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▶ ベストランデツ イノバシオンセルスカップ アーエスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】白血病の治療または予防
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/136 20060101AFI20221206BHJP
   C07C 217/84 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 205/37 20060101ALI20221206BHJP
   C07C 233/25 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20221206BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K31/136
C07C217/84
C07C205/37
C07C233/25
A61P35/02
A61K31/09
C07D209/88
A61K31/403
A61K31/167
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522256
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 GB2020052572
(87)【国際公開番号】W WO2021074614
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】1914848.5
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519326448
【氏名又は名称】ベストランデツ イノバシオンセルスカップ アーエス
【氏名又は名称原語表記】Vestlandets Innovasjonsselskap AS
【住所又は居所原語表記】Thormohlens gate 51, 5006 Bergen, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ビョルスヴィク ハンス レニ
(72)【発明者】
【氏名】イェルツェン ビョルン トーレ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC12
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB27
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206EA03
4C206FA31
4C206GA02
4C206GA31
4C206KA01
4C206KA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB27
4H006AA01
4H006AB20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BP30
4H006BT16
4H006BU46
(57)【要約】
本発明は、2-アミノ-[1,1’]-ビフェニルまたは対応するカルバゾール足場に基づく、白血病の治療または予防に使用するための化合物、特に、以下の式(I)の化合物、それらの立体異性体、およびそのような治療に使用するためのその薬学的に許容される塩を提供し、(I)(I)式中、Yは、C=0および-CR(式中、Rは、H、-OHまたは-O-アルキル(例えば、-O-1-6アルキル)である)から選択され、Zは、C=0および-CR10(式中、R10は、H、-OH、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)または-OC(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)から選択され、Rは、-NOまたは-NR1112(式中、R11およびR12は、両方ともHであるか、またはR11は、Hであり、R12は、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基である)であり、R、R、およびR~R8の各々は独立して、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択され、RおよびRは独立して、H、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択されるか、またはRおよびRは一緒に、NR13基(式中、R13は、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)である)、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、G1-6アルキル)である)の基を形成し、 は、環内の2つの隣接する炭素原子間の任意選択の結合を表すが、ただし、YおよびZが両方ともC=Oであり、かつRおよびRが一緒にNR13基を形成する場合、RおよびRのうちの少なくとも一方は、Hまたは-CH以外である。このような化合物は、慢性骨髄性白血病(GML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、またはt-ALL(T細胞急性リンパ芽球性白血病)の治療または予防に特定の使用を見出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血病の治療または予防に使用するための式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩であって、
【化1】
式中、Yは、C=Oおよび-CR(式中、Rは、H、-OHまたは-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)である)から選択され、
Zは、C=Oおよび-CR10(式中、R10は、H、-OH、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、または-O-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)から選択され、
は、-NOまたは-NR1112(式中、R11およびR12は、両方ともHであるか、またはR11は、Hであり、R12は、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基である)であり、
、R、およびR~Rの各々は独立して、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択され、
およびRは独立して、H、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択されるか、またはRおよびRは一緒に、NR13基(式中、R13は、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基を形成し、
【化2】
は、環内の2つの隣接する炭素原子間の任意選択の結合を表すが、
ただし、YおよびZが両方ともC=Oであり、かつRおよびRが一緒にNR13基を形成する場合、RおよびRのうちの少なくとも一方は、Hまたは-CH以外である、化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、式(Ia)のものであり、
【化3】
式中、R~R10は、請求項1に定義されるとおりである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
が、-O-C1-6アルキル、好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-O-CHである、請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
10が、-OHおよび-O-C(O)R(式中、Rは、HまたはC1-6アルキル、好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物が、式(Ib)のものであり、
【化4】
式中、R~Rは、請求項1に定義されるとおりであるが、ただし、RおよびRが一緒にNR13基を形成する場合、RおよびRのうちの少なくとも一方は、Hまたは-CH以外である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、式(Ia’)のものであり、
【化5】
式中、R~R12の各々は、請求項1、3および4のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
11およびR12が、両方ともHである、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
11が、Hであり、R12が、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)の基である、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
が、Hである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記化合物が、式(Ia)のものであり、
【化6】
式中、R~R、R、R10およびR13の各々は、請求項1、3および4のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
13が、H、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)の基である、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
が、アルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
が、-O-アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキル、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-OCHである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
