(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】血中のアンチトロンビンIIIを定量するためのアプタマーベースのシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6818 20180101AFI20221206BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221206BHJP
C12Q 1/6811 20180101ALI20221206BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20221206BHJP
A61K 31/727 20060101ALI20221206BHJP
A61K 38/55 20060101ALI20221206BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20221206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20221206BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20221206BHJP
【FI】
C12Q1/6818 Z
G01N33/53 L ZNA
C12Q1/6811 Z
C12Q1/6806 Z
A61K31/727
A61K38/55
A61P7/02
A61P43/00 121
G01N21/78 C
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522305
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020055484
(87)【国際公開番号】W WO2021076557
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500360769
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スピース, ブルース デイヴィス
(72)【発明者】
【氏名】タン, ウェイホン
【テーマコード(参考)】
2G054
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G054CA22
2G054CE02
2G054EA03
2G054GB02
4B063QA01
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR90
4B063QS32
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC35
4C084MA02
4C084NA20
4C084ZA54
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA27
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA54
4C086ZC75
(57)【要約】
サンプル中のアンチトロンビン(ATIII)のレベルを決定するための化合物および組成物が、記載される。上記化合物および組成物を形成する方法がまた、記載される。上記化合物および組成物を使用して、被験体におけるATIIIのレベルを定量する方法が、さらに記載される。上記方法は、患者に投与するヘパリンまたはATIIIの投与量を決定することを容易にするために使用され得る。サンプル中のアンチトロンビンIII(ATIII)のレベルを決定するために有用な化合物、組成物、およびキットが、記載される。上記化合物、組成物、およびキットは、トロンビンに結合し、ATIIIの存在下で検出可能なシグナルを生じるシグナル伝達アプタマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるアンチトロンビン(ATIII)のレベルを決定するためのキットであって、前記キットは、
(a)第1のトロンビン特異的アプタマー、第1のハイブリダイゼーション配列、および蛍光標識を含む第1のシグナル伝達アプタマー;ならびに
(b)第2のトロンビン特異的アプタマー、第2のハイブリダイゼーション配列、およびクエンチャーを含む第2のシグナル伝達アプタマー
を含み、ここで前記第1のハイブリダイゼーション配列および前記第2のハイブリダイゼーション配列は、互いに対して相補的であり、前記蛍光標識の蛍光は、第1のトロンビン特異的シグナル伝達アプタマーおよび第2のトロンビン特異的シグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合される場合にクエンチされる、キット。
【請求項2】
前記第1のトロンビン特異的アプタマーは、TBA15を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第2のトロンビン特異的アプタマーは、TBA29を含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記第1のハイブリダイゼーション配列および前記第2のハイブリダイゼーション配列は、長さが6~10個の核酸塩基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記第1のハイブリダイゼーション配列および前記第2のハイブリダイゼーション配列は、長さが9個の核酸塩基である、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-GTCGTA-3’を含み、前記第2のハイブリダイゼーション配列は5’-TACGAC-3’を含むか、または前記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-TACGAC-3’を含み、前記第2のハイブリダイゼーション配列は5’-GTCGTA-3’を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-GTCGTAAGT-3’を含み、前記第2のハイブリダイゼーション配列は配列5’-ACTTACGAC-3’を含むか、または前記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-ACTTACGAC-3’を含み、前記第2のハイブリダイゼーション配列は、配列5’-GTCGTAAGT-3’を含む、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記第1のシグナル伝達アプタマーおよび/または前記第2のシグナル伝達アプタマーは、リンカーを含み、ここで前記リンカーは、前記トロンビン特異的アプタマーを前記ハイブリダイゼーション配列に接続する、請求項1~7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記PEGは、PEG
6である、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記蛍光標識は、FITC、フルオレセイン、ヘキサクロロフルオレセイン、ローダミン、カルボキシ-X-ローダミン、テトラメチルローダミン、IAEDANS、EDANS、クマリン、BODIPY FL、ルシファーイエロー、エオシン、エリスロシン、Texas Red、またはシアニンを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
前記クエンチャーは、DABCYL、BLACK HOLE QUENCHER、またはTAMRA化合物を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
トロンビンをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のキット。
【請求項14】
前記トロンビン、前記第1のシグナル伝達アプタマー、および前記第2のシグナル伝達アプタマーは、複合体を形成する、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
トロンビン;第1のトロンビン特異的アプタマー、第1のハイブリダイゼーション配列、および蛍光標識を含む第1のシグナル伝達アプタマー;ならびに第2のトロンビン特異的アプタマー、第2のハイブリダイゼーション配列、およびクエンチャーを含む第2のシグナル伝達アプタマーを含む複合体であって、ここで前記第1のハイブリダイゼーション配列および前記第2のハイブリダイゼーション配列は、互いに対して相補的でありかつ二重鎖を形成し、前記蛍光標識の蛍光がクエンチされる、複合体。
【請求項16】
トロンビンをさらに含む、請求項15に記載の複合体。
【請求項17】
被験体に由来するサンプル中のATIIIのレベルを決定する方法であって、前記方法は、
(a)前記サンプルを前記被験体から得る工程;
(b)請求項15または16に記載の複合体を含む組成物と前記サンプルとを接触させる工程;および
(c)前記組成物の蛍光の増大を測定する工程、
を包含し、ここで前記蛍光の増大は、前記サンプル中のATIIIのレベルに比例する、方法。
【請求項18】
前記サンプルは、血清サンプル、血液サンプル、または血漿サンプルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光の増大は、15分未満で測定される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
抗凝固剤で患者を処置する方法であって、前記方法は、
(a)前記患者におけるATIIIのレベルを決定する工程であって、ここで前記決定する工程は、
(i)血清、血漿、または血液サンプルを前記患者から得る工程;
(ii)請求項15または16に記載の複合体を含む組成物と前記サンプルとを接触させる工程;および
(iii)前記組成物の蛍光の増大を測定する工程であって、ここで前記蛍光の増大は、前記サンプル中のATIIIのレベルに比例する、工程;
を包含する工程;ならびに
(b)工程(iii)において決定された前記サンプル中のATIIIのレベルに基づいて、前記患者に、ヘパリンおよび/または外因性ATIIIを投与する工程、
を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月15日出願の米国仮特許出願第62/915,107号の利益を主張する。
【0002】
配列表
ファイル 694978_SeqListing_ST25.txt中に書かれている配列表(サイズは5キロバイト、作成日:2020年9月30日)は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
緒言
