(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】光開始剤の組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20221205BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20221205BHJP
【FI】
C08F2/50
C09D11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521229
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2020059500
(87)【国際公開番号】W WO2021070131
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】102019000018374
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ カシラーギ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルツィーニ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ポストル
【テーマコード(参考)】
4J011
4J039
【Fターム(参考)】
4J011QA02
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA07
4J011QA08
4J011QA09
4J011QA12
4J011QA13
4J011QA19
4J011QA22
4J011QA23
4J011QA24
4J011QA25
4J011QA27
4J011QA32
4J011QA34
4J011QA39
4J011QA45
4J011QB16
4J011QB19
4J011QB20
4J011QB24
4J011QB25
4J011SA22
4J011SA61
4J011SA62
4J011SA63
4J011SA64
4J011SA77
4J011SA78
4J011SA84
4J011TA03
4J011TA06
4J011TA08
4J011TA09
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J011WA05
4J011WA06
4J011WA07
4J039AD10
4J039AE04
4J039AE05
4J039AE07
4J039BE27
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA04
4J039GA18
4J039GA19
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は、改善された配合可能性(formulability)、反応性、及び表面硬化性を有する光開始剤の均質な液体/流体の組み合わせ、とりわけ、アシルホスフィンオキシド及びケトクマリン、任意に、さらに少なくとも1の共-開始剤が組み合わされた新規の組み合わせに係る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1のアシルホスフィンオキシドである、NorrishタイプI光開始剤グループに属する少なくとも1の液体又は固体の光開始剤;
b.少なくとも1のケトクマリンである、NorrishタイプII光開始剤グループに属する少なくとも1の光開始剤;及び
c.任意に、1以上の共-開始剤
を含んでなる光開始剤の組み合わせ。
【請求項2】
a’.アシルホスフィンオキシドから選ばれる少なくとも1のNorrishタイプI光開始剤60~90質量%、好ましくは、70~85質量%;
b’.ケトクマリンから選ばれる少なくとも1、好ましくは、1のNorrishタイプII光開始剤1~20質量%、好ましくは、5~20質量%;及び
c’.少なくとも1、好ましくは、1の共-開始剤0~20質量%、好ましくは、5~20質量%
を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
a’’.アシルホスフィンオキシドから選ばれる、NorrishタイプI光開始剤に属する固体の光開始剤0~30質量%、好ましくは、10~30質量%、及びNorrishタイプI光開始剤に属する液体の光開始剤50~80質量%;
b’’.ケトクマリンから選ばれるNorrishタイプII光開始剤に属する少なくとも1の光開始剤5~20質量%、好ましくは、10~15質量%;及び
c’’.少なくとも1の共-開始剤10~20質量%
を含んでなる請求項1又は2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
NorrishタイプI光開始剤グループ(a)又は(a’)に属する液体又は固体の光開始剤がアシルホスフィンオキサイドであり、及びNorrishタイプII光開始剤グループ(b)又は(b’)に属する少なくとも1の光開始剤が1のケトクマリンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の組み合わせ。
【請求項5】
少なくとも1の液体又は固体のアシルホスフィンオキシドが、下記の式(I)~(IV)から選ばれることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の組み合わせ:
式(I)
【化1】
(I)
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
1a、R
2a及びR
3aは、互いに独立して、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はハロゲンであり;
Xは直接の単結合であり、及びR
4は、C1-C28アルキル、置換C1-C28アルキル、又はC1-C28アルコキシであり;又は
Xは、O、NR
5、S、又は直接の単結合であり;
YはO又はSであり;
nは1であり;
R
4は、水素、(CO)R
6、(CO)OR
6、(CO)NR
5R
6、(SO
2)-R
6、[Si(R
7)(R
8)]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、[Si(R
7)(R
8)-O]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、C1-C28アルキル、1以上のO、NR
5、S、(CO)、(CO)O、又はSO
2によって中断されたC2-C28アルキルであり(ここで、前記C1-C28アルキル又は中断されたC2-C28アルキルは、未置換であるか、又はOH、C6-C14アリール、 [Si(R
7)(R
8)]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、[Si(R
7)(R
8)-O]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、N(R
5)
2、
【化2】
プロペノイルオキシ、2-メチルプロペノイルオキシ、C3-C12シクロアルキル(未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)、1以上のO、NR
5、又はSによって中断されたC3-C12シクロアルキル(前記中断されたC3-C12シクロアルキルは、未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)、及びC6-C14アリール(未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)からなる群から選ばれる1以上の置換基によって置換されている);又は、R
4は、C6-C10アリール(未置換であるか、又は1以上のC1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C20アルキル、C1-C12アルコキシ、又はOHによって置換されている)であり;又は、XがNR
5である場合、R
4は、R
5及びN原子とともに、5又は6員の飽和環(中断されていないか、又はO又はNR
5によって中断されている)を形成し(前記中断されていない又は中断された環は、未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている);
Aは、PF
6、SbF
6、AsF
6、又はB(C
6F
5)
4であり;
R
5は、水素、(CO)R
6、フェニル、C1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C12アルキル(ここで、前記C1-C12アルキル又は中断されたC2-C12アルキルは、未置換であるか、又は1以上のC3-C7シクロアルキル、OH、又はNCOによって置換されている)、C3-C12シクロアルキル(未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、OH、又はNCOによって置換されている)であり;
R
6は、C1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C12アルキルであり(ここで、前記C1-C12アルキル又は中断されたC2-C12アルキルは、未置換であるか、又は1以上のC3-C7シクロアルキル、OH、NCO、又はフェニル(NCOによって置換されている);又は、R
