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特表2022-551702幹細胞能を増大させるための組成物及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】幹細胞能を増大させるための組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20221206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20221206BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20221206BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/10 ZNA
C12N5/074
C12N1/00 F
C12N5/0735
A61K31/702
A61P43/00 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521673
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 KR2020013745
(87)【国際公開番号】W WO2021071289
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】10-2019-0124769
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143612
【氏名又は名称】株式会社ジンケム
【氏名又は名称原語表記】GENECHEM INC.
(71)【出願人】
【識別番号】516153568
【氏名又は名称】延世大學校 原州 産學協力團
(71)【出願人】
【識別番号】513184264
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック コオペレイション ファウンデーション、ヨンセイ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ア ルム
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソン レ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ジン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、リ ラ
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ヒ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BB10
4B065BB16
4B065BB17
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB20
4B065BB24
4B065BC01
4B065BD31
4B065BD36
4B065BD37
4B065BD39
4B065BD42
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB22
(57)【要約】
幹細胞の幹細胞能を増大させるシアリルオリゴ糖及びその用途に係り、幹細胞の幹細胞能を増大させるための組成物、シアリルオリゴ糖を含む培地において幹細胞を培養する方法、幹細胞の幹細胞能を増大させる方法、該方法を介して得られた幹細胞能が増大された幹細胞、及び該幹細胞を有効成分として含む細胞治療用組成物などを提供する。一態様による組成物または方法によれば、幹細胞の老化が抑制され、幹細胞能を維持して増大させうる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアリルオリゴ糖を含む、幹細胞の幹細胞能増大用組成物。
【請求項2】
前記シアリルオリゴ糖は、3’-シアリルラクトース(3’-sialyllactose)、6’-シアリルラクトース(6’-sialyllactose)、3’-シアリルラクトサミン(3’-sialyllactosamine)、6’-シアリルラクトサミン(6’-sialyllactosamine)、3’-シアリル-3-フコシルラクトース(3’-sialyl-3-fucosyllactose)、シアリルラクト-N-テトラオース(sialyllacto-N-tetraose)、ジシアリルラクトース(disialyllactose)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、さらにヒト母乳由来オリゴ糖(human milk oligosaccharide)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒト母乳由来オリゴ糖は、ラクト-N-テトラオース、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、LS-テトラサッカライドb、LS-テトラサッカライドc、ジシアリルラクト-N-テトラオース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記幹細胞は、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、または成体幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記成体幹細胞は、臍帯、臍帯血、滑膜、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜及び胎盤によって構成された群のうちから選択される組織に由来する幹細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記幹細胞は、自家由来、同種由来、または異種由来である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、0.1μMないし400μM濃度のシアリルオリゴ糖を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記幹細胞能は、幹細胞の細胞老化の抑剤、細胞増殖能の増大、幹細胞の機能性の増大、テロメラーゼ活性の増大、幹細胞性因子の発現の増大、タンパク質恒常性の増大、細胞移動活性の増大からなる群のうちから選択されるいずれか1以上の特性によって増大される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、培地組成物の形態に提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記培地は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、80% knockout DMEM、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、DMEM-F12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Maccoy’s 5A培地、AmnioMax Medium及びChang’s Medium MesemCult-XF Mediumによって構成された群のうちから選択される基本培地である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記培地は、さらにセレン、アスコルビン酸、ビタミンE、カテキン、リコペン、ベータカロチン、コエンザイムQ-10(CoQ-10)、レスベラトロール、T-BHQ、オルチプラズ、ハンノキ抽出物、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びその組み合わせからなる群のうちから選択される抗酸化剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記培地は、さらにN-アセチル-L-システイン(NAC)、インシュリンまたはインシュリン類似因子、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ヘパラン硫酸、2-メルカプトエタノール、上皮成長因子(EGF)、B-27、アクチビンA、BMP-4、オンコスタチンM(OSM)、幹細胞増殖因子(HGF)、及びその組み合わせからなる群のうちから選択される追加成分を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、病変部位に局所的に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、注射剤の形態で提供される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
シアリルオリゴ糖を含む培地において幹細胞を培養する段階を含む、幹細胞を培養する方法。
【請求項17】
前記シアリルオリゴ糖は、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3’-シアリルラクトサミン、6’-シアリルラクトサミン、3’-シアリル-3-フコシルラクトース、シアリルラクト-N-テトラオース、ジシアリルラクトース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記培地は、さらにヒト母乳由来のオリゴ糖を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト母乳由来オリゴ糖は、ラクト-N-テトラオース、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、LS-テトラサッカライドb、LS-テトラサッカライドc、ジシアリルラクト-N-テトラオース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記培養する段階は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、80% knockout DMEM、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、DMEM-F12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Maccoy’s 5A培地、AmnioMax Medium及びChang’s Medium MesemCult-XF Mediumによって構成された群のうちから選択される基本培地で培養する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記培養する段階は、0.1μMないし400μM濃度のシアリルオリゴ糖を含む培地において幹細胞を培養する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、培養された幹細胞能を維持または増大させる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記培養する段階は、幹細胞を継代培養する段階を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、3ないし12継代培養後、幹細胞能を維持する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階を含む、幹細胞の幹細胞能を増大させる方法。
