IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アペラムの特許一覧

特表2022-551811金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備
<>
  • 特表-金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備 図1
  • 特表-金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備 図2
  • 特表-金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備 図3
  • 特表-金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】金属材料を酸洗するための浴に含まれるクロムの回収方法及びその実施設備
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/32 20060101AFI20221207BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20221207BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20221207BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20221207BHJP
   C22B 5/10 20060101ALI20221207BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20221207BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20221207BHJP
   C25F 1/06 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C22B34/32
C22B3/22
C22B3/44 101Z
C22B5/02
C22B5/10
C22B3/26
C22B7/00 Z
C25F1/06 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514779
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 IB2019057527
(87)【国際公開番号】W WO2021044200
(87)【国際公開日】2021-03-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512072614
【氏名又は名称】アペラム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イスマエル・ギヨット
(72)【発明者】
【氏名】エリス・シノワメリ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ビヤール
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・コニャール
(72)【発明者】
【氏名】ナディーヌ・コマンジュ-ベルノル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ミシェル・ダマス
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA08
4K001BA21
4K001BA24
4K001DA05
4K001DB16
4K001DB22
4K001DB26
4K001HA01
(57)【要約】
金属材料を酸洗するための浴(1)からCrを回収する方法であって、浴(1)は少なくとも1つの硫酸塩と酸洗金属由来のCrを含む水溶液であり、-酸洗浴(1)の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから水性二相系を形成するステップであって、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる酸洗浴からなる三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものであり、水性二相系は、Crの大部分が配置されるポリマー相と非ポリマー相とを含む、ステップ;-ポリマー相と非ポリマー相とを分離するステップ;-ポリマー相にCrを含む沈殿物を形成させるステップ;-前記ポリマー相に対して固液分離を行い、ポリマーとCrを含む沈殿物を分離するステップ;-及び、沈殿物を処理し、それらが含むCrを回収するステップ;を含む方法。前記方法を実施するための設備。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸洗槽(2)のような容器に保持される金属材料を酸洗するための浴(1)に含まれるCrを回収する方法であって、前記酸洗浴(1)は少なくとも1つの硫酸塩と酸洗金属由来のCrを含む水溶液であり、
-水性二相系が、前記酸洗浴(1)の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから形成され、前記ポリマーは好ましくはポリエチレングリコール、典型的にはPEG-200、PEG-400又はPEG-600、最適にはPEG-400であり、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる前記酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出されるポリマー相と非ポリマー相とを含む;
-前記ポリマー相と非ポリマー相とは分離されている;
-前記ポリマー相では、Cr含有沈殿物が形成されたままである;
-前記ポリマー相に対して固液分離を行い、前記ポリマーと前記Cr含有沈殿物を分離する;
-前記沈殿物を処理し、その中に含まれるCrを回収する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記Cr含有沈殿物及び前記ポリマーの形成速度を速めるために、前記ポリマー相は、前記固液分離の前に、340~860nmの間の波長の少なくとも1つの光源に曝露することにより照射されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光源への曝露の前に、前記ポリマー相を液膜の形態で配置することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー相に対する前記固液分離の後、この分離から生じる液体画分を脱水させ、その中に含まれるポリマーを回収し、前記ポリマーを前記水性二相混合物の形成に再利用することを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水は、蒸留により行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脱水から生じる水は、前記酸洗浴(1)を含む前記槽(2)に送られることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
Crを含有する沈殿物からのCrの回収は、照射されたポリマー相の残部からそれらを分離した後、乾式製錬プロセスによって行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾式製錬プロセスは、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元のプロセスであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
-前記酸洗浴(1)を含む槽(2)から酸洗浴(1)の画分を抽出する;
