IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-551757FLT3を標的とする抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】FLT3を標的とする抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221206BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221206BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221206BHJP
   C07K 14/55 20060101ALN20221206BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20221206BHJP
   C07K 14/56 20060101ALN20221206BHJP
   C07K 14/525 20060101ALN20221206BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20221206BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61P35/02
A61K39/395 N
C07K14/55
C07K14/54
C07K14/56
C07K14/525
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522653
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2020055480
(87)【国際公開番号】W WO2021076554
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/915,120
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】バルアー,ヘマンタ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,グレゴリー ピー
(72)【発明者】
【氏名】チョン,アン エフ
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ,アシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジュオ,ゾン ショーン
(72)【発明者】
【氏名】マッケイド,トーマス ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA14
4C085CC23
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA04
4H045DA16
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
対となって細胞上のFLT3を標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを備えるタンパク質と、かかるタンパク質を含む医薬組成物と、がんの処置のためを含めて、かかるタンパクおよび医薬組成物を使用する治療方法とが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変ドメイン(VH)と;
(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項2】
前記VHの前記CDR3が配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項3】
前記VHの前記CDR3が配列番号50のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項4】
前記VHが配列番号37と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号38と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項5】
前記VHが配列番号53のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号42のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項6】
前記VHおよび前記VLが、それぞれ、配列番号9および10;13および10;17および10;9および22;9および26;9および30;9および34;37および38;41および42;45および42;または49および42
のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗原結合部位。
【請求項7】
(a)それぞれ、配列番号59、63、および54のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号86、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項8】
前記VHが、それぞれ、配列番号78、63、79のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ前記VLが、それぞれ、配列番号80、66、67のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項7に記載の抗原結合部位。
【請求項9】
前記VHが、それぞれ、配列番号62、63、64のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ前記VLが、配列番号65、66、67のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む、請求項7に記載の抗原結合部位。
【請求項10】
前記VHが配列番号76と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号77と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗原結合部位。
【請求項11】
前記VHが配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号84のアミノ酸配列を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項12】
前記VHおよび前記VLが、それぞれ、配列番号68および69;72および73;または76および77のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗原結合部位。
【請求項13】
(a)それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項14】
(a)それぞれ、配列番号97、99、および100のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号101、102、および103のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項15】
(a)それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項16】
(a)それぞれ、配列番号109、110、および111のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号112、113、および114のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項17】
(a)それぞれ、配列番号117、118、および119のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号120、121、および122のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項18】
(a)それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項19】
(a)それぞれ、配列番号62、33、および127のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号128、129、および130のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項20】
(a)それぞれ、配列番号132、133、および134のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号65、66、および46のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位。
【請求項21】
請求項13~15および18~19のいずれか一項に記載の抗原結合部位と競合する抗原結合部位。
【請求項22】
表面プラズモン共鳴法(SPR)によって測定して、20nMよりも小さいかまたはこれに等しい解離定数(K)でヒトFLT3と結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項23】
SPRによって測定して10nMよりも小さいかまたはこれに等しいKでヒトFLT3と結合する、請求項1~6、13、14、および18のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項24】
配列番号25のアミノ酸配列を含むヒトFLT3変異体と結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項25】
配列番号18のアミノ酸配列を含むヒトFLT3変異体と結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項26】
カニクイザルFLT3と結合する、請求項1~16および18~25のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項27】
FLT3との結合にあたりFLT3Lと競合しない、請求項1~15および17~26のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項28】
単鎖可変領域断片(scFv)として存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項29】
前記scFvが、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の抗原結合部位。
【請求項30】
先行請求項のいずれか一項に記載の抗原結合部位を含むタンパク質。
【請求項31】
抗体重鎖定常領域をさらに含む、請求項30に記載のタンパク質。
【請求項32】
前記抗体重鎖定常領域がヒトIgG重鎖定常領域である、請求項31に記載のタンパク質。
【請求項33】
前記抗体重鎖定常領域がヒトIgG1重鎖定常領域である、請求項32に記載のタンパク質。
【請求項34】
前記抗体重鎖定常領域の各ポリペプチド鎖が、配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項32または33に記載のタンパク質。
【請求項35】
前記抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む、請求項32~34のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項36】
前記抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eから選択される、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む、請求項32~35のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項37】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含み;かつ前記抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む、請求項32~36のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項38】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するK360EおよびK409Wの置換を含み;かつ前記抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するQ347R、D399VおよびF405Tの置換を含む、請求項37に記載のタンパク質。
【請求項39】
前記抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するY349Cの置換を含み;かつ前記抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するS354Cの置換を含む、請求項37または38に記載のタンパク質。
【請求項40】
請求項30~39のいずれか一項に記載のタンパク質および薬物部分を含む抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項41】
前記薬物部分が、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38からなる群から選択される、請求項40に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項42】
請求項1~29のいずれか一項に記載の抗原結合部位およびサイトカインを含む免疫サイトカイン。
【請求項43】
前記サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNF、およびIFNαからなる群から選択される、請求項42に記載の免疫サイトカイン。
【請求項44】
請求項1~29のいずれか一項に記載の抗原結合部位およびCD3と結合する抗原結合部位を含む二重特異性T細胞エンゲージャー。
【請求項45】
(a)請求項1~29のいずれか一項に記載の抗原結合部位と;
(b)膜貫通ドメインと;
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと
を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項46】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、FLT3、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、およびCD154の膜貫通領域から選択される、請求項45に記載のCAR。
【請求項47】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12の機能性シグナル伝達ドメインを含む一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項45または46に記載のCAR。
【請求項48】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激受容体の機能性シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む、請求項45~47のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項49】
前記共刺激受容体が、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、CD83に結合するリガンド、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項48に記載のCAR。
【請求項50】
請求項45~49のいずれか一項に記載のCARをコードする分離された核酸。
【請求項51】
請求項50に記載の分離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項52】
請求項50に記載の核酸または請求項51に記載の発現ベクターを含む免疫エフェクター細胞。
【請求項53】
請求項45~49のいずれか一項に記載のCARを発現する免疫エフェクター細胞。
【請求項54】
T細胞である、請求項52または53に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項55】
前記T細胞がCD8T細胞、CD4T細胞、またはNKT細胞である、請求項54に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項56】
NK細胞である、請求項52または53に記載の免疫エフェクター細胞。
【請求項57】
請求項30~39のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項40または41に記載の抗体-薬物コンジュゲート、請求項42または43に記載の免疫サイトカイン、請求項44に記載の二重特異性T細胞エンゲージャー、または請求項52~56のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞;および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項58】
がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項30~39のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項40または41に記載の抗体-薬物コンジュゲート、請求項42または43に記載の免疫サイトカイン、請求項44に記載の二重特異性T細胞エンゲージャー、請求項52~56のいずれか一項に記載の免疫エフェクター細胞、または請求項57に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項59】
前記がんが血液悪性腫瘍である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記血液悪性腫瘍が白血病である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記がんが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成、急性Tリンパ芽球性白血病、および急性前骨髄球性白血病からなる群から選択される、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記がんがFLT3を発現する、請求項58~61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年10月15日に出願された米国仮出願第62/915,120号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本願には、ASCIIテキスト形式のコンピュータ読み取り可能な形式(CRF)の配列表が参照によりにその全体が組み入れられる。配列表のテキストファイルは「14247-473-888_SEQ_LISTING」という名称で、2020年10月5日に作成したものであり、サイズは152,327バイトである。
【0003】
本発明は、対となって細胞上のFLT3を標的とする抗原結合部位を形成することができる抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを備えるタンパク質と、かかるタンパク質を含む医薬組成物と、がんの処置のためを含めて、かかるタンパクおよび医薬組成物を使用する治療方法とを提供する。
【背景技術】
【0004】
がんは、相当な研究努力および科学的進歩が本疾患を処置するために文献で報告されているにもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。成人において最も頻繁に診断されるがんの一部としては、前立腺がん、乳がん、および肺がんが挙げられる。血液悪性腫瘍は、固形がんよりも頻度は少ないが、低い生存率を有する。これらのがんに対する現在の処置オプションは、すべての患者にとって有効なわけではなく、かつ/または実質的な有害な副作用を有するおそれがある。他の種類のがんも、既存の治療オプションを使用して処置するには難しい課題のままである。
【0005】
FLK2、STK1、またはCD135とも呼ばれるFms関連チロシンキナーゼ3(FLT3)は、クラスIII受容体チロシンキナーゼである。FLT3は、細胞外領域に5つの免疫グロブリン様ドメインを含む膜貫通タンパク質である。FLT3はFLT3LGの結合によって活性化され得るが、このことによってFLT3のホモ二量体化および自己リン酸化が誘導される。活性化されたFLT3は次いで、Akt、ErkおよびmTORなどの複数の細胞質エフェクター分子をリン酸化および活性化し、それによって細胞増殖を促進するとともにアポトーシスを減少させる。FLT3の構成的活性化をもたらす突然変異は、急性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病で観察されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FLT3と結合する抗体が開発中であるが、FLT3関連がんのための新しくかつ有用な処置に対する当分野での必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトFLT3と結合しかつカニクイザルFLT3と結合してもよい抗原結合部位を提供する。これらの抗原結合部位は、FLT3の細胞外ドメイン中の種々のエピトープと結合し、それらの一部は、かかる結合にあたりFLT3リガンド(FLT3L)と競合しない。本明細書に開示の抗原結合部位の一部は、当技術分野での既知の1つまたは複数の抗FLT3抗体によって標的とされるエピトープと比較して、ユニークなエピトープと結合する。かかる抗原結合部位を含有するタンパク質およびタンパク質コンジュゲート、例えば抗体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性T細胞エンゲージャー(T-cell engagers)(BiTE)、ならびに免疫サイトカインとともに、かかる抗原結合部位を含有するタンパク質[例えば、キメラ抗原受容体(CAR)]を発現する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)も、がんなどのFLT3関連疾患を処置するのに有用である。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含む相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)を含む重鎖可変ドメイン(VH)と;
