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特表2022-551653食物特異的免疫応答を検出するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】食物特異的免疫応答を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221205BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20221205BHJP
   C07K 14/415 20060101ALN20221205BHJP
   C07K 16/16 20060101ALN20221205BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20221205BHJP
   C07K 14/46 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 D
G01N33/536 B
A61P1/04
A61K51/08 200
C07K17/00
C07K14/415
C07K16/16
C07K16/18
C07K14/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521560
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020054819
(87)【国際公開番号】W WO2021072103
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/912,505
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】508087147
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン キャスリン エー
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ジェラルド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンデル マーク ディー
(72)【発明者】
【氏名】リン エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】サファリ ヘディエ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085HH15
4C085KB82
4C085LL05
4H045AA11
4H045BA60
4H045CA30
4H045CA32
4H045CA40
4H045CA43
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を診断および治療する方法が開示される。本方法は、1つ以上の免疫グロブリン抗体のレベルが、対象から得られた食道分泌物試料中で上昇しているかどうかを検出するステップと、試料中の1つ以上の免疫グロブリン抗体のレベルが所定のカットオフ値を超えて上昇したときに、対象を活性なEoEであると診断するステップと、試料中の1つ以上の免疫グロブリン抗体のレベルが所定のカットオフ値を下回るときに、対象を不活性なEoEであると診断するステップと、活性EoEであると診断された対象を治療するステップと、を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の1つ以上の食物特異的免疫グロブリン(Ig)抗体の1つ以上の食物抗原への結合を検出する方法であって、前記方法が、対象から得られた試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、前記1つ以上の食物特異的Ig抗体の前記1つ以上の食物抗原への結合を検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の食物抗原が、固体支持体に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が前記食物抗原のうちの1つ以上を含む食物を摂取する前に、前記試料が得られる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が前記食物抗原のうちの1つ以上を含む食物を摂取した後に、前記試料が得られる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が前記食物抗原のうちの前記1つ以上を含む前記食物を摂取する前に得られた前記試料中の前記1つ以上の食物抗原への前記1つ以上の食物特異的Ig抗体の結合を、前記対象が前記食物抗原のうちの前記1つ以上を含む前記食物を摂取した後に得られた前記試料と比較することをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料中の食物特異的免疫応答を検出する方法であって、前記方法が、
a)前記試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、
b)前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを決定することと、
c)b)の前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体の前記レベルを、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含み、
それによって、前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体の前記レベルが参照試料中の1つ以上のIg抗体の前記レベルよりも高いときに、前記試料中の前記食物特異的免疫応答を検出する、方法。
【請求項7】
活性または不活性好酸球性食道炎(EoE)を有する対象の食物アレルギーを、EoEに罹患している対象において特定する方法であって、前記方法が、
a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、
b)前記試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した前記1つ以上のIg抗体の前記レベルを、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルと比較することであって、前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体のレベルが、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルよりも高く、前記対象における食物アレルギーを特定する、比較することと、を含む、方法。
【請求項8】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEを患う対象において治療する方法であって、前記方法が、
a)試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、
b)前記試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した前記1つ以上のIg抗体の前記レベルを、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、
c)前記対象を治療することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記検出するステップの前に、前記対象においてEoEを検出することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の食道の粘膜組織における好酸球顆粒タンパク質を検出することによって、EoEが前記対象において検出され、前記対象に、放射性標識したヘパリンを、前記放射性標識したヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で投与することと、前記食道の前記粘膜組織における前記放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することと、を含み、それにより、前記食道の前記粘膜組織における前記放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することで、前記対象における好酸球性食道炎を検出する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEに罹患している対象において診断および治療する方法であって、前記方法が、
a)試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、
b)前記試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した前記1つ以上のIg抗体の前記レベルを、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルと比較することと、
c)前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体の前記レベルが、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルよりも高いときに、前記対象を活性なEoEであると診断し、前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体の前記レベルが、参照試料レベル中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルよりも低いときに、前記対象を不活性なEoEであると診断することと、
d)活性なEoEであると診断された前記対象を治療することと、を含み、前記1つ以上の食物抗原に結合した前記試料中の前記1つ以上のIg抗体の前記レベルが、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体の前記レベルよりも高い、方法。
【請求項12】
前記治療ステップが、1つ以上の食物種の摂取中止を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料を対象から得ることまたは得たことをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が活性な好酸球性食道炎を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が消散した好酸球性食道炎を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、食道炎の少なくとも1つの症状を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が過敏性腸症候群を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、1つ以上の1つ以上の食物特異的Ig抗体を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が粘膜試料である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記粘膜試料が、食道分泌物または疾患からの排出物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の食物特異的Ig抗体が、IgG、IgA、IgM、IgD、IgE、またはそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の食物抗原が、コムギf1、ダイズf14、カゼインf78、タマゴf245、またはそれらの組み合わせである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の食物抗原に結合した前記1つ以上の食物特異的Ig抗体の前記レベルが、参照試料中の前記1つ以上の食物抗原に結合した前記1つ以上の食物特異的Ig抗体のレベルと比較して前記試料中でより高いことにより、食物特異的免疫応答が示される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
好酸球性食道炎(EoE)症状の原因を検出する方法であって、前記EoE症状が、EOEと診断されたか、またはEOEに罹患している患者における抗原に対する免疫応答によって引き起こされ、前記方法が、
対象から食道粘膜試料を得ることまたは得たことであって、前記対象から得られた前記食道粘膜試料が、前記免疫応答の部位に由来し、前記食道粘膜試料が、1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体を含む、得ることまたは得たことと、
前記試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、
前記1つ以上の特異的Ig抗体の前記1つ以上の抗原への結合を検出することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/912,505号の利益を主張するものである。先に出願されたこの出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
食物抗原は、好酸球性食道炎の誘発および持続に関与する。誘因を特定するための食事除去は、侵襲的かつ面倒であり、費用がかかる。コストを抑え、本過程の間の患者の生活の質を向上させることができる代替案が必要である。
【発明の概要】
【0003】
試料中の1つ以上の食物特異的免疫グロブリン(Ig)抗体の1つ以上の食物抗原への結合を検出する方法が本明細書に開示され、本方法は、対象から得られた試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、1つ以上の食物特異的Ig抗体の1つ以上の食物抗原への結合を検出することと、を含む。
【0004】
試料中の食物特異的免疫反応を検出する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、b)1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを決定することと、c)b)の1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含み、それによって、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いときに、試料中の食物特異的免疫応答を検出する。
【0005】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象の食物アレルギーを、EoEに罹患している対象において特定する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することであって、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高く、対象における食物アレルギーを特定する、比較することと、を含む。
【0006】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEを患う対象において治療する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)対象を治療することと、を含む。
【0007】
活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEを患う対象において治療する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)対象を治療することと、を含む。
【0008】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEを患う対象において診断および治療する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いときに、対象を活性なEoEであると診断し、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料レベル中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも低いときに、前記対象を不活性なEoEであると診断することと、d)活性なEoEであると診断された対象を治療することと、を含み、ここで、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高い。
【0009】
本明細書において、それを必要とする対象において好酸球性食道炎の診断および治療を、それを必要とする対象において行うための方法が本明細書に開示され、本方法は、(i)患者からの食道生検試料中の少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現レベルを測定することであって、少なくとも1つの遺伝子が、好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、幹細胞因子、またはCCL26、KITLG、およびPOSTNからなる群から選択され、遺伝子発現レベルを測定することが、DNAマイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、またはその両方を含む方法によって行われる、測定することと、(ii)少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現レベルを、高倍率視野当たりの好酸球がゼロであり、基底層膨張がないものとして定義される正常な個体からの食道生検試料中のその発現レベルと比較することと、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが、正常な個体からの食道生検試料中のその発現レベルと比較して10倍超増加する場合に、対象において好酸球性食道炎を診断することと、(iv)抗炎症療法、アレルゲン除去、サイトカイン阻害剤、免疫抑制剤、および補体阻害剤から選択される1つ以上の療法を用いて、ステップ(iii)に従って診断された対象において好酸球性食道炎を治療することと、を含む。
【0010】
好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、幹細胞因子、またはCCL26、KITLG、およびPOSTNからなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーを検出することによって、好酸球性食道炎(EoE)を診断する方法が本明細書に開示される。
【0011】
好酸球性食道炎(EoE)の症状の原因を検出する方法が本明細書に開示され、このEoEの症状は、EOEであると診断されたかまたはEOEに罹患している患者における抗原への免疫応答によって引き起こされ、本方法は、対象から食道粘膜試料を得るかまたは得たことであって、対象から得られた食道粘膜試料が免疫応答の部位に由来し、食道粘膜試料が1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体を含む、得るかまたは得たことと、試料を1つ以上の抗原と接触させることと、1つ以上の特異的Ig抗体の1つ以上の抗原への結合を検出することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】コホートにおける、グルテン、カゼイン、ダイズ、およびタマゴについての免疫グロブリンA応答値を示す:EoE(n=43)、消散したEoE(n=13)、および対照(n=12)。消散患者は、いずれの対試験でも対照と有意差はなかった。活性なEoEは、他の2つの群と比較して、グルテン、カゼイン、およびタマゴに対する抗体値が有意に増加しており、抗体応答レベルについて、消散患者とは異なっていた。IgA=免疫グロブリンA。
図2】グルテン、カゼイン、ダイズ、およびタマゴのコホート(活性なEoE、消散したEoE、および対照)に対する免疫グロブリンG4応答値を示す。活性なEoEは、消散したEoEおよび対照と比較して、4つの食物抗原に対して有意に高い免疫グロブリンG4抗体レベルを示した。IgG4=免疫グロブリンG4。
図3】17人の患者における除去食の導入前後の食道好酸球浸潤および内視鏡による採点を示す。
図4A】EoE患者の食道分泌物中の免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体、誘因食物と非誘因食物との比較を示す。図4Aは、誘因食物および非誘因食物に対する免疫グロブリンA応答を示す。IgA=免疫グロブリンA。IgG4=免疫グロブリンG4
図4B】EoE患者の食道分泌物中の免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体、誘因食物と非誘因食物との比較を示す。図4Bは、非誘因食物と比較して、誘因食物に対する各個体における免疫グロブリンA応答を表すヒートマップを示す。赤色は、検出されたより高い応答レベルを表す。大部分の誘因食物が、より高い範囲の応答値を生じさせた。IgA=免疫グロブリンA。IgG4=免疫グロブリンG4
図4C】EoE患者の食道分泌物中の免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体、誘因食物と非誘因食物との比較を示す。図4Cは、誘因食物および非誘因食物に対する免疫グロブリンG4応答を示す。IgA=免疫グロブリンA。IgG4=免疫グロブリンG4
図4D】EoE患者の食道分泌物中の免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体、誘因食物と非誘因食物との比較を示す。図4Dは、各個体における誘因食物および非誘因食物に対する免疫グロブリンG4応答のヒートマップを示す。IgA=免疫グロブリンA。IgG4=免疫グロブリンG4
図5】誘因食物および非誘因食物としてのグルテンおよびカゼインに対する免疫グロブリンA抗体レベルおよび免疫グロブリンG4抗体レベルを示す。カゼイン免疫グロブリンA応答は、乳製品が誘因でない人とは他対照的に、乳製品が誘因である人において有意に上昇する。免疫グロブリンG4応答値には、乳製品が誘因であることが分かっている人と分かっていない人との間で有意差はなかった。しかしながら、これは、非誘因群における1つの大きな外れ値に起因するものである可能が高かった。免疫グロブリンAについてのコムギ応答値は、EoEの誘因がコムギであった人において有意に上昇した。免疫グロブリンG4応答値は、ここでも、コムギが誘因食物であったのか、またはこの限定されたコホートではそうでなかったのかを確実には区別しなかった。IgA=免疫グロブリンA。IgG4=免疫グロブリンG4。