、RおよびRが、各々Hである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
が、Hまたは-O-アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキル、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-O-CHである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
以下の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【化7-1】
【化7-2】
【請求項17】
白血病、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)またはt-ALL(T細胞急性リンパ芽球性白血病)の治療または予防に使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
治療に使用するため、または薬剤として使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と一緒に含む、薬学的組成物。
【請求項20】
白血病の治療または予防に使用するための薬剤の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩の使用。
【請求項21】
白血病の治療または予防の方法であって、その治療または予防を必要とする対象(例えば、ヒト患者)に、薬学的に有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血病の治療に関する。特に、本発明は、そのような治療における、2-アミノ-[1,1’]-ビフェニルまたは対応するカルバゾール足場に基づく化合物、およびそれらの誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病は、通常骨髄で始まり、多数の異常な血球をもたらす血液がんのグループである。白血病には主に4つのタイプがある:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ならびにいくつかのあまり一般的ではないタイプがある。白血病の現在の治療には、化学療法、放射線療法、標的療法、および骨髄移植の組み合わせが含まれ得る。2015年には、白血病は230万人にみられ、35万人以上の死者がでた。これは小児の最も一般的なタイプのがんであり、小児の白血病症例のほとんどはALLタイプである。成人では、AMLおよびCLLが最も一般的な型である。白血病、特にAMLの治療のための他の治療法が継続的に必要とされている。
【0003】
カルバゾマイシンA~H(スキーム1)として知られている様々なカルバゾールアルカロイドが発見され、単離され、それらの構造が解明されている。これらは、抗菌性、抗真菌性、および抗がん性を含む様々な生物活性を有する(例えば、Sakano et al.,J.Antibiot.1980,33,683-389;Kaneda et al.,J.Antibiot.1988,41,602-608、およびNishiyama et al.,Eur.J.Med.Chem.2016,121,561-577を参照されたい)。
【化1】
【0004】
一連のカルバゾールアルカロイドも単離され、それらの細胞毒性特性について調査された。これには、新しい抗白血病化合物の探索のモデルとして使用されるHL60細胞株での試験が含まれている(Itoigawa et al.,J.Nat.Prod.2000、63(7),893-897;Ito et al.,Phytomedicine 2006,13,359-365、およびIto et al.,J.Nat.Med.2012 66 357-361を参照されたい)。試験した化合物の中には、ムラヤホリンAおよびムラヤキノンAがある。
【化2】
【0005】
カルバゾマイシン(A~H)は、カルバゾール足場の不可欠な部分を構成する2つの芳香環のうちの1つが非置換または一置換であり、もう一方の芳香環がすべての可能な位置で置換されるという独特の置換パターンを持っている。カルバゾマイシンの分子構造、それらの生物活性の範囲、およびそれらの独特の置換カルバゾール足場は、これらを合成化学者にとって魅力的な分子モチーフにし、多くの全合成の開発をもたらした。本発明者らによって開発されたそのような戦略の1つは、2つの異なるPd触媒反応に基づいている。鈴木クロスカップリングを行って、還元および保護された2-ニトロ-1,1’-ビフェニル中間体を取得する。次に、これを付随する分子内C-H活性化に続いて、密集したカルバゾール中間体を生成するC-N結合形成にかける。カルバゾールアルカロイドであるカルバゾマイシンGへのこの12ステップの全合成は、Eur.J.Org.Chem.,2018,1984-1992に記載されている。
【0006】
本発明者らは、今やこの12ステップの全合成で生成された中間体の2-アミノ-[1,1’]-ビフェニルおよびカルバゾール化合物が細胞毒性効果を有することを見出している。急性骨髄性白血病(AML)のモデルであるヒト細胞株HL60およびMOLM-13を含むインビトロ試験を使用して調査すると、これらは細胞毒性があり、場合によっては、IC50値が10-4M未満であることがわかった。同じ2つの細胞株で試験した場合、最終的な天然の産物であるカルバゾマイシンGは細胞毒性を示さないことがわかったため、この調査結果は驚くべきものである。
【0007】
したがって、本発明者らは、カルバゾマイシンGの合成において生成されるこれらの中間化合物が、白血病、特にAMLの治療および/または予防に使用できることを提案する。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、本発明は、白血病の治療または予防に使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩に関し、
【化3】
式中、
Yは、C=Oおよび-CR(式中、Rは、H、-OHまたは-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)である)から選択され、
Zは、C=Oおよび-CR10(式中、R10は、H、-OH、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)または-O-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)から選択され、
は、-NOまたは-NR1112(式中、R11およびR12は、両方ともHであるか、またはR11は、Hであり、R12は、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基である)であり、
、R、およびR~Rの各々は独立して、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択され、
およびRは独立して、H、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択されるか、またはRおよびRは一緒に、NR13基(式中、R13は、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基を形成し、
【化4】
は、環内の2つの隣接する炭素原子間の任意選択の結合を表すが、
ただし、YおよびZが両方ともC=Oであり、かつRおよびRが一緒にNR13基を形成する場合、RおよびRのうちの少なくとも一方は、Hまたは-CH以外である。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、治療に使用するための、または薬剤として使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と一緒に含む、薬学的組成物に関する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、白血病の治療または予防に使用するための薬剤の製造における、式(I)の化合物、立体異性体、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、白血病を治療または予防する方法に関し、前述の方法は、白血病を治療または予防することを必要とする対象(例えば、ヒト患者)に、薬学的に有効量の式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】白血病細胞株HL60およびMOLM-13における化合物の試験結果を示している。細胞株HL60およびMOLM-13を様々な化合物で24時間処理した。細胞生存アッセイWST-1を使用して、細胞毒性効果を決定し、用量反応曲線およびIC50値を生成した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、飽和炭化水素基を指し、直鎖状および分枝状アルキル基の両方を網羅することが意図される。そのような基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチル、n-ヘキシル、2-メチルブチル、2-メチルペンチル、2-エチルブチル、3-メチルペンチル、および4-メチルペンチルが含まれる。アルキル基は、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子、例えば、1~3個の炭素原子を含有する。特に明記しない限り、任意のアルキル基を、1つ以上の位置で好適な置換基で置換することができる。2つ以上の置換基が存在する場合、これらは同じであっても異なっていてもよい。好適な置換基には、ヒドロキシ、-O-C1-3アルキル、およびハロゲン原子が含まれる。
【0015】
本明細書で使用される「ハロゲン」または「ハロゲン原子」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを指す。
【0016】
