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特表2022-551712TRPA1阻害剤としてのチエノピリミドン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】TRPA1阻害剤としてのチエノピリミドン
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20221206BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C07D495/04 105Z
C07D495/14 D CSP
A61K31/519
A61P11/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P11/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521748
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2020078853
(87)【国際公開番号】W WO2021074196
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203171.4
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】フレック マルティン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー フロリアン パウル クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ダーマン ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘーン イェルク ピー
(72)【発明者】
【氏名】ハイマン アンネカトリン シャルロッテ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヴァチャー イェンス
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071BB02
4C071CC02
4C071CC03
4C071CC21
4C071DD40
4C071EE13
4C071FF05
4C071GG01
4C071GG05
4C071HH08
4C071HH28
4C071JJ01
4C071JJ04
4C071JJ06
4C071KK11
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB26
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZB08
4C086ZB11
(57)【要約】
本出願は、チエノピリミジノン、及びTRPA1活性の阻害剤としてのその使用、それを含有する医薬組成物、及びそれを線維性疾患、炎症性及び自己免疫性疾患、ならびにCNS関連疾患の治療及び/又は予防のための薬剤として使用する方法に関する。
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による化合物。
【化1】
(式中、
Aは、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニル、ナフチル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、もしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aは
【化2】
から選択され、
1はH、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、C1-4-アルキル-OH、もしくはC1-4-アルキル-CNから選択され、
2はC1-2-アルキルもしくはClから選択されるか、
又はR1及びR2はそれぞれCH2であり、結合を介して一緒になって6員環を形成する)
【請求項2】
Aが、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aが
【化3】
から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Aが、H、F、Cl、及びCH3からなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aが
【化4】
から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Aが
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
1がH、CH3、CH2CHF2又はCH2C(CH32OHからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
2がCH3又はClである、請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
【化6】
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物の(S)-エナンチオマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物の塩、特に医薬的に許容される塩。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の少なくとも1種、又はその医薬的に許容される塩と、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項11】
医薬としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
炎症性気道疾患又は線維性疾患又は咳嗽の治療又は予防のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項13】
特発性肺疾患(IPF)又は咳嗽の治療又は予防のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チエノピリミジノン、及びTRPA1活性の阻害剤としてのその使用、それを含有する医薬組成物、ならびにそれを線維性疾患、炎症性及び自己免疫性疾患、ならびにCNS関連疾患の治療及び/又は予防のための薬剤として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一過性受容体電位チャネル(TRPチャネル)は、主に多くの哺乳類細胞の種類の細胞膜に位置する電位依存性イオンチャネルの一群である。およそ30の構造的に関連したTRPチャネルが存在し、TRPA、TRPC、TRPM、TRPML、TRPN、TRPP、及びTRPVの群に分類される。一過性受容体電位アンキリン1としても知られる一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーA、メンバー1(TRPA1)は、TRPA遺伝子サブファミリーの唯一のメンバーである。構造上、TRPAチャネルは複数のN末端アンキリンリピートにより特徴付けられ(ヒトTRPA1のN末端に約14個)、このことからアンキリンの名称として「A」が付けられている(Montell, 2005)。
TRPA1は、皮膚及び肺の両方に仕える後根及び節状神経節の感覚ニューロンの細胞膜、ならびに小腸、結腸、膵臓、骨格筋、心臓、脳、膀胱、及びリンパ球(https://www.proteinatlas.org/)、ならびにヒト肺線維芽細胞に高発現している。
【0003】
TRPA1は、疼痛、寒さ、痒みなどの体性感覚モダリティをもたらす環境刺激に対するセンサーとして最もよく知られている。TRPA1はいくつかの反応性親電子刺激(たとえば、アリルイソチオシアネート、活性酸素種)、ならびに非反応性化合物(たとえば、イシリン)により活性化され、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)に伴う咳嗽、又はウイルス感染後の咳嗽、又は慢性特発性咳嗽、ならびに敏感な患者の咳嗽に関与している(Song and Chang, 2015; Grace and Belvisi, 2011)。TRPA1阻害剤は、咳嗽により誘発されるTGF-βの上昇を示す研究(Xie et al., 2009; Froese et al., 2016; Tschumperlin et al., 2003; Yamamoto et al., 2002; Ahamed et al., 2008)に基づいて、咳嗽と肺損傷の関連から、咳嗽が多く認められるIPFの治療に有用である。TRPA1アンタゴニストは、タバコ煙抽出物(CSE)酸化ストレス、炎症性メディエーター放出、及び抗酸化遺伝子発現の下方制御などの咳嗽誘因によって引き起こされるカルシウムシグナル伝達を阻害する(Lin et al., 2015; Wang et al., 2019)。TRPA1アンタゴニストは、アトピー性皮膚炎(Oh et al., 2013; Wilson et al., 2013)、接触性皮膚炎(Liu et al., 2013)、乾癬に関連する痒み(Wilson et al., 2013)、及びIL-31依存性の痒み(Cevikbas et al., 2014)の研究において有効である。ヒトTRPA1の機能獲得は、家族性エピソード性疼痛症候群と関連している(Kremeyer et al., 2010)。TRPA1アンタゴニストは片頭痛関連異痛症の行動モデルにおいて有効であった(Edelmayer et al., 2012)。TRPA1は、健常歯を支配する三叉神経節でのTRPA1発現と比較して、損傷歯を支配する三叉神経節で選択的に増加する(Haas et al., 2011)。イソフルランを含むいくつかの麻酔薬はTRPA1アゴニストであることが知られており(Matta et al., 2008)、術後疼痛緩和のためのTRPA1阻害剤の理論的根拠となっている。TRPA1ノックアウトマウス及び野生型マウスをTRPA1アンタゴニストで処置したところ、抗不安様及び抗うつ様の表現型を示した(de Moura et al., 2014)。TRPA1阻害剤は、AMPKとTRPA1の間の逆調節の機構的関連性を示す研究に基づいて、糖尿病性神経障害の治療において有益であることが期待される(Hiyama et al., 2018; Koivisto and Pertovaara, 2013; Wang et al., 2018)。