(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-12
(54)【発明の名称】廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法及び巻きタバコにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
A24B 15/26 20060101AFI20221205BHJP
C11B 9/02 20060101ALI20221205BHJP
A24B 15/167 20200101ALI20221205BHJP
【FI】
A24B15/26
C11B9/02
A24B15/167
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531435
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2020129090
(87)【国際公開番号】W WO2021104082
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911179288.2
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522209620
【氏名又は名称】内蒙古昆明巻煙有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李力群
(72)【発明者】
【氏名】葉亜軍
(72)【発明者】
【氏名】柴穎
(72)【発明者】
【氏名】張峻松
(72)【発明者】
【氏名】陳晨
(72)【発明者】
【氏名】郭春生
(72)【発明者】
【氏名】紀旭東
(72)【発明者】
【氏名】田数
(72)【発明者】
【氏名】王旭東
(72)【発明者】
【氏名】喬月梅
(72)【発明者】
【氏名】李瑞麗
(72)【発明者】
【氏名】梁▲みゃお▼
(72)【発明者】
【氏名】張文潔
【テーマコード(参考)】
4B043
4H059
【Fターム(参考)】
4B043BA80
4B043BB22
4B043BC02
4B043BC24
4B043BC34
4H059BC23
4H059CA12
4H059CA20
4H059CA93
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
本発明は、廃棄吸い殻を抽出溶媒に投入して亜臨界抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、抽出液を真空吸引ろ過して、ろ液を減圧蒸留し、濃縮エキスを得るステップ(2)と、濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、賦香特性を有するタール抽出物を得るステップ(3)とを含む、廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法を提供する。本発明は、亜臨界抽出及び分子蒸留分離によってタール抽出物を製造し、タール内の有害物質を除去し、その賦香成分を保留するものであり、巻きタバコに用いると、巻きタバコの香気、煙及び香喫味の特性を改善し、ローエンド巻きタバコへの低品質タバコ葉の使用量を増加し、用途を広げるために有効な手段を提供する。本発明は亜臨界抽出及び分子蒸留分離の条件を最適化させることで、吸い殻からタール抽出物を高抽出率で得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、
廃棄吸い殻を抽出溶媒に投入して亜臨界抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、
抽出液を真空吸引ろ過して、ろ液を減圧蒸留し、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、賦香特性を有するタール抽出物を得るステップ(3)とを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記抽出溶媒はn-ブタン、エタノール、石油エーテル、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、廃棄吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~80mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記亜臨界抽出の条件としては、抽出圧力は0.6~1.6MPa、抽出温度は20~60℃、抽出時間は10~120min、抽出回数は1~3回である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記減圧蒸留は、温度25~45℃、圧力0.06~0.08Mpaである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、前記分子蒸留は2段階分子蒸留であり、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、
好ましくは、一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、
好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
廃棄吸い殻を前処理するステップをさらに含み、
好ましくは、前記前処理の操作は、具体的には、廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、巻紙及び残存する刻みタバコを除去し、繊維トウを収集して、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法によって製造されるタール抽出物。
【請求項8】
香料の製造における請求項7に記載のタール抽出物の使用であって、前記タール抽出物は賦香成分として香料に用いられることを特徴とする使用。
【請求項9】
巻きタバコの製造における請求項7に記載のタール抽出物の使用。
【請求項10】
巻きタバコの補助材料又は巻きタバコの再構成刻みタバコを、巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2~5%タール抽出物を添加し、
