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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(54)【発明の名称】活性ろう付け接合部および処理方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/008 20060101AFI20221207BHJP
   C22C 5/08 20060101ALI20221207BHJP
   C22F 1/14 20060101ALI20221207BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20221207BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20221207BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20221207BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20221207BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
B23K1/008 B
C22C5/08
C22F1/14
C04B37/00 B
C04B37/02 B
B23K35/30 310B
B23K1/19 B
C22F1/00 630M
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515753
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020052108
(87)【国際公開番号】W WO2021067081
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】16/589,902
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイデマン、コルネリア
(72)【発明者】
【氏名】プイドカ、サブリナ ミシェル
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA01
4G026BB01
4G026BB28
4G026BF16
4G026BF24
4G026BH01
(57)【要約】
接合部を処理する方法であって、真空炉内で活性ろう付け接合部を形成することを含んでおり、活性ろう付け接合部は、固相線温度および液相線温度を有する或る体積の接合金属合金によって互いに結合した少なくとも2つの構成要素から形成され、接合金属合金は、真空炉内で液相線温度よりも高い第1の温度まで加熱される方法。この方法は、活性ろう付け接合部を固相線温度よりも低い第2の温度まで冷却すること、および所定の持続時間にわたって真空炉において第2の温度を維持し、接合金属合金の体積内に偏析結晶化の少なくとも1つの領域を形成することをさらに含み、偏析結晶化の少なくとも1つの領域は、少なくとも2つの構成要素の間の接合金属合金から形成されたろう付け金属の層の液相線温度を高めるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合部(100)を処理する方法であって、
真空炉内で活性ろう付け接合部(100)を形成するステップであって、前記活性ろう付け接合部(100)は、固相線温度および液相線温度を有する或る体積(106)の接合金属合金によって互いに結合した少なくとも2つの構成要素(102、104)から形成され、前記接合金属合金は、前記真空炉内で前記液相線温度よりも高い第1の温度まで加熱されるステップと、
前記活性ろう付け接合部(100)を前記固相線温度よりも低い第2の温度まで冷却するステップと、
所定の持続時間にわたって前記真空炉において前記第2の温度を維持し、前記接合金属合金の体積(106)内に偏析結晶化の少なくとも1つの領域(108)を形成するステップであって、前記偏析結晶化の少なくとも1つの領域(108)は、前記少なくとも2つの構成要素(102、104)の間の前記接合金属合金から形成されたろう付け金属の層(107)の前記液相線温度を高めるように構成されているステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記活性ろう付け接合部(100)について複数の加熱および冷却サイクルを実行するステップをさらに含み、各々の加熱および冷却サイクルは、
前記活性ろう付け接合部(100)を前記固相線温度よりも低い第3の温度まで加熱することと、
前記活性ろう付け接合部(100)を前記第3の温度から冷却することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各々の加熱および冷却サイクルの実行は、
約20分~約120分の間の範囲内に定められた持続時間にわたって前記固相線温度よりも低い温度に設定された前記真空炉内で前記活性ろう付け接合部(100)を加熱することと、