TRPA1ノックアウトマウスは、野生型マウスと比較して心筋梗塞の大きさが小さい(Conklin et al., 2019)。TRPA1のノックアウト及び薬理学的介入により、マウスのTNBS誘発性大腸炎が阻害された(Engel et al., 2011)。マウス脳虚血モデルにおいて、TRPA1ノックアウト及びTRPA1アンタゴニストは、ミエリン損傷を軽減する。(Hamilton et al., 2016)尿酸一ナトリウムマウス痛風モデルにおいて、TRPA1ノックアウトマウスでは尿酸塩結晶及び関節炎症が軽減する(Moilanen et al., 2015)。ラットのTRPA1欠損は、ラット急性痛風発作モデルにおいて、関節炎症及び痛覚過敏症を改善した(Trevisan et al., 2014)。TRPA1の活性化は、骨関節炎軟骨細胞において炎症反応を誘発する(Nummenmaa et al., 2016)。TRPA1の阻害及び遺伝子欠損は、骨関節炎マウス軟骨細胞及びマウス軟骨において炎症性メディエーターを減少させる(Nummenmaa et al., 2016)。最後に、TRPA1ノックアウトマウスは、MIA誘発性膝膨張モデルにおいて、骨関節炎肢の体重負荷に改善を示した(Horvath et al., 2016)TRPA1は、膀胱出口部閉塞症のラット(Du et al., 2007)及び患者(Du et al., 2008)の膀胱上皮で発現が異なる。TRPA1受容体の調節は、ラット脊髄損傷モデルにおいて膀胱過活動を減衰させ(Andrade et al., 2011)、TRPA1アンタゴニストの鞘内投与は、反射排尿亢進(hyper-reflexia micturition)ラットのシクロホスファミド誘発性膀胱炎を減衰させる(Chen et al., 2016)。
【0004】
したがって、強力なTRPA1阻害剤を提供することが望ましい。
様々な構造クラスのTRPA1阻害剤がS. Skerratt, Progress in Medicinal Chemistry, 2017, Volume 56, 81-115及びD. Preti, G. Saponaro, A. Szallasi, Pharm. Pat. Anal. (2015) 4 (2), 75-94に概説されている。
WO2017/060488は、TRPA1のアンタゴニストである、一般構造式
【化1】
を有する化合物を開示している。
その中の実施例53、72、73、86、及び90のTRPA1活性は、カルシウムフラックスアッセイにおいてIC50が100nM未満であることが開示されている。
【0005】
L. Schenkel, et al., J. Med. Chem. 2016, 59, 2794-2809は、一般構造式
【化2】
の化合物を含む、キナゾリノンベースTRPA1アンタゴニストを開示し、RがOHである化合物31はFLIPRアッセイにおいてIC5058nMの拮抗的なTRPA1活性を有し、ヒト肝ミクロソームにおいて<14μL/分/kgの固有クリアランスを有するものとして開示される。
【発明の概要】
【0006】
本発明はTRPA1の驚くほど強力な阻害剤である(アッセイA)新規チエノピリミジノンであって、
- ヒト肝ミクロソームでの安定性の向上(アッセイB)
- ヒト肝細胞での安定性の向上(アッセイC)によってさらに特徴付けられる新規チエノピリミジノンを提供する。
本発明の化合物は、WO2017/060488の実施例53、72、73、86、及び90ならびにL. Schenkel, et al., J. Med. Chem. 2016, 59, 2794-2809の実施例31とは、それらがアミド置換基ならびに第二級脂肪族アルコールに近接する置換基を有するチエノピリミジノンコアを含有するという点で、構造的に異なる。これらの構造的な違いは予想外にも、(i)TRPA1の阻害、(ii)ヒト肝ミクロソームでの安定性、及び(iii)ヒト肝細胞での安定性という好都合の組合せをもたらす。
【0007】
本発明の化合物はしたがって、以下のパラメーター:
- TRPA1の阻害剤としての効力
- ヒト肝ミクロソームでの安定性
- ヒト肝細胞での安定性
の組合せの観点から、先行技術に開示された化合物よりも優れている。
ヒト肝ミクロソームでの安定性とは、好都合な薬物動態学的特性をもつ薬物の選択及び/又は設計の状況において、最初のスクリーニングステップとしての、化合物の生体内変換に対する感受性を指す。多くの薬物にとって代謝の主要な部位は肝臓である。ヒト肝ミクロソームにはシトクロムP450(CYP)が含有されており、したがって、in vitroでの薬物代謝第I相研究のモデル系となっている。ヒト肝ミクロソームでの安定性の向上は、生物学的利用能の増加及び十分な半減期を含む、いくつかの利点と関連しており、患者への投与量及び投与回数をより少なくすることが可能になる。このように、ヒト肝ミクロソームでの安定性の向上は、薬物として使用される化合物にとって好都合な特徴である。したがって、本発明の化合物は、TRPA1を阻害できることに加えて、好都合なin vivoクリアランスを有し、これによりヒトにおいて所望の作用時間を有することが期待される。
【0008】
ヒト肝細胞での安定性とは、好都合な薬物動態学的特性をもつ薬物の選択及び/又は設計の状況において、化合物の生体内変換に対する感受性を指す。多くの薬物にとって代謝の主要な部位は肝臓である。ヒト肝細胞にはシトクロムP450(CYP)及び他の薬物代謝酵素が含有されており、したがって、in vitroでの薬物代謝研究のモデル系となっている。(重要なことに、肝ミクロソームアッセイとは対照的に、肝細胞アッセイは第II相生体内変換ならびに肝臓特異的トランスポーター媒介プロセスもカバーしており、したがって薬物代謝研究のより完全なシステムとなっている。)ヒト肝細胞での安定性の向上は、生物学的利用能の増加及び十分な半減期を含む、いくつかの利点と関連しており、患者への投与量及び投与回数をより少なくすることが可能になる。このように、ヒト肝細胞での安定性の向上は、薬物として使用される化合物にとって好都合な特徴である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は式(I)による新規化合物
【化3】
(式中、
Aは、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニル、ナフチル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、もしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aは
【0010】
【化4】
から選択され、
1はH、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、C1-4-アルキル-OH、もしくはC1-4-アルキル-CNから選択され、
2はC1-2-アルキルもしくはClから選択される、
又はR1及びR2はそれぞれCH2であり、結合を介して一緒になって6員環を形成する)を提供する。
【0011】
本発明の別の実施形態は式(I)(式中、Aは、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aは
【化5】
から選択され、置換基R1及びR2は先の実施形態のいずれかに定義される通りである)の化合物に関する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、Aが、H、F、Cl、及びCH3からなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aが
【化6】
から選択され、置換基R1及びR2は先の実施形態のいずれかに定義される通りである、式(I)の化合物に関する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、Aが
【化7】
からなる群から選択され、置換基R1及びR2は先の実施形態のいずれかに定義される通りである、式(I)の化合物に関する。
【0014】
本発明の別の実施形態は、R1がH、CH3、CH2CHF2又はCH2C(CH32OHからなる群から選択され、置換基A及びR2は先の実施形態のいずれかに定義される通りである、式(I)の化合物に関する。
本発明の別の実施形態は、R2が-CH3であり、置換基A及びR1が先の実施形態のいずれかに定義される通りである、式(I)の化合物に関する。
【0015】
好ましいのは、
【化8】
からなる群から選択され、置換基Aは先の実施形態のいずれかに定義される通りである、式(I)の化合物である。
【0016】
特に好ましいのは、
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
からなる群から選択される、式(I)による化合物の(S)-エナンチオマーである。
【0017】
使用されている用語及び定義
ここで特に定義されていない用語は、本開示及び文脈に照らして当業者によって与えられるであろう意味を与えられるべきである。ただし、本明細書で使用する場合、反対に規定されない限り、以下の用語は示された意味を有し、以下の慣例が固守される。
以下に定義する基、ラジカル、又は部分では、炭素原子の数は基に先行して特定されることが多く、たとえば、C1-6-アルキルは1~6個の炭素原子を有するアルキル基又はラジカルを意味する。一般にHO、H2N、(O)S、(O)2S、NC(シアノ)、HOOC、F3Cなどの基では、熟練者は基自体の自由原子価から分子へのラジカル結合点を知ることができる。2つ以上のサブグループを含む組み合わせ基の場合、最後に記載されるサブグループがラジカル結合点であり、たとえば、置換基「アリール-C1-3-アルキル」は、C1-3-アルキル基に結合しているアリール基を意味し、C1-3-アルキル基は置換基が結合しているコア又は基に結合している。
【0018】
本発明の化合物が化学名及び化学式で表記されている場合、矛盾がある場合は化学式が優先されるものとする。アスタリスクは、定義されたコア分子に接続されている結合を示すために、サブ式で使用することができる。
置換基の原子の番号付けは、置換基が結合しているコア又は基の最も近接している原子から開始する。
たとえば、用語「3-カルボキシプロピル基」は以下の置換基:
【化10】
(式中、カルボキシ基はプロピル基の3位の炭素原子に結合している)を表す。用語「1-メチルプロピル-」、「2,2-ジメチルプロピル-」又は「シクロプロピルメチル-」基は以下の基:
【化11】
を表す。
【0019】