-水性二相系が、前記酸洗浴(1)の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから形成され、前記ポリマーは好ましくはポリエチレングリコール、典型的にはPEG-200、PEG-400又はPEG-600タイプのポリエチレングリコール、最適にはPEG-400であり、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる前記酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出されるポリマー相と非ポリマー相とを含む;
-及び、前記水性二相混合物の前記非ポリマー相を、前記酸洗浴を含む前記槽(2)に送る
ことを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸洗浴(1)を含む前記槽(2)に、酸洗浴(1)を連続的に供給することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸洗金属は、ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
金属酸洗浴(1)に含まれるCrを回収するための設備であって、前記酸洗浴(1)は、少なくとも1つの硫酸塩及び酸洗金属に由来するCr(VI)を含む水溶液であり、
-前記酸洗浴(1)を含む容器(2);
-前記酸洗槽(2)に接続されたミキサー反応器(3);
-前記酸洗浴(1)とともに水性二相系を形成するために前記ミキサー反応器(3)に配置されることが意図されるポリマーを含む容器(4);
-前記水性二相系の相をポリマー相と非ポリマー相とに分離する装置(5);
-及び、前記ポリマー相に作用して、前記ポリマー相に存在するCr(VI)含有沈殿物を前記ポリマーから分離する固液装置(7)
を含むことを特徴とする、設備。
【請求項13】
それはまた、340~860nmの波長範囲の波長を有する少なくとも1つの光源からの放射を用いて前記ポリマー相を照射し、その中でのCr含有沈殿物の形成を促進させるための装置(6)も含むことを特徴とする、請求項12に記載の設備。
【請求項14】
それは、前記ポリマー相を膜状に配置し、前記膜を340~860nmの波長範囲の少なくとも1つの光源に曝露する手段を含むことを特徴とする、請求項13に記載の設備。
【請求項15】
それはまた、前記Cr含有沈殿物からCrを回収するための装置(10)も含むことを特徴とする、請求項12から14の何れか一項に記載の設備。
【請求項16】
Cr回収のための前記装置(10)は、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元などの乾式製錬プロセスを使用することを特徴とする、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
それは、前記ポリマーを前記Cr含有沈殿物から分離した後に、前記ポリマーを脱水するための装置(9)を含むことを特徴とする、請求項12から16の何れか一項に記載の設備。
【請求項18】
前記ミキサー反応器(3)と前記水性二相系の相の前記分離装置(5)とは、1つの同一の装置のアイテムで構成されることを特徴とする、請求項12から17の何れか一項に記載の設備。
【請求項19】
前記酸洗浴(1)を含む前記容器(2)は、酸洗槽であることを特徴とする、請求項12から18の何れか一項に記載の設備。
【請求項20】
それは、以下の手段:
-前記酸洗浴(1)中の前記非ポリマー相を再利用するための手段;
-使用済みポリマーをその脱水後に、前記ポリマーを含む前記容器(4)に戻すための手段;
-及び、前記ポリマーの脱水から生じる水を前記酸洗槽(2)に戻すための手段
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項12から19の何れか一項に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cr含有金属材料、特にステンレス鋼のようなCrを多く含む鋼の酸洗に関する。より具体的には、硫酸塩を含む酸洗浴中に溶解状態で見出される金属の回収に関するものであり、これらの浴を再生することにより、連続処理方法へのそれらの再利用又は取り込みを、前記方法の性能を急速に低下させることなく可能にし、それによって回収された金属をできる限りアップグレードさせることを目的としている。
【背景技術】
【0002】
化学酸洗は、鋼の製造プロセスで不可欠な作業である。それは、部品表面の酸化層を除去し、部品を水溶液、多くの場合は強酸(特に、HCl、HNO、HSO、HFの中から通常選択される1つ以上の酸を含む溶液)、場合によっては中性塩、例えばNaSO、KSO、(NHSOなどの硫酸塩も含む溶液に浸漬することからなる。
【0003】
硫酸塩を多く含む浴は、特に電解酸洗プロセスで使用される。
【0004】
酸洗される酸化層は、酸化性雰囲気(特に空気)中で行われる熱処理時に形成される。この酸洗は、多くの場合、搬送されるストリップに対して行われる。これにより、ストリップ表面に酸化物が埋没して外観や品質が劣化するリスクなしにストリップを積層することができ、又は良好な条件下で表面処理を行うことができる。
【0005】
この酸洗作業では、酸化層及び/又は卑金属の溶解に由来する金属塩が浴に濃縮される。
【0006】
この金属塩の浴への充填は、2つの視点から有害である。1つ目は、浴中に金属カチオンが多量に存在することにより、新しい浴中に存在する化学的及び電気化学的平衡が変化し、酸洗の効能が低下することである。2つ目は、これらの溶解した金属がそれらの溶解限界濃度に達すると、それらが浴内で沈殿し、スラッジを形成することである。このスラッジが処理品や処理品の走行経路を決めるローラーに堆積すると、表面品質に問題が生じることがある。それらはまた、酸洗装置の槽、タンク、及び配管にも堆積し、この装置の正常な機能を損なうこともある。
【0007】
このような酸洗浴の金属含有量の変化及びそれに伴う効能の損失に直面した場合、産業界にとって唯一の簡単な手段は、使用済みの浴の全部又は一部を、そこに新しい浴を加えて再生することである。再生前に、使用済みの浴の全部又は一部を中和ステーションに送り、そこで他の使用済みの浴と混合し、そこに含まれるCr(VI)イオンを還元処理(例えばFe(II)又はナトリウムNaHSOによる還元)し、続いてNaOH又はCa(OH)を添加して金属カチオンを沈殿させる。そして、凝集/沈降によって固体要素を液体から分離し、プレスフィラーでろ過する。得られた金属水酸化物スラッジのケーキは、経済的に実行可能なこのスラッジのアップグレード処理が存在しないため、廃棄物として処理される。
【0008】
このスラッジは、異なる表面処理浴に溶解した金属と、これらの浴の少なくとも一部のアニオンとの混合物で構成されている。例えば、HSOとHFを使用した酸浴に由来するこのスラッジは、SとFの含有量が高いため、乾式製錬ルートでのこの廃棄物の再利用は困難である。この欠点に直面した場合、1つの解決策は、中和フローを分離して、一方ではFとSを含む使用済みの浴を得、他方ではリサイクルするのがあまり困難ではない副産物を有する浴を得ることである。
【0009】
特定の種類の浴に関する処理の解決策は既に存在し、使用されている。塩酸浴のためのローストスプレーなどのこれらの解決策は一般に、一方では酸の再生を、他方では金属の回収を可能にする。これらの方法はしばしばコストがかかり、工業プロセスで使用できる濃度の酸を再生できるとは限らない。さらに、これらの方法は一般に、エネルギー集約的であり、かつ/又は、大量の水を消費し、かつ/又は、装置が使用できない間、洗浄サイクルを必要とする樹脂又はイオン交換膜を使用するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、使用済み電解酸洗浴を再生し、硫酸塩のような1つ以上の硫黄含有化合物を比較的多量に含むこれらの使用済み電解酸洗浴に含まれるCrを回収するための効率的かつ経済的に実行可能な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の主題は、酸洗槽のような容器に含まれる金属材料の酸洗浴からCrを回収する方法であって、前記酸洗浴は少なくとも1つの硫酸塩と酸洗金属由来のCrを含む水溶液であり、以下のことを特徴とする方法である:
