(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】焦点距離を調整可能なレンズとそれを組み込んだアイウェア
(51)【国際特許分類】
G02C 7/08 20060101AFI20221205BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20221205BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20221205BHJP
G02C 5/14 20060101ALI20221205BHJP
G02C 5/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G02C7/08
G02C7/02
G02C11/00
G02C5/14
G02C5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521200
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 GB2020052533
(87)【国際公開番号】W WO2021069930
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515210673
【氏名又は名称】アドレンズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADLENS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】パーキンス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エッジントン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】マッサー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006CA04
(57)【要約】
焦点距離を調整可能なアイウェアは、ユーザの眼前にレンズを支持するフレームに取り付けられ、少なくとも一方が可変焦点距離レンズである、横方向の相対配置に応じて焦点距離を変えるように成形されている協働する光学表面を有する2つの重ねられているレンズ要素を備える。一方の固定レンズ要素はフレームに固定的に取り付けられ、他方の可動レンズ要素はレンズの焦点距離を変えるために固定レンズ要素に対して手動により移動可能である。可動レンズ要素にはガイド部品が設けられ、固定レンズ要素もしくはフレーム上の対応するガイド部品と協働して、固定レンズ要素に対する移動を視線方向と交差して延びる横断経路に画定し且つ拘束する。固定レンズ要素に対する横断経路に沿う可動レンズ要素の移動を可能にしながら、固定レンズ要素もしくはフレームに可動レンズ要素を解放可能に固定する、1つまたは複数の解放可能なファスナが提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点距離を調整可能なアイウェアであって、ユーザの眼前に支持するためのフレームに取り付けられることにより視線方向を画定する2つのレンズを備え、
前記レンズの少なくとも一方は、相対的な横方向の配置に応じて焦点距離を変えるように成形されている協働する光学表面を有する2つの重ねられているレンズ要素を備えている種類の可変焦点距離レンズであり、
前記レンズ要素の一方は、固定レンズ要素として前記フレームに固定的に取り付けられ、前記レンズ要素の他方は、前記可変焦点距離レンズの前記焦点距離を変えるために、可動レンズ要素として前記固定レンズ要素に対して手動で移動可能であり、
ガイド部品は、前記可動レンズ要素上に設けられ、前記固定レンズ要素もしくは前記フレーム上の対応するガイド部品と協働して、前記固定レンズ要素に対する前記可動レンズ要素の移動を前記視線方向に交差して延びる横断経路に画定し且つ拘束し、
前記横断経路に沿う前記可動レンズ要素の前記固定レンズ要素に対する移動を可能にしながら、前記固定レンズ要素もしくはフレームに前記可動レンズ要素を解放可能に固定する1つまたは複数の解放可能なファスナを備え、前記1つまたは複数の解放可能なファスナは、前記可動レンズ要素および前記固定レンズ要素上に相互に協働する部品を備えている、焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項2】
前記レンズ上の前記視線方向を横断する方向に離間されている少なくとも2つの解放可能なファスナを含む、請求項1に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項3】
前記1つまたは複数の解放可能なファスナは、前記固定および可動レンズ要素上の弾力的相互係合形成を含む1つまたは複数の分離可能な機械的ファスナを含み、前記レンズ要素を前記視線方向に引き離すように促す分離力が漸増して加えられると、最初は前記可動レンズ要素の前記横断経路に沿う移動を可能にしながら前記レンズ要素の分離に抵抗し、最終的に変形して前記弾力的相互係合形成を相互に分離させ、それによって前記固定レンズ要素からの前記可動レンズ要素の取外しを可能とする、請求項1または2に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項4】
前記1つまたは複数の機械的ファスナは、前記レンズ要素が前記横断経路の方向に解放可能に一緒に保持される前記横断経路内の1つまたは複数の個別の戻り止め位置を画定し、その結果、前記レンズ要素を前記横断経路に沿ってスライドさせるために前記戻り止め位置から解放する追加の力が必要とされる、請求項1または2に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項5】
前記1つまたは複数の解放可能なファスナは、前記可動レンズ要素および前記固定レンズ要素もしくは前記フレーム上の相互に協働する個別の磁気部品を含む1つまたは複数の分離可能な磁気ファスナを含む。請求項1または2に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項6】
前記可動レンズ要素および前記固定レンズ要素もしくはフレーム上の前記相互に協働する個別の磁気部品は、前記固定レンズ要素に対する前記可動レンズ要素の少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項5に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項7】
前記可動レンズ要素と前記固定レンズ要素もしくはフレームとの間に2つ以上の磁気ファスナを含み、前記2つ以上の磁気ファスナは、前記固定レンズ要素に対する前記横断経路に沿う前記可動レンズ要素の少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項5または6に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項8】
前記1つまたは複数の磁気ファスナは、前記固定レンズ要素に対する前記横断経路に沿う前記可動レンズ要素の3箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項5または6に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項9】
前記または各磁気ファスナは、前記可動レンズ要素または前記固定レンズ要素もしくはフレームの一方上の個別磁気部品のグループと、前記固定レンズ要素もしくはフレームまたは前記可動レンズ要素の他方上の少なくとも1つの協働する磁気部品とを含み、前記可動レンズ要素および前記固定レンズ要素もしくはフレーム上の磁気部品は、必要に応じて、前記固定レンズ要素に対する前記横断経路に沿う前記可動レンズ要素の手動による移動と、前記固定レンズ要素もしくはフレームからの前記可動レンズ要素の手動による取外しとを可能にしながら、前記固定レンズ要素もしくはフレームに前記可動レンズ要素を取り付けるため相互に引き付け合う、請求項5~8のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項10】
前記グループの磁気部品は、前記横断経路に沿って離間している、請求項9に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項11】
前記グループ内の前記磁気部品および/または協働する前記磁気部品は、永久磁石を含む、請求項9または10に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項12】
前記可動レンズ要素上の前記ガイド部品および前記固定レンズ要素もしくはフレーム上の協働する前記ガイド部品は、前記横断経路を画定する少なくとも2つの直線状または曲線状のガイドを形成する、請求項1~11のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項13】
前記ガイドは、前記レンズ上の前記横断経路の方向に離間されている、請求項12に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項14】
各ガイドは、前記レンズ要素の一方上のダボと、前記レンズ要素の他方内のスロットとを含み、前記ダボは、前記スロットの周りの前記レンズ要素の他方の縁部と係合して前記2つのレンズ要素の相対移動を前記横断経路に拘束する、請求項12または13に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項15】
前記ダボは磁気を有し、且つ2つ以上の磁気部品からなるグループは、前記スロット内の2箇所以上の個別の位置で前記レンズ要素の他方に固定され、前記磁気ダボと協働して、前記2つのレンズ要素を一緒に取り付け且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項14に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項16】
前記スロットは、2つの対向する端部を有し、且つ2つ以上の磁気部品からなる前記グループは、前記レンズ要素の他方に固定されている2つの磁気部品を含み、それぞれが前記スロットの各端部に並置されている、請求項15に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項17】
磁気部品は、前記ダボに隣接する前記レンズ要素の一方に固定され、且つ2つ以上の磁気部品からなるグループは、前記スロットに隣接する2箇所以上の個別の位置で前記レンズ要素の他方に固定され、前記レンズ要素の一方上の前記磁気部品と協働して、前記2つのレンズ要素を一緒に取り付け且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項14に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項18】
前記ダボは、前記固定レンズ要素に対する前記可動レンズの少なくとも1つの位置を除いて、前記可動レンズ要素の脱離を防止するための前記スロット内に延びる協働リブと相互係合するように構成されている、請求項14~17のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項19】
前記フレームは、前記スロット上の前記固定レンズ要素に取り付けられているテンプルアームを含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項20】
前記フレームは、前記スロット上の固定レンズ要素に取り付けられている鼻ブリッジを含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項21】
各ガイドは、前記フレームに固定または一体に形成されているベアリングと、前記可動レンズ要素に固定されているマウントとを備え、前記ベアリングはスロットに隣接して配置され、且つ前記マウントは、前記2つのレンズ要素の相対移動を前記横断経路に拘束するため前記スロット内の前記ベアリングと係合するように成形されている、請求項12または請求項13に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項22】
前記フレームは、テンプルアームと固定レンズ要素とを相互接続する肘部を含み、前記ベアリングは前記肘部に取り付けられ、前記マウントは、対応する位置で前記可動レンズ要素に取り付けられている、請求項21に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項23】
前記フレームは、前記2つのレンズを相互接続するとともに2つの対向する端部を有し一端部上に前記ベアリングを備える鼻ブリッジを含み、且つ前記マウントは、対応する位置で前記可動レンズ要素に取り付けられている、請求項16に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項24】
前記マウントは、磁気部品であるかもしくは磁気部品を含み、且つ2つ以上の磁気部品からなるグループは、前記スロット内もしくは前記スロットに隣接した2箇所以上の個別の位置で前記フレームもしくは固定レンズ要素に固定され、前記マウント上の前記磁気部と協働し、それによって前記2つのレンズ要素を一緒に保持し且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、焦点距離を調整可能な請求項21、22または23のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項25】
前記磁気部品のグループは、前記スロットの各端部に1つずつ備えるベアリングに固定されている2つの磁気部品を含む、請求項24に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項26】
前記磁気部品のグループは、前記スロットの両端部の中間の中央位置で前記ベアリングに固定されている磁気部品をさらに含む、請求項25に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項27】
前記ベアリングは、1箇所以上の個別の位置を除いて前記ベアリングからの前記マウントの取外しを防止するように構成され且つ配置されている1つ以上の保持用ニブを含む、請求項24、請求項25または請求項26のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項28】
前記ベアリングおよび前記マウント上の前記磁気部品は、前記視線方向に配向されている、請求項24~27のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項29】
前記ベアリングおよび前記マウント上の前記磁気部品は、前記視線方向に対して垂直に配向されている、請求項24~27のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項30】
前記スロット内の前記磁石のグループは、前記スロット内に固定されているインサート内に取り付けられ、前記インサートは前記マウントに係合する低摩擦ベアリング面を有する、請求項24~29のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項31】
前記可動レンズ要素の上または下縁部の少なくとも一部は、前記固定レンズ要素の上または下縁部の対応する部分の上または下にそれぞれ突出して、ユーザによる前記可動レンズ要素の手動移動を容易にする、請求項1~30のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項32】
前記固定レンズ要素の前記下または上縁部の他方の少なくとも一部は、前記可動レンズの前記上または下縁部の他方の少なくとも一部の下または上に突出している、請求項30に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項33】
前記可動レンズ要素の前記上および下縁部のそれぞれの少なくとも一部は、前記固定レンズ要素の対応する上および下縁部の上および下にそれぞれ突出して、ユーザによる前記可動レンズ要素の手動移動を容易にする、請求項1~30のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項34】
前記フレームは、前記可変焦点距離レンズの周りに少なくとも部分的に延びるリム部を含み、各ガイドは、前記リム部または前記可動レンズ要素から突出するガイドピンと、前記可動レンズ要素もしくは前記リム部に形成されているスロットとをそれぞれ備え、前記ガイドピンは、前記スロットの周りの前記可動レンズ要素またはリム部の縁部と係合して、前記2つのレンズ要素の相対移動を前記横断経路に拘束する請求項12または13に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項35】
2つ以上の磁気部品からなるグループは、2箇所以上の個別の位置で前記リム部または前記可動レンズ要素に取り付けられ、且つ協働する磁気部品は、前記可動レンズ要素または前記リム部にそれぞれ取り付けられて、前記可動レンズ要素を前記フレームに取り付け且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項34に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項36】
