(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ランダムコポリマーゴムを製造するためのアニオン分散重合プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 236/10 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
C08F236/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522594
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020055602
(87)【国際公開番号】W WO2021076640
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッゲマン、デイヴィッド、エム.
(72)【発明者】
【氏名】クヘル、ジェームズ、ジェイ.、3世
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,テレンス、イー.
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02P
4J100AS02Q
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA34
4J100HA53
4J100HC33
4J100HD07
4J100JA29
(57)【要約】
実施形態は、共役ジエン及びビニル芳香族モノマー並びに重合プロセス中にその場で形成される分散剤を利用して非水性分散液中で行われるアニオン性ゴム重合プロセスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン分散重合によってコポリマーを生成するためのプロセスであって、
第1の重合反応器に、第1の共役ジエンモノマーを含み、第1のビニル芳香族モノマーを含んでもよい、第1のモノマー装入量と、有機リチウム重合開始剤と、非水性分散媒体と、を添加することを含み、
前記第1のモノマー装入量が重合して、分散剤の第1のブロックを形成し、前記第1のブロックが、前記非水性分散媒体に可溶性であり、
総モノマーの少なくとも8重量%が、前記第1のモノマー装入量によって提供され、前記総モノマーが、全てのモノマー装入量の合計であり、
第2の重合反応器に、前記第1のブロックと、前記非水性分散媒体と、第2のビニル芳香族モノマー及び第2の共役ジエンモノマーを含む、第2のモノマー装入量と、有機リチウム重合開始剤と、を添加することを含み、
前記第2のモノマー装入量を重合して前記コポリマーを形成し、前記コポリマーが、少なくとも30重量%の前記第2のビニル芳香族モノマーと少なくとも10重量%の前記第2の共役ジエンモノマーとの重合反応生成物であり、
前記第2の重合反応器が、前記コポリマー及び前記分散剤の第2のブロックを含む出口流を生成し、前記第2のブロックが前記非水性分散媒体に不溶性であり、前記第1のブロックと連結して前記分散剤を形成し、
前記分散剤が、前記非水性分散媒体中に前記コポリマーを分散させる、プロセス。
【請求項2】
カップリング剤を前記出口流に添加することを更に含み、前記カップリング剤が前記コポリマーに結合して前記コポリマーのムーニー粘度を増加させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記総モノマーが、10~20重量%の前記第1のモノマー装入量を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記出口流が、15~30重量%の固形分を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記カップリング剤の添加後に、前記第2の重合反応器から前記分散したコポリマー及び前記分散剤を下流の回収容器内で回収することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のモノマー装入量が、75~98重量%の第1の共役ジエンモノマー、及び2~25重量%の第1のビニル芳香族モノマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記カップリング剤がトリメリット酸トリオクチルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記カップリング剤が、非水性分散媒体と共に添加される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非水性分散媒体が、脂肪族アルカンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記非水性分散媒体が、イソヘキサンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機リチウム重合開始剤が、ブチルリチウムである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の共役ジエンモノマー及び前記第2の共役ジエンモノマーがブタジエンを含み、前記第1のビニル芳香族モノマー及び前記第2のビニル芳香族モノマーがスチレンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第1の重合反応器に添加される前記有機リチウム重合開始剤が、第1の重合反応器及び第2の重合反応器に添加される前記有機リチウム重合開始剤の総量の20~40重量%を提供する、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
ランダム化剤が、前記第1の重合反応器、前記第2の重合反応器、又はその両方に添加される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ランダム化剤がオリゴマーオキソラニルプロパンを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