アスタリスクは、定義されたコア分子に接続されている結合を示すために、サブ式で使用することができる。
用語「C1-n-アルキル」は、nが2、3、4、又は5から選択される整数であるとき、単独で又は別の基と組み合わせて1~n個の炭素原子を有する非環状、飽和、分岐、又は直鎖の炭化水素基を表す。たとえば、用語C1-5-アルキルは、基H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH32-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH32-、H3C-C(CH32-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-、及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
【0020】
用語「F1-m-フルオロ-C1-n-アルキル」は、mが2又は3から選択される整数であり、nが2、3、4、又は5から選択される整数であるとき、1個又は複数の水素原子が1-m個のフッ素で置き換えられている本明細書中でこれより前に定義されたC1-n-アルキル基を表す。たとえば、F1-3-フルオロ-C1-2-アルキルは基FH2C-、F2HC-、F3C-、FH2C-H2C-、F2HC-H2C-、F3C-H2C-、FH2C-FHC-、FH2C-F2C-、F2HC-FHC-、H3C-FHC-、及びH3C-F2C-を包含する。
用語フェニルは以下の環
【化12】
の基を指す。
【0021】
用語ナフチルは以下の環
【化13】
の基を指す。
用語チオフェニルは以下の環
【化14】
の基を指す。
【0022】
用語ベンゾチオフェニルは以下の環
【化15】
の基を指す。
用語チエノピリミドンは以下の環
【化16】
の基を指し、
【化17】
を包含する。
【0023】
用語ベンゾフラニルは以下の環
【化18】
の基を指す。
用語シクロプロピルは以下の環
【化19】
の基を指す。
【0024】
用語シクロブチルは以下の環
【化20】
の基を指す。
本明細書では、用語「置換されている」は、指定された原子上の任意の1個又は複数の水素が、示された群からの選択物で置き換えられることを意味し、ただし指定された原子の通常の原子価を超えないこと、及び置換により安定な化合物が得られることを条件とする。
【0025】
特に明記しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通じて、所与の化学式又は名称は、互変異性体及びすべての立体、光学及び幾何異性体(たとえば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体など)、及びそのラセミ体、ならびに別個のエナンチオマーの異なる割合の混合物、ジアステレオマーの混合物、又はそのような異性体及びエナンチオマーが存在する前述の形態のいずれかの混合物、ならびに、その医薬的に許容される塩及びその溶媒和物を含む塩を包含するものとし、溶媒和物の例としては、たとえば、遊離化合物の溶媒和物又はその遊離化合物の塩の溶媒和物を含む水和物が挙げられる。
一般に、実質的に純粋な立体異性体は、当業者に既知の合成原理に従って、たとえば、対応する混合物の分離、立体化学的に純粋な出発材料の使用、及び/又は立体選択的合成により得ることができる。光学活性体を調製する方法は当技術分野で知られており、たとえばラセミ体の分割によって、又は、たとえば光学活性出発材料から出発する合成によって、及び/又はキラル試薬を使用することによって調製される。
【0026】
本発明のエナンチオマー的に純粋な化合物又は中間体は、不斉合成を経て、たとえば、既知の方法(たとえば、クロマトグラフィーによる分離又は結晶化)によって分離することができる適切なジアステレオマー化合物又は中間体の調製及びその後の分離によって、ならびに/又はキラル出発材料、キラル触媒又はキラル補助剤などのキラル試薬の使用によって、調製することも可能である。
さらに、対応するラセミ混合物からエナンチオマー的に純粋な化合物を調製する方法は当業者に知られており、たとえば、キラル固定相上での対応するラセミ混合物のクロマトグラフィーによる分離;又は適切な分割剤を使用したラセミ混合物の分割、たとえば、光学活性酸又は塩基によるラセミ化合物のジアステレオマー塩形成、その後の塩の分割及び塩からの所望の化合物の放出によって;又は対応するラセミ化合物の光学活性キラル補助試薬での誘導体化、その後のジアステレオマー分離及びキラル補助基の除去により;又はラセミ体の動力学的分割(たとえば、酵素的分割)により;適切な条件下でエナンチオ異性晶の集合体からのエナンチオ選択的な結晶化により;又は光学活性キラル補助剤の存在下での適切な溶媒からの(分別)結晶化により行う。
【0027】
表現「薬学的に許容される」は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題もしくは合併症を伴わずに使用に適し、合理的なベネフィット/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。
本明細書では、「医薬的に許容される塩」は、親化合物が酸又は塩基と共に塩又は複合体を形成する、開示された化合物の誘導体を指す。
塩基性部分を含有する親化合物と共に医薬的に許容される塩を形成する酸の例としては、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチシン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸、及び酒石酸などの鉱酸又は有機酸などがある。
【0028】
酸性部分を含有する親化合物と共に医薬的に許容される塩を形成するカチオン及び塩基の例としては、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4 +、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リジン、N-メチル-D-グルカミン、又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンなどがある。本発明の医薬的に許容される塩は、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成することが可能である。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、水中、又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、もしくはアセトニトリルなどの有機希釈剤又はその混合物中で、十分量の適切な塩基又は酸と反応させることにより調製することができる。
たとえば本発明の化合物の精製又は単離に有用な上記以外の他の酸の塩(たとえば、トリフルオロ酢酸塩)も本発明の一部を構成する。
生物学的アッセイ
アッセイA:TRPA1アッセイ
本発明の化合物の活性は、以下のin vitro TRPA1細胞アッセイを使用して実証することができる。
【0029】
方法:
化合物の有効性及び効力の試験系として、ヒトTRPA1イオンチャネルを過剰発現させたヒトHEK293細胞株(Perkin Elmer、製品番号AX-004-PCL)を使用した。化合物の活性は、FLIPRtetraシステム(Molecular Devices)のAITC(アリルイソチオシアネート(Allylisothiocyanat)アゴニズムによって誘導される細胞内カルシウム濃度に対する化合物の影響を測定することによって決定した。
細胞培養:
細胞はクライオバイアル中の凍結細胞として入手し、使用時まで-150℃で保存した。
細胞を培養培地中(10%FCSと0.4mg/MLのジェネティシンを含むMEM/EBSS培地)で増殖させた。密度が90%コンフルエンスを超えないことが重要である。継代培養のために、ヴェルセン(Versene)により細胞をフラスコから剥離した。アッセイの前日に細胞を剥離し、培地(10%FCSを含むMEM/EBSS培地)で2回洗浄し、20000個の細胞を20μl/ウェルでCorning製ポリD-リジンでバイオコートした384ウェルプレート(黒色、透明底、カタログ番号356697)に播種した。プレートはアッセイで使用する前に37℃/5%CO2で24時間インキュベートした。
【0030】
化合物調製
試験化合物は10mMの濃度で100%DMSOに溶解し、最初のステップでDMSO中5mMの濃度に希釈し、その後100%DMSOで連続希釈ステップを行った。希釈倍率や希釈段階数は、ニーズに応じて変更することができる。典型的には、1:5希釈で8種類の濃度を調製し、さらに物質の中間希釈(1:20)をHBSS/HEPES緩衝液(1×HEPES、Gibco製、カタログ番号14065、20mM HEPES、SIGMA製カタログ番号83264、0.1%BSA、Invitrogen製、カタログ番号11926、pH7.4)で実施した。
FLIPRアッセイ:
アッセイの日に、細胞をアッセイバッファーで3回洗浄し、洗浄後、緩衝液20μLをウェル中に残した。Ca6キット(カタログ番号R8191、MolecularDevices)のHBSS/HEPES中のローディング緩衝液10μLを細胞に添加し、プレートに蓋をして37℃/5%CO2で120分間インキュベートした。中間希釈プレートからHBSS/HEPES緩衝液/5%DMSO中の化合物又は対照10μLをウェルに注意深く添加した。発光(カルシウムの流入又は放出を示す)をFLIPRtetra装置で10分間読み取り、化合物による効果(たとえば、アゴニズム)をモニターした。最後に、HBSS/HEPES緩衝液/0.05%DMSO(最終濃度10μM)に溶解した50μMのアゴニストAITCを10μLウェルに添加し、その後追加の読み取りをFLIPRtetra装置で10分間行った。IC50/阻害%の算出のためにAITC添加後のシグナル曲線下面積(AUC)を使用した。
【0031】
データ評価及び算出:
各アッセイのマイクロタイタープレートには、AITCによって誘導される発光の対照として、化合物の代わりにビヒクル(1%DMSO)対照を用いたウェル(100%CTL;高対照)と、発光の非特異的変化の対照として、AITCなしのビヒクル対照を用いたウェル(0%CTL;低対照)が含有された。
データの分析は、個々のウェルのシグナル曲線下面積を算出することで行った。この値に基づいて、MegaLabソフトウェア(自社開発)を使用して、各物質濃度の測定値に対する%値を算出した(AUC(試料)-AUC(低))*100/(AUC(高)-AUC(低))。IC50値はMegaLabソフトウェアを使用して%対照値から算出した。算出:[y=(a-d)/(1+(x/c)^b)+d]、a=低値、d=高値;x=濃度M;c=IC50 M;b=ヒル係数;y=%対照
