(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体
(51)【国際特許分類】
C07K 7/54 20060101AFI20221205BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221205BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221205BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20221205BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221205BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C07K7/54 ZNA
C07K14/00
A61K47/64
A61K38/12
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520570
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 GB2020052445
(87)【国際公開番号】W WO2021064428
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ケビン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ マッド
(72)【発明者】
【氏名】プニット ウパディヤヤ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA25
4C084BA42
4C084DA27
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA05
4H045BA17
4H045BA30
4H045BA40
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、癌細胞上に存在する構成要素に結合する第一のペプチドリガンドが、リンカーを介して、免疫細胞上に存在する構成要素に結合する第二のペプチドリガンドにコンジュゲートしたものを含む、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体に関する。本発明はまた、癌の予防、抑制、又は治療における該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)癌細胞上に存在する構成要素に結合する第一のペプチドリガンド;がリンカーを介して、
(b)免疫細胞上に存在する構成要素に結合する第二のペプチドリガンド;
にコンジュゲートしたもの
:を含み、
ここで、該ペプチドリガンドの各々が少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体であって、該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が以下の第一及び第二のペプチドリガンド:
【表1】
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、B-Alaはβ-アラニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、hGluはホモグルタミン酸を表し、Nleはノルロイシンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、tBuAlaはt-ブチル-アラニンを表し、Aadはα-L-アミノアジピン酸を表し、Acはアセチル基を表し、Dapはジアミノプロピオン酸を表す)、又はその医薬として許容し得る塩
を含むことを特徴とする、前記ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項2】
前記免疫細胞が、白血球;リンパ球(例えば、Tリンパ球もしくはT細胞、B細胞、又はナチュラルキラー細胞); CD8又はCD4; CD8;樹状細胞、濾胞樹状細胞、及び顆粒球:から選択される、請求項1記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項3】
前記第二のペプチドリガンドがCD137結合二環式ペプチドリガンドを含む、請求項1又は請求項2記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項4】
前記CD137結合二環式ペプチドが配列番号67~84のペプチドのいずれかから選択される、請求項3記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項5】
前記第一のペプチドリガンドがネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドを含む、請求項1~4のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項6】
前記ネクチン-4結合二環式ペプチドが配列番号52~66のペプチドのいずれかから選択される、請求項5記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項7】
表Cに掲載されている複合体、例えば、BCY11468、BCY11618、BCY11776、BCY11860、BCY12020、BCY12661、及びBCY12969のいずれか1つから選択される、請求項5又は請求項6記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項8】
前記第一のペプチドリガンドがEphA2結合二環式ペプチドリガンドを含む、請求項1~4のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項9】
前記EphA2結合二環式ペプチドが配列番号10~51のペプチドのいずれかから選択される、請求項8記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項10】
表Bに掲載されている複合体、例えば、BCY13035、BCY13040、BCY13253、BCY13254、BCY13340、及びBCY13342のいずれか1つから選択される、請求項8又は請求項9記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項11】
前記第一のペプチドリガンドがPD-L1結合二環式ペプチドリガンドを含む、請求項1~4のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項12】
前記PD-L1結合二環式ペプチドが配列番号1~9のペプチドのいずれかから選択される、請求項11記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項13】
表Aに掲載されている複合体、例えば、BCY12375及びBCY12021のいずれか1つから選択される、請求項11又は請求項12記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項14】
前記分子スキャフォールドが1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)から選択される、請求項1~13のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項15】
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、請求項1~14のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む、医薬組成物。
【請求項17】
癌の予防、抑制、又は治療において使用するための、請求項1~15のいずれか一項記載のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、癌細胞上に存在する構成要素に結合する第一のペプチドリガンドが、リンカーを介して、免疫細胞上に存在する構成要素に結合する第二のペプチドリガンドにコンジュゲートしたものを含む、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体に関する。本発明はまた、癌の予防、抑制、又は治療における該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び標的特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005)、ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、トリス(ブロモメチル)ベンゼンのような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法は、WO 2004/077062号及びWO 2006/078161号に開示されている。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子(トリス-(ブロモメチル)ベンゼン)に共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、
(a)癌細胞上に存在する構成要素に結合する第一のペプチドリガンド;がリンカーを介して、
(b)免疫細胞上に存在する構成要素に結合する第二のペプチドリガンド;
にコンジュゲートしたもの
:を含み、
ここで、該ペプチドリガンドの各々が少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体であって、該ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が以下の第一及び第二のペプチドリガンド:
【表1】
(ここで、1Nalは1-ナフチルアラニンを表し、HArgはホモアルギニンを表し、HyPはヒドロキシプロリンを表し、B-Alaはβ-アラニンを表し、PYAは4-ペンチン酸を表し、3,3-DPAは3,3-ジフェニルアラニンを表し、Cbaはβ-シクロブチルアラニンを表し、hGluはホモグルタミン酸を表し、Nleはノルロイシンを表し、NMeAlaはN-メチル-アラニンを表し、tBuAlaはt-ブチル-アラニンを表し、Aadはα-L-アミノアジピン酸を表し、Acはアセチル基を表し、Dapはジアミノプロピオン酸を表す)、又はその医薬として許容し得る塩
を含むことを特徴とする、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
(第一のペプチドリガンド)
「癌細胞」という用語への本明細書における言及は、癌に関与することが知られている任意の細胞を含む。癌細胞は、細胞分裂の調節に関与する遺伝子が損傷を受けたときに生み出される。発癌は、増殖と細胞死との間の正常な均衡を壊す正常細胞の遺伝物質の突然変異及びエピ突然変異によって生じる。この結果として、制御されない細胞分裂及び体内での自然淘汰によるこれらの細胞の進化が起こる。制御されない、かつ多くの場合、急速な細胞増殖は、良性又は悪性腫瘍(癌)を生じさせ得る。良性腫瘍は、体の他の部分に拡大することも、他の組織に侵入することもない。悪性腫瘍は、他の器官に侵入し、遠隔部位に拡大し(転移)、生命を脅かすものとなり得る。
【0010】
一実施態様において、癌細胞は、HT1080、A549、SC-OV-3、PC3、H1376、NCI-H292、LnCap、MC38、4T1-D02、及びRKO腫瘍細胞から選択される。
【0011】
一実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、ネクチン-4である。
【0012】
ネクチン-4は、4つのメンバーを含むネクチンファミリーのタンパク質に属する表面分子である。ネクチンは、発生及び成体期における上皮、内皮、免疫、及び神経細胞の極性、増殖、分化、及び遊走などの様々な生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たす細胞接着分子である。これらは、ヒトにおけるいくつかの病理学的プロセスに関与する。これらは、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス、及び麻疹ウイルスの主要な受容体である。ネクチン-1(PVRL1)又はネクチン-4(PVRL4)をコードする遺伝子の突然変異は、他の異常と関連する外胚葉異形成症候群を引き起こす。ネクチン-4は、胎児発生期に発現される。成体組織では、その発現がファミリーの他のメンバーの発現よりも制限される。ネクチン-4は、乳癌、卵巣癌、及び肺癌の、それぞれ、50%、49%、及び86%における、主に、予後不良の腫瘍上の腫瘍関連抗原である。その発現は、対応する正常組織では検出されない。乳房腫瘍において、ネクチン-4は、主に、トリプルネガティブかつERBB2+の癌で発現される。これらの癌を有する患者の血清において、可溶性形態のネクチン-4の検出は、予後不良と関連している。血清ネクチン-4のレベルは、転移進行期に増大し、治療後に減少する。これらの結果は、ネクチン-4が癌の治療のための信頼できる標的となり得ることを示唆している。したがって、いくつかの抗ネクチン-4抗体が従来技術において記載されている。特に、エンホルツマブベドチン(ASG-22ME)は、ネクチン-4を標的とする抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、固形腫瘍に罹患している患者の治療のために、現在、臨床研究されている。
【0013】
一実施態様において、第一のペプチドリガンドは、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0014】
ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドの好適な例は、そのペプチドが引用により本明細書中に組み込まれるPCT特許出願PCT/GB2019/051740号に開示されている。
