(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20221205BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20221205BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221205BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6886 Z
C12N15/11 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521203
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 KR2020013288
(87)【国際公開番号】W WO2021071163
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0124552
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522140161
【氏名又は名称】レピジン カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ダ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ジョン シル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ウォン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR72
4B063QR77
(57)【要約】
本発明は、起源の分からない生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法及びこれを行うための肝癌組織特異的DNAメチル化マーカーを含む組成物に関するもので、前記肝癌組織特異的DNAメチル化マーカーは、正常肝組織とその他組織ではメチル化レベルが低く、肝癌組織でのみメチル化レベルが高いので、優れた正確度で生物学的試料が肝癌組織に由来したか否かを判別することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対象体(subject)から分離された生物学的試料でDNAを分離する段階;及び
(b)前記分離されたDNAで配列番号1で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルを測定する段階;
を含むことを特徴とする、生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項2】
前記(b)段階は、前記分離されたDNAで配列番号2で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルを追加で測定することを特徴とする、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項3】
前記生物学的試料は、前記対象体から分離された組織、組織断片、細胞、細胞断片、血液、血漿、体液、便及び尿からなる群より選択されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項4】
前記(b)は、PCR、メチル化特異的PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異的PCR(real time methylation specific PCR)、MethyLight PCR、MehtyLight digital PCR、EpiTYPER、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、定量PCR、DNAチップ、分子ビーコン(molecular beacon)、MS-HRM(Methylation-sensitive high resolution melting)、非対称PCR(asymmetric PCR)、非対称PCR MS-HRMA(asymmetric PCR Methylation-sensitive high resolution melting analysis)、リコンビナーゼ-ポリメラーゼ増幅法(Recombinase Polymerase Amplification)、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、Eclipse probe、次世代シークエンシングパネル (NGS)、パイロシークエンシング及びバイサルファイトシークエンシングからなる群より選択される方法で行われることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項5】
配列番号1で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含むことを特徴とする、生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、配列番号2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を追加で含むことを特徴とする、請求項5に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用組成物。
【請求項7】
