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  • 特表-薄膜太陽電池の改良型超格子構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】薄膜太陽電池の改良型超格子構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0352 20060101AFI20221205BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01L31/04 342A
H01L29/06 601N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521163
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 IL2020050904
(87)【国際公開番号】W WO2021070169
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/911,646
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522139039
【氏名又は名称】アーベル・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARBELL ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーベル,マタン
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151AA08
5F151AA09
5F151CB11
5F151DA13
5F151FA02
(57)【要約】
薄膜太陽電池のための超格子構造体。超格子構造体は、ナノ結晶による複数の重畳された層を備え、太陽放射線により照射されると前記層に渡って電子の流れを発生するように構成される。層の各々は、略同一のサイズおよび形状を有するナノ結晶のアレイを備え、かつ、前記層の各々のナノ結晶は、他の層のナノ結晶とは異なるサイズおよび/または異なる形状を有する。前記層は、超格子構造体が異方性であるような順序でソートされる。
本発明は、超格子構造体を備える薄膜太陽電池、および超格子構造体を作製するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜太陽電池のための超格子構造体であって、前記超格子構造体は、ナノ結晶の複数の重畳された層を備えていて、太陽放射線により照射されると前記層に渡って電子の流れを発生するように構成され、前記層の各々は、略同一のサイズおよび形状を有するナノ結晶のアレイを備え、
かつ、前記層の各々の前記ナノ結晶は、他の層のナノ結晶とは異なるサイズおよび/または異なる形状を有し、
前記層は、前記超格子構造体が異方性であるような順序でソートされる、超格子構造体。
【請求項2】
前記超格子構造体は、導電性が必要とされる横方向に沿って異方性である、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項3】
前記層は、前記ナノ結晶のサイズにより、導電性が必要とされる横方向に沿って昇順または降順でソートされる、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項4】
前記層は、
-第1の形状を有するナノ結晶を備える、第1のタイプの層と、
-前記第1の形状とは異なる第2の形状を有するナノ結晶を備える、第2のタイプの層と、を備え、
前記第1のタイプの層は、前記第2のタイプの層と互い違いにされる、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項5】
前記ナノ結晶は、エネルギー的および機械的アラインメントの双方を有するような方法で、前記層内の予め決められた位置に固定される、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項6】
前記ナノ結晶は、下記の材料:
CdS、CdSe、CdTe、InP、InAs、ZnS、ZnSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InSb、Si、Ge、AlAs、AlSb、PbSe、PbS、PbTe、InGaAs、InGaN、AlInGaP、
のうちの1つまたはそれ以上で製造される、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項7】