図6A】食道好酸球増多の領域にわたって行った均一サンプリングにより、特定の食物に対して類似した親和性が示されること、およびサンプリングが容易に再現されることを示す。これは、サンプリングが罹患領域全体にわたって均一であり、2つの異なる擦過物において結果が類似していることを示す。図6Aは、食物特異的抗体(FSA)-IgAびまん性汎食道サンプリング-ピーク計数132好酸球/HPFおよび汎食道炎(すなわち、炎症を伴う食道全体の関与)を示す。
図6B】食道好酸球増多の領域にわたって行った均一サンプリングにより、特定の食物に対して類似した親和性が示されること、およびサンプリングが容易に再現されることを示す。これは、サンプリングが罹患領域全体にわたって均一であり、2つの異なる擦過物において結果が類似していることを示す。図6Bは、95好酸球および全体疾患での食道のFSA-IgG4汎サンプリングを示す。
図6C】食道好酸球増多の領域にわたって行った均一サンプリングにより、特定の食物に対して類似した親和性が示されること、およびサンプリングが容易に再現されることを示す。これは、サンプリングが罹患領域全体にわたって均一であり、2つの異なる擦過物において結果が類似していることを示す。図6Cは、95好酸球および全体疾患での食道のFSA-IgA汎食道サンプリングを示す。
図6D】食道好酸球増多の領域にわたって行った均一サンプリングにより、特定の食物に対して類似した親和性が示されること、およびサンプリングが容易に再現されることを示す。これは、サンプリングが罹患領域全体にわたって均一であり、2つの異なる擦過物において結果が類似していることを示す。図6Dは、食道、25~30好酸球、全体のFSA-IgA汎サンプリングを示す。
図7A】疾患の領域内で特異的にサンプリングし、その後、重大な疾患のない領域でサンプリングした、食道の異なる領域から採取した試料の結果を示す。疾患のない領域と比較して疾患のある領域をサンプリングしたときに、食物特異的抗体産生の変化が見られ、これにより、活性な食道疾患自体が食物特異的抗体の発生源である可能性が高いことが示される。図7Aは、FSA-IgA遠位疾患(25好酸球)および近位疾患(6好酸球)の別個のサンプリングを示す。
図7B】疾患の領域内で特異的にサンプリングし、その後、重大な疾患のない領域でサンプリングした、食道の異なる領域から採取した試料の結果を示す。疾患のない領域と比較して疾患のある領域をサンプリングしたときに、食物特異的抗体産生の変化が見られ、これにより、活性な食道疾患自体が食物特異的抗体の発生源である可能性が高いことが示される。図7Bは、疾患(25)および疾患のない領域(4)におけるFSA-IgG4の別個のサンプリングを示す。
図7C】疾患の領域内で特異的にサンプリングし、その後、重大な疾患のない領域でサンプリングした、食道の異なる領域から採取した試料の結果を示す。疾患のない領域と比較して疾患のある領域をサンプリングしたときに、食物特異的抗体産生の変化が見られ、これにより、活性な食道疾患自体が食物特異的抗体の発生源である可能性が高いことが示される。図7Cは、疾患および疾患の少ない領域(22および1)におけるFSA-IgG4の別個のサンプリングを示す。
図7D】疾患の領域内で特異的にサンプリングし、その後、重大な疾患のない領域でサンプリングした、食道の異なる領域から採取した試料の結果を示す。疾患のない領域と比較して疾患のある領域をサンプリングしたときに、食物特異的抗体産生の変化が見られ、これにより、活性な食道疾患自体が食物特異的抗体の発生源である可能性が高いことが示される。図7Dは、疾患および疾患の少ない領域(22対1)におけるFSA-IgAの別個のサンプリングを示す。
図8A】食道分泌物中の選ばれたバイオマーカーのタンパク質発現を示す。図8Aはエオタキシンを示す。
図8B】食道分泌物中の選ばれたバイオマーカーのタンパク質発現を示す。図8BはSCFを示す。
図8C】食道分泌物中の選ばれたバイオマーカーのタンパク質発現を示す。図8Cはペリオスチンを示す。
図9A】食道分泌液中の食物特異的抗体はEoEの診断に役立つが、唾液または血清はそうではないことを示す。コムギ:カゼイン:卵の応答の比率は、内視鏡時に唾液(全唾液)、血清、および食道分泌物の同時サンプリングを受けた患者3人で異なった。図9Aは、食事除去を完了できなかったが乳製品で症候を示した1人の患者を示す。図に見られるように、食道分泌物はグルテンに対して高い応答値を示した一方、血清および唾液は他の食物抗原に対する応答が上昇しており、このことは、この参加者が罹患組織からの局所応答を有する可能性が高いことを示す。血清または唾液からの汚染は、食道採取物において類似の応答パターンを創出するはずである。これはここでは見られない。
図9B】食道分泌液中の食物特異的抗体はEoEの診断に役立つが、唾液または血清はそうではないことを示す。コムギ:カゼイン:卵の応答の比率は、内視鏡時に唾液(全唾液)、血清、および食道分泌物の同時サンプリングを受けた患者3人で異なった。図9Bは、局所ステロイドを選択した患者を示す。図に見られるように、食道分泌物はグルテンに対して高い応答値を示した一方、血清および唾液は他の食物抗原に対する応答が上昇しており、このことは、この参加者が罹患組織からの局所応答を有する可能性が高いことを示す。血清または唾液からの汚染は、食道採取物において類似の応答パターンを創出するはずである。これはここでは見られない。
図9C】食道分泌液中の食物特異的抗体はEoEの診断に役立つが、唾液または血清はそうではないことを示す。コムギ:カゼイン:卵の応答の比率は、内視鏡時に唾液(全唾液)、血清、および食道分泌物の同時サンプリングを受けた患者3人で異なった。図9Cは、最終的に食物除去食(6つの食物の除去)を受けた患者に行ったものである。食物の再導入により、コムギがこの患者の誘因食物として特定された。図9Cでは、患者のEoEはコムギによって誘発されることが分かった。図に見られるように、食道分泌物はグルテンに対して高い応答値を示した一方、血清および唾液は他の食物抗原に対する応答が上昇しており、このことは、この参加者が罹患組織からの局所応答を有する可能性が高いことを示す。血清または唾液からの汚染は、食道採取物において類似の応答パターンを創出するはずである。これはここでは見られない。
図10】腹部の痛みおよび不快感を有する患者4人についての食物特異的IgAの小腸相対値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本発明の様々な態様の以下の詳細な説明およびこれに含まれる実施例、ならびに図面およびそれらの前述および後述の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。
【0014】
本化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法を開示および記載する前に、本発明が、特定の合成方法または特定の放射性標識された造影剤に限定されず、したがって、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0015】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示される方法および組成物が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等であるいずれの方法および材料も、開示される方法および組成物の実践または試験において使用することができるが、特に有用な方法、デバイス、および材料は、記載するとおりである。
【0016】
開示される方法および組成物は、記載する特定の方法論、プロトコル、および試薬に限定されず、これらは変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈によって明確に別途示されない限り、複数の参照が含まれる。
【0018】
本明細書で使用される「または」という語は、特定の羅列のうちの任意の1つの要素を意味し、その羅列の要素の任意の組み合わせも含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」または「任意選択で」という用語は、後に説明される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、およびその説明には、当該事象または状況が生じる事例と、それらが生じない事例とが含まれることを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象からの組織または臓器、細胞(対象内にあるもの、対象から直接採取されたもの、または培養もしくは培養細胞株から維持された細胞のいずれか)、細胞溶解物(または溶解物分画)もしくは細胞抽出物、または細胞もしくは細胞材料(例えば、ポリペプチドまたは核酸)に由来する1つ以上の分子を含有する溶液を意味する。試料はまた、細胞もしくは細胞成分を含有する任意の体液もしくは排泄物(例えば、限定されないが、血液、尿、便、唾液、涙液、胆汁)、または疾患状態からの排出物であってもよい。
【0021】
範囲は、本明細書では、「約」の1つの特定の値から、かつ/または「約」の別の特定の値までであるとして表現されてもよい。こうした範囲が表現されるとき、別の態様は、¬一方の特定の値から、かつ/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の態様を形成することが理解されることになる。範囲の各々の端点は、他方の端点との関連において、および他方の端点とは独立して、意義があることがさらに理解されることになる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などのこの語の変化形は、「含むが、限定されない」を意味し、例えば、他の追加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「対象」は、個人を意味する。対象は、霊長類、例えば、ヒトなどの哺乳動物であり得る。「対象」という用語には、ネコ、イヌなどといった飼育動物、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど、および実験動物、例えば、マウス、ウサギ、ラット、アレチネズミ、フクロネズミなども含まれる。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、交換可能である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、疾患または障害患う対象を指す。「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学対象を含む。開示される方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与ステップの前に、治療を必要とすると診断されている。
【0025】
本明細書で使用される場合、「粘膜組織」は、体内の様々な空洞を裏打ちしている組織である。粘膜組織の例としては、鼻、副鼻腔、気管支、肺、結膜、口腔、舌、食道、胃、幽門、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、盲腸、虫垂、横行結腸、下行結腸、直腸、肛門、尿道、真皮、小腸(small bowel)(小腸(small intestine))、大腸(large bowel)(大腸(large intestine))、胆道系および胆管系、ならびに膀胱が挙げられるが、これらに限定されない。粘膜組織は、上皮表面、粘液を分泌する腺上皮、基底膜、および結合組織を有する粘膜下組織を含む。いくつかの態様では、粘膜組織は、対象の食道由来である。いくつかの態様では、粘膜組織は、対象の腸由来である。いくつかの態様では、粘膜組織は、消化管粘膜組織である。いくつかの態様では、粘膜組織は、消化管粘膜組織分泌物である。いくつかの態様では、粘膜組織は、腸内層からの小腸液である。いくつかの態様では、粘膜組織は、食道粘膜組織分泌物である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「好酸球顆粒タンパク質」は、好酸球中に顆粒を含むタンパク質である。好酸球が活性化されると、顆粒タンパク質は、細胞から周囲組織に放出される。放出された顆粒タンパク質は、周囲組織、例えば、食道粘膜組織中で、病的アレルギー誘発性炎症応答を引き起こし得る。好酸球顆粒タンパク質の例としては、主要塩基性タンパク質(MBP)、主要塩基性タンパク質1(MBP-1)、主要塩基性タンパク質2(MBP-2)、好酸球由来神経毒素(EDN、RNase2とも称される)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP、RNase3とも称される)、および好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)が挙げられるが、これらに限定されない。好酸球顆粒タンパク質の他の例は、Kita et al.,Biology of Eosinophils,Chapter 19 of Immunologyにおいて提供されており、本書は、その好酸球顆粒タンパク質の例の教示について参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、好酸球顆粒タンパク質はMBP-1であり得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、機能性RNAまたはタンパク質をコードするDNAの領域を指す。「機能性RNA」は、タンパク質に翻訳されないRNA分子を指す。概して、遺伝子記号はイタリック体を使用して示され、タンパク質記号は非イタリック体を使用して示される。
【0028】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、DNAであるかRNAであるかDNA-RNAハイブリッドであるか、一本鎖であるか二本鎖であるか、センスであるかアンチセンスであるかにかかわらず、ワトソン・クリック塩基対形成によって相補的な核酸にハイブリダイズすることができる、天然または合成のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸はまた、ヌクレオチド類似体、および非ホスホジエステルヌクレオシド間連結(例えば、ペプチド核酸(PNA)またはチオジエステル連結)を含み得る。具体的には、核酸は、DNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、またはそれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。
【0029】
「単離された核酸」または「精製された核酸」は、本発明のDNAが誘導される生物の天然のゲノム中で、遺伝子の両側にある遺伝子を含まないDNAを意味する。したがって、この用語には、例えば、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスなどのベクターに組み込まれる組換えDNA、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれる組換えDNA(例えば導入遺伝子)、または別個の分子として存在する組換えDNA(例えば、PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化、または化学もしくはインビトロ合成によって産生されるcDNAまたはゲノムまたはcDNA断片)が含まれる。これにはまた、追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも含まれる。「単離された核酸」という用語はまた、RNA、例えば、単離されたDNA分子によってコードされるmRNA分子、または化学的に合成されるmRNA分子、または少なくともいくつかの細胞成分、例えば、他のタイプのRNA分子もしくはポリペプチド分子から分離されるか、もしくはそれらを実質的に含まないmRNA分子を指す。
【0030】
「特異的に結合する」は、抗体が、その同族抗原を認識し、それと物理的に相互作用し、他の抗原を著しく認識せず、それと相互作用しないことを意味し、そのような抗体は、当該技術分野で周知の技法によって生成されるポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。
【0031】
「プローブ」、「プライマー」、またはオリゴヌクレオチドは、相補配列を含む第2のDNAまたはRNA分子(「標的」)と塩基対合し得る、定義された配列の一本鎖DNAまたはRNA分子を意味する。結果として生じるハイブリッドの安定性は、発生する塩基対合の程度に左右される。塩基対合の程度は、プローブと標的分子との間の相補性の程度、およびハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度などのパラメータに影響される。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、およびホルムアミドなどの有機分子の濃度などのパラメータに影響され、当業者に既知の方法によって決定される。核酸に特異的なプローブまたはプライマー(例えば、遺伝子および/またはmRNA)は、それらがハイブリダイズする核酸の領域に対して、少なくとも80%~90%の配列相補性、好ましくは少なくとも91%~95%の配列相補性、より好ましくは少なくとも96%~99%の配列相補性、および最も好ましくは100%の配列相補性を有する。プローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法によって、放射性または非放射性のいずれかで検出可能に標識されてもよい。プローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチドは、核酸ハイブリダイゼーションを伴う方法、例えば、核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応による逆転写および/または核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、制限断片多型(RFLP)分析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、インサイツハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)に使用される。
【0032】
「特異的にハイブリダイズする」は、プローブ、プライマー、またはオリゴヌクレオチドが、高ストリンジェンシー条件下で、実質的に相補的な核酸を認識し、それと物理的に相互作用(すなわち、塩基対合)し、他の核酸とは実質的に塩基対合しないことを意味する。
【0033】
「高ストリンジェンシー条件」は、0.5MのNaHPO4、pH7.2、7%のSDS、1mMのEDTA、および1%のBSA(V画分)を含有する緩衝液中、65℃の温度、または48%のホルムアミド、4.8倍SSC、0.2Mのトリス-Cl、pH7.6、1倍デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および0.1%のSDSを含有する緩衝液中、42℃の温度で、少なくとも40ヌクレオチド長のDNAプローブを使用することにより得られるものに相当するハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションのため、例えば、PCR、ノーザン、サザン、またはインサイツハイブリダイゼーション、DNA配列決定などのための他の条件は、分子生物学分野の当業者には周知である。(例えば、F.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,NY,1998を参照されたい)。
【0034】
好酸球性食道炎(EoE)は、一般に食物抗原を誘因とする食道の免疫介在性疾患である。EoEは、1993年以前には特徴付けられていなかったが、現在では嚥下障害(嚥下困難)および食道内視鏡を必要とする食塊閉塞の最も一般的な原因である。EoEは、緊急の内視鏡的除去を必要とする急性食塊閉塞を引き起こす。慢性EoEは、線維性狭窄の形成および食道リモデリングを引き起こし、患者は、食べるために定期的な食道拡張を必要とする。EoEにおける線維症の機序は十分に研究されておらず、最適な予防戦略は分かっていない。EoEは、内視鏡生検により診断され、これは侵襲的であり、患者に著しいコストを招く。EoEを誘発する食物抗原は、定期的なほぼ毎月の生検からなる、数年に及ぶ食事除去試験をとおして決定される。
【0035】
本明細書に開示の組成物および方法は、非侵襲的診断モダリティを開発し、誘因抗原を迅速に特定するというEoE患者の臨床ニーズに焦点を当てる。本明細書に開示されるように、そのような抗原フットプリントが最近の食物摂取を反映したかどうか、および疾患自体が抗原シグナルを示したかどうかを試験し、食物誘因の除去により、疾患が進行中であるにもかかわらず、食物特異的シグナルが減少したかどうか(すなわち、シグナルが抗原暴露に依存したかどうか)を決定した。RNA-seqおよび組織病理学的検証を使用して、上皮下免疫調節応答がEoEの特徴であり、線維症を誘導し得ることを示した。また、RNA-seqおよび定量的タンパク質アッセイを使用して、非低侵襲性擦過によって収集した食道分泌物中の診断バイオマーカーを特定した。また、食道分泌物中の食物特異的抗体と抗原の積極的曝露および除去に対する応答とを使用して、誘因食物を正確に予測し決定する方法が本明細書に記載される。
【0036】