6は、C3-C12シクロアルキル、C2-C10アルケニル(未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、OH、又はC1-C4アルコキシによって置換されている)であり;又は、R
6は、C6-C14アリール(未置換であるか、又はC1-C12アルキル、C1-C12アルコキシ、NCO、又はNCO-置換C1-C12アルキルによって置換されている)であり;又は、
R
5及びR
6は、N原子とともに、5又は6員の飽和環(中断されていないか、又は1以上のO又はNR
5 によって中断されている)を形成し(前記中断されていない又は中断された環は、未置換であるか、又は、1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている);
R
7、R
8、及びR
9は、互に独立して、C1-C4アルキル、C6-C14アリール、又はC1-C4アルコキシであり;
oは0~10であり;
Y
1は、結合、O、S、NR
5、O(CO)-*、又はO(CO)-CH
2-O-*であり(ここで、アステリクスは、基(A)、(B)、(D)、又は(E)のフェニル基への結合を表示する);
Y
2は、結合、O、S、又はNR
5であり;
R
11及びR
12は、互いに独立して、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、又はフェニル-C1-C4アルキル(未置換であるか、又はC1-C4アルキルによって置換されている)であるか、又はR
11及びR
12は、それらが結合するC原子とともに、シクロヘキシル又はシクロペンチルであり;
Zは、OH、又はNR
13 R
14であり;
Z
1は、C1-C12アルコキシ又は1以上のOによって中断されたC2-C12アルコキシであり(ここで、前記C1-C12アルコキシ又は中断されたC2-C12アルコキシは、未置換であるか、又はOHによって置換されている);
R
13及びR
14は、互に独立して、C1-C12アルキル、1以上のOH 又はハロゲンによって置換されたC1-C12アルキルであり;又は
R
13及びR
14は、それらが結合するNとともに、5又は6員の不飽和又は飽和環を形成し(前記環は、中断されていないか、又はO又はNR
15によって中断されている);
R
15はC1-C4アルキルであり;
R
16は、水素又はC1-C4アルキルであり;
ただし、
(i)C1-C4アルキルとしてのR
1、R
2、及びR
3がCH
3であり、XがOである場合、C1-C28アルキルとしてのR
4は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、1-メチル-プロピ-1-イル、t-ブチル、n-ヘキシルではなく;
(ii)ハロゲンとしてのR
1及びR
3がClであり、R
2が水素であり、及びXがOである場合、置換C3-C10アリールとしてのR
4は、4-ブチル-フェニルではなく;
(iii)C1-C4アルコキシとしてのR
1及びR
3がメトキシであり、R
2が水素であり、及びXがNR
5であり、及びR
4が、R
5及びN原子とともに、5又は6員の飽和環を形成する場合、前記環はピペリジル-1ではない。];
式(II)
【化3】
(II)
[ここで、
Ar
1及びAr
2は、互に独立して、
【化4】
又はナフチル(未置換であるか、又はR
1、R
2、R
3、又はR’によって1回以上の置換されている)であり;
R
1及びR
3は、互に独立して、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はハロゲンであり;R
2は、水素、C1-C4アルキル、ハロゲン、C1-C4アルコキシ、又は1以上のOによって中断されたC2-C20アルコキシであり;
QはC1-C4アルキレンであり;
R
4は、メチル又はエチルであり;
R’及びR’’は、互に独立して、水素又はPG-Y-R’’’-X-であり;
PGは、重合可能な基、又はメチル又はエチルであり;
Yは、直接の単結合、O又はSであり;
Xは、直接の単結合、O又はSであり;R’’’は、直接の単結合、C1-C20アルキレン、又は1以上のOによって中断されたC2-C20アルキレンであり;
R
5は、C3-C30アルキル(未置換であるか、OH及び
【化5】
から選ばれる1以上の基によって置換されている)であり;又は
R
5は、1以上のO又はC3-C8シクロアルキレンによって中断されたC2-C28アルキルであり(ここで、中断されたC3-C28アルキルは、未置換であるか、又はOH及び
【化6】
から選ばれる1以上の基によって置換されている);及び
任意に、式R
5-O(ここで、R
5は、上記の定義のとおりである)の化合物。];
式(III)
【化7】
(III)
[ここで、
R
1は、C1 -C4アルキル、C1 -C4アルコキシ、又はハロゲンであり;
R
2は、水素、C1 -C4アルキル、C1 -C4アルコキシ、又はハロゲンであり、及び
R
3は、C1-C20アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル-C1-C4アルキル、又は式
【化8】
基であるか、又は
R
3は、ナフチル、ビフェニリル、又はO、S、又はN含有5又は6員複素環であり(ここで、前記ナフチル、ビフェニリル、又はO、S、又はN含有5又は6員複素環基は、未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、ハロゲン、C1-C4アルキルチオによって置換されている)であり;
R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、互に独立して、水素、ハロゲン、C1-C20アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、C2-C12アルケニル、1以上の不連続的O原子によって中断されたC2-C20アルキル、フェニル-C1-C4アルキル、C1-C20アルコキシ、又はフェニル(未置換であるか、又は1又は2のC1-C4アルキル又は/及びC1-C4アルコキシ置換基によって置換されている)である。];及び
式(IV)
【化9】
(IV)
[ここで、
各Aは、互に独立して、O、S、NR
3を表し;
Gは、多官能性化合物(コア)G-(A-H)
m+n(ここで、各A-Hは、アルコール、アミノ、又はチオール基を表す)の残基であり;
m及びnは、共に、整数であり、m+nは3~10であり;
mは3~8であり;
R
1、R
2は、互に独立して、C1-C18アルキル、C6-C12アリール、及びC5-C12シクロアルキルから選ばれる基であり(各々の基は、中断されていないか、又は1以上の酸素及び/又はイオウ原子及び/又は1以上の置換又は未置換のイミノ基によって中断されている)、又は酸素及び/又は窒素及び/又はイオウ原子含有5又は6員複素環基であり(ここで、前記基の各々は、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子、及び/又は複素環基によって置換されていてもよい);
R
2は、R
1-(C=O)-でもよく;
YはO又はSであり;
R
3は、水素又はC1-C4アルキルであり;
ただし、式(IV)の光開始剤は、光硬化性のエチレン系不飽和基を含有しない。]。
【請求項6】
少なくとも1のケトクマリンが、下記の式(V)~(VII)から選ばれることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の組み合わせ:
式(V)
【化10】
(V)
[ここで、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキル基であり;
R
3は、
分枝状C6-C20アルキル基、又は直鎖及び分枝状C6-C20アルキル基の混合;
C6-C20アルキル-アリール、アリールC6-C20アルキル、C6-C20アルキル-ヘテロアリール、ヘテロアリール-C6-C20アルキレンオキシド、-COO-C6-C20アルキル、及びCOOアリール
から選ばれる。];
式(VI)
【化11】
(VI)
[ここで、
Gは、任意にアルコキシル化されたポリヒドロキシ化合物の残基であり;
m、n、及びpは数であり、m+n+pは、2~10の値を有し;
pは0~8の値を有し;
xは0~10の整数であり、xが0である場合、フェニル基は、カルボキシル基に直接結合しており;
Yは、それぞれ独立して、直接の単結合、又は炭素原子1~14個を含んでなる、置換又は未置換の2価の結合基を表し;
Zはラジカル重合性官能基を表し;
R
3は、それぞれ独立して、水素、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12シクロアルキル(-SH、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されている)、又はC1-C12アルコキシを表し;
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12アルキル(-SH, -N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、COOHにて置換されている)、又はC1-C12アルコキシである。];及び
式(VII)
【化12】
(VII)
[ここで、
R
1は、水素、又は置換又は未置換のC1-C12アルキル基であり;
Couは、式(a)
【化13】