改質剤が、前記第1の重合反応器、前記第2の重合反応器、又はその両方に添加される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記コポリマーが、75000~500000g/molの数平均分子量を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記コポリマーが、120~160のムーニー粘度を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、共役ジエン及びビニル芳香族モノマー並びに重合プロセス中にその場で形成される分散剤を利用して非水性分散液中で実施される、アニオン性ゴム重合プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ランダムゴムコポリマー、例えば、35%を超えるスチレン含有量を有するランダムスチレン-ブタジエンゴム(SBR)は、ヘキサン又はその他の脂肪族溶媒などのSBRに不溶性の溶媒とは対照的に、芳香族又は脂環式溶媒中の溶液重合を介してより典型的には重合される。したがって、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,891,947号は、非水性分散液中でスチレンモノマー及びブタジエンモノマーを重合して、35~70重量%のスチレンモノマーを有するランダムSBRゴムを生成することを開示している。本プロセスでは、重合は、第1の重合反応器内に可溶性分散剤が形成され、第2の重合反応器内で不溶性分散剤が形成される2つの重合反応器アニオン分散重合プロセスによって実施される。
【0003】
本プロセスは、少なくとも20%の固形分を有する分散生成物を得ることができるが、これは、工業的必要性の観点から望ましい。より高い固形分含有量に加えて、ランダムSBR及びランダムSBRを組み込んだ生成物の耐摩耗性を高めることができるため、第2の重合反応器の生成物中のランダムSBRの分子量及びムーニー粘度を増加させることが更に望ましい。しかしながら、ゲル化及び反応器の汚損は、分散生成物の分子量を増加させる場合に生じる可能性がある。このゲル化は、連続プロセスで更に悪化する。
【0004】
したがって、より高い固形分含有量でより高い分子量のランダムSBRをもたらす改善された反応器アニオン分散重合プロセスに対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、アニオン分散重合プロセスにおいて、固形分含有量の増加及び分子量の増加というこれらの二重の必要性を満たす。具体的には、本実施形態は、2つの反応器内でアニオン分散重合を利用してランダムSBRを生成するためのプロセスに関する。理論に束縛されるものではないが、第1の重合反応器に少なくとも8重量%の総モノマーが添加されることを確実にすることで、ゲル化及び反応器の汚損を引き起こすことなく、本プロセスが固形分含有量の増加及び分子量の増加を得ることを確実にするのに重要な役割を果たす。
【0006】
一実施形態によれば、アニオン分散重合によってコポリマーを生成するためのプロセスが提供される。本プロセスは、第1の重合反応器に、第1の共役ジエンモノマーを含み、第1のビニル芳香族モノマーを含んでもよい第1のモノマー装入量と、有機リチウム重合開始剤と、非水性分散媒体と、を添加することを含む。第1のモノマー装入量を重合して、分散剤の第1のブロックを形成するが、第1のブロックは、非水性分散媒体に可溶性であり、少なくとも8重量%の総モノマーが第1のモノマー装入量によって提供され、総モノマーは、全てのモノマー装入量の合計(例えば、第1のモノマー装入量と第2のモノマー装入量との合計)である。本プロセスは、第2の重合反応器に、第1のブロックと、非水性分散媒体と、第2のビニル芳香族モノマー及び第2の共役ジエンモノマーを含む第2のモノマー装入量と、有機リチウム重合開始剤と、を添加することを更に含む。第2のモノマー装入量を重合してコポリマーを形成するが、コポリマーは、少なくとも30重量%の第2のビニル芳香族モノマーと少なくとも10重量%の第2の共役ジエンモノマーとの重合反応生成物である。第2の重合反応器は、コポリマー生成物及び分散剤の第2のブロックを含む出口流を生成し、第2のブロックは非水性分散媒体に不溶性であり、第1のブロックと連結して分散剤を形成する。分散剤は、非水性分散媒体中にコポリマーを分散させる。本プロセスは、カップリング剤を出口流に添加することを更に含んでもよく、カップリング剤はコポリマーに結合してコポリマーのムーニー粘度を増加させる。
【0007】
本明細書に記載された実施形態の更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、ある程度において、この説明により当業者は容易に理解し得る、又は、以下の「発明を実施するための形態」、「特許請求の範囲」、及び添付図面など本明細書に記載された実施形態を実施することにより認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、本明細書に含まれた図面と併せて読むことにより、最良に理解され得る。
【0009】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による、アニオン分散重合プロセスの概略説明である。
【0010】
図面に記載される実施形態は、本来説明のためのものであり、「特許請求の範囲」によって定義される実施形態を限定することを意図するものではない。更に、図面の個々の特徴は、「発明を実施するための形態」を考慮することにより完全に明らかとなり、理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
