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特表2022-551596超音波エネルギーを用いて生体組織を単一細胞に解離するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】超音波エネルギーを用いて生体組織を単一細胞に解離するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/08 20060101AFI20221205BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20221205BHJP
【FI】
C12M3/08
C12M1/42
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520448
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020053798
(87)【国際公開番号】W WO2021067595
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,484
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510264246
【氏名又は名称】マイクロソニック システムズ インク.
【氏名又は名称原語表記】MICROSONIC SYSTEMS INC.
【住所又は居所原語表記】76 Bonaventure Drive,San Jose,California 95134,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェック, ヴィブ
(72)【発明者】
【氏名】サンサンワル, プーナム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA16
4B029BB11
4B029CC01
4B065AA93X
4B065CA44
(57)【要約】
生体組織試料から単一細胞を解離させる方法が、そのような方法を実施するためのシステムと共に本明細書に記載される。本方法は、1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して、1またはそれを超える超音波パルスを生成することを含み、そして、生成された1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーを、前記1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して前記生体組織試料を保持する試料容器に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることが、本明細書に記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織試料から単一細胞を解離させる方法であって、
1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、
前記1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを、前記1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して前記試料容器に収容された生体組織試料に印加して、前記生体組織から単一細胞を解離させることと、を含む方法。
【請求項2】
生体組織試料から単一細胞を解離させる方法であって、
1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、
前記1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを、前記1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して前記試料容器に収容された生体組織試料に印加して、前記生体組織から単一細胞を解離させることと、
前記1またはそれを超える生成された超音波パルスからの前記エネルギーが、前記生体組織試料に印加されている間に、前記生体組織試料の温度を制御することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記生体組織試料の前記温度を制御することが、前記結合媒体の温度を制御することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合媒体の前記温度が、前記生体組織試料を冷却するか、または前記生体組織試料の温度上昇を制限するように制御される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結合媒体が、約2℃~約70℃の温度に制御される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記結合媒体が、約2℃~約25℃の温度に制御される、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体組織試料の前記温度を制御することが、前記1またはそれを超える生成された超音波パルスからの前記エネルギーを使用して前記生体組織試料を加熱することを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トランスデューサーによって生成された前記1またはそれを超える超音波パルスの第1の部分が、前記生体組織試料を加熱するように構成され、前記トランスデューサーによって生成された前記1またはそれを超える超音波パルスの第2の部分が、前記生体組織試料を加熱しないように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生体組織試料が、約20℃~約70℃のピーク温度まで加熱される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記生体組織試料が、前記1またはそれを超える生成された超音波パルスから前記試料容器へのエネルギーの前記印加中に15℃よりも少なく加熱されるか、または加熱されない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生体組織試料の前記温度が、約2℃~約70℃に制御される、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生体組織試料の前記温度を制御することが、前記生体組織試料の前記温度を制御しないことと比較して、1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子の発現を低下させる、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子が、CD69、LRRK2、TNF、FOS、PDE4B、NR4A3、S100A9、S100A8、THBD、IL-1β、IL-1α、HK2、CXCL8、CXCL1、AREG、ERG2、TIMP1およびCXCR4からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記結合媒体が、液体、固体、またはゲルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記結合媒体が、液体であり、前記方法が、温度コントローラによって前記結合流体を循環させることをさらに含む、請求項1~14に記載の方法。
【請求項16】
約20%またはそれを超える前記解離した単一細胞が、生存可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記解離した単一細胞の約20%~約95%が、生存可能である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
2つまたはそれを超える異なるタイプの生細胞が、前記生体組織試料から解離される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生体組織試料が、癌組織を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料に印加された前記エネルギーが、前記試料に印加されるせん断力をもたらさない、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1またはそれを超える生成された超音波パルスの、繰返し率、パルス持続時間、デューティサイクル、ピーク電力、または総持続時間のうちの1つ以上を選択することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記試料に印加される前記エネルギーが、前記試料に印加される混合力または懸濁力をもたらす、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
複数の超音波パルスが、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で生成される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1またはそれを超える超音波パルスが、約0.1%~約95%のデューティサイクルで生成される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーが、前記結合媒体に約2秒間~約90分間印加される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記生体組織が、前記試料容器内の液体に懸濁される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記生体組織が、切り刻まれている、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記生体組織試料が、非内因性プロテアーゼを実質的に含まない、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記トランスデューサーが、4つまたはそれを超えるFASA素子を備える、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記生体組織試料が、保存されていない試料である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、
1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、
前記生体組織試料を保持するように構成された試料容器と、
前記1またはそれを超えるFASA素子を前記試料容器に結合し、前記トランスデューサーによって生成された前記複数の超音波パルスからのエネルギーを前記試料容器に伝達して、前記生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含むシステム。
【請求項32】
生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、
1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、
前記生体組織試料を保持するように構成された試料容器であって、前記生体組織試料の温度を制御するように構成された試料容器と、
前記1またはそれを超えるFASA素子を前記試料容器に結合し、前記トランスデューサーによって生成された前記複数の超音波パルスからのエネルギーを前記試料容器に伝達して、前記生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含むシステム。
【請求項33】
前記生体試料の前記温度を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記結合媒体の温度を制御するように構成された温度コントローラをさらに備える、請求項31~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記温度コントローラが、前記結合媒体を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記温度制御装置が、前記結合媒体を約2℃~約25℃の温度に冷却するように構成される、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記結合媒体が液体であり、前記トランスデューサーと前記試料容器との間の位置と前記温度コントローラとの間で前記結合媒体を循環させるように構成されたポンプをさらに備える、請求項31~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記システムが、前記1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを使用して前記生体組織試料を加熱することによって前記生体組織試料の前記温度を制御するように構成される、請求項32~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記トランスデューサーが、(1)前記生体組織試料を加熱する1またはそれを超える超音波パルス、および(2)前記試料を加熱しない1またはそれを超える超音波パルスを選択的に生成するように構成される、請求項32~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記1またはそれを超える超音波パルスを生成するために前記トランスデューサーを動作させるように構成された制御モジュールをさらに備える、請求項31~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記制御モジュールが、選択された繰返し率、選択されたパルス持続時間、選択されたデューティサイクル、選択されたピーク電力、選択された平均パルス電力、または選択された総持続時間のうちの1つ以上で、前記複数の超音波パルスを生成するために前記トランスデューサーを動作させるように構成される、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記制御モジュールが、前記トランスデューサーを動作させて、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で複数の超音波パルスを生成するように構成される、請求項40または41に記載のシステム。
