(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】移植片対宿主病のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221205BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20221205BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221205BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20221205BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221205BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20221205BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221205BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221205BHJP
【FI】
A61K45/00
G01N33/68
G01N33/53 D
A61K31/519
A61K31/573
A61K45/06
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K38/13
A61K39/395 V
A61K39/395 N
A61K35/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521545
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 US2020054836
(87)【国際公開番号】W WO2021072116
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,マイケル ディ
(72)【発明者】
【氏名】オーウェンズ,シェリー
(72)【発明者】
【氏名】プラッタ,マイケル エイ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB11
2G045CB12
2G045CB30
2G045DA36
2G045FA36
2G045FB03
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA05
4C084ZB08
4C084ZC20
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
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4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC48
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4C086CB22
4C086CB26
4C086DA10
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB08
4C086ZC20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB08
(57)【要約】
JAK阻害剤に対する対象の応答性を予測するバイオマーカーが提供される。本明細書に記載されるバイオマーカー、組成物、及び方法は、移植片対宿主病を有するか、移植片対宿主病を有することが疑われるか、または移植片対宿主病を発症するリスクがある対象に対する適切な治療法を選択するうえで有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、前記ヒト対象にJAK阻害剤を投与することを含み、前記ヒト対象が、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを有することが以前に判定されている、前記方法。
【請求項2】
前記ヒト対象が、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを有することが以前に判定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒト対象が、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを有することが以前に判定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト対象が、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを有することが以前に判定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、前記ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
移植片対宿主病(GvHD)を有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、
前記ヒト対象から得られた生物学的試料を提供することと、
前記生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを測定することと、
前記ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、を含む、前記方法。
【請求項8】
前記生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを測定することと、
前記ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを測定することと、
前記ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを測定することと、
前記ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的試料において、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、及び(iv)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度を測定することと、
前記ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的試料において、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、及び(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度を測定することと、
前記ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
第2の治療剤が、前記JAK阻害剤と併用して前記ヒト対象に投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の治療剤が、コルチコステロイド、メトトレキサート、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、抗チモサイトグロブリン、アレムツズマブ、シクロホスファミド、イブルチニブ、イマチニブ、インフリキシマブ、エタナーセプト、トシリズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ、デニロイキンジフチトクス、ペントスタチン、シクロスポリン、サリドマイド、ハロフギノン、ヒドロキシクロロキン、または間葉系幹細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の治療剤が、コルチコステロイドである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記コルチコステロイドが、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記JAK阻害剤が、イタシチニブである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記JAK阻害剤が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドもしくは薬学的に許容されるその塩、または((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルもしくは薬学的に許容されるその塩である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿、尿、脊髄液、唾液、涙液、または汗である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的試料が、血液、血清、または血漿である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記GvHDが、急性GvHDである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記GvHDが、慢性GvHDである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドが前記JAK阻害剤と併用して前記ヒト対象に投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドが前記JAK阻害剤と併用して前記ヒト対象に投与され、前記生物学的試料が血液、血清、または血漿である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドが前記JAK阻害剤と併用して前記ヒト対象に投与され、前記生物学的試料が血液、血清、または血漿であり、前記GvHDが急性GvHDである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドが前記JAK阻害剤と併用して前記ヒト対象に投与され、前記生物学的試料が血漿であり、前記GvHDが急性GvHDである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