【0012】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」又は「コポリマーゴム」とは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと少なくとも1つのビニル芳香族モノマーとの連続共重合によって調製されるコポリマーを意味する。「コポリマー」は、2つ又は3つ以上のモノマーの重合反応生成物を包含してもよい。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ランダムコポリマー」は、コポリマーの5重量%以下が10以上のビニル芳香族モノマー(VAM)単位のVAMブロックからなる、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマー(VAM)とのコポリマーである。同様に、「ランダムSBR」は、コポリマーの5重量%以下が10以上のスチレン単位のスチレンブロックからなる、ブタジエンとスチレンモノマーとのコポリマーである。
【0014】
本明細書で使用される場合、「第1のブロック」、「Aブロック」、「ブロックA」、及び「A」は、分散剤の部分的な成分として互換的に使用されてもよい。同様に、本明細書で使用される場合、「第2のブロック」、「Bブロック」、「ブロックB」、及び「B」は、分散剤の部分的な成分として互換的に使用されてもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「装入量」、「マニホールド」、及び「供給」は、第1の重合反応器及び/又は第2の重合反応器に導入される反応物流として互換的に使用されてもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、「パーセント(%)固形分」は、以下の式によって定義される。
【0017】
%固形分=((ポリマー重量)/溶液の総重量)*100%。
【0018】
本開示の実施形態は、アニオン分散重合によってコポリマーを生成するためのプロセスに関する。
図1の実施形態を参照すると、本プロセス1は、第1の重合反応器10に、第1の共役ジエンモノマーを含み、第1のビニル芳香族モノマーを含んでもよい第1のモノマー装入量14を添加することを含む。
図1は、1つの流れ(第1のモノマー装入量14)に供給されている第1の共役ジエンモノマー及び第1のビニル芳香族モノマーを示しているが、モノマーは、別個の供給流で第1の重合反応器10に送達され得ることが企図される。
図1に更に示すように、第1の重合反応器10の第2の供給流12は、有機リチウム重合開始剤及び非水性分散媒体を含む。再び、
図1の実施形態は、1つの流れ(例えば、流れ12)に供給される供給成分である有機リチウム重合開始剤及び非水性分散媒体を示しているが、これらの供給成分は、別個の供給流で第1の重合反応器10に送達され得ることが企図される。
【0019】
再び
図1を参照すると、追加の成分、例えば、以下に更に記載されるようにランダム化剤又は改質剤は、第1の重合反応器10に供給されてもよい。一実施形態では、ランダム化剤は、第1のモノマー装入量14流中に、第1の共役ジエンモノマー及び第1のビニル芳香族モノマーと共に送達される。更なる実施形態では、ランダム化剤は、第1の重合反応器に、下記の第2の重合反応器に、又はその両方に添加されてもよい。
【0020】
動作中、第1の重合反応器10中の第1のモノマー装入量14は重合され、分散剤の第1のブロック16を形成するが、第1のブロック16は、非水性分散媒体に可溶性である。以下に更に記載されるように、総モノマーの少なくとも8重量%は、第1のモノマー装入量14によって提供され、総モノマーは、第1のモノマー装入量14と第2のモノマー装入量22との合計である。更なる実施形態では、少なくとも10重量%の総モノマーが、第1のモノマー装入量14によって提供される。言い換えれば、第1のモノマー装入量14は、第1の重合反応器10に8重量%~20重量%の総モノマーを送達してもよい、又は10~20重量%、又は8重量%~20重量%を送達してもよい。1つ以上の実施形態では、第1のモノマー装入量は、75~98重量%の第1の共役ジエンモノマー、及び2~25重量%の第1のビニル芳香族モノマーを含む。1つ以上の実施形態では、第1のモノマー装入量は、75~100重量%の第1の共役ジエンモノマー、及び0~25重量%の第1のビニル芳香族モノマーを含む。
【0021】
第1の重合反応器10中で少なくとも8重量%の総モノマーを維持することにより、第1の重合反応器10において十分な量の第1のブロック16が生成されることを確実にする。理論に限定されるものではないが、シードポリマーと見なすことができる生成された第1のブロック16の量を制御することは、第2の重合反応器20の生成物の組成及び粘度を制御し、第2の反応器の分子量が増加することによるゲル化の懸念と、第2の重合反応器20の下流のカップリング剤の任意のインライン添加中のゲル化の懸念と、を低減するのに役立つ。
【0022】
再び
図1を参照すると、第1のブロック16は、続いて第2の重合反応器20に供給される。第1のブロック16に加えて、第2のビニル芳香族モノマー及び第2の共役ジエンモノマーを含む第2のモノマー装入量22は、第2の重合反応器20に供給される。ほとんどの実施形態では、第1のビニル芳香族モノマー及び第2のビニル芳香族モノマーは、組成的に同じであり、第1の共役ジエンモノマー及び第2の共役ジエンモノマーもまた、組成的に同じである。しかしながら、モノマー組成物は、代替的な実施形態では変化し得ると企図される。
【0023】
再び
図1を参照すると、有機リチウム重合開始剤18もまた、第2の重合反応器20に供給される。一実施形態では、本有機リチウム重合開始剤18は、第1のブロック16及び有機リチウム重合開始剤18を含む組み合わされた流れ19を生成するために第2の重合反応器20の上流の第1のブロック16と混合されているように、
図1に示されている。代替的実施形態では、有機リチウム重合開始剤18は、第1のブロック16とは別に第2の重合反応器20に供給されてもよいことが企図される。第1の重合反応器10への供給と同様に、追加の成分、例えば、以下に更に記載されるようにランダム化剤又は改質剤は、第2の重合反応器20に供給されてもよい。一実施形態では、改質剤は、第2のモノマー装入量22流中に、第2の共役ジエンモノマー及び第2のビニル芳香族モノマーと共に送達される。更なる実施形態では、改質剤は、第1の重合反応器に、第2の重合反応器に、又はその両方に添加されてもよい。
【0024】