前記2つ以上の磁気部品からなるグループおよび協働する磁気部品は、前記レンズの上または下縁部に近接する前記リム部および前記可動レンズ要素に取り付けられている、請求項35に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項37】
前記リム部は、テンプルおよび鼻側部を含み、前記可動レンズ要素は、前記横断方向において前記固定レンズ要素よりも幅広く、前記可動レンズ要素のテンプルおよび鼻側縁部は、前記横断経路に沿う前記可動レンズ要素の位置に関係なく、前記視線方向において前記リム部の前記テンプルおよび鼻側部の後ろにある、請求項34~36のいずれか1項に記載の焦点距離を調整可能なアイウェア。
【請求項38】
レンズを通る視線方向に相互に重ね合わされ、且つ可変焦点距離レンズの焦点距離は視線方向の横断方向へのレンズ要素の相対的な横方向の配置に応じて変化するように成形されている協働する光学表面を有する2つのレンズ要素を備える種類の可変焦点距離レンズであって、前記レンズ要素の相対的な移動を画定し且つ前記横断方向に延びる横断経路に拘束する相互に協働するガイド部品を前記レンズ要素上に備え、且つ、前記横断経路に沿う前記レンズ要素の相対的な移動を可能にしながら、前記2つのレンズ要素を一緒に解放可能に固定する1つまたは複数の解放可能なファスナを備える種類の、可変焦点距離レンズ。
【請求項39】
前記レンズ上で、前記視線方向を横断する方向に離間されている少なくとも2つの解放可能なファスナを含む、請求項38に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項40】
前記1つまたは複数の解放可能なファスナは、前記固定および可動レンズ要素上の弾力的相互係合形成を含む1つまたは複数の分離可能な機械的ファスナを含み、前記レンズ要素を前記視線方向に引き離すように促す分離力が漸増して加えられると、最初は前記可動レンズ要素の前記横断経路に沿う移動を可能にしながら前記レンズ要素の分離に抵抗し、最終的に変形して前記弾力的相互係合形成を相互に分離させ、それによって前記固定レンズ要素からの前記可動レンズ要素の取外しを可能とする、請求項38または39に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項41】
前記1つまたは複数の機械的ファスナは、前記レンズ要素が前記横断経路の方向に解放可能に一緒に保持される前記横断経路内の1つまたは複数の個別の戻り止め位置を画定し、その結果、前記レンズ要素を前記横断経路に沿ってスライドさせるために前記戻り止め位置から解放する追加の力が必要とされる、請求項40に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項42】
前記1つまたは複数の解放可能なファスナは、前記レンズ要素上の相互に協働する個別の磁気部品を含む1つまたは複数の磁気ファスナを含む、請求項38または39に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項43】
前記レンズ要素上の前記相互に協働する個別の磁気部品は、前記レンズ要素の相互に対する少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項42に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項44】
前記レンズ要素の間に2つ以上の磁気ファスナを含み、前記2つ以上の磁気ファスナは、前記横断経路に沿う前記レンズ要素の相互に対する少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項42または43に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項45】
前記1つまたは複数の磁気ファスナは、前記横断経路に沿う前記レンズ要素の相互に対する3箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項42または請求項43に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項46】
前記または各磁気ファスナは、前記レンズ要素の一方上の個別磁気部品のグループと、前記レンズ要素の他方上の少なくとも1つの協働する磁気部品とを含み、前記レンズ要素上の前記磁気部品は、必要に応じて、前記横断経路に沿う前記レンズ要素の手動による相対移動と前記レンズ要素の手動による相互の取外しとを可能にしながら、前記レンズ要素を一緒に保持するため相互に引き付け合う、請求項42~45のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項47】
前記グループの前記磁気部品は、前記横断経路に沿って離間している、請求項46に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項48】
前記グループ内の前記磁気部品および/または前記協働する磁気部品は、永久磁石を含む、請求項46または47に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項49】
前記レンズ要素上の前記ガイド部品は、前記横断経路を画定する少なくとも2つの直線状または曲線状のガイドを形成するように協働する、請求項42~48のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項50】
前記ガイドは、前記レンズ上の前記横断経路の方向に離間されている、請求項49に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項51】
各ガイドは、前記レンズ要素の一方上のダボと、前記レンズ要素の他方内のスロットとを含み、前記ダボは、前記スロットの周りの前記レンズ要素の他方の縁部と係合して前記2つのレンズ要素の相対移動を前記横断経路に拘束する、請求項49または50に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項52】
前記ダボは磁気を有し、且つ2つ以上の磁気部品からなるグループは、前記スロット内の2箇所以上の個別の位置で前記レンズ要素の他方に固定され、前記磁気ダボと協働して、前記2つのレンズ要素を一緒に取り付け且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項51に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項53】
前記スロットは、2つの対向する端部を有し、且つ前記2つ以上の磁気部品からなる前記グループは、前記レンズ要素の他方に固定されている2つの磁気部品を含み、それぞれが前記スロットの各端部にある、請求項52に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項54】
磁気部品は、前記ダボに隣接する前記レンズ要素の一方に固定され、且つ2つ以上の磁気部品からなるグループは、前記スロットに隣接する2箇所以上の個別の位置で前記レンズ要素の他方に固定され、前記レンズ要素の一方上の前記磁気部品と協働して、前記2つのレンズ要素を一緒に取り付け且つ前記選択可能な個別の戻り止め位置を画定する、請求項52に記載の可変焦点距離レンズ。
【請求項55】
前記ダボは、前記レンズ要素の少なくとも1つの相対位置を除いて、前記可動レンズ要素の脱離を防止するための前記スロット内に延びる協働リブと相互係合するように構成されている、請求項51~54のいずれか1項に記載の可変焦点距離レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの眼に対して一方が他方の前に配置され、レンズ要素の少なくとも一方は他方に対するレンズ要素の相対配置を調整するために横断方向に相対的に移動可能であり、且つレンズ要素は光学レンズの焦点距離が2つのレンズ要素の相対配置に応じて変わるように成形された相互に協働する光学表面を有する、2つのレンズ要素を含む種類の可変焦点距離の2つの光学レンズを備えている、焦点距離を調整可能な眼鏡に関する。本発明は、老眼の人の使用に適する老眼鏡を特に参照するが、眼科用レンズの分野内でより広い用途を見出すことができるであろう。
【背景技術】
【0002】
上記の種類の光学レンズは、当技術分野でよく知られている。この種の調整可能な光学レンズは、通常、相互に協働する三次またはより高次の表面を有する2つの重ねられたレンズ要素と、レンズの屈折力を変化させるためにレンズの光軸に対して横断方向に移動させることができる相対配置を有する。適切には、横断方向は、通常の使用におけるユーザに対して水平面内に延びることができるが、この種のレンズのいくつかの例では、それは矢状面内に、または少なくとも理論的には、光軸に直交して延びる成分を有する任意の他の面内に延びることができる。この種の調整可能なレンズの例は、米国特許第3305294号明細書によって開示されているアルバレスレンズであり、その内容は、参照により本明細書に援用される。三次およびより高次の表面を有する他の調整可能なレンズは、米国特許第3583790号、第7338159号、第7717552号、第5644374号明細書および国際公開第2013/030603号によって開示され、これらすべての内容も参照により本明細書に援用される。
【0003】
眼鏡としてユーザの眼前にレンズを支持するためのフレームに、この種の調整可能な光学レンズを取り付けるための様々な方法が当技術分野で知られている。しかしながら、この種の調整可能なレンズに固有の難しさは、レンズ要素が中央位置で相互に整列している場合を除いて、それらのそれぞれがレンズの反対側で他方を越えて突出し、特にレンズ要素の側縁部がレンズを通して線として見えるので、審美的な魅力がない点にある。さらに、レンズ要素の少なくとも一方を他方の要素に対して移動させるための機構を提供する必要があり、眼鏡の全体的な外観を改善するために、望ましくは、フレーム内に該機構を隠す必要がある。
【0004】
国際公開第2006/083167号は、第1のレンズおよび第2のレンズによって形成される少なくとも一対のレンズを含む、欠陥のある視力を矯正するためのレンズシステムに適合するフレームを含む、日常使用のための眼鏡を開示している。第1および第2のレンズは、視線の経路で見て、前後に配置され、視覚の所望の程度の矯正を実現するために相互に調整可能であり、第1のレンズは第1の調整要素と結合され、第2のレンズは第2の調整要素と結合されている。組み立てられた状態の第1および第2の調整要素は、調整器の一体の構成要素を形成し、レンズの調整の目的で相互に他方に沿って移動するように設計されている。第1の調整要素および第2の調整要素は、それぞれが第1および第2の糸を備えていてもよい。調整器は、第1および第2の調整要素のそれぞれの第1および第2の糸にそれぞれ係合するように設計されている第3および第4の糸を円周方向に備えた心棒を備えていてもよい。調整器はフレームに組み込むことができ、心棒は、少なくともフレームの外側を越えて突出する作動器を有することができる。国際公開第2006/083167号の眼鏡は概して十分に作動するが、望ましくはフレーム内に調整器を隠すべきであり、心棒上の作動器は審美的な魅力のないフレームから突出している。一対のレンズの焦点距離は、調整器によって画定される第1および第2のレンズの反対の極端間の移動で連続的に調整可能である。
【0005】
本発明の目的は、当技術分野で知られている同様の種類の眼鏡よりも審美的な魅力のある、焦点距離が調整可能な眼鏡を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、ユーザが2つ以上の個別の焦点距離の間でレンズを選択的に調整することができる、焦点距離が調整可能な眼鏡を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、当技術分野で知られている同様の種類の眼鏡よりも清掃が容易である、一方を他方の前に配置する2つのレンズ要素を含む種類の焦点距離が調整可能な眼鏡を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の一態様では、ユーザの眼前にレンズを支持し、各レンズを通る視線方向を画定するためにフレームに取り付けられた2つのレンズを含む、焦点距離を調整可能なアイウェアが提供される。レンズの少なくとも1つは、可変焦点距離レンズの焦点距離がレンズ要素の相対的な横方向の配置に従って可変であるように成形された、協働する光学表面を有する2つの重ねられたレンズ要素を含む種類の可変焦点距離レンズである。適切な可変焦点距離レンズには、対向する光学表面間の各レンズ要素の厚さが、重ね合わせにおいて2つのレンズ要素が球面レンズと同等であるような三次関数によって画定される、本明細書に記載の種類のアルバレス型レンズが含まれる。その屈折力は、レンズ要素の相対配置によって変化する。本発明によれば、レンズ要素の一方はフレームに固定的に取り付けられ、他方のレンズ要素は、可変焦点距離レンズの焦点距離を変えるために固定レンズ要素に対して手動で移動可能である。可動レンズ要素にはガイド部品が設けられており、固定レンズ要素またはフレーム上の対応するガイド部品と協働して、固定レンズ要素に対する可動レンズ要素の、視線方向を横断する横断経路への移動を画定し且つ拘束する。ガイド部品は、可動レンズ要素の少なくとも1つの位置で、可動レンズ要素を固定レンズ要素から取り外すことができるように構成されている。さらに、1つまたは複数の解放可能なファスナが、可動レンズ要素が横断経路に沿って固定レンズ要素に対して移動できるようにしながら、可動レンズ要素を固定レンズ要素またはフレームに解放可能に固定するために提供される。適切には、レンズは、視線方向に直交する方向に離間されている少なくとも2つの解放可能なファスナを備えている。
【0010】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の解放可能なファスナは、1つまたは複数の分離可能な機械的ファスナを含み得る。多数の適切な分離可能な機械的ファスナが当業者に利用可能であり、例えば、固定および可動レンズ要素上の弾力的相互係合形成を含む種類の分離可能な機械的ファスナが含まれる。弾力的形成は、横断経路に沿うレンズ要素の相対的な移動を可能にするためにボールがスロットに係合する種類のバンプフィットまたはボールソケットジョイントを画定することができる。「ボール」は球形でも非球形でもよい。例えば、ボールは、1つまたは複数の軸の周りのソケット内のボールのねじれを防止するために、他の軸よりも1つの軸で長くすることができる。これは、ボールの後ろの首の部分を強くするのに役立つ可能性がある。レンズ要素を視線方向に引き離すように促す分離力が漸加して加えられると、固定および可動レンズ要素の弾力的相互係合形成は、最初は、横断経路に沿う可動レンズ要素の移動を可能にしながら、レンズ要素の分離に抵抗し得る。そして、最終的には変形して、弾力的相互係合形成が相互に分離されることを可能にし、それによって、可動レンズ要素を固定レンズ要素から取り外すことを可能にする。
【0011】
いくつかの実施形態では、機械的ファスナは、レンズ要素が横断経路の方向に解放可能に一緒に保持される横断経路内の1つまたは複数の個別の戻り止め位置を画定し、その結果、レンズ要素を戻り止め位置から横断経路に沿ってスライドさせて変位させるのに追加の力が必要とされ得る。例えば、機械的ファスナは、ボールが上記のように細長いスロットに解放可能に保持されるボールソケットジョイントを含む場合、追加の力が加えられるまでボールしたがってレンズ要素を所定の位置に保持するために、スロットに沿う1つまたは複数の個別の位置に、例えば、スロットの一端部または両端部に、バンプなどの追加形成が提供され得る。
【0012】
あるいは、1つまたは複数の解放可能なファスナは、1つまたは複数の磁気ファスナを含み得る。適切には、1つまたは複数の磁気ファスナは、可動レンズ要素と固定レンズ要素またはフレームとに相互に協働する個別の磁気部品を含み、これらは、固定レンズ要素に対する可動レンズ要素の少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定し得る。
【0013】
アイウェアは、一対の眼鏡またはゴーグルを含み得る。いくつかの実施形態では、アイウェアは、例えば、拡張または仮想現実のヘッドアップディスプレイなどのヘッドセットを含み得る。
【0014】
レンズ要素は、各離散位置で異なる焦点距離を提供するように構成されている。レンズ要素の各相対位置において、可変焦点距離レンズは、光学(z)軸、すなわち、レンズに実質的に垂直であり且つ方向の正味の変化がないレンズを通る光線の経路を表す軸を画定することが当業者によって理解されるであろう。好都合なことに、レンズ要素は、レンズの焦点距離が減少するとレンズの光軸が内側に、つまりユーザの鼻に向かってシフトし、逆にレンズの焦点距離が増大すると、レンズの光軸が外側に、つまりユーザのテンプルに向かってシフトする。これは、遠くから近くに焦点を合わせるときの目の動き方に対応し、可動レンズ要素の配置からユーザの光学体験の改善に貢献することを目的としている。
【0015】