前記メチル化レベルを測定し得る試薬は、配列番号1及び配列番号2からなる配列のCpG部位に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸であることを特徴とする、請求項5に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用キット。
【請求項8】
配列番号1で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含むことを特徴とする、肝癌診断用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、配列番号2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を追加で含むことを特徴とする、請求項8に記載の肝癌診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起源の分からない生物学的試料が肝癌組織由来であるか否かを判別する方法及びこれを行うための肝癌組織特異的DNAメチル化マーカーを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人体にある細胞は、同一の遺伝子情報を有しているが、各細胞の機能と形態は非常に多様である。これは、各細胞ごとに特定の遺伝子が発現され、それによって、細胞分化過程が相異なり最終的に細胞表現型の差を示すからである。このような特定遺伝子の発現には、DNAメチル化、ヒストン変形、組織特異的転写因子など多くの要因が関与する。特に、DNAメチル化、具体的に、CpG部位のメチル化は、細胞特異的遺伝子発現の必須要素であって、細胞又は組織ごとに固有のDNAメチル化特徴を有することが知られている。したがって、DNAメチル化特徴を用いると、細胞又は組織の由来した起源を容易に確認し得る。
【0003】
細胞又は組織の起源を確認することは、疾病の早期診断を可能にし、診断の正確度を高めることができる。例えば、生体を循環する血液中には循環細胞遊離DNA(cell free DNA、cfDNA)が存在し、この中には、腫瘍細胞から流れ出た循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA、ctDNA)があり得る。液体生検でctDNAの存在を検出するとは言え、癌を正確に診断するためには、当該ctDNAの起源となる組織を追加で確認する過程が必要であり、このような過程で癌の診断は遅くなる。しかし、当該ctDNAを検出しながら起源となる組織を同時に確認できれば癌の早期診断が可能となり、生物学的試料の起源を明らかにする方法は、癌だけでなく他の疾病の早期診断にますます必要となっている。
【0004】
本発明者らは、DNAメチル化データを基盤として起源の分からない組織及び細胞の起源を明らかにする方法を研究した結果、肝癌組織特異的にメチル化レベルが高いマーカーを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、起源の不明な生物学的試料が肝癌組織から由来したか否かを判別する方法、生物学的試料で肝癌組織由来DNAを確認する方法及び前記方法を行うための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を逹成するために、本発明の一様相は、下記段階を含む生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法を提供する:
(a)対象体(subject)から分離された生物学的試料からDNAを分離する段階;
及び
(b)前記分離されたDNAで配列番号1で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルを測定する段階。
【0007】
本発明の一具体例において、前記(b)段階は、前記分離されたDNAで配列番号2で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルを追加で測定することができる。例えば、本発明の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを確認する方法は、段階(b)で配列番号1単独、又は配列番号1及び2で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルを測定することができる。
【0008】
本発明の一具体例において、前記対象体は、ヒトであってもよく、前記生物学的試料は、前記対象体から分離した組織、組織断片、細胞、細胞断片、血液、血漿、体液、便及び尿などを含むが、これに制限されるものではない。前記組織、組織断片、細胞及び細胞断片などは、対象体から採取した血液、血漿、体液、尿などから分離したものであってもよい。また、前記DNAは、組織、細胞などから分離したDNAであってもよく、血液、血漿、体液などに浮遊する細胞遊離DNA(cell free DNA、cfDNA)又は腫瘍細胞から流れ出た循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA、ctDNA)であってもよい。
【0009】
本明細書で用いられた用語「メチル化(methylation)」は、DNAを構成する塩基にメチル基(-CH3)が付着することを意味し、好ましくは、特定DNAの特定CpG部位のシトシンで起こるメチル化を意味する。
【0010】
本明細書で用いられた用語「メチル化レベル」は、特定DNA塩基配列内に存在するCpG部位のメチル化状態を定量的に評価したことを意味し、メチル化状態は、DNA塩基配列内の一つ以上のCpG部位で5-メチル-シトシンの存在又は不在を意味する。