前記ナノ結晶は、下記の材料:PbSe、PbS、PbTe、CdS、CdSe、CdTeのうちの1つまたはそれ以上で製造される、請求項1に記載の超格子構造体。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかに記載の超格子構造体を備える薄膜太陽電池であって、前記超格子構造体は、第1の導体接点と第2の導体接点との間に置かれ、前記層は、前記ナノ結晶のサイズにより昇順で前記第1の導体接点から前記第2の導体接点に向かってソートされ、よって、前記電子は、前記横方向に沿って前記第2の導体接点に向かって流れる、薄膜太陽電池。
【請求項9】
薄膜太陽電池の超格子構造体を製造するための方法であって、少なくとも、
a.第1の形状および第1のサイズを有する第1のナノ結晶のアレイを備える第1の層を堆積させるステップと、
b.前記第1の層上に、第2の形状および第2のサイズを有する第2のナノ結晶のアレイを備える第2の層を堆積させるステップであって、前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なり、かつ/または、前記第2のサイズは、前記第1のサイズとは異なる、堆積させるステップと、
c.前記第2の層上に、前記第1の形状および第3のサイズを有する第3のナノ結晶のアレイを備える第3の層を堆積させるステップと、
d.前記第3の層上に、前記第2の形状および第4のサイズを有する第4のナノ結晶のアレイを備える第4の層を堆積させるステップと、を含む方法。
【請求項10】
前記第3のサイズは、前記第1のサイズより大きく、かつ前記第4のサイズは、前記第2のサイズより大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の形状および前記第2の形状は、同一である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のサイズは、前記第2のサイズより大きく、前記第2のサイズは、前記第3のサイズより大きく、前記第3のサイズは、前記第4のサイズより大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のサイズ、前記第2のサイズ、前記第3のサイズおよび前記第4のサイズは、同一であり、かつ前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書本文
本発明は、薄膜太陽電池のための超格子構造体、超格子構造体を備える薄膜太陽電池、および超格子構造体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
既知であるように、太陽電池、すなわち光電池は、光のエネルギーを光起電力効果によって電気へと直に変換するデバイスである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
太陽電池の最も関連性の高い特性は、その効率、すなわち、太陽電池により電気に変換されることが可能な太陽光放射線形態のエネルギー部分にある。
【0004】
第1世代の太陽電池-従来の伝統的な電池またはウェーハベースの電池とも呼ばれる-は、通常、結晶シリコンで製造され、より正確には、ポリシリコンおよび単結晶シリコンなどの材料を含む。個々の従来的太陽電池は、一般に、組み合わされて、別段でソーラーパネルとして知られるモジュールを形成する。
【0005】
これらのシリコン系太陽電池は、競争力のあるコストで比較的高い効率(エネルギー変換効率に関して)を提供し、よって、今日でも商業的に優勢である。
【0006】
最新技術において、単一のp-n接合を用いる従来のシリコン系太陽電池は、最大効率約30%を有する。
【0007】
単一のp-n接合を用いるこれらの従来のシリコン系太陽電池は、「ショックレー-クワイサー限界」として知られる理論上の最大効率、33%~34%を有することが知られている。
【0008】
また、より高い効率限界を有する多接合太陽電池も知られているが、それらは、極めて高価であって製造も容易ではなく、それらのより高い複雑さおよび製造価格により、その用途は、特殊な役割に、具体的には、それらの高いパワーウエート・レシオが望まれる航空宇宙に限定されている。
【0009】
上述の効率限界に加えて、シリコン系太陽電池は、特に多用性、重量およびサイズ、生産速度、ならびに柔軟性などの特徴に関連して他の制限を有する。
【0010】
やがて、一般に薄膜太陽電池として知られる第2世代の太陽電池が開発された。
既知の薄膜太陽電池は、通常、ガラス、プラスチックまたは金属などの基板上に光起電力材料の1つまたは複数の薄層または薄膜(TF)を堆積させることによって製造される。薄膜は、通常、テルル化カドミウム(CdTe)、銅インジウムガリウムジセレニド(CIGS)およびアモルファス薄膜シリコン(a-Si、TF-Si)などの材料を含む。
【0011】
薄膜太陽電池は、膜厚が数ナノメートル(nm)~何十マイクロメートル(μm)と変わり、よって、従来のシリコン系太陽電池より遙かに薄い。これにより、薄膜太陽電池は、結晶シリコン太陽電池よりフレキシブルで、より軽量となり、よって多用性もより高い。さらに、これらの既知の薄膜太陽電池は、従来の結晶シリコン太陽電池より安価である。