前記活性ろう付け接合部(100)を約10分未満の持続時間内で周囲温度へと冷却することと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
活性ろう付け接合部(100)を形成するステップは、銀と、銅と、インジウムと、少なくとも1つの活性元素とを含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活性ろう付け接合部(100)を形成するステップは、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、またはニオブを含む前記少なくとも1つの活性元素を含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記活性ろう付け接合部(100)を形成するステップは、約55重量%~約65重量%の間の範囲内に定められた銀と、約20重量%~約30重量%の間の範囲内に定められた銅と、約5重量%~約30重量%の間の範囲内に定められたインジウムと、約10重量%未満の前記少なくとも1つの活性元素とを含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ろう付け接合部(100)を処理する方法であって、
活性ろう付け接合部(100)を或る温度まで加熱するステップであって、前記活性ろう付け接合部(100)は、固相線温度および液相線温度を有する或る体積(106)の接合金属合金によって互いに結合した少なくとも2つの構成要素(102、104)から形成され、前記活性ろう付け接合部(100)は、前記固相線温度よりも低い前記温度まで加熱されるステップと、
前記活性ろう付け接合部(100)を前記温度から冷却することによって加熱および冷却サイクルを定めるステップと、
前記活性ろう付け接合部(100)について複数の加熱および冷却サイクルを実行し、前記接合金属合金の体積(106)内に偏析結晶化の少なくとも1つの領域(108)を形成するステップであって、前記偏析結晶化の少なくとも1つの領域(108)は、前記少なくとも2つの構成要素(102、104)の間の前記接合金属合金から形成されたろう付け金属の層(107)の前記液相線温度を高めるように構成されているステップと
を含む方法。
【請求項8】
銀と、銅と、インジウムと、少なくとも1つの活性元素とを含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記活性ろう付け接合部(100)を形成するステップは、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、またはニオブを含む前記少なくとも1つの活性元素を含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記活性ろう付け接合部(100)を形成するステップは、約55重量%~約65重量%の間の範囲内に定められた銀と、約20重量%~約30重量%の間の範囲内に定められた銅と、約5重量%~約30重量%の間の範囲内に定められたインジウムと、約10重量%未満のチタンとを含む接合金属合金から前記活性ろう付け接合部(100)を形成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記活性ろう付け接合部(100)を加熱するステップは、前記固相線温度よりも低い温度に設定された真空炉内で前記活性ろう付け接合部(100)を加熱することを含み、前記活性ろう付け接合部(100)は、約20分~約120分の間の範囲内に定められた持続時間にわたって加熱される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記活性ろう付け接合部(100)を冷却することは、前記活性ろう付け接合部(100)を約5分未満の持続時間内で周囲温度へと冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
何回かの加熱および冷却サイクルを実行することは、前記活性ろう付け接合部(100)が前記周囲温度へと冷却されてから1分以内に前記活性ろう付け接合部(100)を再び加熱することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性ろう付け接合部(100)を冷却することは、前記活性ろう付け接合部(100)を約2.5時間の持続時間において周囲温度に冷却することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
活性ろう付け接合部(100)であって、
第1の構成要素(102)と、
第2の構成要素(104)と、
前記第1の構成要素(102)と前記第2の構成要素(104)との間に結合したろう付け金属の層(107)と
を備え、前記ろう付け金属は、前記ろう付け金属の全体組成を定める重量百分率を各々が有する複数の元素を含み、前記ろう付け金属の層(107)は、偏析結晶化の少なくとも1つの領域(108)を含み、前記元素のうちの少なくとも1つの元素の前記重量百分率が、前記少なくとも1つの領域(108)において前記全体組成よりも大きい、活性ろう付け接合部(100)。