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、互に独立して、水素、又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12アルキル(SH、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHによって置換されている)、又はC1-C12アルコキシであり;及びR
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1はH以外であり;
R
6は、水素、ヒドロキシル基、又は炭素原子1~4個を有するアルキル基であり;又は
Couは、式:
【化14】
、
【化15】
、又は
【化16】
の置換又は未置換のナフサ-クマリン基であり;
ただし、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1がH以外であり、及びCouが(a)であり及びR
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1がC1-C12アルキルである場合、又はCouが(b)、(c)又は(d)である場合、R
1は、置換又は未置換のC1-C12アルキル基である。]。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の少なくとも1の組み合わせ、少なくとも1のエチレン系不飽和化合物、及び任意に、1以上の添加剤をを含んでなる光硬化性組成物。
【請求項8】
少なくとも1のエチレン系不飽和化合物が、アルキル又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、オリゴマー性多価不飽和化合物、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化、ビニルエーテル、アクリレートポリウレタン、及びアクリル化ポリエーテルから選ばれることを特徴とする請求項7に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
i)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物80~99質量%;
ii)請求項1~6のいずれかに記載の組み合わせ1~20質量%
を含んでなる請求項7又は8に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
印刷インク、スクリーン印刷インク、グラビア印刷インク、ソルダーレジスト、エッチレジスト、オフセット印刷インク、フレキソ印刷インク、グラビア印刷インク、インクジェットインク、レジスト材料、絶縁体、カプセル材、画像記録材料、ソルダーレジスト、パッシベーション層、保護コーティング、3Dプリンティング物体及び鋳型、ホログラフィック用途、光ファイバー被覆、導波管及びレンズ、オーバープリントワニス、木材、ビニール、金属及びプラスチックコーティングの製造における、請求項1~6のいずれかに記載の組み合わせの使用。
【請求項11】
光重合性組成物、コーティング、接着剤、及びインクを光硬化する方法であって、
基板上に、請求項7~9のいずれかに記載の光重合性組成物を被覆又は印刷し;及び
前記基板上で、前記被覆又は印刷した組成物を光源にて光重合する
ことを含んでなる光硬化法。
【請求項12】
請求項7~9のいずれかに記載の少なくとも1の光硬化性組成物を光重合することを含んでなる立体物の製法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法に従って得られた工業製品、好ましくは、印刷フィルム、インク、コーティング、接着剤層、又は立体物。
【請求項14】
NorrishタイプI光開始剤に属する固体の光開始剤0~30質量%、好ましくは、10~30質量%、及びNorrishタイプI光開始剤に属する液体の光開始剤50~80質量%;
NorrishタイプII光開始剤に属する少なくとも1の光開始剤5~20質量%、好ましくは、10~15質量%;及び
少なくとも1の共-開始剤0~20質量%、好ましくは、10~20質量%
を含んでなる光開始剤の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された配合可能性、反応性、及び表面硬化性を有する光開始剤の均質な液体/流体の組み合わせ、とりわけ、アシルホスフィンオキシド及びケトクマリン、任意に、さらに少なくとも1の共-開始剤が組み合わされた新規の組み合わせに係る。
【背景技術】
【0002】
酸素感受性は、アクリレートのラジカル重合における主要な問題であり、硬化フィルムの乏しい機械的性能及び粘着性表面を生ずる。
【0003】
酸素阻害を改善する方法は、Progress in Organic Coatings 77, (2014) 1789-1798に報告されているように、異なる戦略に分けられる:
-ガス不活化手段(窒素、二酸化炭素)によるコーティングの不活性化。これは、高価な問題解決策である。
-より高濃度のラジカルを生成する高光照射ランプの使用。ランプの主要な出力が光開始剤の吸収最大値と一致する場合には、結果として、より迅速な硬化プロセスとなる。エネルギーの大きい消費は、高価な問題解決策である。
-酸素の拡散を阻害するための液体又はワックス状添加剤による表面積層。表面コーティングの後、余分な生成物を生ずる。
-光がオンにされる際、高ラジカル濃度を示す高濃度の光開始剤の使用。これらのラジカルは、酸素の迅速な消費を補助する。
-製剤中のアミンは、酸素を消費するラジカル連鎖過程に関与する。
-3価ホスファイト、(R3O)3P、(ArO)3P、Ar3P、及びR3P(ここで、Rは、直鎖又は分枝状アルキル基であり、及びArは、任意に置換されたフェニル基である)は、空気中での硬化速度を促進する。残念なことには、3価ホスファイトの有効性は24時間以内である。
-酸素阻害を低減するための水素ドナーの添加。典型的な水素ドナーは、チオール、シラン、スタンナン等であり、これらは、Progress in Organic Chemistry 2014に報告されているように、非反応性ペルオキシルラジカルをヒドロペルオキシル及び新しい反応性ラジカルに転化する。残念なことには、それらは、不快な臭いを有し、取り扱いが簡単ではない。
【0004】
酸素阻害を克服するため、他の選択肢は、2以上の光開始剤の組み合わせを使用することであった。
【0005】
コーティング工業では、Liskaによって、Progress in Organic Chemistry 77, (2014), 1789-1798及び国際公開第2005/035670に報告されているように、>360 nmで光を吸収する光開始剤[MAPO(モノアシルホスフィンオキシド)又はBAPO(ビスアシルホスフィンオキシド)]を、水銀ランプの発光バンドと調和する、より低い波長の光開始剤(<350 nm)と混合することによって課題を処理している。アシルホスフィンオキシド及びα-ヒドロキシケトンを組み合わせた抗-酸素阻害戦略は、水銀ランプでのみ良好に機能し、前記混合物は、近UV又はLED可視発光スペクトルをカバーし得ない。
【0006】
Lalevee(Macromolecules 2018, 51, 4633-4641)は、405 nm LEDの下で作用する3-ヒドロペルオキシフラボン/N-フェニルグリシンの混合物を提案した。
【0007】
電荷移動錯体は、ラジカル発生速度が十分に迅速であり、酸素阻害に対抗できるため、空気中でのアクリレートのラジカル重合において非常に反応性である。残念なことには、阻害時間の始動を完全に排除するほど迅速ではない。ヨードニウム塩を添加することによって改善が得られるが、結果として、不快な臭いの放出及びポスト硬化黄変を生ずる。
【0008】
さらに、W. A. GreenによってIndustrial photoinitiatorsに報告されているように、有機希釈剤又はアクリルモノマーを含まない光開始剤のブレンド(Irgacure(登録商標)1300(BASF)、Esacure(登録商標)TZT(IGM Resins B.V.)、Esacure KIP 100F(IGM Resins B.V.)等)は、使用が簡単であるため、市販されている。これらの液体ブレンドは、表面硬化を改善する相乗的混合物を提供し、多種の光開始剤のブレンドは、高濃度の単独開始剤よりも有効である。残念なことには、文献に述べられた例は、395 nm、400 nm、405 nmとしての可視LEDランプでは機能しない。
【0009】
反応性の光開始剤と使用するため、アシルホスフィンオキシド及びα-ヒドロキシケトンを含んでなる分子錯体化合物が、Ciba Specialty Chemicalsにより、米国特許第5942290号において提案されている。結晶性の分子錯体は、含有する不純物は非常に少量であり、Hgランプを使用する場合には、非常に高感度の用途に適している。
【0010】
さらに、Journal Applied Polymer Science Vol. 112, 129-132, 2009に報告されているように、アシルホスフィンオキシド[MAPO(モノアシルホスフィンオキシド)又はBAPO(ビスアシルホスフィンオキシド)]及びカンファーキノン(CQ)の混合物が、可及的な相乗効果を測定するために査定された。結果は、BAPOがCQと混合される場合には、混合物の重合率は低く、これは、拮抗作用を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、広い波長範囲でエネルギーを吸収し、取り扱いが容易で、高性能である新規の光開始剤についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ラジカルによって重合される少なくとも1のエチレン系不飽和化合物と組み合わされる場合、光重合性組成物を硬化できる、近UV又は可視LED(LEDは、約365~約420 nmの範囲で発光する)から放出されるエネルギーを吸収する光開始剤の均質な液体/流体の組み合わせ(以下では、「ブレンド」と称する)を提供する。本発明による均質な液体/流体の組み合わせは、周囲温度及び圧力において分離する固体粒子及び/又は小滴が存在しない透明な混合物である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適な具体例によれば、本発明は、