【0012】
たとえば、今日、薄膜太陽電池は、建物一体型太陽光発電において、かつ、窓に積層されることが可能な半透明の光起電力グレージング材料として、一般的に使用されている。
【0013】
しかしながら、最新技術において、薄膜太陽電池は、従来の結晶シリコン太陽電池より効率が悪い。
【0014】
実際に、この既知の薄膜太陽電池は、最大効率が約10%である。
最近では、薄膜太陽電池に吸収性光起電力材料として使用されることが可能な新規材料が研究されていて、その中に超格子構造体がある。
【0015】
既知であるように、言及している超格子は、「量子ドット」または「量子ワイヤ」としても知られる数ナノメートルサイズの半導体粒子であるナノ結晶のアレイを備える、周期構造体である。より精確には、こうしたナノ結晶は、その製造材料である物質のボーア半径より小さいサイズを有し、よって、量子効果に起因する特異な光学的および電子的特性を有する。
【0016】
既知の技術によれば、光起電性の超格子は、ナノ結晶が実際にはシャッフルされている等方性構造である。
【0017】
理論上は極めて有望なものであるが、これまでに開発されているこれらの光起電性の超格子は、商業用途において有用であるに足る効率にまで達していない。
【0018】
実際のところ、最新技術において、吸収性光起電力材料として超格子を有するこの既知の薄膜太陽電池の最大効率は、約8%~12%である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明の意図は、上記の技術的課題を解決し、背景技術の欠点を取り除きかつ制限事項を克服して、従来技術より改善された効率を有する薄膜太陽電池を提供することにある。
【0020】
この意図の範囲内で、本発明の1つの目的は、競争力のあるコストで容易に製造される薄膜太陽電池を提供することにある。
【0021】
さらに、本発明の1つの目的は、高い多用性の薄膜太陽電池を提供することにある。
本発明の別の目的は、既知の解決策の代替案をも提供することにある。
【0022】
この意図、ならびにこれらの目的および以後でより明らかとなる他の目的は、薄膜太陽電池のための超格子構造体によって達成され、前記超格子構造体は、ナノ結晶の複数の重畳された層を備えていて、太陽放射線により照射されると前記層に渡って電子の流れを発生するように構成され、
前記層の各々は、略同一のサイズおよび形状を有するナノ結晶のアレイを備え、
かつ、前記層の各々のナノ結晶は、他の層のナノ結晶とは異なるサイズおよび/または異なる形状を有し、
前記層は、前記超格子構造体が異方性であるような順序でソートされる。
【0023】
この意図およびこれらの目的は、請求項8に記載の薄膜太陽電池によっても達成される。
【0024】
この意図およびこれらの目的は、請求項9に記載の超格子構造体を製造するための方法によっても達成される。
【0025】
図面の簡単な説明
本発明の上述の、ならびにさらなる特徴および利点は、添付の図面に非限定的な例として示される、本発明による超格子構造体の、および超格子構造体を含む薄膜太陽電池の好ましい、但し排他的でない実施形態に関する以下の説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による薄膜太陽電池の略図である。
図2】本発明による超格子構造体の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記図面は、本発明の基礎を成す構造をよりよく示す目的で正確な比率を反映するものではないという理由で、略図として意図されなければならないことは、留意されるべきである。
【0028】
発明の詳細な説明
引用されている諸図を参照すると、概して参照数字1で示される薄膜太陽電池は、(図2に詳述されている)超格子構造体10を備える。
【0029】
超格子構造体10は、ナノ結晶21、22、23、24、25、31、32、33、34による複数の重畳された層2A、2B、2C、2D、2E、3A、3B、3C、3Dを備え、以後でより明らかとなるように、太陽放射線Sにより照射されると前記層2A~2E、3A~3Eに渡って電子eの流れを発生するように構成される。
【0030】
超格子構造体10の図示されている非限定的な実施形態には、9つの層2A~2E、3A~3Dが存在するが、層の数は、実施形態に依存して変えられることが可能である。好ましくは、層2A~2E、3A~3Dの数は、少なくとも2つであり、より好ましくは、層2A~2E、3A~3Dの数は、超格子構造体10の厚さが0.5μm未満となるようなものである。
【0031】
各層2A~2E、3A~3Eは、(同一層内に)略同一のサイズおよび形状を有するナノ結晶21~25、31~35のアレイを備え、第1の層2Aの全てのナノ結晶21は、略同一のサイズおよび略同一の形状を有し、第2の層3Aの全てのナノ結晶31は、略同一のサイズおよび略同一の形状を有し、以下同様となる。
