(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】麻疹に対する併用抗ウイルス療法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20221207BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221207BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221207BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221207BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221207BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221207BHJP
A61K 39/155 20060101ALI20221207BHJP
A61K 39/21 20060101ALI20221207BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221207BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221207BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20221207BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221207BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20221207BHJP
C07K 14/115 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/155
A61K39/21
A61P31/14
A61P31/18
A61K47/54
A61K47/60
A61K47/65
C07K14/115
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515099
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020049473
(87)【国際公開番号】W WO2021046398
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501306715
【氏名又は名称】ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】517235188
【氏名又は名称】コーネル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポロット、マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】モスコーナ、アン
(72)【発明者】
【氏名】アラビ、クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
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4B065AB01
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4C076BB16
4C076BB27
4C076CC06
4C076DD41
4C076DD59
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BA57
4C085BB11
4C085CC08
4C085GG04
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA57
4H045CA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に記載されているのは、C末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドに結合した膜融合阻害ペプチド(FIP)を含む抗ウイルスペプチド複合体により麻疹又はHIV感染を治療するペプチド、組成物、及び方法である。また本明細書に記載されているのは、単独で又は本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体と併用して投与することができる可溶性安定化麻疹Fタンパク質、その組成物、及び前記安定化Fタンパク質による麻疹感染を予防する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜融合阻害ペプチド(FIP)とC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)とを含む抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項2】
膜局在化部分領域をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項3】
前記膜局在化部分領域は、コレステロール、トコフェロール、及びパルミチルからなる群から選択される膜局在化部分を含む、請求項2に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項4】
前記膜局在化部分領域は、前記HRCペプチドのC末端に結合している、請求項2に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項5】
リンカー領域をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項6】
前記リンカー領域がポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項5に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項7】
前記PEGが4エチレングリコール単位の長さ(PEG4)である、請求項6に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項8】
前記PEGが11エチレングリコール単位の長さ(PEG11)である、請求項6に記載のペプチド複合体。
【請求項9】
前記リンカー領域は、前記HRCペプチドのC末端に結合している、請求項5に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項10】
膜局在化部分領域及びリンカー領域をさらに含む、請求項1に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項11】
前記リンカー領域は、前記HRCペプチドのC末端に結合しており、前記膜局在化部分領域は、前記リンカー領域に結合している、請求項10に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項12】
前記リンカー領域がポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項11に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項13】
前記PEGが4エチレングリコール単位の長さ(PEG4)である、請求項12に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項14】
前記PEGが11エチレングリコール単位の長さ(PEG11)である、請求項12に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項15】
前記抗ウイルスペプチドが、前記FIP領域及び前記HRCペプチド領域の二量体を含む、請求項5~請求項14のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項16】
前記抗ウイルスペプチドが、前記リンカー領域に結合した第1のFIP-HRCペプチド及び前記リンカー領域に結合した第2のFIP-HRCペプチドを含む、請求項15に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項17】
前記ペプチドが、セリン-グリシンリンカーをさらに含む、請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項18】
前記セリン-グリシンリンカーが、前記FIPと前記HRCペプチドとの間に位置する、請求項17に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項19】
前記セリン-グリシンリンカーが、前記HRCペプチドのC末端に位置する、請求項18に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項20】
前記セリン-グリシンリンカーが、前記FIP領域と前記HRCペプチド領域との間に位置し、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記HRCペプチド領域のC末端に位置する第2のセリン-グリシンリンカーをさらに含む、請求項19に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項21】
前記セリン-グリシンリンカーが、アミノ酸配列GSGSGを含む、請求項17~請求項20のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項22】
前記FIPの第1のフェニルアラニン残基が、D-アミノ酸である、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項23】
前記ペプチドのN末端が、ベンジルオキシカルボニル基をさらに含む、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項24】
前記FIPペプチドが、アミノ酸配列FFGを含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項25】
前記HRCペプチドが、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項26】
前記HRCペプチド複合体が、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNを含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項27】
前記抗ウイルスペプチドが、アミノ酸配列FFGPPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項28】
前記抗ウイルスペプチドが、アミノ酸配列FFGPPISLERLDVGTNを含む、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項29】
請求項1~請求項28のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体を含むナノ粒子。
【請求項30】
前記ナノ粒子が、約50nm~約150nmの直径を有する、請求項29に記載のナノ粒子。
【請求項31】
請求項1~請求項28のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体を含む組成物。
【請求項32】
膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を含む予防用組成物であって、前記抗麻疹ウイルスペプチド複合体が、麻疹ウイルスの膜融合を防止する、予防用組成物。
【請求項33】
膜融合阻害(FIP)ペプチドとC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)とを含むナノ粒子。
【請求項34】
膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッド(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を、必要としている対象に投与することを含む、感染後の麻疹の予防方法。
【請求項35】
前記抗ウイルスペプチド複合体が、リンカー領域をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗ウイルスペプチド複合体が、膜局在化部分領域をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記抗ウイルスペプチド複合体が、リンカー領域及び膜局在化部分領域をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記投与が、鼻腔内吸入又は経口吸入を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記抗ウイルスペプチド複合体が、ネブライザー、エアロゾル装置、及び吸入器からなる群から選択されるデバイスを介して投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が、皮下投与を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が、野生型膜融合糖タンパク質を含む麻疹ウイルスに曝露されている、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が、N462K、L454W、T461I、E455G、E170G、G506E、M337L、D538G、G168R、S262G、A440P、R520C、及びL550Pからなる群から選択される膜融合糖タンパク質の1又は複数の変異を含む麻疹ウイルスに曝露されている、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
E445G変異を含む可溶性安定化麻疹Fタンパク質を含む組換えタンパク質。
【請求項44】
E170G及びE455Gの二重変異を含む可溶性安定化麻疹Fタンパク質を含む組換えタンパク質。
【請求項45】
配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質。
【請求項46】
配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質。
【請求項47】
請求項43~請求項46に記載の組換えタンパク質のいずれか1つを含む免疫原性組成物。
【請求項48】
請求項47に記載の免疫原性組成物を対象に投与することにより、麻疹曝露の前に麻疹感染を予防する方法。
【請求項49】
請求項47に記載の免疫原性組成物を対象に投与することにより、麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項50】
配列番号1又は2のアミノ酸配列を含み、請求項1~請求項28のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体をさらに含む免疫原性組成物。
【請求項51】
請求項47に記載の免疫原性組成物を対象に投与し、請求項1~請求項28のいずれか一項に記載の抗ウイルスペプチド複合体を含む免疫原性組成物をさらに投与することにより、麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導する方法。
【請求項52】
配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を産生する方法。
【請求項53】
配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を産生する方法。
【請求項54】
配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する細胞株。
【請求項55】
配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する細胞株。
【請求項56】
膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体であって、前記HRCペプチドはHIV-gp41(C34)に由来する、抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項57】
前記HRCペプチドが、アミノ酸配列WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLを含む、請求項56に記載の抗ウイルスペプチド複合体。
【請求項58】
膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を、必要としている対象に投与することを含む、感染後のHIVの予防方法。
【請求項59】
前記HRCペプチドが、HIV-gp41(C34)に由来する、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月4日に出願された米国特許出願第62/895,752号、2020年3月11日に出願された米国特許出願第62/988,286号、及び2020年4月14日に出願された米国特許出願第63/009,883号の利益及び優先権を主張し、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。これらの文献の全体の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
本開示には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権所有者は、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されている特許文書又は特許開示のいずれかによる複写に異議を唱えるものではないが、それ以外の場合は全ての著作権を留保する。
【0004】
政府の支援
本発明は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金NS091263、NS105699、AI121349、及びAI119762に基づいて政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
麻疹(はしか)は依然として世界的な健康における課題である。麻疹ワクチンは1963年に導入されたが、感染した個人に対するFDA承認の抗ウイルス治療はない。現在のアプローチは、麻疹ウイルス(「MV」又は「MeV」)が宿主細胞に膜融合して侵入するのを防ぐ能力に限界がある。現在の勧告では、曝露から72時間以内にワクチン又は免疫グロブリン(IG)を投与することを推奨している。抗ウイルス化合物は、ウイルスの複製を防止したり、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを阻止したりするなど、ウイルス活性の様々な構成要素を標的にし得る。
【発明の概要】
【0006】
特定の態様では、本明細書に記載の発明は、C末端ヘプタッドリピート(heptad repeat)(HRC)ペプチド及び膜融合阻害剤ペプチド(FIP)の併用を含む抗ウイルスペプチドに関する。予想外に、HRC及びFIPの併用は、どちらかのアプローチのみよりも効果的であることから、相乗作用を示した。同時に、この併用により、MeVの活性化を防ぎ、既に活性化されたウイルスのリフォールディング及び膜融合を阻止する。
【0007】
一態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を提供する。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜局在化部分領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分領域は、コレステロール、トコフェロール、及びパルミチルからなる群から選択される膜局在化部分を含む。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分領域は、HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、さらにリンカー領域を含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー領域は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。いくつかの実施形態では、前記PEGが4エチレングリコール単位の長さ(PEG4)である。いくつかの実施形態では、前記PEGが11エチレングリコール単位の長さ(PEG11)である。いくつかの実施形態では、前記リンカー領域は、HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜局在化部分領域及びリンカー領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記リンカー領域は、前記HRCペプチドのC末端に結合しており、前記膜局在化部分領域は、前記リンカー領域に結合している。いくつかの実施形態では、前記リンカー領域は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。いくつかの実施形態では、前記PEGが4エチレングリコール単位の長さ(PEG4)である。いくつかの実施形態では、前記PEGが11エチレングリコール単位の長さ(PEG11)である。いくつかの実施形態では、前記PEGが12エチレングリコール単位の長さ(PEG12)である。いくつかの実施形態では、前記PEGが14エチレングリコール単位の長さ(PEG14)である。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチドが、前記FIP領域及び前記HRCペプチド領域の二量体を含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチドが、前記リンカー領域に結合した第1のFIP-HRCペプチド及び前記リンカー領域に結合した第2のFIP-HRCペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記ペプチドはさらにセリン-グリシンリンカーを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーが、前記FIPと前記HRCペプチドとの間に位置する。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーはHRCペプチドのC末端に位置する。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーが、前記FIP領域と前記HRCペプチド領域との間に位置し、前記HRCペプチド領域のC末端に位置する第2のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体のFIPの最初のフェニルアラニン残基は、D-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体のN末端は、さらにベンジルオキシカルボニル基を含む。いくつかの実施形態では、前記FIPペプチドは、アミノ酸配列FFGを含む。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含む。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチド複合体は、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチドは、アミノ酸配列FFGPPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチドは、アミノ酸配列FFGPPISLERLDVGTNを含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかを含むナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子は、約50nm~約150nmの間の直径を有する。
【0009】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかを含む組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を含む予防用組成物であって、前記抗ウイルスペプチド複合体が、麻疹ウイルスの膜融合を防止する、予防用組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、膜融合阻害(FIP)ペプチドとC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)とを含むナノ粒子を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を、必要としている対象に投与することを含む、感染後の麻疹の予防方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、さらにリンカー領域を含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜局在化部分領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体が、リンカー領域及び膜局在化部分領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記投与が、鼻腔内吸入又は経口吸入を含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体が、ネブライザー、エアロゾル装置、及び吸入器からなる群から選択されるデバイスを介して投与される。いくつかの実施形態では、前記投与が皮下投与を含む。いくつかの実施形態では、前記対象が、野生型膜融合糖タンパク質を含む麻疹ウイルスに曝露されている。いくつかの実施形態では、前記対象が、N462K、L454W、T461I、E455G、E170G、G506E、M337L、D538G、G168R、S262G、A440P、R520C、及びL550Pからなる群から選択される膜融合糖タンパク質の1又は複数の変異を含む麻疹ウイルスに曝露されている。
【0013】
別の態様では、本発明は、E445G変異を含む可溶性安定化麻疹Fタンパク質を含む組換えタンパク質を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、E170G及びE455Gの二重変異を含む可溶性安定化麻疹Fタンパク質を含む組換えタンパク質を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の組換えタンパク質のいずれか1つを含む免疫原性組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、前記免疫原性組成物を対象に投与することにより、麻疹曝露の前に麻疹感染を予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、前記免疫原性組成物を対象に投与することにより、麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、配列番号1又は2のアミノ酸配列を含み、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかをさらに含む免疫原性組成物を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫原性組成物のいずれかを対象に投与すること、及び本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかをさらに投与することによって、麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を産生する方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を産生する方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、配列番号3又は4のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する細胞株を提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、配列番号5又は6のアミノ酸配列を含む組換えタンパク質を発現する細胞株を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体であって、前記HRCペプチドはHIV-GP41(C34)に由来する、抗ウイルスペプチド複合体を提供する。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、アミノ酸配列WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLを含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド(FIP-HRC)を含む抗ウイルスペプチド複合体を、必要としている対象に投与することを含む、感染後のHIVの予防方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、HIV-GP41(C34)由来である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本特許又は出願ファイルには、少なくとも1つのカラー図面が含まれる。PCT特許出願の要件に準拠するために、本明細書に示される図の多くは、元々カラーで作成された画像の白黒表示である。
【0027】
【
図1】
図1は、MV感染が気道で始まることを示した図である。
【0028】
【
図2】
図2は、ウイルス血症及びMV病因の放出を示した図である。
【0029】
【
図3】
図3は、麻疹が重篤な合併症も引き起こし得ることを示した図である。
【0030】
【
図4】
図4は、MV脳炎を有するHIV感染患者のデータを示した図である。
【0031】
【
図5】
図5は、麻疹ウイルスの概略図を示した図である。
【0032】
【
図6】
図6は、2人の患者のMV F遺伝子が同じヌクレオチド変異を含んでいたことを示した図である。
【0033】
【
図7】
図7は、CNSへの野生型麻疹ウイルス侵入が厳密に制御されていることを示した図である。
【0034】
【
図8】
図8は、膜融合複合体分析の方法論を示した図である。
【0035】
【
図9A】
図9A~
図9Cは、膜融合のレベルを示した図である。
図9A及び
図9Bは、公知の受容体の存在下で、全てのFタンパク質が同様のレベルの膜融合を示すことを示した図である。
図9Cは、F L454Wが公知の受容体の非存在下で膜融合を誘導することを示した図である。
【
図9B】
図9A~
図9Cは、膜融合のレベルを示した図である。
図9A及び
図9Bは、公知の受容体の存在下で、全てのFタンパク質が同様のレベルの膜融合を示すことを示した図である。
図9Cは、F L454Wが公知の受容体の非存在下で膜融合を誘導することを示した図である。
【
図9C】
図9A~
図9Cは、膜融合のレベルを示した図である。
図9A及び
図9Bは、公知の受容体の存在下で、全てのFタンパク質が同様のレベルの膜融合を示すことを示した図である。
図9Cは、F L454Wが公知の受容体の非存在下で膜融合を誘導することを示した図である。
【0036】
【
図10】
図10は、Fタンパク質の2つの熱状態を示した図である。
【0037】
【
図11】
図11は、組換えウイルスによって誘導される細胞間膜融合を示した図である。
【0038】
【
図12】
図12は、野生型麻疹Fウイルス及びL454W F保有ウイルスに感染した90日齢の脳オルガノイドを示した図である。
【0039】
【
図13】
図13は、マウス(受容体なし)からのエクスビボ組織を示した図である。
【0040】
【
図14】
図14は、コットンラットにおけるMVデータを示した図である。
【0041】
【0042】
【
図16】
図16は、治療標的としてのウイルス侵入を示した図である。
【0043】
【
図17】
図17は、F糖タンパク質由来ペプチドを示した図である。
【0044】
【
図18】
図18は、F糖タンパク質由来ペプチドがウイルス侵入を阻害することを示した図である。
【0045】
【
図19】
図19は、HRCペプチドの脂質膜に対する標的化を示した図である。
【0046】
【
図20】
図20は、Fタンパク質に対するHRCペプチドの結合活性の改善を示した図である。
【0047】
【
図21】
図21は、HRCペプチドの脂質膜に対する標的化の別の実施形態を示した図である。
【0048】
【0049】
【
図23A】
図23A~23Cは、MV HRC4ペプチドがエクスビボでのウイルス拡散を阻止することを示した図である。
【
図23B】
図23A~23Cは、MV HRC4ペプチドがエクスビボでのウイルス拡散を阻止することを示した図である。
【
図23C】
図23A~23Cは、MV HRC4ペプチドがエクスビボでのウイルス拡散を阻止することを示した図である。
【0050】
【
図24】
図24は、MV HRC4の鼻腔内投与が、L454W F保有ウイルスによる致死的感染から乳児マウスを保護することを示した図である。
【0051】
【
図25】
図25は、ペプチド粒子径がナノモルの範囲内にあることを示した図である。
【0052】
【
図26】
図26は、両親媒性構造が自己集合及びナノ粒子形成を促進することを示した図である。
【0053】
【
図27】
図27は、ペプチドを保持した脂質膜界面で、ナノ粒子が集合(分散)することを示した図である。
【0054】
【
図28】
図28は、ナノ粒子がHAEバリアを通過可能であり、インビボで生物学的に利用可能であることを示した図である。関連する感染部位に到達することにより、これらは麻疹ウイルスの増殖を防ぐ。
【0055】
【
図29】
図29は、共役ペプチドが6mg/kgの鼻腔内投与経路でコットンラットモデルの生体内分布を改善したことを示した図である。
【0056】
【
図30】
図30は、膜融合阻害ペプチド(FIP)が膜融合タンパク質に結合し、麻疹Fタンパク質の膜融合前状態を安定化させる併用戦略を示した図である。
【0057】
【
図31】
図31は、アイソボログラム曲線がFIPペプチド及びHRCペプチド間の相乗作用を示すことを示した図である。
【0058】
【
図32】
図32は、HRC領域にFIPを添加すると抗ウイルス活性が高まることを示した図である。
【0059】
【
図33】
図33は、FIP及びHRCが同じ構造にある場合、効力は、一緒に加えられた2つの阻害剤の相乗作用を超えることを示した図である。
【0060】
【
図34】
図34は、FIP及びHRCが同じ構造にある場合、効力は、一緒に加えられた2つの阻害剤の相乗作用を超えることの追加データを示した図である。
【0061】
【
図35】
図35は、HRC領域にFIPを添加すると抗ウイルス活性が高まることを示した図である。
【0062】
【
図36】
図36は、HRC領域にFIPを添加すると抗ウイルス活性が高まることの追加データを示した図である。
【0063】
【0064】
【0065】
【
図39】
図39は、MV HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤がヒト運動ニューロンのMV野生型感染を阻止することを示した図である。
【0066】
【
図40】
図40は、HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤対野生型及びCNS適応ウイルスを示した図である。
【0067】
【
図41】
図41は、ヒト運動ニューロンにおけるMV HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤対CNS適応MVを示した図である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【
図45】
図45は、MV HRC4の鼻腔内投与がIFNAR KOマウスを致死的なMV脳炎から保護することを示した図である。
【0072】
【
図46】
図46は、多能性幹細胞から増殖され得る様々なオルガノイド及び使用される発生シグナルの概略図を示した図である。
【0073】
【
図47A】
図47A~
図47Cは、多能性幹細胞から生成された「ミニ脳」を示した図である。
図47Aは、神経前駆細胞(SOX2、赤)及びニューロン(TUJ1、緑)を含む不均一な領域を有する複雑な形態が認められることを示した図である。
図47Bは、パターン化されたネフロンを有する多能性幹細胞から成長した腎臓オルガノイド全体の免疫蛍光画像を示した図である。形成中の糸球体(NPHS1、黄色)、初期近位尿細管(ロータステトラゴノロバス(lotus tetragonolobus)レクチン、ピンク色)、及び遠位尿細管/集合管(E-カドヘリン、緑色)の有足細胞。
図47Cは、基底細胞(緑色)、アクチン細胞骨格(赤色)、及び核(青色)の中間径フィラメントについて染色され、共焦点顕微鏡によって画像化された、ヒトaSC由来肺オルガノイドの中央部の3D再構成を示した図である。
【
図47B】
図47A~
図47Cは、多能性幹細胞から生成された「ミニ脳」を示した図である。
図47Aは、神経前駆細胞(SOX2、赤)及びニューロン(TUJ1、緑)を含む不均一な領域を有する複雑な形態が認められることを示した図である。
図47Bは、パターン化されたネフロンを有する多能性幹細胞から成長した腎臓オルガノイド全体の免疫蛍光画像を示した図である。形成中の糸球体(NPHS1、黄色)、初期近位尿細管(ロータステトラゴノロバス(lotus tetragonolobus)レクチン、ピンク色)、及び遠位尿細管/集合管(E-カドヘリン、緑色)の有足細胞。
図47Cは、基底細胞(緑色)、アクチン細胞骨格(赤色)、及び核(青色)の中間径フィラメントについて染色され、共焦点顕微鏡によって画像化された、ヒトaSC由来肺オルガノイドの中央部の3D再構成を示した図である。
【
図47C】
図47A~
図47Cは、多能性幹細胞から生成された「ミニ脳」を示した図である。
図47Aは、神経前駆細胞(SOX2、赤)及びニューロン(TUJ1、緑)を含む不均一な領域を有する複雑な形態が認められることを示した図である。
図47Bは、パターン化されたネフロンを有する多能性幹細胞から成長した腎臓オルガノイド全体の免疫蛍光画像を示した図である。形成中の糸球体(NPHS1、黄色)、初期近位尿細管(ロータステトラゴノロバス(lotus tetragonolobus)レクチン、ピンク色)、及び遠位尿細管/集合管(E-カドヘリン、緑色)の有足細胞。
図47Cは、基底細胞(緑色)、アクチン細胞骨格(赤色)、及び核(青色)の中間径フィラメントについて染色され、共焦点顕微鏡によって画像化された、ヒトaSC由来肺オルガノイドの中央部の3D再構成を示した図である。
【0074】
【
図48】
図48は、経時的な麻疹の症例報告数を示した図である。
【0075】
【0076】
【
図50】
図50は、細胞への麻疹ウイルス侵入を示した図である。
【0077】
【
図51】
図51は、細胞への麻疹ウイルス侵入の工程を示した図である。
【0078】
【
図52】
図52は、見込みのある治療標的としての麻疹ウイルス侵入を示した図である。
【0079】
【
図53】
図53は、麻疹膜融合阻害ペプチド(FIP)の構造を示した図である。
【0080】
【
図54】
図54は、麻疹ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐための併用戦略を示した図である。
【0081】
【
図55】
図55は、脂質-ペプチド複合体の設計を示した図である。
【0082】
【
図56】
図56は、脂質-ペプチド複合体の利点を示した図である。
【0083】
【0084】
【
図59】
図59及び
図60は、単量体脂質-ペプチド複合体合成の反応スキームを示した図である。
【
図60】
図59及び
図60は、単量体脂質-ペプチド複合体合成の反応スキームを示した図である。
【0085】
【
図61】
図61は、脂質-ペプチド複合体のリストを示した図である。
【0086】
【
図62】
図62は、脂質-ペプチド複合体の精製及び特性データを示した図である。
【0087】
【
図63】
図63は、βガラクトシダーゼ相補性に基づく膜融合アッセイのプロセスを示した図である。
【0088】
【
図64】
図64は、膜融合アッセイにおける麻疹脂質-ペプチド複合体の阻害活性のデータを示した図である。
【0089】
【
図65】
図65は、膜融合アッセイデータからの阻害活性に基づく最良の脂質-ペプチド複合体候補を示した図である。
【0090】
【
図66】
図66は、MTT細胞毒性アッセイのプロセスを示した図である。
【0091】
【0092】
【
図68】
図68は、麻疹膜融合タンパク質の熱安定性研究のプロセスを示した図である。
【0093】
【
図69】
図69は、麻疹膜融合タンパク質の熱安定性研究からのデータを示した図である。
【0094】
【
図70】
図70は、麻疹脂質-ペプチド複合体のF安定化特性を示した図である。
【0095】
【
図71】
図71は、麻疹脂質-ペプチド複合体のF安定化特性に基づく最良の脂質-ペプチド複合体候補を示した図である。
【0096】
【
図72】
図72は、膜融合活性化の各段階を定量化することを示した図である。
【0097】
【
図73】
図73~
図75は、様々な濃度の異なる脂質-ペプチド複合体の存在下での赤血球(RBC)への麻疹ウイルス結合活性を示した図である(
図73:HRC;
図74:FIP-HRC;
図75:FIP)。
【
図74】
図73~
図75は、様々な濃度の異なる脂質-ペプチド複合体の存在下での赤血球(RBC)への麻疹ウイルス結合活性を示した図である(
図73:HRC;
図74:FIP-HRC;
図75:FIP)。
【
図75】
図73~
図75は、様々な濃度の異なる脂質-ペプチド複合体の存在下での赤血球(RBC)への麻疹ウイルス結合活性を示した図である(
図73:HRC;
図74:FIP-HRC;
図75:FIP)。
【0098】
【
図76】
図76は、麻疹脂質-ペプチド複合体のインビボ有効性の概略図を示した図である。
【0099】
【
図77】
図77は、麻疹脂質-ペプチド複合体のインビボ有効性のデータを示した図である。
【0100】
【
図78】
図78は、麻疹脂質-ペプチド複合体の粒子径測定データを示した図である。
【0101】
【
図79】
図79は、脂質-ペプチド複合体間の相互作用の概略図を示した図である。
【0102】
【
図80】
図80は、アイソボログラム分析からのデータを示した図である。
【0103】
【
図81】
図81は、アイソボログラム分析の定量化を示した図である。
【0104】
【
図82】
図82は、麻疹膜融合阻害複合体の作用機序の概略図を示した図である。
【0105】
【
図83】
図83は、異なる脂質-ペプチド複合体の様々な設計の概略図を示した図である。
【0106】
【0107】
【0108】
【
図86】