【請求項26】
前記シアリルオリゴ糖は、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3’-シアリルラクトサミン、6’-シアリルラクトサミン、3’-シアリル-3-フコシルラクトース、シアリルラクト-N-テトラオース、ジシアリルラクトース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記段階は、さらにヒト母乳由来のオリゴ糖を添加する段階を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト母乳由来のオリゴ糖は、ラクト-N-テトラオース、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、LS-テトラサッカライドb、LS-テトラサッカライドc、ジシアリルラクト-N-テトラオース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記添加する段階は、体外(ex vivo)または試験管内(in vitro)で遂行される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記添加する段階は、0.1μMないし400μM濃度のシアリルオリゴ糖を添加する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記幹細胞能は、細胞老化の抑剤、細胞増殖能の増大、幹細胞の機能性の増大、テロメラーゼ活性の増大、幹細胞性因子の発現の増大、タンパク質恒常性の増大、細胞移動活性の増大からなる群のうちから選択されるいずれか1以上の特性によって増大される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
請求項16ないし24のうちいずれか1項に記載の方法を介して得られた、幹細胞能が増大された幹細胞。
【請求項33】
請求項32に記載の幹細胞またはその希釈液を有効成分として含む、細胞治療用組成物。
【請求項34】
シアリルオリゴ糖を含む、肝オルガノイド培養用組成物。
【請求項35】
前記の肝オルガノイドは、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞に由来する、請求項34に記載の肝オルガノイド培養用組成物。
【請求項36】
前記シアリルオリゴ糖は、3’-シアリルラクトース(3’-sialyllactose)、6’-シアリルラクトース(6’-sialyllactose)、3’-シアリルラクトサミン(3’-sialyllactosamine)、6’-シアリルラクトサミン(6’-sialyllactosamine)、3’-シアリル-3-フコシルラクトース(3’-sialyl-3-fucosyllactose)、シアリルラクト-N-テトラオース(sialyllacto-N-tetraose)、ジシアリルラクトース(disialyllactose)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34に記載の肝オルガノイド培養用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞能を増大させるための組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞治療剤として活用するために、多様な種類の細胞に係る研究及び開発が進行中にあり、前記細胞においては、分化位置により、全分化能幹細胞(胚性幹細胞、誘導万能幹細胞など)、多分化能幹細胞または成体幹細胞(骨髄/脂肪由来幹細胞、臍帯血/臍帯幹細胞、胎児幹細胞など)、そして体細胞などが利用されている。それらのうちでも、ヒト胚性幹細胞は、ヒト生命体で生じうる胚芽から作われるために、多くの倫理的な問題点があり、全分化能幹細胞は、その分化調節技術がまだ完全ではなく、細胞治療剤としての開発までには、長時間がさらに必要になると知られている。また、体細胞を利用した細胞治療剤の研究開発が数多く結実してもいるが、体細胞が生まれ持って有している低い増殖性や、原料組織確保の困難さなどにより、実用化には、困難さが伴う。従って、そのような問題点を克服するための代案として、成体幹細胞の研究に多くの関心が寄せられている。
【0003】
成体幹細胞のうちでも、間葉系幹細胞は、体細胞に比べ、増殖能にすぐれ、骨、軟骨、脂肪などに分化することができる多分化性幹細胞であり、胚性幹細胞のような万能幹細胞に比べ、はるかに遺伝的に安定化されており、軟骨再生、心筋梗塞治療、移植片対宿主疾患の治療などのための細胞治療剤として開発されてきた。間葉系幹細胞が、体細胞に比べ、高い自家再生産能を示すことは事実であるが、体内にあるときとは異なり、体外培養条件においては、細胞の増殖性を維持するための最善の条件を具備しなければならず、生体条件に近い栄養分、pH、温度、浸透圧のような環境条件を合わせる必要があるという困難さが伴う。特に、体外培養時、活性酸素種及び酸化的ストレスにより、老化が誘発され、自家増殖能及び多分化能が損失されるという問題がある。それと関連して、大韓民国登録特許第1980562号においては、幹細胞能向上のための成分として、シュウ酸塩を開示している。しかしながら、そのような努力にもかかわらず、幹細胞能が、体外培養時にも維持され、増大された幹細胞を製造することができる技術への需要が依然として存在する実情がある。
【0004】
一方、シアリルオリゴ糖(sialyloligosaccharides)は、母乳に含まれている代表的なHMO成分であり、脳構成物の核心成分として、乳児の脳機能発達に重要な役割を行い、腸機能改善のためのプレバイオティクス効能があると知られている。しかしながら、シアリルオリゴ糖を、幹細胞の培養または幹細胞能増大のために使用する技術について、全く知られているところがない。
【0005】
そのような背景下において、本発明者らは、幹細胞の幹細胞能を増大させることができる技術を開発するために鋭意努力を傾けた結果、シアリルオリゴ糖と、幹細胞の幹細胞能との有意的な関連性を確認することにより、本出願の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、シアリルオリゴ糖を含む幹細胞の幹細胞能増大用組成物を提供するものである。
【0007】
他の態様は、シアリルオリゴ糖を含む培地において幹細胞を培養する段階を含む幹細胞を培養する方法を提供するものである。
【0008】
さらに他の態様は、シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階を含む幹細胞の幹細胞能を増大させる方法を提供するものである。
【0009】
さらに他の態様は、前記幹細胞を培養する方法を介して得られた幹細胞能が増大された幹細胞を提供するものである。
【0010】
さらに他の態様は、前記幹細胞能が増大された幹細胞及びその希釈液を有効成分として含む細胞治療用組成物を提供するものである。
【0011】
さらに他の態様は、シアリルオリゴ糖を含む肝オルガノイド培養用組成物を提供するものである。
【0012】
本出願のそれ以外の目的及び利点は、添付された請求範囲及び図面と共に、下記の詳細な説明により、さらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野、または類似した技術分野における当業者であるならば、十分に認識して類推することができるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、幹細胞能を維持し、幹細胞老化を抑制することにより、細胞治療剤として適する幹細胞の特性を最大化させるために鋭意努力を傾けた結果、幹細胞にシアリルオリゴ糖を処理することにより、幹細胞老化が抑制され、幹細胞性因子の発現が増大し、幹細胞の細胞増殖能が増大し、幹細胞能が有意に増大することを確認し、それだけではなく、肝オルガノイドにシアリルオリゴ糖を処理することにより、増殖及び/または成熟度を増進させることができることを確認し、それに基づいて本発明の完成に至った。
【0014】
一態様は、シアリルオリゴ糖(sialyloligosaccharides)を含む幹細胞の幹細胞能増大用組成物を提供する。
【0015】
本明細書で使用される用語「幹細胞(stem cell)」は、まだ分化されていない未分化細胞であり、自己複製(self-renewability)を介する無限増殖(infinite proliferation)が可能であり、細胞が位置する環境の影響を受け、必要によっては、適切なシグナルが与えられる場合、多様な全ての種類の細胞に分化することができる全分化/多分化能(pluri-potencyまたはmulti-potency)を保有した万能細胞を称する。
【0016】
前記幹細胞は、自家由来幹細胞または同種由来幹細胞でもあり、ヒト及び非ヒト哺乳類を含む任意類型の動物由来でもあり、前記幹細胞が成体に由来するものであっても、胚芽に由来するものであっても、それに制限されるものではない。
【0017】
前記幹細胞は、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞を含み、具体的には、成体幹細胞であり得る。前記成体幹細胞は、間葉系幹細胞、ヒト組織由来間葉系基質細胞(mesenchymal stromal cell)、ヒト組織由来間葉系幹細胞、多分化能幹細胞または羊膜上皮細胞であり得るが、それらに制限されるものではない。前記成体幹細胞は、臍帯、臍帯血、滑膜、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜及び胎盤などに由来する幹細胞であり得るが、それもまた、それらに制限されるものではない。一具体例によれば、前記幹細胞は、ヒト骨髄に由来する間葉系幹細胞である。