アンチトロンビン(ATIII)は、炎症および凝固の調節因子/緩衝因子として機能する、肝臓によって生成される循環性セルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)タンパク質である。ATIIIは、トロンビンに結合し、かつ阻害することによって、炎症および凝固を阻害する。ヒトが<20% ATIII活性をもって産まれる場合、彼らは、重篤な凝固亢進性を示し、大部分は、生まれて数日以内に死亡する。30~60%の間のレベルは、慢性の、およびときおり急性の生命を脅かす状態と関連する。ATIII欠乏症は、深部静脈血栓症および自然肺塞栓症の最も一般的な原因のうちの1つである。
【0004】
ヘパリンは、今日、病院で抗凝固のために最も一般的に利用される静脈内用薬剤(intravenous agent)である。ヘパリンは、ATIIIとのその相互作用を通じて抗凝固剤として作用する。ATIIIのアンチトロンビン活性は、ヘパリンを結合することによって、2000~4000倍増大される。入院している全患者のうちのおよそ15%は、彼らが入院している間に、ある時点でヘパリンを受容する。それは、人工心肺を使用する間に必要とされる。心臓および血管手術では、ヘパリンは、中程度から大投与量(250~600u/Kgのヘパリン)において与えられる。より小さい投与量は、心カテーテル法、腎透析、および多くの他の血液濾過または放射線手順のような手順のために慣用的に利用される。
【0005】
ヘパリンへの患者応答は、集団における多型が原因で、および種々の疾患、傷害、状態、または薬物療法が循環性ATIIIを減少させ得ることから、非常に変動性である。特に、ヘパリン処置は、循環性ATIIIの減少を生じる。心臓手術において、ヘパリンへのヒト応答の変動性は、大きな問題である。低ATIIIを有する患者では、ヘパリンは、抗凝固剤として適切に機能しない。このような患者は、外因性ATIIIの投与を必要とする。アンチトロンビン補充は、心臓手術患者においてより良好な生存を生じる。しかし、過剰なアンチトロンビンは、有害な出血事象をもたらし得る。理想的には、被験体におけるATIIIのレベルは、ヘパリンまたはATIIIの投与の前に決定される。現在では、被験体におけるATIIIレベルを予測する、または迅速に測定するための信頼に足る手段は存在しない。既存のATIIIの試験は、ヘパリンの存在下もしくは非存在下で抗Xa活性を間接的に評価するか、または複雑および/または頻度の低い病院状況で実行される酵素アッセイもしくはイムノアッセイを利用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
サンプル中のアンチトロンビンIII(ATIII)のレベルを決定するために有用な化合物、組成物、およびキットが、記載される。上記化合物、組成物、およびキットは、トロンビンに結合し、ATIIIの存在下で検出可能なシグナルを生じるシグナル伝達アプタマーを含む。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、蛍光標識を含む第1のトロンビン特異的アプタマーおよびクエンチャーを含む第2のトロンビン特異的アプタマーを含む。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体において、トロンビンに結合されて提供される。トロンビンに結合される場合、上記シグナル伝達アプタマーの各々に存在するハイブリダイズする配列は、二重鎖領域を形成するためにハイブリダイズする。その二重鎖の形成は、上記蛍光標識をクエンチャーに対して近位に置き、上記蛍光標識の蛍光の減少を生じる。ATIIIの存在下では、上記ATIIIは、トロンビンに結合し、上記第1のシグナル伝達アプタマー、上記第2のシグナル伝達アプタマー、または両方のシグナル伝達アプタマーを移動させる(displace)。上記シグナル伝達アプタマーの移動は、蛍光シグナルの増大を生じる。蛍光シグナルの増大が測定され得、サンプル中のATIIIを検出および/または定量するために使用され得る。
【0007】
記載される化合物、組成物、およびキットを使用して、サンプル中のATIIIを検出および/またはその量を定量する方法がまた、記載される。いくつかの実施形態において、上記方法は、トロンビン、第1のシグナル伝達アプタマー、および第2のシグナル伝達アプタマーを含むトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を形成する工程、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体と、ATIIIを含むかまたは含むと疑われるサンプルとを接触させる工程、および上記蛍光標識によって発せられる蛍光を測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体と、ATIIIを含むかまたは含むと疑われるサンプルとを接触させる工程、および上記蛍光標識によって発せられる蛍光シグナルの増大を検出または測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、蛍光シグナルの増大は、上記サンプル中のATIIIのレベルに比例する。
【0008】
いくつかの実施形態において、記載される化合物、組成物、キット、および方法は、医学的手順の前に、医学的手順と同時に、または医学的手順の後に、被験体に投与するためのヘパリンおよび/または外因性ATIIIの投与量を決定するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体へのATIII(アンチトロンビン)結合および第1の(TBA15)および第2の(TBA29)シグナル伝達アプタマーの両方の移動を図示する。いくつかのシグナル伝達アプタマー対に関して、トロンビンへのATIII結合は、第1の(例えば、TBA15)シグナル伝達アプタマーの解離を生じる。
【0010】
【
図2】
図2. ATIIIの濃度の増大に伴う蛍光の増大を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0011】
【
図3】
図3. 100nM シグナル伝達アプタマー濃度に関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0012】
【
図4】
図4. 200nM シグナル伝達アプタマー濃度に関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0013】
【
図5】
図5. 300nM シグナル伝達アプタマー濃度に関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0014】
【
図6】
図6. 400nM シグナル伝達アプタマー濃度に関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0015】
【
図7】
図7. トロンビン 対 シグナル伝達アプタマーTBA15-F6およびTBA29-D6の比を増大させることに関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。TBA15-F6およびTBA29-D6を、200nMの濃度として使用した。トロンビンを、20nM~100nMで使用した。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0016】
【
図8】
図8. トロンビン 対 シグナル伝達アプタマーTBA15-F7およびTBA29-D7の比を増大させることに関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。TBA15-D7およびTBA29-D7を、200nMの濃度として使用した。トロンビンを、75nM~300nMで使用した。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0017】
【
図9】
図9. トロンビン 対 シグナル伝達アプタマーTBA15-F8およびTBA29-D8の比を増大させることに関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。TBA15-D8およびTBA29-D8を、200nMの濃度として使用した。トロンビンを、75nM~300nMで使用した。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0018】
【
図10】
図10. トロンビン 対 シグナル伝達アプタマーTBA15-F9およびTBA29-D9の比を増大させることに関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。TBA15-D9およびTBA29-D9を、200nMの濃度として使用した。トロンビンを、75nM~300nMで使用した。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0019】
【
図11】
図11. トロンビン 対 シグナル伝達アプタマーTBA15-F10およびTBA29-D10の比を増大させることに関して種々の波長での蛍光強度を図示するグラフ。TBA15-D10およびTBA29-D10を、200nMの濃度として使用した。トロンビンを、75nM~300nMで使用した。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0020】
【
図12】
図12. 各構成要素に関して、200nMでのTBA15-F9+TBA29-D9+トロンビン(1:1:1)複合体の形成の動態を図示するグラフ。
【0021】
【
図13】
図13. 1940nM ATIIIの存在下でTBA15-F9+TBA29-D9+トロンビン(1:1:1)複合体の解離の動態を図示するグラフ。上記複合体は、200nMの濃度で存在した。
【0022】
【
図14】
図14. ヘパリンの漸増濃度(0.25g/L~2.00g/L)での200nM 複合体の蛍光滴定を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0023】
【
図15】
図15. HBAの漸増濃度(1g/L~4g/L)での200nM 複合体の蛍光滴定を図示するグラフ。図の凡例中の複合体は、最大強度の順になっている(最高の最大強度~最低の最大強度)。
【0024】
【
図16】
図16. ヒト血清アルブミン(HSA)およびATIIIの漸増濃度での200nM トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の蛍光滴定を図示するグラフ。
【0025】
【
図17】
図17. ヘパリンおよびATIIIの漸増濃度での200nM トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の蛍光滴定を図示するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
A.定義