(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、VHのCDR3が配列番号5のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHのCDR3が配列番号50のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHが、配列番号37と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号38と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHが配列番号53のアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号42のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHおよびVLが、それぞれ、配列番号9および10;13および10;17および10;9および22;9および26;9および30;9および34;37および38;41および42;45および42;または49および42のアミノ酸配列を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号59、63、および54のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号86、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0011】
ある特定の実施形態では、VHが、それぞれ、配列番号78、63、79のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつVLが、それぞれ、配列番号80、66、67のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHが、それぞれ、配列番号62、63、64のCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつVLが、配列番号65、66、67のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHが、配列番号76と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、かつVLが、配列番号77と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHが配列番号29のアミノ酸配列を含み、かつVLが配列番号84のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、VHおよびVLが、それぞれ、配列番号68および69;72および73;または76および77のアミノ酸配列を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、
(a)それぞれ、配列番号97、99、および100のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号101、102、および103のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、
(a)それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号109、110、および111のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号112、113、および114のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号117、118、および119のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号120、121、および122のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号62、33、および127のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号128、129、および130のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は:
(a)それぞれ、配列番号132、133、および134のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと;
(b)それぞれ、配列番号65、66、および46のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLと
を含む、FLT3と結合する抗原結合部位を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、上に開示の抗原結合部位と競合する抗原結合部位を提供する。
【0021】
前述の態様のある特定の実施形態では、抗原結合部位が、表面プラズモン共鳴法(SPR)によって測定して20nMよりも小さいかまたはこれに等しい解離乗数(K)でヒトFLT3と結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合部位が、SPRによって測定して10nMよりも小さいかまたはこれに等しいKでヒトFLT3と結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合部位が、配列番号25のアミノ酸配列を含むヒトFLT3変異体と結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合部位が、配列番号18のアミノ酸配列を含むヒトFLT3変異体と結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合部位がカニクイザルFLT3と結合する。ある特定の実施形態では、抗原結合部位が、FLT3との結合にあたりFLT3Lと競合しない。
【0022】
ある特定の実施形態では、抗原結合部位が単鎖可変領域断片(scFv)として存在する。ある特定の実施形態では、scFvが、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の抗原結合部位を含むタンパク質を提供する。ある特定の実施形態では、タンパク質が抗体重鎖定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域がヒトIgG重鎖定常領域である。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域がヒトIgG1重鎖定常領域である。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の各ポリペプチド鎖が、配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の少なくとも1つのポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eから選択される、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含み;かつ抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439から選択される1つまたは複数の位置に、配列番号21に対する1つまたは複数の突然変異を含む。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するK360EおよびK409Wの置換を含み;かつ抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するQ347R、D399VおよびF405Tの置換を含む。ある特定の実施形態では、抗体重鎖定常領域の一方のポリペプチド鎖が、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するY349Cの置換を含み;かつ抗体重鎖定常領域の他方のポリペプチド鎖は、EUナンバリングシステムに従って番号づけされた、配列番号21に対するS354Cの置換を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示のタンパク質および薬物部分を含む抗体-薬物コンジュゲートを提供する。ある特定の実施形態では、薬物部分が、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38からなる群から選択される。
【0026】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の抗原結合部位およびサイトカインを含む免疫サイトカインを提供する。ある特定の実施形態では、サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNF、およびIFNαからなる群から選択される。
【0027】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の抗原結合部位およびCD3と結合する抗原結合部位を含む二重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は:
(a)本明細書に開示の抗原結合部位と;
(b)膜貫通ドメインと;
(c)細胞内シグナル伝達ドメインと
を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0029】
ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインが、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、FLT3、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、およびCD154の膜貫通領域から選択される。ある特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12の機能性シグナル伝達ドメインを含む一次シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激受容体の機能性シグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、共刺激受容体が、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、CD83に結合するリガンド、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0030】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示のCARをコードする分離された核酸を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の分離された核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の核酸または発現ベクターを含む免疫エフェクター細胞を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示のCARを発現する免疫エフェクター細胞を提供する。ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞がT細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞がCD8T細胞、CD4T細胞、またはNKT細胞である。ある特定の実施形態では免疫エフェクター細胞がNK細胞である。
【0034】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、二重特異性T細胞エンゲージャー、または免疫エフェクター細胞;および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に開示の、タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン、二重特異性T細胞エンゲージャー、免疫エフェクター細胞、または医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0036】
ある特定の実施形態では、がんが血液悪性腫瘍である。ある特定の実施形態では、血液悪性腫瘍が白血病である。ある特定の実施形態では、がんが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成、急性Tリンパ芽球性白血病、および急性前骨髄球性白血病からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、がんがFLT3を発現する。
【0037】
本発明のこれらおよびその他の態様および利点を、以下の図、発明を実施するための形態および特許請求の範囲によって例示する。
【0038】
本発明は、以下の図面を参照することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、hFLT3に結合するマウスハイブリドーマ上清から収集された抗体のSPRプロファイルを示す一連のセンソグラムである。
図2図2は、hFLT3に結合するマウスmAbサブクローンから収集された抗体のSPRプロファイルを示す一連のセンソグラムである。
図3図3は、可溶性FLT3リガンドの濃度を飽和させることによる、候補抗体がFLT3-発現EOL-1がん細胞と結合する能力の減少を図示する、棒グラフである。
図4-1】図4A~4Cは、抗FLT3抗体1158の、FLT3-発現細胞株であるRMA-hFLT3(図4A)、RMA-cFLT3(図4B)、およびREH(図4C)への結合を示す線グラフである。
図4-2】同上。
図5図5は、T227M突然変異を有するFLT3を発現したMOLM-13細胞への、抗FLT3抗体1158の結合を示す線グラフである。
図6-1】図6A~6Dは、TriNKET F3’-1158およびその親モノクローナル抗体の存在下での、FLT3-発現がん細胞株であるEOL-1(図6A)、REH(図6B)、RS4-11(図6C)、およびMV4-11(図6D))のNK細胞媒介性溶解を示す棒グラフである。
図6-2】同上。
図7図7A~7Bは、FLT3リガンドの非存在下(図7A)または存在下(図7B)での、TrinKET F3’-1158およびその親モノクローナル抗体によるFLT3リン酸化を示す棒グラフである。図7AのFLT3リガンド試料が陽性対照となる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、ヒトFLT3と結合しかつカニクイザルFLT3と結合してもよい抗原結合部位を提供する。これらの抗原結合部位は、FLT3の細胞外ドメイン中の種々のエピトープと結合し、いくつかのこれらの抗原結合部位は、かかる結合にあたりFLT3リガンド(FLT3L)と競合しない。かかる抗原結合部位を含有するタンパク質およびタンパク質コンジュゲート、例えば抗体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、ならびに免疫サイトカインとともに、かかる抗原結合部位を含有するタンパク質[例えば、キメラ抗原受容体(CAR)]を発現する免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞)も、がんなどのFLT3関連疾患を処置するのに有用である。
【0041】
本発明は、がん細胞上のFLT3と結合する抗原結合タンパク質と、かかるタンパク質を含む医薬組成物と、がんの処置のためを含めて、かかるタンパク質および医薬組成物を使用する治療法とを提供する。本発明の種々の態様について下のセクションに記載する;しかし、特定の一セクションに記載されている本発明の態様は、特定のいずれのセクションにも限定されるものではない。
【0042】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句について、下に定義する。
【0043】
本明細書で使用される「a」および「an」という用語は、「1つまたは複数」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数形を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する、免疫グロブリン分子の部分を指す。ヒト抗体では、抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の高度に多岐にわたる3つのストレッチは、「超可変領域」と呼ばれており、「フレームワーク領域」または「FR」として知られるより保存的な隣接しているストレッチどうしの間に、挿入されている。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域どうしの間におよびこれに隣接して天然で見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間で互いに相対して配置されて、抗原結合表面を形成する。抗原結合表面は、結合抗原の三次元表面に対して相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。ラクダおよび軟骨魚類などのある特定の動物では、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」をもたらす単一の抗体鎖によって形成される。抗原結合部位は、インタクトな抗体中に、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合断片中に、または、単一ポリペプチド内で重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインに接続するペプチドリンカーを使用した、scFvなどの組み換えポリペプチド中に、存在することができる。本明細書に開示の重鎖または軽鎖の可変領域のすべてのアミノ酸位置は、Kabatナンバリングに従って番号づけされている。
【0045】
抗原結合部位のCDRは、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991)、Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)、およびMacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)に記載の方法によって決定することができる。これらの定義により決定されるCDRは通常には、互いに対して比較して、アミノ酸残基の重複または部分集団を含む。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996)およびMartin A., Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains, in Antibody Engineering, Kontermann and Dubel, eds., Chapter 31, pp. 422-439, Springer-Verlag, Berlin (2001)によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、「CDR」という用語は、Kabat et al., J. Biol. Chem. 252, 6609-6616 (1977)およびKabat et al., Sequences of protein of immunological interest. (1991)によって定義されるCDRである。ある特定の実施形態では、抗体の重鎖CDRおよび軽鎖CDRは、異なる協定を使用して定義される。例えば、ある特定の実施形態では、重鎖CDRは、MacCallum(上掲)に従って定義され、軽鎖CDRは、Kabat(上掲)に従って定義される。CDRH1、CDRH2およびCDRH3は、重鎖CDRを表し、CDRL1、CDRL2およびCDRL3は、軽鎖CDRを表す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の方法および組成物によって処置される生物体を指す。かかる生物体としては、好ましくは、それらに限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ科動物、ネコ科動物等)が挙げられるが、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果を達成するのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回または複数の投与、適用または投薬量で投与してもよく、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図するものではない。本明細書で使用される場合、「処置すること」という用語には、状態、疾患、障害等の改善またはそれらの症状の軽快をもたらす任意の効果、例えば、緩和すること、軽減すること、調節すること、軽快させることもしくは排除することが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤と不活性担体または活性担体との組合せを指し、これにより、組成物が、インビボ(in vivo)またはエクスビボでの診察用途または治療用途に特に適したものとなっている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(例えば、油/水または水/油エマルジョンなどの)、および種々の種類の湿潤剤などの、標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、例えば、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, PA [1975]を参照されたい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指し、この塩は、対象に投与する場合、本発明の化合物またはその活性な代謝産物もしくは残留物を供給することができる。当業者に知られるように、本発明の化合物の「塩」は、無機酸または有機酸および塩基に由来することができる。例示的な酸としては、それらに限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容されるものではないが、本発明の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において用いることができる。
【0051】
例示的な塩基としては、それらに限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)の水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)の水酸化物、アンモニア、および式NW の化合物(式中、Wは、Cアルキルである)等が挙げられる。
【0052】
例示的な塩としては、それらに限定されないが:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸、トシル酸塩、ウンデカン酸塩等が挙げられる。塩の他の例としては、Na、NH 、およびNW (式中、WはCアルキル基である)等などの適切なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが挙げられる。
【0053】