移植片対宿主病(GvHD)を有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象のJAK阻害剤に対する応答を予測する方法であって、
前記JAK阻害剤の投与の前に前記対象から得られた生物学的試料を提供することと、
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質の濃度を測定することと、を含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、前記方法。
【請求項28】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも3つのタンパク質の濃度を測定することを含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも4つのタンパク質の濃度を測定することを含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも5つのタンパク質の濃度を測定することを含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記生物学的試料中のMCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含み、
以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、前記生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、前記生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、を測定することが、前記対象が前記JAK阻害剤に応答することを予測する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記JAK阻害剤が、イタシチニブである請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記JAK阻害剤が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドもしくは薬学的に許容されるその塩、または((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルもしくは薬学的に許容されるその塩である、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記コントロールが、予め確立されたカットオフ値である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記コントロールが、前記JAK阻害剤による治療に応答しなかった1人以上の対象から得られた1乃至複数の試料中の前記タンパク質の濃度である、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
試料中のタンパク質の量を測定するための方法であって、
移植片対宿主病(GvHD)を有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象から得られた生物学的試料を提供することと、
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質の濃度を測定することと、を含む、前記方法。
【請求項38】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも3つのタンパク質の濃度を測定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生体試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも4つのタンパク質の濃度を測定することと、を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも5つのタンパク質の濃度を測定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記生物学的試料中のMCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
20種以下のタンパク質の濃度が測定される、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
10種以下のタンパク質の濃度が測定される、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
6種以下のタンパク質の濃度が測定される、請求項37~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿、尿、脊髄液、唾液、涙液、または汗である請求項37~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記生物学的試料が、血液、血清、または血漿である、請求項37~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記GvHDが、急性GvHDである、請求項37~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記GvHDが、慢性GvHDである、請求項37~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記タンパク質の濃度が、免疫学的方法によって測定される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫学的方法が、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス免疫比濁免疫測定法、ラテックス近赤外免疫比濁免疫測定法、免疫クロマトグラフィーアッセイ、及びウエスタンブロッティングからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記タンパク質の濃度が、質量分析法によって測定される、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月10日に出願された米国特許出願第62/913,284号に基づく優先権を主張するものである。先行出願の内容の全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に、バイオマーカー及び移植片対宿主病に関する。
【背景技術】
【0003】
移植片対宿主病(GvHD)は、同種レシピエントに移植された免疫学的にコンピテントな細胞がレシピエントの組織を攻撃する場合に発症する。皮膚、腸上皮、肝臓の組織が標的となることが多く、GvHDの過程で破壊されるおそれがある。この疾患は、骨髄移植などの免疫組織が移植されている場合に特に深刻な問題を生じる。GvHDは、同種造血幹細胞移植後の2番目に多い死因となっている。GvHDは、心臓移植及び肝移植など、他の移植後にも発生する可能性がある。
【0004】
GvHDの治療薬としてヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤が開発されている。しかしながら、あらゆる治療薬がそうであるように、JAK阻害剤はGvHDを有するすべての患者で同じ効果を有するわけではない。JAK阻害剤による治療による恩恵を最も受ける可能性のあるGvHDを有する患者を特定する手段が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、JAK阻害剤に対するGvHD患者の応答性を予測するバイオマーカーの特定に一部基づくものである。治療前の特定のタンパク質のレベルは、JAK阻害剤に対する反応性の有用な予測因子として特定されている。したがって、本明細書に記載されるバイオマーカー及び組成物は、例えば、JAKによる治療による恩恵を受ける可能性のあるGvHDを有するか、これを有することが疑われるか、またはこれを発症するリスクがある対象または対象のサブセットを特定、層別化、及び/または選択するうえで有用である。さらに、本明細書に記載の方法は、例えば、GvHDを罹患しているか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象に対して適切な治療法(例えば、JAK阻害剤)を選択するうえで有用である。
【0006】
本開示は、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象が、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを有することが以前に判定されている方法に関する。
【0007】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを有することが以前に判定されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを有することが以前に判定されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを有することが以前に判定されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されている。
【0012】