図86は、FIP-HRCが麻疹Fを膜融合前状態で安定させることを示した図である。
【0109】
【
図87】
図87は、MeVペプチドのF安定化特性を示した図である。
【0110】
【0111】
【
図91】
図91は、FIP-HRCがF活性化を防ぐことを示した図である(Fリフォールディングを防ぐHRCとは全く異なるメカニズム)。
【0112】
【
図92】
図92は、FIP-HRCがMeV F発現細胞を標的としていることを示した図である。
【0113】
【
図93】
図93は、FIP-HRCがMeV F発現細胞を標的とすることを実証する3つの異なる実験からのデータを示した図である。
【0114】
【
図94】
図94は、MeVペプチドの安定化特性を示した図である。
【0115】
【
図95】
図95は、MeVペプチドの細胞毒性を示した図である。
【0116】
【
図96】
図96は、HRC+FIP複合体のアイソボログラム分析からの相乗作用データを示した図である。
【0117】
【
図97】
図97は、麻疹HRCに由来する12個のアミノ酸を含むFIP-HRCの効力を示した図である。
【0118】
【
図98】
図98は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したBG505(ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)株)の阻害データを示した図である。
【0119】
【
図99】
図99は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したB41(HIV-1株)の阻害データを示した図である。
【0120】
【
図100】
図100は、様々脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用した16055(HIV-1株)の阻害データを示した図である。
【0121】
【
図101】
図101は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したMN(HIV-1株)の阻害データを示した図である。
【0122】
【
図102】
図102は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用した水疱性口内炎ウイルス(VSV)の阻害データを示した図である。
【0123】
【
図103】
図103は、様々な脂質-ペプチド複合体を使用したマウス白血病ウイルス(MLV)の阻害データを示した図である。
【0124】
【0125】
【
図105A】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105B】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105C】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105D】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105E】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105F】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105G】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105H】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【
図105I】
図105A~
図105Iは、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示した図である。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。
【0126】
【
図106A】
図106A~
図106Dは、CNS適応MeVバリアントが、ヒト多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドに効率的に広がることを示した図である。
【
図106B】
図106A~
図106Dは、CNS適応MeVバリアントが、ヒト多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドに効率的に広がることを示した図である。
【
図106C】
図106A~
図106Dは、CNS適応MeVバリアントが、ヒト多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドに効率的に広がることを示した図である。
【
図106D】
図106A~
図106Dは、CNS適応MeVバリアントが、ヒト多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドに効率的に広がることを示した図である。
【0127】
【
図107A】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107B】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107C】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107D】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107E】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107F】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107G】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【
図107H】
図107A~
図107Hは、L454W Fバックグラウンドでの追加の変異がFタンパク質の膜融合前状態を安定させるという、示された変異を有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示した図である。
【0128】
【
図108】
図108は、感受性の高いCD150×IFNARKO CNSにおけるL454W F保有ウイルスの拡散の阻害を示した図である。
【0129】
【
図109A】
図109A及び
図109Bは、野生型MeVと比較したマウス脳切片培養におけるMeV F L454Wによるインターフェロン刺激遺伝子の誘導を示した図である。
【
図109B】
図109A及び
図109Bは、野生型MeVと比較したマウス脳切片培養におけるMeV F L454Wによるインターフェロン刺激遺伝子の誘導を示した図である。
【0130】
【0131】
【0132】
【
図112】
図112は、脳オルガノイド及びBrainSpanアトラス間の遺伝子レベルのRPKM値の相関ヒートマップを示した図である。
【0133】
【
図113】
図113は、L454W感染時に差次的に発現する遺伝子のKEGGパスウェイ分析を示した図である。
【0134】
【
図114】
図114は、L454W及びL454W/G506E膜融合タンパク質変異体ウイルス集団のウイルス対立遺伝子の縦断的分析(LAVA)プロットを示した図である。
【0135】
【
図115】
図115は、L454W及びL454W/E455G膜融合タンパク質変異体ウイルス集団のLAVAプロットを示した図である。
【0136】
【
図116】
図116は、野生型膜融合タンパク質ウイルス集団のLAVAプロットを示した図である。
【0137】
【
図117A】
図117A~
図117Eは、以下(A)~(E)を示した図である。(A)可溶性MeV-FE170G-E455Gは、1mMのFIP-HRC(コレステロールなしの二量体)の有無にかかわらず、4℃又は55℃で示された時間インキュベートした。インキュベーション後、Fをマウスの膜融合前特異的抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGE還元ゲルで泳動し、PVDF膜に転写し、α-MV-F-HRCビオチン(1:1000)とインキュベートした。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ複合体を二次抗体として使用した(pbsで1:1000)。(B)(A)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。(C)可溶性MeV-FE170G-E455Gを、4℃、25℃、又は37℃で1週間インキュベートした。(A)に記載されているように免疫沈降を実施した。(D)可溶性MeV-FWT又はMeV-FE170G-E455Gは、FIP-HRC、市販のFIP、FIP二量体、又は3g(1mM)の有無に関わらず、4℃又は55℃で60又は120分間インキュベートした。(E)(D)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【
図117B】
図117A~
図117Eは、以下(A)~(E)を示した図である。(A)可溶性MeV-FE170G-E455Gは、1mMのFIP-HRC(コレステロールなしの二量体)の有無にかかわらず、4℃又は55℃で示された時間インキュベートした。インキュベーション後、Fをマウスの膜融合前特異的抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGE還元ゲルで泳動し、PVDFメンブレンに転写し、α-MV-F-HRCビオチン(1:1000)とインキュベートした。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ複合体を二次抗体として使用した(pbsで1:1000)。(B)(A)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。(C)可溶性MeV-FE170G-E455Gを、4℃、25℃、又は37℃で1週間インキュベートした。(A)に記載されているように免疫沈降を実施した。(D)可溶性MeV-FWT又はMeV-FE170G-E455Gは、FIP-HRC、市販のFIP、FIP二量体、又は3g(1mM)の有無に関わらず、4℃又は55℃で60又は120分間インキュベートした。(E)(D)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【
図117C】
図117A~
図117Eは、以下(A)~(E)を示した図である。(A)可溶性MeV-FE170G-E455Gは、1mMのFIP-HRC(コレステロールなしの二量体)の有無にかかわらず、4℃又は55℃で示された時間インキュベートした。インキュベーション後、Fをマウスの膜融合前特異的抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGE還元ゲルで泳動し、PVDFメンブレンに転写し、α-MV-F-HRCビオチン(1:1000)とインキュベートした。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ複合体を二次抗体として使用した(pbsで1:1000)。(B)(A)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。(C)可溶性MeV-FE170G-E455Gを、4℃、25℃、又は37℃で1週間インキュベートした。(A)に記載されているように免疫沈降を実施した。(D)可溶性MeV-FWT又はMeV-FE170G-E455Gは、FIP-HRC、市販のFIP、FIP二量体、又は3g(1mM)の有無に関わらず、4℃又は55℃で60又は120分間インキュベートした。(E)(D)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【
図117D】
図117A~
図117Eは、以下(A)~(E)を示した図である。(A)可溶性MeV-FE170G-E455Gは、1mMのFIP-HRC(コレステロールなしの二量体)の有無にかかわらず、4℃又は55℃で示された時間インキュベートした。インキュベーション後、Fをマウスの膜融合前特異的抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGE還元ゲルで泳動し、PVDFメンブレンに転写し、α-MV-F-HRCビオチン(1:1000)とインキュベートした。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ複合体を二次抗体として使用した(pbsで1:1000)。(B)(A)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。(C)可溶性MeV-FE170G-E455Gを、4℃、25℃、又は37℃で1週間インキュベートした。(A)に記載されているように免疫沈降を実施した。(D)可溶性MeV-FWT又はMeV-FE170G-E455Gは、FIP-HRC、市販のFIP、FIP二量体、又は3g(1mM)の有無に関わらず、4℃又は55℃で60又は120分間インキュベートした。(E)(D)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【
図117E】
図117A~
図117Eは、以下(A)~(E)を示した図である。(A)可溶性MeV-FE170G-E455Gは、1mMのFIP-HRC(コレステロールなしの二量体)の有無にかかわらず、4℃又は55℃で示された時間インキュベートした。インキュベーション後、Fをマウスの膜融合前特異的抗体を使用して免疫沈降した。免疫沈降したタンパク質をSDS-PAGE還元ゲルで泳動し、PVDFメンブレンに転写し、α-MV-F-HRCビオチン(1:1000)とインキュベートした。ストレプトアビジンアルカリホスファターゼ複合体を二次抗体として使用した(pbsで1:1000)。(B)(A)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。(C)可溶性MeV-FE170G-E455Gを、4℃、25℃、又は37℃で1週間インキュベートした。(A)に記載されているように免疫沈降を実施した。(D)可溶性MeV-FWT又はMeV-FE170G-E455Gは、FIP-HRC、市販のFIP、FIP二量体、又は3g(1mM)の有無に関わらず、4℃又は55℃で60又は120分間インキュベートした。(E)(D)で説明した実験のWBバンドの定量化は、ImageJソフトウェアを使用して実施した。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0138】
50年以上前にワクチンが導入されたにも関わらず、麻疹(はしか)は依然として世界的な健康における課題である。感染した個人に対するFDA承認の抗ウイルス治療はなく、現在のアプローチは、麻疹ウイルス(MeV)が宿主細胞に膜融合して侵入するのを防ぐ能力に限界がある。本明細書に開示される発明の対象は、一実施形態では、異なる作用形態を標的とする2つの既存のMeV抗ウイルスアプローチの併用に関する。第1のアプローチは、HRC由来ペプチドを使用してMeV膜融合タンパク質(F)の末端ヘプタッドリピート(HRC)領域を標的化することを含み、これにより、感染中のウイルス膜融合に必要な構造的再配列を妨害する(例えば、リフォールディングを防ぐ)。第2のアプローチは、膜融合阻害剤ペプチド(FIP)を使用してMeV FのヘプタッドリピートB(HRB)領域を標的化することを含み、これにより、膜融合し得ない膜融合前状態でMeV Fを安定化する(例えば、
図52~
図32を参照)。この併用アプローチは、いくつかのインビトロ、エクスビボ、及びインビボモデルでいずれかのみのアプローチよりも効果的であることが実証されている。同時に、この併用により、MeVの活性化を防ぎ、既に活性化されたウイルスのリフォールディング及び膜融合を阻止する。
【0139】
さらに、本明細書に開示される発明の対象は、一実施形態では、感染時のウイルス膜融合に必要な構造的再配列を干渉するHRC由来ペプチドを使用して、MeV FのC末端ヘプタッドリピート(HRC)領域を標的とすることによって、及び事前に活性化された状態でMeV Fを安定化する膜融合阻害ペプチド(FIP)を使用して、MeV FのヘプタッドリピートB(HRB)領域をターゲットにすることによって、麻疹ウイルスと細胞膜との膜融合及び細胞への侵入を防ぐための2つの抗ウイルス法の併用に関する。この技術は、インビトロ、エクスビボ、及びインビボで、両方のアプローチの併用がいずれかのアプローチのみよりも効果的であることを示している。
【0140】
本発明は、呼吸経路又は皮下経路のいずれかによる投与のための麻疹抗ウイルスペプチドに関する。本発明はまた、侵入を防ぐために異なるメカニズムによって作用する2つの別個のペプチドドメインの併用に関する。(1)Fタンパク質が活性化されて標的細胞膜に挿入されると発生するウイルス侵入のFリフォールディング工程に重要な、麻疹Fタンパク質のヘプタッドリピートに相補的なペプチドドメイン(「HRC」)。このリフォールディングは、ウイルスと細胞膜との膜融合及び侵入を引き起こすものであり、したがって、HRCペプチドがFタンパク質に結合することによってそれをブロックすると、ウイルスの侵入及び感染が防止される。(2)Fタンパク質の異なる領域(例えば、HRB領域)に結合し、事前に活性化された立体構造でFタンパク質を安定化させ、膜融合コンピテント状態へのFの活性化を防ぐペプチドドメイン(「FIP」)。Fタンパク質が膜融合コンピテント状態に活性化されていない場合、侵入の後続の工程は起こらない。(1)及び(2)の併用により、膜融合前立体構造でFタンパク質を膜融合コンピテントとならないように最初に安定化し、次に、膜融合するように活性化されたFタンパク質に対して、リフォールディング及び膜融合を防止するペプチドが得られる。この併用の有効性は、インビトロ及びインビボで研究されており、どちらのアプローチのみでも著しく向上される。
【0141】
引用文献:
1. Plemper RK, Snyder JP. Measles control-can measles virus inhibitors make a difference? Curr Opin Investig Drugs. 2009 Aug; 10(8): pp. 811-20.
2.Woo TM. Postexposure management of vaccine-preventable diseases. J Pediatr Health Care. 2016 Mar; 30(2): pp. 173-82.
3.Welsch JC, Talekar A, Mathieu C, Pessi A, Moscona A, Horvat B, Porotto M. Fatal measles virus infection prevented by brain-penetrant fusion inhibitors. J Virol. 2013 Dec; 87(24): pp. 13785-94.
4.Hashiguchi T, Fukuda Y, Matsuoka R, Kuroda D, Kubota M, Shirogane Y, Watanabe S, Tsumoto K, Kohda D, Plemper RK, Yanagi Y. Structures of the prefusion form of measles virus fusion protein in complex with inhibitors. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Mar; 115(10): pp. 2496-501.
【0142】
抗ウイルスペプチド複合体
特定の態様では、本発明は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む抗ウイルスペプチド複合体を提供する。
【0143】
麻疹ウイルスは、モルビリウイルス(Morbillivirus)属に属するパラミクソウイルスである。直径100~300nmの多形性ウイルスである。麻疹ゲノムは6つの遺伝子からなり、それぞれがN(ヌクレオカプシド)、P(リンタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)、F(膜融合タンパク質)、H(血球凝集素)、及びL(巨大タンパク質)と称される単一の構造タンパク質をコードしている。これらの遺伝子の1つであるリンタンパク質(P)遺伝子は、2つの非構造タンパク質(V及びC)もコードしている。核タンパク質のヌクレオチド配列に基づいて、野生型麻疹ウイルスの異なる遺伝的系統が存在する。
【0144】
膜融合阻害ペプチド(FIP)
いくつかの実施形態では、前記FIPは、アミノ酸配列フェニルアラニン-フェニルアラニン-グリシン(FFG)を含む膜融合阻害ペプチドである。いくつかの実施形態では、前記FIPは、アミノ酸配列フェニルアラニン-フェニルアラニン-グリシン(FFG)からなる膜融合阻害ペプチドである。いくつかの実施形態では、麻疹FIPの最初のフェニルアラニン残基はD-アミノ酸であり、2番目のフェニルアラニン残基及びグリシン残基はL-アミノ酸(すなわち、D-FFG)である。D-アミノ酸は、アミノ基の立体中心の炭素αがD配置を有するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、前記FIPのN末端は、
図53に示されるようなベンジルオキシカルボニル基をさらに含む(つまり、Z-D-FFG)。いくつかの実施形態では、前記FIPは、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記FIPは、FIPのC末端にあるセリン-グリシンリンカー(例えば、FFG-GSGSG、D-FFG-GSGSG、Z-D-GSGSG)を含む。いくつかの実施形態では、前記FIPはMeV FのHRB領域に結合して、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを防ぐ。
【0145】
C末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチド
いくつかの実施形態では、前記C末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドは、麻疹ウイルスFタンパク質に由来する。前記HRCペプチドは、麻疹株間で保存されており、任意の麻疹株Fタンパク質に由来し得る。いくつかの実施形態では、麻疹ウイルスFタンパク質由来のC末端ヘプタッドリピートペプチドは、麻疹ウイルス株B3に由来する。いくつかの実施形態では、前記麻疹ウイルス由来のC末端ヘプタッドリピートペプチドは、麻疹ウイルス株G954に由来する。麻疹ウイルスゲノムのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列並びにそれらにコードされるタンパク質は、例えば、当業者に公知のデータベースであるGenBank及びViPR(www.viprbrc.org)で公に入手可能であるが、これらに限定されない。
【0146】
いくつかの実施形態では、前記HRCは、麻疹ウイルスFタンパク質由来のC末端ヘプタッドリピートペプチドである。いくつかの実施形態では、前記HRCは、麻疹ウイルス由来のFタンパク質C末端ヘプタッドリピートペプチドの450位~485位の残基を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含む。いくつかの実施形態では前記HRCは、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRからなる。いくつかの実施形態では、前記HRCは、PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、麻疹ウイルス由来のFタンパク質C末端ヘプタッドリピートペプチドの450位~462位の残基を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNを含む。いくつかの実施形態では前記HRCは、アミノ酸配列PPISLERLDVGTNからなる。いくつかの実施形態では、前記HRCは、PPISLERLDVGTNに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、麻疹ウイルス由来のC末端ヘプタッドリピートペプチドの450位~463位、464位、465位、466位、467位、468位、469位、470位、471位、472位、473位、474位、475位、476位、477位、478位、479位、480位、481位、482位、483位、又は484位の残基を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、長さがPPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR及びPPISLERLDVGTN間のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、当該HRCペプチド(例えば、PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG、PPISLERLDVGTN-GSGSG)のC末端にセリン-グリシンリンカーを含む。
【0147】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、レトロウイルス科、オルソレトロウイルス(Orthoretrovirinae)亜科に属するレンチウイルスである。遺伝的特徴及びウイルス抗原の違いに基づいて、HIVはタイプ1及びタイプ2(HIV-1、HIV-2)に分類される。HIVゲノムには、外核膜のタンパク質(MA、p17)、キャプシドタンパク質(CA、p24)、ヌクレオカプシド(NC、p7)、及びより小さな核酸安定化タンパク質をコードするgag遺伝子が含まれている。gagリーディングフレームの後には、酵素プロテアーゼ(PR、p12)、逆転写酵素(RT、p51)、及びRNase H(p15)又はRT+RNase H(共にp66)及びインテグラーゼ(IN、p32)をコードするpolリーディングフレームが続く。pol遺伝子に隣接して、envリーディングフレームが続き、そこから2つの外被糖タンパク質gp120(表面タンパク質、SU)及びgp41(膜貫通タンパク質、TM)が誘導される。構造タンパク質に加えて、HIVゲノムはいくつかの調節タンパク質をコードする。Tat(トランスアクチベータータンパク質)及びRev(RNAスプライシングレギュレーター)は、HIV複製の開始に必要であるが、他の調節タンパク質Nef(負の調節因子)、Vif(ウイルス感染因子)、Vpr(ウイルスタンパク質r)、及びVpu(ウイルスタンパク質u)は、ウイルス複製、ウイルス発芽、及び病因に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、前記C末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドは、HIV-1ウイルスgp41タンパク質に由来する。前記gp41 HRCペプチドは、HIV株間で保存されており、任意のHIV-1株gp41に由来し得る。いくつかの実施形態では、前記gp41 HRCペプチドは、その内容が参照により全体が本明細書に援用されるPessi et al., A General Strategy to Endow Natural Fusion-protein-Derived Peptides with Potent Antiviral Activity, PLoS One, 2012, 7(5): e36833に記載されている「C34」ペプチドである。HIV-1ウイルスゲノムのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列並びにそれらにコードされるタンパク質は、例えば、当業者に公知のデータベースであるロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)のGenBank及びHIV Sequence Database(www.hiv.lanl.gov)で公に入手可能であるが、これらに限定されない。
【0148】
いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、HIV-gp41(「C34」ペプチドとしても公知)に由来する。いくつかの実施形態では、前記HRCは、HIV-gp41の117位~150位の残基を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、アミノ酸配列WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLを含む。いくつかの実施形態では、前記HRCは、アミノ酸配列WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLからなる。いくつかの実施形態では、前記HRCは、WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記HRCペプチドは、当該HRCペプチド(例えば、WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG)のC末端にセリン-グリシンリンカーを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRを含むC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRからなるC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド結合は、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間及び前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQIL、FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG、又はFFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSGに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記FIPの最初のフェニルアラニン残基は、D-アミノ酸である(すなわち、D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体のN末端は、さらにベンジルオキシカルボニル基を含む(すなわち、Z-D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIP-HRCペプチドを本明細書に記載のリンカー及び膜局在化部分に結合させるために使用するC末端システイン残基を含む(例えば、FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-C、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQIL-C、FFG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG-C、又はFFG-GSGSG-PPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILR-GSGSG-C)。
【0150】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-PPISLERDVGTNを含むC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-PPISLERLDVGTNからなるC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド結合は、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-PPISLERLDVGTN-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間及び前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、FFG-PPISLERLDVGTN、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN、FFG-PPISLERLDVGTN-GSGSG、又はFFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN-GSGSGに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記FIPの最初のフェニルアラニン残基は、D-アミノ酸である(すなわち、D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体のN末端は、さらにベンジルオキシカルボニル基を含む(すなわち、Z-D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIP-HRCペプチドを本明細書に記載のリンカー及び膜局在化部分に結合させるために使用するC末端システイン残基を含む(例えば、FFG-PPISLERLDVGTN-C、FFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN-C、FFG-PPISLERLDVGTN-GSGSG-C、又はFFG-GSGSG-PPISLERLDVGTN-GSGSG-C)。
【0151】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLを含むC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合阻害ペプチド(FIP)及びアミノ酸配列FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLからなるC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド結合は、1又は複数のセリン-グリシンリンカーをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。いくつかの実施形態では、前記セリン-グリシンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGからなる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIPペプチドと前記HRCペプチドとの間及び前記HRCペプチドのC末端にセリン-グリシンリンカーを含む(例えば、FFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL、FFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL、FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG、又はFFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSGに対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記FIPの最初のフェニルアラニン残基は、D-アミノ酸である(すなわち、D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体のN末端は、さらにベンジルオキシカルボニル基を含む(すなわち、Z-D-FFG-・・・)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、前記FIP-HRCペプチドを本明細書に記載のリンカー及び膜局在化部分に結合させるために使用するC末端システイン残基を含む(例えば、FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-C、FFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-C、FFG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG-C、又はFFG-GSGSG-WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL-GSGSG-C)。
【0152】
理論に拘束されることを意図せずに、ウイルスタンパク質がリフォールディングして膜融合後状態に到達する能力(すなわち、細胞に侵入する)は、タンパク質のN末端及びC末端に局在する2つの相補的なヘプタッドリピート(HR)領域(それぞれHRN及びHRC)間の相互作用に依存する。いくつかの実施形態では、前記FIP領域及びHRC領域を含む抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合タンパク質の膜融合前状態を安定化する(例えば、可逆的に結合し、膜融合タンパク質が依然として膜融合前状態にあることを示す、
図74を参照)。いくつかの実施形態では、前記FIP領域及びHRC領域を含む抗ウイルスペプチド複合体は、麻疹膜融合タンパク質を膜融合前状態で安定化する。いくつかの実施形態では、前記FIP領域及びHRC領域を含む抗ウイルスペプチド複合体は、HIVエンベロープタンパク質を膜融合前状態で安定化する。
【0153】
本明細書に記載されるように、前記グリシンセリンリンカーは、アミノ酸配列GSGSGを含む。より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。一実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)n、G(SG)n、又はS(GS)nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0154】
リンカー
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、さらにリンカーを含む。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、生体適合性、溶解性、及び低い免疫原性又は抗原性という立証された特性に基づく成分である。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーである。PEGは、エチレングリコール単位の繰り返しで構成される化合物を指す。ペプチドのPEGへの共有結合は、PEG化として知られ、当技術分野で周知である。例えば、Turecek et al., PEGylation of Biopharmaceuticals: A Review of Chemistry and Nonclinical Safety Information of Approved Drugs, Journal of Pharmaceutical Sciences 105 (2016, 460-475)(その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照。PEGリンカー化合物は、PEG部分及び/又はペプチドに結合した官能基結合を介してペプチドに結合することができる。生物学的に活性な分子への直鎖状PEGポリマー及び分枝状PEGポリマーを含むPEGの共有結合は、結合部位として生物学的に活性な分子のアミノ基を使用して達成され得る。生物学的に活性な分子への直鎖状PEGポリマー及び分枝状PEGポリマーを含むPEGの共有結合は、結合部位として生物学的に活性な分子のチオール基を使用して達成され得る。あるいは、生物学的に活性な分子自体を官能基(例えば、アミン、チオール)を含むように修飾して、直鎖状PEGポリマー及び分枝状PEGポリマーの結合部位を提供することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは二官能性である。二官能性PEGリンカー化合物は2つの官能基を有するため、各官能基を介して、本明細書に記載の抗ウイルスペプチドなどの2つの生物学的に活性な分子に結合して、2つの抗ウイルスペプチドを含む複合体を生成することができる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体の2つの抗ウイルスペプチドは同じである(すなわち、ホモ二価複合体)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体の2つの抗ウイルスペプチドは異なる(すなわち、ヘテロ二価複合体)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、例えば、限定されないが、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の官能基を有する分岐及び/又は多官能基を有し得る。そのような多価PEGリンカーは、各官能基を介して、本明細書に記載の抗ウイルスペプチドなどの複数の生物学的に活性な分子に結合して、複数の抗ウイルスペプチド、例えば、限定されないが、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の抗ウイルスペプチドを含む複合体を生成することができる。いくつかの実施形態では、前記多価抗ウイルスペプチド複合体の抗ウイルスペプチドは同じである(すなわち、ホモ多価複合体)。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体の抗ウイルスペプチドは異なる(すなわち、ヘテロ多価複合体)。本発明の多価抗ウイルスペプチド複合体は、FIPペプチド及びHRCペプチドの様々な組み合わせを含み得る(例えば、限定されないが、