治療用途の場合、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものとして企図される。しかし、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において、用途が見出される場合もある。
【0054】
本明細書で使用される場合、「FLT3」(FLK2、STK1、またはCD135としても知られる)とは、Uniprot受託番号P36888のタンパク質および関連するアイソフォームを指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「FLT3L」(FLT3リガンドとしても知られる)とは、Uniprot受託番号P49771のタンパク質および関連するアイソフォームを指す。
【0056】
本明細書全体を通して、組成物が特定の構成成分を有する(having)、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、または方法(processes)および方法(methods)が特定の工程を有する(having)、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、列挙される構成成分から本質的になるかまたはそれらからなる本発明の組成物が存在すること、ならびに、列挙される処理工程から本質的になるかまたはそれらからなる本発明による方法(processes)および方法(methods)が存在することが、付加的に、企図される。
【0057】
一般的事項として、パーセンテージを明記する組成物は、特に指定がない限り、重量による。さらに、変数が定義を伴わない場合には、当該変数の先の定義が優先する。
【0058】
本発明の種々の特性および態様について、下でより詳細に論じる。
【0059】
I. 抗原結合部位
一態様では、本発明は、ヒトFLT3と結合する抗原結合部位を提供する。例示的な抗原結合部位のVH、VL、CDR、およびscFvの配列を表1に列記する。CDR配列は、Chothiaナンバリングスキームに従って特定されている。
【0060】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0061】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、表1に開示の抗体のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)と、表1に開示の同じ抗体のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、表1に開示の抗体のVH配列およびVL配列の、Kabat[Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, NIH Publication No. 91-3242, Bethesda)を参照されたい]、Chothia[例えば、Chothia C & Lesk A M, (1987), J Mol Biol 196: 901-917を参照されたい]、MacCallum[MacCallum R M et al., (1996) J Mol Biol 262: 732-745を参照されたい]により決定される、または当技術分野で知られる他の任意のCDR決定方法により決定される、重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3とを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、表1に開示の抗体の重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3と、軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3とを含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、12H10.G7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB87またはGB95に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号10と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号3または12と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB88またはGB96に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号10と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号15または16と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB89またはGB97に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号10と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号19または20と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB90およびGB98に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号22と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号23または24と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB91およびGB99に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号26と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号27または28と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB92またはGB100に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号30と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号31または32と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB93またはGB101に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号34と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号35または36と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0070】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB94またはGB102に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号38と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号39または40と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0071】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB102 D101Eに関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号43または44と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0072】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB102 M34Iに関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号47または48と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、GB102 M34I/D101Eに関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および50のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および50のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号51または52と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0074】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、ヒト化12H10.G7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0075】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、ヒト化12H10.G7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号56のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号57と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0076】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、ヒト化12H10.G7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号58のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号11、4、および55のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0077】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、14A5.E8に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号61と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0078】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、mAb 1551または1552に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号69と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号70または71と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0079】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、mAb 1553または1554に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号72のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号73と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号62、63、および64のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号65、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号74または75と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0080】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、mAb 1689に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号76のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号77と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号78、63、および79のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号80、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号78、63、および79のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号80、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位はscFvとして存在し、ここで、scFvは、配列番号81または82と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0081】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、ヒト化14A5.E8に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号84と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号59、63、および54のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号59、63、および54のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号86、66、および67のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0082】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、11F4.B9に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号90と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、ヒト化11F4.B9に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号94と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号87、88、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号91、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0084】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、4A4.A3に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号95のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号96と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号97、99、および100のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号101、102、および103のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号97、99、および100のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号101、102、および103のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0085】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、4A4.H7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号104のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号105と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号87、98、および89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号106、92、および93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0086】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、15A11.C8に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号107のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号108と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号109、110、および111のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号112、113、および114のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号109、110、および111のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号112、113、および114のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0087】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、12C9.E5に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号115のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号116と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号117、118、および119のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号120、121、および122のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号117、118、および119のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号120、121、および122のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、1A2.A3に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号124と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号87、98、89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号106、92、93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号87、98、89のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号106、92、93のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、4H2.E3に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号126と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号62、33、および127のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号128、129、および130のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号62、33、および127のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号128、129、および130のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0090】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、14H8.E7に関連する。例えば、ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、配列番号131のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVHと、配列番号83と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むVLとを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号132、133、および134のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号65、66、および46のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号132、133、および134のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVHと、(b)それぞれ、配列番号65、66、および46のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVLとを含む。
【0091】