本技術を詳細に記載する前に、本開示が、特定の組成物またはプロセス工程に限定されず、よって、変動し得ることは理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」とは、文脈が明らかに別のことを指し示すのでなければ、複数形への言及を包含することが注記されるべきである。従って、例えば、「1つのオリゴマー(an oligomer)」への言及は、複数のオリゴマーを含むなど。接続詞「または(or)」とは、包括的な意味において、すなわち、その包括的な意味が文脈において非合理的でないのであれば、「および/または(and/or)」に等しいと解釈されるべきである。
【0027】
概して、用語「約(about)」とは、組成物の活性または安定性に対していかなる顕著な影響をも有しない組成物の構成要素の量の実質的でない変動を示す。本明細書が、パラメーターの具体的値を開示する場合、本明細書は、代わりに、その値「あたり(about)」でパラメーターを開示するとも理解されるべきである。全ての範囲は、「端点を含まない(not including the endpoints)」のような明確な排除がない場合に、その端点を包含すると解釈されるべきである;従って、例えば、「10~15以内(within 10-15)」とは、10および15という値を包含する。また、「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」、「含む、包含する(comprising)」、「含む、含有する(contain)」、「含む、含有する(contains)」、「含む、含有する(containing)」、「含む、包含する、が挙げられる(include)」、「含む、包含する、が挙げられる(includes)」、および「含む、包含する、が挙げられる(including)」の使用は、限定であるとは意図されない。前述の一般的な説明および詳細な説明の両方が、例示でありかつ説明に過ぎず、教示の限定ではないことは、理解されるべきである。援用される任意の資料は、本開示の明示的な内容と不一致である程度までは、その明示的な内容が優先する。
【0028】
具体的に注記されなければ、種々の構成要素を「含む」、を記載する本明細書中の実施形態は、その記載される構成要素「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」とも企図される。種々の構成要素「から本質的になる」を記載する本明細書中の実施形態は、「からなる」としても企図される。「から本質的になる」は、本明細書で記載される組成物および方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させないさらなる構成要素、組成物、または方法が、それら組成物または方法の中に包含され得ることを意味する。
【0029】
「アプタマー(aptamer)」とは、特定の分子標的(例えば、タンパク質またはタンパク質エピトープ)に選択的に結合する短い(しばしば、長さが40個の核酸塩基未満の)1本鎖ポリヌクレオチド分子である。アプタマーは、化学合成によって容易に生成される。アプタマーは、所望の貯蔵特性を有し得る。いくつかの実施形態において、上記アプタマーは、治療適用においてほとんどまたは全く免疫原性を誘発しない。
【0030】
「シグナル伝達アプタマー(signaling aptamer)」は、ハイブリダイズする配列および標識に連結されたアプタマーである。上記ハイブリダイズする配列は、上記アプタマーの5’末端または3’末端に連結され得る。いくつかの実施形態において、上記ハイブリダイズする配列は、リンカーを介して上記アプタマーに連結される。いくつかの実施形態において、上記標識は、ハイブリダイズする配列に連結される。
【0031】
「ハイブリダイズする配列(hybridizing sequence)」は、相補的なハイブリダイズする配列と塩基対合し得る短い(概して長さが6~12ヌクレオチドの)1本鎖ポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、第1のシグナル伝達アプタマーは、第2のシグナル伝達アプタマーに連結された第2のハイブリダイズする配列に相補的な第1のハイブリダイズする配列に連結される。上記第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、塩基対合して(ハイブリダイズして)、二重鎖領域を形成し得る。
【0032】
「標識」とは、検出可能な分子および/またはクエンチャーである。検出可能な分子としては、蛍光標識が挙げられるが、これに限定されない。蛍光標識(フルオロフォア)は、光で励起する際に再発光し得る蛍光性化合物である。蛍光標識は、特異的波長の光エネルギーを吸収し、より長い波長の光を再発光する。クエンチャーは、蛍光標識の蛍光強度を減少させる化合物である。クエンチャーは、蛍光分子から発せられた励起エネルギーを吸収し得、熱としてまたはより長い波長の光としてエネルギーを散逸し得る。蛍光標識およびクエンチャーが十分近位にある場合、その蛍光標識の発光は抑制される。
【0033】
蛍光標識としては、キサンテン、FITC、FAMTM、TETTM、CAL FLUORTM(OrangeまたはRed)、ALEXA FLUORTM、QUASARTM、フルオレセイン、ヘキサクロロ-フルオレセイン(HEX)、ローダミン、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、テトラメチルローダミン、IAEDANS、EDANS、クマリン、BODIPY FL、ルシファーイエロー、エオシン、エリスロシン、Texas Red、シアニン、またはCY色素(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5)であり得るが、これらに限定されない。
【0034】
クエンチャーは、DABCYL、BLACK HOLE QUENCHERTM(BHQTM、例えば、Black Hole Quencher-0、Black Hole Quencher 1、Black Hole Quencher 2、Black Hole Quencher 3、Black Hole Quencher 650)、またはTAMRATM化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0035】
例示的な蛍光標識/クエンチャー対としては、フルオレセインおよびdabcyl、フルオレセインおよびblack hole quencher、エオシンおよびDABCYL、クマリン/DABCYL、CY5およびBlack Hole Quencher 1、CY5およびBlack Hole Quencher 2、CY3およびBlack Hole Quencher 1、CY3およびBlack Hole Quencher 2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「リンカー」または連結基とは、目的の1つの化学基またはセグメント(例えば、アプタマー)を、目的の別の化学基またはセグメント(例えば、ハイブリダイズする配列)へと、1またはこれより多くの共有結合を介して連結する、2つの原子間の接続である。いくつかの実施形態において、リンカーは、その2つの原子間の距離を増大させる。いくつかの実施形態において、リンカーは、上記連結に可撓性を付加する可撓性リンカーである。リンカーとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、アラルケニル基、およびアラルキニル基(これらの各々は、1またはこれより多くのヘテロ原子を含み得る)、複素環、アミノ酸、ヌクレオチド、サッカリド、およびポリマー基が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー基としては、ポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リンカーは、PEGnを含み、ここでnは、1~50の整数である。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、PEG1、PEG2、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、またはPEG10を含む。上記リンカーは、上記アプタマーのその分子標的(例えば、トロンビン)への結合に干渉しない。上記リンカーは、相補的なハイブリダイゼーション配列を含む2つのアプタマーが標的分子に結合される場合、相補的なハイブリダイズする配列による二重鎖形成を促進し得る。
【0037】
上記「サンプル」は、被験体に由来する任意の生理学的液体を含む。サンプルとしては、血液、血清、血漿、およびその画分が挙げられるが、これらに限定されない。サンプルは、使用前に予備処理され得る(例えば、血漿を血液から調製する)。サンプルは、サンプルは、上記被験体から得られるとおりに直接的に、または上記サンプルの特徴を改変するために予備処理の後に使用され得る。予備処理としては、濾過、希釈、および上記サンプルを調製もしくは分析するにあたって有用な1もしくはこれより多くの試薬の添加が挙げられるが、これらに限定されない。サンプルは、その元々のサンプル、または1もしくはこれより多くの予備処理を受けている元々のサンプルを含む。サンプルは、任意の適切なサイズまたは容積のものであり得る。いくつかの実施形態において、上記サンプル容積は、1mL未満もしくはこれに等しい、500μL未満もしくはこれに等しい、250μL未満もしくはこれに等しい、100μL未満もしくはこれに等しい、75μL未満もしくはこれに等しい、50μL未満もしくはこれに等しい、35μL未満もしくはこれに等しい、25μL未満もしくはこれに等しい、または20μL未満もしくはこれに等しい。
【0038】
「トロンビン」とは、セリンプロテアーゼである。ヒトにおいて、トロンビンは、F2遺伝子によってコードされる。プロトロンビン(凝固因子II)は、タンパク質分解的に切断されて、凝固プロセスにおいてトロンビンが形成される。トロンビンは、次に、可溶性のフィブリノゲンを不溶性のフィブリン鎖へと変換するセリンプロテアーゼとして作用し、同様に、他の凝固関連反応を触媒する。トロンビンは、アンチトロンビンIIIによって不活性化される。
【0039】
B.シグナル伝達アプタマー
