(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】カルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤、バインダー及びその2Kコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20221206BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221206BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521625
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020077143
(87)【国際公開番号】W WO2021069251
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/110161
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,クリスティアン,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゼマン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】サルヴィ,ランジット
(72)【発明者】
【氏名】へフェルマン,クラース,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ヴレーデ,ヤナ,マリア
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038DD001
4J038GA06
4J038KA03
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、式I-(a)及び/又は式I-(b)によって表される少なくとも1つの基、及び、式II-(a)及び/又は式II-(b)によって表される少なくとも1つの基:
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C18アルキル基、C1~C6アルコキシル基、フェニル基、アリール基、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはC1~C6アルコキシル基であり、R
4はC1~C18アルキル基、C1~C6アルカノール基、C1~C6アルコキシル基、又は水素原子を表し、R
5は水素原子、C1~C18アルキル基、又はC1~C6アルコキシル基を表し、R
6はC2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基又はアリーレン基を表し、R
7は-NR
4-基、C2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基、C1~C18アルコキシ基又はアリーレン基を表す)を有する少なくとも1つのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーを含むカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤を提供し、本発明はまた、本発明のシラン官能性硬化剤と少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂との反応から得られるバインダーを提供し、本発明はさらに、一方のバレルに本発明のシラン官能性硬化剤を含み、他方のバレルに少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含む2Kコーティング組成物を提供し、ならびに、得られるコーティング層を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-(a)及び/又は式I-(b)によって表される少なくとも1つの基、及び、式II-(a)及び/又は式II-(b)によって表される少なくとも1つの基:
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C18アルキル基、C1~C6アルコキシル基、フェニル基、アリール基、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはC1~C6アルコキシル基であり、R
4はC1~C18アルキル基、C1~C6アルカノール基、C1~C6アルコキシル基、又は水素原子を表し、R
5は水素原子、C1~C18アルキル基、又はC1~C6アルコキシル基を表し、R
6はC2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基又はアリーレン基を表し、R
7は-NR
4-基、C2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基、C1~C18アルコキシ基又はアリーレン基を表す)
を有する少なくとも1つのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーを含むカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項2】
式I-(a)及び式I-(b)におけるR
1、R
2及びR
3が、好ましくはC1~C6アルコキシル基を表し、より好ましくはメトキシ及び/又はエトキシを表す、請求項1に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項3】
式II-(a)におけるR
4が、好ましくはC1~C6アルカノール基を表し、式II-(a)におけるR
5が、好ましくは水素原子を表す、請求項1又は2に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項4】
式II-(b)におけるR
6が、好ましくはカルボニル基又はC2~C6アシル基を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項5】
式I-(a)及び式I-(b)によって表される基と、式II-(a)及び式II-(b)によって表される基のモル比が0.1~10、好ましくは0.5~2.0である、請求項1~4のいずれか1項に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項6】
前記オリゴマーの主鎖が、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマー、イソシアネートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項7】
前記ポリマーの主鎖が、ポリ(メタ)アクリレート及び/又はそのコポリマー、ポリウレア及び/又はそのコポリマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項8】