前述の実施形態のそれぞれでは、FLT3と一緒に結合するVH配列および/またはVL配列は、FLT3に結合するそれらの能力に有意に影響を与及ぼすことなく、VHおよび/またはVLのフレームワーク領域においてアミノ酸の変更(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、または10個のアミノ酸置換、欠失、または付加)を含有することができることが、本明細書で企図される。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、表面プラズモン共鳴法(SPR)(例えば、下に実施例1で記載の方法を使用して)によってまたはバイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定して、1nMもしくはこれ未満、5nMもしくはこれ未満、または10nMもしくはこれ未満、15nMもしくはこれ未満、または20nMもしくはこれ未満のK(すなわち、解離定数)でFLT3(例えば、ヒトFLT3)と結合するか、かつ/または対象の体液、組織、および/または細胞由来のFLT3と結合する。ある特定の実施形態では、前述の分離された抗体のいずれもが、SPRによって(例えば、下に実施例1で記載の方法を使用して)またはBLIによって測定して、1×10-5、1×10-4、1×10-3、5×10-3、0.01、0.02、または0.05 1/sに等しいかまたはこれら未満のK[すなわち、解離速度(off-rate)、Koffとも呼ばれる]を有する。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位、例えば、上に開示の、12H10.G7、GB87、GB88、GB89、GB90、GB91、GB92、GB93、GB94、GB95、GB96、GB97、GB98、GB99、GB100、GB101、GB102、GB102 M34I、GB102 D101E、GB102 M34I/D101E、またはヒト化12H10.G7に関連する抗原結合部位が、T227M突然変異を有するヒトFLT3変異体またはその細胞外領域と結合する。hFLT3-T227Mの細胞外領域のアミノ酸配列は、NQDLPVIKCVLINHKNNDSSVGKSSSYPMVSESPEDLGCALRPQSSGTVYEAAAVEVDVSASITLQVLVDAPGNISCLWVFKHSSLNCQPHFDLQNRGVVSMVILKMTETQAGEYLLFIQSEATNYTILFTVSIRNTLLYTLRRPYFRKMENQDALVCISESVPEPIVEWVLCDSQGESCKEESPAVVKKEEKVLHELFGMDIRCCARNELGRECTRLFTIDLNQTPQTTLPQLFLKVGEPLWIRCKAVHVNHGFGLTWELENKALEEGNYFEMSTYSTNRTMIRILFAFVSSVARNDTGYYTCSSSKHPSQSALVTIVEKGFINATNSSEDYEIDQYEEFCFSVRFKAYPQIRCTWTFSRKSFPCEQKGLDNGYSISKFCNHKHQPGEYIFHAENDDAQFTKMFTLNIRRKPQVLAEASASQASCFSDGYPLPSWTWKKCSDKSPNCTEEITEGVWNRKANRKVFGQWVSSSTLNMSEAIKGFLVKCCAYNSLGTSCETILLNSPGPFPFIQDNIS(配列番号25)である。
【0094】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位、例えば、上に開示の、12H10.G7、GB87、GB88、GB89、GB90、GB91、GB92、GB93、GB94、GB95、GB96、GB97、GB98、GB99、GB100、GB101、GB102、GB102 M34I、GB102 D101E、GB102 M34I/D101E、またはヒト化12H10.G7に関連する抗原結合部位が、ITD突然変異を有するヒトFLT3変異体またはその細胞外領域と結合する。hFLT3-ITDの細胞外領域のアミノ酸配列は、NQDLPVIKCVLINHKNNDSSVGKSSSYPMVSESPEDLGCALRPQSSGTVYEAAAVEVDVSASITLQVLVDAPGNISCLWVFKHSSLNCQPHFDLQNRGVVSMVILKMTETQAGEYLLFIQSEATNYTILFTVSIRNTLLYTLRRPYFRKMENQDALVCISESVPEPIVEWVLCDSQGESCKEESPAVVKKEEKVLHELFGTDIRCCARNELGRECTRLFTIDLNQTPQTTLPQLFLKVGEPLWIRCKAVHVNHGFGLTWELENKALEEGNYFEMSTYSTNRTMIRILFAFVSSVARNDTGYYTCSSSKHPSQSALVTIVEKGFINATNSSEDYEIDQYEEFCFSVRFKAYPQIRCTWTFSRKSFPCEQKGLDNGYSISKFCNHKHQPGEYIFHAENDDAQFTKMFTLNIRRKPQVLAEASASQASCFSDGYPLPSWTWKKCSDKSPNCTEEITEGVWNRKANRKVFGQWVSSSTLNMSEAIKGFLVKCCAYNSLGTSCETILLNSPGPFPFIQDNIS(配列番号18)である。
【0095】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位、例えば、上に開示の、12H10.G7、GB87、GB88、GB89、GB90、GB91、GB92、GB93、GB94、GB95、GB96、GB97、GB98、GB99、GB100、GB101、GB102、GB102 M34I、GB102 D101E、GB102 M34I/D101E、ヒト化12H10.G7、14A5.E8、1551、1552、1553、1554、1689、ヒト化14A5.E8、11F4.B9、4A4.A3、4A4.H7、15A11.C8、1A2.A3、4H2.E3、または14H8.E7に関連する抗原結合部位が、カニクイザルFLT3と結合する。
【0096】
ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位、例えば、上に開示の、12H10.G7、GB87、GB88、GB89、GB90、GB91、GB92、GB93、GB94、GB95、GB96、GB97、GB98、GB99、GB100、GB101、GB102、GB102 M34I、GB102 D101E、GB102 M34I/D101E、ヒト化12H10.G7、14A5.E8、1551、1552、1553、1554、1689、ヒト化14A5.E8、11F4.B9、4A4.A3、4A4.H7、12C9.E5、1A2.A3、4H2.E3、または14H8.E7に関連する抗原結合部位が、FLT3との結合にあたりFLT3Lと競合しない。
【0097】
別の態様では、本発明は、FLT3(例えば、ヒトFLT3、カニクイザルFLT3)への結合にあたり上記の抗原結合部位と競合する抗原結合部位を提供する。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり上に開示の1A2.A3に関連する抗原結合部位と競合する。一実施形態では、抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり1A2.A3と競合する。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり上に開示の4A4.A3に関連する抗原結合部位と競合する。一実施形態では、抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり4A4.A3と競合する。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり上に開示の4H2.E3に関連する抗原結合部位と競合する。一実施形態では、抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり4H2.E3と競合する。ある特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり上に開示の11F4.B9に関連する抗原結合部位と競合する。一実施形態では、抗原結合部位は、FLT3への結合にあたり11F4.B9と競合する。
【0098】
抗原結合部位を備えるタンパク質
本明細書に開示の抗原結合部位は、抗体中に存在する場合もありまたはその抗原結合断片中に存在する場合もある。抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、Fab断片、Fab’断片、もしくはF(ab’)断片、Fv、二重特異性抗体、二重特異性Fab2、二重特異性(mab)2、ヒト化抗体、人工生成ヒト抗体、二重特異性T細胞エンゲージャー、二重特異性NK細胞エンゲージャー、単鎖抗体(例えば、単鎖Fv断片またはscFv)、トリオマブ(triomab)、共通の軽鎖を有するノブ-イントゥー-ホール(knobs-into-holes)(kih)IgG、クロスマブ(crossmab)、オルト-Fab IgG、DVD-Ig、2 in 1-IgG、IgG-scFv、sdFv2-Fc、バイナノボディ、tandAb、二重アフィニティリターゲティング抗体(DART)、DART-Fc、scFv-HSA-scFv(式中、HSA=ヒト血清アルブミン)、またはドックアンドロック(dock-and-lock)(DNL)-Fab3、とすることができる。
【0099】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の抗原結合部位は、抗体定常領域と、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgAl、IgA2、IgD、およびIgEの重鎖定常領域と;特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の(例えば、ヒト)重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域と、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である、アミノ酸配列に連結されている。別の実施形態では、本明細書に開示の抗原結合部位は、例えば、カッパまたはラムダの(例えば、ヒト)軽鎖定常領域から選択される軽鎖定常領域に連結させることができる。定常領域を変更させて、例えば、突然変異させて、抗体の特性を改変することができる(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、および/または補体機能のうちの1つまたは複数を増減することができる)。一実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに、補体を固定することができる。他の実施形態では、抗体は、エフェクター細胞を動員することも補体を固定することもない。別の実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が減少しているか、または全くない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合をサポートしないアイソタイプまたはサブタイプ、断片またはその他の突然変異体であり、例えば、突然変異誘発または欠失のあるFc受容体結合領域を有する。
【0100】
ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、CH1ドメインの有無にかかわらず、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン含めて、IgG定常領域に連結されている。一部の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ヒト抗体定常領域と、例えば、ヒトIgG1定常領域、ヒトIgG2定常領域、ヒトIgG3定常領域、またはヒトIgG4定常領域と、少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一である。一実施形態では、抗体FcドメインまたはCD16と結合するのに十分なその一部は、野生型ヒトIgG1Fc配列
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号21)と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一である、アミノ酸配列を含む。他の一部の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウマなどの別の哺乳動物に由来する抗体定常領域と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一である。1つまたは複数の突然変異を、ヒトIgG1定常領域と比較して定常領域に、例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411および/またはK439に、組み込むことができる。例示的な置換としては、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eが挙げられる。
【0101】
ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、CD16と結合するのに十分な抗体Fcドメインの一部に連結されている。Fcドメイン内では、CD16結合はヒンジ領域とCH2ドメインによって媒介される。例えば、ヒトIgG1内では、CD16との相互作用は主として、アミノ酸残基Asp265~Glu269、Asn297~Thr299、Ala327~Ile332、Leu234~Ser239、およびCH2ドメイン中の炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンに焦点が当てられている[Sondermann et al., Nature, 406 (6793):267-273を参照されたい]。既知のドメインに基づいて、突然変異については、ファージディスプレイライブラリまたは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリを使用することによるなど、CD16への結合親和性を増強または低減するように選択することができるか、または、相互作用の既知の三次元構造に基づいて設計することができる。
【0102】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1へと組み込むことができる突然変異は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171、および/またはV173のアミノ酸に存在することができる。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCκへと組み込むことができる突然変異は、E123、F116、S176、V163、S174、および/またはT164のアミノ酸に存在することができる。
【0103】
一部の実施形態では、抗体定常ドメインは、IgG抗体、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。一部の実施形態では、突然変異が、抗体定常ドメインに導入されて、別の抗体定常ドメインとのヘテロ二量体化が可能となる。例えば、抗体定常ドメインがヒトIgG1の定常ドメインに由来する場合、抗体定常ドメインは、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332と、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)と同一であるアミノ酸配列を含むことができるとともに、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、およびK439からなる群から選択される1つまたは複数の位置で異なる。本明細書に開示のFcドメインまたはヒンジ領域のすべてのアミノ酸位置は、EUナンバリングに従って番号づけされている。
【0104】
非対称タンパク質の形成を容易にするために、Fcドメインヘテロ二量体化が企図される。ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン中の突然変異(例えば、アミノ酸置換)が、例えば、国際出願公開第WO2019157366号に記載されているが、これは参照により本明細書に組み込まれない。
【0105】
上記のタンパク質を、当業者によく知られた組換えDNA技術を使用して作製することができる。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を、第1の発現ベクターにクローニングすることができる;第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を、第2の発現ベクターにクローニングすることができる;第1の免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を、第3の発現ベクターにクローニングすることができる;第2の免疫グロブリン軽鎖をコードする第4の核酸配列を、第4の発現ベクターにクローニングすることができる;第1の、第2の、第3のおよび第4の発現ベクターを、宿主細胞に一緒に安定的にトランスフェクトして、多量体タンパク質を産生させることができる。
【0106】
タンパク質の最高の収量を得るために、第1の、第2の、第3のおよび第4の発現ベクターの様々な比率を探索して、宿主細胞へのトランスフェクション向けの最適な比率を決定することができる。トランスフェクション後、限界希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法、またはClonepixなどの当技術分野で知られる方法を使用して、細胞バンク生成のために単一クローンを分離することができる。
【0107】
クローンは、バイオリアクターでのスケールアップに適した条件下で培養することができ、本明細書に開示の抗原結合部位を含むタンパク質の発現を維持した。タンパク質を、遠心分離、デプス濾過、細胞溶解、ホモジナイゼーション、凍結融解、アフィニティー精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、および混合モードクロマトグラフィーを含めて、当技術分野で知られる方法を使用して、分離および精製することができる。
【0108】
したがって、別の態様では、本発明は、前述の抗体のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖および/または免疫グロブリン軽鎖の可変領域をコードする配列を含む1つまたは複数の分離された核酸を提供する。本発明は、前述の抗体のいずれか1つの免疫グロブリン重鎖および/または免疫グロブリン軽鎖の可変領域を発現する1つまたは複数の発現ベクターを提供する。同様に、本発明は、前述の発現ベクターおよび/または分離された核酸のうちの1つまたは複数を含む宿主細胞を提供する。
【0109】
ある特定の実施形態では、抗体は、標準的な結合アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴法またはバイオレイヤー干渉法を使用して測定して、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nMもしくはこれ未満のKでFLT3と結合する。ある特定の実施形態では、抗体は、対象の体液、組織、および/または細胞由来のEBI3と結合する。
【0110】
ある抗体が、開示の抗体と同じエピトープに結合するかそれとも結合にあたり開示の抗体と競合するかを判定するための競合アッセイは、当技術分野で知られる。例示的な競合アッセイとしては、イムノアッセイ(例えば、ELISAアッセイ、RIAアッセイ)、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcore解析)、バイオレイヤー干渉法、およびフローサイトメトリーが挙げられる。
【0111】
通常には、競合アッセイは、固体表面に結合させたかまたは細胞表面で発現させた抗原(例えば、ヒトFLT3タンパク質またはその断片)、試験FLT3-結合抗体および参照抗体の使用を伴う。参照抗体が標識され、試験抗体は非標識である。競合阻害は、試験抗体の存在下で固体表面または細胞に結合した標識参照抗体の量を決定することによって、測定される。通例には、試験抗体は、過剰に存在する(例えば、1×、5×、10×、20×または100×)。競合アッセイによって特定される抗体(例えば、競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープまたは類似の(例えば、重複する)エピトープに結合する抗体、および、立体障害が生じることから、参照抗体が結合するエピトープに対して十分に近位である隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。
【0112】
競合アッセイを両方向で実施して、標識の存在が結合を妨害しないかまたはさもなければ阻害しないことを確実にすることができる。例えば、第1の方向では、参照抗体が標識され、試験抗体は非標識であり、そして第2の方向では、試験抗体が標識され、参照抗体は非標識である。
【0113】
試験抗体は、過剰な一方の抗体(例えば、1×、5×、10×、20×または100×)が、例えば、競合結合アッセイで測定して少なくとも50%、75%、90%、95%または99%だけ、他方の抗体の結合を阻害する場合、抗原への特異的な結合にあたり、参照抗体と競合する。
【0114】
2種の抗体は、一方の抗体の結合を減少または排除する、抗原中の本質的にすべてのアミノ酸の突然変異が他方の結合を減少させるかまたは排除する場合、同じエピトープに結合すると判定することができる。2種の抗体は、一方の抗体の結合を減少させるかまたは排除するアミノ酸の突然変異の部分集団のみが他方の結合を減少させるかまたは排除する場合、重複するエピトープに結合すると判定することができる。
【0115】
本明細書に開示の抗体は、親和性および/もしくは特異性を含めて生化学的特徴を改善するために、凝集、安定性、沈殿および/もしくは非特異的相互作用を含めて生物物理学的特性を改善するために、ならびに/または免疫原性を減少させるために、更に最適化(例えば、親和性成熟)することができる。親和性成熟の手順は、当技術分野の通常技術の範囲内である。例えば、多様性が、DNAシャフリング、鎖シャフリング、CDRシャフリング、ランダム突然変異誘発および/または部位特異的突然変異誘発によって、免疫グロブリン重鎖および/または免疫グロブリン軽鎖へと導入することができる。
【0116】
ある特定の実施形態では、分離されたヒト抗体は、1つまたは複数の体細胞突然変異を含有する。これらの場合では、抗体をヒト生殖細胞系列配列に改変して、抗体を最適化することができる(例えば、生殖細胞系列化と呼ばれるプロセスによる)。
【0117】
一般に、最適化抗体は、これが由来した非最適化(または親)抗体と、抗原に対する同じ親和性または実質的に同じ親和性を、少なくとも有する。好ましくは、最適化抗体は、親抗体と比較して、抗原に対してより高い親和性を有する。
【0118】
抗体は、治療薬として使用される場合、標準的なインビトロ(in vitro)コンジュゲーション化学(conjugation chemistries)を使用して、低分子毒素または放射性核種などのエフェクター剤にコンジュゲートすることができる。エフェクター剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートされてもよく、融合タンパク質としてエフェクターに連結されてもよい。融合タンパク質の構築は、当技術分野の通常技術の範囲内である。
【0119】
抗体は、標準的なインビトロコンジュゲーション化学を使用して、低分子毒素または放射性核種などのエフェクター部分にコンジュゲートすることができる。エフェクター部分がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートされてもよいし、融合タンパク質としてエフェクターに連結されてもよい。融合タンパク質の構築は、当技術分野の通常技術の範囲内である。
【0120】
