胞システムにおける異種発現による組換えタンパク質の調製のための単離された、または精製された核酸分子の発現のための様々の利用可能なバイオテクノロジー技術をよく知っており、精通している。例えば、“Recombinant Gene Expression Protocols,in Methods in Molecular Biology,1997、Rocky S Tuan編、Human Press(ISSN 1064-3745)又はSambrook他、Molecular Cloning:A laboratory Manual(第3版)、2001、CSHL Press(ISBN 978-087969577-4)を参照されたい。例えば、本発明に従う酵素をコードする核酸分子、またはその酵素的に活性なフラグメントをコードする核酸分子は、適切な宿主細胞において所望のタンパク質コード核酸配列の発現を指示するために特異的に適合されたすべての必要な転写および翻訳調節配列を含む適切な発現ベクターに挿入され得る。適切な発現ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルスまたは人工酵母染色体(YAC)である。
【0099】
例えば、本発明に従うDNAポリメラーゼを調製するために発現されるとともに使用されるDNA分子は、目的の配列の増殖のために、または本発明のDNAポリメラーゼをコードする配列の発現のために使用されるベクターに挿入され得る。FastCloningは、この目的に適用可能な方法の一例である。
【0100】
本発明の一態様によれば、本発明に従う酵素をコードする核酸分子またはその酵素的に活性なフラグメントを含む、発現ベクターなどのベクターが提供される。
さらなる態様によれば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列、または同配列の全長にわたって少なくとも約60%の配列同一性(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8の配列の全長にわたって少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードする核酸分子を含む、発現ベクターなどのベクターが提供される。
【0101】
さらに別の態様によれば、配列番号9、または配列番号9の配列の全長にわたって少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列が同一など、配列番号9の配列の全長にわたって80%の配列同一性を有する配列を含むベクターが提供される。
【0102】
当業者は、本発明に従うDNAポリメラーゼをコードする核酸分子を含む発現ベクターを用いて、本発明に従うDNAポリメラーゼを調製することができ、ここで、同分子は、問題の宿主細胞に適合したプロモータに作動可能に連結されていることを認識するであろう。
【0103】
当業者はさらに、本明細書中で使用される「プロモータ」が、特定の遺伝子の転写を制御および開始するDNAコーディング配列の上流(5’)のDNA領域を指すことを認識するであろう。プロモータはRNAポリメラーゼおよびその他のタンパク質の認識と結合を制御し、転写を開始させる。「作動可能に連結された(Operably linked)」とは、プロモータと第2の配列との間の機能的連結を指し、ここで、プロモータ配列は、第2の配列に対応するDNA配列の転写を開始および媒介する。通常、作動可能に連結されているとは、連結されている核酸配列が隣接していることを意味する。例えば、細菌宿主細胞における組換えタンパク質の発現に適合されたベクターは、T7プロモータのような細菌発現系に適用可能なプロモータを含み得る。
【0104】
本発明に従うベクターは、当業者に周知の標準的なプラスミド単離技術、例えばQiagen(商標)またはQIAGEN(商標)Plasmid Plus Maxi KitからのQIAprep(商標)Spin Miniprepキットを用いて単離することができる。
【0105】
本発明の酵素をコードする核酸分子またはその酵素的に活性なフラグメントを含む発現ベクターを、所望の酵素を産生するのに適した宿主細胞に導入することができる。本発明の一態様によれば、所望の酵素をコードする核酸分子を含む本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0106】
種々の市販の利用可能な宿主細胞またはウイルスを使用することができる。例えば、大腸菌(E.Coli)、CL21細胞、またはロゼッタ(Rosetta)2(DE3)細胞(Novagen)などの細菌宿主細胞を使用することができる。発現ベクターの形質転換は、例えば化学的にコンピテントな細胞を用いて当業者に周知の方法で行うことができる。