第2の重合反応器20内で、第2のモノマー装入量22の第2のビニル芳香族モノマー及び第2の共役ジエンモノマーを重合してコポリマーを形成するが、これは、少なくとも30重量%の第2のビニル芳香族モノマーと少なくとも10重量%の第2の共役ジエンモノマーとの重合反応生成物である。更なる実施形態では、コポリマーは、少なくとも33重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも38重量%の第2のビニル芳香族モノマー、及び少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25%、少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%の第2の共役ジエンモノマーを含んでもよい。
【0025】
再び
図1を参照すると、コポリマーに加えて、第2の重合反応器20の出口流24はまた、分散剤の第2のブロックを含む。分散剤の第2のブロックは、非水性分散媒体に不溶性であり、第1のブロックと連結されて、分散剤を形成する。分散剤は、出口流24内の非水性分散媒体中にコポリマーを分散させる。出口流24内で、重合反応器が終止していないため、コポリマーは、リビングコポリマーと見なされる場合がある。1つ以上の実施形態では、出口流24は、15~30重量%の固形分、15~25重量%の固形分、又は20~25重量%の固形分を含んでもよい。
【0026】
本開示において有用な分散剤は、化学原子価によって連結された少なくとも2つのブロックを含有する種々のポリマーから選択され、当該ブロック(第1のブロック)のうちの少なくとも1つが、非水性分散媒体に可溶性であり、当該ブロック(第2のブロック)のうちの少なくとも別のものが、非水性分散媒体に不溶性であるという点で、ポリブロックコポリマーである。不溶な第2のブロックは、例えばファン・デル・ワールス力によって、物理的吸着プロセスによりコポリマーに結合するためのアンカーセグメントを提供する。したがって、アンカーとして首尾良いものとするためのそれらの主な基準は、分散媒体において比較的不混和性であることである。分散剤の可溶な第1のブロックは、その他の不溶性コポリマーの周囲にシースを提供し、凝集した塊又は高度に合体した塊ではなく、コポリマー生成物を多数の小さな個別の粒子として維持する。不溶な第2のブロックは、必要に応じて、複数のペンダント基を含んでもよい。
【0027】
分散剤の可溶な第1のブロックは、出口流24中の分散剤及びコポリマーを含む総分散コポリマーの少なくとも8重量パーセントを構成する。分散剤の不溶な第2のブロックを、SBR型ランダムコポリマーの連続重合中にその場で調製し、したがって、第2のブロックは、分散共重合プロセス中に形成されるコポリマーと同じ組成を有する。総分散コポリマー組成物は、8重量パーセント~20重量パーセントの可溶な第1のブロック及び約80~約92重量パーセントの不溶な第2のブロック及びコポリマー、又は具体的には10~12重量パーセントの第1のブロック並びに88~約90重量パーセントの第2のブロック及びコポリマーを含有する。第1のブロックの数平均分子量Mnは、500~200,000g/mol、又は1,000~100,000g/molである。第2のブロックの数平均分子量は、コポリマーと同じである、すなわち、20,000~2,500,000g/mol、又は75,000~500,000g/molである。
【0028】
可溶な第1のブロックは、75~100重量部、又は75~98部の共役ジエンモノマーと、0~25重量部、又は2~25部のビニル芳香族モノマーと、から形成されたポリマーであり、全てのポリマーブロック又はコポリマーブロックが炭化水素分散媒体に可溶性である。不溶な第2のブロックは、30~70重量部の共役ジエンモノマーと、35~70重量部のビニル芳香族モノマーと、の共重合によって、調製され得る。その場で調製され、SBRコポリマーの調製に使用される分散剤は、コポリマーとのブレンドとして回収される。分散剤は、出口流24内の分散剤及びコポリマーを含む分散剤コポリマーの総重量の約2~50重量%の範囲の量で調製され、また存在する。
【0029】
第1の重合反応器10及び第2の重合反応器20における連続重合反応は、0℃~155℃の温度範囲で実行され得る。一実施形態では、反応温度は90℃~130℃であるが、これは、発熱重合反応により自然に起こり得る。このような連続重合における反応器滞留時間は、反応温度、モノマー濃度、触媒系、及び触媒レベルによって変化し得る。一般に、この反応器の滞留時間は、約10分から最大60分、又は15分から45分まで変化し得る。酸素及び水分を含まない環境で本重合を実施することが望ましい。
【0030】
再び
図1を参照すると、出口流24が第2の重合反応器20を出た後、カップリング剤26を出口流24に添加してもよい。一実施形態では、カップリング剤は、非水性分散媒体と共に添加される。動作中、カップリング剤26は、出口流24のコポリマーに結合して、コポリマーの分子量及びムーニー粘度を増加させる。示されるように、カップリング剤26は、分散したコポリマー及び分散剤を第2の重合反応器20から回収する、下流回収容器30の上流の出口流24に供給されてもよい。第2の重合反応器20の下流であるが回収容器30の上流でのカップリング剤26の添加は、カップリング剤26を「インライン」で供給するように説明されてもよい。カップリング剤26を出口流24に添加すると、カップリング剤26は分散液と反応する。これによって、カップリング剤が反応し、コポリマーに結合し得る。
【0031】
カップリング剤とコポリマーとの反応のための更なる滞留時間を提供することに加えて、回収容器30を使用して、コポリマーを終止させてもよい。したがって、追加の成分を回収容器30に添加してもよい。例えば、1つ以上の重合停止剤(例えば、イソプロパノール又は水)を添加してもよい。増量剤及び酸化防止剤などの追加の添加剤も添加されてよい。
【0032】
回収容器30を出る結合コポリマー32は、水蒸気脱溶媒化又はドラム乾燥技術によって非水性分散媒体(例えば、炭化水素溶媒)から回収され得る。したがって、より高い固形分レベルに起因するエネルギー節約を提供する。粒径の適切な制御により、コポリマーは、濾過又は遠心分離技術によって回収され得る。
【0033】
結合コポリマー
【0034】