【請求項43】
前記制御モジュールが、約0.1%~約95%のデューティサイクルで、前記1またはそれを超える超音波パルスを生成するために前記トランスデューサーを動作させるように構成される、請求項40~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記制御モジュールが、前記トランスデューサーを動作させて、約2秒~約90分の総持続時間にわたって、前記1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される、請求項40~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記制御モジュールが、前記トランスデューサーを動作させて前記超音波パルスを生成するように構成された無線周波数(RF)生成器を備える、請求項40~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記制御モジュールが、せん断力が前記試料に加えられないように、前記トランスデューサーを動作させて前記1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された、請求項40~45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記制御モジュールが、混合力または懸濁力が前記試料に印加されるように、前記トランスデューサーを動作させて前記1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される、請求項40~46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記トランスデューサーが、4つまたはそれを超えるFASA素子を備える、請求項30~47のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項49】
前記システムが、複数のシステムを含むアレイ内に配置される、請求項30~48のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年10月2日に出願された米国仮出願第62/909,484号に基づく優先権の利益を主張する。その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
超音波エネルギーを使用して生体組織試料から単一細胞を解離させるための方法およびシステムが、本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
医学および生物学的研究の分野では、腫瘍組織が癌細胞、例えば浸潤免疫細胞および腫瘍間質の不均一な塊であるという知識にもかかわらず、各腫瘍試料を均一な塊として処置する技術によって多くの現在の分析が行われている。塊アプローチは、大量の分子情報を提供するが、元の試料中の細胞成分に関しては構成を保持しない。これらの結果は、腫瘍組織全体の平均であり、重要な細胞の稀な亜集団の同定を妨げる。この実施によって失われた情報は、腫瘍の進行、転移、および薬物耐性に対する重要な洞察を秘匿化し得ることが示唆されている。さらに、腫瘍の微小環境には、恒常性を維持し、さらなる発達を推進する多種多様な細胞型が含まれる。この腫瘍内細胞の不均一性は、進行、転移、および薬物耐性の発生の根底にある重要な因子として同定されている。
【0004】
フローソーティング法は、試料内の各細胞に関する高スループットかつ多重化された情報を提供するので、開発されてきた。細胞選別を使用して、癌幹細胞、転移性前駆体、およびさらなる研究のための薬物耐性クローンなどの希少な細胞型を単離することもできる。しかしながら、単一細胞分析のためには、かなりの時間および労力を必要とする表現型および遺伝子型情報に影響を及ぼすことなく、組織を最初に生存可能な単一細胞に分解しなければならない。
【0005】
以前は、腫瘍組織は、細胞接着分子および/または内在する細胞外マトリックスを消化させるために何らかの形態の物理的力と組み合わせてタンパク質分解酵素を使用して、単一細胞に解離されていた。しかし、すべての細胞型が、酵素を使用して容易に解離されるわけではない。酵素解離の影響を受けやすい細胞型については、酵素が細胞に有害である場合があり、生成された単一細胞がその後生存および/または分裂する能力に悪影響を及ぼし得ることが示されている。例えば、酵素解離は、一般に、炎症誘発性および/またはストレス誘発性遺伝子の望ましくない発現をもたらし得る高温(例えば、37℃)で組織をインキュベートすることを含む。これらの遺伝子の発現は、細胞の状態をその天然の状態から有意に変化させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
バルク側方超音波エネルギーを生成させる1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して、生体組織試料から単一細胞を解離させる方法、および生体組織試料から細胞を解離させるためのシステムが、本明細書に記載される。
【0007】
いくつかの実施形態では、生体組織試料から単一細胞を解離させる方法は、1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、1またはそれを超える生成した超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して試料容器に収容された生体組織試料に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、生体組織試料から単一細胞を解離させる方法は、1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、1またはそれを超える生成した超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して試料容器に収容された生体組織試料に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることと、1またはそれを超える生成した超音波パルスからのエネルギーが、生体組織試料に印加されている間に、生体組織試料の温度を制御することと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度は、約2℃~約70℃に制御される。いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度を制御することは、生体組織試料の温度を制御しないことと比較して、1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子の発現を低下させる。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子は、CD69、LRRK2、TNF、FOS、PDE4B、NR4A3、S100A9、S100A8、THBD、IL-1β、IL-1α、HK2、CXCL8、CXCL1、AREG、ERG2、TIMP1およびCXCR4からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度を制御することは、結合媒体の温度を制御することを含む。いくつかの実施形態では、結合媒体の温度は、生体組織試料を冷却するか、または生体組織試料の温度上昇を制限するように制御される。いくつかの実施形態では、結合媒体は、約2℃~約70℃の温度に制御される。いくつかの実施形態では、結合媒体は、約2℃~約25℃の温度に制御される。
【0011】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織試料の温度を制御することは、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを使用して生体組織試料を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、トランスデューサーによって生成された1またはそれを超える超音波パルスの第1の部分は、生体組織試料を加熱するように構成され、トランスデューサーによって生成された1またはそれを超える超音波パルスの第2の部分は、生体組織試料を加熱しないように構成される。いくつかの実施形態では、生体組織試料は、約20℃~約70℃のピーク温度まで加熱される。
【0012】
上記の方法のいくつかの実施形態では、生体組織試料は、1またはそれを超える生成された超音波パルスから試料容器へのエネルギーの印加中に15℃よりも少なく加熱されるか、または加熱されない。
【0013】
上記方法のいくつかの実施形態では、結合媒体は、液体、固体またはゲルである。いくつかの実施形態では、結合媒体は、液体であり、方法は、温度コントローラによって結合流体を循環させることをさらに含む。
【0014】
上記方法のいくつかの実施形態では、約20%またはそれを超える解離した単一細胞は、生存可能である。いくつかの実施形態では、解離した単一細胞の約20%~約95%は、生存可能である。いくつかの実施形態では、2つまたはそれを超える異なるタイプの生細胞は、生体組織試料から解離される。
【0015】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織試料は、癌組織を含む。
【0016】
上記の方法のいくつかの実施形態では、方法は、1またはそれを超える生成された超音波パルスの、繰返し率、パルス持続時間、デューティサイクル、ピーク電力、または総持続時間のうちの1つ以上を選択することを含む。いくつかの実施形態では、試料に印加されたエネルギーは、試料に印加されるせん断力をもたらさない。いくつかの実施形態では、試料に印加されるエネルギーは、試料に印加される混合力または懸濁力をもたらす。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の超音波パルスは、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で生成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える超音波パルスは、約0.1%~約95%のデューティサイクルで生成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーは、結合媒体に約2秒~約90分間印加される。
【0020】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織は試料容器内の液体に懸濁される。
【0021】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織は、切り刻まれている。
【0022】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織試料は、非内因性プロテアーゼを実質的に含まない。
【0023】
上記の方法のいくつかの実施形態では、トランスデューサーは4つまたはそれを超えるFASA素子を含む。
【0024】
上記方法のいくつかの実施形態では、生体組織試料は、保存されていない試料である。
【0025】
生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、生体組織試料を保持するように構成された試料容器であって、生体組織試料の温度を制御するように構成された試料容器と、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に伝達して、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含むシステムも、本明細書に記載される。
【0026】
生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、生体組織試料を保持するように構成された試料容器であって、生体組織試料の温度を制御するように構成された試料容器と、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に伝達して、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含むシステムが、さらに記載される。いくつかの実施形態では、システムは、生体試料の温度を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される。