【0015】
一実施態様において、ネクチン-4結合二環式ペプチドは、本明細書に記載される配列番号52~66のペプチドのいずれかから選択される。
【0016】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、EphA2である。
【0017】
Eph受容体チロシンキナーゼ(Eph)は、タンパク質をチロシン残基上でリン酸化するキナーゼである、巨大な受容体チロシンキナーゼ(RTK)群に属する。Eph及びその膜結合型エフリンリガンド(エフリン)は、細胞配置及び組織構成を制御する(Poliakovらの文献(2004) Dev Cell 7, 465-80)。機能的及び生化学的なEph応答は、より高いリガンドオリゴマー化状態で生じる(Steinらの文献(1998) Genes Dev 12, 667-678)。
【0018】
他のパターン化機能の中で、様々なEph及びエフリンは、血管発生における役割を果たすことが示されている。EphB4及びエフリン-B2のノックアウトは、毛細血管床を再構築して、血管にする能力の欠如(Poliakovらの文献、前記)及び胚性致死をもたらす。いくつかのEph受容体及びエフリンの持続的発現は、新たに形成された成体の微小血管でも観察されている(Brantley-Siedersらの文献(2004) Curr Pharm Des 10, 3431-42; Adams(2003) J Anat 202, 105-12)。
【0019】
成体におけるいくつかのエフリン及びその受容体の脱調節された再出現も、腫瘍浸潤、転移、及び新血管新生に寄与することが観察されている(Nakamotoらの文献(2002) Microsc Res Tech 59, 58-67; Brantley-Siedersらの文献、前記)。さらに、いくつかのEphファミリーメンバーは、種々のヒト腫瘍由来の腫瘍細胞で過剰発現されることが分かっている(Brantley-Siedersらの文献、前記); Marmeの文献(2002) Ann Hematol 81 Suppl 2, S66; Boothらの文献(2002) Nat Med 8, 1360-1)。
【0020】
EPH受容体A2(エフリンタイプ-A受容体2)は、ヒトにおいてEPHA2遺伝子によってコードされるタンパク質である。
【0021】
EphA2は、疾患進行、転移、及び予後不良としばしば相関しているヒトの多数の癌、例えば:乳癌(Zelinskiらの文献(2001) Cancer Res. 61, 2301-2306; Zhuangらの文献(2010) Cancer Res. 70, 299-308; Brantley-Siedersらの文献(2011) PLoS One 6, e24426)、肺癌(Brannanらの文献(2009) Cancer Prev Res(Phila) 2, 1039-1049; Kinchらの文献(2003) Clin Cancer Res. 9, 613-618; Guoらの文献(2013) J Thorac Oncol. 8, 301-308)、胃癌(Nakamuraらの文献(2005) Cancer Sci. 96, 42-47; Yuanらの文献(2009) Dig Dis Sci 54, 2410-2417)、膵臓癌(Mudaliらの文献(2006) Clin Exp Metastasis 23, 357-365)、前立腺癌(Walker-Danielsらの文献(1999) Prostate 41, 275-280)、肝臓癌(Yangらの文献(2009) Hepatol Res. 39, 1169-1177)、及び膠芽腫(Wykoskyらの文献(2005) Mol Cancer Res. 3, 541-551; Liらの文献(2010) Tumour Biol. 31, 477-488)で上方調節されている。
【0022】
癌進行におけるEphA2の完全な役割はまだ明確にされていないが、腫瘍細胞の増殖、生存、浸潤、及び血管新生を含む癌進行の多くの段階における相互作用の証拠が存在する。EphA2発現の下方調節は、腫瘍癌細胞の増殖を抑制し(Bindaらの文献(2012) Cancer Cell 22, 765-780)、一方、EphA2の遮断は、VEGF誘導性細胞遊走(Hessらの文献(2001) Cancer Res. 61, 3250-3255)、出芽及び血管新生(Chengらの文献(2002) Mol Cancer Res. 1, 2-11; Linらの文献(2007) Cancer 109, 332-40)、並びに転移性進行(Brantley-Siedersらの文献(2005) FASEB J. 19, 1884-1886)を阻害する。
【0023】
EphA2との抗体薬物コンジュゲートは、ラット及びマウスの異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を顕著に減少させることが示されており(Jacksonらの文献(2008) Cancer Research 68, 9367-9374)、同様の手法がヒトで試みられているが、治療は、治療関連有害事象が原因で中止されなければならなかった(Annunziataらの文献(2013) Invest New drugs 31, 77-84)。
【0024】
一実施態様において、第一のペプチドリガンドは、EphA2結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0025】
EphA2結合二環式ペプチドリガンドの好適な例は、そのペプチドが引用により本明細書中に組み込まれる、WO 2019/122860号、WO 2019/122861号、及びWO 2019/122863号に開示されている。
【0026】
一実施態様において、EphA2結合二環式ペプチドリガンドは、本明細書に記載される配列番号10~51のペプチドのいずれかから選択される。
【0027】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、PD-L1である。
【0028】
プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)は、マウス第19番染色体及びヒト第9番染色体上のCD274遺伝子によってコードされた290アミノ酸のI型膜貫通タンパク質である。PD-L1発現は、慢性感染、例えば、慢性ウイルス感染(例えば、特に、HIV、HBV、HCV、及びHTLVを含む)、慢性細菌感染(例えば、特に、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)を含む)、並びに慢性寄生虫感染(例えば、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)を含む)に関与する免疫応答の回避に関与している。PD-L1発現は、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、並びに内皮細胞、肝細胞、筋細胞、及び胎盤を含む非造血細胞を含む、いくつかの組織及び細胞型で検出されている。
【0029】
PD-L1発現は、抗腫瘍免疫活性の抑制にも関与している。腫瘍は、宿主T細胞によって認識されることができる抗原を発現するが、腫瘍の免疫学的クリアランスは稀である。こうした不具合の一部は、腫瘍微小環境による免疫抑制によるものである。多くの腫瘍におけるPD-L1発現は、この抑制的環境の構成要素であり、他の免疫抑制シグナルと協調して作用する。PD-L1発現は、乳房、肺、結腸、卵巣、黒色腫、膀胱、肝臓、唾液腺、胃、神経膠腫、甲状腺、胸腺上皮、頭部、及び頸部を含む、多種多様な固形腫瘍においてインサイチュで示されている(Brown JAらの文献、2003 Immunol. 170:1257-66; Dong Hらの文献、2002 Nat. Med. 8:793-800; Hamanishi Jらの文献、2007 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-65; Strome SEらの文献、2003 Cancer Res. 63:6501-5; Inman BAらの文献、2007 Cancer 109:1499-505; Konishi Jらの文献、2004 Clin. Cancer Res. 10:5094-100; Nakanishi Jらの文献、2007 Cancer Immunol. Immunother. 56:1173-82; Nomi Tらの文献、2007 Clin. Cancer Res. 13:2151-57; Thompson RHらの文献、2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101: 17174-79; Wu Cらの文献、2006 Acta Histochem. 108:19-24)。さらに、PD-L1の受容体であるプログラム細胞死タンパク質1(PD-1及びCD279としても知られる)の発現は、腫瘍浸潤リンパ球で上方調節されており、これも腫瘍免疫抑制に寄与する(Blank Cらの文献、2003 Immunol. 171:4574-81)。最も重要なことに、腫瘍でのPD-L1発現を疾患転帰に関連付ける研究により、PD-L1発現が腎臓癌、卵巣癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、及び膵臓癌における好ましくない予後と強く相関することが示されている(Hamanishi Jらの文献、2007 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104:3360-65; Inman BAらの文献、2007 Cancer 109:1499-505; Konishi Jらの文献、2004 Clin. Cancer Res. 10:5094-100; Nakanishi Jらの文献、2007 Cancer Immunol. Immunother. 56:1173-82; Nomi Tらの文献、2007 Clin. Cancer Res. 13:2151-57; Thompson RHらの文献、2004 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:17174-79; Wu Cらの文献、2006 Acta Histochem. 108:19-24)。さらに、これらの研究により、腫瘍でのより高いレベルのPD-L1発現が腫瘍ステージの前進及びより深い組織構造への侵入を促進し得ることが示唆されている。
【0030】
PD-1経路は、血液悪性腫瘍において役割を果たすこともできる。PD-L1は、多数の骨髄腫細胞で発現されるが、正常な形質細胞では発現されない(Liu Jらの文献、2007 Blood 110:296-304)。PD-L1は、一部の原発性T細胞リンパ腫、特に、未分化大細胞Tリンパ腫で発現される(Brown JAらの文献、2003 Immunol. 170:1257-66)。PD-1は、血管免疫芽球性リンパ腫のT細胞で高度に発現され、PD-L1は、関連する濾胞樹状細胞ネットワークで発現される(Dorfman DMらの文献、2006 Am. J. Surg. Pathol. 30:802-10)。結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫において、リンパ球又は組織球(L&H)細胞と関連するT細胞は、PD-1を発現する。PD-1ライゲーションによって誘導された遺伝子の読み出しを用いるマイクロアレイ解析により、腫瘍関連T細胞がホジキンリンパ腫においてインサイチュでPD-1シグナルに応答することが示唆されている(Chemnitz JMらの文献、2007 Blood 110:3226-33)。PD-1及びPD-L1は、HTLV-1媒介性成人T細胞白血病及びリンパ腫のCD4 T細胞で発現される(Shimauchi Tらの文献、2007 Int. J. Cancer 121: 2585-90)。これらの腫瘍細胞は、TCRシグナルに低応答性である。
【0031】
動物モデルにおける研究により、腫瘍上のPD-L1がT細胞活性化及び腫瘍細胞の溶解を阻害し、場合によって、腫瘍特異的T細胞死の増加をもたらすことが示されている(Dong Hらの文献、2002 Nat. Med. 8:793-800; Hirano Fらの文献、2005 Cancer Res. 65:1089-96)。腫瘍関連APCも、抗腫瘍T細胞応答を制御するために、PD-1:PD-L1経路を利用することができる。腫瘍関連骨髄DCの集団におけるPD-L1発現は、腫瘍環境因子によって上方調節される(Curiel TJらの文献、2003 Nat. Med. 9:562-67)。B16黒色腫の腫瘍流入領域リンパ節内の形質細胞様樹状細胞(DC)は、調節性T細胞の抑制的活性を強く活性化するIDOを発現する。IDO処理された調節性T細胞の抑制的活性は、IDO発現DCとの細胞接触を必要とした(Sharma MDらの文献、2007 Clin. Invest. 117:2570-82)。
【0032】
一実施態様において、第一のペプチドリガンドは、PD-L1結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0033】
PD-L1結合二環式ペプチドリガンドの好適な例は、そのペプチドが引用により本明細書中に組み込まれる、GB特許出願1905631.6号及び1904622.6号に開示されている。
【0034】
一実施態様において、PD-L1結合二環式ペプチドは、本明細書に記載される配列番号1~9のペプチドのいずれかから選択される。
【0035】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。
【0036】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)(グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)、N-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタミン酸ペプチダーゼI(NAALADアーゼI)、及びNAAGペプチダーゼとしても知られる)は、ヒトにおいて、FOLH1(葉酸ヒドロラーゼ1)遺伝子によってコードされる酵素である。ヒトGCPIIは、750個のアミノ酸を含有し、約84kDaの重量である。