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】


【0034】
【表3】
【0035】
アッセイB:ミクロソームのクリアランス:
プールした肝ミクロソームを用いて、37℃で試験化合物の代謝分解をアッセイする。各時点で100μLの最終インキュベーション体積には、RTでpH7.6のTRIS緩衝液(0.1M)、塩化マグネシウム(5mM)、ミクロソームタンパク質(1mg/ml)及び最終濃度1μMの試験化合物が含有される。
37℃の短時間のプレインキュベーション後、ベータ-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型(NADPH、1mM)を添加して反応を開始し、異なる時点(0、5、15、30、60分)でアリコートを溶媒に移して終了する。さらに、NADPHなしのインキュベーションでは、NADPH非依存性分解がモニターされ、最終の時点で終了される。NADPHに依存しないインキュベーション後の試験化合物の残存率[%]は、パラメーターc(対照)に反映される(代謝安定性)。クエンチしたインキュベーション物は、遠心分離(10000g、5分)によりペレット化する。
【0036】
上清のアリコートを、親化合物の量について、LC-MS/MSによりアッセイする。半減期(t1/2 INVITRO)は、濃度-時間プロファイルの片対数プロットの傾きにより決定する。
固有クリアランス(CL_INTRINSIC)は、インキュベーション中のタンパク質の量を考慮して算出される。

CL_INTRINSIC[μL/分/mgタンパク質]=(Ln2/(半減期[分]*タンパク質含有量[mg/ml]))*1000

CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/分/mgタンパク質]×MPPGL[mgタンパク質/g肝]×肝因子[g/kg体重])/1000

Qh[%]=CL[ml/分/kg]/肝血流[ml/分/kg])

肝細胞充実性(hepatocellularity)、ヒト:細胞120×10e6個/g肝
肝因子、ヒト:25.7g/kg体重
血流、ヒト:21ml/(分×kg)
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】

【表6】
【0039】
アッセイC:肝細胞クリアランス
試験化合物の代謝分解は、肝細胞懸濁液でアッセイする。肝細胞(凍結保存)は、5%又は50%の種血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地(3.5μgグルカゴン/500mL、2.5mgインスリン/500mL及び3.75mg/500mLハイドロコルチゾンで補充)中でインキュベートする。
インキュベーター(37℃、10%CO2)で30分間プレインキュベーションした後、5μlの試験化合物溶液(80μM、2mMのDMSOストック溶液を培地で1:25に希釈)を395μlの肝細胞懸濁液(細胞密度は種によってMio細胞0.25~5個/mLの範囲、典型的にはMio細胞1個/mL;試験化合物の最終濃度1μM、最終DMSO濃度0.05%)に添加する。
【0040】
細胞を6時間インキュベートし(インキュベーター、オービタルシェーカー)、0、0.5、1、2、4、6時間後に試料(25μl)を採取する。試料をアセトニトリルに移し、遠心分離(5分)によりペレット化する。上清を新しい96ディープウェルプレートに移し、窒素下で蒸発させ、再懸濁する。
親化合物の減少をHPLC-MS/MSにより分析する。
【0041】
CLintは以下のように算出される:CL_INTRINSIC=用量/AUC=(C0/CD)/(AUD+クラスト/k)×1000/60。C0:インキュベーションの初期濃度[μM]、CD:生細胞の細胞密度[細胞10e6個/mL]、AUD:データ下面積[μM×時間]、クラスト(clast):最後のデータ点の濃度[μM]、k:親化合物の減少の回帰線の傾き[時間-1]。
【0042】
算出されたin vitro肝固有クリアランスは、肝モデル(well stirredモデル)を用いることで、in vivo肝固有クリアランスにスケールアップし、肝in vivo血液クリアランス(CL)の予測に使用することが可能である。

CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]=(CL_INTRINSIC[μL/分/10e6細胞]×肝細胞充実性[細胞10e6個/g肝]×肝因子[g/kg体重])/1000

CL[ml/分/kg]=CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]×肝血流[ml/分/kg]/(CL_INTRINSIC_INVIVO[ml/分/kg]+肝血流[ml/分/kg])

Qh[%]=CL[ml/分/kg]/肝血流[ml/分/kg])

肝細胞充実性、ヒト:細胞120×10e6個/g肝
肝因子、ヒト:25.7g/kg体重
血流、ヒト:21ml/(分×kg)
【0043】
【表7】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
治療方法
本発明は一般式1の化合物を対象とするものであって、この化合物はTRPA1活性と関連する又はこれにより調節される疾患及び/又は状態の予防及び/又は治療に有用であり、たとえばこれには線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器もしくは胃腸の疾患又は愁訴、眼科疾患、関節の炎症性疾患ならびに鼻咽頭、目、及び皮膚の炎症性疾患などの治療及び/また予防が含まれるがこれらに限定されない。前記障害、疾患、及び愁訴としては、咳嗽、特発性肺線維症、他の肺間質性疾患、及び他の線維性疾患、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、ならびにリウマチ性関節炎及びアテローム性動脈硬化などの自己免疫病態、疼痛、及びうつ病などの神経性疾患などがある。
【0046】
一般式1の化合物は、以下の予防及び/又は治療に有用である。
(1)慢性特発性咳嗽、又は慢性難治性咳嗽、喘息に伴う咳嗽、COPD、肺がん、及びウイルス感染後の咳嗽などの咳嗽。
(2)膠原病に伴う肺炎又は間質性肺炎などの肺線維性疾患。膠原病の例としてはたとえば、紅斑性狼瘡、全身性強皮症、リウマチ性関節炎、多発性筋炎及び皮膚筋炎、たとえば肺線維症(IPF)、非特異的間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患、落屑性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、急性間質性肺炎及びリンパ球性間質性肺炎などの特発性間質性肺炎、リンパ脈管筋腫症、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞組織球症、胸膜実質性線維弾性症、たとえばアスベスト症、珪肺症、鉱夫肺(炭塵)、農夫肺(干し草及びカビ)、鳩飼育者肺(鳥)などの職業的曝露による間質性肺炎もしくは金属粉やマイコバクテリアなどの職業的な空中を浮遊する他の引き金による間質性肺炎、又は放射線、メトトレキサート、アミオダロン、ニトロフラントイン、化学療法剤などの治療の結果としての間質性肺炎などの原因が明らかな間質性肺疾患、又はたとえば多発性血管炎を伴う肉芽腫症などの肉芽腫性疾患として、チャーグ・ストラウス症候群及びサルコイドーシス、過敏性肺炎、又はたとえば誤嚥、有毒なガス及び蒸気の吸入などの異なる原因によって引き起こされる間質性肺炎、心不全、X線、放射線、化学療法によって引き起こされる気管支炎又は肺臓炎又は間質性肺炎、ベック類肉腫(M.boeck or sarcoidosis)、肉芽腫症、嚢胞性線維症又は膵線維症、又はアルファ-1-抗トリプシン欠乏症などである。
(3)肝架橋線維症、肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心房線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈の硬化、関節線維性癒着、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、縦隔線維症、骨髄線維症、ペロニー病、腎性全身線維症、後腹膜線維症、癒着性関節炎などの他の線維性疾患。
【0047】
(4)たとえばアレルギー性又は非アレルギー性の鼻炎又は副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎又は鼻炎、鼻ポリープ、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎、喘息、小児喘息、アレルギー性気管支炎、肺胞炎、過敏性気道、アレルギー性結膜炎、気管支拡張症、成人呼吸促迫症候群、気管支及び肺の浮腫、気管支炎又は肺臓炎、好酸球性セルライト(たとえば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(たとえば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、好酸球性筋膜炎(たとえば、シュールマン症候群)、遅延型過敏症、非アレルギー性喘息などの炎症性、自己免疫性、又はアレルギー性疾患及び状態;運動誘発性気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、咳嗽、肺気腫;全身性アナフィラキシー又は過敏反応、薬物アレルギー(たとえば、ペニシリン、セファロスポリンに対して)、汚染されたトリプトファン摂取による好酸球増多筋痛症候群、虫刺されアレルギー;自己免疫性疾患、たとえばリウマチ性関節炎、バセドウ病、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、免疫性血小板減少症(成人ITP、新生児血小板減少症、小児ITP)、免疫性溶血性貧血(自己免疫性、薬物誘導性)、エバンス症候群(血小板及び赤血球免疫性血球減少症)、新生児Rh病(Rh disease)、グッドパスチャー症候群(抗GBM病)、セリアック病、自己免疫性心筋症、若年発症糖尿病;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;同種移植片拒絶又は移植片対宿主病を含む移植片拒絶反応(たとえば、移植時);クローン病及び潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞性乾癬を含む)及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚疾患;血管炎(たとえば、壊死性、皮膚、過敏性血管炎);結節性紅斑;好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、皮膚又は臓器に白血球の浸潤を伴うがん;加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、好酸球性角膜炎、角結膜炎、春季角結膜炎、眼傷害、前眼部傷害、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、水疱症、瘢痕性類天疱瘡、結膜黒色腫、乳頭状結膜炎、ドライアイ、上強膜炎、緑内障、グリオーシス、環状肉芽腫、バセドウ眼症、眼内黒色腫、瞼裂斑、増殖性硝子体網膜症、翼状片、強膜炎、ぶどう膜炎、急性痛風発作、痛風又は変形性眼関節炎などの眼科疾患。