本明細書に記載の化合物は、1つ以上の立体中心を含んでもよく、したがって、異なる立体異性体型で存在し得る。「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、原子または基の立体配置に関して異なる化合物を指す。立体異性体の例は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体がある。「鏡像異性体」という用語は、互いに重ね合わせ不可能な鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。「ジアステレオ異性体」という用語は、互いの鏡像ではない2つ以上の立体中心を有する立体異性体を指す。本発明は、ジアステレオ異性体および鏡像異性体、ならびに鏡像異性体の比が1:1以外であるラセミ混合物および鏡像異性体が豊富な混合物にまで及ぶと考えられる。
【0017】
本明細書に記載の化合物は、それらの鏡像異性体および/またはジアステレオ異性体に分解され得る。例えば、これらが1つのキラル中心のみを含有する場合、これらは、ラセミ化合物もしくはラセミ混合物(50:50の鏡像異性体混合物)の形態で提供され得るか、または純粋な鏡像異性体として、すなわち、R形またはS形で提供され得る。ラセミ化合物として生じる化合物のいずれかは、キラル相上でのカラム分離などの当該技術分野で既知の方法によって、または光学的に活性な溶媒からの再結晶化によって、それらの鏡像異性体に分離され得る。少なくとも2つの非対称炭素原子を有するこれらの化合物は、それ自体既知の方法、例えば、クロマトグラフィーおよび/または分画結晶化によって、それらの物理化学的差異に基づいてそれらのジアステレオ異性体に分解され得、これらの化合物がラセミ形態で得られる場合、それらはその後、それらの鏡像異性体に分解され得る。
【0018】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書に記載の化合物のいずれかの任意の薬学的に許容される有機塩または無機塩を指す。薬学的に許容される塩は、対イオン等の1つ以上の追加の分子を含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機基であり得る。化合物が塩基である場合、遊離塩基を有機酸または無機酸と反応させることにより、好適な薬学的に許容される塩を調製することができる。化合物が酸である場合、遊離酸を有機塩基または無機塩基と反応させることにより、好適な薬学的に許容される塩を調製することができる。好適な塩の非限定的な例が、本明細書に記載される。
【0019】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物が、製剤の他の成分または治療される患者と化学的および/または毒物学的に適合性があることを意味する。
【0020】
「薬学的組成物」とは、医療目的で使用するのに適した任意の形態の組成物を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「治療」は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、非ヒト哺乳動物)に利益をもたらし得る任意の治療用途を含む。ヒトおよび動物の両方の治療が本発明の範囲内であるが、主に本発明はヒトの治療を目的としている。治療は、治療前の症状と比較して、治療されている状態の1つ以上の症状の、好ましくは正常レベルへの低減、軽減、または除去を指すことを意図している。明示的に述べられていない限り、治療には予防が包含される。本明細書で使用される場合、「予防」とは、絶対的な予防、すなわち、状態の特定の症状の程度または出現に関する正常レベルの維持、またはその症状の発症の程度またはタイミング(例えば、遅延)の低減または軽減を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「薬学的に有効量」とは、所望の薬理学的および/または治療効果につながる量、すなわち、その意図される目的を達成するのに有効な薬剤の量に関する。個々の対象(例えば、患者)のニーズは変化し得るが、本明細書に記載の有効量の活性剤の最適範囲の決定は、当業者の能力の範囲内である。一般に、本明細書に記載の化合物のいずれかを用いて疾患、状態または障害を治療するための投与計画は、状態の性質およびその重症度を含む様々な要因に従って当業者によって選択され得る。
【0023】
「対象」という用語は、投与または治療の標的である任意の個人を指す。対象は、例えば、哺乳動物であり得る。したがって、対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。「患者」という用語は、臨床医の治療を受けている対象を指す。好ましくは、対象はヒトである。
【0024】
一態様において、本発明は、白血病の治療または予防に使用するための、式(I)の化合物、その立体異性体、または薬学的に許容される塩を提供し、
【化5】
式中、
Yは、C=Oおよび-CR(式中、Rは、H、-OHまたは-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)である)から選択され、
Zは、C=Oおよび-CR10(式中、R10は、H、-OH、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)または-O-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)から選択され、
は、-NOまたは-NR1112(式中、R11およびR12は、両方ともHであるか、またはR11は、Hであり、R12は、式-C(O)R(式中、Rは、H、またはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基である)であり、
、R、およびR~Rの各々は独立して、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択され、
およびRは独立して、H、-O-アルキル(例えば、-O-C1-6アルキル)、およびハロゲンから選択されるか、
またはRおよびRは一緒に、NR13基(式中、R13は、H、アルキル(例えば、C1-6アルキル)、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)である)の基を形成し、
【化6】
は、環内の2つの隣接する炭素原子間の任意選択の結合を表すが、
ただし、YおよびZが両方ともC=Oであり、かつRおよびRが一緒にNR13基を形成する場合、RおよびRのうちの少なくとも一方は、Hまたは-CH以外である。
【0025】
式(I)の一実施形態において、Yは-CRであり、式中、Rは、本明細書で定義されるとおりである。特定の実施形態において、Rは、-O-アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキルであり、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、メチルである。
【0026】
式(I)の一実施形態において、Zは、-CR10であり、式中、R10は、本明細書で定義されるとおりである。特定の実施形態において、R10は、-OHまたは-O-C(O)Rであり、式中、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C1-6アルキル)、好ましくは、C1-3アルキル、例えば、メチルである。好ましい実施形態において、Zは、-C-OHである。
【0027】
特定の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、ビフェニル足場または対応するカルバゾールに基づく。そのような化合物は、式(I)の化合物であり、式中、Yは、-CR基であり、Zは、-CR10基である。したがって、一態様において、本発明で使用するための化合物は、式(Ia)の化合物、それらの立体異性体、およびその薬学的に許容される塩であり、
【化7】
式中、R~R10は、本明細書で定義されるとおりである。
【0028】
式(Ia)の一実施形態において、Rは、-O-アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキル、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-O-CHである。
【0029】
式(Ia)の一実施形態において、R10は、-OHおよび-O-C(O)Rから選択され、ここで、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1~6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである。好ましくは、R10はOHである。
【0030】
特定の実施形態において、本発明で使用するための化合物の環のうちの1つはキノンである。そのような化合物は、YおよびZの両方がC=Oである式(I)のものである。したがって、一態様において、本発明で使用するための化合物は、式(Ib)の化合物、それらの立体異性体、およびその薬学的に許容される塩であり、
【化8】
式中、R~Rは、RおよびRが一緒にNR13基を形成し、RおよびRのうちの少なくとも一方がHまたは-CH以外であるというただし書きに従って、本明細書で定義されるとおりである。
【0031】
特定の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、式(I)、(Ia)または(Ib)の化合物であり、式中、Rは、-NR1112(式中、R11およびR12は、両方ともHであるか、またはR11は、Hであり、R12は、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)の基である)である。一実施形態において、Rは、-NHである。このような化合物には、式(Ia’)の化合物が含まれ、
【化9】
式中、R~R12の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0032】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、Rは、Hである。
【0033】
他の実施形態において、本発明で使用するための化合物は、RおよびRが一緒にNR13基を形成する化合物である(式中、R13は、本明細書で定義されるとおりであり、好ましくは、R13は、Hであるか、または式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)の基である。このような化合物には、式(Ia’’)の化合物が含まれ、
【化10】
式中、R~R、R、R10およびR13の各々は、本明細書で定義されるとおりである。