-水性二相系が、前記酸洗浴の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから形成され、前記ポリマーは好ましくはポリエチレングリコール、典型的にはPEG-200、PEG-400又はPEG-600、最適にはPEG-400であり、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「重量%ポリマー=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出されるポリマー相と非ポリマー相とを含む;
-前記ポリマー相と非ポリマー相とは分離されている;
-ポリマー相では、Cr含有沈殿物が形成されたままである;
-前記ポリマー相に対して固液分離を行い、ポリマーとCr含有沈殿物を分離する;
-前記沈殿物を処理し、その中に含まれるCrを回収する。
【0012】
好ましくは、Cr含有沈殿物及びポリマーの形成速度を速めるために、前記ポリマー相は、前記固液分離の前に、340~860nmの間の波長の少なくとも1つの光源に曝露することにより照射される。
【0013】
前記光源への曝露の前に、ポリマー相を液膜の形態で配置することができる。
【0014】
前記ポリマー相に対する前記固液分離の後、この分離から生じる液体画分の脱水を行って、その中に含まれるポリマーを回収し、前記ポリマーを前記水性二相混合物の形成に再利用することができる。
【0015】
前記脱水は、蒸留により行うことができる。
【0016】
前記脱水から生じる水は、酸洗浴を含む容器に送ることができる。
【0017】
Crを含有する沈殿物からのCrの回収は、照射されたポリマー相の残部からそれらを分離した後、乾式製錬プロセスを介して行うことができる。
【0018】
前記乾式製錬プロセスは、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元であり得る。
【0019】
前記プロセスは、以下のステップを含むことができる:
-酸洗浴を含む容器から酸洗浴の一部を抽出する;
-水性二相系が、前記酸洗浴の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから形成され、前記ポリマーは好ましくはポリエチレングリコール、典型的にはPEG-200、PEG-400又はPEG-600タイプのポリエチレングリコール、最適にはPEG-400であり、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出されるポリマー相と非ポリマー相とを含む;
-前記水性二相混合物の前記非ポリマー相を、酸洗浴を含む容器に戻す。
【0020】
酸洗浴を含む容器には、酸洗浴を連続的に供給することができる。
【0021】
前記酸洗金属は、ステンレス鋼とすることができる。
【0022】
本発明のさらなる主題は、金属酸洗浴に含まれるCrを回収するための設備であって、前記酸洗浴は、少なくとも1つの硫酸塩及び酸洗金属に由来するCr(VI)を含む水溶液であり、以下のものを含むことを特徴とする、設備である:
-前記酸洗浴を含む容器;
-前記酸洗槽に接続されたミキサー反応器;
-前記酸洗槽とともに水性二相系を形成するために前記ミキサー反応器に添加されることが意図されるポリマーを含む容器;
-前記水性二相系の相をポリマー相と非ポリマー相とに分離する装置;
-及び、前記ポリマー相に作用して、ポリマー相に存在するCr(VI)含有沈殿物を前記ポリマーから分離する固液装置。
【0023】
この設備はまた、340~860nmの範囲の波長の少なくとも1つの光源による放射を介して前記ポリマー相を照射し、Cr含有沈殿物の形成を促進させるための装置も含んでいてもよい。
【0024】
この設備はまた、前記ポリマー相を膜状に配置し、前記膜を340~860nmの波長範囲の波長を有する少なくとも1つの光源に曝露する手段も含んでいてもよい。
【0025】
前記設備はまた、前記Cr含有沈殿物からCrを回収するための装置も含んでいてもよい。
【0026】
前記Cr回収装置は、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元などの乾式製錬プロセスに頼ることができる。
【0027】
この設備は、前記ポリマーを前記Cr含有沈殿物から分離した後に、前記ポリマーの脱水装置を含むことができる。
【0028】
前記ミキサー反応器と前記水性二相系の相を分離する前記装置とは、同一の装置のアイテムで構成することができる。
【0029】
酸洗浴を含む容器は、酸洗槽とすることができる。
【0030】
この設備は、以下の手段のうちの少なくとも1つを含むことができる:
-酸洗浴中の非ポリマー相を再利用するための手段;
-使用済みポリマーをその脱水後に、ポリマーを含む前記容器に戻すための手段;
-及び、使用済みポリマーの脱水から生じる水を酸洗槽に戻すための手段。
【0031】
理解されたように、1つ以上の硫酸塩を含む使用済み酸洗浴、特に電解酸洗からCrを回収するために、本発明は、最も好ましくは酸洗浴からCr(VI)を抽出できる水性二相系の形成につながるポリマーの使用による液-液抽出に頼るものである。
【0032】
本発明で使用できるポリマーは、非妨害エーテル官能基を有する、すなわちエーテル官能基のすぐ近くでポリマー鎖にグラフトされた基を持たないという特徴を有すると思われる。
【0033】
ポリエチレングリコール、特にPEG-200、PEG-400及びPEG-600は、本発明で使用することができる選択肢のポリマーである。PEG-400が好ましい例である。
【0034】
ポリマーを含む水性二相系に関する一般的な情報は、例えば、以下の文書に記載されている:
-「Partitioning in Aqueous Two-Phase Systems: Fundamentals, Applications and Trends」、A. Lima Grilo、M. Raquel Aires-Barros、A. M. Azevedoによる、Separation and Purification Review 45(2016)、第68-80頁;
-「Influence of Different Phase-Forming Parameters on the Phase Diagram of Several PEG-Salt Aqueous Two-Phase Systems」、B.A. Glyk、T. Scheper、S. Beutelによる、J. Chem. Eng. Data、59(2014)、第850-859頁。
【0035】
次に、以下の添付図を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の方法を最適に実施するために行われるべき操作の連続を図式化したものである。
図2】PEG-400、酸洗浴、及び水から構成される混合物中のPEG-400の重量濃度のどの範囲が、本発明の満足な実施のために留意されなければならないかを、特定の組成を有する浴について、浴温の関数として示す図である。
図3】重量パーセントで、最初の浴に加えられたポリマーの割合の関数として、抽出後のポリマーを含む相における元素の分布を与える図である。
図4図4は、処理される液膜の厚さに応じた、光への暴露中のポリマーを含む相のCr含有量の速度論的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