【0027】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、システムは、結合媒体の温度を制御するように構成された温度コントローラをさらに備える。いくつかの実施形態では、温度コントローラは、結合媒体を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される。いくつかの実施形態では、温度制御装置は、結合媒体を約2℃~約25℃の温度に冷却するように構成される。
【0028】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、結合媒体は液体であり、システムは、トランスデューサーと試料容器との間の位置と温度コントローラとの間で結合媒体を循環させるように構成されたポンプをさらに備える。
【0029】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、システムは、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを使用して生体組織試料を加熱することによって生体組織試料の温度を制御するように構成される。
【0030】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、トランスデューサーは、(1)生体組織試料を加熱する1またはそれを超える超音波パルス、および(2)試料を加熱しない1またはそれを超える超音波パルスを選択的に生成するように構成される。
【0031】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、システムは、トランスデューサーを動作させて1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された制御モジュールをさらに備える。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、選択された繰返し率、選択されたパルス持続時間、選択されたデューティサイクル、選択されたピーク電力、選択された平均パルス電力、または選択された総持続時間のうちの1つ以上で、複数の超音波パルスを生成するためにトランスデューサーを動作させるように構成される。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、トランスデューサーを動作させて、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で複数の超音波パルスを生成するように構成される。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、約0.1%~約95%のデューティサイクルで、1またはそれを超える超音波パルスを生成するためにトランスデューサーを動作させるように構成される。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、トランスデューサーを動作させて、約2秒~約90分の総持続時間にわたって、1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、トランスデューサーを動作させて超音波パルスを生成するように構成された無線周波数(RF)生成器を備える。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、せん断力が試料に加えられないように、トランスデューサーを動作させて1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、混合力または懸濁力が試料に印加されるように、トランスデューサーを動作させて1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される。
【0032】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、トランスデューサーは、4つまたはそれを超えるFASA素子を備える。
【0033】
上述のシステムのいくつかの実施形態では、システムは、複数のシステムを含むアレイに配置される。
【0034】
図面の簡単な説明
前述の概要、および以下の実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めばよりよく理解される。本開示を例示する目的で、図面は、本開示の例示的な実施形態を示す。しかしながら、本開示は、開示された特定の方法および手段に限定されない。図面において:
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、生体組織試料から細胞を解離させるための例示的なシステムを示す。
【0036】
図2図2は、本明細書に記載のシステムのトランスデューサーと共に使用され得るFASA素子の電極パターンを示す。
【0037】
図3図3は、4つの90度FASA素子を有する例示的な超音波トランスデューサーの上面図を示し、本明細書に記載のような生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムと共に使用することができる。
【0038】
図4図4は、96個のトランスデューサーユニットがその内部に配置された例示的な8×12トランスデューサーアレイを示し、各ユニットは4つのFASA素子を有する。
【0039】
図5図5は、トランスデューサーが動作中に結合流体の温度を制御するように構成された温度コントローラおよびポンプを備える例示的なシステムを示す図である。
【0040】
図6-1】図6Aは、生きている解離された細胞と死んだ解離された細胞とを区別するために酵素解離法を使用してウサギ脾臓組織試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0041】
図6Bは、生きている解離された細胞と死んだ解離された細胞とを区別するために本明細書に記載のようなバルク側方超音波エネルギーを使用してウサギ脾臓組織試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0042】
図6-2】図6Cは、有核生細胞と他の細胞残屑とを区別するために酵素解離法を使用してウサギ脾臓組織試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0043】
図6Dは、有核生細胞と他の細胞残屑とを区別するために、本明細書に記載のようなバルク側方超音波エネルギーを使用してウサギ脾臓組織試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0044】
図7A-1】図7Aは、酵素解離法を用いて臨床的乳癌腫瘍試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
図7A-2】同上。
【0045】
図7B-1】図7Bは、本明細書に記載のようなバルク側方超音波エネルギーを使用して、臨床的乳癌腫瘍試料から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
図7B-2】同上。
【0046】
図8図8Aは、酵素解離法を使用してマウスモデルから得られたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト乳癌異種移植片(PDX)腫瘍生検から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。右上の象限は、解離したCD326+/CD24+細胞が実質的に存在しないことを示す。
【0047】
図8Bは、本明細書に記載のようなバルク側方超音波エネルギーを使用したマウスモデルから得られたFFPEヒト乳癌異種移植片(PDX)腫瘍生検から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。右上の象限は、解離したCD326+/CD24+細胞を示す。
【0048】
図8Cは、本明細書に記載のようなバルク側方超音波エネルギーを使用してさらに処理した、酵素解離後の残存FFPEヒト乳癌異種移植片(PDX)腫瘍組織から解離した細胞からのフローサイトメトリー分析の結果を示す。右上の象限は、酵素法を使用して首尾よく解離されなかった解離したCD326+/CD24+細胞を示す。
【0049】
図9-1】図9Aは、すべての利用可能な遺伝子について、対照試料(固体組織)と比較した、バルク側方超音波エネルギーによって組織から解離した細胞および酵素プロセスを使用して固体組織から解離した細胞における遺伝子発現変化を示す。
【0050】
図9-2】図9Bは、炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子について、対照試料(固体組織)と比較した、バルク側方超音波エネルギーによって組織から解離した細胞および酵素プロセスを使用して固形組織から解離した細胞における遺伝子発現変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
超音波トランスデューサーから放射された超音波エネルギーを使用して生体組織試料から単一細胞を解離させる方法、およびそのような方法を実行するためのシステムが、本明細書に記載される。超音波トランスデューサーは、試料容器に保持された生体組織試料にバルク側方超音波エネルギーを印加することを可能にする1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備える。
【0052】
FASAトランスデューサーを使用して生物学的試料にエネルギーを印加して、従来の超音波エネルギーを組織に印加する場合の一般的な問題である細胞溶解を最小限に抑えながら個々の細胞を分離するエネルギーの徹底的で穏やかな印加を提供することができる。したがって、組織から分離された単一細胞の増加した割合は、生存可能であり、かつ/または従来の超音波エネルギー印加と比較してタンパク質を発現することができる。さらに、本明細書に記載の方法は、細胞を生体組織試料から分離するための酵素(プロテアーゼなど)の使用を含む方法よりも迅速かつ完全な細胞解離を可能にし、細胞のインビボ状態の酵素誘発性変化も回避する。
【0053】
FASA素子によって生成されるバルク側方超音波は、混合力、懸濁力、せん断力、または加熱エネルギーのうちの1つ以上を加えるように構成することができる(またはこれらのうちの1つ以上を加えないように構成することができる)。生体組織から単一細胞を解離させるために使用される放射された超音波からのエネルギーは、例えば、混合力および/または懸濁力を生体組織試料に加え、それにより、生体組織試料から単一細胞を解離させることができる。同時に、試料に印加される超音波エネルギーを印加して、細胞溶解をもたらし得るせん断力の加力を回避することができる。
【0054】
試料の温度を、単一細胞解離中に制御することができ、炎症誘発性および/またはストレス誘発性遺伝子の発現を制限し得る。試料を長期間加熱すると、炎症誘発性および/またはストレス誘発性遺伝子の発現につながる可能性があり、細胞の生物学的状態を変化させる可能性がある。例えば、酵素的細胞解離中に組織を37℃に加熱すると、炎症誘発性およびストレス誘発性遺伝子発現を誘発する。しかしながら、試料に印加される短い熱のバーストは、炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子の発現を制限しながら組織解離を助けることができる。したがって、いくつかの実施形態では、試料に印加される超音波エネルギーは、試料に加熱エネルギーを印加するように構成される。加熱エネルギーは、細胞に印加される超音波エネルギーの総持続時間未満でもよい所望の持続時間にわたって試料を制御可能に加温することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、例えば、印加された超音波エネルギーによって加熱された試料の温度を低下させるために(または、印加された超音波エネルギーによる加熱から生じる温度の上昇に対抗して、結合媒体を使用して温度を制御しない場合ほど上昇しないようにするために)、試料の温度を制御するために結合媒体が使用される。結合媒体は、例えば、試料から熱を吸収することができ、温度コントローラを使用して結合媒体の温度を制御することができる。いくつかの実施形態では、試料は、温度コントローラによって加熱することができる結合媒体を通して加温される。
【0056】
生体組織試料は、2つまたはそれを超える異なる細胞型を含む不均一な細胞集団を有することが多い。本明細書に記載の方法を使用して、単一の生細胞を生体組織試料から解離させることができ、単一細胞は、不均一な生細胞集団内にある。細胞を解離させるこれまでに知られている方法は、しばしば優先的な細胞溶解をもたらし、不均一な生体組織試料から特定の細胞型を破壊することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、試料(癌試料など)から解離した2つまたはそれを超える異なるタイプの生細胞をもたらす。
【0057】