前記コポリマーが、少なくとも1つのアルコキシシランとエポキシ及び/又はアミン官能化カルボニル化合物を、末端基又は側基として好ましくは含む、請求項7に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項9】
前記アミン官能化カルボニル化合物が、アミド、ウレタン及びウレアから選択される少なくとも1つである、請求項8に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項10】
前記硬化剤が溶媒系又は水性である、請求項1~9のいずれか1項に記載のカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のシラン官能性硬化剤と、少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂との反応から得られるバインダー。
【請求項12】
前記カルボキシル官能性樹脂が、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載のバインダー。
【請求項13】
前記バインダーの表面硬度が試験規格ISO1522によれば75回以上である、請求項11又は12に記載のバインダー。
【請求項14】
前記バインダーの溶媒摩擦値がMEK(メチルエチルケトン)二重摩擦試験によれば200回以上である、請求項11~13のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項15】
一方のバレルに請求項1~10のいずれか1項に記載のシラン官能性硬化剤を含み、他方のバレルに少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含む、2Kコーティング組成物。
【請求項16】
前記カルボキシル官能性樹脂が、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の2Kコーティング組成物。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の2Kコーティング組成物の一方のバレル内の成分と他方のバレル内の成分との反応から得られる、コーティング層。
【請求項18】
前記コーティング層の表面硬度が、試験規格ISO 1522によれば110回以上である、請求項17に記載のコーティング層。
【請求項19】
前記コーティング層のスクラッチ耐性が、20°光沢保持試験によれば70%以上である、請求項17に記載のコーティング層。
【請求項20】
電着コート、プライマー、ベースコート及びクリアコートを含む自動車用コーティングとして使用される、請求項17~19のいずれか1項に記載のコーティング層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤、このようなシラン官能性硬化剤とカルボキシル官能性樹脂との反応から得られるバインダー、一方のバレルにこのようなシラン官能性硬化剤を含み、他方のバレルに少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含む2Kコーティング組成物、ならびに、電着コート、プライマー、ベースコート、クリアコートなどの自動車用コーティングとして使用される2Kコーティング組成物から得られるコーティング層に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車用コーティングは、樹脂と、カルボキシル官能性ポリアクリレートとエポキシ官能性硬化剤の組み合わせ、又は、ヒドロキシル官能性アルキド樹脂とメラミン官能性硬化剤の組み合わせなどの樹脂の官能性と反応する官能性を有する硬化剤との反応により硬化する熱硬化性コーティングに基づいている。通常、これらのコートは薬品耐性及びスクラッチ耐性が低い。このような特性を改善するために、シランがコーティング組成物に導入される。シランは容易に加水分解されシルセスキオキサンネットワークを形成し、良好な薬品耐性、スクラッチ耐性、耐候性などの優れた特性を提供する。
【0003】
特許US6045870号は、カルボキシル基の20%以上がシリル化されたカルボキシル含有化合物、エポキシ、ヒドロキシル及び加水分解性アルコキシシリル含有ビニルポリマー、又はヒドロキシル基の20%以上がシリル化されたビニルポリマーから選択される少なくとも1つのエポキシド、及び架橋微粒子ポリマーを含む有機溶媒系熱硬化性高固体コーティング組成物を開示している。しかし、溶媒系(solvent-borne)コーティングシステムにのみ焦点を当て、水性(water-borne)コーティングシステムについては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、良好な耐薬品耐性、スクラッチ耐性などを有するコーティング層を得るため、溶媒系及び水性コーティングシステムの両方に適用可能な従来のコーティング組成物にシラン官能基を導入するための新しいアプローチを見つけることが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、式I-(a)及び/又は式I-(b)によって表される少なくとも1つの基、及び、式II-(a)及び/又は式II-(b)によって表される少なくとも1つの基:
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C18アルキル基、C1~C6アルコキシル基、フェニル基、アリール基、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはC1~C6アルコキシル基であり、R
4はC1~C18アルキル基、C1~C6アルカノール基、C1~C6アルコキシル基、又は水素原子を表し、R
5は水素原子、C1~C18アルキル基、又はC1~C6アルコキシル基を表し、R
6はC2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基又はアリーレン基を表し、R
7は-NR
4-基、C2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基、C1~C18アルコキシ基又はアリーレン基を表す)
を有する少なくとも1つのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーを含むカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、本発明のシラン官能性硬化剤と少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂との反応から得られるバインダーを提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、一方のバレルに本発明のシラン官能性硬化剤を、他方のバレルに少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含む2Kコーティング組成物を提供する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、本発明の2Kコーティング組成物の一方のバレル中の成分と他方のバレル中の成分との反応から得られるコーティング層を提供する。