まず、硫酸塩を含む電解酸洗浴は、「電気硫酸浴」と呼ばれ、主にステンレス鋼の最終アニーリングのための酸洗シーケンスの初期に使用されることが想起される。一般的にこのような浴で使用される硫酸ナトリウムは、ステンレス鋼の表面には作用しないが、専ら電解電流を運ぶために使用される。電解は、ストリップ表面の酸化物層に含まれるCr(III)を溶解性の高いCr(VI)に変換し、故に浴中に放出させるために使用される。従って、酸洗の進行に伴い、かつ酸洗の進行時に、浴中にはCr(VI)が担持される。この担持は、この浴中で起こる化学反応及び電気化学反応の平衡に変化をもたらし、浴中の溶解金属が高濃度に達すると、酸洗効能を失うことになる。
【0038】
さらにCr(VI)は、欧州REACH規則によると、CMR分類(発がん性、変異原性、生殖毒性)の化学種である。そのため、それに暴露された人には大きな危険性がある。この浴は処理され、従って中和されているが、浴中に多量のCr(VI)が形成及び蓄積されると、酸洗槽の近くで作業する作業者の安全及び健康上のリスクとなる。
【0039】
これらの全ての理由のため、このCr(VI)を無害な形で回収し、その後のクロムの回収を衛生的かつ安全な適切な条件下で、かつ安価に行うことができることが重要である。
【0040】
また、二相系の形成による溶液中に含まれる元素の抽出は、回収分野で既に知られている方法であることが想起される。しかしながら、ほとんどの場合、これらの方法は有機溶媒又はイオン液体を使用しており、コスト及び/又は毒性が高いという欠点がある。
【0041】
この方法による最初の進歩は、国際公開第2018/087364号に開示されている。無機塩を含む処理すべき溶液を、ある割合でイオン液体と接触させることによって、種が二相のうちの一方又は他方の間で分割される水性二相系を形成することが可能である。しかしながら、本書では、金属や合金の酸洗浴へのこの進歩の適用は想定していない。
【0042】
また、幾つかのポリマーで水性二相系を形成することが可能であることが示されている。
【0043】
本発明の方法では、まず、1つ以上の硫酸塩を含む酸洗浴に溶解したCrを抽出し、そこからS欠乏スラッジ(すなわち、後に濾過が続くCaOによる金属カチオンの従来の沈殿方法を使用した場合に約8%であることと比較して、0.03%未満のSを含む)を得ることが可能であり、このスラッジは従って、硫黄含有化合物の排出のリスクなしに乾式製錬手段で処理することができ、第二に、このようにしてCrが減少した浴は、その再利用のためにリサイクルすることができることが好ましい。
【0044】
この方法は、例えば図1に模式的に示される設備で実施される連続的な方法であることが好ましく、そこでは、酸洗槽2自体又は再生されるべき酸洗浴1がその中に移された他の容器に含まれる酸洗槽1の一部を連続的又は断続的に取り出される。これにより、バッチ処理に比べ、その組成の経時的安定性がより確保されるため、浴1の有効寿命を長くすることができる。
【0045】
第1ステップにおける本発明の抽出方法は、ミキサー反応器3において、酸洗槽2から取り出された酸洗浴1の画分と、専用容器4に貯蔵されたポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)との間に水性二相系を形成することを伴う。好ましくは、酸洗槽には新鮮な酸洗浴1が連続的に供給される。
【0046】
一般に、本発明者らは、本発明を実施するために使用できるポリマーは、非妨害エーテル官能基を含む鎖を有するポリマーでなければならないことを確認した。ここで、「非妨害」とは、エーテル官能基の原子Oの近傍に、その作用を妨害し得る基が鎖上にグラフトされていないことが必要であると理解される。
【0047】
ポリエチレングリコールPEGは、本発明で使用することができる前記ポリマーの好ましい例である。それは、以下の一般式を有することが想起される。
【0048】
【化1】
【0049】
以下の一般式のテトラエチレングリコールジメチルエーテルもまた、Cr(VI)の抽出が可能であることが証明されているため、本発明で使用することが可能である。これは、低分子量(222g/mol)の、末端OH基を有さないPEGと比較することができる。
【0050】
【化2】
【0051】
以下の式のトリエチレングリコールジメチルエーテルも、使用可能なポリマーに属する。
【0052】
【化3】
【0053】
逆に、以下の一般式を有するポリプロピレングリコール(PPG)は、そのエーテル官能基に近いCH基によりエーテル官能基が妨害されるため、本発明の実施には適さない。
【0054】
【化4】
【0055】
一方、本発明者らは、PEGブロックとPPGブロックを一緒に混合し、PEG及びPPGと同様の末端OH基を含む、以下の式のBASF社のブロックコポリマー「Pluronic(登録商標) 10R5」を、本発明によるCr(VI)の抽出に使用できること確認した。
【0056】
【化5】
【0057】
非妨害エーテル官能基の存在は、必ずしもポリマー鎖の全体に関する必要はなく、水性二相混合物の成分として、ポリマーがステンレス鋼の酸洗浴からCr(VI)を抽出する特性を有するように、鎖の少なくとも幾つかの部分が前記非妨害エーテル官能基を有していれば十分であると結論付けられる。
【0058】
従って、「非妨害エーテル官能基を含む」との表現は、それらの鎖の全体だけでなく、それらの鎖の一部にのみ前記非妨害エーテル官能基を示す可能性があるポリマーにも関し、鎖内に共存する妨害エーテル官能基の存在は禁止すべき特性ではないことが理解される。
【0059】
また、これら全ての観察から、末端OH基の存在は、本発明が利益を引き出すポリマーの特性において重要な役割を果たすとは思われないと結論付けられる。
【0060】
PEGに関しては、現在、平均分子量が異なる幾つかのタイプが存在する。平均分子量の増加は、混合物の相図における二相領域の表面積の増加、及び所定の温度に対する混合物の粘度の増加をもたらす;高すぎる分子量は、同じ操作条件下でのCr(VI)の抽出におけるポリマーの効能を低下させ得る。この分子量の増加は、混合、沈降、及び分離の操作をより困難にする。PEG-200、PEG-400及びPEG-600(後者は高分子量のPEGと同様に常温で固体である;従って低分子量のPEGよりも取り扱いが難しい)は、本発明に使用できるPEGの好ましい例を表す。PEG-400が最も効率的であることが証明された。PEG-200は、Cr(VI)の良好な抽出を可能にするが、本発明の方法の実施に最適でないポリマー相と非ポリマー相のそれぞれの体積につながる。
【0061】
次に、PEG-400の使用の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0062】
一般に、流体に対するPEG-400の割合は、以下の基準を満たさなければならない。
【0063】
酸洗浴(単一の化学成分とみなす)、水及びPEG-400で形成される三元混合物中のPEG-400の割合は、式「PEG-400の重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に位置するようなものでなければならない。
【0064】
使用されるポリマーの割合に関する基準はまた、PEG-400以外のポリマーに対しても有効である。
【0065】
また、酸洗浴に対するPEG-400の重量割合は50%以下であることが好ましく、これにより、使用するPEG-400の量が回収すべきCrの量に対して高すぎず、経済的観点からこの方法は確実に有利な状態を維持することができる。
【0066】
図2は、前記線と、25~80℃の温度におけるPEG-400浴の前記バイノーダル曲線と、を示す。バイノーダル曲線に対する浴温の影響は、考慮される範囲内では比較的小さいことが証明される。
【0067】
水性二相系を形成する場合、浴中に含まれる金属は二相の間で分配され、Cr(VI)は大部分が(重量で)最大量のポリマーを含む相に向けられることになる。図3は、重量パーセントで、最初の浴に加えられたポリマーの割合の関数として、抽出後のポリマーを含む相における元素の分布を与える。
【0068】