【0018】
本明細書で使用される用語「誘導万能幹細胞(iPSC:induced pluripotent stem cells)」とは、分化された細胞から人為的な逆分化過程を介し、多能性分化能を有するように誘導された細胞を称する言葉であり、逆分化幹細胞とも言う。人為的な逆分化過程は、レトロウイルス及びレンチウイルスを利用したウイルス媒介ベクターまたは非ウイルス性ベクターの利用、タンパク質及び細胞抽出物などを利用する非ウイルス媒介逆分化因子の導入によって遂行されるか、あるいは幹細胞抽出物、化合物などによる逆分化過程を含む。該誘導万能幹細胞は、胚性幹細胞とほとんど同じ特定を有し、具体的には、類似する細胞形態を示し、遺伝子、タンパク質の発現パターンが類似しており、試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)において全分化能を有し、テラトーマ(teratoma)を形成し、マウスの胚盤胞(blastocyst)に挿入した場合にキメラ(chimera)マウスを形成し、遺伝子の生殖系列移行(germline transmission)が可能である。前記誘導万能幹細胞としては、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギなどの全てに由来する誘導万能幹細胞を含むものでもある。
【0019】
本明細書で使用される用語「胚性幹細胞(embryonic stem cell)」は、受精卵が母体の子宮に着床する直前である胞胚期胚芽から内部細胞塊(inner cell mass)を抽出し、体外で培養したものであり、個体の全組織の細胞に分化することができる多能性(pluripotent)でもあり、全能性(totipotent)でもある自己複製能(self-renewal)を有する細胞を意味し、広い意味においては、胚性幹細胞に由来する胚様体(embryoid bodies)を含むものでもある。前記胚性幹細胞としては、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギなどの全てに由来する胚性幹細胞を含むものでもある。
【0020】
本明細書で使用される用語「成体幹細胞(adult stem cell)」とは、発生過程が進められ、胚芽の各臓器が形成される段階、あるいは成体段階で示される幹細胞を称する。該成体幹細胞は、その分化能が、一般的には、特定組織を構成する細胞にだけ限定され、そのような成体幹細胞は、成人になった後にも、ほとんどの臓器に残り、正常あるいは病理的に生じる細胞の損失を補充する役割を担う。それは、組織内に存在する幹細胞を分離し、体外で培養したものであり、多能性(multipotency)を有する細胞を意味しうる。前記成体幹細胞としては、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギなどの全てに由来する成体幹細胞を含むものでもある。
【0021】
本明細書で使用される用語「間葉系幹細胞」とは、ヒトまたは哺乳類の組織から分離された未分化の幹細胞として、多様な組織に由来しうる。特に、臍帯由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、筋肉由来間葉系幹細胞、神経由来間葉系幹細胞、皮膚由来間葉系幹細胞、羊膜由来間葉系幹細胞及び胎盤由来間葉系幹細胞でもあり、各組織において幹細胞を分離する技術は、当該業界にすでに公知されている。
【0022】
本明細書で使用される用語「シアリルオリゴ糖(sialyloligosaccharides)」は、少なくとも1つのシアル酸(sialic acid)部分を含むオリゴ糖を称し、前記オリゴ糖(oligosaccharides)は、グルコース(glucose)、フラクトース(fructose)、ガラクトース(galactose)のような、糖が2個ないし8個ほど結合した糖であり、水溶性の結晶性物質である。前記シアリルオリゴ糖は、例えば、3’-シアリルラクトース(3’-sialyllactose)、6’-シアリルラクトース(6’-sialyllactose)、3’-シアリルラクトサミン(3’-sialyllactosamine)、6’-シアリルラクトサミン(6’-sialyllactosamine)、3’-シアリル-3-フコシルラクトース(3’-sialyl-3-fucosyllactose)、シアリルラクト-N-テトラオース(sialyllacto-N-tetraose)、ジシアリルラクトース(disialyllactose)、またはそれらの組み合わせを含むものでもあり、例えば、前記シアリルオリゴ糖は、米国食品医薬局(FDA)のGRAS(generally recognized as safe)承認を受けた安全な物質である3’-シアリルラクトースであり得るが、それに制限されるものではない。
【0023】
また、前記組成物は、ヒト母乳に含まれているオリゴ糖、すなわち、HMO(human milk oligosaccharide)をさらに含むものでもある。前記ヒト母乳由来オリゴ糖は、例えば、ラクト-N-テトラオース(lacto-N-tetraose)、2’-フコシルラクトース(2’-fucosyllactose)、3-フコシルラクトース(3-fucosyllactose)、ラクト-N-ネオテトラオース(lacto-N-neotetraose)、LS-テトラサッカライドb(LS-tetrasaccharide b)、LS-テトラサッカライドc(LS-tetrasaccharide c)、ジシアリルラクト-N-テトラオース(disialyllacto-N-tetraose)、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0024】
前記シアリルオリゴ糖は、抗菌機能及び抗ウイルス機能にすぐれる免疫活性物質として知られているが、幹細胞の培養、具体的には幹細胞能の維持及び増大に関しては、その機能及び活性は全く知られていない。一具体例によれば、シアリルオリゴ糖、例えば、シアリルラクトースは、幹細胞の幹細胞能と密接な関連性があると究明されている。具体的には、シアリルラクトースが処理された間葉系幹細胞は、SOX2、OCT4、NANOGのような幹細胞性因子の発現を増加させ、細胞老化を抑制させ、細胞増殖能を増大させるということを確認した。従って、シアリルオリゴ糖は、幹細胞の幹細胞能を維持または増大させるための有効物質としても使用される。
【0025】
前記シアリルオリゴ糖は、幹細胞の幹細胞能を増大させる目的に符合する限り、目的とする具体的な細胞の種類により、適切な濃度にも含まれる。前記シアリルオリゴ糖は、例えば、0.1μMないし400μM、例えば、0.1μMないし350μM、例えば、0.1μMないし200μM、例えば、0.1μMないし150μM、例えば、1μMないし400μM、例えば、1μMないし350μM、例えば、1μMないし300μM、例えば、1μMないし250μM、例えば、1μMないし200μM、例えば、1μMないし150μM、例えば、10μMないし250μM、例えば、30μMないし250μM、例えば、50μMないし250μM、例えば、50μMないし200μM、例えば、50μMないし150μMにも含まれる。前記濃度範囲を超えるか、あるいはそれ未満である場合、生体内副作用を伴うか、あるいは幹細胞能の維持効能または増大効能が発揮されない。
【0026】
本明細書で使用される用語「幹細胞能(stemness)」とは、胚性幹細胞のように、全ての細胞を生成することができる能力がある多能性(pluripotency)と、自身に類似する細胞を無制限作り上げることができる自己複製能(self-renewal)を総称する意味として、当業界で通用する用語である。すなわち、幹細胞能は、幹細胞の特性を維持する能力を意味しうる。
【0027】
本明細書で使用される用語「幹細胞能増大」は、幹細胞の細胞老化を抑制させるか、幹細胞の細胞増殖能を増大させるか、幹細胞の機能性を増大させるか、幹細胞のテロメラーゼ活性を増大させるか、幹細胞性因子の発現を増加させるか、未分化細胞を、未分化状態を維持させながら増殖させるか、幹細胞において、タンパク質恒常性を増大させるか、あるいは細胞移動活性を増大させる特徴が示されることを含むものでもある。
【0028】
前記用語「幹細胞性因子」は、幹細胞において多く発現し、幹細胞の全分化能、すなわち、幹細胞の特性維持に重要な役割を行うと知られている遺伝子であり、例えば、SOX2、OCT4、NANOG、KLF4、C-MYC、Oct3/4、SSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA1-60、TRA1-81、Lin28、Fbx15などがあり得るが、それらに制限されるものではない。従って、前記幹細胞性因子のうち少なくとも1つの発現が観察される場合には、未分化幹細胞とも判断され、それらの発現が多いほど、幹細胞の全分化能が高いとも判断される。
【0029】
前記用語「機能性増大」とは、機能的成熟を意味し、幹細胞で発現し、幹細胞の成熟された機能的特性維持に重要な役割を行うと知られている遺伝子であり、例えば、CYP3A4、CYP3A7、ALB、AFP、TTR、CK19などがあり得るが、それらに制限されるものではない。従って、前記幹細胞の機能性を増大させる因子のうち少なくとも1つの発現が観察される場合には、幹細胞の機能性を増大させうると判断することができ、それらの発現が多いほど、幹細胞の機能性増大能が高いとも判断される。
【0030】
前記用語「増殖(proliferation)」は、細胞数の増加を意味するものであり、成長(growth)と同一の意味にも使用される。特に、前記用語「未分化増殖(undifferentiated proliferation)」は、幹細胞が、特定細胞に分化されていないまま、本来の細胞と同一性質を有する、すなわち、多能性(用語「全分化能」とも混用される)を有する細胞に増殖することを意味する。前記組成物は、幹細胞の幹細胞能を増大させるために、シアリルオリゴ糖を含む培地組成物形態にも提供される。前記シアリルオリゴ糖は、本明細書に開示された幹細胞能増大と係わる効果達成のために、幹細胞培養に使用される通常の培地に添加されても使用される。一具体例によれば、幹細胞培養培地にシアリルオリゴ糖を添加すれば、幹細胞の老化が抑制され、細胞増殖能が向上し、幹細胞能が有意的に増大されることを確認した。
【0031】