可変焦点距離レンズは、レンズの屈折力を最大約+7.5ジオプトリーだけ変更するように調整することができる。これは、ほとんどの人の老眼の矯正に適している。いくつかの実施形態では、より狭い範囲の変化、例えば、1、2、3、4、5または6ジオプトリーが提供され得、これにより、より薄いレンズの製造が可能になり得る。いくつかの実施形態では、可変焦点距離レンズは、近視または遠視の矯正のための基本焦点距離を有し得、且つ/または乱視の矯正のためのある程度の円筒を提供するように構成され得る。したがって、可変焦点距離レンズは、通常、約-6~+6ジオプトリーの範囲の基本屈折力を持っている可能性があり、場合によっては、より強力な処方が必要になる可能性もある。
【0016】
横断経路に沿う2箇所以上の選択可能な個別の位置でレンズ要素を一緒に安定して保持するために、1つまたは複数の磁気ファスナが提供される。適切には、磁気ファスナの強度は、必要に応じて、レンズの異なる焦点距離を選択するためにユーザが2箇所以上の個別の位置の間で可動レンズ要素を固定レンズ要素に対して手動で移動させ且つ取り外すことを可能にしながら、使用中にレンズ要素をしっかりと一緒に保持するのに十分である。当業者は、レンズ要素間の保持力およびスライド摩擦力を制御するのに適切な強度の磁気ファスナを選択するのに困難はないであろう。
【0017】
磁気ファスナは、固定レンズ要素に対して横断経路に沿う可動レンズ要素の少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定することができる。いくつかの実施形態では、磁気ファスナは、固定レンズ要素に対して横断経路に沿う可動レンズ要素の3つの選択可能な個別の戻り止め位置を画定することができる。
【0018】
適切には、レンズは、可動レンズ要素と固定レンズ要素またはフレームとの間に2つ以上の磁気ファスナを備え得る。磁気ファスナは、例えば、レンズ要素の相互のねじれ、ぐらつき、または他の望ましくない動きに抵抗するよう、ガイド部品と併せて安定した方法でレンズ要素を一緒に保持するために離間させることができる。2つ以上の磁気ファスナは、ユーザに対して、通常はレンズの一方の横側からもう一方の横側に延びる横断経路の方向に離間させることができるか、またはそれらはユーザに対して、一方が他方の上にある上下方向に配置することができる。いくつかの実施形態では、レンズごとに1つの磁気ファスナのみを使用することも可能であろう。
【0019】
磁気ファスナまたは各磁気ファスナは、可動レンズ要素または固定レンズ要素もしくはフレームの一方にある個別の磁気部品からなるグループと、固定レンズ要素もしくはフレームまたは可動レンズ要素の他方にある少なくとも1つの協働する磁気部品とを含み得る。可動レンズ要素と固定レンズ要素もしくはフレーム上の磁気部品は、相互に引き付け合って可動レンズ要素を固定レンズ要素もしくはフレームに取り付ける一方、必要に応じて、可動レンズ要素を横断経路に沿って固定レンズ要素に対して手動で移動させ、且つ固定レンズ要素もしくはフレームから可動レンズ要素を手動で取り外させることを可能にする。適切には、グループ内の磁気部品は、横断経路に沿って離間され得る。
【0020】
グループ内の磁気部品および/または協働する磁気部品は、永久磁石を含み得る。いくつかの実施形態では、グループ内のすべての磁気部品は永久磁石を含み得、そして協働する磁気部品は永久磁石または強磁性部品を含み得る。あるいは、グループ内のすべての磁気部品は、強磁性部品を含み得、そして協働する磁気部品は、永久磁石を含み得る。適切には、磁気部品は、2つのレンズ要素を一緒に解放可能に固定するために相互に引き付け合うように配置される。適切には、グループ内の磁気部品と協調する磁気部品との両方が永久磁石である。
【0021】
磁気要素のグループは、横断経路に沿うレンズ要素の離散的な相対位置を画定するのに役立ち、レンズ要素は、各位置で相互に最も強く取り付けられている。適切には、磁気部品は、個別の位置の間でレンズ要素を一緒に保持するように配置されているが、ユーザによって移動されたときにレンズ要素は個別の位置の1つに「スナップ」するほど強くない場合がある。レンズ要素は手で相互に対して移動可能であるため、離散位置と横断経路に沿う他の地点との間の異なる保持強度は、レンズ要素が離散位置に配置されたときにユーザにある程度の触覚フィードバックを提供し、かくして各個別の位置における知覚可能な戻り止めを提供し得る。
【0022】
以下に説明するように、いくつかの実施形態では、磁気部品は、他の個別の戻り止め位置よりも強く1つまたは複数の個別の戻り止め位置にレンズ要素が保持されるようにさらに配置され得る。例えば、レンズ要素は、横断経路に沿うそれらの移動の端部に配置されるときの端部戻り止め位置よりも中央戻り止め位置の方でより強く一緒に保持され得る。特に、横断経路は、レンズ要素が一方向にそれ以上移動することができない2つの対向する横方向の端部を有し得る。磁気部品は、2箇所の個別の外側戻り止め位置が横断経路の端部と一致するように、横断経路上の横方向の極端部に配置することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、磁気部品は、2箇所の個別の外側戻り止め位置のみを画定し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、第3の磁気部品は、例えば、外側戻り止め位置の中間の中央戻り止め位置を画定するように配置され得る。前述のように、磁気ファスナは、外側戻り止め位置よりも中央の戻り止め位置の方で保持力を高くすることができるため、ユーザは、レンズ要素が中央位置に配置されていることを感じることができる。この差動保持強度は、保持強度が外側位置よりも中央位置で大きくなるように磁気部品を配置することによって提供することができる。例えば、3つの磁気部品は、中央位置において、協働する磁気部品に対する磁気要素の結合力が、外側の位置よりも大きくなるように、十分に接近して配置され得る。あるいは、複数の磁石、異なる形状の磁石、または異なるグレードの磁石、例えば、N52、N48、N35(数字が大きいほど、同じサイズ/形状の磁石に対してより高い引張力を示す)を使用することができる。いくつかの実施形態では、同様の触覚効果は、例えば、レンズ要素間のバンプフィット、板ばねなどの非磁気部品によって達成することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、レンズ要素の光学表面は、当業者に知られている方法でベースカーブ上に形成することができる。したがって、横断経路は、直線である代わりに、いくつかの実施形態では、光軸と、光(z)軸に垂直な水平(x)軸によって画定される平面内で弧状であり得、レンズのテンプル側と鼻側との間に延びる結果、横断経路に沿う可動レンズ要素の移動は、実質的にベース曲線に従う。したがって、可動レンズ要素のガイド部品と、固定レンズ要素もしくはフレーム上の協働するガイド部品は、可動レンズ要素の曲線の横断経路を画定し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、横断経路は実質的に直線であり得る。
【0025】
固定および可動レンズ要素のガイド部品は、横断経路を画定する少なくとも2つの直線状または曲線状のガイドを形成することができる。適切には、該ガイド部品は、横断経路の方向に相互に離間され得る。これは、可動レンズ要素が固定レンズ要素に対して光軸の周りに回転するのをサポートするのを支援し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、ガイド部品は、レンズ要素に直接形成または取り付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、各ガイドは、レンズ要素の一方に取り付けられたダボと、他方のレンズ要素に形成されたスロットとを含み得る。ダボは、2つのレンズ要素の横断経路に対する相対的な移動を拘束するためのスロットの周りの他方のレンズ要素の縁部と係合し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、ダボは磁気を有し、そして2つ以上の磁気部品からなるグループは、スロット内の2箇所以上の個別の位置で他方のレンズ要素に取り付けられて、磁気ダボと協働して2つのレンズ要素を一緒に固定し、選択可能な個別の戻り止め位置を画定し得る。適切には、スロットは、スロットに隣接する厚みの小さい他方のレンズ要素の領域によって形成される前壁または後壁を有するブラインドスロットであり得る。グループの磁気部品は、前壁または後壁に形成された凹部に嵌入し得る。スロットは、2つの対向する横方向端部を有する。2つ以上の磁気部品からなるグループは、スロットの各端部に1つずつ、他方のレンズ要素に固定される2つの磁気部品を含み得る。
【0028】
適切には、他方のレンズ要素の前壁または後壁は、ダボの端部と係合して固定レンズ要素に対して視線方向に可動レンズ要素を安定させる軸方向の座面を形成し得る。スロットの前壁または後壁は、スロット内に座面を有し得る。座面は、低摩擦面を形成するように処理し、またはコーティングして形成することができる。
【0029】
あるいは、一方のレンズ要素のダボに隣接して磁気部品を固定し、他方のレンズ要素のスロットに隣接する2つ以上の個別の位置で2つ以上の磁気部品からなるグループを固定して、一方のレンズ要素の磁気部品と協働させて、2つのレンズ要素を一緒に取り付け、選択可能な個別の戻り止め位置を画定し得る。
【0030】
一般に、ガイド要素は、レンズ要素が、特に視線方向において、相互に自由に分離されることを可能にする。しかしながら、いくつかの実施形態では、ガイド要素は、可動レンズ要素が固定レンズ要素に対して特定の位置、例えば、1つまたは複数の個別の場所に配置されている場合を除いて、固定レンズ要素からの可動レンズ要素の除去を防止するように配置されている保持要素を含み得る。したがって、適切には、ダボは、固定レンズ要素に対する可動レンズ要素の少なくとも1つの位置を除いて、可動レンズ要素の取外しを防止するためにスロット内に延びる他方のレンズ要素の協働リブと係合するように構成され得る。したがって、いくつかの実施形態では、該リブは、スロットの少なくとも1つの横方向端部の手前で止まり、ダボがリブから外れるスロットのその端部の位置までダボと一緒に可動レンズ要素を移動できるようにし、可動レンズ要素を固定レンズ要素から取り外すことを可能にする。
【0031】
他の実施形態では、リブは、スロットの横方向端部の中間にノッチを形成され、それにより、2つの離間したリブ部を提供し得る。これらの実施形態では、リブは、ダボがリブ部から外れるノッチの位置までダボと一緒に可動レンズ要素を移動できるように構成されている。例えば、リブは、スロットの横方向端部の間で延在することができ、ノッチは、スロットの横方向端部の間のリブの実質的な中間に形成することができる。この実施形態では、可動レンズ要素は、スロットの横方向端部の中間の位置にダボと一緒に移動して、ダボをリブから外すことができ、それにより、可動レンズ要素を固定レンズ要素から取り外し且つ除去することができる。
【0032】
ガイド部品および磁気ファスナがレンズ要素に直接取り付けられている本発明による可変焦点距離レンズは、フレームをカスタマイズする必要がなく、リムなしフレームを含む通常のフレームに取り付けることができる。
【0033】
本発明の別の態様によれば、レンズを通る視線方向に相互に重ね合わされ、可変焦点距離レンズの焦点距離は視線方向を横断する方向におけるレンズ要素の相対的な横方向の配置に応じて変化するように成形されている協働する光学表面を有する2つのレンズ要素を備える種類の可変焦点距離レンズが提供される。相互に協働するガイド部品がレンズ要素に提供され、レンズ要素の相対的な移動を画定し、横断方向に延びる横断経路に拘束する。横断経路に沿うレンズ要素の相対的な移動を可能にしながら、2つのレンズ要素を一緒に解放可能に固定するために、1つまたは複数の解放可能なファスナが提供される。
【0034】
上記のように、1つまたは複数の解放可能なファスナは、1つまたは複数の分離可能な機械的ファスナまたは1つまたは複数の磁気ファスナを含み得る。適切には、1つまたは複数の磁気ファスナは、相互に対してレンズ要素の少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する相互に協働する個別の磁気部品をレンズ要素に含み得る。レンズ要素間に2つ以上の磁気ファスナを設けることができ、これは、横断経路に沿うレンズ要素の相互に対する少なくとも2箇所の選択可能な個別の戻り止め位置を画定する。いくつかの実施形態では、磁気ファスナは、横断経路に沿う相互に対してレンズ要素の3つの選択可能な個別の戻り止め位置を画定し得る。
【0035】
本発明による可変焦点距離レンズは、一対の眼鏡を形成するために適切なフレームに取り付けることができる。フレームは、リムがない場合もあれば、通常のテンプルアームおよび鼻ブリッジに加えて、各レンズの周りにリム部が含まれている場合もある。いくつかの実施形態では、両方のレンズ要素がフレーム内で移動可能であるように、レンズをフレームに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、2つのレンズ要素は、横断経路に沿って等しく反対方向に移動するように接続され得る。このような場合、レンズ要素の相対配置に関係なく、光軸の位置はフレームに対して実質的に固定されたままになる。
【0036】
いくつかの実施形態では、フレームは、スロット上の固定レンズ要素に取り付けられているテンプルアームを含み得る。
【0037】
あるいは、各ガイドは、フレームに固定された、またはフレームと一体に形成されたベアリングと、可動レンズ要素に固定されたマウントとを含み得る。ベアリングはスロットを画定することができ、マウントは、2つのレンズ要素の相対的な移動を横断経路に制限するためのスロット内のベアリングと係合するように成形され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、フレームは、テンプルアームと固定レンズ要素とを相互接続する肘部を含み得る。便利なことに、ベアリングは肘部に設けられてもよい。マウントは、対応する位置で可動レンズ要素に取り付けることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、フレームは、2つのレンズを相互接続し、2つの対向する端部を有する鼻ブリッジを含み得る。ベアリングは、鼻ブリッジの一端部に備えることができる。マウントは、対応する位置で可動レンズ要素に取り付けることができる。
【0040】
適切には、フレームは、肘部にテンプルベアリングを含み、鼻ブリッジの端部に鼻ベアリングを含み得る。2つのテンプルアームおよび鼻ブリッジを有する完全な一対の眼鏡において、各テンプルアームは、レンズのそれぞれの1つに形成されたテンプルマウントと係合するためのベアリングを含む肘部を有することができ、鼻ブリッジは、各レンズに形成された鼻マウントと係合するために両端部に形成された鼻ベアリングを有することができる。
【0041】
磁気部品をマウントに固定することができ、2つ以上の磁気部品からなるグループをスロット内の2箇所以上の個別の位置でベアリングに固定して、マウント上の磁気部品と協働させて2つのレンズ要素を一緒に取り付けることができるとともに、選択可能な個別の戻り止め位置を画定する。いくつかの実施形態では、磁気部品のグループは、スロットの各端部に1つずつ、ベアリングに固定された2つの磁気部品を含み得る。いくつかの実施形態では、磁気部品のグループは、スロットの両端部の中間の中央戻り止め位置でベアリングに固定される磁気部品をさらに含み得る。
【0042】
したがって、本発明によれば、磁気ファスナは、レンズの2つ以上の使用モードを画定することができる。第1のモードでは、レンズ要素は、比較的低い屈折力(長い焦点距離)の相対配置に構成することができ、これは遠方視に適している可能性がある。第2のモードでは、レンズ要素は、比較的高い屈折力(短い焦点距離)配置に構成することができ、これは読み取りに適している可能性がある。3箇所以上の個別の戻り止め位置が磁気ファスナによって画定される場合、例えば、コンピュータの使用に適した1つまたは複数の中間距離モードがあり得る。中間距離モードは、レンズ要素が第1のモードと第2のモードとの2つの極端な位置の間に相対配置をされている場合に達成され得る。
【0043】
適切には、ベアリングは、1つまたは複数の個別の戻り止め位置を除いて、ベアリングからのマウントの取外しを防止するように構成され且つ配置されている1つまたは複数の保持用ニブを含むことができる。例えば、保持用ニブは、レンズ要素が横断経路の端部に配置される2つの端部戻り止め位置の中間でレンズ要素のベアリングからマウントが外れるのを防止するために、スロットに対して配置され得る。あるいは、1つまたは複数の中間戻り止め位置が提供される場合、保持用ニブは、中間戻り止め位置の1つ、例えば3つの個別の戻り止め位置がある場合の中央戻り止め位置を除いて、マウントの取外しを防止するように配置され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、ベアリングおよびマウントの磁気部品は、視線方向に、すなわち、概してレンズの光軸に平行に配向され得る。あるいは、ベアリングおよびマウントの磁気部品は、視線方向に対して垂直に、例えば、上記に画定した光学(z)軸および水平(x)軸に実質的に直交する垂直(y)軸に実質的に平行に配向され得る。