【0034】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、R13は、Hである。他の実施形態において、R13は、式-C(O)R(式中、Rは、Hまたはアルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである)の基である。
【0035】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、Rは、アルキル、好ましくはC1-6アルキル、より好ましくはC1-3アルキル、例えば、メチルである。
【0036】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、Rは、-O-C1-6アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキル、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-OCHである。
【0037】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、R、RおよびRは、各々Hである。
【0038】
本明細書に記載の化合物のいずれかの特定の実施形態において、Rは、Hまたは-O-アルキル、好ましくは-O-C1-6アルキル、より好ましくは-O-C1-3アルキル、例えば、-O-CHである。
【0039】
本発明に従って使用するための化合物の例には、以下のおよびそれらの薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【化11】
【0040】
本発明で使用するための化合物は、当技術分野で知られているか、または容易に入手可能な出発物質を使用して当業者に知られている方法によって調製することができる。当技術分野で知られていない化合物のいずれも、既知の教科書、例えば、Advanced Organic Chemistry(March,Wiley Interscience,5th Ed.2001)またはAdvanced Organic Chemistry(Carey and Sundberg,KA/PP、4th Ed.2001)に記載の知られている合成方法を使用して、容易に入手可能な出発物質から調製することができる。当技術分野で知られていない任意の化合物は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0041】
以下のスキームは、本明細書に記載の化合物を調製するための一般的な方法を示している。この方法に関する詳細は、Elumalai et al.,Eur.J.Org.Chem.2018、1984-1992に説明されており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。出発物質として使用される化合物は、文献から知られているか、または市販されている可能性がある。理解されるように、他の合成経路を使用して、異なる出発物質、異なる試薬、および/または異なる反応条件を使用して化合物を調製することができる。
【化12】
式中、R~R、RおよびR10は、本明細書で定義されるとおりである。
Xは、これらに限定されないが、好適な保護基、アセチル(Ac)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルロネイルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、トシル(Ts)、クロロギ酸トリクロロエチル(Troc)、パラ-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、パラ-メトキシフェニル(PMP)、および(o-またはp-ニトロベンゼンスルホニル(Nosyl)を表し、
「hal」はハロゲン原子、例えば、Cl、BrまたはIである。
【0042】
このスキームでは、ボロン酸とハロゲン化アリールの出発物質との間で鈴木反応が行われ、二環式生成物が得られる。次に、ニトロ芳香族化合物は、還元されてアミノ基を形成し、これは標準的な保護基(例えば、Ac)で保護することができる。次に、閉環工程を行って、カルバゾール系を得る。次に、保護基を除去することができる。酸化ステップを行って、カルバゾールキノンを形成し、続いて位置選択的メチル化を行いる。あるいは、分子内C-H活性化およびC-N結合形成を介して直接環化を行うことができる。
【0043】
本発明で使用するために本明細書に記載の化合物のいずれも、その塩、特に無機もしくは有機の酸または塩基を有するその薬学的に許容される塩に変換することができる。この目的に使用できる酸には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびアスコルビン酸が含まれる。この目的のために好適であり得る塩基としては、アルカリおよびアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化セシウム、アンモニア、ならびにジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、およびジシクロヘキシルアミンなどの有機アミンが挙げられる。塩形成のための手順は、当該技術分野の従来のものである。
【0044】
本明細書に記載の化合物は、対象または患者における白血病の治療または予防、特に慢性骨髄性白血病(CIVIL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)およびt-ALL(T細胞急性リンパ芽球性白血病)の治療または予防に使用を見出す。例えば、それらは成人急性リンパ性白血病またはフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(「Ph+ALL」)の治療に使用され得る。本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物を包含する。哺乳動物対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモットなど)、ウマ、ウシ、ヒツジ、およびブタが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、対象はヒトである。
【0045】
一実施形態において、本明細書に記載の化合物は、白血病細胞の増殖、分化および/または生存を予防および/または遅延させるため、または白血病細胞の転移を予防および/または遅延させるために好適である。本明細書で使用される場合、「増殖」という用語は、有糸分裂中の細胞を指す。「増殖を遅延させる」という用語は、化合物が白血病細胞の増殖を阻害することを示す。好ましい実施形態において、「増殖を遅延させる」とは、DNA複製が未処理細胞で観察されたものよりも少なくとも10%少ない、より好ましくは少なくとも25%少ない、さらにより好ましくは少なくとも50%少ない、例えば、75%、90%または95%であることを示す。
【0046】
一態様において、本発明は、対象(例えば、ヒト患者)における白血病を予防または治療する方法に関する。この方法は、白血病を有するかまたは白血病を発症するリスクのある対象を選択し、白血病を予防または治療するのに有効な条件下で、選択された対象に本明細書に記載の化合物を投与することを含む。一実施形態において、対象は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、または急性リンパ性白血病(ALL)を発症するか、または発症するリスクを有する。
【0047】
一実施形態において、本明細書に記載の化合物は、白血病の前悪性前駆体が存在し得る状態などの前悪性状態の治療に使用することができる。そのような状態には、例えば、AMLの前悪性前駆体である骨髄異形成症候群が含まれる。
【0048】
一実施形態において、本発明による治療に適した対象は、白血病を有し、従来のがん治療に対する耐性を発達させた対象である。
【0049】
本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて単独で投与され得る。あるいは、これらの化合物は、放射線療法および造血幹細胞移植を含むがこれらに限定されない他の既知のがん治療と組み合わせて、例えば、白血病患者における幹細胞移植療法に続く地固め療法において投与され得る。
【0050】
治療的または予防的治療で使用するために、本明細書に記載の化合物は、通常は、薬学的製剤として製剤化されるであろう。したがって、さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の式(I)の化合物を、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と一緒に含む、薬学的組成物を提供する。治療的使用のための許容される担体、賦形剤および希釈剤は、当技術分野で周知であり、意図される投与経路および標準的な薬務に関して選択することができる。例としては、結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、界面活性剤、甘味料、着色剤、香味剤、抗酸化剤、臭気剤、緩衝剤、安定剤および/または塩が挙げられる。
【0051】
本発明で使用するための化合物は、当技術分野で周知の技術に従って、1つ以上の従来の担体および/または賦形剤とともに製剤化され得る。通常は、組成物は、例えば、皮内、皮下、腹腔内、または静脈内注射による経口または非経口投与に適合されるであろう。例えば、これらは、従来の経口投与形態、例えば、錠剤、コーティング錠、カプレット剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、分散剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤などで、従来の賦形剤、例えば、溶媒、希釈剤、結合剤、甘味料、芳香剤、pH調整剤、粘度調整剤、抗酸化剤などを使用して製剤化し得る。好適な賦形剤は、当業者によって容易に決定することができる。製剤は、溶解および/または混合手順などの従来の技術を使用して調製することができる。
【0052】
非経口投与が使用される場合、これは、例えば、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射によるものであり得る。この目的のために、水中油型乳剤などの活性剤を含有する滅菌溶液を使用することができる。水が存在する場合は、適切な緩衝系を追加して、保存条件下でのpHドリフトを防止することができる。