試験浴の組成は以下の通りであった:全Cr:11.7g/l;Fe:0.5g/l;Ni:0.4g/l;Na:47g/l;SO 2-:106g/l;pH=1.8;密度:1.14。
【0069】
この図がプロットされた条件は以下の通りである。
【0070】
この図は、異なる割合のPEG-400が加えられた、上記で定義したような工業用酸洗浴のサンプルについて得られたものである。温度はT=80℃±3℃で制御され、試験された総体積は10mlと1.5lの間で変化された。ある実験的変形例では、Crの総含有量を5g/lに減らすことによって変更し、総体積1.5lに対して温度をT=67℃に設定した。図に示した結果(重量%で表示)は、これらの様々な実験を通していかなる有意な変化も示さなかった。
【0071】
ポリマー(ここではPEG-400)のほとんど、或いは全てが水と混合していると見出される相(この混合物を「ポリマー相」と呼ぶ)に移るCrの割合は、処理浴中のポリマーの重量割合に伴って増加する。逆に、測定された他の元素及びイオン(Ni、Fe、Na、SO 2-)の割合は,処理浴中のポリマーのこの同一の重量割合に伴って減少する。従って、これらの元素及びイオンの大部分は、他の相(「非ポリマー相」と呼ばれる)に見出されることになる。
【0072】
ある試験例では、密度1.13のPEG-400を、酸洗浴の重量の0.66倍、換言すれば酸洗浴の体積の0.58倍に相当する量で前記の酸洗浴に加えた。このPEG-400は、図1の容器4から取り出された。従って、ミキサー反応器3は、攪拌下に残され、酸洗浴の初期重量の1.66倍の重量及び酸洗浴の初期体積の1.58倍の体積を有する浴を含んでいた。
【0073】
その後、混合物を重力沈降器のような分離装置5に移し、上部のポリマー相及び下部の非ポリマー相を得た。
【0074】
分離装置5をミキサー反応器3と一体化することは十分に可能であることが理解される。例えば、ツインフロー反応器を使用する。
【0075】
記載された試験例では、分離操作の完了時にポリマー相が総体積の78%を占め、非ポリマー相が総体積の22%である。
【0076】
ポリマー相は、7.9g/lのCr(VI)、実質的にFe及びNiを含まず、6.5g/lのNa、8.2g/lのSO 2-、570g/lのPEG-400を含む。それは、1.8のpH及び1.12の密度を有する。それは、酸洗浴の初期重量の0.55倍、及び酸洗浴の初期体積の0.65倍を表す。
【0077】
非ポリマー相は、3.7g/lのCr(III)、実質的に酸洗浴中に最初に含まれる全てのFe及びNi、108g/lのNa、228g/lのSO 2-、22g/lのPEG-400を含む。それは、2.6のpH及び1.29の密度を有する。それは、酸洗浴の初期重量の0.45倍、及び酸洗浴の初期体積の0.35倍を表す。
【0078】
図3では、浴中にPEG-400を40重量%の割合で添加した後、ほとんど全てのPEG-400がポリマー相に存在し(非ポリマー相には約1重量%存在する)、逆に実質的に全てのFe及びNiは、これらは酸洗鋼に由来する浴中に本質的に存在する金属イオンであるが、非ポリマー相に見出される(Na及びSO 2-イオンも大部分が非ポリマー相に見出される)ことがわかる。Crについては、ポリマー相に約85%の量で見出される。しかしながら、結果のより詳細な分析は、ポリマー相に含まれるCrが、酸洗浴から優先的に抽出することが望ましいCr(VI)で完全に構成されていることを示す。非ポリマー相に見出されるCrはCr(III)である。
【0079】
従って、本発明者らは、これらの試験の間、ポリマー相に非常に顕著に存在する金属イオンは、求めていたものの中でCr(VI)だけであることを確認した。電解酸洗後の浴中に残留するCr(III)でさえも、PEG-400では有意に抽出されない。
【0080】
酸洗鋼に由来し、Cr(VI)含有イオンに反してオキソニウムイオンではない、種々のFe、Cr、Niイオン(この元素が強く存在する従来のオーステナイト系ステンレス鋼のグレードが処理される場合、この後者の元素が存在する)以外の金属イオンも、処理する特定の鋼のグレードに応じて比較的少量で酸洗浴中に見出すことが可能である。図3に示すように、これらのイオンは最も本質的に非ポリマー相に存在し、従って浴から優位に抽出されることはない。
【0081】
このことは、本発明の精神において有害なことではない。目的は、電解酸洗浴に含まれるCr(VI)を、典型的には乾式製錬手段を介して回収し、それにより特に、それを金属クロムの形態でリサイクルし、最適には酸洗の対象である鋼を製造した製鋼炉に戻すことができるようにすることである。このようにして、Cr(VI)で汚染された廃棄物の生成が回避され、さらに、酸洗に由来するCrを鋼の製造回路に戻すことができ、その結果、原材料の大幅な節約を提供することができる。この回収されたCrが、酸洗設備によって処理された鋼中に最初に存在する他の金属を含む可能性があるという意味で、非常に純粋ではない場合、これらの金属もこの回収されたCrを用いて製造される鋼の組成中に有意に含まれることが意図されているか、又は最も一般的に本発明の回収されたCrの使用によって超過する危険のないレベルまで許容されているので、これは必ずしも大きな欠点とはならない。
【0082】
1つの可能な例外はMoであり、その一部は、Moを含むステンレス鋼を酸洗浴で処理したときにポリマー相に見出される可能性がある。しかしながら、実際には、ほとんどの場合、本発明の方法で回収されたCrの添加が、有意な量のMoを含むことを意図していないステンレス鋼においてMo含有量が許容される値を超える原因となるのに十分であることは稀である。回収されたCrのMo含有量が高すぎて、Moと合金化されていない鋼の調製において大量に使用できない場合は、回収されたCrが寄与するMoを希釈する他の低Mo含有原料に加えて、製錬炉の原料として使用することを想定することができる。
【0083】
Sによるポリマー相の著しい汚染は、乾式製錬プロセスによるCr回収の可能性を損ない、高すぎるレベルの硫黄含有化合物の放出につながるため、有害な可能性がある。しかしながら、図3は、記載された例のSO 2-イオンが非ポリマー相に90%を超えて見出され、残りがポリマー相に存在し、従って許容可能なままであることを示している。
【0084】
回収されるCrが製鋼へのリサイクル以外の目的で使用されることが意図される場合、その純度を前述よりも向上させることが所望され得ることが可能である。この場合、Cr(VI)以外の化合物のポリマー相中の濃度が十分に低く、それにより、その後実施される処理プロセスを考慮しても、意図するCrの使用が効果的に可能であることが確認されなければならない。このことは、場合により、以下のことにつながる可能性がある:
-そのイオンがポリマー相に有意に移る可能性があるCr及びNi以外の合金元素の含有量が低い鋼を酸洗浴が処理した場合に限られる、本発明の方法で得られたCrの使用;高Mo含有量を有する鋼を繰り返し処理した浴は従って、当業者によってケース毎に容易に理解され得るように、幾つかの使用には適合しない場合がある;
-又は、回収後に得られるCrの純度を向上させる追加の金属分離プロセスの、ポリマー相及び/又はそれに由来する製品への適用。
【0085】
図3に示すように、浴中のPEG-400の割合を50%まで増加させると、ポリマー、Cr(VI)及びFeの二相間の分布はほとんど又は全く変化しないが、非ポリマー相へのNa、SO 2-及びNi2+の移動が僅かにさらに増加する。ほぼ全てのポリマーは、一方の相、すなわちポリマー相のみに見出され、ポリマー相はまた、前述のように、酸洗浴に含まれる全てのCr(VI)に相当する初期クロムのほぼ85%を含み、初期Crの残りの15%は、完全に非ポリマー相に見出されるCr(III)である。非ポリマー相には、ポリマーの約1%が残存している可能性がある。
【0086】