(5)慢性特発性疼痛症候群、神経障害性疼痛、知覚異常、アロディニア、片頭痛、歯痛、術後疼痛などの疼痛。
(6)うつ病、不安神経症、糖尿病性神経障害、膀胱出口部閉塞症、過活動膀胱、膀胱炎などの膀胱障害;心筋再灌流障害、又は脳虚血障害。
【0048】
したがって、本発明は、医薬としての使用のための一般式1の化合物に関する。
さらに、本発明は、TRPA1活性と関連する又はこれにより調節される疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための一般式1の化合物の使用に関する。
さらに、本発明は、線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器もしくは胃腸の疾患又は愁訴、眼科疾患、関節の炎症性疾患ならびに鼻咽頭、目、及び皮膚の炎症性疾患の治療及び/又は予防のための一般式1の化合物の使用に関する。前記障害、疾患、及び愁訴としては、咳嗽、特発性肺線維症、他の肺間質性疾患、及び他の線維性疾患、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、ならびにリウマチ性関節炎及びアテローム性動脈硬化などの自己免疫病態、などがある。
【0049】
さらに、本発明は以下の治療及び/又は予防のための一般式1の化合物の使用に関する。
(1)慢性特発性咳嗽、又は慢性難治性咳嗽、喘息に伴う咳嗽、COPD、肺がん、及びウイルス感染後の咳嗽などの咳嗽。
(2)膠原病に伴う肺炎又は間質性肺炎などの肺線維性疾患。膠原病の例としてはたとえば、紅斑性狼瘡、全身性強皮症、リウマチ性関節炎、多発性筋炎及び皮膚筋炎、たとえば肺線維症(IPF)、非特異的間質性肺炎、呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患、落屑性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、急性間質性肺炎及びリンパ球性間質性肺炎などの特発性間質性肺炎、リンパ脈管筋腫症、肺胞タンパク症、ランゲルハンス細胞組織球症、胸膜実質性線維弾性症、たとえばアスベスト症、珪肺症、鉱夫肺(炭塵)、農夫肺(干し草及びカビ)、鳩飼育者肺(鳥)などの職業的曝露による間質性肺炎もしくは金属粉やマイコバクテリアなどの職業的な空中を浮遊する他の引き金による間質性肺炎、又は放射線、メトトレキサート、アミオダロン、ニトロフラントイン、化学療法剤などの治療の結果としての間質性肺炎などの原因が明らかな間質性肺疾患、又はたとえば多発性血管炎を伴う肉芽腫症などの肉芽腫性疾患として、チャーグ・ストラウス症候群及びサルコイドーシス、過敏性肺炎、又はたとえば誤嚥、有毒なガス及び蒸気の吸入などの異なる原因によって引き起こされる間質性肺炎、心不全、X線、放射線、化学療法によって引き起こされる気管支炎又は肺臓炎又は間質性肺炎、ベック類肉腫、肉芽腫症、嚢胞性線維症又は膵線維症、又はアルファ-1-抗トリプシン欠乏症などである。
【0050】
(3)肝架橋線維症、肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、心房線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈の硬化、関節線維性癒着、デュピュイトラン拘縮、ケロイド、強皮症/全身性硬化症、縦隔線維症、骨髄線維症、ペロニー病、腎性全身線維症、後腹膜線維症、癒着性関節炎などの他の線維性疾患。
(4)たとえばアレルギー性又は非アレルギー性の鼻炎又は副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎又は鼻炎、鼻ポリープ、慢性鼻副鼻腔炎、急性鼻副鼻腔炎、喘息、小児喘息、アレルギー性気管支炎、肺胞炎、過敏性気道、アレルギー性結膜炎、気管支拡張症、成人呼吸促迫症候群、気管支及び肺の浮腫、気管支炎又は肺臓炎、好酸球性セルライト(たとえば、ウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(たとえば、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、好酸球性筋膜炎(たとえば、シュールマン症候群)、遅延型過敏症、非アレルギー性喘息などの炎症性、自己免疫性、又はアレルギー性疾患及び状態;運動誘発性気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、咳嗽、肺気腫;全身性アナフィラキシー又は過敏反応、薬物アレルギー(たとえば、ペニシリン、セファロスポリンに対して)、汚染されたトリプトファン摂取による好酸球増多筋痛症候群、虫刺されアレルギー;自己免疫性疾患、たとえばリウマチ性関節炎、バセドウ病、シェーグレン症候群、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、免疫性血小板減少症(成人ITP、新生児血小板減少症、小児ITP)、免疫性溶血性貧血(自己免疫性、薬物誘導性)、エバンス症候群(血小板及び赤血球免疫性血球減少症)、新生児Rh病、グッドパスチャー症候群(抗GBM病)、セリアック病、自己免疫性心筋症、若年発症糖尿病;糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病;同種移植片拒絶又は移植片対宿主病を含む移植片拒絶反応(たとえば、移植時);クローン病及び潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞性乾癬を含む)及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚疾患;血管炎(たとえば、壊死性、皮膚、過敏性血管炎);結節性紅斑;好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、皮膚又は臓器に白血球の浸潤を伴うがん;加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、角膜炎、好酸球性角膜炎、角結膜炎、春季角結膜炎、眼傷害、前眼部傷害、眼瞼炎、眼瞼結膜炎、水疱症、瘢痕性類天疱瘡、結膜黒色腫、乳頭状結膜炎、ドライアイ、上強膜炎、緑内障、グリオーシス、環状肉芽腫、バセドウ眼症、眼内黒色腫、瞼裂斑、増殖性硝子体網膜症、翼状片、強膜炎、ぶどう膜炎、急性痛風発作、痛風又は変形性眼関節炎などの眼科疾患。
(5)慢性特発性疼痛症候群、神経障害性疼痛、知覚異常、アロディニア、片頭痛、歯痛、術後疼痛などの疼痛。
(6)うつ病、不安神経症、糖尿病性神経障害、膀胱出口部閉塞症、過活動膀胱、膀胱炎などの膀胱障害;心筋再灌流障害、又は脳虚血障害。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、上記の疾患及び状態の治療及び/又は予防に使用するための一般式1の化合物に関する。
さらなる態様において、本発明は、上記の疾患及び状態の治療及び/又は予防のための医薬の調製のための、一般式1の化合物の使用に関する。
本発明のさらなる態様において、本発明は、上記の疾患及び状態の治療又は予防のための方法であって、一般式1の化合物の有効量のヒトへの投与を含む方法に関する。
組合せ療法
本発明の化合物は、さらに、1種又は複数、好ましくは1種の追加の治療剤と組み合わせてもよい。一実施形態によれば、追加の治療剤は、特に線維性疾患、炎症性及び免疫調節障害、呼吸器もしくは胃腸の疾患又は愁訴、関節の炎症性疾患又は鼻咽頭、目、及び皮膚の炎症性疾患、又はたとえば咳嗽などの状態、特発性肺線維症、他の肺間質性疾患、喘息又はアレルギー性疾患、好酸球性疾患、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性皮膚炎、ならびにリウマチ性関節炎及びアテローム性動脈硬化などの自己免疫病態に関連する、本明細書で前述した疾患又は状態の治療において有用な治療剤、又は、眼科疾患、疼痛及びうつ病の治療に有用な治療剤の群から選択される。
【0052】
このような組合せに適した追加の治療剤には、特に、たとえば、記載された適応症の1種に関して1種又は複数の活性物質の治療効果を増強するもの、及び/又は1種又は複数の活性物質の投与量を減少させることを可能にするものが含まれる。
したがって、本発明の化合物は、抗線維化剤、鎮咳剤、抗炎症剤、抗アトピー性皮膚炎剤、鎮痛剤、抗痙攣剤、抗不安剤、鎮静剤、骨格筋弛緩剤、又は抗うつ剤からなる群から選択される1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせてもよい。
【0053】