例示的な方法では、生体組織試料から単一細胞を解離させることは、1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して複数の超音波パルスを生成することと、生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を容器に結合する結合媒体を介して生体組織試料を保持する試料容器に印加し、それにより、生体組織から単一細胞を解離させることと、を含むことができる。
【0058】
生体組織試料から単一細胞を解離させる別の例示的な方法では、1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して生体組織試料を保持する試料容器に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることと、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーが、試料容器に印加されている間に、生体組織試料の温度を制御することと、を含む。生体組織試料の温度を制御することは、生体組織試料の温度を制御しないことと比較して1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子の発現を低下させ得る。
【0059】
生物学的試料から単一細胞を解離させるための例示的なシステムでは、システムは、複数の超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、生体組織試料を保持する容器と、1またはそれを超えるFASA素子を容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に伝達して、それによって、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含む。
【0060】
生体組織試料から単一細胞を解離させるための別の例示的なシステムでは、システムは、1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、生体組織試料を保持するように構成された試料容器であって、生体組織試料の温度を制御するように構成された試料容器と、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に伝達して、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含む。
定義
【0061】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。
【0062】
本明細書における値またはパラメータ「約」への言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(および説明する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」という記載を含む。
【0063】
「生存可能な」細胞は、生存しており、培養培地中で細胞の成長または増殖が可能な細胞を指す。
【0064】
本明細書に記載の本発明の態様および変形は、態様および変形「からなる(consisting)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。
【0065】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその状態範囲内の任意の他の記載値または介在値は、本開示の範囲内に含まれることを理解されたい。記載された範囲が上限または下限を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかを除外した範囲も本開示に含まれる。
【0066】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、組織化のみを目的としており、記載された主題を限定するものと解釈されるべきではない。説明は、当業者が本発明を製造および使用することを可能にするために提示され、特許出願およびその要件の文脈で提供される。記載された実施形態に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであろうし、本明細書の一般的な原理は、他の実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載の原理および特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【0067】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願の開示は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた任意の参照が本開示と矛盾する範囲において、本開示を優先するものとする。
生体組織から細胞を解離させるためのシステム
【0068】
細胞を生体組織試料から解離させるためのシステムは、トランスデューサー、試料容器、および結合媒体を含む。トランスデューサーは、超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を含む。試料容器は、生体組織試料を保持することができ、結合媒体を、1またはそれを超えるFASA素子を規定した距離で容器に結合するように配置する。トランスデューサーが超音波パルスを放射すると、結合媒体は超音波から容器にエネルギーを伝達して、これにより生体組織試料から単一細胞の解離が可能になる。
【0069】
生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムのいくつかの実施形態では、システムは、生体組織試料の温度を制御するように構成される。例えば、システムは、生体組織試料の温度を約2℃~約70℃(例えば、約2℃~約5℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、または約55℃~約70℃)に制御するように構成され得る。
【0070】
図1は、例示的な実施形態のトランスデューサー102および試料容器110を含む例示的なシステム100の側面図を示す。トランスデューサー102は、上部電極106と下部電極108との間に挟まれた圧電材料104を含む。以下に説明するように、電極106および108は、動作中に超音波をターゲット方向(例えば、図1の上方)に導くフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)として構成される。制御モジュール109は、トランスデューサーを動作させて超音波を生成するように構成される。試料容器110は、液体(例えば、水または緩衝液)に懸濁され得る生体組織試料112を収容する。システム100は、試料容器110に封入するトランスデューサー104に結合するように構成された結合媒体114をさらに含む。結合媒体は、システムの側壁内に保持されてもよい。試料容器110内の生体組織試料112は、必要に応じて、結合媒体114の表面116の下にあってもよい。結合媒体114は、トランスデューサー102によって放射された超音波から試料容器にエネルギーを伝達するように、トランスデューサー104と試料容器110との間に音響結合を提供し、試料容器110内の生体組織試料112から単一細胞を解離させる。
【0071】
トランスデューサーのフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子は、トランスデューサーがターゲット方向に向けられた高い側方音響電位プロファイルを有する超音波を放射することを可能にし、これにより、ターゲット方向内の流体(例えば、生体組織試料を保持する液体)の混合を可能にする。例示的なFASA素子は、米国特許第6,682,214号またはVivekら、Novel Acoustic-Wave Micromixer,Proceedings MEMS 2000,pp.668-673(2000)に記載されている。FASAは、構成波干渉によって音響波を集束する自己集束音響波トランスデューサーに基づいている。電極領域には強い超音波が生成され、超音波は伝播するにつれて互いに干渉する。これにより、ターゲット方向に存在する流体の混合が生じる。混合は、異なるFASA素子の選択的活性化を提供することによって強化され得る。すなわち、1またはそれを超えるFASA素子を独立して動作させることができる。
【0072】
FASA素子の電極は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、BaTiO、KNbOなどの圧電材料を挟むことができる。電極を通過する電流は、圧電材料を活性化し、それによってトランスデューサーに超音波を生成させる。FASA素子の電極は、1またはそれを超える環状リングセグメント内に構成される。環状リングが角度付きセグメントに分割されると、垂直および側方の音響ポテンシャルプロファイルに比例した変化が生じる。より具体的には、セクタプロファイルの角度が小さくなるほど、側方音響電位の勾配が大きくなり、垂直電位プロファイルがより分布するようになる。FASA素子の角度は、0°超~360°未満、例えば、約10°まで、約10°~約20°、約20°~約45°、約45°~約60°、約60°~約75°、約75°~約90°、約90°~約105°、約105°~約120°、約120°~約135°、約135°~約150°、約150°~約165°、約165°~約180°、約180°~約210°、約210°~約240°、約240°~約270°、約270°~約300°、約300°~約330°、または約330°~約360°未満であってもよい。いくつかの実施形態では、FASA素子の角度は、約75°~約105°である。いくつかの実施形態では、FASA素子の角度は、約90°である。
【0073】
FASA素子の電極は、1つの環状セグメント、またはフレネルレンズパターンに配置された複数の同心環状セグメントによってパターニングされている。例えば、FASA素子の電極は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれまたはそれを超える同心環状セグメントを含むことができる。FASA素子は、例えば、制御モジュールを動作させて電流を流すことによって、電極端子を介して電極に電流を流すことによって動作する。図2は、本明細書に記載のシステムのトランスデューサーと共に使用され得るFASA素子の電極パターンを示す。この例示的な実施形態におけるFASA素子200の角度は、FASA素子202および206の縁部によって定義されるように90°である。FASA素子は、複数の同心環状セグメント(例えば、204および208)から構成される電極を含む。電極は、制御モジュールが電流を駆動することができる端子210および212を含む。電極は、電流が電極を流れるときに電波を生成する圧電材料(図1参照)を挟む。
【0074】
システムのトランスデューサーは、超音波を試料容器の方向に向ける1つまたは複数のFASA素子を有することができる。例えば、トランスデューサーは、試料容器の方向に超音波を放射するように構成された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるFASA素子を含むことができる。FASA素子は、円形パターンで配置されてもよく、FASA素子の頂点は、円の中心の近位に配置される。いくつかの実施形態では、円形パターンの直径は、直径約5mm~約20mm(例えば、直径約5mm~約7mm~直径約9mm、直径約9mm~直径約11mm、直径約11mm~直径約13mm、直径約13mm~直径約15mm、直径約15mm~直径約17mm、または直径約17mm~直径約20mm)であり、トランスデューサーのFASA素子は、ギャップによって分離されてもよく、ギャップは、FASAの半径に沿って一致してもよく、またはトランスデューサー上のFASA素子の構成に応じて変化してもよい。いくつかの実施形態では、2またはそれを超えるFASA素子が重複している。
【0075】
同じトランスデューサー上の複数のFASA素子(またはFASA素子の一部)を活性化させて、同時にまたは非同時に(例えば、2またはそれを超えるFASA素子の順次または交互の活性化)超音波を生成することができる。FASA素子の活性化を適切に制御することにより、ランダムまたは制御された混合が達成される。いくつかの実施形態では、同じトランスデューサーのFASA素子の50%、または50%超が同時に活性化される。いくつかの実施形態では、同じトランスデューサーのFASA素子の75%または75%超が同時に活性化される(例えば、4つのFASA素子のうちの3つ)。いくつかの実施形態では、同じトランスデューサーのFASA素子のすべてが同時に活性化される。すべてよりも少ないFASA素子が同時に活性化される場合、1またはそれを超える非活性FASA素子は、動作中にトランスデューサーのすべてのFASA素子の間で交互になり得る。
【0076】
図3は、T1、T2、T3、およびT4としてラベル付けされた4つの90度FASA素子を有する超音波トランスデューサー300の上面図を示す。FASA素子間の小さなギャップは、FASA素子が機械的効果を効果的に組み合わせて側方方向の混合力を生成させることを可能にする。個々のFASA素子は、独立して動作してもよい。
【0077】