ポリマー相と非ポリマー相との間で種々の金属元素の種々のイオンがこのように分布することの説明は、PEG-400が、上で定義した本発明に使用できる他のポリマーと同様に、これらの金属のオキソニウムイオン、すなわち酸素を含むもののみを抽出することにあるようだ。Crに関しては、酸洗浴中に存在するHCrO 及びCrO 2-イオンがポリマー相に抽出され、これらはまさにCrが価数VIであるイオンである。一方、Cr3+イオンは、特にFe2+イオンやNi2+イオンとともに非ポリマー相に残留する。
【0087】
また、Cu2+イオン、Mo2+イオン及びMn2+イオンが酸洗浴に含まれる場合にも、少なくとも大部分が非ポリマー相に見出されることが試験により確認されている。しかしながら、MoO イオンはオキソニウムイオンであるため、もしあったとしてもポリマー相に見出される。従ってMoは、本発明ではCrとして振る舞う。これは必ずしも大きな欠点ではなく、必要に応じて改善することができることは、上記で見たとおりである。
【0088】
適切な装置5において、濾過、沈降、又は相のそれぞれの特性に適合した他の任意の従来の方法を介して2つのポリマー相及び非ポリマー相を分離した後、ポリマーを含まない相、すなわちCr(VI)の全体が除去された使用済み浴は、ポリマーによって非常に著しく汚染されることなく酸洗浴として再使用することが可能である。それは、連続法であれば、槽2内に残存する酸洗浴1に戻される。この非ポリマー相の酸洗浴への戻しは、酸洗浴の効能をあまり大きく悪化させない限り、実施することが可能である。
【0089】
実験を通じて、ユーザーは、浴の効能がもはや十分であるとみなされ得ない後の酸洗浴中のCr(VI)の許容含有量閾値を設定することができる。この場合、槽2を空にして酸洗浴を完全に更新するか、又は、酸洗浴1を新しい成分で希釈してCr(VI)の含有量を適切なレベルまで下げなければならない。いずれにしても、本発明の方法によるCr(VI)のほぼ完全な除去は、槽2を空にするか、又は浴1を大幅に希釈することが必要になる前に、酸洗浴1の寿命を著しく長くすることができる。既に示したように、槽2に新鮮な酸洗浴を連続的に供給することにより、空にすることが必要となる時期を遅らせることができる。
【0090】
実験はまた、リサイクルされた非ポリマー相を介してFe及びNiが戻ることは、酸洗浴の効果を著しく悪化させないことを示している。従って、定期的に酸洗浴のCr(VI)の含有量を監視し、特別な予防措置の必要なしに、どの時点で非ポリマー相のリサイクルを中断し、酸洗浴の効能を適切に回復させるかを決定することが何よりも重要である。
【0091】
処理の第2ステップにおいて、ポリマー相は、その中に存在する1つ以上のCr含有化合物をそこから抽出するために処理され、さらに任意に、第1の抽出ステップにおけるその再利用の目的でポリマーを分離するために処理される。この処理は、試薬を添加する必要なく、Cr含有沈殿物を自然に形成するように放置することからなる。これは、単に前記ポリマー相を放置し、任意に加熱して沈殿を促進させることで達成できる。しかしながら、好ましくは、この沈殿は、ポリマー相を照射する手段によって促進される。
【0092】
Crに富み、好ましくは例えば約数cmの厚さの液膜の形態で配置されたこのポリマー相を、適切な装置6において、典型的には340~860nmの波長範囲内、すなわちUVスペクトル又は可視スペクトル内で放出される放射波長を有する少なくとも1つの光源による照射に暴露することによって、Crは典型的にはCr(OH)形態で沈殿される。その後、専用の装置7で簡単な濾過(又は他の適切な固液分離法)により、Crに富む固体8を回収することができ、液相は特にポリマーを含む。
【0093】
溶液は非常に暗く、光源から放出される光子は限られた厚さの浴層しか通過できないので、その照射のためにCrに富む相を液膜状に配置することが好ましい方法である。別の可能な解決策は、放射線に暴露された溶液が永久に更新されるように、撹拌装置を備えた容器に溶液を入れることである。また、膜状に配置する前に、攪拌下で浴を照射して、2つの動作モードを蓄積することも十分に考えられる。例えば、光源を浴から十分に離して配置すること、及び/又は、特に光源が容器の壁に組み込まれている場合は頻繁に光源を洗浄することによって、Cr含有沈殿物が光源上に堆積しないことを確実にすることにも注意を払わなければならない。
【0094】
1つの解決策は、複数の規則的に分布された光源であって、他の光源を動作可能な状態に保ちながらそれぞれが順番に清掃される、光源を備えた大きなサイズの容器を提供することである。
【0095】
特に、ユーザーが処理しなければならない酸洗浴の組成及び不透明度、放射線が通過しなければならない液体の厚さなどの関数として、日常の実験を通して、所定の装置でこの方法を最適に実行するために必要な波長及び照度パワーの最適化を得ることができる。
【0096】
しかしながら、UV-可視スペクトルでは照射を省略することが可能であり、実質的に照射と同じタイプの沈殿物を得ることができることが実験により示されている。従って、ポリマー相からのCr(VI)の回収反応は、前述の照射の助けを借りずに装置6で行うことも可能である。しかしながら、この場合、反応速度論はあまり好ましくない。
【0097】
ポリマー相を加熱することにより、そのような速度論を改善することができる。加熱はまた、ポリマー相の照射と同時に適用することができる。
【0098】
Cr含有沈殿物を形成するための別の一見単純な方法は、ポリマー溶液に水酸化ナトリウム又は石灰Ca(OH)を添加することである。水酸化ナトリウムを添加する前に、NaHSOを添加してCr(VI)をCr(III)に還元し、水酸化ナトリウムによってCr(III)を沈殿させることも可能である。
【0099】
しかしながら、これは、操作の生態学的及び経済的バランスを悪化させる追加の化学製品の使用につながり、ポリマーを汚染し、少なくとも追加の処理なしではその再利用は不可能である。また、水酸化ナトリウム又は石灰を単独で添加した場合、ポリマー相に十分な量のCr(III)が存在しないため、操作の収量は非常に低くなるであろう。NaHSOの先行添加により、収率は高くなるが、沈殿物は硫酸塩、すなわち硫黄に富むようになり、この硫黄の大きな存在は、好ましい乾式製錬によるCrの回収に適合しないこと以来のことであった。さらに、これらの化学製品の添加は、pHを塩基性にする変化をもたらし、反応生成物が浴にリサイクルされる場合には、これを修正しなければならない。全体として、Cr含有沈殿物の形成反応を行うには、化学製品の添加を必要とせず、必要なときにはいつでも、加熱及び/又はUV及び/又は可視域での照射によって反応を促進することができるので、この進め方は故に、推奨されるものではない。
【0100】
従って、本発明によれば、Cr含有沈殿物は形成されるままにされる、すなわち、形成は化学製品を加えることなく自然に行われる。所望により、この形成の速度は、熱の添加及び/又はUV又は可視域での照射によって加速することができる。
【0101】
照射によってCr含有沈殿物を得るための光化学的メカニズムは、例えば、以下の論文に記載されている:「An ecological new approach for treating Cr(VI)-containing industrial wastewater: Photochemical reduction」、Jie Liu、Kun Huang、Keng Xie、Ying Yang、Huizhou Liuによる、Water Research、93(2016)、第187-194頁。しかしながら、ステンレス鋼の酸洗浴の抽出液の光化学的処理は想定されていない。さらに、この論文の著者の見解に反して、本発明者らの経験は、十分な時間が確保され、及び/又は反応を加速するために媒体が加熱される場合、少なくとも硫酸塩を含むステンレス鋼の酸洗浴において、照射なしでCr含有化合物の沈殿が可能であることを示している。
【0102】