【0037】
ヒトPSMAは、他の大部分の組織よりも約100倍多く、前立腺で高度に発現される。いくつかの前立腺癌において、PSMAは、2番目に大きく上方調節される遺伝子産物であり、非癌性前立腺細胞におけるレベルよりも8~12倍増大している。この高発現のため、PSMAは、いくつかの癌の治療及びイメージングのための潜在的バイオマーカーとして開発中である。ヒト前立腺癌において、より高発現している腫瘍は、より速い進行時間及びより大きいパーセンテージの再発に苦しむ患者と関連している。
【0038】
一実施態様において、第一のペプチドリガンドは、PSMA結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0039】
PSMA結合二環式ペプチドリガンドの好適な例は、そのペプチドが引用により本明細書中に組み込まれるGB特許出願1820325.7号及び1912723.2号並びにPCT特許出願PCT/EP2019/066273号に開示されている。
【0040】
(第二のペプチドリガンド)
「免疫細胞」という用語への本明細書における言及は、免疫系内の任意の細胞を含む。好適な例としては、リンパ球(例えば、Tリンパ球もしくはT細胞、B細胞、又はナチュラルキラー細胞)などの白血球が挙げられる。一実施態様において、T細胞は、CD8又はCD4である。さらなる実施態様において、T細胞はCD8である。免疫細胞の他の例としては、樹状細胞、濾胞樹状細胞、及び顆粒球が挙げられる。
【0041】
一実施態様において、免疫細胞上に存在する構成要素は、CD137である。
【0042】
CD137は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーである。その別名は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)、4-IBB、及びリンパ球活性化により誘導されるもの(ILA)である。CD137は、活性化T細胞によって発現され得るが、大部分は、CD4+ T細胞よりもCD8+ T細胞で発現され得る。さらに、CD137発現は、樹状細胞、濾胞樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、顆粒球、及び炎症部位の血管壁の細胞で見られる。CD137の1つの特徴付けられた活性は、活性化T細胞に対するその共刺激活性である。CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存、及び細胞溶解活性を増強する。さらに、それは、免疫活性を増強して、マウスの腫瘍を消失させることができる。
【0043】
CD137は、TCR活性化時に誘導されるT細胞共刺激受容体である(Namらの文献、Curr. Cancer Drug Targets, 5:357-363(2005); Waitsらの文献、Annu. Rev, Immunol., 23:23-68(2005))。活性化CD4+及びCD8+ T細胞上でのその発現に加えて、CD137は、CD4+CD25+調節性T細胞、ナチュラルキラー(NK)及びNK-T細胞、単球、好中球、並びに樹状細胞でも発現される。その天然リガンドであるCD137Lは、B細胞、単球/マクロファージ、及び樹状細胞を含む抗原提示細胞に関して記載されている(Wattsらの文献、Annu. Rev. Immunol, 23:23-68(2005))。そのリガンドと相互作用すると、CD137は、TCR誘導性T細胞増殖の増加、サイトカイン産生、機能的成熟、及びCD8+ T細胞生存の延長をもたらす(Namらの文献、Curr. Cancer Drug Targets, 5:357-363(2005)、Wattsらの文献、Annu. Rev. Immunol, 23:23-68(2005))。
【0044】
CD137L又はCD137に対する作動性モノクローナル抗体(mAb)のいずれかによるCD137経由のシグナル伝達は、TCR誘導性T細胞増殖の増加、サイトカイン産生、及び機能的成熟、並びにCD8+ T細胞生存の延長をもたらす。これらの効果は、(1)NF-κB、c-Jun NH2-末端キナーゼ/ストレス活性化タンパク質キナーゼ(JNK/SAPK)、及びp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の活性化、並びに(2)抗アポトーシス及び細胞周期関連遺伝子発現の制御:の結果として生じる。
【0045】
CD137欠損マウスとCD137L欠損マウスの両方において実施された実験により、完全に適格なT細胞応答の発生におけるCD137共刺激の重要性がさらに示された。
【0046】
IL-2及びIL-15活性化NK細胞はCD137を発現し、作動性mAbによるCD137のライゲーションは、NK細胞増殖及びIFN-γ分泌を刺激するが、その細胞溶解活性は刺激しない。
【0047】
さらに、CD137刺激NK細胞は、インビトロでの活性化T細胞の増殖を促進する。
【0048】
その共刺激機能によれば、CD137に対するアゴニストmAbは、心臓及び皮膚の同種移植の拒絶を促進し、定着腫瘍を根絶し、一次抗ウイルスCD8+ T細胞応答を拡大し、かつT細胞細胞溶解能を増大させることが示されている。これらの研究は、CD137シグナル伝達が腫瘍及び感染に対する免疫を増強し得るT細胞機能を促進するという見解を支持する。
【0049】
一実施態様において、第二のペプチドリガンドは、CD137結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0050】
CD137結合二環式ペプチドリガンドの好適な例は、そのペプチドが引用により本明細書中に組み込まれるWO 2019/025811号に開示されている。
【0051】
一実施態様において、CD137結合二環式ペプチドは、本明細書に記載される配列番号67~84のペプチドのいずれかから選択される。
【0052】
(リンカー)
第一のペプチドリガンドは、任意の好適なリンカーを介して、第二のペプチドリガンドにコンジュゲートすることができることが理解されるであろう。典型的には、該リンカーの設計は、2つの二環式ペプチドが、単独で、又は両方の標的受容体に同時に結合しながら、そのそれぞれの標的に邪魔されずに結合することができるような形で提示されるようなものとする。さらに、リンカーは、両方の標的に同時に結合することを可能にする一方で、所望の機能的結果をもたらす標的細胞間の適切な距離を維持するべきである。リンカーの性質は、所望の機能的結果を最適化するために、長さ、剛性、又は可溶性を増大させるように調節することができる。リンカーは、同じ標的への複数の二環の結合を可能にするように設計することもできる。いずれかの結合ペプチドの価数を増大させることは、標的細胞に対するヘテロタンデムの親和性を増大させる役割を果たし得るか、又は標的受容体のうちの一方もしくは両方のオリゴマー化を誘導するのに役立ち得る。
【0053】
一実施態様において、リンカーは、以下の配列: -PEG5-及びTCA-[PEG10]3から選択される。
【0054】
これらのリンカーの構造的表示は、以下で詳述されている:
【化1】
。
【0055】
(ヘテロタンデム複合体)
1つの具体的な実施態様において、第一のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したPD-L1結合二環式ペプチドリガンドを含み、第二のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したCD137結合二環式ペプチドリガンドを含み、該ヘテロタンデム複合体は、表Aに掲載されている複合体から選択される:
表A(PD-L1:CD137; 1:1)
【表2】
【0056】
一実施態様において、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、BCY12375及びBCY12021:から選択される。
【0057】
1つの具体的な実施態様において、第一のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したEphA2結合二環式ペプチドリガンドを含み、第二のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したCD137結合二環式ペプチドリガンドを含み、該ヘテロタンデム複合体は、表Bに掲載されている複合体から選択される:
表B(EphA2:CD137; 1:1)
【表3】
【0058】
一実施態様において、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、BCY13035、BCY13040、BCY13253、BCY13254、BCY13340、及びBCY13342:から選択される。
【0059】
1つの具体的な実施態様において、第一のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドを含み、第二のペプチドリガンドは、TATAスキャフォールドに結合したCD137結合二環式ペプチドリガンドを含み、該ヘテロタンデム複合体は、表Cに掲載されている複合体から選択される:
表C(ネクチン-4:CD137; 1:1)
【表4】
【0060】
一実施態様において、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、BCY11468、BCY11618、BCY11776、BCY11860、BCY12020、BCY12661、及びBCY12969:から選択される。
【0061】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0062】
(命名法)
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端βAla-Sar10-Alaテールは:
βAla-Sar10-A-(配列番号X)
と表される。
【0063】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。誤解を避けるために、その正式名としてか又はそのアミノ酸の1文字もしくは3文字表記としてかのいずれかでのアミノ酸への言及は、別途明記されない限り、本明細書において、L-アミノ酸として表されることが意図される。そのようなアミノ酸がD-アミノ酸として表されることが意図される場合、アミノ酸に、例えば、[dA]、[dD]、[dE]、[dK]、[d1Nal]、[dNle]など、角括弧内に小文字のdが前置される。
【0064】
(ペプチドリガンド)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。典型的には、そのようなペプチドは、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、システイン、3-メルカプトプロピオン酸、及び/又はシステアミンから選択される少なくとも3つの反応基を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0065】
(反応基)
本発明の分子スキャフォールドは、ポリペプチド上の官能基又は反応基を介してポリペプチドに結合していてもよい。これらは、典型的には、ポリペプチドポリマー中に見られる特定のアミノ酸の側鎖から形成される。そのような反応基は、システイン側鎖、リジン側鎖、もしくはN-末端アミノ基、又は任意の他の好適な反応基、例えば、ペニシラミンであってもよい。好適な反応基の詳細は、WO 2009/098450号に見出すことができる。
【0066】
天然アミノ酸の反応基の例は、システインのチオール基、リジンのアミノ基、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸のカルボキシル基、アルギニンのグアニジウム基、チロシンのフェノール基、又はセリンのヒドロキシル基である。非天然アミノ酸は、アジド、ケト-カルボニル、アルキン、ビニル、又はアリールハライド基を含む広範な反応基を提供することができる。ポリペプチドの末端のアミノ及びカルボキシル基も、分子スキャフォールド/分子コアとの共有結合を形成する反応基としての役割を果たすことができる。
【0067】
本発明のポリペプチドは、少なくとも3つの反応基を含有する。該ポリペプチドは、4以上の反応基を含有することもできる。反応基をより多く使用すればするほど、より多くのループを分子スキャフォールド中に形成することができる。
【0068】
好ましい実施態様において、3つの反応基を有するポリペプチドが生成される。該ポリペプチドと3回転対称を有する分子スキャフォールド/分子コアとの反応により、単一生成物異性体が生成される。単一生成物異性体の生成は、いくつかの理由によって好ましい。化合物ライブラリーの核酸は、ポリペプチドの一次配列のみをコードするが、ポリペプチドと分子コアとの反応時に形成される異性状態の分子をコードしない。ただ1つの生成物異性体が形成されることができる場合、生成物異性体への核酸の帰属は、明確に規定される。多数の生成物異性体が形成される場合、核酸は、スクリーニング又は選択プロセスで単離された生成物異性体の性質に関する情報を与えることができない。単一生成物異性体の情報は、本発明のライブラリーの特定のメンバーが合成される場合にも有利である。この場合、ポリペプチドと分子スキャフォールドとの化学反応により、異性体の混合物ではなく、単一生成物異性体が産出される。
【0069】
別の実施態様において、4つの反応基を有するポリペプチドが生成される。該ポリペプチドと4面体対称を有する分子スキャフォールド/分子コアとの反応により、2つの生成物異性体が生成される。2つの異なる生成物異性体が1つの同じ核酸によってコードされるとしても、両方の異性体を化学合成し、2つの異性体を分離し、両方の異性体を標的リガンドとの結合について試験することにより、単離された異性体の性質を決定することができる。
【0070】