トランスデューサーは、絶縁されたトランスデューサーであってもよく、またはトランスデューサーアレイに配置されてもよい。トランスデューサーアレイは、複数の分離された圧電素子を含んでもよく、または、別個のトランスデューサーユニットを形成するために1またはそれを超えるFASA素子で構成される共通の(すなわち、共有されている)圧電素子を有してもよい。例示的なトランスデューサーアレイは、米国特許第8,319,398号に記載されている。図4は、各々が4つのFASA素子を有する96個のトランスデューサーユニットがその内部に配置された例示的な8×12トランスデューサーアレイを示す。任意の数のトランスデューサーを有するアレイ、例えば、アレイ内の1~1000個のトランスデューサーを使用することができる。アレイ内のトランスデューサーの数は、例えば、試料容器に使用されるマルチウェルプレートのウェルの数と一致してもよい(例えば、96個のトランスデューサーアレイを96ウェルプレートと共に使用することができる、または384個のトランスデューサーアレイを384ウェルプレートと共に使用することができる)。
【0078】
超音波を生成するために1またはそれを超える選択されたパラメータを使用してトランスデューサーのFASA素子を動作させるために、制御モジュールを使用することができる。制御モジュールは、例えば、高周波(RF)生成器を備えることができ、これはFASA素子電極を介して電流を誘導することができる。いくつかの実施形態では、制御モジュールは、RF生成器によって生成されたRF信号を増幅してトランスデューサーを動作させることができる増幅器を備える。制御モジュールはまた、例えばRF信号を制御することによって、トランスデューサーによって放射される超音波の1またはそれを超えるパラメータを調整するように構成された1またはそれを超える追加の電子回路を備えることができる。制御モジュールは、例えば、トランスデューサーから放射される超音波を制御する超音波トランスデューサーに印加されるRFエネルギーのピーク電力、パルス補充速度、RF周波数、デューティサイクル、パルス持続時間、総持続時間などを制御することができる。制御モジュールは、1またはそれを超える制御モジュールパラメータを選択するために使用され得るユーザインターフェース(これは、例えば、1またはそれを超えるボタン、スイッチ、またはデジタルインターフェースを含むことができる。)を備えることができる。FASA素子電極を流れる電気信号のパラメータは、トランスデューサーによって生成される結果として生じる超音波を制御する。FASA素子の電極に流れる駆動電流の周波数は、圧電材料の共振周波数に基づいて、超音波の生成を高めることができる(例えば、共振周波数の10%以内、20%以内、または30%以内、またはそれ以上)。駆動電流の形状は、正弦波、正方形、または任意の他の適切な形状であってもよい。
【0079】
超音波トランスデューサーに印加されるRFエネルギーを制御するための選択されたパラメータは、超音波トランスデューサーによって生成される超音波のタイプに影響を及ぼし得る。FASA素子は、混合力、懸濁力、せん断力、および加熱エネルギーのうちの1つ以上を生成するように構成することができるバルク側方超音波を生成する。混合力および懸濁力は、組織試料から単一細胞を解離させるために一般に有益であるが、せん断力は、細胞溶解をもたらす場合があり、好ましくは回避される。必要に応じて、トランスデューサーによって生成されたバルク側方超音波を、加熱エネルギーを生体組織試料に印加するように構成することができ、これを生体組織試料の温度を制御するために印加することができる。いくつかの実施形態では、超音波からのエネルギーは、生体組織試料に加熱エネルギーを印加しない。生体組織試料に印加された超音波からのエネルギーは、細胞解離プロセス中に不均一であり得る。例えば、超音波の第1の部分は、生体組織試料に加熱エネルギーを加えてもよく、超音波の第2の部分は、生体組織試料に加熱エネルギーを加えない。
【0080】
制御モジュールは、選択された繰返し率、選択されたパルス持続時間、選択されたデューティサイクル、選択されたピーク電力、選択された平均パルス電力、または選択された総持続時間のうちの1つ以上で、超音波または超音波パルス(または複数のそのようなパルス)を生成するようにトランスデューサーを動作させるように構成され得る。トランスデューサーによって生成される超音波のパラメータは、単一細胞が組織から解離するが、細胞溶解を最小限に抑えるように、容器によって保持された液体に混合力および懸濁力を加えるように選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、制御モジュールは、1またはそれを超える超音波パルスを生成するようにトランスデューサーを動作させる。超音波パルスは、例えば、トランスデューサーに印加されるRFエネルギーの繰返し率によって制御することができる選択された繰返し率で生成することができる。例えば、繰返し率は、約1Hz~約100,000Hz(例えば、約1Hz~約5Hz、約5Hz~約10Hz約10Hz~約25Hz、約25Hz~約50Hz、約50Hz~約100Hz、約100Hz~約150Hz、約150Hz~約200Hz、約200Hz~約300Hz、約300Hz~約400Hz、約400Hz~約500Hz、約500Hz~約750Hz、または約750Hz~約1000Hz、約1000Hz~約2500Hz、約2500Hz~約5000Hz、約5000Hz~約10,000Hz、約10,000Hz~約25,000Hz、約25,000Hz~約50,000Hz、または約50,000Hz~約100,000Hz)であってもよい。繰返し率は、トランスデューサーが複数の超音波パルスを放射するように動作されるときの超音波パルスの周波数を指す。いくつかの実施形態では、超音波パルスは、約0.1%~約95%(例えば、約0.1%~約0.25%、約0.25%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約2%、約2%~約3%、約3%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、または約90%~約95%)のデューティサイクルで生成される。
【0082】
超音波エネルギーが試料容器に長時間印加されると、試料容器内の細胞が溶解する可能性がある。したがって、制御モジュールは、トランスデューサーを動作させて、選択された持続時間、例えば約2秒~約90分(例えば、約2秒~約5秒、約5秒~約10秒、約10秒~約15秒、約15秒~約30秒、約30秒~約1分、約1分~約2分、約2分~約4分、約4分~約6分、約6分~約8分、約8分~約10分、約10分~約15分、約15分~約30分、約30分~約45分、約45分~約60分、約60分~約75分、または約75分~約90分)、超音波(または波パルス)を生成するように構成される。
【0083】
特定の実施形態では、システムは、結合媒体、超音波パルスからのエネルギー、またはそれらの両方を使用して生体組織試料の温度を制御するように構成される。上述のように、超音波パルスは、試料を加熱するために生体試料にエネルギーを印加するように構成することができ、または生体組織試料にエネルギーを印加するために使用される超音波の一部は、試料を加熱するように構成される。結合媒体は、生体組織試料の温度を制御するために(代替的または追加的に)使用され得る。結合媒体は、生体組織試料と熱的に結合しており、結合媒体の温度を制御することにより、生体組織試料の温度を制御することができる。例えば、結合媒体を冷却してもよく、これを使用して生体組織試料の温度を下げることができる。いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度は、生体組織試料を一定期間加熱するように構成された1またはそれを超える超音波パルスを使用して加熱され、結合流体は、生体組織試料が加熱された後に生体組織試料の温度を低下させるために使用され得る。これにより、比較的短期間、生体組織試料に制御可能に熱を加えることが可能になり、これは組織から単一細胞を解離させるのに役立ち得るが、その後、細胞が炎症誘発性および/またはストレス誘発性遺伝子の発現を制限するように、結合媒体を使用して生体組織試料の温度を下げることができる。
【0084】
システムの結合媒体は、トランスデューサーの1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する。トランスデューサーによって生成された超音波からのエネルギーは、結合流体を介して試料容器に伝達することができ、次いで、試料容器内の生体組織試料から単一細胞を解離させる。結合媒体は、流体(例えば、液体)、固体、またはゲルであってもよい。例示的な結合媒体には、水、緩衝液、油、水性ゲル、プロピレングリコール、グリセリン、またはグリコールエーテルが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0085】
システムは、結合媒体の温度を制御するように構成された温度コントローラを備えることができる。結合媒体は試料容器に熱的に結合することができるので、試料容器内の試料の温度は、結合流体の温度を制御することによって制御することができる。試料容器の温度が高くなりすぎると、細胞が溶解するか、そうでなければ生存不能になる可能性がある。しかし、温度が低すぎると、細胞が生存不能になる可能性もある。いくつかの実施形態では、結合媒体は、約2℃~約70℃(例えば、約2℃~約5℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、または約55℃~約70℃)の温度に制御される。いくつかの実施形態では、細胞解離中の試料のピーク温度は、約2℃~約80℃(例えば、約4℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、約55℃~約65℃、または約65℃~約80℃)である。いくつかの実施形態では、試料の温度は、組織試料からの細胞の解離中に、約50℃未満、約40℃未満、約30℃未満、約20℃未満、約15℃未満、約10℃未満、または約5℃未満上昇する。システムは、トランスデューサーと試料容器との間の位置と温度コントローラとの間で結合媒体を循環させることができるポンプを用いてさらに構成されてもよい。
【0086】
図5は、トランスデューサーが動作中に結合流体の温度を制御するように構成された温度コントローラおよびポンプを備える例示的なシステムを示す図である。図5において、システム500は、結合媒体510によってトランスデューサーに結合された試料容器506に向けられた超音波を生成するように構成された1またはそれを超えるFASA素子を有するトランスデューサー502を含む。トランスデューサーは、超音波を生成するために1またはそれを超えるFASA素子に電流を選択的に流すことができる制御モジュール504を使用して動作される。試料容器506は、生体組織試料508を保持するように構成されている。結合媒体510は、ポンプ512および温度コントローラ514に流体的に接続されている。システム500の動作中、結合媒体510は、ポンプ512を使用して温度コントローラ514に循環させることができ、温度コントローラ514は、結合媒体510を加温または冷却するように動作することができる。結合媒体510は試料容器506に熱的に結合されているので、温度コントローラは試料容器内の生体組織試料の温度を間接的に調節することができる。
【0087】
試料容器は、試料チューブ、ウェル、または所望の量の液体および/または生体組織試料を保持するように構成された他の適切な容器であってもよい。例えば、試料容器は、ポリスチレンまたはポリプロピレンなどのプラスチック、または任意の他の適切な材料から作製され得る標準的な実験用チューブであり得る。いくつかの実施形態では、試料容器は、試料チューブアレイ内、例えばマルチウェルプレート(例えば、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、または384ウェルプレート)内のウェル内に配置される。マルチウェルプレートは、例えば、上述のようなトランスデューサーアレイと共に使用することができる。
【0088】
上述の装置は、本明細書に記載の方法のいずれかで使用することができる。
生体組織試料から単一細胞を解離させる方法
【0089】
1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーを、生体組織試料を保持する試料容器に印加することによって、単一細胞を生体組織試料から解離させることができる。超音波パルスは、結合媒体を介して試料容器の方向に側方方向超音波エネルギーを導くことができる1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子で構成されたトランスデューサーを使用して生成することができる。結合媒体は、FASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された超音波から試料容器にエネルギーを伝達する。試料容器に印加されたエネルギーは、試料に混合力および/または懸濁力を加え、単一細胞を生体組織試料から解離させる。いくつかの実施形態では、方法は、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーが試料容器内の生体組織試料に印加されている間に、生体組織試料の温度を制御することをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度は、結合媒体、超音波パルスからのエネルギー、またはそれらの両方を使用することによって制御される。上述したように、超音波は、加熱エネルギーを生体組織試料に印加するように関係することができ、これにより、容器内の生体組織試料の温度を上昇させることができる。制御された期間にわたる温度上昇は、生体組織試料からの単一細胞の解離を増加させ得るが、長時間の加熱は、1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス関連遺伝子発現を誘発し得る。長期の熱曝露時に発現され得る例示的な炎症誘発性遺伝子またはストレス関連遺伝子としては、限定されないが、CD69、LRRK2、TNF、FOS、PDE4B、NR4A3、S100A9、S100A8、THBD、IL-1β、IL-1α、HK2、CXCL8、CXCL1、AREG、ERG2、TIMP1およびCXCR4が挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、生体組織試料の温度は、約2℃~約70℃(例えば、約2℃~約5℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、または約55℃~約70℃)に制御される。