好ましくは、前記巻きタバコは伝統的な中低級巻きタバコである、ことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法及び巻きタバコにおけるその使用に関し、煙草プロセスの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
吸い殻は、巻きタバコの消費による副生物であり、主にフィルタ部、残存する刻みタバコ、巻紙、チップ紙などからなる。中国は巻きタバコを生産、消費する主な国であり、1年間あたり大量の巻きタバコが消費されており、大量の廃棄吸い殻が発生し、ポイ捨てされると、環境汚染をもたらす。また、廃棄吸い殻中に残留されるタール物質はケトン類、フラン類、ピラジン類など、官能的品質に有利な賦香成分を含むとともに、消費者の満足感を向上させ得るニコチンを含む一方、アミン類、アルデヒド類など、官能に悪い有害な物質を含有する。このため、廃棄吸い殻中のタール物質を抽出し、所定の性能や作用を有する抽出物を製造することには重要な意義がある。
【0003】
亜臨界抽出技術は、亜臨界流体を抽出溶媒として、密閉、無酸素、低圧、低温の条件で抽出を行う超臨界に次いで発展してきた新しい抽出分離技術であり、溶媒の全てが容易に回収でき、抽出生成物が酸化されにくく、利用可能な溶媒が多く、抽出圧力が低く、このため、反応装置への要件が低いなどの利点があるので、ますます注目を集めており、広く普及させている。
【0004】
CN109959649Aにおいて、化学発光性質を有する巻きタバコタール抽出物が開示されており、この巻きタバコタール抽出物の製造方法は、巻きタバコタールに試薬を加えて抽出し、巻きタバコタール抽出物を得るステップを含む。前記巻きタバコタールは、巻きタバコをパフし、生成した煙をろ過して、煙粒子状物を収集し、巻きタバコタールを得るステップによって得られる。この特許における巻きタバコタール抽出物は、自然光の条件下で開放システムにて超音波抽出により製造されるので、これに含まれる発光物質は性質が安定的であり、光、酸素や温度などの要素に敏感ではなく、この抽出物は、媒体のpH値の発光応答範囲が広く、酸性、中性又は塩基性の条件下で化学発光反応を起こすことができる。この特許における巻きタバコタールは、煙粒子状物中のタールであり、製造されたタール抽出物は発光性質を有するが、巻きタバコの吸い殻中のタールが抽出され、タール賦香成分が得られることが記載されていない。
【0005】
CN102559388Aにおいて、煙草精油、その製造方法及び巻きタバコにおけるその使用が開示されており、煙草精油は、廃棄低品質刻みタバコ→有機溶媒抽出→精油粗抽出物→水蒸気導入→凝縮→油水分離→煙草精油のような方法によって製造される。本発明の煙草精油は加香剤として巻きタバコの刻みタバコに添加されると、煙草の本来の香りをより引き出し、巻きタバコの香気の品質を高め、煙草の刺激性や雑気を減少させ、煙を柔らかくする。この特許では、巻きタバコの生産中に生じた廃棄低品質刻みタバコが原料として使用され、廃棄低品質刻みタバコ中にはタール成分が含まれていないので、巻きタバコの吸い殻の抽出プロセスが記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法を提供することである。本発明は、廃棄吸い殻を原料として、亜臨界抽出及び分子蒸留分離によって賦香特性を有するタール抽出物を得るものであり、得たタール抽出物は巻きタバコに使用されると、巻きタバコの香気を改良することができる。
【0007】
本発明に使用される原料である廃棄吸い殻は、人々が巻きタバコを消費した後に灰皿、道端などの箇所に捨てられたタバコフィルタ部であり、このため、原料が入手しやすく、低価であり、使用される廃棄吸い殻が黄色がかり、本発明では、タール含有量の高い黄色がかった吸い殻が使用される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、
廃棄吸い殻を抽出溶媒に投入して亜臨界抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、
抽出液を真空吸引ろ過して、ろ液を減圧蒸留し、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、賦香特性を有するタール抽出物を得るステップ(3)とを含む、廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法を提供する。
【0009】
好ましくは、ステップ(1)において、前記抽出溶媒はn-ブタン、エタノール、石油エーテル、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、廃棄吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~80mLである。
【0010】
好ましくは、ステップ(1)において、前記亜臨界抽出の条件としては、抽出圧力は0.6~1.6MPa、抽出温度は20~60℃、抽出時間は10~120min、抽出回数は1~3回である。より好ましくは、抽出圧力は0.7~1.2MPaであり、抽出圧力の下限値は0.8MPa、0.9MPa、1.0MPa又は1.1MPaから選択される。抽出圧力の上限値は0.8MPa、0.9MPa、1.0MPa又は1.1MPaから選択される。より好ましくは、抽出温度は30~50℃であり、抽出温度の下限値は35℃、40℃又は45℃から選択され、抽出温度の上限値は35℃、40℃又は45℃から選択される。より好ましくは、抽出時間は50~100minであり、抽出時間の下限値は60min、70min、80min又は90minから選択され、抽出時間の上限値は60min、70min、80min又は90minから選択される。
【0011】
好ましくは、ステップ(2)において、前記減圧蒸留は、温度25~45℃、圧力0.06~0.08Mpaである。
【0012】
好ましくは、ステップ(3)において、前記分子蒸留は2段階分子蒸留であり、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、