前記培地組成物は、さらにセレン(selenium)、アスコルビン酸、ビタミンE、カテキン、リコペン、ベータカロチン、コエンザイムQ-10(CoQ-10)、レスベラトロール(resveratrol)、T-BHQ、オルチプラズ(oltipraz)、ハンノキ抽出物、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びその組み合わせからなる群のうちから選択される抗酸化剤を含むものでもある。前記シアリルオリゴ糖及び前記抗酸化剤を含む培地組成物で培養された幹細胞は、形態や活性の変化なしに、細胞の増殖能が優秀に示されうる。
【0032】
前記培地組成物に含まれるシアリルオリゴ糖、またはシアリルオリゴ糖と、セレン、アスコルビン酸、ビタミンE、カテキン、リコペン、ベータカロチン、コエンザイムQ-10、レスベラトロール、T-BHQ、オルチプラズ、ハンノキ抽出物、EPA、DHA、及びその組み合わせからなる群のうちから選択される抗酸化剤は、当業界において、幹細胞培養に適すると知られている簡単な組成を有する一般的な培地(basal medium)と共に含有されうる。一般的に、培養に利用される基本培地としては、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、80% knockout DMEM、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、DMEM-F12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、Maccoy’s 5A培地、AmnioMax Medium及びChang’s Medium MesemCult-XF Mediumによって構成された群のうちから選択される基本培地でもあり、それ以外にも、当業界において、幹細胞の培養に利用される培地であるならば、非制限的にも利用される。
【0033】
前記培地組成物は、N-アセチル-L-システイン(NAC)、インシュリンまたはインシュリン類似因子、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、2-メルカプトエタノール、上皮成長因子(EGF:epidermal growth factor)、B-27、アクチビンA、BMP-4、オンコスタチンM(OSM)、幹細胞増殖因子(HGF)、及びその組み合わせからなる群のうちから選択される追加成分をさらに含むものであり得る。例えば、インシュリンを代替する成分としてインシュリン類似因子を含むものであり得るが、それは、ブドウ糖代謝とタンパク質代謝とを向上させ、細胞成長を促進する役割を行う。特に、組み換えインシュリン様成長因子-1(IGF-1)を使用することが望ましい。該インシュリン類似因子の望ましい含量は、10ないし50ng/mlであり、その成分が10ng/ml未満である場合には、細胞自殺(apoptosis)をもたらし、50ng/mlを超える場合には、細胞毒性及びコスト増加の問題点があり得る。また、例えば、線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むものであり得るが、それは、生体内(in vivo)状態において、多様な形態の細胞増殖を引き起こすが、望ましくは、組み換えタンパク質を使用することができる。線維芽細胞増殖因子の望ましい含量は、1ないし100ng/mlでもある。また、例えば、牛胎児血清(FBS:fetal bovine serum)、カルシウム及び上皮成長因子(EGF)によって構成された群のうちから選択される成分をさらに含むものであり得るが、該上皮成長因子(EGF)は、望ましくは、組み換えタンパク質を使用することができ、該上皮成長因子(EGF)の望ましい含量は、10ないし50ng/mlであり、その含量が10ng/ml未満である場合、特別な効果がなく、50ng/mlを超えれば、細胞に毒性を有してしまう。
【0034】
前記組成物は、病変部位に局所的に投与されるものでもある。前記組成物は、病変部位に局所的に投与され、病変部位またはその周辺に存在する幹細胞の幹細胞能及び細胞増殖能を顕著に増大させうる。また、前記組成物は、体外で培養された幹細胞と共に、併用投与されうる。例えば、前記組成物は、局所投与のために、バイオポリマーのような有機物、ヒドロキシアパタイトのような無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリ乳酸ポリマーまたはポリ乳酸コポリマー、ポリエチレングリコールポリマーまたはポリエチレングリコールコポリマー、及びその化学的誘導体などと組み合わされうる。
【0035】
前記組成物は、注射剤形態で提供されるものでもある。前記注射剤の形態の組成物は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などにより、全身または局所的に投与されうる。具体的には、前記組成物は、局所的に投与しやすいように、注射剤形態で提供されるものでもある。前記注射剤形態の組成物に有効成分として含まれるシアリルオリゴ糖は、薬学的に許容される水溶液中に溶解されているか、あるいは溶液状態で凍結されうる。
【0036】
前記注射剤の形態のための無菌組成物は、注射用蒸溜水のようなビークルを利用し、通常の製剤実施によっても処方される。注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やそれ以外の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム)を含む等張液を有することができる。適切な溶解補助剤としては、例えば、アルコール(エタノールなど)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(TM)、HCO-50など)が併用されうる。油性液としては、ごまあぶら、大豆油を有することができ、溶解補助剤として、安息香酸ベンジル及び/またはベンジルアルコールも併用されうる。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液及び酢酸ナトリウム緩衝液)、鎮痛剤(例えば、塩酸プロカイン)、安定剤(例えば、ベンジルアルコール及びフェノール)、酸化防止剤とも配合される。調剤された注射液は、一般的に適切なアンプルに充填されうる。
【0037】
他の態様は、シアリルオリゴ糖を含む培地において、幹細胞を培養する段階を含む幹細胞を培養する方法を提供する。
【0038】
前記幹細胞を培養する方法において、「シアリルオリゴ糖」及び「幹細胞」などについては、前述の通りである。
【0039】
本明細書で使用される用語「培地(media)」とは、体外培養条件において、幹細胞の成長及び生存を支持することができるようにする培養液を意味し、細胞培養に適切な、当分野で使用される通常の培地をいずれも含むものでもある。細胞の種類により、培地と培養条件とを選択することができる。培養に使用される培地は、細胞培養最小培地(CCMM:cell culture minimum medium)でり、一般的に、炭素源、窒素源及び微量元素成分を含む。
【0040】
前記細胞培養最小培地は、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、αMEM(α Minimal Essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Mediumなどがあるが、それらに制限されるものではない。また、前記培地は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンのような抗生物質を含むものでもある。
【0041】
前記培地は、シアリルオリゴ糖を有効濃度で含むものでもある。前記用語「有効濃度」は、幹細胞の幹細胞能増大に十分な量のシアリルオリゴ糖を意味し、有効濃度以下においては活性を示さず、有効濃度以上においては細胞に毒性を示しうるので、有効濃度内においてシアリルオリゴ糖を使用する。前記シアリルオリゴ糖は、例えば、0.1μMないし400μM、例えば、0.1μMないし350μM、例えば、0.1μMないし300μM、例えば、0.1μMないし250μM、例えば、0.1μMないし200μM、例えば、0.1μMないし150μM、1μMないし400μM、例えば、1μMないし350μM、例えば、1μMないし300μM、例えば、1μMないし250μM、例えば、1μMないし400μM、例えば、1μMないし350μM、例えば、1μMないし300μM、例えば、1μMないし250μM、例えば、1μMないし200μM、例えば、1μMないし150μM、例えば、10μMないし250μM、例えば、30μMないし250μM、例えば、50μMないし250μM、例えば、50μMないし200μM、例えば、50μMないし150μMで含まれてもよい。前記濃度範囲以下においては、幹細胞の維持効果または増大効能を示さない。
【0042】
また、前記培地は、ヒト母乳由来オリゴ糖をさらに含むものでもある。前記ヒト母乳由来オリゴ糖は、例えば、ラクト-N-テトラオース、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、LS-テトラサッカライドb、LS-テトラサッカライドc、ジシアリルラクト-N-テトラオース、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0043】
前記方法は、幹細胞を継代培養する段階を含むものでもある。前記方法は、幹細胞を未分化状態で維持させることができ、具体的には、継代培養する間、またはその後にも、幹細胞を未分化状態で維持させることができる。前記方法は、例えば、3ないし10以上の継代培養後にも、幹細胞能を維持することができる。
【0044】
本明細書で使用される用語「継代培養」は、細胞を健康な状態で持続的に長期間培養するために、周期的に細胞の一部を新たな培養容器に移した後、培養培地を変えながら、細胞の代を続けて培養する方法を意味する。前記用語「継代(passage)」は、培養容器において、初期種培養から、同一培養容器に細胞が旺盛に育つ時期(confluence)までの多能性幹細胞への成長を意味する。限定された空間を有する培養容器内において、細胞の数が増えながら、一定時間を経れば、増殖栄養分が消費されるか、あるいは汚染物質がたまり、細胞が自然に死滅することになるので、健康な細胞の数を増やすための方法として使用され、一般的に、1回培地(培養容器)を交換すること、または細胞群を分けて培養することを、1継代(1 passage)と言う。継代培養の方法は、当業界に公知された方法を制限なしに使用することができるが、望ましくは、機械的分離または酵素的分離によっても遂行される。
【0045】