本開示は、ヒト対象から得られた生物学的試料を提供することと、生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを測定することと、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、によって、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法にも関する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを測定することと、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを測定することと、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料において、以下、すなわち、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、または(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを測定することと、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料において、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、及び(iv)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度を測定することと、ヒト対象に前記JAK阻害剤を投与することと、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料において、(i)コントロールと比較して低下したベースラインのCXCL10タンパク質濃度、(ii)コントロールと比較して低下したベースラインのIL-6のタンパク質濃度、(iii)コントロールと比較して低下したベースラインのMCP-3タンパク質濃度、(iv)コントロールと比較して低下したベースラインのTNFRSF6Bのタンパク質濃度、(v)コントロールと比較して増加したPON3のタンパク質濃度、及び(vi)コントロールと比較して増加したベースラインのSCFのタンパク質濃度を測定することと、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することと、を含む。
【0018】
別の態様では、本開示は、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象のJAK阻害剤に対する応答を予測する方法であって、JAK阻害剤の投与の前に対象から得られた生物学的試料を提供することと、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質の濃度を測定することと、を 含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも2つを測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する、方法に関する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも3つのタンパク質の濃度を測定することを含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも3つを測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも4つのタンパク質の濃度を測定することを含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも4つを測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも5つのタンパク質の濃度を測定することを含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、または(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、のうちの少なくとも5つを測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のMCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含み、以下、すなわち、(i)コントロールよりも低い、生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度、を測定することが、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0024】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、コントロールは、予め確立されたカットオフ値である。
【0025】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、コントロールは、JAK阻害剤による治療に応答しなかった1人以上の対象から得られた1乃至複数の試料中のタンパク質の濃度である。
【0026】
別の態様では、本開示は、試料中のタンパク質の量を測定するための方法であって、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象から得られた生物学的試料を提供することと、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも2つのタンパク質の濃度を測定することと、を含む、方法に関する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも3つのタンパク質の濃度を測定することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも4つのタンパク質の濃度を測定することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFからなる群から選択される少なくとも5つのタンパク質の濃度を測定することを含み、
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のMCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、生物学的試料中のCXCL10、IL-6、MCP-3、TNFRSF6B、PON3、及びSCFのタンパク質濃度を測定することを含み、
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、20種以下のタンパク質の濃度が測定される。
【0031】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、10種以下のタンパク質の濃度が測定される。
【0032】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、6種以下のタンパク質の濃度が測定される。
【0033】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、4種以下のタンパク質の濃度が測定される。
【0034】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、生物学的試料は、血液、血清、血漿、尿、脊髄液、唾液、涙液、または汗である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、血液、血清、または血漿である。
【0035】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、タンパク質の濃度は、免疫学的方法によって測定される。免疫学的方法は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス免疫比濁免疫測定法、ラテックス近赤外免疫比濁免疫測定法、免疫クロマトグラフィーアッセイ、またはウエスタンブロッティングであってよい。
【0036】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、タンパク質の濃度は、質量分析法によって測定される。
【0037】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、イタシチニブである。
【0038】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドもしくは薬学的に許容されるその塩、または((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルもしくは薬学的に許容されるその塩である。
【0039】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、第2の治療剤が、JAK阻害剤と併用してヒト対象に投与される。第2の治療剤は、例えば、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾン)、メトトレキサート、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、抗チモサイトグロブリン、アレムツズマブ、シクロホスファミド、イブルチニブ、イマチニブ、インフリキシマブ、エタナーセプト、トシリズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ、デニロイキンジフチトクス、ペントスタチン、シクロスポリン、サリドマイド、ハロフギノン、ヒドロキシクロロキン、または間葉系幹細胞であってよい。JAK阻害剤と第2の治療薬とは、同時、または順次投与することができる。
【0040】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、GvHDは、急性GvHDである。
【0041】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、GvHDは、慢性GvHDである。
【0042】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤はイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与される。
【0043】
例えば、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与される、方法が包含される。