a.NorrishタイプI光開始剤グループに属する少なくとも1の液体又は固体の光開始剤(少なくとも1のアシルホスフィンオキシド);
b.NorrishタイプII光開始剤グループに属する少なくとも1の液体又は固体の光開始剤(少なくとも1のケトクマリン);及び
c.任意に、1以上の共-開始剤
を含んでなる光開始剤の組み合わせを提供する。
【0014】
好適な具体例によれば、前記任意の1以上の共-開始剤(c)が存在する。
【0015】
好適な具体例によれば、本発明は、
a’.アシルホスフィンオキシドから選ばれる、少なくとも1のNorrishタイプI光開始剤60~90質量%、好ましくは、70~85質量%;
b’.ケトクマリンから選ばれる、少なくとも1、好ましくは、1のNorrishタイプII光開始剤1~20質量%、好ましくは、5~20質量%;及び
c’.少なくとも1、好ましくは、1の共-開始剤0~20質量%、好ましくは、5~20質量%
を含んでなる光開始剤の組み合わせを提供する。
【0016】
好適な具体例によれば、NorrishタイプI光開始剤グループに属する前記少なくとも1の液体又は固体の光開始剤(a.)又は(a’.)は、アシルホスフィンオキシドである。
【0017】
好適な具体例によれば、NorrishタイプII光開始剤グループに属する前記少なくとも1の光開始剤(b.)又は(b’.)は、1のケトクマリンである。
【0018】
好適な具体例によれば、本発明は、
a’’.NorrishタイプI光開始剤グループに属する固体の光開始剤0~30質量%、好ましくは、10~30質量%、及びNorrishタイプI光開始剤グループに属する液体の光開始剤50~80質量%(前記NorrishタイプI光開始剤は、好ましくは、アシルホスフィンオキシドから選ばれる);
b’’.好ましくは、ケトクマリンから選ばれる、NorrishタイプII光開始剤に属する少なくとも1の光開始剤5~20質量%、好ましくは、10~15質量%;及び
c’’.少なくとも1の共-開始剤10~20質量%
を含んでなる光開始剤の組み合わせを提供する。
【0019】
好適な具体例によれば、本発明は、
NorrishタイプI光開始剤グループに属する固体の光開始剤0~30質量%、好ましくは、10~30質量%、及びNorrishタイプI光開始剤グループに属する液体の光開始剤50~80質量%;
NorrishタイプII光開始剤に属する少なくとも1の光開始剤5~20質量%、好ましくは、10~15質量%;及び
少なくとも1の共-開始剤0~20質量%、好ましくは、10~20質量%
を含んでなる光開始剤の組み合わせを提供する。
【0020】
別に特定しない限り、すべての百分率は、組み合わせの総質量に対する成分の質量によって表される。水及び/又は溶媒が存在する場合、それらの量は、上記百分率の計算に関して、組み合わせの総質量には含まれない。
【0021】
用語「液体」、「流体」及び「固体」は、周囲温度及び圧力における物体の性状を示す。
【0022】
驚くべきことには、本発明のように、異なるラジカルNorrishタイプの光開始剤の混合物は、希釈剤の不在下でも、液体/流体である、均質で、安定した液体の組み合わせを生成するとの新たな知見を得た。本発明の組み合わせは、取り扱いが容易であり、硬化用の製剤において迅速な溶解を示した。
【0023】
定義
液体の組み合わせ(又はブレンド)
異なるNorrishタイプの2以上の光開始剤及び任意に(及び好ましくは)1の共-開始剤の混合物からなる、周囲温度において、均質相、透明、及び液体/流体の物質。さらに、本発明の均質な液体の組み合わせは、液体/流体であり、有機希釈剤又はアクリルモノマーの不在下であっても、優れた安定性を示す。
【0024】
光開始剤
光を吸収すると、光反応を受ける液体又は固体の物質。本発明で使用される光開始剤は、ラジカルNorrishタイプI及びIIである。
【0025】
共-開始剤
NorrishタイプII光開始剤との相互反応の結果として、ラジカル重合を促進する液体又は固体の物質。共-開始剤の例は、芳香族又は脂肪族アミン、例えば、3級アミン又はN,N-ジアルキルアニリン誘導体、アルコール、エーテル、又はチオールである。
【0026】
相乗作用
相乗作用は、一般的には、単独で使用される個々の物質と比べて、感光性における利益を生ずる2以上の生成物の混合物をいう(W. A. Greenによる定義-Industrial Photoinitators)。相乗作用は、Frontiers in Pharmacology April 2017, Vol 8, Article 158に記載されているように、期待された相加効果よりも大きい組み合わせ効果として定義されることがしばしば認められる。
【0027】
NorrishタイプI及びNorrishタイプII光開始剤
NorrishタイプI及びNorrishタイプII光開始剤は、当分野においてよく知られている。例えば、W. A Green, Industrial Photoinitiators, CRC Press;K. Dietliker, 「フリーラジカル及びカチオン重合用の光開始剤」, SITA Technology Ltd;N. J. Turro, Modern Molecular Photochemistry参照。
【0028】
百分率
他に特定しない限り、%は質量%であり、組成物/混合物の総量に基づく。
【0029】
好適な具体例によれば、前記少なくとも1の液体又は固体のNorrishタイプI光開始剤(a)のアシルホスフィンオキシドは、以下の式(I)~(IV)から選ばれる。
【0030】
式(I)
【化1】
(I)
[ここで、
R
1、R
2、R
3、R
1a、R
2a及びR
3aは、互いに独立して、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はハロゲンであり;
Xは直接の単結合であり、及びR
4は、C1-C28アルキル、置換C1-C28アルキル、又はC1-C28アルコキシであり;又は
Xは、O、NR
5、S、又は直接の単結合であり;
Yは、O又はSであり;
nは1であり;
R
4は、水素、(CO)R
6、(CO)OR
6、(CO)NR
5R
6、(SO
2)-R
6、[Si(R
7)(R
8)]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、[Si(R
7)(R
8)-O]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、C1-C28アルキル、1以上のO、NR
5、S、(CO)、(CO)O、又はSO
2によって中断されたC2-C28アルキルであり(ここで、前記C1-C28アルキル又は中断されたC2-C28アルキルは、未置換であるか、又はOH、C6-C14アリール、 [Si(R
7)(R
8)]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、[Si(R
7)(R
8)-O]
o-Si(R
7)(R
8)(R
9)、N(R
5)
2、
【化2】
プロペノイルオキシ、2-メチルプロペノイルオキシ、C3-C12シクロアルキル(未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)、1以上のO、NR
5、又はSによって中断されたC3-C12シクロアルキル(前記中断されたC3-C12シクロアルキルは、未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)、及びC6-C14アリール(未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている)からなる群から選ばれる1以上の置換基によって置換されている);又はR
4は、C6-C10アリール(未置換であるか、又は1以上のC1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C20アルキル、C1-C12アルコキシ、又はOHによって置換されている)であり;又はXがNR
5である場合、R
4は、R
5及びN原子とともに、5又は6員の飽和環(中断されていないか、又はO又はNR
5によって中断されている)を形成し(前記中断されていない又は中断された環は、未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている);
Aは、PF
6、SbF
6、AsF
6、又はB(C
6F
5)
4であり;
R
5は、水素、(CO)R
6、フェニル、C1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C12アルキル(ここで、前記C1-C12アルキル又は中断されたC2-C12アルキルは、未置換であるか、又は1以上のC3-C7シクロアルキル、OH、又はNCOによって置換されている)、C3-C12シクロアルキル(未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、OH、又はNCOによって置換されている)であり;