本発明の一実施態様において、ポリペプチドの反応基の少なくとも1つは、残りの反応基に対して直交性である。直交性反応基の使用は、該直交性反応基を分子コアの特定の部位に向けることを可能にする。直交性反応基が関係する連結戦略を用いて、形成される生成物異性体の数を制限することができる。言い換えると、少なくとも3つの結合のうちの残りのものに対して選択された反応基と別個の又は異なる反応基を少なくとも3つの結合のうちの1つ又は複数に対して選択することにより、分子スキャフォールド上の特定の位置へのポリペプチドの特定の反応基の特定の順序の結合又は方向付けを有効に達成することができる。
【0071】
別の実施態様において、本発明のポリペプチドの反応基は、分子リンカーと反応し、その場合、該リンカーは、該リンカーが最終的な結合状態の分子スキャフォールドとポリペプチドの間に入るように、分子スキャフォールドと反応することができる。
【0072】
いくつかの実施態様において、ポリペプチドのライブラリー又はセットのメンバーのアミノ酸は、任意の天然又は非天然アミノ酸に交換することができる。ループ配列のみが交換可能となるように、ポリペプチドを分子コアに架橋するための官能基を有するものが、これらの交換可能なアミノ酸から除外される。交換可能なポリペプチド配列は、ランダムな配列、一定の配列、又はランダムなアミノ酸と一定のアミノ酸を有する配列のいずれかを有する。これらのアミノ酸の位置がループサイズを決定するので、反応基を有するアミノ酸はいずれも、ポリペプチド内の規定の位置にある。
【0073】
一実施態様において、3つの反応基を有するポリペプチドは、配列(X)lY(X)mY(X)nY(X)oを有し、ここで、Yは、反応基を有するアミノ酸を表し、Xは、ランダムなアミノ酸を表し、m及びnは、介在するポリペプチドセグメント(これは、同じであっても異なっていてもよい)の長さを規定する3~6の数を表し、l及びoは、隣接するポリペプチドセグメントの長さを規定する0~20の数を表す。
【0074】
チオール媒介性コンジュゲーションに代わるものを用いて、共有結合的相互作用を介して、分子スキャフォールドをペプチドに結合させることができる。或いは、これらの技法は、さらなる部分(例えば、分子スキャフォールドと異なる対象となる低分子)が本発明に従って選択又は単離された後、ポリペプチドへの該さらなる部分の修飾又は結合において使用することができ-この実施態様においては、明らかに、該結合は、共有結合的である必要はなく、非共有結合的な結合を包含し得る。これらの方法は、相補的反応基を有する低分子と組み合わせて必要な化学反応基を有する非天然アミノ酸を有するタンパク質及びペプチドを提示するファージを産生することによるか、又は分子が選択/単離段階の後に作製されているときに、非天然アミノ酸を化学的にもしくは組換えにより合成されたポリペプチドに組み入れることにより、チオール媒介法の代わりに(又はそれと組み合わせて)使用することができる。さらなる詳細は、WO 2009/098450号又はHeinisらの文献、Nat Chem Biol 2009, 5(7), 502-7において見出すことができる。
【0075】
一実施態様において、反応基は、システイン、3-メルカプトプロピオン酸、及び/又はシステアミン残基から選択される。
【0076】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0077】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、2002年8月に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0078】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0079】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0080】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0081】
本発明の化合物がアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明の範囲内である。
【0082】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基のアラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0083】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0084】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端システイン基(本明細書においてCiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0085】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0086】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端システイン基(本明細書において、Ciiiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。
【0087】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0088】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0089】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0090】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドの医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0091】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0092】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0093】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びアラニンによる置換を含む。この実施態様は、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0094】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照)。
【0095】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0096】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0097】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のネクチン-4標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0098】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0099】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)試験において有用であり得る。
【0100】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0101】
(分子スキャフォールド)
分子スキャフォールドは、例えば、WO 2009/098450号及びその中で引用されている参考文献、特に、WO 2004/077062号及びWO 2006/078161号に記載されている。
【0102】
前述の文書に記載されているように、分子スキャフォールドは、低有機分子などの低分子であってもよい。
【0103】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、高分子であってもよい。一実施態様において、分子スキャフォールドは、アミノ酸、ヌクレオチド、又は炭水化物から構成される高分子である。
【0104】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、ポリペプチドの官能基と反応して、共有結合を形成することができる反応基を含む。
【0105】
分子スキャフォールドは、ペプチドとの結合を形成する化学基、例えば、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、スクシンイミド、マレイミド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含み得る。
【0106】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、特に、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(「TATA」)、もしくはその誘導体を含み得るか、又はこれらからなり得る。
【0107】
本発明の分子スキャフォールドは、本発明のコードされたライブラリーのポリペプチドの官能基が分子スキャフォールドとの共有結合を形成するのを可能にする化学基を含有する。該化学基は、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、無水物、スクシンイミド、マレイミド、アジド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含む広範な官能基から選択される。
【0108】
システインのチオール基と反応させるために分子スキャフォールド上で使用することができるスキャフォールド反応基は、ハロゲン化アルキル(又はハロゲノアルカンもしくはハロアルカンとも命名されている)である。
【0109】
例としては、ブロモメチルベンゼン又はヨードアセトアミドが挙げられる。化合物をタンパク質中のシステインに選択的にカップリングさせるために使用される他のスキャフォールド反応基は、マレイミド、αβ不飽和カルボニル含有化合物、及びα-ハロメチルカルボニル含有化合物である。本発明において分子スキャフォールドとして使用し得るマレイミドの例としては:トリス-(2-マレイミドエチル)アミン、トリス-(2-マレイミドエチル)ベンゼン、トリス-(マレイミド)ベンゼンが挙げられる。αβ不飽和カルボニル含有化合物の例は、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である(Angewandte Chemie, International Edition(2014), 53(6), 1602-1606)。α-ハロメチルカルボニル含有化合物の例は、N,N',N''-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリス(2-ブロモアセトアミド)である。セレノシステインも、システインと同様の反応性を有する天然アミノ酸であり、同じ反応に使用することができる。したがって、システインが言及されている場合はいつでも、文脈上、別のことが示唆されない限り、一般に、セレノシステインを代わりに用いることが許される。
【0110】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0111】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチドコンジュゲートに対して実施される。
【0112】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0113】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0114】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0115】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TATA)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0116】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0117】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0118】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンドを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0119】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0120】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0121】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シルコスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0122】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメータによって決まる。
【0123】
本発明のペプチドリガンドは、保存前に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0124】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメータを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0125】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を選択的に死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0126】
(治療的使用)