【0045】
有利には、スロット内の磁石からなるグループは、スロット内のベアリングに固定されているインサート内に取り付けることができる。インサートには、マウントと係合する低摩擦のベアリング面がある。
【0046】
本発明の別の態様では、可動レンズ要素の上または下縁部の1つの少なくとも一部は、固定レンズ要素の上または下縁部の対応する部分の上または下にそれぞれ突出して、個別の戻り止め位置の間のユーザによる可動レンズ要素の手動での移動、および/または固定レンズ要素からの可動レンズ要素の取外しを容易にすることができる。いくつかの実施形態では、固定レンズ要素の下または上縁部の少なくとも一部は、可動レンズ要素の下または上縁部の少なくとも一部を越えて突出し得る。このようにして、ユーザは、可動レンズ要素の一方の縁部および固定レンズ要素の反対側の縁部に指を簡単に係合させ親指を立てて、可動レンズ要素にスライド力を加えることができる。同様の配置は、両方のレンズ要素が可動である本発明の可変焦点距離レンズに提供され得る。レンズ要素の一方の上または下縁部の少なくとも一部は、他方のレンズ要素の対応する縁部の少なくとも一部の上または下に突出し得る。他方のレンズ要素の下および上縁部の他方の少なくとも一部は、一方のレンズ要素の対応する縁部の少なくとも一部の下または上に突出し得る。あるいは、可動レンズ要素の上および下縁部のそれぞれの少なくとも一部は、固定レンズ要素の対応する上および下縁部の上および下にそれぞれ突出して、個別の戻り止め位置の間でのユーザによる可動レンズ要素の手動での移動、または清掃、修理などのための固定レンズ要素からの可動レンズ要素の取外しを容易にすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、フレームは、可変焦点距離レンズの周りに少なくとも部分的に延びるリム部を含み得る。各ガイドは、リム部もしくは可動レンズ要素から可動レンズ要素もしくはリム部の他方に向かって突出するガイドピンと、可動レンズ要素またはリム部に形成されるスロットとをそれぞれ備えることができる。ガイドピンは、ケースが2つのレンズ要素の相対移動を横断経路に拘束するためのスロットの周りにあるとき、可動レンズ要素またはリム部の縁部と係合し得る。
【0048】
フレームに可動レンズ要素を取り付け、且つ選択可能な個別の戻り止め位置を画定するため、2つ以上の磁気部品からなるグループを2箇所以上の個別の位置でリム部または可動レンズ要素に取り付けることができ、協働する磁気部品を可動レンズ要素またはリム部にそれぞれ取り付けることができる。適切には、2つ以上の磁気部品のグループおよび協働する磁気部を、レンズの上または下縁部に近接するリム部および可動レンズ要素に取り付けることができる。リム部は、テンプルおよび鼻側部を含み得る。有利には、可動レンズ要素は、横断方向、すなわちx軸方向において、固定レンズ要素よりも幅広であり得る。したがって、可動レンズ要素のテンプルおよび鼻側縁部は、横断経路に沿う可動レンズ要素の位置に関係なく、リム部のテンプルおよび鼻側部の視線方向の後ろに留まるように寸法決定され得る。
【0049】
本発明の利点は、レンズを(例えば、射出成形によって)成形することができるか、または標準的な眼科縁取り(切断)装置を使用して切断することができ、組み立てに専門の工具または技能を必要としないことである。
【0050】
発明のさらなる態様によれば、上記の本発明の態様においてレンズ要素として使用するためのレンズ要素を製造する方法が提供される。この方法は、1つまたは複数の他の特徴をレンズ要素に切り込むための基準として、レンズ要素の厚さの途中まで延びるリベートを使用することを含む。リベートが他の特徴をレンズ要素に切り込むための基準として使用されるこの製造プロセスは、異なるサイズ、形状、および屈折力を有するレンズ要素の製造を容易にする。たとえば、固定サイズと形状とのリベートをレンズ要素のサイズ、厚さ、形状の範囲全体のデータとして使用することにより、他の機能をレンズ要素に切り込むプロセスを標準化できるため、異なるレンズ要素の構成の間を切り替える場合、大幅に変更する必要がない。
【0051】
この方法は、レンズ要素の表面にリベートを形成するステップを含み得る。リベートは、レンズ要素の前または背面に形成することができる。レンズ要素が成形プロセス(例えば、射出成形)によって製造される場合、リベートはレンズ要素に成形され得る。あるいは、リベートをレンズ要素に切り込むことができる。リベートは、フレームの1つまたは複数の一部、またはテンプルアームや鼻ブリッジなどのフレーム部材を受け入れるように成形することができる。例えば、リベートは、レンズ要素の前面に提供することができ、肘部がレンズ要素の前面と同一平面上に位置し、テンプルアームの肘部を受け入れるように成形することができる。したがって、リベートは、レンズ要素のサイズ、厚さ、形状、およびユーザの処方に依存しない、フレームまたはフレーム部材の一部を取り付けるための標準化された表面を提供することができる。複数のリベートをレンズ要素に提供することができる。例えば、リベートは、レンズ要素の鼻側に提供することができ、第2のリベートは、レンズ要素のテンプル側に提供することができる。
【0052】
1つまたは複数の他の機能は、リベート内でカットされる場合がある。1つまたは複数の他の特徴は、例えば、磁気ダボピンまたは永久磁石などの1つまたは複数の磁気部品を収容するように構成することができる。1つまたは複数の他の特徴は、レンズ要素をフレーム、テンプルアーム、または鼻ブリッジのうちの1つまたは複数に固定するように構成することができる。1つまたは複数の他の特徴は、固定レンズ要素に対する可動レンズ要素の移動を画定し且つ拘束するガイド部品を収容するように構成することができる。1つまたは複数の他の特徴は、例えば、1つまたは複数のスロット、リブ、リブ部、または穴であり得る。
【0053】
以下は、本発明の実施形態の添付の図面のみの参照例による説明である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面について説明する。
【0055】
【
図1】
図1は、フレームに取り付けられた2つの可変焦点距離レンズを含む、本発明の第1の実施形態による一対のリムなし眼鏡の前部の上方および左側からの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のリムなし眼鏡の前部の上方および左側からの斜視図であり、協働する前部レンズ要素から取り外された状態の可変焦点距離レンズの後部レンズ要素を示す。
【
図3】
図3は、後部レンズ要素を取り外した状態の
図1および
図2のリムなし眼鏡の後部の上方からの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1~3のリムなし眼鏡の後部の上方および左側からの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1~4のリムなし眼鏡の左側後部レンズ要素の前部上半分の左側からの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の左側後部レンズ要素と対になるように構成されている、
図1~4のリムなし眼鏡の左側の前部レンズ要素の正面図である。
【
図7】
図7は、
図6の左側前部レンズ要素の一部の左側の拡大前面図である。
【
図8】
図8は、
図1~7のリムなし眼鏡の後部の一部の上部および左側からの拡大図であり、左側の前部レンズ要素への左側のテンプルアームの取り付け、およびレンズの手動操作を容易にするための後部レンズ要素の上縁部の摩擦が増大した領域を示す。
【
図9A】
図9Aは、
図1~8のリムなし眼鏡の前部および後部レンズ要素の3つの代替実施形態のうちの一つを後ろから示す概略図である。
【
図9B】
図9Bは、
図1~8の縁なし眼鏡の前部および後部レンズ要素の3つの代替実施形態のうちの別の一つを後ろから示す概略図である。
【
図9C】
図9Cは、
図1~8の縁なし眼鏡の前部および後部レンズ要素の3つの代替実施形態うちのさらに別の一つを後ろから示す概略図である。
【
図11】
図11は、
図9Aおよび10Aの前部および後部レンズ要素の後ろからの概略図であり、レンズ要素の相互に対する手動の横方向のスライドを容易にするための後部レンズ要素の上縁部の摩擦が増大した一体領域を示す。
【
図12】
図12は、
図9Aおよび
図10Aの前部および後部レンズ要素の代替実施形態の後ろからの概略図であり、レンズ要素の相互に対する手動の横方向のスライドを容易にするための摩擦が増大した領域を含む、後部レンズ要素の上縁部への小さな部品の追加を示す。
【
図13】
図13は、本発明の第2の実施形態による可変焦点距離レンズの上方および左側からの斜視図であり、レンズの焦点距離を調整するための相対的な横方向の移動のために配置されている前部および後部レンズ要素を含む。
【
図14】
図14は、
図13の可変焦点距離レンズの上方および左側からの切欠の斜視図であり、前部レンズ要素と後部レンズ要素との間のガイド要素および磁気結合要素を示す。
【
図15】
図15は、
図13および14の可変焦点距離レンズの前部の上方および左側からの分解斜視図であり、前部レンズ要素の背面に取り付けられた磁気ダボピンと、後部レンズ要素の前面のブラインドスロットに取り付けられた永久磁石とを示す。
【
図16】
図16は、
図13および14の可変焦点距離レンズの前部の上方および左側からの別の分解斜視図であり、わかりやすくするために、磁気ダボピンと永久磁石とを取り外した状態を示す。
【
図17】
図17は、レンズの屈折力を調整するための相対的な横方向の移動のために配置されている前部および後部レンズ要素を有する種類の2つの可変焦点距離レンズを含む、本発明の第3の実施形態による別の一対のリムなし眼鏡の前部の上方および左側からの斜視図である。左側のレンズの後部レンズ要素を取り外した状態を示す。
【
図18】
図18は、
図17の本発明の第3の実施形態による、左側のレンズの後部レンズ要素を取り外した状態の一対のリムなし眼鏡の後部の上方からの斜視図である。
【
図21】
図21は、
図18および
図19のリムなし眼鏡の左側の可変焦点距離レンズの後部レンズ要素の前部の上方および左側からの斜視図であり、後部レンズ要素の反対側の側面に固定され、それぞれが永久磁石を組み込んでいる2つのマウントを示す。
【
図22】
図22は、
図21の後部レンズ要素上のマウントの左側のものの前部の上方および右側からの拡大斜視図である。
【
図23】
図23は、
図18および19の眼鏡の後部レンズ要素を取り外した状態の左側レンズの背面図であり、左側のテンプルアームの肘部に形成されている後部レンズ要素用のテンプルベアリングおよび鼻ブリッジに形成されている後部レンズ要素用の鼻ベアリングを示している。
【
図24】
図24は、
図23に示すテンプルベアリングの下方および右側からの拡大斜視図である。
【
図25】
図25は、レンズの屈折力を調整するために前部および後部レンズ要素が相互に横方向にスライド可能である種類の2つの可変焦点距離レンズを含む、本発明の第4の実施形態による、一対のリムなし眼鏡の下部の後部からの斜視図である。右側のレンズの後部レンズ要素を対応する前部レンズ要素から取り外した状態を示す。
【
図26】
図26は、
図25のリムなし眼鏡の後部の上方および左側からの斜視図であり、右側の後部レンズ要素を対応する前部レンズ要素から取り外した状態を示す。
【
図27】
図27は、
図25および
図26のリムなし眼鏡の右側の後部レンズ要素の後部正面図であり、わかりやすくするために、後部レンズ要素の左および右のマウントを別々に示す。
【
図28】
図28は、
図25および26のリムなし眼鏡の下部の後ろからの斜視図であり、右側の可変焦点距離レンズを分解して示す。
【
図29】
図29は、わかりやすくするために、左側の前部レンズ要素に取り付けられている、嵌合ベアリングアセンブリを取り外した状態のテンプル肘部アセンブリの後部の上方からの拡大斜視図である。
【
図30】
図30は、ベアリングアセンブリを取り付けた状態の
図29のテンプル肘部アセンブリの上方および左側からの拡大斜視図である。
【
図31】
図31は、
図29および
図30の左側のテンプルベアリングアセンブリの一部を形成する低摩擦ベアリングの右側の上方および後部からの斜視図である。
【
図33】
図33は、フレームと、レンズの屈折力を調整するための相互の横方向の移動のために配置されている前部および後部レンズ要素を含む種類の2つの可変焦点距離レンズとを含む、本発明の第5の実施形態による、フレーム付きの一対の眼鏡の上方および左側からの斜視図である。
【
図35】
図35は、
図33および34のフレーム付き眼鏡の後部の上方および左側からの分解斜視図であり、前部レンズ要素と後部レンズ要素との間の磁石結合を形成する永久磁石を左側のレンズに示すが、わかりやすくするために、右側のレンズからは省略している。
【
図36】
図36は、
図35の眼鏡のフレームの前部の左側部分の後部正面図であり、後部レンズ要素と係合するためのガイド要素を形成する、後方に突出するテンプルおよび鼻ピンを示す。
【
図37】
図37は、永久磁石を保持するためのテンプルおよび鼻ピン、ならびに中間ソケットを示す
図36の一部の拡大図である。
【
図38】
図38は、
図33~35の眼鏡の左側の可変焦点距離レンズの後部レンズ要素の正面図であり、永久磁石を受け入れるために、後部レンズ要素の上および下縁部に隣接するテンプルおよび鼻のピンおよび凹部を受け入れるように配置されているスロットを示す。
【
図39】
図39は、
図33~35の眼鏡の左側レンズの一部の拡大図であり、後部レンズ要素のスロット内に延びる前部レンズ要素上のテンプルおよび鼻ピンを備えた前部および後部レンズ要素のアセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(実施例1)
本発明の第1の実施形態による一対のリムなし眼鏡11は、
図1~
図4に示されている。眼鏡11は、レンズを通る視線方向(レンズ21、22のそれぞれについて
図3のz軸によって示されている)に一方が他方の前に配置された2つの固体の光学的に透明なレンズ要素からなる種類の2つの可変焦点距離レンズ21、22を備え、レンズの焦点距離を変化させるために、視線方向を横断する方向(
図2および8のx軸によって示されている)に相互に対してスライド可能である。
【0057】
この種の可変焦点距離レンズは当技術分野でよく知られており、一般的にアルバレスレンズと呼ばれることが多い。アルバレスレンズは、米国特許第3305294号明細書に開示されているが、例えば、米国特許第3583790号、第7338159号、第7717552号、第5644374号明細書、および国際公開2013/030603号にこの種のレンズの多数の変形例が知られている。一般に、この種の調整可能なレンズは、2つの重ねられたレンズ要素を含み、それぞれは対向する前面および背面の光学表面を有し該表面間の各レンズ要素の厚さを制御するように構成されているので、光線が両方のレンズ要素を連続して通過するときに、レンズはそれらを球面レンズと同等の方法で収束または発散させる。各レンズ要素の厚さは、レンズを通る視線方向に垂直なx-y平面内の三次関数に従って、他方のレンズ要素を補完するように変化するので、レンズの球面屈折力は、レンズ要素の相対的な横方向の配置によって変化する。
【0058】
対向する前面と背面との間の各レンズ要素の厚さtを画定するための適切な式は以下の通りである。
t=A(x^3/3+xy^2)+Dx+E
(I)
ここで、Dは、レンズの厚さを最小にするために除去されたプリズムの係数を表す定数であり、ゼロであり得る。Eは、レンズの光軸zでのレンズ要素の厚さを表す定数である。xとyとは、光軸を中心とし、それに対して垂直な平面内にある直交座標系上の座標を表す。Aは、x方向への相対的なレンズ要素の移動に伴うレンズ度数の変化率を表す定数であり、一方のレンズ要素については正であり、他方のレンズ要素については負である。しかしながら、上記のように、この式の多くの変形が当技術分野で知られており、本発明はこの点に関して限定されない。
【0059】
当業者が理解するように、アルバレスレンズの単一のレンズ要素は、それ自体は光軸を有さないが、一対のレンズ要素は、通常の球面レンズのように機能するので、有効球面レンズの中心と相関する位置として光軸を画定することが可能である。上記式(I)において、「光軸」は、光学プログラム等においてレンズを位置合わせするためz軸を画定するように便利に使用することができる式の原点であるが、必ずしもレンズの有効光軸に対応するとは限らない。
【0060】
便利なことに、各レンズ要素の一方の表面は平坦であるか、または規則的な回転面、例えば球形で形成され、他方の表面は、レンズ要素の厚さを制御するために上記の種類の三次表面を有する。各レンズ要素の三次表面は、適切には、いくつかの実施形態では、当技術分野で知られている方法で球面ベース曲線上に形成され得る。したがって、レンズ要素は、相互に対して線に沿ってもしくは画定された経路、例えば、z軸成分と光軸上の中心とを有する円弧に沿って、相互に対してスライドするように配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、レンズ要素は、ユーザに対して水平(x-z)平面内の円弧上を相互に対してスライドするように配置され得る。
【0061】