サンプル中のATIIIを検出および/またはそのレベルを定量するための化合物、組成物、キット、および方法が、記載される。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記化合物および組成物は、トロンビンに結合し、ATIIIの存在下で検出可能なシグナルを生成する1またはこれより多くのシグナル伝達アプタマーを含む。いくつかの実施形態において、上記化合物、組成物、およびキットは、第1のシグナル伝達アプタマーおよび第2のシグナル伝達アプタマーを含み、これらは各々、トロンビンに結合する。上記第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマーは、トロンビン上の異なるエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、上記第1のアプタマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み、上記第2のアプタマーは、上記蛍光標識の蛍光を低減または変化させるクエンチャーを含む。いくつかの実施形態において、上記第2のアプタマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み、上記第1のアプタマーは、上記蛍光標識の蛍光を低減または変化させるクエンチャーを含む。上記第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマーは、上記クエンチャーが、両方のシグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合される場合に、上記蛍光標識からのシグナルをクエンチするように構成される。上記第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマーは、トロンビンへのATIII結合が、上記アプタマーのうちの少なくとも一方を上記トロンビンから解離することを生じるように、さらに設計される。シグナル伝達アプタマーの、トロンビンからの解離は、蛍光標識の脱クエンチ(dequenching)および検出可能なシグナル(すなわち、蛍光)の増大を生じる。
【0041】
上記第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマーは、上記シグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合される場合に、二重鎖領域を形成し得るハイブリダイゼーション配列を含む。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマー上の標識は、上記ハイブリダイゼーション配列に連結される。いくつかの実施形態において、上記ハイブリダイゼーション配列は、上記ハイブリダイゼーション配列が塩基対合して二重鎖を形成する場合に、上記蛍光標識を上記クエンチャーと近位に位置づけるように設計される。上記ハイブリダイゼーション配列は、上記シグナル伝達アプタマーがATIIIの非存在下でトロンビンに結合される場合に、上記蛍光標識がクエンチされるように、十分に安定な二重鎖を形成する。いくつかの実施形態において、上記ハイブリダイゼーション配列は、トロンビンへのATIIIの結合が、脱クエンチおよび蛍光の増大を生じるようにさらに設計される。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、上記アプタマー配列と上記ハイブリダイゼーション配列との間にリンカーを含む。上記リンカーは、上記アプタマー配列と上記ハイブリダイゼーション配列との間の間隔を増大させるために、および/または上記アプタマー配列と上記ハイブリダイゼーション配列との間に可撓性を付加するために、使用され得る。上記リンカーは、上記シグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合される場合に、ハイブリダイゼーション配列の間での二重鎖形成を促進するように設計される。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1のシグナル伝達アプタマーは、トロンビンアプタマーTBA15のアプタマーヌクレオチド配列を含む。TBA15は、配列5’-GGTTGGTGTGGTTGG-3’(配列番号1)を有する15マーの1本鎖DNAである。上記TBA15アプタマーは、トロンビンのエキソサイトIエピトープに約100nMのKdで結合する。エキソサイトIは、トロンビン上のフィブリノゲンの結合部位である。他の実施形態において、上記第1のシグナル伝達アプタマーは、トロンビンアプタマーTBA29のアプタマーヌクレオチド配列(以下でより詳細に記載される)を含む。いくつかの実施形態において、上記第1のシグナル伝達アプタマーは、上記アプタマーの3’末端に連結された第1のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記第1のハイブリダイズする配列は、リンカーを介して上記アプタマーの3’末端に連結される。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、PEGを含む。いくつかの実施形態において、上記PEGは、PEG1-10(例えば、-(CH2-CH2-O)1-10-)を含む。いくつかの実施形態において、上記PEGは、PEG6を含む。いくつかの実施形態において、上記第1のシグナル伝達アプタマーは、上記第1のハイブリダイズする配列に連結された蛍光分子を含む。いくつかの実施形態において、上記第1のシグナル伝達アプタマーは、上記第1のハイブリダイズする配列の3’末端に連結された蛍光分子を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、第2のシグナル伝達アプタマーは、トロンビンアプタマーTBA29のアプタマーヌクレオチド配列を含む。TBA29は、配列5’-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT-3’(配列番号2)を有する29マーの1本鎖DNAである。上記TBA29アプタマーは、トロンビンのエキソサイトIIエピトープに約0.5nMのKdで結合する。上記エキソサイトIIエピトープは、第V/VIII因子の活性化に関与し、ヘパリン結合を媒介する。他の実施形態において、上記第2のシグナル伝達アプタマーは、トロンビンアプタマーTBA15のアプタマーヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、上記第2のシグナル伝達アプタマーは、上記アプタマーの5’末端に連結された第2のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記第2のハイブリダイズする配列は、リンカーを介して上記アプタマーの5’末端に連結される。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、PEGを含む。いくつかの実施形態において、上記PEGは、PEG1-10(例えば、-(CH2-CH2-O)1-10-)を含む。いくつかの実施形態において、上記PEGは、PEG6を含む。いくつかの実施形態において、上記第2のシグナル伝達アプタマーは、上記第2のハイブリダイズする配列に連結されたクエンチャーを含む。いくつかの実施形態において、上記第2のシグナル伝達アプタマーは、上記第2のハイブリダイズする配列の5’末端に連結されたクエンチャーを含む。
【0045】
他のトロンビン結合アプタマーは、当該分野で公知の方法を使用して同定され得る。このような方法としては、指数関数的富化によるリガンドの体系的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)法および自動化インビトロ選択が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、長さが5~20個の核酸塩基である。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の核酸塩基である。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、長さが6~10個の核酸塩基である。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、長さが6、7、8、9、または10個の核酸塩基である。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、長さが9個の核酸塩基である。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、ハイブリダイズして、長さが6~10個の塩基対の二重鎖を形成する。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、ハイブリダイズして、長さが6、7、8、9、または10個の塩基対の二重鎖を形成する。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、ハイブリダイズして、長さが9個の塩基対の二重鎖を形成する。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1のシグナル伝達アプタマーは、5’-Nn-3’の第1のハイブリダイズする配列を含み、ここで各Nは、独立して、任意の核酸塩基であり、nは、6~10の整数であり、第2のシグナル伝達アプタマーは、上記第1のハイブリダイズする配列に相補的な第2のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記ハイブリダイズした二重鎖は、4個のG:C塩基対および5個のA:T塩基対を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTA-3’(配列番号3)または5’-TACGAC-3’(配列番号4)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーの第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTA-3’(配列番号3)および5’-TACGAC-3’(配列番号4)を含むかまたはからなる。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAT-3’(配列番号5)または5’-ATACGAC-3’(配列番号6)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーの第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAT-3’(配列番号5)および5’-ATACGAC-3’(配列番号6)を含むかまたはからなる。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAGT-3’(配列番号7)または5’-ACTACGAC-3’(配列番号8)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーの第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAGT-3’(配列番号7)および5’-ACTACGAC-3’(配列番号8)を含むかまたはからなる。