【0107】
適切な培養培地で宿主細胞を培養すると、宿主細胞中の発現ベクターによってコードされる本発明の酵素またはその酵素的に活性なフラグメントが産生され、得られた酵素は当業者に周知の方法によって回収および精製することができる。
【0108】
発現ベクターはさらに、発現された酵素を培地に分泌するためのシグナル配列を含み得る。
上述のように、本発明の酵素は、組換えDNA技術を用いて合成することができる。あるいは、本発明の酵素は、無細胞発現系を用いて調製されるか、または化学的ペプチド合成法を用いて、例えば、アミノ酸の所望の配列に従って、あるアミノ酸のカルボキシル基を別のアミノ酸のアミノ基に段階的に縮合反応させることによって製造され得る。
【0109】
一態様によれば、本発明の酵素またはその酵素的に活性なフラグメントの調製のためのプロセスであって、(i)コードされた酵素の発現に適した本発明の1以上の発現ベクターを含む宿主細胞を培養するステップと、任意選択的に(ii)宿主細胞または培地(上清)から酵素を単離または取得するステップと、を含むプロセスが提供される。
【0110】
当業者は、宿主細胞または培地から組換え発現タンパク質を単離し、そして任意選択的に精製するために様々な方法が利用可能であることを認識するであろう。発酵ブロスから得られた発現酵素の単離及び精製のためには、通常、大きな粒子およびバイオマスを除去するために、1以上の前処理または清澄化ステップが最初に用いられる。適用可能な前処理ステップの非限定的な例は、例えば、逆浸透、遠心分離、濾過法およびダイアフィルトレーション、またはそれらの組み合わせである。次いで、得られた酵素を、当業者に周知の種々のクロマトグラフィー方法、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは他のクロマトグラフィー技術、またはそれらの組み合わせによって、一般的に精製する。
【0111】
例えば、適切な宿主細胞によって発現される酵素は、アフィニティークロマトグラフィー法を用いて精製することができ、例えば、MabSelect(商標)SuRe(商標)培地およびFPLCクロマトグラフィーシステム、例えば、5mmのUVフローセルを取り付けたBioRad NGC Discover(商標)10 Proシステムに搭載されたHiTrap MabSelect(商標)SuRe(商標)カラムを用いることができる。精製される酵素を含む試料をロードした後、カラムは通常、1つ以上の適用可能な洗浄緩衝液で1回以上洗浄され、その後、タンパク質は適用可能な溶出緩衝液を用いて溶出される。得られた酵素は、上記したクロマトグラフィー法の1つ以上を用いてさらに精製することができる。
【0112】
本発明のDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼの使用。
本発明の酵素は、dsDNA分子の末端のオーバーハングを提供することが望ましい任意のプロセスで使用することができる。特に、本発明の酵素は、10から40ヌクレオチド以内の長さのオーバーハングを提供することが望ましいプロセスに適用可能であり、このプロセスは、18℃~25℃の範囲の温度で実施される。
【0113】
相同体組換え技術に基づく種々の方法が、核酸分子のアセンブリのために知られている。本発明の酵素は、相同体組換えに基づく核酸分子のアセンブリのための方法、特に多数の核酸分子のアセンブリのために適合された方法において特に有用であり、ここでアセンブリされるdsDNA分子の末端は配列同一の領域を共有し、本発明のエキソヌクレアーゼは、DNA分子のアセンブリの前にオーバーハングを提供するために使用される。
【0114】
例えば、本発明の酵素またはその酵素的に活性なフラグメントは、国際公開第2007/124065号に開示された方法において使用され得る。国際公開第2007/124065号は、配列およびリガーゼ非依存性であるインビトロ相同組換え方法(SLIC)を開示しており、同方法において、dsDNA分子は、エキソヌクレアーゼ処理された標的DNAを、アニーリングされた相同オーバーハングと組み合わせることによってアセンブリされ、かつアニーリングされた領域における欠損ヌクレオチドは、形質転換後に適切な宿主細胞によって埋め込まれる。
【0115】
遺伝子合成、方法およびプロトコル(Gene Synthesis,Methods and Protocols)(Methods in Molecular biology、2012、vol.852、pp51-59)は、標的dsDNAが(dNTPの非存在下で)T4DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を用いて選択されるベクターに挿入され、結合されるdsDNAの一本鎖オーバーハングを生成し、続いてアニーリングおよびアニーリングされた生成物のリガーゼ処理を行う、組換えDNAの生産のためのSLICプロトコルを開示している。