【0032】
本明細書本文および添付の特許請求の範囲における「形状」という用語が、ナノ結晶の単なる幾何学的形状(すなわち、幾何学的構造)を指すと理解されるものであって、そのサイズに関わらないという点を明記することは、有益である。
【0033】
全ての層2A~2E、3A~3Eは、導電性が必要とされる横断方向Yに対して垂直な平面上にある。
【0034】
言い換えれば、横方向Yは、層2A~2E、3A~3Eが存在する平面に対して垂直な横断軸Yにより画定される方向である。
【0035】
本発明によれば、層2A~2E、3A~3Eの各々のナノ結晶は、他の層2A~2E、3A~3Eのナノ結晶とは異なるサイズおよび/または異なる形状を有する。
【0036】
より精確に言えば、層2A~2E、3A~3Eは、効果的には、超格子構造体10が異方性である(すなわち、異なる方向の軸に沿って測定されると値が異なる特性を示す)ような順序でソートされる。
【0037】
さらにより精確には、超格子構造体10は、導電性が必要とされる横方向Yに沿って異方性である。
【0038】
言い換えれば、超格子構造体10は、横断方向Yに沿って異方性でありかつ他の直交する2方向に沿って等方性であるナノ結晶21~25、31~35より成るマトリクスに存する。この特徴の効果として、超格子構造体10内には、電子eが流れる選好方向(すなわち、横方向Y)が存在するが、この点については、後により明らかとなるであろう。
【0039】
たとえば、図2に示す好ましい実施形態において、第1の層2A、第3の層2B、第5の層2C、第7の層2Dおよび第9の層2E(以下、「奇数層2A~2E」)のナノ結晶21~25は、同一形状を有するが、これらのナノ結晶は、奇数層2A~2Eの各層毎に異なるサイズを有し、より精確には、ナノ結晶21~25のサイズは、横方向Yに沿って縮小し、第1の層2Aのナノ結晶21のサイズは、第3の層2Bのナノ結晶22のサイズより大きく、第3の層2Bのナノ結晶22のサイズは、第5の層2Cのナノ結晶23のサイズより大きく、以下同様である。
【0040】
同様に、第2の層3A、第4の層2B、第6の層3Cおよび第8の層3D(以下、「偶数層3A~3D」)のナノ結晶31~34は、同一形状を有するが、これらのナノ結晶31~34は、偶数層3A~3Dの各層毎に異なるサイズを有し、より精確には、ナノ結晶31~34のサイズは、横方向Yに沿って縮小し、第2の層3Aのナノ結晶31のサイズは、第4の層3Bのナノ結晶32のサイズより大きく、第4の層3Bのナノ結晶32のサイズは、第6の層3Cのナノ結晶33のサイズより大きく、以下同様である。
【0041】
よって、概して、全ての層2A~2E、3A~3Eは、ナノ結晶21~25、31~34のサイズにより、導電性が必要とされる横方向Yに沿って昇順または降順でソートされる。
【0042】
実際に、1つのナノ結晶におけるエネルギーギャップ(すなわち、電子の伝導帯の底部と価電子帯の上部との間のエネルギーの差)は、ナノ結晶のサイズに反比例し、よって、本発明によれば、超格子構造体10において、電子eは、横方向Yに沿って第1の層2Aから最後の層(本例では、第9の層2E)に向かって流れるように誘導され、逆方向には誘導されない。
【0043】
超格子構造体10内では、ナノ結晶は、それらがエネルギーアラインメントを有するような方法で予め決められた位置に固定されることは、留意されるべきである。実際には、ナノ結晶のエネルギーギャップは、(太陽放射線Sの吸収により励起される)電子eが超格子構造体10全体を横断できるようにアラインされる。
【0044】
太陽電池1の好ましい実施形態において、超格子構造体10は、第1の導体接点91と第2の導体接点92(たとえば、電極)との間に置かれ、かつ、層2A~2E、3A~3Eは、ナノ結晶のサイズにより昇順で第1の導体接点91から第2の導体接点92に向かってソートされ、よって、電子eは、横方向Yに沿って第2の導体接点92に向かって流れる(かつ必然的に、電流cは、反対方向に流れる)。
【0045】
超格子構造体10の好ましい実施形態に関して、層2A~2E、3A~3Eは、好ましくは、
-第1の形状を有するナノ結晶21~25を備える第1のタイプの層2A~2Eと、
-前記第1の形状とは異なる第2の形状を有するナノ結晶31~34を備える第2のタイプの層3A~3Dと、を備える。
【0046】
諸図を見れば理解され得るように、奇数層2A~2Eは、全て第1のタイプの層2A~2Eであり、かつ偶数層3A~3Dは、全て第2のタイプの層であって、実際には、第1のタイプの層2A~2Eは、規則的なパターンで第2のタイプの層3A~3Dと互い違いにされる。
【0047】
図示されている非限定的な例において、第1の形状(すなわち、奇数層2A~2Eのナノ結晶21~25の形状)は、16面体であり、第2の形状(すなわち、偶数層3A~3Dのナノ結晶31~34の形状)は、5面体である。
【0048】
他の実施形態(不図示)において、第1および/または第2の形状は異なり、たとえば、8面体、立方8面体、六角形、他...である。