【0011】
本明細書で用いられた用語「CpG部位」は、シトシン(cytosine、C)とグアニン(guanine、G)がリン酸基(phosphate)で連結された配列を言い、プロモーター領域、タンパク質コーディング領域(open reading frame、ORF)及びターミネーター領域などを含むDNA配列内に存在することができる。CpG部位のメチル化は、誘電体の安定性維持、遺伝子の発現調節などに関与することが知られている.
【0012】
本発明者らは、肝癌組織特異的メチル化マーカーを発掘するために努力した結果、肝癌組織サンプルではメチル化レベルが高く、正常肝組織と血液を含むその他組織ではメチル化レベルが低いcg13204512(配列番号1)、cg00108164(配列番号2)マーカーを発掘した。前記二つのマーカーのターゲットメチル化部位は、それぞれ配列番号1及び配列番号2で表示される配列で61番目のヌクレオチドに位置するCpG部位である。しかし、前記ターゲットメチル化部位以外に他のCpG部位でもメチル化が行われ得るので、本発明では、前記ターゲットCpG部位を含んで配列番号1及び2で表示される配列に存在する全体CpG部位のメチル化レベルを測定することができる。
【0013】
本明細書で用いられた用語「肝癌組織特異的メチル化マーカー」は、正常肝組織及びその他組織から分離したDNAのメチル化レベルと比較して肝癌組織のDNAでのみ特異的なメチル化レベルを示すメチル化マーカーを意味する。本発明で、前記「肝癌組織特異的メチル化マーカー」は、正常肝組織及びその他組織から分離したDNAのメチル化レベルと比較して肝癌組織のDNAでのみメチル化レベルが高いマーカーを意味する。
【0014】
本発明の一具体例において、前記(b)は、PCR、メチル化特異PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異PCR(real time methylation specific PCR)、MethyLight PCR、MehtyLight digital PCR、EpiTYPER、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、定量PCR、DNAチップ、分子ビーコン(molecular beacon)、MS-HRM(Methylation-sensitive high resolution melting)、非対称PCR(asymmetric PCR)、非対称PCR MS-HRMA(asymmetric PCR Methylation-sensitive high resolution melting analysis)、リコンビナーゼ-ポリメラーゼ増幅法(Recombinase Polymerase Amplification)、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、Eclipse probe、次世代シークエンシングパネル(next generation sequencing(NGS) panel)、パイロシークエンシング及びバイサルファイトシークエンシングからなる群より選択される方法で行われ得る。
【0015】
例えば、前記メチル化レベルは、マイクロアレイにより識別され得、前記マイクロアレイは、固相表面に固定化されたプローブを用いることができる。前記プローブは、前記CpG部位を含む10~100個の連続ヌクレオチド配列に相補的な配列を含むことができる。
【0016】
本発明の具体例において、前記方法は、(C)前記(b)段階以後に、前記メチル化レベルを対照群のメチル化レベルと比較する段階;を追加で含むことができる。
【0017】
本発明で、前記対照群は、起源の組織が既に分かっている生物学的試料から分離したDNAを意味し、正常肝組織と肝癌組織を含む生体内の全ての組織が用いられ得る。例えば、対照群で肝癌組織を用いた場合、生物学的試料から分離したDNAのメチル化レベルが対照群から分離したDNAのメチル化レベルと類似していれば、前記生物学的試料が肝癌組織に由来したものであると判別することができ、対照群で正常肝組織やその他組織を用いた場合、生物学的試料のメチル化レベルが対照群のメチル化レベルより高ければ、前記生物学的試料が肝癌組織に由来したものであると判別することができる。
【0018】
本発明の他の様相は、配列番号1で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含む生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの確認用組成物を提供する。
【0019】
本発明の一具体例において、前記CpG部位は、配列番号1及び配列番号2で表示される配列で61番目のヌクレオチドに位置するCpG部位を含む1個~複数個からなり得る。
【0020】
本発明で、前記組成物は、配列番号2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を追加で含むことができる。前記メチル化レベルを測定し得る試薬は、配列番号1及び配列番号2で表示される配列のCpG部位に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸であってもよく、前記プライマー、プローブ又はアンチセンス核酸は、ハイブリッド形成アレイ要素(hybridizable array element)として用いられ得、基体(substrate)上に固定化され得る。
【0021】
