IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国医学科学院腫瘤医院の特許一覧 ▶ 北京泛生子基因科技有限公司の特許一覧

特表2022-551688ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法
<>
  • 特表-ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法 図1
  • 特表-ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法 図2
  • 特表-ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法 図3
  • 特表-ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法 図4
  • 特表-ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221206BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20221206BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20221206BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20221206BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20221206BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C12Q1/6806 Z
C40B40/06
C12N15/09 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521219
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2020120560
(87)【国際公開番号】W WO2021073490
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】201910983038.8
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520426298
【氏名又は名称】中国医学科学院腫瘤医院
(71)【出願人】
【識別番号】519350421
【氏名又は名称】北京泛生子基因科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GENETRON HEALTH (BEIJING) CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 201,2/F Building 11, Zone 1, No.8 Life Park Road, Zhongguancun Life Science Park, Huilongguan Town,Changping District, Beijing 102206 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】焦宇辰
(72)【発明者】
【氏名】曲春楓
(72)【発明者】
【氏名】王宇▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】王沛
(72)【発明者】
【氏名】陳坤
(72)【発明者】
【氏名】宋欠欠
(72)【発明者】
【氏名】劉慧
(72)【発明者】
【氏名】王京京
(72)【発明者】
【氏名】王思振
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR62
4B063QR72
4B063QS25
4B063QS28
(57)【要約】
本発明は、ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法を開示し、前記方法は、1つのサンプルにおいてctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異(点突然変異、インデル突然変異、HBV組み込みなどの複数種の突然変異の形態を含む)及び/又はメチル化を同時に検出し得る方法であり、サンプルの使用量が少ないだけでなく、該方法で製造されたMCライブラリが10-20回の後続の検出をサポートすることができ、感度及び特異性を低下させることなく、いずれかの検出結果によっても全ての元のctDNA標本の突然変異及び酵素切断部位がカバーする領域のメチル化修飾を反映することができる。本発明は、腫瘍早期スクリーニング、病状追跡、有効性評価、予後予測などに対して臨床的に重要であり、応用の価値が高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンシングライブラリの構築方法であって、
DNAサンプルを用意して、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで酵素切断するステップ(1)と、
ステップ(1)で酵素切断したDNAサンプルに対して末端修復及び3’末端Aテーリングを順次行うステップ(2)と、
ステップ(2)で処理されたDNAサンプルとリンカー混合物内のリンカーとを連結し、PCR増幅を行い、ライブラリを得るステップ(3)とを順次含み、
前記リンカー混合物はn個のリンカーからなり、
各リンカーは、1本の上流プライマーAと1本の下流プライマーAによって部分二本鎖構造が形成されたものであり、上流プライマーAには、シーケンシングリンカーA、ランダムタグ、アンカー配列A及び末端に位置する塩基Tがあり、下流プライマーAには、アンカー配列B及びシーケンシングリンカーBがあり、前記部分二本鎖構造はアンカー配列Aとアンカー配列Bが逆相補したものであり、
前記シーケンシングリンカーA及びシーケンシングリンカーBは、シーケンシングプラットフォームに応じて選択した、対応するシーケンシングリンカーであり、
前記ランダムタグは8-14bpのランダム塩基であり、
前記アンカー配列Aは、長さ12-20bpであり、連続反復塩基が3個以下であり、
n個のリンカーはn個の異なるアンカー配列Aを使用し、且つアンカー配列Aごとに4種類の塩基がバランスを取り、ミスマッチ塩基数が3以上であり、
nは8以上の任意の自然数である、構築方法。
【請求項2】
前記上流プライマーAは、5’末端から、前記シーケンシングリンカーA、前記ランダムタグ、前記アンカー配列A、及び前記塩基Tをこの順で含み、
前記下流プライマーAは、5’末端から、前記アンカー配列B及び前記シーケンシングリンカーBをこの順で含む、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項3】
前記ミスマッチ塩基数が3以上であるとは、前記リンカー混合物がn個のアンカー配列Aを含み、アンカー配列A同士で塩基が少なくとも3つ相違することを意味し、前記相違は、位置の相違又は順番の相違である、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項4】
前記DNAサンプルはゲノムDNA、cDNA、ct DNA又はcf DNAサンプルである、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法により構築されたDNAライブラリ。
【請求項6】
シーケンシングライブラリを構築するためのキットであって、請求項1~4中に記載のリンカー混合物と、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼとを含むキット。
【請求項7】
DNAサンプル中の腫瘍突然変異及び/又はメチル化を検出するためのキットであって、請求項1~4に記載の前記リンカー混合物と、プライマーの組み合わせとを含み、前記プライマーの組み合わせは、プライマーセットI、プライマーセットII、プライマーセットIII、プライマーセットIV、プライマーセットV、プライマーセットVI、プライマーセットVII、及びプライマーセットVIIIを含み、
前記プライマーセットI及び前記プライマーセットII内の各プライマーは、腫瘍突然変異に関連する領域に応じて設計された特異的プライマーであり、ゲノムの特定位置に局在化して、対象領域へのPCR濃縮を実現する役割を果たし、前記プライマーセットI及び前記プライマーセットIIは、それぞれDNAプラス鎖及びマイナス鎖の突然変異部位の検出に用いられ、
前記プライマーセットIII及び前記プライマーセットIV内の各プライマーは、腫瘍特異的高メチル化領域に応じて設計された特異的プライマーであり、ゲノムの特定位置に局在化して、対象領域へのPCR濃縮を実現する役割を果たし、前記プライマーセットIII及び前記プライマーセットIVは、それぞれDNAプラス鎖及びマイナス鎖のメチル化部位の検出に用いられ、
前記プライマーセットV、前記プライマーセットVI、前記プライマーセットVII及び前記プライマーセットVIII内の各プライマーは、リンカー配列と特異的配列を含み、特異的配列は対象領域のさらなる濃縮に用いられ、
前記プライマーセットV及び前記プライマーセットIにおいて、同一突然変異部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVI及び前記プライマーセットIIにおいて、同一突然変異部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVII及び前記プライマーセットIIIにおいて、同一メチル化部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVIII及び前記プライマーセットIV中、同一メチル化部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にある、キット。
【請求項8】
前記腫瘍は肝臓悪性腫瘍である、ことを特徴とする請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記プライマーセットIは78個の一本鎖DNA分子を含み、78個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列28~配列105で示され、