好ましくは、一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、より好ましくは、一段分子蒸留は、加熱温度60~70℃である。より好ましくは、圧力は110Pa~190Paであり、圧力の下限値は120Pa、130Pa、140Pa、150Pa、160Pa、170Pa又は180Paから選択され、圧力の上限値は120Pa、130Pa、140Pa、150Pa、160Pa、170Pa又は180Paから選択される。
【0013】
好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmである。より好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度95~105℃、圧力45~55Paであり、最も好ましくは、二段分子蒸留は、加熱温度100℃、圧力50Paである。
【0014】
好ましくは、前記方法は、廃棄吸い殻を前処理するステップをさらに含み、
好ましくは、前記前処理の操作は、具体的には、廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、巻紙及び残存する刻みタバコを除去し、繊維トウを収集して、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである。
【0015】
第2態様では、本発明はまた、前記方法によって製造されるタール抽出物を提供する。
【0016】
第3態様では、本発明はまた、香料の製造における前記タール抽出物の使用を提供し、前記タール抽出物は賦香成分として香料に用いられる。
【0017】
第4態様では、本発明はまた、巻きタバコの製造における前記タール抽出物の使用を提供する。
【0018】
好ましくは、巻きタバコの補助材料又は巻きタバコの再構成刻みタバコに、タール抽出物を巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2~5%添加し、
好ましくは、前記巻きタバコは伝統的な中低級巻きタバコである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0020】
(1)本発明は、亜臨界抽出及び分子蒸留分離によってタール抽出物を製造し、タール中の有害物質を除去し、その賦香成分を保留するものであり、巻きタバコに用いると、巻きタバコの香気、煙や香喫味の特性を改善し、ローエンド巻きタバコへの低品質タバコ葉の使用量を増やし、用途を広げるために有効な手段を提供する。
【0021】
(2)本発明は亜臨界抽出及び分子蒸留分離の条件を最適化させることで、吸い殻からタール抽出物を高抽出率で得る。しかも、本発明は、廃棄された吸い殻を原料とすることで、吸い殻による環境汚染を回避するとともに、巻きタバコの燃え副生物であるタールを資源化させる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、特定の実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は当業者が本発明の技術的解決手段を容易に理解し、本発明を実現又は使用するための説明に過ぎず、本発明の特許範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明では、特に断らない限り、使用される原料及び設備などは全て市販品として購入されてもよく、本分野で一般的に使用されるものを使用してもよい。
【0024】
実施例の方法は、特に断らない限り、本分野の一般的な方法である。
【0025】
実施例1 廃棄吸い殻を用いた賦香特性を有するタール抽出物の抽出
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、以下のステップを含む。
(1)廃棄吸い殻の前処理:廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、残存する刻みタバコ及び巻紙を除去し、繊維トウを収集して、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)亜臨界抽出タンクに処理済みの廃棄吸い殻20gを投入し、n-ブタンを800mL注入して、抽出圧力1.0MPa、抽出温度40℃で、70minかけて亜臨界抽出を1回行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を真空吸引ろ過した後、ろ液を30℃、0.07Mpaの条件下で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度60℃、圧力150Pa、供給速度400mL/h、フィルムワイプ速度250rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度100℃、圧力50Pa、供給速度400mL/h、フィルムワイプ速度250rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せて、タール抽出物を得た。
【0026】
得たタール抽出物についてGC/MS検出を行った結果、得た成分は、フルフラール、フルフリルアルコール、エチレングリコールジアセテート、1-(1,3-ジオキソラン-2-イル)アセトン、4-シクロペンテン-1,3-ジオン、メチルシクロペンテノロン、ニコチン、2(5H)-フラノン、5-メチルフルフラール、3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、メチルシクロペンテノロン、ベンジルアルコール、2,3-ジメチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-エチル-2-ヒドロキシ-2-シクロペンテン-1-オン、5-ヒドロキシメチルフルフラール、バニリン、メガスチグマトリエノンA、2,4,4-トリメチルペンタン-1,3-ジイルビス(2-メチルプロピオネート)、ファルネソール、1-ブチル-2-イソブチルフタレート、スコポレチン、トリブチルプロパ-1-エン-1,2,3-トリカルボキシレートである。
【0027】
GC/MS条件:
HP6890-5973ガスクロマトグラフ質量分析計
(1)GC条件:
カラム:ULTRA2(50m×0.2mm i.d×0.33μm d.f.)