【請求項16】
前記第1の構成要素(102)は、セラミック材料またはニッケル系の超合金材料を含む金属材料の一方から製造され、前記第2の構成要素(104)は、セラミック材料から製造されている、請求項15に記載の活性ろう付け接合部(100)。
【請求項17】
前記ろう付け金属は、銀と、銅と、インジウムと、少なくとも1つの活性元素とを含む、請求項15に記載の活性ろう付け接合部(100)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの活性元素は、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、またはニオブを含む、請求項17に記載の活性ろう付け接合部(100)。
【請求項19】
銀または銅の少なくとも一方の前記重量百分率が、前記少なくとも1つの領域(108)において前記全体組成よりも大きい、請求項15に記載の活性ろう付け接合部(100)。
【請求項20】
偏析結晶化の前記少なくとも1つの領域(108)は、偏析結晶化の第1の領域(110)および偏析結晶化の第2の領域(112)を含み、前記第1の領域(110)は、前記第2の領域(112)と異なる、請求項15に記載の活性ろう付け接合部(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くには、活性ろう付けに関し、より具体的には、活性ろう付け接合部を使用可能温度を高めるべく処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性ろう付けは、セラミックおよび金属要素を接合し、あるいはセラミック要素を互いに接合するために使用することができる方法である。活性ろう付け接合部を形成するために使用される合金は、少なくともいくつかの点で他の既知のろう付け合金から独特である。具体的には、例えば、銀、金、または銅をベースとする活性ろう付け合金は、典型的には、これらの元素が高真空下でセラミック表面と反応して反応層を形成することを可能にする特定の含有量の「活性」元素(例えば、チタン)を含む。反応層は、セラミック要素と溶融したろう付け合金との間に広がり、セラミック要素とろう付け合金との間の接続部として作用する。しかしながら、活性ろう付け合金は、一般に、比較的低い融点温度を特徴とする。したがって、低い融点ゆえに、ガスタービン用途における高温ガス経路などの高温環境における活性ろう付け接合部の使用が、不都合に制限される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/370241号
【発明の概要】
【0004】
一態様において、接合部を処理する方法が提供される。この方法は、真空炉内で活性ろう付け接合部を形成することを含み、活性ろう付け接合部は、固相線温度および液相線温度を有する或る体積の接合金属合金によって互いに結合した少なくとも2つの構成要素から形成され、接合金属合金は、真空炉内で液相線温度よりも高い第1の温度まで加熱される。この方法は、活性ろう付け接合部を固相線温度よりも低い第2の温度まで冷却すること、および所定の持続時間にわたって真空炉において第2の温度を維持し、接合金属合金の体積内に偏析結晶化の少なくとも1つの領域を形成することをさらに含み、偏析結晶化の少なくとも1つの領域は、少なくとも2つの構成要素の間の接合金属合金から形成されたろう付け金属の層の液相線温度を高めるように構成されている。
【0005】
別の態様において、ろう付け接合部を処理する方法が提供される。この方法は、活性ろう付け接合部を或る温度まで加熱することを含み、活性ろう付け接合部は、固相線温度および液相線温度を有する或る体積の接合金属合金によって互いに結合した少なくとも2つの構成要素から形成され、活性ろう付け接合部は、固相線温度よりも低い前記温度まで加熱される。この方法は、活性ろう付け接合部を前記温度から冷却することによって加熱および冷却サイクルを定めること、および活性ろう付け接合部について複数の加熱および冷却サイクルを実行し、接合金属合金の体積内に偏析結晶化の少なくとも1つの領域を形成することをさらに含み、偏析結晶化の少なくとも1つの領域は、少なくとも2つの構成要素の間の接合金属合金から形成されたろう付け金属の層の液相線温度を高めるように構成される。
【0006】
さらに別の態様において、活性ろう付け接合部が提供される。活性ろう付け接合部は、第1の構成要素と、第2の構成要素と、第1の構成要素と第2の構成要素との間に結合したろう付け金属の層とを備える。ろう付け金属は、ろう付け金属の全体組成を定める重量百分率を各々が有する複数の元素を含む。ろう付け金属の層は、偏析結晶化の少なくとも1つの領域を含み、元素のうちの少なくとも1つの元素の重量百分率が、少なくとも1つの領域において全体組成よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的な活性ろう付け接合部の側面図である。