好酸球性食道炎(EoE)は、食道嚥下障害および運動障害の重篤で増加しつつある免疫学的原因である(E.S.Dellon;Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018)。これは、小児および若年成人における嚥下障害の最も一般的な原因の1つとなっている(E.S.Dellon;Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018;J.M.Spergel,et al.Annals of Allergy,Asthma&Immunology,121(3):281-284,jul 2018、およびE.Inage.American Journal of Physiology.Gastrointestinal and Liver Physiology,315(5),sep 2018)。内視鏡を必要とする嚥下障害症例の12~23%は、EoEによって引き起こされる(E S Dellon.Gastroenterology Clinics of North America,43(2):201-218,jun 2014)。最近の文献によると、EoEの有病率は1,000人当たり0.5~1人であり、EoEの発生率は100,000人当たり5~10人であると見積もられている(E.S.Dellon;Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018)。増加しつつあるEoEの有病率は、疾患の慢性的性質、および疾患がより広く認識されてきたことにより診断が増加したことに起因する(A.Arias and A J Lucendo.Digestive and Liver Disease,jul 2018、S Hommeida,et al.Diseases of the Esophagus,31(12),dec 2018、およびJacob Robson,et al.Clinical Gastroenterology and Hepatology,17(1),jun 2018)。男性は、3:1でEoEにかかりやすい(E Mansoor and GS Cooper.Digestive Diseases and Sciences,61(10):2928-2934,jun 2016、およびCA Liacouras et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,128(1):3-20.e6;quiz 21,jul 2011)。白人は、EoEを発症する可能性がアフリカ系またはアジア系米国人と比較して3倍高い(E Mansoor and GS Cooper.Digestive Diseases and Sciences,61(10):2928-2934,jun 2016、およびCA Liacouras et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,128(1):3-20.e6;quiz 21,jul 2011)。EoE患者は、アトピー性障害(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎)を示す可能性が高い(E Mansoor and GS Cooper.Digestive Diseases and Sciences,61(10):2928-2934,jun 2016、およびCA Liacouras et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,128(1):3-20.e6;quiz 21,jul 2011)。
【0037】
EoEは、免疫介在性疾患であり、症状は、抗原暴露によって誘発される(E.S.Dellon;Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018;J.M.Spergel,et al.Annals of Allergy,Asthma&Immunology,121(3):281-284,jul 2018、およびE.Inage.American Journal of Physiology.Gastrointestinal and Liver Physiology,315(5),sep 2018)。その最も一般的な誘因は食物抗原であり、コムギ、乳製品、タマゴ、ダイズ、魚介類、およびナッツの6つの食物が、症例の約70%を誘発する(E.S.Dellon;Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018;J.M.Spergel,et al.Annals of Allergy,Asthma&Immunology,121(3):281-284,jul 2018、およびE.Inage.American Journal of Physiology.Gastrointestinal and Liver Physiology,315(5),sep 2018)。エアロアレルゲンもEoEを誘発し、症状の重症度は、季節、汚染、または地理によって変化し得る(Matthew I Fogg,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,112(4):796-797,oct 2003、およびCraig C Reed,et al.Annals of Allergy,Asthma&Immunology,122(3):296-301,mar 2019)。
【0038】
EoEには、強い遺伝性および環境的要素がある。一卵性双生児の研究では、EoEは14.5%の遺伝的継承性を有するが、変動の81.0%は共有環境に帰せられることが示されている(ES Alexander et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,134(5):1084-1092.e1,nov 2014)。EoEの家族性再現リスク比は10~64倍であり、男性近親者間で最も高い(ES Alexander et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,134(5):1084-1092.e1,nov 2014)。GWAS研究において、EoEの発症リスクを高めるT-ヘルパー2(Th2)細胞シグナル伝達に関与するバリアントのいくつかの遺伝子が特定されている(LC Kottyan et al.Nature Genetics,46(8):895-900,aug 2014)。RNA-seq試験では、EoE患者由来の食道生検中で、IL-13によって誘導される遺伝子であるTh2サイトカインの発現の増加も示されている(J D Sherrill.Genes and Immunity,15(6):361-369,sep 2014)。
【0039】
Th2サイトカインシグナル伝達の下流効果により、EoEのいくつかの病的特徴、特にIL-5およびIL-13シグナル伝達が生じる(KM O’Shea,et al.,154(2):333-345,2018)。マウス試験では、IL-5は、好酸球成熟および粘膜好酸球増多に重要であることが示された(F Roufosse.Frontiers in medicine,5:49,apr 2018)。ヒトでは、IL-13発現は、EoE患者において増加し、CCL26によってコードされるエオタキシン-3の上皮発現を誘導する(C Blanchard,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,120(6):1292-1300,dec 2007)。マウス試験では、IL-13発現の過剰発現は、食道好酸球増多を引き起こすのに十分であり(C Blanchard,et al.Clinical and Experimental Allergy,35(8):1096-1103,aug 2005)、好酸球とは無関係の線維症を誘導した可能性がある(L Zuo,et al.Journal of Immunology,185(1):660-669,jul 2010)。
【0040】
EoEの急性症状には、嚥下障害、嚥下痛、および食塊による食道閉塞につながる浮腫が含まれるが、これらに限定されない(H Philpott,et al.Asia Pacific allergy,7(1):3-9,jan 2017)。慢性的に治療されていないEoEは、食道リモデリング、硬化、および運動不全と関連付けられる(KM O’Shea,et al.Gastroenterology,154(2):333-345,2018)。これらの変化は、食道狭窄を生じさせ、協調性収縮の欠如に起因して食塊の動きを損なう(KM O’Shea,et al.Gastroenterology,154(2):333-345,2018)。最終的に、線維リモデリングによって誘導される嚥下障害を軽減するために、食道拡張が必要となる場合がある(AM Schoepfer,et al.The American Journal of Gastroenterology,105(5):1062-1070,may 2010)。線維性狭窄は、すべてのEoE患者に発生するものではなく、嚥下障害および食塊閉塞についてのICD-9コードを使用して57~90%と推定されている(Evan S Dellon. Gastroenterology Clinics of North America,43(2):201-218,jun 2014、CA Liacouras et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,128(1):3-20.e6、quiz 21,jul 2011、およびJean P Li-Kim-Moy,et al.Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition,52(2):147-153,feb 2011)。
【0041】
EoEにおける上皮下線維症の正確な機序は不明である(Jennifer Armbruster-Lee,et al.Journal of Leukocyte Biology,104(1):31-40,jul 2018)。
【0042】
EoEは現在、内視鏡生検により診断されている。EoEの診断についての現在のコンセンサス基準は、少なくとも1つの生検において、高倍率顕微鏡視野当たり#15の好酸球である(ES Dellon et al.Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018)。EoEにおける好酸球浸潤の不均一性は、偽陰性を避けるために、1つ超の生検が必要であることを意味する(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。内視鏡生検も、治療応答を評価するために使用される(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。治療は、経過観察時に生検によって組織学的な消散が観察される場合に、成功とみなされる(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。
【0043】
患者のEoEの原因となる食物誘因を特定するため、食事除去試験が行われる(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。これらの試験では、原因となる食物は、患者の食事から除去した後に組織学的な消散が生じ、その食物を患者の食事に再導入した後に疾患が再発する場合に、特定される(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014)。一部のガイドラインでは、経験的頻度でEoE症例の大半を誘発する6つの食品の除去が推奨される(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014)。実際には、患者の社会経済的要因、生活様式の選択、および健康リテラシーに起因して、食事除去の選択および順序には相当なばらつきがある(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014)。食事除去の不履行が頻繁にみられ、患者の順守を評価することは困難であり得る(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014)。患者の順守を評価することの困難は、コムギグルテンから作製される医薬品カプセルなどの消費者製品における一般的なEoE抗原の高い普及率およびその使用が分かりにくいことによってさらに悪化する(AR King and August 2012 University of Kansas Drug Information Center Experiential Rotation Students.Gluten content of the top 200 medications:Follow-up to the influence of gluten on a patient’s medication choices.Hospital pharmacy,48(9):736-743,oct 2013)。
【0044】
EoEの治療には複数の治療が使用される。一般的な第一選択療法には、食事除去、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、および局所コルチコステロイド(TCS)が含まれる(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。生物製剤および標的療法も、臨床試験で探求されているが(KM O’Shea,et al.Gastroenterology,154(2):333-345,2018)、そのいずれも、EoEの治療に十分に効果的ではなく、したがって代替治療が依然として必要とされている。
【0045】
誘因食物の除去は、EoEに対して非常に効果的な治療であり、患者の74%が、6つの最も一般的な食物誘因の除去後に消散する(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。しかしながら、療法食は必ずしも実行可能ではなく、患者の順守、社会経済的要因、または予算上の制約に左右される(WA Wolf,et al.Dysphagia,31(6):765-770,aug 2016)。また、エアロアレルゲンを誘因とするEoEの患者には、食事除去は効果的でない(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,May 2014)。
【0046】
プロトンポンプ阻害剤療法は、EoE患者の約3分の1でEoEの臨床的および組織学的寛解をもたらす(J Molina-Infante,et al.Alimentary Pharmacology&Therapeutics,37(12):1157-1164,jun 2013)。以前のガイドラインでは、EoEの診断を下す前に、患者はPPIに非応答であることを求めていましたが、PPIで回復した患者はPPI応答性EoE(PPI-REE)に分類されました。現在のガイドラインでは、PPI-REEとEoEとは区別されない(ES Dellon et al.Updated international consensus diagnostic criteria for eosinophilic esophagitis:proceedings of the AGREE conference.Gastroenterology,155(4):1022-1033.e10,sep 2018)。PPIは、有害作用が比較的軽度であり、概して忍容性良好である(A Pilotto,et al.World Journal of Gastroenterology,13(33):4467-4472,sep 2007)。しかしながら、多くの患者において、PPI治療は、EoEの長期寛解には効果的でない(AJ Lucendo et al.United European gastroenterology journal,5(3):335-358,apr 2017)。EoEにおけるPPIの作用機序は、まだよく分かっていない(W Asher Wolf and Evan S Dellon.Gastroenterology&hepatology,10(7):427-432,jul 2014)。
【0047】
局所コルチコステロイド(TCS)は、一部の患者においてEoEの臨床的および組織学的詳細を誘導する(BK Butz,et al.Gastroenterology,147(2):324-33.e5,aug 2014)。TCSはまた、一部の患者に対して、長期寛解の維持に効果的である(A Straumann,et al.Clinical Gastroenterology and Hepatology,9(5):400-9.e1,may 2011)。しかしながら、患者の10%において、TCSは、免疫抑制に起因する食道カンジダ症を引き起こす(A Straumann,et al.Clinical Gastroenterology and Hepatology,9(5):400-9.e1,may 2011、およびDA Andreae et al.The American Journal of Gastroenterology,111(8):1187-1197,jun 2016)。
【0048】
生物製剤および標的化治療薬の臨床試験は、EoEにおけるTh2関連シグナル伝達の阻害に焦点を当ててきた。抗IL5モノクローナル抗体(すなわち、メポリズマブ、レスリズマブ)は、食道好酸球増多の低下に中程度の有効性を示したが、臨床症状には効果がなかった(A Straumann,et al.Gut,59(1):21-30,jan 2010、AH Assa’ad,et al.Gastroenterology,141(5):1593-1604,nov 2011、およびJM Spergel,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,129(2):456-63,463.e1,feb 2012)。抗IL13モノクローナル抗体も、食道好酸球増多を低下させたが、臨床症状は改善しなかった(ME Rothenberg,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,135(2):500-507,feb 2015)。IL-4受容体を標的とするモノクローナル抗体の臨床試験は、現在、EoEの臨床試験で試験されている(KM O’Shea,et al.Gastroenterology,154(2):333-345,2018)。好酸球遊走を妨げるCRTH2阻害剤は、食道好酸球増多を低下させたが、完全には消散させなかった(KM O’Shea,et al.Gastroenterology,154(2):333-345,2018)。
【0049】
現在のところ、食事除去試験が、EoEを誘発する食物抗原を特定するための確立された方法である(N Gonsalves,et al.Gastroenterology,142(7):1451-9.e1;quiz e14,jun 2012、KA Peterson,et al.The American Journal of Gastroenterology,108(5):759-766,may 2013、AJ Lucendo,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,131(3):797-804,mar 2013、およびJ Molina-Infante,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,134(5):1093-9.e1,nov 2014)。しかしながら、食事除去試験は、何年にも及ぶことが多く、臨床応答を評価するために、定期的に、多くの場合は毎月繰り返さなければならない内視鏡的生検からなる(N Gonsalves,et al.Gastroenterology,142(7):1451-9.e1;quiz e14,jun 2012、KA Peterson,et al.The American Journal of Gastroenterology,108(5):759-766,may 2013、AJ Lucendo,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,131(3):797-804,mar 2013、およびJ Molina-Infante,et al.The Journal of Allergy and Clinical Immunology,134(5):1093-9.e1,nov 2014)。これらの試験は、内視鏡生検によって強いられる財政的負担および生活の質の低下を生み、これにより、患者コンプライアンス不良が引き起こされ得る(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014、およびWA Wolf,et al.Dysphagia,31(6):765- 770,aug 2016)。さらに、食事除去は、エアロアレルゲンを誘因とするEoEの患者には効果的ではない(JB Wechsler,et al.Journal of asthma and allergy,7:85-94,may 2014)。EoEにおける抗原誘因を特定する改善された方法が必要である。
【0050】
擦過によって得られた食道IgGおよびIgA中の抗体を特定するために使用することができる方法が本明細書に記載される。本方法により、EoE食物誘因を決定するための食物特異的抗体を正確に予測することができる。本方法は、治療応答をモニタリングするためにも使用することができる。本方法は、EoEの原因抗原を特定するための改善された方法の必要性に直接対処するものである。
【0051】
方法
対象における食物感受性および/または食物アレルギーを特定するために使用することができる方法が本明細書に開示される。
【0052】
試料中の1つ以上の食物抗原への1つ以上の食物特異的免疫グロブリン(Ig)抗体の結合を検出する方法が本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、対象から得られた試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、1つ以上の食物抗原への1つ以上の食物特異的Ig抗体の結合を検出することとを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、対象が食物抗原のうちの1つ以上を含む食物を摂取する前に得られた試料中の1つ以上の食物抗原への1つ以上の食物特異的Ig抗体の結合を、対象が食物抗原のうちの1つ以上を含む食物を摂取した後に得られた試料と比較することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0053】