抗線維化剤としては、たとえばニンテダニブ、ピルフェニドン、ロフルミラストなどのホスホジエステラーゼ-IV(PDE4)阻害剤、GLPG-1690又はBBT-877などのオートタキシン阻害剤;パムレブルマブなどの結合組織増殖因子(CTGF)遮断抗体;ラナルマブ(Lanalumab)などのB細胞活性化因子受容体(BAFF-R)遮断抗体;BG-00011/STX-100などのアルファ-V/ベータ-6遮断阻害剤、PRM-151などの組換えペントラキシン-2(PTX-2);CC-90001などのc-Jun N末端キナーゼ(JNK)阻害剤;TD-139などのガレクチン-3阻害剤;GLPG-1205などのGタンパク質共役型受容体84(GPR84)阻害剤;PBI-4050などのGタンパク質共役型受容体84/Gタンパク質共役型受容体40二重阻害剤;KD-025などのRho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ2(ROCK2)阻害剤;BMS-986263/ND-L02-s0201などの熱ショックタンパク質47(HSP47)低分子干渉RNA;SM-04646などのWnt経路阻害剤;チペルカスト(Tipelukast)などのLD4/PDE3/4阻害剤;ATYR-1923などのヒスチジルtRNA合成酵素(HARS)の組換え免疫調節ドメイン;ZL-2102/SAR-191801などのプロスタグランジン合成酵素阻害剤;15-ヒドロキシ-エイコサペンタエン酸(15-HEPE、たとえばDS-102);PAT-1251、PXS-5382/PXS-5338などのリシルオキシダーゼ様2(LOXL2)阻害剤;HEC-68498などのホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/ラパマイシンの哺乳類標的物(mTOR)二重阻害剤;BLD-2660などのカルパイン阻害剤;MG-S-2525などのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K19)阻害剤、OATD-01などのキチナーゼ阻害剤;MMI-0100などのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化タンパク質キナーゼ2(MAPKAPK2)阻害剤;TRK250/BNC-1021などのトランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-ベータ1)低分子干渉RNA;又はBMS-986278などのリゾホスファチジン酸受容体アンタゴニストなどがある。
【0054】
鎮咳剤としては、たとえば、ゲーファピキサント、S-600918、BAY-1817080、又はBLU-5937などのプリン受容体3(P2X3)アンタゴニスト;オルベピタント、アプレピタントなどのニューロキニン1(NK-1)受容体アンタゴニスト;ATA-101/ブラダニクリンなどのニコチン性アセチルコリン受容体アルファ7サブユニット刺激剤;コデイン、ガバペンチン、プレガブリン(pregablin)又はアジスロマイシンなどがある。
抗炎症剤としては、たとえば、プレドニゾロン、デキサメタゾンなどのコルチコステロイド;セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブなどのシクロ-オキシゲナーゼ-2(COX2)阻害剤;プロスタグランジンE2アンタゴニスト;ロイコトリエンB4アンタゴニスト;モンテルカストなどのロイコトリエンD4アンタゴニスト;5-リポキシゲナーゼ阻害剤;又はアスピリン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、もしくはインドメタシンなどの他の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)などがある。
【0055】
抗アトピー性皮膚炎剤としては、たとえば、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、ホスホジエステラーゼ阻害剤(たとえば、アプレミラスト、クリサボロール)、ヤヌス関連キナーゼ(JAK)阻害剤(たとえば、トファシチニブ)、IL-4/IL-13に対する中和抗体(たとえばデュピルマブ(dupilamab))、IL-13(たとえばレブリキズマブ、トラロキヌマブ)及びIL-31(ネモリズマブ)などがある。
鎮痛剤としては、たとえば、モルヒネ、オキシモルヒネ、レボパノール、オキシコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、フェンタニル、ヒドロコドン(hydrocondon)、ヒドロモルフォン、メリピジン、メタドン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシンなどのオピオイド型;又はアセトフェナミン(acetophenamine)などの非オピオイド型などがある。
【0056】
抗うつ剤としては、たとえば、アミトリプチリン、クロミプラミン、デスプラミン(despramine)、ドキセピン、デシプラミン、イミプラミン、ノルトリプチリンなどの三環系抗うつ剤;フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取込み阻害剤抗うつ剤(SSRI);マプロチリン、ロフェプラミン、ミルタザピン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、ミアンセリン、ブプロプリオン、ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシン、ビロキサジンなどのノルエピネフリン再取込み阻害剤抗うつ剤(SNRI);デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、レボミルナシプランなどのデュアルセロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害剤抗うつ剤(SNRI);トラゾドン、ミルタザピン、ボルチオキセチン、ビラゾドン、ブプロピオンなどの非定型抗うつ剤;又はトラニルシプロミン、フェネルジン、もしくはイソカルボキサジドなどのモノアミンオキシダーゼ阻害剤抗うつ剤(MAOI)などがある。
【0057】
抗不安剤としては、たとえば、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、又はトフィソパムなどのベンゾジアゼピン;又は、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンなどの非ベンゾジアゼピン催眠剤;又は、メプロバメート、カリソプロドール、チバメート、ロルバメートなどのカルバミン酸塩;あるいはヒドロキシジン、クロルフェニラミンもしくはジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン剤などがある。
鎮静剤としては、たとえば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタビタ-ル、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、テアミラル(theamylal)、又はチオペンタールのなどのバルビツール系鎮静剤;又はグルテチミド、メプロバメート、メタカロンもしくはジクロアルフェナゾン(dichloalphenazone)などの非バルビツール系鎮静剤などがある。
【0058】
骨格筋弛緩剤としては、たとえば、バクロフェン、メプロバメート、カリソプロドール、シクロベンザプリン、メタキサロン、メトカルバモール、チザニジン、クロルゾキサゾン又はオルフェナドリンなどがある。
他の適切な組合せパートナーは、ドネペジルなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;オンダンセトロンなどの5-HT-3アンタゴニスト;代謝調節型グルタミン酸受容体アンタゴニスト;メキシレチン又はフェニトインなどの抗不整脈薬;又はNMDA受容体アンタゴニストである。
さらに適切な組合せパートナーは、失禁薬、たとえば、オキシブチニン、トルテロジン、ダリフェナシン、フェソテロジン、ソリフェナシン又はトロスピウムなどの抗コリン剤;又はミラベグロンなどの膀胱筋弛緩剤;又はタムスロシン、アルフゾシン、シロドシン、ドキサゾシンもしくはテラゾシンなどのアルファ受容体遮断剤である。
上記の組合せパートナーの投与量は、通常、通常推奨される最低用量の1/5から通常推奨される用量の1/1までとする。
したがって、別の態様において、本発明は、TRPA1によって影響を受け得るか又は媒介される疾患又は状態、特に本明細書で前述した及び後述した疾患又は状態の治療のための、本明細書で前述した及び後述した1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせた、本発明による化合物の使用に関する。
【0059】
さらなる態様において、本発明は、患者におけるTRPA1の阻害によって影響を受け得る疾患又は状態を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療上有効な量の式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩を、治療上有効な量の1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む方法に関する。
さらなる態様において、本発明は、式(I)の化合物又はその医薬的に許容される塩の、TRPA1の阻害によって影響を受け得る疾患又は状態の治療のための、1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせた、それを必要とする患者における使用に関する。
さらに別の態様において、本発明は、患者におけるTRPA1活性によって媒介される疾患又は状態の治療のための方法であって、そのような治療を必要とする患者、好ましくはヒトに、治療上有効な量の本発明の化合物を、治療上有効な量の本明細書で前述した及び後述した1種又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与するステップを含む方法に関する。
【0060】
追加の治療剤と組み合わせた本発明による化合物の使用は、同時に行われてもよく、時間をずらして行われてもよい。
本発明による化合物及び1種又は複数の追加の治療剤は、両方とも1種の製剤、たとえば錠剤又はカプセルに一緒に存在してもよく、2種の同一又は異なる製剤、たとえばいわゆるキットオブパーツとして別々に存在してもよい。
その結果、別の態様において、本発明は、本発明による化合物と、本明細書で前述した及び後述した1種又は複数の追加の治療剤とを含み、1種又は複数の不活性担体及び/又は希釈剤と一緒になっていてもよい、医薬組成物に関する。
さらに別の態様において、本発明は、咳嗽測定装置における本発明による化合物の使用に関する。
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例として説明する以下のより詳細な実施例から明らかになるであろう。
【0061】
調製
本発明による化合物及びその中間体は、当業者に公知であり、有機合成の文献に記載されている合成方法を用いて得ることができる。好ましくは、化合物は、以降でより完全に説明される調製方法と類似の様式で、特に実験のセクションで記載されるように、得られる。場合によっては、反応ステップの実行順序を変えてもよい。また、当業者には既知であるが、ここでは詳細に記載しない反応方法の変形も使用することができる。