【0010】
驚くべきことに、本発明のカルボキシル官能性樹脂用のシラン官能性硬化剤は、より優れたスクラッチ耐性、アルカリ及び酸エッチング耐性を有するコーティング層をもたらすことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される以下の用語は、以下のように定義される:
「a」、「an」及び「the」という表現は、用語を定義するために使用される場合、その用語の複数形及び単数形の両方を含む。
【0012】
すべてのパーセンテージは、特に明記されていない限り、すべて質量で記載されている。
【0013】
「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」の意味を含み、ならびにこの用語に関連する要素の他のすべての可能な組み合わせも含む。
【0014】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、すなわち単一の反応性化合物から調製されるポリマーを指す。
【0015】
本明細書で使用される「コポリマー」という用語は、反応性モノマー化合物を形成する少なくとも2つのポリマーの反応によって調製されるポリマーを指す。
【0016】
本明細書で使用される「オリゴマー」という用語は、単一のモノマー化合物の2~3個の繰り返し単位を有するホモポリマーを指す。
【0017】
本明細書で使用される「コオリゴマー」という用語は、合計で2つ又は3つのモノマー化合物の2~3つの繰り返し単位を有するコポリマーを指す。
【0018】
本明細書で使用される「バインダー」という用語は、コーティング組成物のフィルム形成成分を指す。したがって、樹脂及び硬化剤はバインダーの一部であるが、溶媒、顔料、添加剤、例えば酸化防止剤、HALS、UV吸収剤、レベリング剤などは、バインダーの一部ではない。
【0019】
本明細書で使用される「硬化剤」という用語は、コーティング組成物の樹脂に反応する架橋剤又は硬化剤を指す。
【0020】
本明細書で使用される「2K」、又は「2成分」いう用語は、2つの成分を含む組成物を指し、それぞれはまた、いくつかの化合物の混合物であり得る。2つの成分は、必要に応じてブレンドされることができる。そして、2つの成分はまた、用途に応じてその場で混合できる2つの独立したバレルであってもよい。
【0021】
本明細書で使用される「固形分」という用語は、コーティング、塗料などの懸濁液に含まれる不揮発性材料の質量パーセントを指す。
シラン官能性硬化剤
本発明のシラン官能性硬化剤は、式I-(a)及び/又は式I-(b)に示されるシラン官能基(functionalities)と、式II-(a)に示されるβ-ヒドロキシルアルキルアミン官能化カルボニル化合物(アミド、ウレタン、ウレア)及び式II-(b)に示されるエポキシ官能基から選択される少なくとも1つを含むモノマー又はオリゴマー又はポリマー化合物であり:
【化2】
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C18アルキル基、C1~C6アルコキシル基、フェニル基、アリール基、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはC1~C6アルコキシル基であり、R
4はC1~C18アルキル基、C1~C6アルカノール基、C1~C6アルコキシル基、又は水素原子を表し、R
5は水素原子、C1~C18アルキル基、又はC1~C6アルコキシル基を表し、R
6はC2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基又はアリーレン基を表し、R
7は-NR
4-基、C2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基、C1~C18アルコキシ基又はアリーレン基を表す。
【0022】
好ましくは、式I-(a)及び式I-(b)におけるR1、R2及びR3は、C1~C6アルコキシル基を表すことが好ましく、より好ましくはメトキシ及び/又はエトキシを表す。好ましくは、式II-(a)におけるR4はC1~C6アルカノール基を表すことが好ましく、式II-(a)におけるR5は水素原子を表すことが好ましい。好ましくは、式II-(b)におけるR6は、カルボニル基又はC2~C6アシル基を表すことが好ましい。
【0023】
特定の例では、式I-(a)及び/又は式I-(b)によって表される少なくとも1つの基、及び、式II-(a)及び/又は式II-(b)によって表される少なくとも1つの基を有する少なくとも1つのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーを含むカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤であり:
【化3】
式中、R
1、R
2及びR
3はメトキシ基又はエトキシ基であり、R
4はエチルヒドロキシル基であり、R
5は水素原子であり、R
6はカルボニル基であり、及びR
7は-NH-基である。
【0024】
シラン官能性硬化剤中のオリゴマーの主鎖は、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマー、イソシアネートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む。
【0025】
シラン官能性硬化剤におけるポリマーの主鎖は、ポリ(メタ)アクリレート及び/又はそのコポリマー、ポリアミド及び/又はそのコポリマー、ポリウレタン及び/又はそのコポリマー、ポリエステル及び/又はそのコポリマー、ポリエーテル及び/又はそのコポリマー、ポリオレフィン及び/又はそのコポリマー、ポリウレア及び/又はそのコポリマー、ポリイソシアネート及び/又はそのコポリマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む。このようなコポリマーは、末端基又は側基として、少なくとも1つのアルコキシシランならびにエポキシ及び/又はアミン官能化カルボニル化合物(アミド、ウレタン、ウレア)を好ましくは含む。
【0026】
本発明のシラン官能性硬化剤のシラン官能基は、シランの自己架橋を可能にし、エポキシ及び/又はβ-ヒドロキシルアルキルアミン官能化カルボニル化合物(アミド、ウレタン、ウレア)は、カルボキシル官能性樹脂のカルボキシル基との架橋を可能にする。この種の「二重硬化」は、相互作用ポリマーとシルセスキオキサンのネットワークをもたらし、その結果、さらなるフィルム形成ポリマー、又は可塑剤などの他の添加物を添加することなく、コーティング層のクラックを効果的に抑制することができる。
【0027】
シラン官能基とエポキシ及び/又はβ-ヒドロキシルアルキル官能基のモル比はカルボキシル官能性樹脂との反応後の硬化効果に有意に影響し得る。シルセスキオキサンのネットワークの高いパーセンテージは、より高い硬度とより良好なスクラッチ耐性をもたらす傾向があり、エポキシ-カルボキシル反応又はβ-ヒドロキシルアルキル官能化カルボニル化合物(アミド、ウレタン、ウレア)-カルボキシル反応又はその両方によって形成されるポリマーネットワークの高いパーセンテージは、より良好な引張強度をもたらす傾向がある。したがって、コーティング層のバランスのとれた特性を達成するためには、このようなモル比の適切な範囲が必要である。好ましくは、シラン官能基とエポキシ及び/又はβ-ヒドロキシルアルキルアミン官能化カルボニル化合物(アミド、ウレタン、ウレア)のモル比は0.1~10.0、より好ましくは0.5~2.0である。