【0092】
結合媒体の温度を制御することによって生体組織試料の温度を制御できるように、生体組織試料を結合媒体に熱的に結合させることができる。例えば、結合媒体を冷却して、生体組織試料の温度を低下させてもよい。結合媒体を介して生体組織試料を冷却することにより、例えば、試料に加熱エネルギーを印加するよう構成された超音波を用いて加熱した後の試料の温度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、結合媒体は、生体組織試料の温度を上昇させるために加温される。結合媒体の温度は、例えば、約2℃~約70℃(例えば、約2℃~約5℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、または約55℃~約70℃)に制御されてもよい。例えば、結合媒体は、温度制御された区画内に保持された液体またはゲルであってもよく、または結合媒体は、温度コントローラを介して循環されてもよい。結合媒体は、試料容器(したがって、試料チャンバ内の生体組織試料)に熱的に結合されてもよい。したがって、結合媒体の温度を制御することにより、生体組織試料自体の温度を制御することができる。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える超音波パルスは、加熱エネルギーを生体組織試料に印加するように構成され、加熱エネルギーは、生体組織試料の温度を制御するために印加され得る。いくつかの実施形態では、超音波からのエネルギーは、生体組織試料に加熱エネルギーを印加しない。生体組織試料に印加された超音波からのエネルギーは、細胞解離プロセス中に不均一であり得る。例えば、超音波の第1の部分は、生体組織試料に加熱エネルギーを加えてもよく、超音波の第2の部分は、生体組織試料に加熱エネルギーを加えない。生体組織試料は、超音波を使用して加熱され、次いで、例えば結合媒体によって冷却されて、炎症誘発性および/またはストレス誘発遺伝子の発現を制限することができる。いくつかの実施形態では、生体組織試料は、約20℃~約70℃(例えば、約20℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、または約55℃~約70℃)のピーク温度まで加熱される。
【0093】
トランスデューサーによって放射される超音波は、1またはそれを超える超音波パルスで放射されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の超音波パルスが、トランスデューサーによって放射される。複数の超音波パルスは、例えば、1Hz~約100,000Hz(例えば、約1Hz~約5Hz、約5Hz~約10Hz約10Hz~約25Hz、約25Hz~約50Hz、約50Hz~約100Hz、約100Hz~約150Hz、約150Hz~約200Hz、約200Hz~約300Hz、約300Hz~約400Hz、約400Hz~約500Hz、約500Hz~約750Hz、または約750Hz~約1000Hz、約1000Hz~約2500Hz、約2500Hz~約5000Hz、約5000Hz~約10,000Hz、約10,000Hz~約25,000Hz、約25,000Hz~約50,000Hz、または約50,000Hz~約100,000Hz)の繰返し率で生成させることができる。超音波パルスは側方方向の力を有し、生体組織からの単一細胞の解離を可能にする。
【0094】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える超音波パルスは、約0.1%~約95%(例えば、約0.1%~約0.25%、約0.25%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約2%、約2%~約3%、約3%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、または約90%~約95%)のデューティサイクルで生成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーは、約2秒~約90分(例えば、約2秒~約5秒、約5秒~約10秒、約10秒~約15秒、約15秒~約30秒、約30秒~約1分、約1分~約2分、約2分~約4分、約4分~約6分、約6分~約8分、約8分~約10分、約10分~約15分、約15分~約30分、約30分~約45分、約45分~約60分、約60分~約75分、または約75分~約90分)間、結合媒体に印加される。
【0096】
単一細胞は、生体組織試料から効率的に解離され、解離後に単一細胞のかなりの部分が生存可能なままである。本明細書で提供される方法は、単一細胞を解離させるのに十分に徹底しているが、細胞溶解を制限するのに十分に穏やかである。例えば、いくつかの実施形態では、約20%またはそれを超える、約30%またはそれを超える、約40%またはそれを超える、約50%またはそれを超える、約60%またはそれを超える、約70%またはそれを超える、約80%またはそれを超える、または約90%またはそれを超える組織から解離した単一細胞は、生体組織試料からの解離後に生存可能なままである。いくつかの実施形態では、組織から解離した細胞の約20%~約95%(例えば、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、または約90%~約95%)は、生体組織試料からの解離後も生存可能なままである。
【0097】
生体組織試料は、固体組織試料であってもよいが、単一細胞が生体組織試料から解離する前に、固体組織試料を、接着した細胞のクラスターに切り刻んでもよい。ブレンダー、メス、ハサミ、または他の適切な装置を使用して細胞を切り刻むことができるが、細胞溶解を回避するように注意する必要がある。組織は、例えば、約0.25mm~約5mm(例えば、約0.25mm~約0.5mm、約0.5mm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、または約4mm~約5mmの大きさに切り刻まれてもよい。いくつかの実施形態では、生体組織試料は、水、緩衝液、または他の適切な液体培地(例えば、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地、最小必須培地(MEM)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、またはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))などの試料容器内の液体に懸濁される。
【0098】
細胞は、細胞接合を形成することができるインテグリン、IgSF CAM、カドヘリンおよびセレクチンなどの細胞接着分子を介して組織内で互いに結合する。細胞接着分子は、例えばプロテアーゼ(例えば、トリプシン、コラゲナーゼ、および/またはディスパーゼ)を使用して酵素的に分解され得る。しかし、プロテアーゼは意図しないタンパク質を切断する可能性があるため、そのような酵素による細胞の処理は細胞生存率を低下させる可能性がある。本明細書に記載の方法は、非内因性プロテアーゼ(組織は、1またはそれを超えるプロテアーゼを天然に含み得るが、そのような内因性プロテアーゼは、一般に、単一の生細胞を組織から解離させるのに無効である)の使用なしで、生体組織試料から単一細胞を効果的に解離させることができる。いくつかの実施形態では、生体組織試料は、非内因性プロテアーゼを実質的に含まないか、または含まない。これに関連して、非内因性プロテアーゼを「実質的に含まない」とは、そのような非内因性プロテアーゼが生体組織試料から解離する単一の生細胞の割合に影響を及ぼさない限り、少量の非内因性プロテアーゼが存在し得ることを意味すると理解される。
【0099】
いくつかの実施形態では、生体組織試料は動物組織であり、例えば脊椎動物または無脊椎動物組織であり得る。例えば、組織は、哺乳動物、爬虫類、鳥類、魚類、昆虫または線虫組織であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組織は、植物組織である。いくつかの実施形態では、組織は、真核細胞を含有する。いくつかの実施形態では、細胞は、多細胞原核生物(例えば、バイオフィルム)である。いくつかの実施形態では、組織は、腫瘍組織もしくは癌組織、または生検試料である。生体組織試料は、例えば、肺、腎臓、肝臓、膵臓、胃、脳、皮膚、腸、筋肉、乳房、脾臓、膀胱、子宮、卵巣、前立腺、心臓、骨髄、または任意の他の固体組織であってもよく、病変組織または健常組織、例えば癌性組織または非癌性組織であってもよい。
組織試料から解離した細胞は、2つまたはそれを超えるタイプの異なる生細胞を含んでいてもよい。組織試料は、不均一な組織試料であってよく、異なる細胞型が、組織試料から解離され得る。例えば、癌組織試料は、マクロファージ、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および癌細胞などの複数の異なる細胞型を含んでよく、それらのうちの1つ以上は、組織試料から解離し得る。
例示的な実施形態
【0100】
以下の実施形態は例示であり、本明細書に記載の発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、例示的な実施形態が、例示的な実施形態から1またはそれを超える特徴を追加または除外することによって変更され得ることを理解することができる。
【0101】
実施形態1。生体組織試料から単一細胞を解離させる方法であって、
1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、
1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して試料容器に収容された生体組織試料に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることと、を含む方法。
【0102】
実施形態2。生体組織試料から単一細胞を解離させる方法であって、
1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーを使用して1またはそれを超える超音波パルスを生成することと、
1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを、1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合する結合媒体を介して試料容器に収容された生体組織試料に印加して、生体組織から単一細胞を解離させることと、
1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーが、生体組織試料に印加されている間に、生体組織試料の温度を制御することと、を含む、方法。
【0103】
実施形態3。生体組織試料の温度を制御することが、結合媒体の温度を制御することを含む、実施形態2に記載の方法。
【0104】
実施形態4。結合媒体の温度は、生体組織試料を冷却するか、または生体組織試料の温度上昇を制限するように制御される、実施形態3に記載の方法。
【0105】
実施形態5。結合媒体が、約2℃~約70℃の温度に制御される、実施形態3または4に記載の方法。
【0106】
実施形態6。結合媒体が、約2℃~約25℃の温度に制御される、実施形態3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態7。生体組織試料の温度を制御することが、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを使用して生体組織試料を加熱することを含む、実施形態2~6のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態8。トランスデューサーによって生成された1またはそれを超える超音波パルスの第1の部分が、生体組織試料を加熱するように構成され、トランスデューサーによって生成された1またはそれを超える超音波パルスの第2の部分が、生体組織試料を加熱しないように構成される、実施形態7に記載の方法。
【0109】
実施形態9。生体組織試料が、約20℃~約70℃のピーク温度まで加熱される、実施形態7または8に記載の方法。
【0110】