前記プライマーセットIIは、82個の一本鎖DNA分子を含み、82個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列106~配列187で示され、
前記プライマーセットIIIは、14個の一本鎖DNA分子を含み、14個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列188~配列201で示され、
前記プライマーセットIVは、15個の一本鎖DNA分子を含み、15個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列202~配列216で示され、
前記プライマーセットVは、75個の一本鎖DNA分子を含み、75個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列220~配列294のような、5’末端からの16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列を順次含み、
前記プライマーセットVIは、79個の一本鎖DNA分子を含み、79個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列295~配列373のような、5’末端からの16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列を順次含み、
前記プライマーセットVIIは、14個の一本鎖DNA分子を含み、14個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列374~配列387のような、5’末端からの16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列を順次含み、
前記プライマーセットVIIIは、15個の一本鎖DNA分子を含み、15個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列388~配列402のような、5’末端からの16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列を順次含む、ことを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項11】
以下のS1)又はS2)又はS3):
S1)DNAサンプル中の腫瘍突然変異及び/又はメチル化を検出するキットの製造における請求項7~9のいずれか1項に記載のプライマーの組み合わせの使用、
S2)腫瘍患者血液サンプルと非腫瘍患者血液サンプルの区別における、請求項7~9のいずれか1項に記載のプライマーの組み合わせの使用、
S3)腫瘍患者血液サンプルと非腫瘍患者血液サンプルの区別における、請求項7~9のいずれか1項に記載のキットの使用。
【請求項12】
DNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の検出方法であって、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法によってライブラリを構築するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたライブラリに対してネストPCR増幅を2回行い、生成物についてシーケンシングを行い、シーケンシング結果からDNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の発生を分析するステップ(2)と、を含み、
前記ステップ(2)において、プライマーの組み合わせAを用いて1回目のPCR増幅を行い、
プライマーの組み合わせAは、上流プライマーAと下流プライマーの組み合わせAとからなり、
前記上流プライマーAはステップ(1)のライブラリ増幅用のライブラリ増幅プライマーであり、
前記下流プライマーの組み合わせAは、X個の対象標的に応じて設計されたY本のプライマーの組み合わせであり、X及びYはいずれも1以上の自然数であり、且つX≦Yであり、
1回目のPCRの生成物をテンプレートとして、プライマーの組み合わせBを用いて2回目のPCR増幅を行い、
プライマーの組み合わせBは、上流プライマーBと、下流プライマーの組み合わせBと、indexプライマーとからなり、
前記上流プライマーBは、ライブラリ増幅プライマーであり、且つ3’末端が前記上流プライマーAと部分的に同一であり、1回目のPCRの生成物の増幅に用いられ、
前記indexプライマーは、5’末端から、シーケンシング用のセグメントA、サンプルを区別するindex配列、及びシーケンシング用のセグメントBを含み、
前記下流プライマーの組み合わせBにおけるプライマーは、前記セグメントBを有し、且つ下流プライマーの組み合わせAにおいて同一対象標的が検出されたプライマーと「ネスト」関係になる、検出方法。
【請求項13】
前記DNAサンプル中の標的突然変異の分析方法において、シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、1つの突然変異が、
(a1)少なくとも一対のduplex分子クラスタによってサポートされていること、又は
(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていること
を満たすと、当該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異であり、基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であることを同時に満たすこと
であり、
基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあること
を同時に満たすことであり、
前記DNAサンプル中のメチル化の分析方法において、シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、
基準Cは、
7.ランダムタグ配列が同一であること、
8.アンカー配列が同一であること、
9.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致することを同時に満たすこと
である、ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
DNAサンプル中の複数の標的突然変異及び/又はメチル化の検出方法であって、
(1)請求項1~4のいずれか1項に記載の方法によってライブラリを構築するステップと、
(2)ステップ(1)のライブラリについて標的領域濃縮を行い、シーケンシングし、シーケンシング結果に基づいてDNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の発生を分析するステップとを含む、検出方法。
【請求項15】
前記DNAサンプル中の標的突然変異の分析方法において、シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、1つの突然変異が、
(a1)少なくとも一対duplex分子クラスタによってサポートされていること、又は
(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていること
を満たすと、当該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異であり、
基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であること
を同時に満たし、
基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあること
を同時に満たし、
前記DNAサンプル中のメチル化の分析方法において、シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により、対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、
基準Cは、
6.ランダムタグ配列が同一であること、
7.アンカー配列が同一であること、
8.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること
を同時に満たすことである、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学の分野に属し、特に、ctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異及びメチル化の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA、ctDNA)は、腫瘍細胞のアポトーシス、壊死又は分泌によって生成されたDNA断片に由来し、腫瘍組織DNAと同一の遺伝子変異及び見かけ上の修飾、例えば点突然変異、遺伝子再配列、融合、コピー数の変異、メチル化修飾などを含む。ctDNAの検出はがんの早期スクリーニング、診断やステージ分類、標的薬の指導、有効性の評価、再発のモニタリングなどの各方面に応用することができる。ctDNAが持っている腫瘍特異遺伝子の変異とメチル化の両方の情報の組み合わせは、検出の感度及び特異性を高めることに役立ち、もっと早くがんを発見し、腫瘍の早期スクリーニングに重要な意義がある。
【0003】
既存の遺伝子変異検出とメチル化検出は技術手段が異なる。ctDNA遺伝子変異の検出は、cfDNAに占めるctDNAの割合が低いという制限のため、実質的には低頻度突然変異の検出であり、従来技術は、2種類に分けられている:
1)PCRに基づくホットスポット突然変異の検出法では、通常1つ又は複数のホットスポット突然変異又は既知の突然変異を検出できるが、遺伝子融合などの複雑な突然変異や未知の突然変異を検出することができず、カバー範囲が比較的小さい。