前記基体は、適切な堅固性又は半堅固性支持体であって、例えば、膜、フィルター、チップ、スライド、ウェハー、ファイバー、磁性ビーズ又は非磁性ビーズ、ゲル、チュービング、プレート、高分子、微小粒子及び毛細管を含むことができる。前記ハイブリッド形成アレイ要素は、化学的結合方法、UVのような共有結合方法又はリンカー(例えば、エチレングリコールオリゴマー及びジアミン)を通じて基体上に固定され得る。
【0022】
本発明の一具体例において、生物学的試料から分離したDNA(試料DNA)は、ハイブリッド形成アレイに適用されてアレイ要素とハイブリッド形成され得る。ハイブリッド形成条件は、多様に変更され得、ハイブリッド形成程度の検出及び分析は、当業界で知られている技術によって多様に実施され得る。また、前記試料DNA及び/又は、プライマー、プローブ又はアンチセンス核酸は、ハイブリッド形成されたか否かを確認可能とする信号を提供するために標識(labeling)され得、オリゴヌクレオチドに連結され得る。
【0023】
前記標識は、蛍光団(例えば、フルオレセイン(fluorescein)、フィコエリトリン(phycoerythrin)、ローダミン、リサミン(lissamine)、Cy3及びCy5(Pharmacia)、発色団、化学発光団、磁気粒子、放射性同位元素(P32及びS35)、酵素(アルカリンホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)、補因子、酵素に対する基質、重金属(例えば、金)、抗体、ストレプトアビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxigenin)とキレート基のような特定の結合パートナーを有するヘプテンを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明で、前記プライマー、プローブ又はアンチセンス核酸と試料DNAのハイブリッド形成は、反応温度、ハイブリッド形成及び洗浄時間、緩衝液成分及びこれらのpH及びイオン強度、ヌクレオチドの長さ、ヌクレオチド配列、GC配列の量などの多様な因子に依存する。前記ハイブリッド形成のための詳細な条件は、Joseph Sambrook、et al.、MolecularCloning、A LaboratoryManual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2001);及びM.L.M.Anderson、NucleicAcid Hybridization、Springer-Verlag New York Inc.N.Y.(1999)を参照することができる。
【0025】
前記ハイブリッド形成反応以後に、ハイブリッド形成反応を通じて出るハイブリッド形成シグナルを検出することができる。例えば、前記プローブが酵素により標識された場合、前記酵素の基質をハイブリッド形成反応結果物と反応させてハイブリッド形成されたか否かを確認することができる。
【0026】
前記酵素及び基質は、パーオキシダーゼ(例えば、ホースラディッシュパーオキシダーゼ)とクロロナフトール、アミノエチルカルバゾール、ジアミノベンジジン、D-ルシフェリン、ルシゲニン(ビス-N-メチルアクリジニウムニトレート)、レゾルフィンンベンジルエーテル、ルミノール、アンプレックスレッド試薬(10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン)、HYR(p-phenylenediamine-HCl及びpyrocatechol)、TMB(tetramethylbenzidine)、ABTS(2,2’-Azine-di[3-ethylbenzthiazoline sulfonate])、o-フェニレンジアミン(OPD)及びナフトール/ピロニン;アルカリンホスファターゼとブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ナフトール-AS-B1-ホスフェート(naphthol-AS-B1-phosphate)及びECF基質;グルコースオキシダーゼとt-NBT(nitroblue tetrazolium)及びm-PMS(phenzaine methosulfate)が用いられ得る。
【0027】
本発明のまた他の様相は、配列番号1で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含む肝癌診断用組成物を提供する。
【0028】
本発明で、前記肝癌診断用組成物は、配列番号2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を追加で含むことができ、前記メチル化レベルを測定し得る試薬は、配列番号1及び配列番号2からなる配列のCpG部位に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸を含む。前記配列番号1又は2で表示される配列は、ゲノムDNAであってもよく、スルホン酸(bisulfite)が処理されて非メチル化されたシトシンがウラシルに転換された配列であってもよい。
【0029】
本発明で、対象体の分離された生物学的試料からDNAを分離した後、肝癌組織特異的マーカーのメチル化レベルを測定すると、肝癌組織由来DNAを検出することができる。結果的に、肝癌組織由来DNAの存在を確認することで肝癌を診断することができ、本発明の肝癌診断用組成物は、多様な起源の生物学的試料を用いて肝癌を診断することができるという点が特徴である。
【0030】