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)または5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーの第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)および5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)を含むかまたはからなる。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAAGCT-3’(配列番号11)または5’-AGCTTACGAC-3’(配列番号12)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーの第1のおよび第2のハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAAGCT-3’(配列番号11)および5’-AGCTTACGAC-3’(配列番号12)を含むかまたはからなる。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーのハイブリダイズする配列は、配列5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)または5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)からなる。いくつかの実施形態において、上記TBA15シグナル伝達アプタマーは、5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)からなる3’のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記TBA15シグナル伝達アプタマーは、5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)からなる3’のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記TBA29シグナル伝達アプタマーは、5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)からなる5’のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記TBA29シグナル伝達アプタマーは、5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)からなる5’のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記TBA15シグナル伝達アプタマーは、5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)からなる3’のハイブリダイズする配列を含み、上記TBA29シグナル伝達アプタマーは、5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)からなる5’のハイブリダイズする配列を含む。いくつかの実施形態において、上記TBA15シグナル伝達アプタマーは、5’-ACTTACGAC-3’(配列番号10)からなる3’のハイブリダイズする配列を含み、上記TBA29シグナル伝達アプタマーは、5’-GTCGTAAGT-3’(配列番号9)からなる5’のハイブリダイズする配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達アプタマーは、タンパク質結合領域(アプタマー)と上記ハイブリダイズする配列との間にリンカーを含む。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、可撓性リンカーである。上記リンカーは、核酸塩基リンカーまたは非核酸塩基リンカーであり得る。非核酸塩基リンカーは、PEGまたは脂肪族鎖であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、PEG基である。上記PEG基は、(PEG)nであり得、ここでnは、1~20の整数である。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である。いくつかの実施形態において、nは、6である。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1のハイブリダイズする配列および蛍光標識を含む第1のシグナル伝達アプタマーは、上記第1のハイブリダイズする配列に相補的な第2のハイブリダイズする配列および上記蛍光標識によって発せられた蛍光を低減または変化させるクエンチャーを含む第2のシグナル伝達アプタマーと対形成される。
【0057】
C.組成物
いくつかの実施形態において、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体が記載される。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、記載される第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマーによって結合されたトロンビンを含む。いくつかの実施形態において、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、組成物中に存在する。上記組成物は、蛍光の検出または測定を促進する1またはこれより多く構成要素を含み得る。
【0058】
トロンビンは、当該分野で公知の種々の方法によって調製され得、用語「トロンビン」は、特定の生成方法を含意することは意図されない。上記トロンビンは、天然に存在する供給源から、組換えの、合成のものから精製され得るか、または培養物中で細胞(例えば、細菌、昆虫、酵母または哺乳動物細胞)から合成され得る。トロンビンは、血漿から精製され得る。ヒトおよび非ヒト両方のトロンビンが、本発明内で使用され得る。いくつかの実施形態において、上記トロンビンは、ヒトトロンビンである。
【0059】
上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、溶液中に、または凍結乾燥粉末もしくはケークにおいて提供され得る。上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体はまた、固体支持体(例えば、試験ストリップ)上に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、約100nM~約400nMの濃度において溶液中に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、約100nm、約200nM、約300nm、または約400nMの濃度で溶液中に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーは、約200nMの濃度で溶液中に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、約100nM~約400nMの濃度で溶液中に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、約100nm、約200nM、約300nm、または約400nMの濃度で溶液中に提供され得る。いくつかの実施形態において、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、約200nMの濃度で溶液中に提供され得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記第1のシグナル伝達アプタマー 対 上記第2のシグナル伝達アプタマーのモル比は、約1:1である。いくつかの実施形態において、第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマー 対 トロンビンのモル比は、約1:1:2~2:2:1(第1のシグナル伝達アプタマー:第2のシグナル伝達アプタマー:トロンビン)である。いくつかの実施形態において、第1のおよび第2のシグナル伝達アプタマー 対 トロンビンのモル比は、約1:1:1(第1のシグナル伝達アプタマー:第2のシグナル伝達アプタマー:トロンビン)である。いくつかの実施形態において、TBA15シグナル伝達アプタマー 対 TBA29シグナル伝達アプタマーのモル比は、約1:1である。いくつかの実施形態において、上記TBA15シグナル伝達アプタマーおよびTBA29シグナル伝達アプタマー 対 トロンビンのモル比は、約1:1:2~2:2:1(TBA15シグナル伝達アプタマー:TBA29シグナル伝達アプタマー:トロンビン)である。いくつかの実施形態において、TBA15シグナル伝達アプタマーおよびTBA29シグナル伝達アプタマー 対 トロンビンのモル比は、約1:1:1(TBA15シグナル伝達アプタマー:TBA29シグナル伝達アプタマー:トロンビン)である。
【0061】
ATIIIを含むサンプルが、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体、または上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を含む組成物に添加される場合、上記ATIIIは、上記トロンビンに結合し、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の解離、および上記シグナル伝達アプタマーのうちの一方に存在する蛍光標識からの蛍光の増大をもたらす。蛍光の増大は、上記サンプル中のATIIIの量に比例する。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の解離は、上記トロンビンからの上記第1のシグナル伝達アプタマー、上記第2のシグナル伝達アプタマー、または両方のシグナル伝達アプタマーの解離を含む。いくつかの実施形態において、トロンビンへのATIII結合は、上記第1のシグナル伝達アプタマーを解離する。
【0062】
いくつかの実施形態において、上記サンプル中のATIIIのレベルは、蛍光の増大と標準曲線とを比較することによって決定することである。同じ条件下で測定される場合に、ATIIIの種々の既知の濃度に関して蛍光の増大のレベルを決定することによって、標準曲線が得られ得る。
【0063】
D.キット
本明細書で開示される方法を行うにあたって利用される1もしくはこれより多くの試薬を含むキット、または本明細書で開示される1もしくはこれより多くの化合物もしくは組成物を含むキットがまた、提供される。このようなキットは、本質的に診断用であり得る。
【0064】