R
6は、C1-C12アルキル、1以上のOによって中断されたC2-C12アルキルであり(ここで、前記C1-C12アルキル又は中断されたC2-C12アルキルは、未置換であるか、又は1以上のC3-C7シクロアルキル、OH、NCO、又はフェニル(NCOによって置換されている);又は
R
6は、C3-C12シクロアルキル、C2-C10アルケニル(未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、OH、又はC1-C4アルコキシによって置換されている)であり;又は
R
6は、C6-C14アリール(未置換であるか、又はC1-C12アルキル、C1-C12アルコキシ、NCO、又はNCO-置換C1-C12アルキルによって置換されている)であり;又は
R
5及びR
6は、N原子とともに、5又は6員の飽和環(中断されていないか、又は1以上のO又はNR
5 によって中断されている)を形成し(ここで、中断されていない又は中断われた環は、未置換であるか、又は1以上のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はOHによって置換されている);
R
7、R
8、及びR
9は、互に独立して、C1-C4アルキル、C6-C14アリール、又はC1-C4アルコキシであり;
oは0~10であり;
Y
1は、直接の単結合、O、S、NR
5、O(CO)-*、又はO(CO)-CH
2-O-*であり(ここで、アステリクスは、基(A)、(B)、(D)、又は(E)のフェニル基への結合を表示する);
Y
2は、直接の単結合、O、S、又はNR
5であり;
R
11及びR
12は、互に独立して、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、又はフェニル-C1-C4アルキル(未置換であるか、又はC1-Cアルキルによって置換されている)であるか、又は
R
11及びR
12は、それらが結合するC原子とともに、シクロヘキシル又はシクロペンチルであり;
Zは、OH、又はNR
13 R
14であり;
Z
1は、C1-C12アルコキシ又は1以上のOによって中断されたC2-C12アルコキシであり(ここで、前記C1-C12アルコキシ又は中断されたC2-C12アルコキシは、未置換であるか、又はOH によって置換されている);
R
13及びR
14は、互に独立して、C1-C12アルキル、1以上のOH又はハロゲンによって置換されたC1-C12アルキルであり;又はR
13及びR
14は、それらが結合するNとともに、5又は6員の不飽和又は飽和環を形成し(前記環は、中断されていないか、又はO又はNR
15によって中断されている);
R
15はC1-C4アルキルであり;
R
16は、水素又はC1-C4アルキルであり;
ただし、
(i)C1-C4アルキルとしてのR
1、R
2、及びR
3がCH
3であり、XがOである場合、C1-C28アルキルとしてのR
4は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、1-メチル-プロピ-1-イル、t-ブチル、n-ヘキシルではなく;
(ii)ハロゲンとしてのR
1及びR
3がClであり、R
2が水素であり、及びXがOである場合、置換C3-C10アリールとしてのR
4は4-ブチル-フェニルではなく;
(iii)C1-C4アルコキシとしてのR
1及びR
3がメトキシであり、R
2が水素であり、XがNR
5であり、及びR
4が、R
5及びN原子とともに、5又は6員の飽和環を形成する場合、前記環はピペリジル-1ではなく;
例えば、米国特許出願公開第2016/0039851号に記載されている。];
【0031】
式(II)
【化3】
(II)
[ここで、
Ar
1及びAr
2は、互に独立して、
【化4】
又はナフチル(未置換であるか、又はR
1、R
2、R
3、又はR’によって1回以上置換されている)であり;
R
1及びR
3は、互に独立して、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、又はハロゲンであり;R
2は、水素、C1-C4アルキル、ハロゲン、C1-C4アルコキシ、又は1以上のOによって中断されたC2-C20アルコキシであり;
QはC1-C4アルキレンであり;
R
4は、メチル又はエチルであり;
R’及びR’’は、互に独立して、水素又はPG-Y-R’’’-X-であり;
PGは、重合可能な基、又はメチル又はエチルであり;
Yは、直接の単結合、O又はSであり;
Xは、直接の単結合、O又はSであり;
R’’’は、直接の単結合、C1-C20アルキレン、又は1以上のOによって中断されたC2-C20アルキレンであり;
R
5は、C3-C30アルキル(未置換であるか、OH及び
【化5】
から選ばれる1以上の基によって置換されている)であり;又は
R
5は、1以上のO又はC3-C8シクロアルキレンによって中断されたC2-C28アルキルであり(ここで、中断されたC3-C28アルキルは、未置換であるか、又はOH及び
【化6】
から選ばれる1以上の基によって置換されている);及び
任意に、例えば、国際公開第2015/004566号に開示された式R
5-O(ここで、R
5は、上記の定義のとおりである)の化合物。];
【0032】
式(III)
【化7】
(III)
[ここで、
R
1は、C1 -C4アルキル、C1 -C4アルコキシ、又はハロゲンであり;
R
2は、水素、C1 -C4アルキル、C1 -C4アルコキシ、又はハロゲンであり、及び
R
3は、C1-C20アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル-C1-C4アルキル、又は式
【化8】
基であるか、又はR
3は、ナフチル、ビフェニリル、又はO、S、又はN含有5又は6員複素環であり(ここで、前記ナフチル、ビフェニリル、又はO、S、又はN含有5又は6員複素環基は、未置換であるか、又はC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、ハロゲン、C1-C4アルキルチオによって置換されている)であり;
R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、互に独立して、水素、ハロゲン、C1-C20アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、C2-C12アルケニル、1以上の不連続的O原子によって中断されたC2-C20アルキル、フェニル-C1-C4アルキル、C1-C20アルコキシ、又はフェニル(未置換であるか、又は1又は2のC1-C4アルキル又は/及びC1-C4アルコキシ置換基によって置換されている)であり;
例えば、米国特許第6251963号に開示されている。];及び
【0033】
式(IV)
【化9】
(IV)
[ここで、
各Aは、互に独立して、O、S、NR
3を表し;
Gは、多官能性化合物(コア)G-(A-H)
m+n(ここで、各A-Hは、アルコール、アミノ、又はチオール基を表す)の残基であり;
m及びnは、共に、整数であり、m+nは3~10であり;
mは3~8であり;
R
1、R
2は、互に独立して、C1-C18アルキル、C6-C12アリール、及びC5-C12シクロアルキルから選ばれる基であり(各々の基は、中断されていないか、又は1以上の酸素及び/又はイオウ原子及び/又は1以上の置換又は未置換のイミノ基によって中断されている)、又は酸素及び/又は窒素及び/又はイオウ原子含有5又は6員複素環基であり(ここで、前記基の各々は、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子、及び/又は複素環基によって置換されていてもよい);
R
2は、R
1-(C=O)-でもよく;
YはO又はSであり;
R
3は、水素又はC1-C4アルキルであり;
ただし、式(IV)の光開始剤は、光硬化性のエチレン系不飽和基を含有せず;
例えば、米国特許出願公開第2017/0240659号に開示されている。]
【0034】
表現「多官能性化合物」(又はコア)は、分子量1500 Da以下、最も好ましくは、500 Da以下を有する分枝状ポリエトキシル化鎖である。コアは、好ましくは、グリセロール、エトキシル化/プロポキシル化グリセロール、ジグリセロール、エトキシル化/プロポキシル化ジグリセロール、トリメチロールプロパン、エトキシル化/プロポキシル化トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びエトキシル化/プロポキシル化ペンタエリスリトールの中から選ばれる。
【0035】
アシルホスフィンオキシドNorrishタイプI光開始剤は、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(現在、Omnirad(登録商標)819として市販されている);ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルホスフィンオキシド(現在、Omnirad(登録商標)403として市販されている);ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(現在、Omnirad(登録商標)TPOとして市販されている);エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(現在、Omnirad(登録商標)TPO-Lとして市販されている);ポリマー性TPO-L(現在、Omnipol(登録商標)TPとして市販されている);2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-イル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート(及び側鎖に3又は5個のエトキシ基を含有するその類似体及びその混合物);ブチル ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート;及び国際公開第2015/004566号及び米国特許出願公開第2016/039851号に開示されたもの及びその混合物からなる群から選ばれる。