【0028】
シラン官能性硬化剤は、溶媒系システム及び水性システムの両方で使用できる。
【0029】
一実施形態では、シラン官能性硬化剤は、ジtertブチルペルオキシドの開始剤の存在下で、ビニルトリメトキシシラン、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、スチレン、グリシジルメタクリレート及びn-ドデカンチオールの間の反応によって得られるエポキシ官能性アルコキシシランポリマーである。
【0030】
別の実施形態では、シラン官能性硬化剤は、ジエタノールアミンと3-イソシアナトプロピル-トリエトキシシランの反応から得られるモノマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレアである。
【0031】
別の実施形態では、シラン官能性硬化剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンとヘキサメチレンジイソシアネート及びジエタノールアミンに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂との反応から得られるオリゴマーのシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレアである。
【0032】
さらなる実施形態において、水性シラン官能性硬化剤は、ビス(3-トリエトキシルシリルプロピル)アミン、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂、ポリエチレングリコール及びジエタノールアミンの反応から得られる。
カルボキシル官能性樹脂
本発明のカルボキシル官能性樹脂は、バインダー樹脂としてコーティングに用いられるポリマー及び/又はコポリマー含有カルボキシル基の任意のタイプである。
【0033】
好ましくは、カルボキシル官能性樹脂は、カルボキシル官能性ポリアクリル酸、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、及びカルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0034】
好ましくは、前記カルボキシル官能性樹脂は、少なくとも1つのカルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレートを含む。本発明に適したカルボキシル官能性ポリアクリル酸は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、直鎖又は環状のアルキルジカルボン酸又はその無水物、例えば直鎖又は環状のC2~C6アルキルジカルボン酸又はその無水物を含有するモノマー混合物の重合から得ることもできる。さらに、本発明の一実施形態において、モノマー混合物は、ラクトンモノマーをさらに含んでよい。
【0035】
本発明で使用できるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例は、ヒドロキシルC2~C4アルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを含む。
【0036】
本発明で使用できるラクトンモノマーの非限定的な例は、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトンを含む。
【0037】
本発明で使用できる直鎖又は環状のアルキルジカルボン酸又はその無水物の非限定的な例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、25シクロブタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、1,2シクロヘキサンジカルボン酸及びその無水物が挙げられる。
【0038】
他のモノマーもまた、本発明に適したカルボキシル官能性ポリアクリル酸の調製において、コモノマーとして使用することができる。このようなコモノマーは、例えば、スチレン、(メタ)アクリレートなどであり得る。例えば、(メタ)アクリレートは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート及び3,3,5-トリメチルヘキシルメタクリレート、からなる群から選択されてもよい。
【0039】
本発明に適したカルボキシル官能性ポリアクリル酸は、従来のフリーラジカル重合技術、例えば重合開始剤の存在下でモノマーを加熱することによって調製されることができる。
【0040】
本発明のカルボキシル官能性樹脂はまた、コーティング組成物のバインダー樹脂として使用されるのに適したカルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリエーテル及びカルボキシル官能性ポリアミドであり得る。
【0041】
本発明のカルボキシル官能性樹脂は、溶媒系又は水性である。好ましくは、カルボキシル官能性樹脂の酸価は、70~300mg KOH/gの範囲であり、より好ましくは100~200mg KOH/gの範囲である。
【0042】
一実施形態において、溶媒系カルボン酸官能性ポリエステルは、溶媒ナフサの溶媒の存在下で、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデカン酸、ペンタエリスリトールの反応によって得られ、得られた樹脂は3000g/molの質量平均分子量及び181mg KOH/gの酸価を有する。
【0043】
別の実施形態では、溶媒系カルボン酸官能性ポリアクリレートは、溶媒ナフサ中のジ第三級ブチルペルオキシドの開始剤溶液、及び1-ブタノールと溶媒ナフサとの溶媒混合物の存在下で、アクリル酸、n-ブチルアクリレート、スチレン、エチルヘキシルアクリレート及びドデシルメルカプタンの反応によって得られ、得られた樹脂は3000g/molの質量平均分子量及び131mg KOH/gの酸価を有する。
【0044】
別の実施形態では、水性カルボン酸官能性ポリアクリレートは、ブチルグリコール中の第三級ブチルペルオキシル-2-エチルヘキサノエートの開始剤溶液、及びブチルグリコールと水の溶媒混合物の存在下で、スチレン、2-エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート及びジメチルアミノエタノールの反応によって得られ、得られた樹脂は、3800g/molの質量平均分子量、178mg KOH/g酸価及び75%の中和度を有する。
【0045】
さらなる実施形態では、水性カルボン酸官能性ポリエステルは、3-エトキシプロピオン酸エチル及び水の溶媒混合物の存在下で、アジピン酸、トリメチロールプロパン、ヘキサヒドロフタル酸無水物、Cardura E10と、ジメチルアミノエタノールとの反応によって得られ、得られた樹脂は、3800g/molの質量平均分子量、180mg KOH/g酸価及び70%の中和度を有する。