図83)。例えば、一実施形態では、前記多価抗ウイルスペプチド複合体は、FIP-HRC複合体を含み、分岐PEGリンカーにさらに結合し、任意選択的に本明細書に記載の膜局在化部分をさらに含む。FIP-HRC複合体は、同じでも異なっていてもよい。別の実施形態では、前記多価抗ウイルスペプチド複合体は、分岐PEGリンカーに結合し、HRCペプチドにさらに結合し、任意選択的に膜局在化部分をさらに含む複数のFIPを含む。いくつかの実施形態では、前記多価抗ウイルスペプチド複合体は、分岐PEGリンカーに結合した複数のFIPを含み、任意選択的にさらに膜局在化部分を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、0~50グリコール単位を有する。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、1グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG1)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、2グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG2)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、3グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG3)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、4グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG4)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、5グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG5)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、6グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG6)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、7グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG7)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、8グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG8)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、9グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG9)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、10グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG10)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、11グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG11)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、12グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG12)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、13グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG13)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、14グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG14)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、15グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG15)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、16グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG16)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、17グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG17)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、18グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG18)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、19グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG19)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、20グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG20)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、21グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG21)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、22グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG22)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、23グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG23)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、24グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG24)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、25グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG25)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、26グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG26)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、27グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG27)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、28グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG28)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、29グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG29)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、30グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG30)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、31グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG31)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、32グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG32)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、33グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG33)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、34グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG34)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、35グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG35)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、36グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG36)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、50グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG50)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、4~12グリコール単位を有する。いくつかの実施形態では、前記リンカーは、4~24グリコール単位を有する。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、平均分子量が約5000DaのポリエチレングリコールポリマーであるPEG5000である。PEG5000は、約114グリコール単位を含むため、いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、約114グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG114)。いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、平均分子量が約40,000DaのポリエチレングリコールポリマーであるPEG40,000である。PEG40,000は、約910グリコール単位を含むため、いくつかの実施形態では、前記PEGリンカーは、約910グリコール単位を有する(すなわち、前記リンカーはPEG910)。
【0157】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、任意選択的にPEGリンカーに結合した2つのFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化1】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
Lは1又は複数の官能基結合であり、並びに
PはPEG部分であり、nはグリコール単位数であり、n=0~50である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)n、G(SG)n、又はS(GS)nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0158】
いくつかの実施形態では、Lは1又は複数の硫化物部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、1又は複数のチオール部分に由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分はシステインに由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のチオール部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のシステイン部分は、前記HRCペプチドのC末端を含む。いくつかの実施形態では、Lは1又は複数のピロリジンジオン部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のピロリジンジオン部分は、1又は複数のマレイミド部分に由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のピロリジンジオン部分は、PEGに結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のマレイミド部分は、PEGに結合している。いくつかの実施形態では、Lは、前記1又は複数のチオール部分を前記1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端に結合した前記1又は複数のチオール部分を、前記PEGに結合した1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端にある1又は複数のシステイン部分を、前記PEGに結合した1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。
【0159】
いくつかの実施形態では、非結合FIP-HRCペプチドのC末端システイン残基はチオールで終結する(一般構造「R-SH」、RはFIP-HRCペプチド)。チオールとマレイミドとの間のクロスカップリング反応は、2つの成分を結合して硫化物を形成する(一般構造「R1-S-R2」、R1はFIP-HRCペプチド、R2はPEGリンカー)。
【化2】
【0160】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化3】
を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化4】
を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、任意選択的にPEGリンカーに結合した2つのFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化5】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、並びに
式中、n=0~50である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0163】
膜局在化部分/アンカー
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを含み、膜局在化部分(本明細書ではアンカーとも称される)をさらに含む。膜局在化部分は、標的治療部位に局在化するペプチドの能力を高める任意の成分である。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分は疎水性であり(又はそうでなければ抗ウイルスペプチド複合体の疎水性を増加させる)、脂質膜にペプチドを局在化及び/又は挿入する傾向を増加させる(例えば、
図56を参照)。いくつかの実施形態では、前記膜局在部分は脂質である。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分は、コレステロール、トコフェロール、又はパルミチルである。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分は、前記抗ウイルスペプチドのC末端に結合している(
図61及び64を参照)。いくつかの実施形態では、前記膜局在化部分はリンカー(例えば、PEG4又はPEG11)に結合され、前記リンカーは前記ペプチドのC末端に結合される(
図61及び64を参照)。本発明の膜局在化部分は、前記膜局在化部分及び/又はペプチドに結合した官能基結合を介してペプチドに結合し得る。生物学的に活性な分子への膜局在化部分の共有結合は、結合部位として生物学的に活性な分子のアミノ基を使用して達成され得る。あるいは、生物学的に活性な分子自体を官能基を含むように修飾して、膜局在化部分への結合部位を提供することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、任意選択的にPEGリンカーに結合され、膜局在化部分に結合したFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化6】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
Lは1又は複数の官能基結合であり、
PはPEG部分であり、nはグリコール単位数であり、n=0~50であり、並びにMLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0165】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化7】
を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化8】
を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化9】
を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化10】
を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化11】
を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化12】
を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜局在化部分リンカーに結合したFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化13】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
Lは1又は複数の官能基結合であり、並びに
MLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0172】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化14】
を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化15】
を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化16】
を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化17】
を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化18】
を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化19】
を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、Lは1又は複数の硫化物部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、1又は複数のチオール部分に由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分はシステインに由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のチオール部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のシステイン部分は、前記HRCペプチドのC末端を含む。いくつかの実施形態では、Lは1又は複数のアミド部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のアミド部分は、1又は複数のブロモアミドに由来する。いくつかの実施形態では、Lは1又は複数のエステル部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のエステル部分は、1又は複数のブロモエステルに由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のアミド、ブロモアミド、エステル、又はブロモエステル部分は、MLMに結合している。いくつかの実施形態では、前記MLMはPEGリンカーに結合され、PEGリンカーは、1又は複数のアミド、ブロモアミド、エステル、又はブロモエステル部分を含む。いくつかの実施形態では、Lは、1又は複数のチオール部分を1又は複数のブロモアミド又はブロモエステル部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端に結合した1又は複数のチオール部分を、前記MLM又はPEGリンカーに結合した1又は複数のブロモアミド又はブロモエステル部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端にある1又は複数のシステイン部分を、前記MLM又はPEGリンカーに結合した1又は複数のブロモアミド又はブロモエステル部分に結合することによって形成される。
【0179】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、任意選択的にPEGリンカーに結合され、膜局在化部分に結合されたFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化20】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
式中、n=0~50であり、MLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0180】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化21】
を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化22】
を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化23】
を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、膜局在化部分リンカーに結合したFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化24】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、並びに
MLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0184】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化25】
を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化26】
を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化27】
を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、それぞれ任意選択的にPEGリンカーに結合され、膜局在化部分に結合した2つのFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化28】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
Lは1又は複数の官能基結合基であり、
PはPEG部分であり、nはグリコール単位数であり、n=0~50であり、並びにMLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0188】
いくつかの実施形態では、前記官能基結合基は、
【化29】
を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、前記官能基結合基は、
【化30】
を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、前記官能基結合基は、
【化31】
を含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、前記官能基結合基は、
【化32】
を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化33】
を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化34】
を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化35】
を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、Lは1又は複数の硫化物部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、1又は複数のチオール部分に由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分はシステインに由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数の硫化物部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のチオール部分は、前記HRCペプチドのC末端に結合している。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のシステイン部分は、前記HRCペプチドのC末端を含む。いくつかの実施形態では、Lは1又は複数のピロリジンジオン部分を含む。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のピロリジンジオン部分は、1又は複数のマレイミド部分に由来する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のピロリジンジオン部分は、1又は複数のPEGに結合しており、これにより、例えば、エステル又はアミド結合を介して分岐リンカーにそれぞれ結合され得る。いくつかの実施形態では、前記PEG分岐リンカー部分は、例えばエーテル結合を介してMLMに結合する。いくつかの実施形態では、前記1又は複数のマレイミド部分は、前記1又は複数のPEG又はPEG分岐リンカー部分に結合している。いくつかの実施形態では、Lは、前記1又は複数のチオール部分を前記1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端に結合した前記1又は複数のチオール部分を、前記1又は複数のPEG又はPEG分岐リンカー部分に結合した前記1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。いくつかの実施形態では、Lは、前記HRCペプチドのC末端にある前記1又は複数のシステイン部分を前記1又は複数のPEG又はPEG分岐リンカー部分に結合した前記1又は複数のマレイミド部分に結合することによって形成される。
【0196】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、それぞれ任意選択的にPEGリンカーに結合され、膜局在化部分に結合された2つのFIP-HRCペプチドを含み、前記複合体は以下の式を有する:
【化36】
式中、[FIP]は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチドを含み、
Gは、本明細書に記載のGSGSGリンカーを含み、G基のいずれか1つに対するX=0又は1、
[HRC]は、本明細書に記載のC末端ヘプタッドリピートペプチドを含み、
式中、n=0~50であり、並びに
MLMは膜局在化部分である。いくつかの実施形態では、MLMはコレステロールである。いくつかの実施形態では、MLMはトコフェロールである。いくつかの実施形態では、MLMはパルミチルである。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは11である。いくつかの実施形態では、nは12である。いくつかの実施形態では、nは24である。いくつかの実施形態では、より短い又はより長いグリシンセリンリンカーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、グリシンセリンリンカーは、式(GS)
n、G(SG)
n、又はS(GS)
nを有し、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10である。
【0197】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化37】
を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化38】
を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、MLMは、
【化39】
を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを単量体形態で含む(「FIP-HRC
450-485」、
図64を参照)。
【0201】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを単量体形態で含み、前記ペプチドのC末端に結合した脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む(「FIP-HRC
450-485-chol」、
図64を参照)。
【0202】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを単量体形態で含み、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む(「FIP-HRC
450-485-peg
4-chol」、
図64を参照)。
【0203】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを二量体形態で含みペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む。(「[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-chol」、
図64を参照)
【0204】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の膜融合阻害ペプチド(FIP)及びC末端ヘプタッドリピート(HRC)ペプチドを二量体形態で含み、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG11)をさらに含む(「[FIP-HRC
450-485-peg
11]
2」、
図64を参照)。
【0205】
抗ウイルスペプチド複合体ナノ粒子
特定の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体を含むナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、約50nm~約150nmの間の直径を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれか複数を含む複数のナノ粒子を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子は、前記抗ウイルスペプチド複合体で構成され、他の膜融合性又は天然脂質(例えば、1-パルミトイル-2-オレオイル-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)及びホスファチジルグリセロール(POPG))をさらに含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子径は、医薬組成物での送達に適している。いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子は、徐放性局所遅延型送達に使用されるヒドロゲルにカプセル化されている。いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子の直径は、吸入、鼻腔内投与、又は肺への直接注入に適している(例えば、吸入器、エアロゾル装置、又はネブライザーを介した送達を使用)。
【0206】
いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体を水溶液に入れると、ペプチドの疎水性領域(例えば、膜局在化部分)が会合して疎水性コアを形成するようにナノ粒子に自己集合し、一方で、ペプチドの親水性領域(例えば、FIP-HRCペプチド)は、外側に延伸する(例えば、
図26を参照)。いくつかの実施形態では、前記ナノ粒子が宿主細胞膜などの脂質二重層に接近すると、疎水性領域(例えば、膜局在化部分)が脂質膜と相互作用する一方で、親水性領域(例えば、FIP-HRCペプチド)が水溶液に面するので、前記ナノ粒子の会合は解消される(例えば、
図27を参照)。
【0207】
可溶性安定化麻疹Fタンパク質
これまでは、呼吸器合胞体ウイルスFワクチン候補の場合のように、膜融合前状態を維持するためにジスルフィド結合で操作されない限り、可溶性Fは常に膜融合後状態に反転していた。本明細書には、膜融合前状態で可溶性Fタンパク質を安定化させる麻疹Fの変異が記載されている。ヒトパラインフルエンザウイルス3型野生型(WT)Fタンパク質及び麻疹野生型(WT)Fタンパク質の両方が、細胞質内ドメイン及び膜貫通ドメインの除去を伴う可溶性形態で生成されると、フォルダマー(foldamer)が三量体のオリゴマー化を維持するためにC末端で追加された場合でも、膜融合後状態でフォールディングされる。野生型麻疹Fタンパク質が、FIP-HRC-PEG11-二量体などであるがこれに限定されない、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体が添加された培地で発現される場合、野生型Fタンパク質はその膜融合前状態を維持する。いくつかの実施形態では、可溶性Fタンパク質は、配列番号1又は配列番号2を含む。いくつかの実施形態では、可溶性Fタンパク質は、配列番号1又は配列番号2からなる。いくつかの実施形態では、可溶性Fタンパク質は、配列番号1又は配列番号2に対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
MGLKVNVSAIFMAVLLTLQTPTGQIHWGNLSKIGVVGIGSASYKVMTRSSHQSLVIKLMPNITLLNNCTRVEIAEYRRLLRTVLEPIRDALNAMTQNIRPVQSVASSRRHKRFAGVVLAGAALGVATAAQITAGIALHQSMLNSQAIDNLRASLETTNQAIEAIRQAGQEMILAVQGVQDYINNELIPSMNQLSCDLIGQKLGLKLLRYYTEILSLFGPSLRDPISAEISIQALSYALGGDINKVLEKLGYSGGDLLGILESRGIKARITHVDTESYFIVLSIAYPTLSEIKGVIVHRLEGVSYNIGSQEWYTTVPKYVATQGYLISNFDESSCTFMPEGTVCSQNALYPMSPLLQECLRGSTKSCARTLVSGSFGNRFILSQGNLIANCASILCKCYTTGTIINQDPDKILTYIAADHCPVVEVNGVTIQVGSRRYPDAVYLHRIDLGPPISLERLDVGTNLGNAIAKLEDAKELLESSDQILRSMKGLSSTS(配列番号1)。
【0208】
いくつかの実施形態では、前記可溶性Fタンパク質は、任意選択的に、タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus)プロテアーゼ部位(イタリック体で示される)、リンカー(太字で示される)、フォルダマー(foldamer)ドメイン(二重下線で示される)、及び6×Hisタグ(太字のイタリック体で示される)を含む。
【化40】
(配列番号2)。
【0209】
特定の態様では、本発明は、操作されたジスルフィド結合を必要とせずに安定化タンパク質をもたらす1又は複数の変異を含む可溶性麻疹Fタンパク質を含む組換えポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、前記変異はE455Gである。いくつかの実施形態では、1又は複数の変異はE170G及びE455Gである。特定の態様では、本発明の技術は、これらの組換えポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0210】
いくつかの実施形態では、前記変異E455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号3又は配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、前記変異E455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号3又は配列番号4からなる。いくつかの実施形態では、安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号3又は配列番号4に対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、455位のアミノ酸はGである。
【化41】
(配列番号3)。
【0211】
いくつかの実施形態では、前記変異E455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、任意選択的に、タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus)プロテアーゼ部位(イタリック体で示される)、リンカー(太字で示される)、フォルダマー(foldamer)ドメイン(二重下線で示される)、及び6×Hisタグ(太字のイタリック体で示される)を含む。
【化42】
(配列番号4)。
【0212】
いくつかの実施形態では、前記二重変異体E170G及びE455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号5又は配列番号6を含む。いくつかの実施形態では、前記二重変異体E170G及びE455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号5又は配列番号6からなる。いくつかの実施形態では、二重変異体E170G及びE455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、配列番号5又は配列番号6に対して約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、又は75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、170位のアミノ酸はGであり、455位のアミノ酸はGである。
【化43】
(配列番号5)。
【0213】
いくつかの実施形態では、前記二重変異E170G及びE455Gを含む安定化可溶性Fタンパク質は、任意選択的に、タバコエッチウイルス(Tobacco Etch Virus)プロテアーゼ部位(イタリック体で示される)、リンカー(太字で示される)、フォルダマー(foldamer)ドメイン(二重下線で示される)、及び6×Hisタグ(太字のイタリック体で示される)を含む。
【化44】
(配列番号6)。
【0214】
特定の態様では、本発明は、組換え発現に適した本発明の可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)のいずれか1つをコードする核酸を含む細胞を提供する。特定の態様では、本発明は、組換え発現に適した本発明の可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)のいずれか1つをコードするクローン由来の細胞集団を提供する。特定の態様では、本発明は、組換え発現に適した本発明の可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)のいずれか1つをコードする細胞の安定したプールを提供する。いくつかの実施形態では、核酸配列は、宿主細胞、例えば哺乳動物細胞、又は他の任意の適切な発現系における最適な発現のためにコドン最適化されている。
【0215】
当業者は、本発明の可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)の組換え発現時、分泌経路に向かう新たに合成されたタンパク質の大部分のN末端に存在するシグナルペプチド(場合により、シグナル配列、標的化シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列、又はリーダーペプチドと称される)は、最終的な組換えタンパク質から切断され得ることを理解する。いくつかの実施形態では、したがって、前記組換え可溶性Fタンパク質は、25位のアミノ酸から始まるそれ以降のアミノ酸を含む(すなわち、シグナルペプチドMGLKVNVSAIFMAVLLTLQTPTGQは前記組換えタンパク質から切断される)。
【0216】
特定の態様では、本発明は、膜融合前状態で麻疹Fタンパク質を産生するための方法を提供する。特定の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかを含む培地中で、本発明の可溶性Fタンパク質のいずれか1つ(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)を発現する細胞株の培養により、膜融合前状態で安定化可溶性Fタンパク質を産生することを提供する。
【0217】
組換えタンパク質を産生するための様々な発現系が当技術分野で公知であり、原核生物(例えば、細菌)、植物、昆虫、酵母、及び哺乳動物の発現系が含まれる。適切な細胞株は、目的の分子を産生するために、本発明の可溶性Fタンパク質のコード配列を含む核酸で形質転換、形質導入、又はトランスフェクトすることができる。宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現を可能にする方法で少なくとも1つの調節配列に連結され得るそのような核酸配列を含む発現ベクターは、当技術分野で公知の方法を介して導入することができる。当業者は、発現ベクターの設計は、トランスフェクトされる宿主細胞の選択及び/又は発現される所望のタンパク質の種類及び/又は量などの要因に依存し得ることを理解する。非コードDNA領域のプロモーター領域の上流又は下流に見られる配列であるエンハンサー領域もまた、発現を最適化するのに重要であることが当技術分野で公知である。必要に応じて、原核生物宿主がプラスミドDNAの導入に利用される場合など、ウイルス源からの複製起点を使用してもよい。一方で、真核生物では、染色体の統合はDNA複製の一般的なメカニズムである。哺乳動物細胞の安定したトランスフェクションの場合、細胞のごく一部が導入されたDNAをゲノムに組み込んでもよい。利用される発現ベクター及びトランスフェクション法は、組込みイベントの成功に寄与する要因となり得る。目的のタンパク質を安定して増幅及び発現させるために、目的のタンパク質をコードするDNAを含むベクターを真核細胞(哺乳動物細胞など)のゲノムに安定して組み込むことにより、トランスフェクトされた遺伝子を安定して発現させる。選択可能なマーカー(例えば、抗生物質又は薬物に対する耐性)をコードする遺伝子を、目的のタンパク質をコードする遺伝子を安定して発現するクローンを同定及び選択するために、目的の遺伝子と共に宿主細胞に導入してもよい。目的の遺伝子を含む細胞は、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞が薬物の存在下で生存する薬物選択によって同定され得る。選択可能なマーカーの遺伝子が組み込まれていない細胞は死滅する。生存細胞は、所望のタンパク質分子の産生についてスクリーニングされ得る。