キットは、一般に、適切な容器または入れ物中にシグナル伝達アプタマーまたはトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の記載される対を含む。上記キットはまた、サンプル中のATIIIのレベルを決定するにあたって有用なさらなる試薬またはデバイスを含み得る。このようなさらなる試薬またはデバイスは、緩衝液、ATIII、シリンジ、および皮下注射針のうちの1つまたはこれより多くであり得るが、これらに限定されない。上記キットは、1またはこれより多くのサンプル中のATIIIのレベルを定量するために使用され得る。上記容器は、種々の材料(ガラスおよび薬学的に適合性のプラスチックが挙げられるが、これらに限定されない)から形成され得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、キットは、記載されるシグナル伝達アプタマーまたは複合体のうちのいずれかの1つまたはこれより多くを含む1またはこれより多くの容器を含む。いくつかの実施形態において、キットは、記載されるシグナル伝達アプタマーまたは複合体のうちのいずれかの1つまたはこれより多くを含む1つまたはこれより多くの試験ストリップを含む。いくつかの実施形態において、キットは、単位投与量(すなわち、例えば、必要に応じて、1またはこれより多くの試薬とともに、サンプル中のATIIIのレベルを決定するために適切な記載されるシグナル伝達アプタマーまたは複合体のうちのいずれかを含む、組成物の所定の量を意味する)を含む。いくつかの実施形態において、上記キットは、1またはこれより多くのコントロールサンプルを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーまたはトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体が、液体中に提供される。上記液体は、滅菌されていてもよいし、滅菌されていなくてもよい。いくつかの実施形態において、上記シグナル伝達アプタマーまたはトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体は、適切な溶媒を添加した際に再構成され得る、凍結乾燥した形態において提供される。再構成のために使用される溶媒は、別個の容器中に提供され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、キットは、標識、マーカー、パッケージ挿入物、バーコードおよび/または上記キットの内容物が、サンプル中のATIIIのレベルを決定するために使用され得ることを示すリーダー(reader)を含む。いくつかの実施形態において、キットは、サンプル中のATIIIのレベルを測定するために、上記キットの使用を記載する説明資料を含み得る。
【0068】
E. 方法。
サンプル中のATIIIを検出および/またはその量を定量するために、記載される化合物および組成物を使用する方法が、記載される。いくつかの実施形態において、上記方法は、トロンビン、第1のシグナル伝達アプタマー、および第2のシグナル伝達アプタマーを含むトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を形成する工程、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体と、ATIIIを含むかまたは含むと疑われるサンプルとを接触させる工程、および上記蛍光標識によって発せられた蛍光を測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体と、ATIIIを含むかまたは含むと疑われるサンプルとを接触させる工程、および前記蛍光標識によって発せられた蛍光シグナルを検出するかまたは蛍光シグナルの増大を測定する工程を包含する。いくつかの実施形態において、蛍光シグナルの増大は、上記サンプル中のATIIIのレベルに比例する。
【0069】
サンプル中のATIIIのレベルを決定するための記載される方法は、迅速で、単純、かつ正確である。上記方法は、医学的手順の前に、医学的手順と同時に、および/または医学的手順の後に行われ得る。医学的手順としては、心臓手術、血管手術、人工心肺バイパス、心カテーテル法、透析、体外式膜型人工肺、濾過手順、および放射線手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施形態において、記載される化合物、組成物、および方法は、約10%以内、約9%以内、約8%以内、約7%以内、約6%以内、約5%以内、約4%以内、約3%以内、約2%以内、または約1%以内の、被験体におけるATIIIのレベルを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、記載される化合物、組成物、および方法は、約5%以内の、被験体におけるATIIIのレベルを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記方法は、30分未満またはこれに等しい時間で、25分未満またはこれに等しい時間で、20分未満またはこれに等しい時間で、15分未満またはこれに等しい時間で、または10分未満またはこれに等しい時間で、サンプル中のATIIIのレベルを測定するために使用され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、記載される方法は、被験体がATIII欠乏であるか否かを決定するために使用される。いくつかの実施形態において、記載される方法は、ヘパリンおよび/または外因性ATIIIの投与量を決定して、患者に投与するために使用される。
【0072】
いくつかの実施形態において、サンプル中のATIII尺度のレベルは、所定のコントロールまたはレベルと比較される。上記所定のコントロールまたはレベルは、ヘパリンに応答することが既知および/またはATIIIが欠乏していることが既知の被験体の集団から得られ得る。いくつかの実施形態において、所定のコントロール未満の値は、上記被験体はATIIIを欠乏しており、外因性ATIIIの投与から利益を得ると思われることを示す。いくつかの実施形態において、上記サンプル中のATIIIのレベルが所定のレベルより低い場合、外因性ATIIIが上記被験体に投与される。いくつかの実施形態において、所定のコントロールより高い値は、上記被験体はATIIIを欠乏しておらず、ヘパリン処置に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態において、上記サンプル中のATIIIのレベルが所定のコントロールより高い場合、ヘパリンが上記被験体に投与される。
【0073】
抗凝固剤で患者を処置する方法であって、上記方法は、血清、血漿、または血液サンプルを上記患者から得る工程;上記サンプルと、記載されるトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体とを接触させる工程;蛍光の増大を測定する工程;および上記蛍光の増大に基づいて、上記サンプル中のATIIIのレベルを決定する工程;ならびに上記サンプル中のATIIIの決定されたレベルに基づいて、上記患者にヘパリンおよび/または外因性ATIIIを投与する工程を包含する方法が記載される。
【0074】
F.実施形態の列挙
1.被験体におけるアンチトロンビン(ATIII)のレベルを決定するためのキットであって、上記キットは、
(a)第1のトロンビン特異的アプタマー、第1のハイブリダイゼーション配列、および蛍光標識を含む第1のシグナル伝達アプタマー;ならびに
(b)第2のトロンビン特異的アプタマー、第2のハイブリダイゼーション配列、およびクエンチャーを含む第2のシグナル伝達アプタマー、
を含み、ここで上記第1のおよび第2のハイブリダイゼーション配列は、互いに対して相補的であり、上記蛍光標識の蛍光は、上記第1のおよび第2のトロンビン特異的シグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合される場合にクエンチされる、キット。
【0075】
2.上記第1のトロンビン特異的アプタマーは、TBA15を含む、実施形態1に記載のキット。
【0076】
3. 上記第2のトロンビン特異的アプタマーは、TBA29を含む、実施形態1または2に記載のキット。
【0077】
4. 上記第1のおよび第2のハイブリダイゼーション配列は、長さが6~10個の核酸塩基である、実施形態1~3のいずれか1つに記載のキット。
【0078】
5. 上記第1のおよび第2のハイブリダイゼーション配列は、長さが9個の核酸塩基である、実施形態4に記載のキット。
【0079】
6. 上記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-GTCGTA-3’を含み、上記第2のハイブリダイゼーション配列は5’-TACGAC-3’を含むか、または上記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-TACGAC-3’を含み、上記第2のハイブリダイゼーション配列は5’-GTCGTA-3’を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のキット。
【0080】
7. 上記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-GTCGTAAGT-3’を含み、上記第2のハイブリダイゼーション配列は配列5’-ACTTACGAC-3’を含むか、または上記第1のハイブリダイゼーション配列は配列5’-ACTTACGAC-3’を含み、上記第2のハイブリダイゼーション配列は配列5’-GTCGTAAGT-3’を含む、実施形態6に記載のキット。
【0081】
8. 上記第1のおよび/または第2のシグナル伝達アプタマーは、リンカーを含み、上記リンカーは、上記トロンビン特異的アプタマーを上記ハイブリダイゼーション配列に接続する、実施形態1~7のいずれか1つに記載のキット。
【0082】
9. 上記リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、実施形態8に記載のキット。
【0083】
10. 上記PEGは、PEG6である、実施形態9に記載のキット。
【0084】
11. 上記蛍光標識は、FITC、フルオレセイン、ヘキサクロロフルオレセイン、ローダミン、カルボキシ-X-ローダミン、テトラメチルローダミン、IAEDANS、EDANS、クマリン、BODIPY FL、ルシファーイエロー、エオシン、エリスロシン、Texas Red、またはシアニンを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のキット。
【0085】
12. 上記クエンチャーは、DABCYL、BLACK HOLE QUENCHER、またはTAMRA化合物を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載のキット。
【0086】
13. トロンビンをさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のキット。
【0087】
14. 上記トロンビン、第1のシグナル伝達アプタマー、および第2のシグナル伝達アプタマーは、複合体を形成する、実施形態13に記載のキット。