【0044】
別の例では、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与される、方法が包含される。
【0045】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤はイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料は、血液、血清、または血漿である。
【0046】
例えば、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血液、血清、または血漿である、方法が包含される。
【0047】
別の例では、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血液、血清、または血漿である、方法が包含される。
【0048】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤はイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料は血液、血清、または血漿であり、GvHDは急性GvHDである。
【0049】
例えば、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血液、血清、または血漿であり、GvHDが急性GvHDである、方法が包含される。
【0050】
別の例では、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血液、血清、または血漿であり、GvHDが急性GvHDである、方法が包含される。
【0051】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態では、JAK阻害剤はイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料は血漿であり、GvHDは急性GvHDである。
【0052】
例えば、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象が、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血漿であり、GvHDが急性GvHDである、方法が包含される。
【0053】
別の例では、本明細書には、ヒト対象にJAK阻害剤を投与することにより、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法であって、ヒト対象は、(i)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のCXCL10のベースラインタンパク質濃度、(ii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のIL-6のベースラインタンパク質濃度、(iii)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のMCP-3のベースラインタンパク質濃度、(iv)コントロールよりも低い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のTNFRSF6Bのベースラインタンパク質濃度、(v)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のPON3のベースラインタンパク質濃度、及び(vi)コントロールよりも高い、ヒト対象から得られた生物学的試料中のSCFのベースラインタンパク質濃度を有することが以前に判定されており、JAK阻害剤がイタシチニブであり、コルチコステロイドがJAK阻害剤と併用してヒト対象に投与され、生物学的試料が血漿であり、GvHDが急性GvHDである、方法が包含される。
【0054】
タンパク質の「ベースライン濃度」なる用語は、JAK阻害剤による治療を開始する前の対象におけるタンパク質の濃度を指す。
【0055】
「低下した濃度」なる用語は、コントロール または以前の試料中のそのタンパク質の濃度よりも低い、分析されるタンパク質の濃度を意味する。例えば、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度よりも、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、75、または100倍低いか、または少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、4000%、4500%、または5000%低い。
【0056】
「増加した濃度」なる用語は、コントロール または以前の試料中のそのタンパク質の濃度よりも高い、分析されるタンパク質の濃度を意味する。例えば、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度よりも、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、75、または100倍高いか、または少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、4000%、4500%、または5000%高い。
【0057】
「治療に応答する」なる用語は、治療が投与された対象が、与えられたJAK阻害剤治療に対して正の応答を示すことを意味する。
【0058】
別段の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本発明の実施または試験においては本明細書において記載されるものと同様または同等の方法及び材料を使用することができるが、例示的な方法及び材料について以下に記載する。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、参照によりそれらの全容を援用する。矛盾が生じる場合、定義を含む本出願が優先するものとする。材料、方法、及び実施例は、あくまで例示的なものに過ぎず、限定を目的とするものではない。
【0059】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示は、JAK阻害剤を使用して、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象を治療するための方法及び組成物を提供する。本開示は、JAK阻害剤の投与が有効である可能性が高い、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象を特定するための予測バイオマーカー(例えば、タンパク質発現レベル)を提供する。
【0061】
移植片対宿主病
GvHDは、ドナーT細胞が宿主細胞上の遺伝的に定義されたタンパク質(ヒト白血球抗原を含むがこれに限定されない)に応答する場合に発生する。急性GvHDが一般に移植後100日目よりも前に発生すると定義されているのに対して、慢性GvHDはその時点よりも後に発生する。
【0062】
急性GvHDの臨床的所見は、皮膚、胃腸管、及び肝臓で発生する。皮膚は急性GvHDで最も普通に冒される臓器であり、通常は最初に関与する臓器であり、ドナー細胞の生着としばしば一致する。特徴的な斑点状丘疹は掻痒性であり、全身に拡がる場合がある。重症の場合、皮膚に水ぶくれや潰瘍が生じることがある。その他の特徴としては、異常角化症、リンパ球のエキソサイトーシス、異常角化表皮ケラチノサイトに隣接するサテライトリンパ球、及び真皮への血管周囲リンパ球浸潤が含まれる。急性GvHDの消化管合併症は通常下痢として現れるが、嘔吐、食欲不振、及び/または腹痛も含まれる場合がある。GvHDによって引き起こされる肝疾患の組織学的特徴は、内皮炎、門脈領域のリンパ球浸潤、胆管周囲炎、及び胆管破壊である。
【0063】
慢性GvHDは、造血細胞移植後の遅発性非再発死亡の主な原因である。その症状は、進行性(例、急性GvHDが慢性GvHDになる)、無活動性(完全に回復するが、その後に慢性GvHDが続く急性GvHD)の場合があり、または新たに生じる場合もある。高齢のレシピエント年齢と急性GvHDの病歴は、慢性GvHDの最大の危険因子である。慢性GvHDの臨床的兆候は、しばしば頬粘膜に最初に現れる。
【0064】
JAK阻害剤に対する応答性を予測する方法
それらの発現レベルが、組み合わせて評価した場合にGvHDを有する対象のJAK阻害剤に対する応答性(例えば、疾患スコア及び/または疾患回復の改善)を予測するうえで有用であるようないくつかのタンパク質が実施例で特定されている。これらのタンパク質を表1及び2に示す。
【0065】
【0066】
【0067】
表1に記載される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)タンパク質の濃度がコントロールと比較して低下していることは、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象がJAK阻害剤に応答することを示す/予測する。例えば、JAK阻害剤による治療の前に対象から得られた生物学的試料中のMCP3及びTNFRSF6Bタンパク質の濃度が低い(コントロールと比較して)場合、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0068】
表2に記載される1つ以上(例えば、1つまたは2つ)のタンパク質の濃度がコントロールと比較して増加していることは、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象がJAK阻害剤に応答することを示す/予測する。例えば、JAK阻害剤による治療の前に対象から得られた生物学的試料中のPON3及びSCFタンパク質の濃度が高い(コントロールと比較して)場合、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。
【0069】