【0116】
相同体組換えに基づく他の方法は、例えば欧州特許第1929012号明細書に記載されており、ここでは、dsDNA分子が、オーバーハングを生成する3’-5’エキソヌクレアーゼで処理された後にアセンブリされ、続いてアニーリングされ、アニーリングされた生成物をDNAポリメラーゼと接触させ、最後にリガーゼを用いて再形成ニック(remining nicks)をシーリングし、そしてこのプロセスがクラウディング剤(例えばPEG)の存在下で実施される、相同体組換え方法が開示されている。
【0117】
本発明のDNAポリメラーゼは、欧州特許出願公開第1915446号明細書および欧州特許第2255013号明細書に開示されている方法のような他の同様の方法においても使用することができる。
【0118】
複数のDNAアセンブリシステムも市販されており、例えば、ThermoFisher Scientificによって提供されるGeneArt(登録商標)アセンブリ製品およびNewEngland Biolabs Incによって提供されるNEB Gibson Assembly(登録商標)、NEBuilder(登録商標)HiFi DNAアセンブリおよびGolden Gate Assemblyなどがある。
【0119】
所望の順序で複数のDNA分子をアセンブリさせるために、アセンブリされる末端は、エキソヌクレアーゼ消化ステップアニール(ハイブリダイズ)から生じる問題のそれぞれのオーバーハングを確実にする配列同一性を共有すべきである。オーバーハングの長さは、好ましくは、一本鎖オーバーハングのハイブリダイゼーションを可能にするように、配列同一の共有領域の相補的オーバーハングに特異的にハイブリダイズするのに十分な長さである。複数のdsDNA分子をアニーリングする原理の説明として、LiおよびElledgeによる、SLIC:配列およびライゲーション非依存性クローニングのための方法(SLIC:a method for sequence and ligation independent cloning)、2012、Gene Synthesis、pp51-59の54頁の
図2を参照されたい。
【0120】
本発明によれば、アセンブリされるべきdsDNA分子をDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼと接触させることによって調製されるオーバーハングの長さは、10~40ヌクレオチドである。
【0121】
一態様によれば、プロセスが提供され、前記プロセスは、以下のステップを含む:
(a)アセンブリされるべき2つ以上のdsDNA分子を提供するステップであって、dsDNA分子の末端が配列同一の領域を共有し;そして、接合されるべきdsDNA分子の各対について、第1のDNA分子の遠位領域および第2のDNA分子の近位領域は、10~40ヌクレオチドからなる配列同一の領域を共有する、提供するステップ;
(b)提供された2つ以上のDNA分子を、本発明に従う熱に不安定なDNAポリメラーゼ由来3’-5’エキソヌクレアーゼ酵素と接触させることにより、提供されたdsDNA分子の両端に一本鎖オーバーハングが生成されるステップ;
(c)ステップ(b)で生成されたオーバーハング部分を介して前記DNA分子がアニールする条件下で、(a)のDNA分子をインキュベートするステップ;
(d)任意選択により、ステップ(c)で提供されたアニールされた分子をDNAポリメラーゼと接触させ、DNAポリメラーゼがギャップを埋めることを可能にするステップであって、同DNAポリメラーゼは、低下した、損傷された、または不活性化された鎖置換活性を有し、かつ校正活性を発揮する、前記ステップ。
【0122】
本発明の酵素は、一本鎖オーバーハングを提供する目的のdsDNA分子の消化を室温で行うことができるため、特に適している。さらに、本発明の酵素は熱に不安定であり、25℃を超える温度で不活性化されるので、面倒な不活性化ステップを必要としない。
【0123】
したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に開示されているような2本以上の二本鎖(ds)DNA分子のアセンブリのための方法を提供する。
一実施形態によれば、本発明の複数のDNAアセンブリプロセスにおいてアセンブリされる少なくとも2つ以上のdsDNA分子のうちの1つは、ベクターである。アセンブリされるべきベクターおよびdsDNA分子は、本発明のDNA由来3’-5’エキソヌクレアーゼと別々に、または一段階で一緒に接触され得る。