本発明で、前記生物学的試料は、対象体から分離された組織、組織断片、細胞、細胞断片、血液、血漿、体液、便及び尿などを含むが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0031】
本発明の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法及びこれを行うための組成物は、肝癌組織特異的DNAメチル化マーカーを用い、前記肝癌組織特異的マーカーは、正常肝組織とその他組織ではメチル化レベルが低く、肝癌組織でのみメチル化レベルが高いので、生物学的試料が肝癌組織に由来したか否かを優れた正確度で判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の肝癌組織特異的マーカーの発掘過程を概略的に示す。
【
図2】
図2は、発掘した肝癌組織特異的マーカーの変数重要度プロット(variable importance plot、VarImp Plot)を示す。
【
図3】
図3は、最終選別したcg13204512、cg00108164マーカーの性能を確認した結果を示す。
【
図4】
図4は、最終選別したcg13204512、cg00108164マーカーのメチル化レベルを肝癌サンプルの正常肝組織(LIHC_N)と肝癌組織(LIHC_T)、肝を除いたその他癌組織(Pan_T)で確認した結果を示す。
【
図5】
図5は、cg13204512マーカーのメチル化レベルを多様な正常組織(A)と癌組織(B)で確認した結果を示す。
【
図6】
図6は、cg00108164マーカーのメチル化レベルを多様な正常組織(A)と癌組織(B)で確認した結果を示す。
【
図7】
図7は、cg13204512及びcg00108164マーカーのメチル化レベルを主要正常組織と癌組織で確認した結果を示す:膀胱(bladder、BL)、乳房(breast、BR)、子宮頸部(cervix、CE)大腸(colon、CO)、食道(esophagus、ES)、膠芽腫(glioblastoma、GB)、頭部及び頸部(head and neck、HN)、腎臓(kidney、KI)、肝臓(liver、LI)、肺(lung、LU)、膵臓(pancreas、PA)、傍神経節腫(paraganglioma、PC)、前立腺(prostate、PR)、直腸(rectum、RE)、肉腫(sarcoma、SA)、皮膚(skin、SK)、胃(stomach、ST)、胸腺(thymus、TH)、子宮(uterine、UC)及び血液(blood、B)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、一つ以上の具体例を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1:肝癌組織特異的メチル化マーカーの発掘
癌誘電体アトラス(The Cancer Genome Atlas;以下、TCGAと記載する)から多様な癌種に対するDNAメチル化データをダウンロードした。TCGAからダウンロードしたデータから肝癌組織サンプル(n=379)でメチル化されたCpGサイトを選別し、このうち他の組織の癌種サンプル(n=7,260)では、非メチル化されたCpGサイトを追加で選別した。このときの基準は、50%以上のサンプルでメチル化された場合は、メチル化、90%以上のサンプルで非メチル化された場合は、非メチル化に分類した。
【0035】
その後、前記追加選別されたCpGサイトから肝癌を除いた癌種サンプル(pan-tumor)の90%で非メチル化されたCpGサイト、正常肝組織と肝癌組織でメチル化レベルが30%以上相異なるCpGサイトを追加で選別した。
【0036】
図1に本発明の肝癌組織特異的マーカーの発掘過程を概略的に示した。
【0037】
実施例2:肝癌組織特異的メチル化マーカーの性能検証
ランダムフォレスト方法で前記実施例1で発掘した肝癌組織特異的マーカーの変数重要度プロット(variable importance plot、VarImp Plot)を作成し、これを
図2に示した。
図2で、X軸のMeanDecreaseAccuracyは、肝癌組織/正常肝組織及びその他組織の区分において各マーカーが正確度改善に寄与する程度、Y軸のMeanDecreaseGiniは、肝癌組織/正常肝組織及びその他組織の区分において各マーカーが不純度改善に寄与する程度を示す。すなわち、値が大きいほどそのマーカーが肝癌組織と正常肝組織及びその他組織を明確に区分し得ることを意味する。
【0038】
次に、実施例1で用いた癌組織のメチル化データを無作為に訓練データと検証データに区分して肝癌組織特異的マーカーをテストした。その結果、下の表1に記載したように、発掘したマーカーが肝組織とその他組織を高い効率と正確度で区分することが確認できた。肝癌組織特異的マーカーの性能は、正確度(accuracy)0.9915、敏感度(sensitivity)0.8816、特異度(specificity)0.9973、曲線下面積(area under the curve、AUC)0.9668であった。
【0039】
【0040】
次に、
図1の変数重要度プロットで重要度が高いことが示された2個のマーカー(cg13204512、cg00108164)の性能を追加で検証した。その結果、
図2に示したように、前記二つのマーカーの曲線下面積(AUC)が0.9725となり、肝癌組織とその他組織を区分する性能に優れていることが確認できた。
【0041】
前記結果を根拠として、cg13204512、cg00108164マーカーを肝癌組織特異的マーカーとして最終選別した。下の表2及び表3に、cg13204512、cg00108164マーカーの情報及び配列を記載した。