幹細胞は、培養を繰り返すか、あるいは外部から刺激を受けるほど、細胞の形態や大きさなどが微細に変形されたり、異なったりし、細胞の再生能と活性(telomerase activity)とが低くなるという問題点、すなわち、細胞老化が進められるという問題点がある。細胞の再生能や活性などの特徴は、細胞をどの培地で培養するかによって違いがあるので、繰り返される培養にもかかわらず、形態などの細胞特性に大きい変化なしに、再生能や活性度が低くならないようにする培地組成物で幹細胞を培養することが重要である。すなわち、細胞の老化を遅延または改善させるか、初期細胞状態を維持させる培地組成物で幹細胞を培養することが重要である。しかしながら、従来の培地組成物における幹細胞培養によれば、高収率の幹細胞を得るために、継代培養を何回も行わなければならないので、人力及び時間が多く所要され、特に、継代培養に必要な培地成分のうち一部は、非常に高価であるので、経済的にも長所が存在しなかった。また、繰り返される継代培養により、細胞再生能が低くなるという問題点があった。前記培地組成物は、細胞の形態や活性に変化がなく、細胞再生能を向上させることができる培地組成物を提供することが可能である。従って、幹細胞能の維持及び増大のために、シアリルオリゴ糖を有効成分として含む培地組成物を提供する。
【0046】
前記幹細胞の未分化状態の維持は、アルカリホスファターゼ(ALP)、OCT-4、SOX2、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、TDGF(teratocarcinoma-derived growth factor)またはSSEA-4のような遺伝子の発現が増大することで確認することができるが、必ずしもそれらに制限されるものではない。
【0047】
一具体例によれば、継代培養後、シアリルラクトースで処理していない間葉系幹細胞の場合、細胞老化因子であるp16及びp53の発現が増大し、老化が進行することを確認したが、シアリルラクトースで処理した間葉系幹細胞の場合、p16及びp53の発現が有意的に低減され、細胞老化が抑制されることを確認した。
【0048】
また、一具体例によれば、継代培養後、シアリルラクトースで処理していない間葉系幹細胞の場合、細胞老化標識であるSA-β-galの活性が増大し、細胞老化が進行することを確認したが、シアリルラクトースで処理した間葉系幹細胞の場合、SA-β-galの活性が有意的に低減され、細胞老化が抑制されることを確認した。
【0049】
前記幹細胞を培養する方法で言及された用語または要素のうち、前記幹細胞能増大用組成物に係わる説明に記載したものは、前述の組成物に係る説明に記載した通りのものであると理解される。
【0050】
さらに他の態様は、シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階を含む幹細胞の幹細胞能を増大させる方法を提供する。
【0051】
前記幹細胞の幹細胞能を増大させる方法において、「シアリルオリゴ糖」及び「幹細胞」などについては、前述の通りである。
【0052】
前記シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階は、体外(ex vivo)または試験管内(in vitro)で遂行されうる。また、前記シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階は、培地で培養される幹細胞に、シアリルオリゴ糖を添加することを意味しうる。
【0053】
前記シアリルオリゴ糖を幹細胞に添加する段階は、一般血清培地で遂行されるか、あるいは血清培地で継代培養された幹細胞を、無血清培地に移した後、遂行されるものでもある。無血清培地中における培養は、血清培地における培養液を除去し、細胞をリン酸塩緩衝溶液で洗浄した後にも遂行される。
【0054】
前記方法は、ヒト母乳由来のオリゴ糖を添加する段階をさらに含むものでもある。前記ヒト母乳由来オリゴ糖を添加する段階は、前記シアリルオリゴ糖を添加する段階と同時、別途または順次に遂行され、前記ヒト母乳由来オリゴ糖は、例えば、ラクト-N-テトラオース、2’-フコシルラクトース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-ネオテトラオース、LS-テトラサッカライドb、LS-テトラサッカライドc、ジシアリルラクト-N-テトラオース、またはそれらの組み合わせを含むものでもあるが、それらに制限されるものではない。
【0055】
前記用語「無血清培地」とは、動物の組織や細胞の培養のために、血清を含んでいない培養液と培地とを意味する。例えば、無血清培地は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、EDM(Endothelial Differentiation Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、F-10、F-12、a-MEM(a-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)またはIscove’s Modified Dulbecco’s Mediumなどでもある。
【0056】
前記用語「血清」とは、血液が完全凝固された後、血液から遊離された透明な上層液を意味する。また、動物細胞の培養には、合成培地に血清を必須に添加しなければならず、ウシ、ウマ、ヒトの血清を使用するが、ウシの血清が最も一般的である。採血時期により、ウシ胎児血清(FBS)、新生児ウシ血清(newborn bovine serum)、仔ウシ血清(BCS:bovine calf serum)、親ウシ血清(bovine serum)などと区別することができる。例えば、ウシ胎児血清(FBS)または仔ウシ血清(BCS)などであり得る。
【0057】
前記幹細胞の幹細胞能を増大させる方法によれば、シアリルオリゴ糖の処理により、幹細胞の試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)において、幹細胞の老化が抑制され、細胞増殖能が有意的に増大され、すなわち、幹細胞能が有意的に増大されることにより、細胞治療剤の適する幹細胞の特性を有する幹細胞を提供することができる。
【0058】
前記幹細胞能を増大させる方法において言及された用語または要素において、前述の幹細胞能増大用組成物または幹細胞の培養方法に係る説明で記載されたものは、前述の組成物または培養方法に係わる説明で記載されたものであると理解される。
【0059】
さらに他の態様は、前記幹細胞能を増大させる方法を介して得られた幹細胞能が増大された幹細胞を提供する。
【0060】
さらに他の態様は、前記幹細胞能が増大した幹細胞またはその希釈液を含む細胞治療剤組成物を提供する。
【0061】
前記シアリルオリゴ糖を幹細胞に処理することにより、幹細胞の幹細胞能を増大させうる。従って、シアリルオリゴ糖を処理する段階を含む幹細胞能を増大させる方法を介して得られた幹細胞は、幹細胞能が有意的に増大されることにより、幹細胞を移植に適する状態に活性化させるか、あるいはその特性を人体に適するように変形させるというように、細胞治療剤の有効成分として含まれるものでもある。
【0062】
本明細書で使用される用語「細胞治療剤」とは、ヒトから分離して培養し、特殊なメカニズムを介して製造された細胞及び組織から、治療、診断及び予防の目的に使用される医薬品であり、細胞あるいは組織の機能を復元させるために、生きている、自家(autologous),同種(allogenic)または異種(xenogenic)細胞を体外で増殖、選別するか、あるいは他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるというような一連の行為を介し、治療、診断及び予防の目的に使用される医薬品を称する。該細胞治療剤は、細胞の分化程度により、大きく見て、体細胞治療剤及び幹細胞治療剤に分類されうる。一具体例によれば、前記細胞治療剤組成物は、シアリルオリゴ糖が処理された幹細胞を有効成分として含む幹細胞治療剤でもある。
【0063】
本明細書で使用される用語「幹細胞治療剤」とは、疾病の治療、診断及び予防の目的で、細胞を体外で操作し、それをさらに人体内に導入する細胞治療剤の一種類であり、不特定多数を対象に、疾病症状を緩和させるところに目的を置いた既存の一般医薬品とは異なり、操作及び培養した幹細胞を患者に導入し、疾患を根本的に治療するカスタム型バイオ医薬品を称する。前記幹細胞治療剤は、細胞の起源により、胚芽の初期発達段階で作われる胚性幹細胞治療剤、成人の多様な組織に制限的に存在する成体幹細胞治療剤、一般体細胞を逆分化させ、初期未分化状態に誘導した逆分化幹細胞治療剤、または胚性幹細胞、成体幹細胞、逆分化幹細胞に由来するオルガノイドベース細胞治療剤などに区分され、治療方法により、患者自身の幹細胞を移植する自家幹細胞治療剤、他人の幹細胞を移植する同種由来幹細胞治療剤、動物の幹細胞を利用する異種幹細胞治療剤などにも分類される。前記幹細胞治療剤は、患者に直接細胞を導入し、損傷された細胞の機能や組織を回復させることができるので、人体内毒性がなく、人体本来の機能を再生及び維持させることにより、手術や薬物療法が行うことができない根源的な治療方法を提示することができる。前記幹細胞治療剤は、損傷された組織及び細胞の再生及び復旧(regeneration and rejuvenation)、代替(replacement)、回復(repair)の3R戦略を介し、脳梗塞、心筋梗塞、退行性関節炎及び骨折のような多様な細胞損傷疾患治療にも活用され得る。
【0064】
前記幹細胞能が増大された幹細胞は、細胞を保護及び維持し、目的とする組織に、注射、注入、移植するとき、使用を容易にする1以上の希釈剤を含む細胞組成物の形態が望ましい。前記希釈剤は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、HBSS(Hank’s balanced salt solution)のような緩衝溶液、血漿または血液成分などがあり得る。
【0065】
前記細胞治療剤組成物は、ヒトを含む哺乳動物に、多様な経路にも投与される。投与方式は、一般的に使用される全ての方式でもあり、例えば、臨床投与時、筋肉注射剤または静脈注射剤のような形態の非経口投与だけではなく、直接疾患部位にも投与され、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉などの経路によっても投与され得る。
【0066】
前記細胞治療剤組成物の投与用量は、個体の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態及び疾患程度によっても異なり、医師または薬剤師の判断により、一定時間間隔で、1日1回ないし数回に分割投与することもできる。例えば、ヒトの場合、細胞治療剤の一般的な投与量は、10~1010cells/bodyであり得、望ましくは、10~10cells/bodyであり得、1回または数回に分けて投与することができる。前述の投与量は、平均的な場合を例示したものであり、個人的な差により、その投与量が多かったり少なかったりもする。