バインダー
バインダーは、本発明のシラン官能性硬化剤と少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂との反応から得られる。溶媒系及び水性の両方のバインダーは、溶媒系又は水性のシラン官能性硬化剤及びカルボキシル官能性樹脂を選択することにより調製することができる。ブチルアセテート又は1-ブタノールのような有機溶媒を加えて、溶媒系バインダーを調製することができる。シリコーンに基づく界面活性剤又は反応性有機官能性シロキサンなどの他の添加剤及び/又は共硬化剤も同様に添加することができる。
【0046】
好ましくは、バインダーの形成に用いられるカルボキシル官能性樹脂は、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む。
【0047】
好ましくは、バインダーの表面硬度は、試験規格ISO 1522によれば75回以上である。
【0048】
好ましくは、バインダーの溶媒摩擦値は、MEK(メチルエチルケトン)二重摩擦試験によれば200回以上である。
【0049】
一実施形態では、溶媒系バインダーは、ブチルアセテート又は1-ブタノールの溶媒の存在下で、溶媒系カルボン酸官能性ポリエステルとモノマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレア又はオリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア又はエポキシ官能性アルコキシシランポリマーとの反応によって得られる。
【0050】
別の実施形態では、溶媒系バインダーは、ブチルアセテート又は1-ブタノールの溶媒の存在下で、溶媒系カルボン酸官能性ポリアクリレートとモノマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレア又はオリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア又はエポキシ官能性アルコキシシランポリマーとの反応によって得られる。
【0051】
別の実施形態では、水性バインダーは、水性カルボン酸官能性ポリアクリレートとモノマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレア又は水性オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレアとの反応から得られる。
【0052】
さらなる実施形態では、水性バインダーは、水性カルボン酸官能性ポリエステルとモノマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレア又は水性オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシル-アルキルウレアとの反応から得られる。
【0053】
溶媒系バインダーの固形分は35%以上、水性バインダーの固形分は50%以上である。
【0054】
2Kコーティング組成物
2Kコーティング組成物は、成分Aと成分Bを含み、成分Aは少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含み、成分Bは他のバレルに少なくとも1つのシラン官能性硬化剤を含む。
【0055】
好ましくは、カルボキシル官能性樹脂は、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む。
【0056】
一実施形態において、2Kコーティング組成物の成分Aは、カルボキシル官能性樹脂、有機溶媒及び触媒を含み、2Kコーティング組成物の成分Bは、シラン官能性硬化剤及び有機溶媒を含む。実際の要件に応じて、他の添加剤を成分A又は成分Bに添加することができる。
【0057】
2Kコーティング組成物の成分Aと成分Bを混合し、乾燥及び硬化したコーティング層を得る。好ましくは、得られたコーティング層は、電着コート、プライマー、ベースコート及びクリアコートを含む自動車用コーティングとして使用することができる。
【0058】
コーティング層の表面硬度は、試験規格ISO 1522によれば110回以上である。コーティング層のスクラッチ耐性は、20°光沢保持試験によれば70%以上である。酸エッチング耐性は、20°光沢保持試験によれば80%以上である。アルカリエッチング耐性は、20°光沢保持試験によれば90%以上である。
【0059】
実施形態
以下の実施形態は、本発明をより詳細に説明するために使用される。
【0060】
第1の実施形態は、式I-(a)及び/又は式I-(b)によって表される少なくとも1つの基、及び、式II-(a)及び/又は式II-(b)によって表される少なくとも1つの基:
【化4】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C18アルキル基、C1~C6アルコキシル基、フェニル基、アリール基、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つはC1~C6アルコキシル基であり、R
4はC1~C18アルキル基、C1~C6アルカノール基、C1~C6アルコキシル基、又は水素原子を表し、R
5は水素原子、C1~C18アルキル基、又はC1~C6アルコキシル基を表し、R
6はC2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基又はアリーレン基を表し、R
7は-NR
4-基、C2~C6アシル基、C1~C18アルキレン基、C1~C18アルコキシ基又はアリーレン基を表す)
を有する少なくとも1つのモノマー及び/又はオリゴマー及び/又はポリマーを含むカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0061】
第2の実施形態は、式I-(a)及び式I-(b)におけるR1、R2及びR3が、好ましくはC1~C6アルコキシル基を表し、より好ましくはメトキシ及び/又はエトキシを表す、第1の実施形態によるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0062】
第3の実施形態は、式II-(a)におけるR4が、好ましくはC1~C6アルカノール基を表し、式II-(a)におけるR5が、好ましくは水素原子を表す、実施形態1又は2のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0063】
第4の実施形態は、式II-(b)におけるR6が、好ましくはカルボニル基又はC2~C6アシル基を表す、実施形態1~3のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0064】
第5の実施形態は、式I-(a)及び式I-(b)によって表される基と、式II-(a)及び式II-(b)によって表される基とのモル比が0.1~10、好ましくは0.5~2.0である、実施形態1~4のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0065】