本発明のさらなる態様によれば、癌の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるヘテロタンデム二環式ペプチド複合体が提供される。
【0127】
治療(又は抑制)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
さらなる実施態様において、癌は、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B及びT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、並びに慢性骨髄性白血病(CML):から選択される造血器悪性腫瘍から選択される。
【0129】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0130】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって促進される。
【0131】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例】
【0132】
(実施例)
一般に、本発明のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、以下の一般的な方法に従って調製することができる:
【化2】
【0133】
二環1(1.0当量)及びNHS-PEG5-N3(1.6当量)の混合物をMeCN/H2O(1:1)に溶解させ、溶液のpHをNaHCO3(0.1M)の滴加により8に調整する。反応混合物を30℃で2時間撹拌し、その後、減圧下で濃縮して、溶媒を除去する。その後、残渣を分取HPLCにより精製すると、中間体2が得られる。
【0134】
中間体2(1.0当量)及び二環2(1.0当量)の混合物をt-BuOH/H2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO4(1.0当量)、VcNa(2.3当量)、及びTHPTA(1.0当量)を添加する。最後に、0.2M NH4HCO3を添加して、pHを8に調整する。反応混合物を、N2雰囲気下、40℃で16時間撹拌する。反応混合物を分取HPLCにより直接精製した。
【0135】
本発明の選択されたヘテロタンデム二環式ペプチド複合体のより詳細な実験は、本明細書中、以下に提供されている:
【0136】
(実施例1: BCY12375の合成)
【化3】
(パルミチン酸--PEG10-N
3の調製のための手順)
【化4】
パルミチン酸(100.0mg、282.89μmol、1.0当量)、化合物2(150.0mg、284.84μmol、1.0当量)、及びDIEA(74.5mg、574.11μmol、100.0μL、2.0当量)の混合物をDMF(2mL)に溶解させた。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 765.03、観察されたm/z: 765.22)が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。パルミチン酸--PEG10-N
3(79.0mg、99.41μmol、35.14%収率、96.27%純度)が白色の固形物として得られた。
【0137】
(パルミチン酸-PEG10-BCY12023の調製のための手順)
【化5】
化合物3(50.0mg、22.07μmol、1.0当量)、化合物2(17.0mg、22.22μmol、1.0当量)、及びTHPTA(10.0mg、23.02μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、56.0μL、1.0当量)及びVcNa(10.0mg、50.48μmol、2.3当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、パルミチン酸--PEG10-N
3が戻され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 3030.60、観察されたm/z: 1010.35([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、パルミチン酸--PEG10-BCY12023(43.0mg、13.97μmol、63.30%収率、98.46%純度)が白色の固形物として得られた。
【0138】
(パルミチン酸--PEG10-BCY12023-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化6】
化合物5(43.0mg、14.19μmol、1.0当量)、化合物6(10.0mg、23.13μmol、1.6当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 3347.94、観察されたm/z: 1673.7([(M/2+H
+])、1115.9([(M/3+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。パルミチン酸--PEG10-BCY12023-PEG5-N3(16.0mg、4.43μmol、31.25%収率、92.78%純度)が白色の固形物として得られた。
【0139】
(BCY12375の調製のための手順)
【化7】
化合物7(8.0mg、2.39μmol、1.0当量)、化合物8(6.5mg、2.39μmol、1.0当量)、及びTHPTA(1.1mg、2.53μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、6.0μL、1.0当量)及びVcNa(1.0mg、5.05μmol、2.1当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物7が戻され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 6064.08、観察されたm/z: 1516.4([M/4+H]
+)、1212.8([M/5+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12375(6.2mg、0.99μmol、41.62%収率、97.27%純度)が白色の固形物として得られた。
【0140】
(実施例2: BCY12021の合成)
【化8】
(パルミチン酸--PEG10-BCY11144の調製のための手順)
【化9】
化合物3(160.0mg、69.45μmol、1.0当量)、化合物4(56.0mg、72.20μmol、1.0当量)、及びTHPTA(35.0mg、80.55μmol、1.1当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、2mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、56.0μL、1.0当量)及びVcNa(30.0mg、151.43μmol、2.2当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 3068.70、観察されたm/z: 1533.81([M/2+H]
+)、1023.43([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、パルミチン酸--PEG10-BCY11144(150.0mg、46.83μmol、67.42%収率、95.80%純度)が白色の固形物として得られた。
【0141】
(パルミチン酸--PEG10-BCY11144-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化10】
化合物5(47.0mg、15.32μmol、1.0当量)、化合物6(7.0mg、16.19μmol、1.0当量)、及びDIEA(3.0mg、22.97μmol、4.0μL、1.5当量)の混合物をDMF(1mL)に溶解させた。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 3386.03、観察されたm/z: 1693.21([M/2+H]
+)、1129.13([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。パルミチン酸--PEG10-BCY11144-PEG5-N
3(20.0mg、5.72μmol、37.33%収率、96.79%純度)が白色の固形物として得られた。
【0142】
(BCY12021の調製のための手順)
【化11】
化合物7(10.0mg、2.95μmol、1.0当量)、化合物8(8.2mg、3.02μmol、1.0当量)、及びTHPTA(1.5mg、3.45μmol、1.1当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、8.0μL、1.0当量)及びVcNa(1.5mg、7.57μmol、2.5当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 6102.17、観察されたm/z: 1525.17([M/4+H]
+)、1221.3([M/5+H]
+))が示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12021(6.6mg、1.02μmol、34.62%収率、94.54%純度)が白色の固形物として得られた。
【0143】
(実施例3: BCY11468の合成)
【化12】
(COM113の調製のための手順)
【化13】
化合物1(50.0mg、124.4μmol、1.0当量)、EDCI(95.4mg、497.7μmol、4.0当量)、HOBt(55.5mg、410.6μmol、3.3当量)、及びDMAP(15.2mg、124.4μmol、1.0当量)の混合物を2mL DMFに溶解させ、その後、DIEA(134.9mg、1.04mmol、181.8μL、8.4当量)を添加して、均質な溶液を生成させた。次に、DMF(2mL)に溶解させた化合物2(200.0mg、379.8μmol、3.05当量)をこの溶液に滴加した。反応混合物を30℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 1891.19、観察されたm/z: 945.8600([M/2+H
+])及び612.4400([(M-3H
2O)/3+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)によりそのまま精製すると、凍結乾燥後に、COM113(161mg、85.67μmol、68%収率)が黄色の油状物として得られた。
【0144】
(COM113-BCY8928の調製のための手順)
【化14】
COM113(50.0mg、26.44μmol、1.0当量)及びBCY8928(53.0mg、23.9μmol、0.9当量)をまず2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、66.1μL、1.0当量)、VcNa(10.5mg、53.0μmol、2.0当量)、及びTHPTA(23.0mg、52.93μmol、2.0当量)を添加した。最後に、1M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。全ての溶媒を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、30℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4108.77、観察されたm/z: 1369.97([M/3+H]
+))が示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、化合物2(14.0mg、3.21μmol、12.14%収率、94.16%純度)が白色の固形物として得られた。
【0145】
(パルミチン酸NHSエステルの調製のための手順)
【化15】
パルミチン酸(500mg、1.95mmol、586.85μL、1.0当量)、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(250mg、2.17mmol、1.11当量)のDCM(5mL)溶液に、EDCI(747.60mg、3.90mmol、2.0当量)を添加した。混合物を30℃で16時間撹拌した。TLCにより、反応物1が完全に消費され、1つの新しいスポットが形成されることが示された。TLCによると、反応物はきれいであった。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、DCM:MeOH=0~100:1)により精製した。所望の生成物を乾燥させると、パルミチン酸NHSエステル(0.68g、1.92mmol、98.65%収率)が白色の固形物として得られた。
【0146】
(パルミチン酸-プロパルギルアラニンの調製のための手順)
【化16】
化合物3(120mg、339.47μmol、1.0当量)及び化合物4(57.60mg、509.20μmol、1.5当量)のDMF(6mL)溶液に、DIEA(131.62mg、1.02mmol、177.39μL、3.0当量)及びDMAP(41.47mg、339.47μmol、1.0当量)を添加した。混合物を40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、反応物3が完全に消費され、所望のm/z又は所望の質量を有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。残渣を分取HPLC(TFA条件)により精製した。パルミチン酸-プロパルギルアラニン(90mg、256.03μmol、75.42%収率)が白色の固形物として得られた。
【0147】
(COM113-BCY8928-パルミチン酸の調製のための手順)
【化17】