【0218】
挿入配列の発現を調節する、又は所望の特定の方法で核酸を修飾及び処理する宿主細胞株もまた選択され得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化及び他の翻訳後修飾)及びプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要である場合がある。異なる宿主細胞株は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。したがって、適切な宿主系又は細胞株を選択して、発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にすることができる。よって、一次転写産物の適切なプロセシング、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用してもよい。
【0219】
培養される宿主細胞に関して、様々な培養パラメーターを使用することができる。哺乳動物細胞の適切な培養条件は当技術分野で周知である(Cleveland WL, et al., J Immunol Methods, 1983, 56(2): 221-234)か、当業者が決定することができる(例えば、Animal Cell Culture: A Practical Approach 2nd Ed., Rickwood, D. and Hames, B. D., eds. (Oxford University Press: New York, 1992)を参照)。細胞培養条件は、選択した宿主細胞の種類によって異なる場合がある。市販の培地を利用可能である。
【0220】
本発明の可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)は、本発明の可溶性Fタンパク質を発現する発現構築物でトランスフェクトされたものを含む、ポリペプチドを発現する任意のヒト又は非ヒト細胞から精製することができる。タンパク質の回収、単離、及び/又は精製のために、細胞培養培地又は細胞溶解物を遠心分離して、粒子状細胞及び細胞片を除去する。所望のポリペプチド分子は、適切な精製技術によって、汚染された可溶性タンパク質及びポリペプチドから単離又は精製される。タンパク質の非限定的な精製方法には、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカなどの樹脂又はDEAEなどの陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、セファデックス(登録商標)G-75などのセファロースを使用したゲルろ過、免疫グロブリン汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースクロマトグラフィーなどが挙げられる。プロテアーゼ阻害剤(例えば、PMSF又はプロテイナーゼK)などの他の添加剤を使用して、精製中のタンパク質分解を阻害してもよい。炭水化物を選択できる精製手順、例えば、イオン交換ソフトゲルクロマトグラフィー、又はより酸性の画分が収集される陽イオン又は陰イオン交換樹脂を使用するHPLCも使用できる。
【0221】
組成物
いくつかの実施形態では、抗ウイルスペプチド複合体は、抗ウイルスペプチド複合体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態では、前記安定化Fタンパク質は、抗ウイルスペプチド複合体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、スプレー、エアロゾル、ゲル、溶液、乳濁液、又は懸濁液の形態である。
【0222】
前記組成物は、好ましくは、薬学的に許容される担体と共に哺乳動物に投与される。典型的には、いくつかの実施形態において、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤において使用され、これはいくつかの実施形態において、製剤を等張にし得るものである。
【0223】
特定の実施形態において、前記抗ウイルスペプチド複合体は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれか1つ及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物として提供される。特定の実施形態において、前記安定化Fタンパク質は、本明細書に記載の安定化Fタンパク質のいずれか1つ及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物として提供される。特定の実施形態において、前記免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、前記薬学的に許容される担体は、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。当技術分野で公知の他の適切な薬学的に許容される担体が考慮される。適切な担体及びその製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 2005, Mack Publishing Co.に記載されている。溶液のpHは、好ましくは約5~約8であり、より好ましくは約7~約7.5である。前記製剤はまた、凍結乾燥粉末を含み得る。さらなる担体には、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物が含まれ、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。例えば、投与経路及び投与される抗ウイルスペプチド複合体の濃度に応じて、特定の担体がより好ましい可能性があることは、当業者には明らかであろう。
【0225】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化材料などの、身体の1つの器官又は部分から他の器官又は部分への対象の医薬品の運搬又は輸送に関与する製薬上許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、前記製剤の他の成分と適合性があり、患者に害を及ぼさないという意味で許容される。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例には、乳糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖、コーンスターチやジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなど)、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバターや坐剤ワックスなどの賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油、ブチレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、及び製剤に使用される他の非毒性適合物質が含まれる。「担体」という用語は、適用を容易にするために有効成分が組み合わされる、天然又は合成の有機又は無機成分を意味する。前記医薬組成物の成分はまた、所望の医薬効率を実質的に損なう相互作用がないような方法で、本発明の化合物と互いに混合することができる。前記組成物はまた、等張性剤、防腐剤、界面活性剤、及び二価カチオン、好ましくは亜鉛などの追加の薬剤を含み得る。
【0226】
前記組成物はまた、賦形剤、又は抗ウイルスペプチド複合体組成物を安定化するための薬剤、例えば、緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、アミノ酸(例えば、グリシン又はプラリンなど)、又は炭水化物を含み得る。抗ウイルスペプチド複合体組成物の製剤化に有用なバルクタンパク質には、アルブミンが含まれる。抗ウイルスペプチド複合体の製剤化に有用な典型的な炭水化物には、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、又はグルコースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
界面活性剤はまた、前記組成物に含まれるペプチド又はタンパク質の可溶性及び不溶性の凝集及び/又は沈殿を防止するために使用され得る。適切な界面活性剤には、ソルビタントリオレエート、大豆レシチン、及びオレイン酸が挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、エタノールなどの溶媒を使用した溶液エアロゾルが好ましい。したがって、抗ウイルスペプチド複合体又は安定化Fタンパク質を含む製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧化によって引き起こされる抗ウイルスペプチド複合体又は安定化Fタンパク質の表面誘導凝集を低減又は防止できる界面活性剤を含み得る。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類及びアルコール類、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などの様々な従来の界面活性剤を使用することができる。それらの量は、一般に、製剤の0.001重量%~4重量%の範囲内である。本発明の目的のために特に好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20である。当技術分野で公知の追加の薬剤もまた、組成物に含めてもよい。
【0228】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物及び剤形は、有効成分が崩壊する速度、又は前記組成物の性質が変化する速度を低下させる1又は複数の化合物をさらに含む。いわゆる安定剤又は防腐剤には、アミノ酸、抗酸化剤、pH緩衝液、又は塩緩衝液が含まれ得るが、これらに限定されない。抗酸化剤の非限定的な例には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール及びシステインが挙げられる。防腐剤の非限定的な例には、メチル又はプロピルのp-ヒドロキシ安息香酸塩及び塩化ベンザルコニウムなどのパラベンが挙げられる。アミノ酸の追加の非限定的な例には、グリシン又はプロリンが挙げられる。
【0229】
本発明はまた、二価カチオンの有無に関わらずプロリン又はグリシンを含むアミノ酸を使用することによる中性pH又は中性pH未満での抗ウイルスペプチド複合体を含む液体溶液の安定化(熱的又は機械的に誘発された阻害剤タンパク質の可溶性又は不溶性の凝集及び/又は沈殿を防止又は最小限にすること)により、室温で安定しているか医薬品の投与に適した透明又はほぼ透明な溶液が得られることを教示する。
【0230】
一実施形態では、前記組成物は、単一単位又は複数単位の剤形の医薬組成物である。本発明の単一単位又は複数単位の剤形の医薬組成物は、予防的又は治療的に有効な量の1又は複数の組成物(例えば、本発明の化合物、又は他の予防的若しくは治療的薬剤)、典型的には、1又は複数のビヒクル、担体、又は賦形剤、安定剤、及び/又は防腐剤を含む。好ましくは、ビヒクル、担体、賦形剤、安定剤、及び防腐剤が、薬学的に許容される。
【0231】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物及び剤形は、無水医薬組成物及び剤形を含む。本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿度条件を使用して調製され得る。製造、包装、及び/又は貯蔵中に水分及び/又は湿度との実質的な接触が予想される場合、ラクトース及び一級又は二級アミンを含む少なくとも1つの有効成分を含む医薬組成物及び剤形は、好ましくは無水である。無水医薬組成物は、その無水性が維持されるように調製及び保存されるものとする。したがって、無水組成物は、適切な製剤キットに含めることができるように、水への曝露を防ぐことが公知である材料を使用して包装されることが好ましい。適切な包装の例には、密閉されたホイル(箔)、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
適切なビヒクルは、製薬分野の当業者に周知であり、適切なビヒクルの非限定的な例には、グルコース、スクロース、デンプン、ラクトース、ゼラチン、米、シリカゲル、グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、プロピレングリコール、水、ステアリン酸ナトリウム、エタノール、及び当技術分野で周知の同様の物質が挙げられる。生理食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液も液体ビヒクルとして使用することが可能である。特定のビヒクルが医薬組成物又は剤形への組み込みに適しているかどうかは、剤形が患者に投与される方法及び剤形中の特定の有効成分を含む、当技術分野で周知の様々な要因に依るが、これらに限定されない。医薬ビヒクルは、石油、動物、植物由来又は合成によるピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのものを含む、水及び油などの無菌液体であり得る。
【0233】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合性があるように製剤化される。下気道内の投与経路の例には、経口又は鼻腔吸入(例えば、下気道内に明示的に沈着するのに充分に小さい粒子の吸入)が含まれるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、前記医薬組成物又は単一単位剤形は、無菌であり、対象、好ましくは動物対象、より好ましくは哺乳動物対象、そして最も好ましくはヒト対象への投与に適した形態である。
【0234】
本発明の剤形の組成、形状、及び種類は、通常、それらの用途に応じて変化すると考えられる。剤形の非限定的な例には、粉末、溶液、エアロゾル(例えば、スプレー、定量又は非定量噴霧器、定量吸入器(MDI)を含む経口又は鼻吸入器)、懸濁液を含む患者への粘膜投与に適した液体剤形(例えば、水性又は非水性液体懸濁液、水中油型乳濁液、又は油中水型液体乳濁液)、溶液、及び下気道投与に適した液体剤形を提供するために再構成可能な無菌固体(例えば、結晶性又はアモルファス固体)が挙げられる。粉末又は顆粒の形態の製剤は、例えば、ミキサー、流動床装置、又は噴霧乾燥装置を使用して、従来の方法で上記の成分を使用して調製され得る。
【0235】
本発明はまた、量を示すアンプル又は小袋などの密閉された容器に包装され得る医薬組成物を提供する。一実施形態では、前記医薬組成物は、患者の下気道への投与に適した送達装置において、乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給され得る。前記医薬組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1又は複数の単位剤形を含み得るパック又はディスペンサー装置で提示され得る。前記パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサー装置には、投与手順を添付してもよい。
【0236】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を担体及び、任意選択的に1又は複数の補助成分と会合させる工程を含む。通常、製剤は、本発明の化合物を液体担体又は細かく分割された固体担体、あるいはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0237】
投与に適した本発明の製剤は、粉末、顆粒の形態、水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として、水中油型又は油中水型液体乳濁液として、エリキシル又はシロップとして、トローチ(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤を使用)、及び/又はうがい薬などであってもよく、それぞれが、有効成分として本発明の化合物(例えば、抗ウイルスペプチド複合体)の所定量を含む。
【0238】
本明細書の液体組成物は、送達装置と共にそれ自体で使用されてもよく、又はそれらは、例えば噴霧乾燥の方法によって調製される抗ウイルスペプチド複合体を含む薬学的に許容される製剤の調製に使用され得る。Maa et al., Curr. Pharm. Biotechnol., 2001, 1, 283-302に開示された医薬品投与のためのタンパク質の噴霧凍結乾燥の方法が、本明細書において援用される。別の実施形態では、本明細書の液体溶液は、凍結噴霧乾燥され、噴霧乾燥された生成物は、個人の下気道に投与された時に治療上有効である分散性抗ウイルスペプチド複合体含有粉末として回収される。
【0239】
本発明の化合物及び医薬組成物は、併用療法で使用されてもよく、すなわち、前記化合物及び医薬組成物は、1又は複数の他の所望の治療又は医療処置と同時に、それ以前に、又はその後に投与され得る。併用レジメンで使用する治療法(治療法又は手順)の特定の組み合わせは、所望の治療法及び/又は手順の適合性、及び達成される所望の治療効果を考慮に入れるであろう。使用される治療法は、同じ障害に対して所望の効果を達成し得ることも理解されよう(例えば、本発明の化合物は、別の抗ウイルス剤と同時に投与され得る)。
【0240】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の1又は複数の成分で満たされた1又は複数の容器を含む医薬パック又はキットを提供する。任意選択的にそのような容器に関連付けられるのは、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知であり、この通知は、ヒトへの投与ための製造、使用、又は販売の当局による承認を反映している。
【0241】
本発明は、麻疹又はHIV感染症の治療に適した抗ウイルスペプチド複合体(例えば、FIP-HRCペプチド)を含む剤形を提供する。剤形は、例えば、スプレー、エアロゾル、ナノ粒子、リポソーム、又は当業者に公知の他の形態として製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences; Remington: The Science and Practice of Pharmacy supra; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C., Ansel et al., Lippincott Williams & Wilkins; 7th edition (Oct. 1, 1999)を参照。
【0242】
本発明はまた、麻疹感染を治療又は予防するのに適した安定化Fタンパク質を含む剤形を提供する。剤形は、例えば、スプレー、エアロゾル、ナノ粒子、リポソーム、又は当業者に公知の他の形態として製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences; Remington: The Science and Practice of Pharmacy supra; Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C., Ansel et al., Lippincott Williams & Wilkins; 7th edition (Oct. 1, 1999)を参照。
【0243】
通常、感染症/障害の急性期治療に使用される剤形は、同じ疾患の慢性期治療に使用される剤形よりも、含有する1又は複数の有効成分を大量に含む場合がある。さらに、予防的及び治療的に有効な剤形は、異なる条件間で異なり得る。例えば、治療上有効な剤形は、既存の麻疹又はHIV感染を治療することを意図する場合に適切な抗ウイルス作用を有する抗ウイルスペプチド複合体を含み得る。他方、異なる有効量は、麻疹又はHIV感染に対する予防(例えば、ワクチン)として本発明のペプチドを使用することを意図する場合に適切な免疫原性作用を有する抗ウイルスペプチド複合体を含み得る。治療上有効な剤形は、既存の麻疹感染症を治療することを意図する場合に適切な抗ウイルス作用を有する安定化Fタンパク質を含み得る。他方、異なる有効量は、麻疹感染に対する予防(例えば、ワクチン)として本発明の安定化Fタンパク質を使用することを意図する場合に適切な免疫原性作用を有する安定化Fタンパク質を含み得る。本発明に含まれる特定の剤形が互いに異なり、当業者には容易に明らかになるこれら及び他の方法。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、Remington's Pharmaceutical Sciences, 2005, Mack Publishing Co.; Remington: The Science and Practice of Pharmacy by Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition (2003)、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C. Ansel et al., Lippincott Williams & Wilkins; 7th edition (Oct. 1, 1999)、及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, edited by Swarbrick, J. & J.C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988を参照。
【0244】
医薬組成物又は剤形のpHはまた、1又は複数の有効成分の送達及び/又は安定性を改善するために調整され得る。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は張性を調整して、送達を改善してもよい。ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物又は剤形に添加して、送達を改善するために1又は複数の有効成分の親水性又は親油性を有利に変更することもできる。これに関して、ステアリン酸塩はまた、製剤の脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達増強剤又は浸透増強剤として役立ち得る。有効成分の異なる塩、水和物、又は溶媒和物を使用して、得られる組成物の特性をさらに調整してもよい。
【0245】
組成物は、免疫化に適した組成物を生成するための技術を使用して、適切な担体及びアジュバントとともに製剤化され得る。前記組成物は、例えば、ミョウバン、ポリIC、MF-59、スクアレンベースのアジュバント、又は免疫化に適したリポソームベースのアジュバントなどのアジュバントを含み得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、前記組成物及び方法は、宿主の免疫寛容及び誘導された抗体の放出のメカニズムを調節することができる任意の適切な薬剤又は免疫調節を含む。特定の実施形態において、免疫調節剤は、麻疹Fタンパク質又はHIV-1エンベロープに対する抗体を含む免疫応答を誘導するために、対象の免疫応答の一過性の調節に充分な時間及び量で投与される。
【0247】
治療法
一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、感染の発生又は増悪を防ぐために、MVへの曝露後に開始される予防医療に関する。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、MVに接触した又はMVに接触した疑いのある対象の予防に関する。一実施形態では、前記対象に、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体又はその医薬組成物を含む曝露後予防薬を投与することができる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、麻疹感染の予防薬として、麻疹ウイルスに由来するHRCペプチドに結合したFIPを含む。本発明は、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかを使用することを企図している。いくつかの実施形態では、FIP結合HRCペプチドは、単量体形態である(例えば、「FIP-HRC
450-485」、
図64を参照のこと)。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、単量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合した脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む(「FIP-HRC
450-485-chol」、
図64を参照)。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、単量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG
4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む(「FIP-HRC
450-485-peg
4-chol」、
図64を参照)。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、二量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG
4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む(「[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-chol、
図64を参照)。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、二量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)をさらに含む(「[FIP-HRC
450-485-peg
11]
2」、
図64を参照)。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、ナノ粒子の形態で投与することができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、鼻腔内スプレー又は当技術分野で公知の他の任意の適切な方法を介して鼻腔内に投与することができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、注射器又は当技術分野で公知の他の適切な方法を介して皮下投与することができる。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、流行性耳下腺炎などのMV以外のパラミクソウイルスの曝露後予防に適応及び適用することができる。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、ウイルス膜融合を阻害することによる、あらゆるウイルスの曝露後予防アプローチに関する。
【0248】
一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、感染の発生又は増悪を防ぐために、HIVへの曝露後に開始される予防医療に関する。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、HIVに接触した又はHIVに接触した疑いのある対象の予防に関する。一実施形態では、前記対象に、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体又はその医薬組成物を含む曝露後予防薬を投与することができる。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、HIV感染の予防薬として、HIV-gp41(「C34」)に由来するHRCペプチドに結合したFIPを含む。いくつかの実施形態では、前記抗ウイルスペプチド複合体は、MV感染の予防薬としても使用され得る、HIV-gp41(「C34」)に由来するHRCペプチドに結合したFIPを含む。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、単量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合した脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、単量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、二量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)及び脂質(例えば、コレステロール)をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記FIP結合HRCペプチドは、二量体形態であり、前記ペプチドのC末端に結合したリンカー(例えば、PEG4)をさらに含む。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、ナノ粒子の形態で投与することができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、鼻腔内スプレー又は当技術分野で公知の他の任意の適切な方法を介して鼻腔内に投与することができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、注射器又は当技術分野で公知の他の適切な方法を介して皮下投与することができる。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、ウイルス膜融合を阻害することによる、あらゆるウイルスの曝露後予防アプローチに関する。
【0249】
いくつかの実施形態では、前記対象が、野生型膜融合糖タンパク質を含む麻疹ウイルスに曝露されている。いくつかの実施形態では、前記対象が、N462K、L454W、T461I、E455G、E170G、G506E、M337L、D538G、G168R、S262G、A440P、R520C及びL550Pからなる群から選択される膜融合糖タンパク質の1又は複数の変異を含む麻疹ウイルスに曝露されている(例えば、
図104参照)。
【0250】
本明細書に開示される化合物又は化合物の組み合わせ、又は医薬組成物は、任意の適切な手段によって、細胞、哺乳動物、又はヒトに投与することができる。投与方法の非限定的な例には、特に、(a)カプセル、錠剤、顆粒、スプレー、シロップ、又は他のそのような形態での投与を含む、経口経路による投与、(b)眼内、鼻腔内、耳介内、直腸、膣、尿道内、経粘膜、口腔内、又は経皮などの非経口経路を介した投与(水性懸濁液、油性製剤などとして、又は点滴、スプレー、坐剤、軟膏、軟膏剤などとしての投与を含む)、(c)皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、被膜内、脊髄内、胸骨内などを含む注射による投与(輸液ポンプ送達を含む)、(d)腎臓又は心臓領域への直接注射などによる、例えば、デポー植え込みによる局所投与、(e)局所投与(本明細書に開示される化合物又は化合物の組み合わせを生体組織と接触させるために当業者によって適切であるとみなされる場合)、(f)エアロゾル化、噴霧化、及び粉末化された製剤を含む、吸入による投与、並びに(g)植え込みによる投与が挙げられる。
【0251】
当業者には容易に明らかであるように、投与される有効なインビボ用量及び特定の投与様式は、年齢、体重、及び治療される種、並びに本明細書に開示される化合物又は化合物の組み合わせが使用される特定の用途に応じて変化する。有効な用量レベル、すなわち、所望の結果を達成するために必要な用量レベルの決定は、当業者が日常的な薬理学的方法を使用して達成し得る。通常、製品のヒトでの臨床応用は、より低い用量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで用量レベルが増加される。あるいは、許容可能なインビトロ研究を使用して、確立された薬理学的方法を使用する本発明の方法によって同定された組成物の有用な用量及び投与経路を確立することができる。インビボ研究からの有効な動物用量(例えば、コットンラットでは6mg/kg、
図22及び
図84を参照)は、当技術分野で公知の変換方法を使用して適切なヒト用量に変換することができる(例えば、Nair AB, Jacob S. A simple practice guide for dose conversion between animals and human. Journal of basic and clinical pharmacy. 2016 Mar;7(2):27を参照)。
【0252】
予防法
理論に拘束されることなく、本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体は、膜融合前状態で可溶性麻疹Fタンパク質を安定化させる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の抗ウイルスペプチド複合体は、麻疹膜融合前Fタンパク質に対する免疫応答を促進するためのワクチンとして、可溶性麻疹Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)と共に使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗ウイルスペプチド複合体は、麻疹に対する防御免疫応答を誘発するために、可溶性麻疹Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)と共に投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の抗ウイルスペプチド複合体のいずれか1つ及び可溶性麻疹Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)のいずれか1つを含む免疫原性組成物を投与することを含む、対象において免疫応答を誘導する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の抗ウイルスペプチド複合体はまた、麻疹ウイルスに感染した対象の予防的治療として、可溶性麻疹Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)と共に使用され得る。
【0253】
いくつかの実施形態では、前記安定化可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号3、4、5、又は6)は、麻疹膜融合前Fタンパク質に対する免疫応答を促進するためのワクチンとして使用され得る(すなわち、本明細書に記載された抗ウイルスペプチド複合体なしで)。いくつかの実施形態では、前記安定化可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号3、4、5、又は6)は、麻疹に対する防御免疫応答を誘発するために投与され得る。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の安定化可溶性Fタンパク質(例えば、配列番号3、4、5、又は6)のいずれか1つを含む免疫原性組成物を投与することを含む、対象において免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0254】
いくつかの実施形態では、安定化Fタンパク質は、単独で、又は本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかと併用して投与される。いくつかの実施形態では、本発明の抗ウイルスペプチド複合体は、麻疹ウイルスに感染した対象の予防的治療として、可溶性麻疹Fタンパク質(例えば、配列番号1、2、3、4、5、又は6)と共に使用され得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、本発明は、免疫応答の誘導、例えば、麻疹ウイルス又はHIVに対する抗体の誘導のための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記抗体は広義には中和抗体である。いくつかの実施形態では、前記方法は、麻疹Fタンパク質又はHIV-1エンベロープに対する抗体を誘導する。いくつかの実施形態では、前記方法は、安定化Fタンパク質及び/又は本明細書に記載の抗ウイルスペプチド複合体のいずれかを含む組成物を使用する。いくつかの実施形態では、前記方法は、アジュバントの投与をさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明は、野生型膜融合糖タンパク質を含む麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、N462K、L454W、T461I、E455G、E170G、G506E、M337L、D538G、G168R、S262G、A440P、R520C、及びL550Pからなる群から選択される膜融合糖タンパク質の1又は複数の変異を含む麻疹ウイルスに対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法を提供する(例えば、
図104を参照)。
【実施例】
【0256】
本発明のより完全な理解を容易にするために、以下に実施例を提示する。以下の実施例は、本発明を作成及び実施する例示的な形態を示している。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示された特定の実施形態に限定されず、これらは、同様の結果を得るために代替の方法を利用できるので、例示のみを目的とする。
【0257】
実施例1
MeV感染は、
図1に示されるように気道で起こり得る。肺胞マクロファージ及び樹状細胞(DC)は、MeV受容体シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、CD150とも呼ばれる)を発現する主要な標的である。MeV受容体結合タンパク質ヘマグルチニン(H)がCD150に付着すると、これらの細胞が感染し、気管支関連リンパ組織及び/又は流入領域リンパ節にウイルスが感染する。ウイルスはCD150を発現するBリンパ球及びTリンパ球で増殖し、結果としてウイルス血症が起こる。接着結合タンパク質(PVRL4又はネクチン4)もMeV受容体として機能するが、呼吸器上皮細胞の基底外側表面に見られ、疾患後期のウイルス感染に関係している。ウイルス血症及びMeV病因の放出を
図2に示す。麻疹はまた、
図3に示されるように、重篤な合併症を引き起こし得る。これらの合併症のいくつかは中枢神経系(CNS)に影響を及ぼす。麻疹封入体脳炎(MIBE)及び亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、どちらも麻疹感染の致命的な合併症である。MIBEは、ウイルス感染から1~9か月後に発生する場合がある。SSPEは感染から数年後に現れることもある。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、MIBE及びSSPE中枢神経系合併症からの臨床分離株に重点を置いている。一実施形態では、急性麻疹脳炎(AME)は、MeVの別の合併症である。これまで、SSPEの発生率は1:100000例と考えられていたが、最近のデータは、生後1年の子供の感染は600回の感染ごとに1例となり得ることを示している(Wendorf, K.A., et al. Clin. Infect. Dis. 2017, 65(2), 226-232)。MIBEは、重度の免疫不全患者における麻疹の致命的なCNS症状である。MeV脳炎のHIV感染患者のデータを
図4に示す。患者8は1年前に多剤併用療法(HAART)を受けていた。報告の時点で、患者1及び患者8は生存していた。全患者は最終的に死亡に至った(未発表のデータ、私信、Diana Hardie)。
【0258】
(MVの病理:中枢神経系の合併症)
CNSには公知のMV受容体がないため、長年の問題は、麻疹がCNSにどのように感染して広がるかということである。パラミクソウイルスの膜融合複合体が本明細書に記載されている。CNS臨床分離株も記載されている。したがって、ここで検討する別の問題は、麻疹膜融合複合体がCNSにどのように適応するかである。Fタンパク質及びHタンパク質を含む麻疹ウイルスの概略図を
図5に示す。本明細書に開示される発明の対象はまた、
図4に示されるように、患者1及び患者6からの臨床分離配列からのデータに関する。
【0259】
一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、2009年/2010年の南アフリカ(SA)流行時にMIBEに罹患した患者のCNSから採取された神経病原性MeV分離株の膜融合複合体の特性評価に関する。MeV配列は、南アフリカでの麻疹流行中に陽性MeVPCRを介してMIBEと診断された2人のHIV感染患者の死後の脳組織から分離された。ウイルスゲノム配列決定は、両方の場合において、MeVF遺伝子が
図6に示されるのと同様に、454位(L454W)でロイシンからトリプトファンへの置換をもたらしたヌクレオチド変異を含むことを明らかにした。最初の患者は27歳の女性で、急性麻疹の3か月後にMIBEを発症した。注目すべきことに、この患者の脳から分離されたウイルスに存在するL454W変異は、患者の急性MV感染中に得られた初期の血液試料からのウイルスには存在していなかった。2番目の患者は34歳の女性で、急性MeV感染の3週間後に典型的なMIBE症状を発症した。
図7に示されるように、CNSへの野生型麻疹ウイルス侵入は厳密に制御されている。野生型MeVは、侵入工程にネクチン4又はCD150受容体を必要とする。したがって、SSPE及びMIBEのMeV株がCNSにどのように侵入し、拡散するかという問題が生じる。
【0260】
本明細書に開示される発明の対象の一実施形態では、2009年/2010年のSA流行時にMIBEに罹患した患者のCNSから採取された神経病原性MeV分離株の膜融合機構を特性評価したところ、もう1つの問題は、この単一のアミノ酸変異が麻疹膜融合複合体をどのように変化させるかということであった。ウイルスゲノム配列決定により、両方の場合において、MeV F遺伝子が同じヌクレオチド変異を含み、その結果、454位(L454W)でロイシンからトリプトファンへの置換が生じたことが明らかになった。膜融合複合体分析の方法論を
図8に示す。L454Wヌクレオチド変異がMV膜融合機構の活性を変化させるかどうかが問題となった。
【0261】
(CNS適応膜融合機構:膜融合するための受容体会合の要件の変更)
図9A及び
図9Bに示されるように、公知の受容体の存在下で、全てのFタンパク質が同様のレベルの膜融合を示す。
図9Cに示されるように、F L454Wが公知の受容体の非存在下で膜融合を誘導する。
【0262】
(L454W変異はFを不安定化するのか?)