ある特定の実施形態では、本開示のタンパク質(例えば、抗体)は、FLT3-発現細胞によって実質的に内在化されていない。内在化レベルが低いと、タンパク質の薬物動態が改善され、それにより、FLT3-発現標的細胞とエフェクター細胞(例えば、NK細胞)をエンゲージさせるのに必要な用量を減少させることができる。内在化は、当技術分野で知られる任意の方法、例えば、本開示の実施例7に記載の方法によって測定することができる。例えば、ある特定の実施形態では、ROH細胞またはEOL-1細胞によるタンパク質の内在化は、本明細書に開示の方法によって評価して、2時間のインキュベーション後で10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%未満である。
【0121】
CAR T細胞、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャー、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲート、および免疫毒素
本発明の別の態様は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位を含む分子または複合体を提供する。例示的な分子または複合体には、それらに限定されないが、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞エンゲージャー(例えば、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャー)、免疫サイトカイン、抗体-薬物コンジュゲート、および免疫毒素が含まれる。
【0122】
本明細書に開示の、FLT3と結合する任意の抗原結合部位を使用することができる。ある特定の実施形態では、FLT3と結合する抗原結合部位のVH、VL、および/またはCDRの配列を、表1に提供する。ある特定の実施形態では、FLT3と結合する抗原結合部位は、scFvである。ある特定の実施形態では、scFvは、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、scFvは、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、FLT3と結合する抗原結合部位は、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列によって表されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変ドメインと;それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列によって表されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと;配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号40または配列番号39と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0124】
キメラ抗原受容体(CAR)
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位(例えば、表1を参照されたい)を含むFLT3-標的指向性CARを提供する。FLT3-標的指向性CARは、Fab断片またはscFvを含むことができる。
【0125】
「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」という用語は、少なくとも、細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメイン(本明細書では「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む組み換えポリペプチドコンストラクトを指す。
【0126】
したがって、ある特定の実施形態では、CARは、本明細書に開示の、FLT3と結合する細胞外抗原結合部位と、膜貫通ドメインと、一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。ある特定の実施形態では、CARは、少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つまたは複数の機能性シグナル伝達ドメイン(「共刺激シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)をさらに含む。
【0127】
一実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして表1に列記される重鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3を含むFLT3-結合ドメイン(例えば、FLT3-結合scFvドメイン)と、膜貫通ドメインと、一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして表1に列記される重鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3を含むFLT3-結合ドメイン(例えば、FLT3-結合scFvドメイン)と、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一態様では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして表1に列記される重鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3を含むFLT3-結合ドメイン(例えば、FLT3-結合scFvドメイン)と、膜貫通ドメインと、2つの共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメインとして表1に列記される重鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3ならびに軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3を含むFLT3-結合ドメインと、膜貫通ドメインと、少なくとも2つの共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。
【0128】
例えば、ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、それぞれ、配列番号11、4、および5のアミノ酸配列によって表されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む重鎖可変ドメインと;それぞれ、配列番号6、7、および8のアミノ酸配列によって表されるCDR1、CDR2、およびCDR3の配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗原結合部位(例えば、scFv)を含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと;配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、配列番号40または配列番号39と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0129】
膜貫通ドメインに関して、種々の実施形態では、CARは、CARの細胞外ドメインに融合されている膜貫通ドメインを含むように設計される。一実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR中のドメインのうちの1つと自然に会合するものである。一部の場合では、膜貫通ドメインは、かかるCARのドメインが同一または異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるように、選択することができるか、またはアミノ酸置換によって改変することができる。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、CAR T細胞表面の別のCARとホモ二量体化することが可能である。別の実施形態では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じCAR T細胞中に存在する天然結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小限に抑えるように、改変することができるかまたは置換することができる。
【0130】
膜貫通ドメインは、天然に存在する任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来することができる。一実施形態では、膜貫通領域は、CARが標的に結合した場合はいつでも、細胞内ドメイン(複数可)へのシグナル伝達が可能である。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、FLT3、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、およびCD154からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の膜貫通領域(複数可)を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、およびNKG2Cからなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の膜貫通領域(複数可)を含む。
【0131】
細胞外FLT3-結合ドメイン(例えば、FLT3-結合scFvドメイン)ドメインを、ヒンジ領域によって、膜貫通ドメインに接続することができる。様々なヒンジを用いることができ、これには、それらに限定されないが、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ、IgDヒンジ)、Gly-Serリンカー、(GS)リンカー、KIR2DS2ヒンジ、およびCD8αヒンジが含まれる。
【0132】
本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置された免疫細胞の特化した機能(例えば、T細胞の、サイトカインの分泌を含めて、細胞溶解活性またはヘルパー活性、)の少なくとも1つの活性化を担う。したがって、本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特化した機能を実行するように細胞を方向付ける、タンパク質の部分を指す。通例には、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、必ずしも鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮化部分を使用するという点で、かかる短縮化部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用することができる。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮化部分を含むことになる。
【0133】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン(すなわち、刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメイン)と1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン(すなわち、少なくとも1つの共刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメイン)とを含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、「刺激分子」という用語は、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはB細胞によって発現される分子を指し、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくとも一部の側面に対して刺激性に、免疫細胞の活性化を調節する細胞質シグナル伝達配列(複数可)を提供する。一実施形態では、シグナルとは、例を挙げると、ペプチドが負荷されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって開始される一次シグナルであり、これによって、それらに限定されないが、増殖、活性化、分化等を含めてT細胞応答の媒介がもたらされる。
【0135】
刺激性様式で作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有することができる。本発明において特に有用である細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例としては、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12に由来するものが挙げられる。一実施形態では、本発明の任意の1つまたは複数のCAR中の一次シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータに由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0136】
一部の実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、4-1BB、および/またはCD3-ゼータの機能性シグナル伝達ドメインである。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、および/またはDAP12の機能性シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体複合体と会合するゼータ鎖の機能性シグナル伝達ドメインである。
【0137】
本明細書で使用される場合、「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それにより、それに限定されないが増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネート結合パートナーを指す。共刺激分子とは、抗原に対するリンパ球の効率的な応答にとって必要である、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。かかる分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD11a/CD18)、CD2、CD7、CD258(LIGHT)、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンド等が含まれる。かかる共刺激分子のさらなる例には、CD5、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、およびCD83と特異的に結合するリガンドが含まれる。一部の実施形態では、CARの共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書に記載の共刺激分子、例えば、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、NKG2C、B7-H3、CD83に結合するリガンド、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOSおよび4-1BB(CD137)、またはそれらの任意の組合せの機能性シグナル伝達ドメインである。
【0138】
本明細書で使用される場合、「シグナル伝達ドメイン」という用語は、第2のメッセンジャーを生成することによって、またはかかるメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することによって、規定されたシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するように、細胞内で情報を伝達することによって作用する、タンパク質の機能性部分を指す。
【0139】
本発明のCARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムな順序または特定の順序で互いに連結させることができる。例えば、2から10個の間のアミノ酸長の短いオリゴペプチドまたはポリペプチドのリンカーが連鎖を形成する場合があってもよい。
【0140】
本発明の別の態様は、本明細書に開示の、FLT3-標的指向性CARをコードする核酸を提供する。核酸は、当該核酸を細胞に導入することによって、エフェクター細胞(例えば、T細胞)中でCARを発現させるのに有用である。
【0141】
配列中に改変を加えて、例えば、コドンの1つまたは複数をコドン縮重表に従って変化させることによって、本発明の等価物または改善された変異体を作出することができる。DNAコドン縮重表を表2に提供する。
【0142】
【表16】
【0143】
ある特定の実施形態では、核酸は、DNA分子(例えば、cDNA分子)である。ある特定の実施形態では、核酸は、CARコード配列に作動可能に連結された発現制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)をさらに含む。ある特定の実施形態では、本発明は、核酸を含むベクターを提供する。ベクターは、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクター)であっても非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)であってもよい。
【0144】
ある特定の実施形態では、核酸は、RNA分子(例えば、mRNA分子)である。トランスフェクションでの使用向けのmRNAを生成するための方法は、特別に設計されたプライマーを備える鋳型のインビトロ転写と、これに続くポリA付加を伴い、したがって、3’および5’非翻訳配列、5’キャップおよび/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現される核酸、ならびに典型的には50~2000塩基長のポリAテールを含有するRNAコンストラクトを作製することができる。RNA分子は、例えば、米国特許第8,278,036号;同第8,883,506号、および同第8,716,465号に開示されているように、翻訳効率および/または安定性を高めるためにさらに改変することができる。このようにして作製されたRNA分子は、様々な種類の細胞に効率的にトランスフェクトすることができる。
【0145】
一実施形態では、核酸は、CARのアミノ末端にシグナルペプチドを含むアミノ酸配列をコードする。かかるシグナルペプチドは、エフェクター細胞で発現される場合、CARの細胞表面局在化を容易にすることができ、細胞プロセシング過程でCARから切断される。一実施形態では、核酸は、細胞外FLT3-結合ドメイン(例えば、FLT3-結合scFvドメイン)のN末端にシグナルペプチドを含むアミノ酸配列をコードする。
【0146】
RNAまたはDNAは、いくつかの様々な方法のいずれかを使用して、例を挙げると、それらに限定されないが、エレクトロポレーション、リポフェクションを使用したカチオン性リポソーム媒介性トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介性トランスフェクション、または「遺伝子銃」などのバイオリスティック微粒子銃デリバリーシステム[例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照されたい]が挙げられる、商業的に利用可能な方法を使用して、標的細胞へと導入することができる。
【0147】
本発明の別の態様は、FLT3-標的指向性CARを発現する免疫エフェクター細胞を提供する。FLT3-標的指向性CARをコードする核酸を含む免疫エフェクター細胞もまた提供される。免疫エフェクター細胞には、それらに限定されないが、T細胞およびNK細胞が含まれる。ある特定の実施形態では、T細胞は、CD8T細胞、CD4T細胞、およびNKT細胞から選択される。T細胞またはNK細胞は、初代細胞であっても細胞株であってもよい。
【0148】
免疫エフェクター細胞は、当技術分野において知られる方法によって、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含めて、いくつかの供給源から得ることができる。免疫エフェクター細胞はまた、多能性(pluripotent)細胞または複能性(multipotent)細胞(例えば、造血幹細胞)からインビトロで分化させることもできる。一部の実施形態では、本発明は、FLT3-標的指向性CARを発現するか(例えば、原形質膜上で上記CARを発現するか)、または本明細書に開示の核酸を含む多能性細胞または複能性細胞(例えば、造血幹細胞)を提供する。
【0149】
ある特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞を、分離および/または精製する。例えば、制御性T細胞を、CD25-結合リガンドを使用して、T細胞集団から取り出すことができる。チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1、LAG-3、またはTIM-3)を発現するエフェクター細胞を、類似の方法によって取り出すことができる。ある特定の実施形態では、エフェクター細胞を、ポジティブ選択工程によって分離する。例えば、T細胞の集団を、抗CD3/抗CD28のコンジュゲートビーズとのインキュベーションによって分離することができる。IFN-7、TNF-α、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、およびパーフォリンなどの他の細胞表面マーカーもポジティブ選択に使用することができる。
【0150】
免疫エフェクター細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041;ならびに米国特許出願公開第2006/0121005号および同第2016/0340406号に記載の、当技術分野において知られる方法を概ね使用して、活性化および増やすことができる。例えば、ある特定の実施形態では、T細胞は、T細胞の増殖を刺激するのに適当な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体との接触によって、増やすことおよび/または活性化することができる。細胞は、数時間(例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、18、21時間)~約14日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日)の期間の培養中で増やすことができる。一実施形態では、細胞は、4~9日の期間で増やされる。長期間の細胞培養(例えば、60日またはこれを超える期間の培養)にとっては、複数サイクルの刺激が望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、細胞培養物は、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、TNF-α、またはそれらの組合せを含む。当業者に知られる細胞の増殖用の他の添加物、例えば、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤もまた細胞培養物中に含めてもよい。ある特定の実施形態では、本発明の免疫エフェクター細胞は、インビトロ増殖から得られる細胞である。