本実施形態では、2つのレンズ21、22は、その構造に関して類似しているので、便宜上、左側のレンズ21(ユーザの視点から見た場合)のみについて以下に説明するが、右側のレンズ22も同様の、2つのレンズ21、22の中間をz方向に延びる正中面における左側レンズ21の鏡像である。したがって、左側レンズ21についての以下の説明は、右側レンズ22にも等しく当てはまる。
【0062】
したがって、可変焦点距離レンズ21は、前部レンズ要素31および後部レンズ要素41を備える。前部要素31は、上記の種類の球形または球状円筒形前面32および三次形背面33を有する。後部レンズ要素41は、アルバレスレンズを形成するために前部レンズ要素31の背面33を補完する上記の種類の三次形前面42と、球形または球状円筒形背面43とを有する。両方のレンズ要素31、41の表面32、33、42、43は、光学的使用のために当技術分野で知られている方法で、予め形成された研磨パックから形状に成形または切断することができる。いくつかの実施形態では、前部レンズ要素31の前面32および後部レンズ要素41の背面43は、同じ球面曲率を有することができ、したがって、レンズ21の正味の屈折力に寄与しない。しかし、いくつかの実施形態では、前部レンズ要素31の前面と後部レンズ要素41の背面43とは、正または負の屈折力を備えた球面レンズのように、両方の要素を通過する光線の収束または発散を引き起こすように相互に構成され得る。したがって、レンズ21は、ユーザの要求に従って固定された処方を有することができる。いくつかの実施形態では、前部レンズ要素31の前面および背面32、33、ならびに前部レンズ要素41の前面および背面42、43は、前部および後部レンズ要素31、41の間でユーザの処方を分割するように成形され、レンズ要素31、41を可能な限り薄くすることができるようにし得る。この意味で、各レンズ要素31、41の三次形表面33、42は、対応する球面32、43とは異なる曲率半径を有する球面ベース曲線上に形成され得る。実際には、前部レンズ要素31と後部レンズ要素41とのうちの一方は、標準的な基本屈折力を有することができる一方、他方のレンズ要素41、31の屈折力は、ユーザの処方に従って調整することができる。これにより、レンズ要素31、41のうちの少なくとも1つをある範囲のSKUで製造し、他方のレンズ要素41、31のみについて各ユーザのカスタマイズを必要とすることが可能になる。上記のように、レンズ要素31、41はまた、レンズ21を通過する光にある量の円筒形補正を与えるように構成され得る。適切には、任意の必要な程度の非点収差が、ユーザのためにカスタマイズする他方のレンズ要素41、31に含まれる。さらなる変形例では、前部レンズ要素31の前面32または後部レンズ要素の背面43の一方または両方は、レンズの基本屈折力を変化させるように漸次加算面で形成され得る。
【0063】
上記のように、レンズ要素31、41は、レンズ21の正味の屈折力が、
図2および
図8に示されるように、視線方向zを横切って延びる横軸x上のレンズ要素31、41の相対的な横方向の配置に従って変化するように構成されている。適切には、レンズ要素31、41によって提供される追加の屈折力は、0~2ジオプトリーの範囲で変化し、前の段落で説明した種類の固定ベース球面および/もしくは円筒形の屈折力に加えて老眼を矯正するのに適した追加の屈折力を提供し得る。アルバレスタイプのレンズの問題は、広範囲の屈折力を必要とする場合にレンズ要素が非常に厚くなる可能性のあることである。したがって、レンズ要素31、41を相互に対してシフトすることにより提供される追加の屈折力の範囲をわずか数ジオプトリーに制限することが望ましい場合がある。しかしながら、当業者は、もし人が必要なレンズ要素31、41の厚さのために、レンズ21、22の美的外観を損なうことに妥協する用意があるならば、本発明が、例えば、0~5ジオプトリー、0~6ジオプトリー、または0~10ジオプトリーとより広範囲の追加の屈折力を有するものであっても等しく使用され得ることを理解するであろう。
【0064】
レンズ21、22は、
図1および
図4に示されるように、フレーム12に取り付けられている。本実施形態の眼鏡11はリムなしであり、フレーム12は、以下でより詳細に説明するように、2つのレンズ21、22を相互接続し、固定する鼻ブリッジ14と、左および右側のテンプルアーム15、16とを備える。レンズ21、22と同様に、左および右側のテンプルアーム15、16は、正中面における互いの鏡像である。左側のテンプルアーム15は左側のレンズ21に固定され、右側のテンプルアーム16は右側のレンズ22に固定されている。レンズ21、22は、フレーム12に取り付けられ、レンズ要素31、41のスライドの横軸xは、
図2に示されるように、通常の使用におけるユーザに対して実質的に水平に向いている。本発明の他の実施形態では、レンズ21、22は、レンズの周りのリム部を完全または部分的に含むフレーム内に取り付けられ得る。
【0065】
図6に最もよく示されているように、前部レンズ要素31は、概して長方形であり、それぞれ上および下縁部34、35、ならびに左および右の横方向または側縁部、すなわち、左側のテンプルアーム15に隣接するテンプル側部36および鼻ブリッジ14に隣接する鼻側部37を有する。本発明は、レンズの特定の形状に限定されず、したがって、レンズ要素31、32は、任意の適切なレンズ形状、例えば、当技術分野でよく知られているもののいずれかを有することができる。いくつかの標準的な眼科用レンズの形状は、他のものよりも円形であり、本実施形態のレンズ21よりも明確に画定されていない側部を有し得る。それにもかかわらず、当業者は、レンズの形状を必要に応じて他の形状に適合させるのに困難はないであろう。
【0066】
後部レンズ要素41は、
図11および
図12に最もよく見られるように、前部レンズ要素31の形状に類似した形状を有する。
図11および12は、それぞれ上および下縁部44、45、ならびにそれぞれテンプルおよび鼻側縁部46、47を有する。後部レンズ要素41は、そのテンプルおよび鼻側部46、47の間のx方向において前部レンズ要素31よりも短く、前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41の横方向の動きに対応し、以下に説明するように、レンズ21の焦点距離を調整する。前部および後部レンズ要素31、41は、
図9A、10A、11および12にも最もよく見られるように、後部レンズ要素41の上縁部44の少なくとも一部が前部の上縁部34の少なくとも一部よりわずかに上に突出するように取り付けられていて、以下でより詳細に説明するように、前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41の手動移動、および前部レンズ要素31からの後部レンズ要素41の完全な取外しを容易にする。好都合なことに、後部レンズ要素41の上縁部44は、
図8に最もよく示されているように、摩擦が増大する刻み付き部48を形成され、さらに、ユーザによるレンズ21の手動操作を容易にし得る。あるいは、後部レンズ要素41の上縁部44の少なくとも一部の摩擦は、レンズ縁取りプロセスの一部として、または所望の表面にレーザーエッチングするか、所望の表面を化学的にエッチングするか、もしくは所望の表面にCNC後加工することでレンズ要素41を射出成形する場合は成形工具内で、単一または複数の高くされた(もしくは低くされた、もしくは両方をされた)縁部または面を作成することによって増やすことができる。本実施形態の変形例では、一体型の刻み付き部48を有する後部レンズ要素41を形成する代わりに、
図12に示すように、摩擦が増大した小さな部品48’を後部レンズ要素41の上縁部44に取り付けることができる。これは、特別な媒介物(透明なサンドペーパーなど)を接着するか、小さなボールベアリングもしくは他の媒介物を上縁部44に埋め込むか、コーティング(たとえば、浸漬、スプレーされたもの)を使用するか、高摩擦エラストマー(例:TPU)材料をツーショット成形(オーバーモールド)することによって実現できる。
【0067】
本実施形態のさらなる変形例では、
図9Bおよび10Bに示すように、後部レンズ要素41は、その下縁部45の少なくとも一部が前部レンズ要素の下縁部35の少なくとも一部の下に突出するように、前部レンズ要素31に対して配置することができる。または、後部レンズ要素41の上および下縁部44、45の間の高さは、
図9Cおよび10Cに示すように、後部レンズ要素41の上および下縁部44、45が前部レンズ要素31の対応する縁部34、35を越えて突出するように、前部レンズ要素31の高さよりわずかに高くてもよい。前部および後部レンズ要素31、41のこれらの配置は、以下に説明する本発明の他の実施形態に等しく適用可能である。
【0068】
図6および7に最もよく見られるように、前部レンズ要素31の前面32は、各側部36、37に並置され、前部レンズ要素31の途中まで延びるリベート58を形成される。各リベート58内で、前部レンズ要素31は、以下に説明するように、スロット51、52および複数の穴61、62、63を形成される。
【0069】
いくつかの実施形態では、前部レンズ要素31の製造中に、リベート58は、最初に前部レンズ要素31に切り込まれ、次に、スロット51、52および穴61、62、63を切り取るときにデータとして使用される。これにより、リベートがデータとして使用され、さまざまなサイズと形状とのレンズ要素の製造が容易になる。例えば、レンズ要素のサイズ、厚さ、および形状のある範囲にわたるデータとして固定サイズおよび形状のリベートを使用することにより、スロット51、52および穴61、62、63をレンズ要素に切断するプロセスは標準化され得るので、レンズ要素のサイズを切り替えるときに大幅に変更する必要がない。
【0070】
細長いスロット51、52は、各リベート58内に形成されている。すなわち、テンプルスロット51はテンプル側部36に近接し、鼻スロット52は鼻側部37に近接する。スロット51、52は同じ長さであり、それぞれが前部レンズ要素31を完全に貫通し、上記に画定されるように横断方向xに延びる。スロットは、
図7に示すように、半円形のテンプルおよび鼻端部53、54を有する。スロット51、52の上または下壁55のうちの1つは、
図7に最もよく見られるように、テンプルスロット51に対して階段状になっていて、前部レンズ要素31の背面33に並置されているスロット51の上部または下部に沿って鼻端部54から延在しテンプル端部53の手前で止まる保持用リブ56を画定する。本実施形態では、リブ56は、スロットの下壁55上に形成されているが、変形例では、リブ56は、反対側の上壁上に形成することができ、これにより、下面をより平坦に且つより深くすることが可能になる。保持用リブ56は、前面56を有する。
【0071】
前部レンズ要素31の前面32は、
図6および
図7に示すように、以下に説明するようなテンプルアーム15と鼻ブリッジ14との固定をするためのスロット51、52のそれぞれの周りの58でわずかにリベートされている。リベート58内で、前部レンズ要素31は、スロット51の各端部53、54に並置された2つの大きな穴61、62、および大きな穴61、62の間に配置された2つの小さな穴63を形成される。当業者は、穴のサイズは重要ではなく、いくつかの実施形態では、穴61、62、および63は実質的に同じサイズであり得ることを理解するであろう。穴61~63は、前部レンズ要素31を完全に貫通して延びる。より大きな穴は、
図4および
図8に最もよく見られるように、それぞれ前部永久磁石65、66を収容する。より小さな穴63は、テンプルアーム15および鼻ブリッジ14を、例えば、
図8に示すように、溝付き、ねじ山付き、隆起またはとげのある備品71などの適切な固定具を使用して前部レンズ要素31に固定することを可能にする。備品71は、前部レンズ要素31の前面32と同一平面上にあるリベート58内に嵌入するテンプルアームの肘部17の背面18に取り付けられている。本実施形態では、前部レンズ要素31は、このようにして、フレーム12に確実に固定されている。有利なことに、この配置により、SKU/ユーザ処方に応じて変化し得る前部レンズ要素31の前面32に共通の表面を作成することが可能になる。次に、テンプルアーム15は、ユーザの処方またはSKUの基本屈折力に関係なく、共通の表面に取り付けることができる。肘部17の背面18およびリベート58の前面は、同じ球面半径上にあり、これは、後部レンズ要素41の移動と共に弧状の横断経路(例えば、上記のx-z平面内の)を画定する。前部レンズ要素31は、前部レンズ要素31の鼻側部37に対する同様の配置によって鼻ブリッジ14に取り付けることができる。この配置の変形例では、2つ以上の永久磁石65、66が、例えば、上記の2つの穴61、62の間の第3の大きな穴(図示せず)によって、前部レンズ要素31に適合し得ることが理解されよう。
【0072】
後部レンズ要素41は、
図5に示すように、後部レンズ要素41に形成されたそれぞれの凹部91、92内に取り付けられ、そこから前方に突出する離間した2つの円筒形ダボピン81、82によって前部レンズ要素31に結合される。ダボピン81、82は、前部レンズ要素31のスロット51、52と位置合わせされ、一方のダボピン81は、後部レンズ要素41のテンプル側部46の近くに配置され、他方の82は、鼻側部47の近くに配置される。各ダボピン81、82は、円形の前面85および背面86を有する端部84を画定する切り欠き部83を備える。各ダボピン81、82は、スロット51、52の対応する1つに延在し、保持用リブ56の前面56上での端部84の背面85の相互係合によってその中に保持される。したがって、スロット51、52およびダボピン81、82は、前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41の移動を前部レンズ要素31に対する視線方向zを横切る横断方向xに小さい許容誤差で拘束しながら、前部レンズ要素31に対する視線方向zを横切る横断方向に後部レンズ要素41の横方向の移動を可能にするためのガイド要素として機能する。ダボピン81、82は、スロット51、52内にぴったりと嵌入するように寸法が決められており、x軸に直交するy方向における前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41の移動およびx-y平面内における前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41のヨーイングを防止するようになっている。テンプルダボピン81の前面85は、テンプルアーム15の肘部17の背面18に係合し、鼻ダボピン82の前面85は、鼻ブリッジ14の対応する背面に係合して、前部レンズ要素31に対する後部レンズ要素41のz方向の軸運動を防止するようになっている。適切には、肘部17および鼻ブリッジ14の背面は、低摩擦ベアリング(例えば、PTFE、POM)を備えていてもよい。あるいは、プラスチックダボピン81、82を使用することができる。
【0073】
ダボピン81、82は、後部レンズ要素41の左右の移動の際に、それらが各スロット51、52のテンプル端部53または鼻端部54で同時に前部レンズ要素31と係合するように離間されている。後部レンズ要素41をスロット51、52のテンプル端部53に移動させることにより、保持用リブ56がスロットの端部の手前で止まる位置で前部レンズ要素31からダボピン81、82を取り外すことができる。本実施形態の変形例では、リブ56は、代わりに、スロット51、52のテンプル端部53から延在し、鼻端部54の手前で止まることができ、その結果、後部レンズ要素41は、後部レンズ要素41が鼻の位置に完全にスライドされたときに前部レンズ要素31から取り外すことができる。
【0074】
本実施形態の別の変形例では、リブ56の第1の部分は、スロット51、52の鼻端部54から延びることができ、リブ56の第2の部分は、スロット51、52のテンプル端部53から延びることができる。したがって、リブ56の第1および第2の部分は、相互に接近して止まり、適切なサイズおよび寸法のノッチをそれらの間に画定し、その結果、後部レンズ要素41は、後部レンズ要素41が鼻の位置とテンプルの位置との中間の位置にスライドされたときに前部レンズ要素31から取り外すことができる。
【0075】
上記のように、前部および後部レンズ要素31、41は、それらの相対的な横方向の配置を変更すると、レンズ21の焦点距離が変化するように構成されている。適切には、前部および後部レンズ要素31、41は、後部レンズ要素41をスロット51、52のテンプル端部53から鼻端部54にスライドさせると、レンズ21の屈折力が増大するように構成されている。このようにして、レンズ21は、2つの使用モードを提供するように構成され得る。すなわち、後部レンズ要素41がスロット51、52のテンプル端部53に配置されるときの遠方モードと、後部レンズ要素41がスロット51、52の鼻端部54に配置されるときの増大した屈折力を伴う読み取り位置とである。これは、遠くから近くに焦点を合わせるときの目の動き方と一致しており、可動のアルバレスレンズ配置から光学体験の改善に貢献することを目的としている。上記のように第3の磁石が中間位置に設けられている場合、レンズ21は3つの使用モードを提供することができる。
【0076】