野生型MeV F及びCNS適応MeV Fの熱安定性が本明細書に開示されている。示されたMV F(x軸)を発現する細胞を32℃で一晩インキュベートした後、示された時間(T)で置いた。次に、細胞を、MeV Fの膜融合前又は膜融合後の状態に対してmAbと共に4℃でインキュベートした。y軸の値は、相対発光単位(RLU)を表す。F L454Wは、野生型Fよりも熱安定性が低い。2つの状態の表現を
図10に示す。CNS由来のFを保有するウイルスは、MeV受容体を欠く細胞に広がり得る。
図11に示されるように、組換えウイルスによって誘導される細胞間膜融合を示す。MIBE由来のF L454Wは、公知のMeV受容体の非存在下でも膜融合を媒介できる。野生型Fに対するMV F L454Wの膜融合活性の増加は、安定性の低下と相関している。MV F L454Wは、Hとは無関係に膜融合を促進できる。
【0263】
(L454W F保有ウイルスは、野生型ウイルスよりも病原性が高いのか?)
この問題を解くために使用するモデルには、ヒトの脳オルガノイド、マウス及びコットンラットのエクスビボ組織が含まれるが、これらに限定されない。MeVがコットンラットに感染し、ウイルス力価を評価できる。野生型ウイルスによる致死的な感染をもたらすCD150受容体のトランスジェニック乳児マウスモデルもある。
【0264】
図12に示されるように、90日齢の脳オルガノイドを、野生型麻疹Fウイルス及びL454W F保有ウイルスに感染させた。
図13は、マウス(受容体なし)からのエクスビボ組織を示した図である。野生型対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染では、CNS適応ウイルスは、器官型脳培養において野生型ウイルスよりも優れている。IFNAR KOマウスの脳からの小脳切片を、5000PFU/切片のEGFPを有する野生型ウイルスに4日間感染させた。落射蛍光顕微鏡で観察した24時間又は96時間の感染に関連する赤色蛍光(スケールバー= 500μm)。器官型脳培養(OBC)におけるL454W F播種を有するMeV。IFNAR KOマウス脳の小脳切片を、MeV-IC323-L454W F EGFP(緑色蛍光)と、tdtomato(赤色蛍光)を有する野生型ウイルスとで、5000PFU/切片で4日間感染させた。落射蛍光顕微鏡で観察した24時間(
図13A)又は72時間(
図13B)の感染に関連する緑色蛍光及び赤色蛍光(スケールバー= 500μm)。
【0265】
図14は、コットンラットにおけるMeVウイルスデータを示した図である。
図15A及び
図15Bは、マウスにおける生存率データを示した図である。
図16は、治療標的としてのウイルス侵入を示した図である。
図17に示されるように、F糖タンパク質由来ペプチドは、
図18に示されるようにウイルス侵入を阻害する。
図19は、HRCペプチドの脂質膜に対する標的化を示した図である。
図20は、Fタンパク質に対するHRCペプチドの結合活性の改善を示した図である。
図21は、HRCペプチドの脂質膜に対する標的化の別の実施形態を示した図である。
図22A及び
図22Bは、共役ペプチドがインビボで強力であることを示した図である。使用したモデルは、
図22Aのコットンラット及び
図22BのSLAM:IFNARKOマウスである。投与経路は、6mg/kgの投与量で鼻腔内である。
図23A~23Cは、MeV HRC4ペプチドがエクスビボでのウイルス拡散を阻止することを示した図である。使用したモデルは、L454W F保有ウイルスに感染したマウス(CD150なし)のエクスビボ組織である。
図24は、MeV HRC4の鼻腔内投与が、L454W F保有ウイルスによる致死的感染から乳児マウスを保護することを示した図である。
【0266】
表1~表3は、ペプチドの非限定的な例を提示する。
【0267】
表1に、ペプチド及びその修飾のリストを示す:
a(アミノ酸残基は一文字コードで表される。Ac:アセチル化N末端、GSGSG:5つのアミノ酸を含むリンカー、D-FFG:D-アミノ酸は最初のフェニルアラニン残基に使用されている。Z-D-FFG:Zは、D-FFG配列のN末端に結合したカルボベンゾキシである。)、
b(FIP:膜融合阻害ペプチド、HRC450-485:麻疹HRC由来の450番目のアミノ酸から始まり485番目のアミノ酸で終わるペプチド配列)、
c(Peg:ポリエチレングリコール、Chol:コレステロール)、
d(ペプチド:HRC450-485/FIP-HRC450-485/FIP)。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0268】
表2に、膜融合アッセイにおけるFIP、HRC、及びFIP-HRCペプチド(顕著なペプチド)の阻害活性を示す。βガラクトシダーゼ相補性に基づく膜融合アッセイを行った。簡潔には、ネクチン-4及びオメガレポーターサブユニット(標的細胞)で一過性にトランスフェクトした293T細胞を、ウイルス糖タンパク質(H及びF)とアルファレポーターサブユニット(エフェクター細胞)とを共発現する細胞と共に、膜融合阻害剤ペプチドの存在下又は非存在下で示された期間インキュベートした。ペプチド非存在下では、標的細胞とエフェクター細胞との膜融合により、発光に基づくキットであるGalacto-Star(商標)β-Galactosidase Reporter Gene(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米国)を使用して定量化されたβ-ガラクトシダーゼ活性が再構成される。ペプチドの存在下では、膜融合が低下し、その結果、βガラクトシダーゼ活性も低下する。データは、少なくとも3つの独立した実験からのものである。
【表2】
【0269】
表3に、膜融合アッセイにおけるFIP、HRC、及びFIP-HRCペプチド(拡張版)の阻害活性を示す。上述したように、βガラクトシダーゼ相補性に基づく膜融合アッセイを行った。簡潔には、ネクチン-4又はCD150のいずれか及びオメガレポーターサブユニット(標的細胞)で一過性にトランスフェクトした293T細胞を、ウイルス糖タンパク質(H及びF)とアルファレポーターサブユニット(エフェクター細胞)とを共発現する細胞と共に、膜融合阻害剤ペプチドの存在下又は非存在下で示された期間インキュベートした。ペプチド非存在下では、標的細胞とエフェクター細胞との膜融合により、発光に基づくキットであるGalacto-Star(商標)β-Galactosidase Reporter Gene(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米国)を使用して定量化されたβ-ガラクトシダーゼ活性が再構成される。ペプチドの存在下では、膜融合が低下し、その結果、βガラクトシダーゼ活性も低下する。データは3つの独立した実験からのものである(*=9回の複製、§=6回の複製、及び°=5回の複製を除く)。
【表3-1】
【表3-2】
【0270】
(ペプチド結合は溶液中で自己会合を誘発する)
図25は、ペプチド粒子径がナノモルの範囲内にあることを示す。
図26は、両親媒性構造が自己集合及びナノ粒子形成を促進することを示す。
図27は、ペプチドを保持した脂質膜界面で、ナノ粒子が集合(分散)することを示す。
図28は、ナノ粒子がHAEバリアを通過可能であり、インビボで生物学的に利用可能であることを示す。関連する感染部位に到達することにより、これらは麻疹ウイルスの増殖を防ぐ。
図29は、共役ペプチドが6mg/kgの鼻腔内投与経路でコットンラットモデルの生体内分布を改善したことを示す。
図30は、膜融合阻害ペプチド(FIP)が膜融合タンパク質に結合し、麻疹Fタンパク質の膜融合前状態を安定化させる併用戦略を示す。
図31は、FIPペプチド及びHRCペプチド間の相乗作用を示すアイソボログラム曲線を示す(コンビナトリアル薬物検査:2つの異なる化合物による同時治療)。
図32は、HRC領域にFIPを添加すると抗ウイルス活性が高まることを示す。
図33及び
図34に示されるように、FIP及びHRCが同じ構造にある場合、効力は、一緒に加えられた2つの阻害剤の相乗作用を超える。
図35及び
図36は、HRC領域にFIPを添加すると抗ウイルス活性が高まることを示す。
【0271】
MV IC323eGFPに対するペプチド抗ウイルスアプローチの概要:
・ ウイルス原液:IC323-EGFP,P3(ALa)力価:2×106PFU/mL
・ ペプチド原液:ペプチドMeV HRC 4濃度:50mg/mL
・ 治療用量約1mg/kg又は約0.1mg/kg、感染前24時間又は6時間
・ マウス:SLAM IFNAR KO(3.5~4週齢)
・ 鼻腔内感染(5μL/鼻孔→10μL/マウス)
・ 感染量=4×LD50
・ 20.000PFU/マウス
【0272】
図37は、生存率を示す。SLAM IFNAR KOマウスの生存期間は3.5週間であった。
図38は、様々なMeVを示している。
図39は、MV HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤がヒト運動ニューロンのMeV野生型感染を阻止することを示す。感染日数:8日。緑色蛍光はMeV感染を示し、ウイルス感染に正比例している。
【0273】
MeV HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤は、運動ニューロンにおけるウイルスの拡散を阻止する。ポリメラーゼ阻害剤に関する情報は、Science Translational Medicine 16 Apr 2014:Vol. 6, Issue 232, pp. 232に記載されている。
図40は、HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤対野生型及びCNS適応ウイルスを示す。
図41は、ヒト運動ニューロンにおけるMeV HRC4ペプチド及びRNAポリメラーゼ阻害剤対CNS適応MVを示す。経時的に、ポリメラーゼ阻害剤の活性は低下した。
【0274】
MeV HRC4ペプチドは、最高濃度でのみウイルスの拡散を阻止する。
図42A及び
図42B並びに
図43A~
図43Cは、侵入の工程を示す。
図44A~
図44Cは、H-F相互作用がL454WFにおいて変えられていることを示した図である。
図45は、MeV HRC4の鼻腔内投与がIFNAR KOマウスを致死的なMeV脳炎から保護することを示す。
図46は、多能性幹細胞から増殖され得る様々なオルガノイド及び使用される発生シグナルの概略図を示す。
図47A~
図47Cは、多能性幹細胞から生成された「ミニ脳」を示す。
図47Aは、神経前駆細胞(SOX2、赤)及びニューロン(TUJ1、緑)を含む不均一な領域を有する複雑な形態が認められることを示す(Lancaster et al., 2013)。
図47Bは、パターン化されたネフロンを有する多能性幹細胞から成長した腎臓オルガノイド全体の免疫蛍光画像を示す。形成中の糸球体(NPHS1、黄色)、初期近位尿細管(ロータステトラゴノロバス(lotus tetragonolobus)レクチン、ピンク色)、及び遠位尿細管/集合管(E-カドヘリン、緑色)の有足細胞。
図47Cは、基底細胞(緑色)、アクチン細胞骨格(赤色)、及び核(青色)の中間径フィラメントについて染色され、共焦点顕微鏡によって画像化された、ヒトaSC由来肺オルガノイドの中央部の3D再構成を示す。
【0275】
(曝露後予防)
一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、感染の発生を防ぐために、MeVへの曝露後に開始される予防医療に関する。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、MeVに接触した又はMeVに接触した疑いのある対象の予防に関する。一実施形態では、前記対象に、HRC4ペプチドナノ粒子などのHRCペプチドナノ粒子からなる曝露後予防薬を投与することができる。一実施形態では、対象に、FIP結合HRC4ペプチドナノ粒子などのFIP結合ペプチドからなる曝露後予防薬を投与することができる。一実施形態では、前記曝露後予防薬は、鼻腔内スプレー又は当技術分野で公知の他の適切な方法を介して鼻腔内に投与することができる。一実施形態では、前記曝露後予防薬は、注射器又は当技術分野で公知の他の適切な方法を介して皮下投与することができる。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、流行性耳下腺炎などのMeV以外のパラミクソウイルスの曝露後予防薬に適応及び適用することができる。一実施形態では、本明細書に開示される発明の対象は、ウイルス膜融合を阻害することによる、あらゆるウイルスの曝露後予防アプローチに関する。
【0276】
実施例2
図48~
図83は、少なくとも1つの膜融合阻害ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)などのリンカー、及び膜局在化部分から構成される特定の脂質-ペプチド複合体を含む、本発明のさらなる実施形態を記載している。いくつかの実施形態では、膜融合阻害ペプチドは、麻疹膜融合阻害ペプチド又は麻疹HRC由来ペプチドである。いくつかの実施形態では、PEGリンカーは、4~24回反復されるか又は連結される。他の実施形態では、膜局在化部分は、コレステロール、トコフェロール、又はパルミチルである。これらの脂質-ペプチド複合体のさらなる実施形態は、単量体又は二量体を含むか、脂質を含むか又は含まない場合がある。βガラクトシダーゼ相補性に基づく膜融合アッセイ、MTT細胞毒性アッセイ、熱安定性アッセイ、及びF安定化アッセイからのインビトロ及びインビボ生物学的試験データは、麻疹膜融合阻害複合体が感染を阻害することを示している。
【0277】
実施例3
図84~
図93は、さらに本発明を説明している。
図84は、インビボ有効性データを示す。MeV由来ペプチドの鼻腔内投与は、コットンラットをMV感染から保護する。コットンラット(n=4)を、MeV「WTFb」株に鼻腔内感染させた。治療薬を、感染の24時間前及び12時間前に、100μL(5mg/kg用量のペプチド)で鼻腔内に投与した。感染の4日後に動物を安楽死させた。肺ホモジネートのMeV滴定は、[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-コレステロールが最も強力な阻害剤であることを示した。[HRC
450-485-peg
4]
2-コレステロールは、未治療の動物と比較してウイルス力価を低下させる。
【0278】
図85は、FIP-HRCがMeV F発現細胞を標的としていることを示す。フローサイトメトリー:HEK293T細胞における[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-cholペプチドの局在。MeV Fを発現するHEK293T細胞を、ペプチド(1μM)とともに37℃で60分間インキュベートした。Fタンパク質及びHRC-FIPペプチドは、それぞれAlexa Fluor 488(緑色、x軸)及びAlexa Fluor 594(赤色、y軸)で染色した。3つの別々の実験の典型。コレステロールを有するFIP-HRCの場合、HRCシグナルはFシグナル(A)に正比例し、FIP-HECがF発現細胞に誘導されることを示唆している。FIP単独(コレステロールなし)では、HRCをF発現細胞に局在化するが、HRCシグナルは低くなる(B)。脂質存在下でFIPが欠落している場合(C)、HRCはF発現細胞に特異的に局在していない。
【0279】
図86は、FIP-HRCが麻疹Fを膜融合前状態で安定させることを示す。FIP、HRC、及びFIP-HRCペプチドの存在下でのMeV F野生型の熱安定性。MeV F(「WT」)を発現する293T細胞を37℃で一晩インキュベートした。次に、細胞を示されたペプチドの濃度を増加させながら、55℃で10分間置いた。続いて、細胞を膜融合前立体構造特異的マウスmAb(77.4)とともに4℃でインキュベートした。Alexa488と結合した二次抗体抗マウスを検出に使用した。染色された細胞は、セルアナライザーのハイコンテンツ画像システムを使用して識別した。y軸の値は、未処置の細胞と比較した陽性細胞の割合(%)を示し、立体構造抗体結合の割合を表す(膜融合前状態のFの割合を反映している)。
これらの値は、3回の実験の結果の平均(±SE)である。[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-コレステロールペプチドは、膜融合前状態でFを安定化させるのに最も効果的である。
【0280】
図87は、示されたペプチドの存在下でのMeV F(WT)の熱安定性を示している。膜融合前エピトープが55℃で10分間インキュベートされていない試料の50%(「安定濃度50」又はSC50)及び90%(「安定濃度90」又はSC90)である濃度。これらの値は、少なくとも3回の実験の結果の平均(±SE)である。[FIP-HRC
450-485-peg
4]
2-cholは最も効果的なF安定剤である。
【0281】
図88~
図90は、可溶性Fに対するMeVペプチドの安定化特性を示す。
図88を参照すると、細胞に2つの可溶型MeV Fをトランスフェクトした。野生型F及び変異体E455G(膜融合前状態で本質的に安定化)を使用した。次に、細胞を、示されたペプチドの有無に関わらずインキュベートした。トランスフェクションの24時間後、膜融合前立体構造特異的マウスmAb(77.4)又は抗ヒスチジン(HIS)抗体のいずれかを使用して、上清液のアリコートを免疫沈降させた。抗HRCポリクローナル抗体を検出に使用した。[FIP-HRC450-485-] 2-peg11ペプチドは、野生型(WT)可溶性Fを安定化する(レーン1対レーン2を参照し、レーン5の安定したE455G Fと比較)。
図89を参照すると、細胞に3つの可溶型MeV Fをトランスフェクトした。野生型F、変異体E455G、二重変異体E170G E455G(両方の変異体は、細胞上で膜貫通タンパク質として発現される場合、膜融合前状態で本質的に安定化される)を使用した。次に、細胞を、示されたペプチドの有無に関わらず37℃でインキュベートした。トランスフェクションの24時間後、各組み合わせの上清液の3つのアリコートを、4℃、45℃、又は55℃のいずれかに30分間移行した。次に、各試料を4℃に移し、膜融合前立体構造特異的マウスmAb(77.4)のいずれかを使用して免疫沈降させた。抗HRCポリクローナル抗体を検出に使用した。[FIP-HRC450-485-]2-peg11ペプチドは、45℃及び55℃の両方で全ての可溶性Fタンパク質を安定化する。E455G変異及びE170G E455G変異を有する変異体可溶性Fは、[FIP-HRC450-485-]2-peg11非存在下でも、膜融合前状態で37℃で安定している。
【0282】
図90は、ウエスタンブロットを示す。麻疹ウイルス(MeV)膜融合タンパク質(F)野生型(WT)、E455G、又はEG170-E455G に可溶型を発現する293T細胞を、1μMの示されるペプチドあり(+)又はなし(-)で24時間培養した。培養細胞からの上清液を収集し、4℃、45℃、又は55℃で30分間インキュベートした。次に、各試料を4℃に移し、膜融合前エピトープを認識する膜融合前立体構造特異的マウスmAb(77.4)のいずれかを使用して免疫沈降させた。(A)沈殿物を抗MeV F HRCを使用したウエスタンブロット分析に供した。(B)ウエスタンブロット分析によって検出された免疫沈降MV Fタンパク質の濃度(デンシメトリー)測定。タンパク質含有量は、[FIP-HRC450-485-]2-peg11の存在下でMeV F WTに正規化した(n=3、平均±標準誤差)。[FIP-HRC450-485-]2-peg11ペプチドは、45℃及び55℃の両方で全ての可溶性Fタンパク質を安定化する。E455G変異及びE170G-E455G変異を有する変異体可溶性Fは、[FIP-HRC450-485-]2-peg11非存在下でも、膜融合前状態で37℃で安定している。
【0283】
図91は、FIP-HRCがF活性化を防ぐことを示す(Fリフォールディングを防ぐHRCとは異なるメカニズム)。H-HN T193A(MeVストーク(stalk)領域とHPIV3ヘッド(head)領域を備えたキメラ結合タンパク質で、シアル酸受容体に結合するがMeV Fをトリガーする)及びMeV F(S262R、容易に活性化されるF)を共発現する細胞の単層を、4℃でのシアル酸受容体保有赤血球(RBC)に結合させた。37℃に移行時、示される化合物又はペプチド(1μM)を含む培地を60分間添加した。次に、10mMのザナミビル(Zanamivir)を添加して、可逆的に結合した(すなわち、F挿入ではなくH-HNによってのみ結合した)RBCを放出した。HN-受容体相互作用によって可逆的に結合される(橙色)、F挿入によって不可逆的に結合される(青色)、又は膜融合した(白色)RBCを定量化した。縦軸の値は、3連の実験の結果の平均(±SE)である。[HRC450-485-peg4]2-cholは、標的細胞へのF挿入後の膜融合を阻止する(不可逆的に結合、青色)。[FIP-HRC450-485-peg4]2-cholは、膜融合前状態で阻止する(可逆的に結合、橙色)。3Gは、Fを膜融合前状態で安定化させる小分子ですある(可逆的に結合したRBC、橙色)。ザナミビルは、37℃のインキュベーションの開始時に添加されると全てのRBCを放出した。
【0284】
図92及び
図93は、FIP-HRCがMeV F発現細胞を標的としていることを示す。
図92は、HEK293T細胞における[FIP-HRC450-485-peg4]2-cholペプチドの局在を示す。HEK293T細胞培養物を、ペプチド(1μM)とともに37℃で60分間インキュベートした。Fタンパク質及びHRC-FIPペプチドは、それぞれAlexa Fluor 488(緑色)及びAlexa Fluor 594(赤色)で染色した。マージ画像は、共局在を示している。
図93は、3つの別々の実験からのFIP-HRCがMeV F発現細胞を標的としていることを示す。
【0285】
図94は、示されたペプチドの存在下でのMeV F(WT)の熱安定性を示している。膜融合前エピトープが55℃で10分間インキュベートされていない試料の50%(「安定濃度50」又はSC50)及び90%(「安定濃度90」又はSC90)である濃度。これらの値は、少なくとも3回の実験の結果の平均(±SE)である。[FIP-HRC450-485-peg4]2-cholは最も効果的なF安定剤である。
【0286】
図95は、MeVペプチドの細胞毒性を示す。MeVペプチドの細胞毒性は、市販のMTTアッセイを使用して293THEK細胞培養で評価した。このペプチドには毒性がない。
【0287】
図96は、相乗作用を示している。HRC+FIPのアイソボログラム分析。対角線は相加作用の線である。この線の下方、線上、又は上方にある点で表される実験データポイントは、それぞれ相乗作用、相加作用、又は拮抗作用を示す。赤色の点線は、同じ2つの成分の異なる比率でのFIP及びHRCの寄与から生成された曲線である。青色の点は、IC50濃度でのFIP-HRC-PEG4-Chol-DimerにおけるHRC-4及びFIP-PEG4-Chol-Dimerの寄与を表している。データは3つの実験からのものである。この表は、アイソボログラム分析の結果を示している。
【0288】
図97は、麻疹HRCに由来する12個のアミノ酸を含むFIP-HRCの効力を示す。麻疹Fに由来するHRCペプチドを使用する代わりに、ヒトパラインフルエンザ3(HPIV3)Fに由来するHRCペプチドを使用した。このペプチドを、VIKIと呼ばれた。VIKIペプチドは、HPIV3及びニパウイルスに対して非常に効果的であるが、麻疹では弱い阻害剤である。