【0088】
15. トロンビン;第1のトロンビン特異的アプタマー、第1のハイブリダイゼーション配列、および蛍光標識を含む第1のシグナル伝達アプタマー;ならびに第2のトロンビン特異的アプタマー、第2のハイブリダイゼーション配列、およびクエンチャーを含む第2のシグナル伝達アプタマーを含む複合体であって、ここで上記第1のおよび第2のハイブリダイゼーション配列は、互いに対して相補的であり、二重鎖を形成し、上記蛍光標識の蛍光はクエンチされる、複合体。
【0089】
16. トロンビンをさらに含む、実施形態15に記載の複合体。
【0090】
17. 被験体に由来するサンプル中のATIIIのレベルを決定する方法であって、上記方法は、
(a)上記サンプルを上記被験体から得る工程;
(b)実施形態15に記載の複合体を含む組成物と、上記サンプルとを接触させる工程;および
(c)上記組成物の蛍光の増大を測定する工程、
を包含し、ここで上記蛍光の増大は、上記サンプル中のATIIIのレベルに比例する、方法。
【0091】
18. 上記サンプルは、血清サンプル、血液サンプル、または血漿サンプルを含む、実施形態17に記載の方法。
【0092】
19. 上記蛍光の増大は、15分未満で測定される、実施形態17または18に記載の方法。
【0093】
20. 抗凝固剤で患者を処置する方法であって、上記方法は、
(a)上記患者におけるATIIIのレベルを決定する工程であって、ここで上記決定する工程は、
(i)血清、血漿、または血液サンプルを上記患者から得る工程;
(ii)実施形態15または16に記載の複合体を含む組成物と、上記サンプルとを接触させる工程;および
(iii)上記組成物の蛍光の増大を測定する工程であって、ここで上記蛍光の増大は、上記サンプル中のATIIIのレベルに比例する、工程、
を包含する、工程;ならびに
(b)工程(iii)において決定された上記サンプル中のATIIIのレベルに基づいて、上記患者に、ヘパリンおよび/または外因性ATIIIを投与する工程、
を包含する、方法。
【実施例】
【0094】
実施例1. 例示的シグナル伝達アプタマー
TBA15-F6(5’-GGTTGGTGTGGTTGG-(PEG)6-GTCGTA-FITC-3’)(配列番号13)、
TBA29-D6(5’-DABCYL-TACGAC-(PEG)6-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT-3’)(配列番号14)、
TBA15-F7(5’-GGTTGGTGTGGTTGG-(PEG)6-GTCGTAT-FITC-3’)(配列番号15)、
TBA29-D7(5’-Dabcyl-ATACGAC-(PEG)6-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT)(配列番号16)、
TBA15-F8(5’-GGTTGGTGTGGTTGG-(PEG)6-GTCGTAGT-FITC-3’)(配列番号17)、
TBA29-D8(5’-Dabcyl-ACTACGAC-(PEG)6-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT)(配列番号18)
TBA15-F9(5’-GGTTGGTGTGGTTGG-(PEG)6-GTCGTAAGT-FITC-3’)(配列番号19)、
TBA29-D9(5’-Dabcyl-ACTTACGAC-(PEG)6-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT-3’)(配列番号20)
TBA15-F10(5’-GGTTGGTGTGGTTGG-(PEG)6-GTCGTAAGCT-FITC-3’)(配列番号21)、
TBA29-D10(5’-Dabcyl-AGCTTACGAC-(PEG)6-AGTCCGTGGTAGGGCAGGTTGGGGTGACT)(配列番号22)
【0095】
実施例2. 試薬
全てのDNA(Integrated DNA technologies)を、-20℃においてTris-HCl緩衝液(Tris-アセテート 20mM、KCl 5mM、NaCl 140mM、MgCl2 1mM、CaCl2 1mM、pH=7.5)を用いて貯蔵した。
ヒトα-トロンビン(Haematologic Technologies, Inc.)を、50% グリセロール/水(v/v)中に溶解し、-20℃で貯蔵した。
【0096】
アンチトロンビン(Grifols Therapeutics Inc.)を、粉末として購入し、10mL 脱イオン水と混合し、10本のバイアルに分け、それを全て4℃において貯蔵した。その濃度は、正常ヒトアンチトロンビン濃度の>50倍であった。
【0097】
ヘパリンナトリウム塩(Santa Cruz biotechnology)を、4℃において貯蔵した。
【0098】
ヒト血清由来アルブミン(Sigma)を、4℃において貯蔵した。
【0099】
実施例3. トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の形成
トロンビンを、200nMの濃度において調製した。上記TBA15シグナル伝達アプタマーと上記TBA29シグナル伝達アプタマーとの間の比は、1:1であった。上記シグナル伝達アプタマーを、100nM、200nM、300nMおよび400nMの濃度で調製した。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を、上記トロンビンと、異なる濃度のシグナル伝達アプタマーとを合わせることによって形成した。各々に関して、上記トロンビンおよびシグナル伝達アプタマー溶液を、Tris-HCl緩衝液中、全容積100μLで室温において30分間、一緒にインキュベートした。コントロールに関しては、TBA15シグナル伝達アプタマー単独(コントロール1)、またはTBA15シグナル伝達アプタマー+TBA29シグナル伝達アプタマー(コントロール2)を使用した。蛍光分光法を、検出のために使用した。
【0100】
図3に示されるように、100nM濃度において、ピーク蛍光強度は、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体に関して3.80×10
5であり、I
FDTHRとして設定した。TBA15シグナル伝達アプタマー単独に関してのピーク蛍光強度は、1.029×10
6であり、I
0として設定した。TBA15-F9+TAB29-D9シグナル伝達アプタマーに関してのピーク蛍光強度は、1.011×10
6であり、I
FDとして設定した。上記TBA15シグナル伝達アプタマー単独の蛍光強度を、100%として正規化した。I
FD/I
0は、98.25%であった。上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の相対的蛍光強度(I
FDTHR/I
0)は、36.92%であった。
【0101】
図4に示されるように、200nM 濃度では、TBA15-F9単独に関してのピーク蛍光強度は、1.31×10
6であった。TBA15-F9+TBA29-D9に関してのピーク蛍光強度は1.23H10
6であり、2.66×10
5であった。TBA15-F9単独に関しての蛍光強度を100%として正規化し、I
0として設定した。TBA15-F9+TBA29-D9に関しての蛍光強度を、I
FDとして設定した。次いで、I
FD/I
0は、93.89%であった。上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の相対的蛍光強度(I
FDTHR/I
0)は、20.23%であった。
【0102】
図5に示されるように、300nM濃度では、TBA15-F9単独に関してのピーク蛍光強度は、2.36×10
6であった。TBA15-F9+TBA29-D9に関してのピーク蛍光強度は、2.06×10
6であった。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体に関してのピーク蛍光強度は、3.11×10
5であった。TBA15-F9単独の蛍光強度を、100%として正規化し、I
0として設定した。TBA15-F9+TBA29-D9に関しての蛍光強度を、I
FDとして設定した。TBA15-F9+TBA29-Dに関しての相対的蛍光強度(I
FD/I
0)は、87.29%であった。上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の相対的蛍光強度(I
FDTHR/I
0)は、13.17%であった。
【0103】
図6に示されるように、400nM濃度では、TBA15-F9単独に関してのピーク蛍光強度は、2.90×10
6であった。TBA15-F9+TBA29-D9に関してのピーク蛍光強度は、2.06×10
6であった。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体に関してのピーク蛍光強度は、3.36×10
5であった。TBA15-F9単独の蛍光強度を、100%として正規化し、I
0として設定した。TBA15-F9+TBA29-D9に関しての蛍光強度を、I
FDとして設定した。TBA15-F9+TBA29-Dに関しての相対的蛍光強度(I
FD/I
0)は、71.03%であった。上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体に関しての相対的蛍光強度(I
FDTHR/I
0)は、11.58%であった。
【0104】
これらの実験に基づいて、トロンビン 対 TBA15シグナル伝達アプタマー 対 TBA29シグナル伝達アプタマーの1:1:1比を、さらなる実験のために選択した(
図3~6)。
【0105】
実施例4. ハイブリダイゼーション配列
5つのハイブリダイゼーション配列(と相補的なハイブリダイゼーション配列)を、上記シグナル伝達アプタマーに伴う使用に関して試験した。上記ハイブリダイゼーション配列は、TBA15-F6+TBA29-D6、TBA15-F7+TBA29-D7、TBA15-F8+TBA29-D8、TBA15-F9+TBA29-D9、およびTBA15-F10+TBA29-D10に関して記載されるとおりのものであった。コントロールは、上記のとおりであった。
【0106】
上記TBA15シグナル伝達アプタマーおよび上記TBA29シグナル伝達アプタマーを、200nMの濃度において調製し、1:1の比で合わせた。トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を、上記シグナル伝達アプタマーと、種々の濃度のトロンビンとを合わせることによって形成した。アプタマー 対 トロンビンの比は、(1:1:0.1~1:1:1.5)であった。各々に関して、上記トロンビンおよびシグナル伝達アプタマー溶液を、Tris-HCl緩衝液中、全容積100μLで室温において30分間インキュベートした。コントロールに関しては、TBA15シグナル伝達アプタマー単独またはTBA15シグナル伝達アプタマー+TBA29シグナル伝達アプタマーを使用した。蛍光分光法を、検出のために使用した。