図2図1の領域2に囲まれた活性ろう付け接合部の一部分の拡大断面図である。
図3図2の領域3に囲まれた活性ろう付け接合部の一部分の拡大断面図である。
図4】接合部の処理の例示的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載の実施形態は、活性ろう付け接合部を使用可能温度を高めるべく処理する方法に関する。本明細書に記載の方法は、2つの構成要素の間に位置する接合金属合金を合金の液相線温度よりも高い第1の温度に加熱することによって真空炉内で活性ろう付け接合部を形成することを含む。所定の滞留時間(典型的には、約10分~約30分)の後に、ろう付け接合部は、合金の固相線温度よりも低いが室温よりも依然として高い第2の温度に冷却される。真空炉内の温度は、所定の持続時間にわたって第2の温度に維持される。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、真空炉を所定の持続時間にわたって高い第2の温度に維持することで、合金の体積内の拡散現象の開始が促進されると考えられる。拡散現象は、合金の体積内の偏析結晶化の領域の生成を促進する。偏析結晶化の領域は、合金に含まれる個々の元素の濃度の増加を含む。例えば、この処理の後に、2つの構成要素の間の接合金属合金から形成されたろう付け金属の層が、前処理の状態の接合金属合金と比較して、高い液相線温度を有することが明らかになっている。したがって、得られた活性ろう付け接合部は、最高使用温度がより高い環境において使用することが可能である。
【0009】
別途指定のない限り、本明細書で使用される「一般に」、「実質的に」、および「約」などの近似を表す文言は、そのように修飾された用語が、絶対的または完全な程度ではなく、当業者によって認識されるようなおおよその程度にのみ適用され得ることを示している。したがって、「約」、「おおよそ」、および「実質的に」などの用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの場合に、近似を表す文言は、値を測定するための計器の精度に対応することができる。さらに、別段の指示がない限り、「第1の」、「第2の」、などの用語は、本明細書において単にラベルとして使用され、これらの用語が言及する項目に順序、位置、または階層上の要件を課すものではない。さらに、例えば、「第2の」項目への言及は、例えば、「第1の」項目またはより小さい番号の項目、あるいは「第3の」項目またはより大きい番号の項目の存在を要求するものでも、排除するものでもない。本明細書において使用されるとき、「上流」という用語は、回転機械の前端または入口端を指し、「下流」という用語は、回転機械の下流端または排気端を指す。
【0010】
図1が、例示的な活性ろう付け接合部100の側面図である。例示的な実施形態において、活性ろう付け接合部100は、第1の構成要素102と、第2の構成要素104と、接合金属合金の体積106とを含む。第1の構成要素102および第2の構成要素104を、活性ろう付け接合部100が本明細書に記載のとおりに機能することを可能にする任意の材料から製造することができる。一実施形態において、第1の構成要素102は、セラミック材料または金属材料のいずれかから製造され、第2の構成要素104は、セラミック材料から製造される。例えば、金属材料は、ニッケル系の超合金材料であってよいが、これに限定されない。したがって、一実施形態において、第1の構成要素102は、ガスタービンエンジンの回転構成要素または静止構成要素などの高温ガス経路構成要素であり、第2の構成要素104は、ガスタービンエンジン内のプロセス条件を監視するために使用されるセンサである。
【0011】
本明細書に記載の方法による処理に先立って、接合金属合金は、第1の構成要素102と第2の構成要素104との間に配置される。前処理の状態において、接合金属合金の体積106は、約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内に定められた厚さTを有することができ、ろう付け箔の形態であってよい。接合金属合金は、第1の構成要素102を第2の構成要素104に接合するように配置される。接合金属合金は、活性ろう付け接合部100が本明細書に記載とおりに機能することを可能にする元素の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、一実施形態において、接合金属合金は、銀、銅、インジウム、および少なくとも1つの活性元素を含むが、これらに限定されない。例示的な活性元素として、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、および/またはニオブが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、例示的な実施形態において、接合金属合金は、約55重量%~約65重量%の範囲内に定められた銀と、約20重量%~約30重量%の範囲内に定められた銅と、約5重量%~約30重量%の範囲内に定められたインジウムと、約10重量%未満のチタンとを含む。
【0012】