【0042】
【0043】
【0044】
-前記表で[CG]は、各プローブのターゲットメチル化部位を意味する。
【0045】
実施例3:最終選別した肝癌組織特異的マーカーの検証
最終選別したcg13204512、cg00108164マーカーの肝癌組織、正常肝組織、他の組織でのメチル化レベルを確認した。その結果、
図4のA及びBに示したように、前記二つのマーカーともに肝癌サンプルの正常肝組織(LIHC_N)とその他癌組織(Pan_T)ではメチル化レベルが低い一方、肝癌サンプルの肝癌組織(LIHC_T)ではメチル化レベルが高いことが分かった。
【0046】
図5~
図7に、肝組織とその他組織で確認したcg13204512、cg00108164マーカーのメチル化レベルを示した。
【0047】
今までの結果を通じて、cg13204512、cg00108164マーカーは、肝癌組織では、メチル化レベルが高く、正常肝組織とその他組織では、メチル化レベルが低いことが分かり、したがって、前記二つのマーカーは、肝癌組織特異的マーカーとして用いられ得る。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対象体(subject)から分離された生物学的試料でDNAを分離する段階;及び
(b)前記分離されたDNAで配列番号1
又は2で表示される配列
のメチル化レベルを測定する段階;
を含むことを特徴とする、生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項2】
前記
メチル化レベルは、
配列番号
1又は2で表示される配列のCpG部位のメチル化レベル
である、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項3】
前記生物学的試料は、前記対象体から分離された組織、組織断片、細胞、細胞断片、血液、血漿、体液、便及び尿からなる群より選択されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項4】
前記(b)は、PCR、メチル化特異的PCR(methylation specific PCR)、リアルタイムメチル化特異的PCR(real time methylation specific PCR)、MethyLight PCR、MehtyLight digital PCR、EpiTYPER、メチル化DNA特異的結合タンパク質を用いたPCR、定量PCR、DNAチップ、分子ビーコン(molecular beacon)、MS-HRM(Methylation-sensitive high resolution melting)、非対称PCR(asymmetric PCR)、非対称PCR MS-HRMA(asymmetric PCR Methylation-sensitive high resolution melting analysis)、リコンビナーゼ-ポリメラーゼ増幅法(Recombinase Polymerase Amplification)、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification)、Eclipse probe、次世代シークエンシングパネル (NGS)、パイロシークエンシング及びバイサルファイトシークエンシングからなる群より選択される方法で行われることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かを判別する方法。
【請求項5】
配列番号1
又は2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含むことを特徴とする、生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用組成物。
【請求項6】
前記
メチル化レベルは、
配列番号
1又は2で表示される配列の
CpG部位のメチル化レベル
である、請求項5に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用組成物。
【請求項7】
前記メチル化レベルを測定し得る試薬は、配列番号1
又は配列番号2
で表示される配列
に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸であることを特徴とする、請求項5に記載の生物学的試料が肝癌組織起源であるか否かの判別用
組成物。
【請求項8】
配列番号1
又は2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含むことを特徴とする、肝癌診断用組成物。
【請求項9】
前記
メチル化レベルは、配列番号
1又は2で表示される配列の
CpG部位のメチル化レベル
である、請求項8に記載の肝癌診断用組成物。
【請求項10】
前記試薬は、配列番号1又は2で表示される配列に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸であることを特徴とする、請求項8に記載の肝癌診断用組成物。
【請求項11】
肝癌診断のための、配列番号1又は2で表示される配列のメチル化レベルを測定し得る試薬を含む組成物の使用。
【請求項12】
前記試薬は、配列番号1又は2で表示される配列に結合するプライマー、プローブ又はアンチセンス核酸である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記メチル化レベルは、配列番号1又は2で表示される配列のCpG部位のメチル化レベルである、請求項11に記載の使用。
【国際調査報告】