第6の実施形態は、前記オリゴマーの主鎖が、(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマー、イソシアネートオリゴマー及び/又はそのコオリゴマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む、実施形態1~5のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0066】
第7の実施形態は、前記ポリマーの主鎖が、ポリ(メタ)アクリレート及び/又はそのコポリマー、ポリウレア及び/又はそのコポリマーから選択される少なくとも1つを好ましくは含む、実施形態1~5のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0067】
第8の実施形態は、前記コポリマーが、少なくとも1つのアルコキシシランとエポキシ及び/又はアミン官能化カルボニル化合物を、末端基又は側基として好ましくは含む、第7の実施形態によるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0068】
第9の実施形態は、前記アミン官能化カルボニル化合物が、アミド、ウレタン及びウレアから選択される少なくとも1つである、第8の実施形態によるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0069】
第10の実施形態は、前記硬化剤が溶媒系又は水性である、実施形態1~9のいずれか1つによるカルボキシル官能性樹脂用シラン官能性硬化剤である。
【0070】
第11の実施形態は、実施形態1~10のいずれか1つによるシラン官能性硬化剤と、少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂との反応から得られるバインダーである。
【0071】
第12の実施形態は、前記カルボキシル官能性樹脂が、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む、第11の実施形態によるバインダーである。
【0072】
第13の実施形態は、前記バインダーの表面硬度が試験規格ISO 1522によれば75回以上である、実施形態11~12のいずれか1つによるバインダーである。
【0073】
第14の実施形態は、前記バインダーの溶媒摩擦値がMEK(メチルエチルケトン)二重摩擦試験によれば200回以上である、実施形態11~13のいずれか1つによるバインダーである。
【0074】
第15の実施形態は、一方のバレルに実施形態1~10のいずれか1つによるシラン官能性硬化剤を含み、他方のバレルに少なくとも1つのカルボキシル官能性樹脂を含む2Kコーティング組成物である。
【0075】
第16の実施形態は、前記カルボキシル官能性樹脂が、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレート、カルボキシル官能性ポリウレタン、カルボキシル官能性ポリウレア、カルボキシル官能性ポリエーテル、カルボキシル官能性ポリアミド及び/又はそれらのコポリマーから選択される少なくとも1つを含む、第15の実施形態による2Kコーティング組成物である。
【0076】
第17の実施形態は、第15~第16の実施形態のいずれか1つによる2Kコーティング組成物の一方のバレル内の成分と他方のバレル内の成分との反応から得られる、コーティング層である。
【0077】
第18の実施形態は、前記コーティング層の表面硬度が、試験規格ISO 1522によれば110回以上である、第17の実施形態によるコーティング層である。
【0078】
第19の実施形態は、前記コーティング層のスクラッチ耐性が、20°光沢保持試験によれば70%以上である、第17の実施形態によるコーティング層である。
【0079】
第20の実施形態は、電着コート、プライマー、ベースコート及びクリアコートを含む自動車用コーティングとして使用される、実施形態17~19のいずれか1つによるコーティング層である。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を、実施例を参照して説明するが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
【0081】
実施例1:溶媒系カルボン酸官能性ポリエステルの調製
29.4質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、0.8質量部のシクロヘキサン(CH)、10.6質量部のドデカン酸(DDA)及び13.4質量部のペンタエリスリトール(Penta)を還流凝縮器、水分離器及びN2導入口を備えたステンレス鋼製反応器に充填した。得られた反応混合物を、N2下で185℃まで加熱した。150mg KOH/gの酸価に達した後、反応混合物を120℃まで冷却し、32.1質量部の溶媒ナフサ160/180(SN)中、10.1質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)の溶液を加えることによりポリマーを希釈した。反応混合物を、180mg KOH/gの酸価に達するまで120℃に保持した。その後、反応混合物を1-ブタノール(1-Bu)で希釈し、最終的な固形分が62%となるようにした。得られたポリエステルは、1000g/molの数平均分子量(MN)、3000g/molの質量平均分子量(MW)、10mg KOH/gのOH価、及び181mg KOH/gの固体の酸価を有していた。
【0082】
実施例2:溶媒系カルボン酸官能性ポリアクリレートの調製
還流凝縮器及びN2導入口を備えたステンレス鋼製反応器に、13.2質量部の1-ブタノール(BU)及び16.6質量部の溶媒ナフサ160/180(SN)を充填し、この初期充填物を140℃に加熱した。反応器を圧力(3.5バール)に置いた。その後、4.7時間かけて、開始剤溶液(2.4質量部の1-ブタノール及び2.9質量部の溶媒ナフサ中の、5.3質量部のジ第三級ブチルペルオキシド(DTBP))を撹拌しながら一定の速度で計量する。15.0質量部のアクリル酸(AA)、26.0質量部のn-ブチルアクリレート(nBA)、6.2質量部のスチレン(St)、11.5質量部の2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)及び1.0質量部のドデシルメルカプタン(DDM)を含むモノマー混合物を4時間かけて撹拌しながら一定の速度で計量した。その後、反応混合物を室温まで冷却した。得られたポリアクリレート溶液の固形分は65.8%であった。得られたポリアクリレートは、3000g/molの質量平均分子量(MW)及び、131mg KOH/gの固体の酸価を有する。
【0083】
実施例3:水性カルボン酸官能性ポリアクリレートの調製