2)キャプチャーシーケンシング:複雑な突然変異を含む多重標的の検出に適しているが、キャプチャーキットは一般的に高価で、操作が複雑で、時間がかかる。使用の際には、標的の数及び特性に基づいて、適切な検出方法を選択する必要がある。ctDNAメチル化マーカーの利点は、クラスターとして分布し、遺伝子変異よりも特異性が高く、組織特異性があり、腫瘍の由来を追跡することができ、マーカーの数が多く、より高い感度を実現することにあり、その検出方法には以下の方法がある:
1)メチル化PCRであって、重亜硫酸塩による変換ステップによるDNA損失及び配列多様性の低下により、この方法は多重標的検出を実現しにくい。
2)プローブハイブリダイゼーションに基づくメチル化キャプチャー:8%-13%のCpG部位をカバーでき、同時に大量のマーカーを検出できるが、ctDNAの開始量が限られ、しかも重亜硫酸塩処理後、ゲノム配列の豊富度は低下し、このため、プローブの特異性は保証しにくい。
3)MspI酵素切断によるRRBS(Reduced representation bisulfite sequencing、RRBS)であって、対象となるCpG部位は酵素切断部位「CCGG」によって決定され、約8-10%のCpG部位を占め、メチル化C塩基の認識も重亜硫酸塩による変換に依存する。RRBSで検出されるメチル化部位はCpGアイランドとプロモーター領域に集中しており、低コストである。上記の3種類の方法はメチル化PCRのカバー部位が限られており、メチル化キャプチャは、より多くの部位をカバーすることができ、RRBSデータよりも安定し、RRBSは最もコストが低く、多数のメチル化部位をカバーすることも可能であり、使用の際には、標的の数及び特性に基づいて選択すべきである。
【0004】
現在、ctDNA中の遺伝子変異とメチル化という2種の重要な腫瘍特異的マーカーの同時検出を実現する簡単、低コスト、信頼性の高い手段はない。主な課題は次のとおりである。
1)一回の採血で取得したctDNAサンプルの量は限られており、通常は1-2回の検出しかサポートできないため、ctDNA臨床検出中は通常単一プラットフォーム、使い捨てであり、1つのサンプルを用いて突然変異検出とメチル化検出を同時に行うことが困難であり、特に重亜硫酸塩による変換に基づくメチル化検出技術では、処理中に多くのDNA損失をもたらす。
2)メチル化検出技術の重亜硫酸塩による変換ステップにより、DNA配列の大部分の突然変異情報を提示できないことになり、この部分のDNAに含まれる情報の損失は低頻度突然変異検出感度の低下につながる可能性がある。
3)臨床検出では、よく最初の検出結果に基づいて後続検出の目的や計画を判断する必要があり、このため、後続検出中に再採血する必要があり、結果として、検出周期が長くなる。また、ctDNA関連の臨床検出や研究には多種の技術の優劣を比較する必要がよくあり、これは、数倍の正常採血量の標本が必要とされ、患者は通常受け入れられない。
4)PCR法であっても、キャプチャー法であっても、増幅過程中に発生した騒音突然変異はctDNA低頻度突然変異の検出を深刻に妨害し、偽陽性結果をもたらし、患者の診断や治療を誤認させる。
5)ctDNA突然変異の含有量が低く、操作過程中に汚染が発生しやすく、偽陽性結果をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、ctDNA中の複数種の腫瘍特異的遺伝子の変異及び/又はメチル化を同時に検出することである。
【0006】
まず、本発明は、シーケンシングライブラリの構築方法であって、
DNAサンプルを用意して、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで酵素切断するステップ(1)と、
ステップ(1)で酵素切断したDNAサンプルに対して末端修復及び3’末端Aテーリングを順次行うステップ(2)と、
ステップ(2)で処理されたDNAサンプルとリンカー混合物内のリンカーとを連結し、PCR増幅を行い、ライブラリを得るステップ(3)とを順次含み、
前記リンカー混合物はn個のリンカーからなり、
各リンカーは、1本の上流プライマーAと1本の下流プライマーAによって部分二本鎖構造が形成されたものであり、上流プライマーAには、シーケンシングリンカーA、ランダムタグ、アンカー配列A及び末端(例えば3’末端)に位置する塩基Tがあり、下流プライマーAには、アンカー配列B及びシーケンシングリンカーBがあり、前記部分二本鎖構造はアンカー配列Aとアンカー配列Bが逆相補したものであり、
前記シーケンシングリンカーA及びシーケンシングリンカーBは、様々なシーケンシングプラットフォームに応じて選択したシーケンシングリンカーであり、
前記ランダムタグは8-14bp(例えば8-10bp、10-14bp、8bp、10bp又は14bp)のランダム塩基であり、
前記アンカー配列Aは、長さ12-20bp(例えば12-16bp、16-20bp、12bp、16bp又は20bp)であり、連続反復塩基が3個以下であり、
n個のリンカーは、n個の異なるアンカー配列Aを使用し、且つアンカー配列Aごとに4種類の塩基がバランスを取り、ミスマッチ塩基数が3以上であり、
nは8以上の任意の自然数である、
シーケンシングライブラリの構築方法に関する。
【0007】
通常、プライマー構築用のリンカーは2本の配列をアニーリングしたものであり、「Y」字形の構造を有し、2本の配列のうち相補的にペアリングした部分(即ち、アンカー配列A及びアンカー配列B)はアンカー配列と呼ばれる。前記アンカー配列は配列の固定した組み込みタグとして、元のテンプレート分子をマークすることに用いられる。
【0008】
前記アンカー配列はプライマーの他の部分と相互作用(例えばヘアピン構造、二量体の形成など)しない。
【0009】
前記上流プライマーAは、5’末端から、シーケンシングリンカーA、ランダムタグ、アンカー配列A及び塩基Tをこの順で含んでもよい。
【0010】
前記上流プライマーAは、5’末端から、シーケンシングリンカーA、ランダムタグ、アンカー配列A及び塩基Tによってこの順で構成される。
【0011】
前記下流プライマーAは、5’末端から、アンカー配列B及びシーケンシングリンカーBをこの順で含んでもよい。
【0012】
前記下流プライマーAは、5’末端から、アンカー配列B及びシーケンシングリンカーBによってこの順で構成される。
【0013】
前記「各アンカー配列Aには、4種類の塩基がバランスを取る」とは、A、T、C及びGが均一に分布していることを指す。
【0014】
前記「ミスマッチ塩基数が3以上である」は、前記リンカー混合物がn個のアンカー配列Aを含み、アンカー配列A同士で塩基が少なくとも3個相違していることであってもよい。該相違は、位置の相違又は順番の相違であってもよい。
【0015】
前記DNAサンプルは、ゲノムDNA、cDNA、ct DNA又はcf DNAサンプルであってもよい。
【0016】
前記nは、特に12である。
【0017】
前記ランダムタグは、特に8bpのランダム塩基であってもよい。
【0018】
前記アンカー配列Aの長さは、特に12bpであってもよい。
【0019】
n=12の場合、前記アンカー配列Aのヌクレオチド配列は、特に、それぞれ、配列表の配列1の5’末端から30-41位、配列表の配列3の5’末端から30-41位、配列表の配列5の5’末端から30-41位、配列表の配列7の5’末端から30-41位、配列表の配列9の5’末端から30-41位、配列表の配列11の5’末端から30-41位、配列表の配列13の5’末端から30-41位、配列表の配列15の5’末端から30-41位、配列表の配列17の5’末端から30-41位、配列表の配列19の5’末端から30-41位、配列表の配列21の5’末端から30-41位、配列表の配列23の5’末端から30-41位で示されてもよい。
【0020】
前記シーケンシングリンカーAは、特に、Illumina社からのTruseqシーケンシングキットのシーケンシングリンカーであってもよい。前記シーケンシングリンカーAは、特に、配列表の配列1の5’末端から1-29位で示されてもよい。
【0021】
前記シーケンシングリンカーBは、特に、Illumina社からのnexteraシーケンシングキット的シーケンシングリンカーであってもよい。前記シーケンシングリンカーBは、特に、配列表の配列2の5’末端から13-41位で示されてもよい。
【0022】
n=12の場合、前記12個のリンカーは以下のとおりである。
リンカー1は、配列表の配列1で示される一本鎖DNA分子と配列2で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー2は、配列表の配列3で示される一本鎖DNA分子と配列4で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー3は、配列表の配列5で示される一本鎖DNA分子と配列6で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー4は、配列表の配列7で示される一本鎖DNA分子と配列8で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー5は、配列表の配列9で示される一本鎖DNA分子と配列10で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー6は、配列表の配列11で示される一本鎖DNA分子と配列12で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー7は、配列表の配列13で示される一本鎖DNA分子と配列14で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー8は、配列表の配列15で示される一本鎖DNA分子と配列16で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー9は、配列表の配列17で示される一本鎖DNA分子と配列18で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー10は、配列表の配列19で示される一本鎖DNA分子と配列20で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー11は、配列表の配列21で示される一本鎖DNA分子と配列22で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよく、リンカー12は、配列表の配列23で示される一本鎖DNA分子と配列24で示される一本鎖DNA分子によって部分二本鎖構造が形成されたものであってもよい。