試料中の食物特異的免疫応答を検出する方法が本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料を1つ以上の食物抗原と接触させることと、b)1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを決定することと、c)b)の1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含むことができ、それによって、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いときに、試料中の食物特異的免疫応答を検出する。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0054】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象の食物アレルギーを、EoEに罹患している対象において特定する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含むことができ、ここで、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いことにより、対象の食物アレルギーが特定される。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0055】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象の食物感受性または過感受性を、EoEに罹患している対象において特定する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含むことができ、ここで、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いことにより、対象の食物感受性または過感受性が特定される。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0056】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象の抗原に対する感受性または過感受性を、EoEに罹患している対象において特定する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含むことができ、ここで、1つ以上の抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いことにより、対象の1つ以上の抗原に対する感受性または過感受性が特定される。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0057】
過敏性腸症候群を有する対象における食物アレルギーを特定する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、を含むことができ、ここで、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いことにより、対象の食物アレルギーが特定される。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0058】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEに罹患している対象において治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)対象を治療することと、を含むことができる。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0059】
活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEを患う対象において治療する方法が本明細書に開示され、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)対象を治療することと、を含む。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0060】
好酸球性食道炎(EoE)の症状の原因を検出する方法が本明細書に開示される。いくつかの態様では、EoEの症状は、EOEと診断されたか、またはEOEに罹患している患者における抗原に対する免疫反応によって引き起こされ得る。いくつかの態様では、本方法は、対象から食道粘膜試料を得ること、または得たことを含み得る。いくつかの態様では、食道粘膜試料は、対象から得ることができ、免疫応答の部位に由来する。いくつかの態様では、食道粘膜試料は、1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体を含み得る。いくつかの態様では、本方法は、試料を1つ以上の抗原と接触させることを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、1つ以上の抗原への1つ以上の特異的Ig抗体の結合を検出することを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示される方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。EoEの症状の例としては、嚥下困難(嚥下障害)、嚥下後の食道での食物の詰まり(閉塞)、胸痛(多くの場合、中央にあり、制酸薬に応答しない)、消化されていない食物の吐き戻し(逆流)、嘔吐、腹痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
活性または不活性なEoEを有する対象を診断する方法が、本明細書に開示される。活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEに罹患している対象において診断する方法が、本明細書に開示される。活性または不活性なEoEを有する対象を診断および治療する方法が、本明細書に開示される。活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEに罹患している対象において診断および治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、IgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体(またはそれらの任意の組み合わせ)のレベルが、対象から得られた食道分泌物試料中で上昇しているかどうかを検出することを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、試料中のIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体のレベルが、所定のカットオフ値を上回って上昇するときに、対象を活性なEoEであると診断し、試料中のIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体のレベルが、所定のカットオフ値を下回るときに、対象を不活性なEoEであると対象を診断することを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、活性なEoEであると診断された対象を治療することを含むことができ、IgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体の該レベルが所定のカットオフ値を下回るときに、対象を不活性なEoEであると診断し、IgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体レベルが所定のカットオフ値を上回るときに、対象を活性なEoEであると診断する。
【0062】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のうちのいずれにおいても、IgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体(またはそれらの任意の組み合わせ)のレベルまたは量を使用して、活性なEoEを決定または診断することができる。いくつかの態様では、本方法は、対象由来の試料からのIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体(またはそれらの任意の組み合わせ)のレベルまたは量を、参照試料または対照と比較して、活性なEoEを決定または診断することを含み得る。いくつかの態様では、本方法は、活性なEoEを有する対象由来の試料からのIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体のレベルまたは量を、不活性なEoEを有する対象由来の試料と比較することを含み得る。いくつかの態様では、Ig抗体は、IgG、IgA、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、Ig抗体は、IgG4、IgA、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、本方法は、IgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体のうちのいずれかのレベルが、対象から得られた食道分泌物試料において上昇(増加)しているかどうかを検出することができる。いくつかの態様では、測定されたIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体レベルが所定のカットオフ値を上回って上昇するときに、対象をEoEまたは活性なEoEであると診断することができ、あるいは試料中のIgA、IgE、IgM、IgD、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4抗体レベルが所定のカットオフ値を下回るときに、対象を不活性なEoEであると診断することができる。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgEについて約25ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgE抗体レベルが約25ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgAについて約5000ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgA抗体レベルが約5000ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgMについて約1000ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgM抗体レベルが約1000ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgG1について約200ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgG1抗体レベルが約200ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgG2について約50ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgG2抗体レベルが約50ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgG3について約4000ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgG3抗体レベルが約4000ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。いくつかの態様では、所定のカットオフ値は、IgG4について約6000ng/mlであり得る。いくつかの態様では、IgG4抗体レベルが約6000ng/mlを下回るとき、対象は不活性なEoEであると診断される。
【0063】
例えば、食道粘膜表面に沿って見られるIgAは、容易に収集することができ、EoEにおける一般的な誘因食物に対する反応性を示す。実際、IgAは、EoE患者において原因となる食物に対して顕著に上昇した。誘因食物は、一般に、IgAについて非誘因食物の1.5倍上昇し、日常的に、340応答単位(希釈1:50で0.01mg/lの濃度)を超える応答値を示した。グルテンおよび乳製品などの特定の食物は、それぞれのカテゴリーで類似した結果を示した。実に、340RV(応答値、0.01mg/l)の陽性カットオフは、誘因食物の予測において91%超正確であり、感受性(86%)および特異性(98%)の両方が高かった。
【0064】
過敏性腸症候群を有する対象を治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)対象を治療することと、を含むことができる。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0065】
活性または不活性な好酸球性食道炎(EoE)を有する対象を、EoEに罹患している対象において診断および治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、a)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の1つ以上の免疫グロブリン(Ig)抗体の存在またはレベルを検出することと、b)試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルを、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルと比較することと、c)1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高いときに、対象を活性なEoEであると診断し、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルが参照試料レベル中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも低いときに、対象を不活性なEoEであると診断することと、d)活性なEoEであると診断された対象を治療することと、を含むことができ、ここで、1つ以上の食物抗原に結合した試料中の1つ以上のIg抗体のレベルは、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上のIg抗体のレベルよりも高い。
【0066】
試料中の1つ以上の抗原への1つ以上の特異的免疫グロブリン(Ig)抗体の結合を検出する方法も本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、対象から得られた試料を1つ以上の抗原と接触させることと、1つ以上の食物抗原への1つ以上の特異的Ig抗体の結合を検出することとを含み得る。いくつかの態様では、1つ以上の抗原は、固体支持体に固定することができる。いくつかの態様では、試料は、対象が抗原のうちの1つ以上に暴露される前に得ることができる。いくつかの態様では、本方法は、対象をEoEであると診断することをさらに含む。いくつかの態様では、本方法は、本明細書に開示の方法を使用して、対象をEoEであると診断することをさらに含む。
【0067】
好酸球性食道炎の診断および/または治療を、それを必要とする対象において行うための方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本方法は、(i)患者からの食道生検試料中の少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現レベルを測定することであって、少なくとも1つのタンパク質または少なくとも1つの遺伝子が、好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、幹細胞因子、またはCCL26、KITLG、およびPOSTNからなる群から選択され、タンパク質または遺伝子発現レベルを測定することが、DNAマイクロアレイ分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、またはその両方を含む方法によって行われる、測定することと、(ii)少なくとも1つのタンパク質または少なくとも1つの遺伝子のタンパク質または遺伝子発現レベルを、高倍率視野当たりの好酸球がゼロであり、基底層膨張がないものとして定義される正常な個体からの食道生検試料中のその発現レベルと比較することと、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが、正常な個体からの食道生検試料中のその発現レベルと比較して10倍超増加する場合に、対象において好酸球性食道炎を診断することと、(iv)抗炎症療法、アレルゲン除去、サイトカイン阻害剤、免疫抑制剤、および補体阻害剤から選択される1つ以上の療法を用いて、ステップ(iii)に従って診断された対象において好酸球性食道炎を治療することと、を含む。
【0068】
好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、幹細胞因子、またはCCL26、KITLG、およびPOSTNからなる群から選択される1つ以上のバイオマーカーを検出することによって、好酸球性食道炎(EoE)を診断する方法が本明細書に開示される。
【0069】
いくつかの態様では、治療ステップは、対象に、1つ以上のモノクローナル凝集性抗IgA抗体、抗炎症療法、アレルゲン除去、サイトカイン阻害剤、免疫抑制剤、ウシIg、補体阻害剤、1つ以上のステロイド(例えば、コルチコステロイド)、またはそれらの組み合わせを投与することを含み得る。
【0070】
いくつかの態様では、治療ステップは、取り込みの調節(例えば、食事の変化)、または対象の食事からの1つ以上の食物種もしくは食物成分の摂取中止を含み得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物種または食物成分は、本明細書に開示の方法を使用して検出される1つ以上の食物アレルゲンと相関してもよい、対象が摂取し得るいずれの食物または食物成分であることもできる。いくつかの態様では、食事の変化、または1つ以上の食物種もしくは食物成分の摂取中止は、1つ以上のIg抗体の検出に基づき得る。いくつかの態様では、食物種は、牛乳、コムギ、ダイズ、およびタマゴであり得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物抗原は、コムギf1、ダイズf14、カゼインf78、タマゴf245、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、治療ステップは、1つ以上の食物成分を対象が取り込むものから断つことを含み得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物成分は、対象が摂取し得るいずれの食物種にも見られるいずれの食物成分であることもできる。いくつかの態様では、食物成分は、カゼイン、ホエイ、乳化剤、香辛料、汚染物質、エアロアレルゲン、イエダニなどであり得る。
【0071】
いくつかの態様では、本明細書に開示の方法は、検出ステップの前に、対象においてEoEを検出することをさらに含み得る。いくつかの態様では、対象における食道の粘膜組織中の好酸球顆粒タンパク質を検出することによって、EoEを対象において検出することができる。いくつかの態様では、本方法は、対象に、放射性標識したヘパリンを、放射性標識したヘパリンが好酸球顆粒タンパク質に結合して、放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を形成する条件下で投与することと、食道の粘膜組織における放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することと、を含むことができ、それにより、食道の粘膜組織における放射性標識したヘパリン/好酸球顆粒タンパク質複合体を検出することで、対象における好酸球性食道炎を検出する。
【0072】
いくつかの態様では、本方法は、単一抗原、または単一食物(例えば、牛乳)もしくは食物成分に特異的であり得る。単一食物は、抗原的に複雑な混合物である(例えば、牛乳は多くの抗原を含有する)。いくつかの態様では、本方法は、ビーズ(または他の担体)上の特定の単一抗原または特定の単一食物抗原を検出または特定するか、あるいは1つのビーズ上の2つ以上の(または複数の)抗原を検出または特定するか、あるいは2つ以上のビーズ上の1つ以上の(または複数の)抗原または食物抗原を検出または特定することができる。例えば、Luminexデバイスは、1回の試験で100個または抗原を分析することができる。いくつかの態様では、本方法は、2つ以上の単一抗原または単一食物抗原に特異的であり得る。いくつかの態様では、単一抗原は、食物抗原と環境抗原との組み合わせであり得る。
【0073】
いくつかの態様では、抗原は食物抗原であり得る。いくつかの態様では、抗原は環境抗原であり得る。いくつかの態様では、環境抗原は、花粉、真菌、鱗屑(例えば、ネコの鱗屑)、イエダニ、動物の放散物、昆虫の放散物などであり得る。いくつかの態様では、抗原は、エアロアレルゲンであり得る。いくつかの態様では、エアロアレルゲンは、花粉、胞子、カビ、動物の鱗屑、または昆虫由来抗原であり得る。いくつかの態様では、抗原は、抗原成分であり得る。例えば、抗原は、乳の成分であり得る(例えば、カゼインは、ホエイではなく、検出された免疫グロブリンの増加の原因である乳製品中のタンパク質として検出され得る)。いくつかの態様では、抗原は、原因抗原であり得る。いくつかの態様では、原因抗原は、食物抗原、環境抗原、エアロアレルゲン、または抗原成分であり得る。
【0074】
いくつかの態様では、1つ以上の抗原に結合した1つ以上の特異的Ig抗体のレベルは、参照試料中の1つ以上の抗原に結合した1つ以上の特異的Ig抗体のレベルと比較して試料中でより高くてもよく、これにより、抗原に対する特異的免疫応答が示される。
【0075】
いくつかの態様では、1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の食物特異的Ig抗体のレベルは、参照試料中の1つ以上の食物抗原に結合した1つ以上の食物特異的Ig抗体のレベルと比較して試料中でより高くてもよく、これにより、食物特異的免疫応答が示される。
【0076】
いくつかの態様では、1つ以上の抗原は、固体支持体に固定することができる。いくつかの態様では、1つ以上の食物抗原は、固体支持体に固定することができる。いくつかの態様では、1つ以上の環境抗原は、固体支持体に固定することができる。
【0077】
アレイは、固体支持体の形態である。アレイ検出器はまた、複数の異なる捕捉化合物または検出化合物が、アレイ、グリッド、または他の組織化されたパターンで結合する固体支持体の形態である。
【0078】