還流凝縮器及びN2導入口を備えたステンレス鋼製反応器に、12.5質量部のブチルグリコール(BG)を充填し、この初期充填物を120℃に加熱した。その後、4.5時間かけて、開始剤溶液(1.2質量部のブチルグリコール中の、1.2質量部の第三級ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH))を撹拌しながら一定の速度で計量した。2.4質量部のスチレン(St)、4.9質量部の2-エチルヘキシルメタクリレート(EHA)、7.0質量部のメタクリル酸(MAA)、4.6質量部のメチルメタクリレート(MMA)及び5.4質量部のn-ブチルメタクリレート(nBA)を含むモノマー混合物を4時間かけて撹拌しながら一定の速度で計量した。その後、反応混合物を60℃まで冷却し、5.7質量部の2-ジメチルアミノエタノール(DMEA)及び55.1質量部の水の混合物を加えて希釈した。得られたポリアクリレート溶液の固形分は27.6%であった。得られたポリアクリレートは、3800g/molの質量平均分子量(MW)、178mg KOH/gの固体の酸価及び75%の中和度を有していた。
【0084】
実施例4:水性カルボン酸官能性ポリエステルの調製
3.9質量部のアジピン酸(ADA)、1.1質量部のキシレン(XY)、及び7.4質量部のトリメチロールプロパン(TMP)を還流凝縮器、水分離器及びN2導入口を備えたステンレス鋼製反応器に充填した。得られた反応混合物を、N2下で230℃まで加熱した。酸価が一定になった後、反応混合物を90℃まで冷却し、5.2質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)及び2.5質量部の3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP)を添加した。反応混合物を115℃に保持した。その後、10.3質量部のヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)を添加し、酸価が一定になるまで115℃で反応させた。その後、反応混合物を140℃に加熱し、6.0質量部のCardura E10を添加した。反応混合物を60℃に冷却し、9.5質量部のメチルエチルケトン(MEK)を加えて希釈した後、5.7質量部の2-ジメチルアミノエタノール(DMEA)と20.4質量部の水との混合物を添加した。その後、メチルエチルケトン(MEK)を最終固形分50%になるように除去した。得られたポリエステルは、2500g/molの質量平均分子量(MW)、180mg KOH/gの固体の酸価及び72%の中和度を有していた。
【0085】
実施例5:エポキシ官能性アルコキシシランポリマーの調製
反応器に16.6質量部の溶媒ナフサ160/180(SN)を充填し、この初期充填物を145℃に加熱した。反応器を圧力下(3.5バール)に置いた。その後、5時間かけて、開始剤溶液(3.0質量部の溶媒ナフサ160/180(SN)中の3.6質量部のジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP))を撹拌しながら一定の速度で計量した。開始剤の供給を開始してから15分後に、25.6質量部のビニルトリメトキシシラン(VTMS)を、1時間かけて撹拌しながら一定の速度で計量した。同時に、4.9質量部のメチルメタクリレート(MMA)、12.2質量部のn-ブチルアクリレート(nBA)、4.9質量部のスチレン(St)、24.5質量部のグリシジルメタクリレート(GMA)及び2.5質量部のn-ドデカンチオール(NDT)からなるモノマー混合物を4.5時間かけて撹拌しながら一定の速度で計量した。開始剤溶液を完全に添加した後、反応器を155℃に加熱し、上記の圧力で0.75時間撹拌を続けた後、1.0質量部の溶媒ナフサ160/180(SN)中の、1.2質量部のジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)からなる溶液を1.2時間かけて再び一定の速度で添加した。その後、バッチを上記の温度及び上記の圧力でさらに1.1時間保持した。得られたポリアクリレート溶液の固形分は74.8%であった。コポリマーは、1350g/molの数平均分子量(MN)と4760g/molの質量平均分子量(MW)を有していた。コポリマーのエポキシ当量(EEW)は539であった。
【0086】
実施例6:モノマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア硬化剤の調製
攪拌機、温度センサー、窒素導入口、凝縮器、及び滴下漏斗を備えた250mlフラスコに29.85gのジエタノールアミン(0.284モル、1当量)を充填し、70.3g(0.284モル、1当量)の3-イソシアナトプロピル-トリエトキシシランを滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。その後、生成物を容器に注ぎ、窒素ブランケットで密封した。硬化剤の固形分は100%であった。
【0087】
実施例7:オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア硬化剤Iの調製
攪拌機、温度センサー、窒素導入口、凝縮器、及び滴下漏斗を備えた250mlフラスコに53.88gのDesmodur(登録商標)N 3600(0.3モル、3当量)を充填し、42.57g(0.1モル、1当量)のDynasylan 1122を滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。その後、21.03g(0.2モル、2当量)のジエタノールアミンを滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。最後に、生成物を容器に注ぎ、窒素のブランケットで密封した。硬化剤の固形分は97.1%であった。
【0088】
実施例8:オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア硬化剤IIの調製
攪拌機、温度センサー、窒素導入口、凝縮器、及び滴下漏斗を備えた250mlフラスコに53.88gのDesmodur(登録商標)N 3600(0.3モル、3当量)を充填し、85.14g(0.2mol,2当量)のDynasylan 1122を滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。その後、10.51g(0.1モル、1当量)のジエタノールアミンを滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。最後に、生成物を容器に注ぎ、窒素のブランケットで密封した。硬化剤の固形分は100%であった。
【0089】
実施例9:水性オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア硬化剤Iの調製
攪拌機、温度センサー、窒素導入口、凝縮器、及び滴下漏斗を備えた250mlフラスコに53.88gのDesmodur(登録商標)N 3600(0.3モル、3当量)を充填し、72.37g(0.17モル、1.7当量)のDynasylan 1122を滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。その後、反応混合物を10gのメチルエチルケトンによって希釈し、22.61gのPluriol M750(0.03モル、0.3当量)を加え、反応混合物を70℃に加熱した。反応器をさらに360分間70℃に維持した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、10.15g(0.1モル、1当量)のジエタノールアミンを滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。最後に、生成物をガラス容器に注ぎ、窒素のブランケットで密封した。硬化剤の固形分は94.3%であった。