【0036】
好適な具体例によれば、前記少なくとも1のNorrishタイプIIケトクマリン光開始剤(b)は、下記の式(V)~(VII)から選ばれる:
【0037】
式(V)
【化10】
[ここで、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキル基であり;
R
3は、
分枝状C6-C20アルキル基、又は直鎖及び分枝状C6-C20アルキル基の混合物;
C6-C20アルキル-アリール、アリールC6-C20アルキル、C6-C20アルキル-ヘテロアリール、ヘテロアリール-C6-C20アルキレンオキシド、-COO-C6-C20アルキル、及びCOOアリール
から選ばれる。];
【0038】
式(VI)
【化11】
(VI)
[ここで、
Gは、任意にアルコキシル化されたポリヒドロキシ化合物の残基であり;
m、n、及びpは数であり、及びm+n+pは2~10の値を有し;
pは0~8の値を有し;
xは0~10の整数であり、xが0である場合、フェニル基は、カルボキシル基に直接結合しており;
Yは、それぞれ独立して、直接の単結合、又は炭素原子1~14個を含んでなる、置換又は未置換の2価の結合基を表し;
Zはラジカル重合性官能基を表し;
R
3は、それぞれ独立して、水素、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12シクロアルキル(-SH、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されている)、又はC1-C12アルコキシを表し;
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、C1-C12アルキル、置換又は未置換のフェニル、置換又は未置換のアリール、置換又は未置換のヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12アルキル(-SH, -N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、COOHにて置換されている)、又はC1-C12アルコキシである。];及び
【0039】
式(VII)
【化12】
(VII)
[ここで、
R
1は、水素、又は置換又は未置換のC1-C12アルキル基であり;
Couは、式(a)
【化13】
(ここで、
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、互に独立して、水素、又は-S-R
7(ここで、R
7は、水素、C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換又は未置換のフェニル、アリール又はヘテロアリール、C5-C6シクロアルキル、C1-C12アルキル(SH、-N(C1-C6アルキル)
2、ピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、-OH、-O(C1-C12アルキル)、-COOHにて置換されている);又はC1-C12アルコキシであり;及びR
2、R
3、R
4、及びR
5 の少なくとも1はH以外であり;
R
6は、水素、ヒドロキシル基、又は炭素原子1~4個を有するアルキル基であり;又は
Couは、置換又は未置換の式:
【化14】
、
【化15】
、又は
【化16】
のナフサ-クマリン基であり;
ただし、R
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1がH以外であり、及びCouが(a)であり、及びR
2、R
3、R
4、及びR
5の少なくとも1がC1-C12アルキルである場合、又はCouが、(b)、(c)又は(d)である場合、R
1は置換又は未置換のC1-C12アルキル基であり;
例えば、国際公開第2014/063997号に開示されている。]
【0040】
特に好ましいケトクマリンは、3-(4-ドデシルベンゾイル)-5,7-ジメトキシ-クマリン(現在、Esacure(登録商標)3644として市販されている、国際公開第2017/216699号、IGM Resins B.V.)及び前記出願に記載された他の化合物から選ばれるか、又は国際公開第2019/116176号(IGM Resins Italia)に記載されたアクリル化ケトクマリンから選ばれるか、又は国際公開第2014/018826号(Sun Chemical Corporation)に記載されたケトクマリンから選ばれる。
【0041】
他の好ましいクマリンは、クマリン、3-フェニルクマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-テノイルクマリン、クマリン3-カルボン酸、3-メチルクマリン、7-ヒドロキシクマリン、6-メチルクマリン、4-ヒドロキシクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)クマリン、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-(2-ベンゾフロイル)-7-ジエチルアミノクマリン、7-(ジエチルアミノ)-3-テノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-7-メトキシクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3-テノイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、7-メトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-テノイル-7-メトキシクマリン、5,7-ジメトキシクマリン、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、4-メチル-7-ジメチルアミノクマリン、4-メチル-7-エチルアミノクマリン、4-メチルピペリジノ[3.2-g]クマリン、4-メチル-7-シクロヘキシルアミノクマリン、4-トリフルオロメチル-7-ジエチルアミノクマリン、3-フェニル-4-メチル-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2'-n-メチルベンズイミダゾール)-7-ジエチルアミノクマリン、4-トリフルオロメチル-6-メチル-7-エチルアミノクマリン、3-フェニル-7-アミノクマリン、及び国際公開第2014/018826号(Sun Chemical特許)に開示されたものから選ばれる。
【0042】
本発明では、式(I)~(IV)の少なくとも1の化合物と、式(V)~(VII)の少なくとも1の化合物とのいずれかの組み合わせも考慮される。また、本発明では、上述の好ましいNorrishタイプI及びNorrishタイプII光開始剤の組み合わせも考慮される。特に、後述の実施例に開示する組み合わせも好ましい。
【0043】
好ましい具体例によれば、本発明の組み合わせは、1以上の共-開始剤を含んでなる。
【0044】
典型的には、共-開始剤は、水素ドナーとして作用する分子である。共-開始剤としては、アミン、アルコール、チオールが知られており、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性、ポリマー性、アクリル又はメタクリル誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
好適な共-開始剤の例は、ビス-N,N-[4-ジメチルアミノベンゾイル)オキシエチレン-1-イル]-メチルアミン(現在、Esacure(登録商標)A198として市販されている)、エチル-4-ジメチルアミノベンゾアート(現在、Omnirad(登録商標)EDBとして市販されている)、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾアート(現在、Omnirad(登録商標)EHAとして市販されている)、N-フェニルグリシン、ポリ(エチレングリコール)ビス(p-ジメチルアミノベンゾアート)(現在、Omnipol(登録商標)ASAとして市販されている)、又はアクリル酸アミン(現在、Photomer(登録商標)4250、Photomer(登録商標)4771、Photomer(登録商標)4775、Photomer(登録商標)4780として市販されている化合物)、又は米国特許出願公開第2013/0012611号の実施例4に開示された化合物である。
【0046】
上に掲示した化合物は、好ましい光開始剤又は共-開始剤の単なる例であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0047】
本発明の好ましい組み合わせは、
(a)下記から選ばれる少なくとも1のアシルホスフィンオキシド:
フェニルビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Omnirad(登録商標)819);
ポリマー性TPO-L(Omnipol(登録商標) TP);
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad(登録商標)TPO);
(オクリツホスホリル)ビス-(メシチルメタノン)(ここでは、「化合物1」と記載する);及び
ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィン酸ポリエチレングリコール-モノメチルエーテルエステル(ここでは、「化合物2」と記載する);
(b)下記の中から選ばれる少なくとも1のケトクマリン:
Esacure(登録商標) 3644(3-((4-ドデシル)ベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン;
クマリン3-(ベンゾイル)-7-エチルスルフィッド(ここでは、「化合物3」と記載する);
3-((4-t-ブチル)ベンゾイル)-7-メトキシクマリン(ここでは、「化合物4」と記載する);及び
3-((4-t-ブチル)ベンゾイル)β-ナフトクマリン(ここでは、「化合物5」と記載する);
(c)下記の中から選ばれる少なくとも1の共-開始剤:
1H-アゼピン-1-プロパン酸ヘキサヒドロ-2,2-ビス[[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシルメチル]ブチルエステル(Photomer(登録商標) 4250);及び
1,1,1-トリメチロールプロパントリ-(3-[N-メチル-N-フェニルアミノ]プロピオネート)
を含んでなる。
【0048】
特に好ましい組み合わせは、化合物1及び/又は化合物2及びEsacure(登録商標)3644であり、好ましくは、Photomer(登録商標)4250を含む。
【0049】
好ましくは、本発明の組み合わせは、有機希釈剤又はアクリルモノマーを含まない。
【0050】
本発明の組み合わせの成分のいくつかが固体である場合、組み合わせは、次の工程:
1)組み合わせの液体成分を、周囲温度において、ブレンドし、撹拌する工程;
2)混合物を40~80℃、好ましくは、60℃で加熱する工程;
3)40~80℃、好ましくは、60℃において撹拌しながら、製剤の固体成分を添加し、ついで、100~140℃、好ましくは、120℃において、約1時間撹拌し、このようにして、透明の溶液を得る工程;
4)溶液を周囲温度に冷却し、このようにして透明の液体ブレンドを得る工程
を含んでなる方法によって調製される。
【0051】
或いは、組み合わせの成分の全てが液体である場合は、単に、それらを周囲温度において混合することによってブレンドが得られる。
【0052】
本発明の液体の組み合わせは、近UV又は可視LEDランプによる光硬化性組成物の高速光重合に好適である。
【0053】
本発明の光開始剤の組み合わせは、選択したNorrishタイプI及びII光開始剤の間で相乗作用を発揮することが示された。実際、アシルホスフィンオキシドは、高速光開始剤であるが、酸素阻害に対して非常に鋭敏である。アシルホスフィンオキシドは、ホトブリーチングのため、良好なスルー硬化を行うことが知られているが、表面硬化を改善するためには、添加剤が配合されなければならない。
【0054】
普通には、当業者は、共-開始剤として、重合速度に有利な効果を有するため、アミンを添加する。アシルホスフィンオキシドは、通常、正の影響を受けるが、改善は必ずしも顕著ではない。驚くべきことには、NorrishタイプII光開始剤、特に、ケトクマリン、例えば、現在、Esacure(登録商標)3644として市販の化合物(アシルホスフィンオキシドの波長範囲で吸収する)の少量の添加は、確実かつ顕著に硬化速度を改善する。
【0055】
本発明によれば、組み合わせは、1以上のオレフィン系二重結合を含有するエチレン系不飽和化合物を含んでなる光硬化性組成物を調製するために使用される。
【0056】
前記組成物は、本発明の組み合わせ及び少なくとも1のエチレン系不飽和化合物を含んでなるものであり、本発明の他の主題を表す。
【0057】
好ましい具体例によれば、本発明は光硬化性組成物に係り、該組成物は、
i)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物80~99質量%;
ii)本発明による組み合わせ1~20質量%
を含んでなる。
【0058】
別に特定しない限り、百分率は、すべて、組成物の総質量に対する成分の質量によって表示される。水又は溶媒が存在する場合、それらの量は、上記百分率の計算については、組成物の総質量に含まれない。
【0059】
二重結合1個を有する好適なエチレン系不飽和化合物(例えば、モノマー又はオリゴマー性多価不飽和化合物)の例は、アルキル又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル、又は2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレートである。また、ケイ素又はフッ素にて変性した樹脂、例えば、シリコーンアクリレートも好適である。さらに、好適はモノマーの例は、アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレン及びハロゲノスチレン、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)、ビニルエーテル(例えば、イソブチルビニルエーテル)、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、又は塩化ビニルである。
【0060】
1を超える二重結合を有する好適なモノマーの更なる例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4’-ビス-(2-アクリルオキエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、コハク酸ジビニル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0061】
オリゴマー性多価不飽和化合物の好適な例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化又はビニル-エーテル又はエポキシ基含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタン、又はアクリル化ポリエステルである。
【0062】
本発明の実施に特に好適である化合物(i)の例は、エチレン系不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び鎖又は側鎖にエチレン系不飽和基を含有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン及びそのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、及びこのようなポリマーの1以上の混合物である。
【0063】
前記エステルの調製に有用な不飽和カルボン酸又は無水物の実例は、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、及び不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、及びオレイン酸である。(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0064】
さらに好適なエチレン系不飽和化合物は、不飽和カルボン酸と、好ましくは、2~6個のアミノ基を有する芳香族、脂肪族、及び脂環式ポリアミドとから得られる不飽和ポリアミドである。このようなポリアミドの例は、エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,2-ブチレンジアミン、1,3-ブチレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、及びジ-(β-アミノエトキシ)-及びジ-(β-アミノプロポキシ)-エタンである。このような不飽和ポリアミドの具体的な例は、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、及びN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]-アクリルアミドである。
【0065】
本発明の実施のためのエチレン系不飽和化合物としては、不飽和ポリウレタン、例えば、脂肪族ウレタンジアクリレート、例えば、Photomer(登録商標)6009、脂肪族ウレタントリアクリレート、例えば、Photomer(登録商標)6008又はPhotomer(登録商標)6010、脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、例えば、Photomer(登録商標)6621も好適である。更なる例は、芳香族ウレタンジアクリレート、例えば、Photomer(登録商標)6581、又は芳香族ウレタンヘキサアクリレート、例えば、Photomer(登録商標)6720である。
【0066】