図5に示すように、後部レンズ要素41は、後部レンズ要素41に延びる2つのさらなる穴93、94を形成される。図では、これらの穴は、後部レンズ要素41を通って延びるように示されているが、本実施形態の変形例では、より魅力的な仕上がりを提供するためのブラインド穴である場合がある。これらのさらなる穴93、94のそれぞれは、ダボピン81、82のそれぞれの1つと並置されて配置され、後部永久磁石88、89を収容する。後部永久磁石88、89のそれぞれは、2つの前部レンズ要素31のスロット51、52のそれぞれに隣接する2つの前部永久磁石65、66と協働するように配置されている。特に、後部レンズ要素41がテンプル位置に配置されると、後部永久磁石88、89のそれぞれは、対応するスロット51、52のテンプル端部53の前部永久磁石65と整列し、後部レンズ要素41が鼻の位置に配置されると、後部永久磁石88、89のそれぞれは、対応するスロット51、52の鼻端部53の前部永久磁石66と整列する。前部および後部の永久磁石65、66、88、89は、後部レンズ要素41をテンプルおよび鼻の位置で安定した平衡状態に保持するため、相互に引き付け合うように配向されている。テンプルおよび鼻の位置の中間では、磁石は前部および後部のレンズ要素31、41を一緒に保持し続けるが、後部レンズ要素41はいずれかの端部位置に移動しようとする傾向を有する不安定な平衡状態にある。
【0077】
適切には、前部および後部の磁石65、66、88、89は、各モードにおいて前部および後部レンズ要素31、41を相互に対して保持し且つ正確に配置するのに役立つ一方、例えば清掃のため、後部レンズ要素41が上記のテンプル位置にあるときレンズ要素31、41の分離を可能にする。特に、前部および後部の磁石65、66、88、89は、ダボピン81、82の前面85が肘部17および鼻ブリッジ14の背面18にそれぞれ係合するように前部および後部レンズ要素31、41を一緒に引っ張って、後部レンズ要素41の移動を正確な弧状の横断経路に沿って制御する。前部および後部磁石65、66、88、89は、このようにして、レンズ要素31、41を個別の戻り止め位置に配置し、設定時にユーザに正のフィードバックを提供する。モードを変更する場合、力の大きさは、上記のような触覚インタフェースの組み合わせから生じるユーザインタフェース、前後のレンズ要素31、41のサイズ関係、および前後の磁石65、66、88、89により形成される磁気結合を介して簡単に克服することができる。これにより、ユーザはレンズ21の屈折力を正確且つ容易に調整することができる。
【0078】
「優れた」光学体験を提供するために、前部および後部レンズ要素間の関係は、画定された許容範囲内で制御され、不要な動き(さまざまな自由度でのぐらつき、ねじれなど)を排除または最小化する。一方、良好なユーザインタフェース体験を提供するために、前部および後部レンズ要素31、41の合わせ面間の摩擦を制御することが望ましい。スライド摩擦は、保持力に依存する。磁石の強度は、発生するスライド力と起動力とを最適化するように選択することができる。
【0079】
したがって、第1の実施形態のリムなし眼鏡11は、以下に説明する他の実施形態と比較して、より伝統的なグレージングアプローチを可能にする軽量設計を代表する。スロット51、52は、成形または切断中に前部レンズ要素31に形成することができる。一方、ダボピン81、82(プラスチックまたは金属)用の凹部91、92は、後部レンズ要素41の切断プロセス中に形成することができる。後部磁石88、89は、後部レンズ要素41の切断プロセス中に形成することができる穴93、94内において後部レンズ要素41に直接取り付けられる。前面磁石65、66は、レンズ切断プロセス中に形成することができる穴61、62において前面レンズ要素31に直接取り付けられる。前部レンズ要素31にスロット51、52を直接形成することは、公差連鎖を最小化し、良好な前部/後部レンズ要素31、41の位置合わせを保証するのに役立つ。個別のスロット51、52および前部磁石65、66の使用により、スロット51、52をレンズ要素31の全厚みとすることが可能となり、レンズ要素31の厚み内に適合する磁石の幅広い選択が可能になる。
【0080】
(実施例2)
図13~16は、本発明の第2の実施形態による可変焦点距離レンズ121を示している。レンズ121は、老眼、ならびに任意選択で、例えば、近視、遠視および乱視などの固定屈折異常を矯正するための一対の眼鏡での使用に適している。上記の実施例1のリムなし眼鏡で使用されるレンズ21、22と同様に、本実施形態の可変焦点距離レンズ121は、2つの固体の光学的に透明なレンズ要素を含み、これらは、レンズを通る視線方向(
図15のz軸によって示される)に一方が他方の前に配置され、レンズの焦点距離を変えるために、視線方向を横断する方向(
図15のx軸によって示される)に相互にスライド可能である。適切には、レンズ121はアルバレスタイプのレンズであり得、簡潔にするために、実施例1に関して上記で説明したそのようなレンズの詳細についてここでは繰り返さない。以下の説明は、第1の実施形態とは異なる第2の実施形態の態様に焦点を合わせている。
【0081】
したがって、レンズ121は、前部レンズ要素131および後部レンズ要素141を備える。前部レンズ要素は、前面132および背面133を有する。前面は球形または球状円筒形であり、背面133は、球面ベース曲線に関する上記の種類の三次形表面であるように構成されている。後部レンズ要素141は、三次形の前面142および球形または球状円筒形背面143を有する。三次形表面133、142の組み合わせによって提供される可変屈折力に加えて、レンズ121は、ベース球および/または円筒屈折力を含み得る。第1の実施形態のように、前部および後部レンズ要素131、141は、レンズの焦点距離を変化させるために、z軸を横切る直線状または曲線状の横断経路上でレンズ要素の互いの横方向移動を可能にするために、ガイド要素によって一緒に結合されている。
【0082】
前部レンズ要素131は、上縁部134、下縁部、および2つの対向する側縁部136、137を有する。眼鏡で使用するために成形される場合、一方の側縁部136は、ユーザの頭のテンプル側に配置されているテンプル側縁部を形成する一方、他方の側縁部137は、ユーザの鼻と並置されて配置される鼻側縁部を形成し得る。各側縁部136、137に向かって、そして概して上縁部134に向かって、前部レンズ要素131は、x方向に離間して配置された一連の3つの穴を形成されている。3つの穴は、前部レンズ要素131を通って延在し、前部レンズ要素131の背面133の後方に突出する磁気ダボピン181を受け入れるように成形されたより大きな中央穴161と、前の例で説明したのと同様の方法でフレームにレンズ121を取り付けるのに使用することができる2つのより小さな穴163とを含む。フルフレーム眼鏡では、小さい穴163は冗長であり、省略され得ることが理解されよう。磁気ダボピン181は、中央の穴161に確実に固定される。いくつかの実施形態では、干渉圧入は、磁気ダボピン181を所定の位置にしっかりと保持するのに十分であり得るが、いくつかの実施形態では、接着セメントも適用され得る。したがって、前部レンズ要素131は、2つの後方に延びる磁気ダボピン181を有し、一方はテンプル側縁部136に近接し、他方は鼻側縁部137に近接する。
【0083】
後部レンズ要素141は、
図13および
図14に最もよく見られるように、前部レンズ要素131の形状に類似した形状を有する。したがって、後部レンズ要素141は、上および下縁部144、445、ならびに側縁部146、147を有する。
図9A~C、10A~C、11および12を参照して記載したように、後部レンズ要素141は、その2つの側縁部146、147の間で前部レンズ要素131よりも狭く、前部レンズ要素131に対して後部レンズ要素141の上縁部144もしくは下縁部145のいずれか、またはその両方が前部レンズ要素131の対応する縁部を越えて突出し、レンズ121の手動操作を容易にするように成形し且つ/または配置することができる。第1の実施形態と同様に、後部レンズ要素の上および/または下縁部144、145は、レンズ121の動作を支援するために、摩擦が増大した一体領域または追加領域(図示せず)をさらに含み得る。
【0084】
2つの磁気ダボピン181のそれぞれは、後部レンズの2つの側縁部146、147および上縁部144に向かってそれぞれ前面142の対応する位置に形成された対応するブラインドスロット151に受け入れられる後端部を有する。各スロット151は、後部レンズ要素141の前面142から後退し、前面152がスロット151の内部にある後壁を画定する。各磁気ダボピン181は、背面182を有し、2つのレンズ要素131、141の間に軸方向ベアリングを形成するようにそれぞれのスロット151の後壁の前面152に係合する。適切には、前面152および/または背面182は、一方を他方の上でスライドさせるのを容易にするために低摩擦材料で形成することができる。各スロット151は、対向するテンプルおよび鼻端部153、154を有し、磁気ダボピン181は、それぞれのスロット151にぴったりと嵌入し、2つの端部153、154間の横断経路に沿って前部および後部レンズ要素131、141の相対的な横方向の移動をガイドする一方、
図15に示すような前部および後部レンズ要素131、141の上および下縁部134、135、144、145の間に延びるy軸方向を含む、他の任意の方向にレンズ要素131、141が不要な移動をするのを防止する。磁気ダボピン181およびスロット151は、2つの磁気ダボピン181がテンプルまたは鼻端部153、154に同時に配置されるように位置決めし且つ寸法決定される。
【0085】
それのテンプルおよび鼻端部153、154のそれぞれに近接して、スロット151のそれぞれは、後壁の前面152から後部レンズ要素141を通って延びる対応する穴193に受け入れられる後部永久磁石188を収容する。したがって、各スロット151内に2つの磁石188が存在する。後部永久磁石188は、これらの穴193を塞ぎ、スロット151の後壁の前面153と同一平面になり、磁気ダボピン181と協働するように配置され、ダボピン181がそれぞれのスロット151のテンプル端部153または鼻端部154に配置されるときに、それぞれ2箇所の個別の位置で前部および後部レンズ要素131、141を一緒に結合する。前と同様、磁気ダボピン181と後部磁石188との間の保持力は、スロット151のテンプルおよび鼻端部153、154の間の2つの要素の任意の相対配置で前部および後部レンズ要素131、141を一緒に保持するのに十分に強くすることができる。しかし、これらの端部位置の磁石は近接しているため、前部および後部レンズ要素131、141は、スロット151の端部によって画定される2つの個別の位置の間では不安定な平衡状態に保たれ、その結果、レンズ要素131、141が個別の位置に移動し、ユーザに触覚フィードバックを提供する傾向を有することができる。このようにして、磁気ダボピン181および後部磁石188は、本実施形態のレンズ121の2つの使用モードを画定する。すなわち、レンズ要素が磁気ダボピン181でスロット151のテンプル端部153に配置されている場合と、レンズ要素が磁気ダボピン181でスロット151の鼻端部153に配置されている場合と、である。第1の実施形態と同様に、レンズ要素131、141は、磁気ダボピン181がスロット151の鼻端部154に配置されているときにレンズ121の屈折力がより大きくなるように構成され得る。したがって、レンズ121は、磁気ダボピン181がスロット151のテンプル端部153に配置される遠方モードと、磁気ダボピン181がスロット151の鼻端部153に配置される読み取りモードを有することができる。本実施形態のレンズ121は、第3の中間使用モードを与えるように、各スロット151の中間位置に第3の磁石を含むように容易に適合させることができる。
【0086】
本実施形態では、磁気ダボピン181と後部永久磁石188との間の磁気結合は、前部および後部レンズ要素131、141を一緒に保持する唯一の手段である。第1の実施形態とは異なり、磁気ダボピン181およびスロット151によって構成される機械的ガイド要素は、第1の実施形態のリブ56に対応する保持要素を有していない。
【0087】
第1の実施形態と同様に、磁気ダボピン181および後部磁石188は、清掃、修理等のためのレンズ要素131、141の容易な分離を可能にしながら、前述のモードのそれぞれにおいて前部および後部レンズ要素131、141を相互に対して保持し、正確に配置するのに役立つ。磁気ダボピン181および後部磁石188は、レンズ要素131、141を個別の位置に配置し、設定時にユーザに正のフィードバックを提供する。モードを変更する場合、力の大きさは、上記のような触覚インタフェース、前後のレンズ要素131、141のサイズ関係、および磁気ダボピンによって形成される磁気結合の組み合わせから生じるユーザインタフェースを介して容易に克服することができる。これにより、ユーザは、レンズ121の屈折力を正確且つ容易に調整することができる。
【0088】
本実施形態のレンズ121の利点は、レンズ切り替え機構全体がレンズ121内に含まれ、すべてがレンズ切断プロセス中に形成されることである(処方レンズの場合)。2つのスロット151は、レンズ121上に戦略的に配置されて、容易な切り替えを可能にし、レンズ要素131、141が相互に対してねじれることを防止する。リムなしの変形例の場合、これらはテンプルおよび鼻のフレームワークの後ろに配置することができる。フレーム付きの変形例の場合、これらは、前部/後部レンズ要素対の上縁部134、144およびテンプル側縁部136、146に近接する可能性が高い。これにより、リムなし、ハーフリム、フルフレーム型など、多くの既製のフレームを使用することができる。
【0089】
(実施例3)
本発明の第3の実施形態による別のリムなし眼鏡211を添付図面の
図17および
図18に示す。上記の実施例1に記載の第1の実施形態の眼鏡と同様に、本実施形態の眼鏡は、レンズの焦点距離を変更するため、視線方向(
図17のz軸)を横断する方向に相対運動するように配置された2つの重ね合わせレンズ要素を含む種類の2つの可変焦点距離レンズ221、222を備える。そのようなレンズの詳細について、本発明の第1の実施形態に関連して上記に与えており、簡潔にするためにここでは繰り返さない。大まかに言えば、本実施形態の眼鏡211は、第1の実施形態のレンズ21、22がそれぞれ遠方視および読み取りの2つの使用モードのみを提供するところ、本実施形態のレンズ221、222は、以下でより詳細に説明する中間モードを含む3つの使用モードを有することを除いて、上記の実施例1のものと同様に機能する。
【0090】
レンズ221、222は、鼻ブリッジ214および左側および右側のテンプルアーム215、216(眼鏡をかけているユーザの視点から)を備えるリムなしフレームにそれぞれ取り付けられている。
図17および18に示すように、レンズ221、222は、眼鏡211の左側および右側のレンズを形成し、左側のレンズ221は、左側のテンプルアーム215と鼻ブリッジ214との間に接続されている。右側のレンズ222は、右側のテンプルアーム216と鼻ブリッジ214との間に接続されている。左側および右側のレンズ221、222は、本質的に、正中面について互いの鏡像であるため、左側レンズ221について以下に説明するが、右側レンズ222の構造および動作は実質的に同じである。
【0091】
左側のレンズ221は、前部および後部レンズ要素231、241を含み、これらは、上記の例1および2の前部および後部レンズ要素31、41、131、141と実質的に同じである。前部レンズ要素231は、
図19に示すように、前面232および背面233を有する。前部レンズ要素231は、概して長方形であり、一組の眼鏡での使用に適した種類の全体的な形状を有し、上縁部234、下縁部235、テンプル側縁部236、および鼻側縁部を含む。本発明によれば、他の多くのレンズ形状を使用することができる。上縁部234に向かって、テンプルおよび鼻側縁部236、237のそれぞれは、238および239でそれぞれ切り取られて、左側テンプルアーム215および鼻ブリッジ214のための備品をそれぞれ提供する。特に、
図23および
図24を参照すると、テンプル側の切り欠き部238は、左側のテンプルアーム215の肘部217を受け入れる。肘部217は、上および下面272、273を有する一体型テンプルベアリング271を含み、これらは、切り欠き部238内への圧入を形成する。
図24に最もよく示されているように、テンプルベアリング271の上および下面272、273、ならびに切り欠き部238における前部レンズ要素231の対応する縁部は、肘部217を前部レンズ要素231に確実に固定するため274および275にバンプフィットを形成するように成形される。テンプルアーム215の肘部217と前部レンズ要素231との間の接合部は、必要に応じて接着剤で補うことができる。鼻ブリッジ214は、同様の方法で鼻ブリッジを左側および右側のレンズ221、222の前部レンズ要素231にそれぞれ取り付けるために、両端部に1つずつある2つの同様の鼻ベアリング276、277を備える。鼻ブリッジ214は、左側の鼻ベアリング276によって左側のレンズ221の前面のレンズ要素231に固定され、これは、前面のレンズ要素231の切り欠き部239に圧入を形成する。鼻ブリッジ214は、同様の方法で、右側の鼻ベアリング277によって、右側のレンズ222の前部レンズ要素231に固定されている。
【0092】
肘部217のテンプルベアリング271は、