【0053】
本明細書に記載の化合物の所望の活性を達成するために必要な投与量は、選択される化合物、その投与方法および頻度、治療が治療的または予防的であるかどうか、ならびに疾患または状態の性質および重症度などの様々な要因に依存する。通常は、医師は、個々の対象に最も適した実際の投与量を決定する。特定の患者の特定の用量レベルおよび投与頻度は、変化することがあり、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、患者の年齢、投与方法および投与時間、および特定の状態の重症度などの要因に依存する。化合物および/または薬学的組成物は、1日1回または2回など、1日1回~10回の投与計画に従って投与することができる。ヒト患者への経口および非経口投与の場合、薬剤の1日投与量レベルは、単回投与または分割投与であり得る。
【0054】
本明細書に記載の化合物の好適な1日投与量は、当業者によって容易に決定され得るが、0.1mg~1gの化合物、1mg~500mgの化合物、1mg~300mgの化合物。5mg~100mgの化合物、または10mg~50mgの化合物の範囲であると予想される。「1日投与量」とは、24時間当たりの投与量を意味する。
【実施例
【0055】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例において、および添付の図を参照して、より詳細に説明する。図1は白血病細胞株HL60およびMOLM-13における化合物の試験結果を示している。細胞株HL60およびMOLM-13を様々な化合物で24時間処理した。細胞生存アッセイWST-1を使用して、細胞毒性効果を決定し、用量反応曲線およびIC50値を生成した。
【0056】
実験の詳細
すべての試薬および溶媒は商業的供給元から購入し、受け取ったままの状態で使用した。融点をオープンキャピラリーで決定した。試薬グレードの化学物質を商業的供給源から購入し、さらに精製することなく使用した。すべての反応混合物およびカラム溶離液をTLC(TLCプレートMerck Kieselgel 60 F254)を使用してモニターした。TLCプレートを、λ=254nmおよびλ=365nmのUV光の下で観察した。IRスペクトルは、Shimadzu FTIR-8300分光光度計でKBrディスクとして記録し、Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker instruments AC-200F、DMX400WB、DPX400、AV500、およびBiospin 850SBで記録した。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Q-TOF Micro YA263機器を使用して行った。
【0057】
一般的な方法
GC分析は、フューズドシリカカラム(I25m、内径0.20mm、膜厚0.33mm)を備えたキャピラリーガスクロマトグラフを使用して、ヘリウム圧力200kPa、スプリットレス/スプリットインジェクターおよび水素炎イオン化検出器を使用して行った。質量スペクトルは、フューズドシリカカラム(I30m、内径0.25mm、膜厚0.25mm)およびキャリアガスとしてのヘリウムを備えたガスクロマトグラフを備えたGCMS装置で取得した。DART質量スペクトルは、TOF質量分析計を使用した陽イオン化モードで内部標準としてPEGを使用して取得した。Hおよび13C NMRスペクトルは、周囲温度で、それぞれ400、500、および850MHzと100、125、212.5MHzの周波数で記録した。化学シフトは、外部参照としてテトラメチルシランを使用し、プロトンの残留CDCl(δ=7.26ppm)、炭素のCDCl(δ=77.0ppm)、プロトンのDMSO-d(δ=2.50ppm)、および炭素のDMSO-d(δ=39.51ppm)に対するppmで報告されている。フラッシュクロマトグラフィーは、示した溶媒系およびシリカゲル(230~400メッシュ)を使用して行った。使用したすべての試薬は、Aldrich Chemical Co.から市販されていた。マイクロ波支援実験は、40~250℃の温度範囲で、2.45GHz、0~400W、0~20バール(2MPa、290psi)の圧力範囲、および0.2~20mLのリアクターバイアル容量で動作するBiotage Initiator Sixty EXPマイクロ波システムを使用して行った。
【0058】
実施例1-化合物の合成
【化13】
2,4-ジメトキシ-3-メチルフェノールの調製(2)
アセトニトリル(25mL)中の2,6-ジメトキシトルエン1(3g、19.7mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(1.3mL、19.7mmol)および過酸化水素(35%、3.5mL、39.4mmol)を加えた。反応混合物を75℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、溶媒アセトニトリルを減圧下で除去した。粗混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAc(2×40mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させた。表題化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[(EtOAc:Hx、20:80)]によりオレンジ色の液体(2.85g、85%)として単離した。
=0.49[(EtOAc:Hx、20:80)]。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=6.67(d、J=9Hz、1H)、6.46(d、J=9Hz、1H)、5.10(s、br、1H)、3.69(s、6H)、2.09(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCl,):δ=151.9、145.9、142.8、120.1、111.8、106.9、60.9、56.1、9.3;MS(El):m/z(%);168(100、M)、153(61)、125(49)、107(23)、93(9)、79(11)、65(21)、53(12);IR(cm-1):3406、2996、2940、2834、1486、1259、1098、730。
【0059】
2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニルアセテートの調製(3)
CHCl(15mL)中の2,4-ジメトキシ-3-メチルフェノール2(1.5g、8.9mmol)の溶液に、塩化アセチル(1.3mL、17.8mmol)を加えた。反応混合物を還流下で2時間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で除去して、表題化合物を暗オレンジ色の液体として得た(1.75g、94%)。
=0.78[(EtOAc:Hx、40:60)]。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=6.86(d、J=8.5Hz、1H)、6.60(d、J=8.5Hz、1H)、3.80(s、3H)、3.75(s、3H)、2.32(s、3H)、2.17(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCl):δ=169.7、156.4、150.5、137.6、121.2、119.7、105.6、60.8、55.7、20.7、9.2;MS(El):m/z(%):210(9、M)、168(100)、153(53)、139(4)、125(19)、107(12)、79(6)、65(8)、53(7);IR(cm-1):2940、2838、1759、1484、1199、1106、728。
【0060】
2,4-ジメトキシ-3-メチル-5-ニトロフェニルアセテートの調製(4)
2,4-ジメトキシ-3-メチルフェニルアセテート3(1.6g、7.6mmol)をACOH/ACO(1:3比、12mL)の溶液に0-5°Cで溶解した。ACOH/ACO(1:3比、12mL)中のHNO(65%、1.0mL、14.5mmol)の溶液を、0~5℃で激しく撹拌しながら反応混合物に滴下して加えた。添加が完了したら、反応混合物を周囲温度で30分間撹拌した。反応混合物を水(100mL)に注ぎ、CHCl(3×30mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaHCO(2×50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、表題化合物を黄色の液体として得た(1.49g、77%)。
=0.70[(EtOAc:Hx、40:60)]。
H-NMR(500MHz、CDCIs):δ=7.54(s、1H)、3.87(s、3H)、3.83(s、3H)、2.33(s、3H)、2.26(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCI):δ=168.7、155.2、151.3、139.1、138.8、129、118、62.1、60.9、20.6、10;MS(El):m/z(%):255(4、M)、213(100)、166(26)、152(8)、137(8)、123(11)、107(10)、77(14)、53(14);IR(cm-1):2946、1770、1522、1343、1187、988、729。
【0061】
2,4-ジメトキシ-3-メチル-5-ニトロフェノールの調製(5)
MeOH(25mL)中の濃HCl(12mL)の溶液を、0℃で2,4-ジメトキシ-3-メチル-5-ニトロフェニルアセテート4(1.5g、5.9mmol)に滴下して加えた。反応混合物を還流下で、70℃で1時間撹拌した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を水(40mL)で希釈し、EtOAc(2×40mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させて、Criphol5をオレンジ色の固体(1.25g、99%)として得た。
=0.34[(EtOAc:Hx、20:80)];mp53~55℃。