図2が、図1に示した活性ろう付け接合部100の一部分の拡大断面図であり、図3が、図2に示した活性ろう付け接合部100の一部分の拡大断面図である。例示的な実施形態において、接合金属合金の体積106は、接合金属合金の全体的な組成を定める重量百分率を各々が有する複数の元素を含む。以下でさらに詳細に説明される方法に従って活性ろう付け接合部100を処理することにより、接合金属合金の体積106から形成されたろう付け金属の層107は、偏析結晶化の少なくとも1つの領域108を含む。接合金属合金の元素のうちの少なくとも1つの元素の重量百分率は、少なくとも1つの領域108において、全体的な組成における重量百分率よりも大きい。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載の熱処理の処理方法は、体積106内の相(元素)の偏析を促進し、個々の相のうちの少なくとも1つ、または各々の個々の相が、全体としての接合金属合金よりも高い融点を有すると考えられる。このように、活性ろう付け接合部100について本明細書に記載の熱処理の処理を実行することにより、ろう付け金属の使用温度を高くすることが容易になる。
【0013】
図3を参照すると、少なくとも1つの領域108は、例えば、各々が互いに異なる偏析結晶化の第1の領域110、第2の領域112、および第3の領域114を少なくとも含む。例示的な実施形態において、第1の領域110では、第1の元素(例えば、銀)の重量百分率が、第2の領域112、第3の領域114、および接合金属合金の組成の全体における第1の元素の重量百分率よりも大きい。同様に、第2の領域112では、第2の元素(例えば、銅)の重量百分率が、第1の領域110、第3の領域114、および接合金属合金の組成の全体における第2の元素の重量百分率よりも大きく、第3の領域114では、第3の元素(例えば、チタン)の重量百分率が、第1の領域110、第2の領域112、および接合金属合金の組成の全体における第3の元素の重量百分率よりも大きい。いくつかの実施形態において、第1の元素、第2の元素、および第3の元素は、各々のそれぞれの元素が各々のそれぞれの領域110、112、および114に含まれる他の任意の元素よりも大きい重量百分率を有するという点で、各々の領域110、112、および114における支配的元素である。各々のそれぞれの領域110、112、および114における支配的元素は、各々の領域110、112、および114の組成の約50重量%未満、約25重量%超、約50重量%超、または約75重量%超を構成することができる。
【0014】
図4が、接合部の処理の例示的な方法200を示す流れ図である。例示的な実施形態において、方法200は、真空炉内で(図1に示される)活性ろう付け接合部100などのろう付け接合部を形成するステップ202を含む。上述したように、ろう付け接合部の接合金属合金は、固相線温度および液相線温度を有する。形成するステップ202において、接合金属合金は、炉内で、第1の構成要素102および第2の構成要素104(どちらも図1に示されている)の互いの接合を促進するために、液相線温度よりも高い第1の温度まで加熱される。第1の構成要素102と第2の構成要素104とを接合した後に、熱処理の処理を行ってもよい。
【0015】
例えば、方法200は、ろう付け接合部を接合金属合金の固相線温度よりも低い第2の温度に冷却するステップ204と、所定の持続時間にわたって真空炉内で第2の温度を維持するステップ206とをさらに含む。真空炉内で接合金属合金の第2の温度に維持するステップ206は、接合金属合金内の相の偏析の開始を容易にすると考えられる。第2の温度は、前処理の状態の接合金属合金の固相線温度の約90%よりも高くてよく、約95%よりも高くてよく、あるいは約98%よりも高くてよい。第2の温度は、約20分~120分の間の所定の持続時間にわたって維持される(ステップ206)。次いで、真空炉およびろう付け接合部は、加熱および冷却サイクルを定めるように再び冷却および加熱される。一実施形態において、方法200は、ろう付け接合部について複数の加熱および冷却サイクルを実行するステップ208をさらに含む。
【0016】
例示的な実施形態において、各々の加熱および冷却サイクルは、ろう付け接合部を固相線温度よりも低い第3の温度に加熱することと、ろう付け接合部を第3の温度から冷却することとを含む。第3の温度は、第2の温度に等しくても、第2の温度よりも高くても、第2の温度よりも低くてもよい。サイクルにおける加熱ステップは、ろう付け接合部を、約20分~約30分の間の範囲内に定められた持続時間にわたって、固相線温度よりも低い第3の温度などの温度に設定された真空炉において加熱することを含む。サイクルにおける冷却ステップは、ろう付け接合部を、加熱の持続時間が経過した後に、約10分未満または約5分未満の持続時間内で周囲温度まで冷却することを含む。例えば、ろう付け接合部の冷却を、圧縮空気の流れをろう付け接合部へと向けることによって加速させることができる。次いで、次の加熱および冷却サイクルの加熱ステップを、真空炉を或る温度に設定することによって、ろう付け接合部が周囲温度へと冷却されてから1分以内に、開始させることができる。このように、熱サイクルによって、接合金属合金内の層の偏析が加速および強化されると考えられる。別の実施形態において、サイクルにおける冷却ステップは、ろう付け接合部を、加熱の持続時間が経過した後に、約2.5時間の持続時間内で周囲温度まで冷却することを含む。