表1に記載される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)のタンパク質の濃度のコントロールと比較した低下と、表2に記載される1つ以上(例えば、1つまたは2つ)のタンパク質の濃度のコントロールと比較した増加との組み合わせは、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象がJAK阻害剤に応答することを示す/予測する。例えば、JAK阻害剤による治療の前に対象から得られた生物学的試料中のMCP3及びTNFRSF6Bタンパク質の濃度が低く(コントロールと比較して)、かつPON3及びSCFタンパク質の濃度が高い(コントロールと比較して)場合、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。別の例では、JAK阻害剤による治療の前に対象から得られた生物学的試料中のCXCL10, IL-6, MCP3, 及び TNFRSF6Bタンパク質の濃度が低く(コントロールと比較して)、かつPON3及びSCFタンパク質の濃度が高い(コントロールと比較して)場合、対象がJAK阻害剤に応答することを予測する。いくつかの実施形態では、GvHDは、急性GvHDである。いくつかの実施形態では、GvHDは、慢性GvHDである。
【0070】
コントロール
上記で述べたように、本発明の方法は、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象からの生物学的試料中の1つ以上のタンパク質(例えば、表1及び/または表2に示される1つ以上のタンパク質)の濃度を測定することを含むことができ、コントロールと比較した1つ以上のタンパク質の濃度が、JAK阻害剤を含む治療に対する対象の応答を予測する。特定の実施形態では、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象からの生物学的試料中の表1のタンパク質の濃度がコントロールよりも低い場合、対象は、JAK阻害剤に応答する可能性が高いものと特定される。他の実施形態では、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象からの生物学的試料中の表2のタンパク質の濃度がコントロールよりも高い場合、対象は、JAK阻害剤に応答する可能性が高いものと特定される。この関連で、「コントロール」なる用語は、JAK阻害剤に応答しないことが分かっているヒト対象から得られた試料(同じ組織タイプからの)を含む。「コントロール」なる用語はまた、JAK阻害剤に応答しないことが分かっているヒト対象から過去に得られたもので、治療応答性が予測されるヒト対象から採取した試験試料と後で比較するための基準として使用される試料(同じ組織タイプからの)も含む。特定の細胞型または組織中の特定のタンパク質の「コントロール」発現レベル/濃度は、JAK阻害剤による治療に応答しなかった同じ種の1人以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8 、9、10、15、20、25、30、35、または40人以上)の対象におけるタンパク質発現の分析によって予め確立することができる。次いで、この予め確立された基準値(療法に応答しなかった複数の対象から得られた発現レベル/濃度の平均または中央値)を試験試料との比較における「コントロール」濃度/発現レベルとして使用することができる。かかる比較では、対象は、分析されるタンパク質の発現レベルが予め確立された基準よりも低い(表1)または高い(表2)場合、JAK阻害剤に応答するものと予測される。
【0071】
あるいは、特定の細胞型または組織中の特定のタンパク質の「コントロール」濃度は、JAK阻害剤による治療に応答した1人以上の対象におけるタンパク質発現の分析によって予め確立することもできる。次いで、この予め確立された基準値(療法に応答した複数の対象から得られた発現レベルの平均または中央値)を試験試料との比較における「コントロール」発現レベルとして使用することができる。かかる比較では、対象は、分析されるタンパク質の濃度が予め確立された基準と同じかまたは同等である場合(例えば、基準の少なくとも85%であるが100%未満)、JAK阻害剤に応答すると予測される。
【0072】
特定の実施形態では、「コントロール」は、予め確立されたカットオフ値である。カットオフ値は、一般的には、それよりも高い、または低い濃度が、目的の療法に対する対象の応答性を予測しているとみなされるタンパク質の濃度である。したがって、本明細書に記載される方法及び組成物によれば、基準タンパク質濃度(例えば、表1または表2のタンパク質の)は、それよりも高い、または低い値がJAK阻害剤に対する応答性を予測しているカットオフ値として特定される。本明細書に記載される方法における使用のために決定されたカットオフ値は、例えば、公開されている濃度範囲と比較することができるが、使用される方法及び患者集団に対して個別化することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度と比較して減少している。例えば、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度よりも、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、75、または100倍低いか、または少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、4000%、4500%、または5000%低い。
【0074】
いくつかの実施形態では、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度と比較して増加している。例えば、分析されるタンパク質の濃度は、コントロール中のそのタンパク質の濃度よりも、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、50、75、または100倍高いか、または少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、4000%、4500%、または5000%高い。
【0075】
生物学的試料
本明細書に記載の方法に適した生物学的試料としては、目的のタンパク質を含む任意の生物学的液体、細胞、組織、またはそれらの画分が挙げられる。生物学的試料は、例えば、対象から得られた試料であってよく、またはそのような対象に由来するものでもよい。例えば、生物学的試料は、血液、血清、血漿、尿、脊髄液、唾液、涙液、または汗などの生物学的液体であってよく、または基質(例えば、ガラス、ポリマー、または紙)に吸着されたそのような試料であってもよい。
【0076】
生物学的試料は、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象から得ることができる。特定の実施形態では、対象は急性GvHDを有する。いくつかの実施形態では、対象は慢性GvHDを有する。
【0077】
試料中の分子(例えば、タンパク質)の活性または完全性が保存された試料を取得及び/または保存する方法は、当業者には周知のものである。例えば、生物学的試料を、試料中の分子を保存するかまたはその変化を最小限に抑えるような1つ以上のヌクレアーゼ、プロテアーゼ、及びホスファターゼ阻害剤を含む緩衝剤及び/または阻害剤などの1つ以上のさらなる薬剤とさらに接触させることができる。
【0078】
バイオマーカーの発現レベル/濃度の決定
ある遺伝子の存在または発現レベル(量)は、その遺伝子のタンパク質発現のレベルを検出及び/または測定することにより決定することができる。
【0079】
一実施形態では、ある遺伝子の発現は、その遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または濃度を検出及び/または測定することによって決定することができる。タンパク質の発現/濃度を決定する方法は当該技術分野では周知のものである。一般的に使用される方法では、目的の標的タンパク質に特異的な抗体を使用する。例えば、タンパク質の発現を決定する方法としては、これらに限定されるものではないが、ウエスタンブロットまたはドットブロット分析、免疫組織化学(例えば、定量的免疫組織化学)、免疫細胞化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT;Coligan,J.E.,et al.,eds.(1995)Current Protocols in Immunology.Wiley,New York)、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス免疫比濁免疫測定法、ラテックス近赤外免疫比濁免疫測定法、免疫クロマトグラフィーアッセイ、及び抗体アレイ分析が挙げられる(例えば、それぞれの開示内容の全体を本明細書に参照によって援用する米国特許出願公開第20030013208号及び同第2004171068号を参照)。
【0080】
一例では、遺伝子(例えば、表1または表2に示される遺伝子)のタンパク質発現の存在または量は、ウエスタンブロッティング技術を使用して決定することができる。例えば、ライセートを生物学的試料から調製してもよく、または生物学的試料自体をLaemmli緩衝液と接触させ、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にかけることもできる。次に、サイズにより分離したSDS-PAGE分解タンパク質をフィルターメンブレン(例えば、ニトロセルロース)に転写し、目的のタンパク質に特異的な検出可能な標識抗体を使用したイムノブロッティング法を行うことができる。結合した検出可能な標識抗体の存在または量は、生物学的試料中のタンパク質の存在または量を示す。
【0081】
別の例では、免疫測定法を使用して、遺伝子(例えば、表1または表2に示される遺伝子)のタンパク質発現を検出及び/または測定することができる。上記のように、検出の目的では、免疫測定法は、検出部分(例えば、蛍光剤または酵素)を有する抗体を用いて行うことができる。生物学的試料からのタンパク質は、固相マトリックス(例えば、マルチウェルアッセイプレート、ニトロセルロース、アガロース、セファロース、コード化粒子、または磁気ビーズ)に直接結合させてもよく、または特異的結合ペアの第2の要素(例えば、ストレプトアビジンまたはビオチン)に結合すると固相マトリクスに付着する特異的結合ペアの第1の要素(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン)に結合させることもできる。固相マトリックスへのそのような付着は、検出抗体との接触に先立って生物学的試料の他の干渉成分または無関係な成分からタンパク質を精製することを可能にし、また、未結合抗体のその後の洗浄を可能にする。ここでも上記と同様、結合した検出可能な標識抗体の存在または量は、生物学的試料中のタンパク質の存在または量を示す。