結合コポリマーは、少なくとも30重量%の第2のビニル芳香族モノマー及び少なくとも10重量%の第2の共役ジエンモノマーを含んでもよい。更なる実施形態では、結合コポリマーは、少なくとも33重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも38重量%の第2のビニル芳香族モノマー及び少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25%、少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%の第2の共役ジエンモノマーを含んでもよい。結合コポリマーの数平均分子量は、75000~500000g/molであってもよい。結合コポリマーは、120~160のムーニー粘度を有してもよい。
【0035】
反応器
【0036】
第1の重合反応器10及び第1の重合反応器20の下流の第2の重合反応器20は、当業者によく知られている種々の企図された反応容器を含んでもよい。重合中、第1の重合反応器10及び第2の重合反応器20にいくらかの形態の撹拌又はかきまぜを提供することが望ましい場合がある。その結果、実施形態は、
図1の第1の重合反応器10及び第2の重合反応器20に示されるような連続撹拌槽型反応器を含み得る。
【0037】
モノマー
【0038】
第1の共役ジエンモノマー及び第2の共役ジエンモノマーは、単結合によって分離された少なくとも2つの二重結合を有する、モノマー組成物を意味する。本明細書に記載されたプロセスは、20個未満の炭素原子(すなわち、4~19個の炭素)、4~12個の炭素、又は4~8個の炭素を含有する少なくとも1つの共役ジエンモノマーを使用してもよい。共役ジエンモノマーの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ヘキサジエンが挙げられる。2つ以上の共役ジエンの混合物もまた、共重合に利用されてよい。一実施形態では、第1の共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンモノマーである。更なる実施形態では、第1の共役ジエンモノマー及び第2の共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンを含む。
【0039】
第1のビニル芳香族モノマー及び第2のビニル芳香族モノマーは、アニオン性開始剤によって重合することができる任意のビニル又はα-メチルビニル芳香族化合物を含んでもよい。この目的のための特に有用なモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、α-メチルビニルトルエン、ビニルジフェニル、及び芳香族核が最大8個の炭素原子までのその他のアルキル誘導体を有し得る対応する化合物などの、ビニルアリール化合物及びα-メチル-ビニルアリール化合物である。これらのモノマーのホモポリマーはヘキサンなどの直鎖アルカン溶媒に可溶性であり、ジエンを有するそれらのコポリマーもまた可溶性であるため、特定のビニル芳香族モノマーは、この分散重合プロセスでの使用に適していない。不適切なモノマー型の具体例は、t-ブチルスチレンである。1つ以上の実施形態では、第1の共役ジエンモノマー及び第2の共役ジエンモノマーはブタジエンを含み、第1のビニル芳香族モノマー及び第2のビニル芳香族モノマーはスチレンを含む。
【0040】
非水性分散媒体
【0041】
本重合プロセスで使用される非水性分散媒体は、脂肪族炭化水素であり、好ましくは、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンを含む直鎖脂肪族炭化水素、及びイソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、及びイソノナンを含む分岐鎖脂肪族炭化水素等、及びこれらの混合物である。
【0042】
本プロセスにおける分散媒体として使用するための特定の溶媒は、イソヘキサンである。溶媒は、最大100%の非環式又は直鎖脂肪族炭化水素、好ましくは、最大70%の非環式脂肪族炭化水素又は直鎖脂肪族炭化水素からなり得るが、総溶媒の最大30重量%は、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、並びにベンゼン及びトルエンなどの芳香族炭化水素などの少なくとも1つの脂環式炭化水素によって提供され得る。SBR中のVAM単位のより高い割合により、非脂肪族直鎖炭化水素が溶媒混合物中により高い割合で存在するのを可能にする。
【0043】
溶媒は、ハンセン溶解度パラメータが7.6(cal/mL)1/2、7.5(cal/mL)1/2、又は7.4(cal/mL)1/2未満になるように選択されてもよい。ハンセン溶解度パラメータを計算するための方法は、Handbook of Solubility Parameters、Allan F.M.BartonPh.D.,CRCPress,1983に提供されている。
【0044】
有機リチウム重合開始剤
【0045】
有機リチウム重合開始剤触媒系は、SBRコポリマー及び分散剤の調製に使用するためのアニオン性開始剤であり、例えば、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重合に有用であるとして当該技術分野で公知である、任意の有機リチウム触媒である。モノマー系と分散剤との重合を開始する好適な有機リチウム重合開始剤としては、式R(Li)を有する有機リチウム触媒が挙げられるが、式中、Rは、1~20個のヒドロカルビルラジカル、好ましくは、R基あたり2~8個の炭素原子を表し、xは1~4の整数、好ましくは1又は2である。典型的なR基としては、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、及びアルキルアリールラジカルなどの脂肪族ラジカル及び脂環式ラジカルが挙げられる。
【0046】