【0017】
本明細書において使用されるとき、「周囲温度」は、下限が摂氏約15度であり、上限が摂氏約30度である温度範囲を指す。
【0018】
方法200が本明細書に記載のとおりに機能することを可能にする任意の数の加熱および冷却サイクルを、ろう付け接合部について実行することができる(ステップ208)。例えば、ろう付け接合部の熱処理の処理は、少なくとも2回の加熱および冷却サイクル、少なくとも3回の加熱および冷却サイクル、または少なくとも7回の加熱および冷却サイクルなど、所定数の加熱および冷却サイクルの実施を含むことができる。
【0019】
所定数の加熱および冷却サイクルの完了後に、ろう付け接合部に非破壊検査の処置を施すことができ、かつ/またはガスタービンエンジンの高温ガス経路内など、アセンブリ内に組み込むことができる。非破壊検査は、第1の構成要素102と第2の構成要素104との間の接合の範囲、したがって強度を検証するために使用される。例示的な非破壊検査技術として、超音波検査が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ガスタービンエンジンの高温ガス経路内の温度は、摂氏約600度などの所定の温度に達し得る。例示的な実施形態において、方法200に従って処理されたろう付け接合部は、所定の温度よりも高い温度を有する環境内で動作するように構成される。例えば、方法200に従って処理されたろう付け接合部は、所定の温度よりも高い液相線温度を有する。
【0020】
本明細書に記載の実施形態は、活性ろう付け接合部およびその処理方法に関する。本明細書に記載の方法は、活性ろう付け接合部に使用された接合金属合金の液相線温度を高めることを容易にする。例えば、処理ステップは、或る体積の接合金属合金を有する偏析結晶化の領域の形成を容易にし、各々の領域は、合金の個々の元素の濃度の増加から形成される。個々の元素は、合金全体よりも高い液相線温度を有し得る。したがって、活性ろう付け接合部の使用温度を高めることが容易になる。
【0021】
上記の説明は例示のみを意図したものであり、当業者は、開示された本発明の範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に変更を加えることができることを認識するであろう。例えば、本明細書に記載されたプロセスステップは、例えば、持続時間、温度、またはサイクル間の時間において改変されてよい。本発明の範囲内にある、さらに他の改変は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、そのような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0022】
活性ろう付け接合部およびその処理方法の例示的な実施形態が、上記で詳細に説明されている。方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、むしろ、方法のステップは、本明細書に記載の他のステップとは独立して別々に利用することができる。例えば、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のガスタービンエンジンの高温ガス経路で使用される接合部のみにおける実施に限定されない。むしろ、例示的な実施形態は、多くの他の用途に関連して実施および利用することができる。
【0023】
本発明の種々の実施形態の特定の特徴は、一部の図面に示され、他の図面には示されていないかもしれないが、これは単に便宜上にすぎない。さらに、上記の説明における「一実施形態」への言及は、記載した特徴をやはり取り入れるさらなる実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図しない。本発明の原理によれば、図面の任意の特徴は、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または特許請求することができる。
【0024】
本発明を種々の特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、本発明を特許請求の範囲の趣旨および範囲内の改変を加えて実施することができることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0025】
100 ろう付け接合部
102 第1の構成要素
104 第2の構成要素
106 接合金属合金の体積
107 ろう付け金属の層
108 偏析結晶化の少なくとも1つの領域
110 第1の領域
112 第2の領域
114 第3の領域
200 方法
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】