【0151】
FLT3-標的指向性CAR(例えば、制御可能なCAR)、上記CARをコードする核酸、および上記CARを発現するかまたは上記核酸を含むエフェクター細胞に関するさらなる実施形態は、米国特許第7,446,190号および同第9,181,527号、米国特許出願公開第2016/0340406号および同第2017/0049819号、ならびに国際特許出願公開第WO2018/140725号に提供されている。
【0152】
FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャー
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位を含む、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーを提供する。ある特定の実施形態では、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーは、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、サイトカインは直接にまたはリンカーを介してFcドメインに接続されている。
【0153】
ある特定の実施形態では、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーは、CD3と結合する抗原結合部位をさらに含む。CD3と結合する例示的な抗原結合部位は、国際特許出願公開第WO2014/051433号および同第WO2017/097723号に開示されている。
【0154】
本発明の別の態様は、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーの少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸を提供し、ここで、ポリペプチドはFLT3と結合する抗原結合部位を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、シグナルペプチドは、発現される場合、FLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーのポリペプチドのうちの1つまたは複数のN末端に存在する。また、核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含む産生細胞、およびFLT3/CD3-指向性二重特異性T細胞エンゲージャーを発現する産生細胞も提供される。
【0155】
免疫サイトカイン
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位と、サイトカインとを含む免疫サイトカインを提供する。それらに限定されないが、IL-2、IL-4、IL-10、IL-12、IL-15、TNF、IFNα、IFNγ、およびGM-CSFを含めて、当技術分野において知られる任意のサイトカイン(例えば、炎症誘発性サイトカイン)を使用することができる。より多くの例示的なサイトカインが、米国特許第9,567,399号に開示されている。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、化学コンジュゲーション(例えば、共有結合のまたは非共有結合の化学コンジュゲーション)によってサイトカインに接続されている。ある特定の実施形態では、抗原結合部位は、ポリペプチドの融合によってサイトカインに接続されている。免疫サイトカインは、FLT3と結合する抗原結合部位に接続されたFcドメインをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、免疫サイトカインは、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、サイトカインは直接にまたはリンカーを介してFcドメインに接続されている。
【0156】
本発明の別の態様は、免疫サイトカインの少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸を提供し、ここで、ポリペプチドはFLT3と結合する抗原結合部位を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、シグナルペプチドは、発現される場合、免疫サイトカインのポリペプチドのうちの1つまたは複数のN末端に存在する。また、核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含む産生細胞、および免疫サイトカインを発現する産生細胞も提供される。
【0157】
抗体-薬物コンジュゲート
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位と、細胞傷害性薬物部分とを含む、抗体-薬物コンジュゲートを提供する。例示的な細胞傷害性薬物部分が、国際特許出願公開第WO2014/160160号および同第WO2015/143382号に開示されている。ある特定の実施形態では、細胞傷害性薬物部分は、オーリスタチン、N-アセチル-γカリケアマイシン、メイタンシノイド、ピロロベンゾジアゼピン、およびSN-38から選択される。抗原結合部位は、化学コンジュゲーション(例えば、共有結合のまたは非共有結合の化学コンジュゲーション)によって、細胞傷害性薬物部分に接続することができる。ある特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、FLT3と結合する抗原結合部位に接続されたFcドメインをさらに含む。ある特定の実施形態では、抗体-薬物コンジュゲートは、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、細胞傷害性薬物部分は直接にまたはリンカーを介してFcドメインに接続されている。
【0158】
免疫毒素
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に開示の、FLT3と結合する抗原結合部位と、細胞傷害性ペプチド部分とを含む、免疫毒素を提供する。当技術分野において知られる任意の細胞傷害性ペプチド部分を使用することができ、これには、それらに限定されないが、リシン、ジフテリア毒素、およびシュードモナス外毒素Aが含まれる。より多くの例示的な細胞傷害性ペプチドが、国際特許出願公開第WO2012/154530号および同第WO2014/164680号に開示されている。ある特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、化学コンジュゲーション(例えば、共有結合のまたは非共有結合の化学コンジュゲーション)によって、タンパク質に接続されている。ある特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、ポリペプチドの融合によって、タンパク質に接続されている。免疫毒素は、FLT3と結合する抗原結合部位に接続されたFcドメインをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、免疫毒素は、配列番号3、12、15、16、19、20、23、24、27、28、31、32、35、36、39、40、43、44、47、48、51、52、70、71、74、75、81、および82から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、細胞傷害性ペプチド部分は、直接にまたはリンカーを介してFcドメインに接続されている。
【0159】
本発明の別の態様は、免疫毒素の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸を提供し、ここで、ポリペプチドはFLT3と結合する抗原結合部位を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、シグナルペプチドは、発現される場合、免疫毒素のポリペプチドのうちの1つまたは複数のN末端に存在する。また、核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)、核酸またはベクターを含む産生細胞、および免疫毒素を発現する産生細胞も提供される。
【0160】
II. 治療用組成物およびその使用
本発明は、本明細書に開示の抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲート、もしくは細胞および/または本明細書に記載の医薬組成物を使用してがんを処置するための方法を提供する。方法は、それを必要とする患者に、本明細書に開示の抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲート、または細胞の治療有効量を投与することによって、FLT3を発現する様々ながんを処置するのに使用することができる。
【0161】
治療方法は、処置されるがんに応じて特徴づけることができる。例えば、ある特定の実施形態では、がんは血液悪性腫瘍または白血病である。ある特定の実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、急性Tリンパ芽球性白血病、または急性前骨髄球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、または慢性骨髄性白血病の骨髄性芽球危機である。
【0162】
ある特定の実施形態では、AMLは、微小残存病変(MRD)である。ある特定の実施形態では、MRDは、FLT3-ITD[(Fms様チロシンキナーゼ3)-遺伝子内縦列重複(ITD)]、NPM1(ヌクレオフォスミン1)、DNMT3A(DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子DNMT3A)、およびIDH[イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1および2(IDH1およびIDH2)]から選択される突然変異の有無によって特徴づけられる。ある特定の実施形態では、MDSは、多血球系異形成を伴うMDS(MDS-MLD)、単一血球系統の異形成を伴うMDS(MDS-SLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独del(5q)を伴うMDS、および未分類型MDS(MDS-U)から選択される。ある特定の実施形態では、MDSは、原発性MDSまたは二次性MDSである。
【0163】
ある特定の実施形態では、ALLは、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)およびT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)から選択される。ある特定の実施形態では、MPNは、真性赤血球増加症、本態性血小板血症(ET)、および骨髄線維症から選択される。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫から選択される。ある特定の実施形態では、リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(CLL)、リンパ芽球性リンパ腫(LPL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBL)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、毛様細胞性白血病、形質細胞骨髄腫(PCM)または多発性骨髄腫(MM)、成熟T/NK細胞腫瘍、および組織球腫瘍から選択される。
【0164】
ある特定の実施形態では、がんは固形腫瘍である。ある特定の他の実施形態では、がんは、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、白血病、肺がん、肝臓がん、黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、胃がん、精巣がん、または子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは、血管化腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆管がん、甲状腺がん、末端黒子型悪性黒色腫、光線角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん、星細胞腫、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆道がん、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/脈絡叢癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢腺腫、消化器系がん、十二指腸がん、内分泌系がん、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、子宮内膜様腺癌、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼および眼窩がん、女性生殖器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、幽門洞がん、胃底がん、ガストリノーマ、膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓がん、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝細胞腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリノーマ、子宮頸部上皮内腫瘍、子宮頸部扁平上皮細胞腫瘍、肝内胆管がん、侵襲性扁平上皮癌、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、リンパ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性癌、口のがん、粘膜表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉がん、鼻腔がん、神経系がん、神経上皮腺癌結節型黒色腫、非上皮性皮膚がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起膠細胞がん、口腔がん、骨肉腫、漿液性乳頭状癌、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑筋がん、軟組織がん、ソマトスタチン産生腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、中皮下細胞がん、表在性拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん、膀胱がん、泌尿器系がん、子宮頸がん、子宮体がん、ブドウ膜黒色腫、膣がん、疣状癌、VIPoma、外陰がん、高分化癌、またはウィルムス腫瘍、である。
【0165】
ある特定の他の実施形態では、がんは、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫はB細胞リンパ腫であり、例えば、びまん性大細胞B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、毛様細胞性白血病、または中枢神経系(CNS)原発リンパ腫、である。ある特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫はT細胞リンパ腫であり、例えば、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞性リンパ腫、または末梢性T細胞リンパ腫である。
【0166】
処置されるがんは、がん細胞の表面で発現する特定の抗原の存在に応じて特徴付けることができる。ある特定の実施形態では、がん細胞は、FLT3に加えて、以下のうちの1つまたは複数を発現することができる:CD2、CD19、CD20、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ERBB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、TROP2、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1。
【0167】
本発明の実施形態では、処置されるがんは、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および古典的ホジキンリンパ腫から選択される。
【0168】
本発明の一部の実施形態では、処置されるがんはAMLである。本発明の一部の実施形態では、AMLは、未分化型急性骨髄芽球性白血病、最小分化型急性骨髄芽球性白血病、分化型急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、急性巨核芽球性白血病(AMKL)、急性好塩基球性白血病、線維症を伴う急性汎骨髄症、および芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)から選択される。本発明の一部の実施形態では、AMLは、AML白血病幹細胞(LSC)上のCLL-1の発現によって特徴づけられる。本発明の一部の実施形態では、AML対象におけるLSCは、CD34、CD38、CD123、TIM3、CD25、CD32、およびCD96から選択される細胞膜マーカーをさらに発現する。本発明の一部の実施形態では、AMLは微小残存病変(MRD)として特徴づけられる。本発明の一部の実施形態では、AMLのMRDは、FLT3-ITD[(Fms様チロシンキナーゼ3)-遺伝子内縦列重複(ITD)]、NPM1(ヌクレオフォスミン1)、DNMT3A(DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子DNMT3A)、およびIDH[イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1および2(IDH1およびIDH2)]から選択される突然変異の有無によって特徴づけられる。
【0169】
本発明のある特定の実施形態では、がんは、多血球系異形成を伴うMDS(MDS-MLD)、単一血球系統の異形成を伴うMDS(MDS-SLD)、環状鉄芽球を伴うMDS(MDS-RS)、芽球増加を伴うMDS(MDS-EB)、単独del(5q)を伴うMDS、および未分類型MDS(MDS-U)から選択されるMDSである。
【0170】
本開示のタンパク質、コンジュゲート、細胞、および/または医薬組成物は、がん細胞がFLT3を発現するがんに限定されず、様々ながんを処置するのに使用することができることが企図される。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書に開示のタンパク質、コンジュゲート、細胞、および/または医薬組成物は、FLT3-発現免疫細胞に関連するがんを処置するのに使用することができる。FLT3は、多くの骨髄細胞系列上で発現しており、腫瘍浸潤性骨髄系細胞(例えば、腫瘍関連マクロファージ)は、がんの進行および転移の原因である可能性がある。したがって、本明細書に開示の方法は、がん細胞上であろうと免疫細胞上であろうと、FLT3が発現する様々ながんを処置するのに使用することができる。
【0171】
III. 併用療法
本発明の別の態様は、併用療法を提供する。本明細書に記載の抗原結合部位を含むタンパク質、コンジュゲート、および細胞は、がんを処置するためのさらなる治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0172】
がん処置する上で併用療法の一部として使用することができる例示的な治療薬には、例えば、以下が含まれる:放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、サイマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、エリプチニウム酢酸塩、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンジフチトクス、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、ならびにそのコグネート受容体に対して差次的な結合および血清半減期の増減を呈することができる上述の薬剤の変形形態。
【0173】
がんを処置する上で併用療法の一部として使用することができる薬剤のさらなる種類は、免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4、および(vii)TIM3のうちの1つまたは複数を阻害する薬剤が含まれる。CTLA4阻害剤であるイピリムマブは、黒色腫を処置するために、米国食品医薬品局によって承認されている。
【0174】
がんを処置する上で併用療法の一部として使用することができるさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的を標的とするモノクローナル抗体の薬剤(例えば、ハーセプチン)および非細胞傷害性薬剤(例えば、チロシン-キナーゼ阻害剤)である。
【0175】
抗がん剤のさらに他の分類には、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKとmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤と2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシタイド3-キナーゼ阻害剤、PARP1とDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、およびWEE1阻害剤から選択される阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、またはICOSのアゴニスト;ならびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、およびG-CSFから選択されるサイトカインが含まれる。
【0176】
本発明のタンパク質はまた、原発病巣の外科的除去の補助剤としても使用することができる。
【0177】
本明細書に開示のタンパク質、コンジュゲート、または細胞の量、およびさらなる治療薬、ならびに投与の相対的なタイミングは、所望の併用療法効果を得るために選択することができる。例えば、かかる投与を必要とする患者に併用療法を投与する場合、併用中の治療薬、または当該治療薬を含む医薬組成物(複数可)は、例えば、順次に、共に(concurrently)、一緒に、同時に(simultaneously)等などの任意の順序で投与することができる。さらに、例えば、本明細書に開示のタンパク質、コンジュゲート、または細胞は、さらなる治療薬(複数可)がその予防効果、もしくは治療効果を発揮している間に投与してもよく、その逆も同様である。
【0178】
IV. 医薬組成物