従って、液体中のCr濃度のこの低下の速度論は、図1に示した試験後に得られたCrを含むPEG-400のポリマー相に対して行った実験を示す図4に示すように、媒体が受ける光強度に依存する。浴に添加する前に、PEGを浴と同じ温度に予熱し、この添加によって浴が冷却されないようにし、液膜中のCr濃度の低下の最適な速度を得ることができるようにした。図4において、光源の発光強度が同じであれば、処理膜の厚み(5cm又は2cm)が狭いほど、液膜のCr濃度の低下が速いことがわかる。
【0103】
光源は、本試験では連続スペクトルのランプである。d=250mmの距離で可視光において測定したその照度は9000ルクスであり、d=200mmでは12000ルクスである。それは11.6W/mのパワーを持ち、そのうち25%は紫外線(<392nm)である。
【0104】
換言すれば、2cmの厚さの膜状に配置された所定の重量のポリマー相は、同じ照射強度を有する同じ光源にさらされた5cmの厚さの膜状に配置された同じ重量のポリマー相が受け取る光エネルギー量よりも大きな光エネルギーを受け取り、論理的にはこれが処理の効能に影響を与える。いずれの場合も、ポリマー相の初期Cr濃度を8.5g/lとすると、液膜のCr濃度は、膜厚2cmで4時間後に、膜厚5cmで約6.5時間後に、1.5g/lに達する。液膜のCr濃度は、膜厚2cmで約5.5時間後に、膜厚5cmで8時間後に、実質的にゼロとなる。
【0105】
Crの大部分が沈殿し、先程のステップでCrが含まれていた液体から分離されると、好ましいように、このポリマーを酸洗浴からの最初のCr抽出ステップで再利用することが望ましい場合には、捕捉されたCrの大部分をここで除去、枯渇させたポリマー相に含まれるポリマーを脱水することが必要である。ポリマーと水の沸点は非常に異なるので、例えば専用の装置9で行われる蒸留ステップによって脱水PEG-400を回収することが可能である。この脱水されたPEG-400は、本発明の方法で使用されるポリマーを含む容器4へ送られる。蒸留装置9で抽出され、その後再凝縮された水は、好ましくは、酸洗槽2に戻される方法の開始時に再使用することができる。
【0106】
Crを含む固相に関して、これは、必要に応じて任意に乾燥させた後、例えば固相の組成及び物理的性質に適合するそれ自体既知の任意の乾式製錬プロセスを適用する専用の装置10において、Cr、さらにはそれが含み得る他の金属を回収できるプロセスで処理される。特に、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元のプロセスを適用することができる。
【0107】
一般に、これまで述べてきた様々な装置は、特に、使用される方法が、再生ポリマー及び幾つかの副産物の酸洗設備におけるリサイクル又は再利用を伴う連続方法である場合、及び酸洗浴1が別の容器に移されることなく酸洗槽2内に留まる場合、酸洗設備と同じ場所にあることが好ましくは義務的でさえある。しかしながら、この回収に由来する生成物が本発明の施設に再注入されることを意図していないため、Cr回収装置10が別の場所に配置され、それに向かってCr含有固相8を輸送することができることは、十分に可能である。
【0108】
酸洗浴1内の非ポリマー相のリサイクル、脱水後のポリマーの再利用、及びこの脱水から生じる水を酸洗槽2に戻す操作は、ユーザーの所望により、互いに独立して実施又は省略することができることに留意されたい。説明され図示された方法の連続的な実施のバージョンは、ポリマー相に捕捉され得る大量のCr、さらには他の回収可能な金属を含まない最大量の回収物が、この目的に適合した手段によって設備にリサイクルされて戻されるバージョンである。このようにして、酸洗浴1の組成が酸洗の適切な実施に適合したままであれば、外部材料の添加を最小限に抑えることができる。しかしながら、特に、変形例としての本発明の方法がバッチ法として実施される場合、これらのリサイクル操作及び再利用のうちの幾つかに頼らないことを選択することも可能である。
【0109】
本発明の1つの変形例はまた、非ポリマー相を酸洗浴1に送り返す前に処理して、非ポリマー画分を処理せずに戻した場合に、酸洗浴1の組成に強すぎる、かつ速すぎる及び/又は望ましくない変化を引き起こす、そこに含まれる化学種の少なくとも幾つかを抽出することからなることができる。上記のように、非ポリマー相に含まれるFe及びNiは、酸洗浴1に戻されても一般に有害ではない。しかしながら、他の金属イオンが酸洗浴1中に蓄積することによって、非ポリマー相に著しく存在する場合により有害な影響を及ぼす可能性を完全に排除することはできない。
【0110】
これは特に、本発明の方法の有効性を最も損ねることになる、リサイクルされた非ポリマー相に使用済みポリマーが残留している場合に関係する。従って、非ポリマー相が酸洗浴に戻される前の任意の処理は、主目的として:
-残留ポリマーを抽出して再生し、容器4に含まれるポリマー、すなわち蒸留装置9内のポリマー相から得られた新鮮なポリマー又は脱水ポリマーと同じ特性を回復させなければならない;
-又は、特に高度酸化プロセスを介して、残留ポリマーを分解しなければならない。
【0111】
例として、使用されるPEG-400が完全に脱水装置9で行われる使用済みPEG-400のリサイクルに由来する、以下のような本発明の方法の実施の質量バランスについて説明することができる。
【0112】
出発製品は、本質的に水溶液中でNaSOを含み、以下の特性を有する、ステンレス鋼用の酸洗浴1である:
全Cr:11.7g/l;Fe:0.5 g/l;Ni:0.4 g/l;Na:47g/l;SO 2-:106g/l;pH=1.8;密度:1.14。
【0113】
浴を含む酸洗槽2から、この浴1を6kg引き出し、ミキサー反応器3に入れ、そこに、方法の最終ステップからリサイクルされ、3gのCrを残留的に含むPEG-400も4.0kg添加する。全体は攪拌下に置かれる。
【0114】
混合物の成分は、撹拌後、分離装置5に移され、先で見たように、ポリマー相と非ポリマー相に分離される。変形例として、ミキサー反応器3が両方の機能を果たすことが可能であれば、分離はミキサー反応器3内で行われることができる。これにより、以下のものが得られる:
-酸洗槽2に戻される、4gのCr(III)形態のCrを含む2.4kgの非ポリマー相;
-57gのCr(VI)形態のCrを含む7.6kgの液体ポリマー相。
【0115】
ポリマー相は照射装置6に送られ、この照射から生じる沈殿物及び液相(前述のように、この照射は、それにもかかわらず化学製品を加える必要なしに起こるであろう沈殿物の形成を促進するためにのみ用いられるという理解に基づいて)は次に、固液分離装置7で分離される。
【0116】
得られた固相8は0.5kgを表し、54gのCr(VI)形態のCrを含む。固相を乾燥させ(その重量は0.2kgに減少される)、乾式製錬装置10で前記固相を処理した後、54gのCrが回収される。
【0117】
ポリマーを含む液相は7.1kgを表し、3gのCr(VI)形態のCrを含む。これは、蒸留装置9で脱水される。3.0kgを表し、Crを含まない蒸留物は、酸洗浴1に戻される。蒸留によって回収され、3gのCr(VI)を含む4kgのPEG-400は、ミキサー反応器3に戻され、酸洗浴1に含まれるCrの新たな回収サイクルが開始される。
【0118】
分離装置5に由来する4gのCr(III)及び蒸留によるPEG-400の脱水ステップ9後のリサイクルPEG-400中の3gのCr(VI)の両方が酸洗浴の処理回路に戻され、乾式製錬処理10後に54gのCrが回収されるので、処理を通して酸洗浴1から引き出された61gのCrの損失はない。
【0119】
本発明の方法の実施の一形態は、連続的に動作し、ポリマー及びCrを枯渇させた液相が酸洗浴にリサイクルされて戻るものを詳細に説明及び図示してきた。任意に、この方法の連続的な性質は、酸洗槽2に新鮮な酸洗浴1を常に供給することによって強化することができる。明らかに、フルバッチモードで本方法を実施することは、本発明の精神の範囲内である。これらの条件下で、化学的及び電気化学的平衡を支配するCr、ポリマー及び/又は他の元素又は物質の濃度が高すぎるために、酸洗浴1の組成がもはやその機能を適切に遂行できない状態にあることが確認されるとすぐに、酸洗バッチの全体が本発明の方法で一回の操作で処理される。その後、液体及びCrが枯渇したポリマー相は、それらが新鮮な酸洗浴1の全部又は一部を形成するようにリサイクルされ、Crに富む固相は、金属回収装置10に送られ、前記相に含まれる金属、特にCrを回収し、これによりこれらの金属を再利用し、これらの金属を含み、従って潜在的に有害な廃棄物の環境への排出を回避する。