図97は、ペプチドのIC50及びIC90を示している。FIP-VIKI HRC-PEG4-CHOL-DIMERは、FIP-MV HRC-PEG4-CHOL-DIMERよりも顕著に効力が低い。これは、効力がアミノ酸配列と相関していることを示している。改変FIP-MeV HRC (FIP-MeV HRC-Mod-PEG4-CHOL-DIMER)は、麻疹HRCに由来する12個のアミノ酸を含むFIP-HRCである。麻疹HRC領域からの12アミノ酸(aa)を含むFIP-MeV HRCは、FIP-VIKIよりも効力がある。
【0289】
実施例4 ― FIP-HIV HRC
(血清中和アッセイ)
シュードウイルス(Pseudovirus)エンベロープ(env)及びNL-Luc-AMベクターを、Effectene(QIAGEN社)試薬を使用して293T細胞にコトランスフェクトした。培地を16時間後に交換し、上清を分注し、32時間後に-80℃で凍結する。ウイルス滴定はTZM-BL細胞で設定され、ルシフェラーゼが1秒あたり100,000カウントとなる希釈を見つける。血清を解凍し、56℃で1時間熱不活性化する。使用されない試料は-20℃で保存する。TZM-BL細胞を、感染の16時間前に、不透明な白血球培養プレートに1×104細胞/ウェルの濃度で播種する。血清を解凍し、最高速度で10分間スピンダウンする。血清を最初に1:5に希釈し、Spin-X(登録商標)(Costar(登録商標))フィルターチューブを通して最高速度で10分間回転させる。(これは精製IgGでは行わない)。
【0290】
血清は、それぞれ1:4のさらなる5段階で段階的に希釈する。対照阻害剤は、6段階で1:5に段階希釈する。希釈した血清及び対照阻害剤をプレインキュベーションプレートに移す。各動物の血清を専用のプレートに移す(ウェルあたり110μL)。各プレートには、少なくとも2つのウイルスコントロールウェル及び1つのバックグラウンドウェルが含まれ、この時点では培地のみである。次に、偽型ウイルスを解凍し、2,000,000CPSとなるように所定の濃度に希釈し、培地を受けるバックグラウンドウェルを除く全てのウェルに添加する(110μL)。プレートを37℃で1時間インキュベートする。次に、プレインキュベーション混合物を細胞と合わせる。各ウェルには、2回の複製に充分な量が含まれている(100μLのプレインキュベーション混合物から100μLの細胞まで)。感染から16時間後、培地を細胞から吸引し、必要に応じて交換してもよい。感染後3日目の培地を細胞から吸引し、50μLのGlo-Lysis Buffer(Promega社)を各ウェルに添加する。アッセイプレートを-80℃で少なくとも2時間凍結する。アッセイプレートを解凍し、各ウェルをマルチチャンネルピペットで混合する。等量(50μL)のBright-Glo基質(Promega社)を各ウェルに添加し、ルシフェラーゼカウントを検出する。各アッセイプレート内のバックグラウンドウェルからのカウントをサンプルデータから差し引き、カウントを阻害率(%)としてプロットし、ウイルスコントロールウェルを100%増殖に設定する。
【0291】
(偽型ウイルストランスフェクションプロトコル)
プロトコルは、T175フラスコでの30mLトランスフェクション用である。T75フラスコの場合、各量を半分にカットする。トランスフェクションの1日前:293T細胞(ATCC、CRL-11268)をT175フラスコに約70%コンフルエンスまで播種する。注記:完全にコンフルエントなT175フラスコを1:3に分割すると、目的の細胞濃度が得られる。トランスフェクション当日:注記:このトランスフェクションは、16時間の終夜インキュベーションに近づけるために、1日の遅い時間に実施するのが最善である。1.5mLのECバッファー(Effecteneキット-QIAGEN社、301427)を15mL組織培養チューブに添加する。12μgのDNAをECバッファーに添加する。偽型ウイルスの場合、12μgのエンベローププラスミド及び12μgのバックボーンベクター(NL-Luc)を添加する。注記:試験したほとんどのエンベロープは、1:1のエンベロープ:バックボーントランスフェクションとして最も感染性があるが、ケースバイケースで理想的な比率(比率においていずれかのプラスミドの5倍以下)を経験的に決定することにより、低力価エンベロープを高めることができる。注記:NL-Luc-AMバックボーンは、標準pNL4-3.Luc.R-E-(aidsreagent.org、#3418)よりも感染性の高い偽型ウイルスを生成することが一貫して証明されている。100μLのエンハンサー(Enhancer)(Effecteneキット)を添加し、回旋により穏やかに混合する。室温で5分間インキュベートする。120μLのEffectene試薬(Effecteneキット)を添加し、回旋により穏やかに混合する。室温で10分間インキュベートする。293Tフラスコから細胞株培地を静かに吸引する。10mLの細胞株培地(Cell Line Media)(DMEM、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep)、グルタミン(Gln))を15mLチューブのDNA複合体にすばやく添加する。注記:EffecteneでOpti-Memを使用する必要はないと報告されている。DNA複合体を含む細胞株培地をチューブからすばやく取り除き、293Tフラスコに静かに加える。注記:293T細胞はフラスコにしっかりと付着していないー細胞の上に培地を直接ピペッティングしないこと。フラスコを37度で一晩インキュベートする。トランスフェクション後1日目:注記:朝一番に洗浄を行う。293T細胞フラスコから培地を静かに吸引する。30mLの新しい細胞株培地(Cell Line Media)をフラスコに静かに加える。注記:Effecteneトランスフェクション法は細胞に対して毒性がないと報告されているー予防措置として偽型ウイルスをトランスフェクトする際に培地を交換する。トランスフェクション後2日目:注記:高い力価が報告された場合は、一日の終わりに細胞の回収を行う。回収は3日目に延期する可能性もまたある。フラスコから50mLチューブにウイルス上清を取り除く。試料を1600rpmで10分間回転させる。注記:この時点では、クライオチューブ(VWR、#66021-996)にラベルを付してもよい。ステリフリップ(Steriflip)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、SCGP00525)又は同等品を介してウイルス上清を滅菌ろ過する。注記:この工程は、残っている細胞片を取り除くために行われるが、フィルター上にウイルスが捕捉される場合があると報告されている。低力価ウイルスの場合、本工程を省略してもよい。ウイルス上清を各1mLのクライオチューブにすばやく分注する。直ちに試料を-80℃の冷凍庫に置く。注記:ウイルスが細胞なしで室温に長く留まるほど、力価は低くなる。一度に1又は2以上のウイルスに対してこの回収を実施することは推奨されない。分注は氷上でも行ってもよい。
【表4】
【0292】
図98~
図103は、様々なウイルスの阻害データを示している。
図98は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したBG505(HIV-1株)の阻害データを示す。
図99は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したB41(HIV-1株)の阻害データを示す。
図100は、様々脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用した16055(HIV-1株)の阻害データを示す。
図101は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用したMN(HIV-1株)の阻害データを示す。
図102は、様々な脂質-ペプチド複合体並びに陽性及び陰性対照を使用した水疱性口内炎ウイルス(VSV)の阻害データを示す。
図103は、様々な脂質-ペプチド複合体を使用したマウス白血病ウイルス(MLV)の阻害データを示す。
【0293】
実施例5 ― 脳における感染及び拡大な麻疹ウイルスウイルス膜融合複合体の分子的特徴
(要約)
膜融合タンパク質(F)に単一のアミノ酸変化を有する麻疹ウイルス(MeV)分離株(L454W)が、MeV中枢神経系(CNS)感染で死亡した患者で同定された。この変異がCNSの野生型ウイルスよりも健康上の利点をもたらし、それによってこれらの患者の病気に寄与するかどうかを分析した。マウスの器官型脳培養(OBC)及びヒト脳オルガノイドを使用して、Fにおける特定のCNS適応変異が、自然免疫応答の増強に関連して、エクスビボでのウイルスの拡散を増大させることを示す。脳組織におけるウイルスの拡散は、Fを標的とする阻害性ペプチドによって阻止され、これはFがCNS内の播種に関与しているという見解を支持している。MeV Fの単一の変異は、膜融合複合体を変化させてウイルスをより神経病原性にし、自然免疫応答に直面しても脳組織で増殖可能にする。
【0294】
(緒言)
安全かつ効果的な麻疹ウイルス(MeV)ワクチンが利用可能であるにもかかわらず、MeVは根絶されておらず、2010年以降、世界中で毎年100,000~140,000人が死亡している(Moss & Griffin, 2012; Perry et al., 2015; Simons et al., 2012)。ワクチン接種によるMeVの根絶は、一つにはワクチンの安全性に対する不当な親の懸念に関連することが多いワクチン接種率の低さによって妨げられている(Jansen et al., 2003)。また、ワクチンは弱毒生ウイルスであり、重度の免疫不全である人々には使用できない。麻疹は世界的に再燃しつつあり、SARS-CoV-2パンデミックにより小児期の定期的なワクチン接種率が低下し、より脆弱な個人が感染にさらされる場合があるため、悪化する可能性がある。
【0295】
MeVは最初の感染時に、気道内の活性化されたCD150(SLAM)を発現する免疫細胞に感染し、それによって免疫系へのアクセスを獲得する(Tatsuo, Ono, Tanaka, & Yanagi, 2000)。流入領域リンパ節に到達した後、前記ウイルスはCD150発現リンパ球で増殖し、そこからウイルス血症を引き起こす。感染後期に、MeVはこれらの細胞の基底外側膜に発現されるネクチン4を介して呼吸器上皮細胞に感染し、この部位からMeVは宿主の気道から放出されて伝染し得る(Muhlebach et al., 2011; Noyce et al., 2011)。
【0296】
MeVは、感染の急性期から数日~数年後に致命的な合併症を引き起こす場合がある(Allen, McQuaid, McMahon, Kirk, & McConnell, 1996; Buchanan & Bonthius, 2012; Hosoya, 2006), when it infects the central nervous system (CNS)。ごく一部の症例では、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が最初の感染から数年後に発症する。SSPEは、超変異MeVゲノムRNA及びウイルス転写産物に関連する脳の持続感染並びに不完全なウイルス粒子集合を特徴とする(Cattaneo, Schmid, Billeter, Sheppard, & Udem, 1988; Rima & Duprex, 2005; Schmid et al., 1992)。麻疹封入体脳炎(MIBE)は、野生型(WT)ウイルスに感染してから数週間~数か月後に免疫不全患者に発生し、まれに、使用されなくなった旧型の弱毒化MeVワクチンで発生していた(Baldolli et al., 2016; Buchanan & Bonthius, 2012; Hughes, Jenney, Newton, Morris, & Klapper, 1993).MIBEは、細胞表面の受容体と会合する必要なしに膜融合を媒介するウイルス膜融合複合体と関連している場合があり、高膜融合性MeV膜融合複合体と称される(Hardie, Albertyn, Heckmann, & Smuts, 2013; C. Mathieu et al., 2015)。現在まで、MeV感染及びCNSでの拡散を支配するメカニズムは十分に理解されていないものの、CNS浸潤にはウイルス膜融合(F)タンパク質が必要であると思われるため、膜融合阻害剤の標的となり得る(Hashiguchi et al., 2018; Makhortova et al., 2007; M. Watanabe et al., 2016; Young & Rall, 2009)。
【0297】
MeVによる細胞の感染は、細胞表面受容体への付着から始まり、ウイルス表面でのMeV受容体結合(H)及び(F)タンパク質の協調作用によって侵入が媒介される。したがって、MeVのH/F複合体は、宿主細胞への侵入を促進するウイルス膜融合機構を構成する(Chang & Dutch, 2012; Harrison, 2008)。感染した細胞は、Fを細胞内で切断される前駆体(F0)として合成して、3つのN末端F2サブユニットとジスルフィド結合を介して結合する3つのC末端F1サブユニットで構成される膜融合前F複合体を生成する。新たなウイルス粒子は、ウイルス膜の外面に準安定立体構造で速度論的に捕捉されたこの三量体F構造を提示する(Hashiguchi et al., 2018)。Fは、標的細胞表面侵入受容体(すなわち、野生型株の場合はCD150又はネクチン4)によるH糖タンパク質の会合時に膜融合活性化のために刺激される(Muhlebach et al., 2011; Noyce et al., 2011; Tatsuo et al., 2000).受容体の会合後、Hは膜融合前のFタンパク質をトリガーして構造転移を起こし、その疎水性膜融合ペプチドを宿主細胞膜に挿入するように伸長する。次に、Fは安定した膜融合後の6ヘリックスバンドル構造にリフォールディングし、これによりウイルス及び標的細胞膜が共に膜融合孔を形成開始する。Fタンパク質がリフォールディングしてこの膜融合後状態に到達する能力は、タンパク質のN末端及びC末端に局在する2つの相補的なヘプタッドリピート(HR)領域(それぞれHRN及びHRC)間の相互作用に依存する。この膜融合工程は、これらのHR領域に対応するペプチドによって阻害され得る(Lambert et al., 1996)。
【0298】
数人の患者において、HRCドメインに変異を有するFタンパク質を保有するMeVの分離株で、CNS感染が観察されている(Ayata et al., 2010; Hardie et al., 2013; Jurgens et al., 2015; Watanabe et al., 2013)。インビボでの他の器官におけるいくつかの変異ウイルスの増殖が損なわれた(S. Watanabe et al., 2015)。MIBEにより死亡した2人の患者から回収されたウイルス配列には、準安定Fに熱不安定性を与えるL454W変異(Hardie et al., 2013)を有するFが含まれていた。本発明者らは、このF変異が標的細胞への侵入に影響を与えることを既に示した。緑色蛍光タンパク質を発現し、L454W F(MeV-IC323-EGFP-F L454W)を保有する組換えMeV(IC323株)は、公知のMeV受容体を欠く細胞に拡散する。細胞間膜融合アッセイでは、L454W変異のみを保有するFは、Hタンパク質とは無関係に膜融合を媒介する(Jurgens et al., 2015)。対照的に、他の高膜融合性ウイルスは、膜融合のためにHタンパク質に依存する(Sato et al., 2018)。
【0299】
MIBE患者で同定されたF L454W変異は、CNSで新たに発生した可能性があるか(Hardie et al., 2013)、野生型(WT)ウイルス集団に存在し、CNSで正の選択を受けた可能性がある。このウイルスの起源は特定できず、このFを有するCNS分離株が他の組織に感染し得るかどうかは不明である。ある報告では、L454W Fを保有するウイルスは、特定の膜融合阻害剤の選択圧下で出現する場合があり(Ha et al., 2017)、この神経病原性Fタンパク質を保有するウイルスがCNSの外で見つかる可能性があることを示している。最近の研究では、本発明者らは、L454W Fを保有するウイルスは、コットンラットの肺で野生型よりもよく増殖し、MeV CNS感染の乳児hCD150tgマウスモデルでは10倍致命的であり、野生型MeVよりも速くマウスCNSに到達することを示した(Mathieu et al., 2019)。しかしながら、この変異と脳内の変化した膜融合複合体の観察された影響の理由は解明されていない。
【0300】
この一連の実験では、CNS適応膜融合複合体を保有するMeVが、CNS感染の2つのエクスビボモデル(マウス器官型脳培養及びヒト脳オルガノイド)での増殖と拡散の点で野生型MeVと異なるかどうかを検討した。脳炎の場合に観察される高膜融合性バリアントは、これらのモデルでは野生型よりも効率的に拡散する。感染はいかなる公知の麻疹受容体を必要とせず、感染の程度は、膜融合前状態でのMeV F(野生型又は変異体)の安定性と逆相関する。ウイルスの拡散は、Fのリフォールディングを阻害する膜融合阻害剤によって阻止される。自然免疫応答が誘導されるが、ウイルスの拡散を阻止するものではない。上記のエクスビボモデルにおけるウイルスの進化は、CNS適応のためのMeV膜融合複合体の機能要件を強調している。
【0301】
(結果)
(F糖タンパク質L454Wを保有する麻疹ウイルスは細胞培養で安定しない)
本発明者ら及び他の研究者らは、患者から分離された又は実験室環境で生成された神経病原性麻疹株に関連するMeV F糖タンパク質(L454W、T461I、及びN462K)の変異について既に記述している(Hardie et al., 2013; Jurgens et al., 2015; Mathieu et al., 2019; Watanabe et al., 2013)。これらの変異は、Fタンパク質の膜融合前準安定状態に熱安定性の低下をもたらした。安定性の変化の分子決定因子を探索するために、これらの変異を、Fタンパク質の膜融合前立体構造(MeV F; PDB 5YXW; Hashiguchi et al., 2018)及び膜融合後立体構造(HPIV3 F; PDB 1ZTM; Yin et al., 2005)のX線構造にマッピングした(
図104)。3つの変異(L454W、T461I、及びN462K)は全てHRCドメイン内にある。膜融合前の構造に基づいて、L454W変異は、同じプロトマー内のT314及び/又は隣接するプロトマー内のL457で立体障害を引き起こす可能性がある。T461I変異及びN462K変異は、HRCドメインの秩序だったαヘリックス領域で発生する。これらの残基のインシリコ変異は、隣接するプロトマーとの立体衝突を引き起こすであろう。最も注目すべきことに、これらの3つの変異は、膜融合前立体構造のヘッド領域とストーク領域とが接触するHRCドメインの部分で発生する。この接合部での相互作用は、膜融合前状態を安定させるために重要である可能性が高く、その結果、以前のデータが示唆するように(Jurgens et al., 2015)、この領域の変異はMeV-F膜融合前の構造の安定性の低下につながり得るだろう。
【0302】
MeV F L454Wは、2つの別々の臨床例で見いだされた。この変異は膜融合タンパク質の安定性を低下させ、公知の受容体の非存在下であってもMeVがベロ細胞(Vero cell)に広がることを可能にする高膜融合性の表現型を生じさせる。このような変異がウイルスの適合性に与える影響を評価するために、F L454Wを保有するMeV IC323-EGFPの組換え感染性クローンを生成し、37℃又は32℃のいずれかでVero-CD150細胞で組換えウイルスを増殖させた(温度が低いほど、Fタンパク質をその膜融合前状態で安定させる(Jurgens et al., 2015))。逆遺伝学によってL454W Fを保有する組換えウイルスを生成するこのプロセス(ルーチンであると予想されるプロセス)の過程で、予期しない一連の変異が出現した。両方のウイルス調製物について、力価は低いままであり、通常5.106PFU/mLを超える野生型ウイルス原液と比較して、32℃で2×10
5プラーク形成単位(PFU)/mL、37℃で約5×105PFU/mLに達した。本発明者らは、変異体のウイルス力価は37℃で野生型ウイルスと比較して著しく低下することを以前に指摘した(Mathieu et al., 2019)。これはL454W変異を含むFタンパク質は、細胞培養におけるウイルス増殖に有害であることを示唆している。3継代後、同じ初期プラスミドからレスキューされたが異なる温度で増殖したこれら2つのウイルス原液の次世代配列決定は、両方のFタンパク質にさらなる変異を示した。配列の100%に存在するL454Wに加えて、G506E変異は32℃で対立遺伝子頻度が約36%で出現し、E455G変異は37℃で対立遺伝子頻度が約22%で出現した。E455G変異は
図104で観察可能であるが、G506は利用可能な結晶構造において解像されていない。L454W Fバリアントの不安定性は、細胞培養におけるこれら2つの新しい変異の出現に有利であると仮定した。これらの予期しない突然変異は、以下で説明するように、注目に値する調査手段を提示した。
【0303】
(公知の受容体の非存在下での脳組織における野生型ウイルスに対するMeV-IC323-EGFP-F L454Wの増殖)
L454W Fを有するMeVウイルスはCNSから単離されているため、脳感染症の2つのモデル(マウス及びヒト)によく適応すると仮定した。この変異は、脳内で正の選択圧下にあると仮定した。以前に、IFNAR1ノックアウト(KO)マウスのマウス小脳器官型脳培養(OBC)を使用して、ウイルス感染を評価し、CNSに存在する4つの細胞タイプ(Welsch et al., 2017)においてタイプ1のIFN応答に関連する効果の非存在下で拡散した。ヒトCD150F1導入遺伝子を発現するマウスの海馬及び小脳OBCは、野生型ウイルスの感染及び拡散を維持するが(J. C. Welsch et al., 2013)、公知のMeV受容体の非存在下では、野生型ウイルスは拡散しない(Ferren et al., 2019; Welsch et al., 2017)。
図105A~
図105Dに示される実験において、OBCは、公知の麻疹受容体を「発現しない」IFNAR1KOマウスに由来する。野生型ウイルス(増強緑色蛍光タンパク質、EGFPを発現する)は96時間にわたって拡散できなかった(
図106A及び106B)。
図105C及び
図105Dにおいて、IFNAR1KOマウスのOBCに、異なる蛍光タンパク質(赤色蛍光タンパク質、tdTomato)及びMeV-IC323-EGFP-F L454W(培養で出現したさらなるG506E変異を保有)を発現する5000PFUの野生型ウイルスを同時感染させた。感染を、24時間(
図105C)及び96時間(
図105D)でモニタリングした。野生型ウイルスは(予想どおり)組織内で効率的に拡散しなかったが、L454W(EGFP)を保有するウイルスが感染して拡散し、G506E変異対立遺伝子頻度が約36%から約70%に増加し、このFにおける変異に対する強い正の選択圧を示した。
【0304】
(膜融合を阻止すると、全てのバリアントの拡散が阻害される)