上記式中での置換のためのR基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-アミル、イソアミル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、シクロペンチル-メチル、シクロヘキシル-エチル、シクロペンチル-チル、メチル-シクロペンチルエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2,2,1-ビシクロへプチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、イソ-プロピルシクロヘキシル等の一級基、二級基及び三級基が挙げられる。
【0047】
その他の好適なリチウム触媒の具体例としては、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、p-トリルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、4-ブチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロヘキシルブチルリチウム、1,4-ジリチオブタン、1,10-ジリチオ-デカン、1,20-ジリチオエイコサン、1,4-ジリチオベンゼン、1,4-ジリチオナフタレン、1,10-ジリチオアントラセン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,3,5-トリリチオペンタン、1,5,15-トリリチオエイコサン、1,3,5-トリリチオシクロヘキサン、1,3,5,8-テトラリチオデカン、1,5,10,20-テトラリチオエイコサン、1,2,4,6-テトラリチオシクロヘキサン、4,4’-ジリチオビフェニル等が挙げられる。
【0048】
好ましくはR(Li)xなどの1つ以上のリチウム化合物を含有する、異なる有機リチウム重合開始剤の混合物もまた用いられ得る。一実施形態では、本開示で使用するための有機リチウム重合開始剤は、n-ブチルリチウムである。
【0049】
用いることができるその他の有機リチウム重合開始剤は、リチウムジアルキルアミン、リチウムジアルキルホスフィン、リチウムアルキルアリールホスフィン、リチウムジアリールホスフィン、及びトリブチル-スズ-リチウムなどのトリアルキルスズリチウムである。
【0050】
有機リチウム重合開始剤は、典型的には、総モノマー100グラム当たり0.2ミリモル~20ミリモルの有機リチウム重合開始剤の範囲の量で、反応容器内に装入される。有機リチウム重合開始剤の全ての量は、100グラムのモノマー、又は即時プロセスにおける成分の比によって示され、触媒的に有効な量、すなわち、分散剤のブロックと開示されたモノマー系との重合を開始及び実施して本開示のコポリマーを生成するために有効な量である、と見なされる。
【0051】
例えば、モノマー100グラム当たり0.5~200ミリモルの有機リチウム重合開始剤を使用して、分散剤の第1のブロックを調製してもよい。次に、0.2~20ミリモルの有機リチウム重合開始剤の第2の流れを、第2の重合反応器に添加して、分散剤の第2のブロックとビニル芳香族モノマー及び共役ジエンモノマーからのコポリマーとを同時に生成する。コポリマーを、別個のブロックと見なしてもよい。1つ以上の実施形態では、第1の重合反応器及び第2の重合反応器に添加される有機リチウム重合開始剤の総量の10~50重量パーセントが、第1の重合反応器に添加される。更なる実施形態では、第1のブロックの調製には、20~40重量パーセント、又は25~35重量パーセントの有機リチウム重合開始剤が使用される。逆に、残りの50~90重量パーセントの有機リチウム重合開始剤は、第2のブロック及びコポリマーのその場での調製の間に装入される。更なる実施形態では、60~80重量パーセント、又は65~75重量パーセントの有機リチウム重合開始剤が、第2のブロック及びコポリマーのその場での調製の間に使用される。
【0052】
ランダム化剤
【0053】
ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのランダム共重合を促進するのに好適な種々のランダム化剤組成物が企図される。これらは、オリゴマーオキソラニルプロパン、テトラヒドロフラン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチルエーテル、ジテトラヒドロフリルプロパン等を含んでもよい。一実施形態では、ランダム化剤は、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパンを含む。別の実施形態では、ランダム化剤は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第9,868,795号に記載されているようなジテトラヒドロフリルプロパンのメソ形態を含む。ランダム化剤は、一般に、有機リチウム重合開始剤に対するランダム化剤が1:100~4:1のモル比の範囲で、重合系に用いられてもよい。
【0054】
改質剤
【0055】
本明細書で使用される場合、改質剤は、分子量分布(MWD=Mw/Mw)を広げるか、又はコポリマーのビニル含有量を調整することによって、コポリマーの最終的な特性に影響を与える添加剤を包含する。一実施形態では、改質剤は、1,2-ブタジエンを含む。1,2-ブタジエンをゲル抑制剤と見なしてもよく、そのため、分子量分布に影響を与えるために使用され得る。多くの場合、触媒と反応し、カップリングに悪影響を及ぼす可能性があるため、これは低レベルで使用される。
【0056】
カップリング剤
【0057】
カップリング剤の場合、コポリマーの分子量及びムーニー粘度を増加させるために、コポリマーに結合するのに好適な種々の成分が考慮される。1つ以上の実施形態では、カップリング剤は、非有機金属芳香族トリエステルカップリング剤であってもよい。好適な非有機金属芳香族トリエステルカップリング剤は、以下の式Iによって定義されてもよい。
【化1】
【0058】
式中、R、R’、及びR”は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。非限定的な特定の例としては、トリメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステルカップリング剤の代表的な例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、又はトリノニル1,2,4-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリメリット酸トリイソノニルである。