固体支持体に使用するための固体基材は、例えば、分子が結合することができる任意の固体材料を含み得る。そのような材料の例としては、アクリルアミド、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリシリケート、ポリカーボネート、テフロン、フルオロカーボン、ナイロン、シリコンゴム、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリオルトエステル、ポリプロピルフメレート(polypropylfumerate)、コラーゲン、グリコサミノグリカン、およびポリアミノ酸が挙げられる。固体基材は、薄膜、膜、ボトル、皿、繊維、織布繊維、成形ポリマー、粒子、ビーズ、微粒子、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の有用な形態を有し得る。固体基材および固体支持体は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。固体基材の一例は、マイクロタイター皿(例えば、標準的な96ウェルタイプ)である。マルチウェルガラススライドを使用することもできる。例えば、ウェル当たり1つのアレイを含むものなどを使用して、アッセイ再現性のより優れた制御、スループットおよび試料処理の増加、ならびに容易な自動化を可能にすることができる。
【0079】
本明細書に開示の異なる化合物および成分は、セットとして一緒に使用することができる。セットは、別個の反応において別々に使用される化合物のすべてまたはサブセットの混合物として、またはアレイで固定させて使用することができる。別々にまたは混合物として使用される化合物は、例えば、固体支持体との会合または固体支持体への固定をとおして物理的に分離可能である。アレイは、アレイ上の特定されたまたは所定の位置で固定された複数の化合物を含み得る。アレイ上の所定の各位置は、概して、一種類の成分を有する(つまり、その位置のすべての成分が同じである)。各位置は、成分の複数のコピーを有し得る。アレイ中の異なる成分の空間的分離により、本明細書に開示されるポリヌクレオチドまたはポリペプチドの別個の検出および特定が可能となる。
【0080】
所与のアレイが単一の単位または構造である必要はない。化合物のセットは、任意の数の固体支持体にわたって分布し得る。例えば、各化合物は、別個の反応管もしくは容器中、または別個のビーズもしくは微粒子上に固定され得る。遺伝子発現パネルまたはアレイまたは診断デバイスの開示される方法および使用の異なる態様を、固体支持体に固定された異なる成分(例えば、異なるタンパク質に特異的な異なる化合物)を用いて行うことができる。
【0081】
いくつかの固体支持体は、抗体などの捕捉化合物が固体基材に付着していてもよい。そのような捕捉化合物は、石灰化ナノ粒子または石灰化ナノ粒子上のタンパク質に特異的であり得る。その後、捕捉された石灰化ナノ粒子またはタンパク質を、抗体などの第2の検出化合物の結合によって検出することができる。検出化合物は、石灰化ナノ粒子上の同じまたは異なるタンパク質に特異的であり得る。
【0082】
核酸、ペプチド、または抗体(および他のタンパク質)を固体基材に固定するための方法は、十分に確立されている。固定化は、例えば、標準的な固定化化学を使用して、アミノ化表面、カルボキシル化表面、またはヒドロキシル化表面への付着によって達成され得る。付着剤の例は、臭化シアン、スクシンイミド、アルデヒド、塩化トシル、アビジンビオチン、光架橋剤、エポキシド、マレイミド、およびN-[y-マレイミドブチリルオキシ〕スクシンイミドエステル(GMBS)、およびヘテロ二官能性架橋剤である。抗体は、抗体上の遊離アミノ基を固体基材内に存在する反応性側基に化学的に架橋することによって、基材に付着させることができる。抗体は、例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、またはGMBSを架橋剤として使用して、それぞれ、遊離アミノ、カルボキシル、または硫黄基を含有する基材に化学的に架橋することができる。この方法では、遊離抗体を含有する水溶液を、グルタルアルデヒドまたはカルボジイミドの存在下で固体基材とともにインキュベートし得る。
【0083】
抗体または他のタンパク質を固体基材に付着させるための方法は、アミノシランまたはチオールシランを用いて基材を官能基化した後、官能基化した基材を、(ビス-スルホ-スクシンイミジルスベリン酸塩(BS3)などのホモ二官能性架橋剤、またはGMBSなどのヘテロ二官能性架橋剤を用いて活性化することである。GMBSを用いた架橋のために、ガラス基材を、メルカプトプロピルトリメトキシシランの溶液(95%エタノール中1%体積/体積、pH5.5)に1時間浸漬し、95%エタノール中ですすぎ、120℃で4時間加熱することによって、化学的に官能基化することができる。チオール誘導体化したスライドは、1%ジメチルホルムアミド、99%エタノール中の0.5mg/mlのGMBS溶液に、1時間室温で浸漬することによって活性化することができる。抗体またはタンパク質を、活性化させた基材に直接加え、これを、2%ウシ血清アルブミンなどの薬剤を含有する溶液を用いて遮断し、空気乾燥することができる。他の標準的な固定化化学は、当業者に既知である。
【0084】
固体支持体に固定した成分(例えば、化合物)の各々は、固体支持体の異なる所定の領域に位置し得る。異なる所定の領域の各々は、物理的に互いに離れていてもよい。固体支持体の異なる所定の領域間の距離は、一定であっても可変であってもよい。例えば、アレイ中、成分の各々は、互いから一定距離で配置されてもよく、一方、ビーズと関連付けられる成分は、一定の空間的関係にないことになる。複数の固体支持単位(例えば、複数のビーズ)の使用により、可変の距離が得られてもよい。
【0085】
成分は、任意の密度で固体支持体上に関連付けられても固定されてもよい。成分は、立方センチメートル当たり400個の異なる成分を超過する密度で固体支持体に固定され得る。成分のアレイは、いずれの数の成分も有することができる。例えば、アレイは、固体支持体に固定された少なくとも1,000個の異なる成分、固体支持体に固定された少なくとも10,000個の異なる成分、固体支持体に固定された少なくとも100,000個の異なる成分、または固体支持体に固定された少なくとも1,000,000個の異なる成分を有することができる。
【0086】
いくつかの態様では、試料は、対象が特定の抗原(例えば、食物抗原または環境抗原)に暴露する前に得ることができる。いくつかの態様では、試料は、1つ以上の1つ以上の抗原特異的Ig抗体を含み得る。いくつかの態様では、試料は、対象が食物抗原のうちの1つ以上を含む食物を摂取する前に得ることができる。いくつかの態様では、本方法は、試料を対象から得ることまたは得たことをさらに含み得る。いくつかの態様では、試料は、1つ以上の1つ以上の食物特異的Ig抗体を含み得る。いくつかの態様では、Ig抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、IgA抗体は、IgA1、IgA2、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、試料は粘膜試料であり得る。いくつかの態様では、粘膜試料は食道分泌物であり得る。いくつかの態様では、試料は粘膜液であり得る。いくつかの態様では、試料は食道疾患からの排出物であり得る。いくつかの態様では、試料は、小腸からの排出物であり得る。
【0087】
いくつかの態様では、対象は、活性な好酸球性食道炎を有する。いくつかの態様では、対象は、消散した好酸球性食道炎を有する。いくつかの態様では、対象は、好酸球性食道炎の少なくとも1つの症状を有する。いくつかの態様では、対象は、過敏性腸症候群を有する。いくつかの態様では、対象は、過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状を有する。
【0088】
いくつかの態様では、1つ以上の食物特異的Ig抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物特異的Ig抗体は、IgG、IgA、IgE、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物特異的Ig抗体は、IgG、IgA、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様では、1つ以上の食物特異的Ig抗体は、IgG4、IgA、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、1つ以上の遺伝子の発現または発現レベルを決定または検出する背景において使用されるとき遺伝子の転写を決定または検出する(すなわち、mRNAレベルを決定する)、および/または遺伝子の翻訳を決定または検出する(例えば、産生されたタンパク質を決定または検出する)ことを指し得る。遺伝子の発現レベルを決定することは、遺伝子が発現されるか否か、および発現される場合には、どの程度の相対的度合いで発現されるかを決定することを意味する。
【0090】
本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の発現レベルは、直接的に決定する(例えば、イムノアッセイ、質量分析)ことも間接的に決定する(例えば、タンパク質またはペプチドのmRNA発現を決定する)こともできる。質量分析の例としては、EI、CI、MALDI、ESIなどのイオン化源、およびQuad、イオントラップ、TOF、FT、またはそれらの組み合わせなどの分析、分光法、同位体比質量分析(IRMS)、熱イオン化質量分析法(TIMS)、スパーク光源質量分析、多重反応モニタリング(MRM)、またはSRMが挙げられる。これらの技法のうちのいずれかも、事前分画法または濃縮法と組み合わせて実行することができる。イムノアッセイの例としては、イムノブロット、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、放射免疫アッセイが挙げられる。
【0091】
イムノアッセイ法は、検出に抗体を使用し、抗原のレベルの決定は、当該技術分野で既知である。抗体または抗原は、スティック、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、またはアレイなどの固体支持体に固定され得る。
【0092】
本明細書に記載の遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルは、組織試料中の1つ以上の遺伝子についてのmRNA発現を決定することによって間接的に決定することもできる。RNA発現方法には、遺伝子の全部または一部をコードする転写産物にハイブリダイズする標識されたプローブを使用する、細胞mRNAの抽出およびノーザンブロット、遺伝子特異的プライマーを使用するmRNAの増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、その後の様々な方法による遺伝子産物の定量的検出;細胞からのRNAの抽出、その後の標識化、続く遺伝子をコードするcDNAまたはオリゴヌクレオチドをプローブするための使用、インサイツハイブリダイゼーション、ならびにレポーター遺伝子の検出が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
タンパク質発現レベルを測定するための方法には、ウエスタンブロット、免疫ブロット、ELISA、放射免疫アッセイ、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞分類(FACS)、およびフローサイトメトリーが含まれるが、これらに限定されない。本方法はまた、酵素活性または他のタンパク質パートナーとの酵素相互作用を含むがこれらに限定されない、特定のタンパク質特性ベースのアッセイを含み得る。結合アッセイも使用することができ、当該技術分野で周知である。例えば、BIAcore機を使用して、2つのタンパク質間の複合体の結合定数を決定することができる。あるタンパク質の別のタンパク質への結合を決定または検出するための他の好適なアッセイには、ELISAおよびラジオイムノアッセイなどのイムノアッセイが含まれる。分光の変化のモニタリングによる結合の決定を使用することができ、あるいはタンパク質の光学特性を、蛍光、UV吸収、円偏光二色性、または核磁気共鳴(NMR)を介して決定することができる。あるいは、特異的抗体を使用するイムノアッセイを使用して、試料中の特定のタンパク質の発現を検出することができる。
【0094】
参照mRNA発現レベルの参照。本明細書で使用される場合、「参照」、「参照発現」、「参照試料」、「参照値」、「対照」、「対照試料」などの用語は、1つ以上の遺伝子またはタンパク質の試料または発現レベルの背景において使用される場合、参照が、異なる組織(すなわち、同じ組織ではないが、複数の組織)のあいだで一定レベルで発現され、実験条件に影響されず、所定の疾患状態(例えば、EoEもしくは活性なEoE、IBS、または特定の抗原に暴露した後の免疫応答に罹患していない)の試料におけるレベルを示す、参照標準を指す。参照値は、疾病、または所定の種類もしくは重症度の疾病を表さない、所定の標準値または所定の標準値の範囲であり得る。
【0095】
参照発現は、EoEもしくは活性なEoE、IBS、または特定の抗原に暴露した後の免疫応答、あるいは所定の重症度または種類のEoE、IBS、または特定の抗原に暴露した後の免疫応答に罹患していない対象または対象のプールに由来する参照試料中の本明細書に記載される1つ以上の遺伝子のレベルであり得る。いくつかの態様では、参照値は、対象(単数または複数)の組織(または対象由来の試料)における本明細書に開示される1つ以上の遺伝子のレベルであり、対象(複数または単数)は、EoEもしくは活性なEoE、IBS、または特定の抗原に暴露した後の免疫応答に罹患していない。
【0096】
本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の発現レベルの比較。例えば、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上についての発現レベルを、例えば、CCL26、KITLG、およびPOSTNについての参照発現レベルと比較することにより、対象における活性なEoEを決定することができる。
【0097】
本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の発現レベルを決定することは、遺伝子が、対照もしくは参照試料と比較して上方調節されるもしくは増加するか、対照もしくは参照試料と比較して下方調節されるもしくは減少するか、または対照もしくは参照試料と比較して変化しないかを決定することを含み得る。本明細書で使用される場合、「上方調節された」および「増加した発現レベル」または「発現の増加したレベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子に対応する配列を指し、配列の量の尺度は、参照試料または「正常な」対照と比較したときに、発現の増加したレベルを呈する。いくつかの態様では、正常な対照は、EoEを有しない対象を指し得る。いくつかの態様では、正常な対照は、消散したEoEを有する対象を指し得る。例えば、「上方調節された」および「増加した発現レベル」または「発現の増加したレベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子に対応する配列を指し、配列の量の尺度は、参照試料または「正常な」対照に由来する好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、および幹細胞因子タンパク質、ならびに/または参照試料もしくは「正常な」対照に由来する同じmRNAの発現と比較したときのmRNAのうちの1つ以上の発現の増加したレベルを呈する。「増加した発現レベル」は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、もしくはそれ以上、例えば、20%、30%、40%、もしくは50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上、または1倍超、最大2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、もしくはそれ以上の発現における増加を指す。本明細書で使用される場合、「下方調節された」、「発現の減少したレベル」、または「減少した発現レベル」という用語は、発現される本明細書に開示の1つ以上の遺伝子に対応する配列を指し、配列の量の尺度は、参照試料または「正常な」対照と比較したときに、発現の減少したレベルを呈する。例えば、「下方調節された」、「発現の減少したレベル」、または「減少した発現レベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子に対応する配列を指し、配列の量の尺度は、参照試料または「正常な」対照に由来する好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、および幹細胞因子タンパク質、ならびに/または参照試料もしくは「正常な」対照に由来する同じmRNAの発現と比較したときのmRNAのうちの1つ以上の発現の減少したレベルを呈する。「発現の減少したレベル」は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、もしくはそれ以上、例えば、20%、30%、40%、もしくは50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上、または1倍超、最大2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、もしくはそれ以上の発現における減少を指す。
【0098】
活性なEoEの決定。本明細書に記載されるように、対象由来の試料を参照試料と比較して、発現比率を決定し、対象が活性なEoEを有するかを決定することができる。参照試料は、次の遺伝子、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上のレベルが「正常」である対象由来であり得る。好適な統計分析および他の分析を実行して、参照試料中と比較したときのCCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上における変化(例えば、発現の増加またはそのより高いレベル)を確認することができ、ここでは、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の試料発現レベルと、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の参照発現レベルとの比率により、試料中のCCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の発現レベルがより高いことが示される。いくつかの態様では、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの2つ以上の試料発現レベルと、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの2つ以上の参照発現レベルとの比率により、試料中のCCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの2つ以上の発現レベルがより高いことが示され、これは、対象が活性なEoEを有することを示す。
【0099】
CCL26、KITLG、およびPOSTNの参照発現レベルと比較したとき、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上のより高いまたは増加した発現レベルは、活性なEoEを示し得る。CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の参照発現レベルと比較したときの、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の増加した(より高い)または減少した(より低い)試料発現レベルの特徴パターンが観察され得、これにより、対象における活性なEoEが示される。
【0100】
本明細書に記載される1つ以上の遺伝子の発現レベルは、例えば、単位重量または単位体積当たりの、1つ以上の遺伝子の測定値とすることができる。いくつかの態様では、発現レベルは、比率(例えば、参照値の1つ以上のマーカーの量に対する試料中の1つ以上の遺伝子の量)とすることができる。
【0101】
いくつかの態様では、対象由来の試料を参照試料と比較して、変化率を決定し、対象が活性なEoEを有するかを決定することができる。言い換えれば、発現レベルはパーセントで表すことができる。例えば、CCCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ(または2つ)以上の発現レベルが、CCL26、KITLG、およびPOSTNの参照発現レベルと比較したとき、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%増加する(または高い)、1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化率は、活性なEoEを示す。あるいは、1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化率は、参照発現レベルと比較したとき、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%減少し(または低くあり)得る。
【0102】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるもの以外の遺伝子またはタンパク質の発現レベルにおける増加または減少、またはその組み合わせにより、対象における活性なもしくは消散したEoE、またはEoEもしくは活性なEoEの診断が示され得る。いくつかの態様では、本明細書に開示される遺伝子またはタンパク質のうちの1つ以上の発現レベルの増加または減少の特徴パターンは、指示的なものである。
【0103】
診断デバイス
対象(例えば、ヒト)における好酸球性食道炎を診断するための診断デバイスが本明細書に開示される。いくつかの態様では、粘膜または食道分泌物の試料を対象から得ることができ、試料中のレベルまたは発現レベルを参照値と比較することができる。
【0104】