【0023】
前記リンカーは、上流プライマーAと下流プライマーAをアニーリングしたものであってもよい。
【0024】
前記リンカー混合物中、それぞれのリンカーは等モルで混合されてもよい。
【0025】
前記方法は、ステップ(3)で得られたライブラリを増幅するステップをさらに含んでもよい。前記増幅されるプライマーはリンカー配列に基づいて設計されたものであり、即ち、前記増幅されるプライマーは、少なくとも1つの配列セグメントがリンカーのある配列セグメントと完全に同一である。前記増幅に使用されるプライマー対は、特に、配列表の配列25と配列26で示される2本の一本鎖DNA分子からなる。
【0026】
配列表の配列25で示される一本鎖DNA分子は、シーケンシングリンカーAの5’末端から1~19位である。
【0027】
配列表の配列26で示される一本鎖DNA分子は、シーケンシングリンカーBの3’端から1~22位である。
【0028】
本発明はまた、前記方法によって構築されたDNAライブラリに関する。
【0029】
本発明はまた、上記のいずれかのリンカー混合物と、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼとを含むシーケンシングライブラリを構築するためのキットに関する。
【0030】
前記のシーケンシングライブラリを構築するためのキットは、特に、上記のいずれかに記載のリンカー混合物と、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼとからなる。
【0031】
本発明はまた、DNAサンプル中腫瘍突然変異及び/又はメチル化を検出するためのキットに関し、上記のいずれかに記載のリンカー混合物と、プライマーの組み合わせを含み、前記プライマーの組み合わせは、プライマーセットI、プライマーセットII、プライマーセットIII、プライマーセットIV、プライマーセットV、プライマーセットVI、プライマーセットVII、及びプライマーセットVIIIを含み、
前記プライマーセットI及び前記プライマーセットII内の各プライマーは、腫瘍突然変異に関連する領域に応じて設計された特異的プライマーであり、ゲノムの特定位置に局在化して、対象領域へのPCR濃縮を実現する役割を果たし、前記プライマーセットI及び前記プライマーセットIIは、それぞれ、DNAプラス鎖及びマイナス鎖の突然変異部位の検出に用いられ、
前記プライマーセットIII及び前記プライマーセットIV内の各プライマーは、腫瘍特異的高メチル化領域に応じて設計された特異的プライマーであり、ゲノムの特定位置に局在化して、対象領域へのPCR濃縮を実現する役割を果たし、前記プライマーセットIII及び前記プライマーセットIVは、それぞれDNAプラス鎖及びマイナス鎖のメチル化部位の検出に用いられ、
前記プライマーセットV、前記プライマーセットVI、前記プライマーセットVII及び前記プライマーセットVIII内の各プライマーは、リンカー配列と特異的配列を含み、特異的配列は対象領域のさらなる濃縮に用いられ、
前記プライマーセットV及び前記プライマーセットIにおいて、同一突然変異部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVI及び前記プライマーセットIIにおいて、同一突然変異部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVII及び前記プライマーセットIIIにおいて、同一メチル化部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にあり、
前記プライマーセットVIII及び前記プライマーセットIVにおいて、同一メチル化部位に対して設計された2つのプライマーは「ネスト」関係にある。
【0032】
前記「腫瘍突然変異に関連する領域に応じて設計された特異的プライマー」は、特に、腫瘍特異的遺伝子変異(例えば点突然変異、インデル突然変異、HBV組み込みなどの複数の突然変異の形態)の領域に応じて設計された遺伝子特異的プライマーである。
【0033】
前記「腫瘍特異的高メチル化領域に応じて設計された特異的プライマー」は、特に、腫瘍特異的メチル化領域に応じて設計された遺伝子特異的プライマーである。
【0034】
前記キットにおいて、前記腫瘍は肝臓悪性腫瘍、即ち肝細胞がんである。
【0035】
前記の肝細胞がん突然変異に関連する領域は、特に、肝細胞がんの高頻度突然変異遺伝子(TP53、CTNNB1、AXIN1、TERT)の関連領域、及びHBV組み込みに対するホットスポット領域である。
【0036】
上記のいずれかに記載のキットにおいて、前記プライマーセットIは、78個の一本鎖DNA分子を含み、78個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列28~配列105で示される。前記プライマーセットIIは82個の一本鎖DNA分子を含み、82個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列106~配列187で示される。前記プライマーセットIIIは、14個の一本鎖DNA分子を含み、14個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列188~配列201で示される。前記プライマーセットIVは15個の一本鎖DNA分子を含み、15個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は、順次配列表の配列202~配列216で示される。前記プライマーセットVは75個の一本鎖DNA分子を含み、75個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列220~配列294の5’末端から16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列をこの順で含む。前記プライマーセットVIは、79個の一本鎖DNA分子を含み、79個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列295~配列373の5’末端から16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列をこの順で含む。前記プライマーセットVIIは14個の一本鎖DNA分子を含み、14個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列374~配列387の5’末端から16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列をこの順で含む。前記プライマーセットVIIIは、15個の一本鎖DNA分子を含み、15個の一本鎖DNA分子は、配列表の配列388~配列402の5’末端からの16位~3’末端で示されるヌクレオチド配列をこの順で含む。
【0037】
前記プライマーセットVにおいて、75個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は順次配列表の配列220~配列294で示されてもよい。前記プライマーセットVIにおいて、79個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は順次配列表の配列295~配列373で示されてもよい。前記プライマーセットVIIにおいて、14個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は順次配列表の配列374~配列387で示されてもよい。前記プライマーセットVIIIにおいて、15個の一本鎖DNA分子のヌクレオチド配列は順次配列表の配列388~配列402で示されてもよい。
【0038】
前記プライマーセットIは、特に、前記78個の一本鎖DNA分子からなる。
【0039】
前記プライマーセットIIは、特に、前記82個の一本鎖DNA分子からなる。
【0040】
前記プライマーセットIIIは、特に、前記14個の一本鎖DNA分子からなる。
【0041】
前記プライマーセットIVは、特に、前記15個の一本鎖DNA分子からなる。
【0042】
前記プライマーセットVは、特に、前記75個の一本鎖DNA分子からなる。
【0043】
前記プライマーセットVIは、特に、前記79個の一本鎖DNA分子からなる。
【0044】
前記プライマーセットVIIは、特に、前記14個の一本鎖DNA分子からなる。
【0045】
前記プライマーセットVIIIは、特に、前記15個の一本鎖DNA分子からなる。
【0046】
上記のいずれかの前記キットは、特に、上記のいずれかの前記リンカー混合物と、前記プライマーの組み合わせとからなる。
【0047】
上記のいずれかの前記プライマーの組み合わせは、特に、前記プライマーセットI、前記プライマーセットII、前記プライマーセットIII、前記プライマーセットIV、前記プライマーセットV、前記プライマーセットVI、前記プライマーセットVII及び前記プライマーセットVIIIからなる。
【0048】
上記のいずれかの前記キットは、DNA抽出用の試薬、DNAプライマー構築用の試薬、ライブラリ精製用の試薬、ライブラリキャプチャー用の試薬など、ライブラリ構築用の材料をさらに含んでもよい。
【0049】
本発明はまた、上記のいずれかの前記プライマーの組み合わせに関する。前記プライマーの組み合わせの使用は、DNAサンプル中の腫瘍突然変異及び/又はメチル化の検出としてもよい。
【0050】
本発明はまた、S1)又はS2)又はS3)に関する:
S1)DNAサンプル中の腫瘍突然変異及び/又はメチル化を検出するためのキットの製造における、上記のいずれかの前記プライマーの組み合わせの使用、
S2)腫瘍患者血液サンプルと非腫瘍患者血液サンプルの区別における上記のいずれかの前記プライマーの組み合わせの使用、
S3)腫瘍患者血液サンプルと非腫瘍患者血液サンプルの区別における上記のいずれかの前記キットの使用。
【0051】
上記の使用において、前記腫瘍は肝臓悪性腫瘍、即ち肝細胞がんであってもよい。
【0052】