実施形態10。生体組織試料は、1またはそれを超える生成された超音波パルスから試料容器へのエネルギーの印加中に15℃よりも少なく加熱されるか、または加熱されない、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態11。生体組織試料の温度が、約2℃~約70℃に制御される、実施形態2~10のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態12。生体組織試料の温度を制御することが、生体組織試料の温度を制御しないことと比較して、1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子の発現を低下させる、実施形態2~11のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態13。1またはそれを超える炎症誘発性遺伝子またはストレス誘発性遺伝子が、CD69、LRRK2、TNF、FOS、PDE4B、NR4A3、S100A9、S100A8、THBD、IL-1β、IL-1α、HK2、CXCL8、CXCL1、AREG、ERG2、TIMP1およびCXCR4からなる群から選択される、実施形態12に記載の方法。
【0114】
実施形態14。結合媒体が、液体、固体、またはゲルである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態15。結合媒体が、液体であり、方法が、温度コントローラによって結合流体を循環させることをさらに含む、実施形態1~14に記載の方法。
【0116】
実施形態16。約20%またはそれを超える解離した単一細胞が、生存可能である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態17。解離した単一細胞の約20%~約95%が、生存可能である、実施形態16に記載の方法。
【0118】
実施形態18。2つまたはそれを超える異なるタイプの生細胞が、生体組織試料から解離される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態19。生体組織試料が、癌組織を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態20。試料に印加されたエネルギーが、試料に印加されるせん断力をもたらさない、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態21。1またはそれを超える生成された超音波パルスの、繰返し率、パルス持続時間、デューティサイクル、ピーク電力、または総持続時間のうちの1つ以上を選択することを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態22。試料に印加されるエネルギーが、試料に印加される混合力または懸濁力をもたらす、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態23。複数の超音波パルスが、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で生成される、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態24。1またはそれを超える超音波パルスが、約0.1%~約95%のデューティサイクルで生成される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態25。1またはそれを超える超音波パルスからのエネルギーが、結合媒体に約2秒間~約90分間印加される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態26。生体組織が、試料容器内の液体に懸濁される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態27。生体組織が、切り刻まれている、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態28。生体組織試料が、非内因性プロテアーゼを実質的に含まない、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態29。トランスデューサーが、4つまたはそれを超えるFASA素子を備える、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態30。生体組織試料が、保存されていない試料である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態31。生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、
1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、
生体組織試料を保持するように構成された試料容器;および
1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に送信して、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含む、方法。
【0132】
実施形態32。生体組織試料から単一細胞を解離させるためのシステムであって、
1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された1またはそれを超えるフレネル環状セクタアクチュエータ(FASA)素子を備えるトランスデューサーと、
生体組織試料を保持するように構成された試料容器であって、生体組織試料の温度を制御するように構成された試料容器と、;および
1またはそれを超えるFASA素子を試料容器に結合し、トランスデューサーによって生成された複数の超音波パルスからのエネルギーを試料容器に送信して、生体組織試料から単一細胞を解離させるように構成された結合媒体と、を含む、方法。
【0133】
実施形態33。生体試料の温度を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される、実施形態32に記載のシステム。
【0134】
実施形態34。結合媒体の温度を制御するように構成された温度コントローラをさらに備える、実施形態31~33のいずれか1つに記載のシステム。
【0135】
実施形態35。温度コントローラが、結合媒体を約2℃~約70℃の温度に制御するように構成される、実施形態34に記載のシステム。
【0136】
実施形態36。温度制御装置が、結合媒体を約2℃~約25℃の温度に冷却するように構成される、実施形態34に記載のシステム。
【0137】
実施形態37。結合媒体が液体であり、トランスデューサーと試料容器との間の位置と温度コントローラとの間で結合媒体を循環させるように構成されたポンプをさらに備える、実施形態31~36のいずれか1つに記載のシステム。
【0138】
実施形態38。システムが、1またはそれを超える生成された超音波パルスからのエネルギーを使用して生体組織試料を加熱することによって生体組織試料の温度を制御するように構成される、実施形態32~37のいずれか1つに記載のシステム。
【0139】
実施形態39。トランスデューサーは、(1)生体組織試料を加熱する1またはそれを超える超音波パルス、および(2)試料を加熱しない1またはそれを超える超音波パルスを選択的に生成するように構成される、実施形態32~38のいずれか1つに記載のシステム。
【0140】
実施形態40。1またはそれを超える超音波パルスを生成するためにトランスデューサーを動作させるように構成された制御モジュールをさらに備える、実施形態31~39のいずれか1つに記載のシステム。
【0141】
実施形態41。制御モジュールが、選択された繰返し率、選択されたパルス持続時間、選択されたデューティサイクル、選択されたピーク電力、選択された平均パルス電力、または選択された総持続時間のうちの1つ以上で、複数の超音波パルスを生成するためにトランスデューサーを動作させるように構成される、実施形態40に記載のシステム。
【0142】
実施形態42。制御モジュールが、トランスデューサーを動作させて、約1Hz~約100,000Hzの繰返し率で複数の超音波パルスを生成するように構成される、実施形態40または41に記載のシステム。
【0143】
実施形態43。制御モジュールが、約0.1%~約95%のデューティサイクルで、1またはそれを超える超音波パルスを生成するためにトランスデューサーを動作させるように構成される、実施形態40~42のいずれか1つに記載のシステム。
【0144】
実施形態44。制御モジュールが、トランスデューサーを動作させて、約2秒~約90分の総持続時間にわたって、1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される、実施形態40~43のいずれか1つに記載のシステム。
【0145】
実施形態45。制御モジュールが、トランスデューサーを動作させて超音波パルスを生成するように構成された無線周波数(RF)生成器を備える、実施形態40~44のいずれか1つに記載のシステム。
【0146】
実施形態46。制御モジュールが、せん断力が試料に加えられないように、トランスデューサーを動作させて1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成された、実施形態40~45のいずれか1つに記載のシステム。
【0147】
実施形態47。制御モジュールが、混合力または懸濁力が試料に印加されるように、トランスデューサーを動作させて1またはそれを超える超音波パルスを生成するように構成される、実施形態40~46のいずれか1つに記載のシステム。
【0148】
実施形態48。トランスデューサーは、4つまたはそれを超えるFASA素子を備える、実施形態30~47のいずれか1つに記載のシステム。
【0149】
実施形態49。システムは、複数のシステムを含むアレイ内に配置される、実施形態30~48のいずれか1つに記載のシステム。
【実施例
【0150】
本出願は、本出願の例示的な実施形態として提供される以下の非限定的な例を参照することによってよりよく理解され得る。以下の実施例は、実施形態をより完全に例示するために提示されており、決して本出願の広い範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。本出願の特定の実施形態を本明細書に示し記載したが、そのような実施形態は単なる例として提供されることは明らかであろう。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換を想到することができる。本明細書に記載の方法を実施する際に、本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替形態を使用することができることを理解されたい。
実施例1
【0151】
250μLのロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加したペトリ皿に約100mgの肝臓組織を添加することによって、3つの組織試料を調製した。肝臓組織試料を約1mm~約3mmのサイズの組織片に切り刻んだ。組織試料を試料チューブに移した。試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。水浴(すなわち、結合流体)は、チラーを25℃に設定することによって試料温度を制御した。バルク側方超音波(BLU)エネルギーを試料に印加するように、FASA素子にRFエネルギーを印加することによってFASA素子を活性化させた。4つのFASA素子のうちの3つは、時計回りに回転する非活性FASA素子内で、任意の所与の時点において活性化された。
【0152】
試料に超音波を印加した後、70μmの細胞濾過器に通し、10μLの濾液を顕微鏡で可視化した。高い超音波パルス周波数および超音波の印加の長時間の持続時間は、細胞溶解をもたらした。しかしながら、より短い持続時間でのより低いパルス周波数は、生細胞をもたらした。
実施例2
【0153】
250μLのロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加したペトリ皿に約100mgの肝臓組織を添加することによって、肝臓組織試料を調製した。肝臓組織試料を約1mm~約3mmのサイズの組織片に切り刻んだ。組織試料を試料チューブに移した。次いで、試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。水浴(すなわち、結合流体)は、チラーを25℃に設定することによって試料温度を制御した。バルク側方超音波(BLU)エネルギーを試料に印加するように、FASA素子にRFエネルギーを印加することによってFASA素子を活性化させた。4つのFASA素子のうちの3つは、時計回りに回転する非活性FASA素子内で、任意の所与の時点において活性化された。
【0154】
対照試料(肝臓組織由来)もまた、37℃での酵素解離法によって調製した。
【0155】
試料を15mL遠心チューブに別々に移し、5mLの洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA))をかけた。遠心チューブを300xgで5分間4℃で遠心分離し、上清をデカントした。ペレットを、広口オリフィス1mLピペットチップを使用して1mL洗浄緩衝液に再懸濁した後、5mLのACK(アンモニウム-塩化カリウム)溶解緩衝液を添加し、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。5mLの停止反応緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Ca2+およびMg2+を含まない)中1%BSA)を試料に添加し、次いで、これを300xgで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を除去し、得られたペレットを5mLのDPBSに懸濁した。懸濁した細胞を70μmの細胞濾過器を用いて濾過し、濾液を追加のDPBSを用いて5mLにした。懸濁細胞を混合し、600μLの試料を使用して、Vi-CELL細胞生存率分析装置を使用して細胞生存率を決定した。結果を表1に示す。