図24に示すように、内部テンプル側壁253と内部鼻側壁254との間に横方向に延びるほぼ直方体の凹部251を形成される背面218を有する。直方体の凹部251はまた、内部下壁および上壁255、256と、背面218の前方に設定された内部前壁257とを有する。テンプルベアリング271は、内部前壁257から前方に延びる3つの離間した凹部で形成され、それぞれが前部永久磁石265、266、267を内部前壁257と同一平面に収容する。穴およびそれらに受け入れられる磁石は、
図17に示される視線方向の横断方向に延びるx軸に沿って、テンプルおよび鼻側壁253、245の間で実質的に横方向に離間し、その結果、3つの磁石からなるグループは、テンプル側壁253に近接する前部テンプル磁石265、鼻側壁245に近接する前部鼻磁石267、ならびに前部テンプルおよび鼻磁石265、267の間の前部中央磁石266を含む。
【0093】
鼻ブリッジ214の左側の鼻ベアリング276は、テンプルベアリング217に類似しており、同様の内部テンプル側壁263と内部鼻側壁264との間に延びる直方体の凹部252を有し、内部上壁および下壁265、266と、前壁267とを有する。鼻ブリッジ214上の鼻ベアリング276の前壁267は、
図23に最もよく見られるように、3つの横方向に離間した凹部を形成されている。しかし、本実施形態では、中央の凹部のみが、前壁267と同一平面にある前部永久磁石268を収容し、一方、内部テンプルおよび鼻側壁263、264に隣接する凹部は空である。他の実施形態では、これらの凹部はまた、永久磁石を受け入れることができるか、またはそれらの存在しないことがある。鼻ベアリング276の内部側壁263、264間の間隔は、テンプルベアリングの内部側壁253、254間の間隔に等しく、凹部251、252は、以下に説明するように、前部レンズ要素231に対して後部レンズ要素241の左右の移動を可能にするという点で、上記の第1の実施形態の後部レンズ要素41のスロット51、52に相当する。
【0094】
左側の後部レンズ要素241は、前面242および背面243を有し、
図20に示すように、前部レンズ要素231の形状に対応する形状で形成され、上および下縁部244、245、ならびにテンプルおよび鼻側縁部246、247を有する。上記の第1および第2の実施形態と同様に、後部レンズ要素241は、
図18に見られるように、そのテンプル側部246と鼻側部247との間の幅が、前部レンズ要素231の幅よりも狭い。同様に、後部レンズ要素241は、以下に説明するように、ユーザによる後部レンズ要素241の操作を容易にするためその上および下縁部244、245の一方または両方が前部レンズ要素231の対応する縁部もしくは複数の縁部をわずかに越えて突出するように、前部レンズ要素に対して配置し、または成形もしくはサイズ決定することができる。後部レンズ要素241は、その上縁部244に向かって、そのテンプルおよび鼻側縁部246、247のそれぞれに、雌(切り欠き)のアリ溝249、250を形成されている。
【0095】
図21に最もよく示されているように、雌アリ溝249、250のそれぞれは、マウント281、282を受ける。したがって、後部レンズ要素241のテンプル側縁部246の雌アリ溝249は、テンプルマウント281を載せ、一方、後部レンズ要素241の鼻側縁部247の雌アリ溝250は、鼻マウント282を載せる。テンプルおよび鼻マウント281、282のそれぞれは、緊密な締まりばめを形成する対応の雌アリ溝249、250と対になるように成形されている
図22に示すような雄アリ溝283を備える。テンプルおよび鼻側縁部246、247に形成されている追加のスロット260によって、テンプルおよび鼻マウント281、282への嵌合を調整して確実な圧入を与えることができ、必要に応じて接着セメントで補うことができる。
【0096】
テンプルおよび鼻マウント281、282のそれぞれは、後部レンズ要素241の対応する側縁部246、247の側面に配置され、後部レンズ要素241の前面242の前方に突出する、概して直方体のブロック284を備える。テンプルおよび鼻マウント281、282は、テンプルおよび鼻ベアリング217、276の直方体凹部251、252によって画定される視線方向を横切る横断経路に沿って前部レンズ要素231に対する後部レンズ要素241の横方向の移動をガイドするため、直方体凹部251、252にそれぞれ受け入れられる。各ブロック284は、対応するテンプルまたは鼻ベアリング217、276の前壁257、267に係合してそれと軸方向ベアリングを形成するように配置されている前面289と、上および下面285、286とを有し、それぞれは、対応するテンプルまたは鼻ベアリング217、276の内部上壁および下壁255、256、265、266とスライド可能に係合して、前部レンズ要素231に対する後部レンズ要素241のぐらつき、ねじれなどの望ましくない移動を防止する。マウント281、282およびベアリング271、276は、このようにして、前部および後部レンズ要素231、241の相対的な移動を横断経路に拘束するのに役立つ。テンプルマウント281と鼻マウント282との間の距離は、テンプルベアリング271と鼻ベアリング276との対応する部分の間の距離に等しく、各ブロックは、また、後部レンズ要素241がテンプル側に完全に移動したときに対応するテンプルまたは鼻ベアリング217、276の内部テンプル側壁253、263と係合するように配置されたテンプル側表面287と、後部レンズ要素241が鼻側に完全に移動したときに対応するテンプルまたは鼻ベアリング217、276の内部鼻側壁254、264と係合するように配置された鼻側表面288とを有する。
【0097】
図22に最もよく見られるように、テンプルマウント281の上面285は、前の段落で説明したように、テンプル側または鼻側に後部レンズ要素241が完全に移動したときにテンプルベアリング271の凹部251の内部上壁に形成された保持用ニブ292を受け入れるように構成されている横溝291を形成される。保持用ニブ292は、後部レンズ要素241がこれら2箇所の位置のいずれかに配置されたときに、これらの位置で使用中の後部レンズ要素241の偶発的な取外しが防止されるのを支援する手段として凹部251にテンプルマウント281を保持するのに役立つ。
図24に示すように、後部レンズ要素241がテンプル位置と鼻位置との間の中央位置に配置されている場合、保持用ニブはない。これは、後部レンズ要素241が中央位置にある場合、テンプルマウント281をテンプルベアリング271から取り外すことができることを意味する。
図21に示すように、鼻マウント282は、その下面に同様の横溝291を備えて形成され、これは後部レンズ要素241が完全にテンプル側または鼻側に移動し、中央位置にはないとき、左側の鼻ベアリング276に形成された凹部252の内部下壁に形成された保持用ニブ293を受け入れるように同様の配置がされている。したがって、後部レンズ要素241は、中央位置で前部レンズ要素231から完全に取り外すことができる。
【0098】
テンプルおよび鼻マウント281、282のそれぞれは、直方体ブロック284の前面289に形成された凹部299に受け入れる後部永久磁石298が取り付けられている。磁石298は、視軸zの方向に向けられ、前部および後部レンズ要素231、241の間に磁気結合を形成するように、対応するテンプルまたは鼻ベアリング271、276内の磁石265、266、267、268と協働するように配置されている。前部および後部磁石265、266、267、268は、後部磁石298が前部磁石の1つと整列しているとき、後部磁石298に最も強力に引き付けられる。したがって、前部および後部磁石は、前部レンズ要素231に対する後部レンズ要素241の3つの個別の位置を画定するのに役立つ。すなわち、テンプルマウント281の後部磁石298がテンプルベアリング271のテンプル磁石265と整列するときのテンプル位置と、テンプルマウント281の後部磁石298がテンプルベアリング271の鼻磁石267と整列するときの鼻位置と、テンプルマウント281の後部磁石298がテンプルベアリング271の中央磁石266と整列するときの中央位置と、の3箇所の位置である。後部レンズ要素241が中央位置に配置されると、鼻マウント282上の後部磁石298は、鼻ベアリング276内の後部磁石268に引き付けられる。上記の第1および第2の実施形態のように、前部および後部磁石265、266、267、268、298の強度は、前部および後部レンズ要素231、241を一緒に安定に保持するのには十分強い一方、上記のテンプル、中央、および鼻位置の間を手動でスライドさせ、必要に応じて、例えば清掃のために、後部レンズ要素241を中央位置で取り外すことができるようになっている。
【0099】
前部磁石および後部磁石265、266、267、268、298の間の磁気結合の強さは、個別の位置の間で後部レンズ要素241を操作するときのユーザの触覚体験を画定する。磁石によって生成される保持力の強さは、磁石が整列したときに最大になるので、ユーザは、ユーザの指を通して後部レンズ要素241がいつ個別の位置の1つにあるかを感じることができる。この意味で、テンプルベアリング271内の離間した磁石265、266、267は、一連の3つの戻り止めを提供するのに役立つ。いくつかの実施形態では、中央磁石266は、テンプルおよび鼻磁石265、267よりも強力にすることができ、その結果、ユーザは後部レンズ要素241がいつ中央位置に配置されているかを感じることができ、ユーザが外側の位置に容易にオーバーランすることなく中央位置を選択するのを助ける。本実施形態では、磁石265、266、267は、中央位置がテンプルまたは鼻の位置よりも大きな保持力を生成するように配置されている。他の実施形態では、この効果は、複数の磁石、異なる形状の磁石、または異なるグレードの磁石(例えば、番号が大きいほど同じサイズ/形状の磁石に対してより高い引張力を与えるN52、N48、N35)を使用することによって達成することができる。これは、前部レンズ要素および後部レンズ要素231、241間のバンプフィット、板ばねなどの他の(非磁気的)手段によって達成できることも想定されている。
【0100】
したがって、前部および後部レンズ要素231、241間の磁気結合は、上記の第1および第2の実施形態における2つのモードのみと比較して、3つの異なる使用モードを画定する。実施例1および2に記載されているように、本実施形態の前部および後部レンズ要素231、241は、レンズ221の屈折力が、テンプル位置から中央位置を通って鼻位置まで増大するように便利に配置することができる。レンズ221は、例えば、テンプル位置での遠方視モード、中央位置での中間の「オフィス」モード(例えば、コンピュータを使用するため)、および鼻位置での読み取りモードを提供する。適切には、前部および後部レンズ要素のアルバレス構成要素は、遠方モードでレンズ要素に組み込まれたベースの球形または円筒形屈折力を超えるいかなる追加の屈折力を生成しなくてもよい。読み取りモードでは、前部および後部レンズ要素231、241は、任意の基本屈折力に加えて、例えば+2ジオプトリーの追加の屈折力を提供するように構成し且つ配置することができる。中央位置では、前部および後部レンズ要素231、241は、例えば、+1ジオプトリーの追加の屈折力を提供するように構成し且つ配置することができる。もちろん、これらの屈折力は純粋に例として与えられており、当業者は、レンズ要素の異なる個別の位置に異なる量の追加の屈折力を提供するように本実施形態を適合させることができるであろう。
【0101】
(実施例4)
本発明による一対のリムなし眼鏡311の第4の実施形態を
図25および
図26に示す。いくつかの点で、本実施形態の眼鏡311は、前の例の眼鏡211と同様である。以下の説明は、簡潔にするために、2つの実施形態間の相違点に焦点を合わせている。
【0102】
上記の実施例3の眼鏡211と同様に、本実施形態の眼鏡311は、2つのレンズ321、322とユーザの頭に眼鏡311を装着するための左および右側のテンプルアーム315、316とを相互接続する鼻ブリッジ314を有するフレーム312に取り付けられた2つの可変焦点距離レンズ321、322を備える。前と同様に、「左」と「右」、「前」、「後」、「上」、「下」、「テンプル」、「鼻」などの用語は、ユーザの観点から使用されている。したがって、2つのレンズ321、322は、左側レンズ321と右側レンズ322とを含む。2つのレンズ321、322は、鼻ブリッジ314を二分する正中線について互いの鏡像であり、
図29~32を除いて、右側のレンズ322のみについて記載されている。左側のレンズ321の構造および動作は同一であると想定することができる。
図29~32は、眼鏡311の左側の構成要素を示しているが、正中線について鏡像であるにもかかわらず、対応する右側の構成要素は同一であると想定することができる。
【0103】
したがって、右側のレンズ322は、それぞれ、前部および後部レンズ要素331、341を含み、これらは、
図26に示すように、ユーザの視線方向zに直交するx方向に延びる直線状または曲線状の横断経路に沿う2つのレンズ要素331、341の相対的な横方向の配置に従って可変焦点距離を提供するように構成されている。通常の使用では、ユーザが頭をまっすぐにして座ったり立ったりすると、x軸とz軸とはほぼ水平になる。適切には、可変焦点距離レンズ321、322は、第1の実施形態に関して上記で詳細に説明した種類のアルバレスタイプのレンズとすることができる。x方向は、
図26において直線として示されているが、本発明のすべてではないにしてもほとんどの実施形態において、レンズ要素331、341の相対的な横方向の移動は、レンズ321、322のベース曲線に対応する弧状の経路をたどることが理解されよう。通常、弧状の経路はx-z平面内にある。レンズ321、322は、漸次追加の有無にかかわらず、ユーザの処方に従って固定ベースの球形および/または円筒形屈折力を有することができ、老眼を矯正するため、レンズ要素331、341の相対配置に従って追加の球面屈折力を追加するように調整可能とすることができる。
【0104】
前部レンズ要素331は、概して長方形であり、上および下縁部334、335と、それぞれテンプルおよび鼻側縁部336、337とを有する。前述のように、本発明は、レンズ321、322の特定の形状またはサイズに限定されず、当技術分野で周知の、添付図面に示されているものよりも多かれ少なかれ湾曲する周辺縁部を有し得る種類の多種多様な眼科用レンズスタイルに適用可能である。当業者はまた、ハーフリムまたはフルフレーム眼鏡で使用するために、本実施形態のレンズ321、322を適合させることができるであろう。前面レンズ要素331は、典型的には球形である前面332と、上記のように三次形表面で形成された背面333とを有する。後部レンズ要素341は、前部レンズ要素331の形状およびサイズと一致する形状およびサイズを有し、それぞれの上および下縁部344、345、ならびにそれぞれのテンプルおよび鼻側縁部346、347を有する。本実施形態では、後部レンズ要素341は、そのテンプルおよび鼻側縁部346、347の間が前部レンズ要素331の対応する寸法よりも狭く、本明細書に記載する前部レンズ要素331に対する後部レンズ要素341のスライド運動に対応する。上および/または下縁部344、345の少なくとも一部は、前部レンズ要素331の縁部334、335の対応する部分を越えて突出することができ、且つ増大した摩擦の一体部分または追加部分を備えることができる。第1の実施形態に関連して、
図9A~C、10A~C、11および12を参照して説明した通り、ユーザがレンズ322を手動で操作するのを支援するためである。
【0105】
その上縁部334に向かって、前部レンズ要素331は、そのテンプル側および鼻側のそれぞれに、それぞれ細長い切り欠き部338、339を備えて形成されている。各切り欠き部338、339の内部の端部(前部レンズ要素331に対して)に並置して、前部レンズ要素331は、また、前部レンズ要素331を貫通して延びる開口361、362を形成される。開口361、362の位置は、スロット間の材料のウェブの厚さを変えるために変えることができる)。この配置により、レンズの縁取りプロセス中に部品間の圧入が作成される。左側のレンズ321を参照する
図29および30に最もよく示されるように、切り欠き部338、339および開口361、362が、肘および鼻アセンブリ371、381をそれぞれ前部レンズ要素331に固定するように構成且つ配置されている。肘アセンブリ371は、隣接するテンプルアーム315の肘部317に接続されている。右側レンズ322を参照する
図26および28に示すように、鼻アセンブリ381は、鼻ブリッジ314の右側の横方向端部に形成され、同様の鼻ブリッジアセンブリ381は、左側レンズ321の前部レンズ要素331に取り付けるための鼻ブリッジ314の反対側の左側の横方向端部に設けられている。
【0106】
図29を参照すると、肘アセンブリ371は、テンプルアーム315の肘部317と一体的に形成されるか、またはそれに固定される第1の細長い、概して直方体のブロック372を備える。ブロック372は、その間を横方向に延び、細長い凹部375を画定する上および下壁373、374を有する。上および下壁373、374は、ブロック372のテンプルおよび鼻端部の中間377で前方に階段状になっているブロックの背面376を画定し、切り欠き部338のテンプル端部に並置された前部レンズ要素331のテンプル縁部336に形成された対応する上および下スロット363にしっかりと係合するフランジを画定する。その鼻端部において、ブロック372は、開口361に圧入を形成するように構成されている後方に突出するラグ378を形成されている。したがって、開口361内のラグ378の係合、ならびに上および下スロット363内のブロック372の上および下壁373、374上のフランジの係合によって、前部レンズ要素331にしっかりと取り付けられる。上および下スロット363は、縁取り中に調整されて、肘および鼻ブリッジアセンブリ371、381を前部レンズ要素331に保持するための良好な(緊密な)インタフェースを確保することができる。本実施形態では、ブロック372は、摩擦力だけで然るべき場所に保持されている。しかし、他の実施形態では、接着剤を使用することもできる。フランジとラグ378との間のブロック372の背面376は、前部レンズ要素331の前面332に隣接して適合するように形作られる。ブロック372の下壁374は、