本発明はまた、DNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の検出方法に関し、この方法は、
上記のいずれか1項に記載の方法によってライブラリを構築するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたライブラリに対してネストPCR増幅を2回行い、生成物についてシーケンシングを行い、シーケンシング結果に基づいてDNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の発生を分析するステップ(2)とを含み、
前記ステップ(2)において、プライマーの組み合わせAを用いて1回目のPCR増幅を行い、
プライマーの組み合わせAは、上流プライマーAと下流プライマーの組み合わせAとからなり、
前記上流プライマーAはステップ(1)のライブラリ増幅用のライブラリ増幅プライマーであり、
前記下流プライマーの組み合わせAは、X個の対象標的に応じて設計されたY本のプライマーの組み合わせであり、X及びYはいずれも1以上の自然数であり、且つX≦Yであり、
1回目のPCRの生成物をテンプレートとして、プライマーの組み合わせBを用いて2回目のPCR増幅を行い、
プライマーの組み合わせBは、上流プライマーBと、下流プライマーの組み合わせBと、indexプライマーとからなり、
前記上流プライマーBは、ライブラリ増幅プライマーであり、且つ3’末端が前記上流プライマーAと部分的に同一であり、1回目のPCRの生成物の増幅に用いられ、
前記indexプライマーは、5’末端から、シーケンシング用のセグメントA、サンプルを区別するindex配列、及びシーケンシング用のセグメントBを含み、
前記下流プライマーの組み合わせBにおけるプライマーは、前記セグメントBを有し、且つ下流プライマーの組み合わせAにおける同一対象標的が検出されるプライマーとネスト関係になるようにしてもよい。
【0053】
前記上流プライマーBにおけるヌクレオチド配列は、配列表の配列217で示されてもよい。
【0054】
前記indexプライマーは、5’末端から、特に、前記セグメントA、前記index配列及び前記セグメントBからなる。
【0055】
前記セグメントAのヌクレオチド配列は配列表の配列218で示されてもよい。
【0056】
前記セグメントBのヌクレオチド配列は配列表の配列219で示されてもよい。
【0057】
前記上流プライマーAの一部の配列は、「各リンカーの上流プライマーAのシーケンシングリンカーA」の配列と完全に同一である。
【0058】
前記上流プライマーBは、ライブラリ分子のリンカー配列を完全に補充することで、増幅産物を直接シーケンシングすることを可能とする。前記上流プライマーB及び前記上流プライマーA(1回目のPCR増幅用のプライマー)の一部のヌクレオチド配列は完全に同一である。
【0059】
前記上流プライマーAのヌクレオチド配列は、特に、配列表の配列27で示される。
【0060】
前記上流プライマーBのヌクレオチド配列は、特に、配列表の配列188で示される。
【0061】
前記標的突然変異が肝細胞がん突然変異である場合、前記下流プライマーの組み合わせAは、上記のいずれかの前記プライマーセットIと、プライマーセットIIとからなる。前記下流プライマーの組み合わせBは、上記のいずれかの前記プライマーセットVと、プライマーセットVIとからなる。プライマーセットI及びプライマーセットIIを用いてそれぞれテンプレートに1回目のPCR増幅を行う。プライマーセットIを用いて増幅された生成物は2回目の増幅のテンプレートとしてプライマーセットVで増幅される。プライマーセットIIを用いて増幅された生成物は2回目の増幅のテンプレートとしてプライマーセットVIで増幅される。最後に、増幅生成物は等体積で混合される。
【0062】
前記対象メチル化が肝細胞がんのメチル化である場合、前記下流プライマーの組み合わせAは、上記のいずれかの前記プライマーセットIIIと、プライマーセットIVとからなる。前記下流プライマーの組み合わせBは、上記のいずれかの前記プライマーセットVIIと、プライマーセットVIIIとからなる。
【0063】
プライマーセットIII及びプライマーセットIVを用いてそれぞれテンプレートに対して1回目のPCR増幅を行う。プライマーセットIIIを用いて増幅された生成物は2回目の増幅のテンプレートとしてプライマーセットVIIで増幅される。プライマーセットIVを用いて増幅される生成物は2回目の増幅のテンプレートとしてプライマーセットVIIIで増幅される。最後に、増幅生成物は等体積で混合される。
【0064】
上記の方法では、前記DNAサンプル中の標的突然変異の分析方法において、シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、1つの突然変異が、
(a1)少なくとも一対duplex分子クラスタによってサポートされている(該条件はキャプチャーシーケンシングのデータだけをサポートし、raceのデータに適されていない)こと、又は
(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていること
を満たすと、当該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異であり、基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であることを同時に満たすこと
であり、基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあることを同時に満たすこと
であるようにしてもよい。
【0065】
上記の方法では、前記DNAサンプル中のメチル化の分析方法において、シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、基準Cは、
6.ランダムタグ配列が同一であること、
7.アンカー配列が同一であること、
8.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること
を同時に満たすことであるようにしてもよい。
【0066】
以上の前記DNA挿入断片は、特に、リンカー以外の増幅によるDNA断片である。
【0067】
本発明はまた、DNAサンプル中の複数の標的突然変異及び/又はメチル化の検出方法に関し、この方法は、
上記のいずれか1項に記載の方法によってライブラリを構築するステップ(1)と、
ステップ(1)のライブラリについて標的領域濃縮を行い、シーケンシングし、シーケンシング結果に基づいてDNAサンプル中の標的突然変異及び/又はメチル化の発生を分析するステップ(2)と
を含んでもよい。
【0068】
上記の方法では、前記DNAサンプル中の標的突然変異の分析方法において、シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、ある突然変異が、(a1)少なくとも一対のduplex分子クラスタによってサポートされていること、又は(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていることを満たすと、該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異であり、基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であること
を同時に満たし、基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあることを同時に満たすこと
であるようにしてもよい。
【0069】
上記の方法では、前記DNAサンプル中のメチル化の分析方法において、シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、
基準Cは、
6.ランダムタグ配列が同一であること、
7.アンカー配列が同一である;
8.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致することを同時に満たすこと
である。
【0070】
前記標的領域濃縮は、従来の市販の標的キャプチャーキット(例えばAgilent sureselect XT標的キャプチャーキット、Agilent5190-8646)によって行われてもよく、ここで、最後のステップのPCR増幅プライマー対をプライマーAとプライマーBからなるプライマー対に変更する。前記プライマーAのヌクレオチド配列は、配列表の配列403で示されてもよい。前記プライマーBはセグメントA、index配列、及びセグメントBを含んでもよい。前記プライマーBは、特に、前記セグメントA、前記index配列及び前記セグメントBからなる。前記セグメントAのヌクレオチド配列は配列表の配列404で示されてもよい。前記セグメントBのヌクレオチド配列は配列表の配列405で示されてもよい。
【0071】
上記のいずれかの前記方法では、前記標的突然変異及び/又はメチル化は、腫瘍突然変異及び/又はメチル化であってもよい。前記腫瘍は肝臓悪性腫瘍、即ち肝細胞がんであってもよい。
【0072】
以上では、通常、複数の異なるサンプルのライブラリは混合されたものとしてシーケンシングを行い、前記index配列は、異なるサンプルをマークするものである。シーケンシング終了後、各index配列に応じて全体としてのシーケンシングデータを分割する。Indexを設計する原則は、前記したアンカー配列の設計原則とほぼ同じである。
【0073】
以上では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼでDNAサンプルを切断すると、DNA断片(このときのDNA断片の両端が全て粘着末端となり、末端の一本鎖の一部のヌクレオチド配列はブレークポイント配列となる)が形成され、DNA断片が末端修復を受けた後リンカーに連結され(5’末端と3’末端はそれぞれ1つのリンカーに連結され、リンカーは同一であってもよく、逆のものであってもよい)、このとき、DNA分子では、2つのリンカーの間のDNA断片はDNA挿入断片である。
【0074】