検出器:MS
キャリアガス、流量:He、0.6ml/min
サンプル注入口温度:290℃
昇温プログラム:80℃(1min)2℃/min→280℃(10min)
スプリット比、サンプル注入量:1:10、2μl
(2)GC/MS条件:
GC条件:同上
移送ライン温度:230℃
イオン源温度:230℃
イオン化エネルギー:70eV
質量範囲:30~350u
キャリアガス:He
MSスペクトル:NISTライブラリ
【0028】
実施例2 タール抽出物の巻きタバコへの使用
実施例1で製造された巻きタバコタール抽出物を、巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2%の割合で巻きタバコの吸い口に添加し、タール賦香成分が添加された巻きタバコサンプルAを製造した。
【0029】
実施例1で製造された巻きタバコタール抽出物を、巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2%の割合で巻きタバコの刻みタバコに添加し、タール賦香成分が添加された巻きタバコサンプルBを製造した。
【0030】
実施例1で製造された巻きタバコタール抽出物を、巻きタバコのタバコロッドの重量に対して3%の割合で巻きタバコの刻みタバコに添加し、タール賦香成分が添加された巻きタバコサンプルCを製造した。
【0031】
上記態様で製造された巻きタバコサンプル及びタール賦香成分が添加されていない巻きタバコについて、(20±1)℃、相対湿度(60±3)%の恒温恒湿環境で24h平衡化した後、10名以上の喫煙評価者に煙草製品の官能評価方法(YC/T 415-2011)を参照して、巻きタバコサンプルについて官能評価を行ってもらい、評価結果を表1に示す。
【0032】
【0033】
表1に示すように、対照群に比べて、本発明の実施例で製造されたタール抽出物が添加されると、程度が異なるが、巻きタバコの煙特性、香気特性及び香喫味特性が全て向上し、その中でも、巻きタバコの香気質、香気量が明らかに向上し、雑気が減少し、煙濃度が向上し、強さが高まり、繊細さ及び集まり性が全て改善され、刺激性が弱まり、乾燥感が低下し、後甘味が向上した。本発明の実施例で製造されるタール抽出物が添加されることによって、巻きタバコの官能的品質を効果的に向上させ、中低級巻きタバコへの低品質タバコ葉の使用量を増やし、使用範囲を広げるために有効な手段を提供した。
【0034】
実施例3 製造方法の条件の選択
1、抽出圧力の選択
処理済みの廃棄吸い殻20gを秤量して、亜臨界抽出タンクに投入した後、抽出タンクにn-ブタン800mLを注入し、抽出温度を40℃として、それぞれ0.6MPa、0.8MPa、1.0MPa、1.2MPaの抽出圧力で廃棄吸い殻について亜臨界抽出を70minかけて1回行い、各抽出圧力による抽出効果への影響を比較して分析し、検出結果を表2に示す。表2から分かるように、1.0MPaの場合、抽出効果は最も良好である。
【0035】
【0036】
2、亜臨界抽出温度の選択
処理済みの廃棄吸い殻20gを秤量して、亜臨界抽出タンクに投入した後、抽出タンクにn-ブタン800mLを注入し、抽出圧力を1.0MPaに設定して、それぞれ30℃、35℃、40℃、45℃の抽出温度で廃棄吸い殻について亜臨界抽出を70minかけて1回行い、各抽出温度による抽出効果への影響を比較して分析し、検出結果を表3に示す。表3に示すように、40℃の場合、抽出効果は最も良好である。
【0037】
【0038】
実施例4
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、以下のステップを含む。
(1)廃棄吸い殻の前処理:廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、残存する刻みタバコ及び巻紙を除去し、繊維トウを収集して、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)亜臨界抽出タンクに処理済みの廃棄吸い殻20gを投入し、石油エーテル100mLを注入し、抽出圧力1.0MPa、抽出温度40℃で、10minかけて亜臨界抽出を3回行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を真空吸引ろ過した後、ろ液を25℃、0.08Mpaの条件下で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度50℃、圧力200Pa、供給速度600mL/h、フィルムワイプ速度300rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度90℃、圧力60Pa、供給速度600mL/h、フィルムワイプ速度300rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せて、タール抽出物を得た。