化合物2(14.0mg、3.41μmol、1.0当量)及び化合物3(1.1mg、3.13μmol、0.9当量)をまず2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、10.0μL、1.1当量)、VcNa(2.0mg、10.1μmol、2.9当量)、及びTHPTA(2.0mg、4.6μmol、1.3当量)を添加した。最後に、0.2M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。ここの全ての溶媒を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、35℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4460.29、観察されたm/z: 1486.92([M/3+H]
+)、1115.58([M/4+H]
+)、895.83([M/5+H]
+))が示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、化合物4(5.9mg、1.28μmol、37.66%収率、97.0%純度)が白色の固形物として得られた。
【0148】
(BCY11468の調製のための手順)
【化18】
化合物4(5.9mg、1.32μmol、1.0当量)及びBCY11016(3.0mg、1.29μmol、1当量)をまず2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、8.0μL、2.4当量)、VcNa(2.0mg、7.6当量)、及びTHPTA(2.0mg、3.5当量)を添加した。最後に、1M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。全ての溶媒を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、30℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 6783.93、観察されたm/z: 1131.7([M/6+H]
+))が示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY11468(2.2mg、0.312μmol、23.57%収率、96.16%純度)が白色の固形物として得られた。
【0149】
(実施例4: BCY11618の合成)
【化19】
(BCY8920-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化20】
BCY8920(50.0mg、23.39μmol、1.0当量)、化合物2(10.2mg、23.51μmol、1.01当量)、及びNaHCO
3(2.0mg、24.8μmol、1.0当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、2mL)に溶解させた。LC-MSにより、BCY8920が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2454.83、観察されたm/z: 1227.67([M/2+H]
+)及び818.74([M/3+H]
+))が検出されることが示されるまで、反応混合物を40℃で2時間撹拌した。その後、反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じ、その後、分取HPLC(TFA条件)により精製した。BCY8920-PEG5-N3(25mg、9.70μmol、41.47%収率、95.26%純度)が白色の固形物として得られた。
【0150】
(BCY11143-dK(パルミチン酸)の調製のための手順)
【化21】
BCY11143(30.0mg、12.84μmol、1.0当量)、化合物5(5.0mg、14.12μmol、1.1当量)、DIEA(1.7mg、12.84μmol、2.2μL、1.0当量)、及びDMAP(1.6mg、12.84μmol、1.0当量)の混合物をDMFに溶解させた。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2575.14、観察されたm/z: 1287.68([M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られ、その後、これを分取HPLC(TFA条件)により精製した。BCY11143-dK(パルミチン酸)(18.3mg、6.95μmol、54.17%収率、97.86%純度)が白色の固形物として得られた。
【0151】
(BCY11618の調製のための手順)
【化22】
化合物3(5mg、2.04μmol、1.0当量)、化合物6(5.8mg、2.3μmol、1.1当量)、及びTHPTA(0.9mg、2.07μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、5.1μL、1.0当量)及びVcNa(0.4M、5.1μL、1.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で6時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5029.97、観察されたm/z: 1257.8([M/4+H]
+)及び1006.6([M/5+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY11618(5.3mg、1.0μmol、49.15%収率、95%純度)が白色の固形物として得られた。
【0152】
(実施例5: BCY11776の合成)
【化23】
(BCY8116-Peg5-N
3の調製のための手順)
【化24】
BCY8116(50.0mg、23.39μmol、1.0当量)、化合物2(10.2mg、23.51μmol、1.01当量)、及びNaHCO
3(2.0mg、24.8μmol、1.0当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、2mL)に溶解させた。LC-MSにより、BCY8116が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2454.83、観察されたm/z: 1227.67([M/2+H
+])、818.74([M/3+H
+]))が検出されることが示されるまで、反応混合物を25℃で1時間撹拌した。その後、反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じ、その後、分取HPLC(TFA条件)により精製した。化合物3(25.0mg、9.70μmol、41.47%収率、95.26%純度)が白色の固形物として得られた。
【0153】
(化合物BCY11144-dK(パルミチン酸)の調製のための手順)
【化25】
BCY11144(50.0mg、21.7μmol、1.0当量)、化合物5(8.5mg、23.87μmol、1.1当量)、DIEA(2.81mg、21.7μmol、4.0μL、1.0当量)、及びDMAP(2.7mg、21.7μmol、1.0当量)の混合物をDMFに溶解させた。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2542.08、観察されたm/z: 1271.7([M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られ、その後、これを分取HPLC(TFA条件)により精製した。化合物6(18.3mg、6.95μmol、54.17%収率、96.68%純度)が白色の固形物として得られた。
【0154】
(BCY11776の調製のための手順)
【化26】
化合物3(10mg、4.0μmol、1.0当量)、化合物6(11.2mg、4.4μmol、1.1当量)、及びTHPTA(1.8mg、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、5.1μL、1当量)及びVcNa(0.4M、5.1μL、1当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で6時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5031.9、観察されたm/z: 1258.52([M/4+H
+])、1006.7([M/5+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY11776(12.5mg、2.4μmol、60.11%収率、96.6%純度)が白色の固形物として得られた。
【0155】
(実施例6: BCY11860の合成)
【化27】
(BCY8920-Peg5-BCY11143の調製のための手順)
【化28】
BCY8920-PEG5-N
3(20.0mg、8.15μmol、1.0当量)、化合物2(21.0mg、8.96μmol、1.1当量)、及びTHPTA(0.4M、21.0μL、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、21.0μL、1.0当量)及びVcNa(0.4M、21.0μL、1.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で4時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4791.56、観察されたm/z: 1597.28([M/3+H]
+)、1198.18([M/4+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY8920-Peg5-BCY11143(22.5mg、4.25μmol、52.13%収率、90.44%純度)が白色の固形物として得られた。
【0156】
(BCY11860の調製のための手順)
【化29】
化合物3(5.0mg、1.04μmol、1.0当量)、化合物4(1.08mg、1.15μmol、1.1当量)、及びDIEA(0.4M、1.04μmol、3.0μL、1.0当量)、及びDMAP(0.2mg、1.04μmol、1.0当量)の混合物をDMF(1.0mL)に溶解させた。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 5617.56、観察されたm/z: 1404.56([(M/4+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY11860(2.9mg、0.48μmol、45.86%収率、92.70%純度)が白色の固形物として得られた。
【0157】
(実施例7: BCY12020の合成)
【化30】
(パルミチン酸-PEG10-N
3の調製のための手順)
【化31】
パルミチン酸-NHS(100.0mg、282.89μmol、1.0当量)、化合物2(150.0mg、284.84μmol、1.0当量)、及びDIEA(74.5mg、574.11μmol、100.0μL、2.0当量)の混合物をDMF(2mL)に溶解させた。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 765.03、観察されたm/z: 765.22)が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。パルミチン酸-PEG10-N
3(79.0mg、99.41μmol、35.14%収率、96.27%純度)が白色の固形物として得られた。
【0158】
(パルミチン酸-PEG10-BCY11144の調製のための手順)
【化32】
化合物3(160.0mg、69.45μmol、1.0当量)、化合物2(56.0mg、72.20μmol、1.0当量)、及びTHPTA(35.0mg、80.55μmol、1.1当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、2mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、56.0μL、1.0当量)及びVcNa(30.0mg、151.43μmol、2.2当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 3068.70、観察されたm/z: 1533.81([M/2+H]
+)、1023.43([M/3+H]
+))が示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、パルミチン酸-PEG10-BCY11144(150.0mg、46.83μmol、67.42%収率、95.80%純度)が白色の固形物として得られた。
【0159】
(パルミチン酸-PEG10-BCY11144-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化33】
化合物5(47.0mg、15.32μmol、1.0当量)、化合物6(7.0mg、16.19μmol、1.1当量)、及びDIEA(3.0mg、22.97μmol、4.0μL、1.5当量)の混合物をDMF(1mL)に溶解させた。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 3386.03、観察されたm/z: 1693.21([M/2+H]
+)、1129.13([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。パルミチン酸-PEG10-BCY11144-PEG5-N
3(20.0mg、5.72μmol、37.33%収率、96.79%純度)が白色の固形物として得られた。
【0160】
(BCY12020の調製のための手順)
【化34】
化合物7(50.0mg、14.77μmol、1.0当量)、化合物8(35.0mg、15.06μmol、1.0当量)、及びTHPTA(10.0mg、23.02μmol、1.5当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、2mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、38.0μL、1.0当量)及びVcNa(6.5mg、32.81μmol、2.2当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5709.68、観察されたm/z: 1902.80([M/3+H]