本発明は、1つのサンプルにおいてctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異(点突然変異、インデル突然変異、HBV組み込みなどの複数の突然変異の形態を含む)及び/又はメチル化を同時に検出し得る方法を提供し、サンプルの使用量が少ないだけでなく、該方法で製造されたMCライブラリが10-20回の後続の検出をサポートすることができ、感度及び特異性を低下させることなく、いずれかの検出結果によっても全ての元のctDNA標本の突然変異及び酵素切断部位がカバーする領域のメチル化修飾を反映することができる。該方法を用いて構築されたライブラリは、PCRのホットスポット検出及びキャプチャー法によるシーケンシングの両方に用いられ、付加されたDNA barcodeにより偽陽性結果が効果的に除去され得、このように、duplexに基づく高特異性のシーケンシングが達成される。また、ライブラリ構築方法は、cfDNAサンプルだけでなく、ゲノムDNAやcDNAサンプルに適用できる。本発明は、腫瘍早期スクリーニング、病状追跡、有効性評価、予後予測などに対して臨床的に重要であり、応用の価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】adapter及びプライマー構造の模式図である。
図2】RaceSeq標的領域濃縮及びライブラリ構築の模式図である。
図3】MCライブラリに対するキャプチャー及びduplexシーケンシングの模式図である。
図4】Padlock方法及び突然変異/メチル化共検出法(即ち、本発明で提供される方法)によるAK055957遺伝子のメチル化レベルの検出結果である。
図5】突然変異単独検出法及び突然変異/メチル化共検出法による突然変異及び突然変異頻度の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下の実施例は本発明を理解しやすくするが、本発明を限定するものではない。
【0077】
特に断らない限り、下記実施例における実験方法は常法である。
特に断らない限り、下記実施例に使用される試験材料は、一般的な生化学試薬店より購入したものである。
以下の実施例における定量的試験は、全て3つの重複実験を設置し、結果として平均値を取る。
【0078】
下記実施例におけるTE緩衝液はThermoFisher社の製品であり、カタログ番号が12090015である。
下記実施例では、肝細胞がん患者から本発明の内容についてインフォームドコンセントを得た。
【0079】
実施例1、MCライブラリの構築
一、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる酵素切断
cfDNA 5-40ngを用いて、表1に示すように反応系を調製した後、表2に記載のプログラムに従ってPCR装置にて酵素切断処理を行い、酵素切断生成物を得た(4℃で保存)。
Restriction Enzyme及びRestriction Enzyme 10×Bufferは全てThermoFisher社の製品。Restriction Enzyme及びRestriction Enzyme 10×Bufferは、検出対象領域内に少なくとも1つの該メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる酵素切断部位が含まれていることを基準に、検出対象の標的領域に応じて選択してもよい。
【0080】
【0081】
【0082】
二、酵素切断生成物の精製
ステップ1で得られた酵素切断生成物について、Apostle MiniMaxTM 高性能無細胞DNA濃縮分離キット(High Efficiency Cell-Free DNAIsolation Kit)(標準版)(Apostle社の製品、カタログ番号A17622-50)により精製して濃縮し、精製生成物を得た。
【0083】
三、精製生成物の平滑末端の修復及びAテーリング処理
ステップ二で得られた精製生成物について、表3に示すように反応系を調製した後、表4の反応プログラムに従ってPCR装置にて末端修復及び3’末端Aテーリングを行い、反応生成物を得た(4℃で保存)。
【0084】
【0085】
【0086】
四、反応生成物とadapterの連結
表5のように反応系を調製し、20℃で15min(分)反応させ、連結生成物を得た(4℃で保存)。
【0087】
【0088】
Adapter配列情報を表6に示す。
表6に記載の一本鎖DNA分子をそれぞれTE緩衝液で溶解して、濃度100μMとなるまで希釈した。同一群の2本の一本鎖DNA分子を等体積で混合し(各50μl)、次に、アニーリング(アニーリング手順:95℃、15min;25℃、2h(時間))を行い、12群のDNA溶液を得て、12群のDNA溶液を等体積で混合し、Adapter Mixを得た。
【0089】
【0090】
表6には、8個のNは、8bpのランダムタグを表す。実際の適用では、ランダムタグ長さは8-14bpであってもよい。
下線は12bpのアンカー配列を表し、各群の上流配列(名称に「F」が付いたものは上流配列)及び下流配列(名称に「R」が付いたものは下流配列)において、下線付き部分は逆相補となり、アニーリングによって上流配列と下流配列は結合されてリンカーとなる。また、アンカー配列は配列が固定された組み込みタグとして、元のテンプレート分子をマークしてもよい。実際の適用では、アンカー配列長さは12-20bpであってもよく、連続反復塩基が3以下であり、且つプライマーの他の部分と相互作用(例えばヘアピン構造、二量体などの形成)できず、12群の全て位置において塩基がバランスを取り(即ち、A、T、C及びGは均一に分布)、ミスマッチ塩基数が3以上である(即ち、アンカー配列同士で塩基が少なくとも3つ相違しており、相違は位置の相違又は順番の相違)。
上流配列において末端が太字となったTは元の分子末端に付いた「A」と相補的であり、TA連結が行われる。
上流配列において、5’末端から1~21位(Illumina社のTruseqシーケンシングキット)はシーケンシングプライマー結合配列であり、ここで、5’末端から1~19位はライブラリ増幅プライマー部分である。
下流配列において、非下線付き部分(Illumina社のnexteraシーケンシングキット)はシーケンシングプライマー結合配列であり、ここで、3’端から1~22位はライブラリ増幅プライマー部分である。
【0091】
表6においては、合計12群のリンカーが含まれており、12×12=144種類のマーク組み合わせが形成され得、分子自体の配列情報と組み合わせると、元のサンプル中の全ての分子を区別するのに十分であり、実際の適用では、群数は適宜増加(合成コストが高まる)又は減少(区別效果がわずか劣る)。
【0092】
連結生成物の構造は図1に示される。ここで、aはリンカー部分であり、b及びfはそれぞれライブラリ増幅プライマーであり、cは8bpランダムタグ(表6における8個のNで表示)、dは12bpアンカー配列(表6における下線で表示)、eは挿入断片(cfDNA)である。
【0093】
五、連結生成物の精製
ステップ四で得られた連結生成物に、110-220μl(即ち体積の1-2倍)のAMPure XP磁気ビーズ(ベックマンA63880)を加えて、均一にボルテックス混合し、室温で10min放置し、磁気ラックで5min吸着し、溶液が澄明になると上清を捨てて、その後、80体積%エタノール水溶液200μlを加えて2回洗浄し、上清を捨てて、エタノールが揮発された後、DNase/RNase-Free Water 30μlを加えて、均一にボルテックス混合し、室温で10min放置し、磁気ラックで5min吸着し、上清溶液をPCR管に吸い取り、PCRテンプレートとした。
【0094】
六、ライブラリ増幅及び精製
1、ステップ五で得られたPCRテンプレートを用いて、表7のように反応系を調製し、表8のようにPCR増幅を行い、PCR増幅生成物を得た(4℃で保存)。
【0095】
【0096】
表7には、プライマー情報は以下のとおりである。
MC_F(配列25):5’-GACACGACGCTCTTCCGAT-3’;
MC_R(配列26):5’-GTGGGCTCGGAGATGTGTATAA-3’。
【0097】
【0098】
2、ステップ1で得られたPCR増幅生成物に、70-140μl(即ち体積の1-2倍)のAMPure XP磁気ビーズを加え、均一にボルテックス混合し、室温で10min放置し、磁気ラックで5min吸着し、溶液が澄明になると上清を捨てて、その後、80体積%エタノール水溶液200μlを加えて2回洗浄し、上清を捨てて、エタノールが揮発された後、DNase/RNase-Free Water 100μlを加えて、均一にボルテックス混合し、室温で10min放置し、磁気ラックで5min吸着し、上清溶液を吸い取り、生成物を得た(-20℃で保存)。生成物は長期間保存、繰り返し使用可能なMCライブラリである。
検出した結果、MCライブラリは10-20回の後続の検出を支持することができ、各検出の結果は全ての元のサンプルの突然変異及び酵素切断部位がカバーする領域のメチル化修飾を反映することができ、感度及び特異性を低下させることはない。また、ライブラリの構築方法は、cfDNAサンプルだけでなく、ゲノムDNA又はcDNAサンプルに適用する。
【0099】
実施例2、RaceSeqによる標的領域の濃縮及びシーケンシングライブラリ構築
図2に示すように、中国の肝細胞がん高頻度突然変異遺伝子(TP53、CTNNB1、AXIN1、TERT)の関連領域、HBV組み込みホットスポット領域、及び肝細胞がん特異的高メチル化領域(EMX1、LRRC4、BDH1など)について設計されたプライマーを、所定のプライマーと組み合わせて、MCライブラリに対して2回のPCR増幅を行い、増幅生成物はシーケンシングライブラリである。
図2においては、aは1回目のライブラリ増幅の上流プライマーであり、bは2回目のライブラリ増幅の上流プライマーであり、cは1回目のライブラリ増幅の下流プライマーライブラリであり、対象配列の特異的濃縮用であり、dは2回目のライブラリ増幅の下流プライマーライブラリであり、対象配列の特異的濃縮用であり、eはindex primerであり、index配列付加用である。
【0100】
1、実施例1で製造されたMCライブラリ 300ngを、2つの部分に分けて、表9に記載の反応系(1つはGSP1A mix、もう1つはGSP1B mixに加えて)を調製し、表11に記載の反応プログラムに従って1回目のPCR増幅を行い、1回目の増幅生成物を得た(1回目の増幅生成物は合計2つ得られ、1つはGSP1A mixの増幅生成物であり、もう1つはGSP1B mixの増幅生成物である)。