【0067】
前記細胞治療剤組成物は、神経系疾患、筋肉系疾患、骨疾患または上皮関連疾患に対する予防効果または治療効果を示しうる。前記神経系疾患は、退行性神経系疾患を含むものでもあり、例えば、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、記憶力低下、重症筋無力症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、本態性振戦、皮質基底核退行症、びまん性レビー小体病及びピック病を含む多様な神経系疾患が含まれるものでもある。前記筋肉系疾患は、筋萎縮症、脳性マヒ、進行性骨化性線維異形成症、皮膚筋炎、コンパートメント症侯群、重症筋無力症、ルー・ゲーリック病、ミトコンドリア筋病症、横紋筋融解症、多発性筋炎、線維筋痛、筋緊張症、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝、肝炎、肝硬変及び筋膜性疼痛症侯群などが含まれるものでもある。前記骨疾患は、骨粗鬆症(osteoporosis)、骨軟化症(osteomalacia)、骨減少症(osteopenia)、骨萎縮(bone atrophy)、骨関節炎(osteoarthritis)、無血性大腿骨懐死(avascular necrosis of the femoral head)または歯周炎(periodontal disease)などが含まれるものでもある。前記上皮関連疾患は、難治性角膜疾患などが含まれるものでもある。前記細胞治療剤組成物は、前記疾患以外にも、幹細胞の移植を介して治療が可能な疾患であるならば、いずれも適用されうる。
【0068】
本明細書で使用される用語「治療」とは、疾患に係る臨床的状況を抑制するか、緩和するか、望ましく変更する全ての行為を意味する。また、該治療は、治療を受けていない場合に予想される生存率と比較し、増大された生存を意味しうる。該治療は、治療的手段以外に、予防的手段を同時に含むものでもある。
【0069】
前記細胞治療剤組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでも製剤化される。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を特に刺激せず、投与成分の生物学的な活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を言う。前記細胞治療剤組成物が適用されうる薬学的組成物について薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、保存剤、鎮痛剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤、基剤、賦形剤、潤滑剤のような、当業界に公知されたものであるならば、制限なしに使用することができる。
【0070】
前記細胞治療剤組成物は、各種剤形の形態で通用する技法によっても製造される。該細胞治療剤組成物は、疾病部位に移動を誘導可能なものであるならば、いかなる経路を介してでも投与可能である。場合によっては、幹細胞を病変に指向させる手段を具備するビヒクルにローディングする方案を考慮することもできる。従って、前記細胞治療剤組成物は、局所(頬側、舌下、皮膚及び眼内の投与を含む)、非経口(皮下、皮内、筋肉内、点滴、静脈内、動脈内、関節内及び脳脊髄液内を含む)または経皮性投与を含むさまざまな経路を介して投与することができ、望ましくは、発病部位に直接投与する。
【0071】
一様態として、幹細胞は、適する希釈剤に、懸濁させて個体に投与することができるが、該希釈剤は、細胞を保護及び維持し、目的とする組織に注入するとき、使用に容易であるようにする用途にも使用される。前記希釈剤としては、生理食塩水・リン酸緩衝溶液・HBSSのような緩衝溶液、脳脊髄液などがあり得る。また、該細胞治療剤組成物は、活性物質が標的(ターゲット)細胞に移動するように、任意の装置によっても投与される。望ましい投与方式及び製剤は、注射剤でもある。該注射剤は、生理食塩液、リンゲル液、Hank溶液、または滅菌された水溶液のような水性溶剤;オリーブオイルなどの植物油;エチルオレイン酸のような高級脂肪酸エステル;及びエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはグリセリンのような非水性溶剤などを利用して製造することができ、粘膜透過のために、バリア通過に適する、当業界に公知された非浸透性剤が使用され、変質防止のための安定化剤として、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなどや、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールのような微生物発育を阻止するための保存剤のような薬学的担体をさらに含むものでもある。
【0072】
本明細書で使用される用語「投与」とは、ある適切な方法でもって、患者に前記細胞治療剤組成物を導入させることを意味し、該細胞治療剤組成物の投与経路は、目的組織に逹しうる限り、経口または非経口の多様な経路を介しても投与される。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与にもなるが、それらに制限されるものではない。
【0073】
前記細胞治療剤組成物は、薬学的有効量でもっても投与され得る。本明細書で使用される用語「有効量」は、目的とする治療さるべき特定疾患の発病または進行を遅延させるか、あるいは全面的に中止させるのに必要な量を意味する。適する総1日使用量は、正しい医学的判断範囲内において、処方医によっても決定される。前記細胞治療剤組成物の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成する反応の種類及び程度、場合によっては、他の製剤と使用される否かをはじめとする、具体的組成物、患者の年齢・体重・一般健康状態・性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物分泌率、治療期間、具体的組成物と共に使用されるか、あるいは同時使用される薬物を始めとする多様な因子、並びに医薬分野に周知の類似因子によって、異なる適用することが望ましいのである。
【0074】
前記幹細胞、またはそれを含む細胞治療剤組成物で言及された用語または要素のうち、前記幹細胞能増大用組成物または幹細胞の培養方法に係る説明で記載されたものは、前述の組成物または培養方法に係わる説明で記載された通りのものであると理解される。
【0075】
さらに他の態様は、シアリルオリゴ糖を含む肝オルガノイド培養用組成物を提供する。
【0076】
さらに他の態様は、シアリルオリゴ糖を、肝オルガノイドに添加する段階を含む、成熟された肝オルガノイドを製造する方法/肝オルガノイドの成熟度を増進させる方法を提供する。
【0077】
前述の肝オルガノイド培養用組成物、または成熟された肝オルガノイドを製造する方法/肝オルガノイドの成熟度を増進させる方法で言及された用語または要素において、前述の幹細胞能増大用組成物、または幹細胞の培養方法に係わる説明で記載したものは、前述の組成物または培養方法に係わる説明で記載した通りのものであると理解される。
【0078】
一具体例によれば、製造された肝オルガノイドの培養過程において、シアリルオリゴ糖で処理した場合、肝オルガノイドの増殖が有意的に増大し、CYP3A4/CYP3A7比率及びALB/AFP比率が増大することにより、肝オルガノイドの成熟度にも影響を及ぼすことを確認した。
【0079】
前記用語「オルガノイド(organoid)」とは、幹細胞や臓器起源細胞から分離された細胞を、3D培養法でさらに凝集して組み換えて作られた細胞集合体を意味するものであり、懸濁(suspension)細胞培養物から形成されたオルガノイドまたは細胞クラスタを含むものでもある。前記オルガノイドは、小型類似臓器、臓器類似体、類似臓器とも命名される。前記オルガノイドは、具体的には、器官または組織を構成するさまざまな種類の細胞中の1以上の細胞種類を含み、組織または器官の形態と機能とを再現可能でなければならない。
【0080】
前記用語「オルガノイド培養」とは、オルガノイドを生成するか、あるいは維持させることができる全ての行為を含む。例えば、幹細胞、または特定組織から分離された細胞が、特定機能を有する組織や器官細胞に分化させることでもあり、かつ/あるいはオルガノイドを生存、成長または増殖させることでもある。
【0081】
前記組成物が使用されうるオルガノイドは、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞に由来するものでもあり、好ましくは、前記オルガノイドは、誘導万能幹細胞または成体幹細胞に由来する肝オルガノイドであり得る。
【0082】
前記シアリルオリゴ糖は、肝オルガノイドを培養させたり、その成熟度を増大させたりする目的に符合する限り、適切な濃度で含まれるものでもある。前記シアリルオリゴ糖は、例えば、0.1μMないし400μM、例えば、0.1μMないし350μM、例えば、0.1μMないし300μM、例えば、0.1μMないし250μM、例えば、0.1μMないし200μM、例えば、0.1μMないし150μM、1μMないし400μM、例えば、1μMないし350μM、例えば、1μMないし300μM、例えば、1μMないし250μM、例えば、1μMないし400μM、例えば、1μMないし350μM、例えば、1μMないし300μM、例えば、1μMないし250μM、例えば、1μMないし200μM、例えば、1μMないし150μM、例えば、10μMないし250μM、例えば、30μMないし250μM、例えば、50μMないし250μM、例えば、50μMないし200μM、例えば、50μMないし150μMで含まれてもよい。
【発明の効果】
【0083】
一態様による組成物または方法によれば、幹細胞性因子の発現を有意的に増大させ、幹細胞の老化を抑制し、幹細胞の細胞増殖能、または幹細胞の細胞機能性を有意的に増大させることができる。
【0084】
一態様による組成物または方法は、従来幹細胞の体外培養時に指摘された自家増殖能及び多分化能が損失される問題を解消することができ、幹細胞能が増大された幹細胞を利用することにより、細胞治療剤の治療効率を向上させることができる。
【0085】
一態様による組成物及び方法による幹細胞は、幹細胞能が有意的に増大し、細胞治療剤の有効成分として含まれるものであり得る。