+)、1427.56([M/4+H]
+))が示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12020(54.8mg、9.49μmol、64.24%収率、98.83%純度)が白色の固形物として得られた。
【0161】
(実施例8: BCY12661の合成)
【化35】
(化合物2の調製のための手順)
【化36】
ペプチドを標準的なFmoc化学を用いて合成した。DCMを、クロロトリチル樹脂(1mmol、0.91g、1.10mmol/g)及びFmoc-Lys(N3)-OH(1当量、395.4mg、1mmol)を含有する反応容器に、N
2バブリングしながら添加した。DIEA(4.0当量)を滴加し、2時間混合した。その後、MeOH(2mL)を添加し、30分間混合した。樹脂の水気を切り、DMFで5回洗浄した。Fmoc脱保護を20%ピペリジン/DMFの添加及び30分間の混合により行った。樹脂の水気を切り、DMFで5回洗浄した。鎖伸張のために、Fmoc-アミノ酸溶液を添加し、まず30秒間混合し、その後、活性化バッファー(DMF中にHBTU及びDIEAを含有する)を添加し、連続N
2バブリングしながら、1時間撹拌した。ペプチドが完全となるまで、脱保護及びカップリングを繰り返した。
【表5】
【0162】
最後のアミノ酸カップリングの後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。10mlの切断カクテル(95%TFA/2.5%TIS/2.5%H2O)を、側鎖保護ペプチドを含有するフラスコに室温で添加し、これを1時間撹拌した。樹脂を濾過し、濾液を濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、最終生成物の化合物2(パルミチン酸アジド)(200mg、97.78%純度、37.06%収率)が得られた。計算されたMW: 539.72、観察されたm/z: 540.4([M+H]+)。
【0163】
(BCY12023-パルミチン酸アジドの調製のための手順)
【化37】
化合物1(40.0mg、17.66μmol、1.0当量)、化合物2(9.5mg、17.66μmol、1.0当量)、及びTHPTA(8.0mg、17.66μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、45.0μL、1.0当量)及びVcNa(8.0mg、35.33μmol、2.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で4時間撹拌した。LC-MSにより、化合物1が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2804.30、観察されたm/z: 1402.8([M/2+H]
+)、935.9([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12023-パルミチン酸アジド(35.0mg、12.11μmol、68.54%収率、97.00%純度)が白色の固形物として得られた。
【0164】
(BCY12023-パルミチン酸-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化38】
化合物3(35.0mg、12.48μmol、1.0当量)、化合物4(5.4mg、12.48μmol、1.0当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 3121.63、観察されたm/z: 1561.2([(M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY12023-パルミチン酸-PEG5-N3(11.4mg、3.46μmol、27.71%収率、94.70%純度)が白色の固形物として得られた。
【0165】
(BCY12661の調製のための手順)
【化39】
化合物5(11.4mg、3.65μmol、1.0当量)、化合物6(8.3mg、3.65μmol、1.0当量)、及びTHPTA(1.6mg、3.65μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、10.0μL、1.1当量)及びVcNa(1.5mg、7.30μmol、2.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で4時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5374.21、観察されたm/z: 1344.5([M/4+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12661(9.8mg、19.63μmol、48.73%収率、97.60%純度)が白色の固形物として得られた。
【0166】
(実施例9: BCY12969の合成)
【化40】
(化合物1の調製のための一般的な手順)
【化41】
ペプチドを標準的なFmoc化学を用いて合成した。DCMを、クロロトリチル樹脂(1mmol、0.91g、1.1mmol/g)及びFmoc-γGlu(OtBu)-OH(0.425mg、1mmol、1当量)を含有する反応容器に添加し、N
2バブリングしながら混合物を撹拌した。DIEA(4.0当量)を滴加し、混合物を2時間撹拌した。その後、MeOH(4.6mL)を添加し、30分間混合した。樹脂の水気を切り、DMFで5回洗浄した。20%ピペリジン/DMFを樹脂に添加し、及び30分間混合した。樹脂の水気を切り、DMFで5回洗浄した。Fmoc-アミノ酸溶液を樹脂に添加し、30秒間混合し、その後、活性化剤及びDIEAを添加し、N2を混合物に通して1時間バブリングした。以下の試薬を用いて、脱保護及びカップリング工程を繰り返した:
注:
【表6】
【0167】
パルミチン酸のカップリング後、樹脂をMeOHで3回洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。20%HFIP/80%DCMの添加により、ペプチドを樹脂から室温で切断し、混合物を1時間撹拌した。この手順をもう1回繰り返し、その後、樹脂を濾過し、濾液を濃縮して、溶媒を除去した。粗ペプチドを凍結乾燥させると、最終生成物(280mg、84.80%純度、44.67%収率)が得られた。計算されたMW: 626.8、観察されたm/z: 627.4([M+H]+)。
【0168】
(化合物3の調製のための一般的な手順)
【化42】
化合物2(15.8mg、25.1μmol、1.1当量)のDMF(0.5mL)溶液に、EDCI(4.4mg、22.8μmol、1.0当量)を添加し、10分間撹拌した。その後、HOSu(2.9mg、25.1μmol、1.1当量)及びDIEA(8.8mg、68.5μmol、11.9μL、3当量)を混合物に添加した。混合物を25℃で16時間撹拌した。その後、DMF(0.5mL)中のBCY12358(50.0mg、22.8μmol、1.0当量)を混合物に添加し、これを25℃でもう4時間撹拌した。LC-MSにより、BCY12358が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2798.42、観察されたm/z: 1399.6[M/2+H]
+)が検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(A: H
2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、化合物3(21.9mg、7.83μmol、34.3%収率)が白色の固形物として得られた。
【0169】
(化合物5の調製のための一般的な手順)
【化43】
t-BuOH(0.5mL)及びH
2O(0.5mL)中の化合物4(20.0mg、8.03μmol、1.0当量)、化合物3(22.5mg、8.03μmol、1.0当量)、及びTHPTA(4.0mg、9.21μmol、1.15当量)の混合物を脱気し、N
2で3回パージし、その後、CuSO
4(0.4M、20.1μL、1.0当量)、VcNa(0.4M、40.2μL、2.0当量)、及びNH
4HCO
3(0.2M、80.4μL、2.0当量)を混合物に添加した。混合物を、N
2雰囲気下、30℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物4が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5288.25、観察されたm/z: 1322.3[M/4+H]
+、1763.8[M/3+H]
+)が検出されることが示された。EDTA(0.5M、20.0μL)を反応混合物に添加した。反応混合物を減圧下で濃縮すると、粗生成物の化合物5(42.0mg、粗製物)が灰色の固形物として得られ、それ以上精製することなく、次の工程に使用した。
【0170】
(BCY12969の調製のための一般的な手順)
【化44】
化合物5(42.0mg、8.22μmol、1.0当量)のDCM(0.25mL)溶液に、TFA(3.37μmol、0.25mL、458.6当量)を滴加した。混合物を30℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、化合物5が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 5176.04、観察されたm/z: 1035.7[M/5+H]
+、1294.9[M/4+H]
+、1726.8[M/3+H]
+)が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。残渣を分取HPLC(A: H
2O中の0.075%TFA、B: ACN)により精製すると、BCY12969(2.6mg、0.48μmol、5.85%収率、92.4%純度)が白色の固形物として得られた。
【0171】
(実施例10: BCY13035の合成)
【化45】
(BCY12860-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化46】
BCY12860(40.0mg、19.40μmol、1.0当量)、化合物2(10.0mg、21.34μmol、1.1当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有するピークが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY12860-PEG5-N
3(39.7mg、15.02μmol、77.41%収率、90.0%純度)が白色の固形物として得られた。MW: 2378.78、観察されたm/z: 1190.1([(M/2+H
+])、793.5([(M/3+H
+])。
【0172】
(BCY13035の調製のための手順)
【化47】
化合物3(39.7mg、16.69μmol、1.0当量)、BCY8928(41.0mg、18.36μmol、1.1当量)、及びTHPTA(0.4M、55μL、1.3当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、55μL、1.3当量)及びVcNa(0.4M、109μL、2.6当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13035(42.0mg、8.85μmol、53.04%収率、96.41%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 4596.37、観察されたm/z: 1532.9([M/3+H]
+)、1149.9([M/4+H]
+)。
【0173】
(実施例11: BCY13040の合成)
【化48】
(BCY12865-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化49】
BCY12865(30.0mg、13.99μmol、1.0当量)及び化合物1(6.1mg、14.11μmol、1.01当量)を1mLのMeCN/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、1M NaHCO
3を添加して、pHを8に調整した。混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、BCY12865が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、化合物2(15.6mg、6.32μmol、45.19%収率、99.76%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 2461.87、観察されたm/z: 1231.5([M/2+H]
+)及び821.3([M/3+H]+)。
【0174】
(BCY13040の調製のための手順)
【化50】
化合物2(15.6mg、6.34μmol、1.0当量)及びBCY8928(14.5mg、6.54μmol、1.03当量)をまず2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、16μL、1.01当量)、VcNa(3.0mg、15.14μmol、2.39当量)、及びTHPTA(3mg、6.90μmol、1.09当量)を添加した。最後に、1M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。全ての溶媒を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピークが検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13040(15.8mg、3.31μmol、52.27%収率、98.1%純度)が白色の固形物として得られた。計算されたMW: 4679.45、観察されたm/z: 1560.8([M/3+H]
+)、1170.9([M/4+H]
+)、936.6([M/5+H]
+)。
【0175】