【0082】
抗体の形態に関して特別な制限はなく、本開示は、モノクローナル抗体だけでなく、ポリクローナル抗体も含む。ウサギなどの動物をタンパク質またはその断片(すなわち、表1または表2のタンパク質またはその免疫学的フラグメント)で免疫することによって得られる抗血清、ならびに遺伝子組換えによって作製されたすべてのクラスのポリクローナル及びモノクローナル抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体も含まれる。1つ以上のバイオマーカーによってコードされるタンパク質に特異的な抗体または抗体フラグメントは、ファージディスプレイなどのインビトロ法によって作製することもできる。さらに、抗体は、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質に結合するものであれば、抗体フラグメントまたは修飾抗体であってよい。例えば、H鎖FvとL鎖Fvとがリンカーによって適当に結合されたFab、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fv(scFv)(Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,(1988))を抗体フラグメントとして与えることができる。
【0083】
抗体は、蛍光物質、放射性物質、発光物質などのさまざまな分子に結合させることができる。そのような部分を抗体に結合させる方法は、当該分野ではすでに確立されており、標準的なものである(例えば、米国特許第5,057,313号及び同第5,156,840号を参照されたい)。
【0084】
抗体の抗原結合活性をアッセイする方法の例としては、例えば、吸光度の測定、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、及び/または免疫蛍光法が挙げられる。例えば、ELISAを使用する場合、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質を、本開示の抗体をコーティングしたプレートに加え、次いで、抗体試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清、または精製抗体を加える。次いで、アルカリホスファターゼ及びそのような酵素で標識した一次抗体を認識する二次抗体を加え、プレートをインキュベートしてから洗浄し、p-ニトロフェニルホスフェートなどの酵素基質を加えた後の吸光度を測定して抗原結合活性を評価する。タンパク質としては、タンパク質フラグメント、例えば、C末端を含むフラグメント、またはN末端を含むフラグメントを使用することができる。本発明の抗体の活性を評価するために、BIAcore(GE Healthcare)を使用することができる。
【0085】
これらの方法を用いることにより、抗体と目的のタンパク質を含むと推定される試料とを接触させ、上記抗体とタンパク質との間で形成された免疫複合体を検出またはアッセイすることにより、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質が検出またはアッセイされる。
【0086】
質量分析ベースの定量アッセイ法、例えば、これに限定されるものではないが、安定同位体標識内部標準と組み合わせた多重反応モニタリング(MRM)ベースのアプローチは、タンパク質の定量測定のための免疫測定法に代わる手段である これらのアプローチでは、抗体を使用する必要はない(例えば、Addona et al.,Nat.Biotechnol.,27:633-641,2009;Kuzyk et al.,Mol.Cell Proteomics,8:1860-1877,2009;Paulovich et al.,Proteomics Clin.Appl.,2:1386-1402,2008を参照)。さらに、MRMは優れたマルチプレックス性能を与え、多数のタンパク質を並行して同時に定量することが可能である。これらの方法の基本的な理論は確立されており、小分子の薬物代謝及び薬物動態分析に広く利用されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、表1の1つのタンパク質、2つのタンパク質、3つのタンパク質、または4つのタンパク質の濃度を評価及び/または測定することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、表2の1つのタンパク質または2つのタンパク質の濃度を評価及び/または測定することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、表1の1つのタンパク質、2つのタンパク質、3つのタンパク質、または4つのタンパク質の濃度、及び表2の1つのタンパク質または2つのタンパク質の濃度を評価及び/または測定することができる。
【0090】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、15pg/ml未満、10pg/ml未満、9pg/ml未満、8pg/ml未満、7pg/ml、6pg/ml未満、5pg/ml未満、4pg/ml未満、または3pg/ml未満であるMCP-3の濃度を測定することを含む。
【0091】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、400pg/ml未満、350pg/ml未満、300pg/ml未満、250pg/ml未満、または200pg/ml未満であるTNFRSF6Bの濃度を測定することを含む。
【0092】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、350pg/超、400pg/超、450pg/超、500pg/超、600pg/超、または650pg/超であるSCFの濃度を測定することを含む。
【0093】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、900pg/ml未満、800pg/ml未満、700pg/ml未満、600pg/ml未満、500pg/ml、または400pg/ml未満であるCXCL10の濃度を測定することを含む。
【0094】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、3.5pg/ml未満、3pg/ml未満、2.5pg/ml未満、2pg/ml未満、または1.5pg/ml未満であるIL-6の濃度を測定することを含む。
【0095】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、150,000pg/ml超、200,000pg/ml超、250,000pg/ml超、300,000pg/ml超、350,000pg/ml超、or400,000pg/ml超であるPON3の濃度を測定することを含む。
【0096】
JAK阻害剤
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、JAK1、JAK2、JAK3、及び/またはTYK2を阻害する化合物である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、JAK3及びTYK2よりもよりもJAK1及びJAK2に対して選択的である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、JAK2、JAK3、及びTYK2よりもJAK1に対して選択的である。例えば、本明細書に記載の化合物の一部のもの、または薬学的に許容されるその塩は、JAK2、JAK3、及びTYK2のうちの1つ以上よりもJAK1を選択的に阻害する。いくつかの実施形態では、化合物または塩は、JAK2よりもJAK1を選択的に阻害する(例えば、JAK2/JAK1のIC50比>1を有する)。いくつかの実施形態では、化合物または塩は、JAK2よりもJAK1に対して約10倍選択的である。いくつかの実施形態では、化合物または塩は、1mMのATPでのIC50を測定することによって計算した場合に、JAK2よりもJAK1に対して約3倍、約5倍、約10倍、約15倍、または約20倍、選択的である。
【0097】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリルである。
【0098】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、(3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリルである(ルキソリチニブ;INCB018424としても知られる)。
【0099】
3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル及びルキソリチニブは、本明細書に参照によりその全体を援用する2006年12月12日に出願されたUS7,598,257(実施例67)に記載される手順によって製造することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、(3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリルリン酸塩である。
【0101】
いくつかの実施形態では、JAKの阻害剤は、バリシチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レスタウルチニブ、モメロチニブ、バクリチニブ、PF-04965842、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、ククルビタシンI、ATI-501(Aclaris)、ATI-502(Aclaris)、JTE052(Leo Pharma及び日本タバコ産業)、またはCHZ868である。