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載のタンパク質を含有する医薬組成物も特徴とする。組成物は、様々な薬物デリバリーシステムで使用するために製剤化することができる。1つまたは複数の生理学的に許容される賦形剤または担体もまた、適当な製剤化向けに組成物に含めることができる。本開示での使用に適切な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed., 1985に見出される。薬物デリバリーの方法に関する簡潔な総論については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0179】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のFLT3-結合部位と、薬学的に許容される担体とを含有する、タンパク質の製剤を提供する。
【0180】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号37のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号38のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号49のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号60のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号61のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号68のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号69のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号72のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号73のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号76のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号77のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号90のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号94のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号95のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号96のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号104のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号105のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号107のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号108のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号115のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号116のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号123のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号124のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号125のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号126のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、配列番号131のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号83のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを備える抗原結合部位を含む、タンパク質を含む。
【0181】
組成物は、様々な薬物デリバリーシステムで使用するために製剤化することができる。1つまたは複数の生理学的に許容される賦形剤または担体を、適当な製剤化向けに組成物に含めることができる。本開示での使用に適切な製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, Pa., 17th ed., 1985に見出される。薬物デリバリーの方法に関する簡潔な総論については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0182】
例えば、本開示は、製剤を形成する緩衝液中に治療有効量のタンパク質を含む、水性医薬製剤で存在するかもしれない。水性担体としては、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル溶液またはブドウ糖液を挙げることができる。ある特定の実施形態では、水性製剤は、pH緩衝液中で、本明細書に開示のタンパク質を含んで調製される。調製物のpHは典型的には、3から11の間、より好ましくは5から9の間または6から8の間、最も好ましくは7から8の間、例えば7~7.5である。上記のpHとpHの中間にある範囲もまた、本開示の一部であることが意図される。例えば、上記値のいずれかの組合せを上限および/または下限として使用した値の範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御することになる緩衝剤の例には、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩およびその他の有機酸の緩衝剤が含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝剤系は、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、および/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物を含む。ある特定の実施形態では、緩衝剤系は、約1.3mg/mLのクエン酸(例えば、1.305mg/mL)、約0.3mg/mLのクエン酸ナトリウム(例えば、0.305mg/mL)、約1.5mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、1.53mg/mL)、約0.9mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、0.86)、および約6.2mg/mLの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/mL)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝剤系は、1~1.5mg/mLのクエン酸、0.25~0.5mg/mLのクエン酸ナトリウム、1.25~1.75mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、0.7~1.1mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物、および6.0~6.4mg/mLの塩化ナトリウムを含む。液体製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定することができる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸とすることができる。ある特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムとすることができる。
【0183】
一部の実施形態では、製剤は、薬学的に許容されるとともに(ヒトへの投与向けに安全かつ非毒性である)液体製剤の調製に有用である、水性担体を含む。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル溶液またはブドウ糖液が含まれる。
【0184】
等張化剤として働くとともに抗体を安定化することができるポリオールもまた、製剤中に含めることができる。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関連して様々である量で製剤に添加される。ある特定の実施形態では、水性製剤は等張性とすることができる。添加されるポリオールの量は、ポリオールの分子量に関連して変更することができる。例えば、二糖(例えばトレハロース)と比較して、より低い量の単糖(例えば、マンニトール)を添加することができる。ある特定の実施形態では、等張化剤として製剤中で使用することができるポリオールは、マンニトールである。ある特定の実施形態では、マンニトール濃度は、約5~約20mg/mLとすることができる。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約7.5~15mg/mLとすることができる。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約10~14mg/mLとすることができる。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は、約12mg/mLとすることができる。ある特定の実施形態では、ポリオールソルビトールを製剤中に含めることができる。
【0185】
表面活性剤(detergent)または界面活性剤(surfactant)もまた、製剤に添加することができる。例示的な表面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80等)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性表面活性剤が含まれる。添加される表面活性剤の量は、製剤化される抗体の凝集を減少させ、および/または製剤中の微粒子の形成を最小限にし、および/または吸着を減少させるような量である。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリソルベートである界面活性剤を含むことができる。ある特定の実施形態では、製剤は、表面活性剤のポリソルベート80またはTween80を含有することができる。Tween80とは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを説明して使用される用語である(Fiedler, Lexikon der Hifsstoffe, Editio Cantor Verlag Aulendorf, 4th edi., 1996を参照されたい)。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリソルベート80の約0.1mg/mLから約10mg/mLの間、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間を含有することができる。ある特定の実施形態では、約0.1%ポリソルベート80を製剤中に添加することができる。
【0186】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、安定化レベルにての糖と組み合わせて、10mg/mLの濃度の溶液として調製することができる。ある特定の実施形態では、液体製剤は、水性担体中で調製することができる。ある特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないかまたは適さない粘性をもたらすおそれのある量以下の量で添加することができる。ある特定の実施形態では、糖は、二糖類、例えば、スクロースとすることができる。ある特定の実施形態では、液体製剤はまた、緩衝化剤、界面活性剤、および保存剤のうちの1つまたは複数を含むことができるが、この保存剤は、細菌作用を低減するために、本明細書の製剤に添加されるものである。保存剤の添加によって、例えば、マルチユース(反復投与)製剤の製造を容易にすることができる。
【0187】
一部の実施形態では、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水、および水酸化ナトリウムと組み合わせて、本開示のタンパク質を含む、貯蔵寿命の延長を備える製剤を提供する。
【0188】
脱アミド化は、発酵、収集/細胞清澄、精製、原薬/医薬品の貯蔵中、および試料分析中に生じる場合がある、ペプチドおよびタンパク質の一般的な製品変異型である。脱アミド化とは、タンパク質からのNH3の喪失であり、スクシンイミド中間体を形成し、これは加水分解を受けることが可能である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質量低下をもたらす。続く加水分解により、18ダルトンの質量増加がもたらされる。スクシンイミド中間体の分離は、水性条件下では不安定であることに起因して、困難である。したがって、脱アミド化は通常には、1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミド化は、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかをもたらす。脱アミド化率に影響を及ぼすパラメータには、pH、温度、溶媒の誘電率、イオン強度、一次配列、局所的なポリペプチドの立体構造および三次構造が含まれる。ペプチド鎖中のAsnに隣接するアミノ酸残基が脱アミド化率に影響を及ぼす。タンパク質配列中のAsnに続くGlyおよびSerによって、脱アミド化へのより高い感受性がもたらされる。ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、タンパク質製品の脱アミノ化を防ぐpHおよび湿度の条件下で保存することができる。
【0189】
一部の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤である。ある特定の実施形態では、製剤は、フリーズドライ処理(凍結乾燥)され、約12~60本のバイアルに収められる。ある特定の実施形態では、製剤は、フリーズドライ処理され、フリーズドライ処理された製剤45mgを1本のバイアルに収めることができる。ある特定の実施形態では、フリーズドライ処理された製剤約40mg~約100mgが1本のバイアルに収められる。ある特定の実施形態では、12、27、または45本のバイアルからのフリーズドライ処理された製剤を合わせて、静脈内薬物製剤の治療用量のタンパク質を得る。製剤は液体製剤であってもよい。一部の実施形態では、液体製剤は、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして貯蔵される。ある特定の実施形態では、液体製剤は、約600mg/バイアルとして貯蔵される。ある特定の実施形態では、液体製剤は、約250mg/バイアルとして貯蔵される。
【0190】
一部の実施形態では、凍結乾燥製剤は、本明細書に記載のタンパク質および凍結乾燥保護剤を含む。凍結乾燥保護剤は、糖、例えば、二糖類とすることができる。ある特定の実施形態では、凍結乾燥保護剤は、スクロースであってもマルトースであってもよい。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、および/または保存剤のうちの1つまたは複数を含むことができる。凍結乾燥医薬品の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、タンパク質のスクロースまたはマルトースに対する重量比が少なくとも1:2であるようにすることができる。ある特定の実施形態では、タンパク質のスクロースまたはマルトースに対する重量比は、1:2から1:5までとすることができる。
【0191】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥前の製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって設定することができる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸とすることができる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基は水酸化ナトリウムとすることができる。凍結乾燥前、本開示のタンパク質を含有する溶液のpHは、6から8の間に調整することができる。ある特定の実施形態では、凍結乾燥医薬品のpH範囲は7から8までとすることができる。
【0192】
ある特定の実施形態では、「増量剤」を添加してもよい。「増量剤」とは、凍結乾燥混合物に嵩を与え、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの生成を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが含まれる。本発明の凍結乾燥製剤は、かかる増量剤を含有する場合がある。
【0193】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥のタンパク質製品は水性担体とともに構成される。本明細書で目的の水性担体とは、薬学的に許容される(例えば、ヒトへの投与に安全かつ非毒性である)とともに、凍結乾燥後の液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル溶液またはブドウ糖液が含まれる。ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥医薬品は、USPの注射用滅菌水(SWFI)またはUSPの0.9%塩化ナトリウム注射液のいずれかを用いて復元される。復元の過程で、凍結乾燥粉末が溶液中に溶解する。ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥のタンパク質製品は、約4.5mLの注射用水へと構成され、0.9%生理食塩水(塩化ナトリウム溶液)で希釈される。
【0194】
タンパク質組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌してもよく、滅菌濾過してもよい。生成する水溶液を、そのまま使用向けにパッケージしてもよく、凍結乾燥してもよいが、凍結乾燥の調製物は投与前に滅菌水性担体と合わせられる。固体形態での生成する組成物は、反復の単回投与単位でパッケージしてもよく、そのそれぞれが、一定量の、上述の薬剤(複数可)を含有する。固体形態での組成物はまた、融通性のある分量向けの容器にパッケージすることもできる。
【0195】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投薬レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を、当該患者にとって毒性とはならずに達成するのに有効である有効成分の量が得られるように様々であってもよい。
【0196】
特定の用量は、各患者に対して均一用量、例えば、50~5000mgのタンパク質とすることができる。あるいは、患者の用量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせて調整することができる。適当な投薬量を決定する際の他の要因としては、処置または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および病状を挙げることができる。処置にあたり適当な投薬量を決定するのに必要な算定についてさらなる洗練化が、当業者により、特に、本明細書に開示の投薬量の情報およびアッセイに照らし合わせてルーチン的になされている。投薬量はまた、適当な用量反応データと併せて使用される、投与量を決定するための既知のアッセイを使用して、決定することもできる。個々の患者の投薬量は、疾患の進行をモニタリングしながら調整することができる。患者における標的化可能なコンストラクトまたは複合体の血中レベルを測定して、有効濃度を達成または維持するために投薬量を調整する必要があるかどうかを確かめることができる。薬理ゲノミクスを使用して、どの標的化可能なコンストラクトおよび/または複合体が、ならびにそれらのどういった投薬量が、所与の個体にとって有効である可能性が高いかを判定することができる(Schmitz et al., Clinica. Chimica. Acta. 308: 43-53, 2001;Steimer et al., Clinica. Chimica. Acta. 308: 33-41, 2001)。
【0197】
一般に、体重を基準とした投薬量は、約0.01μgから約100mg毎体重1kgであり、例えば、約0.01μg~約100mg/体重1kg、約0.01μg~約50mg/体重1kg、約0.01μg~約10mg/体重1kg、約0.01μg~約1mg/体重1kg、約0.01μg~約100μg/体重1kg、約0.01μg~約50μg/体重1kg、約0.01μg~約10μg/体重1kg、約0.01μg~約1μg/体重1kg、約0.01μg~約0.1μg/体重1kg、約0.1μg~約100mg/体重1kg、約0.1μg~約50mg/体重1kg、約0.1μg~約10mg/体重1kg、約0.1μg~約1mg/体重1kg、約0.1μg~約100μg/体重1kg、約0.1μg~約10μg/体重1kg、約0.1μg~約1μg/体重1kg、約1μg~約100mg/体重1kg、約1μg~約50mg/体重1kg、約1μg~約10mg/体重1kg、約1μg~約1mg/体重1kg、約1μg~約100μg/体重1kg、約1μg~約50μg/体重1kg、約1μg~約10μg/体重1kg、約10μg~約100mg/体重1kg、約10μg~約50mg/体重1kg、約10μg~約10mg/体重1kg、約10μg~約1mg/体重1kg、約10μg~約100μg/体重1kg、約10μg~約50μg/体重1kg、約50μg~約100mg/体重1kg、約50μg~約50mg/体重1kg、約50μg~約10mg/体重1kg、約50μg~約1mg/体重1kg、約50μg~約100μg/体重1kg、約100μg~約100mg/体重1kg、約100μg~約50mg/体重1kg、約100μg~約10mg/体重1kg、約100μg~約1mg/体重1kg、約1mg~約100mg/体重1kg、約1mg~約50mg/体重1kg、約1mg~約10mg/体重1kg、約10mg~約100mg/体重1kg、約10mg~約50mg/体重1kg、約50mg~約100mg/体重1kgである。用量は、1日1回もしくは複数回、週1回もしくは複数回、月1回もしくは複数回、または年1回もしくは複数回、またはさらには2~20年ごとに1回、与えることができる。当業者であれば、体液または組織における、標的可能なコンストラクトまたは複合体の測定滞留時間および濃度に基づいて、投薬の反復率を容易に推測することができる。本発明の投与は、カテーテルを介した灌流によるまたは直接病巣内注射による、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内のものとすることができるであろう。これは、1日1回または複数回、週1回または複数回、月1回または複数回、および年1回または複数回、投与することができる。
【0198】