【0120】
明らかに、本発明の方法を適用するために使用される装置のリストは、網羅的なものでない。本発明に関係する材料と同等の材料の処理のための通常の機能を実行するために、又は装置の引用されたアイテムのそれぞれによって実行される機能を最適に実行するために、従来通り、他の装置の付属アイテムを追加することができる。
【0121】
また、本発明は、ステンレス鋼の場合のように、有意な量のCrを含む鋼の酸洗浴の処理に好ましく適用されるが、前述の問題が生じるであろう他のCr含有合金の酸洗浴の処理に本発明を適用することも十分に想定できる。
【符号の説明】
【0122】
1 酸洗浴
2 酸洗槽
3 ミキサー反応器
4 容器
5 分離装置
6 照射装置
7 固液分離装置
8 Crに富む固体
9 蒸留装置
10 乾式製錬装置、金属回収装置
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
属材料を酸洗するための酸洗浴(1)に含まれるCrを回収する方法であって、前記酸洗浴は槽(2)に保持され、前記酸洗浴(1)は少なくとも1つの硫酸塩と酸洗金属由来のCrを含む水溶液であり、
-水性二相系が、前記酸洗浴(1)の少なくとも一部と、非妨害エーテル官能基を含むポリマーとから形成され、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる前記酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に前記割合が位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出されるポリマー相と非ポリマー相とを含む;
-前記ポリマー相と非ポリマー相とは分離されている;
-前記ポリマー相では、Cr含有沈殿物が形成されたままである;
-前記ポリマー相に対して固液分離を行い、前記ポリマーと前記Cr含有沈殿物を分離する;
-前記Cr含有沈殿物を処理し、前記Cr含有沈殿物中に含まれるCrを回収する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、PEG-200、PEG-400及びPEG-600の中から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Cr含有沈殿物及び前記ポリマーの形成速度を速めるために、前記ポリマー相は、前記固液分離の前に、340~860nmの間の波長の少なくとも1つの光源に前記ポリマー相を曝露することにより照射されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光源への前記ポリマー相の曝露の前に、前記ポリマー相を液膜の形態で配置することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー相に対する前記固液分離の後、前記分離から生じる液体画分を脱水させ、前記液体画分の中に含まれるポリマーを回収し、前記ポリマーを前記水性二相混合物の形成に再利用することを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱水は、蒸留により行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水から生じる水は、前記酸洗浴(1)を含む前記槽(2)に送られることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
前記Cr含有沈殿物からのCrの回収は、乾式製錬プロセスによって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記乾式製錬プロセスは、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元のプロセスであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
-前記酸洗浴(1)を含む前記槽(2)から酸洗浴(1)の一部を抽出する;
前記水性二相系が、前記酸洗浴(1)の前記一部と、非妨害エーテル官能基を含む前記ポリマーとから形成され、単一の化学成分、水及びポリマーとみなされる前記酸洗浴により形成される三元混合物中のポリマーの割合は、式「ポリマーの重量%=100%-酸洗浴の重量%」の線と、浴温における酸洗浴/ポリマー混合物のバイノーダル曲線との間に前記割合が位置するようなものであり、前記水性二相系は、Crの大部分が見出される前記ポリマー相と前記非ポリマー相とを含む;
-及び、前記水性二相混合物の前記非ポリマー相を、前記酸洗浴を含む前記槽(2)に送る
ことを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸洗浴(1)を含む前記槽(2)に、酸洗浴(1)を連続的に供給することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸洗金属は、ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属酸洗浴(1)に含まれるCrを回収するための設備であって、前記酸洗浴(1)は、少なくとも1つの硫酸塩及び酸洗金属に由来するCr(VI)を含む水溶液であり、
-前記酸洗浴(1)を含む(2);
-前記槽(2)に接続されたミキサー反応器(3);
-前記酸洗浴(1)とともに水性二相系を形成するために前記ミキサー反応器(3)に配置されることが意図されるポリマーを含む容器(4);
-前記水性二相系の相をポリマー相と非ポリマー相とに分離する装置(5);
-及び、前記ポリマー相に作用して、前記ポリマー相に存在するCr(VI)含有沈殿物を前記ポリマーから分離する固液装置(7)
を含むことを特徴とする、設備。
【請求項15】
前記設備は、340~860nmの波長範囲の波長を有する少なくとも1つの光源からの放射を用いて前記ポリマー相を照射し、Cr含有沈殿物の形成を促進させるための装置(6)含むことを特徴とする、請求項14に記載の設備。
【請求項16】
前記設備は、前記ポリマー相を膜状に配置し、前記膜を340~860nmの波長範囲の少なくとも1つの光源に曝露する手段を含むことを特徴とする、請求項15に記載の設備。
【請求項17】
前記設備は、前記Cr含有沈殿物からCrを回収するための装置(10)含むことを特徴とする、請求項14から16の何れか一項に記載の設備。
【請求項18】
Cr回収のための前記装置(10)は、炭素を用いた酸化物の乾式製錬還元などの乾式製錬プロセスを使用することを特徴とする、請求項17に記載の設備。
【請求項19】
前記設備は、前記ポリマーを前記Cr含有沈殿物から分離した後に、前記ポリマーを脱水するための装置(9)を含むことを特徴とする、請求項14から18の何れか一項に記載の設備。
【請求項20】
前記ミキサー反応器(3)と前記水性二相系の相を分離する記装置(5)とは、1つの同一の装置のアイテムで構成されることを特徴とする、請求項14から19の何れか一項に記載の設備。
【請求項21】
それは、以下の手段:
-前記酸洗浴(1)中の前記非ポリマー相を再利用するための手段;
-使用済みポリマーを、前記ポリマーの脱水後に、前記ポリマーを含む前記容器(4)に戻すための手段;
-及び、前記ポリマーの脱水から生じる水を前記酸洗槽(2)に戻すための手段
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項14から20の何れか一項に記載の設備。
【国際調査報告】