【0102】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、同位体標識された化合物、または薬学的に許容されるその塩であってよい。「同位体標識」または「放射性標識された」化合物は、1つ以上の原子が、自然界で通常見られる(すなわち、天然に存在する)原子量または質量数とは異なる原子量または質量数を有する原子に置き換えられた、すなわち置換された本開示の化合物である。本開示の化合物に組み込むことができる適当な放射性核種としては、これらに限定されるものではないが、2H(重水素としてDとも記される)、3H(トリチウムとしてTとも記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、及び131Iが挙げられる。例えば、本開示の化合物中の1つ以上の水素原子を、重水素原子に置換することができる(例えば、-CD3で-CH3を置換するなど、必要に応じて式(I)のC1~6アルキル基の1つ以上の水素原子を重水素原子に置換することができる)。
【0103】
本明細書に記載される化合物の1個以上の構成原子は、天然または非天然存在量の原子の同位体で置き換える、すなわち置換することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも1個の重水素原子を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、2個以上の重水素原子を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、または1~6個の重水素原子を含む。いくつかの実施形態では、化合物中のすべての水素原子を、重水素原子に置き換えられる、すなわち置換することができる。
【0104】
有機化合物中に同位体を含めるための合成法は、当該技術分野では周知のものである(Deuterium Labeling in Organic Chemistry by Alan F.Thomas(New York,N.Y.,Appleton-Century-Crofts,1971、The Renaissance of H/D Exchange by Jens Atzrodt,Volker Derdau,Thorsten Fey and Jochen Zimmermann,Angew.Chem.Int.Ed.2007,7744-7765;The Organic Chemistry of Isotopic Labelling by James R.Hanson,Royal Society of Chemistry,2011)。同位体標識化合物は、NMR分光法、代謝実験、及び/またはアッセイなどのさまざまな研究で使用することができる。
【0105】
重水素などのより重い同位体での置換は、例えば、インビボ半減期の増加または必要投与量の低減などの高い代謝安定性から得られるある特定の治療上の利点をもたらしうることから、状況によっては好ましい場合がある(例えば、A.Kerekes et.al.J.Med.Chem.2011,54,201-210;R.Xu et.al.J.Label Compd.Radiopharm.2015, 58, 308-312を参照されたい)。特に、1つ以上の代謝部位での置換は、1つ以上の治療上の利点をもたらす可能性がある。
【0106】
したがって、いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、化合物中の1個以上の水素原子が重水素原子に置き換えられた化合物、または薬学的に許容されるその塩である。
【0107】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、1個以上の水素原子が重水素原子に置き換えられたルキソリチニブ、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、米国特許第9,249,149号(参照によりその全体を本明細書に援用する)に記載される化合物のいずれか、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、CTP-543、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、化合物は、式Iの化合物:
【化1】
または、薬学的に許容されるその塩である[式中、
R
1は、H及びDから選択され;
各R
2は、H及びDから独立して選択され、ただし、共通の炭素に結合した各R
2が同じであり、
各R
3は、H及びDから独立して選択され、ただし、共通の炭素に結合した各R
3が同じであり、
R
4は、H及びDから選択され;
各R
5は同じであり、H及びDから選択され;
R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立してH及びDから選択され、ただし、R
1がHであり、各R
2及び各R
3がHであり、R
4がHであり、R
6、R
7、及びR
8のそれぞれがHである場合、各R
5はDである]。
【0108】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、下記表中の以下の化合物100~130から選択される式Iの化合物(式中、R
6、R
7、及びR
8はそれぞれHである)、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、下記表中の以下の化合物200~231から選択される式Iの化合物(式中、R
6、R
7、及びR
8はそれぞれDである)、または薬学的に許容されるその塩である。
【表3-1】
【表3-2】
【0109】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、1個以上の水素原子が重水素原子に置き換えられたバリシチニブ、または薬学的に許容されるその塩である。いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、米国特許第9540367号(参照によりその全体を本明細書に援用する)に記載される化合物のいずれか、または薬学的に許容されるその塩である。
【0110】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、表3の化合物、または薬学的に許容されるその塩である。表3の化合物は、選択的JAK1阻害剤である(JAK2、JAK3、及びTYK2よりも選択的)。
【0111】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【0112】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、または薬学的に許容されるその塩である。
【0113】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である。
【0114】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成及び調製は、本明細書に参照によりその全体をそれぞれ援用する2011年3月9日出願の米国特許公開第2011/0224190号、2012年9月6日出願の米国特許公開第2013/0060026号、2014年3月5日出願の米国特許公開第2014/0256941号にみることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、または薬学的に許容されるその塩である。
【0116】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である。
【0117】
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド及びそのリン酸塩の合成及び調製は、例えば、本明細書に参照によりその全体を援用する2014年5月16日出願の米国特許公開第2014/0343030号にみることができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、または薬学的に許容されるその塩である。
【0119】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である。
【0120】
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの合成ならびにその無水物及び一水和物の形態の特性評価については、2013年10月31日出願の米国特許公開第2014/0121198号、及び2015年4月29日出願の米国特許公開第2015/0344497号にみることができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、表3の各化合物は、2011年3月9日出願の米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日出願の米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31出願の第2014/0121198号、2010年5月21日出願の米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日出願の米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日出願の米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日出願の米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日出願の米国特許公開2013/0018034、2012年8月17日出願の米国特許公開第2013/0045963号、2013年5月17日出願の米国特許公開第2014/0005166号に記載の合成手順によって調製される。
【0122】