【0086】
一態様による細胞治療剤組成物は、幹細胞能が有意的に増大された幹細胞を含むことにより、細胞治療剤の効率を上昇させうる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1】シアリルラクトースの処理濃度による骨髄由来間葉系幹細胞の生存率に及ぼす影響を、CCK-8アッセイを介して確認した結果であり、Aは、3’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Bは、6’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Cは、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトース混合物で処理した結果である。
図2】シアリルラクトースの処理濃度による脂肪由来間葉系幹細胞の生存率に及ぼす影響を、CCK-8アッセイを介して確認した結果であり、Aは、3’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Bは、6’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Cは、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトース混合物で処理した結果である。
図3】シアリルラクトースの処理濃度による臍帯血由来間葉系幹細胞の生存率に及ぼす影響を、CCK-8アッセイを介して確認した結果であり、Aは、3’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Bは、6’-シアリルラクトースで処理した結果であり、Cは、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトース混合物で処理した結果である。
図4】シアリルラクトースが骨髄由来間葉系幹細胞の幹細胞能に及ぼす影響を確認した結果であり、Aは、OCT4のmRNAレベルを確認した結果であり、Bは、SOX2のmRNAレベルを確認した結果であり、Cは、NANOGのmRNAレベルを確認した結果であり、Dは、OCT4、SOX2及びNANOGのタンパク質発現レベルを確認した結果である。
図5】シアリルラクトースが脂肪由来間葉系幹細胞の幹細胞能に及ぼす影響を確認した結果であり、Aは、OCT4のmRNAレベルを確認した結果であり、Bは、SOX2のmRNAレベルを確認した結果であり、Cは、NANOGのmRNAレベルを確認した結果であり、Dは、OCT4、SOX2及びNANOGのタンパク質発現レベルを確認した結果である。
図6】シアリルラクトースが臍帯血由来間葉系幹細胞の幹細胞能に及ぼす影響を確認した結果であり、Aは、OCT4のmRNAレベルを確認した結果であり、Bは、SOX2のmRNAレベルを確認した結果であり、Cは、NANOGのmRNAレベルを確認した結果であり、Dは、OCT4、SOX2及びNANOGのタンパク質発現レベルを確認した結果である。
図7】3’-シアリルラクトースが骨髄由来間葉系幹細胞の老化に及ぼす影響を確認した結果であり、Aは、細胞老化因子であるp16及びp53のmRNAレベルにおける発現変化を確認した結果であり、Bは、p16及びp53のタンパク質レベルにおける発現変化を確認した結果であり、Cは、SA-β-galを利用した細胞老化分析結果である。
図8】3’-シアリルラクトースが骨髄由来間葉系幹細胞の増殖に及ぼす影響を確認した結果であり、細胞周期進行及び増殖と関与する遺伝子であるCCNA2及びCDK2の発現変化を確認した結果である。
図9】3’-シアリルラクトースが骨髄由来幹細胞の継代別生存率に及ぼす影響を、CCK-8アッセイを介して確認した結果である。
図10】シアリルラクトースが誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイド細胞の生存率に及ぼす影響を確認した結果であり、生存率をCCK-8アッセイで確認した結果である。
図11】シアリルラクトースが誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイド細胞の成熟度に及ぼす影響を確認した結果であり、CYP3A4とCYP3A7との発現量の比率を比較した結果である。
図12】シアリルラクトースが誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイド細胞の成熟度に及ぼす影響を確認した結果であり、ALBとAFPとの発現量の比率を比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0089】
[実施例1.幹細胞の培養]
本実施例においては、骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)、脂肪組織由来間葉系幹細胞(hATMSCs)及び臍帯血由来間葉系(hCBMSC)、並びに誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドを実験に使用した。該骨髄由来間葉系幹細胞、該脂肪組織由来間葉系幹細胞及び該臍帯血由来間葉系幹細胞の培養培地は、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum、T&I、江原道、韓国)、1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン、Gibco、Grand Island、NY、米国)を含むDMEM低グルコース培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium Low Glucose、Hyclone、Logan、UT、米国)を使用した。なお、100μMの3’-シアリルラクトース(3’-sialyllactose、GeneChem)、6’-シアリルラクトース(6’-sialyllactose、GeneChem)、並びに3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトースの混合液(mixture)で処理した後、3日に1回ずつ培養液を交換した。対照群は、三次蒸留水を培養液に入れた後、同一に実験を進めた。また、肝オルガノイド培養培地は、endothelial cell growth medium-2(Lonza)、2.5% FBS、100nMデキサメタゾン(dexamethasone)(Sigma-Aldrich)、20ng/ml OSM(R&D system)、10ng/ml HGF(PeproTech)を含むHepatocyte Culture Medium(Lonza)を使用し、3日に1回ずつ培養液を交換した。
【0090】
[実施例2.シアリルオリゴ糖処理による幹細胞の細胞生存率の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が幹細胞の細胞生存率に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、継代培養された幹細胞に、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、及びそれらの組み合わせを、それぞれ0,50,100,200,または400μM濃度で処理し、CCK-8分析(Cell counting Kit-8 assay)を介し、濃度別細胞生存率を確認した。具体的には、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞及びヒト臍帯血由来間葉系幹細胞を、96ウェルプレートにシーディングした。その後、0,50,100,200または400μM濃度で、3’-シアリルラクトース(GeneChem)、6’-シアリルラクトース(GeneChem)、及び3’-シアリルラクトースと6’-シアリルラクトースとの混合物を牛胎児血清(T&I)がない1%抗生物質(Gibco)を含むDMEMローグルコース培地(Hyclone)で処理して培養した。その後、培養された細胞の生存率を、CCK-8(同仁化学研究所、熊本、日本)分析を介して確認した。
【0091】
図1ないし図3は、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3’-シアリルラクトースと6’-シアリルラクトースとの混合物を、濃度別に骨髄由来間葉系幹細胞(図1)、脂肪組織由来間葉系幹細胞(図2)及び臍帯血由来間葉系幹細胞(図3)を処理した後、各幹細胞の細胞生存率に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、全ての濃度において、細胞生存率に否定的な影響を及ぼさなかったが、シアリルラクトースを用いて100μM濃度で処理した場合、細胞生存率が有意的に増大することを確認した。従って、今後の実験においては、シアリルラクトースを用いて100μM濃度で処理して実験を進めた。
【0092】
[実施例3.シアリルオリゴ糖処理による幹細胞能の増大の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が幹細胞の幹細胞能に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、間葉系幹細胞を、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、及びそれらの組み合わせでそれぞれ処理した後、前記間葉系幹細胞の幹細胞能標識子であるOCT4、SOX2及びNANOGのmRNAレベル及びタンパク質レベルにおける発現変化を、それぞれリアルタイム逆転写重合酵素連鎖反応(qRT-PCR:quantitative reverse transcription-polymerase chain reaction)及びウェスタンブロットで測定した。具体的には、前記実施例1の方法により、細胞培養して収集した細胞から総RNAを分離し、Bioneer(大田、韓国)から購入したOCT4プライマー、SOX2プライマー(Bioneer、P200205)及びNANOGプライマーを利用したqRT-PCRを介して分離された総RNAのmRNA発現変化を確認した。使用されたOCT4プライマー及びNANOGプライマーの配列は、下記表1に示した。
【0093】
【表1】
【0094】