【0107】
アプタマーTBA15-F6およびTBA29-D6に関しては、異なるトロンビン濃度に関して特異的傾向は観察されなかった(
図7)。異なるトロンビン濃度に関して特異的傾向は観察されなかった。データは、上記2つのアプタマーが、上記トロンビンに結合しなかった、および/または上記2つのシグナル伝達アプタマーのハイブリダイゼーション配列が、二重鎖を形成できなかったことを示唆する。
【0108】
アプタマーTBA15-F7およびTBA29-D7に関しては、蛍光強度は減少し、トロンビン濃度は増大した(
図8)。TBA15-D7単独に関するピーク蛍光強度は、2.806×10
6であり、これを100%で正規化し、I
70として設定した。TBA15-F7+TBA29-D7(1:1)に関するピーク蛍光強度は、2.768×10
6であり、これをI
FD7として設定した。TBA15-F7+TBA29-D7+トロンビン(1:1:1)のピーク蛍光強度は、1.95×10
6であり、これをI
FDTHR7として設定した。I
FD7/I
70=98.64%であった。I
FDTHR7/I
70=69.49%。データは、上記2つのシグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合し、上記ハイブリダイゼーション配列が二重鎖を形成したことを示す。FITCの蛍光を、dabcylによってクエンチした。溶液中のTBA15-F7+TBA29-D7に関しては、蛍光は、クエンチされないようであった。これは、トロンビンへの結合が、ハイブリダイゼーション配列による二重鎖形成および蛍光のクエンチに必要であったことを示す。
【0109】
アプタマーTBA15-F8およびTBA29-D8に関しては、蛍光強度は減少し、トロンビン濃度は増大した(
図9)。TBA15-D8単独に関するピーク蛍光強度は2.76×10
6であり、これを100%で正規化し、I
80として設定した。TBA15-F8+TBA29-D8(1:1)に関するピーク蛍光強度は、2.54×10
6であり、これをI
FD8として設定した。TBA15-F8+TBA29-D8+トロンビン(1:1:1)のピーク蛍光強度は1.79×10
6であり、これをI
FDTHR8として設定した。I
FD8/I
80=92.03%であった。I
FDTHR8/I
80=64.86%。データは、上記2つのシグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合し、上記ハイブリダイゼーション配列が二重鎖を形成したことを示す。FITCの蛍光を、dabcylによってクエンチした。上記TBA15-F6およびTBA15-F7と比較すると、トロンビンの存在下では、TBA15-F8およびTBA29-F8でクエンチの改善が観察された。I
FD8/I
80におけるわずかな減少は、トロンビンの非存在下では、TBA15-F8およびTBA29-F8が相互作用し得るが、弱いことを示す。
【0110】
アプタマーTBA15-F9およびTBA29-D9に関しては、蛍光強度は減少し、トロンビン濃度は増大した(
図10)。TBA15-D9単独に関するピーク蛍光強度は2.81×10
6であり、これを100%で正規化し、I
90として設定した。TBA15-F9+TBA29-D9(1:1)に関するピーク蛍光強度は2.35×10
6であり、これをI
FD9として設定した。TBA15-F9+TBA29-D9+トロンビン(1:1:1)のピーク蛍光強度は0.85×10
6であり、これをI
FDTHR9として設定した。I
FD9/I
90=83.63%であった。I
FDTHR9/I
90=30.25%。データは、上記2つのシグナル伝達アプタマーがトロンビンに結合し、上記ハイブリダイゼーション配列が二重鎖を形成したことを示す。FITCの蛍光を、dabcylによってクエンチした。TBA15-F9およびTBA29-F9は、8塩基のハイブリダイゼーション配列を有するシグナル伝達アプタマーと比較すると、改善されたクエンチを示した。TBA15-F8およびTBA29-F8と同様に、TBA15-F9およびTBA29-F9は、トロンビンの非存在下である程度のクエンチを示した。
【0111】
アプタマーTBA15-F10およびTBA29-D10に関しては、蛍光強度は減少し、トロンビン濃度は増大した(
図11)。TBA15-D10単独に関するピーク蛍光強度は2.30×10
6であり、これを100%で正規化し、I
100として設定した。TBA15-F10+TBA29-D10(1:1)に関するピーク蛍光強度は0.775×10
6であり、これをI
FD10として設定した。TBA15-F10+TBA29-D10+トロンビン(1:1:1)のピーク蛍光強度は0.16×10
6であり、これをI
FDTHR10として設定した。I
FD10/I
100=33.69%であった。I
FDTHR10/I
100=6.95%。データは、上記2つのシグナル伝達アプタマーが上記トロンビンに結合し、上記ハイブリダイゼーション配列が二重鎖を形成したことを示す。FITCの蛍光を、dabcylによってクエンチした。TBA15-F10およびTBA29-F10は、9塩基のハイブリダイゼーション配列を有するシグナル伝達アプタマーと比較すると、より大きなクエンチを示した。TBA15-F10およびTBA29-F10はまた、トロンビンの非存在下で顕著なクエンチを示した。
【0112】
上記結果に基づいて、TBA15-F9+TBA29-D9を、さらなる実験に使用した。
【0113】
実施例5. ヘパリン選択性
上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体がヘパリンおよびヒト血清タンパク質の存在下でATIIIを正確に検出できる能力を試験した。200nM TBA15-F9のみまたは200 nM TBA15-F9+TBA29-D9+トロンビン(1:1:1)を、コントロールとして使用した。複合体形成後、ヘパリンの漸増濃度(0.25g/Lから2.00g/L)を添加して、30分間、室温でインキュベートした。ヒト血漿中のヘパリンの正常濃度は、1.5~3.0 g/Lである。次いで、1940 nM ATIIIを添加し、蛍光分光法を検出のために使用した。1940nM ATIII単独での蛍光強度を、100%に正規化した。蛍光強度は、ヘパリンの存在によって影響を及ぼされなかった(
図14および17)。データは、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体がヘパリンと反応しないこと、ヘパリンの存在がATIII検出に悪影響を及ぼさなかったことを示す。
【0114】
実施例6. ヘパリン結合抗原(HBA)選択性
ヘパリンと同様に、ATIIIアッセイによっても、HBA感度を分析した。HBAは、ヘパリン活性およびヘパリンアッセイに干渉し得る、ある特定の細菌によって作製されるタンパク質である。200 nM TBA15-F9、TBA29-D9およびトロンビン(1:1:1)を、室温において30分間インキュベートして、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を形成した。次いで、種々の濃度のHBAを上記複合体に添加し、30分間、室温でインキュベートした。次いで、ATIIIを上記反応物に添加し、蛍光分光法によって検出した。蛍光強度は、ヘパリン結合抗原の存在によって影響を及ぼされなかった。これは、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体がヘパリンと反応せず、HBAの存在がATIII検出に悪影響を及ぼさないことを示す(
図15)。
【0115】
同様に、ATIIIアッセイによっても、ヒト血清アルブミン感度を分析した。アルブミンは、血漿中で循環している最も遍在するタンパク質であり、内皮細胞上のグリコカリックスの表面活性に影響を及ぼす。アルブミンは、グルコース-アミノグリカン、具体的にはヘパリンと相互作用する。HSAに対する感度を、HBAに対する感度と同じ様式で試験した。複合体形成後に、1940nM ATIIIおよび漸増濃度のHSAを添加した。1940nM ATIII単独での蛍光強度を、100%に正規化した。HSAの存在は、蛍光強度に影響を及ぼさなかった。これは、HBAが反応に悪影響を及ぼさず、HSAの存在がATIII検出に悪影響を及ぼさないことを示す(
図16)。
【0116】
実施例7. アンチトロンビン応答曲線
種々の濃度のATIIIを使用して、ATIIIを定量するにあたって、上記トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体の有用性を試験した。ATIIIの漸増濃度をトロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体に添加し、蛍光を蛍光分光法によって検出した。各サンプルにつき3回反復した(
図2)。
【0117】
アンチトロンビンを、TBA15-F9-TBA29-D9-トロンビン複合体へと滴定した。上記複合体濃度は、200nMであった。TBA15-F9:TBA29-D9:トロンビンの比は、1:1:1であった。アンチトロンビン濃度は、10nMから1960nMへと増大した。TBA15-F9単独のコントロールの蛍光強度を、100%として正規化し、I0として設定した。図のy軸に設定したI/I0は、溶液のみの中のFITCの強度と比較した各サンプルの強度を意味する。各濃度を、3回反復した。データは、上記シグナル伝達アプタマー複合体が、サンプル中のATIIIを定量するために使用され得ることを示す。
【0118】
実施例8. アンチトロンビン(ATIII)およびヘパリンの組み合わせ
ヘパリンがアンチトロンビンとヘパリンとの間の反応を促進する能力を、分析した。200nM TBA15-F9、TBA29-D9およびトロンビン(1:1:1)を、30分間、室温でインキュベートして、トロンビン-シグナル伝達アプタマー複合体を形成した。漸増濃度のアンチトロンビンを上記複合体に添加し、室温で30分間インキュベートし、蛍光を蛍光分光法によって検出した。各サンプルにつき3回反復した。
【0119】
実施例9. 動力学試験
A. TBA15-F9+TBA29-D9+トロンビン動力学。 10μLの2μM TBA15-F9および10μLの2μM トロンビンを調製し、78μL Tris-HCl中で合わせた。10μLの2μM TBA29-D9を、蛍光をモニターしながら上記溶液に添加した。その反応は、約160秒間で完了した(
図12)。
【0120】
B. 複合体+アンチトロンビン動力学
【0121】
12μLの2μM TBA15-F9、12μLの2μM TBA29-D9および12μLの2μM トロンビンを、76μL Tris-HCl中で、30分間、室温において合わせた。次いで、8μLの28.47μM ATIIIを、蛍光をモニターしながら上記溶液へと滴定した。その反応は、約600秒間で完了した(
図13)。
【配列表】
【国際調査報告】