表1
【表1】
【0156】
超音波を用いて肝臓組織から解離した細胞(試験試料)の約77.5%が、肝臓組織の1mg当たり約9,800個の生細胞の収率で生存可能であった。
実施例3
【0157】
約100mgの肝臓組織または腎臓組織をペトリ皿に添加し、そこに200μLのロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加することによって、7つの肝臓組織試料(試料番号1~7)および7つの腎臓試料(試料8~14)を調製した。肝臓組織試料を、はさみまたはメスを使用して約1mm~約3mmサイズの組織片に切り刻んだ。切り刻んだ組織試料200μLを滅菌試料チューブに移した。次いで、試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。水浴(すなわち、結合流体)は、チラーを22℃に設定する(25℃の水浴を得た)ことによって試料温度を制御した。バルク側方超音波(BLU)エネルギーを試料に印加するように、FASA素子にRFエネルギーを印加することによってFASA素子を活性化させた。4つのFASA素子のうちの3つは、時計回りに回転する非活性FASA素子内で、任意の所与の時点において活性化された。表2に示すように、超音波エネルギーの印加中にピーク試料温度を測定した。
表2
【表2】
【0158】
試料を15mL遠心チューブに別々に移し、5mLの洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA))をかけた。遠心チューブを300xgで5分間4℃で遠心分離し、上清をデカントした。ペレットを、広口オリフィス1mLピペットチップを使用して1mL洗浄緩衝液に再懸濁した後、5mLのACK(アンモニウム-塩化カリウム)溶解緩衝液を添加し、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。5mLの停止反応緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Ca2+およびMg2+を含まない)中1%BSA)を試料に添加し、次いで、これを300xgで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を除去し、得られたペレットを5mLのDPBSに懸濁した。懸濁した細胞を70μmの細胞濾過器を用いて濾過し、濾液を追加のDPBSを用いて5mLにした。懸濁細胞を混合し、600μLの試料を使用して、Vi-CELL細胞生存率分析装置を使用して細胞生存率を決定した。結果を表2に示す。
実施例4
【0159】
約100mgのウサギ脾臓組織をペトリ皿に入れ、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加した。脾臓組織試料を約1mm~約3mmのサイズの組織片に切り刻んだ。切り刻んだ組織試料を滅菌試料チューブに移した。次いで、試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。バルク側方超音波エネルギーを試料に印加して、切り刻んだ脾臓組織から細胞を解離させた。
【0160】
別個に、ウサギ脾臓組織を形成する細胞を、酵素解離を用いて45分間解離させた。
【0161】
試料を15mL遠心チューブに別々に移し、5mLの洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA))をかけた。遠心チューブを300xgで5分間4℃で遠心分離し、上清をデカントした。ペレットを、広口オリフィス1mLピペットチップを使用して1mL洗浄緩衝液に再懸濁した後、5mLのACK(アンモニウム-塩化カリウム)溶解緩衝液を添加し、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。5mLの停止反応緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Ca2+およびMg2+を含まない)中1%BSA)を試料に添加し、次いで、これを300xgで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を除去し、得られたペレットを5mLのDPBSに懸濁した。懸濁した細胞を70μmの細胞濾過器を用いて濾過し、濾液を追加のDPBSを用いて5mLにした。
【0162】
バルク側方超音波を使用して解離させたウサギ脾臓組織由来の細胞と、酵素法を使用して解離させた細胞とを、フローサイトメトリー(FACS)を使用して比較した。結果を図6A図6Dに示す。図6Aおよび図6Bは、細胞集団の多様性を比較しており、バルク側方超音波(図6B)を使用して細胞を解離すると、酵素解離(図6A)と比較してより大きな細胞多様性が得られることを示している(円内の細胞集団を比較)。図6C図6Dは、生きている有核細胞(核染色によって決定される、x軸)によって示されるように、酵素解離(図6C)およびバルク側方超音波(図6D)を使用して解離した細胞の細胞生存率を比較する(y軸)。酵素解離は、約7%の生細胞をもたらしたが、バルク側方超音波解離は、約31%の生細胞をもたらした。
実施例5
【0163】
バルク側方超音波エネルギーによる患者から抽出された臨床的乳癌腫瘍からの細胞の解離を酵素解離と比較した。約100mgの乳癌組織をペトリ皿に入れ、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加した。乳癌組織試料を約1mm~約3mmの大きさの組織片に切り刻んだ。切り刻んだ組織試料を滅菌試料チューブに移した。次いで、試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。バルク側方超音波エネルギーを試料に印加して、切り刻んだ脾臓組織から細胞を解離させた。
【0164】
別途、酵素解離を用いて45分間、臨床的乳癌組織試料からなる細胞を解離させた。
【0165】
試料を15mL遠心チューブに別々に移し、5mLの洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA))をかけた。遠心チューブを300xgで5分間4℃で遠心分離し、上清をデカントした。ペレットを、広口オリフィス1mLピペットチップを使用して1mL洗浄緩衝液に再懸濁した後、5mLのACK(アンモニウム-塩化カリウム)溶解緩衝液を添加し、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。5mLの停止反応緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Ca2+およびMg2+を含まない)中1%BSA)を試料に添加し、次いで、これを300xgで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を除去し、得られたペレットを5mLのDPBSに懸濁した。懸濁した細胞を70μmの細胞濾過器を用いて濾過し、濾液を追加のDPBSを用いて5mLにした。
【0166】
両方の試料からの細胞を、フローサイトメトリー(FACS)を使用して比較し、結果を図7A(酵素解離)および図7B(バルク側方超音波エネルギー解離)に示す。図7Bに示すように、バルク側方超音波エネルギーは、癌組織からCD45-細胞、CD45+細胞、CD326-細胞、CD326+細胞、CD326+CD49f+細胞、CD326+CD166+細胞、CD3-細胞、CD3+細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、単球、ナチュラルキラー(NK細胞)およびB細胞を首尾よく解離させた。
実施例6
【0167】
バルク側方超音波エネルギーによる、マウスモデルから得られたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト乳癌異種移植片(PDX)腫瘍生検からの細胞の解離を酵素解離と比較した。約100mgのPDX組織をペトリ皿に入れ、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)培地を添加した。乳癌組織試料を約1mm~約3mmの大きさの組織片に切り刻んだ。切り刻んだ組織試料を滅菌試料チューブに移した。次いで、試料チューブを、約9mmの直径を有する円形パターンに配置された90°の角度を有する4つの独立して動作可能なFASA素子を有するトランスデューサー上に配置した。バルク側方超音波エネルギーを試料に印加して、切り刻んだ脾臓組織から細胞を解離させた。
【0168】
別個に、同様のFFPEヒト乳癌異種移植片腫瘍生検を形成する細胞を、酵素解離を用いて45分間解離させた。
【0169】
試料を15mL遠心チューブに別々に移し、5mLの洗浄緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA))をかけた。遠心チューブを300xgで5分間4℃で遠心分離し、上清をデカントした。ペレットを、広口オリフィス1mLピペットチップを使用して1mL洗浄緩衝液に再懸濁した後、5mLのACK(アンモニウム-塩化カリウム)溶解緩衝液を添加し、細胞を室温で5~7分間インキュベートした。5mLの停止反応緩衝液(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Ca2+およびMg2+を含まない)中1%BSA)を試料に添加し、次いで、これを300xgで5分間、4℃で遠心分離した。次いで、上清を除去し、得られたペレットを5mLのDPBSに懸濁した。懸濁した細胞を70μmの細胞濾過器を用いて濾過し、濾液を追加のDPBSを用いて5mLにした。
【0170】
両方の試料からの細胞を、フローサイトメトリー(FACS)を使用して比較した。酵素解離によって組織試料から解離したCD326+、CD24+細胞は、ほとんどなかった(図8A)。対照的に、かなりの数のCD326+、CD24+細胞が、バルク側方超音波エネルギーを使用して組織試料から解離した。さらに、酵素解離試料からの残留組織をバルク側方超音波エネルギーで処理すると、CD326+、CD24+細胞が首尾よく解離した(図8C)。
実施例7
【0171】
4つの45mg組織試料ブタ肝臓を得た。バルク後期超音波(BLU)波を使用して、試料の2つを細胞懸濁液に解離させた。標準的なMiltenyi酵素組織解離プロトコルを使用して、1つの試料を細胞懸濁液に解離させた。1つの試料を対照試料としてその固体組織状態で保持した。
【0172】
細胞懸濁液および固体組織試料を凍結した後、RNAを抽出し、有効な配列決定データの最小RIN値について評価した。mRNAを、TruSeq(登録商標)RNA Library Pep Kit(Illumina)を使用して配列決定のために調製し、次いで、NextSeq(登録商標)シーケンサー(Illumina)を使用して配列決定した。得られたデータを、標準的な次世代配列決定データ解析ツールを使用して配列決定した。
【0173】
図9Aは、すべての利用可能な遺伝子について、対照試料(固体組織)と比較した倍率変化を示す。バルク側方超音波(BLU)エネルギーを使用して解離した遺伝子発現プロファイルは、ほとんどの遺伝子について対照試料組織と密接に整列しているが、酵素により解離した細胞(ENZYME)の遺伝子発現はそれほど密接に整列していない。図9Bは、炎症誘発性遺伝子およびストレス誘発性遺伝子(CD69、LRRK2、TNF、FOS、PDE4B、NR4A3、S100A9、S100A8、THBD、IL-1β、IL-1α、HK2、CXCL8、CXCL1、AREG、EGR2、TIMP1およびCXCR4)について、対照試料(固体組織)と比較した倍率変化を示す。測定された炎症誘発性遺伝子およびストレス誘発性遺伝子のそれぞれについて、酵素により解離した細胞は、バルク側方超音波を使用して解離した細胞と比較して、遺伝子発現のより高い増加を示した。
【0174】
上記の説明は、説明を目的として、特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、または本開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮して、多くの変更および変形が可能である。実施形態は、技術の原理およびそれらの実際の用途を最もよく説明するために選択および記載された。それにより、他の当業者は、企図される特定の使用に適した様々な変更を伴う技術および様々な実施形態を最良に利用することが可能になる。
【0175】
本開示および実施例は、添付の図面を参照して十分に説明されているが、様々な変化および変更が当業者には明らかになるであろうことに留意されたい。そのような変化および変更は、特許請求の範囲によって定義される本開示および例の範囲内に含まれると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7A-1】
図7A-2】
図7B-1】
図7B-2】
図8
図9-1】
図9-2】
【国際調査報告】