【0090】
実施例10:水性オリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア硬化剤IIの調製
攪拌機、温度センサー、窒素導入口、凝縮器、及び滴下漏斗を備えた250mlフラスコに53.88gのDesmodur(登録商標)N 3600(0.3モル、3当量)を充填し、42.57g(0.1モル、1.0当量)のDynasylan 1122を滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加そた。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。その後、反応混合物を10gのメチルエチルケトンによって希釈し、22.61gのPluriol M750(0.03モル、0.3当量)を加え、反応混合物を70℃に加熱した。反応器をさらに360分間70℃に維持した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、17.87g(0.17mol,1.7当量)のジエタノールアミンを滴下漏斗により60分間かけて滴下して添加した。添加中、反応混合物の温度は40℃を超えなかった。反応器をさらに60分間、40℃に維持した。最後に、生成物をガラス容器に注ぎ、窒素のブランケットで密封した。硬化剤の固形分は93.3%であった。
【0091】
実施例11~20:溶媒系バインダーと水性バインダーの調製
実施例11~20の成分を表1-2に示し、これらを混合し、均一な混合物が得られるまで撹拌した。混合物をドクターブレードによってスズ試験パネルに適用し、200umの湿潤フィルム厚を与え、140℃で20分間焼成して粘着性のないフィルムを得た。3日の後硬化の後、硬度(ケーニッヒ振り子)及び架橋密度(MEK二重摩擦試験)を評価することにより、性能チェックのための単層試験を実施した。実施例11~20の乾燥及び硬化フィルムは実施例#11~#20として得られた。実施例#11~#15の性能試験を、溶媒系(SB)混合物について表1に示している。実施例#16~#20の性能試験を、水性(WB)混合物について表2に示している。
【0092】
実施例21~26:2Kクリアコート組成物の調製と適用
表3の量に従い、カルボン酸基を有する樹脂、触媒及び溶媒、及び任意にレベリング剤、消泡剤及びレオロジー改質剤の添加剤を均一に混合して、成分Iをたる;モノマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア又はオリゴマーシラン官能性β-ヒドロキシ-アルキルウレア及び/又はエポキシ官能性アルコキシシラン、アルキル化メラミン又はメラミン樹脂及び任意に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランモノマーを、均一に混合して、成分IIを得た。実施例21~26は、得られた2Kクリアコート組成物である。組成物を、黒色ベースコート上に適用した。実施例21~26の乾燥及び硬化フィルムは実施例#21~#26として得られた。表3から、本発明の技術的アプローチは、従来の2Kポリウレタン又は酸/エポキシクリアコートと比較した場合、高い固形分、良好な外観、及びより良好なスクラッチ耐性、酸及びアルカリエッチング耐性を提供できることが明確に分かる。
【0093】
<樹脂の特性評価>
当業者は、酸価、OH価、エポキシ当量、固形分、ならびに数平均分子量及び質量平均分子量を測定する方法を知っている。これらは、以下に説明する規格に従って決定した:酸価をDIN EN ISO 2114(日付:2002年6月)に従って決定さした。OH価を、DIN 53240-2(日付:2007年11月)に従って決定した。エポキシ当量を、DIN EN ISO 3001(日付:1999年11月)に従って決定した。固形分を、DIN EN ISO 3251(日付:2008年6月)に従って決定した。数平均分子量及び質量平均分子量を、DIN 55672-1(日付:2007年8月)に従って決定した。
【0094】
<固形分>
表1~3に示される溶媒系バインダー、水性バインダー及び2Kクリアコート組成物の固形分は、130℃、60分間の質量損失に基づいて計算した。
【0095】
<性能試験>
(1)硬度
コーティングの表面硬度を機械的に測定するために、Koenig又はPersozによる振り子減衰試験を行った。コーティングの硬度は、2つの定義された角度(Koenig振り子の場合は6~3度、Persoz振り子の場合は12~4度)の間での振り子によって行われる振動の回数によって決定した。コーティング表面の硬度が高くなると、振動数は増加する。測定方法は、仕様ISO 1522で標準化されている。
(2)溶媒摩擦試験
架橋を評価し、コーティングシステムが硬化したことを確認するために、メチルエチルケトン(MEK)を溶媒として使用して、溶媒摩擦試験を実施した。該試験は、長期間の暴露結果を待つことなく、硬化の程度の相対的な評価を迅速に与えるため、塗料業界で広く使用されている。摩擦は二重摩擦(前方への1回の摩擦と後方への1回の摩擦が二重摩擦を構成する)としてカウントされ、MEK耐性と硬化度の測定可能な値を与える。従来の2Kポリウレタン又は酸/エポキシクリアコートのMEK二重摩擦値は、約200回である。
(3)スクラッチ耐性
スクラッチ耐性を、ドライスクラッチ後の20°光沢保持率によって評価した。ドライスクラッチは、PERSI研磨紙(粒径:10ミクロン)を装着したクロックメータによって作成した。試験中、15回の前後の繰り返しを実行した。ドライスクラッチ前後の20°光沢を比較した。光沢保持率が高いほど、スクラッチ耐性のより優れた性能を示す。従来のポリウレタン2Kクリアコートの20°光沢保持率は約40%である。
(4)酸エッチング耐性
酸エッチング耐性を、酸処理後の20°光沢保持率によって評価した。酸処理は、コーティングを0.5MのH2SO4中の0.35MのFe(II)SO4溶液に浸すことによって行った。試験中、コーティングを完全に酸に覆い、70℃で60分間保存した。酸処理前後の20°の光沢を比較した。光沢保持率が高いほど、酸エッチング耐性のより優れた性能を示す。従来の2Kポリウレタン又は酸/エポキシクリアコートの20°光沢保持率は約70%である。
(5)アルカリエッチング耐性
アルカリエッチング耐性を、アルカリ処理後の20°光沢保持率によって評価した。アルカリ処理は、コーティングを1%の水酸化ナトリウム水溶液中に浸すことによって行った。試験中、コーティングを完全にアルカリ溶液に多い、70℃で60分間保存さ。アルカリ処理前後の20°の光沢を比較した。光沢保持率が高いほど、アルカリエッチング耐性のより優れた性能を示す。従来の2Kポリウレタン又は酸/エポキシクリアコートの20°光沢保持率は約60%である。
【0096】
【0097】
【0098】
【国際調査報告】