(実施例12: BCY13253の合成)
【化51】
(BCY13119-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化52】
BCY13119(35.0mg、17.20μmol、1.0当量)、化合物2(7.8mg、18.06μmol、1.05当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 2352.74、観察されたm/z: 1177.4([(M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY13119-PEG5-N
3(25.7mg、9.97μmol、58.0%収率、91.3%純度)が白色の固形物として得られた。
【0176】
(BCY13253の調製のための手順)
【化53】
化合物3(25.7mg、10.92μmol、1.0当量)、化合物2(26.6mg、12.02μmol、1.1当量)、及びTHPTA(5.7mg、13.11μmol、1.2当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、33.0μL、1.2当量)及びVcNa(5.2mg、26.21μmol、2.4当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4570.32、観察されたm/z: 1143.4([M/4+H]
+)、914.9([M/5+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13253(17.5mg、3.67μmol、33.58%収率、95.8%純度)が白色の固形物として得られた。
【0177】
(実施例13: BCY13254の合成)
【化54】
(BCY13120-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化55】
BCY13120(40.0mg、17.92μmol、1.0当量)、化合物2(8.5mg、19.72μmol、1.1当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、BCY13120が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 2548.99、観察されたm/z: 1275.3([(M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY13120-PEG5-N
3(27.3mg、10.46μmol、58.38%収率、97.7%純度)が白色の固形物として得られた。
【0178】
(BCY13254の調製のための手順)
【化56】
化合物3(27.3mg、10.71μmol、1.0当量)、化合物2(26.1mg、11.78μmol、1.1当量)、及びTHPTA(5.6mg、12.85μmol、1.2当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させた。CuSO
4(0.4M、33.0μL、1.2当量)及びVcNa(5.2mg、26.24μmol、2.4当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4766.58、観察されたm/z: 1192.5([M/4+H]
+)、954.1([M/5+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13254(36.5mg、7.49μmol、69.92%収率、97.8%純度)が白色の固形物として得られた。
【0179】
(実施例14: BCY13340の合成)
【化57】
(BCY12865-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化58】
BCY12865(50mg、23.32μmol、1.0当量)及び化合物1(10.5mg、24.28μmol、1.04当量)を2mLのMeCN/H
2O(1:1)に溶解させ、1M NaHCO
3を添加して、pHを8に調整した。その後、混合物を25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、BCY12865が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 2461.87、観察されたm/z: 1231.6([M/2+H]
+)及び821.4([M/3+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、化合物2(31.5mg、12.62μmol、54.14%収率、98.66%純度)が白色の固形物として得られた。
【0180】
(BCY13340の調製のための手順)
【化59】
化合物2(31.5mg、12.80μmol、1.0当量)、BCY12353(27mg、12.92μmol、1.0当量)、及びTHPTA(5.7mg、13.12μmol、1.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、2mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、32μL、1.0当量)及びVcNa(5.1mg、25.74μmol、2.0当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4551.32、観察されたm/z: 1517.7([M/3+H]
+)及び1138.6([M/4+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13340(34.7mg、7.62μmol、59.59%収率、89.59%純度)が白色の固形物として得られた。
【0181】
(実施例15: BCY13342の合成)
【化60】
(BCY12860-PEG5-N
3の調製のための手順)
【化61】
BCY12860(28.0mg、13.58μmol、1.0当量)及び化合物2(6.5mg、14.94μmol、1.1当量)の混合物をMeCN/H
2O(1:1、1mL)に溶解させ、その後、この溶液のpHをNaHCO
3(0.1M)の滴加により8に調整した。反応混合物を25℃で1時間撹拌した。LC-MSにより、BCY12860が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(MW: 2378.78、観察されたm/z: 1190.2([(M/2+H
+]))が検出されることが示された。反応混合物を減圧下で濃縮すると、溶媒が除去され、残渣が生じた。その後、残渣を分取HPLC(中性条件)により精製した。BCY12860-PEG5-N
3(20.7mg、8.41μmol、61.95%収率、96.7%純度)が白色の固形物として得られた。
【0182】
(BCY13342の調製のための手順)
【化62】
化合物3(20.7mg、8.70μmol、1.0当量)、化合物4(19.0mg、9.14μmol、1.05当量)、及びTHPTA(5.0mg、11.31μmol、1.3当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、1mL、予め脱気し、N
2で3回パージしたもの)に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、28.3μL、1.3当量)及びVcNa(4.5mg、22.62μmol、2.6当量)をN
2下で添加した。この溶液のpHを0.2M NH
4HCO
3(1:1のt-BuOH/H
2O中)の滴加により8に調整すると、溶液は薄黄色になった。反応混合物を、N
2雰囲気下、25℃で2時間撹拌した。LC-MSにより、化合物3が完全に消費され、所望のm/zを有する1つの主要なピーク(計算されたMW: 4468.24、観察されたm/z: 1118.6([M/4+H]
+))が検出されることが示された。反応混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、残渣が得られた。粗生成物を分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY13342(21.7mg、4.60μmol、52.85%収率、94.7%純度)が白色の固形物として得られた。
【0183】
(分析データ)
本発明の以下のヘテロタンデム二環式ペプチド複合体を、質量分析及びHPLCを用いて分析した。HPLC設定は、次の通りであった:
移動相: A: H2O中の0.1%TFA B: ACN中の0.1%TFA
流量: 1.0ml/分
カラム: Gemini-NX C18 5um 110A 150*4.6mm
装置: Agilent 1200 HPLC-BE(1-614)
【0184】
使用された勾配は、下の表:
【表7】
に記載されており、データは、次のように作成した:
【表8】
【0185】
(生物学的データ)
(1.腫瘍細胞とのCD137レポーターアッセイ共培養)
1%FBSをRPMI-1640(PromegaキットCS196005の構成要素)に添加することにより、R1培地と呼ばれる培養培地を調製する。R1中の試験品の連続希釈物を滅菌96ウェルプレート中に調製する。ウェル当たり25μLの試験品又はR1(バックグラウンド対照として)を白色の細胞培養プレート中の指定のウェルに添加する。腫瘍細胞*を回収し、400,000細胞/mLの濃度でR1培地に再懸濁させる。25(25)μL/ウェルの腫瘍細胞を白色の細胞培養プレートに添加する。Jurkat細胞(PromegaキットCS196005、0.5mL)を水浴中で解凍し、その後、5mlの予め温めたR1培地に添加する。その後、25(25)μL/ウェルのJurkat細胞を白色の細胞培養プレートに添加する。細胞及び試験品を37℃、5%CO2で6時間インキュベートする。6時間の最後に、75μL/ウェルのBio-Glo(商標)試薬(Promega)を添加し、10分間インキュベートした後、プレートリーダー(Clariostar, BMG)で発光を読み取る。細胞のみ(Jurkat細胞+共培養で使用した細胞株)と比べた変化倍率を計算し、GraphPad Prismでlog(アゴニスト)対応答としてプロットして、EC50(nM)及びバックグラウンドに対する誘導倍率(Max)を決定する。
【0186】
共培養で使用される腫瘍細胞型は、ネクチン-4を発現することが示されているNCI-H292である。EphA2についての共培養で使用される腫瘍細胞型は、PC3である。PD-L1についての共培養で使用される腫瘍細胞型は、RKOである。
【0187】
NCI-H292細胞を用いるCD137レポーター共培養アッセイにおいてネクチン-4/CD137ヘテロタンデムペプチドによって導かれる誘導倍率のまとめが表1に示されている。全ての化合物を1.1±0.5nMの平均EC
50及びバックグラウンドに対する28±11倍のEmaxを有するプレート対照BCY10000と比較する。
表1: CD137レポーターアッセイにおいてネクチン-4/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって導かれる誘導倍率
【表9】
【0188】
PC3細胞を用いるCD137レポーター共培養アッセイにおいてEphA2/CD137ヘテロタンデムペプチドによって導かれる誘導倍率のまとめが表2に示されている。全ての化合物を0.54nMの平均EC
50及びバックグラウンドに対する42倍のEmaxを有するプレート対照BCY9173と比較する。
表2: CD137レポーターアッセイにおいてEphA2/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって導かれる誘導倍率
【表10】
【0189】
RKO細胞を用いるCD137レポーター共培養アッセイにおいてPD-L1/CD137ヘテロタンデムペプチドによって導かれる誘導倍率のまとめが表3に示されている。
表3: CD137レポーターアッセイにおいてPD-L1/CD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体によって導かれる誘導倍率
【表11】
【0190】
(2. SDラットにおけるCD137ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体の薬物動態)
雄SDラットに、25mMヒスチジンHCl、10%スクロースpH 7中に製剤化された2mg/kgの各々のヘテロタンデム二環ペプチド複合体を投与した。連続採血(約80μL血液/時点)を各々の時点で顎下又は伏在静脈から行った。血液試料を全て、2μL K2-EDTA(0.5M)を抗凝固薬として含有する予冷マイクロ遠心分離チューブにすぐに移し、濡れた氷の上に置いた。血液試料を、約4℃、3000gでの遠心分離によって、血漿用にすぐに処理した。内部標準を含む沈殿剤を血漿にすぐに添加し、十分に混合し、12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清を予めラベルが貼られたポリプロピレンマイクロ遠心分離チューブに移し、その後、ドライアイス上で急速凍結させた。試料を必要に応じて分析まで70℃以下で保存した。7.5μLの上清試料を、ポジティブイオンモードでOrbitrap Q Exactiveを用いるLC-MS/MS分析用にそのまま注入して、二環の濃度を決定した。血漿濃度対時間データを、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアプログラムを用いるノンコンパートメントアプローチによって分析した。C0、Cl、Vdss、T
1/
2、AUC(0-last)、AUC(0-inf)、MRT(0-last)、MRT(0-inf)、及び血漿濃度対時間プロファイルのグラフを報告した。実験の薬物動態パラメータは、表4に示されている通りである:
表4: SDラットにおける薬物動態パラメータ
【表12】
【手続補正書】
【提出日】2022-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】