いくつかの実施形態では、JAK阻害剤は、2011年3月9日出願の米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日出願の米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31出願の第2014/0121198号、2010年5月21日出願の米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日出願の米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日出願の米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日出願の米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日出願の米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日出願の米国特許公開第2013/0045963号、2013年5月17日出願の米国特許公開第2014/0005166号に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0123】
治療方法
本明細書に開示される方法は、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象が、JAK阻害剤に応答する可能性が高い(例えば、疾患の重症度の低減及び/または疾患の寛解/回復によって証明されるような疾患の大幅な改善を有する可能性が高い)か否かの評価を可能とするものである。JAK阻害剤に応答する可能性が高い、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象には、JAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)を投与することができる。これに対して、JAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)に応答する可能性が低い、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象には、GvHDの治療に適したさらなる療法を投与することができる。
【0124】
本開示の方法はまた、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症するリスクがある対象を、JAK阻害剤を含む治療から恩恵を受ける可能性が高い対象群と、恩恵を受ける可能性が低い対象群とに層別化することも可能とする。JAK阻害剤による治療が検討されているGvHDの対象のプールからそのような対象を選択できることは、対象に効果的な治療を投与するうえで有益である。
【0125】
一実施形態では、JAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)で治療される対象は、GvHDを有するか、GvHDを有することが疑われるか、またはGvHDを発症する可能性が高い。特定の実施形態では、JAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)で治療される対象は、急性GvHDを有するか、急性GvHDを有することが疑われるか、または急性GvHDを発症する可能性が高い。他の実施形態では、JAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)で治療される対象は、慢性GvHDを有するか、慢性GvHDを有することが疑われるか、または慢性GvHDを発症する可能性が高い。
【0126】
GvHDを有する対象がJAK阻害剤に応答する可能性が高い場合(上記に述べた1つ以上のバイオマーカーの濃度に基づいて(表1及び2を参照))、対象に有効量のJAK阻害剤(例えば、イタシチニブ)を投与することができる。JAK阻害剤の有効量は、例えば、患者の特性(年齢、性別、体重、人種など)、疾患の進行度、及び薬物への以前の曝露を考慮に入れて、医療従事者によって適宜決定することができる。対象がJAK阻害剤に応答する可能性が低い場合、対象にJAK阻害剤を含まない療法を必要に応じて投与することができる。
【0127】
本方法は、GvHDを発症するリスクがある個人にも適用することができる。そのような個人としては、(i)移植(例えば、造血幹細胞移植)を受けたが、GvHDを発症していない、または(ii)移植(例えば、造血幹細胞移植)を受ける準備をしている者が含まれる。
【0128】
対象がJAK阻害剤に応答する可能性が高いかまたは低いかに基づいて対象を層別化または選択した後、医療従事者(例えば、医師)は、対象に適当な治療法を投与することができる。JAK阻害剤を投与する方法は、当該技術分野では周知のものである。
【0129】
GvHDを有し、JAK阻害剤に応答すると予測される対象が、以前に1つ以上の非JAK阻害剤療法を投与されている場合、JAK阻害剤は、以前にまたは現在投与されている療法を置き換えるかまたはそれを強化することができる。例えば、JAK阻害剤による治療の際、1つ以上の非JAK阻害剤療法の投与を中止または減少する、例えば、より低いレベルで投与することができる。JAK阻害剤を投与しつつ、以前の療法の投与を維持することもできる。いくつかの実施形態では、以前の療法は、JAK阻害剤のレベルが治療効果をもたらすのに十分なレベルに達するまで維持することができる。
【0130】
本明細書に記載される方法に従ってJAK阻害剤で治療された対象は、GvHDの治療に効果的な1つ以上のさらなる組成物を併用して治療することができる。そのような併用治療に使用することができる阻害剤の例としては、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロンまたはプレドニゾン)、メトトレキサート、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、抗チモサイトグロブリン、アレムツズマブ、シクロホスファミド、イブルチニブ、イマチニブ、インフリキシマブ、エタナーセプト、トシリズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ、デニロイキンジフチトクス、ペントスタチン、シクロスポリン、サリドマイド、ハロフギノン、ヒドロキシクロロキン、及び間葉系幹細胞が挙げられる。
【0131】
以下は、本発明の実施の例である。これらの実施例は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0132】
実施例
実施例1:イタシチニブ及びコルチコステロイドによる治療に対する完全応答者である急性移植片対宿主病の患者を区別する標的タンパク質パネルの同定
急性移植片対宿主病(GvHD)を治療するためのイタシチニブとコルチコステロイドとの併用の試験に登録された個人から血漿試料を採取した。すべての被験者は、任意のドナーソース(一致した無関係のドナー、兄弟、ハプロタイプ一致)から血液悪性腫瘍に対する骨髄、末梢血幹細胞、または臍帯血を使用して最初の同種造血幹細胞移植を受けた。被験者は、同種造血幹細胞移植後に発症した、臨床的に疑われるグレードIIB~IVDの急性GvHDを示した。すべての被験者は採血に同意した。
【0133】
採取後、血漿試料に1000種を超えるタンパク質の分析が可能なOLINK(商標)を使用して幅広いプロテオミクスプロファイリングを行った。イタシチニブ(INCB039110)による治療に対する臨床応答に基づいて、試料を下記のグループに分けた。具体的には、試料を、治療28日目の治療応答に基づいて、「完全反応者」(CR)、「部分/混合反応者」、または「進行性疾患/死亡」(PD /死亡)に分類した。
【0134】
表4は、ベースラインでCRグループとPD/死亡グループの間で差次的に発現した13種類のタンパク質を示す。各タンパク質の濃度は、平均対数(濃度)±標準偏差として示される。一元配置分散分析を各アッセイに用いて単変量分析を行い、少なくとも1つのグループ平均が他のグループと異なるかどうかを評価した。13種のタンパク質のうち、11種は、残りのタンパク質と統計的に有意に異なる少なくとも1つのグループ平均を有していた(未調整のp値<0.05)。
【0135】
【0136】
実施例2: 完全応答者及び進行性疾患/死亡集団における選択されたバイオマーカーのタンパク質発現レベル
MCP-3(CCL7)、Reg3A、TNFRSF6B、SCF、CXCL10、IL-8、ST2、CALCA、TNF-R1、IL-6、CCL19、IL-2Ra、及びPON3のターゲットプロテオミクス分析を、OLINK Proximity Extensionアッセイプラットフォームを使用して行った。表5は、完全応答者(CR)及び進行性疾患/死亡(PD /死亡)グループ内の各タンパク質の発現情報を示す。各タンパク質について、表5に、各グループ内のタンパク質の発現レベルの中央値と平均(pg/ml)、標準誤差、範囲、及びCRグループとPD/死亡グループとの統計的差を示す。グループ間の統計的差を、対応のないT検定を用いて識別した。
【0137】
【表6】
実施例3: タンパク質パネルの改良
実施例1及び2で述べた13種のマーカーを、機械学習法を用いてさらに評価した。タンパク質をLassoロジスティック回帰及びランダムフォレストモデルで分析し、1000回リサンプリングした。モデル適合統計(kappa値、精度、感度、及び特異性)と生物学的関連性を評価して、応答クラスを区別できる6タンパク質(表6)モデル及び4タンパク質(表7)モデルを定義した。
【0138】
【0139】
【表8】
13種のマーカーの完全セット(「13種すべて」)と比較した、6タンパク質モデル(「上位6位」)及び4タンパク質モデル(「上位4位」)の感度及び特異性の値を表8に示す。
【0140】
【0141】
他の実施形態
以上、本発明をその詳細な説明とともに記載したが、上記の記載は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲の例示を目的としたものであって、その限定を目的としたものではない。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】