診断デバイスは、1つ以上のバイオマーカーを含み得る。いくつかの態様では、バイオマーカーは抗原であっても抗体であってもよい。いくつかの態様では、バイオマーカーは、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子、RNA産物、またはペプチドに結合またはハイブリダイズし得る。本明細書で使用される場合、「マーカー」または「バイオマーカー」という用語は、生物学的状態、疾患、状態、臨床転帰の予測などを示し得る試料中の検出可能または測定可能な物質(例えば、抗原、抗体、遺伝子、遺伝子産物、タンパク質など)を指す。いくつかの態様では、バイオマーカーは、好酸球ペルオキシダーゼ、ペリオスチン、エオタキシン-3、幹細胞因子、またはCCL26、KITLG、およびPOSTN、もしくはその断片、またはバイオマーカーのうちの1つ以上に結合する抗体もしくはその断片であり得る。診断デバイスは、対象におけるEoEまたは活性なEoEを診断するためのキットに組み込むことができる。
【0105】
タンパク質アレイ
ポリペプチドまたはタンパク質アレイが本明細書に開示される。いくつかの態様では、タンパク質アレイは、本明細書に開示される遺伝子パネルの構成要素に特異的な抗原、抗体、アプタマー、および他の同族結合リガンドを含むプローブを含み得る。タンパク質アレイおよびタンパク質アレイを構築する方法は、当業者に周知である。
【0106】
好適であり得るタンパク質アレイの1つの種類は、固定された「捕捉抗体」を使用する。ポリペプチドを、処置された表面(例えば、アミノシラン)を用いて、またはビオチン-ストレプトアビジン共役を介して、固体基材(例えば、ガラス)に結合させる。次いで、アレイを、時間、緩衝成分、および認識特異性に依存する様式で、捕捉抗体に結合することができるプローブを含有する溶液とともにインキュベートする。その後、プローブを、以前に標識している場合は直接可視化し、あるいは二次標識試薬(例えば、別の抗体)に結合させることができる。可視化する捕捉抗体に結合したプローブの量は、用いる標識方法に左右され得、概して、標識の放出を励起および検出するのに適したフィルタセットを使用するCCD撮像装置またはレーザスキャナが使用され得る。撮像装置により、検出された光子の量を電子信号(8ビットまたは16ビットスケールであることが多い)に変換し、これを、市販のソフトウェアパッケージを使用して分析することができる。
【0107】
アレイの基材は、有機または無機、生物学的もしくは非生物学的、またはこれらの材料の任意の組み合わせであり得る。基材は、透明であっても半透明であってもよい。アレイにおける基材としての使用に好適な材料の例としては、ケイ素、シリカ、石英、ガラス、制御細孔ガラス、炭素、アルミナ、二酸化チタン、ゲルマニウム、窒化ケイ素、ゼオライト、およびガリウムヒ素、ならびに金、白金、アルミニウム、銅、チタン、およびそれらの合金を含む金属が挙げられる。セラミックおよびポリマーも、基材として使用することができる。好適なポリマーには、ポリスチレン、ポリ(テトラ)フルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ(エーテルエーテル)ケトン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリポリフェノール、ポリラクチド、ポリメタクリルイミド(PM I)、ポリアルケネスルホン(PAS)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリルアミド、ポリイミド、コブロックポリマー、およびEupergit(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。フォトレジスト、重合ラングミュアーブロジェット膜、およびLIGA構造も、基材として機能し得る。
【0108】
アレイは、基材上に形成され得るか、または基材に塗布され得るコーティングをさらに含み得る。基材は、物理蒸着(PVD)またはプラズマ加速化学蒸着(PECVD)のいずれかに基づく薄膜技術を使用して、コーティングで修飾することができる。あるいは、プラズマ暴露を使用して、基材を直接活性化してもよい。例えば、プラズマエッチング手順を使用して、ポリマー表面(すなわち、ヒドロキシル、カルボン酸、アルデヒドなどの極性官能基を露出させるためのポリスチレンまたはポリエチレン)を酸化することができる。
【0109】
コーティングは、金属フィルムを含み得る。金属膜の例としては、アルミニウム、クロム、チタン、ニッケルステンレス鋼亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、マンガン、カドミウム、タングステン、コバルト、およびそれらの合金または酸化物が挙げられる。いくつかの態様では、金属フィルムは、貴金属フィルムであり得る。コーティングに使用され得る貴金属の例としては、金、白金、銀、銅、およびパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、コーティングは、金または金合金を含む。電子ビーム蒸着を使用して、金の薄いコーティングを表面に提供することができる。いくつかの態様では、金属膜は、厚さが約50nm~約500nmであり得る。
【0110】
あるいは、コーティングは、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、水素化ケイ素、酸化インジウムスズ、酸化マグネシウム、アルミナ、ガラス、水酸化表面、およびポリマーであり得る。
【0111】
本明細書に記載のアレイは、アドレス可能な要素の集合を含み得る。そのような要素は、マイクロタイタープレート内に含まれるアレイ、または各要素が別個のX座標およびY座標に存在し得る平面上に印刷されるアレイなど、空間的にアドレス可能であり得る。あるいは、要素は、タグ、ビーズ、ナノ粒子、または物理的特性に基づいてアドレス可能であり得る。マイクロアレイは、当業者に既知の方法に従って調製することができる。本明細書で使用される「アレイ」という用語は、複数のアドレス可能な要素を有する任意の生物学的アッセイを指し得る。いくつかの態様では、アドレス可能な要素は、ポリペプチド(例えば、抗体またはその断片)または核酸プローブであり得る。本明細書で使用される場合、「要素」は、器官特異的ポリペプチド、ポリペプチド断片、または本明細書に開示される遺伝子もしくはタンパク質のうちのいずれかと関係するもしくは関連付けられるものなどのポリペプチドをコードする転写産物が結合し得る任意のプローブ(ポリペプチドまたは核酸に基づく)を指す。分子は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、RNA、DNA、脂質、グリコシル化分子、炭水化物、リン酸化修飾を有するポリペプチド、ならびにシトルリン修飾、アプタマー、酸化分子、および他の分子を有するポリペプチドであり得るが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書に記載される要素について、「アドレス可能な」は、場所、位置、タグ、切断可能なタグもしくはマーカー、識別子、スペクトル特性、電気泳動特性、または要素の識別を可能にする他の物理的特性を指す。コード化としても知られるアドレス可能性の例は、空間アドレス可能性であり、ここでは、分子の位置が固定され、その位置が同一性と相関する。この種の空間アレイは、概して、平面基材上に合成またはスポッティングすることができ、例えば、多数の異なる分子が小さな領域に高密度で配置される(例えば、1cm2当たり少なくとも約400個の異なる配列を含み、1cm2当たり1000個の配列、または1cm2当たり5000個もの配列、またはそれ以上であり得る)マイクロアレイを生み出す。プレート内のウェルが各々別個のプローブを含有する、より低い密度のアレイ(例えば、ELISAまたはRIAプレート)は、プレート当たり約96個の配列から、1cm2当たり約100個の配列まで、マイクロアレイの密度までを含み得る。他の空間アレイは、光ファイバーを利用し、ここでは、別個のプローブをファイバーに結合させ、これを、結合および分析のための束に形成することができる。ポリペプチドの空間アレイの製造および使用のための方法は、当該技術分野で既知である。
【0113】
この種の空間コード化アレイの代替は、分子「タグ」の使用であり、ここでは、標的プローブを、プローブの配列に関するコードされた情報を提供し得る検出可能な標識またはタグに付着させることができる。これらのタグは、要素から切断し、その後、要素を識別するために検出することができる。いくつかの態様では、プローブのセットは、コードされたビーズのセットに合成するまたは付着させることができ、各ビーズは、別個のプローブに連結させることができ、付着したプローブの識別を可能にする様式でビーズをコードすることができる。この種の「タグアレイ」では、フローサイトメトリーを結合の検出に使用することができる。例えば、蛍光コードを有するミクロスフェアは、特定のミクロスフェアを特定することができる。プローブは、「カラーコードされた」物体に共有結合することができる。標識された標的ポリペプチドは、フローサイトメトリーによって検出することができ、ミクロスフェア上のコード化を使用して、結合したプローブ(例えば、免疫グロブリン、免疫グロブリンの抗原結合断片、またはリガンド)を特定することができる。
【0114】
いくつかの態様では、アレイは、1つ以上の抗原(例えば、環境抗原または食物抗原またはアレルゲン)を含むアレイであり得る。いくつかの態様では、アレイは、免疫グロブリンアレイ(例えば、抗体またはその抗原結合断片を含むアレイ)であり得る。本明細書で使用される場合、「免疫グロブリンアレイ」は、試料内に含まれるポリペプチドの特定を可能にする様式で配置された標的ポリペプチドに結合することが可能な、空間的に分離した別個の分子実体のセットを指す。いくつかの態様では、アレイは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、RNA、DNA、脂質、グリコシル化分子、リン酸化修飾を有するポリペプチド、ならびにシトルリン修飾、アプタマー、および他の分子を有するポリペプチドのうちの1つ以上を含み得る。
【0115】
キット
いくつかの態様では、試料中の1つ以上の免疫グロブリンを測定するためのキットが提供される。いくつかの態様では、本明細書に開示される1つ以上のバイオマーカーのRNA(例えば、RNA産物)を測定するためのキットが提供される。キットには、1つ以上のバイオマーカーのRNAの発現を測定するために使用することができる材料および試薬が含まれ得る。好適なキットの例としては、RT-PCRまたはマイクロアレイが挙げられる。これらのキットには、RNA発現レベルの測定を実行するために必要な試薬が含まれ得る。あるいは、キットには、追加の材料および試薬がさらに含まれ得る。例えば、キットには、本明細書に開示されるバイオマーカーではない、最大1個、2個、3個、4個、5個、10個、またはそれ以上の任意の数の遺伝子のRNA発現レベルを測定するために必要な材料および試薬が含まれ得る。
【0116】
遺伝子発現パネル
本明細書に開示される1つ以上の遺伝子を検出することが可能なプライマーまたはプローブからなる対象(例えば、ヒト)におけるEoEまたは活性なEoEを診断するための遺伝子発現パネルおよびアレイが本明細書に開示される。開示の遺伝子発現パネルまたはアレイは、本明細書に開示される遺伝子をいずれの数で含んでもよい。例えば、遺伝子発現パネルまたはアレイを使用して、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上を検出することができる。いくつかの態様では、遺伝子発現パネルまたはアレイは、CCL26、KITLG、およびPOSTNを含み得る。
【0117】
いくつかの態様では、試料は、食道生検、粘膜試料、または食道分泌物であり得る。
【0118】
本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイは、本明細書に開示される任意の数の遺伝子を検出または増幅することが可能なプライマーまたはプローブからなり得る。本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイは、本明細書に開示されていない任意の数の遺伝子を検出または増幅することが可能なプライマーまたはプローブをさらに含み得る。例えば、プライマーまたはプローブは、1~5、5~10、10~100の間、またはそれ以上、またはその間のいずれの変動も検出または増幅することができる。
【0119】
本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイは、対象におけるEoEを評価するための独立した方法であっても、本明細書に開示されていない1つ以上の他の遺伝子発現パネルまたはアレイと組み合わせてもよい。それらは、1つ以上の診断検査とともに使用することができる。いくつかの態様では、遺伝子発現パネルまたはアレイは、第2の診断検査をさらに含み得る。本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイは、特定のプロファイルを生成するための方法にも使用することができる。プロファイルは、ヒートマップまたは箱ひげ図の形態で提供することができる。
【0120】
遺伝子発現レベルのプロファイルを使用して、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の差次的発現に基づいて統計的に有意な値を計算することができ、ここで、計算された値は、EoEのサブタイプについての診断と相関する。該選択された遺伝子または遺伝子発現産物の発現レベルの得られたプロファイルにおける分散は、参照対象または対照と比較して感受性が増加した対象では、上方調節されるか下方調節されるかのいずれかであり得る。追加の詳細は、実施例の節で提供する。例えば、CCL26、KITLG、およびPOSTNのうちの1つ以上の発現レベルが上方調節される場合、EoEまたは活性なEoEが示される。本明細書に記載されるように、当業者であれば、本明細書に開示される遺伝子のうちのいずれかの組み合わせを使用して、EoEもしくは活性なEoEを評価するために、または対象がEoEもしくは活性なEoEを有するかどうかを決定する(および診断する)ために後に使用することができるプロファイルを形成することができる。
【0121】
本明細書に記載される遺伝子発現パネルまたはアレイを使用してEoEを診断する方法が本明細書に開示される。
【0122】
いくつかの態様では、本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイを使用して、対象におけるEoEまたは活性なEoEを決定または評価することができ、ここでは、試料中のCCL26、KITLG、またはPOSTNの発現レベルを、CCL26、KITLG、またはPOSTNの参照発現レベルと比較する。いくつかの態様では、本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイを使用して、対象においてEoEまたは活性なEoEを決定または評価することができ、ここでは、CCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの1つ以上の試料発現レベルと、CCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの1つ以上の参照発現レベルとの比率(または変化率)により、試料中のCCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの1つ以上の発現レベルがより高いことが示される。いくつかの態様では、CCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの2つ以上の試料発現レベルと、CCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの2つ以上の参照発現レベルとの比率(または変化率)により、試料中のCCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの2つ以上の発現レベルがより高いことが示され、これは、対象がEoEまたは活性なEoEを有することを示す。好適な統計分析および他の分析を実行して、参照試料と比較したときのCCL26、KITLG、またはPOSTNのうちの1つ以上における変化(例えば、発現の増加またはそのより高いレベル)を確認することができる。
【0123】
遺伝子発現パネルまたはアレイは、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の存在または発現を検出、増幅、または別様に測定することが可能なプライマーまたはプローブからなり得る。例えば、本明細書に開示される方法に使用することができる特定のプライマーとしては、http://www.affYmetrix.comにリストされているAffymetrixウェブサイトからの標準エクソンアレイにおける使用に好適なプライマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本明細書に開示される遺伝子発現パネルまたはアレイを使用して、対象におけるEoEまたは活性なEoEを決定または評価することができ、ここでは、CCL26、KITLG、またはPOSTN RNA発現レベルを、試料中で検出する。
【0124】
いくつかの態様では、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の存在または発現を検出、増幅、または測定することが可能な1つ以上のプローブまたはプライマーを含む診断キットが開示される。
【0125】
本明細書に開示される遺伝子のうちの1つ以上とハイブリダイズまたは結合することができる、1つ以上のプライマー、プローブ、ポリペプチド、または抗体を含む固体支持体が本明細書に開示される。固体支持体は、分析物および分析物結合分子などの分子が会合し得る固体基材または支持体である。分析物(例えば、石灰化ナノ粒子およびタンパク質)は、固体支持体と直接的または間接的に会合させることができる。例えば、分析物は、固体支持体に直接固定することができる。分析物捕捉剤(例えば、捕捉化合物)も、固体支持体に固定することができる。
【0126】
本明細書で言及されるように、当業者であれば、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子(またはタンパク質)の発現レベルを、あらゆる方法で決定することができる。試料内のバイオマーカーのRNA産物のレベルを検出または定量化するために、アレイ、例えば、マイクロアレイ、RT-PCR(定量的RT-PCRを含む)、ヌクレアーゼ保護アッセイ、およびノーザンブロット分析を使用することができる。したがって、いくつかの態様では、バイオマーカー発現レベルは、アレイ、マイクロアレイ、RT-PCR、定量的RT-PCR、ヌクレアーゼ保護アッセイ、またはノーザンブロット分析を使用して決定することができる。
【0127】
加えて、本明細書に記載される遺伝子は、EoEまたは活性なEoEに対する感受性またはその存在もしくは進行についてのマーカー(すなわち、バイオマーカー)としても使用することができる。本明細書に記載される方法およびアッセイは、経時的に行うことができ、マーカーのレベルの変化を評価することができる。例えば、アッセイは、24~72時間ごとに、6か月~1年の期間で行い、その後は、必要に応じて実行することができる。アッセイはまた、治療プロトコルの前、最中、または後に完了することができる。まとめて、本明細書に開示される遺伝子を使用して、個人のEoEの状態をプロファイリングすることができる。この背景内で使用される場合、「差次的に発現される」または「差次的発現」という用語は、本明細書に開示されるバイオマーカーの発現レベルにおける差異を指し、これは、メッセンジャーRNA転写産物もしくはその一部、またはバイオマーカーの発現されたタンパク質のレベルにおける差異などの、バイオマーカーの産物(例えば、RNAまたは遺伝子産物)の発現のレベルを測定することによって、アッセイすることができる。いくつかの態様では、この差異は有意に異なる。
【0128】
感度を改善するために、本明細書に開示される1つ超の遺伝子を、所与の試料内でアッセイすることができる。本明細書に提供される異なるタンパク質、抗体、核酸に特異的な結合剤を、単一のアッセイ内で組み合わせることができる。さらに、複数のプライマーまたはプローブを同時に使用することができる。そのようなアッセイを支援するために、特定のバイオマーカーが、そのような検査の特異性を補助することができる。
【0129】
発現レベルは、転写および/または翻訳レベルで測定することができる。翻訳レベルでは、本明細書に記載される遺伝子のうちのいずれかの発現は、対応する遺伝子またはその断片に選択的に結合する抗体を用いて、免疫組織化学染色、ウエスタンブロッティング、ELISAなどを含むイムノアッセイを使用して測定することができる。イムノアッセイにおけるタンパク質特異的抗体を使用したタンパク質の検出は、当該技術分野で既知である。転写レベルでは、mRNAは、例えば、増幅(例えば、PCR、LCR)、またはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RNAse保護、またはドットブロッティング)によって検出することができる。タンパク質またはmRNAのレベルは、例えば、直接的または間接的に標識された検出剤(例えば、蛍光標識または放射性標識された核酸、放射性標識または酵素標識された抗体)を使用することによって検出することができる。転写レベルの変化(例えば、増加または減少)も、プロモーター-レポーター遺伝子融合構築物を使用して測定することができる。例えば、本明細書に開示される遺伝子のうちのいずれかをコードする遺伝子のプロモーター領域は、検出可能なシグナルを生成するポリペプチドのコード配列に融合(すなわち、動作可能に連結)させることができる。レポーター構築物は、当該技術分野で周知である。レポーター配列の例としては、蛍光タンパク質(例えば、緑色、赤色、黄色)、リン光性タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)、抗生物質耐性タンパク質(例えば、ベータラクタマーゼ)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ)が挙げられる。
【実施例
【0130】
実施例1:食道分泌物中の食物特異的抗体:好酸球性食道炎(EoE)における誘因食物との関連
目的:好酸球性食道炎を誘発する食物に対する抗体が、抗体を食道擦過によって収集できる場所である食道内腔に分泌されるかどうかを検査すること。
【0131】