H NMR(500MHz、CDCI):δ=7.26(s、1H)、3.78(s、6H)、2.21(s、3H)。
13CNMR(125MHz、CDCI):δ=150.2、146.3、145.1、140.0、127.5、109.4、62.1、61.0、10;MS(El):m/z(%):213(100、M)、166(59)、152(21)、137(36)、125(43)、122(28)、91(23)、83(40)、77(32)、53(49);IR(cm-1):3418、2944、1519、1338、1245、1102、988、733。
【0062】
2-クロロ-4,6-ジメトキシ-5-メチル-3-ニトロフェノールの調製(6)
EtOH(15mL)中の2,4-ジメトキシ-3-メチル-5-ニトロフェノール5(0.311g、0.145mmol)の溶液に、DCH(146mg、0.074mmol)を加え、続いてよく撹拌しながら濃HSO(約24滴)を滴下した。添加が完了した後、反応混合物をNaOH(4.1M、5mL)でクエンチした。酢酸(pH約4)で中和したNaOHの添加中に濃い赤色の沈殿が観察され、得られた混合物を水(25mL)で希釈し、ジエチルエーテル(3×40mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl/ヘキサン、40:60)により単離して、表題化合物を淡黄色結晶(0.34g、95%)、m.p.118.5℃として得た。
=0.29(CHCl/ヘキサン、60:40)。
H-NMR(400MHz、CDCI):δ=5.91(s、1H)、3.87(s、3H)、3.80(s、3H)、2.26(s、3H)ppm。13C-NMR(100MHz、CDCIs):δ=147.5、144.0、142.7、125.6、109.3、62.9、61.0、9.9ppm。MS(El):m/z(%)=247(100、M)、217(5)、213(16)、186(25)、171(27)、138(26)、108(20)、83(22)、77(48)、67(32)。
HRMS(El):C10CINOの計算値247.0248;実測値247.0248。IR(cm-1)=3406、3083、2970、2929、2846、1500、1108。
【0063】
3,5-ジメトキシ-4-メチル-6-ニトロビフェニル-2-オールの調製(7)
マイクロ波管内で、2-クロロ4,6-ジメトキシ-5-メチル-3-ニトロフェノール6(0.21g、0.85mmol)、フェニルボロン酸(0.155g、1.27mmol)、NaaCO(0.10g、0.97mmol)、TBAB(0.021g、0.065mmol)およびPd(PPh(0.025g、0.022mmol)を加えた。反応混合物をアルゴンで注意深く洗い流して、MeOH(4mL)と水(1mL)の混合物を加えた。管を密封し、120°Cでマイクロ波空洞に30分間配置した。反応混合物を水(40mL)で希釈し、ジエチルエーテル(2×30mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[(DCM:Hx、40:60)]溶離液で単離して、表題化合物を黄色の固体(0.122g、50%)として得た。R=0.1(CHCl/ヘキサン、40:60);mp:102.7℃。
H-NMR(500MHz、CDCI):δ=7.46~7.40(m、3H)、7.37~7.35(m、2H)、5.55(s、1H)、3.88(s、3H)、3.84(s、3H)、2.33(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCI):δ=147.2、143.2、142.9、142.6、130.8、129.4、128.9、128.8、125.6、119.4、62.8、61.0、10;MS(El):m/z(%):289(100、M)、272(7)、246(20)、207(24)、199(13)、169(13)、141(20)、129(40)、115(33)、102(12)、83(23)、77(20)。
HR-MS(EI):(M+Na):C1515NNaOの計算値312.0848;実測値312.0846);:IR(cm-1)=3413、2937、2929、2849、1528、1101、991、748。
【0064】
3,3’、5-トリメトキシ-4-メチル-6-ニトロ-[1,1’-ビフェニル]-2-オールの調製(7a)
マイクロ波リアクター管内で、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-5-メチル-3-ニトロフェノール6(0.168g、0.68mmol)、3-メトキシフェニルボロン酸(0.155g、1.02mmol)、NaCO(0.079g、0.75mmol)、TBAB(0.019g、0.05mmol)およびPd(PPh(0.020g、0.018mmol)を加えた。MeOH(4mL)と水(1mL)の混合物を加える前に、反応混合物をアルゴンで注意深く洗い流した。管を密閉し、マイクロ波空洞に120℃で30分間沈めた。反応混合物を水(40mL)で希釈し、ジエチルエーテル(2×30mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[(DCM:Hx、40:60)]溶離液で単離して、表題化合物を黄色の油として得た(0.109g、50%)。R=0.1(CHCI/ヘキサン、40:60)。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=7.28(t、J=8Hz、1H)、6.88-6.85(m、2H)、6.82(s、1H)、5.48(s、1H)、3.80(s、3H)、3.76(s、3H)、3.73(s、3H)、2.25(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCI):δ=159.8、147.2、143.2、142.8、142.4、131.9、130、125.7、121.6、119.2、114.9、114.8、62.8、60.9、10。
MS(El):m/z(%):320(17)、319(100、M)、276(33)、257(15)、244(22)、159(32)、128(35)、115(45)、83(38)、55(22)。
HR-MS(DART):(M+H):C1618NOの計算値320.1134;実測値320.1136);IR(cm-1)=3450、2942、2837、1530、1238、1103、997、765。
【0065】
6-アミノ-3,5-ジメトキシ-4-メチル[1,1’-ビフェニル]-2-オールの調製(8)
3,5-ジメトキシ-4-メチル-6-ニトロ-[1,1’-ビフェニル]-2-オール7(0.20g、0.69mmol)をEtOH(4mL)に溶解し、管型リアクターに移した。次に、HO(1.2mL)中のNHCI(0.073g、1.38mmol)およびインジウム粉末(0.238g、2.01mmol)の混合物を加え、次にマグネチックスターラーバーを管に移した。次に、管を密封し、反応混合物を撹拌し、120℃で3時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(30mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。酢酸エチルの別の一部(20mL)を使用して、フィルターパッドを洗浄した。得られた有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、化合物8を紫色の油として得た(0.175g、98%)。R=0.44[(EtOAc:Hx、30:70)]。
H-NMR(500MHz、CDCI):δ=7.50~7.47(m、3H)、7.43~7.40(m、2H)、5.30(s、1H)、3.76(s、3H)、3.74(s、3H)、2.27(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCI):δ=142.8、138.5、137.2、134.4、134.0、130.5、129.1、127.7、123.3、113.0、61.1、59.5、9.5。
MS(El):m/z(%):260(9)、259(58、M)、244(100)、229(9)、216(22)、201(36)、184(11)、144(14)、128(11)、89(8)、77(9)。
HR-MS(DART):(M+H):C1518NOの計算値260.1287;実測値260.1287);IR(cm-1):3458、3334、3057、2933、2849、1580、1460、994、727。
【0066】
6-アミノ-3,3’、5-トリメトキシ-4-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2-オールの調製(8a)
3,3’、5-トリメトキシ-4-メチル-6-ニトロ-(1,1’-ビフェニル)-2-オール(7a)(0.08g、0.25mmol)をEtOH(4mL)に溶解し、管型リアクターに移した。次に、HO(1.2mL)中のNH4Cl(0.027g、0.50mmol)およびインジウム粉末(0.086g、0.75mmol、99.99%100メッシュ)のスラリーを加え、次にマグネチックスターラーバーを管に移した。次に、管を密封し、反応混合物を撹拌し、120℃で3時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、セライトパッドを通して濾過した。酢酸エチルの別の一部(20mL)を使用して、フィルターパッドを洗浄した。得られた有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を減圧下で除去して、紫色の油中の化合物8a(0.071g、98%)を得た。R=0.36[(EtOAc:Hx、30:70)]。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=7.40(t、J=8Hz、1H)、6.99~6.97(m、1H)、6.95~6.94(m、1H)、6.93~6.91(m、1H)、5.29(s、1H)、3.82(s、3H)、3.76(s、3H)、3.74(s、3H)、2.27(s、3H)。13C-NMR(125MHz、CDCl):δ=160.1、142.8、138.5、137.1、135.3、134.4、130.2、123.4、122.7、115.8、113.6、112.8、61.0、59.5、55.3、9.5.