MeVワクチン株感染研究は、Fタンパク質機能への干渉がCNS内での拡散を止めることが可能であることを示唆している(Makhortova et al., 2007)。本発明者らは、MeV F由来の二量体コレステロール結合膜融合阻害ペプチド(HRC4と称され、Fを介した膜融合を阻止する)が、コットンラット及びマウスにおいて、インビボ、エクスビボ、及びインビトロで野生型MeVの感染を阻止することを以前に示した(Mathieu et al., 2015, 2019; Welsch et al., 2013)。「ウイルスへの曝露後」のOBC組織におけるウイルス播種を阻止するHRC4ペプチドの有効性を
図105E~105Gで評価した。ここで使用されるOBCは、公知のMeV受容体のいずれも発現しないIFNAR1KOから得た(Welsch et al., 2017)。
【0305】
実験終了時にOBCに存在するウイルス量を反映するMeVNRNAコピーの量は、RT-qPCRを使用して定量化した。
図105Fは、未処理試料のウイルス量と比較して、100nMのHRC4ペプチドで感染後に処理された培養物におけるウイルス量の有意な2対数の減少(**p=0.008、マン・ホイットニーのU検定)及び10nMで処理された群におけるMeVNRNAコピー数の4倍の有意な減少(*p=0.03、マン・ホイットニーのU検定)を示す。低濃度の膜融合阻害剤で処理した群では、ウイルス量の有意な変動は観察されなかった。MeV IC323-EGFP-F L454Wウイルスが組織に侵入し、感染から4日後に培養全体に広範な膜融合領域を形成した(
図105G)。HRC4ペプチド(100nM又は10nMのいずれか)は、同じ期間にわたってMeV-IC323-EGFP-F L454Wの拡散を阻止する(
図105G)。使用した最高濃度(100nM)では、単離された単一の感染細胞のみが観察された。低濃度(10nM)は部分的に阻害性であり、限局性の播種領域がいくつか観察され(
図105G)、低濃度(10nM未満)と未処理組織の間に有意差は認められなかった(
図105F)。膜融合阻害剤は感染の24時間後に添加されたため、これらの結果は、HRC4ペプチドが3次元CNS組織での細胞から細胞への拡散を阻止することを示しており、脳組織でのMeVの播種は膜融合タンパク質の機能に依存することを示唆している。ヒトCD150(SLAM)受容体を発現するIFNAR1KOマウスからのOBCを使用して、CNSでのウイルス拡散を増強した場合でも、最高濃度のペプチドは、少なくとも野生型ウイルスと同様にMeV IC323-EGFP-F L454Wの播種を阻止した(
図108)。
【0306】
(免疫コンピテントなOBCにおけるL454W保有ウイルスの進化)
完全にコンピテントなマウスCNSの存在下でL454W及びL454W/E455G又はL454W/G506Eのいずれかの二重集団を保有する2つのウイルスのウイルス進化を評価するために、野生型マウスからOBCを導出した。C57BL/6乳児マウスのOBCは、MeV野生型及びL454WFウイルス(追加のL454W/E455G又はL454W/G506Eのいずれか)に感染させた。このモデルでは野生型ウイルスが拡散しないことを観察していたが(Ferren et al., 2019)、その結果をここで確認した。対照的に、L454W Fを保有するウイルスは両方とも、C57BL/6 OBCで効率的に拡散し、7日後に同様のレベルの感染を示した(
図105H)。7日後、トランスクリプトーム、ウイルスの進化、及びウイルスRNAの定量化を評価するために、OBCを配列決定の目的で溶解した。C57BL/6 OBCでは、L454W Fを保有するウイルスは、野生型ウイルスに感染したOBC(拡散が最小限)と比較して、強いインターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子発現パターンを誘導した。この場合、遺伝子パターンは非感染OBCと区別できなかった(
図109を参照、差次的遺伝子発現分析用)。この強力な自然免疫応答にも関わらず、減少したもののL454W F保有ウイルスの拡散は停止しなかった(
図105Iを参照)。次に、これらのOBCのウイルス配列を分析して、L454W/E455G及びL454W/G506Eの変異が保存されているかどうかを判断した。配列分析は、補足資料のLAVAプロット(Lin et al., 2019b)に示されている。LAVAプロット#1は、4つの試料(CM005~CM008)のL454W/G506Eと1つの試料(CM017)のL454W/E455Gの対立遺伝子頻度を示している。L454W/G506Eインプットウイルスの二重変異体の対立遺伝子頻度は約36%(ウイルス調製物で観察)で、エクスビボ組織で7日後に97%、89%、96%、78%に上昇した。L454W/E455Gの場合、インプットウイルスの二重変異体の対立遺伝子頻度は約22%であり、エクスビボからの配列では二重変異体は約4%に減少した。
【0307】
(ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドの感染:CNS適応変異体対野生型ウイルス)
CNSモデリングをヒトの神経組織に拡張するために、hiPSC(2人の別々のドナー、1人の男性及び1人の女性、それぞれFA10及びFA11)を脳オルガノイドに分化させた(Lancaster and Knoblich, 2014)。90日齢のオルガノイドは野生型又はL454WFを保有するウイルスに感染させた。このモデルでのウイルス拡散の変化が単に個々の突然変異に起因するのではなくFの特性に関連しているかどうかを分析するために、オルガノイドをまた、変異N462K(ハムスターの脳で効率的に増殖することが既に見いだされている実験室適応変異)及びT461I(既にSSPEの症例で見いだされている)を有するFを保有するMeVに感染させた(Watanabe et al., 2013)。これらの変異は
図104に記載されている。感染を10日間にわたってモニタリングし、蛍光をモニタリングすることによって拡散を評価した(
図106A及び
図110は10日目に撮影した写真を示す)。感染が等量のウイルスで行われたことを確認するために、ヒト脳オルガノイドの感染に使用された接種材料を、
図106B及び
図110に示すように、CD150を発現するベロ細胞(Vero-CD150)で並行して評価した。全てのウイルス力価は同様であり(PFU/mL)、L454W変異体はわずかに低かった。Vero-CD150では、全てのウイルスが3日以内に細胞単層を効率的に拡散及び破壊した(データは示していない)。10日後、トランスクリプトームを評価し、オルガノイド感染中のウイルスの進化をモニタリングし、ウイルスRNAを定量化するために、感染及び非感染ヒト脳オルガノイドをRNA配列決定の目的で溶解した(
図107C、
図107D、
図112、及び補足資料を参照)。
【0308】
L454W Fを保有するウイルスは、野生型Fを保有するウイルスよりもヒトの脳オルガノイドにおいてより効率的に拡散し(
図106A及び
図106C)、感染の24時間後に添加されたHRC4膜融合阻害剤によって効率的に阻止された(
図110)。T461I変異F(SSPE患者由来)を保有するウイルスも脳オルガノイドに拡散した。対照的に、N462K Fを保有するウイルスは、野生型ウイルスと比較して拡散の中程度の増加しか示さなかった(
図106A及び
図106C)。
【0309】
図106Dでは、ヒト脳オルガノイドにおいて、非感染細胞又は感染細胞(野生型ウイルス又はL454W Fタンパク質を保有するウイルスのいずれか)間の差次的遺伝子発現を比較した。L454W Fを保有するMeVは、MeV野生型(WT)よりも数倍高い100万リードあたりのリード数(RPM)で存在した(
図106D)。L454W Fを保有するウイルスは、野生型ウイルス及び対照試料に感染したオルガノイドと比較して、インターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子発現パターンを誘導した(p=2.6×10-17、差次的遺伝子発現分析については
図110を参照)。インターフェロン応答は特定のF変異とは無関係にウイルス数と相関しているように見えるため、この応答はウイルス増殖の違いの結果である可能性が高いと思われる(
図111は、
図106Aに示す全てのMeVバリアントによる感染との差次的発現を示す)。ヒト脳オルガノイドの両方のセットについて、最も高い遺伝子レベルの発現係数は、以前に言及されたように(Luo et al., 2016; Qian et al., 2016)、最も若い胎児の発達段階(妊娠後8~13週間)及び扁桃体に由来する脳組織(
図112)と相関した。2つのヒト脳オルガノイド感染シリーズに共通する差次的に発現される遺伝子の経路分析は、強いインターフェロン応答がヒト脳オルガノイドにおける麻疹感染によって誘発されることを明らかにした(
図113)。
【0310】
次に、2つのウイルス集団(L454W-L454W/E455G及びL454W-L454W/G506E)が、マウスの器官型脳切片と同様にこのモデルで進化したかどうかを検討した。配列分析はLAVAプロットで表示される。L454W-L454W/G506E集団の場合、脳オルガノイドから出現するウイルス配列は、ウイルス原液の対立遺伝子頻度が約36%からFA10では約96%及びFA11脳オルガノイドでは約78%に増加したFタンパク質のG506E変異体で顕著であった(
図114のFA10のデータを参照)。2番目のウイルス原液(L454W及びL454W/E455Gを有する、二重変異体は22%の対立遺伝子頻度で存在)を使用して、2番目の脳オルガノイドセット(FA11 iPSCに由来)に感染させた。L454W変異は維持され、E455G Fの対立遺伝子頻度はオルガノイドで約2%に減少した(
図115を参照)。野生型ウイルスは顕著な変化を示さなかった(
図116を参照)。
【0311】
(L454W Fバックグラウンドのさらなる変異は、Fタンパク質の膜融合前状態を安定させる)
マウス及びヒトの両方の組織で、FにおけるG506Eの正の選択及びE455Gの負の選択が観察された。2つの追加の変異のこの異なる選択の理由を理解するために、示されたFタンパク質のcDNAでトランスフェクトされた細胞を使用して、単独及びL454Wとの組み合わせの両方で追加の変異を保有するFの機能特性を評価した。L454W/G506E変異を保有するFは、機能アッセイにおいて野生型Fよりも有意に不安定であったが、L454W/E455Gを保有するFは野生型Fよりも安定していた(
図108A及び
図108B)。神経病原性バリアントの特徴は、公知のウイルス受容体なしで膜融合する能力であり、この表現型は依然として存在していた。L454W/G506E Fは、いずれの公知の受容体(CD150/SLAM又はネクチン4)なしで膜融合を媒介できる。しかしながら、オルガノイドの増殖中に頻度が劇的に減少したE455G変異を有する、L454W/E455G Fは、公知の受容体なしでは膜融合を媒介しない。
【0312】
図107A及び
図107Bの結果に基づいて、次に、L454W/E455G Fを保有する同種のウイルス集団が、器官型脳切片及び脳オルガノイドモデルで野生型ウイルスのように挙動するかどうか、及びE455Gがこれらの神経組織で負の選択圧を受けるかどうかを検討した。したがって、L454W/E455GFタンパク質又はE455GFタンパク質のいずれかを保有する2つの新たなウイルスの生成を試み、エクスビボでの脳組織での増殖と拡散を分析した。二重変異体L454W/E455G Fを保有する組換えウイルスは、Vero-CD150の野生型ウイルスと同様に増殖した。しかしながら、単一変異したE455G Fを保有する組換えウイルスは回収できず、培養に有害であることが示唆された。二重変異体が脳において有利であるかどうかを決定するために、
図105Dのように、OBCにおいて、野生型(WT)(赤色)及びL454W/E455G(緑色)F保有ウイルスと同時感染させた。
図107Eは、感染後96時間のウイルス拡散の程度を示している。
図105Dに示された結果とは明らかに対照的に(L454Wウイルスが組織全体に侵入し、野生型感染が制限された場合)、同時感染により、野生型(WT)ウイルスとL454W/E455Gウイルスの両方で同様の(制限された)拡散が発生した。
【0313】
ヒト脳オルガノイドにおけるL454W/E455Gウイルスの表現型を確認するために、90日齢のオルガノイドに感染させた(
図107F~
図107H)。感染を10日間にわたってモニタリングした。
図107Fは、10日目のウイルス拡散の蛍光量を示している。意図した量のウイルス(5000PFU/ウェル)で感染が確実に行われるようにするために、ヒト脳オルガノイドの感染に使用される接種材料を、
図107Gに示すようにVero-CD150で並行して評価した。L454W/E455G F保有ウイルスは、10日後にFA10及びFA11 hiPSC由来の脳オルガノイドの両方で限定的な広がりを示したが(
図107F)、Vero-CD150では2日以内に細胞単層が広がり破壊された(
図107G)。10日後、トランスクリプトームを評価し、オルガノイド感染中のウイルスの進化をモニタリングし、ウイルスRNAを定量化し、ウイルスの進化を評価するために、感染及び非感染ヒト脳オルガノイドをRNA配列決定の目的で溶解した(
図107H、
図111、
図113を参照)。L454W/E455Gからの感染のウイルスゲノムの量は、野生型ウイルスで観察されたものと同様であり(
図106)、10日後も二重変異は安定したままであった(LAVAプロット#5を参照)。これらの知見を確認するために、別の脳オルガノイドのセットをhiPSCFA11から分化させた。合計9つのウェルを、1000PFU/ウェルの野生型、L454W F(混合集団L454W及びL454W/E455G)、及びL4545/E455GFを保有するウイルスに感染させた。感染から20日後、脳オルガノイドを溶解し、ウイルス配列決定のためにRNAを抽出した。データはLAVAプロット#6に示されている。野生型ウイルスは、3つの試料全てで対立遺伝子頻度が約30%のP遺伝子(R77C)にのみ変化を認めた。1つの試料のL454WF保有ウイルス(混合集団L454W及びL454W/E455G)は、E455G変異を完全に排除した。2番目の試料ではE455Gは約24%に留まり、3番目の試料はE455Gを欠失し、約23%の頻度で追加の変異(D538G)を獲得した。二重変異体L454W/E455Gは、有意な変化なしに安定したままであり、脳オルガノイドにうまく広がることができない。
【0314】
G506EのようなF安定化変異が必ずしもCNS適応を干渉しないという知見に照らして、そのような表現型のエビデンスをインビボで検索した。FのL454W変異に関する最初の文献の時点で分離された患者のウイルス(Hardie et al., 2013)は、Fタンパク質(M337L)に追加の変異を有していた。Fの膜融合及び安定性に対するM337Lの効果を、単独及びL454Wとの組み合わせの両方で評価した(
図107A及び
図107B)。発現されたM337LFは、受容体の非存在下では膜融合を媒介せず、その膜融合前状態は野生型Fよりも安定していた。M337L/L454W Fは、受容体の非存在下で膜融合を促進し、野生型Fよりも有意に熱安定性が低かった。インビボでの進化は、異なる変異残基を介して、G506Eによって引き起こされたものと同様の機能変化をもたらした。このパターンは、CNS固有の適応パターンを反映している。
【0315】
(検討)
南アフリカのMeVの流行では、8人のHIV感染患者がMeVCNS症状で死亡した(Albertyn et al., 2011)。1つのCNS適応膜融合複合体(H及びFで構成される)の特性を特性評価した(Jurgens et al., 2015)。MIBE患者の中枢神経系からのMeVの膜融合複合体配列は、Fが公知の侵入受容体なしで活性化されるように変更される。2人の別々の患者からの分離株のFタンパク質は、454位(L454W)に1つの特定のアミノ酸変化を含み、異型付着タンパク質との膜融合を媒介するFの能力を高め、Fの熱安定性を著しく低下させる(Jurgens et al., 2015)。
【0316】
予想外に有益な変異のセットは、逆遺伝学によってL454WFを保有する組換えウイルスを生成する技術的プロセスから偶然に出現した。37℃で実施した標準的な方法では、L454W F又はL454W/E455G Fのいずれかを保有するウイルスの混合集団が発生した。Fを安定させるためにウイルス産生の温度を32℃に下げると、L454W及びL454W/G506Eの両方を含む集団が得られた。E455はHRCドメインに位置しているが(
図104を参照)、残基G506は膜貫通ドメインにあり、MeV Fの利用可能な結晶構造では分解されない。荷電残基を膜貫通ドメインに配置すると、タンパク質の折り畳み及び活性に劇的な影響を与える可能性があるが、この変異はエクスビボモデルで正の選択を受けた。私たちのデータは、HRC変異E455GがFの安定性を高め、L454W/E455G F(L454Wとは対照的に)が膜融合を媒介するために受容体へのH(MeV受容体結合タンパク質)の会合を必要とすることを示している。したがって、この2番目のHRCドメイン変異は、H受容体相互作用の要件を付与する。G506E膜貫通ドメイン変異は、Fの安定性をわずかに回復させたが、二重変異体L454W/G506 Fは、野生型よりも安定性が低く、公知の受容体の非存在下で膜融合を媒介する。技術的プロセスの結果として生じたものの、これらの代償性変異は、公知の受容体なしで膜融合可能なウイルスがCNSで正の選択を受けているという直接的なエビデンスを提示した。
【0317】
T461Iタンパク質及びN462KFタンパク質を保有するウイルスは、細胞培養及びエクスビボの両方で遺伝的に安定しているように見えるが(データは示さず)、N462K Fを保有するウイルスは、驚くべきことに、人間の脳オルガノイドで予期されるほどには増殖しなかった。二重変異体L454W/G506Eは、両方の培養条件に適合する「バランス」に達していると見られる。ヒトパラインフルエンザウイルス3型について観察したように(Iketani et al., 2018)、細胞培養における臨床検体からのウイルスの単離は、ウイルスの進化に選択圧を提供し、臨床株の本来の特徴を曖昧にする可能性がある。臨床試料の直接配列は、これらの細胞株アーチファクトの発生を回避する(Iketani et al., 2018)。コンセンサスF(SSPE F)に5つのアミノ酸変化(G168R、E170G、S262G、A440P、R520C、L550P)を有していたSSPE症例からのウイルスについて以前に説明した(Angius et al., 2019)。SSPE Fは、野生型Fよりも熱安定性が低く、公知の受容体の非存在下で膜融合を媒介できた。変異の影響を個別に評価したところ、変異だけでは膜融合特性を付与できないことが判明した。変異のいくつかは、膜融合前Fの安定性を増加させた(例えば、E170G)が、他の変異はそれを減少させた(例えば、S262G)。完全にCNSに適応したSSPE Fにつながるインビボ進化が臨床例で起こったのではないかと推測する。
【0318】
FのL454W変異が最初に同定された臨床試料の1つのディープシーケンシングにより、Fタンパク質に他のいくつかの変異が存在することが明らかになった。Fタンパク質(M337L)の1つのさらなる変異は、L454Wのそれと同様の対立遺伝子頻度を有し、M337L/L454Wを保有するFタンパク質は、L454W/G506変異を保有するFの膜融合表現型と一致した、これは脳オルガノイドで観察されたものと同様のF機能に対するインビボウイルス進化を示している。これらの結果は、同様に不安定で受容体に依存しないFに達する様々な変異が、CNSで正の選択を受け得ることを示唆している。M337L変異をMeV Fの膜融合前構造にマッピングした。この変異は、L256及びL257と疎水性相互作用を形成して、MeV Fの膜融合前立体構造を安定化させ得るものであった。L454W/E455G Fを保有するウイルスは、実験で回収に成功し、野生型ウイルスと同様に挙動した。脳オルガノイドの感染は限定的であり(野生型ウイルスに関して)、本明細書に示された2つの別々の実験の10~20日のスパンでは、変異の負の選択を受けなかった。より長い感染は、E455G変異の排除又はは追加の変異の導入をもたらし得た可能性がある。いくつかの試みにもかかわらず、純粋にE455G Fを保有するウイルスは回収できず、E455GFの安定性の向上は適合性に悪影響を与え得ることが判明した。
【0319】
(図の説明文)
図104Aは、CNS適応ウイルスからのFタンパク質内の置換の位置を示す。(A)膜融合ペプチド(FP)ドメイン、N末端ヘプタッドリピート(HRN)ドメイン、C末端ヘプタッドリピート(HRC)ドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、及び細胞質(CT)ドメインを示すMeV Fの概略図。(B)膜融合前(左、MeV F; PDB 5YXW)立体構造及び膜融合後(右、HPIV3 F; PDB 1ZTM)立体構造のリボン図。Fタンパク質構造における5つの置換(M337L、L454W、E455G、T461I、及びN462K)を示す。
【0320】
図105は、野生型(WT)対L454W F保有ウイルスのエクスビボ感染を示す。CNS適応ウイルスは、器官型脳培養(OBC)において野生型(WT)ウイルスよりも優れている。(A及びB)IFNARKOマウス脳からのOBCは、EGFPを保有する5000プラーク形成単位(PFU)/切片のWTウイルスに感染させた(緑色蛍光)。(C及びD)IFNARKOマウス脳からのOBCは、5000プラーク形成単位(PFU)/切片でtdTomato(赤色蛍光)及びMeV-IC323-L454W F EGFP(緑色蛍光)を保有するWTウイルスに同時感染させた。96時間にわたってモニタリングした。写真は24時間(C)及び96時間(D)時点で撮影した。スケールバー=500μm。(E及びG)MeV F由来の膜融合阻害剤ペプチド(HRC4)は、OBCにおけるL454W Fを保有するMeVの播種を阻害する。IFNARKOマウス脳のOBCを、MeV-IC323-L454W F EGFPに5000PFU/切片で4日間感染させた。OBCは、最初の感染から24、48、及び72時間後にHRC4膜融合阻害ペプチドを添加することにより、示された濃度で処理するか、未処理のままとした(NT対照)。(E)手順の概略図。(F)感染後4日目に器官型切片から全RNAを回収し、MeVN遺伝子発現のレベルをRT-qPCRによって定量化した。結果を、5匹の異なるマウスからの培養物の平均±標準偏差として表す(**:P<0.01、***:P<0.001 [マン・ホイットニーのU検定])。(G)感染に関連する緑色蛍光は、示された濃度(スケールバー=500μm)で処理されたOBCにおいて落射蛍光顕微鏡によって4dpiで観察された。(H)完全に免疫コンピテントなOBCにおけるL454W F感染を有するエクスビボウイルス。C57/BL6マウス脳からのOBCは、1000PFU/切片で7日間、L454W F保有ウイルス(1つはFに追加のE455Gを、もう1つはFにG506Eを有する両方のウイルス調製物を使用)に感染させた。写真は、示されているように感染の4日後に撮影した。(I)WT及びIFNARKOのOBCにおけるL454W保有ウイルス増殖。WT又はIFNARKOマウス脳からのOBCを、1000PFU/切片MeV-IC323-L454WFEGFPに7日間感染させた。感染後4日目にOBCから全RNAを回収し、RT-qPCRによりMeVN遺伝子発現のレベルを定量化した。結果を、少なくとも5匹の異なるマウスからの培養物の平均±標準偏差として表す(*:P<0.05、***:P<0.001[マン・ホイットニーのU検定])。