本発明の組み合わせ及びエチレン系不飽和化合物以外にも、本発明の組成物は、さらに、光重合性化合物が液体又は粘稠な物質である場合に有利な結合剤を含むことができる(これに限定されない)。結合剤の選択は、使用分野及び要求される特性に従って行われる。好適な結合剤は、アクリレート及びメタクリレートのホモ-及びコ-ポリマー、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリ酢酸ビニルである。さらに、添加剤は、例えば、固体の湿潤性を改善する湿潤剤、及び粒子の凝集を防止する分散剤、例えば、BYK製品ラインである。
【0067】
インクの配合に重要な成分の1つは、インクのレオロジー特性を変更して、色の一貫性を増大させる人工又は天然のフィラーである。フィラーの役割は、高価な顔料の特定割合を交換すること及びインクの印刷適性に正の影響を与えることである。印刷インクの製造に使用される一般的なフィラーは、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカである。
【0068】
困難な基板、例えば、プラスティック、金属、PVC、ポリスチレン、アルミニウム、及びガラス上でのUVインクの接着を改善するために、接着促進が使用される。このタイプの添加剤の例は、キレート化チタン酸塩、BASFのLoxanol(商品名)シリーズ又はDOXAのAddox(商品名)シリーズである。
【0069】
インク、コーティング、又は接着剤は、改善されたブレークスルー特性を提供するために、潤滑剤を含んでなることができる。このような潤滑剤の例は、フルオロカーボンオイル又は樹脂又は官能化シリコーン化合物である。
【0070】
当業者であれば、本発明の組成物の他の適切な成分を完全に選択することが可能であろう。
【0071】
本発明の組成物は、1以上の光増感剤を含んでなることもできる。
【0072】
本発明の組成物に1以上の光増感剤を添加する場合、それらは、0.05~12質量%、好ましくは、0.1~10質量%の量で存在できる。
【0073】
本発明の均質な液体組み合わせ及び組成物は、
スクリーン印刷インク、オフセット印刷インク、フレキソ印刷インク、グラビア印刷インク、デジタル印刷インク、白色インク等を生成するための印刷工業;
ソルダーレジスト、エッチレジスト、絶縁層、及びプリント回路用インク、保護コーティング、カプセル材、ディスプレー、及び他の製造用電子部品に関するエレクトロニクス工業;
光ファイバー被覆、導波管、及びレンズに関する光学工業;
立体物、いわゆる、3Dプリンティングの製造又は添加剤製造;
接着剤
において使用される。
【0074】
増感剤の例は、当分野で一般的に使用されるもの、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、及び3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、及び3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノン、及びエオジン、ローダミン及びエリスロシン染料である。
【0075】
本発明の組み合わせ及び組成物は、ホログラフィック用途、木材、ビニール、セラミック、金属、及びプラスティックのコーティングにおける含有物用にも好適である。
【0076】
本発明の組み合わせ及び組成物の上記用途は、本発明の更なる主題である。
【0077】
本発明の他の主題は、本発明の組み合わせ及び組成物を含んでなる印刷及びコーティング法、及び前記方法によって製造された物品にある。
【0078】
さらに詳述すれば、本発明の方法は、
本発明による光重合性組成物を、基板上に被覆又は印刷し;及び
前記被覆又は印刷した組成物を、前記基板上で、光源にて光重合する
ことを含んでなる。
【0079】
好ましくは、光源は、近-UV又は可視LEDである。
【0080】
実施例の項において示すように、本発明のNorrishタイプI光開始剤(アシルホスフィン)への、少量であっても、本発明のNorrishタイプII光開始剤の添加は、全体的性能の改善の点で予想外の結果を提供する。実際、NorrishタイプII光開始剤(特に、ケトクマリン)の添加は、単独で使用する場合の、NorrishタイプI光開始剤(特に、アシルホスフィン)の弱点である重合度及びコーティングの表面部分(空気と接触する部分)の反応性を改善する。
【0081】
下記の実施例の項において、本発明を、非限定的に、さらに詳述する。
【0082】
【0083】
一般的手順
三頚250 mlフラスコに、周囲温度において液体成分を充填し、ついで、60℃で加熱した後、固体成分を添加する。透明の溶液を、120℃において、1時間撹拌し、ついで、ブレンドを、ゆっくりと周囲温度に冷却し、排出する。
【0084】
組成物及び安定性
一般的手続きに従って調製したブレンドの組成物を表1に報告する。
表1:ブレンドの組成(質量%)
ブレンドの安定性を、光から保護した状態で、20℃及び40℃において評価した。安定なブレンドを、顔料を添加した製剤において、反応性、表面硬化、及びスルー硬化について評価した。
【0085】
塗布の結果
【実施例1】
【0086】
表面硬化及びスルー硬化
ペンタエリスリトール[5 EO]テトラアクリレート15~20%、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート5~10%、トリメチロールプロパン[3 EO]トリアクリレート5~10%、グリセリル[4 PO]トリアクリレート1~2%、及びシアン顔料(15:3フタロ・ブルー)15~18%(%は、すべて質量%である)を含んでなる多官能性アクリレート系の工業用シアンオフセットインクに、ブレンド6質量%を溶解することによってテスト製剤を調製した。テスト製剤を、機械的撹拌機にて、周囲温度において、1時間均質化し、IGTレトロ-テスター装置を使用して、厚さ1.5μで、Leneta紙に塗布した。距離5mmでPhoseon Fire Power 395 nm UV-LEDランプ(4W/cm)を使用して、製剤を硬化した。
表面硬化について、乾燥表面を得るための100 m/分の速度での通過回数を考慮して評価を行った(コットンテスト)。通過回数が少ないほど、表面硬化は良好である。
さらに、表面硬化を、約1407 cm-1におけるアクリレート二重結合の転化(DBC)を測定するFT-IR分光測定によってチェックした。
スルー硬化テストは、所定の速度で得られた完全インク硬化の測定であり、「thumb twist pressure test」によってチェックされる。速度が速いことは、反応性が大きいことに相当する。
結果を表2に示す。
【0087】
表2:空気の存在下、395 nm(4W/cm)において、LEDランプにて硬化したシアン工業用オフセットインクの表面硬化及びスルー硬化
【0088】
これらの結果は、実施例11の本発明の液体が、Omnirad(登録商標)819と比較して、又は特に、化合物1単独、及び化合物1及びPhotomer(商品名)4250の混合物と比較して、良好なスルー硬化性能及び改善された表面硬化のいずれかを提供することを証明している。
また、Esacure(登録商標)3644及びPhotomer(登録商標)4250は、同一濃度で、非常に低い反応性を示した(表2参照)。
【0089】
先の結果をFT-IRによって確認した:実施例11は、表3に示すように、DBC%が、100 m/分で1通過後、他のコーティングよりも大きいため、改善された表面性能を提供する。
表3:AT-IR測定による転化(DBC%)
【実施例2】
【0090】
LFC3644及び他のケトクマリンのアシルホスフィンオキシドとの相乗作用
工業用シアンオフセットインクに、アシルホスフィンオキシド4.32部及びEsacure(商品名)3644 0.72部を添加してLED硬化性インクを調製し、周囲温度において、均質になるまで、混合物を1時間撹拌した。IGTレトロテスター装置を使用して、厚さ1.5μmで、インクをLeneta紙に印刷し、Phoseon Flare Power 395 nm UV-LEDランプ(4W/cm)にて、距離5mmで硬化した。
実施例1に記載のとおり、表面硬化及びスルー硬化をチェックした。結果を表4に示す。
【0091】
表4:アシルホスフィンオキシド及びケトクマリンEsacure(登録商標)3644の反応性
【0092】
これらの結果は、共-開始剤の不存在下でも、表面硬化及びスルー硬化のいずれかにおいて良好な性能を有する液体ブレンド、例えば、化合物1+Esacure(登録商標)3644が得らえることを示している。同様の条件下において、化合物1と他のケトクマリンとの組み合わせをテストし、結果を表5に示す。
【0093】
【0094】
これらの結果は、ケトクマリンの存在下では、化合物1単独と比べて、硬化速度が顕著に増大することを示している。Esacure(登録商標)3644との組み合わせは、最良の性能を示さなかったが、興味深い利点、例えば、良好な溶解性及び極めて低いポスト硬化黄変を提供する。
【実施例3】
【0095】
共-開始剤Photomer(登録商標)4250の存在下における化合物1に対するケトクマリンの相乗作用
工業用シアンオフセットインクに、化合物1 4.32部、ケトクマリン0.72部、及び共-開始剤Photomer(商品名)4250 0.96部を添加することによって、化合物1、異なるケトクマリン、及びアミン共-開始剤のブレンドを調製した。参考として、Photomer 4250を含まない同様の製剤を調製した。先の実施例において報告したように、テストを実施した。結果を表6に示す。
【0096】
表6:ケトクマリン及びPhotomer(商品名)4250を含む化合物1ブレンドの相乗作用
(*)ベルトの最高速度
結果は、アミン共-開始剤の存在が、2成分組み合わせに対して、ブレンドの性能を、さらに改善することを証明した。
【国際調査報告】