【0059】
別の実施形態では、非有機金属芳香族トリエステルカップリング剤は、以下の式IIのものである。
【化2】
【0060】
式中、R、R’、及びR”は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。非限定的な特定の例としては、トリメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステルカップリング剤の代表的な例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリ-2-エチルヘキシルヘミメリテート、又はトリノニル1,2,3-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリイソノニルヘミメリテートである。
【0061】
別の実施形態では、非有機金属芳香族トリエステルカップリング剤は、以下の式IIIのものである。
【化3】
【0062】
式中、R、R’、及びR”は、独立して、1~20個の炭素を含有するヒドロカルビル基から選択される。非限定的な特定の例としては、トリメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリプロピル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリブチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリペンチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリヘプチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリシクロヘキシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリオクチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、トリドデシル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、ブチルジメチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート、及びブチルジエチル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートが挙げられる。非有機金属トリメリット酸エステルカップリング剤の代表的な例は、トリ(2-エチルヘキシル)1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリ-2-エチルヘキシルトリメシテート、又はトリノニル1,3,5-ベンゼントリカルボキシレートとしても知られているトリイソノニルトリメシテートである。
【0063】
代表的実施形態では、カップリング剤はトリメリット酸トリオクチルを含む。
【0064】
別の実施形態では、カップリング剤は、金属ハロゲン化物、半金属ハロゲン化物、アルコキシシラン、及びアルコキシスタナンを含む。
【0065】
1つ以上の実施形態では、有用な金属ハロゲン化物又は半金属ハロゲン化物は、式(1)R1
nM1X4-n、式(2)M1X4、及び式(3)M2X3によって表される化合物を含む群から選択されてもよく、式中、R1は同じであるか又は異なり、1~約20の炭素数を有する一価有機基を表し、式(1)及び式(2)におけるM1はスズ原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子を表し、M2はリン原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、nは0~3の整数を表す。
【0066】
式(1)によって表される代表的な化合物としては、ハロゲン化有機金属化合物が挙げられ、式(2)及び(3)によって表される化合物としては、ハロゲン化金属化合物が挙げられる。
【0067】
M1がスズ原子を表す場合、式(1)によって表される化合物は、例えば、トリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド等であり得る。更に、式(2)によって表される化合物としては、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド等が挙げられ得る。
【0068】
M1がケイ素原子を表す場合、式(1)によって表される化合物は、例えば、トリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン等であり得る。更に、式(2)によって表される化合物としては、ケイ素テトラクロリド、ケイ素テトラブロミド等が挙げられ得る。M1がゲルマニウム原子を表す場合、式(1)によって表される化合物は、例えば、トリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリド等であり得る。更に、式(2)によって表される化合物としては、ゲルマニウムテトラクロリド、ゲルマニウムテトラブロミド等が挙げられ得る。式(3)によって表される化合物としては、リントリクロリド、リントリブロミド等が挙げられ得る。1つ以上の実施形態では、金属ハロゲン化物及び/又は半金属ハロゲン化物の混合物が使用され得る。
【0069】
1つ以上の実施形態では、有用なアルコキシシラン又はアルコキシスタナンは、式(4)R1
nM1(OR)4-nによって表される化合物を含む群から選択されてもよく、式中、R1は同じであるか又は異なり、1~約20の炭素数を有する一価有機基を表し、M1はスズ原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子を表し、ORは、Rが一価有機基を表すアルコキシ基を表し、nは0~3の整数を表す。
【0070】