【0039】
実施例5
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、以下のステップを含む。
(1)廃棄吸い殻の前処理:廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、残存する刻みタバコ及び巻紙を除去し、繊維トウを収集して、トウを長さ1cm未満のサイズに断裁した。
(2)亜臨界抽出タンクに処理済みの廃棄吸い殻20gを投入し、無水エタノール1.6Lを注入し、抽出圧力1.0MPa、抽出温度40℃で、100minかけて亜臨界抽出を1回行い、抽出液を得た。
(3)抽出液を真空吸引ろ過した後、ろ液を45℃、0.06Mpaの条件下で減圧蒸留し、濃縮エキスを得た。
(4)濃縮エキスについて2段階分子蒸留を行い、一段分子蒸留では、加熱温度80℃、圧力100Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、二段分子蒸留では、加熱温度110℃、圧力40Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せて、タール抽出物を得た。
【0040】
実施例6
実施例5に比べて、該実施例6では、ステップ(4)において、濃縮エキスについて一段分子蒸留を行い、分子蒸留では、加熱温度80℃、圧力100Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、タール抽出物を得る点が異なる。残りは実施例5の方法のステップと同様であった。
【0041】
実施例7
実施例5に比べて、該実施例7では、ステップ(4)において、濃縮エキスについて一段分子蒸留を行い、分子蒸留では、加熱温度110℃、圧力40Pa、供給速度300mL/h、フィルムワイプ速度200rpmとし、タール抽出物を得る点が異なる。残りは実施例5の方法のステップと同様であった。
【0042】
本発明の実施例4~7で製造されたタール抽出物の種類及び含有量を測定した結果、実施例4~5で製造されたタール抽出物は、種類が実施例6~7で製造されたタール抽出物の種類よりも多く、含有量が実施例6~7で製造されたタール抽出物の含有量よりも高いことが明らかになった。
【0043】
本発明の実施例4~7で製造されたタール抽出物を、それぞれ巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2%の割合で巻きタバコの刻みタバコに添加し、巻きタバコサンプル4#、巻きタバコサンプル5#、巻きタバコサンプル6#、及び巻きタバコサンプル7#を製造した。巻きタバコサンプルを(20±1)℃、相対湿度(60±3)%の恒温恒湿環境で24h平衡化した後、20名以上の喫煙評価者に煙草製品官能評価方法(YC/T 415-2011)を参照して、巻きタバコサンプルについて官能評価を行ってもらい、評価結果を表4に示す。
【0044】
【0045】
表4の結果から分かるように、本発明の実施例で製造されたタール抽出物が巻きタバコに添加されると、程度が異なるが、巻きタバコの香気特性、煙特性及び香喫味特性の全てを改善し、巻きタバコの官能的品質を効果的に向上させ、中低級巻きタバコにおける低品質タバコ葉の使用量を増やし、用途を広げるために有効な手段を提供した。
【0046】
以上は、本願の実施例に過ぎず、本願の特許範囲はこれらの特定の実施例により限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲により定められる。当業者にとっては、本願のさまざまな変更や変化が可能である。本願の技術的構想及び原理を逸脱することなく行われる修正、同等置換、改良などは、本願の特許範囲に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、
廃棄吸い殻を抽出溶媒に投入して亜臨界抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、
ここで、前記抽出溶媒はn-ブタン、エタノール、石油エーテル、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、前記亜臨界抽出の条件としては、抽出圧力は0.6~1.6MPa、抽出温度は20~60℃、抽出時間は10~120min、抽出回数は1~3回であり、
抽出液を真空吸引ろ過して、ろ液を減圧蒸留し、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、賦香特性を有するタール抽出物を得るステップ(3)とを含
み、