【0321】
図106は、CNS適応MeVバリアントが、ヒト多能性幹細胞(hiPSC)由来の脳オルガノイドに効率的に広がることを示す。(A)90日齢のヒト脳オルガノイドの2つの別々のセット(2つのhiPSCであるFA10及びFA11に由来)を、示されたMeV膜融合(F)タンパク質を保有する組換えMeVウイルス(EGFP又はtdTomato蛍光タンパク質のいずれか)に感染させた。各ウイルスについて、それぞれ2~4個のオルガノイドを含む3つの別々のウェルに感染させた(5,000PFU/ウェル)。脳オルガノイドを経時的にモニタリングした。ここで示されている蛍光は10日後の感染を反映している。バー=1000μm。(B)感染に使用した接種材料のウイルス力価は、VeroCD150でPFU/mL(log)として評価した。(C)感染後10日目にヒト脳オルガノイドから全RNAを回収し、RT-qPCRによりMeVN遺伝子発現のレベルを定量化した。(D)脳オルガノイドにおけるWT対L454W F保有ウイルス感染のRNA-Seq分析(3つの別々の実験からのデータ)。非感染脳オルガノイド及びMeVに感染した脳オルガノイドの7つの複製(n=6:非感染、n=5:WT、n=2:L454W F保有ウイルス)の転写プロファイルを作成した。各試料のMeVのRPM値は、各ヒートマップの下に示されている。生のカウント数を全試料にわたって正規化し、差次的発現分析を実施した。L454W及び非感染の間で調整されたp値が最も低い50個の遺伝子がヒートマップに示され、各遺伝子の平均正規化カウントに対する各サンプルのlog2倍の変化で色分けされている。
【0322】
図107は、示された変異を保有するMeV膜融合(F)タンパク質の膜融合活性及び熱安定性を示す。(A)示されたMeVFタンパク質及びMeV WT血球凝集素(H)を共発現するHEK293T細胞とHEK293T細胞(公知の麻疹受容体なし)との間の細胞間膜融合を、βガラクトシダーゼ補完アッセイによって評価した。Y軸の値は、3回の独立した実験の結果の相対発光単位(RLU)平均(標準誤差、SEを含む)として表される。*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001(2元配置分散分析)。(B)ネクチン4又はCD150の存在下又は受容体なしでの野生型Fと比較した、示された変異を保有するMeV Fタンパク質(IC323)の膜融合活性の割合(%)。(C)HEK293T細胞を、示された変異を保有するMeV Fタンパク質でトランスフェクトし、37℃で24時間インキュベートし、次に示された時間(X軸)で55℃に昇温した。Y軸の値は、示されたFタンパク質に結合する膜融合前立体構造特異的抗体の割合(%)を表す(0時間での野生型Fタンパク質との比較)。これらの値は、3回の独立した実験の平均である。****:p<0.0001(2元配置分散分析の結果は
図4Dに要約されている)。(D)0時間(100%)での野生型Fと比較して、膜融合前エピトープの割合を50%(TS50)及び10%(TS10)に減少させる55℃での時間(分)。データは、3回の実験±SEの平均である。(E)IFNARKOマウス脳からのOBCは、5000PFU/切片でtdTomato(赤色蛍光)及びMeV-IC323-L454W/E455G F EGFP(緑色蛍光)を保有するWTウイルスに同時感染させた。96時間にわたってモニタリングした。写真は96時間時点で撮影した。スケールバー=500μm。(F)90日齢のヒト脳オルガノイドの2つの別々のセット(2つのhiPSCであるFA10及びFA11に由来)を、L4545W/E455GFタンパク質を保有する組換えMeVウイルスに感染させた。2~4個のオルガノイドを含む3つの別々のウェルに感染させた(5,000PFU/ウェル)。脳オルガノイドを経時的にモニタリングした。ここで示されている蛍光は10日後の感染を反映している。バー=1000μm。(G)感染に使用したウイルス接種材料のウイルス力価は、VeroCD150でPFU/mL(log)として評価した。写真は2日後の感染の程度を示している(PFU/ウェルが示されている)。(H)感染後10日目にヒト脳オルガノイドから全RNAを回収し、RT-qPCRによりMeVN遺伝子発現のレベルを定量化した。
【0323】
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【0324】
(方法)
ペプチド及び化学薬品。MV F由来の膜融合阻害ペプチドについては、既に記述されている(Mathieu et al., 2015)。簡潔には、MV Fタンパク質のC末端のヘプタッドリピート領域に由来する36アミノ酸ペプチドを合成した。本研究では、ペプチドの二量体コレステロール結合(HRC4)型を使用した。N-(3-シアノフェニル)-2-フェニルアセトアミド(3Gとしても知られている)は、ZereneX Molecular Limited社(英国)から購入した。3Gの純度は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)で試験し、95%を超える純度であることが示された。
【0325】
プラスミド及び試薬。MeV IC323 Hタンパク質及びFタンパク質の遺伝子は、コドン最適化、合成され、哺乳動物発現ベクターpCAGGSにサブクローン化された。ネクチン4及びCD150をコードするプラスミドは購入した。
【0326】
細胞。HEK293T(ヒト腎臓上皮)細胞、293-3-46細胞(Radecke and Billeter, 1995; Radecke et al., 1995)、Vero及びVero-SLAM/CD150細胞(アフリカミドリザル腎臓)は、10%ウシ胎児血清(FBS、ライフテクノロジーズ社(サーモフィッシャーサイエンティフィック社))及び抗生物質を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ライフテクノロジーズ社(サーモフィッシャーサイエンティフィック社))で、37℃及び5%CO2で培養した。293-3-46培地及びVero-SLAM/CD150培地に1mg/mLのGeneticin(登録商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を添加した。
【0327】
組換えウイルスの産生及び分析。MeV IC323-EGFP(Hashimoto et al., 2002)は、EGFPをコードする遺伝子を発現する組換えウイルスである。T461I、N462K、及びL454Wの変異を有する全ての変異体は、逆遺伝学を使用してMeV IC323-EGFPバックグラウンドで生成した(九州大学の柳氏(福岡、日本)から提供されたMeV IC323-EGFPをコードするプラスミドを使用)。MeV IC323-Td Tomatoは、EGFP発現カセットをtdTomato赤色蛍光タンパク質をコードする配列に置換することによって生成した。MeV IC323組換えウイルスは、以前に説明されたように293-3-46細胞でレスキューした(Radecke et al., 1995)。L454Wを保有するウイルスのウイルス産生は、37℃又は32℃のいずれかで実施した。全てのウイルスを、Vero-SLAM/CD150細胞で増殖及び滴定した。
【0328】
構造モデリング。タンパク質相同性サーバーPhyre2を使用して、野生型(WT)麻疹ウイルス膜融合糖タンパク質(MeV F)の20個のモデルを作成した(Kelley et al., 2015)。MeV Fの膜融合前及び膜融合後の状態に対する各モデルの不良な局所形状は、プログラムXtalViewによって手動で修正した(McRee, 1999)。結果として得られたモデルは、その後、膜融合前及び膜融合後の状態について、それぞれ5EVM及び1ZTMの電子密度に対してCNS-1.3(Brunger et al., 1998)によって改良した。全てのMV-F変異タンパク質のモデルの作成に同じ方法を用いた。全ての構造図は、PyMol (www.pymol.org/)を使用して作成した。
【0329】
β-ガラクトシダーゼ(β-Gal)相補性に基づく膜融合アッセイ。β-Gal相補性に基づく膜融合アッセイは、以前に説明されたように実施した(Jurgens et al., 2015)。簡潔には、上記の構築物及びオメガレポーターサブユニットで一過性にトランスフェクトした293T細胞を、MV F HRC由来の膜融合阻害ペプチドの存在下又は非存在下で、ウイルス糖タンパク質及びアルファレポーターサブユニットを共発現する細胞と共に示された期間インキュベートした(Mathieu et al., 2015)。
【0330】
F立体構造特異的mAbによる細胞表面染色。ウイルス糖タンパク質構築物で一過性にトランスフェクトした293T細胞を、完全培地(DMEM、10%FBS)中で37℃で一晩インキュベートした。トランスフェクションの20時間後、細胞を図に示した時間で55℃に移行した。その後、細胞を、膜融合前の立体構造(1:1,000)でMeV Fを特異的に検出するマウスモノクローナル抗体(mAb)と共に、氷上で1時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄した後、Alexa-488抗マウス二次抗体(1:500、ライフテクノロジーズ社)と共に氷上で1時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄した後、DAPI(4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を1:1000に希釈した4%パラホルムアルデヒド(PFA)を含む氷上で60分間固定した。プレートを洗浄し、0.01%アジ化ナトリウムを添加し、IN Cell Analyzerを使用してプレートの画像を作成した。陽性に認識された細胞の割合(%)は、Cell Profilerを使用して決定した。
【0331】
感染後の器官型小脳培養の準備及び処理。小脳切片は、IFNAR1KO(及びSLAM/CD150tg×IFNAR1KO)又はC57/BL6マウスから調製し、他で詳述されるように培養で維持した(Welsch et al., 2017)。簡潔には、7日齢のマウスの脳から小脳を分離し、McIlwainのティッシュチョッパー(WPI-Europe)で切断して、厚さ350μmの漸進的な切片を得た。次に、脳切片を冷Hibernate(登録商標)-A/5g/L D-グルコース/1×キヌレン酸バッファーで分離し、ミリポア(Millipore(登録商標))細胞培養インサート膜(ミリセル(Millicell(登録商標))細胞培養インサート、30mm、親水性ポリテトラフルオロエチレン、Millipore(登録商標))に配置した。続いて、切片を、25%馬血清、5g/Lグルコース、1%HEPES(全てサーモフィッシャーサイエンティフィック社)、及び0.1mg/Lヒト組換えインスリン(R&D Systems社)を添加したGlutaMAX最小必須培地で、37℃で5%CO2の加湿雰囲気中で培養した。切片化手順の後、培地は毎日交換した。切片化当日、5匹のマウスの切片をMeV IC323-EGFP-F L454Wウイルス(IFNAR1KOからの5.103PFU/切片及びSLAM/ CD150tg×IFNAR1KOマウスからの100PFU/切片)に感染させた。次に、培養物を、1日目~4日目まで、Neurobasal(商標)培地中のHRC4膜融合阻害剤の段階希釈又はビヒクル(未処理状態「NT」)のいずれかで毎日処理した。各ウェルの5つの切片のそれぞれの上に、2μLの10000nM、1000nM、又は100nMのHRC4を添加した。数分後、ペプチドを含む液滴は完全に吸収され、供給媒体を含む系の下部区画に到達した。培養培地(1mL)の最終濃度は100nM、10nM、又は1nMであった。各時点で、切片を収集し、RNAを抽出し、以前に説明されたようにRT-qPCRを実施した(Welsch et al., 2013)。
【0332】
ヒト脳オルガノイドの分化。脳オルガノイドは、以前に説明されたように(Lancaster and Knoblich, 2014)、2つのiPSC系統(FA0000010及びFA0000011、簡便にFA10及びFA11と称する)から生成した。簡潔には、Accutase(STEMCELL Technologies社、カタログ番号7920)を使用して細胞を単一細胞懸濁液に分離し、4,500細胞/ウェルで96ウェル低付着U字底プレートに、20%Knockout(商標)Serum Replacement(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号10828-028)、3%ES品質のバッチテスト済ウシ胎児血清(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号10439024)、1%Glutamax(商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号35050-038)、1×非必須アミノ酸、0.1mMの2-メルカプトエタノール、4ng/mLのbFGF(R&D Systems社、カタログ番号233FB01M)、及び50μMのY-27632を含むEB培地(DMEM/F12 (サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号11330-032)に播種した。新鮮な培地に6日目まで1日おきに交換した。6日目に、EB培地をNeuralInduction(NI)培地に置き換え(DMEM/F12、1×N2サプリメント、1×Glutamax(商標)、1×NEAA、及び1μg/mLヘパリン(シグマアルドリッチ社、カタログ番号H3149))、オルガノイドを60mm又は100mmの低付着プレートに移した。オルガノイドは11日目~14日目まで神経上皮組織を形成することができ、培地は1日おきに交換した。11日目~24日目に、オルガノイドをマトリゲル(Matrigel(登録商標))液滴でコーティングし、37℃で30分間保持することによりゲル化させた。マトリゲルでコーティングしたオルガノイドを、分化培地(1:1 DMEM/F12:Neurobasal(商標)、0.5%N2サプリメント、2%B27サプリメント(ビタミンAなし)(ライフテクノロジーズ社、カタログ番号12587010)、0.25%インスリン溶液(ライフテクノロジーズ社、カタログ番号12585014)、50μMの2-メルカプトエタノール、1%Glutamax(商標)、0.5%NEAA、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)へ、4日間移した。4日後、オルガノイドをビタミンAを含むB27サプリメント(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、カタログ番号17504-044)を含む分化培地に移した。脳オルガノイドをさらに60日間培養し、7日ごとに培地を交換し、90日目又は270日目でさらなる実験に使用した。
【0333】
脳オルガノイドRNA-Seq(RNAシーケンス)及び分析。非感染脳オルガノイド及び感染脳オルガノイドからのRNAは、Direct-zol(商標)RNA MicroPrep(Zymo Research社)を使用して抽出し、ライブラリーの準備及び配列決定のためにJP Sulzberger Columbia Genome Centerに提出した。ストランド固有のRNA-Seqライブラリーは、ポリAエンリッチメントを使用して調製し、ペアエンド2×100リードを使用してIllumina(登録商標)NovaSeq(商標)で配列決定した。品質及びアダプターのトリミング後、Kallisto(バージョン0.44.0)(Bray et al., 2016)を使用し、GRCh38を参照ゲノムとして転写産物ライブラリーを行った。
【0334】
脳オルガノイドの発達段階を理解する目的で、BrainSpanデータセット(22031440)を使用した。BrainSpanは、Gencodev10アノテーション(遺伝子注釈)に基づいて正規化されたRPKM式の値を提供することから、bowtie2(22388286)を使用してR1配列決定リードをヒトゲノムのGRCh37アノテーションにマッピングし、featureCountsを使用して遺伝子レベルのRPKMレベルを定量化した(Liao et al., 2014)。遺伝子は、539のRNA-Seq実験全て(524 BrainSpan、15 MeV感染)で1000を超える任意の遺伝子レベルのRPKM合計に基づいてフィルタリングした。R v3.6.2では、疑似カウントが1のlog2変換されたRPKM値の全て対全て(all-by-all)の相関行列が生成された。非感染FA10脳オルガノイド複製1との相関係数が最も高い上位100個のBrainSpanサンプルを取得し、pheatmap (https://github.com/raivokolde/pheatmap)を使用して相関係数のヒートマップを生成した。
【0335】
Kallisto転写産物の存在量及びRBioconductorパッケージDESeq2を使用して、差次的遺伝子発現解析を実施した(Love et al., 2014)。分析のためのコードは、http://www.github.com/greninger-lab/MeV-brain-organoidsで利用可能である。カウントの少ないフィルタリングは、サンプルあたり平均1カウント未満の遺伝子に対して実施した。バッチ効果及びオルガノイド間の生物学的差異は、交絡因子として設計式に組み込み、DESeq2のデフォルトパラメーターを使用して正規化及び差次的発現分析を実施した。F454Wと非感染オルガノイドとの間でBenjamini-Hochberg法で調整されたp値が最も低い50個の遺伝子の発現を、Rパッケージのヒートマップを使用して生成されたヒートマップにプロットした。棒グラフはRパッケージのggplotで生成した。RパッケージReactomePAを使用して、L454WとKEGG経路の非感染遺伝子との間で差次的に発現する遺伝子(padj<0.0001、絶対値log2倍変化>1)の濃縮を評価した(Yu and He, 2016)。
【0336】
MeVリードの100万リードあたりのリード数(RPM)値を計算するために、デフォルトのパラメーター(22388286)でBowtie2を使用して、各サンプルをNC_001498MeV参照配列に対してアラインメントした。MeV RPM値は、得られたBAMファイル内のマッピングしたリード数を使用して計算した。
【0337】
マウス脳切片のRNA-Seq。脳切片から抽出されたRNAを、上記のオルガノイドの場合と同様に調製及び配列決定した。リードは、Kallisto v0.44(参照)によってマウスリファレンストランスクリプトームmmGRCm38に疑似アラインメントした。DESeq2で差次的発現解析を行い、バッチ効果を設計式に組み込んだ。発現ヒートマップは、上記の脳オルガノイドと同様に生成した。MeVRPMは上記のように計算した。
【0338】
脳オルガノイドゲノム特異的RT-qPCR。MeVゲノム鎖を標的とする特異的逆転写は、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis System(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を使用して、製造元の指示に従って、500ngの全RNAで実施した。リバースプライマーとしてヒトGAPDH及びFW5’タグ化MeVプライマーとしてニパウイルス由来のTAG配列を有するアンチゲノム鎖のMeV配列を含む5’-gcagggcaatctcacaatcaggAAAACTGGTGTTCTACAACAA-3’を用いた。得られたcDNAを1:10に希釈した。次に、プライマーとしてMeV Rev 5’-TGAAGGCCACTGCATT-3’及びTag FW 5’-gcagggcaatctcacaatcagg-3’を使用して、以前に説明されたように(Iketani et al., 2018)QPCRを実施した。全ての結果を、ヒトGAPDH偏差に対して正規化した。
【0339】
mNGS及びバリアント呼び出し。mNGSを前述のように実施した(Iketani et al., 2018)。簡潔には、Quick-RNA Viral Kit(Zymo Research社)を使用して50μLのウイルス培養液からRNAを抽出し、TURBO DNase I(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)で処理した。DNAは、Superscript(登録商標) IV Reverse Transcriptase(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)及びランダムヘキサマー(Integrated DNA Technologies社)を使用してDNase処理されたRNAから生成し、続いてSequenase(登録商標) Version 2.0 DNA Polymeraseを介して第二鎖合成を行った。次に、得られた二本鎖cDNAをDNA Clean & Concentrator Kit(Zymo Research社)で精製した。Nextera(登録商標)XTキット(イルミナ社)を使用して2μLのcDNAからライブラリーを構築し、1×192bpのIllumina(登録商標)MiSeqランで配列決定した。
【0340】
シーケンスリードはアダプターであり、Trimmomatic v0.38を使用して品質を調整した (Bolger et al., 2014)。MeV参照ゲノム(NC_001498)を使用して、LAVA(github.com/greninger-lab/lava)で、10%を超える頻度と10倍を超えるカバー度で存在するバリアントを特定した。Geneious v11.1.4の同じMeV参照株にシーケンスリードをマッピングすることにより、全てのバリアントを手動で確認した(Kearse et al., 2012)。マトリックスと膜融合タンパク質との間の遺伝子間領域、及びホモポリマートラクトに存在するこれらの変異体は、分析から除外した。配列決定リードは、NCBI BioProject番号PRJNA594952で利用可能である。
【0341】
統計分析:マンテル・コックス(Mantel-Cox)検定を、生存率の比較分析に使用した。他の全ての統計的比較は、マン・ホイットニーのU検定を使用して実施した。全て分析を、GraphPadPrism5ソフトウェアで行った。RNA-seqデータの統計分析はRで行った。
【0342】
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【0343】
実施例6 ― 膜融合前状態で安定化された可溶性Fタンパク質
図117A~
図117Eは、特定の変異であるE107G及びE455Gによって及びFIP-HRC(コレステロールを含まない二量体)によって安定化された麻疹膜融合タンパク質に関するデータを示す。膜融合前状態の可溶性Fはワクチンとして使用され得る。
図117A~
図117Eは以下を示す:1)FIP-HRCの存在下で安定化されたFは、55℃で最大2時間の膜融合前のインキュベーション状態を維持する;2)安定化されたFは、37℃で最大1週間、膜融合前状態を維持する;3)野生型FはFIP-HRCペプチドによって部分的に安定化される;及び4)FIP-HRCのF安定化は、市販のFIPや3gなどの市販の安定剤よりも優れている。
【配列表】
【国際調査報告】