【0049】
他の実施形態(不図示)において、全ての層2A~2E、3A~3Eの全てのナノ結晶21~25、31~34(すなわち、超格子構造体10に含まれるナノ結晶21~25、31~34の全て)は、同一形状を有し、これらの実施形態では、ナノ結晶のサイズは、異なる層内で異なり、かつ好ましくは、ナノ結晶31~34のサイズは、横方向Yに沿って縮小し、第1の層のナノ結晶のサイズは、第2の層のナノ結晶のサイズより大きく、第2の層のナノ結晶のサイズは、第3の層のナノ結晶のサイズより大きく、第3の層のナノ結晶のサイズは、第4の層のサイズより大きく、以下同様である。
【0050】
さらに他の実施形態(不図示)では、全ての層2A~2E、3A~3Eの全てのナノ結晶21~25、31~34(すなわち、超格子構造体10に含まれるナノ結晶21~25、31~34の全て)が略同一のサイズを有し、ナノ結晶の形状のみが(横方向Yに沿って)変わる。
【0051】
よって、超格子構造体10内では、ナノ結晶21~25、31~34は、それらが形状方向のアラインメントを有するような方法で予め決められた位置に固定されることは、留意されるべきである。
【0052】
より詳細には、ナノ結晶21~25、31~34の形状および方向づけは、ナノ結晶21~25、31~34がエネルギーアラインメントだけでなく機械的アラインメントも有するように規定される。
【0053】
さらにより詳細には、ナノ結晶21~25、31~34の形状および方向づけは、ナノ結晶21~25、31~34の幾何学的形状に起因する、ナノ結晶21~25、31~34の各々と、横方向Yに沿って隣接する複数のナノ結晶21~25、31~34との間のエネルギー障壁を最小にするように選択され、よって、電子eは、横方向Yに沿って最後の層(本例では第9の層2E)から第1の層2Aに向かって流れるようにさらにいっそう誘導される。
【0054】
機械的アラインメントは、層を、幾何学的互換性があるように、すなわち、最上層が最下層に嵌合してナノ結晶同士が互いに安定されるように、調整することにより達成される。
【0055】
最終的に、これらの好ましい実施形態において、ナノ結晶21~25、31~34は、エネルギー的および機械的アラインメントの双方を有するような方法で、前記層2A~2E、3A~3E内の予め決められた位置に固定される。
【0056】
効果的には、ナノ結晶21~25、31~34間のギャップおよび接続部は、ナノ結晶21~25、31~34へ連接されるリガンド分子によって制御される。
【0057】
このようなエネルギー的および機械的アラインメントの相乗的組合せの結果として、超格子構造体10内には、太陽放射線の光子の吸収の結果としてナノ結晶21~25、31~34内で励起される電子eが、横方向Yにおいて第2の導体接点92に向かって隣接するナノ結晶21~25、31~34へと「飛ぶ」(移動する)極めて高い確率が存在し、かつ、このような電子eが、他の方向で隣接する他のナノ結晶21~25、31~34へと「飛ぶ」(移動する)極めて低い確率が存在する。
【0058】
さらに、超格子構造体10内のナノ結晶21~25、31~34のサイズが特異であることの結果として、多励起子生成の確率(すなわち、単一光子の吸収が複数の電子の励起および放出をもたらす確率)の高まりがあり、よって、本発明による超格子構造体10は、ショックレー-クワイサー効率限界を超えることができる。
【0059】
さらに、ナノ結晶21~25、31~34の異なる形状およびサイズは、あらゆるタイプのナノ結晶21~25、31~34が太陽放射線Sのスペクトルの異なる部分を吸収することから、多色応答を提供し、よって、この好ましい実施形態では、吸収効率が既知の単一接合セルより高い。
【0060】
これまでに述べた効果的な効率の組合せは全て、本発明による太陽電池の好ましい実施形態では、40%超の効率に達することを可能にする。
【0061】
ナノ結晶21~25、31~34の組成について言えば、これらは、CdS、CdSe、CdTe、InP、InAs、ZnS、ZnSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InSb、Si、Ge、AlAs、AlSb、PbSe、PbS、PbTe、InGaAs、InGaN、AlInGaPなどの半導体材料で製造される。
【0062】
これらの好ましい実施形態において、ナノ結晶21~25、31~34は、以下の材料:PbSe、PbS、PbTe、CdS、CdSe、CdTeのうちの1つまたはそれ以上で製造される。
【0063】
好ましくは、全てのナノ結晶21~25、31~34は、同じ材料で製造される。
しかしながら、実施形態によっては、場合により、奇数層2A~2Eのナノ結晶21~25が、第1の材料で製造されて、偶数層3A~3Dのナノ結晶31~34が、前記第1の材料とは異なる第2の材料で製造され、よって、第1の材料製のナノ結晶21~25は、横方向Yに沿って規則的なパターンで第2の材料製のナノ結晶21~25と互い違いにされる。