式(4)によって表される代表的な化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、テトラメチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラエトキシスズ、テトラメトキシスズ、及びテトラプロポキシスズが挙げられる。
【0071】
ゴム組成物
【0072】
回収された結合コポリマー生成物は、それらの分子量及び組成に応じて、タイヤ及び種々のゴム成形品などの種々の物品に使用され得る。
【実施例】
【0073】
図1を参照すると、直列に接続された2つの20ガロン反応器を含む試験設備において、重合を実施した。以下の表1に示されるように、第1のモノマー装入量流14及び供給流12を介して供給成分を第1の重合反応器10の底部へと計量した。得られた第1のブロック16を、第2の重合反応器20に連続的に供給し、そこに、以下の追加の成分を供給流18及び第2のモノマー装入量22により添加した。
【0074】
【0075】
得られた分散液24を回収容器30に連続的に供給した。カップリング剤TOTMを、回収容器30の上流の第2の重合反応器20の出口で移送ラインに添加した。
【0076】
ジャケット温度を調整して、第2の重合反応器20の終端で、モノマーを98~100%ポリマーに変換するのを支持するように、内部温度を維持した。
【0077】
回収容器30内で、ポリマーに対して約0.5%w/wのレベルで、イソプロパノールを用いてコポリマーを終止させた。次に、酸化防止剤(Santoflex 6PPD)を0.75%w/wのレベルでポリマーに添加し、BO125 Hyprene(Ergon Refining,Inc.)を37.5%w/wでポリマーに添加し、分散液を2時間混合した。次に、セメントを蒸気脱溶媒化し、残留水を0.75%以下のレベルまで乾燥させて最終生成物を得た。この例(実施例1)の特性を以下の表2に提供する。
【0078】
表2に示すように、実施例1のムーニー値及びGPC値を、従来の溶液重合連続SBR(比較例1)について比較する。
【0079】
【0080】
示されるように、実施例1で得られた全ての値は、溶液重合によって生成される比較例1のゴムと同等であり、しかしながら、溶液重合プロセスで生成される固形分の量は、本発明のアニオン分散重合プロセスを利用した実施例1で生成された固形分よりも低い。
【0081】
表3の以下の実施例を以下のように調製した。
【0082】
【0083】
以下の表4を参照すると、実施例2及び3は、回収容器30内で少なくとも2.5分間の滞留時間を有した後に取得された結合測定値を有した。実施例4及び5は、回収容器30の上流で取得された結合測定値を有しており、したがって、これらの実施例は、結合滞留時間が少なかった。比較例1と同様に、比較例2(CE2)は、溶液重合によって生成されたSBRである。
【0084】
【表4】
%Mon.=モノマー% %Sty.=スチレン% %Cat.=触媒% Cpld=結合 Disp.Rtg.=分散評価
【0085】
示されるように、回収容器内で滞留時間が増加した実施例2及び3は、実施例4及び5よりも高い結合ムーニー粘度、及び対照よりわずかに低いムーニー粘度を有した。分散評価について、実施例2~5は全て、以下に定義される分散評価に従って良好な分散から優れた分散を得た。CE2と比較して、実施例2~5は全て、溶液重合CE2よりも高い総固形分を得ることが望ましい。更に、実施例2~5は全て、溶液重合CE2よりも高いビニル含有量を有した。
【0086】
表5の以下の実施例を以下のように調製した。
【0087】
【0088】
以下の表6を参照すると、実施例6のムーニー値及びGPC値が示されている。以下の表7を参照すると、実施例6は、回収容器30の上流で取得された結合測定値を有し、したがって、本実施例は、結合滞留時間が比較的少なかった。
【0089】
【0090】
【0091】
示されるように、第1のモノマー装入量中にブタジエンのみを含む実施例6は、実施例1、4、及び5と同じ量の固形分を得て、実施例2及び3のようにより多くの量の固形分を達成し、その全ては、第1のモノマー装入量中のブタジエン及びスチレンの両方を含んだ。
【0092】
試験方法
【0093】
ムーニー粘度:本明細書にて開示されたポリマーのムーニー粘度を、大型ロータ、1分間の予備加熱時間、及び4分間の運転時間でAlpha Technologies製ムーニー粘度計を使用して、100℃で測定した。より具体的には、ロータが始動する前に1分間100℃に各ポリマーを予備加熱することにより、ムーニー粘度を測定した。ロータが始動して4分後に、トルクとして、各試料のムーニー粘度を記録した。4分間の測定を完了した後、トルク緩和を記録した。t80を、各ポリマーのトルクの80%を減衰させるのに必要な時間とした。本方法は、ASTM D-1646に従う。
【0094】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
【0095】
ポリマーの分子量(Mn、Mw及びMp-ピーク、GPC曲線のMn)並びに分子量分布(Mw/Mn)が、GPCによって決定された。本明細書にて開示されたGPC測定値は、ポリスチレン基準及び生成したポリスチレンのMark-Houwink定数により較正される。
【0096】
フーリエ変換赤外線分光法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy(FTIR))
【0097】
ポリマーのスチレン%及びビニル%を、FTIRによって決定した。具体的には、試料を二硫化炭素中に溶解させて、Perkin Elmer製のSpectrum GX機器でFTIRを実施した。
【0098】
分散評価
【0099】
以下の評価システムを使用して、本プロセスにおける分散生成物を評価した。分散生成物を透明なガラス瓶に入れて、肉眼で評価し、その後、以下のスコアを提供した。
【表8】
【0100】
添付の「特許請求の範囲」で定義される本開示の範囲から逸脱することなく修正及び変形が可能であることが明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましい、又は特に有利なものとして特定されるが、本開示はこれらの態様に必ずしも限定されていないことが企図される。
【0101】
特許請求の範囲:
【国際調査報告】