MS(El):m/z(%):290(12)、289(74、M)、274(100)、259(12)、246(26)、231(25)、137(14)、130(32)、115(15)、83(14)、77(10)。
HR-MS(DART):(M+H):C1620NOの計算値290.1392;実測値290.1395);IR(cm-1):3458、3341、3057、2933、2849、1580、1360、994、727。
【0067】
6-アセトアミド-3,5-ジメトキシ-4-メチル-(1,1’-ビフェニル)-2-イルアセテートの調製(9)
丸底フラスコ(50mL)に、6-アミノ-3,5-ジメトキシ-4-メチル-(1,1’-ビフェニル)-2-オール8(0.12g、0.46mmol)を不活性雰囲気下で脱水CHCl(10mL)に溶解した。撹拌した溶液にトリエチルアミン(0.14mL、0.97mmol)を加えた。溶液を氷浴下で冷却し、無水酢酸(0.09mL、1.01mmol)を反応混合物に滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。残留物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(40mL)で洗浄した。有機層をNaHCO(30mL)で洗浄し、最終的にNaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、アセチル化生成物9(0.148g、紫色の液体)を94%の粗収率で得た。
=0.74[(EtOAc:Hx、50:50)]。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=7.34(m、3H)、7.20(m、2H)、6.50(s、br、1H)、3.76(d、J=8.5Hz、6H)、2.29(s、3H)、2.17(s、3H)、1.99(s、3H)。
MS(El):m/z(%):343(11、M)、301(46)、270(24)、244(100)、201(24)、144(51)、128(39)、115(60)、89(72)、83(94)、77(47)、55(43)。
HR-MS(DART):(M+H) 1922NOの計算値344.14980;実測値344.14999;IR(cm-1):2928、2552、1669、1603、1451、1422、1290、1205、707。
【0068】
6-アセトアミド-3,3’、5-トリメトキシ-4-メチル-(1,1’-ビフェニル)-2-イルアセテートの調製(9a)
丸底フラスコ(50mL)に、6-アミノ-3,3’,5-トリメトキシ-4-メチル-(1,1’-ビフェニル)-2-オール8a(0.13g、0.45mmol)を不活性雰囲気下で脱水CHCl(10mL)に溶解した。次に、トリエチルアミン(0.13mL、0.97mmol)を撹拌混合物に加えた。溶液を氷浴下で冷却し、無水酢酸(0.09mL、1.01mmol)を反応混合物に滴下して加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。残留物をEtOAc(50mL)で希釈し、水(40mL)で洗浄した。有機層をNaHCO(30mL)で洗浄し、最終的にNaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させて、アセチル化生成物9a(0.131g、紫色の液体)を92%の粗収率で得た。アセチル化生成物9aは、さらに精製することなく次のステップで使用した。
=0.67[(EtOAc:Hx、50:50)]。
MS(El):m/z(%):373(16、M)、332(12)、331(68)、316(7)、300(26)、274(100)、256(11)、242(13)、231(11)、174(12)、115(9)、83(15)。
【0069】
9-アセチル-1,3-ジメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-イルアセテートの調製(10)
6-アセトアミド-3,5-ジメトキシ-4-メチル-(1,1’-ビフェニル)-2-イルアセテート9(0.063g、0.183mmol)を氷酢酸(5mL)、Pd(OAc)(2.1mg、0.009mmol)、IMes・HCl(3.2mg、0.009mmol)に溶解して、H(35%、0.05mL、0.53mmol)を加えた。バイアルを密封し、マグネチックスターラーバーを管に移した。管をマイクロ波空洞に120℃で5時間浸した。反応混合物をGC(94%収率)でモニターした。粗生成物をEtOAc(20mL)に溶解し、水(25mL)で洗浄した。水相をEtOAc(2×15mL)で抽出した。合わせた層を水性NaHCO(20mL)で洗浄した。有機層をNaSO上で乾燥させ、濾別した。溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20:80、EtOAc:Hx)を使用して精製して、N-アセチルカルバゾール化合物10(0.043g、褐色の液体)を71%の収率で得た。
=0.33[(EtOAc:Hx、20:80)]。
H-NMR(500MHz、CDCI):δ=8.26(d、J=8.5Hz、1H)、7.83(d、J=7.5Hz、1H)、7.45(t、J=7.5Hz、1H)、7.33(t、J=7.5Hz、1H)、3.85(s、3H)、3.73(s、3H)、2.62(s、3H)、2.54(s、3H)、2.39(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCI):δ=172.8、168.6、147.4、144.0、140.4、134.8、128.5、127.7、124.9、123.7、123.6、121.1、119.7、115.1、61.1、60.0、26.8、20.8、10.2.
MS(El):m/z(%):341(11、M)、299(19)、257(46)、242(100)、226(11)、196(12)、168(22)、154(23)、127(22)、115(27)、89(12)、77(12)、55(12)。
HR-MS(DART):(M+H):C1920NOの計算値342.1341;実測値342.1343);IR(cm-1):2935、1766、1702、1445、1398、1367、1269、1254、1183、1082、1002、749。
【0070】
9-アセチル-1,3,6-トリメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-イルアセテート(10a)および9-アセチル-1,3,8-トリメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-イルアセテートの調製(10b)(異性体混合物)
6-アセトアミド-3,3’、5-トリメトキシ-4-メチル-[1,1’-ビフェニル]-2-イルアセテート9a(0.130g、0.348mmol)を氷酢酸(5mL)、Pd(OAc)(8mg、0.024mmol)、IMes・HCl(12mg、0.024mmol)に溶解して、H(35%、0.09mL、1.0mmol)を加えた。バイアルを密封し、マグネチックスターラーバーを管に移した。管をマイクロ波空洞に120℃で5時間浸した。反応混合物をGC(50%収率)でモニターした。酢酸を減圧下で除去した。粗生成物をEtOAc(40mL)に溶解し、水(25mL)で洗浄した。水相をEtOAc(2×40mL)で抽出した。合わせた有機層を水性NaHCO(30mL)で洗浄した。有機層をNaSO上で乾燥させ、濾別した。溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20:80、EtOAc:Hx)を使用して精製し、10aおよび10bの異性体混合物を30%の収率で得た。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=8.13(d、J=9Hz、1H)、7.64(d、J=7.5Hz、1H)、7.54~7.55(m、1H)、7.32(t、J=8Hz、1H)、7.25(m、1H)、6.96~6.98(dd、J=2.5、9Hz、1H)、3.82(s、1H)、3.79(s、3H)、3.77(s、1H)、3.65(s、3H)、2.54(s、3H)、2.47(s、3H)、2.31(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCl):δ=172.5、168.6、159.6、156.3、147.4、144.2、135.1、134.7、130.5、129.5、129.1、125.1、124.6、122.6、120.4、119.7、116.2、114.4、114.3、105.5、61.1、59.9、55.8、55.5、26.6、20.8、10.2.