【0064】
全てのナノ結晶21~25、31~34は、それらの製造材料のボーア半径より小さいサイズ(すなわち、最大寸法)を有する。
【0065】
また、本発明による超格子構造体10は、製造が極めて容易でもある。
本発明による、薄膜太陽電池1のための超格子構造体10の製造方法は、上述の特徴を有する一連の層2A~2E、3A~3Eを順に堆積するプロセスを含む。
【0066】
概して、超格子構造体10を製造する方法は、
a.第1の形状および第1のサイズを有する第1のナノ結晶21のアレイを備える第1の層2Aを堆積させるステップと、
b.前記第1の層2A上に、第2の形状および第2のサイズを有する第2のナノ結晶31のアレイを備える第2の層3Aを堆積させるステップであって、前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なり、かつ/または、前記第2のサイズは、前記第1のサイズとは異なる、堆積させるステップと、
c.前記第2の層3A上に、前記第1の形状および第3のサイズを有する第3のナノ結晶22のアレイを備える第3の層2Bを堆積させるステップであって、前記第3のサイズは、好ましくは前記第1のサイズとは異なる(かつさらにより好ましくは、前記第1のサイズより大きい)、堆積させるステップと、
d.前記第3の層2B上に、前記第2の形状および第4のサイズを有する第4のナノ結晶32のアレイを備える第4の層3Bを堆積させるステップであって、前記第4のサイズは、好ましくは前記第2のサイズとは異なる(かつさらにより好ましくは、前記第2のサイズより大きい)、堆積させるステップと、
以下同様の、予め決められた数の層2A~2E、3A~3Eが達成されるまで行われる堆積させるステップと、を含む。
【0067】
これらの好ましい実施形態において、前記第2の形状は、前記第1の形状とは異なる。
他の実施形態において、前記第1の形状および前記第2の形状は同一であって、好ましくは、前記第1のサイズは、前記第2のサイズより大きく、前記第2のサイズは、前記第3のサイズより大きく、前記第3のサイズは、前記第4のサイズより大きく、以下同様である。
【0068】
前記第2の形状が前記第1の形状とは異なる実施形態の一部において、前記第1のサイズ、前記第2のサイズ、前記第3のサイズおよび前記第4のサイズは同一である(よって、全てのナノ結晶のサイズが同一である)。
【0069】
場合により、第1の層は、ITOおよびFTOなどの(但しこれらに限定されない)透明な導電体上に堆積される。
【0070】
場合により、最後の層2Eの上に、導体接点91(たとえば、電極)が置かれる。
層2A~2E、3A~3Eは、インクジェット技術、原子層堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、キャストコーティング相分離、他などの、均一かつコンフォーマルな薄膜を堆積させることができる任意の既知技術によって堆積されることが可能である。
【0071】
実施形態によっては、薄膜太陽電池1は、超格子構造体10に加えて、他の活性層(技術上既知であるもの)を備える。
【0072】
超格子構造体、および超格子構造体を備える薄膜太陽電池の動作は、これまでに述べたことから明らかである。
【0073】
実際には、本発明による超格子構造体が、従来技術に比べて薄膜太陽電池の効率向上を可能にするという理由で、意図された目標および目的を達成することが分かっている。
【0074】
本発明による超格子構造体の別の利点は、多用性の高い薄膜太陽電池の提供を可能にすることにある。
【0075】
本発明による超格子構造体のさらなる利点は、信頼性が高く、比較的容易に、かつ競争力のあるコストで製造されることにある。
【0076】
さらに、本発明による超格子構造体は、既知のソリューションの代替案を提供する。
このようにして考案される本発明は、その全てが本発明概念の範囲に含まれる多くの変更および変形が可能であり、全ての詳細は、技術的に等価な他のエレメントでさらに置き換えられてもよい。
【0077】
実際には、使用される材料、ならびに大きさは、要件および最新技術にしたがって如何なるものであってもよい。
【0078】
任意のクレームにおいて言及される技術的特徴に参照符号が続いている場合、これらの参照符号は、単にクレームの了解度を高める目的で付されるものであり、したがって、参照符号の有無は、これまでに述べた技術的特徴または如何なるクレームエレメントの範囲に対しても限定的効果を及ぼすものではない。
【0079】
したがって、本発明の範囲は、上述の明細書本文ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、よって、特許請求の範囲と等価の意味および範囲内にある変化は全て、本発明に包含されることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】