【0101】
【0102】
表9において、プライマー情報は以下のとおりである。
上流プライマー1355(配列27):5’-TCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGAT-3’。
GSP1A mix:表10においてプライマープールGSP1Aに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMに希釈した。プライマープールGSP1Aにおけるプライマーはテンプレートのプラス鎖増幅に用いる。
GSP1B mix:表10においてプライマープールGSP1Bに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMに希釈した。プライマープールGSP1Bにおけるプライマーはテンプレートのマイナス鎖増幅に用いる。
プライマープールGSP1A及びプライマープールGSP1Bでは、同じ番号のプライマー(即ちプライマー番号の最後の4桁は同じ)について正方向と逆方向から同一突然変異部位が検出され、また、最大限に濃縮可能な元の分子情報が使用された。
【0103】
【0104】
【0105】
2、ステップ1で得られた2つの1回目の増幅生成物をそれぞれ30-60μl(即ち体積の1-2倍)のAMPure XP磁気ビーズで精製し、その後、DNase/RNase-Free Water 25μlで溶出し、1回目の精製生成物を得た。
【0106】
3、ステップ2で得られた1回目の精製生成物をそれぞれテンプレートとし、表12に記載の反応系を調製し(GSP1A mix増幅生成物をテンプレートとして使用する場合、GSP2A mixで増幅、GSP1Bmix増幅生成物をテンプレートとして使用する場合、GSP2B mixで増幅)、表14に記載の反応プログラムに従って2回目のPCR増幅を行い、2回目の増幅生成物を得た(4℃で保存)。
【0107】
【0108】
表12において、プライマー情報は以下のとおりである。
上流プライマー3355(配列217):5’-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCT-3’;下線部分は1回目の上流プライマー1355の同一部分であり、3355及び1355は全てIlluminaシーケンシングプラットフォームシーケンシングの固定配列である(他のシーケンシングプラットフォームでシーケンシング可能な配列に変更してもよい)。
GSP2A mix:表13においてプライマープールGSP2Aに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMまで希釈した。プライマープールGSP2Aにおけるプライマーはテンプレートのプラス鎖増幅に用いる。
GSP2B mix:表13においてプライマープールGSP2Bに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMに希釈した。プライマープールGSP2Bにおけるプライマーはテンプレートのマイナス鎖増幅に用いる。
【0109】
表13において、5’末端から1~15位はIndexプライマーに結合される部分である。
GSP2A mix及びGSP1A mixでは、プライマー番号が同じプライマー(即ちプライマー番号の最後の4桁は同じ)は同一突然変異部位について設計されたものであり、2本のプライマーはネスト関係になる。
GSP2B mix及びGSP2A mixでは、プライマー番号が同じプライマー(即ちプライマー番号の最後の4桁は同じ)は同一突然変異部位について設計されたものであり、2本のプライマーはネスト関係になる。
Indexプライマー:5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT(配列218)********GTGACTGGAGTTCCTTGGCACCCGAGAA-3’(配列219);下線部分はGSP2 mixに結合される部分である。********はindex配列位置であり、indexは、長さ6-8bpであり、サンプル同士の配列を区別し、複数のサンプルを混合してシーケンシングすることに寄与する。index配列に加えて、残りは全てIllumina社のsmall RNAシーケンシングキット由来の固定配列である。
【0110】
【0111】
【0112】
4、ステップ3で得られたGSP2A mixによる2回目の増幅の生成物と、GSP1B mixによる2回目の増幅の生成物とを等体積で混合し、AMPure XP磁気ビーズを用いて1:(1-2)の割合で精製し、その後、DNase/RNase-Free Water 50μlで溶出し、2回目の精製生成物として、Illumina Hiseq Xプラットフォームにてシーケンシング可能なシーケンシングライブラリを得た。
MCライブラリにおけるDNAランダムタグはcfDNA配列とともにシーケンシングライブラリのRead1配列下流に付加された。シーケンシング中、DNAランダムタグ配列、アンカー配列、cfDNA配列(図1のc、d、e配列)が順次得られた。
【0113】
肝細胞がん特異的遺伝子変異の分析方法:シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、1つの突然変異が、(a1)少なくとも一対duplex分子クラスタによってサポートされていること、又は(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていることを満たすと、当該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異であり、基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であること
を同時に満たすことであり、基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあることを同時に満たすこと
である。
肝細胞がん特異的メチル化修飾の度合いの分析方法:シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、基準Cは、
6.ランダムタグ配列が同一であること、
7.アンカー配列が同一であること、
8.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致することを同時に満たすこと
である。
【0114】
実施例3、MCライブラリのキャプチャー及びシーケンシング
図3に示すように、標的領域濃縮は、従来の市販の標的キャプチャーキットに基づいて最適化設計を行ってキャプチャーされてもよい。例えば、メチル化領域に基づくキャプチャーは、Roche SeqCap Epi CpGiant Enrichment Kit(Roche 07138881001)又はIllumina Infinium Methylation EPIC BeadChipWG-317-1001)を参照してもよく、メチル化領域を標的とするキャプチャーの設計は、酵素切断部位のカバーする度合いに応じて選別し、プローブ中の亜硫酸水素塩処理で変換された塩基を調整することを必要とする。遺伝子変異領域に基づくキャプチャーは、最後のステップのPCR増幅のプライマーを以下のプライマーに変更すること以外、Agilent sureselect XT標的キャプチャーキット(Agilent5190-8646)を参照すればよい。
上流プライマー:5’-AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT-3’(配列403)(図3の「a」)、下線部分はプライマーMC_F部分と同じであり、ライブラリ増幅用であり、残りの部分はilluminaシーケンシングプラットフォームでのシーケンシングに必要な固定配列である。
下流プライマー:5’-CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT(配列404)********GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAA-3’(配列405)(図3の「b」)、下線部分はプライマーMC_Rと同じであり、ライブラリ増幅用である。********はindex配列位置であり、indexは長さ6-8bpであり、サンプル同士の配列を区別し、複数のサンプルを混合してシーケンシングすることに寄与する。残りの部分はilluminaシーケンシングプラットフォームでのシーケンシングに必要な固定配列である。
キャプチャー後のライブラリでは、MCライブラリと同じDNAランダムタグ配列、アンカー配列、及びcfDNA配列があり、この順でRead1下流に位置する。
【0115】
シーケンシングデータが基準Aを満たすDNA分子を1つの分子クラスタまでバックトラックし、基準Aは、
1.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
2.ランダムタグ配列が同一であること、
3.アンカー配列が同一であること
を同時に満たすことである。基準Bを満たす分子クラスタを一対のduplex分子クラスタとしてマークし、基準Bは、
4.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致すること、
5.分子クラスタの両端のアンカー配列が同一であるが、逆の位置にあることを同時に満たすこと
である。1つの突然変異が、(a1)少なくとも一対duplex分子クラスタによってサポートされていること、又は(a2)少なくとも4つの分子クラスタによってサポートされていることを満たすと、当該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異である。一対のduplex分子クラスタによってサポートされる突然変異は、信頼性がより高く、90%の偽陽性突然変異を減少できる。
シーケンシングデータが基準Cを満たすDNA分子をクラスタとしてマークし、断片末端が興味のある酵素切断部位であるクラスタの数をそれぞれ算出し、非メチル化断片として記録し、増幅断片が1番目の酵素切断部位と同程度又はそれ以上の全てのクラスタの数を算出し、断片総数として記録し、2種の断片の数から、領域のメチル化レベル=(1-非メチル化断片数/断片総数)×100%により対応する領域の平均メチル化レベルを算出し、基準Cは、