【0124】
本発明の酵素のエキソヌクレアーゼ活性は、ポリヌクレオチドを除去する方法、例えば精製方法においても使用され得る。例えば、天然源から単離された、または種々の宿主系で発現されたポリペプチドまたはタンパク質の精製に酵素を使用することができ、同精製において、ポリヌクレオチドは不純物または混入物を表し、所望のタンパク質を含む溶液と本発明の酵素とのインキュベーションは、問題の所望のタンパク質の非ポリヌクレオチド精製溶液を提供する。また、ポリヌクレオチドで汚染された関心のある1つ以上の試薬を含む他の溶液を、本発明の酵素を用いて精製することができる。本発明の1つの利点は、タンパク質または他の試薬を含む溶液からポリヌクレオチドを除去するために使用する場合、酵素を室温で使用することができ、さらに不活性化ステップを必要とせず、例えば、問題のタンパク質または試薬に望ましくない効果を及ぼす可能性のある金属イオンまたはキレート剤などの不活性化添加剤の添加またはそのさらなる使用を回避することである。
【実施例】
【0125】
実施例1:DNAポリメラーゼII由来3’-5’エキソヌクレアーゼのクローニング
Lunderらは、冬の潰瘍性疾患に冒された養殖タイセイヨウサケから分離されたビブリオ様細菌を用いた1995年の実験を、Disease of Aquatic Organisms,vol.23,No.23,pp.39-49に報告した。その後,分離した細菌は精神栄養性海洋(psychotrophic marine)M.ビスコーサ(viscosa)細菌であることが判明した。
【0126】
本発明の酵素をコードする遺伝子の提供は、前記M.ビスコーサ(GenBank:LN554852.1)のゲノムDNAを用いたポリメラーゼ連鎖反応において、以下のプライマーを用いて得られた。
【0127】
M.ビスコーサからのDNAポリメラーゼIをコードする同定された遺伝子を、Gateway(登録商標)Technology(Thermo Fisher)を用いてpHMGWAベクターにクローニングした。ポリメラーゼ連鎖反応の出発物質はM.ビスコーサのゲノムDNAであった。QuikChange II部位特異的変異誘発キット(Agilent Technologies)を用いて種々の変異を導入し、配列解析により確認した。
【0128】
【0129】
野生型酵素と比較して、同定された酵素のポリメラーゼ活性が低下した、損傷した、または不活性化した修飾酵素を提供するために、種々の突然変異を、QuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies)によって同定されたクローン化遺伝子に導入し、配列決定分析によって確認した。
【0130】
実施例2:組換え酵素の調製(MV Pol IIおよびその変異体)
宿主細胞における本発明の酵素の発現のために、本発明のDNAポリメラーゼをコードする遺伝子配列(配列番号2、問題の宿主細胞に対して最適化されたコドン)が、Gateway(登録商標)デスティネーションベクターpHMGWAに導入された。
【0131】
本発明に従う酵素の組換えタンパク質産生は、ロゼッタ2(DE3)細胞(ノバゲン(登録商標))において行った。細胞をTerrific Broth培地/アンピシリン(100μg/ml)中で増殖させ、遺伝子発現は0.1mM IPTGの添加によりOD600nm1.0で誘導させた。タンパク質産生は15℃にて6~8時間実施した。
【0132】
タンパク質の精製のために、1リットル培養のペレットを50mM HEPES pH7.5(25℃)、500mM NaCl、5%グリセロール、0.15mg/mlリゾチーム、1プロテアーゼインヒビタータブレット(Complete(商標)、Mini、EDTAフリープロテアーゼインヒビターカクテル、Roche)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。
【0133】
細胞破壊は、Sonics(登録商標)のVCX750を使用した超音波処理によって実施した(パルス1.0/1.0、15分、振幅25%)。最初のステップにおいて、遠心分離(48384g、45分、4℃)及びろ過(φ0.45μm)後に存在するHis6-タグ付きタンパク質の可溶性部分を、固定化Ni2+アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。50mM HEPES(25℃にて)、500mM NaCl、35mMイミダゾール、5%グリセロールを用いた洗浄ステップの後に、タンパク質を250mMのイミダゾール濃度で溶出し、さらに脱塩カラムを使用して、50mM HEPES(25℃にて)、500mM NaCl、10mM MgCl2、5%グリセロールに移した。第2のステップは、TEVプロテアーゼによるタグの切断であり、50mMトリスpH8.0、0.5mM EDTA、および1mM DTT中にて4℃で一晩行った。His6-タグ及びHis6-タグ付きTEVプロテアーゼからタンパク質を分離するために、50mM HEPES(25℃にて)、500mM NaCl、5%グリセロールを適用することにより、第3のステップで第2のNi2+アフィニティークロマトグラフィーを行った。最終的なタンパク質溶液を濃縮し、活性アッセイのために-20℃にて50%グリセロールとともに保存した。