方法:食物特異的免疫反応を、内視鏡を受ける68人の患者(対照12人、消散好酸球性食道炎13人、および活性な好酸球性食道炎43人)の擦過物中で評価した。参加者17人の誘因食物が、食物除去食を介して特定された。4つの最も一般的な好酸球性食道炎の食物誘因に対する免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4抗体を、ImmunoCAPアッセイを使用して、食道擦過物中で測定した。食物特異的抗体値を、活性好酸球性食道炎、消散した好酸球性食道炎、および対照の間で比較した。
【0132】
結果:活性な好酸球性食道炎(15好酸球/hpf超)を有する患者は、対照と比較して、一般的な好酸球性食道炎誘因に対する免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4レベルの増加を示した(免疫グロブリンAについては327±380対150±130、および免疫グロブリンG4については1534±3346対178±123、p<0.003)。特異的誘因食物は、食道好酸球増多を誘発しなかった食物と比較して、免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンGG4の応答の上昇と関連付けられた(免疫グロブリンAについて733±469対142±64、p<0.001、および免疫グロブリンG4について2620±3228対526±1050、p<0.001)。
【0133】
結論:食物特異的抗体は、好酸球性食道炎患者の食道内腔に沿って収集した。
【0134】
序文:好酸球性食道炎(EoE)は、あらゆる年齢群において、生活の質の低下、嚥下障害、および食塊閉塞の一般的な原因としてますます認識されてきている(Holbreich M.Allergy Asthma Proc 2019;40:198-203、Peiris CD,Tarbox JA.JAMA 2019;321:1418、Reed CC,Dellon ES.Med Clin North Am 2019;103:29-42、およびLucendo AJ,et al.Aliment Pharmacol Ther 2017;46:401-409)。食物に対する免疫学的応答が関与しているが、アレルギー検査(皮膚プリック検査、免疫グロブリンE抗体検査、またはアトピーパッチ検査)は、疾患の原因である食物を特定しない(Aceves SS.Allergy Testing in Patients with Eosinophilic Esophagitis.Gastroenterol Hepatol(N Y)2016;12:516-518、Anyane-Yeboa A,Wang W,Kavitt RT.The Role of Allergy Testing in Eosinophilic Esophagitis.Gastroenterol Hepatol(N Y)2018;14:463-469、およびPhilpott H,et al.Aliment Pharmacol Ther 2016;44:223-33)。とはいえ、食物抗原は、除外食後の疾患の消散によって証明されるように、小児集団と成人集団との両方においてEoEの病因および増悪に関与している(Philpott H,et al.Aliment Pharmacol Ther 2016;44:223-33、Chehade M,Sher E.Allergy Asthma Proc 2017;38:170-176、Fahey LM,et al.Clin Transl Gastroenterol 2018;9:139、de Bortoli N,Penagini R,Savarino E,et al.Dig Liver Dis 2017;49:254-260、およびPhilpott H,Thien F.The Role of Allergy Testing in Eosinophilic Esophagitis:an Update of the Evidence.Curr Treat Options Gastroenterol 2017;15:26-34)。免疫グロブリンEは、EoE患者の粘膜中で上昇するが、原因食物を特定するための免疫グロブリンEに基づく皮膚プリック検査の正確さを評価する臨床試験は、満足のいく結果を示すことができなかった(Philpott H,Thien F.Curr Treat Options Gastroenterol 2017;15:26-34、Kamdar TA,et al.Clin Mol Allergy 2010;8:16、Gottlieb SJ,et al.J Allergy Clin Immunol 2013;131:242-3、Aceves SS.Clin Gastroenterol Hepatol 2014;12:1216-23、Paquet B,Begin P,Paradis L,et al.J Allergy Clin Immunol 2013;131:613、Erwin EA,et al.J Allergy Clin Immunol Pract 2015;3:896-904 e3、およびTurnbull JL,et al.Aliment Pharmacol Ther 2015;41:3-25)。同様に、オマリズマブの臨床試験は、EoE患者の食道における好酸球浸潤を低下させることができなかった(Clayton F,et al.Gastroenterology 2014;147:602-9)。他の研究者らは、食物に対する細胞介在性応答が食道好酸球増多につながると仮定して、アトピーパッチ検査の感受性および特異性を評価したが、結果は不良であった(Aceves SS.Allergy Testing in Patients with Eosinophilic Esophagitis.Gastroenterol Hepatol(N Y)2016;12:516-518、Anyane-Yeboa A,et al.The Role of Allergy Testing in Eosinophilic Esophagitis.Gastroenterol Hepatol(N Y)2018;14:463-469、Bahna SL.Allergy Asthma Proc 2008;29:447-52、およびBlanchard C,et al.J Intern Med 2017;281:448-457)。EoEでは、炎症は食道に局在するため、この疾患を局所的な食道特異的免疫応答の結果として特徴付けることができる。例えば、Claytonらは、EoE由来の組織ホモジネート中の総免疫グロブリンG4のレベルの増加を特定し、これは、局所免疫応答が生じることを示唆するものであった(Clayton F,et al.Gastroenterology 2014;147:602-9)。鉗子生検および擦過生検により、免疫グロブリン(免疫グロブリンG4および免疫グロブリンE)がEoE組織で増加することが明らかとなった(Ramaswamy AT,et al.Int Forum Allergy Rhinol 2019;9:870-875)。EoEでは具体的に研究されていないが、免疫グロブリンAは、細菌およびウイルスなどの可能性のある脅威から身体を保護するために消化管表面に分泌される既知の粘膜排除抗体である(Carlier FM,et al.Clin Exp Allergy 2016;46:1372-1388)。疾患組織内の局所応答はまた、セリアック病に見られるように、分泌性免疫グロブリンA産生または免疫介在性免疫グロブリンA産生のいずれかを伴い得る(Koninckx CR,et al.J Pediatr Gastroenterol Nutr 1984;3:676-82、およびLamm ME,et al.APMIS 1995;103:241-6)。免疫グロブリンAのレベルおよび応答は、食物アレルギーにおいてますます研究されている(Ahrens N,et al.Clin Exp Immunol 2008;151:455-8、およびAndre C.Letter:Allergy,tolerance,and immunoglobulin A.Lancet 1974;2:782)。免疫グロブリンAは、食道内の抗原応答を媒介する食物に応答して分泌され得るというのが妥当である。免疫グロブリンG4および免疫グロブリンAがEoEの食道で産生されているかどうか、および好酸球性食道炎症の原因となる食物を発見する試験を行った。
【0135】
方法:試験設計。この試験は、EoEを誘発させる食物が免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4の抗体産生も刺激するかどうかを試験するように設計した。患者は、嚥下障害のための上部内視鏡または既知のEoEのモニタリングに参加した際の食道の1回限りのサンプリングに同意した。1)EoEの以前の診断はないが、内視鏡評価を必要とする嚥下障害である、または2)疾患状態を評価するために経過観察内視鏡生検に参加している以前に診断されたEoEという2つの基準のいずれかを満たした患者に登録を依頼した。患者は、治験責任医師が、経過観察のための日常的な臨床ケア中に患者の臨床経過および生検結果を追跡することを許可することに同意した。自己免疫性食道炎(すなわち、扁平苔癬)、クローン病、全身性強皮症、または全身免疫抑制を必要とするものを含む、共存免疫障害と診断された患者は、さらなる分析から除外した。68人の患者において、免疫グロブリンA食物特異的抗体と免疫グロブリンG4食物特異的抗体の両方を食道擦過で測定し、最終分析に含めた。分析した3つのコホートは、活性なEoE、消散したEoE、および対照であった。患者を、標準基準(Dellon ES,et al.Updated International Consensus Diagnostic Criteria for Eosinophilic Esophagitis:Proceedings of the AGREE Conference.Gastroenterology 2018;155:1022-1033 e10)、少なくとも1つの食道生検および随伴する食道症状に対する高倍率視野(HPF)当たり15好酸球により、EoEと診断した。最新の生検で好酸球/HPFが15個未満であったEoEの既往を有する患者(および症状が消散した患者)を、消散したEoE患者とみなした。食道生検で病理組織が正常であった、食道診断歴のない嚥下障害を提示した者を対照とみなした。
【0136】
食道分泌物の収集。食道擦過物を、上部内視鏡中に、食道生検の前に得た。Cook medical cytobrush(Cook Medical、Indianapolis,IN)を内視鏡にとおし、食道の内腔に適用し、食道の遠位5cmから上部食道(歯から約15~20cm)に抜去した。次いで、ブラシを除去し、さらなる評価まで-70℃で瞬間凍結させた。
【0137】
除去食にある患者の臨床経過。臨床ケアの一環として食物排除食を選択したEoE患者をモニタリングし、食物誘因を記録した。食物誘因は、除去により好酸球増多が15好酸球/HPF未満に低下したもの(単一食物除去を受けている患者)、または再導入により消散後に食道好酸球増多が15好酸球/HPF超となったもの(複数の食物除去)として記録した。標準治療には、誘因食物を特定するために、内視鏡を再び行う前に4週間の特定食物再導入が含まれる(Gonsalves N.Gastrointest Endosc Clin N Am 2018;28:89-96、およびGonsalves N,et al.Gastroenterology 2012;142:1451-9 el)。症状のみでは、患者を特定の食物に反応するものとして分類するには不十分であった。複数の食物を除去した患者については、消散後、再導入後に好酸球数を15好酸球/HPFを超えて増加させなかった食物を真陰性として特定した。再導入を完了した患者を最終分析に含めた。
【0138】
食物特異的抗体検査。ブラシを解凍し、1mlのPhadia希釈溶液(製品番号10-9498-01、Kalamazoo,MI)を用いて、時折振盪させながら約30分間浸漬して平衡化した。別の実験において、ブラシ当たりの分泌物量を、10,000RPMで1分間遠心分離することによって測定し、ブラシ当たり約21~23マイクロリットルの流体を得た。約1:50希釈でのPhadia希釈液中の抽出した食道液を、Phadia ImmunoCap試薬を用いて、コムギf1、ダイズf14、カゼインf78、およびタマゴf245の4つの食物アレルゲンに対する免疫グロブリンG4抗体および免疫グロブリンA抗体について分析した。カゼインおよびグルテンを試験に選択し、その理由は、それらが、それぞれ乳製品およびコムギに対する主な反応物であると考えられる特定の食物タンパク質であるからである。端的には、40μLの希釈した分泌物を、CAPと称される食物特異的固相抗原に加えた後、免疫グロブリンA/免疫グロブリンG4抗体共役体を洗浄して加え、洗浄を繰り返し、最後に、プロトコルに従って発生溶液を加えた。停止溶液を加え、得られた蛍光シグナル(応答値)を測定した。1:50希釈からの濃度測定の限界に起因して、応答値を測定し報告した。結果を応答値としてリスト列記する。アッセイの検証のため、低域および高域の対照試料を各分析に含めた。参加者は、グルテン、カゼイン、ダイズ、タマゴに対する食物特異的抗体について、免疫グロブリンG4および免疫グロブリンA分析両方の分析を受け、Immunocapシステムを使用して検出した応答値を報告する。
【0139】
統計解析。応答値についての群間の比較を、評価した群に応じてANOVAおよびマンホイットニーU検定を介して行った。食物誘因を評価するために、食物除去試験を受けた患者について、EoEを誘発する食物(真陽性)およびEoEを誘発しなかった食物(真陰性)を決定した。収集した体積が個人間で異なることを考慮に入れ、その後の有効な比較を維持するために、免疫グロブリンG4および免疫グロブリンAの応答値を個人内で標準化した(平均がゼロであり、標準偏差が1であるように新たにスケーリングした)。各個人の食物誘因を特定するために、グルテン、ダイズ、カゼイン、およびタマゴについての標準化した免疫グロブリンG4および免疫グロブリンAの応答値に対してヒートマップを使用し、事後確率的ロジスティック回帰モデルによって結果を確認した。群間のカテゴリー変数および定量的変数の差の統計的有意性を、それぞれフィッシャーの直接確率検定およびマンホイットニーU検定を使用して評価した。
【0140】
結果:患者の特性。内視鏡時に68人の患者を登録し、食道生検の前に首尾よく食道擦過を受けさせた。人口統計を表1に示す。12人の対照参加者は、嚥下障害を有したが、併発する全身性自己免疫性疾患またはアレルギー性疾患はなく、生検での病理組織は正常であった。13人の消散したEoEの患者は、以前の生検では15好酸球/HPF超を示したのに対して、15未満の好酸球/HPFを示し、消散した患者は、局所ステロイド(n=3)、プロトンポンプ阻害剤(n=3)、または食物除去食(n=7)で治療された。残りの登録患者は、活性なEoEの基準を満たした。
【0141】
表1:総コホートの人口統計。活性な好酸球性食道炎(EoE:15超の好酸球/HPFおよび食道症状)を有する43人の患者を登録し、17人が食物除去食および再導入食を完了した。13人の患者が治療を受け、症状の消散を伴う15未満の好酸球/HPFであり、消散した好酸球性食道炎(消散したEoE)の患者である。12人の患者は嚥下障害を有していたが、食道生検は正常であり、これらの患者は対照である。
【表1】
【0142】
活性なEoE患者は、食物特異的免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4を示す。食道分泌物の分析により、図1および図2にそれぞれ示されるように、免疫グロブリンA応答および免疫グロブリンG4応答の存在が明らかになった。全体として、EoE患者は、対照と比較したときに、検査にわたって、免疫グロブリンA応答および免疫グロブリンG4応答のレベルが増加した(免疫グロブリンAについて、327±380対150±130、および免疫グロブリンG4について、1534±3346対178±123、両方ともp<0.003)。各個人群間を比較すると、活性なEoE患者は、平均して、消散したEoE患者と比較して、カゼイン(p<0.001)、グルテン(p<0.001)、ダイズ(p<0.001)、およびタマゴ(p<0.008)に対する免疫グロブリンA応答の値が大きかった。活性なEoEの参加者は、対照と比較して、グルテン(p<0.001)、カゼイン(p<0.001)に対する免疫グロブリンA応答値が大きかったが、ダイズ(p=0.223)およびタマゴ(p=0.379)についての応答値は、対照と有意に異なるものではなかった。活性なEoEの参加者は、消散したEoEおよび対照と比較したとき、すべての食物に対してより高いレベルの免疫グロブリンG4応答を示した(表2)。
【表2】
【0143】
除去食により、17人の患者で誘因食物が特定される。合計で27人の患者に、食物除去食を試した。7人の患者は、選択した除去食に失敗し、追加の食物除去に進まなかった(3人が6つ(以上)の食物除去食に失敗し、2人が2つの食物除去に失敗し、2人が1つの食物除去に失敗した)。3人の患者が6つの食物除去食に応答したが、すべての食物の再導入に失敗した。
【0144】
合計で17人の患者が、選択した食事試験をすべて完了した。5人の患者が単一食物の除去を受け、誘因食物としての単一の除外された食物が関与する食道好酸球増多が消散した。残りの12人の患者は、複数の食物を食事から除去することを選択した。誘因食物は、疾患の最初の消散後にその1つの特定の食物群を再導入した後で症状および食道好酸球増多が戻ったときに、特定した。好酸球数は、食物除去前は平均で60.5好酸球/HPF(標準32.1)であったのに対し、その後では、好酸球数は、平均6.2好酸球/HPF(標準4.1)(p<0.001)であった(図3)。加えて、食物除去食により、浮腫、輪、滲出液、溝、および狭窄を評価する内視鏡参照スコアが改善し、食事前は4.5(標準1.9)と高かったものが食事後は2(標準1.6)に変化した(p<0.001)。狭窄は、食事とともに消散する可能性が低かった。食物誘因は、コムギ(n=9)、乳製品(n=4)、またはその両方(n=4)のいずれかであった。1人の患者は、「反応」を理由に、検査前に豚肉および牛肉を除去した。別の患者は、好酸球/HPFが15超の食道好酸球増多を伴って、鶏肉および米の再導入に反応した。最後に、追加の患者がタマゴの再導入時に気分を悪くしたが、食道好酸球増多の発症はなかった(8好酸球/HPF)。
【0145】
免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4食物特異的抗体反応性は、誘因食物に対して増加する。食物除去試験に成功した17人の患者の免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体のレベルを、表3ならびに図4および図5に示す。EoEの誘因であることが判明した食物(誘因食物)は、免疫グロブリンA抗体値が非誘因食物食品よりも大きかった(733±469対142±64、p<0.001)。コムギが誘因食物である参加者は、グルテンに対する免疫グロブリンA抗体値が、コムギが誘因食物でない患者よりも高かった(707±430対185±80、p<0.004)。乳製品が誘因である参加者は、カゼインに対する免疫グロブリンA抗体値が、乳製品が誘因でない参加者よりも大きかった(859±515対197±94、p<0.021)。
【0146】
表3.食物除去食および再導入食を完了した17人の患者における、グルテン、ダイズ、カゼイン、およびタマゴ対する免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4抗体レベル。ほとんどの誘因食物は、免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4に対して高いレベルを示した。患者内および患者間の免疫グロブリンG4の変動は、全コホートに対して解釈を困難にした。誘因食物に対する免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4抗体レベルは、表中で太字にする。*測定は、免疫蛍光応答性(すなわち、応答値)に基づく。
【表3】
【0147】
誘因食物はまた、非誘因食品よりも大きい免疫グロブリンG4応答値を生じさせた(2620±3228対526±1050、p<0.001)。しかしながら、免疫グロブリンG4抗体レベルをグルテンと具体的に比較すると、コムギ誘因を有する参加者は、コムギが誘因食物でなかった参加者と有意に異ならなかった(2988±4097対936±908、p<0.25)。乳製品誘因を有する参加者は、カゼインに対する応答が、乳製品誘因を有しない参加者と有意に異ならず(2349±2000対976±1818、p<0.49)、これは、免疫グロブリンG4応答に見られる高い変動性に起因する可能性がある。
【0148】
免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4応答の上昇による誘因として関与した食品。17人の患者において、合計21個の食物誘因を特定した(表2)。患者間の応答値に有意な変動が生じたが、免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4についての抗体応答がより高いことにより、食物誘因はほぼ常に特定された。免疫グロブリンA応答については、21例中19例において、食物誘因は、最大応答値(または2つの食物誘因の場合、上位2つの最大応答値)を示した。免疫グロブリンG4応答については、患者にわたっておよび患者間でかなりの変動があったものの、21個中20個の食物誘因により、上位の応答値が得られた。このため、ほとんどの食物誘因が、免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4の両方に対する陽性応答によって特定された。免疫グロブリンAは、EoEを引き起こす原因となる食物の識別において最も正確に働いた。ヒートマップの事後ロジスティック回帰分析(図4bおよび図4d)では、免疫グロブリンAの結果に従い、17個中1つの誤分類(すなわち、94.1%の正しい分類)が誘因食物としてのコムギについて見出され、2つが乳製品について見出され(すなわち、88.2%の正しい分類)、2つがコムギ/乳製品について見出された(すなわち、88.2%の正しい分類)ことが確認され、高い分類能力が示された。
【0149】
上部内視鏡時に3人の患者から収集し、検査した、唾液、血清、および食道分泌物。免疫グロブリン応答比は、3つの異なる供給源の間で異なっており、食道収集物が、血液または唾液の汚染に大きく影響を受けなかったことが示された(図9)。
【0150】
活性なEoE群の患者の経過観察を、患者が食事に関する経過観察内視鏡に参加したときに記録し、免疫グロブリンAと免疫グロブリンG4との両方の検査を患者の擦過物に行った。検査した3つの症例では、食物特異的抗体は、疾患の消散と平行して減少するように見受けられた(表4)。
【0151】