MS(El):m/z(%):371(7、M)、331(11)、287(28)、272(62)、207(69)、115(34)、96(38)、83(42)、77(76)。
【0071】
1,3-ジメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-オールの調製(11)
メタノール(10mL)中の9-アセチル-1,3-ジメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-イルアセテート10(0.023g、0.07mmol)の撹拌溶液に0℃でMeOH(5mL)中の濃HCl(2mL)を滴下して加えた。反応混合物を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物を水(40mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させた。溶媒を濾別して、化合物11を褐色の固体として得た(0.017g、94%)。
=0.42¥(EtOAc:Hx、20:80)]。
H-NMR(500MHz、CDCl):δ=8.24(d、J=8Hz、1H)、8.10(s、br、1H)、7.41(m、1H)、7.39~7.35(td、J=1.0Hz、6.5Hz、1H)、7.24~7.20(m、1H)、6.03(s、1H)、3.90(s、3H)、3.85(s、3H)、2.42(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、CDCl):δ=140.7、139.1、137.6、135.8、130.7、125.0、123.2、122.6、121.0、119.5、110.6、110.2、61.3、60.8、9.8。
HR-MS(DART):(M+H):C1516NOの計算値258.1130;実測値258.1133);IR(cm-1):3309、3244、2973、2924、2896、1624、1321、1087、1046、879。
【0072】
3-メトキシ-2-メチル-1-カルバゾール-1,4(9H)-ジオンの調製(12)
氷酢酸(3mL)中の1,3-ジメトキシ-2-メチル-9H-カルバゾール-4-オール(11)(40mg、0.155mmol)の溶液に、HNO(90%、0.01mL、0.186mmol)を0~5℃でゆっくりと加えた。次に、反応混合物を周囲温度で15分間撹拌した。反応時間後、HO(20mL)を溶液に加え、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をHO(2x40mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50:50、DCM:Hx)を使用して精製して、化合物12を薄緑色の固体として得た(36mg、0.124mmol)。
=0.86[(EtOAc:Hx、50:50)]。
H-NMR(500MHz、DMSO-d):δ=12.85(s、br、1H)、8.01(d、J=8Hz、1H)、7.53(m、1H)、7.35~7.38(td、J=1.0、8.0Hz、1H)、7.29~7.32(td、J=1.0Hz、8.0Hz、1H)、4.03(s、3H)、1.92(s、3H)。
13C-NMR(125MHz、DMSO-d):δ=180.5、178.7、157.8、137.6、136.4、129.3、128.4、126.6、126.0、123.8、121.4、113.7、61.2、8.4。
HR-MS(ESI-):(M-H):C1410NOの計算値240.06606;実測値240.06632);IR(cm-1):3257、2958、2923、2853、1639、1258、1094、1022、794。
【0073】
カルバゾマイシンG(1-ヒドロキシ-3-メトキシ-1,2-ジメチル-1,9-ジヒドロ-4H-カルバゾール-4-オン)の調製(13)
真空乾燥したシュレンク管に、THF(10mL)に溶解した化合物12(0.022g、0.091mmol)の溶液を、Ar雰囲気下で加えた。溶液を-7℃で冷却した(ドライアイスとアセトンの混合物を使用)。メチルリチウムの溶液(EtzO中1.6M、0.26mL、0.42mmol)を-78℃で滴下した。反応混合物を室温に近づけるために放置した(約30分)。次に、NHCl(10%、10mL)を加えて反応をクエンチし、反応後の混合物をEtOAc(2×50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50:50、EtOAc:Hx)を使用して精製して、化合物13を淡黄色の固体として得た(51%、12mg、0.047mmol)。
=0.41[(EtOAc:Hx、50:50)]。
H-NMR(850MHz、DMSO-d):δ=12.19(s、br、1H)、8.01(d、J=7.7Hz、1H)、7.44(d、J=7.7Hz、1H)、7.22(t、J=7.7Hz、1H)、7.17(t、J=7.7Hz、1H)、5.92(s、1H)、3.69(s、3H)、1.98(s、3H)、1.57(s、3H)。
13C-NMRおよびDEPT(212.5MHz、DMSO-d):δ=177.6(C=O)、154.4(C)、147.7(C)、140.8(C)、136.5(C)、123.9(C)、122.9(CH)、121.4(CH)、120.5(CH)、112.0(CH)、108.4(C)、67.4(C)、59.2(CH)、27.9(CH)、10.1(CH)。
HR-MS(ESI-):(M-H):C1514NOの計算値256.09737;実測値256.09799);IR(cm-1):3255 br、2924、2853、1719、1643、1618、1468、1375、1289、1138、1092、1011、961、804、748。
【0074】
実施例2-化合物の試験
2つのヒト細胞株HL60およびMOLM-13は、高悪性度の血液がん急性骨髄性白血病(AML)を反映している。これらの細胞株(American Type Culture Collection、ATCCから入手)は、RPMI1640、2mMのL-グルタミン、50UmL-1ペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma Aldrich)および10%ウシ胎児血清(Biowest)中で培養し、加湿雰囲気下5%CO下、37℃の温度で培養した。細胞(2×10細胞×mL-1)を様々な濃度(0.001μM→100μM)の化合物で24時間処理した。WST-1細胞増殖剤(Roche)を使用して代謝細胞活性(すなわち細胞生存率)を測定し、発光プレートリーダー(Infinite 200 Pro,Tecan)で読み取った。選択した細胞サンプルはアポトーシス核断片化を決定するためにHoechstで核染色した後に分析した。
【0075】
化合物7~13の結果を図1に示す。一般に、すべての化合物が2つの細胞株に同じ影響を与えることがわかり、明らかに、これら2つの特定の細胞株の遺伝子型または表現型は、応答に直接的な影響を与えなかった。化合物8、10、11、7a、および8aは、ミトコンドリア代謝アッセイ(WST-1)において細胞生存率の急速な低下を示した。理論に束縛されることを望むものではないが、観察された細胞死における協同性は、細胞を破壊する酵素プログラムまたはシグナル伝達カスケードを反映し得る。より限定された用量/反応曲線(7、9、9a、12、および13)を有する化合物は、細胞の生命維持システムとのより受動的な相互作用によって細胞を死滅し得る。
【0076】
興味深いことに、2つの細胞株HL60およびMOLM-13をビフェニル化合物7で処理すると、生存率のわずかな低下が観察された。化合物7のニトロ基を対応するアミノ誘導体8に化学的に還元すると、特に細胞株HL60の生存率が大幅に低下した。これは、アミノ基が観察された細胞毒性活性に有利であり得ることを示唆している。合成の次のステップにおいて、化合物8のアミノ基およびヒドロキシル基をアセチル化(保護)した。得られた6-アセトアミド-[1,1’-ビフェニル]-2-イルアセテート9は、2つの細胞株の両方に対して弱い細胞毒性を示した。したがって、分子足場8のアミノ基は細胞毒性に有利であるようにみえる。カルバゾール足場10を生成する合成の閉環工程は、細胞毒性に何の影響も示さなかった。しかしながら、カルバゾール誘導体11を与える脱保護工程においてアセチル保護基が除去された場合、2つの細胞株の両方に対する主要な細胞毒性が見られた。化合物11は、化合物8である構造の剛性化の結果である。化合物11のベンゼン環が化合物12に酸化されたときに環の芳香族性を取り除いた結果と一緒に得られたこの知識は、ペリプラナー形がより有益であり得ることを示唆している。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
【国際調査報告】