【0134】
実施例3:本発明の酵素のポリメラーゼ活性の測定。
本発明の酵素(present enzyme)のポリメラーゼ活性を測定し、また前記新規な酵素を既知のDNAポリメラーゼと比較するために、モレキュラービーコンプローブ(Summerer,Methods Mol.Biol.,2008,429,225-235から改変したもの)に基づくアッセイを使用した。モレキュラービーコンテンプレートは、GCリッチな8merのステム領域(配列は斜体で示されている)および43merの伸長部によって連結された23merのループで構成されている。ループの形成により、フルオロフォアのDabcylとFAMは近接し、クエンチされる。モレキュラービーコンテンプレートにアニーリングされたプライマーがDNAポリメラーゼIによって伸長されると、ステムが開かれ、2つのフルオロフォアの距離の増加がFAM蛍光の回復(励起485nm、発光518nm)によって測定される。
【0135】
【0136】
モレキュラービーコン基質は、20μlの10μMモレキュラービーコンテンプレートと15μMプライマーを10mMトリス-HCl pH8.0、100mM NaCl中に95℃で5分間インキュベートすることによって生成された。その後、反応物を室温で2時間冷却させた。基質溶液は、10μMの最終濃度で-20℃で保存された。
【0137】
50マイクロリットルの反応物は200nMの基質および200μMのdNTP(等モル量のdATP、dGTP、dCTPおよびdTTP)で構成されていた。反応はさらに、50mM Tris-HCl pH8.5中の5mM MgCl
2、100mM KCl、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロールを含んでいた。活性アッセイは、黒色の96ウェル蛍光アッセイプレート(Corning(登録商標))中で25℃にて実施した。反応は、タンパク質溶液、すなわち、MV pol IIおよびそのバリアントの添加によって開始した。FAM蛍光の増加は、485nmで励起し、518nmで発光することにより、適切な時間間隔で相対蛍光単位として測定された。測定は、SpectraMax(登録商標)Geminiマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で実施した。結果を
図3に示し、本発明の酵素が低いDNAポリメラーゼ活性を有することを示している。
【0138】
実施例5:本発明の酵素の3’-5’エキソヌクレアーゼ活性
エキソヌクレアーゼアッセイ用の平滑末端dsDNA基質は、40μ1の0.5μMテンプレートDNAと0.5μMのFAM標識逆相補鎖(配列番号14および配列番号15)とを10mM Tris-HCl pH8.0、100mM NaCl中で75℃にて5分間インキュベートすることにより生成した。その後、反応物を室温で2時間冷却した。基質溶液は、0.5μMの最終濃度で-20℃で保存した。
【0139】
10マイクロリットルの反応物は、25nMの基質、50mM Tris-HCl(pH8.0)中の5mM MgCl2、25mM NaCl、1mM DTT、0.2mg/ml BSAおよび2%グリセロールを含有していた。反応は、0.02μg/μlのタンパク質、即ち、MV pol IIおよびそのバリアントの添加によって開始した。陰性対照として、タンパク質溶液の代わりにタンパク質希釈緩衝液を使用した。2.5μlの変性ゲル負荷緩衝液(95%ホルムアミド、10mM EDTA、0.1%キシレンシアノール)を添加し、95℃で5分間インキュベートすることによって反応を停止させた。変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(12%ポリアクリルアミド/7M尿素)のために、6μlの試料容量をゲル上にロードした。ゲル電気泳動を0.5×TBE緩衝液(44.5mM Tris、44.5mMホウ酸、1mM EDTA)中で50Wにて1時間15分間行い、続いてゲルをPharosFX(商標)Plus Imager(Bio-Rad)でスキャンした。
【0140】
【0141】
【0142】
【配列表】
【国際調査報告】