本発明による化合物を調製するための一般的な工程は、以下のスキームを研究する当業者にとって明らかになるであろう。出発材料は、文献又は本明細書に記載されている方法によって調製されてもよく、又は類似のもしくは同様の方式で調製されてもよい。出発材料又は中間体中の官能基は、通常の保護基を使用して保護してもよい。これらの保護基は、当業者によく知られた方法を用いて、反応順序内の適切な段階で再度切断することができる。
【0062】
本発明による化合物は、一般式の置換基が本明細書の上記で与えられた意味を有する、本明細書で後述した合成方法によって調製される。これらの方法は、その主題及び請求される化合物の範囲をこれらの実施例に制限することなく、本発明の例示として意図されている。出発化合物の調製が記載されていない場合、それらは商業的に入手可能であるか、又は本明細書に記載の既知の化合物又は方法と類似して調製することができる。文献に記載されている物質は、公表されている合成方法によって調製される。
式Iの化合物は、以下のスキームIに示すように調製することができる。
スキームI:
【化21】
【0063】
スキームIにおいて、部分構造(A)のアルファ-シアノケトンは、キラル配位子(たとえば、[(1S,2S)-(-)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル](4-トルエンスルホニル)アミド)と組み合わせた遷移金属錯体(たとえば、Ru又はIrの)を使用した適切な触媒系を使用して、エナンチオ選択的様式で還元される。対応するシアノアルコール(B)にヒドロキシルアミンを添加し、ジヒドロキシプロパンイミドアミド(C)とする。クロロメチレン-オキサジアゾール(D)への閉環は、反応混合物を塩化クロロアセチルと共に撹拌することにより達成することができる。最後に一般式(I)の化合物は、一般式(D)の化合物を塩基(たとえばK2CO3)の存在下で適切なチエノピリミジノンと一緒に組み合わせることによって調製することができる。
【0064】
三環系チエノピリミドン化合物は、以下のスキームIIに示すように調製することができる。
スキームII:
【化22】
スキームIIでは、適切なチエノテトラヒドロピリジン前駆体は、適切な溶媒(たとえば、EtOH)中、ホルムアミジン、ホルムアミド又はその塩などの適切な試薬で、高温(たとえば、100℃)で三環系チエノピリミドン化合物(C)に変換される。次に、テトラヒドロピリジンコアは、適切な酸化剤(たとえば、KMnO4)を用いて酸化され、キレート試薬(たとえば、18-クラウン-6)の存在により加速される。この反応は、典型的には、非極性溶媒(たとえば、DCM)中で行われ、周囲温度で優先的に実行される。R3が保護基(たとえばBOC)に似ている場合、この基は脱保護のための適切な条件(たとえばR3=BOCの場合、RTでTFA/DCM又はHCl/ジオキサン)を使用して除去することが可能である。
【実施例
【0065】
調製
本発明による化合物及びその中間体は、当業者に知られていて有機合成の文献に記載されている合成方法を使用して、たとえば、“Comprehensive Organic Transformations”, 2nd Edition, Richard C. Larock, John Wiley & Sons, 2010, and “March's Advanced Organic Chemistry”, 7th Edition, Michael B. Smith, John Wiley & Sons, 2013に記載の方法を使用して得ることができる。好ましくは、化合物は、以降でより十分に説明される調製方法、特に実験のセクションで記載される調製方法に、類似して得られる。場合によっては、反応スキームを実行する際の順序を変えてもよい。熟練者に知られているが、本明細書には詳細に記載されていないこれらの反応の変形もまた使用することができる。本発明による化合物を調製するための一般的な工程は、後に続くスキームを研究する当業者にとって明らかになるであろう。出発化合物は、市販されているか、又は文献もしくは本明細書に記載されている方法によって調製されてもよく、又は類似のもしくは同様の方式で調製されてもよい。反応を行う前に、出発化合物中の対応する官能基は、通常の保護基を使用して保護してもよい。これらの保護基は、当業者によく知られた方法、及び文献に記載された方法、たとえば“Protecting Groups”, 3rd Edition, Philip J. Kocienski, Thieme, 2005中の方法及び“Protective Groups in Organic Synthesis”, 4th Edition, Peter G. M. Wuts, Theodora W. Greene, John Wiley & Sons, 2006中の方法を用いて、反応順序内の適切な段階で再度切断することができる。用語「周囲温度」及び「室温」は互いに交換可能に用いられ、約20℃、たとえば19~24℃の温度を指定する。
【0066】
略語:
【表10】
【0067】
出発化合物の調製
中間体I
中間体I.1(一般経路)
(3S)-3-(4-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロパンニトリル
【化23】
10.0g(55.7mmol)の4-クロロベンゾイルアセトニトリルを不活性雰囲気下、100mLのACNに添加する。142mg(0.23mmol)のクロロ([(1S,2S)-(-)-2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル](4-トルエンスルホニル)アミド)(メシチレン)ルテニウム(II)(CAS 174813-81-1)を添加後、8.30mL(19.8mmol)のギ酸トリエチルアミン複合体(5:2)を滴下する。RTで3時間撹拌した後、溶媒を真空で除去する。残りの粗混合物に水を添加し、この混合物をEtOAcで2回抽出する。有機層を合わせ、MgSO4で乾燥させ、溶媒を真空で除去する。
98ClNO(M=181.6g/mol)
ESI-MS:226[M+HCOO]-
t(HPLC):0.81分(方法B)
【0068】
以下の化合物は、前述の一般的な手順(中間体I.1)に従って調製する。
【表11】
【0069】
中間体II
中間体II.1(一般経路)
(3S)-3-(4-クロロフェニル)-N,3-ジヒドロキシプロパンイミドアミド
【化24】
9.82g(54.1mmol)の(3S)-3-(4-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロパンニトリル(中間体I.1)と8.00mL(136mmol)のヒドロキシルアミン(水中50%)との混合物を100mLのMeOHに添加し、75℃で1.5時間撹拌する。RTまで冷却した後、すべての揮発分を真空で除去して粗生成物を得て、これをさらに精製せずに使用する。
911ClN22(M=214.6g/mol)
ESI-MS:215[M+H]+
t(HPLC):0.60分(方法B)
【0070】
以下の化合物は、前述の一般的な手順(中間体II.1)に従って調製する。
【表12】
【0071】
中間体III
中間体III.1(一般経路)
(1S)-2-[5-(クロロメチル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-1-(4-クロロフェニル)エタン-1-オール
【化25】
55mLのNMP中の11.2g(52.4mmol)中間体IIに10.0mL(57.8mmol)DIPEAを添加する。混合物を0℃まで冷却した後、5mLのNMPに溶解した4.60mL(57.7mmol)の塩化クロロアセチルをゆっくりと添加し、混合物を一定温度で45分間撹拌する。その後、混合物を95℃まで加熱し、4時間撹拌を続ける。RTまで冷却後、200mLの水を添加し、得られた混合物をEtOAcで3回抽出する。有機層を合わせ、MgSO4で乾燥させ、濾過し、溶媒を真空で除去する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;PE/EtOAc、7/3)により精製する。
1110l222(M=273.1g/mol)
ESI-MS:271[M-H]-
t(HPLC):0.93分(方法B)
【0072】
以下の化合物は、前述の一般的な手順(中間体III.1)に従って調製する。
【表13】
【0073】
中間体IV
中間体IV.1(一般経路)
N,5-ジメチル-4-オキソ-3H,4H-チエノ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
【化26】
30mLのTHF中の5-メチル-4-オキソ-3H,4H-チエノ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボン酸0.25g(1.19mmol)に、331μL(2.38mmol)TEA及び429mg(1.19mmol)TBTUを添加する。混合物をRTで30分間撹拌した後、654μL(1.31mmol)のメチルアミン溶液(TFA中c=2mol/L)を添加する。周囲温度で16時間撹拌を継続する。溶媒を真空で除去した後、水及びDCMを添加する。有機層を分離し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を真空で除去する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;DCM/MeOH/NH3 90/10/1)により精製する。
9932S(M=223.3g/mol)
ESI-MS:224[M+H]+
t(HPLC):0.62分(方法C)
【0074】
以下の化合物は、前述の一般的な手順(実施例IV.1)に従って調製する。
【表14】
【0075】
中間体V
3-(2,2-ジフルオロ-2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-3-オキソプロパンニトリル
【化27】