6.ランダムタグ配列が同一であること、
7.アンカー配列が同一であること、
8.DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致することを同時に満たすこと
である。
【0116】
実施例4、検出方法の比較
一、検出方法の比較1
1、21例の肝細胞がん患者からcfDNA標本を採取した。
2、ステップ1を完了した後、各cfDNA標本について、実施例1の方法によってMCライブラリを構築し、その後、実施例2の方法によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングし、AK055957遺伝子のメチル化レベルを得た。
3、ステップ1を完了した後、各cfDNA標本について、Padlock方法(Xu R H , Wei W , Krawczyk M , et al. Circulating tumour DNA methylation markers for diagnosis and prognosis of hepatocellular carcinoma[J]. Nature Materials, 2017, 16(11):1155.)によって、AK055957遺伝子のメチル化レベルを検出した。Padlockは、メチル化を標的とするシーケンシング技術であり、Padlockプローブはパドロックのようなコンフォメーションを有し、メチル化を標的とするハイスループットシーケンシングに適用でき、亜硫酸水素塩で変換された後の効率的な構築方法であり、「BSPP」とも呼ばれる。cfDNAを亜硫酸水素塩で変換した後、亜硫酸塩ロックプローブ(BSPP)のキャプチャーアームと相補的にペアリングすると、増幅されてループに連結され、エキソヌクレアーゼによりループに連結されたロックプローブを選別し、増幅生成物をシーケンシングすると、対応するDNAメチル化情報を得ることができる。
結果を図4に示す。結果から明らかなように、Padlock方法及び突然変異/メチル化共検出法(即ち本発明で提供される方法)は、AK055957遺伝子(肝細胞がん特異的遺伝子)のメチル化レベルの検出結果がほぼ同じである。
【0117】
二、検出方法の比較2
1、突然変異/メチル化共検出法による突然変異及び突然変異頻度の検出
(1)ある肝細胞がん患者からcfDNAを採取した。
(2)ステップ(1)を完了した後、cfDNA 5-40ngを用いて、表1に示す反応系を調製し、その後、PCR装置にて酵素切断処理を行い、得到酵素切断生成物を得た(4℃で保存)。ここで、酵素切断処理の時間は0h、0.2h、0.4h、0.6h、0.8h又は1hとした。
(3)ステップ(2)を完了した後、前記酵素切断生成物を用いて、実施例1の二~六の方法によってMCライブラリを構築し、その後、実施例2の方法によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングした。データ分析において、ランダムタグ配列が同一であり、DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致するDNA分子シーケンシングデータを、1つの分子クラスタまでバックトラックし、クラスタ内の分子数>5個、且つクラスタ内の分子突然変異一致率>80%、クラスタ個数≧5である場合、該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異である。該分子突然変異を含むクラスタの割合は突然変異頻度である。
2、突然変異単独検出法による突然変異及び突然変異頻度の検出
(1)ある肝細胞がん患者からcfDNAを採取した。
(2)ステップ(1)を完了した後、cfDNA 5-40ngを用いて、表3に示す反応系を調製し、その後、表4の反応プログラムに従ってPCR装置にて末端修復及び3’末端Aテーリングを行い、反応生成物を得た(4℃で保存)。
(3)ステップ(2)を完了した後、前記反応生成物を用いて、実施例1の四~六の方法によってMCライブラリを構築し、その後、実施例2の方法によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングした。データ分析において、ランダムタグ配列が同一であり、DNA挿入断片が、同一長さであり、且つ突然変異部位以外の配列が一致するDNA分子シーケンシングデータを、1つの分子クラスタまでバックトラックし、クラスタ内の分子数>5、クラスタ内の分子突然変異一致率>80%且つクラスタ個数≧5である場合、該突然変異は元のDNAサンプル由来の真の突然変異である。該分子突然変異を含むクラスタの割合は突然変異頻度である。
3、突然変異部位について突然変異/メチル化共検出法により得られた突然変異頻度を横座標、突然変異単独検出法により得られた突然変異頻度を縦座標として、散布図をプロットし、線形フィット曲線及び相関係数Rを付加した。
結果を図5に示す。結果から明らかなように、突然変異/メチル化共検出法及び突然変異単独検出法は、突然変異及び突然変異頻度の検出結果がほぼ一致し、即ち、メチル化検出は突然変異の検出に影響しなかった。
【0118】
実施例5、正確性実験
突然変異標準品はHorizon Discovery社の製品であり、カタログ番号がHD701である。
【0119】
一、正確性実験1
1、突然変異標準品を用いて、実施例1の一~六の方法によってMCライブラリを構築し、その後、実施例2の方法(ただし、ステップ3におけるGSP2A mixをGSP2A mix-1、GSP2B mixをGSP2B mix-1に変更)によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングした。
GSP2A mix-1:表15においてプライマープールGSP2Aに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMに希釈した。プライマープールGSP2Aにおけるプライマーは、テンプレートのプラス鎖増幅に用いる。
GSP2B mix-1:表15においてプライマープールGSP2Bに属する各プライマーを、TE緩衝液で溶解して濃度100μMとなるまで希釈し、その後、等体積で混合し、TE緩衝液で0.3μMに希釈した。プライマープールGSP2Bにおけるプライマーは、テンプレートのマイナス鎖増幅に用いる。
【0120】
【0121】
2、シーケンシング結果に基づいて、突然変異部位の突然変異頻度を得た。
検出結果を表16に示す。結果から明らかなように、突然変異/メチル化共検出法によって突然変異標準品について検出を行った結果、得られた突然変異部位の突然変異頻度は理論値に近い。このことから、突然変異/メチル化共検出法は、肝細胞がん特異的遺伝子(例えばCTNNB1遺伝子、TP53遺伝子、AXIN1遺伝子)の変異検出に対する正確性が高いことが分かった。
【0122】
【0123】
二、正確性実験2
ヒトメチル化及び非メチル化標準品はZymo Research社の製品であり、カタログ番号がD5014である。
1、ヒトメチル化及び非メチル化標準品のうち、メチル化標準品と非メチル化標準品を異なる割合で混合し、被験サンプルを得た。被験サンプル中、メチル化標準品の割合は0%、20%又は100%であり、即ち、腫瘍特異的遺伝子(BDH1遺伝子、EMX1遺伝子、LRRC4遺伝子、CLEC11A遺伝子、HOXA1遺伝子、AK055957遺伝子、COTL1遺伝子、ACP1遺伝子又はDAB2IP遺伝子)メチル化の割合は0%、20%又は100%である。
2、被験サンプルを用いて、実施例1の方法によってMCライブラリを構築し、その後、実施例2の方法によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングし、メチル化部位の検出値を得た。
検出結果を表17及び表18に示す(サンプルタイプの最後の4桁は腫瘍特異的遺伝子の名称である)。突然変異/メチル化共検出法によってメチル化標準品について検出を行った結果、検出値は理論値にほぼ近い。このことから、突然変異/メチル化共検出法は、腫瘍特異的遺伝子(例えばBDH1遺伝子、EMX1遺伝子、LRRC4遺伝子、CLEC11A遺伝子、HOXA1遺伝子、AK055957遺伝子、COTL1遺伝子、ACP1遺伝子、DAB2IP遺伝子)のメチル化レベルに対する検出正確性が高いことが分かった。
【0124】
【0125】
【0126】
実施例6、突然変異/メチル化共検出法の肝細胞がん患者cfDNAにおける使用
1、健常人1例、肝硬変患者1例、及び肝細胞がん患者3例の血液サンプルから、cfDNAを抽出した。
2、cfDNA 5-40ngを用いて、実施例1のようにMCライブラリを構築し、実施例2の方法によってRaceSeq標的領域濃縮を行い、シーケンシングした。
3、メチル化検出結果を表19及び表20に示す。
その結果、肝細胞がん特異的高メチル化の遺伝子は、検出される肝細胞がんサンプル中のメチル化レベルが非肝細胞がんサンプル中のメチル化レベルよりも高かった。突然変異/メチル化共検出法は、肝細胞がんcfDNAサンプルの検出に有用であった。
【0127】
【0128】
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、1つのサンプルにおいてctDNA中の腫瘍特異的遺伝子の変異(点突然変異、インデル突然変異、HBV組み込みなどの複数の突然変異の形態を含む)及び/又はメチル化を同時に検出し得る方法を開示し、サンプルの使用量が少ないだけでなく、該方法で製造されたMCライブラリが10-20回の後続の検出をサポートすることができ、感度及び特異性を低下させることなく、いずれかの検出結果によっても全ての元のctDNA標本の突然変異及び酵素切断部位がカバーする領域のメチル化修飾を反映することができる。また、ライブラリ構築方法は、cfDNAサンプルだけでなく、ゲノムDNA又はcDNAサンプルに適用できる。本発明は、腫瘍早期スクリーニング、病状追跡、有効性評価、予後予測などに対して臨床的に重要であり、応用の価値が高い。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022551688000001.app
【国際調査報告】