上の明細書は、本発明の多数の態様および実施形態について記載するものである。本特許出願は、態様および実施形態のすべての組合せおよび入替えを具体的に企図している。
【0199】
本明細書全体を通して、組成物が特定の構成成分を有する(having)、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、または方法(processes)および方法(methods)が特定の工程を有する(having)、含む(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載される場合、列挙される構成成分から本質的になるかまたはそれらからなる本発明の組成物が存在すること、ならびに、列挙される処理工程から本質的になるかまたはそれらからなる本発明による方法(processes)および方法(methods)が存在することが、付加的に、企図される。
【0200】
本願では、ある要素または構成成分が、列挙された要素または構成成分のリスト中に含まれると、および/または当該リストから選択されると述べられている場合、その要素または構成成分は、列挙された要素または構成成分のうちのいずれか1つとすることができるということ、または、その要素または構成成分は、列挙された要素または構成成分のうちの2つ以上からなる群から選択することができるということを理解されたい。
【0201】
さらに、本明細書に記載の組成物または方法の要素および/または特性は、本明細書で明示的であるか暗黙的であるかどうかにかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な方法で組み合わせることができることを理解されたい。例えば、特定の化合物に言及がなされる場合、その化合物は、文脈から別様に理解されない限り、本発明の組成物の種々の実施形態においておよび/または本発明の方法において使用することができる。言い換えれば、本願内では、明確で簡潔な出願を記すことおよび描くことを可能とするように、実施形態を記載および図示してきたが、実施形態は、本教示および本発明(複数可)から分かれることなく、様々に、組み合わせることが可能であること、または別々にすることが可能であることが意図されておりそしてそのことが理解されよう。例えば、本明細書に記載および図示されるすべての特性は、本明細書に記載および図示される本発明(複数可)のすべての態様に適用可能であることが理解されよう。
【0202】
「~の少なくとも1つ」という表現は、文脈および使用から別様に理解されない限り、その表現の前にある列挙された対象物のそれぞれを、ならびに、列挙された対象物のうちの2つ以上の種々の組合せを、個別に含むことを理解されたい。3つ以上の列挙された対象物に関する「および/または」という表現は、文脈から別様に理解されない限り、同じ意味を有するものと理解されたい。
【0203】
「含む(include、includes、including)」、「有する(have、has、having)」、または「含有する(contain、contains、containing)」という用語の使用については、それらの文法上の同等物を含めて、特に明記しない限りまたは文脈から別様に理解されない限り、無制限のかつ非限定的なもの、例えば、列挙されていないさらなる要素または工程を除外しないものとして、全体として理解されたい。
【0204】
「約」という用語の使用が定量的値の前にある場合、本発明はまた、特に明記しない限り、その具体的な定量的値自体も含む。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特に指定のない限りまたは推定がない限り、公称値から±10%の変動を指す。
【0205】
工程の順序またはある特定の行為を実行するための順序は、本発明が実施可能状態に留まる限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上の工程または行為を同時に実行してもよい。
【0206】
本明細書におけるあらゆる例、または例示的な文言、例えば、「などの(such as)」または「含めて(including)」の使用は、本発明をよりよく例示することを単に意図したものであり、特許請求されない限り、本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書のいかなる文言も、特許請求されていない任意の要素が本発明の実践にとって不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0207】
以下の実施例は、単なる例示であり、いかようにも本発明の範囲または内容を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0208】
[実施例1]
選択されたハイブリドーマクローンの上清の特性評価
FLT3特異的抗体を、hFLT3-His融合タンパク質でマウスを免疫することによって生成した。228のハイブリドーマ上清を、酵素免疫測定法(ELISA)によってFLT3結合について評価し、96のハイブリドーマがhFLT3-Hisタンパク質に非共有結合で結合した。予備的なバイオレイヤー干渉法(BLI)結合親和性の推定値、FLT3を発現するヒト細胞およびカニクイザル細胞への結合、ならびにエピトープの多様性に基づいて、11のクローンを選択した。これら11のクローンがhFLT3-Hisと結合する能力を、高分解能表面プラズモン共鳴法(SPR)によってさらに解析した。実験を、Biacore 8K機器を使用して、生理学的温度を模倣して37℃で実行した。ビアコアセンサーグラムおよびキネティックパラメータを表4に提示し、生データおよび適合を図1に示す。11のハイブリドーマのうち7つが10nM未満のKで結合したが、5つは遅い解離速度定数(k<5×10-4-1)を見せている。
【0209】
参照mAbとのハイブリドーマ融合物のビニングを、OcetetRed384(ForteBio)を使用するBLIによって実施した。簡潔にいえば、ハイブリドーマ上清を抗マウスIgGキャプチャーセンサーチップに15分間ロードし、PBSF中で5分間平衡化した。センサーを200nM hFLT3-Hisに浸漬し、180秒間会合させ、これに続いて、100nM対照IgGまたは200nM FTL3リガンド溶液に浸漬した。応答単位の上昇は、ハイブリドーマが参照mAbに対して非競合物であることを指示したが、一方、シグナルの上昇がないことは、ハイブリドーマが参照mAbと競合することを指示した。FL23(Amgen)およびFL39(Amgen)はドメイン1に結合する。既知のFLT3リガンドブロッカーであるEB10(ImClone)はドメイン3に結合する。FL61(Amgen)もドメイン3に結合するが、FLT3リガンドブロッカーではない。4G8(Synimmune)はドメイン4に結合する。NC7(Imclone)はドメイン5に結合する。これら参照抗体のVH配列およびVL配列を表3に提供する。
【0210】
【表17】
【0211】
ハイブリドーマのうちの5つ、すなわち4A4、11F4、1A2、4H2、および13C9から産生された抗体は、hFLT3-Hisへの結合にあたり参照抗体のいずれとも競合しないことが観察された。カニクイザルFLT3(cFLT3)との交差反応性を、cFLT3を発現する同質遺伝子RMA細胞への抗体の結合を測定することによって評価した。
【0212】
簡潔にいえば、RMA細胞に、cFLT3またはヒトFLT3(hFLT3)をコードするレトロウイルスベクターを形質導入した。粗ハイブリドーマ収集物からのα-FLT3 mAbのhFLT3またはcFLT3の同質遺伝子細胞株ならびにFLT3+がん細胞株への結合を以下のように実施した。96ウェル丸底プレートのウェルごとに100,000個のRMA、REH、またはSEMの細胞を添加した。細胞を遠沈し、ペレットをボルテックス振とうにより穏やかに分離させた。Zombieライブ/デッド色素(PBS+1:2000色素)50μLをウェルごとに添加し、暗所で室温で20分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝剤(PBS+2%FBS)200μLで洗浄した。ハイブリドーマ上清50μLを洗浄細胞に添加し、混合物を暗所で氷上で30分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、次いで、抗マウスFc-PE二次試薬(1:200希釈)50μLを添加し、暗所で氷上で20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒド50μLで氷上で15分間固定した。細胞を再度洗浄し、次いで、FACS緩衝剤200μLに再懸濁し、取得の用意ができるまで4℃で保存した。試料を、HTS(ハイスループットサンプラー)を備えたBDFACSCelestaでランさせた。
【0213】
FLT3を発現すると報告されているヒトALL細胞株であるREHがん細胞(ATCCカタログ番号CRL-8286)に対するハイブリドーマ上清の結合親和性も測定した。表4に示すように、ほとんどのクローンが、hFLT3を発現するがん細胞への結合親和性およびcFLT3との交差反応性を提示した。14A5および15A11に関するカニクイザルFLT3結合データについては収集しなかった。
【0214】
【表18】

[実施例2]
【0215】
精製抗FLT3マウス抗体の解析
上に提示の解析に基づいて、8つのハイブリドーマ(4A4、11F4、12H10、15A11、12C09、1A2、14A5、4H2)をサブクローニングおよび配列決定のために選択した。各親ハイブリドーマからの2つのサブクローンを生成し、解析した。各ハイブリドーマからの配列を、ユニークであると判定した。各サブクローンをハイブリドーマ培養物から精製し、hFLT3-Hisへの結合を図2に示すようにSPRによって確認した。精製マウスサブクローンmAbに対するhFLT3のキネティック定数および結合親和性を表5に示す。参照抗体によるビニングを、実施例1に記載の方法を使用して実施したが、4つの抗体、すなわち4A4.A3、11F4.B9、1A2.A3、および4H2.E3は、hFLT3-Hisへの結合にあたり、参照抗体のいずれとも競合しなかった。
【0216】
【表19】
【0217】
精製サブクローニングmAbの細胞結合を、RMA細胞株を発現する同質遺伝子のヒトFLT3およびカニクイザルFLT3で確認した。12C9.E5を除いて、細胞表面に結合したすべてのクローンは、ヒトおよびカニクイザルのFLT3を発現した(表6)。同様に、すべてのサブクローンが、FLT3を発現すると報告されているヒトALL細胞株であるSEM(DSMZカタログ番号ACC 546)に、高親和性をもって結合した。
【0218】
【表20】
[実施例3]
【0219】
選択された抗FLT3ネズミ抗体のリガンドブロッキング特性
本実施例を、選択された抗FLT3ネズミ抗体がFLT3リガンドとのFLT3相互作用をブロックする能力を、特徴づけるように設計した。α-FLT3 mAbがFLT3-発現EOL-1がん細胞(DSMZカタログ番号ACC 386)と結合する能力について、飽和濃度の可溶性FLT3リガンドを添加する前後で、試験した。各抗体について、リガンドブロッキング値に関する各抗体のパーセンテージは、指示されたFLT3リガンドの非存在下で得られたmAb結合シグナルと比べた、FLT3リガンドの存在下で得られた上記シグナルの低下として計算した。既知のFLT3リガンドブロッカーであるEB10 mAbを陽性対照として使用した。図3に示すように、12H10.G7、11F4.B9および4A4.A3、14A5.E8の抗体は、FLT3のFLT3リガンドへの結合を妨害しなかったが、一方、15A11.C8抗体は、FLT3リガンドのFLT3への結合をブロックした。
[実施例4]
【0220】
推定配列易罹病性の解析
12H10.G7、11F4.B9および4A4.A3、14A5.E8の抗体のCDR(Chothiaに基づいて特定)における可能性のある配列易罹病性について調べた。以下の可能性のある易罹病性が考慮に入れられた:M(可能性のある酸化部位);NG、NSおよびNT配列モチーフ(可能性のある脱アミド化部位);DG、DSおよびDT配列モチーフ(可能性のある異性化部位);DP配列モチーフ(化学加水分解の可能性のある部位)。結果を表7にまとめる。
【0221】
【表21】
【0222】
加えて、Kabatに基づいた12H10.G7のCDRH1に該当するM34にての推定配列易罹病性もまた特定した。これらの抗体の変異体を、推定上の配列易罹病性モチーフを排除するように設計した。
[実施例5]
【0223】
ヒト化および親和性成熟
組換えhFLT3タンパク質のキネティクスおよび親和性、ヒトおよびカニクイザルサルのFLT3を発現する細胞株への結合、様々なAMLおよびALLのがん細胞への結合、ビニングプロファイル、ならびにヒトFLT3-リガンド結合を阻害しないことに関して収集されたデータに基づいて、4つのマウスハイブリドーマサブクローン、すなわち12H10.G7、11F4.B9、4A4.A3および14A5.E8をヒト化向けに選択した。4A4.A3および14A5.E8は、12H10.G7および11F4.B9よりもhFLT3に対してわずかに低い親和性を示したが、これらの抗体は、それぞれ、FLT3のユニークエピトープ(参照抗体との交差ブロッキングではない)およびドメイン1に結合するようであり、したがって、エピトープの多様性を探索するためにさらに解析した。
【0224】
12H10.G7抗体をヒト化して、上掲のようにGB94およびGB102を創り出したが、これらは同じVH配列およびVL配列を共有した。フレームワーク領域に復帰突然変異を導入して、GB87~GB93およびGB95~GB101の変異体を創り出した。
【0225】
11F4.B9抗体をヒト化して、上掲のように1153および1154を創り出したが、これらは同じVH配列およびVL配列を共有した。フレームワーク領域に復帰突然変異を導入して、1151および1152の変異体を創り出した。1153抗体についてはまた、親和性成熟に供した。簡潔にいえば、1553 FLT3 scFvのCDRに焦点を当てたライブラリを設計し、酵母の表面で提示させた。FACS選択を、酵母をビオチン化ヒトFLT3-His抗原とインキュベートすることにより、2回行った。FACS濃縮のアウトプット試料をさらなるCDR突然変異体と組み合わせて、第2のライブラリを作製した。100nMから1nMまでビオチン化ヒトFLT3-Hisで滴定することにより、さらなるFACS選択の2ラウンドを行った。ソーティングを10nMで実行したが、この場合、親と比較して、シグナルの明らかな上昇がライブラリに対して観察された。ソーティングした酵母クローンをプレーティングし、スクリーニングした。
[実施例6]
【0226】
ヒトがん抗原を発現した細胞への抗体結合の評価
ヒトおよびカニクイザルのFLT3を異所的に発現する同質遺伝子細胞株を使用して、ヒトFLT3とカニクイザルFLT3の間の交差反応性について評価した。hFLT3またはcFLT3を発現するヒトがん細胞株RMAを使用して、FLT3-結合抗体の腫瘍抗原結合について評価した。ヒトAML細胞株MOLM-13およびMV4-11ならびにヒトALL細胞株REHを使用して、抗体の結合能力について評価した。具体的には、FLT3-T227Mを発現したMOLM-13細胞を使用して、抗FLT3抗体が突然変異型FLT3と結合する能力について評価した。
【0227】
ヒトIgG1フォーマットでの12H10.G7からヒト化されたモノクローナル抗体である1158 mAbを希釈し、それぞれの細胞とともにインキュベートした。次いで、細胞をフルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体とともにインキュベートし、フローサイトメトリーによって解析した。平均蛍光強度(MFI)値を二次抗体のみの対照に対して正規化して、バックグラウンドに対する倍数(fold over background)(FOB)値を得た。
【0228】
図4Aおよび図4Bに示すように、1158 mAbは、等価の効力でヒトおよびカニクイザルのFLT3を異所的に発現するRMA細胞と結合した。図4Cに示すように、1158 mAbは、ヒトALL細胞であるREH細胞と結合した。図5に示すように、1158 mAbはFLT3-T227Mを発現したMOLM-13細胞と結合した。
【0229】
FLT3-ITDを発現したMV4-11細胞も使用して、同様の方法を使用して抗FLT3抗体が突然変異体FLT3と結合する能力について評価した。1158 mAbに由来するscFvの形で抗原結合部位を含有する二重特異性抗体が、MV4-11細胞と結合することが観察された。
[実施例7]
【0230】
抗体内在化の評価
好酸球性白血病に由来するEOL-1ヒトがん細胞株を使用して、1158 mAbとのインキュベーション後のFLT3の内在化について評価した。重複するプレートでEOL-1細胞を、1158 mAbまたはhIgG1アイソタイプ対照抗体とともに37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、非競合抗FLT3抗体を使用して全FLT3を染色した。FLT3の内在化を以下のように計算した:
%内在化=[1-(試料MFI 2時間/hIgG1アイソタイプMFI 2時間)]×100%
【0231】
上の方法を使用して測定して、1158 mAbとのインキュベーション後のREH細胞へのFLT3の内在化は、約8.27%であった。上の方法を使用して測定して、1158 mAbとのインキュベーション後のEOL-1細胞へのFLT3の内在化は、約8.30%であった。
[実施例8]
【0232】
初代ヒトNK細胞の細胞傷害性アッセイ
標的細胞の溶解を、DELFIA細胞傷害性アッセイによって測定した。簡潔にいえば、FLT3を発現するヒトがん細胞株を、培養物から回収し、HBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer C136-100)で標識するために10/mLで増殖培地に再懸濁した。標的細胞の標識については、製造業者の使用説明書に従った。標識後、細胞をHBSで3回洗浄し、培養培地に0.5~1.0×10/mLで再懸濁した。BATDA標識細胞100μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。1158 mAbを培養培地で希釈し、希釈mAb 50μlを各ウェルに添加した。
【0233】
NK細胞を調製するために、PBMCを、密度勾配遠心分離を使用してヒト末梢血バフィーコートから分離し、洗浄し、NK細胞分離向けに調製した。NK細胞を、磁気ビーズを用いたネガティブセレクション技法を使用して分離した。分離NK細胞の純度は通常には、>90%のCD3-CD56+であった。分離NK細胞を一晩休止させ、培養物から回収した。次いで、細胞を洗浄し、エフェクターの標的(E:T)に対する比が5:1となるように、培養培地に10~2.0×10/mLの濃度で再懸濁した。NK細胞50μlを、培養容量が合計200μlとなるようにプレートの各ウェルに添加した。プレートを37℃で5%COと共に2~3時間インキュベートした。
【0234】
インキュベーション後、プレートをインキュベーターから取り出し、細胞を200×gで5分間の遠心分離によってペレット化した。培養上清20μlをクリーンなマイクロプレートに移し、室温のユーロピウム溶液(Perkin Elmer C135-100)200μlを各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、プレートシェーカー上で250rpmで15分間インキュベートし、次いで、SpectraMax i3X機器を使用して読み取った。
【0235】
ユーロピウムと蛍光キレートを形成することができる物質の自然放出を、NK細胞の非存在下でインキュベートされた標的細胞において測定した。かかる物質の最大放出を、1%Triton-Xで溶解した標的細胞で測定した。特異的溶解の%を以下のように計算した:
特異的溶解の%=[(実験上の放出-自然放出)/(最大放出-自然放出)]100%。
【0236】
図6A~6Dに、ヒトAMLまたはALL細胞株EOL-1(図6A)、Reh(図6B)、RS4-11(図6C)、およびMV4-11(図6D)の初代NK細胞媒介性殺傷を増強する上での1158 mAbの活性を示す。1158 mAbによって、NK細胞が用量依存的に標的細胞を殺傷する能力が向上した。
[実施例9]
【0237】
ヒト全血へのTriNKETまたは mAbの結合の評価
1158 mAbが様々なタイプの血球と結合する能力について評価した。簡潔にいえば、ヒト全血を1158 mAbまたはヒトIgG1アイソタイプ対照抗体とインキュベートした。血球をフローサイトメトリーにより解析し、1158 mAbまたはアイソタイプ対照抗体の結合を、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。
【0238】
血液中の顆粒球、単球、B細胞、NK細胞、CD8+ T細胞、およびCD4+ T細胞への1158 mAbの有意な結合は観察されなかった。
[実施例10]
【0239】
FLT3シグナル伝達の活性化
FLT3シグナル伝達のマーカーであるFLT3のリン酸化を、pFLT3 ELISA(R&D Systems DYC368)によって測定した。EOL-1細胞を96ウェル丸底プレートにプレーティングした。1158 mAbおよび/またはFLT3Lを添加した。試料を室温で5分間インキュベートし、即座に300×gで5分間ペレット化した。細胞をPBSで2回洗浄した。細胞ペレットをLysis Buffer #9 200μLに再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。試料を2000×gで5分間ペレット化し、上清をクリーンな試験管に移した。タンパク質濃度を、BCA総タンパク質アッセイを使用して定量化した。適宜、試料をIC Diluent #12で希釈した。溶解物を、製造元の使用説明書に従って測定した。各試料のpFLT3濃度を、導出した標準曲線からの値の補間によって決定した。既知の標準物質の光学密度値をそれらそれぞれの濃度に対してプロットし、データを線形回帰モデルに適合させた。
【0240】
図7Aに示すように、FLT3Lは、pFLT3レベルの3倍の上昇をもたらしたが、一方、1158 mAbは、有意なFLT3リン酸化を誘導しなかった。図7Bに、細胞をFLT3Lと組み合わせて1158 mAbと共にインキュベートした場合、1158 mAbは、FLT3L誘導性のFLT3リン酸化を阻害しなかったことを示す。これらの結果は、1158 mAbがFLT3との結合にあたりFLT3Lと競合しないという観察と一致した。
【0241】
参照による組込み
そうでないと指示されていない限り、本明細書において参照される特許文書および科学論文のそれぞれの開示全体は、あらゆる目的のために、参照により組み込まれる。
【0242】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化することができる。したがって、前述の実施形態は、あらゆる点において、本明細書に記載の本発明に関して限定的というよりもむしろ例示的であると見なすべきである。ゆえに、本発明の範囲は、前述の明細書によってではなく、添付の特許請求の範囲によって指示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内にあるすべての変更は特許請求の範囲に包含されるように意図されている。
【0243】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
【配列表】
2022551757000001.app
【国際調査報告】