図4ないし図6は、シアリルラクトースが幹細胞の幹細胞能に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、シアリルラクトースなしに培養された幹細胞と比較し、3’-シアリルラクトース、6’-シアリルラクトース、3’-シアリルラクトースと6’-シアリルラクトースとの混合物で処理して培養された、骨髄由来間葉系幹細胞(図4)、脂肪組織由来間葉系幹細胞(図5)及び臍帯血由来間葉系幹細胞(図6)は、幹細胞能を確認することができるマーカー遺伝子であるOCT4、SOX2及びNANOGのmRNAレベル及びタンパク質レベルにおいて、発現がいずれも有意的に増大するということを確認した。
【0095】
前記実験結果から、幹細胞の培養前、培養中または培養後の過程において、シアリルオリゴ糖の処理は、幹細胞の幹細胞能を有意的に増大させることができることを確認することができた。
【0096】
[実施例4.3’-シアリルラクトース処理による幹細胞の老化低減の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が幹細胞の老化に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、骨髄由来間葉系幹細胞を3’-シアリルラクトースで処理し、継代培養後の細胞老化因子であるp16及びp53のmRNAレベル及びタンパク質レベルにおける発現変化を、それぞれqRT-PCR及びウェスタンブロットで測定した。具体的には、前記実施例1の方法で細胞培養して収集した細胞から総RNAを分離し、Bioneer(大田、韓国)から購入したp16プライマー(Bioneer、P260189)及びp53プライマー(Bioneer、P250999)を利用したqRT-PCRを介して分離された総RNAのmRNA発現変化を確認した。
【0097】
図7は、3’-シアリルラクトースが幹細胞の老化に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、3’-シアリルラクトースが処理されずに継代培養された骨髄由来間葉系幹細胞は、老化が進められるほど、p16及びp53のmRNAレベル及びタンパク質レベルにおける発現が増大されるが、3’-シアリルラクトースで処理して継代培養された幹細胞は、p16及びp53のmRNAレベル及びタンパク質レベルにおいて、非常に低い発現を示し、p16及びp53の発現が低減することを確認した。
【0098】
また、3’-シアリルラクトース(GeneChem)処理した後の幹細胞の老化程度を確認するために、100μMの3’-シアリルラクトースを処理した10継代の骨髄由来間葉系幹細胞(hBMSCs)において、老化関連ベータ-ガラクトシダーゼ染色法を遂行した。具体的には、細胞をホルマリンに固定させた後、PBSで洗浄し、ベータ-ガラクトシダーゼ染色溶液(β-gal staining solution、1mg/mL X-Gal、40mMクエン酸・リン酸ナトリウム緩衝液、150mM NaCl、2mM MgCl、5mMフェロシアン化カリウム及び5mMフェリシアン化カリウム;pH6.0;Sigma-Aldrich、セントルイス、米国)を添加し、37℃で反応させた。その後、Eclipse TS100(Nikon米国、Melville、NY、米国)を利用し、老化された細胞(青色、陽性)、及び老化活性が示されていない細胞(陰性)の老化活性程度を確認した。
【0099】
SA-β-galを利用した細胞老化分析結果、3’-シアリルラクトースが処理されずに継代培養された骨髄由来間葉系幹細胞は、老化が進行するほど、SA-β-galの活性が増大するが、3’-シアリルラクトースで処理して継代培養された幹細胞は、SA-β-galの低活性を示し、SA-β-galの活性が低下することを確認した。
前記実験結果から、幹細胞の培養前、培養中または培養後の過程において、シアリルオリゴ糖の処理は、幹細胞の老化を有意的に低減させることができることが確認された。
【0100】
[実施例5.3’-シアリルラクトース処理による幹細胞の増殖増加の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が幹細胞の増殖に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、低い増殖能を有する骨髄由来間葉系幹細胞を、3’-シアリルラクトースで処理し、細胞周期進行及び増殖と関与する遺伝子であるサイクリンA2(CCNA2:cyclin A2)及びサイクリン依存的キナーゼ2(CDK2:cyclin-dependent kinase2)の発現変化を確認した。具体的には、前記実施例1の方法でもって細胞培養して収集した細胞から総RNAを分離し、Bioneer(大田、韓国)から購入したCCNAプライマー(Bioneer、P212796)及びCDK2プライマー(Bioneer、P136765)を利用したqRT-PCRを介して分離された総RNAのmRNA発現変化を確認した。
【0101】
図8は、3’-シアリルラクトースが骨髄由来間葉系幹細胞の増殖に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、3’-シアリルラクトースが処理されていない幹細胞は、老化が進行するほど、CCNA2及びCDK2の発現が低減するが、3’-シアリルラクトースが処理された幹細胞は、CCNA2及びCDK2の発現が有意的に増大することを確認した。
【0102】
前記実験結果から、幹細胞の培養前、培養中または培養後の過程において、シアリルオリゴ糖の処理は、幹細胞の増殖を有意的に増大させることができることが確認された。
【0103】
[実施例6.3’-シアリルラクトース処理による継代数別幹細胞の生存率の上昇の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が幹細胞の細胞継代培養による生存率に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、4,7,10及び12継代培養された骨髄由来間葉系幹細胞を、3’-シアリルラクトースを用いて100μM濃度で処理し、CCK-8分析(Cell counting Kit-8 assay)を介して細胞生存率を確認した。具体的には、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を、96ウェルプレートにシーディングした。その後、100μM濃度で、3’-シアリルラクトース(GeneChem)を用いて、牛胎児血清(T&I)がない1%抗生物質(Gibco)を含むDMEMローグルコース培地(Hyclone)で処理して培養した。培養された細胞の生存率をCCK-8分析を介して確認した。
【0104】
図9は、3’-シアリルラクトースが、継代による幹細胞の細胞生存率に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、3’-シアリルラクトースで処理して幹細胞を培養した場合、細胞生存率が有意的に上昇するということを確認した。
【0105】
前記実験結果から、幹細胞の持続的な継代培養により、自家増殖力が低下しうるが、シアリルオリゴ糖の処理は、継代培養による増殖能低下を有意的に抑制させることができることを確認することができた。
【0106】
[実施例7.シアリルラクトース処理によるオルガノイド生存率の上昇の確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの生存率に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、肝オルガノイドを継代培養した後、HM(hepatic medium)で1日安定化させ、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトースを、0,0.1,1,10,100μM濃度で6日間処理した後、そこから7日目、CCK分析を介して細胞生存率を確認した。
【0107】
図10は、シアリルラクトースが誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの細胞生存率に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、3’-シアリルラクトースを、10,100μM濃度で処理し、6’-シアリルラクトースを、0.1,1,10,100μM濃度で処理した場合、肝オルガノイド内細胞生存率が有意的に上昇するということを確認した。
【0108】
前記実験結果から、誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの培養過程において、シアリルオリゴ糖の処理は、肝オルガノイドの増殖を有意的に増大させることができることを確認することができた。
【0109】
[実施例8.シアリルラクトース処理によるオルガノイド成熟度上昇確認]
本実施例においては、シアリルオリゴ糖が誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの成熟度に及ぼす影響を確認するものである。具体的には、肝オルガノイドを継代培養した後、HM(hepatic medium)で1日安定化させ、3’-シアリルラクトース及び6’-シアリルラクトースを、0,0.1,1,10,100μM濃度で6日間処理した後、そこから7日目、肝オルガノイドから総RNAを分離し、代謝成熟度標識子であるCYP3A4、CYP2A7、ALB、AFPのmRNAレベルにおける発現変化を、それぞれリアルタイム逆転写重合酵素連鎖反応(qRT-PCR:quantitative reverse transcription-polymerase chain reaction)で測定し、その発現比率を比較し、代謝成熟度を確認した。
【0110】
図11及び図12は、シアリルラクトースが誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの細胞成熟度に及ぼす影響を確認した結果である。その結果、3’-シアリルラクトースを、1,10μM濃度で処理した場合、CYP3A4/CYP3A7の比率、3’-シアリルラクトースを10,100μM濃度で処理した場合、ALB/AFPの比率を有意的に上昇させるということを確認し、6’-シアリルラクトースは、0.1,100μM濃度で処理した場合、ALB/AFPの比率を有意的に上昇させるということを確認した。
【0111】
前記実験結果から、誘導万能幹細胞由来の肝オルガノイドの培養過程において、シアリルオリゴ糖の処理は、肝オルガノイドの代謝成熟度を有意的に上昇させることができることを確認することができた。
【0112】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解できるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022551702000001.app
【国際調査報告】