表4.3人の患者が、好酸球増多が消散した(15好酸球/HPF未満)ときに、食物除去食前後の食道サンプリングを受けた。食物抗体応答値は、疾患の消散および/または食物の除去とともに減少するように見受けられた。患者1は、コムギおよび乳製品除去を受けた後にサンプリングされた。患者2は、乳製品、エンドウ豆、豆類、果物、野菜の除去後に(皮膚IgE試験に基づいて)繰り返しのサンプリングを受けた。患者3は、第2のサンプリングの前に乳製品除去を受けた。患者4は、第2のサンプリング時に食道用局所ステロイドを使用していた。
【表4】
【0152】
考察:現在、好酸球性食道炎における食物誘因の正確な検査は利用可能ではなく、患者および医師の不満につながっている(Anyane-Yeboa A,et al.The Role of Allergy Testing in Eosinophilic Esophagitis. Gastroenterol Hepatol(N Y)2018;14:463-469、Philpott H,et al.Aliment Pharmacol Ther 2016;44:223-33、Aceves SS.Clin Gastroenterol Hepatol 2014;12:1216-23、およびAssa’ad A.Ann Allergy Asthma Immunol 2005;95:309-11)。皮膚プリック検査は、良好に行われた食事除去試験で20%未満の精度であったことが見出された(Gonsalves N.Gastrointest Endosc Clin N Am 2018;28:89-96、およびGonsalves N,et al.Gastroenterology 2012;142:1451-9)。食道は、B細胞スイッチングによる局所免疫応答を発現し得ることが推測されている(Turnbull JL,et al.Aliment Pharmacol Ther 2015;41:3-25)。この理論は、皮膚プリック検査が食道の誘因を反映しない可能性がある理由を説明し得る。Warnersらは、内視鏡中にEoEの患者の食道にある食物にプリック検査を行うことによって、この仮説を試験した。この試験により、食道は、特定の抗原に対する即時型応答が可能であることが実証された(Warners MJ,et al.Gastroenterology 2018;154:57-60 e2、およびWarners MJ,et al.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2017;313:G230-G238)。免疫グロブリンEに関係する可能性のあるそのような食道応答は、皮膚プリック検査で特定されたものとは異なった。しかしながら、この局所的検査が、原因となる誘因を特定する能力を有するかどうかは未だ不明である(Blanchard C,et al.J Intern Med 2017;281:448-457)。EoE患者をオマリズマブ(Xolair)で治療した以前の研究は、EoEの食道好酸球増多の低下に失敗しており、免疫グロブリンE応答性がEoEの病態生理学において重要であるという考えに水を差すものであった(Philpott H,et al.Aliment Pharmacol Ther 2016;44:223-33)。免疫グロブリンG4は、EoEの食道粘膜において高度に上方調節され、疾患を誘発する抗原に対する原因応答を反映し得る(Clayton F,et al.Gastroenterology 2014;147:602-9)。しかしながら、いくつかの研究では、食物特異的免疫グロブリンG4について検査した食道組織ホモジネートおよび血清は、原因抗原を正確に予測しなかったことが見出された(Wright BL,et al.J Allergy Clin Immunol 2016;138:1190-1192、Bjorksten B,et al.Allergy 1983;38:119-24、Guhsl EE,et al.Allergy 2015;70:59-66、McGowan EC,et al.Ann Allergy Asthma Immunol 2019、Pope AE,et al.J Pediatr Gastroenterol Nutr 2019;68:689-694、およびSchuyler AJ,et al.J Allergy Clin Immunol 2018;142:139-148).最近の研究は、末梢CD4+T細胞増殖を食道組織免疫グロブリンG4食物特異的検出と組み合わせて、食物除去を管理した。この結果は、患者の改善につながったが、消散は僅かであった(McGowan EC,et al.Ann Allergy Asthma Immunol 2019)。これらの結果は、EoEの粘膜における免疫グロブリンG4の斑状の性質に影響された可能性がある。免疫グロブリンG4の存在は、食道粘膜全体にわたって変動し、単一生検からのホモジネートにおいて正確に反映されない可能性がある。しかしながら、免疫グロブリン検査により、特にEoEの粘膜内の食物アレルゲンを特定した最近のデータを踏まえると、EoEにおける食物誘因に対する答えが提供され得る(Philpott H,Dellon ES.Gastroenterology 2017;153:605-606)。
【0153】
より広範な表面サンプリングを行うために、EoEを有する患者の罹患した食道から得られた擦過物を分析すると、結果は、食道表面に沿って得られた食道分泌物中で、特定の食物に対する免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4のレベルが上昇したことを示唆する。さらに、これらの食物特異的免疫グロブリンにより、88.2%~94.1%の範囲の高い分類能力で、EoE患者における食物誘因が特定された。加えて、結果は、免疫グロブリンA抗体および免疫グロブリンG4抗体が、消散したEoEおよび対照の患者における正常な粘膜分泌物中では実質的に上昇せず、むしろ活性な好酸球性疾患自体と密接に関連しているように見受けられることを示す。食物特異的抗体は、疾患が(局所ステロイドまたは食事により)消散した後では容易に検出されない。活性なEoEと消散したEoEとの間の図1および図2における結果により、消散した患者の食物抗原について、最小限の免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4抗体レベルが示されていることに注目されたい。加えて、局所的に産生された食物特異的抗体は、血漿または唾液によって著しく汚染されないと考えられる。このため、EoEにある罹患した食道に由来する食道擦過物は、貴重な情報を含み、原因抗原を特定するのに有用であり得る。食事療法の前後に3人の患者を追跡したが、これらのデータは、疾患が食事で管理されているときに、食物特異的抗体が減少するように見受けられることを示唆する。しかしながら、食物特異的抗体の発現が、積極的食物摂取量および/または活性な疾患に依存するかどうかは依然として不明である。
【0154】
罹患した食道内腔に沿って見出される食物特異的抗体である免疫グロブリンAは、免疫グロブリンG4応答よりも良好に、誘因食物(食道炎症を引き起こす食物)を非誘因食物と区別するように見受けられる。これは、比較的小さなコホートにおいて免疫グロブリンG4応答の変動性が大きいことに起因し得る。加えて、食物(特に乳製品)に対する免疫グロブリンG4は、食物アレルギーのあるコホートまたはないコホートの両方の血清中で共通して増加する(Schuyler AJ,et al.J Allergy Clin Immunol 2018;142:139-148)。このため、免疫グロブリンG4応答が、誘因食物を示すことなく発生し得るというのは妥当である。しかしながら、興味深いことに、免疫グロブリンG4食物特異的抗体応答は、他の食物と比較して、誘因食物に対して最も際立って上昇した。全体として、免疫グロブリンA応答値は、サンプリング時に変動性が低く、EoEの原因ではなかった食物と比較して、EoEの原因に関与する食物に対して有意に高かった。
【0155】
血漿または唾液からの食道収集物の汚染も検査した(図9)。炎症を起こした食道内腔は、炎症中の血漿溢出に由来するタンパク質、および唾液分泌物に由来する汚染を含み得る。唾液には豊富な免疫グロブリンAが含まれ、アッセイを妨げる可能性がある。食物特異的免疫グロブリン発現は、療法のモダリティ(プロトンポンプ阻害剤、局所ステロイド、除去食)にかかわらず、疾患の消散後に食物内腔で減少し、これは、唾液汚染に異議を唱えるものであった。
【0156】
本明細書に記載される試験は、そのサンプルサイズが小さいことによって制限されるが、結果は、コムギおよび乳製品によって誘発されたEoEを有する患者が、診断感度の意義のある計算に十分な数で本試験に存在することを示す。さらに、この試験は、食物特異的免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4に限定され、他の免疫グロブリンは試験しなかった。総免疫グロブリンAを試験し、免疫グロブリンA1と免疫グロブリンA2とは区別しなかった。そうであっても、最初のアッセイは、コムギ誘因および乳製品誘因を区別し、それらを重要であると特定するように見受けられる。EoE患者は、概して、EoEを引き起こさない食物についてであっても、対照よりも免疫応答性が高いように見受けられた。EoE患者におけるダイズおよびタマゴ(非誘因食物)に対する免疫グロブリンA応答値は、対照と有意に異ならなかった。しかしながら、これらの同じ非誘因食物に対する免疫グロブリンG4応答は、対照と比較してEoEにおいて増加した。これは、EoE患者自身の間で見られる免疫グロブリンG4応答の高い変動性に関係し得る。免疫グロブリンG4検査は、患者内および患者間で高度に変動性であり、これにより、免疫グロブリンAと比較した免疫グロブリンG4応答について患者間の全体的な比較が困難となった。
【0157】
免疫グロブリンG4は、EoEにおいて最近特定された既知の抗体である。免疫グロブリンG4は、EoEにおける組織学的特徴と相関することが示されている(Pope AE,et al.J Pediatr Gastroenterol Nutr 2019;68:689-694、およびRosenberg CE,et al.Allergy 2018;73:1892-1901)。免疫グロブリンAは、粘膜において最も豊富な免疫グロブリンであり、これは、粘膜中で、摂取された抗原の免疫排除をとおして活性障壁として作用する。アレルギーにおけるその役割は未だ不明である。免疫グロブリンAは、EoEの保護機序として作用し、組織に浸潤する前にアレルゲンに結合し得る(Turnbull JL,et al.Aliment Pharmacol Ther 2015;41:3-25)。しかしながら、免疫グロブリンAは、好酸球を活性化し、脱顆粒を誘導することが示されているため、疾患の病因にも寄与し得る(Motegi Y,et al.Int Arch Allergy Immunol 2000;122 Suppl 1:25-7、およびMuraki M,et al.Int Arch Allergy Immunol 2011;154:119-27)。
【0158】
要約すると、これらの所見により、好酸球性食道炎からの擦過物における食物に対する抗体の測定を使用して、好酸球性食道炎の食物誘因を特定することができるという結論が支持される。さらに、食物に対する低い抗体応答値は、EoE治療成功のマーカーとして機能し得る。本明細書に記載される結果は、食道が、疾患プロセスに関係する抗原に対する検出可能な局所免疫グロブリンを分泌すること、および本明細書に開示される方法が、EoEを有する患者の免疫学的検査として使用され得ることを示唆する。
【0159】
実施例2:抗原に対する抗体の特異的産生は疾患自体から発生する
背景技術。好酸球性食道炎(EoE)は、あらゆる年齢群において、生活の質の低下、嚥下障害、および食塊閉塞の一般的な原因としてますます認識されてきている。食物抗原は、除外食後の疾患の消散によって証明されるように、小児集団と成人集団との両方においてEoEの病因および増悪に関与している。
【0160】
食物特異的抗体は、好酸球性食道炎の罹患食道から発現され、食道における炎症を引き起こしている食物を特定できることが示されている。食物特異的抗体が疾患の領域において容易に再現可能であるかどうかは不明なままである。加えて、食物特異的抗体が疾患のある領域と疾患のない領域との間で異なっていたかどうかは決定されておらず、疾患自体による抗体の局所的産生に異議を唱える。罹患した食道表面に沿って2回の検査を試料に行った(結果が罹患した表面に沿って複製され得ることを実証するため)。他の検査には、活性な疾患が組織内に存在するかどうかによる、食物に対する応答性および応答の大きさの比較が含まれた(生検で15超の好酸球/HPF)。
【0161】
方法。この研究は、食物特異的免疫グロブリンAおよび免疫グロブリンG4抗体産生(食物特異的抗体(FSA)-IgAおよびFSA-IgG4)が、活性な好酸球性疾患の領域と不活性な好酸球性疾患の領域との間で異なるかどうかを試験するように設計した。患者は、嚥下障害のための上部内視鏡または既知のEoEのモニタリングに参加した際の食道の1回限りのサンプリングに同意した。食道擦過物を、上部内視鏡中に、食道生検の前に得た。Cook medical cytobrush(Cook Medical、Indianapolis,IN)を内視鏡にとおし、食道の内腔に適用し、内視鏡により活性とされる疾患の領域上、続いて食道中で異なる程度の疾患が見受けられた場合は不活性な疾患の領域上で擦過を行った。食道全体が関与する場合、2つの擦過を活性な疾患に適用して食物特異的抗体の測定値が疾患内で上下したか、または類似の再現性のある結果をもたらしたかどうかを決定した。次いで、ブラシを除去し、さらなる評価まで-70℃で瞬間凍結させた。病理組織学的検査(すなわち、好酸球数)を、サンプリングした各領域について記録した。
【0162】
食道分泌物の収集。食道擦過物を、上部内視鏡中に、食道生検の前に得た。Cook medical cytobrush(Cook Medical、Indianapolis,IN)を内視鏡にとおし、食道の内腔に適用し、食道の遠位5cmから上部食道(歯から約15~20cm)に抜去した。次いで、ブラシを除去し、さらなる評価まで-70℃で瞬間凍結させた。
【0163】
食物特異的抗体検査。食物特異的抗体試験は、本明細書に記載のように行った。端的には、ブラシを解凍し、1mlのPhadia希釈溶液(製品番号10-9498-01、Kalamazoo,MI)を用いて、時折振盪させながら約30分間浸漬して平衡化した。端的には、40μLの希釈した分泌物を、CAPと称される食物特異的固相抗原に加えた後、免疫グロブリンA/免疫グロブリンG4抗体共役体を洗浄して加え、洗浄を繰り返し、最後に、プロトコルに従って発生溶液を加えた。停止溶液を加え、得られた蛍光シグナル(応答値)を測定した。1:50希釈からの濃度測定の限界に起因して、応答値を測定し報告した。結果を応答値としてリスト列記する。アッセイの検証のため、低域および高域の対照試料を各分析に含めた。
【0164】
結果。図6および図7は、食道中の罹患した領域に沿って摂取した食物特異的IgAおよびIgG4の両方を表す。グラフは、食道中の活性な疾患の領域でサンプリングした2つの異なる擦過物の結果を表す。図6のグラフに示すように、食物抗原についての食物抗体比は、患者当りの各擦過物間で類似しているように見受けられる。食物特異的抗体比は、疾患の領域に沿って摂取した場合に比較的安定している。図7では、各患者の2つの擦過物を、(1)組織学的に陽性の疾患の領域(15超の好酸球/HPF)と、(2)より少ない疾患の領域(7未満の好酸球/HPF未満)との異なる領域で採取した。図7Aでは、カゼインと他の食物とについての食物特異的IgA(FSA-IgA)の比率は、より少ない疾患の領域(右)と比較して、疾患の領域(左)においてはるかに大きい。
【0165】
図7Bでは、IgG4は、疾患領域(25好酸球)と非疾患領域(4好酸球)との間で、食物抗原に対するその親和性が変化するようであり、これが疾患自体によって直接産生され得ることを示唆する。
【0166】
図7Bは、疾患のない領域(1好酸球)と比較して、疾患の領域(22好酸球)におけるカゼインおよびタマゴについてのIgG4の劇的な増加を示す。図7Dは、疾患の領域(22好酸球)と疾患のない領域(1好酸球)との間の免疫グロブリンAタマゴのいくらかの変動を示す。IgAは、食物抗原に対するその親和性があまり変化しないように見受けられるが、疾患が存在するか存在しないかによって、依然としてその提示が変化する。
【0167】
これらの結果は、IgAが、疾患のない領域においてであっても、食物誘因をより示し得ることを示唆している。IgG4は、疾患が存在するか存在しないかによって、顕著に変化するように見受けられる。IgAは応答の強度も上下し、免疫グロブリンが粘膜ではなく疾患自体によって産生され得ることを示す。
【0168】
結論として、食物特異的抗体検査は、好酸球性食道炎を有する患者の疾患の領域から直接サンプリングされた場合に、再現性がある。しかしながら、免疫グロブリンA抗原と免疫グロブリンG4抗原との両方の検査からの結果は、サンプリングが疾患組織または健康な組織のどちらで生じるかによって変化するように見受けられる。これは、抗原に対する抗体の特異的産生が疾患自体から発現し、通常の粘膜応答を反映しないことを示唆する。正確な食物抗原検査を得るには、食物特異的抗体を疾患組織から確実に採取する必要がある。
【0169】
実施例3:疾患食道分泌物中のタンパク質バイオマーカーは、好酸球性食道炎のための実現可能なコストおよび侵襲性の低い診断モダリティである
EoEには、非侵襲性の診断バイオマーカーが必要である。
【0170】
序文。好酸球性食道炎(EoE)は、非IgE過敏症の一形態によって支配される慢性炎症状態である。最近の文献により、小児および成人のEoE発生率は急速に上昇していることが示されている(J Robson,et al.Clinical Gastroenterology and Hepatology,17(1):107-114.e1,January 2019)。EoE症状は治療により改善することが多いが、疾患活性は持続し、食道線維症の一因となる可能性がある(ES Dellon,et al.Gastrointestinal Endoscopy,79(4):577-585.e4,2014)。
【0171】
治療に応答してEoE活性を追跡するための非侵襲性バイオマーカーは、現在臨床診療には適用されていない。したがって、患者は生検を伴う頻繁な内視鏡に同意する。内視鏡は鎮静を必要とし、手技上のリスクを伴い、米国における年間のEoEに起因する医療費のうち推定14億ドルの要因となっている(ET Jensen,et al.The American journal of gastroenterology,110(5):626-632,May 2015)。内視鏡の負担は、推奨されるEoE疾患監視の相当な不順守につながる可能性が高い。安価で侵襲性の低いEoEの診断および追跡モダリティが必要である。
【0172】
最近の研究では、RNA配列解析および機械学習を使用して、EoE診断ツールを作成し、特定のEoE表現型を特定している(BF Sallis,et al.The Journal of allergy and clinical immunology,141(4):1354-1364.e9,April 2018)。タンパク質転写産物を用いてEoE遺伝子を特異的に標的化した機械学習アルゴリズムを使用して、EoE遺伝子を特定するデータが本明細書に記載される。食道分泌物は、内視鏡と比較して、患者に対しかなり低い費用およびリスクで、患者が覚醒した状態で、確実に得ることができる(H Saffari,et al.The American journal of gastroenterology,111(7):933-939,July 2016)。発現したタンパク質が食道管腔分泌物中で収集され得るか、および活性なEoE、治療により消散したEoE、および対照の患者を区別するために使用され得るかどうかを評価した。
【0173】
方法。トランスクリプトーム解析を介した可能性のあるバイオマーカーの特定。EoEのためのバイオマーカー候補をハイスループットで発見するため、14人のEoE患者および14人の対照からのRNA配列データを分析した。〔6]機械学習アルゴリズムの一種である決定木を、転写産物/百万リード(TPM)で測定した遺伝子発現値に適合させた。5倍の交差検証を使用して、各遺伝子の診断精度を評価した。診断精度が100%であり、遺伝子が市販のアッセイを使用して測定できる分泌タンパク質産物をコードするという基準が満たされた場合、遺伝子をバイオマーカー候補として指定した。
【0174】
食道分泌物中のバイオマーカーの検証。バイオマーカー候補の診断精度を、食道分泌物中のタンパク質レベルで評価した。活性なEoE(EoE)を有する患者5人、治療により消散したEoE(消散)を有する患者6人、および対照6人(対照)からの食道分泌物を、内視鏡細胞ブラシを使用して得た。Luminex 23-サイトカインパネルを使用して、各試料についてタンパク質発現をアッセイした。
【0175】
結果。タンパク質バイオマーカーをコードする遺伝子を、エオタキシン-3をコードするCCL26、幹細胞因子(SCF)をコードするKITLG、およびペリオスチンをコードするPOSTNを含むトランスクリプトーム分析を介して特定した(図8A~8C)。エオタキシン-3は、対照と比較して活性なEoE症例で高度に発現し、治療により消散したEoEと比較して活性なEoEでより高度に発現した。
【0176】
実施例4:小腸における食物特異的抗体:好酸球性食道炎(EoE)における誘因食物との関連
腹部の痛みおよび不快感を有する患者4人についての食物特異的IgAの小腸相対値を図10に示す。過敏性腸症候群(IBS)を有する患者から試料を得た。より具体的には、小腸から試料を得た。消散した好酸球性食道炎を有する2人は、小腸における応答が低いように見受けられた。消散したEoEを有する1人(左端)は、除去食の一部としてタマゴを加えると腹痛が再発したことに気づいた。この患者の腸試料は、タマゴがより強い反応物であることを示唆する。もう1人(右端)は、食事から牛乳を除くと、腹痛の80%が消散したことに気づいた。この患者の小腸は、カゼインに対する食物特異的IgAのより高い値を示した。中央の2人は、活性なEOEおよび腹痛(1人は右上腹部の痛み、もう1人は非特異的な「IBS」)を有する。両人とも、EOEが消散した患者と比較して、食物に対する食物特異的抗体が増加しており、両人とも、グルテンに対する高レベルのIgAを示した。腹部不快感のない他の患者は、消散したEOEよりもさらに低い値を有する。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
【国際調査報告】