5mLのTHF中の0.63mL(12.0mmol)のアセトニトリルに、18.0mLのカリウム2-メチル-2-ブトキシド(conc:THF中2mol/L;36.1mmol)を添加し、得られた混合物を短時間撹拌する。次に、2.60g(12.0mmol)メチル2,2-ジフルオロ-2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキシレートを添加し、撹拌をRTで30分継続する。反応を、HCl水溶液(conc:1mol/Lの添加によりクエンチする。EtOAcを添加し、有機層を分離し、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させる。溶媒を真空で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;CyH/EtOAc75/25→57/43)で精製し、所望の生成物を得る。
1052NO3(M=225.2g/mol)
ESI-MS:224[M-H]-
t(HPLC):0.89分(方法B)
【0076】
中間体VI
tert-ブチル4,8-ジオキソ-5,6-ジヒドロ-3H-ピリド[2,3]チエノ[2,4-c]ピリミジン-7-カルボキシレート
【化28】
8.0mLのDCM中のtert-ブチル4-オキソ-3,5,6,8-テトラヒドロピリド[2,3]チエノ[2,4-c]ピリミジン-7-カルボキシレート500mg(1.63mmol)に86.0mg(0.325mmol)の18-クラウン-6及び514mg(3.25mmol)の過マンガン酸カリウムを添加する。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌する。その後、メタノール及び10%Na223水溶液を加えて反応混合物をクエンチする。沈殿した固体を濾過により除去し、濾液を濃縮する。残渣をメタノール及びDMFに溶解し、濾過し、分取HPLC(ACN/H2O/TFA勾配)で精製する。生成物を含有する画分を合わせ、アセトニトリルを減圧下で除去する。残りの生成物水溶液をDCMで抽出する(2回)。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、所望の生成物を得る。
141534S(M=321.3g/mol)
ESI-MS:322[M+H]+
t(HPLC):0.46分(方法A)
【0077】
中間体VII
3,5,6,7-テトラヒドロピリド[2,3]チエノ[2,4-c]ピリミジン-4,8-ジオン
【化29】
6mLのDCM中のtert-ブチル4,8-ジオキソ-5,6-ジヒドロ-3H-ピリド[2,3]チエノ[2,4-c]ピリミジン-7-カルボキシレート264mg(0.822mmol)に380μL(4.926mmol)トリフルオロ酢酸を添加する。得られた混合物を周囲温度で45分間撹拌する。すべての揮発分を真空で除去し、残渣を得られたものとして次のステップで使用する。
9732S(M=221.2g/mol)
ESI-MS:222[M+H]+
t(HPLC):0.22分(方法A)
【0078】
中間体VIII
中間体VIII.1(一般経路)
【化30】
25mLピリジン中の2-アミノ-4-クロロ-3-シアノ-5-ホルミルチオフェン(CAS:104366-23-6)5.00g(26.8mmol)に5.70mL(42.9mmol)のN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを添加する。混合物を100℃で3時間撹拌する。周囲温度まで冷却した後、混合物を減圧下で濃縮する。残渣をDCMに再懸濁し、水で洗浄する。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮して所望の生成物を得る。
98ClN3OS(M=241.7g/mol)
ESI-MS:242[M+H]+
t(HPLC):1.04分(方法B)
【0079】
中間体IX
中間体IX.1(一般経路)
【化31】
10mLギ酸中の1.00g(4.14mmol)の中間体IX.1に、678mg(8.27mmol)酢酸ナトリウムを添加する。反応混合物を還流で一晩撹拌する。周囲温度まで冷却した後、混合物を氷冷した水の上に注ぐ。その後、ジクロロメタンで希釈し、濃縮乾固させる。残渣をジクロロメタンに懸濁し、残存する塩を濾別する。濾液を濃縮し、所望の生成物を得る。
73ClN22S(M=214.6g/mol)
ESI-MS:213[M-H]-
t(HPLC):0.87分(方法B)
【0080】
中間体X
中間体X.1(一般経路)
【化32】
4.0mLのDMF中の150mg(699μmol)の中間体IX.1に、473mg(769μmol)ペルオキシモノ硫酸カリウムを添加する。反応混合物を周囲温度で18時間かけて添加する。それから混合物を分取HPLC(H2O/ACN/TFA)で精製し、所望の生成物を得る。
73ClN23S(M=230.6g/mol)
ESI-MS:229[M-H]-
t(HPLC):0.58分(方法C)
【0081】
中間体XI
中間体XI.1(一般経路)
【化33】
1.0mLのDMF中の45.0mg(0.195mmol)の実施例X.1に、81.7mg(0.215mmol)の1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート、74.8μL(0.429mmol)ジイソプロピルエチルアミン及び1.17mL(0.5M、0.585mmol)のTHF中アンモニア溶液を添加する。反応混合物を周囲温度で18時間撹拌する。それから反応混合物を分取HPLC(H2O/ACN/NH3)で精製し、所望の生成物を得る。
74ClN32S(M=229.6g/mol)
ESI-MS:230[M+H]+
t(HPLC):0.52分(方法C)
【0082】
最終化合物の調製
(実施例1)
実施例1(一般経路)
3-({3-[(2S)-2-(4-クロロフェニル)-2-ヒドロキシエチル]-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル}メチル)-5-メチル-4-オキソ-3H,4H-チエノ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミド
【化34】
2.00g(9.56mmol)の5-メチル-4-オキソ-3H,4H-チエノ[2,3-d]ピリミジン-6-カルボキサミドを20mLのDMAに添加した後、4.30g(31.1mmol)K2CO3が添加される。混合物をRTで20分間撹拌した後、5mLのDMA中の2.70g(9.89mmol)の実施例III.1を添加する。50℃で3時間撹拌を継続する。RTまで冷却後、混合物を濾過し、HPLC(0.3%TFAを含有するACN/H2O勾配)で精製して、所望の生成物を得る。
1916ClN54S(M=445.9g/mol)
ESI-MS:446[M+H]+
t(HPLC):0.82分(方法B)
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm:2.70(s,3H),2.92~3.05(m,2H),4.94(dt,J=7.60,5.30Hz,1H),5.52(s,2H),5.60(d,J=4.80Hz,1H),7.26~7.39(m,4H),7.69(br s,2H),8.63(s,1H).
【0083】
前述の一般的な手順(実施例1)に従い、以下の化合物を調製する。
【表15】


【0084】
上表に記載の最終化合物の分析データ:
【表16】

【0085】
分析用HPLC方法
方法A
【表17】
【0086】
方法B
【表18】

方法C
【表19】
【0087】
方法D
【表20】
【0088】
方法E
【表21】
【0089】
方法F
【表22】
【0090】
方法G
【表23】
【0091】
方法H
【表24】
【0092】
方法I
【表25】
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による化合物。
【化1】
(式中、
Aは、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニル、ナフチル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、もしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aは
【化2】
から選択され、
1はH、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、C1-4-アルキル-OH、もしくはC1-4-アルキル-CNから選択され、
2はC1-2-アルキルもしくはClから選択されるか、
又はR1及びR2はそれぞれCH2であり、結合を介して一緒になって6員環を形成する)
【請求項2】
Aが、H、F、Cl、Br、C1-4-アルキル、F1-3-フルオロ-C1-4-アルキル、CN、OCH3、シクロプロピル、及びシクロブチルからなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aが
【化3】
から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Aが、H、F、Cl、及びCH3からなる群の1又は2の基で置換されていてもよい、フェニルもしくはベンゾフラニルからなる群から選択されるか、
又は、Aが
【化4】
から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Aが
【化5】
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
1がH、CH3、CH2CHF2又はCH2C(CH32OHからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
2がCH3又はClである、請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
【化6】
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物の(S)-エナンチオマー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物の塩。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の少なくとも1種、又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項11】
さらに、1又は複数の医薬的に許容される賦形剤を含む請求項10に記載の医薬組成物
【請求項12】
炎症性気道疾患又は線維性疾患又は咳嗽の治療又は予防のための、請求項10又は11に記載の医薬組成物
【請求項13】
特発性肺疾患(IPF)又は咳嗽の治療又は予防のための、請求項10~12のいずれか1項に記載の医薬組成物
【国際調査報告】