図29に最もよく見られるように、階段部377と鼻端部との間で後方に突出する二次ピン379を形成される。それは、前部レンズ要素331に加えられた荷重を分散させるように、切り欠き部338に隣接する前部レンズ要素331に形成された対応するノッチに係合するように配置されている。その結果、荷重は全てが開口361に集中せず、且つ/または適用される接着剤にそれほど依存しない。鼻ブリッジアセンブリ381は、
図28に示すのと同様の立方体ブロック381を含む。
【0107】
図30を参照すると、ブロック372内の細長い凹部375は、ほぼ直線状のベアリング380を収容し、これは、
図31および
図32に詳細に示されている。ベアリング380は、ブロック372の細長い凹部375に結合され、ブロック372の下壁374の上面と係合するように構成されている下面381と、低摩擦仕上げが施されている上面382とを有する。下面381は、ベアリングアセンブリを形成するための前部永久磁石365、366のグループを収容するため、
図32に示すように凹んでいる。取り付け位置では、前部磁石365、366はベアリング380に形成された凹部と、
図29に示すようにブロック372の下壁374の上面に形成された対応する凹部383とに受け入れられる。前部磁石265の1つは凹部375のテンプル端部に配置され、他の前部磁石は凹部375の鼻端部に配置される。本実施形態は、各ベアリングアセンブリに2つの前部磁石365、366のみを有することに留意されたい。しかし、本発明の変形例では、上記の実施例3のように3つの前部磁石を使用するか、3つ以上の前部磁石を使用して、後部レンズ要素341のより離散的な位置を画定することができる。前部磁石365、366は、
図26に示すように、x軸およびz軸に実質的に直交するy軸と整列して垂直に配向されている。この点で、本実施形態は、磁石265、266、267、268が概してz軸と整列している上記の実施例3の配置とは異なる。この配置により、本実施形態は、以下に説明するように、画定された横断経路に沿って後部レンズ要素341の良好なガイドおよび保持を維持しながら、正面から見たときに薄く、より軽くすることができる。
【0108】
ベアリング380の上面382は、ブロックの上壁373の下面の下に離間して配置され、上記の例1、2、および3のそれぞれで説明した第1、第2および第3の実施形態のスロット51、52および151、152ならびに凹部251、252と同様の機能を果たす細長いスロットを画定し、すなわち、前部レンズ要素331に対する後部レンズ要素341の移動のためのガイドを提供する。
図31に示すように、ベアリング380は、さらに、実質的な中央の位置に直立した保持用突起384を含み、これは、上記の実施例3の保持用ニブ292、293と同様の機能を果たす。
【0109】
図27を参照すると、後部レンズ要素341は、そのテンプルおよび鼻側縁部346、347にそれぞれ並置され、概して上縁部344に向かって2つの開口349、350を形成される。開口は、後部レンズ要素341を貫通して延び、テンプルおよび鼻後部マウント391、392をそれぞれ固定するように構成されている。テンプルおよび鼻後部マウント391、392のそれぞれは、肘および鼻アセンブリ371、381の前部レンズ要素331への取り付けと同様の方法で後部マウント391、392を後部レンズ要素341に固定するために、対応する開口349、350に緊密な圧入を形成するように構成されている一体型後方突出ラグ393を備える。したがって、同様の方法で、後部レンズ要素341の側縁部346、347は、後部マウント391、392を隣接する側縁部346、347に対して配置させるように構成されているスロット394を形成される。スロット394の深さは、後部レンズ要素341に対する後部テンプルおよび後部鼻マウント391、392の間の緊密な嵌合を保証するよう後部レンズ要素341の縁取り中に調整することができる。
【0110】
テンプルおよび鼻後部マウント391、392のそれぞれは、後部レンズ要素341の前面342の前方に突出し、ベアリング380の上面382の中間の対応する肘または鼻ブリッジアセンブリ371、381の細長いスロットにぴったりと嵌入するように成形およびサイズ決定される、ほぼ直線状の本体部395を備える。それにより、前部レンズ要素331に対する後部レンズ要素341のぐらつき、ねじれなど望ましくない移動を実質的に防止しながら、本体部395が、ブロック372の上壁373とインサートの上面382との間の細長いスロットに沿って前後にスライドすることを可能にする。適切には、本体部395は、対応する細長いスロットの内面と係合するための平坦な上面および下面を有する。本体部395は、本体部395の下面に形成された凹部に受け入れられる後部磁石396(
図28を参照)を収容し、後部永久磁石396は、y軸上でほぼ垂直に配向されて、対応するベアリングアセンブリ内の同様に配向されている前部磁石365、366のグループと協働する。
【0111】
前述の実施形態と同様に、前部および後部磁石365、366、396は、相互に引き付け合って、前部および後部レンズ要素331、341を複数の個別の位置に解放可能に一緒に保持する。本実施形態では、磁石365、366、396は、後部レンズ要素341を、テンプルアーム315、316に向かって完全にスライドするテンプル位置、または鼻ブリッジ314に向かって完全にスライドする鼻位置に配置するのに役立つ。これらの位置の中間では、磁石は、前部および後部レンズ要素331、341を一緒に保持するのに役立つが、それほど強くはないので、後部レンズ要素341は、個別の位置の1つに移動したがる傾向を有する。磁石の強度は、後部レンズ要素341を操作して、配置が各個別の位置に戻り止めを画定する位置間で横方向にシフトさせるときに、ユーザが指を通してこれを感じることができるようなものである。本実施形態では、後部マウント391、392は、細長いスロットの中央位置にあるベアリング380上の直立した保持用突起384によって、前部肘および鼻ブリッジアセンブリ371、381から誤って取り外されることを防止することができる。後部レンズ要素341は、それが端部位置の1つにあるときに、前部レンズ要素331から選択的に取り外すことができる。
【0112】
前の実施形態のように、前部および後部レンズ要素331、341は、前部レンズ要素に対して鼻ブリッジ314に向かって横方向内側にスライドするにつれて、レンズ321、322の屈折力が増大するように適切に構成されている。したがって、レンズ321、322は、後部レンズ要素341がテンプル位置にあるときは遠方モードを有し、後部レンズ要素341が鼻位置にあるときは読み取りモードを有する。上記の第3の実施形態と比較して、モードの数を3から2に減らすことにより、レンズ321、322の厚さを減らせる可能性がある。これにより、製品の重量を減らせる可能性がある。結果として、本実施形態の眼鏡311は、実施例3の眼鏡211よりも薄く、かさばらないようにすることができる。製品を従来の眼鏡セットと同じ重量にすることは、快適さ、親しみやすさなどを確保するために重要である。
【0113】
本実施形態の配置は、また、いくつかの追加のギブ/スプリングを提供するように、鼻部を横切り肘部に至る材料を薄くし、したがって、前部レンズ要素331アセンブリを屈曲させることによってグレージングジョイントから負荷を取り除くことを目的とする。さらに、本実施形態では、後部マウント391、392は、後部レンズ要素341の前面342から組み立てられる。これは、上記の実施例1で説明したようにユーザの処方をレンズ321、322に追加することが望まれ、それは後部レンズ要素341の背面343に影響を与えるだろう場合に、便益を提供することができる。このように、この面は、本実施形態の残りの設計によって制約されない。
【0114】
(実施例5)
上記の実施例1、3および4はすべてリムなし眼鏡であるが、本発明は、フレーム付き眼鏡での使用にも同様によく適している。このように、
図33~35は、本発明の第5の実施形態による眼鏡411のフレーム対を示す。眼鏡411は、フレーム412に取り付けられた2つの可変焦点距離レンズ421、422を備える。フレームは、2つの左および右の成形されたリム部417、418を組み込んだフレーム前部413と、一体型の鼻ブリッジ部414と、それぞれが従来の方法でリム部417、418のそれぞれの一方にヒンジで固定されている左側および右側のテンプルアーム415、416とを備える。
【0115】
可変焦点距離レンズ421、422のそれぞれは、レンズ421、422の焦点力を調整するために、視線方向を横断する方向に相互に対してスライドするように配置される種類の2つの重ね合わされたレンズ要素431、441を備える。この種のレンズには、上記の実施例1で詳細に説明しているアルバレスタイプのレンズが含まれる。実施例1におけるそのようなレンズの説明は、本実施形態のレンズ421、422に等しく適用され、ここで繰り返す必要はない。したがって、レンズ421、422は、
図35に明確に示すように、それぞれ前部および後部レンズ要素431、441を備える。前部レンズ要素431は、それぞれのリム部417、418に確実に固定され、一方、後部レンズ要素441は、
図35のx軸によって示される方向に前部レンズ要素431に対してスライド可能である。
図35のx軸は、一般にz軸によって示される視線方向を横切って横に延びる。いくつかの実施形態では、レンズ421、422のフレーム412および前部レンズ要素431は、単一の部分または3つの部分(フレーム、左前部レンズ要素、右前部レンズ要素)として成形され、従来の方法で組み立てることができる(例えば、従来のベベルフィットを用いて)。上記の第1から第4の実施形態では、対応する前部および後部レンズ要素は、当技術分野で周知の方法のベース曲線で形成されているため、実際には、後部レンズ要素がたどる横断経路は、既述の通り、直線でなくx-z平面内における弧状である。しかしながら、本実施形態では、横断経路は実際に直線である。
【0116】
左側および右側レンズ421、422の構造および動作は、一方がフレームの鼻ブリッジ414を二等分する正中のy-z平面(図示せず)における他方の鏡像であることを除いて、実質的に同じである。したがって、以下では、左側レンズ421のみについて詳細に説明するが、同説明は右側のレンズ422にも同様に適用される。
【0117】
前部レンズ要素431は、前面432および背面433を有する。前部レンズ要素431は、弧状の側部および角を有するが、概して長方形であり、上縁部434、下縁部435、テンプル側縁部436、および鼻側縁部437を有する(
図35を参照)。
図36に最もよく見られるように、前部レンズ要素431の上縁部434は、リム部417の上部404に隣接するリム部417に取り付けられ、一方、前部レンズ要素431の下縁部435は、リム部417の下部405に隣接するリム部417に取り付けられている。前部レンズ要素431のテンプルおよび鼻側縁部436、437は、リム部417の対応するテンプルおよび鼻部406、407に隣接するリム部417にそれぞれ取り付けられている。フレーム412の上、下、および側部404~407は、実質的に平面の背面409を画定する。側部406、407の幅について、以下でより詳細に説明する。
【0118】
リム部417の上部404は、
図36および37に示すx方向に離間した2つのガイドピン481、482を形成されている。ガイドピン481、482は、リム部417の背面409から後方に突出している。上部404の背面の2つのガイドピン481、482の中間に、z軸に沿って配向されている上部永久磁石481を収容する上部凹部491が形成されている。磁石481は、背面409と同一平面に配置される。リム部417の下部405は、
図35に示すように、前部下部永久磁石482を同様に収容するほぼ中央の位置にある同様の下部凹部492を形成されている。
【0119】
図38に示すように、後部レンズ要素441は、前および背面442、443を有し、前部レンズ要素431と一致する形状およびサイズを有する。後部レンズ要素441は、上縁部444、下縁部445、ならびにテンプルおよび鼻側縁部446、447を有する。上記の第1から第4の実施形態とは異なり、テンプルおよび鼻側縁部446、447の間の後部レンズ要素441の幅は、以下でより詳細に説明するように、前部レンズ要素431の対応する幅よりも大きい。後部レンズ要素441は、後部レンズ要素441を貫通して延び、x軸に沿って配向されている、上縁部444に隣接する2つの細長いスロット451、452を形成されている。各スロット451、452は、テンプル端部453および鼻端部454を有し、
図39に示すように、前部レンズ要素431上のガイドピン481、482のそれぞれの一方をスライド可能に受け入れるように配置されている。変形例では、ガイドピンは、代わりに、後部レンズ要素441上に形成され、前方に突出し、前部レンズ要素431の対応するスロットに受け入れられ得ることが理解されよう。
【0120】
2つのスロット451、452の間で、後部レンズ要素441の前面は、2つの離間した上部凹部461、462を形成され、それぞれは、後部上部永久磁石464、465をそれぞれ収容している。後部上部永久磁石464、465は、前部レンズ要素431の前部上部磁石481と結合するためにz軸に沿って配向され、後部レンズ要素441の前面442と同一平面上にある。上部凹部461、462と位置合わせをされて、後部レンズ要素441の前面442は、下縁部445と並置された2つの下部凹部466、467をさらに形成されている。下部凹部466、467のそれぞれは、前部下部磁石482と結合するためのz軸に沿って配向される後部永久磁石(図示しない)を収容し、後部レンズ要素441の前面442と同一平面上にある。
【0121】
永久磁石464、465、466、467、481、482を、スロット451、452およびガイドピン481、482によって構成されるガイド要素から分離することにより、本実施形態は、スロット451、452のサイズによって拘束されないサイズの永久磁石を使用することを可能にする。
【0122】
ガイドピン481、482は、スロット451、452にぴったりと嵌入し、レンズ421の焦点距離を変更するために後部レンズ要素441を前部レンズ要素431に対して前後にスライドすることを可能にする一方、前部および後部レンズ要素431、441の相互に対する不要なねじれを防止することができる。リム部417の側部406、407は、後部レンズ要素441の各位置において、後部レンズ要素441のテンプルおよび鼻縁部446、447がフレーム412によってマスクされ、したがって傍観者の視点からは「見えない」が、後部レンズ要素の外縁部は側面からは見えたままであるように寸法決定されている。
【0123】
前の実施形態のように、スロット451、452およびガイドピン481、482は、レンズ421の焦点距離を変化させるための横断経路に沿う前部レンズ要素431に対する後部レンズ要素441の移動をガイドするためのガイド要素を形成している。前部ならびに後部の上部および下部永久磁石464、465、466、467、481、482は、レンズ要素431、441を一緒に折り畳むのに十分な保持力で、前部および後部レンズ要素431、441を一緒に磁気的に結合する。前部および後部レンズ要素431、441は、前部上部および下部磁石481、482がそれぞれ上部および下部テンプル後部磁石464、466または上部および下部鼻後部磁石465、467と整列するとき、より強く一緒に保持される。したがって、これは、前部レンズ要素431に対して後部レンズ要素441の2箇所の個別の位置を画定するのに役立つ。適切には、前部および後部レンズ要素431、441は、後部レンズ要素441がテンプル位置にあり、前部および後部レンズ要素431、441が上部および下部テンプル後部磁石464,466と整列している場合よりも、前部および後部レンズ要素441が鼻位置にあり、前部および後部レンズ要素431、441が上部および下部鼻後部磁石465、467と整列している場合のほうが大きい屈折力を有している。本実施形態の変形例では、後部レンズ要素441の前面442上の磁石の上部および下部グループは、2つより多い磁石、例えば3つ以上の磁石を含み、より多くの個別の位置を画定し得ることが理解されよう。
【0124】
実施例5の変形例では、ガイドピン481、482は、端部を画定する切り欠き部(図示せず)を含み得る。したがって、ガイドピン481、482は、各ガイドピン481、482の端部と、各スロット51、52内に形成された保持用リブ(図示せず)との相互係合により、第1の実施形態に関する上記と同様の方法で、磁石464、465、466、467、481、482によって画定される個別の戻り止め位置の間をレンズ421の作動中にスロット51、52内に保持することができる。
【国際調査報告】