ステップ(3)において、前記分子蒸留は2段階分子蒸留であり、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、
一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、
二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、
当該方法は、
廃棄吸い殻を前処理するステップをさらに含み、
前記前処理の操作は、具体的には、廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、巻紙及び残存する刻みタバコを除去し、繊維トウを収集して、繊維トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである、方法。
【請求項2】
廃棄吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~80mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記減圧蒸留は、温度25~45℃、圧力0.06~0.08Mpaである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法によって製造されるタール抽出物。
【請求項5】
香料の製造における請求項
4に記載のタール抽出物の使用であって、前記タール抽出物は賦香成分として香料に用いられることを特徴とする使用。
【請求項6】
巻きタバコの製造における請求項
4に記載のタール抽出物の使用。
【請求項7】
巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2~5%のタール抽出物を、巻きタバコの補助材料又は巻きタバコの再構成刻みタバコ
に添加
する、ことを特徴とする請求項
6に記載の使用。
【請求項8】
前記巻きタバコは伝統的な中低級巻きタバコである、ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄吸い殻を用いて賦香特性を有するタール抽出物を製造する方法であって、
廃棄吸い殻を抽出溶媒に投入して亜臨界抽出を行い、抽出液を得るステップ(1)と、ここで、前記抽出溶媒はn-ブタン、エタノール、石油エーテル、n-ヘキサン、アセトン、ジクロロメタン、酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、前記亜臨界抽出の条件としては、抽出圧力は0.6~1.6MPa、抽出温度は20~60℃、抽出時間は10~120min、抽出回数は1~3回であり、
抽出液を真空吸引ろ過して、ろ液を減圧蒸留し、濃縮エキスを得るステップ(2)と、
濃縮エキスを分子蒸留して、分子蒸留軽質画分を収集し、賦香特性を有するタール抽出物を得るステップ(3)とを含み、
ステップ(3)において、前記分子蒸留は2段階分子蒸留であり、一段分子蒸留と二段分子蒸留による軽質画分を併せ、
一段分子蒸留は、加熱温度50~80℃、圧力100~200Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、
二段分子蒸留は、加熱温度90~110℃、圧力40~60Pa、供給速度300~600mL/h、フィルムワイプ速度200~300rpmであり、
当該方法は、
廃棄吸い殻を前処理するステップをさらに含み、
前記前処理の操作は、具体的には、廃棄吸い殻のチップ紙を剥がして、巻紙及び残存する刻みタバコを除去し、繊維トウを収集して、繊維トウを長さ1cm未満のサイズに断裁することである、方法。
【請求項2】
廃棄吸い殻と抽出溶媒との割合が1g:5~80mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記減圧蒸留は、温度25~45℃、圧力0.06~0.08Mpaである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法によって製造されるタール抽出物。
【請求項5】
香料の製造における請求項4に記載のタール抽出物の使用であって、前記タール抽出物は賦香成分として香料に用いられることを特徴とする使用。
【請求項6】
巻きタバコの製造における請求項4に記載のタール抽出物の使用。
【請求項7】
巻きタバコのタバコロッドの重量に対して2~5%のタール抽出物を、巻きタバコの補助材料又は巻きタバコの再構成刻みタバコに添加する、ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記巻きタバコは伝統的な中低級巻きタバコである、ことを特徴とする請求項
7に記載の使用。
【国際調査報告】